説明

Gタンパク質共役受容体およびそのシグナル伝達経路の断片相補アッセイ

本発明は一般に、生物学、分子生物学、化学および生化学の分野に関する。本発明は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)およびそのシグナル伝達経路の多数の新規なアッセイを対象とする。GPCR経路における1つまたは複数のステップについてそのようなアッセイを構築する方法が記載される。本発明は、GPCRの機能上の特徴付け、標的検証、受容体の脱オーファン化、高処理能スクリーニング、高容量スクリーニング、薬理学的プロファイリング、および他の創薬適用技術に使用することができる。本アッセイを直接使用して、化合物ライブラリーまたは生体抽出物が受容体のアゴニストまたはアンタゴニストを含むかどうかを評価することができる。アッセイ組成物も提供される。本アッセイの開発が直接的であり、それによってGPCRまたはその同系の経路に作用する新規薬剤および天然リガンドの発見に関する広範、柔軟かつ生物学的に適切な土台が提供されることが示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
全関係者へ:
本発明者である米国国民、San Ramon, California在住者のJohn K. Westwick、Castro Valley, California在住者のBrigitte Keon、および米国国民、Pleasanton, California在住者のMarnie L. MacDonaldが、「Gタンパク質共役受容体およびそのシグナル伝達経路の断片相補アッセイ」における特定の新規なかつ有用な改良発明を行ったことを証し、以下がその明細書である。
【0002】
本願は、"Fragment Complementation Assays For G-Protein-Coupled Receptors And Their Signaling Pathways"という名称で2003年9月25日に出願された米国特許仮出願第60/505,447号の、35 U.S.C.第119条の規定による優先権の利益を主張するものであり、その仮出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は一般に、生物学、分子生物学、化学および生化学の分野に関する。本発明は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)およびそのシグナル伝達経路の多数の新規なアッセイを対象とする。本発明はまた、GPCR経路における1つまたは複数のステップについてそのようなアッセイを構築する方法にも関する。本発明は、GPCRの機能上の特徴付け、標的検証、受容体の脱オーファン化(de-orphanization)、高処理能スクリーニング、高容量スクリーニング、薬理学的プロファイリング、および他の創薬適用技術に使用することができる。本アッセイを直接使用して、化合物ライブラリーまたは生体抽出物が受容体のアゴニストまたはアンタゴニストを含むかどうかを評価することができる。アッセイ組成物も提供される。そのようなアッセイの開発は、直接的であり、それによってGPCRまたはその同系の経路に作用する新規薬剤および天然リガンドの発見に関する広範、柔軟かつ生物学的に適切な土台を提供することが示される。本発明は、GPCR経路内の幅広い範囲のタンパク質について、かつ一連のアッセイ形式について実証される。
【背景技術】
【0004】
Gタンパク質共役受容体(GPCR)スーパーファミリーは、細胞表面受容体の最大のファミリーであり、製薬産業にとって薬剤標的の最も重要な供給源の1つである。GPCRは、潰瘍、精神疾患、不安、パーキンソン病、アルツハイマー病および高血圧を含む広範囲の障害および疾患状態に関与する。最も販売されている処方箋調剤薬の20%を超えるもの、および処方箋調剤薬全体の推定50%が、GPCRと直接相互作用する。また、薬剤とこの種の受容体との相互作用は、これらの薬剤に付随するいくつかの副作用の原因でもある。
【0005】
500種を超える様々なGPCRがヒトゲノム内で同定されている。これらの200種ほどが「オーファン(orphan)」受容体であり、その天然のリガンドは不明である。オーファン受容体が薬剤標的へと転換する第1のステップはその特徴付け、または「脱オーファン化」である(AD Howard et al., 2001, Orphan G-protein-coupled receptors and natural ligand discovery, Trends in Pharmacol. Sci. 22(3): 132-140)。GPCRの脱オーファン化、ならびに合成アゴニストおよびアンタゴニストの合成が、様々な病態に関する新規かつ強力な多数の薬剤へとつながる可能性は高い。これはまた、受容体候補の、特定の疾患に対する潜在的な重要性を理解し、効率のよい薬剤スクリーニング手段を開発する、かなり大きな労力を伴う作業である。例えば、同定された受容体のリガンドを、関連するオーファンGPCRに対して試験して、そのオーファン受容体と結合する化合物を同定することができる。さらに、リガンドの分画化、精製および分子上の特徴付けを誘導する機能アッセイを用いて、組織の抽出物を試験することができる。最終的に、オーファンGPCRを、アレイ化した既知リガンドファミリーに対して評価することができる。大規模にGPCRを脱オーファン化するのに使用することができる、高感度で生物学的に適切なアッセイが必要である。
【0006】
GPCRは全体的な配列相同性は有さないが、それには通常、交互に現れる細胞内ループおよび細胞外ループによってつながった7回膜貫通型αへリックス部分が存在し、そのアミノ末端は細胞膜の細胞外側にあり、そのカルボキシル末端は細胞膜の細胞内側にある。したがって、GPCRは通常、7回膜貫通型(7TM)受容体と呼ばれる。GPCRは異なるサブファミリー(A〜F)に分類され、主要なサブファミリーA、BおよびCには、β2アドレナリン受容体(ファミリーA)、グルカゴン受容体に関連する受容体(ファミリーB)、および神経伝達物質受容体に関連する受容体(ファミリーC)が含まれる。ファミリーBには、血管作用性腸ペプチド、カルシトニン、PTHおよびグルカゴンの受容体が含まれ、ファミリーCには、GABA、カルシウム、哺乳動物フェロモン、および味受容器の受容体が含まれる。すべてのGPCRは、グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)を介してシグナル伝達する。供給源の中でも特に公共データベース中に多数のGPCRのDNA配列を見ることができる(F. Horn et al., 1998, GPCRDB: an Information system for G protein-coupled receptors, Nucleic Acids Res. 26:275-279)。公共GPCRデータベースは、ワールドワイドウェブ上のhttp://www.gpcr.org/7tm/で見ることができ、対応するcDNAおよびペアワイズ配列アラインメントは、http://www.gpcr.org/7tm/seq/dna.htmlで見ることができる。このデータベースは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0007】
細胞シグナル伝達におけるGPCRの一般的な作用機構が過去20年にわたって解明されてきたが、多くの詳細な点が依然として分かっていない。数百もの科学論文および総説が当該主題について著されている(総説では、GB Downes & N Gautham, 1999, The G-protein subunit gene families, Genomics 62: 544-552; Hermans, 2003, Biochemical and pharmacological control of the multiplicity of coupling at G-protein-coupled receptors, Pharmacology & Therapeutics 99: 25-44; およびU Gether, 2000, Uncovering molecular mechanisms involved in activation of G-protein-coupled receptors, Endocrine Reviews 21: 90-113; EM Hur & KT Kim, 2002, G-protein-coupled receptor signaling and cross talk: achieving rapidity and specificity, Cell Signal 14: 397-405を参照されたい)。様々なGタンパク質共役経路の既知のエレメントのいくつかは、従来技術において本発明を位置付ける目的で本明細書に記載されている。GPCRにつながるシグナル伝達経路のさらなる解明によって、GPCRの活性化につながる細胞内事象について多数のアッセイの構築が可能となる。次に、そのようなアッセイによって、GPCRのシグナル伝達を活性化または遮断することができる薬剤候補を同定する創薬が可能となる。
【0008】
創薬では、多数の化合物を迅速にかつ安価にスクリーニングして、GPCRおよびGPCR依存性の経路のアゴニスト、アンタゴニストならびに阻害剤を含む新たな薬剤候補を同定する必要がある。別個の化合物が時に100万種を超える大きなライブラリー中でこれらの化合物を収集する。化合物という用語の使用は、単純な有機および無機分子、タンパク質、ペプチド、抗体、核酸およびオリゴヌクレオチド、炭水化物、脂質、または生物学的な対象となる任意の化学構造を含むように広く解釈されるものとするが、これらに限定されるものではない。GPCRのアッセイを行う旧来の生化学的な手法は、例えばシンチレーション近接アッセイまたは表面プラズモン共鳴でリガンドの結合の測定を利用している(C. Bieri et al., 1999, Micropatterned immobilization of a G-protein-coupled receptor and direct detection of G protein activation, Nature Biotech. 17: 1105-1109)。そのようなアッセイの実施は安価であるが、その開発に6ヶ月以上かかる可能性がある。主要な問題は、in vitroアッセイの開発で、スクリーニングが行われる標的についての精製タンパク質を含めて、対象とする標的毎に特異的な試薬が必要となるということである。対象とするタンパク質を発現させ、及び/または純粋な形で十分な量のタンパク質を得ることは困難であることが多い。さらに、in vitroアッセイは薬理学および構造活性相関(SAR)の研究で最も標準となるものであるが、in vitroアッセイで標的検証を行うことができない場合、スクリーニングでヒットしたもののバイオアベイラビリティーおよび細胞活性についての情報を得るためにin vivoアッセイが必要である。
【0009】
ゲノミクスの手法によって同定された薬剤標的の数が増大することにより、明らかになっていない標的を調べ出すための「遺伝子をスクリーニングする」手法の開発が促進されており、その多くは細胞アッセイ系を利用するものである。理論的な標的は、必要な構成成分のすべてが予め組み合わされ制御されている細胞の生物学的な状況下でその標的が発現され制御される形で最も容易にスクリーニングされる。細胞に基づくアッセイは、新たな生物学的標的の作用機構および化合物の生物活性の評価にも極めて重要である。特に、天然の活性化リガンドが同定されていないGPCRを「脱オーファン化」する必要がある。脱オーファン化に対する様々な手法について総説が著されている(AD Howard et al., 2001, Orphan G-protein-coupled receptors and natural ligand discovery, Trends in Pharmacological Sciences 22: 132-140)。例えば、リガンドの分画化、精製および分子上の特徴付けを誘導する機能アッセイを用いて、組織の抽出物を試験することができる。あるいは、オーファンGPCRを、アレイ化した既知リガンドファミリーに対して評価することもできる。
【0010】
GPCRについての細胞に基づく現在のアッセイには、経路の活性化の測定(Ca2+放出、cAMP生成、または転写活性)、GPCRおよび下流エレメントにGFPでタグを付けることによるタンパク質輸送の測定、ならびに蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)または生物発光共鳴エネルギー転移(BRET)または酵母2ハイブリッド手法を用いたタンパク質間相互作用の直接的な測定(例えば、King et al., 米国特許出願第20020022238号)がある。これらの手法を下記に記載する。
【0011】
GPCRについての細胞に基づくアッセイの大半は、細胞内カルシウムの測定を利用するものである。細胞内貯蔵からのカルシウム放出は、活性化後の特定の種類のGPCR、特にGqと共役するGPCRによって刺激される。カルシウム放出の蛍光および発光アッセイは、カルシウム指示薬として働く色素を細胞に添加することにより生成する。fura-2、indo-1、fluo-3及びカルシウムグリーン(Calcium-Green)などの蛍光Ca2+指示薬が、細胞内Ca2+測定および画像化の支柱となっている(例えば、米国特許第4,603,209号および第5,049,673号を参照)。そのような指示薬およびそれに伴う器具システム(FLIPRシステム)は、例えば、California州SunnyvaleのMolecular Devices(www.moleculardevices.com)によって販売されている。カルシウム流束の発光アッセイは、細胞にエクオリンを導入することによって実現することができる。エクオリンは、カルシウムの存在下で青色光を発し、その光子放射の割合は、遊離したCa2+濃度と特定の範囲内で比例する。対象とするGPCRを発現する細胞にまずセレンテラジン(coelenterazine)を添加してエクオリンを活性化し、次いで試験する化合物を細胞に添加し、ルミノメーターを用いて結果を定量する。このアッセイを非Gq共役型受容体まで拡張するために、広範囲のGPCRを、ホスホリパーゼC(PLC)活性およびカルシウムの動員と共役させることができるGα16などの乱雑なGαタンパク質の使用を含めて、種々の戦略が使用されている(Milligan et al., 1996, Trends in Pharmacological Sciences 17: 235-237)。
【0012】
蛍光色素、およびGFP、YFP、BFPやCFPなどの蛍光タンパク質は、cAMPまたはCa2+の細胞センサーとしても使用されている。cAMPのための最初の蛍光タンパク質指示薬は、cAMPが誘導するサブユニットの解離によってFRETが破壊されるように、触媒サブユニットおよび制御サブユニットがそれぞれフルオレセインおよびローダミンで標識された環状AMP依存性タンパク質キナーゼのPKAからなっていた(S.R. Adams et al., 1991, Fluorescence ratio imaging of cyclic AMP in single cells, Nature 349: 694-697)。GFPおよびBFPで色素を置換すると、この系が遺伝子でコード可能となり、in vitroでの色素の結合およびマイクロインジェクションの必要が排除された(M. Zaccolo et al., 2000, A genetically encoded fluorescent indicator for cyclic AMP in living cells, Nature Cell Biol. 2: 25-29)。GFPに基づく様々な他の技術を使用して、細胞センサーが作製されてきた。例えば、転写因子CREB(環状AMP応答エレメント結合タンパク質)のキナーゼ誘導ドメイン(KID)で結合された2個のGFP分子は、環状AMP依存性タンパク質キナーゼであるPKA によるKIDのリン酸化によって蛍光共鳴エネルギー転移の低下を示す(Y. Nagai et al., 2000, A fluorescent indicator for visualizing cAMP-induced phosphorylation in vivo, Nature Biotech. 18: 313-316)。カルシウム感受性タンパク質であるカルモジュリンをYFPに挿入することによって、カルシウム結合後に蛍光を7倍に増大させるカルシウムセンサー(「カムガルー(camgaroo)」)が得られている(GS Baird et al., 1999, Circular permutation and receptor insertion within green fluorescent proteins, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96: 11241-11246)。同様に、カルモジュリンと、カルシウム感受性にカルモジュリンと結合するペプチドであるM13との間に円順列変異GFPを挿入することによって、「ペリカム(pericam)」として知られるカルシウム指示薬が得られる(T. Nagai et al., 2001, Circularly permuted green fluorescent proteins engineered to sense Ca2+, Proc. Natl. Acad. Sci USA 98: 3197-3202)。「カメレオン(cameleon)」として知られる別のカルシウム指示薬が、CFPとYFPの間にカルモジュリン、ペプチドリンカー、およびM13をはさむことによって作り出されている(A. Miyawaki et al., 1997, Fluorescent indicators for Ca2+ based on green fluorescent proteins and calmodulin, Nature 388: 882-887)。
【0013】
転写レポーターアッセイでは、アゴニスト/アンタゴニストに反応する経路の活性化/阻害を測定し、それはGPCRの研究で広範に使用されている(Klein et al., 米国特許第6,255,059号、およびその中の参照文献を参照)。レポーターアッセイは、受容体の生物活性を、容易に検出される酵素またはタンパク質レポーターの発現と共役させる。特定の応答エレメントの合成反復配列をレポーター遺伝子の上流に挿入して、生細胞における特定の経路の活性化によって生じたシグナル伝達分子に応答してその発現を制御することができる。β-ガラクトシダーゼ(H Brauner-Osborne & MR Brann, 1996, Eur. J. Pharmacol. 295: 93-102)、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、GFP、β-ラクタマーゼ(G. ZIokarnik et al., 1998, Quantitation of transcription and clonal selection of single living cells with beta-lactamase as reporter, Science 279: 84-88)および他のレポーターを含めて、様々な酵素および蛍光レポーターを用いてそのような薬剤スクリーニング系が開発されている。転写レポーターアッセイは、高感度なスクリーニング手段である;しかし、転写へとつながる経路の構成成分のマッピングを可能にし、またはシグナル伝達カスケード内での個々のステップの研究を可能にするような化合物の作用機構についての情報は、それからは得られない。
【0014】
