説明

FM送信回路及びオーバーサンプリング処理回路

【課題】オーディオ信号を処理する際に最大周波数偏移を決めるための非線形振幅制御処理による高調波の発生を抑制し、従来技術に比較して回路規模を大幅に削減でき、消費電力も少ない回路構成となるFM送信回路を提供する。
【解決手段】プリエンファシス回路3から出力される信号に対して変調度制限のための振幅調整を行う非線形振幅制御回路5と、非線形振幅制御回路5の後段に設けられるLPF7及びFM変調器10とを備えたFM送信回路において、非線形振幅制御回路5とプリエンファシス回路3との間に設けられ、所定の段数のCICフィルタを用いて所定のアップサンプリング比でアップサンプリングを行うCICアップサンプラ4と、非線形振幅制御回路5とLPF7との間に設けられ、CICフィルタを用いて所定のダウンサンプリング比でダウンサンプリングを行うCICダウンサンプラ6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタル処理によるオーディオ非線形処理回路を有して周波数変調(以下、FM変調という。)を行うFM送信回路、特にディジタル信号処理により非線形処理を施した際の高調波抑制に関し、FM変調の過変調を防止しそれによる音質劣化を低減することができ、特性の安定化と共に回路規模の増大を抑えて低消費電力化を図ったFM送信回路に関する。また、FM変調器の前段に用いるオーバーサンプリング処理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、オーディオ信号をFMステレオ変調し無線送信するためのFM送信回路が、開発され利用されてきている。本発明では、アナログ方式ではなく、小型化、高性能化のためのディジタル方式の場合に適応される。周波数変調を実現するための回路技術は、従来はアナログ回路技術で実現されていたわけであるが、近年のディジタル信号処理技術の進展、IC技術の発達により、周波数変調もオーディオ信号処理と共にディジタル回路技術で行われるようになった。
【0003】
図2は従来技術に係るFM送信回路の構成を示すブロック図である。図2において、FM送信回路は、オーディオ信号入力処理回路1と、帯域制限低域通過フィルタ(以下、低域通過フィルタをLPFという。)2と、プリエンファシス回路3と、非線形振幅制御回路5と、高調波雑音除去用LPF7と、パイロット信号発生器8と、コンポジット信号生成回路9と、周波数変調器10と、DA変換器(以下、DACという。)11と、高周波アナログ回路(以下、RFアナログ回路という。)12とを備えて構成される。
【0004】
図2において、オーディオ信号入力処理回路1は、入力オーディオ信号を有効周波数帯域の数倍のサンプリング周波数でサンプリングしてディジタルオーディオ信号を出力する。ここで、アナログオーディオ信号が入力されるときは、内蔵のAD変換器によってディジタルデータに変換し、ディジタルオーディオデータ信号が入力されるときは、必要に応じてサンプリング周波数変換を行う。次いで、帯域制限LPF2は、入力オーディオ信号をFM放送のために必要とする有効帯域に帯域制限するためのフィルタで、直線位相であるトランスバーサル型FIR(Finite Impulse Response)フィルタの構成が望ましい。プリエンファシス回路3は、周波数変調時に発生する三角雑音により高域のSNRが劣化するのを補正する目的で、あらかじめ高域の変調度を強調して信号を送信するために、入力信号に対して変換すべき周波数帯域の高域側になるにつれて増強する処理を行う。さらに、非線形振幅制御回路5は、プリエンファシス回路3より出力される入力信号の振幅を所定の波高制限値内に制限する。非線形振幅制御回路5は最も簡単な処理はリミッタ処理であり、その他、シグモイド曲線を使った方式などいくつかの既知の方式を用いてもよい。高調波雑音除去用LPF7は入力信号から非線形振幅制御回路5で発生した高調波成分を除去してコンポジット信号生成回路9に出力する。
【0005】
パイロット信号発生器8は、ステレオFM変調時に必要となるパイロット信号(19kHzの単一トーン)と、ステレオのL−R信号をAM変調するためのパイロット信号と同調したキャリア信号(38kHzの単一トーン)を発生してコンポジット信号生成回路9に出力する。コンポジット信号生成回路9は、LPF7から入力されるステレオ信号(L,R)から、パイロット信号発生器8からの種々のパイロット信号等を用いて、(L+R)信号、(L−R)信号の38kHzの搬送波抑圧式振幅変調(AM)波、及びパイロット信号を合成してコンポジット信号を出力する。なお、ディジタルデータ多重送信が可能な場合は、ディジタルデータ変調信号も合成される場合がある。さらに、FM変調器10は、前記コンポジット信号に従って搬送波信号をディジタルFM変調し、必要に応じてIF周波数もしくは直接RF周波数までアップコンバートしてDAC11に出力する。DAC11は入力されるディジタル信号をアナログ中間周波信号(以下、中間周波信号をIF信号という。)に変換してRFアナログ回路12に出力する。RFアナログ回路12は、DAC11からのIF信号をRF信号にアップコンバートし、もしくは直接DAC11からRF信号が出力される場合は、そのままアップコンバートの必要はない。その後、RFアナログ回路12からのRF信号は電力増幅器(図示せず。)により電力増幅されアンテナよりFM電波が送信される。なお、必要に応じてLPFや帯域通過フィルタ(以下、BPFという。)が挿入される。ステレオ音声信号を無線で送信する周波数変調方式については、例えば特許文献1において開示されている。
【0006】
