説明

FM・AM復調装置とラジオ受信機および電子機器ならびにイメージ補正調整方法

【課題】FM放送とAM放送の両方の受信機能を有するラジオ受信装置における、AM受信時の消費電力の低減と、チップサイズの小型化、および、復調精度の向上を可能とする。
【解決手段】ウエーバー方式を備え、かつ、I/Q間の誤差を補正する回路を具備した、スーパーヘテロダイン方式を用いたFM・AM兼用受信機において、それぞれ雑音性能の異なる二つの発振器(イメージ発振器4、局部発振器5)を設け、高精度な動作が要求されるFM放送受信時と、要求される精度の緩いAM放送受信時とで異なる発振器を動作させることで、AM放送受信時の消費電力低減を実現する構成とする。また、それぞれ使用しない側の発振器をイメージ信号生成に使用することで、回路規模を縮小させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジオ放送受信装置や無線通信受信装置等の電子機器に用いられ、異なる二つの受信帯域に対応した、ウエーバー方式を用いたラジオ受信技術に係り、特に、消費電力の低減と装置の小型化を図りながら受信品質を向上させるのに好適な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な無線受信アーキテクチャとして知られているものに、搬送波に対する周波数変換を一段で直流まで落とすダイレクトコンバージョン方式と、途中に中間周波数を設けて、数段に分けて徐々に周波数を落としていくスーパーヘテロダイン方式が挙げられる。
【0003】
このうち、スーパーヘテロダイン方式では、イメージ信号の問題がある。このイメージ信号の問題とは、入力信号を中間周波数に落とす際に、所望信号と反対側の周波数にある信号が、ミキサの周波数変換作用によって所望信号と重なってしまう問題である。イメージ信号が所望信号と重なって復調された場合は、信号対雑音比(SNR:Signal vs Noise Ratio)の悪化を招く。
【0004】
このような問題に対して、一般的な従来技術では、ミキサによる周波数変換の前段において所定のフィルタリングを行い、イメージ信号を充分に抑制した後でミキサに入力することで、イメージ信号が所望信号と重ならないようにしていた。
【0005】
しかし、近年の受信機のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)ワンチップ化の要求に際しては、高性能なフィルタをCMOSで作ることは、回路的に難易度が高く、チップサイズの増大も招くことになる。
【0006】
また、近年、一般的には「ローIF」と言われる、いわゆる中間周波数を低い帯域に設定する技術が提案されている。このローIF技術を使えば、中間周波数の帯域が低いため、ミキサ以後のフィルタやAGC(Automatic Gain Control)アンプ等の回路が容易に実現されるようになり、消費電力やコストの面で有利である。
【0007】
また、中間周波数帯をA/Dコンバータ(アナログ/デジタルコンバータ)の帯域よりも低く設定できれば、中間周波数をそのままディジタルに取り込むことができ、以後の復調処理を、ディジタル回路を用いて容易に実現することが可能となる。
【0008】
しかし、前述したイメージ信号の問題は、ローIFの時に顕著となる。すなわち、搬送波周波数に対して中間周波数が充分小さいと、搬送波帯で極めて急峻なフィルタが必要となり、そのためには、チップ外に高精度なフィルタを用意しなければならず、部品点数やコストの増大を招くことになる。
【0009】
この問題に対して、ミキサがダウンコンバートした信号にイメージ信号が含まれていても、信号処理によって除去できる技術として、「ポリフェーズフィルタ」を用いた技術が知られている。
【0010】
この技術は、90度位相の異なる信号を用いて受信信号をダウンコンバートすることで、I信号とQ信号を生成し、両者をポリフェーズフィルタによってフィルタリングしてイメージ成分を除去するものである。
【0011】
このようなポリフェーズフィルタを用いてイメージ除去を行う従来技術に関しては、例えば、特許文献1(特開2006−121665号公報)に記載がある。この特許文献1に記載の技術では、ポリフェーズフィルタによるイメージ除去の後段に、周波数可変フィルタを置くことで、低消費電力、低コストで高精度なフィルタ特性を実現している。
【0012】
しかし、一般にポリフェーズフィルタは、抵抗や容量といった受動素子を用いて実現される。そのため、中間周波数の帯域が低くなった場合に、受動素子の面積が増大してしまうという問題がある。また、ポリフェーズフィルタそのものの雑音によって受信感度が劣化してしまうという問題もある。
【0013】
また、例えば、特許文献2(特許第2546331号公報)に記載のように、ポリフェーズフィルタの代わりに、トランジスタ、抵抗器およびコンデンサなどによりアクティブ型に構成する技術がある。しかし、このようにアクティブ型に構成した場合であっても、そのフィルタ時定数は、抵抗やコンデンサで決められるため、上述したようなチップ面積増大の問題は、依然として存在する。
【0014】
一方、ポリフェーズフィルタを用いずにイメージ除去を行う技術として、ウエーバー方式というものが知られている。この技術は、90度位相の異なる(直交した)信号を用いて受信信号をダウンコンバートすることで、I信号、Q信号を生成し、それらを再び加算することでイメージ信号を除去するものである。
【0015】
しかし、このウエーバー方式を用いる際には、前述のI信号とQ信号は、完全に直交していなければならず、両者のゲインも等しい必要がある。これらのゲインや位相の誤差によって、ウエーバー方式のイメージ除去は、不完全なものとなり、受信SNRの劣化を招くことになる。
【0016】
実際には、CMOSデバイスは、全く同じようにレイアウトされたトランジスタですら動作ばらつきを持っており、そのため、I信号とQ信号が完全に誤差を持たないようにすることは実質的に不可能である。そのため、予め、回路的に含まれる誤差を検出し、補正するような動作が必要である。
【0017】
しかし、この補正動作の際には、回路的には、ミキサのダウンコンバートに必要な局部発振信号とは、異なる周波数のイメージ信号が必要となる。そのため、通常の受信時には、使用しないイメージ信号生成のための発振器が必要となってしまい、チップサイズの増大につながる。
【0018】
