説明

FPC用コネクタ

【課題】信号線用の接続端子とグラウンド層用の接続端子の相対位置を配慮する必要がなく、常に適正な接触圧を得ることが出来、半田付け工程の自動化も容易な、新しいFPC用コネクタを提供する。
【解決手段】長手方向軸芯の直角の方向にリテーナ11の鍔部挿入用のポケット2が形成されており、ポケット2の下部からは、グラウンド用端子金具の接触腕が後方へ向かって付勢された状態で植設おり、表面側には信号線露出部が形成されており、張り出し片の裏面側にはグラウンド層露出部が形成されており、FPC18をリテーナ11に取付け、リテーナ11をコネクタ本体5の凹穿部に挿入し、コネクタ本体5の端子金具3をFPC18の信号線露出部に、グラウンド用端子金具をFPC18のグラウンド層露出部にそれぞれ電気的に接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はFPC用コネクタ、詳しくは、裏面にグラウンド層を有するFPC用との接続に用いるFPC用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント基板(以下FPCと称す)は柔軟性があり、大きく変形させることが可能な為、プリンターのヘッドへ電気信号を伝える配線や折りたたみ型携帯電話のヒンジを通る配線など、可動部品への配線に多く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】なし
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
FPCにおいては、多くの場合、裏面にグラウンド層が形成されているが、この裏面にグラウンド層が形成されているFPCにコネクタを接続しようとする場合、コネクタの接続端子は、表面側に形成されている信号線と裏面側のグラウンド層を表裏から挟み込んでそれぞれの露出部に接触されていた為、FPCに対する接触圧は、表面側の接続端子と裏面側の接続端子の相対位置により変化するので、表面側の接続端子及び裏面側の接続端子の取付位置の設定は、適正な接触圧を保つ為に厳密さが要求され、その寸法管理は大変むずかしかった。又、FPCとコネクタの接触箇所とを半田付けによって接合する場合には、表裏両面を半田付けする必要があり、表裏両面からの半田付け作業は、自動化することがむずかしく、ロボットなどによる作業効率の向上も困難であった。更に、グラウンド層との接触は裏面側で行われるので、表面側から目視により確認も困難であった。
【0006】
本発明者は、裏面にグラウンド層を有するFPCへのコネクタの接続に関する上記問題点を解決すべく研究した結果、従来にFPC用コネクタの様に、信号線用の接続端子とグラウンド層用の接続端子の相対位置を配慮する必要がなく、常に適正な接触圧を得ることが出来、半田付け工程の自動化も容易な、新しいFPC用コネクタを開発することに成功し、本発明としてここに提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
柱状をなし、長手方向軸芯に沿って、上下方向にリテーナ挿入用の凹穿部が形成されていると共に、長手方向両端には、前記凹穿部に連通し、かつ、これに対して直角の方向に、リテーナの鍔部挿入用のポケットが形成されており、前面からは、複数の端子金具がその接触腕を凹穿部の方向を向いて片持式に延設された状態で並列されており、前記ポケットの下部からは、グラウンド用端子金具が、その接触腕が後方へ向かって付勢された状態で植設されているコネクタ本体と;
