GDNFおよびBDNFを中枢神経系へ送達するための融合タンパク質
本発明は、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、またはそれらの類似体もしくは断片などの関係分子と連結された、血液-脳関門を横切る担体として作用するAngiopep-2などのペプチドベクターを含む化合物に関する。本発明の化合物は、ニューロンの生存または成長が望まれる疾患、例えば、パーキンソン病などの神経変性疾患、または筋萎縮性側索硬化症を治療するために用いることができる。本化合物を用いて治療できる他の疾患には統合失調症およびうつ病が含まれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドベクターおよびグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)または脳由来神経栄養因子(BDNF)を含むコンジュゲートならびにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ニューロンの喪失または障害に関わる疾患は重篤な症状であり、世界中で数百万人が患っている。GDNFなどの治療法は神経変性疾患、例えば、パーキンソン病の治療に有望であるものの、本発明以前、かかる治療薬の脳への送達は活性薬が血液脳関門を横切ることができないため困難であった。実際、パーキンソン病に対するGDNF治療法に関わる従来の臨床試行は薬剤の脳中への直接注入の使用を必要とし、また筋萎縮性側索硬化症治療用のBDNF試行は薬剤のくも膜下腔内注入を必要とした。これらの方法は煩雑かつ困難でありうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ニューロンの生存または成長の増大が有利である広範囲の様々な疾患に対する治療の必要性があるので、血液脳関門を横切る能力をもつGDNFおよびBDNF系治療薬が切望される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、このほど、GDNF、BDNFまたは関係分子とコンジュゲートしたペプチドベクターを含む化合物を開発した。これらの化合物を、GDNFまたはBDNF配列とAngiopep-2配列を含む融合タンパク質によって例示する。ある特定の実施形態において、これらの化合物は血液脳関門を横切ることができ、従って、これらは神経変性疾患またはニューロン損傷を有する被験者を治療する治療薬として有用である。
【0005】
従って、第一の態様において、本発明は式:
A-X-B
[式中、Aはペプチドベクターであり;Bは(i)GDNF、少なくとも1つのGDNF活性を有するその断片、もしくはGDNF類似体(例えば、本明細書に記載のいずれか);または(ii)BDNF、少なくとも1つのBDNF活性を有するその断片、もしくはBDNF類似体(例えば、本明細書に記載のいずれか)と実質的に同一のポリペプチドであり;そしてXはAをBと接続するリンカー(例えば、本明細書に記載のいずれか)である]を含む化合物を特徴とする。本化合物は血液脳関門を(例えば、効率的に)横切ることができる。本化合物はGDNFの成熟型(例えば、アイソフォーム1のアミノ酸118〜211)またはBDNFの成熟型(例えば、アイソフォームAのアミノ酸129〜247)を含んでもよい。GDNF断片はアイソフォーム1のアミノ酸78〜211を含むかまたはそれであってもよい。本化合物はさらにタグ、例えばHisタグまたは切断部位、例えばトロンビン切断部位を含んでもよい。ある特定の実施形態において、本化合物は図2または図14に示した構造を有する。ある特定の実施形態において、Xはペプチド結合であるかまたはXは少なくとも1つのアミノ酸であり、ここで、AとBはそれぞれXとペプチド結合により共有結合されている。ある特定の実施形態において、リンカーは柔軟なリンカー(例えば、(GGGGS)n、ここでnは1、2、または3である)、硬いリンカー(例えば、PAPAPおよび(PT)nP、ここでnは2、3、4、5、6、または7である)、またはα-ヘリックスリンカー(例えば、A(EAAAK)nA、ここでnは1、2、3、4、または5である)。ペプチドベクターはGDNF、BDNF、または関係分子のNまたはC末端に存在してもよい。本発明はまた、化合物(ここで、Xはペプチド結合、アミノ酸、またはペプチドリンカーである)をコードする核酸分子であることを特徴とする。核酸はベクターの一部分であってもよく、そして核酸はプロモーターと機能しうる形で連結されていてもよい。本発明はまた、ベクターがコードするするポリペプチドを細胞内で発現することにより化合物を作製し、かつそのポリペプチドを精製する方法も特徴とする。本発明はまた、前記化合物を固体支持体上で合成することにより本化合物を作製する方法も特徴とする。
【0006】
他の態様において本発明は、本発明の化合物の有効量を被験体に投与することにより、神経変性障害またはニューロンの損傷もしくは障害を有する被験体(例えば、ヒト)を治療する(例えば、予防的に)方法を特徴とする。神経変性障害は、ポリグルタミン鎖増大障害、脆弱X症候、脆弱XE精神遅滞、フリードリッヒ失調症、筋緊張性ジストロフィー、脊髄小脳失調症8型、および脊髄小脳失調症12型、アレキサンダー病、アルパーズ病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、毛細血管拡張性運動失調、バッテン病(シュピールマイアー-フォークト-シェーグレン-バッテン病)、キャナヴァン病、コケーン症候群、皮質基底変性症、クロイツフェルト‐ヤーコブ病、虚血脳卒中、クラッベ病、レーヴィ小体認知症、多発性硬化症、多系統萎縮症、パーキンソン病、ペリツェーウス-メルツバッヒャー病、ピック病、原発性側索硬化症、レフサム病、サンドホッフ病、シルダー病、脊髄損傷、脊髄筋萎縮、スティール・リチャードソン・オルスゼフスキー病、および脊髄ろうからなる群より選択される。ポリグルタミン反復性疾患は、ハンチントン病(HD)、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、ケネディー病(脊髄延髄性筋萎縮とも呼ばれる)、または1型、2型、3型(マチャド-ジョセフ病)、6型、7型、および17型)からなる群より選択される脊髄小脳失調症でありうる。ニューロン障害は虚血性脳卒中、出血性脳卒中、または脊髄損傷によって起こりうる。本発明の化合物を用いて治療できる(例えば、予防的に)他の疾患にはうつ病および統合失調症が含まれる。
【0007】
上記態様の特定の実施形態において、AはAngiopep-2(配列番号97)であり、Xはペプチド結合であり;そしてBはhGDNF78-211であり、ここでAはBのN末端とXを介して接続されるか;AはAngiopep-2(配列番号97)であり、Xはペプチド結合であり;そしてBはhGDNF78-211であり、ここでAはBのC末端とXを介して接続されるか;Aは逆転Angiopep-2(配列番号117)であり、Xはペプチド結合であり;そしてBはhGDNF78-211であり、ここでAはBのN末端とXを介して接続されるか;AはAngiopep-2(配列番号97)であり、Xは(GGGGS)2であり;そしてBはhGDNF78-211であり、ここでAはBのN末端とXを介して接続されるか;AはAngiopep-2(配列番号97)であり、XはPAPAPであり;そしてBはhGDNF78-211であり、ここでAはBのN末端とXを介して接続されるか;またはAはAngiopep-2(配列番号97)であり、XはA(EAAAK)2Aであり;そしてBはhGDNF78-211であり、ここでAはBのN末端とXを介して接続される。
【0008】
上記態様のいずれにおいても、ペプチドベクターは表1に掲げた配列、またはその断片のいずれかと実質的に同一なポリペプチドであってよい。ある特定の実施形態において、ペプチドベクターはAngiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(配列番号97)、Angiopep-3(配列番号107)、Angiopep-4a(配列番号108)、Angiopep-4b(配列番号109)、Angiopep-5(配列番号110)、Angiopep-6(配列番号111)、Angiopep-7(配列番号112)、または逆転Angiopep-2(配列番号117)の配列を有する。本発明のペプチドベクターまたは化合物は、特定の細胞型(例えば、肝臓、肺、腎臓、脾臓、および筋肉のうちの任意の1、2、3、4、または5つ)中に効率よく輸送することができるかまたは哺乳動物のBBBを効率よく横切ることができる(例えば、Angiopep-1、-2、-3、-4a、-4b、-5、および-6)。他の実施形態において、このペプチドベクターまたは化合物は特定の細胞型(例えば、肝臓、肺、腎臓、脾臓、および筋肉のうちの任意の1、2、3、4、または5つ)中に効率よく進入することはできるが、BBBを効率よく横切らない(例えば、Angiopep-7を含むコンジュゲート)。ペプチドベクターは任意の長さ、例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、25、35、50、75、100、200、または500アミノ酸、またはこれらの間の任意の範囲であってもよい。ある特定の実施形態において、ペプチドベクターは長さが10〜50アミノ酸である。ポリペプチドは組換え遺伝技法または化学合成により作製することができる。
【0009】
表1:例示のペプチドベクター
【表1】
【0010】
ポリペプチド番号5、67、76、および91はそれぞれ配列番号5、67、76、および91の配列を含み、かつC末端でアミド化されている。ポリペプチド番号107、109、および110はそれぞれ配列番号97、109、および110の配列を含み、かつN末端でアセチル化されている。
【0011】
以上の態様のいずれにおいても、ペプチドベクターは式:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19
[式中、X1〜X19(例えば、X1〜X6、X8、X9、X11〜X14、およびX16〜X19)は、独立して、任意のアミノ酸(例えば、天然アミノ酸、例えばAla、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、およびVal)であるかまたは不在でありかつX1、X10、およびX15の少なくとも1つ(例えば、2つまたは3つ)はアルギニンである]を有するアミノ酸配列を含みうる。いくつかの実施形態において、X7はSerもしくはCysであるか;またはX10およびX15はそれぞれ独立してArgもしくはLysである。いくつかの実施形態において、X1〜X19の残基は、配列番号:1〜105および107〜116のいずれか1つのアミノ酸配列のいずれか(例えば、Angiopep-1、Angiopep-2、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7)と実質的に同一である。いくつかの実施形態において、アミノ酸X1〜X19の少なくとも1つ(例えば、2、3、4、または5つ)はArgである。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは1以上のさらなるシステイン残基をポリペプチドのN末端、ポリペプチドのC末端、または両方に有する。
【0012】
以上の態様の任意のある特定の実施形態において、ペプチドベクターまたはGDNF、BDNF、または関係分子は改変されている(例えば、本明細書に記載の通り)。ペプチドまたはポリペプチドはアミド化、アセチル化または両方の改変が行われていてもよい。かかる改変はポリペプチドのアミノまたはカルボキシ末端にあってもよい。ペプチドまたはポリペプチドはまた、本明細書に記載のポリペプチドの任意のペプチドミメチック(例えば、本明細書に記載のもの)を含んでもよい。ペプチドまたはポリペプチドは(例えば、システイン残基を介するジスルフィド結合により形成された)多量体、例えば、二量体であってもよい。
【0013】
ある特定の実施形態において、ペプチドベクターまたはGDNF、BDNF、または関係分子は、少なくとも1つのアミノ酸置換(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12置換)、挿入、または欠失をもつ本明細書に記載のアミノ酸配列を有するか、または本明細書に記載のアミノ酸配列と実質的に同一である。ペプチドまたはポリペプチドは、例えば、1〜12、1〜10、1〜5、または1〜3アミノ酸置換、例えば、1〜10(例えば、〜9、8、7、6、5、4、3、2)アミノ酸置換を含有してもよい。アミノ酸置換(複数のアミノ酸置換を含む)は保存的であってもまたは非保存的であってもよい。例えば、ペプチドベクターは、配列番号1、Angiopep-1、Angiopep-2、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7の任意のアミノ酸配列の位置1、10、および15に対応する1、2、もしくは3つの位置に1つのアルギニンを有してもよい。ある特定の実施形態において、BDNF、GDNF、または関係分子は任意の位置にシステインまたはリシン置換または付加(例えば、NまたはC末端位置におけるリシン置換)を有してもよい。
【0014】
以上の態様のいずれかにおいて、本化合物は特定して、配列番号:1〜105および107〜116(例えば、Angiopep-1、Angiopep-2、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7)のいずれかを含むかまたはから成るポリペプチドを除外してもよい。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドおよび化合物は配列番号:102、103、104、および105のポリペプチドを除外する。
【0015】
「断片」は全長アミノ酸または核酸配列(例えば、BDNFまたはGDNF)の一部分を意味する。断片は全長配列の少なくとも4、5、6、8、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、75、80、90、100、110、120、130、140、150、175、200、または250アミノ酸または核酸を含んでもよい。断片は全長タンパク質の生物学的活性の少なくとも1つを保持しうる。
【0016】
「実質的に同一の」は、参照アミノ酸または核酸配列に対して少なくとも35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、85%、90%、95%、またはさらに99%同一性を示すポリペプチドまたは核酸を意味する。ポリペプチドについては、比較配列の長さは一般に少なくとも4(例えば、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、50、または100)アミノ酸であろう。核酸については、比較配列の長さは一般に少なくとも60ヌクレオチド、好ましくは少なくとも90ヌクレオチド、およびより好ましくは少なくとも120ヌクレオチド、または全長であろう。ここで、元来のポリペプチドのアミノ酸と同一または類似配列のアミノ酸との間にギャップがあってもよいことを理解されたい。ギャップには、アミノ酸不在、元来のポリペプチドと同一または類似でない1個以上のアミノ酸が含まれる。%同一性は、例えば、nアルゴリズムギャップ、BESTFIT、またはFASTA(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0)により、デフォールトギャップウェイトを用いて決定することができる。
【0017】
「ペプチドベクター」は、特定の細胞型(例えば、肝臓、肺、腎臓、脾臓、または筋肉)中にまたはBBBを横切って輸送するかことができる化合物または分子、例えばポリペプチドまたはペプチドミメチックを意味する。ベクターを薬剤と結合(共有結合または非共有結合で)またはコンジュゲートしてもよく、それにより前記薬剤を特定の細胞型中にまたはBBBを横切って輸送することができる。ある特定の実施形態において、ベクターは癌細胞または脳内皮細胞上に存在する受容体と結合してもよく、それにより癌細胞中にまたは経細胞輸送によりBBBを横切って輸送するかことができる。ベクターは、細胞またはBBB完全性に影響を与えることなく高レベルの経内皮輸送が得られる分子であってもよい。ベクターはポリペプチドまたはペプチドミメチックであってもよくかつ天然であってもまたは化学合成もしくは組換え遺伝技術により作製してもよい。
【0018】
被験体の疾患、障害、または症状を「治療する」は、被験体に治療薬を投与することにより疾患、障害、または症状の少なくとも1つの症候を軽減することを意味する。
【0019】
被験体の疾患、障害または症状を「予防的に治療する」は、疾患症候もしくは症候群が現われる前に被験体に治療薬を投与することにより疾患、障害、または症状の出現頻度もしくは重症度を軽減する(例えば、予防する)ことを意味する。
【0020】
一例として、特定の症状について治療を受けている被験体は、医師がその症状を有すると診断した被験体である。診断は本明細書に記載した、いずれかの好適な手段により実施することができる。症状の発症を予防的に治療されている被験体はかかる診断を受けていてもいなくてもよい。当業者は、本発明の被験体を標準試験に課してもよいしまたは試験せずに1以上のリスク因子の存在により高いリスクにあると同定してもよいことを理解するであろう。
【0021】
「被験体」はヒトまたは非ヒト動物(例えば、哺乳動物)を意味する。
【0022】
「等価用量」は、非コンジュゲート分子と比較して、本発明の化合物中のGDNF、BDNF、または関係分子の同じモル量を達成するために必要な本発明の化合物の量を意味する。
【0023】
「BBBを横切って効率的に輸送される」ポリペプチドは、少なくともAngiopep-6のようにBBBを効率的に横切ることができるポリペプチドを意味する(すなわち、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第11/807,597号(2007年5月29日出願)に記載のin situ脳潅流アッセイで、Angiopep-1(250nM)の38.5%より大きい)。従って、「BBBを横切って効率的に輸送されない」ポリペプチドはより低いレベルで脳に輸送される(例えば、Angiopep-6より低い効率で輸送される)。
【0024】
「特定の細胞型に効率的に輸送される」ポリペプチドまたは化合物は、ポリペプチドまたは化合物を(例えば、細胞中への輸送増加、細胞からの流出の減少、またはそれらの組み合わせによって)対照物質と比較して、またはコンジュゲートの場合、非コンジュゲート薬剤と比較して、少なくとも10%(例えば、25%、50%、100%、200%、500%、1,000%、5,000%、または10,000%)大きい程度で、その細胞型に蓄積することができることを意味する。かかる活性は、参照により本明細書に組み込まれる国際特許公開第WO 2007/009229号に詳しく記載されている。
【0025】
本発明の他の特徴と利点は以下の詳しい説明、図面、および請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1−1】ヒトGDNFおよびBDNFの配列を示す。
【図1−2】図1−1の続き。
【図2】ペプチド結合、柔軟なリンカー、硬いリンカー、またはα-ヘリックスリンカーのいずれかを介して連結されたHis6タグ、トロンビン切断部位、Angiopep-2ペプチドおよびhGDNF78-211を含有するAngiopep2-GDNF構築物の模式図である。
【図3】図2に記載した構築物の配列を示す。
【図4】GDNF構築物を作製するためのクローニングストラテジーを示す。
【図5】GDNF構築物を作製するためのクローニングストラテジーを示す。
【図6】GDNF構築物を作製するためのクローニングストラテジーを示す。
【図7】GDNF構築物を作製するためのクローニングストラテジーを示す。
【図8】GDNF構築物の配列を示す。
【図9】GDNF構築物の配列を示す。
【図10】GDNF構築物の配列を示す。
【図11】GDNF構築物の配列を示す。
【図12】GDNF構築物の配列を示す。
【図13】GDNFファミリー受容体α-1(GRα-1)と結合したAngiopep-2/GDNFの構造を示す模式図である。
【図14】(a)Angiopep-2または逆転Angiopep-2と(b)GDNF(hGDNF78-211)を含む付加融合タンパク質を示す模式図である。具体的な構築物は、An2-hGDNF(hGDNF78-211と融合したN末端Angiopep-2);hGDNF-An2(hGDNF78-211と融合したC末端Angiopep-2);An2NT-hGDNF(hGDNF78-211と融合したN末端逆配列Angiopep-2);An2-Flex-hGDNF(柔軟な((GGGGS)2)リンカーを介してhGDNF78-211と融合したN末端Angiopep-2);An2-Rig-hGDNF(硬い(PAPAP)リンカーを介してhGDNF78-211と融合したN末端Angiopep-2);An2-Hel-hGDNF(ヘリックス(A(EAAAK)2A)リンカーを介してhGDNF78-211と融合したN末端Angiopep-2)を含む。
【図15】コンジュゲートがGFRa1受容体と結合できるかどうかを確認するために用いた酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を示す模式図である。
【図16】図14のコンジュゲートのそれぞれについて実施した図15に記載の結合実験から得た結果を示す一式のグラフである。
【図17】GDNFおよびAngiopep-GDNF融合タンパク質ホモ二量体の形成を示す模式図である。
【図18】GDNFおよびAn2-GDNFポリペプチドの両方の二量体形成を示すクーマシー染色ポリアクリルイミドの写真である。二量体をジチオトレイトール(DTT)で処理すると単量体が形成する。
【図19】GDNFシグナル伝達カスケードを示す模式図である。
【図20】GDNFおよびAn2-GDNFの両方がGDNFシグナル伝達カスケードの成分を活性化(リン酸化)を増強できることを示す一式のウェスタンブロットの写真である。
【図21】GDNFまたはAngiopep-2/GDNF融合タンパク質のいずれかを用いるin situ脳潅流アッセイから得た結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明者らは血液脳関門(BBB)を横切ることができるペプチドベクターと結合したGDNF、BDNF、類似体またはその機能性断片を含む化合物を開発した。こららの化合物はBBBを横切ることができるので、従ってペプチドベクターと結合していないGDNF、BDNF、または関係分子より遥かに効率的に脳中に輸送される。この輸送増加は、効力増加、副作用軽減、またはこれら両者の組み合わせをもたらすことができる。効力が増加する事例では、ペプチドベクターと結合していない場合のGDNF、BDNF、または関係分子と比較して、より低い有効量の化合物を投与することができる。副作用が軽減される他の事例では、化合物をより高い用量で投与することが可能でありうる。本発明の化合物は、ニューロン成長の増加またはニューロン死の低下が所望される疾患の治療に有用である。かかる疾患には、神経変性疾患、例えばパーキンソン病(PD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ならびに本明細書に記載の他の疾患および症状が含まれる。
【0028】
GDNFおよびGDNF類似体
ある特定の実施形態において、ペプチドベクターはGDNF、GDNF類似体、GDNF断片、またはそれらの改変型と結合している。ある特定の実施形態において、GDNF類似体はGDNF、GDNF類似体と、またはその断片と、実質的に同一の(例えば、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%同一の)配列である。
【0029】
GDNFはジスルフィド連結ホモ二量体として分泌され、ドーパミン作動性ニューロン、プルキンエ細胞、運動ニューロン、および交感神経性ニューロンの生存を支援することができる。これらの活性の1つ以上を有するGDNF類似体または断片を本発明に用いることができ、かかる類似体および断片の活性は当技術分野で公知のいずれかの手段を用いて試験することができる。
