EL素子およびディスプレイ装置
【課題】観察者側から見た視野角内の光強度分布におけるサイドローブを低減でき、光取り出し効率を向上できるEL素子を提供する。
【解決手段】透光性基板と、前記透光性基板の片面に設けられた、陽極および陰極とこれらの間に挟まれた発光層とを有する素子部と、前記透光性基板の素子部と反対面に設けられたレンズシートとを有するEL素子において、前記レンズシートは、2つの斜面をもち頂部が第1の方向に延びたシリンドリカル形状の複数の第1のレンズと、隣り合う第1のレンズの対向する2つの斜面間の溝部に形成され、前記第1の方向に沿って互いに逆向きに傾いた2つの小斜面をもち頂部が前記第1の方向と交差する第2の方向に延びた複数の第2のレンズとを有し、前記第1のレンズの占有面積に対する前記第2のレンズの占有面積の比率が0.3以上であることを特徴とするEL素子。
【解決手段】透光性基板と、前記透光性基板の片面に設けられた、陽極および陰極とこれらの間に挟まれた発光層とを有する素子部と、前記透光性基板の素子部と反対面に設けられたレンズシートとを有するEL素子において、前記レンズシートは、2つの斜面をもち頂部が第1の方向に延びたシリンドリカル形状の複数の第1のレンズと、隣り合う第1のレンズの対向する2つの斜面間の溝部に形成され、前記第1の方向に沿って互いに逆向きに傾いた2つの小斜面をもち頂部が前記第1の方向と交差する第2の方向に延びた複数の第2のレンズとを有し、前記第1のレンズの占有面積に対する前記第2のレンズの占有面積の比率が0.3以上であることを特徴とするEL素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフラットパネルディスプレイたとえば液晶パネルのバックライト、照明用光源、電飾、サイン用光源などに用いられるEL素子、およびこのEL素子を用いたディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、透光性基板の片面上に、陽極および陰極とこれらの間に挟まれた蛍光有機化合物を含む発光層とを有する素子部を設けた構造を有する。有機EL素子は、陽極と陰極との間に直流電圧を印加し、発光層に電子および正孔を注入して再結合させることにより励起子を生成し、この励起子が失活する際の光の放出を利用して発光を生じる。
【0003】
このようなEL素子において、発光層からの光が透光性基板で全反射されてロスが生じるという問題があった。ロスが生じる結果、光の外部取り出し効率は一般的に20%程度であると言われている。そのため、高輝度が必要となればなるほど投入電力が必要となるという問題がある。しかも、投入電力を増加させると、素子に及ぼす負荷が増大して素子自体の信頼性を低下させる。
【0004】
そこで、光の外部取り出し効率を向上させる目的で、透光性基板の素子部が設けられた面と反対面に微細な凹凸を形成するレンズシートを設け、透光性基板でいったん全反射された光を外部に取り出すようにすることが提案されている。
【0005】
図1に従来のレンズシートを設けたEL素子の断面図を示す。透光性基板1の下面に、陽極3および陰極4とこれらの間に挟まれた蛍光有機化合物を含む発光層2とを有する素子部が設けられている。透光性基板1の上面(素子部が設けられた面と反対面)に、透光性基材1a上に微細な凹凸を形成する複数の単位レンズ5を形成したレンズシートが、接着層6により接着されている。図1の単位レンズ5は、2つの斜面をもち頂部が紙面に垂直な方向に延びて三角錐をなすシリンドリカル形状を有する。このような単位レンズ5を横方向に配列したことによって、光の全反射によるロスを抑えて、正面方向へ取り出す効率を高めることが可能になる。
【0006】
しかし、図1に示したように、三角錐をなすシリンドリカル形状の単位レンズ5により単純な凹凸が形成されたレンズシートを用いた場合、観察者側から見た視野角内の光強度分布にサイドローブが出現するという問題がある。
【0007】
図2に、図1のEL素子について視野角内の光強度分布をシミュレーションした図を示す。このシミュレーションは、シリンドリカル形状の単位レンズ5を150μmで5列配列したレンズシートを用いた場合について行っている。図2に示されるように、正面に対して70度付近の角度で大きなサイドローブが出現している。このため、視野角内で明るくなったり暗くなったりする現象が起こる。
【0008】
なお、マイクロレンズ形状のように丸みを帯びた単位レンズを配列したレンズシートでは、丸みを帯びた単位レンズ間に隙間を設けざるをえないため、その隙間において光が全反射するという問題が生じる。
【特許文献1】特開2007−207471号公報
【特許文献2】特開2007−273275号公報
【特許文献3】特開2008−3515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、観察者側から見た視野角内の光強度分布におけるサイドローブを低減でき、光取り出し効率を向上できるEL素子、およびこのようなEL素子をバックライトユニットに用いたディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、透光性基板と、前記透光性基板の片面に設けられた、陽極および陰極とこれらの間に挟まれた発光層とを有する素子部と、前記透光性基板の素子部と反対面に設けられたレンズシートとを有するEL素子において、前記レンズシートは、2つの斜面をもち頂部が第1の方向に延びたシリンドリカル形状の複数の第1のレンズと、隣り合う第1のレンズの対向する2つの斜面間の溝部に形成され、前記第1の方向に沿って互いに逆向きに傾いた2つの小斜面をもち頂部が前記第1の方向と交差する第2の方向に延びた複数の第2のレンズとを有し、前記第1のレンズの占有面積に対する前記第2のレンズの占有面積の比率が0.3以上であることを特徴とするEL素子である。
【0011】
請求項2の発明は、前記第1のレンズは頂部が丸みを帯びていることを特徴とする請求項1に記載のEL素子である。
【0012】
請求項3の発明は、前記第1のレンズは斜面が曲面であることを特徴とする請求項1に記載のEL素子である。
【0013】
請求項4の発明は、前記陽極および陰極のいずれか一方が光散乱性であることを特徴とする請求項1に記載のEL素子である。
【0014】
請求項5の発明は、前記陽極および陰極のいずれか一方が光透過性であることを特徴とする請求項1に記載のEL素子である。
【0015】
