説明

DNA表示物、およびその製造に使用する細胞採取ツール

【課題】 誰のDNAなのかを肉眼で識別できるようにし、更に、これを用いて意匠効果を向上させることのできる製品を提供すること。
【解決手段】少なくとも1つ以上の意匠乃至は情報表示領域を具備するDNA表示物であって、当該DNA表示物における、意匠乃至は情報表示領域には、細胞から抽出したデオキシリボ核酸(DNA)の塩基配列に基づいて形成された情報表示物を設けてなるDNA表示物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞から抽出したデオキシリボ核酸(DNA)の塩基配列に基づいて形成された情報表示物を、そのデザインの一部として使用したDNA表示物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から広く知られているように、デオキシリボ核酸(DNA)はアデニン(A)・チミン(T)・グアニン(G)・シトシン(C)の4つの塩基、デオキシリボース(五炭糖)、リン酸から成り立つ構成単位(ヌクレオチド)をもっており、ヌクレオチド同士が結合して鎖を作っている高分子である。このヌクレオチド鎖は、糖分子の構造に基づく方向性を持っており、2本が結合する時には常に逆向きに(反平行に)結合することにより二重螺旋構造が形成される。
【0003】
かかるDNAは、現代においては親子鑑定に利用されており、また個人識別にも利用されるに至っている。
【0004】
特に、DNA親子鑑定とは、DNAを構成している塩基の配列の特徴を調べることにより父と子が親子であるかどうか等を鑑定するものである。具体的には、親から子へ、子から孫へと受け継がれる様々な遺伝情報を持っているDNAは、必ず両親から2分の1ずつ受け継がれることから、父親から子供へDNAが受け継がれているかどうか特定の部位数カ所を調べることによって鑑定を行うものである。
【0005】
一方、かかるDNAについては、従来、以下の技術が提案されている。
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3091107号公報
この特許文献1では、人やペットから抽出したDNAを封入したDNAペンダントが提案されている。具体的には、人や犬・猫などのペットから抽出したDNAを一方のガラス板に付着させ、他方のガラス板を該ガラス板に重合密着させることにより該DNAを封入したDNAペンダントが提案されている。その結果、ペットから抽出したDNAを常時視認状態で身飾品に保存することができ、ペットとの想い出を大切に保存しうるペンダントを提供することが可能となっている。
【0007】
【特許文献2】特開2001−114601号公報
この特許文献2では、人体の細胞から抽出したデオキシリボ核酸(DNA)を安定化した状態に精製して容器に保存し、該容器の携帯または安置が可能である遺伝子情報としてのDNAの保管方法が提案されている。その結果、遺伝子情報として無限の可能性を秘めているDNAを、本人が自分自身で携帯する、あるいは故人の場合には仏壇などに安置して子孫に遺伝子情報を残す事が可能となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の通り、DNAには、その日と個人の遺伝子情報も含まれており、血縁関係を有する者同士では、共通の塩基配列を有する部位が存在する事が知られている。そしてこのようなDNA自体を可視化して容器に封入する事は前記特許文献1及び2で提案されてる。しかしながら、DNAそれ自体は肉眼で目視したとしても、実質的には個々に違う事の無い、同じような綿状体であるから、それが誰のDNAなのかを識別する事はできない。
【0009】
即ち、従来提供されているようなDNA自体を封入するタイプの製品は、相互に見比べても、どれが誰のDNAなのかを判別できず、オリジナル性に欠ける物となっていた。また、可視化されたDNAそれ自体は綿状体であるから、これを意匠的な効果の向上につなげる事は困難であった。
【0010】
そこで本発明は、第一に、誰のDNAなのかを肉眼で識別できるようにし、更に、これを用いて意匠効果を向上させることのできる製品を提供することにある。
【0011】