【0030】
ヒトGDNFは211アミノ酸タンパク質(アイソフォーム1;配列番号117);185アミノ酸タンパク質(アイソフォーム2;配列番号118)、および133アミノ酸タンパク質として発現される。成熟GDNFは、アイソフォーム1のアミノ酸78〜211または118〜211、アイソフォーム2のアミノ酸92〜185を含む134アミノ酸配列である。アイソフォーム3はアミノ酸40〜133からのトランスフォーミング増殖因子様ドメインを含む。
【0031】
ある特定の実施形態において、GDNF類似体はGDNFのスプライス変異体である。かかるタンパク質はPCT公開第WO2009/053536号に記載されていて、pre-(α)pro-GDNF、pre-(β)pro-GDNF、およびpre-(γ)pro-GDNFスプライス変異体、ならびにpre-pro領域を欠く変異体:(α)pro-GDNF、(β)pro-GDNF、およびpre-(γ)pro-GDNFを含む。
【0032】
GDNF類似体はまた、米国特許出願公開第2009/0069230号に記載され、これは配列:
Xaa1-Pro-Xaa3-Pro-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Xaa8(I)
[式中、Xaa1はPhe、Trp、またはTyrであり;Xaa3はLeu、Ala、Ile、またはValであり;Xaa5はAla、Leu、Ile、またはValであり;Xaa6はGlyであり、D-コンフィギュレーションのアミノ酸残基であるかまたは不在であり;Xaa7はLys、Arg、もしくはHisであるかはまたは不在であり;そしてXaa8はArg、Lys、もしくはHisであるかまたは不在である]を有するGDNF類似体を含む。Xaaはアミノ酸を表し、本発明者らはこれをアミノ酸残基と呼ぶこともある。下付き文字(ここでは下付き文字1〜8)はペプチド配列中のそれぞれのアミノ酸の位置を表す。従って、Xaa1はGDNF前駆体タンパク質の断片中の第1アミノ酸残基を表す。
【0033】
特定の実施形態において、GDNF前駆体タンパク質の断片は(1)Phe-Pro-Xaa3-Pro-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Xaa8,(例えば,Phe-Pro-Leu-Pro-Ala-Gly-Lys-Arg);(2)Xaa1-Pro-Leu-Pro-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Xaa8;(3)Phe-Pro-Leu-Pro-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Xaa8;(4)Xaa1-Pro-Xaa3-Pro-Ala-Xaa6-Xaa7-Xaa8;(5)Phe-Pro-Xaa3-Pro-Ala-Xaa6-Xaa7-Xaa8;(6)Phe-Pro-Leu-Pro-Ala-Xaa6-Xaa7-Xaa8;(7)Xaa1-Pro-Xaa3-Pro-Xaa5-Gly-Xaa7-Xaa8;(8)Phe-Pro-Xaa3-Pro-Xaa5-Gly-Xaa7-Xaa8;(9)Phe-Pro-Leu-Pro-Xaa5-Gly-Xaa7-Xaa8;(10)Phe-Pro-Leu-Pro-Ala-Gly-Xaa7-Xaa8;(11)Xaa1-Pro-Xaa3-Pro-Xaa5-Xaa6-Lys-Xaa8;(12)Phe-Pro-Xaa3-Pro-Xaa5-Xaa6-Lys-Xaa8;(13)Phe-Pro-Leu-Pro-Xaa5-Xaa6-Lys-Xaa8;(14)Phe-Pro-Leu-Pro-Ala-Xaa6-Lys-Xaa8;(15)Phe-Pro-Leu-Pro-Ala-Gly-Lys-Xaa8;(16)Xaa1-Pro-Xaa3-Pro-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Arg;(17)Phe-Pro-Xaa3-Pro-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Arg;(18)Phe-Pro-Leu-Pro-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Arg;(19)Phe-Pro-Leu-Pro-Ala-Xaa6-Xaa7-Arg;および(20)Phe-Pro-Leu-Pro-Ala-Gly-Xaa7-Argにより表される配列を有しうる。
【0034】
他の実施形態において、GDNF前駆体タンパク質の断片は、Xaa1がPheであり、Xaa3がLeuであり、Xaa5がAlaでありXaa6がGlyであり、Xaa7がLysであり、そしてXaa8がArgである式I(すなわち、Phe-Pro-Leu-Pro-Ala-Gly-Lys-Arg)に一致するGDNF前駆体タンパク質の断片もしくは部分でありうる。式Iにより表されるアミノ酸残基の少なくとも1つ(例えば、1、2、または3つ)は不在であってもよい。例えば、Xaa6、Xaa7、および/またはXaa8は不在であってもよい。
【0035】
他の実施形態において、GDNF前駆体タンパク質またはその生物学的に活性な変異体の断片は式II:
Pro-Pro-Xaa3-Xaa4-Pro-Xaa6-Xaa7-Xaa8-Xaa9-Xa-a10-Xaa11-Xaa12-Xaa13-Xaa14(II)
[式中、Xaa3はGluまたはAspであり;Xaa4はAla、Gly、Ile、Leu、Met、またはValであり;Xaa6はAla、Gly、Ile、Leu、Met、またはValであり;Xaa7はGluまたはAspであり;Xaa8はAspまたはGluであり;Xaa9はArg、His、またはLysであり;Xaa10はSer、Asn、Gln、またはThrであり;Xaa11はLeu、Ala、Gly、Ile、Leu、MetまたはValであり;Xaa12はGlyであり、D-コンフィギュレーションのアミノ酸残基であるか、または非存在であり;Xaa13はArg、His、もしくはLysであるかまたは非存在であり;Xaa14はArg、His、もしくはLysであるかまたは非存在である]のアミノ酸配列と一致するアミノ酸残基の配列を有してもよくまたは含んでもよい。式IIと一致する例示のペプチドは配列Pro-Pro-Glu-Ala-Pro-Ala-Glu-Asp-Arg-Ser-Leu-Gly-Arg-Arg(配列番号2)を有しうる。
【0036】
他の実施形態において、GDNF前駆体タンパク質またはその生物学的に活性な変異体の断片は式III:
Xaa1-Xaa2-Xaa3-Xaa4-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Xaa8-Xaa9-Xaa10-Xaa11-Xaa12-Xaa13-Xaa14-Xaa15-Xaa16-Xaa17-Xaa18-Xaa19-Xaa20-Xaa21-Xaa22(III)
[式中、Xaa1およびXaa2は、独立して、Arg、Lys、もしくはHisであるかまたは不在であり;Xaa3はGluまたはAspであり;Xaa4はArg、Lysであるか、またはHisであり;Xaa5はAsn、Gln、Ser、またはThrであり;Xaa6はArg、Lys、またはHisであり;Xaa7はGln、Asn、Ser、またはThrであり;Xaa8、Xaa9、Xaa10、およびXaa11は、独立して、Ala、Gly、Ile、Leu、Met、またはValであり;Xaa12はAsn、Gln、Ser、またはThr;Xaa13はProまたはSer;Xaa14はGluまたはAspであり;Xaa15はAsn、Gln、Ser、またはThrであり;Xaa16はSer、Asn、Gln、またはThrであり;Xaa17はLys、Arg、またはHisであり;Xaa18はGly、Ala、Ile、Leu、Met、またはValであり;Xaa19はLys、Arg、またはHisであり;Xaa20はGlyであり、D-コンフィギュレーションのアミノ酸残基であるか、または不在であり;およびXaa21およびXaa22は、独立して、Arg、Lys、Hisであるか、または存在しない]のアミノ酸配列と一致するアミノ酸残基の配列を有してもよくまたは含んでもよい。式IIIと一致する例示のペプチドは配列:Arg-Arg-Glu-Arg-Asn-Arg-Gln-Ala-Ala-Ala-Ala-Asn-Pro-Glu-Asn-Ser-Arg-Gly-Lys-Gly-Arg-Argを有してもよい。
【0037】
他のGDNF類似体がPCT公開公報WO 2008/069876に記載されている。これらの類似体には、ERNRQAAAANPENSRGK-アミド; FPLPA-アミド; および PPEAPAEDRSL-アミドが含まれる。
【0038】
さらに他のGDNF類似体がPCT公開第WO2007/019860号に記載されている。
【0039】
本類似体は、式:
Xa-(x)-Xb-Xc-Xd-Xf
[式中、XaはD、E、AまたはGであり、(x)はアミノ酸残基A、D、E、G、I、K、L、P、Q、S、TおよびVから選択される2〜3アミノ酸残基もしくは単一アミノ酸残基の配列であり、Xbはアミノ酸残基YもしくはHであるか、または疎水性アミノ酸残基であり、そしてXc、Xd、もしくはXfの少なくとも1つは帯電性もしくは疎水性アミノ酸残基である]を有するものを含む。この類似体は長さが6〜22アミノ酸であってもよい。
【0040】
さらなるGDNF類似体が米国特許出願公開第2006/0258576号に記載されている。これらの類似体にはFPLPA-アミド、PPEAPAEDRSL-アミド、LLEAPAEDHSL-アミド、SPDKQMAVLP、SPDKQAAALP、SPDKQTPIFS、ERNRQAAAANPENSRGK-アミド、ERNRQAAAASPENSRGK-アミド、および ERNRQSAATNVENSSKK-アミドが含まれる。
【0041】
さらなるGDNF類似体は、機能性断片(例えば、本明細書に記載の断片のいずれか)、本明細書に記載の改変のいずれかを有するペプチド、またはそのペプチドミメチックを含みうる。かかる類似体および断片の活性は当技術分野で公知の任意の手段を用いて試験することができる。
【0042】
BDNF
BDNFはタンパク質の神経成長因子ファミリーに属する糖タンパク質である。このタンパク質は247アミノ酸ポリペプチド(アイソフォームA)、255アミノ酸ポリペプチド(アイソフォームB)、262アミノ酸ポリペプチド(アイソフォームC)、276アミノ酸ポリペプチド(アイソフォームD)、329アミノ酸ポリペプチド(アイソフォームE)としてコードされる。成熟119アミノ酸糖タンパク質はさらに大きい前駆体からプロセシングされ、神経細胞集団の生存を促進する神経栄養因子を生じる。成熟タンパク質は、アイソフォームAプレタンパク質のアミノ酸129〜247、アイソフォームBプレタンパク質のアミノ酸137〜255、アイソフォームCプレタンパク質のアミノ酸144〜162、アイソフォームDプレタンパク質のアミノ酸158〜276、またはアイソフォームEプレタンパク質のアミノ酸211(または212)〜329を含む。BDNFは、TrkB受容体および低アフィニティ神経成長因子受容体(LNGFRまたはp75)に作用する。BDNFは存在するニューロンのニューロン生存を支援することができ、そしてまた、新ニューロンの成長と分化を促進することができる。本発明のBDNF断片もしくは類似体は上述した活性のいずれかを有しうる。かかる類似体および断片は当技術分野で公知の任意の手段を用いて試験することができる。
【0043】
BDNF類似体は米国特許出願公開第2004/0072291号に記載されていて、位置10、16、20、29、31、36、38、39、42、44、49、52、53、54、61、63、71、76、86、87、90、92、98、100、102、103、および105からなる群より選択される1以上の位置においてA、C、D、E、G、H、K、N、P、Q、R、S、またはTの置換を有するものを含む。追加の置換を次の表2に記載する。
【表2】
【0044】
BDNF類似体はまた、米国特許第6,800,607号にも記載されており、これは1-アシル-グリセロールで修飾されたBDNFを記載している。これらの類似体は、
式(1):
A(X-B)n
(式中、Aが脳由来神経栄養因子を表し、Bがグリセロールの2位にヒドロキシル基を有する1-アシル-グリセロール誘導体のそのヒドロキシル基の水素原子を除いた残基を表し、Xが化学的架橋を表し、mは平均導入数を表し、約0.5以上を表す)である、上記の修飾されたBDNF;
(3)Xが式(2):
【化1】
【0045】
(式中、R1はアルキレン基を表す)または式(3):
【化2】
【0046】
(式中、R2およびR3は各々独立してアルキレン基を表す)である、上記(2)記載の修飾されたBDNF;
(4)1-アシル-グリセロール誘導体が1-アシル-グリセロ-3-ホスホリルコリン、1-アシル-グリセロ-3-ホスホリルセリン、または1-アシル-グリセロ-3-ホスホリルエチルアミンである、上記(2)記載の修飾されたBDNF;
(5)Bが式(4):
【化3】
【0047】
(式中、R4はアシル基を表す)で示される1-アシル-グリセロ-3-ホスホリルコリン残基、
式(5):
【化4】
【0048】
(式中、R4はアシル基を表す)で示される1-アシル-グリセロ-3-ホスホリルセリン残基、または式(6):
【化5】
【0049】
(式中、R4はアシル基である)で示される1-アシル-グリセロ-ホスホリルエチルアミン残基である、上記(2)記載の修飾されたBDNF;
(6)Bが式(4):
【化6】
【0050】
(式中、R4はアシル基である)である、上記(2)または(3)記載の修飾されたBDNF;
(7)アシル基が炭素数8〜30のアルカノイル基である上記(2)、(3)、(4)、(5)および(6)のいずれか1つに記載の修飾されたBDNF;
(8)アシル基がパルミトイル基である上記(2)、(3)、(4)、(5)、(6)および(7)のいずれか1つに記載の修飾されたBDNF;
(9)mが約1〜約6である上記(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)および(8)のいずれか1つに記載の修飾されたBDNF;
(11)R1が炭素数2〜10の直鎖状のアルキレン基である、上記(10)記載の修飾されたBDNF;
(12)R1がトリメチレンである、上記(10)記載の修飾されたBDNFを含む。
【0051】
他のBDNF類似体は、BDNFの水可溶性ポリマー(例えばポリエチレングリコール)とのコンジュゲートを記載したPCT公開公報WO96/15146に記載のものを含む。追加のBDNF類似体は、機能性断片(例えば、本明細書に記載の断片のいずれか)、本明細書に記載の改変のいずれかを有するペプチド、またはそのペプチドミメチックを含みうる。かかる類似体の活性は当技術分野で公知の方法を用いて試験することができる。
【0052】
ペプチドベクター
本発明の化合物は、本明細書に記載のポリペプチドのいずれか、例えば、表1に記載のペプチドのいずれか(例えば、Angiopep-1またはAngiopep-2)、またはその断片もしくは類似体を特徴としうる。ある特定の実施形態において、ポリペプチドは本明細書に記載のポリペプチドと少なくとも35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはさらに100%同一性を有しうる。ポリペプチドは本明細書に記載の配列の1つと比較して1以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15)の置換を有しうる。他の改変を以下にさらに詳しく記載する。
【0053】
本発明はまた、これらのポリペプチドの断片(例えば、機能性断片)を特徴とする。ある特定の実施形態において、その断片は特定の細胞型(例えば、肝臓、眼、肺、腎臓、または脾臓)に効率良く輸送されるかもしくは蓄積することができるかまたはBBBを横切って効率良く輸送される。ポリペプチドの末端切断はポリペプチドのN末端、ポリペプチドのC末端、またはそれらの組み合わせから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12以上のアミノ酸であってもよい。他の断片にはポリペプチドの内部が欠失した配列が含まれる。
【0054】
さらなるポリペプチドは本明細書に記載のアッセイまたは方法の1つを用いることにより同定することができる。例えば、候補ポリペプチドを通常のペプチド合成により作製し、パクリタキセルとコンジュゲートして実験動物に投与してもよい。生物学的活性のあるポリペプチドコンジュゲートは、例えば、腫瘍細胞を注射し、前記コンジュゲートで治療した動物の生存率を増加する能力に基づいて、コンジュゲートで治療しなかった(例えば、非コンジュゲート薬剤で治療した)対照と比較して同定することができる。例えば、生物学的活性のあるポリペプチドは、in situ脳潅流アッセイにおいて、その脳実質中の位置に基づいて同定することができる。
【0055】
他組織における蓄積を測定するアッセイも同様に実施することができる。標識したポリペプチドのコンジュゲートを動物に投与し、色々な器官における蓄積を測定してもよい。例えば、検出可能な標識とコンジュゲートしたポリペプチド(例えば、Cy5.5などの近赤外蛍光分光分析計標識)は実況のin vivo可視化を可能にする。かかるポリペプチドを動物に投与し、器官中のポリペプチドを検出し、こうして所望の器官中のポリペプチド蓄積の速度と量の測定を可能にすることができる。他の実施形態においては、ポリペプチドを放射性同位体(例えば、125I)を用いて標識することができる。そのポリペプチドを次いで動物に投与する。ある期間の後に、その動物を犠牲にし、その器官を抽出する。各器官における放射性同位体の量を次いで当技術分野で公知の任意の手段を用いて測定することができる。特定器官中の標識した候補ポリペプチドの量を標識した対照ポリペプチドの量と相対的に比較することにより、候補ポリペプチドの特定組織へアクセスおよび蓄積する能力を確認することができる。適当なネガティブ対照には、特定の細胞型に効率的に輸送されないことが公知の任意のペプチドまたはポリペプチド(例えば、BBBを横切らないAngiopepに関係するペプチド、またはいずれかの他のペプチド)が含まれる。
【0056】
さらなる配列が米国特許第5,807,980号(例えば、本明細書の配列番号102)、5,780,265(例えば、配列番号103)、5,118,668(例えば、配列番号105)に記載されている。アプロチニン類似体をコードする例示のヌクレオチド配列は、atgagaccag atttctgcct cgagccgccg tacactgggc cctgcaaagc tcgtatcatc cgttacttct acaatgcaaa ggcaggcctg tgtcagacct tcgtatacgg cggctgcaga gctaagcgta acaacttcaa atccgcggaa gactgcatgc gtacttgcgg tggtgcttag(配列番号6; Genbank受託番号X04666)である。アプロチニン類似体の他の例は国際特許出願番号PCT/CA2004/000011に開示された合成アプロチニン配列(またはその部分)を用いて、タンパク質BLAST(Genbank: www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を実施することにより見出すことができる。例示のアプロチニン類似体はまた、受託番号CAA37967(GI:58005)および1405218C(GI:3604747)のもとで見出すこともできる。
【0057】
改変ポリペプチド
本明細書で用いるペプチドベクターおよびGDNF、BDNF、または関係分子は、改変されたアミノ酸配列を有してもよい。ある特定の実施形態において、改変は所望の生物学的活性(例えば、BBBを横切る能力またはニューロテンシンアゴニスト活性)を有意に破壊しない。改変は元来のポリペプチドの生物学的活性を、(例えば、5%、10%、20%、25%、35%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、または95%だけ)低下してもよく、効果を与えなくてもよく、または(例えば、少なくとも5%、10%、25%、50%、100%、200%、500%、または1000%だけ)増加してもよい。改変ペプチドまたはポリペプチドはポリペプチドの特徴、例えば、in vivo安定性、バイオアベイラビリティ、毒性、免疫学的活性、免疫学的同一性、およびコンジュゲーション特性を有してもよくまたは最適化してもよい。
【0058】
改変は、翻訳後プロセシングなどの自然のプロセスによるもの、または当技術分野で公知の化学修飾技法によるものを含む。改変は、ポリペプチド主鎖、アミノ酸側鎖およびアミノまたはカルボキシ末端を含むポリペプチドのいずれで起こってもよい。同じタイプの改変は所与のポリペプチドのいくつかの部位に同程度または様々な程度で存在してもよく、ポリペプチドは複数のタイプの改変を含んでもよい。ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として分枝していてもよく、またポリペプチドは分枝鎖を伴うまたは伴わない環状であってもよい。環状、分枝鎖、および分枝鎖環状ポリペプチドは翻訳後の自然プロセスから生じてもよくまたは合成されてもよい。他の改変は、PEG化、アセチル化、アシル化、アセトミドメチル基(Acm)の付加、ADP-リボシル化、アルキル化、アミド化、ビオチン化、カルバモイル化、カルボキシエチル化、エステル化、フラビンとの共有結合、ヘム部分との共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、薬物の共有結合、マーカー(例えば、蛍光または放射マーカー)の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合性架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解性プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、転移RNAが介在するアミノ酸のタンパク質への付加、例えばアルギニン化およびユビキチン化を含む。
【0059】
改変ポリペプチドはまた、(例えば、かかる変化が実質的にポリペプチドの生物学的活性を変えない場合、)ポリペプチド配列における保存的もしくは非保存的アミノ酸挿入、欠失、または置換(例えば,D-アミノ酸、デアミノ酸)を含みうる。特に、本発明のポリペプチドのアミノまたはカルボキシ末端への1以上のシステイン残基の付加は、例えば、これらのポリペプチドのジスルフィド結合によるコンジュゲーションを促進することができる。例えば、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(配列番号97)、またはAngiopep-7(配列番号112)を改変して、単一システイン残基をアミノ末端に(それぞれ配列番号:71、113、および115)、または単一システイン残基をカルボキシ末端に(それぞれ、配列番号:72、114、および116)含ませることができる。アミノ酸置換は保存的(すなわち、残基を同じ属のタイプもしくはグループの他のものにより置き換える場合)または非保存的(すなわち、残基を他のタイプのアミノ酸により置き換える場合)であってもよい。さらに、非天然アミノ酸を、天然のアミノ酸と置換してもよい(すなわち、非天然の保存的アミノ酸置換または非天然の非保存的アミノ酸置換)。
【0060】
合成で作製したポリペプチドは、DNAにより天然にコードされないアミノ酸(例えば、天然に存在しないすなわち非天然アミノ酸)の置換を含みうる。天然に存在しないアミノ酸の例は、D-アミノ酸、システインの硫黄原子と結合したアセチルアミノメチル基を有するアミノ酸、PEG化アミノ酸、式NH2(CH2)nCOOH(式中、nは2〜6である)のω-アミノ酸、中性非極性アミノ酸、例えば、サルコシン、t-ブチルアラニン、t-ブチルグリシン、N-メチルイソロイシン、およびノルロイシンを含む。フェニルグリシンはTrp、Tyr、または Pheと置換しうる;シトルリンおよびメチオニンスルホキシドは中性非極性であり、システイン酸は酸性であり、そしてオルニチンは塩基性である。プロリンをヒドロキシプロリンと置換し、特性を与えるコンフォーメーションを保持することができる。
【0061】
