説明

ELディスプレイ装置

アクティブ・マトリクスELディスプレイにおいて、非照射帯(12)によって隔てられる少なくとも2つの行帯(10)の範囲を定める複数の画素行が照射される。画素行帯(10)は経時的に列方向にスクロールし、せいぜい75%の行が特定時点で照射される。この方法は、事実上、二重バー・スクローリング方法である。2つのバーをスクロールすることによって、要求されるピーク輝度は、有効全体デューティ・サイクルが増加するので減少する。しかし、照射期間はなお短い状態に留まるので、運動知覚は向上された状態に留まる。スクローリング速度は同じフレーム・レートの場合、半分にすることができ、さもなければ、フレーム・レートを増加させてフリッカを削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ELディスプレイ装置、特に、各画素に関連した薄膜スイッチング・トランジスタを有するアクティブ・マトリクス・ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ELの発光ディスプレイ素子を用いるマトリクス・ディスプレイ装置は周知である。ディスプレイ素子は、高分子材料、さもなければ、伝統的なIII-V族半導体混晶を用いた発光ダイオード(LED)を用いた有機薄膜EL素子を備え得る。有機EL材料、特に高分子材料における最近の発展によって、そうしたものをビデオ・ディスプレイ装置に実用的に用いることができることが明らかになった。こうした材料は通常、一方が透明であり、他方が、高分子層に正孔又は電子を注入するのに適切な材料でできている電極の対の間に挟まれた1つ又は複数の半導体共役系高分子層を備える。
【0003】
図1は、アクティブ・マトリクス・アドレス指定ELディスプレイ装置の公知の画素回路を示す。ディスプレイ装置は、ブロック1によって表し、交差する行(選択)アドレス導体4群と、列(データ)アドレス導体6群との交点に配置される、関連したスイッチング手段とともにELディスプレイ素子2を備える、一定間隔の画素の行及び列のマトリクス・アレイを有するパネルを備える。単純にするよう、いくつかの画素のみを図示している。実際には、数百の画素行及び画素列が存在し得る。画素1は、各々の導体群の端部に接続される、走査行ドライバ回路8及びデータ列ドライバ回路9を備える周辺駆動回路によって行アドレス導体群及び列アドレス導体群を介してアドレス指定される。
【0004】
ELディスプレイ素子2は、ここではダイオード素子(LED)として表す有機発光ダイオードと、1つ又は複数のアクティブ有機EL材料層が間に挟まれている電極対とを備える。アレイのディスプレイ素子は、絶縁性支持部の一方の側に、関連したアクティブ・マトリクス回路とともに収容される。ディスプレイ素子の陰極又は陽極は、透明の導体材料
から形成される。支持部はガラスなどの透明な材料でできており、基板に最も近いディスプレイ素子2の電極は、EL層がよって発生する光が、支持部の反対側にいる観察者に見えるようにこうした電極及び支持部を通るようにITOなどの透明な導体材料を備え得る。
【0005】
LEDディスプレイは、(高分子タイプのものも低分子のものも、)いくつかの周知の利点を、LCDなどの商用化された既存のフラットパネル画面技術に対して備える。こうした利点として、より良好な視野角、より速い固有の応答時間(より良好な動画特性)、より軽量であること、より低い電力消費及びより低い生産コストがある。
【0006】
パッシブ・マトリクス・ディスプレイは、一度に一画素行を照射し、非常に高いピーク輝度と、大きな電圧スイングをもたらす。電力損失はディスプレイの対角線とともに指数関数的に増加し、そうしたディスプレイは、既存の材料では、約8cmの対角線を超えると非実用的なものになっている。アクティブ・マトリクス・ディスプレイは、メモリ素子を各画素内に配置し、これによって、フレーム期間にわたって画素電流の流れをプログラムするデータ電圧によって画素行のアドレス指定が可能になる。
【0007】
画素全てが光を連続して発する、(前述した単純なアクティブ・マトリクス手法などの)ディスプレイは、場合によっては見逃される問題点につながる。観察者が画面上で動画像をみている場合、動きの視線追跡と、受ける光線の集約との結果として、一種のモーションブラーが生じる。ディスプレイ・デューティ・サイクルを(例えば、25%に)低減させることによって、こうした形態の画像障害は大きく減少する。
【0008】
