説明

EGFR経路を標的にする薬物による治療のための結腸直腸癌患者の選択

質量スペクトルデータ分析および分類アルゴリズムを用いる方法により、結腸直腸癌(CRC)患者について、上皮増殖因子受容体経路を標的にする薬物、例えばモノクローナル抗体であるEGFR阻害剤が有効である可能性が高いかどうかを決定する可能性を提供する。該方法は、a)該患者より採取した血液に基づくサンプルから質量スペクトルを得ること;b)ステップa)にて得られた質量スペクトルに、1つ以上の所定の前処理ステップを行うこと;c)ステップb)にて質量スペクトルに前処理ステップを行った後、1つ以上の所定のm/z範囲で、該スペクトルの選択された特徴の積分強度値を得ること;および、d)該薬物による治療が有効である可能性が高いか低いかについて該患者を同定するために、他の患者より採取した血液に基づくサンプルから作成したクラス標識したスペクトル(class-labeled spectra)を含む訓練集合(training set)を用いる分類アルゴリズムに、ステップc)にて得られた値を用いること、の各ステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本発明は、癌患者について、上皮増殖因子受容体(EGFR)経路を標的にする薬物による治療が有効である可能性が高いことを同定する分野に関する。治療の最初の選択の同定は、該患者から採取した血液サンプルの質量スペクトル分析を、該疾患を有する他の患者から得たクラス標識したスペクトル(class-labeled spectra)の訓練集合(training set)を用いた分類アルゴリズムと併用することを含む。
【背景技術】
【0002】
非小細胞肺癌(NSCLC)は、米国において男女共に癌による死亡の主要原因である。少なくとも4つの異なる型のNSCLCが存在し、腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌、および気管支肺胞癌が含まれる。肺の扁平上皮(類表皮)癌は、喫煙と最も頻繁に関連する顕微鏡的癌(microscopic type of cancer)である。肺の腺癌は、米国において全肺癌症例の50%以上の割合を占める。この癌は女性によく見られ、さらに非喫煙者に最も頻繁に見られる型である。大細胞癌、特に神経内分泌特性を有するものは、一般に脳への腫瘍の転移と関連する。NSCLCが血流に入ると、遠位部位、例えば肝臓、骨、脳、および肺内の他の場所などに転移しうる。
【0003】
NSCLCの治療は、長年にわたって比較的不良であった。化学療法は、進行癌の中心的な治療であるが、限局した癌を除いて、効果はほんのわずかである。外科手術はNSCLCについての最も可能性のある根治的な治療選択肢であるが、癌の病期に依存していつでも可能というわけではない。
【0004】
NSCLC患者を治療するための抗癌剤開発の最近の取り組みは、癌細胞が増殖および分裂する能力を減少または除去することに集中している。これらの抗癌剤は、増殖するか死亡するかを指示する細胞へのシグナルを破壊するために用いられる。通常、細胞増殖は、細胞が受容するシグナルによってしっかりと制御されている。しかしながら癌では、このシグナル伝達に異常が生じ、細胞が制御不能な様式にて増殖および分裂を続け、それによって腫瘍が形成される。これらのシグナル伝達経路の1つは、上皮増殖因子と呼ばれる体内の化学物質が、体内の多くの細胞の表面に見られる受容体に結合すると始まる。上皮増殖因子受容体(EGFR)として知られる該受容体は、細胞内に見られるチロシンキナーゼ(TK)と呼ばれる酵素の活性化を通じて細胞にシグナルを送る。該シグナルは、細胞に増殖および分裂することを知らせるために用いられる。
【0005】
腫瘍学における標的療法の使用は、以前は化学療法が唯一の実行可能な選択肢であった進行期の固形腫瘍における治療選択を改善するための新たな機会を開いた。例えば、上皮増殖因子受容体(EGFR)経路を標的にする薬物(タルセバ(エルロチニブ)、エルビタックス(セツキシマブ)、イレッサ(ゲフィチニブ)を含み、これらに限定されない)が認可され、また、進行期の固形腫瘍、特に非小細胞肺癌(NSCLC)の治療について評価段階にある。Metro G et al, Rev Recent Clin Trials. 2006 Jan;1(1):1-13。
【0006】
ほとんど全ての全身性の癌治療の1つの限界は、単剤が少数の患者のみに有効であろうということである。標的療法の分野の発達に従って、予測バイオマーカーがいかなる治療の成功にも不可欠であることが明らかになりつつある。実際、規制当局によって近年認可された多くの薬剤は、普遍的な分子改変を持つ疾患におけるものであり、それゆえ事実上の予測マーカーであり(例えば慢性骨髄性白血病におけるイマチニブ)、または患者を選択するアッセイと併せて用いられるものである(例えばHER2陽性乳癌におけるトラスツズマブ)。同様に、標的薬剤を任意抽出の患者集団に投与すると、中程度〜非存在の奏功率が通常伴う(例えばHNSCCにおけるゲフィチニブ250mg)。これらのマーカーは個々の患者が利益を得る可能性を顕著に増加させうるため、表面上は、いずれかの薬物の開発の成功は、その有効性の予測因子と関連するはずである。罹患率および無効な薬剤で癌患者を治療する負担を考えると、これらの努力に取り組むことが不可欠である。