類似体を置換変異誘発により作製し、元来のポリペプチドの生物学的特性を保持することができる。「保存的置換」と同定される置換の例を表3に示す。もしかかる置換が所望でない変化をもたらせば、次いで、表3において「例示の置換」と表示された、またはさらなるアミノ酸クラスに記載された他の型の置換を導入してその産物をスクリーニングする。
【0062】
機能または免疫学的同一性の実質的改変は、(a)置換領域におけるポリペプチド主鎖の構造(例えば、シートもしくはヘリックスコンフォーメーション)、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の体積を維持する効果が有意に異なる置換を選択することにより達成される。天然塩基は、次の共通の側鎖特性に基づいていくつかのグループに分類される:
(1)疎水性:ノルロイシン、メチオニン(Met)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、ヒスチジン(His)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe);
(2)中性親水性:システイン(Cys)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr);
(3)酸性/負電荷:アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu);
(4)塩基性:アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、ヒスチジン(His)、リシン(Lys)、アルギニン(Arg);
(5)鎖配向に影響を与える残基:グリシン(Gly)、プロリン(Pro);
(6)芳香族性:トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、ヒスチジン(His);
(7)極性:Ser、Thr、Asn、Gln;
(8)塩基性正電荷:Arg、Lys、His;および
(9)帯電:Asp、Glu、Arg、Lys、His。
【0063】
他のアミノ酸置換を表3に掲げる。
【0064】
表3:アミノ酸置換
【表3】
【0065】
ポリペプチド誘導体とペプチドミメチック
天然のアミノ酸から成るポリペプチドに加えて、ペプチドミメチックまたはポリペプチド類似体も本発明に包含され、本発明の化合物で使用するペプチドベクターまたはGDNF、BDNF、または関係分子を形成することができる。ポリペプチド類似体は医薬品産業において一般に、テンプレートポリペプチドに類似した特性をもつ非ペプチド薬物として利用される。非ペプチド化合物は「ペプチド-ミメチック」またはペプチドミメチックと呼ばれる(Fauchere et al, Infect. Immun. 54:283-287,1986 and Evans et al, J. Med. Chem. 30:1229-1239, 1987)。治療上有用なペプチドもしくはポリペプチドと構造的に関係があるペプチドミメッチクを用いて等価またはより高い治療または予防効果を生じうる。一般に、ペプチドミメチックはパラダイムポリペプチド(すなわち、生物学的または薬理学的な活性を有するポリペプチド)、例えば、天然の受容体結合ポリペプチドと構造的に類似するが、当技術分野で公知の方法により、-CH2NH-、-CH2S-、-CH2-CH2-、-CH=CH-(cisおよびtrans)、-CH2SO-、-CH(OH)CH2-、-COCH2-などの結合によって任意に置き換えられた1以上のペプチド結合を有する(Spatola, Peptide Backbone Modifications, Vega Data, 1:267, 1983;Spatola et al., Life Sci. 38:1243-1249, 1986;Hudson et al., Int. J. Pept. Res. 14:177-185, 1979;およびWeinstein, 1983, Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides and Proteins, Weinstein eds, Marcel Dekker, New York)。かかるポリペプチドミメチックは天然のポリペプチドを越える大きな利点を有し、その利点としては、より経済的な生産、より優れた化学安定性、向上した薬理学的特性(例えば、半減期、吸収、効力、効率)、低い抗原性などが挙げられる。
【0066】
本明細書に記載したペプチドベクターはBBBを効率的に横切るかまたは特定の細胞型(例えば、本明細書に記載したもの)を標的化しうる一方、その有効性はプロテアーゼの存在により低下しうる。同じ様に、GDNF、BDNF、または本発明で用いる関係分子も同様に低下しうる。血清プロテアーゼは切断に対して、L-アミノ酸およびペプチド結合を含む特異的な基質要件を有する。さらに、血清中のプロテアーゼ活性の最も顕著な成分を代表するエキソペプチダーゼは通常ポリペプチドの最初のペプチド結合に作用し、そしてフリーなN末端を必要とする(Powell et al., Pharm. Res. 10:1268-1273, 1993)。これを考慮すると、ポリペプチドの改変バージョンを用いることはしばしば有利である。改変ポリペプチドは元来のL-アミノ酸ポリペプチドの構造的特徴を保持するが、有利なことに、プロテアーゼおよび/またはエキソペプチダーゼによる切断を容易に受けることはない。
【0067】
コンセンサス配列の1以上のアミノ酸を同じタイプのD-アミノ酸(例えば、エナンチオマー;L-リシンの代わりにD-リシン)と体系的に置き換えることによって、より安定なポリペプチドを生成することができる。従って、本明細書に記載のポリペプチド誘導体またはペプチドミメチックは全てL-、全てD-、または混合D、Lポリペプチドであってもよい。N末端またはC末端のD-アミノ酸の存在は、ペプチダーゼはD-アミノ酸を基質として利用できないのでポリペプチドのin vivo安定性が増加する(Powell et al, Pharm. Res. 10:1268-1273、1993)。リバース-Dポリペプチドは、L-アミノ酸を含有するポリペプチドと比較して逆配列で配置されたD-アミノ酸を含有するポリペプチドである。従って、L-アミノ酸ポリペプチドのC末端残基はD-アミノ酸ポリペプチドに対してN末端となるなどである。リバースD-ポリペプチドはL-アミノ酸ポリペプチドと同じ三次コンフォメーション、それ故に同じ活性を保持するが、in vitroおよびin vivoでの酵素分解に対してより安定であるので、従って、元来のポリペプチドより高い治療効力を有する(Brady and Dodson、Nature 368:692-693、1994 および Jameson et al., Nature 368:744-746、1994)。リバース-D-ポリペプチドだけでなく、コンセンサス配列または実質的に同一のコンセンサス配列変化を含有する束縛されたポリペプチドを当技術分野で周知の方法により作製することができる(Rizo et al., Ann. Rev. Biochem. 61:387-418、1992)。例えば、束縛されたポリペプチドをジスルフィド架橋を形成できるシステイン残基を加えることにより作製し、それにより、環状ポリペプチドを得ることができる。環状ポリペプチドは遊離したNまたはC末端を有しない。従って、これらはエキソペプチダーゼによるタンパク質分解に感受性がないが、勿論、ポリペプチド末端を切断しないエンドペプチダーゼには感受性がある。N末端またはC末端D-アミノ酸をもつポリペプチドと環状ポリペプチドのアミノ酸配列は、N末端またはC末端D-アミノ酸残基の存在あるいはそれらの環状構造を除くと、それぞれそれらが対応するポリペプチドの配列は通常同一である。
【0068】
分子内ジスルフィド結合を有する環状誘導体は、アミノ末端およびカルボキシ末端などの環化のために選択した位置に、好適なSが保護されたシステインまたはホモシステイン残基を組み込んで、通常の固相合成によって調製することができる(Sah et al., J. Pharm. Pharmacol. 48:197、1996)。環化は、ポリペプチド鎖構築の完了後、(1)S-保護基の選択的除去、その結果として起こる対応する2つの遊離SH-官能基の支持体上での酸化(S-S結合を形成する)、次いで生成物の支持体からの通常の除去および適当な精製処理によって、または(2)完全な側鎖脱保護と共に支持体からのポリペプチド除去、次いで、遊離SH-官能基の高希釈した水溶液中の酸化によって実施することができる。
【0069】
分子内アミド結合を含有する環状誘導体は、環化のために選択した位置に、好適なアミノおよびカルボキシル側鎖が保護されたアミノ酸誘導体を組み込んで、通常の固相合成によって調製することができる。分子内-S-アルキル結合を含有する環状誘導体は、好適なアミノが保護された側鎖をもつアミノ酸残基および好適なSが保護されたシステインもしくはホモシステイン残基を環化のために選択した位置に組み入れて、通常の固相合成により調製することができる。
【0070】
ポリペプチドのN末端またはC末端残基で作用するペプチダーゼに対して耐性を与える他の有効な手法は、ポリペプチド末端に化学基を加え、改変ポリペプチドをペプチダーゼに対する基質でないようにすることである。かかる化学的改変の1つは、一末端または両末端のポリペプチドのグリコシル化である。ある特定の化学的改変は、特別なN末端グリコシル化において、ヒト血清中のポリペプチドの安定性を増加することが示されている(Powell et al, Pharm. Res. 10:1268-1273、1993)。血清安定性を向上する他の化学的改変は、限定されるものでないが、1〜20個の炭素の低級アルキルから成るN末端アルキル基の付加、例えばアセチル基、および/またはC末端アミドもしくは置換アミド基の付加を含む。特に、本発明は、N末端アセチル基および/またはC末端アミド基を保持するポリペプチドからなる改変されたポリペプチドを含む。
【0071】
本発明に含まれるのはまた、その誘導体がポリペプチドの所望の機能活性を保持することを条件として、通常ポリペプチドの一部分でないさらなる化学部分を含有する他の型のポリペプチド誘導体である。かかる誘導体の例には、(1)アミノ末端または他の遊離アミノ基のN-アシル誘導体[ここでアシル基はアルカノイル基(例えば、アセチル、ヘキサノイル、オクタノイル)、アロイル基(例えば、ベンゾイル)もしくはF-moc(フルオレニルメチル-O-CO-)などのブロック基であってもよい];(2)カルボキシ末端のまたは他の遊離カルボキシまたはヒドロキシル基のエステル;(3)アンモニアまたは好適なアミンとの反応により生じたカルボキシ末端のまたは他の遊離カルボキシル基のアミド;(4)リン酸エステル化誘導体;(5)抗体または他の生物学的リガンドおよび他の型の誘導体とコンジュゲートした誘導体が含まれる。
【0072】
さらなるアミノ酸残基の本明細書に記載のポリペプチドへの付加から得られるより長いポリペプチド配列も本発明に包含される。かかるより長いポリペプチド配列は先に記載したポリペプチドと同じ生物学的活性と特異性(例えば、細胞向性)を有すると期待することができる。相当な数のさらなるアミノ酸を有するポリペプチドを除外しないものの、いくつかの大きいポリペプチドは有効配列を遮蔽する立体配置をとり、その結果、標的(例えば、LRPまたはLRP2などのLRP受容体ファミリーの一員)との結合を妨げうると考えられる。これらの誘導体は競合的アンタゴニストとして作用しうる。従って、本発明は、伸張部を有する本明細書に記載したポリペプチドまたはポリペプチドの誘導体を包含するが、望ましくは、その伸張部はポリペプチドまたはその誘導体の細胞を標的化する活性を損なうものでない。
【0073】
本発明に包含される他の誘導体は直接、またはスペーサーを介して、例えば、アラニン残基の短い伸張部によりまたはタンパク質分解の推定部位により(例えばカテプシンにより、例えば、米国特許第5,126,249号および欧州特許第495 049号を参照されたい)お互いに共有結合された、本明細書に記載した2つの同一のまたは2つの異なるポリペプチドからなる二重ポリペプチドである。本明細書に記載のポリペプチドの多量体は同じかまたは異なるポリペプチドまたはその誘導体から形成された分子のポリマーから成る。
【0074】
本発明はまた、アミノまたはカルボキシ末端、またはそれらの両方において異なるタンパク質のアミノ酸配列と連結された、本明細書に記載のポリペプチド、またはその断片を含有するキメラまたは融合タンパク質であるポリペプチド誘導体を包含する。かかるキメラまたは融合タンパク質はそのタンパク質をコードする核酸の組換え発現により作製することができる。例えば、キメラまたは融合タンパク質は、望ましくは等価のまたはより高い機能的活性を有するキメラまたは融合タンパク質をもたらす記載したポリペプチドの1つと共有される少なくとも6アミノ酸を含有しうる。
【0075】
ペプチドミメチックを同定するアッセイ
上記のように、本明細書に記載のポリペプチドの主鎖幾何およびファーマコフォア提示を複製するように作製した非ペプチジル化合物(ペプチドミメチック)はしばしば、より高い代謝安定性、より高い効力、より長い作用期間、およびより優れたバイオアベイラビリティの属性を持つ。
【0076】
ペプチドミメチック化合物は、当技術分野で公知のコンビナトリアルライブラリー法での多数の手法のいずれかを用いて得ることができ、前記手法としては、生物学的ライブラリー、空間的に位置指定可能なパラレル固相または液相ライブラリー、デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー法、「1ビーズ1化合物」ライブラリー法、およびアフィニティクロマトグラフィ選択を用いる合成ライブラリー法が挙げられる。生物学的ライブラリー手法はペプチドライブラリーに限定されるが、他の4手法はペプチド、非ペプチドオリゴマー、または化合物の小分子ライブラリーに適用することができる(Lam, Anticancer Drug Des. 12:145, 1997)。分子ライブラリーの合成方法の例は、当技術分野で次の通り見出すことができる:(DeWitt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6909, 1993);(Erb et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422, 1994);(Zuckermann et al., J. Med. Chem. 37:2678, 1994);(Cho et al., Science 261:1303, 1993);(Carell et al., Angew. Chem, Int. Ed. Engl. 33:2059, 1994 および ibid 2061);および(Gallop et al., Med. Chem. 37:1233, 1994)。化合物のライブラリーは溶液中で(例えば、Houghten, Biotechniques 13:412-421, 1992)、ビーズ(Lam, Nature 354:82-84, 1991)、チップ(Fodor, Nature 364:555-556, 1993)、細菌もしくは胞子(米国特許第5,223,409号)、プラスミド(Cullら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1865-1869, 1992)で、またはファージ(ScottおよびSmith, Science 249:386-390, 1990)、またはルシフェラーゼで提示し、そして酵素標識を適当な基質の生成物への変換の測定により検出することができる。
【0077】
いったん本明細書に記載したポリペプチドが同定されると、それを、限定されるものでないが、溶解度の違い(例えば、沈殿)、遠心分離、クロマトグラフィー(例えば、アフィニティー、イオン交換、サイズ排除など)を含む多くの標準方法のいずれかによって、またはペプチド、ペプチドミメチックもしくはタンパク質の精製に使用されるいずれか他の標準技術によって、単離しかつ精製することができる。同定した目的のポリペプチドの機能的特性は当技術分野で公知のいずれかのアッセイを用いて評価することができる。望ましくは、細胞内シグナル伝達の下流の受容体機能を評価するアッセイ(例えば、細胞増殖)を用いる。
【0078】
例えば、本発明のペプチドミメチック化合物は次の3ステップのプロセスを用いて得ることができる:(1)本明細書に記載のポリペプチドを走査し、本明細書に記載の特定の細胞型を標的化するために必要な二次構造の領域を同定するステップ;(2)コンフォーメーションが束縛されたジペプチド代理物を用いて主鎖幾何を洗練し、これらの代理物に対応する有機プラットフォームを提供するステップ;および(3)設計した候補のライブラリー中の有機ファーマコフォアを表示する最良の有機プラットフォームを用いて自然のポリペプチドの所望の活性を模倣するステップ。さらに詳しく説明すると、これらの3ステップは次の通りである。第1ステップにおいて、リード候補ポリペプチドを走査しかつそれらの構造を要約してその活性のための要件を同定する。一連の元来のポリペプチド誘導体を合成する。第2ステップにおいて、コンフォーメーションが束縛されたジペプチド代理物を用いて最良のポリペプチド類似体を調べる。インドリジン-2-オン、インドリジン-9-オンおよびキノリジジノンアミノ酸(それぞれ、I2aa、I9aaおよびQaa)を、最良のペプチド候補の主鎖幾何を研究するためのプラットフォームとして用いた。これらと関係プラットフォーム(Halab et al., Biopolymers 55:101-122, 2000、およびHanessian et al., Tetrahedron 53:12789-12854, 1997に総括されている)をポリペプチドの特定領域に導入し、色々な方向にファーマコフォアを配向させることができる。これらの類似体の生物学的評価によって活性のための幾何学的要件を模倣する改良されたリードポリペプチドを同定する。第3ステップにおいて、最も活性のあるリードポリペプチドからのプラットフォームを用いて、生来のペプチドの活性に関わるファーマコフォアの有機代理物を表示する。ファーマコフォアおよびスカフォールドをパラレル合成フォーマットで組み合わせる。ポリペプチドの誘導と上記ステップは、当技術分野で公知の方法を用いる他の手段により達成することができる。
【0079】
本明細書に記載のポリペプチド、ポリペプチド誘導体、ペプチドミメチックまたは他の小分子から確認した構造機能相関を用いて、同様のまたはさらに優れた特性を有する類似分子構造を洗練しかつ調製することができる。従って、本発明の化合物はまた、本明細書に記載のポリペプチドの構造、極性、電荷特徴および側鎖特性を共有する分子も含む。
【0080】
総括すると、本開示に基づいて、当業者は、特定の細胞型に対する薬剤を標的化する化合物を同定するために有用なペプチドおよびペプチドミメチックスクリーニングアッセイ(例えば、本明細書に記載のもの)を開発することができる。本発明のアッセイは、ロー(低)スループット、ハイ(高)スループット、またはウルトラハイ(超高)スループットスクリーニングフォーマット用に開発することができる。本発明のアッセイは自動化が可能なアッセイを含む。
【0081】
リンカー
GDNF、BDNF、または関係分子を直接(例えば、ペプチド結合などの共有結合を介して)またはリンカーを介して結合することができる。リンカーは化学連結剤(例えば、切断可能なリンカー)およびペプチドを含む。
【0082】
いくつかの実施形態において、リンカーは化学連結剤である。GDNF、BDNF、または関係分子およびペプチドベクターをスルフヒドリル基、アミノ基(アミン類)、および/または糖または任意の適当な反応基を介してコンジュゲートすることができる。ホモ二官能およびヘテロ二官能架橋剤(コンジュゲーション剤)は多数の市販供給元から入手可能である。架橋に利用可能な領域は本発明のポリペプチド上に見出すことができる。架橋剤は柔軟なアーム、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個の炭素原子を含みうる。例示の架橋剤としては、BS3([スベリン酸ビス(スルホスクシンイミジル)];BS3はアクセス可能な一級アミン類を標的化するホモ二官能性N-ヒドロキシスクシンイミドエステルである)、NHS/EDC(N-ヒドロキシスクシンイミドおよびN-エチル-'(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド;NHS/EDCは一級アミン基のカルボキシル基とのコンジュゲーションを可能にする)、スルホ-EMCS([N-e-マレイミドカプロン酸]ヒドラジド;スルホ-EMCSはスルフヒドリルおよびアミノ基に対して反応性のヘテロ二官能性反応基(マレイミドおよびNHS-エステル)である)、ヒドラジド(ほとんどのタンパク質は曝された糖を含有し、ヒドラジドはカルボキシル基を一級アミン類と連結するための有用な試薬である)、およびSATA(N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート;SATAはアミン類に対して反応性であり、保護スルフヒドリル基を加える)が挙げられる。
【0083】
ペプチドを改変するのに必要なレベルでヒドロキシル部分が生物学的に許容される場合、共有結合を形成するために、広範囲の活性カルボキシル基(例えば、エステル)を化学反応基として利用することができる。具体的な薬剤としては、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、N-ヒドロキシ-スルホスクシンイミド(スルホ-NHS)、マレイミド-ベンゾイル-スクシンイミド(MBS)、γ-マレイミド-ブチリルオキシスクシンイミドエステル(GMBS)、プロピオン酸マレイミド(MPA)ヘキサン酸マレイミド(MHA)、およびウンデカン酸マレイミド(MUA)が含まれる。
【0084】
一級アミン類はNHSエステルの主な標的である。タンパク質およびリシンのε-アミンのN末端上に存在するアクセス可能なα-アミン基はNHSエステルと反応する。アミド結合は、NHSエステルコンジュゲーション反応物が一級アミン類と反応してN-ヒドロキシスクシンイミドを放出するときに形成される。これらのスクシンイミドを含有する反応基を本明細書ではスクシンイミジル基と呼ぶ。本発明のある特定の実施形態において、タンパク質の官能基はチオール基でありかつ化学反応基はマレイミド含有基、例えば、γ-マレイミド-ブチリルアミド(GMBAまたはMPA)でありうる。かかるマレイミド含有基を本明細書ではマレイミド基と呼ぶ。
【0085】
マレイミド基は、反応混合物のpHが6.5〜7.4であるときに、ペプチド上のスルフヒドリル基に対して最も選択的である。pH 7.0において、マレイミド基のスルフヒドリル(例えば、血清ある部またはIgGなどのタンパク質上のチオール基)との反応速度はアミン類より1000倍速い。従って、マレイミド基とスルフヒドリル基の間に安定なチオエーテル結合を形成することができる。
【0086】
他の実施形態において、リンカーは少なくとも1つのアミノ酸(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、10、15、20、25、40、または50アミノ酸のペプチド)を含む。ある特定の実施形態において、リンカーは単一のアミノ酸(例えば、Cysなどの任意の天然アミノ酸)である。他の実施形態においては、米国特許第7,271,149号に記載のように、グリシンの豊富なペプチド、例えば配列[Gly-Gly-Gly-Gly-Ser]n(ここで、nは1、2、3、4、5または6である)を有するペプチドを用いる。他の実施形態においては、米国特許第5,525,491号に記載のように、セリンの豊富なペプチドリンカーを用いる。セリンの豊富なペプチドリンカーは、式[X-X-X-X-Gly]yのものを含み、ここで、Xのうちの2つまではThrであり、残りのXはSerであり、そしてyは1〜5である(例えば、Ser-Ser-Ser-Ser-Glyであり、yは2以上である)。いくつかの事例において、リンカーは単一のアミノ酸である(例えば、GlyまたはCysなどの任意のアミノ酸)。他のリンカーは硬いリンカー(例えば、PAPAPおよび(PT)nP、ここでnは2、3、4、5、6、または7である)およびα-ヘリックスリンカー(例えば、A(EAAAK)nA、ここでnは1、2、3、4、または5である)を含む。
