説明

Gタンパク質共役受容体に対する機能抗体およびその応用

【課題】Gタンパク質共役受容体(GPCR)と特異的に結合し、またはこれと相互作用しうる抗体を提供することを課題し、さらには前記抗体の使用方法を提供することを課題とする。
【解決手段】GPCRの細胞外ドメインと特異的に結合または相互作用する抗体であり、例えばGPCRのアゴニスト機能を有する機能抗体による。より詳しくは、GPCRが、GPR56である抗GPR56細胞外ドメイン抗体による。当該機能抗体の使用により、GPCRのアゴニストおよび/またはアンタゴニストをスクリーニングすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経幹細胞マーカータンパク質であるGタンパク質共役受容体に対する機能抗体およびその使用に関する。具体的には、Gタンパク質共役受容体の細胞外ドメインに特異的な抗体およびその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
Gタンパク質共役受容体(G protein-coupled receptor, GPCR)は、細胞膜上で神経伝達物質やホルモンを認識する生体センサーであり、細胞が細胞外のシグナルを受け取る際のアンテナ分子として働き、我々の身体を維持するための神経系、内分泌系、循環器系、免疫系など様々な生体システムで必須である。ヒトのゲノム解析から800種類以上のGPCRの存在が明らかとなった。これらは、7回膜貫通部位を持つという特徴を有する。現在臨床的に用いられている薬の約半分がGPCRに働くといわれているので、創薬の大きなターゲットといえる。リガンドが結合したGPCRは細胞膜の内側にある三量体型Gタンパク質(αGDPβγ)に作用し、GDPの遊離を促進する。GDPが解離した後αサブユニットにはGTPが結合し、三量体型Gタンパク質はαGTPとβγに解離する。αGTPとβγはそれぞれ酵素やイオンチャンネルに作用して細胞内で情報を伝達する。
【0003】
ヒトゲノムプロジェクトによって明らかにされた遺伝子配列からGPCRをコードすると思われる未知の遺伝子が多数見つかってきており、これらはその受容体が結合するアゴニストまたはリガンド(例えば、身体の中に存在するホルモンなど)が不明であることから「オーファンGPCR」と呼ばれる。GPCRは、アミノ酸配列の相同性などからいくつかのファミリーに分けられているが(非特許文献2)、長い細胞外領域を持つ接着性GPCRファミリーに属する受容体のほとんどは、例えばGPR56のようにアゴニストが不明のオーファン受容体である。
【0004】
GPCRファミリーのうち、TSR32と呼ばれる新規な受容体について開示がある(特許文献1)。ここでは、TSR32受容体をコードする単離されたポリヌクレオチド分子について開示があり、さらにTSR32受容体に特異的に結合する抗体または抗体の断片について開示がある。また、ここではTSR32受容体のアゴニストおよび/またはアンタゴニスト化合物を検出するための方法について開示がある。しかしながら、その検出を行う際に、抗体を用いることも、抗体そのものがアゴニスト機能を有することについては、一切開示が無い。
【0005】
GPCRファミリーのうち、GPR56と呼ばれる受容体について、細胞外ドメインの遺伝子の異常と脳のBFPP疾患との関係について報告がある(非特許文献1)。ここでは、GPR56遺伝子の細胞外ドメインにおける変異が、BFPP疾患に関係することが示唆されている。また、BFPPの患者から見つかった変異を持つGPR56遺伝子を細胞内で発現させると、変異GPR56は細胞膜表面への発現が減少していることが報告されている(非特許文献3)。
【0006】
GPR56と相互作用するリガンドの同定および治療薬の提供に関して開示がある(特許文献2)。ここでは、GPR56が、特定の領域(海馬、視床、および視床下部の傍室核を含む)で発現することが示されている。さらに、ここではGPR56をコードする遺伝子によって発現されるmRNAが、げっ歯動物の食欲/肥満モデルにおいて野生型と比べて違いをもって発現されることを確認している。そこで、ここではGPR56と相互作用するリガンドの同定および治療薬を提供することを課題としており、GPR56のアゴニストおよび/またはアンタゴニストをスクリーニングすることについて、開示がある。しかしながら、アゴニストおよび/またはアンタゴニストと抗GPR56抗体との関係については一切開示が無い。
【0007】
さらには、GPR56の抗原性を有するポリペプチドをコードする遺伝子についての開示がある(特許文献3)。ここでは、細胞の癌化をGPR56の発現を指標に評価する方法が記載されており、GPR56の発現検出方法として抗GPR56抗体が開示されているものの、抗GPR56抗体がアゴニストの機能を有することについては、一切開示が無い。
【特許文献1】特表2001−513653号公表公報
【特許文献2】特表2003−531599号公表公報
【特許文献3】米国出願明細書US20060137029
【非特許文献1】Science, 303, 2033 (2004)
【非特許文献2】Mol. Pharmacol.63, 1256 (2003)
【非特許文献3】Hum. Mol. Genet., 16, 1972 (2007)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、Gタンパク質共役受容体(以下、単に「GPCR」という場合もある。)と特異的に結合し、またはこれと相互作用しうる物質を提供することを課題し、さらには前記物質の使用方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するためにGPCRの細胞外ドメインと特異的に結合または相互作用する抗体に着目し、鋭意研究を重ねた結果、例えばGPCRのアゴニスト機能を有する機能抗体を得ることに成功し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は以下による。
