ＤＮＡチップ処理装置
【課題】プレートの開口部を容易に開閉できるような構成でありながらＤＮＡチップが収納された区画の密封を保つことが出来るＤＮＡチップ処理装置を提供する。
【解決手段】複数枚のＤＮＡチップ１の各々が収容される複数の区画２を有するプレート３と、プレート開口部を密閉する密封材５と、区画２に保持された液体４を設定温度に保持可能な温度調整機構１０と、プレート３と密封材５を固定するカバー部６と、カバー部６をプレート３に対して、水平または垂直方向に移動させる移動機構７と、カバー部６をプレート３に所定の圧力で押付ける押付け機構９からなり、カバー部６のプレート３の開口部に接する部分に空間８を備える。
【解決手段】複数枚のＤＮＡチップ１の各々が収容される複数の区画２を有するプレート３と、プレート開口部を密閉する密封材５と、区画２に保持された液体４を設定温度に保持可能な温度調整機構１０と、プレート３と密封材５を固定するカバー部６と、カバー部６をプレート３に対して、水平または垂直方向に移動させる移動機構７と、カバー部６をプレート３に所定の圧力で押付ける押付け機構９からなり、カバー部６のプレート３の開口部に接する部分に空間８を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ＤＮＡチップをハイブリダイゼーション及び洗浄処理する装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
近年、多数遺伝子の一括発現解析を可能とするＤＮＡマイクロアレイ法（ＤＮＡチップ法）と呼ばれる新しい分析法、ないし方法論が開発され、注目を集めている。これらの方法は、いずれも核酸―核酸間ハイブリダイゼーション反応に基づく核酸検出・定量法であり、マイクロアレイ又はチップと呼ばれる平面基盤片上に、多数のＤＮＡ断片が高密度に整列固定化されたものが用いられている点に大きな特徴がある。マイクロアレイ法の具体的使用法としては、例えば、研究対象細胞の発現遺伝子等を蛍光色素等で標識したサンプルを平面基盤片上でハイブリダイゼーションさせ、互いに相補的な核酸（ＤＮＡ又はＲＮＡ）同士を結合させ、その箇所を蛍光色素等でラベル後、高解像度解析装置で高速に読みとる方法が挙げられる。こうして、サンプル中のそれぞれの遺伝子量を迅速に推定できる。この新しい方法の導入により、反応検体の微量化と、その反応検体を再現性よく多量・迅速・系統的に分析、定量することが可能となってきた。
【０００３】
マイクロアレイは上述の平面基盤片のもの以外に、例えば、検査対象となる物質の探査針として機能するプローブが固定化された高分子ゲルが、表裏を貫通する複数の孔部の各々に、プローブが固定された高分子ゲルが保持された構造を有するＤＮＡチップ（ＤＮＡマイクロアレイ）が知られている。その一例として、孔部が中空繊維により形成されているＤＮＡマイクロアレイ（繊維型ＤＮＡマイクロアレイ）が開示されている（例えば、特許文献１参照）。
【０００４】
また、繊維型ＤＮＡマイクロアレイのハイブリダイゼーション、洗浄処理に関して、大量のＤＮＡチップを、操作が簡便で、かつ効率よく処理することができるＤＮＡチップ処理装置が開示されている（例えば、特許文献２参照）。
【０００５】
ここで、従来のＤＮＡチップ処理装置の処理工程（ハイブリダイゼーション工程、洗浄処理工程）に関して、図４を用いて説明する。ＤＮＡマイクロアレイ１０１をハイブリダイゼーション及び洗浄用プレート（以降プレート１０３とする）の区画１０２に挿入する。次いで検体１０４をプレート１０３の開口部より注入した後、内部の液体の蒸発防止、コンタミネーション防止のために各区画を粘着フィルム１０５で密閉する。次にプレート１０３を固定するためにカバー部１０６をプレート１０３上部に配置し、カバー部止めねじ１０７にてプレート１０３をしっかり固定する。その後、所定の条件（温度、時間等）にて、ハイブリダイゼーション工程を開始する。
【０００６】
