説明

FRET測定方法及びFRET測定装置

【課題】解離定数Kの大きさによらず、解離定数Kを精度よく求めることができるFRET測定技術を提供する。
【解決手段】レセプターとリガンドが結合し、第1分子及び第2分子が設けられた測定サンプルにレーザ光を照射し、第1分子から第2分子へエネルギーが移動するFRETを測定するFRET測定方法であって、レーザ光を測定サンプルに照射するステップと、測定サンプルが発する蛍光を計測するステップと、第1分子の蛍光寿命を算出するステップと、結合比率を算出するステップと、測定サンプルの結合条件を設定するステップと、解離定数を算出するステップと、を有し、解離定数を算出するステップは、最小二乗法を用いて、測定サンプル中のレセプターの全濃度と解離定数とを変数とする関数を、結合比率算出ステップで算出された結合比率にフィッティングすることにより、解離定数を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光の照射によってドナー分子(第1分子)がエネルギーを吸収し、ドナー分子からアクセプター分子(第2分子)へエネルギーが移動するFRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer:蛍光共鳴エネルギー移動)を測定する方法及び装置に関する。具体的には、レセプターとリガンドが結合し、ドナー分子及びアクセプター分子が設けられた測定サンプルにレーザ光を照射し、解離定数を求めるFRET測定装置及びFRET測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、医療、創薬、食品産業におけるポストゲノム関連技術として、タンパク質の機能解析が重要となっている。特に、細胞の作用を解析するために、生細胞における生体物質であるタンパク質と、他のタンパク質や低分子化合物との間の相互作用(結合、分離)の研究が必要である。
蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)現象を利用して、生細胞における生体物質であるタンパク質と、他のタンパク質や低分子化合物との間の相互作用の解析が行われている。FRET現象により生じる蛍光を測定することにより、数ナノメータの領域での分子間の相互作用を測定することができる。
【0003】
例えば、FRET発生時のドナー分子の蛍光寿命τと、アクセプター分子が存在しないときのドナー分子の蛍光寿命τとを用いて、ドナー分子からアクセプター分子へのエネルギー移動の程度を示すFRET効率を求める技術が知られている(特許文献1)。
上記特許文献1において、FRET効率は、1−τ/τにより求められる。
【0004】
しかし、上記FRET効率は、ドナー分子やアクセプター分子の濃度に影響を受けるため、上記技術を用いて細胞等に含まれるタンパク質の相互作用の強さを定量的に求めることは難しい。
【0005】
一般に、分子が相互作用する際の結合の強さを表す指標として、解離定数Kが用いられる。しかし、解離定数Kを精度よく測定することが容易ではない場合がある。以下、解離定数Kについて説明する。例えば、下記式(1)に示される反応の場合、解離定数Kは、下記式(2)のように定義される。ここで、Lはリガンド、Rはレセプター、LRはリガンドと結合しているレセプターを示す。また、[L]はレセプターと結合していないリガンドの濃度(以下、「リガンド濃度」と呼ぶ。)、[R]はリガンドと結合していないレセプターの濃度(以下、「レセプター濃度」と呼ぶ。)、[LR]はリガンドと結合しているレセプターの濃度を示す。
【数1】


【数2】

【0006】
ここで、サンプル中に含まれる全リガンド濃度を[L]、全レセプター濃度を[R]とすると、[L]、[R]は以下のような関係式で表される。
【数3】

【0007】
式(2)と式(4)より[R]を消去すると、下記式(5)が得られる。
【数4】


式(5)の左辺は、全レセプターのうちリガンドと結合しているレセプターの割合を示すものである。[LR]/[R]を[L]の対数軸に対してプロットすると、シグモイド曲線となる。
【0008】
解離定数Kが大きいことは、式(1)の右辺から左辺への反応が起こりやすいことを示す。そのため、解離定数Kがある程度大きい場合は、[L]>>[LR]の関係が成り立つ。このとき、式(3)と式(5)より、[LR]/[R]は下記式(6)のように近似される。
【数5】