以上のように構成された従来技術に係るFM送信回路においては、オーディオ信号をプリエンファシス回路3により高域を強調した後、非線形振幅制御回路5以降の処理によりFM信号を得るようにすることにより、無線回線における微弱なオーディオ信号の信号対雑音電力比(以下、SNRという。)の劣化を防止している。また、非線形振幅制御回路5により圧縮されたオーディオ信号は、FM変調器10により所定の変調度でFM変調される。FM変調では、周波数偏移がベースバンド信号の瞬時的なピーク値によって決まるので、ベースバンド信号の振幅が一定値(最大周波数偏移)を超えないようにするために、リミッタ回路などの非線形振幅制御処理を用いて振幅制限をする。これらは一般的なFM送信回路としての従来例である。
【0007】
なお、オーディオ信号の振幅を最初から小さくしておくことで、プリエンファシス後のピーク値が最大周波数偏移を超えないようにすることも考えられ、高調波の発生原因となっている非線形振幅制御処理を使う必要がなくなるが、このようにオーディオ信号の全周波数領域にわたって振幅を小さくすると、平均音量が下がり、平均の周波数偏移が狭くなり、SNRの劣化要因となるため、このような方法は好ましくない。
【0008】
ところが、リミッタ回路などの非線形振幅制御によりオーディオ信号の振幅制限を行うと、その出力信号は高調波成分を含むものとなる。前段のプリエンファシス回路3において、オーディオ信号の高域強調が行われるから、オーディオ信号が高い周波数成分を持つほど、非線形振幅制御において高調波雑音が生じやすいという問題がある。そこで、当該高調波成分を取り除くために、急峻なカットオフ特性を持つLPF7が使用される。
【0009】
しかしながら、ディジタル処理で非線形振幅制御を行う場合、サンプリング周波数が低いと高調波成分が折り返し雑音となって可聴域に現れるため、それによる雑音は高調波除去用LPF7でカットすることはできない。そのため、信号対雑音歪感度(以下、SINAD(Signal to Noise Distortion Sensitivity)という。)特性や全高調波歪+雑音(以下、THD+N(Total Harmonic Distortion Plus Noise)という。)特性が悪くなる。
【0010】
図3は前記折り返し雑音を説明するための折り返し周波数を示す図であり、入力信号に対してその奇数次高調波が1/2×Fs(ここで、Fsはサンプリング周波数である。また、fmaxは入力信号の最高周波数である。)で折り返す様子を示している。このとき、1/8×Fs程度の有効帯域幅がある場合、例えば24kHzのオーディオ帯域に対して、サンプリング周波数24×8=192kHzのサンプリングとなるが、9次の高調波から24kHzに折り返してくることがわかる。実際に9次以上の高調波がどの程度の大きさで発生するかは、非線形振幅制御処理の振幅圧縮の大きさにもよるが、実際に時定数50usecのプリエンファシス特性の場合の13kHzの単一トーンに対する高調波発生の様子をシミュレーションすると、プリエンファシスによって13kHzで約12〜13dBの振幅強調されるため−12〜−13dBもの振幅圧縮を行う必要がある。
【0011】
図4は時定数50μsecのプリエンファシス回路において13kHzの単一トーンに対する高調波発生をシミュレーションした周波数特性を示すスペクトル図である。図4から、前記振幅圧縮によって高調波が高域に向かって発生しているのがわかる。これはプリエンファシス後に一旦サンプリング周波数を16倍にあげた状態でリミッタをかけて高調波を発生させたときの特性である。つまり、必要オーディオ帯域の8×16倍のサンプリングである。この図4から、例えば15次の特性を見ると、13kHzの1次信号に対して−40dB程度の大きさを示している。13kHzの15次の周波数は13×15=195kHzであり、1/2×Fs=96kHzで折り返すことを考えると195−96=99kHzとなり、3kHzの可聴域に−40dBという折り返し高調波雑音が現れることになる。これは聴感上、十分に聞き分け可能な信号レベルである。このような折り返し雑音を軽減するために、入力信号をオーバーサンプリングしてから、非線形処理を行い、その後にデシメーションフィルタを通してアンダーサンプリングするという方法があった。
【0012】
【特許文献1】特開平7−162383号公報。
【特許文献2】特許第2775570号公報。
【特許文献3】特許第2691851号公報。
【特許文献4】特許第4035474号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、オーバーサンプリング及びアンダーサンプリング時に必要となるフィルタを直線位相のトランスバーサル型FIRフィルタで構成することを考えると、例えば、前記の例のような必要帯域の8×16倍ものサンプリングで必要帯域のみ通過させ阻止域で100dB程度の減衰を得るには数百タップものFIRフィルタを構成する必要があり、そのフィルタをオーバーサンプルとアンダーサンプルの2回処理する必要があり、乗算器と加算器の回路増加、消費電力の増加を招くことになる。
【0014】
前記のような、非線形振幅制御の前後段でオーバーサンプリング及びアンダーサンプリングを行い高調波の折り返し雑音を軽減する発明はいくつか公開されているが、フィルタ構成に関して小型省電力を特徴とした非線形振幅処理の従来例はない。特にFM送信回路の過変調防止のための非線形振幅制御に関して最適な従来例はない。
【0015】
