説明

DNAの完全性を保存するための方法

【課題】検出されるべきDNAが、サンプル中の他のDNAに対して低い割合であり、そして急速に分解するサンプルにおいて、DNAの完全性を保持するための方法を提供する。
【解決手段】本発明は、生物学的サンプルから、DNAを抽出するための方法を提供し、本発明によれば、従来の方法よりも高い収率で標的DNAを得る。より具体的には、生物学的サンプルを、DNA分解のインヒビターに曝露させる工程を包含する、DNAを抽出するための方法である。また、本発明の方法は、酵素媒介DNA分解を抑制し、サンプル中のDNAの完全性を保存するための方法を提供する。このDNAの完全性の保存によって、DNAを容易に単離および検出し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、米国仮特許出願番号第60/122,177号(1999年2月25日提出)に優先権を主張し、そしてその利益を主張し、この全開示が、本明細書中で参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、生物学的サンプルからのデオキシリボ核酸(「DNA」)抽出のための方法を提供する。より具体的に、本発明は、DNA分解を阻害することによって、異質な生物学的サンプルからの高い収率のDNA抽出のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
DNAは、生物学的サンプルから慣用的に単離される比較的に安定な分子である。近年、ゲノムDNAにおける不安定性(例えば、変異)に関連する多くの疾患が、特徴付けられている。また、多くの病原体が、生物学的サンプル中に特定のDNAが存在するか、または存在しないかによって同定されている。多くの疾患(例えば、癌)は、それらの進行を早期に最適に検出される。早期検出が有効であるために、癌を示す比較的低レベルのDNAが、他のDNA(例えば、通常のヒトDNA、細菌DNAなど)の高いバックグランドに対して検出されなくてはならない。この型の検出は、技術的に困難であり、そして典型的に、検出の低い感度を生じる。さらに、特定の複雑な検体(糞便を含む)において、種特異性DNAが少ししか存在しないものは、急速に分解され、効率的な配列特異性検出でさえ、より困難にしている。従って、サンプル、特に、検出されるべきDNAが、サンプル中の他のDNAに対して低い割合であり、そして急速に分解するサンプルにおいて、DNAの完全性を保持するための方法についての必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は、サンプル中のDNAの完全性を保存するための方法を提供する。好ましい実施形態において、本発明の方法は、酵素媒介DNA分解を抑制する。DNAの完全性の保存は、DNAの単離および検出を容易にする。
【0005】
本発明の方法は、生物学的被験物(特に、低レベルの関連DNAを含む被験物)中のDNAを抽出または検出するために特に有用である。低レベルの関連DNAを含む被験物の良い例は、糞便である。代表的なヒト糞便は、少量のインタクトなヒトDNAのみを含む。健康な個体由来の糞便中のヒトDNAのほとんどは、おそらく剥離された上皮細胞由来であり、アポトーシス分解を引き起こす。形成する糞便が結腸を通過する際、結腸上皮細胞は、結腸内で生じる細胞代謝回転の一部として、糞便上に脱皮される。糞便はまた、他の管腔源(例えば、肺、胃、食道など)から脱皮された細胞を含む。脱皮された細胞は、代表的にアポトーシスを引き起こしたか、または引き起こし、小さなフラグメント内に、細胞DNAが残る。酵素(例えば、デオキシリボヌクレアーゼ(「DNase」)および小球菌ヌクレアーゼ)は、残存する任意のインタクトなヒトDNAの分解に寄与する。DNaseインヒビターを使用する先行技術は、糞便由来の有意な収率のインタクトな、種−特異的DNAを得るのに失敗した。それ故に、このような方法は、DNA分解の阻害の最適化を考慮するのに失敗した。本発明の方法は、DNA分解酵素の最適阻害がサンプル中に存在するDNA、特に大きな診断学的に関連のあるDNAフラグメントを効果的に保存するという理解に基づいている。
【0006】
1局面において、本発明は、サンプル中の核酸分解を阻害する工程、および必要に応じて、例えばフェノール−クロロホルム抽出を用いて標的DNAを抽出する工程、を包含する。好ましくは、核酸分解の阻害は、臨界数の分析可能なDNAの分子を産生するのに十分である。1実施形態において、本発明の方法は、糞便サンプル中でDNA分解し得る酵素を阻害する工程を包含する。好ましい実施形態において、本発明の方法は、イオンキレート剤(例えば、二価イオンキレート剤)に糞便サンプルを曝露する工程を包含する。イオンキレート剤は、特定の実施形態において、DNaseを阻害する。好ましいインヒビターの例として、エチレンジアミンテトラ酢酸(「EDTA」)が挙げられる。本発明のさらに好ましい方法は、小球菌ヌクレアーゼインヒビター(例えば、EGTA、さらに二価のイオンキレート剤)に糞便サンプルを曝露する工程を包含する。DNA分解のインヒビターは、最適レベルのDNA保存を達成するために、単独で、または組み合わせて、使用され得る。
【0007】