また、例えば、特許文献3(特開2003−244002号公報)に記載のように、FM(Frequency Modulation)放送とAM(Amplitude Modulation)放送を受信するラジオ受信機がある。この特許文献3に記載の技術は、コストの低減と共に、外付け部品を減らすことができるラジオ受信機を提供することを目的に、受信機内部のFM用周波数シンセサイザおよびAM用周波数シンセサイザ、FMステレオ復調回路、AM同期検波回路それぞれの基準周波数の最小公倍数あるいは、その整数倍となるように外部の推奨振動子の周波数およびこれを用いた発振器の発振周波数を設定するものである。
【0019】
しかし、一般に、FM放送とAM放送では、AM放送の方が周波数が低いため、局部発振器に求められる位相雑音性能は、AM放送の方が比較的緩いものとなっている。そのため、FM放送に用いる局部発振器を、同様にAM放送に用いることは、過剰な性能を求めることになり、消費電力の増大につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
解決しようとする問題点は、従来の技術では、FM放送とAM放送の両方の受信機能を有するラジオ受信装置においては、受信品質の向上に用いる局部発振器に求められる位相雑音性能が、AM放送受信時には過剰なものであり、消費電力の増大につながってしまう点である。
【0021】
本発明の目的は、これら従来技術の課題を解決し、FM放送とAM放送の両方の受信機能を有するラジオ受信装置における、AM受信時の消費電力の低減と、チップサイズの小型化、および、復調精度の向上を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するため、本発明では、ウエーバー方式を備え、かつ、I/Q間の誤差を補正する回路を具備した、スーパーヘテロダイン方式を用いたFM・AM兼用受信機において、それぞれ雑音性能の異なる二つの発振器を設け、高精度な動作が要求されるFM放送受信時と、要求される精度の緩いAM放送受信時とで異なる発振器を動作させることで、AM放送受信時の消費電力低減を実現する構成とする。また、それぞれ使用しない側の発振器をイメージ信号生成に使用することで、回路規模を縮小させる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、要求される雑音特性の緩いAM放送受信時には、イメージ信号発生器を局部発振器の代わりに使用することで、AM受信時の消費電力を低減することができる。また、AM受信に対してのイメージ信号は、局部発振器を用いることで、余分な発振器を持つ必要がなく、チップサイズを低減することができる。また、受信信号を、中間周波数帯でディジタル化することにより、その後の復調に際して雑音が混入することがなくなり、高精度な復調が可能となる。特に、ウエーバー方式は、ローIFの復調に対して有利な方式であり、ローIFとすることでA/Dコンバータの帯域を低くすることができるため、その分、高精度なA/Dコンバータを実現することができ、復調精度の向上につながる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るFM・AM復調装置の第1の回路構成例を示すブロック図である。
【図2】イメージ信号による受信信号への影響状態例を示す説明図である。
【図3】イメージ信号を除去するウエーバー方式の回路構成例を示すブロック図である。
【図4】図1に示すFM・AM復調装置におけるI/Q補正部の回路構成例を示す回路図である。
【図5】本発明に係るFM・AM復調装置の第2の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図を用いて本発明を実施するための最良の形態例を説明する。図1は、本発明に係るFM・AM復調装置を具備したFM・AM受信装置の第1の回路構成例を示すブロック図であり、図2は、イメージ信号による受信信号への影響状態例を示す説明図、図3は、イメージ信号を除去するウエーバー方式の回路構成例を示すブロック図、図4は、図1に示すFM・AM受信装置におけるI/Q補正部の回路構成例を示す回路図、図5は、本発明に係るFM・AM復調装置を具備したFM・AM受信装置の第2の構成例を示すブロック図である。
【0026】
図1に示す本例のFM・AM受信装置は、受信したFM信号とAM信号を切り替えて入力し、スーパーヘテロダイン方式で復調するFM・AM復調装置を具備して構成となっており、このFM・AM復調装置として、まず、FMアンテナ1から入力したFM信号を増幅するFM信号増幅器2と、FM信号を中間周波数へ変換するための局部発振信号を生成する局部発振器5と、FM帯域のイメージ信号を生成するイメージ発振器4と、FM信号増幅器2からの信号とイメージ発振器4からの信号の一方を選択して出力する(第1の)セレクタ3と、このセレクタ3で選択した信号と局部発振器5が生成した局部発振信号を用いて周波数変換を行い、互いに直交するI信号とQ信号を生成して出力する(第1の)直交ミキサ8とを具備する。
【0027】
また、AMアンテナ9から入力したAM信号を増幅するAM信号増幅器10と、イメージ発振器4の出力信号を分周してAM信号を中間周波数へ変換するための局部発振信号を生成する(第1の)分周器12と、局部発振器5の出力信号を分周する(第2の)分周器13と、AM信号増幅器10からの信号と分周器13からの信号の一方を選択して出力する(第2の)セレクタ11と、このセレクタ11で選択した信号と分周器12からの信号を用いて周波数変換を行い、互いに直交するI信号とQ信号を生成して出力する(第2の)直交ミキサ16とを具備する。
【0028】
さらに、直交ミキサ8からのI信号と直交ミキサ16からのI信号の一方を選択して出力する(第3の)セレクタ17aと、このセレクタ17aが選択出力したI信号から高周波信号を除去して出力する(第1の)フィルタ18aと、このフィルタ18aが出力したI信号を増幅する(第1の)増幅器19aと、直交ミキサ8からのQ信号と直交ミキサ16からのQ信号の一方を選択して出力する(第4の)セレクタ17bと、このセレクタ17bが選択出力したQ信号から高周波信号を除去して出力する(第2の)フィルタ18bと、このフィルタ18bが出力したQ信号を増幅する(第2の)増幅器19bと、増幅器19aが出力したI信号と増幅器19bが出力したQ信号を入力し、入力したI信号およびQ信号が予め定められた振幅になるよう増幅器19aと増幅器19bを制御する(第1の)ゲイン制御部20とを具備する。
【0029】