1.GPCRの細胞外ドメインに特異的に結合し、またはこれと相互作用し、細胞内へシグナル伝達を行う機能を有する抗GPCR細胞外ドメイン抗体。
2.抗体の機能が、GPCRのアゴニスト機能により、細胞内へシグナル伝達を行う、前項1に記載の抗体。
3.GPCRが、GPR56である前項1または2に記載の抗体。
4.抗体が、以下の領域から選択されるいずれかの部分を抗原エピトープとして認識しうる、前項1〜3のいずれかに記載の抗体:
1)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち1−403番目までの部分から選択され、アミノ酸残基が少なくとも3個以上含まれるポリペプチド;
2)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち1−403番目までの部分において、1若しくは複数個のアミノ酸が、置換、欠失、付加または誘導された配列から選択され、アミノ酸残基が少なくとも3個以上含まれるポリペプチド;
3)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち1−403番目までの部分から選択され、アミノ酸残基が少なくとも3個以上含まれるポリペプチド;
4)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち1−403番目までの部分において、1若しくは複数個のアミノ酸が、置換、欠失、付加または誘導された配列から選択され、アミノ酸残基が少なくとも3個以上含まれるポリペプチド。
5.GPCRのアゴニストおよび/またはアンタゴニストを選別するための方法であって、GPCRと前項1〜4の何れかに記載の抗体を相互作用させ、さらに候補化合物を作用させてGPCRの機能を測定し、前記抗体の代替物、あるいは前記GPCRと抗体の相互作用を増強若しくは阻害させる物質を選別することを特徴とする、GPCRのアゴニストおよび/またはアンタゴニストのスクリーニング方法。
6.前項1〜4の何れかに記載の抗体あるいは前項5のスクリーニング方法により得られたGPCRのアゴニストおよび/若しくはアンタゴニストを有効成分として含有する細胞や組織を治療目的で移植する際に用いる細胞移植薬剤、および/または患者の細胞、組織を賦活化あるいは保護する際に用いる再生医療用薬剤。
7.前項1〜4の何れかに記載の抗体あるいは前項5のスクリーニング方法により得られたGPCRのアゴニストおよび/若しくはアンタゴニストを有効成分として含有する癌細胞の増殖、移動、浸潤、転移、生着を抑制する薬剤。
8.前項1〜4の何れかに記載の抗体あるいは前項5のスクリーニング方法により得られたGPCRのアゴニストおよび/若しくはアンタゴニストを含む神経幹細胞の検査用試薬。
9.前項1〜4の何れかに記載の抗体あるいは前項5のスクリーニング方法により得られたGPCRのアゴニストおよび/若しくはアンタゴニストを含む癌細胞の増殖、分化、移動、および/または接着、生着の検査用試薬。
10.GPCRと前項1〜4の何れかに記載の抗体を相互作用させ、被験者から採取した生体試料を作用させて、GPCR受容体機能を測定することを特徴とする神経幹細胞の検査方法。
11.GPCRと前項1〜4の何れかに記載の抗体を相互作用させ、被験者から採取した生体試料を作用させて、GPCR機能を測定することを特徴とする癌の浸潤および/または転移の検査方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の抗GPCR細胞外ドメイン抗体は、GPCRの細胞外ドメインに特異的に結合し、またはこれと相互作用し、細胞内へシグナル伝達を行う機能を有する。細胞内へシグナル伝達を行う機能とは、例えば、GPCRのアゴニスト機能である。
【0012】
本発明の抗体により、GPCRのうち、例えばGPR56のようなオーファン受容体の機能を解析することができる。また、本発明の抗体を用いることにより、GPCRのアゴニストおよび/若しくはアンタゴニストを選別するためのスクリーニング方法を提供することができる。さらに、本発明の抗体や前記スクリーニング方法により選別されたGPCRのアゴニストおよび/若しくはアンタゴニストを有効成分とする神経幹細胞や癌細胞の増殖、分化、移動、および/若しくは接着の検査用試薬、再生医療用薬剤または癌の浸潤および/または転移抑制剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において、GPCRとは、GPCRファミリーに属するものであれば良く特に限定されないが、例えば接着性GPCRが挙げられ、例えばGPR56、GPR113、GPR115、GPR97、GPR114、GPR112およびGPR116が挙げられ、最も具体的にはGPR56が挙げられる。接着性GPCRは、様々な組織に分布しており、免疫系、中枢神経系、再生系などで、生理学的機能において重要な役割を果たしていると考えられる。これらは、7回膜貫通部位を持つという特徴を有し、いずれも長いN末端とGPS(GPCR proteolytic site)ドメインや各々独自のドメインを有する(Fredriksson R. et al., FEBSLetters 531, 407-414 (2004))。接着性GPCRのN末端が、リガンド等の認識に機能的に重要と考えられるが、殆どの受容体はオーファン受容体であると考えられ、その機能も不明のものが多い。
