説明

Gタンパク質共役型レセプターおよびそのリガンドをアッセイするための組成物および方法

一つ以上の内在性混交Gタンパク質、およびGタンパク質共役型レセプター(GPCR)をコードする外来性核酸配列を含み、カルシウム放出活性化カルシウムチャネル(CRAC)を任意に含む細胞は、GPCRの膜レベル発現を有意に改善し、シグナル応答およびシグナル持続期間を増大させ、GPCR関連アッセイ適用におけるバックグラウンドを低減するという特徴および改善を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2004年10月29日に出願された米国仮出願番号60/623,418の恩恵を主張する。上記の出願の全教示は、参照によって本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
リガンドに対する細胞表面レセプターは、細胞が外的環境と連絡する主要な手段である。細胞は最初のリガンド-レセプター相互作用を示し、その影響を調節し、トランスダクションおよび調節を介したこの相互作用に応答して細胞のプロセスを指示する。現在の処方薬の60%より多くがGタンパク質共役型レセプター(GPCR)に対して標的とされ、そのため、GPCRが薬物発見の研究について重要な焦点である。現在までに、2000より多くの遺伝子(全ヒトゲノムの1%より多く)がGPCRとして同定されており、これらは最大の未同定遺伝子ファミリーを構成する。GPCRは7回膜貫通レセプターであり、広い範囲のシグナル伝達分子を介した細胞外シグナルのトランスダクションに重大な役割を果たす。
【0003】
全てのGPCRは同様の分子機構によって機能する。細胞外刺激によるGPCRの活性化がレセプターのコンフォメーション変化を引き起こし、中間体の共役およびGTP結合タンパク質(Gタンパク質)の活性化を生じる。Gタンパク質は、天然でヘテロ3量体であり、異なる遺伝子でコードされたα、βおよびγサブユニットから構成される。αサブユニットはGDPおよびGTPの結合に重要である。リガンドのGPCRへの結合によって、GDP結合形態からGTP結合形態へのαサブユニットの移行が生じ、α-GTPのβγ二量体からの解離を介したへテロ3量体の活性化をもたらす。α-GTPおよびβγ二量体の両方は、第2のメッセンジャー分子(例えば、カルシウム、cAMP等)の生成を介して細胞内へのシグナルを伝達する種々のエフェクターの活性を調節する。少なくとも17個のGα遺伝子があり、Gタンパク質のメンバーはGαi/o、Gαq、GαsおよびGα12と称される4つの主な種類に分類され得る。GPCRは多くの異なる特色を生じ、リガンド結合の際にこれらは種々のGタンパク質に結合し得、従って多くの複合シグナル伝達経路の活性化をもたらし、GPCRのハイスループットスクリーニング(HTS)について読み取りを複雑にし得る。
【0004】
Fluorometric Imaging Plate Reader(FLIPR(登録商標))およびエクオリン技術は多くのGPCR薬物標的について迅速かつ感度の高い読み取りを提供し、ハイスループットな様式においてリガンドのGPCRへの結合の際の細胞内カルシウムの変化を測定するための選択系となっている。しかしながら、全てのGPCRがGαqと共役するとは限らず、それによってカルシウム動員をもたらすPLCβ経路を活性化する。
【0005】
非Gαq共役型レセプターをPLCβ/カルシウム経路に共役(couple)させる慣用的な方法は、FLIPR(登録商標)またはエクオリン読み取りを促進する混交(promiscuous)Gタンパク質(Gα15および/もしくはGα16)またはGαqキメラのいずれかを共トランスフェクションすることである。しかしながら、この方法には多くの制限および欠点がある。例えば、トランスフェクションされるGタンパク質の量を調節および標準化することは困難であり、リガンドEC50の有意な変化および構造−活性相関(SAR)の変化を引き起こし得る。さらに、組換え体Gα15および/またはGα16の過剰発現は、GPCRの構成性活性を引き起こし、それによって高いバックグラウンドを生じ、分析を阻害し得る。
【0006】
従って、GPCRを同定および特徴づける改善された方法が必要とされる。
【0007】
(発明の概要)
本発明は、特定の細胞が高いレベルで発現された1つ以上の内在性混交Gタンパク質を含み、かかる細胞が外来性核酸配列でコードされる1つ以上のGPCRを高いレベルで発現し得るという発見に基づく。本発明は、新規な哺乳類動物発現ベクター、pHSの発見にさらに基づき、これは本発明の細胞と適合性があり、細胞表面上でのGPCR発現レベルの有意な上昇および発現されたGPCRの内在性混交Gタンパク質への機能的な共役および優れたカルシウム動員を生じる。
【0008】
1つの態様において、本発明は、1つ以上の内在性混交Gタンパク質および(1つ以上の)Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)をコードする外来性核酸配列を含み、1つ以上のGタンパク質およびGPCRは高いレベルで発現される細胞である。特定の態様において、細胞は内在性カルシウム放出活性化カルシウム(CRAC)チャネルをさらに含む。
【0009】
別の態様において、本発明はアクセッション番号PTA-6986としてAmerican Type Cultute Collection(ATCC)に寄託されているpHSベクターである。なお別の態様において、本発明はpHSベクターをトランスフェクションした細胞である。
【0010】
本発明はまた、Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)の活性を増大する薬剤を同定する方法に関する。該方法は、1つ以上の内在性混交Gタンパク質およびGタンパク質共役型レセプター(GPCR)をコードする外来性核酸配列を含み、1つ以上のGタンパク質およびGPCRが高いレベルで発現される細胞を、試験薬剤と合わせる工程、およびGPCRの活性を検出する工程を含む。該方法において、対照に対するGPCRの活性増大は、試験薬剤がGPCRの活性を増大することを示す。
【0011】
Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)のリガンドを同定する方法もまた、本明細書中に提供される。本方法において、1つ以上の内在性混交Gタンパク質およびGタンパク質共役型レセプター(GPCR)をコードする外来性核酸配列を含み、1つ以上のGタンパク質およびGPCRが高いレベルで発現される細胞は、試験リガンドと合わされる。GPCRの活性が次に検出される。該方法において、対照に対するGPCRの活性増大は、試験リガンドがGPCRのリガンドであることを示す。特定の態様において、GPCRはオーファン(orphan)GPCRである。
【0012】
本発明はまた、Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)の活性を調節する薬剤を同定する方法に関する。該方法は、1つ以上の内在性混交Gタンパク質およびGタンパク質共役型レセプター(GPCR)をコードする外来性核酸配列を含み、1つ以上のGタンパク質およびGPCRが高いレベルで発現される細胞を、GPCRを活性化する薬剤および試験薬剤と合わせる工程を含む。GPCRの活性が次に検出される。該方法において、対照に対するGPCR活性の変化は、試験薬剤がGPCRの活性を調節することを示す。
【0013】
本発明はまた、1つ以上の内在性混交Gタンパク質を含む細胞を、GPCRをコードする核酸配列でトランスフェクションする工程を含む、細胞においてGタンパク質共役型レセプター(GPCR)を発現する方法を提供する。細胞(トランスフェクションされた細胞)は、1つ以上のGタンパク質およびGPCRが高いレベルで発現される条件下で維持される。
【0014】
細胞において細胞内カルシウムの変化を測定する方法もまた本発明に包含される。該方法は、1つ以上の内在性混交Gタンパク質およびGタンパク質共役型レセプター(GPCR)をコードする外来性核酸配列を含み、1つ以上のGタンパク質およびGPCRが高いレベルで発現される細胞を、GPCRを活性化する薬剤と合わせる工程を含む。細胞中の細胞内カルシウムが次に測定される。測定された細胞内カルシウムは、細胞中の細胞内カルシウムの変化を示すために適切な対照と比較され得る。
【0015】
本発明はまた、Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)をPLCβ経路に共役させる方法に関する。該方法は、GPCRが活性化される条件下で1つ以上の内在性混交Gタンパク質およびGタンパク質共役型レセプター(GPCR)をコードする外来性核酸配列を含む細胞を、GPCRを活性化する薬剤と合わせる工程を含む。該方法において、1つ以上のGタンパク質およびGPCRは高いレベルで発現される。1つ以上のGタンパク質は、Gαi/oファミリーのGタンパク質、GαsファミリーのGタンパク質、およびGα12ファミリーのGタンパク質からなる群より選択され得る。
【0016】
(発明の詳細な説明)
本発明は、以下の、特定の好ましい態様および実施例の記載への参照によって当業者に容易に理解され得、そこで本発明は、任意の当業者に公知の、容易に利用可能な手段および技術を用いて容易に再現され得る。これらの態様は、本発明を明確に記載するために提供されるが、本発明の他の態様が理解され得るか、あるいは達成され得る範囲および手段、または当業者に明らかな改変および変化に限定されることを意図しないことが理解されよう。
【0017】
本明細書中に広く記載されるように、本発明は、リガンドおよびその特異的なGPCRとの間での相互作用を検出するための組成物および方法を提供する。多くのGPCRが捕捉されたポリヌクレオチド配列の相同性によってのみ同定されてきたことを考慮して、これらの多くのレセプターは特異的な天然リガンドと結合せず、「オーファン」レセプターと呼ばれている。他の使用の中で、本発明の方法は、化合物および天然分子のハイスループットスクリーニングの利用によってリガンド(例えば、天然リガンド)を同定する手段を提供する。1つの態様において、本発明は、本発明のスクリーニング方法で同定される薬剤である。薬物治療におけるGPCRの重要性を考慮すると、特定のGPCR活性を変更し得るものとして同定される薬剤が治療目的に有用であり得る。
【0018】
1つの態様において、Gα15および/またはGα16ファミリーの混交Gタンパク質を内在的に発現し、GPCR種のレセプターに属するレセプターの発現と特に適合性がある細胞が選択される。Gαq共役型レセプターは、ホスホリパーゼCβ2(PLCβ2)と共役することによってカルシウムを動員し得る。ほとんどのGPCRはこの経路に関連していないが、任意のGPCRは、混交Gタンパク質、キメラGαqタンパク質の手段、またはGPCRがカルシウム流入を誘発することを意図する特定の場合のGαqファミリーの天然Gタンパク質と関連づけられ得る。しかしながら、本明細書中に記載されるように、Gタンパク質のGα15およびGα16は乱雑であり、本発明の細胞における高いレベルの内在性Gα15 発現および/またはGα16発現は、PLCβとの良好な結合および次のカルシウムイオン動員を任意のGPCRに提供する。
【0019】
特定の態様において、新規な哺乳類動物GPCR発現ベクター(例えば、pHS)のいくつかの特徴は、細胞表面上で組み換え体GPCRの非常に増大した発現を提供し、GPCRの細胞内在性Gα15および/またはGα16への首尾よい共役を生じる。本明細書中に記載される場合、これはリガンドのGPCRへの結合の際にPLCβ/カルシウム経路の活性化を生じる。
【0020】
さらなる態様において、GPCR活性化によって生成されたカルシウムイオン関連シグナルがカルシウム放出活性化カルシウムチャネル(CRACチャネル)の調節された活性化の手段によって有意に増幅される細胞が提供される。かかるチャネルは保存されたカルシウムイオンの消耗で開き、さらなるカルシウムイオンが用量依存の様式で細胞に入ることを可能にする(図11)。
【0021】
集合的に、これらの特徴は、GPCRの活性を測定する本方法に関して有意な改善を提供し、増大したシグナル対バックグラウンド比、および特定の型のGタンパク質(例えば、Gα15、Gα16、Gαqキメラ)を共トランスフェクションするよりもリガンドに対するより生理学的なEC50値を伴う。本明細書中に記載されるように、非Gαq共役型GPCRをPLCβ/カルシウム経路に共役させる慣用的な方法は、Gタンパク質およびGPCRの共トランスフェクションを含み、これはGPCRおよびGタンパク質の両方の最適レベルを維持する点で困難をもたらし得、かつ/またはGPCRの構成性活性を引き起こし得、それによってバックグラウンドを増大させる。
【0022】
GPCR
