DMDのための複数のエキソンスキッピング組成物
エキソンスキッピングを誘導するためにヒトジストロフィン遺伝子における選択された標的部位に結合することが可能であるアンチセンス分子、および筋ジストロフィーを治療するためのそのアンチセンス分子の使用方法が提供される。本発明の実施形態は、一般的に、エキソンスキッピングを誘導するために、選択された標的に結合可能であるアンチセンス化合物、およびエキソンスキッピングを誘導するためのそのアンチセンス化合物の使用方法に関する。特定の実施形態において、単一のまたは複数のエキソンスキッピングを誘導するために本発明の2つ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドを一緒に合わせることが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)項の、2008年10月24日出願の米国仮特許出願第61/108,416号における利益を主張し、この仮特許出願は、本明細書中でその全体が参考として援用される。
【0002】
配列表に関する言及
本願と関連する配列表は、紙コピーの代わりにテキスト形式で提供され、これは、それによって参照により本明細書に援用される。配列表を含むテキストの名称は120178_410PC_SEQUENCE_LISTING.txtである。テキストファイルは156KBであり、2009年10月23日に作成され、そしてEFS−Webを経由して電子的に提出されている。
【0003】
発明の分野
本発明は、ヒトジストロフィン遺伝子におけるエキソンのスキップを容易にするために適切な新規なアンチセンス化合物および組成物に関する。本発明は、本発明の方法における使用のために適合されたアンチセンス組成物を使用してエキソンスキッピングを誘導するための方法もまた提供する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
アンチセンス技術は、種々の異なるレベルで(転写、スプライシング、安定性、翻訳のレベルで)遺伝子発現に影響を与えるために一連の化学を使用して開発されてきた。その研究の多くは、広範な指標における異常なまたは疾患関連の遺伝子を修正するかまたは補償するためのアンチセンス化合物の使用に焦点を当てている。アンチセンス分子は、特異性をもって遺伝子発現を阻害することが可能であり、このために、遺伝子発現の調節因子としてのオリゴヌクレオチドに関連する多くの研究の労力は、標的となる遺伝子の発現またはシス作用性エレメントの機能の阻害に焦点を当ててきた。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、典型的には、あるウイルスRNA標的の場合において、センス鎖(例えば、mRNA)またはマイナス鎖のいずれかのRNAを指向している。特定の遺伝子ダウンレギュレーションの所望の効果を達成するために、オリゴヌクレオチドは、一般的に、標的とされたmRNAの崩壊を促進するか、mRNAの翻訳をブロックするか、またはシス作用性RNAエレメントの機能をブロックするかのいずれかであり、それによって、標的タンパク質のデノボ合成またはウイルスRNAの複製のいずれかを効果的に妨害する。
【0005】
しかし、このような技術は、目的がネイティブタンパク質の産生をアップレギュレートすること、またはナンセンス変異もしくはフレームシフト変異などの翻訳の未成熟終了を誘導する変異を補償することである場合には有用ではない。これらの場合においては、欠損遺伝子転写物は標的とされた分解または立体阻害に供されるべきではなく、従って、アンチセンスオリゴヌクレオチド化学は、標的mRNA崩壊を促進するべきではなく、または翻訳をブロックするべきではない。
【0006】
種々の遺伝的疾患において、1つの遺伝子の最終的な発現に対する変異の効果は、スプライシングプロセスの間に標的とされたエキソンのスキップのプロセスを通して調節できる。スプライシングプロセスは、プレmRNAにおける隣接するエキソン−イントロン接合部を密接に接近させ、一緒にスプライシングされるエキソン間のそれらの引き続く再形成を伴って、イントロンの末端でホスホジエステル結合の切断を実施する、複雑な多成分機構によって方向付けられている。この複雑かつ高度に正確なプロセスは、比較的短い半保存性RNAセグメントであるプレmRNA中の配列モチーフによって媒介され、そこに種々の核スプライシング因子が結合し、次いで、これらの因子は、スプライシング反応に関与する。スプライシング機構がプレmRNAプロセシングに関与するモチーフを読み取りまたは認識するやり方を変更することによって、ディファレンシャルにスプライシングされたmRNA分子を作製することが可能である。ヒト遺伝子の大部分が正常な遺伝子発現の間に選択的にスプライシングされるが、関与する機構は同定されていないことが今や認識されている。
【0007】
正常に機能しているタンパク質がその中の変異のために未成熟で終結される場合において、アンチセンス技術を通してある機能的タンパク質産生を回復させるための手段は、スプライシングプロセスの間の介入を通して可能であることが示されており、そして疾患を引き起こす変異と関連するエキソンがある遺伝子から特異的に除去できるならば、ネイティブタンパク質の同様の生物学的特性を有するか、またはエキソンと関連する変異によって引き起こされた疾患を改善するために十分な生物学的活性を有する短縮型タンパク質産物が、時折、産生可能であることが示されている(Sierakowska,Sambadeら、1996;Wilton,Lloydら、1999;van Deutekom,Bremmer−Boutら、2001;Lu,Mannら、2003;Aartsma−Rus,Jansonら、2004)。Koleら(特許文献1;特許文献2;特許文献3;および特許文献4)は、標的とされているプレmRNAの崩壊を促進しない修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドアナログを使用して異常なスプライシングと闘う方法を開示している。Bennettら(米国特許第6,210,892号)は、標的RNAのRNAse H媒介切断を誘導しないアンチセンスオリゴヌクレオチドアナログもまた使用する、野生型細胞mRNAプロセシングのアンチセンス調節を記載している。
【0008】
標的とされたエキソンスキッピングのプロセスは、多くのエキソンおよびイントロンが存在するか、エキソンの遺伝子構成が冗長であるか、またはタンパク質が1種以上の特定のエキソンなしで機能することが可能である、長い遺伝子中で特に有用であるようである。種々の遺伝子中の変異によって引き起こされる短縮と関連する遺伝性疾患の治療のための遺伝子プロセシングを再方向付けするための試みは、以下のいずれかであるアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用に焦点を当てている:(1)スプライシングプロセスに関与するエレメントと完全にまたは部分的に重複する;または(2)エレメントにおいて起こる特定のスプライシング反応を正常に媒介するスプライシング因子の結合および機能を破壊するためにそのエレメントに十分に近接した位置でプレmRNAに結合する。
【0009】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、タンパク質ジストロフィンの発現の欠損によって引き起こされる。このタンパク質をコードする遺伝子は、200万ヌクレオチドを超えるDNAに広がる79個のエキソンを含む。エキソンの読み枠を変更するか、または終止コドンを導入するか、または読み枠のエキソン(単数または複数)もしくは1つ以上のエキソンの複製からの全体の除去によって特徴付けられるいかなるエキソンの変異も、機能的ジストロフィンの産生を破壊し、DMDを生じる潜在能力を有する。
【0010】
より重篤度が軽い型の筋ジストロフィーである、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)は、変異、典型的には、1つ以上のエキソンの欠失が、全体のジストロフィン転写物に沿った正確な読み枠を生じ、その結果、mRNAのタンパク質への翻訳が未成熟で終結しない場合に生じることが見い出されている。変異したジストロフィンプレmRNAのプロセシングにおける上流および下流のエキソンの結合が遺伝子の正確な読み枠を維持する場合、結果は、ベッカー表現型を生じる何らかの活性を保持している、短い内部欠失を有するタンパク質をコードするmRNAである。
【0011】
ジストロフィンタンパク質の読み枠を変化させないエキソン(単数または複数)の欠失はBMD表現型を生じるのに対して、フレームシフトを引き起こすエキソン欠失はDMDを生じる(Monaco,Bertelsonら、1988)。一般的に、読み枠を変化させ、従って、適切なタンパク質翻訳を中断する点変異およびエキソン欠失を含むジストロフィン変異は、DMDを生じる。あるBMDおよびDMD患者は複数のエキソンを網羅するエキソン欠失を有することもまた注記されるべきである。
【0012】
アンチセンス分子はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療におけるツールを提供するかもしれないが、アンチセンス分子を使用してエキソンスキッピングを誘導するための試みは混合した成功を有していた。ジストロフィンのプレmRNAからのジストロフィンエキソン19のスキップの成功は、Erringtonら(Errington,Mannら、2003)によって記載されるように、エキソンの定義に含まれるエキソンの範囲内での隣接するスプライス部位またはモチーフにおいて方向付けられている種々のアンチセンス分子を使用して達成された。
【0013】
mdxマウスモデルにおける特異的かつ再現性のあるエキソンスキッピングの最初の例は、Wiltonら(Wilton,Lloydら、1999)によって報告された。ドナースプライシング部位にアンチセンス分子を方向付けることによって、エキソン23スキップは、培養細胞の処理の6時間以内にジストロフィンmRNAにおいて誘導された。Wiltonらはまた、より長いアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて、マウスジストロフィンのプレmRNAのアクセプター領域を標的とすることを記載している。イントロン23ドナースプライシング部位において指向される最初のアンチセンスオリゴヌクレオチドが初代培養筋芽細胞においてエキソンスキッピングを誘導したのに対して、この化合物は、より高レベルのジストロフィンを発現する不死化細胞培養においてははるかにより効率的ではないことが見い出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,627,274号明細書
【特許文献2】米国特許第5,916,808号明細書
【特許文献3】米国特許第5,976,879号明細書
【特許文献4】米国特許第5,665,593号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
これらの試みにも関わらず、複数のジストロフィンエキソンに標的化されるアンチセンスオリゴマーの改善、および筋肉送達組成物の改善、およびDMDの治療適用のための方法についての必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の要旨
本発明の実施形態は、一般的に、エキソンスキッピングを誘導するために、選択された標的に結合可能であるアンチセンス化合物、およびエキソンスキッピングを誘導するためのそのアンチセンス化合物の使用方法に関する。特定の実施形態において、単一のまたは複数のエキソンスキッピングを誘導するために本発明の2つ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドを一緒に合わせることが可能である。
【0017】
特定の実施形態において、2つ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチド分子を一緒に共有結合することによって、単一のまたは複数のエキソンのエキソンスキッピングを改善することが可能である(例えば、Aartsma−Rus,Jansonら、2004を参照のこと)。
【0018】
特定の実施形態において、本発明のアンチセンス化合物は、ヒトジストロフィン遺伝子におけるエキソンスキッピングを誘導し、それによって、筋肉細胞が機能的ジストロフィンタンパク質を生成することを可能にする。
【0019】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド化合物(本明細書ではオリゴマーともまた呼ばれる)は、典型的には:(i)モルホリノサブユニットおよび1つのサブユニットのモルホリノ窒素を隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合するリンを含有するサブユニット間連結を含み、(ii)10〜40個の間、好ましくは20〜35個の間のヌクレオチド塩基を含有し、(iii)ジストロフィンのプレmRNA中の標的配列の少なくとも12個の連続する塩基にハイブリダイズしかつエキソンスキッピングを誘導するために有効な塩基配列を含む。
【0020】
特定の実施形態において、本明細書のアンチセンス化合物は、以下の構造(I)に従って、1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合するリンを含有するサブユニット間連結を含んでもよい:
【0021】
【化1】
ここで:
Y1は−O−、−S−、−NH−、または−CH2−であり;
ZはOまたはSであり;
Pjは、塩基特異的水素結合によって、ポリヌクレオチド中の塩基に結合するために有効であるプリンまたはピリミジン塩基対形成部分であり;そして
Xは、フルオロ、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルコキシ、任意に置換されたチオアルコキシ、アミノ、任意に置換されたアルキルアミノ、または任意に置換されたヘテロシクリルである。
【0022】
特定の実施形態において、電荷を有さない上記のサブユニット間連結は、生理学的pHにおいて正電荷を有する連結が分散されてもよく、ここで、正電荷を有する連結の総数は、2から連結の総数の半分を超えない数までの間である。例えば、正電荷を有する連結は、Xが任意に置換された1−ピペラジニルである上記の構造を有してもよい。他の実施形態において、正に荷電した連結は、1−ピペラジニルが、任意に置換されたアルキルグアニジニル部分で4位において置換されている、Xが置換1−ピペラジニルである上記の構造を有してもよい。
【0023】
投与されたアンチセンス化合物が、プレプロセスされた(preprocessed)ヒトジストロフィンのスプライシング部位を標的とするために有効である場合、これは、プレプロセスされたメッセンジャーRNA(mRNA)ヒトジストロフィン転写物において少なくとも12個の連続する塩基を含む標的領域に相補的な塩基配列を有してもよい。例示的なアンチセンス配列はm配列番号1〜569および612〜633によって同定される配列が含まれる。
【0024】
特定の実施形態において、本発明のアンチセンス配列は以下の中に含まれる:
(a)ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおけるエキソン44のスキップを生じる際に使用するための、配列番号1〜20、好ましくは配列番号4、8、11、および12、ならびにより好ましくは、配列番号12によって同定される配列のいずれか;
(b)ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおけるエキソン45のスキップを生じる際に使用するための、配列番号21〜76および612〜624、好ましくは配列番号27、29、34、および39、ならびにより好ましくは、配列番号34によって同定される配列のいずれか;
(c)ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおけるエキソン46のスキップを生じる際に使用するための、配列番号77〜125、好ましくは配列番号21〜53、ならびにより好ましくは、配列番号82、84〜87、90、96、98、および101によって同定される配列のいずれか;
(d)ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおけるエキソン47のスキップを生じる際に使用するための、配列番号126〜169、好ましくは配列番号126〜149、ならびにより好ましくは、配列番号126、128〜130、132、144、および146〜149によって同定される配列のいずれか;
(e)ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおけるエキソン48のスキップを生じる際に使用するための、配列番号170〜224および634、好ましくは配列番号170〜201および634、ならびにより好ましくは、配列番号176、178、181〜183、194、および198〜201によって同定される配列のいずれか;
(f)ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおけるエキソン49のスキップを生じる際に使用するための、配列番号225〜266、好ましくは配列番号225〜248、ならびにより好ましくは、配列番号227、229、234、236、237、および244〜248によって同定される配列のいずれか;
(g)ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおけるエキソン50のスキップを生じる際に使用するための、配列番号267〜308、好ましくは配列番号277、287、および290、ならびにより好ましくは、配列番号287によって同定される配列のいずれか;
(h)ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおけるエキソン51のスキップを生じる際に使用するための、配列番号309〜371、好ましくは配列番号324、326、および327、ならびにより好ましくは、配列番号327によって同定される配列のいずれか;
(i)ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおけるエキソン52のスキップを生じる際に使用するための、配列番号372〜415、好ましくは配列番号372〜397、ならびにより好ましくは、配列番号379〜382、384、390、および392〜395によって同定される配列のいずれか;
(j)ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおけるエキソン53のスキップを生じる際に使用するための、配列番号416〜475および625〜633、好ましくは配列番号428、429、および431、ならびにより好ましくは、配列番号429によって同定される配列のいずれか;
(k)ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおけるエキソン54のスキップを生じる際に使用するための、配列番号476〜519、好ましくは配列番号476〜499、ならびにより好ましくは、配列番号479〜482、484、489、および491〜493によって同定される配列のいずれか;
(l)ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおけるエキソン55のスキップを生じる際に使用するための、配列番号520〜569および635、好ましくは配列番号520〜546および635、ならびにより好ましくは、配列番号524〜528、537、539、540、542、および544によって同定される配列のいずれか。
【0025】
特定の実施形態において、この化合物は、細胞への化合物の取り込みを促進するために有効なアルギニンリッチポリペプチドに結合体化されてもよい。例示的なペプチドは、本明細書に記載されるものの中でも、配列番号570〜578によって同定されるものが含まれる。
【0026】
1つの例示的な実施形態において、アルギニンリッチペプチドは、そのN末端またはC末端において、アンチセンス化合物の3’末端または5’末端に共有結合される。また、1つの例示的な実施形態において、アンチセンス化合物は、モルホリノサブユニット、および1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合するリンを含有するサブユニット間結合から構成される。
【0027】
一般的に、ペプチド−オリゴマー結合体は、選択された哺乳動物組織のために選択的であるホーミングペプチドをさらに含んでもよく、すなわち、同じ組織は細胞透過性ペプチドによって標的とされる。この結合体は、細胞透過性ペプチド−ホーミングペプチド−アンチセンスオリゴマーの型であってもよく、または、より好ましくは、ホーミングペプチド−細胞透過性ペプチド−アンチセンスオリゴマーの型であってもよい。例えば、上記のようなデュシェンヌ型筋ジストロフィーを治療する際に使用するためのペプチド結合体化合物は、細胞透過性ペプチドに結合体化された、配列番号579として同定される配列を有するペプチドなどの、筋肉組織のために選択的であるホーミングペプチドをさらに含むことができる。この型の例示的な結合体には、本明細書でCP06062−MSP−PMO(細胞透過性ペプチド−ホーミングペプチド−アンチセンスオリゴマー)およびMSP−CP06062−PMO(ホーミングペプチド−細胞透過性ペプチド−アンチセンスオリゴマー)として表されるものが含まれる(配列番号580−583を参照のこと)。
【0028】
ある実施形態において、ペプチドは、リンカー部分を介してオリゴマーに結合体化される。特定の実施形態において、リンカー部分は、任意に置換されたピペラジニル部分を含んでもよい。他の実施形態において、リンカー部分は、βアラニンおよび/または6−アミノヘキサン酸サブユニットをさらに含んでもよい。さらに他の実施形態において、ペプチドは、リンカー部分なしでオリゴマーに直接的に結合体化される。
【0029】
オリゴマーへのペプチドの結合体化は、ペプチドとオリゴマーの間、またはリンカー部分とオリゴマーの間で共有結合を形成するために適切である任意の部分においてであってもよい。例えば、ある実施形態において、ペプチドの結合体化はオリゴマーの3’末端においてであってもよい。他の実施形態において、オリゴマーへのペプチドの結合体化はオリゴマーの5’末端においてであってもよい。さらに他の実施形態において、ペプチドはサブユニット間連結のいずれかを通してオリゴマーに結合体化されてもよい。
【0030】
ある実施形態において、ペプチドはオリゴマーの5’末端においてオリゴマーに結合体化される。リンを含有するサブユニット間連結を含む実施形態において、ペプチドは、末端連結基のリンへの共有結合を介して、オリゴマーに結合体化されてもよい。この様式での結合体化は、上記のリンカー部分を伴っても、または伴わなくてもよい。
【0031】
さらに他の実施形態において、ペプチドは、オリゴマーの3’末端においてオリゴマーに結合体化されてもよい。あるさらなる実施形態において、ペプチドは、オリゴマーの3’末端モルホリノ基の窒素原子に結合体化されてもよい。この点において、ペプチドは、直接的に、または上記のリンカー部分を介してのいずれかでオリゴマーに結合体化されてもよい。
【0032】
ある実施形態において、オリゴマーは、水性媒体中のオリゴマーの溶解度を増強する部分に結合体化されてもよい。ある実施形態において、水性媒体中のオリゴマーの溶解度を増強する部分はポリエチレングリコールである。なおさらなる実施形態において、水性媒体中のオリゴマーの溶解度を増強する部分はトリエチレングリコールである。例えば、ある実施形態において、水性媒体中の溶解度を増強する部分は、オリゴマーの5’末端においてオリゴマーに結合体化されてもよい。水性媒体中のオリゴマーの溶解度を増強する部分のオリゴマーへの結合体化は、直接的または上記のリンカー部分を通してのいずれかであってもよい。
【0033】
本発明の特定の実施形態は、患者への送達のために適切な型で少なくともアンチセンス分子を含む、遺伝的障害の予防的または治療的処置において補助するように選択および/または適合されたアンチセンス分子を提供する。
【0034】
本発明の特定の実施形態は、特定のタンパク質をコードする遺伝子中の変異が存在し、その変異の影響がエキソンスキッピングによって無効にできる遺伝性疾患に罹患している患者を治療するための方法を提供し、この方法は、(a)本明細書に記載される方法に従ってアンチセンス分子を選択する工程;および(b)そのような治療が必要である患者にその分子を投与する工程を包含する。本発明はまた、遺伝的疾患の治療のための医薬の製造のための、本発明の精製かつ単離されたアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用もまた含む。
【0035】
特定の実施形態は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーによって特徴付けられる状態などの筋ジストロフィーを治療する方法を提供し、この方法は、治療が必要な患者における特定の遺伝子の損傷に関連する、本明細書に記載されるような適切に設計されたアンチセンスオリゴヌクレオチドの有効量を、その患者に投与する工程を包含する。さらに、特定の実施形態は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを含む筋ジストロフィーを予防するか、または少なくとも最小化するために患者を予防的に治療するための方法を提供し、この方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはこれらの生物学的分子の1種以上を含む薬学的組成物の有効量を患者に投与する工程を包含する。
【0036】
特定の実施形態は、1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物の有効量を被験体に投与する工程を包含する、被験体における筋ジストロフィーを治療する方法に関し、この化合物は、配列番号1〜569および612〜635からなる群より選択される配列を含み、かつジストロフィン遺伝子エキソンにおける相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、上記化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有し、ここで、このエキソンはエキソン44〜55からなる群より選択される。
【0037】
特定の実施形態において、筋ジストロフィーはデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)である。特定の実施形態において、筋ジストロフィーはベッカー型筋ジストロフィー(BMD)である。
【0038】
特定の実施形態において、配列は配列番号1〜20からなる群より選択され、エキソンはエキソン44である。特定の実施形態において、配列は配列番号21〜76および612〜624からなる群より選択され、エキソンはエキソン45である。
【0039】
特定の実施形態において、配列は配列番号77〜125からなる群より選択され、エキソンはエキソン46である。特定の実施形態において、配列は配列番号126〜169からなる群より選択され、エキソンはエキソン47である。
【0040】
特定の実施形態において、配列は配列番号170〜224および634からなる群より選択され、エキソンはエキソン48である。特定の実施形態において、配列は配列番号225〜266からなる群より選択され、エキソンはエキソン49である。
【0041】
特定の実施形態において、配列は配列番号267〜308からなる群より選択され、エキソンはエキソン50である。特定の実施形態において、配列は配列番号309〜371からなる群より選択され、エキソンはエキソン51である。
【0042】
特定の実施形態において、配列は配列番号372〜415からなる群より選択され、エキソンはエキソン52である。特定の実施形態において、配列は配列番号416〜475および625〜633からなる群より選択され、エキソンはエキソン53である。特定の実施形態において、配列は配列番号476〜519からなる群より選択され、エキソンはエキソン54である。特定の実施形態において、配列は配列番号520〜569および635からなる群より選択され、エキソンはエキソン55である。特定の実施形態において、配列は配列番号287を含むかまたはそれから本質的になる。
【0043】
特定の実施形態は、遺伝的疾患を治療するためのキットを提供し、このキットは、適切な容器にパッケージされた少なくとも1種の本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド、およびその使用のための指示書を含む。
【0044】
これらのおよび他の目的および特徴は、本発明の以下の詳細な説明が図面と共に読まれるときにより完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1A】図1Aは、ホスホロジアミデート連結を有する例示的なモルホリノオリゴマー構造を示す。
【図1B】図1Bは、本発明の実施形態に従う、アルギニンリッチペプチドおよびアンチセンスオリゴマーの結合体を示す。
【図1C】図1Cは、骨格連結が1つ以上の正電荷を有する基を含む、図1Bにおけるような結合体を示す。
【図1D】図1D〜Gは、DからGまで指定された例示的なモルホリノオリゴヌクレオチドの反復サブユニットセグメントを示す。
【図1E】図1D〜Gは、DからGまで指定された例示的なモルホリノオリゴヌクレオチドの反復サブユニットセグメントを示す。
【図1F】図1D〜Gは、DからGまで指定された例示的なモルホリノオリゴヌクレオチドの反復サブユニットセグメントを示す。
【図1G】図1D〜Gは、DからGまで指定された例示的なモルホリノオリゴヌクレオチドの反復サブユニットセグメントを示す。
【図2A】図2Aは、ヒトジストロフィンエキソン51のスキップを誘導するように設計されたアンチセンスオリゴマーエキソン51の相対的位置および結果を示す。
【図2B】図2B〜Cは、エキソン51スキップを誘導する際に有効である配列(AVI−5658;配列番号588およびh51AON1;配列番号594)と比較した、エキソン51スキャンから選択された3つの最良のオリゴマー(配列番号324、326、および327)の、培養したヒト横紋筋肉腫(RD)細胞およびヒト初代骨格筋細胞中での相対活性を示す。
【図2C】図2B〜Cは、エキソン51スキップを誘導する際に有効である配列(AVI−5658;配列番号588およびh51AON1;配列番号594)と比較した、エキソン51スキャンから選択された3つの最良のオリゴマー(配列番号324、326、および327)の、培養したヒト横紋筋肉腫(RD)細胞およびヒト初代骨格筋細胞中での相対活性を示す。
【図2D】図2Dは、特定の配列と比較した、3種の選択したオリゴマーのエキソン51の中での相対的位置を示す。
【図3A】図3Aは、エキソン50スキップを誘導する他の配列と比較した、ヒトジストロフィンエキソン50のスキップを誘導するように設計されたアンチセンスオリゴマーエキソン50スキャンの相対的位置および結果を示す。
【図3B】図3Bは、他の配列(配列番号584および585)と比較した、エキソン50スキャンから選択されたアンチセンス配列(配列番号277、287、290、および291)の相対的位置および結果を示す。
【図4A】図4Aは、ヒトジストロフィンエキソン53のスキップを誘導するように設計されたアンチセンスオリゴマーエキソン53スキャンの相対的位置および結果を示す。
【図4B】図4Bは、エキソン53スキャンにおいて最も活性であるように選択されたオリゴマーに対してエキソンスキッピング活性を比較するために使用された特定の配列の相対的位置を示す。
【図4C】図4C〜Fは、エキソン53スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号422、428、429、および431)を使用した、図4Gにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。
【図4D】図4C〜Fは、エキソン53スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号422、428、429、および431)を使用した、図4Gにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。
【図4E】図4C〜Fは、エキソン53スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号422、428、429、および431)を使用した、図4Gにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。
【図4F】図4C〜Fは、エキソン53スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号422、428、429、および431)を使用した、図4Gにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。
【図4G】図4C〜Fは、エキソン53スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号422、428、429、および431)を使用した、図4Gにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。
【図4H】図4Hおよび4Iは、RD細胞とヒト初代骨格筋細胞の両方の中で最も活性なエキソン53スキップオリゴマー(配列番号429)の活性と比較した、特定の配列(配列番号608〜611)の相対活性を示す。
【図4I】図4Hおよび4Iは、RD細胞とヒト初代骨格筋細胞の両方の中で最も活性なエキソン53スキップオリゴマー(配列番号429)の活性と比較した、特定の配列(配列番号608〜611)の相対活性を示す。
【図5A】図5Aは、ヒトジストロフィンエキソン44のスキップを誘導するように設計されたアンチセンスオリゴマーエキソン44スキャンの相対的位置および結果を示す。
【図5B】図5Bは、エキソン44スキャンにおいて最も活性であるように選択されたオリゴマーに対してエキソンスキッピング活性を比較するために使用された特定の配列のエキソン44中での相対的位置を示す。
【図5C】図5C〜Gは、エキソン44スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号4、8、11、12、および13)を使用した、図5Hにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。
【図5D】図5C〜Gは、エキソン44スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号4、8、11、12、および13)を使用した、図5Hにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。
【図5E】図5C〜Gは、エキソン44スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号4、8、11、12、および13)を使用した、図5Hにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。
【図5F】図5C〜Gは、エキソン44スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号4、8、11、12、および13)を使用した、図5Hにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。
【図5G】図5C〜Gは、エキソン44スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号4、8、11、12、および13)を使用した、図5Hにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。
【図5H】図5C〜Gは、エキソン44スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号4、8、11、12、および13)を使用した、図5Hにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。
【図5I】図5Iおよび5Jは、RD細胞とヒト初代骨格筋細胞の両方の中で最も活性なエキソン53スキップオリゴマー(配列番号12)の活性と比較した、特定の配列(配列番号600〜603)の相対活性を示す。
【図5J】図5Iおよび5Jは、RD細胞とヒト初代骨格筋細胞の両方の中で最も活性なエキソン53スキップオリゴマー(配列番号12)の活性と比較した、特定の配列(配列番号600〜603)の相対活性を示す。
【図6A】図6Aは、ヒトジストロフィンエキソン45のスキップを誘導するように設計されたアンチセンスオリゴマーエキソン45スキャンの相対的位置および結果を示す。
【図6B】図6Bは、エキソン45スキャンにおいて最も活性であるように選択されたオリゴマーに対してエキソンスキッピング活性を比較するために使用された特定の配列のエキソン45中での相対的位置を示す。
【図6C】図6C〜Fは、エキソン45スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号27、29、34、および39)を使用した、図6Hにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。図6Gは、陰性対照として比較的不活性なオリゴマー(配列番号49)を使用する。
【図6D】図6C〜Fは、エキソン45スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号27、29、34、および39)を使用した、図6Hにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。図6Gは、陰性対照として比較的不活性なオリゴマー(配列番号49)を使用する。
【図6E】図6C〜Fは、エキソン45スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号27、29、34、および39)を使用した、図6Hにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。図6Gは、陰性対照として比較的不活性なオリゴマー(配列番号49)を使用する。
【図6F】図6C〜Fは、エキソン45スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号27、29、34、および39)を使用した、図6Hにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。図6Gは、陰性対照として比較的不活性なオリゴマー(配列番号49)を使用する。
【図6G】図6C〜Fは、エキソン45スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号27、29、34、および39)を使用した、図6Hにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。図6Gは、陰性対照として比較的不活性なオリゴマー(配列番号49)を使用する。
【図6H】図6C〜Fは、エキソン45スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号27、29、34、および39)を使用した、図6Hにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。図6Gは、陰性対照として比較的不活性なオリゴマー(配列番号49)を使用する。
【図6I】図6Iおよび6Jは、RD細胞とヒト初代骨格筋細胞の両方の中で最も活性なエキソン53スキップオリゴマー(配列番号34)の活性と比較した、特定の配列(配列番号604〜607)の相対活性を示す。
【図6J】図6Iおよび6Jは、RD細胞とヒト初代骨格筋細胞の両方の中で最も活性なエキソン53スキップオリゴマー(配列番号34)の活性と比較した、特定の配列(配列番号604〜607)の相対活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の実施形態は、一般的に、ジストロフィン遺伝子におけるエキソンスキッピングを誘導するように具体的に設計されている、アンチセンス化合物の改善およびその使用方法に関する。ジストロフィンは、筋肉の機能において致命的な役割を果たしており、種々の筋肉関連疾患がこの遺伝子の変異型によって特徴付けられている。従って、特定の実施形態において、本明細書に記載されるアンチセンス化合物の改善は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)およびベッカー型筋ジストロフィー(BMD)において見い出される変異ジストロフィン遺伝子などの変異型のヒトジストロフィン遺伝子においてエキソンスキッピングを誘導する。
【0047】
変異によって引き起こされる異常なmRNAスプライシング事象に起因して、これらの変異型ヒトジストロフィン遺伝子は、欠損ジストロフィンタンパク質を発現するか、または測定可能なジストロフィンを全く発現しないかのいずれかであり、これは、種々の型の筋ジストロフィーに導く状態である。この状態を治療するために、本発明のアンチセンス化合物は、典型的には、変異型ヒトジストロフィン遺伝子のプレプロセスされたRNAの選択された領域にハイブリダイズし、さもなくば異常にスプライシングされるジストロフィンmRNAにおいてエキソンスキッピングおよびディファレンシャルスプライシングを誘導し、それによって、筋肉細胞が機能的なジストロフィンタンパク質をコードするmRNA転写物を産生することを可能にする。特定の実施形態において、得られるジストロフィンタンパク質は、必ずしも「野生型」のジストロフィンではないが、むしろ短縮型であり、なお機能的または半機能的な型のジストロフィンである。
【0048】
筋肉細胞における機能的ジストロフィンタンパク質のレベルを増加させることによって、これらおよび関連する実施形態は、異常なmRNAスプライシングに起因する欠損ジストロフィンタンパク質の発現によって特徴付けられる筋ジストロフィー、とりわけ、DMDおよびBMDなどの筋ジストロフィーの型の予防および治療において有用であり得る。本明細書に記載される特定のオリゴマーは、使用の際に他のオリゴマーを超えた、ジストロフィン−エキソン−特異的標的化の改善をさらに提供し、それによって、関連する型の筋ジストロフィーを治療する代替方法を超えた、顕著かつ実用的な利点を提供する。
【0049】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって共通して理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様のまたは等価な任意の方法および材料が、本発明の実施または試験において使用できるが、好ましい方法および材料が記載されている。本発明の目的のために、次の用語が以下で定義される。
【0050】
定義
冠詞「1つの(「a」および「an」)」は冠詞の文法的な目的の1つまたは1つより多く(すなわち、少なくとも1つ)をいうために本明細書で使用される。例として、「1つのエレメント」は、1つのエレメントまたは1つより多くのエレメントを意味する。
【0051】
「約」は、言及される量(quantity)、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量(amount)、重量、または長さに対して、30、25、20、25、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1%まで多く変化する、量(quantity)、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量(amount)、重量、または長さを意味する。
【0052】
「コード配列」は、遺伝子のポリペプチド産物のコードに寄与する任意の核酸配列を意味する。対照的に、「非コード配列」という用語は、遺伝子のポリペプチド産物のコードに寄与しない任意の核酸配列をいう。
【0053】
本明細書を通して、文脈が反対を必要としない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含むこと(comprising)」という言葉は、言及される工程もしくは構成要素、または工程もしくは構成要素の群を含むことを意味するが、任意の他の工程もしくは構成要素、または工程もしくは構成要素の群を排除しないと理解される。
【0054】
「からなる」は、「からなる」の語句の前に来るものは何でも含み、これに限定されることが意味される。従って、「からなる」という語句は、列挙された構成要素が必要とされるかまたは必須であること、および他の構成要素が存在しなくてもよいことを示す。「から本質的になる」は、この語句の前に列挙される任意の構成要素を含むことが意味され、列挙される構成要素のために本開示において特定される活性または作用を妨害しないか、またはそれに寄与しない他の構成要素に限定される。従って、「から本質的になる」という語句は、列挙された構成要素が必要とされるかまたは必須であることを示すが、他の構成要素は任意であり、これらが列挙された構成要素の活性または作用に物質的に影響を与えるか否かに依存して、存在してもよいか、または存在しなくてもよい。
【0055】
「相補」および「相補性」という用語は、塩基対形成規則によって関連付けられるポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)をいう。例えば、「A−G−T」という配列は、「T−C−A」という配列に相補的である。相補性は、「部分的」であってもよく、この場合、核酸塩基のいくつかのみが塩基対形成規則に従って一致する。または、核酸間の「完全な」または「全体の」相補性が存在してもよい。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率および強さに対する有意な効果を有する。完全な相補性がしばしば所望されるが、ある実施形態は、標的RNAに関して、1つ以上、しかし、好ましくは、6、5、4、3、2、または1個のミスマッチを含むことができる。オリゴマー中の任意の位置におけるバリエーションが含まれる。特定の実施形態において、オリゴマーの末端近くの配列のバリエーションは、一般的に、内部におけるバリエーションが好ましく、そして存在する場合、典型的には、5’および/または3’末端の約6、5、4、3、2、または1個のヌクレオチドの中である。
【0056】
「細胞透過性ペプチド」または「CPP」という用語は交換可能に使用され、カチオン性細胞透過性ペプチドをいい、輸送ペプチド、キャリアペプチド、またはペプチド伝達ドメインとも呼ばれる。本明細書に示されるようなこれらのペプチドは、その間のすべての整数を含む、所定の細胞培養集団の細胞の30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の中の細胞透過を誘導する可能性を有し、全身投与の際に、インビボで複数の組織の中で高分子移行を可能にする。
【0057】
「アンチセンスオリゴマー」または「アンチセンス化合物」という用語は交換可能に使用され、環状サブユニットの配列をいい、各々が塩基対形成部分を有し、Watson−Crick塩基対形成によって核酸(典型的にはRNA)中の標的配列に、塩基対形成部分がハイブリダイズすることを可能にするサブユニット間連結によって連結され、標的配列中で、核酸:オリゴマーヘテロ二重鎖を形成する。環状サブユニットは、リボースまたは別のペントース糖、または、好ましい実施形態において、モルホリノ基に基づく(以下のモルホリノオリゴマーの説明を参照のこと)。
【0058】
