FT図作成プログラム、FT図作成装置、記録媒体及びFT図作成方法
【課題】低コストで、そのうえ信頼性も高いFT図を作成することができるFT図作成プログラム、FT図作成装置、記録媒体及びFT図作成方法を提供することにある。
【解決手段】部品部分木作成処理(処理1)、機能部分木作成処理(処理2)及び因果関係部分木作成処理(処理3)の各処理により部品部分木120、機能部分木220及び因果関係部分木(図示せず)を作成する。これら作成した各木を、各ノード間の類似度に基づいてノード間の距離を算出することにより統合し、この算出された距離に基づいてノードの最適な配置を決定し、FT図を作成する。
【解決手段】部品部分木作成処理(処理1)、機能部分木作成処理(処理2)及び因果関係部分木作成処理(処理3)の各処理により部品部分木120、機能部分木220及び因果関係部分木(図示せず)を作成する。これら作成した各木を、各ノード間の類似度に基づいてノード間の距離を算出することにより統合し、この算出された距離に基づいてノードの最適な配置を決定し、FT図を作成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品などに生じた事故、故障などのトラブル情報に基づいてFT図を作成するFT図作成プログラム、FT図作成装置、記録媒体及びFT図作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、あるプロセスを実現するためのシステムにどのような故障の可能性があるかを解析する技術として、故障の木解析(FTA/Fault Tree Analysis)が知られている。このFTAに用いられるのが、故障の木(Fault Tree、以下略して「FT」と呼ぶ)図であり、FT図とは、開発や評価の対象となるシステムやプロセスの故障原因としてどのような事象が考えられるかを木構造のデータとして表した図である。
【0003】
このFT図の作成手法として、従来、人手による作成手法がある。例えば、設計時に予めFT図を作成したり、現場の生データに基づいて作成するという手法がある。しかしながら、前者は、設計者の予測に基づくため、内容が抽象的になり現場に適用しにくいという問題があり、後者は、部分的な情報だけが残るため網羅性に欠けるという問題がある。更に、人手によって作成した場合には、個人差が出てしまい、FT図の信頼性にバラつきも生じる。
【0004】
一方、品質保証やトラブルシューティングなどは、従来、熟練者の経験や勘などの知識(暗黙知)に依存しているというのが実態であるが、熟練者の作業量には限界があることから、熟練者の知識を形式知化して、誰でも作業ができるようにすることが現場において切望されている。そこで、従来、トラブル事例と解決策を記録して蓄積することで形式知化することが行われてきた。しかしながら、多量に蓄積された事例の中から同一あるいは類似の事例を検索し、解決したい問題に適用することは非常に困難であった。
【0005】
そこで、従来から、熟練者の知識やトラブル事例などを形式知化する種々の技術がある。例えば、特許文献1に記載の技術は、事例文からキーワードを抽出し、各事例文が属するクラスタを決定し、その決定結果に基づいて各キーワードの集合で特徴付けられる問題解決木を生成する。すると、その問題解決木の各クラスタに属する各事例文の言語表現の属性に基づいて、各事例文が属するクラスタを細分化するように構成されている。この技術によれば、効率よく事例を分類して問題解決木を構築することができるとともに、検索文と構文的・意味的に類似する文を含む事例を検索することも出来る。
【0006】
しかしながら、この技術は、クラスタ分類によるものであり、トラブル事例の原因と結果という因果構造に着目していないので、問題解決に活用できる知識にはならない。その他にも、似たような技術として、特許文献2に記載の技術がある。この特許文献2に記載の技術は、コンピュータに蓄積される膨大な知識データの中から所望の情報を抽出する技術であり、複数の知識データを関連性に基づいて融合するように構成されている。この技術においても、関連性を示しているだけで、因果構造に着目しておらず、よって問題解決に活用できる知識とはなっていない。
【0007】
熟練者の問題解決手法を反映したFT図が、人手によらず作成出来れば、コスト面及び信頼性の面において有効であるが、未だそのようなものは存在しない。
【0008】
【特許文献1】特開2001−188678号公報
【0009】
【特許文献2】特開2003−337933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、低コストで、そのうえ信頼性も高いFT図を作成することができるFT図作成プログラム、FT図作成装置、記録媒体及びFT図作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、対象物に生じた事故や故障などのトラブル情報をトップダウン的に解析し、そのトラブルの原因と結果からツリー構造のFT図を作成するFT図作成プログラムであって、上記FT図作成プログラムは、コンピュータを、部品部分木作成手段、機能部分木作成手段、少なくとも事象抽出手段と因果関係抽出手段とを有する因果関係部分木作成手段、ノード間類似度算出手段を有するFT図作成手段、として機能させるものであり、上記部品部分木作成手段は、上記対象物の構成部品に関するデータをそれぞれ部品ノードとし、各部品ノードをトップダウン的なツリー構造に表記する部品部分木を作成する手段であり、上記機能部分木作成手段は、上記対象物における機能に関するデータをそれぞれ機能ノードとし、各機能ノードをトップダウン的なツリー構造に表記する機能部分木を作成する手段であり、上記事象抽出手段は、上記トラブル情報を解析することにより該トラブル情報を構造化し、該構造化されたトラブル情報に基づいて該トラブルにおける全ての事象を抽出する手段であり、上記因果関係抽出手段は、上記事象抽出手段により抽出された事象間の因果関係を抽出する手段であり、上記因果関係部分木作成手段は、上記事象抽出手段により抽出された各事象を事象ノードとし、各事象ノードを上記因果関係抽出手段により抽出された因果関係に基づいてツリー構造に表記する因果関係部分木を作成する手段であり、上記ノード間類似度算出手段は、上記部品部分木、上記機能部分木及び上記因果関係部分木を解析し、各部分木を構成する各ノードの記述内容の類似度を算出する手段であり、上記FT図作成手段は、上記ノード間類似度算出手段により算出された類似度に基づいて、上記部品部分木、上記機能部分木及び上記因果関係部分木を統合することにより、FT図を作成する手段であることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、次のようなロジックによりFT図が自動的に作成されるように構成されている。
【0013】
1つの製品は、通常、複数の部品からなり、各部品がそれぞれの機能を発揮することにより製品全体として正常に機能する。
【0014】
一方、1つの製品が故障した場合には、通常、その製品における故障発生箇所を特定し、どのような症状が生じたのかが解析される。最終的に発生した故障の症状を突き詰めれば、1つの部品あるいは複数の部品の機能障害である。
【0015】
ここで、1つの製品について、その構成部品をノードとし、トップダウン的なツリー構造である部品部分木を作成するのに熟練者の力は必要ないし、既存の解析技術を使用すればコンピュータにより自動的に作成することが可能である。同様に、各構成部品の機能については、仕様書などから容易に特定でき、各構成部品における機能をノードとし、トップダウン的なツリー構造である機能部分木を作成するのに熟練者の力は必要ないし、既存の解析技術を使用すればコンピュータにより自動的に作成することが可能である。
【0016】
これに対し、製品における故障や事故などの発生原因は、種々の原因が考えられるし、発生箇所を特定するのも高度な技術や熟練者の勘などを要する。通常、製品における故障や事故が生じた場合は、その内容、発生箇所、症状などが記載された報告書(事例文)が作成される。この事例文に基づいてFT図を作成すれば、熟練者の知識が反映された信頼性の高いFT図を作成することが可能であるが、FT図を作成するに際しては、関連する事例をまとめたり、症状の上位概念化が必要など作成作業は容易ではなく、仮にそのようなFT図を作成する場合には、熟練者により手作業で作成する必要がある。
【0017】
そこで、本発明においては、事例文から故障や事故等において生じた各事象(物理現象を記述する単位)間の因果関係を抽出し、この抽出された因果関係を上記のようにして作成された部品部分木及び機能部分木に関連付けてFT図を作成するように構成した。
【0018】
すなわち、本発明は、部品部分木や機能部分木における各構成(ノード)間の依存関係、階層構造を利用し、これらに事例から抽出した因果構造を当てはめることにより、具体性のある使えるFT図を簡易に作成することができる。
【0019】
ここで、「対象物」とは、製品やその部品など、あらゆる物が対象となる。また、「構成部品」とは、有形物のみならず、無形物も対象となる。例えば、対象物が「ガスボンベ」であれば、封入されている「ガス」などの無形物も対象となる。
【0020】
上記コンピュータに上記作成されたFT図を編集する機能を実現させるように構成してもよい。
【0021】
上記部品部分木作成手段は、上記対象物の構成部品に関するデータを、部品構成表を読取手段により読み取ることにより取得するようにしてもよい。
【0022】
上記機能部分木作成手段は、上記対象物における機能に関するデータを、仕様書を読取手段により読み取ることにより取得するようにしてもよい。
【0023】
上記トラブル情報は、トラブルに関する情報が記載された事例文を読取手段により読み取ることにより取得するようにしてもよい。
【0024】
上記「読取手段」としては、スキャナなどの光学的読取手段が適用可能である。
【0025】
また、本発明のFT図作成装置は、上記FT図作成プログラムを備えたことを特徴とする。
【0026】
また本発明の記録媒体は、上記FT図作成プログラムを記録したことを特徴とする。
【0027】
記録媒体としては、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROMなど磁気的、光学的に記憶を行うものなどを主として、プログラムが記憶可能なメディアであればよい。
【0028】
また、本発明は、対象物に生じた事故や故障などのトラブル情報をトップダウン的に解析し、そのトラブルの原因と結果からツリー構造のFT図を作成するFT図作成方法であって、上記対象物の構成部品に関するデータをそれぞれ部品ノードとし、各部品ノードをトップダウン的なツリー構造に表記する部品部分木を作成する部品部分木作成工程と、上記対象物における機能に関するデータをそれぞれ機能ノードとし、各機能ノードをトップダウン的なツリー構造に表記する機能部分木を作成する機能部分木作成工程と、上記トラブル情報を解析することにより該トラブル情報を構造化し、該構造化されたトラブル情報に基づいて該トラブルにおける全ての事象を抽出する事象抽出工程と、上記事象抽出工程により抽出された事象間の因果関係を抽出する因果関係抽出工程と、上記事象抽出工程により抽出された各事象を事象ノードとし、各事象ノードを上記因果関係抽出工程により抽出された因果関係に基づいてツリー構造に表記する因果関係部分木を作成する因果関係部分木作成工程と、上記部品部分木、上記機能部分木及び上記因果関係部分木を解析し、各部分木を構成する各ノードの記述内容の類似度を算出するノード間類似度算出工程と、上記ノード間類似度算出工程により算出された類似度に基づいて、上記部品部分木、上記機能部分木及び上記因果関係部分木を統合することにより、FT図を作成するFT図作成工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように本発明によれば、部品部分木、機能部分木及び因果関係部分木を作成し、解析し、各部分木を構成する各ノードの記述内容の類似度を算出し、算出された類似度に基づいて、上記部品部分木、上記機能部分木及び上記因果関係部分木を統合することにより、FT図を作成するように構成した。これにより、熟練者の知識に依存することなく、具体性があり利用価値も高いFT図を安価に作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0031】
