説明

FVIIIおよびVWFがノックアウトされた遺伝子導入マウス−血友病Aモデル

本発明は、概して、内因性第VIII因子および内因性フォンヴィレブランド因子を欠失する血友病Aの遺伝子導入非ヒト動物モデル、ならびに外因性ヒトVWFの投与により、遺伝性もしくは後天性の血友病Aまたはフォンヴィレブランド病(VWD)を治療するための方法に関する。本発明により、例えば、機能的な内因性第VIII因子(FVIII)遺伝子欠損および機能的な内因性フォンヴィレブランド因子(VWF)遺伝子欠損を有するゲノムを有する、遺伝子導入非ヒト動物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年8月4日に出願された米国特許仮出願第61/231,230号の優先権の利益を主張し、参照されることにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は概して、血友病A等の血液凝固障害の研究に有用な、第VIII因子(FVIII)およびフォンヴィレブランド因子(VWF)を欠損する遺伝子導入非ヒト動物に関する。
【背景技術】
【0003】
血液凝固は、とりわけフィブリノゲン、第II因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、およびフォンヴィレブランド因子の成分の一連の連続的な相互作用を含む複合過程である。それら1つの成分の損失、またはその機能性の阻害は、血液凝固の増加傾向または、一部の患者では生命を脅かす恐れがある凝固不能を引き起こす場合がある。
【0004】
第VIII因子は、血液凝固へと導く反応の連鎖にある共同因子として作動する、血漿で築かれたタンパク質である。血液中の第VIII因子活性の量の欠乏は、遺伝性疾患で主に男性に影響を与える凝固障害血友病Aをもたらす。血友病Aはヒト血漿から抽出された、またはDNA組み換え技術を用いて製造された第VIII因子の治療的調製で治療されている。そのような調製は出血症状に応えて、あるいは頻繁に、一定間隔でコントロール不可能である出血を防ぐために(予防法)投与される。
【0005】
フォンヴィレブランド因子(VWF)は、第VIII因子と錯体を形成した血漿で循環する。第VIII因子と錯体を形成したVWFは第VIII因子タンパク質を安定させる、またはタンパク質分解から保護する。血小板凝集ではその機能に起因して、VWFは血液凝固にも直接的に干渉する。フォンヴィレブランド欠乏症(VWD)(フォンヴィレブランド症候群としても知られている)は欠乏症あるいはVWFの過剰発現に由来する。VWFの欠乏症は、VWF共同因子が欠損した第VIII因子の急速分解に起因する、血友病に似た病気をもたらす。
【0006】
血友病Aおよびフォンヴィレブランド症候群の療法の従来の方法は、第VIII因子または血漿から回収された、もしくは組み換え源によって製造されたVWFを使用し、そして精製された第VIII因子、VWF、または第VIII因子/VWF複合体で患者を治療する多くの試みがある。
【0007】
遺伝子導入動物技術は、非ヒト動物内のヒトタンパク質の特性を研究するただ一つの機会を提示する。組み換えDNAおよび遺伝子工学技術は、内因性遺伝子の発現に干渉または導入する、そして目的配列または、とりわけインビボ分子の効果を研究し、そして分子に結合する薬剤を研究することを可能にしている受容動物内の遺伝子を発現することを可能にした。遺伝子導入マウスを製造する1つの方法は、新たに交尾した雌マウスからの受精卵の回収および、動物内の発現または卵の雄性前核の中の内因性遺伝子発現で干渉するための当該の遺伝子のDNAのマイクロインジェクションが必要である。マイクロインジェクションを施された卵は、それから1日偽妊娠した育ての母の卵管内に植えつけ、出産に進ませる。例えば、非特許文献1,特許文献1および特許文献2を参照のこと。別の手順は当該遺伝子を導入された胚幹細胞を使用する。導入胚幹細胞はそれから、生殖細胞系を含む全組織形成に加わるマウス胚盤胞腔に注射されるので、それゆえ遺伝子導入子孫を生成する。同種組み換え技術と組み合わせたこの取り組みは、規制された方法で胚の胚幹細胞改造することの可能性を提供するので、それゆえ、規定のゲノムで遺伝子導入のマウスを生成する。例えば、非特許文献2、あるいは、非特許文献3、あるいは、非特許文献4を参照のこと。
【0008】
遺伝子導入のマウスは、発現するため、または当該(ノックインマウス)タンパク質を過剰に発現する場合があり、もしくは当該(ノックアウトマウス)遺伝子を削除するために発生させる可能性がある。ヒトタンパク質分子を発現する遺伝子導入マウスは、インビボヒト分子の研究を考慮に入れる。例えば、非特許文献5は、遺伝子導入マウスが組み換えFVIIIの活性を抑制するFVIII抑制抗体の問題を回避するよう設計されている、修正されたヒトFVIIIタンパク質(B−ドメイン欠損)を発現している、と記載する。ヒトVWDと似た症状を示すVWFノックアウトマウスは、VWF欠乏症を治すためにマウスVWFからなる遺伝子療法ベクターの投与を記載する、非特許文献6で開示された。
【0009】
それゆえ、人間患者への研究なしにインビボヒト血液凝固因子活性の研究のための改良方法を発展する技術の必要性が存在する。さらにまた、血友病Aのような血液凝固障害を有する患者に対する、外因性治療的タンパク質の投与の治療的効果を決定する技術の必要性が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,873,191号明細書
【特許文献2】米国特許第7,294,755号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Wagneret al.Proc Natl .Acad.Sci.U.S.A.78:6376−6380(1981)
【非特許文献2】Baribault and Kemler.Embryonic stem cell culture and gene targeting in transgenic mice.Mol Biol Med.6:481−92,1989
【非特許文献3】Ledermann B.Embryonic stem cells and gene targeting.Exp Physiol.85:603−13,2000
【非特許文献4】Moreadith and Radford.Gene targeting in embryonic stem cells;the new physiology and metabolism.J Mol Med.75:208−16,1997
【非特許文献5】Shiら,J Clin Invest.116:1974−82,2006
【非特許文献6】Pergolizziら,Blood.108:862−9,2006
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、インビボでの治療的養生法における効果の研究と、同様に外因性ヒト血液凝固因子の投与を用いてヒト血液凝固障害を治療する方法の発達に有益である遺伝子導入の非ヒト動物の提供による、血液凝固障害の治療に関連する当技術分野における1つ以上の必要性に取り組む。
【0013】
一実施形態において、本発明は、機能性が欠損しているゲノム、内因性第VIII因子(FVIII)遺伝子、および内因性フォンヴィレブランド因子(VWF)遺伝子である機能性が欠損しているゲノムを有する遺伝子導入の非ヒト動物を提供する。一態様において、遺伝子導入動物は、ヒトVWFをコード化しているヒト導入遺伝子ポリヌクレオチド配列から成るゲノムを有する。任意で、ポリヌクレオチド配列はプロモーターポリヌクレオチド配列と作動可能に連結され、および/または、ポリヌクレオチド配列はポリアデニル化ポリヌクレオチド配列から成る。様々な態様において動物は齧歯動物であり、特定の一態様において動物はマウスである。
【0014】
本発明はまた、機能的な内因性第VIII因子(FVIII)遺伝子の欠損および機能的な内因性フォンヴィレブランド因子(VWF)遺伝子の欠損を有するゲノムを有する非ヒト遺伝子導入動物も提供し、このゲノムは、ヒトフォンヴィレブランド因子をコードするポリヌクレオチドを含み、このヒトVWFは、ヒトVWFの生理学的活性を有し、この遺伝子導入哺乳動物は、その遺伝子内に、転写制御ポリヌクレオチド配列、上述のヒトVWFをコードするDNA、およびポリアデニル化シグナルを含む外因性導入遺伝子構築物を有し、転写制御ポリヌクレオチド配列、上述のヒトVWFをコードするDNA、およびポリアデニル化シグナルは、ヒトVWFまたはその断片の遺伝子導入動物中の産生を得るために、外因性遺伝子構築物内で作動可能に連結される。一態様において、転写制御ポリヌクレオチド配列は5’転写制御ポリヌクレオチド配列、3’転写制御ポリヌクレオチド配列、内部転写制御ポリヌクレオチド配列、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。特定の態様において、5’制御配列は、任意選択でエンハンサー領域を含むプロモーターである。
【0015】
提供される遺伝子導入の動物の様々な実施形態において、動物はヒト後天的血友病Aの実験的モデルである。
【0016】
さらに、先に述べたように治療有効量のヒトVWFの動物への投与から成る内因性第VIII因子および内因性VWFの欠乏した哺乳動物における、外因性ヒトフォンヴィレブランド因子(VWF)の効果の評価、および臨床的読出しの改善が外因性VWFの治療的効果を示しているVWF活性の臨床的読出し測定のための方法が提供される。その方法のある態様において、VWFは腹腔内または皮下に投与される。他の態様において、VWFは50VWF:AgU/kgから500U/kgまでの範囲で投与される。さらに他の態様において、VWF活性の臨床的読出しは血液組成、血小板凝集、血小板粘着および血小板活性化から構成される基より選ばれる。
【0017】
本発明は、外因性多量体ヒトフォンヴィレブランド因子の血友病Aの症状改善に効果的な量を、腹腔内または皮下に投与されることから成る血友病Aを有する被験対象の治療のための方法を、さらになお提供する。一態様において、症状は出血性障害、自己免疫疾患、異常血小板凝集、異常血小板粘着および異常血小板活性化から構成される基から選ばれる。別の態様において、VWFは50VWF:AgU/kgから500U/kgまでの範囲で投与される。
【0018】
前述で提供される方法の様々な実施形態において、VWFはヒト第VIII因子と組み合わせて投与される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】200rVWF/kg(図1A)または400rVWF/kg(図1B)の投与後のFVIIIxVWDダブルノックアウトマウスの血漿における、組み換えVWF抗原のレベルを示す。
【図2】腹腔内に注射されたrVWFがFVIIIxVWDマウスの血漿において高分子量マルチマーとして検出されたことを図示している低分解能SDS−PAGE(図2A)または高分解能SDS−PAGE(図2B)を表す。
【図3】は、腹腔内に注射されたVWFに由来する血漿がFVIIIxVWDノックアウトマウスの血液循環において検出されたことを図示する。
【図4】腹腔内に注射されたVWFに由来する血漿が、無傷マルチマーとして血液循環において保存されていることを示す。(A)低分解能SDS−PAGE、(B)高分解能SDS−PAGE。
【図5】rVWF:Agが200IU rFVIII/kgおよび200IU VWF:Ag/kgの腹腔内注射後24時間まで血漿において検出可能であることを示す。
【図6】FVIIIが200IU rFVIII/kgおよび200 IU VWF:Ag/kgの腹腔内注射後9時間まで血漿において検出可能であったが、24時間以降は検出可能でなかったことを示す。
【図7】FVIII(図7A)およびrVWF:Ag(図7B)の、200IU rFVIII/kgおよび200IU VWF:Ag/kgの腹腔内注射後48時間までの血中濃度を図示する。FVIIIおよびrVWFは、46時間以降は血液循環において検出可能ではなかった。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、血液凝固障害を治療するために有用な改善された方法および組成物の当技術分野における必要性に取り組む。本発明は、さらに、ヒト血液凝固障害の治療における治療的組成物の有効性に取り組むために、内因性血液凝固因子が欠損している、および血液凝固因子内因性の代わりにヒト凝固因子が発現しているいくつかの症例において遺伝子導入動物を提供する。