このようなアンチセンスオリゴマーは、mRNAの翻訳をブロックもしくは阻害するように、または天然のプレmRNAスプライシングプロセシングを阻害するように設計でき、これがハイブリダイズする標的配列を「指向する」かまたはそれを「標的とする」と言われてもよい。特定の実施形態において、標的配列は、mRNAのAUG開始コドン、プレプロセスされたmRNAの3’もしくは5’スプライシング部位、または分岐点を含む領域を含む。標的配列は、エキソン内であってもよく、またイントロン内であってもよい。スプライシング部位のための標的配列は、プレプロセスされたmRNAにおける通常のスプライシングアクセプター接合部の下流のその5’末端の1〜約25塩基対を有するmRNA配列を含んでもよい。スプライシングのための好ましい標的配列は、スプライシング部位を含むプレプロセスされたmRNAの任意の領域であり、エキソンコード配列中に完全に含まれるか、またはスプライシングアクセプターもしくはドナー部位にまたがる。オリゴマーは、より一般的には、タンパク質、ウイルス、または細菌などの生物学的に関連する標的を「標的とする」と言われ、このとき、これは、上記の様式で標的の核酸に対して標的化される。配列番号1〜569および612〜635の1つ以上を含み、これらから本質的になり、またはこれらからなるアンチセンスオリゴマーが含まれる。これらのアンチセンスオリゴマーの改変体もまた含まれ、これらの改変体には、配列番号1〜569および612〜635のいずれか1つに対して、80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%(その間のすべての整数を含む)の配列同一性もしくは配列相同性を有する改変体オリゴマー、および/または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のヌクレオチドがこれらの配列とは異なっている改変体、好ましくは、1つ以上の選択されたヒトジストロフィンエキソンのエキソンスキッピングを誘導する改変体が含まれる。配列番号584〜611および634〜635の任意の1つ以上(on or more)のオリゴマーもまた含まれ、これは、本明細書に記載されるように、適切な数の電荷を有する連結、例えば、10個の電荷を有さない連結毎に約4〜5個などの、2〜5個の電荷を有さない連結毎に約1個までを含み、および/またはこれもまた本明細書に記載されるように、これに結合されたArgリッチペプチドを含む。
【0059】
「モルホリノオリゴマー」または「PMO」(ホスホルアミデート−またはホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー)とは、モルホリノサブユニット構造から構成されるオリゴヌクレオチドアナログをいい、ここでは、(i)構造は、1〜3原子長、好ましくは、2原子長、および好ましくは、電荷を有さないかまたはカチオン性であり、隣接するサブユニットの5’環外炭素に1サブユニットのモルホリノ窒素を結合する、リンを含有する連結によって一緒に連結されており、そして(ii)各モルホリノ環は、塩基特異的水素結合によって、ポリヌクレオチド中の塩基に結合するために有効であるプリンまたはピリミジン塩基対形成部分を有する。例えば、好ましいホスホロジアミデート連結型を示す、図1Aにおける構造を参照のこと。バリエーションは、これらが結合または活性に干渉しない限り、この連結に対して作製できる。例えば、リンに結合された酸素は硫黄で置換されてもよい(チオホスホロジアミデート)。5’酸素は、アミノまたは低級アルキル置換アミノで置換されてもよい。リンに結合したペンダント窒素は、(任意に置換された)低級アルキルで、非置換、一置換、または二置換であってもよい。以下のカチオン性連結の議論もまた参照のこと。モルホリノオリゴマーの合成、構造、および結合特性は、米国特許第5,698,685号、同第5,217,866号、同第5,142,047号、同第5,034,506号、同第5,166,315号、同第5,521,063号、および同第5,506,337号、ならびにPCT出願第PCT/US07/11435号(カチオン性連結)において詳述され、これらのすべては参照により本明細書に援用される。
【0060】
プリンまたはピリミジン塩基対形成部分には、典型的には、例えば、以下の塩基もまた含まれる:アデニン、シトシン、グアニン、ウラシル、チミン、またはイノシンである。ピリジン−4−オン、ピリジン−2−オン、フェニル、プソイドウラシル、2,4,6−トリメ115トキシベンゼン、3−メチルウラシル、ジヒドロウリジン、ナフチル、アミノフェニル、5−アルキルシチジン(例えば、5−メチルシチジン)、5−アルキルウリジン(例えば、リボチミジン)、5−ハロウリジン(例えば、5−ブロモウリジン)、または6−アザピリミジンもしくは6−アルキルピリミジン(例えば、6−メチルウリジン)、プロピン、クエソシン、2−チオウリジン、4−チオウリジン、ワイブトシン、ワイブトキソシン、4−アセチルチジン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、5’−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウリジン、β−D−ガラクトシルクエオシン、1−メチルアデノシン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアノシン、3−メチルシチジン、2−メチルアデノシン、2−メチルグアノシン、N6−メチルアデノシン、7−メチルグアノシン、5−メトキシアミノメチル−2−チオウリジン、5−メチルアミノメチルウリジン、5−メチルカルボニルメチルウリジン(5−methylcarbonyhnethyluridine)、5−メチルオキシウリジン、5−メチル−2−チオウリジン、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデノシン、β−D−マンノシルクエオシン、ウリジン−5−オキシ酢酸、2−チオシチジン、スレオニン誘導体およびその他(Burginら、1996,Biochemistry,35,14090;Uhlman & Peyman,前出)。この点に関して、「修飾塩基」は、上記に例証したようなアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)、およびウラシル(U)以外のヌクレオチド塩基を意味し;このような塩基は、アンチセンス分子中の任意の位置において使用できる。当業者は、オリゴマーの使用に依存して、TおよびUが交換可能であることを理解している。例えば、よりRNA様である2’−O−メチルアンチセンスオリゴヌクレオチドなどの他のアンチセンスケミストリーを用いて、T塩基はUとして示されてもよい(例えば、配列番号の表を参照のこと)。
【0061】
「アミノ酸サブユニット」または「アミノ酸残基」とは、αアミノ酸残基(例えば、−CO−CHR−NH−)またはβ−もしくは他のアミノ酸残基(例えば、−CO−(CH2)nCHR−NH−)をいうことができ、ここで、Rは側鎖であり(これは水素を含んでもよい)、nは1〜6であり、好ましくは、1〜4である。
【0062】
「天然に存在するアミノ酸」とは、天然に見い出されるタンパク質中に存在するアミノ酸、例えば、タンパク質生合成の間に利用される20種の(L)アミノ酸、ならびに4−ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、デスモシン、イソデスモシン、ホモシステイン、シトルリン、およびオルニチンなどのその他のアミノ酸をいう。「非天然アミノ酸」という用語は、天然に見い出されるタンパク質中に存在しないアミノ酸をいい、例には、ベータアラニン(β−Ala;またはB)、6−アミノヘキサン酸(Ahx)、および6−アミノペンタン酸が含まれる。「非天然アミノ酸」のさらなる例には、非限定的に、(D)−アミノ酸、ノルロイシン、ノルバリン、p−フルオロフェニルアラニン、エチオニンなどが含まれ、これらは、当業者には公知である。
【0063】
「有効量」または「治療有効量」とは、単回用量として、または一連の用量の一部としてのいずれかで、哺乳動物被験体に投与された、アンチセンスオリゴマーなどの治療化合物の量をいい、これは、被験体における所望の生理学的応答または治療効果を生じるために有効である。所望の生理学的応答の1つの例には、アンチセンスオリゴマーまたは対照オリゴマーがない場合と比較して、主として、欠損ジストロフィンタンパク質を含むか、またはジストロフィンを含まない筋肉組織または細胞中での、比較的機能的なまたは生物学的に活性型のジストロフィンタンパク質の発現の増加が含まれる。所望の治療効果の例には、非限定的に、とりわけ、筋ジストロフィーの徴候または病理の改善、筋ジストロフィーの徴候または病理の進行の減少、および筋ジストロフィーの徴候または病理の発症の遅延が含まれる。このような徴候の例には、疲労、精神遅滞、筋衰弱、運動技能の困難(例えば、走行、片足跳び、跳躍)、頻繁な落下、および歩行困難が含まれる。筋ジストロフィーの病理は、例えば、筋繊維の損傷および膜漏出によって特徴付けることができる。アンチセンスオリゴマーについては、この効果は、典型的には、例えば、エキソンスキッピングを誘導するために、選択された標的配列(例えば、ジストロフィン)のスプライシングプロセスを変化させることによって、典型的にはもたらされる。
【0064】
「エキソン」とは、タンパク質をコードする核酸の規定されたセクション、またはプレプロセスされた(もしくは前駆体)RNAのいずれかの部分がスプライシングによって除去された後で、成熟型のRNA分子の中で表される核酸配列をいう。成熟RNA分子は、メッセンジャーRNA(mRNA)または非コードRNAの機能型、例えば、rRNAもしくはtRNAであり得る。ヒトジストロフィン遺伝子は約75エキソンを有する。
【0065】
「イントロン」とは、(遺伝子中の)タンパク質に翻訳されない核酸領域をいう。イントロンは、前駆体mRNA(プレmRNA)に転写される非コードセクションであり、続いて、成熟RNAの形成の間、スプライシングによって除去される。
【0066】
「エキソンスキッピング」とは、全体のエキソンまたはその一部が所定のプレプロセスされたRNAから取り除かれ、それによって、タンパク質に翻訳される成熟mRNAなどの成熟RNA中に存在することから除外されるプロセスを一般的にいう。従って、さもなくばスキップされたエキソンによってコードされるタンパク質の部分は、発現型のタンパク質中には存在せず、典型的には、変化した、しかしなお機能的である、タンパク質の型を作製する。特定の実施形態において、スキップされるエキソンは、ヒトジストロフィン遺伝子からの異常なエキソンであり、これは、さもなくば異常なスプライシングを引き起こす、その配列中に変異または他の変化を含む可能性がある。特定の実施形態において、スキップされるエキソンは、ジストロフィン遺伝子のエキソン1〜75の任意の1つ以上であるが、ヒトジストロフィン遺伝子のエキソン44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、および/または55の任意の1つ以上が好ましい。
【0067】
「ジストロフィン」は、棒状の細胞質タンパク質であり、このタンパク質複合体の必要不可欠な部分が、筋繊維の細胞骨格を、細胞膜を通して周囲の細胞外マトリックスに接続する。ジストロフィンは複数の機能ドメインを含む。例えば、ジストロフィンは、約アミノ酸14〜240にアクチン結合ドメイン、および約アミノ酸253〜3040に中心棒状ドメインを含む。この大きな中心ドメインは、約109アミノ酸の24スペクトリン様三重らせんエレメントによって形成され、これは、αアクチニンおよびスペクトリンとの相同性を有する。反復は、典型的には、4つのプロリンリッチ非反復セグメントによって中断され、これはまたヒンジ領域とも呼ばれる。反復15および16は、ジストロフィンのタンパク質分解性切断のための主要な部位を提供するらしい18アミノ酸のストレッチによって分離されている。多くの反復間での配列同一性は10〜25%の範囲である。1つの反復は、3つのαヘリックス:1、2、および3を含む。αヘリックス1および3は、各々が7個のヘリックスターンによって形成され、これはおそらく、疎水性界面を通してコイルドコイルとして相互作用する。αヘリックス2は、グリシンまたはプロリン残基によって分離される4個または3個のヘリックスターンのセグメントによって形成される。各反復は2つのエキソンによってコードされ、典型的には、αヘリックス2の最初の部分におけるアミノ酸47と48の間のイントロンによって中断される。他のイントロンは、この反復中の異なる位置において見い出され、通常はヘリックス3にわたって分散される。ジストロフィンはまた、約アミノ酸3080〜3360においてシステインリッチドメインを含み、これは、システインリッチセグメント(すなわち、280アミノ酸中の15システイン)を含み、これは粘菌(Dictyostelium discoideum)αアクチニンのC末端ドメインとの相同性を示す。カルボキシ末端ドメインは、アミノ酸約3361〜3685にある。
【0068】
ジストロフィンのアミノ末端はFアクチンに結合し、カルボキシ末端は筋細胞膜においてジストロフィン関連タンパク質複合体(DAPC)に結合する。DAPCはジストログリカン、サルコグリカン、インテグリン、およびカベオリンを含み、これらの成分のいずれかにおける変異は、常染色体遺伝性筋ジストロフィーを引き起こす。DAPCは、ジストロフィンが存在しない場合に不安定になり、このことは、メンバーのタンパク質の減少レベルを生じ、そして次には、進行性の繊維損傷および膜の漏出に導く。デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)およびベッカー型筋ジストロフィー(BMD)などの種々の型の筋ジストロフィーにおいて、筋肉細胞は、不正確なスプライシングに導く遺伝子配列の変異に主として起因して、変化しかつ機能的に欠損した型のジストロフィンを産生するか、またはジストロフィンを全く産生しない。欠損型のジストロフィンタンパク質の優勢な発現、またはジストロフィンもしくはジストロフィン様タンパク質の完全な欠如は、上記のように、筋肉変性の急速な進行に導く。この点に関して、「欠損型」ジストロフィンタンパク質は、当該分野において公知であるように、DMDもしくはBMDを有する特定の被験体において産生されるジストロフィンの型によって、または検出可能なジストロフィンの非存在によって特徴付けられるかもしれない。
【0069】
表Aは、種々のジストロフィンドメイン、これらのドメインを包含するアミノ酸残基、およびこれらをコードするエキソンの実例を提供する。
【表A−1】
【0070】
【表A−2】
【0071】
本明細書で使用される場合、「機能」および「機能的」という用語および同様の用語は、生物学的、酵素的、または治療的機能をいう。
【0072】
「機能的」ジストロフィンタンパク質とは、典型的には、DMDまたはBMDを有する被験体に存在する変化したまたは「欠損」型のジストロフィンタンパク質と比較して、他の点では筋ジストロフィーに特徴的である筋肉組織の進行性の分解を減少するために十分な生物学的活性を有するジストロフィンタンパク質を一般的にいう。特定の実施形態において、機能的ジストロフィンタンパク質は、当該分野における日常的な技術に従って測定されるような、野生型ジストロフィンのインビトロまたはインビボの生物学的活性の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%(間のすべての整数を含む)を有してもよい。1つの例として、インビトロでの筋肉培養におけるジストロフィン関連活性は、筋管サイズ、筋原線維組織(組織崩壊)、収縮能、およびアセチルコリン受容体の自発的クラスター化に従って測定できる(例えば、Brownら、Journal of Cell Science.112:209−216,1999を参照のこと)。動物モデルもまた、疾患の病原を研究するための価値ある資源であり、ジストロフィン関連活性を試験するための手段を提供する。DMD研究のために最も広範に使用されている動物モデルのうちの2つは、mdxマウスおよびゴールデンレトリーバ筋ジストロフィー(GRMD)ドッグであり、これらの両方がジストロフィンネガティブである(例えば、CollinsおよびMorgan,Int J Exp Pathol 84:165−172,2003を参照のこと)。これらおよび他の動物モデルは、種々のジストロフィンタンパク質の機能的活性を測定するために使用できる。本発明の特定のエキソンスキッピングアンチセンス化合物によって産生される型などの短縮型のジストロフィンが含まれる。
【0073】
「遺伝子」は、染色体上の特定の遺伝子座を占める遺伝の単位を意味し、転写および/もしくは翻訳の調節配列、ならびに/またはコード領域および/もしくは非翻訳配列(すなわち、イントロン、5’および3’非翻訳配列)からなる。
【0074】
「単離された」は、そのネイティブな状態において通常付随する成分を実質的にまたは本質的に含まない物質を意味する。例えば、「単離されたポリヌクレオチド」は、本明細書で使用される場合、その天然に存在する状態でそれに隣接する配列から精製されまたは取り出されているポリヌクレオチド、例えば、DNAフラグメントに通常隣接する配列から取り出されたDNAフラグメントをいってもよい。
【0075】
「増強する」もしくは「増強すること」または「増加する」もしくは「増加すること」または「刺激する」もしくは「刺激すること」とは、アンチセンス化合物がない場合、または対照化合物のいずれかによって引き起こされる応答と比較して、細胞または被験体において、より高い生理学的応答(すなわち、下流効果)を、生じるかまたは引き起こす、1種以上のアンチセンス化合物または組成物の能力を一般的にいう。測定可能な生理学的応答には、機能型のジストロフィンタンパク質の発現の増加、または筋肉組織におけるジストロフィン関連の生物学的活性の増加、とりわけ、当該分野における理解および本明細書の記載から明らかである応答が含まれてもよい。約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の筋肉機能の増加または改善を含む、筋肉機能の増加もまた測定できる。約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の筋繊維におけるジストロフィン発現の増加を含む、機能的ジストロフィンを発現する筋繊維のパーセンテージもまた測定できる。例えば、約40%の筋肉機能の改善は、繊維の25〜30%がジストロフィンを発現する場合に起こり得ることが示されてきた(例えば、DelloRussoら、Proc Natl Acad Sci USA 99:12979−12984、2002を参照のこと)。「増加した」または「増強された」量は、典型的には、「統計学的に有意な」量であり、アンチセンス化合物がない場合(薬剤の非存在)または対照化合物によって産生される量の1.1、1.2、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50倍またはそれ以上(例えば、500、1000倍)(間および1より大きいすべての整数および小数点を含む、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8など)である増加を含んでもよい。
【0076】
「減少する」または「阻害する」という用語は、一般的に、診断分野における日常的な技術に従って測定されるような、本明細書に記載される疾患または状態の徴候などの、関連する生理学的または細胞の応答を「低減する」、本発明の1種以上のアンチセンス化合物の能力に関連し得る。関連する生理学的または細胞の応答(インビボまたはインビトロ)は当業者には明白であり、筋ジストロフィーの徴候もしくは病理の減少、または欠損型のジストロフィン、例えば、DMDまたはBMDを有する個体において発現される変化した型のジストロフィンの発現の減少を含んでもよい。応答の「減少」は、アンチセンス化合物がない場合、または対照組成物によって産生される応答と比較して、統計学的に有意であってもよく、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の減少を含んでもよく、これには間のすべての整数が含まれる。
【0077】
「相同性」とは、同一であるかまたは保存性置換を構成するアミノ酸のパーセンテージの数をいう。相同性は、GAP(Deverauxら、1984,Nucleic Acids Research 12,387−395)などの配列比較プログラムを使用して決定されてもよい。このようにして、本明細書に引用されるものと類似のまたは実質的に異なる長さの配列が、整列へのギャップの挿入によって比較でき、このようなギャップは、例えば、GAPによって使用される比較アルゴリズムによって決定される。
【0078】
「配列同一性」または、例えば、「に50%同一である配列」を含むことの列挙は、本明細書で使用される場合、比較のウィンドウにわたって、ヌクレオチド対ヌクレオチドベースか、またはアミノ酸対アミノ酸ベースで、配列が同一である程度をいう。従って、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較のウィンドウにわたって、2つの最適に整列された配列を比較することにより計算されてもよく、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、およびMet)が両方の配列中に存在し、一致する位置の数を生じる位置の数を決定すること、比較のウィンドウにおける位置の総数(すなわち、ウインドウサイズ)によって一致した位置の数を除算すること、および結果に100を乗算して配列同一性のパーセンテージを生じることによって計算されてもよい。
【0079】
2つ以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの間の配列の関連性を説明するために使用される用語には、「参照配列」「比較ウィンドウ」「配列同一性」「配列同一性のパーセンテージ」および「実質的同一性」が含まれる。「参照配列」は、ヌクレオチドおよびアミノ酸残基の長さの、両端を含む、少なくとも8または10個であるが、頻繁には15〜18個、しばしば少なくとも25個のモノマー単位である。2つのポリヌクレオチドは、各々が(1)2つのポリヌクレオチド間で類似している配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の一部のみ)、および(2)2つのポリヌクレオチド間で不一致の配列を含んでもよく、2つ(またはそれ以上)のポリヌクレオチドの間の配列比較が、典型的には、「比較ウィンドウ」にわたって2つのポリヌクレオチドの配列を比較することによって実施されて、配列類似性の局所的領域を同定および比較する。「比較ウィンドウ」とは、少なくとも6個、通常は約50〜約100個、より通常には約100〜約150個の連続する位置の概念的なセグメントをいい、ここでは、2つの配列が最適に整列された後で、1つの配列が同じ数の連続する位置の参照配列と比較される。比較ウィンドウは、2つの配列の最適な整列のために、参照配列(これは付加または欠失を含まない)と比較した場合に、約20%以下の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでもよい。比較ウィンドウを整列させるための配列の最適な整列は、コンピュータ化されたアルゴリズムの手段(the Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0,Genetics Computer Group,575 Science Drive Madison,WI,USAにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によって、または検査および選択された種々の方法のいずれかによって生成された最良の整列(すなわち、比較ウィンドウにわたって最高の相同性パーセンテージを生じる)によって実施されてもよい。参照はまた、例えば、Altschulら、1997,Nucl.Acids Res.25:3389によって開示されるような、BLASTファミリーのプログラムに対してなされてもよい。配列分析の詳細な議論は、Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」John Wiley & Sons Inc,1994−1998,Chapter 15のUnit 19.3において見い出すことができる。
【0080】
個体(例えば、ヒトなどの哺乳動物)または細胞の「治療」または「治療すること」は、個体または細胞の天然の経過を変化させる試みにおいて使用される任意の型の介入を含んでもよい。治療には、薬学的組成物の投与が含まれるがこれに限定されず、予防的に、または病理的な事象の開始もしくは病因との接触に引き続いてのいずれかで実施されてもよい。治療は、特定の型の筋ジストロフィーにおけるような、ジストロフィンタンパク質と関連する疾患または状態の徴候または病理に対する任意の望ましい効果を含んでもよく、そして、例えば、治療される疾患または状態の1つ以上の測定可能なマーカーにおける最小限の変化または改善を含んでもよい。「予防的」処置もまた含まれ、これは、治療される疾患または状態の進行の速度を減少すること、その疾患または状態の発症を遅延させること、またはその発症の重篤度を減少することを指向できる。「治療」または「予防」は、疾患もしくは状態、またはそれに関連する徴候の完全な根絶、治癒、または妨害を必ずしも示すものではない。
【0081】
従って、その必要がある患者に、任意に、薬学的製剤または剤形の一部として、本発明の1種以上のアンチセンスオリゴマー(例えば、配列番号1〜569および612〜635、およびその改変体)を投与することによって、DMDおよびBMDなどの筋ジストロフィーを治療する方法が含まれる。1種以上のアンチセンスオリゴマーを投与することによって被験体においてエキソンスキッピングを誘導する方法もまた含まれ、ここでは、エキソンは、ジストロフィン遺伝子からのエキソン44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、および/または55の1つであり、好ましくはヒトジストロフィン遺伝子である。「被験体」には、本明細書で使用される場合、本発明のアンチセンス化合物で治療できる、徴候を示しているかまたは徴候を示すリスクがある任意の動物、例えば、DMDもしくはBMD、またはこれらの状態に関連する徴候のいずれか(例えば、筋繊維の損失)を有するかまたは有するリスクがある被験体が含まれる。適切な被験体(患者)には、実験用動物(マウス、ラット、ウサギ、またはモルモットなど)、家畜、および家庭内の動物またはペット(ネコまたはイヌなど)が含まれる。非ヒト霊長類および、好ましくは、ヒト患者が含まれる。
【0082】
本発明のオリゴマー性、ジストロフィン標的化配列を発現可能であるベクター送達系、例えば、本明細書に記載されるような、配列番号1〜569および612〜635、またはその改変体の任意の1つ以上を含むポリヌクレオチド配列を発現するベクターもまた含まれる。「ベクター」または「核酸構築物」は、例えば、プラスミド、バクテリオファージ、酵母、またはウイルスに由来し、ポリヌクレオチドがそこに挿入またはクローニングできるポリヌクレオチド分子、好ましくはDNA分子を意味する。ベクターは、好ましくは、1つ以上の独特な制限部位を含み、標的細胞もしくは組織または前駆細胞もしくはその組織を含む規定された宿主細胞中での自律的複製が可能であり得、あるいはクローニングされた配列が再生可能であるように、規定された宿主細胞のゲノムと統合可能であり得る。従って、ベクターは、自律的に複製可能なベクター、すなわち、染色体外の実体として存在するベクターであり得、その複製は、染色体の複製とは独立しており、例えば、線状または閉環状プラスミド、染色体外エレメント、ミニ染色体、または人工染色体である。ベクターは自己複製を確実にするための任意の手段を含むことができる。または、ベクターは、宿主細胞に導入されるときに、ゲノムに組み込まれ、それが組み込まれた染色体と一緒に複製されるものであり得る。
【0083】
ベクターまたは核酸構築物系は、単一のベクターまたはプラスミド、2つ以上のベクターまたはプラスミドを含むことができ、これらは、一緒に、宿主細胞のゲノムに導入される全DNA、またはトランスポゾンを含む。ベクターの選択は、典型的には、ベクターが導入される宿主細胞とのベクターの適合可能性に依存する。今の場合においては、ベクターまたは核酸構築物は、好ましくは、筋肉細胞などの哺乳動物細胞中で作動可能に機能的であるものである。ベクターはまた、抗生物質もしくは薬物耐性遺伝子、またはレポーター遺伝子(すなわち、グリーン蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ)などの選択マーカーも含むことができ、これらは、適切な形質転換体またはトランスフェクト体の選択または同定のために使用できる。例示的な送達系には、ウイルスベクター系(すなわち、ウイルス媒介性形質導入)を含んでもよく、これには、当該分野に公知であるものの中でも、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、およびヘルペスウイルスベクターが含まれるがこれらに限定されない。
【0084】
「作動可能に連結される」という用語は、本明細書で使用される場合、プロモーターの調節的制御下にオリゴマーをコードする配列を配置し、次いで、オリゴマーの転写を制御することを意味する。
【0085】
野生型遺伝子または遺伝子産物は、集団中で最も頻繁に観察され、従って、任意にその遺伝子の「正常」または「野生型」の型と称される。
【0086】
「アルキル」または「アルキレン」は、両方とも、1〜18個の炭素を含む飽和の直鎖または分枝鎖の炭化水素基をいう。例には、非限定的に、メチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、およびn−ヘキシルが含まれる。「低級アルキル」という用語は、本明細書で規定されるようなアルキル基をいい、1〜8個の間の炭素を含む。
【0087】
「アルケニル」とは、2〜18個の炭素を含有し、少なくとも1つの炭素から炭素の間の二重結合を含む、不飽和の直鎖または分枝鎖の炭化水素基をいう。例には、非限定的に、エテニル、プロペニル、イソ−プロペニル、ブテニル、イソ−ブテニル、tert−ブテニル、n−ペンテニル、およびn−ヘキセニルが含まれる。「低級アルケニル」という用語は、本明細書で規定されるようなアルケニル基をいい、2〜8個の間の炭素を含む。
【0088】
「アルキニル」とは、2〜18個の炭素を含有し、少なくとも1つの炭素から炭素の間の三重結合を含む、不飽和の直鎖または分枝鎖の炭化水素基をいう。例には、非限定的に、エチニル、プロピニル、イソ−プロピニル、ブチニル、イソ−ブチニル、tert−ブチニル、ペンチニル、およびヘキシニルが含まれる。「低級アルキニル」という用語は、本明細書で規定されるようなアルキニル基をいい、2〜8個の間の炭素を含む。
【0089】
「シクロアルキル」とは、モノ−またはポリ−環状アルキル基をいう。例には、非限定的に、シクロブチル、シクロペンチル(cycopentyl)、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが含まれる。
【0090】
「アリール」とは、1つ以上の閉環を有する5〜18個の炭素を含む環状芳香族炭化水素部分をいう。例には、非限定的に、フェニル、ベンジル、ナフチル、アントラセニル、フェナントラセニル、およびビフェニルが含まれる。
【0091】
「アラルキル」とは、化学式RaRbの基をいい、ここで、Raが上記に規定されるようなアルキレン鎖であり、Rbが上記に規定されるような1つ以上のアリール基であり、例えば、ベンジル、ジフェニルメチルなどである。
【0092】
「チオアルコキシ」とは、化学式−SRcの基をいい、ここで、Rcは、上記に規定されるようなアルキル基である。「低級チオアルコキシ」という用語は、本明細書に規定されるような、1〜8個の間の炭素を含むアルコキシ基をいう。
【0093】
「アルコキシ」とは、化学式−ORdaの基をいい、ここで、Rdは本明細書に規定されるようなアルキル基である。「低級アルキル」という用語は、本明細書に規定されるような、1〜8個の間の炭素を含むアルコキシ基をいう。アルコキシ基の例には、非限定的に、メトキシおよびエトキシが含まれる。
【0094】
「アルコキシアルキル」とは、アルコキシ基で置換されたアルキル基をいう。
【0095】
「カルボニル」とは、−C(=O)−基をいう。
【0096】
「グアニジニル」とは、H2N(C=NH2)−NH−基をいう。
【0097】
「アミジニル」とは、H2N(C=NH2)CH−基をいう。
【0098】
「アミノ」とは、−NH2基をいう。
【0099】
「アルキルアミノ」とは、化学式−NHRdまたは−NRdRdの基をいい、ここで、各Rdは、独立して、本明細書に規定されるようなアルキル基である。「低級アルキルアミノ」という用語は、本明細書に記載されるような、1〜8個の間の炭素を含むアルキルアミノ基をいう。
【0100】
「複素環」とは、5〜7員単環式、または7〜10員二環式の、飽和、不飽和、または芳香族のいずれかであり、かつ窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を含む複素環を意味し、ここで、窒素および硫黄ヘテロ原子は任意に酸化されてもよく、そして窒素ヘテロ原子は、任意に四級化されてもよく、上記のヘテロ環のいずれかがベンゼン環に縮合されている二環式環を含む。複素環は任意のヘテロ原子または炭素原子を介して結合されてもよい。複素環には以下に定義されるようなヘテロアリールが含まれる。従って、以下に列挙されるヘテロアリールに加えて、複素環には、モルホリニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、ピペリジニル(piperidinyl)、ピペリジニル(piperizynyl)、ヒダントイニル、バレロラクタミル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオピラニルなどもまた含まれる。
【0101】
「ヘテロアリール」とは、5〜10員であり、窒素、酸素、および硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有し、かつ少なくとも1つの炭素原子を含有し、単環系と二環系の両方を含む、芳香族複素環を意味する。代表的なヘテロアリールは、ピリジル、フリル、ベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、キノリニル、ピロリル、インドリル、オキサゾリル、ベンズオキサゾリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、シノリニル、フタラジニル、およびキナゾリニルである。
【0102】
「任意に置換されたアルキル」、「任意に置換されたアルケニル」、「任意に置換されたアルコキシ」、「任意に置換されたチオアルコキシ」、「任意に置換されたアルキルアミノ」、「任意に置換された低級アルキル」、「任意に置換された低級アルケニル」、「任意に置換された低級アルコキシ」、「任意に置換された低級チオアルコキシ」、「任意に置換された低級アルキルアミノ」、および「任意に置換されたヘテロシクリル」とは、置換されたときに、少なくとも1つの水素原子が置換基に置き換えられていることを意味する。オキソ置換基(=O)の場合においては、2つの水素原子が置き換えられる。この点に関して、置換基には、重水素、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアリール、任意に置換された複素環、任意に置換されたシクロアルキル、オキソ、ハロゲン、−CN、−ORx、NRxRy、NRxC(=O)Ry、NRxSO2Ry、−NRxC(=O)NRxRy、C(=O)Rx、C(=O)ORx、C(=O)NRxRy、−SOmRx、および−SOmNRxRyが含まれ、ここで、mは0、1、または2であり、RxおよびRyは同じかまたは異なり、独立して、水素、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアリール、任意に置換された複素環、任意に置換されたシクロアルキル、または任意に置換されたシクロアルキルであり、上記の任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアリール、任意に置換された複素環、任意に置換されたシクロアルキル、および任意に置換されたシクロアルキル置換基の各々は、オキソ、ハロゲン、−CN、−ORx、NRxRy、NRxC(=O)Ry、NRxSO2Ry、−NRxC(=O)NRxRy、C(=O)Rx、C(=O)ORx、C(=O)NRxRy、−SOmRx、および−SOmNRxRyの1つ以上でさらに置換されてもよい。
【0103】
アンチセンスオリゴヌクレオチドの構築
リンを含有する骨格連結を有するモルホリノオリゴヌクレオチドの例は図1A〜1Cに図示されている。とりわけ好ましいものは、図1Cに示されるような、ホスホロジアミデート連結モルホリノオリゴヌクレオチドであり、これは、本発明の1つの局面に従うと、その骨格連結の好ましくは10%〜50%で正に荷電した基を含むように修飾されている。アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、電荷を有さない骨格連結を有するモルホリノオリゴヌクレオチドおよびそれらの調製は、例えば、SummertonおよびWeller 1997において、ならびに共有に係る米国特許第5,698,685号、同第5,217,866号、同第5,142,047号、同第5,034,506号、同第5,166,315号、同第5,185,444号、同第5,521,063号、および同第5,506,337号において詳述され、これらのすべては参照により本発明に明確に援用される。
【0104】
モルホリノベースのサブユニットの重要な特性には以下が含まれる:1)安定な、電荷を有さない、または正電荷を有する骨格連結による、オリゴマー型で連結される能力;2)形成されたポリマーが、比較的短いオリゴヌクレオチド(例えば、10〜15塩基)において約45℃より高いTmで、標的RNAを含む相補塩基標的核酸とハイブリダイズできるように、ヌクレオチド塩基(例えば、アデニン、シトシン、グアニン、チミジン、ウラシル、およびイノシン)を支持する能力;3)オリゴヌクレオチドが哺乳動物細胞に能動的または受動的に輸送される能力;ならびに4)アンチセンスオリゴヌクレオチド:RNAヘテロ二重鎖が、RNAseおよびRNaseH分解にそれぞれ抵抗する能力。
【0105】
特許請求された対象のアンチセンスオリゴヌクレオチドについての例示的な骨格構造には、各々が電荷を有さないかまたは正電荷を有する、リンを含有するサブユニット連結によって連結されている、図1D〜Gに示されるモルホリノサブユニット型が含まれる。図1Dは、5個の原子の反復単位の骨格を形成する、リンを含有する連結を示し、ここで、モルホリノ環は、1原子ホスホアミド連結によって連結されている。図1Eは、6原子反復単位骨格を生じる連結を示す。この構造において、5’モルホリノ炭素をリン基に連結する原子Yは硫黄、窒素、炭素、または好ましくは、酸素であってもよい。リンからのX部分ペンダントは、フッ素、アルキルもしくは置換アルキル、アルコキシもしくは置換アルコキシ、チオアルコキシもしくは置換チオアルコキシ、または非置換、一置換、もしくは二置換窒素であってもよく、モルホリンまたはピペリジンなどの環状構造を含む。アルキル、アルコキシ、およびチオアルコキシには、好ましくは、1〜6個の炭素原子が含まれる。Z部分は硫黄または酸素であり、好ましくは酸素である。
【0106】
図1Fおよび1Gに示される連結は、7原子単位長骨格と称する。構造1Fにおいて、X部分は構造1Eと同様であり、Y部分はメチレン、硫黄、または好ましくは酸素であってもよい。構造1Gにおいて、XおよびY部分は構造1Eと同様である。特に好ましいモルホリノオリゴヌクレオチドには、図1Eに示される型のモルホリノサブユニット構造から構成されるものが含まれ、ここで、X=NH2、N(CH3)2、任意に置換された1−ピペラジニル、または他の電荷を有する基、Y=O、およびZ=Oである。
【0107】
上述のように、電荷を有さないかまたは実質的に電荷を有さないオリゴヌクレオチドは、本発明の態様に従って、例えば、2〜5個の電荷を有さない連結あたり約1個までの電荷を有する連結、例えば、10個の電荷を有さない連結毎あたり約4〜5個の連結を含むように修飾されてもよい。アンチセンス活性の最適な改善は、骨格連結の約25%がカチオン性である場合に見られ得、これには約20%〜約30%が含まれる。約35%、40%、45%、50%、55%、60%(間のすべての整数を含む)またはそれ以上の骨格連結がカチオン性であるオリゴマーもまた含まれる。増強はまた、小さな数、例えば、5%または10〜20%のカチオン性連結でもまた見られる。
【0108】
オリゴヌクレオチドアナログにおける実質的に電荷を有さないリンを含有する骨格は、典型的には、サブユニット連結の大部分、例えば、その連結の50%〜100%、典型的には少なくとも60%〜100%または75%または80%が、生理学的pHにおいて電荷を有さず、単一のリン原子を含むものである。
【0109】
本発明を支持して実施されるさらなる実験は、加えられたカチオン性骨格の電荷に伴って見られる増強が、ある場合において、例えば、10個の最も中心の連結において局在化されたこれらの荷電した連結の少なくとも70%を有する、8個のカチオン性骨格連結を有する20マーオリゴヌクレオチドにおいて、アンチセンスオリゴヌクレオチドの「中心領域」骨格連結に密接した正味の電荷を分配することによってさらに増強され得ることを示す。
【0110】
アンチセンス化合物は、段階的固相合成によって、電荷を有さない連結およびカチオン性骨格連結の混合物を有するオリゴヌクレオチドの合成に関して、上記および下記に引用される参考文献に詳述される方法を利用して調製できる。ある場合において、アンチセンス化合物にさらなる化学的部分を加えること、例えば、薬物動態を増強すること、または化合物の捕捉もしくは検出を容易にすることが所望されてもよい。このような部分は、標準的な合成方法に従って、典型的には、オリゴマーの末端に共有結合されてもよい。例えば、ポリエチレングリコール部分または他の親水性ポリマー、例えば、10〜100個のモノマーサブユニットを有するものの付加が、溶解度を増強するために有用であり得る。1つ以上の電荷を有する基、例えば、有機酸などのアニオン性荷電基は、細胞の取り込みを増強し得る。フロオレセインまたは放射性基などのレポーター部分が、検出の目的のために結合されてもよい。または、オリゴマーに結合されたレポーター標識は、標識された抗体またはストレプトアビジンを結合可能な、抗原またはビオチンなどのリガンドであってもよい。アンチセンス化合物の結合または修飾のための部分を選択する際に、望ましくない副作用を伴わずに、生体適合性であるかまたは被験体によって耐えられる可能性が高い、化学化合物の基を選択することが当然一般的に望ましい。
【0111】
上述のように、アンチセンス化合物は、上記の型の電荷を有さない連結が分散している選択された数のカチオン性連結を含むように構築できる。電荷を有さないものおよびカチオン性の両方のサブユニット間連結は、好ましくは、リンを含有する連結であり、構造(II):
【0112】
【化2】
を含み、
ここで:
Wは−S−または−O−、好ましくは、−O−であり、
X=−NR1R2または−OR6、
Y=−O−または−NR7、および
オリゴマー中の各上記連結は以下から選択され:
(a)電荷を有さない連結(a)、ここで、R1、R2、R6、およびR7の各々は、水素および低級アルキルから独立して選択され;
(b1)カチオン性連結(b1)、ここで、X=−NR1R2でありかつY=−O−であり、−NR1R2は任意に置換されたピペラジニル部分を表し、その結果、R1R2=−CHRCHRN(R3)(R4)CHRCHR−であり、ここで:
各Rは独立してHまたは−CH3であり、
R4はH、−CH3、または電子対であり;および
R3は、H、任意に置換された低級アルキル、−C(=NH)NH2、−Z−L−NHC(=NH)NH2、および[−C(=O)CHR’NH]mHであり、ここで、Zは−C(=O)−または直接結合であり、Lは、18原子長まで、好ましくは12原子長まで、およびより好ましくは8原子長までの任意のリンカーであり、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルコキシ、任意に置換されたアルキルアミノから選択される結合を有し、R’は天然に存在するアミノ酸またはその1個もしくは2個の炭素ホモログの側鎖であり、mは1〜6であり、好ましくは1〜4であり;
(b2)カチオン性連結(b2)、ここで、X=−NR1R2およびY=−O−、R1=Hまたは−CH3、およびR2=LNR3R4R5であり、ここで、L、R3、およびR4は上記に定義された通りであり、R5は、H、任意に置換された低級アルキル、または任意に置換された低級(アルコキシ)アルキルであり;ならびに
(b3)カチオン性連結(b3)、ここで、Y=−NR7およびX=−OR6、およびR7=−LNR3R4R5であり、ここで、L、R3、R4、およびR5は上記に定義された通りであり、R6は、Hまたは任意に置換された低級アルキルであり;ならびに
少なくとも1つの上記連結はカチオン性連結(b1)、(b2)、および(b3)から選択される。
【0113】
好ましくは、このオリゴマーは、(a)型(すなわち、電荷を有さない連結)の少なくとも2つの連続する連結を含む。さらなる実施形態において、オリゴマー中の少なくとも5%の連結がカチオン性連結(すなわち、(b1)型、(b2)型、または(b3)型)である;例えば、10%〜60%、好ましくは、20〜50%の連結がカチオン性連結である。
【0114】
1つの実施形態において、少なくとも1つの連結は(b1)型であり、ここで、好ましくは、各RはHであり、R4は、H、−CH3、または電子対であり、R3は、H、任意に置換された低級アルキル、−C(=NH)NH2、および−C(=O)−L−NHC(=NH)NH2である。R3の後者の2つの実施形態は、ピペラジン環、またはリンカー基Lへのペンダントのいずれかに、それぞれ直接的に結合されるグアニジノ部分を提供する。合成の容易さのために、R3における変数Zは、好ましくは、示されるように−C(=O)−である。
【0115】
リンカー基Lは、上述のように、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルコキシ、および任意に置換されたアルキルアミノから選択されるその骨格中の結合を含み、ここで、Lにおける末端原子(例えば、カルボニルまたは窒素に隣接するもの)は炭素原子である。分枝連結が可能であるが、リンカーは、好ましくは、非分枝である。1つの実施形態において、リンカーは直鎖状アルキルリンカーである。このようなリンカーは構造−(CH2)n−を有してもよく、ここで、nは1〜12、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜6である。
【0116】
モルホリノサブユニットは以下の構造(III)を有し:
【0117】
【化3】
ここで、Piは塩基対形成部分であり、上記に示された連結は(III)の窒素原子を隣接するサブユニットの5’炭素に接続する。塩基対形成部分Piは、同じかまたは異なっていてもよく、一般的には、標的核酸に結合する配列を提供するように設計される。
【0118】
モルホリノサブユニット(III)を連結するための上記の連結型(b1)、(b2)、および(b3)の実施形態の使用は、以下のように図式的に例証されてもよい:
【0119】
【化4】
好ましくは、オリゴマー中のすべてのカチオン性連結は同じ型である;すなわち、すべて(b1)型、すべて(b2)型、またはすべて(b3)型である。
【0120】
さらなる実施形態において、カチオン性連結は、以下に示される連結(b1’)および(b1’’)から選択され、ここで、(b1’)は本明細書では「Pip」連結と呼ばれ、(b1’’)は本明細書では「GuX」連結と呼ばれる。
【0121】
【化5】
上記の構造において、WはSまたはOであり、そして好ましくはOであり;R1およびR2の各々は、独立して、水素および任意に置換された低級アルキルから選択され、そして好ましくはメチルであり;ならびにAは、(b1’)および(b1’’)中の1つ以上の炭素原子上の水素または非干渉置換基(すなわち、その意図される標的にオリゴマーが結合する能力に有害な影響を与えない置換基)を表す。好ましくは、ピペラジン環中の環炭素は置換されていない;しかし、ピペラジン環の環炭素は、メチルまたはフッ素などの非干渉置換基を含んでもよい。好ましくは、最大で1個または2個の炭素原子がそのように置換されている。
【0122】
さらなる実施形態において、少なくとも10%の連結が(b1’)型または(b1’’)型であり;例えば、10%〜60%、好ましくは20%〜50%の連結が(b1’)型または(b1’’)型であってもよい。
【0123】
他の実施形態において、オリゴマーは、上記の(b1’)型の連結を含まない。または、オリゴマーは、(b1)型の連結を含まず、ここで、各RはHであり、R3はHまたは−CH3であり、そしてR4はH、−CH3、または電子対である。
【0124】
