説明

ERBBアンタゴニスト癌治療に対する有効な応答の可能性を向上させるための遺伝子検出アッセイ

【課題】遺伝子増幅アッセイによりErbBアンタゴニストを用いて、ErbBを過剰発現する腫瘍を生じやすい、又は該腫瘍との診断を下された患者の、より効果的な治療方法を提供する。
【解決手段】ErbBアンタゴニスト癌治療の有効性の可能性を増加するために、対象から得た組織試料中の腫瘍細胞のerbB遺伝子が増幅されることが分かった対象に、癌治療用量のErbBアンタゴニストを投与する。例えば蛍光in-situハイブリダイゼーションにより、その腫瘍細胞でErbBが増幅していると分かった対象に対して、癌治療用量のErbBアンタゴニストを、好ましくは更に化学療法剤を加えて投与することを含む。ErbBアンタゴニストは抗HER2抗体を含む。更に該治療の成分の製薬パッケージ。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本出願は、2000年5月19日に提出された仮出願60/205,754の米国特許法第119条(e)に基づく優先権を主張し、その全体を開示によりここに取り込む。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、腫瘍抗原、例えばErbBレセプター、特にHER2の過剰発現により特徴づけられる癌の治療に関する。より詳細には、本発明は、ErbBアンタゴニスト、例えば抗ErbB抗体を用いて、遺伝子増幅アッセイにより決定されるような腫瘍細胞がErbBを過剰発現する癌にかかりやすい、又は該癌であると診断されたヒト患者の、より効果的な治療に関する。本発明は更にこのような治療のための製薬パッケージを提供する。
【0003】
(発明の背景)
遺伝学理解の前進並びに技術及び疫学の発達は、遺伝的異常と特定の悪性度との関係、並びに特定の悪性度の進行についての個体のリスク評価を可能にしてきた。しかしながら、悪性度に関連する、又は個体を悪性にさせる遺伝子の存在についての組織評価に利用できる多くの方法論は、欠点がよく知られている。例えば、組織の脱凝集を必要とする方法、例えばサザン、ノーザン、ウェスタンブロット分析は、同じ組織中に存在する正常細胞又は他の非悪性細胞が悪性細胞に混合されることによって正確さが低くなる。更に、結果的に生じる組織構造の欠損は、形態学的特異性を可能にする点においての遺伝子異常の存在に悪性細胞を関連づける可能性をなくす。この結果は、特に、任意の領域にある有意な割合の細胞が悪性でないような場合に、異種として知られる組織型、例えばヒト乳癌で問題となる。
【0004】
her2/neu遺伝子はタンパク質産物をコードし、時にp185HER2として同定される。天然p185HER2タンパク質は上皮成長因子レセプター(EGFR)と相同性を有する膜レセプター様分子である。ヒト乳癌でのHER2の過剰発現及び増幅は、幾つかの研究ではより短い非疾病期間及びより短い全体的生存に関係していたが(van de Vijer 等 New Eng. J. Med. 317:1239(1988); Walker 等 Br. J. Cancer 60: 426 (1989); Tandon 等 J. Clin. Invest. 7:1120(1989); Wright 等 Cancer Res. 49:2087(1989); McCann等. Cancer Res 51:3296(1991); Paterson 等 Cancer Res. 51:556(1991); 及び Winstanley 等 Br. J. Cancer 63: 447(1991))、その他ではそうではない(Zhou 等 Oncogene 4: 105(1989); Heintz 等 Arch Path Lab Med 114:160(1990); Kury 等 Eur. J. Cancer 26:946(1990); Clark 等 Cancer Res. 51:944(1991); 及び Ravdin 等 J. Clin. Oncol. 12:467-74(1994))。
【0005】
乳癌を有する103の患者の初期評価では、3以上の腫瘍細胞陽性である腋窩のリンパ節(リンパ節陽性)を有する者は、3未満の陽性リンパ節を有する患者よりもHER2タンパク質を過剰発現する傾向が強い(Slamon 等 Science 235:177(1987))。乳癌を有する86のリンパ節陽性である患者のその後の評価では、短命、早期再発、及び遺伝子増幅の程度の間に有意な相関関係がある。HER2の過剰発現は、サザン及びノーザンブロッティングを用いて決定され、ウェスタンブロッティング及び免疫組織化学(IHC)により評価されるHER2腫瘍性タンパク質発現と相関する(Slamon 等 Science 235:177(1987); Salmon等 Science 244:707 (1989))。生存期間の中央値は、her2遺伝子の5以上の複製を有する患者で、遺伝子増幅のない患者よりも約5倍短いことが分かった。この相関は、多変量解析において節の状態及び他の予後因子に相関関係があってもなお存在していた。これらの研究は、187のリンパ節陽性患者に拡大し、mRNAの量(ノーザンブロッティングにより測定される)を増加させ、タンパク質発現(免疫組織化学的に測定される)を増加させる遺伝子増幅もまた、短くなった生存期間と相関することが示された(Slamon等 Science 244:707(1989));(また米国特許出願第4968603号参照)。Nelson等は、免疫組織学的に測定された乳癌での過剰発現についてFISHを用いてher2/neu遺伝子増幅を比較した(Nelson 等 Modern Pathology 9(1)21A(1996))。
【0006】
組織切片の免疫組織化学的染色は、異種組織のタンパク質の変化を評価する確実な方法であることが示されている。免疫組織化学(IHC)技術は、抗体をプローブに利用し、一般的には発色法又は蛍光法によってin situで細胞性抗原を視覚化する。この技術は、脱凝集の不要な影響を回避し、形態学の面で個々の細胞の評価を可能にするために優れている。更に、標的タンパク質が凍結工程によって変化することがない。
しかしながら、臨床試験(CTA)において、ホルムアルデヒド固定してパラフィン包埋した組織のIHCは、凍結したIHC試料に対して50−80%の感度しか示さなかった(Press, Cancer Research 54:2771(1994))。従って、IHCは誤った陰性の結果となる可能性があり、治療によって恩恵を受けうる患者が治療からはずされる。
【0007】
蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)は、近年、無傷の細胞にある遺伝子の存在を直接評価する方法を発達させている。FISHは、細胞特異性を提供するので、パラフィン包埋した組織を悪性の存在について評価する絶好の手段であり、さらにホルマリン固定により生じる他のタンパク質変化の影響及び架橋の問題を克服する。FISHは、遺伝子異常を細胞形態と関連づけるためにこれまで古典的な染色方法論と組み合わせられてきた(例えば、Anastasi等, Blood 77:2456-2462(1991); Anastasi等, Blood 79:1796-1801(1992); Anastasi等, Blood 81:1580-1585(1993); van Lom 等, Blood 82:884-888(1992); Wolman等, Diagnostic Molecular Pathology 1(3): 192-199(1992); Zitzelberger, Journal of Pathology 172:325-335(1994))。
【0008】
現在まで、her2遺伝子増幅は抗HER2抗体治療の成果との関連はなく、病気の予後とのみ関連があった。標準的なアッセイは、ホルマリン固定したパラフィン包埋試料でのIHCであった。これらの試料は、3+又は2+とスコアされた場合に、ハーセプチン(登録商標)のような抗HER2抗体での治療が役に立つと考えられる患者と決定する。3+及び2+のスコアは、例えばFISHにより試験されるようなher2遺伝子増幅と相関する。しかしながら、ハーセプチン(登録商標)治療のような効果のあるErbBアンタゴニスト療法候補の、より効果的な同定の必要性が依然として残っている。
【0009】
(発明の概要)
本発明は、有利には、ErbBアンタゴニスト癌治療の有効性の可能性を増加する方法を提供する。方法は、対象から得た組織試料中の腫瘍細胞のerbB遺伝子が増幅されることが分かった対象に、癌治療用量のErbBアンタゴニストを投与することを含む。好ましくはErbBはHER2である。特定の実施態様では、方法は更に癌治療用量の化学療法剤、特にタキソールを投与することを含む。
特に好ましい実施態様では、ここで例示するが、本発明は癌を治療するための抗HER2抗体の有効性の可能性を増加させる方法を提供する。この方法は、対象から得た組織試料中の腫瘍細胞のher2遺伝子が増幅されることが分かった対象に癌治療用量の抗HER2抗体を投与することを含む。
【0010】
本発明の根底にある意外な臨床結果は、遺伝子増幅が免疫組織化学によるタンパク質検出よりも有効な抗体利用腫瘍治療の徴候であることを証明し、一般に腫瘍抗原にまで及ぶ。従って、任意の抗腫瘍特異的抗原を利用した抗体治療は、腫瘍抗原をコードする遺伝子の遺伝子増幅があることが分かった患者で、増大した成功の可能性を有しうる。
本発明の特に有利な点は、免疫組織化学的判定基準に基づくと除外されうる、治療にふさわしい患者の選択がなされることである。従って、特定の実施態様では、対象はホルムアルデヒド固定した組織試料での免疫組織化学によりHER2について0又は+1に相当する抗原レベルを有することが分かっている。
【0011】
本発明は更に、癌を治療するためのErbBアンタゴニスト、及び対象から得た組織試料中の腫瘍細胞でerbB遺伝子が増幅される場合に、対象にErbBアンタゴニストを投与するという指示書を含む製薬パッケージを提供する。好ましくは、ErbBアンタゴニストは抗ErbB抗体、例えば抗HER2抗体である。更なる態様では、指示書はまた、癌治療用量の化学療法剤、例えばタキソールを投与することを教示する。使用のための指示書を含むこのような製薬パッケージは、腫瘍特異的抗原に特異的なあらゆる抗体利用治療剤を提供しうる。
【0012】
(詳細な説明)
