説明

ETC用カード及びETC用車載器

【課題】ETC機能部及び通信手段の両方を所持する際の携帯性を向上させることができるETC用カード、及びこのETC用カードを挿着可能とするETC用車載器とを提供することにある。
【解決手段】ETC用カード20は、ETC1を利用するためのETC用ICチップ22を備えている。また、ETC用カード20は、車両のセキュリティ機能の設定・解除を行う車両用制御装置11を制御する通信部30を備えている。このため、前記ETC用カード20は、ETC1の利用と、通信部30によるセキュリティ機能の設定・解除との2つの機能を備えており、これら機能を備えたコントローラ等をそれぞれ別々に所持する必要がない。また、ETC用カード20は、通信部30がカード本体21の端部に取り付けられている。このため、カード本体21から突設された通信部30のケース31を把持することで容易に挿入することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ETC用カード及びETC用車載器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、社会問題の1つとして交通渋滞が挙げられている。そこで、料金所での渋滞緩和を主たる目的として、ETC(ノンストップ自動料金収受システムElectronic Toll Collection System)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ここで、ETCとは、有料道路の料金所に設置されるETC路側器と自動車に装備されるETC用車載器との間の無線通信により、料金決済が自動で行われるシステムである。このため、ETCを用いると、料金所をノンストップで通行することが可能となる。従って、このようなETCの普及に伴って、交通渋滞が次第に緩和されてゆくものと期待されている。なお、ETC用車載器には、同ETC用車載器に対応するETC用カードが挿入される。
【0003】
また、近年車両の盗難防止を目的としたイモビライザーシステムに関する技術が開示されている。イモビライザーシステムとは、エンジン始動用の電子キーに内蔵されたトランスポンダが発信するIDコードを車両側のマイコンが照合し、IDコードが正しいときにエンジンの始動を許可する一方で、IDコードが正しくないときにエンジンの始動を禁止するシステムである。そして、イモビライザーシステムが搭載された車両にあっては、単に機械的に複製しただけのメカニカルキーを用いたり、或いは配線を直結したりする盗難手口に遭っても、エンジンが始動されることはない。従って、イモビライザーシステムは、車両の盗難防止に非常に効果がある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−092672号公報
【特許文献2】特開2004−025936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、ETCを利用したい場合、ユーザは、エンジン始動用の前記電子キーを所持するとともにETC用カードも所持しなければならない。ちなみに、ETC用カードをETC用車載器に常に挿入しておけば前記ETC用カードをわざわざ所持する必要はないという提案もある。しかしながら、前記ETC用カードは、決済機能を有するため、常に車両内に保管することは、セキュリティ上好ましくないため、駐車時、下車時においてはユーザが携帯することが望ましい。従って、ETC用カードと電子キーとの両方を携帯しなければならなかった。
【0005】
本発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的はETC機能部及び通信手段の両方を所持する際の携帯性を向上させることができるETC用カード、及びこのETC用カードを挿着可能とするETC用車載器とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、路側機との間で双方向の無線通信に基づいて料金決済を自動的に行うETCに利用されるETC機能部を備えるETC用カードであって、車両に設けられて該車両のセキュリティ機能の設定・解除を行うセキュリティ制御手段との間で無線もしくは有線通信を行うことにより、該セキュリティ制御手段を制御する通信手段を備えたことを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のETC用カードにおいて、前記通信手段は、当該ETC用カードの端部に着脱可能に設けられていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のETC用カードを挿着可能なカード挿着部と、前記ETC用カードが前記カード挿着部に挿着されたことを条件として前記通信手段との通信を行い、該通信が成立したことを条件として車両のセキュリティ機能を解除させるセキュリティ制御手段とを備えることを特徴とすることを要旨とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のETC用車載器において、前記通信手段との通信が成立したことを条件として前記ETC用カードの取り外しを規制する規制手段を備えることを要旨とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載のETC用車載器において、前記ETC用カードが当該ETC用車載器に完全に挿入されたか否かを検出する検出手段を備え、前記セキュリティ制御手段は、前記検出手段によってETC用カードの完全挿入が検出されたことを条件として前記通信手段との通信を行うことを要旨とする。
