GI症候群及び移植片対宿主病を治療及び予防する方法
我々は、抗セラミド抗体投与が、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)誘導殺傷及び放射線誘導GI症候群、移植片対宿主病、炎症性疾患及び自己免疫疾患を含む内皮微小血管への損傷により介在される一連の疾患を治療及び予防することを発見した。我々はまた、これらの疾患を治療又は予防するための、好ましくはヒト化形態での治療用途を有する新しい抗セラミドモノクローナル抗体を発見した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願出願は、2007年5月6日に出願された仮出願第60/916,007号の利益を主張しており、合衆国法典第35巻第119条(e)に基づいて、その全ての内容は、本明細書内に完全に説明されているかのように、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の利益の提示
本発明は、国立衛生研究所の助成金CA85704の下での政府の支援と共になされた。政府は本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、GI症候群及び移植片対宿主病を治療及び予防する方法の分野におけるものである。
【0004】
2.関連技術の説明
放射線療法は、依然として、様々な悪性細胞に対する最も効果的な治療法の一つである;しかしながら、骨髄、毛包、表皮及び消化管の正常細胞は、放射線誘導細胞死に対して極めて感受性であり、癌治療のための本治療法の効果的な利用を限定している。骨髄移植は進行性の癌を治療するための別の方法であるが、臓器移植は、宿主における種々の免疫応答をしばしば引き起こし、これは移植片の拒絶及び移植片対宿主病(以下、「GVHD」と言う)をもたらす。骨髄移植は、急性及び慢性白血病、骨髄腫、固形腫瘍(R. J. Jones, Curr Opin Oncol 3 (2), 234(1991); G. L. Phillips, Prog Clin Biol Res 354B, 171(1990))、再生不良性貧血及び重症免疫不全症の(immunodeficiency's)(R. P. Gale, R. E. Champlin, S. A. Feigら、Ann Intern Med 95(4), 477(1981); G. M. Silber, J. A. Winkelstein, R. C. Moenら、Clin Immunol Immunopathol 44(3), 317(1987))を含む、多くの悪性及び非悪性疾患を治療するために現在用いられている。移植の前に必要とされるコンディショニング(移植前処置)のレジメンは、患者の免疫系を除去又は抑制するのを目的としており、患者を腫瘍の再発又は感染症にかかりやすくする。最近の、非血縁且つHLA非同一のドナーの使用は、残念ながらGvHDの発生率を増加させた。ドナーの骨髄移植片からのT細胞の除去はGvHDを改善するが、このストラテジーは生着不全率を増加させ、治療に有益な移植片対腫瘍効果を顕著に減少させる。そのため、生存全体は改善しない。さらには、強力な前臨床データにも関わらず、コルチコステロイドにTNFアンタゴニストを添加して炎症性サイトカインの作用を減少させることによりGvHDの転帰の改善を試みる、急性GvHDケアの標準が提供する治療的有用性は限られている。したがって、臨床的に最適化され得るのであれば、GI症候群及びGvHDの発生率及び重症度を減少させるための代替的なストラテジーに対する緊急の必要性が存在している。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】ASMase及びBax欠損は、C57BL/6の腸粘膜を放射線誘導微小血管内皮アポトーシスから保護する。近位空腸検体を野生型(第2パネル)及びasmase−/−(第3パネル)及びBax−/−(第4パネル)C57BL/6マウスから15Gy TBIの4時間後に採取し、非照射野生型マウスから採取した検体(第1パネル)と比較した。内皮細胞のアポトーシス核(赤、CD31染色)は、絨毛粘膜固有層において、TUNEL染色により、非アポトーシス核の青い染色と対照的に、濃縮又は断片化された茶色の核として同定された。矢印はアポトーシス内皮細胞を示す。
【図2】ASMase欠損は、腸粘膜を放射性誘導微小血管内皮アポトーシス及び陰窩幹細胞致死から保護する。(A)TUNEL染色により評価した、0から15Gy TBIの4時間後の照射asmase+/+及びasmase−/−マウスの絨毛固有層におけるアポトーシス細胞の頻度ヒストグラムである。アポトーシス細胞は、ポイントあたり200の絨毛の粘膜固有層においてスコア化した。データは、2つの実験から得られた平均スコアを表す。(B)C3HeB/FeJの近位空腸の横断面を照射前または照射後3.5日のいずれかに採取し、ヘマトキシリンで染色した。生存再生陰窩に典型的である、大きな好色素性陰窩は照射検体において見られ(中段及び下段パネル)、これは対照の非照射陰窩(上段パネル)と比較すると有意に拡大している。(C)15Gy TBI後のasmase+/+及びasmase−/−C57BL/6の剖検から採取した、H&E染色した近位空腸及び大腿骨切片である。致死の日を記している。
【図3−1】Bax欠損は、マウスの腸を放射線誘導内皮アポトーシス、陰窩致死及び致死性GI症候群から保護する。(A)C57Bl/6マウスを15Gy TBI(A)又は13−15Gy TBI(B)に曝露し、組織試料を採取し、図1及び2において記載するように処理した。示された各応答に関する2つの実験において、似たような結果を得た。データを、(A)ポイントあたり200の絨毛の固有層における平均アポトーシス細胞及び(B)4匹の各マウスについてスコア化した、10−20の周囲由来の平均±標準誤差の生存陰窩として報告した。(C)12−15Gy TBIに曝露後、自家骨髄移植を受けている8−12週齢のC57BL/6マウスの保険数理的な生存率カーブである。保険数理的な生存率は、積極限カプラン−マイヤー法[Kalpan, 1958 #47]により計算した。4−10匹の動物を群ごとに照射した。データは、複数の実験に起因する照合した生存率の結果を表す。
【図3−2】Bax欠損は、マウスの腸を放射線誘導内皮アポトーシス、陰窩致死及び致死性GI症候群から保護する。(A)C57Bl/6マウスを15Gy TBI(A)又は13−15Gy TBI(B)に曝露し、組織試料を採取し、図1及び2において記載するように処理した。示された各応答に関する2つの実験において、似たような結果を得た。データを、(A)ポイントあたり200の絨毛の固有層における平均アポトーシス細胞及び(B)4匹の各マウスについてスコア化した、10−20の周囲由来の平均±標準誤差の生存陰窩として報告した。(C)12−15Gy TBIに曝露後、自家骨髄移植を受けている8−12週齢のC57BL/6マウスの保険数理的な生存率カーブである。保険数理的な生存率は、積極限カプラン−マイヤー法[Kalpan, 1958 #47]により計算した。4−10匹の動物を群ごとに照射した。データは、複数の実験に起因する照合した生存率の結果を表す。
【図4】セラミドの中和は、プラットフォーム生成を中和し、in vitroでの放射線誘導アポトーシスを弱める。(A)10Gy IR15分前の抗セラミドMID15B4(1μg/ml)とのJurkat T細胞の予備培養は、プラットフォーム生成を弱めた。プラットフォームを、抗セラミドMID15B4(1:30)及びTexas−Red結合抗マウスIgM(1:500)で染色後の明視野顕微鏡検査により定量化した。(B)アポトーシスを、抗セラミドMID15B4(1μg/ml)での予備培養の有り又は無しで、Hoeschstビスベンズイミド染色後の核形態学的解析によりJurkat細胞において定量化した。最も少なくて150個の細胞由来のデータを、3つの独立した実験から得た。
【図5−1】セラミドの隔離は、C57BL/6の腸粘膜を放射線誘導微小血管内皮アポトーシス、陰窩幹細胞死及び致死GI毒性から保護する。(A)陰窩微小コロニーアッセイにより評価した陰窩生存率である。生存陰窩は、図4に示すように特定され、計数された。各線量レベルにおける生存画分の計算についてのデータを同時に照射された2−4匹の動物からまとめ、マウスごとに10−20の周囲をスコア化した。データは、平均±標準誤差として報告した。(B)TUNEL染色により評価した、15Gy TBIの4時間後の照射asmase+/+及びasmase−/−マウスの絨毛固有層におけるアポトーシス細胞の頻度ヒストグラムである。アポトーシス細胞を、ポイントあたり200の絨毛の粘膜固有層においてスコア化した。データは、2つの実験から照合した平均スコアを表す。(C)抗セラミド又はIgMを投与し、15Gy TBIに曝露した8−12週齢のC57BL/6マウスの保険数理的な生存率カーブである。保険数理的な生存率を、積極限カプラン−マイヤー法[Kalpan, 1958 #47]により計算した。5−10匹の動物を群ごとに照射した。似たようなデータが3つの実験において得られた。(D))15Gy TBIの15分前の抗セラミドMID15B4(100μg)とのC57BL/6マウスの前処理は、対照IgM処理と比較して内皮アポトーシスを弱めた。15Gy照射後4時間で採取した小腸及び肺組織をTUNELにより染色した。アポトーシス細胞は茶色に染色した核により示される。データ(平均±標準誤差)は、2つの独立した実験の最も少なくて150個の絨毛から得た。
【図5−2】セラミドの隔離は、C57BL/6の腸粘膜を放射線誘導微小血管内皮アポトーシス、陰窩幹細胞死及び致死GI毒性から保護する。(A)陰窩微小コロニーアッセイにより評価した陰窩生存率である。生存陰窩は、図4に示すように特定され、計数された。各線量レベルにおける生存画分の計算についてのデータを同時に照射された2−4匹の動物からまとめ、マウスごとに10−20の周囲をスコア化した。データは、平均±標準誤差として報告した。(B)TUNEL染色により評価した、15Gy TBIの4時間後の照射asmase+/+及びasmase−/−マウスの絨毛固有層におけるアポトーシス細胞の頻度ヒストグラムである。アポトーシス細胞を、ポイントあたり200の絨毛の粘膜固有層においてスコア化した。データは、2つの実験から照合した平均スコアを表す。(C)抗セラミド又はIgMを投与し、15Gy TBIに曝露した8−12週齢のC57BL/6マウスの保険数理的な生存率カーブである。保険数理的な生存率を、積極限カプラン−マイヤー法[Kalpan, 1958 #47]により計算した。5−10匹の動物を群ごとに照射した。似たようなデータが3つの実験において得られた。(D))15Gy TBIの15分前の抗セラミドMID15B4(100μg)とのC57BL/6マウスの前処理は、対照IgM処理と比較して内皮アポトーシスを弱めた。15Gy照射後4時間で採取した小腸及び肺組織をTUNELにより染色した。アポトーシス細胞は茶色に染色した核により示される。データ(平均±標準誤差)は、2つの独立した実験の最も少なくて150個の絨毛から得た。
【図6】ヒト化抗セラミドモノクローナル抗体を生成するために用いた戦略を示すフローチャート。
【図7】抗原(Ag)の開発、スクリーニングのためのELISAの検証。(挿入図)BSA結合セラミドは、スフィンゴイド塩基にBSA結合C16脂肪酸を合成することにより生成した。抗体スクリーニングのためのAgの検証はELISAアッセイにより行い、該アッセイでは、減少する量のAgを、プレートに固定し、ブロッキング後に各ウェルを、抗セラミドMID15B4抗体(1:100)、次に西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗マウスIgMと共にインキュベートした。ODを、(西洋ワサビペルオキシダーゼ)HRP基質の投与後に650nmで評価した。
【図8】BSAセラミドELISAは、カポジ肉腫細胞での免疫後の上清#3673における増大した結合活性を明らかにした。1:100希釈でのELISAにより免疫されたマウスから採取したプラズマ試料の結合は、試料#3674に対して、試料#3673によるセラミドのより高度な結合を明らかにした。結合活性は、抗体産生B細胞(sn73−I−C6)の不死化後もとどまり、抗セラミド結合活性を伴うモノクローナル2A2 IgMの単離を可能にする(非掲載)。
【図9】精製したモノクローナル2A2抗体は、BSAセラミドに結合する。Elisaは、2A2マウスモノクローナルIgMがBSAセラミドに結合することを明らかにした。Elisaは、図7にあるように行われ、対照IgMに対して、2A2のより著しい結合能力を示す。2A2は、MID15B4マウスIgMよりも5−10倍効率悪くセラミドに結合する。
【図10】2A2は、in vitroでの、放射線誘導アポトーシスを中和する。8Gy IR前15分の抗セラミド2A2(0−100μg/ml)でのJurkat T細胞の予備培養。抗セラミド抗体での予備培養の有り又は無しでの、Hoeschstビスベンズイミド染色後の、核形態学的解析により、アポトーシスをJurkat細胞において定量化した。データは、3つの独立した実験から得た最も少なくて150個の細胞由来である。
【図11】2A2は、in vivoでの15Gy後の陰窩生存率を増強した。(A)漸増用量の2A2抗セラミド(0−750μg)でのC57BL/6マウスの前処理は、15Gy TBI後3.5日の陰窩生存率を改善する。(B)2A2抗セラミド抗体は、1.2の線量修飾係数(DMF)(過去の研究において、ASMase欠損は、C57BL/6マウスにおいて、1.2のDMFで陰窩生存率を増加させた)による8−15Gy 全身照射後の陰窩生存率を増加させる。陰窩生存率は、図5cにあるようにして決定した。
【図12】2A2抗体は、14−17Gy 単一線量の放射線に曝露したC57BL/6マウスの生存率を改善する。IR前15分、750μg 2A2の有り又は無しでのC57BL/6マウスを、14−17Gy TBIで照射した。マウスは、IRの16時間内に、3×106自家骨髄細胞を注入された。生存率を、モニタリングし、カプラン−マイヤーパラメータを用いて表した。統計的有意性(p<0.05)を、各線量において達成した。
【図13】2A2抗体は、in vivoでの放射線誘導GI死を弱め、asmase−/−表現型を再現する。図12において行った生存率の研究からの、瀕死の時に屠殺したマウスの剖検結果。近位空腸検体が90%より多い陰窩−絨毛ユニットの露出を見せ、且つ陰窩の再生がない場合、GI死と判定した。脱灰した大腿骨切片が、造血因子の枯渇及び大量出血を示す場合、骨髄(BM)死と判定した。
【図14】急性GvHDの免疫病態生理を示す図解。
【図15】宿主ASMaseは、移植片対宿主に関連する疾病率及び死亡を制御する。致死に照射された(1100cGy)C57BL/6asmase+/+又はC57BL/6asmase−/−マウスは、脾臓T細胞(3x106)の有り又は無しでのLP TCD−BM細胞(5x106)の静脈注射を受けた。カプラン−マイヤー生存率(A)及び5つの臨床パラメータ(体重減少、猫背の姿勢、活動性低下、毛の波打ち現象(fur ruffling)及び皮膚病変)の週に一度の評価から導出される臨床的GvHDスコア;117(B)を示しており、これは、2つの実験から集められた群ごとに6−8のBM対照及び13−14のBM+T細胞レシピエントを示す。統計解析は次の通りである:(A)□対■ p<0.001、■対● p<0.001。(B)□対■ p<0.05、■対● p<0.05。
【図16−1】in vivoにおいて活性化された同種異系CTLは、ex vivoにおける効率的致死のために標的肝細胞ASMaseを必要とする。実施例1に記載するように単離した肝細胞を、LP BM+T細胞の移植後10−14日に、致死的に照射された野生型C57BL/6のレシピエントから採取した脾臓T細胞と共培養した。(A)2x106GvH活性CTLを、0.5x106野生型C57BL/6又はB6.MRL.lpr(FasR−/−)肝細胞(左パネル)と共に、完全培地で16時間共培養した。あるいは、DMSO又はコンカナマイシンAで前処理した(100ng/ml、30分)GvH活性化CTLを、0.5x106野生型C57BL/6肝細胞と共に、16時間共培養した(右パネル)。アポトーシスを、固定後に核のビスベンズイミド染色により定量化した。(B)asmase−/−肝細胞は、GvH活性化CTLにより誘導されたアポトーシスに対して抵抗性である。CTL共培養を、(A)にあるように行い、アポトーシスをこの16時間後に定量化した。(C)2x106GvH活性化T細胞と共に懸濁液中で10分共培養後の、asmase+/+(上段左パネル)及びasmase−/−(下段左パネル)のC57BL/6肝細胞の代表的画像。肝細胞を、実施例1に記載するようにDAPI及びCy−3標識抗セラミドmAbで固定し、染色した。矢印は、原形質膜の外層におけるセラミドリッチプラットフォーム生成を示す。留意すべきは、インキュベーション後、染色及びイメージング前に、細胞を50xgで4分、4℃で遠心分離した。したがって、肝細胞(大きな青い核)と共に分布しているCTL(小さな青い核)は、生物学的関連性を反映していない。(D)2x106GvH活性化CTLとインキュベーション後のasmase+/+及びasmase−/−肝細胞における、セラミドリッチプラットフォームの定量。0.5x106肝細胞を、示した時間共培養し、上記のように固定し、染色した。(E)外因性C16−セラミドは、標的細胞ASMaseの必要性を回避し、GvH活性化CTL刺激asmase−/−肝細胞にアポトーシスを付与する。アポトーシスを、(A)にあるように定量化した。(F)ナイスタチンでの膜GEMの崩壊は、CTL誘導肝細胞アポトーシスを阻害する。50μg/mL ナイスタチンで30分間予備培養し、1%脂質フリーFBS含有RPMIで再懸濁した、0.5x106野生型肝細胞を、2x106GvH活性化T細胞と共培養し、アポトーシスを、(A)にあるように定量化した。データ(平均±標準誤差)は、パネルA、B、D、E及びFのそれぞれについての3つの独立した実験の3連の測定値を表す。
【図16−2】in vivoにおいて活性化された同種異系CTLは、ex vivoにおける効率的致死のために標的肝細胞ASMaseを必要とする。実施例1に記載するように単離した肝細胞を、LP BM+T細胞の移植後10−14日に、致死的に照射された野生型C57BL/6のレシピエントから採取した脾臓T細胞と共培養した。(A)2x106GvH活性CTLを、0.5x106野生型C57BL/6又はB6.MRL.lpr(FasR−/−)肝細胞(左パネル)と共に、完全培地で16時間共培養した。あるいは、DMSO又はコンカナマイシンAで前処理した(100ng/ml、30分)GvH活性化CTLを、0.5x106野生型C57BL/6肝細胞と共に、16時間共培養した(右パネル)。アポトーシスを、固定後に核のビスベンズイミド染色により定量化した。(B)asmase−/−肝細胞は、GvH活性化CTLにより誘導されたアポトーシスに対して抵抗性である。CTL共培養を、(A)にあるように行い、アポトーシスをこの16時間後に定量化した。(C)2x106GvH活性化T細胞と共に懸濁液中で10分共培養後の、asmase+/+(上段左パネル)及びasmase−/−(下段左パネル)のC57BL/6肝細胞の代表的画像。肝細胞を、実施例1に記載するようにDAPI及びCy−3標識抗セラミドmAbで固定し、染色した。矢印は、原形質膜の外層におけるセラミドリッチプラットフォーム生成を示す。留意すべきは、インキュベーション後、染色及びイメージング前に、細胞を50xgで4分、4℃で遠心分離した。したがって、肝細胞(大きな青い核)と共に分布しているCTL(小さな青い核)は、生物学的関連性を反映していない。(D)2x106GvH活性化CTLとインキュベーション後のasmase+/+及びasmase−/−肝細胞における、セラミドリッチプラットフォームの定量。0.5x106肝細胞を、示した時間共培養し、上記のように固定し、染色した。(E)外因性C16−セラミドは、標的細胞ASMaseの必要性を回避し、GvH活性化CTL刺激asmase−/−肝細胞にアポトーシスを付与する。アポトーシスを、(A)にあるように定量化した。(F)ナイスタチンでの膜GEMの崩壊は、CTL誘導肝細胞アポトーシスを阻害する。50μg/mL ナイスタチンで30分間予備培養し、1%脂質フリーFBS含有RPMIで再懸濁した、0.5x106野生型肝細胞を、2x106GvH活性化T細胞と共培養し、アポトーシスを、(A)にあるように定量化した。データ(平均±標準誤差)は、パネルA、B、D、E及びFのそれぞれについての3つの独立した実験の3連の測定値を表す。
【図17】in vitroでの混合リンパ球反応(MLR)アッセイの概略図。
【図18】in vitroでの活性化誘導細胞死(AICD)アッセイの概略図。
【図19−1】in vitroでの活性化CTLは、効率的致死のために標的脾細胞ASMaseを必要とする。(A)2x106照射された(2Gy)C57BL/6脾細胞/ml培地で5日間in vitroで、活性化された、エフェクターBalb/c脾臓T細胞と20分間2:1の標的:エフェクター比率で共培養した際の、ミトトラッカーレッド標識した、conA活性化(5mg/mlで24時間)標的C57BL/6asmase+/+及びC57BL/6asmase−/−脾細胞の表面に形成された、セラミドリッチプラットフォーム(矢印)の代表的画像。標的脾細胞を4% リン酸緩衝ホルマリンで固定し、DAPI及びFITC標識抗セラミドmAbで染色した。(B)クロム遊離アッセイにより測定した、エフェクターBalb/c脾臓T細胞との6時間の共培養後の、51Cr標識標的C57BL/6asmase+/+及びC57BL/6asmase−/−脾細胞の溶解。(C)500nM C16−セラミド又はC16−ジヒドロセラミド(DCer)の存在下での、(B)にあるような活性化エフェクターBalb/c脾臓T細胞に対する、51Cr標識標的C57BL/6asmase−/−脾細胞の細胞溶解応答。(D)材料及び方法に記載のように10ng/ml 抗CD3でのAICDの誘導後4時間の、C57BL/6asmase+/+及びC57BL/6asmase−/−C57BL/6脾臓T細胞の表面に形成された、セラミドリッチプラットフォーム(矢印)の代表的画像。細胞を、4% リン酸緩衝ホルマリンで固定し、DAPI及びFITC標識抗セラミドmAbで染色した。AICDは、asmase+/+T細胞における平均蛍光強度による決定でセラミドシグナル全体における2.0±0.1倍の増加を誘導するが(未規定の対照に対してp<0.005)、asmase−/−T細胞においては明らかではなく、パネル間での全体的な染色における差異を説明している。(E)(D)にあるようなAICD誘導後の、プラットフォームにおけるセラミド(上から2番目のパネル)及びGM1(上から3番目のパネル)共局在化の共焦点顕微鏡検出。プラットフォームを、それぞれ抗セラミドMID15B4及びFITC結合コレラ毒素のCy3抗マウスIgM検出を用いて同定した。(F)AICDアポトーシス同胞殺し(apoptotic fratricide)後のC57BL/6asmase+/+又はC57BL/6asmase−/−脾臓T細胞のアポトーシス応答を(D)にあるようにして誘導した。アポトーシスを、核ビスベンズイミド染色の16時間後に定量した。(G)500nM C16−セラミド又はC16−ジヒドロセラミドの存在下で、(D)にあるようにC57BL/6asmase−/−脾臓T細胞において、AICDを開始した。アポトーシスを、核ビスベンズイミド染色の16時間後に定量した。データ(平均±標準誤差)は、パネルB、C、F及びGについての3つの独立した実験の3連の試料を表す。
【図19−2】in vitroでの活性化CTLは、効率的致死のために標的脾細胞ASMaseを必要とする。(A)2x106照射された(2Gy)C57BL/6脾細胞/ml培地で5日間in vitroで、活性化された、エフェクターBalb/c脾臓T細胞と20分間2:1の標的:エフェクター比率で共培養した際の、ミトトラッカーレッド標識した、conA活性化(5mg/mlで24時間)標的C57BL/6asmase+/+及びC57BL/6asmase−/−脾細胞の表面に形成された、セラミドリッチプラットフォーム(矢印)の代表的画像。標的脾細胞を4% リン酸緩衝ホルマリンで固定し、DAPI及びFITC標識抗セラミドmAbで染色した。(B)クロム遊離アッセイにより測定した、エフェクターBalb/c脾臓T細胞との6時間の共培養後の、51Cr標識標的C57BL/6asmase+/+及びC57BL/6asmase−/−脾細胞の溶解。(C)500nM C16−セラミド又はC16−ジヒドロセラミド(DCer)の存在下での、(B)にあるような活性化エフェクターBalb/c脾臓T細胞に対する、51Cr標識標的C57BL/6asmase−/−脾細胞の細胞溶解応答。(D)材料及び方法に記載のように10ng/ml 抗CD3でのAICDの誘導後4時間の、C57BL/6asmase+/+及びC57BL/6asmase−/−C57BL/6脾臓T細胞の表面に形成された、セラミドリッチプラットフォーム(矢印)の代表的画像。細胞を、4% リン酸緩衝ホルマリンで固定し、DAPI及びFITC標識抗セラミドmAbで染色した。AICDは、asmase+/+T細胞における平均蛍光強度による決定でセラミドシグナル全体における2.0±0.1倍の増加を誘導するが(未規定の対照に対してp<0.005)、asmase−/−T細胞においては明らかではなく、パネル間での全体的な染色における差異を説明している。(E)(D)にあるようなAICD誘導後の、プラットフォームにおけるセラミド(上から2番目のパネル)及びGM1(上から3番目のパネル)共局在化の共焦点顕微鏡検出。プラットフォームを、それぞれ抗セラミドMID15B4及びFITC結合コレラ毒素のCy3抗マウスIgM検出を用いて同定した。(F)AICDアポトーシス同胞殺し(apoptotic fratricide)後のC57BL/6asmase+/+又はC57BL/6asmase−/−脾臓T細胞のアポトーシス応答を(D)にあるようにして誘導した。アポトーシスを、核ビスベンズイミド染色の16時間後に定量した。(G)500nM C16−セラミド又はC16−ジヒドロセラミドの存在下で、(D)にあるようにC57BL/6asmase−/−脾臓T細胞において、AICDを開始した。アポトーシスを、核ビスベンズイミド染色の16時間後に定量した。データ(平均±標準誤差)は、パネルB、C、F及びGについての3つの独立した実験の3連の試料を表す。
【図20】2A2抗体は、in vivoでの急性GvHDに影響を及ぼし、asmase−/−表現型を部分的に再現する。図14に記載のような、LP BM及びT細胞の移植後のカプラン−マイヤー生存率解析。2A2抗体を受けている群は、1100cGy分割線量TBIの前半の15分前に、750μgの抗体を受けた。
【図21】2A2抗体は、急性GvHDに関連する血清サイトカインストームを弱める。図15からの実験的急性GvHDをわずらっているマウスから、BMT7日後に血清を採取した。血清インターフェロンγを、製造者のプロトコル(R&D Systems)にしたがって、ELISAにより定量化した。
【図22−1】宿主ASMaseは、移植片対宿主標的臓器障害及びアポトーシスを決定する。C57BL/6asmase+/+又はC57BL/6asmase−/−マウスに移植を行い、病理組織学的解析のためにその21日後に屠殺した。(A)代表的な5μM H&E染色した肝臓切片であり、これは、asmase−/−の同腹子と比較して、自家T細胞を受けたasmase+/+宿主における、リンパ球浸潤の増加、門脈領域の膨張及び内皮炎を示している。(B)近位空腸陰窩及び絨毛の代表的な5μM TUNEL染色切片は、固有層及び陰窩のアポトーシスを示す。矢印は、(C)及び(D)においてそれぞれ定量化された、非アポトーシス核の青い染色と対照的な、凝縮又は断片化された茶色の核を含む細胞を示す。絨毛固有層におけるアポトーシス細胞の頻度ヒストグラム(C)は、2つの実験から集められた、ポイントあたり150の絨毛からのデータを示す。陰窩アポトーシス(D)を、ポイントあたり200の陰窩においてスコア化し、2つの実験から集められた平均±標準誤差を表す。(E)C57BL/6レシピエント宿主は、上記のような骨髄移植、あるいはB10.BR(H2k)ドナー由来の0.5x106T細胞の有り又は無しでの10x106TCD−BM細胞を受けた。皮膚(舌及び耳)を、骨髄移植後14日(B10.BRレシピエント)又は21日(LP)に採取し、GvHDスコアは、H&E染色切片での盲検方式での評価で、表皮1mmごとの異常角化及びアポトーシス角化細胞の数(平均±標準誤差)により決定した。データは、3つの独立した実験から集められた、群ごと4−14匹のマウスを表す。
【図22−2】宿主ASMaseは、移植片対宿主標的臓器障害及びアポトーシスを決定する。C57BL/6asmase+/+又はC57BL/6asmase−/−マウスに移植を行い、病理組織学的解析のためにその21日後に屠殺した。(A)代表的な5μM H&E染色した肝臓切片であり、これは、asmase−/−の同腹子と比較して、自家T細胞を受けたasmase+/+宿主における、リンパ球浸潤の増加、門脈領域の膨張及び内皮炎を示している。(B)近位空腸陰窩及び絨毛の代表的な5μM TUNEL染色切片は、固有層及び陰窩のアポトーシスを示す。矢印は、(C)及び(D)においてそれぞれ定量化された、非アポトーシス核の青い染色と対照的な、凝縮又は断片化された茶色の核を含む細胞を示す。絨毛固有層におけるアポトーシス細胞の頻度ヒストグラム(C)は、2つの実験から集められた、ポイントあたり150の絨毛からのデータを示す。陰窩アポトーシス(D)を、ポイントあたり200の陰窩においてスコア化し、2つの実験から集められた平均±標準誤差を表す。(E)C57BL/6レシピエント宿主は、上記のような骨髄移植、あるいはB10.BR(H2k)ドナー由来の0.5x106T細胞の有り又は無しでの10x106TCD−BM細胞を受けた。皮膚(舌及び耳)を、骨髄移植後14日(B10.BRレシピエント)又は21日(LP)に採取し、GvHDスコアは、H&E染色切片での盲検方式での評価で、表皮1mmごとの異常角化及びアポトーシス角化細胞の数(平均±標準誤差)により決定した。データは、3つの独立した実験から集められた、群ごと4−14匹のマウスを表す。
【図23】ドナーのCD8+T細胞の増殖は、asmase−/−宿主において損なわれた。(A)C57BL/6asmase+/+及びC57BL/6asmase−/−レシピエントは、実施例1に記載のように、LP/Jドナー由来の15−206CFSE染色脾臓CD3+T細胞を注入された。脾臓を、その72時間後に採取し、マルチカラーフローサイトメトリーを行った。CFSEが「高い」(平均蛍光値>103である細胞)及び「低い」(平均蛍光値<103)CD4+及びCD8+集団のパーセンテージは、2つの独立した実験のうち代表する1つから示された。(B)実施例1に記載される、LP/J BM及びT細胞注入後14日にC57BL/6 asmase+/+及びC57BL/6 asmase−/−レシピエントから採取したLy9.1+ドナーのLP/J T細胞のフローサイトメトリー解析。データ(平均±標準誤差)は、2つの独立した実験の4−12の測定値を表す。
【図24】T細胞増殖能は、asmase−/−宿主においてインタクトなままである。同系(LP)もしくは自家(Balb/c)脾細胞又はマイトジェン(ConA)に応えて、ドナーのLP BM及びT細胞のC57BL/6asmase+/+又はC57BL/6asmase−/−レシピエントから採取した脾臓T細胞の増殖を測定するチミジン取り込みアッセイ。データ(平均±標準誤差)は、3つの独立した実験からの3連の測定値を表す。
【図25】1H4、5H9及び15D9ハイブリドーマ細胞系を、6回のサブクローニング後に確立した。ハイブリドーマ上清は、Jurkat細胞アポトーシス阻害アッセイにおいて検査され、用量依存的であり、かつ2A2と同程度の保護効果を示した。3つの抗体のアイソタイプを確立した。15D9 mAbは、IgM、κである。1H4及び5H9 mAbは、mIgG3、κである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
略語リスト
ASMase − 酸性スフィンゴミエリナーゼ
BMT − 骨髄移植
CTL − 細胞傷害性Tリンパ球
ERK − 細胞外シグナル関連キナーゼ
FADD − Fas関連デスドメイン
FcRγII − FcレセプターγII
FITC − フルオレセインイソチオシアネート
GVHD − 移植片対宿主病
GVT − 移植片対腫瘍
IL − インターロイキン
JNK − c−Jun N末端キナーゼ
mHAg − 副組織適合(histocompatability)抗原
MHC − 主要組織適合(histocompatability)複合体
MLR − 混合リンパ球反応
SDS-PAGE − ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動
TCR − T細胞レセプター
TNF − 腫瘍壊死因子
TUNEL − 末端dUTPニック末端標識
【0007】
詳細な説明
我々は、抗セラミド抗体の投与が、放射線誘導GI症候群、移植片対宿主病、炎症性疾患及び自己免疫疾患(本明細書内に列挙された疾患)を含む、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)誘導死及び内皮微小血管(microvasculture)への損傷により介在される数々の疾患を治療及び予防する事を発見した。我々はまた、新規抗セラミドモノクローナル抗体2A2及び以下に記載されるその他のものを発見し、これらは、列挙された疾患を治療又は予防するための、好ましくはヒト化形態での治療用途を有する。本発明の他の実施形態は、1以上のスタチン;又はイミプラミンもしくは他のASMase阻害剤又はBax阻害剤と共に抗セラミド抗体を投与することにより、上に列挙された疾患を治療又は予防する併用療法を対象とする。さらに、他の実施形態は、ASMase、Bax及びBakの発現を低下させるか、さもなければ列挙した疾患のいずれかの症状を低減又は改善する量のアンチセンスヌクレオチド又は低分子干渉RNAを投与することを含む。最後に、特定の実施形態は、抗セラミド抗体及び1以上のスタチン又はイミプラミンを含む、列挙された疾患を治療又は予防における治療的使用のための組成物を対象とする。
【0008】
細胞外セラミドは放射線誘導アポトーシスに必要である
【0009】
脂質ラフトは、スフィンゴ脂質と共に密集したコレステロールからなるはっきりした原形質膜ミクロドメインであり、特定のスフィンゴミエリンにおいて、液体無秩序(liquid-disordered)のバルク原形質膜内に液体秩序(liquid-ordered)ドメインを作る。ラフトは、周囲の膜とはタンパク質及び脂質組成が異なり、多数のグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)−アンカータンパク質、Srcファミリーの二重にアシル化されたチロシンキナーゼ及び膜貫通タンパク質を含む、シグナル分子を収容する。さらに、ラフトは、抗原に遭遇した際のB細胞レセプター(BCR)を含め多数のレセプターが、活性化の際に内又は外に移行する部位としての役割を果たす。最近の証拠は、これらの移行の事象が、多数のシグナル伝達カスケードのために極めて重要であることを示している。
【0010】
古典的には細胞膜の構成成分として見なされていたスフィンゴ脂質は、1,2−ジアシルグリセロールが、スフィンゴミエリンのセラミドへの加水分解を促進するという実証によりシグナル伝達の重要な調節因子であり得ることが発見された5。GH3下垂体細胞においてセラミドを産生する酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASMase)の活性を同定することにより、これらの研究は、セカンドメッセンジャーとしてのセラミドの役割の可能性を導入した。この役割は、外因性セラミドの添加によるin vitroでの調節されたタンパク質リン酸化反応事象及びキナーゼ活性の同定により支持された(R. N. Kolesnick及びM. R. Hemer, J Biol Chem 265(31), 18803(1990), S. Mathias, K. A. Dressler、並びにR. N. Kolesnic, Proc Natl Acad Sci U S A 88(22), 10009(1991))。最終的に、腫瘍壊死因子レセプター(TNFR)活性の無細胞系におけるセラミド産生との結合、セラミド産生の阻害によるTNF−α介在性シグナル伝達の拮抗作用、並びにセラミド産生を欠いた細胞におけるTNF−αシグナル伝達の外因性セラミドによる再現は、正規の脂質セカンドメッセンジャーとしてのセラミドを確立した(K. A. Dressler, S. Mathias及びR. N. Kolesnick, Science 255(5052), 1715(1992)。
【0011】
酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASMase)は、リソソーム型及び分泌型の2つの形態で存在する、スフィンゴミエリン特異的ホスフォリパーゼC(スフィンゴミエリンホスフォジエステラーゼ)であり;これは、多くの細胞型において、迅速なストレス応答を開始させる(R. Kolesnick, Mol Chem Neuropathol 21 (2-3), 287(1994); J. Lozano, S. Menendez, A. Morales ら、J Biol Chem 276(1), 442(2001); Y. Morita, G. I. Perez, F. Parisら、Nat Med 6(10), 1109(2000); F. Paris, Z. Fuks, A. Kangら、Science 293(5528), 293(2001); Santana, L. A. Pena, A. Haimovitz-Friedmanら、Cell 86(2), 189(1996))。我々の最近の研究は、セラミドリッチプラットフォーム内への原形質膜の脂質ラフトのクラスタリングが、ASMaseを活性化することができる刺激を増幅することを示した。Grassmeら、J Biol Chem. 2001, 276:20589(これは、参照によって本明細書内に組み込まれる)。これらの研究において、我々は、in vitro及びin vivoにおいて、CD95に誘導されてASMaseが原形質膜外表面へ移行すると放出される、細胞外に配向されたセラミドが、スフィンゴ脂質リッチ膜ラフトにおけるCD95のクラスタリングを可能にし、並びにJerkat細胞におけるアポトーシスを誘導することを示した。ASMaseの欠損、ラフトの破壊又は表面セラミドの中和は、CD95のクラスタリング及びアポトーシスを妨げたが、天然セラミドは、ASMase欠損細胞をレスキューした。データは、セラミドによるCD95介在性クラスタリングが、シグナル伝達及びアポトーシス細胞死についての必要条件であることを示した。Jurkat細胞は、ヒトT細胞白血病細胞株である。
【0012】
セラミドが、いくつかの細胞型におけるFas誘導アポトーシスのために必要であることが他の者らによって示されている。我々は、アポトーシス応答開始の際のUV−C誘導セラミド産生の必要条件を調べた。UV−Cは、100−280nmの波長帯における紫外放射線を意味する。これらの研究において、ASMase活性を阻害するためにイミプラミンが用いられた。50mM イミプラミンでの30分間のJurkat細胞の前処理は、ベースラインのASMase活性を低下させ、刺激後1分でのUV−C及びFas誘導ASMaseの活性化並びに2分でのセラミド産生を無効にし、かつ、刺激後4時間でのアポトーシスを弱めた。これらのデータは、ASMase活性が、最適なFas又はUV−C誘導のアポトーシスに不可欠であることを示しているが、この応答におけるセラミドそれ自体の役割を明確にしてはいない。Grassmeら、J Biol Chem. 2001, 276:20589(これは、参照によって本明細書内に組み込まれる)。
【0013】
セラミドは、分化、増殖及び成長停止において重要な役割を有するが、セラミドに関する最も顕著な役割は、プログラム細胞死の誘導においてである。外因性C8セラミド及びスフィンゴミエリナーゼは、HL60ヒト白血病細胞におけるTNF−α誘導DNA断片化及びクローン原性の低下をミミックし、セラミドがアポトーシスシグナル伝達の必須成分であることを示した(K. A. Dressler, S. Mathias及びR. N. Kolesnic, Science 255(5052), 1715(1992)。電離放射線(IR)は、セラミドへのスフィンゴミエリンの加水分解を促進し、外因性セラミドは、放射線誘導セラミド産生及びアポトーシスのホルボールエステル介在性の阻害を回避することができた(A. Haimovits-Friedman, C. C. Kan, D. Ehleiterら、J Exp Med 180(2), 525(1994))。ASMase活性における遺伝的欠損を特徴とする遺伝病である、ニーマン・ピック患者由来のリンパ芽球は、遺伝学的モデルにおいて、ASMase介在性のセラミド産生が放射線誘導アポトーシスに必要であることを証明し、ASMase欠損マウスの開発は、セラミドについての細胞型特異的な役割の同定を可能にした(J. Lozano, S. Menendez, A. Moralesら、J Biol Chem 276(1), 442(2001); P. Santana, L. A. Pena, A. Haimovitz-Freidmanら、Cell 86(2), 189(1996))。セラミド産生はその後、多数のサイトカイン、ウイルス/病原体、環境ストレス、及び化学療法誘導アポトーシス事象のための必要条件として同定されてきた。Verheij Mら。Requirement for ceramide-initiated SAPK/JNK signaling in stress-induced apoptosis。Nature. 1996 Mar 7; 380(6569): 75-9; Riethmuller Jら。Membrane rafts in host-pathogen interactinons、Biochim Biophys Acta. 2006 Dec: 1758(12): 2139-47(これらは参照によって本明細書内に取り込まれる)。
【0014】
その後、新たに出てきた多数の証拠は、細菌及び病原体の内在化、並びに放射線及び化学療法誘導アポトーシスに対するシグナル伝達の部位として、セラミド介在性のラフトのクラスタリングを認識した。D. A. Brown及びE. London, Annu Rev Cell Dev Biol 14, 111 (1998): J. C. Fanzo, M. P. Lynch, H. Phee ら、Cancer Biol Ther 2 (4), 392 (2003); S. Lacour, A. Hammann, S . Grazideら、Cancer Res 64 (1O), 3593 (2004); Semac, C. Palomba, K. Kulangaraら、Cancer Res 63 (2), 534 (2003; A. B. Abdel Shakor, K. Kwiatkowska、及び A. Sobota, J Biol Chem 279 (35) 36778 (2004); H. Grassme, V. Jendrossek, J. Bockら、J Zmmunol 168 (1), 298 (2002); M. S. Cragg, S. M. Morgan, H. T. Chanら、Blood 101 (3), 1045 (2003);6 D. Scheel-Toellner, K. Wang, L. K. Assi ら、Biochem Soc Trans 32 (Pt 5), 679 (2004).; D. Delmas, C. Rebe, S. Lacourら、J Biol Chem 278 (42), 41482 (2003).;及び C. Bezombes, S. Grazide, C. Garret ら、Blood 104 (4), 1166 (2004)。
【0015】
これに関連して、セラミドリッチプラットフォームは、Jurkat細胞(Zhang及びKolesnick、未発表結果)及びウシ大動脈内皮細胞(Stancevic及びKolesnick、未発表結果)におけるIR誘導アポトーシス、JY B細胞におけるCD40誘導IL−12分泌及びc−Junキナーゼリン酸化反応、緑膿菌(P. aeruginosa)の内在化及び肺における自然免疫応答の活性化、Daudi及びRLリンパ腫細胞におけるリツキシマブ誘導CD20クラスタリング及びERKリン酸化反応、U937ヒト単球細胞におけるFcRγIIクラスタリング及びリン酸化反応、並びに、HT29ヒト結腸癌細胞及び好中球におけるレスベラトロル、シスプラチン、及び活性酸素種誘導アポトーシスのためのシグナルを送る。ASMaseの移行及び活性化の下流の効果についての更なる研究にも関わらず、ASMaseシグナル伝達を開始させるカプセース(capsase)非依存の経路があることを我々が示すまで、原形質外膜上へのその移行を介在する起因事象についてはほとんど分かっていなかった。J.A. Rotolo ら、J. Biol. Chem. Vol 280, No. 29, Issue of July 15,26425-34 (2005)(これは、参照によって本明細書内に組み込まれる)。
【0016】
異なる区画においてセラミドを作るための経路が細胞内には多数ある点を強調しておくことは、重要である。細胞表面においてASMaseによってラフト内で産生されるセラミドは、細胞内部のセラミドとは異なる。以下に示す結果は、ASMase産生細胞表面セラミドが、内皮微小血管への損傷(GI症候群の顕著な特徴)を経て、放射線誘導GI症候群を引き起こすことに関与することを初めて示すものである。我々はさらに、ASMase産生セラミドが、T細胞介在性の死によって引き起こされるGVHDに必要であることを示す。したがって、ASMase産生セラミドは、内皮微小血管損傷及びT細胞介在性の死の両方に必要である。我々はさらに、in vivoでの抗セラミド抗体の投与による、ASMaseにより産生されるセラミドの阻害又は隔離は、放射線誘導損傷を低減し、並びにGI症候群及びGvHDを治療又は予防するために訴えられ(be sued to)得ることを発見した。本発明の特定の実施形態は、(例えば、イミプラミンもしくはアンチセンス核酸で)ASMaseを阻害すること又は(例えば、抗セラミド抗体単独もしくはスタチンと共に)細胞表面セラミドを不活性化することにより、GVHD及びGI症候群並びに自己免疫疾患を含む他のT細胞介在性の疾患を治療又は予防する薬理学的方法を対象にする。
【0017】
致死的GI症候群の治療及び予防
【0018】
小腸の幹細胞を収容する腸コロニー形成区画は、リーベルキューンの陰窩の底から4−9の位置にあり、腸多能性幹細胞及び、本明細書内では幹細胞クロノゲン(clonogens)と呼ばれる未確定の前駆細胞クロノゲンからなる。この群の細胞は、絶え間なく増殖及び分化し、腸細胞の生理学的損失及び絨毛の先端から分化した他の上皮細胞を補充し、したがって、粘膜の解剖学的及び機能的完全性を維持する。この区画の完全な除去は、陰窩−絨毛ユニットを恒久的に破壊するために必要であるようであるが、たとえ陰窩ごとに1つであったとしても、生存している幹細胞クロノゲンは、完全に機能的な陰窩を再生可能である。
【0019】