本発明の方法は、DNA分解の任意のインヒビターを使用して、実施される。インヒビターの量は、使用されるインヒビターに依存して変化する。しかし、インヒビターは、後の分析のためのサンプル中の有意なレベルのDNAを保存する量で使用されなければならない。十分なレベルのDNAを決定するための方法は、以下に示される。このような方法は、当業者が、使用されるインヒビターに関わらず、特異性をもって本発明を実施することが可能である。好ましい方法に従って、統計学的信頼性の所望されるレベル内で標的DNAの検出のために十分なサンプル中のDNAを保存する量のインヒビターが使用される。本明細書中で記載される方法を使用して、当業者は、本発明の方法において使用するための任意のインヒビターの適切な量を決定し得る。種々の特定のインヒビターの使用は、以下に例示される。
【0008】
別の好ましい実施形態において、本発明の方法は、代表的な(円周または断面の)糞便サンプルを得る工程、サンプルまたはその一部をDNaseインヒビターに曝露する工程、およびDNAをサンプルから単離する工程を包含する。1つの好ましいDNaseインヒビターは、EDTAである。好ましいEDTAの量は、1gの糞便あたり約0.042g〜約0.782gであり、1gの糞便あたり約0.250g〜約0.521gが特に好ましい。DNAは、例えば、フェノール−クロロホルム抽出によって抽出され得る。抽出後、DNAは、当該分野において公知の方法によって分析され得る。例えば、米国特許第5,830,665号および同第5,670,325号(これらは、本明細書中において参考として援用される)は、糞便サンプルから抽出されたDNAを分析するための方法を開示する。
【0009】
本発明の方法は、DNA分解の阻害が所望される任意のサンプル中で有用である。例えば、本発明の方法は、剥離された細胞、特に剥離された上皮細胞を含むサンプルにおいて特に効果的である。このようなサンプル中に含まれるDNAは、急激に分解し、特定のDNA(特に、サンプル中に低い割合で存在するDNA)の分析を困難にさせる。例えば、このようなサンプルとして、糞便、痰、尿、膿、および初乳が挙げられる。本発明の方法は、このようなサンプル中でDNA分解を抑制する工程、従って特異的な、高感度の検出のための十分な量のDNAを保存する工程を包含する。上記の特徴のいずれも(例えば、DNA分解インヒビターまたは使用されるインヒビターの量)は、剥離された細胞を含むサンプルにおいて有用であり得る。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1) 糞便サンプル中のDNAの完全性を保存する方法であって、該方法は、以下:
該糞便サンプルを、臨界数の分析可能なDNA分子を生成するのに十分な量のDNA分解のインヒビターに曝露させる工程、
を包含する、方法。
(項目2) 前記インヒビターがイオンキレート剤を含む、項目1に記載の方法。
(項目3) 前記イオンキレート剤が二価のイオンキレート剤を含む、項目2に記載の方法。
(項目4) 前記二価のイオンキレート剤が、EDTAおよびEGTAからなる群から選択される、項目3に記載の方法。
(項目5) 前記糞便サンプルをDNA分解のインヒビターの一定量に曝露させる工程が、糞便1グラム当たり0.042gのEDTA〜糞便1グラムあたり0.782gのEDTAの範囲のEDTAを提供する工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目6) 前記DNA分解のインヒビターが、酵素インヒビターを含む、項目1に記載の方法。
(項目7) 標的DNAを抽出する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目8) 前記抽出する工程が、フェノール−クロロホルム抽出を含む、項目7に記載の方法。
(項目9) 剥離した細胞を含有するサンプル中のDNAの完全性を保存するための方法であって、該方法は、以下:
該サンプルを、臨界数の分析可能なDNAの分子を生成するのに十分な、最小量のDNA分解のインヒビターに曝露させる工程、
を包含する、方法。
(項目10) 前記サンプルが糞便から得られる、項目9に記載の方法。
(項目11) 前記インヒビターがイオンキレート剤を含む、項目9に記載の方法。
(項目12) 前記イオンキレート剤が二価のイオンキレート剤を含む、項目11に記載の方法。
(項目13) 前記二価のイオンキレート剤が、EDTAおよびEGTAからなる群から選択される、項目12に記載の方法。
(項目14) 前記サンプルをDNA分解のインヒビターの最小量に曝露させる工程が、糞便1グラム当たり0.042gのEDTA〜糞便1グラムあたり0.782gのEDTAの範囲のEDTAを提供する工程を包含する、項目10に記載の方法。
(項目15) 標的DNAを抽出する工程をさらに包含する、項目9に記載の方法。
(項目16) 前記抽出する工程が、フェノール−クロロホルム抽出を含む、項目9に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の1局面を記載するフローチャートを示す。
【図2】図2は、種々の濃度のEDTAを含む、幾つかの異なる均質化された糞便の上清から単離されたDNAの分離ゲルを示す。
【図3】図3は、種々の濃度のEDTAを含む均質化された糞便の上清から単離され、続いて捕捉され、増幅されたDNAの分離ゲルを示す。
【図4】図4は、種々の濃度のEDTAを含む均質化された糞便の上清から単離され、続いて捕捉され、さらに多くのDNAを加えられ、増幅されたDNAの分離ゲルを示す。