【0014】
GPR56およびGPR56細胞外ドメイン(以下、「GPR56ECD」という場合もある。)の成体マウス組織での分布とマウス胎児より調製した神経前駆細胞(neural progenitor cells: NPCs)での発現を図1に示した。成体マウスでは、GPR56ECDは、肝臓、腎臓および胎盤での発現が認められる。また、GPR56の中枢神経系でのマウス胎児脳発生の様子を図2に、マウス胎児脳の発生ステージにおけるGPR56およびGPR56ECDの発現をSDS-PAGEにて調べた結果を図3に示した。
【0015】
本発明のGPCRの細胞外ドメイン抗体は、具体的には以下の領域から選択されるいずれかの部分を抗原エピトープとして認識しうる抗体である。抗体は、下記ポリペプチドのいずれかを抗原とし、ウサギやラットなどの抗体取得用動物に接種したのち、選択して取得することができる。さらには、下記ポリペプチドのいずれかを抗原として、マウスに接種し、通常の方法に従いモノクローナル抗体を作製することができる。
【0016】
1)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち1−403番目までの部分から選択され、アミノ酸残基が少なくとも3個以上含まれるポリペプチド;
2)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち1−403番目までの部分において、1若しくは複数個のアミノ酸が、置換、欠失、付加または誘導された配列から選択され、アミノ酸残基が少なくとも3個以上含まれるポリペプチド;
3)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち1−403番目までの部分から選択され、アミノ酸残基が少なくとも3個以上含まれるポリペプチド;
4)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち1−403番目までの部分において、1若しくは複数個のアミノ酸が、置換、欠失、付加または誘導された配列から選択され、アミノ酸残基が少なくとも3個以上含まれるポリペプチド。
【0017】
上記において、配列表の配列番号1に記載の配列は、GenBank ACCESSION No. BC008770に登録されるヒトGPR56のアミノ酸配列を示し、配列番号2に記載の配列は、GenBank ACCESSION No. BC034678に登録されるマウスGPR56のアミノ酸配列を示す。
【0018】
上記、1)〜4)のいずれかにおいて、アミノ酸残基が少なくとも3個以上含まれるポリペプチドとは、抗原性を有する最低限のアミノ酸残基数を示したものである。さらにはGPR56の細胞外ドメインと特異的に結合し、または相互作用を有する抗体を取得するための抗原となりうるポリペプチドであればよい。そのようなポリペプチドであれば、配列番号1または2に記載のアミノ酸配列から1若しくは複数個のアミノ酸が、置換、欠失、付加または誘導され、変異した配列から選択されるポリペプチドであっても良い。
【0019】
本発明の抗体は、上記GPCRの細胞外ドメインに特異的に結合し、またはこれと相互作用し、細胞内へシグナル伝達機能を有すればよく、特に限定されない。細胞内へのシグナル伝達は、GPCRのアゴニスト機能を有するシグナルであれば特に好適である。GPCRのアゴニスト機能は、GPCR機能を測定することにより確認することができる。GPCR機能の測定方法は、自体公知または今後開発される新たな方法を適用することがきる。例えば、以下のGPCRによる遺伝子発現の確認またはGPCRの細胞遊走能に及ぼす影響を確認する方法が挙げられる。
【0020】
GPCR機能としてのGPCRによる遺伝子発現の測定は、任意の転写調節配列の下流にレポータータンパク質遺伝子を組み込んだプラスミドとともにGPCRを発現させ、レポータータンパク質遺伝子の発現への影響を確認することで行うことができる。レポータータンパク質は、自体公知のものを使用することができ、例えばLuc(ルシフェラーゼ)、CAT(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ) 、DsRed (Discosoma sp. Red Fluorescent Protein) 、GFP(グリーンフルオレセントプロテイン)、GUZ(ベータグルクロニダーゼ)などを用いることができる。
【0021】
GPCRのうち、GPR56は神経幹細胞、神経前駆細胞 (NPCs)で発現し、ヒトの大脳皮質形成不全の原因遺伝子として報告されている。GPR56は、神経前駆細胞が脳室帯 (ventricular zone, VZ) から、中間層 (intermediate zone, IZ)、さらに大脳皮質になる皮質板 (cortical plate, CP) へ遊走することを調節していると推定される(図4参照)。そこで、GPCRの機能は、神経前駆細胞の遊走能を調べることにより測定することができる。具体的には大脳皮質を形成する際に、神経前駆細胞が脳組織のVZから、IZへ遊走し、さらにCPに遊走するまでに及ぼす影響を調べることにより、測定することができる。
【0022】
本発明のGPCRの細胞外ドメイン抗体の機能は、上記GPCR機能の測定への影響を調べることで確認することができる。
【0023】