LCDにおいてこうしたデューティ・サイクル低減を達成するということが明らかになった手段の1つとして、バックライト全体を発生させるというものがある。同等の手法をアクティブ・マトリクスOLEDディスプレイに施し得る。まず、フィールド輝度データをプログラムし、次のフィールドがプログラムされる前に、ディスプレイ全体を(コモン・カソード、パワー・レイル、又は特定の画素内トラジススタをスイッチングすることによって)「フラッシング」する。
【0009】
結果として発生する画像はずっと鮮鋭である。フラッシングはフィールド・フリッカを副作用としてもたらし得るが、これは、フラッシュ頻度を十分に高くすることによって抑制することができる。LCDでは、画像のオン及びオフへのスイッチングはバックライトによって行われる。LCD自体は、これにとって十分速いものでない。
【0010】
新たなLEDディスプレイはこの遅い応答を表すものでなく、光スイッチングはよって、画素セル自体によって行うことができ、よって、どのようにして画像を非常に低コストで作成するかを非常に柔軟にコントロールすることが可能になる。画素は、特定の光量を発生させるようプログラムすることができ、もう一度オフにスイッチングするようプログラムすることもでき、よって、光が特定のデューティ・サイクルによって発生する手法がもたらされる。
【0011】
公知のアドレス指定手法は、ラスタ時間が、各行が画像情報によってプログラムされるが、光は何ら発生しないアドレス期間と、アドレス指定は何ら起こらないが、ディスプレイは光を発生させる期間との2つの期間に分割される「アドレス及びフラッシュ」手法である。
【0012】
アクティブ・マトリクスのOLEDタイプのディスプレイでは、画面全体を「フラッシング」することの欠点として主に、ディスプレイをアドレス指定するのに利用可能な時間が、フレーム・レートから「フラッシュ」期間を減算したものに削減されるということと、(特に、高解像度ディスプレイでは、できる限り多くの時間がアドレス指定に必要であり)、更に、漏れによって、ディスプレイの最も直近にアドレス指定された部分(通常、下部)における画像の輝度特性又はコントラスト特性は最初にアドレス指定された部分(例えば、上部)とは異なる可能性が高いということとの2つがある。
【0013】
照射の「スクロール」方法も提案されており、行は順次、通常の方法でアドレス指定され、更に、アドレス指定後、nライン時間(一画素行をアドレス指定するうえでの時間であるライン時間)、照射される。このようにして、何れかの時点で照射される画面の一部分は、例えば、アドレス指定されている行の直後の、画面の4分の1(25%のデューティ・サイクル)である。この方法は、全ての行が、アドレス指定後、同じ時間、照射されるようにしている。
【0014】
米国特許第6,583,775号明細書は、行が順にアドレス指定されるが、フィールド期間が終わる前にオフにして、上記のように輝度制御を備える駆動手法を開示している。
【0015】
図2は、こうした種々の公知の駆動手法を示す。示しているスクローリング手法は、セグメント化され、順次照射されるバックライトを備えるLCD上で表している。スクローリング・バー手法では、各行は、二度、すなわち、画素をオンにするうえで一度と、画素をオフにするうえでもう一度、アドレス指定される。このようにして、デューティ・サイクルは、これらの2つのアドレス指定工程間の時間を調節することによって容易に制御することができる。バーの高さは、デューティ・サイクルのサイズを示す。このアドレス指定手法は、いくつかの技術的な利点を有し、かつ、非常に柔軟である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
図3は、フレーム期間Tfの繰り返し率をはっきりと示す、スクローリング・バー手法についての、各行が「みた」時間光分布を示す。Tfの値によって、特に、デューティ・サイクルが低い値を有する場合に、大領域フリッカを眼で視ることができる。50Hzのフレーム・レートを選ぶ場合にはこのことが確かにあてはまる。明らかな解決策の1つとして、大領域フリッカが観察されないようにTf値を選ぶということがある。しかし、これはフレーム・レートを変換することを意味し、それによって、ハローなどの動きアーチファクトが生じることになる。
【0017】
LEDディスプレイの各画素において光を発生させる電流は、電源線を介して供給される。この線が抵抗を有し、電流が画素に流れるので、電圧降下が生じることになり、それによってクロストークが生じ得る。更に、電圧は、駆動トランジスタ及びLEDダイオードの両端間の電圧に少なくとも等しくなければならない。このことは、大型ディスプレイの場合、特に問題となる。
【0018】