図5はオーディオ信号を非線形振幅制御回路で単純リミッタによる振幅制限を行ったときの全高調波歪み+雑音(THD+N)の周波数特性を示すスペクトル図である。また、図6はプリエンファシス回路22と単純リミッタ23と低域通過フィルタ(LPF)24とデエンファシス回路25とを備えた測定回路の構成を示すブロック図である。図5の特性の測定は図6に示すように、入力端子21を介して入力される入力信号にプリエンファシス回路22を通した後、非線形振幅制御回路として単純リミッタ23を通過させ、その後LPF24により高域に現れる帯域外の高調波を除去し、デエンファシス回路25によるディエンファシス後の出力端子26からの出力信号の周波数特性を測定する。なお、入力信号のオーディオソースのサンプリング周波数は48kHzの4倍の192kHzであり、入力信号を20kHzまで掃引させて各入力周波数でのTHD+Nを測定している。図5の特性結果を見ればわかるように、プリエンファシスと非線形振幅制御により高域になるにつれ高調波雑音が発生し、THD+N特性が劣化するが8kHz以上の入力周波数においては、3次高調波以上が24kHz以上の周波数となるため、本来は有効オーディオ帯域外に発生するので後段の高調波除去用LPF7により除去されTHD+N特性は改善されるはずである。しかし、図5の特性図を見ればわかるように一旦特性がよくなった後、高域になるにつれてさらに特性が劣化している。これは高調波除去用LPFにて除去できない高調波の折り返し雑音が帯域内に現れることでTHD+N特性を劣化させているのである。
【0016】
図7は図6の測定回路により測定された相対電力レベルのリニア周波数特性を示すスペクトル図である。また、図8は図6の測定回路により測定された相対電力レベルの対数周波数特性を示すスペクトル図である。すなわち、これらは、図6の測定系での入力信号が13kHzの時の出力スペクトル図である。なお、図6の測定回路では受信系で挿入されるディエンファシス回路25を加えて測定している。図7は横軸を周波数のリニア表示で1/2Fs=96kHzまで表示しており、図8は横軸を周波数の対数スケールで有効オーディオ帯域の20kHz近辺まで表示している。図8から明らかなように、前述のように3kHzで大きな折り返し雑音が現れているのがわかる。3kHz以外にも多くの折り返し雑音が発生しているのがわかる。
【0017】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、特にオーディオ信号を処理する際に最大周波数偏移を決めるための非線形振幅制御処理による高調波の発生を抑制し、従来技術に比較して回路規模を大幅に削減でき、消費電力も少ない回路構成となるFM送信回路を提供することにある。
【0018】
また、本発明の別の目的は、従来技術に比較して回路規模を大幅に削減でき、消費電力も少ない回路構成となるオーバーサンプリング処理回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
第1の発明に係るFM送信回路は、
入力されるオーディオディジタル信号に対してプリエンファシス処理するプリエンファシス手段と、
前記プリエンファシス手段から出力される信号に対して変調度制限のための振幅調整を行う非線形振幅制御手段と、
前記非線形振幅制御手段から出力される信号から高調波雑音を除去する低域通過フィルタ手段と、
前記低域通過フィルタ手段から出力される信号に従って、搬送波信号をFM変調して出力するFM変調手段とを備えたFM送信回路において、
前記非線形振幅制御手段と前記プリエンファシス手段との間に設けられ、所定の段数のカスケード積分くし形フィルタ(以下、CICフィルタという。)を用いて所定のアップサンプリング比でアップサンプリングを行うアップサンプラ手段と、
前記非線形振幅制御手段と前記低域通過フィルタ手段との間に設けられ、CICフィルタを用いて所定のダウンサンプリング比でダウンサンプリングを行うダウンサンプラ手段とを備えたことを特徴とする。
【0020】
前記FM送信回路において、
前記アップサンプリング比は8Mに設定され、
前記ダウンサンプリング比は1/8Mに設定され、
前記CICフィルタの段数はNに設定され、
前記M,Nはそれぞれ自然数であることを特徴とする。
【0021】
また、前記FM送信回路において、入力されるオーディオディジタル信号のサンプリング周波数を、有効オーディオ帯域(16kHz〜24kHz)の8倍に設定し、前記非線形振幅制御手段のアップサンプリング比を16倍に設定し、前記非線形振幅制御手段のダウンサンプリング比を1/16倍に設定し、M=1及びN=3に設定したことを特徴とする。
【0022】
さらに、前記FM送信回路において、M及びNを変化できるように構成されたことを特徴とする。
【0023】
またさらに、前記FM送信回路において、前記FM変調手段の前段に設けられ、入力信号に対してオーバーサンプリング処理を行うオーバーサンプリング処理手段をさらに備え、
前記オーバーサンプリング処理手段は、
FIRフィルタを用いて入力信号をアップサンプリングする第1のアップサンプラと、
前記第1のアップサンプラの後段に設けられ、CICフィルタを用いて入力信号をアップサンプリングする第2のアップサンプラとを備えたことを特徴とする。
【0024】
また、前記FM送信回路において、前記アップサンプラ手段のCICフィルタ及び前記ダウンサンプラ手段のCICフィルタと、前記オーバーサンプリング処理手段のCICフィルタとを共用し、時系列で交互に選択的に切り換えるように構成したことを特徴とする。
【0025】
さらに、前記FM送信回路において、前記各CICフィルタは、1つの加算器又は減算器と1つの遅延器とからなる回路を複数段カスケード接続してなるフィルタ回路を、1つの加算器又は減算器と複数の遅延器とからなるフィルタ回路で置き換えて構成し、前記各遅延器を順次選択的に前記加算器又は前記減算器に接続してシリアル処理を行うように構成したことを特徴とする。
【0026】
第2の発明に係るオーバーサンプリング処理回路は、入力信号に対してオーバーサンプリング処理を行うオーバーサンプリング処理回路において、
FIRフィルタを用いて入力信号をアップサンプリングする第1のアップサンプラと、