ハイブリダイゼーション工程の実施時間が終了すると、次に洗浄処理工程を開始する。洗浄処理工程は、洗浄液注入用ノズル及び洗浄液吸引用ノズル（以降ノズル１０８とする）の移動機構１０９により、ノズル１０８を各区画１０２の所定の位置まで移動し、その位置でノズル１０８を降下させ、フィルム穿刺口１１０を通して、粘着フィルム１０５をノズル１０８にて穿刺し、洗浄動作である洗浄液の注入及び吸引を実行する。
【０００７】
ここでは、洗浄液が収納された洗浄液ボトル１１１から、洗浄液を選択する洗浄液切替え弁１１２、洗浄液を吸引吐出する洗浄液ポンプ１１３、吸引吐出を選択できる吸引吐出切替え弁１１４、洗浄液を所定の温度に制御する熱交換ユニット１１５を用いて、ノズル１０８より所定の温度の洗浄液をプレート１０３の各区画に注入する。さらに、プレート１０３から吸引される廃液は、廃液ポンプ１１６にて吸引され、廃液ボトル１１７に収集する。
【特許文献１】特開２００１−１３３４５３号公報
【特許文献２】特開２００６−３３４９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
しかしながら、前記従来の構成では、ハイブリダイゼーション時に生じた水蒸気を外部に逃がさないようにＤＮＡチップが収納された区画を密封するため、プレート上部にカバー部を配置し、カバー部止めねじにてプレートを固定しているので、プレートの開口部を容易に開閉することが出来ないという課題を有していた。
【０００９】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、プレートの開口部を容易に開閉できるような構成でありながらＤＮＡチップが収納された区画の密封を保つことが出来るＤＮＡチップ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
前記従来の課題を解決するために、本発明のＤＮＡチップ処理装置は、複数枚のＤＮＡチップの各々が収容される複数の区画を有するプレートと、前記プレート開口部を密閉する密封材と、前記区画に保持された液体を設定温度に保持可能な温度調整機構と、前記プレートと前記密封材を固定するカバー部と、前記カバー部を前記プレートに対して、水平または垂直方向に移動させる移動機構と、前記カバー部を前記プレートに所定の圧力で押付ける押付け機構からなり、前記カバー部の前記プレートの開口部に接する部分に空間を備えたことを特徴とするものである。
【００１１】
さらにＤＮＡチップ処理装置において、洗浄液を注入する洗浄液注入ノズルと、前記洗浄液を吸引する洗浄液吸引ノズルと、前記洗浄液を注入する洗浄液注入ノズルと前記洗浄液を吸引する洗浄液吸引ノズルを前記カバー部にさらに備えたことを特徴とするものである。
【００１２】
さらにＤＮＡチップ処理装置において、前記カバー部の空間は、少なくとも前記区画内の空気が温度上昇により膨張する体積よりも大きい体積であることを特徴とするものである。
【００１３】
さらにＤＮＡチップ処理装置において、前記カバー部は、前記カバー部の空間内の空気を通過させる空気口を備えたことを特徴とするものである。
【００１４】
さらにＤＮＡチップ処理装置において、前記移動機構において、前記プレートの開口部と前記カバー部の空間を一致させる制御部を備えたことを特徴とするものである。
【００１５】
さらにＤＮＡチップ処理装置において、前記密封材は、伸縮可能なものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【００１６】
本発明のＤＮＡチップ処理装置によれば、プレートとカバー部の開閉を容易にしつつ、ハイブリダイゼーション時にはＤＮＡチップが収納された区画で生じる水蒸気を外部に漏らさないようにすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
以下に、本発明のＤＮＡチップ処理装置の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【００１８】
（実施の形態１）
図１は、本発明の第１の実施の形態におけるＤＮＡチップ処理装置の断面図を、図２は本発明の第１の実施の形態におけるＤＮＡチップ処理装置のカバー部詳細図を、図３は本発明の第１の実施の形態におけるＤＮＡチップ処理装置のプレート構成図をそれぞれ示したものである。図３において図３（ａ）はプレート３の上面図、図３（ｂ）はプレート３の断面図を示している。