図4は、電源線の電圧降下が、スクローリング手法の画面サイズ及びデューティ・サイクルによって変わってくる影響をどのように有するかを示す。グラフは、一様な白色画像を前提とした、種々の画面サイズ及びデューティ・サイクルの場合の、電源線に沿った最大電圧降下を示す。画面サイズが大型で、かつ、デューティ・サイクルが低い場合、電源電圧値が通常、15Vであるため、電源線電圧降下がいかに問題であるかをこの結果は示している。
【0019】
こうしたグラフは、一定の光出力が必要であることを前提としている。デューティ・サイクルが低減されると、照射中に必要な輝度は、特定の輝度を達成するには高くなり、このことは、より高い電流と、よって、より大きな電圧降下を必要とする。図4Aは50%のデューティ・サイクルでの電圧降下を画面サイズに対して示し、図4Bは30インチ(75cm)の画面サイズでの電圧降下をデューティ・サイクルに対して示す。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、行及び列に配置されたディスプレイ画素のアレイを備えるアクティブ・マトリクスELディスプレイ装置を照射する方法を備え、この方法は、何れかの時点で、複数の画素行を照射する工程を備え、複数の行は、非照射帯によって隔てられる少なくとも2つの行帯の範囲を定め、少なくとも2つの画素行帯は、経時的に列方向にスクロールし、せいぜい75%の行が何れかの時点で照射される。
【0021】
この方法は、事実上、二重バー・スクローリング方法である。2つのバーをスクロールすることによって、要求されるピーク輝度は、有効全体デューティ・サイクルが増加するので減少する。しかし、照射の期間はなお短い状態、特に、75%未満のデューティ・サイクルに留まっていることがあり得るので、運動知覚は向上した状態に留まる。スクローリング速度は同じフレーム・レートの場合、半分にすることができ、さもなければ、フレーム・レートを増加させてフリッカを削減することができる。
【0022】
各画素行帯は、複数の隣接画素行を備え得る。別々の画像フレームの画像データをその場合、別々の帯内に表示することができるので、2つの隣接フレームの別々の部分が如何なる時点でも表示される。
【0023】
好ましい実施例では、各画素行帯は、一連の1つおきの複数画素行を備える。これによって、奇数行又は偶数行のみが帯内に現れるインタレース手法を実施することが可能になる。このようにして、奇数行に対する1つと偶数行に対する1つとの2つのスクローリング動作が、データのフレームを表示するうえで必要である。これは、特に、画像データの形式がインタレース形式である場合に、好ましい実施例である(すなわち、各フレームは、偶数行のみを備える1つと奇数行のみを備える1つとの2つの後のフィールドを備え、フィールドの内容は、一フィールド時間によって時間的に隔てられる。)。その場合、真のデインタレーサは必要でない。
【0024】
これによって、ディスプレイの領域毎にフラッシング・レートが2倍になる。
【0025】
本発明は、行及び列に配置されたディスプレイ画素アレイと、各々で同時に複数の画素行を照射する行ドライバ回路とを備えるアクティブ・マトリクスELディスプレイ装置も備え、複数の行は、非照射帯によって隔てられる少なくとも2つの行帯の範囲を定め、行ドライバ回路は、経時的に列方向にスクロールする少なくとも2つの画素行帯を照射行が範囲を定めるようにせいぜい、フレーム期間の75%、各行を照射する手段を備える。
【0026】
画像データを複数スクロール・バー形式に再フォーマッティングすることを可能にするために、フレーム・バッファが、画像データを記憶するうえで備えられることが好ましい。フレーム・バッファは、単一の画像データ・フレームに相当する量のデータを記憶するだけでよい。データは更に、フレーム・バッファが2つの隣接フレームの部分データを記憶するように連続してフレーム単位で順番にフレーム・バッファ内に書き込むことができ。データはフレーム・バッファから2つの場所で同時に読み出すことができる。こうした2つの場所は更に、2つのスクロール・バーの画像データを備える。
【0027】
2つの場所はよって、好ましくは、別々の隣接画像データ・フレームからのデータを備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の例を次に、添付図面を参照しながら詳細に説明することとする。
【0029】
本発明は、ダブル・バー・スクローリング・アドレス指定手法を備える。2つのバーをスクロールすることによって、要求されるピーク輝度は、有効全体デューティ・サイクルを増加させるにつれて減少する。更に、光を発生させる行は、ディスプレイにわたってより好適に分布する。両方の要因が、行導体抵抗に関連した問題点を軽減する。しかし、各行の照射期間は、動きの描写を好適に表すには短い状態に留まっている。