【0087】
好適なリンカーの例はコハク酸、Lys、Glu、および Asp、またはジペプチド、例えばGly-Lysである。リンカーがコハク酸である場合、1つのカルボキシル基はアミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成し、そして他のカルボキシル基は、例えば、ペプチドもしくは置換基のアミノ基とアミド結合を形成しうる。リンカーがLys、Glu、またはAspである場合、カルボキシル基はアミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成し、そしてアミノ基は、例えば、置換基のカルボキシル基とアミド結合を形成しうる。Lysをリンカーとして用いる場合、さらなるリンカーをLysのε-アミノ基と置換基との間に挿入しうる。1つの特定の実施形態において、そのさらなるリンカーはコハク酸であり、例えば、Lysのε-アミノ基とおよび置換基に存在するアミノ基とアミド結合を形成する。一実施形態において、さらなるリンカーはGluまたはAspである(例えば、Lysのε-アミノ基とアミド結合および置換基に存在するカルボキシル基と他のアミド結合を形成する)、すなわち、置換基はNε-アシル化リシン残基である。
【0088】
疾患
ニューロンの生存の向上(例えば、ニューロン死滅率の減少)またはニューロン形成速度の増加が有利である疾患または症状は、本発明の化合物を用いて治療することができる。かかる症状には、神経変性障害、例えば、ポリグルタミン鎖増大障害(例えば、ハンチントン病(HD)、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮、ケネディー病(脊髄延髄性筋萎縮とも呼ばれる)、および脊髄小脳失調症(例えば、1型、2型、3型(マチャド-ジョセフ病とも呼ばれる)、6型、7型、および17型)、他のトリヌクレオチド反復増大障害(例えば、脆弱X症候、脆弱XE精神遅滞、フリードリッヒ失調症、筋緊張性ジストロフィー、脊髄小脳失調症8型、および脊髄小脳失調症12型)、アレキサンダー病、アルパーズ病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、毛細血管拡張性運動失調、バッテン病(シュピールマイアー-フォークト-シェーグレン-バッテン病とも呼ばれる)、キャナヴァン病、コケーン症候群、皮質基底変性症、クロイツフェルト‐ヤーコブ病、虚血脳卒中、クラッベ病、レーヴィ小体認知症、多発性硬化症、多系統萎縮症、パーキンソン病、ペリツェーウス-メルツバッヒャー病、ピック病、原発性側索硬化症、レフサム病、サンドホッフ病、シルダー病、脊髄損傷、脊髄筋萎縮、スティール・リチャードソン・オルスゼフスキー病、および脊髄ろうからなる群より選択される障害が含まれる。他の症状には、損傷(例えば、脊髄損傷)、振盪、虚血性脳卒中、および 出血性脳卒中が含まれる。
【0089】
投与および用量
本発明はまた、本発明の化合物の治療有効量を含有する医薬組成物を特徴とする。組成物は様々な薬物送達システムで用いるために製剤化することができる。1以上の生理的に許容される賦形剤または担体も適当な製剤のために組成物に含まれてよい。本発明における使用に好適な製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Philadelphia, PA, 17th ed., 1985に見出すことができる。薬物送達の方法の総括については、例えば、Langer(Science 249:1527-1533, 1990)を参照されたい。
【0090】
医薬組成物は予防および/または治療処置のための非経口、鼻腔内、膏薬、経口、または局所(例えば、経皮手段による)投与を意図している。医薬組成物は非経口(例えば、静脈内、筋肉内、または皮下注射による)、または経口摂取、または血管もしくは癌症状を患う領域における局所施用もしくは関節内注入により投与することができる。さらなる投与経路には、血管内、動脈内、腫瘍内、腹腔内、脳室内、硬膜内、ならびに経鼻、眼、強膜内、眼窩内、直腸、局所、またはエアロゾル吸入投与が含まれる。デポ注入または浸食性移植片もしくは成分のような手段による徐放性投与も具体的に本発明に含まれる。従って、本発明は、許容される担体、好ましくは水性担体、例えば、水、緩衝化水、生理食塩水、PBSなどに溶解もしくは懸濁した上述の薬剤を含有する、非経口投与用の組成物を提供する。組成物は、生物学的条件を近似するために必要な製薬上許容される助剤、例えば、pH調節および緩衝化剤、等張化剤、湿潤剤、界面活性剤などを含有してもよい。本発明はまた、経口送達用の組成物を提供し、これは不活性成分、例えば、錠剤、カプセルなどを製剤するための結合剤または充填剤を含有してもよい。さらに、本発明は局所投与用の組成物を提供し、これは不活性成分、例えば、クリーム、軟膏などを製剤するための溶媒もしくは乳濁化剤などを含有してもよい。
【0091】
これらの組成物は通常の滅菌技法により滅菌するかまたは濾過滅菌することができる。得られる水性溶液を使用のためにそのまま包装してもよく、または凍結乾燥して凍結乾燥品を滅菌水性担体と組み合わせた後に投与してもよい。調製物のpHは、典型的には3〜11、より好ましくは5〜9または6〜8、そして最も好ましくは7〜8、例えば7〜7.5であろう。得られる固形組成物は、それぞれが上述の薬剤の一定量を、例えば、錠剤もしくはカプセルの密封包装中に含有する、複数の単回投与単位に包装してもよい。固形組成物はまた、例えば、局所施用クリームもしくは軟膏用に設計した絞り可能なチューブのような、柔軟な量向けの容器に包装することができる。
【0092】
有効量を含有する組成物を予防または治療処置用に投与してもよい。予防の施用では、組成物を臨床的に確認した神経学的もしくは神経変性疾患に対する素因または感受性増加をもつ被験体に投与することができる。本発明の組成物を、臨床疾患の発症を遅延、軽減、または好ましくは防止するのに十分な量だけ投与することができる。治療の施用では、組成物を既に疾患(例えば、神経学的もしくは神経変性疾患)を患う被験体(例えば、ヒト)に、その症状およびその複合症の症候群を治療または少なくとも部分的に停止するために十分な量だけ投与する。この目的を達成するのに十分な量は、「治療有効量」、疾患もしくは医学的症状に随伴するいくつかの症候を実質的に改善するのに十分な化合物の量として定義される。例えば、神経変性疾患(例えば、本明細書に記載のもの)において、疾患または症状のいずれかの症候を軽減、防止、遅延、抑制、または停止する薬剤または化合物は治療上有効でありうる。薬剤もしくは化合物の治療有効量は、疾患もしくは症状を治癒するのに必要な量ではないが、疾患もしくは症状の発症を遅延し、邪魔し、もしくは防止するか、または疾患もしくは症状症候群を改善するか、または疾患もしくは症状の期間を変えるか、または例えば、より軽症化するか、または個体における回復を加速するなどの疾患もしくは症状の治療を提供する。
【0093】
この使用に対する有効量は、疾患または症状の重症度および被験体の体重と全身状態に依存するが、一般に、1被験体当たり1用量当たり、GDNF、BDNFまたは関係分子の等価量の約0.05μg〜約1000μg(例えば、0.5〜100μg)の範囲である。最初の投与および追加投与の好適なレジメンは、典型的には、最初の投与と次いで、1回以上の繰り返し用量を時間、日、週、または月間隔で引き続いて行う投与である。本発明の組成物中に存在する薬剤の総有効量を、哺乳動物に単一用量として、あるいは、ボーラス(大量瞬時投与)としてまたは比較的短時間にわたる注入により投与してもよく、または、複数用量をより長期間にわたって(例えば、1用量を毎4-6、8〜12、14〜16、または18〜24時間、または毎2〜4日、1〜2週、毎月に)投与する分割治療プロトコルを用いて投与してもよい。あるいは、血液中に治療上有効な濃度を維持するのに十分な、連続的静脈内輸液が考えられる。
【0094】
哺乳動物(例えば、ヒト)に施用される本発明の組成物内に存在するおよび本発明の方法に使用される1以上の薬剤の治療有効量は、当業者が哺乳動物の年齢、体重、および症状の個々の相違を考慮して決定することができる。本発明のある特定の化合物はBBBを横切る能力が高いので、本発明の化合物の投与量は、非コンジュゲートアゴニストの治療効果に必要な等価用量より低いもの(例えば、必要な等価用量の約90%、75%、50%、40%、30%、20%、15%、12%、10%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、または0.1%以下)でありうる。本発明の薬剤は被験体(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に、治療する被験体に所望の結果(例えば、ニューロンの保存、新ニューロンの成長)を生じる量である有効量だけ投与される。治療有効量はまた、当業者が実験的に決定することができる。
【0095】
被験体はまた、1用量当たりGDNF、BDNF、または関係分子と比較して1週当たり1回以上(例えば、毎週2、3、4、5、6、または7回またはそれ以上)、約0.05〜1,000μg等価用量、例えば、1週当たり0.1〜2,500(例えば、2,000、1,500、1,000、500、100、10、1、0.5、または0.1)μg用量の範囲の薬剤を受けてもよい。被験体はまた、本組成物の薬剤を毎2または3週に1回、1用量当たり0.1〜3,000μgの範囲の組成物の薬剤を受けてもよい。
【0096】
有効量を含む本発明の組成物の単回投与または複数回投与を、治療する医師が選択した用量レベルおよびパターンで行うことができる。用量および投与スケジュールは、臨床医が通常行う方法もしくは本明細書に記載した方法によって治療期間を通してモニターできる被験体の疾患または症状の重症度に基づいて決定しかつ調節することができる。
【0097】
本発明の化合物を従来の処置または治療法と組み合わせて使用してもよく、または従来の処置または治療法とは別に使用してもよい。
【0098】
本発明の化合物を他の薬剤による治療と組み合わせて投与する場合、それらを順次または同時に個体に投与してもよい。あるいは、本発明による医薬組成物は、本発明の化合物と本明細書に記載した製薬上許容される賦形剤および当技術分野で公知の別の治療薬または予防薬を合体した組み合わせから成ってもよい。
【実施例】
【0099】
実施例1
Angiopep-2/GDNF構築物
Angiopep-2とhGDNF配列(hGDNF78-211)を含む構築物を作製した。これらの構築物はN末端(His)6タグ、トロンビン切断部位、Angiopep-2配列、およびGDNF配列を含む。対照ペプチド(Angiopep-2配列を欠く)も作製した(図2)。これらの配列のN末端部分のアミノ酸配列を図3に示す。これらの構築物をクローニングするストラテジーを図4〜7に記載する。類似したストラテジーをBDNF構築物を作製するのに使った。構築物の配列を図8〜12に示す。GFRα1と結合したAngiopep-2-GDNF化合物を示すイメージを図13に示す。
【0100】
さらなるGDNF構築物を図14に示すように作製した。これには、Angiopep-2がN末端に結合したhGDNF78-211(An2-hGDNF);Angiopep-2がC末端に結合したhGDNF78-211(hGDNF-An2);逆転Angiopep-2がN末端に結合したhGDNF78-211(An2NT-hGDNF);Angiopep-2がN末端に柔軟な((GGGGS)2)リンカーを介して結合したhGDNF78-211(An2-Flex-hGDNF);Angiopep-2がN末端に硬い(PAPAP)リンカーを介して結合したhGDNF78-211(An2-Rig-hGDNF);およびAngiopep-2がN末端にヘリックス(A(EAAAK)2A)リンカーを介して結合したhGDNF78-211(An2-Hel-hGDNF)が含まれる。
【0101】
実施例2
GDNFコンジュゲートの受容体結合
GDNFコンジュゲートの受容体結合を測定するために、二重サンドイッチElisaを用いた。簡単に説明すると、マウス抗-ヒトIgG抗体をプレートに結合させた(図15)。GFRα1受容体/IgGFc融合体を加えると、これは前記抗体と結合した。リガンド結合を測定するため、GDNF、GDNFコンジュゲート、または Angiopep-2をそれぞれプレートに加えた。プレートを次いで、順にヤギ抗-GDNF抗体およびアルカリホスファターゼ-コンジュゲート-ウサギ抗ヤギIgG抗体を用いて処理した。このサンプルを次いでp-ニトロフェニルホスフェート(p-NPP)(アルカリホスファターゼ(AP)基質で、AP処理すると無色から黄色に変わる)を用いて処理した。タンパク質の結合をこの変色に基づいて測定した。
【0102】
このアッセイで、試験した融合タンパク質の全てがGDNF自体によるGDNF受容体との結合に類似したレベルでGDNF受容体と結合することができた(図16)。Angiopep-2(ネガティブ対照)は受容体と結合しないことが観察された。各タンパク質に対する結合定数を計算し、下表に示した。これでわかるように、融合タンパク質の全てがGDNF受容体と効果的に結合することができた。
【表4】
【0103】
実施例3
ホモ二量体の形成
先に記載したように、GDNFがジスルフィド結合を介してホモ二量体を形成することは公知である(図17)。かかるホモ二量体の形成はまた、An2-GDNF タンパク質についても観察された(図18)。還元剤、例えばジチオトレイトール(DTT)での処理により、これらのジスルフィド結合は低減することができる。
【0104】
実施例4
GDNFシグナル伝達カスケードの活性化
以上説明したように、GDNFはGFRα1受容体と結合する。リガンド-受容体複合体は次いでチロシンキナーゼ受容体RETと結合する。この受容体は次いで2つの経路、すなわち、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)を介するAkt経路およびRas経路を介するErk経路を活性化することができる。これらの経路の活性化は細胞生存および増殖の増加をもたらす(図19)。
【0105】
融合タンパク質がこれらの経路を活性化できるかどうかを試験するために、細胞をGDNF、An2-GDNFで10分間処理するか、または無処理のままとした。これらの実験から、GDNFとAn2-GDNFの両方を用いてリン酸化RET、リン酸化Erk、およびリン酸化Aktの増加を観察した(図 20)。これらの結果はAn2-GDNFが、GDNFと同様に、GDNF経路を活性化できたことを示す。
【0106】
実施例5
in situ脳潅流
GDNF融合タンパク質が血液脳関門を横切ることができるかどうかを確認するために、in situ潅流アッセイを実施した。かかるアッセイは、例えば、PCT公開公報WO 2006/086870に記載されている。これらの結果からAngiopep-2-GDNFコンジュゲートは非コンジュゲートGDNFより遥かに効果的にBBBを横切ることが観察された(図 21)。
【0107】
他の実施形態
本明細書で記載した全ての特許、米国特許出願第61/186,246号(2009年6月11日出願)を含む特許出願、および公開は、それぞれの特許、特許出願、または公開を特定しておよび個々に参照により組込まれると示したのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドベクターおよびグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)または脳由来神経栄養因子(BDNF)を含むコンジュゲートならびにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ニューロンの喪失または障害に関わる疾患は重篤な症状であり、世界中で数百万人が患っている。GDNFなどの治療法は神経変性疾患、例えば、パーキンソン病の治療に有望であるものの、本発明以前、かかる治療薬の脳への送達は活性薬が血液脳関門を横切ることができないため困難であった。実際、パーキンソン病に対するGDNF治療法に関わる従来の臨床試行は薬剤の脳中への直接注入の使用を必要とし、また筋萎縮性側索硬化症治療用のBDNF試行は薬剤のくも膜下腔内注入を必要とした。これらの方法は煩雑かつ困難でありうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ニューロンの生存または成長の増大が有利である広範囲の様々な疾患に対する治療の必要性があるので、血液脳関門を横切る能力をもつGDNFおよびBDNF系治療薬が切望される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、このほど、GDNF、BDNFまたは関係分子とコンジュゲートしたペプチドベクターを含む化合物を開発した。これらの化合物を、GDNFまたはBDNF配列とAngiopep-2配列を含む融合タンパク質によって例示する。ある特定の実施形態において、これらの化合物は血液脳関門を横切ることができ、従って、これらは神経変性疾患またはニューロン損傷を有する被験者を治療する治療薬として有用である。
【0005】
従って、第一の態様において、本発明は式:
A-X-B
[式中、Aはペプチドベクターであり;Bは(i)GDNF、少なくとも1つのGDNF活性を有するその断片、もしくはGDNF類似体(例えば、本明細書に記載のいずれか);または(ii)BDNF、少なくとも1つのBDNF活性を有するその断片、もしくはBDNF類似体(例えば、本明細書に記載のいずれか)と実質的に同一のポリペプチドであり;そしてXはAをBと接続するリンカー(例えば、本明細書に記載のいずれか)である]を含む化合物を特徴とする。本化合物は血液脳関門を(例えば、効率的に)横切ることができる。本化合物はGDNFの成熟型(例えば、アイソフォーム1のアミノ酸118〜211)またはBDNFの成熟型(例えば、アイソフォームAのアミノ酸129〜247)を含んでもよい。GDNF断片はアイソフォーム1のアミノ酸78〜211を含むかまたはそれであってもよい。本化合物はさらにタグ、例えばHisタグまたは切断部位、例えばトロンビン切断部位を含んでもよい。ある特定の実施形態において、本化合物は図2または図14に示した構造を有する。ある特定の実施形態において、Xはペプチド結合であるかまたはXは少なくとも1つのアミノ酸であり、ここで、AとBはそれぞれXとペプチド結合により共有結合されている。ある特定の実施形態において、リンカーは柔軟なリンカー(例えば、(GGGGS)n、ここでnは1、2、または3である)、硬いリンカー(例えば、PAPAPおよび(PT)nP、ここでnは2、3、4、5、6、または7である)、またはα-ヘリックスリンカー(例えば、A(EAAAK)nA、ここでnは1、2、3、4、または5である)。ペプチドベクターはGDNF、BDNF、または関係分子のNまたはC末端に存在してもよい。本発明はまた、化合物(ここで、Xはペプチド結合、アミノ酸、またはペプチドリンカーである)をコードする核酸分子であることを特徴とする。核酸はベクターの一部分であってもよく、そして核酸はプロモーターと機能しうる形で連結されていてもよい。本発明はまた、ベクターがコードするするポリペプチドを細胞内で発現することにより化合物を作製し、かつそのポリペプチドを精製する方法も特徴とする。本発明はまた、前記化合物を固体支持体上で合成することにより本化合物を作製する方法も特徴とする。
【0006】
他の態様において本発明は、本発明の化合物の有効量を被験体に投与することにより、神経変性障害またはニューロンの損傷もしくは障害を有する被験体(例えば、ヒト)を治療する(例えば、予防的に)方法を特徴とする。神経変性障害は、ポリグルタミン鎖増大障害、脆弱X症候、脆弱XE精神遅滞、フリードリッヒ失調症、筋緊張性ジストロフィー、脊髄小脳失調症8型、および脊髄小脳失調症12型、アレキサンダー病、アルパーズ病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、毛細血管拡張性運動失調、バッテン病(シュピールマイアー-フォークト-シェーグレン-バッテン病)、キャナヴァン病、コケーン症候群、皮質基底変性症、クロイツフェルト‐ヤーコブ病、虚血脳卒中、クラッベ病、レーヴィ小体認知症、多発性硬化症、多系統萎縮症、パーキンソン病、ペリツェーウス-メルツバッヒャー病、ピック病、原発性側索硬化症、レフサム病、サンドホッフ病、シルダー病、脊髄損傷、脊髄筋萎縮、スティール・リチャードソン・オルスゼフスキー病、および脊髄ろうからなる群より選択される。ポリグルタミン反復性疾患は、ハンチントン病(HD)、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、ケネディー病(脊髄延髄性筋萎縮とも呼ばれる)、または1型、2型、3型(マチャド-ジョセフ病)、6型、7型、および17型)からなる群より選択される脊髄小脳失調症でありうる。ニューロン障害は虚血性脳卒中、出血性脳卒中、または脊髄損傷によって起こりうる。本発明の化合物を用いて治療できる(例えば、予防的に)他の疾患にはうつ病および統合失調症が含まれる。
【0007】
上記態様の特定の実施形態において、AはAngiopep-2(配列番号97)であり、Xはペプチド結合であり;そしてBはhGDNF78-211であり、ここでAはBのN末端とXを介して接続されるか;AはAngiopep-2(配列番号97)であり、Xはペプチド結合であり;そしてBはhGDNF78-211であり、ここでAはBのC末端とXを介して接続されるか;Aは逆転Angiopep-2(配列番号117)であり、Xはペプチド結合であり;そしてBはhGDNF78-211であり、ここでAはBのN末端とXを介して接続されるか;AはAngiopep-2(配列番号97)であり、Xは(GGGGS)2であり;そしてBはhGDNF78-211であり、ここでAはBのN末端とXを介して接続されるか;AはAngiopep-2(配列番号97)であり、XはPAPAPであり;そしてBはhGDNF78-211であり、ここでAはBのN末端とXを介して接続されるか;またはAはAngiopep-2(配列番号97)であり、XはA(EAAAK)2Aであり;そしてBはhGDNF78-211であり、ここでAはBのN末端とXを介して接続される。
【0008】
上記態様のいずれにおいても、ペプチドベクターは表1に掲げた配列、またはその断片のいずれかと実質的に同一なポリペプチドであってよい。ある特定の実施形態において、ペプチドベクターはAngiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(配列番号97)、Angiopep-3(配列番号107)、Angiopep-4a(配列番号108)、Angiopep-4b(配列番号109)、Angiopep-5(配列番号110)、Angiopep-6(配列番号111)、Angiopep-7(配列番号112)、または逆転Angiopep-2(配列番号117)の配列を有する。本発明のペプチドベクターまたは化合物は、特定の細胞型(例えば、肝臓、肺、腎臓、脾臓、および筋肉のうちの任意の1、2、3、4、または5つ)中に効率よく輸送することができるかまたは哺乳動物のBBBを効率よく横切ることができる(例えば、Angiopep-1、-2、-3、-4a、-4b、-5、および-6)。他の実施形態において、このペプチドベクターまたは化合物は特定の細胞型(例えば、肝臓、肺、腎臓、脾臓、および筋肉のうちの任意の1、2、3、4、または5つ)中に効率よく進入することはできるが、BBBを効率よく横切らない(例えば、Angiopep-7を含むコンジュゲート)。ペプチドベクターは任意の長さ、例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、25、35、50、75、100、200、または500アミノ酸、またはこれらの間の任意の範囲であってもよい。ある特定の実施形態において、ペプチドベクターは長さが10〜50アミノ酸である。ポリペプチドは組換え遺伝技法または化学合成により作製することができる。
【0009】
表1:例示のペプチドベクター
【表1】
【0010】
ポリペプチド番号5、67、76、および91はそれぞれ配列番号5、67、76、および91の配列を含み、かつC末端でアミド化されている。ポリペプチド番号107、109、および110はそれぞれ配列番号97、109、および110の配列を含み、かつN末端でアセチル化されている。
