説明

DC−DCコンバータ

【課題】出力線108に接続される負荷の大きさをを検出する為の負荷検出用抵抗器を用いずに、従って負荷検出用抵抗器による無駄な電力消費が発生しないDC−DCコンバータを提供する。
【解決手段】第2インダクタ105に発生するフライバック電圧を入力する積分回路10を第2インダクタ105に並列に接続する。出力線108に接続された負荷が、軽負荷若しくは無負荷である場合には、フライバック電圧がOFF時間T2の全体で発生しないので積分回路10の出力は所定値以下となり、積分回路10の出力から軽負荷若しくは無負荷であると判定してスイッチング制御回路110を間欠発振動作モードで動作させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不安定な入力側の直流電源電圧を変換して、定電圧制御した直流電圧を出力するDC−DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
DC−DCコンバータは、直流電源と第1インダクタンスと主スイッチング素子が直列に接続され、主スイッチング素子を高い周波数でオン、オフ制御することにより、第1インダクタに結合する第2インダクタンスに表れるインダクタ電流を整流平滑化し、所望の電圧に昇圧した直流電圧を出力端子間へ出力するものである。
【0003】
このようなDC−DCコンバータにおいては、出力端子間に接続される負荷の大きさにかかわらず、固定周期で主スイッチング素子をオン、オフ制御するので、出力端子間に接続される負荷が、待機時の無負荷や軽負荷である場合にも、同様に主スイッチング回路が動作し無駄にスイッチング動作することとなるので、スイッチング損失等による電力損失が発生していた。
【0004】
そこで、従来のDC−DCコンバータでは、出力端子間に接続される負荷の大きさを判定し、軽負荷若しくは無負荷と判定する場合に、主スイッチング素子のオン、オフ制御を一時的に休止する間欠動作モードへ移行させている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−56981号公報(明細書第5頁項目0027乃至第6頁項目0030、図2乃至図4)
【0006】
この従来のDC−DCコンバータを、図7に示すSEPIC(シングルエンド一次インダクタンスコンバータ)方式のDC−DCコンバータ100を用いて説明する。
【0007】
図7に示すように、101は、直流入力電源としてのバッテリーであり、その高電位側端子101aと低電位側端子101b間に、第1インダクタ102と主スイッチング素子となるFET103が直列に接続されている。FET103は、スイッチング制御回路としての制御用IC110により固定周期Tでオン、オフ制御され、このスイッチング動作によって第1インダクタ102に流れる電流がオン、オフ制御される。
【0008】
また、FET103と並列に、CL結合回路を構成する結合コンデンサ104と第2インダクタ105が直列に接続され、更に、第2インダクタ105と並列に、整流用ダイオード106と平滑コンデンサ107からなる整流・平滑回路が接続され、第2インダクタ105の両端に表れる出力電圧を、平滑コンデンサ107両端の高圧側出力線108Aと低圧側出力線108B間に整流・平滑化して、出力している。
【0009】
高圧側出力線108Aと低圧側出力線108B間には、第1分圧用抵抗器111、112が直列に接続され、第1分圧用抵抗器111、112の抵抗比で出力電圧を分圧した分電圧を、中間の接続点J1から制御用IC110へ出力している。制御用IC110は、連続動作モードの間、この出力電圧の分電圧を所定の出力設定電圧と比較し、固定周期T内のON時間、すなわちオンデューティ比を変化させてFET103をスイッチング制御し、設定電圧に一致するように定電圧制御している。
【0010】
更に、高圧側出力線108Aと低圧側出力線108B間には、負荷が軽負荷若しくは無負荷である場合の間欠動作モードで、出力電圧を監視するための第2分圧用抵抗器113、114がそれぞれ直列に接続されている。第2分圧用抵抗器113、114の中間接続点J2は、負荷検出用IC120の電圧検出端子VSに接続し、間欠動作モードの間、負荷検出用IC120において、中間接続点J2から入力される出力電圧の分電圧を所定の開始電圧及び停止電圧と比較している。
【0011】
115は、低圧側出力線108Bに直列に接続された負荷検出抵抗器で、その両端は、負荷検出用IC120の電流検出端子ISと低圧側基準端子GNDに接続している。負荷検出抵抗器115両端の電位は、出力電圧を定電圧制御している間、高圧側出力線108Aと低圧側出力線108B間に接続される負荷の大きさに比例し、従って、負荷検出用IC120は、電流検出端子ISと低圧側基準端子GND間の電位が所定値以上となったときに、通常の大きさの負荷と、所定値未満となったときに、軽負荷若しくは無負荷と判定している。
【0012】
負荷検出用IC120の出力端子OUTは、プルダウン抵抗器116を介して高電位側端子101aに接続し、プルダウン抵抗器116との接続点を、制御用IC110の動作制御端子ON/OFFへ接続している。
【0013】
このように構成されたDC−DCコンバータ100は、通常の大きさの負荷が接続されていると負荷検出用IC120が判定する間は、出力端子OUTから制御用IC110の動作制御端子ON/OFFへON信号を連続出力し、制御用IC110を連続動作モードとして、連続した動作状態とする。その結果、FET103は、固定周期Tでオン、オフ制御され、DC−DCコンバータ100全体が発振動作を繰り返すことによって、高圧側出力線108Aと低圧側出力線108B間に、負荷に応じた出力電流が出力される。この連続動作モードでは、FET103のオンデューティ比が制御され、出力電圧が出力設定電圧から設定される例えば5Vとなるように定電圧制御される。
【0014】