【0010】
(作用)
請求項1に記載の発明によると、ETCを利用するためのETC機能部を備えたETC用カードに、車両のセキュリティ機能の設定・解除を行うセキュリティ制御手段を制御する通信手段が設けられている。このため、ETC用カードを前記通信手段としても利用することができ、ETC機能部を備えたカードと、通信手段を備えたコントローラとを別々に所持する必要がない。したがって、ETC機能部及び通信手段の両方を所持する際の携帯性を向上させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によると、請求項1に記載の発明の作用に加えて、通信手段がETC用カードの端部に着脱可能となっている。このため、通信手段を備えていないETC用カードに当該通信手段を後付けしたり、通信手段だけを交換したりすることなどが可能となり、既存のETC用カードの汎用性を向上させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によると、ETC用車載器にはセキュリティ制御手段が備えられており、該セキュリティ制御手段は、ETC用カードがETC用車載器に挿着されたことを条件として通信手段との通信を行う。そして、セキュリティ制御手段は、この通信が成立したことを条件として車両のセキュリティ機能を解除させる。即ち、対応する通信手段を有するETC用カードをETC用車載器に挿着しないとセキュリティ機能を解除させることができない。このため、車両のセキュリティレベルを向上させることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明の作用によると、請求項3に記載の発明の作用に加えて、ETC用車載器に備えられたセキュリティ制御手段は、通信手段との通信が成立したことを条件としてETC用カードの取り外しを規制手段によって規制する。従って、ETC用車載器からETC用カードが不用意に抜けることがないため、車両の走行時など、車両のセキュリティ機能が解除された状態においては、確実にETC用カードが挿着された状態が維持される。このため、ETCの利用時には必ずETC用カードが挿着された状態となることから、車両が路側器周辺に近づいたときにETC用カードがETC用車載器に挿着されているかを確認する必要がなくなる。それゆえ、ETCの利便性を一層向上させることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明によると、請求項3に記載の発明の作用に加えて、ETC用カードがETC用車載器に完全に挿着されると、セキュリティ制御手段は通信手段との通信を行う。このため、セキュリティ制御手段は、通信が必要なときにのみ通信手段と該通信を行うため、不要な通信における電力消費を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ETC機能部及び通信手段の両方を所持する際の携帯性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明をETCに利用され、且つ車両に装備されるETCユニットに具体化した実施形態を図1〜図3に従って説明する。
<ETC1の概要>
図1に示すように、ETC1は、有料道路の料金所に設置されるETC路側器2と、車両に装備されるETCユニット3とを備えている。ETC1は、ETC路側器2とETCユニット3との間の無線通信により、料金決済が自動で行われるシステムである。ETC路側器2は、料金所の入口と出口とにおいてそれぞれ設けられている。
【0017】
有料道路に入る場合、ETCユニット3が搭載された車両と入口の料金所に設置されたETC路側器2との間で相互通信が行われて、入口の料金所の情報が車両側のETCユニット3に記憶される。また、有料道路から出る場合、前記車両と出口の料金所に設置されたETC路側器2との間で相互通信が行われて、前記ETCユニット3に記憶された入口の料金所の情報を元に通行料金が決定され、その金額がETC路側器2の周辺に設置された表示器(図示略)に表示されるようになっている。
【0018】
<セキュリティ機能部4の概要>
一方、車両は、前記ETCユニット3の他にセキュリティ機能部4を備えており、セキュリティ機能部4は、車両のセキュリティ機能と、同セキュリティ機能の制御を行う車両用制御装置11とを備えている。