請求項6の発明は、前記陽極および陰極の両方が光透過性であり、前記陽極および陰極のうち外側にある方の外面に設けられた光反射層を有することを特徴とする請求項1に記載のEL素子である。
【0016】
請求項7の発明は、前記発光層は2種以上の異なる発光色を示す単位発光層を含むことを特徴とする請求項1に記載のEL素子である。
【0017】
請求項8の発明は、前記発光層は発光色が白色であることを特徴とする請求項1に記載のEL素子である。
【0018】
請求項9の発明は、前記光反射層は金属材料から形成されていることを特徴とする請求項6に記載のEL素子である。
【0019】
請求項10の発明は、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のEL素子を複数配列した表示部と、前記EL素子を画素駆動する機構とを有することを特徴とするディスプレイ装置である。
【0020】
請求項11の発明は、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のEL素子を含むバックライトユニットと、画像表示パネルとを有することを特徴とするディスプレイ装置である。
【0021】
請求項12の発明は、前記画像表示パネルが液晶表示パネルであることを特徴とする請求項10に記載のディスプレイ装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、観察者側から見た視野角内の光強度分布におけるサイドローブを低減でき、光取り出し効率を向上できるEL素子、およびこのようなEL素子をバックライトユニットに用いたディスプレイ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
図3に本発明の一実施形態に係るレンズシートを設けたEL素子の断面図を示す。図4に、図3のEL素子に用いられているレンズシートの斜視図を示す。図5に、図3のEL素子に用いられているレンズシートの平面図を示す。
【0025】
図3に示すように、透光性基板1の下面に、陽極3および陰極4とこれらの間に挟まれた蛍光有機化合物を含む発光層2とを有する素子部が設けられている。透光性基板1の上面(素子部が設けられた面と反対面)に、透光性基材1a上に複数の第1のレンズ7と複数の第2のレンズ8を形成したレンズシートが、接着層6により接着されている。
【0026】
図4を参照して、レンズシートを構成する第1のレンズ7および第2のレンズ8の形状について説明する。1つの第1のレンズ7は、互いに逆向きに傾いた2つの斜面p1、p1をもち、頂部r1が第1の方向(図4ではX方向)に延びて三角錐をなすシリンドリカル形状を有する。1つの第2のレンズ8は、隣り合う第1のレンズ7、7の対向する2つの斜面p1、p1間の溝部に形成され、第1の方向(X方向)に沿って互いに逆向きに傾いた2つの小斜面p2、p2をもち頂部r2が第1の方向(X方向)と交差する第2の方向(Y方向)に延びている。ここで、第2のレンズ8について「小斜面」という用語を用いているのは、第2のレンズ8の斜面が第1のレンズ7の斜面と比較して相対的に面積が小さいことを表すことを意図している。
【0027】
第1のレンズ7の斜面および第2のレンズ8の小斜面がレンズシート(透光性基材1a)の主面に対してなす角度は、40〜60度の範囲で設定することができる。第1のレンズ7および第2のレンズの頂角を90度にすると最も効率がよい。第2のレンズ8を四角錐形状にした場合、他の多角錐形状などと比較して正面輝度を高くでき、光の取り出し効率を高くすることができる。ただし、第2のレンズ8の形状は特に限定されず、円錐形状、半球形状、多角錐形状などでもよい。各レンズのピッチは、1μm以上1mm以下に設定することが好ましい。レンズのピッチが1μm以下であれば光の回折現象が生じるが、この回折現象をうまく利用して波長毎に拡散性を変えるようにしてもよい。
【0028】
本発明においては、第1のレンズ7の占有面積に対する第2のレンズ8の占有面積の比率が0.3以上になるように設計する。図5を参照して、第1のレンズ7および第2のレンズ8の占有面積について説明する。レンズの占有面積とは、平面的な占有面積すなわちレンズを平面上に投影したときの占有面積のことをいう。図5においては、第2のレンズ8の占有面積S2を斜線で示している。第1のレンズ7の占有面積S1は、レンズシートの全面積から第2のレンズ8の占有面積S2を減算した値となる。本発明における占有面積の比率とはS2/S1のことであり、この値が0.3以上であればよい。
【0029】
いま、第2のレンズ8の高さを第1のレンズ7の高さと同一とし、隣り合う第1のレンズ7の対向する2つの斜面間の溝部で隣り合う2つの第2のレンズ8の端部が互いに点接触するようにレンズシートを設計すると、第1のレンズ7の占有面積に対する第2のレンズ8の占有面積の比率(S2/S1)は1となる。このようなレンズシートは、観察者側から見た視野角内の光強度分布におけるサイドローブの低減に最適な効果を示すと考えられる。
【0030】
ただし、第1のレンズ7の占有面積に対する第2のレンズ8の占有面積の比率(S2/S1)を1より小さく設計しても差し支えなく、(S2/S1)の値が0.3以上であれば、視野角内の光強度分布においてサイドローブをなくす効果を得ることができる。実際に、レンズシートの設計の容易さなどを考慮すると、第1のレンズ7の占有面積に対する第2のレンズ8の占有面積の比率(S2/S1)を1より小さく設計するのが通常である。
【0031】
図6に、本発明に係るEL素子の一例について視野角内の光強度分布をシミュレーションした図を示す。このシミュレーションは、三角錐をなすシリンドリカル形状の第1のレンズ7を150μmで5列配列し、隣り合う第1のレンズ7の対向する2つの斜面間の溝部に第1のレンズ7よりも高さが低い第2のレンズを5個ずつ形成したレンズシートを用いた場合について行っている。図6に示されるように、正面から真横までの視野角範囲で光強度が増加を示すことなくほぼ単調に減少し、視野角内の光強度分布においてサイドローブがなく、光強度分布がブロードになる。
【0032】
なお、後に説明する、レンズシートの製造に用いるスタンパの加工精度によっては、(S2/S1)の値が1を超えて1.1程度になることもありうる。したがって、本発明における(S2/S1)の値は、0.3〜1.1の範囲であればよく、より好ましくは0.4〜0.9の範囲である。
【0033】