そして、ゲイン制御部20で振幅制御された増幅器19aからのI信号および増幅器19bからのQ信号のいずれかの位相とゲインもしくは両方の位相とゲインを調整して出力するI/Q補正部21と、FMアンテナ1から受信したFM信号の中間周波数およびAMアンテナ9から受信したAM信号の中間周波数を復調する際に予め定められた周波数の信号を生成して出力するIF発振器25と、I/Q補正部21から出力されたI信号およびQ信号とIF発振器25から出力された信号を用いて復調されたI信号と復調されたQ信号を生成して出力する(第3の)直交ミキサ24と、この直交ミキサ24から出力された、復調されたI信号と復調されたQ信号を加算して出力する加算器26と、この加算器26から出力された信号から予め定められた帯域の信号を取り出すチャネルフィルタ27と、このチャネルフィルタ27から出力された信号を増幅して出力する(第3の)増幅器28と、この増幅器28の出力信号の振幅を予め定められた振幅に制御する(第2の)ゲイン制御部29と、増幅器28から出力された信号を復調して、出力信号を生成して出力する復調器30と、この復調器30から出力された出力信号の振幅を検出して、I/Q補正部21におけるI信号とQ信号の位相とゲインの調整に用いるI/Q補正信号を生成し、I/Q補正部21に出力するI/Q補正制御部31とを具備する。
【0030】
尚、直交ミキサ8は、ミキサ6a,6bと移相器7からなり、直交ミキサ16は、ミキサ14a,14bと移相器15からなり、直交ミキサ24は、ミキサ22a,22bと移相器23からなる。
【0031】
以下、このような構成からなるFM・AM復調装置の動作を説明する。FM信号増幅器2は、FMアンテナ1が受信した信号を増幅して出力する。セレクタ3は、FM信号増幅器2の出力とイメージ発振器4の出力のうち一方を出力する。
【0032】
局部発振器5は、受信チャネルに適応した周波数の局部発振信号を生成し、移相器7へ出力する。この移相器7は、局部発振信号をもとに90度位相の異なる信号を生成し、ミキサ6a,6bへ出力する。尚、局部発振器5が90度位相の異なる信号を生成し、直接ミキサ6a,6bに入力する構成としてもよい。
【0033】
ミキサ6a,6bは、セレクタ3と移相器7の出力を乗算し、I信号およびQ信号として出力する。こうして、ミキサ6a,6bと移相器5によって直交ミキサ8が構成される。
【0034】
同様に、AM信号増幅器10は、AMアンテナ9が受信した信号を増幅し、セレクタ11へ出力する。分周器12,13は、局部発振器5、イメージ発振器4の出力をそれぞれ予め定められた(所定の)分周比で分周する。
【0035】
セレクタ11は、AM増幅器10と分周器13の出力のうちいずれかを選択してミキサ14a,14bへ出力する。また、分周器12の出力は、移相器15に入力される。前述の直交ミキサ8と同様に、ミキサ14a,14bと移相器15により直交ミキサ16が構成される。
【0036】
セレクタ17aは、直交ミキサ8,16のI出力のうち一方を選択して出力する。また、セレクタ17bは、直交ミキサ8,16のQ出力のうち一方を選択して出力する。
【0037】
フィルタ18aは、セレクタ17aにより選択されたI信号から不要なものを取り除き、増幅器19aは、フィルタ18aの出力を増幅する。同様に、セレクタ17bにより選択されたQ出力は、フィルタ18bにより不要信号を除去され、増幅器19bによって増幅される。
【0038】
ゲイン制御部20は、増幅器19a,19bの出力をもとに制御信号を生成し、増幅器19a,19bの増幅率を制御して所定の振幅の出力を得るようにする。
【0039】
I/Q補正部21は、I信号とQ信号のいずれか、あるいは、両方の振幅および位相を、I/Q補正制御部31からの制御信号を用いて補正して出力する。
【0040】
IF発振器25は、所定の中間周波数信号を生成し、移相器23へ出力する。尚、IF発振器25の代わりに、局部発振器5やイメージ発振器4の出力を選択および分周し、所望の周波数として移相器23に入力するよう構成しても構わない。
【0041】
移相器23は、入力された中間周波数信号を、90度位相の異なる信号としてミキサ22a,22bに出力する。こうしてミキサ22a,22bと移相器23もまた直交ミキサ24を構成する。
【0042】
ミキサ22a,22bは、I/Q補正部21からのI出力とQ出力をそれぞれ移相器23の出力と乗算して出力する。加算器26は、直交ミキサ24のI出力とQ出力を加算して出力する。
【0043】
加算器26の出力は、チャネルフィルタ27によって所望の帯域のものを取り出され、増幅器28によって増幅されて復調器30に入力される。
【0044】
ゲイン制御部29は、増幅器28の出力をもとに制御信号を生成し、増幅器28の出力が所定のものとなるように増幅器28を制御する。
【0045】
復調器30は、入力された信号を所定の復調技術で復調して出力信号を生成する。出力信号は、スピーカー等を介して音声信号として出力される。
【0046】
I/Q補正制御部31は、出力信号をもとにI/Q補正制御信号を生成してI/Q補正部21へ出力する。
【0047】
尚、図1に示す構成のFM・AM復調装置では、FM信号とAM信号をセレクタ17a,17bによって選択し、それ以降は、同一の回路を用いる構成としたが、FMおよびAMそれぞれを別の回路で復調する構成としても構わない。
【0048】
従来技術の説明においても述べたように、一般的に、スーパーヘテロダイン方式を用いた復調を行う際には、イメージ信号の発生が問題となる。スーパーヘテロダイン方式における第1の局部発振信号周波数をω1、第2の局部発振信号周波数をω2とする。この時、所望信号の周波数は、(ω1+ω2)となる。
【0049】
ミキサにおいて、所望信号は、周波数ω2へとダウンコンバートされるが、イメージ周波数(ω1−ω2)の信号も周波数−ω2へとダウンコンバートされ、復調時に所望信号に重なってしまう。これがイメージ信号の問題であり、このようなイメージ信号による受信信号への影響を図2に示す。
【0050】
特にローIFと呼ばれる技術では、中間周波数ω2が、第1の局部発振周波数ω1と比較して小さい値となるため、イメージ信号を、予めフィルタなどで除去することが困難となる。
【0051】
このような問題に際し、イメージ信号を除去する技術としてよく知られているものとして、ウエーバー方式が挙げられる。
【0052】
このウエーバー方式に関して図3を用いて説明する。図1の構成と同様、局部発振器41からミキサ40a,40bにそれぞれ90度位相の異なる信号を入力することで、直交ミキサ42を構成している。局部発振器45とミキサ44a,44bについても同様に、直交ミキサ46を構成する。
【0053】
入力信号は、第1の直交ミキサ42に入力され、周波数変換が施され、それぞれI信号とQ信号として出力される。このI信号およびQ信号は、フィルタ43a,43bによって高域が除去され、第2の直交ミキサ46に入力される。第2の直交ミキサ46の出力は、加算器47によって加算される。
【0054】