【0011】
以上の態様のいずれにおいても、ペプチドベクターは式:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19
[式中、X1〜X19(例えば、X1〜X6、X8、X9、X11〜X14、およびX16〜X19)は、独立して、任意のアミノ酸(例えば、天然アミノ酸、例えばAla、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、およびVal)であるかまたは不在でありかつX1、X10、およびX15の少なくとも1つ(例えば、2つまたは3つ)はアルギニンである]を有するアミノ酸配列を含みうる。いくつかの実施形態において、X7はSerもしくはCysであるか;またはX10およびX15はそれぞれ独立してArgもしくはLysである。いくつかの実施形態において、X1〜X19の残基は、配列番号:1〜105および107〜116のいずれか1つのアミノ酸配列のいずれか(例えば、Angiopep-1、Angiopep-2、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7)と実質的に同一である。いくつかの実施形態において、アミノ酸X1〜X19の少なくとも1つ(例えば、2、3、4、または5つ)はArgである。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは1以上のさらなるシステイン残基をポリペプチドのN末端、ポリペプチドのC末端、または両方に有する。
【0012】
以上の態様の任意のある特定の実施形態において、ペプチドベクターまたはGDNF、BDNF、または関係分子は改変されている(例えば、本明細書に記載の通り)。ペプチドまたはポリペプチドはアミド化、アセチル化または両方の改変が行われていてもよい。かかる改変はポリペプチドのアミノまたはカルボキシ末端にあってもよい。ペプチドまたはポリペプチドはまた、本明細書に記載のポリペプチドの任意のペプチドミメチック(例えば、本明細書に記載のもの)を含んでもよい。ペプチドまたはポリペプチドは(例えば、システイン残基を介するジスルフィド結合により形成された)多量体、例えば、二量体であってもよい。
【0013】
ある特定の実施形態において、ペプチドベクターまたはGDNF、BDNF、または関係分子は、少なくとも1つのアミノ酸置換(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12置換)、挿入、または欠失をもつ本明細書に記載のアミノ酸配列を有するか、または本明細書に記載のアミノ酸配列と実質的に同一である。ペプチドまたはポリペプチドは、例えば、1〜12、1〜10、1〜5、または1〜3アミノ酸置換、例えば、1〜10(例えば、〜9、8、7、6、5、4、3、2)アミノ酸置換を含有してもよい。アミノ酸置換(複数のアミノ酸置換を含む)は保存的であってもまたは非保存的であってもよい。例えば、ペプチドベクターは、配列番号1、Angiopep-1、Angiopep-2、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7の任意のアミノ酸配列の位置1、10、および15に対応する1、2、もしくは3つの位置に1つのアルギニンを有してもよい。ある特定の実施形態において、BDNF、GDNF、または関係分子は任意の位置にシステインまたはリシン置換または付加(例えば、NまたはC末端位置におけるリシン置換)を有してもよい。
【0014】
以上の態様のいずれかにおいて、本化合物は特定して、配列番号:1〜105および107〜116(例えば、Angiopep-1、Angiopep-2、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7)のいずれかを含むかまたはから成るポリペプチドを除外してもよい。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドおよび化合物は配列番号:102、103、104、および105のポリペプチドを除外する。
【0015】
「断片」は全長アミノ酸または核酸配列(例えば、BDNFまたはGDNF)の一部分を意味する。断片は全長配列の少なくとも4、5、6、8、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、75、80、90、100、110、120、130、140、150、175、200、または250アミノ酸または核酸を含んでもよい。断片は全長タンパク質の生物学的活性の少なくとも1つを保持しうる。
【0016】
「実質的に同一の」は、参照アミノ酸または核酸配列に対して少なくとも35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、85%、90%、95%、またはさらに99%同一性を示すポリペプチドまたは核酸を意味する。ポリペプチドについては、比較配列の長さは一般に少なくとも4(例えば、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、50、または100)アミノ酸であろう。核酸については、比較配列の長さは一般に少なくとも60ヌクレオチド、好ましくは少なくとも90ヌクレオチド、およびより好ましくは少なくとも120ヌクレオチド、または全長であろう。ここで、元来のポリペプチドのアミノ酸と同一または類似配列のアミノ酸との間にギャップがあってもよいことを理解されたい。ギャップには、アミノ酸不在、元来のポリペプチドと同一または類似でない1個以上のアミノ酸が含まれる。%同一性は、例えば、nアルゴリズムギャップ、BESTFIT、またはFASTA(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0)により、デフォールトギャップウェイトを用いて決定することができる。
【0017】
「ペプチドベクター」は、特定の細胞型(例えば、肝臓、肺、腎臓、脾臓、または筋肉)中にまたはBBBを横切って輸送するかことができる化合物または分子、例えばポリペプチドまたはペプチドミメチックを意味する。ベクターを薬剤と結合(共有結合または非共有結合で)またはコンジュゲートしてもよく、それにより前記薬剤を特定の細胞型中にまたはBBBを横切って輸送することができる。ある特定の実施形態において、ベクターは癌細胞または脳内皮細胞上に存在する受容体と結合してもよく、それにより癌細胞中にまたは経細胞輸送によりBBBを横切って輸送するかことができる。ベクターは、細胞またはBBB完全性に影響を与えることなく高レベルの経内皮輸送が得られる分子であってもよい。ベクターはポリペプチドまたはペプチドミメチックであってもよくかつ天然であってもまたは化学合成もしくは組換え遺伝技術により作製してもよい。
【0018】
被験体の疾患、障害、または症状を「治療する」は、被験体に治療薬を投与することにより疾患、障害、または症状の少なくとも1つの症候を軽減することを意味する。
【0019】
被験体の疾患、障害または症状を「予防的に治療する」は、疾患症候もしくは症候群が現われる前に被験体に治療薬を投与することにより疾患、障害、または症状の出現頻度もしくは重症度を軽減する(例えば、予防する)ことを意味する。
【0020】
一例として、特定の症状について治療を受けている被験体は、医師がその症状を有すると診断した被験体である。診断は本明細書に記載した、いずれかの好適な手段により実施することができる。症状の発症を予防的に治療されている被験体はかかる診断を受けていてもいなくてもよい。当業者は、本発明の被験体を標準試験に課してもよいしまたは試験せずに1以上のリスク因子の存在により高いリスクにあると同定してもよいことを理解するであろう。
【0021】
「被験体」はヒトまたは非ヒト動物(例えば、哺乳動物)を意味する。
【0022】
「等価用量」は、非コンジュゲート分子と比較して、本発明の化合物中のGDNF、BDNF、または関係分子の同じモル量を達成するために必要な本発明の化合物の量を意味する。
【0023】
「BBBを横切って効率的に輸送される」ポリペプチドは、少なくともAngiopep-6のようにBBBを効率的に横切ることができるポリペプチドを意味する(すなわち、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第11/807,597号(2007年5月29日出願)に記載のin situ脳潅流アッセイで、Angiopep-1(250nM)の38.5%より大きい)。従って、「BBBを横切って効率的に輸送されない」ポリペプチドはより低いレベルで脳に輸送される(例えば、Angiopep-6より低い効率で輸送される)。
【0024】
「特定の細胞型に効率的に輸送される」ポリペプチドまたは化合物は、ポリペプチドまたは化合物を(例えば、細胞中への輸送増加、細胞からの流出の減少、またはそれらの組み合わせによって)対照物質と比較して、またはコンジュゲートの場合、非コンジュゲート薬剤と比較して、少なくとも10%(例えば、25%、50%、100%、200%、500%、1,000%、5,000%、または10,000%)大きい程度で、その細胞型に蓄積することができることを意味する。かかる活性は、参照により本明細書に組み込まれる国際特許公開第WO 2007/009229号に詳しく記載されている。
【0025】
本発明の他の特徴と利点は以下の詳しい説明、図面、および請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1−1】ヒトGDNFおよびBDNFの配列を示す。
【図1−2】図1−1の続き。
【図2】ペプチド結合、柔軟なリンカー、硬いリンカー、またはα-ヘリックスリンカーのいずれかを介して連結されたHis6タグ、トロンビン切断部位、Angiopep-2ペプチドおよびhGDNF78-211を含有するAngiopep2-GDNF構築物の模式図である。
【図3】図2に記載した構築物の配列を示す。
【図4】GDNF構築物を作製するためのクローニングストラテジーを示す。
【図5】GDNF構築物を作製するためのクローニングストラテジーを示す。
【図6】GDNF構築物を作製するためのクローニングストラテジーを示す。
【図7】GDNF構築物を作製するためのクローニングストラテジーを示す。
【図8】GDNF構築物の配列を示す。
【図9】GDNF構築物の配列を示す。
【図10】GDNF構築物の配列を示す。
【図11】GDNF構築物の配列を示す。
【図12】GDNF構築物の配列を示す。
【図13】GDNFファミリー受容体α-1(GRα-1)と結合したAngiopep-2/GDNFの構造を示す模式図である。
【図14】(a)Angiopep-2または逆転Angiopep-2と(b)GDNF(hGDNF78-211)を含む付加融合タンパク質を示す模式図である。具体的な構築物は、An2-hGDNF(hGDNF78-211と融合したN末端Angiopep-2);hGDNF-An2(hGDNF78-211と融合したC末端Angiopep-2);An2NT-hGDNF(hGDNF78-211と融合したN末端逆配列Angiopep-2);An2-Flex-hGDNF(柔軟な((GGGGS)2)リンカーを介してhGDNF78-211と融合したN末端Angiopep-2);An2-Rig-hGDNF(硬い(PAPAP)リンカーを介してhGDNF78-211と融合したN末端Angiopep-2);An2-Hel-hGDNF(ヘリックス(A(EAAAK)2A)リンカーを介してhGDNF78-211と融合したN末端Angiopep-2)を含む。
【図15】コンジュゲートがGFRa1受容体と結合できるかどうかを確認するために用いた酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を示す模式図である。
【図16】図14のコンジュゲートのそれぞれについて実施した図15に記載の結合実験から得た結果を示す一式のグラフである。
【図17】GDNFおよびAngiopep-GDNF融合タンパク質ホモ二量体の形成を示す模式図である。
【図18】GDNFおよびAn2-GDNFポリペプチドの両方の二量体形成を示すクーマシー染色ポリアクリルイミドの写真である。二量体をジチオトレイトール(DTT)で処理すると単量体が形成する。
【図19】GDNFシグナル伝達カスケードを示す模式図である。
【図20】GDNFおよびAn2-GDNFの両方がGDNFシグナル伝達カスケードの成分を活性化(リン酸化)を増強できることを示す一式のウェスタンブロットの写真である。
【図21】GDNFまたはAngiopep-2/GDNF融合タンパク質のいずれかを用いるin situ脳潅流アッセイから得た結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明者らは血液脳関門(BBB)を横切ることができるペプチドベクターと結合したGDNF、BDNF、類似体またはその機能性断片を含む化合物を開発した。こららの化合物はBBBを横切ることができるので、従ってペプチドベクターと結合していないGDNF、BDNF、または関係分子より遥かに効率的に脳中に輸送される。この輸送増加は、効力増加、副作用軽減、またはこれら両者の組み合わせをもたらすことができる。効力が増加する事例では、ペプチドベクターと結合していない場合のGDNF、BDNF、または関係分子と比較して、より低い有効量の化合物を投与することができる。副作用が軽減される他の事例では、化合物をより高い用量で投与することが可能でありうる。本発明の化合物は、ニューロン成長の増加またはニューロン死の低下が所望される疾患の治療に有用である。かかる疾患には、神経変性疾患、例えばパーキンソン病(PD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ならびに本明細書に記載の他の疾患および症状が含まれる。
【0028】
GDNFおよびGDNF類似体
ある特定の実施形態において、ペプチドベクターはGDNF、GDNF類似体、GDNF断片、またはそれらの改変型と結合している。ある特定の実施形態において、GDNF類似体はGDNF、GDNF類似体と、またはその断片と、実質的に同一の(例えば、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%同一の)配列である。
【0029】
GDNFはジスルフィド連結ホモ二量体として分泌され、ドーパミン作動性ニューロン、プルキンエ細胞、運動ニューロン、および交感神経性ニューロンの生存を支援することができる。これらの活性の1つ以上を有するGDNF類似体または断片を本発明に用いることができ、かかる類似体および断片の活性は当技術分野で公知のいずれかの手段を用いて試験することができる。
【0030】
ヒトGDNFは211アミノ酸タンパク質(アイソフォーム1;配列番号117);185アミノ酸タンパク質(アイソフォーム2;配列番号118)、および133アミノ酸タンパク質として発現される。成熟GDNFは、アイソフォーム1のアミノ酸78〜211または118〜211、アイソフォーム2のアミノ酸92〜185を含む134アミノ酸配列である。アイソフォーム3はアミノ酸40〜133からのトランスフォーミング増殖因子様ドメインを含む。
【0031】
ある特定の実施形態において、GDNF類似体はGDNFのスプライス変異体である。かかるタンパク質はPCT公開第WO2009/053536号に記載されていて、pre-(α)pro-GDNF、pre-(β)pro-GDNF、およびpre-(γ)pro-GDNFスプライス変異体、ならびにpre-pro領域を欠く変異体:(α)pro-GDNF、(β)pro-GDNF、およびpre-(γ)pro-GDNFを含む。
【0032】
GDNF類似体はまた、米国特許出願公開第2009/0069230号に記載され、これは配列:
Xaa1-Pro-Xaa3-Pro-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Xaa8(I)
[式中、Xaa1はPhe、Trp、またはTyrであり;Xaa3はLeu、Ala、Ile、またはValであり;Xaa5はAla、Leu、Ile、またはValであり;Xaa6はGlyであり、D-コンフィギュレーションのアミノ酸残基であるかまたは不在であり;Xaa7はLys、Arg、もしくはHisであるかはまたは不在であり;そしてXaa8はArg、Lys、もしくはHisであるかまたは不在である]を有するGDNF類似体を含む。Xaaはアミノ酸を表し、本発明者らはこれをアミノ酸残基と呼ぶこともある。下付き文字(ここでは下付き文字1〜8)はペプチド配列中のそれぞれのアミノ酸の位置を表す。従って、Xaa1はGDNF前駆体タンパク質の断片中の第1アミノ酸残基を表す。
【0033】
特定の実施形態において、GDNF前駆体タンパク質の断片は(1)Phe-Pro-Xaa3-Pro-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Xaa8,(例えば,Phe-Pro-Leu-Pro-Ala-Gly-Lys-Arg);(2)Xaa1-Pro-Leu-Pro-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Xaa8;(3)Phe-Pro-Leu-Pro-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Xaa8;(4)Xaa1-Pro-Xaa3-Pro-Ala-Xaa6-Xaa7-Xaa8;(5)Phe-Pro-Xaa3-Pro-Ala-Xaa6-Xaa7-Xaa8;(6)Phe-Pro-Leu-Pro-Ala-Xaa6-Xaa7-Xaa8;(7)Xaa1-Pro-Xaa3-Pro-Xaa5-Gly-Xaa7-Xaa8;(8)Phe-Pro-Xaa3-Pro-Xaa5-Gly-Xaa7-Xaa8;(9)Phe-Pro-Leu-Pro-Xaa5-Gly-Xaa7-Xaa8;(10)Phe-Pro-Leu-Pro-Ala-Gly-Xaa7-Xaa8;(11)Xaa1-Pro-Xaa3-Pro-Xaa5-Xaa6-Lys-Xaa8;(12)Phe-Pro-Xaa3-Pro-Xaa5-Xaa6-Lys-Xaa8;(13)Phe-Pro-Leu-Pro-Xaa5-Xaa6-Lys-Xaa8;(14)Phe-Pro-Leu-Pro-Ala-Xaa6-Lys-Xaa8;(15)Phe-Pro-Leu-Pro-Ala-Gly-Lys-Xaa8;(16)Xaa1-Pro-Xaa3-Pro-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Arg;(17)Phe-Pro-Xaa3-Pro-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Arg;(18)Phe-Pro-Leu-Pro-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Arg;(19)Phe-Pro-Leu-Pro-Ala-Xaa6-Xaa7-Arg;および(20)Phe-Pro-Leu-Pro-Ala-Gly-Xaa7-Argにより表される配列を有しうる。
【0034】
他の実施形態において、GDNF前駆体タンパク質の断片は、Xaa1がPheであり、Xaa3がLeuであり、Xaa5がAlaでありXaa6がGlyであり、Xaa7がLysであり、そしてXaa8がArgである式I(すなわち、Phe-Pro-Leu-Pro-Ala-Gly-Lys-Arg)に一致するGDNF前駆体タンパク質の断片もしくは部分でありうる。式Iにより表されるアミノ酸残基の少なくとも1つ(例えば、1、2、または3つ)は不在であってもよい。例えば、Xaa6、Xaa7、および/またはXaa8は不在であってもよい。
【0035】
他の実施形態において、GDNF前駆体タンパク質またはその生物学的に活性な変異体の断片は式II:
Pro-Pro-Xaa3-Xaa4-Pro-Xaa6-Xaa7-Xaa8-Xaa9-Xa-a10-Xaa11-Xaa12-Xaa13-Xaa14(II)
[式中、Xaa3はGluまたはAspであり;Xaa4はAla、Gly、Ile、Leu、Met、またはValであり;Xaa6はAla、Gly、Ile、Leu、Met、またはValであり;Xaa7はGluまたはAspであり;Xaa8はAspまたはGluであり;Xaa9はArg、His、またはLysであり;Xaa10はSer、Asn、Gln、またはThrであり;Xaa11はLeu、Ala、Gly、Ile、Leu、MetまたはValであり;Xaa12はGlyであり、D-コンフィギュレーションのアミノ酸残基であるか、または非存在であり;Xaa13はArg、His、もしくはLysであるかまたは非存在であり;Xaa14はArg、His、もしくはLysであるかまたは非存在である]のアミノ酸配列と一致するアミノ酸残基の配列を有してもよくまたは含んでもよい。式IIと一致する例示のペプチドは配列Pro-Pro-Glu-Ala-Pro-Ala-Glu-Asp-Arg-Ser-Leu-Gly-Arg-Arg(配列番号2)を有しうる。
【0036】
他の実施形態において、GDNF前駆体タンパク質またはその生物学的に活性な変異体の断片は式III:
Xaa1-Xaa2-Xaa3-Xaa4-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Xaa8-Xaa9-Xaa10-Xaa11-Xaa12-Xaa13-Xaa14-Xaa15-Xaa16-Xaa17-Xaa18-Xaa19-Xaa20-Xaa21-Xaa22(III)
[式中、Xaa1およびXaa2は、独立して、Arg、Lys、もしくはHisであるかまたは不在であり;Xaa3はGluまたはAspであり;Xaa4はArg、Lysであるか、またはHisであり;Xaa5はAsn、Gln、Ser、またはThrであり;Xaa6はArg、Lys、またはHisであり;Xaa7はGln、Asn、Ser、またはThrであり;Xaa8、Xaa9、Xaa10、およびXaa11は、独立して、Ala、Gly、Ile、Leu、Met、またはValであり;Xaa12はAsn、Gln、Ser、またはThr;Xaa13はProまたはSer;Xaa14はGluまたはAspであり;Xaa15はAsn、Gln、Ser、またはThrであり;Xaa16はSer、Asn、Gln、またはThrであり;Xaa17はLys、Arg、またはHisであり;Xaa18はGly、Ala、Ile、Leu、Met、またはValであり;Xaa19はLys、Arg、またはHisであり;Xaa20はGlyであり、D-コンフィギュレーションのアミノ酸残基であるか、または不在であり;およびXaa21およびXaa22は、独立して、Arg、Lys、Hisであるか、または存在しない]のアミノ酸配列と一致するアミノ酸残基の配列を有してもよくまたは含んでもよい。式IIIと一致する例示のペプチドは配列:Arg-Arg-Glu-Arg-Asn-Arg-Gln-Ala-Ala-Ala-Ala-Asn-Pro-Glu-Asn-Ser-Arg-Gly-Lys-Gly-Arg-Argを有してもよい。
【0037】
他のGDNF類似体がPCT公開公報WO 2008/069876に記載されている。これらの類似体には、ERNRQAAAANPENSRGK-アミド; FPLPA-アミド; および PPEAPAEDRSL-アミドが含まれる。
【0038】
さらに他のGDNF類似体がPCT公開第WO2007/019860号に記載されている。
【0039】
本類似体は、式:
Xa-(x)-Xb-Xc-Xd-Xf
[式中、XaはD、E、AまたはGであり、(x)はアミノ酸残基A、D、E、G、I、K、L、P、Q、S、TおよびVから選択される2〜3アミノ酸残基もしくは単一アミノ酸残基の配列であり、Xbはアミノ酸残基YもしくはHであるか、または疎水性アミノ酸残基であり、そしてXc、Xd、もしくはXfの少なくとも1つは帯電性もしくは疎水性アミノ酸残基である]を有するものを含む。この類似体は長さが6〜22アミノ酸であってもよい。
【0040】
さらなるGDNF類似体が米国特許出願公開第2006/0258576号に記載されている。これらの類似体にはFPLPA-アミド、PPEAPAEDRSL-アミド、LLEAPAEDHSL-アミド、SPDKQMAVLP、SPDKQAAALP、SPDKQTPIFS、ERNRQAAAANPENSRGK-アミド、ERNRQAAAASPENSRGK-アミド、および ERNRQSAATNVENSSKK-アミドが含まれる。