【図5】図5は、例えば、表1および表2について記載されるようなモデルを使用して得られるデータの回帰分析によって作成される1組の曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
(I.導入)
本発明は、サンプル中のDNAの完全性を保存することによって、生物学的サンプル中のDNAの増加した収率のための方法を提供する。このような方法は、目的のDNA(「標的DNA」)が、低い頻度でサンプル中に存在するっか、または急速に分解する場合に、特に有用である。より具体的に、本発明の方法は、例えば、DNAを分解する酵素を阻害する工程を包含する。
【0012】
本発明の以前に、当業者は、サンプルからの抽出の前に、DNA分解を防ぐことに関心をよせてはいなかった。典型的に、目的のDNAが比較的多量にサンプル中(例えば、腫瘍細胞、血液)に存在するか、または方法が低頻度のDNAに対する増加した感度に関するが、その完全性には向かわないかのいずれかであった。しかし、特に異質なサンプル(例えば、複数の細胞型および/または器官からの細胞および/または細胞細片を有するサンプル)中の低頻度DNAの場合、DNAに対する増加した感度についての方法は、全体的に成功ではなかった。本発明の方法は、DNAの完全性を保存することによる新しいアプローチを提供する。本発明の方法は、特定の標的DNAを検出する可能性を増加させる。なぜなら、このような方法は、インタクトな標的DNAをサンプル中でより利用可能とするからである。
【0013】
図1を参照して、本発明の1つの一般化された方法が、サンプルを得る工程(工程2)およびそれをDNA分解インヒビターに曝露する工程(工程4)を包含する。一旦、サンプルが、DNA分解インヒビターに曝露されると、標的DNAが抽出される(工程6)。次いで、この抽出された標的DNAの存在または非存在が検出される(工程8)。
【0014】
異質なサンプル(例えば、糞便)において、内因性ヒトDNaseおよび/または細菌ヌクレアーゼは、DNAを分解する。ヌクレアーゼの例には、DNase(例えば、デオキシボヌクレアーゼI(「DNase I」)および小球菌ヌクレアーゼ)が挙げられる。DNaseおよび小球菌ヌクレアーゼの両方は、最適に機能するために二価のカチオンを必要とする。DNaseについて、適切なイオンとしては、Mn2+およびMg2+が挙げられる。小球菌ヌクレアーゼについて、Ca2+が適切なイオンである。イオンキレート化剤(chelator)、特に二価のイオンキレート化剤は、ヌクレアーゼを阻害し得る。イオンキレート化剤は、ヌクレアーゼとの会合からイオンを除去し、従って、ヌクレアーゼの機能を阻害する。例えば、最適な量で使用されるEDTAまたはEGTAは、本発明における使用のために有用なイオンキレート化剤である。
【0015】
DNAの酵素媒介分解を不活性化するか、干渉するか、または遅くする他の化合物が有用である。例えば、DNA分解酵素の活性部位と競合するか干渉し、それらの酵素を不活性化し、そして/またはDNA分解酵素を制御するメッセンジャーシステムをブロックするリガンドおよび/または抗体は、本発明の実施において有用である。フェノール−クロロホルム抽出成分はまた、抽出の間に典型的に使用される濃度よりもより高い濃度で、分離および変性によってヌクレアーゼを阻害し得る。例えば、フェノールは、DNA分解酵素を変性し、そして、本発明の方法において使用して、DNAの完全性を保存する。また、DNA分解酵素を分解および/または変性するプロテイナーゼも有用である。
【0016】
本発明の方法は、診断スクリーニングのために十分な、高い完全性のDNAを保存するために、最適な量のDNA分解インヒビターの使用を含む。異質のサンプル(例えば、糞便)において、標的DNA(例えば、変異したDNAまたは変異を示す列挙された野生型DNAの減少)が、少量で存在する。DNA分解インヒビターの最適な量は、サンプルにおいて利用可能なDNAの量の測定可能な改善をもたらす量である。従って、当業者は、高い完全性の標的DNAの診断的に関連したフラクションを保存するために必要なインヒビター量を使用することによって、本発明の方法における使用のためのDNA分解インヒビターの最適な量を経験的に決定し得る。診断的に関連したDNAの量を決定するための方法を以下に示す。
【0017】
異質のサンプルに対して実施されるDNAの増幅および他の確率過程は、低頻度のDNAを測定する不可能性に実際に寄与し得る。例えば、腫瘍形成の初期段階における典型的な癌−関連(変異)DNAは、異質のサンプル(例えば、糞便)中の約1%のDNAを示す。サンプル中のDNAが、30%のPCR効率で増幅される場合、任意の特定のDNAは、PCRの任意のラウンドで、増幅される30%の可能性のみを有する。従って、サンプルの1%として最初に存在する変異DNAが、第1のラウンドにおいて増幅されない場合、変異DNAは、ラウンド1の後のサンプルにおいて、DNAの約0.7%のみを示す。変異体が、最初の2回のラウンドにおいて増幅されない場合(0.7×0.7、すなわち49%の確率)、変異DNAは、PCRのラウンド3に突入した、サンプル中のDNAの約0.6%のみを示す。変異体を検出するために使用される増幅後アッセイが、変異体に対して、0.5%以下の感度を有する場合、変異DNAの存在を信頼して検出することが、可能でないかもしれない。従って、検出方法自体は、特に、十分な量のインタクトなDNAがサンプル中に存在しない場合、低頻度のDNAを検出する際の困難さに実際に寄与し得る。従って、本発明の方法において使用するためのインタクトなDNAの適切な量を決定するための1つの手段は、上記の確率的な効果を回避するために、サンプル中に存在しなければならないインタクトなDNAの最小量を決定し、次いで、サンプル中の少なくとも最小の数のDNA分子を産生するための十分なインヒビターを使用することである。確率過程(例えば、PCR)の効果を克服するために必要なDNA分子の最小数を計算するための方法を以下に示す。