【0007】
一部の試験ではEGFR−阻害剤(EGFR−I)が任意抽出の集団においてさえ十分な生存利益を生じることが示されている一方、他の試験では実質的利益がなかった。これは、アストラゼネカがEGFR−チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)(ゲフィチニブ、イレッサ)を米国市場から回収する原因となっている。認可されたEGFR−Iの場合でさえ、EGFR−Iによる治療が有効であるかもしれない患者を、有効である可能性が低い患者に対して同定するために、効率的かつ信頼できる試験が必要であることがますます明らかになっている。Ladanyi M, et al., Mod Pathol. 2008 May; 21 Suppl 2:S16-22。
【0008】
米国特許公開2007/0231921として公開された我々の先願の米国特許出願11/396,328において、我々は、質量分析を用いた単純な血清に基づく前治療試験、ならびに分類子(classifier)および疾患を有する他の患者から採取したクラス標識したスペクトル(class-labeled spectra)の訓練集合(training set)を用いた最新のデータ分析技術が、非小細胞肺癌患者においてEGFR経路を標的にする薬物による治療のための患者選択が期待できることを示した。Taguchi F. et al, JNCI 2007 v99(11), 838-846も参照のこと(その内容は参照することによって本明細書に援用される)。その商用版にてVeriStratと呼ばれる該試験は、前治療の血清または血漿サンプルに、標識「VeriStrat良好」または「VeriStrat不良」を割り当てる。該JNCIの論文には、「VeriStrat良好」患者がVeriStrat不良患者よりもEGFR−I治療が有効である可能性が高く、「VeriStrat不良」患者に対する「VeriStrat良好」患者のハザード比がおよそ0.5であることが示されている。
【0009】
結腸直腸癌(「CRC」)は、結腸または直腸の癌である。結腸は大腸の最下部であり、食物が通過する消化器系の最後の部分である。直腸は結腸の最後の部分であり、そこを通って固形廃棄物が体から排出される。結腸直腸癌は癌の最も一般的な形態の1つである。それは、米国人男性において、肺癌および前立腺癌に次いで3番目に多い癌である。それは、女性においても、肺癌および乳癌に次いで3番目に多い癌である。結腸直腸癌は、米国において毎年全ての新たな癌症例の約10パーセントを占める。それは、癌による全ての死亡の約10パーセントも占める。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概略
我々は、我々の先願の特許出願に記載した患者サンプルの質量スペクトル分析の方法および訓練集合(training set)を用いた分類が、NSCLC患者について、EGFR経路を標的にする薬物が有効である可能性が高いことを最初に同定する選択手段を提供するだけではなく、該方法が該薬物、特にモノクローナル抗体であるEGFR−阻害剤(EGFR−I)、例えばセツキシマブ(エルビタックス)およびパニツムマブによる治療についてのCRC患者の選択のための選択手段を提供することも発見した。
【0011】
さらに、この開示の方法は単純な血液サンプルのみを必要とするため、該方法は該患者の選択についての迅速で使いやすい(non-intrusive)手法を可能にする。
【0012】
1つの特定の実施態様では、CRC患者について、EGFR経路を標的にする薬物(例えば、エルビタックス(セツキシマブ)または均等物などのEGFR−I)による治療が有効である可能性が高いかどうかを決定する方法であって、
a)該患者より採取した血液に基づくサンプルから質量スペクトルを得ること;
b)ステップa)にて得られた質量スペクトルに、1つ以上の所定の前処理ステップを行うこと;
c)ステップb)にて質量スペクトルに前処理ステップを行った後、1つ以上の所定のm/z範囲で、該スペクトルの選択された特徴の積分強度値を得ること;および
d)該薬物による治療が有効である可能性が高いか低いかについて該患者を同定するために、他の患者より採取した血液に基づくサンプルから作成したクラス標識したスペクトル(class-labeled spectra)を含む訓練集合(training set)を用いる分類アルゴリズムに、ステップc)にて得られた値を用いること
の各ステップを含む方法を開示する。
【0013】
該方法に用いるための質量スペクトルの1つ以上の所定のm/z範囲は、下記で説明する。
【0014】
好ましい実施態様では、該薬物はモノクローナル抗体である上皮増殖因子受容体阻害剤を含む。
【0015】
好ましい実施態様では、所定の前処理ステップは、バックグラウンド減算スペクトルを作成するバックグラウンド減算ステップ、およびバックグラウンド減算スペクトルの正規化(normalization)を行う正規化ステップを含む。
【0016】