また、本発明の抗体を用いて、GPCRのアゴニストおよび/またはアンタゴニストを選別するためのスクリーニングを行うことができる。GPCRのアゴニストおよび/またはアンタゴニストの選別は、前記抗体の代替物、あるいは、前記GPCRと抗体の相互作用を増強若しくは阻害させる物質を選別することによる。GPCRと抗体の相互作用を増強若しくは阻害させる物質の選別は、GPCRの機能を測定することによる。ここにおいてGPCRの機能は、遺伝子発現や細胞の遊走、あるいは細胞内セカンドメッセンジャーであるサイクリックAMP、カルシウムの動態を指標とすることができる。具体的には、以下の工程を含む方法による:
1)GPCR、前記抗体および候補化合物を、各々同時に、または時間を変えて相互作用させ、
2)上記いずれかの指標によりGPCRの機能を測定する工程;
3)GPCR機能の測定結果から、前記抗体の代替物、あるいは、GPCRと抗体の相互作用を増強若しくは阻害させる物質を選別する工程。
【0024】
本発明の抗体を用いることにより、GPCRのアゴニストおよび/またはアンタゴニストを選別するためのスクリーニングを行うことができる。候補化合物は、低分子化合物の他、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチドなどであってもよい。また、本発明の抗体の代替物となりうるものであってもよい。
【0025】
本発明の抗体や、上記スクリーニングにより選別されたGPCRのアゴニストおよび/またはアンタゴニストは、オーファン受容体として解明がいまだ十分でないGPCRのリガンドやアゴニストの解析に使用することができる。
【0026】
GPCRのうち、例えばGPR56はオーファン受容体の一つであるが、上述の如く、例えばヒトの大脳皮質形成不全の原因遺伝子として知られている。また、癌細胞の接着、転移、悪性化との関連も示唆されている(PNAS, 103 (24), 9023-9028 (2006))。そこで本発明の抗体や、上記スクリーニングにより選別されたGPCRのアゴニストおよび/またはアンタゴニスト、特にGPR56のアゴニストおよび/またはアンタゴニストは、神経幹細胞、神経前駆細胞の検査用試薬、癌細胞の増殖、分化、移動、および/または接着の検査用試薬に利用することができる。また、本発明の抗体あるいは上記スクリーニングにより選別されたGPCRのアゴニストおよび/またはアンタゴニスト、特にGPR56のアゴニストおよび/またはアンタゴニストは、細胞や組織を治療目的で移植する際に用いる細胞移植薬剤および/または患者の細胞、組織を賦活化あるいは保護する際に用いる再生医療用薬剤や癌細胞の増殖、移動、浸潤、転移、生着を抑制する薬剤に利用することができる。さらには、(a)GPCRと、(b)本発明の抗体あるいは上記スクリーニングにより選別されたGPCRのアゴニストおよび/またはアンタゴニスト、特にGPR56のアゴニストおよび/またはアンタゴニストと、(c)生体試料を作用させてGPCR機能を測定することで、神経幹細胞の検査や癌細胞の増殖、分化、移動、および/または接着、生着を検査することができる。また、本発明の検査用試薬には、さらに適当な賦形剤や安定化剤を加えることができる。
【0027】
本発明は、本発明の抗体あるいは上記スクリーニングにより選別されたGPCRのアゴニストおよび/またはアンタゴニストを有効成分として含む、(1)神経幹細胞の検査用試薬や、(2)癌細胞の増殖、分化、移動、および/または接着、生着の検査用試薬に及ぶ。また、上記物質を有効成分として含む、(1)細胞移植剤および/または再生医療用薬剤や、(2)癌の浸潤および/または転移抑制剤にも及ぶ。さらには、(a)GPCRと、(b)上記物質と(c)生体試料を作用させてGPCR機能を測定することによる、神経幹細胞の検査方法ならびに癌の浸潤および/または転移の検査方法に及ぶ。
【0028】
本発明の細胞移植剤および/または再生医療用薬剤や、癌細胞の増殖、移動、浸潤、転移、生着を抑制する薬剤は、さらに薬学的に許容し得る担体を含んでいても良い。かかる組成物は、経口的または非経口的に投与することができる。経口投与による場合、本発明の薬剤は通常の製剤、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等の固形剤;水剤;油性懸濁剤;またはシロップ剤若しくはエリキシル剤等の液剤のいずれかの剤型としても用いることができる。非経口投与による場合、本発明の薬剤は、水性または油性懸濁注射剤、点鼻液として用いることができる。その調製に際しては、慣用の賦形剤、結合剤、滑沢剤、水性溶剤、油性溶剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、安定剤等を任意に用いることができる。薬剤の投与量については、使用目的に応じて、適宜決定することができる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を示して説明するが、本実施例は発明の内容をより理解するためのものであって、本発明は本実施例に限定されるものではないことはいうまでもない。
【0030】
(実施例1)抗GPR56細胞外ドメイン(GPR56ECD)抗体作製のための抗原の調製
抗GPR56ECD抗体作製のための抗原を調製するために、バキュロウイルスを用いて遺伝子組換えの手法によりHis-GPR56 細胞外ドメインを発現させた。
GPR56は、配列表の配列番号1に示すヒト型GPR56(GenBank ACCESSION No. BC008770)および配列番号2に示すマウス型GPR56(GenBank ACCESSION No. BC034678)に表される。
【0031】