【0018】
正確な測定のための十分なDNA分子を産生するのに有用なモデルは、PCRの多くのラウンドにわたる確率過程を繰り返すことによって操作する。分子的な疾患診断に状況において、このモデルは、所望の標識DNAの増幅を信頼して確実にするために、PCRに存在しなければならない分子の数を指定する。このモデルは、予め設定されたPCR効率(個別の特異性要求に適合するために確立された)を組み込み、そして分析されるサンプル中の全DNAに対する変異DNAの予め設定された比(これは、検出される疾患の特性およびサンプルの性質である)を組み込む。それらの入力値に基づいて、このモデルは、統計的な信頼度の所定のレベル内で、低頻度の(標的)分子が増幅されそして検出されることを確実にするために、PCRに存在しなければならない分子の数を予測する。一旦、分子数が決定されると、当業者は、サンプルの特性(例えば、その起源、分子構造(makeup)など)に依存して、使用されるサンプルサイズ(例えば、重量、体積など)を決定し得る。このモデルは、増幅および検出を信頼して確実にするために、PCRに存在しなければならない分子の数を指定する。
【0019】
例示的なモデルは、PCRのいくつかのラウンドを介した増幅のためのDNAの選択をシミュレートする。このモデルの目的に対して、1:100の変異体対全DNAの比(これは、疾患に対する臨床的な閾値で存在すると仮定される)を含むサンプルが選択される。例えば、結腸直腸癌において、検体(例えば、糞便)中の1%のヒトDNAが変異される(すなわち、欠失、置換、再配列、転化または対応する野生型配列とは異なる他の配列を有する)。大多数のPCRラウンドにわたって、サンプル中に任意の異常分子が存在することを仮定して、検体におけるそれらの比(ここでは、通常100の中の1)に従って、変異体および野生型分子の両方が選択される(すなわち、増幅される)。しかし、任意の1つのラウンドにおいて、増幅される各種の数は、ポアソン分布に従って、決定される。多くのラウンドにわたって、このプロセスは、低頻度の変異DNAを検出する能力を減少させる確率的な誤りに供される。しかし、PCRの初期のラウンド(主として、最初の2回のラウンド)は、低頻度種が検出される場合、比例してより重要であり、そしてラウンド10の後の任意のラウンドは、実質的に重要ではない。従って、このモデルは、(1)十分な変異分子のPCRに存在すること、および(2)PCRの出力において、信頼性のある検出を確実にするために、十分な数の分子および全分子に対する変異体の十分な比が存在するように、確率増幅のそれらの分子に対する効果の合わせた確率を決定する。
【0020】
PCRの最初の回に必要な数の分子を作動するために使用されるこのモデルは、1000回の実験の「Monte Carlo」シュミレーションとして作製され、各実験は、サンプル中の各分子に対する10サイクルのPCR操作からなる。このシュミレーションによって、(1)被験物由来のサンプルの採取を分析し;そして(2)各回に対して、サンプル中に変異体DNAが存在する場合増幅されるか否かを測定するための、各回のPCR反復性を分析した。反復性サンプリングの完了時、このモデルによって、変異体鎖が増幅される回のパーセント、検出のために予め決定された閾値を超える変異体のパーセント(この実施例において0.5%が1%の変異体:総量の比に基づく)、各回単独における確率論的なサンプリングに対する変化の係数(CV)、ならびに確率論的なサンプリングおよびPCRの組み合わせに対する分散の係数、を決定した。
【0021】
PCR効率が0%または100%以外のものである場合はいずれも(これらの2つの場合は、増幅が全くないか、または特定の増幅の完全な忠実度のいずれかを示す)、確率論的なノイズ(noise)が、PCRにおいて作製される。0%と100%との間のPCRにおけるノイズのシグナルレベルまたはバックグラウンドのシグナルレベルは、PCRの効率を伴って変化する。PCRにおける確率論的なノイズの標準偏差(S)は、式
【0022】
【数1】


によって与えられ、ここで、nは、サンプル中の分子の数であり、pは、PCRの効率であり、そしてqは、1−pである。表1は、PCR効率を100%および20%に設定し、そして変異体:総量の比が0.5%の、反復性サンプリングに関して得られた結果を示す。
【0023】
表1は、種々の条件下で実施された12の実験のモデルからの出力を示す。最初の列は、第1回目のPCRで入る分子の公称数(すなわち、増幅から入手可能な分子の総数)を示す。第2の列は、変異体であると予想される生物学的被検物中の分子(DNA)のパーセントを示す。糞便から回収されたDNAにおける結腸直腸癌の徴候に関しては、初期段階の癌の検出における臨床的関連に対する閾値は、1%である。すなわち、不均一な被検物(例えば、糞便)から誘導されたサンプルにおける1%のDNAは、結腸直腸癌に関連する変異を含む。6番目の列は、PCRの完了後に、PCR産物を測定するために使用されるアッセイの検出の閾値である。この数がより下にみられる場合、有意である。なぜなら、十分な変異体DNAは、野生型および無作為バックグラウンドノイズから異常なシグナルに対して検出可能であるように、PCRによって生成されなければならないからである。見出し「出力」のもと、第1の線は、少なくとも1つの変異体分子が、第1回目のPCRに存在する可能性を提供する。出力見出しの下の第2の線は、検出に対して予備決定された閾値より上の、変異体の検出(PCR後)の可能性を提供する。例えば、実験4において、結果から、実験4に特定化された条件下で実行された87.9%の実験物において、変異体の数は、検出の閾値数を超えることが示される。最後に、最後の2つの列は、サンプリングならびにサン