図1は本発明の実施形態の概略構成を説明するための機能ブロック図、図2は図1の詳細を示す機能ブロック図、図3は部品部分木作成処理を示すフローチャート、図4は機能部分木作成処理を示すフローチャート、図5は因果関係部分木作成処理を示すフローチャート、図6はFT図作成処理を示すフローチャート、図7は部品部分木の一例を示す図、図8は機能部分木の一例を示す図、図9は部品部分木、機能部分木及び因果関係部分木を統合して本発明のFT図を作成する工程を説明するための説明図、図10は本発明により作成したFT図の一例を示す図、図11は部品構成表の一例を示す図、図12は仕様書の一例を示す図、図13は事例文の一例を示す図である。
【0032】
<構成>
図1は、本発明の概略構成を説明するための機能ブロック図であり、本発明の一実施形態を仮想的な機能ブロック図により示したものである。すなわち、図1は、FT図作成プログラムPを備えたコンピュータCが、該FT図作成プログラムPを実行することにより、FT図を作成し、出力することを示した仮想的な機能ブロック図である。
【0033】
より具体的には、図1及び図2に示す通り、本発明のFT図作成プログラムPは、コンピュータCを、部品部分木作成手段110、機能部分木作成手段210、因果関係部分木作成手段310、FT図作成手段400、として機能させるプログラムである。因果関係部分木作成手段310は、少なくとも事象抽出手段312と因果関係抽出手段313とを有し、FT図作成手段400は、ノード間類似度算出手段402を有している。
【0034】
また、コンピュータCは、CPU(C1)、RAMなどを使ったメインメモリC2、ハードディスク装置などの補助記憶装置C3、キーボード・マウスあるいはスキャナなどの入力装置C4、ディスプレイやプリンタなどの出力装置C5からなる。
【0035】
なお、本発明のFT図作成装置は、このFT図作成プログラムPを備え、該プログラムPを実行するコンピュータCにより実現される。また、本発明のFT図作成方法は、該FT図作成プログラムPを実行することにより実現される。よって、以下においては、本発明のFT図作成プログラムについてのみ説明し、FT図作成装置およびFT図作成方法の説明については省略する。
【0036】
図1に示すように、本発明のFT図作成プログラムPは概略次の通り構成されている。まず、コンピュータCを、部品部分木作成手段110として機能させて部品構成表100(図11参照)から部品部分木120(図7参照)を作成する。次いで、コンピュータCを、機能部分木作成手段210として機能させて仕様書200(図12参照)から機能部分木220(図8参照)を作成する。更に、コンピュータCを、因果関係部分木作成手段310として機能させて事例文300(トラブル情報)(図13参照)から因果関係部分木(図示しない)を作成する。そして、コンピュータCを、FT図作成手段400として機能させて、上記部品部分木120、機能部分木220及び因果関係部分木(図示しない)を統合することによりFT図を作成するように構成されている。なお、本実施形態においては、FT図作成プログラムPは、作成されたFT図を修正可能なエディタ500を有している。
【0037】
図2を用いて、各構成について詳細に説明する。
【0038】
部品部分木作成手段110は、部品構成表解析手段111と、部品部分木構築手段112とを備えており、入力装置C4により部品構成表100から電子データを取得し、部品部分木120を作成する手段である。
【0039】
部品構成表100は、対象となる製品の部品構成について記した文書あるいは該製品の部品の部品構成について記した文書であり、その一例を図11に示している。部品構成表100は、図中、左から記号欄101、部品名欄102及び型式・仕様等欄103から構成されている。ここでは、ある製品の部品「リレー」についての部品構成表が示されている。
【0040】
例えば、「リレー」は、「電磁石」(記号:1)、「接点」(記号:2)及び「筐体」(記号:4)などからなる。記号欄101には、各構成部品に付与された階層的な記号が記入されている。例えば、この部品構成表の最上位の部品である「リレー」には記号:0を付し、「リレー」の構成部品である「電磁石」には記号:1を付してある。
【0041】
更に、「電磁石」の構成部品の「コイル」には記号:1.1を付し、各部品間における階層構造が明確に分かるようにしている。また、構成部品が複数あり、部品構成表が複数枚にわたる場合においても、この記号が重複しないように付与されている。
【0042】
部品構成表100から電子データを取得する方法としては、種々の方法が適用可能である。例えば、部品構成表100を作成した際の電子データから直接取得する方法、部品構成表100をスキャナなどにより光学的に読み取ることにより取得する方法など種々の方法がある。この部品構成表のフォーマットは、部品構成の階層構造や各部品間の依存関係(例えば、Aという部品はBとCという部品から出来ているなど)を解析・抽出し易いようなフォーマットにしておくとよい。
【0043】
部品構成表解析手段111は、部品構成表100の構成・構造をもとに、部品の構成に関する依存関係を理解・抽出する手段である。構成要素に関するより詳細な部品構成表がある場合、再帰的に部品構成を分解して依存関係を理解・抽出する。本実施形態においては、この部品構成表解析手段111により抽出された構成要素が後述する部品部分木120を構成する部品ノード(図7のN0,N01,N02,・・・)となり、該依存関係により、各部品ノード間の階層構造が抽出される。ここでは、この依存関係を抽出するのに、記号欄101の記号が使用される。例えば、部品名「コイル」、「鉄心」に付された記号はそれぞれ記号:1.1,記号:1.2であり、部品名「電磁石」に付された記号:1に「.」+昇順で数字が付された記号が用いられており、この記号を抽出・解析することにより、「コイル」及び「鉄心」は「電磁石」と依存関係にあることが抽出される。このような図表に関する記述知識に関するデータは、予め後述する図表記述知識600に蓄積されている。
【0044】
図表記述知識600は、機能ブロック図の構成要素とその凡例や、部品構成表、機能定義表の各項目、構成要素とその意味など図表に関するデータが蓄積されたハードディスクなどの記憶手段である。この図表記述知識600には、種々のタイプの部品構成表、機能定義表が電子データとして予め蓄積されている。
【0045】
部品部分木構築手段112は、部品構成表解析手段111により抽出された部品構成要素間の依存関係を木構造に構築して部品部分木120を作成し、作成された部品部分木120に関するデータを内部データとして保存する。上記部品構成表解析手段111により抽出・解析された部品構成要素を部品ノードとし、各部品構成要素間の依存関係から各部品ノード間のアーク(図7のA1〜A16)を求めて、図7に示すような部品部分木120を作成する。
【0046】
機能部分木作成手段210は、仕様書構造解析手段211、機能ブロック図理解手段212、機能定義表理解手段213、機能定義文理解手段214、機能構造木構築手段215を備えており、入力装置C4により仕様書200から電子データを取得し、機能部分木220を作成する手段である。
【0047】
仕様書200は、対象となる製品や、該製品を構成する部品などの機能構成について記述した設計文書であり、その一例を図12に示している。仕様書200は、記入項目として、上から機能ブロック図201、各機能の定義202及び各機能の動作203から構成されている。機能ブロック図201は、各構成を機能的に表現したものをブロックで示し、各ブロック間の依存関係(信号の流れや、連動関係など)を矢印で示した図である。
【0048】
各機能の定義202は、項目欄及び各項目の定義欄からなり、項目欄には、上記ブロック内の名称が記入され、定義欄には、項目欄に記載された各構成が、どのような機能のものであるかの説明文あるいは定義文が記載されている。各機能の動作203は、上記項目欄に記載された各構成についての機能・動作説明が項目ごとに記号を付して階層的に記載されている。
【0049】
上述したように、仕様書200においては、各構成について、ブロック図(機能ブロック図201)、機能定義表(各機能の定義202)及び機能定義文(各機能の動作203)を用いて記述されている。なお、この仕様書200においても、上記部品構成表と同様に、後述する各手段により抽出・解析し易いようなフォーマットにより作成するとよい。また、仕様書200から電子データを取得する方法としても、上記部品構成表100における取得方法と同様の方法が適用可能である。
【0050】
仕様書構造解析手段211は、仕様書200の章節構造、図表の構成をもとに機能部分木の要素となる文・図・表を抽出する手段である。仕様書200の全体的構成がどのようになっているかを解析する手段である。この解析により、仕様書200には、「文が含まれている」、「図が含まれている」、「表が含まれている」などの全体的な構成を把握することができる。それぞれにおける詳細な分析は、後述する各手段212、213、214において行われる。
【0051】
機能ブロック図理解手段212は、ブロック図のブロック及び矢印、エッジなどの配置を解釈し、各サブ機能(接点開閉部、筐体機能、接続部など)の依存関係を理解・抽出する手段である。サブ機能とはメイン機能を発揮させるために下位の構成部品が発揮する機能のことである。例えば、製品が「リレー」である場合には、「リレー」全体における機能はメイン機能であり、「リレー」を構成する各部品(例えば、電磁石、端子、筐体など)それぞれの機能がサブ機能である。サブ機能の内容を詳細に説明する仕様書・ブロック図・機能定義表・本文が存在する場合には、再帰的にサブ機能を分解し理解する。
【0052】
機能定義表理解手段213は、機能定義表202に示された項目を解釈し、各サブ機能の内容及び各サブ機能間の依存関係を理解・抽出する手段である。サブ機能の内容を詳細に説明する仕様書・ブロック図・機能定義表・本文が存在する場合には、再帰的にサブ機能を分解し理解する。
【0053】
仕様書構造解析手段211及び機能定義表理解手段213における解析・抽出は、上記説明した図表記述知識600に蓄積された表や図などに関するデータに基づき行われる。
【0054】
機能定義文理解手段214は、機能定義文203に示された文を解釈し、各サブ機能の定義・内容及び各サブ機能間の依存関係を理解・抽出する手段である。サブ機能の内容を詳細に説明する仕様書・ブロック図・機能定義表・本文が存在する場合には、再帰的にサブ機能を分解し理解する。機能定義文203に示された文の解析は、例えば、形態素解析、係り受け解析など種々のテキスト解析により行うことが可能である。例えば、形態素解析を行なうツールとしては、無償ソフトウェアである「茶筌(ChaSen)」、係り受け解析を行なうツールとしては、無償ソフトウェアである「南瓜(CaboCha)」がある。