図3に示すように、入力信号、および第1、第2の直交ミキサの局部発振信号を、それぞれ、sin(ω0*t)、sin(ω1*t)、cos(ω1*t)、sin(ω2*t)、cos(ω2*t)と表す。尚、「*」は「×」を意味する。
【0055】
この場合、第1の直交ミキサ42のI出力は、次の式1と表される。
【0056】
sin(ω0*t)*sin(ω1*t)=−(1÷2)*(cos((ω0+ω1)*t)−cos((ω0−ω1)*t)) …(式1)
【0057】
フィルタ43aによって高域成分が除去されるため、フィルタ43aの出力信号は、「A(t)=(1÷2)*cos((ω0−ω1)*t)」となり、同様に、フィルタ43bの出力信号は、「B(t)=(1÷2)*sin((ω0−ω1)*t)」となる。
【0058】
同じように、第2の直交ミキサ46のI出力における信号は次の式2となり,Q出力における信号は次の式3となる。
【0059】
C(t)=(1÷4)*sin(((ω0−ω1)+ω2)*t)−sin(((ω0−ω1)−ω2)*t)) …(式2)
【0060】
D(t)=(1÷4)*sin(((ω0−ω1)+ω2)*t)+sin(((ω0−ω1)−ω2)*t)) …(式3)
【0061】
従って、加算器47の出力は、次の式4となる。
【0062】
−C(t)+D(t)=(1÷2)*sin((ω0−ω1−ω2)*t) …(式4)
【0063】
ω0<<ω2とすれば、図2に示す所望信号帯域((ω1+ω2)近傍)の信号成分が出力され、イメージ信号帯域((ω1−ω2)近傍)の信号成分は、加算器47の出力では、打ち消されていることがわかる。
【0064】
しかし、ウエーバー方式は、復調の過程において生成されるI信号とQ信号の間に、振幅や位相の誤差が発生した場合、イメージ除去が充分ではなくなってしまう。
【0065】
例として、図3の例において第1の直交ミキサ42に入力される局部発振信号にゲイン誤差r、位相誤差φが存在する場合を示す。
【0066】
この誤差を考慮した場合、上述の計算式においては、第1の直交ミキサ42の局部発振信号を「r*sin(ω1*t+φ),cos(ω1*t)」と表すことができる。
【0067】
この時、第1の直交ミキサ42のI出力は、次の式5と表せ、フィルタ43aによって高域が除去されて、「A(t)=(r÷2)*cos((ω0−ω1)*t−φ)」となる。
【0068】
sin(ω0*t)*r*sin(ω1*t+φ)=−(r÷2)*(cos((ω0+ω1)*t+φ)−cos((ω0−ω1)*t−φ)) …(式5)
【0069】
一方、第1の直交ミキサ42のQ出力およびフィルタ43bの出力B(t)は、上述した例と同じである。従って、第2の直交ミキサ46の出力におけるI出力の信号は、次の式6となり、Q出力の信号は、次の式7となる。
【0070】
C(t)=(r÷4)*sin(((ω0−ω1)+ω2)*t−φ)−sin(((ω0−ω1)−ω2)*t−φ)) …(式6)
【0071】
D(t)=(1÷4)*sin(((ω0−ω1)+ω2)*t)+sin(((ω0−ω1)−ω2)*t)) …(式7)
【0072】
以上より、加算器47の出力中で、位相、ゲイン誤差によって残留するイメージ信号e(t)は、次の式8となり、イメージ除去比は、(((1−r)*φ)÷2)と近似される。
【0073】
e(t)=−(r÷4)*sin(((ω0−ω1)+ω2)*t−φ)+(1÷4)*sin(((ω0−ω1)+ω2)*t)=((1−r)*φ)÷4*cos((ω0−ω1+ω2)*t) …(式8)
【0074】
一般に、イメージ除去には、−50dB程度の除去比が求められる。そのため、ウエーバー方式に許容されるゲインや位相の誤差は、極めて小さいものとなる。
【0075】
一方で、回路の設計やレイアウトを注意深く行ったとしても、トランジスタそのものの相対ばらつき等によってI/Q間の誤差は、必ず発生してしまう。そのため、I信号または、Q信号、あるいは、その両方に対して、振幅と位相に所定の補正を与えて、誤差を取り除くことが必要となる。
【0076】
以下、図1の構成のFM・AM復調装置において、I/Q誤差を補正する際の動作について説明する。
【0077】
例として、FM信号を受信する場合に対してI/Q誤差を補正する際の動作を説明する。
【0078】
図1においてFM信号を受信する際、セレクタ17a,17bは、直交ミキサ8の出力信号を選択する。
【0079】
そして、セレクタ3は、通常の受信時には、FM信号増幅器2の出力を選択するが、イメージ補正調整時は、イメージ発振器4の出力を選択して、直交ミキサ8へと入力する。
【0080】
局部発振器5は、所望の受信チャネルに合わせた局部発振周波数の信号を直交ミキサ8に入力し、イメージ発振器4は、所定のイメージ周波数の信号をセレクタ3に出力する。
【0081】
セレクタ3によるイメージ補正調整時のイメージ発振器4の出力選択の結果、直交ミキサ8からは、イメージ周波数と局部発振周波数が掛け合わされた信号が出力される。
【0082】
直交ミキサ8から出力された信号に対して、フィルタ18a,18bと増幅器19a,19bおよびゲイン制御部20は通常の動作を行い、不要な信号が取り除かれた増幅器19a,19bからの出力振幅は所定のものとなる。
【0083】
尚、イメージ信号の場合は、増幅器28の出力振幅は、I/Q補正部21によって変化するため、ゲイン制御部29は制御を行わず、増幅器28のゲインは固定としておかなければならない。
【0084】
I/Q補正部21は、入力されたI信号もしくはQ信号、あるいは、その両方に対して、I/Q補正制御部31から入力された補正信号に従ったゲインと位相の補正を行う。このI/Q補正部21内のゲインおよび位相の補正を行う回路の一例を図4に示す。
【0085】
図4において、入力信号in+,in−は、差動信号を想定している。可変抵抗51a,51bは同じ抵抗値R1であり、可変抵抗52a,52bは同じ抵抗値R2である。また、容量53a,53bは同じ容量値Cである。また、差動オペアンプ54は、充分な帯域とゲインを持っているとする。
【0086】
この場合、この回路の伝達関数H(s)は、次の式9で表される。
【0087】
H(s)=(R2÷R1)*(1÷(1+R2*C*s)) …(式9)
【0088】
従って、図4の回路は、可変抵抗52a,52bの抵抗値R2を変化させることで、出力信号out+,out−への位相遅れを所望の値に調整することが可能である。
【0089】
可変抵抗52a,52bの抵抗値R2を変化させるとゲインも変化するが、位相遅れが決まった後で、可変抵抗51a,51bの抵抗値R1を変化させることで、ゲインを所望の値に調整することができる。
【0090】