プリングおよびPCRの組み合わせに対する、変化の係数を提供する。
表1
【0024】
【表1】


表1に示すように、100%のPCR効率であっても、1000個の入力分子が使用される場合(すなわち、1000個のDNA分子が、最初のPCRサイクルにおけるプライミングに利用可能である)、たとえ100%のDNAが任意の所定の回のPCRにおいて増幅されたとしても、変異体DNAは97.1%のサンプルのみで検出される。10,000個の分子が存在する場合、変異体DNAが増幅されかつ検出されることは、(表1の実験6の結果で示すように)実質的に確実である。入力分子の数における変化に起因する確率的な誤りは、約500個の入力分子でより有意ではなくなり、そして上昇する(すなわち、統計学的変化に対するCVは、PCR効率が20%または100%であるか否かに関わらず、ほとんど同じである)。低いPCR効率(表1における20%)において、このモデルが、PCRへの50、100、200、500個、またはさらに1000個の分子の導入は、増幅または検出のいずれも保証しないことを示す。実験12に示すように、10,000個の分子の導入により、変異体標的の増幅が生じ、そしてこの後の検出の高い可能性を生じる。従って、100%効率のPCRでさえ、入力分子が500未満に落ちる場合、有意な偽陰性事象が生じる。
【0025】
前述の分析により、低頻度DNAの増幅を達成し、そしてその検出を可能にするために、PCRへ提供されなければならない分子の特有の範囲の数が、存在することが示される。この範囲は、PCR効率、およびサンプル中の低頻度(変異体)DNAのパーセンテージ、および検出閾値の関数である。上述のモデルが開発され、そして上記のようにPCRをシミュレートするためにVisual Basic for Applications code(Microsoft,Office 97)が実行された。結果が測定された統計学的な信頼水準は、約99%の定数を維持する。PCR効率およびパーセント変異体DNAのみが変化された。上記のように、このモデルは、1,000回の実験に対する「Monte Carlo」シミュレーション(各実験は、10回のPCRからなる)で、DNAを反復してサンプリングする。この結果を、以下の表2に示す。
表2
【0026】
【表2】


上記のようなモデルを使用して得られたデータの回帰により、以下の図5に示される曲線のセットを作製する。
【0027】
図5を用いて、PCRに提供される分子の最適な数が、PCR効率を選択し、そして疾患と関連がある変異体DNAであると疑われるサンプルのパーセンテージを選択することによって決定される。次にはこれが、検出の閾値を指令する。全てではない検出戦略が、類似の基本的な検出閾値を有し、そして適切な技術が選択されなければならない。パーセンテージ変異体DNAは、直腸結腸癌に関して上記で概説するように、臨床要因によって決定され得る。
【0028】
増幅された、検出可能な変異体DNAを得る可能性を最大にするために、PCR効率および期待される変異体のパーセントを決定し得る。例えば、5%のサンプルが、このアッセイの結果の信頼度を高めるために、変異体DNAであることが期待される場合、図5の「1%」曲線からの入力分子の数、Nを選択し得る。
【0029】
このモデル、そして特に図5は、DNA分解インヒビターの最適な濃度を決定する場合に、有用である。DNAサンプルがDNAインヒビターに曝露された後に、PCRがDNA分子を分析するために使用される場合、図5は、どれくらい多くの標的DNAの分子が、十分な分析可能なDNAを有するために保存される必要があるかを示す。従って、任意のDNA分解インヒビターの最適な量は、図5に従う、十分な数の分析可能なDNAを産生するインヒビターの量またはその量の範囲として決定され得る。当然、このモデリング系は、PCR以外のDNA検出技術に適用され得る。詳細には、当業者は、確率論的ノイズが問題である、任意のプロセスおよび/または検出技術に対してこのモデリング系を適用し得る。従って、任意のDNA分解インヒビターの最適な量は、分析可能なDNAを生成するのに十分なDNA分子の数に基づいて決定され得る。
【0030】
PCRへの入力のための分子の数が一旦決定されると、その数(またはより多く)の分子を含むサンプルは、標準の方法に従うPCRに対して調製される。サンプル中の分子の数は、例えば、米国特許第5,670,325号(これは、本明細書中に参考として援用される)に教示されるような列挙の方法によって、直接決定され得る。あるいは、複合体サンプル中の分子の数は、モル濃度、分子量によって、または当該分野で公知の他の手段によって決定され得る。サンプル中のDNAの量は、質量分析器、光学濃度、または当該分野で公知の他の手段によって測定され得る。生物学的被検物由来のサンプル中の分子の数は、当該分野における多数の手段(米国特許第5,741,650号および同第5,670,325号(これらの両方は、本明細書中に参考とし援用される)において開示される手段を含む)によって測定され得る。