【0055】
文法知識700は、文理解のための文法知識が蓄積されたハードディスクなどの記憶手段である。例えば、上記茶筌や南瓜の辞書、日本語語彙大系(岩波書店)などの辞書が蓄積されている。
【0056】
機能構造木構築手段215は、機能ブロック図理解手段212、機能定義表理解手段213、機能定義文理解手段214の各手段により抽出されたサブ機能間の依存関係を木構造に構築して内部データに保存する。上記各理解手段212、213、214により抽出・解析されたサブ機能を機能ノード(図8のN1,N2,N3,・・・)とし、各サブ機能間の依存関係から各機能ノード間のアーク(図8のB1〜B13)を求めて、図8に示すような機能部分木220を作成する。
【0057】
因果関係部分木作成手段310は、事例文解析手段311、事象抽出手段312、因果関係抽出手段313、因果関係部分木構築手段314を備えており、入力装置C4により事例文300から電子データを取得し、因果関係部分木(図示しない)を作成する手段である。
【0058】
事例文300は、対象となる製品や該製品の部品に関する不具合、故障、その履歴など対象物に生じた種々のトラブルに関する情報を記載した文書であり、その一例を図13に示す。例えば、この事例文としては、工程不具合に関する改善レポート、顧客トラブル回答書、故障履歴、設計変更に関するレポート、生産作業日報など種々の文書がある。図13に示す事例文300は、記入事項として、「ご返却品の詳細」301、「貴社のお申し出事項」302、「結論」303、「解析結果」304及び「発生メカニズム」305から構成されている。
【0059】
ここでは、「ご返却品の詳細」301には、故障を発生した対象製品を特定する情報が記載されており、「貴社のお申し出事項」302には、お客様から頂いた故障に関する情報が記載されており、「結論」303には、故障の原因と結果、すなわちどのような理由でどのような故障が発生したかが記載されており、「解析結果」304には、故障した対象製品に生じている症状が記載されており、「発生メカニズム」305には、故障の発生の原因を解析し、そのメカニズムが記載されている。この事例文300から電子データを取得する方法についても、上記部品構成表における方法と同様の手法が適用可能である。
【0060】
事例文解析手段311は、事例文300の記述内容を、文書の章節構成及び文法解析に基づいて構造化する手段である。文の構造を解析した後、その構造に基づいて必要なタグ情報(形態素・係り受け情報、章節構造の情報、箇条書きの情報など)を付与する。
【0061】
事象抽出手段312は、上記付与されたタグ情報に基づいて構造化された文書を解析し、事象(物理現象を記述する単位)を抽出する。事象抽出は、例えば、格フレーム解析に基づいて、後述する事象抽出知識801のデータを参照して、述語と述語を修飾する自立語の一式として抽出する。例えば、箇条書き(順序付き箇条書きを含む)されている場合、その項を1つの事象として扱う。また、自然言語文で表現されている場合、構文解析によって語彙間の係り受け構造を解析し、述語―述語に係る自立語(述語1語に対し、複数の述語に係る自立語)の組として事象を抽出する。
【0062】
事象抽出知識801は、事象の定義に関するデータが記憶された記憶手段である。例えば、述語+述語を修飾する語彙という知識や、箇条書きの各項を使うという知識などが蓄積されている。
【0063】
因果関係抽出手段313は、付与されたタグ情報に基づいて因果関係の有無を判別し、事象間の因果関係・依存関係を抽出する手段である。予め教師データにより作成された因果関係の統計モデルによって事象間の因果関係の有無を判別し、事象間の因果関係・依存関係を抽出する。例えば、箇条書きから抽出された事象の場合は、箇条書きの連鎖構造に基づいて順に因果関係があると推定し、抽出する。
【0064】
また、自然言語文中に「により」、「のために」、「に伴ない」などの接続語を含む場合、接続語の直前に存在する事象と接続語の直後に存在する事象の間に因果関係があると推定し、抽出する。更に、事例から抽出した事象の全ての組み合わせについて、因果のモデルに照合し、モデルとの類似度が高い組み合わせには因果関係があると推定し、抽出する。因果のモデルは、因果関係のある事象ペアを教師データとして与えた統計モデル(例えば、GMM:ガウス混合分布モデル)で統計学習する。モデルとの類似度はモデルと測定対象との尤度を統計的に求める。このような因果関係の抽出の手法の公知例としては、『FIT2007(第6回情報科学技術フォーラム) 「類推に基づいた類似分野における知識生成システム」 』において本発明者他が開示した手法がある。
【0065】
因果構造抽出知識802は、因果関係抽出の基準を知識データとして蓄積したハードディスクなどの記憶手段である。例えば、接続語彙「により」の前後の事象を抽出する、という知識や、教師データによって学習された因果関係らしさの統計モデルなどが記憶されている。
【0066】
因果関係部分木構築手段314は、抽出された事象間の因果関係・依存関係を木構造に構築して内部データに保存する手段である。
【0067】
FT図作成手段400は、木構造データ解析手段401、ノード間類似度算出手段402、類似ノード結合手段403、類似アーク結合手段404、ノード配置決定手段405、FT図構築手段406を備えている。
【0068】
木構造データ解析手段401は、部品部分木120、機能部分木220及び因果関係部分木(図示しない)を解析し、共通フォーマットの内部データに保存する手段である。
【0069】
ノード間類似度算出手段402は、部品部分木120、機能部分木220及び因果関係部分木(図示しない)のノード間の距離をノードに記述された内容の類似度に基づいて算出する手段である。ノード間類似度は、検索をおこなうための検索モデルの1つであるベクトル空間モデルにおいて、検索質問ベクトルと各文書ベクトルの間の類似度を算出する際に使用されるコサイン尺度により算出される。詳細は後述する。
【0070】
類似ノード結合手段403は、上記ノード間類似度算出手段402により算出された類似度がしきい値以上である場合、それらのノードは同一のノードであると判定し、結合する手段である。このしきい値は、予め使用者において設定しておく必要があるが、使用者において変更可能に構成しておくと、上記同一判定精度を向上することが出来る。
【0071】
類似アーク結合手段404は、2つのノード間に複数のアークが存在する場合、それらのアークは同一であると判定し、アークを結合する。図10に示すFT図の一例を参照すれば、2つのノード間において、アークは2つ以上存在することはない。よって、上記類似ノード結合手段403により結合した結果、2つのノード間にアークが複数形成されてしまった場合には、この状態を類似アーク結合手段404により1つのアークに集約する。
【0072】
ノード配置決定手段405は、ノード間の類似度に基づいてノード間の距離を決定し、ノード間の距離に基づいて各ノードの最適な配置を決定する。ノード間の距離は、例えば、ノード類似度の逆数により与える。
【0073】
FT図構築手段406は、ノード、アークにより構成されるツリー・ネットワーク構成と、ノード間距離により決定されるノード配置に基づいて各ノードとアークの配置を再構成する手段であるとともに、FT図を作成する手段である。
【0074】
エディタ500は、上記作成されたFT図に対し、ノードやアークの追加・削除・更新・修正などが行えるアプリケーションである。上記作成されたFT図を、コンピュータCのディスプレイに表示させて、マウスやキーボードを使用してユーザが修正できるように構成されている。
【0075】
なお、図2においては、図表記述知識600、文法知識700、事象抽出知識801及び因果構造抽出知識802は、別々に記載したが、これらは作図上便宜的に別個に記載したものであり、本実施形態においては、いずれも、図1に示す補助記憶装置C3内に備えられている。
【0076】
<処理動作>
以上が本発明の構成に関する説明であるが、次いで、本発明の処理動作について図3〜6を参照して説明する。
【0077】
本発明における処理動作の概略を説明すると次の通りである。まず、図3に示す部品部分木作成処理(処理1)、図4に示す機能部分木作成処理(処理2)及び図5に示す因果関係部分木作成処理(処理3)が行われる。次いで、これら処理により作成された部品部分木、機能部分木及び因果関係部分木を統合してFT図を作成するFT図作成処理(処理4)が行われ、FT図が作成される。以上が本発明の処理動作の概略であるが、以下に各処理動作について詳細に説明する。なお、処理1、処理2、処理3に関しては順不同である。また、各処理は、FT図を作成する際に一連として行ってもよいし、FT図を作成する前に予め処理を終了しておいてもよい。
【0078】
[処理1:部品部分木作成処理]
図3に示すように、ユーザがコンピュータCのキーボードやマウスなどを操作することにより、部品構成表100のデータの読取処理を開始する(S100)。ここでは、部品構成表100の元データとしては、部品構成表100を作成した際の電子データを用いる。この読み取りが終了すると、次に、部品構成表解析手段111において、図表記述知識600にアクセスし、図表記述知識600に蓄積された図表に関するデータに基づいて、部品構成表100の構成・構造を解析し(S101)、その解析された結果に基づいて、部品部分木120の各ノードとなる構成部品と、各構成部品間の依存関係とを抽出する(S102)。本実施形態においては、記号欄101の記号が階層的に付してあることから、この依存関係を、該記号欄101の記号により抽出する。
【0079】
その後、部品部分木構築手段112において、上記抽出された構成部品、構成部品間の依存関係に基づいて、各ノード及びアークを求めて、図7に示す部品部分木120を作成し(S103)、作成された部品部分木120に関するデータを内部データとして保存し(S104)、部品部分木作成処理を終了する。
【0080】
[処理2:機能部分木作成処理]
図4に示すように、まず、仕様書データ読取処理を行う(S200)。この読取処理は、上記読取処理(S100)と同様の手法で行う。次に、仕様書構造解析手段211において、仕様書200の構成・構造を解析する(S201)。本実施形態においては、仕様書200には、機能ブロック図201、機能定義表202及び機能定義文203が含まれているので、この解析の結果、図、表、文が抽出される(S202)。
【0081】
次いで、機能ブロック図理解手段212において、機能ブロック図のブロックの包含関係及び矢印、エッジなどの配置を解釈し、各サブ機能(接点開閉部、筐体機能、接続部など)の依存関係を理解・抽出する(S203)。更に、機能定義表理解手段213において、機能定義表202に示された項目を解釈し、各サブ機能の内容及び各サブ機能間の依存関係を理解・抽出する(S204)。例えば、各項目の文に他の項目が含まれているか否かを解析し、依存関係を抽出したり、各項目の文を意味理解し、因果関係を抽出する。これら抽出処理は、各手段212、213において、図表記述知識600にアクセスし、図表記述知識600に蓄積された図表に関するデータに基づいて行われる。
【0082】
機能定義文理解手段214において、文法知識700にアクセスし、文法知識700に蓄積された文法知識に関するデータに基づいて、機能定義文203に示された文の構成(章節構造)の階層構造や各文の意味を解析し、各サブ機能の定義・内容及び各サブ機能間の依存関係を理解・抽出する(S205)。これら抽出処理により抽出されたサブ機能がノードになり、各サブ機能間の依存関係からアークが求められる。
【0083】