【0019】
<ETCユニット3>
図2に併せ示すように、ETCユニット3は、ETC用カード20と、このETC用カード20が挿着されるETC用車載器40とを備えている。ETC用カード20は、カード本体21と、ETC機能部としてのETC用ICチップ22と、通信手段としての通信部30とを備えている。カード本体21の表面には、ETC用ICチップ22が設けられている。ETC用ICチップ22は、通行料金を支払う支払者(所有者)の情報、有効期限等が予め登録されており、リアルタイムの利用履歴が記録される。通信部30は、カード本体21の一端部に配置されている。
【0020】
通信部30は、略直方体状に形成されたケース31、マイコン32、送信回路33、ドアアンロックスイッチ34、ドアロックスイッチ35及びトランスポンダ36を備えている。ケース31内には、マイコン32、送信回路33及びトランスポンダ36を備えており、ケース31の表面には、ドア錠をアンロックするときに押圧されるドアアンロックスイッチ34と、ドア錠をロックするときに押圧されるドアロックスイッチ35とが押圧操作可能に設けられている。また、ケース31の一側面には、係止部31aが凹状に形成されている。
【0021】
マイコン32は、送信回路33、ドアアンロックスイッチ34及びドアロックスイッチ35とそれぞれ電気的に接続されている。マイコン32は、ドアアンロックスイッチ34が押圧されると、送信回路33を介して車両のドア錠の解錠を要求するドア開要求信号を出力する。また、マイコン32は、ドアロックスイッチ35が押圧されると、送信回路33を介して車両のドア錠の施錠を要求するドア閉要求信号を出力する。なお、マイコン32、送信回路33、ドアアンロックスイッチ34及びドアロックスイッチ35は、通信部30内に設けられた図示しないバッテリを電源として駆動するようになっている。
【0022】
トランスポンダ36は、コイルアンテナ37及びメモリ38を備えている。コイルアンテナ37は、車両からの駆動電波を受信すると、その駆動電波に基づいて電力を生成してトランスポンダ36に電力を供給する。メモリ38には、トランスポンダ用のIDコードとしてトランスポンダコードが記憶されており、トランスポンダ36は、前記駆動電波に基づいて生成された電力によって前記トランスポンダコードを含むトランスポンダ信号を、コイルアンテナ37を介して外部に出力する。
【0023】
ETC用車載器40は、本体ケース41、ETC制御部42、セキュリティ制御手段としてのイモビECU43、カード検出部44を備えている。
本体ケース41には、前記ETC制御部42、イモビECU43及びカード検出部44が収容されている。また、本体ケース41には、ETC用カード20が挿入されるカード挿着部45が凹状に形成されている。カード挿着部45の一端には、ETC用カード20のカード本体21を完全に挿着することができる長方形状の開口部46が形成されている。カード挿着部45の内側面には、端子部47が設けられており、この端子部47は、ETC制御部42と電気的に接続されている。端子部47はカード挿着部45に完全に挿着された状態におけるETC用カード20のETC用ICチップ22と電気的に接続するようになっている。カード挿着部45の内底面には、カード検出部44が設けられており、カード検出部44は、モーメンタリ式のスイッチから構成されている。カード検出部44は、ETC用カード20がカード挿着部45に完全に挿着されると前記スイッチが押圧されて、オン作動するようになっている。カード検出部44は、車両用制御装置11と電気的に接続されており、前記スイッチがオン作動すると、車両用制御装置11に検出信号を出力する。また、カード挿着部45の開口部46近傍には、同カード挿着部45内に出没可能な規制手段としてのソレノイド48が設けられている。このソレノイド48の鉄心が車両用制御装置11からの規制信号の入力の有無に基づいて出没し、係止部31aに係脱する。詳述すると、ソレノイド48は、規制信号が入力されるとオン作動して鉄心を突出させ、規制信号の入力が遮断されるとオフ作動して鉄心を引込ませる。このため、ソレノイド48に規制信号が入力されて、ソレノイド48の鉄心が突出した状態においては、この鉄心とETC用カード20の係止部31aとが係合して、ETC用カード20がETC用車載器40から取り外し不能となる。
【0024】
ETC制御部42は、メモリ42aを備えており、料金設定に必要な車両の情報が予め記憶されている。また、ETC制御部42は、前記ETC用カード20が挿着された状態において、ETC用ICチップ22と端子部47を介して電気的に接続され、相互通信が可能となっている。この状態において、ETC用ICチップ22に登録された通行料金を支払う支払者の情報がETC制御部42に伝達されるとともに、リアルタイムの利用履歴がETC用ICチップ22に伝達される。
【0025】