図1におけるI/Q補正部21内では、I信号もしくはQ信号のいずれかは、抵抗値R1,R2とも固定値とし、もう一方を可変とすれば、I信号とQ信号に対する位相遅れとゲインをそれぞれ変化させることで、I/Q間の誤差を取り除くように制御することが可能である。
【0091】
尚、図4に示す構成例において、可変抵抗52a,52bの抵抗値R2の代わりに、容量53a,53bの容量値Cを可変とするような構成でももちろん構わない。
【0092】
また、上述の「式8」により、I/Q間の誤差による残留イメージ信号の絶対値は、ゲインおよび位相共に、下に凸な関数であることがわかる。
【0093】
そのため、図1に示すFM・AM復調装置においては、I/Q補正制御部31により、セレクタ3がイメージ発振部4の出力を選択している状態で、復調部30からの出力が最小となるように制御信号を生成して、I/Q補正部21に入力することで、最適なI/Q誤差補正を行うことができる。
【0094】
尚、式(5)の例では、第1の直交ミキサに対する誤差について述べたが、第2の直交ミキサに入力される局部発振信号やI信号、Q信号の経路が持つゲインおよび位相の誤差の影響についても、式(8)と同様に表されるため、上述した方法を用いて除去することが可能である。
【0095】
また、AM信号入力時についてI/Q誤差を補正する際も、上述のFM信号に対して行った補正と同様に調整を行えばよい。
【0096】
すなわち、図1においてセレクタ11は、分周器13からの信号を出力し、セレクタ17a,17bは、直交ミキサ16からの信号を出力するよう設定する。そして、分周器12,13の出力周波数を、AM受信時の局部発振周波数とそのイメージ周波数となるように設定する。
【0097】
この状態で、復調器30の出力が最小となるように、I/Q補正制御部31においてI/Q補正信号を生成して、I/Q補正部21へ入力することで、AM受信時のイメージ除去を精度良く行うことができる。
【0098】
ところで、通常、トランジスタの電流に占める雑音電流の割合は、トランジスタが流す電流の平方根に反比例する。つまり、低雑音な回路を実現するためには、消費電流の増大は、避けられない。
【0099】
また、一般的な無線受信機(ラジオ受信機)においては、局部発振器(5)の雑音特性は、受信特性に重大な影響をもたらすため、非常に高い精度で周波数を生成することが求められており、従って局部発振器(5)の位相雑音は、極力低減することが望ましい。そのため、局部発振器(5)の消費電力は、受信機全体の中でも高い割合を占めている。
【0100】
しかし、AM放送の信号帯域は、FM放送と比較した場合、約「1÷40」と大幅に低い周波数となっている。そのため、局部発振器(5)に求められる位相雑音等の要求は、FMに比べてAMは、大幅に緩和される。
【0101】
また、上述したようなイメージ補正調整において、イメージ信号は、帯域内で抑制されることが目的であるため、イメージ信号そのものが多少雑音を含んでいても問題はない。
【0102】
つまり、図1に例示したFM・AM復調装置においては、局部発振器5とイメージ発振器4では、イメージ発振器4の方が雑音の要求を緩めることができる。そのため、イメージ発振器4の消費電力を、局部発振器5と比較して低減することができる。
【0103】
そこで、AM信号受信時には、イメージ発振器4から生成される信号を分周器12が所定の周波数に分周することでAMの局部発振信号を生成し、その際、局部発振器5は、スリープ状態としておくことで、消費電力の低減を実現できる。また、AM専用の局部発振器(5)を持つ必要も無いので、チップサイズの低減にもつながる。
【0104】
また、AM信号のイメージ調整時には、局部発振器5の出力を分周器13が所定の周波数とすることでAMイメージ信号を生成すればよい。この際、消費電力は、FM受信時と同等になってしまうが、イメージ信号は、上述したような調整時にのみ動作すればよく、通常の受信時の消費電力には、影響は無い。
【0105】
尚、図1の実施例において、局部発振器5およびイメージ発振器4、IF発振器25には、PLL(Phase Locked Loop)回路が好適に用いられるが、PLLの動作は、既知のものであるため、ここでの詳細な説明は省略する。また、それ以外の各モジュールの動作についても既知であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0106】
以上、説明したように、図1に示す構成のFM・AM復調装置を具備したFM・AM受信装置は、スーパーヘテロダイン方式を用いてAM放送とFM放送を切り替えて受信する受信機ことができ、かつ、I信号とQ信号のゲインおよび位相の誤差を補正する回路を備えたウエーバー方式を用いてイメージ信号を除去することで、高いイメージ除去比を有した復調を実現することができる。
【0107】
そして、局部発振器5とイメージ発振器4の二種類の異なる発振器を有し、FM放送の受信時には、雑音性能の高い局部発振器5から局部発振信号を生成し、AM放送の受信時には、雑音性能の高くないイメージ発振器4から局部発振信号を生成することで、AM放送時の消費電力を低減することができる。
【0108】
また、イメージ除去のための補正回路調整のために、互いに使用しない方の発振器からイメージ周波数信号を生成することで、イメージ信号発生用の発振器を持つ必要がなくなり、チップサイズの低減につながる。
【0109】
次に、図5を用いて、本発明に係る他の実施例の説明を行う。
【0110】
図5に示すFM・AM復調装置を具備したFM・AM受信装置は、図1において示したFM・AM復調装置を具備したFM・AM受信装置におけるI/Q補正部21の前段にA/Dコンバータ61a,61bを挿入し、その後の回路を、ディジタル化したものである。
【0111】
A/Dコンバータ61a,61bによってディジタル化されたI信号、Q信号は、それぞれI/Q補正部62に入力され、I/Q補正部62は、ディジタル演算によってゲインおよび位相の誤差を補正する。
【0112】
以下のIF発振器66、移相器64、ディジタルミキサ63a,63b、加算器67、ディジタルフィルタ68、増幅器69、復調器70は、図1の実施例と同様の動作をするディジタル回路である。
【0113】
尚、A/Dコンバータ61a,61b以前の回路については、図1において示したFM・AM復調装置を具備したFM・AM受信装置におけるものと同様であるため説明は、省略する。
【0114】
I/Q補正部62は、入力されたI信号とQ信号のいずれか、もしくは、両方に対してゲインと位相の補正を行う。補正動作は、ディジタル演算によって行われ、この演算は、一般的なディジタルフィルタを用いることで容易に実現できる。
【0115】