モルホリノサブユニットは、以下にさらに記載されるように、非リンベースのサブユニット間連結によってもまた連結されてもよく、ここで、少なくとも1つの連結が、上記のようなペンダントカチオン性基で修飾される。
【0125】
非修飾状態では電荷を有さないが、ペンダントアミン置換基を有することもできる、他のオリゴヌクレオチドアナログ連結が使用できる。例えば、モルホリノ環上の5’窒素原子は、スルファミド連結またはウレア連結中で利用でき(ここで、リンは炭素または硫黄でそれぞれ置き換えられる)、上記の構造(b3)中の5’窒素原子に類似の様式で修飾される。
【0126】
任意の数のカチオン性連結を有するオリゴマーが提供され、これには、完全にカチオン性連結されたオリゴマーが含まれる。しかし、好ましくは、オリゴマーは、例えば、10%〜80%、部分的に電荷を有する。好ましい実施形態において、約10〜60%、および好ましくは20%〜50%の連結がカチオン性である。
【0127】
1つの実施形態において、カチオン性連結は、骨格に沿って分散している。部分的に電荷を有するオリゴマーは、好ましくは、少なくとも2つの連続する電荷を有さない連結を含み;すなわち、オリゴマーは、その全体の長さに沿って、厳密に互い違いのパターンを有するわけではない。
【0128】
カチオン性連結のブロックおよび電荷を有さない連結のブロックを有するオリゴマーもまた考慮され;例えば、電荷を有さない連結の中心ブロックは、カチオン性連結のブロックによって隣接されてもよく、その逆もあり得る。1つの実施形態において、オリゴマーは、およそ等しい長さの5’、3’および中心領域を有し、中心領域におけるカチオン性連結のパーセンテージは、約50%より大きく、好ましくは約70%より大きい。
【0129】
アンチセンス適用における使用のためのオリゴマーは、一般的には、約10〜約40サブユニットの長さの範囲であり、より好ましくは約10〜30サブユニット、典型的には15〜25塩基、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40塩基を有するものが含まれる。特定の実施形態において、アンチセンス化合物のための有用な長さである19〜20サブユニットを有する本発明のオリゴマーは、理想的には、2〜10個、例えば、4個〜8個のカチオン性連結、および残りの電荷を有さない連結を有してもよい。14〜15サブユニットを有するオリゴマーは、理想的には、2〜7個、例えば、3〜5個のカチオン性連結、および残りの電荷を有さない連結を有してもよい。
【0130】
各モルホリノ環構造は、治療される細胞または被験体において、選択されたアンチセンス標的にハイブリダイズするように典型的に設計されている、塩基対形成部分の配列を形成するように、塩基対形成部分を支持する。塩基対形成部分は、ネイティブDNAまたはRNAにおいて見い出されるプリンもしくはピリミジン(例えば、A、G、C、T、またはU)、またはヒポキサンチン(ヌクレオシドイノシンの塩基成分)もしくは5−メチルシトシンなどのアナログであってもよい。
【0131】
ペプチドトランスポーター
本発明のアンチセンス化合物は、細胞への化合物の輸送を増強するために有効なアルギニンリッチペプチド輸送部分に結合体化されたオリゴヌクレオチド部分を含んでもよい。輸送部分は、好ましくは、例えば、図1Bおよび1Cに示されるように、オリゴマーの末端に結合されている。このペプチド輸送部分は、好ましくは、X’サブユニット、Y’サブユニット、およびZ’サブユニットから選択される6〜16個のサブユニットを含み、
ここで:
(a)各X’サブユニットは、独立して、リジン、アルギニン、またはアルギニンアナログを表し、上記アナログは、構造R1N=C(NH2)R2の側鎖を含むカチオン性αアミノ酸であり、ここで、R1はHまたはRであり;R2は、R、−NH2、−NHR、または−NR2であり、ここで、Rは任意に置換された低級アルキルまたは任意に置換された低級アルケニルであり;R1およびR2は一緒に結合されて環を形成してもよく;そして側鎖はR1またはR2を介して上記アミノ酸に連結され;
(b)各Y’サブユニットは、独立して、中性アミノ酸−C(=O)−(CHR)n−NH−を表し、ここで、nは2〜7であり、各Rは独立して、Hまたはメチルであり;ならびに
(c)各Z’サブユニットは、独立して、中性アラルキル側鎖を有するαアミノ酸を表し;
ここで、ペプチドは、(X’Y’X’)p、(X’Y’)m、および/または(X’Z’Z’)pの少なくとも1つによって表される配列を含み、ここで、pは2〜5であり、mは2〜8である。特定の実施形態は、(X’Y’X’)p、(X’Y’)m、および/または(X’Z’Z’)pから独立して選択される種々の組み合わせを含み、これには、例えば、配列(X’Y’X’)(X’Z’Z’)(X’Y’X’)(X’Z’Z’)(配列番号637)を有するペプチドが含まれる。
【0132】
選択された実施形態において、各X’について、側鎖部分は、アミノ酸サブユニットアルギニン(Arg)におけるのと同様に、グアニジルである。特定の実施形態において、各Y’は、独立して、−C(=O)−(CH2)n−CHR−NH−であり、ここで、nは2〜7であり、RはHである。例えば、nが5でありかつRがHである場合、Y’は6−アミノヘキサン酸サブユニットであり、本明細書ではAhxと省略され;nが2でありかつRがHである場合、Y’はβアラニンサブユニットであり、本明細書ではBと省略される。特定の実施形態は、異なる中性アミノ酸の組み合わせを有するキャリアペプチドに関し、これには、例えば、βアラニンおよび6−アミノヘキサン酸の両方を含む、配列−RahxRRBRRAhxRRBRAhxB−(配列番号578)を含むペプチドが含まれる。
【0133】
この型の好ましいペプチドには、単一のY’サブユニットを交互に含むアルギニン二量体を含むものが含まれ、ここで、Y’は、好ましくは、AhxまたはBまたはその両方である。例には、式(RY’R)pおよび/または式(RRY’)pを有するペプチドが含まれ、ここで、pは1〜2〜5であり、ここでY’は好ましくはAhxである。1つの実施形態において、Y’は6−アミノヘキサン酸サブユニットであり、Rはアルギニンであり、pは4である。特定の実施形態は、少なくとも2つの(RY’R)pおよび(RRY’)pの種々の線状の組み合わせを含み、これには、例えば、配列(RY’R)(RRY’)(RY’R)(RRY’)(配列番号638)または(RRY’)(RY’R)(RRY’)(配列番号639)を有する例示的なペプチドが含まれる。他の組み合わせが意図される。さらなる例示的な実施形態において、各Z’はフェニルアラニンであり、mは3または4である。
【0134】
結合体化ペプチドは、好ましくは、リンカーAhx−Bを介してオリゴマーの末端に連結され、ここで、例えば、図1Bおよび1Cに示されるように、Ahxは、6−アミノヘキサン酸サブユニットであり、Bはβアラニンサブユニットである。
【0135】
選択された実施形態において、各X’について、側鎖部分は、独立して、グアニジル(HN=C(NH2)NH−)、アミジニル(HN=C(NH2)CH−)、2−アミノジヒドロピリミジル、2−アミノテトラヒドロピリミジル、2−アミノピリジニル、および2−アミノピリミドニルからなる群より選択され、好ましくは、グアニジルおよびアミジニルから選択される。1つの実施形態において、側鎖部分は、アミノ酸サブユニットアルギニン(Arg)におけるのと同様に、グアニジルである。
【0136】
特定の実施形態において、Y’サブユニットは、X’サブユニットがY’サブユニット間に介入しないか、または単独でX’サブユニット間に分散しないという点で、連続してもよい。特定の実施形態において、連結サブユニットは、Y’サブユニット間にあってもよい。1つの実施形態において、Y’サブユニットは、トランスポーターの末端にあり;他の実施形態において、これらはX’サブユニットによって隣接されている。さらに好ましい実施形態において、各Y’は、−C(=O)−(CH2)n−CHR−NH−であり、ここで、nは2〜7であり、RはHである。例えば、nが5であり、RがHである場合、Y’は6−アミノヘキサン酸サブユニットであり、本明細書ではAhxと省略される。この基の選択される実施形態において、各X’は、アルギニンサブユニット中と同様に、グアニジル側鎖部分を含む。この型の好ましいペプチドには、単一のY’サブユニットと交互になっているアルギニン二量体を含むものが含まれ、ここで、Y’は好ましくはAhxである。例には、式(RY’R)4または式(RRY’)4を有するペプチドが含まれ、ここで、Y’は、好ましくはAhxである。後者の場合において、核酸アナログは、例えば、図1Bおよび1Cに示されるように、好ましくは、C末端において、末端Y’サブユニットに好ましく連結される。好ましいリンカーは、構造AhxBのものであり、ここで、Ahxは6−アミノヘキサン酸サブユニットであり、Bはβアラニンサブユニットである。
【0137】
上記のような輸送部分は、結合された輸送オリゴマーの非存在におけるオリゴマーの取り込みと比較して、および疎水性サブユニットY’を欠く結合された輸送部分による取り込みと比較して、結合されたオリゴマーの細胞侵入を大きく増強することが示されている。このような増強された取り込みは、疎水性サブユニットY’を欠く結合された輸送部分による薬剤の取り込みと比較した、哺乳動物細胞への化合物の取り込みにおいて、好ましくは、少なくとも2倍の増加によって、および好ましくは、4倍の増加によって証明される。取り込みは、非結合体化化合物と比較して、好ましくは、少なくとも20倍、より好ましくは、40倍増強される。
【0138】
輸送部分のさらなる利点は、おそらく、正電荷を有する輸送部分と負電荷を有する核酸の間の静電相互作用による、アンチセンス化合物とその標的核酸配列の間の二重鎖を安定する、その予測される能力である。トランスポーター中の電荷を有するサブユニットの数は、上述のように14未満であり、好ましくは、8から11の間であり、なぜなら、多すぎる数の電荷を有するサブユニットは、配列特異性の減少に導く可能性があるからである。
【0139】
アルギニンリッチペプチドトランスポーター(すなわち、細胞透過性ペプチド)の使用は、本発明の実施において特に有用である。特定のペプチドトランスポーターは、筋肉細胞を含む初代細胞へのアンチセンス化合物の送達の際に高度に有効であることが示されてきた(Marshall,Odaら、2007;Jearawiriyapaisarn,Moultonら、2008;Wu,Moultonら、2008)。さらに、ペネトラチン(Penetratin)およびTatペプチドなどの他のペプチドトランスポーターと比較して、本明細書に記載されるペプチドトランスポーターは、アンチセンスPMOに結合体化されたときに、いくつかの遺伝子転写物のスプライシングを変化させる能力の増強を実証する(Marshall,Odaら、2007)。とりわけ好ましいものは、表3において以下に列挙されているP007、CP06062、およびCP04057輸送ペプチドである(それぞれ、配列番号573、578、および577)。
【0140】
リンカー(BまたはAhxB)を含む例示的なペプチドトランスポーターは、以下の表Bで以下に与えられる。好ましい配列は、CP06062(配列番号578)、P007(配列番号573)、およびCP04057(配列番号577)と称するものである。
【表B】
【0141】
製剤
特定の実施形態において、本発明は、本明細書に記載されるような、アンチセンスオリゴマーの治療的送達のために適切な製剤または組成物を提供する。従って、特定の実施形態において、本発明は、1種以上の薬学的に受容可能なキャリア(添加物)および/または希釈剤とともに製剤化された、1種以上の本明細書に記載されたオリゴマーの治療有効量を含む、薬学的に受容可能な組成物を提供する。本発明のオリゴマーが単独で投与されることは不可能であるが、薬学的製剤(組成物)としてこの化合物を投与することが好ましい。
【0142】
核酸分子の送達のための方法は、例えば、Akhtarら、1992,Trends Cell Bio.,2:139;およびDelivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics,Akhtar編;Sullivanら、PCT WO 94/02595に記載されている。これらおよび他のプロトコールは、本発明の単離されたオリゴマーを含む、実施的に任意の核酸分子の送達のために利用できる。
【0143】
以下に詳述されるように、本発明の薬学的組成物は、固体型または液体型での投与のために特別に製剤化されてもよく、これには、以下のために適合されたものが含まれる:(1)経口投与、例えば、飲薬(水性または非水性溶液または懸濁液)、錠剤、例えば、口腔、舌下、および全身性吸収のために標的化されたもの、ボーラス、散剤、顆粒剤、舌への適用のためのペースト;(2)例えば、滅菌溶液もしくは懸濁液、または持続放出製剤としての、例えば、皮下、筋肉内、静脈内、または硬膜外注射による非経口投与;(3)例えば、皮膚に適用されるクリーム、軟膏、または制御放出パッチまたはスプレーとしての、局所的適用;(4)例えば、ペッサリー、クリーム、またはフォームとしての、膣内または直腸内;(5)舌下;(6)眼;(7)経皮;あるいは(8)鼻。
【0144】
「薬学的に受容可能な」という語句は、信頼できる医学的判断の範囲内にあり、過度の毒性、炎症、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、ヒトおよび動物の組織と接触する使用のために適切であり、合理的な損益比の釣り合っている、化合物、物質、組成物、および/または剤形をいうために本明細書で利用される。
【0145】
「薬学的に受容可能なキャリア」という語句は、本明細書で使用される場合、身体の1つの器官、またはその部分から、身体の別の器官、またはその部分まで、対象の化合物を運搬または輸送する際に含まれる、薬学的に受容可能な物質、組成物、またはビヒクル、例えば、液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、製造助剤(例えば、潤滑剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム、カルシウム、もしくは亜鉛、またはステアリン酸(steric acid))、または溶媒カプセル化剤を意味する。各キャリアは、製剤の他の成分と適合性があり、患者に有害でないという意味において、「受容可能」でなければならない。
【0146】
薬学的に受容可能なキャリアとして働くことができる物質のいくつかの例には、非限定的に以下が含まれる:(1)ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖;(2)コーンスターチおよびポテトスターチなどのデンプン;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;(4)粉末化トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバターおよび坐剤ワックスなどの賦形剤;(9)ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、およびダイズ油などの油:(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張生理食塩水;(18)Ringer液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝化溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート、および/もしくはポリ無水物;ならびに(22)薬学的製剤中で利用される他の非毒性適合性物質。
【0147】
本発明のアンチセンスオリゴマーとの製剤のために適切な薬剤のさらなる非限定的な例には以下が含まれる:PEG結合体化核酸、リン脂質結合体化核酸、親油性部分を含有する核酸、ホスホロチオエート、種々の組織への薬物の侵入を増強できるP−糖タンパク質阻害剤(Pluronic P85など);生分解性ポリマー、例えば、移植後の持続放出送達のためのポリ(DL−ラクチド−コグリコリド)ミクロスフェア(Emerich,DFら、1999,Cell Transplant,8,47−58)Alkermes,Inc.Cambridge;および負荷されたナノ粒子、例えば、血液脳関門を横切って薬物を送達でき、神経細胞の取り込み機構を変化できる、ポリブチルシアノアクリレートから作られたもの(Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry,23,941−949,1999)。
【0148】
本発明はまた、ポリ(エチレングリコール)脂質を含む表面修飾リポソーム(PEG−修飾された、分枝または非分枝またはその組み合わせの、または長循環リポソームまたはステルスリポソーム)を含む組成物の使用を特徴とする。本発明のオリゴマーはまた、種々の分子量の共有結合されたPEG分子を含むことができる。これらの製剤は、標的組織における薬物の蓄積を増加させるための方法を提供する。このクラスの薬物キャリアは、単核食細胞系(MPSまたはRES)によるオプソニン作用および除去に抵抗性であり、それによって、より長い血液循環時間およびカプセル化された薬物の組織曝露の増強を可能にする(Lasicら、Chem.Rev.1995,95,2601−2627;Ishiwataら、Chem.Pharm.Bull.1995,43,1005−1011)。このようなリポソームは、おそらく、新血管形成された標的組織における血管外遊出および捕捉によって、腫瘍中に選択的に蓄積されることが示されてきた(Lasicら、Science 1995,267,1275−1276;Okuら、1995,Biochim.Biophys.Acta,1238,86−90)。長く循環するリポソームは、特に、MPSの組織において蓄積することが知られている従来的なカチオン性リポソームと比較して、DNAおよびRNAの薬物動態学および薬力学を増強する(Liuら、J.Biol.Chem.1995,42,24864−24870;Choiら、PCT国際公開番号WO 96/10391;Ansellら、PCT国際公開番号WO 96/10390;Hollandら、PCT国際公開番号WO 96/10392)。長く循環するリポソームはまた、肝臓および脾臓などの代謝的に攻撃的なMPS組織において蓄積を回避するそれらの能力に基づき、カチオン性リポソームと比較して、より高い程度まで、薬物をヌクレアーゼ分解から防御する可能性が高い。
【0149】
さらなる実施形態において、本発明は、米国特許第6,692,911号、同第7,163,695号、および同第7,070,807号に記載されるように、送達のために調製されたオリゴマー組成物を含む。この点に関して、1つの実施形態において、本発明は、米国特許第7,163,695号、同第7,070,807号、および同第6,692,911号に記載されるようなリジンおよびヒスチジン(HK)のコポリマーを含む組成物中の本発明のオリゴマーを、単独でまたはPEG(例えば、分枝または非分枝PEGまたは両方の混合物)と組み合わせて、PEGおよび標的化部分または架橋剤と組み合わせた前述のいずれかと組み合わせて、提供する。特定の実施形態において、本発明は、グルコン酸修飾ポリヒスチジンまたはグルコニル化ポリヒスチジン/トランスフェリン−ポリリジンを含む組成物中のアンチセンスオリゴマーを提供する。当業者は、HisおよびLysに類似の特性を有するアミノ酸が組成物中で置換されてもよいこともまた認識している。
【0150】
本発明に記載されるオリゴマーの特定の実施形態は、アミノまたはアルキルアミノなどの塩基性官能基を含んでもよく、従って、薬学的に受容可能な酸とともに薬学的に受容可能な塩を形成することが可能である。「薬学的に受容可能な塩」という用語は、この点に関して、比較的非毒性である、本発明の化合物の無機および有機酸付加塩をいう。これらの塩は、投与ビヒクルもしくは剤形製造プロセスでインサイチュで調製でき、またはその遊離塩基型の本発明の精製した化合物を適切な有機酸もしくは無機酸と別々に反応させること、および引き続く精製の間にこのように形成した塩を単離することによって調製できる。代表的な塩には、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩(napthylate)、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、およびラウリルスルホン酸塩などが含まれる(例えば、Bergeら、(1977)「Pharmaceutical Salts」J.Pharm.Sci.66:1−19を参照のこと)。
【0151】
対象のオリゴマーの薬学的に受容可能な塩には、例えば、非毒性有機酸または無機酸からの、化合物の従来的な非毒性塩または四級アンモニウム塩が含まれる。例えば、このような従来的な非毒性塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機塩から誘導されたもの;およびプロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イソチオン酸などの有機酸から調製された塩が含まれる。
【0152】
特定の実施形態において、本発明のオリゴマーは、1つ以上の酸性官能基を含んでもよく、従って、薬学的に受容可能な塩基と薬学的に受容可能な塩を形成することが可能である。これらの例において「薬学的に受容可能な塩」という用語は、本発明の化合物の、比較的非毒性である、無機塩基付加塩および有機塩基付加塩をいう。これらの塩は、同様に、投与ビヒクルもしくは剤形製造プロセスでインサイチュで調製でき、またはその遊離酸型の本発明の精製した化合物を、適切な塩基、例えば、薬学的に受容可能な金属カチオンの水酸化物、炭酸塩、もしくは炭酸水素塩と、アンモニアと、または薬学的に受容可能な有機一級、二級、もしくは三級アミンと別々に反応させることによって調製できる。代表的なアルカリ塩またはアルカリ土類塩には、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、およびアルミニウム塩などが含まれる。塩基付加塩の形成のために有用である代表的な有機アミンには、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが含まれる(例えば、Bergeら、前出を参照のこと)。
【0153】
ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤、および潤滑剤、ならびに着色剤、離型剤、コート剤、甘味料、香料および芳香剤、保存料、ならびに抗酸化剤もまた、組成物中に存在することができる。
【0154】
薬学的に受容可能な抗酸化剤の例には以下が含まれる:(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)脂溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、αトコフェロールなど;ならびに(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など。
【0155】
本発明の製剤は、経口、鼻、局所(口腔および舌下を含む)、直腸、膣、および/または非経口投与のために適切なものが含まれる。これらの製剤は、単位剤形で便利に存在してもよく、薬学分野において周知である任意の方法によって調製されてもよい。単一の剤形を生じるためにキャリア材料と合わせることができる活性成分の量は、治療される宿主、投与の特定の様式に依存して変化する。単一の剤形を生じるためにキャリア材料と合わせることができる活性成分の量は、一般的には、治療効果を生じる化合物の量である。一般的には、100パーセントの中から、この量は、約0.1パーセントから約99パーセント、好ましくは、約5パーセントから約70パーセント、最も好ましくは、約10パーセントから約30パーセントの活性成分の範囲である。
【0156】
特定の実施形態において、本発明の製剤は、シクロデキストリン、セルロース、リポソーム、ミセル形成剤、例えば、胆汁酸、およびポリマー性キャリア、例えば、ポリエステルおよびポリ無水物から選択される賦形剤;ならびに本発明のオリゴマーを含む。特定の実施形態において、上述の製剤は、本発明のオリゴマーを経口的に生物学的利用可能にする。
【0157】
これらの製剤および組成物を調製する方法は、本発明のオリゴマーを、キャリアおよび任意に、1種以上の付属成分と一緒にする工程を包含する。一般的に、これらの製剤は、本発明の化合物を液体キャリア、または微細に分割された固体キャリア、またはその両方とともに均一かつ密接に一緒にすること、次いで、必要な場合、生成物を成型することによって調製される。
【0158】
経口投与のために適切な本発明の製剤は、カプセル、カシェ剤、丸薬、ロゼンジ(香料ベース、通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガカントを使用)、散剤、顆粒剤、または水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油もしくは油中水の液体エマルジョン、またはエリキシルもしくはシロップとして、または香錠(不活性ベース、例えば、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアを使用)、および/またはマウスウォッシュとしてなどの型であってもよく、各々が活性成分として所定量の本発明の化合物を含む。本発明のオリゴマーはまた、ボーラス、舐剤、またはペーストとして投与されてもよい。
【0159】
経口投与のための本発明の固体剤形(カプセル、錠剤、丸薬、糖衣錠、散剤、顆粒剤、トローチなど)において、活性成分は、1種以上の薬学的に受容可能なキャリアと混合されてもよく、このキャリアは、例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、および/または以下のいずれかである:(1)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸;(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/またはアカシアなど;(3)保湿剤、例えば、グリセロール;(4)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸、およびカルボン酸ナトリウム;(5)溶液遅延剤、例えば、パラフィン;(6)吸収加速剤、例えば、四級アンモニウム化合物および界面活性剤、例えば、ポロキサマーおよびラウリル硫酸ナトリウム;(7)湿潤剤、例えば、セチルアルコール、モノステアリン酸グリセロール、および非イオン性界面活性剤など;(8)吸着剤、例えば、カオリンおよびベントナイトクレイ;(9)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸、およびこれらの混合物;(10)着色剤;ならびに(11)制御放出剤、例えば、クロスポビドンまたはエチルセルロース。カプセル、錠剤、および丸薬の場合において、薬学的組成物は、緩衝剤もまた含んでもよい。同様の型の固体組成物は、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用して、ソフトおよびハード殻のゼラチンカプセル中の充填剤としてもまた利用されてもよい。
【0160】
錠剤は、任意に1種以上の付属成分とともに、圧縮または成型によって製造されてもよい。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤、または分散剤を使用して調製されてもよい。成型された錠剤は、不活性液体希釈剤を用いて湿らされた粉末化合物の混合物を、適切な機械の中で成型することによって製造されてもよい。
【0161】
本発明の薬学的組成物の錠剤、および他の剤形、例えば、糖衣錠、カプセル、丸薬、および顆粒剤は、腸溶コーティングおよび製薬分野で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて、任意に入手および調製されてもよい。これらはまた、例えば、所望の放出プロフィールを提供するために様々な比率のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソーム、および/またはミクロスフェアを使用して、その中の活性成分の遅延または制御放出を提供するように製剤化されてもよい。これらは、迅速な放出のために製剤化、例えば、凍結乾燥されてもよい。これらは、例えば、細菌保持フィルターによって、または使用直前に滅菌水もしくは何らかの他の注射可能な媒体に溶解できる滅菌固体組成物の型で滅菌薬剤を取り込むことによって、滅菌されてもよい。これらの組成物はまた、乳白剤を任意に含んでもよく、胃腸管の特定の部分のみにおいて、または選択的に胃腸管の特定の部分で優先的に、任意に遅延様式で、活性成分を放出する組成物であってもよい。使用され得る包埋組成物の例には、ポリマー性物質およびワックスが含まれる。活性成分はまた、適切な場合、上記の賦形剤の1種以上とともに、マイクロカプセル化型であり得る。
【0162】
本発明の化合物の経口投与のための液体剤形には、薬学的に受容可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルが含まれる。活性成分に加えて、液体剤形は、例えば、水または他の溶媒などの当該分野において共通して使用される不活性希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油類(特に、綿実油、ラッカセイ油、胚芽油(germ oil)、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、およびこれらの混合物などの溶解剤および乳化剤を含んでもよい。
【0163】
不活性希釈剤に加えて、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、香料、着色料、芳香剤、ならびに保存剤などのアジュバントもまた含むことができる。
【0164】
懸濁液は、活性成分に加えて、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキサイド、ベントナイト、寒天、およびトラガカント、およびこれらの混合物としての懸濁剤を含んでもよい。
【0165】
直腸または膣投与のための製剤は坐剤として提示されてもよく、これは、本発明の1種以上の化合物を、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、坐剤ワックス、またはサリチル酸を含む適切な非炎症性キャリアまたは賦形剤とともに混合することによって調製されてもよく、かつこれは室温で固体であるが、体温では液体であり、従って、直腸または膣腔で融解して活性化合物を放出する。
【0166】
本明細書に提供されるようなオリゴマーの局所的または経皮投与のための製剤または剤形には、散剤、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ジェル、溶液、パッチ、および吸入剤が含まれる。活性オリゴマーは、滅菌条件下で、薬学的に受容可能なキャリアとともに、および必要とされ得る、任意の保存剤、緩衝剤、または噴霧剤とともに混合されてもよい。軟膏、ペースト、およびジェルは、本発明の活性化合物に加えて、賦形剤、例えば、動物性および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはこれらの混合物を含んでもよい。
【0167】
散剤およびスプレーは、本発明のオリゴマーに加えて、賦形剤、例えば、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはこれら物質の混合物を含むことができる。スプレーは、慣例的な噴霧剤、例えば、クロロフルオロハイドロカーボンおよび揮発性非置換炭化水素、例えば、ブタンおよびプロパンをさらに含むことができる。
【0168】
経皮パッチは、本発明のオリゴマーの身体への制御送達を提供するさらなる利点を有する。このような剤形は、適切な媒体中に本発明のオリゴマーを溶解または分散させることによって行うことができる。吸収増強剤もまた、皮膚を横切っての薬剤の流入を増加させるために使用することができる。このような流入の速度は、当該分野において公知である方法の中でも、速度制御膜を提供すること、またはポリマーマトリックスもしくはゲル中で薬剤を分散させることのいずれかによって制御できる。
【0169】
非経口投与のために適切な薬学的組成物は、本発明の1種以上のオリゴマーを、1種以上の薬学的に受容可能な滅菌等張水性または非水性溶液、分散液、懸濁液、またはエマルジョン、あるいは、使用直前に滅菌注射用溶液または分散液に再構築されてもよい滅菌粉末と組み合わせて含んでもよく、これらは、糖、アルコール、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、製剤を意図されるレシピエントの血液と等張性にする溶質、または懸濁剤または濃厚剤を含んでもよい。本発明の薬学的組成物において利用されてもよい適切な水性および非水性キャリアの例には、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物、植物油、例えば、オリーブ油、および注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルが含まれる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散の場合には必要とされる粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。
【0170】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などのアジュバントもまた含んでもよい。対象のオリゴマーに対する微生物の作用の予防は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含めることによって保証されてもよい。組成物に、糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることもまた望ましくあり得る。加えて、注射可能な薬剤型の吸収の延長は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる剤を含めることによってもたらされてもよい。
【0171】
ある場合において、薬物の効果を延長させるために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅延させることが望ましくあり得る。これは、当該分野において公知の方法の中でも、乏しい水溶性を有する結晶性またはアモルファス性材料の液体懸濁液の使用によって達成されてもよい。次いで、薬物の吸収の速度は、その溶解の速度に依存し、次には、結晶サイズおよび結晶型に依存するかもしれない。または、非経口投与された薬物型の吸収の遅延は、油性ビヒクル中で薬物を溶解または懸濁することによって達成される。
【0172】
注射用デポー剤は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生物分解可能なポリマー中で対象のオリゴマーのマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって行われてもよい。オリゴマー対ポリマーの比率、および利用される特定のポリマーの性質に依存して、オリゴマー放出の速度は制御できる。他の生物分解可能なポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が含まれる。デポー注射製剤は、身体組織と適合可能であるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に薬物をトラップすることによってもまた調製されてもよい。
【0173】
本発明のオリゴマーがヒトおよび動物に医薬品として投与される場合、これらは、それ自体で、または薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて、例えば、活性成分の0.1〜99%(より好ましくは、10〜30%)を含む薬学的組成物として、与えられることができる。
【0174】
上述のように、本発明の製剤または調製物は、経口的、非経口的、局所的、または直腸的に与えられてもよい。これらは、典型的には、各々の投与経路のために適切な型で与えられる。例えば、これらは、錠剤またはカプセル型で、注射、吸入、洗眼液、軟膏、坐剤など、注射による投与、注入または吸入;ローションまたは軟膏によって局所的に;および坐剤によって直腸的に与えられる。
【0175】
「非経口投与」および「非経口的に投与される」という語句は、本明細書で使用される場合、通常は注射による、腸内および局所的投与以外の投与の様式を意味し、非限定的に、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、および胸骨内の注射および注入を含む。
【0176】
「全身投与」、「全身的に投与される」、「末梢投与」、および「末梢的に投与される」という語句は、本明細書で使用される場合、中枢神経系に直接的である以外の、化合物、薬物、または他の物質の投与であって、その結果、これは、患者の系に入り、従って、代謝および他の同様のプロセスに供されることを意味し、これは、例えば、皮下投与である。
【0177】
選択される経路に関わらず、適切な水和型で使用されてもよい本発明のオリゴマー、および/または本発明の薬学的組成物は、当業者に公知である従来的な方法によって、薬学的に受容可能な剤形に製剤化されてもよい。本発明の薬学的組成物における活性成分の実際の投薬量レベルは、患者に対して受容可能でない毒性を伴うことなく、特定の患者についての所望の治療応答、組成物、および投与の様式を達成するために有効である活性成分の量を得るために変動されてもよい。
【0178】
選択された投薬量レベルは、利用される本発明の特定のオリゴマー、またはそのエステル、塩、またはアミドの活性、投与の経路、投与の時間、利用される特定のオリゴマーの排出または代謝の速度、吸収の速度または程度、治療の期間、利用される特定のオリゴマーと組み合わせて使用される他の薬物、化合物、および/または物質、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康、および以前の医学的履歴、および医学分野で周知である同様の要因を含む種々の要因に依存する。
【0179】
当該分野において通常の技能を有する医師または獣医は、必要とされる薬学的組成物の有効量を容易に決定および処方できる。例えば、医師または獣医は、所望の効果を達成するために、薬学的組成物中で利用される本発明の化合物の用量を、必要とされるレベルよりも低いレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで、投薬量を徐々に増加させることができる。一般的に、本発明の化合物の適切な1日の用量は、治療効果を生じるために有効である最低の用量である化合物の量である。このような有効用量は、一般的には、上記の因子に依存する。一般的には、患者のための本発明の化合物の経口、脳室内、および皮下用量は、示される効果のために使用される場合、約0.0001〜約100mg/体重キログラム/日の範囲である。
【0180】
所望される場合、活性化合物の有効1日用量は、1日を通して適切な間隔で別々に投与される2回、3回、4回、5回、6回、またはそれ以上のサブ用量として、任意に、単位剤形で投与される。特定の状況において、投薬は、1日あたり1回の投与である。特定の状況において、投薬は、機能的ジストロフィンタンパク質の所望の発現を維持するために、必要に応じて、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日毎、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12週間毎、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月毎あたりに1回以上の投与である。
【0181】
核酸分子は、当業者に公知である種々の方法によって細胞に投与でき、これらには、非制限的に、本明細書に記載され、かつ当該分野で公知であるような、リポソーム中のカプセル化、イオン泳動による方法、または、ハイドロゲル、シクロデキストリン、生物分解性ナノカプセル、および生体接着性ミクロスフェアなどの他のビヒクルへの取り込みによる方法が含まれる。特定の実施形態において、マイクロエマルジョン化技術は、親油性(水不溶性)薬学的製剤の生物学的利用能を改善するために利用されてもよい。例には、トリメトリン(Trimetrine)(Dordunoo,S.K.ら、Drug Development and Industrial Pharmacy,17(12),1685−1713,1991およびREV 5901(Sheen,P.C.ら、J Pharm Sci 80(7),712−714,1991)が含まれる。他の利点の中でも、マイクロエマルジョン化は、循環系の代わりに、リンパ系への吸収を優先的に指向することによって、生物学的利用能の増強を提供し、それによって、肝臓をバイパスし、肝胆汁性循環における化合物の破壊を防止する。
【0182】
本発明の1つの態様において、製剤は、本明細書に提供されるようなオリゴマーおよび少なくとも1種の両親媒性キャリアから形成されるミセルを含み、ここでは、このミセルは、約100nm未満の平均直径を有する。より好ましい実施形態は、約50nm未満の平均直径を有するミセルを提供し、さらに好ましい実施形態は約30nm未満、またはさらに約20nm未満の平均直径を有するミセルを提供する。
【0183】
すべての適切な両親媒性キャリアが意図されるが、現在好ましいキャリアは、一般的には、一般的に安全であると認められている(Generally−Recognized−as−Safe)(GRAS)状態であり、溶液が複雑な水相と接触されるより後期段階において(例えば、ヒトの胃腸管で見い出されるもの)、本発明の化合物を可溶化することと、それをマイクロエマルジョン化することの両方ができるものである。通常、これらの要件を満たす両親媒性成分は、2〜20のHLB(親水性対親油性バランス)値を有し、それらの構造はC−6からC−20の範囲の直鎖脂肪族基を含む。例は、ポリエチレン−グリコール化脂肪グリセリドおよびポリエチレングリコールである。
【0184】
両親媒性キャリアの例には、完全にまたは部分的に水素化された種々の植物油から得られるものなどの、飽和および一不飽和ポリエチレングリコール化脂肪酸グリセリドが含まれる。このような油は、トリ−、ジ−、およびモノ−脂肪酸グリセリドならびに対応する脂肪酸のジ−およびモノ−ポリエチレングリコールエステルから有利になってもよく、特に好ましい脂肪酸組成は、カプリン酸4〜10%、カプリン酸3〜9%、ラウリン酸40〜50%、ミリスチン酸14〜24%、パルミチン酸4〜14%、およびステアリン酸5〜15%を含む。別の有用なクラスの両親媒性キャリアには、飽和または一不飽和脂肪酸(SPANシリーズ)または対応するエトキシ化アナログ(TWEENシリーズ)を有する、部分的にエステル化されたソルビタンおよび/またはソルビトールが含まれる。
【0185】
市販の両親媒性キャリアは特に有用であり得、これらには以下が含まれる:Gelucireシリーズ、Labrafil、Labrasol、またはLauroglycol(すべてGattefosse Corporation,Saint Priest,Franceにより製造および販売)、PEG−モノ−オレエート、PEG−ジ−オレエート、PEG−モノ−ラウレートおよびジ−ラウレート、レシチン、ポリソルベート80など(米国および世界中の数多くの企業によって製造および販売されている)。
【0186】
特定の実施形態において、送達は、適切な宿主細胞への本発明の組成物の導入のために、リポソーム、ナノカプセル、微粒子、ミクロスフェア、脂質粒子、ベシクルなどの使用によって行われてもよい。特に、本発明の組成物は、送達のために、脂質粒子、リポソーム、ベシクル、ナノスフェア、ナノ粒子などのいずれかにカプセル化されて製剤化されてもよい。このような送達ベシクルの製剤および使用は、公知でありかつ従来的な技術を使用して実行できる。
【0187】
本発明における使用のために適切な親水性ポリマーは、容易に水に溶解し、ベシクル−形成脂質に共有結合でき、そして毒性効果を伴わずにインビボで耐容性を示す(すなわち、生体適合性がある)ものである。適切なポリマーには、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸(ポリラクチドとも呼ばれる)、ポリグリコール酸(ポリグリコリドとも呼ばれる)、ポリ乳酸−ポリグリコール酸コポリマー、およびポリビニルアルコールが含まれる。特定の実施形態において、このポリマーは、約100もしくは120ダルトンから約5,000もしくは10,000ダルトンまで、または約300ダルトンから約5,000ダルトンまでの分子量を有する。他の実施形態において、ポリマーは、約100から約5,000ダルトンまでの分子量を有するか、または約300から約5,000ダルトンまでの分子量を有するポリエチレングリコールである。特定の実施形態において、このポリマーは、750ダルトンのポリエチレングリコール(PEG(750))である。ポリマーはまた、その中のモノマーの数によって規定されてもよく;本発明の好ましい実施形態は、少なくとも約3つのモノマーのポリマーを利用し、このようなPEGポリマーは、3つのモノマー(およそ150ダルトン)からなる。
【0188】
本発明における使用のために適切であり得る他の親水性ポリマーには、ポリビニルピロリドン、ポリメトキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、およびヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースなどの誘導体化セルロースが含まれる。
【0189】
特定の実施形態において、本発明の製剤は、以下からなる群より選択される生体適合性ポリマーを含む:ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、アクリルおよびメタクリルエステルのポリマー、ポリビニルポリマー、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびそのコポリマー、セルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、乳酸およびグリコール酸のポリマー、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ(ブチック(butic)酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリサッカリド、タンパク質、ポリヒアルロン酸、ポリシアノアクリレート、およびこれらのブレンド、混合物、またはコポリマー。
【0190】
シクロデキストリンは環状オリゴサッカリドであり、ギリシャ文字α、β、またはγによってそれぞれ示される、6、7、または8個のグルコース単位からなる。これらのグルコース単位は、α−1,4−グルコシド結合によって連結されている。糖単位のイス型コンホメーションの結果として、すべての二次ヒドロキシル基(C−2、C−3における)は環の一方の側に位置するのに対して、C−6におけるすべての一次ヒドロキシル基は他の側に配置されている。結果として、外部表面は親水性であり、シクロデキストリンを水溶性にする。対照的に、シクロデキストリンの空洞は疎水性である。なぜなら、これらは、C−3およびC−5の水素原子によって、およびエーテル様酸素によって並べられているからである。これらのマトリックスは、例えば、17α−エストラジオールなどのステロイド化合物を含む、種々の比較的疎水的な化合物との複合体形成を可能にする(例えば、van Udenら、Plant Cell Tiss.Org.Cult.38:1−3−113(1994)を参照のこと)。この複合体形成は、Van der Waals相互作用によって、および水素結合形成によって起こる。シクロデキストリンの化学の一般的総説については、Wenz,Agnew.Chem.Int.Ed.Engl.,33:803−822(1994)を参照のこと。
【0191】
シクロデキストリン誘導体の物理化学的特性は、置換の種類および程度に強く依存する。例えば、これらの水溶性は、不溶性(トリアセチル−β−シクロデキストリン)から147%可溶性(w/v)(G−2−β−シクロデキストリン)までの範囲である。加えて、これらは、多くの有機溶媒中で可溶性である。シクロデキストリンの特性は、それらの溶解性を増加または減少させることによって、種々の製剤成分の溶解度に対する制御を可能にする。