放射線は、胃腸微小血管及び増殖性陰窩幹細胞の両方を標的にする。絨毛における微小管内皮のアポトーシスは、照射の4時間後に生じるGI症候群の初期病変を呈する。内皮アポトーシスは、病変を亜致死から致死の陰窩クロノゲンに変換し、再生陰窩の減少をもたらし、GI毒性を促進する。[3H]TdR及びBrdUrdによる免疫組織学的及び標識研究は、陰窩幹細胞クロノゲンの死が放射線曝露後すぐには起こらないことを明らかにした。むしろ、最も早く検出可能な応答は、放射線誘導DNA二本鎖切断(dsd)によりシグナルされているらしい、S期後期チェックポイント及び核分裂停止を経る進行における一時的な線量依存的遅延である。哺乳類細胞において、DNA二本鎖切断は、DNA損傷の認識及び修復の経路、並びに細胞周期チェックポイント活性の協調的な制御を活性化する。腸幹細胞の核分裂停止は、この経路における制御された事象を表すように思われる。この考えと一致して、腸の周囲あたりの陰窩数における有意な変化はこのステージでは見られないが、陰窩の大きさは、陰窩通過の継続的な通常の移動及び分化した細胞の陰窩から絨毛の上皮層への通常の移動によって徐々に減少する。36−48時間での核分裂活性の再開は、陰窩幹細胞クロノゲンの迅速な枯渇及び周囲あたりの陰窩数の減少に関連する。幹細胞枯渇の機序は、完全には確立されていない。
【0020】
GI幹細胞クロノゲンの死亡率は、放射線曝露から3.5日後に生存している陰窩の数により最もよく評価され、これは、線量の増加に従って指数関数的に減少する(C. S. Potten及びM. Loeffler, Development 110 (4), 1001 (1990), H. R. Withers, Cancer 28 (I), 75 (1971)及びJ. G. Maj, F. Paris, A. Haimovitz-Friedmanら、Cancer Res 63, 4338 (2003))。生存幹細胞を含む陰窩は加速度的に増殖し、腸粘膜が正常な構造を取り戻すまで分裂又は出芽して新しい陰窩を産生する典型的な再生陰窩を生じる。いくつかのマウスモデルにおけるTBI実験は、8−12Gyに曝露後の生存陰窩幹細胞の数が、通常、粘膜の完全な回復を支持するのに十分であることを実証した。しかしながら、より高い線量では、とても大きな幹細胞クロノゲン損失が、陰窩−絨毛系のほぼ完全な崩壊、粘膜露出及びGI症候群による動物の死を引き起こし得る。GI死を誘導するための閾値線量及び50%のGI致死率を与えるTBI線量(LD50)は、系統特異的であるように思われる。TBIに曝露したC57BL/6マウスの剖検研究は、14Gyに曝露したマウスの25%及び15Gyに曝露したマウスの100%が、6.8±0.99日でGI症候群のため死亡し、14と15Gyの間がGI死のLD50であると予測された。これに対して、報告されたLD50/6(6日目のLD50、GI死に対する代わりのマーカーとしての役割を果たす)は、BALB/cマウスについて8.8±0.72Gy、BDF1マウスについて11.7±0.22Gy、C3H/Heマウスについて12.5±0.1Gy、C3H/SPFマウスについて14.9Gy(95%の信頼限界で13.9−16.0Gy)、及びB6CF1マウスについて16.4±1.2Gyであり、GI症候群による死に対するマウスの感受性における、系統特異的スペクトルを示す。骨髄及び肺といった、放射線に対する他の臓器の感受性における系統変動もまた、報告されている。
【0021】
古典的に、電離放射線(IR)は、ゲノムDNAへの直接の損傷によりゲノムの不安定性を引き起こすことで細胞を殺し、その結果生殖細胞の死をもたらすと考えられた。Haimovitz-Friedmanらは、無核系において、アポトーシスシグナル伝達が、IRと細胞膜との相互作用により代わりに発生し得ることを実証した。我々による、本明細書に記載したこれらの研究の拡大は、セラミド介在性のラフトクラスタリングが、IR誘導アポトーシス及びクローン原性細胞の死に関与することを明らかにした。胃腸(GI)粘膜のクローン原性区画が、GI損傷誘導の際の照射のための特異的かつ直接的な標的であることは、長い間受け入れられてきた。
【0022】
我々の初期研究の一部において、我々は、Jurkat細胞においてナイスタチンによって誘導されたコレステロール枯渇と組み合わせて抗セラミドモノクローナル抗体によりセラミド中和を誘導することにより、いずれかの物質のみを用いて得られるよりも、UV−C(5−50J/m2)の紫外線照射及びin vitroでの抗Fas(1−50ng/ml CH−11)誘導アポトーシスに対するより強い保護が得られたことを示した。H. Grassme, H. Schwarz及び E. Gulbins, Biochem Biophys Res Commun 284 (4), 1016 (2001)(これは、参照によって本明細書内に組み込まれる)。これらの研究において、我々は、ナイスタチンとの併用での抗セラミド抗体とのJurkat細胞の予備培養が、50J/m2 UV−C又は50ng/ml 抗Fas刺激後1分でのラフトクラスタリングを阻害したことを示した。さらに、抗セラミドとナイスタチンとの併用処理によるラフトクラスタリングの阻害は、刺激後4時間でのUV−C(5−50J/m2)及び抗Fas(1−50ng/ml CH−11)誘導アポトーシスを弱め(図2d)、50J/m2 UV−C又は50ng 抗Fasでの刺激後7日で、細胞生存率をそれぞれ2.46及び2.42倍増強した。重要なことには、我々はまた、抗セラミド及びナイスタチン前処理が、5−50J/m2 UV−C又は抗Fas刺激後のビヒクル対照と比較して、クローン原性細胞の生存率における約1logの増加を生み出したことを観察した。単一ヒット多標的モデルによるこれらのクローン原性生存データのプロットは、抗セラミド及びナイスタチンでの前処理が用量応答曲線のD0を、1.6±0.7J/m2から3.6±1.1J/m2へ増加させたことを明らかにし、これは、10%の生存レベルでの2.32の線量修正値と共に、再現的な様式のUV誘導細胞死に対する有意な(p<0.05)保護を示す。総合すると、これらの結果は、Jurkat細胞の表面でのセラミド介在性のラフトクラスタリングがUV−Cにより誘導されるアポトーシスの膜透過型シグナル伝達に必須であること、及びそのような保護はクローン原性生存の改善により明らかなように、生物学的に意義があることを示した。
【0023】
単一線量照射後の陰窩幹細胞クロノゲンの死亡率と、腸微小血管系の内皮におけるASMase介在性アポトーシスの初期の波との間の条件的なつながりについての証拠がある。放射線は、原形質膜の外側の層におけるグリコスフィンゴ脂質及びコレステロールリッチなラフト内への分泌非リソソーム形態のASMaseの迅速な移動を誘導し(E. Gulbins 及びR. Kolesnick, Oncogene 22 (45) 7070 (2003)、そこでセラミドが迅速に産生され、膜透過型のアポトーシスシグナルの伝達が連係されている。内皮細胞は、体内の他の細胞と比較して、分泌型ASMaseに20倍富んでおり、この細胞型は、in vitro及びin vivoでの放射線誘導アポトーシスに特に感受性である。SV129/C57BL/6マウスにおけるASMaseの遺伝子不活性化、又は全身照射(TBI)前の内皮細胞生存因子bFGFでのC57BL/6マウスの静脈注射処理は、腸微小血管系の放射線誘導内皮アポトーシスを弱め、陰窩幹細胞クロノゲンを保存し、GI症候群による死亡からマウスを保護した(F. Paris, Z. Fuks, A. Kangら、 Science 293 (5528), 293 (2001))。陰窩上皮細胞ではなく腸内皮細胞が照射の前又は後にbFGFレセプター転写物を発現することから、血管機能障害は放射線誘導GI損傷にとって重要であるように思われる。
【0024】
ASMase欠損及びBax欠損は、放射線損傷及びGI症候群から保護する
【0025】
本項は、asmase−/−マウス及びBax−/−マウスの両方が全身照射(TBI)の4時間以内に起こる内皮アポトーシスに抵抗性であることを示す我々の実験を説明する。これは、陰窩クロノゲンにより被った亜致死病変の修復、陰窩−絨毛系の再生、及び致死性GI症候群の無効化を可能にする。GI症候群のよく特徴付けられたパラメータは、この系をセラミド標的医薬品の研究のための理想的なモデルにする。以下に、我々は、抗セラミド抗体がasmase−/−遺伝子型に類似したレベルまで微小血管アポトーシスを弱め、クローン原性陰窩幹細胞生存及びGI再生を促進することを示す。抗セラミドは、15Gy TBI及び同系BMTを受けたマウスの60%を保護し、微小血管保護には生物学的意義があることを実証した。
【0026】
先行研究は、C57BL/6マウス系統及びそのSV129/C57BL/6ハイブリッドのGI放射線応答における内皮幹細胞クロノゲンの関連を明らかにした。さらに、これらの研究は、SV129/C57BL/6ハイブリッド系統におけるGI放射線応答でのASMaseの役割を特徴付けた。F. Parisら、上記を参照。ASMaseの遺伝子不活性化が、放射線に対する腸応答において血管成分からC57BL/6を保護するかどうかを調べるために、放射線に対するSV129/C57BL/6マウスの腸応答を特徴付けるいくつかの特徴を、asmase+/+及びasmase−/−のC57BL/6マウスにおいて評価した。この系統でのasmase+/+及びasmase−/−遺伝子型における放射線に対する内皮応答のパターンの典型的な組織学的例を示す(図1)。SV129/C57BL/6マウスにおける公表された観察と一致して、野生型C57BL/6マウスは、15Gy TBIから4時間後に、大規模な内皮アポトーシスを示し(絨毛固有層における12のアポトーシス内皮核;図1第2パネル)、asmase−/−及びBax−/−検体においては、それぞれ3つのアポトーシス核に減少させた(図1、それぞれ第3及び第4パネル)。非照射の対照asmase+/+(図1、第1パネル)、asmase−/−又はBax−/−(非掲載)の固有層においては、たまにのみ(1−3)アポトーシス核が観察された。内皮細胞アポトーシスは、15Gyへの曝露から早ければ3時間で野生型粘膜において検出され、4時間で最大に到達した(非掲載)。図2Aは、漸増した線量のTBIへの曝露から4時間後のC57BL/6マウスの腸固有層におけるアポトーシス核の頻度ヒストグラムを表示している。最大の効果は15Gyでのasmase+/+粘膜において観察され、対照非照射マウスにおいて観察された3以下のアポトーシス核/絨毛(p<0.001;n=各データポイントのために計数した2動物由来の200の絨毛)と比較して、92%の絨毛が3より多くのアポトーシス核/絨毛を示し、52%が大規模なアポトーシス(10より多くのアポトーシス核/絨毛)を示した。ASMase欠損は、アポトーシス応答全体(3より多くのアポトーシス核/絨毛)を38%にまで、並びに大規模なアポトーシスの頻度を総絨毛の20%にまで有意に低減させた(それぞれ、野生型同腹子と比較してp<0.001;n=各データポイントのために計数した2動物由来の200の絨毛)。したがって、アポトーシス応答のピークの出現は、SV129/C57BL/6系統よりも1時間遅く起こったが、C57BL/6系統における、放射線誘導内皮細胞アポトーシスの速度及び線量依存性、並びにASMaseの必要性は、SV129/C57BL/6マウス系統1におけるものと定性的及び定量的に類似していた。
【0027】
SV129/C57BL/6マウスについて報告されたように(J. G. Maj, F. Paris, A. Haimovitz-Friedmanら、Cancer Res 63, 4338 (2003))、内皮アポトーシスは、TBI後の陰窩幹細胞クロノゲンの生存と密接に相関した。図2bは、15Gy TBIに曝露後3.5日でのC57BL/6マウスの近位空腸の典型的な横断面を示す。非照射の場合、この系統における陰窩/腸周囲の数は155±1.1だった。15Gyに曝露後、示したC57BL/6asmase+/+マウス由来の検体は、C57BL/6asmase−/−同腹子から得られた検体における27と比較して、生存再生陰窩を3つしか含まなかった。ASMase欠損は、10−15Gyの範囲内の各線量において、陰窩生存比率を有意に増加させた(p<0.05)。15Gy TBIに曝露後3.5日の野生型マウスは、機能的な近位空腸陰窩をほぼ完全に枯渇している(図2b、中段パネル)。暗紫染色された、再生、過色素性陰窩の発現の増加により明らかなように、ASMaseの遺伝子不活性化は、陰窩生存率を増強した(図2b、下段パネル)。10%の陰窩生存率の等効果を与えるために必要な線量(D10)は、野生型に対しては14.6±0.9Gy、ASMase欠損マウスに対しては16.8±1.8Gyであり(p<0.01)、asmase−/−遺伝子型については1.15±0.14の線量修正係数(DMF)を示した。この値は、bFGFによる照射C57BL/6陰窩幹細胞クロノゲンの保護について報告されたDMFとは大きくは異なっていなかった7。
【0028】
ASMase欠損により与えられた幹細胞クロノゲン保護もまた、15Gy TBI後のGI症候群によるC57BL/6マウスの死に対する保護に翻訳され、これは、ハイブリッドSV129/C57BL/6asmase−/−マウスについて報告されたもの1と類似した。p53欠損C57BL/6マウスが放射線損傷から保護されなかったのに対して(データ非掲載)、C57BL/6asmase+/+マウスはTBIから5−6(平均5.3±0.2)日後に死亡した(非掲載)。剖検は、骨髄への一部分の損傷のみ(正常な造血組織の島と混じった、出血の部位及び造血因子の枯渇の部位;それぞれ図2c中段左及び右パネル)を伴う、GI症候群に典型的な腸損傷(ほとんど全ての陰窩及び絨毛の大規模な露出)を明らかにした。胸腺及びリンパ組織、並びに直接の死因とは思われない種々の臓器における時折の微小腫瘍又は局所出血を除いて、他の臓器に損傷は見られなかった。これに対して、C57BL/6asmase−/−マウスは、7.75±0.12日で死亡した(C57BL/6asmase+/+マウスと比較した場合、p<0.001)。剖検は骨髄死の典型的な特徴を明らかにした(造血因子の完全な枯渇を伴う、大規模な出血及びマトリックスの大規模な壊死;図2c、右下パネル)。さらに、C57BL/6asmase+/+マウスにおける陰窩/絨毛ネットワークの完全な崩壊とは対照的に、C57BL/6asmase−/−同腹子の腸粘膜は、腸表面のほとんどを覆う増殖性、好色素性の陰窩を伴う大規模な再生活性を示した(図2c、左下パネル)。
【0029】
Bax欠損は、放射線損傷及びGI症候群からのasmase−/−保護を表現型模写する
【0030】
放射線により誘導され且つASMaseにより調節される、内皮細胞アポトーシス以外の事象が放射線損傷幹細胞クロノゲンの致死率に影響を与え得るという可能性を排除するためである。幼若マウスの卵母細胞における腫瘍内皮において野生型ASMaseを発現し、asmase−/−放射線表現型をミミックするアポトーシス耐性Bax欠損C57BL/6マウスを用いた実験を行った。Bax及びBakは、原型的なプロアポトーシスのBcl−2マルチドメインタンパク質である。二重欠損(Bax−/−及びBak−/−突然変異の劣性ホモ接合体)は、アポトーシス刺激に対する抵抗性を与えるために必要であると以前には考えられていた。Bak欠損マウスについてのデータは掲載していない。
【0031】
これらの実験で用いられた野生型C57BL/6Bax+/+系統は、検出可能なベースラインの内皮細胞アポトーシスを示さず、15Gy TBIへの曝露後に、4時間でピークとなる時間依存的な増加を被った(非掲載)。絨毛の85%が、15Gyの4時間後に、3より多い内皮アポトーシス核/絨毛を含み、38%が大規模な(10より多いアポトーシス核/絨毛)アポトーシス応答を示した(図3)。Bax欠損は、放射線誘導アポトーシス応答全体を45%まで(p<0.05)、並びに大規模なアポトーシスの頻度を絨毛の12%まで(p<0.001;n=各データポイントのために計数した2動物由来の200の絨毛)有意に低下させ、既に報告されたC57BL/6及びSV129/C57BL/6におけるasmase−/−放射線応答表現型を再現した。Bax欠損による内皮アポトーシスの減弱は、13、14及び15Gy TBIに曝露後の陰窩クロノゲンを保護した(図3b)。通説では生存陰窩幹細胞の指標である、13、14及び15Gy TBI後3.5日での野生型C57BL/6マウスにおける生存陰窩は、非照射の腸周囲における152±3から、それぞれ、20.5±1.3、10.8±0.6及び2.3±0.3に減少した(それぞれ13.4±0.9%、7.0±0.4%及び1.47±0.2%の生存率、n=ポイントあたりそれぞれ4動物由来の10−20の周囲)。Bax欠損は、野生型対照に比べて13、14及び15Gy TBI後の生存陰窩の数を、それぞれ42.3.7±2.0、27.6±1.6及び18.2±1.3に増加させた(それぞれ27.8±1.4%、18.2±1.1%及び12.0±0.9%の生存率、野生型C57BL/6に対してp<0.001、図3b)。13−15Gy後のC57BL/6Bax−/−マウスにおける生存陰窩の率は、12Gy単独で処理した野生型C57Bl/6マウスにおける粘膜の回復の支持及びGI死の予防に必要と報告された8.5±0.1%の生存陰窩62、71を上回った。これらのデータは、放射線曝露後の内皮アポトーシスと陰窩幹細胞クロノゲンの生存率との間の関連性という概念と一致する。J.A. Rotolo,ら、Int. J. Radiation Oncology Biol. Phys.., Vol. 70, No. 3, 804-815(2008)(これは、参照によって本明細書内に組み込まれる)。
【0032】
Bax欠損により提供された幹細胞クロノゲン保護は、SV129/C57BL/6マウスについて報告された1と同様、GI症候群によるマウス死に対する保護と関連があった。自家骨髄移植(BMT)は、13Gy TBIに曝露したC57Bl/6Bax+/+及びC57Bl/6Bax−/−マウスの100%をBM死から保護した(図3C)。これらのTBI線量に曝露されたがBMTを受けなかった対照動物は、完全に修復(12Gy)又はほぼ完全に修復した(13Gy)GI粘膜と共に、BM死に陥った(表1)。表1はBaxの遺伝子不活性化又は抗セラミド抗体によるセラミドの薬理学的拮抗作用が、致死性GI症候群を阻害することを示す。全身照射したBax+/+又はBax−/−遺伝子型C57BL/6マウス及び抗セラミド抗体又は無関連のIgM対照を投与されたC57BL/6マウスの剖検は、Bax及びセラミドシグナル伝達が、致死性GI症候群に必要であることを明らかにした。BM及びGI死亡率は、H&E染色した近位空腸及び大腿骨の5μm切片の組織学的試験により評価された。GI死は、絨毛及び陰窩の完全な露出により特徴付けられ、並びにBM死は、BM窩洞及び大量出血による造血因子の枯渇により特徴付けられた。*は、BM形成不全並びにBM死及びGI死の混合の促進を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
GI症候群による死への転換は、14Gy TBIでのC57Bl/6Bax+/+マウスにおいて生じ、BMT非処理マウスの90%が、7.7±0.8日でこの様式の死に陥った(図5c;表1)。したがって、野生型C57BL/6マウスコロニーに関するこれまでに報告されたデータと比較して、Bax−/−遺伝子型を包含するC57BL/6亜株は、約1GyのGI放射線感受性増加を示した(F. Paris, Z. Fuks, A. Kangら Science 293 (5528), 293 (2001))。Bax欠損は、14Gy TBI後のGI死から保護し(図5c、表1)、剖検は、腸粘膜の再生の進行及びBM死の典型的な変化を示す腸表面のほとんどを覆う増殖性、好色素性の陰窩を示した。これらの発見は、上で報告したC57Bl/6Bax−/−マウスにおける陰窩幹細胞クロノゲン生存率のレベルに一致し(図3b)、腸粘膜の再生の観察は、恐らくこれらのマウスの生存の延長に関係し(8.4±0.5日;表1)、これは粘膜回復の開始を可能にしたと推定される。自家BMTは、14Gy TBIに曝露したC57Bl/6Bax−/−マウスの60%を恒久的にレスキューしたが(図3c;p<0.05)、残りの動物は、移植に失敗したり、骨髄形成不全に陥った(表1)。線量を15Gy TBIに上げた場合、C57Bl/6Bax+/+マウスは、剖検が証明するところでは、混合GI及びBM死との混合により5.5±0.4日で死亡し(表1)、胃腸粘膜の回復の成功ために必要とされるような、十分な数の生存陰窩が利用可能であるように思われたにも関わらず(図3b)、Bax欠損は、当該動物をレスキューしなかった。後者の現象は、粘膜再生が明らかになる前に起こる、不確定の理由に起因した、BM形成不全及びBM死の進行の加速に由来すると思われる。この概念と一致して、15Gy TBIで処置したC57Bl/6Bax−/−マウスへの自家BMTは、マウスの生存を9.0±0.0日に延長し(図3c;p<0.05)、また、移植のレベルはBMマトリックス壊死及び造血因子の完全な欠失からマウスをレスキューするには十分でなかったが(表1及び非掲載)、腸粘膜は、活発に再生する陰窩の複数の領域を示した。これらのデータは、Bax欠損がASMase欠損によりもたらされたGI致死性に対する保護をミミックすることを示す。留意すべきは、Bax及びBak欠損は、陰窩位置4−5における、p53介在性の上皮アポトーシスに影響を与えなかったことである。さらに、Bax及びBakは、腸微小血管系において機能的に重複しない。さらなるサポートは、J.A. Rotoloら、Int. J. Radiation Oncology Biol. Phys..,Vol. 70, No. 3, 804-815(2008)(これは、参照によって本明細書内に組み込まれる)に見られ得る。
【0035】
本発明の特定の実施形態は、患者における標的タンパク質ASMase又はBak又はBaxの内因性発現を阻害するアンチセンスヌクレオチド又はsiRNAを投与することにより、該対象における放射線損傷又はGI症候群(及び以下で議論される他の列挙された疾患)を治療又は予防する方法を対象にする。他の実施形態は、疾患の1以上の症状を改善する量のイミプラミンを投与することにより、放射線疾患又はGI症候群を治療又は予防するための方法を対象にする。例えば、ASMaseを阻害するアンチセンス又はイミプラミンの治療量は、処理前のレベルと比較して、ヒト(又は哺乳類)対象由来の生物学的試料におけるASMaseの活性又は発現を低減する量としてルーチンの実験により決定され得る。
【0036】
各アンチセンスヌクレオチドは、アンチセンス核酸の少なくとも一部、典型的に8−50の連続したヌクレオチド)が、標的ASMase、Bax又はBakをコードする遺伝子又はmRNAと相補的であり、かつ特異的にハイブリダイズするものである。ASMaseのGenBank登録番号は、NP_000534であり、配列番号:1として本明細書内に組み込まれる。BaxのGenBank登録番号は、NP_004315.1であり、配列番号:2として本明細書内に組み込まれる。BakのGenBank登録番号は、NP_001179.1であり、配列番号:3として本明細書内に組み込まれる。以下に記載されるように、当業者は、ASMase、Bax又はBakの発現を低減させるために、標的遺伝子又はmRNAそれぞれの転写又は翻訳のいずれかを妨害するための様々なアンチセンスヌクレオチド及びsiRNAを設計することが出来る。列挙された疾患を治療又は予防するために、本発明において治療的に用いられるアンチセンス核酸としては、cDNA、アンチセンスDNA、アンチセンスRNA及び低分子干渉RNAが挙げられ、これらは、各遺伝子又はmRNAに対する特異的ハイブリダイゼーションが可能である標的タンパク質をコードする標的遺伝子又はmRNAに十分相補的であり、したがって処理前のレベルと比較して動物における標的タンパク質の発現を低減する。
【0037】
特定の実施形態において、ヒトASMase登録番号NM000543に関するcDNA配列である配列番号:2;又はヒトBax登録番号NM138761に関するcDNA配列である配列番号:4;又はヒトBak登録番号NM001188に関するcDNA配列である配列番号:5に特異的にハイブリダイズする、治療量の長さ8−50ヌクレオチドのアンチセンス核酸を投与することにより、列挙された疾患は治療又は予防される。別の実施形態において、アンチセンスは、各遺伝子、ASMase 配列番号:7、Bax 配列番号:8、又はBak 配列番号:9の転写を阻害する、各ゲノムDNAの様々な領域を対象にする。患者は、ASMase(タンパク質配列 配列番号:1)もしくはBax(タンパク質配列 配列番号:3);又はBak(タンパク質配列 配列番号:5)の発現を低減するために、同日又は異なる日に投与される、単一の製剤又は異なる製剤中のこれらのアンチセンス核酸の組み合わせにより治療され得るであろう。あるいは、治療は、1以上の標的タンパク質ASMase、Bax又はBakの発現を低減させるために適切なsiRNAを投与することにより達成され得るであろう。アンチセンス技術に関するさらなる詳細は、以下に説明する。
【0038】
本発明の目的のための、化合物の治療有効量は、所望の生物学的又は治療的効果を達成する量、即ち、治療又は予防されている列挙した疾患の1以上の症状を予防、減少又は改善する量である。アンチセンス又はsiRNAの有効治療量の決定のための開始点は、対象から採取された生物学的試料における標的タンパク質ASMase、又はBaxもしくはBakの発現を低減する量である。イミプラミンの治療量は、同様に決定され得る。
【0039】
抗セラミド抗体によるIR誘導疾患及びGI症候群の治療及び予防
【0040】
我々は、抗セラミド抗体によるセラミドの隔離がセラミド介在性ラフトクラスタリングを阻害し、それによってアポトーシスを弱め、並びにクローン原性生存率を改善することを示すJurkat T細胞におけるin vitroでの研究を行った(図4)。放射線誘導アポトーシスに対する抗セラミドのin vivoでの作用を決定するために、100μgの市販のマウス抗セラミド抗体MID 15B4又はアイソタイプ対照IgMを、C57BL/6マウスに15Gy TBIの30分前に静脈投与した。抗セラミド注入は、15Gyから4時間後の内皮アポトーシスを無効にし、大規模なアポトーシス(10より多いアポトーシス細胞/絨毛)の出現を、IgM処理対象における56.9%から13.7%に減少させ(図5B及びD)、ASMaseの遺伝子不活性化により与えられる保護を薬理学的に再現した(14.9%)。これらの発見は、内皮の抗セラミド介在性の保護が、GI幹細胞致死率に影響を与え、これによって動物の全体的な生存を増強することを示した。内皮アポトーシスの拮抗作用は、陰窩幹細胞クロノゲンの生存を増進し、これは、15Gy照射後3.5日の生存陰窩の出現の増加により実証される。抗セラミドは、asmase−/−表現型を薬理学的に再現して、内皮アポトーシスを弱めるため、我々は陰窩生存に対する影響を試験した。15Gy TBI前の抗セラミドでのC57BL/6マウスの前処理は、15Gy TBI前に無関連のIgMで処理した同腹子により示された9.3x10−3生存率に対して、1 logの保護を上回る1.3x10−1の陰窩生存率をもたらした(図5A)。無関連のIgM抗体は、非処理C57BL/6対照と比較して陰窩生存率に影響を与えなかった。抗セラミド抗体は、ASMaseの遺伝的阻害と同様のレベル(1.2x10−1)まで陰窩生存を増加させ、セラミドシグナル伝達の薬理学的阻害が、in vivoでの陰窩クロノゲン致死率に対してASMaseの遺伝子不活性化により与えられる保護をミミックすることを実証した。留意すべきは、Bax及びBak欠損は、陰窩位置4−5におけるp53介在性の上皮アポトーシスに影響を与えなかったことである。さらに、Bax及びBakは、腸微小血管系において機能的に重複しない。さらなるサポートは、J.A. Rotoloら、Int. J. Radiation Oncology Biol. Phys.., Vol. 70, No. 3, 804-815(2008)(これは、参照によって本明細書内に組み込まれる)において見いだされ得る。
【0041】
抗セラミド投与がasmase−/−表現型を再現し、15Gy後の動物生存率を増加させるかどうかを評価するために、C57BL/6マウスを50−100μg 抗セラミド抗体又は無関連のIgM対照で前処理し、15Gy TBIに供した。照射の16時間以内に、マウスに3x106自家骨髄細胞を静脈内投与した。これまでに公開されたデータと一致して、15Gyは、IgM処理したマウスのC57BL/6対照において7日までに100%致死であった。抗セラミド抗体は、照射後120日で60%の生存率をもたらす100μg 抗セラミド前処理で線量依存的に生存率を増加させた(図5C)。これらの知見は、15Gy後に自家BMTを投与されたasmase−/−マウスの生存率と密接に相関する(F. Paris, Z. Fuks, A. Kang ら、Science 293 (5528), 293 (2001))。剖検は、対照IgMを受けたマウスが、骨髄への部分的損傷のみを伴う、完全に露出した陰窩及び絨毛を含む、大規模な腸損傷で死亡したことを明らかにした(非掲載)。これらの発見は、GI症候群による死と一致する。反対に、抗セラミド前処理後に死亡したマウスの剖検は、大規模な出血及びほぼ完全な造血因子の枯渇を含む骨髄死の典型的特徴を明らかにした(非掲載)。これらのマウスは、腸表面のほとんどを覆う、増殖性、好色素性陰窩を含む、再生状態にある腸粘膜を示した。図5Dは、TUNELによって染色された15Gy照射後4時間に採取された小腸の顕微鏡写真を示す。アポトーシス細胞は、茶色に染色された核によって表される。データ(平均±標準誤差)は、2つの独立した実験由来の最も少なくて150の絨毛から得られた。これらのデータは、抗セラミド抗体が、in vivoでのセラミドシグナル伝達を効果的に中和し、asmase−/−表現型を薬理学的に再現し、並びに放射線誘導疾患及びGI症候群から保護することを実証している。
【0042】
アポトーシスにおける細胞外セラミドの役割に関するこの証拠に基づいて、本発明の特定の実施形態は、治療量の1以上の抗セラミド抗体又はそれらの生物学的活性断片を、好ましくはヒト化形態で投与することにより放射線誘導疾患及びGI症候群を治療又は予防する方法を対象にする。これらの抗体は、ポリクローナル又はモノクローナルであり得る。好ましい実施形態において、抗セラミド抗体は、モノクローナル2A2抗体又は以下に記載する生物学的活性断片で、好ましくはヒト化形態である。我々が発見した、2A2 IgMと呼ばれる新規の効果的なモノクローナル抗セラミド抗体を、以下に詳しく記載する。上に記載した先行研究は、スタチン(ナイスタチン)もまた、in vitroモデルにおけるアポトーシスの低減に有益な効果を有したことを示した。したがって、特定の他の実施形態は、GI症候群を治療又は予防するために単独又は組み合わせて投与される、治療量の抗セラミド抗体又はそれらの生物学的活性断片、及び1以上のスタチンを投与することを含む。併用療法のための本明細書内に記載される治療剤は、同日又は連日に投与され得る。
【0043】
スタチンは、血中のコレステロール及び特定の脂質の量を低下させる剤の群のいずれかを含む。スタチンは、コレステロール形成を助ける重要な酵素を阻害する。スタチンは2つの群に分けられる:発酵由来及び合成。スタチンとしては、アルファベット順に(商標名は色々な国によって異なる):
【表2】
【0044】
LDL低下有効性は、剤の間で変化する。セリバスタチンは最も効能があり、続いて(有効性が低下する順に)ロスバスタチン、アトルバスタチン、シムバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンである。
【0045】
2A2抗セラミドモノクローナルIgM抗体
【0046】
強力なin vivo活性を有する新規抗セラミド抗体を作成するために用いた戦略のフローチャートを図6に示す。抗体を作成するために、我々はまず予防接種された宿主から強い抗体応答を生み出すのに十分な免疫原性である抗原の開発を必要とした。スフィンゴイド塩基上にBSA結合C16脂肪酸を合成することにより、BSA結合セラミドを合成した。図7)挿入図。抗体スクリーニングのための抗原の検証は、ELISAアッセイにより行い、これはプレートに固定された抗原の量を減少させた。各ウェルをブロックした後、次いで、Axxora LLC、San Diego CAより市販の抗セラミドMID15B4抗体(1:100)続いて、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗マウスIgMと共にプレートをインキュベートした。HRP基質の投与後、ODを650nmで評価した。BSAセラミドELISAは、カポジ肉腫細胞での免疫後の上清#3673における結合活性の増大を明らかにした。図8。免疫したマウスから採取された血漿試料の1:100希尺でのELISAによる結合は、試料#3673対#3674によるセラミドのより強い結合を明らかにした。結合活性は、抗体産生B細胞(sn73−I−C6)の固定化後も保たれ、抗セラミド結合活性を伴うモノクローナル2A2 IgMの単離を可能にした(非掲載)。カルポジ(Karposi)免疫は、一群の抗体産生B細胞の形成をもたらす強い免疫応答を生み出すことを意図されていた。これらのB細胞から産生されたハイブリドーマ由来の抗体含有上清は、次いで、BSAセラミドELISAに対して検査された。アッセイにおいて陽性と試験された上清を単離し、これが最終的にクローン2A2の精製をもたらす。さらなる詳細は、実施例4に説明される。
【0047】
精製モノクローナル2A2抗体は、上清#3673から単離された。Elisaは、2A2マウスモノクローナルIgMがBSAセラミドに結合することを明らかにした。図9。Elisaは、対照IgMに対する2A2のより大きな結合能力を有意に示した。我々は、2A2抗体がin vivoで働くこと及び、我々が臨床用途のためにこれをヒト化できたことを示す。抗体及びその他をヒト化する方法は、実施例1に説明される。
【0048】
in vitroでの市販の抗体を用いた我々の初期の観察と一致して、精製2A2抗体は、in vitroでの放射線誘導アポトーシスを中和した。2A2モノクローナル抗セラミド抗体(25−100μg/mL)とのJurkat細胞の予備培養は、8Gy誘導アポトーシスを阻害した。図10;図4Bにおけるように定量化した。アポトーシス阻害の計算は、8Gy前の無処理Jurkat細胞の平均アポトーシスに対して行われた。C16セラミドでのマウスの免疫により産生された、他の抗セラミド抗体1H4、15D9及び5H9は、当該技術分野に公知の技術を用いてヒト化され得、並びに、GI症候群、及び同様にGvHD、自己免疫疾患及び以下で議論される炎症の治療又は予防について本発明の範囲内となる。
【0049】
次の一連の実験において、我々は、2A2がin vivoでの15Gy後の陰窩生存率を高めたことを示した。増加用量の2A2抗セラミド(0−750μg)でのC57BL/6マウスの前処理は、15Gy TBI後の重要な3.5日の時点での陰窩生存率を改善した。図11(A)。2A2抗セラミド抗体は、8−15Gy全身照射後の陰窩生存率を1.2の線量修飾係数(DMF)で増加させた。図11(B)。陰窩生存率を図5Cにあるように測定した。我々の動物実験において、我々はマウス35gあたり750μgの抗体を用いた。この標的タンパク質は抗体に接近しやすいため、活性化T細胞の表面上のセラミドの配置は、抗体療法を用いて列挙された疾患のいずれかを治療又は予防するために特に重要である。
【0050】
他の実験において、我々は、抗2A2抗体もまた、14−17Gy単一線量放射線に曝露したC57BL/6マウスの生存率を改善したことを発見した。図12。C57BL/6マウスは、IRの15分前に750μg 2A2の有り又は無しで、14−17Gy TBIで照射された。マウスは、IRの16時間以内に、3x106自家骨髄細胞を注入された。生存をモニターし、カプラン−マイヤーパラメータを介して表した。統計的有意性(p<0.05)は、各線量において達成された。
【0051】
曝露の範囲に渡って、我々は、2A2抗体がin vivoでの放射線誘導GI死を弱め、asmase−/−表現型を再現することを見出した。図13において行われた生存率研究で瀕死になった時に屠殺されたマウスの剖検結果。近位空腸検体が90%より多くの陰窩−絨毛ユニットの露出を見せ、並びに陰窩の再生がない場合にGI死と判定した。脱灰大腿骨部分が造血因子の枯渇及び大量出血を示す場合に骨髄(BM)死と判定した。
【0052】
これらの結果は、好ましくはヒト化形態での2A2抗体自身、又はその断片もしくは変異体を対象とした本発明の実施形態をサポートする。別の好ましい実施形態において、ヒト2A2抗体又はその断片は、放射線損傷又はGI症候群を治療又は予防するために治療有効量で投与される。抗体が本明細書内で用いられる場合、これはまた、以下に記載されるように抗体断片又は変異体を包含することを意味する。特定の他の実施形態は、抗セラミド抗体、好ましくはヒト化、さらに好ましくは2A2、並びに循環コレステロールレベルを減少させ、それによって抗セラミド抗体の効果を増加させる量のスタチンを含む組成物を対象とする。別の実施形態は、イミプラミン並びに、単独又は抗セラミド抗体及び/もしくはスタチンとの組み合わせのいずれかで、抗精神病薬剤として現在用いられるASMase阻害剤を投与することによる、放射線損傷又はGI症候群の治療又は予防を対象とする。別の実施形態は、2A2抗体及びイミプラミン、又はASMaseもしくはBakを標的とするアンチセンスもしくはsiRNAを含む組成物である。
【0053】
ルーチンの実験により、使用されるヒト化モノクローナル抗セラミド抗体の治療有効量が決定されるであろう。治療的に投与され得る抗セラミド抗体の量は、約1ugから100ug/mlに及ぶ。この量は、典型的に変動し、並びに典型的には対象において約1μg/mlと約10μg/mlとの間の血清治療剤のレベルを達成するために十分な量であり得る。本発明の文脈において、抗セラミド抗体は、セラミドがアポトーシスを阻害するのを防ぐ中和抗体の一種である。
【0054】
以下に記載するように、我々はまた、2A2抗体がGvHDを低減することによりBMT後の生存率を改善し、並びにGvHDと共に見られる典型的なサイトカインストームを低減させることを発見した。
【0055】
我々は、BSAセラミドで免疫されたマウスにおいて作られた他のモノクローナル抗体は、Jurkat細胞アポトーシス阻害アッセイにおいて検査された場合、線量依存的で有り、且つ2A2に匹敵する保護作用を示すこと免疫を発見した。3つの抗体のアイソタイプは確立されている。15D9 mAbは、IgM、κである。1H4及び5H9 mAbはmIgG3、κである。図25。
【0056】
本発明の特定の実施形態は、放射線誘導疾患又はGI症候群、及び同様に以下に示されるようにGvHD、他の自己免疫疾患及び炎症を治療するための治療的使用のための、好ましくはヒト化されたモノクローナル抗体15D9、1H4及び5H9並びにそれらの断片又は変異体を対象とする。他の実施形態は、これらのモノクローナル抗体、断片又は変異体を好ましくはヒト化形態で、並びに任意的にアロス(alos)イミプラミンもしくはスタチン又は両方を包含する医薬組成物を対象にする。
【0057】
我々の発見の一つは、実施例4に記載されるようなカルポシ(Karposi)肉腫細胞による宿主マウスの免疫が、例えば2A2抗体で示されるように、劇的な治療作用を伴う効果的な抗セラミドモノクローナル抗体を産生したことである。我々は、免疫のためにKS細胞を選択したが、それは、セラミドリッチであることを我々が示した活性化内皮をKS細胞が再現するからである。純粋なセラミド抗原だけでなく、活性化細胞で免疫したために、我々が作成したモノクローナルは、セラミド以外の他のタンパク質と交差反応し得る。本出願では、交差反応とは、モノクローナルがセラミド以外の他のタンパク質又はタンパク質複合体と反応し得ることを意味する。例えば、これらのモノクローナル抗体が反応する(即ち、親和性を有する)セラミド上のエピトープは、他の細胞表面タンパク質と共有され得る。あるいは、他のタンパク質は、抗原部位において類似の構造を有し得るか、あるいは、該エピトープは、セラミドを提示する複合体の一部であり得る。したがって、本発明の特定の他の実施形態は、セラミドと交差反応するモノクローナル抗体を広く対象にし、ここで該抗体は、全細胞での宿主の免疫によって得られる。断片を含むヒト化モノクローナルが、好ましい実施形態である。免疫グロブリンのサブタイプは任意のサブタイプであり得、IgG、IgMが好ましいが、IgA、IgE等もまた効果的であり得る。
【0058】
移植片対宿主病及び自己免疫疾患の治療及び予防
【0059】
以下に示す結果は、ASMase産生セラミドがGVHDに必要であることを初めて示し、したがって、特定の実施形態は、(例えばイミプラミン又はアンチセンス核酸での)ASMaseの阻害により、GVHDを治療又は予防するためあるいは、(例えば抗セラミド抗体で)この細胞表面セラミドを不活性化するための薬理学的方法を対象にする。
【0060】
自己免疫疾患は、自己抗原に対する持続的な適応免疫応答である。T細胞と、ほとんどの細胞型において発現される細胞表面分子である組織主要組織適合複合体(MHC)分子及び/又は副組織適合抗原(mHAG)との間の不適合性に起因してT細胞は自己抗原を異物として認識する。自己抗原に対する活性化T細胞は、直接的(細胞傷害性T細胞、CTL経由)又は間接的(自己反応性B細胞に対するT細胞の助けによる抗体産生経由)に組織損傷及び慢性炎症を与える。造血幹細胞移植の主な合併症である急性移植片対宿主病(GvHD)は、免疫除去された(immunoablated)宿主に注入されたアロ反応性ドナーT細胞の分化及び活性化に起因する特有の自己免疫様疾患である。急性GvHDにおいて、ドナーT細胞による宿主のアロ抗原の認識(メジャー又はマイナーミスマッチ)は、宿主組織に対する初期損傷及びI型サイトカイン(INF−γ及びIL−2)産生を含む適応免疫応答を開始させる。これが、CTLクローンの増殖及び活性化をもたらし、それが炎症性サイトカイン(TNF−α及びIL−1β)から成るマクロファージ依存性「サイトカインストーム」の発生と共に(D. A. Wall及び K. C. Sheehan, Transplantation 57 (2), 273 (1994); G. R. Hill, W. Krenger、及びJ. L. Ferrara, Cytokines Cell Mol Ther 3 (4), 257 (1997); J. L. Ferrara, Bone Marrow Transplant 21 Suppl 3, S13 (1998))、選ばれた一連の標的細胞におけるアポトーシスを誘導し(A. C. Gilliam, D. Whitaker-Menezes, R. Korngold ら、J Invest Dematol 107 (3), 377 (1996))、並びに関連する標的臓器(肝臓、腸及び皮膚)に結果として損傷を与えるD. A. Wall、上記を参照; G. F. Murphy, D. Whitaker, J. Sprentら、Am J Pathol 138 (4), 983 (1991))。急性GvHDの一般的な症状としては、深刻な体重減少、下痢、肝疾患、発疹及び黄疸が挙げられる。図14は、GvHDの免疫病理学の図解である。
【0061】
多くの種類の白血病及びリンパ腫の治療に用いられる、高用量化学療法及び高線量放射線は、さらに分裂している骨髄細胞幹細胞を迅速に殺し、免疫除去及びそれに必然的に伴われる造血因子の再構成をもたらす。骨髄移植(BMT)は、これらの患者における免疫再構成のための一般的且つ効果的治療法であり、並びに無形成性貧血及び重症複合免疫不全を含む免疫疾患の治療であり、骨髄移植(BMT)では、骨髄幹細胞の注入が、赤血球、T及び/又はB細胞の欠損を矯正し得る。GvHDはBMTに関連する主な合併症であり、血縁ドナーからのMHCが一致するBMTの30%、単一のMHCが不一致のBMTの50%及び2つのMHCが不一致のBMTの70%、並びに非血縁ドナーを用いる場合にはより高く起こる86。大規模な研究にも関わらず、よい治療法がない。急性GvHDは典型的にBMTの3ヶ月以内に発症し、その間、腸、皮膚及び肝臓を含む特定の臓器が細胞傷害性T細胞の標的となる。これまで、GvHDを制御するために利用できる臨床的意義のある戦略方法は、同種移植片からのT細胞枯渇又はドナーT細胞増殖及び活性化を制御することを目的とした非特異的免疫抑制に限られており、既に免疫不全である患者における感染又は腫瘍再発の可能性を増加させる試みに限られている。
【0062】
薬理学的及び遺伝的手段は、細胞レベルでのCTL誘導アポトーシス細胞死のいくつかの重要なメディエーターの同定を可能にした。急性GvHDの間の肝臓、腸及び皮膚アポトーシスは、パーフォリン/グランザイム介在性細胞溶解からの最少の寄与を伴う、Fas−Fasリガンド(FasL)(H. Kuwahara, Y. Tani, Y. Ogawaら、Clin Immunol 99 (3), 340 (2001); C. Schmaltz, 0. Alpdogan, K. J. Horndasch ら、Blood 97 (9), 2886 (2001); K. Hattori, T. Hirano, H. Miyajimaら、Blood 91 (11), 4051 (1998))及びTNF−TNFR経路を介したの宿主組織のCTLの攻撃を介して主に介在される。TNFスーパーファミリーレセプターシグナル伝達の阻害は、概して、マウス同種異系BMTのメジャー及びマイナーミスマッチモデルにおいて急性GvHD関連死亡率を弱め、それはドナーT細胞FasリガンドもしくはTNF−αの遺伝子不活性化、又はこれらの同種レセプターであるCD95/Fas及びTNFRの抗体介在性中和のいずれかによるものであった。これらの研究は、急性GvHDの発症におけるドナーCTL機能におけるデスレセプターシグナル伝達の不可欠な役割を確立し、TNFスーパーファミリーシグナル伝達の無差別阻害がGvH関連病変からの強い保護を提供する可能性があることを示唆した。
【0063】
多くの最近の研究は、自己免疫性の肝臓及びGI毒性における及びそのセカンドメッセンジャーであるセラミドの役割を同定している。ASMaseの遺伝子不活性化は、フィトヘマグルチン(phytohemagglutin) (PHA)誘導Fas依存性自己免疫性肝炎の自己免疫マウスモデルを無効にし、その際リンパ球におけるFasLの誘導がFasを発現する肝細胞の選択的殺傷及び抗CD4抗体によるHIVレセプターgp120の活性化をもたらし、CD4+T細胞の枯渇が、これらの細胞におけるFas及びFasLのアップレギュレーションによって起こる。さらに、証拠は、細胞膜の原形質外(exoplasmic)層におけるセラミド産生が、虚血再かん流傷害の過程(L. Llacuna, M. Mari, C. Garcia-Ruizら、Hepatology 44 (3), 561 (2006))並びに肝硬変93及び放射線誘導GI毒性につながるTNF誘導肝細胞アポトーシスの過程(これらの疾患単位について標準化された動物モデルを用いることが既に議論されている)において急激に起こることを示す。
【0064】
造血幹細胞移植の主な合併症である急性GvHDは、宿主組織に対するドナーの細胞溶解性T細胞の攻撃により介在される明確な自己免疫様疾患である。CTL介在性の組織損傷における標的細胞のASMase及びセラミドの寄与並びに急性GvHDの間の死亡率を評価するため、LP/J ドナー(H−2b)のC57BL/6レシピエント(H−2b)への副組織適合性(minor histocompatability)不適合同種異系BM移植モデルを選択した。asmase+/+又はasmase−/−バックグラウンドの致死性照射C57BL/6宿主は、5x106のT細胞枯渇した(TCD)LP/J BM細胞を受け、GvHDを同種移植片に対して3x106のLP/Jドナー脾臓T細胞を加えることにより誘導した。ドナーLP/J BM及びT細胞の移植は、カプラン−マイヤー生存率(図15A)、及び臨床的GvHDスコア(図15B)カーブによる決定で、asmase−/−レシピエントにおける作用を低減したが、全てのレシピエントにおいてGvHDの進行を誘導した。GvHD生存率は、BM及びT細胞のasmase+/+レシピエントにおける28.6%からasmase−/−レシピエントにおける84.6%まで増加し(p<0.005)、asmase−/−レシピエントでは90日を通じて一貫して低い臨床スコアを伴い(図15B及び非掲載)、asmase−/−レシピエントにおけるGvHDの減弱を示した。これらの結果は、マイナーMHC不一致の同種異系BMTモデルでの急性GvHD誘導死亡率におけるASMaseの役割を同定する。