IF発振器66は、内部に位相情報を持ち、基準クロックに合わせて位相情報をインクリメントする。また、位相情報に対応した出力値を記憶しておき、必要に合わせて出力することでIF信号を生成する。
【0116】
移相器64は、IF信号をもとに90度位相の異なる信号を生成し、ディジタルミキサ63a,63bへ出力するディジタルフィルタである。尚、IF発振器66に90度位相の異なる二種類の値を記憶し、直接、ディジタルミキサ63a,63bに出力する構成としても構わない。
【0117】
ディジタルミキサ63a,63bは、I/Q補正部62の出力と移相器64の出力を乗算する。こうして、移相器64とディジタルミキサ63a,63bは、直交ミキサ65を構成する。
【0118】
加算器67は、直交ミキサ65の出力を加算して出力する。ディジタルフィルタ68は、出力信号から必要な帯域を取り出す。また、増幅器69は、入力された信号を設定されたゲインだけ増幅して出力する。
【0119】
ゲイン制御部70は、増幅器69の出力が所望の値となるように、増幅器69のゲインを制御する。復調器71は、増幅器69の出力をもとに所定の方法で復調を行う。
【0120】
これらの信号処理は、全てディジタル演算として行われるため、量子化に伴う誤差以外は、信号の劣化がなく、精度のよい復調が可能となる。
【0121】
前述したように、一般的にローIFと呼ばれる方式は、中間周波数を数百kHzという比較的低い周波数に設定する。そのため、図5に示すA/Dコンバータ61a,61bの帯域は、低いものとすることができる。
【0122】
一般に、A/Dコンバータ(61a,61b)は、帯域が低ければ精度を良くすることができるため、高精度な復調が可能となる。
【0123】
さらに、A/Dコンバータ61a,61b以降の、直交ミキサ65、IF発振器66、加算機67、フィルタ68、増幅器69、復調器71からなる復調部については、ディジタル的に信号処理を行うため、非線形性等の誤差が入らず、精度の良い復調が容易となる。
【0124】
また、ディジタル部を動作させる基準クロックは、局部発振器5やイメージ発振器4の出力を選択および分周し、所望の周波数として使用することで、チップサイズを低減することができる。
【0125】
以上、説明したように、図5に示した構成のFM・AM復調装置を具備したFM・AM受信装置においても、スーパーヘテロダイン方式を用いてAM放送とFM放送を切り替えて受信する際に、I信号とQ信号のゲインおよび位相の誤差を補正する回路を備えたウエーバー方式を用いてイメージ信号を除去することで、高いイメージ除去比を有した復調を実現することができる。
【0126】
特に、中間周波数帯においてA/Dコンバータ61a,61bを用いて、以降の信号処理をディジタル的に行うことで、A/Dコンバータ61a,61b以降は、雑音の影響を受けることがなくなり、精度のよい復調が可能となる。
【0127】
また、局部発振器5とイメージ発振器4の二種類の異なる発振器を有し、FM放送の受信時には、雑音性能の高い局部発振器5から局部発振信号を生成し、AM放送の受信時には、雑音性能の高くないイメージ発振器4から局部発振信号を生成することで、AM放送時の消費電力を低減することができる。
【0128】
また、イメージ除去のための補正回路調整のために、互いに使用しない方の発振器からイメージ周波数信号を生成することで、イメージ信号発生用の発振器を持つ必要がなく、チップサイズの低減につながる。
【0129】
以上、説明したように、図1に示す構成のFM・AM受信装置は、スーパーヘテロダイン方式のFM・AM復調装置として、ウエーバー方式のイメージ除去回路を備えており、そのI/Q誤差を補正するための回路と、補正値を検出するためのイメージ信号発生器を有し、要求される雑音特性の緩いAM放送受信時には、イメージ信号発生器を局部発振器の代わりに使用することで、AM受信時の消費電力を低減することができる。
【0130】
また、AM受信に対してのイメージ信号は、局部発振器5を用いることで、余分な発振器を持つ必要がなく、チップサイズの低減につながる。
【0131】
また、図2に示す構成のFM・AM受信装置では、受信信号は、中間周波数帯でディジタル化されるため、その後の復調に際して雑音が混入することがなく、高精度な復調が可能である。
【0132】
特に、ウエーバー方式は、ローIFの復調に対して有利な方式であり、ローIFとすることでA/Dコンバータの帯域を低くすることができるため、その分高精度なA/Dコンバータを実現することができ、復調精度の向上につながる。
【0133】
以下、図1および図5に示す構成のFM・AM受信装置におけるFM・AM復調装置によるイメージ信号補正を含む処理動作説明を行う。
【0134】
例えば、図1に示す構成のFM・AM復調装置においてイメージ補正調整を行う際、(1)FM信号に対するイメージ補正調整を行う場合には、(1−1)まず、セレクタ3がイメージ発振器4の出力を選択するようセレクタ3を設定して、イメージ発振器4からの信号を直交ミキサ8へと入力させることで、直交ミキサ8においてイメージ発振器4からのイメージ周波数と局部発振器5からの局部発信周波数を掛け合わせて生成されたI信号をセレクタ17aにQ信号をセレクタ17bに出力させる。
【0135】
(1−2)次に、セレクタ17aが直交ミキサ8からのI信号を選択するようセレクタ17aを設定して、直交ミキサ8からのI信号をフィルタ18aと増幅器19aを介してI/Q補正部21に入力させると共に、セレクタ17bが直交ミキサ8からのQ信号を選択するようセレクタ17bを設定して、直交ミキサ8からのQ信号をフィルタ18bと増幅器19bを介してI/Q補正部21に入力させる。
【0136】
(1−3)さらに、増幅器28のゲインを固定とするようゲイン制御部29を設定して、I/Q補正部21から出力されたI信号およびQ信号とIF発振器25から出力された局部発信周波数とが直交ミキサ24において掛け合わせされて生成されたI信号とQ信号が加算器26で加算され、フィルタ27を介して出力されてきた信号を、ゲインが固定された増幅器28で増幅して復調器30に入力させる。
【0137】
(1−4)そして、復調器30からの出力が最小となるようにI/Q補正制御部31において補正信号を生成させてI/Q補正部21に入力し、I/Q補正部21において、入力されたI信号もしくはQ信号、あるいは、その両方に対する、I/Q補正制御部31から入力された補正信号に従っての位相の調整とゲインの調整を行う。
【0138】
尚、(1−5)FM信号に対する復調を行う場合には、セレクタ3が増幅器2の出力を選択するようセレクタ3を設定して、増幅器2からの信号を直交ミキサ8へと入力させ、以降、FM信号に対するイメージ補正調整を行う場合と同様の設定を行う際に、ゲイン制御部29による増幅器28のゲイン固定を解除し、かつ、I/Q補正制御部31からI/Q補正部21に、FM信号に対するイメージ補正調整を行った際に生成した補正信号を入力させる。