前記凹穿部に挿入可能な寸法を有する柱状をなし、下縁が円弧状に形成されているリテーナ本体の両端に、前記コネクタ本体のポケットに挿入される鍔部が一体的に設けられており、該鍔部の前縁両側には、保持すべきFPCの側縁をその両側から抱き込むカギ形のFPC保持片が対向して設けられており、リテーナ本体の後方内側にはFPC係止用のフックが、リテーナ本体と間隔をあけて、これと平行に垂下せしめられており、鍔部の上部後方からはリテーナ本体の軸芯と同じ向きに支持板が垂設されているリテーナ;とからFPC用コネクタを構成し、前記リテーナのリテーナ本体よりわずかに小さい幅を有し、長手方向端縁寄りの表面側には信号線露出部が形成されており、長手方向端縁の両側には前記支持板に当接する張り出し片が一体的に形成されており、該張り出し片の裏面側にはグラウンド層露出部が形成されており、長手方向端縁寄りの部分の内側に、前記リテーナに形成されているフックと係合する透孔が形成されているFPCを、その長手方向端縁側をリテーナの対向した一対のFPC保持片の間を通過させ、リテーナ本体の前面及びその下部の円弧状の端縁に沿わせてU字形に弯曲させ、その端縁をリテーナ本体裏面側に位置させて、その透孔をFPC係止用のフックに係合させることにより、FPCをリテーナに取付け、この状態でリテーナをコネクタ本体の凹穿部に挿入し、コネクタ本体の端子金具の接触腕をFPCの信号線露出部に、グラウンド用端子金具の接触腕をFPCのグラウンド層露出部にそれぞれ電気的に接続せしめる様にし、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係るFPC用コネクタにおいては、端子金具が信号線露出部及びグラウンド層露出部にいずれも前面側から接触して電気的接続関係を維持する様になっているので、従来のものの様に、表面側の信号線露出部と裏面側のグラウンド層露出部の相対位置に起因する接触圧の不均衡が起きるおそれは全くなく、安定的に電気的接続関係を保つことが出来る。又、半田付け作業を行う場合には、一方の面からの作業で足りるので、ロボットなどによる自動化も極めて容易である。更に、接続箇所はすべて前面に位置しているので、目視による確認も容易であり、従来のFPC用コネクタに比べ、信頼性、耐久性、作業性において格段に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明に係るFPC用コネクタの構成要素であるコネクタ本体の実施例1の斜視図。
【図2】同じく、その平面図。
【図3】同じく、リテーナの斜視図。
【図4】同じく、リテーナの平面図。
【図5】同じく、図4における矢視A−A線拡大断面図。
【図6】同じく、リテーナの正面図。
【図7】同じく、コネクタ本体にリテーナを挿入した状態の斜視図。
【図8】同じく、このコネクタに装着するFPCの斜視図。
【図9】同じく、FPCをリテーナに取付けた状態の斜視図。
【図10】同じく、FPCをリテーナに取付けた状態の拡大断面図。
【図11】同じく、FPCを取り付けたリテーナをコネクタ本体に装着した状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
FPCの信号線露出部が形成されている端縁側をU字形に弯曲させて専用のリテーナに取付、これをコネクタ本体に挿入することにより、FPCの信号線露出部と裏面側のグラウンド層露出部を共に前方側に向けさせ、前方側を向いたこれら各露出部に同一方向からそれぞれ端子金具を接触させる様にした点に最大の特徴がある。
【実施例1】
【0011】
この発明に係るFPC用コネクタは、コネクタ本体とこのコネクタ本体へ挿入されるリテーナとから構成されるものであり、図中5はコネクタ本体、11はリテーナを示す。
コネクタ本体5は絶縁性を有する合成樹脂を素材として構成されており、柱状をなし、長手方向軸芯に沿って、上下方向に、方形箱形をなした凹穿部1が形成されていると共に、その長手方向両端には、前記凹穿部1に連通し、かつ、これに対して直角の方向を向いた溝形をなしたリテーナ挿入用のポケット2が形成されている。
又、このコネクタ本体5の前面には、複数の端子金具3が、その接触腕4を、前記凹穿部1の開口部の方向を向いて片持式に延設された状態で、多数並列せしめられている。
【0012】
更に、前記ポケット2の一対の側壁22の外側には、リテーナ11の両端面に形成された突条23に弾性的に係合する板バネ24が内側方向に付勢された状態で植設されている。同じく、同ポケット2の一対の側壁22の外側には、グラウンド用接続端子20がその接続腕21を後方へ向かって付勢させた状態で植設されている。
【0013】