【0009】
式(6)によれば、全リガンド濃度[L]が解離定数Kに等しくなるとき、サンプル中に含まれる全レセプターのうちリガンドと結合しているレセプターの割合[LR]/[R]が0.5となる。そのため、全リガンド濃度[L]を変化させながら[LR]/[R]を測定し、[LR]/[R]が0.5となるときの全リガンド濃度[L]から解離定数Kを求めることができる。
平衡状態にあるリガンドの濃度[L]を測定するのが困難な場合であっても、全リガンド濃度[L]を求めることは可能であるため、上記のような方法により解離定数Kを求める手法が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−240424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、解離定数Kが小さい場合は、[L]>>[LR]の関係式が成り立たないため、式(5)を式(6)のように近似することができない。そのため、解離定数Kが小さい場合、全リガンド濃度[L]を変化させながら[LR]/[R]を測定し、[LR]/[R]が0.5となるときの全リガンド濃度[L]は、解離定数Kの値とは異なる値となり、従来の手法では、解離定数Kを正しく求めることができない。
【0012】
そこで、本発明は、解離定数Kの大きさによらず、解離定数Kを精度よく測定することができるFRET測定方法及びFRET測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のFRET測定方法は、レセプターとリガンドが結合し、第1分子及び第2分子が設けられた測定サンプルにレーザ光を照射し、第1分子から第2分子へエネルギーが移動するFRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer)を測定するFRET測定方法であって、強度が時間変調されたレーザ光を前記測定サンプルに照射する照射ステップと、前記レーザ光を照射された前記測定サンプルが発する蛍光を計測する計測ステップと、前記計測ステップで計測された蛍光信号を用いて、第1分子の蛍光寿命を算出する蛍光寿命算出ステップと、前記蛍光寿命算出ステップで算出された前記蛍光寿命を用いて、前記測定サンプルに含まれる前記レセプターのうちFRETが発生しているレセプターの比率である結合比率を算出する結合比率算出ステップと、前記結合比率が異なるように、前記測定サンプルの結合条件を設定する結合条件設定ステップと、前記レセプターと前記リガンドとの結合の度合いを示す解離定数を算出する解離定数算出ステップと、を有し、前記解離定数算出ステップは、最小二乗法を用いて、前記測定サンプル中の前記レセプターの全濃度と前記解離定数とを変数とする関数を、前記結合比率算出ステップで算出された前記結合比率にフィッティングすることにより、前記解離定数を求めることを特徴とする。
【0014】
また、前記結合比率をκFRET、前記測定サンプル中に含まれる前記レセプターの全濃度を[R]、前記測定サンプル中に含まれる前記リガンドの全濃度を[L]、前記解離定数をKとすると、前記解離定数算出ステップは、[R]とKとを変数とする二変数最小二乗法を用いて、下記式を、κFRETと[L]とにフィッティングすることにより、前記解離定数Kを求めることが好ましい。
【数6】

【0015】
また、前記蛍光寿命算出ステップは、前記計測ステップで計測された蛍光信号と前記レーザ光を変調する変調信号との位相差を用いて、第1分子の蛍光寿命を算出することが好ましい。
【0016】
また、前記レセプターには、第1分子と第2分子が結合しており、前記結合条件設定ステップは、前記測定サンプルに前記リガンドを添加することにより、前記結合比率が異なるように前記サンプルの結合条件を設定することが好ましい。
【0017】
また、前記レセプターには、第1分子が結合しており、前記リガンドには、第2分子が結合しており、前記結合条件設定ステップは、前記測定サンプルに前記リガンドを添加することにより、前記結合比率が異なるように前記サンプルの結合条件を設定することが好ましい。
【0018】
本発明のFRET測定装置は、レセプターとリガンドが結合し、第1分子及び第2分子が設けられた測定サンプルにレーザ光を照射し、第1分子から第2分子へエネルギーが移動するFRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer)を測定するFRET測定装置であって、強度が時間変調されたレーザ光を前記測定サンプルに照射するレーザ光源部と、前記レーザ光を照射された前記測定サンプルが発する蛍光を計測する計測部と、前記計測部で計測された蛍光信号を用いて、第1分子の蛍光寿命を算出する蛍光寿命算出部と、前記蛍光寿命算出部で算出された前記蛍光寿命を用いて、前記測定サンプルに含まれる前記レセプターのうちFRETが発生しているレセプターの比率である結合比率を算出する結合比率算出部と、前記レセプターと前記リガンドとの結合の度合いを示す解離定数を算出する解離定数算出部と、を備え、前記解離定数算出部は、最小二乗法を用いて、前記測定サンプル中の前記レセプターの全濃度と前記解離定数とを変数とする関数を、前記結合比率が異なる複数の結合条件において前記結合比率算出部で算出された前記結合比率にフィッティングすることにより、前記解離定数を求めることを特徴とする。
【0019】
また、前記結合比率をκFRET、前記測定サンプル中に含まれる前記レセプターの全濃度を[R]、前記測定サンプル中に含まれる前記リガンドの全濃度を[L]、前記解離定数をKとすると、前記解離定数算出部は、[R]とKとを変数とする二変数最小二乗法を用いて、下記式を、κFRETと[L]とにフィッティングすることにより、前記解離定数Kを求めることが好ましい。
【数7】