【0021】
定義
他に定義済みである場合を除いて、本明細書で使用された全ての技術および化学用語は、この発明が属する当業者によって一般に理解された同様の意味を有する。下記の参考文献は本発明において使われた多くの用語の通常の定義と共に、当業者に提供する。Singleton,et al.,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY(2d ed.1994); THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY(Walker ed.,1988); THE GLOSSARY OF GENETICS,5TH ED.,R.Rieger,et al.(eds.),Springer Verlag(1991); and Hale and Marham,THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY(1991)。
【0022】
各出版物、特許出願、特許、および他の本明細書に引用された参照文献は、本開示と矛盾しない範囲全体中の参照文献によって連携される。
【0023】
この明細書および添付の請求項において使用された、単数形態「a」、「an」および「the」は、その文脈が明らかに指し示さない限り、複数形を含むということをここに留意する。
【0024】
本明細書で使用される、以下の用語は、他を特定しない限りそれらに属する意味を有する。
【0025】
本明細書で使用される、RNA、ポリペプチド、タンパク質または酵素のような「コード配列」または配列「コード化」生成物は、発現した際、RNA、ポリペプチド、タンパク質または酵素の産出をもたらす、ヌクレオチド配列である。つまりヌクレオチド配列がポリペプチド、タンパク質または酵素に必要なアミノ酸配列をコードする。タンパク質に対するコード配列は、開始コドン(通常ATG)および終始コドンを含む可能性がある。
【0026】
本明細書で使用される「遺伝子」は、コードするDNA配列または、1つ以上のポリペプチド、タンパク質または酵素の全てまたは一部から成る、アミノ酸の特定配列に言及し、イントロン、および、例えば、その遺伝子が発現される下の条件に影響を及ぼすプロモーターまたはエンハンサー配列、5’−非翻訳領域または、3’−非翻訳領域のような調節DNA配列を含む可能性または含まない可能性がある。構造遺伝子ではない、いくつかの遺伝子は、DNAからRNAへ書き直される可能性があるが、アミノ酸配列には変えられない。他の遺伝子は、構造遺伝子の調整剤として、またはDNA転写の調整剤として機能する可能性がある。
【0027】
本明細書で使用される、「導入遺伝子」は、別の有機体のゲノムに伝わる外因性遺伝子に言及する。ヒト導入遺伝子は、非ヒト哺乳動物に伝わるヒト遺伝子である。
【0028】
本明細書で使用される「プロモーター」または「プロモーター配列」は、RNAポリメラーゼを細胞内に結び付ける、およびコード配列の転写を開始する能力があるDNA調節領域である。一態様において、プロモーター配列は、転写開始部位によってその3’末端に結び付けられ、上記背景で検出可能な水準で転写を開始するために必要な基節または要素の最小数を含むため、上流(5’方向)へおよぶ。関連した態様において、プロモーター配列内に、RNAポリメラーゼの結びつきに対して関与するドメインを結び付けるタンパク質(合意配列)と同様に、転写開始部位(例えば、ヌクレアーゼS1と共に位置することにより、便利に定義される)が発見される。プロモーターは、エンハンサーおよびリプレッサー配列を含む、他の発現制御配列と作動的に関係がある可能性がある。
【0029】
一態様において、プロモーターは以前、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(米国特許第5,385,839号、および第5,168,062号)、SV40早期プロモーター領域(BenoistおよびChambon,Nature290:304−310,1981)、ラウス肉腫ウイルス(Yamamoto,et al.,Cell 22:787−797,1980)の3’長い末端反復に含まれているプロモーター、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1441−1445,1981)、メタロチオネイン遺伝子の制御配列(Brinster et al.,Nature 296:39−42,1982)、あるいは酵母または他のGAL4プロモーターのような菌類からのプロモーター要素、ADC(アルコール脱水素酵素)プロモーター、PGK(ホスホグリセロムターゼ キナーゼ)プロモーター、アルカリ性ホスファターゼプロモーター、あるいは視床下部に活性がある(Mason et al.,Science 234:1372−1378,1986)ゴナドトロピン放出ホルモン遺伝子制御領域のような、神経または脳特有の発現を示す転写制御領域、胸腺リンパ球1.2「全神経の」プロモーター、および神経に活性があるシナプシスIプロモーター(Howland et al.,Brain Neurobiol Aging 16:685−699,1995)、を含み遺伝子発現を制御したがそれには限定されない。プロモーターが内因性血液凝固因子プロモーターであるということも熟慮される。当業者は、当技術分野において知られているいずれのプロモーターが有用であり、発現が望まれることにおけるその細胞形式が特殊なプロモーターの使用を決定することが出来るということを理解するであろう。
【0030】
本明細書で使用されるコード配列は、RNAポリメラーゼがRNAへコード配列を書き直し、同時にトランス−RNAを挿入され(それがイントロンを含有する場合は)そして、mRNAについて言えば、コード配列によってコード化されたタンパク質へ翻訳された際、細胞における、「その制御下の」、「〜に作動可能に連結される」または「作動可能なように関連する」転写および翻訳制御配列である。
【0031】
本明細書で使用される用語「発現する」および「発現」は、例えば、対応遺伝子またはDNA配列の転写および翻訳に含まれる細胞機能の活性化によりタンパク質を生産することといった遺伝子またはDNA配列が明白になる、許可または情報の原因に言及する。DNA配列は、タンパク質のような「発現生産」を形成することにおいて、またはそれによって発現される。発現生産それ自身は、例えば、結果として生じるタンパク質が、「発現された」とも言われる可能性がある。発現生産は、様々な態様において、細胞内に、細胞外にまたは隠されたと見なされる。用語「細胞内の」は細胞の内側を意味する。用語「細胞外」は、膜貫通タンパク質のような細胞の外側を意味する。実体は、それが細胞外、どこかからまたは細胞内に有意な尺度を現わす場合、細胞によって「隠された」。
【0032】
本明細書で使用される「導入」は、細胞への異質の核酸の導入に言及する。用語「形質転換」は、「異質」の(つまり外因性、異種、外部のまたは細胞外)遺伝子、DNAまたはRNA配列における胚幹(ES)細胞または前核の導入に言及し、細胞が、遺伝子導入の動物における目的の実体を生産するための遺伝子または配列を取り込む発現を出来るようにする。
【0033】
本明細書で使用される用語「ベクター」、「クローニングベクター」および「発現ベクター」は、DNAまたはRNA配列(例えば、異質の遺伝子)が、宿主を変形し、導入された配列の発現(例えば、転写および翻訳)を推進するために宿主細胞へ導入されることによる媒体に言及する。用語「ベクター」は本明細書では、用語「プラスミド」と相互に変化して使われた。
【0034】
本明細書で使用される「選択可能なマーカー」は、マーカーの発現または活性が、(例えば、無制限だが、ネオ遺伝子のような陽性マーカー)のために選ばれた、または(例えば、無制限で、ジフテリア遺伝子のような陰性マーカー)に対して選ばれたというような薬物、抗生物質または他の薬剤に抵抗するような識別可能な表現型の変化が発現された細胞または有機体を与える酵素または他のタンパク質の遺伝子コード化に言及する。異種選択可能なマーカーは、通常見つけられるであろう動物のゲノムへ挿入されるという選択可能なマーカー遺伝子に言及する。
【0035】
選択可能なマーカーの例は、ネオマイシン(neo)、ピューロマイシン(Puro)、ジフテリア毒素、ホスホトランスフェラーゼ、ハイグロマイシン ホスホトランスフェラーゼ、キサンチン誘導ホスホリボシル トランスフェラーゼ、単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ、アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼおよびヒポキサンチン ホスホリボシルトランスフェラーゼのような抗生物質耐性遺伝子を含むがそれに限定されない。当業者は、その方法において有用であると知られている技術のいずれの選択可能なマーカーを理解すると考えられる。
【0036】
本明細書で使用される「異種」は、それ自身において自然に生じず、および/または、非自然環境において発見される要素の組み合わせに言及する。例えば、異種DNAは、DNAが細胞において、または細胞の染色体部位おいて、自然に位置しないことに言及する。それは細胞を含む異種DNAを考慮する。異種発現調節要素は、自然中と作動的に関連するよりも異質遺伝子と作動的に関連するこのような要素である。
【0037】
本明細書で使用される用語「同種」は、上科からのタンパク質(例えば、上科免疫グロブリン)を含む「共通の環境起源」を保有するタンパク質および異種(例えば、ミオシン軽鎖等)からの同種タンパク質間の関係に言及する(Reeck et al.,Cell 50:667,1987)。そのようなタンパク質(およびそれらのコード化遺伝子)は、類似率または保存タンパク質で特異残基またはモチーフの存在に関してどうであろうと、それらの類似配列の反映として同族配列を有する。
【0038】
対照用に配列の最適アラインメントが、例えば無制限で、Smith&Waterman,Adv.Appl.Math.2:482,1981の局部同族アルゴリズムによって、あるいはNeedleman&Wunsch,J.Mol.Biol.48:443,1970の同族調整アルゴリズムによって、あるいはPearson&Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:2444,1988の類似方法の探究によって、あるいはこれらのアルゴリズム(GAP,BESTFIT,FASTA,and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WI)の電子化実施によって、または外観検査(generally Ausubel et al.,supra、を参照のこと)によって、実施された。アルゴリズムの別例は、配列識別割合およびの究明に適しており、配列類似がAltschul et al.,J.Mol.Biol.215:403−410,1990において記載されたBLASTアルゴリズムである。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、全米バイオテクノロジー情報センターを通じて公的に入手可能である。配列識別割合の計算に加えて、BLASTアルゴリズムは、2つの配列(例えば、Karlin&Altschul,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA90:5873−5787,1993、を参照のこと)間の類似の統計分析も実行する。
【0039】
本明細書で使用される「内因性」は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド宿主有機体において自然に発現された他の化合物に言及し、また細胞内部、組織または有機体に由来する。「外因性」は、ポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは他の細胞外部、組織または有機体に由来する化合物に言及する。