【００１９】
図１において、本発明のＤＮＡチップ処理装置は、ＤＮＡチップ１を収納し、液体の検体４が注入される区画２と、複数の区画２を有するプレート３と、プレート３上に配置され区画２を密封するフィルム５と、プレート３上に配置するカバー部６と、カバー部６を上下に移動させる移動機構７と、カバー部６をプレート３に押圧する押付け機構９とプレート３を加熱するヒータ１０とで構成される。さらにカバー部６は空間８と空気口１１を有する。さらにカバー部６の所定位置にノズル５２が配置されている。
【００２０】
ここで、ＤＮＡチップ処理装置を使用したハイブリダイゼーション工程に関する説明を図１、図２、図３を用いて説明する。図１において、複数枚のＤＮＡチップ１の各々が収容される複数の区画２を有するハイブリダイゼーション及び洗浄を行うためのプレート３に、ＤＮＡチップ１を挿入し、各区画の開口部より検体４を注入する。次に検体のコンタミネーション防止のためのフィルム５を、プレート３を固定するためのカバー部６に装着する。
【００２１】
ここで、カバー部６へのフィルム５装着に関して、例えば、図２において、カバー部６にプレート３とカバー部６が接する部分にフィルム装着部５０を設け、フィルム装着部の挿入口５１よりフィルム５を入れるようにする。また、フィルム５は、ノズル５２を除いた範囲５３をカバーできる大きさとし、フィルム装着部５０は、その大きさのフィルムを装着できるものとする。
【００２２】
次にハイブリダイゼーション開始前の装置動作は、カバー部６をプレート３に対して水平または垂直方向に移動させる移動機構７により、プレート３全体を密閉できる位置にカバー部６移動させる。この時、プレート３の各区画２に対応して設けられたカバー部の空間８が、プレート３の各区画２の開口部６１に一致するようにカバー部６を移動するものとする。
【００２３】
ここで、カバー部６の移動における位置あわせは、基準位置を設け、移動させる方がよい。例えば、図２のようなカバー部６とノズル５２を一体型とした構成において、プレート３にノズル収納部６０を設け、この位置を基準位置とし、移動させる。プレート３の各区画は、図３に示すノズル収納部６０から相対的な位置に配置する構成とすることで、カバー部の空間８を設ける位置も決まり、プレート３の各区画の開口部６１とカバー部の空間８を容易に一致させることができる。
【００２４】
また、カバー部６をプレート３に押付ける押付け機構９とカバー部の移動機構７を利用して、プレート３の各区画を確実に密閉する。例えば、移動機構７にてプレートに対して垂直方向へカバー部を所定の距離だけ移動させ、押付け機構９に設けたばねの力を利用することで、所定の押付け力を実現する。
【００２５】
こうすることで、この装置でハイブリダイゼーションが実行できる。また、カバー部６とフィルム５が移動機構７により、連動して移動するため、プレート３の開口部を容易に開閉することを可能とし、洗浄動作時は、ノズル５２がフィルム５を穿刺することなく、安定した洗浄性能を実現することができる。
【００２６】
また、ハイブリダイゼーション実行中にて、プレート３を密閉状態にし、所定の温度になるようにヒータ１０にて温度制御を行うが、ハイブリダイゼーション実行中は、プレート３の各区画における内部温度が上昇し、内部の空気が膨張し、内部圧力が上昇することから、膨張した空気の体積分だけフィルム５を押し上げる。膨張した空気の体積分は、カバー部の空間８に逃がすことができるため、プレート３の各区画における内圧の上昇を減らすことができる。
【００２７】
こうすることで、プレート３の各区画における内圧上昇により、カバー部６とプレート３間に生じる隙間により、検体４が蒸発し、検体量が減少してしまうことを防ぎ、プレート３の複数の区画２に収納された各ＤＮＡチップ１と検体４の反応条件の均一性を確保することができる。
【００２８】
また、カバー部の空間８の体積は、少なくともハイブリダイゼーション時の温度変化により膨張する空気の体積分だけ設ける必要がある。例えば、室温をＴ１、ハイブリダイゼーション実施温度Ｔ２、とし、プレート３の各区画の空気存在部の高さをｈ１、カバー部の空間８の高さをｈ２とした場合、シャルルの法則よりｈ２は次式から求められる。