全てのGPCRは同様の分子機構によって機能する。細胞外刺激によるGPCRの活性化が、レセプターのコンフォメーション変化を引き起こし、GTP結合タンパク質(Gタンパク質)の中間の活性化およびサブユニット放出を生じる。Gタンパク質は天然でヘテロ3量体であり、異なる遺伝子でコードされるα、βおよびγサブユニットから構成される。αサブユニットはGDPおよびGTPの結合に重要である。リガンドのGPCRへの結合によって、GDP結合からGTP結合αサブユニットの移行が生じ、α-GTPのβγ二量体からの解離をもたらす。α-GTPおよびβγ二量体の両方は、第2のメッセンジャー分子(例えば、カルシウム、cAMP等)の生成を介して細胞および細胞核内へのシグナルを伝達するエフェクターの活性を調節する。少なくとも17個のGタンパク質遺伝子があり、Gタンパク質のメンバーはGαi/o、Gαq、GαsおよびGα12と呼ばれる4つ(または5つ)の主な種類に分類され得る。当該分野で公知であるように、Gタンパク質の構造および機能分類がαサブユニットによって定義されている(例えば、Morris, A.J.,およびMalbon, C.C. Physiol. Rev. 79(4):1373-1430(1999)を参照; 全教示は参照によって本明細書中に援用される)。GPCRは多くの異なる特色を生じ、これらは様々なGタンパク質と共役し得、従ってリガンド結合の際に多くのシグナル伝達経路の活性化をもたらす。ほとんどのGPCRレセプターはGαファミリーのシグナル伝達タンパク質、一般にGαi/o、Gαq、Gαs、およびGα12のうち何かの構成の手段によって複数の細胞内シグナル伝達経路と関連づけられる。リガンドの特定のGPCRへの結合によって、シグナル伝達経路のいくつかの成分、一般にATP、ADP、または保存貯蔵から動員されるカルシウムイオン等の最終成分の特性におけるいくつかの変化を測定することで検出されるシグナルが起こされる。
【0023】
本明細書中に記載されるように、1つ以上のGPCRをコードする外来性核酸配列が本発明の細胞に導入される。本明細書中で使用される場合、外来性核酸配列とは、天然には細胞で生じず、かつ/または細胞(例えば、宿主細胞、前駆体(祖先)細胞)に導入された核酸配列のことをいう。GPCRをコードし得、かつ外来的に発現される任意の核酸配列(例えば、DNA、RNA)が、本発明の組成物および方法で使用され得る。外来性核酸配列の導入は、当該分野で周知であり、例えば、トランスフェクションによって実施され得る。公知のトランスフェクション方法としては、例えば、カルシウムリン酸沈殿、DEAEデキストラン媒介遺伝子移入、リポソーム媒介遺伝子移入、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、レトロウイルストランスフェクションおよび遺伝子銃の使用が挙げられる。使用される特定のトランスフェクション方法は、利用される細胞型および産成されるGPCRを含む多くの因子に依存する。例えば、カルシウムリン酸沈殿(例えば、Wiglerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:3567(1980)に記載される)およびリポソーム仲介遺伝子移入は、大半の哺乳類動物細胞のトランスフェクションに有用であるが、付着細胞でより効果的であることが見出されている。対照的に、エレクトロポレーション(例えば、Potterら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:7161(1988)に記載される)は、懸濁液における細胞のトランスフェクションに主に利用される。レトロウイルストランスフェクション方法は、多くの哺乳類動物細胞型のトランスフェクションに有用である(例えば、Mannら, Cell 33:153-159 (1993); Pearら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90(18):8392-96 (1993); およびKitamuraら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:9146-50 (1995)に記載される)。哺乳類動物細胞のトランスフェクションのための様々な技術がKeownら, Methods in Enzymology 185:527-37(1990)、Mansourら, Nature 336:348-52(1988)およびSambrookら, Molecular Cloning, 第2版, 3巻 16章, 特にセクション68-72(1989)にさらに記載されている。1つの態様において、GPCRをコードする外来性核酸配列がプラスミドまたはベクターとして細胞に導入される。
【0024】
本明細書中に記載されるように、特定の態様において、GPCRをコードする外来性核酸配列が本発明の細胞に導入される。1つの態様において、GPCRはケモカインレセプターである。ケモカインレセプターは、重要な免疫分子として公知であり、薬物発見のための良好な標的を示す。
【0025】
あるいは、細胞に導入される場合、内在性GPCRの高いレベルの発現を生じる外来性核酸はまた、本発明の方法に包含される。例えば、GPCRをコードし、通常のサイレント内在性核酸配列を発現させる外来性核酸(またはGPCRをコードし、内在性核酸配列の高いレベルの発現を引き起こす外来性核酸)が細胞(ゲノムにスプライシングされる)に導入され得る。かかる技術に対する方法は、当該分野で公知である(例えば、参照によって本明細書中に援用される米国特許番号5,641,670、5,733,761および5,733,746)。
【0026】
細胞
本明細書中に広く記載される本発明の組成物および方法に従って、本発明は、1つの局面において、活性化されたGPCR(例えば、Gαi/o共役型GPCR、Gαq共役型GPCR、Gαs共役型GPCR、およびGα12共役型GPCR)の検出のための組成物を提供する。特定の態様において、本発明の組成物は、GPCRを発現し、特定のGタンパク質の種によるGPCRの、特定のシグナル伝達経路との固有のつながり(linkage)とは無関係に、両者は、ホスホリパーゼCβ(PLC-β)経路への結合をGPCRに提供するGα15および/またはGα16等の内在性混交Gタンパク質を含む安定な細胞株から構成される。Gα15および/またはGα16のGPCRへの結合によって、アゴニストリガンドによるGPCRの刺激が、PLCβ経路の活性化による細胞内カルシウムイオンの増大を引き起こす(図1および11)。本発明の組成物および方法において、高いレベルの発現を要求する現在での当該分野の実施および水準のように、Gα15および/またはGα16は、ベクターまたは他の遺伝子的手段によって組み換え体タンパク質として細胞に導入されない。代わりに、細胞株のパネルがスクリーニングされ、本明細書中に記載されるように、高いレベルの内在性混交Gタンパク質(例えば、Gα15、Gα16)を発現する特定の細胞株(例えば、CHEM-1、CHEM-2、CHEM-3)が選択された。本明細書に使用される場合、内在性混交Gタンパク質とは、多数の型のGPCR(例えば、GαI/0共役型GPCR、Gαq共役型GPCR、Gαs共役型GPCR、およびGα12共役型GPCR)活性化に応答して、共役し得、かつ活性化され得、特定の経路(例えば、PLCβ/カルシウム経路)を介してシグナルを伝達する天然Gタンパク質(例えば、特定の細胞によって天然に産生されるGタンパク質)のことをいう。高いレベルの内在性Gα15および/またはGα16を発現する細胞株を提供するために、培養細胞が増殖され、混交Gα15および/またはGα16Gタンパク質のmRNA発現レベルおよびタンパク質発現レベルをアッセイした。細胞培養物のアリコートから単離されたmRNAが一定の手順で扱われ、転写のレベルが逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって決定された。また、ウエスタンブロット分析がGα15および/またはGα16Gタンパク質発現を測定するために実施された。
【0027】
したがって、一態様において、本発明は、1種類以上の内在性混交Gタンパク質およびGPCRをコードする外来性核酸配列を含み、1種類以上のGタンパク質およびGPCRが高レベルで発現される細胞である。
【0028】
上記のように、内在性混交Gタンパク質は、多数の型のGPCR(例えば、Gαi/o共役型GPCR、Gαq共役型GPCR、Gαs共役型GPCRおよびGα12共役型GPCR)による活性化に応答して共役し、活性化され得、特定の経路(例えば、PLCβ/カルシウム経路)を介してシグナル伝達し得る天然のGタンパク質(例えば、特定の細胞によって天然に産生されるGタンパク質)をいう。特定の態様において、内在性混交Gタンパク質は、Gαi/o共役型GPCR、Gαq共役型GPCR、Gαs共役型GPCRおよびGα12共役型GPCRを含む任意の型のGPCRによる活性化に応答して共役し、活性化され得る。別の態様において、内在性混交Gタンパク質は、PLCβ/カルシウム経路を介してシグナル伝達する。また別の態様において、該1種類以上の混交Gタンパク質は、Gα15、Gα16およびその組み合わせからなる群より選択されるαサブユニットを含む。
【0029】
本発明の細胞において、内在性混交Gタンパク質は高レベルで発現される。本明細書で使用する「高レベルのGタンパク質発現」または「高レベルで発現されるGタンパク質」は、対照細胞(例えば、CHO細胞)におけるGタンパク質の発現と比較して、Gタンパク質の発現の少なくとも10倍の増加をいう。
【0030】
上記のように、Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)をコードするか、またはGPCRの発現をもたらす外来性核酸配列は、細胞内に天然に存在しない、および/または細胞(例えば、宿主細胞、前駆(祖先)細胞)に導入された核酸配列をいう。GPCRをコードするか、または内在性GPCRを高レベルで発現させ、細胞に導入される任意の核酸配列(例えば、DNA、RNA)(外来性核酸配列)が、本発明の組成物および方法において使用され得る。一態様において、(GPCR)をコードする核酸配列は、プラスミドまたはベクター内に存在する。別の態様において、Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)をコードする核酸配列は、GPCRに作動可能に連結された非CMVプロモーターを含む。本明細書で使用するように、プロモーターは、GPCRの転写を制御できる場合、GPCRに「作動可能に連結され」ている。また別の態様において、GPCRをコードする核酸配列は、小胞体(ER)輸送(export)シグナルをさらに含む。特定の態様において、Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)をコードする核酸配列はpHSである。pHSは、pHSベクターまたはpHSプラスミドとも称され、2005年9月20日に、CHEMICON(登録商標)International, Inc., 28820 Single Oak Drive, Temecula, CA 92590, U.S.A.を代表して、American Type Culture Collection(ATCC)、10801 University Boulevard, Manassas, Virginia 20110, U.S.A.に受託番号PTA-6986で寄託された。
【0031】
本発明の細胞において、GPCRは高レベルで発現される。本明細書で使用するように、「高レベルのGPCR 発現」または「高レベルで発現されるGPCR」は、GPCRの内在性発現よりも有意に高いGPCRの発現をいう。一態様において、かかる高レベルのGPCR 発現は、約100,000レセプター/細胞よりも大きい。別の態様において、かかる高レベルのGPCR 発現は、約1 pmol/mgのタンパク質よりも大きいBmaxである。Bmaxは、飽和結合曲線の頂点(例えば、膜タンパク質1 mgあたりpmol)であり、レセプター密度に正比例する。また別の態様において、かかる高レベルのGPCR 発現は、対応する非トランスフェクト細胞のもの(すなわち、該GPCRの内在レベル)と比べ、外因的に発現されたGPCRの発現における増加が約10倍より大きい。
【0032】
PLC-β/カルシウム経路に共役したGPCRの活性化は、特定の細胞(例えば、特定の免疫系細胞(例えば、CHEM-2細胞、CHEM-3細胞))内で内在的に高度に発現されるカルシウム放出活性化カルシウムチャネル(CRACチャネル)によって検知され得る細胞内カルシウム動員をもたらす。CRACチャネルは、ER上のIP3レセプター(IP3R)とCRACチャネルの相互作用による細胞内カルシウム貯蔵によって作動される。具体的には、CRACチャネルは、ER内のカルシウム濃度を検知し、内部カルシウム貯蔵が枯渇すると開く。これにより、細胞内へのカルシウムの急増がもたらされ、GPCR媒介性カルシウム動員が増幅される。カルシウム動員シグナルのかかる増幅は、例えば、限定されないが、カルシウム感受性染料、カルシウム感受性蛍光化合物および/またはカルシウム感受性検出可能タンパク質が挙げられるカルシウム感受性分子を用いる検出に有利である。したがって、一態様において、細胞は、内在性カルシウム放出活性化カルシウム(CRAC)チャネルをさらに含む。別の態様において、細胞は、CRACチャネルを介して細胞外カルシウムを取り込む。
【0033】
本明細書に記載するように、一般的に、PLCβ/カルシウム経路を介してシグナル伝達するGαqファミリーのGタンパク質と会合するのは、GPCRだけである。したがって、一態様において、外来的に導入されたGPCRは、GαqファミリーのGタンパク質に結合する。本明細書に記載する細胞および発現系の利点は、これらが、GPCR(非Gαq会合GPCRを含む)をPLCβ/カルシウム経路に共役させることができることである。したがって、一態様において、外来的に導入されたGPCRは、Gαi/oファミリーのGタンパク質、GαsファミリーのGタンパク質およびGα12ファミリーのGタンパク質からなる群より選択されるGタンパク質に結合する。
【0034】