図3では、透光性基材1a上に複数の第1のレンズ7と複数の第2のレンズ8を形成した多層構造のレンズシートを用いているが、レンズシートは単層構造でもよい。透光性基材1aの材料は特に限定されないが、典型的には、ポリエチレンテレフタレート樹脂が用いられる。第1のレンズ7および第2のレンズ8は樹脂からなり、たとえばアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、アクリルスチレン共重合樹脂等の熱可塑性樹脂およびポリエチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性樹脂、または紫外線硬化樹脂および電子線硬化樹脂などの電離放射線硬化樹脂が用いられる。
【0034】
レンズシートは、たとえばスタンパを用いた方法により形成することができる。スタンパとしては、例えば、平面スタンパ又はロールスタンパを使用することができる。ロールスタンパを使用する方法は、平面スタンパを使用する方法と比較して生産性に優れている。
【0035】
ロールスタンパは、たとえば以下の方法により製造することができる。まず、ロール面に銅メッキ層を形成したロールを準備する。次に、バイトを用い、ロール面の銅メッキ層を一方向に沿って切削加工して溝を形成した後、ロール面の銅メッキ層を直交する方向に沿って切削加工して溝を形成する。これらの切削加工により、ロール面に第1のレンズに対応する溝および第2のレンズに対応する溝が形成される。
【0036】
次いで、たとえばレンズの材料として熱可塑性樹脂を用い、加熱したスタンパを熱可塑性樹脂に押し当ててスタンパの凹凸構造を樹脂に転写し、スタンパから取り外してレンズシートを得る。あるいは、透光性基材とスタンパとの間に紫外線硬化樹脂を供給し、紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して硬化させた後、硬化させた紫外線硬化樹脂を基材とともにスタンパから取り外してレンズシートを得る。
【0037】
上記のように、ロール面に形成した銅メッキ層をバイトによって切削加工したスタンパを形成する場合、加工精度によっては第1のレンズおよび第2のレンズのそれぞれの高さに対応するそれぞれの溝の深さが設計通りにならず、様々な寸法をもつ第1のレンズおよび第2のレンズが形成されることがある。
【0038】
図7に本発明の他の実施形態に係るEL素子の断面図を示す。このEL素子では、複数の第1のレンズ7の高さおよびピッチなどの寸法が様々に異なっている。
【0039】
図8に本発明の他の実施形態に係るレンズシートの斜視図を示す。このレンズシートでは、複数の第1のレンズ7の高さおよびピッチなどの寸法が様々に異なっているだけでなく、複数の第2のレンズ8の高さおよびピッチなどの寸法も様々に異なっている。また、第2のレンズ8の高さが第1のレンズ7の高さよりも高くなっている部分もある。
【0040】
本発明においては、レンズシートを構成する第1のレンズおよび第2のレンズが様々な寸法をもって形成されていたとしても、第1のレンズの占有面積に対する第2のレンズの占有面積の比率が0.3以上であれば、観察者側から見た視野角内の光強度分布におけるサイドローブを低減する効果が得られる。
【0041】
以下、本発明の他の実施形態に係るレンズシートについて説明する。
【0042】
図9(a)は第1のレンズ7および第2のレンズ8が拡散性微粒子を含んでいるレンズシートを示す断面図である。第1のレンズ7および第2のレンズ8に拡散性微粒子を混入させることによって出射光の角度依存性を緩和し、さらに視野角内の光強度分布をコントロールすることができる。
【0043】
図9(b)は透光性基材1aが拡散性微粒子を含んでいるレンズシートを示す断面図である。透光性基材1aに拡散性微粒子を混入させることによって出射光の角度依存性を緩和し、さらに視野角内の光強度分布をコントロールすることができる。
【0044】
図9(c)は第1のレンズ7および第2のレンズ8の頂部が丸みを帯びているレンズシートを示す断面図である。このように、第1のレンズ7および第2のレンズ8の頂部に丸みをつけることによって、レンズシートの耐擦性を改善することができる。
【0045】
図10(a)は第1のレンズ7の一方の斜面が曲面であるレンズシートを示す断面図である。第2のレンズ8も第1のレンズ7と同様の形状を有していてもよい。図10(b)は第1のレンズ7の両方の斜面が曲面であるレンズシートを示す断面図である。第2のレンズ8も第1のレンズ7と同様の形状を有していてもよい。このように第1のレンズ7(および第2のレンズ8)の斜面に一定の曲率をもたせることによって、視野角内の光強度分布を有利にコントロールできる。
【0046】
以下、本発明の他の実施形態に係るEL素子について説明する。
【0047】
図11は陽極および陰極のうち少なくとも一方(ここでは外側にある陰極4)が光散乱性であるEL素子を示す断面図である。このように電極を光散乱性にすることによって、EL素子における光強度分布ムラを低減させることができる。また、レンズシートからの再帰反射光をさらに散乱させて出射面に戻すという作用が得られる。
【0048】
図12は陽極および陰極のうち少なくとも一方(ここでは内側にある陽極3)が光透過性電極であるEL素子を示す断面図である。このEL素子では、発光層2から発光した光が陽極3から出射し、その方向の延長上にレンズシートがあり、光を取り出すことができる。
【0049】
図13は陽極3および陰極4の両方が光透過性であり、外側にある陰極4の外面に設けられた光反射層9を有するEL素子を示す断面図である。光反射層9と発光層2との距離は実質的に光学干渉が生じないように設定される。光反射層9の材料は特に限定されないが、Al、Zr、Ti、Y、Sc、Ag、In、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属などの金属単体もしくはこれらの金属の合金、または酸化物、ハロゲン化物、金属ドーピング有機層の併用、などを上げることができる。このEL素子では、光反射層9と発光層2との距離をコントロールすることによって光学干渉を低減させ、角度依存性、波長依存性のある迷光を低減させることができる。
【0050】