シグナル伝達分子の細胞内区画化は、細胞のシグナル伝達において、どのように生化学的経路が活性化されるかを明らかにする際だけでなく、経路活性化の望ましい生理的結果に影響を与える際にも重要な現象である。高容量スクリーニング(HCS)は、細胞の画像化を利用して、細胞プロセスの刺激または阻害因子に応答するタンパク質の細胞内局在および輸送を検出する手法である。HCSでは蛍光プローブを使用することができる。例えば、GTPは、蛍光色素BODIPYで標識され、Gタンパク質によるGTP加水分解の有無の割合を研究するのに使用され、フルオレセイン標識ミリストイル化Gα-Iは、Gタンパク質サブユニットの会合および解離を研究するために、Gβ-γと結合するリガンドとして使用されている(NA Sarvazyan et al., 2002, Fluorescence analysis of receptor-G protein interactions in cell membranes, Biochemistry 41: 12858-12867)。
【0015】
緑色蛍光タンパク質(GFP)は、細胞内での鍵となるシグナル伝達事象の分析にますます使用されている。GFPのcDNAを、対象とするタンパク質をコードするcDNAにインフレーム(in-frame)で融合することによって、生細胞において得られたキメラの機能および結末を調べることが可能である。この戦略は、受容体自体、GαなどのGタンパク質サブユニット、β-アレスチン、RGSタンパク質、タンパク質キナーゼC、およびGタンパク質共役経路の多数の他の細胞内構成成分を含めて、Gタンパク質共役経路のほとんどすべての既知のエレメントに対して現在適用されている(M Zaccolo and T. Pozzan, 2000, Imaging signal transduction in living cells with GFP-based probes, IUBMB Life 49: 1-5, 2000.)。
【0016】
例えば、受容体の内部移行をモニターするために、Gタンパク質共役受容体にGFPのタグが付けられている。GFP-β-アレスチンを含む融合タンパク質は、アゴニストに応答して甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体1と同時局在することが示されている(T Drmota et al., 1999, Visualization of distinct patterns of subcellular redistribution of the thyrotropin-releasing hormone receptor-1 and Gqalpha/G11alpha induced by agonist stimulation, Biochem. J. 340: 529-538)。GFPをGタンパク質に内部導入して、Gα/GFPキメラが作製され、GPCR活性化後にそれが細胞膜へと移動することが示されている(J-Z Yu & M Rasenick, 2002, Real-time visualization of a fluorescent GalphaS dissociation of the activated G protein from plasma membrane, Mol. Pharmacol. 61: 352-359; P Coward et al., 1999, Chimeric G proteins allow a high-throughput signaling assay of Gi-coupled receptors, Anal. Biochem. 270: 242-248)。GFPのタグを付けることは、細胞内シグナル伝達事象のモニターにも使用されている。GFPタグの付いたGタンパク質シグナル伝達制御因子(Regulator of G protein Signaling) (RGS2およびRGS4)タンパク質は、Gタンパク質およびその同系の受容体によって形質膜に選択的に動員された(AA Roy et al., 2003, Recruitment of RGS2 and RGS4 to the plasma membrane by G proteins and receptors reflects functional interactions. Mol. Pharmacol. 64: 587-593)。細胞膜からのジアシルグリセロールの放出によって活性化される、GFPタグの付いたタンパク質キナーゼC(PKC)は、細胞のシグナル伝達に反応するそのキナーゼの移動のモニターに使用されている(E. Oancea et al., 1998, Green fluorescent protein (GFP)-tagged cysteine-rich domains from protein kinase C as fluorescent indicators for diacylglycerol signaling in living cells, J. Cell Biol. 140: 485-498)。GFPタグの付いたコネキシンは、細胞内カルシウム流束のモニターに使用されている(K Paemeleire et al., 2000, Intercellular calcium waves in HeLa cells expressing GFP-labeled connexin, Mol. Biol. Cell 11: 1815-1827)。GFPタグの付いたβ-アレスチンは、GPCRアゴニストに反応するβ-アレスチンの細胞内再分布を画像化することにより、GPCR活性化のモニターに使用されている。TransFluorとして知られる後者のアッセイは、Norak Bioscience (www.norakbio.com)によって販売され、米国特許第5,891,646号および米国特許第6,110,693号の対象である。上記のアッセイおよび発明ではすべて、対象とするタンパク質(受容体、β-アレスチン、Gタンパク質、コネキシン、RGS、キナーゼなど)を、GFPなどの光学的に検出可能な分子と融合させ、その融合構築物を細胞内で発現させ、次いで刺激または阻害因子に反応するキメラタンパク質の量および/または細胞内局在を検出することを含む。
【0017】
GPCRと、同系の細胞内シグナル伝達タンパク質との間のタンパク質・タンパク質相互作用の測定は、上記に挙げた技術の代替法となる。単一のタンパク質にGFPでタグを付けることによってそれをモニターすることとは対照的に、タンパク質・タンパク質の相互作用のアッセイは、2種のタンパク質の動的な会合および解離を測定することができる。タンパク質・タンパク質相互作用についての細胞に基づく最も普及しているアッセイは、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)または生物発光共鳴エネルギー転移(BRET)に基づくものである。FRETでは、2種の異なる蛍光タンパク質レポーターの遺伝子を、対象のものをコードする遺伝子と別々に融合し、その2種のキメラタンパク質を生細胞内で同時に発現させる。対象とする2種のタンパク質間でタンパク質複合体が形成されると、2種の蛍光体が密接する。2種のタンパク質が、重複する放射波長および励起波長を有していれば、第1の「ドナー」蛍光体による光子放射の結果、第2の「アクセプター」蛍光体によって放射光子が効率よく吸収される。そのFRETの対は、励起波長と放射波長の独特の組合せで蛍光を発し、それらは生細胞中でどちらかの蛍光体単独のものと区別することができる。FRETまたはBRETの定量化は技術的に難題であり、タンパク質・タンパク質相互作用を画像化する際におけるその使用は、FRETのシグナルが非常に弱いために限定されている。アクセプター蛍光体がドナーの励起を介して間接的にしか励起されないため、そのシグナルは弱いことが多い。FRETがドナーの放射とアクセプターの励起の重複を必要とするので、ドナーとアクセプターの蛍光波長は、FRETが働くには非常に近くなければならない。入り込み(bleed-through)および自己蛍光からFRETのデコンボリューション(deconvolution)を可能にする、より新しい方法が開発中である。さらに、蛍光寿命画像化顕微法は、単一のFRET強度を定量することに伴うアーチファクトの多くを除去するものである。
【0018】
例えば、GPCRが媒介する生細胞中でのGタンパク質の活性化の研究(C. Janetopoulos, 2001, Receptor-mediated activation of heterotrimeric G-proteins in living cells, Science 291:2408-2411)、およびPKAとAKAPの会合の研究(ML Ruehr et al., 1999, Cyclic AMP-dependent protein kinase binding to A-kinase anchoring proteins in living cells by fluorescence resonance energy transfer of green fluorescent protein fusion proteins, J. Biol. Chem. 274: 33092-33096)にFRETが使用されている。シアン(cyan)、シトリン(citrine)、増強緑色および増強青色蛍光タンパク質を含めて、様々なGFP変異体がFRETアッセイの構築に使用されている。BRETでは、酵素ウミシイタケルシフェラーゼ(Rluc)などの発光タンパク質をエネルギードナーとして使用し、緑色蛍光タンパク質(GFP)をアクセプターとして使用する。Rlucの基質として働く化合物を添加後、Rlucによって放射された青色光の量を、GFPによって放射された緑色光の量と比較することによって、FRETシグナルを測定する。その2種のタンパク質が近接するにつれて、緑色/青色比が増大する。FRETおよびBRETは、β2アドレナリン、δ-オピオイド、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンおよびメラトニン受容体のオリゴマーのGPCRオリゴマー化の研究に適用されている。BRETはまた、生細胞におけるβ2-アレスチンとβ2アドレナリン受容体とのアゴニスト依存性会合の研究にも使用されている(S Angers et al., 2000, Detection of beta-2-adrenergic receptor dimerization in living cells using bioluminescence resonance energy transfer, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 3684-3689)。蛍光体と結合した受容体リガンドはまた、GPCRのオリゴマー化をモニターするのに、FRETのパートナーとしても使用されている。
【0019】
原理上、タンパク質・タンパク質相互作用の細胞に基づくアッセイは、生細胞における生化学的経路の活性をモニターするのにも、標的および経路に対する化学物質の作用を直接研究するのにも使用することができる。転写レポーターアッセイと異なり、特定の経路の摂動から得られる情報は、その経路の終点ではなく特定の分枝路または分枝点で特異的に起こるものである。タンパク質断片相補アッセイ(PCA)および酵素断片相補アッセイは、FRETに基づく方法の代替法となる。PCAでは、適切なレポーターの断片化に由来するポリペプチド断片でタンパク質にタグを付ける。完全な蛍光タンパク質またはホロ酵素とは異なり、PCA断片は、内在性の活性または蛍光を有さない。しかし、相補的な断片のタグを付けた2種のタンパク質が相互作用する場合、断片は密接する。次いで、その相補的な断片は、活性型の構造へと折り畳まれ、その断片が由来したレポーターの活性を再構成することができる。FRETまたはBRETと異なり、PCAに基づく蛍光または発光アッセイは、動的範囲が広いシグナルをもたらす。さらに、PCAは、特殊な光学機器または器具を必要としない。同様の手法を用いて、多量体タンパクの天然に存在するサブユニット(β-ガラクトシダーゼ)が、タンパク質・タンパク質の相互作用の測定についての相補アッセイの構築に使用されている(Rossi, et al., 1997, Monitoring protein-protein interactions in intact eukaryotic cells by beta-galactosidase complementation. Proc Natl Acad Sci USA 94: 8405-8410)。
【0020】
ジヒドロ葉酸還元酵素またはβ-ラクタマーゼに基づく蛍光PCAが、生細胞におけるその標的に対する薬剤ラパマイシンの効果の定量(Remy, I. and Michnick, S.W., Clonal Selection and In Vivo Quantitation of Protein Interactions with Protein Fragment Complementation Assays. Proc Natl Acad Sci USA, 96: 5394-5399, 1999; Galarneau, A., Primeau, M., Trudeau, L.-E. and Michnick, S.W., A Protein fragment Complementation Assay based on. TEM1 β-lactamase for detection of protein-protein interactions, Nature Biotech. 20: 619-622, 2002)、および環状AMP応答エレメント結合タンパク質CREBの2種のドメインのリン酸化依存性相互作用の研究(JM Spotts, RE Dolmetsch, & ME Greenberg, 2002, Time-lapse imaging of a dynamic phosphorylation-dependent protein-protein interaction in mammalian cells, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99: 15142-15147.)に使用されている。PCAはまた、哺乳動物細胞におけるインスリンおよび成長因子依存性経路中の様々なタンパク質についての定量的な高容量アッセイの構築にも使用されている(Remy, I. and Michnick, S. W., Visualization of Biochemical Networks in Living Cells, Proc Natl Acad Sci USA, 98: 7678-7683, 2001および米国特許出願第20030108869号)。
【0021】
受容体活性化の直接的なアッセイに関して、PCAは、生細胞におけるエリスロポエチン(EPO)受容体の蛍光アッセイの構築に使用されている(Remy, I., Wilson, I.A. and Michnick, S.W., Erythropoietin receptor activation by a ligand-induced conformation change, Science 283: 990-993, 1999; Remy, I. and Michnick, S.W., Clonal selection and in vivo quantitation of protein interactions with protein fragment complementation assays, Proc Natl Acad Sci USA, 96: 5394-5399, 1999; および米国特許第6,294,330号)。これらのアッセイは定量的であり、容量依存性が実証され、エリスロポエチンまたはEMP1のEC50に一致するその2種のアゴニストに対する反応に差があることが示された。同様に、β-ガラクトシダーゼの低親和性サブユニットに基づく酵素断片相補アッセイは、生細胞におけるEGF受容体の二量体化の研究に使用されている(Rossi, et al., Monitoring protein-protein interactions in intact eukaryotic cells by beta-galactosidase complementation, Proc Natl Acad Sci USA 94: 8405-8410, 1997; および米国特許第 6,342,345号)。しかし、従来技術では、Gタンパク質共役受容体またはGタンパク質共役シグナル伝達経路についてのタンパク質断片または酵素断片相補アッセイの使用については言及されていない。
【0022】
基礎的なレベルでは、断片相補は、無傷の生細胞におけるタンパク質・タンパク質複合体の会合および解離の測定を可能にする一般的なかつ柔軟な戦略である。特に、PCAは、それが創薬に重要な手段となる以下の独特の特徴を有する:
【0023】
転写活性化やカルシウム放出などの二次的な事象を介さずに、分子相互作用が直接検出される。
完全な蛍光タンパク質などの大きな分子でタンパク質にタグを付けることは必要としない。
in vivoのPCAでは、タンパク質は、正しく翻訳後修飾が行われたタンパク質の天然の状態を反映する適切な細胞の状況下で、かつPCAによって測定されるタンパク質・タンパク質相互作用を調節する際に直接的または間接的に必要な内在性の細胞タンパク質の存在下で発現される。
【0024】
PCAは、様々なレポーターの使用を可能にし、任意の機器プラットホーム、自動化の設定、細胞の型、および所望のアッセイ形式に特異的なアッセイ設計が可能である。PCAに適したレポーターには、蛍光、リン光および発光タンパク質(GFP、YFP、CFP、BFP、RFPおよびその変異体、ならびに発光タンパク質(photoprotein)(エクオリンまたはオベリン);種々のルシフェラーゼ; β-ラクタマーゼ; ジヒドロ葉酸還元酵素; β-ガラクトシダーゼ; チロシナーゼ; ならびに広範な他の酵素がある。
レポーターの選択に応じて、PCAを用いて高容量または高処理能アッセイを構築することができ、それによって、特定の標的、および細胞の状況下でアゴニストまたはアンタゴニストに応答する方法に依存して、アッセイ設計を柔軟に行うことができる。
【0025】
高容量PCAでは、膜、細胞質、核または他の細胞内区画においても、タンパク質・タンパク質複合体の細胞内局在を決定することができ、刺激または阻害因子に応答したタンパク質・タンパク質複合体の運動を視覚化することができる。
高処理能PCAでは、そのアッセイは定量的であり、フローサイトメトリー、または標準的な蛍光マイクロプレート読み取り器を使用して複数穴のマイクロタイタープレート中で行うことができる。
PCAを用いて、哺乳動物細胞の状況下で特定のタンパク質が他のタンパク質と行う相互作用を検出し、次いでアゴニスト、アンタゴニストまたは阻害因子と反応してタンパク質・タンパク質複合体が調節される可能性があるか否かを判定することによって、タンパク質をシグナル伝達経路へと「マッピング」し、新規の標的を検証することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明の目的は、GPCRおよびGPCR依存性経路の機能的な注釈付けおよびスクリーニングを大規模に行う方法を提供することである。本発明の目的は、受容体またはその下流のシグナル伝達エレメントをコードする遺伝子から出発する、GPCRのスクリーニングアッセイの迅速な構築を可能にすることである。本発明の他の目的は、GPCRおよびGPCR依存性経路の高処理能アッセイまたは高容量アッセイを可能にすることである。本発明の他の目的は、アッセイの構築で使用することができる適切なシグナル伝達タンパク質を含む、そのようなアッセイに有用な組成物を提供することである。蛍光、発光、リン光または比色による読み出し(readout)を含む種々の検出の選択枝を提供することも本発明の目的である。本発明の利点には、対象とする任意の細胞型における任意のGPCRまたはGPCR依存性経路のアゴニスト、アンタゴニストおよび阻害因子をスクリーニングできることがある。本発明の他の利点は、創薬のためにGPCRを脱オーファン化できることである。他の利点は、広範囲の検出方法、実験室の測定機器および自動化に適したアッセイを構築できることである。他の利点は、任意のアッセイ形式の、in vitroまたはin vivoでの、任意の細胞型におけるアッセイを構築できることである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、上記に挙げた、創薬に必要なものを提供しようとするものである。本発明は、タンパク質断片相補アッセイ(PCA)および酵素断片相補アッセイを含む、レポーター相補の戦略に基づく、GPCRおよびGPCR依存性経路の高処理能アッセイを構築し使用するための一般的な戦略を提供する。本発明はまた、受容体の脱オーファン化、経路のマッピング、および生細胞中の特定の生化学的経路を阻害または活性化することができる、天然産物、小分子、ペプチド、核酸または薬学的に活性な他の作用物質を同定するための化合物ライブラリーのスクリーニングにどの程度そのようなアッセイを適用できるのかをも教示するものである。