本発明の細胞および方法は、GPCR(非Gαq会合GPCRを含む)をPLCβ/カルシウム経路に共役させるために設計される。したがって、一態様において、細胞は、GPCRへの1種類以上のリガンドの結合に応答した細胞内遊離カルシウムの増加を示す。
【0035】
多数の細胞株のスクリーニングによって示されるように、特定の細胞は、高レベルで発現される1種類以上の内在性混交Gタンパク質を含み、さらに、GPCRをコードする外来性核酸配列を高レベルで発現する(発現することができる)という所望の特徴を有する。一態様において、本発明の細胞は哺乳動物細胞である。特定の態様において、本発明の細胞はヒト細胞またはマウス細胞である。また別の態様において、本発明の細胞は、
i) American Type Culture Collection(ATCC)に受託番号 CRL-2256として寄託されたCHEM-1(RBL-2H3)細胞;
ii) American Type Culture Collection(ATCC)に受託番号 CRL-1593.2として寄託されたCHEM-2(U937)細胞; および
iii) Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkuturen GmbH(DSMZ)に受託番号 ACC300として寄託されたCHEM-3(BA/F3)細胞
からなる群より選択される。特定の態様において、細胞は単離された細胞である。本明細書で使用するように、組成物(例えば、細胞、プラスミド)は、実質的に細胞性の物質を含まない場合、非組換え細胞から単離された場合、または化学的に合成したとき化学的前駆物質もしくは他の化学物質を含まない場合、単離されている(純粋、実質的に純粋である)。
【0036】
本明細書に記載するように、本発明の細胞は、内在性混交Gタンパク質および1種類以上のGPCRをコードする(か、または発現を引き起こす)外来性核酸配列を高レベルで発現する。一態様において、かかる細胞は、GPCRをコードする外来性核酸を導入されやすい(例えば、トランスフェクトされやすい細胞)。一態様において、細胞は、>50%のトランスフェクション効率を有する(例えば、GFP構築物を用いて測定したとき)。別の態様において、かかる(such are)細胞は、培養しやすい。一態様において、細胞は、24時間以下である倍加時間を有する。別の態様において、本発明の細胞は、(1種類以上の) GPCRを低レベルで(例えば、細胞あたり1000 GPCR未満)を内在的に発現する。目的のGPCRの低い内生的発現は、低いバックグラウンドシグナル伝達をもたらし、したがって、本発明の方法において有利であり得る。
【0037】
一態様において、本発明の細胞は接着細胞である。接着細胞(例えば、CHEM-1細胞)は、基材(例えば、プレートの底面)に接着し、アッセイ(例えば、FLIPR(登録商標)アッセイ)が行なわれる容器(例えば、マイクロタイタープレート)の底面またはその付近に存在するシグナル(例えば、カルシウム)を検出するアッセイまたは検出方法を用いてより容易にアッセイされ得る。別の態様において、本発明の細胞は、懸濁状態である非接着細胞(例えば、CHEM-2細胞、CHEM-3細胞)である。アッセイ(例えば、エクオリンアッセイ) が行なわれる容器(例えば、マイクロタイタープレート)の上面またはその付近に存在するシグナル(例えば、カルシウム) を検出するアッセイでは、かかる細胞は、より正確にアッセイされ得る。
【0038】
一態様において、本発明の細胞は、(1種類以上の) カルシウム感受性分子をさらに含む。カルシウム感受性分子の含有は、カルシウム動員検出およびアッセイを補助し得る。カルシウム感受性分子は当該技術分野で公知であり、限定されないが、カルシウム感受性染料、カルシウム感受性蛍光化合物および/またはカルシウム感受性検出可能タンパク質が挙げられる。一態様において、カルシウム感受性分子は、カルシウム感受性染料(例えば、Fluo-3、Fluo-4、Indo-1、Fura-2、Rhod-2、オレゴングリーン(Oregon green)およびカルシウムグリーン-2)である。別の態様において、カルシウム感受性分子は、カルシウム感受性検出可能タンパク質(例えば、生物発光タンパク質)である。特定の態様において、カルシウム感受性検出可能タンパク質は、ルシフェラーゼ、エクオリン、アポ-エクオリンおよび任意の前記のものの誘導体または変異体からなる群より選択される生物発光タンパク質である。また、かかるカルシウム感受性検出可能タンパク質は核酸配列にコードされ得る。カルシウム感受性検出可能タンパク質をコードする任意の核酸(例えば、DNA、RNA)が本発明に包含される。特定の態様において、カルシウム感受性検出可能タンパク質をコードする核酸配列は、プラスミドまたはベクター内に存在する。別の態様において、カルシウム感受性検出可能タンパク質をコードする核酸配列およびGPCRをコードする核酸配列の両方がプラスミド内に存在する。さらに別の態様において、カルシウム感受性検出可能タンパク質をコードする核酸配列およびGPCRをコードする核酸配列は同じプラスミド内に存在する。
【0039】
プラスミド
一態様において、本発明は、(1種類以上の) GPCRをコードする核酸配列を含むプラスミドまたはベクターであり、ここで、GPCRは高レベルで発現される。別の態様において、プラスミドは、Gタンパク質共役型レセプター(GPCR) をコードする核酸配列を含み、GPCRをコードする核酸配列は、GPCRに作動可能に連結された弱いプロモーター(例えば、非CMVプロモーター)をさらに含む。本明細書に示すように、本発明のプラスミドにおける弱いプロモーター(例えば、pHSベクターに含まれるSFFV LTRプロモーター)の存在は、本明細書に記載の細胞にトランスフェクトされた場合、外来的に導入されたGPCRの高レベルの発現をもたらす。別の態様において、プラスミドは、Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)をコードする核酸配列を含み、GPCRをコードする核酸配列は、さらに小胞体(ER)輸送シグナルを含む。
【0040】
本明細書に記載するように、新規な哺乳動物発現ベクターであるpHSを開発し、これを、American Type Culture Collection(ATCC)に受託番号 PTA-6986として寄託した。pHSは、非CMVプロモーター(SFFV LTR)およびER輸送シグナルを含み(図4)、本発明の細胞(例えば、CHEM-1CHEM-2およびCHEM-3細胞株)に適合性である。さらに、本明細書に示すように、pHSは、GPCRのER保持を低下させ、細胞表面上での機能性レセプター発現のレベルの有意な増加(図5および6)、続いて内在性混交Gタンパク質への機能性共役をもたらし、優れたカルシウム動員およびFLIPR(登録商標)シグナルの増加をもたらした(図9)。したがって、一態様において、本発明は、American Type Culture Collection(ATCC)に受託番号 PTA-6986として寄託されたpHSベクターである。別の態様において、本発明は、pHSベクターでトランスフェクトされた細胞である。適当な細胞としては、pHSでトランスフェクトされ得る任意の細胞が挙げられる。
【0041】
スクリーニング方法、GPCRの発現方法および細胞内カルシウムレベルの変化の測定方法
本明細書に記載するように、現在の処方薬の60%を越えるものはGPCRを標的化し、GPCRは、それ自体薬物送達研究のための重要な焦点である。さらに、本明細書に記載するように、本発明の細胞は、GPCRの活性を変更する薬剤のスクリーニングに充分適している。したがって、特定の態様において、本発明は、活性および/またはGPCRの発現を変更する薬剤のスクリーニング方法である。
【0042】
一態様において、本発明は、Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)の活性を調節する薬剤、またはGPCRを活性化する薬剤の同定方法である。該方法では、1種類以上の内在性混交Gタンパク質およびGタンパク質共役型レセプター(GPCR) をコードする外来性核酸配列を含み、1種類以上のGタンパク質およびGPCRが高レベルで発現される細胞、GPCRを活性化する薬剤、ならびに試験薬剤を合わせて、GPCRの活性を検出する。対照と比べたGPCRの活性の変化は、試験薬剤がGPCRまたはGPCRを活性化する薬剤の活性を調節することを示す。
【0043】
一態様において、試験薬剤はGPCRの活性を低下させる。別の態様において、試験薬剤はGPCRの活性を増大させる。例えば、試験薬剤は、GPCRの結合および/または活性化のアッセイに使用されるGPCRを活性化する薬剤と競合するリガンドまたはアゴニストであり得る。
【0044】
別の態様において、本発明は、GPCRの活性を増大させる薬剤の同定方法である。該方法は、1種類以上の内在性混交Gタンパク質およびGタンパク質共役型レセプター(GPCR)をコードする外来性核酸配列を含み、1種類以上のGタンパク質およびGPCRが高レベルで発現される細胞ならびに試験薬剤を合わせる工程、およびGPCRの活性を検出する工程を含む。対照と比べたGPCRの活性の増大は、試験薬剤がGPCRの活性を増大させることを示す。
【0045】
一態様において、GPCRの活性を増大させる薬剤はアゴニストである。本明細書で使用するように、アゴニストは、直接または間接的のいずれかでGPCRの活性を増大させる薬剤である。特定の態様において、GPCRの活性を増大させる薬剤は、GPCRに結合して直接相互作用するアゴニストである。別の態様において、GPCRの活性を増大させる薬剤は、リガンド(例えば、天然のリガンド、非天然のリガンド)である。
【0046】
特定の態様において、本発明は、Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)のリガンドの同定方法である。該方法では、1種類以上の内在性混交Gタンパク質およびGタンパク質共役型レセプター(GPCR)をコードする外来性核酸配列を含み、1種類以上のGタンパク質およびGPCRが高レベルで発現される細胞、ならびに試験リガンドを合わせ、GPCRの活性を検出する。対照と比べたGPCRの活性の増大は、試験リガンドがGPCRのリガンドであることを示す。特定の態様において、GPCRは、オーファン(orphan)GPCRである。したがって、本発明の細胞は、その望ましい性質のため、オーファンGPCRのリガンドを同定(deorphan)する方法を可能にする。
【0047】
記載のように、本発明の細胞は、GPCR(例えば、Gαi/o共役型GPCR、Gαq共役型GPCR、Gαs共役型GPCR、Gα12共役型GPCR)を、PLCβ/カルシウム経路に共役させる。したがって、一態様において、GPCRの活性を変更する(例えば、活性を増大させる、活性を低下させる)薬剤の同定方法は、細胞内遊離カルシウムの変化(例えば、増加、減少)によって確認される。特定の態様において、細胞内遊離カルシウムの変化(例えば、増加、減少)は、Fluorometric Imaging Plate Reader(FLIPR(登録商標))またはエクオリン技術を用いて検出される。細胞内遊離カルシウムの変化を測定するための他の技術(例えば、電気生理学)は、当業者に公知である。
【0048】
FLIPR(登録商標)およびエクオリン技術は、高処理的に細胞内カルシウムの変化を測定するのに最適な系となっている。これらは両方とも、多くのGPCR薬物標的に対して迅速で感受性の読み出し情報(read-out)を提供する。しかしながら、本明細書に記載するように、すべてのGPCRがGαqに共役し、PLCβ経路を活性化してカルシウム動員をもたらすわけではない。混交および/またはキメラGタンパク質と共トランスフェクトしてFLIPR(登録商標)応答を促進させる現在の方法よりもずっと簡便で再現可能な感度の高い選択肢として、本発明の細胞はGPCRをPLCβ/カルシウム経路に共役させ、したがって、本明細書に記載するスクリーニング方法に充分適する。
【0049】
本明細書に記載するスクリーニング方法において、対照と比べたGPCRの活性の変化を測定する。適当な対照は、試験薬剤の非存在下でアッセイを行なうことである。また、対照は、標準値または対照値を得るために多数の試料および統計学的モデルを用いて確立された標準対照であり得る。他の適当な対照は、当業者に容易に理解できる。
【0050】
限定されないが、タンパク質(例えば、抗体)、ペプチド、ペプチド模倣物、有機系低分子、核酸などが挙げられる種々の試験薬剤または試験化合物が、本発明の方法においてアッセイされ得る。かかる試験薬剤は、個々にスクリーニングされ得るか、または1種類以上の試験薬剤が同時にアッセイされ得る。試験薬剤の混合物をアッセイする場合、記載の方法によって選択された試験薬剤を分離(必要に応じて)し、適当な方法(例えば、配列決定、クロマトグラフィーなど)を用いて同定し得る。試験試料中における1種類以上の因子(例えば、リガンド、インヒビター、プロモーター)の存在もまた、これらの方法に従って測定され得る。
【0051】