前記第1のアップサンプラの後段に設けられ、CICフィルタを用いて入力信号をアップサンプリングする第2のアップサンプラとを備えたことを特徴とする。
【0027】
前記オーバーサンプリング処理回路において、前記各CICフィルタは、1つの加算器又は減算器と1つの遅延器とからなる回路を複数段カスケード接続してなるフィルタ回路を、1つの加算器又は減算器と複数の遅延器とからなるフィルタ回路で置き換えて構成し、前記各遅延器を順次選択的に前記加算器又は前記減算器に接続してシリアル処理を行うように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ディジタルオーディオ信号を対象とした、入力から周波数変調回路までの信号処理回路分をディジタル信号処理とし、周波数変換及び高周波電力増幅部分をアナログ処理とするFM送信回路において、ディジタル処理で安定した変調度を制御するための非線形振幅制御回路において、本発明に係るCICフィルタを使ったオーバーサンプル非線形振幅制御方法を使用することで、回路規模の増大を招かずにディジタル処理によって生じる特有の高調波成分の折り返し雑音を抑制することが実現可能となる。本発明は、非線形処理による高調波成分の折り返し雑音を抑制するための手法として、FM送信回路以外のディジタル非線形振幅制御でも同様に使用することができる。
【0029】
また、本発明に係るオーバーサンプリング処理回路によれば、FIRフィルタを用いて入力信号をアップサンプリングする第1のアップサンプラと、前記第1のアップサンプラの後段に設けられ、CICフィルタを用いて入力信号をアップサンプリングする第2のアップサンプラとを備えて構成したので、従来技術に比較して回路規模を減少させて構成でき、製造コストを軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0031】
図1は本発明の一実施形態に係るFM送信回路の構成を示すブロック図である。図1において、本実施形態に係るFM送信回路は、図2の従来技術に比較して、非線形振幅制御回路5の前後段に、トランスバーサル形FIRフィルタではなく、それぞれ、移動平均フィルタをカスケード接続したカスケード積分くし形(Cascade Integrated Comb:CIC)フィルタ(以下、CICフィルタという。)を使用したCICアップサンプラ4及びCICダウンサンプラ6を挿入したことを特徴としている。
【0032】
図1のFM送信回路は、オーディオ信号入力処理回路1と、帯域制限LPF2と、プリエンファシス回路3と、CICアップサンプラ4と、非線形振幅制御回路5と、CICダウンサンプラ6と、高調波雑音除去用LPF7と、パイロット信号発生器8と、コンポジット信号生成回路9と、周波数変調器10と、DAC11と、RFアナログ回路12とを備えて構成される。なお、CICアップサンプラ4及びCICダウンサンプラ6以外の回路は上述の従来技術の動作と同様であり、詳細説明を省略する。ここで、CICフィルタは、移動平均フィルタをカスケード接続したもので、移動平均フィルタの伝達関数H(z)は次式で表される。
【0033】
【数1】

【0034】
前記式(1)を実現する回路を図11に示す。すなわち、図11は図1のCICアップサンプラ4及びCICダウンサンプラ6を構成するために用いるCICフィルタ基本回路41Fの構成を示すブロック図である。図11において、CICフィルタ基本回路41Fは、CICフィルタ41と、増幅度1/Nの増幅器35とを備えて構成される。ここで、CICフィルタ41は、(a)加算器31と、加算器31の出力信号を1クロック遅延して加算器31に帰還させる遅延器32とからなる加算遅延回路51と、(b)減算器34と、加算器31の出力信号をNクロックだけ遅延して減算器34に出力する遅延器33nとからなる遅延減算回路61nとを備えて構成される。
【0035】
図12はCICダウンサンプラ6aの一例の構成を示すブロック図である。ここで、図12は、図11のCICフィルタ41を4段カスケード接続して1/Nにダウンサンプルする回路であり、4個のCICフィルタ41〜44と1/Nダウンサンプラ36と、増幅器37とを備えて構成される。
【0036】
図13(a)は図12のCICダウンサンプラ6aから変形されたCICダウンサンプラ6bの構成を示すブロック図であり、図13(b)は図12のCICダウンサンプラ6bから変形されたCICダウンサンプラ6cの構成を示すブロック図である。図13(a)では、図12の回路のうち、加算遅延回路51を4段カスケード接続した後、遅延減算回路61nを4段カスケード接続して構成した。次いで、図13(b)では、図13(a)の回路のうち、1/Nダウンサンプラ36を、加算遅延回路51が4段のカスケード接続された回路と、遅延減算回路61nが4段のカスケード接続された回路との間に挿入しかつ、各遅延減算回路61nをそれぞれ遅延減算回路61とすることにより回路変換している。ここで、遅延減算回路61は、減算器34と、入力信号を1クロックだけ遅延して減算器34に出力する遅延器33とから構成される。
【0037】
図13の回路変換の手法を用いて構成された回路を図14乃至図17に示す。図14は図1のCICアップサンプラ4の構成を示すブロック図である。図14において、CICアップサンプラ4は、遅延減算回路61が3段カスケード接続されて構成されたフィルタ回路61Aと、16倍アップサンプラ38aと、加算遅延回路51が3段カスケード接続されて構成されたフィルタ回路51Aと、増幅器37とを備えて構成される。
【0038】