機能部分木構築手段215において、上記抽出されたサブ機能、サブ機能間の依存関係に基づいて、サブ機能をノードとし、サブ機能間の依存関係をアークとして、図8に示す機能部分木220を作成し(S206)、作成された機能部分木220に関するデータを内部データとして保存し(S207)、機能分木作成処理を終了する。
【0084】
[処理3:因果関係部分木作成処理]
図5に示すように、まず、事例データ読取処理を行う(S300)。この読取処理は、上記読取処理(S100)と同様の手法で行う。次に、事例文解析手段311において、事例文300の記述内容を、文書の章節構成及び文法解析に基づいて構造化し、文の構造をテキスト解析した後、その構造に基づいて必要なタグ情報を付与する(S301)。
【0085】
次に、事象抽出手段312において、上記付与されたタグ情報に基づいて構造化された文書を格フレーム解析し、事象抽出知識801に蓄積されたデータに基づいて、事象を抽出する(S302)。
【0086】
因果関係抽出手段313において、因果関係抽出知識802にアクセスし、因果関係抽出知識802に蓄積された知識データと、上記付与されたタグ情報に基づいて因果関係の有無を判別し、事象間の因果関係・依存関係を抽出する(S303)。
【0087】
因果関係部分木構築手段314において、上記抽出処理により抽出された各事象をノード(事象ノード)とし、各事象間の因果関係をアークとして、因果関係部分木を作成し(S304)、作成された因果関係部分木に関するデータを内部データとして保存し(S305)、因果関係部分木作成処理を終了する。
【0088】
[処理4:FT図作成処理]
図6に示すように、木構造データ解析手段401において、上記処理1〜3により作成され内部データに保存された部品部分木120、機能部分木220及び因果関係部分木(図示しない)を解析し、共通フォーマットの内部データに保存する(S401)。
【0089】
次に、ノード間類似度算出手段402において、上記保存された各部分木における全てのノードに対し、ノード間の距離をノードに記述された内容の類似度に基づいて算出する(S401)。この類似度算出処理を模式化したものが、図9である。ここでは、上段に機能部分木220、下段に部品部分木120を示し、事例文300から抽出した各事象をR1、R10、R100、・・・で表している。例えば、『“ガス漏れ”が発生し、“接点アーク”が起こり、その結果、“リレー動作不良”が生じた。』という故障に関する事例文300から、事象として、「ガス漏れ」R100、「接点アーク」R10、「リレー動作不良」R1という3つの事象を抽出し、各事象間における因果関係を矢印により示している。
【0090】
更に、各事象R1、R10、R100と、部品部分木120の部品ノード及び機能部分木220の機能ノードとの間において類似度を算出し、類似している事象を紐付け、結合する処理が模式的に示されている。具体的には、部品ノードN042と事象R100、部品ノードN02と事象R10、機能ノードN1と事象R1とが類似していると判断し、結合している。
【0091】
このノード間類似度は、例えば、次のようにしてコサイン尺度により算出される。
【0092】
ノードAとノードBの類似度をS、ノードAに含まれる語彙をWA1,WA2,WA3,・・・,WAN、ノードBに含まれる語彙をWB1,WB2,WB3,
・・・,WBN、語彙Wの特徴を表すワードベクトルをVWとする。なお、ワードベクトルVWは、大規模文書集合を係り受け解析することで求めたWに係る語彙の頻度を列挙したもので与える。また、ノードAの特徴を表すベクトルVAはワードベクトルの和VWA1+VWA2+VWA3+・・・+VWANとする。ノードBの特徴を表すベクトルVBも同様とする。すると、類似度Sは、ベクトルVAとVBのコサイン尺度で求められる。なお、類似度S=sim(a,b)、ベクトルVAをa、VBをbとすると、類似度は以下の式により算出される。
【0093】
<式>
【0094】
上記類似度を算出した結果、類似ノード結合手段403において、算出された類似度が、しきい値以上か否かがチェックされ、しきい値以上のノードは結合する(S402)。
【0095】
上記ノード結合処理が終了後、類似アーク結合手段404において、全てのノードに対し、ノード間においてFromとToが同じアークが存在するか否かがチェックされ、同じアークがあった場合には、全てのアークを結合し1つのアークにする(S403)。例えば、ノードAからノードBに直接至るアークが2つ以上である場合、1つのアークを残して他は削除する。
【0096】
次いで、ノード配置決定手段405において、ノード間の類似度に基づいてノード間の距離を算出し(S404)、算出されたノード間の距離に基づいて各ノードの最適な配置を決定する(S405)。このノード間の距離は、例えば、ノード類似度の逆数により与える。また、ノード配置決定は、次のようなアルゴリズムにより行う。
【0097】
ノードをN1,N2,N3,・・・NN、各ノードの座標をNn(xn,yn)、ノードNnとNmの距離Dnm=ノード間類似度の逆数とし、次の式を最小にするノード座標を最急降下法により求める。
【0098】
<式>
なお、Σ(総和)は、全てのmnの組み合わせについて行う。abs()は絶対値を意味する。
【0099】
上記処理後、FT図構築手段406において、ノード、アークが最適に配置されたFT図を作成し(S406)、コンピュータCのディスプレイにFT図を表示し(S407)、当該処理は終了する。この処理により作成されたFT図の一例を図10に示す。上記のように事例における各事象間の因果関係を、部品部分木120及び機能部分木220に関連付けて作成しているので、このFT図は、熟練者の問題解決手法が反映されたFT図となっている。
【0100】
なお、作成されたFT図について、修正を加えたい場合には、エディタ500を起動し、ユーザがノードやアークを、マウスやキーボードを操作することにより、追加、修正を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施形態の概略構成を説明するための機能ブロック図。
【図2】図1の詳細を示す機能ブロック図。
【図3】本発明の実施形態における部品部分木作成処理を示すフローチャート。
【図4】本発明の実施形態における機能部分木作成処理を示すフローチャート。
【図5】本発明の実施形態における因果関係部分木作成処理を示すフローチャート。
【図6】本発明の実施形態におけるFT図作成処理を示すフローチャート。
【図7】部品部分木の一例を示す図。
【図8】機能部分木の一例を示す図。
【図9】部品部分木、機能部分木及び因果関係部分木を統合して本発明のFT図を作成する工程を説明するための説明図。
【図10】本発明により作成したFT図の一例を示す図。
【図11】部品構成表の一例を示す図。
【図12】仕様書の一例を示す図。
【図13】事例文の一例を示す図。
【符号の説明】
【0102】
100 部品構成表
110 部品部分木作成手段
120 部品部分木
200 仕様書
210 機能部分木作成手段
220 機能部分木
300 事例文
310 因果関係部分木作成手段
312 事象抽出手段
400 FT図作成手段
401 ノード間類似度算出手段
500 エディタ
C コンピュータ
P FT図作成プログラム
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品などに生じた事故、故障などのトラブル情報に基づいてFT図を作成するFT図作成プログラム、FT図作成装置、記録媒体及びFT図作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、あるプロセスを実現するためのシステムにどのような故障の可能性があるかを解析する技術として、故障の木解析(FTA/Fault Tree Analysis)が知られている。このFTAに用いられるのが、故障の木(Fault Tree、以下略して「FT」と呼ぶ)図であり、FT図とは、開発や評価の対象となるシステムやプロセスの故障原因としてどのような事象が考えられるかを木構造のデータとして表した図である。
【0003】
このFT図の作成手法として、従来、人手による作成手法がある。例えば、設計時に予めFT図を作成したり、現場の生データに基づいて作成するという手法がある。しかしながら、前者は、設計者の予測に基づくため、内容が抽象的になり現場に適用しにくいという問題があり、後者は、部分的な情報だけが残るため網羅性に欠けるという問題がある。更に、人手によって作成した場合には、個人差が出てしまい、FT図の信頼性にバラつきも生じる。
【0004】
一方、品質保証やトラブルシューティングなどは、従来、熟練者の経験や勘などの知識(暗黙知)に依存しているというのが実態であるが、熟練者の作業量には限界があることから、熟練者の知識を形式知化して、誰でも作業ができるようにすることが現場において切望されている。そこで、従来、トラブル事例と解決策を記録して蓄積することで形式知化することが行われてきた。しかしながら、多量に蓄積された事例の中から同一あるいは類似の事例を検索し、解決したい問題に適用することは非常に困難であった。
【0005】
そこで、従来から、熟練者の知識やトラブル事例などを形式知化する種々の技術がある。例えば、特許文献1に記載の技術は、事例文からキーワードを抽出し、各事例文が属するクラスタを決定し、その決定結果に基づいて各キーワードの集合で特徴付けられる問題解決木を生成する。すると、その問題解決木の各クラスタに属する各事例文の言語表現の属性に基づいて、各事例文が属するクラスタを細分化するように構成されている。この技術によれば、効率よく事例を分類して問題解決木を構築することができるとともに、検索文と構文的・意味的に類似する文を含む事例を検索することも出来る。
【0006】
しかしながら、この技術は、クラスタ分類によるものであり、トラブル事例の原因と結果という因果構造に着目していないので、問題解決に活用できる知識にはならない。その他にも、似たような技術として、特許文献2に記載の技術がある。この特許文献2に記載の技術は、コンピュータに蓄積される膨大な知識データの中から所望の情報を抽出する技術であり、複数の知識データを関連性に基づいて融合するように構成されている。この技術においても、関連性を示しているだけで、因果構造に着目しておらず、よって問題解決に活用できる知識とはなっていない。
【0007】
熟練者の問題解決手法を反映したFT図が、人手によらず作成出来れば、コスト面及び信頼性の面において有効であるが、未だそのようなものは存在しない。
【0008】
【特許文献1】特開2001−188678号公報
【0009】