好ましい実施態様では、訓練集合(training set)は、非小細胞肺癌患者から得られた血液に基づくサンプルから作成したクラス標識したスペクトル(class-labeled spectra)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施態様に従った、EGFR−Iによる治療のためのCRC患者の選択方法を示すフローチャートである。
【図2】図2は、セツキシマブで治療した一組の結腸直腸癌患者についてのカプラン・マイヤープロットおよび図1の方法を用いた血清サンプルに割り当てられたクラス標識(class label)である。該プロットは、「良好」と標識された患者が「不良」と標識された患者よりもセツキシマブでの治療後により良好な予後を有し、不良に対する良好のハザード比が0.57(95% CI:.31−.83)であったことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な記載
我々は、EGFR−Iで治療した再発性および/または転移性のNSCLCおよびCRC患者から採取した血清または血漿サンプルのみならず、EGFR−Iで治療しなかった患者から採取したサンプルからもMS特性を調べた。MALDI質量スペクトルは各サンプルから得、生存比較のために各患者を「良好」または「不良」転帰群に分類した。我々は、MS特性が全てのEGFRI治療コホート(cohorts)において生存転帰を予測するものであることを発見した。
【0019】
EGFR−I標的薬物での治療のためのNSCLCおよびCRC患者の選択方法は、フローチャート形態の図1にプロセス100として図示している。
【0020】
ステップ102では、血清または血漿サンプルを患者から得る。1つの実施態様では、血清サンプルを3つの一定分量に分離し、質量分析ならびに続くステップ104、106(サブステップ108、110および112を含む)、114、116および118を各一定分量について独立に行う。
【0021】
ステップ104では、サンプルを質量分析にかける。質量分析の好ましい方法は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)飛行時間型(TOF)質量分析であるが、他の方法も可能である。当該技術分野では通常のことであるが、質量分析は多数の質量/電荷(m/z)値で強度値を表すデータ点を生じる。1つの例となる実施態様では、サンプルを解凍し、摂氏4度にて1500rpmで5分間遠心分離する。さらに、血清サンプルは、ミリQ水中で1:10または1:5に希釈してよい。MALDIプレート上のランダムに決めた位置に3つ組にて(すなわち、3つの異なるMALDI標的上に)希釈サンプルのスポットをつけてよい。0.75μlの希釈血清のスポットをMALDIプレート上につけた後、0.75μlの35mg/mlのシナピン酸(50%アセトニトリルおよび0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)中)を加えて上下に5回ピペッティングすることによって混合してよい。プレートを室温で乾燥させてよい。本発明の原理に従って、血清の調製および処理のために他の技術および方法が利用されてよいことが理解されるべきである。
【0022】
陽イオンについては、スペクトルを自動または手動収集するVoyager DE−PROまたはDE−STR MALDI TOF質量分析計を用いて、リニアモードにて質量スペクトルを得てよい。各MALDIスポット内の7または5個の位置から75または100個のスペクトルを収集し、各血清標本について525または500個のスペクトルの平均を作成する。標準タンパク質の混合物(インスリン(ウシ)、チオレドキシン(大腸菌)、およびアポミオグロビン(ウマ))を用いてスペクトルを外部較正する。
【0023】
ステップ106では、ステップ104にて得られたスペクトルを1つ以上の所定の前処理ステップにかける。前処理ステップ106は、ステップ104にて得られた質量スペクトルデータに作用するソフトウェア命令を用いて、汎用コンピューター内で実行される。前処理ステップ106は、バックグラウンド減算(ステップ108)、正規化(ステップ110)およびアライメント(alignment)(ステップ112)を含む。バックグラウンド減算のステップは、好ましくはスペクトル中のバックグラウンドのロバストな非対称的推定(robust, asymmetrical estimate)を作成することを含み、スペクトルからバックグラウンドを減算する。ステップ108は、公開された米国出願2007/0231921および米国2005/0267689(参照することによって本明細書に援用される)に記載されたバックグラウンド減算技術を用いる。正規化ステップ110は、バックグラウンド減算したスペクトルの正規化を含む。我々の先願の米国特許出願2007/0231921に記載されているように、正規化は部分イオン電流の正規化(partial ion current normalization)、または全イオン電流の正規化(total ion current normalization)の形態をとりうる。ステップ112は、米国2007/0231921に記載されているように、正規化したバックグラウンド減算したスペクトルを所定の質量スケールにアライメントするが、これは分類子によって用いられる訓練集合(training set)の研究から得ることができる。
