説明

DNAを定量又は検出する方法

【課題】簡便にDNAを定量又は検出する方法を提供する。
【解決手段】(1)検体中に含まれるDNAから、目的とする領域の塩基配列を含むDNAを取得する第一工程、(2)第一工程で得られた前記DNAをメチル化酵素で処理し、メチル化DNAを取得する第二工程、(3)第二工程で得られた前記メチル化DNAから、一本鎖メチル化DNAをを取得する第三工程、(4)第三工程で選択された前記一本鎖メチル化DNAと、固定化メチル化DNA抗体と、を結合させて、該メチル化された目的とするDNA領域を含む一本鎖メチル化DNAと、該固定化メチル化DNA抗体と、の複合体を形成させて、該複合体を取得する第四工程等を含む検体中に含まれるDNA中の目的とする領域のメチル化されたDNAの含量を定量または検出する方法等を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体中に含まれる目的とするDNA領域を有するDNAを定量又は検出する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
検体中に含まれる目的とするDNA領域を有するDNAを定量又は検出する方法としては、例えば、生物由来検体に含まれるゲノムDNAを抽出した後、DNAポリメラーゼによるDNA合成の連鎖反応(Polymerase Chain Reaction;以下、PCRと記すこともある。)によってDNAを増幅させて検出する方法等が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】Chiquet C., Lina G., Benito Y., Cornut P.L., Etienne J., Romanet J.P., Denis P., Vandenesch F.,Polymerase chain reaction identification in aqueous humor of patients with postoperative endophthalmitis.,J. Cataract. Refract. Surg.,2007;33(4):635-641.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
PCRを利用する方法では、PCRに供するまでの操作(具体的には例えば、メチル化検出のためのDNAの修飾及びその後の生成物の精製等)に非常に時間と労力とを要し、更に、PCRが増幅しようとする目的領域のDNAの塩基配列に対して相補的な1組のオリゴヌクレオチドプライマー(以下、プライマー対と記すこともある。)を用いて液相中にて行われるために、増幅されたDNA断片を精製した後、これをPCRのための反応容器へ移し換える操作、また目的領域を増幅させるための前記のプライマー対を含む反応試薬を反応系に添加するための操作等も必要である。更に、増幅しようとする目的領域のDNAの増幅を確認するために、電気泳動等の分析操作に供する必要もあり、しかもその操作は極めて繁雑である。
このように、検体中に含まれるDNA中の目的とする領域のDNAの含量を測定するための一連の操作には、多大な手間が存在していた。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、簡便にDNAを定量又は検出する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、かかる状況下鋭意検討した結果、本発明に至った。
即ち、本発明は、
[発明1]
検体中に含まれる目的とするDNA領域を有するDNAを定量又は検出する方法であって、
(1)目的とするDNA領域を有するDNAを検体中から取得する第一工程、
(2)第一工程で取得した目的とするDNA領域を有するDNAをDNAメチル化酵素で処理する第二工程、
(3)第二工程で取得したDNAメチル化酵素で処理された目的とするDNA領域を有するDNAから、目的とするDNA領域を有する一本鎖メチル化DNAを取得する第三工程、
(4)第三工程で取得された目的とするDNA領域を有する一本鎖メチル化DNAと、固定化メチル化DNA抗体と、を結合させて、該目的とするDNA領域を有する一本鎖メチル化DNAと該固定化メチル化DNA抗体との複合体を形成させる第四工程、
(5)第四工程で形成された複合体に含まれる目的とするDNA領域を有する一本鎖メチル化DNAを、固定化メチル化DNA抗体から分離して一本鎖DNA(正鎖)にする第五工程と、
(6)第五工程で得られた一本鎖DNA(正鎖)を、該一本鎖DNA(正鎖)が有する塩基配列の部分塩基配列(正鎖)であって、且つ、前記目的とするDNA領域の塩基配列(正鎖)の3’末端より更に3’末端側に位置する部分塩基配列(正鎖)に対して相補性のある塩基配列(負鎖)を有するプライマー(フォーワード用プライマー)を伸長プライマーとして、該伸長プライマーを1回伸長させることにより、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)を二本鎖DNAに伸長形成させる第六工程と、
(7)第六工程で伸長形成された二本鎖DNAを、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(負鎖)に分離する第七工程と、
(8)第七工程で得られた目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)を鋳型として、前記フォワード用プライマーを伸長プライマーとして、該伸長プライマーを一回伸長させることにより、前記目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAを二本鎖DNAとして伸長形成させる第八工程と、
(9)第七工程で得られた目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(負鎖)を鋳型として、前記目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(負鎖)が有する塩基配列の部分塩基配列(負鎖)であって、且つ、前記目的とするDNA領域の塩基配列(正鎖)に対して相補性のある塩基配列(負鎖)の3’末端より更に3’末端側に位置する部分塩基配列(負鎖)に対して相補性のある塩基配列(正鎖)を有するプライマー(リバース用プライマー)を伸長プライマーとして、該伸長プライマーを1回伸長させることにより、前記目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAを二本鎖DNAとして伸長形成させる第九工程と、
(10)第八工程又は第九工程で得られた伸長形成された二本鎖DNAを一本鎖状態に分離した後、繰り返すことにより、前記目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAを検出可能な量になるまで増幅する第十工程と、
(11)第十工程で増幅されたDNAの量を定量又は検出する第十一工程と、
を有することを特徴とする方法。
[発明2]
DNAメチル化酵素がシトシンメチル化酵素又はSss Iメチラーゼである発明1に記載の方法。
[発明3]
第四工程において検体中に含まれる目的とするDNA領域を有する一本鎖メチル化DNAを固定化メチル化DNA抗体と結合させることにより固定相へ吸着させる発明1に記載の方法を用いたDNAの濃縮方法。
[発明4]
固定化メチル化DNA抗体がメチルシトシン抗体である発明1〜3のいずれか一に記載の方法。
[発明5]
検体中に含まれる目的とするDNA領域を有するDNAが、RNAから逆転写酵素により生成されたDNAである発明1〜4のいずれか一に記載の方法。
[発明6]
検体が、下記のいずれかの検体である発明1〜5のいずれか一に記載の方法。
(a)哺乳動物由来の血液、体液、糞尿、体分泌物、細胞溶解液又は組織溶解液
(b)哺乳動物由来の血液、体液、糞尿、体分泌物、細胞溶解液及び組織溶解液からなる群より選ばれる一から抽出されたDNA
(c)哺乳動物由来の組織、細胞、組織溶解液及び細胞溶解液からなる群より選ばれる一から抽出されたRNAを鋳型として作製されたcDNA
(e)細菌、真菌又はウイルスから抽出されたDNA
(f)細菌、真菌又はウイルスから抽出されたRNAを鋳型として作製されたDNA
[発明7]
検体中に含まれる目的とするDNA領域を有するDNAが、目的とするDNA領域を認識切断部位としない制限酵素で予め消化処理されてなるDNA、合成オリゴヌクレオチド、又は予め精製されてなるDNAである発明1〜6のいずれか一に記載の方法。
[発明8]
第二工程で目的とするDNA領域を有する一本鎖メチル化DNAを取得する際に、カウンターオリゴヌクレオチドを添加する発明1〜7のいずれか一に記載の方法;
等を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、簡便にDNAを定量又は検出する方法等を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は、検体中に含まれる目的とするDNA領域を有するDNAを定量又は検出する方法(以下、本発明方法と記すこともある)に関するものである。
第一工程は、目的とするDNA領域を有するDNAを検体中から取得する工程である。
【0007】
本発明方法における「検体」としては、非生物由来検体と生物由来検体とが挙げられる。非生物由来検体とは、例えば食品、河川、土壌、一般市販製品の表面付着物等の真菌、細菌、ウイルス等の混入微生物や核酸が含まれ得るものを意味する。
尚、特に食品においては食中毒菌の有無の検査と原因菌の特定が重要であり、通常は微生物表面の抗原を利用した免疫法が使用される。しかし、免疫法は、抗原を作るために多大の労力を必要とし、更に病原菌の特定が必要となる。即ち、微生物検査における免疫法は、微生物種の特異性を利用しているため、一回の検査で複数菌種をまとめて、その有無を検査することが難しいだけでなく、免疫法を確立できない微生物に対しては、PCR法等を用いる等、検査には多大の労力が必要となる。本発明方法は、まず、免疫法による検査が難しい場合でも、遺伝子から検査方法を確立でき、次に、複数の微生物を同時に検出することが可能な検査方法を提供できる。即ち、本発明方法は、非生物由来検体中に存在する真菌類、微生物類、ウイルス等の検査に利用できる。
また、本発明方法を用いることにより、例えば食品中の混入微生物やウイルスを検出することが可能となり、感染症の検査や食品汚染検査等で利用が期待できる。
【0008】
生物由来検体とは、(a)哺乳動物由来の血液、体液、糞尿、体分泌物、細胞溶解液又は組織溶解液、(b)哺乳動物由来の血液、体液、糞尿、体分泌物、細胞溶解液及び組織溶解液からなる群より選ばれる一から抽出されたDNA、(c)哺乳動物由来の組織、細胞、組織溶解液及び細胞溶解液からなる群より選ばれる一から抽出されたRNAを鋳型として作製されたDNA、(e)細菌、真菌又はウイルスから抽出されたDNA、(f)細菌、真菌又はウイルスから抽出されたRNAを鋳型として作製されたDNA、等が挙げられる。尚、前記組織とは、血液、リンパ節等を含む広義の意味であり、前記体液とは血漿、血清、リンパ液等を意味し、前記体分泌物とは尿や乳汁等を意味する。
【0009】
検体中に含まれるDNAとしては、前記生体試料や前記混入微生物から抽出して得られたゲノムDNA、ゲノムDNA由来のDNA断片、若しくはRNA等を挙げることができる。
また、哺乳動物由来の検体がヒトの血液、体液又は体分泌物等である場合には、ヒトの定期健康診断における臨床検査等で採取したものを利用することができる。血液を検体として用いる場合には、血液から通常の方法に準じて血漿又は血清を調製し、調製された血漿又は血清を検体として、その中に含まれる遊離DNA(胃癌細胞等の癌細胞由来のDNAが含まれる)を分析すると、血球由来のDNAを避けて胃癌細胞等の癌細胞由来のDNAを解析することができ、胃癌細胞等の癌細胞、それを含む組織等を検出する感度を向上させることができる。
【0010】
ゲノムDNAを哺乳動物由来の検体から得るには、例えば市販のDNA抽出用キット等を用いればよい。また、RNAからDNAを得るためには、市販のcDNA作成キット等の逆転写酵素を用いてRNAからDNAを合成するようなキットを用いればよい。また、本発明方法においては、検体としては、人工的に合成されたDNAであっても良い。
【0011】
本発明方法における「哺乳動物」とは、哺乳動物に属する動物の全てを意味する。哺乳動物に属する動物とは、動物界 脊索動物門 脊椎動物亜門 哺乳綱(Mammalia)に分類される動物の総称であり、より具体的には、ヒト、サル、マーモセット、モルモット、ラット、マウス、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ等を意味する。
【0012】
本発明における「体液」とは、固体を構成する細胞間に存在する液体を意味し、血漿と間質液を意味し、多くの場合、固体の恒常性の維持機能を果たす。より具体的には、リンパ液、組織液(組織間液、細胞間液、間質液)、体腔液、漿膜腔液、胸水、腹水、心嚢液、脳脊髄液(髄液)、関節液(滑液)、眼房水(房水)、脳脊髄液、等を意味する。
【0013】
本発明における「体分泌液」とは、外分泌腺からの分泌液を意味する。より具体的には、唾液、胃液、 胆汁、 膵液、腸液、 汗、 涙、 鼻水、 精液、 膣液、 羊水、 乳汁、等を意味する。
【0014】
本発明における「細胞溶解液」とは、細胞培養用の10cmプレート等で培養した細胞、即ち細胞株や初代培養細胞、血球細胞等を破壊することにより得られる細胞内液を含む溶解液を意味する。細胞膜を破壊する方法としては、超音波による方法、界面活性剤を用いる方法、アルカリ溶液をを用いる方法等が挙げられる。尚、細胞を溶解するためには、様々なキット等を利用してもよい。
例えば具体的には、10cmプレートでコンフルエントになるまで細胞を培養した後、培養液を捨てて、0.6mLのRIPAバッファー(1x TBS, 1% nonidet P-40, 0.5% sodium deoxysholate, 0.1% SDS, 0.004% sodium azide)を10cmプレートに加える。4℃で15分間プレートをゆっくり揺り動かしてから、10cmプレート上の接着細胞を、スクレーパー等を用いて剥がし、プレート上の溶解液をマイクロチューブに移す。溶解液の1/10容量の10mg/mL PMSFを添加してから、氷上で30-60分間放置する。4℃で10分間、10,000xgで遠心し、上清を細胞溶解液として取得する。
【0015】
本発明における「組織溶解液」とは、哺乳動物等の動物から採取した組織中の細胞を破壊することにより取得する細胞内液を含む溶解液を意味する。
より具体的には、動物から取得した組織の重量を測定した後、カミソリ等を用いて組織を小片に裁断する。凍結組織をスライスする場合は、更に小さい小片にする必要がある。裁断後、氷冷RIPAバッファー(プロテアーゼインヒビター、フォスファターゼインヒビター等を添加してもよく、例えば、RIPAバッファーの1/10容量の10mg/mL PMSFを添加しても良い)を組織1gあたり3mLの比率で添加し、4℃でホモジナイズする。ホモジナイズには、ソニケーターや加圧型細胞破砕装置を用いる。ホモジナイズの作業では、溶液を常に4℃に維持し、発熱を抑えるようにする。ホモジナイズ液を、マイクロチューブに移して、4℃で10分間、10,000xgで遠心し、上清を組織溶解液として取得する。
【0016】
本発明方法における「目的とするDNA領域」(以下、目的領域と記すこともある。)とは、検体中に含まれるDNA領域のうち、本発明方法により検出又は定量したいDNA領域である。検体がDNAである場合の目的とするDNA領域とは、DNAの塩基配列上の塩基配列を意味し、検体がRNAである場合には、RNAから逆転写酵素により作成されたDNAの塩基配列上の塩基配列を意味する。本発明方法においては、シトシンをメチル化して検出又は定量する方法であるため、目的領域はシトシン或いは後述のCpGに富む領域を含むことが望ましい。
【0017】
第一工程は、検体中から目的とするDNA領域を有するDNAを取得する工程である。
「目的とするDNA領域」とは、例えばゲノムDNA上の検出対象となる所定の塩基配列を意味する。また、検体中に含まれるRNAを検出する場合、「目的とするDNA領域」とは、抽出されたRNAを鋳型として逆転写酵素により合成されたDNA上の塩基配列であって、RNA上の検出対象となる所定の塩基配列の相補的塩基配列を意味する。
【0018】
第一工程で取得されるDNAは、該DNAが有する目的とするDNA領域を認識切断部位としない制限酵素で予め消化処理されてなるDNA試料であってもよく、また予め精製されてなるDNA試料であってもよい。他に、第一工程で取得されるDNA試料として、血液中の遊離DNA、微生物ゲノム由来のDNA、検体中のRNAから逆転写酵素により作製されたDNA等が挙げられる。更には、「目的とするDNA領域を有するDNA」は人工的に合成されたDNAであっても良い。
【0019】
目的とするDNA領域の塩基配列を含むゲノムDNAを取得するには、例えば、検体が哺乳動物由来の場合は、市販のDNA抽出用キット(Genfind v2 Kit(ベックマン・コールター社製)、FastPure DNA Kit(タカラバイオ株式会社製))等を用いればよい。
また、検体が真菌等の微生物である場合、Methods in Yeast Genetics(Cold Spring Harbor Laboratory Press)に記載されているような、一般的な酵母ゲノムの調製法等を用いればよく、検体が大腸菌のような原核生物である場合、Molecular Cloning -A Laboratory Manual-(Cold Spring Harbor Laboratory Press)に記載されているような一般的な微生物ゲノム調製法等を用いればよい。
また、検体が食品である場合、食品から微生物等を分離してからDNAを取得してもよく、食品に含まれる微生物以外のゲノムDNAと微生物由来のゲノムを同時に取得してもよい。また、検体が哺乳動物由来の組織であり、目的とするDNA領域がウイルス由来のDNAである場合は、組織中から市販のRNA抽出用キット(ISOGEN(311-02501)(NIPPON GENE社製)、或いは、FastRNA Pro Green Kit (フナコシ社製)、FastRNA Pro Blue Kit (フナコシ社製)、FastRNA Pro Red Kit (フナコシ社製)、等)等を用いてRNAを抽出し、逆転写酵素によってDNAを取得してもよい。また、検体が哺乳動物由来の検体である場合、ウイルス粒子を抽出してからウイルスのDNAを抽出してもよく、或いはウイルス粒子を抽出してから市販のキット(QuickGene RNA tissue kit S II、富士フィルム社製)等を用いてウイルスRNAを抽出し、逆転写酵素によりウイルス由来のDNAを取得しても良い。ウイルスが感染した組織からRNAを抽出し逆転写酵素によりウイルス由来のDNAを取得しても良いし、ウイルスが感染した組織からDNAを取得して、ウイルス由来のDNAを取得しても良い。
【0020】
本発明方法における「メチル化DNA」或いは「メチル化されたDNA」とは、下記のようなDNAを意味するものである。通常、遺伝子(ゲノムDNA)を構成する4種類の塩基のいずれかがメチル化されることを意味する。例えば、哺乳動物では、5’−CG−3’で示される塩基配列(Cはシトシンを表し、Gはグアニンを表す。以下、当該塩基配列を「CpG」と記すこともある。)中のシトシンのみがメチル化されるという現象が知られている。シトシンのメチル化部位は5位である。CpGのシトシンメチル化現象は、細胞分裂に先立つDNA複製により新生二本鎖DNAでは、親細胞由来のDNA鎖中の「CpG」中のシトシンのみがメチル化された状態であるが、メチル基転移酵素の働きにより即座に新生されたDNA鎖中の「CpG」中のシトシンもメチル化される。このシトシンメチル化は、親細胞由来のDNA鎖中のメチル化されたシトシンを含むCpGと相補的に結合する新生DNA鎖のCpGのシトシンをメチル化する。従って、親細胞のDNAのメチル化の状態は、DNA複製後の、新しい2組のDNAにそのまま引き継がれることになる。「メチル化されたDNA」とは、このようなメチル化修飾により生じたDNAを意味するものである。尚、「CpG対」とは、CpGで示される塩基配列と、これに相補するCpGが結合してなる二本鎖DNAを意味するものである。
また、本発明方法における「一本鎖メチル化DNA」とは、一本鎖DNAの塩基配列中の5’−CG−3’で示される塩基配列中のシトシンの5位がメチル化された一本鎖DNAを意味する。
【0021】
本発明方法における前記「目的とするDNA領域」を換言すると、検体中のDNA含量を調べたいDNA領域ともいえる。例えば、Lysyl oxidase、HRAS-like suppressor、bA305P22.2.1、Gamma filamin、HAND1、Homologue of RIKEN 2210016F16、FLJ32130、PPARG angiopoietin-related protein、Thrombomodulin、p53-responsive gene 2、Fibrillin2、Neurofilament3、disintegrin and metalloproteinase domain 23、G protein-coupled receptor 7、G-protein coupled somatostatin and angiotensin-like peptide receptor、Solute carrier family 6 neurotransmitter transporter noradrenalin member 2等の有用タンパク質遺伝子のプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)等を自由に挙げることができる。「目的とするDNA領域」においてメチル化されたDNAを個々に検出又は定量することは勿論であるが、例えば1つの検出系において「目的とするDNA領域」がより多く存在すれば、それだけ定量精度及び検出感度を向上させることができる。
【0022】
具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子がLysyl oxidase遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のLysyl oxidase遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号1で示される塩基配列(Genbank Accession No.AF270645に記載される塩基配列の塩基番号16001〜18661で示される塩基配列に相当する。)が挙げられる。配列番号1で示される塩基配列においては、ヒト由来のLysyl oxidaseタンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号2031〜2033に示されており、上記エクソン1の塩基配列は、塩基番号1957〜2661に示されている。
【0023】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子がHRAS-like suppressor遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のHRAS-like suppressor遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号2で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC068162に記載される塩基配列の塩基番号172001〜173953で示される塩基配列に相当する。)が挙げられる。配列番号2で示される塩基配列においては、ヒト由来のHRAS-like suppressor遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1743〜1953に示されている。
【0024】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、bA305P22.2.1遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のbA305P22.2.1遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号3で示される塩基配列(Genbank Accession No.AL121673に記載される塩基配列の塩基番号13001〜13889で示される塩基配列に相当する。)が挙げられる。配列番号3で示される塩基配列においては、ヒト由来のbA305P22.2.1タンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号849〜851に示されており、上記エクソン1の塩基配列は、塩基番号663〜889に示されている。