有利には、本発明は、治療薬、例えば抗腫瘍抗原治療抗体又はErbBレセプターアンタゴニストを、腫瘍抗原又はErbBレセプタータンパク質等をコードする増幅遺伝子を有することが分かっている患者に投与することによって、治療に対する応答のより大きい可能性を有する患者の治療を可能にする。一つには、本発明は、例えば、免疫組織化学(IHC)により検出されるようなHER2発現と相関するが、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)により検出されるような、her2遺伝子増幅は、意外にもFISHのステータスが治療に対する応答とより良好に相関することから治療にふさわしい患者を選択するためのより正確な基準を提供するという意外な発見に基づく。この結果は、FISHのステータスが他のIHCアッセイ(Hercep Test)とほぼ同じ割合の臨床試験(CTA)と相関関係を有するために、幾分驚いた。この知見に基づき、FISHは治療応答に対して同様の相関関係があると予測される。また、この結果は、タンパク質の直接的な測定(免疫アッセイによる)が遺伝子増幅のような発現の間接的な測定よりもタンパク質を標的とする癌治療のより正確な評価を提供することに驚かされる。
【0013】
患者のグループ及びサブグループの評価は、治療に対してより応答しやすい患者を選択する、遺伝子増幅分析の能力を明らかにする。IHCは、腫瘍細胞でのHER2発現のスコア:0(発現なし)〜3+(非常に高レベルの発現)を提供する。臨床的な選択基準は0及び1+のスコアの患者を排除し、2+及び3+のスコアの患者を選択する。データは、2+/3+の患者の14%がハーセプチン(登録商標)に応答するが、FISH+(her2遺伝子を増幅した)の20%がハーセプチン(登録商標)に応答することを示す。3+のサブグループは17%の応答率を有し、FISH+対象の応答率に非常に近似する。しかしながら、2+のサブグループはFISH+対象の応答率の半分未満であった。従って、遺伝子増幅は、明らかに2+サブグループ内を大きなサブ集団に分け、FISH+である者に対してより効果的な治療を可能にし、他の治療様式が適し直ちに開始するべきである患者を敏速に同定する。
【0014】
遺伝子増幅分析はまた、特に試験がホルマリン固定したパラフィン包埋試料(このような試料の選別はHER2タンパク質の抗体エピトープを崩壊又は破壊しうる)で実施される場合に、IHC分析の変則性のために余計に除外されてしまう患者を同定する。実施例に示されるように、0及び1+対象の下位集合はFISH+である。これらの患者は、例えばハーセプチン(登録商標)を用いる抗HER2抗体治療に対して応答しやすいが、IHC基準によればこの治療を受けることからはずされうる。
従って、本発明は、有利には、治療から恩恵を受ける可能性があるが、IHC基準によって治療から除外されうる患者の包含を許容する。同時に、本発明は、抗腫瘍抗原治療(即ち、ErbBアンタゴニスト又は腫瘍抗原特異的治療抗体)が成功しないと思われるために他の様式の治療を遅滞なく探すべき患者の除外を可能にする。
【0015】
要するに、本発明は、標的タンパク質発現レベルに基づく患者の選択についてIHCアッセイを強力に補助する。また、それ自体、つまりIHCとともにでなくとも、患者の初期選別及び選択の提供に使用されうる。本発明は、癌治療用量の抗腫瘍抗原療法の抗体治療、ErbBレセプターアンタゴニスト治療、及び過剰発現腫瘍抗原(又は腫瘍特異的抗原)を標的とする他の治療を受ける対象の選別及び選択を著しく向上させ、このような治療から恩恵を受ける増大した可能性をもたらす。
他の態様では、本発明は、容器、ErbBアンタゴニスト、例えば抗ErbB抗体(又は他の抗腫瘍特異的抗原抗体)を含む容器内の組成物、場合によっては、容器上の又は容器と一体の、組成物をErbBレセプターの過剰発現により特徴づけられる症状の治療に用いることができることを示すラベル、及び増幅erbB遺伝子を有することが分かっている患者にアンタゴニストを投与するという指示書を含むパッケージ挿入物を含む製品又はパッケージに関する。
【0016】
(定義)
ここで使用される場合、「ErbBレセプター」は、ErbBレセプターファミリーに属するレセプタータンパク質チロシンキナーゼであり、EGFR、HER2、ErbB3及びErbB4レセプター並びにTEGFR(米国特許第5708156号)及び将来同定されるこのファミリーの他のメンバーを含む。ErbBレセプターは、一般にはErbBリガンドに結合しうる胞外ドメイン;親油性膜貫通ドメイン;保存された細胞内チロシンキナーゼドメイン;及びリン酸化され得る幾つかのチロシンキナーゼ残基を有するカルボキシル末端シグナル伝達ドメインを含む。ErbBレセプターは、天然配列ErbBレセプター又はそのアミノ酸配列変異体であってもよい。好ましくは、ErbBレセプターは天然配列ヒトErbBレセプターである。
【0017】
ErbBレセプターは腫瘍特異的抗原又は腫瘍抗原の例である。「腫瘍抗原」という用語は、ここで、正常細胞に比較して腫瘍細胞において高いレベルで発現されるタンパク質を指して使用される。一般的に、比較する正常細胞は、腫瘍と又は腫瘍を生じたものと同じ組織型、特に表現型である。「腫瘍特異的抗原」は腫瘍細胞に優先的に又は腫瘍細胞でのみ発現する抗原を指す。腫瘍特異的抗原の例は、ErbBレセプターに加えて、(メラノーマの)MART1/MelanA、gp-100、及びチロシナーゼ;(膀胱、頭部及び頸部、非小細胞癌の)MAGE-1及びMAGE-3;(子宮頸癌の)HPVEG及びE7タンパク質;(乳癌、膵臓癌、大腸癌、及び前立腺癌の)Mucin/MUC-1;(前立腺癌の)前立腺特異的抗原/PSA;及び(大腸癌、乳癌、及び消化管癌の)癌胎児抗原/CEAを含む。
【0018】
「増幅」は、染色体補体のerbB又は他の腫瘍抗原コーディング遺伝子の一以上の付加的な遺伝子複製物の存在を意図している。遺伝子増幅はタンパク質、例えばErbBレセプタータンパク質の過剰発現を生じうる。組織試料からの細胞での遺伝子増幅は、多くの技術、特に蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、またこれに限らないが定量的PCR、定量的サザンハイブリダイゼーション等も含む技術により測定することができる。
【0019】
「組織試料」は、好ましくは染色体物質を有する有核細胞を含む、対象又は患者の組織から得られた類似細胞の集合を意図している。4つの主なヒト組織は(1)上皮;(2)血管、骨及び軟骨を包含する結合組織;(3)筋組織;及び(4)神経組織である。組織試料の供給源は、生、凍結及び/又は保存された器官又は組織試料あるいはバイオプシーからの個体組織、あるいは吸引液;血液、又は血液成分;対象の妊娠又は発達の任意の期間に得た細胞でありうる。組織試料は、保存料、抗凝固剤、バッファー、固定剤、栄養分、構成物質等の天然で組織に本質的に混入していない成分を含んでいてもよい。本発明の一実施態様では、組織試料は「非血液組織」である(即ち、血管又は骨髄組織ではない)。
【0020】
ここでの目的において、組織試料の「切片」は、組織試料の一部又は断片、例えば、組織の薄切り又は組織からの細胞片を意味する。組織試料の複数の切片が得られて本発明に従って分析の対象とすることができると理解され、ただし、本発明は、組織試料の同じ切片を形態学的に及び分子レベルで分析することができ、或いはタンパク質及び核酸の両方に関して分析されうる方法を含むことができることが理解される。
【0021】
「相関する」又は「相関」は、何らかの第一分析の能力及び/又は結果と第二分析の能力及び/又は結果を比較することを意図している。例えば、第二分析の実施において第一分析の結果を使用してもよく、及び/又は第二分析を行うかどうかを決定するために第一分析の結果を用いてもよく、及び/又は第一分析の結果と第2分析の結果を比較してもよい。FISHと組み合わせたIHCに関して、FISHを行うかどうかを決定するためにIHCの結果を使用してもよく、及び/又は腫瘍バイオプシーを更に特徴づけるために遺伝子増幅とタンパク質発現のレベルを比較してもよい(例えば、HER2遺伝子増幅とHER2タンパク質発現を比較する)。本発明の有利な特徴の一つは、IHCが抗原性を低いと示したとしても、FISHを用いて治療の恩恵を受ける可能性のある患者を同定することができることである。
【0022】
「核酸」とは、あらゆるDNA又はRNA、例えば、組織試料に存在する染色体、ミトコンドリア、ウィルス及び/又はバクテリアの核酸を含むことを意図している。「核酸」という用語は、二本鎖核酸分子の鎖の片方又は両方を包含し、無傷の核酸分子の任意の断片又は部分を含む。
「遺伝子」とは、RNA(rRNA、tRNA、又はmRNA、後者はタンパク質に翻訳される能力がある)をコードする又は転写する、あるいは他の遺伝子発現を調節する機能的な役割を持つあらゆる核酸配列又はその部分を意図している。遺伝子は、機能性タンパク質をコードするもととなる核酸全体又はタンパク質のコード又は発現の原因となる核酸の部分のみからなっていてもよい。核酸配列は、エキソン、イントロン、開始又は終結領域、プロモーター配列、他の調節領域又は固有の遺伝子隣接領域を含みうる。
【0023】
「ErbBリガンド」とはErbBレセプターに結合する、及び/又はこれを活性化するポリペプチドを意味する。ここで特に興味のあるErbBリガンドは天然配列ヒトErbBリガンド、例えば上皮成長因子(EGF)(Savage等, J. Biol. Chem. 247:7612-7621 (1972));トランスフォーミング成長因子α(TGF-α)(Marquardt等, Science 223:1079-1082 (1984));シュワン細胞腫又はケラチノサイト自己分泌成長因子としても知られているアンフィレグリン(amphiregulin)(Shoyab等, Science 243:1074-1976 (1989); Kimura等, Nature 348:257-260 (1990);及びCook等 Mol. Cell. Biol. 11:2547-2557 (1991));ベータセルリン(Shing等, Science 259:1604-1607 (1993);及びSasada等 Biochem. Biophys. Res. Commun. 190:1173 (1993));ヘパリン結合上皮成長因子(HB-EGF)(Higashiyama等, Science 251:936-939 (1991));エピレグリン(Toyoda等, J. Biol. Chem. 270:7495-7500 (1995);及びKomurasaki等 Oncogene 15:2841-2848 (1997))、ヘレグリン(以下を参照のこと);ニューレグリン-2(NRG-2)(Carraway等, Nature 387:512-516 (1997));ニューレグリン-3(NRG-3)(Zhang等, Proc. Natl. Acad. Sci. 94:9562-9567 (1997));又はクリプト(cripto)(CR-1)(Kannan等, J. Biol. Chem. 272(6):3330-3335 (1997))である。EGFRに結合するErbBリガンドにはEGF、TGF-α、アンフィレグリン、ベータセルリン、HB-EGF及びエピレグリンが含まれる。HER3に結合するErbBリガンドにはヘレグリンが含まれる。HER4に結合可能なErbBリガンドにはベータセルリン、エピレグリン、HB-EGF、NRG-2、NRG-3及びヘレグリンが含まれる。