高圧側出力線108Aと低圧側出力線108B間に接続される負荷が軽負荷若しくは無負荷となると、負荷検出抵抗器115に流れる出力電流が低下することから、負荷検出用IC120は、軽負荷若しくは無負荷と判定し、制御用IC110を間欠動作モードで動作するように制御する。すなわち、間欠動作モードでは、高圧側出力線108Aと低圧側出力線108B間の出力電圧が開始電圧から設定される例えば2Vを維持するように制御用IC110自体を間欠駆動制御する。出力電圧が2V未満に低下すると、負荷検出用IC120の出力端子OUTから制御用IC110の動作制御端子ON/OFFへON信号が出力され、制御用IC110が動作状態となる。
【0015】
その結果、制御用IC110は、FET103を固定周期Tでオン、オフ制御し、一方高圧側出力線108Aと低圧側出力線108B間に接続される負荷が軽負荷若しくは無負荷であるので、出力電圧はすぐに上昇する。出力電圧が停止電圧から設定される例えば2.2Vを越えると、負荷検出用IC120の出力端子OUTから制御用IC110の動作制御端子ON/OFFへOFF信号が出力され、制御用IC110自体の動作が休止する休止状態となる。その結果、FET103のスイッチング動作が停止し、第2インダクタ105に電力が供給されないので、出力電圧は徐々に低下し、開始電圧から設定される2V未満に低下すると、負荷検出用IC120は制御用IC110を再び動作状態とする。以後、負荷検出用IC120が軽負荷若しくは無負荷と判定する限り、上記動作を繰り返し、制御用IC110は間欠動作を行う。
【0016】
間欠動作モードから、高圧側出力線108Aと低圧側出力線108B間に、通常の負荷が接続されると、出力線108Bに流れる電流が増加することから負荷検出用IC120は、再び出力端子OUTから制御用IC110の動作制御端子ON/OFFへ連続してON信号を出力し、制御用IC110を連続動作モードへ移行させる。
【0017】
このDC−DCコンバータ100によれば、軽負荷若しくは無負荷である場合に、制御用IC110を休止し、この間FET103のスイッチング動作を停止するので、無駄なスイッチング動作がなくなり、スイッチング損失等による電力損失を防止できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、この従来のDC−DCコンバータ100は、高圧側出力線108A若しくは低圧側出力線108Bの一方に、負荷検出抵抗器115を直列に接続し、出力線に流れる電流から負荷の大きさを判定するものであることから、通常の大きさの負荷が接続された連続動作モードにおいても、負荷検出抵抗器115に出力線の電流が流れ、無駄な電力を消費するものであった。
【0019】
負荷検出抵抗器115の抵抗値を下げれば、この電力消費量を低下させることができるが、通常の大きさの負荷から軽負荷と判定する境界値で流れる電流は微弱であり、負荷検出用IC120で軽負荷と判定可能な所定の電位を発生させるには、その下限に限界があった。例えば、通常の大きさの負荷から軽負荷と判定する境界値で流れる電流を10mAとし、電流検出端子ISと低圧側基準端子GND間の電位が50mV以上で負荷検出用IC120が判定可能とすれば、負荷検出抵抗器115の抵抗値は5Ω以下とすることはできず、連続動作モードに転じて出力線に1Aの電流が流れるとすれば、少なくとも5Wの電力が負荷検出抵抗器115において、無駄に消費されるものとなる。
【0020】
また、電流検出端子ISと低圧側基準端子GND間の電位から出力線間に接続される負荷の大きさを判定し、制御用IC110の動作を、連続動作モードと間欠動作モードで制御する負荷検出用IC120を備える必要があるため、回路全体が複雑で高価になるという問題があった。
【0021】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、出力線に接続される負荷の大きさをを検出する為の負荷検出抵抗器を用いずに、従って負荷検出抵抗器による無駄な電力消費が発生しないDC−DCコンバータを提供することを目的とする。
【0022】
また、制御用IC110の動作を制御する負荷検出用ICを用いずに、簡単な回路で出力線間に接続される負荷の大きさによってスイッチング制御回路の動作を制御するDC−DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上述の目的を達成するため、請求項1のDC−DCコンバータは、直流電源の高電位側端子に一端が接続する第1インダクタと、前記第1インダクタの他端を前記直流電源の低電位側端子に接続させる主スイッチング素子と、前記主スイッチング素子を固定周期でオン、オフ制御するスイッチング制御回路と、前記第1インダクタの他端に接続する結合コンデンサと、前記第1インダクタの他端を、前記結合コンデンサを介して前記直流電源の低電位側端子に接続させる第2インダクタと、前記第2インダクタの両端に表れる出力を整流平滑化して一対の出力端子間に出力する整流平滑化回路と、前記出力端子間に接続する負荷が軽負荷若しくは無負荷と判定した際に、軽負荷判定信号を出力する負荷判定回路とを備え、連続動作モードで前記出力端子間の出力電圧を定電圧制御するように、前記主スイッチング素子をオン、オフ制御する前記スイッチング制御回路を、軽負荷判定信号が出力されている間は、前記主スイッチング素子のオン、オフ制御を一時的に休止する間欠動作モードとするDC−DCコンバータであって、
前記負荷判定回路は、前記第2インダクタに並列に接続し、前記主スイッチング素子がオフ制御されるOFF時間中に前記第2インダクタに発生する電圧を入力する積分回路からなり、前記主スイッチング素子をオン、オフ制御する間に、前記第2インダクタに発生する電圧を入力した前記積分回路の出力電圧が、所定の設定電圧未満である場合に、前記積分回路から軽負荷判定信号を出力することを特徴とする。
【0024】
出力電圧の定電圧制御している状態で、出力端子間に通常の大きさの負荷が接続されている場合には、エネルギー放出時間が長く、OFF時間が終了するまでに出力電流の放出が終了しない。従って、第2インダクタには、OFF時間中連続してインダクタ電流が流れ、このOFF時間全体に出力電圧とほぼ同一の電圧が発生する。第2インダクタと並列に接続する積分回路のコンデンサは、OFF時間の全体で第2インダクタ両端の電圧で充電されるので、主スイッチング素子がオン、オフ動作を繰り返すことにより、積分回路の出力は設定電圧以上となる。その結果、軽負荷判定信号を出力せず、スイッチング制御回路は、連続動作モードで、主スイッチング素子のオン、オフ制御を連続して繰り返す。