【0192】
多数のシクロデキストリンおよびそれらの調製のための方法が記載されてきた。例えば、Parmeter(I)ら(米国特許第3,453,259号)およびGrameraら(米国特許第3,459,731号)は電気的中性シクロデキストリンを記載している。他の誘導体には、カチオン性特性を有するシクロデキストリン[Parmeter(II)米国特許第3,453,257号]、不溶性架橋シクロデキストリン(Solms、米国特許第3,420,788号)、およびアニオン性特性を有するシクロデキストリン[Parmeter(III)、米国特許第3,426,011号]が含まれる。アニオン性特性を有するシクロデキストリンの中では、カルボン酸、亜リン酸、亜ホスフィン酸、ホスホン酸、リン酸、チオホスホン酸、チオスルフィン酸、およびスルホン酸が、親のシクロデキストリンに付加されている[Parmeter(III)、前出を参照のこと]。さらに、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体が、Stellaら(米国特許第5,134,127号)によって記載されてきた。
【0193】
リポソームは、水性内部区画を囲む少なくとも1つの脂質二重層からなる。リポソームは、膜の型およびサイズによって特徴付けられ得る。小さな単層ベシクル(SUV)は単一の膜を有し、典型的には、直径が0.02から0.05μmの間の範囲であり;大きな単層ベシクル(LUV)は、典型的には、0.05μmよりも大きい。オリゴ層の大きなベシクルおよび多層ベシクルは、複数の、通常は同心性の膜の層を有し、典型的には、0.1μmよりも大きい。いくつかの非同心性膜を有するリポソーム、すなわち、より大きなベシクル内に含まれるいくつかのより小さなベシクルは、多ベシクル性ベシクルと称する。
【0194】
本発明の1つの態様は、本発明のオリゴマーを含有するリポソームを含む製剤に関し、ここで、リポソーム膜は、輸送能力が増加したリポソームを提供するように製剤化される。代替的に、または加えて、本発明の化合物は、リポソームのリポソーム二重層に含まれてもよく、またはそこに吸着されてもよい。本発明のオリゴマーは、脂質界面活性剤で凝集されてもよく、リポソームの内部空間に輸送されてもよく;これらの場合、リポソーム膜は、活性薬剤−界面活性剤凝集体の破壊的効果に抵抗するように製剤化される。
【0195】
本発明の1つの実施形態に従うと、リポソームの脂質二重層は、ポリエチレングリコール(PEG)鎖が脂質二重層の内部表面からリポソームによってカプセル化された内部空間にまで伸び、そして脂質二重層の外部から周囲環境にまで伸びるように、ポリエチレングリコール(PEG)で誘導体化された脂質を含む。
【0196】
本発明のリポソーム中に含まれる活性薬剤は可溶化型である。界面活性剤および活性薬剤(例えば、目的の活性薬剤を含むエマルジョンまたはミセル)の凝集体は、本発明に従うリポソームの内部空間の中に捕捉されてもよい。界面活性剤は、活性薬剤を分散および可溶化するように働き、任意の適切な脂肪族、脂環式、または芳香族界面活性剤から選択されてもよく、これには様々な鎖の長さ(例えば、約C14〜約C20)の生体適合性リゾホスファチジルコリン(LPC)が含まれるがこれに限定されない。PEG−脂質などのポリマー誘導体化脂質もまた、ミセル形成のために利用されてもよい。なぜなら、これらがミセル/膜融合を阻害するように働くから、そして界面活性剤分子へのポリマーの添加が界面活性剤のCMCを減少させ、ミセル形成を補助するからである。マイクロモル濃度範囲のCMCを有する界面活性剤が好ましい;より高いCMCの界面活性剤は、本発明のリポソーム中にトラップされたミセルを調製するために利用されてもよい。
【0197】
本発明に従うリポソームは、当該分野において公知である種々の技術のいずれかによって調製されてもよい。例えば、米国特許第4,235,871号;PCT出願公開WO 96/14057;New RRC,Liposomes:A practical approach,IRL Press,Oxford(1990),33−104頁;Lasic DD,Liposomes from physics to applications,Elsevier Science Publishers BV,Amsterdam,1993を参照のこと。例えば、本発明のリポソームは、あらかじめ形成されたリポソームに、親水性ポリマーで誘導体化した脂質を分散させることによって、例えば、リポソーム中で所望される誘導体化脂質の最終モルパーセントに対応する脂質濃度で、脂質グラフト結合ポリマーから構成されるミセルに、あらかじめ形成されたリポソームを露出させることによって調製されてもよい。親水性ポリマーを含むリポソームはまた、当該分野において公知であるように、均質化、脂質フィールド水和、または押し出し技術によって形成することができる。
【0198】
別の例示的な製剤手順において、活性薬剤は、容易に疎水性分子を溶解する、リゾホスファチジルコリンまたは他の低CMC界面活性剤(ポリマーグラフト結合脂質を含む)中での超音波処理によって最初に分散される。次いで、得られた活性薬剤のミセル懸濁液は、適切なモルパーセントのポリマーグラフト結合脂質またはコレステロールを含む乾燥脂質サンプルを再水和するために使用される。次いで、脂質および活性薬剤懸濁液が、当該分野において公知であるように、押し出し技術を使用してリポソームに形成され、得られたリポソームは、標準的なカラム分離によって非カプセル化溶液から分離される。
【0199】
本発明の1つの態様において、リポソームは、選択されたサイズ範囲において実質的に均一なサイズを有するように調製される。1つの有効なサイズ決定方法は、選択された均一なポアサイズを有する一連のポリカーボネートメンブレンを通してリポソームの水性懸濁液を押し出しする工程を包含し;このメンブレンのポアサイズは、そのメンブレンを通した押し出しによって産生されるリポソームの最大サイズとおおまかに一致する。例えば、米国特許第4,737,323号(1988年4月12日)を参照のこと。特定の実施形態において、DharmaFECT(登録商標)およびLipofectamine(登録商標)などの試薬が、ポリヌクレオチドまたはタンパク質を細胞に導入するために利用されてもよい。
【0200】
本発明の製剤の放出特性は、カプセル化材料、カプセル化された薬物の濃度、および放出修飾剤の存在に依存する。例えば、放出は、例えば、胃の中のような低pHにおいてのみ、または腸の中のようなより高いpHにおいてのみ放出するpH感受性コーティングを使用して、pH依存性に操作することができる。腸溶コーティングは、胃を通った通路の後まで放出が起こることを防止するために使用できる。異なる材料中にカプセル化されたシアナミドの複数のコーティングまたはその混合物は、胃の中で初期の放出を得るために使用でき、続いて、腸の中でより後期の放出を得るために使用できる。放出はまた、塩またはポア形成薬剤を含めることによって操作でき、カプセルからの分散により、水の取り込みまたは薬物の放出を増加できる。薬物の溶解度を修飾する賦形剤もまた、放出速度を制御するために使用できる。マトリックスの分解またはマトリックスからの放出を増強する薬剤もまた、組み込んでもよい。これらは、薬物に加えることができ、別々の相として加えることができ(すなわち、微粒子として)、または化合物に依存してポリマー相に共溶解できる。多くの場合において、その量は0.1から30パーセント(w/wポリマー)の間であるべきである。分解促進剤の型には、無機塩、例えば、硫酸アンモニウムおよび塩化アンモニウム、有機酸、例えば、クエン酸、安息香酸、およびアスコルビン酸、無機塩基、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、および水酸化亜鉛、ならびに有機塩基、例えば、硫酸プロタミン、スペルミン、コリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミン、ならびに界面活性剤、例えば、Tween(登録商標)およびPluronic(登録商標)が含まれる。マトリックスに微細構造を加えるポア形成剤(すなわち、無機塩および糖などの水溶性化合物)は、微粒子として加えられる。その範囲は、典型的には、1から30%(w/wポリマー)の間である。
【0201】
取り込みはまた、腸における粒子の滞留時間を変化させることによって操作できる。これは、例えば、粘膜接着ポリマーで粒子をコーティングすること、またはカプセル化材料として粘膜接着ポリマーを選択することによって達成できる。例としては、遊離のカルボキシル基を有する多くのポリマー、例えば、キトサン、セルロース、およびとりわけ、ポリアクリレート(本明細書で使用される場合、ポリアクリレートとは、アクリレート基および修飾アクリレート基、例えば、シアノアクリレートおよびメタクリレートを含むポリマーをいう)が含まれる。
【0202】
オリゴマーは、外科的または医学的デバイスもしくは移植物の中に含まれるように製剤化され、またはこれらによって放出されるように適合されてもよい。特定の態様において、移植物は、オリゴマーでコートされるか、または他の方法にてオリゴマーで処理されてもよい。例えば、ハイドロゲルまたは他のポリマー、例えば、生体適合性および/または生物分解性ポリマーが、本発明の組成物で移植片をコートするために使用されてもよい(すなわち、組成物は、ハイドロゲルまたは他のポリマーを使用することによって、医学的デバイスを伴う使用のために適合されてもよい)。薬剤で医学的デバイスをコーティングするためのポリマーおよびコポリマーは当該分野で周知である。移植物の例には、ステント、薬物溶出ステント、縫合糸、プロテーゼ、血管カテーテル、透析カテーテル、血管移植片、人工心臓弁、心臓ペースメーカー、植込み型除細動器、静脈針、骨の設定および形成のためのデバイス、例えば、ピン、スクリュー、プレート、およびその他のデバイス、ならびに創傷治癒のための人工組織マトリックスが含まれるがこれらに限定されない。
【0203】
本明細書に提供される方法に加えて、本発明に従う使用のためのオリゴマーは、他の医薬品からの類推により、ヒトまたは獣医学的な医薬における使用のための任意の便利な方法での投与のために製剤化されてもよい。アンチセンスオリゴマーおよびそれらの対応する製剤は、単独で、または筋ジストロフィーの治療における他の治療ストラテジーと組み合わせて投与されてもよく、その投与ストラテジーとは、例えば、筋芽細胞移植、幹細胞治療、アミノグリコシド抗生物質の投与、プロテオソーム阻害剤、およびアップレギュレーション治療(例えば、ユートロフィンのアップレギュレーション、ジストロフィンの常染色体パラログ)である。
【0204】
本明細書に引用されるすべての刊行物および特許出願は、あたかも各々の刊行物または特許出願が具体的にかつ個別に参照により援用されることが示されるかのように、参照により本明細書に援用される。
【0205】
前述の発明は、理解の明確さの目的のために、例証および実例によっていくぶん詳細に記載されてきたが、特定の変更および改変が添付の特許請求の範囲の技術思想または範囲から逸脱することなく、本発明になされ得ることは、本発明の教示に鑑みて当業者には容易に明白である。以下の実施例は、例示目的のみのために提供され、限定目的ではない。当業者は、本質的に同様の結果を生じるために変更または改変できる種々の決定的ではないパラメーターを容易に認識する。
【0206】
【数1】
【0207】
【数2】
【0208】
【数3】
【実施例】
【0209】
材料および方法
細胞および組織培養処理条件
5%DMSO溶液(Sigma)中に保存された少ない継代数のヒト横紋筋肉腫細胞(ATCC,CCL−136;RD細胞)は、氷の銀色(ice sliver)がもはや見えなくなるまで、37℃ウォーターバス中で融解した。細胞は、L−グルタミン(HyClone)、10%ウシ胎仔血清、および1%ペニシリン−ストレプトマイシン抗生物質溶液(CelGro)を補充した24mLの温めたDMEM中、1.5×106細胞/フラスコで、組織培養処理したT75フラスコ(Nunc)に播種した;24時間後、培地を吸引し、細胞は温めたPBSで1回洗浄し、新鮮な培地を加えた。細胞は、37℃インキュベーター中で、5.0%CO2にて、80%コンフルエントまで増殖させた。
【0210】
培地をT75フラスコから吸引し;細胞は温めたPBSで1回洗浄し、そして吸引した。37℃ウォーターバス中で温めた3mLのトリプシン/EDTAを各T75に加えた。細胞は、37℃で、5回、2〜5分間、穏やかに攪拌しながら、これらがフラスコから遊離されるまでインキュベートした。細胞懸濁液は、15.0mLコニカルチューブに移し;フラスコは1.0mLのトリプシン/EDTA溶液ですすぎ、残りの細胞を集めた。細胞は、Vi−Cell XR細胞カウンター(Beckman Coulter)で計数した。細胞は、1.0mL培地のウェルあたり2.0×105生存細胞で、組織培養処理した12ウェルプレート(Falcon)に播種した。細胞は、37℃インキュベーター中で、5.0%CO2にて一晩インキュベートした。
【0211】
12ウェルの播種プレートは、均一な細胞分布およびプレート接着について試験した。凍結乾燥した、ペプチド結合体化ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PPMO)を、ヌクレアーゼを含まない水(Ambion)中で2.0mMに再懸濁し、細胞処理の間氷上に維持した;モル濃度を確認するために、PPMOは、NanoDrop 2000分光光度計(Thermo Scientific)を使用して測定した。PPMO処理の直前に、培地を吸引し、細胞を温めたPBSですすいだ。PPMOは温めた培地で、所望のモル濃度まで希釈した;細胞は、ウェルあたり総量1.0mL PPMO中で処理した。PPMOは三連で試験した。未処理対照のために、新鮮な、温めた培地を、1.0mL総量で加えた。細胞は、37℃インキュベーター中で、5.0%CO2にて48時間インキュベートした。
【0212】
RNA抽出
培地を吸引し、細胞は温めたPBSですすいだ。RNAは、QuickGene−Mini80システム、QuickGene RNA培養細胞HCキットS、およびMagNAlyserを用いて、セラミックビーズ均質化とともに、製造業者の推奨するプロトコールを使用して、抽出した。手短に述べると、細胞は、350μL LRP(100μL LRPあたり10μL β−メルカプトエタノールを加えた)溶解緩衝液を有する処理プレート中で溶解した;ホモジネートは、完全な溶解を確実にするために穏やかに摩砕し、MagNAlyserチューブに移した。チューブは、MagNAlyser中で、2800rpmで30秒間、遠心分離して、完全な均質化を確実にし、そして手短に氷冷した。50μL SRP可溶化緩衝液を加え、ホモジネートは15秒間ボルテックスした。170μL>99%エタノールを各チューブに加え、ホモジネートは60秒間ボルテックスした。ホモジネートは手早く遠心分離し、Mini80 RNAカートリッジに移し、サンプルは加圧し、フロースルーは廃棄した。カートリッジは750μL WRP洗浄緩衝液中で洗浄され、加圧された。40μLのDNase溶液(1.25μL Qiagen DNaseI、35μL RDD緩衝液、3.75μL ヌクレアーゼを含まない水)を、カートリッジメンブレンに直接加えた;カートリッジは、室温で4分間インキュベートした。カートリッジは、750μL WRPで2回洗浄し、各洗浄後に加圧した。カートリッジはヌクレアーゼを含まないチューブ上に配置した。50μL CRP溶出緩衝液を各メンブレンに加えた;メンブレンは室温で5分間インキュベートした。カートリッジは加圧し、溶離液を収集した。RNAは、定量を保留して−80℃に保存した。RNAはNanoDrop(商標)2000分光光度計を使用して定量した。
【0213】
ネステッドRT−PCR
プライマー特異的、エキソン特異的、最適化ネステッドRT−PCR増幅を、表1において以下に示されるように各ジストロフィンエキソンについてのプライマー対セットを使用して実施した。
【0214】
【表1】
示されたプライマー対は、フォワードまたはリバース(F/R)のいずれかで、そして一次増幅または二次増幅にそれぞれ対応する外部または内部(I/O)のいずれかのプライマー対として、それぞれ示される。プライマー標的の位置は、エキソンカラムに示され、目的は、エキソンスキッピング事象が検出できることを示す。例えば、PS170およびPS176プライマーは、一次増幅において、エキソン48〜53の領域を増幅する。次いで、プライマーPS172およびPS174は、二次増幅において、エキソン49〜52の領域を増幅する。このネステッドPCR反応は、エキソン50および/またはエキソン51の両方のエキソンスキッピングを検出する。特異的ネステッドRT−PCR反応条件は以下に提供される。
【0215】
処理細胞から抽出されたRNA(上記)はすべてのサンプルについて、20ng/μlに希釈した。
【0216】
【表2】
【0217】
【表3】
【0218】
【表4】
【0219】
【表5】
ゲル電気泳動分析
10マイクロリットルの5×Ficollローディング色素を、各50マイクロリットルのネステッドRT−PCR反応物に加えた。15マイクロリットルのPCR/色素混合液を、300ボルトで30分間、10% TBEゲル上で泳動した。電気泳動後、ゲルはdiH2O中で少なくとも1時間洗浄し、30分毎に水を交換した。次いで、ゲルはTyphoon Trio Variable Mode Imager(GE Healthcare)上で走査した。エキソン44スキップについては、全長ジストロフィン転写物からのネステッドRT−PCR産物は571bpであり、エキソン44スキップmRNAからは423bpである(エキソン44は148bpである)。エキソン45については、全長ジストロフィン転写物からのネステッドRT−PCR産物は571bpであり、エキソン45スキップmRNAからは395bpである(エキソン45は176bpである)。エキソン53については、全長ジストロフィン転写物からのPCR産物は365bpであり、エキソン53スキップmRNAからは153bpである(エキソン53は212bpである)。
【0220】
ゲルイメージは、エキソンスキッピング産物と比較して、全長PCR産物のバンド強度を測定することによって、定量的分析に供した。ある場合において、固定されたPPMO濃度(例えば、3マイクロモル濃度)でのパーセントスキップは、一連のPPMOの相対活性を決定して、所定のエキソンのエキソンスキッピングを誘導するために使用した。他の状況において、PPMO用量−範囲は細胞を処理するために使用し(例えば、0.1、0.3、1.0、3.0、および10マイクロモル濃度)、EC50は、各濃度において誘導されたスキップパーセントに基づいて計算した。
【0221】
実施例1
エキソン51スキャン
ヒトジストロフィンエキソン51を標的とする重複する一連のアンチセンスPPMOを設計し、合成し、そしてヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)または初代ヒト骨格筋細胞のいずれかを処理するために使用した。このストラテジーは「エキソンスキャン」と呼ばれ、以下に記載されるように、いくつかの他のジストロフィンエキソンについて類似して使用した。すべてのPPMOは、CP06062ペプチド(配列番号578)および3’末端PMO連結を使用して、ペプチド結合体化PMO(PPMO)として合成した。エキソン51については、図2Aに示されるように、各々が26塩基長である一連の26個のPPMOを作製した(配列番号:309〜311、314、316、317、319、321、323、324、326、327、329〜331、333、335、336、338〜345)。これらのPPMOは、材料および方法において上記に記載されているように、種々の濃度においてRD細胞を処理することによって、エキソンスキッピング効力について評価した。3種のPPMO(配列番号324、326、および327)を、エキソンスキッピングを誘導する際に有効であると同定し、さらなる評価のために選択した。RD細胞および初代ヒト骨格筋細胞における用量−範囲実験は、これら3種のPPMO配列の相対的効力を確認するために使用した。配列番号327は、図2Bおよび2Cに示されるように、エキソン51スキップを誘導する際に最も有効であることを示した。
【0222】
他のエキソン51標的化アンチセンス配列に対する、配列番号327の相対的有効性の比較は、上記のように、RD細胞および初代ヒト骨格筋細胞において実施した。すべての評価された配列は、CP06062ペプチド(配列番号578)を使用して、ペプチド結合体化PMOとして作製した。これは、アンチセンス化学または細胞送達に関わりなく、アンチセンス配列の相対的有効性の直接的比較を可能にした。配列番号327と比較した特定のエキソン51標的化オリゴの相対的位置は図2Dに示す。図2Cに示されるように、エキソンスキッピングの有効性の階層化されたヒエラルキーが存在し、配列番号327が最も有効であり、他の配列と比較して少なくとも数倍の因数である。
【0223】
実施例2
エキソン50スキャン
ヒトジストロフィンエキソン50を標的とする重複する一連のアンチセンスPPMOを設計および合成した。エキソン50については、図3Aに示されるように、各々が25塩基長である一連の17個のPPMOを作製した(配列番号267、269、271、273、275、277、279、280、282、および284〜291)。これらのPPMOは、材料および方法において上記に記載されているように、種々の濃度においてRD細胞を処理することによって、エキソンスキッピング効力について評価した。4種のPPMO(配列番号277、287、290、および291)を、エキソンスキッピングを誘導する際に有効であると同定し、さらなる評価のために選択した。RD細胞における用量−範囲実験は、これら4種のPMO配列の相対的効力を確認するために使用した。配列番号584(AVI−5656)および287(AVI−5038)は、図3Bに示されるように、エキソン50スキップを誘導する際に最も有効であることを示した。EC50値は用量−範囲実験から誘導し、これは、エキソン50を含むmRNAから産生されたPCR産物と比較すると、エキソン50を欠くmRNAからはPCR産物の50%であるという計算濃度を表す。他の配列と比較すると(例えば、配列番号584および585は、それぞれ、WO2006/000057における配列番号173および175に対応することを参照のこと)、AVI−5038(配列番号287)は、図3Bに示されるように、RD細胞アッセイにおいて、エキソンスキッピング活性を誘導する際に、等価であるかまたはより良好である。
【0224】
実施例3
エキソン53スキャン
ヒトジストロフィンエキソン53を標的とする重複する一連のアンチセンスPPMOを設計および合成した。エキソン53については、図4Aに示されるように、各々が25塩基長である一連の24個のPPMOを作製した(配列番号416、418、420、422、424、426、428、429、431、433、434、436、438〜440、および443〜451)。これらのPPMOは、材料および方法において上記に記載されているように、種々の濃度においてRD細胞および初代ヒト骨格筋細胞を処理することによって、エキソンスキッピング効力について評価した。3種のPPMO(配列番号428、429、および431)を、エキソンスキッピングを誘導する際に有効であると同定し、さらなる評価のために選択した。RD細胞における用量−範囲実験は、これら3種のPMO配列の相対的効力を確認するために使用した。配列番号429は、図4B〜Fに示されるように、エキソン53スキップを誘導する際に最も有効であることを示した。しかし、他のエキソン53アンチセンス配列と比較した場合に、配列番号429は、WO2006/000057において配列番号195として列挙されているH53A(+23+47)および本願の配列番号609と同一であることが判明した。他の配列を配列番号429と比較し、これには、H53A(+39+69)およびH53A(−12+10)(それぞれ、WO2006/000057において配列番号193および199と列挙される)およびh53AON1(米国出願11/233,507において配列番号39と列挙される)が含まれ、本願において、それぞれ、配列番号608、611、および610と列挙される。すべての評価された配列は、CP06062ペプチド(配列番号578)を使用して、ペプチド結合体化PMOとして作製した。これは、アンチセンス化学または細胞送達に関わりなく、アンチセンス配列の相対的有効性の直接的比較を可能にした。図4Iおよび4G〜Hに示されるように、配列番号429が、これらの4種の配列の各々よりも優れていることが示された。
【0225】
実施例4
エキソン44スキャン
ヒトジストロフィンエキソン44を標的とする重複する一連のアンチセンスPPMOを設計および合成した。エキソン44については、図5Aに示されるように、各々が25塩基長である一連のPPMOを作製した(配列番号1〜20)。これらのPPMOは、材料および方法において上記に記載されているように、種々の濃度においてRD細胞を処理することによって、エキソンスキッピング効力について評価した。5種のPPMO(配列番号4、8、11、12、および13)を、エキソンスキッピングを誘導する際に有効であると同定し、さらなる評価のために選択した。RD細胞における用量−範囲実験は、図5C〜Hに示されるように、これら5種のPPMO配列の相対的効力を確認するために使用した。配列番号8、11、および12は、図5Hに示されるように、エキソン44スキップを誘導する際に最も有効であることを示し、配列番号12が最も高い効力を提供した。
【0226】
他のエキソン44アンチセンス配列に対する、配列番号12の比較は、RD細胞と初代ヒト骨格筋細胞の両方において行った。すべての評価された配列は、CP06062ペプチド(配列番号578)を使用して、ペプチド結合体化PMOとして作製した。これは、アンチセンス化学または細胞送達に関わりなく、アンチセンス配列の相対的有効性の直接的比較を可能にした。
【0227】
配列番号4、8、11、および12との配列(配列番号600、601、602、および603)の整列は図5Bに示される。配列番号601および603はWO2006/000057において配列番号165および167として列挙されている。配列番号602はWO2004/083446に列挙されており、米国出願11/233,507に配列番号21として列挙されている。配列番号600は2007年に公開された(Wilton,Fallら、2007)。RD細胞における比較は、配列番号602および603が配列番号12よりも優れていることを示した(図5I)。しかし、図5Jに示されるように、ヒト初代骨格筋細胞においては、配列番号12(8.86%のエキソンスキッピング)が配列番号602(6.42%)よりも優れていた。同様の実験は配列番号603でも実施している。
【0228】
実施例5
エキソン45スキャン
ヒトジストロフィンエキソン45を標的とする重複する一連のアンチセンスPPMOを設計および合成した。エキソン45については、図6Aに示されるように、各々が25塩基長である一連の22個のPPMOを作製した(配列番号21、23、25、27、29、31、32、34、35、37、39、41、43、および45〜53)。これらのPPMOは、材料および方法において上記に記載されているように、種々の濃度においてRD細胞およびヒト初代骨格筋細胞を処理することによって、エキソンスキッピング効力について評価した。5種のPPMO(配列番号27、29、34、および39)を、エキソンスキッピングを誘導する際に有効であると同定し、さらなる評価のために選択した。RD細胞における用量−範囲実験は、図6C〜Gに示され、図6Hに要約されているように、これら4種のPMO配列の相対的効力を確認するために使用した。配列番号49はこれらの実験において陰性対照として使用した。配列番号29および34は、図6Hに示されるように、エキソン45スキップを誘導する際に最も有効であることを示した。
【0229】
他のエキソン45標的化アンチセンス配列に対する、配列番号34の比較は、RD細胞と初代ヒト骨格筋細胞の両方において行った。すべての評価された配列は、CP06062ペプチド(配列番号578)を使用して、ペプチド結合体化PMOとして作製した。これは、アンチセンス化学または細胞送達に関わりなく、アンチセンス配列の相対的有効性の直接的比較を可能にした。配列番号27、29、34、および39との配列(配列番号604、605、606、および607)の整列は図6Bに示される。配列番号604および607はWO2006/000057において配列番号211および207としてそれぞれ列挙されている。配列番号605および606は、米国出願11/233,507に配列番号23および1としてそれぞれ列挙されている。RD細胞における比較は、図6Iに示されるように、配列番号34が評価された4つすべての配列よりも優れていることを示した。ヒト初代骨格筋細胞の異なる集団におけるこれらの化合物の試験は、上記のように実施している。
【0230】
配列表
配列は、DNAについて共通のヌクレオチド塩基記号:A、G、C、およびTを使用して示される。2’−O−メチルなどの他のアンチセンス化学は、Tの代わりにUを使用する。任意の塩基が、とりわけ、3個以上のG残基のストレッチ中では、イノシン(I)で置換されてもよい。
【0231】
【表6−1】
【0232】
【表6−2】
【0233】
【表6−3】
【0234】
【表6−4】
【0235】
【表6−5】
【0236】
【表6−6】
【0237】
【表6−7】
【0238】
【表6−8】
【0239】
【表6−9】
【0240】
【表6−10】
【0241】
【表6−11】
【0242】
【表6−12】
【0243】
【表6−13】
【0244】
【表6−14】
【0245】
【表6−15】
【0246】
【表6−16】
【0247】
【表6−17】
【0248】
【表6−18】
【0249】
【表6−19】
【0250】
【表6−20】
【0251】
【表6−21】
【0252】
【表6−22】
【0253】
【表6−23】
【0254】
【表6−24】
【0255】
【表6−25】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)項の、2008年10月24日出願の米国仮特許出願第61/108,416号における利益を主張し、この仮特許出願は、本明細書中でその全体が参考として援用される。
【0002】
配列表に関する言及
本願と関連する配列表は、紙コピーの代わりにテキスト形式で提供され、これは、それによって参照により本明細書に援用される。配列表を含むテキストの名称は120178_410PC_SEQUENCE_LISTING.txtである。テキストファイルは156KBであり、2009年10月23日に作成され、そしてEFS−Webを経由して電子的に提出されている。
【0003】
発明の分野
本発明は、ヒトジストロフィン遺伝子におけるエキソンのスキップを容易にするために適切な新規なアンチセンス化合物および組成物に関する。本発明は、本発明の方法における使用のために適合されたアンチセンス組成物を使用してエキソンスキッピングを誘導するための方法もまた提供する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
アンチセンス技術は、種々の異なるレベルで(転写、スプライシング、安定性、翻訳のレベルで)遺伝子発現に影響を与えるために一連の化学を使用して開発されてきた。その研究の多くは、広範な指標における異常なまたは疾患関連の遺伝子を修正するかまたは補償するためのアンチセンス化合物の使用に焦点を当てている。アンチセンス分子は、特異性をもって遺伝子発現を阻害することが可能であり、このために、遺伝子発現の調節因子としてのオリゴヌクレオチドに関連する多くの研究の労力は、標的となる遺伝子の発現またはシス作用性エレメントの機能の阻害に焦点を当ててきた。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、典型的には、あるウイルスRNA標的の場合において、センス鎖(例えば、mRNA)またはマイナス鎖のいずれかのRNAを指向している。特定の遺伝子ダウンレギュレーションの所望の効果を達成するために、オリゴヌクレオチドは、一般的に、標的とされたmRNAの崩壊を促進するか、mRNAの翻訳をブロックするか、またはシス作用性RNAエレメントの機能をブロックするかのいずれかであり、それによって、標的タンパク質のデノボ合成またはウイルスRNAの複製のいずれかを効果的に妨害する。
【0005】
しかし、このような技術は、目的がネイティブタンパク質の産生をアップレギュレートすること、またはナンセンス変異もしくはフレームシフト変異などの翻訳の未成熟終了を誘導する変異を補償することである場合には有用ではない。これらの場合においては、欠損遺伝子転写物は標的とされた分解または立体阻害に供されるべきではなく、従って、アンチセンスオリゴヌクレオチド化学は、標的mRNA崩壊を促進するべきではなく、または翻訳をブロックするべきではない。
【0006】
種々の遺伝的疾患において、1つの遺伝子の最終的な発現に対する変異の効果は、スプライシングプロセスの間に標的とされたエキソンのスキップのプロセスを通して調節できる。スプライシングプロセスは、プレmRNAにおける隣接するエキソン−イントロン接合部を密接に接近させ、一緒にスプライシングされるエキソン間のそれらの引き続く再形成を伴って、イントロンの末端でホスホジエステル結合の切断を実施する、複雑な多成分機構によって方向付けられている。この複雑かつ高度に正確なプロセスは、比較的短い半保存性RNAセグメントであるプレmRNA中の配列モチーフによって媒介され、そこに種々の核スプライシング因子が結合し、次いで、これらの因子は、スプライシング反応に関与する。スプライシング機構がプレmRNAプロセシングに関与するモチーフを読み取りまたは認識するやり方を変更することによって、ディファレンシャルにスプライシングされたmRNA分子を作製することが可能である。ヒト遺伝子の大部分が正常な遺伝子発現の間に選択的にスプライシングされるが、関与する機構は同定されていないことが今や認識されている。
【0007】
正常に機能しているタンパク質がその中の変異のために未成熟で終結される場合において、アンチセンス技術を通してある機能的タンパク質産生を回復させるための手段は、スプライシングプロセスの間の介入を通して可能であることが示されており、そして疾患を引き起こす変異と関連するエキソンがある遺伝子から特異的に除去できるならば、ネイティブタンパク質の同様の生物学的特性を有するか、またはエキソンと関連する変異によって引き起こされた疾患を改善するために十分な生物学的活性を有する短縮型タンパク質産物が、時折、産生可能であることが示されている(Sierakowska,Sambadeら、1996;Wilton,Lloydら、1999;van Deutekom,Bremmer−Boutら、2001;Lu,Mannら、2003;Aartsma−Rus,Jansonら、2004)。Koleら(特許文献1;特許文献2;特許文献3;および特許文献4)は、標的とされているプレmRNAの崩壊を促進しない修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドアナログを使用して異常なスプライシングと闘う方法を開示している。Bennettら(米国特許第6,210,892号)は、標的RNAのRNAse H媒介切断を誘導しないアンチセンスオリゴヌクレオチドアナログもまた使用する、野生型細胞mRNAプロセシングのアンチセンス調節を記載している。
【0008】
標的とされたエキソンスキッピングのプロセスは、多くのエキソンおよびイントロンが存在するか、エキソンの遺伝子構成が冗長であるか、またはタンパク質が1種以上の特定のエキソンなしで機能することが可能である、長い遺伝子中で特に有用であるようである。種々の遺伝子中の変異によって引き起こされる短縮と関連する遺伝性疾患の治療のための遺伝子プロセシングを再方向付けするための試みは、以下のいずれかであるアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用に焦点を当てている:(1)スプライシングプロセスに関与するエレメントと完全にまたは部分的に重複する;または(2)エレメントにおいて起こる特定のスプライシング反応を正常に媒介するスプライシング因子の結合および機能を破壊するためにそのエレメントに十分に近接した位置でプレmRNAに結合する。
【0009】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、タンパク質ジストロフィンの発現の欠損によって引き起こされる。このタンパク質をコードする遺伝子は、200万ヌクレオチドを超えるDNAに広がる79個のエキソンを含む。エキソンの読み枠を変更するか、または終止コドンを導入するか、または読み枠のエキソン(単数または複数)もしくは1つ以上のエキソンの複製からの全体の除去によって特徴付けられるいかなるエキソンの変異も、機能的ジストロフィンの産生を破壊し、DMDを生じる潜在能力を有する。
【0010】
より重篤度が軽い型の筋ジストロフィーである、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)は、変異、典型的には、1つ以上のエキソンの欠失が、全体のジストロフィン転写物に沿った正確な読み枠を生じ、その結果、mRNAのタンパク質への翻訳が未成熟で終結しない場合に生じることが見い出されている。変異したジストロフィンプレmRNAのプロセシングにおける上流および下流のエキソンの結合が遺伝子の正確な読み枠を維持する場合、結果は、ベッカー表現型を生じる何らかの活性を保持している、短い内部欠失を有するタンパク質をコードするmRNAである。
【0011】
ジストロフィンタンパク質の読み枠を変化させないエキソン(単数または複数)の欠失はBMD表現型を生じるのに対して、フレームシフトを引き起こすエキソン欠失はDMDを生じる(Monaco,Bertelsonら、1988)。一般的に、読み枠を変化させ、従って、適切なタンパク質翻訳を中断する点変異およびエキソン欠失を含むジストロフィン変異は、DMDを生じる。あるBMDおよびDMD患者は複数のエキソンを網羅するエキソン欠失を有することもまた注記されるべきである。
【0012】
アンチセンス分子はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療におけるツールを提供するかもしれないが、アンチセンス分子を使用してエキソンスキッピングを誘導するための試みは混合した成功を有していた。ジストロフィンのプレmRNAからのジストロフィンエキソン19のスキップの成功は、Erringtonら(Errington,Mannら、2003)によって記載されるように、エキソンの定義に含まれるエキソンの範囲内での隣接するスプライス部位またはモチーフにおいて方向付けられている種々のアンチセンス分子を使用して達成された。
【0013】
mdxマウスモデルにおける特異的かつ再現性のあるエキソンスキッピングの最初の例は、Wiltonら(Wilton,Lloydら、1999)によって報告された。ドナースプライシング部位にアンチセンス分子を方向付けることによって、エキソン23スキップは、培養細胞の処理の6時間以内にジストロフィンmRNAにおいて誘導された。Wiltonらはまた、より長いアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて、マウスジストロフィンのプレmRNAのアクセプター領域を標的とすることを記載している。イントロン23ドナースプライシング部位において指向される最初のアンチセンスオリゴヌクレオチドが初代培養筋芽細胞においてエキソンスキッピングを誘導したのに対して、この化合物は、より高レベルのジストロフィンを発現する不死化細胞培養においてははるかにより効率的ではないことが見い出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,627,274号明細書
【特許文献2】米国特許第5,916,808号明細書
【特許文献3】米国特許第5,976,879号明細書
【特許文献4】米国特許第5,665,593号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
これらの試みにも関わらず、複数のジストロフィンエキソンに標的化されるアンチセンスオリゴマーの改善、および筋肉送達組成物の改善、およびDMDの治療適用のための方法についての必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の要旨
本発明の実施形態は、一般的に、エキソンスキッピングを誘導するために、選択された標的に結合可能であるアンチセンス化合物、およびエキソンスキッピングを誘導するためのそのアンチセンス化合物の使用方法に関する。特定の実施形態において、単一のまたは複数のエキソンスキッピングを誘導するために本発明の2つ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドを一緒に合わせることが可能である。
【0017】
特定の実施形態において、2つ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチド分子を一緒に共有結合することによって、単一のまたは複数のエキソンのエキソンスキッピングを改善することが可能である(例えば、Aartsma−Rus,Jansonら、2004を参照のこと)。
【0018】
特定の実施形態において、本発明のアンチセンス化合物は、ヒトジストロフィン遺伝子におけるエキソンスキッピングを誘導し、それによって、筋肉細胞が機能的ジストロフィンタンパク質を生成することを可能にする。
【0019】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド化合物(本明細書ではオリゴマーともまた呼ばれる)は、典型的には:(i)モルホリノサブユニットおよび1つのサブユニットのモルホリノ窒素を隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合するリンを含有するサブユニット間連結を含み、(ii)10〜40個の間、好ましくは20〜35個の間のヌクレオチド塩基を含有し、(iii)ジストロフィンのプレmRNA中の標的配列の少なくとも12個の連続する塩基にハイブリダイズしかつエキソンスキッピングを誘導するために有効な塩基配列を含む。
【0020】
特定の実施形態において、本明細書のアンチセンス化合物は、以下の構造(I)に従って、1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合するリンを含有するサブユニット間連結を含んでもよい:
【0021】
【化1】
ここで:
Y1は−O−、−S−、−NH−、または−CH2−であり;
ZはOまたはSであり;
Pjは、塩基特異的水素結合によって、ポリヌクレオチド中の塩基に結合するために有効であるプリンまたはピリミジン塩基対形成部分であり;そして
Xは、フルオロ、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルコキシ、任意に置換されたチオアルコキシ、アミノ、任意に置換されたアルキルアミノ、または任意に置換されたヘテロシクリルである。
【0022】
特定の実施形態において、電荷を有さない上記のサブユニット間連結は、生理学的pHにおいて正電荷を有する連結が分散されてもよく、ここで、正電荷を有する連結の総数は、2から連結の総数の半分を超えない数までの間である。例えば、正電荷を有する連結は、Xが任意に置換された1−ピペラジニルである上記の構造を有してもよい。他の実施形態において、正に荷電した連結は、1−ピペラジニルが、任意に置換されたアルキルグアニジニル部分で4位において置換されている、Xが置換1−ピペラジニルである上記の構造を有してもよい。
【0023】
投与されたアンチセンス化合物が、プレプロセスされた(preprocessed)ヒトジストロフィンのスプライシング部位を標的とするために有効である場合、これは、プレプロセスされたメッセンジャーRNA(mRNA)ヒトジストロフィン転写物において少なくとも12個の連続する塩基を含む標的領域に相補的な塩基配列を有してもよい。例示的なアンチセンス配列はm配列番号1〜569および612〜633によって同定される配列が含まれる。
【0024】
特定の実施形態において、本発明のアンチセンス配列は以下の中に含まれる:
(a)ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおけるエキソン44のスキップを生じる際に使用するための、配列番号1〜20、好ましくは配列番号4、8、11、および12、ならびにより好ましくは、配列番号12によって同定される配列のいずれか;
(b)ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおけるエキソン45のスキップを生じる際に使用するための、配列番号21〜76および612〜624、好ましくは配列番号27、29、34、および39、ならびにより好ましくは、配列番号34によって同定される配列のいずれか;
(c)ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおけるエキソン46のスキップを生じる際に使用するための、配列番号77〜125、好ましくは配列番号21〜53、ならびにより好ましくは、配列番号82、84〜87、90、96、98、および101によって同定される配列のいずれか;
(d)ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおけるエキソン47のスキップを生じる際に使用するための、配列番号126〜169、好ましくは配列番号126〜149、ならびにより好ましくは、配列番号126、128〜130、132、144、および146〜149によって同定される配列のいずれか;
(e)ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおけるエキソン48のスキップを生じる際に使用するための、配列番号170〜224および634、好ましくは配列番号170〜201および634、ならびにより好ましくは、配列番号176、178、181〜183、194、および198〜201によって同定される配列のいずれか;
(f)ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおけるエキソン49のスキップを生じる際に使用するための、配列番号225〜266、好ましくは配列番号225〜248、ならびにより好ましくは、配列番号227、229、234、236、237、および244〜248によって同定される配列のいずれか;
(g)ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおけるエキソン50のスキップを生じる際に使用するための、配列番号267〜308、好ましくは配列番号277、287、および290、ならびにより好ましくは、配列番号287によって同定される配列のいずれか;
(h)ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおけるエキソン51のスキップを生じる際に使用するための、配列番号309〜371、好ましくは配列番号324、326、および327、ならびにより好ましくは、配列番号327によって同定される配列のいずれか;
(i)ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおけるエキソン52のスキップを生じる際に使用するための、配列番号372〜415、好ましくは配列番号372〜397、ならびにより好ましくは、配列番号379〜382、384、390、および392〜395によって同定される配列のいずれか;
(j)ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおけるエキソン53のスキップを生じる際に使用するための、配列番号416〜475および625〜633、好ましくは配列番号428、429、および431、ならびにより好ましくは、配列番号429によって同定される配列のいずれか;
(k)ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおけるエキソン54のスキップを生じる際に使用するための、配列番号476〜519、好ましくは配列番号476〜499、ならびにより好ましくは、配列番号479〜482、484、489、および491〜493によって同定される配列のいずれか;