イモビECU43は、メモリ43a及びコイルアンテナ43bを備えており、車両用制御装置11と電気的に接続されている。イモビECU43は、車両用制御装置11からの駆動信号が入力されると、前記トランスポンダ36に駆動電波を出力する。また、イモビECU43は、トランスポンダ36からのトランスポンダ信号を受信すると、その信号に含まれるトランスポンダコードと、予めイモビECU43のメモリ43aに登録されている識別コードとを照合する。イモビECU43は、これらの照合が一致したことを条件としてエンジンの始動を許可する成立信号を車両用制御装置11に出力する(イモビライザーシステム)。
【0026】
<セキュリティ機能部4の詳細>
セキュリティ機能部4は、前記車両用制御装置11、受信回路12、エンジン制御装置13、ステアリングロック駆動装置14及びドアロック駆動装置15を備えている。車両用制御装置11は、受信回路12、エンジン制御装置13、ステアリングロック駆動装置14及びドアロック駆動装置15とそれぞれ電気的に接続されている。車両用制御装置11は、ETCユニット3からの無線もしくは有線信号に基づいてエンジン制御装置13、ステアリングロック駆動装置14及びドアロック駆動装置15をそれぞれ制御するようになっている。
【0027】
受信回路12は、ETC用カード20の送信回路33からの無線信号を受信する。車両用制御装置11は、受信回路12を介してETC用カード20の通信部30からのドア開要求信号が入力されると、ドアロック駆動装置15にドアアンロック駆動信号を出力する。また、車両用制御装置11は、受信回路12を介してETC用カード20の通信部30からのドア閉要求信号が入力されると、ドアロック駆動装置15にドアロック駆動信号を出力する。ドアロック駆動装置15は、車両用制御装置11からのドアアンロック駆動信号が入力されると図示しないモータの駆動に基づいてドア錠をアンロックし、ドアロック駆動信号が入力されると同モータに基づいてドア錠をロックする。
【0028】
車両用制御装置11は、前記カード検出部44からの検出信号が入力されると、イモビECU43に駆動信号を出力する。また、車両用制御装置11は、ETC用車載器40のイモビECU43からの成立信号が入力されると、エンジン制御装置13にエンジン始動許可信号を出力するとともに、ソレノイド48に規制信号を出力する。エンジン制御装置13は、車両用制御装置11からのエンジン始動許可信号が入力されると、エンジン始動の許可状態となる。車両用制御装置11は、この許可状態において、インストルメントパネル周辺に設けられたエンジン始動・停止用のプッシュスイッチSWが押圧されることで、ステアリングロック駆動装置14にステアリングロック解除要求信号を出力する。ステアリングロック駆動装置14は、車両用制御装置11からのステアリングロック解除要求信号が入力されると、図示しないモータの駆動に基づいてステアリングロックを解除する。車両用制御装置11は、ステアリングロックが解除されたことを条件としてエンジン制御装置13を介してエンジンを駆動させる。なお、本実施形態において、車両用制御装置11が設定・解除可能なセキュリティ機能は3つ設けられており、1つ目は、対応する通信部30を有するETC用カード20がETC用車載器40に挿着された場合においてエンジンの始動を許可する機能である。また、2つ目は、対応する通信部30を有するETC用カード20がETC用車載器40に挿着された場合においてステアリングロックを解除する機能である。また、3つ目は、対応する通信部30を有するETC用カード20において、ドアアンロックスイッチ34の操作に基づくドア錠の解錠である。
【0029】
(実施形態の作用)
次に、上記ETC1の動作について説明する。
<ETC用カード20を所持した所有者が車内に入るとき>
まず、所有者は、ETC用カード20のドアアンロックスイッチ34を押圧する。すると、マイコン32は、送信回路33を介してドア開要求信号を出力する。ドア開要求信号がセキュリティ機能部4の受信回路12を介して車両用制御装置11に入力されると、車両用制御装置11は、ドアロック駆動装置15にドアアンロック駆動信号を出力する。ドアロック駆動装置15にドアアンロック駆動信号が入力されると、同ドアロック駆動装置15は、前記モータを駆動させて車両のドア錠を解錠する。所有者は、ドア錠が解錠されたことで、車両内に進入することができる。
【0030】
<ETC用カード20をETC用車載器40に挿着するとき>
図2に示すように、所有者は、ETC用カード20の通信部30を把持した状態で、ETC用カード20のカード本体21をETC用車載器40の開口部46から挿入する。そして、カード本体21が、カード挿着部45の内側面に沿って奥まで挿入される。図3に示すように、通信部30のケース31の端部が開口部46を覆う。このとき、開口部46には、前記通信部30の側面に設けられた係止部31aまでが挿入される。この状態において、カード挿着部45の内底面に設けられたカード検出部44のスイッチがオン作動する。カード検出部44がオン作動すると、車両用制御装置11に検出信号を出力する。すると、車両用制御装置11は、ソレノイド48に規制信号を出力する。そして、ソレノイド48の鉄心が通信部30のケース31に形成された係止部31aに嵌合する。その結果、ETC用カード20がETC用車載器40から取り外し不能となる。