【0025】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、Gamma filamin遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のGamma filamin遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号4で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC074373に記載される塩基配列の塩基番号63528〜64390で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)が挙げられる。配列番号4で示される塩基配列においては、ヒト由来のGamma filaminタンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号572〜574に示されており、上記エクソン1の塩基配列は、塩基番号463〜863に示されている。
【0026】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、HAND1遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のHAND1遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号5で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC026688に記載される塩基配列の塩基番号24303〜26500で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)が挙げられる。配列番号5で示される塩基配列においては、ヒト由来のHAND1タンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号1656〜1658に示されており、上記エクソン1の塩基配列は、塩基番号1400〜2198に示されている。
【0027】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、Homologue of RIKEN 2210016F16遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のHomologue of RIKEN 2210016F16遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号6で示される塩基配列(Genbank Accession No.AL354733に記載される塩基配列の塩基番号157056〜159000で示される塩基配列の相補的塩基配列に相当する。)が挙げられる。配列番号6で示される塩基配列においては、ヒト由来のHomologue of RIKEN 2210016F16タンパク質のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1392〜1945に示されている。
【0028】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、FLJ32130遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のFLJ32130遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号7で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC002310に記載される塩基配列の塩基番号1〜2379で示される塩基配列の相補的塩基配列に相当する。)が挙げられる。配列番号7で示される塩基配列においては、ヒト由来のFLJ32130タンパク質のアミノ酸末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号2136〜2138に示されており、上記エクソン1と考えられる塩基配列は、塩基番号2136〜2379に示されている。
【0029】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、PPARG angiopoietin-related protein遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のPPARG angiopoietin-related protein遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号8で示される塩基配列が挙げられる。配列番号8で示される塩基配列においては、ヒト由来のPPARG angiopoietin-related proteinタンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号717〜719に示されており、上記エクソン1の5’側部分の塩基配列は、塩基番号1957〜2661に示されている。
【0030】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、Thrombomodulin遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のThrombomodulin遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号9で示される塩基配列(Genbank Accession No.AF495471に記載される塩基配列の塩基番号1〜6096で示される塩基配列に相当する。)が挙げられる。配列番号9で示される塩基配列においては、ヒト由来のThrombomodulinタンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号2590〜2592に示されており、上記エクソン1の塩基配列は、塩基番号2048〜6096に示されている。
【0031】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、p53-responsive gene 2遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のp53-responsive gene 2遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号10で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC009471に記載される塩基配列の塩基番号113501〜116000で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)が挙げられる。配列番号10で示される塩基配列においては、ヒト由来のp53-responsive gene 2遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1558〜1808に示されている。
【0032】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、Fibrillin2遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のFibrillin2遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号11で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC113387に記載される塩基配列の塩基番号118801〜121000で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)が挙げられる。配列番号11で示される塩基配列においては、ヒト由来のFibrillin2遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1091〜1345に示されている。
【0033】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、Neurofilament3遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のNeurofilament3遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号12で示される塩基配列(Genbank Accession No.AF106564に記載される塩基配列の塩基番号28001〜30000で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)が挙げられる。配列番号12で示される塩基配列においては、ヒト由来のNeurofilament3遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号614〜1694に示されている。
【0034】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、disintegrin and metalloproteinase domain 23遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のdisintegrin and metalloproteinase domain 23遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号13で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC009225に記載される塩基配列の塩基番号21001〜23300で示される塩基配列に相当する。)が挙げられる。配列番号13で示される塩基配列においては、ヒト由来のdisintegrin and metalloproteinase domain 23遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1194〜1630に示されている。
【0035】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、G protein-coupled receptor 7遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のG protein-coupled receptor 7遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号14で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC009800に記載される塩基配列の塩基番号75001〜78000で示される塩基配列に相当する。)が挙げられる。配列番号14で示される塩基配列においては、ヒト由来のG protein-coupled receptor 7遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1666〜2652に示されている。
【0036】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、G-protein coupled somatostatin and angiotensin-like peptide receptor遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、のプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のG-protein coupled somatostatin and angiotensin-like peptide receptor遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号15で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC008971に記載される塩基配列の塩基番号57001〜60000で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)が挙げられる。配列番号15で示される塩基配列においては、ヒト由来のG-protein coupled somatostatin and angiotensin-like peptide receptor遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号776〜2632に示されている。
【0037】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、Solute carrier family 6 neurotransmitter transporter noradrenalin member 2遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のSolute carrier family 6 neurotransmitter transporter noradrenalin member 2遺伝子のエクソン1と、その5’上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号16で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC026802に記載される塩基配列の塩基番号78801〜81000で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)が挙げられる。配列番号16で示される塩基配列においては、ヒト由来のSolute carrier family 6 neurotransmitter transporter noradrenalin member 2遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1479〜1804に示されている。
【0038】
本発明方法の第一工程における「目的とするDNA領域を有するDNA」とは、目的領域が微生物由来の塩基配列である場合、検体中から抽出したゲノムDNA、DNA断片、或いはRNAを逆転写酵素によりDNAとした塩基配列を意味する。
【0039】
本発明方法の第一工程における「目的とするDNA領域を有するDNA」としては、例えば、グラム陽性菌、グラム陰性菌等の細菌、真菌、ウイルス、病原性原虫等の微生物等由来のDNAや、該微生物等由来のRNAから逆転写酵素により取得したDNAを挙げることができる。例えば、Mycoplasma genitalium、Mycoplasma pneumoniae、Borrelia burgdorferi B31、Rickettsia prowazekii、Treponema pallidum、Chlamydia pneumoniae、Chlamydia trachomatis、Helicobacter pylori J99、Helicobacter pylori 26695、Haemophilus influenzae Rd、Mycobacterium tuberculosis H37Rv、Pseudomonas aeruginosa、Legionella pneumophila、Serratia marcescens、Escherichia coli、Listeria monocytogenes、Salmonella enterica、Campylobacter jejuni subsp. Jejuni、Staphylococcus aureus、Vibrio parahaemolyticus、Bacillusu cereus、Clostridium botulinum、Clostridium perfringens、Yersinia enterocolitica、Yersinia pseudotuberuculosis、Trichophyton ruburum、Trichophyton mentagrophytes、Candida albicans、Cryptococcus neoformans、Aspergillus fumigatus、Pneumocystis carinii、Coccidioides immitis、Cytomegalovirus、human herpesvirus 5、Epstein-Barr virus、Human Immunodeficiency Virus、Human Papilloma Virus、Enterovirus、Norovirus Influenza Virus、Toxoplasma gondii、Cryptosporidium parvum、Entamoeba histolyticaのゲノムDNAや、それらのRNAから逆転写酵素により作製されたDNAは、検体中の感染症原因菌、或いは食品中の食中毒原因菌等の検出に利用できる。
【0040】
第二工程は、第一工程で取得した目的とするDNA領域を有するDNAをDNAメチル化酵素で処理する工程である。
第二工程において、「目的とするDNA領域を有するDNAをDNAメチル化酵素で処理する」とは、第一工程で得られたDNAをメチル化酵素で処理し、メチル化DNAを取得することを意味する。
【0041】
「DNAメチル化酵素」とは、DNA中の塩基をメチル化する酵素であり、哺乳類細胞、細菌等から、多くのDNAメチル化酵素が単離されている。DNAメチル化酵素は、基質の塩基の種類から、アデニンメチル化酵素、シトシンメチル化酵素等、複数種類に分類される。シトシンメチル化酵素は、DNA塩基配列中の特定の配列を認識し、その配列の近くのシトシンをメチル化する酵素であり、認識する塩基配列により異なったシトシンメチル化酵素が知られている。
また、DNAメチル化酵素の触媒するDNAのメチル化反応は、制限修飾系と呼ばれる原始的な免疫系から、多数見出されている。制限修飾系とは、細菌で機能するゲノム全体を定期的なメチル化することにより、特定の配列を認識する制限酵素(制限エンドヌクレアーゼ)によって消化されないようにした上で、外来DNA(特に、バクテリオファージ)を制限酵素によって消化する機能で、バクテリオファージ感染から微生物ゲノムを防御するシステムのことである。ゲノムのメチル化に機能している酵素は、シトシン或いはアデニンをメチル化し、多くは、プリン残基の6位の窒素(N6)、或いは、5位の炭素(C5)をメチル化することが知られている。このような酵素のうち、シトシンのC5をメチル化するシトシンメチル化酵素としては、SssI(M.SssI)メチラーゼ、AluIメチラーゼ、HhaIメチラーゼ、HpaIIメチラーゼ、MspIメチラーゼ、HaeIIIメチラーゼ等が知られている。また、これらシトシンのC5位をメチル化する酵素は、認識する塩基配列が異なっており、CpGを認識するシトシンメチル化酵素は、SssIのみである。
また、ヒトゲノム中のDNAのメチル化反応としては、エピジェネティクス(遺伝子配列によらない遺伝子発現の多様性を生みだす仕組み)として、CpGのシトシンの5位(C5)のメチル化が知られており、このようなシトシンメチル化酵素として、DNAメチルトランスフェラーゼが知られている。DNAメチルトランスフェラーゼとしては、DnmtIメチルトランスフェラーゼが知られている。
従って、ヒト細胞中ではCpG配列のシトシンのC5位がメチル化されているため、人為的にゲノムをメチル化する場合には、SssIを用いることで、ヒト細胞内でのメチル化と同じ配列(CpG)の、同じシトシンの、同じ位置をメチル化することが可能となる。
シトシンメチル化酵素によりメチル化されたDNAにするためには、具体的には例えば、以下のように実施すればよい。DNA試料に、最適な10×緩衝液(NEBuffer2 (NEB社製))を5μL、S-adenosyl methionine (3.2 mM, NEB社製)を0.5μl、シトシンメチル化酵素SssI(NEB社製)を夫々0.5μL加え、次いで当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を50μLとし、37℃で30分間インキュベーションすればよい。 第二工程におけるメチル化は、目的とするDNA領域を、メチル化DNA抗体に結合させることにより、支持体へ結合するために実施するため、抽出したDNA試料の目的とする領域がメチル化されていれば、必ずしも、第二工程を実施する必要は無い。
【0042】
第三工程は、第二工程で取得したDNAメチル化酵素で処理された目的とするDNA領域を有するDNAから、目的とするDNA領域を有する一本鎖メチル化DNAを取得する工程である。
第三工程における「目的とするDNA領域を有する一本鎖メチル化DNAを取得する」とは、「第二工程でDNAメチル化酵素によりメチル化された二本鎖DNAをメチル化された一本鎖DNAに分離する」ことを意味し、メチル化された一本鎖DNAに分離するためには、二本鎖DNAを一本鎖DNAにするための一般的は操作を行えばよい。具体的には、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料を適当量の超純水に溶解し、95℃で10分間加熱し、氷中で急冷すればよい。
【0043】
他に第二工程において、メチル化された一本鎖DNAを分離する際の好ましい態様として、メチル化された一本鎖DNAを分離する際にカウンターオリゴヌクレオチドを添加すること等を挙げることができる。
本発明方法における「カウンターオリゴヌクレオチド」とは、目的とするDNA領域と同じ塩基配列を短いオリゴヌクレオチドに分割したものである。通常10〜100塩基、より好ましくは、20〜50塩基の長さに設計したものであればよい。尚、カウンターオリゴヌクレオチドは、フォーワード用プライマーあるいはリバース用プライマーが目的とするDNA領域と相補的に結合する塩基配列上には設計しない。カウンターオリゴヌクレオチドは、ゲノムDNAに比し、大過剰で添加され、目的とするDNA領域を一本鎖(正鎖)にした後、固定化メチル化DNA抗体と結合させる際に、目的とするDNA領域の相補鎖(負鎖)と目的とするDNA領域を一本鎖(正鎖)が相補性により再結合することを妨げるために添加する。目的とするDNA領域にメチル化DNA抗体を結合させて、DNAのメチル化頻度又はそれに相関関係のある指標値を測定する際に、目的領域が一本鎖である方がメチル化DNA抗体に結合しやすいからである。尚、カンウターオリゴヌクレオチドは、目的とするDNA領域に比べて、少なくとも10倍、通常は100倍以上の量が添加されることが望ましい。
【0044】
「メチル化された一本鎖DNAを分離する際にカウンターオリゴヌクレオチドを添加する」とは、具体的には、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料から、メチル化された一本鎖DNAを選択するために、生物由来生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料をカウンターオリゴヌクレオチドと混合して、目的とするDNA領域の相補鎖とカウンターオリゴヌクレオチドとの二本鎖を形成させればよい。例えば、前記DNA試料と、前記カウンターオリゴヌクレオチドを、緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithiothreitol)5μLと、100mMのMgCl溶液5μLと、1mg/mLのBSA溶液5μLを添加し、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を50μLとし、混合して、95℃で10分間加熱し、70℃まで速やかに冷却し、その温度で10分間保温し、次いで、50℃まで冷却し10分間保温し、さらに37℃で10分間保温した後、室温に戻せばよい。
【0045】
第四工程は、第三工程で取得された目的とするDNA領域を有する一本鎖メチル化DNAと、固定化メチル化DNA抗体と、を結合させて、該目的とするDNA領域を有する一本鎖メチル化DNAと該固定化メチル化DNA抗体との複合体を形成させる工程である。
第四工程における「目的とするDNA領域を有する一本鎖メチル化DNAと、固定化メチル化DNA抗体と、を結合させて、該目的とするDNA領域を有する一本鎖メチル化DNAと該固定化メチル化DNA抗体との複合体を形成させる」とは、第三工程で得られた目的とするDNA領域を有する一本鎖メチル化DNAを固定化メチル化DNA抗体と結合させて支持体に固定化することを意味する。
【0046】