【0040】
本明細書で使用される「ポリペプチド」は、ペプチド結合を経由して結合されたアミノ酸残基から成るポリマーに言及する。合成ポリペプチドは、一態様において、自動ポリペプチド合成器を使用して、合成される。用語「タンパク質」は、概して拡大ポリペプチドに言及する。用語「ペプチド」は概して短ポリペプチドに言及する。
【0041】
本明細書で使用される、ポリペプチドの「断片」は、ポリペプチドのいずれの部分も、実物大のポリペプチドまたはタンパク質発現産物より小さいことに言及する。断片は概して、アミノ末端、および/または、実物大のポリペプチドのカルボキシ末端から除去された1つ以上のアミノ酸残基における実物大のポリペプチドの削除類似体である。従って、「断片」は以下に記載された削除類似体の小集団である。
【0042】
本明細書で使用される「類似体」は、たとえ、異なる程度の場合、自然発生分子の場合であっても、実質的に類似した構造で同様の生物活性を有するポリペプチドに言及する。類似体は、その類似体から生成された自然発生ポリペプチドに比べてそれらのアミノ酸配列の組成物が異なり、以下を含む1つ以上の変異に基づく、(i)1つ以上のポリペプチドの末端、および/または、自然発生ポリペプチド配列のより内部領域での1つ以上のアミノ酸残基の削除、(ii)ポリペプチドの1つ以上の末端(概して、「追加」類似体)、および/または、1つ以上の自然発生ポリペプチド配列の内部領域(概して、「挿入」類似体)、での1つ以上のアミノ酸の挿入または追加、あるいは(iii)自然発生ポリペプチド配列における他のアミノ酸のための1つ以上のアミノ酸の置換。置換は、物理化学または、置き換えられていて、そのアミノ酸がそれを置き換えるというアミノ酸の機能的同系性に基づく保存または非保存である。本明細書で留意すべきは、自然発生するアミノ酸配列の1つまたは両末端で、1つ以上のアミノ酸残基において、削除類似体が断片を含み取り除かる。また、追加類似体は、全てまたは部分的に別なタンパク質またはポリペプチド配列において、融合タンパク質を含む、自然発生のアミノ酸配列の1つまたは両方の末端へ加えられる。
【0043】
本明細書で使用される「対立遺伝子多型」は、同様の遺伝子座を占領している遺伝子の2つ以上のいずれかの多形相に言及する。対立遺伝子の変化は、変異体を通じて自然に起こり、また個体群内の表現型多型をもたらす可能性がある。一態様において、遺伝子変異体は寡黙(コード化されたポリペプチドにおいて、変化しない)または、変貌したアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする可能性がある。「対立遺伝子多型」は、それらによってコード化されたタンパク質と同様に、対立遺伝子多型遺伝子のmRNA転写物から生成されたcDNAsにも言及する。
【0044】
本明細書で使用される「変異体」は、ポリペプチド、タンパク質または通常分子の部分ではない追加的化学部分を含有するために修正された類似体に言及する。そのような部分は、様々な態様において、分子の溶解度、吸収、および/または生物学的半減期を調節する。他の様々な態様におけるその部分は、分子の毒性を選択的に減少し、分子等のいかなる望ましくない副作用をも、削除するまたは衰えさせる。そのような効果を仲介出来る部分は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1980)において開示さる。そのような部分を分子に連結するための手順は、その技術において周知されている。例えば、変異体は、長半減期インビボをタンパク質へ与える化学一時的変異を有する血液凝固因子である可能性がある。一実施形態において、ポリペプチドは、その技術において知られている水溶性のポリマーを追加することで修正される。関連する実施形態において、ポリペプチドは、グリコシル化、ペグ化、および/または、ポリシアル化によって修正される。
【0045】
本明細書で使用される「検出可能な部分」または「標識」は、分光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的または他の手段によって検出可能な組成物に言及する。例えば、有用な標識は、32P、35S、蛍光性染料、電子密度の高い試薬、酵素(例えば、一般に使用されるものとして、ELISA)、ビオチンストレプトアビジン、ジオキシゲニン、ハプテンおよび、抗血清もしくは単クローン性抗体を入手するためのタンパク質、または対象に補完的配列である核酸分子を含む。検出可能な部分は、サンプルにおける化合した検出可能な部分量をかつて計った放射性、発色性または蛍光性シグナルのような測定可能なシグナルをしばしば発生する。
【0046】
血液凝固因子
第VIII因子(FVIII)は、哺乳動物の肝臓内に大量生産された分子、約260kDaの血漿糖タンパク質である。それは血液凝固を導くという凝固反応の連鎖に重要な成分である。この連鎖内において、FVIIIと連結して、第X因子を第Xa因子である活性形状へ変換する第IXa因子が存在する段階である。FVIIIはこの段階で共同因子として作動し、カルシウムイオンおよび第IXa因子の活性に対するリン脂質とともに要求される。2つの最も共通の血友病障害は、機能的な欠乏症FVIII(血友病A、全ての症状の約80%)または機能的第IXa因子(血友病Bまたはクリスマス因子病)によって生じる。
【0047】
近年までは、血友病Aの治療基準は、ヒト臓器提供者の血漿から生成されたFVIII濃縮物の調製の頻繁な注入を含んでいた。この補充療法は一般に有効であるが、一方で、そのような治療は、肝炎およびエイズのような、ウイルス伝染性の病の危険がある状態に患者を置く。この危険性は、単クローン抗体を使用した免疫精製により血漿からFVIIIのさらなる精製により減少しているが、有機的な溶媒または熱のどちらか一方との治療による不活化ウイルスにより、そのような調製は、危険性なしではない治療の費用を大いに増加した。これらの理由により、患者は予防的というよりはむしろ、偶発的に取り扱われてきた。
【0048】
血友病Aの治療における重要な進歩は、ヒトFVIIIのcDNAクローンコード化完全な2,351アミノ酸配列の単離(Wood et al,Nature,312:330(1984)および、米国特許第4,757,006号、1988月7月12日、を参照)あるいはヒトFVIII遺伝子DNA配列およびその製品のための組み換え方法の提供である。しかしながら、組み換えFVIIIを受けている患者は、病の治療を妨げるFVIII特異的抗体を、まだ発現する可能性がある。血友病の治療のための第VIII因子製品は、ADVATE(登録商標)(抗血友病因子(組み換え)、血漿/アルブミンなしの方法、rAHF−PFM)、組み換え抗血友病因子(BIOCLATE(登録商標)GENARC(登録商標)、HELIXATE FS(登録商標)、KOATE(登録商標)、KOGENATE FS(登録商標)、RECOMBINATE(登録商標))、あるいはMONOCLATE−P(登録商標)、第VIII:C因子の精製調製、抗血友病因子/フォンヴィレブランド因子合成物(ヒト)HUMATE−P(登録商標)およびALPHANATE(登録商標)、抗血友病因子/フォンヴィレブランド因子合成物(ヒト)、あるいはHYATE C(登録商標)、精製ブタ第VIII因子、を含むが限定はされない。
【0049】
フォンヴィレブランド因子は、1×10から20×10ダルトンの分子量のマルチマーを形状系の血漿において存在する。VWFは、哺乳動物の内皮細胞において主に形成され、その後血液循環内へ分泌される糖タンパク質である。この連結において、およそ220kDの分子量を有するポリペプチド鎖を根幹として、550kDの分子量を有するVWF二量体が、いくつかの硫黄結合の形成により細胞に生産される。さらに、分子量の増加を伴うVWFのポリマーは、最大20百万ダルトンまでで、連結によるVWF二量体から形成される。特殊な高分子VWFマルチマーが、血液凝固において非常に重要だと推定される。
【0050】
VWF症候群は、VWFの生産不足または過剰生産のどちらか、またはVWF(後天的なVWD)への抑制抗体を伴う自己免疫疾患の際は、臨床的に明らかにする。VWFの過剰生産は血栓症(血塊の形成または血管内の血栓、血流の閉塞性)を減少し、一方でVWFの高分子形状水準の減少または欠損が出血の増加を引き起こし、血小板凝集の阻害および創縫合に起因する出血時間を増加する。
【0051】
VWF欠乏症は、VWFが機能的第VIII因子の必須成分とされて以来、表現型血友病Aも引き起こす可能性がある。これらの事例において、第VIII因子の半減期は、血液凝固連鎖におけるその機能が正常に機能しないような限度に減少された。フォンヴィレブランド病(VWD)またはVWF症候群に悩む患者は、欠乏症第VIII因子を頻繁に示す。これらの患者において、減少された第VIII因子活性は、X染色体の遺伝子の欠陥の結果ではないが、血漿におけるVWFの 定量的および質的変化の間接的な結果である。血友病AおよびVWDの間の分化は通常、VWF抗原の測定またはリストセチン共同因子活性の決定により影響を及ぼされる可能性がある。VWF抗原内容物およびリストセチン 共同因子活性の両方は、血友病A患者においてそれらは通常であるのに対して、ほとんどのVWD患者において低下させられる。VWF症候群の治療に対するVWF製品は、HUMATE−Pあるいは、血漿から濃縮されたFVIII/VWFから成る療法であるIMMUNATE(登録商標)、ALPHANATE(登録商標)、INNOBRAND(登録商標)および、8Y(登録商標)、を含むが限定されない。
【0052】
付加的な血液因子は、無制限に第II因子(トロンビンとしても当技術分野において知られている)(核酸データベースのアクセス番号、NP_000497)を含む発明の方法で使用するために修正可能で、血栓症およびプロントロンビン欠乏症を引き起こすような欠損症つまり、出血性素因または活性タンパク質C抵抗として知られている血栓性素因形状を引き起こす欠損症の第V因子(核酸データベースのアクセス番号、NP_000121)、ローザンタールの(症候群(血友病C)の欠損症を引き起こす第XI因子(核酸データベースのアクセス番号、NP_000119)、あるいは第XIII因子サブユニットA(核酸データベースのアクセス番号、NP_000120)およびサブユニットB(核酸データベースのアクセス番号、NP_001985)、タイプI(欠乏症(AおよびB両サブユニットにおける欠乏症)あるいはタイプII(欠乏症(唯一Aサブユニットにおける欠乏症)を特徴とする欠損症、生涯出血傾向をもたらすどちらか、欠陥品創傷治療、および習慣流産第XII因子(核酸データベースのアクセス番号、NP_000496)、あるいはタンパク質C(核酸データベースのアクセス番号、NP_000303)、あるいは抗トロンビンIII(核酸データベースのアクセス番号、NP_000479)またはそれ自身の活性形状である。
【0053】
ヒト血液凝固因子の断片、変異体および類似体
血液凝固障害の治療におけるヒト血液凝固因子タンパク質の治療的効果を評価するため、ヒト血液凝固因子ポリペプチドまたは断片の変異体もしくはその類似体は、前述された遺伝子導入のマウスへ投与される。
【0054】
ポリペプチド断片、変異体または類似体を用意するための方法は、当技術分野において周知されている。ポリペプチドの断片は、酵素的切断(例えば、トリプシン、キモトリプシン)を無制限に含み、さらに特定のアミノ酸配列を有するポリペプチド断片を生成するための組み換え手段を用いて用意される。目的の断片をコード化しているポリヌクレオチドを用い、ポリペプチド断片は、リガンド結合ドメイン、ドメインを結びつけている受容体、二重化もしくは多量体化ドメイン、または当技術分野において知られているいずれか他の識別可能なドメインのように、特定の活性を有するタンパク質の領域から成り生成される可能性がある。
【0055】
ポリペプチド類似体の作成方法は、さらに周知されている。ポリペプチドのアミノ酸配列類似体は、置換、挿入または削除変異体である。ポリペプチドの断片を含む削除類似体は、機能または免疫活性にとって不可欠ではない天然タンパク質の1つ以上の残留物が欠損する。挿入類似体は、ポリペプチドにおいて非ターミナルポイントで原料の添加を含む。これは免疫反応性エピトープまたは単なる単体残留物の挿入を含む可能性がある。