【0028】
本願は、GPCRおよびGタンパク質共役シグナル伝達経路のアッセイ構築用の、相互作用するタンパク質の対を同定し選択する方法を含む、GPCRアッセイを開発する一般的な手法を教示するものである。cDNAライブラリースクリーニング、1遺伝子単位の相互作用マッピングを含めて、相互作用するタンパク質の対を同定し選択する複数の方法が記載される。これらの方法を使用して、特定のGPCRと結合する細胞内シグナル伝達エレメントをマッピングすることができ、それによって薬剤スクリーニングのさらなるアッセイが作り出される。経路またはタンパク質・タンパク質相互作用に関する従来知識または仮説を用いて、そのようなアッセイを設計し構築することもできる。
【0029】
高処理能スクリーニング(HTS)と高容量スクリーニング(HCS)の両方についての方法および組成物が提供される。これらのアッセイを用いて、潜在的な治療的価値を有する化合物を同定する化合物ライブラリーのスクリーニング、および天然リガンドについての生物学的化合物または抽出物のスクリーニングを行うことができる。これらのアッセイを使用して、GPCRの天然リガンドを同定し(脱オーファン化)、「オーファン」GPCRの(複数の)シグナル伝達経路を同定することができる。蛍光、発光又はリン光など、生細胞のアッセイで光学的に検出可能なシグナルを生じさせることができる。細胞溶解物および固定化細胞を本発明で使用することもできる。アッセイプレート全体を細胞処理後特定の時点で固定し、プレートスタッカーまたはカルーセル(carousel)に入れ、後の時間に読み取ることができるので、細胞固定により、実験室自動化の目的で生細胞のアッセイに対する利点が得られる。あるいは、本明細書に記載の戦略および方法を用いて、in vitroアッセイを構築することもできる。in vitroアッセイは、生細胞のシグナル伝達事象から分断される欠点があるが、それによって、超高処理能低コストスクリーニングについてのある種の利点が得られる可能性がある。
【0030】
単に定量的なアッセイの場合、マイクロタイター蛍光プレート読み取り装置、フローサイトメーター、蛍光計、微小流体装置または類似の装置を用いて、アッセイで生じるシグナルを定量する。その強度は、形成されたタンパク質・タンパク質複合体の量の測定値であり、それによって、アゴニスト、アンタゴニストおよび阻害因子に反応する、生細胞におけるタンパク質・タンパク質複合体の形成の変化の検出が可能となる。高容量アッセイの場合、自動化顕微鏡法、共焦点、レーザーに基づく、または他の適切な高解像度の画像化システムによって細胞を画像化する。1細胞当たりの全蛍光、ならびにシグナルの細胞内位置(膜、細胞質、核、エンドソームなど)を検出することができる。HTSまたはHCSの形式の選択は、シグナル伝達事象、およびスクリーニングするタンパク質の機能の生物学的生化学的性質によって決定する。選択したレポーターによって生じるシグナルの検出に適した任意の機器と組み合わせて、本発明の対象であるHTSおよびHCSアッセイを行うことができることが、当業者には理解されるであろう。
【0031】
PCAに適したレポーターの一般的な性質、PCAのレポーターを加工する方法、およびPCAの様々な使用は、詳細に記載されている(米国特許第6,270,964号、この文献は、参照により本明細書に組み込まれる)。本発明に適したレポーターの例を表1に示す。本発明は、PCAに適した任意のレポーターを利用して、GPCRまたはGタンパク質共役経路のアッセイを作製できることを教示するものである。本願はまた、特定のレポーターを選択する理由付けについても説明する。本発明の好ましい実施形態は、下記のレポーター(表1を参照): β-ラクタマーゼ; β-ガラクトシダーゼ; コペボーダ、ウミシイタケまたはホタルのルシフェラーゼ; 黄色蛍光タンパク質; ビーナス(Venus)として知られるYFP変異体; 誘発発光型蛍光タンパク質; (KFP1); 光活性化型GFP(PA-GFP); エクオリン; およびオベリンの断片に基づくアッセイの作成を含む。本発明の他の実施形態は、下記のレポーター: ジヒドロ葉酸還元酵素; シアン蛍光タンパク質; 単量体赤色蛍光タンパク質; Michnick et al. (米国特許第6,270,964号)で記載され、表1にある多数の代替PCAレポーター; ならびに分割ユビキチンおよび分割インテイン系(J. N. Pelletier, I. Remy and S. W. Michnick (1998) Protein-Fragment Complementation Assays: a General Strategy for the in vivo Detection of Protein-Protein Interactions. Journal of Biomolecular Techniques, accession number S0012; T. Ozawa, TM Takeuchi, A. Kaihara, M. Sato and Y. Umezawa (2001) Protein splicing-based reconstitution of split green fluorescent protein for monitoring protein-protein interactions in bacteria: improved sensitivity and reduced screening time. (2001) Anal. Chem. 73: 5866-5874)を含み、これらはDHFR、GFPまたは類似のタンパク質を利用して、光学的に検出可能なシグナルを発生させる。
【0032】
【表1−1】

【0033】
【表1−2】

【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
アッセイの構築
GPCRまたはGタンパク質共役経路のアッセイを構築するプロセスの全体像を図1に示す。アッセイで使用する遺伝子は、既知または新規の相互作用タンパク質をコードするものでもよい。相互作用タンパク質は、1つまたは複数の方法によって選択され、その方法には、ベイト対ライブラリーのスクリーニング、ペアワイズ(1遺伝子単位の)相互作用マッピング、および/又は経路または相互作用タンパク質の対に関する従来知識または仮説が含まれる。
【0035】
適切なレポーターを断片化することによって、F1/F2レポーター断片対を生成する(さらなるレポーターの例は、表1および米国特許第6,270,964号にある)。融合タンパク質の発現が適切なプロモーターによって駆動される、相補的な断片を含む2種の発現構築物を作製する。一方の発現構築物は、レポーター断片F1とインフレームで融合した第1の遺伝子を含み、他方は、レポーター断片F2とインフレームで融合した第2の遺伝子を含む。最適には、下記の実施例1に記載のものなどの柔軟なリンカーを、蛍光タンパク質断片と対象の遺伝子の間で融合させて、断片相補を促進する。したがって、各発現ベクターは、作動的に連結した対象の遺伝子、柔軟なリンカー、およびF1またはF2の選択したレポーターからなる融合タンパク質をコードする。そのような組成物は、本発明の対象である。断片は、対象とする遺伝子の3'末端または5'末端で、断片と対象の遺伝子との間にリンカーと融合させてもよい。融合の向きの選択は、特定のタンパク質機能についての従来の理解を基礎としてもよく、あるいは最適な断片の向きについての経験的な根拠を基礎としてもよい。図1に示すように、F1またはF2を対象の遺伝子と融合することができ、融合の向きを対象の遺伝子に対して5'または3'とすることができるので、対象とする任意の単一遺伝子について4種の異なるDNA構築物が考えられる。
【0036】
例えばAとBのタンパク質の対についてPCAを作成するには、相補的なレポーター断片F1およびF2にそれぞれ融合したAおよびBをコードする構築物を、特定のベクターおよび細胞型に適したトランスフェクションの方法を用いて細胞に同時トランスフェクトする。タンパク質AとBが相互作用した場合、断片F1とF2は密接し、それらは、折り畳まれて、活性なレポーターを再構成することができる。次いで、選択したレポーターを光学的に検出する種々の標準的な方法によって、得られたシグナルを検出、定量、視覚化または画像化することができる。これらの方法はすべて、当業者に周知の測定機器を用いて、自動化、高処理能の形式で使用することができる。
【0037】
発現ベクターの選択が、アッセイ構築用の細胞型(細菌、酵母、哺乳動物、または他の細胞型かどうか); 所望の発現レベル; 一過性のトランスフェクション又は安定なトランスフェクションの選択; および他の典型的な分子細胞生物学上の考慮事項に依存することは、当業者には明らかであろう。それだけに限らないが、エピトープタグ、抗生物質耐性エレメント、および様々な細胞内区画に対してアッセイの細胞内標的化を可能にするペプチドまたはポリペプチドタグ(例えば、A Chiesa et al., Recombinant aequorin and green fluorescent protein as valuable tools in the study of cell signaling)を含めて、多様な他の有用なエレメントを適当な発現ベクターに組み込むことができる。2種の相補的な構築物それぞれの中に異なる抗生物質耐性マーカーを組み込むことによって、抗生物質による二重の選択圧を通じて安定な細胞株の生成が可能となり、その一方で、細胞内標的エレメントによって、ミトコンドリア、ゴルジ体、核や他の区画など特定の細胞内区画内で起こるGタンパク質共役経路の事象についてアッセイの作成が可能となる。
【0038】
細胞型および所望の発現レベルに基づいて種々の標準的なまたは新規の発現ベクターを選択することができる。そのようなベクターおよびその性質は当業者に周知であり、それにはプラスミド、レトロウイルス、およびアデノウイルスの発現系が含まれる。さらに、ベクター構築で使用することができる構成的なレポーターおよび誘導性のレポーターを含めて、広範囲の適切なプロモーターが存在する。誘導性プロモーターを使用する場合、そのアッセイで生じるシグナルは、PCA構築物によってコードされる遺伝子の転写後に変化する事象の活性化に依存する。
【0039】
レポーターの断片化
PCAアッセイ構築の原理は、本明細書に組み込まれる参照文献中に詳細に記載されている。PCA用のタンパク質の断片化は一般にポリペプチド鎖の合理的な切断に基づくが、当業者には周知である他のいくつかの工学的手法を使用することができる。適切なレポータータンパク質の断片は、対象とする全長レポーターをコードするcDNAから開始し、PCRを用いて対象とする断片を増幅することによって作製することができる。あるいは、例えば5'エキソヌクレアーゼを用いてレポーターの無作為な断片化を行って、断片のライブラリーを作製して、最適な対を検索することもできる(Michnick, et al. 6,270,964)。さらに、標準的なオリゴヌクレオチド合成技術を用いて、断片をコードするオリゴヌクレオチドを単に合成することができる。
【0040】
使用する生物学的な適用技術および測定機器に合わせたアッセイを作製するために、突然変異断片を作製することもできる。例えば、レポーターの部位特異的突然変異生成、その後に断片化(あるいは、その前に作製した断片の部位特異的突然変異生成)を用いて、蛍光特性が変化した、あるいは断片相補に対して折り畳みまたは成熟比率および安定性に優れた断片を得ることができる。部位特異的突然変異生成は、当業者に周知である任意のいくつかの手法によって実現される(MM Ling & BH Robinson, 1997, Approaches to DNA mutagenesis: an overview. Anal Biochem 254:157-78を参照)。そのような方法のうち選択した例を本明細書で示すが、これらの例は、本発明の実施を限定しないものとする。適切な方法には、無作為な突然変異生成と、定方向進化またはDNAシャッフリングの方式の組合せ(A.L. Kurtzman et al., 2001, Advances in directed protein evolution by recursive genetic recombination: applications to therapeutic proteins, Curr Opin Biotechnol 2001 Aug;12(4):361-70; SW Santoro et al., 2002, Directed evolution of the site specificity of Cre recombinase. Proc Natl Acad Sci U S A 2002 99:4185-90; Z. Shao et al., 1996, Engineering new functions and altering existing functions, Curr Opin Struct Biol 6:513-8; S. Harayama, 1998, Artificial evolution by DNA shuffling, Trends Biotechnol 1998, 16:76-82); アセンブリーPCR(assembly PCR)または遺伝子合成の手法(WP Stemmer et al., 1995, Single-step assembly of a gene and entire plasmid from large numbers of oligodeoxyribonucleotides, Gene 164(1):49-53; RM Horton et al. 1993, Gene splicing by overlap extension. Methods Enzymol. 217:270-9); あるいはエキソヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼ消化による断片化(M. Kitabatake and H. Inokuchi, 1993, A simplified method for generating step-wise deletions using PCR, Gene 123:59-61; S. Henikoff, 1990, Ordered deletions for DNA sequencing and in vitro mutagenesis by polymerase extension and exonuclease III gapping of circular templates, Nucleic Acids Res 18(10):2961-6)が含まれ得る。特に強力な方法は、いくつかの市販の突然変異生成キット、例えばQuickChange(商標)システム(Stratagene)により例示されている5'-鋳型支援長距離プラスミド重合化(5'-template-assisted long-range plasmid polymerization)に基づくものである。さらに、DNAシャッフリングに基づく様々な形の定方向進化を用いて、完全に新規なPCAを作成することもできる。DNAレベルでPCAの設計および構築を実施し、次いで細胞に融合タンパク質を産生させることが得策であるが、それは必須ではない。本明細書で記載するアッセイは、in vivoでもin vitroでも行うこともできる。in vitroアッセイは、多数のGPCRの特徴付けを促進する可能性がある。例えば、バキュロウイルス発現系など当業者に周知のin vitro発現技術、およびポリペプチド発現に対する代替の手法を用いて、融合タンパク質をin vitroで作製することができる。さらに、in vitroのPCAでは、ペプチド合成によって、または対象とする分子をコードするペプチド断片を連結してレポーター断片とのペプチド融合物を作り出すことによって、融合ポリペプチドを合成的に作製することができる。そのようなアッセイを使用して、例えば、ペプチドリガンドとのオーファンGPCRの結合について特徴付けることができる。GPCRにレポーターのF1断片でそれぞれタグを付け、チップなど固体表面にそれを固定化することができる。次いでそのチップを、ペプチドライブラリーなどのライブラリーにさらすが、そのライブラリーでは各ペプチドにレポーターの相補的な(F2)断片のタグが付いている。ペプチドとGPCRが結合したことを、F1とF2の会合を介するレポーター活性の再構成によって検出する。次いで、例えば、質量分析を含めた様々なプロテオミクスの方法のうちいずれかにより、その結合ポリペプチドの同一性について評価する。スクリーニングおよび脱オーファン化のためのそのようなアッセイも本発明の対象である。本発明は、使用するアッセイ形式またはそのアッセイの検出法に限定されない。
【0041】
適当なレポーターの選択
PCAに適したレポーターの一般的な性質は、以前に記載されている(本明細書に組み込まれる参照文献)。本発明の好ましい実施形態は、蛍光または発光シグナルを発生させる細胞に基づくアッセイを使用し、それが特に有用である。本発明で使用することができるレポーターの例を表1に列挙する。レポーターの選択が限定されないことは当業者には明らかであろう。むしろそれは、所望のアッセイの性質、形式、細胞型、スペクトル特性、発現、時間経過、および他のアッセイの仕様に基づく。対象とする任意のレポーターについて、断片の種々の有用な対を、例えば米国特許第6,270,964号および本明細書に組み込まれる参照文献で教示される方法を用いて作製し、次いで断片の再集合後により明るいシグナルが得られまたは特異的な色が読み出される断片が生じるように設計することができる。遺伝子工学の種々の技術を使用して、本発明の対象である任意のレポーターの有用な断片および断片の変異体を作製できることは、当業者には明らかであろう。
【0042】
多様なレポーターの中から選択できることにより、本発明が大規模の創薬に特に有用なものとなっていることは、当業者には明らかであろう。具体的には、タンパク質発現レベルの範囲、細胞型、および検出の方式に適する可能性がある特定の波長および強度の光を発するレポーターを選択することができる。GPCRにつながるシグナル伝達の事象または生化学的プロセスが広範囲であるので、その柔軟性は本発明の重要な特徴である。いくつかの生化学的事象では、GPCRの活性化、例えばアゴニストの結合によるものは、GPCR及び同系の結合タンパク質の会合、またはGタンパク質共役経路の「下流」にあるキナーゼとその基質など2つのエレメントの会合の増加につながる。PCAの対を形成する2つのタンパク質の会合の増加は、再集合したレポーター断片によって生じるシグナルの増加につながる。その場合、高処理能アッセイの形式を用いて、対象とする複合体の量に比例する蛍光シグナルを測定することができる。読み出しがシグナル強度の増大または低下である定量的なアッセイでは、本発明で論じるレポーターのいずれかを使用することができ、各レポーターは様々な長所と短所を有するが、それらは細胞生物学の分野の技術者に十分に理解されている。触媒反応によって蛍光、リン光、発光または他の光学的に検出可能なシグナルが発生する酵素は、単に定量的なアッセイに最も適している可能性がある。断片相補後、再構成された酵素は、基質に作用して蛍光または発光産物を発生させ、それはレポーターが活性である間蓄積する。産物が蓄積するので、断片相補後、高いシグナル・ノイズ比が得られる可能性がある。そのようなアッセイは、384ウエルまたは153ウエルおよびそれ以上の形式に特に適しており、標準的なかつ超高処理能の実験室自動化に適合する。
【0043】