【0025】
出力端子間に接続される負荷が、軽負荷若しくは無負荷となると、エネルギー放出時間が短くなり、OFF時間が終了する前に出力電流が途絶える。従って、第2インダクタに流れるインダクタ電流は、出力電流が途絶えた時に途絶え、OFF時間の途中で第2インダクタに発生する電圧は0Vとなる。OFF時間中の第2インダクタに発生する電圧で積分回路のコンデンサを充電する充電時間は短縮され、主スイッチング素子がオン、オフ動作を繰り返しても積分回路の出力は設定電圧に達することがなく、軽負荷判定信号が出力される。その結果、スイッチング制御回路は、主スイッチング素子のオン、オフ制御を一時的に休止する間欠動作モードに移行する。
【0026】
スイッチング制御回路が、間欠動作モードで動作している間に、出力端子間に通常の大きさの負荷が接続されると、主スイッチング素子を繰り返してオン、オフ制御する間に、固定周期内で出力電流の放出が終了しなくなり、積分回路の出力は設定電圧以上となる。その結果、軽負荷判定信号の出力は停止し、スイッチング制御回路は、連続動作モードに復帰する。
【0027】
請求項2のDC−DCコンバータは、直流電源の高電位側端子に一端が接続する第1インダクタと、前記第1インダクタの他端を前記直流電源の低電位側端子に接続させる主スイッチング素子と、前記主スイッチング素子を固定周期でオン、オフ制御するスイッチング制御回路と、前記第1インダクタの他端に接続する結合コンデンサと、前記第1インダクタの他端を、前記結合コンデンサを介して前記直流電源の低電位側端子に接続させる第2インダクタと、前記第2インダクタの両端に表れる出力を整流平滑化して一対の出力端子間に出力する整流平滑化回路と、前記出力端子間に接続する負荷が軽負荷若しくは無負荷と判定した際に、軽負荷判定信号を出力する負荷判定回路とを備え、連続動作モードで前記出力端子間の出力電圧を定電圧制御するように、前記主スイッチング素子をオン、オフ制御する前記スイッチング制御回路を、軽負荷判定信号が出力されている間は、前記主スイッチング素子のオン、オフ制御を一時的に休止する間欠動作モードとするDC−DCコンバータであって、
前記負荷判定回路は、前記第1インダクタ若しくは前記第2インダクタに直列に接続され、前記第1インダクタ若しくは前記第2インダクタに流れるインダクタ電流を検出する電流検出回路からなり、前記主スイッチング素子をオン、オフ制御する間に、前記第1インダクタ若しくは前記第2インダクタに流れるインダクタ電流が前記固定周期内で不連続状態となる場合に、前記電流検出回路から軽負荷判定信号を出力することを特徴とする。
【0028】
出力電圧の定電圧制御している状態で、出力端子間に通常の大きさの負荷が接続されている場合には、エネルギー放出時間が長く、OFF時間が終了するまでに出力電流の放出が終了しない。従って、前記第1インダクタ若しくは第2インダクタには、OFF時間中連続してインダクタ電流が流れ、不連続状態とならない。電流検出回路は、軽負荷判定信号は出力せず、スイッチング制御回路は、連続動作モードで、主スイッチング素子のオン、オフ制御を連続して繰り返す。
【0029】
出力端子間に接続される負荷が、軽負荷若しくは無負荷となると、エネルギー放出時間が短くなり、OFF時間が終了する前に出力電流が途絶える。従って、前記第1インダクタと第2インダクタに流れるインダクタ電流は、OFF時間の途中で途絶え、固定周期内で不連続となる。前記第1インダクタ若しくは第2インダクタに流れるインダクタ電流が固定周期内で不連続となるので、電流検出回路は軽負荷判定信号を出力し、スイッチング制御回路は、主スイッチング素子のオン、オフ制御を一時的に休止する間欠動作モードに移行する。
【0030】
スイッチング制御回路が、間欠動作モードで動作している間に、出力端子間に通常の大きさの負荷が接続されると、主スイッチング素子を繰り返してオン、オフ制御する間に、固定周期内で出力電流の放出が終了しなくなり、前記第1インダクタと第2インダクタに流れるインダクタ電流は連続する。その結果、軽負荷判定信号の出力は停止し、スイッチング制御回路は、連続動作モードに復帰する。
【0031】
請求項3のDC−DCコンバータは、前記固定周期をT、前記第2インダクタのインダクタンスをL2、所定値に設定する前記出力端子間に流れる設定電流をIset、前記直流電源の電源電圧をVin、定電圧制御する前記出力端子間の電圧をVoutとしたときに、
T=2*L2*Iset*(1/Vin+1/Vout)・・・(1)式
から、前記第2インダクタのインダクタンスL2を調整し、前記出力端子間に流れる電流が前記設定電流Iset未満である場合に、前記電流検出回路から軽負荷判定信号を出力することを特徴とする請求項2に記載のDC−DCコンバータ。
【0032】
任意に設定する設定電流Isetに対して(1)式を満たすインダクタンスL2のインダクタを第2インダクタとして用いれば、出力端子間に流れる電流が設定電流Isetであるときに、固定周期TのOFF時間と、エネルギー放出時間すなわち出力電流が途絶えるまでの期間が一致する。
【0033】
出力電圧は定電圧制御され、負荷の大きさは出力電流に比例するので、通常の負荷と軽負荷の境界とする負荷の境界値を任意に設定し、境界値の負荷が出力端子間に接続された際に流れる電流を設定電流Isetとし、(1)式を満たすインダクタンスL2のインダクタを第2インダクタとして用いれば、任意に設定する境界値の負荷が接続されたときに、インダクタ電流の連続状態と不連続状態の臨界状態となり、インダクタ電流の連続性から負荷の大きさを判定できる。
【発明の効果】
【0034】
請求項1乃至請求項3の発明によれば、負荷検出抵抗器を出力線に直列に接続せずに、負荷の大きさを検出できるので、負荷検出抵抗器による出力電流が流れることによる無駄な電力消費が発生しない。