【0056】
類似体は、派生されるおよびここに記述される血液凝固因子と実質的に同種または実質的に同質である可能性がある。熟慮された類似体は、少なくともいくつかの野生型ポリペプチドの生物活性、例えば、血液凝固活性、を維持するそれらである。
【0057】
置換類似体は、一般的に1つの野生型のアミノ酸と別のタンパク質内の1つ以上の部位を交換し、ここに記述されるように、他の機能または性質の損失なしに1つ以上のポリペプチドの性質を調節するよう作られる場合がある。一態様において、置換は保守的な置換である。「保守的なアミノ酸置換」とは、類似する化学的特性の側鎖を有するアミノ酸でのアミノ酸の置換を意味する。保守的な置換を作成するための類似するアミノ酸は、酸性側鎖(グルタミン酸、アスパラギン酸)、塩基性側鎖(アルギニン、リジン、ヒスチジン)、極性アミド側鎖(グルタミン、アスパラギン)、疎水性、脂肪族側鎖(ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、グリシン)、芳香族側鎖(フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン)、小型側鎖(グリシン、アラニン、セリン、トレオニン、メチオニン)、もしくは脂肪族ヒドロキシル側鎖(セリン、トレオニン)を有するそれらを含む。
【0058】
断片および類似体をコード化しているポリヌクレオチドは、自然発生分子に同一または類似する生物活性を所有する自然発生分子の、生物学的に活発な断片、変異体、または類似体をコードする当業者により、ただちに生成される可能性がある。これはPCR技法、分子をコード化しているDNAの消化などにより行うことが出来る。従って、当業者は、DNAらせん構造における変化したコドンおよびミスセンス変異をもたらすため、単体の塩基の変化を生成することが出来る。
【0059】
代表的な血液凝固因子類似体は、例えば、米国特許第6,346,513号、米国特許第6,316,226号、米国特許第6,156,888号、米国特許第6,130,203号、および米国特許第6,958,322号においてこれらを参照することにより本書に組み込まれ、記述された。
【0060】
熟慮されたヒト血液凝固因子変異体は、ユビキチン化、グリコシル化、治療的であるための結合または診断薬のような技法によって、化学的に修正されたポリペプチド、標識(例えば、放射性核種または様々な酵素と共に)、ペグ化(ポリエチレングリコールとの誘導体化)等の共有結合性のポリマー付属品、非加水分解結合の導入、および通常ヒトタンパク質に発生しないオルニチン等のアミノ酸の化学合成による挿入または置換を含む。変異体は、本発明の非修正分子の結合性質を保有する。
【0061】
ペグ化血液凝固因子類似体の用意は、一般的にポリペプチドがポリエチレングリコール(反応性エステルまたはPEGのアルデヒド誘導体、等)と、結合構造ポリペプチドが1つ以上のPEG基に付着するようになる状況下で反応している(a)、および、反応性生物(s)を得ている(b)の段階から成る。概して、アシル化反応のための最適な反応条件は既知のパラメータおよび目的の結果に基づき決定される。例えば、PEGタンパク質の比率が大きくなるほど、ポリ−ペグ化生成物の割合が高くなる。同一の実施形態において、結合構造はN−末端に単体PEG部分を有することになる。
【0062】
ポリエチレングリコール(PEG)は、長い半減期インビボを提供するため、血液凝固因子に付着される可能性がある。PEG基は、いずれの都合の良い分子量のものになる可能性があり、線状または分岐する可能性がある。PEGの平均分子量は、約2キロダルトン(「kD」)から約100kDaまで、約5kDaから約50kDaまでの範囲、または約5kDaから約10kDaまでにおよぶ。PEG基は、アシル化または還元的なアルキル化を介し、自然または改変反応基を通し、PEG部分(例えば、アルデヒド、アミノ、チオール、またはエステル基)上で、血液凝固因子(例えば、アルデヒド、アミノ、またはエステル基)上の反応基へ、もしくはいずれかの当技術分野において知られている他の技法により、血液凝固因子へ付着される。
【0063】
本発明の方法において有効であるポリペプチド変異体は、ポリシアル酸(PSA)部分から成るポリペプチドを含む。ポリシアル酸ポリペプチドを用意するための方法は、米国特許公開20060160948およびSaenko et al.,Haemophilia 12:42−51、2006において記載される。
【0064】
本発明の方法における使用のためのヒト血液凝固因子は、ポリペプチドである第2物質で融合タンパク質を含むことは、さらになお熟慮される。一実施形態において、無制限のポリペプチドである第2物質は、酵素、成長因子、サイトカイン、ケモカイン、細胞−表面受容体、細胞表面受容体の細胞外ドメイン、細胞粘着分子、もしくは断片、または前述されるタンパク質の活性ドメインである。関係のある実施形態において、第2物質は第VIII因子、第VII因子、第IX因子およびフォンヴィレブランド因子のような血液凝固因子である。熟慮された融合タンパク質は、当技術分野において周知される化学または組み換え技法により作成される。
【0065】
組み換えVWF
有用なrVWFの一形成は、少なくともインビボ−安定化の性質を有する、例えば、少なくとも1つの第VIII因子(FVIII)分子の結合、および、薬理学上許容可能であるグリコシル化パターンを随意的に有する結合。その具体例は、それによってタンパク質分解(Lankhof et al.,Thromb.Haemost.77:1008−1013、1997)に耐性を示すA2ドメインなしに、糖タンパク質lb−結合ドメインおよびコラーゲンおよびヘパリン(Pietu et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.164:1339−1347、1989)のための結合部位を含むVal449からAsn730までのVWF断片およびVWFを含む。少なくとも1つのFVIII分子を安定させるVWFの能力の決定は、当技術分野で述べられる周知された方法によると、VWF−欠乏哺乳動物において実施される。
【0066】
本発明において有用であるrVWFは、当技術分野において知られているいずれかの方法により生成される場合がある。一具体例は1986年10月23日に公開されたWO86/06096において開示され、産生組み換えVWFの方法に関して1990年7月23日に出願された米国特許出願第07/559,509号を参照することにより本書に組み込まれる。従って方法は当技術分野において、(i)遺伝子工学による組み換えDNAの産生、例えばRNAの逆転写および/またはDNAの増幅の経由、(ii)導入による原核または真核性細胞への組み換えDNAの導入、例えばエレクトロポレーションまたはマイクロインジェクションによる経由、(iii)上記変型細胞の培養、例えば持続的またはバッチ式様式における、(iv)発現VWF、例えば構造的または誘導上で、および、(v)孤立的上記VWF、例えば培地からまたは変型細胞の収穫によるもの、(vi)精製rVWFを得るために、例えば陰イオン交換クロマトグラフィーまたは親和性クロマトグラフィー経由、として知られる。組み換えVWFは、当技術分野において周知されている組み換えDNA技法を用いて、変型宿主細胞で作成されることがある。例として、ポリペプチドをコードする配列は適切な制限酵素を用いてDNAから削除され得る。
【0067】
あるいは、DNA分子はアミド亜リン酸法のような化学合成技法を用いて合成される。さらに、これら技法の組み合わせは使用され得る。
【0068】
投与のための血液凝固因子組成物
ここで記述される血液凝固因子ポリペプチド(断片、類似体または、変異体を含む)を被験対象へ投与するため、血液凝固因子ポリペプチドは1つ以上の薬学上許容可能な輸送体から成る組成物に調剤される。「薬学上または薬理学上許容可能」という表現は、下記に記述するように当技術分野において周知されている経路を用いて投与する際に、アレルギー、または他の拒絶反応を引き起こさない分子的実態および組成物に言及する。「薬学上許容可能な輸送体」は、いずれのおよび全ての臨床的有用な溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌性および抗真菌性物質、等浸透圧ならびに物質が遅延する吸収およびそのようなものを含む。
【0069】
その上、化合物は水または共通有機溶媒と反応して溶媒和物を生じる可能性がある。このような溶媒和物は同様に熟慮される。
【0070】
血液凝固因子組成物は様々な態様において、経口的、局所的、経皮的、非経口的、吸入噴霧によるもの、経膣的、直腸的、または頭蓋的注射によって投与される。ここで使用されるように非経口な用語は、皮下注射、静脈、筋肉内、嚢内注射、または融合技法におけるものを含む。静脈、皮内、筋肉内、乳房内、腹腔内、髄腔内、球後、肺内注射および/または特定の部位の外科的移植による投与は、よく熟慮される。通常、組成物は受容に有害となり得る他の不純物と同様に原則的にピロゲンが含まれない。
【0071】
薬剤組成物の調合は、(例えば、溶液、乳剤)を選ばれた投与の経路によって変化するであろう。投与されるその組成物から成る適切な組成物は、生理的に許容可能な媒体または輸送体で用意される。適切な輸送体である溶液または乳剤として、例えば生理食塩水および緩衝媒体を含む、水性もしくはアルコール/水性溶液、乳剤または懸濁液を含む。非経口の媒体は、塩化ナトリウム溶液、リンゲルブドウ糖、ブドウ糖および塩化ナトリウム、乳酸加リンゲルまたは固定油を含むことが出来る。静脈媒体は、様々な添加物、防腐剤、もしくは液体、栄養素または電解質補給を含むことが出来る。
【0072】
活性成分として血液凝固因子から構成される本発明のその方法において有用である薬剤組成物は、様々な態様において、投与の経路によって薬学上許容可能輸送体または添加物を含む。このような輸送体または添加物の例は、水、薬剤的に許容可能な有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンゴム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、薬学上許容可能な界面活性剤およびそのようなものを含む。使用された添加物は、本発明の投与形態によって適切なものとして上記またはその組み合わせから選ばれるが、これに限定されるものではない。
【0073】
種類豊富な水性輸送体、例えば、水、緩衝用水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン、または水性懸濁液は、様々な態様において、水性懸濁液の製造に適している賦形剤で、混合剤において活性化合物を含む。このような賦形剤は、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアカシアゴムの懸濁化剤であり、分散剤または湿潤剤は自然発生リン脂質であることがある、例えばレシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合物、例えばポリオキシエチレンステアリン酸塩、またはエチレン酸化物と長鎖脂肪族アルコールとの縮合物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、またはポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートのような脂肪酸およびヘキトールから誘導されたエチレン酸化物と部分的エステルとの縮合物、または脂肪酸およびヘキトール無水物から誘導されたエチレン酸化物と部分的エステルとの縮合物、例えばポリエチレンソルビタンオレイン酸モノエステルである。水性懸濁液は、さらに1つ以上の防腐剤、例えばエチル、またはパラオキシ安息香酸であるn−プロピルを含む。
【0074】