図14は陽極3および陰極4とこれらの間に挟まれた発光層2とを有する素子部の外側に、薄膜トランジスタ(TFT)層10を付与したEL素子を示す断面図である。素子部には複数のEL素子が配列されている。TFT層10は下基板11上に形成されている。このようにTFT層10を付与したことによって、複数配列されたEL素子を画素駆動するアクティブマトリックス型のディスプレイとして用いることもできる。なお、本発明に係るEL素子は、アクティブマトリックス型に限定されず、パッシブ型のディスプレイとしても用いることもできる。その場合には陽極3および陰極4はストライプ構造に形成される。
【0051】
図15は液晶パネル12のバックライトユニットに本発明に係るEL素子を用いた液晶ディスプレイ装置を示す断面図である。この液晶ディスプレイ装置のバックライトユニットには、EL素子が複数配列されている。このように本発明に係るEL素子を含むバックライトユニットを用いた液晶ディスプレイ装置は、従来のように光源として冷陰極管(CCFL)を含むバックライトユニットを用いたものと比較し、より構造を薄型化でき、消費電力も低減することができる。また、光源ムラも実質上ないため、従来のようにランプイメージを低減させることを目的とする拡散板やレンズシートも必要なくなり、コストダウンとなる。
【0052】
図16はレンズシートの先端付近に光拡散層を設けたEL素子を示す断面図である。このEL素子では、レンズシートから取り出した光を光拡散層15によって散乱させることができる。また、レンズシート先端付近の突起により密着力を上げるというメリットもある。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0054】
実施例1
図4に示すように、三角錐をなすシリンドリカル形状の第1のレンズ7を150μmで5列配列し、隣り合う第1のレンズ7の対向する2つの斜面間の溝部に第1のレンズ7よりも高さが低い第2のレンズを5個ずつ形成したレンズシートを作製した。
【0055】
図5に示すように、平面上において、第2のレンズ8の頂部r2の長さを隣り合う2つの第1のレンズ7の頂部間の間隔の80%とし、隣り合う第1のレンズ7の対向する2つの斜面間の溝部で第2のレンズ8が均等なピッチで互いに離間して形成されるようにレンズシートを設計した。この場合、第1のレンズ7の占有面積に対する第2のレンズ8の占有面積の比率(S2/S1)は約0.47となる。
【0056】
このレンズシートを用いたEL素子について視野角内の光強度分布をシミュレーションしたところ、図6に示したように、光強度分布にサイドローブは認められなかった。
【0057】
他の実施例
第2のレンズ8の頂部r2の長さを隣り合う2つの第1のレンズ7の頂部間の間隔の90%として上記と同様の設計したレンズシートでは、(S2/S1)は約0.68となる。
【0058】
第2のレンズ8の頂部r2の長さを隣り合う2つの第1のレンズ7の頂部間の間隔の70%として上記と同様の設計したレンズシートでは、(S2/S1)は約0.32となる。
【0059】
これらのレンズシートを用いたEL素子について視野角内の光強度分布をシミュレーションした場合にも、同様に光強度分布にサイドローブは認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】従来のレンズシートを設けたEL素子の断面図。
【図2】図1のEL素子について視野角内の光強度分布をシミュレーションした図。
【図3】本発明の一実施形態に係るレンズシートを設けたEL素子の断面図。
【図4】本発明の一実施形態において用いられるレンズシートを示す斜視図。
【図5】本発明の一実施形態において用いられるレンズシートを示す平面図。
【図6】図3のEL素子について視野角内の光強度分布をシミュレーションした図。
【図7】本発明の他の実施形態に係るEL素子の断面図。
【図8】本発明の他の実施形態において用いられるレンズシートを示す斜視図。
【図9】本発明の他の実施形態において用いられるレンズシートを示す断面図。
【図10】本発明の他の実施形態において用いられるレンズシートを示す断面図。
【図11】本発明の他の実施形態に係るEL素子の断面図。
【図12】本発明の他の実施形態に係るEL素子の断面図。
【図13】本発明の他の実施形態に係るEL素子の断面図。
【図14】本発明に係るEL素子を用いたディスプレイ装置を示す断面図。
【図15】本発明に係るEL素子をバックライトユニットに用いた液晶ディスプレイ装置を示す断面図。
【図16】本発明の他の実施形態に係るEL素子の断面図。
【符号の説明】
【0061】
1…透光性基板、1a…透光性基材、2…発光層、3…陽極、4…陰極、5…単位レンズ、6…接着層、7…第1のレンズ、8…第1のレンズ、9…光反射層、10…薄膜トランジスタ(TFT)層、11…下基板、12…液晶パネル、15…光拡散層。
【技術分野】
【0001】
本発明はフラットパネルディスプレイたとえば液晶パネルのバックライト、照明用光源、電飾、サイン用光源などに用いられるEL素子、およびこのEL素子を用いたディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、透光性基板の片面上に、陽極および陰極とこれらの間に挟まれた蛍光有機化合物を含む発光層とを有する素子部を設けた構造を有する。有機EL素子は、陽極と陰極との間に直流電圧を印加し、発光層に電子および正孔を注入して再結合させることにより励起子を生成し、この励起子が失活する際の光の放出を利用して発光を生じる。
【0003】
このようなEL素子において、発光層からの光が透光性基板で全反射されてロスが生じるという問題があった。ロスが生じる結果、光の外部取り出し効率は一般的に20%程度であると言われている。そのため、高輝度が必要となればなるほど投入電力が必要となるという問題がある。しかも、投入電力を増加させると、素子に及ぼす負荷が増大して素子自体の信頼性を低下させる。
【0004】
そこで、光の外部取り出し効率を向上させる目的で、透光性基板の素子部が設けられた面と反対面に微細な凹凸を形成するレンズシートを設け、透光性基板でいったん全反射された光を外部に取り出すようにすることが提案されている。
【0005】
図1に従来のレンズシートを設けたEL素子の断面図を示す。透光性基板1の下面に、陽極3および陰極4とこれらの間に挟まれた蛍光有機化合物を含む発光層2とを有する素子部が設けられている。透光性基板1の上面(素子部が設けられた面と反対面)に、透光性基材1a上に微細な凹凸を形成する複数の単位レンズ5を形成したレンズシートが、接着層6により接着されている。図1の単位レンズ5は、2つの斜面をもち頂部が紙面に垂直な方向に延びて三角錐をなすシリンドリカル形状を有する。このような単位レンズ5を横方向に配列したことによって、光の全反射によるロスを抑えて、正面方向へ取り出す効率を高めることが可能になる。