図15は図14のフィルタ回路61Aの改良例の構成を示すブロック図である。図15のフィルタ回路61Aは、スイッチ101〜103,111〜116と、3個の遅延器33a,33b,33cと、減算器34とを備えて構成され、図14の回路に比較して減算器34の個数を減少させたことを特徴としている。クロック信号発生器71は所定のクロック信号CLKを発生して遅延器33a,33b,33c及びタイミング信号発生器71に出力する。タイミング信号発生器72はクロック信号CLKに基づいてスイッチ101〜103,111〜116のオン/オフを制御するタイミング信号を以下のように発生してスイッチ101〜103,111〜116に出力する。
(1)まず、スイッチ101,111,112をオンして1段目の遅延減算回路の動作をさせる。
(2)次いで、スイッチ101をオフし、スイッチ103,113,114をオンして2段目の遅延減算回路の動作をさせる。
(3)さらに、スイッチ111,112をオフし、スイッチ115,116,102をオンして3段目の遅延減算回路の動作をさせ、減算器34からの出力信号を出力させる。
【0039】
すなわち、図15の回路のごとくシリアル処理することで1つの減算器34で実現することもでき回路規模を大幅に削減できる。
【0040】
図16は図14のフィルタ回路51Aの改良例の構成を示すブロック図である。図16のフィルタ回路51Aは、加算器31と、スイッチ101〜103,111〜116と、3個の遅延器32a,32b,32cとを備えて構成され、図14の回路に比較して加算器31の個数を減少させたことを特徴としている。図15のクロック信号発生器71及びタイミング信号発生器72を同様に用いて、図16のスイッチ101〜103,111〜116を同様に制御することで図16のフィルタ回路51Aを動作させることができる。
【0041】
図17は図1のCICダウンサンプラ6の構成を示すブロック図である。図17において、CICダウンサンプラ6は、加算遅延回路51が3段カスケード接続されて構成されたフィルタ回路51Aと、1/16ダウンサンプラ36aと、遅延減算回路61が3段カスケード接続されて構成されたフィルタ回路61Aと、増幅器37とを備えて構成される。
【0042】
図18は図14のCICアップサンプラ4の周波数特性を示すスペクトル図であり、図19は図17のCICダウンサンプラ6の周波数特性を示すスペクトル図である。また、図20は図18及び図19のノッチ部分の拡大図である。ここで、図18と図19のスペクトルは基本的に同じ特性を示している。また、図20の拡大図から明らかなように、オーディオ帯域のイメージ領域が大きく減衰するような特性を示している。この例はサンプリング周波数Fs=192kHzの入力信号を16倍でアップサンプリング(16×192kHz)した後、リミッタ等の非線形振幅制御を行い、その後1/16にダウンサンプリングすることで、元のサンプリング周波数Fs=192kHzに戻している。その際にサンプリング周波数Fs/2=192/2=96kHzで周波数が折り返すので、最初に有効オーディオ帯域に折り返し雑音として侵入して来る周波数帯は192±24kHz=168kHz〜216kHzとなり、その次の折り返し雑音となる帯域はさらに192kHz先の(192×2)±24kHz=360kHz〜408kHzとなる。図20にはこれらの周波数での減衰量を表示している。最悪値で−51dBもの減衰が得られている。通常のオーディオソースでは、この程度まで減衰できれば折り返し雑音は聴感上認識されにくい。また、THD+N特性も0.1%程度まで改善でき、十分な性能を確保できる。
【0043】
図21は図1の本実施形態に係るFM送信回路と、図2の従来技術に係るFM送信回路の全高調波歪み+雑音(THD+N)の周波数特性を示すスペクトル図である。図21の周波数特性の測定は図6の測定回路で測定しており、従来技術に比較して周波数10kHz以上において大幅に改善されていることがわかる。
【0044】
図22は図1の本実施形態に係るFM送信回路において単一トーン13kHzの入力信号を入力したときの出力信号のリニア周波数特性を示すスペクトル図であり、図23は図1の本実施形態に係るFM送信回路において単一トーン13kHzの入力信号を入力したときの出力信号の対数周波数特性を示すスペクトル図である。ここで、図22は、図7と同様に横軸を周波数のリニア表示で1/2Fs=96kHzまで表示しており、図23は図8と同様に横軸を周波数の対数スケールで有効オーディオ帯域の20kHz近辺まで表示している。図22及び図23から明らかなように、図7及び図8と比較して、高調波発生による折り返し雑音の影響が従来の方式による結果と比較して大幅に軽減されているのがわかる。
【0045】
以上説明したように、図1の構成を有する本実施形態によれば、オーバーサンプルされた高サンプリングレートで非線形振幅制御を行った後に発生する高調波雑音をノッチ特性で除去でき、その後ダウンサンプリングするので、帯域内への折り返し雑音を抑制することが可能となる。
【0046】
以上の実施形態では、FM変調する信号をステレオ信号で記載したが、本発明はこれに限らず、モノラル信号であってもよい。ステレオ信号の場合、オーディオ信号入力処理回路1から高調波除去用LPF7までの回路をL/Rの2系統の回路とする必要がある。
【0047】
以上の実施形態では、入力サンプリング周波数をオーディオ帯域の8倍、例えば24kHzの帯域ならサンプリング周波数は24kHz×8=192kHzとし、オーバーサンプリング比を16倍としたが、入力オーディオソースの信号成分によっては高域成分パワーが無い場合や、使用帯域幅が狭い場合がある。また、多少性能を落としても消費電力を優先する場合がある。その場合は、CICフィルタの特性を緩和できるのでカスケード段数を減らすことも可能である。また、オーバーサンプリング比も減らすこともできる。それによって消費電力を削減できる。そこで、これらの構成を可変にし、用途に応じて最適構成に変更できるようにする。逆にCICフィルタのカスケード段数を増やしてノッチ特性を良くすることもできる。