【0020】
また、前記蛍光寿命算出部は、前記計測部で計測された蛍光信号と前記レーザ光を変調する変調信号との位相差を用いて、第1分子の蛍光寿命を算出することが好ましい。
【0021】
また、前記レセプターには、第1分子と第2分子が結合しており、前記解離定数算出部は、前記測定サンプルに前記リガンドを添加することにより前記結合比率を異ならせた複数の結合条件において、前記結合比率算出部で算出された前記結合比率をフィッティングすることにより、前記解離定数を求めることが好ましい。
【0022】
また、前記レセプターには、第1分子が結合しており、前記リガンドには、第2分子が結合しており、前記解離定数算出部は、前記測定サンプルに前記リガンドを添加することにより前記結合比率を異ならせた複数の結合条件において、前記結合比率算出部で算出された前記結合比率をフィッティングすることにより、前記解離定数を求めることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のFRET測定方法及びFRET測定装置によれば、解離定数Kの大きさによらず、解離定数Kを精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】FRET測定装置の一実施形態であるフローサイトメータの概略構成図である。
【図2】(a)は、レセプターにリガンドが結合していない状態のサンプルを示す図であり、(b)は、レセプターにリガンドが結合している状態のサンプルを示す図である。
【図3】ドナー分子とアクセプター分子のエネルギー吸収スペクトルと蛍光放射スペクトルの一例を示す図である。
【図4】図1に示すフローサイトメータの計測部の一例を示す概略構成図である。
【図5】図1に示すフローサイトメータの制御・処理部の一例を示す概略構成図である。
【図6】図1に示すフローサイトメータの分析装置の一例を示す概略構成図である。
【図7】FRET測定方法の一例を示すフローチャートである。
【図8】全リガンド濃度に対するドナー分子の蛍光寿命の測定結果の一例を示す図である。
【図9】全リガンド濃度に対する結合比率の測定結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(FRET測定装置の概略構成)
以下、本発明のFRET測定方法及び装置について、詳細に説明する。
図1は、本発明のFRET測定装置の一実施形態であるフローサイトメータ10の概略構成図である。
本実施形態のフローサイトメータ10は、例えば、測定対象となる生細胞中のタンパク質をドナー分子とアクセプター分子で標識したサンプル12(測定サンプル)にレーザ光を照射し、サンプル12が発する蛍光を計測する。計測された蛍光信号を用いることにより、フローサイトメータ10は、解離定数Kの値を求める。図1に示されるように、フローサイトメータ10は、管路20と、レーザ光源部30と、計測部40,50と、制御・処理部100と、分析装置150と、を備える。
【0026】
管路20は、高速流を形成するシース液とともにサンプル12を流す。管路20の出口には、サンプル12を回収する回収容器22が設けられている。
ここで、図2を参照して、本実施形態のサンプル12について説明する。本実施形態のサンプル12では、レセプターRにドナー分子16とアクセプター分子18が結合している。図2(a)は、レセプターRにリガンドLが結合していない状態のサンプル12を示す図であり、図2(b)は、レセプターRにリガンドLが結合している状態のサンプル12を示す図である。図2(a)、(b)に示されるように、本実施形態では、レセプターRにリガンドLが結合するとレセプターRが変形する。その結果、ドナー分子16とアクセプター分子18との距離が近くなり、FRET現象が生じる。従って、本実施形態のフローサイトメータ10によりFRET現象を測定することにより、レセプターRにリガンドLがどの程度結合しているかを知ることが可能となる。
【0027】
図1に戻り、レーザ光源部30は、強度が時間変調されたレーザ光をサンプル12に照射する。サンプル12にレーザ光が照射されることにより、ドナー分子16とアクセプター分子18はそれぞれエネルギーを吸収する。例えば、ドナー分子16がCFP(Cyan Fluorescent Protein)、アクセプター分子18がYFP(Yellow Fluorescent Protein)である場合、ドナー分子16が主にエネルギーを吸収する波長405nm〜450nmのレーザ光が用いられる。レーザ光源部30は、例えば、半導体レーザである。レーザ光源部30が出射するレーザ光の出力は、例えば、5mW〜100mWである。
【0028】
ここで、レーザ光源部30が照射するレーザ光の波長と、ドナー分子16及びアクセプター分子18がエネルギーを吸収する波長との関係、及びFRETの発生について説明する。
図3は、ドナー分子16がCFP、アクセプター分子18がYFPである場合のエネルギー吸収スペクトルと蛍光放射スペクトルを示す図である。曲線Aはドナー分子16のエネルギー吸収スペクトルであり、曲線Aはドナー分子16の蛍光放射スペクトルである。また、曲線Bはアクセプター分子18のエネルギー吸収スペクトルであり、曲線Bはアクセプター分子18の蛍光放射スペクトルである。
図3に示されるように、ドナー分子16が主にエネルギーを吸収する波長領域は、405nm〜450nmである。また、アクセプター分子18が主にエネルギーを吸収する波長領域は、470nm〜530nmである。