また、各人毎に異なるDNAの塩基配列に基づいて模様を作成し、この模様中に、実際のDNAを存在させる事で、DNA自体を可視化し、かつ夫々を識別可能にした製品を提供するものである。
【0012】
更に、DNAは親子鑑定にも利用される事からも明らかなように、その塩基配列を解析する事で血縁関係を確認することができる。そこで、このような血縁関係を示す情報を持ったDNAを可視化することで、お互いの関係を再認識し、かつ記念に残す事のできる製品を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決する為に、本発明ではデオキシリボ核酸(DNA)の塩基配列の違いによって形成される模様、解析データその他の情報表示物を使用し、これを視認できる様に配置したDNA表示物を提供するものである。
【0014】
即ち、本発明にかかるDNA表示物は、少なくとも1つ以上の意匠乃至は情報表示領域を具備するDNA表示物であって、当該DNA表示物における、意匠乃至は情報表示領域には、細胞から抽出したデオキシリボ核酸(DNA)の塩基配列に基づいて形成された情報表示物を設けてなるDNA表示物である。
【0015】
かかるDNA表示物は、ペンダント、ブレスレット、イヤリングなどの身飾品の他、プレートや額縁、その他の造形物などの置物あるいは壁掛け、あるいは仏具などとして具体化することができる。また、これら製品における意匠乃至は情報表示領域は、常に視認できるように、表面に設けられる他、常には覆われており、必要に応じて確認できるように形成されていても良い。
【0016】
そして情報表示物は、細胞から抽出したデオキシリボ核酸(DNA)の塩基配列に基づいて形成される。DNAの塩基配列は各人ごとに異なる事から、当該情報表示物に表示される情報(文字、グラフ、図形、モザイクなどで表現された情報)も、DNA抽出源となった人毎に異なったものとなる。これにより、複数のDNA表示物の中から、何れが自己のものかを特定する事ができ、原則として、個人に由来するその人だけのDNA表示物が提供される。
【0017】
なお、抽出されるDNAは、人のDNAである他、哺乳類、爬虫類、昆虫その他のペット等から抽出したものであっても良く、これら人以外から抽出したDNAを使用する事も本発明の技術的範囲内である。
【0018】
上記情報表示物は、抽出したDNAを1種または2種以上の制限酵素で切断して得られたDNA断片混合物を、アガロースゲル電気泳動法により処理し、そして得られた測定結果を可視化して形成することが望ましい。切断されたDNAの長さ及び存在量に応じた複数のピークを表現する事ができ、意匠上も望ましいからである。但しこの情報表示物は、少なくとも各人のDNAを識別できれば良い事から、アガロースゲル電気泳動法に限らず、抽出したDNAについての、DNAシーケンス解析の解析結果、またはサザンブロット法もしくはノーザンブロット法で得られた測定結果を使用する事もできる。
【0019】
かかる情報表示物は、上記したような測定法で得られたデータを印刷乃至は撮像したものであっても良いが、特に、アガロースゲル電気泳動法、サザンブロット法もしくはノーザンブロット法では、得られた測定結果(なしいは解析結果)、即ち、測定に際して出力される解析結果そのものを使用するのが望ましい。なぜならば、これら測定法における解析結果内には、DNAそのものが含まれている事から、DNA自体を可視化して保持することが可能になる為である。
【0020】
具体的には、アガロースゲル電気泳動法では、制限酵素で切断して得られたDNA断片混合物が、その長さに応じてアガロースゲル上に並び、これが模様乃至はモザイクを形成している。そこで、この解析結果であるDNA断片混合物を電気泳動させた後のアガロースゲルを乾燥、定着させ、これを情報表示物として使用する。
【0021】
上記アガロースゲル電気泳動法において、DNA断片混合物を電気泳動させたアガロースゲル(即ち解析結果)は、長期保存の為の処理が施されている事が望ましい。この様な長期保存の為の処理としては、紫外線吸収また紫外線遮断効果を有する容器内に保存するか、あるいは紫外線吸収また紫外線遮断作用を有するフィルムでラミネートする事が考えられる。また、写真の保管技術を転用する事も可能である。
【0022】