本発明に好ましいレポーターには、β-ラクタマーゼPCA、またはホタルルシフェラーゼやウミシイタケルシフェラーゼを用いるようなルシフェラーゼPCAがあるが、これらに限定されない。これらの各酵素は、哺乳動物系での細胞に基づくレポーターとしての使用に成功している(S Baumik & SS Gambhir, 2002, Optical imaging of renilla luciferase reporter gene expression in living mice, Proc. Natl. Acad. Sci., USA 2002, 99(1): 377-382; Lorenz et al., 1991, Isolation and expression of a cDNA encoding renilla reniformis luciferase, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 4438-4442; G. Zlokarnik et al., 1998, Quantitation of transcription and clonal selection of single living cells with beta-lactamase as reporter, Science 279: 84-88)。PCAの構築の例として、切断後にバックグラウンドに対して高いシグナルが発生する細胞透過性基質を用いてβ-ラクタマーゼPCAが構築されている(A Galameau et al., 2000, Nature Biotechnol. 20: 619-622)。β-ラクタマーゼPCAは、HTSに適した感度が高く定量的なアッセイである。このPCAは、β-ラクタマーゼによってβ-ラクタム環が切断された後に青色になる緑色蛍光分子CCA2/AMとともに使用される。したがって、青色と緑色の比が、タンパク質断片相補後に再構成されたβ-ラクタマーゼ活性の測定値となる。細胞透過性基質を用いてルシフェラーゼPCAを使用して、本発明に適したHTSアッセイを作成することもできる(例えば、R Paulmurugan et al., 2002, Noninvasive imaging of protein-protein interactions in living subjects by using reporter protein complementation and reconstitution strategies, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99: 15608-15613)。適切な改変を行って、これらのPCAのいずれかをin vivoまたはin vitroで本発明に使用することができる。生来の蛍光、リン光または生物発光タンパク質に基づくPCAは、高容量形式または高処理能形式で読み取ることができることが当業者には明らかであろう。これらのPCAには、基質の添加を必要としないという利点があるが、発生したシグナルは通常、酵素レポーターによって発生するものより低い。
【0044】
カルシウム感受性発光タンパク質は、GPCRアッセイ用のPCAとして特に有用であろう。これは、エクオリン、オベリン、または他の任意のカルシウム感受性タンパク質の断片に基づくものでもよい(例えば、MD Ungrin et al., 1999, An automated aequorin luminescence-based functional calcium assay for G-protein-coupled receptors, Anal Biochem. 272: 34-42; Rizzuto et al., 1992, Rapid changes of mitochondrial calcium revealed by specifically targeted recombinant aequorin, Nature 358 (6384): 325-327; Campbell et al., 1988, Formation of the calcium activated photoprotein obelin from apo-obelin and mRNA in human neutrophils, Biochem J. 252 (1):143-149)。クラゲであるオワンクラゲ(Aequorea victoria)に由来するカルシウム感受性発光タンパク質エクオリンは、アポタンパク質(分子量約21 kDa)と疎水性の接合団セレンテラジンから構成される。タンパク質とのカルシウムの結合によってアポタンパク質とセレンテラジン間の共有結合の断裂が生じ、単一の光子が放出される。この反応の割合は、その発光タンパク質がさらされるカルシウム濃度に依存する。セレンテラジンを含む完全なエクオリンが、GPCRについての細胞に基づくアッセイでのカルシウム流束のモニターに使用されている。オベリンは、22 kDaの単量体タンパク質であり、やはりシグナル発生にセレンテラジンを必要とする。エクオリンPCAまたはオベリンPCAの構築によって、リガンドとタンパク質の相互作用またはタンパク質とタンパク質の相互作用の結果、レポーター断片が会合した場合にのみ光子放出が生じるGタンパク質共役受容体および経路のアッセイが可能となる。そのようなアッセイを、カルシウム流束での経路活性化の測定と組合せ、非常に感度の高いGPCR研究用のアッセイを作成することができる。
【0045】
レポーター断片のサイズが小さいので小さな単量体レポーターが本発明に好ましいが、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、チロシナーゼや他のレポーターなどの多量体酵素も本発明で使用できることが従来技術から明らかであろう。PCAに適したいくつかの多量体酵素が以前に記載されている(米国特許第6,270,964号)。従来技術で記載されているPCAの原理を使用して多量体タンパク質の断片を加工することができる; あるいは、広く使用されているβ-ガラクトシダーゼαおよびω相補系(beta-galactosidase alpha and omega complementation system)(参照文献を参照)を含めて、多量体酵素の天然に存在する断片または加工した低親和性サブユニットを使用することもできる。β-ガラクトシダーゼの天然に存在する断片およびそれを使用するプロトコールがDiscoveRx, Inc. (Fremont, CA; www.discoverx.com)によって、またStratagene (Q-Tag検出キット、www.stratagene.com)を含む販売業者によって開発され販売されており、本発明で教示される任意の断片相補アッセイおよびGPCRシグナル伝達タンパク質と組み合わせてそれを使用することができる。β-galの加工した低親和性サブユニットは、Applied Biosystems, Inc. (www.appliedbiosystems.com)によって販売されている。β-galの相補後の蛍光および発光シグナルの発生に適した基質も広く入手可能であり(例えば、β-Gloのプロトコールおよび試薬についてwww.promega.comを参照)、本発明と組み合わせてそれを使用することができる。
【0046】
いくつかのGタンパク質共役事象では、経路の活性化は、タンパク質・タンパク質複合体の合計数の増加を伴わない、一細胞内区画から他区画への既存のタンパク質とタンパク質の複合体の移動につながる。その場合、細胞内で複合体が形成した部位で再集合したレポーターによって生じた蛍光シグナルを画像化することができ、その複合体の輸送のモニターが可能となる。シグナルがタンパク質・タンパク質複合体の部位で残る任意の適切なレポーターについて、そのような「高容量」PCAを加工することができる。例として、DHFRのPCAがあり、それはシグナル伝達経路の高容量アッセイに使用され(I Remy & S Michnick, 2001, Visualization of Biochemical Networks in Living Cells, Proc Natl Acad Sci USA, 98: 7678-7683)、高処理能アッセイにも使用されている(I Remy et al., 1999, Erythropoietin receptor activation by a ligand induced conformation change, Science 283: 990-993)。再構成されたDHFRはメトトレキセート(MTX)と結合する; MTXがフルオレセイン、テキサスレッド(Texas Red)やBODIPYなどの蛍光体と結合している場合、PCAシグナルを細胞内に局在化させることができる。高容量アッセイに特に有用なさらなるレポーターは米国特許第6,270,964号に記載され、それにはオワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質(GFP)が含まれる。
【0047】
GFP、YFP、および他の生来の蛍光、発光またはリン光タンパク質レポーターに基づくPCAは、本発明の好ましい実施形態である。あらゆる蛍光タンパク質が科学文献中に記載されている(例えば、RY Tsien, 1998, The Green Fluorescent Protein, Annual Reviews of Biochemistry 67: 509-544; J. Zhang et al., 2000, Creating new fluorescent probes for cell biology, Nature Reviews 3: 906-918)。任意の突然変異蛍光タンパク質を加工して、本発明で使用する断片にすることができる。適切なレポーターには、YFP、CFP、dsRed、mRFP、「シトリン(citrine)」、BFP、PA-GFP、「ビーナス(Venus)」、SEYFP、および他のAFP、ならびにイソギンチャクおよび花虫類由来の赤色およびオレンジ赤色蛍光タンパク質がある。
【0048】
細胞のバックグラウンドで高いシグナルを発生するレポーターは本発明に好ましい。例えば、YFP、SEYFP、または「ビーナス」(T Nagai et al., 2002, A variant of yellow fluorescent protein with fast and efficient maturation for cell-biological applications, Nature Biotech. 20: 87-90)に基づくPCAは、本発明に特に適している。誘発発光型蛍光タンパク質(KFP1)(DM Chudakov et al., 2003, Kindling fluorescent proteins for precise in vivo photolabeling, Nat. Biotechnol. 21, 191-194)、カエデなどの光転換型蛍光タンパク質(R Ando et al., 2002, An optical marker based on the uv-induced green-red photoconversion of a fluorescent protein, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2002, 99 (20): 12651-12656)や、PA-GFPなどの光活性化型タンパク質(GH Patterson et al., 2002, A photoactivatable GFP for selective labeling of proteins and cells, Science 297: 1873-1877)など、シグナルを誘発することができるタンパク質に基づくPCAは、非常に速いシグナル伝達事象の捕捉が必要となる場合に特に利点を有することがある。KFP1は、イソギンチャクであるヘビイソギンチャクの独特のGFP様色素タンパク質asCPに由来する。asCPは最初蛍光を発しないが、強い緑色光の照射に反応して、それは放射波長595 nmの明るい蛍光を発するようになる(誘発発光する)。誘発発光したasCPは、半減期<10秒で蛍光を発しない元の状態に戻る。あるいは、青色光の短時間照射によって蛍光を即座にかつ完全に「消失」させることもできる。その突然変異体(asCP A148G、またはKFP1)は、蛍光を発しない形態から安定な明るい赤色蛍光を発する形態への独特の不可逆性の光転換が可能であり、その形態は誘発発光していないタンパク質より蛍光強度が30倍強く、それによってその変異体が生細胞のPCAに特に適したものとなる。
【0049】
これらのレポーターのいずれを用いても、使用するレポーターの断片の対を単に作製し、融合構築物中で所望のレポーターをその断片の対と置き換え、対象とするシグナルの検出に適したレベルでそれを発現させ、その特定のレポーターの断片相補後に発生するシグナルの検出に適した条件下でアッセイを行うことにより、本明細書に記載の原理および方法に基づいたアッセイを構築することができることは、当業者に明らかであろう。そのようなアッセイ条件は、生化学の文献中で見つけることができ、当業者に周知である。
【0050】
測定機器
上記に記載の高処理能アッセイでは、光学的に検出可能なシグナルが発生し、それは、蛍光プレート読み取り器、ルミノメーター、およびフローサイトメーターを含む市販の測定機器で読み取ることができる。そのような測定機器は、Molecular Devices、Packard、Perkin Elmer、Becton Dickinson、Beckman Coulter、および他の業者を含む商業製造業者から広く入手可能である。そのようなアッセイはすべて、複数穴(96穴および384穴)の形式で構築することができる。上記に記載の高容量アッセイでは、光学的に検出可能なシグナルが発生し、それは、細胞内区画内で空間分解することができる。得られた画像を、自動化顕微鏡、共焦点画像化システム、および類似の機器で捕捉することができる。適切な画像化測定機器は、Molecular Devices (Universal Imaging)、Amersham Bioscience、Cellomics、Evotec、Zeiss、Q3DM、Atto、および他の業者を含む、様々な商業製造業者から広く入手可能である。MetaMorphなどの画像分析ソフトウェア、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)の公的に利用可能なIMAGEソフトウェア(http://rsb.info.nih.gov/nih-image/)、および様々な専売権付きソフトウェアパッケージを使用して、様々な細胞内区画(膜、細胞質ゾル、核)からシグナル発生を区別し、1細胞当たりの蛍光の総量を定量する。さらに、本発明の複数穴PCA形式をアレイに基づくアッセイ形式に構築することができ、それには、単一アレイ上で多数の異なるPCAの迅速な同時処理を可能にするAkceli Inc.により提供されているものなどのリバーストランスフェクション法が含まれる。
【0051】
アッセイ構築用の、Gタンパク質共役経路のエレメントの選択
本発明を使用して、例えばレポーター断片でGPCRの細胞内(C末端)部分にタグを付け、その自己相互作用、リガンドと、他の受容体と、キナーゼまたはホスファターゼと、受容体活性化修飾因子タンパク質と、あるいは他の細胞内タンパク質との受容体の相互作用のアッセイを行うことによってGタンパク質共役受容体自体のアッセイを構築することができる。例えば、本明細書で提供する方法を用いて、GPCRとGタンパク質の間の様々な相互作用についてアッセイを行うことができる。その利点は、特定のGPCRにつながる細胞内の機構を理解し、経路中の任意のステップについてアッセイを構築できることである。受容体から開始し、シグナル伝達カスケード全体を下るGタンパク質共役経路中の様々なステップについてスクリーニングアッセイを構築できるという利点としては、Gタンパク質共役経路における潜在的に創薬に適した様々な標的のいずれか1つで働く可能性がある化合物をスクリーニングでき、その受容体がつながるシグナル伝達機構の同定により受容体を脱オーファン化できることが挙げられる。
【0052】
図1に概略を描いた方法のいずれかによって、アッセイ構築に適した相互作用分子の対を同定することができる。PCAは、GPCRの種々の対によってPCAシグナルが対象の細胞型で発生するかどうかを最初に調べ、次いでシグナルの量または細胞内局在が細胞シグナル伝達を修飾する作用因子によって影響を受けるかどうかを判定することにより、生細胞においてGPCR間でなされる相互作用の体系的な特徴付けが可能になる。このようにして、数百のGPCR間の機能的な相互作用を、PCAを用いて「マッピング」することができる。例えば、レポーターの相補的な一断片でタグを付けたGPCRを「ベイト」として使用して、レポーターの第2の相補的な断片でタグを付けたcDNAライブラリーをスクリーニングすることができる(ベイト対ライブラリースクリーニング)。この点において、PCAは、Gタンパク質共役シグナル伝達の構成成分間の相互作用の同定に広く使用されている酵母2ハイブリッド系の代替の方法である。体系的なスクリーニングを行って、経路のエレメントを同定することもでき、例えば、適切なレポーターのF1でタグを付けた新規またはオーファンGPCRを、相補的な断片F2でタグを付けた他のタンパク質に対して個々に試験することができる(1遺伝子単位の分析)。PCAシグナルが存在することから、相補的な断片でタグを付けた2つのタンパク質間に相互作用があることが示唆される。例えば、PCAで他のタンパク質に対して各タンパク質を試験することにより、特定のGPCRと結びつく同系のGタンパク質を同定することもでき、あるいは、特定のGPCRと結びつくキナーゼを同定することもできる。PCAシグナルが存在することから、2つのアッセイ構成成分間に相互作用があることが示唆される。本発明の利点は、相互作用が同定された後、アッセイは掌握され、それを使用して、高容量PCAまたは高処理能PCAをスクリーニングとして用いることによって経路の修飾をスクリーニングし、受容体を脱オーファン化し、又は対象とする経路を修飾する化合物をスクリーニングできることである。
【0053】
Gタンパク質共役経路の構成成分は部分的に解明されており、既知のまたは仮説上の相互作用を容易に使用して、本発明に従ってアッセイを設計することができる。本発明は、Gタンパク質共役経路における様々なステップのアッセイを包含する。生化学の文献に基づいてこれらのステップのいくつかを下記で詳細に説明し、表2に列挙する。タンパク質断片相補アッセイまたは酵素断片相補アッセイの構築の基礎として、今日までに報告されたタンパク質とタンパク質の相互作用のいずれかを使用することができる。そのようなアッセイは、GPCR自体; Gタンパク質(α、βおよびγサブユニット); アデニル酸シクラーゼ(RおよびCサブユニット); タンパク質キナーゼ(GRK、PCA、PKC、MAPK、ERK、および他のキナーゼを含むが、これらに限定されない); タンパク質ホスファターゼ(PPP2Aおよび他のホスファターゼ); ホスホリパーゼC(PLC)などのホスホリパーゼ; 受容体活性修飾タンパク質(RAMP); 脂質トランスフェラーゼ(ファルネシルトランスフェラーゼ、ミリストイルトランスフェラーゼ、パルミトイルトランスフェラーゼ); イオン交換制御因子; GIRK; β-アレスチン; E3リガーゼ; ユビキチン単量体またはポリペプチド; RDGタンパク質; PDE4などのホスホジエステル; GPCRとのクロストークを示すサイトカインおよび成長因子の受容体; およびELK、CREBやCBPなどの転写因子を含んでもよい。
【0054】
本発明の対象であるアッセイはすべて、検証アッセイとして、または基礎実験生物学の研究ならびに創薬において一般に使用される。例えば、これらのアッセイをRNA干渉の方法と組み合わせて使用して、特定の遺伝子をGタンパク質共役経路に関連付けることができる。これは、例えば小干渉RNA(siRNA)を、細胞に基づく断片相補アッセイに導入し、そのsiRNAにより相互作用タンパク質の対によって生じるシグナルが低下するかどうかを判定することによって行うことができる。ドミナントネガティブ遺伝子、薬剤、ペプチド、抗体および他の生化学的または生物学的試薬を含めて、任意の他の細胞プローブを同様な形で使用することができる。機能的な注釈付け、標的検証および経路のマッピングに加えて、本明細書に記載のアッセイは全て、高処理能スクリーニングおよび創薬に適している。
【0055】
【表2−1】

【0056】
【表2−2】

【0057】
【表2−3】

【0058】
【表2−4】

【0059】