【0024】
ここで使用されるところの「ヘレグリン」(HRG)は、米国特許第5641869号又はMarchionni等, Nature, 362:312-318(1993)に開示されているようなヘレグリン遺伝子産物によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドと、そのようなポリペプチドの生物学的に活性な変異体を意味する。ヘレグリンの例にはヘレグリン-α、ヘレグリン-β1、ヘレグリン-β2及びヘレグリン-β3(Holmes等, Science, 256:1205-1210(1992);及び米国特許第5641869号);neu分化因子(NDF)(Peles等, Cell 69: 205-216 (1992));アセチルコリンレセプター誘導活性(ARIA)(Falls等, Cell 72:801-815 (1993));膠細胞成長因子(GGFs)(Marchionni等, Nature, 362:312-318(1993));感覚及び運動神経由来因子(SMDF)(Ho等, J. Biol. Chem. 270:14523-14532 (1995));γ-ヘレグリン(Schaefer等, Oncogene 15:1385-1394 (1997))が含まれる。天然配列HRGポリペプチドの生物学的に活性な断片/アミノ酸配列変異体の例はEGF様ドメイン断片(例えばHRGβ1、177−244)である。
【0025】
ここでの「ErbBヘテロ-オリゴマー」は少なくとも2つの異なったErbBレセプターを含む非共有的に結合したオリゴマーである。そのような複合体は2以上のErbBレセプターを発現する細胞がErbBリガンドに暴露されると形成され得るが、例えばSliwkowski等, (J. Biol. Chem., 269(20):14661-14665 (1994))に記載されたようにして、免疫沈降法によって単離しSDS-PAGEによって分析することができる。ErbBヘテロ-オリゴマーの例には、EGFR-HER2、HER2-HER3、及びHER3-HER4複合体が含まれる。さらに、ErbBヘテロオリゴマーは異なったErbBレセプター、例えばHER3、HER4、又はEGFRと組み合わさった2以上のHER2レセプターを含んでもよい。他のタンパク質、例えばサイトカインレセプターサブユニット(例えばgp130)はヘテロ-オリゴマーに含まれうる。
【0026】
「ErbB1」、「上皮成長因子レセプター」及び「EGFR」という用語は、ここでは互換的に使用され、Carpenter等, (Ann. Rev. Biochem. 56:881-914(1987))に開示されているような天然配列EGFRを意味し、その変異体(例えば、Humphrey等, (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:4207-4211(1990)に記載されているような欠失変異体EGFR)を含む。ErbB1は、EGFRタンパク質産物をコードする遺伝子を意味する。EGFRに結合する抗体の例には、MAb579(ATCC CRL HB8506)、MAb455(ATCC CRL HB8507)、MAb255(ATCC CRL HB8508)、MAb528(ATCC CRL HB8509)(米国特許第4943533号を参照のこと)及びその変異体、例えばキメラ化225(C225)及びリシェイプヒト225(H225)(国際公開第96/40210を参照のこと)が含まれる。
【0027】
「ErbB2」及び「HER2」という表現はここでは互換的に使用され、例えば、Semba等, (Proc. Natl. Acad. Sci USA 82:6497-6501(1985))及びYamamoto等, (Nature 319:230-234(1986))(Genebank受託番号 X03363)に記載されている天然配列ヒトHER2タンパク質、及びその変異体を意味する。erbB2という用語はヒトHER2をコードする遺伝子を意味し、neuはラットp185neuをコードする遺伝子を意味する。好適なHER2は天然配列ヒトHER2である。HER2に結合する抗体の例には、MAbs4D5(ATCC CRL10463)、2C4(ATCC HB-12697)、7F3(ATCC HB-12216)、及び7C2(ATCC HB12215)が含まれる(米国特許第5772997号;国際公開第98/77797号;及び米国特許第5840525号参照、ここに出典明示により取り込まれる)。ヒト化抗HER2抗体には、ここに出典明示により取り込まれる米国特許第5821337号の表3に記載されているようなhuMAb4D5-1、huMAb4D5-2、huMAb4D5-3、huMAb4D5-4、huMAb4D5-5、huMAb4D5-6、huMAb4D5-7及びhuMAb4D5-8(ハーセプチン(登録商標));及びヒト化520C9(国際公開第93/21319号)が含まれる。ヒト抗HER2抗体は米国特許第5772997号及び国際公開第97/00271号に記載されている。
【0028】
「ErbB3」及び「HER3」は、例えば米国特許第5183884号及び同第5480968号並びにKraus等, (Ploc. Natl. Acad. Sci. USA) 86: 9193-9197(1989))に開示されたレセプターポリペプチドを意味し、その変異体を含む。HER3に結合する抗体の例は、米国特許第5968511号に記載され、例えば8B8抗体(ATCC HB-12070)又はそのヒト化変異体である。ここでの「ErbB4」及び「HER4」という用語は、例えば、欧州特許出願第599274号;Plowman等, (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 1746-1750(1993));及びPlowman等, (Nature 366: 473-475(1993))に開示されたレセプターポリペプチドを意味し、例えば国際公開第99/19488号に開示されているHER4アイソフォームのような、その変異体を含む。
「ErbBアンタゴニスト」は、ErbBレセプターに結合する、あるいはErbBレセプターのリガンド活性を阻害するあらゆる分子である。このようなアンタゴニストは、これに限られないが、修飾されたリガンド、リガンドペプチド(即ち、リガンドの断片)、可溶性ErbBレセプター、さらに好ましくは抗ErbB抗体を含む。
【0029】
「治療」とは、治療的処置及び予防又は防止的手段の両方を意味する。治療の必要があるものには、既に羅患しているもの、並びに疾患が予防されるべきものが含まれる。
治療の目的とされる「哺乳動物」とは、ヒト、家庭又は農場用動物、及び動物園、スポーツ又はペット用動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシ等を含む、哺乳動物に分類されるあらゆる動物を意味する。好ましくは哺乳動物はヒトである。
「疾患」はErbBアンタゴニスト、例えば抗ErbB2抗体で治療することで恩恵を得るあらゆる症状、より一般的には過剰発現抗原に対する抗体の投与により癌を治療することのできるあらゆる癌のことである。これには、問題の疾患に哺乳動物を罹患させる素因になる病理状態を含む、慢性及び急性の疾患又は病気が含まれる。ここで治療される疾患の例は、これに限定されるものではないが、良性及び悪性の腫瘍;白血病及びリンパ悪性腫瘍;ニューロン、神経膠、星状細胞、視床下部及び他の腺、マクロファージ、上皮、ストロマ及び割腔の疾患;及び炎症、血管形成及び免疫性疾患が含まれる。
【0030】
「治療的有効量」という用語は、抗増殖効果を有する量を意図する。好ましくは、治療的有効量は、抗体媒介細胞障害性を誘発し、補体を活性化し、アポトーシス活性を有し、或いは細胞死、好ましくは良性又は悪性の腫瘍細胞、特に癌細胞の死を誘発する能力がある。効果は、治療の条件により、従来からの方法で測定されうる。ガンの治療に対して、効果は例えば疾患進行までの時間(TTP)、生存率、腫瘍サイズ、又は反応時間(RR)の決定を評価することによって測定できる(下記実施例参照)。
【0031】
「ガン」及び「ガン性」という用語は、典型的には調節されない細胞成長を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指す又は説明する。ガンの例には、これらに限定されるものではないが、ガン腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、黒色腫及び白血病が含まれる。このようなガンのより特定の例には、扁平細胞ガン(squamous cell cancer)、小細胞肺ガン、非小細胞肺ガン、肺の腺ガン、肺の扁平ガン腫(squamous carcinoma)、腹膜ガン、肝細胞ガン、胃腸ガン、膵臓ガン、神経膠芽細胞腫、子宮頸管ガン、卵巣ガン、肝臓ガン、膀胱ガン、肝ガン、乳ガン、大腸ガン、結腸直腸ガン、子宮内膜又は子宮ガン、唾液腺ガン、腎臓(kidney)ガン、肝臓ガン、前立腺ガン、産卵口ガン、甲状腺ガン、肝ガン、並びに様々な型の頭部及び頸部のガンが含まれる。
【0032】
「ErbB発現性癌」は、例えば、抗ErbB抗体が癌に結合することができるような、その表面にErbBタンパク質を有する細胞を含むものである。
ここで用いられる「細胞障害剤」なる用語は、細胞の機能を阻害又は抑制する及び/又は細胞破壊を生ずる物質を意味する。この用語は、放射性同位体(例えば、I131、I125、Y90、及びRe186)、化学治療薬、及び細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素的活性毒素といった毒素、又はその断片を含むとされる。
