説明

EL素子、液晶ディスプレイ用バックライト装置、照明装置、電子看板装置、ディスプレイ装置及び光取り出しフィルム

【課題】光取り出し効率を高く維持しながら、視聴角度の変化による急激な輝度変化を抑制することが可能なEL素子を提供する。
【解決手段】陽極13と陰極14とからなる一対の電極間に挟持された発光層12を、透光性基材11の一方の面側に積層し、発光層12が放出した光を透光性基材11を介して出射するEL素子10において、透光性基材11の出射面側に、レンズ素子19を複数配列したレンズシート17を積層し、該レンズシート17のレンズ素子19に拡散要素を含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルタイプのディスプレイ装置、液晶用バックライトユニット等の照明用光源、電飾、サイン用光源等に用いられる有機EL(エレクトロルミネセンス)素子に関し、特に、光取り出し効率の向上を図ることのできるEL素子、EL素子を用いた液晶ディスプレイ用バックライト装置、EL素子を用いた照明装置、EL素子を用いた電子看板装置、及びEL素子を用いたディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、EL素子は、図7に示すように、透光性基材1と、蛍光有機化合物を含む発光層2を陽極3と陰極4とで挟んだ構造のものを透光性基材1の一方の面に積層したものとから構成され、さらに、透光性基材1の発光層2と反対の面には、光取り出し用のレンズシート5が接着層6を介して設けられている。このレンズシート5は、図8に示すように、基材5a上に三角形状のレンズ素子5bを複数配列することで構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなEL素子においては、陽極3と陰極4との間に直流電圧を印加し、発光層2に電子および正孔を注入して再結合させることにより励起子を生成し、この励起子が失活する際の光の放出を利用して発光する。そして、この光を透光性基材1及びレンズシート5を通過させてレンズ素子5bから出射させる。
【0004】
ここで、上記のようなEL素子においてレンズシート5を除いた構成とした場合、発光層2が放射した光線が透光性基材1から射出する際、一部の光線が透光性基材1の出射面において全反射して光のエネルギーにロスが生じてしまう。
【0005】
この際の光の外部取り出し効率は、一般的に20%程度と言われている。そのため、高輝度が必要となればなるほど投入電力を多く必要としてしまい、エネルギー効率が悪いとともに、素子に及ぼす負荷が増大してEL素子自体の信頼性が低下してしまう他、EL素子の寿命が短くなってしまう。
【0006】
そこで、EL素子においては、光の外部取り出し効率を向上させる目的で、上記のような透光性基材1の出射面側にレンズシート5が設けられており、これにより、全反射によってロスする光線を外部に取り出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−207471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来のEL素子においては、レンズシート5が三角形状のレンズ素子5bを複数配列することで構成されているため、当該レンズシート5を通過する光は、視聴者方向に集光される光と、視聴者方向に進むことなく横方向に無駄に出射する光(サイドローブ光)との2つに極端に分かれて出射される。
これにより、レンズシートから出射される光強度分布は、図9に示すように、視覚方向Fに対する視野角が0°(軸上方向)における光強度が最も高められる一方、視野角約±70°においても光強度のピークが観察される。このような光強度分布を示す場合、視聴者の視聴角度が変化することによって急激な輝度変化が起きてしまうという問題があった。
【0009】
本発明は上記のような問題を解決するためになされたもので、光取り出し効率を高く維持しながら、視聴角度の変化による急激な輝度変化を抑制することが可能なEL素子及びこれを用いた液晶ディスプレイ用バックライト装置、電子看板装置、照明装置、ディスプレイ装置、光取り出しフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係るEL素子は、陽極と陰極とからなる一対の電極間に挟持された発光層が、透光性の基材の一方の面側に配されてなり、前記発光層により放出された光が前記基材を介して出射されるEL素子において、該基材の出射面側に複数のレンズ素子が配列されてなるレンズシートとが積層され、前記レンズ素子に拡散要素が含有されていることを特徴としている。