「固定化メチル化DNA抗体」とは、DNA中のメチル化された塩基を抗原として結合するメチル化DNA抗体を「支持体」に固定化したものである。抗体として、好ましくは一本鎖DNA中の5位がメチル化されたシトシンを認識して結合する性質を有している抗体であればよく、より好ましくは、メチルシトシン抗体でも良い。また、市販されているメチル化DNA抗体であっても、本明細書記載のメチル化状態のDNAを特異的に認識して、特異的に結合できる抗体であればよい。従って、目的とするDNA領域を有する一本鎖メチル化DNAと固定化メチル化DNA抗体との複合体を形成させることで、目的とするDNA領域を有する一本鎖メチル化DNAは支持体に固定化される。
「メチル化DNA抗体」としては、より望ましくは、一本鎖DNA中の5位がメチル化されたシトシンを認識して結合する性質を有している抗体であればよく、より具体的には、メチルシトシン抗体でも良い。また、市販されているメチル化DNA抗体であっても、本明細書記載のメチル化状態のDNAを特異的に認識して、特異的に結合できる抗体であればよい。
【0047】
「支持体」としては、メチル化DNA抗体が結合可能な支持体であれば、材質及び形状は何でも良い。例えば、形状は、使用目的に適っていればよく、チューブ状、テストプレート状、フィルター状、ディスク状、ビーズ状等が挙げられる。また、材質としては、通常の免疫測定法用支持体として用いられるもの、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ナイロン等の合成樹脂、又は、前記合成樹脂にスルホン基、アミノ基等の反応性官能基を導入したものでも良い。また、ガラス、多糖類若しくはその誘導体(セルロース、ニトロセルロース等)、シリカゲル、多孔性セラミックス、金属酸化物等でも良い。
【0048】
メチル化DNA抗体を支持体に固定化して「固定化メチル化DNA抗体」として機能させる方法としては、該メチル化DNA抗体が支持体に結合する方法であればどのような方法を用いても良い。メチル化DNA抗体を支持体に結合させるには、メチル化DNA抗体を通常の遺伝子工学的な操作又は市販のキット、装置等を用いて行えばよい(固相への結合)。具体的に、メチル化DNA抗体をビオチン化して得られたビオチン化メチル化DNA抗体をストレプトアビジンで被覆した支持体(例えば、ストレプトアビジンで被覆したPCRチューブ、ストレプトアビジンで被覆した磁気ビーズ等)に固定する方法を挙げることができる。他に、メチル化DNA抗体を、アミノ基、チオール基、アルデヒド基等の活性官能基を有する分子に共有結合させた後、シランカップリング剤等で表面を活性化させたガラス、多糖類誘導体、シリカゲル、或いは合成樹脂等、若しくは耐熱性プラスチック製の支持体に共有結合させる方法もある。尚、共有結合には、例えば、トリグリセライドを5個直列に連結して成るようなスペーサー、クロスリンカー等により共有結合させる方法も挙げられる。
【0049】
メチル化DNA抗体の支持体への結合は直接的であっても間接的であってもよく、例えば、メチル化DNA抗体が直接支持体に固定化してもよく、或いはメチル化DNA抗体に対する抗体(二次抗体)を支持体に固定化し、該二次抗体にメチル化DNA抗体を結合させることで支持体に固定してもよい。
【0050】
目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)を支持体に固定(選択)するには、メチル化DNA抗体を介して支持体に固定化されていればよく、
(1)一本鎖DNA(正鎖)とメチル化DNA抗体との結合前に、メチル化DNA抗体との結合により固定化されるものであってもよく、また
(2)一本鎖DNA(正鎖)とメチル化DNA抗体との結合後に、該メチル化DNA抗体が支持体に結合することにより固定化されてもよい。
【0051】
メチル化DNA抗体は、メチル化された塩基、メチル化DNA等を抗原として、通常の方法により作成できる。具体的には、5−メチルシチジン、5−メチルシトシン、或いは、5−メチルシトシンを含むDNA等を抗原として作製された抗体からDNA中のメチルシトシンへの特異的な結合を指標として選抜することで作製できる。
動物に抗原を接触させて得られる抗体としては、動物から精製した抗原を免疫した後、IgG画分の抗体(ポリクローナル抗体)を利用する方法と、単一のクローンを生産する抗体(モノクローナル抗体)を利用する方法がある。本発明においてはメチル化DNA、或いはメチルシトシンを特異的に認識できる抗体であることが望ましいため、モノクローナル抗体を利用することが望ましい。
【0052】
モノクローナル抗体を作製する方法としては、細胞融合法による方法をあげることができる。例えば、細胞融合法は免疫したマウス由来の脾細胞(B細胞)と骨髄腫細胞とを細胞融合させることでハイブリドーマを作製し、ハイブリドーマの生産する抗体を選抜して、メチルシトシン抗体(モノクローナル抗体)を作製できる。細胞融合法でモノクローナル抗体を作製する場合は、抗原を精製する必要がなく、例えば、5−メチルシチジン、5−メチルシトシン、又は、5−メチルシトシンを含むDNA等の混合物を抗原として、免疫に用いる動物に投与できる。投与方法としては、5−メチルシチジン、5−メチルシトシン、又は、5−メチルシトシンを含むDNA等を、直接、抗体を産生させるマウスへ投与する。抗体が産生されにくい場合は、抗原を支持体へ結合させて免疫しても良い。また、アジュバント溶液(例えば、流動パラフィンとAracel Aを混合し、アジュバントとして結核菌の死菌を混合したもの)と抗原をよく混合することや、リポソームに組み入れて免疫することで、抗原の免疫性を上げることができる。或いは、抗原を含む溶液とアジュバント溶液を等量添加し、十分に乳液状にしてから、マウスの皮下或いは腹腔内に注射する方法や、ミョウバン水とよく混合してから百日咳死菌をアジュバントとして添加する方法がある。尚、最初の免疫をしてから適当な期間の後、マウスの腹腔内或いは静脈内に追加免疫することもできる。また、抗原の量が少ない場合には、抗原が浮遊する溶液を、直接マウス脾臓に注入して免疫しても良い。最終免疫から数日後に脾臓を摘出し脂肪組織を剥離してから、脾細胞浮遊液を作製する。この脾細胞と、例えばHGPRT欠損骨髄腫細胞とを細胞融合してハイブリドーマを作製する。細胞融合剤としては脾細胞(B細胞)と骨髄腫細胞を効率的に融合できる方法ならば何でもよく、例えば、センダイウイルス(HVJ)、ポリエチレングリコール(PEG)を用いる方法等があげられる。また、高電圧パルスを用いる方法で細胞融合をしても良い。細胞融合操作の後、HAT培地で培養し、脾細胞と骨髄腫細胞が融合したハイブリドーマのクローンを選択し、スクリーニングが可能になるまで細胞が成育するのを待つ。目的とする抗体を生産するハイブリドーマを選択するための抗体の検出法や抗体力価の測定法には、抗原抗体反応系を利用できる。具体的には、可溶性抗原に対する抗体測定法で、放射性同位元素免疫定量法(RIA)、酵素免疫定量法(ELISA)等があげられる。
【0053】
一本鎖DNA中に存在するCpGが少なくとも一箇所以上メチル化されていれば抗メチル化抗体と結合することができる。従って、本発明の方法における「メチル化された一本鎖DNA」とは、一本鎖DNA中に存在するCpGが少なくとも一箇所以上メチル化されている一本鎖DNAを意味しており、一本鎖DNA中に存在するCpGの全てがメチル化されている一本鎖DNAに限った意味ではない。
【0054】
尚、「相補的な(塩基対合による)結合」とは、塩基同士の水素結合による塩基対合により二本鎖DNAを形成することを意味する。例えば、DNAを構成する二本鎖の各々一本鎖DNAを構成する塩基が、プリンとピリミジンの塩基対合により二本鎖を形成することであり、より具体的には、複数の連続した、チミンとアデニン、グアニンとシトシンの水素結合による塩基結合により、二本鎖DNAを形成することを意味する。相補性によって結合することを「相補的な結合」と呼ぶこともある。「相補的な結合」は、「相補的に塩基対合しうる」又は「相補性により結合」又は「相補性によって結合」と表現することもある。また、相補的に結合しうる塩基配列を互いに「相補性を有する」[相補性である]と表現することもある。尚、人工的に作製されるオリゴヌクレオチドに含まれるイノシンがシトシン、又はアデニン、又はチミンと水素結合の水素結合で結合することも意味する。
【0055】
これらの第五工程から第十工程は、固定化された目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAを、メチル化DNA抗体から分離して鋳型とし、フォワード用プライマーとリバース用プライマーをプライマーとして用いてPCRを実施することにより、目的とするDNA領域を増幅する工程である。
【0056】
第五工程において、第四工程で得られた複合体に含まれる前記目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAを、固定化メチル化DNA抗体から分離して一本鎖状態であるDNA(正鎖)にする。具体的には例えば、第四工程で得られた未消化物である一本鎖DNAに、アニーリングバッファーを添加することにより、混合物を得る。次いで、得られた混合物を95℃で数分間加熱することにより、一本鎖状態であるDNA(正鎖)を得る。
【0057】
第六工程において、第五工程で得られた一本鎖状態であるDNA(正鎖)を、該一本鎖状態であるDNA(正鎖)が有する塩基配列の部分塩基配列(正鎖)であって、且つ、前記目的とするDNA領域の塩基配列(正鎖)の3’末端より更に3’末端側に位置する部分塩基配列(正鎖)に対して相補性のある塩基配列(負鎖)を有するプライマー(フォーワード用プライマー)を伸長プライマーとして、該伸長プライマーを1回伸長させることにより、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)を二本鎖DNAに伸長形成させる。具体的には例えば、第五工程で得られた一本鎖状態のDNA(正鎖)とフォワードプライマーを、滅菌超純水を17.85μL、最適な緩衝液(例えば、100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2)を3μL、2mM dNTPを3μL、5N ベタインを6μL加え、次いで当該混合物にAmpliTaq(DNAポリメラーゼの1種:5U/μL)を0.15μL加えて液量を30μLとした溶液中で混合し、37℃で約2時間インキュベーションし、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)を二本鎖DNAに伸長形成させる。
【0058】
第七工程において、第六工程で伸長形成された二本鎖DNAを、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(負鎖)に分離する。具体的には例えば、第六工程で伸長形成された二本鎖DNAに、アニーリングバッファーを添加することにより混合物を得て、得られた混合物を95℃で数分間加熱することにより、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAに一旦分離する。
【0059】
第八工程において、第七工程で得られた目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)を鋳型として、前記フォワード用プライマーを伸長プライマーとして、該伸長プライマーを一回伸長させることにより、前記目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAを二本鎖DNAとして伸長形成させる。具体的には例えば、(i) 生成した目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)に、前記フォワード用プライマーをアニーリングさせるために、例えば、前記フォワード用プライマーのTm値の約0〜20℃低い温度まで速やかに冷却し、その温度で数分間保温する。(ii)その後、室温に戻す。(iii)(i)でアニーリングさせた前記一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記フォワード用プライマーを伸長プライマーとして、当該プライマーを1回伸長させることにより、前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAを二本鎖DNAとして伸長形成させる。
【0060】
第九工程において、第七工程で得られた目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(負鎖)を鋳型として、前記目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(負鎖)が有する塩基配列の部分塩基配列(負鎖)であって、且つ、前記目的とするDNA領域の塩基配列(正鎖)に対して相補性のある塩基配列(負鎖)の3’末端より更に3’末端側に位置する部分塩基配列(負鎖)に対して相補性のある塩基配列(正鎖)を有するプライマー(リバース用プライマー)を伸長プライマーとして、該伸長プライマーを1回伸長させることにより、前記目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAを二本鎖DNAとして伸長形成させる。具体的には例えば、上記(iii)の第八工程と同様に伸長反応での操作方法等に準じて実施すればよい。
【0061】
第十工程において、第八工程又は第九工程で得られた伸長形成された二本鎖DNAを一本鎖状態に分離した後、繰り返すことにより、前記目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAを検出可能な量になるまで増幅し、第十一工程において、増幅されたDNAの量を定量又は検出する。具体的には、第六工程から開始して第十工程に至るまでの反応を、一つのPCR反応として実施することもできる。また、第六工程までを独立した反応として実施し、第七工程から第十工程をPCR反応として実施することもできる。目的とするDNA領域(即ち、目的領域)を増幅する方法としては、例えば、PCRを用いることができる。目的領域を増幅する際に、予め蛍光等で標識されたプライマーを使用してその標識を指標とすれば、電気泳動等の煩わしい操作を実施せずに増幅産物の有無を評価できる。PCR反応液としては、例えば、本発明の方法の第五工程で得たDNAに、50μMのプライマーの溶液を0.15μlと、2mM dNTPを2.5μlと、10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、20mM MgCl2、0.01% Gelatin)を2.5μlと、AmpliTaq Gold (耐熱性DNAポリメラーゼの一種: 5U/μl)を0.2μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を25μlとした反応液をあげることができる。目的とするDNA領域(即ち、目的領域)は、GCリッチな塩基配列が多いため、時に、ベタイン、DMSO等を適量加えて反応を実施してもよい。反応条件としては、例えば、前記のような反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて30秒間次いで55〜65℃にて30秒間更に72℃にて30秒間を1サイクルとする保温を30〜40サイクル行う条件が挙げられる。
【0062】
第十一工程は、第十工程で増幅されたDNAの量を定量又は検出する工程である。
第十一工程おいて、第十工程までにPCRで得られたDNA増幅産物を検出する。例えば、予め標識されたプライマーを使用した場合には、蛍光標識体の量の測定によりPCR反応での増幅量を評価することができる。また、標識されていない通常のプライマーを用いたPCRを実施した場合は、金コロイド粒子、蛍光等で標識したプローブ等をアニーリングさせ、目的領域に結合した当該プローブの量を測定することにより検出することができる。また、増幅産物の量をより精度よく求めるには、例えば、リアルタイムPCR法を用いればよい。リアルタイムPCR法とは、PCRをリアルタイムでモニターし、得られたモニター結果をカイネティックス分析する方法であり、例えば、遺伝子量に関して2倍程度の僅かな差異をも検出できる高精度の定量PCR法として知られる方法である。当該リアルタイムPCR法には、例えば、鋳型依存性核酸ポリメラーゼプローブ等のプローブを用いる方法、サイバーグリーン等のインターカレーターを用いる方法等を挙げることができる。リアルタイムPCR法のための装置及びキットは市販されるものを利用してもよい。以上の如く、検出については特に限定されることはなく、これまでに周知のあらゆる方法による検出が可能である。これら方法では、反応容器を移し換えることなく検出までの操作が可能となる。また、DNAをエチジウムブロマイドやサイバーグリーン等によりDNAを染色して検出しても良い。
【0063】
尚、本発明方法において、第五工程から第十工程までを一連のPCR反応として実施しても構わないし、夫々の工程を独立して実施しても構わない。例えば、固定化メチル化DNA固体が、PCRチューブに固定化されている場合、第五工程から第十工程までを一つのPCR反応として実施する事も可能である。
【0064】
また、本発明方法に下記工程を更に加えることで検体中に含まれるDNA中の目的とする領域のメチル化されたDNAの含量の割合を算出する方法(以下、メチル化割合算出方法と記すこともある)とすることもできる。
検体中に含まれる目的とするDNA領域のメチル化されたDNAをシトシンメチル化酵素によりメチル化せずに該目的とするDNA領域のメチル化されたDNA(元来メチル化されていたDNAの総量)を第十工程で検出可能な量になるまで増幅して定量されたDNAの量と、前記検体中に含まれる目的とするDNA領域のメチル化されたDNAをシトシンメチル化酵素によりメチル化して該目的とするDNA領域のメチル化されたDNA(元来メチル化されていたDNA及び元来メチルされていなかったDNAの総量)を第十工程で検出可能な量になるまで増幅して定量されたDNAの量と、の差異を指標として前記目的とする領域のメチル化されたDNAの割合を算出する工程。
【0065】
メチル化割合算出方法は、下記のような場面において利用すればよい。
各種疾患(例えば、癌)においてDNAのメチル化異常が起こることが知られており、このDNAメチル化異常を検出することにより、各種疾患の程度(度合い)を測定することが可能と考えられている。例えば、疾患由来の生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおいて100%メチル化されていないDNA領域があり、そのDNA領域について本発明方法及び本メチル化割合算出方法を実施すれば、新たにメチル化されるDNAの量は増加する。一方、疾患由来の生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおいて100%メチル化されているDNA領域があり、そのDNA領域について、本発明方法及び本メチル化割合算出方法を実施すれば、新たにメチル化されるDNAの量はほぼ0に近い値となる。また、例えば、健常者の生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおいてメチル化割合が低く且つ疾患患者の生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおいてメチル化割合が高いDNA領域があり、そのDNA領域について、本発明方法及び本メチル化割合算出方法を実施すれば、健常者の場合には、メチル化されたDNAの量は0に近い値を示し、一方、疾患患者の場合には、健常者の場合における値よりも有意に高い値を示す。このため、この値の差異に基づき、「疾患の度合い」を判定することができる。ここでの「疾患の度合い」とは、一般に当該分野において使用される意味と同様であって、具体的には例えば、生物由来検体が細胞である場合には当該細胞の悪性度を意味し、また例えば、生物由来検体が組織である場合には当該組織における疾患細胞の存在量等を意味している。従って、本発明方法及び本メチル化割合算出方法は、メチル化異常を調べることにより、各種疾患を診断することを可能にする。このように各種疾患の診断を目的としたメチル化割合を調べる際に、目的とするDNA領域をシトシンメチル化酵素によりメチル化するためには、CpGメチラーゼであるSssIメチラーゼを用いることが好ましい。
【0066】
このような本発明方法及び本メチル化割合算出方法における、目的領域のメチル化されたDNA量の測定、メチル化割合の測定を行うための各種方法において使用し得る制限酵素、プライマー又はプローブは、検出用キットの試薬としても有用である。本発明により、これら制限酵素、プライマー又はプローブ等を試薬として使用する検出用キットや、これらプライマー又はプローブ等が担体上に固定化されてなる検出用チップも提供可能となり、本発明方法及び本メチル化割合算出方法の権利範囲は、当該方法の実質的な原理を利用してなる前記のような検出用キットや検出用チップのような形態での使用も可能とするものである。
【0067】
また、本発明方法の第四工程を行うことにより、検体中に含まれるDNA試料を、固定化メチル化DNA抗体と結合させることにより、前記目的とするDNA領域を有する一本鎖メチル化DNAを固定相へ選択させるDNAの濃縮方法(以下、本濃縮方法と記すこともある。)を提供することも可能である。一本鎖メチル化DNAと固定化メチル化DNA抗体との親和性を利用して、固定相へ一本鎖メチル化DNAを結合させる方法は、DNAの濃縮及び洗浄のための簡易方法としても利用できる。例えば、目的とするDNA領域中に存在するCpGが少なくとも一箇所以上メチル化されていればメチルシトシン抗体と結合することができるため、Sss Iメチラーゼによりメチル化したDNA試料をメチルシトシン抗体により固定相に選択してPCRに供することが可能になる。PCR反応は、シトシンがメチル化されても阻害されないため、PCRに供するDNAサンプルが微量な場合や、PCRに供するDNAの濃縮工程を簡便にしたい場合には、本濃縮方法が有用である。また、生検サンプル中、或いは食品等に含まれるグラム陽性菌、グラム陰性菌等の細菌、真菌、ウイルス、病原性原虫等の微生物等由来のDNAを検出しようとする場合、PCRによるゲノムの検出を実施しようとする場合がある。このような場合、通常、微量のDNAを扱うことになり、PCRを開始するまでにPCRに供するDNAの濃縮や洗浄の操作が必要となるが、本濃縮方法を用いると、シトシンメチル化酵素によりメチル化したDNAをメチルシトシン抗体でPCRを実施するチューブへ固定することで、大幅に操作を単純化できる。
また、検体からRNAを抽出し、逆転写酵素によりDNAを合成し、PCRを行う場合には、RNAから合成した極微量のDNAを取り扱うことになる。極微量のDNAを扱う場合、操作上の試料の喪失を少なくするために、作業工程数を少なくする必要があるが、本濃縮方法では、このような極微量のDNAをPCRへ供するための前操作としてのDNAの濃縮や洗浄の工程を少なくすることが可能である。
【0068】

通常、生検サンプルや食品中に含まれる病原性微生物の有無を検査する場合、各々微生物抗原に対して免疫法による検査により、該病原性微生物の有無を調べたり、該病原性微生物を特定する。しかし、この免疫法に用いる抗体の作製は容易ではなく、更に複数の病原性微生物を検出するためには、各々の病原性微生物の抗原に対する抗体を作製する必要がある。そこで、本発明方法を用いることにより、これら煩雑な抗体作製を行うことなく病原性微生物に対する簡易な検査が可能となる。また、本発明方法では、異なる病原性微生物の塩基配列を同時に検査できることから、一つの検体中に含まれる数種類の病原性微生物を、同時に検出できるようになる。
通常、生検サンプル中、或いは食品等の一般製品中に含まれる病原性微生物等の有無を検査する場合、各々病原性微生物等の抗原に対して免疫法による検査により、該病原性微生物の有無を調べたり、該病原性微生物を特定する。しかし、免疫法に用いる抗体の作製は容易ではなく、更に複数の病原性微生物を検出するためには、各々病原性微生物等の抗原に対する抗体を作製する必要がある。そこで、本発明方法を用いることにより、これら煩雑な抗体を作製を行うことなく病原性微生物に対する簡易な検査が可能となる。また、本発明方法では、異なる病原性微生物の塩基配列を同時に検査できることから、一つの検体中に含まれる数種類の病原性微生物を、同時に検出できるようになる。具体的には食中毒菌として、Listeria monocytogenes、Salmonella enterica、Campylobacter jejuni subsp. Jejuni、Staphylococcus aureus、Vibrio parahaemolyticus、Bacillusu cereus、Clostridium botulinum、Yersinia enterocolitica、Yersinia pseudotuberuculosis、Clostridium perfringens等が知られている。また、本発明方法は環境中の微生物等のゲノムを検出することにより、産業上の有用な微生物等の同定や土壌、河川又は湖沼の底質等の微生物群の簡易調査等にも用いることができる。環境中の微生物のうち、例えば、Methanococcus jannaschii、Methanobacterium thermoautotrophicum deltaH、Aquifex aeolicus、Pyrococcus horikoshii OT3、Archaeoglobus fulgidus、Thermotoga maritima MSB8、Aeropyrum pernix K1、Haloferax mediterraneiを生息を確認することが可能となる。また、Geobacter sulfurreducensのように工業に利用できうる細菌、Streptococcus thermophilusのような醗酵に用いられる微生物の検出及び同定も可能となる。