一方、リテーナ11は、前記コネクタ本体5の凹穿部1に挿入される部材であり、絶縁性を有する合成樹脂を素材とし、柱状をなし、図5に示す様に、下縁6が円弧状に形成された板状のリテーナ本体7の両端に、前記コネクタ本体5のポケット2に挿入される鍔部8が一体的に設けられており、該鍔部8の前縁両側には、保持すべきFPC18の側縁をその両側から抱き込むカギ形をなしたFPC保持片9が対向して設けられている。
又、鍔部8の外側両面には、コネクタ本体5に植設されている板バネ24に係合する突条23がそれぞれ形成されている。
【0014】
又、リテーナ本体7の後方内側には、FPC係止用のフック10が、リテーナ本体7と間隔をあけてこれと平行に垂下せしめられている。更に、鍔部8の上部後方からは、鍔部8と90°変位した方向、直ち、リテーナ本体7の軸芯と同じ向きに、腕材25が一体的に延設され、この腕材25から下方に向かって支持板26が同じく一体的に形成されており、この支持板26の下端には、前方へ向かって突条27が形成され、後記するFPC18の端縁に形成されている張り出し片17の下縁をこのストッパー突条27によって係止する様になっている。
【0015】
次に、この発明に係るコネクタに接合するFPC18について説明すると、このFPC18は、リテーナ本体7の横幅Bよりわずかに小さい横幅Cを有し、その表面側13には、多数の信号線28が平行に、裏面側15には、グラウンド層29がそれぞれ形成されており、これら信号線28及びグラウンド層29は絶縁層31によって覆われている。そして、表面13側の長手方向端縁12寄りの部分には、信号線露出部14が形成されている。又、長手方向端縁12の両側には、前記フック10に係合される張り出し片17が形成されており、この張り出し片17の裏面側には、グラウンド層露出部16が形成されている。
【0016】
更に、長手方向端縁12寄り部分の内側には、前記リテーナ11に形成されているフック10と係合する係止用の透孔30が形成されている。なお、前記信号線露出部14は長手方向端縁12寄りの部分を折り返した際に、図10に示す様に、張り出し片17の前方側にくる様な位置に形成されている。
【0017】
この発明に係るFPC用コネクタは上記の通りの構成を有するものであり、図9及び図面10に示す様に、FPC18の長手方向端縁12側を、リテーナ11の対向した一対のFPC保持片9の間を通過させて、その裏面15側をリテーナ本体11の前面及びその下部の円弧状の端縁12に沿わせてU字形に弯曲させ、その端縁12をリテーナ本体12の裏面側に位置させ、透孔30をフック10に係合させる共に、張り出し片17の下縁を支持板26の突条27に係止させることにより、FPC18をリテーナ11に取付け、この状態のまま、リテーナ11をコネクタ本体5の凹穿部1に挿入する。リテーナ11がコネクタ本体7に完全に挿入されると、コネクタ本体5の板バネ25はリテーナ11の突条23に係合して、これを弾性的に押圧し、コネクタ本体5とリテーナ11との結合状態は安定的に保持される。そして、この状態において、コネクタ本体5の端子金具3の接触腕4がFPC18の信号線露出部14に、リテーナ11のグラウンド用端子金具20の接触腕21がFPC18のグラウンド層露出部16にそれぞれ電気的に接続され、FPC18とこのコネクタとの装着は完成する。
【0018】
なお、各電気的接続箇所は、必要に応じて半田付けしても良く、そうすれば電気的接続はより確実となり、振動等に対する耐久性はより向上する。一方、使用条件によっては、接触箇所における接触圧が十分な場合は半田付けを特に必要とせず、この場合においては、リテーナ11をコネクタ本体12から必要に応じて着脱することが出来る。
【0019】
以上述べた様に、この発明に係るFPC用コネクタにおいては、端子金具が信号線露出部及びグラウンド層露出部にいずれも前面側から接触して電気的接続関係を維持する様になっているので、従来のものの様に、表面側の信号線露出部と裏面側のグラウンド層露出部の相対位置に起因する接触圧の不均衡が起きるおそれは全くなく、安定的に電気的接続関係を保つことが出来る。又、半田付け作業を行う場合には、一方の面からの作業で足りるので、ロボットなどによる自動化も極めて容易である。更に、接続箇所はすべて前面に位置しているので、目視により確認も容易であり、従来のFPC用コネクタに比べ、信頼性、耐久性、作業性において格段に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0020】