1)His-GPR56 細胞外ドメインのコンストラクトの作製
配列番号1および2に示すGPR56から得られる Met1 - Leu403 からなるポリペプチドのC末に 6 x His タグを付加したリコンビナントタンパク質を作製するため、ATCC から入手したGPR56の全長cDNAを鋳型に、以下のプライマーを用いてPCR反応を行ない、遺伝子断片を増幅した。
【0032】
A.ヒトGPR56ECD作製用プライマー
5' - GAAGATCTATGACTCCCCAGTCGCTGC - 3' (配列番号3)
3' - GAAGATCTCTAGTGATGGTGATGGTGATGCAGGTAGTGCTTGTGCACGG - 5'(配列番号4)
B.マウスGPR56ECD作製用プライマー
5' - GAAGATCTATGGCTGTCCAGGTGCTGC - 3'(配列番号5)
3' - GAAGATCTCTAGTGATGGTGATGGTGATGGAGGTAGTGTTTGTGAGTGG - 5'(配列番号6)
【0033】
2)トランスポジション
PCR反応によって得られたヒトまたはマウスのGPR56ECDのcDNAを pFastBac_1 (Invitrogen社) ベクターに組み込み、 大腸菌DH10BacTM(Invitrogen社) に導入して組換え Bacmid DNA を作製し、アルカリミニプレップ法により精製した。
【0034】
3)組換え Bacmid DNA のSf9細胞(昆虫細胞用)への導入
精製した組換え Bacmid DNAはセルフェクチン(R)試薬(Cellfectin(R) Reagent (Invitrogen社) を用いて接着培養したSf9細胞に導入し、TC-100培地を用いて27℃、72時間培養した。
【0035】
4)組換えバキュロウイルス(Baculovirus)の調製
上記の72時間培養後の培養上清を、Sf9細胞に培地の1/10量加えて27℃、72時間培養し、再び上清を回収してウイルス液とした。これを最低3回繰り返すことにより、ウイルスを増やすと共に感染効率の高いストック溶液を調製した。
【0036】
5)GPR56ECD組換え体タンパク質の抽出と精製
Sf9細胞 (2×106cells/ml)を含む培養液4 Lに、上記で得た高力価のウイルス溶液を培地の 1/100量加え、27℃で72時間培養した。その後、5000rpm、10分間、4℃で遠心し、培養上清を回収した。回収した培養上清は SP SepharoseTM Fast Flow カラム(GEヘルスケア社)に通した後、50mM リン酸緩衝液 (Na-Pi緩衝液) (pH 6.0) でカラムを洗浄し、50mM Na-Pi 緩衝液(pH 8.0)、500mM NaCl, 10mM イミダゾール(Imidazole)で溶出した。溶出液を Ni-NTA agarose カラム(QIAGEN社) に通してから、50mM Na-Pi緩衝液(pH 8.0), 500mM NaCl、20mMイミダゾールで洗浄後、50mM Na-Pi 緩衝液(pH 8.0)、500mM NaCl、400mMイミダゾールで溶出し、溶出液を透析により50mM Na-Pi 緩衝液((pH 6.0) に置換した。さらにMonoTM S (Pharmacia製) カラムに通し、50mM Na-Pi 緩衝液(pH 8.0) で溶出させ、精製GPR56ECD組換え体タンパク質を得た。
【0037】
(実施例2)抗GPR56ECD抗体の作製(ポリクローナル抗体の作製)
1)ウサギ抗血清の調製
実施例1で得た精製GPR56ECD組換え体タンパク質を抗原とし、ウサギの抗GPR56ECDポリクローナル抗体を作製した。
SPF日本シロウサギを、上記マウスの精製GPR56ECD組換え体タンパク質を抗原として5回接種し、ELISA (Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay) により抗体価をチェックした後に全採血し、抗血清を得た。ここで、SPFとは、特定病原菌不在(Specific Pathogen Free)を意味する。
【0038】
2)ポリクローナル抗体のアフィニティ精製
抗体は、抗血清から実施例1の手法により作製したSf9より調製したマウスGPR56ECDをカップリングさせたアフィニティーカラム(HiTrap NHS-activated HP columnTM, GE Healthcare社)を用いて精製した。
【0039】
(実施例3)抗GPR56ECD抗体の作製(モノクローナル抗体の作製)
1)マウスへの免疫
実施例1で得たマウスの精製GPR56ECD組換え体タンパク質(2 mg/ml)およびフロイント完全アジュバント(SIGMA社) を1:1で混合し、50μlの混合溶液を、6週齢のマウス (系統 Balb/cの雌) の足蹠に接種した。 以降、1週間おきにマウスに2回目および3回目の接種をする際、サンプルはフロイント不完全アジュバント(SIGMA社) と抗原を等量に混合させたものを接種した。合計3回の免疫を経て、マウスのリンパ節からリンパ球を取り出した。
【0040】
2)細胞融合
上記採取したリンパ節細胞およびミエローマ細胞について、50%ポリエチレングリコール(PEG)1500 (Roche社) を用いて細胞融合を行い、ハイブリドーマを作製した。その後、総細胞数が1×106cells/ml となるように 96穴プレートに100μl/well播種し、RPMI-1640(10%FBS、ペニシリン、ストレプトマイシンを含む)および HAT培地(コージンバイオ社)(50倍希釈)、BMコンディムドH1TM(Roche社)(10倍希釈)で37℃、5%CO2存在下培養した。