【0035】
また、請求項1の発明によれば、負荷検出用ICを用いずに、簡単な積分回路で出力線間に接続される負荷の大きさを判別できるので、複雑な回路とならず安価にDC−DCコンバータを製造できる。
【0036】
また、請求項2の発明によれば、負荷検出用ICを用いずに、電流値を検出することなく、電流の有無を検出する簡単な電流検出回路で出力線間に接続される負荷の大きさを判別できるので、複雑な回路とならず安価にDC−DCコンバータを製造できる。
【0037】
請求項3の発明によれば、任意に設定する境界値に対する実際に接続されている負荷の大きさを、インダクタ電流の連続性から簡単に比較できるので、軽負荷若しくは無負荷の判定が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の一実施の形態に係るSEPIC(シングルエンド一次インダクタンスコンバータ)方式のDC−DCコンバータ1を、図1乃至図5で説明する。SEPIC方式のDC−DCコンバータは、降圧と昇圧の双方が可能なステップダウン/ステップアップ・コンバータとして、直流電源となる電池セルの電圧が放電によって低下しても定電圧出力制御が可能なことから、ポータブル機器に使用されるDC−DCコンバータとして広く利用されている。
【0039】
図1は、DC−DCコンバータ1の回路図であり、上述した従来のDC−DCコンバータ100と実質的に同一若しくは同様に作用する構成については、同一の番号を付してその詳細な説明を省略する。本実施の形態に係るDC−DCコンバータ1は、図7に示すDC−DCコンバータ100と比較して明らかなように、DC−DCコンバータ100に備えられていた負荷検出抵抗器115と、負荷検出用IC120を省略した回路となっている。
【0040】
直流入力電源101は、10乃至20%程度の電圧変動がある不安定な電源で、その高電位側端子101aと低電位側端子101b間に、第1インダクタ102と主スイッチング素子となるFET103が直列に接続されている。FET103のゲートは、スイッチング制御回路としての制御用ICで構成される110の制御端子DRAIVEに接続し、制御用IC110が後述する動作状態にあるとき、FET103は、制御用IC110により、例えば800nsecの固定周期Tでオン、オフ制御される。
【0041】
このFET103と並列に、第1インダクタ102に接続する結合コンデンサ104を介して第2インダクタ105が接続され、結合コンデンサ104と第2インダクタ105との接続点にアノードを接続させた整流用ダイオード106が接続されている。整流用ダイオード106のカソードと低電位側端子101b間には、平滑コンデンサ107が接続され、第2インダクタ105の両端に表れる出力電圧を整流・平滑化し、平滑コンデンサ107両端の高圧側出力線108Aと低圧側出力線108B間に出力している。
【0042】
高圧側出力線108Aと低圧側出力線108B間には、通常の大きさの負荷が接続された際の後述する連続動作モードで、出力電圧を監視するための第1分圧用抵抗器111、112が、更に、負荷が軽負荷若しくは無負荷である場合の後述する間欠動作モードで、出力電圧を監視するための第2分圧用抵抗器113、114が、それぞれ直列に接続されている。
【0043】
第1分圧用抵抗器111、112間の中間接続点J1は、制御用IC110の入力端子SENCEに接続され、これにより制御用IC110は、連続動作モードの間、中間接続点J1から入力される出力電圧の分電圧を所定の出力設定電圧と比較し、固定周期T内のON時間、すなわちオンデューティ比を変化させてFET103をスイッチング制御し、設定電圧に一致するように定電圧制御している。
【0044】
また、第2分圧用抵抗器113、114の中間接続点J2は、NPN形トランジスタで構成される駆動制御トランジスタ2のベースに接続し、駆動制御トランジスタ2のコレクタは、プルダウン抵抗器116を介して高電位側端子101aに、エミッタは、低電位側端子101bに接続している。駆動制御トランジスタ2のコレクタは、更に制御用IC110の動作制御端子ON/OFFに接続し、これにより駆動制御トランジスタ2のオン、オフ動作に連動して、制御用IC110が、休止状態と動作状態を交互に繰り返す間欠動作モードに移行するようになっている。
【0045】
すなわち、間欠動作モードの間、中間接続点J2から入力される出力電圧の分電圧が、駆動制御トランジスタ2の動作電圧を超えると、駆動制御トランジスタ2はオン動作し、動作制御端子ON/OFFが低電位側端子101bの電位に引き下げられ、制御用IC110が休止状態となる。また、出力電圧の分電圧が、駆動制御トランジスタ2の動作電圧を下回ると、駆動制御トランジスタ2がオフ動作することにより動作制御端子ON/OFFが高電位側端子101aの電位に引き上げられ、制御用IC110は動作状態に移行する。
【0046】
このDC−DCコンバータ1には、図に示すように、直列に接続された第1積分用抵抗器4と第2積分用抵抗器5と、第2積分用抵抗器5に対して並列に接続された積分用コンデンサ6とから構成される積分回路10が備えられている。積分回路10は、第2インダクタ105と並列となるように、アノードを結合コンデンサ104と第2インダクタ105の接続点に接続させた逆流阻止ダイオード3に接続され、第2インダクタ105に発生するフライバック電圧で、積分用コンデンサ6が充電されるようになっている。
【0047】
第1積分用抵抗器4と第2積分用抵抗器5の接続点J3、すなわち積分用コンデンサ6の高圧側電極は、NPN形トランジスタで構成される負荷検出トランジスタ7のベースに接続し、負荷検出トランジスタ7のコレクタは、抵抗器8を介して第2分圧用抵抗器113、114の中間接続点J2に、エミッタは、低電位側端子101bに接続している。抵抗器8の抵抗値は、負荷検出トランジスタ7がオン動作した際に駆動制御トランジスタ2のベース電圧がその動作電位に達しない電位となるように、第2分圧用抵抗器113、114の抵抗値に対して充分小さい値となっている。
【0048】