【0006】
しかし、図1に示したように、三角錐をなすシリンドリカル形状の単位レンズ5により単純な凹凸が形成されたレンズシートを用いた場合、観察者側から見た視野角内の光強度分布にサイドローブが出現するという問題がある。
【0007】
図2に、図1のEL素子について視野角内の光強度分布をシミュレーションした図を示す。このシミュレーションは、シリンドリカル形状の単位レンズ5を150μmで5列配列したレンズシートを用いた場合について行っている。図2に示されるように、正面に対して70度付近の角度で大きなサイドローブが出現している。このため、視野角内で明るくなったり暗くなったりする現象が起こる。
【0008】
なお、マイクロレンズ形状のように丸みを帯びた単位レンズを配列したレンズシートでは、丸みを帯びた単位レンズ間に隙間を設けざるをえないため、その隙間において光が全反射するという問題が生じる。
【特許文献1】特開2007−207471号公報
【特許文献2】特開2007−273275号公報
【特許文献3】特開2008−3515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、観察者側から見た視野角内の光強度分布におけるサイドローブを低減でき、光取り出し効率を向上できるEL素子、およびこのようなEL素子をバックライトユニットに用いたディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、透光性基板と、前記透光性基板の片面に設けられた、陽極および陰極とこれらの間に挟まれた発光層とを有する素子部と、前記透光性基板の素子部と反対面に設けられたレンズシートとを有するEL素子において、前記レンズシートは、2つの斜面をもち頂部が第1の方向に延びたシリンドリカル形状の複数の第1のレンズと、隣り合う第1のレンズの対向する2つの斜面間の溝部に形成され、前記第1の方向に沿って互いに逆向きに傾いた2つの小斜面をもち頂部が前記第1の方向と交差する第2の方向に延びた複数の第2のレンズとを有し、前記第1のレンズの占有面積に対する前記第2のレンズの占有面積の比率が0.3以上であることを特徴とするEL素子である。
【0011】
請求項2の発明は、前記第1のレンズは頂部が丸みを帯びていることを特徴とする請求項1に記載のEL素子である。
【0012】
請求項3の発明は、前記第1のレンズは斜面が曲面であることを特徴とする請求項1に記載のEL素子である。
【0013】
請求項4の発明は、前記陽極および陰極のいずれか一方が光散乱性であることを特徴とする請求項1に記載のEL素子である。
【0014】
請求項5の発明は、前記陽極および陰極のいずれか一方が光透過性であることを特徴とする請求項1に記載のEL素子である。
【0015】
請求項6の発明は、前記陽極および陰極の両方が光透過性であり、前記陽極および陰極のうち外側にある方の外面に設けられた光反射層を有することを特徴とする請求項1に記載のEL素子である。
【0016】
請求項7の発明は、前記発光層は2種以上の異なる発光色を示す単位発光層を含むことを特徴とする請求項1に記載のEL素子である。
【0017】
請求項8の発明は、前記発光層は発光色が白色であることを特徴とする請求項1に記載のEL素子である。
【0018】
請求項9の発明は、前記光反射層は金属材料から形成されていることを特徴とする請求項6に記載のEL素子である。
【0019】
請求項10の発明は、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のEL素子を複数配列した表示部と、前記EL素子を画素駆動する機構とを有することを特徴とするディスプレイ装置である。
【0020】
請求項11の発明は、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のEL素子を含むバックライトユニットと、画像表示パネルとを有することを特徴とするディスプレイ装置である。
【0021】
請求項12の発明は、前記画像表示パネルが液晶表示パネルであることを特徴とする請求項10に記載のディスプレイ装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、観察者側から見た視野角内の光強度分布におけるサイドローブを低減でき、光取り出し効率を向上できるEL素子、およびこのようなEL素子をバックライトユニットに用いたディスプレイ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
図3に本発明の一実施形態に係るレンズシートを設けたEL素子の断面図を示す。図4に、図3のEL素子に用いられているレンズシートの斜視図を示す。図5に、図3のEL素子に用いられているレンズシートの平面図を示す。
【0025】
図3に示すように、透光性基板1の下面に、陽極3および陰極4とこれらの間に挟まれた蛍光有機化合物を含む発光層2とを有する素子部が設けられている。透光性基板1の上面(素子部が設けられた面と反対面)に、透光性基材1a上に複数の第1のレンズ7と複数の第2のレンズ8を形成したレンズシートが、接着層6により接着されている。
【0026】
図4を参照して、レンズシートを構成する第1のレンズ7および第2のレンズ8の形状について説明する。1つの第1のレンズ7は、互いに逆向きに傾いた2つの斜面p1、p1をもち、頂部r1が第1の方向(図4ではX方向)に延びて三角錐をなすシリンドリカル形状を有する。1つの第2のレンズ8は、隣り合う第1のレンズ7、7の対向する2つの斜面p1、p1間の溝部に形成され、第1の方向(X方向)に沿って互いに逆向きに傾いた2つの小斜面p2、p2をもち頂部r2が第1の方向(X方向)と交差する第2の方向(Y方向)に延びている。ここで、第2のレンズ8について「小斜面」という用語を用いているのは、第2のレンズ8の斜面が第1のレンズ7の斜面と比較して相対的に面積が小さいことを表すことを意図している。
【0027】