【００２９】
【数１】
【００３０】
ただし、カバー部の空間８の面積とプレート３の各区画の開口部の面積を同じとし、検体４は高さｈ３まで注入するものとする。また、ハイブリダイゼーション実行中において、フィルム５にてプレート３開口部を塞いだ状態で、カバー部の空間８内の圧力とプレート３の各区画の内圧における圧力バランスが均衡しないように、空気を通過させる空気口１１を設ける。こうすることで、プレート３の各区画における内圧の上昇分をカバー部の空間８へ容易に逃がすことができる。
【００３１】
また、フィルム５は、プレート３の各区画の内部圧力変化に伴って、十分伸縮できるものとし、例えばポリオレフィンなどを用いるものとする。
【００３２】
以上のように本実施の形態１においてはカバー部に検体の熱膨張による圧力逃げ部となる空間を設けるようにしたため、カバー部をねじ止めすることなく密封状態を保ち、検体の外部への蒸発を防ぐ事が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【００３３】
本発明にかかるＤＮＡチップ処理装置は、ＤＮＡチップが収納されたプレートの開口部を容易に開閉でき、さらにハイブリダイゼーション時のプレート内の検体の蒸発を防止できる効果を有し、大量の検体を同時に迅速に処理する事の出来る遺伝子解析装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【００３４】
【図１】本発明の第１の実施の形態におけるＤＮＡチップ処理の構成図
【図２】本発明の第１の実施の形態におけるＤＮＡチップ処理装置のカバー部詳細図
【図３】本発明の第１の実施の形態におけるＤＮＡチップ処理装置のプレート構成図
【図４】従来のＤＮＡチップ処理装置の構成図
【符号の説明】
【００３５】
１ ＤＮＡチップ
２ 区画
３ プレート
４ 検体
５ フィルム
６ カバー部
７ 移動機構
８ カバー部空間
９ 押付け機構
１０ ヒータ
１１ 空気口
５０ フィルム装着部
５０ａ フィルム装着範囲
５１ 挿入口
５２ ノズル
５３ 洗浄液ボトル
５４ 洗浄液切替え弁
５５ 洗浄液ポンプ
５６ 吸引吐出切替え弁
５７ 熱交換ユニット
５８ 排気ポンプ
５９ 廃液ボトル
６０ ノズル収納部
６１ 開口部
１０１ ＤＮＡマイクロアレイ
１０２ 区画
１０３ プレート
１０４ 検体
１０５ 粘着フィルム
１０６ カバー部
１０７ 止めねじ
１０８ ノズル
１０９ 移動機構
１１０ フィルム穿刺口
１１１ 洗浄液ボトル
１１２ 洗浄液切替え弁
１１３ 洗浄液ポンプ
１１４ 吸引吐出切替え弁
１１５ 熱交換ユニット
１１６ 排気ポンプ
１１７ 廃液ボトル
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ＤＮＡチップをハイブリダイゼーション及び洗浄処理する装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
近年、多数遺伝子の一括発現解析を可能とするＤＮＡマイクロアレイ法（ＤＮＡチップ法）と呼ばれる新しい分析法、ないし方法論が開発され、注目を集めている。これらの方法は、いずれも核酸―核酸間ハイブリダイゼーション反応に基づく核酸検出・定量法であり、マイクロアレイ又はチップと呼ばれる平面基盤片上に、多数のＤＮＡ断片が高密度に整列固定化されたものが用いられている点に大きな特徴がある。マイクロアレイ法の具体的使用法としては、例えば、研究対象細胞の発現遺伝子等を蛍光色素等で標識したサンプルを平面基盤片上でハイブリダイゼーションさせ、互いに相補的な核酸（ＤＮＡ又はＲＮＡ）同士を結合させ、その箇所を蛍光色素等でラベル後、高解像度解析装置で高速に読みとる方法が挙げられる。こうして、サンプル中のそれぞれの遺伝子量を迅速に推定できる。この新しい方法の導入により、反応検体の微量化と、その反応検体を再現性よく多量・迅速・系統的に分析、定量することが可能となってきた。
【０００３】