【実施例】
【0030】
図5は、2つのスクローリング・バー10を備える、本発明のアドレス指定手法を示す。行の照射帯10間には、非照射帯12が存在する。ハッチングされたバーは、特定の時点で照射された行を示し、2つのフレーム期間にわたる5つの連続時間を示す。光は、ディスプレイから、画面の高さの半分によって隔てられた2つのバーにおいて発せられる。2つのバーは同じ速度でスクロールする。2つのバーの2つの行を真に同時にアドレス指定することが可能でないので、行は交互にアドレス指定される。
【0031】
ディスプレイ素子がフレーム期間内にオン・オフにされることを可能にする画素回路が公知である。例えば、閾値電圧測定回路を備えて、駆動トランジスタの閾値電圧における変動の補償を可能にする画素回路が公知である。こうした回路の特定例として、閾値測定動作に用いられるが、アドレス指定後でかつ、フレーム期間の終了前にディスプレイ素子をオフにすることを可能にするものでもある割り込みスイッチがある。
【0032】
ディスプレイ素子をオフにすることを可能にする種々の画素設計が当業者には分かり、こうした画素回路は、本願では説明しないこととする。
【0033】
単一バー・スクローリング・システムと比較すれば、いくつかの更なる可能性が存在する。
【0034】
フレーム・レートが一定に維持されると、バーは低速でスクロールすることになる一方、アドレス指定動作の数は同一に留まることになる。このことは図5に示す。
【0035】
あるいは、フレーム・レートを2倍にして大領域フリッカを削減することができ、バーはその場合、同じ速度でスクロールすることになるが、アドレス指定工程の数も2倍になる。
【0036】
何れの場合にも、バーは、図6に示すように、後の画像フレームからのビデオを表示することになる。図6は、(番号1乃至4の)入力ビデオ・フレームと、こうした画像の表示と、フレーム・レートとの間の関係を示す。示している例におけるデューティ・サイクル(特定時点で光を発生している行の割合)は50%である。
【0037】
示しているように、表示する対象の画像の別々のフレームの画像データは、別々の帯内に表示される。よって、各画像は行単位で上部から下部まで表示されるが、同時に、別の画像(先行フレーム又は後続フレーム)も表示される。
【0038】
フラッシング頻度を増加させるのでフレーム・レートを2倍にすることが望ましい。通常、アドレス指定動作の数は、フレーム・レートを2倍にする場合、2倍にしなければならない。
【0039】
インタレースされた2重スクローリング・バー手法を用いて、アドレス指定動作数を一定に保つ一方でフラッシング頻度を2倍にすることを可能にすることができる。このことは、データ・ソースの形式がインタレース形式である場合に特に有用である。情報の半分が廃棄されることになり、一フレームが、フレーム時間の半分、時間的に隔てられた2つの後のフィールドに分離されることになるので、この手法は、通常の連続データには通常用いられないことになる。これによって、動き補償が用いられない限り、動いている物体の場合、2重エッジが生じる。この手法は図7に示す。
【0040】
この場合も又、2つのバーが画面にわたってスクロールするが、一方が奇数行のみを備えるのに対し、他方は偶数行のみを備える。図7は、一方が奇数行を備え、他方が偶数行を備える2つの行帯のスクローリングを示す。
【0041】
(図7における画像の4に相当する)一フレーム期間内で、ディスプレイの各領域は2回フラッシュされる。例えば、ディスプレイの上部の行帯は、最初に、偶数行(第1の画像)によってフラッシュされ、もう一度、半フレーム期間後に奇数行(第3の画像)によってフラッシュされる。
【0042】
動きアーチファクトがないようにするために、バーの一方において表示されるビデオは、動きを補正することとする。
【0043】
図8は、連続フレームが、このインタレースされた2重バー手法によって表示される方法を示し、入力ビデオ・フレームと、こうした画像の表示と、フレーム・レートとの間の関係を示す。
【0044】
一フレームの画像情報は、奇数行の場合、一方の対角線方向に、偶数行の場合、他方の対角線方向に、淡いハッチングによって対角線方向にハッチングされている。後続フレームの画像情報は、この場合も又、奇数行の場合、一方の対角線方向に、偶数行の場合、他方の対角線方向に、濃いハッチングによって対角線方向にハッチングされている。
【0045】