【0048】
本実施形態においては、上述のように、CICアップサンプラ4のアップサンプリング比を8Mとし、CICダウンサンプラ6のダウンサンプリング比を1/8Mとすることが好ましい。ここで、Mは1以上の自然数である。また、最も好ましくは、M=1のとき、本発明者らのシミュレーション結果により、図14及び図17のごとく3段のCICフィルタを用いたCICアップサンプラ4及びCICダウンサンプラ6を用いることが好ましい。すなわち、入力されるオーディオディジタル信号のサンプリング周波数を、有効オーディオ帯域(16kHz〜24kHz)の8倍に設定し、前記非線形振幅制御手段のアップサンプリング比を16倍に設定し、前記非線形振幅制御手段のダウンサンプリング比を1/16倍に設定し、M=1及びN=3に設定することが好ましい。
【0049】
図24は6段でカスケード接続したときのCICフィルタの周波数特性を示すスペクトル図である。図24から明らかなように、図20で示した3段のCICフィルタ特性と比べて約50dBも改善できている。このように特性を可変にするために、具体的には使用するCICフィルタの段数を切り替え可能としてもよい。特に、図15及び図16の回路を用いれば、スイッチのタイミング信号を変更することで容易に段数を変更することができる。また、入力のサンプリング周波数とオーバーサンプルされたサンプリング周波数の比を変更するため、可変タップのFIRフィルタ構成を使用してもよい。このように、これらを可変にすることで処理量をコントロールし、消費電力のコントロールが可能となる。また折り返し雑音の除去能力を制御することも可能となる。
【0050】
また、FM変調器10では、例えばIF周波数にアップコンバートして出力するために、一般的にオーバーサンプリング処理を施す場合がある。その際、処理量削減の効果があるマルチステージ型フィルタ構成を使用する。例えば、サンプリング周波数が24kHz×8=192kHzの入力信号を16倍にオーバーサンプルするには、4倍×2段で構成すると、初段に45タップ程度のFIRフィルタを用いたアップサンプラで構成し、後段に15タップ程度のFIRフィルタで構成できる(従来技術)。ここで、FIRフィルタは例えば従来技術に係るトランスバーサルフィルタである。
【0051】
図25は本発明の変形例に係るFM変調回路の構成を示すブロック図である。図25の変形例では、FM変調器10の前段に、オーバーサンプリング処理回路13が設けられ、オーバーサンプリング処理回路13は、前段のFIRフィルタを用いたアップサンプラ13aと、後段のCICフィルタを用いたアップサンプラ13b(例えば、図14乃至図16の構成を有する。)とを備えて構成される。
【0052】
図9はオーバーサンプリング処理回路13の前段(45タップ)のアップサンプラ13aの周波数特性を示すスペクトル図である。図10はオーバーサンプリング処理回路13の後段(15タップ)のアップサンプラ13bの周波数特性を示すスペクトル図である。ここで、有効周波数通過帯域を60kHzとしているのは、出力されるコンポジット信号において、オーディオ帯域以外にパイロット信号及び38kHzでAM変調された(L−R)が合成されているステレオ信号を考慮しているからであり、さらにRDS(Radio Data System)規格のFMデータ多重方式の変調信号57KHz±2〜3dBも含まれることを考慮して、60kHzをコンポジット信号通過帯域としてフィルタ特性を決めている。
【0053】
図26は後段の15タップのFIRフィルタの代わりに4段でカスケード接続したときのCICフィルタを用いたアップサンプラ13bの周波数特性を示すスペクトル図である。当該CICフィルタは、4段のフィルタなので、8つの加算器又は減算器でフィルタを構成できる。ここで、このFM変調器10の前段のオーバーサンプリング処理回路13内のCICフィルタの加算器を、前記非線形振幅制御回路5の前後段に配置されたCICフィルタの加算器と共有し、時系列で交互に選択的に複数のスイッチを用いて切り換えて構成してもよい。それにより、大幅に回路規模の削減を行うことができる。
【0054】
図27は図1のFM送信回路においてブロック動作を示す図である。図27では、各回路ブロックの処理サンプル周波数毎に分類した様子を示しており、通常処理ブロックとオーバーサンプル処理ブロックの2種類に分けられる。通常処理ブロックはB1とB3で破線でエリアを示している。オーバーサンプル処理ブロックはB2とB4で実線でエリアを示している。すべての回路ブロック逐次処理させることで、通常処理ブロックのフィルタ処理で使用する加算器とオーバーサンプル処理ブロックのCICフィルタで使用する加算器を共通化することも可能であるが、動作クロックをあげる必要があり、消費電流の増大を招く。そのため可能な限り並列処理化をする必要がある。ただし、すべて並列処理すると回路規模が大きくなる。
【0055】
図28は図27のブロック動作における並列処理を示すタイミングチャートである。図26の例の場合、並列処理させるには、図28に示すようにB1の処理とB4の処理を処理サンプル時間の違いから並列処理可能なブロックとさせればよい。そうすれば、B2の回路ブロックとB4の回路ブロックで使用しているCICフィルタは逐次処理となるので加算器を共通化することが可能となる。これにより、回路規模の増大を招かずにオーバーサンプル処理による非線形振幅制御を行うことが可能となり、回路規模を維持したまま性能を改善することができる。
【0056】
以上の実施形態において、フィルタのカットオフ周波数や帯域外減衰量の数値は単なる一例であって、これに限定されるものではない。
【0057】
本実施形態の作用効果.