マイクロアレイは上述の平面基盤片のもの以外に、例えば、検査対象となる物質の探査針として機能するプローブが固定化された高分子ゲルが、表裏を貫通する複数の孔部の各々に、プローブが固定された高分子ゲルが保持された構造を有するＤＮＡチップ（ＤＮＡマイクロアレイ）が知られている。その一例として、孔部が中空繊維により形成されているＤＮＡマイクロアレイ（繊維型ＤＮＡマイクロアレイ）が開示されている（例えば、特許文献１参照）。
【０００４】
また、繊維型ＤＮＡマイクロアレイのハイブリダイゼーション、洗浄処理に関して、大量のＤＮＡチップを、操作が簡便で、かつ効率よく処理することができるＤＮＡチップ処理装置が開示されている（例えば、特許文献２参照）。
【０００５】
ここで、従来のＤＮＡチップ処理装置の処理工程（ハイブリダイゼーション工程、洗浄処理工程）に関して、図４を用いて説明する。ＤＮＡマイクロアレイ１０１をハイブリダイゼーション及び洗浄用プレート（以降プレート１０３とする）の区画１０２に挿入する。次いで検体１０４をプレート１０３の開口部より注入した後、内部の液体の蒸発防止、コンタミネーション防止のために各区画を粘着フィルム１０５で密閉する。次にプレート１０３を固定するためにカバー部１０６をプレート１０３上部に配置し、カバー部止めねじ１０７にてプレート１０３をしっかり固定する。その後、所定の条件（温度、時間等）にて、ハイブリダイゼーション工程を開始する。
【０００６】
ハイブリダイゼーション工程の実施時間が終了すると、次に洗浄処理工程を開始する。洗浄処理工程は、洗浄液注入用ノズル及び洗浄液吸引用ノズル（以降ノズル１０８とする）の移動機構１０９により、ノズル１０８を各区画１０２の所定の位置まで移動し、その位置でノズル１０８を降下させ、フィルム穿刺口１１０を通して、粘着フィルム１０５をノズル１０８にて穿刺し、洗浄動作である洗浄液の注入及び吸引を実行する。
【０００７】
ここでは、洗浄液が収納された洗浄液ボトル１１１から、洗浄液を選択する洗浄液切替え弁１１２、洗浄液を吸引吐出する洗浄液ポンプ１１３、吸引吐出を選択できる吸引吐出切替え弁１１４、洗浄液を所定の温度に制御する熱交換ユニット１１５を用いて、ノズル１０８より所定の温度の洗浄液をプレート１０３の各区画に注入する。さらに、プレート１０３から吸引される廃液は、廃液ポンプ１１６にて吸引され、廃液ボトル１１７に収集する。
【特許文献１】特開２００１−１３３４５３号公報
【特許文献２】特開２００６−３３４９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
しかしながら、前記従来の構成では、ハイブリダイゼーション時に生じた水蒸気を外部に逃がさないようにＤＮＡチップが収納された区画を密封するため、プレート上部にカバー部を配置し、カバー部止めねじにてプレートを固定しているので、プレートの開口部を容易に開閉することが出来ないという課題を有していた。
【０００９】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、プレートの開口部を容易に開閉できるような構成でありながらＤＮＡチップが収納された区画の密封を保つことが出来るＤＮＡチップ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
前記従来の課題を解決するために、本発明のＤＮＡチップ処理装置は、複数枚のＤＮＡチップの各々が収容される複数の区画を有するプレートと、前記プレート開口部を密閉する密封材と、前記区画に保持された液体を設定温度に保持可能な温度調整機構と、前記プレートと前記密封材を固定するカバー部と、前記カバー部を前記プレートに対して、水平または垂直方向に移動させる移動機構と、前記カバー部を前記プレートに所定の圧力で押付ける押付け機構からなり、前記カバー部の前記プレートの開口部に接する部分に空間を備えたことを特徴とするものである。
【００１１】
さらにＤＮＡチップ処理装置において、洗浄液を注入する洗浄液注入ノズルと、前記洗浄液を吸引する洗浄液吸引ノズルと、前記洗浄液を注入する洗浄液注入ノズルと前記洗浄液を吸引する洗浄液吸引ノズルを前記カバー部にさらに備えたことを特徴とするものである。