何れかの時点で、同じ画像の奇数行及び偶数行が表示され、さもなければ、一フレームからの奇数行と、隣接フレームの偶数行が表示される。
【0046】
この例におけるデューティ・サイクルは25%に削減されるが、それは、バーにおいて、行の半数のみが光を発生させるからである。
【0047】
ディスプレイによって発せられる光がいくつかの隣接行について平均化される場合、図9に示す時間応答が得られる。
【0048】
人間の眼にとって、時間的リフレッシュ・レートが2倍になり、大領域フリッカが削減される一方、アドレス指定動作の数は一定の状態に留まる。
【0049】
50%に達するデューティ・サイクルの場合、(いわゆる「フィッシュ・ボーン」構造として認識される)奇妙な動きアーチファクトが生じ得る。このことは、図10を参照しながら説明する。上部のグラフは偶数行の照射のタイミングを示し、下部のグラフは隣接奇数行の照射のタイミングを示す。
【0050】
矢印によって示す時点では、隣接する奇数行及び偶数行は、別々のフレームからのビデオを同時に表示することになる。よって、インタレースされたスクローリング・バーは好ましくは、(50%未満のデューティ・サイクルを備える)低デューティ・サイクル駆動手法に用いる。
【0051】
インタレースされた駆動手法の別の欠点は、ライン・クロールが現れることである。これは、隣接行が別々のフレームからの情報を表示する場合に生じる。低デューティ・サイクルと、動き補償とによってこの欠点が軽減される。
【0052】
この作用は、画素の範囲が非常に鋭く定められるので、マトリクス・ディスプレイにおいて特に、眼に見えるものである。
【0053】
ライン・クロールをなくすための、前述したインタレース手法に対する更なる修正は、2重ライン・アドレス指定を備えるインタレース手法を用いるというものである。この場合、各帯は(奇数行又は偶数行のみではなく)隣接行全てを有するが、各帯は、同じフレームからのデータによって2度、アドレス指定される。偶数行又は奇数行のみをアドレス指定するかわりに、偶数行及び隣接奇数行が、同時に、かつ、同じデータによってアドレス指定される。この結果、アドレス指定された行の間には、黒色行は何ら存在しない。しかし、(1/2行離して時間的に間隔が空けられている)静止画像の場合にも、偶数フレームにおけるデータと、奇数フレームにおけるデータは同じでないため、発生する画像は完全に定常な画像である訳でない。このことは、偶数フレームと奇数フレームとの間隙を備えるうえで、デューティ・サイクルが短い場合にのみ機能する。
【0054】
(1行ではなく2行が光を発生させる、)ピーク輝度低減以外に、時間的応答は、図9に示すインタレースされた駆動手法の場合のようになる。
【0055】
入力ビデオと、ビデオの表示との間の関係は、デューティ・サイクルの差が2倍である以外は、図8と同様である(この場合、各バーにおける行全てが光を発生させる。)。このことは、認識された時間的リフレッシュ・レートが2倍になるということを意味する。しかし、明らかな欠点として、解像度の損失がある。特に、2行が、各サイクルにおいて同じデータによってアドレス指定される。このことは、ディスプレイに対する(微々たる)修正を必要とする。アドレス動作の数は変わらないが、2倍の行がアドレス指定される。
【0056】
解像度の損失は、1フレームが、偶数行を備える1フィールドと奇数行を備える1フィールドとの2フィールドに分離されるからである。各フィールドはよって、情報の半分しか有しない。これらの2つのフィールドが順番に示され、完全な画像が、眼において1つの画像に集約される。1つの特定行を視ると、画像の一方のフィールドに存在した正しいデータは、他方のフィールドにおける隣接行から補間されたデータとともに眼によって集約される。
【0057】
アクティブであり、よって、電源線から電流を引き込む行は、種々のアドレス手法について異なる。このことは、電源線にわたる電圧降下に対して影響を及ぼし得る。
【0058】
図11は、4つの別々のアドレス指定手法に対する電源線電圧を示す。フラッシング(「flash」)、スクローリング・バー(「scr」)、2重スクローリング(「dbl scr」)及びインタレース・スクローリング(「int scr」)である。電圧は、一フレーム期間にわたって平均化される。デューティ・サイクルは50%であり、電源線電圧は15Vである。
【0059】
本発明のアドレス指定手法は垂直方向の電源線に特に効果的であり、図11は、垂直方向の電源線を用いているものとする。
【0060】