【0031】
また、このとき、ETC用カード20のETC用ICチップ22が、カード挿着部45の端子部47に接触して、互いに電気的に接続されることで、通行料金を支払う支払者(所有者)の情報がETC用車載器40に伝達される。
【0032】
<イモビライザーシステム>
車両用制御装置11は、カード検出部44から検出信号が入力されると、イモビECU43に駆動信号を出力する。すると、イモビECU43からコイルアンテナ43bを介して駆動電波が出力され、その駆動電波に基づいてETC用カード20の通信部30のトランスポンダ36からコイルアンテナ37を介してトランスポンダ信号が出力される。イモビECU43は、トランスポンダ36からのトランスポンダ信号に含まれるトランスポンダコードと、自身のメモリ43aに予め登録された識別コードと照合する。そして、これらのコードが一致すると、イモビECU43から車両用制御装置11に成立信号が出力される。すると、車両用制御装置11からエンジン制御装置13にエンジン始動許可信号が出力され、エンジンの始動の許可状態となる。なお、対応する通信部30(正確にはトランスポンダ36)を有しないETC用カード20がETC用車載器40に挿着された場合、トランスポンダコードの照合が一致しない。このため、車両用制御装置11はエンジンの始動を許可しないため、この状態ではエンジンの始動が不能となる。
【0033】
<エンジンの始動>
エンジン始動許可信号がエンジン制御装置13に入力された状態で、プッシュスイッチSWを押圧すると、車両用制御装置11からステアリングロック駆動装置14にステアリングロック解除要求信号が出力される。すると、ステアリングロック駆動装置14はステアリングロックをモータの駆動に基づいて解除する。そして、ステアリングロックが解除されると、エンジン制御装置13はエンジンを駆動する。
【0034】
(実施形態の効果)
従って、上記実施形態のETC1のETCユニット3によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0035】
(1)ETC用カード20は、ETC1を利用するためのETC用ICチップ22を備えている。また、ETC用カード20は、エンジンの始動を許可する機能、ステアリングロックを解除する機能、ドア錠を解錠する機能等のセキュリティ機能の設定・解除を行う車両用制御装置11を制御する通信部30を備えている。このため、前記ETC用カード20は、ETC1の利用と、通信部30によるセキュリティ機能の設定・解除との2つの機能を備えており、これら機能を備えたコントローラ等をそれぞれ別々に所持する必要がない。したがって、携帯性を向上させることができる。
【0036】
(2)ETC用カード20は、通信部30がカード本体21の端部に取り付けられている。このため、カード本体21をETC用車載器40のカード挿着部45に挿着する際、カード本体21から突設された通信部30のケース31を把持することで容易に挿入することができる。
【0037】
(3)ETC用車載器40には、イモビECU43が備えられており、ETC用カード20のカード本体21がETC用車載器40のカード挿着部45に挿着されたことを条件として前記イモビECU43は、ETC用カード20のトランスポンダ36に駆動電波を出力する。そして、トランスポンダ36に前記駆動電波が入力されるとトランスポンダコードを含むトランスポンダ信号をイモビECU43に出力する。そして、イモビECU43は、前記トランスポンダコードと、自身の予め登録された識別コードとの照合を行い、この通信が成立したことを条件として、車両用制御装置11に車両のセキュリティ機能を解除させる成立信号を出力する。即ち、対応する通信部30を有するETC用カード20をETC用車載器40に挿入しないとセキュリティ機能を解除させることができない。このため、車両のセキュリティレベルを向上させることができる。
【0038】
(4)イモビECU43におけるトランスポンダコードと識別コードとの照合が成立して、車両用制御装置11に成立信号が入力されると、ソレノイド48に規制信号が入力されて、通信部30のケース31の係止部31aにソレノイド48の鉄心が係合する。このため、ETC用カード20がETC用車載器40から不用意に抜けることがない。このため、車両の走行時時など、車両のセキュリティ機能が解除された状態においては、確実にETC用カード20が挿着された状態が維持される。要するに、ETC1の利用時には、必ずETC用カード20が挿着されており、ETC路側器2周辺に近づいたときにETC用カード20がETC用車載器40に挿着されているかを確認する必要がなくなるため、利便性を一層向上させることができる。