【００１２】
さらにＤＮＡチップ処理装置において、前記カバー部の空間は、少なくとも前記区画内の空気が温度上昇により膨張する体積よりも大きい体積であることを特徴とするものである。
【００１３】
さらにＤＮＡチップ処理装置において、前記カバー部は、前記カバー部の空間内の空気を通過させる空気口を備えたことを特徴とするものである。
【００１４】
さらにＤＮＡチップ処理装置において、前記移動機構において、前記プレートの開口部と前記カバー部の空間を一致させる制御部を備えたことを特徴とするものである。
【００１５】
さらにＤＮＡチップ処理装置において、前記密封材は、伸縮可能なものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【００１６】
本発明のＤＮＡチップ処理装置によれば、プレートとカバー部の開閉を容易にしつつ、ハイブリダイゼーション時にはＤＮＡチップが収納された区画で生じる水蒸気を外部に漏らさないようにすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
以下に、本発明のＤＮＡチップ処理装置の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【００１８】
（実施の形態１）
図１は、本発明の第１の実施の形態におけるＤＮＡチップ処理装置の断面図を、図２は本発明の第１の実施の形態におけるＤＮＡチップ処理装置のカバー部詳細図を、図３は本発明の第１の実施の形態におけるＤＮＡチップ処理装置のプレート構成図をそれぞれ示したものである。図３において図３（ａ）はプレート３の上面図、図３（ｂ）はプレート３の断面図を示している。
【００１９】
図１において、本発明のＤＮＡチップ処理装置は、ＤＮＡチップ１を収納し、液体の検体４が注入される区画２と、複数の区画２を有するプレート３と、プレート３上に配置され区画２を密封するフィルム５と、プレート３上に配置するカバー部６と、カバー部６を上下に移動させる移動機構７と、カバー部６をプレート３に押圧する押付け機構９とプレート３を加熱するヒータ１０とで構成される。さらにカバー部６は空間８と空気口１１を有する。さらにカバー部６の所定位置にノズル５２が配置されている。
【００２０】
ここで、ＤＮＡチップ処理装置を使用したハイブリダイゼーション工程に関する説明を図１、図２、図３を用いて説明する。図１において、複数枚のＤＮＡチップ１の各々が収容される複数の区画２を有するハイブリダイゼーション及び洗浄を行うためのプレート３に、ＤＮＡチップ１を挿入し、各区画の開口部より検体４を注入する。次に検体のコンタミネーション防止のためのフィルム５を、プレート３を固定するためのカバー部６に装着する。
【００２１】
ここで、カバー部６へのフィルム５装着に関して、例えば、図２において、カバー部６にプレート３とカバー部６が接する部分にフィルム装着部５０を設け、フィルム装着部の挿入口５１よりフィルム５を入れるようにする。また、フィルム５は、ノズル５２を除いた範囲５３をカバーできる大きさとし、フィルム装着部５０は、その大きさのフィルムを装着できるものとする。
【００２２】
次にハイブリダイゼーション開始前の装置動作は、カバー部６をプレート３に対して水平または垂直方向に移動させる移動機構７により、プレート３全体を密閉できる位置にカバー部６移動させる。この時、プレート３の各区画２に対応して設けられたカバー部の空間８が、プレート３の各区画２の開口部６１に一致するようにカバー部６を移動するものとする。
【００２３】
ここで、カバー部６の移動における位置あわせは、基準位置を設け、移動させる方がよい。例えば、図２のようなカバー部６とノズル５２を一体型とした構成において、プレート３にノズル収納部６０を設け、この位置を基準位置とし、移動させる。プレート３の各区画は、図３に示すノズル収納部６０から相対的な位置に配置する構成とすることで、カバー部の空間８を設ける位置も決まり、プレート３の各区画の開口部６１とカバー部の空間８を容易に一致させることができる。
【００２４】