【0069】
例えば、前記目的とするDNA領域としては、具体的には、Genbank Accession No. NC_001139等に示される酵母染色体VIIの塩基番号271743-272083に相当する領域(配列番号31)、Genbank Accession No. NC_001139等に示される酵母染色体VIIの塩基番号384569-384685(配列番号43)のように、遺伝子をコードしない塩基配列でもよい。また、種々の病原性微生物に共通する特徴的な遺伝子の、病原性微生物で保存された塩基配列を検出対象とすることは、複数の病原性微生物を同時に検出する方法を提供しうるものであるため有用である。具体的には、mce-family遺伝子(Micobacterium tuberculosis)、13番染色体上のtRNA-Tyr塩基配列(Cryptococcus neoformans)、chitin synthase activator (Chs3)は、Aspergillus fumigatus及びNeosartorya 属に特有の塩基配列を有することから、ヒトの痰、肺の生検サンプル中から抽出したDNA中に、これら微生物由来のDNAが含まれるか否かを検定することで、微生物による感染症の検定に用いることができる。また、actA(Listeria monocytogenes)、pyrG(NC_002163、Campylobacter jejuni subsp. jejuni)等は食中毒菌に特有共通した遺伝子であることから、これらの遺伝子は、食中毒における微生物検定に用いることができる。また、thrAは、Salmonella enterica、Yersinia enterocolitica、Escherichia coliで保存された配列を有しており、ひとつの遺伝子で複数の微生物を検出することも可能である。
【0070】
データベース上で公開されている塩基配列のうち、微生物特有の塩基配列を探索することができる。例えば、PubMed等の公開データベース上にある塩基配列であれば、通常の操作により取得することが可能であり、取得した塩基配列は、通常の操作によるBlast検索をかけることにより、特有の塩基配列であるか否かを検討することができる。尚、特有の塩基配列とは、検出対象中の塩基配列が検出対象となる微生物のゲノム塩基配列以外の生物由来の塩基配列と相同性を示す塩基配列を有さないことを意味する。
【実施例】
【0071】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
実施例1
市販のメチルシトシン抗体(Aviva Systems Biology社製)を、市販ビオチン化キット(Biotin Labeling Kit-NH2、同仁化学研究所製)を用いて、カタログに記載された方法に準じて、ビオチン標識した。得られたビオチン標識メチルシトシン抗体を溶液[抗体約0.25 μg/μL 0.1% BSA含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)溶液]として冷蔵保存した。
【0073】
ストレプトアビジン被覆済みPCRチューブ(計8本)に、合成して得られたビオチン標識メチルシトシン抗体の0.1 μg/50 μL溶液を各50μLの割合で添加し、約1時間室温で放置してPCRチューブに固定化した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、当該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作を更に2回繰り返した(以上、本発明方法で使用する固定化メチル化DNA抗体の調製に相当する)。
【0074】
パン酵母酵母株X2180−1AをYPD培地(1% Yeast extract、2% Peptone、2% Glucose, pH 5.6-6.0)で、濁度がOD600 0.6-1.0 になるまで培養し、10,000g で10分間遠心して、1x107の酵母細胞を調製した。調製した酵母細胞から、Methods in Yeast Genetics(Cold Spring Harbor Laboratory)に記載されているような、一般的な酵母ゲノムの調製法を用いて酵母ゲノムを取得した。
調製した酵母細胞を、バッファーA(1M ソルビトール、 0.1M EDTA、pH 7.4)に懸濁し、0.1% 2-メルカプトエタノール(終濃度14mM)及び100U zymolase(10 mg/ml)を添加して、溶液が透明になるまで 30°C で1時間、撹拌しながらインキュベートした。550gで10分間遠心してプロトプラストを回収後、バッファーB(50 mM Tris-HCl、pH 7.4、 20 mM EDTA)に懸濁してから、ドデシル硫酸ナトリウムを1%(w/v)になるように加えた後、65℃で30分間インキュベートした。続いて、体積比2/5量の5M CH3COOKを添加して混和してから30分間氷冷後、15,000gで30分間遠心して上清を回収した。回収した上清に体積比1/10量の3M CH3COONaと等量のイソプロパノ−ルを加えてよく混和し、15,000g 4℃で30分間遠心して得られた沈澱を70%エタノールでリンスして回収した。沈澱を乾燥させてから、1ml のTEバッファー(10 mM Tris-HCl、pH 8.0、1 mM EDTA)に溶解し、40μg/mlになるようにRNase A(Sigma社製)を加えて37℃で1時間インキュベートし、続いて、混合液にproteinase K(Sigma社製)を500μg/ml及びドデシル硫酸ナトリウムを1%(w/v)になるように加えた後、これを55℃で約16時間振とうした。振とう終了後、当該混合物をフェノール[1M Tris-HCl(pH 8.0)にて飽和]・クロロホルム抽出処理した。水層を回収し、これにNaClを0.5Nとなるよう加えた後、これをエタノール沈澱処理して生じた沈澱を回収した。回収された沈澱を70%エタノールでリンスすることにより、ゲノムDNAを得た。
【0075】
得られたゲノムDNAから、以下の配列番号17及び配列番号18で示されるPCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー(PF1及びPR1)及び反応条件を用いてPCRを行うことにより、供試サンプルとして用いられるDNAフラグメント(S、配列番号19、Genbank Accession No. NC_001136等に示される酵母染色体IVの塩基番号1264-1352に相当する領域)を増幅した。
【0076】
<PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー>
PF1:5’- GGAAGCTATTGACATGGTATCG -3’ (配列番号17)
PR1:5’-AGTCTGTCCTACGTATCTGACA -3’ (配列番号18)
【0077】
<DNAフラグメント>
S:5’- GGAAGCTATTGACATGGTATCGAAAGGTTGTCCACATTGGGAAGTAACTTGGTTCTATGAATCTTCATGTCAGATACGTAGGACAGACT -3’(配列番号19)
【0078】
PCRの反応液としては、鋳型とするゲノムDNAを10ngと、5μMに調製されたオリゴヌクレオチドプライマー溶液各3μlと、each 2mM dNTPを5μlと、10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を5μlと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold、ABI社製)5U/μlを0.25μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μlとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて20秒間次いで61℃にて30秒間更に72℃にて30秒間を1サイクルとする保温を40サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、2%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認し、Wizard SV Gel/PCR Kit(PROMEGA社)により、DNAフラグメントSを精製した。
【0079】
得られたDNAフラグメントSについて、以下の溶液をそれぞれ2連で調製した。
溶液A: 100pg/20μL TE溶液
溶液B: 10pg/20μL TE溶液
溶液C: 1 pg/20μL TE溶液
溶液D: TE溶液(ネガティブコントロール液)
【0080】
得られた夫々の溶液を20μLと、SssI methylase (NEB社製)を0.5μlと、10xNEBuffer2 (NEB社製)を5μlと、S-adenosyl methionine (3.2 mM, NEB社製)を0.5μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μlとしたものを調製した。当該反応液を、37℃にて30分間インキュベーションし、配列番号19で示される塩基配列からなるDNAフラグメントSをメチル化することにより、配列番号20で示される塩基配列からなるメチル化されたDNAフラグメントS2を得た。
【0081】
<DNAフラグメント>
S:5’- GGAAGCTATTGACATGGTATCGAAAGGTTGTCCACATTGGGAAGTAACTTGGTTCTATGAATCTTCATGTCAGATACGTAGGACAGACT -3’ (配列番号19)
<メチル化されたDNAフラグメント>(Nは5-メチルシトシンを表す)
S2:5’- GGAAGCTATTGACATGGTATNGAAAGGTTGTCCACATTGGGAAGTAACTTGGTTCTATGAATCTTCATGTCAGATANGTAGGACAGACT -3’ (配列番号20)
【0082】
上記の反応液を、95℃にて10分間保温した後、4℃にて10分間保温し、DNAフラグメントを1本鎖状態とした。
【0083】
前記のビオチン標識メチルシトシン抗体が固定化されたストレプトアビジン被覆済みPCRチューブに、前記で調製したDNAフラグメントの反応液50μLを加え、室温で30分間放置した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、当該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作を更に2回繰り返し、配列番号20で示される塩基配列からなるメチル化されたDNAフラグメントS2をPCRチューブに固定した。
【0084】
<メチル化されたDNAフラグメント>(Nは5-メチルシトシンを表す)
S2:5’- GGAAGCTATTGACATGGTATNGAAAGGTTGTCCACATTGGGAAGTAACTTGGTTCTATGAATCTTCATGTCAGATANGTAGGACAGACT -3’ (配列番号20)
【0085】
次に、上記のPCRチューブに、配列番号17及び配列番号18で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーPF1及びPR1の各溶液及び、下記の反応条件を用いてPCRを行うことにより、配列番号19で示される塩基配列からなる目的とするDNA領域Sを増幅した。
【0086】
<PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー>
PF1:5’- GGAAGCTATTGACATGGTATCG -3’ (配列番号17)
PR1:5’- AGTCTGTCCTACGTATCTGACA -3’ (配列番号18)
【0087】
<目的とするDNA領域>
S:5’- GGAAGCTATTGACATGGTATCGAAAGGTTGTCCACATTGGGAAGTAACTTGGTTCTATGAATCTTCATGTCAGATACGTAGGACAGACT -3’ (配列番号19)
【0088】
PCRの反応液としては、鋳型とするDNAに、5μMに調製されたオリゴヌクレオチドプライマー溶液各3μLと、each 2mM dNTPを5μLと、緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を5μLと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold、ABI社製)5U/μLを0.25μLとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μLとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて20秒間次いで61℃にて30秒間更に72℃にて30秒間を1サイクルとする保温を35サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、2%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認した。その結果は、以下の通りであった。
【0089】
酵母ゲノム由来DNA断片の溶液A(100 pg)、溶液B(10 pg)、及び、溶液C(1 pg)で、増幅が確認された。コントロール溶液D(0 pg)では、増幅が確認されなかった。
【0090】
以上より、前記の目的とするDNA領域を含むDNAをメチルシトシン抗体を用いて選択することが可能であること、且つ、前記の目的とするDNA領域を検出可能な量になるまで増幅できることが確認された。
【0091】
実施例2
市販のメチルシトシン抗体(Aviva Systems Biology社製)を、市販ビオチン化キット(Biotin Labeling Kit-NH2、同仁化学研究所製)を用いて、カタログに記載された方法に準じて、ビオチン標識した。得られたビオチン標識メチルシトシン抗体を溶液[抗体約0.25 μg/μL 0.1% BSA含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)溶液]として冷蔵保存した。
【0092】
ストレプトアビジン被覆済みPCRチューブ(計8本)に、合成して得られたビオチン標識メチルシトシン抗体の0.1 μg/50 μL溶液を各50μLの割合で添加し、約1時間室温で放置してPCRチューブに固定化した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、当該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作を更に2回繰り返した(以上、本発明方法で使用する固定化メチル化DNA抗体の調製に相当する)。
【0093】
パン酵母酵母株X2180−1AをYPD培地(1% Yeast extract、2% Peptone、2% Glucose, pH 5.6-6.0)で、濁度がOD600 0.6-1.0 になるまで培養し、10,000g で10分間遠心して、1x107の酵母細胞を調製した。調製した酵母細胞から、Methods in Yeast Genetics(Cold Spring Harbor Laboratory)に記載されているような、一般的な酵母ゲノムの調製法を用いて酵母ゲノムを取得した。
調製した酵母細胞を、バッファーA(1M ソルビトール、 0.1M EDTA、pH 7.4)に懸濁し、0.1% 2-メルカプトエタノール(終濃度14mM)及び100U zymolase(10 mg/ml)を添加して、溶液が透明になるまで 30°C で1時間、撹拌しながらインキュベートした。550gで10分間遠心してプロトプラストを回収後、バッファーB(50 mM Tris-HCl、pH 7.4、 20 mM EDTA)に懸濁してから、ドデシル硫酸ナトリウムを1%(w/v)になるように加えた後、65℃で30分間インキュベートした。続いて、体積比2/5量の5M CH3COOKを添加して混和してから30分間氷冷後、15,000gで30分間遠心して上清を回収した。回収した上清に体積比1/10量の3M CH3COONaと等量のイソプロパノ−ルを加えてよく混和し、15,000g 4℃で30分間遠心して得られた沈澱を70%エタノールでリンスして回収した。沈澱を乾燥させてから、1ml のTEバッファー(10 mM Tris-HCl、pH 8.0、1 mM EDTA)に溶解し、40μg/mlになるようにRNase A(Sigma社製)を加えて37℃で1時間インキュベートし、続いて、混合液にproteinase K(Sigma社製)を500μg/ml及びドデシル硫酸ナトリウムを1%(w/v)になるように加えた後、これを55℃で約16時間振とうした。振とう終了後、当該混合物をフェノール[1M Tris-HCl(pH 8.0)にて飽和]・クロロホルム抽出処理した。水層を回収し、これにNaClを0.5Nとなるよう加えた後、これをエタノール沈澱処理して生じた沈澱を回収した。回収された沈澱を70%エタノールでリンスすることにより、ゲノムDNAを得た。
【0094】
得られたゲノムDNAから、以下の配列番号17及び配列番号18で示されるPCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー(PF1及びPR1)及び反応条件を用いてPCRを行うことにより、供試サンプルとして用いられるDNAフラグメント(S、配列番号19、Genbank Accession No. NC_001136等に示される酵母染色体IVの塩基番号1264-1352に相当する領域)を増幅した。
【0095】
<PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー>
PF1:5’- GGAAGCTATTGACATGGTATCG -3’ (配列番号17)
PR1:5’- AGTCTGTCCTACGTATCTGACA -3’ (配列番号18)
【0096】
<DNAフラグメント>
S:5’- GGAAGCTATTGACATGGTATCGAAAGGTTGTCCACATTGGGAAGTAACTTGGTTCTATGAATCTTCATGTCAGATACGTAGGACAGACT -3’(配列番号19)
【0097】
PCRの反応液としては、鋳型とするゲノムDNAを10ngと、5μMに調製されたオリゴヌクレオチドプライマー溶液各3μlと、each 2mM dNTPを5μlと、10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を5μlと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold、ABI社製)5U/μlを0.25μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μlとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて20秒間次いで61℃にて30秒間更に72℃にて30秒間を1サイクルとする保温を40サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、2%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認し、Wizard SV Gel/PCR Kit(PROMEGA社)により、DNAフラグメントSを精製した。
【0098】
得られたDNAフラグメントSについて、ヒト血液ゲノムDNA(クロンテック社製)を含有する以下の溶液をそれぞれ2連で調製した。
溶液A:100pg/20μL TE溶液(100ngヒト血液ゲノム/20μL含有)
溶液B:10pg/20μL TE溶液(100ngヒト血液ゲノム/20μL含有)
溶液C:1pg/20μL TE溶液(100ngヒト血液ゲノム/20μL含有)
溶液D:TE溶液(100ngヒト血液ゲノム/20μL含有)
【0099】
得られた夫々の溶液を20μLと、SssI methylase (NEB社製)を0.5μlと、10xNEBuffer2 (NEB社製)を5μlと、S-adenosyl methionine (3.2 mM, NEB社製)を0.5μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μlとしたものを調製した。当該反応液を、37℃にて30分間インキュベーションし、配列番号19で示される塩基配列からなるDNAフラグメントSをメチル化することにより、配列番号20で示される塩基配列からなるメチル化されたDNAフラグメントS2を得た。
【0100】
<DNAフラグメント>
S:5’- GGAAGCTATTGACATGGTATCGAAAGGTTGTCCACATTGGGAAGTAACTTGGTTCTATGAATCTTCATGTCAGATACGTAGGACAGACT -3’ (配列番号19)
<メチル化されたDNAフラグメント>(Nは5-メチルシトシンを表す)
S2:5’- GGAAGCTATTGACATGGTATNGAAAGGTTGTCCACATTGGGAAGTAACTTGGTTCTATGAATCTTCATGTCAGATANGTAGGACAGACT -3’ (配列番号20)
【0101】
上記の反応液を、95℃にて10分間保温した後、4℃にて10分間保温し、DNAフラグメントを1本鎖状態とした。
【0102】
前記のビオチン標識メチルシトシン抗体が固定化されたストレプトアビジン被覆済みPCRチューブに、前記で調製したDNAフラグメントの反応液50μLを加え、室温で30分間放置した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、当該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作を更に2回繰り返し、配列番号20で示される塩基配列からなるメチル化されたDNAフラグメントS2をPCRチューブに固定した。
【0103】
<メチル化されたDNAフラグメント>(Nは5-メチルシトシンを表す)
S2:5’- GGAAGCTATTGACATGGTATNGAAAGGTTGTCCACATTGGGAAGTAACTTGGTTCTATGAATCTTCATGTCAGATANGTAGGACAGACT -3’ (配列番号20)
【0104】
次に、上記のPCRチューブに、配列番号17及び配列番号18で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーPF1及びPR1の各溶液及び、下記の反応条件を用いてPCRを行うことにより、配列番号19で示される塩基配列からなる目的とするDNA領域Sを増幅した。
【0105】
<PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー>
PF1:5’- GGAAGCTATTGACATGGTATCG -3’ (配列番号17)
PR1:5’- AGTCTGTCCTACGTATCTGACA-3’ (配列番号18)
【0106】
<目的とするDNA領域>
S:5’- GGAAGCTATTGACATGGTATCGAAAGGTTGTCCACATTGGGAAGTAACTTGGTTCTATGAATCTTCATGTCAGATACGTAGGACAGACT -3’ (配列番号19)
【0107】
PCRの反応液としては、鋳型とするDNAに、5μMに調製されたオリゴヌクレオチドプライマー溶液各3μLと、each 2mM dNTPを5μLと、緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を5μLと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold、ABI社製)5U/μLを0.25μLとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μLとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて20秒間次いで61℃にて30秒間更に72℃にて30秒間を1サイクルとする保温を35サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、2%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認した。その結果は、以下の通りであった。