【0065】
GvH誘導の死亡は、回腸、肝臓及び皮膚を含む臓器を選択する損傷に関与する。実施例2は、ASMaseがGvHD標的臓器損傷及びアポトーシスに必要であることを示す実験を記載する。実施例2における実験は、ASMase欠損が、概してGvHD関連臓器損傷を保護し、肝臓及び小腸においてそれぞれ、スコアを10.2±0.5及び7±0.1減少させることを示す(表1、それぞれasmase+/+同腹子に対して肝臓及び腸についてp<0.005)。ASMase欠損はまた、マイナー抗原不適合同種異系BMT後の皮膚角化細胞アポトーシスから宿主を保護した。さらに、GvHD関連臓器損傷は、目立った腸及び皮膚アポトーシスと関連することが示された。これらのデータは、GvHD関連標的臓器損傷及びアポトーシスの有意な減衰を明らかにしており、マイナー及びメジャー抗原差異の両方にわたって、野生型同腹子と比較してasmase−/−宿主におけるGvHDの疾病及び死亡に対する保護と密接に関連している。
【0066】
実施例3に記載した追加実験は、ASMase欠損が、一般にGvHD及び炎症に関連するサイトカインストームを弱め、それによって、炎症から宿主を保護することを示す。実験は、ASMase不活性化が、同種異系BM及びT細胞のレシピエントにおける急性GvHDでのTh1/Th2サイトカインプロファイル及びCD8+T細胞増殖を弱めることを示した。我々のデータは、asmase−/−宿主におけるin vivoでのCD8+CTL増殖の不全、及びGvHDを有するこれらのBMTレシピエントにおける血清炎症性サイトカインレベルの減弱に対する生物学的に関連する結果を示した。したがって、in vivoデータは、GvHに関連する疾病率、死亡及び標的臓器損傷におけるASMaseの役割を確認する。宿主のASMase欠損の影響は、T細胞殺傷の不活性化によってではなく、主に全身性因子(即ち、サイトカイン、循環するT細胞の数)の変換によって、GvHDの病態生理学に作用する。
【0067】
抗セラミド抗体の投与は、GvHDを予防する
【0068】
膜プラットフォーム内へのセラミド介在性ラフトクラスタリングが肝細胞の細胞溶解T細胞(CTL)誘導アポトーシスの必須成分であるかどうかを判定するために、我々は、ラフトクラスタリングを薬理学的に阻害し、in vitroにおける同種活性化(alloactivated)CTL誘導肝細胞アポトーシスにおける影響を試験した。ASMase欠損が、CTL誘導アポトーシスに対する抵抗性を直接標的細胞に与えるかどうかを調べるために、活性GvHD及びナイーブC57BL/6肝細胞を示すマウスから新たに単離された同種活性化脾臓CTLエフェクターを用いて2細胞ex vivoモデルにおいて、GvHD介在性の標的細胞融解を脱構築(deconstructed)した。本アッセイにおける標的細胞として肝細胞を選択したが、それは、肝細胞がGvHDの重要な標的であり、アポトーシスのためにスフィンゴミエリン経路を利用するためである。我々のアッセイ条件下では、0.5x106の肝細胞を、LP/J BM+T細胞→B6レシピエントから単離した0−2x106の同種活性脾臓T細胞と共培養した。共培養は、核の形態変化によって検出されたように、16時間で4.7±0.7%ベースラインから33.8±1.9%への肝細胞アポトーシスの増加を誘導した(図16A)。多くのin vivo研究からのデータと一致して、機能的Fasレセプターを欠くB6.MRL.lpr肝細胞は、この様式のCTL誘導アポトーシスに対して抵抗性であり(図16A、左パネル)、一方、100ng/ml CMAとの2時間のインキュベーションによる、顆粒エキソサイトーシス介在性細胞溶解経路の選択的阻害は、肝細胞アポトーシスに対する効果を有しなかった(図16A、右パネル)。これらの研究は、本モデルにおけるCTL介在性肝細胞アポトーシスが、パーフォリン/グランザイムシグナル伝達ではなくFasシグナル伝達を必要とすることを示す。先行研究は、Fasレベルはasmase−/−肝細胞において変わらないことを示したが、それにも関わらず、asmase−/−肝細胞は、ex vivoでのGvHDモデルにおいて同種異系エフェクターT細胞の0.1−2x106からの全用量で(図16B)、且つ4−48時間からの全ての時間で(データ非掲載)、アポトーシスに抵抗性であった。
【0069】
Fas介在性アポトーシスデスレセプターの活性化は、いくつかの細胞系では、セラミドリッチプラットフォームの生成を必要とする一方で、GvHDのex vivoモデルにおいて、CTL誘導プラットフォーム生成をasmase+/+及びasmase−/−肝細胞において評価した。同種活性化T細胞は、共培養後10分で標的肝細胞表面におけるセラミドリッチプラットフォームの迅速な生成を誘導した(図16C)。プラットフォームの生成は、1分以内で増加し、10分でピークを迎え、60分間を超えて持続した(図16D)。この系でのアポトーシスに必要とされるFasを、共焦点顕微鏡法による決定で、セラミドリッチプラットフォーム内に濃縮した。反対に、asmase−/−肝細胞は、セラミドリッチプラットフォームの形成(図16C、及び図16Dにおいて定量化されている)、並びにその中でのFasの濃縮に対して完全に抵抗性であり、肝細胞におけるCTL誘導プラットフォーム生成がASMase依存性であることを実証した。それに付随して、CTLは、asmase+/+肝細胞における1ピクセル当りの平均蛍光強度による決定で、セラミドシグナルの全体として1.5±0.1倍の全体としての増加を誘導した(刺激していない対照と比較してp<0.005)、これはasmase−/−肝細胞では起こらず、図16Cの下パネルに対する上パネルにおけるセラミド染色の強度の差異を説明する。
【0070】
肝細胞アポトーシスが特にセラミド依存性であり、ASMase欠損の結果でないことを実証するため、我々は、ex vivoでのGvHDアッセイにおいて、アポトーシス濃度未満の外因性C16セラミド(500nMまで)を、asmase−/−肝細胞に添加した。低用量の長鎖天然セラミドによる、ヒトasmase−/−リンパ球におけるプラットフォーム生成の回復に一致して、亜致死用量の外因性C16セラミド(200nM以下)は、CTL処理asmase−/−肝細胞において46.3±1.3%の細胞までプラットフォーム形成を回復させ、ASMase介在性セラミド生成はプラットフォーム形成を促進することを実証した。C16セラミドは、asmase−/−肝細胞に対するCTL誘導アポトーシスをほぼ完全に回復し(図16E)、標的細胞ASMaseの必要性を回避する。反対に、C16セラミドの生物学的不活性アナログであるC16ジヒドロセラミドは、CTL誘導プラットフォーム生成(非掲載)又は肝細胞アポトーシス(図16E)を回復しなかった。これらのデータは、ex vivoでのCTL誘導肝細胞アポトーシスが、効率的な細胞死誘導のために標的細胞のセラミド生成を必要とすることを明らかに実証し、これはasmase−/−マウスにおいて観察された急性GvHDからのin vivoでの保護と一致する。さらに、コレステロールキレート剤ナイスタチンを用いたスフィンゴミエリン濃縮の部位である細胞表面ラフトの薬理学的崩壊は、CTL誘導性のセラミドリッチプラットフォームの生成を無効化し(非掲載)、並びに2x106の同種活性化CTL誘導肝細胞アポトーシスを完全に阻害した(図16F)。外因性C16セラミドは、コレステロールキレート化を克服することができず(図16F)、セラミドリッチプラットフォームの形成は、シグナル伝達のためにアポトーシス機構が予め集合するための場所として働き得る、機能的ラフトを必要とすることを示唆した。
【0071】
T細胞誘導溶解における標的細胞ASMaseの遺伝的役割を示すために、我々はT細胞機能についての2つの標準化されたアッセイを用いた;MLR感作CTL誘導脾細胞溶解(図17)及びin vitroでのT細胞の活性化誘導細胞死(AICD)(図18)。標的細胞のASMaseの役割を、in vitroでの活性化MLRにおいて評価し、ここで、asmase+/+又をasmase−/−遺伝子型のC57BL/6脾細胞標的細胞をマイトジェンで48時間刺激し、洗浄し、クロム標識した。次いで、これらの細胞を、照射C57BL/6脾細胞との培養により5日間活性化させた、エフェクターBalb/c脾細胞と共培養した。クロム放出を定量化し、%融解を算出した。asmase−/−標的細胞を溶解するためのin vitro活性化脾細胞の能力を試験するために、Balb/cエフェクターT細胞を5x106照射(2Gy)C57BL/6脾細胞と共に5日間培養することより活性化した。標的asmase+/+又はasmase−/−のC57BL/6脾細胞を48時間、10mg/ml conAで刺激することにより調製し、51Crで標識してCTL介在性クロム放出を評価した。洗浄した脾細胞を増加する比率の活性化エフェクターBalb/cT細胞と共培養し、51Cr放出をその6時間後に定量化した。図19A。
【0072】
T細胞誘導溶解におけるプラットフォーム生成における標的細胞ASMaseの果たす潜在的遺伝的役割を評価するために、我々は、T細胞介在性の細胞溶解についての、2つの標準化されたアッセイ、MLR感作CTL誘導脾細胞溶解、及びT細胞のin vitroでのAICDを試験した。in vitroでの活性化脾細胞溶解アッセイのために、5x106の照射(2Gy)したC57BL/6脾細胞との5日間の培養により、BALB/cエフェクターT細胞を刺激し、その後、48時間の10□g/ml conAでの刺激により調製したasmase+/+又はasmase−/−標的C57BL/6脾細胞と共培養した。検出のためにミトトラッカーレッドで標識したasmase+/+標的脾細胞とのエフェクターT細胞の共培養は、標的細胞上でのセラミドリッチプラットフォームの迅速な生成をもたらした。共培養の5分以内で、標的asmase+/+脾細胞上のプラットフォームの出現は、4.7±2.1から25.8±6.6%に増加した(p<0.01;図19A)。Fasは、これらのセラミドリッチプラットフォーム内に共局在した(データ非掲載)。プラットフォーム生成は、asmase−/−脾細胞にはなく、刺激後10分での集団のわずか5.9±3.5%で見られた。さらに、MLR感作CTLは、50:1のエフェクター:標的の割合において43.2±6.5%のasmase+/+脾細胞溶解を誘導し(図19B)、51Cr放出アッセイによる定量で、asmase−/−標的細胞における溶解を7.3±2.5%まで弱めた。亜致死の外因性の500nM C16セラミドは、プラットフォーム生成及びasmase−/−標的脾細胞のCTL誘導溶解の両方を回復したが、一方で、C16ジヒドロセラミドは、両方の事象において作用しなかった(非掲載及び図19C)。これらのデータは、conAブラストのin vitro 感作CTL溶解が、ASMaseに依存して標的細胞のプラットフォーム生成を活性化すること、並びにプラットフォームがこれらのモデルにおける標的細胞の効率的な溶解に必要であることを示す。
【0073】
AICDにおける標的細胞のASMaseの役割を明らかにするために、asmase+/+、asmase−/−又はMRL.lpr(FasR−/−)T細胞を10μg/ml ConAで24時間刺激し、洗浄し、20U/ml rIL−2含有培地中に24時間静置し、そして最終的に、20U/ml rIL−2及び増加する濃度のプレート結合抗CD3 mAbを含有する培地中で再刺激することにより、AICDを開始させた。抗CD3 mAbによるAICD誘導は、刺激後4時間でセラミドリッチプラットフォーム生成を与え(図19D)、asmase−/−T細胞の集団の5.1±1.0%と比較して、asmase+/+T細胞の26.4±1.6%において明らかであった(p<0.005)。共焦点解析は、asmase+/+T細胞におけるセラミドリッチプラットフォーム内のスフィンゴ脂質GM1(図19E)及びFasの共局在化を明らかにした。
【0074】
AICDに対するプラットフォーム生成の影響を特徴付けるために、asmase+/+及びasmase−/−T細胞を、AICDを被るように誘導し、その16時間後アポトーシスを定量化した。asmase+/+T細胞におけるアポトーシスは抗CD3 mAb用量依存的であり、誘導の16時間後にアポトーシスは32.9±5.2%に達した(図19F)。反対に、アポトーシスはMRL.lpr(FasR−/−)T細胞では無効化され(図19F)、この系におけるFas/FasL相互作用についての必要性が確認された。asmase−/−T細胞は、asmase+/+T細胞と同様に良く抗CD3 mAbにより増殖するように誘導され、腫瘍細胞の溶解においてasmase+/+T細胞と同様に効果的であったが、asmase−/−T細胞は、in vitroにおいてAICD誘導アポトーシスに対するほぼ完全な抵抗性を示した。asmase−/−脾細胞は、最大10ng/ml 抗CD3に対する応答において、バックグラウンド(8.8%)を上回る検出可能なアポトーシスを被らなかった(10ng/ml 抗CD3においてasmase+/+に対してp<0.05;図19F)。これは、Fas及びFasLの通常のアップレギュレーションに関わらず起こった(非掲載)。C16ジヒドロセラミド(C16-dihydoceramide)はそうではなかったが、天然の長鎖C16セラミドは、プラットフォーム生成(非掲載)及びAICDを被るように刺激されたasmase−/−T細胞のアポトーシスを完全に回復した(図19G)。これらのデータは、標的細胞のASMase介在性のセラミドリッチプラットフォームの形成が、抗原不一致及び競合的(fratricidic)な両方の設定におけるT細胞誘導アポトーシスに必要であるという説得力のある証拠を提供する。
【0075】
抗セラミド抗体でのGvHDの治療及び予防
【0076】
次に、我々は、同種異系骨髄及びT細胞移植後の生存率に対する2A2抗セラミド抗体IgMでの治療の効果に注目した(図20)。図15に記載のC57BL/6レシピエント(H−2b)モデルへの同一のLP/Jドナー(H−2b)を用いて、我々は、2A2抗体治療がin vivoにおける急性移植片対宿主病の客観的兆候を有意に低減させ、asmase−/−表現型を部分的に再現することを実証する。C57BL/6asmase+/+又はC57BL/6asmase−/−を、分割線量の1100cGy TBIで致死的に照射した。2A2抗体を受けたC57BL/6asmase+/+群は、分割線量TBIの前半の15分前に750μgの抗体を受けた。その後、全てのマウスに、脾臓T細胞(3x106)と共にマイナー抗原不適合であるLP TCD−BM細胞(5x106)を静脈内注射した。生存率を毎日モニタリングし、結果をカプラン−マイヤー生存率解析により表した。2A2の投与は、移植後100日の動物生存率を12.5%から60%に増加させた(図20)。
【0077】
GvHDのサイトカインストーム発生においてASMaseが果たす役割を鑑みて、次に、我々は、この有害反応を弱めるための2A2抗体の能力を研究した。上に記載したように解析された群に由来する、BMT後7日目の野生型、asmase−/−及び2A2処理動物から血清を採取した(図21)。血清インターフェロンγを、製造者のプロトコル(R&D Systems)にしたがって、ELISAにより定量化した。我々の結果は、2A2 mAbで処理したWTマウスが、ASMase欠損マウスと同様に、約25%の血清インターフェロンγの減少を伴う応答をしたことを示す。
【0078】
これらの結果は、GvHD及び炎症性サイトカインの増加に関連する他のT細胞介在性の自己免疫疾患が、治療量の抗セラミド抗体、好ましくは2A2抗セラミドモノクローナルIgM又は本明細書内に記載するようなそれらの生物学的活性断片を投与することにより治療され得ることを示す。我々のin vivoでの結果は、ナイスタチンもまたex vivoでのT細胞の細胞溶解を減少させ、GvHD及び自己免疫疾患が1以上のスタチンを、好ましくは2A2といったヒト化抗セラミド抗体と共に投与することにより治療又は予防されるという特定の実施形態を支持することを示した。他の実施形態は、1以上のスタチン及び1以上の抗セラミド抗体の新しい組成物を対象にする。GI症候群の治療に関して、ルーチンの実験により、使用すべきヒト化モノクローナル抗セラミド抗体の有効量が決定されるであろう。治療的に投与され得る抗セラミド抗体の量は、約1ugから100ug/mlに及ぶ。この量は、典型的に変動し、並びに対象において典型的には約1μg/mlと約10μg/mlの間の血清治療剤レベルを達成するために十分な量であり得る。
【0079】
本研究は、電離放射線後のGIの微小血管アポトーシス及び免疫標的上のCTLによる溶解攻撃の両方において重要な段階としての標的細胞の原形質膜の原形質外層におけるセラミドリッチ膜プラットフォームの形成を明らかにする。刺激の数秒以内で形成されるこれらの構造は、かなり大きくしばしば直径3ミクロンに達するため、共焦点又は標準顕微鏡によって容易に検出される。我々は、例えばASMase又はBaxの阻害及び抗セラミド抗体の投与による、プラットフォームの遺伝子的又は薬理的破壊が、in vivo及びin vitroでの放射線誘導細胞死並びにCTL誘導細胞死の3つの異なる細胞モデルにおけるCTL介在性の死を妨げることを示した。モノクローナル抗セラミド抗体での治療は、胃腸の放射線毒性における病態生理学的応答の複数の側面を劇的に低減させ、並びにGvHDのメジャー及びマイナーミスマッチモデルを標準化した。
【0080】
要約
【0081】
本研究は、微小血管内皮アポトーシスと幹細胞クロノゲン致死率との間のつながりは、マウスの腸に対する放射線損傷の誘導に関する一般的な機序であるとする新しい証拠を提供する。Bax欠損マウスは、照射された陰窩幹細胞クロノゲンの運命に影響を与えるのは、ASMaseシグナル伝達により制御された他の事象よりはむしろ、内皮アポトーシス応答である証拠を提供する。ASMaseを阻害し得る薬理学的利用可能性(イミプラミン、アンチセンス核酸又はsiRNA)は、高線量腹部照射を必要とする患者において、腫瘍細胞殺傷に影響を与えず、GI毒性を選択的に中和する可能性を伴う、価値ある治療法である。別の価値ある治療法は、突発的放射線曝露又は大規模な放射線事故に対する応答の初期の、ラフトクラスタリング及びGIアポトーシスを中和するための抗セラミド抗体のようなセラミド標的薬物療法の利用である。現在治療の選択肢がない、放射線曝露後の致死性GI毒性は、世界情勢の現在の状態に代わって、国立衛生研究所の主要な関心事である。
【0082】
我々がここに示した結果が示すように、セラミドリッチプラットフォームは、in vivoでのT細胞介在性自己免疫症候群に必要である。ASMaseは急性T細胞介在性の自己攻撃的肝疾患のモデルである、フィトヘマグリチン(phytohemagglutin)(PHA)誘導肝炎における肝細胞アポトーシスを制御することが示されている(S. Kirschnek, F. Paris, M. Wellerら、J Biol Chem 275(35), 27316 (2000))。PHAは、リンパ球でのFasL誘導を刺激し、肝臓へのそれらの移動の際に、肝細胞はアポトーシスにより殺され、肝炎を促す(K. Seino, N. Kayagaki, K. Takedaら、Gastroenterology 113(4), 1315(1997))。リンパ球FasLの正常アップレギュレーションにもかかわらず、ASMase欠損は、アポトーシスから肝細胞を保護した。CD4活性化T細胞誘導細胞溶解におけるASMaseの役割が報告されている(Z. Q. Wang, A. Dudhane, T. Orlikowskyら、Eur J Immunol 24(7), 1549(1994))。HIVレセプター分子gp120又はアゴニストの抗CD4抗体によるCD4活性化は、Fas/FasL系を活性化し、アポトーシスを開始させる一方、ASMaseにおけるCD4+T細胞欠損は、抗CD4抗体のin vivoでの接種においてアポトーシスを遂げることができなかった(S. Kirschnek, F. Paris, M. Wellerら、J Biol Chem 275(35), 27316(2000))。我々はここに、ASMase産生セラミドがサイトカイン介在性T細胞誘導アポトーシス、及びGI症候群の病理学の根底にある内皮微小血管のアポトーシスの阻止において普遍的に必要であることを示してきた)。我々はまた、抗セラミド抗体でのASMase産生セラミドの阻害は、血清炎症性サイトカインの発現を減少させることも示した。したがって、Fas/FasL及びTNF/TNFR相互関作用を含むTNFスーパーファミリーレセプターシグナル伝達を介して働く任意の疾患は、ASMase産生セラミドに結合する治療量の抗体を投与することにより、又はASMaseもしくはBaxの阻害により治療又は予防され得る。
【0083】
本明細書内に記載される実験は、宿主ASMaseの活性化及びセラミドリッチプラットフォームの形成が急性GvHDを起こさせることにおける重要な事象であることを初めて示す。我々は、不適合自己活性CTLがasmase−/−マウスへの骨髄移植片に加えられた場合の、GvHDを進めるために必要なステップである、I型サイトカイン産生及びCTLクローン性増殖における著しい減少により、これを示した。異なる病因にも関わらず、GI症候群と同様、GvHDは、抗セラミド抗体による治療及びASMase又はBax発現の阻害に対して応答した。
【0084】
セラミドリッチプラットフォームの不活性化の利点は、TNF、IL−1及びTRAILを含むがこれに限定されない他の炎症性サイトカインは同様に、膜貫通型シグナル伝達のためにASMaseを用いるので、Fas介在性の生物学的作用に限定されない。したがって、ASMase産生セラミドリッチプラットフォームは、GvHD及び病態生理を引き起すために複数のサイトカインを利用する他の免疫疾患のための無差別の標的を示す。
【0085】
抗体
【0086】
「抗体」は、インタクトな免疫グロブリン又は特異的結合のためにインタクトな抗体と競合するその抗原結合部分を言う。抗原結合部分は、組換えDNA技術又はインタクトな抗体の酵素的もしくは化学的切断により産生されてもよい。抗原結合部分としては、とりわけ、Fab、Fab’、F(ab)sub.2、Fv、dAb及び相補性決定領域(CDR)断片、単鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、二重特異性抗体並びにポリペプチドへの特異的抗原結合を与えるのに十分である免疫グロブリンの少なくとも一部分を含むポリペプチドが挙げられる。
【0087】
「免疫グロブリン」は、四量体分子である。天然に生じる免疫グロブリンにおいて、各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一の対からなり、各対は1つの「軽」鎖(約25kDa)及び1つの「重」鎖(約50−70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、抗原認識に主に関与する約100から110又はそれより多くのアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能に主に関与する定常領域を規定する。ヒト軽鎖は、κ及びλ軽鎖に分類されている。重鎖は、μ、δ、γ、α又はεに分類され、それぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA及びIgEとしての抗体のアイソタイプを規定する。軽鎖及び重鎖のうち、可変及び定常領域は、約12以上のアミノ酸の「J」領域により結合され、重鎖はまた、約10以上(10 more)のアミノ酸の「D」領域を含む。一般には、Fundamental Immunology Ch. 7(Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y. (1989))(全ての目的のために参照によってその全体が組み込まれる)を参照されたい。各軽/重鎖対の可変領域は、インタクトな免疫グロブリンが2つの結合部位を有するように抗体結合部位を形成する。免疫グロブリン鎖は、相補的決定領域又はCDRとも呼ばれる、3つの超可変領域によって結合された比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同一の一般的構造を示す。各対の2つの鎖由来のCDRは、フレームワーク領域により整列し、特異的エピトープへの結合を可能にする。N末端からC末端へ、軽鎖及び重鎖の両方は、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interestの定義(国立衛生研究所、Bethesda, Md. (1987及び1991))又はChothia & Lesk J. Mol. Biol. 196:901 917 (1987); Chothia ら、Nature 342:878 883 (1989)に従う。
【0088】
Fab断片は、VL、VH、CL及びCHIドメインからなる一価の断片である;F(ab’).sub.2断片は、ヒンジ領域のジスルフィド結合により結合された2つのFab断片を含む二価の断片である;Fd断片は、VH及びCH1ドメインからなる;Fv断片は、抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなる;並びにdAb断片(Wardら、Nature 341:544 546, 1989)は、VHドメインからなる。単鎖抗体(scFv)は、VL及びVH領域が対になって、これらを単一タンパク質鎖とすることを可能にする合成リンカーを介して、一価分子を形成する抗体である(Birdら、Science 242:423 426, 1988 及びHuston ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 855879 5883, 1988)。二重特異性抗体は二価の二重特異性の抗体であり、VH及びVLドメインが単一ポリペプチド鎖上に発現されるが、同一鎖上の2つのドメインの間でペアになるのを可能にするには短かすぎるリンカーを用いることにより、当該ドメインが別の鎖の相補的ドメインと対にならざるを得ず、2つの抗原結合部位を作る(例えばHolliger, P., ら、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444 6448, 1993,及びPoljak, R. J.ら、Structure 2: 1121 1123, 1994を参照)。1以上のCDRが、共有又は非共有結合的のいずれかで分子内に組み込まれてそれをイムノアドヘシンとしてもよい。イムノアドヘシンは、大きなポリペプチド鎖の一部としてCDRを組み込んでもよく、CDRを別のポリペプチド鎖に共有結合的に結合してもよく、もしくは、CDRを非共有結合的に組み込んでもよい。CDRは、イムノアドヘシンが、目的の特定の抗原に特異的に結合するのを可能にする。
【0089】
抗体は、1以上の結合部位を有し得る。1より多くの結合部位がある場合、結合部位は、互いに同一でもよく、又は異なっていてもよい。例えば、天然に生じる免疫グロブリンは、2つの同一の結合部位を有し、単鎖抗体又はFab断片は1つの結合部位を有する一方、「二重特異的」又は「二機能性」抗体は、2つの異なる結合部位を有する。
【0090】
「単離された抗体」は、(1)自然の状態においてそれに付随する、他の天然に伴われる抗体を含む天然に伴われる成分を伴っていない、(2)同種由来の他のタンパク質を含まない、(3)異種由来の細胞により発現される、又は(4)天然には生じない、抗体である。
【0091】
用語「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリン配列由来の1以上の可変及び定常領域を有する全ての抗体を含む。好ましい実施形態において、全ての可変及び定常ドメインは、ヒト免疫グロブリン配列由来(完全ヒト抗体)である。これらの抗体は、以下に記載するように、様々な方法において調製され得る。
【0092】
ヒト化抗体は、非ヒト種由来の抗体であり、重鎖及び軽鎖のフレームワークドメイン及び定常ドメインの特定のアミノ酸が、ヒトにおける免疫応答を妨げるか又は無効にするように変異されたものである。あるいは、ヒト化抗体は、ヒト抗体由来の定常ドメインを非ヒト種の可変ドメインに融合させることにより作成され得る。ヒト化抗体の作成方法の例は、参照によって本明細書内に組み込まれる、米国特許第6,054,297号、第5,886,152号及び第5,877,293号に見られ得る。
【0093】
用語「キメラ抗体」は、1つの抗体由来の1以上の領域及び1以上の他の抗体由来の1以上の領域を含む抗体を言う。
【0094】
抗体の断片又はアナログは、本明細書の教示に従って当業者によって容易に作製され得る。断片又はアナログの好ましいアミノ及びカルボキシ末端は、機能的ドメインの境界付近に生じる。構造的及び機能的ドメインは、ヌクレオチド及び/又はアミノ酸配列データと公的又は私的な配列データベースとの比較によって同定され得る。好ましくは、コンピュータでの比較方法が、公知の構造及び/又は機能の他のタンパク質で生じる配列モチーフ又は予測されるタンパク質構造ドメインの同定に用いられる。公知の3次元構造に折りたたまれたタンパク質配列を同定するための方法は、公知である。Bowie ら、Science 253:164 (1991)。
【0095】
低分子干渉RNA
【0096】
低分子干渉RNAもまた、それぞれの発現を低減又は阻害し、それによりアポトーシスを阻害するために、その少なくとも一部がASMase又はBaxをコードするmRNAに相補的且つ特異的にハイブリダイズするsiRNAを投与することにより、対象におけるGvHD、GI症候群、炎症及び自己免疫疾患を含む放射線誘導疾患を治療又は予防するため治療的に用いられ得る。
【0097】
米国特許出願第20040023390(参照によって本明細書内に組み込まれる)は、RNA干渉(RNAi)として公知のプロセスによって、二本鎖RNA(dsRNA)が、多くの生物体において配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングを誘導し得ることを教示する。しかしながら、哺乳類細胞において、30塩基対又はそれより長いdsRNAは、タンパク質合成の終了及びアポトーシスを介する細胞死すらも引き起こす、配列非特異的応答を誘導し得る。最近の研究は、RNA断片がRNAiの配列特異的メディエーターであることを示す(Elbashirら、2001)。これらの低分子干渉RNA(siRNA)による遺伝子発現の干渉が、線虫(C. elegans)、ショウジョウバエ、植物において及びマウス胚幹細胞、卵母細胞及び初期胚において遺伝子をサイレンシングするための天然に起こる戦略方法として現在認識されている(Cogoniら、1994; Baulcombe, 1996; Kennerdell, 1998; Timmons, 1998; Waterhouseら、1998; Wianny 及びZernicka-Goetz, 2000; Yangら、2001; Svobodaら、2000)。
【0098】
哺乳類細胞培養において、siRNA介在性遺伝子発現の減少が、合成RNA核酸を伴う細胞をトランスフェクトすることにより達成されている(Caplanら、2001; Elbashirら、2001)。本明細書に完全に説明されたように、参照によってその内容全てが本明細書内に組み込まれる、出願第20040023390号は、対象の遺伝子を標的にした低分子干渉RNA分子(siRNA)をコードする核酸配列に作動可能に連結されたpol IIプロモーターを包含する発現カセットを含有するウイルスベクターを用いる方法を提供する。
【0099】
本明細書内で用いられる場合RNAiは、RNA干渉のプロセスである。典型的なmRNAは、約5000コピーのタンパク質を産生する。RNAiは、mRNAにより作成されたタンパク質コピーの数に干渉するか又は有意に減少させるプロセスである。例えば、二本鎖の短い干渉RNA(siRNA)分子は、干渉されるべき標的mRNAのタンパク質コードヌクレオチド配列と相補的且つ適合するように作製されている。細胞内輸送後、siRNA分子はRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に随伴される。siRNA随伴RISCは、標的mRNA(ASMase又はBaxをコードするmRNA等)と塩基対合相互作用を介して結合し、これを分解する。RISCは、標的とされたmRNAの更なるコピーを依然として分解することができる。短いヘアピンRNA及びより長いRNA分子などのRNAの他の形態が用いられ得る。より長い分子は、例えばアポトーシスを引き起こして、インターフェロン応答を誘導することにより、細胞死を引き起こす。30ヌクレオチドより長いdsRNAはRNA転写物の非特異的分解及び宿主細胞の全体的な停止をもたらす防御機序を活性化するため、細胞死は哺乳類においてRNAiを達成するための大きな障害であった。哺乳類細胞における遺伝子特異的抑制を介在するために約20から約29ヌクレオチドのsiRNAを利用することで、この障害を克服されたようである。これらのsiRNAは、遺伝子抑制を引き起こすのに十分な長さであるが、インターフェロン応答を誘導する長さではない。
【0100】
本発明は、特定の実施形態への言及と共に先行する詳述において記載されている。しかしながら、本発明のより広範な精神及び範囲を逸脱することなく、様々な改変及び変更が、実施形態に対して行われ得ることは明らかであろう。本明細書及び図面は、限定的意味ではなく寧ろ例示的意味において見なされるべきである。
【0101】
アンチセンス核酸
【0102】
本明細書内で用いられる場合、用語「核酸」は、RNA及びcDNA、ゲノムDNA及び合成(例、化学合成)DNAを含むDNAの両方をいう。核酸は、二本鎖又は一本鎖(即ち、センス又はアンチセンス一本鎖)であり得る。本明細書内で用いられる場合、「単離された核酸」は、哺乳類ゲノムにおける核酸の片側又は両側に通常隣接する核酸(例、ARPKD遺伝子に隣接する核酸)を含む、哺乳類ゲノム中に存在する別の核酸分子から分離された核酸をいう。天然に生じない配列は、天然には見出されず且つ天然に生じるゲノムにおいて直に接する配列を有さないため、核酸について本明細書内で用いられる用語「単離された」はまた、任意の天然に生じない核酸配列を含む。
【0103】
単離された核酸は、天然に生じるゲノムにおいてそのDNA分子に直に接して通常見出される核酸配列の一つが除去されているか又は存在しないのであれば、例えばDNA分子であり得る。したがって、単離された核酸としては、限定されないが、他の配列から独立した分離分子として存在するDNA分子(例、化学的に合成された核酸又はPCRもしくは制限エンドヌクレアーゼ処理により生成されたcDNAもしくはゲノムDNA断片)並びにベクター、自己複製プラスミド、ウイルス(例、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルスもしくはヘルペスウイルス)又は原核細胞もしくは真核細胞のゲノムDNA内に組み込まれているDNAが挙げられる。さらに単離された核酸は、ハイブリッド又は融合核酸の一部であるDNA分子等の改変核酸を含み得る。例えば、cDNAライブラリ又はゲノムDNA制限消化を包含するゲル薄片内の何百から何百万の他の核酸の中に存在する核酸は、単離された核酸と考えられない。
【0104】
本発明の他の実施形態は、ASMaseもしくはBaxもしくはBak又はそれらの生物学的活性断片もしくは変異体の発現を阻害するための、アンチセンス核酸(DNAもしくはRNAのいずれか)又は低分子干渉RNAの使用を対象にする。アンチセンス核酸は、アンチセンスRNA、アンチセンスDNA又は低分子干渉RNAであり得る。ASMaseもしくはBaxもしくはBakの公知の配列に基づいて、発現を止めるために各々の遺伝子もしくはmRNAに十分にハイブリダイズするアンチセンスのDNAもしくはRNAは、当該技術分野において公知の方法を用いて容易に設計及び作製され得る。
【0105】
本発明において用いるための単離されたアンチセンス又はsiRNA核酸分子は、標的(配列番号:1として特定されるASMaseをコードする遺伝子(完全ゲノムDNA)、配列番号:2として特定されるヒトBaxをコードする遺伝子、又は配列番号:3として特定されるヒトBakをコードする遺伝子)のための遺伝子又はmRNA配列の相補体である核酸分子を含む。所与のヌクレオチド配列に相補的な核酸分子は、該所与のヌクレオチドとハイブリダイズして安定な二本鎖を形成し得る、該所与のヌクレオチド配列に十分相補的であるものである。
【0106】
アンチセンス核酸分子は、即ちタンパク質をコードするセンス核酸に相補的である(例、二本鎖DNA分子のコード鎖(もしくはcDNA)に相補的であるか、又はmRNA配列と相補的である)分子である。したがって、アンチセンス核酸はセンス核酸と水素結合し得る。アンチセンス核酸は、ASMase、BakもしくはBaxのコード鎖全体、又はその一部のみ(例、タンパク質コード領域(又はオープンリーディングフレーム)の全てもしくは一部)に相補的であり得る。アンチセンス核酸分子は、ASMase、BakまたはBaxをコードするヌクレオチド配列のコード鎖の非コード領域に対してアンチセンスであり得る。非コード領域(「5’及び3’非翻訳領域」)は、コード領域に隣接し、アミノ酸に翻訳されない5’及び3’の配列である。
【0107】
本明細書に開示される、ASMaseをコードするコード鎖配列(cDNA配列番号:2、ゲノムDNA配列番号:7、Bax cDNA配列番号:3、ゲノムDNA配列番号:8又はBak cDNA配列番号:5、ゲノムDNA配列番号:9を考慮して、本発明のアンチセンス核酸を、ワトソンとクリックの塩基対合のルールにしたがって設計することができる。アンチセンス核酸分子は、ASMase、Bak又はBax mRNAのコード領域全体と相補的であり得るが、より好ましくは、ASMase、Bak又はBax mRNAのコード又は非コード領域の一部のみにアンチセンスであるオリゴヌクレオチドである。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ASMase、Bak又はBaxの翻訳開始部位の周りの領域に相補的であり得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50ヌクレオチドの長さであり得る。本発明のアンチセンス核酸は、当該技術分野において公知の手順を用いた化学合成及び酵素的ライゲーション反応を用いて構築され得る。例えば、アンチセンス核酸(例、アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然に生じるヌクレオチド又は、分子の生物学的安定性を増加するようにもしくはアンチセンスとセンス核酸との間に形成される二本鎖の物理的安定性を増加するように設計された様々な改変ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチドが用いられ得る)を用いて化学的に合成され得る。アンチセンス核酸を生成するために用いられ得る、改変ヌクレオチドの例としては、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ホドウラシル(hodouracil)、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−ソウリジン(thouridine)、5−カルボキシメチルアミノメチ−イルウラシル(5-carboxymethylaminometh-yluracil)、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メトニルシトシン(metnylcytosine)、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテン−イルアデニン(2-methylthio-N6-isopenten- yladenine)、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、シュードウラシル、キュエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−スロウラシル(2-thlouracil)、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−シクシ酢酸(cxyacetic acid)(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボシキプロピル)ウラシル、(acp3)w、及び2,6−ジアミノプリン等が挙げられる。あるいは、アンチセンス核酸は、アンチセンスの向きに核酸がサブクローニングされている(即ち、以下の小節にさらに記載される、挿入された核酸から転写されたRNAが、目的の標的核酸に対してアンチセンスの向きであるだろう)発現ベクターを用いて生物学的に作成され得る。
【0108】
本発明のアンチセンス核酸分子は、典型的には、対象に投与されるか、又は細胞性mRNA及び/もしくは目的のタンパク質をコードするゲノムDNAとハイブリダイズするかもしくは結合し、それによって、例えば転写及び/もしくは翻訳を阻害することにより該タンパク質の発現を阻害するようにin situで生成される。ハイブリダイゼーションは、安定な二本鎖を形成する従来のヌクレオチド相補性によるものであってもよく、又は、例えば、DNA二本鎖と結合するアンチセンス核酸分子の場合、ダブルへリックスの主溝内での特異的相互作用を介したものであってもよい。本発明のアンチセンス核酸分子の投与経路の例は、組織部位における直接接種を含む。あるいは、アンチセンス核酸分子は、選択された細胞を標的にするために改変され得、次いで全身に投与され得る。例えば、アンチセンス分子は、全身投与のために、例えば、アンチセンス核酸分子を、細胞表面レセプターもしくは抗原に結合するペプチド又は抗体に連結することにより、選択された細胞表面に発現したレセプター又は抗原に特異的に結合するように改変され得る。アンチセンス核酸分子はまた、本明細書に記載されるベクターを用いて細胞に送達され得る。アンチセンス分子の十分な細胞内濃度を達成するため、アンチセンス核酸分子は、強いpol II又はpol IIIポリメラーゼの制御下に置かれたベクターコンストラクトが好ましい。
【0109】
本発明のアンチセンス核酸分子は、α−アノマー核酸分子であり得る。α−アノマー核酸分子は、通常のβ−ユニットとは対照的に、鎖が互いに並行して走る特有の二本鎖ハイブリッドを相補的なRNAと形成する(Gaultierら、(1987) Nucleic Acids. Res. 15:6625-6641)。アンチセンス核酸分子はまた、2’−o−メチルリボヌクレオチド(Inoueら、(1987) Nucleic Acids Res. 15:6131-6148)又はキメラRNA−DNAアナログ(Inoueら、(1987) FEBS Lett. 215:327-330)を包含し得る。アンチセンス技術に関する上記論文に記載される全ての方法は、参照によって本明細書内に組み込まれる。
【0110】
本発明はまた、リボザイムを包含する。リボザイムは、相補的領域を有する一本鎖核酸(mRNAなど)を切断することができるリボヌクレアーゼ活性を伴う触媒RNA分子である。したがって、リボザイム(例、ハンマーヘッドリボザイム(Haselhoff及びGerlach (1988) Nature 334:585-591に記載される))は、ASMase、Bak又はBax転写物を触媒的に切断することにより、ASMase、Bak又はBaxの翻訳を阻害するために用いられ得る。ASMase、Bak又はBaxコード核酸に特異性を有するリボザイムは、本明細書内に開示されるASMase、Bak又はBaxcDNAのヌクレオチド配列に基づいて設計され得る。例えば、活性部位のヌクレオチド配列が、ASMase、Bak又はBaxをコードするmRNAにおいて切断されるヌクレオチド配列に相補的であるテトラヒメナのL−19 IVS RNAの誘導体が、構築され得る。例えば、Cechら、米国特許第4,987,071号;及びCechら、米国特許第5,116,742号を参照されたい。あるいは、ASMase、Bak又はBax mRNAは、RNA分子のプールから特異的リボヌクレアーゼ活性を有する触媒RNAを選択するために用いられ得る。例えば、参照によって本明細書内に組み込まれる、Bartel及びSzostak (1993) Science 261:1411-1418を参照されたい。
【0111】
本明細書内で用いられる場合、用語「核酸」は、RNA及びcDNA、ゲノムDNA及び合成(例、化学合成)DNAを含むDNAの両方をいう。核酸は、二本鎖又は一本鎖(即ち、センス又はアンチセンス一本鎖)であり得る。本明細書内で用いられる場合、「単離された核酸」は、哺乳類ゲノムにおける核酸の片側又は両側に通常隣接する核酸(例、ARPKD遺伝子に隣接する核酸)を含む、哺乳類ゲノム中に存在する別の核酸分子から分離された核酸をいう。天然に生じない配列は、天然には見出されず且つ天然に生じるゲノムにおいて直に接する配列を有さないため、核酸について本明細書内で用いられる用語「単離された」はまた、任意の天然に生じない核酸配列を含む。
【0112】
単離された核酸は、天然に生じるゲノムにおいてそのDNA分子に直に接して通常見出される核酸配列の一つが除去されているか又は存在しないのであれば、例えばDNA分子であり得る。したがって、単離された核酸としては、限定されないが、他の配列から独立した分離分子として存在するDNA分子(例、化学的に合成された核酸又はPCRもしくは制限エンドヌクレアーゼ処理により生成されたcDNAもしくはゲノムDNA断片)並びにベクター、自己複製プラスミド、ウイルス(例、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルスもしくはヘルペスウイルス)又は原核細胞もしくは真核細胞のゲノムDNA内に組み込まれているDNAが挙げられる。さらに単離された核酸は、ハイブリッド又は融合核酸の一部であるDNA分子等の改変核酸を含み得る。例えば、cDNAライブラリ又はゲノムDNA制限消化を包含するゲル薄片内の何百から何百万の他の核酸の中に存在する核酸は、単離された核酸と考えられない。
【0113】
医薬組成物
【0114】
本発明はまた、任意で1以上のスタチン又はイミプラミンと共に製剤処方される、2A2ヒト化モノクローナル抗体の医薬組成物及び製剤を含む。投与される本発明のアンチセンス核酸及び低分子干渉RNAを含む他の医薬組成物は、ASMase又はBak又はBax発現を低減する。
【0115】
本発明の医薬組成物は、対象における列挙した疾患:GVHD、GI症候群、炎症及び自己免疫疾患を含む放射線誘導疾患を予防又は治療するのに十分な量の治療剤(抗セラミド抗体、酵素阻害剤、アンチセンス核酸及びsiRNA)を包含する。これらの医薬組成物は、対象においてGVHD、GI症候群、炎症及び自己免疫疾患を含む放射線誘導疾患の予防又は治療の必要がある対象への投与に好適である。対象は、好ましくはヒトであるが、非ヒトでもあり得る。好適な対象は、列挙した疾患の1つである疑いがある、であると診断された、又は発症の危険性がある個体であり得る。治療組成物は、例えば、結合剤、充填剤、担体、保存剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤及び賦形剤、例えば医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等として通常使用される添加剤等を含有してもよい。これらの組成物は典型的に、1%−95%の活性成分、好ましくは2%−70%の活性成分を含有する。
【0116】