特に、アガロースゲル電気泳動法のように、解析結果が帯状のものとして得られる場合には、これを三角形、四角形、その他の多角形、円形、またはその他の象形形状の一部に使用して情報表示物を形成することが望ましい。解析結果そのものを使用しながらも、身飾品としたときの意匠効果の向上を図る為である。
【0023】
上記情報表示物は、アガロースゲル電気泳動法で得られたサンプル(解析結果)のみならず、これを撮像したものを使用する事もできる。例えば、この解析結果を蛍光写真で撮影したものや、この解析結果を縮尺したり、あるいは着色したりして印刷したものを使用する事もできる。
【0024】
特に、この情報表示物の形成手法としては、平面だけでなく解析結果のピークに合わせて凹凸を形成し、立体感のあるものとして形成することもできる。例えば、自己顕示欲の表れとして、自己のDNAを誇示したい利用者の要求などを充たす為である。
【0025】
そしてアガロースゲル電気泳動で得られた解析結果を印刷乃至はプリントする場合には、これをTシャツなどにプリントして、これを模様として使用する事もできる。この場合、Tシャツやハンカチ等の布製品に施す模様の形成方法として、DNAの塩基配列に起因する用を使用することになり、これまでに無い模様、特に自己または親しい人のDNAに関連する模様を具備する布製品が提供される。
【0026】
また、上記DNA表示物は、更に、DNA設置領域を具備しており、当該DNA設置領域には、細胞から抽出したDNAを可視化させて、これを気密領域または液密領域内に封入した可視化DNA部材を設置するのが望ましい。解析結果に存在するDNA(詳細にはDNA断片混合物)は、アガロースゲル状に並んだものであるから、直感的にDNAを意識するのは困難である。そこで本発明では、DNA自体を抽出し、これを可視化させて上記情報表示物と共に表示させたDNA表示物も提供する。
【0027】
かかる可視化されたDNAは液密空間内に収容されて可視化DNA部材を形成しており、当該可視化DNA部材は、細胞から抽出したDNAを含有するDNA溶液に防腐剤を均一に溶解すると共に、当該溶液内の水分を除去して、DNA分解・腐敗への防止処理が行われていることが望ましい。長期保存を可能にし、身飾品や装飾物等としての価値を高める為である。
【0028】
また、当該DNA表示物におけるDNA設置領域の正面には、当該領域に設置される可視化DNA部材内の可視化DNAを拡大するためのルーペまたは凸レンズを設ける事も望ましい。DNAの視認性を高め、容易に確認できるようにすることで、ユーザーの関心を高める為である。
【0029】
更に、可視化DNA部材内に存在するDNAの背景領域には、黒色または濃色の背景地を配置すると共に、当該DNA表示物には、更に当該DNAの所有者を識別する識別情報表示領域を具備する事が望ましい。通常、DNAは白色の糸状体または綿状体として抽出されることから、その存在を容易に確認できるように、このような黒色または濃色の背景地を設けるものである。かかる背景地は、DNA設置領域に設ける他、気密領域または液密領域を形成する容器の背面側に設ける事もできる。なお、この気密領域または液密領域を形成する容器は、少なくとも内容物であるDNAそのものを確認できるように、内部透視領域または内部透視窓を備えている必要がある。
【0030】
また、1つのDNA表示物中に、2つ以上の異なる情報表示物、または2つ以上の異なる可視化DNA部材を設けることもできる。これはDNAが血縁関係を示す遺伝子としても機能している事に鑑み、親子の絆を確認する為、婚姻の相手が肉親になることを再認識するシンボルとして使用する為に、各人のDNAに起因する情報表示物および/または可視化DNA部材を1つの物品(ペンダントその他の身飾品、または装飾品)に一体化するものである。なお、一体化する情報表示物および/または可視化DNA部材は、必ずしもペアである必要はなく、例えば家族全員のDNA由来のシンボルを表示するなど、3組以上を組み合わせることもできる。
【0031】
上記可視化させたDNAを封入または収容する気密領域または液密領域は、各種の容器を用いて形成することができるが、少なくともその一部、または全部が、中に収容したDNAを観察できるような透明領域を備えている必要がある。このような容器として、例えば、DNAの抽出源となった遺伝子提供者のイニシャル形状の収容空間を備える容器を形成し、この収容空間内にDNAを存在させる事もできる。
【0032】