いくつかの実施形態において、血液凝固因子組成物は保管のため凍結乾燥し使用するため適切な輸送体プライアーで再構成される。この技法は慣習の免疫グロブリンにおいて有効なであることが示された。いずれの当技術分野において知られている適切な凍結乾燥および再構成技法は採用される。当業者によって凍結乾燥および再構成が抗体活性の損失度の変化につながり、それらを相殺するため使用レベルを調整しなければならないようになると認められる。
【0075】
水の添加による水性懸濁液の調製に適する分散性粉末および顆粒は、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤および1つ以上の防腐剤との混合において活性化合物を生じる。適切な分散剤もしくは湿潤剤および懸濁化剤は、それら既に前述したものにより例示される。
【0076】
ある実施形態において、これら調合における血液凝固因子の濃度には大きな差がある、例えば通常は約0.5%より少ない、または少なくとも約1%から15または20%と同程度まで重量で、また特定の選択される投与方法に従って液量、粘着性等に優先して基づき選択される。従って、例えば、無制限に、非経口の注射の代表的な薬剤組成物は、1ml滅菌緩衝用水、および50mgの血液凝固因子を含んで作られる。静脈注入のための代表的な組成物は、250ml滅菌リンゲル溶液、および150mg血液凝固因子を含んで作られることが出来る。非経口的投与可能な組成の用意における実際的方法は知れているまたは当業者に明らかであり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Science、15th ed.、Mack Publishing Company、Easton、Pa.(1980)においてより詳細に記載される。二重特異性抗体の効果的な投与量は、1回の投与、体重1kgにつき0.01mgから1000mgの範囲内にある。
【0077】
様々な態様において、薬剤組成物は、滅菌注射用溶液または分散の即時調製のため、滅菌注射用な水性、油性懸濁液、分散または滅菌粉末の形式である。懸濁液はそれら適切な分散剤または湿潤剤および前述された懸濁化剤を使用していると知られている当技術分野に従って調合される可能性がある。滅菌注射用調製は、さらに非毒性非経口的許容可能な希釈剤または溶媒における滅菌注射用溶液または懸濁液は、例えば1、3−溶液としてブタンジオールにある、という可能性がある。いくつかの実施形態において、輸送体は溶媒または分散の、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールのような)、適切なその混合物、植物油、リンゲル溶液および等張塩化ナトリウム溶液、培地である。その上、滅菌、固定油は溶媒または懸濁化剤として従来的に採用される。この目的のため、いずれの無菌性の固定油は合成モノまたはジグリセリドを含んで採用される可能性がある。加えて、オレイン酸のような脂肪酸注射用の調製において使用することが出来る。
【0078】
全ての場合において、形態は滅菌されなくてはならず、かつ容易に注射可能な存在である範囲になければならない。適した流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用により、分散の場合において要求された粒径の維持により、および界面活性剤の使用によって、言及される。それは製造および保管の状況下で安定的でなければならなく、バクテリアおよび菌類のような微生物の活動の汚染に対し維持されなければならない。微生物の活動の防止は、様々な抗菌性および抗真菌性物質によってもたらされる、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなど。多数の場合において、例えば糖または塩化ナトリウムといった等張剤を含むのが望ましい。ある態様において、注射用組成物の持続性吸収は吸収を遅延する物質の組成物における使用によってもたらされる、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン。
【0079】
投与に有用な組成物は、それら有効性の増長のため摂取または吸収エンハンサーでの調合である可能性がある。このようなエンハンサーは、例えばサリチル酸塩、グリココール酸塩/リノール酸塩、グリコール酸塩、アプロチニン、バシトラシン、SDS、カプリン酸などを含む。例としてFix(J.Pharm.Sci.、85:1282−1285、1996)およびOliyaiならびにStella(Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.、32:521−544、1993)を参照。
【0080】
その上、このような均衡が欠損している他の組成物が実質上実用性にかける一方、インビトロおよび特にインビボの用途の両方に対するそれら実用性の増強し、組成物の親水性および疎水性の性質、もしくはその方法における使用を熟慮したため、この発明は均衡が取れたものである。具体的に、本発明における使用のため熟慮された組成物は、体内における吸収および生体利用効率を可能にする水性媒体での溶解の適した程度を有し、その一方で化合物が活動の推定部位に細胞膜を横切ることを可能とする脂質での溶解度の程度を有する。
【0081】
組み換えVWFの調合は共有のPCT/US08/88201およびPCT/US08/06291において開示され、これを参照することで本書に組み込まれる。
【0082】
血液凝固因子ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの調製
タンパク質産生の発現のためのベクター構造の要素は、当業者で知られている。血液凝固因子ポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、発現するよう作動的にヌクレオチド配列に関係している発現制御配列から成る組み換えポリヌクレオチドから成る発現ベクターにおいて発現する。発現ベクターは、発現のための十分なシス作用要素を含み、発現のための他の要素は、宿主細胞もしくはインビトロ発現システムによって供給され得る。発現ベクターは、無制限のコスミッドを含んで全ての当業者を含み、プラスミド(例えば、剥き出しのまたはリポソームに含まれる)および組み換えポリヌクレオチドを合体するウイルスを含む。発現ベクターは、当技術分野において知られる技法を用いた形質転換または導入によるポリヌクレオチドおよびポリペプチドの発現のため、(例えば、形質転換または形質導入を経由して)適切な宿主細胞に挿入される。例として、Sambrook,Fritsch & Maniatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition.Cold Spring Harbor,N.Y.:Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989を参照。
【0083】
形質転換は、有機体に従って、有機体の細胞およびその生態のもの特質上で種類豊富な知られている技法によって実施される。安定した形質転換は、細胞へのおよび細胞核へのDNA侵入を引き起こす。単体細胞(いくつかの哺乳動物を含む)より再生される有機体のため、形質転換はインビトロ培養において実施され、形質転換細胞の選択および形質転換細胞の再生が続く。DNAまたはRNAの細胞への転送のためしばしば使用される方法は、マイクロインジェクション、パーティクルガン衝撃、陽イオン性脂質でのDNAまたはRNA合体の形成、リポソームまたは他の輸送体原料、エレクトロポレーション、およびDNAまたはRNAのウイルスベクターへの転入の組み込みを含む。他の技法は当技術分野において知られる。DNAの細胞核への転写は細胞過程によって起こり、細胞内のトランスポーゼースまたはリコンビナーゼによる上で作用する融合部位配列を含むことにより時には適切なベクターの選択によって促進し得る。(例として、[Craig,Ann.Rev.Genet.1988,22:77; Cox.In Genetic Recombination(R.Kucherlapati and G.R.Smith,eds.) 1988,American Society for Microbiology,Washington,D.C.,pages 429−493; Hoess.In Nucleic Acid and Molecular Biology(F.Eckstein and D.M.J.Lilley eds.) Vol.4,1990,Springer −Verlag,Berlin、ページ99〜109を参照。
【0084】
発現ベクターおよび核酸はいくつかの態様において血液凝固因子を発現するために使用され、組織特異的プロモーターを含む。このようなプロモーターは当技術分野おいて知られるおよびそれを含むが、肝臓特異的プロモーター(例えば、アルブミン; Miyatake et al.,J Virol.1:5124−32,1997; α−fetoタンパク質)、筋特異的プロモーター(例えば、ミオシン軽鎖1(Shi et al.,Hum Gene Ther.8:403−10,1997,α−actin)、膵臓特異的プロモーター(例えば、インスリンまたはグルカゴンプロモーター)、神経特異的プロモーター(例えば、チロシンヒドロキシラーゼプロモーターまたは神経特異的エノラーゼプロモーター)、内皮細胞特異的プロモーター(例えば、フォンヴィレブランド因子;Ozaki et al.,Hum Gene Ther.7:1483−90,1996)および平滑筋細胞特異的プロモーター(例えば、22a; Kim et al.,J Clin Invest.100:1006−14,1997)に限定されるものではない。他の組織特異的プロモーターは、ヒトアロマターゼシトクロムから派生される脂肪組織プロモーターであるチロシナーゼ特異的プロモーター(Diaz et al.,J Virol.72:789−95,1998)を含でいる、発展途上にある癌療法においてさらに使用されるプロモーターを含むp450(p450arom)(米国特許第5,446,143号;Mahendroo et al.,J.Biol.Chem.268:19463 19470,1993;and Simpson et al.,Clin.Chem.39:317 324,1993)。プロモーターが内因性血液凝固因子プロモーターであることはさらになお熟慮される。本発明のその方法において有用であるベクターおよび他の核酸分子は、導入遺伝子の一時的な発現に限る配列をさらに含むことが出来る。例えばプロモーターにおいてcAMP反応要素エンハンサーを含むおよびcAMP修正剤で移入または感染細胞を処理することを含むことにより、例えば導入遺伝子は薬剤誘導プロモーターで制御される(Suzuki et al.,Hum Gene Ther.7:1883−93,1996)。あるいは、リプレッサー要素は転写薬剤の存在における転写を防ぐことが出来る(Hu et al.,Cancer Res 57:3339−43,1997)。発現の空間的な制御は、エルグ1遺伝子プロモーターとの結合においてイオン化放射(放射線治療)を使用することによりさらに達成されている(Seung et al.,Cancer Res 55:5561−5,1995)。
【0085】
ヒト血液凝固因子をコード化している組み換え核酸構築物は、増幅のためいずれの適したプラスミド、バクテリオファージ、またはウイルス性のベクターへ挿入され、それによって、分子クローニング実習マニュアル,2nd Ed.,ed.by Sambrook,Fritsch and Maniatis(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989)で記載されたそれらのように、当技術分野において知られている方法を用いて繁殖させる。一実施形態において、脊椎細胞のような真核性細胞と適合する発現ベクターは用いられる。真核性細胞発現ベクターは、当技術分野において周知され、商業的供給源から入手可能である。熟慮された発現ベクターは、原核配列(バクテリアにおけるベクターの伝播を促進するため)、および1つ以上の細胞における機能性である真核性転写単位の両方を含む。概して、このようなベクターは目的の組み換えDNA分子の挿入のため便利な制約部位を提供する。ベクターに派生したPcDNAI、pSV2、pSVK、pMSG、pSVL、pPVV−1/PML2dおよびpTDT1(ATCC番号31255)は、非ヒト細胞の導入に適切な哺乳類発現ベクターの例である。いくつかのこれらベクターは、配列でpBR322のようなバクテリアプラスミドから、複製の促進もしくは原核および真核性細胞における薬剤抵抗選択へ修正される。あるいは、ウシ乳頭腫ウイルス(BPV−1)のようなウイルスの誘導体、またはエプスタイン・バーウイルスウイルス(pHEBo、pREP由来およびp205)は、豚細胞におけるタンパク質の発現のため使用される。プラスミドの調整および宿主細胞の形質転換において採用される様々な方法は、当技術分野において周知さている。本発明において有用であるための他の適切な発現システムのため、通常の組み換え手順と同様に、分子クローニング実習マニュアル,2nd Ed.,ed.by Sambrook,Fritsch and Maniatis(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989)を参照のこと。