本発明の抗体及びアンチセンスヌクレオチド並びに酵素阻害剤又はスタチンはまた、相溶性があり、生理的に許容できる希釈剤又は賦形剤と混合され得る。好適な希釈剤及び賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール等、並びにこれらの組み合わせである。さらに、必要であれば、該組成物は、湿潤又は乳化剤、安定化又はpH緩衝剤等の少量の補助物質を含有してもよい。
【0117】
いくつかの実施形態において、本願発明の治療組成物は、水溶液もしくは懸濁液として、スプレーとして又は固形でのいずれかで調製される。経口製剤としては、通常、結合剤、充填剤、担体、保存剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤及び賦形剤、例えば医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等として通常使用される添加剤等が挙げられる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放性製剤又は粉末の形態をとり、典型的には1%−95%の活性成分、好ましくは2%−70%を含有する。本発明の治療組成物を送達するのに有用な経口組成物の一例は、米国特許第5,643,602号に記載される(参照によって本明細書内に組み込まれる)。
【0118】
局所投与等の他の投与の方法に対して好適であるさらなる製剤としては、軟膏、チンキ剤、クリーム、ローション、経皮貼布剤及び坐薬が挙げられる。軟膏及びクリームについて、従来の結合剤、担体及び賦形剤を含んでもよく、例えば、ポリアルキレングリコール又はトリグリセリドである。局所送達方法の一例は、米国特許第5,834,016号(参照によって本明細書内に組み込まれる)に記載される。他のリポソーム送達方法もまた使用されてもよい(いずれも参照によって本明細書内に組み込まれる、米国特許第5,851,548号及び第5,711,964号を参照されたい)。
【0119】
製剤はまた、治療される特定の兆候に必要である1より多くの活性化合物を含有してもよく、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を伴うものである。このような分子は、好ましくは、意図した目的に効果がある量で組み合わせて存在する。例えば、2A2抗体はスタチン又はイミプラミンと共に処方され得るであろう。
【0120】
徐放製剤もまた調製され得る。徐放製剤の好適な例は、抗体又は断片を含有する固体疎水性ポリマーの半透明性マトリックス、ナイスタチン、イミプラミン又はそれらの組み合わせを含み、ここで該マトリックスは、例えば、フィルム又はマイクロカプセルの造形品の形態である。徐放性マトリックスの例としては、これに限定されないが、ポリエステル、ヒドロゲル(例、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド、L−グルタミン酸とyエチル−L−グルタミン酸(y ethyl-L-glutamate)の共重合体、非分解性エチレン酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(乳酸−グリコール酸共重合体及び酢酸ロイプロリドからなる注射可能なミクロスフェア)等の分解性乳酸−グリコール酸共重合体、並びにポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン酢酸ビニル及び乳酸−グリコール酸等のポリマーは、100日を越える分子の放出が可能であり、特定のヒドロゲルは、より短期間タンパク質を放出する。
【0121】
本願発明の抗体及びアンチセンス又はsiRNAは、非経口、皮下、局所、腹腔内、肺内、及び鼻腔内並びに病巣内投与(例、局所的免疫抑制治療)を含む、任意の好適な方法により投与され得る。非経口注入としては、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与が挙げられる。さらに、好適な投与としては、特に抗体の用量の低下を伴う、脈内注入が含まれる。好ましくは、投与は注射により与えられ、最も好ましくは投与が短いか又は慢性的かに部分的に依存して静脈内又は皮下注射により与えられる。
【0122】
疾患の予防又は治療について、抗体の適切な用量は、治療される疾患の種類、重症度及び疾患の経過、薬剤が予防又は治療目的で投与されるかどうか、薬歴、患者の病歴及び新薬(2A2抗体等)に対する応答及び主治医の判断に依存するだろう。抗体及びヌクレオチド又は他の薬剤(イミプラミン及びスタチン)は1回又は一連の治療に渡って患者に好適に投与される。
【0123】
上述したように、治療的に投与されるべき抗セラミド抗体の量は、約1ugから100ug/mlに及ぶ。この量は典型的に変動し、対象において典型的には約1μg/mlと約10μg/mlの間の血清治療剤レベルを達成するのに十分な量であり得る。本発明の治療剤は、1以上の分かれた投与により又は連続的注入により投与され得る。数日又はそれより長きに渡る繰り返し投与について、条件に応じて、治療は症状が十分に低減又は除去されるまで続けられる。本治療の進展は、従来の技術及びアッセイにより容易にモニタリングされ、治療効果を達成するための用量を調節するために用いられてもよい。
【0124】
治療的用途のためのアンチセンス核酸又はsiRNAの候補用量は、ヒト又は動物からの生物学的試料における標的タンパク質の発現を低減する量を見つけることにより初めに決定され得る。
【0125】
以上の詳述において、本発明をその特定の実施形態について説明してきた。しかしながら、本発明のより広範な精神及び範囲を逸脱することなく、様々な改変及び変更が、これらに対して行われることは明らかであろう。したがって、本明細書及び図面は、限定的意味ではなく寧ろ例示的意味において見なされるべきである。
【実施例】
【0126】
実施例1:材料及び方法
細胞培養及び刺激
【0127】
野生型(クローンE6−1)、カスパーゼ8−/−(クローンI9.2)及びFADD−/−(クローンI2.1)Jurkat Tリンパ球はATCC(Rockville、MD)から得た。細胞を5% CO2インキュベーター内、37℃で10% 熱不活性化ウシ胎仔血清及び10mM Hepes(pH7.4)、2mM L−グルタミン、1mM ピルビン酸ナトリウム、100μM 非必須アミノ酸、100単位/ml ペニシリン及び100μg/ml ストレプトマイシンを添加した、RPMI1640培地中で増殖した。UV−C又は抗Fasでの刺激の前に、細胞を新鮮培地で再懸濁し、4時間順化させた。次いで、別段記載しない限り、50ng/ml 抗FasCH−11活性抗体(Upstate Biotechnology, Lake Placid NY)又はFB−UVXL−1000クロスリンカー(Fisher Biotech, Pittsburgh PA)を用いて50ジュール/m2 UV−Cで、Jurkat細胞を処理した。プラットフォーム研究のために、均一なレセプターの関与を保証するためにJurkat細胞をCH−11と共に4℃で20分間培養し、刺激を開始させるために37℃に温めた。
【0128】
示した場合には、細胞を10μM z−VAD−fmk(Calbiochem, La Jolla CA)、30μg/ml ナイスタチン(Sigma-Aldrich, Milwaukee WI)、50μM イミプラミン(Sigma-Aldrich)又は1μg/ml マウスモノクローナル抗セラミド抗体MID15B4(Alexis Biochemicals, San Diego CA)と共に予備培養した。ナイスタチン、イミプラミン及び抗セラミド研究を0.5% 脂質フリーウシ胎仔血清(HyClone, Logan UT)含有RPMI中で行った。各研究において、生存率を評価するために、細胞のアリコートをトリパンブルーで染色した。
【0129】
マウスと骨髄移植(BMT)
【0130】
C3H/HeJ、C3HeB/FeJ、LP/J(“LP”、H−2b)、B10.BR(“B10”、H−2k)及びB6.MRL.lpr雌マウス、8−12週齢をJackson研究所(Bar Harbor, ME)から購入した。SV129/C57BL/6asmase−/−及びC57BL/6Bax−/−マウスを、前述の我々のコロニーで交配し、遺伝子型を同定した[Horinouchi, 1995 #171; Knudson, 1995 #173]。初めに、野生型C57BL/6雌と雄SV129/C57BL/6asmase−/−マウスを交配することにより、C57BL/6バックグラウンドへのasmase−/−遺伝子型戻し交雑を行った。続いて、asmase+/−遺伝子型の雄F1マウスをC57BL/6の雌と交配した。次に、純粋C57BL/6バックグラウンドにおけるasmase+/−遺伝子型を得るために、雄のasmase+/−後代と野生型C57BL/6の雌マウスとの交配プロトコルを、10世代続けた。戻し交配が確立されたら、C57BL/6asmase+/+マウスを異種交配させて、実験的動物を得た。BMT実験において用いた雄及び雌宿主は8−12週齢であった。BMTプロトコルは、Memorial Sloan-Kettering Cancer Center Institutional Animal Care and Use Committeeにより承認された。マウスをMemorial Sloan-Kettering Cancer Centerの病原体のない施設内の殺菌したマイクロアイソレーターケージ内に収容し、通常の食事及びオートクレーブした高塩素消毒飲料水(pH3.0)を与えた。この施設は、アメリカの実験動物管理評価認定協会により承認され、農務省及び保健社会福祉省、国立衛生研究所の規則及び基準にしたがって維持される。
【0131】
骨髄(BM)細胞を大腿骨及び頸骨から無菌で除去した。ドナーの髄質は、抗Thy−1.2抗体及び低TOX−Mウサギ補体を用いて枯渇させたT細胞であった(Cedarlane Laboratories, Hornby, Canada)。ナイロンウールカラムを通じた精製により脾臓T細胞を採取した。細胞(脾臓T細胞の有り又は無しでの5x106BM細胞)をDulbeccoの改変必須培地に再懸濁し、0日目において、投与の間3時間の分割用量で、尾静脈注入により1100cGy全身照射(137Csソース)を受けた致死照射されたレシピエントに移植した。
【0132】
リンパ球及び骨髄採集のための細胞培養培地は、10% 熱不活性化ウシ胎仔血清、100単位/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシン、2mM L−グルタミン及び50μM 2−メルカプトエタノールを添加した、RPMI1640からなる。抗マウスCD16/CD32 Fc ブロック(2.4G2)、蛍光クロム標識CD3(145−2Cll)、CD4(RM4−5)、CD8(53−6.7)、CD62L(MEL−14)、及びLy−9.1(30C7)抗体をPharmingen(San Diego, CA)から入手した。塩化アンモニウム赤血球細胞(RBC)溶解バッファ、コンカナバリンA(conA)及びコンカナマイシンA(CMA)をSigma(St. Louis, MO)から入手した。
【0133】
ex vivoでの肝細胞培養
【0134】
Klaunig94により記載される方法にしたがって門脈の挿管及びin situでの逆行性コラゲナーゼかん流により、肝細胞を単離した。つまり、肝臓を20mL バッファ1(グルコース+0.1mM EGTAを含むKrebsリンガー)、続いて25mL バッファ2[5000ユニットコラゲナーゼI型(Sigma)を含む0.2mM CaCl2含有グルコースを含むKrebsリンガー]で、7ml/分の速さで蠕動ポンプ(Rainin Instrument LLC. Woburn, MA)によってかん流した。かん流した肝臓を切除し、バッファ2中で細分化し、100μM細胞ストレーナーを通じて濾過し、50xgで2度洗浄し、並びに10% ウシ胎仔血清含有RPMI1640完全培地に再懸濁した。生存率は、通常90%より高かった。
【0135】
アポトーシス定量
【0136】
2つの異なる技術によって、アポトーシスをin vitroで評価した。製造者の説明書(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis IN)にしたがって、0.1%トリトンX−100及び0.1%クエン酸ナトリウムにより、4℃、5分で透過処理した細胞についてTUNEL染色を行った。あるいは、刺激した細胞を2% パラホルムアルデヒドで固定し、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、100μlの24μg/ml ビスベンズイミド三塩酸塩溶液(Hoechst #33258; Sigma-Aldrich, Milwaukee WI)で10分間染色した。核の周辺に沿ったクロマチンの凝縮(condensation)、セグメント化、凝縮(compaction)又はアポトーシス小体の出現を含む核アポトーシスの生態学的変化を、前述のようにして、Axiovert S-100 Zeiss蛍光顕微鏡を用いて定量化した33。ポイントあたり最も少なくて200個の細胞を試験した。
【0137】
記載されているようにして[Paris, 2001 #7]、TUNEL染色後に、アポトーシスを小f腸の固有層の内皮においてin vivoで定量化した。既に公開されたようにして[Paris, 2001 #7]、内皮細胞表面マーカーCD31(PharMingenカタログNo.1951D)に対する抗体を用いた免疫染色により、内皮細胞を同定した。
【0138】
完全培地に30分間静置し、記載するようにして、LP/Jドナー骨髄及びT細胞の移植後2―3週間でC57BL/6マウスから単離した1μg/mL抗Fas Jo2抗体(Pharmingen)又は0−2x106の脾臓T細胞と共に、16時間、37℃、5% CO2下で刺激した0.5x106の肝細胞において肝細胞アポトーシスを定量化した。いくつかの研究において、肝細胞をナイスタチン(50μg/mL、Sigma-Aldrich, Milwaukee WI)で30分間前処理し、RPMIで洗浄し、刺激前に1% 脂質フリーFBSが添加されたRPMIに再懸濁した。
【0139】
クローン原性アッセイ
【0140】
UV−C又は抗FasCH−11処理後のJurkat細胞のコロニー形成を、既述95のようにして、軟寒天クローニングアッセイを用いて評価した。つまり、細胞をナイスタチン及び抗セラミドmAb、又はビヒクル及び対照IgMと共に、RPMI+0.5% 脂質フリーウシ胎仔血清中で予備培養し、並びに漸増用量のUV−C又は抗Fasで4時間刺激した。その後、細胞を20% FBS、20mM L−グルタミン及び40% メチルセルロース培地含有RPMI培地に懸濁し、3連で塗布した。培養の14−16日後、プレートを倒立顕微鏡により解析し、20より多い細胞の凝集体をコロニーとしてスコア化した。各条件についてのコロニー形成を、非処理対照細胞について得られた値に対して算出した。コロニー生存曲線を、FITソフトウェアプログラム96の変更を用いて最小二乗回帰分析により算出した。該プログラムは、線量−生存率データの各セットに対する重み付けした加重最小二乗を繰り返すことにより曲線をフィットさせ、生存曲線パラメータの共変量及び対応する信頼領域を見積もり、並びに生存曲線をプロットする。これはまた、D0(放射線感受性レベルを示す、カーブの指数部分における傾きの逆数)及びNナンバー(肩の大きさの指標)といった曲線パラメータを導き出す。
【0141】
プラットフォーム検出
【0142】
前述のようにして、プラットフォームを検出した。つまり、1x106Jurkat細胞をUV−C又はα−Fasで刺激し、2% パラホルムアルデヒドで示した時間固定し、1% ウシ胎仔血清含有PBSでブロックし、次いでPBSで洗浄した。細胞を、ラフト局在脂質GM1について、FITC結合コレラ毒素β−サブユニット(2μg/ml;Sigma-Aldrich)で、45分間、4℃で染色し、0.1% トリトンX−100含有PBSで2度洗浄し、蛍光封入剤(Dako, Carpenteria CA)にマウントした。SPOTデジタルカメラを備えたAxiovert S-100 Zeiss蛍光顕微鏡を用いて蛍光を検出した。プラットフォームを包含する細胞即ち蛍光が細胞表面の15%未満に凝縮した細胞のパーセンテージを、ポイントあたり150−250個の細胞を計数することにより測定した。あるいは、マウスモノクローナル抗セラミド抗体MID 15B4 IgM(1:50希釈、Alexis Biochemicals)、マウスモノクローナル抗Fas CH−11 IgM(1:500希釈、Upstate Biotechnology)又はポリクローナルウサギ抗ASMase抗体1598(1:100希釈)を用いてプラットフォームを同定し、それぞれCy3結合抗マウス又は抗ウサギIgM(1:500希釈、Roche Molecular Biochemicals)を用いて検出した。ウサギポリクローナル抗CD46(1:1000希釈、Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz CA)をネガティブ対照として用いた。いくつかの研究において、Leica TCS SPZ直立共焦点顕微鏡を用いて、共焦点画像を得た。あるいは、0.5x106肝細胞をCTLで示した時間の間刺激し、プラットフォーム形成を記載したようにして評価した。
【0143】
ウサギポリクローナル抗ASMase抗体#1598を全長FLAGタグ化ヒトASMaseタンパク質に対して産生した。抗血清をBIO−RAD Tゲルカラムを通じて精製して、100ngの精製組換えヒトASMase又は25μgのJurkat細胞溶解液由来のASMaseに対して、100ng/μlの濃度での免疫ブロットアッセイにより特異的免疫反応性を示すIgG分画を得た。200μg/μlの濃度で、#1598は、100ngの精製ASMase由来のASMase活性を定量的に免疫沈降し、並びに200ng/μlの濃度で、フローサイトメトリー又は共焦点免疫蛍光顕微鏡によりASMaseの細胞表面発現を検出する。
【0144】
ジアシルグリセロールキナーゼアッセイ(DGK)
【0145】
UV−C又はCH−11で刺激したJurkat細胞を、37℃で示した時間の間インキュベートした。2mlのクロロホルム:メタノール:HCl(100:100:1、v/v/v)の添加により刺激を終了し、記載されたようにして97、セラミドをジアシルグリセロールキナーゼアッセイにより定量化した。
【0146】
ウエスタンブロット解析
【0147】
UV−C又はCH−11で刺激したJurkat細胞を、37℃で示した時間の間インキュベートした。氷冷PBSで刺激を終了し、細胞をRIPAバッファ(25mM HEPES(pH7.4)、0.1% SDS、0.5% デオキシコール酸ナトリウム、1% トリトンX−100、100mM NaC1、10mM NaF、10mM Na2P2O7、10mM EDTA及び10μg/mlずつのアプロトニン及びロイペプチン)に溶解した。試料を14000gで遠心分離し、上清を4X SDSサンプルバッファに添加した。溶解液を10% SDS−PAGEゲル上で分離し、ニトロセルロース膜に移した。カスパーゼ3(BD PharMingen, San Diego CA)、カスパーゼ8(BD PharMingen)又はカスパーゼ9(Cell Signaling Technology, Beverly MA)に対するウサギポリクローナル抗体を用いて、カスパーゼ切断を検出した。マウスモノクローナル抗カスパーゼ8(clone 1-1-37; Upstate Biotechnology)又は抗FADD(BD PharMingen)抗体をそれぞれ用いて、カスパーゼ8及びFADD発現レベルを検出した。
【0148】
フローサイトメトリー解析
【0149】
FACSにより表面ASMaseを検出するために、50J/m2 UV−C又は50ng/ml CH−11で、37℃で、Jurkat細胞を刺激した。最大ASMase転移の時間である1分後に、氷冷洗浄バッファ(1% FCS及び0.1% NaN3含有PBS)の添加により刺激を終了し、アイソタイプ対照ウサギIgG(20μg/ml)を添加した同一のバッファを用いて20分間、氷上で細胞をブロックした。細胞を再洗浄し、PBS中で1μg/mlのポリクローナル抗ASMase1598抗体と共に45分間インキュベートし、続いて洗浄し、Cy3結合抗ウサギIgGと共にインキュベートした。10000個の細胞を、FACScanフローサイトメーター(Becton Dickinson, Franklin Lakes NJ)を用いて解析した。
【0150】
採取した脾細胞を洗浄し、CD16/CD32FcRブロックと共に、氷上で15分間インキュベートし、その後一次抗体と共に45分間インキュベートし、洗浄し、FACSバッファ(PBS+2%BSA+0.1%NaN3)に再懸濁し、CellQuestソフトウェア(Becton Dickinson)を備えたFACScanフローサイトメーターで解析した。CFSE染色のために、RBC溶解LP/J又はB10.BR脾細胞を抗CD3マイクロビーズ(Miltenyi, Auburn, CA)を用いて製造者の取扱説明書のように陽性選択し、2.5μM カルボキシフルオレセイン ジアセテート スクシンイミジル エステル(CFSE)中で染色し、並びに15−20x106の染色細胞を、asmase+/+又はasmase−/−バックグラウンドのいずれかの同種異系(B6)レシピエントに移植した。これらの動物由来の脾細胞をその後72時間で採取し、表面抗原に対する蛍光クロム結合抗体で染色し、FACS解析を上記のように行った。
【0151】
ASMase活性アッセイ
【0152】
蛍光ベースの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)アッセイ98を用いてASMase活性を測定した。つまり、5x106のJurkat細胞を、50J/m2 UV−C又は50ng/ml CH−11で、37℃で刺激し、示した時間氷冷PBSで洗浄し、氷上でNP−40バッファ(150mM NaC1、25mM Tris HCl pH7.5、10% グリセロール、1% NP−40、2mM EDTA、PMSFを添加した0.1M DTT、ロイペプチン及びプロテアーゼ阻害剤カクテル)に溶解した。アッセイバッファ[500μM BODIPY−C12スフィンゴミエリン(Molecular Probes, Eugene OR)、0.1mM ZnC12、0.1M 酢酸ナトリウムpH5.0及び0.6%トリトンX−100]中で等量の溶解液を60分間、37℃でインキュベートすることによりASMase活性を測定した。その後、エタノールでの10X希釈により反応を停止し、20x4mmの逆相Aquasil C18カラム(Keystone Scientific, Bellefonte PA)を備えたWIPS 712(Waters Corp., Milford MA)オートサンプラーにより5μlのアッセイ混合物をサンプリングした。1.2ml/分の流速で、95% MeOHでの定組成溶離により0.4−0.5分以内に、BODIPY−C12セラミドである反応産物を基質から特異的に分離した。それぞれ505及び540nmの励起及び発光波長に設定したWaters 474 (Waters Corp.)蛍光検出器を用いて、蛍光を定量化した。既知量のBODIPY−C12セラミドの標準について確立された標準曲線から導出される回帰式を用いて、生成産物の量を算出した。あるいは、記載されたようにして14、[14Cメチルコリン]スフィンゴミエリン(Amersham Biosciences, Piscataway, NJ)を基質として用いる放射酵素アッセイにより、ASMase活性を定量化した。つまり、50J/m2 UV−C又は50ng/ml CH−11刺激後に、示した時間0.2% トリトンX−100含有PBSにJurkat細胞を溶解した。基質の存在下で、0.1mM ZnCl2、1mM EDTA及び0.1% トリトンX−100を添加した250mM 酢酸ナトリウム、pH5.0中で、ポスト核上清を活性についてアッセイした。1時間後、CHCl3:MeOH:1N HC1(100:100:1、v/v/v)で反応を終了し、シンチレーションカウンターにより産物を定量した。両方のアッセイが、UV−C又はFas刺激後に同一の明らかな倍増を生じたために、これらのデータを照合した。しかしながら、ミカエリスメンテン動態解析による決定では、BODIPY−C12スフィンゴミエリンは、より非効率的に触媒され、より低いVmaxをもたした。したがって、放射酵素アッセイから導出された基準ASMase特異的活性を、本文書を通じて示している。
【0153】
放射線及び組織調製
【0154】
TBIは、137Csソースを操作するShepherd Mark-I unit (Model 68, SN643)を用いて供給された。線量率は、2.12Gy/分であった。小腸試料を採取するために、高炭酸ガス窒息によりマウスを屠殺し、2.5cmの近位空腸断片をトライツ靱帯から2cmで採取した。組織試料を4% 中性緩衝ホルムアルデヒド中で終夜のインキュベーションにより固定し、パラフィンブロックに包埋した。放射線に対する腸組織応答を評価するために、完全な空腸周囲の横断切片(5μm厚)を、パラフィンブロックからのミクロトーム法により採取し、ポリリシン処理したスライドに接着し、90℃で10分間及び60℃で5分間加熱することにより脱パラフィンし、続いて5分間、2度キシレン洗浄し、標準プロトコルにしたがって、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。TBI後の死亡原因を決定するため、動物死の60分以内に剖検を行うか、又は末期の場合、末期の呼吸パターンを示す動物を高炭酸ガス窒息により屠殺した。組織検体を全ての動物から採取し、ホルムアルデヒド中で固定し、ヘマトキシリンで染色した。
【0155】
陰窩微小コロニー生存アッセイ
【0156】
Withers及びElkind99により記載されるように、微小コロニー生存アッセイを行った。つまり、照射後3.5日のマウスを高炭酸ガス窒息により屠殺し、小腸の試料を採取し、上述のように組織学的染色のために調製した。生存陰窩を、10以上の隣接した好色素性非パネート細胞、少なくとも1つのパネート細胞及び内腔を包含するとして定義した。腸の横断切片の周囲を1つのユニットとして用いた。生存陰窩の数を、各周囲について計数した。10−20周囲をマウスごとにスコア化し、各データ点を作成するために2−4匹のマウスを用いた。データを平均±標準誤差として報告した。
【0157】
GVHDの評価
【0158】
生存率を毎日モニタリングし、5つの臨床パラメータ(体重減少、猫背の姿勢、活動性低下、毛の波打ち現象(fur ruffling)及び皮膚病変)について、0から2のスケールで、コード化したケージ内の耳タグをした動物を個別に毎週スコア化した。Cookeら100により記載されるように、5つの基準スコア(0−10)の合計により、臨床GVHDスコアを作成した。10% ホルマリン緩衝リン酸保存し、パラフィン包埋し、且つヘマトキシリン/エオシン染色した5μM 組織学的切片について、盲検方式で、腸(回腸末端及び上行結腸)、肝臓及び皮膚(舌及び耳)についてのGVHD標的臓器病理を、半定量的な採点系で、1つの個体により評価した(肝臓及び腸病理についてJ.M.C.、皮膚病理について G.F.M.)。つまり、記載されたように腸及び肝臓をGVHDに関連する19から22の異なるパラメータについてスコア化し101、並びに、公開されたように異常角化及びアポトーシス細胞の数について皮膚を評価した102。記載されたようにして、ホルマリン保存し、パラフィン包埋し、TUNEL染色及びヘマトキシリン/エオシン対比染色した切片について、絨毛及び陰窩細胞アポトーシスをスコア化した18、62。
【0159】
ELISA
【0160】
血清IL−1β、IL−2、INF−γ及びTNF−αレベルについての酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を、製造者の取扱説明書(R&D, Minneapolis, MN)にしたがって行った。
【0161】
活性化誘導細胞死(AICD)アッセイ
【0162】
採取した脾細胞をナイロンウール通過によりTリンパ球について枯渇し、フローサイトメトリーによるFITC−CD3 mAb染色に基づいて90%を超える純度をもたらした。既述のようにして、AICDを誘導した103。つまり、T細胞をRPMI1640+10% FCS中で、2x106/mLでインキュベートし、10μg/ml ConA(Sigma, St. Loius, MO)で48時間プライムした。次いで、細胞を洗浄し、20U/ml IL−2(R&D Systems)含有培地に24時間静置した。最終的に、細胞を洗浄し、20U/ml IL−2及び増加量の抗CD3 mAb(0−10μg/ml)含有培地に24時間再懸濁した。その後、細胞を固定し、25μlの24μg/ml ビスベンズイミド三塩酸塩溶液(Hoechst #33258; Sigma-Aldrich, Milwaukee WI)で染色し、蛍光顕微鏡により、上記のように、アポトーシスを定量化した。
【0163】
混合リンパ球反応(MLR)
【0164】
2x106の照射(2000rad)C57BL/6脾細胞とのRPMI1640+10% FCS中での5日間のインキュベーションにより、Balb/c脾細胞をin vitroで活性化した。MLRの2日前、asmase+/+又はasmase−/−脾細胞を、10μg/mL conAで48時間活性化し、45分間1μCi/mL Na251CrO4で、37℃及び5% CO2で標識し、RPIM1640+10% FBSで洗浄し、並びに活性化Balb/c脾細胞と、完全培地中で、24時間37℃で共培養した。補正した溶解%=100x(試料51Cr放出−対照51Cr放出)/(最大51Cr放出−対照51Cr放出)という式を用いて、ガンマカウンター(Cobra, Meriden, CT)により上清中への51Cr放出を計数することによって、標的細胞溶解を定量化した。
【0165】
統計
【0166】
動物の保険数理上の生存率を積極限カプラン−マイヤー法104により算出し、生存率における差異の統計学的有意性をマンテルログランク検定105により算出した。陰窩生存率カーブを、FITソフトウェアプログラム96の変更を用いて最小二乗回帰解析により算出した。該プログラムは、線量−生存率データの各セットに対する重み付けした加重最小二乗を繰り返すことにより曲線をフィットさせ、生存曲線パラメータの共変量及び対応する信頼領域を見積もり、並びに生存曲線をプロットする。これはまた、D0(放射線感受性レベルを示す、カーブの指数部分における傾きの逆数)及びNナンバー(肩の大きさを測定する)といった曲線パラメータを導き出す。GVDHスコア、胸腺細胞及び脾細胞数並びに増殖アッセイの統計学的解析を、ノンパラメトリックな対応のないマンホイットニーU検定を用いて行った。95%の確信度推定を伴うスチューデントのt検定を、他の全ての解析に用いた。
【0167】
実施例2
GVHDにおけるASMASEの役割
【0168】
3x106T細胞が有り又は無しでの骨髄の移植後21日のasmase+/+及びasmase−/−レシピエントから小腸、肝臓及び皮膚を採取した。ヘマトキシリン&エオシン染色した肝臓切片は、asmase+/+レシピエントと比較して、asmase−/−ではより目立たない、リンパ球浸潤(図22A、矢印)、門脈域浸潤、内皮炎(図22A、右パネル)及び肝臓構造喪失により特徴付けられる、肝臓GvHDを示した。同様に、絨毛の鈍化、固有層炎症、陰窩幹細胞喪失及び崩壊並びに粘膜の萎縮を含む腸GvHDは、asmase−/−レシピエントにおいてより目立たなかった(図22B、矢印はアポトーシス細胞を示す)。半定量的組織学的解析は、同種異系骨髄及びT細胞のasmase+/+レシピエントが、肝臓(表1、15.7±1.5対8.3±2.7、p<0.05)及び小腸(表2、10.7±1.1対3.5±0.5、p<0.01)においてBMのみ受けた同腹子よりも有意に高くスコア化されたことを明らかにした。ASMase欠損は、GvHD関連臓器損傷を大きく保護し、肝臓及び小腸において、それぞれ、10.2±0.5及び7±0.1までスコアを低下させた(表2、asmase+/+同腹子に対して肝臓及び腸についてそれぞれp<0.005)。
【0169】
GvHD関連臓器損傷は、腸及び皮膚の顕著なアポトーシスに関連する。TUNEL染色した回腸切片は、BM及びT細胞のasmase+/+レシピエントの固有層(図22C)及び陰窩上皮(図22D)の内部のアポトーシス細胞の顕著な増加を明らかにした。同系異種T細胞のasmase+/+レシピエントは、絨毛の88.4%における大規模なアポトーシス(4より多くのアポトーシス細胞/絨毛)を示し、これは、asmase−/−レシピエントにおいて25.4%に減少し(図22C、p<0.05)、並びに3.8±0.4の陰窩ごとのアポトーシス内皮細胞は、asmase−/−レシピエントにおいて0.95±0.2に弱まった(図22D、p<0.05)。さらに、ASMase欠損は、マイナー抗原ミスマッチ同種異系BMT後の皮膚角化細胞アポトーシスから宿主を保護した(図22E)。同系異種T細胞は、asmase+/+上皮の8.2±2.1アポトーシス細胞/mmと比較して、asmase−/−上皮における5.1±0.9アポトーシス細胞/mmを誘導した(p<0.05)。これらのデータは、ASMase組織が、GvH関連アポトーシス及び臓器損傷に対して抵抗性であることを実証し、標的臓器損傷及びアポトーシスを決定することで、ASMaseがGVH誘導罹患率及び死亡率を制御することを示した。GvHDにおける宿主ASMaseの具体的役割を確かめるために、C57BL/6レシピエント(H−2b)への、B10.BRドナー(H−2k)の主要組織適合性不適合同種異系BM移植モデルを選択した。ASMase+/+又はASMase−/−バックグラウンドの致死性照射C57BL/6宿主は、10x106T細胞枯渇(TCD)B10.BR BM細胞を受け、並びに、同種移植片に対する0.5x106B10.BRドナー脾臓T細胞の添加によりGvHDを誘導した。マイナーミスマッチモデルと一致して、BM及びT細胞の移植後14日でのasmase+/+同腹子と比較してasmase−/−宿主において、有意に少ない標的臓器損傷を観察した(表1、asmase−/−宿主における7.4±0.9に対するasmase+/+における16.3±1.1の肝臓病理スコア、p<0.05及びasmase−/−宿主における3.5±0.4に対するasmase+/+における10.0±0.8の小腸病理スコア、p<0.05)。これらのデータは、陰窩上皮アポトーシスの低下(asmase−/−宿主における15.8±3.7%に対する野生型におけるアポトーシス細胞含有陰窩の59.3±3.8%、p<0.05、非掲載)、並びに肝臓リンパ球浸潤、内皮炎、及び肝臓構造の全体的な崩壊の減少(非掲載)と一致する。さらに、角化細胞アポトーシスは野生型宿主において顕著であり、11.2±1.2アポトーシス細胞/mm2上皮のアポトーシス指標に達し、これはasmase−/−宿主において3.2±1.7まで著しく減衰した(図22E、p<0.01)。しかしながら、カプラン−マイヤー生存率は、遅発性(BMT後21日以降)骨髄形成不全のため、このメジャーミスマッチモデルにおいて決定され得ず、B10.BR系統における遺伝的シフトの検出が認められ、Jackson研究所ウェブサイトに記載された。総合すると、これらのデータは、GvHD関連標的臓器損傷及びアポトーシスの有意な減衰を明らかにし、マイナー及びメジャー抗原不一致の両方に渡って、野生型同腹子と比較して、asmase−/−宿主における、GvHD罹患率及び死亡に対する保護と密接に相関する。
【0170】
【表3】
【0171】
【表4】
【0172】
実施例3
ASMase欠損は炎症を防ぐ
【0173】
次に、我々は、宿主ASMase不活性化は、急性GvHDにおけるTh1/Th2サイトカインプロファイル及びCD8+T細胞増殖を弱めることを示す実験を行った。初期CTL介在性アポトーシス組織損傷は、CD4+Th1サイトカイン分泌を必要とするフィードフォワード応答及び結果として生じる、急性GvHDを進行させる同種反応性(alloreactive)CD8+クローン性増殖を伝播し、それに炎症性サイトカインストームが続く。GvHDの際の血清サイトカインレベル対するASMaseの影響を評価するために、脾臓T細胞の有り又は無しでのLP BMの移植後7及び14日に、血清Th1サイトカインIL−2及びIFN−γ並びにTh2サイトカインIL−1β及びTNF−αを定量化した。マイナーミスマッチモデルにおいて、自己移植片へのT細胞の添加は、BM対照レシピエントと比較して、7日目に、IL−2及びIFN−γを、それぞれ15.7±4.1から30.3±2.8及び3.7±1.0から109.9±18.9pg/ml血清に増加した(それぞれ、p<0.05)(表3)。同様に、BM対照レシピエントと比較して、7日目に、Th2サイトカインIL−1β及びTNF−αは、それぞれ、6.8±1.9から13.4±1.1及び2.3±1.2から24.3±7.0pg/ml血清に増加した(それぞれ、p<0.05)(表3)。宿主ASMaseの遺伝子不活性化は、7日目に、血清IL−2及びIFN−γを、それぞれ19.1±2.0及び32.8±12.4pg/ml血清に、(asmase+/+宿主に対してp<0.05)並びにIL−1β及びTNF−αを、それぞれ2.9±1.2及び17.3±3.0pg/ml血清に(asmase+/+宿主に対してp<0.05且つ有意でない)減少させた(表3)。血清サイトカインの減衰は、C57BL/6宿主へのドナーB10.BR BM及びT細胞のメジャーミスマッチモデルに渡って保存され(表2、asmase+/+対asmase−/−宿主における119.1±14.2対63.3±10.8pg/mlのIFN−γ p<0.05、asmase+/+対asmase−/−宿主における136.8±11.5対63.7±9.0pg/mlのTNF−α、p<0.005)、ASMase欠損は、同系異種BM及びT細胞のレシピエントにおける血清サイトカイン産生を通常弱めたことを実証した。
【0174】
血清サイトカインレベルの増加は、T細胞増殖に直接影響する111。BM及びT細胞のasmase−/−レシピエントにおける血清サイトカインの減衰が、ドナーT細胞増殖に影響を与えるかどうかを評価するために、LP/J(H−2b、マイナーMHC不適合)又はB10.BR(H−2k、メジャーMHC不適合)ドナー由来のカルボキシフルオレセイン スクシンイミジル エステル(CFSE)標識T細胞(10−20x106)をasmase+/+又はasmase−/−バックグラウンドの致死照射C57BL/6宿主内に注入した。LP及びB10.BRのCD4+T細胞のin vivoでの増殖は、asmase+/+同腹子と比較して、asmase−/−において統計的に差異がない(図23A 上段パネル及びB10.BRについては非掲載)一方で、CD8+T細胞増殖は、マイナー(図12A)及びメジャーMHC(非掲載)不一致モデルの両方に渡って有意に損なわれた。注入3日後、CD8+細胞の増殖は、asmase−/−宿主から回収した集団の26.4%と比較して、asmase+/+宿主における全ドナーLP CD8+T細胞集団の54.1%を占めた(図23A下段パネル、p<0.005)。同様に、asmase+/+宿主における全ての集団の81.5%からasmase−/−宿主における67.1%にまで、増殖ドナーB10.BR CD8+細胞は減少した(非掲載、p<0.005)。さらに、増殖の減弱は、BM及び3x106T細胞の注入から14日後においてasmase+/+レシピエントにおける1.69±0.28x106細胞からasmase−/−レシピエントにおける0.55±0.28x106まで、脾臓ドナーLP/J CD8+T細胞の有意な減少をもたらした(図23B、p<0.001)。
【0175】
in vivoで増殖を損なったにも関わらず、LP/J TCD−BM及びT細胞と共に同種移植したasmase−/−又はasmase+/+宿主由来の脾臓T細胞は、conAでチャレンジした場合にex vivoで同様の特異的増殖応答を提示するため、T細胞増殖能力は、asmase−/−宿主内への移植においてインタクトなままであった(図24)。T細胞増殖能力は、asmase−/−宿主への移植においてインタクトなままである。同系(LP)又は同種異系(Balb/c)脾細胞又はマイトジェン(ConA)に対する応答におけるドナーLP BM及びT細胞のC57BL/6asmase+/+又はC57BL/6asmase−/−レシピエントから採取した脾臓T細胞の増殖を測定するチミジン取り込みアッセイ。データ(平均±標準誤差)は、3つの独立した実験から得られる3連の測定値を示す。
【0176】
さらに、増殖は、照射した第三者のT細胞チャレンジに対する応答においてインタクトであり(Balb/c)、照射LP/J T細胞に対する応答はなかったため(図23)、LP/J BM+T細胞を伴う移植後21日でのasmase+/+及びasmase−/−宿主由来T細胞のex vivoにおける同種活性は似ていた。これらのデータは、asmase−/−宿主におけるin vivoでのCD8+CTL増殖の欠損を実証し、並びに、これらのBMTレシピエントにおいて、血清炎症性サイトカインレベルの減衰への生物学的意義のある結果を示す。
【0177】
実施例4
2A2抗体の作成方法
ハイブリドーマ作製
【0178】
C57BL/6マウスをカポジ肉腫細胞で8回免疫付与し、ELISAによる評価のために血清を採取した。あるいは、マウスをBSA結合C16セラミドで免疫した。ELISAによってセラミド結合について血清を試験し、陽性と評価された動物を屠殺した。末梢リンパ節を採取し、浸漬してB細胞を放出させた。Sp2/0骨髄腫細胞を用いてPEG介在性融合を精製B細胞で行い、該融合をHAT添加DMEM含有培地プレートに播種した。その後、5日目にハイブリドーマを与え、10日目に上清を採取し、ELISAによりセラミド結合について試験した。上清がセラミドと結合するが、BSA又はC16ジヒドロセラミドには結合しない場合のみ、クローンは陽性であると決定した。陽性クローンをHT添加DMEM中で増殖し、限定希釈法によりサブクローニングし、ELISAにより再評価した。
【0179】
ELISAアッセイ
【0180】
抗原(BSA結合C16セラミド、BSA結合C16ジヒドロセラミド又はBSA)を、終夜4℃でのインキュベーションにより、NUNC Maxisorp免疫プレート上に吸収させた(absorped)。非結合抗原を、0.05% Tween20含有リン酸緩衝生理食塩水(PBS)により洗浄し、プレートを5% ミルク含有PBSで飽和した。ハイブリドーマ上清又は一次抗体インキュベーションを室温で2時間行った。PBS+0.05% Tween20で3回洗浄後、二次抗体インキュベーション(HRP結合抗マウス抗体)を室温で2時間行った。さらに3回洗浄後、3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン(TMB)を用いて抗体結合を検出し、酸性溶液を用いて停止し、吸光度を450nmで定量化した。
【0181】
抗体精製
【0182】
ハイブリドーマ由来の組織培養上清を滅菌濾過し、予め洗浄したタンパク質Gと1時間4℃で混合した。タンパク質Gを採取し、10倍量のPBSで洗浄した。抗体を50mM クエン酸、140mM NaCL、pH2.7で溶出した。抗体含有画分をTrisにより中和し、透析し、抗体をカラムアフィニティーにより精製した。NaCL勾配を用いて抗体を溶出した。抗体を25mM リン酸塩、100mM NaCL、pH5.8に対して透析し、1mg/mlに分割し、−20℃で保管した。
【0183】
2A2抗体作成方法
モノクローナル抗体の産生
【0184】
5匹の8週齢雌BALB/cマウスを、IPを介して0.5mlのカポジ肉腫細胞(4x107/ml)で免疫した。動物を、週に1度、3回免疫した。最後の免疫の後1週間で、マウスを出血し、抗血清における抗体応答をFACS解析により評価した。ハイブリドーマ調製のために1匹のマウスを選んだ。細胞融合前3日間、KS細胞の追加免疫を受けた。ポリエチレングリコール(MW 1500)を用いて、KS細胞で免疫したBALB/cマウス由来の脾細胞をマウス骨髄腫細胞(P3X63Ag8.653、ATCC)と4:1の割合で融合した。融合後、細胞を96ウェルプレートに1x105細胞/ウェルで、20%ウシ胎仔血清、10% ハイブリドーマ添加物(Sigma)、2mM L−グルタミン、100U/ml ペニシリン、100mg/ml ストレプトマイシン、10mM HEPES及び1xヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(Sigma)含有RPMI1640選択培地に播種し、培養した。KS細胞におけるFACS解析及び市販のタンパク質混合物(アネキシンV、セラミドBSA及びAPA)を用いるELISAによりハイブリドーマ上清を選択した。選ばれたハイブリドーマを限定希釈法により4回サブクローニングし、アネキシンV塗布プレート上でELISAにより検査した。条件培地を安定ハイブリドーマ培養物から採取した。mAbのIgクラスをマウスmAbアイソタイピングキット(Santa Cruz)で決定した。mAbの免疫グロブリンクラスを,マウスmAbアイソタイプキットを用いて決定した。アネキシンVに結合する2A2 mAb(mIgM)は、ELISAにより確認されたセラミドに対する弱い交差結合活性を有する。
【0185】
抗体ヒト化。マウス2A2抗体の重(VH)及び軽(VL)鎖の両方に対する可変領域を得るために、一般的な分子クローニング技術(RT−PCR又は5’−RACE)を用いた。キメラ2A2抗体を作成し、マウス両親と同等の結合特性を確認する。相補性決定領域(CDR)移植を用いることによりキメラ2A2抗体をヒト化する。一連のヒト生殖細胞系遺伝子由来のヒトフレームワーク配列を、マウス2A2抗体のCDRに対するヒト抗体のCDRの類似性に基づいて選択する。抗体親和性及び生産量を改善するために、抗体の可変領域のフレームワーク領域における重要な残基を交換することにより、抗原結合ループの構造を微調整するために、抗体をさらに操作する。
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願出願は、2007年5月6日に出願された仮出願第60/916,007号の利益を主張しており、合衆国法典第35巻第119条(e)に基づいて、その全ての内容は、本明細書内に完全に説明されているかのように、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の利益の提示
本発明は、国立衛生研究所の助成金CA85704の下での政府の支援と共になされた。政府は本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、GI症候群及び移植片対宿主病を治療及び予防する方法の分野におけるものである。
【0004】
2.関連技術の説明