【0029】
一般に、ドナー分子16とアクセプター分子18との距離が10nm以下である場合、レーザ光の照射によりドナー分子16が吸収したエネルギーの一部が、クーロン相互作用によりアクセプター分子18へ移動する。アクセプター分子18は、クーロン相互作用によりドナー分子16から移動したエネルギーを吸収することにより励起され、蛍光を発する。この現象は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)と呼ばれる。
【0030】
ドナー分子16としてCFPを用い、アクセプター分子18としてYFPを用いた場合もFRETが発生する。すなわち、クーロン相互作用によりドナー分子16からアクセプター分子18へエネルギーが移動することにより、アクセプター分子18が励起されたことに起因する蛍光を発する。
【0031】
図1に戻り、計測部40は、管路20を挟んでレーザ光源部30と対向するように配置されている。計測部40は、測定点を通過するサンプル12によってレーザ光が前方散乱することにより、サンプル12が測定点を通過する旨の検出信号を出力する光電変換器を備える。計測部40から出力される信号は、制御・処理部100に供給される。計測部40から制御・処理部100に供給される信号は、サンプル12が管路20中の測定点を通過するタイミングを知らせるトリガ信号として用いられる。
【0032】
計測部50は、測定点を通り、レーザ光源部30から出射されるレーザ光の出射方向に対して直交する平面と、測定点を通り、管路20中のサンプル12の移動方向に対して直交する平面との交線上に配置されている。計測部50は、測定点にてレーザ光を照射されたサンプル12が発する蛍光を受光する光電子倍増管やアバランシェフォトダイオード等の光電変換器を備える。
【0033】
ここで、図4を参照して、計測部50の構成の詳細を説明する。図4は、本実施形態の計測部50の一例を示す概略構成図である。図4に示されるように、計測部50は、レンズ系51と、ダイクロイックミラー52と、バンドパスフィルター53,54と、光電変換器55,56と、を備える。
レンズ系51は、サンプル12が発する蛍光を集束させる。ダイクロイックミラー52は、アクセプター分子18が発する蛍光を透過し、ドナー分子16が発する蛍光を反射させるように、反射、透過の波長特性が定められている。
【0034】
バンドパスフィルター53,54は、光電変換器55,56の受光面の前面に設けられる。バンドパスフィルター53,54は、所定の波長帯域の蛍光のみを透過させる。具体的には、バンドパスフィルター53は、ドナー分子16が主に蛍光を発する波長帯域(図3においてAで示される帯域)の蛍光を透過するように設定されている。また、バンドパスフィルター54は、アクセプター分子18が主に蛍光を発する波長帯域(図3においてBで示される帯域)の蛍光を透過するように設定されている。
【0035】
光電変換器55,56は、受光した光を電気信号に変換する。光電変換器55,56は、例えば、光電子倍増管を備えたセンサである。光電変換器55,56が受光する蛍光は、強度変調されたレーザ光よりも位相が遅れている。そのため、光電変換器55,56は、強度変調されたレーザ光に対する位相差の情報を持った光信号を受光し、電気信号に変換する。光電変換器55,56から出力された信号(蛍光信号)は、制御・処理部100に供給される。
【0036】
ここで、図5を参照して、制御・処理部100の構成の詳細を説明する。図5は、本実施形態の制御・処理部100の一例を示す概略構成図である。図5に示されるように、制御・処理部100は、信号生成部110と、信号処理部120と、コントローラ130と、を備える。
信号生成部110は、レーザ光の強度を時間変調するための変調信号を生成する。変調信号は、例えば、所定の周波数の正弦波信号であり、10MHz〜100MHzの範囲の周波数に設定される。
信号生成部110は、発振器112と、パワースプリッタ114と、増幅器116,118と、を備える。発振器112により生成された変調信号は、パワースプリッタ114により分けられ、レーザ光源部30と信号処理部120とに供給される。信号生成部110が変調信号を信号処理部120に供給するのは、後述するように、変調信号に対する蛍光信号の位相差を測定するための参照信号として用いるためである。また、変調信号は、レーザ光源部30が出射するレーザ光の振幅を変調するための信号として用いられる。
【0037】
信号処理部120は、光電変換器55,56から出力される蛍光信号を用いて、サンプル12が発する蛍光の情報を抽出する。サンプル12が発する蛍光の情報は、例えば、蛍光の強度に関する情報や、蛍光の寿命に関する情報である。信号処理部120は、増幅器122,124と、位相差検出器126と、を備える。
増幅器122,124は、光電変換器55,56から出力される信号を増幅し、増幅した信号を位相差検出器126に出力する。
【0038】
位相差検出器126は、光電変換器55,56から出力された蛍光信号のそれぞれについて、変調信号(参照信号)に対する位相差を検出する。位相差検出器126は、不図示のIQミキサを備えている。IQミキサは、参照信号と蛍光信号とを乗算することにより、蛍光信号のcos成分(実数部)と高周波成分を含む処理信号を算出する。また、IQミキサは、参照信号の位相を90度シフトさせた信号と蛍光信号とを乗算することにより、蛍光信号のsin成分(虚数部)と高周波成分を含む処理信号を算出する。