上記可視化DNA部材の形成は、例えば以下の方法で行う事ができる。
【0033】
即ち、DNAを抽出する対象となる特定の人および/または動物の体の中で、血液不通の80cm以下の体表面試料、および/または、無出血で採取される2mL以下の体液試料から、当該試料100mg(0.1g)当りDNA14μg(0.014mg)以上の効率で抽出する細胞回収法を用いてDNAを回収し、大量DNA取得を可能にする。これによって、増量剤・支持剤などの非DNA物質を含まないDNA高純品および/または遺伝子高純度品を肉眼で可視化する形態と成す、可視化DNA部材を形成することができる。
【0034】
かかる体表面試料としては、口腔表面を成す頬内側、歯茎、硬口蓋、舌、柔口蓋の全細胞を一括して用いることが望ましい。また、口腔表面試料を採取するに際して、同時に分泌される唾液をスポイトなどの吸引ツールで都度回収し、口腔表面試料と唾液とを一括してDNA抽出源として用いることが望ましい。
【0035】
また、本発明では、上記のようなDNA抽出用細胞を採取する方法に使用可能な、細胞採取ツールを提供する。
【0036】
即ち、口腔内部から多量の細胞を回収するために、採取した細胞が細胞採取ツールの内部に浸透して回収困難になることを防ぐため、通常の綿棒より吸水性が小さい材質、表面凹凸の多い表面構造、表面材の厚さを薄くした不織布、および/または非短繊維シートの表面材から成る、口腔内部擦過用の細胞採取ツールを提供する。かかる細胞採取ツールを使用することにより、効率よく、大量の細胞を回収する事ができる。
【発明の効果】
【0037】
上記本発明にかかるDNA表示物によれば、第一に、誰のDNAなのかを肉眼で識別でき、更にこれを用いて意匠効果を向上させることのできる製品が提供される。
【0038】
また、各人毎に異なるDNAの塩基配列に基づいて模様を作成し、この模様中に、実際のDNAを存在させる事で、DNA自体を可視化し、かつ夫々を識別可能にした製品が提供される。
【0039】
更に、DNAは親子鑑定にも利用される事からも明らかなように、その塩基配列を解析する事で血縁関係を確認することができものであるところ、このような血縁関係を示す情報を持ったDNAを可視化することで、お互いの関係を再認識し、かつ記念に残す事のできる製品を提供することができる。
【0040】
即ち、本発明にかかる製品は、その人の設計図とも言えるDNAを相互に所有することにより、お互いの信頼関係を強め、かつ当該DNAがその人のものである事を目視して識別できる製品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
〔実施の形態1〕
以下、図面に基づいて、本発明にかかるDNA表示物の好ましい実施の形態の一例を示す。図1は本発明にかかるDNA表示物を身飾品であるのペンダントPの形態に形成した例を示しており、図2は当該ペンダントPにおけるヘッドの要部拡大図(A)右側面図(B)、c−c’断面図(c)である。また、図3は情報表部物を形成する為の解析結果30の一例を示しており、図4は、室内装飾具であるフォトフレームの形態に形成した例を示している。
【0042】
先ず、図1に示すペンダントPにおいて、DNA表示物は、特にペンダントヘッドPHを構成するものとして形成されている。かかるペンダントヘッドPHには、図2に示す様に、DNAの塩基配列に相関するモザイクからなる情報表示物10が設けられており、またその中央には、後述する実施例に示すような方法で抽出したDNAを用いて形成した可視化DNA部材20が設けられている。
【0043】
この実施の形態における情報表示物10は、図3に示すような解析結果30を折り畳むか、或いは意匠効果を奏する様に組み合わせて形成されており、この図に示す以外の形状に形成することも勿論可能である。
【0044】
本実施の形態に示す情報表示物10を構成する、図3に示す解析結果30は、制限酵素で切断したDNAをアガロースゲル電気泳動させたものでる。より具体的には、後述する実施例に示すような方法で抽出したDNAを、HindIIIやEcoRIなどの制限酵素の1種または2種以上で切断してDNA断片混合物を調製し、これをアガロースゲル電気泳動によって、その大きさ毎に分けて可視化している。この図3中、白く浮き出ている横棒31は、同じ長さのDNAが集まったものである。