放射線療法は、依然として、様々な悪性細胞に対する最も効果的な治療法の一つである;しかしながら、骨髄、毛包、表皮及び消化管の正常細胞は、放射線誘導細胞死に対して極めて感受性であり、癌治療のための本治療法の効果的な利用を限定している。骨髄移植は進行性の癌を治療するための別の方法であるが、臓器移植は、宿主における種々の免疫応答をしばしば引き起こし、これは移植片の拒絶及び移植片対宿主病(以下、「GVHD」と言う)をもたらす。骨髄移植は、急性及び慢性白血病、骨髄腫、固形腫瘍(R. J. Jones, Curr Opin Oncol 3 (2), 234(1991); G. L. Phillips, Prog Clin Biol Res 354B, 171(1990))、再生不良性貧血及び重症免疫不全症の(immunodeficiency's)(R. P. Gale, R. E. Champlin, S. A. Feigら、Ann Intern Med 95(4), 477(1981); G. M. Silber, J. A. Winkelstein, R. C. Moenら、Clin Immunol Immunopathol 44(3), 317(1987))を含む、多くの悪性及び非悪性疾患を治療するために現在用いられている。移植の前に必要とされるコンディショニング(移植前処置)のレジメンは、患者の免疫系を除去又は抑制するのを目的としており、患者を腫瘍の再発又は感染症にかかりやすくする。最近の、非血縁且つHLA非同一のドナーの使用は、残念ながらGvHDの発生率を増加させた。ドナーの骨髄移植片からのT細胞の除去はGvHDを改善するが、このストラテジーは生着不全率を増加させ、治療に有益な移植片対腫瘍効果を顕著に減少させる。そのため、生存全体は改善しない。さらには、強力な前臨床データにも関わらず、コルチコステロイドにTNFアンタゴニストを添加して炎症性サイトカインの作用を減少させることによりGvHDの転帰の改善を試みる、急性GvHDケアの標準が提供する治療的有用性は限られている。したがって、臨床的に最適化され得るのであれば、GI症候群及びGvHDの発生率及び重症度を減少させるための代替的なストラテジーに対する緊急の必要性が存在している。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】ASMase及びBax欠損は、C57BL/6の腸粘膜を放射線誘導微小血管内皮アポトーシスから保護する。近位空腸検体を野生型(第2パネル)及びasmase−/−(第3パネル)及びBax−/−(第4パネル)C57BL/6マウスから15Gy TBIの4時間後に採取し、非照射野生型マウスから採取した検体(第1パネル)と比較した。内皮細胞のアポトーシス核(赤、CD31染色)は、絨毛粘膜固有層において、TUNEL染色により、非アポトーシス核の青い染色と対照的に、濃縮又は断片化された茶色の核として同定された。矢印はアポトーシス内皮細胞を示す。
【図2】ASMase欠損は、腸粘膜を放射性誘導微小血管内皮アポトーシス及び陰窩幹細胞致死から保護する。(A)TUNEL染色により評価した、0から15Gy TBIの4時間後の照射asmase+/+及びasmase−/−マウスの絨毛固有層におけるアポトーシス細胞の頻度ヒストグラムである。アポトーシス細胞は、ポイントあたり200の絨毛の粘膜固有層においてスコア化した。データは、2つの実験から得られた平均スコアを表す。(B)C3HeB/FeJの近位空腸の横断面を照射前または照射後3.5日のいずれかに採取し、ヘマトキシリンで染色した。生存再生陰窩に典型的である、大きな好色素性陰窩は照射検体において見られ(中段及び下段パネル)、これは対照の非照射陰窩(上段パネル)と比較すると有意に拡大している。(C)15Gy TBI後のasmase+/+及びasmase−/−C57BL/6の剖検から採取した、H&E染色した近位空腸及び大腿骨切片である。致死の日を記している。
【図3−1】Bax欠損は、マウスの腸を放射線誘導内皮アポトーシス、陰窩致死及び致死性GI症候群から保護する。(A)C57Bl/6マウスを15Gy TBI(A)又は13−15Gy TBI(B)に曝露し、組織試料を採取し、図1及び2において記載するように処理した。示された各応答に関する2つの実験において、似たような結果を得た。データを、(A)ポイントあたり200の絨毛の固有層における平均アポトーシス細胞及び(B)4匹の各マウスについてスコア化した、10−20の周囲由来の平均±標準誤差の生存陰窩として報告した。(C)12−15Gy TBIに曝露後、自家骨髄移植を受けている8−12週齢のC57BL/6マウスの保険数理的な生存率カーブである。保険数理的な生存率は、積極限カプラン−マイヤー法[Kalpan, 1958 #47]により計算した。4−10匹の動物を群ごとに照射した。データは、複数の実験に起因する照合した生存率の結果を表す。
【図3−2】Bax欠損は、マウスの腸を放射線誘導内皮アポトーシス、陰窩致死及び致死性GI症候群から保護する。(A)C57Bl/6マウスを15Gy TBI(A)又は13−15Gy TBI(B)に曝露し、組織試料を採取し、図1及び2において記載するように処理した。示された各応答に関する2つの実験において、似たような結果を得た。データを、(A)ポイントあたり200の絨毛の固有層における平均アポトーシス細胞及び(B)4匹の各マウスについてスコア化した、10−20の周囲由来の平均±標準誤差の生存陰窩として報告した。(C)12−15Gy TBIに曝露後、自家骨髄移植を受けている8−12週齢のC57BL/6マウスの保険数理的な生存率カーブである。保険数理的な生存率は、積極限カプラン−マイヤー法[Kalpan, 1958 #47]により計算した。4−10匹の動物を群ごとに照射した。データは、複数の実験に起因する照合した生存率の結果を表す。
【図4】セラミドの中和は、プラットフォーム生成を中和し、in vitroでの放射線誘導アポトーシスを弱める。(A)10Gy IR15分前の抗セラミドMID15B4(1μg/ml)とのJurkat T細胞の予備培養は、プラットフォーム生成を弱めた。プラットフォームを、抗セラミドMID15B4(1:30)及びTexas−Red結合抗マウスIgM(1:500)で染色後の明視野顕微鏡検査により定量化した。(B)アポトーシスを、抗セラミドMID15B4(1μg/ml)での予備培養の有り又は無しで、Hoeschstビスベンズイミド染色後の核形態学的解析によりJurkat細胞において定量化した。最も少なくて150個の細胞由来のデータを、3つの独立した実験から得た。
【図5−1】セラミドの隔離は、C57BL/6の腸粘膜を放射線誘導微小血管内皮アポトーシス、陰窩幹細胞死及び致死GI毒性から保護する。(A)陰窩微小コロニーアッセイにより評価した陰窩生存率である。生存陰窩は、図4に示すように特定され、計数された。各線量レベルにおける生存画分の計算についてのデータを同時に照射された2−4匹の動物からまとめ、マウスごとに10−20の周囲をスコア化した。データは、平均±標準誤差として報告した。(B)TUNEL染色により評価した、15Gy TBIの4時間後の照射asmase+/+及びasmase−/−マウスの絨毛固有層におけるアポトーシス細胞の頻度ヒストグラムである。アポトーシス細胞を、ポイントあたり200の絨毛の粘膜固有層においてスコア化した。データは、2つの実験から照合した平均スコアを表す。(C)抗セラミド又はIgMを投与し、15Gy TBIに曝露した8−12週齢のC57BL/6マウスの保険数理的な生存率カーブである。保険数理的な生存率を、積極限カプラン−マイヤー法[Kalpan, 1958 #47]により計算した。5−10匹の動物を群ごとに照射した。似たようなデータが3つの実験において得られた。(D))15Gy TBIの15分前の抗セラミドMID15B4(100μg)とのC57BL/6マウスの前処理は、対照IgM処理と比較して内皮アポトーシスを弱めた。15Gy照射後4時間で採取した小腸及び肺組織をTUNELにより染色した。アポトーシス細胞は茶色に染色した核により示される。データ(平均±標準誤差)は、2つの独立した実験の最も少なくて150個の絨毛から得た。
【図5−2】セラミドの隔離は、C57BL/6の腸粘膜を放射線誘導微小血管内皮アポトーシス、陰窩幹細胞死及び致死GI毒性から保護する。(A)陰窩微小コロニーアッセイにより評価した陰窩生存率である。生存陰窩は、図4に示すように特定され、計数された。各線量レベルにおける生存画分の計算についてのデータを同時に照射された2−4匹の動物からまとめ、マウスごとに10−20の周囲をスコア化した。データは、平均±標準誤差として報告した。(B)TUNEL染色により評価した、15Gy TBIの4時間後の照射asmase+/+及びasmase−/−マウスの絨毛固有層におけるアポトーシス細胞の頻度ヒストグラムである。アポトーシス細胞を、ポイントあたり200の絨毛の粘膜固有層においてスコア化した。データは、2つの実験から照合した平均スコアを表す。(C)抗セラミド又はIgMを投与し、15Gy TBIに曝露した8−12週齢のC57BL/6マウスの保険数理的な生存率カーブである。保険数理的な生存率を、積極限カプラン−マイヤー法[Kalpan, 1958 #47]により計算した。5−10匹の動物を群ごとに照射した。似たようなデータが3つの実験において得られた。(D))15Gy TBIの15分前の抗セラミドMID15B4(100μg)とのC57BL/6マウスの前処理は、対照IgM処理と比較して内皮アポトーシスを弱めた。15Gy照射後4時間で採取した小腸及び肺組織をTUNELにより染色した。アポトーシス細胞は茶色に染色した核により示される。データ(平均±標準誤差)は、2つの独立した実験の最も少なくて150個の絨毛から得た。
【図6】ヒト化抗セラミドモノクローナル抗体を生成するために用いた戦略を示すフローチャート。
【図7】抗原(Ag)の開発、スクリーニングのためのELISAの検証。(挿入図)BSA結合セラミドは、スフィンゴイド塩基にBSA結合C16脂肪酸を合成することにより生成した。抗体スクリーニングのためのAgの検証はELISAアッセイにより行い、該アッセイでは、減少する量のAgを、プレートに固定し、ブロッキング後に各ウェルを、抗セラミドMID15B4抗体(1:100)、次に西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗マウスIgMと共にインキュベートした。ODを、(西洋ワサビペルオキシダーゼ)HRP基質の投与後に650nmで評価した。
【図8】BSAセラミドELISAは、カポジ肉腫細胞での免疫後の上清#3673における増大した結合活性を明らかにした。1:100希釈でのELISAにより免疫されたマウスから採取したプラズマ試料の結合は、試料#3674に対して、試料#3673によるセラミドのより高度な結合を明らかにした。結合活性は、抗体産生B細胞(sn73−I−C6)の不死化後もとどまり、抗セラミド結合活性を伴うモノクローナル2A2 IgMの単離を可能にする(非掲載)。
【図9】精製したモノクローナル2A2抗体は、BSAセラミドに結合する。Elisaは、2A2マウスモノクローナルIgMがBSAセラミドに結合することを明らかにした。Elisaは、図7にあるように行われ、対照IgMに対して、2A2のより著しい結合能力を示す。2A2は、MID15B4マウスIgMよりも5−10倍効率悪くセラミドに結合する。
【図10】2A2は、in vitroでの、放射線誘導アポトーシスを中和する。8Gy IR前15分の抗セラミド2A2(0−100μg/ml)でのJurkat T細胞の予備培養。抗セラミド抗体での予備培養の有り又は無しでの、Hoeschstビスベンズイミド染色後の、核形態学的解析により、アポトーシスをJurkat細胞において定量化した。データは、3つの独立した実験から得た最も少なくて150個の細胞由来である。
【図11】2A2は、in vivoでの15Gy後の陰窩生存率を増強した。(A)漸増用量の2A2抗セラミド(0−750μg)でのC57BL/6マウスの前処理は、15Gy TBI後3.5日の陰窩生存率を改善する。(B)2A2抗セラミド抗体は、1.2の線量修飾係数(DMF)(過去の研究において、ASMase欠損は、C57BL/6マウスにおいて、1.2のDMFで陰窩生存率を増加させた)による8−15Gy 全身照射後の陰窩生存率を増加させる。陰窩生存率は、図5cにあるようにして決定した。
【図12】2A2抗体は、14−17Gy 単一線量の放射線に曝露したC57BL/6マウスの生存率を改善する。IR前15分、750μg 2A2の有り又は無しでのC57BL/6マウスを、14−17Gy TBIで照射した。マウスは、IRの16時間内に、3×106自家骨髄細胞を注入された。生存率を、モニタリングし、カプラン−マイヤーパラメータを用いて表した。統計的有意性(p<0.05)を、各線量において達成した。
【図13】2A2抗体は、in vivoでの放射線誘導GI死を弱め、asmase−/−表現型を再現する。図12において行った生存率の研究からの、瀕死の時に屠殺したマウスの剖検結果。近位空腸検体が90%より多い陰窩−絨毛ユニットの露出を見せ、且つ陰窩の再生がない場合、GI死と判定した。脱灰した大腿骨切片が、造血因子の枯渇及び大量出血を示す場合、骨髄(BM)死と判定した。
【図14】急性GvHDの免疫病態生理を示す図解。
【図15】宿主ASMaseは、移植片対宿主に関連する疾病率及び死亡を制御する。致死に照射された(1100cGy)C57BL/6asmase+/+又はC57BL/6asmase−/−マウスは、脾臓T細胞(3x106)の有り又は無しでのLP TCD−BM細胞(5x106)の静脈注射を受けた。カプラン−マイヤー生存率(A)及び5つの臨床パラメータ(体重減少、猫背の姿勢、活動性低下、毛の波打ち現象(fur ruffling)及び皮膚病変)の週に一度の評価から導出される臨床的GvHDスコア;117(B)を示しており、これは、2つの実験から集められた群ごとに6−8のBM対照及び13−14のBM+T細胞レシピエントを示す。統計解析は次の通りである:(A)□対■ p<0.001、■対● p<0.001。(B)□対■ p<0.05、■対● p<0.05。
【図16−1】in vivoにおいて活性化された同種異系CTLは、ex vivoにおける効率的致死のために標的肝細胞ASMaseを必要とする。実施例1に記載するように単離した肝細胞を、LP BM+T細胞の移植後10−14日に、致死的に照射された野生型C57BL/6のレシピエントから採取した脾臓T細胞と共培養した。(A)2x106GvH活性CTLを、0.5x106野生型C57BL/6又はB6.MRL.lpr(FasR−/−)肝細胞(左パネル)と共に、完全培地で16時間共培養した。あるいは、DMSO又はコンカナマイシンAで前処理した(100ng/ml、30分)GvH活性化CTLを、0.5x106野生型C57BL/6肝細胞と共に、16時間共培養した(右パネル)。アポトーシスを、固定後に核のビスベンズイミド染色により定量化した。(B)asmase−/−肝細胞は、GvH活性化CTLにより誘導されたアポトーシスに対して抵抗性である。CTL共培養を、(A)にあるように行い、アポトーシスをこの16時間後に定量化した。(C)2x106GvH活性化T細胞と共に懸濁液中で10分共培養後の、asmase+/+(上段左パネル)及びasmase−/−(下段左パネル)のC57BL/6肝細胞の代表的画像。肝細胞を、実施例1に記載するようにDAPI及びCy−3標識抗セラミドmAbで固定し、染色した。矢印は、原形質膜の外層におけるセラミドリッチプラットフォーム生成を示す。留意すべきは、インキュベーション後、染色及びイメージング前に、細胞を50xgで4分、4℃で遠心分離した。したがって、肝細胞(大きな青い核)と共に分布しているCTL(小さな青い核)は、生物学的関連性を反映していない。(D)2x106GvH活性化CTLとインキュベーション後のasmase+/+及びasmase−/−肝細胞における、セラミドリッチプラットフォームの定量。0.5x106肝細胞を、示した時間共培養し、上記のように固定し、染色した。(E)外因性C16−セラミドは、標的細胞ASMaseの必要性を回避し、GvH活性化CTL刺激asmase−/−肝細胞にアポトーシスを付与する。アポトーシスを、(A)にあるように定量化した。(F)ナイスタチンでの膜GEMの崩壊は、CTL誘導肝細胞アポトーシスを阻害する。50μg/mL ナイスタチンで30分間予備培養し、1%脂質フリーFBS含有RPMIで再懸濁した、0.5x106野生型肝細胞を、2x106GvH活性化T細胞と共培養し、アポトーシスを、(A)にあるように定量化した。データ(平均±標準誤差)は、パネルA、B、D、E及びFのそれぞれについての3つの独立した実験の3連の測定値を表す。
【図16−2】in vivoにおいて活性化された同種異系CTLは、ex vivoにおける効率的致死のために標的肝細胞ASMaseを必要とする。実施例1に記載するように単離した肝細胞を、LP BM+T細胞の移植後10−14日に、致死的に照射された野生型C57BL/6のレシピエントから採取した脾臓T細胞と共培養した。(A)2x106GvH活性CTLを、0.5x106野生型C57BL/6又はB6.MRL.lpr(FasR−/−)肝細胞(左パネル)と共に、完全培地で16時間共培養した。あるいは、DMSO又はコンカナマイシンAで前処理した(100ng/ml、30分)GvH活性化CTLを、0.5x106野生型C57BL/6肝細胞と共に、16時間共培養した(右パネル)。アポトーシスを、固定後に核のビスベンズイミド染色により定量化した。(B)asmase−/−肝細胞は、GvH活性化CTLにより誘導されたアポトーシスに対して抵抗性である。CTL共培養を、(A)にあるように行い、アポトーシスをこの16時間後に定量化した。(C)2x106GvH活性化T細胞と共に懸濁液中で10分共培養後の、asmase+/+(上段左パネル)及びasmase−/−(下段左パネル)のC57BL/6肝細胞の代表的画像。肝細胞を、実施例1に記載するようにDAPI及びCy−3標識抗セラミドmAbで固定し、染色した。矢印は、原形質膜の外層におけるセラミドリッチプラットフォーム生成を示す。留意すべきは、インキュベーション後、染色及びイメージング前に、細胞を50xgで4分、4℃で遠心分離した。したがって、肝細胞(大きな青い核)と共に分布しているCTL(小さな青い核)は、生物学的関連性を反映していない。(D)2x106GvH活性化CTLとインキュベーション後のasmase+/+及びasmase−/−肝細胞における、セラミドリッチプラットフォームの定量。0.5x106肝細胞を、示した時間共培養し、上記のように固定し、染色した。(E)外因性C16−セラミドは、標的細胞ASMaseの必要性を回避し、GvH活性化CTL刺激asmase−/−肝細胞にアポトーシスを付与する。アポトーシスを、(A)にあるように定量化した。(F)ナイスタチンでの膜GEMの崩壊は、CTL誘導肝細胞アポトーシスを阻害する。50μg/mL ナイスタチンで30分間予備培養し、1%脂質フリーFBS含有RPMIで再懸濁した、0.5x106野生型肝細胞を、2x106GvH活性化T細胞と共培養し、アポトーシスを、(A)にあるように定量化した。データ(平均±標準誤差)は、パネルA、B、D、E及びFのそれぞれについての3つの独立した実験の3連の測定値を表す。
【図17】in vitroでの混合リンパ球反応(MLR)アッセイの概略図。
【図18】in vitroでの活性化誘導細胞死(AICD)アッセイの概略図。
【図19−1】in vitroでの活性化CTLは、効率的致死のために標的脾細胞ASMaseを必要とする。(A)2x106照射された(2Gy)C57BL/6脾細胞/ml培地で5日間in vitroで、活性化された、エフェクターBalb/c脾臓T細胞と20分間2:1の標的:エフェクター比率で共培養した際の、ミトトラッカーレッド標識した、conA活性化(5mg/mlで24時間)標的C57BL/6asmase+/+及びC57BL/6asmase−/−脾細胞の表面に形成された、セラミドリッチプラットフォーム(矢印)の代表的画像。標的脾細胞を4% リン酸緩衝ホルマリンで固定し、DAPI及びFITC標識抗セラミドmAbで染色した。(B)クロム遊離アッセイにより測定した、エフェクターBalb/c脾臓T細胞との6時間の共培養後の、51Cr標識標的C57BL/6asmase+/+及びC57BL/6asmase−/−脾細胞の溶解。(C)500nM C16−セラミド又はC16−ジヒドロセラミド(DCer)の存在下での、(B)にあるような活性化エフェクターBalb/c脾臓T細胞に対する、51Cr標識標的C57BL/6asmase−/−脾細胞の細胞溶解応答。(D)材料及び方法に記載のように10ng/ml 抗CD3でのAICDの誘導後4時間の、C57BL/6asmase+/+及びC57BL/6asmase−/−C57BL/6脾臓T細胞の表面に形成された、セラミドリッチプラットフォーム(矢印)の代表的画像。細胞を、4% リン酸緩衝ホルマリンで固定し、DAPI及びFITC標識抗セラミドmAbで染色した。AICDは、asmase+/+T細胞における平均蛍光強度による決定でセラミドシグナル全体における2.0±0.1倍の増加を誘導するが(未規定の対照に対してp<0.005)、asmase−/−T細胞においては明らかではなく、パネル間での全体的な染色における差異を説明している。(E)(D)にあるようなAICD誘導後の、プラットフォームにおけるセラミド(上から2番目のパネル)及びGM1(上から3番目のパネル)共局在化の共焦点顕微鏡検出。プラットフォームを、それぞれ抗セラミドMID15B4及びFITC結合コレラ毒素のCy3抗マウスIgM検出を用いて同定した。(F)AICDアポトーシス同胞殺し(apoptotic fratricide)後のC57BL/6asmase+/+又はC57BL/6asmase−/−脾臓T細胞のアポトーシス応答を(D)にあるようにして誘導した。アポトーシスを、核ビスベンズイミド染色の16時間後に定量した。(G)500nM C16−セラミド又はC16−ジヒドロセラミドの存在下で、(D)にあるようにC57BL/6asmase−/−脾臓T細胞において、AICDを開始した。アポトーシスを、核ビスベンズイミド染色の16時間後に定量した。データ(平均±標準誤差)は、パネルB、C、F及びGについての3つの独立した実験の3連の試料を表す。
【図19−2】in vitroでの活性化CTLは、効率的致死のために標的脾細胞ASMaseを必要とする。(A)2x106照射された(2Gy)C57BL/6脾細胞/ml培地で5日間in vitroで、活性化された、エフェクターBalb/c脾臓T細胞と20分間2:1の標的:エフェクター比率で共培養した際の、ミトトラッカーレッド標識した、conA活性化(5mg/mlで24時間)標的C57BL/6asmase+/+及びC57BL/6asmase−/−脾細胞の表面に形成された、セラミドリッチプラットフォーム(矢印)の代表的画像。標的脾細胞を4% リン酸緩衝ホルマリンで固定し、DAPI及びFITC標識抗セラミドmAbで染色した。(B)クロム遊離アッセイにより測定した、エフェクターBalb/c脾臓T細胞との6時間の共培養後の、51Cr標識標的C57BL/6asmase+/+及びC57BL/6asmase−/−脾細胞の溶解。(C)500nM C16−セラミド又はC16−ジヒドロセラミド(DCer)の存在下での、(B)にあるような活性化エフェクターBalb/c脾臓T細胞に対する、51Cr標識標的C57BL/6asmase−/−脾細胞の細胞溶解応答。(D)材料及び方法に記載のように10ng/ml 抗CD3でのAICDの誘導後4時間の、C57BL/6asmase+/+及びC57BL/6asmase−/−C57BL/6脾臓T細胞の表面に形成された、セラミドリッチプラットフォーム(矢印)の代表的画像。細胞を、4% リン酸緩衝ホルマリンで固定し、DAPI及びFITC標識抗セラミドmAbで染色した。AICDは、asmase+/+T細胞における平均蛍光強度による決定でセラミドシグナル全体における2.0±0.1倍の増加を誘導するが(未規定の対照に対してp<0.005)、asmase−/−T細胞においては明らかではなく、パネル間での全体的な染色における差異を説明している。(E)(D)にあるようなAICD誘導後の、プラットフォームにおけるセラミド(上から2番目のパネル)及びGM1(上から3番目のパネル)共局在化の共焦点顕微鏡検出。プラットフォームを、それぞれ抗セラミドMID15B4及びFITC結合コレラ毒素のCy3抗マウスIgM検出を用いて同定した。(F)AICDアポトーシス同胞殺し(apoptotic fratricide)後のC57BL/6asmase+/+又はC57BL/6asmase−/−脾臓T細胞のアポトーシス応答を(D)にあるようにして誘導した。アポトーシスを、核ビスベンズイミド染色の16時間後に定量した。(G)500nM C16−セラミド又はC16−ジヒドロセラミドの存在下で、(D)にあるようにC57BL/6asmase−/−脾臓T細胞において、AICDを開始した。アポトーシスを、核ビスベンズイミド染色の16時間後に定量した。データ(平均±標準誤差)は、パネルB、C、F及びGについての3つの独立した実験の3連の試料を表す。
【図20】2A2抗体は、in vivoでの急性GvHDに影響を及ぼし、asmase−/−表現型を部分的に再現する。図14に記載のような、LP BM及びT細胞の移植後のカプラン−マイヤー生存率解析。2A2抗体を受けている群は、1100cGy分割線量TBIの前半の15分前に、750μgの抗体を受けた。
【図21】2A2抗体は、急性GvHDに関連する血清サイトカインストームを弱める。図15からの実験的急性GvHDをわずらっているマウスから、BMT7日後に血清を採取した。血清インターフェロンγを、製造者のプロトコル(R&D Systems)にしたがって、ELISAにより定量化した。
【図22−1】宿主ASMaseは、移植片対宿主標的臓器障害及びアポトーシスを決定する。C57BL/6asmase+/+又はC57BL/6asmase−/−マウスに移植を行い、病理組織学的解析のためにその21日後に屠殺した。(A)代表的な5μM H&E染色した肝臓切片であり、これは、asmase−/−の同腹子と比較して、自家T細胞を受けたasmase+/+宿主における、リンパ球浸潤の増加、門脈領域の膨張及び内皮炎を示している。(B)近位空腸陰窩及び絨毛の代表的な5μM TUNEL染色切片は、固有層及び陰窩のアポトーシスを示す。矢印は、(C)及び(D)においてそれぞれ定量化された、非アポトーシス核の青い染色と対照的な、凝縮又は断片化された茶色の核を含む細胞を示す。絨毛固有層におけるアポトーシス細胞の頻度ヒストグラム(C)は、2つの実験から集められた、ポイントあたり150の絨毛からのデータを示す。陰窩アポトーシス(D)を、ポイントあたり200の陰窩においてスコア化し、2つの実験から集められた平均±標準誤差を表す。(E)C57BL/6レシピエント宿主は、上記のような骨髄移植、あるいはB10.BR(H2k)ドナー由来の0.5x106T細胞の有り又は無しでの10x106TCD−BM細胞を受けた。皮膚(舌及び耳)を、骨髄移植後14日(B10.BRレシピエント)又は21日(LP)に採取し、GvHDスコアは、H&E染色切片での盲検方式での評価で、表皮1mmごとの異常角化及びアポトーシス角化細胞の数(平均±標準誤差)により決定した。データは、3つの独立した実験から集められた、群ごと4−14匹のマウスを表す。
【図22−2】宿主ASMaseは、移植片対宿主標的臓器障害及びアポトーシスを決定する。C57BL/6asmase+/+又はC57BL/6asmase−/−マウスに移植を行い、病理組織学的解析のためにその21日後に屠殺した。(A)代表的な5μM H&E染色した肝臓切片であり、これは、asmase−/−の同腹子と比較して、自家T細胞を受けたasmase+/+宿主における、リンパ球浸潤の増加、門脈領域の膨張及び内皮炎を示している。(B)近位空腸陰窩及び絨毛の代表的な5μM TUNEL染色切片は、固有層及び陰窩のアポトーシスを示す。矢印は、(C)及び(D)においてそれぞれ定量化された、非アポトーシス核の青い染色と対照的な、凝縮又は断片化された茶色の核を含む細胞を示す。絨毛固有層におけるアポトーシス細胞の頻度ヒストグラム(C)は、2つの実験から集められた、ポイントあたり150の絨毛からのデータを示す。陰窩アポトーシス(D)を、ポイントあたり200の陰窩においてスコア化し、2つの実験から集められた平均±標準誤差を表す。(E)C57BL/6レシピエント宿主は、上記のような骨髄移植、あるいはB10.BR(H2k)ドナー由来の0.5x106T細胞の有り又は無しでの10x106TCD−BM細胞を受けた。皮膚(舌及び耳)を、骨髄移植後14日(B10.BRレシピエント)又は21日(LP)に採取し、GvHDスコアは、H&E染色切片での盲検方式での評価で、表皮1mmごとの異常角化及びアポトーシス角化細胞の数(平均±標準誤差)により決定した。データは、3つの独立した実験から集められた、群ごと4−14匹のマウスを表す。
【図23】ドナーのCD8+T細胞の増殖は、asmase−/−宿主において損なわれた。(A)C57BL/6asmase+/+及びC57BL/6asmase−/−レシピエントは、実施例1に記載のように、LP/Jドナー由来の15−206CFSE染色脾臓CD3+T細胞を注入された。脾臓を、その72時間後に採取し、マルチカラーフローサイトメトリーを行った。CFSEが「高い」(平均蛍光値>103である細胞)及び「低い」(平均蛍光値<103)CD4+及びCD8+集団のパーセンテージは、2つの独立した実験のうち代表する1つから示された。(B)実施例1に記載される、LP/J BM及びT細胞注入後14日にC57BL/6 asmase+/+及びC57BL/6 asmase−/−レシピエントから採取したLy9.1+ドナーのLP/J T細胞のフローサイトメトリー解析。データ(平均±標準誤差)は、2つの独立した実験の4−12の測定値を表す。
【図24】T細胞増殖能は、asmase−/−宿主においてインタクトなままである。同系(LP)もしくは自家(Balb/c)脾細胞又はマイトジェン(ConA)に応えて、ドナーのLP BM及びT細胞のC57BL/6asmase+/+又はC57BL/6asmase−/−レシピエントから採取した脾臓T細胞の増殖を測定するチミジン取り込みアッセイ。データ(平均±標準誤差)は、3つの独立した実験からの3連の測定値を表す。
【図25】1H4、5H9及び15D9ハイブリドーマ細胞系を、6回のサブクローニング後に確立した。ハイブリドーマ上清は、Jurkat細胞アポトーシス阻害アッセイにおいて検査され、用量依存的であり、かつ2A2と同程度の保護効果を示した。3つの抗体のアイソタイプを確立した。15D9 mAbは、IgM、κである。1H4及び5H9 mAbは、mIgG3、κである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
略語リスト
ASMase − 酸性スフィンゴミエリナーゼ
BMT − 骨髄移植
CTL − 細胞傷害性Tリンパ球
ERK − 細胞外シグナル関連キナーゼ
FADD − Fas関連デスドメイン
FcRγII − FcレセプターγII
FITC − フルオレセインイソチオシアネート
GVHD − 移植片対宿主病
GVT − 移植片対腫瘍
IL − インターロイキン
JNK − c−Jun N末端キナーゼ
mHAg − 副組織適合(histocompatability)抗原
MHC − 主要組織適合(histocompatability)複合体
MLR − 混合リンパ球反応
SDS-PAGE − ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動
TCR − T細胞レセプター
TNF − 腫瘍壊死因子
TUNEL − 末端dUTPニック末端標識
【0007】
詳細な説明
我々は、抗セラミド抗体の投与が、放射線誘導GI症候群、移植片対宿主病、炎症性疾患及び自己免疫疾患(本明細書内に列挙された疾患)を含む、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)誘導死及び内皮微小血管(microvasculture)への損傷により介在される数々の疾患を治療及び予防する事を発見した。我々はまた、新規抗セラミドモノクローナル抗体2A2及び以下に記載されるその他のものを発見し、これらは、列挙された疾患を治療又は予防するための、好ましくはヒト化形態での治療用途を有する。本発明の他の実施形態は、1以上のスタチン;又はイミプラミンもしくは他のASMase阻害剤又はBax阻害剤と共に抗セラミド抗体を投与することにより、上に列挙された疾患を治療又は予防する併用療法を対象とする。さらに、他の実施形態は、ASMase、Bax及びBakの発現を低下させるか、さもなければ列挙した疾患のいずれかの症状を低減又は改善する量のアンチセンスヌクレオチド又は低分子干渉RNAを投与することを含む。最後に、特定の実施形態は、抗セラミド抗体及び1以上のスタチン又はイミプラミンを含む、列挙された疾患を治療又は予防における治療的使用のための組成物を対象とする。
【0008】
細胞外セラミドは放射線誘導アポトーシスに必要である
【0009】
脂質ラフトは、スフィンゴ脂質と共に密集したコレステロールからなるはっきりした原形質膜ミクロドメインであり、特定のスフィンゴミエリンにおいて、液体無秩序(liquid-disordered)のバルク原形質膜内に液体秩序(liquid-ordered)ドメインを作る。ラフトは、周囲の膜とはタンパク質及び脂質組成が異なり、多数のグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)−アンカータンパク質、Srcファミリーの二重にアシル化されたチロシンキナーゼ及び膜貫通タンパク質を含む、シグナル分子を収容する。さらに、ラフトは、抗原に遭遇した際のB細胞レセプター(BCR)を含め多数のレセプターが、活性化の際に内又は外に移行する部位としての役割を果たす。最近の証拠は、これらの移行の事象が、多数のシグナル伝達カスケードのために極めて重要であることを示している。
【0010】
古典的には細胞膜の構成成分として見なされていたスフィンゴ脂質は、1,2−ジアシルグリセロールが、スフィンゴミエリンのセラミドへの加水分解を促進するという実証によりシグナル伝達の重要な調節因子であり得ることが発見された5。GH3下垂体細胞においてセラミドを産生する酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASMase)の活性を同定することにより、これらの研究は、セカンドメッセンジャーとしてのセラミドの役割の可能性を導入した。この役割は、外因性セラミドの添加によるin vitroでの調節されたタンパク質リン酸化反応事象及びキナーゼ活性の同定により支持された(R. N. Kolesnick及びM. R. Hemer, J Biol Chem 265(31), 18803(1990), S. Mathias, K. A. Dressler、並びにR. N. Kolesnic, Proc Natl Acad Sci U S A 88(22), 10009(1991))。最終的に、腫瘍壊死因子レセプター(TNFR)活性の無細胞系におけるセラミド産生との結合、セラミド産生の阻害によるTNF−α介在性シグナル伝達の拮抗作用、並びにセラミド産生を欠いた細胞におけるTNF−αシグナル伝達の外因性セラミドによる再現は、正規の脂質セカンドメッセンジャーとしてのセラミドを確立した(K. A. Dressler, S. Mathias及びR. N. Kolesnick, Science 255(5052), 1715(1992)。
【0011】
酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASMase)は、リソソーム型及び分泌型の2つの形態で存在する、スフィンゴミエリン特異的ホスフォリパーゼC(スフィンゴミエリンホスフォジエステラーゼ)であり;これは、多くの細胞型において、迅速なストレス応答を開始させる(R. Kolesnick, Mol Chem Neuropathol 21 (2-3), 287(1994); J. Lozano, S. Menendez, A. Morales ら、J Biol Chem 276(1), 442(2001); Y. Morita, G. I. Perez, F. Parisら、Nat Med 6(10), 1109(2000); F. Paris, Z. Fuks, A. Kangら、Science 293(5528), 293(2001); Santana, L. A. Pena, A. Haimovitz-Friedmanら、Cell 86(2), 189(1996))。我々の最近の研究は、セラミドリッチプラットフォーム内への原形質膜の脂質ラフトのクラスタリングが、ASMaseを活性化することができる刺激を増幅することを示した。Grassmeら、J Biol Chem. 2001, 276:20589(これは、参照によって本明細書内に組み込まれる)。これらの研究において、我々は、in vitro及びin vivoにおいて、CD95に誘導されてASMaseが原形質膜外表面へ移行すると放出される、細胞外に配向されたセラミドが、スフィンゴ脂質リッチ膜ラフトにおけるCD95のクラスタリングを可能にし、並びにJerkat細胞におけるアポトーシスを誘導することを示した。ASMaseの欠損、ラフトの破壊又は表面セラミドの中和は、CD95のクラスタリング及びアポトーシスを妨げたが、天然セラミドは、ASMase欠損細胞をレスキューした。データは、セラミドによるCD95介在性クラスタリングが、シグナル伝達及びアポトーシス細胞死についての必要条件であることを示した。Jurkat細胞は、ヒトT細胞白血病細胞株である。
【0012】
セラミドが、いくつかの細胞型におけるFas誘導アポトーシスのために必要であることが他の者らによって示されている。我々は、アポトーシス応答開始の際のUV−C誘導セラミド産生の必要条件を調べた。UV−Cは、100−280nmの波長帯における紫外放射線を意味する。これらの研究において、ASMase活性を阻害するためにイミプラミンが用いられた。50mM イミプラミンでの30分間のJurkat細胞の前処理は、ベースラインのASMase活性を低下させ、刺激後1分でのUV−C及びFas誘導ASMaseの活性化並びに2分でのセラミド産生を無効にし、かつ、刺激後4時間でのアポトーシスを弱めた。これらのデータは、ASMase活性が、最適なFas又はUV−C誘導のアポトーシスに不可欠であることを示しているが、この応答におけるセラミドそれ自体の役割を明確にしてはいない。Grassmeら、J Biol Chem. 2001, 276:20589(これは、参照によって本明細書内に組み込まれる)。
【0013】
セラミドは、分化、増殖及び成長停止において重要な役割を有するが、セラミドに関する最も顕著な役割は、プログラム細胞死の誘導においてである。外因性C8セラミド及びスフィンゴミエリナーゼは、HL60ヒト白血病細胞におけるTNF−α誘導DNA断片化及びクローン原性の低下をミミックし、セラミドがアポトーシスシグナル伝達の必須成分であることを示した(K. A. Dressler, S. Mathias及びR. N. Kolesnic, Science 255(5052), 1715(1992)。電離放射線(IR)は、セラミドへのスフィンゴミエリンの加水分解を促進し、外因性セラミドは、放射線誘導セラミド産生及びアポトーシスのホルボールエステル介在性の阻害を回避することができた(A. Haimovits-Friedman, C. C. Kan, D. Ehleiterら、J Exp Med 180(2), 525(1994))。ASMase活性における遺伝的欠損を特徴とする遺伝病である、ニーマン・ピック患者由来のリンパ芽球は、遺伝学的モデルにおいて、ASMase介在性のセラミド産生が放射線誘導アポトーシスに必要であることを証明し、ASMase欠損マウスの開発は、セラミドについての細胞型特異的な役割の同定を可能にした(J. Lozano, S. Menendez, A. Moralesら、J Biol Chem 276(1), 442(2001); P. Santana, L. A. Pena, A. Haimovitz-Freidmanら、Cell 86(2), 189(1996))。セラミド産生はその後、多数のサイトカイン、ウイルス/病原体、環境ストレス、及び化学療法誘導アポトーシス事象のための必要条件として同定されてきた。Verheij Mら。Requirement for ceramide-initiated SAPK/JNK signaling in stress-induced apoptosis。Nature. 1996 Mar 7; 380(6569): 75-9; Riethmuller Jら。Membrane rafts in host-pathogen interactinons、Biochim Biophys Acta. 2006 Dec: 1758(12): 2139-47(これらは参照によって本明細書内に取り込まれる)。
【0014】
その後、新たに出てきた多数の証拠は、細菌及び病原体の内在化、並びに放射線及び化学療法誘導アポトーシスに対するシグナル伝達の部位として、セラミド介在性のラフトのクラスタリングを認識した。D. A. Brown及びE. London, Annu Rev Cell Dev Biol 14, 111 (1998): J. C. Fanzo, M. P. Lynch, H. Phee ら、Cancer Biol Ther 2 (4), 392 (2003); S. Lacour, A. Hammann, S . Grazideら、Cancer Res 64 (1O), 3593 (2004); Semac, C. Palomba, K. Kulangaraら、Cancer Res 63 (2), 534 (2003; A. B. Abdel Shakor, K. Kwiatkowska、及び A. Sobota, J Biol Chem 279 (35) 36778 (2004); H. Grassme, V. Jendrossek, J. Bockら、J Zmmunol 168 (1), 298 (2002); M. S. Cragg, S. M. Morgan, H. T. Chanら、Blood 101 (3), 1045 (2003);6 D. Scheel-Toellner, K. Wang, L. K. Assi ら、Biochem Soc Trans 32 (Pt 5), 679 (2004).; D. Delmas, C. Rebe, S. Lacourら、J Biol Chem 278 (42), 41482 (2003).;及び C. Bezombes, S. Grazide, C. Garret ら、Blood 104 (4), 1166 (2004)。
【0015】
これに関連して、セラミドリッチプラットフォームは、Jurkat細胞(Zhang及びKolesnick、未発表結果)及びウシ大動脈内皮細胞(Stancevic及びKolesnick、未発表結果)におけるIR誘導アポトーシス、JY B細胞におけるCD40誘導IL−12分泌及びc−Junキナーゼリン酸化反応、緑膿菌(P. aeruginosa)の内在化及び肺における自然免疫応答の活性化、Daudi及びRLリンパ腫細胞におけるリツキシマブ誘導CD20クラスタリング及びERKリン酸化反応、U937ヒト単球細胞におけるFcRγIIクラスタリング及びリン酸化反応、並びに、HT29ヒト結腸癌細胞及び好中球におけるレスベラトロル、シスプラチン、及び活性酸素種誘導アポトーシスのためのシグナルを送る。ASMaseの移行及び活性化の下流の効果についての更なる研究にも関わらず、ASMaseシグナル伝達を開始させるカプセース(capsase)非依存の経路があることを我々が示すまで、原形質外膜上へのその移行を介在する起因事象についてはほとんど分かっていなかった。J.A. Rotolo ら、J. Biol. Chem. Vol 280, No. 29, Issue of July 15,26425-34 (2005)(これは、参照によって本明細書内に組み込まれる)。
【0016】
異なる区画においてセラミドを作るための経路が細胞内には多数ある点を強調しておくことは、重要である。細胞表面においてASMaseによってラフト内で産生されるセラミドは、細胞内部のセラミドとは異なる。以下に示す結果は、ASMase産生細胞表面セラミドが、内皮微小血管への損傷(GI症候群の顕著な特徴)を経て、放射線誘導GI症候群を引き起こすことに関与することを初めて示すものである。我々はさらに、ASMase産生セラミドが、T細胞介在性の死によって引き起こされるGVHDに必要であることを示す。したがって、ASMase産生セラミドは、内皮微小血管損傷及びT細胞介在性の死の両方に必要である。我々はさらに、in vivoでの抗セラミド抗体の投与による、ASMaseにより産生されるセラミドの阻害又は隔離は、放射線誘導損傷を低減し、並びにGI症候群及びGvHDを治療又は予防するために訴えられ(be sued to)得ることを発見した。本発明の特定の実施形態は、(例えば、イミプラミンもしくはアンチセンス核酸で)ASMaseを阻害すること又は(例えば、抗セラミド抗体単独もしくはスタチンと共に)細胞表面セラミドを不活性化することにより、GVHD及びGI症候群並びに自己免疫疾患を含む他のT細胞介在性の疾患を治療又は予防する薬理学的方法を対象にする。
【0017】
致死的GI症候群の治療及び予防
【0018】
小腸の幹細胞を収容する腸コロニー形成区画は、リーベルキューンの陰窩の底から4−9の位置にあり、腸多能性幹細胞及び、本明細書内では幹細胞クロノゲン(clonogens)と呼ばれる未確定の前駆細胞クロノゲンからなる。この群の細胞は、絶え間なく増殖及び分化し、腸細胞の生理学的損失及び絨毛の先端から分化した他の上皮細胞を補充し、したがって、粘膜の解剖学的及び機能的完全性を維持する。この区画の完全な除去は、陰窩−絨毛ユニットを恒久的に破壊するために必要であるようであるが、たとえ陰窩ごとに1つであったとしても、生存している幹細胞クロノゲンは、完全に機能的な陰窩を再生可能である。
【0019】
放射線は、胃腸微小血管及び増殖性陰窩幹細胞の両方を標的にする。絨毛における微小管内皮のアポトーシスは、照射の4時間後に生じるGI症候群の初期病変を呈する。内皮アポトーシスは、病変を亜致死から致死の陰窩クロノゲンに変換し、再生陰窩の減少をもたらし、GI毒性を促進する。[3H]TdR及びBrdUrdによる免疫組織学的及び標識研究は、陰窩幹細胞クロノゲンの死が放射線曝露後すぐには起こらないことを明らかにした。むしろ、最も早く検出可能な応答は、放射線誘導DNA二本鎖切断(dsd)によりシグナルされているらしい、S期後期チェックポイント及び核分裂停止を経る進行における一時的な線量依存的遅延である。哺乳類細胞において、DNA二本鎖切断は、DNA損傷の認識及び修復の経路、並びに細胞周期チェックポイント活性の協調的な制御を活性化する。腸幹細胞の核分裂停止は、この経路における制御された事象を表すように思われる。この考えと一致して、腸の周囲あたりの陰窩数における有意な変化はこのステージでは見られないが、陰窩の大きさは、陰窩通過の継続的な通常の移動及び分化した細胞の陰窩から絨毛の上皮層への通常の移動によって徐々に減少する。36−48時間での核分裂活性の再開は、陰窩幹細胞クロノゲンの迅速な枯渇及び周囲あたりの陰窩数の減少に関連する。幹細胞枯渇の機序は、完全には確立されていない。
【0020】
GI幹細胞クロノゲンの死亡率は、放射線曝露から3.5日後に生存している陰窩の数により最もよく評価され、これは、線量の増加に従って指数関数的に減少する(C. S. Potten及びM. Loeffler, Development 110 (4), 1001 (1990), H. R. Withers, Cancer 28 (I), 75 (1971)及びJ. G. Maj, F. Paris, A. Haimovitz-Friedmanら、Cancer Res 63, 4338 (2003))。生存幹細胞を含む陰窩は加速度的に増殖し、腸粘膜が正常な構造を取り戻すまで分裂又は出芽して新しい陰窩を産生する典型的な再生陰窩を生じる。いくつかのマウスモデルにおけるTBI実験は、8−12Gyに曝露後の生存陰窩幹細胞の数が、通常、粘膜の完全な回復を支持するのに十分であることを実証した。しかしながら、より高い線量では、とても大きな幹細胞クロノゲン損失が、陰窩−絨毛系のほぼ完全な崩壊、粘膜露出及びGI症候群による動物の死を引き起こし得る。GI死を誘導するための閾値線量及び50%のGI致死率を与えるTBI線量(LD50)は、系統特異的であるように思われる。TBIに曝露したC57BL/6マウスの剖検研究は、14Gyに曝露したマウスの25%及び15Gyに曝露したマウスの100%が、6.8±0.99日でGI症候群のため死亡し、14と15Gyの間がGI死のLD50であると予測された。これに対して、報告されたLD50/6(6日目のLD50、GI死に対する代わりのマーカーとしての役割を果たす)は、BALB/cマウスについて8.8±0.72Gy、BDF1マウスについて11.7±0.22Gy、C3H/Heマウスについて12.5±0.1Gy、C3H/SPFマウスについて14.9Gy(95%の信頼限界で13.9−16.0Gy)、及びB6CF1マウスについて16.4±1.2Gyであり、GI症候群による死に対するマウスの感受性における、系統特異的スペクトルを示す。骨髄及び肺といった、放射線に対する他の臓器の感受性における系統変動もまた、報告されている。