【0041】
3)ハイブリドーマのスクリーニング
ELISA用の96穴プレートに、アルカリ性緩衝液(炭酸ナトリウム緩衝液 (pH 9.6)) を溶媒にし、マウスGPR56ECDを5μg/ml含む溶液を50μl/well加え、4℃で一晩放置した。採取したハイブリドーマの培養上清を、抗原でコーティングしたプレートに加え、1時間、室温で静置した。PBST(1 ×PBS、0.2% TritonX-100) で洗浄後、二次抗体反応としてPBSTで5000倍希釈したHRP標識抗マウス抗体IgM+IgG (Jackson Immuno Research LABORATORIES社) を100μl/well 加え、1時間 室温で静置した。再びPBSTで洗浄した後、ペルオキシダーゼ(POD)発色基質TMBキット(ナカライ社)を用いて発色反応および発色反応停止を行ない、450nmの波長での吸光度を検出することによってハイブリドーマのスクリーニングを行なった。
【0042】
(実験例1)ウエスタンブロッティングによる確認
実施例2および3により得られた本発明の抗体(抗GPR56ECD抗体)の模式図を図5に示した。
【0043】
実施例1で作製した抗原としてのマウスGPR56の細胞外ドメイン(GPR56ECD)を0.1、1.0、10 ng、および神経前駆細胞の抽出液をSDS-PAGEで分離した後、抗マウスGPR抗体でウエスタンブロッティングを行った。図6より、約50kDaの位置にGPR56ECDのバンドが認められた。また、神経前駆細胞の抽出液からは、約62kDaの位置にバンドが認められ、神経前駆細胞にGPR56が発現していることが確認された。なお、電気泳動上の移動度すなわちみかけの分子量の差異は昆虫細胞Sf9細胞でのタンパク質の糖鎖修飾と哺乳動物マウスでの糖鎖修飾が異なるためと考えられる。
【0044】
(実験例2)GPR56機能の測定(レポーターアッセイ)
本発明のGPR56機能を測定するために、ルシフェラーゼをレポータータンパク質とするレポーターアッセイを行った。レポーターアッセイはDual-Luciferase Reporter AssayTM(Promega社) を用いて行った。
【0045】
ヒト293T細胞におけるマウスGPR56発現細胞とコントロール細胞について、各濃度の抗マウスGPR抗体を加えたときのレポータータンパク質の相対活性を確認した。
【0046】
ヒト293T細胞を48穴プレートで培養した。
ルシフェラーゼ遺伝子の上流に、転写調節因子の結合配列であるSRE(Serum responsive element)を有するルシフェラーゼ遺伝子 (pSRE-Luc) 、インターナルコントロール用pEF-RLルシフェラーゼベクター、さらに各種発現ベクターを、リン酸カルシウム法により導入した。24時間培養後、実施例2にて調製した抗マウスGPR56ECD抗体を各濃度加えて、さらに6時間培養を続けた。その後、培養細胞を回収し、細胞抽出液を調製した。
【0047】
細胞抽出液の調製にはDual-Luciferase Reporter AssayTM (Promega社) に含まれる溶解用試薬 (Passive Lysis BufferTM、PLB) を用いた。発光測定はプレートリーダーARVOTM MX (Perkin Elmer社) を用いて行った。ウミシイタケルシフェラーゼによる発光強度を用いてサンプル間の遺伝子導入効率の違いを補正してホタルルシフェラーゼ活性を評価した。
【0048】
その結果、GPR56発現細胞では抗体濃度依存的に、SREを介した転写活性が増加することが確認された(図7)。これにより、抗GPR56ECD抗体は、GPR56を活性化して下流で働くSREを介した転写活性を増加させうるGPR56アゴニスト機能を有することが確認された。
【0049】
(実験例3)GPR56機能の測定(レポーターアッセイ)2
実験例2と同様に、本発明のGPR56機能を測定するために、ルシフェラーゼをレポータータンパク質とするレポーターアッセイを行った。レポーターアッセイは、実験例2と同様にDual-Luciferase Reporter AssayTM(Promega社) を用いて行った。
【0050】
実験例2と同手法にて、ヒト293T細胞を用いて、SREルシフェラーゼによる発光強度の確認試験を行った。
【0051】
その結果、図8に示すように、GPR56発現細胞では抗GPR56ECD抗体濃度依存的に、SREを介した転写活性が増加することが確認された。一方、GPR56を発現しない細胞(mock)では抗体存在下でも低い発光度であり、SREを介した転写活性の増加は認められなかった。また、GPR56発現細胞であっても、抗GPR56ECD抗体のかわりに、コントロール抗体を用いた場合では、抗体濃度依存的なSREを介した転写活性の増加は認められなかった。さらにGPR56発現細胞に、抗GPR56ECD抗体とGPR56ECDを混合したものを加えた場合、抗体濃度依存的なSREを介した転写活性の増加が抑制された。
【0052】
コントロール抗体には細胞内タンパク質であるマウスAsef2を抗原として同様に作製したウサギポリクローナル抗体を用いた。抗血清からの抗体の精製は抗GPR56ECD抗体と同様に行った。
【0053】
以上の結果からも、抗GPR56ECD抗体は、SREを介した転写活性を増加させうるGPR56アゴニスト機能を有することが確認された。
【0054】
(実験例4)GPR56機能の測定(遊走アッセイ)
1)ニューロスフェア(neurosphere)の培養
ニューロスフェアは、神経幹細胞コロニーである。胎生11.5日目(E11.5)のICRマウス終脳よりニューロスフェアを調製した。