【0024】
前処理ステップ106を行った時点で、プロセス100は、所定のm/z範囲にわたるスペクトル内の選択した特徴(ピーク)の値を得るステップ114へ進む。ピーク検出アルゴリズム(peak finding algorithm)のピーク幅設定を用いて、正規化し、バックグラウンド減算した振幅をこれらのm/z範囲にわたって積分してよく、この積分した値(すなわち、特徴の幅の間の曲線下面積)を特徴に割り当ててよい。このm/z範囲内にピークが検出されなかったスペクトルについては、積分範囲は現在のm/z位置でのピーク幅に対応する幅を有するこの特徴の平均m/z位置周りの間隔として定義してよい。このステップは、我々の先願の米国特許出願2007/0231921にもさらに詳細に開示されている。
【0025】
ステップ114では、米国2007/0231921として公開された我々の特許出願に記載されているように、スペクトル内の特徴の積分強度値は、1つ以上の下記のm/z範囲で得られる:
5732〜5795
5811〜5875
6398〜6469
11376〜11515
11459〜11599
11614〜11756
11687〜11831
11830〜11976
12375〜12529
23183〜23525
23279〜23622および
65902〜67502。
【0026】
好ましい実施態様では、値はこれらのm/z範囲の少なくとも8個で得られ、より好ましくはこれらの範囲の全12個で得られる。これらのピークの有意性および検出方法は、先願の米国特許出願公開2007/0231921で説明されている。
【0027】
ステップ116では、ステップ114で得られた値を分類子(図示している実施態様ではK−最近傍(KNN)分類子)に供給する。分類子は、多数の他の患者(NSCLCまたはCRC癌患者)から得たクラス標識したスペクトル(class labeled spectra)の訓練集合(training set)を利用する。1つの特定の実施態様では、訓練集合(training set)は、多数のNSCLC患者から得たクラス標識したスペクトル(class labeled spectra)を含む。114で得られた値および訓練集合(training set)へのKNN分類アルゴリズムの適用は、我々の米国特許出願公開2007/0231921で説明されている。確率的(probabilistic)KNN分類子または他の分類子を含む他の分類子が用いられてもよい。
【0028】
ステップ118では、分類子は、「良好」、「不良」または「未決定(undefined)」としてスペクトルを標識する。上記のように、ステップ104〜118は、特定の患者サンプルから採取した3つの別々の一定分量について並行して行う。ステップ120では、全3つの一定分量が同一のクラス標識(class label)を生じるかどうかを決定するためのチェックを行う。同一でない場合、ステップ122に示すように未決定(undefined)の結果が返される。全ての一定分量が同一の標識を生じた場合、ステップ124に示すように標識を報告する。
【0029】
ステップ124で報告された標識が「良好」である場合、患者はEGFR経路を標的にする薬物の投与が有効である可能性が高いことを示し、また、治療過程の患者をモニタリングしている場合には連続投与が有効である可能性が高いことを示す。ステップ124で報告された標識が「不良」である場合、患者はEGFR経路を標的にする薬物の投与が有効である可能性が低いことを示す。
【0030】
ステップ106、114、116および118は、典型的には、前処理ステップ106、ステップ114におけるスペクトル値の取得、ステップ116におけるKNN分類アルゴリズムの適用、およびステップ118におけるクラス標識(class label)の発生をコードするソフトウェアを用いたプログラム化した汎用コンピューターにて行われることが理解されるであろう。ステップ116で用いられるクラス標識したスペクトル(class labeled spectra)の訓練集合(training set)は、コンピューター内のメモリーまたはコンピューターにアクセスできるメモリーに格納される。
【0031】
上記の方法を、図1と併せて、セツキシマブ(商品名エルビタックス、イムクローン)での治療前に収集したCRC患者から採取した一組の88個の血漿サンプルに適用した。これらのうち、49個は標識「良好」を生じ、36個は標識「不良」を生じ、3個は標識「未決定(undefined)」を生じた。分析は完全に盲検様式にて行い、標識の決定の間に入手できる臨床データはなかった。標識が生じた時点で、臨床データを非盲検にし、エンドポイント「無増悪生存率」についての臨床データから無増悪生存率についてのカプラン・マイヤー分析を行うことが可能となった。「良好」および「不良」と標識された患者について、カプラン・マイヤー曲線を図2に示す。「良好」と標識された患者は、「不良」と標識された患者よりもセツキシマブでの治療後により良好な予後を有し、不良に対する良好のハザード比は0.57(95% CI:.31−.83)であった。良好および不良曲線は統計的に有意に異なっており、ログランク(log-rank)p値は0.007である。この結果は、本願に記載した試験がCRC患者をセツキシマブでの治療後に統計的に異なる予後を有する群に分離するのに用いることができることを示すものである。