【0086】
レトロウイルスベクターからの効果的な発現は、SV40プロモーターまたはLTRプロモーターのような「強力な」プロモーターが転写の制御に使用される際、Chang et al.,Int.J.Cell Cloning 7:264,1989における再調査のように観測される。これらのプロモーターは、構成的でありおよび組織特異的発現を通常可能にしない。他の適切なプロモーターは、ここで詳述される。
【0087】
パッケージング細胞株の使用は、産生した組み換えウイルスの有効性および伝染力を増大させる。例えば、Miller,1990,Human Gene Therapy 1:5.Murine retroviral vectors have been useful for transferring genes efficiently into murine embryonicを参照、またはWagner et al.,1985,EMBO J.4:663あるいはGriedley et al.,Trends Genet.3:162,1987およびhematopoietic stem cellsを参照、例えばLemischka et al.,Cell 45:917−927,1986; Dick et al.,Trends in Genetics 2:165−170,1986を参照のこと。
【0088】
以前の可能性より高いウイルスタイターの獲得を可能にする追加的なレトロウイルス技術は、同種指向性および両種性間のパッケージング細胞株の継続的な転写による増幅を含み、「ピンポン」方法と言われる、例えばKozak et al.,J.Virol.64:3500−3508,1990あるいは、例えばBodine et al.,Prog.Clin.Biol.Res.319:589−600,1989を参照。その上、ウイルスタイターを増加させる技法は、効果的な形質導入を達成するために、ウイルス産生細胞株での直接的なインキュベーションよりむしろウイルスを含む上澄みの使用を可能とする、例えば、Bodine et al.,Prog.Clin.Biol.Res.319:589−600,1989を参照。通常のDNAの複製はレトロウイルスベクターの宿主ゲノムへの統合に必要であるため、活発な循環である目的の幹細胞での頻度を増加させることが望ましい可能性がある。例えば、目的の細胞をインビトロでの治療による成長因子での分裂へ促すこと、例えば、Lemischka et al.,Cell 45:917−927,1986あるいは、Bodine et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.86:8897−8901,1989,or to expose the recipient to 5−fluorouracil、あるいは、Mori et al.,Jpn.J.Clin.Oncol.14 Suppl.1:457−463,1984を参照。
【0089】
遺伝子導入動物調製
一般に、本発明の遺伝子導入動物は、ヒト以外の変形可能種をどれでも含有する。特に注目されるのは哺乳動物で、マウス、ネズミ、ラビット、ヒツジ、ハムスター、アレチネズミ、モルモットおよびブタ、あるいはウシおよび非ヒト霊長類を含む、形質転換方法として開発された他のような周知の変形可能な種を含む。
【0090】
ある態様において、本発明の導入遺伝子動物は、複数の内因性血液凝固因子、特殊な因子VIIIおよびフォンヴィレブランド因子の発現を防止するために、一般的に変更される。本発明の遺伝子導入動物は、少なくともある異質な遺伝子をゲノムに挿入され、例えば、ヒトVWFが2重のノックアウトマウスFVIII/VWFへ挿入され、一般的に修正された動物であるというさらなる意図がある。これらの動物は、系統的および他の研究システムで成功可能でない特殊な方法において、細胞水準での調節作業で研究されるおよび影響されることを許可する。
【0091】
記載されている種類の遺伝子導入動物は、治療的血液凝固因子の投与でのインビボ効果を分析するために有用であり、第VIII因子(FVIII)、フォンヴィレブランド因子(VWF)、第VII因子(FVII)、第IX因子(FIX)、第II因子(FII)、第V因子(FV)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、および第XIII因子(FXIII)を含むが限定されない。遺伝子導入動物は、推定耐性宿主免疫システムの関係において、抗自己抗体の発達の原因に対する、化合物、つまり精製された凝固タンパク質またはそれらの変異体、の効果を評価するための優れたモデルとして役目を果たす。そのような理解は、血液凝固障害の治療のための病因を考案および試験に必須であり、血友病、フォンヴィレブランド症候群および同類のものを含むがそれに限定されない。
【0092】
本明細書で熟慮されたように、導入遺伝子発現ヒトポリヌクレオチド配列は、自然調節(発現調節)配列によりヒト血液凝固因子の側面に位置するため、または異種配列と関連するための、プロモーター、内部リボソーム参入部位(IRES)および他のリボソーム結束部位配列、エンハンサー、反応要素、化膿、シグナル配列、ポリアデニル化配列、イントロン、5’−および3’−非コード化領域あるいは同類のものを含むコード配列(例えば、cDNA、合成コード配列またはゲノムDNA)から成る。コード配列が、当技術分野において知られている多くの手段によって修正されることを意図している。そのような一時的変異の非制限例は、メチル化、「キャップス」、類似体を伴う自然発生のヌクレオチドの1つ以上の置換、あるいは、例えば、それらの非荷連鎖(例えば、メチルホスホン酸塩、リン酸トリエステル、ホスホロアミダート、カルバミン酸塩、等)との、および荷電連鎖(例えば、ホスホロチオエート、ジチオリン酸、等)との、のようなヌクレオチド間の一時的変異を含む。遺伝子発現の制御は、当技術分野において周知の様々な手段によって完成された。導入遺伝子の発現は、周知の手段による、あるいは、一連の与えられた状況、例えば、与えられた化合物の存在、あるいは特定の実体、あるいは組織種類または温度のような環境条件においての変化に応答するという、概してプロモーターの選択による誘導または抑制を構成するまたは調節する。用語「誘導発現」は、宿主有機体のための利便性および妥当性に基づいて選択された手段および状況である定義された状況のもと起こる遺伝子発現を引き起こすためのいかなる手段におよぶ。
【0093】
ある態様において、導入遺伝子は組み換えタンパク質の発現に対し前述されたプロモーターに関係すると熟慮される。
【0094】
様々なES細胞が派生されるマウス系統の遺伝的背景は、亜系統129/Svおよび129/Sv−CP(Nagy et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.90:8424−8,1993)の交配種からのマウス胚盤胞腔を起源とするマウス系統129:R1細胞を起源としているES細胞を含んだ当技術分野において知られており、GS1細胞は129/Sv/Evを起源とする。D3−細胞(Doetschman et al.,Nature 330:576−8,1987)およびJ1細胞は、129/Svまたは129/terSvを起源とする。さらにESマウスを生じるTT2細胞はF1交雑種(C57BL/6 x CBA)を起源とする(Yagi et al.,Anal Biochem.14:70−6,1993)。
【0095】
遺伝子導入動物、特にマウスまたはラットの創造のための技術は、広く知られている(Gordon,International Review of Cytology 115:171−229,1989)。導入遺伝子を導入するための、核酸の細胞へのマイクロインジェクション、レトロウイルスベクター法、および胚幹細胞への遺伝子移動を含む様々な手段が利用可能である。受精卵母細胞が遺伝子導入を評価するために使用される場合、目的の外来DNAまたは導入遺伝子が卵母細胞に組み込まれる。導入遺伝子の卵母細胞への組み込みは、適用レトロウイルスベクターなどのいくつかの方法、またはマイクロインジェクションによって行われる。遺伝子導入マウスは、Lederらへ発行された米国特許第4,736,866号において記載されるように、またB.Hogan et al.entitled “Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual”,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.,U.S.A.(1986)において提供されるように、妊娠マウスから分離された胚盤胞腔へのDNAのマイクロインジェクションによって、先行技術において日常的に生成される。例えば、Haren et al,Annu.Rev.Microbiol.53:245−281,1999; Reznikoff et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,266(3):729−734,1999; Ivics et al,Methods Cell Bid.,60:99−131,1999; Hall et al.,FEMS Microbiol.Rev.21:157−178 1997も参照。米国特許第6,492,575号は、胚幹細胞の変換によって遺伝子導入マウスを作製し、その変換細胞を4倍体胚盤胞腔に注射するための方法を説明する。同胞ヘテロ接合体を異種交配することによって、目的の遺伝子を持った同型の動物が得られる。
【0096】
さらに、Capecchiらは、導入遺伝子が胚、胎児、または成体多性能幹細胞に組み込まれる方法を説明する(Science 244:1288−1292,1991)。この方法においては、胚幹細胞は、インビトロ培養された胚盤胞腔から分離される。これらの胚幹細胞は、分化なしに何細胞世代にもわたる培養において安定が保たれる。導入遺伝子は、その後エレクトロポレーションまたは他の形質転換方法によって、胚幹細胞に組み込まれる。導入遺伝子を持つ幹細胞は、胚盤胞腔の内細胞塊用に選択され、注射される。胚盤胞腔は、その後偽妊娠した雌に移植される。胚盤胞腔の全ての内細胞塊が導入遺伝子を持つわけではないため、その動物は導入遺伝子に対してキメラである。キメラ動物の異種交配は、導入遺伝子を持つ動物の生産を可能にする。その過程の概説はCapecchi,Trends in Genetics 1989,5:70−76により提供される。
【0097】
導入遺伝子の送達は、レトロウイルス送達システム、例えば、Eglitis et al.,Adv.Exp.Med Biol.241:19,1988参照、によって行われる。一態様において、レトロウイルス構造は、ウイルスの構造遺伝子が単一遺伝子によって置き換えられ、その後ウイルスの長い末端反復(LTR)に含まれる調節要素の支配下で書き換えられるものである。モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)を含む、様々な種類の単一遺伝子−ベクター骨格が使用される。一実施形態において、内部プロモーターの支配下で選択可能なマーカーのための遺伝子および当該の第二遺伝子のような異なる遺伝子の反復挿入を可能にするレトロウイルスベクターは、この種の骨格から派生される。例えば Gilboa,Adv.Exp.Med Biol.241:29,1988を参照。