明らかな理由で、最大の電圧降下は、電源線の中央で生じる。フラッシング・アドレス指定手法は、最大の電圧降下を有するが、それは、この手法において全画素が電流を同時に引き込むからである。電圧降下は、スクローリング・バー手法の場合、低減され、2重スクローリング・バー手法及びインタレース・バー手法の場合、更に低減される。スクローリング・バーの場合、行の一部(ディーティ・サイクル*行数)のみが電流を同時に引き込み、それによって、各時点で電圧降下が低減される。インタレース・スクローリング・バー手法及び2重スクローリング・バー手法では、引き込まれる電流は、画面の上半分及び画面の下半分にわたって分布する。電源線は両側部で接続されるため、電圧降下は更に低減される。
【0061】
図12は、種々の画面サイズ(図12(a))及びデューティ・サイクル(図12(b))に対する、垂直方向の電源線に沿った最大電圧降下を示す。同じ用語を図11と同様に用いている。
【0062】
画面サイズに関しては、電圧降下は、アドレス手法全てについて、画面サイズの大型化によって増加するが、本発明は、大型画面を実施する場合にある程度の改良を備える。
【0063】
デューティ・サイクルに関しては、限度は、100%(すなわち、1)のデューティ・サイクルでの電圧降下である。
【0064】
低デューティ・サイクルの場合、電圧降下は、フラッシング手法において急速に増加する一方、2重スクロール手法及びインタレース・スクローリング手法の場合、ほとんど一定の状態に留まる。したがって、2重バー・アドレス指定手法によって、AMPLEDディスプレイの低デューティ・サイクル駆動が可能になる。
【0065】
図13は、2重バー・アドレス指定手法を実施する、考えられるディスプレイ・システムを示す。ディスプレイ・コントローラ20は、入力ビデオ・データをフレーム・バッファ22に記憶し、ディスプレイを駆動させる行ドライバ8及び列ドライバ9を制御する。表示データは、列ドライバ9に、フレーム・バッファ22を介して供給される。
【0066】
図14及び図15は、フレーム・バッファ22におけるデータの読み書きを説明する。フレーム・バッファ・メモリは、奇数フレームの1つの領域と、偶数フレームの1つの領域との2つの領域に分割される。図中のハッチングされた領域は、まだ表示されていないデータを示す。何れのバーも、別個のフレームからのデータを指し示す別個の読み取りポインタを有し、これらは、バッファの高さの半分によって隔てられている。書き込みポインタは、読み取りポインタの(図14にVRとして表す)速度の2倍の(図14にVwとして表す)速度で移動する。読み取りポインタは、一フレームの最後の画像データに達すると、新たなデータによって直近で満たされた正しいフレームの新たな開始位置に飛ぶ。
【0067】
各時点で、なお表示されることとする合計データ量は1フレーム・メモリ未満であるので、1フレーム・バッファのみが必要である。フレーム・バッファは、既存のディスプレイ設計において既に利用可能である。
【0068】
図15は、フレーム・バッファ・メモリにおけるデータの読み書きの処理を更に詳細に示し、3つの時点を示す。図15(1)では、書き込みポインタは、新たなデータをフレーム・バッファF0に書き込み始める。偶数読み取りポインタは更に、このバッファからデータを読み取り始める。奇数読み取りポインタは、既に完全に満たされている最後のバッファF-1からデータをなお読み取る。図15(2)では、書き込みポインタは偶数フレーム・バッファにデータをなお書き込み、何れの読み取りポインタも利用可能なものとして存在するデータを読み取る。図15(3)では、偶数読み取りポインタは、バッファF-1を読み取り終えており、最初の行が書き込みポインタによって直近で書き込まれている新たなバッファに飛ぶ。
【0069】
前述のように、必要な合計メモリ空間量は、1データ・フレーム分のみであり、このメモリ空間は、書き込みポインタによって循環的に書き込まれる。
【0070】
上記例全てにおいて、2つのバーをスクロールする手法を説明した。なお、本発明は、3つ以上のスクロール・バーに拡張させ得る。
【0071】
ディスプレイ装置の特定の画素構成は、説明していないが、当業者には決まり切ったことである。
【0072】
他の修正は当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】従来のLEDディスプレイを示す図である。
【図2】いくつかの公知のアドレス指定手法を示す図である。
【図3】図2のスクローリング・バー・システムにおける画素行からの光出力のタイミングを示す図である。
【図4】スクローリング・バー手法に関連した課題を説明するのに用いる図である。
【図5】本発明の第1のアドレス指定手法を示す図である。
【図6】図5の手法を更に詳細に説明するのに用いる図である。