マウス胎児から脳を取り出し、氷上のリン酸緩衝液 (PBS; 138mM NaCl、2.68mM KCl、8.10mM Na2HPO4、1.47mM KH2PO4)に移し、さらに実体顕微鏡下で終脳を摘出し、DF(DMEM:F12 = 1:1)培地中に回収した。その後トリプシンで37℃、15分間インキュベートし、単一細胞に分離させた。DF培地で懸濁後、20μg/ml poly-2-hydroxyethyl methacrylate (poly-HEMA)でコートした10cmのディッシュに2×106cellsとなるように播種し、50倍希釈 B-27サプリメントTM (Invitrogen社) 、20ng/ml bFGF、20ng/ml EGF、1mg/ml BSA、および2μg/mlヘパリン存在下、100 U/mlペニシリンと100μg/mlストレプトマイシンを含むDF培地で浮遊培養させた。ここにおいて、前記B-27サプリメントTMは、海馬神経細胞の増殖および長期生存に必要な補助試薬であり、市販されている。37℃、5%CO2存在下で3日間培養後、ニューロスフェアを得た。さらにトリプシン処理により細胞塊を分散し、2×106 cellsとなるように播種して3日間浮遊培養し、ニューロスフェアを形成させ、遊走アッセイに用いた。
【0055】
2)遊走アッセイ
ポリエチレンイミン(Polyethyleneimine, PEI)でコートした96穴プレートに、1ウェルあたりニューロスフェアを20-40個入れ、B-27サプリメントTM (Invitrogen社) 、1 mg/ml BSAを含むDF培地で接着培養させ、24時間後の形態を観察した。接着したニューロスフェアを中心に、神経前駆細胞はスフェアの外側へと移動し、同心円上に広がる。同心円上に移動した細胞の外周までの距離を測定し、ニューロスフェアの直径の2倍以上の場合"遊走した"と評価して、全ニューロスフェア中の遊走したスフェアの割合を算出した。
【0056】
3)抗GPR56ECD抗体を用いた組織免疫染色
抗GPR56ECD抗体を用いて胎生16.5日マウス大脳皮質の組織免疫染色を行なった。胎生16.5日マウスの脳を4 %パラホルムアルデヒドで1晩固定し、続いて、3日間30 %スクロースに浸漬した。その後、厚さ30μmの凍結切片を作製し、免疫染色に用いた。抗GPR56ECD抗体と共に、神経幹細胞/神経前駆細胞のマーカー分子であるnestin若しくは、分化した神経細胞のマーカーであるβ3-tubulinの抗体で免疫染色を行った。
【0057】
その結果、図9に示すように、位相差顕微鏡写真(phase)で示された脳室帯(ventricular zone, VZ)、中間層(intermediate zone, IZ)、皮質板(cortical plate, CP)のうち、GPR56はnestinの抗体で認識される神経幹細胞/神経前駆細胞の存在するVZで多く発現が認められた。また、図10に示すように、βIII-tubulinの抗体で認識される神経細胞へと分化した細胞が存在するCPでのGPR56の発現は僅かであった。
以上の結果より、GPR56は神経幹細胞/神経前駆細胞に多く発現し、抗GPR56ECD抗体は神経幹細胞/神経前駆細胞を認識する抗体であることが確認された。
【0058】
4)抗マウスGPR56ECD抗体の神経前駆細胞の遊走に及ぼす影響
抗マウスGPR56ECD抗体が神経前駆細胞の遊走に及ぼす影響を調べた。
緩衝液(PBS)、コントロール抗体(15 μg/ml)、抗マウスGPR56ECD抗体(15μg/ml)、 抗マウスGPR56ECD抗体(15μg/ml)とGPR56ECD(15μg/ml)、各存在下で、上記2)に示した手法を用いて遊走活性を測定した。その結果、図11に示すように、抗マウスGPR56ECD抗体(15μg/ml)存在下でのみ神経前駆細胞の遊走が抑制された。また、抗原であるGPR56ECDによって抗マウスGPR56ECD抗体を中和することで、その遊走阻害効果は見られなくなった。
以上の結果より、抗マウスGPR56ECD抗体はGPR56に作用することで神経前駆細胞の遊走を抑制する機能を有することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明したように、本発明の抗GPCR細胞外ドメイン抗体により、GPCRのうち、例えばGPR56のようなオーファン受容体の機能を解析することができる。また、本発明の抗体を用いることにより、GPCRのアゴニストおよび/若しくはアンタゴニストを選別するためのスクリーニング方法を提供することができる。さらに、本発明の抗体や前記スクリーニング方法により選別されたGPCRのアゴニストおよび/若しくはアンタゴニストを有効成分とする神経幹細胞や癌細胞の増殖、分化、移動、および/若しくは接着の検査用試薬、再生医療用薬剤または癌の浸潤および/または転移抑制剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】GPR56ECDの成体マウス組織での分布を示す図である。GPR56FLはGPSドメインで切断されていない全長のGPR56を示す。
【図2】マウス胎児脳の発生の過程を示す図である。
【図3】GPR56ECDのマウス胎児脳の発生段階における発現を示す図である。GPR56FLはGPSドメインで切断されていない全長のGPR56を示す。
【図4】大脳皮質形成時における神経前駆細胞の非対称分裂と移動の様子を示す図である。
【図5】本発明の抗体を模式的に説明する図である。
【図6】本発明の抗体作製用ペプチドをウエスタンブロッティングにより確認する図である。(実験例1)