【特許文献2】特開2003−337933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、低コストで、そのうえ信頼性も高いFT図を作成することができるFT図作成プログラム、FT図作成装置、記録媒体及びFT図作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、対象物に生じた事故や故障などのトラブル情報をトップダウン的に解析し、そのトラブルの原因と結果からツリー構造のFT図を作成するFT図作成プログラムであって、上記FT図作成プログラムは、コンピュータを、部品部分木作成手段、機能部分木作成手段、少なくとも事象抽出手段と因果関係抽出手段とを有する因果関係部分木作成手段、ノード間類似度算出手段を有するFT図作成手段、として機能させるものであり、上記部品部分木作成手段は、上記対象物の構成部品に関するデータをそれぞれ部品ノードとし、各部品ノードをトップダウン的なツリー構造に表記する部品部分木を作成する手段であり、上記機能部分木作成手段は、上記対象物における機能に関するデータをそれぞれ機能ノードとし、各機能ノードをトップダウン的なツリー構造に表記する機能部分木を作成する手段であり、上記事象抽出手段は、上記トラブル情報を解析することにより該トラブル情報を構造化し、該構造化されたトラブル情報に基づいて該トラブルにおける全ての事象を抽出する手段であり、上記因果関係抽出手段は、上記事象抽出手段により抽出された事象間の因果関係を抽出する手段であり、上記因果関係部分木作成手段は、上記事象抽出手段により抽出された各事象を事象ノードとし、各事象ノードを上記因果関係抽出手段により抽出された因果関係に基づいてツリー構造に表記する因果関係部分木を作成する手段であり、上記ノード間類似度算出手段は、上記部品部分木、上記機能部分木及び上記因果関係部分木を解析し、各部分木を構成する各ノードの記述内容の類似度を算出する手段であり、上記FT図作成手段は、上記ノード間類似度算出手段により算出された類似度に基づいて、上記部品部分木、上記機能部分木及び上記因果関係部分木を統合することにより、FT図を作成する手段であることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、次のようなロジックによりFT図が自動的に作成されるように構成されている。
【0013】
1つの製品は、通常、複数の部品からなり、各部品がそれぞれの機能を発揮することにより製品全体として正常に機能する。
【0014】
一方、1つの製品が故障した場合には、通常、その製品における故障発生箇所を特定し、どのような症状が生じたのかが解析される。最終的に発生した故障の症状を突き詰めれば、1つの部品あるいは複数の部品の機能障害である。
【0015】
ここで、1つの製品について、その構成部品をノードとし、トップダウン的なツリー構造である部品部分木を作成するのに熟練者の力は必要ないし、既存の解析技術を使用すればコンピュータにより自動的に作成することが可能である。同様に、各構成部品の機能については、仕様書などから容易に特定でき、各構成部品における機能をノードとし、トップダウン的なツリー構造である機能部分木を作成するのに熟練者の力は必要ないし、既存の解析技術を使用すればコンピュータにより自動的に作成することが可能である。
【0016】
これに対し、製品における故障や事故などの発生原因は、種々の原因が考えられるし、発生箇所を特定するのも高度な技術や熟練者の勘などを要する。通常、製品における故障や事故が生じた場合は、その内容、発生箇所、症状などが記載された報告書(事例文)が作成される。この事例文に基づいてFT図を作成すれば、熟練者の知識が反映された信頼性の高いFT図を作成することが可能であるが、FT図を作成するに際しては、関連する事例をまとめたり、症状の上位概念化が必要など作成作業は容易ではなく、仮にそのようなFT図を作成する場合には、熟練者により手作業で作成する必要がある。
【0017】
そこで、本発明においては、事例文から故障や事故等において生じた各事象(物理現象を記述する単位)間の因果関係を抽出し、この抽出された因果関係を上記のようにして作成された部品部分木及び機能部分木に関連付けてFT図を作成するように構成した。
【0018】
すなわち、本発明は、部品部分木や機能部分木における各構成(ノード)間の依存関係、階層構造を利用し、これらに事例から抽出した因果構造を当てはめることにより、具体性のある使えるFT図を簡易に作成することができる。
【0019】
ここで、「対象物」とは、製品やその部品など、あらゆる物が対象となる。また、「構成部品」とは、有形物のみならず、無形物も対象となる。例えば、対象物が「ガスボンベ」であれば、封入されている「ガス」などの無形物も対象となる。
【0020】
上記コンピュータに上記作成されたFT図を編集する機能を実現させるように構成してもよい。
【0021】
上記部品部分木作成手段は、上記対象物の構成部品に関するデータを、部品構成表を読取手段により読み取ることにより取得するようにしてもよい。
【0022】
上記機能部分木作成手段は、上記対象物における機能に関するデータを、仕様書を読取手段により読み取ることにより取得するようにしてもよい。
【0023】
上記トラブル情報は、トラブルに関する情報が記載された事例文を読取手段により読み取ることにより取得するようにしてもよい。
【0024】
上記「読取手段」としては、スキャナなどの光学的読取手段が適用可能である。
【0025】
また、本発明のFT図作成装置は、上記FT図作成プログラムを備えたことを特徴とする。
【0026】
また本発明の記録媒体は、上記FT図作成プログラムを記録したことを特徴とする。
【0027】
記録媒体としては、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROMなど磁気的、光学的に記憶を行うものなどを主として、プログラムが記憶可能なメディアであればよい。
【0028】
また、本発明は、対象物に生じた事故や故障などのトラブル情報をトップダウン的に解析し、そのトラブルの原因と結果からツリー構造のFT図を作成するFT図作成方法であって、上記対象物の構成部品に関するデータをそれぞれ部品ノードとし、各部品ノードをトップダウン的なツリー構造に表記する部品部分木を作成する部品部分木作成工程と、上記対象物における機能に関するデータをそれぞれ機能ノードとし、各機能ノードをトップダウン的なツリー構造に表記する機能部分木を作成する機能部分木作成工程と、上記トラブル情報を解析することにより該トラブル情報を構造化し、該構造化されたトラブル情報に基づいて該トラブルにおける全ての事象を抽出する事象抽出工程と、上記事象抽出工程により抽出された事象間の因果関係を抽出する因果関係抽出工程と、上記事象抽出工程により抽出された各事象を事象ノードとし、各事象ノードを上記因果関係抽出工程により抽出された因果関係に基づいてツリー構造に表記する因果関係部分木を作成する因果関係部分木作成工程と、上記部品部分木、上記機能部分木及び上記因果関係部分木を解析し、各部分木を構成する各ノードの記述内容の類似度を算出するノード間類似度算出工程と、上記ノード間類似度算出工程により算出された類似度に基づいて、上記部品部分木、上記機能部分木及び上記因果関係部分木を統合することにより、FT図を作成するFT図作成工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように本発明によれば、部品部分木、機能部分木及び因果関係部分木を作成し、解析し、各部分木を構成する各ノードの記述内容の類似度を算出し、算出された類似度に基づいて、上記部品部分木、上記機能部分木及び上記因果関係部分木を統合することにより、FT図を作成するように構成した。これにより、熟練者の知識に依存することなく、具体性があり利用価値も高いFT図を安価に作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0031】
図1は本発明の実施形態の概略構成を説明するための機能ブロック図、図2は図1の詳細を示す機能ブロック図、図3は部品部分木作成処理を示すフローチャート、図4は機能部分木作成処理を示すフローチャート、図5は因果関係部分木作成処理を示すフローチャート、図6はFT図作成処理を示すフローチャート、図7は部品部分木の一例を示す図、図8は機能部分木の一例を示す図、図9は部品部分木、機能部分木及び因果関係部分木を統合して本発明のFT図を作成する工程を説明するための説明図、図10は本発明により作成したFT図の一例を示す図、図11は部品構成表の一例を示す図、図12は仕様書の一例を示す図、図13は事例文の一例を示す図である。
【0032】
<構成>
図1は、本発明の概略構成を説明するための機能ブロック図であり、本発明の一実施形態を仮想的な機能ブロック図により示したものである。すなわち、図1は、FT図作成プログラムPを備えたコンピュータCが、該FT図作成プログラムPを実行することにより、FT図を作成し、出力することを示した仮想的な機能ブロック図である。
【0033】
より具体的には、図1及び図2に示す通り、本発明のFT図作成プログラムPは、コンピュータCを、部品部分木作成手段110、機能部分木作成手段210、因果関係部分木作成手段310、FT図作成手段400、として機能させるプログラムである。因果関係部分木作成手段310は、少なくとも事象抽出手段312と因果関係抽出手段313とを有し、FT図作成手段400は、ノード間類似度算出手段402を有している。
【0034】
また、コンピュータCは、CPU(C1)、RAMなどを使ったメインメモリC2、ハードディスク装置などの補助記憶装置C3、キーボード・マウスあるいはスキャナなどの入力装置C4、ディスプレイやプリンタなどの出力装置C5からなる。
【0035】
なお、本発明のFT図作成装置は、このFT図作成プログラムPを備え、該プログラムPを実行するコンピュータCにより実現される。また、本発明のFT図作成方法は、該FT図作成プログラムPを実行することにより実現される。よって、以下においては、本発明のFT図作成プログラムについてのみ説明し、FT図作成装置およびFT図作成方法の説明については省略する。
【0036】
図1に示すように、本発明のFT図作成プログラムPは概略次の通り構成されている。まず、コンピュータCを、部品部分木作成手段110として機能させて部品構成表100(図11参照)から部品部分木120(図7参照)を作成する。次いで、コンピュータCを、機能部分木作成手段210として機能させて仕様書200(図12参照)から機能部分木220(図8参照)を作成する。更に、コンピュータCを、因果関係部分木作成手段310として機能させて事例文300(トラブル情報)(図13参照)から因果関係部分木(図示しない)を作成する。そして、コンピュータCを、FT図作成手段400として機能させて、上記部品部分木120、機能部分木220及び因果関係部分木(図示しない)を統合することによりFT図を作成するように構成されている。なお、本実施形態においては、FT図作成プログラムPは、作成されたFT図を修正可能なエディタ500を有している。
【0037】
図2を用いて、各構成について詳細に説明する。
【0038】
部品部分木作成手段110は、部品構成表解析手段111と、部品部分木構築手段112とを備えており、入力装置C4により部品構成表100から電子データを取得し、部品部分木120を作成する手段である。
【0039】
部品構成表100は、対象となる製品の部品構成について記した文書あるいは該製品の部品の部品構成について記した文書であり、その一例を図11に示している。部品構成表100は、図中、左から記号欄101、部品名欄102及び型式・仕様等欄103から構成されている。ここでは、ある製品の部品「リレー」についての部品構成表が示されている。
【0040】
例えば、「リレー」は、「電磁石」(記号:1)、「接点」(記号:2)及び「筐体」(記号:4)などからなる。記号欄101には、各構成部品に付与された階層的な記号が記入されている。例えば、この部品構成表の最上位の部品である「リレー」には記号:0を付し、「リレー」の構成部品である「電磁石」には記号:1を付してある。
【0041】
更に、「電磁石」の構成部品の「コイル」には記号:1.1を付し、各部品間における階層構造が明確に分かるようにしている。また、構成部品が複数あり、部品構成表が複数枚にわたる場合においても、この記号が重複しないように付与されている。
【0042】