【0039】
コントローラ130は、信号生成部110が所定の周波数の正弦波信号を生成するように、信号生成部110を制御する。また、コントローラ130は、信号処理部120により出力された蛍光信号のcos成分とsin成分を含む処理信号から、高周波成分を取り除いて蛍光信号のcos成分とsin成分を求める。
【0040】
コントローラ130は、ローパスフィルタ132と、増幅器134と、A/D変換器136と、システム制御器138と、を備える。ローパスフィルタ132は、信号処理部120から出力された蛍光信号のcos成分とsin成分と高周波成分を含む信号から、高周波成分を取り除く。増幅器134は、ローパスフィルタ132によって高周波成分が取り除かれた信号である、蛍光信号のcos成分、sin成分の処理信号を増幅し、A/D変換器136に出力する。A/D変換器136は、蛍光信号のcos成分、sin成分の処理信号をサンプリングし、分析装置150に供給する。システム制御器138は、計測部40から出力されるトリガ信号の入力を受ける。また、システム制御器138は、発振器112とA/D変換器136を制御する。
【0041】
図1に戻り、分析装置150は、蛍光信号のcos成分(実数部)、sin成分(虚数部)の処理信号から、蛍光寿命、結合比率、解離定数などを算出する。
分析装置150は、コンピュータ上で所定のプログラムを起動させることにより構成される装置である。ここで、図6を参照して、分析装置150の構成を詳細に説明する。図6は、本実施形態の分析装置150の一例を示す概略構成図である。図6に示されるように、分析装置150は、CPU152と、メモリ154と、入出力ポート156と、蛍光寿命算出ユニット158と、結合比率算出ユニット160と、解離定数算出ユニット162と、判定部164と、を備える。
また分析装置150には、ディスプレイ200が接続されている。
【0042】
CPU152は、コンピュータに設けられた演算プロセッサである。CPU152は、蛍光寿命算出ユニット158、結合比率算出ユニット160、解離定数算出ユニット162の各種計算を実質的に実行する。
メモリ154は、コンピュータ上で実行することにより、蛍光寿命算出ユニット158、結合比率算出ユニット160、解離定数算出ユニット162を形成するプログラムを格納したROMと、これらのユニットにより算出された処理結果や入出力ポート156から供給されたデータを記憶するRAMと、を備える。
【0043】
入出力ポート156は、コントローラ130から供給される蛍光信号のcos成分(実数部)、sin成分(虚数部)の値の入力を受ける。また、入出力ポート156は、各ユニットにより算出された処理結果をディスプレイ200に出力する。
ディスプレイ200は、各ユニットにより求められた各種情報や処理結果などを表示する。
【0044】
蛍光寿命算出ユニット158は、計測部50で計測された蛍光信号を用いて、ドナー分子16の蛍光寿命を算出する。例えば、蛍光寿命算出ユニット158は、コントローラ130から供給される蛍光信号のcos成分及びsin成分の値から、変調信号に対する蛍光信号の位相差を求める。また、蛍光寿命算出ユニット158は、求めた位相差を用いて、ドナー分子16の蛍光寿命を算出する。具体的に、蛍光寿命算出ユニット158は、後述する式(21)に基づいて、位相差のtan成分を変調信号の角周波数で除算することにより、蛍光寿命を算出する。蛍光寿命は、レーザ光の照射により発せられる蛍光成分が、1次遅れ系の緩和応答であるとしたときの蛍光緩和時定数で表される。
【0045】
結合比率算出ユニット160は、蛍光寿命算出ユニット158で算出された蛍光寿命を用いて、サンプル12中に含まれるレセプターRのうちFRETが発生しているレセプターの比率である結合比率を算出する。具体的には、結合比率算出ユニット160は、後述する式(23)により規定される結合比率κFRETを算出する。
【0046】
解離定数算出ユニット162は、レセプターRとリガンドLとの結合の度合いを示す解離定数Kを算出する。具体的には、解離定数算出ユニット162は、サンプル12中のレセプターRの全濃度と解離定数Kとを変数とする最小二乗法を用いて、結合比率算出部160で算出された結合比率κFRETにフィッティングすることにより、解離定数Kを求める。より具体的には、解離定数算出ユニット162は、サンプル12中のレセプターRの全濃度と解離定数Kとを変数とする二変数最小二乗法を用いて、後述する式(8)をフィッティングすることにより、解離定数Kを求める。
【0047】
判定部164は、解離定数算出ユニット162が二変数最小二乗法を用いてフィッティングするために必要となる所定数の測定データが得られたか否かを判定する。
以上が、本実施形態のフローサイトメータ10の構成である。
【0048】
(FRET測定方法の概要)
次に、本発明のFRET測定方法の概要を説明する。
図2を参照して説明したように、本実施形態では、レセプターRにリガンドLが結合することによりFRET現象が生じる。サンプル12中で、レセプターRとリガンドLは、上述した式(1)で表される平衡状態となる。ここで、上述した式(2)、式(3)、式(4)を用いて、[L]、[R]を消去すると、下記式(7)が得られる。
【数8】