【0041】
さらなるGDNF類似体は、機能性断片(例えば、本明細書に記載の断片のいずれか)、本明細書に記載の改変のいずれかを有するペプチド、またはそのペプチドミメチックを含みうる。かかる類似体および断片の活性は当技術分野で公知の任意の手段を用いて試験することができる。
【0042】
BDNF
BDNFはタンパク質の神経成長因子ファミリーに属する糖タンパク質である。このタンパク質は247アミノ酸ポリペプチド(アイソフォームA)、255アミノ酸ポリペプチド(アイソフォームB)、262アミノ酸ポリペプチド(アイソフォームC)、276アミノ酸ポリペプチド(アイソフォームD)、329アミノ酸ポリペプチド(アイソフォームE)としてコードされる。成熟119アミノ酸糖タンパク質はさらに大きい前駆体からプロセシングされ、神経細胞集団の生存を促進する神経栄養因子を生じる。成熟タンパク質は、アイソフォームAプレタンパク質のアミノ酸129〜247、アイソフォームBプレタンパク質のアミノ酸137〜255、アイソフォームCプレタンパク質のアミノ酸144〜162、アイソフォームDプレタンパク質のアミノ酸158〜276、またはアイソフォームEプレタンパク質のアミノ酸211(または212)〜329を含む。BDNFは、TrkB受容体および低アフィニティ神経成長因子受容体(LNGFRまたはp75)に作用する。BDNFは存在するニューロンのニューロン生存を支援することができ、そしてまた、新ニューロンの成長と分化を促進することができる。本発明のBDNF断片もしくは類似体は上述した活性のいずれかを有しうる。かかる類似体および断片は当技術分野で公知の任意の手段を用いて試験することができる。
【0043】
BDNF類似体は米国特許出願公開第2004/0072291号に記載されていて、位置10、16、20、29、31、36、38、39、42、44、49、52、53、54、61、63、71、76、86、87、90、92、98、100、102、103、および105からなる群より選択される1以上の位置においてA、C、D、E、G、H、K、N、P、Q、R、S、またはTの置換を有するものを含む。追加の置換を次の表2に記載する。
【表2】
【0044】
BDNF類似体はまた、米国特許第6,800,607号にも記載されており、これは1-アシル-グリセロールで修飾されたBDNFを記載している。これらの類似体は、
式(1):
A(X-B)n
(式中、Aが脳由来神経栄養因子を表し、Bがグリセロールの2位にヒドロキシル基を有する1-アシル-グリセロール誘導体のそのヒドロキシル基の水素原子を除いた残基を表し、Xが化学的架橋を表し、mは平均導入数を表し、約0.5以上を表す)である、上記の修飾されたBDNF;
(3)Xが式(2):
【化1】
【0045】
(式中、R1はアルキレン基を表す)または式(3):
【化2】
【0046】
(式中、R2およびR3は各々独立してアルキレン基を表す)である、上記(2)記載の修飾されたBDNF;
(4)1-アシル-グリセロール誘導体が1-アシル-グリセロ-3-ホスホリルコリン、1-アシル-グリセロ-3-ホスホリルセリン、または1-アシル-グリセロ-3-ホスホリルエチルアミンである、上記(2)記載の修飾されたBDNF;
(5)Bが式(4):
【化3】
【0047】
(式中、R4はアシル基を表す)で示される1-アシル-グリセロ-3-ホスホリルコリン残基、
式(5):
【化4】
【0048】
(式中、R4はアシル基を表す)で示される1-アシル-グリセロ-3-ホスホリルセリン残基、または式(6):
【化5】
【0049】
(式中、R4はアシル基である)で示される1-アシル-グリセロ-ホスホリルエチルアミン残基である、上記(2)記載の修飾されたBDNF;
(6)Bが式(4):
【化6】
【0050】
(式中、R4はアシル基である)である、上記(2)または(3)記載の修飾されたBDNF;
(7)アシル基が炭素数8〜30のアルカノイル基である上記(2)、(3)、(4)、(5)および(6)のいずれか1つに記載の修飾されたBDNF;
(8)アシル基がパルミトイル基である上記(2)、(3)、(4)、(5)、(6)および(7)のいずれか1つに記載の修飾されたBDNF;
(9)mが約1〜約6である上記(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)および(8)のいずれか1つに記載の修飾されたBDNF;
(11)R1が炭素数2〜10の直鎖状のアルキレン基である、上記(10)記載の修飾されたBDNF;
(12)R1がトリメチレンである、上記(10)記載の修飾されたBDNFを含む。
【0051】
他のBDNF類似体は、BDNFの水可溶性ポリマー(例えばポリエチレングリコール)とのコンジュゲートを記載したPCT公開公報WO96/15146に記載のものを含む。追加のBDNF類似体は、機能性断片(例えば、本明細書に記載の断片のいずれか)、本明細書に記載の改変のいずれかを有するペプチド、またはそのペプチドミメチックを含みうる。かかる類似体の活性は当技術分野で公知の方法を用いて試験することができる。
【0052】
ペプチドベクター
本発明の化合物は、本明細書に記載のポリペプチドのいずれか、例えば、表1に記載のペプチドのいずれか(例えば、Angiopep-1またはAngiopep-2)、またはその断片もしくは類似体を特徴としうる。ある特定の実施形態において、ポリペプチドは本明細書に記載のポリペプチドと少なくとも35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはさらに100%同一性を有しうる。ポリペプチドは本明細書に記載の配列の1つと比較して1以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15)の置換を有しうる。他の改変を以下にさらに詳しく記載する。
【0053】
本発明はまた、これらのポリペプチドの断片(例えば、機能性断片)を特徴とする。ある特定の実施形態において、その断片は特定の細胞型(例えば、肝臓、眼、肺、腎臓、または脾臓)に効率良く輸送されるかもしくは蓄積することができるかまたはBBBを横切って効率良く輸送される。ポリペプチドの末端切断はポリペプチドのN末端、ポリペプチドのC末端、またはそれらの組み合わせから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12以上のアミノ酸であってもよい。他の断片にはポリペプチドの内部が欠失した配列が含まれる。
【0054】
さらなるポリペプチドは本明細書に記載のアッセイまたは方法の1つを用いることにより同定することができる。例えば、候補ポリペプチドを通常のペプチド合成により作製し、パクリタキセルとコンジュゲートして実験動物に投与してもよい。生物学的活性のあるポリペプチドコンジュゲートは、例えば、腫瘍細胞を注射し、前記コンジュゲートで治療した動物の生存率を増加する能力に基づいて、コンジュゲートで治療しなかった(例えば、非コンジュゲート薬剤で治療した)対照と比較して同定することができる。例えば、生物学的活性のあるポリペプチドは、in situ脳潅流アッセイにおいて、その脳実質中の位置に基づいて同定することができる。
【0055】
他組織における蓄積を測定するアッセイも同様に実施することができる。標識したポリペプチドのコンジュゲートを動物に投与し、色々な器官における蓄積を測定してもよい。例えば、検出可能な標識とコンジュゲートしたポリペプチド(例えば、Cy5.5などの近赤外蛍光分光分析計標識)は実況のin vivo可視化を可能にする。かかるポリペプチドを動物に投与し、器官中のポリペプチドを検出し、こうして所望の器官中のポリペプチド蓄積の速度と量の測定を可能にすることができる。他の実施形態においては、ポリペプチドを放射性同位体(例えば、125I)を用いて標識することができる。そのポリペプチドを次いで動物に投与する。ある期間の後に、その動物を犠牲にし、その器官を抽出する。各器官における放射性同位体の量を次いで当技術分野で公知の任意の手段を用いて測定することができる。特定器官中の標識した候補ポリペプチドの量を標識した対照ポリペプチドの量と相対的に比較することにより、候補ポリペプチドの特定組織へアクセスおよび蓄積する能力を確認することができる。適当なネガティブ対照には、特定の細胞型に効率的に輸送されないことが公知の任意のペプチドまたはポリペプチド(例えば、BBBを横切らないAngiopepに関係するペプチド、またはいずれかの他のペプチド)が含まれる。
【0056】
さらなる配列が米国特許第5,807,980号(例えば、本明細書の配列番号102)、5,780,265(例えば、配列番号103)、5,118,668(例えば、配列番号105)に記載されている。アプロチニン類似体をコードする例示のヌクレオチド配列は、atgagaccag atttctgcct cgagccgccg tacactgggc cctgcaaagc tcgtatcatc cgttacttct acaatgcaaa ggcaggcctg tgtcagacct tcgtatacgg cggctgcaga gctaagcgta acaacttcaa atccgcggaa gactgcatgc gtacttgcgg tggtgcttag(配列番号6; Genbank受託番号X04666)である。アプロチニン類似体の他の例は国際特許出願番号PCT/CA2004/000011に開示された合成アプロチニン配列(またはその部分)を用いて、タンパク質BLAST(Genbank: www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を実施することにより見出すことができる。例示のアプロチニン類似体はまた、受託番号CAA37967(GI:58005)および1405218C(GI:3604747)のもとで見出すこともできる。
【0057】
改変ポリペプチド
本明細書で用いるペプチドベクターおよびGDNF、BDNF、または関係分子は、改変されたアミノ酸配列を有してもよい。ある特定の実施形態において、改変は所望の生物学的活性(例えば、BBBを横切る能力またはニューロテンシンアゴニスト活性)を有意に破壊しない。改変は元来のポリペプチドの生物学的活性を、(例えば、5%、10%、20%、25%、35%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、または95%だけ)低下してもよく、効果を与えなくてもよく、または(例えば、少なくとも5%、10%、25%、50%、100%、200%、500%、または1000%だけ)増加してもよい。改変ペプチドまたはポリペプチドはポリペプチドの特徴、例えば、in vivo安定性、バイオアベイラビリティ、毒性、免疫学的活性、免疫学的同一性、およびコンジュゲーション特性を有してもよくまたは最適化してもよい。
【0058】
改変は、翻訳後プロセシングなどの自然のプロセスによるもの、または当技術分野で公知の化学修飾技法によるものを含む。改変は、ポリペプチド主鎖、アミノ酸側鎖およびアミノまたはカルボキシ末端を含むポリペプチドのいずれで起こってもよい。同じタイプの改変は所与のポリペプチドのいくつかの部位に同程度または様々な程度で存在してもよく、ポリペプチドは複数のタイプの改変を含んでもよい。ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として分枝していてもよく、またポリペプチドは分枝鎖を伴うまたは伴わない環状であってもよい。環状、分枝鎖、および分枝鎖環状ポリペプチドは翻訳後の自然プロセスから生じてもよくまたは合成されてもよい。他の改変は、PEG化、アセチル化、アシル化、アセトミドメチル基(Acm)の付加、ADP-リボシル化、アルキル化、アミド化、ビオチン化、カルバモイル化、カルボキシエチル化、エステル化、フラビンとの共有結合、ヘム部分との共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、薬物の共有結合、マーカー(例えば、蛍光または放射マーカー)の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合性架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解性プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、転移RNAが介在するアミノ酸のタンパク質への付加、例えばアルギニン化およびユビキチン化を含む。
【0059】
改変ポリペプチドはまた、(例えば、かかる変化が実質的にポリペプチドの生物学的活性を変えない場合、)ポリペプチド配列における保存的もしくは非保存的アミノ酸挿入、欠失、または置換(例えば,D-アミノ酸、デアミノ酸)を含みうる。特に、本発明のポリペプチドのアミノまたはカルボキシ末端への1以上のシステイン残基の付加は、例えば、これらのポリペプチドのジスルフィド結合によるコンジュゲーションを促進することができる。例えば、Angiopep-1(配列番号67)、Angiopep-2(配列番号97)、またはAngiopep-7(配列番号112)を改変して、単一システイン残基をアミノ末端に(それぞれ配列番号:71、113、および115)、または単一システイン残基をカルボキシ末端に(それぞれ、配列番号:72、114、および116)含ませることができる。アミノ酸置換は保存的(すなわち、残基を同じ属のタイプもしくはグループの他のものにより置き換える場合)または非保存的(すなわち、残基を他のタイプのアミノ酸により置き換える場合)であってもよい。さらに、非天然アミノ酸を、天然のアミノ酸と置換してもよい(すなわち、非天然の保存的アミノ酸置換または非天然の非保存的アミノ酸置換)。
【0060】
合成で作製したポリペプチドは、DNAにより天然にコードされないアミノ酸(例えば、天然に存在しないすなわち非天然アミノ酸)の置換を含みうる。天然に存在しないアミノ酸の例は、D-アミノ酸、システインの硫黄原子と結合したアセチルアミノメチル基を有するアミノ酸、PEG化アミノ酸、式NH2(CH2)nCOOH(式中、nは2〜6である)のω-アミノ酸、中性非極性アミノ酸、例えば、サルコシン、t-ブチルアラニン、t-ブチルグリシン、N-メチルイソロイシン、およびノルロイシンを含む。フェニルグリシンはTrp、Tyr、または Pheと置換しうる;シトルリンおよびメチオニンスルホキシドは中性非極性であり、システイン酸は酸性であり、そしてオルニチンは塩基性である。プロリンをヒドロキシプロリンと置換し、特性を与えるコンフォーメーションを保持することができる。
【0061】
類似体を置換変異誘発により作製し、元来のポリペプチドの生物学的特性を保持することができる。「保存的置換」と同定される置換の例を表3に示す。もしかかる置換が所望でない変化をもたらせば、次いで、表3において「例示の置換」と表示された、またはさらなるアミノ酸クラスに記載された他の型の置換を導入してその産物をスクリーニングする。
【0062】
機能または免疫学的同一性の実質的改変は、(a)置換領域におけるポリペプチド主鎖の構造(例えば、シートもしくはヘリックスコンフォーメーション)、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の体積を維持する効果が有意に異なる置換を選択することにより達成される。天然塩基は、次の共通の側鎖特性に基づいていくつかのグループに分類される:
(1)疎水性:ノルロイシン、メチオニン(Met)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、ヒスチジン(His)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe);
(2)中性親水性:システイン(Cys)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr);
(3)酸性/負電荷:アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu);
(4)塩基性:アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、ヒスチジン(His)、リシン(Lys)、アルギニン(Arg);
(5)鎖配向に影響を与える残基:グリシン(Gly)、プロリン(Pro);
(6)芳香族性:トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、ヒスチジン(His);
(7)極性:Ser、Thr、Asn、Gln;
(8)塩基性正電荷:Arg、Lys、His;および
(9)帯電:Asp、Glu、Arg、Lys、His。
【0063】
他のアミノ酸置換を表3に掲げる。
【0064】
表3:アミノ酸置換
【表3】
【0065】
ポリペプチド誘導体とペプチドミメチック
天然のアミノ酸から成るポリペプチドに加えて、ペプチドミメチックまたはポリペプチド類似体も本発明に包含され、本発明の化合物で使用するペプチドベクターまたはGDNF、BDNF、または関係分子を形成することができる。ポリペプチド類似体は医薬品産業において一般に、テンプレートポリペプチドに類似した特性をもつ非ペプチド薬物として利用される。非ペプチド化合物は「ペプチド-ミメチック」またはペプチドミメチックと呼ばれる(Fauchere et al, Infect. Immun. 54:283-287,1986 and Evans et al, J. Med. Chem. 30:1229-1239, 1987)。治療上有用なペプチドもしくはポリペプチドと構造的に関係があるペプチドミメッチクを用いて等価またはより高い治療または予防効果を生じうる。一般に、ペプチドミメチックはパラダイムポリペプチド(すなわち、生物学的または薬理学的な活性を有するポリペプチド)、例えば、天然の受容体結合ポリペプチドと構造的に類似するが、当技術分野で公知の方法により、-CH2NH-、-CH2S-、-CH2-CH2-、-CH=CH-(cisおよびtrans)、-CH2SO-、-CH(OH)CH2-、-COCH2-などの結合によって任意に置き換えられた1以上のペプチド結合を有する(Spatola, Peptide Backbone Modifications, Vega Data, 1:267, 1983;Spatola et al., Life Sci. 38:1243-1249, 1986;Hudson et al., Int. J. Pept. Res. 14:177-185, 1979;およびWeinstein, 1983, Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides and Proteins, Weinstein eds, Marcel Dekker, New York)。かかるポリペプチドミメチックは天然のポリペプチドを越える大きな利点を有し、その利点としては、より経済的な生産、より優れた化学安定性、向上した薬理学的特性(例えば、半減期、吸収、効力、効率)、低い抗原性などが挙げられる。
【0066】
本明細書に記載したペプチドベクターはBBBを効率的に横切るかまたは特定の細胞型(例えば、本明細書に記載したもの)を標的化しうる一方、その有効性はプロテアーゼの存在により低下しうる。同じ様に、GDNF、BDNF、または本発明で用いる関係分子も同様に低下しうる。血清プロテアーゼは切断に対して、L-アミノ酸およびペプチド結合を含む特異的な基質要件を有する。さらに、血清中のプロテアーゼ活性の最も顕著な成分を代表するエキソペプチダーゼは通常ポリペプチドの最初のペプチド結合に作用し、そしてフリーなN末端を必要とする(Powell et al., Pharm. Res. 10:1268-1273, 1993)。これを考慮すると、ポリペプチドの改変バージョンを用いることはしばしば有利である。改変ポリペプチドは元来のL-アミノ酸ポリペプチドの構造的特徴を保持するが、有利なことに、プロテアーゼおよび/またはエキソペプチダーゼによる切断を容易に受けることはない。
【0067】
コンセンサス配列の1以上のアミノ酸を同じタイプのD-アミノ酸(例えば、エナンチオマー;L-リシンの代わりにD-リシン)と体系的に置き換えることによって、より安定なポリペプチドを生成することができる。従って、本明細書に記載のポリペプチド誘導体またはペプチドミメチックは全てL-、全てD-、または混合D、Lポリペプチドであってもよい。N末端またはC末端のD-アミノ酸の存在は、ペプチダーゼはD-アミノ酸を基質として利用できないのでポリペプチドのin vivo安定性が増加する(Powell et al, Pharm. Res. 10:1268-1273、1993)。リバース-Dポリペプチドは、L-アミノ酸を含有するポリペプチドと比較して逆配列で配置されたD-アミノ酸を含有するポリペプチドである。従って、L-アミノ酸ポリペプチドのC末端残基はD-アミノ酸ポリペプチドに対してN末端となるなどである。リバースD-ポリペプチドはL-アミノ酸ポリペプチドと同じ三次コンフォメーション、それ故に同じ活性を保持するが、in vitroおよびin vivoでの酵素分解に対してより安定であるので、従って、元来のポリペプチドより高い治療効力を有する(Brady and Dodson、Nature 368:692-693、1994 および Jameson et al., Nature 368:744-746、1994)。リバース-D-ポリペプチドだけでなく、コンセンサス配列または実質的に同一のコンセンサス配列変化を含有する束縛されたポリペプチドを当技術分野で周知の方法により作製することができる(Rizo et al., Ann. Rev. Biochem. 61:387-418、1992)。例えば、束縛されたポリペプチドをジスルフィド架橋を形成できるシステイン残基を加えることにより作製し、それにより、環状ポリペプチドを得ることができる。環状ポリペプチドは遊離したNまたはC末端を有しない。従って、これらはエキソペプチダーゼによるタンパク質分解に感受性がないが、勿論、ポリペプチド末端を切断しないエンドペプチダーゼには感受性がある。N末端またはC末端D-アミノ酸をもつポリペプチドと環状ポリペプチドのアミノ酸配列は、N末端またはC末端D-アミノ酸残基の存在あるいはそれらの環状構造を除くと、それぞれそれらが対応するポリペプチドの配列は通常同一である。
【0068】
分子内ジスルフィド結合を有する環状誘導体は、アミノ末端およびカルボキシ末端などの環化のために選択した位置に、好適なSが保護されたシステインまたはホモシステイン残基を組み込んで、通常の固相合成によって調製することができる(Sah et al., J. Pharm. Pharmacol. 48:197、1996)。環化は、ポリペプチド鎖構築の完了後、(1)S-保護基の選択的除去、その結果として起こる対応する2つの遊離SH-官能基の支持体上での酸化(S-S結合を形成する)、次いで生成物の支持体からの通常の除去および適当な精製処理によって、または(2)完全な側鎖脱保護と共に支持体からのポリペプチド除去、次いで、遊離SH-官能基の高希釈した水溶液中の酸化によって実施することができる。
【0069】
分子内アミド結合を含有する環状誘導体は、環化のために選択した位置に、好適なアミノおよびカルボキシル側鎖が保護されたアミノ酸誘導体を組み込んで、通常の固相合成によって調製することができる。分子内-S-アルキル結合を含有する環状誘導体は、好適なアミノが保護された側鎖をもつアミノ酸残基および好適なSが保護されたシステインもしくはホモシステイン残基を環化のために選択した位置に組み入れて、通常の固相合成により調製することができる。
【0070】
ポリペプチドのN末端またはC末端残基で作用するペプチダーゼに対して耐性を与える他の有効な手法は、ポリペプチド末端に化学基を加え、改変ポリペプチドをペプチダーゼに対する基質でないようにすることである。かかる化学的改変の1つは、一末端または両末端のポリペプチドのグリコシル化である。ある特定の化学的改変は、特別なN末端グリコシル化において、ヒト血清中のポリペプチドの安定性を増加することが示されている(Powell et al, Pharm. Res. 10:1268-1273、1993)。血清安定性を向上する他の化学的改変は、限定されるものでないが、1〜20個の炭素の低級アルキルから成るN末端アルキル基の付加、例えばアセチル基、および/またはC末端アミドもしくは置換アミド基の付加を含む。特に、本発明は、N末端アセチル基および/またはC末端アミド基を保持するポリペプチドからなる改変されたポリペプチドを含む。