【0021】
古典的に、電離放射線(IR)は、ゲノムDNAへの直接の損傷によりゲノムの不安定性を引き起こすことで細胞を殺し、その結果生殖細胞の死をもたらすと考えられた。Haimovitz-Friedmanらは、無核系において、アポトーシスシグナル伝達が、IRと細胞膜との相互作用により代わりに発生し得ることを実証した。我々による、本明細書に記載したこれらの研究の拡大は、セラミド介在性のラフトクラスタリングが、IR誘導アポトーシス及びクローン原性細胞の死に関与することを明らかにした。胃腸(GI)粘膜のクローン原性区画が、GI損傷誘導の際の照射のための特異的かつ直接的な標的であることは、長い間受け入れられてきた。
【0022】
我々の初期研究の一部において、我々は、Jurkat細胞においてナイスタチンによって誘導されたコレステロール枯渇と組み合わせて抗セラミドモノクローナル抗体によりセラミド中和を誘導することにより、いずれかの物質のみを用いて得られるよりも、UV−C(5−50J/m2)の紫外線照射及びin vitroでの抗Fas(1−50ng/ml CH−11)誘導アポトーシスに対するより強い保護が得られたことを示した。H. Grassme, H. Schwarz及び E. Gulbins, Biochem Biophys Res Commun 284 (4), 1016 (2001)(これは、参照によって本明細書内に組み込まれる)。これらの研究において、我々は、ナイスタチンとの併用での抗セラミド抗体とのJurkat細胞の予備培養が、50J/m2 UV−C又は50ng/ml 抗Fas刺激後1分でのラフトクラスタリングを阻害したことを示した。さらに、抗セラミドとナイスタチンとの併用処理によるラフトクラスタリングの阻害は、刺激後4時間でのUV−C(5−50J/m2)及び抗Fas(1−50ng/ml CH−11)誘導アポトーシスを弱め(図2d)、50J/m2 UV−C又は50ng 抗Fasでの刺激後7日で、細胞生存率をそれぞれ2.46及び2.42倍増強した。重要なことには、我々はまた、抗セラミド及びナイスタチン前処理が、5−50J/m2 UV−C又は抗Fas刺激後のビヒクル対照と比較して、クローン原性細胞の生存率における約1logの増加を生み出したことを観察した。単一ヒット多標的モデルによるこれらのクローン原性生存データのプロットは、抗セラミド及びナイスタチンでの前処理が用量応答曲線のD0を、1.6±0.7J/m2から3.6±1.1J/m2へ増加させたことを明らかにし、これは、10%の生存レベルでの2.32の線量修正値と共に、再現的な様式のUV誘導細胞死に対する有意な(p<0.05)保護を示す。総合すると、これらの結果は、Jurkat細胞の表面でのセラミド介在性のラフトクラスタリングがUV−Cにより誘導されるアポトーシスの膜透過型シグナル伝達に必須であること、及びそのような保護はクローン原性生存の改善により明らかなように、生物学的に意義があることを示した。
【0023】
単一線量照射後の陰窩幹細胞クロノゲンの死亡率と、腸微小血管系の内皮におけるASMase介在性アポトーシスの初期の波との間の条件的なつながりについての証拠がある。放射線は、原形質膜の外側の層におけるグリコスフィンゴ脂質及びコレステロールリッチなラフト内への分泌非リソソーム形態のASMaseの迅速な移動を誘導し(E. Gulbins 及びR. Kolesnick, Oncogene 22 (45) 7070 (2003)、そこでセラミドが迅速に産生され、膜透過型のアポトーシスシグナルの伝達が連係されている。内皮細胞は、体内の他の細胞と比較して、分泌型ASMaseに20倍富んでおり、この細胞型は、in vitro及びin vivoでの放射線誘導アポトーシスに特に感受性である。SV129/C57BL/6マウスにおけるASMaseの遺伝子不活性化、又は全身照射(TBI)前の内皮細胞生存因子bFGFでのC57BL/6マウスの静脈注射処理は、腸微小血管系の放射線誘導内皮アポトーシスを弱め、陰窩幹細胞クロノゲンを保存し、GI症候群による死亡からマウスを保護した(F. Paris, Z. Fuks, A. Kangら、 Science 293 (5528), 293 (2001))。陰窩上皮細胞ではなく腸内皮細胞が照射の前又は後にbFGFレセプター転写物を発現することから、血管機能障害は放射線誘導GI損傷にとって重要であるように思われる。
【0024】
ASMase欠損及びBax欠損は、放射線損傷及びGI症候群から保護する
【0025】
本項は、asmase−/−マウス及びBax−/−マウスの両方が全身照射(TBI)の4時間以内に起こる内皮アポトーシスに抵抗性であることを示す我々の実験を説明する。これは、陰窩クロノゲンにより被った亜致死病変の修復、陰窩−絨毛系の再生、及び致死性GI症候群の無効化を可能にする。GI症候群のよく特徴付けられたパラメータは、この系をセラミド標的医薬品の研究のための理想的なモデルにする。以下に、我々は、抗セラミド抗体がasmase−/−遺伝子型に類似したレベルまで微小血管アポトーシスを弱め、クローン原性陰窩幹細胞生存及びGI再生を促進することを示す。抗セラミドは、15Gy TBI及び同系BMTを受けたマウスの60%を保護し、微小血管保護には生物学的意義があることを実証した。
【0026】
先行研究は、C57BL/6マウス系統及びそのSV129/C57BL/6ハイブリッドのGI放射線応答における内皮幹細胞クロノゲンの関連を明らかにした。さらに、これらの研究は、SV129/C57BL/6ハイブリッド系統におけるGI放射線応答でのASMaseの役割を特徴付けた。F. Parisら、上記を参照。ASMaseの遺伝子不活性化が、放射線に対する腸応答において血管成分からC57BL/6を保護するかどうかを調べるために、放射線に対するSV129/C57BL/6マウスの腸応答を特徴付けるいくつかの特徴を、asmase+/+及びasmase−/−のC57BL/6マウスにおいて評価した。この系統でのasmase+/+及びasmase−/−遺伝子型における放射線に対する内皮応答のパターンの典型的な組織学的例を示す(図1)。SV129/C57BL/6マウスにおける公表された観察と一致して、野生型C57BL/6マウスは、15Gy TBIから4時間後に、大規模な内皮アポトーシスを示し(絨毛固有層における12のアポトーシス内皮核;図1第2パネル)、asmase−/−及びBax−/−検体においては、それぞれ3つのアポトーシス核に減少させた(図1、それぞれ第3及び第4パネル)。非照射の対照asmase+/+(図1、第1パネル)、asmase−/−又はBax−/−(非掲載)の固有層においては、たまにのみ(1−3)アポトーシス核が観察された。内皮細胞アポトーシスは、15Gyへの曝露から早ければ3時間で野生型粘膜において検出され、4時間で最大に到達した(非掲載)。図2Aは、漸増した線量のTBIへの曝露から4時間後のC57BL/6マウスの腸固有層におけるアポトーシス核の頻度ヒストグラムを表示している。最大の効果は15Gyでのasmase+/+粘膜において観察され、対照非照射マウスにおいて観察された3以下のアポトーシス核/絨毛(p<0.001;n=各データポイントのために計数した2動物由来の200の絨毛)と比較して、92%の絨毛が3より多くのアポトーシス核/絨毛を示し、52%が大規模なアポトーシス(10より多くのアポトーシス核/絨毛)を示した。ASMase欠損は、アポトーシス応答全体(3より多くのアポトーシス核/絨毛)を38%にまで、並びに大規模なアポトーシスの頻度を総絨毛の20%にまで有意に低減させた(それぞれ、野生型同腹子と比較してp<0.001;n=各データポイントのために計数した2動物由来の200の絨毛)。したがって、アポトーシス応答のピークの出現は、SV129/C57BL/6系統よりも1時間遅く起こったが、C57BL/6系統における、放射線誘導内皮細胞アポトーシスの速度及び線量依存性、並びにASMaseの必要性は、SV129/C57BL/6マウス系統1におけるものと定性的及び定量的に類似していた。
【0027】
SV129/C57BL/6マウスについて報告されたように(J. G. Maj, F. Paris, A. Haimovitz-Friedmanら、Cancer Res 63, 4338 (2003))、内皮アポトーシスは、TBI後の陰窩幹細胞クロノゲンの生存と密接に相関した。図2bは、15Gy TBIに曝露後3.5日でのC57BL/6マウスの近位空腸の典型的な横断面を示す。非照射の場合、この系統における陰窩/腸周囲の数は155±1.1だった。15Gyに曝露後、示したC57BL/6asmase+/+マウス由来の検体は、C57BL/6asmase−/−同腹子から得られた検体における27と比較して、生存再生陰窩を3つしか含まなかった。ASMase欠損は、10−15Gyの範囲内の各線量において、陰窩生存比率を有意に増加させた(p<0.05)。15Gy TBIに曝露後3.5日の野生型マウスは、機能的な近位空腸陰窩をほぼ完全に枯渇している(図2b、中段パネル)。暗紫染色された、再生、過色素性陰窩の発現の増加により明らかなように、ASMaseの遺伝子不活性化は、陰窩生存率を増強した(図2b、下段パネル)。10%の陰窩生存率の等効果を与えるために必要な線量(D10)は、野生型に対しては14.6±0.9Gy、ASMase欠損マウスに対しては16.8±1.8Gyであり(p<0.01)、asmase−/−遺伝子型については1.15±0.14の線量修正係数(DMF)を示した。この値は、bFGFによる照射C57BL/6陰窩幹細胞クロノゲンの保護について報告されたDMFとは大きくは異なっていなかった7。
【0028】
ASMase欠損により与えられた幹細胞クロノゲン保護もまた、15Gy TBI後のGI症候群によるC57BL/6マウスの死に対する保護に翻訳され、これは、ハイブリッドSV129/C57BL/6asmase−/−マウスについて報告されたもの1と類似した。p53欠損C57BL/6マウスが放射線損傷から保護されなかったのに対して(データ非掲載)、C57BL/6asmase+/+マウスはTBIから5−6(平均5.3±0.2)日後に死亡した(非掲載)。剖検は、骨髄への一部分の損傷のみ(正常な造血組織の島と混じった、出血の部位及び造血因子の枯渇の部位;それぞれ図2c中段左及び右パネル)を伴う、GI症候群に典型的な腸損傷(ほとんど全ての陰窩及び絨毛の大規模な露出)を明らかにした。胸腺及びリンパ組織、並びに直接の死因とは思われない種々の臓器における時折の微小腫瘍又は局所出血を除いて、他の臓器に損傷は見られなかった。これに対して、C57BL/6asmase−/−マウスは、7.75±0.12日で死亡した(C57BL/6asmase+/+マウスと比較した場合、p<0.001)。剖検は骨髄死の典型的な特徴を明らかにした(造血因子の完全な枯渇を伴う、大規模な出血及びマトリックスの大規模な壊死;図2c、右下パネル)。さらに、C57BL/6asmase+/+マウスにおける陰窩/絨毛ネットワークの完全な崩壊とは対照的に、C57BL/6asmase−/−同腹子の腸粘膜は、腸表面のほとんどを覆う増殖性、好色素性の陰窩を伴う大規模な再生活性を示した(図2c、左下パネル)。
【0029】
Bax欠損は、放射線損傷及びGI症候群からのasmase−/−保護を表現型模写する
【0030】
放射線により誘導され且つASMaseにより調節される、内皮細胞アポトーシス以外の事象が放射線損傷幹細胞クロノゲンの致死率に影響を与え得るという可能性を排除するためである。幼若マウスの卵母細胞における腫瘍内皮において野生型ASMaseを発現し、asmase−/−放射線表現型をミミックするアポトーシス耐性Bax欠損C57BL/6マウスを用いた実験を行った。Bax及びBakは、原型的なプロアポトーシスのBcl−2マルチドメインタンパク質である。二重欠損(Bax−/−及びBak−/−突然変異の劣性ホモ接合体)は、アポトーシス刺激に対する抵抗性を与えるために必要であると以前には考えられていた。Bak欠損マウスについてのデータは掲載していない。
【0031】
これらの実験で用いられた野生型C57BL/6Bax+/+系統は、検出可能なベースラインの内皮細胞アポトーシスを示さず、15Gy TBIへの曝露後に、4時間でピークとなる時間依存的な増加を被った(非掲載)。絨毛の85%が、15Gyの4時間後に、3より多い内皮アポトーシス核/絨毛を含み、38%が大規模な(10より多いアポトーシス核/絨毛)アポトーシス応答を示した(図3)。Bax欠損は、放射線誘導アポトーシス応答全体を45%まで(p<0.05)、並びに大規模なアポトーシスの頻度を絨毛の12%まで(p<0.001;n=各データポイントのために計数した2動物由来の200の絨毛)有意に低下させ、既に報告されたC57BL/6及びSV129/C57BL/6におけるasmase−/−放射線応答表現型を再現した。Bax欠損による内皮アポトーシスの減弱は、13、14及び15Gy TBIに曝露後の陰窩クロノゲンを保護した(図3b)。通説では生存陰窩幹細胞の指標である、13、14及び15Gy TBI後3.5日での野生型C57BL/6マウスにおける生存陰窩は、非照射の腸周囲における152±3から、それぞれ、20.5±1.3、10.8±0.6及び2.3±0.3に減少した(それぞれ13.4±0.9%、7.0±0.4%及び1.47±0.2%の生存率、n=ポイントあたりそれぞれ4動物由来の10−20の周囲)。Bax欠損は、野生型対照に比べて13、14及び15Gy TBI後の生存陰窩の数を、それぞれ42.3.7±2.0、27.6±1.6及び18.2±1.3に増加させた(それぞれ27.8±1.4%、18.2±1.1%及び12.0±0.9%の生存率、野生型C57BL/6に対してp<0.001、図3b)。13−15Gy後のC57BL/6Bax−/−マウスにおける生存陰窩の率は、12Gy単独で処理した野生型C57Bl/6マウスにおける粘膜の回復の支持及びGI死の予防に必要と報告された8.5±0.1%の生存陰窩62、71を上回った。これらのデータは、放射線曝露後の内皮アポトーシスと陰窩幹細胞クロノゲンの生存率との間の関連性という概念と一致する。J.A. Rotolo,ら、Int. J. Radiation Oncology Biol. Phys.., Vol. 70, No. 3, 804-815(2008)(これは、参照によって本明細書内に組み込まれる)。
【0032】
Bax欠損により提供された幹細胞クロノゲン保護は、SV129/C57BL/6マウスについて報告された1と同様、GI症候群によるマウス死に対する保護と関連があった。自家骨髄移植(BMT)は、13Gy TBIに曝露したC57Bl/6Bax+/+及びC57Bl/6Bax−/−マウスの100%をBM死から保護した(図3C)。これらのTBI線量に曝露されたがBMTを受けなかった対照動物は、完全に修復(12Gy)又はほぼ完全に修復した(13Gy)GI粘膜と共に、BM死に陥った(表1)。表1はBaxの遺伝子不活性化又は抗セラミド抗体によるセラミドの薬理学的拮抗作用が、致死性GI症候群を阻害することを示す。全身照射したBax+/+又はBax−/−遺伝子型C57BL/6マウス及び抗セラミド抗体又は無関連のIgM対照を投与されたC57BL/6マウスの剖検は、Bax及びセラミドシグナル伝達が、致死性GI症候群に必要であることを明らかにした。BM及びGI死亡率は、H&E染色した近位空腸及び大腿骨の5μm切片の組織学的試験により評価された。GI死は、絨毛及び陰窩の完全な露出により特徴付けられ、並びにBM死は、BM窩洞及び大量出血による造血因子の枯渇により特徴付けられた。*は、BM形成不全並びにBM死及びGI死の混合の促進を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
GI症候群による死への転換は、14Gy TBIでのC57Bl/6Bax+/+マウスにおいて生じ、BMT非処理マウスの90%が、7.7±0.8日でこの様式の死に陥った(図5c;表1)。したがって、野生型C57BL/6マウスコロニーに関するこれまでに報告されたデータと比較して、Bax−/−遺伝子型を包含するC57BL/6亜株は、約1GyのGI放射線感受性増加を示した(F. Paris, Z. Fuks, A. Kangら Science 293 (5528), 293 (2001))。Bax欠損は、14Gy TBI後のGI死から保護し(図5c、表1)、剖検は、腸粘膜の再生の進行及びBM死の典型的な変化を示す腸表面のほとんどを覆う増殖性、好色素性の陰窩を示した。これらの発見は、上で報告したC57Bl/6Bax−/−マウスにおける陰窩幹細胞クロノゲン生存率のレベルに一致し(図3b)、腸粘膜の再生の観察は、恐らくこれらのマウスの生存の延長に関係し(8.4±0.5日;表1)、これは粘膜回復の開始を可能にしたと推定される。自家BMTは、14Gy TBIに曝露したC57Bl/6Bax−/−マウスの60%を恒久的にレスキューしたが(図3c;p<0.05)、残りの動物は、移植に失敗したり、骨髄形成不全に陥った(表1)。線量を15Gy TBIに上げた場合、C57Bl/6Bax+/+マウスは、剖検が証明するところでは、混合GI及びBM死との混合により5.5±0.4日で死亡し(表1)、胃腸粘膜の回復の成功ために必要とされるような、十分な数の生存陰窩が利用可能であるように思われたにも関わらず(図3b)、Bax欠損は、当該動物をレスキューしなかった。後者の現象は、粘膜再生が明らかになる前に起こる、不確定の理由に起因した、BM形成不全及びBM死の進行の加速に由来すると思われる。この概念と一致して、15Gy TBIで処置したC57Bl/6Bax−/−マウスへの自家BMTは、マウスの生存を9.0±0.0日に延長し(図3c;p<0.05)、また、移植のレベルはBMマトリックス壊死及び造血因子の完全な欠失からマウスをレスキューするには十分でなかったが(表1及び非掲載)、腸粘膜は、活発に再生する陰窩の複数の領域を示した。これらのデータは、Bax欠損がASMase欠損によりもたらされたGI致死性に対する保護をミミックすることを示す。留意すべきは、Bax及びBak欠損は、陰窩位置4−5における、p53介在性の上皮アポトーシスに影響を与えなかったことである。さらに、Bax及びBakは、腸微小血管系において機能的に重複しない。さらなるサポートは、J.A. Rotoloら、Int. J. Radiation Oncology Biol. Phys..,Vol. 70, No. 3, 804-815(2008)(これは、参照によって本明細書内に組み込まれる)に見られ得る。
【0035】
本発明の特定の実施形態は、患者における標的タンパク質ASMase又はBak又はBaxの内因性発現を阻害するアンチセンスヌクレオチド又はsiRNAを投与することにより、該対象における放射線損傷又はGI症候群(及び以下で議論される他の列挙された疾患)を治療又は予防する方法を対象にする。他の実施形態は、疾患の1以上の症状を改善する量のイミプラミンを投与することにより、放射線疾患又はGI症候群を治療又は予防するための方法を対象にする。例えば、ASMaseを阻害するアンチセンス又はイミプラミンの治療量は、処理前のレベルと比較して、ヒト(又は哺乳類)対象由来の生物学的試料におけるASMaseの活性又は発現を低減する量としてルーチンの実験により決定され得る。
【0036】
各アンチセンスヌクレオチドは、アンチセンス核酸の少なくとも一部、典型的に8−50の連続したヌクレオチド)が、標的ASMase、Bax又はBakをコードする遺伝子又はmRNAと相補的であり、かつ特異的にハイブリダイズするものである。ASMaseのGenBank登録番号は、NP_000534であり、配列番号:1として本明細書内に組み込まれる。BaxのGenBank登録番号は、NP_004315.1であり、配列番号:2として本明細書内に組み込まれる。BakのGenBank登録番号は、NP_001179.1であり、配列番号:3として本明細書内に組み込まれる。以下に記載されるように、当業者は、ASMase、Bax又はBakの発現を低減させるために、標的遺伝子又はmRNAそれぞれの転写又は翻訳のいずれかを妨害するための様々なアンチセンスヌクレオチド及びsiRNAを設計することが出来る。列挙された疾患を治療又は予防するために、本発明において治療的に用いられるアンチセンス核酸としては、cDNA、アンチセンスDNA、アンチセンスRNA及び低分子干渉RNAが挙げられ、これらは、各遺伝子又はmRNAに対する特異的ハイブリダイゼーションが可能である標的タンパク質をコードする標的遺伝子又はmRNAに十分相補的であり、したがって処理前のレベルと比較して動物における標的タンパク質の発現を低減する。
【0037】
特定の実施形態において、ヒトASMase登録番号NM000543に関するcDNA配列である配列番号:2;又はヒトBax登録番号NM138761に関するcDNA配列である配列番号:4;又はヒトBak登録番号NM001188に関するcDNA配列である配列番号:5に特異的にハイブリダイズする、治療量の長さ8−50ヌクレオチドのアンチセンス核酸を投与することにより、列挙された疾患は治療又は予防される。別の実施形態において、アンチセンスは、各遺伝子、ASMase 配列番号:7、Bax 配列番号:8、又はBak 配列番号:9の転写を阻害する、各ゲノムDNAの様々な領域を対象にする。患者は、ASMase(タンパク質配列 配列番号:1)もしくはBax(タンパク質配列 配列番号:3);又はBak(タンパク質配列 配列番号:5)の発現を低減するために、同日又は異なる日に投与される、単一の製剤又は異なる製剤中のこれらのアンチセンス核酸の組み合わせにより治療され得るであろう。あるいは、治療は、1以上の標的タンパク質ASMase、Bax又はBakの発現を低減させるために適切なsiRNAを投与することにより達成され得るであろう。アンチセンス技術に関するさらなる詳細は、以下に説明する。
【0038】
本発明の目的のための、化合物の治療有効量は、所望の生物学的又は治療的効果を達成する量、即ち、治療又は予防されている列挙した疾患の1以上の症状を予防、減少又は改善する量である。アンチセンス又はsiRNAの有効治療量の決定のための開始点は、対象から採取された生物学的試料における標的タンパク質ASMase、又はBaxもしくはBakの発現を低減する量である。イミプラミンの治療量は、同様に決定され得る。
【0039】
抗セラミド抗体によるIR誘導疾患及びGI症候群の治療及び予防
【0040】
我々は、抗セラミド抗体によるセラミドの隔離がセラミド介在性ラフトクラスタリングを阻害し、それによってアポトーシスを弱め、並びにクローン原性生存率を改善することを示すJurkat T細胞におけるin vitroでの研究を行った(図4)。放射線誘導アポトーシスに対する抗セラミドのin vivoでの作用を決定するために、100μgの市販のマウス抗セラミド抗体MID 15B4又はアイソタイプ対照IgMを、C57BL/6マウスに15Gy TBIの30分前に静脈投与した。抗セラミド注入は、15Gyから4時間後の内皮アポトーシスを無効にし、大規模なアポトーシス(10より多いアポトーシス細胞/絨毛)の出現を、IgM処理対象における56.9%から13.7%に減少させ(図5B及びD)、ASMaseの遺伝子不活性化により与えられる保護を薬理学的に再現した(14.9%)。これらの発見は、内皮の抗セラミド介在性の保護が、GI幹細胞致死率に影響を与え、これによって動物の全体的な生存を増強することを示した。内皮アポトーシスの拮抗作用は、陰窩幹細胞クロノゲンの生存を増進し、これは、15Gy照射後3.5日の生存陰窩の出現の増加により実証される。抗セラミドは、asmase−/−表現型を薬理学的に再現して、内皮アポトーシスを弱めるため、我々は陰窩生存に対する影響を試験した。15Gy TBI前の抗セラミドでのC57BL/6マウスの前処理は、15Gy TBI前に無関連のIgMで処理した同腹子により示された9.3x10−3生存率に対して、1 logの保護を上回る1.3x10−1の陰窩生存率をもたらした(図5A)。無関連のIgM抗体は、非処理C57BL/6対照と比較して陰窩生存率に影響を与えなかった。抗セラミド抗体は、ASMaseの遺伝的阻害と同様のレベル(1.2x10−1)まで陰窩生存を増加させ、セラミドシグナル伝達の薬理学的阻害が、in vivoでの陰窩クロノゲン致死率に対してASMaseの遺伝子不活性化により与えられる保護をミミックすることを実証した。留意すべきは、Bax及びBak欠損は、陰窩位置4−5におけるp53介在性の上皮アポトーシスに影響を与えなかったことである。さらに、Bax及びBakは、腸微小血管系において機能的に重複しない。さらなるサポートは、J.A. Rotoloら、Int. J. Radiation Oncology Biol. Phys.., Vol. 70, No. 3, 804-815(2008)(これは、参照によって本明細書内に組み込まれる)において見いだされ得る。
【0041】
抗セラミド投与がasmase−/−表現型を再現し、15Gy後の動物生存率を増加させるかどうかを評価するために、C57BL/6マウスを50−100μg 抗セラミド抗体又は無関連のIgM対照で前処理し、15Gy TBIに供した。照射の16時間以内に、マウスに3x106自家骨髄細胞を静脈内投与した。これまでに公開されたデータと一致して、15Gyは、IgM処理したマウスのC57BL/6対照において7日までに100%致死であった。抗セラミド抗体は、照射後120日で60%の生存率をもたらす100μg 抗セラミド前処理で線量依存的に生存率を増加させた(図5C)。これらの知見は、15Gy後に自家BMTを投与されたasmase−/−マウスの生存率と密接に相関する(F. Paris, Z. Fuks, A. Kang ら、Science 293 (5528), 293 (2001))。剖検は、対照IgMを受けたマウスが、骨髄への部分的損傷のみを伴う、完全に露出した陰窩及び絨毛を含む、大規模な腸損傷で死亡したことを明らかにした(非掲載)。これらの発見は、GI症候群による死と一致する。反対に、抗セラミド前処理後に死亡したマウスの剖検は、大規模な出血及びほぼ完全な造血因子の枯渇を含む骨髄死の典型的特徴を明らかにした(非掲載)。これらのマウスは、腸表面のほとんどを覆う、増殖性、好色素性陰窩を含む、再生状態にある腸粘膜を示した。図5Dは、TUNELによって染色された15Gy照射後4時間に採取された小腸の顕微鏡写真を示す。アポトーシス細胞は、茶色に染色された核によって表される。データ(平均±標準誤差)は、2つの独立した実験由来の最も少なくて150の絨毛から得られた。これらのデータは、抗セラミド抗体が、in vivoでのセラミドシグナル伝達を効果的に中和し、asmase−/−表現型を薬理学的に再現し、並びに放射線誘導疾患及びGI症候群から保護することを実証している。
【0042】
アポトーシスにおける細胞外セラミドの役割に関するこの証拠に基づいて、本発明の特定の実施形態は、治療量の1以上の抗セラミド抗体又はそれらの生物学的活性断片を、好ましくはヒト化形態で投与することにより放射線誘導疾患及びGI症候群を治療又は予防する方法を対象にする。これらの抗体は、ポリクローナル又はモノクローナルであり得る。好ましい実施形態において、抗セラミド抗体は、モノクローナル2A2抗体又は以下に記載する生物学的活性断片で、好ましくはヒト化形態である。我々が発見した、2A2 IgMと呼ばれる新規の効果的なモノクローナル抗セラミド抗体を、以下に詳しく記載する。上に記載した先行研究は、スタチン(ナイスタチン)もまた、in vitroモデルにおけるアポトーシスの低減に有益な効果を有したことを示した。したがって、特定の他の実施形態は、GI症候群を治療又は予防するために単独又は組み合わせて投与される、治療量の抗セラミド抗体又はそれらの生物学的活性断片、及び1以上のスタチンを投与することを含む。併用療法のための本明細書内に記載される治療剤は、同日又は連日に投与され得る。
【0043】
スタチンは、血中のコレステロール及び特定の脂質の量を低下させる剤の群のいずれかを含む。スタチンは、コレステロール形成を助ける重要な酵素を阻害する。スタチンは2つの群に分けられる:発酵由来及び合成。スタチンとしては、アルファベット順に(商標名は色々な国によって異なる):
【表2】
【0044】
LDL低下有効性は、剤の間で変化する。セリバスタチンは最も効能があり、続いて(有効性が低下する順に)ロスバスタチン、アトルバスタチン、シムバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンである。
【0045】
2A2抗セラミドモノクローナルIgM抗体
【0046】
強力なin vivo活性を有する新規抗セラミド抗体を作成するために用いた戦略のフローチャートを図6に示す。抗体を作成するために、我々はまず予防接種された宿主から強い抗体応答を生み出すのに十分な免疫原性である抗原の開発を必要とした。スフィンゴイド塩基上にBSA結合C16脂肪酸を合成することにより、BSA結合セラミドを合成した。図7)挿入図。抗体スクリーニングのための抗原の検証は、ELISAアッセイにより行い、これはプレートに固定された抗原の量を減少させた。各ウェルをブロックした後、次いで、Axxora LLC、San Diego CAより市販の抗セラミドMID15B4抗体(1:100)続いて、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗マウスIgMと共にプレートをインキュベートした。HRP基質の投与後、ODを650nmで評価した。BSAセラミドELISAは、カポジ肉腫細胞での免疫後の上清#3673における結合活性の増大を明らかにした。図8。免疫したマウスから採取された血漿試料の1:100希尺でのELISAによる結合は、試料#3673対#3674によるセラミドのより強い結合を明らかにした。結合活性は、抗体産生B細胞(sn73−I−C6)の固定化後も保たれ、抗セラミド結合活性を伴うモノクローナル2A2 IgMの単離を可能にした(非掲載)。カルポジ(Karposi)免疫は、一群の抗体産生B細胞の形成をもたらす強い免疫応答を生み出すことを意図されていた。これらのB細胞から産生されたハイブリドーマ由来の抗体含有上清は、次いで、BSAセラミドELISAに対して検査された。アッセイにおいて陽性と試験された上清を単離し、これが最終的にクローン2A2の精製をもたらす。さらなる詳細は、実施例4に説明される。
【0047】
精製モノクローナル2A2抗体は、上清#3673から単離された。Elisaは、2A2マウスモノクローナルIgMがBSAセラミドに結合することを明らかにした。図9。Elisaは、対照IgMに対する2A2のより大きな結合能力を有意に示した。我々は、2A2抗体がin vivoで働くこと及び、我々が臨床用途のためにこれをヒト化できたことを示す。抗体及びその他をヒト化する方法は、実施例1に説明される。
【0048】
in vitroでの市販の抗体を用いた我々の初期の観察と一致して、精製2A2抗体は、in vitroでの放射線誘導アポトーシスを中和した。2A2モノクローナル抗セラミド抗体(25−100μg/mL)とのJurkat細胞の予備培養は、8Gy誘導アポトーシスを阻害した。図10;図4Bにおけるように定量化した。アポトーシス阻害の計算は、8Gy前の無処理Jurkat細胞の平均アポトーシスに対して行われた。C16セラミドでのマウスの免疫により産生された、他の抗セラミド抗体1H4、15D9及び5H9は、当該技術分野に公知の技術を用いてヒト化され得、並びに、GI症候群、及び同様にGvHD、自己免疫疾患及び以下で議論される炎症の治療又は予防について本発明の範囲内となる。
【0049】
次の一連の実験において、我々は、2A2がin vivoでの15Gy後の陰窩生存率を高めたことを示した。増加用量の2A2抗セラミド(0−750μg)でのC57BL/6マウスの前処理は、15Gy TBI後の重要な3.5日の時点での陰窩生存率を改善した。図11(A)。2A2抗セラミド抗体は、8−15Gy全身照射後の陰窩生存率を1.2の線量修飾係数(DMF)で増加させた。図11(B)。陰窩生存率を図5Cにあるように測定した。我々の動物実験において、我々はマウス35gあたり750μgの抗体を用いた。この標的タンパク質は抗体に接近しやすいため、活性化T細胞の表面上のセラミドの配置は、抗体療法を用いて列挙された疾患のいずれかを治療又は予防するために特に重要である。
【0050】
他の実験において、我々は、抗2A2抗体もまた、14−17Gy単一線量放射線に曝露したC57BL/6マウスの生存率を改善したことを発見した。図12。C57BL/6マウスは、IRの15分前に750μg 2A2の有り又は無しで、14−17Gy TBIで照射された。マウスは、IRの16時間以内に、3x106自家骨髄細胞を注入された。生存をモニターし、カプラン−マイヤーパラメータを介して表した。統計的有意性(p<0.05)は、各線量において達成された。
【0051】
曝露の範囲に渡って、我々は、2A2抗体がin vivoでの放射線誘導GI死を弱め、asmase−/−表現型を再現することを見出した。図13において行われた生存率研究で瀕死になった時に屠殺されたマウスの剖検結果。近位空腸検体が90%より多くの陰窩−絨毛ユニットの露出を見せ、並びに陰窩の再生がない場合にGI死と判定した。脱灰大腿骨部分が造血因子の枯渇及び大量出血を示す場合に骨髄(BM)死と判定した。
【0052】
これらの結果は、好ましくはヒト化形態での2A2抗体自身、又はその断片もしくは変異体を対象とした本発明の実施形態をサポートする。別の好ましい実施形態において、ヒト2A2抗体又はその断片は、放射線損傷又はGI症候群を治療又は予防するために治療有効量で投与される。抗体が本明細書内で用いられる場合、これはまた、以下に記載されるように抗体断片又は変異体を包含することを意味する。特定の他の実施形態は、抗セラミド抗体、好ましくはヒト化、さらに好ましくは2A2、並びに循環コレステロールレベルを減少させ、それによって抗セラミド抗体の効果を増加させる量のスタチンを含む組成物を対象とする。別の実施形態は、イミプラミン並びに、単独又は抗セラミド抗体及び/もしくはスタチンとの組み合わせのいずれかで、抗精神病薬剤として現在用いられるASMase阻害剤を投与することによる、放射線損傷又はGI症候群の治療又は予防を対象とする。別の実施形態は、2A2抗体及びイミプラミン、又はASMaseもしくはBakを標的とするアンチセンスもしくはsiRNAを含む組成物である。
【0053】
ルーチンの実験により、使用されるヒト化モノクローナル抗セラミド抗体の治療有効量が決定されるであろう。治療的に投与され得る抗セラミド抗体の量は、約1ugから100ug/mlに及ぶ。この量は、典型的に変動し、並びに典型的には対象において約1μg/mlと約10μg/mlとの間の血清治療剤のレベルを達成するために十分な量であり得る。本発明の文脈において、抗セラミド抗体は、セラミドがアポトーシスを阻害するのを防ぐ中和抗体の一種である。
【0054】
以下に記載するように、我々はまた、2A2抗体がGvHDを低減することによりBMT後の生存率を改善し、並びにGvHDと共に見られる典型的なサイトカインストームを低減させることを発見した。
【0055】
我々は、BSAセラミドで免疫されたマウスにおいて作られた他のモノクローナル抗体は、Jurkat細胞アポトーシス阻害アッセイにおいて検査された場合、線量依存的で有り、且つ2A2に匹敵する保護作用を示すこと免疫を発見した。3つの抗体のアイソタイプは確立されている。15D9 mAbは、IgM、κである。1H4及び5H9 mAbはmIgG3、κである。図25。
【0056】
本発明の特定の実施形態は、放射線誘導疾患又はGI症候群、及び同様に以下に示されるようにGvHD、他の自己免疫疾患及び炎症を治療するための治療的使用のための、好ましくはヒト化されたモノクローナル抗体15D9、1H4及び5H9並びにそれらの断片又は変異体を対象とする。他の実施形態は、これらのモノクローナル抗体、断片又は変異体を好ましくはヒト化形態で、並びに任意的にアロス(alos)イミプラミンもしくはスタチン又は両方を包含する医薬組成物を対象にする。
【0057】
我々の発見の一つは、実施例4に記載されるようなカルポシ(Karposi)肉腫細胞による宿主マウスの免疫が、例えば2A2抗体で示されるように、劇的な治療作用を伴う効果的な抗セラミドモノクローナル抗体を産生したことである。我々は、免疫のためにKS細胞を選択したが、それは、セラミドリッチであることを我々が示した活性化内皮をKS細胞が再現するからである。純粋なセラミド抗原だけでなく、活性化細胞で免疫したために、我々が作成したモノクローナルは、セラミド以外の他のタンパク質と交差反応し得る。本出願では、交差反応とは、モノクローナルがセラミド以外の他のタンパク質又はタンパク質複合体と反応し得ることを意味する。例えば、これらのモノクローナル抗体が反応する(即ち、親和性を有する)セラミド上のエピトープは、他の細胞表面タンパク質と共有され得る。あるいは、他のタンパク質は、抗原部位において類似の構造を有し得るか、あるいは、該エピトープは、セラミドを提示する複合体の一部であり得る。したがって、本発明の特定の他の実施形態は、セラミドと交差反応するモノクローナル抗体を広く対象にし、ここで該抗体は、全細胞での宿主の免疫によって得られる。断片を含むヒト化モノクローナルが、好ましい実施形態である。免疫グロブリンのサブタイプは任意のサブタイプであり得、IgG、IgMが好ましいが、IgA、IgE等もまた効果的であり得る。
【0058】
移植片対宿主病及び自己免疫疾患の治療及び予防
【0059】
以下に示す結果は、ASMase産生セラミドがGVHDに必要であることを初めて示し、したがって、特定の実施形態は、(例えばイミプラミン又はアンチセンス核酸での)ASMaseの阻害により、GVHDを治療又は予防するためあるいは、(例えば抗セラミド抗体で)この細胞表面セラミドを不活性化するための薬理学的方法を対象にする。
【0060】
自己免疫疾患は、自己抗原に対する持続的な適応免疫応答である。T細胞と、ほとんどの細胞型において発現される細胞表面分子である組織主要組織適合複合体(MHC)分子及び/又は副組織適合抗原(mHAG)との間の不適合性に起因してT細胞は自己抗原を異物として認識する。自己抗原に対する活性化T細胞は、直接的(細胞傷害性T細胞、CTL経由)又は間接的(自己反応性B細胞に対するT細胞の助けによる抗体産生経由)に組織損傷及び慢性炎症を与える。造血幹細胞移植の主な合併症である急性移植片対宿主病(GvHD)は、免疫除去された(immunoablated)宿主に注入されたアロ反応性ドナーT細胞の分化及び活性化に起因する特有の自己免疫様疾患である。急性GvHDにおいて、ドナーT細胞による宿主のアロ抗原の認識(メジャー又はマイナーミスマッチ)は、宿主組織に対する初期損傷及びI型サイトカイン(INF−γ及びIL−2)産生を含む適応免疫応答を開始させる。これが、CTLクローンの増殖及び活性化をもたらし、それが炎症性サイトカイン(TNF−α及びIL−1β)から成るマクロファージ依存性「サイトカインストーム」の発生と共に(D. A. Wall及び K. C. Sheehan, Transplantation 57 (2), 273 (1994); G. R. Hill, W. Krenger、及びJ. L. Ferrara, Cytokines Cell Mol Ther 3 (4), 257 (1997); J. L. Ferrara, Bone Marrow Transplant 21 Suppl 3, S13 (1998))、選ばれた一連の標的細胞におけるアポトーシスを誘導し(A. C. Gilliam, D. Whitaker-Menezes, R. Korngold ら、J Invest Dematol 107 (3), 377 (1996))、並びに関連する標的臓器(肝臓、腸及び皮膚)に結果として損傷を与えるD. A. Wall、上記を参照; G. F. Murphy, D. Whitaker, J. Sprentら、Am J Pathol 138 (4), 983 (1991))。急性GvHDの一般的な症状としては、深刻な体重減少、下痢、肝疾患、発疹及び黄疸が挙げられる。図14は、GvHDの免疫病理学の図解である。
【0061】
多くの種類の白血病及びリンパ腫の治療に用いられる、高用量化学療法及び高線量放射線は、さらに分裂している骨髄細胞幹細胞を迅速に殺し、免疫除去及びそれに必然的に伴われる造血因子の再構成をもたらす。骨髄移植(BMT)は、これらの患者における免疫再構成のための一般的且つ効果的治療法であり、並びに無形成性貧血及び重症複合免疫不全を含む免疫疾患の治療であり、骨髄移植(BMT)では、骨髄幹細胞の注入が、赤血球、T及び/又はB細胞の欠損を矯正し得る。GvHDはBMTに関連する主な合併症であり、血縁ドナーからのMHCが一致するBMTの30%、単一のMHCが不一致のBMTの50%及び2つのMHCが不一致のBMTの70%、並びに非血縁ドナーを用いる場合にはより高く起こる86。大規模な研究にも関わらず、よい治療法がない。急性GvHDは典型的にBMTの3ヶ月以内に発症し、その間、腸、皮膚及び肝臓を含む特定の臓器が細胞傷害性T細胞の標的となる。これまで、GvHDを制御するために利用できる臨床的意義のある戦略方法は、同種移植片からのT細胞枯渇又はドナーT細胞増殖及び活性化を制御することを目的とした非特異的免疫抑制に限られており、既に免疫不全である患者における感染又は腫瘍再発の可能性を増加させる試みに限られている。
【0062】
薬理学的及び遺伝的手段は、細胞レベルでのCTL誘導アポトーシス細胞死のいくつかの重要なメディエーターの同定を可能にした。急性GvHDの間の肝臓、腸及び皮膚アポトーシスは、パーフォリン/グランザイム介在性細胞溶解からの最少の寄与を伴う、Fas−Fasリガンド(FasL)(H. Kuwahara, Y. Tani, Y. Ogawaら、Clin Immunol 99 (3), 340 (2001); C. Schmaltz, 0. Alpdogan, K. J. Horndasch ら、Blood 97 (9), 2886 (2001); K. Hattori, T. Hirano, H. Miyajimaら、Blood 91 (11), 4051 (1998))及びTNF−TNFR経路を介したの宿主組織のCTLの攻撃を介して主に介在される。TNFスーパーファミリーレセプターシグナル伝達の阻害は、概して、マウス同種異系BMTのメジャー及びマイナーミスマッチモデルにおいて急性GvHD関連死亡率を弱め、それはドナーT細胞FasリガンドもしくはTNF−αの遺伝子不活性化、又はこれらの同種レセプターであるCD95/Fas及びTNFRの抗体介在性中和のいずれかによるものであった。これらの研究は、急性GvHDの発症におけるドナーCTL機能におけるデスレセプターシグナル伝達の不可欠な役割を確立し、TNFスーパーファミリーシグナル伝達の無差別阻害がGvH関連病変からの強い保護を提供する可能性があることを示唆した。
【0063】
多くの最近の研究は、自己免疫性の肝臓及びGI毒性における及びそのセカンドメッセンジャーであるセラミドの役割を同定している。ASMaseの遺伝子不活性化は、フィトヘマグルチン(phytohemagglutin) (PHA)誘導Fas依存性自己免疫性肝炎の自己免疫マウスモデルを無効にし、その際リンパ球におけるFasLの誘導がFasを発現する肝細胞の選択的殺傷及び抗CD4抗体によるHIVレセプターgp120の活性化をもたらし、CD4+T細胞の枯渇が、これらの細胞におけるFas及びFasLのアップレギュレーションによって起こる。さらに、証拠は、細胞膜の原形質外(exoplasmic)層におけるセラミド産生が、虚血再かん流傷害の過程(L. Llacuna, M. Mari, C. Garcia-Ruizら、Hepatology 44 (3), 561 (2006))並びに肝硬変93及び放射線誘導GI毒性につながるTNF誘導肝細胞アポトーシスの過程(これらの疾患単位について標準化された動物モデルを用いることが既に議論されている)において急激に起こることを示す。
【0064】
造血幹細胞移植の主な合併症である急性GvHDは、宿主組織に対するドナーの細胞溶解性T細胞の攻撃により介在される明確な自己免疫様疾患である。CTL介在性の組織損傷における標的細胞のASMase及びセラミドの寄与並びに急性GvHDの間の死亡率を評価するため、LP/J ドナー(H−2b)のC57BL/6レシピエント(H−2b)への副組織適合性(minor histocompatability)不適合同種異系BM移植モデルを選択した。asmase+/+又はasmase−/−バックグラウンドの致死性照射C57BL/6宿主は、5x106のT細胞枯渇した(TCD)LP/J BM細胞を受け、GvHDを同種移植片に対して3x106のLP/Jドナー脾臓T細胞を加えることにより誘導した。ドナーLP/J BM及びT細胞の移植は、カプラン−マイヤー生存率(図15A)、及び臨床的GvHDスコア(図15B)カーブによる決定で、asmase−/−レシピエントにおける作用を低減したが、全てのレシピエントにおいてGvHDの進行を誘導した。GvHD生存率は、BM及びT細胞のasmase+/+レシピエントにおける28.6%からasmase−/−レシピエントにおける84.6%まで増加し(p<0.005)、asmase−/−レシピエントでは90日を通じて一貫して低い臨床スコアを伴い(図15B及び非掲載)、asmase−/−レシピエントにおけるGvHDの減弱を示した。これらの結果は、マイナーMHC不一致の同種異系BMTモデルでの急性GvHD誘導死亡率におけるASMaseの役割を同定する。
【0065】
GvH誘導の死亡は、回腸、肝臓及び皮膚を含む臓器を選択する損傷に関与する。実施例2は、ASMaseがGvHD標的臓器損傷及びアポトーシスに必要であることを示す実験を記載する。実施例2における実験は、ASMase欠損が、概してGvHD関連臓器損傷を保護し、肝臓及び小腸においてそれぞれ、スコアを10.2±0.5及び7±0.1減少させることを示す(表1、それぞれasmase+/+同腹子に対して肝臓及び腸についてp<0.005)。ASMase欠損はまた、マイナー抗原不適合同種異系BMT後の皮膚角化細胞アポトーシスから宿主を保護した。さらに、GvHD関連臓器損傷は、目立った腸及び皮膚アポトーシスと関連することが示された。これらのデータは、GvHD関連標的臓器損傷及びアポトーシスの有意な減衰を明らかにしており、マイナー及びメジャー抗原差異の両方にわたって、野生型同腹子と比較してasmase−/−宿主におけるGvHDの疾病及び死亡に対する保護と密接に関連している。
【0066】
実施例3に記載した追加実験は、ASMase欠損が、一般にGvHD及び炎症に関連するサイトカインストームを弱め、それによって、炎症から宿主を保護することを示す。実験は、ASMase不活性化が、同種異系BM及びT細胞のレシピエントにおける急性GvHDでのTh1/Th2サイトカインプロファイル及びCD8+T細胞増殖を弱めることを示した。我々のデータは、asmase−/−宿主におけるin vivoでのCD8+CTL増殖の不全、及びGvHDを有するこれらのBMTレシピエントにおける血清炎症性サイトカインレベルの減弱に対する生物学的に関連する結果を示した。したがって、in vivoデータは、GvHに関連する疾病率、死亡及び標的臓器損傷におけるASMaseの役割を確認する。宿主のASMase欠損の影響は、T細胞殺傷の不活性化によってではなく、主に全身性因子(即ち、サイトカイン、循環するT細胞の数)の変換によって、GvHDの病態生理学に作用する。
【0067】
抗セラミド抗体の投与は、GvHDを予防する
【0068】