【0011】
このような特徴のEL素子によれば、レンズシートを構成するレンズ素子に拡散要素が含有されているため、発光部から放射され基材を通過しレンズシートに入射した光は、レンズ素子のレンズ面に到達する前に十分に散乱させられる。したがって、該散乱した光がレンズ素子のレンズ面にて屈折して集光されることで、該レンズシートから出射される光の光強度分布を滑らかなものとすることができる。即ち、拡散要素によって配光特性を均一化させる方向に調整することができるため、視野角の変化による急激な輝度変化を低減させることが可能となる。
【0012】
また、本発明に係るEL素子においては、前記レンズ素子のレンズ面が、凹四角錐状を呈していることを特徴としている。
【0013】
このような特徴のEL素子によれば、視野角にサイドローブのような急激な輝度変化が起こりにくくなり、視野角の変化による急激な変化をより低減させることができ、配光特性を一層好適に制御することができる。
【0014】
本発明に係るEL素子においては、レンズ素子に含有される前記拡散要素の前記レンズ素子に対する体積百分率が、1vol%以上20vol%以下の範囲に設定されていることを特徴とする。
【0015】
ここで、上記拡散要素の体積百分率が1vol%未満の場合、拡散要素による配光特性の調整効果を十分に得ることができず、視野角の変化による輝度の急激な変化を低減させることができない。一方、拡散要素の体積百分率が20vol%を超える場合、拡散要素の含有量が大き過ぎてレンズシート作製時に外観ムラが生じてしまう他、拡散要素による光の吸収が大きくなり、正面輝度が低下してしまう。
この点、本発明のEL素子においては、拡散要素の体積百分率が1vol%以上20vol%以下に設定されているため、配光特性を良好に調整して視野角の変化による輝度の急激な変化を低減させることができるとともに、外観ムラが生じることがなく、また、輝度の高い光を出射することが可能となる。
【0016】
本発明に係るEL素子においては、前記レンズ素子に含有される前記拡散要素の前記レンズ素子に対する体積百分率が、1.1vol%以上19.8vol%以下の範囲に設定されていることが好ましい。
これにより、より確実に視野角の変化による急激な輝度変化を低減させることができ、また、外観ムラの発生を抑え、さらに輝度の高い光を出射することができる。
【0017】
本発明に係るEL素子においては、前記レンズシートが粘着層を介して前記基材に接着されていることを特徴とする。
これによって、レンズシートを基材に対して確実に接合することができ、該レンズシートによる輝度の向上及び配光分布の調整を良好に行うことが可能となる。
【0018】
本発明に係る液晶ディスプレイ用バックライト装置は、上記のEL素子を用いてなることを特徴としている。これにより、輝度が高く配光分布が均一化されたバックライト光を出射することができる。
【0019】
本発明に係る電子看板装置は、上記のEL素子を用いてなることを特徴としている。これにより、輝度が高く配光分布が均一化された電子看板表示を行うことが可能となる。
【0020】
本発明に係る照明装置は、上記のEL素子を用いてなることを特徴としている。これにより、輝度が高く配光分布が均一化された照明光を出射することが可能となる。
【0021】
本発明に係るディスプレイ装置は、上記のバックライト装置又は上記の照明装置と、これらバックライト装置又は照明装置によって照射され、画素単位での透過/遮光に応じて表示画像を規定する画像表示素子を備えることを特徴としている。
このような特徴のディスプレイ装置によれば、輝度が高く配光分布が均一化された画像表示を行うことができる。
【0022】
本発明に係る光取り出しフィルムは、上記のEL素子を用いてなることを特徴としている。これにより、輝度が高く視野角による配光分布が均一化された光を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のEL素子によれば、レンズシートを構成するレンズ素子に拡散要素が含有されたことにより、該レンズシートから出射される光の光強度分布を滑らかなものとすることができる。よって、光取り出し効率を高く維持しながら、視聴角度の変化による急激な輝度変化を抑制することが可能となる。