【0049】
[LR]<[L]の条件において、上記式(7)を[LR]について解くと、下記式(8)が得られる。
【数9】


上記式(8)は、式(7)の厳密解であり、解離定数Kの大きさによらずに成り立つ関係式である。また、[LR]/[R]は、全レセプターRのうちリガンドLと結合しているレセプターRの比率を示す。以下、レセプターRとリガンドLが結合すると常にFRETが発生すると仮定する。また、サンプル12に含まれるレセプターRのうちFRETが発生しているレセプターRの比率[LR]/[R]を結合比率κFRETと定義する。
【0050】
本発明のFRET測定方法では、全リガンド濃度[L]の値を異ならせ、全リガンド濃度[L]の各々に対して全リガンド濃度[L]に対応する結合比率κFRETを測定する。また、全レセプター濃度[R]と解離定数Kを変数とし、上記式(8)に基づく曲線を、二変数最小二乗法を用いて[L]、κFRETにフィッティングすることにより、解離定数Kを求める。
【0051】
(結合比率κFRETの算出方法)
まず、結合比率κFRETの算出方法を説明する。
サンプル12中の全レセプター濃度をC、FRETが発生しているレセプターの濃度をC、FRETが発生していないレセプターの濃度をCと定義する。ここで、C=C−Cである。また、レーザ光による励起パワーをP(t)、FRETが発生しているレセプターRに結合しているドナー分子16の励起電子数をN(t)、FRETが発生していないレセプターRに結合しているドナー分子16の励起電子数をN(t)と定義する。このとき、励起電子のレート方程式は、下記式(9)、式(10)で表される。
【数10】


ここで、kは発光遷移の速度定数、knrは無輻射遷移の速度定数、kは共鳴エネルギー移動の速度定数である。また、KP(t)は、単位時間、単位体積当りにレーザ光により励起される電子数である。
【0052】
サンプル12に含まれるレセプターRのうちFRETが発生しているレセプターRの比率である結合比率κFRETは、下記式(11)で表される。
【数11】


ここで、式(9)、式(10)、式(11)よりC、Cを消去し、Kex=CKとすると、励起電子のレート方程式は、下記式(12)、式(13)で表される。
【数12】

【0053】
式(12)、式(13)をラプラス変換すると、下記式(14)、式(15)が得られる。
【数13】


ここで、τminはドナー分子16の蛍光寿命の最小値であり、1/τmin=k+knr+kの関係式を満たす。また、τmaxはドナー分子16の蛍光寿命の最大値であり、1/τmax=k+knrの関係式を満たす。
【0054】
τminはサンプル12中の全てのドナー分子16でFRETが発生している場合のドナー分子16の蛍光寿命である。例えば、ドナー分子16に対してアクセプター分子18の濃度を十分に大きくした条件でドナー分子16の蛍光寿命を測定することにより、τminを測定することができる。
また、τmaxはサンプル12中の全てのドナー分子16でFRETが発生していない場合のドナー分子16の蛍光寿命である。例えば、サンプル12中にアクセプター分子18を添加しない条件でドナー分子16の蛍光寿命を測定することにより、τmaxを測定することができる。
このように、τminとτmaxの値は、測定により求めることができる。
【0055】
上記式(14)、式(15)より、サンプル12中のドナー分子16の励起電子数N(s)は、下記式(16)で表される。
【数14】


式(16)の括弧で示される部分がドナー分子16の蛍光寿命に関係するため、式(16)の括弧で示される部分をTと定義して整理すると、下記式(17)が得られる。
【数15】

【0056】
ここで、上記式(17)のsにjωを代入して整理すると、下記式(18)が得られる。
【数16】


ここで、θ、θは、下記式(19)、式(20)で表される。
【数17】


ここで、ωはレーザ光を変調する変調信号の角周波数である。また、θ−θは、ドナー分子16の蛍光信号とレーザ光を変調する変調信号との位相差である。
【0057】
ドナー分子16の蛍光信号とレーザ光を変調する変調信号との位相差、および、変調信号の角周波数より、ドナー分子16の蛍光寿命τは、下記式(21)により求められる。
【数18】