本実施形態に係るFM送信回路では、図1に示すように、非線形振幅制御回路5の前段及び後段にそれぞれ、CICフィルタで構成したCICアップサンプラ4及びCICダウンサンプラ6を挿入したことを特徴としている。これによって、折り返し雑音を防止するためにオーバーサンプル処理で非線形処理をしても数個の加算器又は減算器のみで処理が可能となり、回路規模、消費電流を抑えることが可能となる。
【0058】
また、実際にFM送信回路で20kHz帯域のオーディオ信号をプリエンファシスを使って送信するときに、非線形処理で発生する高調波成分とその折り返し雑音を除去するための最適なサンプリング周波数設定とCICフィルタの段数を決めている。これによりFM送信回路で十分な性能が得られる最小規模の構成での非線形振幅制御処理となる。
【0059】
さらに、入力オーディオソースの信号成分や、使用帯域幅によって、また多少性能を落としても消費電力を優先する場合などにオーバーサンプリング比やCICフィルタの段数を可変にすることで、用途に応じた最適構成に変更できるようにしている。
【0060】
またさらに、周波数変調器では変調精度を上げるために、IF周波数又はRF周波数にアップコンバートして出力するために一般的にオーバーサンプリング処理を施す。ここで、このオーバーサンプリングを行うためには、必要なデータに影響を与えずイメージ成分だけを高精度に除去するために,急峻な遮断特性を持ち、かつリップルの少ない線形位相のトランスバーサル方FIRフィルタを用いるのが一般的であるが、1つのFIRフィルタでオーバーサンプリングフィルタを構成する場合、そのタップ数が数百タップに増えるため、1出力サンプルを処理するのに数百回の積和演算が必要となる。そのため通常マルチステージ型フィルタの構成にして、多段のFIRフィルタに分割(マルチステージ化)した方がトータルのタップ数が減り、演算回数が激減し、有限語長の影響による演算誤差の低減、回路規模削減、消費電力の削減に効果的であることが知られている。
【0061】
例えば、サンプリング周波数が24kHz×8=192kHzの入力信号を16倍にオーバーサンプルするには、直接16倍する場合、約100dBの阻止特性を得るのに170タップ程度必要となるが、4倍×2段で構成すると初段に45タップ、後段に15タップ程度のFIRで構成できるため、トータルの演算数を削減できる。
【0062】
図9はオーバーサンプリング回路の前段(45タップ)のフィルタ回路の周波数特性を示すスペクトル図である。また、図10はオーバーサンプリング回路の後段(15タップ)のフィルタ回路の周波数特性を示すスペクトル図である。本実施形態では、マルチステージのオーバーサンプリング処理の後段のFIRフィルタをCICフィルタに置き換え、非線形振幅制御処理回路5のCICフィルタと加算器又は減算器を共用化させる構成としてもよい。これによって、非線形振幅制御処理回路5でオーバーサンプル処理をしても回路規模の増大にならない。
【0063】
以上実施形態においては、前記回路ブロック1〜13をハードウエアで構成してもよいし、前記回路ブロック1〜13の機能をDSP(Digital Signal Processor)などのディジタル計算機を用いてソフトウエアで構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上詳述したように、本発明によれば、ディジタルオーディオ信号を対象とした、入力から周波数変調回路までの信号処理回路分をディジタル信号処理とし、周波数変換及び高周波電力増幅部分をアナログ処理とするFM送信回路において、ディジタル処理で安定した変調度を制御するための非線形振幅制御回路において、本発明に係るCICフィルタを使ったオーバーサンプル非線形振幅制御方法を使用することで、回路規模の増大を招かずにディジタル処理によって生じる特有の高調波成分の折り返し雑音を抑制することが実現可能となる。本発明は、非線形処理による高調波成分の折り返し雑音を抑制するための手法として、FM送信回路以外のディジタル非線形振幅制御でも同様に使用することができる。
【0065】
本発明の非線形振幅制御処理による高調波雑音に対する抑制回路は、高周波信号の周波数をオーディオ信号に比例して変化させる周波数変調を行う周波数変調器又はこれを用いて構成したFMトランスミッタ等の応用回路に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態に係るFM送信回路の構成を示すブロック図である。
【図2】従来技術に係るFM送信回路の構成を示すブロック図である。
【図3】折り返し雑音を説明するための折り返し周波数を示す図である。
【図4】時定数50μsecのプリエンファシス回路において13kHzの単一トーンに対する高調波発生をシミュレーションした周波数特性を示すスペクトル図である。
【図5】オーディオ信号を非線形振幅制御回路で単純リミッタによる振幅制限を行ったときの全高調波歪み+雑音(THD+N)の周波数特性を示すスペクトル図である。
【図6】プリエンファシス回路22と単純リミッタ23と低域通過フィルタ(LPF)24とデエンファシス回路25とを備えた測定回路の構成を示すブロック図である。
【図7】図6の測定回路により測定された相対電力レベルのリニア周波数特性を示すスペクトル図である。
【図8】図6の測定回路により測定された相対電力レベルの対数周波数特性を示すスペクトル図である。
【図9】オーバーサンプリング回路の前段(45タップ)のフィルタ回路の周波数特性を示すスペクトル図である。
【図10】オーバーサンプリング回路の後段(15タップ)のフィルタ回路の周波数特性を示すスペクトル図である。
【図11】図1のCICアップサンプラ4及びCICダウンサンプラ6を構成するために用いるCICフィルタ基本回路41Fの構成を示すブロック図である。
【図12】CICダウンサンプラ6aの一例の構成を示すブロック図である。
【図13】(a)は図12のCICダウンサンプラ6aから変形されたCICダウンサンプラ6bの構成を示すブロック図であり、(b)は図12のCICダウンサンプラ6bから変形されたCICダウンサンプラ6cの構成を示すブロック図である。
【図14】図1のCICアップサンプラ4の構成を示すブロック図である。
【図15】図14のフィルタ回路61Aの改良例の構成を示すブロック図である。
【図16】図14のフィルタ回路51Aの改良例の構成を示すブロック図である。
【図17】図1のCICダウンサンプラ6の構成を示すブロック図である。
【図18】図14のCICアップサンプラ4の周波数特性を示すスペクトル図である。
【図19】図17のCICダウンサンプラ6の周波数特性を示すスペクトル図である。
【図20】図18及び図19のノッチ部分の拡大図である。
【図21】図1の本実施形態に係るFM送信回路と、図2の従来技術に係るFM送信回路の全高調波歪み+雑音(THD+N)の周波数特性を示すスペクトル図である。