(l)ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおけるエキソン55のスキップを生じる際に使用するための、配列番号520〜569および635、好ましくは配列番号520〜546および635、ならびにより好ましくは、配列番号524〜528、537、539、540、542、および544によって同定される配列のいずれか。
【0025】
特定の実施形態において、この化合物は、細胞への化合物の取り込みを促進するために有効なアルギニンリッチポリペプチドに結合体化されてもよい。例示的なペプチドは、本明細書に記載されるものの中でも、配列番号570〜578によって同定されるものが含まれる。
【0026】
1つの例示的な実施形態において、アルギニンリッチペプチドは、そのN末端またはC末端において、アンチセンス化合物の3’末端または5’末端に共有結合される。また、1つの例示的な実施形態において、アンチセンス化合物は、モルホリノサブユニット、および1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合するリンを含有するサブユニット間結合から構成される。
【0027】
一般的に、ペプチド−オリゴマー結合体は、選択された哺乳動物組織のために選択的であるホーミングペプチドをさらに含んでもよく、すなわち、同じ組織は細胞透過性ペプチドによって標的とされる。この結合体は、細胞透過性ペプチド−ホーミングペプチド−アンチセンスオリゴマーの型であってもよく、または、より好ましくは、ホーミングペプチド−細胞透過性ペプチド−アンチセンスオリゴマーの型であってもよい。例えば、上記のようなデュシェンヌ型筋ジストロフィーを治療する際に使用するためのペプチド結合体化合物は、細胞透過性ペプチドに結合体化された、配列番号579として同定される配列を有するペプチドなどの、筋肉組織のために選択的であるホーミングペプチドをさらに含むことができる。この型の例示的な結合体には、本明細書でCP06062−MSP−PMO(細胞透過性ペプチド−ホーミングペプチド−アンチセンスオリゴマー)およびMSP−CP06062−PMO(ホーミングペプチド−細胞透過性ペプチド−アンチセンスオリゴマー)として表されるものが含まれる(配列番号580−583を参照のこと)。
【0028】
ある実施形態において、ペプチドは、リンカー部分を介してオリゴマーに結合体化される。特定の実施形態において、リンカー部分は、任意に置換されたピペラジニル部分を含んでもよい。他の実施形態において、リンカー部分は、βアラニンおよび/または6−アミノヘキサン酸サブユニットをさらに含んでもよい。さらに他の実施形態において、ペプチドは、リンカー部分なしでオリゴマーに直接的に結合体化される。
【0029】
オリゴマーへのペプチドの結合体化は、ペプチドとオリゴマーの間、またはリンカー部分とオリゴマーの間で共有結合を形成するために適切である任意の部分においてであってもよい。例えば、ある実施形態において、ペプチドの結合体化はオリゴマーの3’末端においてであってもよい。他の実施形態において、オリゴマーへのペプチドの結合体化はオリゴマーの5’末端においてであってもよい。さらに他の実施形態において、ペプチドはサブユニット間連結のいずれかを通してオリゴマーに結合体化されてもよい。
【0030】
ある実施形態において、ペプチドはオリゴマーの5’末端においてオリゴマーに結合体化される。リンを含有するサブユニット間連結を含む実施形態において、ペプチドは、末端連結基のリンへの共有結合を介して、オリゴマーに結合体化されてもよい。この様式での結合体化は、上記のリンカー部分を伴っても、または伴わなくてもよい。
【0031】
さらに他の実施形態において、ペプチドは、オリゴマーの3’末端においてオリゴマーに結合体化されてもよい。あるさらなる実施形態において、ペプチドは、オリゴマーの3’末端モルホリノ基の窒素原子に結合体化されてもよい。この点において、ペプチドは、直接的に、または上記のリンカー部分を介してのいずれかでオリゴマーに結合体化されてもよい。
【0032】
ある実施形態において、オリゴマーは、水性媒体中のオリゴマーの溶解度を増強する部分に結合体化されてもよい。ある実施形態において、水性媒体中のオリゴマーの溶解度を増強する部分はポリエチレングリコールである。なおさらなる実施形態において、水性媒体中のオリゴマーの溶解度を増強する部分はトリエチレングリコールである。例えば、ある実施形態において、水性媒体中の溶解度を増強する部分は、オリゴマーの5’末端においてオリゴマーに結合体化されてもよい。水性媒体中のオリゴマーの溶解度を増強する部分のオリゴマーへの結合体化は、直接的または上記のリンカー部分を通してのいずれかであってもよい。
【0033】
本発明の特定の実施形態は、患者への送達のために適切な型で少なくともアンチセンス分子を含む、遺伝的障害の予防的または治療的処置において補助するように選択および/または適合されたアンチセンス分子を提供する。
【0034】
本発明の特定の実施形態は、特定のタンパク質をコードする遺伝子中の変異が存在し、その変異の影響がエキソンスキッピングによって無効にできる遺伝性疾患に罹患している患者を治療するための方法を提供し、この方法は、(a)本明細書に記載される方法に従ってアンチセンス分子を選択する工程;および(b)そのような治療が必要である患者にその分子を投与する工程を包含する。本発明はまた、遺伝的疾患の治療のための医薬の製造のための、本発明の精製かつ単離されたアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用もまた含む。
【0035】
特定の実施形態は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーによって特徴付けられる状態などの筋ジストロフィーを治療する方法を提供し、この方法は、治療が必要な患者における特定の遺伝子の損傷に関連する、本明細書に記載されるような適切に設計されたアンチセンスオリゴヌクレオチドの有効量を、その患者に投与する工程を包含する。さらに、特定の実施形態は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを含む筋ジストロフィーを予防するか、または少なくとも最小化するために患者を予防的に治療するための方法を提供し、この方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはこれらの生物学的分子の1種以上を含む薬学的組成物の有効量を患者に投与する工程を包含する。
【0036】
特定の実施形態は、1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物の有効量を被験体に投与する工程を包含する、被験体における筋ジストロフィーを治療する方法に関し、この化合物は、配列番号1〜569および612〜635からなる群より選択される配列を含み、かつジストロフィン遺伝子エキソンにおける相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、上記化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有し、ここで、このエキソンはエキソン44〜55からなる群より選択される。
【0037】
特定の実施形態において、筋ジストロフィーはデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)である。特定の実施形態において、筋ジストロフィーはベッカー型筋ジストロフィー(BMD)である。
【0038】
特定の実施形態において、配列は配列番号1〜20からなる群より選択され、エキソンはエキソン44である。特定の実施形態において、配列は配列番号21〜76および612〜624からなる群より選択され、エキソンはエキソン45である。
【0039】
特定の実施形態において、配列は配列番号77〜125からなる群より選択され、エキソンはエキソン46である。特定の実施形態において、配列は配列番号126〜169からなる群より選択され、エキソンはエキソン47である。
【0040】
特定の実施形態において、配列は配列番号170〜224および634からなる群より選択され、エキソンはエキソン48である。特定の実施形態において、配列は配列番号225〜266からなる群より選択され、エキソンはエキソン49である。
【0041】
特定の実施形態において、配列は配列番号267〜308からなる群より選択され、エキソンはエキソン50である。特定の実施形態において、配列は配列番号309〜371からなる群より選択され、エキソンはエキソン51である。
【0042】
特定の実施形態において、配列は配列番号372〜415からなる群より選択され、エキソンはエキソン52である。特定の実施形態において、配列は配列番号416〜475および625〜633からなる群より選択され、エキソンはエキソン53である。特定の実施形態において、配列は配列番号476〜519からなる群より選択され、エキソンはエキソン54である。特定の実施形態において、配列は配列番号520〜569および635からなる群より選択され、エキソンはエキソン55である。特定の実施形態において、配列は配列番号287を含むかまたはそれから本質的になる。
【0043】
特定の実施形態は、遺伝的疾患を治療するためのキットを提供し、このキットは、適切な容器にパッケージされた少なくとも1種の本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド、およびその使用のための指示書を含む。
【0044】
これらのおよび他の目的および特徴は、本発明の以下の詳細な説明が図面と共に読まれるときにより完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1A】図1Aは、ホスホロジアミデート連結を有する例示的なモルホリノオリゴマー構造を示す。
【図1B】図1Bは、本発明の実施形態に従う、アルギニンリッチペプチドおよびアンチセンスオリゴマーの結合体を示す。
【図1C】図1Cは、骨格連結が1つ以上の正電荷を有する基を含む、図1Bにおけるような結合体を示す。
【図1D】図1D〜Gは、DからGまで指定された例示的なモルホリノオリゴヌクレオチドの反復サブユニットセグメントを示す。
【図1E】図1D〜Gは、DからGまで指定された例示的なモルホリノオリゴヌクレオチドの反復サブユニットセグメントを示す。
【図1F】図1D〜Gは、DからGまで指定された例示的なモルホリノオリゴヌクレオチドの反復サブユニットセグメントを示す。
【図1G】図1D〜Gは、DからGまで指定された例示的なモルホリノオリゴヌクレオチドの反復サブユニットセグメントを示す。
【図2A】図2Aは、ヒトジストロフィンエキソン51のスキップを誘導するように設計されたアンチセンスオリゴマーエキソン51の相対的位置および結果を示す。
【図2B】図2B〜Cは、エキソン51スキップを誘導する際に有効である配列(AVI−5658;配列番号588およびh51AON1;配列番号594)と比較した、エキソン51スキャンから選択された3つの最良のオリゴマー(配列番号324、326、および327)の、培養したヒト横紋筋肉腫(RD)細胞およびヒト初代骨格筋細胞中での相対活性を示す。
【図2C】図2B〜Cは、エキソン51スキップを誘導する際に有効である配列(AVI−5658;配列番号588およびh51AON1;配列番号594)と比較した、エキソン51スキャンから選択された3つの最良のオリゴマー(配列番号324、326、および327)の、培養したヒト横紋筋肉腫(RD)細胞およびヒト初代骨格筋細胞中での相対活性を示す。
【図2D】図2Dは、特定の配列と比較した、3種の選択したオリゴマーのエキソン51の中での相対的位置を示す。
【図3A】図3Aは、エキソン50スキップを誘導する他の配列と比較した、ヒトジストロフィンエキソン50のスキップを誘導するように設計されたアンチセンスオリゴマーエキソン50スキャンの相対的位置および結果を示す。
【図3B】図3Bは、他の配列(配列番号584および585)と比較した、エキソン50スキャンから選択されたアンチセンス配列(配列番号277、287、290、および291)の相対的位置および結果を示す。
【図4A】図4Aは、ヒトジストロフィンエキソン53のスキップを誘導するように設計されたアンチセンスオリゴマーエキソン53スキャンの相対的位置および結果を示す。
【図4B】図4Bは、エキソン53スキャンにおいて最も活性であるように選択されたオリゴマーに対してエキソンスキッピング活性を比較するために使用された特定の配列の相対的位置を示す。
【図4C】図4C〜Fは、エキソン53スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号422、428、429、および431)を使用した、図4Gにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。
【図4D】図4C〜Fは、エキソン53スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号422、428、429、および431)を使用した、図4Gにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。
【図4E】図4C〜Fは、エキソン53スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号422、428、429、および431)を使用した、図4Gにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。
【図4F】図4C〜Fは、エキソン53スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号422、428、429、および431)を使用した、図4Gにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。
【図4G】図4C〜Fは、エキソン53スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号422、428、429、および431)を使用した、図4Gにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。
【図4H】図4Hおよび4Iは、RD細胞とヒト初代骨格筋細胞の両方の中で最も活性なエキソン53スキップオリゴマー(配列番号429)の活性と比較した、特定の配列(配列番号608〜611)の相対活性を示す。
【図4I】図4Hおよび4Iは、RD細胞とヒト初代骨格筋細胞の両方の中で最も活性なエキソン53スキップオリゴマー(配列番号429)の活性と比較した、特定の配列(配列番号608〜611)の相対活性を示す。
【図5A】図5Aは、ヒトジストロフィンエキソン44のスキップを誘導するように設計されたアンチセンスオリゴマーエキソン44スキャンの相対的位置および結果を示す。
【図5B】図5Bは、エキソン44スキャンにおいて最も活性であるように選択されたオリゴマーに対してエキソンスキッピング活性を比較するために使用された特定の配列のエキソン44中での相対的位置を示す。
【図5C】図5C〜Gは、エキソン44スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号4、8、11、12、および13)を使用した、図5Hにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。
【図5D】図5C〜Gは、エキソン44スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号4、8、11、12、および13)を使用した、図5Hにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。
【図5E】図5C〜Gは、エキソン44スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号4、8、11、12、および13)を使用した、図5Hにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。
【図5F】図5C〜Gは、エキソン44スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号4、8、11、12、および13)を使用した、図5Hにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。
【図5G】図5C〜Gは、エキソン44スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号4、8、11、12、および13)を使用した、図5Hにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。
【図5H】図5C〜Gは、エキソン44スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号4、8、11、12、および13)を使用した、図5Hにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。
【図5I】図5Iおよび5Jは、RD細胞とヒト初代骨格筋細胞の両方の中で最も活性なエキソン53スキップオリゴマー(配列番号12)の活性と比較した、特定の配列(配列番号600〜603)の相対活性を示す。
【図5J】図5Iおよび5Jは、RD細胞とヒト初代骨格筋細胞の両方の中で最も活性なエキソン53スキップオリゴマー(配列番号12)の活性と比較した、特定の配列(配列番号600〜603)の相対活性を示す。
【図6A】図6Aは、ヒトジストロフィンエキソン45のスキップを誘導するように設計されたアンチセンスオリゴマーエキソン45スキャンの相対的位置および結果を示す。
【図6B】図6Bは、エキソン45スキャンにおいて最も活性であるように選択されたオリゴマーに対してエキソンスキッピング活性を比較するために使用された特定の配列のエキソン45中での相対的位置を示す。
【図6C】図6C〜Fは、エキソン45スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号27、29、34、および39)を使用した、図6Hにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。図6Gは、陰性対照として比較的不活性なオリゴマー(配列番号49)を使用する。
【図6D】図6C〜Fは、エキソン45スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号27、29、34、および39)を使用した、図6Hにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。図6Gは、陰性対照として比較的不活性なオリゴマー(配列番号49)を使用する。
【図6E】図6C〜Fは、エキソン45スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号27、29、34、および39)を使用した、図6Hにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。図6Gは、陰性対照として比較的不活性なオリゴマー(配列番号49)を使用する。
【図6F】図6C〜Fは、エキソン45スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号27、29、34、および39)を使用した、図6Hにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。図6Gは、陰性対照として比較的不活性なオリゴマー(配列番号49)を使用する。
【図6G】図6C〜Fは、エキソン45スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号27、29、34、および39)を使用した、図6Hにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。図6Gは、陰性対照として比較的不活性なオリゴマー(配列番号49)を使用する。
【図6H】図6C〜Fは、エキソン45スキャンにおいて最も有効であるとして選択されたオリゴマー(配列番号27、29、34、および39)を使用した、図6Hにおいて要約される用量−範囲研究の結果を示す。図6Gは、陰性対照として比較的不活性なオリゴマー(配列番号49)を使用する。
【図6I】図6Iおよび6Jは、RD細胞とヒト初代骨格筋細胞の両方の中で最も活性なエキソン53スキップオリゴマー(配列番号34)の活性と比較した、特定の配列(配列番号604〜607)の相対活性を示す。
【図6J】図6Iおよび6Jは、RD細胞とヒト初代骨格筋細胞の両方の中で最も活性なエキソン53スキップオリゴマー(配列番号34)の活性と比較した、特定の配列(配列番号604〜607)の相対活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の実施形態は、一般的に、ジストロフィン遺伝子におけるエキソンスキッピングを誘導するように具体的に設計されている、アンチセンス化合物の改善およびその使用方法に関する。ジストロフィンは、筋肉の機能において致命的な役割を果たしており、種々の筋肉関連疾患がこの遺伝子の変異型によって特徴付けられている。従って、特定の実施形態において、本明細書に記載されるアンチセンス化合物の改善は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)およびベッカー型筋ジストロフィー(BMD)において見い出される変異ジストロフィン遺伝子などの変異型のヒトジストロフィン遺伝子においてエキソンスキッピングを誘導する。
【0047】
変異によって引き起こされる異常なmRNAスプライシング事象に起因して、これらの変異型ヒトジストロフィン遺伝子は、欠損ジストロフィンタンパク質を発現するか、または測定可能なジストロフィンを全く発現しないかのいずれかであり、これは、種々の型の筋ジストロフィーに導く状態である。この状態を治療するために、本発明のアンチセンス化合物は、典型的には、変異型ヒトジストロフィン遺伝子のプレプロセスされたRNAの選択された領域にハイブリダイズし、さもなくば異常にスプライシングされるジストロフィンmRNAにおいてエキソンスキッピングおよびディファレンシャルスプライシングを誘導し、それによって、筋肉細胞が機能的なジストロフィンタンパク質をコードするmRNA転写物を産生することを可能にする。特定の実施形態において、得られるジストロフィンタンパク質は、必ずしも「野生型」のジストロフィンではないが、むしろ短縮型であり、なお機能的または半機能的な型のジストロフィンである。
【0048】
筋肉細胞における機能的ジストロフィンタンパク質のレベルを増加させることによって、これらおよび関連する実施形態は、異常なmRNAスプライシングに起因する欠損ジストロフィンタンパク質の発現によって特徴付けられる筋ジストロフィー、とりわけ、DMDおよびBMDなどの筋ジストロフィーの型の予防および治療において有用であり得る。本明細書に記載される特定のオリゴマーは、使用の際に他のオリゴマーを超えた、ジストロフィン−エキソン−特異的標的化の改善をさらに提供し、それによって、関連する型の筋ジストロフィーを治療する代替方法を超えた、顕著かつ実用的な利点を提供する。
【0049】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって共通して理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様のまたは等価な任意の方法および材料が、本発明の実施または試験において使用できるが、好ましい方法および材料が記載されている。本発明の目的のために、次の用語が以下で定義される。
【0050】
定義
冠詞「1つの(「a」および「an」)」は冠詞の文法的な目的の1つまたは1つより多く(すなわち、少なくとも1つ)をいうために本明細書で使用される。例として、「1つのエレメント」は、1つのエレメントまたは1つより多くのエレメントを意味する。
【0051】
「約」は、言及される量(quantity)、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量(amount)、重量、または長さに対して、30、25、20、25、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1%まで多く変化する、量(quantity)、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量(amount)、重量、または長さを意味する。
【0052】
「コード配列」は、遺伝子のポリペプチド産物のコードに寄与する任意の核酸配列を意味する。対照的に、「非コード配列」という用語は、遺伝子のポリペプチド産物のコードに寄与しない任意の核酸配列をいう。
【0053】
本明細書を通して、文脈が反対を必要としない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含むこと(comprising)」という言葉は、言及される工程もしくは構成要素、または工程もしくは構成要素の群を含むことを意味するが、任意の他の工程もしくは構成要素、または工程もしくは構成要素の群を排除しないと理解される。
【0054】
「からなる」は、「からなる」の語句の前に来るものは何でも含み、これに限定されることが意味される。従って、「からなる」という語句は、列挙された構成要素が必要とされるかまたは必須であること、および他の構成要素が存在しなくてもよいことを示す。「から本質的になる」は、この語句の前に列挙される任意の構成要素を含むことが意味され、列挙される構成要素のために本開示において特定される活性または作用を妨害しないか、またはそれに寄与しない他の構成要素に限定される。従って、「から本質的になる」という語句は、列挙された構成要素が必要とされるかまたは必須であることを示すが、他の構成要素は任意であり、これらが列挙された構成要素の活性または作用に物質的に影響を与えるか否かに依存して、存在してもよいか、または存在しなくてもよい。
【0055】
「相補」および「相補性」という用語は、塩基対形成規則によって関連付けられるポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)をいう。例えば、「A−G−T」という配列は、「T−C−A」という配列に相補的である。相補性は、「部分的」であってもよく、この場合、核酸塩基のいくつかのみが塩基対形成規則に従って一致する。または、核酸間の「完全な」または「全体の」相補性が存在してもよい。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率および強さに対する有意な効果を有する。完全な相補性がしばしば所望されるが、ある実施形態は、標的RNAに関して、1つ以上、しかし、好ましくは、6、5、4、3、2、または1個のミスマッチを含むことができる。オリゴマー中の任意の位置におけるバリエーションが含まれる。特定の実施形態において、オリゴマーの末端近くの配列のバリエーションは、一般的に、内部におけるバリエーションが好ましく、そして存在する場合、典型的には、5’および/または3’末端の約6、5、4、3、2、または1個のヌクレオチドの中である。
【0056】
「細胞透過性ペプチド」または「CPP」という用語は交換可能に使用され、カチオン性細胞透過性ペプチドをいい、輸送ペプチド、キャリアペプチド、またはペプチド伝達ドメインとも呼ばれる。本明細書に示されるようなこれらのペプチドは、その間のすべての整数を含む、所定の細胞培養集団の細胞の30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の中の細胞透過を誘導する可能性を有し、全身投与の際に、インビボで複数の組織の中で高分子移行を可能にする。
【0057】
「アンチセンスオリゴマー」または「アンチセンス化合物」という用語は交換可能に使用され、環状サブユニットの配列をいい、各々が塩基対形成部分を有し、Watson−Crick塩基対形成によって核酸(典型的にはRNA)中の標的配列に、塩基対形成部分がハイブリダイズすることを可能にするサブユニット間連結によって連結され、標的配列中で、核酸:オリゴマーヘテロ二重鎖を形成する。環状サブユニットは、リボースまたは別のペントース糖、または、好ましい実施形態において、モルホリノ基に基づく(以下のモルホリノオリゴマーの説明を参照のこと)。
【0058】
このようなアンチセンスオリゴマーは、mRNAの翻訳をブロックもしくは阻害するように、または天然のプレmRNAスプライシングプロセシングを阻害するように設計でき、これがハイブリダイズする標的配列を「指向する」かまたはそれを「標的とする」と言われてもよい。特定の実施形態において、標的配列は、mRNAのAUG開始コドン、プレプロセスされたmRNAの3’もしくは5’スプライシング部位、または分岐点を含む領域を含む。標的配列は、エキソン内であってもよく、またイントロン内であってもよい。スプライシング部位のための標的配列は、プレプロセスされたmRNAにおける通常のスプライシングアクセプター接合部の下流のその5’末端の1〜約25塩基対を有するmRNA配列を含んでもよい。スプライシングのための好ましい標的配列は、スプライシング部位を含むプレプロセスされたmRNAの任意の領域であり、エキソンコード配列中に完全に含まれるか、またはスプライシングアクセプターもしくはドナー部位にまたがる。オリゴマーは、より一般的には、タンパク質、ウイルス、または細菌などの生物学的に関連する標的を「標的とする」と言われ、このとき、これは、上記の様式で標的の核酸に対して標的化される。配列番号1〜569および612〜635の1つ以上を含み、これらから本質的になり、またはこれらからなるアンチセンスオリゴマーが含まれる。これらのアンチセンスオリゴマーの改変体もまた含まれ、これらの改変体には、配列番号1〜569および612〜635のいずれか1つに対して、80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%(その間のすべての整数を含む)の配列同一性もしくは配列相同性を有する改変体オリゴマー、および/または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のヌクレオチドがこれらの配列とは異なっている改変体、好ましくは、1つ以上の選択されたヒトジストロフィンエキソンのエキソンスキッピングを誘導する改変体が含まれる。配列番号584〜611および634〜635の任意の1つ以上(on or more)のオリゴマーもまた含まれ、これは、本明細書に記載されるように、適切な数の電荷を有する連結、例えば、10個の電荷を有さない連結毎に約4〜5個などの、2〜5個の電荷を有さない連結毎に約1個までを含み、および/またはこれもまた本明細書に記載されるように、これに結合されたArgリッチペプチドを含む。
【0059】
「モルホリノオリゴマー」または「PMO」(ホスホルアミデート−またはホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー)とは、モルホリノサブユニット構造から構成されるオリゴヌクレオチドアナログをいい、ここでは、(i)構造は、1〜3原子長、好ましくは、2原子長、および好ましくは、電荷を有さないかまたはカチオン性であり、隣接するサブユニットの5’環外炭素に1サブユニットのモルホリノ窒素を結合する、リンを含有する連結によって一緒に連結されており、そして(ii)各モルホリノ環は、塩基特異的水素結合によって、ポリヌクレオチド中の塩基に結合するために有効であるプリンまたはピリミジン塩基対形成部分を有する。例えば、好ましいホスホロジアミデート連結型を示す、図1Aにおける構造を参照のこと。バリエーションは、これらが結合または活性に干渉しない限り、この連結に対して作製できる。例えば、リンに結合された酸素は硫黄で置換されてもよい(チオホスホロジアミデート)。5’酸素は、アミノまたは低級アルキル置換アミノで置換されてもよい。リンに結合したペンダント窒素は、(任意に置換された)低級アルキルで、非置換、一置換、または二置換であってもよい。以下のカチオン性連結の議論もまた参照のこと。モルホリノオリゴマーの合成、構造、および結合特性は、米国特許第5,698,685号、同第5,217,866号、同第5,142,047号、同第5,034,506号、同第5,166,315号、同第5,521,063号、および同第5,506,337号、ならびにPCT出願第PCT/US07/11435号(カチオン性連結)において詳述され、これらのすべては参照により本明細書に援用される。
【0060】
プリンまたはピリミジン塩基対形成部分には、典型的には、例えば、以下の塩基もまた含まれる:アデニン、シトシン、グアニン、ウラシル、チミン、またはイノシンである。ピリジン−4−オン、ピリジン−2−オン、フェニル、プソイドウラシル、2,4,6−トリメ115トキシベンゼン、3−メチルウラシル、ジヒドロウリジン、ナフチル、アミノフェニル、5−アルキルシチジン(例えば、5−メチルシチジン)、5−アルキルウリジン(例えば、リボチミジン)、5−ハロウリジン(例えば、5−ブロモウリジン)、または6−アザピリミジンもしくは6−アルキルピリミジン(例えば、6−メチルウリジン)、プロピン、クエソシン、2−チオウリジン、4−チオウリジン、ワイブトシン、ワイブトキソシン、4−アセチルチジン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、5’−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウリジン、β−D−ガラクトシルクエオシン、1−メチルアデノシン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアノシン、3−メチルシチジン、2−メチルアデノシン、2−メチルグアノシン、N6−メチルアデノシン、7−メチルグアノシン、5−メトキシアミノメチル−2−チオウリジン、5−メチルアミノメチルウリジン、5−メチルカルボニルメチルウリジン(5−methylcarbonyhnethyluridine)、5−メチルオキシウリジン、5−メチル−2−チオウリジン、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデノシン、β−D−マンノシルクエオシン、ウリジン−5−オキシ酢酸、2−チオシチジン、スレオニン誘導体およびその他(Burginら、1996,Biochemistry,35,14090;Uhlman & Peyman,前出)。この点に関して、「修飾塩基」は、上記に例証したようなアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)、およびウラシル(U)以外のヌクレオチド塩基を意味し;このような塩基は、アンチセンス分子中の任意の位置において使用できる。当業者は、オリゴマーの使用に依存して、TおよびUが交換可能であることを理解している。例えば、よりRNA様である2’−O−メチルアンチセンスオリゴヌクレオチドなどの他のアンチセンスケミストリーを用いて、T塩基はUとして示されてもよい(例えば、配列番号の表を参照のこと)。
【0061】
「アミノ酸サブユニット」または「アミノ酸残基」とは、αアミノ酸残基(例えば、−CO−CHR−NH−)またはβ−もしくは他のアミノ酸残基(例えば、−CO−(CH2)nCHR−NH−)をいうことができ、ここで、Rは側鎖であり(これは水素を含んでもよい)、nは1〜6であり、好ましくは、1〜4である。
【0062】
「天然に存在するアミノ酸」とは、天然に見い出されるタンパク質中に存在するアミノ酸、例えば、タンパク質生合成の間に利用される20種の(L)アミノ酸、ならびに4−ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、デスモシン、イソデスモシン、ホモシステイン、シトルリン、およびオルニチンなどのその他のアミノ酸をいう。「非天然アミノ酸」という用語は、天然に見い出されるタンパク質中に存在しないアミノ酸をいい、例には、ベータアラニン(β−Ala;またはB)、6−アミノヘキサン酸(Ahx)、および6−アミノペンタン酸が含まれる。「非天然アミノ酸」のさらなる例には、非限定的に、(D)−アミノ酸、ノルロイシン、ノルバリン、p−フルオロフェニルアラニン、エチオニンなどが含まれ、これらは、当業者には公知である。
【0063】
「有効量」または「治療有効量」とは、単回用量として、または一連の用量の一部としてのいずれかで、哺乳動物被験体に投与された、アンチセンスオリゴマーなどの治療化合物の量をいい、これは、被験体における所望の生理学的応答または治療効果を生じるために有効である。所望の生理学的応答の1つの例には、アンチセンスオリゴマーまたは対照オリゴマーがない場合と比較して、主として、欠損ジストロフィンタンパク質を含むか、またはジストロフィンを含まない筋肉組織または細胞中での、比較的機能的なまたは生物学的に活性型のジストロフィンタンパク質の発現の増加が含まれる。所望の治療効果の例には、非限定的に、とりわけ、筋ジストロフィーの徴候または病理の改善、筋ジストロフィーの徴候または病理の進行の減少、および筋ジストロフィーの徴候または病理の発症の遅延が含まれる。このような徴候の例には、疲労、精神遅滞、筋衰弱、運動技能の困難(例えば、走行、片足跳び、跳躍)、頻繁な落下、および歩行困難が含まれる。筋ジストロフィーの病理は、例えば、筋繊維の損傷および膜漏出によって特徴付けることができる。アンチセンスオリゴマーについては、この効果は、典型的には、例えば、エキソンスキッピングを誘導するために、選択された標的配列(例えば、ジストロフィン)のスプライシングプロセスを変化させることによって、典型的にはもたらされる。
【0064】
「エキソン」とは、タンパク質をコードする核酸の規定されたセクション、またはプレプロセスされた(もしくは前駆体)RNAのいずれかの部分がスプライシングによって除去された後で、成熟型のRNA分子の中で表される核酸配列をいう。成熟RNA分子は、メッセンジャーRNA(mRNA)または非コードRNAの機能型、例えば、rRNAもしくはtRNAであり得る。ヒトジストロフィン遺伝子は約75エキソンを有する。
【0065】
「イントロン」とは、(遺伝子中の)タンパク質に翻訳されない核酸領域をいう。イントロンは、前駆体mRNA(プレmRNA)に転写される非コードセクションであり、続いて、成熟RNAの形成の間、スプライシングによって除去される。
【0066】
「エキソンスキッピング」とは、全体のエキソンまたはその一部が所定のプレプロセスされたRNAから取り除かれ、それによって、タンパク質に翻訳される成熟mRNAなどの成熟RNA中に存在することから除外されるプロセスを一般的にいう。従って、さもなくばスキップされたエキソンによってコードされるタンパク質の部分は、発現型のタンパク質中には存在せず、典型的には、変化した、しかしなお機能的である、タンパク質の型を作製する。特定の実施形態において、スキップされるエキソンは、ヒトジストロフィン遺伝子からの異常なエキソンであり、これは、さもなくば異常なスプライシングを引き起こす、その配列中に変異または他の変化を含む可能性がある。特定の実施形態において、スキップされるエキソンは、ジストロフィン遺伝子のエキソン1〜75の任意の1つ以上であるが、ヒトジストロフィン遺伝子のエキソン44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、および/または55の任意の1つ以上が好ましい。
【0067】
「ジストロフィン」は、棒状の細胞質タンパク質であり、このタンパク質複合体の必要不可欠な部分が、筋繊維の細胞骨格を、細胞膜を通して周囲の細胞外マトリックスに接続する。ジストロフィンは複数の機能ドメインを含む。例えば、ジストロフィンは、約アミノ酸14〜240にアクチン結合ドメイン、および約アミノ酸253〜3040に中心棒状ドメインを含む。この大きな中心ドメインは、約109アミノ酸の24スペクトリン様三重らせんエレメントによって形成され、これは、αアクチニンおよびスペクトリンとの相同性を有する。反復は、典型的には、4つのプロリンリッチ非反復セグメントによって中断され、これはまたヒンジ領域とも呼ばれる。反復15および16は、ジストロフィンのタンパク質分解性切断のための主要な部位を提供するらしい18アミノ酸のストレッチによって分離されている。多くの反復間での配列同一性は10〜25%の範囲である。1つの反復は、3つのαヘリックス:1、2、および3を含む。αヘリックス1および3は、各々が7個のヘリックスターンによって形成され、これはおそらく、疎水性界面を通してコイルドコイルとして相互作用する。αヘリックス2は、グリシンまたはプロリン残基によって分離される4個または3個のヘリックスターンのセグメントによって形成される。各反復は2つのエキソンによってコードされ、典型的には、αヘリックス2の最初の部分におけるアミノ酸47と48の間のイントロンによって中断される。他のイントロンは、この反復中の異なる位置において見い出され、通常はヘリックス3にわたって分散される。ジストロフィンはまた、約アミノ酸3080〜3360においてシステインリッチドメインを含み、これは、システインリッチセグメント(すなわち、280アミノ酸中の15システイン)を含み、これは粘菌(Dictyostelium discoideum)αアクチニンのC末端ドメインとの相同性を示す。カルボキシ末端ドメインは、アミノ酸約3361〜3685にある。
【0068】
ジストロフィンのアミノ末端はFアクチンに結合し、カルボキシ末端は筋細胞膜においてジストロフィン関連タンパク質複合体(DAPC)に結合する。DAPCはジストログリカン、サルコグリカン、インテグリン、およびカベオリンを含み、これらの成分のいずれかにおける変異は、常染色体遺伝性筋ジストロフィーを引き起こす。DAPCは、ジストロフィンが存在しない場合に不安定になり、このことは、メンバーのタンパク質の減少レベルを生じ、そして次には、進行性の繊維損傷および膜の漏出に導く。デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)およびベッカー型筋ジストロフィー(BMD)などの種々の型の筋ジストロフィーにおいて、筋肉細胞は、不正確なスプライシングに導く遺伝子配列の変異に主として起因して、変化しかつ機能的に欠損した型のジストロフィンを産生するか、またはジストロフィンを全く産生しない。欠損型のジストロフィンタンパク質の優勢な発現、またはジストロフィンもしくはジストロフィン様タンパク質の完全な欠如は、上記のように、筋肉変性の急速な進行に導く。この点に関して、「欠損型」ジストロフィンタンパク質は、当該分野において公知であるように、DMDもしくはBMDを有する特定の被験体において産生されるジストロフィンの型によって、または検出可能なジストロフィンの非存在によって特徴付けられるかもしれない。
【0069】
表Aは、種々のジストロフィンドメイン、これらのドメインを包含するアミノ酸残基、およびこれらをコードするエキソンの実例を提供する。
【表A−1】
【0070】
【表A−2】
【0071】
本明細書で使用される場合、「機能」および「機能的」という用語および同様の用語は、生物学的、酵素的、または治療的機能をいう。
【0072】
「機能的」ジストロフィンタンパク質とは、典型的には、DMDまたはBMDを有する被験体に存在する変化したまたは「欠損」型のジストロフィンタンパク質と比較して、他の点では筋ジストロフィーに特徴的である筋肉組織の進行性の分解を減少するために十分な生物学的活性を有するジストロフィンタンパク質を一般的にいう。特定の実施形態において、機能的ジストロフィンタンパク質は、当該分野における日常的な技術に従って測定されるような、野生型ジストロフィンのインビトロまたはインビボの生物学的活性の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%(間のすべての整数を含む)を有してもよい。1つの例として、インビトロでの筋肉培養におけるジストロフィン関連活性は、筋管サイズ、筋原線維組織(組織崩壊)、収縮能、およびアセチルコリン受容体の自発的クラスター化に従って測定できる(例えば、Brownら、Journal of Cell Science.112:209−216,1999を参照のこと)。動物モデルもまた、疾患の病原を研究するための価値ある資源であり、ジストロフィン関連活性を試験するための手段を提供する。DMD研究のために最も広範に使用されている動物モデルのうちの2つは、mdxマウスおよびゴールデンレトリーバ筋ジストロフィー(GRMD)ドッグであり、これらの両方がジストロフィンネガティブである(例えば、CollinsおよびMorgan,Int J Exp Pathol 84:165−172,2003を参照のこと)。これらおよび他の動物モデルは、種々のジストロフィンタンパク質の機能的活性を測定するために使用できる。本発明の特定のエキソンスキッピングアンチセンス化合物によって産生される型などの短縮型のジストロフィンが含まれる。
【0073】
「遺伝子」は、染色体上の特定の遺伝子座を占める遺伝の単位を意味し、転写および/もしくは翻訳の調節配列、ならびに/またはコード領域および/もしくは非翻訳配列(すなわち、イントロン、5’および3’非翻訳配列)からなる。
【0074】
「単離された」は、そのネイティブな状態において通常付随する成分を実質的にまたは本質的に含まない物質を意味する。例えば、「単離されたポリヌクレオチド」は、本明細書で使用される場合、その天然に存在する状態でそれに隣接する配列から精製されまたは取り出されているポリヌクレオチド、例えば、DNAフラグメントに通常隣接する配列から取り出されたDNAフラグメントをいってもよい。
【0075】
「増強する」もしくは「増強すること」または「増加する」もしくは「増加すること」または「刺激する」もしくは「刺激すること」とは、アンチセンス化合物がない場合、または対照化合物のいずれかによって引き起こされる応答と比較して、細胞または被験体において、より高い生理学的応答(すなわち、下流効果)を、生じるかまたは引き起こす、1種以上のアンチセンス化合物または組成物の能力を一般的にいう。測定可能な生理学的応答には、機能型のジストロフィンタンパク質の発現の増加、または筋肉組織におけるジストロフィン関連の生物学的活性の増加、とりわけ、当該分野における理解および本明細書の記載から明らかである応答が含まれてもよい。約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の筋肉機能の増加または改善を含む、筋肉機能の増加もまた測定できる。約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の筋繊維におけるジストロフィン発現の増加を含む、機能的ジストロフィンを発現する筋繊維のパーセンテージもまた測定できる。例えば、約40%の筋肉機能の改善は、繊維の25〜30%がジストロフィンを発現する場合に起こり得ることが示されてきた(例えば、DelloRussoら、Proc Natl Acad Sci USA 99:12979−12984、2002を参照のこと)。「増加した」または「増強された」量は、典型的には、「統計学的に有意な」量であり、アンチセンス化合物がない場合(薬剤の非存在)または対照化合物によって産生される量の1.1、1.2、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50倍またはそれ以上(例えば、500、1000倍)(間および1より大きいすべての整数および小数点を含む、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8など)である増加を含んでもよい。
【0076】
「減少する」または「阻害する」という用語は、一般的に、診断分野における日常的な技術に従って測定されるような、本明細書に記載される疾患または状態の徴候などの、関連する生理学的または細胞の応答を「低減する」、本発明の1種以上のアンチセンス化合物の能力に関連し得る。関連する生理学的または細胞の応答(インビボまたはインビトロ)は当業者には明白であり、筋ジストロフィーの徴候もしくは病理の減少、または欠損型のジストロフィン、例えば、DMDまたはBMDを有する個体において発現される変化した型のジストロフィンの発現の減少を含んでもよい。応答の「減少」は、アンチセンス化合物がない場合、または対照組成物によって産生される応答と比較して、統計学的に有意であってもよく、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の減少を含んでもよく、これには間のすべての整数が含まれる。
【0077】