また、本発明の液晶ディスプレイ用バックライト装置、電子看板装置、証明装置、ディスプレイ装置、光取り出しフィルムによれば、輝度が高く視野角による配光分布が均一化された出射光や画像表示を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態に係るEL素子の縦断面図である。
【図2】レンズシートの斜視図である。
【図3】レンズ素子の斜視図である。
【図4】レンズシートの作成方法の一例を示す側面図である。
【図5】実施例及び比較例のレンズシートを備えたEL素子の輝度測定結果である。
【図6】実施例及び比較例とのレンズシートを備えたEL素子の光強度分布を示すグラフである。
【図7】従来のEL素子の縦断面図である。
【図8】変形例のEL素子におけるレンズシートの斜視図である。変形例のEL素子の縦断面図である。
【図9】従来のEL素子の光強度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、実施形態に係るEL素子(エレクトロ・ルミネッセンス素子)10は、透光性基材11と、発光層12と、陽極13と、陰極14と、接着層16と、レンズシート17とから構成されている。
【0026】
透光性基材11は、透光性の材料、例えばガラス材料やプラスチック等からなる平板状をなしている。また、透光性基材11の材料としては、上記ガラス材料の他に、PMMA、ポリカーボネート、ポリスチレン等のプラスチック材料を用いることもでき、さらに、透明である限りその他のいかなる材料を用いてもよい。
また、特に、加工性、耐熱、耐水性及び光学透光性等の材料特性の全てにおいて優れたシクロオレフィン系のポリマーを用いることが好ましい。
なお、この透光性基材11は、発光層12からの光を可能な限り透過させることができるように、全光線透過率が50%以上となる材料で形成することが好ましい。
【0027】
上記透光性基材11の2つの板面のうち、背面側(図1における下側)を向く一方の面には、層状をなし、形成すべき画素に対応して光を透過させる陽極13が積層されている。
この陽極13は、ITO、IZOなどを蒸着もしくはスパッタなどのドライプロセスで形成される。この蒸着する材料としては上述のものに限定されず、透明であって電気伝導性を有するものであれば他の材料を用いても良い。
また、陽極13の厚さは10000Å程度以下とすることが好ましい。厚すぎると電気伝導性は向上するが、局所的なスパイクが入りやすくなり、また、全光線透過率が低下するため好ましくない。上記スパイクはその突起の高さが、例えば100nm程度を超えるとその後の成膜工程にて問題を生じることがある。
【0028】
陽極13の背面側には、一定の間隔を空けるようにして陽極13と同様に層状をなす陰極14が配設されている。
この陰極14は電気伝導性を有する材料で形成されており、陽極13と異なり必ずしも透明な材料で形成されている必要はない。
この陰極14と上記陽極13とで、発光層12に通電可能な電極が構成されている。
【0029】
そして、上記陽極13及び陰極14の間には、層状をなす発光層12が介在させられている。即ち、この発光層12は、陽極13と陰極14とからなる一対の電極間に挟持されるようにして配設されているのである。
【0030】
本実施形態において、発光層12としては、通電されることにより白色に発光する蛍光有機化合物から構成されている。このような発光層12の一例としては、ITO/CuPc(銅フタロシアニン)/α−NPDにルブレン1%ドープ /ジナクチルアントラセンにペリレン1%ドープ/Alq3/フッ化リチウム/陰極としてAlといった構成を挙げることができる。
【0031】
なお、発光層12は上記構成の白色に発光する蛍光有機化合物に限定されず、この他、青色、赤色、黄色、緑色に自然発光可能な蛍光有機化合物であってもよい。これらの色彩は、発光層12から射出する光線の波長をR(赤色)、G(緑色)、B(青色)とすることのできる蛍光有機化合物を適宜用いることで実現することができる。
また、EL素子10をフルカラーディスプレイ用途で使用する場合にはR、G、Bに対応した3種類の発光材料の塗り分けをすることや、白色光にカラーフィルターを重ねることにより、放射される光に彩色を施すことができ、これによりフルカラー表示を行うことが可能となる。