これらの原理を例示するために、相互作用タンパク質の様々な既知の対を使用して、受容体/受容体のアッセイ、受容体/Gタンパク質のアッセイ、および受容体/β-アレスチンのアッセイを含む、GPCRおよびGタンパク質共役経路のアッセイを構築した。後者では、タンパク質の定量的なアゴニスト依存性の会合と、生細胞における高容量の動態アッセイの両方を実証した。
【実施例】
【0060】
実施例1:GPCRの二量体化
GPCRがホモ二量体またはヘテロ二量体を形成できることを示す研究は増加している(S. Angers et al., 2002, Dimerization: an emerging concept for GPCR ontogeny and function, Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 42: 409-435; MK Dean et al., 2001, Dimerization of G-protein-coupled receptors, J. Med. Chem. 44: 4594-4614)。受容体の自己会合、および受容体活性のその後の変化が、δ-オピオイド受容体、ドーパミン受容体、および他のGPCRに加えて、β2アドレナリン受容体(T.E. Hebert, 1996, A peptide derived from a beta2-adrenergic receptor transmembrane domain inhibits both receptor dimerization and activation, J. Biol. Chem. 271: 16384-16392)において報告されている。アゴニストが、二量体型の様々なGPCRを安定化できることが示され(U. Gether et al., 2000, Uncovering molecular mechanisms involved in activation of G-protein-coupled receptors, Endocrine Reviews 21:90-113)、そのことから、ホモ二量体化が受容体の活性化に、あるいはその後のアゴニスト依存性脱感作および内部移行のプロセスに直接的に役割を果たす可能性があることが示唆される(He et al., 2002, Regulation of opioid receptor trafficking and morphine tolerance by receptor oligomerization, Cell 108: 271-282)。ホモ二量体化に加えて、密接に関連する受容体のサブタイプ間のヘテロ二量体化が重要であると考えられることを示す証拠が蓄積しており、それはまた、細胞表面への機能的な受容体の標的送達および薬剤耐性にも重要である可能性がある。免疫共沈降およびゲルシフトアッセイを含む標準的な生化学的方法が、受容体の二量体化の研究に使用されている。さらに、FRETまたはBRETがGPCRのホモオリゴマー化およびヘテロオリゴマー化のモニターに使用されている(McVey et al., 2001, Monitoring receptor oligomerization using fluorescence resonance energy transfer and bioluminescence resonance energy transfer, J. Biol. Chem. 276: 14092-14099)。しかし、従来技術では、GPCR二量体化の研究への断片相補アッセイの使用については言及されていない。
【0061】
生細胞に適した高容量アッセイにより、アゴニストおよびアンタゴニストに反応して、細胞膜、エンドサイトーシス小胞、細胞質および他の細胞内区画間における受容体複合体の輸送をモニターすることができるはずである。断片相補を使用して、受容体と受容体の二量体を検出する蛍光アッセイを構築することができると仮定した。したがって、実施例1では、高容量の蛍光PCAを構築して、β2アドレナリン受容体を測定した。増強型YFPをレポーターとして選択した。β2ARの融合構築物を作製するために、β2ARのcDNAの完全なコード配列を、配列が確認されている完全長cDNAからPCRで増幅した。得られたPCR産物を真空ろ過(MultiScreen PCR, Amicon)によって精製し、定方向クローニングが可能となるように適当な制限酵素で消化した。PCR産物をYFP[1]またはYFP[2]の5'末端とインフレームで融合して、pcDNA3.1(Invitrogen)骨格中で構築物β2AR-YFP[1]およびβ2AR-YFP[2]を作製した。断片YFP[1]およびYFP[2]は、下記のヌクレオチド配列を有するものであった:
【0062】
>YFP[1]
atggtgagcaagggcgaggagctgttcaccggggtggtgcccatcctggtcgagctggacggcgacgtaaacggccacaagttcagcgtgtccggcgagggcgagggcgatgccacctacggcaagctgaccctgaagttcatctgcaccaccggcaagctgcccgtgccctggcccaccctcgtgaccaccttcggctacggcctgcagtgcttcgcccgctaccccgaccacatgaagcagcacgacttcttcaagtccgccatgcccgaaggctacgtccaggagcgcaccatcttcttcaaggacgacggcaactacaagacccgcgccgaggtgaagttcgagggcgacaccctggtgaaccgcatcgagctgaagggcatcgacttcaaggaggacggcaacatcctggggcacaagctggagtacaactacaacagccacaacgtctatatcatggccgacaagcagtaa
【0063】
YFP断片1の翻訳:
MVSKGEELFTGVVPILVELDGDVNGHKFSVSGEGEGDA
TYGKLTLKFICTTGKLPVPWPTLVTTFGYGLQCFARYPDHMKQHDFFKSA
MPEGYVQERTIFFKDDGNYKTRAEVKFEGDTLVNRIELKGIDFKEDGNIL
GHKLEYNYNSHNVYIMADKQ
【0064】
>YFP[2]
aagaacggcatcaaggtgaacttcaagatccgccacaacatcgaggacggcagcgtgcagctcgccgaccactaccagcagaacacccccatcggcgacggccccgtgctgctgcccgacaaccactacctgagctaccagtccgccctgagcaaagaccccaacgagaagcgcgatcacatggtcctgctggagttcgtgaccgccgccgggatcactctcggcatggacgagctgtacaagtaa
【0065】
YFP断片2の翻訳:
KNGIKVNFKIRHNIEDGSVQLADHYQQNTPIGDGPVLLPDNHYLSYQSAL
SKDPNEKRDHMVLLEFVTAAGITLGMDELYK
【0066】
YFP[1]は、EYFPのアミノ酸1〜158に対応し、YFP[2]は、アミノ酸159〜239に対応する。上記の配列は、2004年12月1日に出願の米国特許出願第10/724,178号(2004年7月15日に米国第2004/0137528号として公開)、および2004年2月5日に出願の米国特許出願第10/772021号(2004年8月19日に第2004/0161787号として公開)の対象である。上記の2出願は、本願と同じ譲受人が所有しており、電子形式の配列が上記に示した出願とともに提出されている。融合はすべて、10アミノ酸のペプチド(Gly.Gly.Gly.Gly.Ser)2をコードする柔軟なリンカーを介して行った。対象とする遺伝子とレポーター断片の間での柔軟なリンカーの使用は、融合物の向きおよび配置がそのタンパク質断片を密接させるのに最適となることを確実にするものである(J.N. Pelletier, F.-X. C.-Valois & S.W. Michnick, 1998, Proc Natl. Acad Sci USA 95: 12141-12146)。組換え構築物のDNAは、Beckman FXロボットワークステーション(Beckman Coulter, Fullerton, CA)でQiagen Turbo BioRobot Prepキットを用いて、またはQiagen Midi Prepキットを用いて手動操作で単離した。単離したDNAを定量し、次いで濃度50 ng/μlに標準化した。β2AR-YFP1およびβ2AR-YFP2融合遺伝子をHEK293E細胞中で一過性に48時間発現させた。融合構築物の一過性発現では、HEK293E細胞を、ポリリジンで被覆した96穴プレート中に播き(1穴当たり細胞9000個)、24時間後、Fugeneトランスフェクション試薬(Roche Diagnostics, Indianapolis, IN)を用いて、製造業者の推奨に従ってDNA30ngを同時トランスフェクトした。48時間発現させた後、細胞をPBSで1回洗浄し、40×対物レンズを用いて、CoolSnap HQ CCDカメラを備えたNikon TE-2000で画像取得した(励起波長: 460〜500nm; 放射波長: 505〜560 nm; 二色性ミラー: 505LP)。図2に示すように、受容体はヒト細胞中で自己会合し、細胞膜で強い蛍光シグナルを発生し、このことから、受容体と受容体の複合体が、活発に増殖する細胞中で膜に局在することが示された。
【0067】
実施例2:グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)のサブユニットとGPCRの会合
GPCRは、サブユニットGα、GβおよびGγからなるヘテロ三量体グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)によってその2次メッセンジャー系と共役する(CC Malbon & AJ Morris, 1999, Physiological regulation of G protein-linked signaling, Physiol. Rev. 79: 1373-1430; T Gudermann et al., 1996, Diversity and selectivity of receptor-G protein interaction, Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 36: 429-459)。細胞外リガンドまたはアゴニストがGPCRと結合したとき、受容体はグアニンヌクレオチド交換因子活性を発揮し、Gγサブユニット上で、グアノシン三リン酸(GTP)と、結合しているグアノシン二リン酸(GDP)の交換を促進する。GTPと結合した後、Gαの3個の柔軟な「切り替え」領域内での構造変化によって、Gβγの放出、およびその後の各Gαサブタイプに特異的な下流エフェクターの関与が可能となる。Gαの内在性のGTPアーゼ活性によって、そのタンパク質はGDP結合状態に戻る。GβγとGαの再会合によって、重要なエフェクター接触部位が不明瞭になり、それによってエフェクターの相互作用がすべて終結する。したがって、Gタンパク質共役シグナル伝達の持続時間は、GTP結合状態にあるGαサブユニットの寿命によって決まる。Gタンパク質は、α-サブユニットの組成に基づいてGs、Gi、GqおよびG12/13の4種のタンパク質ファミリーに分類されている。Gαによって制御される主要なエフェクターには、アデニル酸シクラーゼ(Gsは刺激性、Giは抑制性)、ホスホリパーゼC(Gqは刺激性)およびK+チャネル(Giは刺激性)がある。遊離したGβγはまた、ホスホリパーゼCを含む特定のエフェクター系に関与することもできる。生細胞中での単純な蛍光アッセイによってこれらの事象を研究することができ、それにより、Gタンパク質共役経路において、GPCRとその同系のGタンパク質との間の会合、およびGタンパク質と下流エフェクターとの間の会合を調べることが可能となるはずである。
【0068】
GαiおよびGβ1のPCA発現構築物を作製するために、各遺伝子の完全なコード配列を、実施例1に記載の方法を用いて、配列が確認されている対応する完全長cDNAからPCRで増幅した。構築物Gαi-YFP[1]およびYFP[1]-Gβ1を調製した。これらの各構築物を使用して、Gタンパク質とβ2アドレナリン受容体の会合を評価する一過性のPCAを構築した。実施例1の場合と同様に調製したβ2AR-YFP[2]構築物を、Gαi-YFP[1]とともに同時トランスフェクトし、U-2 OS(ヒト骨肉種)細胞(図3a)またはHEK293E(ヒト胎児腎)細胞(図3b)中で一過性に48時間発現させた。生細胞における再構成した蛍光シグナルの画像を、実施例1に記載のように取得した。別の実験では、YFP[1]-Gβ1を、実施例1に記載のようにβ2AR-YFP2とともにHEK293E細胞中で同時トランスフェクトした(図4)。その結果、生細胞中で明るい蛍光シグナルが示され、これらのタンパク質の知られている生化学的性質から予想されるように、GPCRがGタンパク質のαサブユニットとβサブユニットのどちらとも会合し、生じたタンパク質とタンパク質の複合体が形質膜に局在することが実証された。これらのアッセイは現在、同系のGタンパク質をPCAでの相補の相手として用いて、任意のGPCRについて構築することができる。そのようなアッセイを使用して、アゴニストおよびアンタゴニストに反応した受容体/Gタンパク質複合体の会合、解離および細胞内再分布をモニターし; GPCRとGタンパク質の結合を増大または低下させる新規な化合物をスクリーニングし; Gタンパク質とオーファン受容体の結合を誘導する天然の化合物を同定し、オーファン受容体と結合する特定のGαサブタイプを同定することにより、受容体を脱オーファン化することができる。
【0069】
実施例3:β-アレスチンが関与する細胞内事象
β-アレスチンは、ほとんどのGPCRと複合体を形成するアダプタータンパク質であり、受容体の脱感作、隔離および下方制御(downregulation)に中心的な役割を果たす(総説については、Luttrell and Lefkowitz, J. Cell Science 115 (3): 455-465, 2002を参照)。β-アレスチンがGPCRと結合すると、その同系のGタンパク質から受容体が解離し、受容体がクラスリン被覆ピットへと標的送達されてエンドサイトーシスが生じる。β-アレスチンはまた、GPCRシグナル伝達因子としても機能することができる。それは、Srcファミリーチロシンキナーゼ、ならびにERK1/2およびJNK3 MAPキナーゼカスケードの構成成分を含む、他のシグナル伝達タンパク質と複合体を形成することができる。β-アレスチン/Src複合体は、受容体のエンドサイトーシスを調節し、いくつかのキナーゼカスケードの骨格として作用することが提唱されている。形質膜から細胞内小胞へのβ-アレスチンの移動は、GFPでβ-アレスチンにタグを付け、生細胞中でその蛍光の細胞内分布をモニターすることにより視覚化されている(LS Barak et al., 2001, A beta-arrestin/green fluorescent protein biosensor for detecting G-protein-coupled receptor activation. J. Biol. Chem. 272: 27497-27500)。
【0070】
β-アレスチンは、未同定のタンパク質キナーゼによってSer412がリン酸化される。膜へと移動した後、β-アレスチン-1は、同定されていないタンパク質ホスファターゼによって迅速に脱リン酸化される。断片相補アッセイを使用して、β-アレスチンに作用するキナーゼおよびホスファターゼを同定することができる。例えば、レポーターの第1の断片と結合させたβ-アレスチンを、それぞれをレポーターの第2の断片と結合させた多数のser/thrキナーゼに対して試験することができた。次いで、これらの融合構築物を細胞に同時トランスフェクトして、複合体が形成されるかどうか確認することができた。相互作用が起こる場合、GPCRのアゴニストおよびアンタゴニストの効果を試験して、受容体の活性化によりキナーゼとβ-アレスチンの結合が増大または低下するかを判定することができた。あるいは、特定のタンパク質キナーゼのsiRNAを、細胞に基づく断片相補アッセイで遺伝子サイレンシングに使用することができた。このようにして、特定のタンパク質キナーゼのサイレンシングによって、β-アレスチンとGタンパク質共役経路の他のエレメントとの結合が減弱または増強するかを判定することができる。キナーゼがβ-アレスチンと結びついた場合、β-アレスチン/キナーゼアッセイを高処理能スクリーニングで使用して、そのステップでその経路を遮断する化合物を同定することができる。これらの手法はすべて、本発明の対象である断片相補アッセイにより可能である。
【0071】
ユビキチン化は、タンパク質を標的としてプロテアソーム内でそれを分解する生化学的プロセスである。β-アレスチンのユビキチン化は、GPCRの内部移行に明らかに必要である。β-アレスチン-2は、E3ユビキチンリガーゼMdm2によってユビキチン化され、それはβ-アレスチンと直接相結合することが示されている。GPCRも、未同定のユビキチンリガーゼによってユビキチン化される。β-アレスチン/Mdm2のアッセイ、あるいはβ-アレスチン/ユビキチン、GPCR/ユビキチン、またはGPCR/E3リガーゼのアッセイのPCA構築により、受容体の脱感作を調節する細胞事象の特徴付け、定量およびモニターが可能となるはずである。一例として、β-アレスチン/ユビキチンのアッセイを示す。
【0072】
多数のGPCRはMAPキナーゼを活性化し、タンパク質キナーゼERK 1/2の活性化を誘導する。β-アレスチンは、ERKと直接結合し、ERK1/2 MAPキナーゼカスケードの骨格として機能することができる。ERKは、核転写因子(ELK)および他の基質を直接リン酸化する(Pearson 2001)。これらの事象はすべて、タンパク質とタンパク質の複合体ならびに経路のアゴニストおよびアンタゴニストに対するその反応を位置特定し定量する断片相補アッセイを用いて研究することができる。
【0073】
これらの例を示すために、細胞に基づくタンパク質断片相補アッセイを先ず構築して、β-アレスチン2とβ2アドレナリン受容体の間の複合体形成を測定した (図5〜6および8〜10を参照)。最初に、β2ARの活性化の変化が、受容体とβ-アレスチン2の結合によって発生する再構成された蛍光シグナルの増大または低下によって検出される定量的な蛍光アッセイの作製を試みた。
【0074】
β2ARとβ-アレスチン2の融合構築物を実施例1に記載のように調製し、構築物β2AR-YFP[2]およびYFP1-β-アレスチン2を作製した。YFP1-β-アレスチン2およびβ2AR-YFP2構築物をHEK293E細胞にトランスフェクトした。48時間発現させた後、細胞をハンクスバランス塩溶液(Hank's Balanced Salt Solution) (HBSS)で1回洗浄し、0〜10μMのイソプロテレノール(Sigma-Aldrich Corp., St. Louis, MO)で30分間処理した。HBSSで1回洗浄して処理を終結し、その後、細胞をそれぞれ2%ホルムアルデヒドおよび3μg/mlのヘキスト(Hoechst)色素でそれぞれ15分間固定および染色した。次いで細胞をHBSSで洗浄し、Gemini蛍光プレート読み取り器(Molecular Devices)で蛍光を定量した。非処理細胞の平均蛍光値をバックグラウンドとして、処理したものの値から差し引いた。図5に、β2ARとβ-アレスチン2の会合についての用量・応答を示し、これから、既知の受容体アゴニスト(イソプロテレノール)に反応して、蛍光強度が用量依存的に増大することが実証された。
【0075】
β2ARとβ-アレスチン2の会合について高用量動態アッセイを作成するために、IFP[1]と名付けた変異型のYFP[1]を用いてβ-アレスチン2の融合構築物を作製し、構築物β-アレスチン2- IFP[1]を作製した。IFP[1]は、変異F46L、F64LおよびM153Tを組み込んだものであり、その変異は、YFPのシグナル強度を増大させることが示されている(Nagai et al. (2002) A variant of yellow fluorescent protein with fast and efficient maturation for cell-biological applications. Nature Biotechnology 20: 87-90)。得られた新規の断片IFP[1]を下記に示す。YFP[1]と比較したIFP[1]の変異は、強調のため大文字および下線で示す。