【図7】本発明の抗体がGPR56を活性化してSREを介した転写活性を促進することを示した図である。(実験例2)
【図8】本発明の抗体がGPR56を活性化してSREを介した転写活性を促進することを示した図である。(実験例3)
【図9】本発明の抗体を用いて胎生16日目マウス大脳におけるGPR56と神経幹細胞/神経前駆細胞マーカーであるnestinの発現を調べた図である。(実験例4)
【図10】本発明の抗体を用いて胎生16日目マウス大脳におけるGPR56と神経細胞マーカーであるβIII-tubulinの発現を調べた図である。(実験例4)
【図11】本発明の抗体の神経前駆細胞の遊走に及ぼす影響を調べた図である。(実験例5)
【符号の説明】
【0061】
各図面において「GPR56ECD」は、「GPR56細胞外ドメイン」を意味する。
各図面において「抗GPR56抗体」は、「抗マウスGPR56細胞外ドメイン抗体」を意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Gタンパク質共役受容体の細胞外ドメインに特異的に結合し、またはこれと相互作用し、細胞内へシグナル伝達を行う機能を有する抗Gタンパク質共役受容体細胞外ドメイン抗体。
【請求項2】
抗体の機能が、Gタンパク質共役受容体のアゴニスト機能により、細胞内へシグナル伝達を行う、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
Gタンパク質共役受容体が、GPR56である請求項1または2に記載の抗体。
【請求項4】
抗体が、以下の領域から選択されるいずれかの部分を抗原エピトープとして認識しうる、請求項1〜3のいずれかに記載の抗体:
1)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち1−403番目までの部分から選択され、アミノ酸残基が少なくとも3個以上含まれるポリペプチド;
2)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち1−403番目までの部分において、1若しくは複数個のアミノ酸が、置換、欠失、付加または誘導された配列から選択され、アミノ酸残基が少なくとも3個以上含まれるポリペプチド;
3)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち1−403番目までの部分から選択され、アミノ酸残基が少なくとも3個以上含まれるポリペプチド;
4)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち1−403番目までの部分において、1若しくは複数個のアミノ酸が、置換、欠失、付加または誘導された配列から選択され、アミノ酸残基が少なくとも3個以上含まれるポリペプチド。
【請求項5】
Gタンパク質共役受容体のアゴニストおよび/またはアンタゴニストを選別するための方法であって、Gタンパク質共役受容体と請求項1〜4の何れかに記載の抗体を相互作用させ、さらに候補化合物を作用させてGタンパク質共役受容体の機能を測定し、前記抗体の代替物、あるいは前記Gタンパク質共役受容体と抗体の相互作用を増強若しくは阻害させる物質を選別することを特徴とする、Gタンパク質共役受容体のアゴニストおよび/またはアンタゴニストのスクリーニング方法。
【請求項6】
請求項1〜4の何れかに記載の抗体あるいは請求項5のスクリーニング方法により得られたGタンパク質共役受容体のアゴニストおよび/若しくはアンタゴニストを有効成分として含有する細胞や組織を治療目的で移植する際に用いる細胞移植薬剤、および/または患者の細胞、組織を賦活化あるいは保護する際に用いる再生医療用薬剤。
【請求項7】
請求項1〜4の何れかに記載の抗体あるいは請求項5のスクリーニング方法により得られたGタンパク質共役受容体のアゴニストおよび/若しくはアンタゴニストを有効成分として含有する癌細胞の増殖、移動、浸潤、転移、生着を抑制する薬剤。
【請求項8】
請求項1〜4の何れかに記載の抗体あるいは請求項5のスクリーニング方法により得られたGタンパク質共役受容体のアゴニストおよび/若しくはアンタゴニストを含む神経幹細胞の検査用試薬。
【請求項9】
請求項1〜4の何れかに記載の抗体あるいは請求項5のスクリーニング方法により得られたGタンパク質共役受容体のアゴニストおよび/若しくはアンタゴニストを含む癌細胞の増殖、分化、移動、および/または接着、生着の検査用試薬。
【請求項10】
Gタンパク質共役受容体と請求項1〜4の何れかに記載の抗体を相互作用させ、被験者から採取した生体試料を作用させて、Gタンパク質共役受容体受容体機能を測定することを特徴とする神経幹細胞の検査方法。
【請求項11】
Gタンパク質共役受容体と請求項1〜4の何れかに記載の抗体を相互作用させ、被験者から採取した生体試料を作用させて、Gタンパク質共役受容体機能を測定することを特徴とする癌の浸潤および/または転移の検査方法。

【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−108013(P2009−108013A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284829(P2007−284829)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(504143441)国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 (226)
【Fターム(参考)】