【0032】
なお、陽極13、陰極14及び発光層12からなる発光構造体としては、上記構成の他、従来公知の様々な構成を採用することができる。
【0033】
そして、上記透光性基材11の2つの板面のうち、上記一方の面の反対側に位置して正面側(図1における上側)を向く他方の面には、接着層16を介してレンズシート17が積層されている。
【0034】
接着層16は粘着剤や接着剤を用いて形成されている。この粘着剤や接着剤としては、ウレタン系、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、ビニル系の樹脂等を用いることができる。さらに、粘着剤や接着剤として、1液型で押圧して接着するものや、熱や光で硬化させるものを用いることができ、その他、2液もしくは複数の液を混合して硬化させるものを用いることもできる。
【0035】
接着層16の形成方法としては、接合面へ直接塗布する方法や、あらかじめドライフィルムとして準備したものを貼り合わせる方法がある。接着層16をドライフィルムとして準備した場合、製造工程上、簡易的に扱うことが可能となるため好ましい。
【0036】
レンズシート17は、図1及び図2に示すように、背面側の面が接着層16によって透光性基材11に接合される透光性の基材フィルム18と、この基材フィルム18の正面側の面に複数が配設されるレンズ素子19とから構成されている。
【0037】
レンズ素子19は、詳しくは図2に示すように、基材フィルム18の出射面全体を敷き詰めるようにして、一定のピッチで二次元方向に沿って複数が配列されている。
個々のレンズ素子19は、正面視正方形状をなしており、図3に示すように、背面側の面が正方形状をなして基材フィルム18の出射面に接する平坦面19aとされ、正面側の面は、その外周4辺を底面の4辺とするとともにレンズ素子19の厚みを高さ寸法とした四角錐形状に窪む凹四角錐面19bとされている。この凹四角錐面19bは、4つの三角形面から形成されており、これら三角形面がレンズ素子19のレンズ面19cとされている。
即ち、レンズ素子19は、それぞれ一定深さの凹型の四角錐形状を呈しているのである。
【0038】
そして、このようなレンズ素子19が、基材フィルム18上にマトリックス状に配置されることによりレンズシート17が構成されている。これにより、個々のレンズ素子19の凹四角錐面19bの頂底部が谷となるとともに、隣り合うレンズ素子19同士が接する凹四角錐面19bの底面4辺が山となる凹凸形状がレンズシート17の出射面側に形成される。
【0039】
このレンズシート17の形成材料としては、透明材料が用いられる。この透明材料としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、COP(シクロオレフィンポリマー)、アクリルニトリルスチレン共重合体、アクリロニトリルポリスチレン共重合体等が用いることができる。
【0040】
また、本実施形態においては、上記レンズシート17におけるレンズ素子19に拡散要素が添加されている。この拡散要素としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル系樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、PET、ポリプロピレン等の硬化物からなるものが用いられ、レンズシート17の主材料となる透明樹脂の屈折率をM、拡散要素の屈折率をNとした場合に、両者の屈折率差|M−N|が、|M−N|≧0.01の関係を満たすことが望ましい。両者の屈折率差が0.01未満であると拡散要素の光散乱効果を十分に得ることができないからである。レンズ素子19内の拡散要素の体積百分率の制御は拡散要素の添加量を調整することにより行うことができる。
【0041】
なお、拡散要素は、レンズ素子19に対する体積百分率が、1vol%以上20vol%以下、好ましくは1.1vol%以上19.8vol%以下の範囲となるようにレンズ素子19を成型する透明材料に添加されている。
【0042】