このように構成されたSEPIC方式のDC−DCコンバータ1は、通常の大きさの負荷が接続されている間は、連続動作モードで動作状態にある制御用IC110によって、FET103は、800nsecの固定周期Tでオン、オフ制御され、DC−DCコンバータ1全体が発振動作を繰り返し、高圧側出力線108Aと低圧側出力線108B間に、負荷に応じた出力電流が出力される。この連続動作モードでは、上述のDC−DCコンバータ100と同様に、第1分圧用抵抗器111、112から得る出力電圧の分電圧が、制御用IC110により所定の出力設定電圧と比較され、制御用IC110は、固定周期T内のオンデューティ比を変化させてFET103をスイッチング制御し、出力電圧を出力設定電圧から設定される例えば5.2Vに定電圧制御している。
【0049】
図2は、図1に示すDC−DCコンバータ1について、直流入力電源101の電源電圧Vinを5Vとし、出力電圧Voutを5.2Vに定電圧制御しながら、FET103を約800nsecの固定周期Tでオン、オフ制御したときのFET103のドレイン−ソース間の電圧Vds、ドレインからソースへ流れる電流Ids、第1インダクタ102に流れる第1インダクタンス電流IL1、第2インダクタ105に流れる第2インダクタンス電流IL2及び整流用ダイオード106の順方向電流IDの各波形を示す波形図である。
【0050】
DC−DCコンバータ1が約800nsecの固定周期Tで連続発振している状態で、固定周期T中のON時間T1中に第1インダクタ102に流れる第1インダクタンス電流IL1は、直流入力電源101の電源電圧をVin、第1インダクタ102のインダクタンスをL1、FET103がターンオンしてからの経過時間をtとすれば、
IL1=Vin/L1*t・・・・(2)
で表され、図2に示すように、第1インダクタ102には、インダクタンスL1と電源電圧Vinによって定まる傾斜の第1インダクタンス電流IL1がFET103を通して流れ、励磁される。
【0051】
同時に、結合コンデンサ104の一側は、ON動作するFET103を介して低電位側端子101bに接続しているので、第2インダクタ105に、結合コンデンサ104の充電電圧で電源電圧Vinの負電圧が加わり、第2インダクタ105にも、FET103を通して第2インダクタンス電流IL2が流れ、励磁される。このON時間T1中に第2インダクタ105に流れる第2インダクタンス電流IL2は、第2インダクタ105のインダクタンスをL2とすれば、
IL2=Vin/L2*t・・・・(3)
で表され、第2インダクタンス電流IL2は、インダクタンスL2に反比例し電源電圧Vinに比例する傾斜でON時間T1が経過した時にピークに達する。
【0052】
すなわち、ON時間T1中は、時間の経過と共に上昇する励磁電流IL1、IL2がそれぞれ第1インダクタ102と第2インダクタ105に流れ、エネルギーが蓄積される。
【0053】
FET103がOFF動作しOFF時間T2になると、図2のVds電圧に示すように、結合コンデンサ104と接続する側の第1インダクタ102の他端に発生するフライバック電圧が電源電圧Vinよりも高くステップ状に上昇し、結合コンデンサ104によって電源電圧Vinと分離した状態で、整流用ダイオード106を通してエネルギー放出時間Tout中、出力線108A、108B間に接続された負荷へ給電する。同時に第2インダクタ105にも、逆電圧となるフライバック電圧が発生し、図3(a)(b)に示すように、エネルギー放出時間Tout中は、時間と共に減少する第1インダクタンス電流IL1と第2インダクタンス電流IL2の和が整流用ダイオード106を通して流れ、一部は出力線108に流れる出力電流Ioutとなり、負荷へ供給される。
【0054】
出力電圧Voutが定電圧制御されるもとで、出力線108A、108B間に接続された負荷が重くなると、第1インダクタンス電流IL1と第2インダクタンス電流IL2もそれぞれ増大する。その結果、負荷が所定の大きさを越えると、図3(a)に示すように、固定周期Tを経過しても第1インダクタンス電流IL1と第2インダクタンス電流IL2が流れ続けている状態となり、再び0N時間T1に移行する際には、これらのインダクタンス電流IL1、IL2に、上述の0N時間T1で新たに流れる第1インダクタンス電流IL1と第2インダクタンス電流IL2が重畳し、出力電流Ioutが負荷へ供給される。
【0055】
このように、所定の大きさの負荷が出力線108A、108B間に接続された状態では、OFF時間T2が経過してもエネルギー放出が終了しないので、OFF時間T2の全体で常に第2インダクタL2にフライバック電圧が発生している。積分回路10の積分用コンデンサ6は、逆流阻止ダイオード3と第1積分用抵抗器4を介して、OFF時間T2に第2インダクタL2に発生するこのフライバック電圧により充電され、ON時間T1中に第2積分用抵抗器5を通して放電されるものの前述のようにOFF時間T2の全期間でフライバック電圧により充電されるので、約800nsecの固定周期Tで発振を繰り返すことにより充電電圧VJ3が上昇し、図4のAで示すように、負荷検出用トランジスタ7の0.5Vの動作電圧を超えて安定する。
【0056】
その結果、負荷検出用トランジスタ7はオン動作し、駆動制御トランジスタ2は、図4に示すように、ベースに接続する中間接続点J2の電位VJ2が低電位側端子101bの電位付近まで低下するのでオフ動作する。そして、駆動制御トランジスタ2がオフ動作することにより動作制御端子ON/OFFが高電位側端子101aの電位に引き上げられ、制御用IC110は動作状態となる。出力線108に所定の大きさの負荷が接続されている限り、積分用コンデンサ6の充電電圧VJ3は、負荷検出用トランジスタ7の動作電圧を超えて安定しているので、制御用IC110は、動作状態が連続する連続動作モードで動作し、FET103は、固定周期Tでオン、オフを繰り返す。
【0057】
一方、出力線108A、108B間に接続された負荷が軽くなると、出力電流Ioutが下降し、第1インダクタンス電流IL1と第2インダクタンス電流IL2もそれぞれ減少する。その結果、図3(b)に示すように、エネルギー放出時間ToutがOFF時間T2より短くなり、固定周期T中に第1インダクタンス電流IL1と第2インダクタンス電流IL2が流れない時間が生じ、第1インダクタンス電流IL1と第2インダクタンス電流IL2は、それぞれ不連続となる。