【0139】
(2)また、AM信号に対するイメージ補正調整を行う場合には、(2−1)まず、セレクタ11が分周器13の出力を選択するようセレクタ11を設定して、分周器13からの信号を直交ミキサ16へと入力させ、直交ミキサ16において分周器13からのイメージ周波数と分周器12からの局部発信周波数を掛け合わせて生成されたI信号をセレクタ17aにQ信号をセレクタ17bに出力させる。
【0140】
(2−2)次に、セレクタ17aが直交ミキサ16からのI信号を選択するようセレクタ17aを設定して、直交ミキサ16からのI信号をフィルタ18aと増幅器19aを介してI/Q補正部21に入力させると共に、セレクタ17bが直交ミキサ16からのQ信号を選択するようセレクタ17bを設定して、直交ミキサ16からのQ信号をフィルタ18bと増幅器19bを介してI/Q補正部21に入力させる。
【0141】
(2−3)以降、FM信号に対するイメージ補正調整を行う場合と同様にして、I/Q補正部21における入力されたI信号もしくはQ信号、あるいは、その両方に対する、I/Q補正制御部31から入力された補正信号に従っての位相の調整とゲインの調整を行う。
【0142】
(2−4)そして、AM信号に対する復調を行う場合には、セレクタ11が増幅器10の出力を選択するようセレクタ11を設定して、増幅器10からの信号を直交ミキサ16へと入力させ、以降、AM信号に対するイメージ補正調整を行う場合と同様の設定を行う際に、ゲイン制御部29による増幅器28のゲイン固定を解除し、かつ、I/Q補正制御部31からI/Q補正部21に、AM信号に対するイメージ補正調整を行った際に生成した補正信号を入力する。
【0143】
尚、AM信号に対する復調を行う場合には、局部発振器5をスリープ状態とすることで、消費電力を削減させる。
【0144】
尚、本発明は、図1〜図5を用いて説明した例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。例えば、図2に示すFM・AM復調装置を具備したFM・AM受信装置において、必要であれば復調器71の後段にD/Aコンバータを接続して、アナログ信号に変換して出力するような構成としても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0145】
図1,5に示す構成のFM・AM復調装置を具備したFM・AM受信装置を、例えば、FM・AM両用のラジオやトランシーバー等の電子機器に設けることにより、当該電気機器の高性能化および小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0146】
1:FMアンテナ、2:FM信号増幅器、3:セレクタ、4:イメージ発振器、5:局部発振器、6:6a,6b,14a,14b,22a,22b:ミキサ、7,15,23:移相器、8,16,24:直交ミキサ、9:AMアンテナ、10:AM信号増幅器、12,13:分周器、11,17a,17b:セレクタ、18a,18b:フィルタ、19a,19b,28:増幅器、20,29:ゲイン制御部、21:I/Q補正部、25:IF発振器、26:加算器、27:チャネルフィルタ、30:復調器、31:I/Q補正制御部、40a,40b,44a,44b:ミキサ、41,45:局部発振器、42,46;直交ミキサ、43a,43b:フィルタ、47:加算器、51a,51b,52a,52b:可変抵抗、53a,53b:容量、54:差動オペアンプ、61a,61b:A/Dコンバータ、62:I/Q補正部、63a,63b:ディジタルミキサ、64:移相器、65:直交ミキサ、66:IF発振器、67:加算器、68:ディジタルフィルタ、69:増幅器、70:復調器。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0147】
【特許文献1】特開2006−121665号公報
【特許文献2】特許第2546331号公報
【特許文献3】特開2003−244002号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FM信号とAM信号を切り替えて入力し、スーパーヘテロダイン方式で復調するFM・AM復調装置であって、
入力したFM信号を増幅するFM信号増幅器と、
FM信号を中間周波数へ変換するための局部発振信号を生成する局部発振器と、
FM帯域のイメージ信号を生成するイメージ発振器と、
前記FM信号増幅器からの信号と前記イメージ発振器からの信号の一方を選択して出力する第1のセレクタと、
該第1のセレクタで選択した信号と前記局部発振器が生成した局部発振信号を用いて周波数変換を行い、互いに直交するI信号とQ信号を生成して出力する第1の直交ミキサと、
入力したAM信号を増幅するAM信号増幅器と、
前記イメージ発振器の出力信号を分周して前記AM信号を中間周波数へ変換するための局部発振信号を生成する第1の分周器と、
前記局部発振器の出力信号を分周する第2の分周器と、
前記AM信号増幅器からの信号と前記第2の分周器からの信号の一方を選択して出力する第2のセレクタと、
該第2のセレクタで選択した信号と前記第1の分周器からの信号を用いて周波数変換を行い、互いに直交するI信号とQ信号を生成して出力する第2の直交ミキサと、
前記第1の直交ミキサからのI信号と前記第2の直交ミキサからのI信号の一方を選択して出力する第3のセレクタと、
該第3のセレクタが選択出力したI信号から高周波信号を除去して出力する第1のフィルタと、
該第1のフィルタが出力したI信号を増幅する第1の増幅器と、
前記第1の直交ミキサからのQ信号と前記第2の直交ミキサからのQ信号の一方を選択して出力する第4のセレクタと、
該第4のセレクタが選択出力したQ信号から高周波信号を除去して出力する第2のフィルタと、
該第2のフィルタが出力したQ信号を増幅する第2の増幅器と、
前記第1の増幅器が出力したI信号と前記第2の増幅器が出力したQ信号を入力し、入力したI信号およびQ信号が予め定められた振幅になるよう前記第1の増幅器と前記第2の増幅器を制御する第1のゲイン制御手段と、
該第1のゲイン制御手段で振幅制御された前記第1の増幅器からのI信号および前記第2の増幅器からのQ信号のいずれかの位相とゲインもしくは両方の位相とゲインを調整して出力するI/Q補正手段と、
前記受信したFM信号の中間周波数および前記受信したAM信号の中間周波数を復調する際に予め定められた周波数の信号を生成して出力するIF発振器と、
前記I/Q補正手段から出力されたI信号およびQ信号と前記IF発振器から出力された信号を用いて復調されたI信号と復調されたQ信号を生成して出力する第3の直交ミキサと、