第1のレンズ7の斜面および第2のレンズ8の小斜面がレンズシート(透光性基材1a)の主面に対してなす角度は、40〜60度の範囲で設定することができる。第1のレンズ7および第2のレンズの頂角を90度にすると最も効率がよい。第2のレンズ8を四角錐形状にした場合、他の多角錐形状などと比較して正面輝度を高くでき、光の取り出し効率を高くすることができる。ただし、第2のレンズ8の形状は特に限定されず、円錐形状、半球形状、多角錐形状などでもよい。各レンズのピッチは、1μm以上1mm以下に設定することが好ましい。レンズのピッチが1μm以下であれば光の回折現象が生じるが、この回折現象をうまく利用して波長毎に拡散性を変えるようにしてもよい。
【0028】
本発明においては、第1のレンズ7の占有面積に対する第2のレンズ8の占有面積の比率が0.3以上になるように設計する。図5を参照して、第1のレンズ7および第2のレンズ8の占有面積について説明する。レンズの占有面積とは、平面的な占有面積すなわちレンズを平面上に投影したときの占有面積のことをいう。図5においては、第2のレンズ8の占有面積S2を斜線で示している。第1のレンズ7の占有面積S1は、レンズシートの全面積から第2のレンズ8の占有面積S2を減算した値となる。本発明における占有面積の比率とはS2/S1のことであり、この値が0.3以上であればよい。
【0029】
いま、第2のレンズ8の高さを第1のレンズ7の高さと同一とし、隣り合う第1のレンズ7の対向する2つの斜面間の溝部で隣り合う2つの第2のレンズ8の端部が互いに点接触するようにレンズシートを設計すると、第1のレンズ7の占有面積に対する第2のレンズ8の占有面積の比率(S2/S1)は1となる。このようなレンズシートは、観察者側から見た視野角内の光強度分布におけるサイドローブの低減に最適な効果を示すと考えられる。
【0030】
ただし、第1のレンズ7の占有面積に対する第2のレンズ8の占有面積の比率(S2/S1)を1より小さく設計しても差し支えなく、(S2/S1)の値が0.3以上であれば、視野角内の光強度分布においてサイドローブをなくす効果を得ることができる。実際に、レンズシートの設計の容易さなどを考慮すると、第1のレンズ7の占有面積に対する第2のレンズ8の占有面積の比率(S2/S1)を1より小さく設計するのが通常である。
【0031】
図6に、本発明に係るEL素子の一例について視野角内の光強度分布をシミュレーションした図を示す。このシミュレーションは、三角錐をなすシリンドリカル形状の第1のレンズ7を150μmで5列配列し、隣り合う第1のレンズ7の対向する2つの斜面間の溝部に第1のレンズ7よりも高さが低い第2のレンズを5個ずつ形成したレンズシートを用いた場合について行っている。図6に示されるように、正面から真横までの視野角範囲で光強度が増加を示すことなくほぼ単調に減少し、視野角内の光強度分布においてサイドローブがなく、光強度分布がブロードになる。
【0032】
なお、後に説明する、レンズシートの製造に用いるスタンパの加工精度によっては、(S2/S1)の値が1を超えて1.1程度になることもありうる。したがって、本発明における(S2/S1)の値は、0.3〜1.1の範囲であればよく、より好ましくは0.4〜0.9の範囲である。
【0033】
図3では、透光性基材1a上に複数の第1のレンズ7と複数の第2のレンズ8を形成した多層構造のレンズシートを用いているが、レンズシートは単層構造でもよい。透光性基材1aの材料は特に限定されないが、典型的には、ポリエチレンテレフタレート樹脂が用いられる。第1のレンズ7および第2のレンズ8は樹脂からなり、たとえばアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、アクリルスチレン共重合樹脂等の熱可塑性樹脂およびポリエチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性樹脂、または紫外線硬化樹脂および電子線硬化樹脂などの電離放射線硬化樹脂が用いられる。
【0034】
レンズシートは、たとえばスタンパを用いた方法により形成することができる。スタンパとしては、例えば、平面スタンパ又はロールスタンパを使用することができる。ロールスタンパを使用する方法は、平面スタンパを使用する方法と比較して生産性に優れている。
【0035】
ロールスタンパは、たとえば以下の方法により製造することができる。まず、ロール面に銅メッキ層を形成したロールを準備する。次に、バイトを用い、ロール面の銅メッキ層を一方向に沿って切削加工して溝を形成した後、ロール面の銅メッキ層を直交する方向に沿って切削加工して溝を形成する。これらの切削加工により、ロール面に第1のレンズに対応する溝および第2のレンズに対応する溝が形成される。
【0036】
次いで、たとえばレンズの材料として熱可塑性樹脂を用い、加熱したスタンパを熱可塑性樹脂に押し当ててスタンパの凹凸構造を樹脂に転写し、スタンパから取り外してレンズシートを得る。あるいは、透光性基材とスタンパとの間に紫外線硬化樹脂を供給し、紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して硬化させた後、硬化させた紫外線硬化樹脂を基材とともにスタンパから取り外してレンズシートを得る。
【0037】
上記のように、ロール面に形成した銅メッキ層をバイトによって切削加工したスタンパを形成する場合、加工精度によっては第1のレンズおよび第2のレンズのそれぞれの高さに対応するそれぞれの溝の深さが設計通りにならず、様々な寸法をもつ第1のレンズおよび第2のレンズが形成されることがある。
【0038】
図7に本発明の他の実施形態に係るEL素子の断面図を示す。このEL素子では、複数の第1のレンズ7の高さおよびピッチなどの寸法が様々に異なっている。
【0039】
図8に本発明の他の実施形態に係るレンズシートの斜視図を示す。このレンズシートでは、複数の第1のレンズ7の高さおよびピッチなどの寸法が様々に異なっているだけでなく、複数の第2のレンズ8の高さおよびピッチなどの寸法も様々に異なっている。また、第2のレンズ8の高さが第1のレンズ7の高さよりも高くなっている部分もある。
【0040】
本発明においては、レンズシートを構成する第1のレンズおよび第2のレンズが様々な寸法をもって形成されていたとしても、第1のレンズの占有面積に対する第2のレンズの占有面積の比率が0.3以上であれば、観察者側から見た視野角内の光強度分布におけるサイドローブを低減する効果が得られる。
【0041】
以下、本発明の他の実施形態に係るレンズシートについて説明する。
【0042】
図9(a)は第1のレンズ7および第2のレンズ8が拡散性微粒子を含んでいるレンズシートを示す断面図である。第1のレンズ7および第2のレンズ8に拡散性微粒子を混入させることによって出射光の角度依存性を緩和し、さらに視野角内の光強度分布をコントロールすることができる。