GPCRの活性を変更する試験薬剤は、例えば、本明細書に記載の方法を用いてNational Cancer InstituteのChemical Repositoryなどのライブラリーまたは分子の収集体をスクリーニングすることにより同定され得る。コンビナトリアル化学合成または他の方法によって作製された化合物(例えば、有機化合物、組換えまたは合成ペプチド、「ペプトイド」、核酸)のコンビナトリアルライブラリーなどのライブラリーが試験され得る(例えば、Zuckerman, R.N. et al, J. Med. Chem., 37: 2678-2685 (1994) およびそこに挙げられた参考文献; また、タグ化化合物に関するOhlmeyer, M.H.J. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10922-10926 (1993)およびDeWitt, S.H. et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6909-6913 (1993)も参照のこと; Rutter, W.J. et al.の米国特許第5,010,175号; Huebner, V.D. et al.の米国特許第5,182,366号; およびGeysen, H.M.の米国特許第4,833,092号を参照のこと)。ライブラリーから選択された化合物が特有のタグを有する場合、クロマトグラフィー法による個々の化合物の同定が可能である。
【0052】
一態様において、本発明は、本発明のスクリーニング方法により同定される薬剤である。薬物療法におけるGPCRの重要性を考えると、特定のGPCRの活性を変更することができると同定された薬剤は、治療目的に有用であり得る。
【0053】
本発明はまた、1種類以上の内在性混交Gタンパク質を含み、1種類以上のGタンパク質およびGPCRが高レベルで発現される細胞を、GPCRをコードする核酸配列でトランスフェクトする工程を含む、細胞内でGタンパク質共役型レセプター(GPCR)を発現させる方法に関する。特定の態様において、GPCRをコードする核酸配列はpHSベクター内に存在する。
【0054】
本明細書に記載するように、本発明の細胞は、GPCRにPLCβ/カルシウム経路を共役させる。したがって、一態様において、本発明は、細胞内で細胞内カルシウムの変化を測定する方法である。該方法において、1種類以上の内在性混交Gタンパク質およびGタンパク質共役型レセプター(GPCR)をコードする外来性核酸配列を含み、1種類以上のGタンパク質およびGPCRが高レベルで発現される細胞を、GPCRを活性化する薬剤と合わせ、細胞内の細胞内カルシウムを測定する。
【0055】
別の態様において、本発明は、Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)をPLCβ経路に共役させる方法である。該方法は、GPCRが活性化される条件下で、1種類以上の内在性混交Gタンパク質およびGタンパク質共役型レセプター(GPCR)をコードする外来性核酸配列を含む細胞を、GPCRを活性化する薬剤と合わせる工程を含む。該方法において、1種類以上のGタンパク質およびGPCRは高レベルで発現され、1種類以上のGタンパク質は、Gαi/oファミリーのGタンパク質、GαsファミリーのGタンパク質 およびGα12ファミリーのGタンパク質からなる群より選択される。
【0056】
本明細書に記載するように、本発明は、リガンド(または「アゴニスト」)によって刺激されると、細胞内の貯蔵または捕捉蓄積(sequestration depot)からカルシウムイオンの動員をもたらし得るレセプターを含む、細胞を包含し、動員されたカルシウムイオン流出は、限定されないが、FLIPR(登録商標)およびエクオリン分析が挙げられる種々の分析手段によって示され得る。また、本発明は、レセプターの活性を調節する(例えば、増加させる、低下させる)薬剤および試験薬剤を検出し、同定し得る。本発明の広い範囲を限定しないが、本発明の特定の使用の1つは、GPCRと呼ばれるレセプタークラスによるリガンド結合の検出に関する。
【0057】
示した好ましい態様および実施例は、本発明の実体(entity)から容易に構想され、誘導される数多くの概念の範囲を限定しないことを理解されたい。すなわち、本発明は、実施例に提供した特異的レセプターまたはリガンドに関するだけでなく、その概念が適用され得るすべてのレセプターおよびリガンド、また、較正されたGタンパク質共役型レセプター(GPCR)発現を混交Gタンパク質の強い内在性発現と組み合わせる原理を包含する。特に、本発明は、レセプターの機能(1つまたは複数)またはリガンド(1つまたは複数)が知られているか、知られていない(以下、本明細書において「オーファン」GPCRという)かに関わらず、本明細書で用いた態様、実施例または用語よって、任意の特定のGPCRに限定されない。また、本発明において有用性を有する、細胞内のカルシウムイオンのレベルもしくは配置(disposition)、または特定の条件、特定の方法、特定の遺伝子、特定の細胞型、または任意の特定の遺伝子もしくはタンパク質配列、または特定の薬物もしくはアゴニストもしくはアンタゴニストに影響する細胞性またはインビトロのシグナル伝達経路の任意の部分を検出、測定または変更するための本発明の使用に制限はない。また、本明細書において使用される用語は、本発明を説明することを目的とし、本発明の範囲を制限すると解釈されるべきでないことを理解されたい。
【実施例】
【0058】
方法および材料
発現プラスミド、細胞株および抗体
GPCRの発現に使用した発現プラスミドpHSは、StratageneのpBluescript(登録商標)主鎖(Stratagene, La Jolla, CA)を主体とするものである。pHSの概略を図4として提供する。また、本明細書にpHSの関連部分(例えば、SFFV LTRプロモーター、ER輸送シグナル)の配列を示す。pHSは、pHSベクターまたはpHS プラスミドとも呼ばれ、2005年9月20日に、CHEMICON(登録商標) International, Inc., 28820 Single Oak Drive, Temecula, CA 92590, U.S.A.を代表して、American Type Culture Collection(ATCC)、10801 University Boulevard, Manassas, Virginia 20110, U.S.A.に受託番号PTA-6986で寄託された。
【0059】
比較目的のために使用されたpcDNA3およびpCDNA5FRTなどの他の発現プラスミドは、InVitrogen (Carlsbad, CA) から購入した。
【0060】
混交Gタンパク質スクリーニングおよび組換えGPCRの発現に使用したすべての哺乳動物細胞株は、ATCCから購入したか、またはCHEMICON(登録商標)細胞バンクから入手したかのいずれかであった。GPCRおよびGタンパク質のcDNAは、特許権消滅状態の(public domain)プライマーを用いてRT-PCRまたはPCRによってクローン化した。具体的には、使用したプライマーは、N末端およびC末端でGα15およびGα16との間の相同配列を主体とするものである。使用したフォワードオリゴヌクレオチドプライマーは5' atg gcc cgg tcc ctg ac 3'(配列番号:1)であり、リバースオリゴヌクレオチドプライマーは5' gtc aca gca ggt tga tct 3'(配列番号:2)であった。FACSortingおよび解析に使用した抗体は、CHEMICONのカタログから得た。QuikChange変異誘発キットは、Stratagene (La Jolla, CA)から購入した。
【0061】
細胞トランスフェクション
リポフェクタミン(InVitrogen, Carlsbad, CA)またはエレクトロポレーション(BioRad, Hercules, CA)を製造業者の使用説明書に従って用い、細胞をトランスフェクトした。適切な抗生物質を用いて安定なプールを選択し、GPCRに対する特異的抗体を用いて単一の細胞クローンにFACSソート(FACSort)した。種々のGPCRに対する染料コンジュゲートもしくは染料非コンジュゲートモノクローナル抗体(mAb)またはウサギ抗血清を、市販供給源(例えば、BD Biosciences, San Jose, CA; R&D Systems, Minneapolis, MN)またはCHEMICON(登録商標) International, Inc. (Temecula, CA)のいずれかから得た。二次染色のため、関連する種特異的反応性を有する染料コンジュゲート精製Fab断片を、市販供給源(Molecular Probes/InVitrogen, Carlsbad, CA)から得た。
【0062】
膜調製物
N2キャビテーション(cavitation)および分画遠心法によって、安定にトランスフェクトされた細胞から粗製膜画分を調製し、10%グリセロールおよび1% BSAを含む50 mM Tris Cl中に-80℃で保存した。
【0063】
レセプター結合アッセイ
1〜5μg/ウェルの粗製膜タンパク質を解凍し、アッセイバッファー(50 mM Hepes、5 mM MgCl2、1 mM CaCl2、0.2% BSA )中で2時間 25℃で、50,000〜100,000 cpmの放射性リガンド(2200 Ci/mmol)および冷却競合体と合わせた。反応は、96ウェルGF/Cガラス繊維フィルタープレート(PerkinElmer、カタログ番号6005174、Wellesley, MA)内で行なった。100μl/ウェルの洗浄バッファー(50 mM Hepes、pH 7.4、500 mM NaCl、0.1% BSA)の添加および細胞回収装置でプレートからの吸引によって結合を終了させた後、洗浄バッファーを用いて0.2 mlで3回の洗浄した。次いで、フィルタープレートを乾燥し、Microbeta 液体シンチレーションカウンター(PerkinElmer, Wellesley, MA) でカウントした。
【0064】
例えば、CXCR2の放射性リガンド飽和結合アッセイを96ウェルプレート内で、アクセス(access)量の冷却リガンドGroαの非存在および存在下で、5μgのGPCR 膜調製物を増加濃度(0〜2 nM)の125I標識リガンドGroα(PerkinElmer, Wellesley, MA)とともにインキュベートすることにより行なった。
【0065】
細胞内[Ca2+]測定およびFLIPR(登録商標)アッセイ
実験の前日、細胞(50,000/ウェル)を96 ウェルFLIPR(登録商標)プレート(透明な底面、黒色の壁のTCプレート)に播種し、次いで、蛍光カルシウム染料Fluo-4またはIndo-1(Molecular Probes)を負荷し、HBSSバッファー(Ca2+およびMg2+を有する)中でPluronic F-127およびProbenecidとともに暗所で37℃にて30分間インキュベートした。次いで、細胞をHBSSで2回洗浄し、リガンド添加後のFLEX StationまたはFLIPR(登録商標)でカルシウム動員について読み取った。Ca2+流出アッセイの負荷効率および完全性を、各ランの前後でイオノマイシン処理に対するシグナル伝達応答を比較することにより評価した。
【0066】
FLIPR(登録商標)(Fluorometric Imaging Plate Reader)は、疑いなく、今日の薬物発見産業における最も広く使用されている高処理スクリーニング基盤である。これは、細胞内Ca流出、細胞内pHおよびナトリウムならびに膜電位の変化をモニターするための細胞系蛍光アッセイのために設計され、高感度でリアルタイム速度論データ情報をもたらす。これは、可転性(versatile)6位置台(-position platform)および一体化した384または96 ウェルピペッター、励起および発光光学機器、アルゴンレーザー、ならびに1秒間に全プレートから発せられたシグナルを同時に捕捉する低温CCDカメラからなる。一体化されたプレートスタッカーおよびスタッカーステージならびに一体化された先端洗浄器により、ほぼハンドフリーモードでFLIPR(登録商標)がアッセイを行なうことを可能にし、処理量を100プレート/日に潜在的に増大させ得、384形式で1日あたり40,000個までの化合物がスクリーニングされるのを可能にする。また、試薬コストが、cAMPアッセイでは約1$/ウェルと比較して1ウェルあたり約1ペニーに低減され得る。
【0067】
化学走性アッセイ
1%ウシ胎児血清(FCS)を含有するHBSSバッファー(Ca2+およびMg2+を含む)中に細胞を懸濁し、特定のケモカイン(R&D Systems, Minneapolis, MN)で2時間37℃で処理するか、または未処理で放置した。CHEMICONの遊走(transmigration)キット(カタログ番号ECM580; Temecula, CA)を用いて化学走性アッセイを行なった。
【0068】
FACS解析
細胞表面レセプターGPCRの発現を検出するため、Becton Dickinson Flow Cytometerを用いてFACS(Florescent Activated Cell)解析を行なった。特に、細胞を回収し、洗浄し、PE(フィコエリトリン(phycoerythin))コンジュゲート抗GPCR抗体(例えば、PEコンジュゲート抗CXCR2)とともにインキュベートし、次いで、ノズルサイズを80ミクロンとし、FACStar装置(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)を用いて染色に関してアッセイした。
【0069】
結果