【0045】
その結果、一人一人塩基配列が異なることから、制限酵素で切断される長さも異なり、アガロースゲル電気泳動による解析結果30も、各人毎に異なったものとなる。即ち、この方法で形成した解析結果30は、DNAの塩基配列に基づいて形成されたモザイク乃至は模様であり、しかもこの解析結果30内には、電気泳動したDNAが実際に存在している。これにより、各人に異なるDNAを、その違いが分かる様に可視化することができるようになっている。
なお、意匠効果を高める為、この解析結果30を着色したり、或いはシート状に形成されたカラーフィルターを、この解析結果30上に重ねることもできる。
【0046】
なお、このアガロースゲル電気泳動で得られた解析結果30は、必ずしもそれ自体を使用しなくとも良く、例えば当該解析結果を撮像したものを使用することもできる。特に、撮像したものであれば、その拡大・縮尺および着色などは任意に行うことができることから、特にアクセサリーなどに使用する場合には望ましいものとなる。
【0047】
また上記情報表示物10の中央には、可視化DNA部材20が設置されており、当該可視化DNA部材20内に収容される可視化DNA21は、例えば後述する実施例に示すような方法で抽出することができる。そして、この抽出される可視化DNA21は、白色の線状体または綿状体であることから、本実施の形態におけるペンダントヘッドPHでは、当該可視化DNA21を設置する領域の背景22を黒色に着色して、白色であるDNAの視認性を高めている。
【0048】
また、抽出方法によっては、この可視化DNA部材20内に収容されるDNAが少量であることも考えられ、そのような場合でも、DNAの視認性を高めるべく、当該DNAと相対する位置に、凸状のレンズ23を配置している。これにより、DNAの視認性を高めることができ、困難なく誰でも簡単に確認することが可能になる。
【0049】
なお、このように形成したペンダントヘッドPHでは、情報表示物10および可視化DNA部材20を、常に視認できるように設置しているが、その他にも、情報表示物10および可視化DNA部材20の存在する部分に蓋を設け、常にはこれらが露出することの内容に形成することもできる。その際、例えば情報表示物10だけ、又は可視化DNA部材20だけを隠すように、蓋を設けることもできる。DNAの塩基配列は遺伝子情報に関連するものであるから、これを誰にでも見せることのないようにしたものである。
【0050】
〔実施の形態2〕
図4は、室内装飾具として利用される写真立てPSとして具体化した態様を示しており、例えば、結婚式における記念として、写真だけでなく、お互いのDNA情報も直接的または間接的に表示する様に形成したDNA表示物である。
【0051】
この実施の形態にかかる写真立てPSでは、写真や絵画など人間関係を表す領域部分40を備え、更に、その人間関係の対象になっている者同士の情報表示物10および可視化DNA部材20を表示してなる。
【0052】
特にこの実施の形態における特徴を明らかにすれば、第一に、2人以上の情報表示物10および可視化DNA部材20を、1つのDNA表示物に表示している点が挙げられる。このように何らかの関連がある2人のDNAを一緒に表示することにより、単なる写真とは異なり、相互の人間の設計図ともいえるDNAを表示することができ、よりお互いの絆を強めたものとして、付加価値を高めることが可能になる。
【0053】
この実施の形態に示すDNA表示物の第二の特徴としては、情報表示物10および可視化DNA部材20の形状が、前記実施の形態1に示したものと相違する点である。即ち、本発明にかかるDNA表示物では、これら情報表示物10および可視化DNA部材20を任意の形状に形成することが可能である。
【0054】
なお、室内装飾品として形成されている場合には、これを見るものはある程度限られていることから、情報表示物10および/または可視化DNA部材20を常には見えないようにする必要性は乏しいが、この部分を覆うカバーを設けることは任意である。
【実施例1】
【0055】
以下、上記DNA表示物に使用する情報表示物の製造方法の一例を具体的に示す。特に、この実施例では、口腔粘膜からのDNA抽出手順を例に説明するが、これは一例であり、本発明の技術的範囲を制約するものではない。
【0056】