部品構成表100から電子データを取得する方法としては、種々の方法が適用可能である。例えば、部品構成表100を作成した際の電子データから直接取得する方法、部品構成表100をスキャナなどにより光学的に読み取ることにより取得する方法など種々の方法がある。この部品構成表のフォーマットは、部品構成の階層構造や各部品間の依存関係(例えば、Aという部品はBとCという部品から出来ているなど)を解析・抽出し易いようなフォーマットにしておくとよい。
【0043】
部品構成表解析手段111は、部品構成表100の構成・構造をもとに、部品の構成に関する依存関係を理解・抽出する手段である。構成要素に関するより詳細な部品構成表がある場合、再帰的に部品構成を分解して依存関係を理解・抽出する。本実施形態においては、この部品構成表解析手段111により抽出された構成要素が後述する部品部分木120を構成する部品ノード(図7のN0,N01,N02,・・・)となり、該依存関係により、各部品ノード間の階層構造が抽出される。ここでは、この依存関係を抽出するのに、記号欄101の記号が使用される。例えば、部品名「コイル」、「鉄心」に付された記号はそれぞれ記号:1.1,記号:1.2であり、部品名「電磁石」に付された記号:1に「.」+昇順で数字が付された記号が用いられており、この記号を抽出・解析することにより、「コイル」及び「鉄心」は「電磁石」と依存関係にあることが抽出される。このような図表に関する記述知識に関するデータは、予め後述する図表記述知識600に蓄積されている。
【0044】
図表記述知識600は、機能ブロック図の構成要素とその凡例や、部品構成表、機能定義表の各項目、構成要素とその意味など図表に関するデータが蓄積されたハードディスクなどの記憶手段である。この図表記述知識600には、種々のタイプの部品構成表、機能定義表が電子データとして予め蓄積されている。
【0045】
部品部分木構築手段112は、部品構成表解析手段111により抽出された部品構成要素間の依存関係を木構造に構築して部品部分木120を作成し、作成された部品部分木120に関するデータを内部データとして保存する。上記部品構成表解析手段111により抽出・解析された部品構成要素を部品ノードとし、各部品構成要素間の依存関係から各部品ノード間のアーク(図7のA1〜A16)を求めて、図7に示すような部品部分木120を作成する。
【0046】
機能部分木作成手段210は、仕様書構造解析手段211、機能ブロック図理解手段212、機能定義表理解手段213、機能定義文理解手段214、機能構造木構築手段215を備えており、入力装置C4により仕様書200から電子データを取得し、機能部分木220を作成する手段である。
【0047】
仕様書200は、対象となる製品や、該製品を構成する部品などの機能構成について記述した設計文書であり、その一例を図12に示している。仕様書200は、記入項目として、上から機能ブロック図201、各機能の定義202及び各機能の動作203から構成されている。機能ブロック図201は、各構成を機能的に表現したものをブロックで示し、各ブロック間の依存関係(信号の流れや、連動関係など)を矢印で示した図である。
【0048】
各機能の定義202は、項目欄及び各項目の定義欄からなり、項目欄には、上記ブロック内の名称が記入され、定義欄には、項目欄に記載された各構成が、どのような機能のものであるかの説明文あるいは定義文が記載されている。各機能の動作203は、上記項目欄に記載された各構成についての機能・動作説明が項目ごとに記号を付して階層的に記載されている。
【0049】
上述したように、仕様書200においては、各構成について、ブロック図(機能ブロック図201)、機能定義表(各機能の定義202)及び機能定義文(各機能の動作203)を用いて記述されている。なお、この仕様書200においても、上記部品構成表と同様に、後述する各手段により抽出・解析し易いようなフォーマットにより作成するとよい。また、仕様書200から電子データを取得する方法としても、上記部品構成表100における取得方法と同様の方法が適用可能である。
【0050】
仕様書構造解析手段211は、仕様書200の章節構造、図表の構成をもとに機能部分木の要素となる文・図・表を抽出する手段である。仕様書200の全体的構成がどのようになっているかを解析する手段である。この解析により、仕様書200には、「文が含まれている」、「図が含まれている」、「表が含まれている」などの全体的な構成を把握することができる。それぞれにおける詳細な分析は、後述する各手段212、213、214において行われる。
【0051】
機能ブロック図理解手段212は、ブロック図のブロック及び矢印、エッジなどの配置を解釈し、各サブ機能(接点開閉部、筐体機能、接続部など)の依存関係を理解・抽出する手段である。サブ機能とはメイン機能を発揮させるために下位の構成部品が発揮する機能のことである。例えば、製品が「リレー」である場合には、「リレー」全体における機能はメイン機能であり、「リレー」を構成する各部品(例えば、電磁石、端子、筐体など)それぞれの機能がサブ機能である。サブ機能の内容を詳細に説明する仕様書・ブロック図・機能定義表・本文が存在する場合には、再帰的にサブ機能を分解し理解する。
【0052】
機能定義表理解手段213は、機能定義表202に示された項目を解釈し、各サブ機能の内容及び各サブ機能間の依存関係を理解・抽出する手段である。サブ機能の内容を詳細に説明する仕様書・ブロック図・機能定義表・本文が存在する場合には、再帰的にサブ機能を分解し理解する。
【0053】
仕様書構造解析手段211及び機能定義表理解手段213における解析・抽出は、上記説明した図表記述知識600に蓄積された表や図などに関するデータに基づき行われる。
【0054】
機能定義文理解手段214は、機能定義文203に示された文を解釈し、各サブ機能の定義・内容及び各サブ機能間の依存関係を理解・抽出する手段である。サブ機能の内容を詳細に説明する仕様書・ブロック図・機能定義表・本文が存在する場合には、再帰的にサブ機能を分解し理解する。機能定義文203に示された文の解析は、例えば、形態素解析、係り受け解析など種々のテキスト解析により行うことが可能である。例えば、形態素解析を行なうツールとしては、無償ソフトウェアである「茶筌(ChaSen)」、係り受け解析を行なうツールとしては、無償ソフトウェアである「南瓜(CaboCha)」がある。
【0055】
文法知識700は、文理解のための文法知識が蓄積されたハードディスクなどの記憶手段である。例えば、上記茶筌や南瓜の辞書、日本語語彙大系(岩波書店)などの辞書が蓄積されている。
【0056】
機能構造木構築手段215は、機能ブロック図理解手段212、機能定義表理解手段213、機能定義文理解手段214の各手段により抽出されたサブ機能間の依存関係を木構造に構築して内部データに保存する。上記各理解手段212、213、214により抽出・解析されたサブ機能を機能ノード(図8のN1,N2,N3,・・・)とし、各サブ機能間の依存関係から各機能ノード間のアーク(図8のB1〜B13)を求めて、図8に示すような機能部分木220を作成する。
【0057】
因果関係部分木作成手段310は、事例文解析手段311、事象抽出手段312、因果関係抽出手段313、因果関係部分木構築手段314を備えており、入力装置C4により事例文300から電子データを取得し、因果関係部分木(図示しない)を作成する手段である。
【0058】
事例文300は、対象となる製品や該製品の部品に関する不具合、故障、その履歴など対象物に生じた種々のトラブルに関する情報を記載した文書であり、その一例を図13に示す。例えば、この事例文としては、工程不具合に関する改善レポート、顧客トラブル回答書、故障履歴、設計変更に関するレポート、生産作業日報など種々の文書がある。図13に示す事例文300は、記入事項として、「ご返却品の詳細」301、「貴社のお申し出事項」302、「結論」303、「解析結果」304及び「発生メカニズム」305から構成されている。
【0059】
ここでは、「ご返却品の詳細」301には、故障を発生した対象製品を特定する情報が記載されており、「貴社のお申し出事項」302には、お客様から頂いた故障に関する情報が記載されており、「結論」303には、故障の原因と結果、すなわちどのような理由でどのような故障が発生したかが記載されており、「解析結果」304には、故障した対象製品に生じている症状が記載されており、「発生メカニズム」305には、故障の発生の原因を解析し、そのメカニズムが記載されている。この事例文300から電子データを取得する方法についても、上記部品構成表における方法と同様の手法が適用可能である。
【0060】
事例文解析手段311は、事例文300の記述内容を、文書の章節構成及び文法解析に基づいて構造化する手段である。文の構造を解析した後、その構造に基づいて必要なタグ情報(形態素・係り受け情報、章節構造の情報、箇条書きの情報など)を付与する。
【0061】
事象抽出手段312は、上記付与されたタグ情報に基づいて構造化された文書を解析し、事象(物理現象を記述する単位)を抽出する。事象抽出は、例えば、格フレーム解析に基づいて、後述する事象抽出知識801のデータを参照して、述語と述語を修飾する自立語の一式として抽出する。例えば、箇条書き(順序付き箇条書きを含む)されている場合、その項を1つの事象として扱う。また、自然言語文で表現されている場合、構文解析によって語彙間の係り受け構造を解析し、述語―述語に係る自立語(述語1語に対し、複数の述語に係る自立語)の組として事象を抽出する。
【0062】
事象抽出知識801は、事象の定義に関するデータが記憶された記憶手段である。例えば、述語+述語を修飾する語彙という知識や、箇条書きの各項を使うという知識などが蓄積されている。
【0063】
因果関係抽出手段313は、付与されたタグ情報に基づいて因果関係の有無を判別し、事象間の因果関係・依存関係を抽出する手段である。予め教師データにより作成された因果関係の統計モデルによって事象間の因果関係の有無を判別し、事象間の因果関係・依存関係を抽出する。例えば、箇条書きから抽出された事象の場合は、箇条書きの連鎖構造に基づいて順に因果関係があると推定し、抽出する。
【0064】
また、自然言語文中に「により」、「のために」、「に伴ない」などの接続語を含む場合、接続語の直前に存在する事象と接続語の直後に存在する事象の間に因果関係があると推定し、抽出する。更に、事例から抽出した事象の全ての組み合わせについて、因果のモデルに照合し、モデルとの類似度が高い組み合わせには因果関係があると推定し、抽出する。因果のモデルは、因果関係のある事象ペアを教師データとして与えた統計モデル(例えば、GMM:ガウス混合分布モデル)で統計学習する。モデルとの類似度はモデルと測定対象との尤度を統計的に求める。このような因果関係の抽出の手法の公知例としては、『FIT2007(第6回情報科学技術フォーラム) 「類推に基づいた類似分野における知識生成システム」 』において本発明者他が開示した手法がある。
【0065】
因果構造抽出知識802は、因果関係抽出の基準を知識データとして蓄積したハードディスクなどの記憶手段である。例えば、接続語彙「により」の前後の事象を抽出する、という知識や、教師データによって学習された因果関係らしさの統計モデルなどが記憶されている。
【0066】
因果関係部分木構築手段314は、抽出された事象間の因果関係・依存関係を木構造に構築して内部データに保存する手段である。
【0067】
FT図作成手段400は、木構造データ解析手段401、ノード間類似度算出手段402、類似ノード結合手段403、類似アーク結合手段404、ノード配置決定手段405、FT図構築手段406を備えている。
【0068】