【0071】
本発明に含まれるのはまた、その誘導体がポリペプチドの所望の機能活性を保持することを条件として、通常ポリペプチドの一部分でないさらなる化学部分を含有する他の型のポリペプチド誘導体である。かかる誘導体の例には、(1)アミノ末端または他の遊離アミノ基のN-アシル誘導体[ここでアシル基はアルカノイル基(例えば、アセチル、ヘキサノイル、オクタノイル)、アロイル基(例えば、ベンゾイル)もしくはF-moc(フルオレニルメチル-O-CO-)などのブロック基であってもよい];(2)カルボキシ末端のまたは他の遊離カルボキシまたはヒドロキシル基のエステル;(3)アンモニアまたは好適なアミンとの反応により生じたカルボキシ末端のまたは他の遊離カルボキシル基のアミド;(4)リン酸エステル化誘導体;(5)抗体または他の生物学的リガンドおよび他の型の誘導体とコンジュゲートした誘導体が含まれる。
【0072】
さらなるアミノ酸残基の本明細書に記載のポリペプチドへの付加から得られるより長いポリペプチド配列も本発明に包含される。かかるより長いポリペプチド配列は先に記載したポリペプチドと同じ生物学的活性と特異性(例えば、細胞向性)を有すると期待することができる。相当な数のさらなるアミノ酸を有するポリペプチドを除外しないものの、いくつかの大きいポリペプチドは有効配列を遮蔽する立体配置をとり、その結果、標的(例えば、LRPまたはLRP2などのLRP受容体ファミリーの一員)との結合を妨げうると考えられる。これらの誘導体は競合的アンタゴニストとして作用しうる。従って、本発明は、伸張部を有する本明細書に記載したポリペプチドまたはポリペプチドの誘導体を包含するが、望ましくは、その伸張部はポリペプチドまたはその誘導体の細胞を標的化する活性を損なうものでない。
【0073】
本発明に包含される他の誘導体は直接、またはスペーサーを介して、例えば、アラニン残基の短い伸張部によりまたはタンパク質分解の推定部位により(例えばカテプシンにより、例えば、米国特許第5,126,249号および欧州特許第495 049号を参照されたい)お互いに共有結合された、本明細書に記載した2つの同一のまたは2つの異なるポリペプチドからなる二重ポリペプチドである。本明細書に記載のポリペプチドの多量体は同じかまたは異なるポリペプチドまたはその誘導体から形成された分子のポリマーから成る。
【0074】
本発明はまた、アミノまたはカルボキシ末端、またはそれらの両方において異なるタンパク質のアミノ酸配列と連結された、本明細書に記載のポリペプチド、またはその断片を含有するキメラまたは融合タンパク質であるポリペプチド誘導体を包含する。かかるキメラまたは融合タンパク質はそのタンパク質をコードする核酸の組換え発現により作製することができる。例えば、キメラまたは融合タンパク質は、望ましくは等価のまたはより高い機能的活性を有するキメラまたは融合タンパク質をもたらす記載したポリペプチドの1つと共有される少なくとも6アミノ酸を含有しうる。
【0075】
ペプチドミメチックを同定するアッセイ
上記のように、本明細書に記載のポリペプチドの主鎖幾何およびファーマコフォア提示を複製するように作製した非ペプチジル化合物(ペプチドミメチック)はしばしば、より高い代謝安定性、より高い効力、より長い作用期間、およびより優れたバイオアベイラビリティの属性を持つ。
【0076】
ペプチドミメチック化合物は、当技術分野で公知のコンビナトリアルライブラリー法での多数の手法のいずれかを用いて得ることができ、前記手法としては、生物学的ライブラリー、空間的に位置指定可能なパラレル固相または液相ライブラリー、デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー法、「1ビーズ1化合物」ライブラリー法、およびアフィニティクロマトグラフィ選択を用いる合成ライブラリー法が挙げられる。生物学的ライブラリー手法はペプチドライブラリーに限定されるが、他の4手法はペプチド、非ペプチドオリゴマー、または化合物の小分子ライブラリーに適用することができる(Lam, Anticancer Drug Des. 12:145, 1997)。分子ライブラリーの合成方法の例は、当技術分野で次の通り見出すことができる:(DeWitt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6909, 1993);(Erb et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422, 1994);(Zuckermann et al., J. Med. Chem. 37:2678, 1994);(Cho et al., Science 261:1303, 1993);(Carell et al., Angew. Chem, Int. Ed. Engl. 33:2059, 1994 および ibid 2061);および(Gallop et al., Med. Chem. 37:1233, 1994)。化合物のライブラリーは溶液中で(例えば、Houghten, Biotechniques 13:412-421, 1992)、ビーズ(Lam, Nature 354:82-84, 1991)、チップ(Fodor, Nature 364:555-556, 1993)、細菌もしくは胞子(米国特許第5,223,409号)、プラスミド(Cullら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1865-1869, 1992)で、またはファージ(ScottおよびSmith, Science 249:386-390, 1990)、またはルシフェラーゼで提示し、そして酵素標識を適当な基質の生成物への変換の測定により検出することができる。
【0077】
いったん本明細書に記載したポリペプチドが同定されると、それを、限定されるものでないが、溶解度の違い(例えば、沈殿)、遠心分離、クロマトグラフィー(例えば、アフィニティー、イオン交換、サイズ排除など)を含む多くの標準方法のいずれかによって、またはペプチド、ペプチドミメチックもしくはタンパク質の精製に使用されるいずれか他の標準技術によって、単離しかつ精製することができる。同定した目的のポリペプチドの機能的特性は当技術分野で公知のいずれかのアッセイを用いて評価することができる。望ましくは、細胞内シグナル伝達の下流の受容体機能を評価するアッセイ(例えば、細胞増殖)を用いる。
【0078】
例えば、本発明のペプチドミメチック化合物は次の3ステップのプロセスを用いて得ることができる:(1)本明細書に記載のポリペプチドを走査し、本明細書に記載の特定の細胞型を標的化するために必要な二次構造の領域を同定するステップ;(2)コンフォーメーションが束縛されたジペプチド代理物を用いて主鎖幾何を洗練し、これらの代理物に対応する有機プラットフォームを提供するステップ;および(3)設計した候補のライブラリー中の有機ファーマコフォアを表示する最良の有機プラットフォームを用いて自然のポリペプチドの所望の活性を模倣するステップ。さらに詳しく説明すると、これらの3ステップは次の通りである。第1ステップにおいて、リード候補ポリペプチドを走査しかつそれらの構造を要約してその活性のための要件を同定する。一連の元来のポリペプチド誘導体を合成する。第2ステップにおいて、コンフォーメーションが束縛されたジペプチド代理物を用いて最良のポリペプチド類似体を調べる。インドリジン-2-オン、インドリジン-9-オンおよびキノリジジノンアミノ酸(それぞれ、I2aa、I9aaおよびQaa)を、最良のペプチド候補の主鎖幾何を研究するためのプラットフォームとして用いた。これらと関係プラットフォーム(Halab et al., Biopolymers 55:101-122, 2000、およびHanessian et al., Tetrahedron 53:12789-12854, 1997に総括されている)をポリペプチドの特定領域に導入し、色々な方向にファーマコフォアを配向させることができる。これらの類似体の生物学的評価によって活性のための幾何学的要件を模倣する改良されたリードポリペプチドを同定する。第3ステップにおいて、最も活性のあるリードポリペプチドからのプラットフォームを用いて、生来のペプチドの活性に関わるファーマコフォアの有機代理物を表示する。ファーマコフォアおよびスカフォールドをパラレル合成フォーマットで組み合わせる。ポリペプチドの誘導と上記ステップは、当技術分野で公知の方法を用いる他の手段により達成することができる。
【0079】
本明細書に記載のポリペプチド、ポリペプチド誘導体、ペプチドミメチックまたは他の小分子から確認した構造機能相関を用いて、同様のまたはさらに優れた特性を有する類似分子構造を洗練しかつ調製することができる。従って、本発明の化合物はまた、本明細書に記載のポリペプチドの構造、極性、電荷特徴および側鎖特性を共有する分子も含む。
【0080】
総括すると、本開示に基づいて、当業者は、特定の細胞型に対する薬剤を標的化する化合物を同定するために有用なペプチドおよびペプチドミメチックスクリーニングアッセイ(例えば、本明細書に記載のもの)を開発することができる。本発明のアッセイは、ロー(低)スループット、ハイ(高)スループット、またはウルトラハイ(超高)スループットスクリーニングフォーマット用に開発することができる。本発明のアッセイは自動化が可能なアッセイを含む。
【0081】
リンカー
GDNF、BDNF、または関係分子を直接(例えば、ペプチド結合などの共有結合を介して)またはリンカーを介して結合することができる。リンカーは化学連結剤(例えば、切断可能なリンカー)およびペプチドを含む。
【0082】
いくつかの実施形態において、リンカーは化学連結剤である。GDNF、BDNF、または関係分子およびペプチドベクターをスルフヒドリル基、アミノ基(アミン類)、および/または糖または任意の適当な反応基を介してコンジュゲートすることができる。ホモ二官能およびヘテロ二官能架橋剤(コンジュゲーション剤)は多数の市販供給元から入手可能である。架橋に利用可能な領域は本発明のポリペプチド上に見出すことができる。架橋剤は柔軟なアーム、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個の炭素原子を含みうる。例示の架橋剤としては、BS3([スベリン酸ビス(スルホスクシンイミジル)];BS3はアクセス可能な一級アミン類を標的化するホモ二官能性N-ヒドロキシスクシンイミドエステルである)、NHS/EDC(N-ヒドロキシスクシンイミドおよびN-エチル-'(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド;NHS/EDCは一級アミン基のカルボキシル基とのコンジュゲーションを可能にする)、スルホ-EMCS([N-e-マレイミドカプロン酸]ヒドラジド;スルホ-EMCSはスルフヒドリルおよびアミノ基に対して反応性のヘテロ二官能性反応基(マレイミドおよびNHS-エステル)である)、ヒドラジド(ほとんどのタンパク質は曝された糖を含有し、ヒドラジドはカルボキシル基を一級アミン類と連結するための有用な試薬である)、およびSATA(N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート;SATAはアミン類に対して反応性であり、保護スルフヒドリル基を加える)が挙げられる。
【0083】
ペプチドを改変するのに必要なレベルでヒドロキシル部分が生物学的に許容される場合、共有結合を形成するために、広範囲の活性カルボキシル基(例えば、エステル)を化学反応基として利用することができる。具体的な薬剤としては、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、N-ヒドロキシ-スルホスクシンイミド(スルホ-NHS)、マレイミド-ベンゾイル-スクシンイミド(MBS)、γ-マレイミド-ブチリルオキシスクシンイミドエステル(GMBS)、プロピオン酸マレイミド(MPA)ヘキサン酸マレイミド(MHA)、およびウンデカン酸マレイミド(MUA)が含まれる。
【0084】
一級アミン類はNHSエステルの主な標的である。タンパク質およびリシンのε-アミンのN末端上に存在するアクセス可能なα-アミン基はNHSエステルと反応する。アミド結合は、NHSエステルコンジュゲーション反応物が一級アミン類と反応してN-ヒドロキシスクシンイミドを放出するときに形成される。これらのスクシンイミドを含有する反応基を本明細書ではスクシンイミジル基と呼ぶ。本発明のある特定の実施形態において、タンパク質の官能基はチオール基でありかつ化学反応基はマレイミド含有基、例えば、γ-マレイミド-ブチリルアミド(GMBAまたはMPA)でありうる。かかるマレイミド含有基を本明細書ではマレイミド基と呼ぶ。
【0085】
マレイミド基は、反応混合物のpHが6.5〜7.4であるときに、ペプチド上のスルフヒドリル基に対して最も選択的である。pH 7.0において、マレイミド基のスルフヒドリル(例えば、血清ある部またはIgGなどのタンパク質上のチオール基)との反応速度はアミン類より1000倍速い。従って、マレイミド基とスルフヒドリル基の間に安定なチオエーテル結合を形成することができる。
【0086】
他の実施形態において、リンカーは少なくとも1つのアミノ酸(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、10、15、20、25、40、または50アミノ酸のペプチド)を含む。ある特定の実施形態において、リンカーは単一のアミノ酸(例えば、Cysなどの任意の天然アミノ酸)である。他の実施形態においては、米国特許第7,271,149号に記載のように、グリシンの豊富なペプチド、例えば配列[Gly-Gly-Gly-Gly-Ser]n(ここで、nは1、2、3、4、5または6である)を有するペプチドを用いる。他の実施形態においては、米国特許第5,525,491号に記載のように、セリンの豊富なペプチドリンカーを用いる。セリンの豊富なペプチドリンカーは、式[X-X-X-X-Gly]yのものを含み、ここで、Xのうちの2つまではThrであり、残りのXはSerであり、そしてyは1〜5である(例えば、Ser-Ser-Ser-Ser-Glyであり、yは2以上である)。いくつかの事例において、リンカーは単一のアミノ酸である(例えば、GlyまたはCysなどの任意のアミノ酸)。他のリンカーは硬いリンカー(例えば、PAPAPおよび(PT)nP、ここでnは2、3、4、5、6、または7である)およびα-ヘリックスリンカー(例えば、A(EAAAK)nA、ここでnは1、2、3、4、または5である)を含む。
【0087】
好適なリンカーの例はコハク酸、Lys、Glu、および Asp、またはジペプチド、例えばGly-Lysである。リンカーがコハク酸である場合、1つのカルボキシル基はアミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成し、そして他のカルボキシル基は、例えば、ペプチドもしくは置換基のアミノ基とアミド結合を形成しうる。リンカーがLys、Glu、またはAspである場合、カルボキシル基はアミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成し、そしてアミノ基は、例えば、置換基のカルボキシル基とアミド結合を形成しうる。Lysをリンカーとして用いる場合、さらなるリンカーをLysのε-アミノ基と置換基との間に挿入しうる。1つの特定の実施形態において、そのさらなるリンカーはコハク酸であり、例えば、Lysのε-アミノ基とおよび置換基に存在するアミノ基とアミド結合を形成する。一実施形態において、さらなるリンカーはGluまたはAspである(例えば、Lysのε-アミノ基とアミド結合および置換基に存在するカルボキシル基と他のアミド結合を形成する)、すなわち、置換基はNε-アシル化リシン残基である。
【0088】
疾患
ニューロンの生存の向上(例えば、ニューロン死滅率の減少)またはニューロン形成速度の増加が有利である疾患または症状は、本発明の化合物を用いて治療することができる。かかる症状には、神経変性障害、例えば、ポリグルタミン鎖増大障害(例えば、ハンチントン病(HD)、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮、ケネディー病(脊髄延髄性筋萎縮とも呼ばれる)、および脊髄小脳失調症(例えば、1型、2型、3型(マチャド-ジョセフ病とも呼ばれる)、6型、7型、および17型)、他のトリヌクレオチド反復増大障害(例えば、脆弱X症候、脆弱XE精神遅滞、フリードリッヒ失調症、筋緊張性ジストロフィー、脊髄小脳失調症8型、および脊髄小脳失調症12型)、アレキサンダー病、アルパーズ病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、毛細血管拡張性運動失調、バッテン病(シュピールマイアー-フォークト-シェーグレン-バッテン病とも呼ばれる)、キャナヴァン病、コケーン症候群、皮質基底変性症、クロイツフェルト‐ヤーコブ病、虚血脳卒中、クラッベ病、レーヴィ小体認知症、多発性硬化症、多系統萎縮症、パーキンソン病、ペリツェーウス-メルツバッヒャー病、ピック病、原発性側索硬化症、レフサム病、サンドホッフ病、シルダー病、脊髄損傷、脊髄筋萎縮、スティール・リチャードソン・オルスゼフスキー病、および脊髄ろうからなる群より選択される障害が含まれる。他の症状には、損傷(例えば、脊髄損傷)、振盪、虚血性脳卒中、および 出血性脳卒中が含まれる。
【0089】
投与および用量
本発明はまた、本発明の化合物の治療有効量を含有する医薬組成物を特徴とする。組成物は様々な薬物送達システムで用いるために製剤化することができる。1以上の生理的に許容される賦形剤または担体も適当な製剤のために組成物に含まれてよい。本発明における使用に好適な製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Philadelphia, PA, 17th ed., 1985に見出すことができる。薬物送達の方法の総括については、例えば、Langer(Science 249:1527-1533, 1990)を参照されたい。
【0090】
医薬組成物は予防および/または治療処置のための非経口、鼻腔内、膏薬、経口、または局所(例えば、経皮手段による)投与を意図している。医薬組成物は非経口(例えば、静脈内、筋肉内、または皮下注射による)、または経口摂取、または血管もしくは癌症状を患う領域における局所施用もしくは関節内注入により投与することができる。さらなる投与経路には、血管内、動脈内、腫瘍内、腹腔内、脳室内、硬膜内、ならびに経鼻、眼、強膜内、眼窩内、直腸、局所、またはエアロゾル吸入投与が含まれる。デポ注入または浸食性移植片もしくは成分のような手段による徐放性投与も具体的に本発明に含まれる。従って、本発明は、許容される担体、好ましくは水性担体、例えば、水、緩衝化水、生理食塩水、PBSなどに溶解もしくは懸濁した上述の薬剤を含有する、非経口投与用の組成物を提供する。組成物は、生物学的条件を近似するために必要な製薬上許容される助剤、例えば、pH調節および緩衝化剤、等張化剤、湿潤剤、界面活性剤などを含有してもよい。本発明はまた、経口送達用の組成物を提供し、これは不活性成分、例えば、錠剤、カプセルなどを製剤するための結合剤または充填剤を含有してもよい。さらに、本発明は局所投与用の組成物を提供し、これは不活性成分、例えば、クリーム、軟膏などを製剤するための溶媒もしくは乳濁化剤などを含有してもよい。
【0091】
これらの組成物は通常の滅菌技法により滅菌するかまたは濾過滅菌することができる。得られる水性溶液を使用のためにそのまま包装してもよく、または凍結乾燥して凍結乾燥品を滅菌水性担体と組み合わせた後に投与してもよい。調製物のpHは、典型的には3〜11、より好ましくは5〜9または6〜8、そして最も好ましくは7〜8、例えば7〜7.5であろう。得られる固形組成物は、それぞれが上述の薬剤の一定量を、例えば、錠剤もしくはカプセルの密封包装中に含有する、複数の単回投与単位に包装してもよい。固形組成物はまた、例えば、局所施用クリームもしくは軟膏用に設計した絞り可能なチューブのような、柔軟な量向けの容器に包装することができる。
【0092】
有効量を含有する組成物を予防または治療処置用に投与してもよい。予防の施用では、組成物を臨床的に確認した神経学的もしくは神経変性疾患に対する素因または感受性増加をもつ被験体に投与することができる。本発明の組成物を、臨床疾患の発症を遅延、軽減、または好ましくは防止するのに十分な量だけ投与することができる。治療の施用では、組成物を既に疾患(例えば、神経学的もしくは神経変性疾患)を患う被験体(例えば、ヒト)に、その症状およびその複合症の症候群を治療または少なくとも部分的に停止するために十分な量だけ投与する。この目的を達成するのに十分な量は、「治療有効量」、疾患もしくは医学的症状に随伴するいくつかの症候を実質的に改善するのに十分な化合物の量として定義される。例えば、神経変性疾患(例えば、本明細書に記載のもの)において、疾患または症状のいずれかの症候を軽減、防止、遅延、抑制、または停止する薬剤または化合物は治療上有効でありうる。薬剤もしくは化合物の治療有効量は、疾患もしくは症状を治癒するのに必要な量ではないが、疾患もしくは症状の発症を遅延し、邪魔し、もしくは防止するか、または疾患もしくは症状症候群を改善するか、または疾患もしくは症状の期間を変えるか、または例えば、より軽症化するか、または個体における回復を加速するなどの疾患もしくは症状の治療を提供する。
【0093】
この使用に対する有効量は、疾患または症状の重症度および被験体の体重と全身状態に依存するが、一般に、1被験体当たり1用量当たり、GDNF、BDNFまたは関係分子の等価量の約0.05μg〜約1000μg(例えば、0.5〜100μg)の範囲である。最初の投与および追加投与の好適なレジメンは、典型的には、最初の投与と次いで、1回以上の繰り返し用量を時間、日、週、または月間隔で引き続いて行う投与である。本発明の組成物中に存在する薬剤の総有効量を、哺乳動物に単一用量として、あるいは、ボーラス(大量瞬時投与)としてまたは比較的短時間にわたる注入により投与してもよく、または、複数用量をより長期間にわたって(例えば、1用量を毎4-6、8〜12、14〜16、または18〜24時間、または毎2〜4日、1〜2週、毎月に)投与する分割治療プロトコルを用いて投与してもよい。あるいは、血液中に治療上有効な濃度を維持するのに十分な、連続的静脈内輸液が考えられる。
【0094】
哺乳動物(例えば、ヒト)に施用される本発明の組成物内に存在するおよび本発明の方法に使用される1以上の薬剤の治療有効量は、当業者が哺乳動物の年齢、体重、および症状の個々の相違を考慮して決定することができる。本発明のある特定の化合物はBBBを横切る能力が高いので、本発明の化合物の投与量は、非コンジュゲートアゴニストの治療効果に必要な等価用量より低いもの(例えば、必要な等価用量の約90%、75%、50%、40%、30%、20%、15%、12%、10%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、または0.1%以下)でありうる。本発明の薬剤は被験体(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に、治療する被験体に所望の結果(例えば、ニューロンの保存、新ニューロンの成長)を生じる量である有効量だけ投与される。治療有効量はまた、当業者が実験的に決定することができる。
【0095】
被験体はまた、1用量当たりGDNF、BDNF、または関係分子と比較して1週当たり1回以上(例えば、毎週2、3、4、5、6、または7回またはそれ以上)、約0.05〜1,000μg等価用量、例えば、1週当たり0.1〜2,500(例えば、2,000、1,500、1,000、500、100、10、1、0.5、または0.1)μg用量の範囲の薬剤を受けてもよい。被験体はまた、本組成物の薬剤を毎2または3週に1回、1用量当たり0.1〜3,000μgの範囲の組成物の薬剤を受けてもよい。
【0096】
有効量を含む本発明の組成物の単回投与または複数回投与を、治療する医師が選択した用量レベルおよびパターンで行うことができる。用量および投与スケジュールは、臨床医が通常行う方法もしくは本明細書に記載した方法によって治療期間を通してモニターできる被験体の疾患または症状の重症度に基づいて決定しかつ調節することができる。