【図22】図1の本実施形態に係るFM送信回路において単一トーン13kHzの入力信号を入力したときの出力信号のリニア周波数特性を示すスペクトル図である。
【図23】図1の本実施形態に係るFM送信回路において単一トーン13kHzの入力信号を入力したときの出力信号の対数周波数特性を示すスペクトル図である。
【図24】6段でカスケード接続したときのCICフィルタの周波数特性を示すスペクトル図である。
【図25】本発明の変形例に係るFM変調回路の構成を示すブロック図である。
【図26】後段の15タップのFIRフィルタの代わりに4段でカスケード接続したときのCICフィルタの周波数特性を示すスペクトル図である。
【図27】図1のFM送信回路においてブロック動作を示す図である。
【図28】図27のブロック動作における並列処理を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0067】
1…オーディオ信号入力処理回路、
2…帯域制限低域通過フィルタ(LPF)、
3…プリエンファシス回路、
4…CICアップサンプラ、
5…非線形利得制御回路、
6,6a,6b,6c…CICダウンサンプラ、
7…高調波雑音除去用低域通過フィルタ(LPF)、
8…パイロット信号発生器、
9…コンポジット信号生成回路、
10…周波数変調器、
11…DA変換器(DAC)、
12…RFアナログ回路、
13…オーバーサンプリング処理回路、
13a…FIRフィルタを用いたアップサンプラ、
13b…CICフィルタを用いたアップサンプラ、
21…入力端子、
22…プリエンファシス回路、
23…単純リミッタ、
24…低域通過フィルタ(LPF)、
25…デエンファシス回路、
26…出力端子、
31…加算器、
32,32a,32b,32c,33,33n,33a,33b,33c…遅延器、
34…減算器、
35…増幅器、
36,36a…ダウンサンプラ、
37…増幅器、
38a…アップサンプラ、
41,42,43,44…CICフィルタ回路、
41…CICフィルタ基本回路、
51,52,53,54…加算遅延回路、
51A,61A…フィルタ回路、
61,62,63,64,61n,62n,63n,64n…遅延減算回路、
71…クロック信号発生器、
72…タイミング信号発生器、
101,102,103,111〜116…スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されるオーディオディジタル信号に対してプリエンファシス処理するプリエンファシス手段と、
前記プリエンファシス手段から出力される信号に対して変調度制限のための振幅調整を行う非線形振幅制御手段と、
前記非線形振幅制御手段から出力される信号から高調波雑音を除去する低域通過フィルタ手段と、
前記低域通過フィルタ手段から出力される信号に従って、搬送波信号をFM変調して出力するFM変調手段とを備えたFM送信回路において、
前記非線形振幅制御手段と前記プリエンファシス手段との間に設けられ、所定の段数のカスケード積分くし形フィルタ(以下、CICフィルタという。)を用いて所定のアップサンプリング比でアップサンプリングを行うアップサンプラ手段と、
前記非線形振幅制御手段と前記低域通過フィルタ手段との間に設けられ、CICフィルタを用いて所定のダウンサンプリング比でダウンサンプリングを行うダウンサンプラ手段とを備えたことを特徴とするFM送信回路。
【請求項2】
前記アップサンプリング比は8Mに設定され、
前記ダウンサンプリング比は1/8Mに設定され、
前記CICフィルタの段数はNに設定され、
前記M,Nはそれぞれ自然数であることを特徴とする請求項1記載のFM送信回路。
【請求項3】
入力されるオーディオディジタル信号のサンプリング周波数を、有効オーディオ帯域(16kHz〜24kHz)の8倍に設定し、前記非線形振幅制御手段のアップサンプリング比を16倍に設定し、前記非線形振幅制御手段のダウンサンプリング比を1/16倍に設定し、M=1及びN=3に設定したことを特徴とする請求項2記載のFM送信回路。
【請求項4】
M及びNを変化できるように構成されたことを特徴とする請求項2記載のFM送信回路。
【請求項5】
前記FM変調手段の前段に設けられ、入力信号に対してオーバーサンプリング処理を行うオーバーサンプリング処理手段をさらに備え、
前記オーバーサンプリング処理手段は、
FIRフィルタを用いて入力信号をアップサンプリングする第1のアップサンプラと、
前記第1のアップサンプラの後段に設けられ、CICフィルタを用いて入力信号をアップサンプリングする第2のアップサンプラとを備えたことを特徴とする請求項1乃至4のうちのいずれか1つに記載のFM送信回路。
【請求項6】
前記アップサンプラ手段のCICフィルタ及び前記ダウンサンプラ手段のCICフィルタと、前記オーバーサンプリング処理手段のCICフィルタとを共用し、時系列で交互に選択的に切り換えるように構成したことを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれか1つに記載のFM送信回路。
【請求項7】
前記各CICフィルタは、1つの加算器又は減算器と1つの遅延器とからなる回路を複数段カスケード接続してなるフィルタ回路を、1つの加算器又は減算器と複数の遅延器とからなるフィルタ回路で置き換えて構成し、前記各遅延器を順次選択的に前記加算器又は前記減算器に接続してシリアル処理を行うように構成したことを特徴とする請求項1乃至6のうちのいずれか1つに記載のFM送信回路。
【請求項8】
入力信号に対してオーバーサンプリング処理を行うオーバーサンプリング処理回路において、
FIRフィルタを用いて入力信号をアップサンプリングする第1のアップサンプラと、
前記第1のアップサンプラの後段に設けられ、CICフィルタを用いて入力信号をアップサンプリングする第2のアップサンプラとを備えたことを特徴とするオーバーサンプリング処理回路。
【請求項9】
前記各CICフィルタは、1つの加算器又は減算器と1つの遅延器とからなる回路を複数段カスケード接続してなるフィルタ回路を、1つの加算器又は減算器と複数の遅延器とからなるフィルタ回路で置き換えて構成し、前記各遅延器を順次選択的に前記加算器又は前記減算器に接続してシリアル処理を行うように構成したことを特徴とする請求項8記載のオーバーサンプリング処理回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2010−68033(P2010−68033A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229944(P2008−229944)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】