ここで、上記式(19)、式(21)よりθを消去すると、下記式(22)が得られる。
【数19】

【0058】
上記式(22)をκFRETについて解くと、下記式(23)が得られる。
【数20】


上記式(23)により、ドナー分子16の蛍光寿命τから結合比率κFRETを求めることができる。なお、上述したように、τmin、τmaxの値は、別途測定により求めることができる。式(23)により求められた結合比率κFRETを用いて、後述するように結合定数Kを求めることができる。
【0059】
(FRET測定方法)
次に、図7、図8、図9を参照して、本発明のFRET測定方法について説明する。図7は、本発明のFRET測定方法の一例を示すフローチャートである。図8は、全リガンド濃度[L]に対するドナー分子16の蛍光寿命τの測定結果の一例を示す図である。図9は、全リガンド濃度[L]に対する結合比率κFRETの測定結果の一例を示す図である。
【0060】
まず、フローサイトメータ10がサンプル12の結合条件を設定する(ステップS101)。例えば、サンプル12に添加される全リガンド濃度[L]を調整することにより、サンプル12の結合条件が設定される。
次に、強度が時間変調されたレーザ光を、レーザ光源部30がサンプル12に照射する(ステップS102)。次に、計測部50が、測定点にてレーザ光を照射されたサンプル12が発する蛍光を受光する(ステップS103)。
【0061】
次に、蛍光寿命算出ユニット158が、計測部50で計測された蛍光信号を用いて、ドナー分子16の蛍光寿命を算出する(ステップS104)。具体的には、蛍光信号と変調信号との位相差(θ−θ)から、上述した式(21)に基づいて、蛍光寿命算出ユニット158がドナー分子16の蛍光寿命を算出する。ステップS104により、図8に示される1つの測定結果が得られる。
【0062】
次に、結合比率算出ユニット160が、蛍光寿命算出ユニット158で算出された蛍光寿命τを用いて、結合比率κFRETを算出する(ステップS105)。具体的には、蛍光寿命算出ユニット158で算出された蛍光寿命τを用いて、上述した式(23)に基づいて、結合比率算出ユニット160が結合比率κFRETを算出する。調整した[L]に応じて、結合比率κFRETが得られる。したがって、ステップS105により、図9に示される1つの測定結果が得られる。
【0063】
次に、二変数最小二乗法を用いてフィッティングするために必要となる所定数の測定データが得られたか否かを、判定部164が判定する(ステップS106)。解離定数算出ユニット162が二変数最小二乗法を用いてフィッティングするために、例えば、10〜15点程度の測定データが得られていることが好ましい。得られた測定データの数(測定数)が所定数よりも少ないと判定部164が判定した場合、所定数の測定データが得られるまで、上述したステップS101〜S105を繰り返す。
【0064】
所定数の測定データが得られ、測定数が所定数に等しいと判定部164が判定した場合、解離定数算出ユニット162が、レセプターRとリガンドLとの結合の度合いを示す解離定数Kを算出する。具体的には、全レセプター濃度[R]と解離定数Kとを変数とする二変数最小二乗法を用いて、解離定数算出ユニット162が上述した式(8)を、結合比率κFRET、全リガンド濃度[L]にフィッティングすることにより、解離定数Kが求められる。
【0065】
以上説明したように、本発明によれば、最小二乗法を用いて、サンプル12中の全レセプター濃度[R]と解離定数Kとを変数とする関数を、結合比率κFRET、全リガンド濃度[L]にフィッティングすることにより、解離定数Kが求められる。そのため、本発明によれば、解離定数Kの大きさによらず、解離定数Kを精度よく測定することができる。
【0066】
なお、上述した実施形態では、図2を参照して説明したように、レセプターRにドナー分子16とアクセプター分子18が結合している場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、レセプターRにドナー分子16が結合しており、リガンドLにアクセプター分子18が結合している場合にも、本発明を適用することができる。
【0067】
以上、本発明のFRET測定方法、及び、FRET測定装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0068】
10 フローサイトメータ
12 サンプル
16 ドナー分子
18 アクセプター分子
20 管路
22 回収容器
30 レーザ光源部
40,50 計測部
51 レンズ系
52 ダイクロイックミラー
53,54 バンドパスフィルター
55,56 光電変換器
100 制御・処理部
110 信号生成部
112 発振器
114 パワースプリッタ
116,118 増幅器
120 信号処理部
122,124 増幅器
126 位相差検出器
130 コントローラ
132 ローパスフィルタ
134 増幅器
136 A/D変換器
138 システム制御器
150 分析装置
152 CPU
154 メモリ
156 入出力ポート
158 蛍光寿命算出ユニット
160 結合比率算出ユニット
162 解離定数算出ユニット
164 判定部
200 ディスプレイ
R レセプター
L リガンド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
レセプターとリガンドが結合し、第1分子及び第2分子が設けられた測定サンプルにレーザ光を照射し、第1分子から第2分子へエネルギーが移動するFRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer)を測定するFRET測定方法であって、
強度が時間変調されたレーザ光を前記測定サンプルに照射する照射ステップと、
前記レーザ光を照射された前記測定サンプルが発する蛍光を計測する計測ステップと、
前記計測ステップで計測された蛍光信号を用いて、第1分子の蛍光寿命を算出する蛍光寿命算出ステップと、
前記蛍光寿命算出ステップで算出された前記蛍光寿命を用いて、前記測定サンプルに含まれる前記レセプターのうちFRETが発生しているレセプターの比率である結合比率を算出する結合比率算出ステップと、
前記結合比率が異なるように、前記測定サンプルの結合条件を設定する結合条件設定ステップと、
前記レセプターと前記リガンドとの結合の度合いを示す解離定数を算出する解離定数算出ステップと、を有し、
前記解離定数算出ステップは、最小二乗法を用いて、前記測定サンプル中の前記レセプターの全濃度と前記解離定数とを変数とする関数を、前記結合比率算出ステップで算出された前記結合比率にフィッティングすることにより、前記解離定数を求めることを特徴とするFRET測定方法。
【請求項2】
前記結合比率をκFRET、前記測定サンプル中に含まれる前記レセプターの全濃度を[R]、前記測定サンプル中に含まれる前記リガンドの全濃度を[L]、前記解離定数をKとすると、
前記解離定数算出ステップは、[R]とKとを変数とする二変数最小二乗法を用いて、下記式を、κFRETと[L]とにフィッティングすることにより、前記解離定数Kを求める、請求項1に記載のFRET測定方法。
【数1】