【0097】
本発明の化合物を従来の処置または治療法と組み合わせて使用してもよく、または従来の処置または治療法とは別に使用してもよい。
【0098】
本発明の化合物を他の薬剤による治療と組み合わせて投与する場合、それらを順次または同時に個体に投与してもよい。あるいは、本発明による医薬組成物は、本発明の化合物と本明細書に記載した製薬上許容される賦形剤および当技術分野で公知の別の治療薬または予防薬を合体した組み合わせから成ってもよい。
【実施例】
【0099】
実施例1
Angiopep-2/GDNF構築物
Angiopep-2とhGDNF配列(hGDNF78-211)を含む構築物を作製した。これらの構築物はN末端(His)6タグ、トロンビン切断部位、Angiopep-2配列、およびGDNF配列を含む。対照ペプチド(Angiopep-2配列を欠く)も作製した(図2)。これらの配列のN末端部分のアミノ酸配列を図3に示す。これらの構築物をクローニングするストラテジーを図4〜7に記載する。類似したストラテジーをBDNF構築物を作製するのに使った。構築物の配列を図8〜12に示す。GFRα1と結合したAngiopep-2-GDNF化合物を示すイメージを図13に示す。
【0100】
さらなるGDNF構築物を図14に示すように作製した。これには、Angiopep-2がN末端に結合したhGDNF78-211(An2-hGDNF);Angiopep-2がC末端に結合したhGDNF78-211(hGDNF-An2);逆転Angiopep-2がN末端に結合したhGDNF78-211(An2NT-hGDNF);Angiopep-2がN末端に柔軟な((GGGGS)2)リンカーを介して結合したhGDNF78-211(An2-Flex-hGDNF);Angiopep-2がN末端に硬い(PAPAP)リンカーを介して結合したhGDNF78-211(An2-Rig-hGDNF);およびAngiopep-2がN末端にヘリックス(A(EAAAK)2A)リンカーを介して結合したhGDNF78-211(An2-Hel-hGDNF)が含まれる。
【0101】
実施例2
GDNFコンジュゲートの受容体結合
GDNFコンジュゲートの受容体結合を測定するために、二重サンドイッチElisaを用いた。簡単に説明すると、マウス抗-ヒトIgG抗体をプレートに結合させた(図15)。GFRα1受容体/IgGFc融合体を加えると、これは前記抗体と結合した。リガンド結合を測定するため、GDNF、GDNFコンジュゲート、または Angiopep-2をそれぞれプレートに加えた。プレートを次いで、順にヤギ抗-GDNF抗体およびアルカリホスファターゼ-コンジュゲート-ウサギ抗ヤギIgG抗体を用いて処理した。このサンプルを次いでp-ニトロフェニルホスフェート(p-NPP)(アルカリホスファターゼ(AP)基質で、AP処理すると無色から黄色に変わる)を用いて処理した。タンパク質の結合をこの変色に基づいて測定した。
【0102】
このアッセイで、試験した融合タンパク質の全てがGDNF自体によるGDNF受容体との結合に類似したレベルでGDNF受容体と結合することができた(図16)。Angiopep-2(ネガティブ対照)は受容体と結合しないことが観察された。各タンパク質に対する結合定数を計算し、下表に示した。これでわかるように、融合タンパク質の全てがGDNF受容体と効果的に結合することができた。
【表4】
【0103】
実施例3
ホモ二量体の形成
先に記載したように、GDNFがジスルフィド結合を介してホモ二量体を形成することは公知である(図17)。かかるホモ二量体の形成はまた、An2-GDNF タンパク質についても観察された(図18)。還元剤、例えばジチオトレイトール(DTT)での処理により、これらのジスルフィド結合は低減することができる。
【0104】
実施例4
GDNFシグナル伝達カスケードの活性化
以上説明したように、GDNFはGFRα1受容体と結合する。リガンド-受容体複合体は次いでチロシンキナーゼ受容体RETと結合する。この受容体は次いで2つの経路、すなわち、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)を介するAkt経路およびRas経路を介するErk経路を活性化することができる。これらの経路の活性化は細胞生存および増殖の増加をもたらす(図19)。
【0105】
融合タンパク質がこれらの経路を活性化できるかどうかを試験するために、細胞をGDNF、An2-GDNFで10分間処理するか、または無処理のままとした。これらの実験から、GDNFとAn2-GDNFの両方を用いてリン酸化RET、リン酸化Erk、およびリン酸化Aktの増加を観察した(図 20)。これらの結果はAn2-GDNFが、GDNFと同様に、GDNF経路を活性化できたことを示す。
【0106】
実施例5
in situ脳潅流
GDNF融合タンパク質が血液脳関門を横切ることができるかどうかを確認するために、in situ潅流アッセイを実施した。かかるアッセイは、例えば、PCT公開公報WO 2006/086870に記載されている。これらの結果からAngiopep-2-GDNFコンジュゲートは非コンジュゲートGDNFより遥かに効果的にBBBを横切ることが観察された(図 21)。
【0107】
他の実施形態
本明細書で記載した全ての特許、米国特許出願第61/186,246号(2009年6月11日出願)を含む特許出願、および公開は、それぞれの特許、特許出願、または公開を特定しておよび個々に参照により組込まれると示したのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
A-X-B
[式中、Aはペプチドベクターであり;Bは(i)GDNF、少なくとも1つのGDNF活性を有するその断片、もしくはGDNF類似体;または(ii)BDNF、少なくとも1つのBDNF活性を有するその断片、もしくはBDNF類似体、と実質的に同一のポリペプチドであり;そしてXはAをBと接続するリンカーである]を含む、化合物。
【請求項2】
血液脳関門を横切ることができる、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記BがGDNFまたはBDNFの成熟型を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
AがAngiopep-2(配列番号97)、逆転Angiopep-2(配列番号117)、Angiopep-1(配列番号67)、cys-Angiopep-2(配列番号113)、およびAngiopep-2-cys(配列番号114)からなる群より選択される配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記配列同一性が少なくとも90%である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
AがAngiopep-2 (配列番号97)、逆転Angiopep-2(配列番号117)、Angiopep-1(配列番号67)、cys-Angiopep-2(配列番号113)、およびAngiopep-2-cys(配列番号114)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Aが、Angiopep-2(配列番号97)、逆転Angiopep-2(配列番号117)、Angiopep-1(配列番号67)、cys-Angiopep-2(配列番号113)、およびAngiopep-2-cys(配列番号114)からなる群より選択されるアミノ酸配列から成る、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
Xがペプチド結合である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
Xが少なくとも1つのアミノ酸であり;AとBがそれぞれペプチド結合によりXと共有結合されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
Xが(GGGGS)n(ここでnは1、2、または3である);PAPAP;(PT)pP(ここでpは2、3、4、5、6、または7である);およびA(EAAAK)qA(ここでqは1、2、3、4、または5である)からなる群より選択される、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
AがAngiopep-2(配列番号97)であり;Xがペプチド結合であり;そしてBがhGDNF78-211であり;AがBのN末端とXを介して接続されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
AがAngiopep-2(配列番号97)であり;Xがペプチド結合であり;そしてBがhGDNF78-211であり;AがBのC末端とXを介して接続されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
Aが逆転 Angiopep-2(配列番号117)であり;Xがペプチド結合であり;そしてBがhGDNF78-211であり;AがBのN末端とXを介して接続されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
AがAngiopep-2(配列番号97)であり;Xが(GGGGS)2であり;そしてBがhGDNF78-211であり;ここでAはBのN末端とXを介して接続されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
AがAngiopep-2(配列番号97)であり;XがPAPAPであり;そしてBがhGDNF78-211であり;ここでAはBのN末端とXを介して接続されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
AがAngiopep-2(配列番号97)であり;XがA(EAAAK)2Aであり;そしてBがhGDNF78-211であり;ここでAはBのN末端とXを介して接続されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
請求項8〜16のいずれか1項に記載の化合物をコードする核酸分子。
【請求項18】
前記核酸が機能しうる形でプロモーターと連結されている、請求項17に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項19】
請求項18に記載のベクターがコードするポリペプチドを細胞において発現するステップ、および該ポリペプチドを精製するステップを含む、請求項8または9に記載の化合物の作製方法。
【請求項20】
前記化合物を固体支持体上で合成するステップを含む、請求項8または9に記載の化合物の作製方法。
【請求項21】
神経変性障害を有する被験体を治療する方法であって、該被験体に請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物の有効量を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項22】
前記神経変性障害が、ポリグルタミン鎖増大障害、脆弱X症候、脆弱XE精神遅滞、フリードリッヒ失調症、筋緊張性ジストロフィー、脊髄小脳失調症8型、および脊髄小脳失調症12型、アレキサンダー病、アルパーズ病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、毛細血管拡張性運動失調、バッテン病(シュピールマイアー-フォークト-シェーグレン-バッテン病)、キャナヴァン病、コケーン症候群、皮質基底変性症、クロイツフェルト-ヤーコブ病、虚血脳卒中、クラッベ病、レーヴィ小体認知症、多発性硬化症、多系統萎縮症、パーキンソン病、ペリツェーウス-メルツバッヒャー病、ピック病、原発性側索硬化症、レフサム病、サンドホッフ病、シルダー病、脊髄損傷、脊髄筋萎縮、スティール・リチャードソン・オルスゼフスキー病、および脊髄ろうからなる群より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリグルタミン反復疾患がハンチントン病(HD)、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮、ケネディー病(脊髄延髄筋萎縮とも呼ばれる)、または1型、2型、3型(マチャド-ジョセフ病)、6型、7型、および17型からなる群より選択される脊髄小脳失調症である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記被験体がヒトである、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
ニューロン障害を有する被験体を治療する方法であって、該被験体に請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物の有効量を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項26】
前記ニューロン障害が虚血性脳卒中、出血性脳卒中、または脊髄損傷により誘発されたものである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記被験体がヒトである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
うつ病を有する被験体を治療する方法であって、該被験体に請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物の有効量を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項29】
前記被験体がヒトである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
統合失調症を有する被験体を治療する方法であって、該被験体に請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物の有効量を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項31】
前記被験体がヒトである、請求項30に記載の方法。
【請求項1】
式:
A-X-B
[式中、Aはペプチドベクターであり;Bは(i)GDNF、少なくとも1つのGDNF活性を有するその断片、もしくはGDNF類似体;または(ii)BDNF、少なくとも1つのBDNF活性を有するその断片、もしくはBDNF類似体、と実質的に同一のポリペプチドであり;そしてXはAをBと接続するリンカーである]を含む、化合物。
【請求項2】
血液脳関門を横切ることができる、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記BがGDNFまたはBDNFの成熟型を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
AがAngiopep-2(配列番号97)、逆転Angiopep-2(配列番号117)、Angiopep-1(配列番号67)、cys-Angiopep-2(配列番号113)、およびAngiopep-2-cys(配列番号114)からなる群より選択される配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記配列同一性が少なくとも90%である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
AがAngiopep-2 (配列番号97)、逆転Angiopep-2(配列番号117)、Angiopep-1(配列番号67)、cys-Angiopep-2(配列番号113)、およびAngiopep-2-cys(配列番号114)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Aが、Angiopep-2(配列番号97)、逆転Angiopep-2(配列番号117)、Angiopep-1(配列番号67)、cys-Angiopep-2(配列番号113)、およびAngiopep-2-cys(配列番号114)からなる群より選択されるアミノ酸配列から成る、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
Xがペプチド結合である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
Xが少なくとも1つのアミノ酸であり;AとBがそれぞれペプチド結合によりXと共有結合されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
Xが(GGGGS)n(ここでnは1、2、または3である);PAPAP;(PT)pP(ここでpは2、3、4、5、6、または7である);およびA(EAAAK)qA(ここでqは1、2、3、4、または5である)からなる群より選択される、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
AがAngiopep-2(配列番号97)であり;Xがペプチド結合であり;そしてBがhGDNF78-211であり;AがBのN末端とXを介して接続されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
AがAngiopep-2(配列番号97)であり;Xがペプチド結合であり;そしてBがhGDNF78-211であり;AがBのC末端とXを介して接続されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
Aが逆転 Angiopep-2(配列番号117)であり;Xがペプチド結合であり;そしてBがhGDNF78-211であり;AがBのN末端とXを介して接続されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
AがAngiopep-2(配列番号97)であり;Xが(GGGGS)2であり;そしてBがhGDNF78-211であり;ここでAはBのN末端とXを介して接続されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
AがAngiopep-2(配列番号97)であり;XがPAPAPであり;そしてBがhGDNF78-211であり;ここでAはBのN末端とXを介して接続されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
AがAngiopep-2(配列番号97)であり;XがA(EAAAK)2Aであり;そしてBがhGDNF78-211であり;ここでAはBのN末端とXを介して接続されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
請求項8〜16のいずれか1項に記載の化合物をコードする核酸分子。
【請求項18】
前記核酸が機能しうる形でプロモーターと連結されている、請求項17に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項19】
請求項18に記載のベクターがコードするポリペプチドを細胞において発現するステップ、および該ポリペプチドを精製するステップを含む、請求項8または9に記載の化合物の作製方法。
【請求項20】
前記化合物を固体支持体上で合成するステップを含む、請求項8または9に記載の化合物の作製方法。
【請求項21】
神経変性障害を有する被験体を治療する方法であって、該被験体に請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物の有効量を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項22】
前記神経変性障害が、ポリグルタミン鎖増大障害、脆弱X症候、脆弱XE精神遅滞、フリードリッヒ失調症、筋緊張性ジストロフィー、脊髄小脳失調症8型、および脊髄小脳失調症12型、アレキサンダー病、アルパーズ病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、毛細血管拡張性運動失調、バッテン病(シュピールマイアー-フォークト-シェーグレン-バッテン病)、キャナヴァン病、コケーン症候群、皮質基底変性症、クロイツフェルト-ヤーコブ病、虚血脳卒中、クラッベ病、レーヴィ小体認知症、多発性硬化症、多系統萎縮症、パーキンソン病、ペリツェーウス-メルツバッヒャー病、ピック病、原発性側索硬化症、レフサム病、サンドホッフ病、シルダー病、脊髄損傷、脊髄筋萎縮、スティール・リチャードソン・オルスゼフスキー病、および脊髄ろうからなる群より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリグルタミン反復疾患がハンチントン病(HD)、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮、ケネディー病(脊髄延髄筋萎縮とも呼ばれる)、または1型、2型、3型(マチャド-ジョセフ病)、6型、7型、および17型からなる群より選択される脊髄小脳失調症である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記被験体がヒトである、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
ニューロン障害を有する被験体を治療する方法であって、該被験体に請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物の有効量を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項26】
前記ニューロン障害が虚血性脳卒中、出血性脳卒中、または脊髄損傷により誘発されたものである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記被験体がヒトである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
うつ病を有する被験体を治療する方法であって、該被験体に請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物の有効量を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項29】
前記被験体がヒトである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
統合失調症を有する被験体を治療する方法であって、該被験体に請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物の有効量を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項31】
前記被験体がヒトである、請求項30に記載の方法。
【図1−1】
【図1−2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図1−2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2012−529272(P2012−529272A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514307(P2012−514307)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000889
【国際公開番号】WO2010/142035
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(511093410)アンジオケム インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000889
【国際公開番号】WO2010/142035
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(511093410)アンジオケム インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】
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