【0076】
>IFP1
atggtgagcaagggcgaggagctgttcaccggggtggtgcccatcctggtcgagctggacggcgacgtaaacggccacaagttcagcgtgtccggcgagggcgagggcgatgccacctacggcaagctgaccctgaagttGatctgcaccaccggcaagctgcccgtgccctggcccaccctcgtgaccaccCtcggctacggcctgcagtgcttcgcccgctaccccgaccacatgaagcagcacgacttcttcaagtccgccatgcccgaaggctacgtccaggagcgcaccatcttcttcaaggacgacggcaactacaagacccgcgccgaggtgaagttcgagggcgacaccctggtgaaccgcatcgagctgaagggcatcgacttcaaggaggacggcaacatcctggggcacaagctggagtacaactacaacagccacaacgtctatatcaCggccgacaagcagtaa
【0077】
>IFP1翻訳
MVSKGEELFTGVVPILVELDGDVNGHKFSVSGEGEGDATYGKLTLKLICT
TGKLPVPWPTLVTTLGYGLQCFARYPDHMKQHDFFKSAMPEGYVQERTIF
FKDDGNYKTRAEVKFEGDTLVNRIELKGIDFKEDGNILGHKLEYNYNSHN
VYITADKQ
【0078】
上記の配列は、2004年12月1日に出願の米国特許出願第10/724,178号(2004年7月15日に米国第2004/0137528号として公開)、および2004年2月5日に出願の米国特許出願第10/772021号(2004年8月19日に第2004/0161787号として公開)の対象である。上記の2出願は、本願と同じ譲受人が所有しており、電子形式の配列が上記に示した出願とともに提出されている。
【0079】
構築物β-アレスチン2- IFP[1]およびβ2AR-YFP[2]を、実施例1に記載の方法に従って細胞に同時トランスフェクトした。48時間後、37℃で細胞を1μMのイソプロテレノールで1〜30分間処理した。図5についての記載のように細胞を固定し染色した。再構成された蛍光シグナルの画像を、機器Discovery-1(Universal Imaging, Downingtown PA)で20×対物レンズを用いて取得した。図6は、シグナルが膜から細胞内顆粒へと進行するにつれて、アゴニストに反応したシグナルの強度および位置が時間依存的に変化することを示すものである。細胞内顆粒でのタンパク質とタンパク質の複合体の出現は、アゴニストに反応した受容体内部移行のプロセスと一致する。図8に、30分でのPCAシグナルに対するアゴニスト(イソプロテレノール)およびアンタゴニスト(プロパノロール)の効果を示すが、これは、この高容量アッセイが受容体の活性化および阻害に動的に反応し、既知のアンタゴニストのプロパノロールがイソプロテレノールの効果を遮断することをさらに示すものである。図9に、高容量アッセイの定量的な結果を示すが、これは、既知のアゴニストによってタンパク質とタンパク質の複合体の量が増大し、プロパノロールがその複合体形成をほぼ完全に遮断することを示すものである。これらのアッセイは、βアドレナリン受容体の新規なアゴニストおよびアンタゴニストを同定するための高容量スクリーニングで有用であろう。さらに、そのアッセイの原理を用いて、βアドレナリン受容体について示したものと類似した形で、適切なレポーターの断片と融合した、対象とする任意のGPCRをコードするcDNAと、そのレポーターの相補的な断片と融合したβ-アレスチンを用いてアッセイを単に構築し、強く安定した再現性のあるシグナルの検出を可能にするトランスフェクションの条件を確立することにより、β-アレスチンと結合する任意のGPCRのアッセイを構築することもできる。この後者のステップでは、一過性のトランスフェクションで使用するDNAの量を主に確立し、それによって、バックグラウンドを上回る強いアッセイシグナルが得られ、その一方で融合構築物の大幅な過剰発現が回避される。あるいは、例えば下記に記載の方法を用いて、安定な細胞株を作製することもできる。
【0080】
実施例4:安定な細胞株の樹立および薬剤スクリーニングでのその使用
βARR2/β2ARについて、安定な細胞株を作製した。HEK293T細胞に、YFP[1]-βARR2融合ベクターをトランスフェクトし、1000μg/mlのゼオシン(Zeocin)を用いて安定な細胞株を選択した。その後、選択した細胞株にβ2AR-YFP[2] 融合ベクターをトランスフェクトし、200μg/mlのハイグロマイシンBおよび500μg/mlのゼオシンを用いた二重の抗生物質による選択の後、YFP[1]-βARR2/β2AR-YFP[2]を発現する安定な細胞株を単離した。蛍光シグナルは、少なくとも25回の継代にわたって安定していた(データは示さず)。薬剤処理の約24時間前に、Multidrop 384蠕動ポンプシステム(Thermo Electron Corp., Waltham, Mass)を用いて、細胞を96穴ポリ-D-リジン被覆プレート(Greiner)に播いた。そのアッセイでは、98種の薬剤のパネル (名称、供給業者および用量を下記の表に列挙する)に対して二連でスクリーニングした。
【0081】
【表3】

【0082】
薬剤濃度は最初に文献の参照に基づいて選択し、乳酸脱水素酵素(LDH)の毒性分析に基づいてさらに改良して、HEK293細胞中で確実に毒性がないようにした。液体の取り扱いのステップはすべて、Biomek FXプラットホーム(Beckman Instruments, Fullerton, CA)を用いて行った。薬剤を含む細胞培養液中でβARR2/β2AR PCAを発現する細胞を、30分間、90分間、および8時間インキュベートした。薬剤処理後、33μg/mlのヘキスト33342(Molecular Probes)および15μg/mlのテキサスレッド結合コムギ胚芽凝集素(Wheat Germ Agglutinin)(WGA; Molecular Probes)で細胞を同時に染色し、2%ホルムアルデヒド(Ted Pella)で10分間固定した。その後、細胞をHBSS(Invitrogen)ですすぎ、画像取得の間同じ緩衝液中で維持した。ロボットアーム(CRS Catalyst Express; Thermo Electron Corp., Waltham, Mass)を備えたDiscovery-1自動蛍光画像化装置 (Molecular Devices, Inc.)を用いてYFP、ヘキスト、およびテキサスレッドの蛍光シグナルを取得した。下記のフィルターセットを使用して、1穴当たり重複しない4個の細胞集団の画像を取得した: 励起フィルター480/40nm、放射フィルター535/50nm (YFP); 励起フィルター360/40nm、放射フィルター465/30nm (ヘキスト); 励起フィルター560/50nm、放射フィルター650/40nm (テキサスレッド)。処理条件はすべて二連で行い、各波長および処理条件について全部で8つの画像が得られた。
【0083】
蛍光画像分析:
これらの高容量アッセイでは、取得した画像を蛍光強度に転換し、必要に応じて蛍光シグナルの細胞内分布を分解するために画像分析が必要である。様々な高容量画像分析プログラムが市販されているが、公的に利用可能なプログラムImageJを用いた。ImageJ API/library (http://rsb.info.nih.gov/ij/, NIH, MD)を用いて16ビット階調のTIFF形式の生画像を分析した。最初に、ImageJ 内蔵のローリングボール(rolling-ball)アルゴリズム[S.R. Sternberg, Biomedical image processing. Computer, 16(1), January 1983]を用いて、3つすべての蛍光チャネル(ヘキスト、YFP、およびテキサスレッド)からの画像を標準化した。次に、バックグラウンドからフォアグラウンドを分離する閾値を設定した。ImageJのParticle Analyzerに基づく反復アルゴリズムを、閾値を設定したヘキストチャネル画像(HI)に適用して、総細胞計数値を得た。細胞の核の領域(核マスク(nuclear mask))も、閾値を設定したHIに由来するものであった。WGAマスクは、閾値を設定したテキサスレッド画像から同様に生成した。陽性粒子のマスクは、閾値を設定したYFP画像(YI)から生成した。全体的バックグラウンド(gBG)を算出するために、閾値を設定していないYIからヒストグラムを得て、その最も強度が低いピークの画素強度をgBGとみなした。ヘキストマスク、WGAマスクおよびYFPマスクを重ね合わせて、相関のある細胞の部分領域を規定した。規定した各部分領域内での陽性粒子すべての平均画素強度を算出して、4つのパラメーター: 全陽性画素平均(MT、全粒子の蛍光の平均強度); ヘキスト平均(M1、ヘキスト規定領域の平均強度); テキサスレッド平均(M2、WGA規定領域の平均強度); および減算平均(M3、WGAおよびヘキスト規定領域から除外した画素の平均強度)を得た。すべての平均は、対応するgBGで補正した。
【0084】
実験の組(アッセイ+薬剤処理+処理時間)それぞれについて、8つの画像からの陽性画素データを貯蔵した。各パラメーターについて、外れ値フィルターをかけて、群の範囲(平均±3SD)外となる粒子を取り除いた。次に、フィルターをかけた群から、各パラメーターについて試料の平均または対照の平均を得た。
【0085】
そのアッセイから、高度の感度、選択性および再現性が示された。試験した薬剤98種の中で、わずか一握りの薬剤が、その薬剤の既知の作用機序と一致した効果を示した。初期の時点では、イソプロテレノールやサルブタモールなどの直接的なアゴニストによってシグナル強度が増大した。後期の時点(480分)では、GPCRシグナル伝達経路に影響を及ぼすことが知られているBAY 11-7082、百日咳毒素およびクロザピンを含む他の作用物質が効果を示した。
【0086】
実施例5:プロテアソームによるGPCRシグナル伝達の制御:β-アレスチンのユビキチン化
本明細書で提供する方法を用いて構築される新規なアッセイの他の例を示すために、本明細書に記載の方法を用いた、β-アレスチン2とユビキチンの会合を測定するタンパク質断片相補アッセイ(図11〜12を参照)を開発した。ユビキチンは、高度に保存された76アミノ酸のポリペプチドである。1970年代半ばにそれが発見されて以来、ユビキチンは、損傷タンパク質の除去など、細胞のハウスキーピング機能と関連付けられている。ユビキチンが形質膜から核までの様々な細胞内位置で、細胞周期進行、シグナル伝達、転写制御、受容体の下方制御、およびエンドサイトーシスを含めた生命に重要な他の様々なプロセスに関与することが最近明らかとなってきている。ユビキチンは、そのカルボキシ末端のグリシンと、標的タンパク質のリシンのεアミノ基との間でイソペプチド結合を介してタンパク質と共有結合する。この結合は、ユビキチン部分を活性化し最終的にそれを基質中のリシン残基と結合させる酵素によって触媒される。これは、結合したユビキチン自体の内部にある特定のリシン残基へのユビキチンのさらなる付加に続く可能性があり、その結果ポリユビキチン鎖が生じる。この共有結合による修飾は、そのイソペプチド結合に特異的な独特のプロテアーゼによって元に戻すことができる。ユビキチンは最もよく特徴付けられているポリペプチド修飾因子であるが、他のポリペプチド(しばしばユビキチン様タンパク質またはUblと呼ばれる)も、類似の反応で標的と結合する。配列類似性はユビキチンと異なるが、構造的にユビキチンと類似しているこの「代替の」修飾因子には、SUMO; Nedd8; Hub 1、ISG15またはUCRP; およびApg 12がある(Aguilarの総説)。
【0087】
ユビキチン化されたタンパク質は、プロテアソームの19S制御サブユニットによって認識され、そのサブユニットは、再利用のためにユビキチン鎖を取り除き、消滅することになるタンパク質を変性させる。次いで、変性したタンパク質は、プロテアソームの中心部へと送り込まれ、短いペプチド(22残基未満)となる。
【0088】
ユビキチン化される多数のタンパク質が同定されている。これには、サイクリンおよび関連タンパク質(サイクリンA、B、D、Eおよびサイクリン依存性キナーゼ阻害因子); p53を含む腫瘍抑制因子; c-fos、c-jun、c-mycおよびN-mycを含む癌遺伝子; IκBおよびp130を含む阻害タンパク質; cdc25ホスファターゼ、チロシンアミノトランスフェラーゼ、ならびにトポイソメラーゼ(IおよびIIα)を含む酵素がある。タンパク質の代謝回転の標的を識別すると考えられる2種のタンパク質モチーフF-boxおよびRingフィンガーのコピー数は、真核生物ゲノム中で数百に達し、このことから、その代謝回転がユビキチン系によって制御されている多数のタンパク質が示唆される。
【0089】
プロテアソーム機構自体に加えて、プロテアソームの上流にある制御的な事象(すなわち、プロテアソーム基質およびその制御因子のリン酸化およびユビキチン化)が、創薬のために積極的に探究されつつある。タンパク質分解の選択性は、ユビキチンとの連結の段階で主に決定される。簡潔に述べると、ユビキチンとタンパク質の連結は、3種の酵素の連続した作用を必要とする。ユビキチンは、最初にE2ユビキチン結合酵素ファミリーの構成要素と結合しなければならない(E1ユビキチン活性化酵素が、最初のATP依存性の活性化をもたらす)。その後、E2酵素自体が、または、より典型的にはE3リガーゼが、標的タンパク質(リガーゼ基質)上へとユビキチンが移動する特異性をもたらす。通常、E1は単独で存在するが、E2は多種存在し、E3またはE3多タンパク質複合体は複数ファミリー存在する。特定のE3が、ユビキチンとタンパク質の連結の(したがって、タンパク質分解の)選択性を主に担っていると思われる。E3は、特異的な認識シグナルを含む特異的なタンパク質基質と結合することによってそれを行う。ある場合には、基質タンパク質とE3の結合は間接的であり、アダプタータンパク質を介したものである。ユビキチンを帯びたE2(ユビキチンが結合している)酵素と結合する、タンパク質とタンパク質の相互作用ドメインを含むタンパク質であるE3ユビキチンリガーゼを同定することによって、基質の認識と、ユビキチン鎖形成の触媒ステップとの間のつながりがもたらされる。
【0090】
β2アドレナリン受容体およびβ-アレスチン2のアゴニスト刺激によるユビキチン化は、受容体の内部移行に必須であると報告されている。ラクタシスチンやALLNなどのプロテアソーム阻害剤は細胞透過性の化合物であり、26Sプロテアソームの活性化を特異的に遮断し、プロテアソームによって分解されるユビキチン化タンパク質の蓄積を引き起こす。
【0091】
以前は、ユビキチン化のアッセイは、抗ユビキチン抗体を用いたタンパク質のイムノブロット法を、または蛍光体でタグを付けたユビキチンポリペプチドを用いたタンパク質の標識を利用するものであった。本明細書で、ユビキチンとβ-アレスチン-2の間での複合体形成を測定することによる、ユビキチン化の直接的な測定についての細胞に基づくアッセイの構築を示す。YFPのPCAについて上記に記載の方法を用いてアッセイを構築したが、トランスフェクションで使用するタンパク質とタンパク質の対は、上記に記載のβAR2構築物(β-アレスチン2- IFP[1])と、YFPのF2断片がユビキチンcDNAのN末端で融合したユビキチン単量体(Genbank識別名NM_021009 -CDS 69..296)であった。図11〜12に、PCA構築物の一過性トランスフェクションの結果を示す。このアッセイによって薬剤の効果を検出することができたことを示すために、シグナル強度に対するβアドレナリンアゴニストのイソプロテレノールとプロテアソーム阻害剤のALLNの効果について試験した。ユビキチン化のプロセスが、分解されるタンパク質を標的とするので、アレスチン/ユビキチン複合体が細胞内で確実に蓄積され検出可能となるように、ALLN(濃度については表3を参照)を用いて、細胞のプロテアソーム活性を阻害した。そのアッセイシグナルは、ALLNの存在下で、イソプロテレノールの不在下でもはっきりと可視化された(図11、上方左の図)。しかし、イソプロテレノールで60〜120分間細胞を処理すると、蛍光強度が著しく増大した(図11)。図12は、陰性(賦形剤のみ)対照と比較した、蛍光シグナルに対する、プロテアソーム阻害剤であるMG132、およびヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の阻害剤であるトリコスタチンAの効果を示す。示したようにどちらの薬剤もアッセイシグナルを著しく増大させた。HDACの阻害が、イソプロテレノールによって、または心臓の成長および増殖に関連するタンパク質の過剰発現によって誘導される心肥大の減衰につながるという最近の知見を考慮すると、トリコスタチンAの効果は特に興味深い(Cardiac hypertrophy and histone deacetylase-dependent transcriptional repression mediated by the atypical homeodomain protein Hop; H. Kook, et al., J Clin Invest. 2003 Sep;112(6):863-71)。この著者らは、クロマチン再構築、および他の活性な転写プロセスの抑制によって、心肥大および心不全となる可能性があり、このプロセスは、化学的なHDAC阻害物質によって遮断することができ、このことから、HDACとGPCR依存性シグナル伝達事象との関係が示唆されると論じている。HDAC阻害物質は、様々な心臓以外の疾患についてすでに臨床試験中であり、正常なまたは病的な心機能に潜在的に影響を及ぼす可能性がある。抗肥大性の転写経路が同定されさらに解明されると、うっ血性心不全の治療についての新規な治療標的が提供される。本発明者らの結果は、トリコスタチンAの存在下でのユビキチン/アレスチン複合体の増大を示し、このことから、このアッセイが、他のユビキチン化タンパク質、ならびにプロテアソームおよびHDAC制御経路の他の構成成分を同定するのに加えて、心肥大につながる経路をさらに解明し、プロテアソームおよびHDACの新規な阻害因子を同定する高処理能スクリーニングで有用であることが示唆される。
【0092】
実施例6:PCA断片は、光学的に検出可能な物質ではない。
本発明と、GFPでタグを付けたβ-アレスチンを使用する細胞に基づく以前のアッセイとの間の主な違いに留意することが重要である。後者のアッセイでは、完全なGFPなどの光学的に検出可能な分子でタグを付けたβ-アレスチンを含む単一の融合構築物を細胞に導入する。したがって、視覚化され定量されるものは、発現したβ-アレスチンタンパク質の量である。
【0093】
対照的に、本発明では、レポーターの不活性な断片でβ-アレスチンにタグを付ける。その断片に光学的な活性がないことを示すために、HEK293E細胞に、同量のβ-アレスチン2-IFP[1]またはβ2AR-YFP[2]融合構築物DNAの何れかをトランスフェクトし、あるいは、β-アレスチン2-IFP[1]とβ2AR-YFP[2]の両方を同時トランスフェクトした。48時間後、37℃で細胞を10μMのイソプロテレノールで30分間処理した。図5についての記載のように細胞を固定し染色した。再構成された蛍光シグナル(上方の図)およびヘキストで染色した核(下方の図)の画像を、機器Discovery-1(Universal Imaging, Downingtown PA)で20×対物レンズを用いて取得した。
【0094】
図7に示すように、単独でトランスフェクトしたとき、β-アレスチンと断片の融合物からは、(無DNA対照と比べて)検出可能なシグナルが発生しない。β2アドレナリン受容体と融合したその相補的な断片からもシグナルは発生しない。したがって、PCA断片は、光学的に検出可能な物質ではない。
【0095】