【0108】
酵母ゲノム由来DNA断片の溶液A(100 pg)、溶液B(10 pg)、及び、溶液C(1 pg)で、増幅が確認された。コントロール溶液D(0 pg)では、増幅が確認されなかった。
【0109】
以上より、前記の目的とするDNA領域を含むDNAをメチルシトシン抗体を用いて選択することが可能であること、且つ、前記の目的とするDNA領域を検出可能な量になるまで増幅できることが確認された。
【0110】
実施例3
市販のメチルシトシン抗体(Aviva Systems Biology社製)を、市販ビオチン化キット(Biotin Labeling Kit-NH2、同仁化学研究所製)を用いて、カタログに記載された方法に準じて、ビオチン標識した。得られたビオチン標識メチルシトシン抗体を溶液[抗体約0.25 μg/μL 0.1% BSA含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)溶液]として冷蔵保存した。
【0111】
ストレプトアビジン被覆済みPCRチューブ(計8本)に、合成して得られたビオチン標識メチルシトシン抗体の0.1 μg/50 μL溶液を各50μLの割合で添加し、約1時間室温で放置してPCRチューブに固定化した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、当該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作を更に2回繰り返した(以上、本発明方法で使用する固定化メチル化DNA抗体の調製に相当する)。
【0112】
パン酵母酵母株X2180−1AをYPD培地(1% Yeast extract、2% Peptone、2% Glucose, pH 5.6-6.0)で、濁度がOD600 0.6-1.0 になるまで培養し、10,000g で10分間遠心して、1x107の酵母細胞を調製した。調製した酵母細胞から、Methods in Yeast Genetics(Cold Spring Harbor Laboratory)に記載されているような、一般的な酵母ゲノムの調製法を用いて酵母ゲノムを取得した。
調製した酵母細胞を、バッファーA(1M ソルビトール、 0.1M EDTA、pH 7.4)に懸濁し、0.1% 2-メルカプトエタノール(終濃度14mM)及び100U zymolase(10 mg/ml)を添加して、溶液が透明になるまで 30°C で1時間、撹拌しながらインキュベートした。550gで10分間遠心してプロトプラストを回収後、バッファーB(50 mM Tris-HCl、pH 7.4、 20 mM EDTA)に懸濁してから、ドデシル硫酸ナトリウムを1%(w/v)になるように加えた後、65℃で30分間インキュベートした。続いて、体積比2/5量の5M CH3COOKを添加して混和してから30分間氷冷後、15,000gで30分間遠心して上清を回収した。回収した上清に体積比1/10量の3M CH3COONaと等量のイソプロパノ−ルを加えてよく混和し、15,000g 4℃で30分間遠心して得られた沈澱を70%エタノールでリンスして回収した。沈澱を乾燥させてから、1ml のTEバッファー(10 mM Tris-HCl、pH 8.0、1 mM EDTA)に溶解し、40μg/mlになるようにRNase A(Sigma社製)を加えて37℃で1時間インキュベートし、続いて、混合液にproteinase K(Sigma社製)を500μg/ml及びドデシル硫酸ナトリウムを1%(w/v)になるように加えた後、これを55℃で約16時間振とうした。振とう終了後、当該混合物をフェノール[1M Tris-HCl(pH 8.0)にて飽和]・クロロホルム抽出処理した。水層を回収し、これにNaClを0.5Nとなるよう加えた後、これをエタノール沈澱処理して生じた沈澱を回収した。回収された沈澱を70%エタノールでリンスすることにより、ゲノムDNAを得た。
【0113】
得られた酵母ゲノムDNAについて、以下の溶液をそれぞれ2連で調製した。
溶液A: 100ng/20μL TE溶液
溶液B: 10ng/20μL TE溶液
溶液C: 1ng/20μL TE溶液
溶液D: TE溶液(ネガティブコントロール液)
【0114】
得られた夫々の溶液を20μLと、制限酵素XspIを5Uと、XspIに最適な10x緩衝液(200mM Tris-HCl pH 8.5、100mM MgCl2、10mM Dithiothreitol、1000mM KCl)5μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μlとしたものを調製した。当該反応液を、37℃にて1時間インキュベーションし、配列番号21で示されるからなるDNAフラグメントS3を得た。
【0115】
<DNAフラグメント>
S3:5’- TAGGTTTTGCTTTGATCCGTTTTACAGTGACACCGAACATAAGGGGAAGCTATTGACATGGTATCGAAAGGTTGTCCACATTGGGAAGTAACTTGGTTCTATGAATCTTCATGTCAGATACGTAGGACAGACTCTTTCCTGTGTAAATATTTGTGACAGCTACGTCTATTTTCTAC -3’ (配列番号21)
【0116】
得られた夫々の反応液から20μLとり、SssI methylase (NEB社製)を0.5μlと、10xNEBuffer2 (NEB社製)を5μlと、S-adenosyl methionine (3.2 mM, NEB社製)を0.5μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μlとしたものを調製した。当該反応液を、37℃にて30分間インキュベーションし、配列番号21で示される塩基配列からなるDNAフラグメントS3をメチル化することにより、配列番号37で示される塩基配列からなるメチル化されたDNAフラグメントS4を得た。
【0117】
<DNAフラグメント>
S3:5’- TAGGTTTTGCTTTGATCCGTTTTACAGTGACACCGAACATAAGGGGAAGCTATTGACATGGTATCGAAAGGTTGTCCACATTGGGAAGTAACTTGGTTCTATGAATCTTCATGTCAGATACGTAGGACAGACTCTTTCCTGTGTAAATATTTGTGACAGCTACGTCTATTTTCTAC -3’ (配列番号21)
<メチル化されたDNAフラグメント>(Nは5-メチルシトシンを表す)
S4:5’- TAGGTTTTGCTTTGATCNGTTTTACAGTGACACNGAACATAAGGGGAAGCTATTGACATGGTATNGAAAGGTTGTCCACATTGGGAAGTAACTTGGTTCTATGAATCTTCATGTCAGATANGTAGGACAGACTCTTTCCTGTGTAAATATTTGTGACAGCTANGTCTATTTTCTAC -3’ (配列番号37)
【0118】
上記の反応液を、95℃にて10分間保温した後、4℃にて10分間保温し、DNAフラグメントを1本鎖状態とした。
【0119】
前記のビオチン標識メチルシトシン抗体が固定化されたストレプトアビジン被覆済みPCRチューブに、前記で調製したDNAフラグメントの反応液50μLを加え、室温で30分間放置した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、当該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作を更に2回繰り返し、配列番号37で示される塩基配列からなるメチル化されたDNAフラグメントS4をPCRチューブに固定した。
【0120】
<メチル化されたDNAフラグメント>(Nは5-メチルシトシンを表す)
S4:5’- TAGGTTTTGCTTTGATCNGTTTTACAGTGACACNGAACATAAGGGGAAGCTATTGACATGGTATNGAAAGGTTGTCCACATTGGGAAGTAACTTGGTTCTATGAATCTTCATGTCAGATANGTAGGACAGACTCTTTCCTGTGTAAATATTTGTGACAGCTANGTCTATTTTCTAC -3’ (配列番号37)
【0121】
次に、上記のPCRチューブに、配列番号17及び配列番号18で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーPF1及びPR1の各溶液及び、下記の反応条件を用いてPCRを行うことにより、DNAフラグメントS3(配列番号21、Genbank Accession No. NC_001136等に示される酵母染色体IVの塩基番号1220-1395に相当する領域)の部分配列である配列番号19で示される塩基配列からなる目的とするDNA領域Sを増幅した。
【0122】
<PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー>
PF1:5’- GGAAGCTATTGACATGGTATCG -3’ (配列番号17)
PR1:5’- AGTCTGTCCTACGTATCTGACA -3’ (配列番号18)
【0123】
<目的とするDNA領域>
S:5’- GGAAGCTATTGACATGGTATCGAAAGGTTGTCCACATTGGGAAGTAACTTGGTTCTATGAATCTTCATGTCAGATACGTAGGACAGACT -3’ (配列番号19)
【0124】
PCRの反応液としては、鋳型とするDNAに、5μMに調製されたオリゴヌクレオチドプライマー溶液各3μLと、each 2mM dNTPを5μLと、緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を5μLと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold、ABI社製)5U/μLを0.25μLとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μLとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて20秒間次いで61℃にて30秒間更に72℃にて30秒間を1サイクルとする保温を35サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、2%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認した。その結果は、以下の通りであった。
【0125】
酵母ゲノムDNAの溶液A(100 ng)、溶液B(10 ng)、及び、溶液C(1 ng)で、増幅が確認された。コントロール溶液D(0 ng)では、増幅が確認されなかった。
【0126】
以上より、前記の目的とするDNA領域を含むDNAをメチルシトシン抗体を用いて選択することが可能であること、且つ、前記の目的とするDNA領域を検出可能な量になるまで増幅できることが確認された。
【0127】
実施例4
市販のメチルシトシン抗体(Aviva Systems Biology社製)を、市販ビオチン化キット(Biotin Labeling Kit-NH2、同仁化学研究所製)を用いて、カタログに記載された方法に準じて、ビオチン標識した。得られたビオチン標識メチルシトシン抗体を溶液[抗体約0.25 μg/μL 0.1% BSA含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)溶液]として冷蔵保存した。
【0128】
ストレプトアビジン被覆済みPCRチューブ(計8本)に、合成して得られたビオチン標識メチルシトシン抗体の0.1 μg/50 μL溶液を各50μLの割合で添加し、約1時間室温で放置してPCRチューブに固定化した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、当該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作を更に2回繰り返した(以上、本発明方法で使用する固定化メチル化DNA抗体の調製に相当する)。
【0129】
パン酵母酵母株X2180−1AをYPD培地(1% Yeast extract、2% Peptone、2% Glucose, pH 5.6-6.0)で、濁度がOD600 0.6-1.0 になるまで培養し、10,000g で10分間遠心して、1x107の酵母細胞を調製した。調製した酵母細胞から、Methods in Yeast Genetics(Cold Spring Harbor Laboratory)に記載されているような、一般的な酵母ゲノムの調製法を用いて酵母ゲノムを取得した。
調製した酵母細胞を、バッファーA(1M ソルビトール、 0.1M EDTA、pH 7.4)に懸濁し、0.1% 2-メルカプトエタノール(終濃度14mM)及び100U zymolase(10 mg/ml)を添加して、溶液が透明になるまで 30°C で1時間、撹拌しながらインキュベートした。550gで10分間遠心してプロトプラストを回収後、バッファーB(50 mM Tris-HCl、pH 7.4、 20 mM EDTA)に懸濁してから、ドデシル硫酸ナトリウムを1%(w/v)になるように加えた後、65℃で30分間インキュベートした。続いて、体積比2/5量の5M CH3COOKを添加して混和してから30分間氷冷後、15,000gで30分間遠心して上清を回収した。回収した上清に体積比1/10量の3M CH3COONaと等量のイソプロパノ−ルを加えてよく混和し、15,000g 4℃で30分間遠心して得られた沈澱を70%エタノールでリンスして回収した。沈澱を乾燥させてから、1ml のTEバッファー(10 mM Tris-HCl、pH 8.0、1 mM EDTA)に溶解し、40μg/mlになるようにRNase A(Sigma社製)を加えて37℃で1時間インキュベートし、続いて、混合液にproteinase K(Sigma社製)を500μg/ml及びドデシル硫酸ナトリウムを1%(w/v)になるように加えた後、これを55℃で約16時間振とうした。振とう終了後、当該混合物をフェノール[1M Tris-HCl(pH 8.0)にて飽和]・クロロホルム抽出処理した。水層を回収し、これにNaClを0.5Nとなるよう加えた後、これをエタノール沈澱処理して生じた沈澱を回収した。回収された沈澱を70%エタノールでリンスすることにより、ゲノムDNAを得た。
【0130】
得られたゲノムDNAについて、ヒト血液ゲノムDNA(クロンテック社製)を含有する以下の溶液をそれぞれ2連で調製した。
溶液A:100ng/20μL TE溶液(100ngヒト血液ゲノム/20μL含有)
溶液B:10ng/20μL TE溶液(100ngヒト血液ゲノム/20μL含有)
溶液C:1ng/20μL TE溶液(100ngヒト血液ゲノム/20μL含有)
溶液D:TE溶液(100ngヒト血液ゲノム/20μL含有)
【0131】
得られた夫々の溶液を20μLと、制限酵素XspIを5Uと、XspIに最適な10x緩衝液(200mM Tris-HCl pH 8.5、100mM MgCl2、10mM Dithiothreitol、1000mM KCl)5μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μlとしたものを調製した。当該反応液を、37℃にて1時間インキュベーションし、配列番号21で示される塩基配列からなるDNAフラグメントS3を得た。
【0132】
<DNAフラグメント>
S3:5’- TAGGTTTTGCTTTGATCCGTTTTACAGTGACACCGAACATAAGGGGAAGCTATTGACATGGTATCGAAAGGTTGTCCACATTGGGAAGTAACTTGGTTCTATGAATCTTCATGTCAGATACGTAGGACAGACTCTTTCCTGTGTAAATATTTGTGACAGCTACGTCTATTTTCTAC -3’ (配列番号21)
【0133】
得られた夫々の反応液から20μLとり、SssI methylase (NEB社製)を0.5μlと、10xNEBuffer2 (NEB社製)を5μlと、S-adenosyl methionine (3.2 mM, NEB社製)を0.5μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μlとしたものを調製した。当該反応液を、37℃にて30分間インキュベーションし、配列番号21で示される塩基配列からなるDNAフラグメントS3をメチル化することにより、配列番号37で示される塩基配列からなるメチル化されたDNAフラグメントS4を得た。
【0134】
<DNAフラグメント>
S3:5’- TAGGTTTTGCTTTGATCCGTTTTACAGTGACACCGAACATAAGGGGAAGCTATTGACATGGTATCGAAAGGTTGTCCACATTGGGAAGTAACTTGGTTCTATGAATCTTCATGTCAGATACGTAGGACAGACTCTTTCCTGTGTAAATATTTGTGACAGCTACGTCTATTTTCTAC -3’ (配列番号21)
<メチル化されたDNAフラグメント>(Nは5-メチルシトシンを表す)
S4:5’- TAGGTTTTGCTTTGATCNGTTTTACAGTGACACNGAACATAAGGGGAAGCTATTGACATGGTATNGAAAGGTTGTCCACATTGGGAAGTAACTTGGTTCTATGAATCTTCATGTCAGATANGTAGGACAGACTCTTTCCTGTGTAAATATTTGTGACAGCTANGTCTATTTTCTAC -3’ (配列番号37)
【0135】
上記の反応液を、95℃にて10分間保温した後、4℃にて10分間保温し、DNAフラグメントを1本鎖状態とした。
【0136】
前記のビオチン標識メチルシトシン抗体が固定化されたストレプトアビジン被覆済みPCRチューブに、前記で調製したDNAフラグメントの反応液50μLを加え、室温で30分間放置した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、当該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作を更に2回繰り返し、配列番号37で示される塩基配列からなるメチル化されたDNAフラグメントS4をPCRチューブに固定した。
【0137】
<メチル化されたDNAフラグメント>(Nは5-メチルシトシンを表す)
S4:5’- TAGGTTTTGCTTTGATCNGTTTTACAGTGACACNGAACATAAGGGGAAGCTATTGACATGGTATNGAAAGGTTGTCCACATTGGGAAGTAACTTGGTTCTATGAATCTTCATGTCAGATANGTAGGACAGACTCTTTCCTGTGTAAATATTTGTGACAGCTANGTCTATTTTCTAC -3’ (配列番号37)
【0138】
次に、上記のPCRチューブに、配列番号17及び配列番号18で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーPF1及びPR1の各溶液及び、下記の反応条件を用いてPCRを行うことにより、DNAフラグメントS3(配列番号21、Genbank Accession No. NC_001136等に示される酵母染色体IVの塩基番号1220-1395に相当する領域)の部分配列である配列番号19で示される塩基配列からなる目的とするDNA領域Sを増幅した。
【0139】
<PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー>
PF1:5’- GGAAGCTATTGACATGGTATCG -3’ (配列番号17)
PR1:5’- AGTCTGTCCTACGTATCTGACA -3’ (配列番号18)
【0140】
<目的とするDNA領域>
S:5’- GGAAGCTATTGACATGGTATCGAAAGGTTGTCCACATTGGGAAGTAACTTGGTTCTATGAATCTTCATGTCAGATACGTAGGACAGACT -3’ (配列番号19)
【0141】
PCRの反応液としては、鋳型とするDNAに、5μMに調製されたオリゴヌクレオチドプライマー溶液各3μLと、each 2mM dNTPを5μLと、緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を5μLと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold、ABI社製)5U/μLを0.25μLとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μLとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて20秒間次いで61℃にて30秒間更に72℃にて30秒間を1サイクルとする保温を35サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、2%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認した。その結果は、以下の通りであった。
【0142】
酵母ゲノムDNAの溶液A(100 ng)、溶液B(10 ng)、及び、溶液C(1 ng)で、増幅が確認された。コントロール溶液D(0 ng)では、増幅が確認されなかった。
【0143】
以上より、前記の目的とするDNA領域を含むDNAをメチルシトシン抗体を用いて選択することが可能であること、且つ、前記の目的とするDNA領域を検出可能な量になるまで増幅できることが確認された。
【0144】
実施例5
市販のメチルシトシン抗体(Aviva Systems Biology社製)を、市販ビオチン化キット(Biotin Labeling Kit-NH2、同仁化学研究所製)を用いて、カタログに記載された方法に準じて、ビオチン標識した。得られたビオチン標識メチルシトシン抗体を溶液[抗体約0.25 μg/μL 0.1% BSA含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)溶液]として冷蔵保存した。
【0145】
ストレプトアビジン被覆済みPCRチューブ(計8本)に、合成して得られたビオチン標識メチルシトシン抗体の0.1 μg/50 μL溶液を各50μLの割合で添加し、約1時間室温で放置してPCRチューブに固定化した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、当該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作を更に2回繰り返した(以上、本発明方法で使用する固定化メチル化DNA抗体の調製に相当する)。
【0146】
パン酵母酵母株X2180−1AをYPD培地(1% Yeast extract、2% Peptone、2% Glucose, pH 5.6-6.0)で、濁度がOD600 0.6-1.0 になるまで培養し、10,000g で10分間遠心して、1x107の酵母細胞を調製した。調製した酵母細胞から、Methods in Yeast Genetics(Cold Spring Harbor Laboratory)に記載されているような、一般的な酵母ゲノムの調製法を用いて酵母ゲノムを取得した。
調製した酵母細胞を、バッファーA(1M ソルビトール、 0.1M EDTA、pH 7.4)に懸濁し、0.1% 2-メルカプトエタノール(終濃度14mM)及び100U zymolase(10 mg/ml)を添加して、溶液が透明になるまで 30°C で1時間、撹拌しながらインキュベートした。550gで10分間遠心してプロトプラストを回収後、バッファーB(50 mM Tris-HCl、pH 7.4、 20 mM EDTA)に懸濁してから、ドデシル硫酸ナトリウムを1%(w/v)になるように加えた後、65℃で30分間インキュベートした。続いて、体積比2/5量の5M CH3COOKを添加して混和してから30分間氷冷後、15,000gで30分間遠心して上清を回収した。回収した上清に体積比1/10量の3M CH3COONaと等量のイソプロパノ−ルを加えてよく混和し、15,000g 4℃で30分間遠心して得られた沈澱を70%エタノールでリンスして回収した。沈澱を乾燥させてから、1ml のTEバッファー(10 mM Tris-HCl、pH 8.0、1 mM EDTA)に溶解し、40μg/mlになるようにRNase A(Sigma社製)を加えて37℃で1時間インキュベートし、続いて、混合液にproteinase K(Sigma社製)を500μg/ml及びドデシル硫酸ナトリウムを1%(w/v)になるように加えた後、これを55℃で約16時間振とうした。振とう終了後、当該混合物をフェノール[1M Tris-HCl(pH 8.0)にて飽和]・クロロホルム抽出処理した。水層を回収し、これにNaClを0.5Nとなるよう加えた後、これをエタノール沈澱処理して生じた沈澱を回収した。回収された沈澱を70%エタノールでリンスすることにより、ゲノムDNAを得た。