【0033】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類、;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;クロランブシル、クロロナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロスレアス(nitrosureas);アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カリケアマイシン(calicheamicin)、カラビシン(carabicin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、マイトマイシン、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin)などの抗生物質;メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU)のような抗-代謝産物;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)のような葉酸類似体;フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなプリン類似物;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)、5-FU;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)のようなアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)のような葉酸リプレニッシャー(replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;オキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine):ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン(razoxane);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカーバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);シトシンアラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(タキソール(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)及びドキセタキセル(タキソテア、Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;ゲンシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン及びカルボプラチンのようなプラチナ類似体;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP-16);イフォスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン(navelbine);ノバントロン(novantron);テニポシド;ダウノマイシン;カルミノマイシン;アミノプテリン;キセローダ(xeloda);イバンドロナート(ibandronate);CTP-11;トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラマイシン;カペシタビン(capecitabine);並びに上述したものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。また、この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように働くホルモン剤、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン(raloxifene)等を含む抗エストロゲン類、4(5)-イミダゾール類を阻害するアロマターゼ、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone);及び抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)及びニルタミド(nilutamide);及び上記のものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
【0034】
ここで使用されるところの「成長阻害剤」とは、インビトロ又はインビボで細胞、特にErbB過剰発現癌細胞の成長を阻害する化合物又は組成物を意味する。よって、成長阻害剤は、S相におけるErbB過剰発現細胞の割合を有意に低減させるものである。成長阻害剤の例には、(S相以外の場所において)細胞分裂周期の進行を阻止する薬剤、例えばG1停止及びM相停止を誘発する薬剤が含まれる。伝統的なM相ブロッカーには、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキソール(登録商標)、及びトポ(topo)IIインヒビター、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンが含まれる。G1を停止させる薬剤、例えばDNAアルキル化剤、例えばタモキシフェン、プレドニソン、ダカーバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びara-CはS相停止に溢流する。更なる情報は、Murakami等による「細胞分裂周期の調節、オンコジーン、及び抗腫瘍薬」と題された、癌の分子的基礎、Mendelsohn及びIsrael編、第1章(WB Saunders;Philadelphia, 1995)、特に13頁に見出すことができる。4D5抗体(及びその機能的等価物)もまた、この趣旨において使用することができる。
【0035】
ErbBレセプターチロシンキナーゼ
ErbBレセプターチロシンキナーゼは細胞成長、分化及び生存の重要なメディエーターである。該レセプターファミリーには上皮細胞成長因子レセプター(EGFR又はErbB1)、HER2(ErbB2又はp185neu)、HER3(ErbB3)及びHER4(ErbB4又はtyro2)を含む少なくとも4の別個のメンバーが含まれる。
【0036】
ErbB1遺伝子によってコードされるEGFRはヒト悪性腫瘍の原因であるとされている。特に、EGFRの発現の増加が乳癌、膀胱癌、肺癌、頭部癌、頚部癌及び胃癌並びに膠芽細胞腫において観察されている。EGFRレセプターの発現の増加はしばしば同じ腫瘍細胞によるEGFRリガンドであるトランスフォーミング成長因子α(TGF-α)の生産の増加に関連し、自己分泌刺激経路によるレセプターの活性化が生じる。BaselgaとMendelsohn Pharmac. Ther. 64:127-154 (1994)。EGFR又はそのリガンドであるTGF-α及びEGFに対するモノクローナル抗体はそのような悪性腫瘍の治療における治療剤として評価されている。例えば上掲のBaselgaとMendelsohn;Masui等, Cancer Research 44:1002-1007 (1984);及びWu等, J. Clin. Invest. 95:1897-1905 (1995)を参照のこと。
【0037】
ErbBファミリーの第2のメンバーであるp185neuは、元々は、化学的に処理されたラットの神経芽細胞種由来のトランスフォーミング遺伝子の産物として同定された。neuプロトオンコジーンの活性化型はコードされたタンパク質の膜貫通領域における点突然変異(バリンからグルタミン酸へ)の結果として生じる。neuのヒト相同体の増幅は乳癌及び卵巣癌において観察され、乏しい予後と相関している(Slamon等, Science, 235:177-182 (1987);Slamon等, Science, 244:707-712 (1989);及び米国特許第4968603号)。今日までneuプロトオンコジーンにおけるものに類似した点突然変異はヒトの腫瘍に対しては報告されていない。HER2の過剰発現(よく起こるが遺伝子増幅のために一様ではない)は胃、子宮内膜、唾液腺、肺、腎臓、大腸、甲状腺、膵臓及び膀胱の癌腫を含む他の癌腫においても観察されている。
【0038】
ラットp185neu及びヒトHER2タンパク産物に対する抗体については記載がある。Drebinとその同僚たちはラットneu遺伝子産物、p185neu(例えば、Drebin等, Cell 41:695-706(1985);Myers等, Meth. Enzym. 198:277-290 (1991);及び国際公開第94/22478号を参照のこと)に対する抗体を産生した。Drebin等 (Oncogene 2:273-277 (1988))は、p185neuの2つの区別される領域と反応性の抗体の混合物がヌードマウス中に移植されたneu-形質転換NIH-3T3細胞に対して相乗的な抗腫瘍効果を示すことを報告している(米国特許第5824311号もまた参照のこと)。
【0039】
Hudziak等,(Mol. Cell. Biol. 9(3):1165-1172(1989))には、ヒトの乳房腫瘍株化細胞SKBR3を使用して特徴付けられた抗Her2抗体のパネルの産生が記載されている。抗体への暴露に続いてのSKBR3細胞の相対的細胞増殖が、72時間後の単層のクリスタルバイオレットでの染色により測定された。このアッセイを使用して、4D5と呼ばれる抗体により、細胞増殖を56%阻害する最大の阻害度が得られた。パネルの他の抗体は、このアッセイではより少ない度合いで細胞増殖を低減した。抗体4D5は、更に、TNF-αの細胞障害効果に対し、HER2過剰発現乳房腫瘍株化細胞を感作させることが見出されている(また、米国特許第5677171号を参照のこと)。Hudziak等において検討された抗Her2抗体は、更に特徴付けられている(Fendly等,Cancer Research 50:1550-1558(1990);Kotts等,In Vitro 26(3):59A(1990);Sarup等,Growth Regulation 1:72-82(1991);Shepard等,J. Clin. Immunol. 11(3):117-127(1991);Kumar等, Mol. Cell. Biol. 11(2):979-986(1991);Lewis等, CancerImmunol. Immunother. 37:255-263(1993);Pietras等, Oncogene 9:1829-1838(1994);Vitetta等, Cancer Research 54:5301-5309(1994);Sliwkowski等, J. Biol. Chem. 269(20):14661-14665(1994);Scott等, J. Biol. Chem. 266:14300-5(1991);D'souza等, Proc. Natl. Acad. Sci. 91:7202-7206(1994);Lewis等, Cancer Research 56:1457-1465 (1996);及びSchaefer等, Oncogene 15:1385-1394 (1997))。