【0043】
図9(b)は透光性基材1aが拡散性微粒子を含んでいるレンズシートを示す断面図である。透光性基材1aに拡散性微粒子を混入させることによって出射光の角度依存性を緩和し、さらに視野角内の光強度分布をコントロールすることができる。
【0044】
図9(c)は第1のレンズ7および第2のレンズ8の頂部が丸みを帯びているレンズシートを示す断面図である。このように、第1のレンズ7および第2のレンズ8の頂部に丸みをつけることによって、レンズシートの耐擦性を改善することができる。
【0045】
図10(a)は第1のレンズ7の一方の斜面が曲面であるレンズシートを示す断面図である。第2のレンズ8も第1のレンズ7と同様の形状を有していてもよい。図10(b)は第1のレンズ7の両方の斜面が曲面であるレンズシートを示す断面図である。第2のレンズ8も第1のレンズ7と同様の形状を有していてもよい。このように第1のレンズ7(および第2のレンズ8)の斜面に一定の曲率をもたせることによって、視野角内の光強度分布を有利にコントロールできる。
【0046】
以下、本発明の他の実施形態に係るEL素子について説明する。
【0047】
図11は陽極および陰極のうち少なくとも一方(ここでは外側にある陰極4)が光散乱性であるEL素子を示す断面図である。このように電極を光散乱性にすることによって、EL素子における光強度分布ムラを低減させることができる。また、レンズシートからの再帰反射光をさらに散乱させて出射面に戻すという作用が得られる。
【0048】
図12は陽極および陰極のうち少なくとも一方(ここでは内側にある陽極3)が光透過性電極であるEL素子を示す断面図である。このEL素子では、発光層2から発光した光が陽極3から出射し、その方向の延長上にレンズシートがあり、光を取り出すことができる。
【0049】
図13は陽極3および陰極4の両方が光透過性であり、外側にある陰極4の外面に設けられた光反射層9を有するEL素子を示す断面図である。光反射層9と発光層2との距離は実質的に光学干渉が生じないように設定される。光反射層9の材料は特に限定されないが、Al、Zr、Ti、Y、Sc、Ag、In、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属などの金属単体もしくはこれらの金属の合金、または酸化物、ハロゲン化物、金属ドーピング有機層の併用、などを上げることができる。このEL素子では、光反射層9と発光層2との距離をコントロールすることによって光学干渉を低減させ、角度依存性、波長依存性のある迷光を低減させることができる。
【0050】
図14は陽極3および陰極4とこれらの間に挟まれた発光層2とを有する素子部の外側に、薄膜トランジスタ(TFT)層10を付与したEL素子を示す断面図である。素子部には複数のEL素子が配列されている。TFT層10は下基板11上に形成されている。このようにTFT層10を付与したことによって、複数配列されたEL素子を画素駆動するアクティブマトリックス型のディスプレイとして用いることもできる。なお、本発明に係るEL素子は、アクティブマトリックス型に限定されず、パッシブ型のディスプレイとしても用いることもできる。その場合には陽極3および陰極4はストライプ構造に形成される。
【0051】
図15は液晶パネル12のバックライトユニットに本発明に係るEL素子を用いた液晶ディスプレイ装置を示す断面図である。この液晶ディスプレイ装置のバックライトユニットには、EL素子が複数配列されている。このように本発明に係るEL素子を含むバックライトユニットを用いた液晶ディスプレイ装置は、従来のように光源として冷陰極管(CCFL)を含むバックライトユニットを用いたものと比較し、より構造を薄型化でき、消費電力も低減することができる。また、光源ムラも実質上ないため、従来のようにランプイメージを低減させることを目的とする拡散板やレンズシートも必要なくなり、コストダウンとなる。
【0052】
図16はレンズシートの先端付近に光拡散層を設けたEL素子を示す断面図である。このEL素子では、レンズシートから取り出した光を光拡散層15によって散乱させることができる。また、レンズシート先端付近の突起により密着力を上げるというメリットもある。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0054】
実施例1
図4に示すように、三角錐をなすシリンドリカル形状の第1のレンズ7を150μmで5列配列し、隣り合う第1のレンズ7の対向する2つの斜面間の溝部に第1のレンズ7よりも高さが低い第2のレンズを5個ずつ形成したレンズシートを作製した。
【0055】
図5に示すように、平面上において、第2のレンズ8の頂部r2の長さを隣り合う2つの第1のレンズ7の頂部間の間隔の80%とし、隣り合う第1のレンズ7の対向する2つの斜面間の溝部で第2のレンズ8が均等なピッチで互いに離間して形成されるようにレンズシートを設計した。この場合、第1のレンズ7の占有面積に対する第2のレンズ8の占有面積の比率(S2/S1)は約0.47となる。
【0056】
このレンズシートを用いたEL素子について視野角内の光強度分布をシミュレーションしたところ、図6に示したように、光強度分布にサイドローブは認められなかった。
【0057】
他の実施例
第2のレンズ8の頂部r2の長さを隣り合う2つの第1のレンズ7の頂部間の間隔の90%として上記と同様の設計したレンズシートでは、(S2/S1)は約0.68となる。
【0058】
第2のレンズ8の頂部r2の長さを隣り合う2つの第1のレンズ7の頂部間の間隔の70%として上記と同様の設計したレンズシートでは、(S2/S1)は約0.32となる。
【0059】
これらのレンズシートを用いたEL素子について視野角内の光強度分布をシミュレーションした場合にも、同様に光強度分布にサイドローブは認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】従来のレンズシートを設けたEL素子の断面図。
【図2】図1のEL素子について視野角内の光強度分布をシミュレーションした図。
【図3】本発明の一実施形態に係るレンズシートを設けたEL素子の断面図。
【図4】本発明の一実施形態において用いられるレンズシートを示す斜視図。
【図5】本発明の一実施形態において用いられるレンズシートを示す平面図。