ここで、レンズ素子19内への拡散要素の形成方法としては、例えば、レンズ素子19の内部に樹脂やガラス等のフィラーを拡散要素として配する方法が挙げられる。具体的には、金型による圧接成形、押し出し成形、射出成形等による光学素子パターン形成の際に、フィラーを混入させて、レンズ素子19の内部に取り込んで同時に作成する。
【0043】
また、この他の作製方法としては、気泡を拡散要素としてレンズ素子19の内部に配する方法が挙げられる。ここで、気泡を拡散要素として配する場合のレンズ素子19の作成方法としては、放射線硬化性の樹脂を用いて基材フィルム18上にレンズ素子19のパターンを形成するとともに、該レンズ素子19の内部に微細な拡散要素を設ける方法があり、以下にその一例を示す。
【0044】
この場合のレンズ素子19のパターン形成方法は、図4に示すように、まず、放射線硬化性の樹脂32を基材フィルム18の表面上に塗布する。その後、レンズ素子19を作成するための形状を表面に有するロール状の金型30に樹脂塗布側を圧接させつつ、基材フィルム18を通して放射線31を照射させる。これにより、基材フィルム18の表面上に塗布された放射線硬化性の樹脂32を硬化させることにより、所望の形状を有するレンズ素子19が基材フィルム18の表面上に形成される。
【0045】
ここで、気泡発生機構を用いて放射線硬化性の樹脂32の内部に気泡を混入させた後、基材フィルム18の表面上に塗布してレンズ素子19のパターン形成を行うことで、レンズ素子19の内部に気泡としての拡散要素を設けることができる。このように拡散要素を設ける場合は、気泡発生機構の制御を発生させる気泡の添加量を調節する必要がある。具体的には、発生機構における気泡生成量や泡噴出時の圧力、泡噴出口の形状を変化させることによってレンズ素子19内の拡散要素の体積百分率を調節する。
【0046】
以上のような構成のEL素子10は、陽極13及び陰極14からなる電極に通電することによって、これら陽極13及び陰極14に挟持された発光層12が発光する。この発光層12から放射された光線は、透光性基材11を通過してレンズシート17の基材フィルム18に入射する。そして、基材フィルム18に入射した光線は、レンズ素子19内の拡散要素によって散乱された後、レンズ面19cからそれぞれ出射される。
【0047】
本実施形態のEL素子10によれば、レンズシート17を構成するレンズ素子19に拡散要素が含有されているため、発光層12から放射されてレンズシート17から出射される光は、レンズ素子19のレンズ面19cに到達する前に十分に散乱させられる。したがって、該散乱した光がレンズ素子19のレンズ面19cにて屈折して集光されることで、該レンズシート17から出射される光の光強度分布を滑らかなものとすることができる。
即ち、拡散要素によって配光特性を均一化させる方向に調整することができるため、視野角の変化による急激な輝度変化を低減させることが可能となる。
【0048】
また、上記のように、レンズシート17のレンズ素子19のレンズ面19cが、凹四角錐状を呈しているため、視野角の変化によるサイドローブ光のような急激な輝度変化が起こりにくくなり、レンズシートが観察者側にあっても視野角の急激な変化をより低減させることができ、配光特性を一層好適に制御することができる。
【0049】
ここで、拡散要素のレンズ素子19に対する体積百分率が1vol%未満の場合、拡散要素による配光特性の調整効果を十分に得ることができず、視野角の変化による輝度の急激な変化を低減させることができない。一方、拡散要素の体積百分率が20vol%を超える場合、拡散要素の含有量が大き過ぎてレンズシート17作製時に外観ムラが生じてしまう他、拡散要素による光の吸収が大きくなり、正面輝度が低下してしまう。
この点、本実施形態のEL素子10においては、拡散要素の体積百分率が1vol%以上20vol%以下に設定されているため、配光特性を良好に調整して視野角の変化による輝度の急激な変化を低減させることができるとともに、外観ムラが生じることがなく、また、輝度の高い光を出射することが可能となる。
さらに、拡散要素の上記体積百分率が1.1vol%以上19.8vol%以下に設定すれば、より確実に上記効果を得ることができる。
【0050】
また、レンズシート17が接着層16を介して透光性基材11に接着されているため、レンズシート17を透光性基材11に対して確実に積層させることができ、該レンズシート17による輝度の向上及び配光分布の調整を良好に行うことが可能となる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態に係るEL素子10について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0052】