【0058】
ここでエネルギー放出が終わり第2インダクタンス電流IL2が途絶えた時には、第2インダクタL2に発生しているフライバック電圧も消滅する。従って、積分回路10の積分用コンデンサ6は、OFF時間T2より短いエネルギー放出時間Toutにのみ第2インダクタL2に発生するこのフライバック電圧により充電されるので、その充電電圧VJ3は、制御用IC110が連続動作モードで動作していても、負荷検出用トランジスタ7の動作電圧に達しない。
【0059】
また、制御用IC110が間欠動作モードで動作している場合には、積分用コンデンサ6の充電電圧VJ3が負荷検出用トランジスタ7の動作電圧に達することなく、出力電圧が間欠動作モードで設定される制御電圧を超えて、図5のBで示すように、制御用IC110が休止状態となり、発振が停止し、充電電圧VJ3は低電位側端子101bの電位に戻る。
【0060】
その結果、負荷検出用トランジスタ7はオフ動作し、駆動制御トランジスタ2のベースの電位VJ2は、第2分圧用抵抗器113、114により分圧される出力電圧の分電圧によってのみ変動することとなる。つまり、第2分圧用抵抗器113、114の中間接続点J2から入力される出力電圧の分電圧によって、駆動制御トランジスタ2はオン、オフ動作し、制御用IC110は、駆動制御トランジスタ2のオン、オフ動作に連動して休止状態と動作状態を交互に繰り返す間欠動作モードに移行する。
【0061】
制御用IC110が間欠動作モードで動作している間は、出力電圧Voutが例えば0.8Vを越えると、第2分圧用抵抗器113、114で分圧された中間接続点J2の電位が、駆動制御トランジスタ2の動作電圧を超えるように第2分圧用抵抗器113、114の抵抗比が設定され、これにより、出力電圧Voutが0.8V未満となると、制御用IC110が動作状態となって固定周期Tで連続発振を開始する。出力電圧Voutが0.8Vを越えた直後に休止状態へ移行して発振が停止するが、発振を休止していても出力線108に接続される負荷は軽負荷若しくは無負荷であるので、出力電圧Voutはゆっくりと0.8V未満まで低下し、数秒の休止状態を経て再び動作状態を繰り返す。
【0062】
従って、本実施の形態に係るDC−DCコンバータ1によれば、軽負荷若しくは無負荷である場合に、制御用IC110が休止し、この間FET103のスイッチング動作を停止するので、無駄なスイッチング動作がなくなり、スイッチング損失等による電力損失を防止できる。また、出力線108A、108B間に接続される負荷の軽重を、積分回路10の積分用コンデンサ6の充電電圧から判定できるので、出力線108A、108Bに出力電流を検出するための抵抗器を接続したり、IC回路素子を用いずに簡単な回路で構成できる。
【0063】
上述の実施の形態では、出力線108A、108B間に接続される負荷の大きさによって、第2インダクタL2に発生するフライバック電圧の発生時間がことなることに着目し、フライバック電圧で充電される積分用コンデンサ6の充電電圧から負荷の大きさを判定したが、第1インダクタ102若しくは第2インダクタ105に流れるインダクタ電流IL1、IL2を検出し、いずれかのインダクタ電流がOFF時間T2中に不連続となるか否かで出力線108A、108B間に接続する負荷の大きさを判定してもよい。
【0064】
図6は、第2インダクタ105に流れるインダクタ電流IL2を検出し、負荷の大きさを判定する第2の実施の形態に係るDC−DCコンバータ20の回路図であり、上述のDC−DCコンバータ1と実質的に同一若しくは同様に作用する構成については、同一の番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0065】
上述したように、SEPIC方式のDC−DCコンバータ20は、図3(a)に示すように、出力電圧Voutの定電圧制御下で、FET103を固定周期TでON、OFF制御している間、出力線108A、108B間に接続された負荷が重くなると、固定周期Tが経過しても第1インダクタンス電流IL1と第2インダクタンス電流IL2が流れ続ける。一方、負荷が軽くなると、図3(b)に示すように、エネルギー放出時間ToutがOFF時間T2より短くなり、固定周期T中に第1インダクタンス電流IL1と第2インダクタンス電流IL2が不連続となる。
【0066】
DC−DCコンバータ20では、第2インダクタ105に、一端が低電位側端子101bに接続するカレントトランス21の一次巻線21aを直列に接続し、第2インダクタンス電流IL2の連続性を検出して負荷の大きさを判定している。一端が低電位側端子101bに接続するカレントトランス21の二次側巻線21bの両端には、図6に示すように、逆流防止ダイオード22と終端抵抗器23が直列に接続され、OFF時間T2間に第2インダクタ105に流れる第2インダクタンス電流IL2に比例して終端抵抗器23の両端に積分入力電圧が発生するようにしている。終端抵抗器23に並列に接続される第2積分回路30は、第3積分用抵抗24、第4積分用抵抗25及び第2積分用コンデンサ26で構成され、終端抵抗器23の両端に表れる積分入力電圧を積分した積分出力電圧を第2積分用コンデンサ26の両端に発生させている。
【0067】
第2積分用コンデンサ26の両端は、負荷検出用トランジスタ7のベースとエミッタに接続し、従って積分出力電圧が負荷検出用トランジスタ7の動作電圧を超えると、負荷検出用トランジスタ7はオン動作し、オフ動作する駆動制御トランジスタ2に連動して制御用IC110が動作状態となる。
【0068】
このように構成されたDC−DCコンバータ20は、固定周期Tで連続発振を繰り返している状態で、通常の大きさの負荷が接続されている状態では、固定周期Tを経過しても第2インダクタンス電流IL2が流れ続ける。終端抵抗器23の両端には、OFF時間T2の全期間に積分入力電圧が発生するので、固定周期Tで連続発振を繰り返すことにより、積分出力電圧は上昇し、負荷検出用トランジスタ7の動作電圧を超えて安定する。