【図6】図3のEL素子について視野角内の光強度分布をシミュレーションした図。
【図7】本発明の他の実施形態に係るEL素子の断面図。
【図8】本発明の他の実施形態において用いられるレンズシートを示す斜視図。
【図9】本発明の他の実施形態において用いられるレンズシートを示す断面図。
【図10】本発明の他の実施形態において用いられるレンズシートを示す断面図。
【図11】本発明の他の実施形態に係るEL素子の断面図。
【図12】本発明の他の実施形態に係るEL素子の断面図。
【図13】本発明の他の実施形態に係るEL素子の断面図。
【図14】本発明に係るEL素子を用いたディスプレイ装置を示す断面図。
【図15】本発明に係るEL素子をバックライトユニットに用いた液晶ディスプレイ装置を示す断面図。
【図16】本発明の他の実施形態に係るEL素子の断面図。
【符号の説明】
【0061】
1…透光性基板、1a…透光性基材、2…発光層、3…陽極、4…陰極、5…単位レンズ、6…接着層、7…第1のレンズ、8…第1のレンズ、9…光反射層、10…薄膜トランジスタ(TFT)層、11…下基板、12…液晶パネル、15…光拡散層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板と、前記透光性基板の片面に設けられた、陽極および陰極とこれらの間に挟まれた発光層とを有する素子部と、前記透光性基板の素子部と反対面に設けられたレンズシートとを有するEL素子において、
前記レンズシートは、2つの斜面をもち頂部が第1の方向に延びたシリンドリカル形状の複数の第1のレンズと、隣り合う第1のレンズの対向する2つの斜面間の溝部に形成され、前記第1の方向に沿って互いに逆向きに傾いた2つの小斜面をもち頂部が前記第1の方向と交差する第2の方向に延びた複数の第2のレンズとを有し、前記第1のレンズの占有面積に対する前記第2のレンズの占有面積の比率が0.3以上であることを特徴とするEL素子。
【請求項2】
前記第1のレンズは頂部が丸みを帯びていることを特徴とする請求項1に記載のEL素子。
【請求項3】
前記第1のレンズは斜面が曲面であることを特徴とする請求項1に記載のEL素子。
【請求項4】
前記陽極および陰極のいずれか一方が光散乱性であることを特徴とする請求項1に記載のEL素子。
【請求項5】
前記陽極および陰極のいずれか一方が光透過性であることを特徴とする請求項1に記載のEL素子。
【請求項6】
前記陽極および陰極の両方が光透過性であり、前記陽極および陰極のうち外側にある方の外面に設けられた光反射層を有することを特徴とする請求項1に記載のEL素子。
【請求項7】
前記発光層は2種以上の異なる発光色を示す単位発光層を含むことを特徴とする請求項1に記載のEL素子。
【請求項8】
前記発光層は発光色が白色であることを特徴とする請求項1に記載のEL素子。
【請求項9】
前記光反射層は金属材料から形成されていることを特徴とする請求項6に記載のEL素子。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のEL素子を複数配列した表示部と、前記EL素子を画素駆動する機構とを有することを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のEL素子を含むバックライトユニットと、画像表示パネルとを有することを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項12】
前記画像表示パネルが液晶パネルであることを特徴とする請求項11に記載のディスプレイ装置。
【請求項1】
透光性基板と、前記透光性基板の片面に設けられた、陽極および陰極とこれらの間に挟まれた発光層とを有する素子部と、前記透光性基板の素子部と反対面に設けられたレンズシートとを有するEL素子において、
前記レンズシートは、2つの斜面をもち頂部が第1の方向に延びたシリンドリカル形状の複数の第1のレンズと、隣り合う第1のレンズの対向する2つの斜面間の溝部に形成され、前記第1の方向に沿って互いに逆向きに傾いた2つの小斜面をもち頂部が前記第1の方向と交差する第2の方向に延びた複数の第2のレンズとを有し、前記第1のレンズの占有面積に対する前記第2のレンズの占有面積の比率が0.3以上であることを特徴とするEL素子。
【請求項2】
前記第1のレンズは頂部が丸みを帯びていることを特徴とする請求項1に記載のEL素子。
【請求項3】
前記第1のレンズは斜面が曲面であることを特徴とする請求項1に記載のEL素子。
【請求項4】
前記陽極および陰極のいずれか一方が光散乱性であることを特徴とする請求項1に記載のEL素子。
【請求項5】
前記陽極および陰極のいずれか一方が光透過性であることを特徴とする請求項1に記載のEL素子。
【請求項6】
前記陽極および陰極の両方が光透過性であり、前記陽極および陰極のうち外側にある方の外面に設けられた光反射層を有することを特徴とする請求項1に記載のEL素子。
【請求項7】
前記発光層は2種以上の異なる発光色を示す単位発光層を含むことを特徴とする請求項1に記載のEL素子。
【請求項8】
前記発光層は発光色が白色であることを特徴とする請求項1に記載のEL素子。
【請求項9】
前記光反射層は金属材料から形成されていることを特徴とする請求項6に記載のEL素子。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のEL素子を複数配列した表示部と、前記EL素子を画素駆動する機構とを有することを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のEL素子を含むバックライトユニットと、画像表示パネルとを有することを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項12】
前記画像表示パネルが液晶パネルであることを特徴とする請求項11に記載のディスプレイ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−97711(P2010−97711A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265295(P2008−265295)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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