本明細書に記載の実験は、すべてのGPCRシグナル伝達経路を、これらが共通で単純な読み出し情報、すなわちGPCRへのリガンドの結合に応答した細胞内遊離カルシウムの増加をもたらすように集中(funnel)させることが可能であることを示す。図1に示すように、非Gαq共役型レセプターをPLCβ/カルシウム経路に共役させるための従来法は、混交Gタンパク質(例えば、Gα15、Gα16)またはGαqキメラの両方を共トランスフェクトしてFLIPR(登録商標)またはAequorin読み出しを促進させるものである(図1)。しかしながら、この従来法には制限および欠点がある。特に、トランスフェクトされたGタンパク質の量を制御および標準化することは困難であり、これは、しばしば、リガンドEC50の有意なシフトおよび構造活性相関(SAR)における変化を引き起こす(例えば、図2Aおよび2Bを参照)。図2Aおよび2Bに示すように、Gα16の絶対量は、リガンドの正確な効能および有効性をもたらすために重要である。また、組換え Gα15および/もしくはGα16またはGqキメラの過剰発現は、GPCRの構成的活性化を引き起こし得、高いバックグラウンドをもたらし得る。
【0070】
GPCRに対するFLIPR(登録商標)またはエクオリン応答を促進するためのGα15、Gα16および/またはGαqキメラの共トランスフェクションに伴う問題を回避するため、Gα15およびGα16の両方に共通のプライマーまたは抗体を用いてRT-PCRおよびウエスタンブロット解析を行ない、内在性Gα15および/またはGα16発現を有する細胞を同定した(図3)。特定の細胞株の発現を解析するためにRT-PCRを用いる一例を図3に示す。図示するように、特定の細胞株(例えば、CHEM-1(RBL-2H3細胞)、CHEM-2(U937細胞)、CHEM-3(BA/F3細胞)、HL60)は、高レベルの内在性Gα15および/またはGα16発現を有する。HL60は高レベルの内在性Gα15および/またはGα16 発現を示したが、後の実験は、この細胞株をトランスフェクトするのは困難であったことを示す。
【0071】
残念ながら、一般的に使用されるCMVプロモーターは、pcDNA3などのほとんどの哺乳動物発現ベクターに用いられるが、本明細書に記載する宿主細胞株内ではサイレントであり、組換えGPCR発現がほとんどまたは全く起こらない。したがって、American Type Culture Collection(ATCC)に受託番号PTA-6986として寄託されている新規な哺乳動物発現ベクターpHSを開発した。図4は、pHS 発現ベクターの概略図である。pHSは、非CMVプロモーター(SFFV LTR)およびER輸送シグナル(FEYEFNEVEF; 配列番号:3)(図4)を含有し、高レベルの内在性Gα15および/またはGα16発現を示すCHEM-1、CHEM-2およびCHEM-3細胞株と適合性である。pHSベクター内に含有される非CMVプロモーター(SFFV LTRプロモーター)は、少なくとも2つの重要な改善されたGPCR 発現の特徴を有する。第1の特徴は、本明細書に記載の細胞株(例えば、CHEM-1、CHEM-2、CHEM-3)と適合性であり、そのため、目的の外来性核酸(例えば、GPCR)を高度に発現することである。第2の特徴は、非CMVプロモーターが、シャペロン系を制圧(overwhelm)し、それにより、発現されたタンパク質のER保持を引き起こすのに速すぎない転写速度をもたらすことである。したがって、このプロモーターは、より多くのGPCRを細胞表面に送達することができる。多くのウイルスプロモーターを用いた実験により、pHSベクターにコードされたSpleen Focus Forming Virus(SFFV) LTRが、この系でのGPCR発現に優れたプロモーターであることが示された。SFFV LTRの配列は、


である。pHSベクターにコードされたER輸送シグナル(FEYEFNEVEF; 配列番号:3)は、カルボキシ末端の9個のアミノ酸の疎水性モチーフである。これは、GPCR表面発現を2倍増大させることが示された。
【0072】
pHSはGPCRのER保持を低下させ、細胞表面上での機能性レセプター発現レベルの有意な増加(図5および6)、続いて内在性混交Gタンパク質への機能性共役をもたらし、優れたカルシウム動員およびFLIPR(登録商標)シグナルの増加をもたらした(図9)。特定の理論に拘束されることを望まないが、非常に強力なプロモーターであるためCMVプロモーターの制御下で発現される外来性タンパク質は、特に、7回膜貫通GPCRなどの大きな膜貫通タンパク質の場合、しばしば、タンパク質発現のシャペロン系を制圧し、タンパク質のER保持を引き起こすと考えられる。pHSベクターのSFFV LTRプロモーターなどのより弱いプロモーターの選択により、ER保持の問題ならびに宿主細胞との適合性の問題が解決される(例えば、CHEM-1、CHEM-2およびCHEM-3細胞においてpcDNA3発現GPCRで観察されるサイレンシング効果が解決される)。
【0073】
図5A、5B、6Aおよび6Bに示すように、pHSベクターおよびCHEM-1細胞を用いた緑色蛍光タンパク質(GFP)標識CXCR2 GPCR(CXCR2-GFP)の発現により、CMVプロモーター含有pcDNA3 ベクターおよびCHO細胞の場合よりも多くの細胞表面発現がもたらされた。具体的には、GFPをCXCR2のC末端に融合させ、異なる適合性発現ベクター(pcDNA3またはpHSのいずれか)を用いてCHO細胞およびCHEM-1細胞内にトランスフェクトし、蛍光イメージングおよびFACS解析を行なった。CXCR2-GFP発現の蛍光イメージング(図5Aおよび図5Bを比較)ならびにFACS解析(図6Aおよび図6Bを比較)は、pHSベクターおよびCHEM-1細胞を用いたとき、細胞表面でのより多くのGPCRの発現を明白に示す。これらの実験に用いたCXCR2-GFP融合タンパク質は、CHEMICONのGFP配列に融合させたCXCR2の全コード配列(停止コドンを除く; GenBank受託番号M73969)を含んだ。この配列以下のとおりである。

【0074】
本発明の細胞(例えばCHEM-1、CHEM-2およびCHEM-3)およびベクター(例えばpHSベクター)を用いて発現されるレセプター(例えばGPCR)が標的とされ、細胞表面上で発現され、正しいコンホメーションおよびGタンパク質共役状態を取り、それにより正しい薬理学を生じさせる。本明細書中に記載した発現系を用いて発現される細胞表面レセプター(例えばGPCR)が、膜結合アッセイにおいて正しいコンホメーションを取り、正しい薬理学を示すことを明らかにするために、CHOおよびCHEM-1細胞からGPCR含有膜を単離し、放射性リガンド競合結合アッセイにかけた。特異的に、pcDNA3ベクターにコードされるCXCR2をトランスフェクトしたCHO細胞由来の膜、およびpHSベクターにコードされるCXCR2をトランスフェクトしたCHEM-1細胞由来の膜をリガンド結合についてアッセイした。図7Aおよび7Bに示されるように、pcDNA3ベクターにコードされるCXCR2をトランスフェクトしたCHO細胞由来のCXCR2含有膜と比較すると(図7Aと図7Bを比較)、pHSベクターにコードされるCXCR2をトランスフェクトしたCHEM-1細胞由来のCXCR2含有膜は上昇した飽和結合のBmax(レセプター発現レベル)を示した(図7)。さらに、pHSベクターにコードされるCXCR2をトランスフェクトしたCHEM-1細胞由来のCXCR2含有膜は2部位結合曲線を生じたが(図8A)、一方でpHSベクターにコードされるCXCR2をトランスフェクトしたCHEM-1細胞由来のCXCR2含有膜は1部位結合曲線を生じた(図8Aと図8Bを比較)。図8Aで観察されたGroα(2.2 x 1O-10)およびIL-8(7.6 x 10-11)の両方についての高親和性部位と図8Bで観察された高親和性部位が一致して、図8Aで観察された低親和性部位(Groαについて3.4 x 10-8およびIL-8について2.9 x 10-8)はおそらく、ER中でトラップされたGPCRのGタンパク質非共役状態から生じる。
【0075】
CHEM-1細胞における高レベルなレセプター発現とその後の内在性混交Gタンパク質へのレセプターの機能的な共役との組合せにより、混交Gqタンパク質またはキメラGqタンパク質のいずれかの共トランスフェクションの必要なしにカルシウムの動員がもたらされる(図9)。図9に示されるように、CXCR2をトランスフェクトしたCHEM-1細胞中の内在性Gα15を介した、リガンド(Groα)誘導カルシウム動員は、CXCR2をトランスフェクトしたCHO細胞またはCXCR2をトランスフェクトしたHL60好中球中のリガンド(Groα)誘導カルシウム動員が示したものよりも、かなり大きいカルシウム流量を示した(図9Aおよび9Dと図9Gを比較)。さらに、CXCR2をトランスフェクトしたCHO細胞またはCXCR2をトランスフェクトしたHL60好中球とは異なり、リガンド(Groα)誘導カルシウム流量は、百日咳菌毒素(PTX)との予備インキュベーションにより阻害されなかった(CXCR2はPTX感受性)(図9Bおよび図9Eと図9Hを比較)。しかしながら、残存するCa2+流量は、ドミナントネガティブGα15(DNGα15)の共トランスフェクションにより抑制され得る(図9I)。これらの結果より、組換えCXCR2はGαi/oと共役するだけではなく、CXCR2をトランスフェクトしたCHEM-1細胞中で内在性Gα15と無差別に共役することも示される。図9Aおよび9Dにおける少量のCa2+流量は、βγを介したPTX感受性PLCβ活性化のためである。
【0076】
本明細書に記載されるように、混交またはキメラGαqタンパク質の共トランスフェクションは、トランスフェクトされるGタンパク質の量の調節および標準化の難しさならびに高いバックグランドを生じるGPCRの構成的な活性化を含む、多くの関連した課題を有する。高レベルに発現され、カルシウムシグナル経路に応答してGPCRに共役する、内在性混交Gタンパク質の使用により、本明細書に記載されるGPCR安定細胞株を、Gタンパク質共役状態とは無関係な、特有の機能的スクリーニングツールとする。さらに、本発明は、オーファンGPCRのリガンドを同定するための単純で一般的な方法も提供する。
【0077】
本明細書で記載されるように、GPCRは、Gタンパク質共役状態に基づいて、Gαi/o、Gαq、GαsおよびGα12と称される、4つの主要な分類に分けられ得る。シグナル経路をPLCβ/カルシウム読出しに変換することにより、本明細書に記載される実験で、用量依存的FLIPR(登録商標)カルシウムアッセイを使用して、GPCRの各分類を検証した。例えば、Gαi共役型レセプターについて、任意のGαi共役型GPCRの標的をカルシウム経路に実質的に変換すること、ならびにその正確な薬理学および公知のアゴニストおよびアンタゴニストの等級順位をさらに保持することが可能であると示された(図10A〜10D)。図10Aで、pHSベクターを用いてCHEM-1細胞にトランスフェクトされたGαi共役型GPCR、SSTR2についてのFLIPR(登録商標)マルチウェル平均オーバーレイリガンド(SST-14)用量応答が示され、図10Bでリガンド(SST-14)用量応答曲線が示されるように、CHEM-1細胞は正確な薬理学を保持する。このことは、示されたアゴニストについてのCHEM-1 FLIPR(登録商標)アッセイにおいて決定された、潜在力(EC50値)および効力(用量応答曲線の頂点)の両方の等級順位が公表された値に一致するという事実により証明される。さらに、別のGPCR 、すなわちC5aR(Gi共役型レセプター)の分析、ならびにC5aRおよびGα15を共トランスフェクトされたCHEM-1細胞およびCHO細胞におけるC5aR FLIPR(登録商標)用量応答とリガンドEC50との比較により、CHEM-1細胞がKi結合値と一致するEC50を与えることが明らかにされた(図10C)。さらに、CHEM-1細胞にトランスフェクトされた別のGPCR、CB1レセプターのFLIPR(登録商標)分析により、Ki結合値と一致するEC50値を有した、完全アゴニスト(WIN55212)および部分アゴニスト(CP55940)に対する用量応答曲線が明らかにされた(図10D)。これらの結果により、リガンドについての正確な値および潜在力が与えられる場合、CHEM-1細胞株はハイスループット構造活性関係(HTSAR)についての優れたツールであることが示される。
【0078】
GPCRカルシウム最適化細胞株(例えば本明細書中に記載されるもの)の別の重要な特徴は、内在性のストア作動性カルシウム放出活性化カルシウム(CRAC)チャネルを介した細胞内カルシウム動員がその後さらに増幅され、カルシウム流入およびFLIPR(登録商標)シグナルが最大となるということである。まだクローニングされていないが、CRACチャネル自体は重要な薬物標的である。しかしながら、多くのCRACチャネルインヒビターが記載されており、入手可能である。内部カルシウム貯蔵の欠乏に加えて、低nM濃度のイオノマイシンもCRACチャネルを活性化し得る。CRACチャネルは、特定の免疫系細胞、特に本明細書中に記載されるような、高レベルの内在性混交Gα16も有するCHEM-2およびCHEM-3において、高く発現される。CRACチャネルは、ER上のIP3レセプターとCRACチャネルとの相互作用を介して、細胞内カルシウム貯蔵により機能する。CRACチャネルはER中のカルシウム濃度を感知し、内部カルシウム貯蔵が欠乏する場合に開く。このことはより多くのカルシウムが細胞内に流入することを可能にし、用量依存的な様式でGPCRを介したカルシウム動員を増幅する(図11)。図11に示されるように、細胞内Ca2+シグナルの増幅は、CHEM-2およびCHEM-3細胞中で内在的に発現される、ストア作動性カルシウム放出活性化カルシウム(CRAC)チャネルの活性化から生じる。
【0079】