本明細書で参照した、以前に作成したPCAすべてについても同様である。PCAは、複合体を形成する2分子の同時発現を必要とする。相補的な断片が、その断片が融合した分子に近接したとき、その断片は、折り畳みおよび再集合、または相補が可能である。援助された相補の後においてのみシグナルが発生することがPCAの特色である。
【0096】
さらに、本発明は、Barak et al.(米国特許第5,891,646号および第6,110,693号)に記載のものなどの、光学的に検出可能な分子で単一のタンパク質にタグを付ける以前の発明のどんな態様においても同じではない。これらの発明は、完全に異なる現象を測定するものである。β-アレスチンなどのタンパク質に蛍光タンパク質または他のいくつかの光学的に検出可能な分子でタグを付けた場合、そのアッセイで画像化または定量されるものは、個々のタグ付きタンパク質の量および/または個々のタグ付きタンパク質の細胞内位置である。断片でタグを付けた個々のタンパク質からは光学的に検出可能なシグナルが発生しない(図7)ので、断片相補ではこのことは考えられない。対照的に、図5のようにPCAで定量されるものは2つのタンパク質の会合であり、図6および図8のようにPCAで画像化されるものはタンパク質とタンパク質の複合体の細胞内位置である。
【0097】
実施例7:Gタンパク質共役経路の他のエレメントのアッセイ
表1に、GPCR経路について作成することができる多数のアッセイを記載する。図13(A〜C)は、これらのエレメントのいくつかについての断片相補アッセイを示すものであり、一過性のトランスフェクションを示す。本明細書で提供される方法が、どんな特定のGPCRまたは下流の事象にも限定されないことを教示する。本明細書で、GPCRシグナル伝達経路の様々な「下流」エレメントとともに、Frizzled相同体4(Frizzled4)(図13A); ケモカイン受容体5(図13B); 血管作用性腸ペプチド受容体2(VIPR2)およびソマトスタチン受容体(図113C)を含む様々な7TM受容体の断片相補アッセイの実施例を提供する。
【0098】
Frizzled相同体4は、Frizzled遺伝子ファミリーの構成要素である。このファミリーの構成要素は、7回膜貫通型ドメインタンパク質をコードし、現在の証拠からは、Frizzledファミリーのタンパク質がWntファミリーリガンドの受容体として作用することが示唆されている。最近の研究から、β-カテニンの安定化によって媒介されるWntシグナル伝達経路の活性の増大は、ヒト黒色腫および結腸直腸癌における発癌の重要な局面であることが示され、これは創薬にとって重要な経路となる。図13Aは、Frizzled相同体4がヒト細胞中でGα-I、RGS2およびGRK2と相互作用し、これらのタンパク質とタンパク質の複合体について、本明細書で教示される断片相補アッセイに基づいて強く安定した蛍光アッセイが生成され得ることを示す。
【0099】
ケモカイン受容体5(図13B): ケモカイン受容体は、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)の侵入に必須の補因子として働くことによってHIV-1感染に重要な役割を果たすことが最近示された。ケモカインは、70〜90アミノ酸の主要な炎症性ペプチドであり、白血球の遊走および活性化に関係している。それは、保存されているシステイン残基の位置に従って、CXCおよびCCサブファミリーに細分することができ、当該システイン残基は、1個のアミノ酸(X)によって分離されているか、または互いに隣接している。CXCケモカインは、主に好中球を活性化し、急性炎症反応に重要であると思われる一方、CCケモカインは、一般に骨髄球系およびリンパ球系の細胞、ならびに好塩基球および好酸球を標的とし、慢性およびアレルギー性の炎症に関与すると考えられる。ケモカインは、血液細胞中で発現に差があるGタンパク質共役受容体(GPCR)のファミリーと結合する。CXCケモカインは、CXC特異的受容体サブタイプ(CXCR-1、CXCR-2、CXCR-3およびCXCR-4)と結合し、CCケモカインは、ケモカイン受容体の第2のサブグループ(CCR-1、CCR-2a、CCR-2b、CCR-3、CCR-4およびCCR-5)を認識し、これらはそれぞれ、異なっているが重複したリガンド結合特異性を示す。HIV-1感染の補因子としてCCR-5が同定されたことは前進であるが、このケモカイン受容体のシグナル伝達および制御についてはほとんど知られていない。一般に、GPCRと結合するアゴニストは、細胞内2次メッセンジャーによって媒介されるシグナル伝達カスケードを活性化し、それは、受容体シグナル伝達を迅速に減衰させる内在性の細胞機構によって相殺される。そのプロセスには、2次メッセンジャー依存性タンパク質キナーゼおよび受容体特異的なGタンパク質共役受容体キナーゼ(GRK)によるリン酸化が関与し、これらのキナーゼは、阻止タンパク質(β-アレスチン)と受容体の結合を促進し、その結果、受容体とGタンパク質の相互作用がさらに解離される。さらに、β-アレスチンは、受容体の隔離/内部移行に関与し、そのプロセスは、GPCRアダプタータンパク質として働くことによって、正常の反応性を回復させる役割を果たす。GRKが媒介するリン酸化は、ケモカイン受容体の脱感作を行う共通の機構である可能性がある。以前の研究から、GRK2、3、5および6によってCCR-5をリン酸化できることが示されている。本発明者らは、ケモカイン受容体とGRKの間の直接的な相互作用を示す。シグナル伝達カスケードにおいてCCRの下流にあるいくつかの既知または新規タンパク質のアッセイに加えて(例えば表2)、β-アレスチン/CCRアッセイを構築することもできる。図13Bは、CCR5がPKCαと相互作用し、明るい蛍光のアッセイが作成されていることを示す。本発明で教示するアッセイは、ケモカイン受容体によって調節されるシグナル伝達経路の同定、およびこれらの経路上で作用する薬剤候補のスクリーニングに有用であろう。
【0100】
血管作用性腸ペプチド受容体2(VIPR2): 血管作用性腸ペプチド(VIP)は、28アミノ酸のペプチドである(ヒト、chr 6q26〜q27)。それはリンパ節など一次および二次免疫器官を神経支配するニューロンによって発現および分泌され、分子量は20kDである。VIPは強力な神経栄養因子であり、血管拡張を引き起こし、動脈圧を低下させ、気管、胃および胆嚢の平滑筋を弛緩する。VIPはまた、運動性、サイトカイン産生、増殖およびアポトーシスを含む、いくつかのTリンパ球の活性を調節する。VIPR2、ヒトでは438aa(chr.7q36.3)のタンパク質(ラットおよびマウスでは437aa)。VIP 受容体2(VIPR2)は、III型PACAP受容体とも呼ばれ、主に神経組織で発現する。これは、VIPならびにPACAP38および27の受容体である。VIPR2の活性はGタンパク質によって媒介され、Gタンパク質は、アデニル酸シクラーゼを活性化し、ホスホリパーゼCと共役することができる。図13Cは、VIPR2がGタンパク質のGβ-1と相互作用し、強く安定した蛍光アッセイが生成されることを示す。本発明で教示するアッセイは、VIPR2によって調節されるシグナル伝達経路の同定、およびこれらの経路上で作用する新規薬剤候補の同定に有用であろう。
【0101】
ソマトスタチン受容体2型(図13C): SSTR2はソマトスタチン14および28の受容体である。この受容体は、百日咳毒素感受性Gタンパク質と共役して、アデニル酸シクラーゼを阻害する。ソマトスタチンは、特定の腫瘍細胞に対して増殖阻害性である。ソマトスタチンは、広範に発現されるホルモンであり、神経伝達、ホルモンおよび水電解質の分泌阻害、ならびに細胞増殖を含む多面的な生物作用を発揮する。この神経ペプチドは、Gタンパク質共役7回膜貫通型ドメイン受容体(GPCR)スーパーファミリーに属する特定の受容体と相互作用することによって作用する。5つのサブタイプのソマトスタチン受容体がこれまでにクローン化されている(SSTR1〜5)。それらは、アデニル酸シクラーゼおよびグアニル酸シクラーゼの阻害、イオン伝導チャネルおよびタンパク質リン酸化の調節、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼおよびホスホリパーゼCの活性化を含む、様々なシグナル伝達経路を媒介する。ソマトスタチン受容体の中で、sst2が、細胞増殖の負の調節に重要な役割を果たし、膵癌の腫瘍抑制遺伝子として作用することが発見されている。SSTR2受容体媒介性の細胞増殖抑制のシグナル伝達経路は、完全には解明されていない。図13Cは、SSTR2がGβ-1と相互作用し、強く安定した蛍光アッセイを生成することを示す。本発明で教示するアッセイは、SSTR2によって調節されるシグナル伝達経路の同定、およびこれらの経路上で作用する新規薬剤候補の同定に有用であろう。
【0102】
様々なGPCRシグナル伝達タンパク質の詳細
1) RGSタンパク質(Gタンパク質シグナル伝達の制御因子)
構成要素数が30を超える、GTPアーゼを促進するタンパク質の大きなスーパーファミリーが同定され、「RGS」(Gタンパク質シグナル伝達の制御因子)と名付けられている(RJ Kimple et al., 2003, Established and emerging fluorescence-based assays for G-protein function: heterotrimeric G-protein alpha subunits and RGS proteins, Combinatorial Chem. & HTS 6: 1-9)。各RGSタンパク質は、特徴となるドメイン、またはRGS-boxを含み、それはGα切り替え領域と接触する。多数のRGSタンパク質は、単離Gαサブユニットによる急速なGTP加水分解を触媒し、in vivoでアゴニスト/GPCRが刺激する細胞の反応を減衰させることが示されている。RGSタンパク質は様々な役割を果たすことができ、GPCR経路の主な脱感作因子として、ヘテロ三量体Gタンパク質エフェクター、エフェクターアンタゴニスト、および/またはGPCRシグナル伝達の動態および特異性を制御する骨格として機能する。さらに、RGSタンパク質は、GPCR経路におけるいくつかの最良な創薬標的となる。それは高度に多様なタンパク質ファミリーであり、独特の組織分布を有し、シグナル伝達事象によって強く制御され、生細胞において多様な機能的役割を果たす可能性が高い。RGSタンパク質を標的とする薬剤は、5つの群: 1) 内因性アゴニスト機能の増強剤、2) 外因性GPCRアゴニストの増強剤/脱感作遮断剤、3) 外因性アゴニストの特異性促進剤、4) RGSタンパク質によるエフェクターシグナル伝達のアンタゴニスト、および5) RGSアゴニストに分けることができる。
【0103】
以前に、GαサブユニットとRGSタンパク質の間の相互作用が、アフィニティークロマトグラフィーまたは表面プラズモン共鳴を含む生化学的方法によって測定された。より最近では、FRETがGα/RGSの相互作用の研究に使用されている。例えば、RGSとGαの間の相互作用が、CFPとGαi1を融合させ、YFPとRGS4を融合させ、FRETを測定することにより研究されている。本発明は、RGSと、Gタンパク質およびGPCR経路の他のエレメントとの相互作用を測定するPCAを包含する。他のPCAに関して、高処理能アッセイまたは高容量アッセイを構築することができ、それによってタンパク質とタンパク質の複合体の誘導または阻害、ならびに細胞内区画間でのその輸送の研究が可能となる。
【0104】
図13A(中央の図)は、Frizzled相同体4タンパク質と会合したRGS2の新規なアッセイを示す。これらのアッセイは、創薬だけでなく、wnt/frizzledシグナル伝達の根底にある生物学的機構の理解にも有用であるはずである。Frizzledシグナル伝達経路の既知のエレメントは、リガンド(Wnt)および受容体(Frizzled)から、アキシン(Axin)、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK3)、腺腫様結腸ポリープ症タンパク質(APC)やβ-カテニンなどの下流の構成成分へとシグナルが伝達される機構を含めて、完全には分かっていない。腺腫様結腸ポリープ症遺伝子であるAPCは既知の腫瘍抑制因子であり、β-カテニンは癌遺伝子である。APCおよびGSK3との複合体中のアキシンは、部分的にはそのユビキチン化および分解を引き起こすことによって転写因子β-カテニンを負に制御する。Wntがその受容体Frizzledと結合すると、この阻害効果が軽減され、それによって活性なβ-カテニンのレベルが増大する。アキシン/APC複合体の最近判明した結晶構造から、APCがアキシンのRGSドメインと結合することが明らかとなった。本明細書に示すアッセイは、wnt/frizzled経路を遮断しまたは活性化することができる薬剤候補の発見、およびヒトでの様々な異常に重要な経路の構成成分の解明に有用である可能性がある。
【0105】
2) RAMPS(受容体活性修飾タンパク質)
1回膜貫通型補助タンパク質のファミリーRAMPS(受容体活性修飾タンパク質)が同定され、カルシトニン受容体様受容体(CRLR)と複合体を形成することが明らかとなっている。CRLRとRAMPの会合は、細胞表面への受容体の標的送達だけでなく、受容体の薬理学的特性の修飾にも役割を果たす。RAMPタンパク質の様々な相同体が同定されている。RAMP1はCRLRをカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体に変換するが、RAMP2が会合した受容体はアドレノメデュリン受容体の特性を示す(Gether 282)。GPCRとRAMPの間の複合体を検出し定量するためのPCAは、本明細書に記載の原理および方法を用いて容易に構築することができ、それによって、これらの機構ならびに生物学的な作用因子および新規化合物に対するその応答の、機能上の詳細な特徴付けが可能となる。
【0106】
3) ホスホリパーゼC
ホスホイノシチドを加水分解するホスホリパーゼC(PLC)の刺激は、多数のGPCR、ならびにいくつかの受容体チロシンキナーゼ(RTK)を含む多様な膜受容体の活性化に対する細胞の応答である。これら2つの型の膜受容体は、一般に別々のPLCアイソエンザイムを刺激する。GPCRは、GTPをリガンドとするGq型のGタンパク質のαサブユニットを介して、またはGi型のGタンパク質から遊離したβγ二量体によってPLCβアイソエンザイムを活性化する。その一方で、EGFおよびPDGF受容体のものなどのRTKは、これらのPLCを自己リン酸化RTKへと動員し、続いてチロシンをリン酸化することによってPLCγアイソエンザイムを活性化する。
【0107】
4) タンパク質キナーゼおよびタンパク質ホスファターゼ
様々なタンパク質キナーゼが、Gタンパク質共役受容体の制御および経路の活性に不可欠である。最初に、GPCRがGタンパク質共役受容体キナーゼ(GRK)によってリン酸化される。GRKは、セリン/スレオニンキナーゼであり、アゴニストによって占有された受容体を優先的にリン酸化する。図13Aは、GRK2とFrizzled 4の会合の新規なアッセイを示す。
【0108】
GRKは、相同な受容体の脱感作、およびその後のβ-アレスチンの結合に関与する。既知のGRKが7種存在する。ロドプシンキナーゼ(GRK1)、およびコンデオプシン(conde opsin)キナーゼの候補であるGRK7は、ソドプシン(thodopsin)光受容器の制御に関与する網膜キナーゼであるが、GRK2〜GRK6はより広範に発現される。膜へのGRK全種の標的送達は、その機能に明らかに重要であり、その性質は、C末端の尾部ドメインによって付与されている。GRK1およびGRK7はそれぞれ、C末端にCAAXモチーフを有する。細胞質ゾルから膜への、光によって誘発されるGRK1の移動は、この部位の翻訳後ファルネシル化によって促進される。βアドレナリン受容体キナーゼ(GRK2およびGRK3)は、C末端にGβγサブユニット結合ドメインおよびプレクストリン相同ドメインを有し、それはこれらのドメイン間の相互作用によって膜へと移動し、Gβγサブユニットおよびイノシトールリン脂質を遊離する。GRK4およびGRK6のC末端システイン残基のパルミトイル化によって、構成的な膜局在化が誘導される。膜へのGRK5の標的送達には、46残基のC末端ドメインと膜のリン脂質の相互作用が関与すると考えられる。
【0109】
GRKとその同系のタンパク質および基質との相互作用のアッセイは、本発明の対象である。GRKと、GPCR、Gタンパク質サブユニット、β-アレスチン、ファルネシルトランスフェラーゼまたは他の脂質トランスフェラーゼ、ならびに種々の下流キナーゼおよび他のシグナル伝達タンパク質との相互作用を、断片相補アッセイを用いてすべて調べることができる。GRKのC末端が翻訳後修飾され、それが適切な細胞内局在化の役割を担うので、レポーター断片は、GRKのアミノ末端に融合させるべきである。
【0110】
多数のGPCRによるERK1/2 MAPキナーゼ経路のRas依存的な活性化は、チロシンキナーゼc-Srcの活性を必要とする。ある場合には、β-アレスチンとSrcの既知の相互作用は、GPCRが媒介するERK1/2活性化に重要であると思われる。HEK-293細胞では、Src結合障害を示すか、または受容体をクラスリン被覆ピットへと標的送達することができないβ-アレスチン1突然変異体の過剰発現によって、β2アドレナリン受容体が媒介するERK1/2活性化が遮断される。KNRK細胞では、P物質によるNK1受容体の活性化は、内部移行した受容体、β-アレスチン、SrcおよびERK1/2を含む骨格複合体の構築を誘導する。ドミナントネガティブβ-アレスチン1突然変異体、またはβ-アレスチンと結合することができない切断型NK1受容体の発現によって、複合体形成が遮断され、P物質刺激性の受容体エンドサイトーシスもERK1/2活性化も阻害される。
【0111】
これらの結果を総合すると、GRK、PKCおよびSrcのキナーゼ間で直接の相互作用を実証することが可能であるかもしれないことが示唆される。図13Bは、これが事実であることを実証するものである。本発明者らは、GRKと、タンパク質キナーゼC(PKCα)およびc-Srcキナーゼとの会合の新規なアッセイを示す。さらに図13Cは、GRKと転写因子ERK2の会合の新規なアッセイを実証するものである。
【0112】
GRKの低分子阻害因子はまだ報告されていない。GRKのアッセイを高処理能または高容量のスクリーニングで使用して、GRKの阻害因子を同定することができる。そのような阻害因子によって、その同系のGPCRの活性が延長されることが予想される。
【0113】
5) タンパク質ホスファターゼ
刺激直後に、リン酸化β2アドレナリン受容体が、その受容体を脱リン酸化するGPCR特異的タンパク質ホスファターゼ2A(Pitcher et al 1995)に富むエンドソームの小胞の分画中に現れる。PPP2Aおよび他のホスファターゼとGPCRの会合および解離は、断片相補アッセイを用いて測定することができる。
【0114】
6) 断片相補アッセイに適した他のGタンパク質共役経路エレメント
他の多数のGタンパク質共役経路エレメントが、本発明での使用に適している。これには、表2、および本願全体にわたって提供される参照文献中に挙げられているタンパク質、ならびにその任意の相同体がある。本発明は、任意の種の任意の7回膜貫通型受容体に適用することができ、ヒトGPCRデータベース中にみられるものも含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明は、新規GPCRまたはオーファンGPCR、およびGタンパク質共役経路の新規エレメントに適用することができ、それらは、本明細書で提供される方法、または経路をマッピングしてタンパク質とタンパク質の相互作用を同定する他の方法によって同定することができる。そのような代替の方法は、当業者に周知であり、それには、タンパク質とタンパク質の複合体を分析する酵母2ハイブリッドの手法、ファージディスプレイ、及び質量分析が含まれることがある。
【0115】
その外国の等価物および刊行物すべてを含む、下記の特許のその中で引用された参照文献を含む全体の内容は、個々の特許、特許出願または刊行物それぞれが個々にそのように意味していた場合と同程度のすべての目的で、その全体が参照により組み込まれる。
【0116】
米国特許文書
第6,270,964号、Michnick, et al.