【0031】
上記のような方法は、確率論的なプロセスが生じる任意のDNA単離、検出、または増幅プロセスにおける使用のための、DNA分解インヒビターの最小量または最適な量を決定するために使用される。分子の最小数(これは、低頻度の種を信頼して検出するように測定されなければならない)を決定するための上記のモデルを使用して、経験的に、どれくらいの任意の所定のインヒビターが使用されるべきであるかを決定し得る。
【実施例】
【0032】
(II.実施例−DNA分解インヒビターとしてEDTAを含む糞便中のDNAの検出)
(A.導入)
本発明の方法は、結腸直腸癌を検出するための糞便由来のDNA分析に有用である。結腸直腸癌は、早期に診断される場合、その癌性組織の外科的除去によって効果的に処置され得る。結腸直腸癌は、結腸直腸の上皮において発生し、そして代表的には、発生の早期段階中には広範には可視化されない(従って、これは、侵襲性ではない)。身体全体に広がる、高度に可視化され、侵襲性であり、そして最終的に転移性の癌への移行には、10年以上かかる。この癌は、侵襲の前に検出される場合、この癌性組織の外科的除去が、効果的な治療法である。しかし、結腸直腸癌は、しばしば、臨床症状(例えば、痛み、および黒いタール状の糞便)の発現の際にしか検出されない。一般的に、このような症状は、この疾患が十分に確立されたとき(しばしば、転移が生じた後)にのみ現れ、そしてその患者の予後は、その癌性組織の外科的切除後でさえ、思わしくない。従って、結腸直腸癌の早期検出が、重要である。なぜなら、早期検出は、患者の罹患率を有意に減少し得るからである。
【0033】
(B.実験)
以下の実験は、DNaseのインヒビターである、EDTAが、糞便サンプルからの高い完全性のDNAの収率を増加し、同時に、増幅可能なDNAの量を増加することを実証する。これらの実験において、糞便(各5g)の3つのアリコートを、緩衝液(0.5M Tris、10mM NaCl、EDTA)中でホモジェナイズした。緩衝液 対 糞便の比を、7:1にした(従って、35mlの緩衝液を、各5gの糞便に対して使用した)。この緩衝液は、0mMのEDTA、16mMのEDTA、または96mMのEDTAを含んだ。次いで、この3つのアリコートの各々を、最終的に20:1の緩衝液 対 糞便の比まで、緩衝液(EDTAを含まない)でさらに希釈した。次いで、各アリコートを遠心分離し、そして上清(これは、活性なDNA分解画分を有する)をきれいなチューブに取り出した。次いで、2μgのE.coli DNAおよび100ngのヒトゲノムDNAのDNA混合物を、各チューブに添加した。各チューブを、37℃で75分間インキュベートした。次いで、42μlのプロテイナーゼKおよび250μlの10% SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を、各チューブに添加した後、37℃で一晩インキュベートした。この一晩のインキュベーション後、各サンプル中のDNAを、標準的な技術によって調製した。例えば、Short Protocols Molecular Biology §§2.1−2.4(Ausubelら、第3版、1995)を参照のこと。一般的に、フェノール抽出、フェノール/クロロホルム抽出、そしてフェノール抽出を行った後に、DNAを単離した。次いで、単離されたDNAを、標準的なTris緩衝液中に置いた。
【0034】
この単離されたDNAに対して、3つの実験を行った。第1の実験は、ホモジェナイズした糞便の上清に存在するDNA分解活性が、至適量のEDTAによって阻害され、これが、高い完全性のDNAの量を増加することを実証した。この実験において、0mM、16mM、または96mMのEDTAを含有する緩衝液中でホモジェナイズした糞便のアリコートから採取した、そのホモジェナイズした糞便の上清からDNAを単離した。全核酸を、分離ゲル上で泳動した。結果を図2に示す。ここで、矢印は、目的のDNAを含むスメア(または、スメアの欠失)の位置を示す。
【0035】
レーン4、5、および6は、それぞれ、0mM、16mM、または96mMのEDTAを含有する緩衝液中でホモジェナイズした糞便から得られたホモジェナイズした糞便の上清に添加し、その後で単離したDNAのサンプルを表す。各レーンは、糞便サンプル由来の内因性DNAを表す高分子量のバンド、および外因性DNA由来のスメアを示すことに留意する。写真のバンドおよびスメアの強度(これは、バンド中のDNAの量に相関し、強度が大きいほど、より多くの量のDNAに対応する)は、元の緩衝液中のEDTAの濃度が増加するほど、増加した。レーン7〜9および10〜12は、レーン4〜6の複製である。EDTA濃度が増加するにつれて、バンドおよびスメアの強度が増加することは、DNAの完全性が、緩衝液中のEDTAの濃度が増加するほど保存されることを示した。従って、このホモジェナイズした糞便の上清のDNA分解活性は、EDTAによって、ほぼ用量依存性の様式で阻害された。
【0036】
レーン1、2および3、ならびにレーン13、14および15は、16mM EDTAで作製した緩衝液中の2μgのE.coli DNAおよび100ngの外因性ヒトDNAを含有するコントロールサンプルであった。予測されたように、各レーンは、この添加したDNAを表すスメアを示した。