CCR7をトランスフェクトされたCHEM-2安定細胞株を使用したFLIPR(登録商標)スクリーニングのさらなる研究を通じて、別のGαi共役型レセプターについてのさらなる検証が示された。CHEM-2細胞中で発現する場合、内在性Gα16およびCRACチャネルの作用によりCCR7 FLIPR(登録商標)シグナルが劇的に増加する一方で、リガンドのEC50は変化しなかった。発明者らは、CCR7をトランスフェクトされたCHEM-2細胞を用いたFLIPR(登録商標)スクリーニングにより同定されたCCR7アンタゴニスト400009が、CCR7を介した走化性も阻害する場合、CCR7/CHEM-2および活性化T細胞の両方を使用して、SARに対する一次FLIPR(登録商標)スクリーニングアッセイおよび二次走化性アッセイとの間の相関において導き出された利点をさらに確認した(図12CおよびD)。
【0080】
さらに、CCR7をトランスフェクトされたCHEM-2細胞を用いたFLIPR(登録商標)スクリーニングにより同定されたCCR7低分子アンタゴニストを用いて、CCR7 FLIPR(登録商標)アッセイと結合アッセイとの間の相関が決定された(図13)。適合度r2は0.9616である(図13)。
【0081】
s共役型レセプターをスクリーニングするためにどのアッセイ形式を選択すべきで、全GPCR標的についての単一アッセイおよびプラットフォームを採用することは可能であるか? Gαs共役型レセプターのスクリーニングについて、内在性経路読出しを使用したcAMPアッセイが最も一般的に使用されるアッセイである。しかし、かかるcAMPアッセイは反応速度アッセイではなく、産生されて蓄積した終点cAMPを測定するのみで、FLIPR(登録商標)アッセイよりも約10〜100倍高価である。しかしながら図14〜16に示されるように、Gαs共役型レセプターはCHEM-1細胞中のGα15またはGα16に共役し、FLIPR(登録商標)アッセイを用いてアッセイされ得る。図14Aおよび14Bは、異なるレセプターについて特定の等級順位の潜在力を有するペプチドアゴニストを使用して、CHEM-1細胞中のGαs共役型CRFレセプターからFLIPR(登録商標)応答への変換およびFLIPR(登録商標)応答の検証を示す。特に、図14Aは、三重のペプチドリガンドを使用した、CHEM-1細胞中のCRF1に対するFLIPR(登録商標)アゴニストアッセイを示す。図14Bは、三重のペプチドリガンド(sauvagine、oCRF、h/r CRF、hUCN、mUCNII)を使用した、CHEM-1細胞中のCRF2に対するFLIPR(登録商標)アゴニストアッセイを示す。CRFレセプターに対するペプチドリガンド(CRF1およびCRF2)は、cAMPアッセイにおいてと同様に、CHEM-1細胞を用いたFLIPR(登録商標)アッセイにおいて同じ等級順位の潜在力のままであり、それによりCHEM-1細胞FLIPR(登録商標)アッセイがGαs共役型レセプターに適していることが示される(図14Aおよび14B)。
【0082】
図15Aは、ヒトCRF1レセプターを発現するCHEM-1細胞におけるcAMPおよびCa2+応答を示すグラフである。cAMP応答およびFLIPR(登録商標)カルシウム応答についてsauvagineのEC50値も示される。図15Bは、ヒトCRF1レセプターを発現するCHO細胞におけるcAMPおよびCa2+応答を示すグラフである。cAMP応答およびFLIPR(登録商標)カルシウム応答についてsauvagineのEC50値も示される。よりハイスループットおよびより低いコストに加えて、Gαs共役型レセプターについてFLIPR(登録商標)アッセイを使用することの別の利点は、産生されて蓄積した終点cAMPを測定するcAMPアッセイと比較して、GPCR活性化の即時的反応速度測定である。図15Aおよび15Bにおいて、異なる細胞株(CHEM-1細胞およびCHO細胞)におけるCRF1にについてcAMP応答とFLIPR(登録商標)Ca2+応答の両方を比較すると、等級順位の潜在力はFLIPR(登録商標)アッセイおよびcAMPアッセイで同じである。図15Aで示されるように、ほとんどのGPCRが混交Gα15に共役させられるCHEM-1発現系において、cAMP応答よりもかなり大きなFLIPR(登録商標)応答があり、FLIPR(登録商標)Ca2+応答について12nMのEC50およびcAMP応答について5nMのEC50を伴う。このことは、同じレセプターを安定に発現するCHO細胞を用いたcAMPアッセイと一致して、混交Gタンパク質共役の欠如のために、CHO細胞においてCa2+流量はない。
【0083】
薬理学およびSARの観点から、Gαs共役型レセプターについてのCHEM細胞FLIPR(登録商標)アッセイの使用の最も重要な利点の一つは、従来のSAR法では見逃され得る、新しい一連のアロステリックモジュレーターを発見する機会である。GPCRは流体構造であると考えられ;共役するGタンパク質および結合するアゴニスト/アンタゴニストに依存する任意のコンホメーションを取り得る。従って、CRF1レセプターを前もってGα15に共役させることはレセプターに代替的なコンホメーションを取らせ得、それによりGαs共役型状態に対して従来のcAMPアッセイを使用することで見逃され得る、新しい薬剤(例えば低分子)のための新しい結合ポケットを開き得る。
【0084】
図16Aは、CHEM-1細胞中のCRF1 FLIPR(登録商標)アンタゴニストアッセイを示す概略図である。低分子化合物はCRF1のアロステリックモジュレーターであり、CRF1をトランスフェクトしたCHEM-1細胞を使用した、FLIPR(登録商標)HTSARにより同定された。このアロステリックモジュレーターが低い結合親和性を有するにもかかわらず、これは潜在的なFLIPR(登録商標)アンタゴニストであり、さらにcAMPアッセイおよびACTH放出アッセイにおいて潜在的であり続ける。図16Aは、GPCR理論の流体構造、ならびに活性(RA)および不活性状態(R)理論の従来の硬性構造を示す概略図である。図16Bは、まずペプチドアンタゴニスト(Astressin)または低分子アンタゴニスト(化合物1、化合物2または化合物3)のいずれかを添加し、その後10nMのCRF1リガンド、sauvagineの添加(約EC50値)を続けて行なわれるFLIPR(登録商標)アンタゴニストアッセイの結果を示す。リガンド誘導カルシウム動員の用量応答阻害をLogMのアンタゴニスト濃度に対してプロットする。
【0085】
CHEM-1細胞系(based) FLIPR(登録商標)アッセイを、GαqおよびGα12共役型レセプターについても検証した。CHEM細胞中の内在性混交Gα15および/またはGα16の補助により、Gαq共役型レセプターのFLIPR(登録商標)応答はCHO細胞中のものよりもさらに大きくなり、リガンド用量応答およびEC50は同じままである(図17)。図17Aおよび17Bに示されるように、Gαqに加えた内在性のGα15を介したリガンドのEC50を変化させることなく、CHEM-1細胞株はFLIPR(登録商標)シグナルを増加させた。図17Cに示されるように、Gαq共役型GnRHレセプターFLIPR(登録商標)アンタゴニストアッセイは、低分子アンタゴニスト(Chem-11221)について正確なSARを示した。図17Dに示すように、Gα12共役型トロンビンレセプターPAR1もまた、CHEM-1細胞FLIPR(登録商標)アッセイ中で作用し、正確な薬理学を示した。CHEM-1細胞を使用した、Gαq共役型レセプター(GnRH)またはGα12共役型レセプター(PAR1)のいずれかについてのFLIPR(登録商標)アゴニストおよびアンタゴニストアッセイを含むこれらの結果により、さらに、本明細書中に記載された細胞(例えばCHEM-1、CHEM-2、CHEM-3)の能力が示され、検証され、種々のGPCR経路(Gαi/o共役型レセプターおよびGαs共役型レセプターのみならず、Gαq共役型レセプターおよびGα12共役型レセプターも)が、EC50(IC50)およびSARの変化を伴わずにFLIPRアッセイについての単純な読出しに変換される。
【0086】
図18に示されるように、適切なリガンドによる、広く種々の発現されたGPCRの活性化は、Bmax値で示されるような強力なカルシウム動員を生じる。
【0087】
要約すると、高レベルの内在性混交Gα15またはGα16およびCRACチャネルを発現する、本発明の天然の細胞(例えばCHEM-1、CHEM-2およびCHEM-3)を用いて、種々の型のGPCR(例えば、Gαi/o共役型GPCR、Gαq共役型GPCR、Gαs共役型GPCRおよびGα12共役型GPCR)をPLCβ/カルシウム経路に共役させる新規の方法、ならびに新規の哺乳動物発現ベクターpHSを明らかにした。この方法はGαq共役型GPCRのみならず、Gαi/o共役型GPCR、Gαs共役型GPCRおよびGα12共役型GPCRについても検証される。
【0088】
本明細書に引用される全刊行物の関連があり、参照によって以前に援用されていない教示は、その全範囲を参照によって本明細書中に援用される。本発明は、その好ましい態様に関して特に示され記載されるが、添付の請求の範囲に包含される発明の範囲から逸脱することなく、形式および詳細においての種々の変更が本明細書中になされ得ることを、当業者は理解しよう。


寄託された微生物に関する表示
(補助紙面)
C.補助表示(続き)
本PCT出願におけるオーストラリアの指定に関して、およびオーストラリア特許規則の規則3.25条3項に従って、出願人はここで、受託番号PTA−6986でAmerican Type Culture Collectionに寄託される生物材料の試料の分譲が、特許の付与前、または本願の消滅、拒絶もしくは取下げ前に、本発明に関係のない当業者、および試料の分譲の請求に指指定された者に実施されるに過ぎないことを通知する。
本PCT出願におけるカナダの指定に関して、出願人はここで、カナダ特許が出願に基づいて発行されるか、または本願が拒絶されるか、または放棄されて回復しないか、または取り下げられるまで、特許庁長官だけが、受託番号PTA−6986でAmerican Type Culture Collectionに寄託され、本願に参照される生物材料の試料の分譲を、長官が指定した独立した専門家に認可することを要請することを国際事務局に通知する。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、非Gαq共役型GPCRをPLCβ/カルシウム経路に共役させる慣用的な方法を示す概略図である。示されるように、1つまたは複数の混交Gα15および/もしくはGα16Gタンパク質またはGqキメラの共トランスフェクションがPLCβを活性化し、IP3生成およびカルシウム動員をもたらし、FLIPR(登録商標)またはエクオリン読み取りを可能にする。
【図2A】図2Aおよび2Bは、非Gq共役型GPCRに対するCa2+応答を促進するようなGα16およびGPCRの共トランスフェクションの制限を示すグラフである。具体的に、FLIPR(登録商標)カルシウム応答を促進するためにチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中で変化させた量のGα16(0.5、1、2、3、4および5μg)およびベクター対照を、Gαi共役型GPCR、C5aRと共にトランスフェクションした。図2AはLogM[C5a]に対してプロットされた最大FLIPR(登録商標)応答のパーセントを示す。
【図2B】図2Aおよび2Bは、非Gq共役型GPCRに対するCa2+応答を促進するようなGα16およびGPCRの共トランスフェクションの制限を示すグラフである。具体的に、FLIPR(登録商標)カルシウム応答を促進するためにチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中で変化させた量のGα16(0.5、1、2、3、4および5μg)およびベクター対照を、Gαi共役型GPCR、C5aRと共にトランスフェクションした。図2Bは、トランスフェクトされたGα16の量に対してプロットされた最大FLIPR(登録商標)応答(%として)を示す。
【図3】図3は、特定の細胞株(即ち、Chem-1(RBL-2H3細胞; ATCCアクセッション番号CRL-2256)、HL60細胞、THP-1細胞、Chem-2(U937細胞; ATCCアクセッション番号CRL-1593.2)、70Z/3細胞、Jurkat細胞、Chem-3細胞(BA/F3細胞; DSMZアクセッション番号ACC300)、Hela細胞、HEK293細胞およびCHO細胞)に関してGα15および/またはGα16RT-PCR産物のレベルを示すエチジウム染色アガロースゲルである。
【図4】図4は、哺乳類動物発現ベクターpHSを示す概略図である。pBluescript(登録商標)由来プラスミドであるpHSは、非CMVプロモーター(脾臓病巣形成ウイルス(SFFV)LTR)および小胞体(ER)輸送シグナルを含み、GPCRの高いレベルの発現を提供する。
【図5A】図5Aは、pcDNA3哺乳類動物発現ベクターを用いてCHO細胞中で発現されたCXCR2-GFP融合タンパク質の発現を示す共焦点顕微鏡蛍光画像である。
【図5B】図5Bは、pHS発現ベクターを用いてCHEM-1細胞中で発現されたCXCR2-GFP融合タンパク質の発現を示す共焦点顕微鏡蛍光画像である。
【図6A】図6Aは、pcDNA3哺乳類動物発現ベクターを用いてCHO細胞中で発現されたCXCR2-GFP融合タンパク質の発現を示す蛍光プロット(FACs分析)である。