【0040】
マウス抗HER2抗体4D5の組換えヒト化IgG1型(rhuMAb HER2又は(ハーセプチン(登録商標);サウスサンフランシスコのジェネンテック社から商業的に入手可能))は、広範な抗癌治療を前に受けたHER2過剰発現転移性乳癌を持つ患者において臨床的に活性である(Baselga等, J. Clin. Oncol. 14:737-744(1996))。ハーセプチン(登録商標)は、腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現する転移性乳癌の患者の治療用として1998年9月25日に食品医薬品庁から市販の承認を受けた。HER2タンパク質の過剰発現を決定するための最近の処理プロトコールはIHCを用いる。
【0041】
様々な性質を持つ他の抗HER2抗体については、記載がある(Tagliabue等, Int. J. Cancer 47:933-937(1991);McKenzie等 Oncogene 4:543-548 (1989);Maier等 Cancer Res. 51:5361-5369 (1991);Bacus等 Molecular Carcinogenesis 3:350-362 (1990);Stancovski等 (Proc. Natl. Acad. Sci. USA) 88:8691-8695 (1991);Bacus等 Cabcer Research 52:2580-2589 (1992);Xu等 Int. J. Cancer 53:401-408 (1993);国際公開第94/00136号;Kasprzk等, Cancer Research 52:2771-2776 (1992);Hancock等 Cancer Res. 51:4575-4580 (1991);Shawver等 Cancer Res. 54:1367-1373 (1994);Arteaga等 Cancer Res. 54:3758-3765 (1994);Harwerth等, J. Biol. Chem. 267:15160-15167 (1992);米国特許第5783186号;Klapper等, Oncogene 14:2099-2109 (1997);及び国際公開第98/77797号)。
相同性スクリーニングにより2種の他のErbBレセプターファミリーメンバー;HER3(米国特許第5183884号及び第5480968号並びにKrausu等 (Proc. Natl. Acad. Sci. USA) 86:9193-9197 (1989))及びHER4(欧州特許出願第599274号;Plowman等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:1746-1750 (1993);及びPlowman等, Nature, 366:473-475 (1993))が同定された。これらのレセプターの両方とも少なくともある種の乳癌細胞株で増加した発現を示す。
【0042】
ErbBレセプターは細胞中に様々な組み合わせとして一般に見出され、ヘテロ二量体化は様々なErbBリガンドに対する細胞応答の多様性を増加させること考えられる(Earp等 Breast Cancer Research and Treatment 35: 115-132 (1995))。EGFRには6種の異なったリガンド;上皮細胞成長因子(EGF)、トランスフォーミング成長因子α(TGF-α)、アンフィレグリン(amphiregulin)、ヘパリン結合上皮細胞成長因子(HB-EGF)、ベータセルリン及びエピレグリン(Groenen等 Grwoth Factors 11:235-257 (1994))が結合する。単一の遺伝子の選択的スプライシングの結果として生じるヘレグリンタンパク質のファミリーはHER3及びHER4に対するリガンドである。ヘレグリンファミリーにはα、β及びγヘレグリン(Holmes等, Science, 256:1205-1210 (1992);米国特許第5641869号;及びSchaefer等, Oncogene 15:1385-1394 (1997));neu分化因子(NDFs)、膠細胞成長因子(GGFs);アセチルコリンレセプター誘導活性(ARIA);及び感覚及び運動神経誘導因子(SMDF)が含まれる。概説としては、Groenen等 Grwoth Factors 11:235-257 (1994);Lemke, G. Molec & Cell. Neurosci. 7:247-262 (1996)及びLee等 Pharm. Rev. 47:51-85 (1995)を参照のこと。最近、2つの更なるErbBリガンドが同定された;HER3又はHER4の何れかに結合すると報告されているニューレグリン-2(NRG-2)(Chang等 Nature 387 509-512 (1997);及びCarraway等 Nature 387:512-516 (1997));及びHER4に結合するニューレグリン-3(Zhang等 PNAS (USA) 94(18):9562-7 (1997))である。HB-EGF、ベータセルリン及びエピレグリンはまたHER4に結合する。
【0043】
EGF及びTGF-αはHER2に結合しないが、EGFはEGFRとHER2を刺激してヘテロ二量体を形成し、それがEGFRを活性化させ、ヘテロ二量体においてHER2のトランスリン酸化を生じる。二量体化及び/又はトランスリン酸化はHER2チロシンキナーゼを活性化させるように思われる。上掲のEarp等を参照のこと。同様に、HER3がHER2と同時発現される場合、活性なシグナル伝達複合体が形成されHER2に対する抗体はこの複合体を破壊することができる(Sliwkowski等, J. Biol. Chem., 269(20):14661-14665 (1994))。また、ヘレグリン(HRG)に対するHER3の親和性はHER2と同時発現される場合、高親和性状態まで増加する。また、HER2-HER3タンパク複合体に関してLewis等, Cancer Res., 56:1457-1465 (1996);Levi等, Journal of Neuroscience 15:1329-1340 (1995);Morrissey等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 1431-1435 (1995)を参照のこと。HER3と同様にHER4はHER2と活性なシグナル伝達複合体を形成する(CarrawayとCantley, Cell 78:5-8 (1994))。
【0044】
遺伝子増幅の検出
本発明は、遺伝子増幅を検出するための任意の技術(Boxer, J. Clin. Pathol. 53:19-21(2000)参照)を用いることが考えられる。これらの技術は、放射性同位体又は蛍光標識したプローブを用いたin situハイブリダイゼーション(Stoler, Clin. Lab. Med. 12:215-36(1990));ポリメラーゼ連鎖反応(PCR);定量的サザンブロッティング、及び個々の遺伝子を定量化するための他の技術を含む。遺伝子増幅評価に選択される好ましいプローブ又はプライマーは、近い関係にある相同な遺伝子の検出を避けるために、高い特異性がある。
【0045】
ここで使用される「標識」なる語句は、核酸プローブ又は抗体等の試薬に直接的に又は間接的に抱合又は融合した化合物又は組成物を意味し、抱合又は融合した試薬の検出を容易にする。標識はそれ自体が検出可能(例えば、放射性標識又は蛍光標識)であり得、あるいは酵素標識の場合には、検出可能な基質化合物又は組成物の化学変化を触媒しうる。抗体に免疫特異的に結合されるハプテン又はエピトープも標識として使える。
「蛍光標識した核酸プローブ」という用語は、(1)標的核酸配列とハイブリッド形成する能力を与える配列を有する核酸及び(2)蛍光標識を有するプローブを意味する。好ましくは、このようなハイブリダイゼーションは特異的であり、例えば、高い厳密性の条件下で行うことができる。
【0046】
試料の調製
対象からのあらゆる組織試料が用いられ得る。使用されうる組織試料の例には、これに限られないが、乳房、前立腺、卵巣、大腸、肺、子宮内膜、胃、唾液腺、又は膵臓を含む。組織試料は、これに限らないが、外科的切除、吸引、又はバイオプシーを含む様々な方法で得ることができる。組織は生でも又は凍結されていてもよい。一実施態様では、組織試料は固定され、パラフィン等で包埋される。
【0047】
組織試料は、従来からの方法(例えば、Manual of Histological Staining Method of the Armaed Forces Institute of Pathology, 第3版 Lee G. Luna, HT (ASCP) 編集, The Blakston Division McGraw-Hill Book 社: New york; (1960); Armed Forces Institute of Pathology Advanced Laboratory Methods in Histology and Pathology (1994) Ulreka V. Mikel, 編集, Armed Foreces Institute of Pathology, American Registry of Pathology, Washington, D.C.)によって固定(すなわち保存)することができる。当業者であれば、固定剤は組織が組織学的に染色されるように又は他の方法で分析されるように決定されることを理解するであろう。当業者はまた、固定の長さが組織試料の大きさ及び使用される固定剤によることも理解しているであろう。例えば、中性緩衝ホルマリン、ブアン又はパラホルムアルデヒドが組織試料の固定に使用されうる。
【0048】
一般に、組織試料を初めに固定し、次いでアルコールの上昇系列で脱水し、パラフィン又は組織試料を切片にできるような他の切片法媒体を浸透して包埋する。あるいは、組織を切片化し、得られた切片を固定できるようにする。例えば、組織試料は、従来からの方法によりパラフィンで包埋及び加工されうる。用いられ得るパラフィンの例は、これに限られないが、パラプラスト、Broloid、及びTissuemayを含む。組織試料が包埋されると、試料はミクロトーム等により切片化されうる。この方法の例としては、切片を約3ミクロンから約5ミクロンの範囲にすることができる。切片化されると、切片は幾つかの標準的な方法でスライドに貼り付けられうる。スライド付着の方法の例には、これに限られないが、シラン、ゼラチン、ポリ-L-リジン等が含まれる。例えば、パラフィン包埋切片は、プラスに帯電したスライド、ポリ-L-リジンで被覆したスライドに貼り付けられうる。