【0037】
第2の実験において、上記のように単離されたDNAを、捕捉および増幅した。この実験の結果は、EDTAが、糞便上清中に存在するDNA分解活性を阻害するのみならず、増幅可能なDNAの量を増加することを実証した。この実験において、上記のようにDNAを調製した後、標準的なハイブリッド捕捉(hybrid capture)を、Kras特異的捕捉プローブを使用して、Kras DNAを捕捉することによって行った。次いで、Kras DNAをPCR増幅した。図3は、Kras DNAの保存に対するEDTAの効果を示す。Kras DNAを表すバンド(または、バンドの欠失)の位置を、矢印で示す。
【0038】
レーン4、5および6は、それぞれ、0mM、16mM、または96mMのEDTAを含有する緩衝液中でホモジェナイズした糞便から得られた、そのホモジェナイズした糞便の上清に添加したテンプレートDNAから増幅された、Kras DNAを表す。レーン4においてKrasのバンドは、ほとんど存在しないが、レーン5および6においては、緩衝液中のEDTAの濃度が増加するにつれて、このKrasのバンドの強度が増加した(これは、Kras DNAが実際に存在している量の増加を表す)。レーン7〜9は、レーン4〜6の複製であり、これは、元の緩衝液中のEDTAの濃度が増加するにつれて、類似のバンド強度の増加(DNA存在量の増加)を示す。従って、EDTAの濃度が高いほど、Kras DNAが多く増幅され、より強いシグナルを生じる。
【0039】
さらに、集団において、糞便から増幅され得るDNAレベルは、個体間で変化する。これらの個体を、A〜Fのグループに特徴付け、Aは、DNAレベルが最も高く、そしてFは、DNAが検出不可能なレベルである。グループAの高いDNAレベルは、それらの糞便における低いDNA分解活性に起因する(「高い完全性の糞便」)。グループAの個体由来の糞便アリコートをホモジェナイズする緩衝液にEDTAを添加することは、大きな効果を生じることが予測されない。なぜなら、グループAの糞便は、DNA分解活性をほとんど有さないからである。実際、Kras DNAを、0mM、16mM、または96mMのEDTAを含有する緩衝液中でホモジェナイズされたグループAの糞便から得られた、そのホモジェナイズした糞便の上清に添加したテンプレートDNAから増幅した場合に、増幅されたKras DNAの量には、ほとんど差異は観察されなかった(それぞれ、レーン10、11および12)。Krasバンドの完全性において、0mMのEDTAと16mMまたは96mMのEDTAとの間で、わずかな増加
しか観察され得ず、これは、EDTAの阻害濃度で、Kras DNAの量がわずかにしか増加しないことを表す。
【0040】
レーン1〜3およびレーン13〜15は、ホモジェナイズした糞便の上清に曝露されなかった、増幅されたKras DNAのサンプルを表す。予測されたように、これらのコントロールのレーンは、レーン間で等しい強度のKras DNAを表すバンドを示す。レーン16および17はネガティブコントロールであり、そして予測されたように、Krasを表すバンドを示さず、これは、観察されたいずれのKras DNAも、捕捉されたDNAに起因し、混入に起因しないことを示す。レーン18は、ネガティブコントロールであり、そして予測されたように、Kras遺伝子を表すバンドを有さず、これは、このPCR産物が、サンプル由来であり、混入由来ではないことを示す。レーン19〜21は、ポジティブコントロールであり、ここでは、50pg、100pgまたは200pgのヒトDNAが、E.coli DNAのバックグランド下で増幅され、これは、ヒトDNAが、このモデル系におけるE.coliのバックグランド下で増幅され得ることを示す。最後に、レーン22は、分子量マーカーである。
【0041】
第3の実験において、ヒトゲノムDNAを捕捉後の各サンプルに添加したことを除き、第2の実験と同じプロトコールを使用した。Kras DNAを、PCRによって再度増幅させた。従って、過剰のテンプレートDNAが、PCRに利用可能である。この実験は、第2の実験における種々のレベルのPCR増幅が、正常なPCRを妨害または増強するEDTAに起因せず、EDTAによる種々のレベルのDNA分解阻害から生じる、増幅されるべき利用可能な種々のレベルのテンプレートDNAに起因することを実証する。図4は、この実験の結果を示す。Krasを表すバンド(または、バンドの欠失)の位置を、矢印で示す。レーン1〜6および8〜13は、第2の実験のレーン1〜12と対応する(すなわち、レーン1〜3は、コントロールであり、レーン4〜6および8〜10は、0mM、16mM、または96mMのEDTA中でホモジェナイズされた、そのホモジェナイズされた糞便の上清に曝露されたサンプル中で増幅された、過剰のKras DNAであり、そしてレーン11〜13は、0mM、16mM、または96mMのEDTA中でホモジェナイズされた高い完全性の糞便からの、そのホモジェナイズされた糞便の上清に曝露されたサンプル中で増幅された、過剰のKras DNAであった)。予測されたように、レーン1〜6および8〜13は、ほぼ等しい強度のPCR産物を示す。なぜなら、過剰のテンプレートDNAが利用可能であるからである。EDTAは、正常なPCRを妨害または増強しない。この結果は、第2の実験での0mM、16mM、または96mMのEDTAサンプル中の種々のレベルのPCR増幅が、種々のレベルのテンプレートDNAに起因し、そしてインヒビターに起因しなかったことを示す。レーン14は、ヒトゲノムDNAのサンプルを示す。レーン15〜18は、第2の実験のレーン17および19〜21と同じコントロールである。