また、カバー部６をプレート３に押付ける押付け機構９とカバー部の移動機構７を利用して、プレート３の各区画を確実に密閉する。例えば、移動機構７にてプレートに対して垂直方向へカバー部を所定の距離だけ移動させ、押付け機構９に設けたばねの力を利用することで、所定の押付け力を実現する。
【００２５】
こうすることで、この装置でハイブリダイゼーションが実行できる。また、カバー部６とフィルム５が移動機構７により、連動して移動するため、プレート３の開口部を容易に開閉することを可能とし、洗浄動作時は、ノズル５２がフィルム５を穿刺することなく、安定した洗浄性能を実現することができる。
【００２６】
また、ハイブリダイゼーション実行中にて、プレート３を密閉状態にし、所定の温度になるようにヒータ１０にて温度制御を行うが、ハイブリダイゼーション実行中は、プレート３の各区画における内部温度が上昇し、内部の空気が膨張し、内部圧力が上昇することから、膨張した空気の体積分だけフィルム５を押し上げる。膨張した空気の体積分は、カバー部の空間８に逃がすことができるため、プレート３の各区画における内圧の上昇を減らすことができる。
【００２７】
こうすることで、プレート３の各区画における内圧上昇により、カバー部６とプレート３間に生じる隙間により、検体４が蒸発し、検体量が減少してしまうことを防ぎ、プレート３の複数の区画２に収納された各ＤＮＡチップ１と検体４の反応条件の均一性を確保することができる。
【００２８】
また、カバー部の空間８の体積は、少なくともハイブリダイゼーション時の温度変化により膨張する空気の体積分だけ設ける必要がある。例えば、室温をＴ１、ハイブリダイゼーション実施温度Ｔ２、とし、プレート３の各区画の空気存在部の高さをｈ１、カバー部の空間８の高さをｈ２とした場合、シャルルの法則よりｈ２は次式から求められる。
【００２９】
【数１】
【００３０】
ただし、カバー部の空間８の面積とプレート３の各区画の開口部の面積を同じとし、検体４は高さｈ３まで注入するものとする。また、ハイブリダイゼーション実行中において、フィルム５にてプレート３開口部を塞いだ状態で、カバー部の空間８内の圧力とプレート３の各区画の内圧における圧力バランスが均衡しないように、空気を通過させる空気口１１を設ける。こうすることで、プレート３の各区画における内圧の上昇分をカバー部の空間８へ容易に逃がすことができる。
【００３１】
また、フィルム５は、プレート３の各区画の内部圧力変化に伴って、十分伸縮できるものとし、例えばポリオレフィンなどを用いるものとする。
【００３２】
以上のように本実施の形態１においてはカバー部に検体の熱膨張による圧力逃げ部となる空間を設けるようにしたため、カバー部をねじ止めすることなく密封状態を保ち、検体の外部への蒸発を防ぐ事が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【００３３】
本発明にかかるＤＮＡチップ処理装置は、ＤＮＡチップが収納されたプレートの開口部を容易に開閉でき、さらにハイブリダイゼーション時のプレート内の検体の蒸発を防止できる効果を有し、大量の検体を同時に迅速に処理する事の出来る遺伝子解析装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【００３４】
【図１】本発明の第１の実施の形態におけるＤＮＡチップ処理の構成図
【図２】本発明の第１の実施の形態におけるＤＮＡチップ処理装置のカバー部詳細図
【図３】本発明の第１の実施の形態におけるＤＮＡチップ処理装置のプレート構成図
【図４】従来のＤＮＡチップ処理装置の構成図
【符号の説明】
【００３５】
１ ＤＮＡチップ
２ 区画
３ プレート
４ 検体
５ フィルム
６ カバー部
７ 移動機構
８ カバー部空間
９ 押付け機構
１０ ヒータ
１１ 空気口
５０ フィルム装着部
５０ａ フィルム装着範囲
５１ 挿入口
５２ ノズル
５３ 洗浄液ボトル
５４ 洗浄液切替え弁
５５ 洗浄液ポンプ
５６ 吸引吐出切替え弁
５７ 熱交換ユニット
５８ 排気ポンプ
５９ 廃液ボトル
６０ ノズル収納部
６１ 開口部
１０１ ＤＮＡマイクロアレイ
１０２ 区画
１０３ プレート
１０４ 検体
１０５ 粘着フィルム
１０６ カバー部