木構造データ解析手段401は、部品部分木120、機能部分木220及び因果関係部分木(図示しない)を解析し、共通フォーマットの内部データに保存する手段である。
【0069】
ノード間類似度算出手段402は、部品部分木120、機能部分木220及び因果関係部分木(図示しない)のノード間の距離をノードに記述された内容の類似度に基づいて算出する手段である。ノード間類似度は、検索をおこなうための検索モデルの1つであるベクトル空間モデルにおいて、検索質問ベクトルと各文書ベクトルの間の類似度を算出する際に使用されるコサイン尺度により算出される。詳細は後述する。
【0070】
類似ノード結合手段403は、上記ノード間類似度算出手段402により算出された類似度がしきい値以上である場合、それらのノードは同一のノードであると判定し、結合する手段である。このしきい値は、予め使用者において設定しておく必要があるが、使用者において変更可能に構成しておくと、上記同一判定精度を向上することが出来る。
【0071】
類似アーク結合手段404は、2つのノード間に複数のアークが存在する場合、それらのアークは同一であると判定し、アークを結合する。図10に示すFT図の一例を参照すれば、2つのノード間において、アークは2つ以上存在することはない。よって、上記類似ノード結合手段403により結合した結果、2つのノード間にアークが複数形成されてしまった場合には、この状態を類似アーク結合手段404により1つのアークに集約する。
【0072】
ノード配置決定手段405は、ノード間の類似度に基づいてノード間の距離を決定し、ノード間の距離に基づいて各ノードの最適な配置を決定する。ノード間の距離は、例えば、ノード類似度の逆数により与える。
【0073】
FT図構築手段406は、ノード、アークにより構成されるツリー・ネットワーク構成と、ノード間距離により決定されるノード配置に基づいて各ノードとアークの配置を再構成する手段であるとともに、FT図を作成する手段である。
【0074】
エディタ500は、上記作成されたFT図に対し、ノードやアークの追加・削除・更新・修正などが行えるアプリケーションである。上記作成されたFT図を、コンピュータCのディスプレイに表示させて、マウスやキーボードを使用してユーザが修正できるように構成されている。
【0075】
なお、図2においては、図表記述知識600、文法知識700、事象抽出知識801及び因果構造抽出知識802は、別々に記載したが、これらは作図上便宜的に別個に記載したものであり、本実施形態においては、いずれも、図1に示す補助記憶装置C3内に備えられている。
【0076】
<処理動作>
以上が本発明の構成に関する説明であるが、次いで、本発明の処理動作について図3〜6を参照して説明する。
【0077】
本発明における処理動作の概略を説明すると次の通りである。まず、図3に示す部品部分木作成処理(処理1)、図4に示す機能部分木作成処理(処理2)及び図5に示す因果関係部分木作成処理(処理3)が行われる。次いで、これら処理により作成された部品部分木、機能部分木及び因果関係部分木を統合してFT図を作成するFT図作成処理(処理4)が行われ、FT図が作成される。以上が本発明の処理動作の概略であるが、以下に各処理動作について詳細に説明する。なお、処理1、処理2、処理3に関しては順不同である。また、各処理は、FT図を作成する際に一連として行ってもよいし、FT図を作成する前に予め処理を終了しておいてもよい。
【0078】
[処理1:部品部分木作成処理]
図3に示すように、ユーザがコンピュータCのキーボードやマウスなどを操作することにより、部品構成表100のデータの読取処理を開始する(S100)。ここでは、部品構成表100の元データとしては、部品構成表100を作成した際の電子データを用いる。この読み取りが終了すると、次に、部品構成表解析手段111において、図表記述知識600にアクセスし、図表記述知識600に蓄積された図表に関するデータに基づいて、部品構成表100の構成・構造を解析し(S101)、その解析された結果に基づいて、部品部分木120の各ノードとなる構成部品と、各構成部品間の依存関係とを抽出する(S102)。本実施形態においては、記号欄101の記号が階層的に付してあることから、この依存関係を、該記号欄101の記号により抽出する。
【0079】
その後、部品部分木構築手段112において、上記抽出された構成部品、構成部品間の依存関係に基づいて、各ノード及びアークを求めて、図7に示す部品部分木120を作成し(S103)、作成された部品部分木120に関するデータを内部データとして保存し(S104)、部品部分木作成処理を終了する。
【0080】
[処理2:機能部分木作成処理]
図4に示すように、まず、仕様書データ読取処理を行う(S200)。この読取処理は、上記読取処理(S100)と同様の手法で行う。次に、仕様書構造解析手段211において、仕様書200の構成・構造を解析する(S201)。本実施形態においては、仕様書200には、機能ブロック図201、機能定義表202及び機能定義文203が含まれているので、この解析の結果、図、表、文が抽出される(S202)。
【0081】
次いで、機能ブロック図理解手段212において、機能ブロック図のブロックの包含関係及び矢印、エッジなどの配置を解釈し、各サブ機能(接点開閉部、筐体機能、接続部など)の依存関係を理解・抽出する(S203)。更に、機能定義表理解手段213において、機能定義表202に示された項目を解釈し、各サブ機能の内容及び各サブ機能間の依存関係を理解・抽出する(S204)。例えば、各項目の文に他の項目が含まれているか否かを解析し、依存関係を抽出したり、各項目の文を意味理解し、因果関係を抽出する。これら抽出処理は、各手段212、213において、図表記述知識600にアクセスし、図表記述知識600に蓄積された図表に関するデータに基づいて行われる。
【0082】
機能定義文理解手段214において、文法知識700にアクセスし、文法知識700に蓄積された文法知識に関するデータに基づいて、機能定義文203に示された文の構成(章節構造)の階層構造や各文の意味を解析し、各サブ機能の定義・内容及び各サブ機能間の依存関係を理解・抽出する(S205)。これら抽出処理により抽出されたサブ機能がノードになり、各サブ機能間の依存関係からアークが求められる。
【0083】
機能部分木構築手段215において、上記抽出されたサブ機能、サブ機能間の依存関係に基づいて、サブ機能をノードとし、サブ機能間の依存関係をアークとして、図8に示す機能部分木220を作成し(S206)、作成された機能部分木220に関するデータを内部データとして保存し(S207)、機能分木作成処理を終了する。
【0084】
[処理3:因果関係部分木作成処理]
図5に示すように、まず、事例データ読取処理を行う(S300)。この読取処理は、上記読取処理(S100)と同様の手法で行う。次に、事例文解析手段311において、事例文300の記述内容を、文書の章節構成及び文法解析に基づいて構造化し、文の構造をテキスト解析した後、その構造に基づいて必要なタグ情報を付与する(S301)。
【0085】
次に、事象抽出手段312において、上記付与されたタグ情報に基づいて構造化された文書を格フレーム解析し、事象抽出知識801に蓄積されたデータに基づいて、事象を抽出する(S302)。
【0086】
因果関係抽出手段313において、因果関係抽出知識802にアクセスし、因果関係抽出知識802に蓄積された知識データと、上記付与されたタグ情報に基づいて因果関係の有無を判別し、事象間の因果関係・依存関係を抽出する(S303)。
【0087】
因果関係部分木構築手段314において、上記抽出処理により抽出された各事象をノード(事象ノード)とし、各事象間の因果関係をアークとして、因果関係部分木を作成し(S304)、作成された因果関係部分木に関するデータを内部データとして保存し(S305)、因果関係部分木作成処理を終了する。
【0088】
[処理4:FT図作成処理]
図6に示すように、木構造データ解析手段401において、上記処理1〜3により作成され内部データに保存された部品部分木120、機能部分木220及び因果関係部分木(図示しない)を解析し、共通フォーマットの内部データに保存する(S401)。
【0089】
次に、ノード間類似度算出手段402において、上記保存された各部分木における全てのノードに対し、ノード間の距離をノードに記述された内容の類似度に基づいて算出する(S401)。この類似度算出処理を模式化したものが、図9である。ここでは、上段に機能部分木220、下段に部品部分木120を示し、事例文300から抽出した各事象をR1、R10、R100、・・・で表している。例えば、『“ガス漏れ”が発生し、“接点アーク”が起こり、その結果、“リレー動作不良”が生じた。』という故障に関する事例文300から、事象として、「ガス漏れ」R100、「接点アーク」R10、「リレー動作不良」R1という3つの事象を抽出し、各事象間における因果関係を矢印により示している。
【0090】
更に、各事象R1、R10、R100と、部品部分木120の部品ノード及び機能部分木220の機能ノードとの間において類似度を算出し、類似している事象を紐付け、結合する処理が模式的に示されている。具体的には、部品ノードN042と事象R100、部品ノードN02と事象R10、機能ノードN1と事象R1とが類似していると判断し、結合している。
【0091】
このノード間類似度は、例えば、次のようにしてコサイン尺度により算出される。
【0092】
ノードAとノードBの類似度をS、ノードAに含まれる語彙をWA1,WA2,WA3,・・・,WAN、ノードBに含まれる語彙をWB1,WB2,WB3,
・・・,WBN、語彙Wの特徴を表すワードベクトルをVWとする。なお、ワードベクトルVWは、大規模文書集合を係り受け解析することで求めたWに係る語彙の頻度を列挙したもので与える。また、ノードAの特徴を表すベクトルVAはワードベクトルの和VWA1+VWA2+VWA3+・・・+VWANとする。ノードBの特徴を表すベクトルVBも同様とする。すると、類似度Sは、ベクトルVAとVBのコサイン尺度で求められる。なお、類似度S=sim(a,b)、ベクトルVAをa、VBをbとすると、類似度は以下の式により算出される。
【0093】
<式>
【0094】
上記類似度を算出した結果、類似ノード結合手段403において、算出された類似度が、しきい値以上か否かがチェックされ、しきい値以上のノードは結合する(S402)。
【0095】
上記ノード結合処理が終了後、類似アーク結合手段404において、全てのノードに対し、ノード間においてFromとToが同じアークが存在するか否かがチェックされ、同じアークがあった場合には、全てのアークを結合し1つのアークにする(S403)。例えば、ノードAからノードBに直接至るアークが2つ以上である場合、1つのアークを残して他は削除する。
【0096】
次いで、ノード配置決定手段405において、ノード間の類似度に基づいてノード間の距離を算出し(S404)、算出されたノード間の距離に基づいて各ノードの最適な配置を決定する(S405)。このノード間の距離は、例えば、ノード類似度の逆数により与える。また、ノード配置決定は、次のようなアルゴリズムにより行う。
【0097】
ノードをN1,N2,N3,・・・NN、各ノードの座標をNn(xn,yn)、ノードNnとNmの距離Dnm=ノード間類似度の逆数とし、次の式を最小にするノード座標を最急降下法により求める。
【0098】
<式>
なお、Σ(総和)は、全てのmnの組み合わせについて行う。abs()は絶対値を意味する。
【0099】