【0042】
上記の実験データから、DNaseを阻害するために必要とされるEDTAの量を計算した。この3つの実験で使用した種々の緩衝液中のEDTAの濃度を、1グラムの糞便あたりのEDTAのグラムとして正規化した。一般的に、EDTAの濃度を、EDTAの分子量および糞便がホモジェナイズされた緩衝液の容量によって乗算した。この積を、ホモジェナイズした糞便の量で除算した。例えば、以下の等式を使用して、EDTA濃度を正規化した。
【0043】
【数2】


従って、ホモジェナイズされる任意の量の糞便について、DNAの収率を最大化するために、1gの糞便あたり少なくとも約0.042gのEDTAを、ホモジェネーション緩衝液に使用するべきである。使用され得るEDTAの範囲は、1g糞便あたり約0.042gのEDTA〜1g糞便あたり約0.782gのEDTAである。より好ましくは、1g糞便あたり約0.250gのEDTA〜1g糞便あたり約0.521gのEDTAを使用する。最も好ましくは、1g糞便あたり約0.391gのEDTAを使用する。
【0044】
これらの計算は、通常使用される緩衝液の容量および糞便量で、ホモジェナイズされたサンプル中に存在するEDTAの量が、そのホモジェナイズされたサンプル中のEDTAの最終濃度よりも、より重要な因子であることを示す。しかし、当業者が理解するように、ある点において、EDTAの量が所定の容量中で同じままであるが、この容量は、非常に大きくなって、DNAの完全性に対するEDTAの効果が希釈されるかもしれない。通常使用されるパラメーター内の糞便サンプルを試験する場合、この希釈効果は見られない。しかし、代替的実施形態において、EDTAの濃度は、関連性のある因子である。これらの実施形態において、約16mMのEDTA〜約300mMのEDTAが、有用である。より好ましくは、約100mMのEDTA〜約200mMのEDTAが、有用である。最も好ましくは、約150mMのEDTAが、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糞便サンプル中のDNAの完全性を保存する方法であって、該方法は、該糞便サンプルを、糞便1グラム当たり約0.250gのEDTA〜糞便1グラムあたり約0.782グラムのEDTAの範囲のEDTAに暴露させて、DNAの完全性を保存する工程を包含する、方法。
【請求項2】
標的DNAを抽出する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抽出する工程が、フェノール−クロロホルム抽出を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
剥離した細胞を含有するサンプル中のDNAの完全性を保存するための方法であって、該方法は、該サンプルを、糞便1グラム当たり約0.250gのEDTA〜糞便1グラムあたり約0.782グラムのEDTAの範囲のEDTAに暴露させて、DNAの完全性を保存する工程を包含する、方法。
【請求項5】
前記サンプルが糞便から得られる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
標的DNAを抽出する工程をさらに包含する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記抽出する工程が、フェノール−クロロホルム抽出を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、該方法は、該糞便サンプルを、糞便1グラム当たり約0.250gのEDTA〜糞便1グラムあたり約0.521グラムのEDTAの範囲のEDTAに暴露させて、DNAの完全性を保存する工程を包含する、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、該方法は、該糞便サンプルを、糞便1グラムあたり約0.391グラムのEDTAに暴露させて、DNAの完全性を保存する工程を包含する、方法。
【請求項10】
請求項4に記載の方法であって、該方法は、該糞便サンプルを、糞便1グラム当たり約0.250gのEDTA〜糞便1グラムあたり約0.521グラムのEDTAの範囲のEDTAに暴露させて、DNAの完全性を保存する工程を包含する、方法。
【請求項11】
請求項4に記載の方法であって、該方法は、該糞便サンプルを、糞便1グラムあたり約0.391グラムのEDTAに暴露させて、DNAの完全性を保存する工程を包含する、方法。
【請求項12】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−15701(P2011−15701A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239144(P2010−239144)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【分割の表示】特願2000−601203(P2000−601203)の分割
【原出願日】平成12年1月24日(2000.1.24)
【出願人】(501063380)エグザクト サイエンシーズ コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】