【0049】
パラフィンが包埋の材料として使用された場合、組織切片は一般に脱パラフィンし、水で再水和する。組織切片は、幾つかの従来からの標準的な方法で脱パラフィンすることができる。例えば、キシレン及び緩やかな下降系列アルコールを使用することができる。或いは、市販の脱パラフィン用非有機溶剤、例えばHemo-De7(CMS, Houston, Texas)が使用されうる。
【0050】
蛍光 in situ ハイブリダイゼーション
in situ ハイブリダイゼーションは、一般にスライドに固定された細胞又は組織切片で実施される。in situ ハイブリダイゼーションは、幾つかの従来からの方法(例えば、Leitch等, In Situ Hybridization: A Practical Guide, Oxford BIOS Scientific Publishers, Micropscopey Handbooks v. 27 (1994)参照)により行うことができる。あるin situ 法では、蛍光染料(例えば、アルゴンイオンレーザーで励起したときに緑の蛍光を発するフルオレセインイソチオシアネート(FITC))が、細胞の標的ヌクレオチド配列に相補的な核酸配列プローブを標識するために使用される。標的核酸配列を含む各細胞は、使用される特定の蛍光色素の励起に適した波長の光源に細胞を曝すことにより蛍光シグナルを発する標識プローブに結合しうる。「標的核酸配列」は、ErbB等の過剰発現した腫瘍抗原に特異的な配列である。FISH分析は、これに限らないが、形態学的染色(連続切片又は同切片の;PCT公開番号WO00/20641参照、特に開示によりここに取り込む)を含む他のアッセイと併用することができる。
【0051】
様々な程度のハイブリダイゼーション厳密性が用いられうる。ハイブリダイゼーション条件がより厳密になると、安定した二本鎖を形成して残るようにプローブと標的の間に、より優れた相補性が必要となる。厳密性は、温度を上げる、塩濃度を下げる、又はホルマリン濃度を上げることにより増大する。デキストラン硫酸の添加又はその濃度の上昇もまた、標識したプローブの有効な濃度を増大させて、ハイブリダイゼーションの率及び最終シグナル強度を増大させる。ハイブリダイゼーションの後、一般的にハイブリダイゼーション溶液に見られるものと同様の試薬を含有する溶液でスライドを洗浄し、洗浄時間は必要な厳密度に応じて分単位から時間単位まで変化する。より長い又はより大きい緊縮性は、典型的に低い非特異性の条件のものを洗浄するが、総合感度が減少するリスクがある。
【0052】
FISH分析に使用されるプローブは、RNA又はDNAのオリゴヌクレオチドでもポリヌクレオチドでもよく、天然に生じるヌクレオチドのみならず、ジゴキシゲニン標識dCTP、ウシdcTP 7-アザグアノシン、アジドチミジン、イノシン、又はウリジン等の類似体も含まれうる。他の利用可能なプローブは、ペプチドプローブ及びその類似体、分枝遺伝子DNA、ペプチドメティクス(peptidometics)、ペプチド核酸(PNA)、及び/又は抗体を含む。
プローブは、安定した特異的な結合が標的核酸配列とプローブとの間に生じるように、対象とする標的核酸配列と十分な相補性を有しうる。安定したハイブリダイゼーションに必要な相同性の程度は、ハイブリダイゼーション媒体及び/又は洗浄媒体の厳密性によって変化する。好ましくは、完全に相同なプローブが本発明に使用されるが、当業者には十分ではないより低い相同性を示すプローブが本発明に使用できることが容易に理解されるであろう(例えば、Sambrook, J., 等, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, (1989))。
【0053】
当業者であれば、プローブの選択が対象とする標的遺伝子の性質に依存することを理解するであろう。増幅の例としては、これに限られないが、乳癌及び卵巣癌のher2/neu、神経芽細胞腫のn-myc、小細胞肺癌のc-mycを含む。her2/neu増幅の評価の例としては、her2/neu遺伝子(17q 11.2-17q12)を含む染色体17の長腕上の140kbの範囲に及ぶプローブが使用されうる。染色体17(D1721)の動原体性領域にある-サテライト配列のプローブは、her2/neu増幅の供給源又は原因として染色体17のaneusomyについて評価するのに使用される。例えば、これらのプローブの混合バーションは、Vysis社から入手することができ、各プローブは容易に識別できるフルオロフォア、例えばSPECTRUM ORANGE7及びSPECTRUM GREEN7で直接標識されている。
【0054】
プローブはまた、これに限られないが、in situ ハイブリダイゼーション、体細胞雑種パネル、又は選別した染色体のスポットブロットによるマッピング;染色体連鎖解析を含む幾つかの方法により作成及び選択することができ;あるいは染色体領域の顕微解剖、放射性体細胞ハイブリッド、ヒト染色体との体細胞ハイブリッド又はヒト細胞株由来の選別した染色体ライブラリから、あるいは固有の染色体座位に特異的なPCRプライマー又は隣接したYACクローンの等の他の適した手段により同定される酵母人口染色体(YACs)からクローン化及び単離することができる。プローブは、プラスミド、ファージ、コスミド、YAC、細菌性人口染色体(BACs)、ウィルスベクター、又は任意の他の適したベクターでクローン化したゲノムDNA、cDNA、又はRNAでありうる。プローブは、従来からの方法により化学的にクローン化または合成されうる。クローン化した場合、単離したプローブ核酸断片は、典型的にベクター、例えばλファージ、pBR322、M13、又はSP6もしくはT7を含むベクターに挿入され、細菌宿主のライブラリとしてクローン化される(例えば、Sambrook、上掲参照)。
【0055】
好ましくはプローブはフルオロフォアで標識される。フルオロフォアの例としては、これに限られないが、希土類キレート(ユーロピウムキレート)、テキサスレッド、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン(Lissamine)、ウンベリフェロン、フィコエリスリン(phycocrytherin)、フィコシアニン、又は市販のフルオロフォア、例えばSPECTRUM ORANGE7及びSPECTRUM GREEN7、及び/又は任意の一以上の上記の誘導体を含む。アッセイに使用される複数のプローブは、一以上の識別可能な蛍光又は色素の色で標識されうる。これらの色の違いは、特異的なプローブのハイブリダイゼーション部位を同定する手段を提供する。更に、空間的に離れていないプローブは、2つの他の色(例えば、明るい赤+緑=黄)、色素(例えば、青+黄=緑)を混ぜて生じる異なる色の光又は色素により、又は同時に1つだけの色を通すフィルターセットを用いることにより同定することができる。
【0056】
プローブは、従来からの方法を用いて、フルオロフォアで直接的に又は間接的に標識することができる。更なるプローブ及び色は、より遺伝的な異常を含む又は内部標準として役立つようにこの基本手順の洗練及び拡張を高めることができる。一例として、her2/neu遺伝子は染色体17にあり、染色体17に特異的なサテライト配列(D17Z1)のプローブの内部標準は、非悪性細胞の領域にある二倍性を証明するために及び/又はher2/neu増幅の領域内染色体17aneusomyの存在又は不存在を明らかにするために使用することができる(Vysis社)。
【0057】
FISH工程の後、スライドを蛍光顕微鏡の標準的な技術(例えば、Ploem及びTanke, Introduction to Fluorescence Microscopy, Oxford University Press: New York(1987)参照)で分析することができる。概略すると、各スライドを、適切な励起フィルター、ニクロム、及び濾過フィルターを備える顕微鏡を用いて観察する。フィルターは、使用される蛍光色素の励起及び発光スペクトルに基づいて選択される。使用される蛍光標識、シグナル強度及びフィルター選択に応じたフィルム露光時間でスライドの写真を得ることができる。FISH分析について、形態学的分析で決定された対象細胞の物理的遺伝子座を再度用いて、FISH定量化に適した領域となるように視覚的に適合させる。
【0058】
FISHとIHCを関連づけるために、座標位置を組み込むコンピュータによる自動化段階を用いることができる。これは、2つの異なる分析技術により同じ領域を評価するのに用いられうる。例えば、形態的に染色された領域の色の像を、コンピュータを用いた冷却CCDカメラを使用して獲得し、記録することができる。その後、同じ部分は、FISH法、再度用いられる組み込み位置、蛍光核シグナルの存在を記録した指定領域により解釈される。IHCとそれに続くFISHに同様の方法が考えられる。
【0059】
典型的に、数百の細胞が組織試料で走査され、特異的な標的核酸配列の定量を蛍光スポットの形で決定し、それを細胞数に比例して計算する。細胞内のスポットの数の基準からの偏差(例えば、正常細胞のher2/neu遺伝子の調査は2つの複製を生じ、異常な場合には2よりも大きい)は、腫瘍抗原特異的抗体治療、例えば、ErbBアンタゴニスト治療で恩恵を受けるより高い可能性を示す。下に例示されるように、her2遺伝子増幅は、抗HER2抗体治療が有効である可能性の非常に効果的な表示を提供する。
【0060】
医薬製剤
本発明に従って使用されるアンタゴニスト、例えば抗体の治療用製剤は、所定の純度を持つ抗体と、場合によっては生理学的に許容される担体、賦形剤又は安定化剤を混合することにより(Remington's Pharmaceutical Sciences 16版, Osol, A. 編,)、水溶液、又は凍結乾燥の形態に調製され貯蔵される。許容される担体、賦形剤又は安定化剤は、用いられる用量と濃度でレシピエントに非毒性であり、ホスフェート、シトレート、及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;保存料(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンズエトニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート化剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/又はTWEEN(商品名)、PLURONICS(商品名)又はポリエチレングリコール(PEG)を含む。好ましい凍結乾燥抗ErbB2抗体の製剤は、WO97/04801に記載され、特に参考としてここに取り込む。