【請求項3】
前記蛍光寿命算出ステップは、前記計測ステップで計測された蛍光信号と前記レーザ光を変調する変調信号との位相差を用いて、第1分子の蛍光寿命を算出する、請求項1又は2に記載のFRET測定方法。
【請求項4】
前記レセプターには、第1分子と第2分子が結合しており、
前記結合条件設定ステップは、前記測定サンプルに前記リガンドを添加することにより、前記結合比率が異なるように前記サンプルの結合条件を設定する、請求項1乃至3のいずれかに記載のFRET測定方法。
【請求項5】
前記レセプターには、第1分子が結合しており、
前記リガンドには、第2分子が結合しており、
前記結合条件設定ステップは、前記測定サンプルに前記リガンドを添加することにより、前記結合比率が異なるように前記サンプルの結合条件を設定する、請求項1乃至3のいずれかに記載のFRET測定方法。
【請求項6】
レセプターとリガンドが結合し、第1分子及び第2分子が設けられた測定サンプルにレーザ光を照射し、第1分子から第2分子へエネルギーが移動するFRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer)を測定するFRET測定装置であって、
強度が時間変調されたレーザ光を前記測定サンプルに照射するレーザ光源部と、
前記レーザ光を照射された前記測定サンプルが発する蛍光を計測する計測部と、
前記計測部で計測された蛍光信号を用いて、第1分子の蛍光寿命を算出する蛍光寿命算出部と、
前記蛍光寿命算出部で算出された前記蛍光寿命を用いて、前記測定サンプルに含まれる前記レセプターのうちFRETが発生しているレセプターの比率である結合比率を算出する結合比率算出部と、
前記レセプターと前記リガンドとの結合の度合いを示す解離定数を算出する解離定数算出部と、を備え、
前記解離定数算出部は、最小二乗法を用いて、前記測定サンプル中の前記レセプターの全濃度と前記解離定数とを変数とする関数を、前記結合比率が異なる複数の結合条件において前記結合比率算出部で算出された前記結合比率にフィッティングすることにより、前記解離定数を求めることを特徴とするFRET測定装置。
【請求項7】
前記結合比率をκFRET、前記測定サンプル中に含まれる前記レセプターの全濃度を[R]、前記測定サンプル中に含まれる前記リガンドの全濃度を[L]、前記解離定数をKとすると、
前記解離定数算出部は、[R]とKとを変数とする二変数最小二乗法を用いて、下記式を、κFRETと[L]とにフィッティングすることにより、前記解離定数Kを求める、請求項6に記載のFRET測定装置。
【数2】

【請求項8】
前記蛍光寿命算出部は、前記計測部で計測された蛍光信号と前記レーザ光を変調する変調信号との位相差を用いて、第1分子の蛍光寿命を算出する、請求項6又は7に記載のFRET測定装置。
【請求項9】
前記レセプターには、第1分子と第2分子が結合しており、
前記解離定数算出部は、前記測定サンプルに前記リガンドを添加することにより前記結合比率を異ならせた複数の結合条件において、前記結合比率算出部で算出された前記結合比率をフィッティングすることにより、前記解離定数を求める、請求項6乃至8のいずれかに記載のFRET測定装置。
【請求項10】
前記レセプターには、第1分子が結合しており、
前記リガンドには、第2分子が結合しており、
前記解離定数算出部は、前記測定サンプルに前記リガンドを添加することにより前記結合比率を異ならせた複数の結合条件において、前記結合比率算出部で算出された前記結合比率をフィッティングすることにより、前記解離定数を求める、請求項6乃至8のいずれかに記載のFRET測定装置。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−237342(P2011−237342A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110383(P2010−110383)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】