【0098】
いくつかの実施形態において、導入遺伝子の動物への導入時に、導入遺伝子が内因性遺伝子へ挿入されるため、内因性遺伝子の機能をノックアウトするということが、熟慮される。他の実施形態において、外因性遺伝子は、内因性遺伝子の発現が維持されるような位置において動物ゲノムへ挿入される。こうして、遺伝子導入動物は、動物に挿入されるヒト導入遺伝子ポリヌクレオチドに対応する全てまたは一部の内因性ポリヌクレオチドを発現する可能性がある。
【0099】
外因性血液因子の投与
ここでヒト血液凝固因子と共に記載される条件を治療するための方法に含まれる投与計画は、薬の作用を変化させる様々な因子、例えば患者の年齢、条件、体重、性別、および食習慣、感染の重症度、投与時間および他の臨床学的因子を考慮して、担当医によって決定されるだろう。例として、本発明において有益な組み換えVWFの投与量は、およそ50U/kg、500μg/kgに等しく、およそ75U/kg、およそ100U/kg、およそ150U/kg、およそ200U/kg、およそ250U/kg、およそ300U/kg、およそ350U/kg、およそ400U/kg、およそ450U/kgもしくはおよそ500U/kg、または対応するμg/kgもしくはmg/kgである。
【0100】
ある実施形態において、本発明の形状は、初回ボーラス投与によって投与され、その後に薬剤の治療的循環レベルを維持するための継続的な注入が続く。別の例として、本発明の化合物は、単回投与として投与される。当業者は、良い医療業務および各患者の病態によって決定された効果的な投与量および投与計画を、容易に最適化する。投与の頻度は、薬剤の薬物動態のパラメータおよび投与経路によって決まる。製剤は、投与経路および目的の投与量によって当業者により決められる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.(1990,Mack Publishing Co.,Easton,PA 18042)1435から1712ページ、参照することによりここに組み込まれる開示を参照。このような形状は、投与物質の物理的状態、安定性、インビボ放出割合、およびインビボクリアランスの割合に影響する場合がある。投与経路次第で、適切な投与量が、体重、対表面積または器官の大きさによって計算される可能性がある。適した投与量は、適切な投与量−反応データと併せて、血液レベルの投与量を決定するための確立されたアッセイの使用を通して究明される可能性がある。最終投与計画は、薬の作用を変える様々な因子、例えばその薬の特異性活性、患者の損傷および反応の重症度、患者の年齢、状態、体重、性別および食習慣、感染の重症度、投与時間、ならびに他の臨床的因子を考慮して、担当医により決定されるだろう。研究が実施されるにつれ、適切な投与量レベルならびに様々な疾病および条件のための治療の持続期間に関するより詳しい情報が明らかになるだろう。
【0101】
キット
追加態様として、本発明は、外因性血液因子の患者への投与のための、被険対象への投与のための使用を容易にする方法で包装された、1つ以上の製剤からなるキットを含む。一実施形態において、このようなキットはここで説明される製剤(例えば治療的タンパク質またはペプチドからなる組成物)から成り、その容器に貼られるまたはパッケージに含まれるこの方法を使用する際にその化合物または組成物の使用を説明する標識と共に、密閉ビンまたは密閉容器などの容器に包装される。一実施形態において、その製剤は、その容器中の頭部の空間の量(例えば、液体と容器の上部との間の空気量)がかなり小さいような容器に梱包される。好ましくは、その頭部空間の量がごくわずか(つまり、ほとんどない)である。一実施形態において、そのキットは、治療的タンパク質またはペプチド組成物を有する第1の容器、および組成物に対して生理的に受容可能な再構成溶液を有する第2の容器からなる。一態様において、その製剤は、ユニット剤形に包装される。そのキットは、特定の投与経路によって製剤の投与に適切な装置を含む可能性もある。好ましくは、キットは、製剤の使用を説明する標識を含む。
【0102】
以下の実施例は、非制限実施例とする意図はなく、本発明の特定の実施形態の例示である。
【実施例】
【0103】
実施例1
FVIIIxVWDダブルノックアウトマウスに対する外因性VWFの効果
ヒト血友病Aおよびフォンヴィレブランド病(VWD)のマウスモデルは、FVIIIまたはVWFの薬物動態的、薬力学的、および免疫学的研究に使用されている。FVIII欠損マウスは、FVIIIタンパク質が欠損しているが、ヒトFVIIIとの併用でヒトVWFとは異なった相互作用がある可能性のある、内因性マウスVWFの正常なレベルを持っている。従って、FVIII欠乏症およびネズミVWFの代わりにヒトVWFを有するマウスモデルは、血友病の研究に有利となるだろう。血友病におけるヒトVWFの効果を研究するために、遺伝子導入マウスの系列が、マウスの内因性FVIIIとVWF(FVIIIxVWD)の両方における欠損に基づいて構築された。
【0104】
ヒトVWFの静脈注射は、これらの動物における比較的短いヒトVWF インビボの半減期のため、徐々にVWF−FVIII共欠損マウスをVWFの正常循環レベルへ戻すために効果的な方法ではない(およそ5時間)。そのため、ヒトVWFの投与の代替方法が開発された。
【0105】
高分子量ヒトVWFは、これらの経路が欠損動物におけるVWFの血漿レベルの回復において効果的であるかを究明するために、FVIIIxVWDマウスの腹腔内または皮下に注射された。マウスはrFVIIIおよびVWFを共同発現しているCHO細胞から精製された組み換えVWF(rVWF)を用いて治療された(Turecek et al.,Hamostaseologie,2009(submitted); Plaimauer et al.,Semin Thromb Hemost.27:395−403,2001; Parti et al.,Haemophilia 11:492−6,2005; Shapiro et al.Vasc Health Risk Manag.3:555−65,2007)。rVWF製品の開始原料は、Blanchette VS,Shapiro AD,Liesner RJ,Hernandez Navarro F,Warrier I,Schroth PC,Spotts G,Ewenstein BM; rAHF−PFM Clinical Study Group.Plasma and albumin−free recombinant factor VIII:pharmacokinetics,efficacy and safety in previously treated pediatric patients.J Thromb Haemost.2008; 6:1319−26に記載のように、市販用rFVIII製品ADVATE(登録商標)の製造過程の中間体であった。
【0106】
マウスは、ヒトVWFを腹腔内に400IU VWF:Ag/kg体重(10ml/kg)で注射され、また最初の注射から9時間後に再注射された。製剤緩衝材が、制御装置として使用された。血液は、初回腹腔注射後、2、6、9、11および23にて(n=5)心臓穿刺により治療および対照動物から収集された。VWF血漿レベルは、2つの多クローン性抗VWF抗体(Dakopatts,Glostrup,Denmark)を用いた酵素免疫測定法(ELISA)により測定され、オルトフェニレンジアミンカラー現像を用いて現像された(Sigma,St,Louis,Missouri)。
【0107】
腹腔内注射後2時間のマウス血漿において見られるVWF抗原のレベルは、1.7±0.9VWF:Ag単位/ml(図1B)の平均値を示し、腹腔内注射されたVWFの17%の血漿回復を示した。rVWFの2回目の注射(9時間での)は、平均VWF:Ag値を2.1VWF:Ag単位/mlへ増加させた。注射後23時間においては、まだ測定可能なおよそ1.1VWF:Ag単位/mlの循環VWF:Agの値があった。この研究は、2時間および9時間の同じ治療間隔で、より低い投与量200U/kgで繰り返された。より低い投与量で検証された血漿VWF:Agのレベルは、より高い投与量で見られるものよりおよそ3倍低く、およそ12%の血液循環(図1A)における回復を表した。
【0108】
驚くべきことに、血液循環において見られるVWFは、注射されたVWF素材のマルチマーパターンに匹敵する無損傷マルチマーパターンを示した。マウスの治療に使用されたrVWFは、より低い二重体および対応分解帯の量を示したが、それでも9時間後に減少および分解され始めた高分子量マルチマーを有するマルチマーパターンを有していた(図2)。
【0109】
実験は、しばしば血友病患者の治療に使われる血漿派生VWF(pdVWF)が、マルチマーを循環するため検出可能であるかを究明するために実施された。マウスは、2回のpdVWF腹腔内注射を用いた上記と同様の治療により治療され、VWFのレベルは上記のように測定された。組み換えVWFを用いて検証した結果、pdVWFの注射は、VWF抗原レベルを循環、および注射されたタンパク質のマルチマーパターンと同様の無損傷マルチマーをもたらした(図3および4)。
【0110】
これらの結果は、組み換え、血漿派生を問わずヒトVWFは、早ければ腹腔内注射後2時間および遅ければ注射後23時間のFVIIIxVWDマウスの血液循環において検出可能であることを示す。従って、VWFの腹腔内注射は、腹腔内注射を、VWF療法を受けている患者にとってより良い治療の選択肢にし、同溶液の静脈注射よりも長いインビボ半減期を実証する。
【0111】
実施例2
FVIIIxVWDノックアウトマウスへのFVIII/VWF複合体の投与
無損傷VWFマルチマーがrVWFまたはpdVWのVWF欠損マウスへの腹腔内注射後に観察されたということの発見は、ヒトrFVIIIとrVWFの複合体が、腹腔内注射によって同様の結果をもたらし投与され得るかどうかの調査につながった。
【0112】
それぞれ200IU rFVIII/kgと200IU VWF:Ag/kgの組み合わせたものが、上記の記載と同様の治療間隔で腹腔内に投与された。上記血液の分析は、循環VWF:Agのレベルが、VWF単体で治療された動物と同様に、24時間にわたり検出可能であったことを実証した(図5)。同じ時点で測定されたFVIIIレベルは、FVIIIが3時間後に0.1±0.6単位/mlで検出可能であり、9時間までこのレベルを維持したことを示した。FVIIIは、24時間後には検出可能でなかった(図6)。これらの実験のために、腹腔内注射後のVWFの回復は、FVIII回復がおよそ5%であったのに対し、注射された物質のおよそ12%であった。繰り返し実験において、血液レベルは、48時間まで測定された。24時間まで見られたFVIIIおよびVWFレベルは、前の実験と同様であったが、FVIIIおよびVWFは、46時間以降の血液循環において検出可能ではなかった(図7)。
【0113】
FVIIIxVWDダブルノックアウトは、また、200IU rFVIII/kgと200 IU VWF:Ag/kgを含む複合体の皮下注射によりrVWFまたはFVIIIを投与された。皮下注射後、循環VWF:Agレベル(0.14VWF:Ag単位/ml)においてわずかな増加があった(図1)。対応するFVIIIレベルは低かったが、注射6時間後において検出可能(0.04単位/ml)であった(図6)。
【0114】
これらの結果は、静脈または皮下注射よりも血液循環においてより良い回復を明示する腹腔内注射が、大きなVWF分子の投与に良好な経路であることを実証する。腹腔内注射は、ヒト種における薬理学的研究において、小分子薬の投与に広く使用されているが(例、エリスロポエチンの腹腔内注射)、タンパク質の腹腔内注射、特に大型VWFマルチマーは、現在まで調査されていなかった。多量体VWFの大きな分子量のため、タンパク質が、腹腔内注射後のマウスの血液循環において無傷で回復されるであろうことは予期されていなかった。これは、この大きな多量体タンパク質が、大きなVWFタンパク質の構造と機能を維持しながら、中皮腫を通って脈管構造に運ばれることを示す。これは、ヒトVWFの循環を用いた血友病の研究に対する新しい取り組みを提供するrVWFの脈管構造への運搬能力を新たに発見した。