例えば、EL素子10を用いて液晶ディスプレイ用バックライトを構成してもよい。この液晶ディスプレイ用バックライトにおいては、光取り出し効率の高いEL素子10を用いているため、投入電力を低くして高輝度のバックライト光を出射することができる。
【0053】
また、このバックライトEL素子10を用いて電子看板装置を構成してもよい。これにより、輝度が高く配光分布が均一化された電子看板表示を行うことが可能となる。
【0054】
さらに、このバックライトEL素子10を用いて照明装置を構成してもよい。これにより、輝度が高く配光分布が均一化された照明光を出射することが可能となる。
【0055】
また、上記のEL素子10を用いたバックライトを搭載した液晶ディスプレイ装置を構成してもよい。この液晶ディスプレイ装置は、上記バックライトの正面側、即ち、該バックライトのバックライト光が照射される箇所に、液晶パネルが配置されることで構成される。この液晶パネルは、例えば矩形格子状に形成された複数の画素領域ごとに画像信号に応じて光の透過状態を制御する液晶セルの正面側及び背面側に、光の偏光方向を制御する偏光板がそれぞれ積層されることで構成されている。この液晶ディスプレイ装置においても、上記のようなEL素子10が搭載されているため、輝度が高く配光分布が均一化された画像表示を行うことができる。
【0056】
さらにまた、上記のEL素子10を光取り出しフィルムとして用いてもよい。これにより、輝度が高く配光分布が均一化された光を得ることが可能となる。
【実施例】
【0057】
(レンズシートの作製)
厚さ188μmのPETの基材フィルム18上にレンズ素子19としてアクリル系のUV硬化樹脂を用い、UVキュアリング成型法により、凹状レンズ素子群が配列してなるレンズシート17を作製した。なお、レンズ素子19は、高さ70μmの凹四角錐形状をなしており、ピッチが140μmでマトリックス状に配列されている。
【0058】
ここで、放射線硬化性の樹脂32をPETの基材フィルム18上に塗布する際に、気泡発生装置を用い、発生機構における気泡生成量や泡噴出時の圧力、泡噴出口の形状を変化させることによって拡散要素のレンズ素子19に対する体積百分率を調整しながら、レンズ素子19のパターン形成を行い、レンズシート17を作成した。
【0059】
(実施例のレンズシート)
拡散要素のレンズ素子19に対する体積百分率の違いによりレンズシート17を分類し、体積百分率が1.1vol%のレンズシート17を実施例1、体積百分率が10.1%のレンズシート17を実施例2、体積百分率は19.8%のレンズシート17を実施例3とした。
【0060】
(比較例のレンズシート)
また、拡散要素のレンズ素子19に対する体積百分率が0%、即ち、拡散要素が添加されていないレンズシート17を比較例1、体積百分率が21.6vol%のレンズシート17を比較例2、体積百分率が29.7vol%のレンズシート17を比較例3、体積百分率が0.8vol%のレンズシート17を比較例4とした。
【0061】
(EL素子の作製及び輝度の測定)
上記の実施例1〜3及び比較例1〜4を用いて実施形態で説明したEL素子10を作製した。
そして、陽極13と陰極14とからなる電極に通電して発光層12を発光させて、その際のレンズシート17から出射される光の輝度を測定した。この輝度の測定は、レンズシート17の正面方向及び該正面方向から45°傾斜した斜め方向から行なった。
【0062】
(輝度測定結果)
輝度測定結果のデータを図5に示す。なお、各実施例及び比較例の輝度のデータは、比較例1(レンズシート17に拡散要素が添加されていないもの)を基準とした比率で表示した。
レンズシート17の拡散要素のレンズ素子19に対する体積百分率が1vol%より小さい比較例4においては、拡散要素が添加されていないものと比べて輝度に変化が見られず、また、配光特性の調整は認められなかった。
レンズシート17の拡散要素のレンズ素子19に対する体積百分率が20vol%よりも大きい比較例2及び3については、レンズシート17作成時に外観ムラが生じてしまい輝度測定に値するサンプルを作成することができず輝度の評価を行なうことができなかった。