【0147】
得られたゲノムDNAから、以下の配列番号22及び配列番号23で示されるPCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー(PF2及びPR2)及び反応条件を用いてPCRを行うことにより、供試サンプルとして用いられるDNAフラグメント(T、配列番号24、Genbank Accession No. NC_001139等に示される酵母染色体VIIの塩基番号271743-272083に相当する領域)を増幅した。
【0148】
<PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー>
PF2:5’- AGGTGAGCTACGTGTGTTTGG -3’ (配列番号22)
PR2:5’- AGACATGTGCTCACGTACGGT -3’ (配列番号23)
【0149】
<DNAフラグメント>
T:5’- AGGTGAGCTACGTGTGTTTGGGCGTCGTGCACTGGCTCACTTGTACGCGCAGAAATGGCAGCTTGTACGATTGGTGACCCGCCTTTTCGACACTGGACCGCTATGGACGTGGCGGCGGTGTGGCGGCGGCTCAATGACCTGTGGCGCCCGTTTGTGGCGTGCGATAGTCGAGCCGCCTGTCACGTGCGCGGCCGCCCTGCTCCGTTTGACGCGATGCATAGCATGCGACCACCCAGTAATCATACTGCTGACGCTATTGGTCACGTGGTTATGGCAGCTGCTGTTGACTGCGGTGGCGTCCCGTTTCCACACCGTACGTGAGCACATGTCT -3’(配列番号24)
【0150】
PCRの反応液としては、鋳型とするゲノムDNAを10ngと、5μMに調製されたオリゴヌクレオチドプライマー溶液各3μlと、each 2mM dNTPを5μlと、10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を5μlと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold、ABI社製)5U/μlを0.25μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μlとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて20秒間次いで58℃にて30秒間更に72℃にて30秒間を1サイクルとする保温を40サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認し、Wizard SV Gel/PCR Kit(PROMEGA社)により、DNAフラグメントTを精製した。
【0151】
得られたDNAフラグメントTについて、以下の溶液をそれぞれ2連で調製した。
溶液A: 100pg/20μL TE溶液
溶液B: 10pg/20μL TE溶液
溶液C: 1 pg/20μL TE溶液
溶液D: TE溶液(ネガティブコントロール液)
【0152】
得られた夫々の溶液を20μLと、SssI methylase (NEB社製)を0.5μlと、10xNEBuffer2 (NEB社製)を5μlと、S-adenosyl methionine (3.2 mM, NEB社製)を0.5μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μlとしたものを調製した。当該反応液を、37℃にて30分間インキュベーションし、配列番号24で示される塩基配列からなるDNAフラグメントTをメチル化することにより、配列番号25で示される塩基配列からなるメチル化されたDNAフラグメントT2を得た。
【0153】
<DNAフラグメント>
T:5’- AGGTGAGCTACGTGTGTTTGGGCGTCGTGCACTGGCTCACTTGTACGCGCAGAAATGGCAGCTTGTACGATTGGTGACCCGCCTTTTCGACACTGGACCGCTATGGACGTGGCGGCGGTGTGGCGGCGGCTCAATGACCTGTGGCGCCCGTTTGTGGCGTGCGATAGTCGAGCCGCCTGTCACGTGCGCGGCCGCCCTGCTCCGTTTGACGCGATGCATAGCATGCGACCACCCAGTAATCATACTGCTGACGCTATTGGTCACGTGGTTATGGCAGCTGCTGTTGACTGCGGTGGCGTCCCGTTTCCACACCGTACGTGAGCACATGTCT -3’(配列番号24)
<メチル化されたDNAフラグメント>(Nは5-メチルシトシンを示す)
T2:5’- AGGTGAGCTANGTGTGTTTGGGNGTNGTGCACTGGCTCACTTGTANGNGCAGAAATGGCAGCTTGTANGATTGGTGACCNGCCTTTTNGACACTGGACNGCTATGGANGTGGNGGNGGTGTGGNGGNGGCTCAATGACCTGTGGNGCCNGTTTGTGGNGTGNGATAGTNGAGCNGCCTGTCANGTGNGNGGCNGCCCTGCTCNGTTTGANGNGATGCATAGCATGNGACCACCCAGTAATCATACTGCTGANGCTATTGGTCANGTGGTTATGGCAGCTGCTGTTGACTGNGGTGGNGTCCNGTTTCCACACNGTANGTGAGCACATGTCT -3’ (配列番号25)
【0154】
配列番号24で示される塩基配列からなるDNAフラグメントTの負鎖に相補性により結合可能な配列番号26〜配列番号35で示される塩基配列からなるカウンターオリゴヌクレオチドC1〜C10を合成し、夫々の濃度が0.01μMであるTEバッファー溶液を調製した。
【0155】
<DNAフラグメント>
T:5’- AGGTGAGCTACGTGTGTTTGGGCGTCGTGCACTGGCTCACTTGTACGCGCAGAAATGGCAGCTTGTACGATTGGTGACCCGCCTTTTCGACACTGGACCGCTATGGACGTGGCGGCGGTGTGGCGGCGGCTCAATGACCTGTGGCGCCCGTTTGTGGCGTGCGATAGTCGAGCCGCCTGTCACGTGCGCGGCCGCCCTGCTCCGTTTGACGCGATGCATAGCATGCGACCACCCAGTAATCATACTGCTGACGCTATTGGTCACGTGGTTATGGCAGCTGCTGTTGACTGCGGTGGCGTCCCGTTTCCACACCGTACGTGAGCACATGTCT -3’(配列番号24)
【0156】
<カウンターオリゴヌクレオチド>
C1:5’- AGGTGAGCTACGTGTGTTTGG -3’ (配列番号26)
C2:5’- GCGTCGTGCACTGGCTCACTTGTACGCGCA -3’ (配列番号27)
C3:5’- CTTGTACGATTGGTGACCCGCCTTTTCGAC -3’ (配列番号28)
C4:5’- ACTGGACCGCTATGGACGTGGCGGCGGTGT -3’ (配列番号29)
C5:5’- GGCGGCGGCTCAATGACCTGTGGCGCCCGT -3’ (配列番号30)
C6:5’- TTGTGGCGTGCGATAGTCGAGCCGCCTGTC -3’ (配列番号31)
C7:5’- ACGTGCGCGGCCGCCCTGCTCCGTT -3’ (配列番号32)
C8:5’- TGACGCGATGCATAGCATGCGACCACCCAG -3’ (配列番号33)
C9:5’- ACTGCTGACGCTATTGGTCACGTGGTTATG -3’ (配列番号34)
C10:5’- CTGCTGTTGACTGCGGTGGCGTCCCGTTTC -3’ (配列番号35)
【0157】
前記のDNAフラグメントTの反応液について、以下の処理を施した。
【0158】
前記で調製したDNAフラグメントの反応液に、前記で調製したカウンターオリゴヌクレオチド溶液10μLを添加し、混合した。その後、本PCRチューブを95℃で10分間加熱し、70℃まで速やかに冷却し、その温度で10分間保温した。次いで、50℃まで冷却し10分間保温し、更に37℃で10分間保温した後、室温に戻した。
【0159】
前記のビオチン標識メチルシトシン抗体が固定化されたストレプトアビジン被覆済みPCRチューブに、前記で調製したDNAフラグメントの反応液50μLを加え、室温で30分間放置した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、当該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作を更に2回繰り返し、配列番号25で示される塩基配列からなるメチル化されたDNAフラグメントT2をPCRチューブに固定した。
【0160】
<メチル化されたDNAフラグメント>(Nは5-メチルシトシンを示す)
T2:5’- AGGTGAGCTANGTGTGTTTGGGNGTNGTGCACTGGCTCACTTGTANGNGCAGAAATGGCAGCTTGTANGATTGGTGACCNGCCTTTTNGACACTGGACNGCTATGGANGTGGNGGNGGTGTGGNGGNGGCTCAATGACCTGTGGNGCCNGTTTGTGGNGTGNGATAGTNGAGCNGCCTGTCANGTGNGNGGCNGCCCTGCTCNGTTTGANGNGATGCATAGCATGNGACCACCCAGTAATCATACTGCTGANGCTATTGGTCANGTGGTTATGGCAGCTGCTGTTGACTGNGGTGGNGTCCNGTTTCCACACNGTANGTGAGCACATGTCT -3’ (配列番号25)
【0161】
次に、上記のPCRチューブに、配列番号22及び配列番号23で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーPF2及びPR2の各溶液及び、下記の反応条件を用いてPCRを行うことにより、配列番号24で示される塩基配列からなる目的とするDNA領域Tを増幅した。
【0162】
<PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー>
PF2:5’- AGGTGAGCTACGTGTGTTTGG -3’ (配列番号22)
PR2:5’- AGACATGTGCTCACGTACGGT -3’ (配列番号23)
【0163】
<目的とするDNA領域>
T:5’- AGGTGAGCTACGTGTGTTTGGGCGTCGTGCACTGGCTCACTTGTACGCGCAGAAATGGCAGCTTGTACGATTGGTGACCCGCCTTTTCGACACTGGACCGCTATGGACGTGGCGGCGGTGTGGCGGCGGCTCAATGACCTGTGGCGCCCGTTTGTGGCGTGCGATAGTCGAGCCGCCTGTCACGTGCGCGGCCGCCCTGCTCCGTTTGACGCGATGCATAGCATGCGACCACCCAGTAATCATACTGCTGACGCTATTGGTCACGTGGTTATGGCAGCTGCTGTTGACTGCGGTGGCGTCCCGTTTCCACACCGTACGTGAGCACATGTCT -3’ (配列番号24)
【0164】
PCRの反応液としては、鋳型とするDNAに、5μMに調製されたオリゴヌクレオチドプライマー溶液各3μLと、each 2mM dNTPを5μLと、緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を5μLと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold、ABI社製)5U/μLを0.25μLとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μLとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて20秒間次いで58℃にて30秒間更に72℃にて30秒間を1サイクルとする保温を25サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認した。その結果は、以下の通りであった。
【0165】
酵母ゲノム由来DNA断片の溶液A(100 pg)、溶液B(10 pg)、及び、溶液C(1 pg)で、増幅が確認された。コントロール溶液D(0 pg)では、増幅が確認されなかった。
【0166】
以上より、前記の目的とするDNA領域を含むDNAをメチルシトシン抗体を用いて選択することが可能であること、且つ、前記の目的とするDNA領域を検出可能な量になるまで増幅できることが確認された。
【0167】
実施例6
市販のメチルシトシン抗体(Aviva Systems Biology社製)を、市販ビオチン化キット(Biotin Labeling Kit-NH2、同仁化学研究所製)を用いて、カタログに記載された方法に準じて、ビオチン標識した。得られたビオチン標識メチルシトシン抗体を溶液[抗体約0.25 μg/μL 0.1% BSA含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)溶液]として冷蔵保存した。
【0168】
ストレプトアビジン被覆済みPCRチューブ(計8本)に、合成して得られたビオチン標識メチルシトシン抗体の0.1 μg/50 μL溶液を各50μLの割合で添加し、約1時間室温で放置してPCRチューブに固定化した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、当該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作を更に2回繰り返した(以上、本発明方法で使用する固定化メチル化DNA抗体の調製に相当する)。
【0169】
パン酵母酵母株X2180−1AをYPD培地(1% Yeast extract、2% Peptone、2% Glucose, pH 5.6-6.0)で、濁度がOD600 0.6-1.0 になるまで培養し、10,000g で10分間遠心して、1x107の酵母細胞を調製した。調製した酵母細胞から、Methods in Yeast Genetics(Cold Spring Harbor Laboratory)に記載されているような、一般的な酵母ゲノムの調製法を用いて酵母ゲノムを取得した。
調製した酵母細胞を、バッファーA(1M ソルビトール、 0.1M EDTA、pH 7.4)に懸濁し、0.1% 2-メルカプトエタノール(終濃度14mM)及び100U zymolase(10 mg/ml)を添加して、溶液が透明になるまで 30°C で1時間、撹拌しながらインキュベートした。550gで10分間遠心してプロトプラストを回収後、バッファーB(50 mM Tris-HCl、pH 7.4、 20 mM EDTA)に懸濁してから、ドデシル硫酸ナトリウムを1%(w/v)になるように加えた後、65℃で30分間インキュベートした。続いて、体積比2/5量の5M CH3COOKを添加して混和してから30分間氷冷後、15,000gで30分間遠心して上清を回収した。回収した上清に体積比1/10量の3M CH3COONaと等量のイソプロパノ−ルを加えてよく混和し、15,000g 4℃で30分間遠心して得られた沈澱を70%エタノールでリンスして回収した。沈澱を乾燥させてから、1ml のTEバッファー(10 mM Tris-HCl、pH 8.0、1 mM EDTA)に溶解し、40μg/mlになるようにRNase A(Sigma社製)を加えて37℃で1時間インキュベートし、続いて、混合液にproteinase K(Sigma社製)を500μg/ml及びドデシル硫酸ナトリウムを1%(w/v)になるように加えた後、これを55℃で約16時間振とうした。振とう終了後、当該混合物をフェノール[1M Tris-HCl(pH 8.0)にて飽和]・クロロホルム抽出処理した。水層を回収し、これにNaClを0.5Nとなるよう加えた後、これをエタノール沈澱処理して生じた沈澱を回収した。回収された沈澱を70%エタノールでリンスすることにより、ゲノムDNAを得た。
【0170】
得られたゲノムDNAから、以下の配列番号22及び配列番号23で示されるPCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー(PF2及びPR2)及び反応条件を用いてPCRを行うことにより、供試サンプルとして用いられるDNAフラグメント(T、配列番号24、Genbank Accession No. NC_001139等に示される酵母染色体VIIの塩基番号271743-272083に相当する領域)を増幅した。
【0171】
<PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー>
PF2:5’- AGGTGAGCTACGTGTGTTTGG -3’ (配列番号22)
PR2:5’- AGACATGTGCTCACGTACGGT -3’ (配列番号23)
【0172】
<DNAフラグメント>
T:5’- AGGTGAGCTACGTGTGTTTGGGCGTCGTGCACTGGCTCACTTGTACGCGCAGAAATGGCAGCTTGTACGATTGGTGACCCGCCTTTTCGACACTGGACCGCTATGGACGTGGCGGCGGTGTGGCGGCGGCTCAATGACCTGTGGCGCCCGTTTGTGGCGTGCGATAGTCGAGCCGCCTGTCACGTGCGCGGCCGCCCTGCTCCGTTTGACGCGATGCATAGCATGCGACCACCCAGTAATCATACTGCTGACGCTATTGGTCACGTGGTTATGGCAGCTGCTGTTGACTGCGGTGGCGTCCCGTTTCCACACCGTACGTGAGCACATGTCT -3’(配列番号24)
【0173】
PCRの反応液としては、鋳型とするゲノムDNAを10ngと、5μMに調製されたオリゴヌクレオチドプライマー溶液各3μlと、each 2mM dNTPを5μlと、10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を5μlと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold、ABI社製)5U/μlを0.25μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μlとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて20秒間次いで58℃にて30秒間更に72℃にて30秒間を1サイクルとする保温を40サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認し、Wizard SV Gel/PCR Kit(PROMEGA社)により、DNAフラグメントTを精製した。
【0174】
得られたDNAフラグメントTについて、ヒト血液ゲノムDNA(クロンテック社製)を含有する以下の溶液をそれぞれ2連で調製した。
溶液A:100pg/20μL TE溶液(100ngヒト血液ゲノム/20μL)
溶液B:10pg/20μL TE溶液(100ngヒト血液ゲノム/20μL)
溶液C:1pg/20μL TE溶液(100ngヒト血液ゲノム/20μL)
溶液D:TE溶液(100ngヒト血液ゲノム/20μL)
【0175】
得られた夫々の溶液を20μLと、SssI methylase (NEB社製)を0.5μlと、10xNEBuffer2 (NEB社製)を5μlと、S-adenosyl methionine (3.2 mM, NEB社製)を0.5μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μlとしたものを調製した。当該反応液を、37℃にて30分間インキュベーションし、配列番号24で示される塩基配列からなるDNAフラグメントTをメチル化することにより、配列番号25で示される塩基配列からなるメチル化されたDNAフラグメントT2を得た。
【0176】
<DNAフラグメント>
T:5’- AGGTGAGCTACGTGTGTTTGGGCGTCGTGCACTGGCTCACTTGTACGCGCAGAAATGGCAGCTTGTACGATTGGTGACCCGCCTTTTCGACACTGGACCGCTATGGACGTGGCGGCGGTGTGGCGGCGGCTCAATGACCTGTGGCGCCCGTTTGTGGCGTGCGATAGTCGAGCCGCCTGTCACGTGCGCGGCCGCCCTGCTCCGTTTGACGCGATGCATAGCATGCGACCACCCAGTAATCATACTGCTGACGCTATTGGTCACGTGGTTATGGCAGCTGCTGTTGACTGCGGTGGCGTCCCGTTTCCACACCGTACGTGAGCACATGTCT -3’(配列番号24)
<メチル化されたDNAフラグメント>(Nは5-メチルシトシンを示す)
T2:5’- AGGTGAGCTANGTGTGTTTGGGNGTNGTGCACTGGCTCACTTGTANGNGCAGAAATGGCAGCTTGTANGATTGGTGACCNGCCTTTTNGACACTGGACNGCTATGGANGTGGNGGNGGTGTGGNGGNGGCTCAATGACCTGTGGNGCCNGTTTGTGGNGTGNGATAGTNGAGCNGCCTGTCANGTGNGNGGCNGCCCTGCTCNGTTTGANGNGATGCATAGCATGNGACCACCCAGTAATCATACTGCTGANGCTATTGGTCANGTGGTTATGGCAGCTGCTGTTGACTGNGGTGGNGTCCNGTTTCCACACNGTANGTGAGCACATGTCT -3’ (配列番号25)
【0177】
配列番号24で示される塩基配列からなるDNAフラグメントTの負鎖に相補性により結合可能な配列番号26〜配列番号35で示される塩基配列からなるカウンターオリゴヌクレオチドC1〜C10を合成し、夫々の濃度が0.01μMであるTEバッファー溶液を調製した。
【0178】
<DNAフラグメント>
T:5’- AGGTGAGCTACGTGTGTTTGGGCGTCGTGCACTGGCTCACTTGTACGCGCAGAAATGGCAGCTTGTACGATTGGTGACCCGCCTTTTCGACACTGGACCGCTATGGACGTGGCGGCGGTGTGGCGGCGGCTCAATGACCTGTGGCGCCCGTTTGTGGCGTGCGATAGTCGAGCCGCCTGTCACGTGCGCGGCCGCCCTGCTCCGTTTGACGCGATGCATAGCATGCGACCACCCAGTAATCATACTGCTGACGCTATTGGTCACGTGGTTATGGCAGCTGCTGTTGACTGCGGTGGCGTCCCGTTTCCACACCGTACGTGAGCACATGTCT -3’(配列番号24)
【0179】
<カウンターオリゴヌクレオチド>
C1:5’- AGGTGAGCTACGTGTGTTTGG -3’ (配列番号26)
C2:5’- GCGTCGTGCACTGGCTCACTTGTACGCGCA -3’ (配列番号27)
C3:5’- CTTGTACGATTGGTGACCCGCCTTTTCGAC -3’ (配列番号28)
C4:5’- ACTGGACCGCTATGGACGTGGCGGCGGTGT -3’ (配列番号29)
C5:5’- GGCGGCGGCTCAATGACCTGTGGCGCCCGT -3’ (配列番号30)
C6:5’- TTGTGGCGTGCGATAGTCGAGCCGCCTGTC -3’ (配列番号31)
C7:5’- ACGTGCGCGGCCGCCCTGCTCCGTT -3’ (配列番号32)
C8:5’- TGACGCGATGCATAGCATGCGACCACCCAG -3’ (配列番号33)
C9:5’- ACTGCTGACGCTATTGGTCACGTGGTTATG -3’ (配列番号34)
C10:5’- CTGCTGTTGACTGCGGTGGCGTCCCGTTTC -3’ (配列番号35)
【0180】
前記のDNAフラグメントTの反応液について、以下の処理を施した。
【0181】
前記で調製したDNAフラグメントの反応液に、前記で調製したカウンターオリゴヌクレオチド溶液10μLを添加し、混合した。その後、本PCRチューブを95℃で10分間加熱し、70℃まで速やかに冷却し、その温度で10分間保温した。次いで、50℃まで冷却し10分間保温し、更に37℃で10分間保温した後、室温に戻した。
【0182】