【0032】
上記の考察から、当然のことながら我々は、結腸直腸癌(CRC)患者について、EGFR経路を標的にする薬物による治療が有効である可能性が高いかどうかを決定する方法であって、
a)該患者より採取した血液に基づくサンプルから質量スペクトルを得ること;
b)ステップa)にて得られた質量スペクトルに、1つ以上の所定の前処理ステップを行うこと;
c)ステップb)にて質量スペクトルに前処理ステップを行った後、1つ以上の所定のm/z範囲で、該スペクトルの選択された特徴の積分強度値を得ること;および
d)該薬物による治療が有効である可能性が高いか低いかについて該患者を同定するために、他の患者より採取した血液に基づくサンプルから作成したクラス標識したスペクトル(class-labeled spectra)を含む訓練集合(training set)を用いる分類アルゴリズムに、ステップc)にて得られた値を用いること
の各ステップを含む方法を記載した。
【0033】
好ましい実施態様では、1つ以上のm/z範囲は、
5732〜5795
5811〜5875
6398〜6469
11376〜11515
11459〜11599
11614〜11756
11687〜11831
11830〜11976
12375〜12529
23183〜23525
23279〜23622および
65902〜67502
からなるm/z範囲の群から選択される1つ以上のm/z範囲を含む。
【0034】
必ずというわけではないが、好ましくは、質量スペクトルはMALDI質量分析計から得られたものである。
【0035】
用語「結腸直腸癌」は、該用語について当該技術分野で理解されているように、結腸および直腸のいずれの癌も包含するように広く解釈されることを意図する。
【0036】
開示した好ましい実施態様の特定の細部の変動は、当然のことながら本発明の範囲から逸脱しない限り可能である。範囲の全ての疑問は、添付の特許請求の範囲を参照することによって決定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結腸直腸癌(CRC)患者について、EGFR経路を標的にする薬物による治療が有効である可能性が高いかどうかを決定する方法であって、
a)該患者より採取した血液に基づくサンプルから質量スペクトルを得ること;
b)ステップa)にて得られた質量スペクトルに、1つ以上の所定の前処理ステップを行うこと;
c)ステップb)にて質量スペクトルに前処理ステップを行った後、1つ以上の所定のm/z範囲で、該スペクトルの選択された特徴の積分強度値を得ること;および
d)該薬物による治療が有効である可能性が高いか低いかについて該患者を同定するために、他の患者より採取した血液に基づくサンプルから作成したクラス標識したスペクトル(class-labeled spectra)を含む訓練集合(training set)を用いる分類アルゴリズムに、ステップc)にて得られた値を用いること
の各ステップを含む方法であって、
1つ以上のm/z範囲が、
5732〜5795
5811〜5875
6398〜6469
11376〜11515
11459〜11599
11614〜11756
11687〜11831
11830〜11976
12375〜12529
23183〜23525
23279〜23622および
65902〜67502
からなるm/z範囲の群から選択される1つ以上のm/z範囲を含み、
かつ、該薬物が、モノクローナル抗体である上皮増殖因子受容体阻害剤を含む方法。
【請求項2】
質量スペクトルがMALDI質量分析計から得られたものである、請求項1の方法。
【請求項3】
所定の前処理ステップが、バックグラウンド減算スペクトルを作成するバックグラウンド減算ステップ、およびバックグラウンド減算スペクトルの正規化を行う正規化ステップを含む、請求項1の方法。
【請求項4】
訓練集合(training set)が非小細胞肺癌患者より得られた血液に基づくサンプルから作成したクラス標識したスペクトル(class-labeled spectra)を含む、請求項1の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−507033(P2012−507033A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534536(P2011−534536)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/006267
【国際公開番号】WO2010/085234
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(508293966)バイオデシックス・インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】BIODESIX INC
【Fターム(参考)】