膜プラットフォーム内へのセラミド介在性ラフトクラスタリングが肝細胞の細胞溶解T細胞(CTL)誘導アポトーシスの必須成分であるかどうかを判定するために、我々は、ラフトクラスタリングを薬理学的に阻害し、in vitroにおける同種活性化(alloactivated)CTL誘導肝細胞アポトーシスにおける影響を試験した。ASMase欠損が、CTL誘導アポトーシスに対する抵抗性を直接標的細胞に与えるかどうかを調べるために、活性GvHD及びナイーブC57BL/6肝細胞を示すマウスから新たに単離された同種活性化脾臓CTLエフェクターを用いて2細胞ex vivoモデルにおいて、GvHD介在性の標的細胞融解を脱構築(deconstructed)した。本アッセイにおける標的細胞として肝細胞を選択したが、それは、肝細胞がGvHDの重要な標的であり、アポトーシスのためにスフィンゴミエリン経路を利用するためである。我々のアッセイ条件下では、0.5x106の肝細胞を、LP/J BM+T細胞→B6レシピエントから単離した0−2x106の同種活性脾臓T細胞と共培養した。共培養は、核の形態変化によって検出されたように、16時間で4.7±0.7%ベースラインから33.8±1.9%への肝細胞アポトーシスの増加を誘導した(図16A)。多くのin vivo研究からのデータと一致して、機能的Fasレセプターを欠くB6.MRL.lpr肝細胞は、この様式のCTL誘導アポトーシスに対して抵抗性であり(図16A、左パネル)、一方、100ng/ml CMAとの2時間のインキュベーションによる、顆粒エキソサイトーシス介在性細胞溶解経路の選択的阻害は、肝細胞アポトーシスに対する効果を有しなかった(図16A、右パネル)。これらの研究は、本モデルにおけるCTL介在性肝細胞アポトーシスが、パーフォリン/グランザイムシグナル伝達ではなくFasシグナル伝達を必要とすることを示す。先行研究は、Fasレベルはasmase−/−肝細胞において変わらないことを示したが、それにも関わらず、asmase−/−肝細胞は、ex vivoでのGvHDモデルにおいて同種異系エフェクターT細胞の0.1−2x106からの全用量で(図16B)、且つ4−48時間からの全ての時間で(データ非掲載)、アポトーシスに抵抗性であった。
【0069】
Fas介在性アポトーシスデスレセプターの活性化は、いくつかの細胞系では、セラミドリッチプラットフォームの生成を必要とする一方で、GvHDのex vivoモデルにおいて、CTL誘導プラットフォーム生成をasmase+/+及びasmase−/−肝細胞において評価した。同種活性化T細胞は、共培養後10分で標的肝細胞表面におけるセラミドリッチプラットフォームの迅速な生成を誘導した(図16C)。プラットフォームの生成は、1分以内で増加し、10分でピークを迎え、60分間を超えて持続した(図16D)。この系でのアポトーシスに必要とされるFasを、共焦点顕微鏡法による決定で、セラミドリッチプラットフォーム内に濃縮した。反対に、asmase−/−肝細胞は、セラミドリッチプラットフォームの形成(図16C、及び図16Dにおいて定量化されている)、並びにその中でのFasの濃縮に対して完全に抵抗性であり、肝細胞におけるCTL誘導プラットフォーム生成がASMase依存性であることを実証した。それに付随して、CTLは、asmase+/+肝細胞における1ピクセル当りの平均蛍光強度による決定で、セラミドシグナルの全体として1.5±0.1倍の全体としての増加を誘導した(刺激していない対照と比較してp<0.005)、これはasmase−/−肝細胞では起こらず、図16Cの下パネルに対する上パネルにおけるセラミド染色の強度の差異を説明する。
【0070】
肝細胞アポトーシスが特にセラミド依存性であり、ASMase欠損の結果でないことを実証するため、我々は、ex vivoでのGvHDアッセイにおいて、アポトーシス濃度未満の外因性C16セラミド(500nMまで)を、asmase−/−肝細胞に添加した。低用量の長鎖天然セラミドによる、ヒトasmase−/−リンパ球におけるプラットフォーム生成の回復に一致して、亜致死用量の外因性C16セラミド(200nM以下)は、CTL処理asmase−/−肝細胞において46.3±1.3%の細胞までプラットフォーム形成を回復させ、ASMase介在性セラミド生成はプラットフォーム形成を促進することを実証した。C16セラミドは、asmase−/−肝細胞に対するCTL誘導アポトーシスをほぼ完全に回復し(図16E)、標的細胞ASMaseの必要性を回避する。反対に、C16セラミドの生物学的不活性アナログであるC16ジヒドロセラミドは、CTL誘導プラットフォーム生成(非掲載)又は肝細胞アポトーシス(図16E)を回復しなかった。これらのデータは、ex vivoでのCTL誘導肝細胞アポトーシスが、効率的な細胞死誘導のために標的細胞のセラミド生成を必要とすることを明らかに実証し、これはasmase−/−マウスにおいて観察された急性GvHDからのin vivoでの保護と一致する。さらに、コレステロールキレート剤ナイスタチンを用いたスフィンゴミエリン濃縮の部位である細胞表面ラフトの薬理学的崩壊は、CTL誘導性のセラミドリッチプラットフォームの生成を無効化し(非掲載)、並びに2x106の同種活性化CTL誘導肝細胞アポトーシスを完全に阻害した(図16F)。外因性C16セラミドは、コレステロールキレート化を克服することができず(図16F)、セラミドリッチプラットフォームの形成は、シグナル伝達のためにアポトーシス機構が予め集合するための場所として働き得る、機能的ラフトを必要とすることを示唆した。
【0071】
T細胞誘導溶解における標的細胞ASMaseの遺伝的役割を示すために、我々はT細胞機能についての2つの標準化されたアッセイを用いた;MLR感作CTL誘導脾細胞溶解(図17)及びin vitroでのT細胞の活性化誘導細胞死(AICD)(図18)。標的細胞のASMaseの役割を、in vitroでの活性化MLRにおいて評価し、ここで、asmase+/+又をasmase−/−遺伝子型のC57BL/6脾細胞標的細胞をマイトジェンで48時間刺激し、洗浄し、クロム標識した。次いで、これらの細胞を、照射C57BL/6脾細胞との培養により5日間活性化させた、エフェクターBalb/c脾細胞と共培養した。クロム放出を定量化し、%融解を算出した。asmase−/−標的細胞を溶解するためのin vitro活性化脾細胞の能力を試験するために、Balb/cエフェクターT細胞を5x106照射(2Gy)C57BL/6脾細胞と共に5日間培養することより活性化した。標的asmase+/+又はasmase−/−のC57BL/6脾細胞を48時間、10mg/ml conAで刺激することにより調製し、51Crで標識してCTL介在性クロム放出を評価した。洗浄した脾細胞を増加する比率の活性化エフェクターBalb/cT細胞と共培養し、51Cr放出をその6時間後に定量化した。図19A。
【0072】
T細胞誘導溶解におけるプラットフォーム生成における標的細胞ASMaseの果たす潜在的遺伝的役割を評価するために、我々は、T細胞介在性の細胞溶解についての、2つの標準化されたアッセイ、MLR感作CTL誘導脾細胞溶解、及びT細胞のin vitroでのAICDを試験した。in vitroでの活性化脾細胞溶解アッセイのために、5x106の照射(2Gy)したC57BL/6脾細胞との5日間の培養により、BALB/cエフェクターT細胞を刺激し、その後、48時間の10□g/ml conAでの刺激により調製したasmase+/+又はasmase−/−標的C57BL/6脾細胞と共培養した。検出のためにミトトラッカーレッドで標識したasmase+/+標的脾細胞とのエフェクターT細胞の共培養は、標的細胞上でのセラミドリッチプラットフォームの迅速な生成をもたらした。共培養の5分以内で、標的asmase+/+脾細胞上のプラットフォームの出現は、4.7±2.1から25.8±6.6%に増加した(p<0.01;図19A)。Fasは、これらのセラミドリッチプラットフォーム内に共局在した(データ非掲載)。プラットフォーム生成は、asmase−/−脾細胞にはなく、刺激後10分での集団のわずか5.9±3.5%で見られた。さらに、MLR感作CTLは、50:1のエフェクター:標的の割合において43.2±6.5%のasmase+/+脾細胞溶解を誘導し(図19B)、51Cr放出アッセイによる定量で、asmase−/−標的細胞における溶解を7.3±2.5%まで弱めた。亜致死の外因性の500nM C16セラミドは、プラットフォーム生成及びasmase−/−標的脾細胞のCTL誘導溶解の両方を回復したが、一方で、C16ジヒドロセラミドは、両方の事象において作用しなかった(非掲載及び図19C)。これらのデータは、conAブラストのin vitro 感作CTL溶解が、ASMaseに依存して標的細胞のプラットフォーム生成を活性化すること、並びにプラットフォームがこれらのモデルにおける標的細胞の効率的な溶解に必要であることを示す。
【0073】
AICDにおける標的細胞のASMaseの役割を明らかにするために、asmase+/+、asmase−/−又はMRL.lpr(FasR−/−)T細胞を10μg/ml ConAで24時間刺激し、洗浄し、20U/ml rIL−2含有培地中に24時間静置し、そして最終的に、20U/ml rIL−2及び増加する濃度のプレート結合抗CD3 mAbを含有する培地中で再刺激することにより、AICDを開始させた。抗CD3 mAbによるAICD誘導は、刺激後4時間でセラミドリッチプラットフォーム生成を与え(図19D)、asmase−/−T細胞の集団の5.1±1.0%と比較して、asmase+/+T細胞の26.4±1.6%において明らかであった(p<0.005)。共焦点解析は、asmase+/+T細胞におけるセラミドリッチプラットフォーム内のスフィンゴ脂質GM1(図19E)及びFasの共局在化を明らかにした。
【0074】
AICDに対するプラットフォーム生成の影響を特徴付けるために、asmase+/+及びasmase−/−T細胞を、AICDを被るように誘導し、その16時間後アポトーシスを定量化した。asmase+/+T細胞におけるアポトーシスは抗CD3 mAb用量依存的であり、誘導の16時間後にアポトーシスは32.9±5.2%に達した(図19F)。反対に、アポトーシスはMRL.lpr(FasR−/−)T細胞では無効化され(図19F)、この系におけるFas/FasL相互作用についての必要性が確認された。asmase−/−T細胞は、asmase+/+T細胞と同様に良く抗CD3 mAbにより増殖するように誘導され、腫瘍細胞の溶解においてasmase+/+T細胞と同様に効果的であったが、asmase−/−T細胞は、in vitroにおいてAICD誘導アポトーシスに対するほぼ完全な抵抗性を示した。asmase−/−脾細胞は、最大10ng/ml 抗CD3に対する応答において、バックグラウンド(8.8%)を上回る検出可能なアポトーシスを被らなかった(10ng/ml 抗CD3においてasmase+/+に対してp<0.05;図19F)。これは、Fas及びFasLの通常のアップレギュレーションに関わらず起こった(非掲載)。C16ジヒドロセラミド(C16-dihydoceramide)はそうではなかったが、天然の長鎖C16セラミドは、プラットフォーム生成(非掲載)及びAICDを被るように刺激されたasmase−/−T細胞のアポトーシスを完全に回復した(図19G)。これらのデータは、標的細胞のASMase介在性のセラミドリッチプラットフォームの形成が、抗原不一致及び競合的(fratricidic)な両方の設定におけるT細胞誘導アポトーシスに必要であるという説得力のある証拠を提供する。
【0075】
抗セラミド抗体でのGvHDの治療及び予防
【0076】
次に、我々は、同種異系骨髄及びT細胞移植後の生存率に対する2A2抗セラミド抗体IgMでの治療の効果に注目した(図20)。図15に記載のC57BL/6レシピエント(H−2b)モデルへの同一のLP/Jドナー(H−2b)を用いて、我々は、2A2抗体治療がin vivoにおける急性移植片対宿主病の客観的兆候を有意に低減させ、asmase−/−表現型を部分的に再現することを実証する。C57BL/6asmase+/+又はC57BL/6asmase−/−を、分割線量の1100cGy TBIで致死的に照射した。2A2抗体を受けたC57BL/6asmase+/+群は、分割線量TBIの前半の15分前に750μgの抗体を受けた。その後、全てのマウスに、脾臓T細胞(3x106)と共にマイナー抗原不適合であるLP TCD−BM細胞(5x106)を静脈内注射した。生存率を毎日モニタリングし、結果をカプラン−マイヤー生存率解析により表した。2A2の投与は、移植後100日の動物生存率を12.5%から60%に増加させた(図20)。
【0077】
GvHDのサイトカインストーム発生においてASMaseが果たす役割を鑑みて、次に、我々は、この有害反応を弱めるための2A2抗体の能力を研究した。上に記載したように解析された群に由来する、BMT後7日目の野生型、asmase−/−及び2A2処理動物から血清を採取した(図21)。血清インターフェロンγを、製造者のプロトコル(R&D Systems)にしたがって、ELISAにより定量化した。我々の結果は、2A2 mAbで処理したWTマウスが、ASMase欠損マウスと同様に、約25%の血清インターフェロンγの減少を伴う応答をしたことを示す。
【0078】
これらの結果は、GvHD及び炎症性サイトカインの増加に関連する他のT細胞介在性の自己免疫疾患が、治療量の抗セラミド抗体、好ましくは2A2抗セラミドモノクローナルIgM又は本明細書内に記載するようなそれらの生物学的活性断片を投与することにより治療され得ることを示す。我々のin vivoでの結果は、ナイスタチンもまたex vivoでのT細胞の細胞溶解を減少させ、GvHD及び自己免疫疾患が1以上のスタチンを、好ましくは2A2といったヒト化抗セラミド抗体と共に投与することにより治療又は予防されるという特定の実施形態を支持することを示した。他の実施形態は、1以上のスタチン及び1以上の抗セラミド抗体の新しい組成物を対象にする。GI症候群の治療に関して、ルーチンの実験により、使用すべきヒト化モノクローナル抗セラミド抗体の有効量が決定されるであろう。治療的に投与され得る抗セラミド抗体の量は、約1ugから100ug/mlに及ぶ。この量は、典型的に変動し、並びに対象において典型的には約1μg/mlと約10μg/mlの間の血清治療剤レベルを達成するために十分な量であり得る。
【0079】
本研究は、電離放射線後のGIの微小血管アポトーシス及び免疫標的上のCTLによる溶解攻撃の両方において重要な段階としての標的細胞の原形質膜の原形質外層におけるセラミドリッチ膜プラットフォームの形成を明らかにする。刺激の数秒以内で形成されるこれらの構造は、かなり大きくしばしば直径3ミクロンに達するため、共焦点又は標準顕微鏡によって容易に検出される。我々は、例えばASMase又はBaxの阻害及び抗セラミド抗体の投与による、プラットフォームの遺伝子的又は薬理的破壊が、in vivo及びin vitroでの放射線誘導細胞死並びにCTL誘導細胞死の3つの異なる細胞モデルにおけるCTL介在性の死を妨げることを示した。モノクローナル抗セラミド抗体での治療は、胃腸の放射線毒性における病態生理学的応答の複数の側面を劇的に低減させ、並びにGvHDのメジャー及びマイナーミスマッチモデルを標準化した。
【0080】
要約
【0081】
本研究は、微小血管内皮アポトーシスと幹細胞クロノゲン致死率との間のつながりは、マウスの腸に対する放射線損傷の誘導に関する一般的な機序であるとする新しい証拠を提供する。Bax欠損マウスは、照射された陰窩幹細胞クロノゲンの運命に影響を与えるのは、ASMaseシグナル伝達により制御された他の事象よりはむしろ、内皮アポトーシス応答である証拠を提供する。ASMaseを阻害し得る薬理学的利用可能性(イミプラミン、アンチセンス核酸又はsiRNA)は、高線量腹部照射を必要とする患者において、腫瘍細胞殺傷に影響を与えず、GI毒性を選択的に中和する可能性を伴う、価値ある治療法である。別の価値ある治療法は、突発的放射線曝露又は大規模な放射線事故に対する応答の初期の、ラフトクラスタリング及びGIアポトーシスを中和するための抗セラミド抗体のようなセラミド標的薬物療法の利用である。現在治療の選択肢がない、放射線曝露後の致死性GI毒性は、世界情勢の現在の状態に代わって、国立衛生研究所の主要な関心事である。
【0082】
我々がここに示した結果が示すように、セラミドリッチプラットフォームは、in vivoでのT細胞介在性自己免疫症候群に必要である。ASMaseは急性T細胞介在性の自己攻撃的肝疾患のモデルである、フィトヘマグリチン(phytohemagglutin)(PHA)誘導肝炎における肝細胞アポトーシスを制御することが示されている(S. Kirschnek, F. Paris, M. Wellerら、J Biol Chem 275(35), 27316 (2000))。PHAは、リンパ球でのFasL誘導を刺激し、肝臓へのそれらの移動の際に、肝細胞はアポトーシスにより殺され、肝炎を促す(K. Seino, N. Kayagaki, K. Takedaら、Gastroenterology 113(4), 1315(1997))。リンパ球FasLの正常アップレギュレーションにもかかわらず、ASMase欠損は、アポトーシスから肝細胞を保護した。CD4活性化T細胞誘導細胞溶解におけるASMaseの役割が報告されている(Z. Q. Wang, A. Dudhane, T. Orlikowskyら、Eur J Immunol 24(7), 1549(1994))。HIVレセプター分子gp120又はアゴニストの抗CD4抗体によるCD4活性化は、Fas/FasL系を活性化し、アポトーシスを開始させる一方、ASMaseにおけるCD4+T細胞欠損は、抗CD4抗体のin vivoでの接種においてアポトーシスを遂げることができなかった(S. Kirschnek, F. Paris, M. Wellerら、J Biol Chem 275(35), 27316(2000))。我々はここに、ASMase産生セラミドがサイトカイン介在性T細胞誘導アポトーシス、及びGI症候群の病理学の根底にある内皮微小血管のアポトーシスの阻止において普遍的に必要であることを示してきた)。我々はまた、抗セラミド抗体でのASMase産生セラミドの阻害は、血清炎症性サイトカインの発現を減少させることも示した。したがって、Fas/FasL及びTNF/TNFR相互関作用を含むTNFスーパーファミリーレセプターシグナル伝達を介して働く任意の疾患は、ASMase産生セラミドに結合する治療量の抗体を投与することにより、又はASMaseもしくはBaxの阻害により治療又は予防され得る。
【0083】
本明細書内に記載される実験は、宿主ASMaseの活性化及びセラミドリッチプラットフォームの形成が急性GvHDを起こさせることにおける重要な事象であることを初めて示す。我々は、不適合自己活性CTLがasmase−/−マウスへの骨髄移植片に加えられた場合の、GvHDを進めるために必要なステップである、I型サイトカイン産生及びCTLクローン性増殖における著しい減少により、これを示した。異なる病因にも関わらず、GI症候群と同様、GvHDは、抗セラミド抗体による治療及びASMase又はBax発現の阻害に対して応答した。
【0084】
セラミドリッチプラットフォームの不活性化の利点は、TNF、IL−1及びTRAILを含むがこれに限定されない他の炎症性サイトカインは同様に、膜貫通型シグナル伝達のためにASMaseを用いるので、Fas介在性の生物学的作用に限定されない。したがって、ASMase産生セラミドリッチプラットフォームは、GvHD及び病態生理を引き起すために複数のサイトカインを利用する他の免疫疾患のための無差別の標的を示す。
【0085】
抗体
【0086】
「抗体」は、インタクトな免疫グロブリン又は特異的結合のためにインタクトな抗体と競合するその抗原結合部分を言う。抗原結合部分は、組換えDNA技術又はインタクトな抗体の酵素的もしくは化学的切断により産生されてもよい。抗原結合部分としては、とりわけ、Fab、Fab’、F(ab)sub.2、Fv、dAb及び相補性決定領域(CDR)断片、単鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、二重特異性抗体並びにポリペプチドへの特異的抗原結合を与えるのに十分である免疫グロブリンの少なくとも一部分を含むポリペプチドが挙げられる。
【0087】
「免疫グロブリン」は、四量体分子である。天然に生じる免疫グロブリンにおいて、各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一の対からなり、各対は1つの「軽」鎖(約25kDa)及び1つの「重」鎖(約50−70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、抗原認識に主に関与する約100から110又はそれより多くのアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能に主に関与する定常領域を規定する。ヒト軽鎖は、κ及びλ軽鎖に分類されている。重鎖は、μ、δ、γ、α又はεに分類され、それぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA及びIgEとしての抗体のアイソタイプを規定する。軽鎖及び重鎖のうち、可変及び定常領域は、約12以上のアミノ酸の「J」領域により結合され、重鎖はまた、約10以上(10 more)のアミノ酸の「D」領域を含む。一般には、Fundamental Immunology Ch. 7(Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y. (1989))(全ての目的のために参照によってその全体が組み込まれる)を参照されたい。各軽/重鎖対の可変領域は、インタクトな免疫グロブリンが2つの結合部位を有するように抗体結合部位を形成する。免疫グロブリン鎖は、相補的決定領域又はCDRとも呼ばれる、3つの超可変領域によって結合された比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同一の一般的構造を示す。各対の2つの鎖由来のCDRは、フレームワーク領域により整列し、特異的エピトープへの結合を可能にする。N末端からC末端へ、軽鎖及び重鎖の両方は、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interestの定義(国立衛生研究所、Bethesda, Md. (1987及び1991))又はChothia & Lesk J. Mol. Biol. 196:901 917 (1987); Chothia ら、Nature 342:878 883 (1989)に従う。
【0088】
Fab断片は、VL、VH、CL及びCHIドメインからなる一価の断片である;F(ab’).sub.2断片は、ヒンジ領域のジスルフィド結合により結合された2つのFab断片を含む二価の断片である;Fd断片は、VH及びCH1ドメインからなる;Fv断片は、抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなる;並びにdAb断片(Wardら、Nature 341:544 546, 1989)は、VHドメインからなる。単鎖抗体(scFv)は、VL及びVH領域が対になって、これらを単一タンパク質鎖とすることを可能にする合成リンカーを介して、一価分子を形成する抗体である(Birdら、Science 242:423 426, 1988 及びHuston ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 855879 5883, 1988)。二重特異性抗体は二価の二重特異性の抗体であり、VH及びVLドメインが単一ポリペプチド鎖上に発現されるが、同一鎖上の2つのドメインの間でペアになるのを可能にするには短かすぎるリンカーを用いることにより、当該ドメインが別の鎖の相補的ドメインと対にならざるを得ず、2つの抗原結合部位を作る(例えばHolliger, P., ら、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444 6448, 1993,及びPoljak, R. J.ら、Structure 2: 1121 1123, 1994を参照)。1以上のCDRが、共有又は非共有結合的のいずれかで分子内に組み込まれてそれをイムノアドヘシンとしてもよい。イムノアドヘシンは、大きなポリペプチド鎖の一部としてCDRを組み込んでもよく、CDRを別のポリペプチド鎖に共有結合的に結合してもよく、もしくは、CDRを非共有結合的に組み込んでもよい。CDRは、イムノアドヘシンが、目的の特定の抗原に特異的に結合するのを可能にする。
【0089】
抗体は、1以上の結合部位を有し得る。1より多くの結合部位がある場合、結合部位は、互いに同一でもよく、又は異なっていてもよい。例えば、天然に生じる免疫グロブリンは、2つの同一の結合部位を有し、単鎖抗体又はFab断片は1つの結合部位を有する一方、「二重特異的」又は「二機能性」抗体は、2つの異なる結合部位を有する。
【0090】
「単離された抗体」は、(1)自然の状態においてそれに付随する、他の天然に伴われる抗体を含む天然に伴われる成分を伴っていない、(2)同種由来の他のタンパク質を含まない、(3)異種由来の細胞により発現される、又は(4)天然には生じない、抗体である。
【0091】
用語「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリン配列由来の1以上の可変及び定常領域を有する全ての抗体を含む。好ましい実施形態において、全ての可変及び定常ドメインは、ヒト免疫グロブリン配列由来(完全ヒト抗体)である。これらの抗体は、以下に記載するように、様々な方法において調製され得る。
【0092】
ヒト化抗体は、非ヒト種由来の抗体であり、重鎖及び軽鎖のフレームワークドメイン及び定常ドメインの特定のアミノ酸が、ヒトにおける免疫応答を妨げるか又は無効にするように変異されたものである。あるいは、ヒト化抗体は、ヒト抗体由来の定常ドメインを非ヒト種の可変ドメインに融合させることにより作成され得る。ヒト化抗体の作成方法の例は、参照によって本明細書内に組み込まれる、米国特許第6,054,297号、第5,886,152号及び第5,877,293号に見られ得る。
【0093】
用語「キメラ抗体」は、1つの抗体由来の1以上の領域及び1以上の他の抗体由来の1以上の領域を含む抗体を言う。
【0094】
抗体の断片又はアナログは、本明細書の教示に従って当業者によって容易に作製され得る。断片又はアナログの好ましいアミノ及びカルボキシ末端は、機能的ドメインの境界付近に生じる。構造的及び機能的ドメインは、ヌクレオチド及び/又はアミノ酸配列データと公的又は私的な配列データベースとの比較によって同定され得る。好ましくは、コンピュータでの比較方法が、公知の構造及び/又は機能の他のタンパク質で生じる配列モチーフ又は予測されるタンパク質構造ドメインの同定に用いられる。公知の3次元構造に折りたたまれたタンパク質配列を同定するための方法は、公知である。Bowie ら、Science 253:164 (1991)。
【0095】
低分子干渉RNA
【0096】
低分子干渉RNAもまた、それぞれの発現を低減又は阻害し、それによりアポトーシスを阻害するために、その少なくとも一部がASMase又はBaxをコードするmRNAに相補的且つ特異的にハイブリダイズするsiRNAを投与することにより、対象におけるGvHD、GI症候群、炎症及び自己免疫疾患を含む放射線誘導疾患を治療又は予防するため治療的に用いられ得る。
【0097】
米国特許出願第20040023390(参照によって本明細書内に組み込まれる)は、RNA干渉(RNAi)として公知のプロセスによって、二本鎖RNA(dsRNA)が、多くの生物体において配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングを誘導し得ることを教示する。しかしながら、哺乳類細胞において、30塩基対又はそれより長いdsRNAは、タンパク質合成の終了及びアポトーシスを介する細胞死すらも引き起こす、配列非特異的応答を誘導し得る。最近の研究は、RNA断片がRNAiの配列特異的メディエーターであることを示す(Elbashirら、2001)。これらの低分子干渉RNA(siRNA)による遺伝子発現の干渉が、線虫(C. elegans)、ショウジョウバエ、植物において及びマウス胚幹細胞、卵母細胞及び初期胚において遺伝子をサイレンシングするための天然に起こる戦略方法として現在認識されている(Cogoniら、1994; Baulcombe, 1996; Kennerdell, 1998; Timmons, 1998; Waterhouseら、1998; Wianny 及びZernicka-Goetz, 2000; Yangら、2001; Svobodaら、2000)。
【0098】
哺乳類細胞培養において、siRNA介在性遺伝子発現の減少が、合成RNA核酸を伴う細胞をトランスフェクトすることにより達成されている(Caplanら、2001; Elbashirら、2001)。本明細書に完全に説明されたように、参照によってその内容全てが本明細書内に組み込まれる、出願第20040023390号は、対象の遺伝子を標的にした低分子干渉RNA分子(siRNA)をコードする核酸配列に作動可能に連結されたpol IIプロモーターを包含する発現カセットを含有するウイルスベクターを用いる方法を提供する。
【0099】
本明細書内で用いられる場合RNAiは、RNA干渉のプロセスである。典型的なmRNAは、約5000コピーのタンパク質を産生する。RNAiは、mRNAにより作成されたタンパク質コピーの数に干渉するか又は有意に減少させるプロセスである。例えば、二本鎖の短い干渉RNA(siRNA)分子は、干渉されるべき標的mRNAのタンパク質コードヌクレオチド配列と相補的且つ適合するように作製されている。細胞内輸送後、siRNA分子はRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に随伴される。siRNA随伴RISCは、標的mRNA(ASMase又はBaxをコードするmRNA等)と塩基対合相互作用を介して結合し、これを分解する。RISCは、標的とされたmRNAの更なるコピーを依然として分解することができる。短いヘアピンRNA及びより長いRNA分子などのRNAの他の形態が用いられ得る。より長い分子は、例えばアポトーシスを引き起こして、インターフェロン応答を誘導することにより、細胞死を引き起こす。30ヌクレオチドより長いdsRNAはRNA転写物の非特異的分解及び宿主細胞の全体的な停止をもたらす防御機序を活性化するため、細胞死は哺乳類においてRNAiを達成するための大きな障害であった。哺乳類細胞における遺伝子特異的抑制を介在するために約20から約29ヌクレオチドのsiRNAを利用することで、この障害を克服されたようである。これらのsiRNAは、遺伝子抑制を引き起こすのに十分な長さであるが、インターフェロン応答を誘導する長さではない。
【0100】
本発明は、特定の実施形態への言及と共に先行する詳述において記載されている。しかしながら、本発明のより広範な精神及び範囲を逸脱することなく、様々な改変及び変更が、実施形態に対して行われ得ることは明らかであろう。本明細書及び図面は、限定的意味ではなく寧ろ例示的意味において見なされるべきである。
【0101】
アンチセンス核酸
【0102】
本明細書内で用いられる場合、用語「核酸」は、RNA及びcDNA、ゲノムDNA及び合成(例、化学合成)DNAを含むDNAの両方をいう。核酸は、二本鎖又は一本鎖(即ち、センス又はアンチセンス一本鎖)であり得る。本明細書内で用いられる場合、「単離された核酸」は、哺乳類ゲノムにおける核酸の片側又は両側に通常隣接する核酸(例、ARPKD遺伝子に隣接する核酸)を含む、哺乳類ゲノム中に存在する別の核酸分子から分離された核酸をいう。天然に生じない配列は、天然には見出されず且つ天然に生じるゲノムにおいて直に接する配列を有さないため、核酸について本明細書内で用いられる用語「単離された」はまた、任意の天然に生じない核酸配列を含む。
【0103】
単離された核酸は、天然に生じるゲノムにおいてそのDNA分子に直に接して通常見出される核酸配列の一つが除去されているか又は存在しないのであれば、例えばDNA分子であり得る。したがって、単離された核酸としては、限定されないが、他の配列から独立した分離分子として存在するDNA分子(例、化学的に合成された核酸又はPCRもしくは制限エンドヌクレアーゼ処理により生成されたcDNAもしくはゲノムDNA断片)並びにベクター、自己複製プラスミド、ウイルス(例、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルスもしくはヘルペスウイルス)又は原核細胞もしくは真核細胞のゲノムDNA内に組み込まれているDNAが挙げられる。さらに単離された核酸は、ハイブリッド又は融合核酸の一部であるDNA分子等の改変核酸を含み得る。例えば、cDNAライブラリ又はゲノムDNA制限消化を包含するゲル薄片内の何百から何百万の他の核酸の中に存在する核酸は、単離された核酸と考えられない。
【0104】
本発明の他の実施形態は、ASMaseもしくはBaxもしくはBak又はそれらの生物学的活性断片もしくは変異体の発現を阻害するための、アンチセンス核酸(DNAもしくはRNAのいずれか)又は低分子干渉RNAの使用を対象にする。アンチセンス核酸は、アンチセンスRNA、アンチセンスDNA又は低分子干渉RNAであり得る。ASMaseもしくはBaxもしくはBakの公知の配列に基づいて、発現を止めるために各々の遺伝子もしくはmRNAに十分にハイブリダイズするアンチセンスのDNAもしくはRNAは、当該技術分野において公知の方法を用いて容易に設計及び作製され得る。
【0105】
本発明において用いるための単離されたアンチセンス又はsiRNA核酸分子は、標的(配列番号:1として特定されるASMaseをコードする遺伝子(完全ゲノムDNA)、配列番号:2として特定されるヒトBaxをコードする遺伝子、又は配列番号:3として特定されるヒトBakをコードする遺伝子)のための遺伝子又はmRNA配列の相補体である核酸分子を含む。所与のヌクレオチド配列に相補的な核酸分子は、該所与のヌクレオチドとハイブリダイズして安定な二本鎖を形成し得る、該所与のヌクレオチド配列に十分相補的であるものである。
【0106】
アンチセンス核酸分子は、即ちタンパク質をコードするセンス核酸に相補的である(例、二本鎖DNA分子のコード鎖(もしくはcDNA)に相補的であるか、又はmRNA配列と相補的である)分子である。したがって、アンチセンス核酸はセンス核酸と水素結合し得る。アンチセンス核酸は、ASMase、BakもしくはBaxのコード鎖全体、又はその一部のみ(例、タンパク質コード領域(又はオープンリーディングフレーム)の全てもしくは一部)に相補的であり得る。アンチセンス核酸分子は、ASMase、BakまたはBaxをコードするヌクレオチド配列のコード鎖の非コード領域に対してアンチセンスであり得る。非コード領域(「5’及び3’非翻訳領域」)は、コード領域に隣接し、アミノ酸に翻訳されない5’及び3’の配列である。
【0107】
本明細書に開示される、ASMaseをコードするコード鎖配列(cDNA配列番号:2、ゲノムDNA配列番号:7、Bax cDNA配列番号:3、ゲノムDNA配列番号:8又はBak cDNA配列番号:5、ゲノムDNA配列番号:9を考慮して、本発明のアンチセンス核酸を、ワトソンとクリックの塩基対合のルールにしたがって設計することができる。アンチセンス核酸分子は、ASMase、Bak又はBax mRNAのコード領域全体と相補的であり得るが、より好ましくは、ASMase、Bak又はBax mRNAのコード又は非コード領域の一部のみにアンチセンスであるオリゴヌクレオチドである。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ASMase、Bak又はBaxの翻訳開始部位の周りの領域に相補的であり得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50ヌクレオチドの長さであり得る。本発明のアンチセンス核酸は、当該技術分野において公知の手順を用いた化学合成及び酵素的ライゲーション反応を用いて構築され得る。例えば、アンチセンス核酸(例、アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然に生じるヌクレオチド又は、分子の生物学的安定性を増加するようにもしくはアンチセンスとセンス核酸との間に形成される二本鎖の物理的安定性を増加するように設計された様々な改変ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチドが用いられ得る)を用いて化学的に合成され得る。アンチセンス核酸を生成するために用いられ得る、改変ヌクレオチドの例としては、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ホドウラシル(hodouracil)、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−ソウリジン(thouridine)、5−カルボキシメチルアミノメチ−イルウラシル(5-carboxymethylaminometh-yluracil)、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メトニルシトシン(metnylcytosine)、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテン−イルアデニン(2-methylthio-N6-isopenten- yladenine)、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、シュードウラシル、キュエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−スロウラシル(2-thlouracil)、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−シクシ酢酸(cxyacetic acid)(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボシキプロピル)ウラシル、(acp3)w、及び2,6−ジアミノプリン等が挙げられる。あるいは、アンチセンス核酸は、アンチセンスの向きに核酸がサブクローニングされている(即ち、以下の小節にさらに記載される、挿入された核酸から転写されたRNAが、目的の標的核酸に対してアンチセンスの向きであるだろう)発現ベクターを用いて生物学的に作成され得る。
【0108】
本発明のアンチセンス核酸分子は、典型的には、対象に投与されるか、又は細胞性mRNA及び/もしくは目的のタンパク質をコードするゲノムDNAとハイブリダイズするかもしくは結合し、それによって、例えば転写及び/もしくは翻訳を阻害することにより該タンパク質の発現を阻害するようにin situで生成される。ハイブリダイゼーションは、安定な二本鎖を形成する従来のヌクレオチド相補性によるものであってもよく、又は、例えば、DNA二本鎖と結合するアンチセンス核酸分子の場合、ダブルへリックスの主溝内での特異的相互作用を介したものであってもよい。本発明のアンチセンス核酸分子の投与経路の例は、組織部位における直接接種を含む。あるいは、アンチセンス核酸分子は、選択された細胞を標的にするために改変され得、次いで全身に投与され得る。例えば、アンチセンス分子は、全身投与のために、例えば、アンチセンス核酸分子を、細胞表面レセプターもしくは抗原に結合するペプチド又は抗体に連結することにより、選択された細胞表面に発現したレセプター又は抗原に特異的に結合するように改変され得る。アンチセンス核酸分子はまた、本明細書に記載されるベクターを用いて細胞に送達され得る。アンチセンス分子の十分な細胞内濃度を達成するため、アンチセンス核酸分子は、強いpol II又はpol IIIポリメラーゼの制御下に置かれたベクターコンストラクトが好ましい。
【0109】
本発明のアンチセンス核酸分子は、α−アノマー核酸分子であり得る。α−アノマー核酸分子は、通常のβ−ユニットとは対照的に、鎖が互いに並行して走る特有の二本鎖ハイブリッドを相補的なRNAと形成する(Gaultierら、(1987) Nucleic Acids. Res. 15:6625-6641)。アンチセンス核酸分子はまた、2’−o−メチルリボヌクレオチド(Inoueら、(1987) Nucleic Acids Res. 15:6131-6148)又はキメラRNA−DNAアナログ(Inoueら、(1987) FEBS Lett. 215:327-330)を包含し得る。アンチセンス技術に関する上記論文に記載される全ての方法は、参照によって本明細書内に組み込まれる。
【0110】
本発明はまた、リボザイムを包含する。リボザイムは、相補的領域を有する一本鎖核酸(mRNAなど)を切断することができるリボヌクレアーゼ活性を伴う触媒RNA分子である。したがって、リボザイム(例、ハンマーヘッドリボザイム(Haselhoff及びGerlach (1988) Nature 334:585-591に記載される))は、ASMase、Bak又はBax転写物を触媒的に切断することにより、ASMase、Bak又はBaxの翻訳を阻害するために用いられ得る。ASMase、Bak又はBaxコード核酸に特異性を有するリボザイムは、本明細書内に開示されるASMase、Bak又はBaxcDNAのヌクレオチド配列に基づいて設計され得る。例えば、活性部位のヌクレオチド配列が、ASMase、Bak又はBaxをコードするmRNAにおいて切断されるヌクレオチド配列に相補的であるテトラヒメナのL−19 IVS RNAの誘導体が、構築され得る。例えば、Cechら、米国特許第4,987,071号;及びCechら、米国特許第5,116,742号を参照されたい。あるいは、ASMase、Bak又はBax mRNAは、RNA分子のプールから特異的リボヌクレアーゼ活性を有する触媒RNAを選択するために用いられ得る。例えば、参照によって本明細書内に組み込まれる、Bartel及びSzostak (1993) Science 261:1411-1418を参照されたい。
【0111】
本明細書内で用いられる場合、用語「核酸」は、RNA及びcDNA、ゲノムDNA及び合成(例、化学合成)DNAを含むDNAの両方をいう。核酸は、二本鎖又は一本鎖(即ち、センス又はアンチセンス一本鎖)であり得る。本明細書内で用いられる場合、「単離された核酸」は、哺乳類ゲノムにおける核酸の片側又は両側に通常隣接する核酸(例、ARPKD遺伝子に隣接する核酸)を含む、哺乳類ゲノム中に存在する別の核酸分子から分離された核酸をいう。天然に生じない配列は、天然には見出されず且つ天然に生じるゲノムにおいて直に接する配列を有さないため、核酸について本明細書内で用いられる用語「単離された」はまた、任意の天然に生じない核酸配列を含む。
【0112】
単離された核酸は、天然に生じるゲノムにおいてそのDNA分子に直に接して通常見出される核酸配列の一つが除去されているか又は存在しないのであれば、例えばDNA分子であり得る。したがって、単離された核酸としては、限定されないが、他の配列から独立した分離分子として存在するDNA分子(例、化学的に合成された核酸又はPCRもしくは制限エンドヌクレアーゼ処理により生成されたcDNAもしくはゲノムDNA断片)並びにベクター、自己複製プラスミド、ウイルス(例、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルスもしくはヘルペスウイルス)又は原核細胞もしくは真核細胞のゲノムDNA内に組み込まれているDNAが挙げられる。さらに単離された核酸は、ハイブリッド又は融合核酸の一部であるDNA分子等の改変核酸を含み得る。例えば、cDNAライブラリ又はゲノムDNA制限消化を包含するゲル薄片内の何百から何百万の他の核酸の中に存在する核酸は、単離された核酸と考えられない。
【0113】
医薬組成物
【0114】
本発明はまた、任意で1以上のスタチン又はイミプラミンと共に製剤処方される、2A2ヒト化モノクローナル抗体の医薬組成物及び製剤を含む。投与される本発明のアンチセンス核酸及び低分子干渉RNAを含む他の医薬組成物は、ASMase又はBak又はBax発現を低減する。
【0115】
本発明の医薬組成物は、対象における列挙した疾患:GVHD、GI症候群、炎症及び自己免疫疾患を含む放射線誘導疾患を予防又は治療するのに十分な量の治療剤(抗セラミド抗体、酵素阻害剤、アンチセンス核酸及びsiRNA)を包含する。これらの医薬組成物は、対象においてGVHD、GI症候群、炎症及び自己免疫疾患を含む放射線誘導疾患の予防又は治療の必要がある対象への投与に好適である。対象は、好ましくはヒトであるが、非ヒトでもあり得る。好適な対象は、列挙した疾患の1つである疑いがある、であると診断された、又は発症の危険性がある個体であり得る。治療組成物は、例えば、結合剤、充填剤、担体、保存剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤及び賦形剤、例えば医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等として通常使用される添加剤等を含有してもよい。これらの組成物は典型的に、1%−95%の活性成分、好ましくは2%−70%の活性成分を含有する。
【0116】
本発明の抗体及びアンチセンスヌクレオチド並びに酵素阻害剤又はスタチンはまた、相溶性があり、生理的に許容できる希釈剤又は賦形剤と混合され得る。好適な希釈剤及び賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール等、並びにこれらの組み合わせである。さらに、必要であれば、該組成物は、湿潤又は乳化剤、安定化又はpH緩衝剤等の少量の補助物質を含有してもよい。
【0117】
いくつかの実施形態において、本願発明の治療組成物は、水溶液もしくは懸濁液として、スプレーとして又は固形でのいずれかで調製される。経口製剤としては、通常、結合剤、充填剤、担体、保存剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤及び賦形剤、例えば医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等として通常使用される添加剤等が挙げられる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放性製剤又は粉末の形態をとり、典型的には1%−95%の活性成分、好ましくは2%−70%を含有する。本発明の治療組成物を送達するのに有用な経口組成物の一例は、米国特許第5,643,602号に記載される(参照によって本明細書内に組み込まれる)。
【0118】
局所投与等の他の投与の方法に対して好適であるさらなる製剤としては、軟膏、チンキ剤、クリーム、ローション、経皮貼布剤及び坐薬が挙げられる。軟膏及びクリームについて、従来の結合剤、担体及び賦形剤を含んでもよく、例えば、ポリアルキレングリコール又はトリグリセリドである。局所送達方法の一例は、米国特許第5,834,016号(参照によって本明細書内に組み込まれる)に記載される。他のリポソーム送達方法もまた使用されてもよい(いずれも参照によって本明細書内に組み込まれる、米国特許第5,851,548号及び第5,711,964号を参照されたい)。
【0119】
製剤はまた、治療される特定の兆候に必要である1より多くの活性化合物を含有してもよく、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を伴うものである。このような分子は、好ましくは、意図した目的に効果がある量で組み合わせて存在する。例えば、2A2抗体はスタチン又はイミプラミンと共に処方され得るであろう。
【0120】