前記のビオチン標識メチルシトシン抗体が固定化されたストレプトアビジン被覆済みPCRチューブに、前記で調製したDNAフラグメントの反応液50μLを加え、室温で30分間放置した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、当該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作を更に2回繰り返し、配列番号25で示される塩基配列からなるメチル化されたDNAフラグメントT2をPCRチューブに固定した。
【0183】
<メチル化されたDNAフラグメント>(Nは5-メチルシトシンを示す)
T2:5’- AGGTGAGCTANGTGTGTTTGGGNGTNGTGCACTGGCTCACTTGTANGNGCAGAAATGGCAGCTTGTANGATTGGTGACCNGCCTTTTNGACACTGGACNGCTATGGANGTGGNGGNGGTGTGGNGGNGGCTCAATGACCTGTGGNGCCNGTTTGTGGNGTGNGATAGTNGAGCNGCCTGTCANGTGNGNGGCNGCCCTGCTCNGTTTGANGNGATGCATAGCATGNGACCACCCAGTAATCATACTGCTGANGCTATTGGTCANGTGGTTATGGCAGCTGCTGTTGACTGNGGTGGNGTCCNGTTTCCACACNGTANGTGAGCACATGTCT -3’ (配列番号25)
【0184】
次に、上記のPCRチューブに、配列番号22及び配列番号23で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーPF2及びPR2の各溶液及び、下記の反応条件を用いてPCRを行うことにより、配列番号24で示される塩基配列からなる目的とするDNA領域Tを増幅した。
【0185】
<PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー>
PF2:5’- AGGTGAGCTACGTGTGTTTGG -3’ (配列番号22)
PR2:5’- AGACATGTGCTCACGTACGGT -3’ (配列番号23)
【0186】
<目的とするDNA領域>
T:5’- AGGTGAGCTACGTGTGTTTGGGCGTCGTGCACTGGCTCACTTGTACGCGCAGAAATGGCAGCTTGTACGATTGGTGACCCGCCTTTTCGACACTGGACCGCTATGGACGTGGCGGCGGTGTGGCGGCGGCTCAATGACCTGTGGCGCCCGTTTGTGGCGTGCGATAGTCGAGCCGCCTGTCACGTGCGCGGCCGCCCTGCTCCGTTTGACGCGATGCATAGCATGCGACCACCCAGTAATCATACTGCTGACGCTATTGGTCACGTGGTTATGGCAGCTGCTGTTGACTGCGGTGGCGTCCCGTTTCCACACCGTACGTGAGCACATGTCT -3’ (配列番号24)
【0187】
PCRの反応液としては、鋳型とするDNAに、5μMに調製されたオリゴヌクレオチドプライマー溶液各3μLと、each 2mM dNTPを5μLと、緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を5μLと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold、ABI社製)5U/μLを0.25μLとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μLとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて20秒間次いで58℃にて30秒間更に72℃にて30秒間を1サイクルとする保温を25サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認した。その結果は、以下の通りであった。
【0188】
酵母ゲノム由来DNA断片の溶液A(100 pg)、溶液B(10 pg)、及び、溶液C(1 pg)で、増幅が確認された。コントロール溶液D(0 pg)では、増幅が確認されなかった。
【0189】
以上より、前記の目的とするDNA領域を含むDNAをメチルシトシン抗体を用いて選択することが可能であること、且つ、前記の目的とするDNA領域を検出可能な量になるまで増幅できることが確認された。
【0190】
実施例7
市販のメチルシトシン抗体(Aviva Systems Biology社製)を、市販ビオチン化キット(Biotin Labeling Kit-NH2、同仁化学研究所製)を用いて、カタログに記載された方法に準じて、ビオチン標識した。得られたビオチン標識メチルシトシン抗体を溶液[抗体約0.25 μg/μL 0.1% BSA含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)溶液]として冷蔵保存した。
【0191】
ストレプトアビジン被覆済みPCRチューブ(計8本)に、合成して得られたビオチン標識メチルシトシン抗体の0.1 μg/50 μL溶液を各50μLの割合で添加し、約1時間室温で放置してPCRチューブに固定化した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、当該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作を更に2回繰り返した(以上、本発明方法で使用する固定化メチル化DNA抗体の調製に相当する)。
【0192】
パン酵母酵母株X2180−1AをYPD培地(1% Yeast extract、2% Peptone、2% Glucose, pH 5.6-6.0)で、濁度がOD600 0.6-1.0 になるまで培養し、10,000g で10分間遠心して、1x107の酵母細胞を調製した。調製した酵母細胞から、Methods in Yeast Genetics(Cold Spring Harbor Laboratory)に記載されているような、一般的な酵母ゲノムの調製法を用いて酵母ゲノムを取得した。
調製した酵母細胞を、バッファーA(1M ソルビトール、 0.1M EDTA、pH 7.4)に懸濁し、0.1% 2-メルカプトエタノール(終濃度14mM)及び100U zymolase(10 mg/ml)を添加して、溶液が透明になるまで 30°C で1時間、撹拌しながらインキュベートした。550gで10分間遠心してプロトプラストを回収後、バッファーB(50 mM Tris-HCl、pH 7.4、 20 mM EDTA)に懸濁してから、ドデシル硫酸ナトリウムを1%(w/v)になるように加えた後、65℃で30分間インキュベートした。続いて、体積比2/5量の5M CH3COOKを添加して混和してから30分間氷冷後、15,000gで30分間遠心して上清を回収した。回収した上清に体積比1/10量の3M CH3COONaと等量のイソプロパノ−ルを加えてよく混和し、15,000g 4℃で30分間遠心して得られた沈澱を70%エタノールでリンスして回収した。沈澱を乾燥させてから、1ml のTEバッファー(10 mM Tris-HCl、pH 8.0、1 mM EDTA)に溶解し、40μg/mlになるようにRNase A(Sigma社製)を加えて37℃で1時間インキュベートし、続いて、混合液にproteinase K(Sigma社製)を500μg/ml及びドデシル硫酸ナトリウムを1%(w/v)になるように加えた後、これを55℃で約16時間振とうした。振とう終了後、当該混合物をフェノール[1M Tris-HCl(pH 8.0)にて飽和]・クロロホルム抽出処理した。水層を回収し、これにNaClを0.5Nとなるよう加えた後、これをエタノール沈澱処理して生じた沈澱を回収した。回収された沈澱を70%エタノールでリンスすることにより、ゲノムDNAを得た。
【0193】
得られた酵母ゲノムDNAについて、以下の溶液をそれぞれ2連で調製した。
溶液A: 10ng/20μL TE溶液
溶液B: 1ng/20μL TE溶液
溶液C: 0.1ng/20μL TE溶液
溶液D: TE溶液(ネガティブコントロール液)
【0194】
得られた夫々の溶液を20μLと、制限酵素XspIを5Uと、XspIに最適な10x緩衝液(200mM Tris-HCl pH 8.5、100mM MgCl2、10mM Dithiothreitol、1000mM KCl)5μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μlとしたものを調製した。当該反応液を、37℃にて1時間インキュベーションし、配列番号36からなるDNAフラグメントT3を得た。
【0195】
<DNAフラグメント>
T3:5’- TAGGTGAGCTACGTGTGTTTGGGCGTCGTGCACTGGCTCACTTGTACGCGCAGAAATGGCAGCTTGTACGATTGGTGACCCGCCTTTTCGACACTGGACCGCTATGGACGTGGCGGCGGTGTGGCGGCGGCTCAATGACCTGTGGCGCCCGTTTGTGGCGTGCGATAGTCGAGCCGCCTGTCACGTGCGCGGCCGCCCTGCTCCGTTTGACGCGATGCATAGCATGCGACCACCCAGTAATCATACTGCTGACGCTATTGGTCACGTGGTTATGGCAGCTGCTGTTGACTGCGGTGGCGTCCCGTTTCCACACCGTACGTGAGCACATGTCTGGATTGC -3’(配列番号36)
【0196】
得られた夫々の反応液から20μLとり、SssI methylase (NEB社製)を0.5μlと、10xNEBuffer2 (NEB社製)を5μlと、S-adenosyl methionine (3.2 mM, NEB社製)を0.5μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μlとしたものを調製した。当該反応液を、37℃にて30分間インキュベーションし、配列番号36で示される塩基配列からなるDNAフラグメントT3をメチル化することにより、配列番号38で示される塩基配列からなるメチル化されたDNAフラグメントT4を得た。
【0197】
<DNAフラグメント>
T3:5’- TAGGTGAGCTACGTGTGTTTGGGCGTCGTGCACTGGCTCACTTGTACGCGCAGAAATGGCAGCTTGTACGATTGGTGACCCGCCTTTTCGACACTGGACCGCTATGGACGTGGCGGCGGTGTGGCGGCGGCTCAATGACCTGTGGCGCCCGTTTGTGGCGTGCGATAGTCGAGCCGCCTGTCACGTGCGCGGCCGCCCTGCTCCGTTTGACGCGATGCATAGCATGCGACCACCCAGTAATCATACTGCTGACGCTATTGGTCACGTGGTTATGGCAGCTGCTGTTGACTGCGGTGGCGTCCCGTTTCCACACCGTACGTGAGCACATGTCTGGATTGC -3’(配列番号36)
<メチル化されたDNAフラグメント>(Nは5-メチルシトシンを示す)
T4:5’- TAGGTGAGCTANGTGTGTTTGGGNGTNGTGCACTGGCTCACTTGTANGNGCAGAAATGGCAGCTTGTANGATTGGTGACCNGCCTTTTNGACACTGGACNGCTATGGANGTGGNGGNGGTGTGGNGGNGGCTCAATGACCTGTGGNGCCNGTTTGTGGNGTGNGATAGTNGAGCNGCCTGTCANGTGNGNGGCNGCCCTGCTCNGTTTGANGNGATGCATAGCATGNGACCACCCAGTAATCATACTGCTGANGCTATTGGTCANGTGGTTATGGCAGCTGCTGTTGACTGNGGTGGNGTCCNGTTTCCACACNGTANGTGAGCACATGTCTGGATTGC -3’ (配列番号38)
【0198】
配列番号36で示される塩基配列からなるDNAフラグメントT3の負鎖に相補性により結合可能な配列番号26〜配列番号35で示される塩基配列からなるカウンターオリゴヌクレオチドC1〜C10を合成し、夫々の濃度が0.01μMであるTEバッファー溶液を調製した。
【0199】
<DNAフラグメント>
T3:5’- TAGGTGAGCTACGTGTGTTTGGGCGTCGTGCACTGGCTCACTTGTACGCGCAGAAATGGCAGCTTGTACGATTGGTGACCCGCCTTTTCGACACTGGACCGCTATGGACGTGGCGGCGGTGTGGCGGCGGCTCAATGACCTGTGGCGCCCGTTTGTGGCGTGCGATAGTCGAGCCGCCTGTCACGTGCGCGGCCGCCCTGCTCCGTTTGACGCGATGCATAGCATGCGACCACCCAGTAATCATACTGCTGACGCTATTGGTCACGTGGTTATGGCAGCTGCTGTTGACTGCGGTGGCGTCCCGTTTCCACACCGTACGTGAGCACATGTCTGGATTGC -3’(配列番号36)
【0200】
<カウンターオリゴヌクレオチド>
C1:5’- AGGTGAGCTACGTGTGTTTGG -3’ (配列番号26)
C2:5’- GCGTCGTGCACTGGCTCACTTGTACGCGCA -3’ (配列番号27)
C3:5’- CTTGTACGATTGGTGACCCGCCTTTTCGAC -3’ (配列番号28)
C4:5’- ACTGGACCGCTATGGACGTGGCGGCGGTGT -3’ (配列番号29)
C5:5’- GGCGGCGGCTCAATGACCTGTGGCGCCCGT -3’ (配列番号30)
C6:5’- TTGTGGCGTGCGATAGTCGAGCCGCCTGTC -3’ (配列番号31)
C7:5’- ACGTGCGCGGCCGCCCTGCTCCGTT -3’ (配列番号32)
C8:5’- TGACGCGATGCATAGCATGCGACCACCCAG -3’ (配列番号33)
C9:5’- ACTGCTGACGCTATTGGTCACGTGGTTATG -3’ (配列番号34)
C10:5’- CTGCTGTTGACTGCGGTGGCGTCCCGTTTC -3’ (配列番号35)
【0201】
前記の酵母ゲノムDNAの反応液について、以下の処理を施した。
【0202】
前記で調製した酵母ゲノムDNAの反応液に、前記で調製したカウンターオリゴヌクレオチド溶液10μLを添加し、混合した。その後、本PCRチューブを95℃で10分間加熱し、70℃まで速やかに冷却し、その温度で10分間保温した。次いで、50℃まで冷却し10分間保温し、更に37℃で10分間保温した後、室温に戻した。
【0203】
前記のビオチン標識メチルシトシン抗体が固定化されたストレプトアビジン被覆済みPCRチューブに、前記で調製したDNAフラグメントの反応液50μLを加え、室温で30分間放置した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、当該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作を更に2回繰り返し、配列番号38で示される塩基配列からなるメチル化されたDNAフラグメントT4をPCRチューブに固定した。
【0204】
<メチル化されたDNAフラグメント>(Nは5-メチルシトシンを示す)
T4:5’- TAGGTGAGCTANGTGTGTTTGGGNGTNGTGCACTGGCTCACTTGTANGNGCAGAAATGGCAGCTTGTANGATTGGTGACCNGCCTTTTNGACACTGGACNGCTATGGANGTGGNGGNGGTGTGGNGGNGGCTCAATGACCTGTGGNGCCNGTTTGTGGNGTGNGATAGTNGAGCNGCCTGTCANGTGNGNGGCNGCCCTGCTCNGTTTGANGNGATGCATAGCATGNGACCACCCAGTAATCATACTGCTGANGCTATTGGTCANGTGGTTATGGCAGCTGCTGTTGACTGNGGTGGNGTCCNGTTTCCACACNGTANGTGAGCACATGTCTGGATTGC -3’ (配列番号38)
【0205】
次に、上記のPCRチューブに、配列番号22及び配列番号23で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーPF2及びPR2の各溶液及び、下記の反応条件を用いてPCRを行うことにより、配列番号24で示される塩基配列からなる目的とするDNA領域Tを増幅した。
【0206】
<PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー>
PF2:5’- AGGTGAGCTACGTGTGTTTGG -3’ (配列番号22)
PR2:5’- AGACATGTGCTCACGTACGGT -3’ (配列番号23)
【0207】
<目的とするDNA領域>
T:5’- AGGTGAGCTACGTGTGTTTGGGCGTCGTGCACTGGCTCACTTGTACGCGCAGAAATGGCAGCTTGTACGATTGGTGACCCGCCTTTTCGACACTGGACCGCTATGGACGTGGCGGCGGTGTGGCGGCGGCTCAATGACCTGTGGCGCCCGTTTGTGGCGTGCGATAGTCGAGCCGCCTGTCACGTGCGCGGCCGCCCTGCTCCGTTTGACGCGATGCATAGCATGCGACCACCCAGTAATCATACTGCTGACGCTATTGGTCACGTGGTTATGGCAGCTGCTGTTGACTGCGGTGGCGTCCCGTTTCCACACCGTACGTGAGCACATGTCT -3’ (配列番号24)
【0208】
PCRの反応液としては、鋳型とするDNAに、5μMに調製されたオリゴヌクレオチドプライマー溶液各3μLと、each 2mM dNTPを5μLと、緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を5μLと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold、ABI社製)5U/μLを0.25μLとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μLとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて20秒間次いで58℃にて30秒間更に72℃にて30秒間を1サイクルとする保温を35サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認した。その結果は、以下の通りであった。
【0209】
酵母ゲノムDNAの溶液A(10 ng)、溶液B(1 ng)、及び、溶液C(0.1 ng)で、増幅が確認された。コントロール溶液D(0 ng)では、増幅が確認されなかった。
【0210】
以上より、前記の目的とするDNA領域を含むDNAをメチルシトシン抗体を用いて選択することが可能であること、且つ、前記の目的とするDNA領域を検出可能な量になるまで増幅できることが確認された。
【0211】
実施例8
市販のメチルシトシン抗体(Aviva Systems Biology社製)を、市販ビオチン化キット(Biotin Labeling Kit-NH2、同仁化学研究所製)を用いて、カタログに記載された方法に準じて、ビオチン標識した。得られたビオチン標識メチルシトシン抗体を溶液[抗体約0.25 μg/μL 0.1% BSA含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)溶液]として冷蔵保存した。
【0212】
ストレプトアビジン被覆済みPCRチューブ(計8本)に、合成して得られたビオチン標識メチルシトシン抗体の0.1 μg/50 μL溶液を各50μLの割合で添加し、約1時間室温で放置してPCRチューブに固定化した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、当該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作を更に2回繰り返した(以上、本発明方法で使用する固定化メチル化DNA抗体の調製に相当する)。
【0213】
パン酵母酵母株X2180−1AをYPD培地(1% Yeast extract、2% Peptone、2% Glucose, pH 5.6-6.0)で、濁度がOD600 0.6-1.0 になるまで培養し、10,000g で10分間遠心して、1x107の酵母細胞を調製した。調製した酵母細胞から、Methods in Yeast Genetics(Cold Spring Harbor Laboratory)に記載されているような、一般的な酵母ゲノムの調製法を用いて酵母ゲノムを取得した。
調製した酵母細胞を、バッファーA(1M ソルビトール、 0.1M EDTA、pH 7.4)に懸濁し、0.1% 2-メルカプトエタノール(終濃度14mM)及び100U zymolase(10 mg/ml)を添加して、溶液が透明になるまで 30°C で1時間、撹拌しながらインキュベートした。550gで10分間遠心してプロトプラストを回収後、バッファーB(50 mM Tris-HCl、pH 7.4、 20 mM EDTA)に懸濁してから、ドデシル硫酸ナトリウムを1%(w/v)になるように加えた後、65℃で30分間インキュベートした。続いて、体積比2/5量の5M CH3COOKを添加して混和してから30分間氷冷後、15,000gで30分間遠心して上清を回収した。回収した上清に体積比1/10量の3M CH3COONaと等量のイソプロパノ−ルを加えてよく混和し、15,000g 4℃で30分間遠心して得られた沈澱を70%エタノールでリンスして回収した。沈澱を乾燥させてから、1ml のTEバッファー(10 mM Tris-HCl、pH 8.0、1 mM EDTA)に溶解し、40μg/mlになるようにRNase A(Sigma社製)を加えて37℃で1時間インキュベートし、続いて、混合液にproteinase K(Sigma社製)を500μg/ml及びドデシル硫酸ナトリウムを1%(w/v)になるように加えた後、これを55℃で約16時間振とうした。振とう終了後、当該混合物をフェノール[1M Tris-HCl(pH 8.0)にて飽和]・クロロホルム抽出処理した。水層を回収し、これにNaClを0.5Nとなるよう加えた後、これをエタノール沈澱処理して生じた沈澱を回収した。回収された沈澱を70%エタノールでリンスすることにより、ゲノムDNAを得た。
【0214】
得られたゲノムDNAについて、ヒト血液ゲノムDNA(クロンテック社製)を含有する以下の溶液をそれぞれ2連で調製した。
溶液A:10ng/20μL TE溶液(100ngヒト血液ゲノム/20μL)
溶液B:1ng/20μL TE溶液(100ngヒト血液ゲノム/20μL)
溶液C:0.1ng/20μL TE溶液(100ngヒト血液ゲノム/20μL)
溶液D:TE溶液(100ngヒト血液ゲノム/20μL)
【0215】
得られた夫々の溶液を20μLと、制限酵素XspIを5Uと、XspIに最適な10x緩衝液(200mM Tris-HCl pH 8.5、100mM MgCl2、10mM Dithiothreitol、1000mM KCl)5μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μlとしたものを調製した。当該反応液を、37℃にて1時間インキュベーションし、配列番号36からなるDNAフラグメントT3を得た。
【0216】
<DNAフラグメント>
T3:5’- TAGGTGAGCTACGTGTGTTTGGGCGTCGTGCACTGGCTCACTTGTACGCGCAGAAATGGCAGCTTGTACGATTGGTGACCCGCCTTTTCGACACTGGACCGCTATGGACGTGGCGGCGGTGTGGCGGCGGCTCAATGACCTGTGGCGCCCGTTTGTGGCGTGCGATAGTCGAGCCGCCTGTCACGTGCGCGGCCGCCCTGCTCCGTTTGACGCGATGCATAGCATGCGACCACCCAGTAATCATACTGCTGACGCTATTGGTCACGTGGTTATGGCAGCTGCTGTTGACTGCGGTGGCGTCCCGTTTCCACACCGTACGTGAGCACATGTCTGGATTGC -3’(配列番号36)
【0217】
得られた夫々の反応液から20μLとり、SssI methylase (NEB社製)を0.5μlと、10xNEBuffer2 (NEB社製)を5μlと、S-adenosyl methionine (3.2 mM, NEB社製)を0.5μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μlとしたものを調製した。当該反応液を、37℃にて30分間インキュベーションし、配列番号36で示される塩基配列からなるDNAフラグメントT3をメチル化することにより、配列番号38で示される塩基配列からなるメチル化されたDNAフラグメントT4を得た。