【0039】
(5)ETC用カード20がETC用車載器40に完全に挿着されると、カード検出部44は検出信号を車両用制御装置11に出力する。そして、イモビECU43は、検出信号が車両用制御装置11に入力されたことを条件として通信部30のトランスポンダ36に駆動電波を出力して、同トランスポンダ36との相互無線通信を行う。このため、イモビECU43は、通信が必要なときにのみ通信部30と通信を行うため、不要な通信における電力消費を抑制することができる。
【0040】
(6)ETC用カード20の通信部30の表面には、ドアロックスイッチ35が設けられている。このため、車両を駐車して離れる際には、ETC用カード20を持ち出して、前記ドアロックスイッチ35を操作することで車両のドア錠を施錠する。従って、車両から離れる際には、ETC用カード20を持ち出すため、車両に置き忘れることが抑制される。よって、車両のセキュリティレベルを向上させることができる。
【0041】
(別の実施形態)
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・エンジン始動の許可を無線通信によるトランスポンダ信号に含まれるトランスポンダコードに基づいて対応する通信部30を有するETC用カード20か否かを判別したが、有線を用いて信号の授受を行ってもよい。例えば、ETC用ICチップ22とETC用車載器40の端子部47とが電気的に接続されることを利用する。このような構成にした場合、予めETC用ICチップ22に個別に設定されたIDコードを記憶させて、そのIDコードを含むIDコード信号を、端子部47を介してETC制御部42に出力する。そして、ETC制御部42に予め設定されたIDコードと、前記ETC用ICチップ22から出力されるIDコードとを照合することで、対応するETC用ICチップ22を備えたETC用カード20か否かを判別する。このような構成にした場合、無線通信を行うためのトランスポンダ36及びイモビECU43を省略することができ、ETC用カード20及びETC用車載器40の構成をそれぞれ簡素化することができる。
【0042】
・無線通信は、自身で電力を生成可能なトランスポンダ36から出力するトランスポンダコード信号に限らず、通信部30内に設けられた図示しないバッテリを電源として駆動することで出力されるBluetooth(R)等の無線通信または赤外線等の通信方式によって通信するようにしてもよい。このような構成にした場合、Bluetooth(R)及び赤外線をマイコン32と電気的に接続して用いる。
【0043】
・上記実施形態の通信部30においては、押圧式のドアアンロックスイッチ34及びドアロックスイッチ35を備え、操作者が前記ドアアンロックスイッチ34もしくはドアロックスイッチ35押圧することでドアロック駆動装置15を駆動させるようにしたが、次のようにしてもよい。例えば、通信部30と車両用制御装置11との間で無線による相互通信を行わせることにより、車両のドア錠を自動的に施解錠させたり、エンジンの始動を許可したりする車両用遠隔制御システムを用いてもよい。このような構成にした場合、車両用制御装置11は、車両周辺の所定領域や車両室内の所定領域にリクエスト信号を送信するようになっている。また、通信部30は、該リクエスト信号を受信すると、自身に予め設定されたIDコードを含むIDコード信号を自動的に返信するようになっている。そして、車両用制御装置11は、IDコード信号を受信すると、該IDコード信号のIDコードと自身に予め設定されたIDコードとの比較を行い、該IDコード同士が一致したことを条件として、ドア錠を自動的に解錠させたり、エンジンを始動許可状態にしたりする制御を行う。こうすることで、車両用制御装置11をセキュリティ制御手段として利用することができ、通信部30のトランスポンダ36、ETC用車載器40のイモビECU43を省略することができる。また、上記変更態様のような通信部30を備えたETC用カード20をETC用車載器40に完全に挿着したことを条件としてエンジンの始動を行うようにしてもよい。
【0044】
・通信部30に備えられた送信回路33、ドアアンロックスイッチ34及びドアロックスイッチ35を省略してもよい。即ち、通信部30にトランスポンダ36のみを搭載するようにしてもよい。このような構成にした場合、車両のセキュリティレベルを維持することができるとともに、通信部30を簡素化することができる。
【0045】
・通信手段としての通信部30は、カード本体21の端部に設けることに限定しない。例えば、カード本体21内に埋め込んでもよい。このような構成にした場合、カード本体21に通信部30が内蔵されるため、携帯性が一層向上する。
【0046】
・通信手段としての通信部30をカード本体21から取り外し可能にしてもよい。このような構成にした場合、通信部30を備えていないETC用カード20に当該通信部30を後付けしたり、通信部30だけを交換したりすることなどが可能となり、既存のETC用カード20の汎用性を向上させることができる。