１０７ 止めねじ
１０８ ノズル
１０９ 移動機構
１１０ フィルム穿刺口
１１１ 洗浄液ボトル
１１２ 洗浄液切替え弁
１１３ 洗浄液ポンプ
１１４ 吸引吐出切替え弁
１１５ 熱交換ユニット
１１６ 排気ポンプ
１１７ 廃液ボトル
【特許請求の範囲】
【請求項１】
複数枚のＤＮＡチップの各々が収容される複数の区画を有するプレートと、
前記プレート開口部を密閉する密封材と、
前記区画に保持された液体を設定温度に保持可能な温度調整機構と、
前記プレートと前記密封材を固定するカバー部と、
前記カバー部を前記プレートに対して、水平または垂直方向に移動させる移動機構と、
前記カバー部を前記プレートに所定の圧力で押付ける押付け機構からなり、
前記カバー部の前記プレートの開口部に接する部分に空間を備えた、
ＤＮＡチップ処理装置。
【請求項２】
洗浄液を注入する洗浄液注入ノズルと、
前記洗浄液を吸引する洗浄液吸引ノズルと、
前記洗浄液を注入する洗浄液注入ノズルと前記洗浄液を吸引する洗浄液吸引ノズルを前記カバー部にさらに備えた、
請求項１に記載のＤＮＡチップ処理装置。
【請求項３】
前記カバー部の空間は、
少なくとも前記区画内の空気が温度上昇により膨張する体積よりも大きい体積である、
請求項１に記載のＤＮＡチップ処理装置。
【請求項４】
前記カバー部は、
前記カバー部の空間内の空気を通過させる空気口を備えた、
請求項１に記載のＤＮＡチップ処理装置。
【請求項５】
前記移動機構において、
前記プレートの開口部と前記カバー部の空間を一致させる制御部を備えた、
請求項１に記載のＤＮＡチップ処理装置。
【請求項６】
前記密封材は、伸縮可能なものである、
請求項１に記載のＤＮＡチップ処理装置。
【請求項１】
複数枚のＤＮＡチップの各々が収容される複数の区画を有するプレートと、
前記プレート開口部を密閉する密封材と、
前記区画に保持された液体を設定温度に保持可能な温度調整機構と、
前記プレートと前記密封材を固定するカバー部と、
前記カバー部を前記プレートに対して、水平または垂直方向に移動させる移動機構と、
前記カバー部を前記プレートに所定の圧力で押付ける押付け機構からなり、
前記カバー部の前記プレートの開口部に接する部分に空間を備えた、
ＤＮＡチップ処理装置。
【請求項２】
洗浄液を注入する洗浄液注入ノズルと、
前記洗浄液を吸引する洗浄液吸引ノズルと、
前記洗浄液を注入する洗浄液注入ノズルと前記洗浄液を吸引する洗浄液吸引ノズルを前記カバー部にさらに備えた、
請求項１に記載のＤＮＡチップ処理装置。
【請求項３】
前記カバー部の空間は、
少なくとも前記区画内の空気が温度上昇により膨張する体積よりも大きい体積である、
請求項１に記載のＤＮＡチップ処理装置。
【請求項４】
前記カバー部は、
前記カバー部の空間内の空気を通過させる空気口を備えた、
請求項１に記載のＤＮＡチップ処理装置。
【請求項５】
前記移動機構において、
前記プレートの開口部と前記カバー部の空間を一致させる制御部を備えた、
請求項１に記載のＤＮＡチップ処理装置。
【請求項６】
前記密封材は、伸縮可能なものである、
請求項１に記載のＤＮＡチップ処理装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２００８−２９８５１６（Ｐ２００８−２９８５１６Ａ）
【公開日】平成２０年１２月１１日（２００８．１２．１１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−１４３２６０（Ｐ２００７−１４３２６０）
【出願日】平成１９年５月３０日（２００７．５．３０）
【出願人】（０００００５８２１）パナソニック株式会社 (73,050)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２０年１２月１１日（２００８．１２．１１）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年５月３０日（２００７．５．３０）
【出願人】（０００００５８２１）パナソニック株式会社 (73,050)
【Ｆターム（参考）】
[ Back to top ]