【0218】
<DNAフラグメント>
T3:5’- TAGGTGAGCTACGTGTGTTTGGGCGTCGTGCACTGGCTCACTTGTACGCGCAGAAATGGCAGCTTGTACGATTGGTGACCCGCCTTTTCGACACTGGACCGCTATGGACGTGGCGGCGGTGTGGCGGCGGCTCAATGACCTGTGGCGCCCGTTTGTGGCGTGCGATAGTCGAGCCGCCTGTCACGTGCGCGGCCGCCCTGCTCCGTTTGACGCGATGCATAGCATGCGACCACCCAGTAATCATACTGCTGACGCTATTGGTCACGTGGTTATGGCAGCTGCTGTTGACTGCGGTGGCGTCCCGTTTCCACACCGTACGTGAGCACATGTCTGGATTGC -3’(配列番号36)
<メチル化されたDNAフラグメント>(Nは5-メチルシトシンを示す)
T4:5’- TAGGTGAGCTANGTGTGTTTGGGNGTNGTGCACTGGCTCACTTGTANGNGCAGAAATGGCAGCTTGTANGATTGGTGACCNGCCTTTTNGACACTGGACNGCTATGGANGTGGNGGNGGTGTGGNGGNGGCTCAATGACCTGTGGNGCCNGTTTGTGGNGTGNGATAGTNGAGCNGCCTGTCANGTGNGNGGCNGCCCTGCTCNGTTTGANGNGATGCATAGCATGNGACCACCCAGTAATCATACTGCTGANGCTATTGGTCANGTGGTTATGGCAGCTGCTGTTGACTGNGGTGGNGTCCNGTTTCCACACNGTANGTGAGCACATGTCTGGATTGC -3’ (配列番号38)
【0219】
配列番号36で示される塩基配列からなるDNAフラグメントT3の負鎖に相補性により結合可能な配列番号26〜配列番号35で示される塩基配列からなるカウンターオリゴヌクレオチドC1〜C10を合成し、夫々の濃度が0.01μMであるTEバッファー溶液を調製した。
【0220】
<DNAフラグメント>
T3:5’- TAGGTGAGCTACGTGTGTTTGGGCGTCGTGCACTGGCTCACTTGTACGCGCAGAAATGGCAGCTTGTACGATTGGTGACCCGCCTTTTCGACACTGGACCGCTATGGACGTGGCGGCGGTGTGGCGGCGGCTCAATGACCTGTGGCGCCCGTTTGTGGCGTGCGATAGTCGAGCCGCCTGTCACGTGCGCGGCCGCCCTGCTCCGTTTGACGCGATGCATAGCATGCGACCACCCAGTAATCATACTGCTGACGCTATTGGTCACGTGGTTATGGCAGCTGCTGTTGACTGCGGTGGCGTCCCGTTTCCACACCGTACGTGAGCACATGTCTGGATTGC -3’(配列番号36)
【0221】
<カウンターオリゴヌクレオチド>
C1:5’- AGGTGAGCTACGTGTGTTTGG -3’ (配列番号26)
C2:5’- GCGTCGTGCACTGGCTCACTTGTACGCGCA -3’ (配列番号27)
C3:5’- CTTGTACGATTGGTGACCCGCCTTTTCGAC -3’ (配列番号28)
C4:5’- ACTGGACCGCTATGGACGTGGCGGCGGTGT -3’ (配列番号29)
C5:5’- GGCGGCGGCTCAATGACCTGTGGCGCCCGT -3’ (配列番号30)
C6:5’- TTGTGGCGTGCGATAGTCGAGCCGCCTGTC -3’ (配列番号31)
C7:5’- ACGTGCGCGGCCGCCCTGCTCCGTT -3’ (配列番号32)
C8:5’- TGACGCGATGCATAGCATGCGACCACCCAG -3’ (配列番号33)
C9:5’- ACTGCTGACGCTATTGGTCACGTGGTTATG -3’ (配列番号34)
C10:5’- CTGCTGTTGACTGCGGTGGCGTCCCGTTTC -3’ (配列番号35)
【0222】
前記の酵母ゲノムDNAの反応液について、以下の処理を施した。
【0223】
前記で調製した酵母ゲノムDNAの反応液に、前記で調製したカウンターオリゴヌクレオチド溶液10μLを添加し、混合した。その後、本PCRチューブを95℃で10分間加熱し、70℃まで速やかに冷却し、その温度で10分間保温した。次いで、50℃まで冷却し10分間保温し、更に37℃で10分間保温した後、室温に戻した。
【0224】
前記のビオチン標識メチルシトシン抗体が固定化されたストレプトアビジン被覆済みPCRチューブに、前記で調製したDNAフラグメントの反応液50μLを加え、室温で30分間放置した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、当該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作を更に2回繰り返し、配列番号38で示される塩基配列からなるメチル化されたDNAフラグメントT4をPCRチューブに固定した。
【0225】
<メチル化されたDNAフラグメント>(Nは5-メチルシトシンを示す)
T4:5’- TAGGTGAGCTANGTGTGTTTGGGNGTNGTGCACTGGCTCACTTGTANGNGCAGAAATGGCAGCTTGTANGATTGGTGACCNGCCTTTTNGACACTGGACNGCTATGGANGTGGNGGNGGTGTGGNGGNGGCTCAATGACCTGTGGNGCCNGTTTGTGGNGTGNGATAGTNGAGCNGCCTGTCANGTGNGNGGCNGCCCTGCTCNGTTTGANGNGATGCATAGCATGNGACCACCCAGTAATCATACTGCTGANGCTATTGGTCANGTGGTTATGGCAGCTGCTGTTGACTGNGGTGGNGTCCNGTTTCCACACNGTANGTGAGCACATGTCTGGATTGC -3’ (配列番号38)
【0226】
次に、上記のPCRチューブに、配列番号22及び配列番号23で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーPF2及びPR2の各溶液及び、下記の反応条件を用いてPCRを行うことにより、配列番号24で示される塩基配列からなる目的とするDNA領域Tを増幅した。
【0227】
<PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー>
PF2:5’- AGGTGAGCTACGTGTGTTTGG -3’ (配列番号22)
PR2:5’- AGACATGTGCTCACGTACGGT -3’ (配列番号23)
【0228】
<目的とするDNA領域>
T:5’- AGGTGAGCTACGTGTGTTTGGGCGTCGTGCACTGGCTCACTTGTACGCGCAGAAATGGCAGCTTGTACGATTGGTGACCCGCCTTTTCGACACTGGACCGCTATGGACGTGGCGGCGGTGTGGCGGCGGCTCAATGACCTGTGGCGCCCGTTTGTGGCGTGCGATAGTCGAGCCGCCTGTCACGTGCGCGGCCGCCCTGCTCCGTTTGACGCGATGCATAGCATGCGACCACCCAGTAATCATACTGCTGACGCTATTGGTCACGTGGTTATGGCAGCTGCTGTTGACTGCGGTGGCGTCCCGTTTCCACACCGTACGTGAGCACATGTCT -3’ (配列番号24)
【0229】
PCRの反応液としては、鋳型とするDNAに、5μMに調製されたオリゴヌクレオチドプライマー溶液各3μLと、each 2mM dNTPを5μLと、緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を5μLと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold、ABI社製)5U/μLを0.25μLとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μLとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて20秒間次いで58℃にて30秒間更に72℃にて30秒間を1サイクルとする保温を35サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認した。その結果は、以下の通りであった。
【0230】
酵母ゲノムDNAの溶液A(10 ng)、溶液B(1 ng)、及び、溶液C(0.1 ng)で、増幅が確認された。コントロール溶液D(0 ng)では、増幅が確認されなかった。
【0231】
以上より、前記の目的とするDNA領域を含むDNAをメチルシトシン抗体を用いて選択することが可能であること、且つ、前記の目的とするDNA領域を検出可能な量になるまで増幅できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0232】
本発明により、検体中に含まれるDNA中の目的とする領域のメチル化されたDNAの含量を簡便に測定する方法等を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0233】
【図1】図1は、実施例1において、調製されたサンプルから、配列番号20で示される塩基配列からなる目的とするDNA領域をPCRにて増幅し、得られた増幅産物を2%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。 図中の一番左のレーンから、DNAマーカー「M1」、DNAマーカー「M2」、コントロール溶液D(0pg)のサンプル「D」、DNAフラグメントの溶液C(1pg)のサンプル「C」、DNAフラグメントの溶液B(10pg)のサンプル「B」、DNAフラグメントの溶液A(100pg)のサンプル「A」、コントロール溶液D(0pg)のサンプル「D」、DNAフラグメントの溶液C(1pg)のサンプル「C」、DNAフラグメントの溶液B(10pg)のサンプル「B」、DNAフラグメントの溶液A(100pg)のサンプル「A」、での結果を示している。
【図2】図2は、実施例2において、調製されたサンプルから、配列番号20で示される塩基配列からなる目的とするDNA領域をPCRにて増幅し、得られた増幅産物を2%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。 図中の一番左のレーンから、DNAマーカー「M1」、DNAマーカー「M2」、コントロール溶液D(0pg)のサンプル「D」、DNAフラグメントの溶液C(1pg)のサンプル「C」、DNAフラグメントの溶液B(10pg)のサンプル「B」、DNAフラグメントの溶液A(100pg)のサンプル「A」、コントロール溶液D(0pg)のサンプル「D」、DNAフラグメントの溶液C(1pg)のサンプル「C」、DNAフラグメントの溶液B(10pg)のサンプル「B」、DNAフラグメントの溶液A(100pg)のサンプル「A」、での結果を示している。
【図3】図3は、実施例3において、調製されたサンプルから、配列番号20で示される塩基配列からなる目的とするDNA領域をPCRにて増幅し、得られた増幅産物を2%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。 図中の一番左のレーンから、DNAマーカー「M1」、DNAマーカー「M2」、コントロール溶液D(0ng)のサンプル「D」、酵母ゲノムDNAの溶液C(1ng)のサンプル「C」、酵母ゲノムDNAの溶液B(10ng)のサンプル「B」、酵母ゲノムDNAの溶液A(100ng)のサンプル「A」、コントロール溶液D(0ng)のサンプル「D」、酵母ゲノムDNAの溶液C(1ng)のサンプル「C」、酵母ゲノムDNAの溶液B(10ng)のサンプル「B」、酵母ゲノムDNAの溶液A(100ng)のサンプル「A」、での結果を示している。
【図4】図4は、実施例4において、調製されたサンプルから、配列番号20で示される塩基配列からなる目的とするDNA領域をPCRにて増幅し、得られた増幅産物を2%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。 図中の一番左のレーンから、DNAマーカー「M1」、DNAマーカー「M2」、コントロール溶液D(0ng)のサンプル「D」、酵母ゲノムDNAの溶液C(1ng)のサンプル「C」、酵母ゲノムDNAの溶液B(10ng)のサンプル「B」、酵母ゲノムDNAの溶液A(100ng)のサンプル「A」、コントロール溶液D(0ng)のサンプル「D」、酵母ゲノムDNAの溶液C(1ng)のサンプル「C」、酵母ゲノムDNAの溶液B(10ng)のサンプル「B」、酵母ゲノムDNAの溶液A(100ng)のサンプル「A」、での結果を示している。
【図5】図5は、実施例5において、調製されたサンプルから、配列番号25で示される塩基配列からなるDNA領域をPCRにて増幅し、得られた増幅産物を1.5%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。 図中の一番左のレーンから、DNAマーカー「MK」、コントロール溶液D(0pg)のサンプル「D」、DNAフラグメントの溶液C(1pg)のサンプル「C」、DNAフラグメントの溶液B(10pg)のサンプル「B」、DNAフラグメントの溶液A(100pg)のサンプル「A」、コントロール溶液D(0pg)のサンプル「D」、DNAフラグメントの溶液C(1pg)のサンプル「C」、DNAフラグメントの溶液B(10pg)のサンプル「B」、DNAフラグメントの溶液A(100pg)のサンプル「A」、での結果を示している。
【図6】図6は、実施例6において、調製されたサンプルから、配列番号25で示される塩基配列からなるDNA領域をPCRにて増幅し、得られた増幅産物を1.5%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。 図中の一番左のレーンから、DNAマーカー「MK」、コントロール溶液D(0pg)のサンプル「D」、DNAフラグメントの溶液C(1pg)のサンプル「C」、DNAフラグメントの溶液B(10pg)のサンプル「B」、DNAフラグメントの溶液A(100pg)のサンプル「A」、コントロール溶液D(0pg)のサンプル「D」、DNAフラグメントの溶液C(1pg)のサンプル「C」、DNAフラグメントの溶液B(10pg)のサンプル「B」、DNAフラグメントの溶液A(100pg)のサンプル「A」、での結果を示している。
【図7】図7は、実施例7において、調製されたサンプルから、配列番号25で示される塩基配列からなるDNA領域をPCRにて増幅し、得られた増幅産物を1.5%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。 図中の一番左のレーンから、DNAマーカー「MK」、コントロール溶液D(0ng)のサンプル「D」、酵母ゲノムDNAの溶液C(0.1ng)のサンプル「C」、酵母ゲノムDNAの溶液B(1ng)のサンプル「B」、酵母ゲノムDNAの溶液A(10ng)のサンプル「A」、コントロール溶液D(0ng)のサンプル「D」、酵母ゲノムDNAの溶液C(0.1ng)のサンプル「C」、酵母ゲノムDNAの溶液B(1ng)のサンプル「B」、酵母ゲノムDNAの溶液A(10ng)のサンプル「A」、での結果を示している。
【図8】図8は、実施例8において、調製されたサンプルから、配列番号25で示される塩基配列からなるDNA領域をPCRにて増幅し、得られた増幅産物を1.5%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。 図中の一番左のレーンから、DNAマーカー「MK」、コントロール溶液D(0ng)のサンプル「D」、酵母ゲノムDNAの溶液C(0.1ng)のサンプル「C」、酵母ゲノムDNAの溶液B(1ng)のサンプル「B」、酵母ゲノムDNAの溶液A(10ng)のサンプル「A」、コントロール溶液D(0ng)のサンプル「D」、酵母ゲノムDNAの溶液C(0.1ng)のサンプル「C」、酵母ゲノムDNAの溶液B(1ng)のサンプル「B」、酵母ゲノムDNAの溶液A(10ng)のサンプル「A」、での結果を示している。
【0234】
[配列表フリーテキスト]
配列番号17
実験のために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号18
実験のために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号19
実験のために設計されたDNAフラグメント
配列番号20
実験のために設計されたメチル化されたDNAフラグメント
配列番号21
実験のために設計されたDNAフラグメント
配列番号22
実験のために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号23
実験のために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号24
実験のために設計されたDNAフラグメント
配列番号25
実験のために設計されたメチル化されたDNAフラグメント
配列番号26
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号27
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号28
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号29
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号30
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号31
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号32
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号33
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号34
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号35
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号36
実験のために設計されたDNAフラグメント
配列番号37
実験のために設計されたメチル化されたDNAフラグメント
配列番号38
実験のために設計されたメチル化されたDNAフラグメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体中に含まれる目的とするDNA領域を有するDNAを定量又は検出する方法であって、
(1)目的とするDNA領域を有するDNAを検体中から取得する第一工程、
(2)第一工程で取得した目的とするDNA領域を有するDNAをDNAメチル化酵素で処理する第二工程、
(3)第二工程で取得したDNAメチル化酵素で処理された目的とするDNA領域を有するDNAから、目的とするDNA領域を有する一本鎖メチル化DNAを取得する第三工程、
(4)第三工程で取得された目的とするDNA領域を有する一本鎖メチル化DNAと、固定化メチル化DNA抗体と、を結合させて、該目的とするDNA領域を有する一本鎖メチル化DNAと該固定化メチル化DNA抗体との複合体を形成させる第四工程、
(5)第四工程で形成された複合体に含まれる目的とするDNA領域を有する一本鎖メチル化DNAを、固定化メチル化DNA抗体から分離して一本鎖DNA(正鎖)にする第五工程と、
(6)第五工程で得られた一本鎖DNA(正鎖)を、該一本鎖DNA(正鎖)が有する塩基配列の部分塩基配列(正鎖)であって、且つ、前記目的とするDNA領域の塩基配列(正鎖)の3’末端より更に3’末端側に位置する部分塩基配列(正鎖)に対して相補性のある塩基配列(負鎖)を有するプライマー(フォーワード用プライマー)を伸長プライマーとして、該伸長プライマーを1回伸長させることにより、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)を二本鎖DNAに伸長形成させる第六工程と、
(7)第六工程で伸長形成された二本鎖DNAを、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(負鎖)に分離する第七工程と、
(8)第七工程で得られた目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)を鋳型として、前記フォワード用プライマーを伸長プライマーとして、該伸長プライマーを一回伸長させることにより、前記目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAを二本鎖DNAとして伸長形成させる第八工程と、
(9)第七工程で得られた目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(負鎖)を鋳型として、前記目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(負鎖)が有する塩基配列の部分塩基配列(負鎖)であって、且つ、前記目的とするDNA領域の塩基配列(正鎖)に対して相補性のある塩基配列(負鎖)の3’末端より更に3’末端側に位置する部分塩基配列(負鎖)に対して相補性のある塩基配列(正鎖)を有するプライマー(リバース用プライマー)を伸長プライマーとして、該伸長プライマーを1回伸長させることにより、前記目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAを二本鎖DNAとして伸長形成させる第九工程と、
(10)第八工程又は第九工程で得られた伸長形成された二本鎖DNAを一本鎖状態に分離した後、繰り返すことにより、前記目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAを検出可能な量になるまで増幅する第十工程と、
(11)第十工程で増幅されたDNAの量を定量又は検出する第十一工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
DNAメチル化酵素がシトシンメチル化酵素又はSss Iメチラーゼである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第四工程において検体中に含まれる目的とするDNA領域を有する一本鎖メチル化DNAを固定化メチル化DNA抗体と結合させることにより固定相へ吸着させる請求項1に記載の方法を用いたDNAの濃縮方法。
【請求項4】
固定化メチル化DNA抗体がメチルシトシン抗体である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
検体中に含まれる目的とするDNA領域を有するDNAが、RNAから逆転写酵素により生成されたDNAである請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
検体が、下記のいずれかの検体である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
(a)哺乳動物由来の血液、体液、糞尿、体分泌物、細胞溶解液又は組織溶解液
(b)哺乳動物由来の血液、体液、糞尿、体分泌物、細胞溶解液及び組織溶解液からなる群より選ばれる一から抽出されたDNA
(c)哺乳動物由来の組織、細胞、組織溶解液及び細胞溶解液からなる群より選ばれる一から抽出されたRNAを鋳型として作製されたcDNA
(e)細菌、真菌又はウイルスから抽出されたDNA
(f)細菌、真菌又はウイルスから抽出されたRNAを鋳型として作製されたDNA
【請求項7】
検体中に含まれる目的とするDNA領域を有するDNAが、目的とするDNA領域を認識切断部位としない制限酵素で予め消化処理されてなるDNA、合成オリゴヌクレオチド、又は予め精製されてなるDNAである請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第二工程で目的とするDNA領域を有する一本鎖メチル化DNAを取得する際に、カウンターオリゴヌクレオチドを添加する請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−296905(P2009−296905A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152618(P2008−152618)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】