【0047】
・照合手段としてのイモビECU43をETC用車載器40から取り外し可能としてもよい。このような構成にした場合、既存のETC用車載器40に後付けすることができる。
【0048】
・イモビECU43をETC用車載器40内部に設けることに限定しない。即ち、イモビECU43を、ETC用カード20の通信部30とトランスポンダ信号の通信のできる範囲内に備えてもよい。例えば、ETC用車載器40をコンソールボックス内に収容し、イモビECU43をコンソールボックス内におけるETC用車載器40の周辺に配設する。このような構成にした場合にも、ETC用カード20の通信部30と、イモビECU43との間においてトランスポンダコードの通信を行うことができるとともに、容易にイモビECU43を後付けすることができる。
【0049】
・セキュリティ機能部4に備えられたセキュリティ機能は、エンジン制御装置13、ステアリングロック駆動装置14及びドアロック駆動装置15の制御に基づく機能に限らない。例えば、エンジン制御装置13及びステアリングロック駆動装置14等のように、車両の走行に用いられる機能の規制を設定・解除するセキュリティ機能として駐車時における車両のシフトレバーの操作を規制するシフトロック制御装置を用いてもよい。また、ドアロック駆動装置15のように、車両の走行には直接的に関係ないが、車両の盗難防止等の機能を設定・解除するセキュリティ機能として駐車時における車両の振動等の異常を検知する防犯センサを用いてもよい。
【0050】
(付記)
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について追記する。
・請求項1又は請求項2に記載のETC用カードと、請求項3〜請求項5のうちいずれか1項に記載のETC用車載器とを備えたことを特徴とするETCユニット。このような構成にすることで、ETCユニットをメーカーの標準装備として流通させることができ、車両のセキュリティレベルが向上するとともに、ETC用カードの携帯性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施形態のETCを示すブロック図。
【図2】本実施形態のETC用カードをETC用車載器に挿入時の状態を示す斜視図。
【図3】同ETC用カードをETC用車載器に挿着された状態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0052】
1…ETC、2…ETC路側器、3…ETCユニット、4…セキュリティ機能部、11…車両用制御装置、20…ETC用カード、22…ETC用ICチップ(ETC機能部)、40…ETC用車載器、43…イモビECU(セキュリティ制御手段)、44…カード検出部(検出手段)、45…カード挿着部、48…ソレノイド(規制手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路側機との間で双方向の無線通信に基づいて料金決済を自動的に行うETCに利用されるETC機能部を備えるETC用カードであって、
車両に設けられて該車両のセキュリティ機能の設定・解除を行うセキュリティ制御手段との間で無線もしくは有線通信を行うことにより、該セキュリティ制御手段を制御する通信手段を備えたことを特徴とするETC用カード。
【請求項2】
請求項1に記載のETC用カードにおいて、
前記通信手段は、当該ETC用カードの端部に着脱可能に設けられていることを特徴とするETC用カード。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のETC用カードを挿着可能なカード挿着部と、
前記ETC用カードが前記カード挿着部に挿着されたことを条件として前記通信手段との通信を行い、該通信が成立したことを条件として車両のセキュリティ機能を解除させるセキュリティ制御手段とを備えることを特徴とするETC用車載器。
【請求項4】
請求項3に記載のETC用車載器において、
前記通信手段との通信が成立したことを条件として前記ETC用カードの取り外しを規制する規制手段を備えることを特徴とするETC用車載器。
【請求項5】
請求項3に記載のETC用車載器において、
前記ETC用カードが当該ETC用車載器に完全に挿入されたか否かを検出する検出手段を備え、
前記セキュリティ制御手段は、前記検出手段によってETC用カードの完全挿入が検出されたことを条件として前記通信手段との通信を行うことを特徴とするETC用車載器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−18079(P2007−18079A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196471(P2005−196471)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】