上記処理後、FT図構築手段406において、ノード、アークが最適に配置されたFT図を作成し(S406)、コンピュータCのディスプレイにFT図を表示し(S407)、当該処理は終了する。この処理により作成されたFT図の一例を図10に示す。上記のように事例における各事象間の因果関係を、部品部分木120及び機能部分木220に関連付けて作成しているので、このFT図は、熟練者の問題解決手法が反映されたFT図となっている。
【0100】
なお、作成されたFT図について、修正を加えたい場合には、エディタ500を起動し、ユーザがノードやアークを、マウスやキーボードを操作することにより、追加、修正を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施形態の概略構成を説明するための機能ブロック図。
【図2】図1の詳細を示す機能ブロック図。
【図3】本発明の実施形態における部品部分木作成処理を示すフローチャート。
【図4】本発明の実施形態における機能部分木作成処理を示すフローチャート。
【図5】本発明の実施形態における因果関係部分木作成処理を示すフローチャート。
【図6】本発明の実施形態におけるFT図作成処理を示すフローチャート。
【図7】部品部分木の一例を示す図。
【図8】機能部分木の一例を示す図。
【図9】部品部分木、機能部分木及び因果関係部分木を統合して本発明のFT図を作成する工程を説明するための説明図。
【図10】本発明により作成したFT図の一例を示す図。
【図11】部品構成表の一例を示す図。
【図12】仕様書の一例を示す図。
【図13】事例文の一例を示す図。
【符号の説明】
【0102】
100 部品構成表
110 部品部分木作成手段
120 部品部分木
200 仕様書
210 機能部分木作成手段
220 機能部分木
300 事例文
310 因果関係部分木作成手段
312 事象抽出手段
400 FT図作成手段
401 ノード間類似度算出手段
500 エディタ
C コンピュータ
P FT図作成プログラム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に生じた事故や故障などのトラブル情報をトップダウン的に解析し、そのトラブルの原因と結果からツリー構造のFT図を作成するFT図作成プログラムであって、
上記FT図作成プログラムは、
コンピュータを、部品部分木作成手段、機能部分木作成手段、少なくとも事象抽出手段と因果関係抽出手段とを有する因果関係部分木作成手段、ノード間類似度算出手段を有するFT図作成手段、として機能させるものであり、
上記部品部分木作成手段は、
上記対象物の構成部品に関するデータをそれぞれ部品ノードとし、各部品ノードをトップダウン的なツリー構造に表記する部品部分木を作成する手段であり、
上記機能部分木作成手段は、
上記対象物における機能に関するデータをそれぞれ機能ノードとし、各機能ノードをトップダウン的なツリー構造に表記する機能部分木を作成する手段であり、
上記事象抽出手段は、
上記トラブル情報を解析することにより該トラブル情報を構造化し、該構造化されたトラブル情報に基づいて該トラブルにおける全ての事象を抽出する手段であり、
上記因果関係抽出手段は、
上記事象抽出手段により抽出された事象間の因果関係を抽出する手段であり、
上記因果関係部分木作成手段は、
上記事象抽出手段により抽出された各事象を事象ノードとし、各事象ノードを上記因果関係抽出手段により抽出された因果関係に基づいてツリー構造に表記する因果関係部分木を作成する手段であり、
上記ノード間類似度算出手段は、
上記部品部分木、上記機能部分木及び上記因果関係部分木を解析し、各部分木を構成する各ノードの記述内容の類似度を算出する手段であり、
上記FT図作成手段は、
上記ノード間類似度算出手段により算出された類似度に基づいて、上記部品部分木、上記機能部分木及び上記因果関係部分木を統合することにより、FT図を作成する手段であること
を特徴とするFT図作成プログラム。
【請求項2】
上記コンピュータに上記作成されたFT図を編集する機能を実現させることを特徴とする請求項1に記載のFT図作成プログラム。
【請求項3】
上記部品部分木作成手段は、上記対象物の構成部品に関するデータを、部品構成表を読取手段により読み取ることにより取得することを特徴とする請求項1あるいは2に記載のFT図作成プログラム。
【請求項4】
上記機能部分木作成手段は、上記対象物における機能に関するデータを、仕様書を読取手段により読み取ることにより取得することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のFT図作成プログラム。
【請求項5】
上記トラブル情報は、トラブルに関する情報が記載された事例文を読取手段により読み取ることにより取得することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載のFT図作成プログラム。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項に記載のFT図作成プログラムを備えることを特徴とするFT図作成装置。
【請求項7】
請求項1〜5いずれか1項に記載のFT図作成プログラムを記録したことを特徴とする記録媒体。
【請求項8】
対象物に生じた事故や故障などのトラブル情報をトップダウン的に解析し、そのトラブルの原因と結果からツリー構造のFT図を作成するFT図作成方法であって、
上記対象物の構成部品に関するデータをそれぞれ部品ノードとし、各部品ノードをトップダウン的なツリー構造に表記する部品部分木を作成する部品部分木作成工程と、
上記対象物における機能に関するデータをそれぞれ機能ノードとし、各機能ノードをトップダウン的なツリー構造に表記する機能部分木を作成する機能部分木作成工程と、
上記トラブル情報を解析することにより該トラブル情報を構造化し、該構造化されたトラブル情報に基づいて該トラブルにおける全ての事象を抽出する事象抽出工程と、
上記事象抽出工程により抽出された事象間の因果関係を抽出する因果関係抽出工程と、
上記事象抽出工程により抽出された各事象を事象ノードとし、各事象ノードを上記因果関係抽出工程により抽出された因果関係に基づいてツリー構造に表記する因果関係部分木を作成する因果関係部分木作成工程と、
上記部品部分木、上記機能部分木及び上記因果関係部分木を解析し、各部分木を構成する各ノードの記述内容の類似度を算出するノード間類似度算出工程と、
上記ノード間類似度算出工程により算出された類似度に基づいて、上記部品部分木、上記機能部分木及び上記因果関係部分木を統合することにより、FT図を作成するFT図作成工程と、を備えること
を特徴とするFT図作成方法。
【請求項1】
対象物に生じた事故や故障などのトラブル情報をトップダウン的に解析し、そのトラブルの原因と結果からツリー構造のFT図を作成するFT図作成プログラムであって、
上記FT図作成プログラムは、
コンピュータを、部品部分木作成手段、機能部分木作成手段、少なくとも事象抽出手段と因果関係抽出手段とを有する因果関係部分木作成手段、ノード間類似度算出手段を有するFT図作成手段、として機能させるものであり、
上記部品部分木作成手段は、
上記対象物の構成部品に関するデータをそれぞれ部品ノードとし、各部品ノードをトップダウン的なツリー構造に表記する部品部分木を作成する手段であり、
上記機能部分木作成手段は、
上記対象物における機能に関するデータをそれぞれ機能ノードとし、各機能ノードをトップダウン的なツリー構造に表記する機能部分木を作成する手段であり、
上記事象抽出手段は、
上記トラブル情報を解析することにより該トラブル情報を構造化し、該構造化されたトラブル情報に基づいて該トラブルにおける全ての事象を抽出する手段であり、
上記因果関係抽出手段は、
上記事象抽出手段により抽出された事象間の因果関係を抽出する手段であり、
上記因果関係部分木作成手段は、
上記事象抽出手段により抽出された各事象を事象ノードとし、各事象ノードを上記因果関係抽出手段により抽出された因果関係に基づいてツリー構造に表記する因果関係部分木を作成する手段であり、
上記ノード間類似度算出手段は、
上記部品部分木、上記機能部分木及び上記因果関係部分木を解析し、各部分木を構成する各ノードの記述内容の類似度を算出する手段であり、
上記FT図作成手段は、
上記ノード間類似度算出手段により算出された類似度に基づいて、上記部品部分木、上記機能部分木及び上記因果関係部分木を統合することにより、FT図を作成する手段であること
を特徴とするFT図作成プログラム。
【請求項2】
上記コンピュータに上記作成されたFT図を編集する機能を実現させることを特徴とする請求項1に記載のFT図作成プログラム。
【請求項3】
上記部品部分木作成手段は、上記対象物の構成部品に関するデータを、部品構成表を読取手段により読み取ることにより取得することを特徴とする請求項1あるいは2に記載のFT図作成プログラム。
【請求項4】
上記機能部分木作成手段は、上記対象物における機能に関するデータを、仕様書を読取手段により読み取ることにより取得することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のFT図作成プログラム。
【請求項5】
上記トラブル情報は、トラブルに関する情報が記載された事例文を読取手段により読み取ることにより取得することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載のFT図作成プログラム。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項に記載のFT図作成プログラムを備えることを特徴とするFT図作成装置。
【請求項7】
請求項1〜5いずれか1項に記載のFT図作成プログラムを記録したことを特徴とする記録媒体。
【請求項8】
対象物に生じた事故や故障などのトラブル情報をトップダウン的に解析し、そのトラブルの原因と結果からツリー構造のFT図を作成するFT図作成方法であって、
上記対象物の構成部品に関するデータをそれぞれ部品ノードとし、各部品ノードをトップダウン的なツリー構造に表記する部品部分木を作成する部品部分木作成工程と、
上記対象物における機能に関するデータをそれぞれ機能ノードとし、各機能ノードをトップダウン的なツリー構造に表記する機能部分木を作成する機能部分木作成工程と、
上記トラブル情報を解析することにより該トラブル情報を構造化し、該構造化されたトラブル情報に基づいて該トラブルにおける全ての事象を抽出する事象抽出工程と、
上記事象抽出工程により抽出された事象間の因果関係を抽出する因果関係抽出工程と、
上記事象抽出工程により抽出された各事象を事象ノードとし、各事象ノードを上記因果関係抽出工程により抽出された因果関係に基づいてツリー構造に表記する因果関係部分木を作成する因果関係部分木作成工程と、
上記部品部分木、上記機能部分木及び上記因果関係部分木を解析し、各部分木を構成する各ノードの記述内容の類似度を算出するノード間類似度算出工程と、
上記ノード間類似度算出工程により算出された類似度に基づいて、上記部品部分木、上記機能部分木及び上記因果関係部分木を統合することにより、FT図を作成するFT図作成工程と、を備えること
を特徴とするFT図作成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−289020(P2009−289020A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140741(P2008−140741)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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