自動車用電装品、家電、コンピューター関連機器等、FPCを利用するあらゆる電気分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0021】
1.凹穿部
2.ポケット
3.端子金具
4.接触腕
5.コネクタ本体
6.下縁
7.リテーナ本体
8.鍔部
9.FPC保持片
10.フック
11.リテーナ
12.端縁
13.表面
14.信号線露出部
15.裏面
16.グラウンド層露出部
17.張り出し片
18.FPC
20.グラウンド用端子金具
21.接続腕
22.側壁
23.突条
24.板バネ
25.腕材
26.支持板
27.突条
28.信号機
29.グラウンド層
30.透孔
31.絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状をなし、長手方向軸芯に沿って、上下方向にリテーナ挿入用の凹穿部(1)が形成されていると共に、長手方向両端には、前記凹穿部(1)に連通し、かつ、これに対して直角の方向に、リテーナ(11)の鍔部(8)挿入用のポケット(2)が形成されており、前面からは、複数の端子金具(3)がその接触腕(4)を凹穿部(1)の方向を向いて片持式に延設された状態で並列されており、前記ポケット(2)の下部からは、グラウンド用端子金具(20)が、その接触腕(21)が後方へ向かって付勢された状態で植設されているコネクタ本体(5)と;
前記凹穿部(1)に挿入可能な寸法を有する柱状をなし、下縁(6)が円弧状に形成されているリテーナ本体(7)の両端に、前記コネクタ本体(5)のポケット(2)に挿入される鍔部(8)が一体的に設けられており、該鍔部(8)の前縁両側には、保持すべきFPC(18)の側縁をその両側から抱き込むカギ形のFPC保持片(9)が対向して設けられており、リテーナ本体(7)の後方内側にはFPC係止用のフック(10)が、リテーナ本体(7)と間隔をあけて、これと平行に垂下せしめられているおり、鍔部(8)の上部後方からはリテーナ本体(7)の軸芯と同じ向きに支持板(26)が垂設されているリテーナ(11);とからなり、
前記リテーナ(11)のリテーナ本体(7)よりわずかに小さい幅を有し、長手方向端縁(12)寄りの表面(13)側には信号線露出部(14)が形成されており、長手方向端縁(12)の両側には前記支持板(26)に当接する張り出し片(17)が一体的に形成されており、該張り出し片(17)の裏面側(15)にはグラウンド層露出部(16)が形成されており、長手方向端縁(12)寄りの部分の内側に、前記リテーナ(11)に形成されているフック(10)と係合する透孔(30)が形成されているFPC(18)を、その長手方向端縁(12)側をリテーナ(11)の対向した一対のFPC保持片(9)の間を通過させ、リテーナ本体(7)の前面及びその下部の円弧状の端縁(12)に沿わせてU字形に弯曲させ、その端縁(12)をリテーナ本体(7)裏面側に位置させて、その透孔(30)をFPC係止用のフック(10)に係合させることにより、FPC(18)をリテーナ(11)に取付け、この状態でリテーナ(11)をコネクタ本体(5)の凹穿部(1)に挿入し、コネクタ本体(5)の端子金具(3)の接触腕(4)をFPC(18)の信号線露出部(14)に、グラウンド用端子金具(20)の接触腕(21)をFPC(18)のグラウンド層露出部(16)にそれぞれ電気的に接続せしめる様にしたことを特徴とするFPC用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−186112(P2012−186112A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50010(P2011−50010)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000115142)ユニオンマシナリ株式会社 (38)
【Fターム(参考)】