【図6B】図6Bは、pHS発現ベクターを用いてCHEM-1細胞中で発現されたCXCR2-GFP融合タンパク質の発現を示す蛍光プロット(FACs分析)である。
【図7A】図7Aは、哺乳類動物発現ベクターpcDNA3にコードされるCXCR2でトランスフェクトされたCHO細胞の膜に対するCXCR2膜放射性リガンド飽和結合を示すグラフである。具体的に、5μgのGPCR膜調製物を、過剰量の反応しない(cold)リガンドGroαの非存在または存在下で増大する濃度(0〜2 nM)の125I標識リガンドGroα(PerkinElmer, Wellesley, MA)と共にインキュベートした。図7Aに示されるように、KDは0.1484であり、Bmaxは2756 fmol/mgであった。
【図7B】図7Bは、発現ベクターpHSにコードされるCXCR2でトランスフェクトされたCHEM-1細胞の膜に対するCXCR2膜放射性リガンド飽和結合を示すグラフである。具体的に、5μgのGPCR膜調製物を、過剰量の反応しないリガンドGroαの非存在または存在下で増大する濃度(0〜2 nM)の125I標識リガンドGroα(PerkinElmer, Wellesley, MA)と共にインキュベートした。図7Bに示されるように、KDは0.2787であり、Bmaxは51122 fmol/mgであった。
【図8A】図8Aは、哺乳類動物発現ベクターpcDNA3にコードされるCXCR2でトランスフェクトされたCHO細胞の膜に対する放射性リガンド(125I標識Groα)競合結合アッセイを示すグラフである。具体的に、96ウェルプレート中で5μgのGPCR膜調製物を、0.5nM(約Ki値)の125I標識リガンドGroα(PerkinElmer, Wellesley, MA)および増大する濃度(1x10-12〜1x10-6)の反応しない競合物(GroαまたはIL-8)と共にインキュベートした。室温で2時間のインキュベーションの後、膜を96ウェルGF/Cフィルタープレートに回収し、乾燥し、マイクロベータカウンターを用いてカウントした。示されるように、慣用的なpcDNA3/CHO細胞発現系は、2部位結合曲線を示した膜を生じた。
【図8B】図8Bは、哺乳類動物発現ベクターpcDNA3にコードされるCXCR2でトランスフェクトされたCHEM-1細胞の膜に対する放射性リガンド(125I標識Groα)競合結合アッセイを示すグラフである。具体的に、96ウェルプレート中で5μgのGPCR膜調製物を、0.5nM(約Ki値)の125I標識リガンドGroα(PerkinElmer, Wellesley, MA)および増大する濃度(1x10-12〜1x10-6)の反応しない競合物(GroαまたはIL-8)と共にインキュベートした。室温で2時間のインキュベーションの後、膜を96ウェルGF/Cフィルタープレートに回収し、乾燥し、マイクロベータカウンターを用いてカウントした。示されるように、pHS/CHEM-1細胞発現系は、1部位結合曲線を示した膜を生じた。
【図9】図9Aは、百日咳毒素の非存在下(-PTX)でHL60好中球中の内在性CXCR2を介したリガンド(Groα)誘導カルシウム動員を示すグラフである。具体的に、細胞に、レシオ測定可能な(ratiometric)蛍光カルシウム色素Indo-1(Molecular Probes/InVitrogen, Carlsbad, CA)を負荷し、HBSSバッファ(Ca2+およびMg2+を含む)中のプルロニックF-127およびプロベネシドと共に暗所の37℃で30分インキュベートした。細胞を次にHBSSで2度洗浄し、リガンド添加の際に蛍光計で単一キュベットにおけるカルシウム動員をアッセイした。TX-100=細胞の全カルシウム貯蔵を放出する試薬。図9Bは、百日咳毒素の存在下(+PTX; 100ng/ml)でHL60 好中球中の内在性CXCR2を介したリガンド(Groα)誘導カルシウム動員を示すグラフである。具体的に、細胞に、レシオ測定可能な蛍光カルシウム色素Indo-1(Molecular Probes/InVitrogen, Carlsbad, CA)を負荷し、HBSSバッファ(Ca2+およびMg2+を含む)中のプルロニックF-127およびプロベネシドと共に暗所の37℃で30分インキュベートした。細胞を次にHBSSで2度洗浄し、リガンド添加の際に蛍光計で単一キュベットにおけるカルシウム動員をアッセイした。TX-100=細胞の全カルシウム貯蔵を放出する試薬。図9Cは、ドミナントネガティブGα15の存在下(DNGα15; 2μg/ウェル)でHL60 好中球中の内在性CXCR2を介したリガンド(Groα)誘導カルシウム動員を示すグラフである。具体的に、細胞に、2μg/ウェルのドミナントネガティブGα15(DNGα15)を一過的にトランスフェクションし、リガンド添加前にPTXと共にプレインキュベートした。TX-100=細胞の全カルシウム貯蔵を放出する試薬。図9Dは、百日咳毒素の非存在下(-PTX)でCXCR2トランスフェクションCHO細胞によるリガンド(Groα)誘導カルシウム動員を示すグラフである。具体的に、細胞に、レシオ測定可能な蛍光カルシウム色素Indo-1(Molecular Probes/InVitrogen, Carlsbad, CA)を負荷し、HBSSバッファ(Ca2+およびMg2+を含む)中のプルロニックF-127およびプロベネシドと共に暗所の37℃で30分インキュベートした。細胞を次にHBSSで2度洗浄し、リガンド添加の際に蛍光計で単一キュベットにおけるカルシウム動員をアッセイした。図9Eは、百日咳毒素の存在下(+PTX; 100ng/ml)でCXCR2トランスフェクションCHO細胞によるリガンド(Groα)誘導カルシウム動員を示すグラフである。具体的に、細胞に、レシオ測定可能な蛍光カルシウム色素Indo-1(Molecular Probes/InVitrogen, Carlsbad, CA)を負荷し、HBSSバッファ(Ca2+およびMg2+を含む)中のプルロニックF-127およびプロベネシドと共に暗所の37℃で30分インキュベートした。細胞を次にHBSSで2度洗浄し、リガンド添加の際に蛍光計で単一キュベットにおけるカルシウム動員をアッセイした。図9Fは、ドミナントネガティブGα15(DNGα15; 2μg/ウェル)の存在下でCXCR2トランスフェクションCHO細胞によるリガンド(Groα)誘導カルシウム動員を示すグラフである。具体的に、細胞に、2μg/ウェルのドミナントネガティブGα15(DNGα15)を一過的にトランスフェクションし、リガンド添加前にPTXと共にプレインキュベートした。図9Gは、百日咳毒素の非存在下(-PTX)でCXCR2トランスフェクションCHEM-1細胞によるリガンド(Groα)誘導カルシウム動員を示すグラフである。具体的に、細胞に、レシオ測定可能な蛍光カルシウム色素Indo-1(Molecular Probes/InVitrogen, Carlsbad, CA)を負荷し、HBSSバッファ(Ca2+およびMg2+を含む)中のプルロニックF-127およびプロベネシドと共に暗所の37℃で30分インキュベートした。細胞を次にHBSSで2度洗浄し、リガンド添加の際に蛍光計で単一キュベットにおけるカルシウム動員をアッセイした。図9Hは、百日咳毒素の存在下(+PTX; 100ng/ml)でCXCR2トランスフェクションCHEM-1細胞によるリガンド(Groα)誘導カルシウム動員を示すグラフである。具体的に、細胞に、レシオ測定可能な蛍光カルシウム色素Indo-1(Molecular Probes/InVitrogen, Carlsbad, CA)を負荷し、HBSSバッファ(Ca2+およびMg2+を含む)中のプルロニックF-127およびプロベネシドと共に暗所の37℃で30分インキュベートした。細胞を次にHBSSで2度洗浄し、リガンド添加の際に蛍光計で単一キュベットにおけるカルシウム動員をアッセイした。図9Iは、ドミナントネガティブGα15(DNGα15; 2μg/ウェル)の存在下でCXCR2トランスフェクションCHEM-1細胞によるリガンド(Groα)誘導カルシウム動員を示すグラフである。具体的に、細胞に、2μg/ウェルのドミナントネガティブGα15(DNGα15)を一過的にトランスフェクションし、リガンド添加前にPTXと共にプレインキュベートした。
【図10A】図10Aは、pHSベクターを用いてCHEM-1細胞にトランスフェクトされたGαi共役型GPCR、SSTR2に対するFLIPR(登録商標)マルチウェルの平均オーバーレイリガンド(SST-14)用量応答を示すグラフである。
【図10B】図10Bは、pHSベクターを用いてCHEM-1細胞にトランスフェクトされたGi共役型GPCR、SSTR2に対するFLIPR(登録商標)リガンド(SST-14)用量応答を示すグラフである。
【図10C】図10Cは、pHSベクターを用いたC5aRトランスフェクションCHEM-1細胞(「C5aR/Chem-1」と呼ぶ)およびpcDNA3ベクターを用いたGα15およびC5aRの共トランスフェクションCHO細胞(「C5aR+Gα15/CHO」と呼ぶ)におけるC5aR FLIPR(登録商標)用量応答およびリガンドEC50を比較するグラフである。図10Cに示されるように、CHEM-1細胞は、Ki結合値と一致するEC50値を与える。
【図10D】図10Dは、pHSベクターを用いたCB-1トランスフェクションCHEM-1細胞に対するアゴニスト誘導CB1レセプターFLIPR(登録商標)用量応答を示すグラフである。示されるように、完全アゴニスト(WIN55212)および部分アゴニスト(CP55940)に対する用量応答が示され、Ki結合値と一致するEC50値を与える。
【図11】図11は、CHEM-2細胞およびCHEM-3細胞中で内在的に発現された保存機能(store-operated)カルシウム放出活性化カルシウム(Calcium Release Activated Calcium)(CRAC)チャネルの活性化によって細胞内Ca2+シグナルの増幅を示す概略図である。APB=IP3R特異的インヒビター;GSK96365=CRACチャネルインヒビター。
【図12A】図12Aは、CCR7トランスフェクションCHEM-2細胞に対するリガンド(MIP-3β)誘導CCR-7媒介FLIPR(登録商標)用量応答を示すFLIPR(登録商標)ミニグラフのオーバーレイを示すグラフである。
【図12B】図12Bは、混交Gタンパク質共役およびCRACチャネルの有り無しで様々な細胞株に対するリガンド(MIP-3β)誘導CCR7媒介FLIPR(登録商標)用量応答を示すグラフである。CCR7/Chem-2-Gα16/CRAC=内在性Gα16およびCRACチャネルを発現するCCR7トランスフェクションCHEM-2細胞;PriessB細胞- Gα16共役=Gα16を発現するがCRACチャネルは発現しないPriessB細胞で発現される内在性CCR7;PHA T細胞-Gi/βγ共役=Gαiから解離したGβγサブユニットによって媒介されるが、任意のGα16またはCRACチャネルなしにT細胞で発現される内在性CCR7;CCR7/HEK293-Gi/βγ共役= Gαiから解離したGβγサブユニットによって媒介されるが、任意のGα16またはCRACチャネルがないCCR7トランスフェクションHEK293細胞。
【図12C】図12Cは、低分子アンタゴニスト(400009)によるリガンド(MIP-3β)誘導CCR-7媒介カルシウム流入の阻害を示すグラフである。400009=CCR7低分子アンタゴニスト;活性化T細胞=フィトヘマグルチン(PHA)で活性化されるT細胞。
【図12D】図12Dは、低分子アンタゴニスト(400009)によるリガンド(MIP-3β)誘導CCR-7媒介化学走性の阻害を示すグラフである。400009=CCR7低分子アンタゴニスト;活性化T細胞=フィトヘマグルチン(PHA)で活性化されるT細胞。
【図13A】図13Aは、CCR7トランスフェクションCHEM-2細胞を用いたFLIPR(登録商標)スクリーニングから同定された様々な低分子アンタゴニストに対するIC50値およびKi値を示す表である。
【図13B】図13Bは、CCR7アンタゴニストに対する結合アッセイからのKi値およびFLIPR(登録商標)アッセイからのIC50値の相関を示すグラフである。適合度、r2は0.9616である。
【図14A】図14Aは、3つのペプチドリガンドを用いたCHEM-1細胞中のCRF1に対するFLIPR(登録商標)アゴニストアッセイを示すグラフである。
【図14B】図14Bは、特定のCRF1アゴニスト(sauvagine、oCRF、r/hCRF、hUCN、mUCNII)に対するCRF1用量応答曲線およびEC50値を示すグラフおよび表である。
【図14C】図14Cは、3つのペプチドリガンドを用いたCHEM-1細胞中のCRF2に対するFLIPR(登録商標)アゴニストアッセイを示すグラフである。
【図14D】図14Dは、特定のCRF1アゴニスト(sauvagine、oCRF、r/hCRF、hUCN、mUCNII)に対するCRF2用量応答曲線およびEC50値を示すグラフおよび表である。
【図15A】図15Aは、ヒトCRF1をトランスフェクションされたCHEM-1細胞に対するcAMP(左Y軸)およびFLIPR(登録商標)Ca2+(右Y軸)応答の比較を示すグラフである。CHEM-1発現系で示されるように、大半のレセプターが混交Gα15と共役することを余儀なくされる場合、cAMP応答(4.9nMのEC50)よりも非常に大きいFLIPR(登録商標)応答(12nMのEC50)が存在する。