【0069】
その結果、第1の実施の形態と同様に、制御用IC110が動作状態となる。出力線108に所定の大きさの負荷が接続されている限り、積分出力電圧は、負荷検出用トランジスタ7の動作電圧を超えて安定しているので、制御用IC110は、動作状態が連続する連続動作モードで動作し、FET103は、固定周期Tでオン、オフを繰り返す。
【0070】
一方、出力線108A、108B間に接続された負荷が軽くなると、エネルギー放出時間ToutがOFF時間T2より短くなり、固定周期T中に第2インダクタンス電流IL2が途絶える不連続な状態となる。第2積分回路30の入力となる積分入力電圧は、OFF時間T2より短いエネルギー放出時間Toutにのみ発生することとなるので、第2積分回路30の出力となる積分出力電圧は制御用IC110が連続動作モードで動作していても、負荷検出用トランジスタ7の動作電圧に達しない。
【0071】
また、制御用IC110が間欠動作モードで動作している場合にも、積分用コンデンサ26の充電電圧が負荷検出用トランジスタ7の動作電圧に達することなく、連続発振によって出力電圧が間欠動作モードで設定される制御電圧を超え、制御用IC110が休止状態となって発振が停止する。
【0072】
このように、制御用IC110が連続動作モードと間欠動作モードのいずれであっても、積分出力電圧は制御用IC110が負荷検出用トランジスタ7の動作電圧に達しない場合には、オフ動作する負荷検出用トランジスタ7によって、制御用IC110は、第2分圧用抵抗器113、114により分圧される出力電圧の分電圧によってのみ休止状態と動作状態を交互に繰り返す間欠動作モードに移行する。
【0073】
上述の実施の形態では、例えば、出力電圧Voutを5.2Vに定電圧制御し定格出力を1.5WとするDC−DCコンバータとして、負荷が5mW未満となったときに軽負荷若しくは無負荷と判定し、間欠動作モードとしているが、制御用IC110を連続動作モードとするか間欠動作モードとするかの境界、すなわち軽負荷若しくは無負荷と判定する負荷の境界値は、境界値で負荷検出用トランジスタ7のベース電圧が動作電圧となるように各回路定数を調整することによって任意に設定できる。
【0074】
また、通常の大きさの負荷と軽負荷の境界値として任意に設定する大きさの負荷に合わせて第2インダクタ105のインダクタンスL2を調整することにより、任意の境界値の負荷が接続されたときに、第2インダクタンス電流IL2が連続から不連続へ移行する臨界状態とすることができ、第2インダクタンス電流IL2の連続性から負荷の軽重を更に容易に判定できる。
【0075】
第2インダクタンス電流IL2が連続から不連続へ移行する臨界状態では、OFF時間T2中のエネルギー放出時間ToutがOFF時間T2に一致し、ON時間T1とエネルギー放出時間Toutの和が固定周期Tに一致する。すなわち、
T=T1+Tout・・・(4)式
の関係となる。
【0076】
ここで、FET103と整流用ダイオード106による電圧降下を無視し、入力電力と出力電力の効率が100%であると仮定すると、第2インダクタンス電流IL2の平均値は、出力電流Ioutに等しいので、通常の大きさの負荷と軽負荷の境界値として任意に設定する大きさの負荷が接続されているときに出力線108に流れる設定電流をIsetとすれば、設定電流Isetは、固定周期Tに流れる第2インダクタンス電流IL2の平均値であり、ON時間T1が経過した時に流れる最大出力電流の1/2であるので、第2インダクタ105のインダクタンスをL2、直流入力電源101の電源電圧をVinとして、(3)式を用いれば、ON時間T1は、
T1=2*Iset*L2/Vin・・・(5)式
で表される。
【0077】
(3)式は、OFF時間T2において同一の傾斜で減少する第2インダクタンス電流IL2についても符号を変えて適用することができ、定電圧制御する出力電圧をVoutとして、同様に(3)式を用いれば、OFF時間T2すなわちエネルギー放出時間Toutは、
Tout=2*Iset*L2/Vout・・・(6)式
で表される。
【0078】
従って、(4)式は、これらの(5)式と(6)式を用いて、
T=2*L2*Iset*(1/Vin+1/Vout)・・・(1)式
で表される。第2インダクタ105のインダクタンスをL2以外は、既知の定数として得られるので、この(1)式を満たすインダクタンスのインダクタを第2インダクタ105に用いれば、設定した境界値未満の負荷が接続された際に、第2インダクタンス電流IL2が不連続となり、制御用IC110を間欠動作モードへ移行させることができる。
【0079】
また、設定電流Isetは、境界値に設定する負荷の大きさをWsetとすれば、定電圧制御する出力電圧をVoutとして、
Iset=Wset/Vout・・・(7)式
で表されるので、
(1)式は、
T=2*L2*Wset/Vout*(1/Vin+1/Vout)・・・(8)式
と置き換えられ、(8)式を用いて任意に境界値に設定する負荷の大きさから、第2インダクタ105のインダクタンスを得てもよい。
【0080】
本実施の形態では、第2インダクタ105の第2インダクタンス電流IL2が不連続となることから、軽負荷若しくは無負荷と判定したが、第1インダクタ102に対して、上述実施の形態と同様の負荷判定回路を設けて、第1インダクタ102に流れる第1インダクタ電流IL1が不連続となることから、軽負荷若しくは無負荷と判定してもよい。
【0081】
又、本願発明は、上述の実施の形態に係るSEPIC方式に限らず、ステップアップ、ステップダウン、出力反転型の各DC−DCコンバータや、AC電源から不安定な直流電源を得るスイッチング電源回路にも適応できる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、異なる大きさの負荷が接続されるDC−DCコンバータに適している。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の一実施の形態に係るDC−DCコンバータ1の回路図である。