【0061】
ここでの製剤は、治療される特定の徴候のために必要ならば一以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を与えない相補的活性を持つものも含んでよい。例えば、ある形式によると、EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、血管内皮因子(VEGF)に結合する抗体、又は標的ErbBの異なるエピトープに結合する抗体を更に用意することが望ましい。あるいは、又は更に、組成物は細胞傷害剤、化学治療法、サイトカイン、成長阻害剤及び/又は心臓保護剤を含んでいてもよい。そのような分子は、意図する目的のために有効な量で組み合わされて好適に存在する。
【0062】
また活性成分は、例えばコアセルベーション技術あるいは界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルに、コロイド状ドラッグデリバリー系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ-粒子及びナノカプセル)に、あるいはマクロエマルションに捕捉させてもよい。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 17版, Osol, A. 編に開示されている。
インビボ投与に使用される製剤は、好ましくはヒトを対象とする場合に無菌でなければならない。このことは、滅菌濾過膜を通して濾過することにより容易に達成される。
【0063】
徐放性調合物を調製してもよい。徐放性調合物の好ましい例は、抗体を含む疎水性固体ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのマトリクスは成形物、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリペプチド(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸とエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(商品名)(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射可能なミクロスフィア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシブチル酸が含まれる。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸等のポリマーは、分子を100日以上かけて放出することを可能にするが、ある種のヒドロゲルはタンパク質をより短い時間で放出する。カプセル化された抗体が体内に長時間残ると、37℃の水分に暴露された結果として変性し又は凝集し、生物活性を喪失させ免疫原性を変化させるおそれがある。合理的な戦略を、関与するメカニズムに応じて安定化のために案出することができる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド交換による分子間S-S結合の形成であることが見いだされた場合、安定化はスルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥させ、水分含有量を制御し、適当な添加剤を使用し、また特定のポリマーマトリクス組成物を開発することによって達成されうる。
【0064】
抗ErbBアンタゴニストを用いた治療
本発明によれば、抗ErbB抗体を、増幅erbB遺伝子を有することが分かった患者のErbBレセプターの過剰発現及び/又は活性化により特徴付けられる種々の病状の治療に使用することが考えられている。病状又は疾患の例には、良性又は悪性の腫瘍(例えば、腎性、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、胃、卵巣、直腸結腸、前立腺、膵臓、肺、陰門、甲状腺、肝臓(hepatic)の癌腫;肉腫;神経膠芽細胞腫、及び様々な種類の頭部及び頸部の腫瘍);白血病及びリンパ悪性腫瘍;他の疾患、例えばニューロン、神経膠、星状細胞、視床下部及び他の腺、マクロファージ、上皮、ストロマ、割腔、炎症、血管由来及び免疫性疾患が含まれる。
【0065】
本発明の抗体、化学療法剤及び他の活性剤は、ボーラス投与としての静脈内投与、又は一定期間にわたる連続的注入、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下の、関節内、滑膜内、クモ膜下腔内、経口、局所的に、吸入経路など、既知の方法に従ってヒトの患者に投与される。抗体の静脈内又は皮下への投与が好ましい。
【0066】
一実施態様では、本発明の治療は、抗ErbB抗体及び化学療法剤、例えばタキソイドの組み合わせ投与を含む。本発明は、異なる化学療法剤の混合物の投与が考えられる。組合わせ投与には、別々の製剤又は単一の医薬製剤を使用する共投与、及びいずれかの順序による継続的な投与が含まれ、その場合、好ましくは両方(又は全ての)活性のある薬剤が、同時に生物学的活性を発揮する期間が存在する。そのような化学治療薬剤に対する調製及び投与スケジュールは、製造者の指示に従い、又は熟練した実行者より経験的に決定されたものとして使用される。また、そのような化学療法に対する調製及び投与スケジュールは、Chemotherapy Service Ed., M.C. Perry, Williams & Wilkins, Baltimore, MD (1992)中に記載されている。抗体は、タモキシフェンのような抗エストロジェン化合物、又はオナプリストン(欧州特許第616812参照)のような抗プロジェストロン化合物と、これらの分子において既知の投与量にて組合わせてもよい。
【0067】
上記療法に加え、患者は、ガン細胞の外科的な除去(腫瘍切除)及び/又は放射線療法が施されてもよい。
疾患の予防又は治療に対して、アンタゴニスト、例えば抗体の適切な用量は、上記されるように治療すべき疾患の型、疾患の重篤さ及び経路、抗体の投与が予防目的か治療目的か、過去の治療、患者の臨床履歴及び抗体に対する反応、及び担当医師の裁量に依存する。抗体は、一時に又は一連の治療にわたって適切に患者に投与される。
【0068】
疾患のタイプと重篤さに応じて、約1μg/kgから15mg/kg(例えば、0.1−20mg/kg)の抗体が、例えば一以上の別々の投与であろうと、あるいは連続注入によるものであろうと、患者への初期候補投与量である。典型的な1日の用量は、上記の要因に依存し、約1μg/kgから100mg/kg又はそれ以上の範囲である。数日間又はそれ以上にわたる繰り返し投与の場合は、状況に応じて、疾患徴候の望ましい抑制が起こるまで治療を続ける。しかし、他の用量計画も有用でありうる。この療法の進行は、常套的な技術及びアッセイで容易に監視される。
【0069】
製薬パッケージ;製造品
本発明の関連する態様では、上記の疾患の診断又は治療に有用な物質を含む製造品が提供される。製造品は、容器、場合によってラベル及びパッケージ挿入物を具備する。好適な容器には、例えば、ビン、バイアル、シリンジ等々が含まれる。容器は、様々な材料、例えばガラス又はプラスチックから形成されうる。容器は、症状を治療するのに有効な組成物を収容し、好ましくは滅菌アクセスポートを有す(例えば、容器は皮下注射針が貫通可能なストッパーを有するバイアル又は静脈内溶液バッグでありうる)。組成物中の少なくとも一つの活性剤は、抗腫瘍抗原治療抗体又はErbBアンタゴニスト、例えば抗ErbB抗体である。容器上の、又は容器に付随するラベルは、組成物が選択した症状の治療に使用されることを示す。更に、製造品は、薬学的に許容されるバッファー、例えばリン酸緩衝生理食塩水、リンガー液及びデキストロース溶液を含む第2の容器を更に具備してもよい。この第2のバッファーは、凍結乾燥物又は乾燥粉末として提供される場合に、あるいは活性剤の濃縮調製物の希釈のために、活性剤の再構成に使用される。更に、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジを含む、商業上及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
【0070】
更に、製造品には、例えばFISH試験によってerbB遺伝子増幅を有すると考えられる患者に使用するというパッケージ挿入物又は挿入物を含む。このような患者は、IHCによりErbBアンタゴニストでの治療からはずされた対象、例えば抗HER2抗体を用いて0又は1+をスコアした患者であり得る。
【0071】
材料の寄託
以下のハイブリドーマ株化細胞を、アメリカン・タイプ・カルチュア・コレクション12301 Parklawn Drive, Rockville, MD, USA(ATCC)に寄託した。
抗体名 ATCC 番号 寄託日
7C2 ATCC HB-12215 1996年10月17日
7F3 ATCC HB-12216 1996年10月17日
4D5 ATCC CRL 10463 1990年 5月24日
本発明のさらなる詳細を、以下の非限定的な実施例により例証する。
【0072】
実施例1:ハーセプチン(登録商標)ピボタル試験での蛍光 In Situ ハイブリダイゼーション(FISH)と臨床試験(CTA)との間の一致
免疫組織化学(IHC)による2+又は3+レベルのHER2過剰発現は、ピボタルハーセプチン(登録商標)転位性、乳癌試験への登録が必要であった。臨床試験(CTA)は、モノクローナル抗体4D5(ホルマリン固定試料のプロテアーゼ消化の後)又はCB11(ホルマリン固定試料の熱処理の後)の何れかで実施する2つの別々のIHCアッセイを含む。対象は、何れかのアッセイが2+又は3+をスコアした場合に適格とした。どちらも実施した場合には、最終スコアは2つの結果のより高い方とした。
CTAと他のIHC、Herce Test(HT)との間の一致は79%である。これは、ハーセプチン治療患者の選択のためのHTのFDA承認の基準であった。
【0073】
この実施例は、ハーセプチン(登録商標)ピボタル試験のスクリーニングを受ける臨床物質を利用し、Path Vsion FISHアッセイにより測定されるher2/neu遺伝子増幅とCTAを比較する類似一致研究を説明する。ピボタル試験では、5998の対象をHER2発現について選別し;CTAによって1915(32%)が陽性で、4083(68%)が陰性であった。623検体の無作為な試料(陽性:陰性の割合が1:1)をこの分析に、317のCTA+及び306のCTA−選択した。検体はブロックから新たに切り離さなかった。それらをスライドガラス上で4−6μの切片として2〜4年の間保存した。各切片を、Path Vysionアッセイのパッケージ挿入物に支持されるプロトコルを用いてher2/neu増幅について分析した。増幅を2以上のシグナルの割合と定義した。結果は表1に示される。