【図15B】図15Bは、ヒトCRF1をトランスフェクションされたCHO細胞に対するcAMP(左Y軸)およびFLIPR(登録商標) Ca2+(右Y軸)応答の比較を示すグラフである。CHO発現系で示されるように、cAMPアッセイはcAMP応答に対して同様のEC50値(8.4nMのEC50)をもたらすが、混交Gタンパク質の共役がないためにCHO細胞のCa流入を示さなかった。
【図16A】図16Aは、GPCRが流動性であると現在信じられているが、むしろ活性(RA)または不活性(R)状態を有する固定構造であることを示す概略図である。
【図16B】図16Bは、CRF1アンタゴニストアッセイを示すグラフである。FLIPRアンタゴニストアッセイはペプチドアンタゴニスト(アストレシン(Astressin))または低分子アンタゴニスト(化合物1、化合物2または化合物3)のいずれかを添加し、続いて10nMのCRF1リガンドSauvagine(約EC50値)を添加することで実施された。化合物1は、CRF1/CHEM-1細胞を用いたFLIPR(登録商標)ハイスループット構造活性相関(HTSAR)により同定されたCRF1のアロステリックなモジュレーターであった。
【図17A】図17Aは、pcDNA3ベクターを用いてGq共役型オレキシン(orexin)レセプター(HCR2)をトランスフェクションされたHEK293細胞におけるオレキシン用量応答を示すグラフである。
【図17B】図17Bは、pHSベクターを用いてGq共役型オレキシンレセプター(HCR2)をトランスフェクションされたCHEM-1細胞におけるオレキシン用量応答を示すグラフである。示されるように、HCR2/pHS/CHEM-1細胞株は、Gqに加えて内在性Gα15を介したリガンドのEC50を変化させることなくFLIPR(登録商標)シグナルを増大した。
【図17C】図17Cは、Chem-11221に対して正確なSARを示すGnRHアンタゴニスト(Chem-11221)アッセイを示すグラフである。
【図17D】図17Dは、CHEM-1細胞FLIPR(登録商標)アッセイにおける正確な薬理学も示す、Gα12共役型トロンビンレセプター(PAR1)FLIPR(登録商標)用量応答を示すグラフである。
【図18】図18は、pcDNA3.1ベクターまたはpHSベクターのいずれかを用いて発現させた様々なGPCR(CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CCR5、CCR6、CCR7、C3aRおよびC5aR)に対するBmax値を示すグラフである。示されるように、すべてのGPCRは、pcDNA3.1ベクターを用いて発現される場合よりもpHSベクターを用いて発現される場合に非常に高いBmaxを有した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上の内在性混交Gタンパク質、およびGタンパク質共役型レセプター(GPCR)をコードする外来性核酸配列を含む細胞であって、一つ以上のGタンパク質および該GPCRを高レベルで発現する細胞。
【請求項2】
該GPCR発現の高レベルが約100,000レセプター/細胞より高い、請求項1記載の細胞。
【請求項3】
該GPCR発現の高レベルが約1pmol/mgのタンパク質より高いBmaxである、請求項1記載の細胞。
【請求項4】
該GPCR発現の高レベルが、対応する非トランスフェクト細胞と比較して該GPCRの発現の約10倍増加よりも高い、請求項1記載の細胞。
【請求項5】
対照細胞と比較して、該高レベルのGタンパク質発現が、該Gタンパク質の発現の約10倍の増加よりも大きい、請求項1記載の細胞。
【請求項6】
該対照細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項5記載の細胞。
【請求項7】
内在性カルシウム放出活性化カルシウム(CRAC)チャネルをさらに含む、請求項1記載の細胞。
【請求項8】
該細胞が該CRACチャネルを介して細胞外カルシウムを取り込む、請求項7記載の細胞。
【請求項9】
該一つ以上の内在性混交Gタンパク質が、Gα15、Gα16およびその組合せからなる群より選択されるαサブユニットを含む、請求項1記載の細胞。
【請求項10】
該GPCRがGαqファミリーのGタンパク質に結合する、請求項1記載の細胞。
【請求項11】
該GPCRが、Gαi/oファミリーのGタンパク質、GαsファミリーのGタンパク質、Gα12ファミリーのGタンパク質およびその組合せからなる群より選択されるGタンパク質に結合する、請求項1記載の細胞。
【請求項12】
該細胞が、リガンドの該GPCRへの結合に応答して細胞内遊離カルシウムの増加を示す、請求項1記載の細胞。
【請求項13】
該細胞が哺乳動物細胞である、請求項1記載の細胞。
【請求項14】
該細胞が、
i) American Type Culture Collection (ATCC) に受託番号CRL-2256で寄託された、CHEM-1(RBL-2H3)細胞;
ii) American Type Culture Collection (ATCC) に受託番号CRL-1593.2で寄託された、CHEM-2(U937)細胞;および
iii) Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkuturen GmbH (DSMZ) に受託番号ACC300で寄託された、CHEM-3(BA/F3)細胞
からなる群より選択される、請求項1記載の細胞。
【請求項15】
カルシウム感受性分子をさらに含む、請求項1記載の細胞。
【請求項16】
該カルシウム感受性分子がFluo-3、Fluo-4、Indo-1、Fura-2、Rhod-2、オレゴングリーンおよびカルシウムグリーン-2からなる群より選択される、請求項15記載の細胞。
【請求項17】
該カルシウム感受性分子がカルシウム感受性検出可能タンパク質である、請求項15記載の細胞。
【請求項18】
該カルシウム感受性検出可能タンパク質が生物発光性タンパク質である、請求項17記載の細胞。
【請求項19】
該生物発光性タンパク質が、ルシフェラーゼ、エクオリン、アポエクオリンおよび前記いずれかの誘導体または変異体からなる群より選択される、請求項18記載の細胞。
【請求項20】
該カルシウム感受性検出可能タンパク質が外来導入核酸にコードされる、請求項17記載の細胞。
【請求項21】
Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)をコードする該核酸配列がプラスミド中に存在する、請求項1記載の細胞。
【請求項22】
該プラスミドが、American Type Culture Collection (ATCC) に受託番号PTA-6986で寄託されたpHSベクターである、請求項21記載の細胞。
【請求項23】
該核酸配列が、該GPCRに作動可能に連結される非CMVプロモーターを含む、請求項1記載の細胞。
【請求項24】
該核酸配列が、小胞体(ER)輸送シグナルをさらに含む、請求項1記載の細胞。
【請求項25】
該細胞が付着細胞である、請求項1記載の細胞。
【請求項26】
該細胞が非付着細胞である、請求項1記載の細胞。
【請求項27】
該細胞が1000 GPCR/細胞未満で内在的に発現される、請求項1記載の細胞。
【請求項28】
カルシウム感受性検出可能タンパク質をコードする該外来導入核酸、およびGPCRをコードする該核酸配列がプラスミド中に存在する、請求項20記載の細胞。
【請求項29】
American Type Culture Collection (ATCC) に受託番号PTA-6986で寄託されたpHSベクター。
【請求項30】
American Type Culture Collection (ATCC) に受託番号PTA-6986で寄託されたpHSベクターをトランスフェクトされた細胞。
【請求項31】
1) a) 一つ以上の内在性混交Gタンパク質、およびGタンパク質共役型レセプター(GPCR)をコードする外来性核酸配列を含む細胞、ここで該一つ以上のGタンパク質および該GPCRが高レベルで発現される;および
b) 試験薬剤
を合わせる工程;ならびに
2) 該GPCRの活性を検出する工程
を含み、対照に対する該GPCRの活性の増加は、該試験薬剤が該GPCRの活性を増加させることを示す、Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)の活性を増加させる薬剤を同定する方法。
【請求項32】
該薬剤がアゴニストである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
該GPCRの活性の該増加が細胞内遊離カルシウムの増加である、請求項31記載の方法。
【請求項34】
該GPCRの活性の該増加が、Fluorometric Imaging Plate Reader(FLIPR(登録商標))またはエクオリン技術を用いて検出される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
1) a) 一つ以上の内在性混交Gタンパク質、およびGタンパク質共役型レセプター(GPCR)をコードする外来性核酸配列を含む細胞、ここで該一つ以上のGタンパク質および該GPCRが高レベルで発現される;および
b) 試験リガンド
を合わせる工程;ならびに
2) 該GPCRの活性を検出する工程
を含み、対照に対する該GPCRの活性の増加は、該試験リガンドが該GPCRのリガンドであることを示す、Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)のリガンドを同定する方法。
【請求項36】
該GPCRがオーファンGPCRである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
1) a) 一つ以上の内在性混交Gタンパク質、およびGタンパク質共役型レセプター(GPCR)をコードする外来性核酸配列を含む細胞、ここで該一つ以上のGタンパク質および該GPCRが高レベルで発現される;
b) 該GPCRを活性化する薬剤;および
c) 試験薬剤
を合わせる工程;ならびに
2) 該GPCRの活性を検出する工程
を含み、対照に対する該GPCRの活性の変化は、該試験薬剤が該GPCRの活性を調節することを示す、Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)の活性を調節する薬剤を同定する方法。
【請求項38】
該試験薬剤が該GPCRの活性を減少させる、請求項37記載の方法。
【請求項39】
該試験薬剤が該GPCRの活性を増加させる、請求項37記載の方法。
【請求項40】
該GPCRの活性の調節が細胞内遊離カルシウムの変化である、請求項37記載の方法。
【請求項41】
該GPCRの活性の調節がFluorometric Imaging Plate Reader(FLIPR(登録商標))またはエクオリン技術を用いて検出される、請求項40記載の方法。
【請求項42】
細胞内でGタンパク質共役型レセプター(GPCR)を発現させる方法であって、該細胞に、該GPCRをコードする核酸配列をトランスフェクトする工程を含み、該細胞が一つ以上の内在性混交Gタンパク質を含み、該一つ以上のGタンパク質および該GPCRが高レベルで発現される、方法。
【請求項43】
該GPCRをコードする該核酸配列が、American Type Culture Collection (ATCC) に受託番号PTA-6986で寄託されたpHSベクター中に存在する、請求項41記載の方法。
【請求項44】
1) a) 一つ以上の内在性混交Gタンパク質、およびGタンパク質共役型レセプター(GPCR)をコードする外来性核酸配列を含む細胞であって、ここで該一つ以上のGタンパク質および該GPCRが高レベルで発現される;および
b) 該GPCRを活性化する薬剤
を合わせる工程、ならびに
2) 該細胞中の細胞内カルシウムを測定する工程
を含む、細胞中の細胞内カルシウムの変化を測定する方法。
【請求項45】
1) a) 一つ以上の内在性混交Gタンパク質、およびGタンパク質共役型レセプター(GPCR)をコードする外来性核酸配列を含む細胞、ここで
i) 該一つ以上のGタンパク質および該GPCRが高レベルで発現され、
ii) 該一つ以上のGタンパク質が、Gαi/oファミリーのGタンパク質、GαsファミリーのGタンパク質およびGα12ファミリーのGタンパク質からなる群より選択される、ならびに
b) 該GPCRを活性化する薬剤
を、該GPCRが活性化される条件下で合わせる工程
を含む、Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)をPLCβ経路に共役させる方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【図18】
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【公表番号】特表2008−518600(P2008−518600A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539219(P2007−539219)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/039167
【国際公開番号】WO2006/050214
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(507140793)ケミコン インターナショナル,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】