「相同性」とは、同一であるかまたは保存性置換を構成するアミノ酸のパーセンテージの数をいう。相同性は、GAP(Deverauxら、1984,Nucleic Acids Research 12,387−395)などの配列比較プログラムを使用して決定されてもよい。このようにして、本明細書に引用されるものと類似のまたは実質的に異なる長さの配列が、整列へのギャップの挿入によって比較でき、このようなギャップは、例えば、GAPによって使用される比較アルゴリズムによって決定される。
【0078】
「配列同一性」または、例えば、「に50%同一である配列」を含むことの列挙は、本明細書で使用される場合、比較のウィンドウにわたって、ヌクレオチド対ヌクレオチドベースか、またはアミノ酸対アミノ酸ベースで、配列が同一である程度をいう。従って、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較のウィンドウにわたって、2つの最適に整列された配列を比較することにより計算されてもよく、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、およびMet)が両方の配列中に存在し、一致する位置の数を生じる位置の数を決定すること、比較のウィンドウにおける位置の総数(すなわち、ウインドウサイズ)によって一致した位置の数を除算すること、および結果に100を乗算して配列同一性のパーセンテージを生じることによって計算されてもよい。
【0079】
2つ以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの間の配列の関連性を説明するために使用される用語には、「参照配列」「比較ウィンドウ」「配列同一性」「配列同一性のパーセンテージ」および「実質的同一性」が含まれる。「参照配列」は、ヌクレオチドおよびアミノ酸残基の長さの、両端を含む、少なくとも8または10個であるが、頻繁には15〜18個、しばしば少なくとも25個のモノマー単位である。2つのポリヌクレオチドは、各々が(1)2つのポリヌクレオチド間で類似している配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の一部のみ)、および(2)2つのポリヌクレオチド間で不一致の配列を含んでもよく、2つ(またはそれ以上)のポリヌクレオチドの間の配列比較が、典型的には、「比較ウィンドウ」にわたって2つのポリヌクレオチドの配列を比較することによって実施されて、配列類似性の局所的領域を同定および比較する。「比較ウィンドウ」とは、少なくとも6個、通常は約50〜約100個、より通常には約100〜約150個の連続する位置の概念的なセグメントをいい、ここでは、2つの配列が最適に整列された後で、1つの配列が同じ数の連続する位置の参照配列と比較される。比較ウィンドウは、2つの配列の最適な整列のために、参照配列(これは付加または欠失を含まない)と比較した場合に、約20%以下の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでもよい。比較ウィンドウを整列させるための配列の最適な整列は、コンピュータ化されたアルゴリズムの手段(the Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0,Genetics Computer Group,575 Science Drive Madison,WI,USAにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によって、または検査および選択された種々の方法のいずれかによって生成された最良の整列(すなわち、比較ウィンドウにわたって最高の相同性パーセンテージを生じる)によって実施されてもよい。参照はまた、例えば、Altschulら、1997,Nucl.Acids Res.25:3389によって開示されるような、BLASTファミリーのプログラムに対してなされてもよい。配列分析の詳細な議論は、Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」John Wiley & Sons Inc,1994−1998,Chapter 15のUnit 19.3において見い出すことができる。
【0080】
個体(例えば、ヒトなどの哺乳動物)または細胞の「治療」または「治療すること」は、個体または細胞の天然の経過を変化させる試みにおいて使用される任意の型の介入を含んでもよい。治療には、薬学的組成物の投与が含まれるがこれに限定されず、予防的に、または病理的な事象の開始もしくは病因との接触に引き続いてのいずれかで実施されてもよい。治療は、特定の型の筋ジストロフィーにおけるような、ジストロフィンタンパク質と関連する疾患または状態の徴候または病理に対する任意の望ましい効果を含んでもよく、そして、例えば、治療される疾患または状態の1つ以上の測定可能なマーカーにおける最小限の変化または改善を含んでもよい。「予防的」処置もまた含まれ、これは、治療される疾患または状態の進行の速度を減少すること、その疾患または状態の発症を遅延させること、またはその発症の重篤度を減少することを指向できる。「治療」または「予防」は、疾患もしくは状態、またはそれに関連する徴候の完全な根絶、治癒、または妨害を必ずしも示すものではない。
【0081】
従って、その必要がある患者に、任意に、薬学的製剤または剤形の一部として、本発明の1種以上のアンチセンスオリゴマー(例えば、配列番号1〜569および612〜635、およびその改変体)を投与することによって、DMDおよびBMDなどの筋ジストロフィーを治療する方法が含まれる。1種以上のアンチセンスオリゴマーを投与することによって被験体においてエキソンスキッピングを誘導する方法もまた含まれ、ここでは、エキソンは、ジストロフィン遺伝子からのエキソン44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、および/または55の1つであり、好ましくはヒトジストロフィン遺伝子である。「被験体」には、本明細書で使用される場合、本発明のアンチセンス化合物で治療できる、徴候を示しているかまたは徴候を示すリスクがある任意の動物、例えば、DMDもしくはBMD、またはこれらの状態に関連する徴候のいずれか(例えば、筋繊維の損失)を有するかまたは有するリスクがある被験体が含まれる。適切な被験体(患者)には、実験用動物(マウス、ラット、ウサギ、またはモルモットなど)、家畜、および家庭内の動物またはペット(ネコまたはイヌなど)が含まれる。非ヒト霊長類および、好ましくは、ヒト患者が含まれる。
【0082】
本発明のオリゴマー性、ジストロフィン標的化配列を発現可能であるベクター送達系、例えば、本明細書に記載されるような、配列番号1〜569および612〜635、またはその改変体の任意の1つ以上を含むポリヌクレオチド配列を発現するベクターもまた含まれる。「ベクター」または「核酸構築物」は、例えば、プラスミド、バクテリオファージ、酵母、またはウイルスに由来し、ポリヌクレオチドがそこに挿入またはクローニングできるポリヌクレオチド分子、好ましくはDNA分子を意味する。ベクターは、好ましくは、1つ以上の独特な制限部位を含み、標的細胞もしくは組織または前駆細胞もしくはその組織を含む規定された宿主細胞中での自律的複製が可能であり得、あるいはクローニングされた配列が再生可能であるように、規定された宿主細胞のゲノムと統合可能であり得る。従って、ベクターは、自律的に複製可能なベクター、すなわち、染色体外の実体として存在するベクターであり得、その複製は、染色体の複製とは独立しており、例えば、線状または閉環状プラスミド、染色体外エレメント、ミニ染色体、または人工染色体である。ベクターは自己複製を確実にするための任意の手段を含むことができる。または、ベクターは、宿主細胞に導入されるときに、ゲノムに組み込まれ、それが組み込まれた染色体と一緒に複製されるものであり得る。
【0083】
ベクターまたは核酸構築物系は、単一のベクターまたはプラスミド、2つ以上のベクターまたはプラスミドを含むことができ、これらは、一緒に、宿主細胞のゲノムに導入される全DNA、またはトランスポゾンを含む。ベクターの選択は、典型的には、ベクターが導入される宿主細胞とのベクターの適合可能性に依存する。今の場合においては、ベクターまたは核酸構築物は、好ましくは、筋肉細胞などの哺乳動物細胞中で作動可能に機能的であるものである。ベクターはまた、抗生物質もしくは薬物耐性遺伝子、またはレポーター遺伝子(すなわち、グリーン蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ)などの選択マーカーも含むことができ、これらは、適切な形質転換体またはトランスフェクト体の選択または同定のために使用できる。例示的な送達系には、ウイルスベクター系(すなわち、ウイルス媒介性形質導入)を含んでもよく、これには、当該分野に公知であるものの中でも、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、およびヘルペスウイルスベクターが含まれるがこれらに限定されない。
【0084】
「作動可能に連結される」という用語は、本明細書で使用される場合、プロモーターの調節的制御下にオリゴマーをコードする配列を配置し、次いで、オリゴマーの転写を制御することを意味する。
【0085】
野生型遺伝子または遺伝子産物は、集団中で最も頻繁に観察され、従って、任意にその遺伝子の「正常」または「野生型」の型と称される。
【0086】
「アルキル」または「アルキレン」は、両方とも、1〜18個の炭素を含む飽和の直鎖または分枝鎖の炭化水素基をいう。例には、非限定的に、メチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、およびn−ヘキシルが含まれる。「低級アルキル」という用語は、本明細書で規定されるようなアルキル基をいい、1〜8個の間の炭素を含む。
【0087】
「アルケニル」とは、2〜18個の炭素を含有し、少なくとも1つの炭素から炭素の間の二重結合を含む、不飽和の直鎖または分枝鎖の炭化水素基をいう。例には、非限定的に、エテニル、プロペニル、イソ−プロペニル、ブテニル、イソ−ブテニル、tert−ブテニル、n−ペンテニル、およびn−ヘキセニルが含まれる。「低級アルケニル」という用語は、本明細書で規定されるようなアルケニル基をいい、2〜8個の間の炭素を含む。
【0088】
「アルキニル」とは、2〜18個の炭素を含有し、少なくとも1つの炭素から炭素の間の三重結合を含む、不飽和の直鎖または分枝鎖の炭化水素基をいう。例には、非限定的に、エチニル、プロピニル、イソ−プロピニル、ブチニル、イソ−ブチニル、tert−ブチニル、ペンチニル、およびヘキシニルが含まれる。「低級アルキニル」という用語は、本明細書で規定されるようなアルキニル基をいい、2〜8個の間の炭素を含む。
【0089】
「シクロアルキル」とは、モノ−またはポリ−環状アルキル基をいう。例には、非限定的に、シクロブチル、シクロペンチル(cycopentyl)、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが含まれる。
【0090】
「アリール」とは、1つ以上の閉環を有する5〜18個の炭素を含む環状芳香族炭化水素部分をいう。例には、非限定的に、フェニル、ベンジル、ナフチル、アントラセニル、フェナントラセニル、およびビフェニルが含まれる。
【0091】
「アラルキル」とは、化学式RaRbの基をいい、ここで、Raが上記に規定されるようなアルキレン鎖であり、Rbが上記に規定されるような1つ以上のアリール基であり、例えば、ベンジル、ジフェニルメチルなどである。
【0092】
「チオアルコキシ」とは、化学式−SRcの基をいい、ここで、Rcは、上記に規定されるようなアルキル基である。「低級チオアルコキシ」という用語は、本明細書に規定されるような、1〜8個の間の炭素を含むアルコキシ基をいう。
【0093】
「アルコキシ」とは、化学式−ORdaの基をいい、ここで、Rdは本明細書に規定されるようなアルキル基である。「低級アルキル」という用語は、本明細書に規定されるような、1〜8個の間の炭素を含むアルコキシ基をいう。アルコキシ基の例には、非限定的に、メトキシおよびエトキシが含まれる。
【0094】
「アルコキシアルキル」とは、アルコキシ基で置換されたアルキル基をいう。
【0095】
「カルボニル」とは、−C(=O)−基をいう。
【0096】
「グアニジニル」とは、H2N(C=NH2)−NH−基をいう。
【0097】
「アミジニル」とは、H2N(C=NH2)CH−基をいう。
【0098】
「アミノ」とは、−NH2基をいう。
【0099】
「アルキルアミノ」とは、化学式−NHRdまたは−NRdRdの基をいい、ここで、各Rdは、独立して、本明細書に規定されるようなアルキル基である。「低級アルキルアミノ」という用語は、本明細書に記載されるような、1〜8個の間の炭素を含むアルキルアミノ基をいう。
【0100】
「複素環」とは、5〜7員単環式、または7〜10員二環式の、飽和、不飽和、または芳香族のいずれかであり、かつ窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を含む複素環を意味し、ここで、窒素および硫黄ヘテロ原子は任意に酸化されてもよく、そして窒素ヘテロ原子は、任意に四級化されてもよく、上記のヘテロ環のいずれかがベンゼン環に縮合されている二環式環を含む。複素環は任意のヘテロ原子または炭素原子を介して結合されてもよい。複素環には以下に定義されるようなヘテロアリールが含まれる。従って、以下に列挙されるヘテロアリールに加えて、複素環には、モルホリニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、ピペリジニル(piperidinyl)、ピペリジニル(piperizynyl)、ヒダントイニル、バレロラクタミル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオピラニルなどもまた含まれる。
【0101】
「ヘテロアリール」とは、5〜10員であり、窒素、酸素、および硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有し、かつ少なくとも1つの炭素原子を含有し、単環系と二環系の両方を含む、芳香族複素環を意味する。代表的なヘテロアリールは、ピリジル、フリル、ベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、キノリニル、ピロリル、インドリル、オキサゾリル、ベンズオキサゾリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、シノリニル、フタラジニル、およびキナゾリニルである。
【0102】
「任意に置換されたアルキル」、「任意に置換されたアルケニル」、「任意に置換されたアルコキシ」、「任意に置換されたチオアルコキシ」、「任意に置換されたアルキルアミノ」、「任意に置換された低級アルキル」、「任意に置換された低級アルケニル」、「任意に置換された低級アルコキシ」、「任意に置換された低級チオアルコキシ」、「任意に置換された低級アルキルアミノ」、および「任意に置換されたヘテロシクリル」とは、置換されたときに、少なくとも1つの水素原子が置換基に置き換えられていることを意味する。オキソ置換基(=O)の場合においては、2つの水素原子が置き換えられる。この点に関して、置換基には、重水素、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアリール、任意に置換された複素環、任意に置換されたシクロアルキル、オキソ、ハロゲン、−CN、−ORx、NRxRy、NRxC(=O)Ry、NRxSO2Ry、−NRxC(=O)NRxRy、C(=O)Rx、C(=O)ORx、C(=O)NRxRy、−SOmRx、および−SOmNRxRyが含まれ、ここで、mは0、1、または2であり、RxおよびRyは同じかまたは異なり、独立して、水素、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアリール、任意に置換された複素環、任意に置換されたシクロアルキル、または任意に置換されたシクロアルキルであり、上記の任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアリール、任意に置換された複素環、任意に置換されたシクロアルキル、および任意に置換されたシクロアルキル置換基の各々は、オキソ、ハロゲン、−CN、−ORx、NRxRy、NRxC(=O)Ry、NRxSO2Ry、−NRxC(=O)NRxRy、C(=O)Rx、C(=O)ORx、C(=O)NRxRy、−SOmRx、および−SOmNRxRyの1つ以上でさらに置換されてもよい。
【0103】
アンチセンスオリゴヌクレオチドの構築
リンを含有する骨格連結を有するモルホリノオリゴヌクレオチドの例は図1A〜1Cに図示されている。とりわけ好ましいものは、図1Cに示されるような、ホスホロジアミデート連結モルホリノオリゴヌクレオチドであり、これは、本発明の1つの局面に従うと、その骨格連結の好ましくは10%〜50%で正に荷電した基を含むように修飾されている。アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、電荷を有さない骨格連結を有するモルホリノオリゴヌクレオチドおよびそれらの調製は、例えば、SummertonおよびWeller 1997において、ならびに共有に係る米国特許第5,698,685号、同第5,217,866号、同第5,142,047号、同第5,034,506号、同第5,166,315号、同第5,185,444号、同第5,521,063号、および同第5,506,337号において詳述され、これらのすべては参照により本発明に明確に援用される。
【0104】
モルホリノベースのサブユニットの重要な特性には以下が含まれる:1)安定な、電荷を有さない、または正電荷を有する骨格連結による、オリゴマー型で連結される能力;2)形成されたポリマーが、比較的短いオリゴヌクレオチド(例えば、10〜15塩基)において約45℃より高いTmで、標的RNAを含む相補塩基標的核酸とハイブリダイズできるように、ヌクレオチド塩基(例えば、アデニン、シトシン、グアニン、チミジン、ウラシル、およびイノシン)を支持する能力;3)オリゴヌクレオチドが哺乳動物細胞に能動的または受動的に輸送される能力;ならびに4)アンチセンスオリゴヌクレオチド:RNAヘテロ二重鎖が、RNAseおよびRNaseH分解にそれぞれ抵抗する能力。
【0105】
特許請求された対象のアンチセンスオリゴヌクレオチドについての例示的な骨格構造には、各々が電荷を有さないかまたは正電荷を有する、リンを含有するサブユニット連結によって連結されている、図1D〜Gに示されるモルホリノサブユニット型が含まれる。図1Dは、5個の原子の反復単位の骨格を形成する、リンを含有する連結を示し、ここで、モルホリノ環は、1原子ホスホアミド連結によって連結されている。図1Eは、6原子反復単位骨格を生じる連結を示す。この構造において、5’モルホリノ炭素をリン基に連結する原子Yは硫黄、窒素、炭素、または好ましくは、酸素であってもよい。リンからのX部分ペンダントは、フッ素、アルキルもしくは置換アルキル、アルコキシもしくは置換アルコキシ、チオアルコキシもしくは置換チオアルコキシ、または非置換、一置換、もしくは二置換窒素であってもよく、モルホリンまたはピペリジンなどの環状構造を含む。アルキル、アルコキシ、およびチオアルコキシには、好ましくは、1〜6個の炭素原子が含まれる。Z部分は硫黄または酸素であり、好ましくは酸素である。
【0106】
図1Fおよび1Gに示される連結は、7原子単位長骨格と称する。構造1Fにおいて、X部分は構造1Eと同様であり、Y部分はメチレン、硫黄、または好ましくは酸素であってもよい。構造1Gにおいて、XおよびY部分は構造1Eと同様である。特に好ましいモルホリノオリゴヌクレオチドには、図1Eに示される型のモルホリノサブユニット構造から構成されるものが含まれ、ここで、X=NH2、N(CH3)2、任意に置換された1−ピペラジニル、または他の電荷を有する基、Y=O、およびZ=Oである。
【0107】
上述のように、電荷を有さないかまたは実質的に電荷を有さないオリゴヌクレオチドは、本発明の態様に従って、例えば、2〜5個の電荷を有さない連結あたり約1個までの電荷を有する連結、例えば、10個の電荷を有さない連結毎あたり約4〜5個の連結を含むように修飾されてもよい。アンチセンス活性の最適な改善は、骨格連結の約25%がカチオン性である場合に見られ得、これには約20%〜約30%が含まれる。約35%、40%、45%、50%、55%、60%(間のすべての整数を含む)またはそれ以上の骨格連結がカチオン性であるオリゴマーもまた含まれる。増強はまた、小さな数、例えば、5%または10〜20%のカチオン性連結でもまた見られる。
【0108】
オリゴヌクレオチドアナログにおける実質的に電荷を有さないリンを含有する骨格は、典型的には、サブユニット連結の大部分、例えば、その連結の50%〜100%、典型的には少なくとも60%〜100%または75%または80%が、生理学的pHにおいて電荷を有さず、単一のリン原子を含むものである。
【0109】
本発明を支持して実施されるさらなる実験は、加えられたカチオン性骨格の電荷に伴って見られる増強が、ある場合において、例えば、10個の最も中心の連結において局在化されたこれらの荷電した連結の少なくとも70%を有する、8個のカチオン性骨格連結を有する20マーオリゴヌクレオチドにおいて、アンチセンスオリゴヌクレオチドの「中心領域」骨格連結に密接した正味の電荷を分配することによってさらに増強され得ることを示す。
【0110】
アンチセンス化合物は、段階的固相合成によって、電荷を有さない連結およびカチオン性骨格連結の混合物を有するオリゴヌクレオチドの合成に関して、上記および下記に引用される参考文献に詳述される方法を利用して調製できる。ある場合において、アンチセンス化合物にさらなる化学的部分を加えること、例えば、薬物動態を増強すること、または化合物の捕捉もしくは検出を容易にすることが所望されてもよい。このような部分は、標準的な合成方法に従って、典型的には、オリゴマーの末端に共有結合されてもよい。例えば、ポリエチレングリコール部分または他の親水性ポリマー、例えば、10〜100個のモノマーサブユニットを有するものの付加が、溶解度を増強するために有用であり得る。1つ以上の電荷を有する基、例えば、有機酸などのアニオン性荷電基は、細胞の取り込みを増強し得る。フロオレセインまたは放射性基などのレポーター部分が、検出の目的のために結合されてもよい。または、オリゴマーに結合されたレポーター標識は、標識された抗体またはストレプトアビジンを結合可能な、抗原またはビオチンなどのリガンドであってもよい。アンチセンス化合物の結合または修飾のための部分を選択する際に、望ましくない副作用を伴わずに、生体適合性であるかまたは被験体によって耐えられる可能性が高い、化学化合物の基を選択することが当然一般的に望ましい。
【0111】
上述のように、アンチセンス化合物は、上記の型の電荷を有さない連結が分散している選択された数のカチオン性連結を含むように構築できる。電荷を有さないものおよびカチオン性の両方のサブユニット間連結は、好ましくは、リンを含有する連結であり、構造(II):
【0112】
【化2】
を含み、
ここで:
Wは−S−または−O−、好ましくは、−O−であり、
X=−NR1R2または−OR6、
Y=−O−または−NR7、および
オリゴマー中の各上記連結は以下から選択され:
(a)電荷を有さない連結(a)、ここで、R1、R2、R6、およびR7の各々は、水素および低級アルキルから独立して選択され;
(b1)カチオン性連結(b1)、ここで、X=−NR1R2でありかつY=−O−であり、−NR1R2は任意に置換されたピペラジニル部分を表し、その結果、R1R2=−CHRCHRN(R3)(R4)CHRCHR−であり、ここで:
各Rは独立してHまたは−CH3であり、
R4はH、−CH3、または電子対であり;および
R3は、H、任意に置換された低級アルキル、−C(=NH)NH2、−Z−L−NHC(=NH)NH2、および[−C(=O)CHR’NH]mHであり、ここで、Zは−C(=O)−または直接結合であり、Lは、18原子長まで、好ましくは12原子長まで、およびより好ましくは8原子長までの任意のリンカーであり、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルコキシ、任意に置換されたアルキルアミノから選択される結合を有し、R’は天然に存在するアミノ酸またはその1個もしくは2個の炭素ホモログの側鎖であり、mは1〜6であり、好ましくは1〜4であり;
(b2)カチオン性連結(b2)、ここで、X=−NR1R2およびY=−O−、R1=Hまたは−CH3、およびR2=LNR3R4R5であり、ここで、L、R3、およびR4は上記に定義された通りであり、R5は、H、任意に置換された低級アルキル、または任意に置換された低級(アルコキシ)アルキルであり;ならびに
(b3)カチオン性連結(b3)、ここで、Y=−NR7およびX=−OR6、およびR7=−LNR3R4R5であり、ここで、L、R3、R4、およびR5は上記に定義された通りであり、R6は、Hまたは任意に置換された低級アルキルであり;ならびに
少なくとも1つの上記連結はカチオン性連結(b1)、(b2)、および(b3)から選択される。
【0113】
好ましくは、このオリゴマーは、(a)型(すなわち、電荷を有さない連結)の少なくとも2つの連続する連結を含む。さらなる実施形態において、オリゴマー中の少なくとも5%の連結がカチオン性連結(すなわち、(b1)型、(b2)型、または(b3)型)である;例えば、10%〜60%、好ましくは、20〜50%の連結がカチオン性連結である。
【0114】
1つの実施形態において、少なくとも1つの連結は(b1)型であり、ここで、好ましくは、各RはHであり、R4は、H、−CH3、または電子対であり、R3は、H、任意に置換された低級アルキル、−C(=NH)NH2、および−C(=O)−L−NHC(=NH)NH2である。R3の後者の2つの実施形態は、ピペラジン環、またはリンカー基Lへのペンダントのいずれかに、それぞれ直接的に結合されるグアニジノ部分を提供する。合成の容易さのために、R3における変数Zは、好ましくは、示されるように−C(=O)−である。
【0115】
リンカー基Lは、上述のように、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルコキシ、および任意に置換されたアルキルアミノから選択されるその骨格中の結合を含み、ここで、Lにおける末端原子(例えば、カルボニルまたは窒素に隣接するもの)は炭素原子である。分枝連結が可能であるが、リンカーは、好ましくは、非分枝である。1つの実施形態において、リンカーは直鎖状アルキルリンカーである。このようなリンカーは構造−(CH2)n−を有してもよく、ここで、nは1〜12、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜6である。
【0116】
モルホリノサブユニットは以下の構造(III)を有し:
【0117】
【化3】
ここで、Piは塩基対形成部分であり、上記に示された連結は(III)の窒素原子を隣接するサブユニットの5’炭素に接続する。塩基対形成部分Piは、同じかまたは異なっていてもよく、一般的には、標的核酸に結合する配列を提供するように設計される。
【0118】
モルホリノサブユニット(III)を連結するための上記の連結型(b1)、(b2)、および(b3)の実施形態の使用は、以下のように図式的に例証されてもよい:
【0119】
【化4】
好ましくは、オリゴマー中のすべてのカチオン性連結は同じ型である;すなわち、すべて(b1)型、すべて(b2)型、またはすべて(b3)型である。
【0120】
さらなる実施形態において、カチオン性連結は、以下に示される連結(b1’)および(b1’’)から選択され、ここで、(b1’)は本明細書では「Pip」連結と呼ばれ、(b1’’)は本明細書では「GuX」連結と呼ばれる。
【0121】
【化5】
上記の構造において、WはSまたはOであり、そして好ましくはOであり;R1およびR2の各々は、独立して、水素および任意に置換された低級アルキルから選択され、そして好ましくはメチルであり;ならびにAは、(b1’)および(b1’’)中の1つ以上の炭素原子上の水素または非干渉置換基(すなわち、その意図される標的にオリゴマーが結合する能力に有害な影響を与えない置換基)を表す。好ましくは、ピペラジン環中の環炭素は置換されていない;しかし、ピペラジン環の環炭素は、メチルまたはフッ素などの非干渉置換基を含んでもよい。好ましくは、最大で1個または2個の炭素原子がそのように置換されている。
【0122】
さらなる実施形態において、少なくとも10%の連結が(b1’)型または(b1’’)型であり;例えば、10%〜60%、好ましくは20%〜50%の連結が(b1’)型または(b1’’)型であってもよい。
【0123】
他の実施形態において、オリゴマーは、上記の(b1’)型の連結を含まない。または、オリゴマーは、(b1)型の連結を含まず、ここで、各RはHであり、R3はHまたは−CH3であり、そしてR4はH、−CH3、または電子対である。
【0124】
モルホリノサブユニットは、以下にさらに記載されるように、非リンベースのサブユニット間連結によってもまた連結されてもよく、ここで、少なくとも1つの連結が、上記のようなペンダントカチオン性基で修飾される。
【0125】
非修飾状態では電荷を有さないが、ペンダントアミン置換基を有することもできる、他のオリゴヌクレオチドアナログ連結が使用できる。例えば、モルホリノ環上の5’窒素原子は、スルファミド連結またはウレア連結中で利用でき(ここで、リンは炭素または硫黄でそれぞれ置き換えられる)、上記の構造(b3)中の5’窒素原子に類似の様式で修飾される。
【0126】
任意の数のカチオン性連結を有するオリゴマーが提供され、これには、完全にカチオン性連結されたオリゴマーが含まれる。しかし、好ましくは、オリゴマーは、例えば、10%〜80%、部分的に電荷を有する。好ましい実施形態において、約10〜60%、および好ましくは20%〜50%の連結がカチオン性である。
【0127】
1つの実施形態において、カチオン性連結は、骨格に沿って分散している。部分的に電荷を有するオリゴマーは、好ましくは、少なくとも2つの連続する電荷を有さない連結を含み;すなわち、オリゴマーは、その全体の長さに沿って、厳密に互い違いのパターンを有するわけではない。
【0128】
カチオン性連結のブロックおよび電荷を有さない連結のブロックを有するオリゴマーもまた考慮され;例えば、電荷を有さない連結の中心ブロックは、カチオン性連結のブロックによって隣接されてもよく、その逆もあり得る。1つの実施形態において、オリゴマーは、およそ等しい長さの5’、3’および中心領域を有し、中心領域におけるカチオン性連結のパーセンテージは、約50%より大きく、好ましくは約70%より大きい。
【0129】
アンチセンス適用における使用のためのオリゴマーは、一般的には、約10〜約40サブユニットの長さの範囲であり、より好ましくは約10〜30サブユニット、典型的には15〜25塩基、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40塩基を有するものが含まれる。特定の実施形態において、アンチセンス化合物のための有用な長さである19〜20サブユニットを有する本発明のオリゴマーは、理想的には、2〜10個、例えば、4個〜8個のカチオン性連結、および残りの電荷を有さない連結を有してもよい。14〜15サブユニットを有するオリゴマーは、理想的には、2〜7個、例えば、3〜5個のカチオン性連結、および残りの電荷を有さない連結を有してもよい。
【0130】
各モルホリノ環構造は、治療される細胞または被験体において、選択されたアンチセンス標的にハイブリダイズするように典型的に設計されている、塩基対形成部分の配列を形成するように、塩基対形成部分を支持する。塩基対形成部分は、ネイティブDNAまたはRNAにおいて見い出されるプリンもしくはピリミジン(例えば、A、G、C、T、またはU)、またはヒポキサンチン(ヌクレオシドイノシンの塩基成分)もしくは5−メチルシトシンなどのアナログであってもよい。
【0131】
ペプチドトランスポーター
本発明のアンチセンス化合物は、細胞への化合物の輸送を増強するために有効なアルギニンリッチペプチド輸送部分に結合体化されたオリゴヌクレオチド部分を含んでもよい。輸送部分は、好ましくは、例えば、図1Bおよび1Cに示されるように、オリゴマーの末端に結合されている。このペプチド輸送部分は、好ましくは、X’サブユニット、Y’サブユニット、およびZ’サブユニットから選択される6〜16個のサブユニットを含み、
ここで:
(a)各X’サブユニットは、独立して、リジン、アルギニン、またはアルギニンアナログを表し、上記アナログは、構造R1N=C(NH2)R2の側鎖を含むカチオン性αアミノ酸であり、ここで、R1はHまたはRであり;R2は、R、−NH2、−NHR、または−NR2であり、ここで、Rは任意に置換された低級アルキルまたは任意に置換された低級アルケニルであり;R1およびR2は一緒に結合されて環を形成してもよく;そして側鎖はR1またはR2を介して上記アミノ酸に連結され;
(b)各Y’サブユニットは、独立して、中性アミノ酸−C(=O)−(CHR)n−NH−を表し、ここで、nは2〜7であり、各Rは独立して、Hまたはメチルであり;ならびに
(c)各Z’サブユニットは、独立して、中性アラルキル側鎖を有するαアミノ酸を表し;
ここで、ペプチドは、(X’Y’X’)p、(X’Y’)m、および/または(X’Z’Z’)pの少なくとも1つによって表される配列を含み、ここで、pは2〜5であり、mは2〜8である。特定の実施形態は、(X’Y’X’)p、(X’Y’)m、および/または(X’Z’Z’)pから独立して選択される種々の組み合わせを含み、これには、例えば、配列(X’Y’X’)(X’Z’Z’)(X’Y’X’)(X’Z’Z’)(配列番号637)を有するペプチドが含まれる。
【0132】
選択された実施形態において、各X’について、側鎖部分は、アミノ酸サブユニットアルギニン(Arg)におけるのと同様に、グアニジルである。特定の実施形態において、各Y’は、独立して、−C(=O)−(CH2)n−CHR−NH−であり、ここで、nは2〜7であり、RはHである。例えば、nが5でありかつRがHである場合、Y’は6−アミノヘキサン酸サブユニットであり、本明細書ではAhxと省略され;nが2でありかつRがHである場合、Y’はβアラニンサブユニットであり、本明細書ではBと省略される。特定の実施形態は、異なる中性アミノ酸の組み合わせを有するキャリアペプチドに関し、これには、例えば、βアラニンおよび6−アミノヘキサン酸の両方を含む、配列−RahxRRBRRAhxRRBRAhxB−(配列番号578)を含むペプチドが含まれる。
【0133】
この型の好ましいペプチドには、単一のY’サブユニットを交互に含むアルギニン二量体を含むものが含まれ、ここで、Y’は、好ましくは、AhxまたはBまたはその両方である。例には、式(RY’R)pおよび/または式(RRY’)pを有するペプチドが含まれ、ここで、pは1〜2〜5であり、ここでY’は好ましくはAhxである。1つの実施形態において、Y’は6−アミノヘキサン酸サブユニットであり、Rはアルギニンであり、pは4である。特定の実施形態は、少なくとも2つの(RY’R)pおよび(RRY’)pの種々の線状の組み合わせを含み、これには、例えば、配列(RY’R)(RRY’)(RY’R)(RRY’)(配列番号638)または(RRY’)(RY’R)(RRY’)(配列番号639)を有する例示的なペプチドが含まれる。他の組み合わせが意図される。さらなる例示的な実施形態において、各Z’はフェニルアラニンであり、mは3または4である。
【0134】
結合体化ペプチドは、好ましくは、リンカーAhx−Bを介してオリゴマーの末端に連結され、ここで、例えば、図1Bおよび1Cに示されるように、Ahxは、6−アミノヘキサン酸サブユニットであり、Bはβアラニンサブユニットである。
【0135】
選択された実施形態において、各X’について、側鎖部分は、独立して、グアニジル(HN=C(NH2)NH−)、アミジニル(HN=C(NH2)CH−)、2−アミノジヒドロピリミジル、2−アミノテトラヒドロピリミジル、2−アミノピリジニル、および2−アミノピリミドニルからなる群より選択され、好ましくは、グアニジルおよびアミジニルから選択される。1つの実施形態において、側鎖部分は、アミノ酸サブユニットアルギニン(Arg)におけるのと同様に、グアニジルである。
【0136】
特定の実施形態において、Y’サブユニットは、X’サブユニットがY’サブユニット間に介入しないか、または単独でX’サブユニット間に分散しないという点で、連続してもよい。特定の実施形態において、連結サブユニットは、Y’サブユニット間にあってもよい。1つの実施形態において、Y’サブユニットは、トランスポーターの末端にあり;他の実施形態において、これらはX’サブユニットによって隣接されている。さらに好ましい実施形態において、各Y’は、−C(=O)−(CH2)n−CHR−NH−であり、ここで、nは2〜7であり、RはHである。例えば、nが5であり、RがHである場合、Y’は6−アミノヘキサン酸サブユニットであり、本明細書ではAhxと省略される。この基の選択される実施形態において、各X’は、アルギニンサブユニット中と同様に、グアニジル側鎖部分を含む。この型の好ましいペプチドには、単一のY’サブユニットと交互になっているアルギニン二量体を含むものが含まれ、ここで、Y’は好ましくはAhxである。例には、式(RY’R)4または式(RRY’)4を有するペプチドが含まれ、ここで、Y’は、好ましくはAhxである。後者の場合において、核酸アナログは、例えば、図1Bおよび1Cに示されるように、好ましくは、C末端において、末端Y’サブユニットに好ましく連結される。好ましいリンカーは、構造AhxBのものであり、ここで、Ahxは6−アミノヘキサン酸サブユニットであり、Bはβアラニンサブユニットである。
【0137】
上記のような輸送部分は、結合された輸送オリゴマーの非存在におけるオリゴマーの取り込みと比較して、および疎水性サブユニットY’を欠く結合された輸送部分による取り込みと比較して、結合されたオリゴマーの細胞侵入を大きく増強することが示されている。このような増強された取り込みは、疎水性サブユニットY’を欠く結合された輸送部分による薬剤の取り込みと比較した、哺乳動物細胞への化合物の取り込みにおいて、好ましくは、少なくとも2倍の増加によって、および好ましくは、4倍の増加によって証明される。取り込みは、非結合体化化合物と比較して、好ましくは、少なくとも20倍、より好ましくは、40倍増強される。
【0138】
輸送部分のさらなる利点は、おそらく、正電荷を有する輸送部分と負電荷を有する核酸の間の静電相互作用による、アンチセンス化合物とその標的核酸配列の間の二重鎖を安定する、その予測される能力である。トランスポーター中の電荷を有するサブユニットの数は、上述のように14未満であり、好ましくは、8から11の間であり、なぜなら、多すぎる数の電荷を有するサブユニットは、配列特異性の減少に導く可能性があるからである。
【0139】
アルギニンリッチペプチドトランスポーター(すなわち、細胞透過性ペプチド)の使用は、本発明の実施において特に有用である。特定のペプチドトランスポーターは、筋肉細胞を含む初代細胞へのアンチセンス化合物の送達の際に高度に有効であることが示されてきた(Marshall,Odaら、2007;Jearawiriyapaisarn,Moultonら、2008;Wu,Moultonら、2008)。さらに、ペネトラチン(Penetratin)およびTatペプチドなどの他のペプチドトランスポーターと比較して、本明細書に記載されるペプチドトランスポーターは、アンチセンスPMOに結合体化されたときに、いくつかの遺伝子転写物のスプライシングを変化させる能力の増強を実証する(Marshall,Odaら、2007)。とりわけ好ましいものは、表3において以下に列挙されているP007、CP06062、およびCP04057輸送ペプチドである(それぞれ、配列番号573、578、および577)。
【0140】
リンカー(BまたはAhxB)を含む例示的なペプチドトランスポーターは、以下の表Bで以下に与えられる。好ましい配列は、CP06062(配列番号578)、P007(配列番号573)、およびCP04057(配列番号577)と称するものである。
【表B】
【0141】
製剤
特定の実施形態において、本発明は、本明細書に記載されるような、アンチセンスオリゴマーの治療的送達のために適切な製剤または組成物を提供する。従って、特定の実施形態において、本発明は、1種以上の薬学的に受容可能なキャリア(添加物)および/または希釈剤とともに製剤化された、1種以上の本明細書に記載されたオリゴマーの治療有効量を含む、薬学的に受容可能な組成物を提供する。本発明のオリゴマーが単独で投与されることは不可能であるが、薬学的製剤(組成物)としてこの化合物を投与することが好ましい。
【0142】
核酸分子の送達のための方法は、例えば、Akhtarら、1992,Trends Cell Bio.,2:139;およびDelivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics,Akhtar編;Sullivanら、PCT WO 94/02595に記載されている。これらおよび他のプロトコールは、本発明の単離されたオリゴマーを含む、実施的に任意の核酸分子の送達のために利用できる。
【0143】
以下に詳述されるように、本発明の薬学的組成物は、固体型または液体型での投与のために特別に製剤化されてもよく、これには、以下のために適合されたものが含まれる:(1)経口投与、例えば、飲薬(水性または非水性溶液または懸濁液)、錠剤、例えば、口腔、舌下、および全身性吸収のために標的化されたもの、ボーラス、散剤、顆粒剤、舌への適用のためのペースト;(2)例えば、滅菌溶液もしくは懸濁液、または持続放出製剤としての、例えば、皮下、筋肉内、静脈内、または硬膜外注射による非経口投与;(3)例えば、皮膚に適用されるクリーム、軟膏、または制御放出パッチまたはスプレーとしての、局所的適用;(4)例えば、ペッサリー、クリーム、またはフォームとしての、膣内または直腸内;(5)舌下;(6)眼;(7)経皮;あるいは(8)鼻。
【0144】
「薬学的に受容可能な」という語句は、信頼できる医学的判断の範囲内にあり、過度の毒性、炎症、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、ヒトおよび動物の組織と接触する使用のために適切であり、合理的な損益比の釣り合っている、化合物、物質、組成物、および/または剤形をいうために本明細書で利用される。
【0145】
「薬学的に受容可能なキャリア」という語句は、本明細書で使用される場合、身体の1つの器官、またはその部分から、身体の別の器官、またはその部分まで、対象の化合物を運搬または輸送する際に含まれる、薬学的に受容可能な物質、組成物、またはビヒクル、例えば、液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、製造助剤(例えば、潤滑剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム、カルシウム、もしくは亜鉛、またはステアリン酸(steric acid))、または溶媒カプセル化剤を意味する。各キャリアは、製剤の他の成分と適合性があり、患者に有害でないという意味において、「受容可能」でなければならない。
【0146】
薬学的に受容可能なキャリアとして働くことができる物質のいくつかの例には、非限定的に以下が含まれる:(1)ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖;(2)コーンスターチおよびポテトスターチなどのデンプン;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;(4)粉末化トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバターおよび坐剤ワックスなどの賦形剤;(9)ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、およびダイズ油などの油:(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張生理食塩水;(18)Ringer液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝化溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート、および/もしくはポリ無水物;ならびに(22)薬学的製剤中で利用される他の非毒性適合性物質。
【0147】
本発明のアンチセンスオリゴマーとの製剤のために適切な薬剤のさらなる非限定的な例には以下が含まれる:PEG結合体化核酸、リン脂質結合体化核酸、親油性部分を含有する核酸、ホスホロチオエート、種々の組織への薬物の侵入を増強できるP−糖タンパク質阻害剤(Pluronic P85など);生分解性ポリマー、例えば、移植後の持続放出送達のためのポリ(DL−ラクチド−コグリコリド)ミクロスフェア(Emerich,DFら、1999,Cell Transplant,8,47−58)Alkermes,Inc.Cambridge;および負荷されたナノ粒子、例えば、血液脳関門を横切って薬物を送達でき、神経細胞の取り込み機構を変化できる、ポリブチルシアノアクリレートから作られたもの(Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry,23,941−949,1999)。
【0148】
本発明はまた、ポリ(エチレングリコール)脂質を含む表面修飾リポソーム(PEG−修飾された、分枝または非分枝またはその組み合わせの、または長循環リポソームまたはステルスリポソーム)を含む組成物の使用を特徴とする。本発明のオリゴマーはまた、種々の分子量の共有結合されたPEG分子を含むことができる。これらの製剤は、標的組織における薬物の蓄積を増加させるための方法を提供する。このクラスの薬物キャリアは、単核食細胞系(MPSまたはRES)によるオプソニン作用および除去に抵抗性であり、それによって、より長い血液循環時間およびカプセル化された薬物の組織曝露の増強を可能にする(Lasicら、Chem.Rev.1995,95,2601−2627;Ishiwataら、Chem.Pharm.Bull.1995,43,1005−1011)。このようなリポソームは、おそらく、新血管形成された標的組織における血管外遊出および捕捉によって、腫瘍中に選択的に蓄積されることが示されてきた(Lasicら、Science 1995,267,1275−1276;Okuら、1995,Biochim.Biophys.Acta,1238,86−90)。長く循環するリポソームは、特に、MPSの組織において蓄積することが知られている従来的なカチオン性リポソームと比較して、DNAおよびRNAの薬物動態学および薬力学を増強する(Liuら、J.Biol.Chem.1995,42,24864−24870;Choiら、PCT国際公開番号WO 96/10391;Ansellら、PCT国際公開番号WO 96/10390;Hollandら、PCT国際公開番号WO 96/10392)。長く循環するリポソームはまた、肝臓および脾臓などの代謝的に攻撃的なMPS組織において蓄積を回避するそれらの能力に基づき、カチオン性リポソームと比較して、より高い程度まで、薬物をヌクレアーゼ分解から防御する可能性が高い。
【0149】
さらなる実施形態において、本発明は、米国特許第6,692,911号、同第7,163,695号、および同第7,070,807号に記載されるように、送達のために調製されたオリゴマー組成物を含む。この点に関して、1つの実施形態において、本発明は、米国特許第7,163,695号、同第7,070,807号、および同第6,692,911号に記載されるようなリジンおよびヒスチジン(HK)のコポリマーを含む組成物中の本発明のオリゴマーを、単独でまたはPEG(例えば、分枝または非分枝PEGまたは両方の混合物)と組み合わせて、PEGおよび標的化部分または架橋剤と組み合わせた前述のいずれかと組み合わせて、提供する。特定の実施形態において、本発明は、グルコン酸修飾ポリヒスチジンまたはグルコニル化ポリヒスチジン/トランスフェリン−ポリリジンを含む組成物中のアンチセンスオリゴマーを提供する。当業者は、HisおよびLysに類似の特性を有するアミノ酸が組成物中で置換されてもよいこともまた認識している。
【0150】