〔使用する器具など〕
小型冷却遠心機(Tomy社製)、1.5mlスピッツ型遠心管、遠心管スタンド、ウォーターバス(55℃)、ピペットマン(Gilson社製)2〜20μl、20〜200μl、200〜1000μl、ピペットチップ(イエロー、ブルー)、5mlガラス丸底試験管、1.5mlマイクロチューブ綿棒、アイスボックス、氷水、ディスポーザブル手袋細胞溶解バッファー、DNA抽出試薬(抽出バッファー、溶解液)、DNA沈殿用試薬(3M Sodium Acetate,pH5.2、エタチンメート、99%、70%エタノール)、NaCl飽和水溶液、DNA溶解用試薬(TE)、リン酸緩衝生理食塩水(1xPBS)、タンパク質除去試薬(フェノール/クロロホルム)。
【0057】
〔操作〕
最初に、1.5ml容量のスピッツ型遠心管を、DNAを採取する人数1名毎に1本用意し、これに1xPBSを500μlずつ入れ、アイスボックスに入れた遠心管スタンドに立てておく。
【0058】
次に、歯全体を薬品なしで軽く磨き、口腔を2回うがいし、次いで口腔内部の全体の中の10パーツ(頬内側の右半分・左半分、歯茎の上表側・上裏側・下表側・下裏側上口蓋、舌上面、舌下面、下口蓋)毎に通常の綿捧を宛てがい、回転させながら15〜20秒ほど念入りに軽くこすり、口腔細胞を綿棒の全体に付着させて採取する。なお、綿棒に代えて、本発明にかかる口腔内部擦過用の細胞採取ツール(以下、単に「細胞採取ツール」とする)を使用することもできる。この細胞採取ツールは、その採取部分が、綿棒よりも吸水性が小さい材質で形成されるか、または面貌よりも表面凹凸の多い表面構造で形成されることを特徴とする。
【0059】
そして、前記10パーツ毎に各々、綿棒(または細胞採取ツール)を1xPBSの入った遠心管の中に入れて震盪させながら、採取細胞を綿棒から離脱させて懸濁する。綿棒(または細胞採取ツール)の先端部分を遠心管の口の部分に回転させながらこすりつけ、絞るようにして、できるだけ多量の口腔細胞が遠心管の中に入るようにすると共に、抽出液が減量しないように注意する。この綿棒(または細胞採取ツール)は捨てないで、再度前記の採取操作を行なって細胞離脱操作を行ない、これを反復する。
【0060】
そして多量の口腔細胞が入った遠心管の蓋を閉め、冷却遠心機で4℃で毎分12000回転の回転速度で3分間、遠心させ、細胞を沈殿させて底に集める。ピペットマンで沈殿を吸わないように上清だけを吸い上げて捨てる。その際、各人ごとの試料がクロスコンタミしないようにピペットチップは遠心管ごとに取り替える。
【0061】
次に、遠心管の中で細胞をタッピングでほぐすように分散させ、細胞溶解バッファーを200μl加える。このバッファーはDNA抽出を効率化するための溶液であり、主にリン脂質から構成される細胞膜や核膜などを破壊するための界面活性剤(SDS:Sodiumdodecyl sulfate)、および/または、DNAに結合しているヒストンなどのタンパク質を分解するためのタンパク質分解酵素(プロティナーゼKなど)を含んでいる。そして55℃のウォーターバスに浮かべ、20分間処理する。
【0062】
ウォーターバスから取り出した後は、手袋をしてフェノール/クロロホルムを200μl加えて、チューブのふたを開け、チューフスタンドに立てておく。フェノール/クロロホルムが2層に分かれている場合は、下層の液体を取る。そして密栓し、転倒混和により、5分間撹拌を継続する。
【0063】
その後、冷却遠心機で毎分12000回転の回転速度で5分遠心し、沈澱を分離する。延伸分離後の試料は、上層が水相であり、ここにDNAが溶解している。下層はフェノール/クロロホルム相であり、タンパク質が溶解している。水相200μlを別の遠心管に移し、残りは危険物であり密栓して立てておく。そして、遠心管に移した水相成分の中に、3M Sodium Acetate(pH5.2)を20μlを加え、ピペットマンでエタチンメート2μlを添加して混合し、エタノール400μlを加える。これを冷却遠心機で毎分12,000回転の回転速度で15分遠心し、DNAを沈殿させる。
【0064】
その後、70%エタノール500μlを静かに加え、軽く転倒混和してから、毎分12,000回転の回転速度で2分間、遠心する。そしてピペットマンで沈殿を吸わないように注意してエタノールを除去し、ふたを開け、遠心管スタンドに立てて乾燥させる。