以上から、実施例1〜3の範囲、即ち、レンズシート17の拡散要素のレンズ素子19に対する体積百分率が1.1vol%以上19.8vol%以下の範囲内の場合、外観ムラが認識されることなく、総合的な光学特性が調整可能であった。即ち、図6に示すように、実施例のレンズシート17を備えたEL素子10によれば、レンズ素子19に拡散要素が含有されてない比較例1に比較して、高い輝度を維持しながら視野角の違いによる輝度の急激な変化を抑制することができるのである。このような正面方向輝度や45度方向輝度の変化は、顧客の要望に対応した光学特性の微調整に大いに貢献できる。また、当該効果は、レンズシート17の拡散要素のレンズ素子19に対する体積百分率が1vol%以上20vol%以下の範囲でも奏するものと推認できる。
【0063】
また、上記実施例1〜3及び比較例1〜4以外のピッチ幅のレンズ素子19を有するレンズシート17においても、レンズ素子19の集光性の違いから輝度比率の変化量の範囲は異なったが、拡散要素の体積百分率に対する光学特性の変化、表示状態のムラに関しては、上記で示した結果と同様の傾向を示した。
したがって、レンズ素子19のピッチの幅に関わらず、上記で示した条件範囲内で総合的な光学特性が調整可能であることがわかった。
【符号の説明】
【0064】
10 EL素子
11 透光性基材
12 発光層
13 陽極
14 陰極
16 接着層
17 レンズシート
18 基材フィルム
19 レンズ素子
19a 平坦面
19b 凹四角錐面
19c レンズ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極とからなる一対の電極間に挟持された発光層が、透光性の基材の一方の面側に配されてなり、前記発光層により放出された光が前記基材を介して出射されるEL素子において、
該基材の出射面側に、複数のレンズ素子を配列したレンズシートが積層され、
該レンズシートのレンズ素子に拡散要素が含有されていることを特徴とするEL素子。
【請求項2】
前記レンズ素子のレンズ面が、凹四角錐状を呈していることを特徴とする請求項1に記載のEL素子。
【請求項3】
前記レンズ素子に含有される前記拡散要素の前記レンズ素子に対する体積百分率が、1vol%以上20vol%以下の範囲に設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のEL素子。
【請求項4】
前記レンズ素子に含有される前記拡散要素の前記レンズ素子に対する体積百分率が、1.1vol%以上19.8vol%以下の範囲に設定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のEL素子。
【請求項5】
前記レンズシートが粘着層を介して前記基材に接着されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のEL素子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のEL素子を用いてなる液晶ディスプレイ用バックライト装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載のEL素子を用いてなる電子看板装置。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか一項に記載のEL素子を用いてなる照明装置。
【請求項9】
請求項6に記載の液晶ディスプレイ用バックライト装置又は請求項8記載の照明装置と、
これらバックライト装置又は照明装置によって照射され、画素単位での透過/遮光に応じて表示画像を規定する画像表示素子を備えることを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項10】
請求項1から5のいずれか1項に記載のEL素子を用いてなる光取り出しフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−218839(P2010−218839A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63224(P2009−63224)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】