本発明に記載されるオリゴマーの特定の実施形態は、アミノまたはアルキルアミノなどの塩基性官能基を含んでもよく、従って、薬学的に受容可能な酸とともに薬学的に受容可能な塩を形成することが可能である。「薬学的に受容可能な塩」という用語は、この点に関して、比較的非毒性である、本発明の化合物の無機および有機酸付加塩をいう。これらの塩は、投与ビヒクルもしくは剤形製造プロセスでインサイチュで調製でき、またはその遊離塩基型の本発明の精製した化合物を適切な有機酸もしくは無機酸と別々に反応させること、および引き続く精製の間にこのように形成した塩を単離することによって調製できる。代表的な塩には、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩(napthylate)、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、およびラウリルスルホン酸塩などが含まれる(例えば、Bergeら、(1977)「Pharmaceutical Salts」J.Pharm.Sci.66:1−19を参照のこと)。
【0151】
対象のオリゴマーの薬学的に受容可能な塩には、例えば、非毒性有機酸または無機酸からの、化合物の従来的な非毒性塩または四級アンモニウム塩が含まれる。例えば、このような従来的な非毒性塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機塩から誘導されたもの;およびプロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イソチオン酸などの有機酸から調製された塩が含まれる。
【0152】
特定の実施形態において、本発明のオリゴマーは、1つ以上の酸性官能基を含んでもよく、従って、薬学的に受容可能な塩基と薬学的に受容可能な塩を形成することが可能である。これらの例において「薬学的に受容可能な塩」という用語は、本発明の化合物の、比較的非毒性である、無機塩基付加塩および有機塩基付加塩をいう。これらの塩は、同様に、投与ビヒクルもしくは剤形製造プロセスでインサイチュで調製でき、またはその遊離酸型の本発明の精製した化合物を、適切な塩基、例えば、薬学的に受容可能な金属カチオンの水酸化物、炭酸塩、もしくは炭酸水素塩と、アンモニアと、または薬学的に受容可能な有機一級、二級、もしくは三級アミンと別々に反応させることによって調製できる。代表的なアルカリ塩またはアルカリ土類塩には、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、およびアルミニウム塩などが含まれる。塩基付加塩の形成のために有用である代表的な有機アミンには、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが含まれる(例えば、Bergeら、前出を参照のこと)。
【0153】
ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤、および潤滑剤、ならびに着色剤、離型剤、コート剤、甘味料、香料および芳香剤、保存料、ならびに抗酸化剤もまた、組成物中に存在することができる。
【0154】
薬学的に受容可能な抗酸化剤の例には以下が含まれる:(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)脂溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、αトコフェロールなど;ならびに(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など。
【0155】
本発明の製剤は、経口、鼻、局所(口腔および舌下を含む)、直腸、膣、および/または非経口投与のために適切なものが含まれる。これらの製剤は、単位剤形で便利に存在してもよく、薬学分野において周知である任意の方法によって調製されてもよい。単一の剤形を生じるためにキャリア材料と合わせることができる活性成分の量は、治療される宿主、投与の特定の様式に依存して変化する。単一の剤形を生じるためにキャリア材料と合わせることができる活性成分の量は、一般的には、治療効果を生じる化合物の量である。一般的には、100パーセントの中から、この量は、約0.1パーセントから約99パーセント、好ましくは、約5パーセントから約70パーセント、最も好ましくは、約10パーセントから約30パーセントの活性成分の範囲である。
【0156】
特定の実施形態において、本発明の製剤は、シクロデキストリン、セルロース、リポソーム、ミセル形成剤、例えば、胆汁酸、およびポリマー性キャリア、例えば、ポリエステルおよびポリ無水物から選択される賦形剤;ならびに本発明のオリゴマーを含む。特定の実施形態において、上述の製剤は、本発明のオリゴマーを経口的に生物学的利用可能にする。
【0157】
これらの製剤および組成物を調製する方法は、本発明のオリゴマーを、キャリアおよび任意に、1種以上の付属成分と一緒にする工程を包含する。一般的に、これらの製剤は、本発明の化合物を液体キャリア、または微細に分割された固体キャリア、またはその両方とともに均一かつ密接に一緒にすること、次いで、必要な場合、生成物を成型することによって調製される。
【0158】
経口投与のために適切な本発明の製剤は、カプセル、カシェ剤、丸薬、ロゼンジ(香料ベース、通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガカントを使用)、散剤、顆粒剤、または水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油もしくは油中水の液体エマルジョン、またはエリキシルもしくはシロップとして、または香錠(不活性ベース、例えば、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアを使用)、および/またはマウスウォッシュとしてなどの型であってもよく、各々が活性成分として所定量の本発明の化合物を含む。本発明のオリゴマーはまた、ボーラス、舐剤、またはペーストとして投与されてもよい。
【0159】
経口投与のための本発明の固体剤形(カプセル、錠剤、丸薬、糖衣錠、散剤、顆粒剤、トローチなど)において、活性成分は、1種以上の薬学的に受容可能なキャリアと混合されてもよく、このキャリアは、例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、および/または以下のいずれかである:(1)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸;(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/またはアカシアなど;(3)保湿剤、例えば、グリセロール;(4)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸、およびカルボン酸ナトリウム;(5)溶液遅延剤、例えば、パラフィン;(6)吸収加速剤、例えば、四級アンモニウム化合物および界面活性剤、例えば、ポロキサマーおよびラウリル硫酸ナトリウム;(7)湿潤剤、例えば、セチルアルコール、モノステアリン酸グリセロール、および非イオン性界面活性剤など;(8)吸着剤、例えば、カオリンおよびベントナイトクレイ;(9)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸、およびこれらの混合物;(10)着色剤;ならびに(11)制御放出剤、例えば、クロスポビドンまたはエチルセルロース。カプセル、錠剤、および丸薬の場合において、薬学的組成物は、緩衝剤もまた含んでもよい。同様の型の固体組成物は、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用して、ソフトおよびハード殻のゼラチンカプセル中の充填剤としてもまた利用されてもよい。
【0160】
錠剤は、任意に1種以上の付属成分とともに、圧縮または成型によって製造されてもよい。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤、または分散剤を使用して調製されてもよい。成型された錠剤は、不活性液体希釈剤を用いて湿らされた粉末化合物の混合物を、適切な機械の中で成型することによって製造されてもよい。
【0161】
本発明の薬学的組成物の錠剤、および他の剤形、例えば、糖衣錠、カプセル、丸薬、および顆粒剤は、腸溶コーティングおよび製薬分野で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて、任意に入手および調製されてもよい。これらはまた、例えば、所望の放出プロフィールを提供するために様々な比率のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソーム、および/またはミクロスフェアを使用して、その中の活性成分の遅延または制御放出を提供するように製剤化されてもよい。これらは、迅速な放出のために製剤化、例えば、凍結乾燥されてもよい。これらは、例えば、細菌保持フィルターによって、または使用直前に滅菌水もしくは何らかの他の注射可能な媒体に溶解できる滅菌固体組成物の型で滅菌薬剤を取り込むことによって、滅菌されてもよい。これらの組成物はまた、乳白剤を任意に含んでもよく、胃腸管の特定の部分のみにおいて、または選択的に胃腸管の特定の部分で優先的に、任意に遅延様式で、活性成分を放出する組成物であってもよい。使用され得る包埋組成物の例には、ポリマー性物質およびワックスが含まれる。活性成分はまた、適切な場合、上記の賦形剤の1種以上とともに、マイクロカプセル化型であり得る。
【0162】
本発明の化合物の経口投与のための液体剤形には、薬学的に受容可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルが含まれる。活性成分に加えて、液体剤形は、例えば、水または他の溶媒などの当該分野において共通して使用される不活性希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油類(特に、綿実油、ラッカセイ油、胚芽油(germ oil)、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、およびこれらの混合物などの溶解剤および乳化剤を含んでもよい。
【0163】
不活性希釈剤に加えて、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、香料、着色料、芳香剤、ならびに保存剤などのアジュバントもまた含むことができる。
【0164】
懸濁液は、活性成分に加えて、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキサイド、ベントナイト、寒天、およびトラガカント、およびこれらの混合物としての懸濁剤を含んでもよい。
【0165】
直腸または膣投与のための製剤は坐剤として提示されてもよく、これは、本発明の1種以上の化合物を、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、坐剤ワックス、またはサリチル酸を含む適切な非炎症性キャリアまたは賦形剤とともに混合することによって調製されてもよく、かつこれは室温で固体であるが、体温では液体であり、従って、直腸または膣腔で融解して活性化合物を放出する。
【0166】
本明細書に提供されるようなオリゴマーの局所的または経皮投与のための製剤または剤形には、散剤、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ジェル、溶液、パッチ、および吸入剤が含まれる。活性オリゴマーは、滅菌条件下で、薬学的に受容可能なキャリアとともに、および必要とされ得る、任意の保存剤、緩衝剤、または噴霧剤とともに混合されてもよい。軟膏、ペースト、およびジェルは、本発明の活性化合物に加えて、賦形剤、例えば、動物性および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはこれらの混合物を含んでもよい。
【0167】
散剤およびスプレーは、本発明のオリゴマーに加えて、賦形剤、例えば、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはこれら物質の混合物を含むことができる。スプレーは、慣例的な噴霧剤、例えば、クロロフルオロハイドロカーボンおよび揮発性非置換炭化水素、例えば、ブタンおよびプロパンをさらに含むことができる。
【0168】
経皮パッチは、本発明のオリゴマーの身体への制御送達を提供するさらなる利点を有する。このような剤形は、適切な媒体中に本発明のオリゴマーを溶解または分散させることによって行うことができる。吸収増強剤もまた、皮膚を横切っての薬剤の流入を増加させるために使用することができる。このような流入の速度は、当該分野において公知である方法の中でも、速度制御膜を提供すること、またはポリマーマトリックスもしくはゲル中で薬剤を分散させることのいずれかによって制御できる。
【0169】
非経口投与のために適切な薬学的組成物は、本発明の1種以上のオリゴマーを、1種以上の薬学的に受容可能な滅菌等張水性または非水性溶液、分散液、懸濁液、またはエマルジョン、あるいは、使用直前に滅菌注射用溶液または分散液に再構築されてもよい滅菌粉末と組み合わせて含んでもよく、これらは、糖、アルコール、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、製剤を意図されるレシピエントの血液と等張性にする溶質、または懸濁剤または濃厚剤を含んでもよい。本発明の薬学的組成物において利用されてもよい適切な水性および非水性キャリアの例には、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物、植物油、例えば、オリーブ油、および注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルが含まれる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散の場合には必要とされる粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。
【0170】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などのアジュバントもまた含んでもよい。対象のオリゴマーに対する微生物の作用の予防は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含めることによって保証されてもよい。組成物に、糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることもまた望ましくあり得る。加えて、注射可能な薬剤型の吸収の延長は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる剤を含めることによってもたらされてもよい。
【0171】
ある場合において、薬物の効果を延長させるために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅延させることが望ましくあり得る。これは、当該分野において公知の方法の中でも、乏しい水溶性を有する結晶性またはアモルファス性材料の液体懸濁液の使用によって達成されてもよい。次いで、薬物の吸収の速度は、その溶解の速度に依存し、次には、結晶サイズおよび結晶型に依存するかもしれない。または、非経口投与された薬物型の吸収の遅延は、油性ビヒクル中で薬物を溶解または懸濁することによって達成される。
【0172】
注射用デポー剤は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生物分解可能なポリマー中で対象のオリゴマーのマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって行われてもよい。オリゴマー対ポリマーの比率、および利用される特定のポリマーの性質に依存して、オリゴマー放出の速度は制御できる。他の生物分解可能なポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が含まれる。デポー注射製剤は、身体組織と適合可能であるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に薬物をトラップすることによってもまた調製されてもよい。
【0173】
本発明のオリゴマーがヒトおよび動物に医薬品として投与される場合、これらは、それ自体で、または薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて、例えば、活性成分の0.1〜99%(より好ましくは、10〜30%)を含む薬学的組成物として、与えられることができる。
【0174】
上述のように、本発明の製剤または調製物は、経口的、非経口的、局所的、または直腸的に与えられてもよい。これらは、典型的には、各々の投与経路のために適切な型で与えられる。例えば、これらは、錠剤またはカプセル型で、注射、吸入、洗眼液、軟膏、坐剤など、注射による投与、注入または吸入;ローションまたは軟膏によって局所的に;および坐剤によって直腸的に与えられる。
【0175】
「非経口投与」および「非経口的に投与される」という語句は、本明細書で使用される場合、通常は注射による、腸内および局所的投与以外の投与の様式を意味し、非限定的に、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、および胸骨内の注射および注入を含む。
【0176】
「全身投与」、「全身的に投与される」、「末梢投与」、および「末梢的に投与される」という語句は、本明細書で使用される場合、中枢神経系に直接的である以外の、化合物、薬物、または他の物質の投与であって、その結果、これは、患者の系に入り、従って、代謝および他の同様のプロセスに供されることを意味し、これは、例えば、皮下投与である。
【0177】
選択される経路に関わらず、適切な水和型で使用されてもよい本発明のオリゴマー、および/または本発明の薬学的組成物は、当業者に公知である従来的な方法によって、薬学的に受容可能な剤形に製剤化されてもよい。本発明の薬学的組成物における活性成分の実際の投薬量レベルは、患者に対して受容可能でない毒性を伴うことなく、特定の患者についての所望の治療応答、組成物、および投与の様式を達成するために有効である活性成分の量を得るために変動されてもよい。
【0178】
選択された投薬量レベルは、利用される本発明の特定のオリゴマー、またはそのエステル、塩、またはアミドの活性、投与の経路、投与の時間、利用される特定のオリゴマーの排出または代謝の速度、吸収の速度または程度、治療の期間、利用される特定のオリゴマーと組み合わせて使用される他の薬物、化合物、および/または物質、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康、および以前の医学的履歴、および医学分野で周知である同様の要因を含む種々の要因に依存する。
【0179】
当該分野において通常の技能を有する医師または獣医は、必要とされる薬学的組成物の有効量を容易に決定および処方できる。例えば、医師または獣医は、所望の効果を達成するために、薬学的組成物中で利用される本発明の化合物の用量を、必要とされるレベルよりも低いレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで、投薬量を徐々に増加させることができる。一般的に、本発明の化合物の適切な1日の用量は、治療効果を生じるために有効である最低の用量である化合物の量である。このような有効用量は、一般的には、上記の因子に依存する。一般的には、患者のための本発明の化合物の経口、脳室内、および皮下用量は、示される効果のために使用される場合、約0.0001〜約100mg/体重キログラム/日の範囲である。
【0180】
所望される場合、活性化合物の有効1日用量は、1日を通して適切な間隔で別々に投与される2回、3回、4回、5回、6回、またはそれ以上のサブ用量として、任意に、単位剤形で投与される。特定の状況において、投薬は、1日あたり1回の投与である。特定の状況において、投薬は、機能的ジストロフィンタンパク質の所望の発現を維持するために、必要に応じて、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日毎、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12週間毎、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月毎あたりに1回以上の投与である。
【0181】
核酸分子は、当業者に公知である種々の方法によって細胞に投与でき、これらには、非制限的に、本明細書に記載され、かつ当該分野で公知であるような、リポソーム中のカプセル化、イオン泳動による方法、または、ハイドロゲル、シクロデキストリン、生物分解性ナノカプセル、および生体接着性ミクロスフェアなどの他のビヒクルへの取り込みによる方法が含まれる。特定の実施形態において、マイクロエマルジョン化技術は、親油性(水不溶性)薬学的製剤の生物学的利用能を改善するために利用されてもよい。例には、トリメトリン(Trimetrine)(Dordunoo,S.K.ら、Drug Development and Industrial Pharmacy,17(12),1685−1713,1991およびREV 5901(Sheen,P.C.ら、J Pharm Sci 80(7),712−714,1991)が含まれる。他の利点の中でも、マイクロエマルジョン化は、循環系の代わりに、リンパ系への吸収を優先的に指向することによって、生物学的利用能の増強を提供し、それによって、肝臓をバイパスし、肝胆汁性循環における化合物の破壊を防止する。
【0182】
本発明の1つの態様において、製剤は、本明細書に提供されるようなオリゴマーおよび少なくとも1種の両親媒性キャリアから形成されるミセルを含み、ここでは、このミセルは、約100nm未満の平均直径を有する。より好ましい実施形態は、約50nm未満の平均直径を有するミセルを提供し、さらに好ましい実施形態は約30nm未満、またはさらに約20nm未満の平均直径を有するミセルを提供する。
【0183】
すべての適切な両親媒性キャリアが意図されるが、現在好ましいキャリアは、一般的には、一般的に安全であると認められている(Generally−Recognized−as−Safe)(GRAS)状態であり、溶液が複雑な水相と接触されるより後期段階において(例えば、ヒトの胃腸管で見い出されるもの)、本発明の化合物を可溶化することと、それをマイクロエマルジョン化することの両方ができるものである。通常、これらの要件を満たす両親媒性成分は、2〜20のHLB(親水性対親油性バランス)値を有し、それらの構造はC−6からC−20の範囲の直鎖脂肪族基を含む。例は、ポリエチレン−グリコール化脂肪グリセリドおよびポリエチレングリコールである。
【0184】
両親媒性キャリアの例には、完全にまたは部分的に水素化された種々の植物油から得られるものなどの、飽和および一不飽和ポリエチレングリコール化脂肪酸グリセリドが含まれる。このような油は、トリ−、ジ−、およびモノ−脂肪酸グリセリドならびに対応する脂肪酸のジ−およびモノ−ポリエチレングリコールエステルから有利になってもよく、特に好ましい脂肪酸組成は、カプリン酸4〜10%、カプリン酸3〜9%、ラウリン酸40〜50%、ミリスチン酸14〜24%、パルミチン酸4〜14%、およびステアリン酸5〜15%を含む。別の有用なクラスの両親媒性キャリアには、飽和または一不飽和脂肪酸(SPANシリーズ)または対応するエトキシ化アナログ(TWEENシリーズ)を有する、部分的にエステル化されたソルビタンおよび/またはソルビトールが含まれる。
【0185】
市販の両親媒性キャリアは特に有用であり得、これらには以下が含まれる:Gelucireシリーズ、Labrafil、Labrasol、またはLauroglycol(すべてGattefosse Corporation,Saint Priest,Franceにより製造および販売)、PEG−モノ−オレエート、PEG−ジ−オレエート、PEG−モノ−ラウレートおよびジ−ラウレート、レシチン、ポリソルベート80など(米国および世界中の数多くの企業によって製造および販売されている)。
【0186】
特定の実施形態において、送達は、適切な宿主細胞への本発明の組成物の導入のために、リポソーム、ナノカプセル、微粒子、ミクロスフェア、脂質粒子、ベシクルなどの使用によって行われてもよい。特に、本発明の組成物は、送達のために、脂質粒子、リポソーム、ベシクル、ナノスフェア、ナノ粒子などのいずれかにカプセル化されて製剤化されてもよい。このような送達ベシクルの製剤および使用は、公知でありかつ従来的な技術を使用して実行できる。
【0187】
本発明における使用のために適切な親水性ポリマーは、容易に水に溶解し、ベシクル−形成脂質に共有結合でき、そして毒性効果を伴わずにインビボで耐容性を示す(すなわち、生体適合性がある)ものである。適切なポリマーには、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸(ポリラクチドとも呼ばれる)、ポリグリコール酸(ポリグリコリドとも呼ばれる)、ポリ乳酸−ポリグリコール酸コポリマー、およびポリビニルアルコールが含まれる。特定の実施形態において、このポリマーは、約100もしくは120ダルトンから約5,000もしくは10,000ダルトンまで、または約300ダルトンから約5,000ダルトンまでの分子量を有する。他の実施形態において、ポリマーは、約100から約5,000ダルトンまでの分子量を有するか、または約300から約5,000ダルトンまでの分子量を有するポリエチレングリコールである。特定の実施形態において、このポリマーは、750ダルトンのポリエチレングリコール(PEG(750))である。ポリマーはまた、その中のモノマーの数によって規定されてもよく;本発明の好ましい実施形態は、少なくとも約3つのモノマーのポリマーを利用し、このようなPEGポリマーは、3つのモノマー(およそ150ダルトン)からなる。
【0188】
本発明における使用のために適切であり得る他の親水性ポリマーには、ポリビニルピロリドン、ポリメトキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、およびヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースなどの誘導体化セルロースが含まれる。
【0189】
特定の実施形態において、本発明の製剤は、以下からなる群より選択される生体適合性ポリマーを含む:ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、アクリルおよびメタクリルエステルのポリマー、ポリビニルポリマー、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびそのコポリマー、セルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、乳酸およびグリコール酸のポリマー、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ(ブチック(butic)酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリサッカリド、タンパク質、ポリヒアルロン酸、ポリシアノアクリレート、およびこれらのブレンド、混合物、またはコポリマー。
【0190】
シクロデキストリンは環状オリゴサッカリドであり、ギリシャ文字α、β、またはγによってそれぞれ示される、6、7、または8個のグルコース単位からなる。これらのグルコース単位は、α−1,4−グルコシド結合によって連結されている。糖単位のイス型コンホメーションの結果として、すべての二次ヒドロキシル基(C−2、C−3における)は環の一方の側に位置するのに対して、C−6におけるすべての一次ヒドロキシル基は他の側に配置されている。結果として、外部表面は親水性であり、シクロデキストリンを水溶性にする。対照的に、シクロデキストリンの空洞は疎水性である。なぜなら、これらは、C−3およびC−5の水素原子によって、およびエーテル様酸素によって並べられているからである。これらのマトリックスは、例えば、17α−エストラジオールなどのステロイド化合物を含む、種々の比較的疎水的な化合物との複合体形成を可能にする(例えば、van Udenら、Plant Cell Tiss.Org.Cult.38:1−3−113(1994)を参照のこと)。この複合体形成は、Van der Waals相互作用によって、および水素結合形成によって起こる。シクロデキストリンの化学の一般的総説については、Wenz,Agnew.Chem.Int.Ed.Engl.,33:803−822(1994)を参照のこと。
【0191】
シクロデキストリン誘導体の物理化学的特性は、置換の種類および程度に強く依存する。例えば、これらの水溶性は、不溶性(トリアセチル−β−シクロデキストリン)から147%可溶性(w/v)(G−2−β−シクロデキストリン)までの範囲である。加えて、これらは、多くの有機溶媒中で可溶性である。シクロデキストリンの特性は、それらの溶解性を増加または減少させることによって、種々の製剤成分の溶解度に対する制御を可能にする。
【0192】
多数のシクロデキストリンおよびそれらの調製のための方法が記載されてきた。例えば、Parmeter(I)ら(米国特許第3,453,259号)およびGrameraら(米国特許第3,459,731号)は電気的中性シクロデキストリンを記載している。他の誘導体には、カチオン性特性を有するシクロデキストリン[Parmeter(II)米国特許第3,453,257号]、不溶性架橋シクロデキストリン(Solms、米国特許第3,420,788号)、およびアニオン性特性を有するシクロデキストリン[Parmeter(III)、米国特許第3,426,011号]が含まれる。アニオン性特性を有するシクロデキストリンの中では、カルボン酸、亜リン酸、亜ホスフィン酸、ホスホン酸、リン酸、チオホスホン酸、チオスルフィン酸、およびスルホン酸が、親のシクロデキストリンに付加されている[Parmeter(III)、前出を参照のこと]。さらに、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体が、Stellaら(米国特許第5,134,127号)によって記載されてきた。
【0193】
リポソームは、水性内部区画を囲む少なくとも1つの脂質二重層からなる。リポソームは、膜の型およびサイズによって特徴付けられ得る。小さな単層ベシクル(SUV)は単一の膜を有し、典型的には、直径が0.02から0.05μmの間の範囲であり;大きな単層ベシクル(LUV)は、典型的には、0.05μmよりも大きい。オリゴ層の大きなベシクルおよび多層ベシクルは、複数の、通常は同心性の膜の層を有し、典型的には、0.1μmよりも大きい。いくつかの非同心性膜を有するリポソーム、すなわち、より大きなベシクル内に含まれるいくつかのより小さなベシクルは、多ベシクル性ベシクルと称する。
【0194】
本発明の1つの態様は、本発明のオリゴマーを含有するリポソームを含む製剤に関し、ここで、リポソーム膜は、輸送能力が増加したリポソームを提供するように製剤化される。代替的に、または加えて、本発明の化合物は、リポソームのリポソーム二重層に含まれてもよく、またはそこに吸着されてもよい。本発明のオリゴマーは、脂質界面活性剤で凝集されてもよく、リポソームの内部空間に輸送されてもよく;これらの場合、リポソーム膜は、活性薬剤−界面活性剤凝集体の破壊的効果に抵抗するように製剤化される。
【0195】
本発明の1つの実施形態に従うと、リポソームの脂質二重層は、ポリエチレングリコール(PEG)鎖が脂質二重層の内部表面からリポソームによってカプセル化された内部空間にまで伸び、そして脂質二重層の外部から周囲環境にまで伸びるように、ポリエチレングリコール(PEG)で誘導体化された脂質を含む。
【0196】
本発明のリポソーム中に含まれる活性薬剤は可溶化型である。界面活性剤および活性薬剤(例えば、目的の活性薬剤を含むエマルジョンまたはミセル)の凝集体は、本発明に従うリポソームの内部空間の中に捕捉されてもよい。界面活性剤は、活性薬剤を分散および可溶化するように働き、任意の適切な脂肪族、脂環式、または芳香族界面活性剤から選択されてもよく、これには様々な鎖の長さ(例えば、約C14〜約C20)の生体適合性リゾホスファチジルコリン(LPC)が含まれるがこれに限定されない。PEG−脂質などのポリマー誘導体化脂質もまた、ミセル形成のために利用されてもよい。なぜなら、これらがミセル/膜融合を阻害するように働くから、そして界面活性剤分子へのポリマーの添加が界面活性剤のCMCを減少させ、ミセル形成を補助するからである。マイクロモル濃度範囲のCMCを有する界面活性剤が好ましい;より高いCMCの界面活性剤は、本発明のリポソーム中にトラップされたミセルを調製するために利用されてもよい。
【0197】
本発明に従うリポソームは、当該分野において公知である種々の技術のいずれかによって調製されてもよい。例えば、米国特許第4,235,871号;PCT出願公開WO 96/14057;New RRC,Liposomes:A practical approach,IRL Press,Oxford(1990),33−104頁;Lasic DD,Liposomes from physics to applications,Elsevier Science Publishers BV,Amsterdam,1993を参照のこと。例えば、本発明のリポソームは、あらかじめ形成されたリポソームに、親水性ポリマーで誘導体化した脂質を分散させることによって、例えば、リポソーム中で所望される誘導体化脂質の最終モルパーセントに対応する脂質濃度で、脂質グラフト結合ポリマーから構成されるミセルに、あらかじめ形成されたリポソームを露出させることによって調製されてもよい。親水性ポリマーを含むリポソームはまた、当該分野において公知であるように、均質化、脂質フィールド水和、または押し出し技術によって形成することができる。
【0198】
別の例示的な製剤手順において、活性薬剤は、容易に疎水性分子を溶解する、リゾホスファチジルコリンまたは他の低CMC界面活性剤(ポリマーグラフト結合脂質を含む)中での超音波処理によって最初に分散される。次いで、得られた活性薬剤のミセル懸濁液は、適切なモルパーセントのポリマーグラフト結合脂質またはコレステロールを含む乾燥脂質サンプルを再水和するために使用される。次いで、脂質および活性薬剤懸濁液が、当該分野において公知であるように、押し出し技術を使用してリポソームに形成され、得られたリポソームは、標準的なカラム分離によって非カプセル化溶液から分離される。
【0199】
本発明の1つの態様において、リポソームは、選択されたサイズ範囲において実質的に均一なサイズを有するように調製される。1つの有効なサイズ決定方法は、選択された均一なポアサイズを有する一連のポリカーボネートメンブレンを通してリポソームの水性懸濁液を押し出しする工程を包含し;このメンブレンのポアサイズは、そのメンブレンを通した押し出しによって産生されるリポソームの最大サイズとおおまかに一致する。例えば、米国特許第4,737,323号(1988年4月12日)を参照のこと。特定の実施形態において、DharmaFECT(登録商標)およびLipofectamine(登録商標)などの試薬が、ポリヌクレオチドまたはタンパク質を細胞に導入するために利用されてもよい。
【0200】
本発明の製剤の放出特性は、カプセル化材料、カプセル化された薬物の濃度、および放出修飾剤の存在に依存する。例えば、放出は、例えば、胃の中のような低pHにおいてのみ、または腸の中のようなより高いpHにおいてのみ放出するpH感受性コーティングを使用して、pH依存性に操作することができる。腸溶コーティングは、胃を通った通路の後まで放出が起こることを防止するために使用できる。異なる材料中にカプセル化されたシアナミドの複数のコーティングまたはその混合物は、胃の中で初期の放出を得るために使用でき、続いて、腸の中でより後期の放出を得るために使用できる。放出はまた、塩またはポア形成薬剤を含めることによって操作でき、カプセルからの分散により、水の取り込みまたは薬物の放出を増加できる。薬物の溶解度を修飾する賦形剤もまた、放出速度を制御するために使用できる。マトリックスの分解またはマトリックスからの放出を増強する薬剤もまた、組み込んでもよい。これらは、薬物に加えることができ、別々の相として加えることができ(すなわち、微粒子として)、または化合物に依存してポリマー相に共溶解できる。多くの場合において、その量は0.1から30パーセント(w/wポリマー)の間であるべきである。分解促進剤の型には、無機塩、例えば、硫酸アンモニウムおよび塩化アンモニウム、有機酸、例えば、クエン酸、安息香酸、およびアスコルビン酸、無機塩基、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、および水酸化亜鉛、ならびに有機塩基、例えば、硫酸プロタミン、スペルミン、コリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミン、ならびに界面活性剤、例えば、Tween(登録商標)およびPluronic(登録商標)が含まれる。マトリックスに微細構造を加えるポア形成剤(すなわち、無機塩および糖などの水溶性化合物)は、微粒子として加えられる。その範囲は、典型的には、1から30%(w/wポリマー)の間である。
【0201】
取り込みはまた、腸における粒子の滞留時間を変化させることによって操作できる。これは、例えば、粘膜接着ポリマーで粒子をコーティングすること、またはカプセル化材料として粘膜接着ポリマーを選択することによって達成できる。例としては、遊離のカルボキシル基を有する多くのポリマー、例えば、キトサン、セルロース、およびとりわけ、ポリアクリレート(本明細書で使用される場合、ポリアクリレートとは、アクリレート基および修飾アクリレート基、例えば、シアノアクリレートおよびメタクリレートを含むポリマーをいう)が含まれる。
【0202】
オリゴマーは、外科的または医学的デバイスもしくは移植物の中に含まれるように製剤化され、またはこれらによって放出されるように適合されてもよい。特定の態様において、移植物は、オリゴマーでコートされるか、または他の方法にてオリゴマーで処理されてもよい。例えば、ハイドロゲルまたは他のポリマー、例えば、生体適合性および/または生物分解性ポリマーが、本発明の組成物で移植片をコートするために使用されてもよい(すなわち、組成物は、ハイドロゲルまたは他のポリマーを使用することによって、医学的デバイスを伴う使用のために適合されてもよい)。薬剤で医学的デバイスをコーティングするためのポリマーおよびコポリマーは当該分野で周知である。移植物の例には、ステント、薬物溶出ステント、縫合糸、プロテーゼ、血管カテーテル、透析カテーテル、血管移植片、人工心臓弁、心臓ペースメーカー、植込み型除細動器、静脈針、骨の設定および形成のためのデバイス、例えば、ピン、スクリュー、プレート、およびその他のデバイス、ならびに創傷治癒のための人工組織マトリックスが含まれるがこれらに限定されない。
【0203】
本明細書に提供される方法に加えて、本発明に従う使用のためのオリゴマーは、他の医薬品からの類推により、ヒトまたは獣医学的な医薬における使用のための任意の便利な方法での投与のために製剤化されてもよい。アンチセンスオリゴマーおよびそれらの対応する製剤は、単独で、または筋ジストロフィーの治療における他の治療ストラテジーと組み合わせて投与されてもよく、その投与ストラテジーとは、例えば、筋芽細胞移植、幹細胞治療、アミノグリコシド抗生物質の投与、プロテオソーム阻害剤、およびアップレギュレーション治療(例えば、ユートロフィンのアップレギュレーション、ジストロフィンの常染色体パラログ)である。
【0204】
本明細書に引用されるすべての刊行物および特許出願は、あたかも各々の刊行物または特許出願が具体的にかつ個別に参照により援用されることが示されるかのように、参照により本明細書に援用される。
【0205】
前述の発明は、理解の明確さの目的のために、例証および実例によっていくぶん詳細に記載されてきたが、特定の変更および改変が添付の特許請求の範囲の技術思想または範囲から逸脱することなく、本発明になされ得ることは、本発明の教示に鑑みて当業者には容易に明白である。以下の実施例は、例示目的のみのために提供され、限定目的ではない。当業者は、本質的に同様の結果を生じるために変更または改変できる種々の決定的ではないパラメーターを容易に認識する。
【0206】
【数1】
【0207】
【数2】
【0208】
【数3】
【実施例】
【0209】
材料および方法
細胞および組織培養処理条件
5%DMSO溶液(Sigma)中に保存された少ない継代数のヒト横紋筋肉腫細胞(ATCC,CCL−136;RD細胞)は、氷の銀色(ice sliver)がもはや見えなくなるまで、37℃ウォーターバス中で融解した。細胞は、L−グルタミン(HyClone)、10%ウシ胎仔血清、および1%ペニシリン−ストレプトマイシン抗生物質溶液(CelGro)を補充した24mLの温めたDMEM中、1.5×106細胞/フラスコで、組織培養処理したT75フラスコ(Nunc)に播種した;24時間後、培地を吸引し、細胞は温めたPBSで1回洗浄し、新鮮な培地を加えた。細胞は、37℃インキュベーター中で、5.0%CO2にて、80%コンフルエントまで増殖させた。
【0210】
培地をT75フラスコから吸引し;細胞は温めたPBSで1回洗浄し、そして吸引した。37℃ウォーターバス中で温めた3mLのトリプシン/EDTAを各T75に加えた。細胞は、37℃で、5回、2〜5分間、穏やかに攪拌しながら、これらがフラスコから遊離されるまでインキュベートした。細胞懸濁液は、15.0mLコニカルチューブに移し;フラスコは1.0mLのトリプシン/EDTA溶液ですすぎ、残りの細胞を集めた。細胞は、Vi−Cell XR細胞カウンター(Beckman Coulter)で計数した。細胞は、1.0mL培地のウェルあたり2.0×105生存細胞で、組織培養処理した12ウェルプレート(Falcon)に播種した。細胞は、37℃インキュベーター中で、5.0%CO2にて一晩インキュベートした。
【0211】
12ウェルの播種プレートは、均一な細胞分布およびプレート接着について試験した。凍結乾燥した、ペプチド結合体化ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PPMO)を、ヌクレアーゼを含まない水(Ambion)中で2.0mMに再懸濁し、細胞処理の間氷上に維持した;モル濃度を確認するために、PPMOは、NanoDrop 2000分光光度計(Thermo Scientific)を使用して測定した。PPMO処理の直前に、培地を吸引し、細胞を温めたPBSですすいだ。PPMOは温めた培地で、所望のモル濃度まで希釈した;細胞は、ウェルあたり総量1.0mL PPMO中で処理した。PPMOは三連で試験した。未処理対照のために、新鮮な、温めた培地を、1.0mL総量で加えた。細胞は、37℃インキュベーター中で、5.0%CO2にて48時間インキュベートした。
【0212】
RNA抽出
培地を吸引し、細胞は温めたPBSですすいだ。RNAは、QuickGene−Mini80システム、QuickGene RNA培養細胞HCキットS、およびMagNAlyserを用いて、セラミックビーズ均質化とともに、製造業者の推奨するプロトコールを使用して、抽出した。手短に述べると、細胞は、350μL LRP(100μL LRPあたり10μL β−メルカプトエタノールを加えた)溶解緩衝液を有する処理プレート中で溶解した;ホモジネートは、完全な溶解を確実にするために穏やかに摩砕し、MagNAlyserチューブに移した。チューブは、MagNAlyser中で、2800rpmで30秒間、遠心分離して、完全な均質化を確実にし、そして手短に氷冷した。50μL SRP可溶化緩衝液を加え、ホモジネートは15秒間ボルテックスした。170μL>99%エタノールを各チューブに加え、ホモジネートは60秒間ボルテックスした。ホモジネートは手早く遠心分離し、Mini80 RNAカートリッジに移し、サンプルは加圧し、フロースルーは廃棄した。カートリッジは750μL WRP洗浄緩衝液中で洗浄され、加圧された。40μLのDNase溶液(1.25μL Qiagen DNaseI、35μL RDD緩衝液、3.75μL ヌクレアーゼを含まない水)を、カートリッジメンブレンに直接加えた;カートリッジは、室温で4分間インキュベートした。カートリッジは、750μL WRPで2回洗浄し、各洗浄後に加圧した。カートリッジはヌクレアーゼを含まないチューブ上に配置した。50μL CRP溶出緩衝液を各メンブレンに加えた;メンブレンは室温で5分間インキュベートした。カートリッジは加圧し、溶離液を収集した。RNAは、定量を保留して−80℃に保存した。RNAはNanoDrop(商標)2000分光光度計を使用して定量した。
【0213】
ネステッドRT−PCR
プライマー特異的、エキソン特異的、最適化ネステッドRT−PCR増幅を、表1において以下に示されるように各ジストロフィンエキソンについてのプライマー対セットを使用して実施した。
【0214】
【表1】
示されたプライマー対は、フォワードまたはリバース(F/R)のいずれかで、そして一次増幅または二次増幅にそれぞれ対応する外部または内部(I/O)のいずれかのプライマー対として、それぞれ示される。プライマー標的の位置は、エキソンカラムに示され、目的は、エキソンスキッピング事象が検出できることを示す。例えば、PS170およびPS176プライマーは、一次増幅において、エキソン48〜53の領域を増幅する。次いで、プライマーPS172およびPS174は、二次増幅において、エキソン49〜52の領域を増幅する。このネステッドPCR反応は、エキソン50および/またはエキソン51の両方のエキソンスキッピングを検出する。特異的ネステッドRT−PCR反応条件は以下に提供される。
【0215】
処理細胞から抽出されたRNA(上記)はすべてのサンプルについて、20ng/μlに希釈した。
【0216】
【表2】
【0217】
【表3】
【0218】
【表4】
【0219】
【表5】
ゲル電気泳動分析
10マイクロリットルの5×Ficollローディング色素を、各50マイクロリットルのネステッドRT−PCR反応物に加えた。15マイクロリットルのPCR/色素混合液を、300ボルトで30分間、10% TBEゲル上で泳動した。電気泳動後、ゲルはdiH2O中で少なくとも1時間洗浄し、30分毎に水を交換した。次いで、ゲルはTyphoon Trio Variable Mode Imager(GE Healthcare)上で走査した。エキソン44スキップについては、全長ジストロフィン転写物からのネステッドRT−PCR産物は571bpであり、エキソン44スキップmRNAからは423bpである(エキソン44は148bpである)。エキソン45については、全長ジストロフィン転写物からのネステッドRT−PCR産物は571bpであり、エキソン45スキップmRNAからは395bpである(エキソン45は176bpである)。エキソン53については、全長ジストロフィン転写物からのPCR産物は365bpであり、エキソン53スキップmRNAからは153bpである(エキソン53は212bpである)。
【0220】
ゲルイメージは、エキソンスキッピング産物と比較して、全長PCR産物のバンド強度を測定することによって、定量的分析に供した。ある場合において、固定されたPPMO濃度(例えば、3マイクロモル濃度)でのパーセントスキップは、一連のPPMOの相対活性を決定して、所定のエキソンのエキソンスキッピングを誘導するために使用した。他の状況において、PPMO用量−範囲は細胞を処理するために使用し(例えば、0.1、0.3、1.0、3.0、および10マイクロモル濃度)、EC50は、各濃度において誘導されたスキップパーセントに基づいて計算した。
【0221】
実施例1
エキソン51スキャン