最後に、DNA溶解液を20μl加えDNA試料として冷暗所で保存する。
【0065】
以上により、本発明にかかるDNA表示物を形成する為のDNAを効率的に抽出することができる。但し、効率的にDNAを抽出できるのであれば、上記方法に限らず実施することができる。
【0066】
なお、摂取する細胞は口腔内部に限定されるものではなく、例えば精子、卵子(排卵期における卵細胞)、あるいは膣粘膜細胞から採取することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】DNA表示物を身飾品であるのペンダントの形態に形成した例を示す全体図
【図2】図1のペンダントにおけるヘッドの要部拡大図(A)、右側面図(B)、c−c’断面図(c)
【図3】情報表部物を形成する為の解析結果の一例を示す写真
【図4】室内装飾具であるフォトフレームの形態に形成した例を示す斜視図
【符号の説明】
【0068】
10 情報表示物
20 可視化DNA部材
23 レンズ
30 解析結果
P ペンダント
PH ペンダントヘッド
PS 写真立て

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つ以上の意匠乃至は情報表示領域を具備するDNA表示物であって、
当該DNA表示物における、意匠乃至は情報表示領域には、細胞から抽出したデオキシリボ核酸(DNA)の塩基配列に基づいて形成された情報表示物を設けてなるDNA表示物。
【請求項2】
前記情報表示物は、抽出したDNAを1種または2種以上の制限酵素で切断して得られたDNA断片混合物を、アガロースゲル電気泳動法により処理し、そして得られた測定結果を可視化して形成されている請求項1に記載のDNA表示物。
【請求項3】
前記情報表示物は、帯状の測定結果を三角形、四角形、その他の多角形、円形、またはその他の象形形状に形成してなる、請求項1に記載のDNA表示物。
【請求項4】
更に、DNA設置領域を具備しており、
当該DNA設置領域には、細胞から抽出したDNAを可視化させて、これを気密領域または液密領域内に封入した可視化DNA部材が設置されている請求項1に記載のDNA表示物。
【請求項5】
前記可視化されたDNAは液密空間内に収容されて可視化DNA部材を形成しており、
当該可視化DNA部材は、細胞から抽出したDNAを含有するDNA溶液に防腐剤を均一に溶解すると共に、当該溶液内の水分を除去して、DNA分解・腐敗への防止処理が行われている請求項4に記載のDNA表示物。
【請求項6】
前記DNA表示物におけるDNA設置領域の正面には、当該領域に設置される可視化DNA部材内の可視化DNAを拡大するためのルーペまたは凸レンズが設けられている、請求項4に記載のDNA表示物。
【請求項7】
可視化DNA部材内におけるDNAの背景領域には、黒色または濃色の背景地が配置されると共に、
当該DNA表示物は、更に当該DNAの所有者を識別する識別情報表示領域を具備する請求項1に記載のDNA表示物。
【請求項8】
1つのDNA表示物中に、2つ以上の異なる情報表示物、または2つ以上の異なる可視化DNA部材が設けられている、請求項1または4に記載のDNA表示物。
【請求項9】
前記DNA表示物が、ペンダント、ブレスレット、イヤリング、身体装着品、置物、枕内プレートとして使用される請求項1項記載のDNA表示物。
【請求項10】
前記請求項1乃至9の何れか一項に記載のDNA表示物を作成する為に、DNA抽出用の細胞を取得する細胞採取ツールであり、
少なくとも、把持部と、当該把持部の先端に設けられた採取部とからなり、
当該採取部は、綿棒よりも吸水性が小さい材質で形成されるか、または面貌よりも表面凹凸の多い表面構造で形成されることを特徴とする、口腔内部擦過用の細胞採取ツール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−237202(P2008−237202A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113498(P2007−113498)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(502316784)
【Fターム(参考)】