【0074】

【0075】
全部で623の検体を試験し、FISHシグナルの結果を529で得た。アッセイの失敗は19.9%のCTA−及び10.4%のCTA+の試料で生じた。0、1、2、及び3+のグループの増幅はそれぞれ4.2%、6.7%、23.9%、及び89.3%であった。試料の一致は81.3%であり、CTA/HTの一致の79%に近かった。単一複製の過剰発現は31%であり、2+のグループに優勢であった。増幅はCTA−のグループでまれに(4.6%)記録された。CTA−グループでのより高いアッセイの失敗率は、固定等のアッセイに関係ない要因が原因であり得る。これらはまた、IHCについて誤った陰性の結果を生じることがあった。
【0076】
これらのデータは、意外にもher2/neu増幅のステータスがHercep Testに比較してハーセプチン(登録商標)処理から恩恵を受ける可能性の高い患者を同定するための優れた予測値を有しうることをうまく示唆すると解釈された。たった24%の2+の患者がFISH+であるという観察は、このサブグループがIHCのみで選択された場合に予測の難しい処理結果を有しうることを示唆する。1+及び0のサブグループのFISH+患者の同定は、ハーセプチン(登録商標)治療のIHC基準には達しないが、ハーセプチン(登録商標)治療〜恩恵を受ける可能性のある対象を同定しうる。IHCのスコアに比べたFISHのスコアに基づくハーセプチン(登録商標)効果の直接分析は実施例2に示す。
【0077】
実施例2:FISH/臨床結果の研究
この実施例は、3回のハーセプチン(登録商標)試験からの結果とFISHのステータスを関連させる。この研究では、805の対象を全部で3回の試験から無作為に選択した。これらのうち、167はスライドが足りなかった。他の78(9.7%)はアッセイに失敗した。従って、ホルマリン固定した切片を、試料プールに用意された540の対象からこの研究のために2.5〜4.5年の間保存した。これらの試料の個体群統計又は予後指標に不均衡はなかった。結果は、異なる処理グループについて記録した。
応答とFISHのステータスの一致は、第2又は第3系統の治療としてハーセプチン(登録商標)を受けた患者について評価した。これらのデータは、表2に2+及び3+(CTAによって)の対象について記録した。
【0078】

【0079】
FISH+対象の20%の応答率は、意外にもこの研究で2+及び3+である患者の15%の応答率並びにピボタル試験の間にCTAによって免疫組織化学的に2+又は3+のスコアで選択された患者に観察された14%の応答率に勝る。従って、FISHは他のIHCアッセイ、Hercep Testとほぼ同じ程度までIHCとよく一致するが、実施例1に示されるように、意外にもハーセプチン(登録商標)治療から恩恵を受ける可能性のより高い患者を同定することに優れる。
これらのデータを要因3+及び2+の対象に分けた場合、同じ20%の応答率のFISH+の対象が見られた(表3及び4)。
【0080】

【0081】

【0082】
3+のサブグループでは、FISH+応答率(20%)は、3+の対象の17%の応答率と非常に近いが、それでも勝っていた。2+のサブグループは非常に大きな違いを示し、FISH+選択による応答率20%に対して9%のみであった。これらのデータは、FISHのステータス(her2遺伝子増幅)がハーセプチン(登録商標)に対する応答の可能性を非常に図代させることを示す。
データはまた、第1系統の治療としてのハーセプチン(登録商標)に対する患者の応答について評価した(表5)。
【0083】

【0084】
FISH+対象の41%の応答率は、3+、2+対象の27%の応答率よりも著しく大きかった。
表6に示されるように、FISH分析に基づく有効な応答の可能性の驚くべき増大は、化学療法と組み合わせたハーセプチン(登録商標)の応答にまで及んだ。FISH+対象は、FISH−(41%)よりも非常に大きい化学療法及びハーセプチン(登録商標)に対する応答(54%)を示した。表7−9は、より拡大したデータを含み、化学療法に組み合わせたハーセプチン(登録商標)について、異なる化学療法剤(アドリノマイシン及びシクロホスファミド, AC;及びPaditaxol, P)並びに異なる指標(反応率、経過時間、及び生存率)に分けた。
【0085】

【0086】

【0087】

【0088】

【0089】
これらのデータは、FISH+分析がIHCに密接な関係があるけれどもハーセプチン(登録商標)治療の成功する可能性の非常に正確な指標を提供することを一様に裏付ける。全体にわたって、FISH+選択は、2+/3+IHC選択よりも約1/3(30%)優れた応答率を有する。2+の患者に注目すると、FISHのステータスは患者の選択のための非常に有効な手段を提供する。FISHの状態はまた、IHCによる測定として0又は1+のステータスであるために治療からはずされる患者を同定する。
これらの観察は、一般にErbBレセプターアンタゴニストを利用した癌治療及び抗腫瘍抗原癌治療に広く関わりがある。従って、erbBアンタゴニスト、例えばハーセプチン(登録商標)等の抗erbBレセプター抗体は、例えばFISH試験でerbB遺伝子増幅が陽性である患者に投与される場合に効果がある可能性を増大させる。このことはこれらのデータに基づき、ハーセプチン(登録商標)を用いた場合に確かである。
【0090】
本発明は、ここで記載される特定の実施態様の範囲に限られない。むしろ、ここで記載されるものに加えて本発明の様々な修飾が、前記の説明及び添付の図から当業者には明らかであろう。このような修飾は添付の特許請求の範囲に入ることを意図している。
さらに全ての値はおよそのものであり、説明のために提供されることが理解される。
特許、特許出願、出版物、製品に関する文書、及びプロトコールは本出願の全体にわたって挙げられ、その開示は全ての趣旨において開示によりここに取り込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ErbBアンタゴニスト癌治療の有効性の可能性を増加する方法であって、対象から得た組織試料中の腫瘍細胞のerbB遺伝子が増幅されることが分かった対象に、癌治療用量のErbBアンタゴニストを投与することを含む方法。
【請求項2】
ErbBがHER2タンパク質である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
癌が乳癌である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
対象が、ホルムアルデヒド固定した組織試料での免疫組織化学により0又は1+とスコアされることが分かっている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ErbBアンタゴニストが抗ErbB抗体である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ErbBがHER2であり、抗体が組み換えヒトモノクローナル抗体(rhuMAb)4D5である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
erbB遺伝子増幅が、遺伝子とハイブリッド形成させた蛍光標識した核酸プローブの蛍光検出により検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
erbB遺伝子がher2遺伝子である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
癌治療用量の化学療法剤の投与をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ErbBがHER2であり、化学療法剤がタキソイドである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
有効性の可能性を約30%まで増加させる請求項1に記載の方法。
【請求項12】
癌を治療する抗HER2抗体の有効性の可能性を増加させる方法であって、対象から得た組織試料中の腫瘍細胞のher2遺伝子が増幅されることが分かっている対象に癌治療用量の抗HER2抗体を投与することを含む方法。
【請求項13】
対象が、ホルムアルデヒド固定した組織試料での免疫組織化学により0又は1+とスコアされることが分かっている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
癌治療用量のタキソイドの投与をさらに含む請求項12に記載の方法。
【請求項15】
(a)癌を治療するためのErbBアンタゴニストを含む容器;及び
(b)対象から得た組織試料中の腫瘍細胞でerbB遺伝子が増幅される場合に、対象にErbBアンタゴニストを投与するという指示書:
を含む製薬パッケージ。
【請求項16】
ErbBアンタゴニストが抗体である請求項15のパッケージ。
【請求項17】
抗体が抗HER2抗体である請求項16に記載のパッケージ。
【請求項18】
抗HER2抗体がrhuMAb4D5(ハーセプチン(登録商標))である請求項17のパッケージ。
【請求項19】
指示書がさらに、ErbBアンタゴニストと組み合わせる化学療法剤の投与の指示を含む、請求項15のパッケージ。
【請求項20】
化学療法剤がタキソイドである請求項19のパッケージ。
【請求項21】
癌を治療するためのErbBアンタゴニストに有利に応答すると考えられる患者を同定する方法であって、患者から得た組織試料の腫瘍細胞でのerbB遺伝子増幅を検出することを含む方法。
【請求項22】
対象が、ホルムアルデヒド固定した組織試料での免疫組織化学により0又は1+とスコアされることが分かっている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
erbB遺伝子がher2である請求項21に記載の方法。

【公開番号】特開2012−184248(P2012−184248A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−112891(P2012−112891)
【出願日】平成24年5月16日(2012.5.16)
【分割の表示】特願2001−585808(P2001−585808)の分割
【原出願日】平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】