該第3の直交ミキサから出力された前記復調されたI信号と前記復調されたQ信号を加算して出力する加算器と、
該加算器から出力された信号から予め定められた帯域の信号を取り出すチャネルフィルタと、
該チャネルフィルタから出力された信号を増幅して出力する第3の増幅器と、
該第3の増幅器の出力信号の振幅を予め定められた振幅に制御する第2のゲイン制御手段と、
前記第3の増幅器から出力された信号を復調して、出力信号を生成して出力する復調器と、
該復調器から出力された出力信号の振幅を検出して、前記I/Q補正手段におけるI信号とQ信号の位相とゲインの調整に用いるI/Q補正信号を生成して該I/Q補正手段に出力するI/Q補正制御手段と
を設けたことを特徴とするFM・AM復調装置。
【請求項2】
請求項1に記載のFM・AM復調装置であって、
前記第1の増幅器が出力したI信号を入力してディジタル信号に変換する第1のA/Dコンバータと、
前記第2の増幅器が出力したQ信号を入力してディジタル信号に変換する第2のA/Dコンバータを設け、
前記I/Q補正手段と、前記IF発振器、前記第3の直交ミキサ、前記加算器、前記チャネルフィルタ、前記第3の増幅器、前記第2のゲイン制御手段、前記復調器、前記I/Q補正制御手段のそれぞれは、ディジタル演算素子からなることを特徴とするFM・AM復調装置。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2のいずれかに記載のFM・AM復調装置であって、
前記イメージ発振器として、前記局部発振器より位相雑音が高い発振器を用いることを特徴とするFM・AM復調装置。
【請求項4】
FM放送とAM放送を切り替えて受信するFM・AM受信装置であって、
請求項1から請求項3のいずれかに記載のFM・AM復調装置を具備し、
該FM・AM復調装置を用いて、FMアンテナで受信したFM信号とAMアンテナで受信したAM信号の復調を行うことを特徴とするFM・AM受信装置。
【請求項5】
請求項4に記載のFM・AM受信装置を具備したことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のFM・AM復調装置のイメージ補正調整方法であって、
FM信号に対するイメージ補正調整を行う場合には、
前記第1のセレクタがイメージ発振器の出力を選択するよう該第1のセレクタを設定して、前記イメージ発振器からの信号を第1の直交ミキサへと入力させ、
該第1の直交ミキサにおいて前記イメージ発振器からのイメージ周波数と局部発振器からの局部発信周波数を掛け合わせて生成されたI信号を第3のセレクタにQ信号を第4のセレクタに出力させ、
前記第3のセレクタが前記第1の直交ミキサからのI信号を選択するよう該第3のセレクタを設定して、前記第1の直交ミキサからのI信号を前記第1のフィルタと前記第1の増幅器を介して前記I/Q補正手段に入力させ、
前記第4のセレクタが前記第1の直交ミキサからのQ信号を選択するよう該第4のセレクタを設定して、前記第1の直交ミキサからのQ信号を前記第2のフィルタと前記第2の増幅器を介して前記I/Q補正手段に入力させ、
前記第3の増幅器のゲインを固定とするよう前記第2のゲイン制御手段を設定して、前記I/Q補正手段から出力されたI信号およびQ信号とIF発振器から出力された局部発信周波数とが第3の直交ミキサにおいて掛け合わせされて生成されたI信号とQ信号が加算器で加算され、チャネルフィルタを介して出力されてきた信号を、ゲインが固定された第3の増幅器で増幅して復調器に入力させ、
該復調器からの出力が最小となるように前記I/Q補正制御手段において補正信号を生成させて前記I/Q補正手段に入力し、
該I/Q補正手段において、前記入力されたI信号もしくはQ信号、あるいは、その両方に対する、前記I/Q補正制御手段から入力された補正信号に従っての位相の調整とゲインの調整を行い、
FM信号に対する復調を行う場合には、
前記第1のセレクタがFM信号増幅器の出力を選択するよう該第1のセレクタを設定して、前記FM信号増幅器からの信号を第1の直交ミキサへと入力させ、以降、FM信号に対するイメージ補正調整を行う場合と同様の設定を行う際に、前記第2のゲイン制御手段による前記第3の増幅器のゲイン固定を解除し、
かつ、前記I/Q補正制御手段から前記I/Q補正手段に、前記FM信号に対するイメージ補正調整を行った際に生成した補正信号を入力することを特徴とし、
AM信号に対するイメージ補正調整を行う場合には、
前記第2のセレクタが前記第2の分周器の出力を選択するよう該第2のセレクタを設定して、前記第2の分周器からの信号を第2の直交ミキサへと入力させ、
該第2の直交ミキサにおいて前記第2の分周器からのイメージ周波数と第1の分周器からの局部発信周波数を掛け合わせて生成されたI信号を第3のセレクタにQ信号を第4のセレクタに出力させ、
前記第3のセレクタが前記第2の直交ミキサからのI信号を選択するよう該第3のセレクタを設定して、前記第2の直交ミキサからのI信号を前記第1のフィルタと前記第1の増幅器を介して前記I/Q補正手段に入力させ、
前記第4のセレクタが前記第2の直交ミキサからのQ信号を選択するよう該第4のセレクタを設定して、前記第2の直交ミキサからのQ信号を前記第2のフィルタと前記第2の増幅器を介して前記I/Q補正手段に入力させ、
以降、前記FM信号に対するイメージ補正調整を行う場合と同様にして、前記I/Q補正手段における前記入力されたI信号もしくはQ信号、あるいは、その両方に対する、前記I/Q補正制御手段から入力された補正信号に従っての位相の調整とゲインの調整を行い、
AM信号に対する復調を行う場合には、
前記第2のセレクタがAM信号増幅器の出力を選択するよう該第2のセレクタを設定して、前記AM信号増幅器からの信号を第2の直交ミキサへと入力させ、以降、AM信号に対するイメージ補正調整を行う場合と同様の設定を行う際に、前記第2のゲイン制御手段による前記第3の増幅器のゲイン固定を解除し、
かつ、前記I/Q補正制御手段から前記I/Q補正手段に、前記AM信号に対するイメージ補正調整を行った際に生成した補正信号を入力することを特徴とするFM・AM復調装置のイメージ補正調整方法。
【請求項7】
請求項6に記載のFM・AM復調装置のイメージ補正調整方法であって、
AM信号に対する復調を行う場合には、前記局部発振器をスリープ状態とすることを特徴とするFM・AM復調装置のイメージ補正調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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