【図2】DC−DCコンバータ1が発振動作している間の各部の波形図である。
【図3】固定周期Tで発振しているDC−DCコンバータ1について、 (a)は、出力線108に通常の負荷が接続されている場合の (b)は、出力線108に軽負荷が接続されている場合の第1インダクタ102に流れる第1インダクタンス電流IL1と第2インダクタ105に流れる第2インダクタンス電流IL2の波形図である。
【図4】出力線108に軽負荷から通常の大きさの負荷が接続された状態での負荷検出用トランジスタ7のベース電圧と、駆動制御トランジスタ2のベース電圧を示す波形図である。
【図5】出力線108に軽負荷が接続された状態で、間欠動作モードで動作する制御用IC110が休止状態から一時的に動作状態となったときの負荷検出用トランジスタ7のベース電圧と、駆動制御トランジスタ2のベース電圧を示す波形図である。
【図6】本発明の第2実施の形態に係るDC−DCコンバータ20の回路図である。
【図7】従来のDC−DCコンバータ100の回路図である。
【符号の説明】
【0084】
1、20 DC−DCコンバータ
10 積分回路(負荷判定回路)
21 カレントトランス(負荷判定回路)
30 第2積分回路(負荷判定回路)
110 制御用IC(スイッチング制御回路)
101 直流入力電源
101a 高圧側端子
101b 低圧側端子
102 第1インダクタ
103 FET(主スイッチング素子)
104 結合コンデンサ
105 第2インダクタ
106 整流用ダイオード(整流平滑化回路)
107 平滑コンデンサ(整流平滑化回路)
T 固定周期
T1 ON時間
T2 OFF時間
Tout エネルギー放出期間
L1 第1インダクタのインダクタンス
L2 第2インダクタのインダクタンス
IL1 第1インダクタのインダクタ電流
IL2 第2インダクタのインダクタ電流
Vin 直流入力電源電圧
Vout 定電圧制御された出力電圧
Iout 出力電流
Iset 設定された出力電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の高電位側端子に一端が接続する第1インダクタと、
前記第1インダクタの他端を前記直流電源の低電位側端子に接続させる主スイッチング素子と、
前記主スイッチング素子を固定周期でオン、オフ制御するスイッチング制御回路と、
前記第1インダクタの他端に接続する結合コンデンサと、
前記第1インダクタの他端を、前記結合コンデンサを介して前記直流電源の低電位側端子に接続させる第2インダクタと、
前記第2インダクタの両端に表れる出力を整流平滑化して一対の出力端子間に出力する整流平滑化回路と、
前記出力端子間に接続する負荷が軽負荷若しくは無負荷と判定した際に、軽負荷判定信号を出力する負荷判定回路とを備え、
連続動作モードで前記出力端子間の出力電圧を定電圧制御するように、前記主スイッチング素子をオン、オフ制御する前記スイッチング制御回路を、軽負荷判定信号が出力されている間は、前記主スイッチング素子のオン、オフ制御を一時的に休止する間欠動作モードとするDC−DCコンバータであって、
前記負荷判定回路は、前記第2インダクタに並列に接続し、前記主スイッチング素子がオフ制御されるOFF時間中に前記第2インダクタに発生する電圧を入力する積分回路からなり、
前記主スイッチング素子をオン、オフ制御する間に、前記第2インダクタに発生する電圧を入力した前記積分回路の出力電圧が、所定の設定電圧未満である場合に、前記積分回路から軽負荷判定信号を出力することを特徴とするDC−DCコンバータ。
【請求項2】
直流電源の高電位側端子に一端が接続する第1インダクタと、
前記第1インダクタの他端を前記直流電源の低電位側端子に接続させる主スイッチング素子と、
前記主スイッチング素子を固定周期でオン、オフ制御するスイッチング制御回路と、
前記第1インダクタの他端に接続する結合コンデンサと、
前記第1インダクタの他端を、前記結合コンデンサを介して前記直流電源の低電位側端子に接続させる第2インダクタと、
前記第2インダクタの両端に表れる出力を整流平滑化して一対の出力端子間に出力する整流平滑化回路と、
前記出力端子間に接続する負荷が軽負荷若しくは無負荷と判定した際に、軽負荷判定信号を出力する負荷判定回路とを備え、
連続動作モードで前記出力端子間の出力電圧を定電圧制御するように、前記主スイッチング素子をオン、オフ制御する前記スイッチング制御回路を、軽負荷判定信号が出力されている間は、前記主スイッチング素子のオン、オフ制御を一時的に休止する間欠動作モードとするDC−DCコンバータであって、
前記負荷判定回路は、前記第1インダクタ若しくは前記第2インダクタに直列に接続され、前記第1インダクタ若しくは前記第2インダクタに流れるインダクタ電流を検出する電流検出回路からなり、
前記主スイッチング素子をオン、オフ制御する間に、前記第1インダクタ若しくは前記第2インダクタに流れるインダクタ電流が前記固定周期内で不連続状態となる場合に、前記電流検出回路から軽負荷判定信号を出力することを特徴とするDC−DCコンバータ。
【請求項3】
前記固定周期をT、前記第2インダクタのインダクタンスをL2、所定値に設定する前記出力端子間に流れる設定電流をIset、前記直流電源の電源電圧をVin、定電圧制御する前記出力端子間の電圧をVoutとしたときに、
T=2*L2*Iset*(1/Vin+1/Vout)・・・(1)式
から、前記第2インダクタのインダクタンスL2を調整し、
前記出力端子間に流れる電流が前記設定電流Iset未満である場合に、前記電流検出回路から軽負荷判定信号を出力することを特徴とする請求項2に記載のDC−DCコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−288987(P2007−288987A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116891(P2006−116891)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】