ヒトジストロフィンエキソン51を標的とする重複する一連のアンチセンスPPMOを設計し、合成し、そしてヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞)または初代ヒト骨格筋細胞のいずれかを処理するために使用した。このストラテジーは「エキソンスキャン」と呼ばれ、以下に記載されるように、いくつかの他のジストロフィンエキソンについて類似して使用した。すべてのPPMOは、CP06062ペプチド(配列番号578)および3’末端PMO連結を使用して、ペプチド結合体化PMO(PPMO)として合成した。エキソン51については、図2Aに示されるように、各々が26塩基長である一連の26個のPPMOを作製した(配列番号:309〜311、314、316、317、319、321、323、324、326、327、329〜331、333、335、336、338〜345)。これらのPPMOは、材料および方法において上記に記載されているように、種々の濃度においてRD細胞を処理することによって、エキソンスキッピング効力について評価した。3種のPPMO(配列番号324、326、および327)を、エキソンスキッピングを誘導する際に有効であると同定し、さらなる評価のために選択した。RD細胞および初代ヒト骨格筋細胞における用量−範囲実験は、これら3種のPPMO配列の相対的効力を確認するために使用した。配列番号327は、図2Bおよび2Cに示されるように、エキソン51スキップを誘導する際に最も有効であることを示した。
【0222】
他のエキソン51標的化アンチセンス配列に対する、配列番号327の相対的有効性の比較は、上記のように、RD細胞および初代ヒト骨格筋細胞において実施した。すべての評価された配列は、CP06062ペプチド(配列番号578)を使用して、ペプチド結合体化PMOとして作製した。これは、アンチセンス化学または細胞送達に関わりなく、アンチセンス配列の相対的有効性の直接的比較を可能にした。配列番号327と比較した特定のエキソン51標的化オリゴの相対的位置は図2Dに示す。図2Cに示されるように、エキソンスキッピングの有効性の階層化されたヒエラルキーが存在し、配列番号327が最も有効であり、他の配列と比較して少なくとも数倍の因数である。
【0223】
実施例2
エキソン50スキャン
ヒトジストロフィンエキソン50を標的とする重複する一連のアンチセンスPPMOを設計および合成した。エキソン50については、図3Aに示されるように、各々が25塩基長である一連の17個のPPMOを作製した(配列番号267、269、271、273、275、277、279、280、282、および284〜291)。これらのPPMOは、材料および方法において上記に記載されているように、種々の濃度においてRD細胞を処理することによって、エキソンスキッピング効力について評価した。4種のPPMO(配列番号277、287、290、および291)を、エキソンスキッピングを誘導する際に有効であると同定し、さらなる評価のために選択した。RD細胞における用量−範囲実験は、これら4種のPMO配列の相対的効力を確認するために使用した。配列番号584(AVI−5656)および287(AVI−5038)は、図3Bに示されるように、エキソン50スキップを誘導する際に最も有効であることを示した。EC50値は用量−範囲実験から誘導し、これは、エキソン50を含むmRNAから産生されたPCR産物と比較すると、エキソン50を欠くmRNAからはPCR産物の50%であるという計算濃度を表す。他の配列と比較すると(例えば、配列番号584および585は、それぞれ、WO2006/000057における配列番号173および175に対応することを参照のこと)、AVI−5038(配列番号287)は、図3Bに示されるように、RD細胞アッセイにおいて、エキソンスキッピング活性を誘導する際に、等価であるかまたはより良好である。
【0224】
実施例3
エキソン53スキャン
ヒトジストロフィンエキソン53を標的とする重複する一連のアンチセンスPPMOを設計および合成した。エキソン53については、図4Aに示されるように、各々が25塩基長である一連の24個のPPMOを作製した(配列番号416、418、420、422、424、426、428、429、431、433、434、436、438〜440、および443〜451)。これらのPPMOは、材料および方法において上記に記載されているように、種々の濃度においてRD細胞および初代ヒト骨格筋細胞を処理することによって、エキソンスキッピング効力について評価した。3種のPPMO(配列番号428、429、および431)を、エキソンスキッピングを誘導する際に有効であると同定し、さらなる評価のために選択した。RD細胞における用量−範囲実験は、これら3種のPMO配列の相対的効力を確認するために使用した。配列番号429は、図4B〜Fに示されるように、エキソン53スキップを誘導する際に最も有効であることを示した。しかし、他のエキソン53アンチセンス配列と比較した場合に、配列番号429は、WO2006/000057において配列番号195として列挙されているH53A(+23+47)および本願の配列番号609と同一であることが判明した。他の配列を配列番号429と比較し、これには、H53A(+39+69)およびH53A(−12+10)(それぞれ、WO2006/000057において配列番号193および199と列挙される)およびh53AON1(米国出願11/233,507において配列番号39と列挙される)が含まれ、本願において、それぞれ、配列番号608、611、および610と列挙される。すべての評価された配列は、CP06062ペプチド(配列番号578)を使用して、ペプチド結合体化PMOとして作製した。これは、アンチセンス化学または細胞送達に関わりなく、アンチセンス配列の相対的有効性の直接的比較を可能にした。図4Iおよび4G〜Hに示されるように、配列番号429が、これらの4種の配列の各々よりも優れていることが示された。
【0225】
実施例4
エキソン44スキャン
ヒトジストロフィンエキソン44を標的とする重複する一連のアンチセンスPPMOを設計および合成した。エキソン44については、図5Aに示されるように、各々が25塩基長である一連のPPMOを作製した(配列番号1〜20)。これらのPPMOは、材料および方法において上記に記載されているように、種々の濃度においてRD細胞を処理することによって、エキソンスキッピング効力について評価した。5種のPPMO(配列番号4、8、11、12、および13)を、エキソンスキッピングを誘導する際に有効であると同定し、さらなる評価のために選択した。RD細胞における用量−範囲実験は、図5C〜Hに示されるように、これら5種のPPMO配列の相対的効力を確認するために使用した。配列番号8、11、および12は、図5Hに示されるように、エキソン44スキップを誘導する際に最も有効であることを示し、配列番号12が最も高い効力を提供した。
【0226】
他のエキソン44アンチセンス配列に対する、配列番号12の比較は、RD細胞と初代ヒト骨格筋細胞の両方において行った。すべての評価された配列は、CP06062ペプチド(配列番号578)を使用して、ペプチド結合体化PMOとして作製した。これは、アンチセンス化学または細胞送達に関わりなく、アンチセンス配列の相対的有効性の直接的比較を可能にした。
【0227】
配列番号4、8、11、および12との配列(配列番号600、601、602、および603)の整列は図5Bに示される。配列番号601および603はWO2006/000057において配列番号165および167として列挙されている。配列番号602はWO2004/083446に列挙されており、米国出願11/233,507に配列番号21として列挙されている。配列番号600は2007年に公開された(Wilton,Fallら、2007)。RD細胞における比較は、配列番号602および603が配列番号12よりも優れていることを示した(図5I)。しかし、図5Jに示されるように、ヒト初代骨格筋細胞においては、配列番号12(8.86%のエキソンスキッピング)が配列番号602(6.42%)よりも優れていた。同様の実験は配列番号603でも実施している。
【0228】
実施例5
エキソン45スキャン
ヒトジストロフィンエキソン45を標的とする重複する一連のアンチセンスPPMOを設計および合成した。エキソン45については、図6Aに示されるように、各々が25塩基長である一連の22個のPPMOを作製した(配列番号21、23、25、27、29、31、32、34、35、37、39、41、43、および45〜53)。これらのPPMOは、材料および方法において上記に記載されているように、種々の濃度においてRD細胞およびヒト初代骨格筋細胞を処理することによって、エキソンスキッピング効力について評価した。5種のPPMO(配列番号27、29、34、および39)を、エキソンスキッピングを誘導する際に有効であると同定し、さらなる評価のために選択した。RD細胞における用量−範囲実験は、図6C〜Gに示され、図6Hに要約されているように、これら4種のPMO配列の相対的効力を確認するために使用した。配列番号49はこれらの実験において陰性対照として使用した。配列番号29および34は、図6Hに示されるように、エキソン45スキップを誘導する際に最も有効であることを示した。
【0229】
他のエキソン45標的化アンチセンス配列に対する、配列番号34の比較は、RD細胞と初代ヒト骨格筋細胞の両方において行った。すべての評価された配列は、CP06062ペプチド(配列番号578)を使用して、ペプチド結合体化PMOとして作製した。これは、アンチセンス化学または細胞送達に関わりなく、アンチセンス配列の相対的有効性の直接的比較を可能にした。配列番号27、29、34、および39との配列(配列番号604、605、606、および607)の整列は図6Bに示される。配列番号604および607はWO2006/000057において配列番号211および207としてそれぞれ列挙されている。配列番号605および606は、米国出願11/233,507に配列番号23および1としてそれぞれ列挙されている。RD細胞における比較は、図6Iに示されるように、配列番号34が評価された4つすべての配列よりも優れていることを示した。ヒト初代骨格筋細胞の異なる集団におけるこれらの化合物の試験は、上記のように実施している。
【0230】
配列表
配列は、DNAについて共通のヌクレオチド塩基記号:A、G、C、およびTを使用して示される。2’−O−メチルなどの他のアンチセンス化学は、Tの代わりにUを使用する。任意の塩基が、とりわけ、3個以上のG残基のストレッチ中では、イノシン(I)で置換されてもよい。
【0231】
【表6−1】
【0232】
【表6−2】
【0233】
【表6−3】
【0234】
【表6−4】
【0235】
【表6−5】
【0236】
【表6−6】
【0237】
【表6−7】
【0238】
【表6−8】
【0239】
【表6−9】
【0240】
【表6−10】
【0241】
【表6−11】
【0242】
【表6−12】
【0243】
【表6−13】
【0244】
【表6−14】
【0245】
【表6−15】
【0246】
【表6−16】
【0247】
【表6−17】
【0248】
【表6−18】
【0249】
【表6−19】
【0250】
【表6−20】
【0251】
【表6−21】
【0252】
【表6−22】
【0253】
【表6−23】
【0254】
【表6−24】
【0255】
【表6−25】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおいてエキソン44のスキップを生じる際に使用するための組成物であって、該組成物は、
1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物を含み、該化合物は、配列番号1〜20からなる群より選択される配列を含み、かつ該ジストロフィン遺伝子エキソン44における相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有する、組成物。
【請求項2】
前記化合物が配列番号8、11、および12からなる群より選択される配列を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記化合物が、配列番号570〜578からなる群より選択される配列を有するアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおいてエキソン45のスキッピングを生じる際に使用するための組成物であって、該組成物は、
1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物を含み、該化合物は、配列番号21〜76および612〜624からなる群より選択される配列を含み、かつ該ジストロフィン遺伝子エキソン45における相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有する、組成物。
【請求項5】
前記化合物が配列番号27、29、34、および39からなる群より選択される配列を含有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記化合物が配列番号29および34からなる群より選択される配列を含有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記化合物が、配列番号570〜578からなる群より選択される配列を有するアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおいてエキソン46のスキッピングを生じる際に使用するための組成物であって、該組成物は、
1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物を含み、該化合物は、配列番号77〜125からなる群より選択される配列を含み、かつ該ジストロフィン遺伝子エキソン46における相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有する、組成物。
【請求項9】
前記化合物が配列番号77〜105からなる群より選択される配列を含有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記化合物が配列番号82、84〜87、90、96、98、99、および101からなる群より選択される配列を含有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記化合物が、配列番号570〜578からなる群より選択される配列を有するアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおいてエキソン47のスキッピングを生じる際に使用するための組成物であって、該組成物は、
1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物を含み、該化合物は、配列番号126〜169からなる群より選択される配列を含み、かつ該ジストロフィン遺伝子エキソン47における相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有する、組成物。
【請求項13】
前記化合物が配列番号126〜149からなる群より選択される配列を含有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記化合物が配列番号126、128〜130、132、144、および146〜149からなる群より選択される配列を含有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記化合物が、配列番号570〜578からなる群より選択される配列を有するアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおいてエキソン48のスキッピングを生じる際に使用するための組成物であって、該組成物は、
1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物を含み、該化合物は、配列番号170〜224、および634からなる群より選択される配列を含み、かつ該ジストロフィン遺伝子エキソン48における相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有する、組成物。
【請求項17】
前記化合物が配列番号170〜201、および634からなる群より選択される配列を含有する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記化合物が配列番号176、178、181〜183、194、および198〜201からなる群より選択される配列を含有する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記化合物が、配列番号570〜578からなる群より選択される配列を有するアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおいてエキソン49のスキッピングを生じる際に使用するための組成物であって、該組成物は、
1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物を含み、該化合物は、配列番号225〜266からなる群より選択される配列を含み、かつ該ジストロフィン遺伝子エキソン49における相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有する、組成物。
【請求項21】
前記化合物が配列番号225〜248からなる群より選択される配列を含有する、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記化合物が配列番号227、229、234、236、237、および244〜248からなる群より選択される配列を含有する、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記化合物が、配列番号570〜578からなる群より選択される配列を有するアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおいてエキソン50のスキッピングを生じる際に使用するための組成物であって、該組成物は、
1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物を含み、該化合物は、配列番号267〜308からなる群より選択される配列を含み、かつ該ジストロフィン遺伝子エキソン50における相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有する、組成物。
【請求項25】
前記化合物が配列番号277、287、290、および291からなる群より選択される配列を含有する、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記化合物が配列番号287からなる配列を含有する、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記化合物が、配列番号570〜578からなる群より選択される配列を有するアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項24に記載の組成物。
【請求項28】
ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおいてエキソン51のスキッピングを生じる際に使用するための組成物であって、該組成物は、
1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物を含み、該化合物は、配列番号309〜371からなる群より選択される配列を含み、かつ該ジストロフィン遺伝子エキソン51における相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有する、組成物。
【請求項29】
前記化合物が配列番号324、326、および327からなる群より選択される配列を含有する、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記化合物が配列番号327からなる配列を含有する、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記化合物が、配列番号570〜578からなる群より選択される配列を有するアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項28に記載の組成物。
【請求項32】
ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおいてエキソン52のスキッピングを生じる際に使用するための組成物であって、該組成物は、
1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物を含み、該化合物は、配列番号372〜415からなる群より選択される配列を含み、かつ該ジストロフィン遺伝子エキソン52における相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有する、組成物。
【請求項33】
前記化合物が配列番号372〜397からなる群より選択される配列を含有する、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記化合物が配列番号379〜382、384、390、および392〜395からなる群より選択される配列を含有する、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記化合物が、配列番号570〜578からなる群より選択される配列を有するアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項32に記載の組成物。
【請求項36】
ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおいてエキソン53のスキッピングを生じる際に使用するための組成物であって、該組成物は、
1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物を含み、該化合物は、配列番号416〜475および625〜633からなる群より選択される配列を含み、かつ該ジストロフィン遺伝子エキソン53における相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有する、組成物。
【請求項37】
前記化合物が配列番号428、429、および431からなる群より選択される配列を含有する、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記化合物が配列番号429からなる配列を含有する、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記化合物が、配列番号570〜578からなる群より選択される配列を有するアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項36に記載の組成物。
【請求項40】
ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおいてエキソン54のスキッピングを生じる際に使用するための組成物であって、該組成物は、
1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物を含み、該化合物は、配列番号476〜519からなる群より選択される配列を含み、かつ該ジストロフィン遺伝子エキソン54における相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有する、組成物。
【請求項41】
前記化合物が配列番号476〜499からなる群より選択される配列を含有する、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記化合物が配列番号479〜482、484、489、および491〜493からなる群より選択される配列を含有する、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記化合物が、配列番号570〜578からなる群より選択される配列を有するアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項40に記載の組成物。
【請求項44】
ヒトジストロフィン遺伝子のプレプロセスされたmRNA転写物のプロセシングにおいてエキソン55のスキッピングを生じる際に使用するための組成物であって、該組成物は、
1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物を含み、該化合物は、配列番号520〜569、および635からなる群より選択される配列を含み、かつ該ジストロフィン遺伝子エキソン55における相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有する、組成物。
【請求項45】
前記化合物が配列番号520〜546、および635からなる群より選択される配列を含有する、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
前記化合物が配列番号524〜528、537、539、540、542、および544からなる群より選択される配列を含有する、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
前記化合物が、配列番号570〜578からなる群より選択される配列を有するアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項44に記載の組成物。
【請求項48】
被験体における筋ジストロフィーを治療する方法であって、該方法は、1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物の有効量を該被験体に投与する工程を包含し、該化合物は、配列番号1〜569、および612〜635からなる群より選択される配列を含み、かつジストロフィン遺伝子エキソンにおける相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有し、該エキソンがエキソン44〜55からなる群より選択される、方法。
【請求項49】
前記筋ジストロフィーがデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記筋ジストロフィーがベッカー型筋ジストロフィー(BMD)である、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記配列が配列番号1〜20からなる群より選択され、前記エキソンがエキソン44である、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記配列が配列番号21〜76および612〜624からなる群より選択され、前記エキソンがエキソン45である、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
前記配列が配列番号77〜125からなる群より選択され、前記エキソンがエキソン46である、請求項48に記載の方法。
【請求項54】
前記配列が配列番号126〜169からなる群より選択され、前記エキソンがエキソン47である、請求項48に記載の方法。
【請求項55】
前記配列が配列番号170〜224および634からなる群より選択され、前記エキソンがエキソン48である、請求項48に記載の方法。
【請求項56】
前記配列が配列番号225〜266からなる群より選択され、前記エキソンがエキソン49である、請求項48に記載の方法。
【請求項57】
前記配列が配列番号267〜308からなる群より選択され、前記エキソンがエキソン50である、請求項48に記載の方法。
【請求項58】
前記配列が配列番号309〜371からなる群より選択され、前記エキソンがエキソン51である、請求項48に記載の方法。
【請求項59】
前記配列が配列番号372〜415からなる群より選択され、前記エキソンがエキソン52である、請求項48に記載の方法。
【請求項60】
前記配列が配列番号416〜475および625〜633からなる群より選択され、前記エキソンがエキソン53である、請求項48に記載の方法。
【請求項61】
前記配列が配列番号476〜519からなる群より選択され、前記エキソンがエキソン54である、請求項48に記載の方法。
【請求項62】
前記配列が配列番号520〜569および635からなる群より選択され、前記エキソンがエキソン55である、請求項48に記載の方法。
【請求項63】
前記配列が配列番号287を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項64】
前記化合物がアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項48に記載の方法。
【請求項65】
前記アルギニンリッチペプチドが配列番号570〜578からなる群より選択される配列を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項1】
ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおいてエキソン44のスキップを生じる際に使用するための組成物であって、該組成物は、
1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物を含み、該化合物は、配列番号1〜20からなる群より選択される配列を含み、かつ該ジストロフィン遺伝子エキソン44における相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有する、組成物。
【請求項2】
前記化合物が配列番号8、11、および12からなる群より選択される配列を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記化合物が、配列番号570〜578からなる群より選択される配列を有するアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおいてエキソン45のスキッピングを生じる際に使用するための組成物であって、該組成物は、
1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物を含み、該化合物は、配列番号21〜76および612〜624からなる群より選択される配列を含み、かつ該ジストロフィン遺伝子エキソン45における相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有する、組成物。
【請求項5】
前記化合物が配列番号27、29、34、および39からなる群より選択される配列を含有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記化合物が配列番号29および34からなる群より選択される配列を含有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記化合物が、配列番号570〜578からなる群より選択される配列を有するアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおいてエキソン46のスキッピングを生じる際に使用するための組成物であって、該組成物は、
1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物を含み、該化合物は、配列番号77〜125からなる群より選択される配列を含み、かつ該ジストロフィン遺伝子エキソン46における相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有する、組成物。
【請求項9】
前記化合物が配列番号77〜105からなる群より選択される配列を含有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記化合物が配列番号82、84〜87、90、96、98、99、および101からなる群より選択される配列を含有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記化合物が、配列番号570〜578からなる群より選択される配列を有するアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおいてエキソン47のスキッピングを生じる際に使用するための組成物であって、該組成物は、
1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物を含み、該化合物は、配列番号126〜169からなる群より選択される配列を含み、かつ該ジストロフィン遺伝子エキソン47における相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有する、組成物。
【請求項13】
前記化合物が配列番号126〜149からなる群より選択される配列を含有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記化合物が配列番号126、128〜130、132、144、および146〜149からなる群より選択される配列を含有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記化合物が、配列番号570〜578からなる群より選択される配列を有するアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおいてエキソン48のスキッピングを生じる際に使用するための組成物であって、該組成物は、
1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物を含み、該化合物は、配列番号170〜224、および634からなる群より選択される配列を含み、かつ該ジストロフィン遺伝子エキソン48における相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有する、組成物。
【請求項17】
前記化合物が配列番号170〜201、および634からなる群より選択される配列を含有する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記化合物が配列番号176、178、181〜183、194、および198〜201からなる群より選択される配列を含有する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記化合物が、配列番号570〜578からなる群より選択される配列を有するアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおいてエキソン49のスキッピングを生じる際に使用するための組成物であって、該組成物は、
1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物を含み、該化合物は、配列番号225〜266からなる群より選択される配列を含み、かつ該ジストロフィン遺伝子エキソン49における相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有する、組成物。
【請求項21】
前記化合物が配列番号225〜248からなる群より選択される配列を含有する、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記化合物が配列番号227、229、234、236、237、および244〜248からなる群より選択される配列を含有する、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記化合物が、配列番号570〜578からなる群より選択される配列を有するアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおいてエキソン50のスキッピングを生じる際に使用するための組成物であって、該組成物は、
1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物を含み、該化合物は、配列番号267〜308からなる群より選択される配列を含み、かつ該ジストロフィン遺伝子エキソン50における相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有する、組成物。
【請求項25】
前記化合物が配列番号277、287、290、および291からなる群より選択される配列を含有する、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記化合物が配列番号287からなる配列を含有する、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記化合物が、配列番号570〜578からなる群より選択される配列を有するアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項24に記載の組成物。
【請求項28】
ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおいてエキソン51のスキッピングを生じる際に使用するための組成物であって、該組成物は、
1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物を含み、該化合物は、配列番号309〜371からなる群より選択される配列を含み、かつ該ジストロフィン遺伝子エキソン51における相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有する、組成物。
【請求項29】
前記化合物が配列番号324、326、および327からなる群より選択される配列を含有する、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記化合物が配列番号327からなる配列を含有する、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記化合物が、配列番号570〜578からなる群より選択される配列を有するアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項28に記載の組成物。
【請求項32】
ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおいてエキソン52のスキッピングを生じる際に使用するための組成物であって、該組成物は、
1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物を含み、該化合物は、配列番号372〜415からなる群より選択される配列を含み、かつ該ジストロフィン遺伝子エキソン52における相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有する、組成物。
【請求項33】
前記化合物が配列番号372〜397からなる群より選択される配列を含有する、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記化合物が配列番号379〜382、384、390、および392〜395からなる群より選択される配列を含有する、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記化合物が、配列番号570〜578からなる群より選択される配列を有するアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項32に記載の組成物。
【請求項36】
ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおいてエキソン53のスキッピングを生じる際に使用するための組成物であって、該組成物は、
1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物を含み、該化合物は、配列番号416〜475および625〜633からなる群より選択される配列を含み、かつ該ジストロフィン遺伝子エキソン53における相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有する、組成物。
【請求項37】
前記化合物が配列番号428、429、および431からなる群より選択される配列を含有する、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記化合物が配列番号429からなる配列を含有する、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記化合物が、配列番号570〜578からなる群より選択される配列を有するアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項36に記載の組成物。
【請求項40】
ヒトジストロフィンのプレプロセスされたmRNAのプロセシングにおいてエキソン54のスキッピングを生じる際に使用するための組成物であって、該組成物は、
1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物を含み、該化合物は、配列番号476〜519からなる群より選択される配列を含み、かつ該ジストロフィン遺伝子エキソン54における相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有する、組成物。
【請求項41】
前記化合物が配列番号476〜499からなる群より選択される配列を含有する、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記化合物が配列番号479〜482、484、489、および491〜493からなる群より選択される配列を含有する、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記化合物が、配列番号570〜578からなる群より選択される配列を有するアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項40に記載の組成物。
【請求項44】
ヒトジストロフィン遺伝子のプレプロセスされたmRNA転写物のプロセシングにおいてエキソン55のスキッピングを生じる際に使用するための組成物であって、該組成物は、
1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物を含み、該化合物は、配列番号520〜569、および635からなる群より選択される配列を含み、かつ該ジストロフィン遺伝子エキソン55における相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有する、組成物。
【請求項45】
前記化合物が配列番号520〜546、および635からなる群より選択される配列を含有する、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
前記化合物が配列番号524〜528、537、539、540、542、および544からなる群より選択される配列を含有する、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
前記化合物が、配列番号570〜578からなる群より選択される配列を有するアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項44に記載の組成物。
【請求項48】
被験体における筋ジストロフィーを治療する方法であって、該方法は、1つのサブユニットのモルホリノ窒素を、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合する、リンを含有するサブユニット間連結によって連結されている20〜35個のモルホリノサブユニットを含有する実質的に電荷を有さないアンチセンス化合物の有効量を該被験体に投与する工程を包含し、該化合物は、配列番号1〜569、および612〜635からなる群より選択される配列を含み、かつジストロフィン遺伝子エキソンにおける相補mRNA配列とヘテロ二重鎖構造物を形成することが可能であって、該化合物とmRNAの間でのヘテロ二重鎖構造物が少なくとも45℃のTmを有し、該エキソンがエキソン44〜55からなる群より選択される、方法。
【請求項49】
前記筋ジストロフィーがデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記筋ジストロフィーがベッカー型筋ジストロフィー(BMD)である、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記配列が配列番号1〜20からなる群より選択され、前記エキソンがエキソン44である、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記配列が配列番号21〜76および612〜624からなる群より選択され、前記エキソンがエキソン45である、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
前記配列が配列番号77〜125からなる群より選択され、前記エキソンがエキソン46である、請求項48に記載の方法。
【請求項54】
前記配列が配列番号126〜169からなる群より選択され、前記エキソンがエキソン47である、請求項48に記載の方法。
【請求項55】
前記配列が配列番号170〜224および634からなる群より選択され、前記エキソンがエキソン48である、請求項48に記載の方法。
【請求項56】
前記配列が配列番号225〜266からなる群より選択され、前記エキソンがエキソン49である、請求項48に記載の方法。
【請求項57】
前記配列が配列番号267〜308からなる群より選択され、前記エキソンがエキソン50である、請求項48に記載の方法。
【請求項58】
前記配列が配列番号309〜371からなる群より選択され、前記エキソンがエキソン51である、請求項48に記載の方法。
【請求項59】
前記配列が配列番号372〜415からなる群より選択され、前記エキソンがエキソン52である、請求項48に記載の方法。
【請求項60】
前記配列が配列番号416〜475および625〜633からなる群より選択され、前記エキソンがエキソン53である、請求項48に記載の方法。
【請求項61】
前記配列が配列番号476〜519からなる群より選択され、前記エキソンがエキソン54である、請求項48に記載の方法。
【請求項62】
前記配列が配列番号520〜569および635からなる群より選択され、前記エキソンがエキソン55である、請求項48に記載の方法。
【請求項63】
前記配列が配列番号287を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項64】
前記化合物がアルギニンリッチペプチドに結合体化されている、請求項48に記載の方法。
【請求項65】
前記アルギニンリッチペプチドが配列番号570〜578からなる群より選択される配列を含む、請求項64に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図4I】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図5I】
【図5J】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図6I】
【図6J】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図4I】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図5I】
【図5J】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図6I】
【図6J】
【公表番号】特表2012−506703(P2012−506703A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533392(P2011−533392)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/061960
【国際公開番号】WO2010/048586
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(501237039)エイブイアイ バイオファーマ, インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/061960
【国際公開番号】WO2010/048586
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(501237039)エイブイアイ バイオファーマ, インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】
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