【図7】本発明の第2のアドレス指定手法を示す図である。
【図8】図7の手法を更に詳細に説明するのに用いる図である。
【図9】図8のスクローリング・バー・システムにおける画素行の光出力のタイミングを示す図である。
【図10】図8の手法の限界を示すのに用いる図である。
【図11】本発明の手法の利点を説明するのに用いるグラフである。
【図12a】本発明の手法の利点を更に説明するのに用いるグラフである。
【図12b】本発明の手法の利点を更に説明するのに用いるグラフである。
【図13】本発明の方法を実施する、本発明のディスプレイを示す図である。
【図14】図13で用いるフレーム・バッファの好ましい構造を示す図である。
【図15】フレーム・バッファの動作を説明するのに用いる図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
行及び列に配置されたディスプレイ画素のアレイを備えるアクティブ・マトリクスELディスプレイ装置を照射する方法であって、該方法は、特定時点で、複数の画素行を照射する工程を備え、該複数の行は、非照射帯によって隔てられる少なくとも2つの行帯の範囲を定め、該少なくとも2つの画素行帯は、経時的に列方向にスクロールし、せいぜい75%の行が特定時点で照射されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、各画素行帯は、複数の隣接画素行を備えることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、表示される対象の画像の別々の画像データは、別々の帯内に表示されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法であって、各画素行帯は、一連の一つおきの複数画素行を備えることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法であって、一方の行帯は奇数行のみを備え、他方の行帯は偶数行のみを備えることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5に請求項記載の方法であって、せいぜい50%の行が特定時点で照射されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法であって、せいぜい30%の行が特定時点で照射されることを特徴とする方法。
【請求項8】
行及び列に配置されたディスプレイ画素アレイと、同時に複数の画素行を照射する行ドライバ回路とを備えるアクティブ・マトリクスELディスプレイ装置であって、前記複数の行は、非照射帯によって隔てられる少なくとも2つの行帯の範囲を定め、前記行ドライバ回路は、経時的に列方向にスクロールする少なくとも2つの画素行帯を照射行が範囲を定めるようにせいぜい、フレーム期間の75%、各行を照射する手段を備えることを特徴とするアクティブ・マトリクスELディスプレイ装置。
【請求項9】
請求項8記載の装置であって、画像データを記憶するフレーム・バッファを更に備えることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項9記載の装置であって、前記フレーム・バッファは単一の画像データ・フレームに相当する量のデータを記憶することを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項10記載の装置であって、データが、連続してフレーム単位で順番にフレーム・バッファ内に、該フレーム・バッファが2つの隣接フレームの部分データを記憶するように書き込まれ、データは前記フレーム・バッファから2つの場所で同時に読み出されることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項11記載の装置であって、前記2つの場所は、別々の隣接画像データ・フレームからのデータを備えることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−508579(P2007−508579A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530975(P2006−530975)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051975
【国際公開番号】WO2005/036516
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】