第6,294,330号、Michnick, et al.
第6,428,951号、Michnick, et al.
米国特許出願第20030108869号、Michnick, et al.
米国特許出願第20020064769号、Michnick, et al.
第6,342,345号、Blau, et al.
第5,891,646号、Barak, et al.
第6,110,693号、Barak, et al.
第6,255,059号、Klein, et al.
米国特許出願第20020022238号、King et al.
【0117】
他の刊行物
LS Barak, SS Ferguson, J Zhang and MG Caron, 2001, A beta-arrestin/green fluorescent protein biosensor for detecting G-protein-coupled receptor activation. J. Biol. Chem. 272: 27497-27500.
JN Pelletier, I Remy, I. and SW Michnick, 1998, Protein-Fragment Complementation Assays: a General Strategy for the in vivo Detection of Protein-Protein Interactions. Journal of Biomolecular Techniques 10: 32-39.
【0118】
I Remy, JN Pelletier, A Galarneau & SW Michnick, 2002, Protein Interactions and Library Screening with Protein Fragment Complementation Strategies. : Protein-protein interactions: A molecular cloning manual. E.A. Golemis, editor. Cold Spring Harbor Laboratory Press. Chapter 25, 449-475.
SW Michnick, I Remy, FX C-Valois, F.X., A Vallee-Belisle, A. Galarneau & JN Pelletier, 2000, Detection of Protein-Protein Interactions by Protein Fragment Complementation Strategies, Parts A and B (John N. Abelson, Scott D Emr and Jeremy Thomer, editors) Methods in Enzymology 328: 208-230.
【0119】
I Remy, IA Wilson & SW Michnick, 1999, Erythropoietin receptor activation by a ligand-induced conformation change. Science 283: 990-993.
I Remy & SW Michnick, 2001, Visualization of Biochemical Networks in Living Cells. Proc Natl Acad Sci USA 98: 7678-7683.
【0120】
Rossi, 1997, Monitoring protein-protein interactions in intact eukaryotic cells by beta-galactosidase complementation. Proc Natl Acad Sci USA 94: 8405-8410, 1997.
JM Spotts, RE Dolmetsch, & ME Greenberg, 2002, Time-lapse imaging of a dynamic phosphorylation-dependent protein-protein interaction in mammalian cells, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99: 15142-15147.
【0121】
本発明を、その特定の実施形態の特定の細部を参照しながら説明してきたが、そのような細部は、それが添付した特許請求の範囲内に含まれる程度である場合を除き、本発明の範囲に対する限定とみなすべきでないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】図1は、本発明によるアッセイの設計および構築の一般的な戦略を示す。
【図2】図2は、Gタンパク質共役受容体の自己会合についての生細胞アッセイを示す。
【図3】図3は、2種の異なるヒト細胞型におけるGタンパク質共役受容体とGタンパク質αサブユニット(Gαi)の会合についてのアッセイを示す。
【図4】図4は、Gタンパク質共役受容体とGタンパク質βサブユニット(Gβ1)の会合についてのアッセイを示す。
【図5】図5は、Gタンパク質共役受容体とβ-アレスチンの会合についての定量的なアッセイを示し、アゴニストに応答してシグナル強度が増大することを示している。
【図6】図6は、Gタンパク質共役受容体とβ-アレスチンの会合に対するアゴニストの効果の時間経過を示し、時間が経つにつれてのシグナル強度の増大と、細胞内顆粒へのタンパク質・タンパク質複合体の再分布の両方を示している。
【図7】図7は、個々の断片の融合物からは、光学的に検出可能なシグナルが発生しないことを示す。シグナルの発生は断片相補に依存する。
【図8】図8は、β-アレスチン2とβ2アドレナリン受容体の会合に対する薬剤の効果を示す。アゴニストの不在下では(上方左の図)YFPシグナルは存在せず、ヘキストで染色した細胞核だけが認められる。イソプロテレノールの存在下では、2つのタンパク質は会合し、YFP断片の再集合を引き起こして、明るく強調された蛍光が発生する。アンタゴニストのプロパノロールは、イソプロテレノールの効果を遮断する。このアッセイを用いて、β2アドレナリン受容体の新規なアゴニストおよびアンタゴニストをスクリーニングすることができる。このアッセイの原理は、アレスチン分子と結合する任意のGPCRに適用することができる。
【図9】図9は、図8に示したアッセイから得られた定量的な結果を示す。YFPチャネルの蛍光強度は、対照(賦形剤単独)の百分率として示した。いくつかの異なるアゴニスト(クレンブテロール、サルブマトモールおよびイソプロテレノール)の効果を示す。アンタゴニストのプロパノロールは、イソプロテレノールの効果を完全に遮断する。
【図10】図10は、図8のアッセイを用いて、様々な時点でGPCR経路を活性化する作用因子をスクリーニングした結果を示す。30分、90分または480分でβアドレナリン受容体とβ-アレスチン2の相互作用を増大する能力について、98種の異なる薬剤を試験した。YFPチャネルの蛍光強度は、対照(賦形剤単独)の百分率として示した。直接的なアゴニストのイソプロテレノールおよびサルブタモールは、初期の時点で効果があったが、他の薬剤(BAY 11-7082、クロザピンおよび百日咳毒素)は、後期の時点でのみ効果があり、それらの異なる作用機序と一致していた。
【図11】図11は、GPCR経路のプロテアソーム制御を検出するアッセイを示す。β-アレスチン2のユビキチン化を測定した。シグナルは、プロテアソーム阻害剤ALLNの存在下でのみ明らかであった(上方左の図)。ALLNの存在下では、イソプロテレノールは、60分または120分でシグナルの有意な増大を引き起こした。これらのアッセイを用いて、新規なプロテアソーム阻害剤を同定することができる。
【図12】図12は、β-アレスチン2とユビキチンのアッセイに対する薬剤の効果を示す。プロテアソーム阻害剤MG132、およびヒストンデアセチラーゼ阻害剤トリコスタチンAによって、陰性対照(賦形剤単独)の4倍にシグナルが増大した。アッセイの蛍光を、陽性画素平均蛍光強度(PPM)について対照の百分率として示す。
【図13】図13(A〜C)は、GPCRおよびその同系の経路についての様々な高容量断片相補アッセイを示す。特定のタンパク質断片相補アッセイの蛍光顕微鏡写真を示す。HEK細胞のヘキスト核染色による蛍光は青色であるが、一過性トランスフェクションによるYFPのPCAシグナルは黄色/緑色である。タンパク質・タンパク質複合体の細胞内局在も認めることができる。下記のタンパク質・タンパク質の対についてのアッセイを示す: Frizzled4/Gα-I; Frizzled 4/RGS2; Frizzled 4/GRK2; PKCα/GRK; PKCα/ケモカイン受容体5; GRK/c-Src; GRK/ERK2; VIPR2/Gβ-1; およびソマトスタチン受容体/Gβ-1。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Gタンパク質共役受容体およびGタンパク質共役経路のタンパク質断片相補アッセイおよび酵素断片相補アッセイであって、レポーター分子の分離断片の再集合を含むアッセイ。
【請求項2】
Gタンパク質共役受容体またはGタンパク質共役経路のアッセイを行う方法であって、
(a) 相互作用する分子を同定し、
(b) 適当なレポーター分子を選択し、
(c) 断片化の結果としてレポーター機能が可逆的に消失するように前記レポーター分子の断片化を実施し、
(d) 前記レポーター分子の断片を前記相互作用分子に別々に融合または結合させ、
(e) 前記断片に融合または結合させた分子の相互作用を介して前記レポーター断片を再会合させ、
(f) 前記レポーター分子の活性を測定することを含む、上記の方法。
【請求項3】
候補薬剤、化合物ライブラリーまたは生体抽出物をスクリーニングしてGタンパク質共役受容体またはGタンパク質共役経路の活性化因子または阻害因子を同定する方法であって、
(A) タンパク質断片相補アッセイまたは酵素断片相補アッセイを用いて、Gタンパク質共役経路の1つまたは複数のステップのアッセイを構築し、
(B) 前記対象とする受容体または経路に対する前記候補薬剤、化合物ライブラリーまたは生体抽出物のいずれかの効果を試験し、
(C) 前記スクリーニングの結果を使用して、前記対象とする受容体または経路を活性化または阻害する特定の作用因子を同定することを含む、上記の方法。
【請求項4】
Gタンパク質共役経路の活性を調節する薬剤リードを同定する方法であって、(a) 候補薬剤、天然産物、化合物および/または生体抽出物からなる群から選択される、化合物の収集物またはライブラリーを構築し、(b) (i) 前記化合物の収集物またはライブラリー、および(ii) Gタンパク質共役経路でのタンパク質・タンパク質の複合体のアッセイを提供することによって、前記収集物またはライブラリーをスクリーニングし、(c) 前記アッセイを、前記収集物またはライブラリーの1種または複数の試験エレメントと接触させ、(d) 前記アッセイの1種または複数の特性を検出または測定することを含み、前記試験エレメントの不在下と比較した、前記試験エレメントのいずれかの存在下での前記アッセイの1種または複数の特性の変化を用いて、Gタンパク質共役経路を調節する薬剤リードを同定する、上記の方法。
【請求項5】
前記アッセイを使用して、Gタンパク質共役受容体またはGタンパク質共役経路のアゴニスト、アンタゴニスト、活性化因子または阻害因子を同定する、請求項1、3または4に記載のアッセイ。
【請求項6】
前記アッセイを行って、生体抽出物から、あるいは合成物ライブラリー、コンビナトリアルライブラリー、天然産物ライブラリー、ペプチドライブラリー、抗体ライブラリー、または核酸ライブラリーから、Gタンパク質共役受容体またはGタンパク質共役経路を活性化または阻害する化合物をスクリーニングする、請求項1、3または4に記載のアッセイ。
【請求項7】
前記アッセイを行って、Gタンパク質共役受容体のリガンドを同定する、請求項1、3または4に記載のアッセイ。
【請求項8】
蛍光、比色、生物発光、化学発光、リン光または他の光学的に検出可能なシグナルが発生する、請求項1、2、3または4に記載のアッセイまたは方法。
【請求項9】
前記レポーター分子が、蛍光タンパク質、発光タンパク質、リン光タンパク質、単量体酵素、および多量体酵素からなる群から選択される、請求項1、2、3または4に記載のアッセイまたは方法。
【請求項10】
前記レポーター断片に融合させた分子を、(a) cDNAライブラリースクリーニング、(b) ペアワイズ相互作用マッピング、および(c) タンパク質の対の間での相互作用の存在についての従来知識からなる群から選択される方法によって同定する、請求項1、2、3または4に記載の方法またはアッセイ。
【請求項11】
プロモーターに作動的に連結した対象とする遺伝子、リンカー、およびレポーター断片からなる発現ベクターを含む、Gタンパク質共役受容体またはGタンパク質共役経路のアッセイ組成物。
【請求項12】
レポーター断片と融合させた少なくとも1種の分子を含み、前記分子が、7回膜貫通型受容体、リガンド、グアニンヌクレオチド結合タンパク質のαサブユニット、グアニンヌクレオチド結合タンパク質のβサブユニット、グアニンヌクレオチド結合タンパク質のγサブユニット、ホスホジエステラーゼ、アレスチン分子、受容体活性修飾タンパク質(RAMP)、アデニル酸シクラーゼ、A-キナーゼアンカータンパク質(AKAP)、RDG分子、RGS分子、ホスホリパーゼ、タンパク質キナーゼ、タンパク質ホスファターゼ、サイトカイン受容体、成長因子受容体、細胞骨格タンパク質、E3リガーゼ、ユビキチン分子、SUMO分子、Gタンパク質共役内部調整K+チャネル(GIRK)、Na+/H+交換制御因子、PDZ含有タンパク質、Homerドメインタンパク質、EVH含有タンパク質、Dishevelled様タンパク質、ファルネシルトランスフェラーゼ、パルミトイルトランスフェラーゼ、ミリストイルトランスフェラーゼ、リボソームタンパク質P2、N-エチルマレイミド感受性融合タンパク質(NSF)、クラスリン、および転写因子からなる群から選択される、請求項1、2、3または4に記載の方法またはアッセイ。
【請求項13】
前記組成物がレポーター断片に融合させた少なくとも1種の分子を含み、前記分子が、7回膜貫通型受容体、リガンド、グアニンヌクレオチド結合タンパク質のαサブユニット、グアニンヌクレオチド結合タンパク質のβサブユニット、グアニンヌクレオチド結合タンパク質のγサブユニット、ホスホジエステラーゼ、アレスチン分子、受容体活性修飾タンパク質(RAMP)、アデニル酸シクラーゼ、A-キナーゼアンカータンパク質(AKAP)、RDG分子、RGS分子、ホスホリパーゼ、タンパク質キナーゼ、タンパク質ホスファターゼ、サイトカイン受容体、成長因子受容体、細胞骨格タンパク質、E3リガーゼ、ユビキチン分子、SUMO分子、Gタンパク質共役内部調整K+チャネル(GIRK)、Na+/H+交換制御因子、PDZ含有タンパク質、Homerドメインタンパク質、EVH含有タンパク質、Dishevelled様タンパク質、ファルネシルトランスフェラーゼ、パルミトイルトランスフェラーゼ、ミリストイルトランスフェラーゼ、リボソームタンパク質P2、N-エチルマレイミド感受性融合タンパク質(NSF)、クラスリン、および転写因子からなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、核酸、タンパク質、ペプチド、プローブ、ベクター、発現構築物、細胞、培養液、モデル生物または動物からなる群から選択される、請求項13に記載の組成物。



【図1】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−514185(P2008−514185A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528290(P2006−528290)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/031643
【国際公開番号】WO2005/031309
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(506099775)オデュッセイ セラ インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】