【0115】
実施例3
FVIIIxVWDノックアウトにおける血液凝固への外因性ヒトVWFの評価
ヒト血友病と同様に、FVIIIxVWDダブルノックアウトマウスは、出血症状を伴う傾向を示す。外因性ヒトVWFのFVIIIxVWDダブルノックアウトマウスへの投与は、腹腔内、およびより狭い範囲の皮下へのrVWFまたはpdVWFの注射が、VWFが脈管構造へ運ばれ、血液循環において検出可能な活性を示すことを可能にすることを実証した。この検証は、外因性VWFが、血管負傷の部位へ血小板を引き付けること、血小板相互作用を仲介すること、および血液循環における第VIII因子(FVIII)を安定させることを含む、特徴的なVWFインビボ活性を恐らく示す(Plaimauer et al.,Semin Thromb Hemost.27:395−403,2001)。
【0116】
コラーゲンは、VWFの生理学的結合パートナーである。Kesslerらによる研究(Blood 63:1291−1298,1984)は、VWFと第VIII因子の複合体は、コラーゲン繊維を結合することを示した。米国特許第6,414,125号は、高または中分子量VWFのみが、コラーゲンを結合することを教示し、コラーゲンを結合するVWFを検出する方法およびコラーゲン固定化を用いたVWFの精製方法を提供する。そのため、VWF−コラーゲン結合アッセイは、インビボのVWFの腹腔内または皮下投与後の高分子量VWF種の存在の測定法でもある。
【0117】
血液凝固および他の関係するVWF活性に対する外因性VWFの効果を究明するため、血小板粘着、血小板凝集、または血液凝固/血流を測定するために、インビボアッセイが当技術分野において知られている技術を用いて実施された。
【0118】
例えば、米国特許第6,005,077号は、VWFなどの外因性血液凝固因子の投与前後の出血時間および血液の特徴(例、ヘモグロビン含有量、凝固因子の存在)に対する血液因子欠乏症の影響を究明するための方法を開示する。さらに、血小板粘着アッセイは、固定化した組み換えVWF断片を使用した流動条件下で血小板粘着を測定する方法を記載したShenkman et al.(Thromb Haemost.96:160−6,2006)において開示される。de Romeuf et al.(Thromb Haemost.79:211−6,1998)は、rVWF調製を用いたインビトロ血小板活性化および血小板凝集アッセイを開示する。
【0119】
これらのアッセイは、外因性血液凝固因子が血液凝固障害をもたらす能力の評価、および病気の改善のための外因性因子の投薬および投与に関する情報の提供に有用である。
【0120】
さらに、VWFを特徴付け、またVWDを診断するためのアッセイは、他により記載されたように行われる。例えば、出血性障害および血栓障害におけるVWFの役割を決める方法は、Franchini,et al.,Crit Rev Clin Lab Sci.44(2):115−49(2007)において記載され、VWDおよびVWF療法の治療を評価する方法は、Budde et al.,Semin Thromb Hemost.Sep;32(6):626−35(2006),Favaloro Semin Thromb Hemost.Sep;32(6):566−76(2006)およびFavaloro,Semin Thromb Hemost.2006 Jul;32(5):456−71(2006)において記載され、VWDの分類方法は、Sadler et al.,J Thromb Haemost.Oct;4(10):2103−14(2006)において記載され、VWDの特定方法はKouides Semin Thromb Hemost.Jul;32(5):480−4(2006)において記載されている。
【0121】
実施例4
外因性ヒト血液凝固因子を用いた血液凝固障害の治療
FVIIIおよびVWFなどの血液凝固因子において欠乏症のある被険対象は、ここに示されるように、血液因子組成物を用いて治療される。血液凝固障害の動物モデルへの血液因子の投与、および血液障害に苦しむヒトを治療するために当技術分野において知られているプロトコルの使用は、ここに記述される単独または他の治療薬、例えば化学療法または放射線療法、サイトカイン、成長因子、およびよく使われる他の治療学の薬との組み合わせ、の血液因子を被険対象に投与する基準を提供する。
【0122】
例えば、FVIIIにおいて欠乏症を持つ血友病A患者は、治療を行う医師によって簡単に決められるような、低ペグ化FVIIIの治療効果のある投与量を用いて治療される。例えば、重度の血友病患者への代替FVIIIの2つの異なる調製の投与および比較を説明しているDi Paola et al.,Haemophilia.13:124−30,2007を参照。
【0123】
精製されたVWFは、血友病Aと同様に、フォンヴィレブランド病(Majumdar et al.,Blood Coagul Fibrinolysis 4:1035−7,1993)に苦しむ患者を治療するためにも使用されている。ここに記述される組み換えまたは血漿派生VWFは、代替VWFの恩恵を受けるであろう患者を治療するための当技術分野で知られている養生法において使用されている。
【0124】
組み換えVWFが単独またはFVIIIとの複合体において投与されることを、本発明において熟慮された。一実施形態において、VWFは50U/kgから500U/kgの投与量範囲において投与された。例えば、VWFは、およそ50、100、150、200、250、300、350、400、450、または500U/kgで投与された。
【0125】
血液因子の投与は、1から24時間、またはそれ以上続く可能性があり、日常実験を用いた最適化のために修正可能である。血液因子が、長期処置の必要がないよう期間中続けて投与されることも熟慮された。さらに、改良血液因子組成物は、毎日、毎週、隔週、または当業者によって決められるであろう他の効果的な頻度で投与される。
【0126】
改良血液因子が、他の化学療法もしくは放射線療法薬、または成長因子もしくはサイトカインなどの他の治療法と組み合わせて患者に投与されることが熟慮された。別の治療薬剤との組み合わせで投与される場合、改良血液因子の量は、必要に応じて適宜減らされる。第2物質はヒトの病気の改善に安全および効果的である決められた量で投与される。
【0127】
ある実施形態において、サイトカインまたは成長因子、および化学療法薬または放射線療法薬は、血液因子と同じ形状で投与され、同時に投与される。あるいは、その薬剤は、別の形状で投与されても、血液因子と同時に投与される。ここに使用されるように、同時に、それぞれ30分以内に投与された薬剤に関連する。関連する実施形態において、第2物質は改良血液因子の投与に先立って投与される。先行投与は、改良血液因子の投与前一週間前から30分前までの範囲で改良因子治療に先立って投与される。第2物質が、改良血液因子の投与の後に投与されることも、さらに熟慮された。後続の投与は、改良血液因子投与の30分後から1週間後までの投与を説明することを意図されている。血液因子組成物は、血液凝固障害および癌の形状を有する被険対象における放射線療法の養生法と共に投与され、治療を行う医師により処方されることで治療が行われる。
【0128】
上の説明に役立つ実例において記載された、本発明における多数の改良および変異は、これらの当業者に想起することが期待される。従って、添付の特許請求の範囲に表れるような制限のみが、本発明とされるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能的な内因性第VIII因子(FVIII)遺伝子欠損および機能的な内因性フォンヴィレブランド因子(VWF)遺伝子欠損を有するゲノムを有する、遺伝子導入非ヒト動物。
【請求項2】
ヒトVWFをコードするヒト導入遺伝子ポリヌクレオチド配列を含むゲノムをさらに有する、請求項1に記載の遺伝子導入動物。
【請求項3】
前記ポリヌクレオチド配列がプロモーターポリヌクレオチド配列と作動可能に連結される、請求項2に記載の遺伝子導入動物。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチド配列がポリアデニル化ポリヌクレオチド配列を含む、請求項2に記載の遺伝子導入動物。
【請求項5】
前記動物が齧歯動物である、請求項1に記載の遺伝子導入動物。
【請求項6】
前記動物がマウスである、請求項5に記載の遺伝子導入動物。
【請求項7】
機能的な内因性第VIII因子(FVIII)遺伝子欠損および機能的な内因性フォンヴィレブランド因子(VWF)遺伝子欠損を有するゲノムを有する非ヒト遺伝子導入動物であって、前記ゲノムがヒトフォンヴィレブランド因子をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ヒトVWFが前記ヒトVWFの生理学的活性を有し、前記遺伝子導入哺乳動物が、そのゲノム中に
(a)転写制御ポリヌクレオチド配列と、
(b)前記ヒトVWFをコードするDNAと、
(c)ポリアデニル化シグナルと
を含む外因性導入遺伝子構築物を有し、
(A)、(B)、および(C)が、前記遺伝子導入動物中の前記ヒトVWFまたはその断片の産生を得るために、前記外因性遺伝子構築物内で作動可能に連結される、非ヒト遺伝子導入動物。
【請求項8】
前記転写制御ポリヌクレオチド配列が、5’転写制御ポリヌクレオチド配列、3’転写制御ポリヌクレオチド配列、内部転写制御ポリヌクレオチド配列、およびその組み合わせからなる群より選ばれることを特徴とする、請求項7に記載の遺伝子導入動物。
【請求項9】
5’制御配列は任意でエンハンサー領域を含むプロモーターである、請求項8に記載の遺伝子導入動物。
【請求項10】
前記動物がヒト後天性血友病Aの実験モデルである、請求項1または7に記載の遺伝子導入動物。
【請求項11】
内因性第VIII因子および内因性ヒトフォンヴィレブランド因子(VWF)を欠失する哺乳動物への、外因性ヒトフォンヴィレブランド因子の効果を評価するための方法であって、治療有効量のヒトVWFを請求項1から10のいずれか一項に記載の動物に投与することと、VWF活性の臨床的読出しを測定することと、を含み、臨床的読出しの改善が外因性VWFの治療効果を示す、方法。
【請求項12】
前記VWFが腹腔内または皮下に投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記VWFが50VWF:AgU/kgから500U/kgの範囲で投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記VWF活性の臨床的読出しが、血液組成、血小板凝集、血小板粘着、および血小板活性化からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
血友病Aの症状の改善に効果的な量で外因性多量体ヒトフォンヴィレブランド因子を投与することを含み、前記VWFが腹腔内または皮下に投与される、血友病Aを有する被験者の治療のための方法。
【請求項16】
前記症状が、出血性障害、自己免疫疾患、異常血小板凝集、異常血小板粘着、および異常血小板活性化からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記VWFが50VWF:AgU/kgから500U/kgの範囲で投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記VWFがヒト第VIII因子と組み合わせて投与される、請求項11または15に記載の方法。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−500743(P2013−500743A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523728(P2012−523728)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/044381
【国際公開番号】WO2011/017414
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】