徐放製剤もまた調製され得る。徐放製剤の好適な例は、抗体又は断片を含有する固体疎水性ポリマーの半透明性マトリックス、ナイスタチン、イミプラミン又はそれらの組み合わせを含み、ここで該マトリックスは、例えば、フィルム又はマイクロカプセルの造形品の形態である。徐放性マトリックスの例としては、これに限定されないが、ポリエステル、ヒドロゲル(例、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド、L−グルタミン酸とyエチル−L−グルタミン酸(y ethyl-L-glutamate)の共重合体、非分解性エチレン酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(乳酸−グリコール酸共重合体及び酢酸ロイプロリドからなる注射可能なミクロスフェア)等の分解性乳酸−グリコール酸共重合体、並びにポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン酢酸ビニル及び乳酸−グリコール酸等のポリマーは、100日を越える分子の放出が可能であり、特定のヒドロゲルは、より短期間タンパク質を放出する。
【0121】
本願発明の抗体及びアンチセンス又はsiRNAは、非経口、皮下、局所、腹腔内、肺内、及び鼻腔内並びに病巣内投与(例、局所的免疫抑制治療)を含む、任意の好適な方法により投与され得る。非経口注入としては、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与が挙げられる。さらに、好適な投与としては、特に抗体の用量の低下を伴う、脈内注入が含まれる。好ましくは、投与は注射により与えられ、最も好ましくは投与が短いか又は慢性的かに部分的に依存して静脈内又は皮下注射により与えられる。
【0122】
疾患の予防又は治療について、抗体の適切な用量は、治療される疾患の種類、重症度及び疾患の経過、薬剤が予防又は治療目的で投与されるかどうか、薬歴、患者の病歴及び新薬(2A2抗体等)に対する応答及び主治医の判断に依存するだろう。抗体及びヌクレオチド又は他の薬剤(イミプラミン及びスタチン)は1回又は一連の治療に渡って患者に好適に投与される。
【0123】
上述したように、治療的に投与されるべき抗セラミド抗体の量は、約1ugから100ug/mlに及ぶ。この量は典型的に変動し、対象において典型的には約1μg/mlと約10μg/mlの間の血清治療剤レベルを達成するのに十分な量であり得る。本発明の治療剤は、1以上の分かれた投与により又は連続的注入により投与され得る。数日又はそれより長きに渡る繰り返し投与について、条件に応じて、治療は症状が十分に低減又は除去されるまで続けられる。本治療の進展は、従来の技術及びアッセイにより容易にモニタリングされ、治療効果を達成するための用量を調節するために用いられてもよい。
【0124】
治療的用途のためのアンチセンス核酸又はsiRNAの候補用量は、ヒト又は動物からの生物学的試料における標的タンパク質の発現を低減する量を見つけることにより初めに決定され得る。
【0125】
以上の詳述において、本発明をその特定の実施形態について説明してきた。しかしながら、本発明のより広範な精神及び範囲を逸脱することなく、様々な改変及び変更が、これらに対して行われることは明らかであろう。したがって、本明細書及び図面は、限定的意味ではなく寧ろ例示的意味において見なされるべきである。
【実施例】
【0126】
実施例1:材料及び方法
細胞培養及び刺激
【0127】
野生型(クローンE6−1)、カスパーゼ8−/−(クローンI9.2)及びFADD−/−(クローンI2.1)Jurkat Tリンパ球はATCC(Rockville、MD)から得た。細胞を5% CO2インキュベーター内、37℃で10% 熱不活性化ウシ胎仔血清及び10mM Hepes(pH7.4)、2mM L−グルタミン、1mM ピルビン酸ナトリウム、100μM 非必須アミノ酸、100単位/ml ペニシリン及び100μg/ml ストレプトマイシンを添加した、RPMI1640培地中で増殖した。UV−C又は抗Fasでの刺激の前に、細胞を新鮮培地で再懸濁し、4時間順化させた。次いで、別段記載しない限り、50ng/ml 抗FasCH−11活性抗体(Upstate Biotechnology, Lake Placid NY)又はFB−UVXL−1000クロスリンカー(Fisher Biotech, Pittsburgh PA)を用いて50ジュール/m2 UV−Cで、Jurkat細胞を処理した。プラットフォーム研究のために、均一なレセプターの関与を保証するためにJurkat細胞をCH−11と共に4℃で20分間培養し、刺激を開始させるために37℃に温めた。
【0128】
示した場合には、細胞を10μM z−VAD−fmk(Calbiochem, La Jolla CA)、30μg/ml ナイスタチン(Sigma-Aldrich, Milwaukee WI)、50μM イミプラミン(Sigma-Aldrich)又は1μg/ml マウスモノクローナル抗セラミド抗体MID15B4(Alexis Biochemicals, San Diego CA)と共に予備培養した。ナイスタチン、イミプラミン及び抗セラミド研究を0.5% 脂質フリーウシ胎仔血清(HyClone, Logan UT)含有RPMI中で行った。各研究において、生存率を評価するために、細胞のアリコートをトリパンブルーで染色した。
【0129】
マウスと骨髄移植(BMT)
【0130】
C3H/HeJ、C3HeB/FeJ、LP/J(“LP”、H−2b)、B10.BR(“B10”、H−2k)及びB6.MRL.lpr雌マウス、8−12週齢をJackson研究所(Bar Harbor, ME)から購入した。SV129/C57BL/6asmase−/−及びC57BL/6Bax−/−マウスを、前述の我々のコロニーで交配し、遺伝子型を同定した[Horinouchi, 1995 #171; Knudson, 1995 #173]。初めに、野生型C57BL/6雌と雄SV129/C57BL/6asmase−/−マウスを交配することにより、C57BL/6バックグラウンドへのasmase−/−遺伝子型戻し交雑を行った。続いて、asmase+/−遺伝子型の雄F1マウスをC57BL/6の雌と交配した。次に、純粋C57BL/6バックグラウンドにおけるasmase+/−遺伝子型を得るために、雄のasmase+/−後代と野生型C57BL/6の雌マウスとの交配プロトコルを、10世代続けた。戻し交配が確立されたら、C57BL/6asmase+/+マウスを異種交配させて、実験的動物を得た。BMT実験において用いた雄及び雌宿主は8−12週齢であった。BMTプロトコルは、Memorial Sloan-Kettering Cancer Center Institutional Animal Care and Use Committeeにより承認された。マウスをMemorial Sloan-Kettering Cancer Centerの病原体のない施設内の殺菌したマイクロアイソレーターケージ内に収容し、通常の食事及びオートクレーブした高塩素消毒飲料水(pH3.0)を与えた。この施設は、アメリカの実験動物管理評価認定協会により承認され、農務省及び保健社会福祉省、国立衛生研究所の規則及び基準にしたがって維持される。
【0131】
骨髄(BM)細胞を大腿骨及び頸骨から無菌で除去した。ドナーの髄質は、抗Thy−1.2抗体及び低TOX−Mウサギ補体を用いて枯渇させたT細胞であった(Cedarlane Laboratories, Hornby, Canada)。ナイロンウールカラムを通じた精製により脾臓T細胞を採取した。細胞(脾臓T細胞の有り又は無しでの5x106BM細胞)をDulbeccoの改変必須培地に再懸濁し、0日目において、投与の間3時間の分割用量で、尾静脈注入により1100cGy全身照射(137Csソース)を受けた致死照射されたレシピエントに移植した。
【0132】
リンパ球及び骨髄採集のための細胞培養培地は、10% 熱不活性化ウシ胎仔血清、100単位/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシン、2mM L−グルタミン及び50μM 2−メルカプトエタノールを添加した、RPMI1640からなる。抗マウスCD16/CD32 Fc ブロック(2.4G2)、蛍光クロム標識CD3(145−2Cll)、CD4(RM4−5)、CD8(53−6.7)、CD62L(MEL−14)、及びLy−9.1(30C7)抗体をPharmingen(San Diego, CA)から入手した。塩化アンモニウム赤血球細胞(RBC)溶解バッファ、コンカナバリンA(conA)及びコンカナマイシンA(CMA)をSigma(St. Louis, MO)から入手した。
【0133】
ex vivoでの肝細胞培養
【0134】
Klaunig94により記載される方法にしたがって門脈の挿管及びin situでの逆行性コラゲナーゼかん流により、肝細胞を単離した。つまり、肝臓を20mL バッファ1(グルコース+0.1mM EGTAを含むKrebsリンガー)、続いて25mL バッファ2[5000ユニットコラゲナーゼI型(Sigma)を含む0.2mM CaCl2含有グルコースを含むKrebsリンガー]で、7ml/分の速さで蠕動ポンプ(Rainin Instrument LLC. Woburn, MA)によってかん流した。かん流した肝臓を切除し、バッファ2中で細分化し、100μM細胞ストレーナーを通じて濾過し、50xgで2度洗浄し、並びに10% ウシ胎仔血清含有RPMI1640完全培地に再懸濁した。生存率は、通常90%より高かった。
【0135】
アポトーシス定量
【0136】
2つの異なる技術によって、アポトーシスをin vitroで評価した。製造者の説明書(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis IN)にしたがって、0.1%トリトンX−100及び0.1%クエン酸ナトリウムにより、4℃、5分で透過処理した細胞についてTUNEL染色を行った。あるいは、刺激した細胞を2% パラホルムアルデヒドで固定し、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、100μlの24μg/ml ビスベンズイミド三塩酸塩溶液(Hoechst #33258; Sigma-Aldrich, Milwaukee WI)で10分間染色した。核の周辺に沿ったクロマチンの凝縮(condensation)、セグメント化、凝縮(compaction)又はアポトーシス小体の出現を含む核アポトーシスの生態学的変化を、前述のようにして、Axiovert S-100 Zeiss蛍光顕微鏡を用いて定量化した33。ポイントあたり最も少なくて200個の細胞を試験した。
【0137】
記載されているようにして[Paris, 2001 #7]、TUNEL染色後に、アポトーシスを小f腸の固有層の内皮においてin vivoで定量化した。既に公開されたようにして[Paris, 2001 #7]、内皮細胞表面マーカーCD31(PharMingenカタログNo.1951D)に対する抗体を用いた免疫染色により、内皮細胞を同定した。
【0138】
完全培地に30分間静置し、記載するようにして、LP/Jドナー骨髄及びT細胞の移植後2―3週間でC57BL/6マウスから単離した1μg/mL抗Fas Jo2抗体(Pharmingen)又は0−2x106の脾臓T細胞と共に、16時間、37℃、5% CO2下で刺激した0.5x106の肝細胞において肝細胞アポトーシスを定量化した。いくつかの研究において、肝細胞をナイスタチン(50μg/mL、Sigma-Aldrich, Milwaukee WI)で30分間前処理し、RPMIで洗浄し、刺激前に1% 脂質フリーFBSが添加されたRPMIに再懸濁した。
【0139】
クローン原性アッセイ
【0140】
UV−C又は抗FasCH−11処理後のJurkat細胞のコロニー形成を、既述95のようにして、軟寒天クローニングアッセイを用いて評価した。つまり、細胞をナイスタチン及び抗セラミドmAb、又はビヒクル及び対照IgMと共に、RPMI+0.5% 脂質フリーウシ胎仔血清中で予備培養し、並びに漸増用量のUV−C又は抗Fasで4時間刺激した。その後、細胞を20% FBS、20mM L−グルタミン及び40% メチルセルロース培地含有RPMI培地に懸濁し、3連で塗布した。培養の14−16日後、プレートを倒立顕微鏡により解析し、20より多い細胞の凝集体をコロニーとしてスコア化した。各条件についてのコロニー形成を、非処理対照細胞について得られた値に対して算出した。コロニー生存曲線を、FITソフトウェアプログラム96の変更を用いて最小二乗回帰分析により算出した。該プログラムは、線量−生存率データの各セットに対する重み付けした加重最小二乗を繰り返すことにより曲線をフィットさせ、生存曲線パラメータの共変量及び対応する信頼領域を見積もり、並びに生存曲線をプロットする。これはまた、D0(放射線感受性レベルを示す、カーブの指数部分における傾きの逆数)及びNナンバー(肩の大きさの指標)といった曲線パラメータを導き出す。
【0141】
プラットフォーム検出
【0142】
前述のようにして、プラットフォームを検出した。つまり、1x106Jurkat細胞をUV−C又はα−Fasで刺激し、2% パラホルムアルデヒドで示した時間固定し、1% ウシ胎仔血清含有PBSでブロックし、次いでPBSで洗浄した。細胞を、ラフト局在脂質GM1について、FITC結合コレラ毒素β−サブユニット(2μg/ml;Sigma-Aldrich)で、45分間、4℃で染色し、0.1% トリトンX−100含有PBSで2度洗浄し、蛍光封入剤(Dako, Carpenteria CA)にマウントした。SPOTデジタルカメラを備えたAxiovert S-100 Zeiss蛍光顕微鏡を用いて蛍光を検出した。プラットフォームを包含する細胞即ち蛍光が細胞表面の15%未満に凝縮した細胞のパーセンテージを、ポイントあたり150−250個の細胞を計数することにより測定した。あるいは、マウスモノクローナル抗セラミド抗体MID 15B4 IgM(1:50希釈、Alexis Biochemicals)、マウスモノクローナル抗Fas CH−11 IgM(1:500希釈、Upstate Biotechnology)又はポリクローナルウサギ抗ASMase抗体1598(1:100希釈)を用いてプラットフォームを同定し、それぞれCy3結合抗マウス又は抗ウサギIgM(1:500希釈、Roche Molecular Biochemicals)を用いて検出した。ウサギポリクローナル抗CD46(1:1000希釈、Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz CA)をネガティブ対照として用いた。いくつかの研究において、Leica TCS SPZ直立共焦点顕微鏡を用いて、共焦点画像を得た。あるいは、0.5x106肝細胞をCTLで示した時間の間刺激し、プラットフォーム形成を記載したようにして評価した。
【0143】
ウサギポリクローナル抗ASMase抗体#1598を全長FLAGタグ化ヒトASMaseタンパク質に対して産生した。抗血清をBIO−RAD Tゲルカラムを通じて精製して、100ngの精製組換えヒトASMase又は25μgのJurkat細胞溶解液由来のASMaseに対して、100ng/μlの濃度での免疫ブロットアッセイにより特異的免疫反応性を示すIgG分画を得た。200μg/μlの濃度で、#1598は、100ngの精製ASMase由来のASMase活性を定量的に免疫沈降し、並びに200ng/μlの濃度で、フローサイトメトリー又は共焦点免疫蛍光顕微鏡によりASMaseの細胞表面発現を検出する。
【0144】
ジアシルグリセロールキナーゼアッセイ(DGK)
【0145】
UV−C又はCH−11で刺激したJurkat細胞を、37℃で示した時間の間インキュベートした。2mlのクロロホルム:メタノール:HCl(100:100:1、v/v/v)の添加により刺激を終了し、記載されたようにして97、セラミドをジアシルグリセロールキナーゼアッセイにより定量化した。
【0146】
ウエスタンブロット解析
【0147】
UV−C又はCH−11で刺激したJurkat細胞を、37℃で示した時間の間インキュベートした。氷冷PBSで刺激を終了し、細胞をRIPAバッファ(25mM HEPES(pH7.4)、0.1% SDS、0.5% デオキシコール酸ナトリウム、1% トリトンX−100、100mM NaC1、10mM NaF、10mM Na2P2O7、10mM EDTA及び10μg/mlずつのアプロトニン及びロイペプチン)に溶解した。試料を14000gで遠心分離し、上清を4X SDSサンプルバッファに添加した。溶解液を10% SDS−PAGEゲル上で分離し、ニトロセルロース膜に移した。カスパーゼ3(BD PharMingen, San Diego CA)、カスパーゼ8(BD PharMingen)又はカスパーゼ9(Cell Signaling Technology, Beverly MA)に対するウサギポリクローナル抗体を用いて、カスパーゼ切断を検出した。マウスモノクローナル抗カスパーゼ8(clone 1-1-37; Upstate Biotechnology)又は抗FADD(BD PharMingen)抗体をそれぞれ用いて、カスパーゼ8及びFADD発現レベルを検出した。
【0148】
フローサイトメトリー解析
【0149】
FACSにより表面ASMaseを検出するために、50J/m2 UV−C又は50ng/ml CH−11で、37℃で、Jurkat細胞を刺激した。最大ASMase転移の時間である1分後に、氷冷洗浄バッファ(1% FCS及び0.1% NaN3含有PBS)の添加により刺激を終了し、アイソタイプ対照ウサギIgG(20μg/ml)を添加した同一のバッファを用いて20分間、氷上で細胞をブロックした。細胞を再洗浄し、PBS中で1μg/mlのポリクローナル抗ASMase1598抗体と共に45分間インキュベートし、続いて洗浄し、Cy3結合抗ウサギIgGと共にインキュベートした。10000個の細胞を、FACScanフローサイトメーター(Becton Dickinson, Franklin Lakes NJ)を用いて解析した。
【0150】
採取した脾細胞を洗浄し、CD16/CD32FcRブロックと共に、氷上で15分間インキュベートし、その後一次抗体と共に45分間インキュベートし、洗浄し、FACSバッファ(PBS+2%BSA+0.1%NaN3)に再懸濁し、CellQuestソフトウェア(Becton Dickinson)を備えたFACScanフローサイトメーターで解析した。CFSE染色のために、RBC溶解LP/J又はB10.BR脾細胞を抗CD3マイクロビーズ(Miltenyi, Auburn, CA)を用いて製造者の取扱説明書のように陽性選択し、2.5μM カルボキシフルオレセイン ジアセテート スクシンイミジル エステル(CFSE)中で染色し、並びに15−20x106の染色細胞を、asmase+/+又はasmase−/−バックグラウンドのいずれかの同種異系(B6)レシピエントに移植した。これらの動物由来の脾細胞をその後72時間で採取し、表面抗原に対する蛍光クロム結合抗体で染色し、FACS解析を上記のように行った。
【0151】
ASMase活性アッセイ
【0152】
蛍光ベースの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)アッセイ98を用いてASMase活性を測定した。つまり、5x106のJurkat細胞を、50J/m2 UV−C又は50ng/ml CH−11で、37℃で刺激し、示した時間氷冷PBSで洗浄し、氷上でNP−40バッファ(150mM NaC1、25mM Tris HCl pH7.5、10% グリセロール、1% NP−40、2mM EDTA、PMSFを添加した0.1M DTT、ロイペプチン及びプロテアーゼ阻害剤カクテル)に溶解した。アッセイバッファ[500μM BODIPY−C12スフィンゴミエリン(Molecular Probes, Eugene OR)、0.1mM ZnC12、0.1M 酢酸ナトリウムpH5.0及び0.6%トリトンX−100]中で等量の溶解液を60分間、37℃でインキュベートすることによりASMase活性を測定した。その後、エタノールでの10X希釈により反応を停止し、20x4mmの逆相Aquasil C18カラム(Keystone Scientific, Bellefonte PA)を備えたWIPS 712(Waters Corp., Milford MA)オートサンプラーにより5μlのアッセイ混合物をサンプリングした。1.2ml/分の流速で、95% MeOHでの定組成溶離により0.4−0.5分以内に、BODIPY−C12セラミドである反応産物を基質から特異的に分離した。それぞれ505及び540nmの励起及び発光波長に設定したWaters 474 (Waters Corp.)蛍光検出器を用いて、蛍光を定量化した。既知量のBODIPY−C12セラミドの標準について確立された標準曲線から導出される回帰式を用いて、生成産物の量を算出した。あるいは、記載されたようにして14、[14Cメチルコリン]スフィンゴミエリン(Amersham Biosciences, Piscataway, NJ)を基質として用いる放射酵素アッセイにより、ASMase活性を定量化した。つまり、50J/m2 UV−C又は50ng/ml CH−11刺激後に、示した時間0.2% トリトンX−100含有PBSにJurkat細胞を溶解した。基質の存在下で、0.1mM ZnCl2、1mM EDTA及び0.1% トリトンX−100を添加した250mM 酢酸ナトリウム、pH5.0中で、ポスト核上清を活性についてアッセイした。1時間後、CHCl3:MeOH:1N HC1(100:100:1、v/v/v)で反応を終了し、シンチレーションカウンターにより産物を定量した。両方のアッセイが、UV−C又はFas刺激後に同一の明らかな倍増を生じたために、これらのデータを照合した。しかしながら、ミカエリスメンテン動態解析による決定では、BODIPY−C12スフィンゴミエリンは、より非効率的に触媒され、より低いVmaxをもたした。したがって、放射酵素アッセイから導出された基準ASMase特異的活性を、本文書を通じて示している。
【0153】
放射線及び組織調製
【0154】
TBIは、137Csソースを操作するShepherd Mark-I unit (Model 68, SN643)を用いて供給された。線量率は、2.12Gy/分であった。小腸試料を採取するために、高炭酸ガス窒息によりマウスを屠殺し、2.5cmの近位空腸断片をトライツ靱帯から2cmで採取した。組織試料を4% 中性緩衝ホルムアルデヒド中で終夜のインキュベーションにより固定し、パラフィンブロックに包埋した。放射線に対する腸組織応答を評価するために、完全な空腸周囲の横断切片(5μm厚)を、パラフィンブロックからのミクロトーム法により採取し、ポリリシン処理したスライドに接着し、90℃で10分間及び60℃で5分間加熱することにより脱パラフィンし、続いて5分間、2度キシレン洗浄し、標準プロトコルにしたがって、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。TBI後の死亡原因を決定するため、動物死の60分以内に剖検を行うか、又は末期の場合、末期の呼吸パターンを示す動物を高炭酸ガス窒息により屠殺した。組織検体を全ての動物から採取し、ホルムアルデヒド中で固定し、ヘマトキシリンで染色した。
【0155】
陰窩微小コロニー生存アッセイ
【0156】
Withers及びElkind99により記載されるように、微小コロニー生存アッセイを行った。つまり、照射後3.5日のマウスを高炭酸ガス窒息により屠殺し、小腸の試料を採取し、上述のように組織学的染色のために調製した。生存陰窩を、10以上の隣接した好色素性非パネート細胞、少なくとも1つのパネート細胞及び内腔を包含するとして定義した。腸の横断切片の周囲を1つのユニットとして用いた。生存陰窩の数を、各周囲について計数した。10−20周囲をマウスごとにスコア化し、各データ点を作成するために2−4匹のマウスを用いた。データを平均±標準誤差として報告した。
【0157】
GVHDの評価
【0158】
生存率を毎日モニタリングし、5つの臨床パラメータ(体重減少、猫背の姿勢、活動性低下、毛の波打ち現象(fur ruffling)及び皮膚病変)について、0から2のスケールで、コード化したケージ内の耳タグをした動物を個別に毎週スコア化した。Cookeら100により記載されるように、5つの基準スコア(0−10)の合計により、臨床GVHDスコアを作成した。10% ホルマリン緩衝リン酸保存し、パラフィン包埋し、且つヘマトキシリン/エオシン染色した5μM 組織学的切片について、盲検方式で、腸(回腸末端及び上行結腸)、肝臓及び皮膚(舌及び耳)についてのGVHD標的臓器病理を、半定量的な採点系で、1つの個体により評価した(肝臓及び腸病理についてJ.M.C.、皮膚病理について G.F.M.)。つまり、記載されたように腸及び肝臓をGVHDに関連する19から22の異なるパラメータについてスコア化し101、並びに、公開されたように異常角化及びアポトーシス細胞の数について皮膚を評価した102。記載されたようにして、ホルマリン保存し、パラフィン包埋し、TUNEL染色及びヘマトキシリン/エオシン対比染色した切片について、絨毛及び陰窩細胞アポトーシスをスコア化した18、62。
【0159】
ELISA
【0160】
血清IL−1β、IL−2、INF−γ及びTNF−αレベルについての酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を、製造者の取扱説明書(R&D, Minneapolis, MN)にしたがって行った。
【0161】
活性化誘導細胞死(AICD)アッセイ
【0162】
採取した脾細胞をナイロンウール通過によりTリンパ球について枯渇し、フローサイトメトリーによるFITC−CD3 mAb染色に基づいて90%を超える純度をもたらした。既述のようにして、AICDを誘導した103。つまり、T細胞をRPMI1640+10% FCS中で、2x106/mLでインキュベートし、10μg/ml ConA(Sigma, St. Loius, MO)で48時間プライムした。次いで、細胞を洗浄し、20U/ml IL−2(R&D Systems)含有培地に24時間静置した。最終的に、細胞を洗浄し、20U/ml IL−2及び増加量の抗CD3 mAb(0−10μg/ml)含有培地に24時間再懸濁した。その後、細胞を固定し、25μlの24μg/ml ビスベンズイミド三塩酸塩溶液(Hoechst #33258; Sigma-Aldrich, Milwaukee WI)で染色し、蛍光顕微鏡により、上記のように、アポトーシスを定量化した。
【0163】
混合リンパ球反応(MLR)
【0164】
2x106の照射(2000rad)C57BL/6脾細胞とのRPMI1640+10% FCS中での5日間のインキュベーションにより、Balb/c脾細胞をin vitroで活性化した。MLRの2日前、asmase+/+又はasmase−/−脾細胞を、10μg/mL conAで48時間活性化し、45分間1μCi/mL Na251CrO4で、37℃及び5% CO2で標識し、RPIM1640+10% FBSで洗浄し、並びに活性化Balb/c脾細胞と、完全培地中で、24時間37℃で共培養した。補正した溶解%=100x(試料51Cr放出−対照51Cr放出)/(最大51Cr放出−対照51Cr放出)という式を用いて、ガンマカウンター(Cobra, Meriden, CT)により上清中への51Cr放出を計数することによって、標的細胞溶解を定量化した。
【0165】
統計
【0166】
動物の保険数理上の生存率を積極限カプラン−マイヤー法104により算出し、生存率における差異の統計学的有意性をマンテルログランク検定105により算出した。陰窩生存率カーブを、FITソフトウェアプログラム96の変更を用いて最小二乗回帰解析により算出した。該プログラムは、線量−生存率データの各セットに対する重み付けした加重最小二乗を繰り返すことにより曲線をフィットさせ、生存曲線パラメータの共変量及び対応する信頼領域を見積もり、並びに生存曲線をプロットする。これはまた、D0(放射線感受性レベルを示す、カーブの指数部分における傾きの逆数)及びNナンバー(肩の大きさを測定する)といった曲線パラメータを導き出す。GVDHスコア、胸腺細胞及び脾細胞数並びに増殖アッセイの統計学的解析を、ノンパラメトリックな対応のないマンホイットニーU検定を用いて行った。95%の確信度推定を伴うスチューデントのt検定を、他の全ての解析に用いた。
【0167】
実施例2
GVHDにおけるASMASEの役割
【0168】
3x106T細胞が有り又は無しでの骨髄の移植後21日のasmase+/+及びasmase−/−レシピエントから小腸、肝臓及び皮膚を採取した。ヘマトキシリン&エオシン染色した肝臓切片は、asmase+/+レシピエントと比較して、asmase−/−ではより目立たない、リンパ球浸潤(図22A、矢印)、門脈域浸潤、内皮炎(図22A、右パネル)及び肝臓構造喪失により特徴付けられる、肝臓GvHDを示した。同様に、絨毛の鈍化、固有層炎症、陰窩幹細胞喪失及び崩壊並びに粘膜の萎縮を含む腸GvHDは、asmase−/−レシピエントにおいてより目立たなかった(図22B、矢印はアポトーシス細胞を示す)。半定量的組織学的解析は、同種異系骨髄及びT細胞のasmase+/+レシピエントが、肝臓(表1、15.7±1.5対8.3±2.7、p<0.05)及び小腸(表2、10.7±1.1対3.5±0.5、p<0.01)においてBMのみ受けた同腹子よりも有意に高くスコア化されたことを明らかにした。ASMase欠損は、GvHD関連臓器損傷を大きく保護し、肝臓及び小腸において、それぞれ、10.2±0.5及び7±0.1までスコアを低下させた(表2、asmase+/+同腹子に対して肝臓及び腸についてそれぞれp<0.005)。
【0169】
GvHD関連臓器損傷は、腸及び皮膚の顕著なアポトーシスに関連する。TUNEL染色した回腸切片は、BM及びT細胞のasmase+/+レシピエントの固有層(図22C)及び陰窩上皮(図22D)の内部のアポトーシス細胞の顕著な増加を明らかにした。同系異種T細胞のasmase+/+レシピエントは、絨毛の88.4%における大規模なアポトーシス(4より多くのアポトーシス細胞/絨毛)を示し、これは、asmase−/−レシピエントにおいて25.4%に減少し(図22C、p<0.05)、並びに3.8±0.4の陰窩ごとのアポトーシス内皮細胞は、asmase−/−レシピエントにおいて0.95±0.2に弱まった(図22D、p<0.05)。さらに、ASMase欠損は、マイナー抗原ミスマッチ同種異系BMT後の皮膚角化細胞アポトーシスから宿主を保護した(図22E)。同系異種T細胞は、asmase+/+上皮の8.2±2.1アポトーシス細胞/mmと比較して、asmase−/−上皮における5.1±0.9アポトーシス細胞/mmを誘導した(p<0.05)。これらのデータは、ASMase組織が、GvH関連アポトーシス及び臓器損傷に対して抵抗性であることを実証し、標的臓器損傷及びアポトーシスを決定することで、ASMaseがGVH誘導罹患率及び死亡率を制御することを示した。GvHDにおける宿主ASMaseの具体的役割を確かめるために、C57BL/6レシピエント(H−2b)への、B10.BRドナー(H−2k)の主要組織適合性不適合同種異系BM移植モデルを選択した。ASMase+/+又はASMase−/−バックグラウンドの致死性照射C57BL/6宿主は、10x106T細胞枯渇(TCD)B10.BR BM細胞を受け、並びに、同種移植片に対する0.5x106B10.BRドナー脾臓T細胞の添加によりGvHDを誘導した。マイナーミスマッチモデルと一致して、BM及びT細胞の移植後14日でのasmase+/+同腹子と比較してasmase−/−宿主において、有意に少ない標的臓器損傷を観察した(表1、asmase−/−宿主における7.4±0.9に対するasmase+/+における16.3±1.1の肝臓病理スコア、p<0.05及びasmase−/−宿主における3.5±0.4に対するasmase+/+における10.0±0.8の小腸病理スコア、p<0.05)。これらのデータは、陰窩上皮アポトーシスの低下(asmase−/−宿主における15.8±3.7%に対する野生型におけるアポトーシス細胞含有陰窩の59.3±3.8%、p<0.05、非掲載)、並びに肝臓リンパ球浸潤、内皮炎、及び肝臓構造の全体的な崩壊の減少(非掲載)と一致する。さらに、角化細胞アポトーシスは野生型宿主において顕著であり、11.2±1.2アポトーシス細胞/mm2上皮のアポトーシス指標に達し、これはasmase−/−宿主において3.2±1.7まで著しく減衰した(図22E、p<0.01)。しかしながら、カプラン−マイヤー生存率は、遅発性(BMT後21日以降)骨髄形成不全のため、このメジャーミスマッチモデルにおいて決定され得ず、B10.BR系統における遺伝的シフトの検出が認められ、Jackson研究所ウェブサイトに記載された。総合すると、これらのデータは、GvHD関連標的臓器損傷及びアポトーシスの有意な減衰を明らかにし、マイナー及びメジャー抗原不一致の両方に渡って、野生型同腹子と比較して、asmase−/−宿主における、GvHD罹患率及び死亡に対する保護と密接に相関する。
【0170】
【表3】
【0171】
【表4】
【0172】
実施例3
ASMase欠損は炎症を防ぐ
【0173】
次に、我々は、宿主ASMase不活性化は、急性GvHDにおけるTh1/Th2サイトカインプロファイル及びCD8+T細胞増殖を弱めることを示す実験を行った。初期CTL介在性アポトーシス組織損傷は、CD4+Th1サイトカイン分泌を必要とするフィードフォワード応答及び結果として生じる、急性GvHDを進行させる同種反応性(alloreactive)CD8+クローン性増殖を伝播し、それに炎症性サイトカインストームが続く。GvHDの際の血清サイトカインレベル対するASMaseの影響を評価するために、脾臓T細胞の有り又は無しでのLP BMの移植後7及び14日に、血清Th1サイトカインIL−2及びIFN−γ並びにTh2サイトカインIL−1β及びTNF−αを定量化した。マイナーミスマッチモデルにおいて、自己移植片へのT細胞の添加は、BM対照レシピエントと比較して、7日目に、IL−2及びIFN−γを、それぞれ15.7±4.1から30.3±2.8及び3.7±1.0から109.9±18.9pg/ml血清に増加した(それぞれ、p<0.05)(表3)。同様に、BM対照レシピエントと比較して、7日目に、Th2サイトカインIL−1β及びTNF−αは、それぞれ、6.8±1.9から13.4±1.1及び2.3±1.2から24.3±7.0pg/ml血清に増加した(それぞれ、p<0.05)(表3)。宿主ASMaseの遺伝子不活性化は、7日目に、血清IL−2及びIFN−γを、それぞれ19.1±2.0及び32.8±12.4pg/ml血清に、(asmase+/+宿主に対してp<0.05)並びにIL−1β及びTNF−αを、それぞれ2.9±1.2及び17.3±3.0pg/ml血清に(asmase+/+宿主に対してp<0.05且つ有意でない)減少させた(表3)。血清サイトカインの減衰は、C57BL/6宿主へのドナーB10.BR BM及びT細胞のメジャーミスマッチモデルに渡って保存され(表2、asmase+/+対asmase−/−宿主における119.1±14.2対63.3±10.8pg/mlのIFN−γ p<0.05、asmase+/+対asmase−/−宿主における136.8±11.5対63.7±9.0pg/mlのTNF−α、p<0.005)、ASMase欠損は、同系異種BM及びT細胞のレシピエントにおける血清サイトカイン産生を通常弱めたことを実証した。
【0174】
血清サイトカインレベルの増加は、T細胞増殖に直接影響する111。BM及びT細胞のasmase−/−レシピエントにおける血清サイトカインの減衰が、ドナーT細胞増殖に影響を与えるかどうかを評価するために、LP/J(H−2b、マイナーMHC不適合)又はB10.BR(H−2k、メジャーMHC不適合)ドナー由来のカルボキシフルオレセイン スクシンイミジル エステル(CFSE)標識T細胞(10−20x106)をasmase+/+又はasmase−/−バックグラウンドの致死照射C57BL/6宿主内に注入した。LP及びB10.BRのCD4+T細胞のin vivoでの増殖は、asmase+/+同腹子と比較して、asmase−/−において統計的に差異がない(図23A 上段パネル及びB10.BRについては非掲載)一方で、CD8+T細胞増殖は、マイナー(図12A)及びメジャーMHC(非掲載)不一致モデルの両方に渡って有意に損なわれた。注入3日後、CD8+細胞の増殖は、asmase−/−宿主から回収した集団の26.4%と比較して、asmase+/+宿主における全ドナーLP CD8+T細胞集団の54.1%を占めた(図23A下段パネル、p<0.005)。同様に、asmase+/+宿主における全ての集団の81.5%からasmase−/−宿主における67.1%にまで、増殖ドナーB10.BR CD8+細胞は減少した(非掲載、p<0.005)。さらに、増殖の減弱は、BM及び3x106T細胞の注入から14日後においてasmase+/+レシピエントにおける1.69±0.28x106細胞からasmase−/−レシピエントにおける0.55±0.28x106まで、脾臓ドナーLP/J CD8+T細胞の有意な減少をもたらした(図23B、p<0.001)。
【0175】
in vivoで増殖を損なったにも関わらず、LP/J TCD−BM及びT細胞と共に同種移植したasmase−/−又はasmase+/+宿主由来の脾臓T細胞は、conAでチャレンジした場合にex vivoで同様の特異的増殖応答を提示するため、T細胞増殖能力は、asmase−/−宿主内への移植においてインタクトなままであった(図24)。T細胞増殖能力は、asmase−/−宿主への移植においてインタクトなままである。同系(LP)又は同種異系(Balb/c)脾細胞又はマイトジェン(ConA)に対する応答におけるドナーLP BM及びT細胞のC57BL/6asmase+/+又はC57BL/6asmase−/−レシピエントから採取した脾臓T細胞の増殖を測定するチミジン取り込みアッセイ。データ(平均±標準誤差)は、3つの独立した実験から得られる3連の測定値を示す。
【0176】
さらに、増殖は、照射した第三者のT細胞チャレンジに対する応答においてインタクトであり(Balb/c)、照射LP/J T細胞に対する応答はなかったため(図23)、LP/J BM+T細胞を伴う移植後21日でのasmase+/+及びasmase−/−宿主由来T細胞のex vivoにおける同種活性は似ていた。これらのデータは、asmase−/−宿主におけるin vivoでのCD8+CTL増殖の欠損を実証し、並びに、これらのBMTレシピエントにおいて、血清炎症性サイトカインレベルの減衰への生物学的意義のある結果を示す。
【0177】
実施例4
2A2抗体の作成方法
ハイブリドーマ作製
【0178】
C57BL/6マウスをカポジ肉腫細胞で8回免疫付与し、ELISAによる評価のために血清を採取した。あるいは、マウスをBSA結合C16セラミドで免疫した。ELISAによってセラミド結合について血清を試験し、陽性と評価された動物を屠殺した。末梢リンパ節を採取し、浸漬してB細胞を放出させた。Sp2/0骨髄腫細胞を用いてPEG介在性融合を精製B細胞で行い、該融合をHAT添加DMEM含有培地プレートに播種した。その後、5日目にハイブリドーマを与え、10日目に上清を採取し、ELISAによりセラミド結合について試験した。上清がセラミドと結合するが、BSA又はC16ジヒドロセラミドには結合しない場合のみ、クローンは陽性であると決定した。陽性クローンをHT添加DMEM中で増殖し、限定希釈法によりサブクローニングし、ELISAにより再評価した。
【0179】
ELISAアッセイ
【0180】
抗原(BSA結合C16セラミド、BSA結合C16ジヒドロセラミド又はBSA)を、終夜4℃でのインキュベーションにより、NUNC Maxisorp免疫プレート上に吸収させた(absorped)。非結合抗原を、0.05% Tween20含有リン酸緩衝生理食塩水(PBS)により洗浄し、プレートを5% ミルク含有PBSで飽和した。ハイブリドーマ上清又は一次抗体インキュベーションを室温で2時間行った。PBS+0.05% Tween20で3回洗浄後、二次抗体インキュベーション(HRP結合抗マウス抗体)を室温で2時間行った。さらに3回洗浄後、3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン(TMB)を用いて抗体結合を検出し、酸性溶液を用いて停止し、吸光度を450nmで定量化した。
【0181】
抗体精製
【0182】
ハイブリドーマ由来の組織培養上清を滅菌濾過し、予め洗浄したタンパク質Gと1時間4℃で混合した。タンパク質Gを採取し、10倍量のPBSで洗浄した。抗体を50mM クエン酸、140mM NaCL、pH2.7で溶出した。抗体含有画分をTrisにより中和し、透析し、抗体をカラムアフィニティーにより精製した。NaCL勾配を用いて抗体を溶出した。抗体を25mM リン酸塩、100mM NaCL、pH5.8に対して透析し、1mg/mlに分割し、−20℃で保管した。
【0183】
2A2抗体作成方法
モノクローナル抗体の産生
【0184】
5匹の8週齢雌BALB/cマウスを、IPを介して0.5mlのカポジ肉腫細胞(4x107/ml)で免疫した。動物を、週に1度、3回免疫した。最後の免疫の後1週間で、マウスを出血し、抗血清における抗体応答をFACS解析により評価した。ハイブリドーマ調製のために1匹のマウスを選んだ。細胞融合前3日間、KS細胞の追加免疫を受けた。ポリエチレングリコール(MW 1500)を用いて、KS細胞で免疫したBALB/cマウス由来の脾細胞をマウス骨髄腫細胞(P3X63Ag8.653、ATCC)と4:1の割合で融合した。融合後、細胞を96ウェルプレートに1x105細胞/ウェルで、20%ウシ胎仔血清、10% ハイブリドーマ添加物(Sigma)、2mM L−グルタミン、100U/ml ペニシリン、100mg/ml ストレプトマイシン、10mM HEPES及び1xヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(Sigma)含有RPMI1640選択培地に播種し、培養した。KS細胞におけるFACS解析及び市販のタンパク質混合物(アネキシンV、セラミドBSA及びAPA)を用いるELISAによりハイブリドーマ上清を選択した。選ばれたハイブリドーマを限定希釈法により4回サブクローニングし、アネキシンV塗布プレート上でELISAにより検査した。条件培地を安定ハイブリドーマ培養物から採取した。mAbのIgクラスをマウスmAbアイソタイピングキット(Santa Cruz)で決定した。mAbの免疫グロブリンクラスを,マウスmAbアイソタイプキットを用いて決定した。アネキシンVに結合する2A2 mAb(mIgM)は、ELISAにより確認されたセラミドに対する弱い交差結合活性を有する。
【0185】
抗体ヒト化。マウス2A2抗体の重(VH)及び軽(VL)鎖の両方に対する可変領域を得るために、一般的な分子クローニング技術(RT−PCR又は5’−RACE)を用いた。キメラ2A2抗体を作成し、マウス両親と同等の結合特性を確認する。相補性決定領域(CDR)移植を用いることによりキメラ2A2抗体をヒト化する。一連のヒト生殖細胞系遺伝子由来のヒトフレームワーク配列を、マウス2A2抗体のCDRに対するヒト抗体のCDRの類似性に基づいて選択する。抗体親和性及び生産量を改善するために、抗体の可変領域のフレームワーク領域における重要な残基を交換することにより、抗原結合ループの構造を微調整するために、抗体をさらに操作する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の抗セラミド抗体又はその生物学的活性断片を投与することを含む、移植片対宿主病を予防又は治療する方法。
【請求項2】
抗体がヒト化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗体が、モノクローナル抗体である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
モノクローナル抗体が2A2 IgMである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
治療有効量の抗セラミド抗体又はその生物学的活性断片を投与することを含む、放射線病及びGI症候群を予防又は治療する方法。
【請求項6】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
モノクローナル抗体が2A2 IgMである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
抗体がヒト化されている、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
治療有効量の抗セラミド抗体又はその生物学的活性断片を投与することを含む、自己免疫疾患を予防又は治療する方法。
【請求項10】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
モノクローナル抗体が2A2 IgMである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
モノクローナル抗体2A2 IgM又はその生物学的活性断片。
【請求項13】
抗体がヒト化されている、請求項12に記載の2A2 IgM。
【請求項14】
ヒト化抗セラミド抗体又はその生物学的断片を含む医薬組成物。
【請求項15】
モノクローナル抗体2A2 IgM又はその生物学的活性断片を含む医薬組成物。
【請求項16】
抗体がヒト化されている、請求項14又は請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
スタチンをさらに含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項18】
イミプラミンをさらに含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
治療有効量のイミプラミンを投与することを含む、放射線病又はGI症候群を予防又は治療する方法。
【請求項20】
治療有効量のイミプラミンを投与することを含む、移植片対宿主病を予防又は治療する方法。
【請求項21】
治療有効量のイミプラミンを投与することを含む、自己免疫疾患を予防又は治療する方法。
【請求項22】
治療有効量の長さ8−50ヌクレオチドのアンチセンス核酸を投与することを含む、動物における移植片対宿主病を予防又は治療する方法であって、ここで該アンチセンス核酸が、ASMaseをコードする配列番号7として特定されるヒト遺伝子又は配列番号2として特定されるcDNAに対して、ハイブリダイズすることによって安定な二本鎖を形成するために十分に相補的である、方法。
【請求項23】
治療有効量の長さ8−50ヌクレオチドのアンチセンス核酸を投与することを含む、動物における移植片対宿主病を予防又は治療する方法であって、ここで該アンチセンス核酸が、Baxをコードするコードする(encoding encoding)配列番号8として特定されるヒト遺伝子又は配列番号4として特定されるcDNAに対して、ハイブリダイズすることによって安定な二本鎖を形成するために十分に相補的である、方法。
【請求項24】
治療有効量の長さ8−50ヌクレオチドのアンチセンス核酸を投与することを含む、動物における移植片対宿主病を予防又は治療する方法であって、ここで該アンチセンス核酸が、Bakをコードするコードする(encoding encoding)配列番号9として特定されるヒト遺伝子又は配列番号6として特定されるcDNAに対して、ハイブリダイズすることによって安定な二本鎖を形成するために十分に相補的である、方法。
【請求項25】
治療有効量の長さ8−50ヌクレオチドのアンチセンス核酸を投与することを含む、動物における放射線障害又はGI症候群を予防又は治療する方法であって、ここで該アンチセンス核酸が、ASMaseをコードする配列番号7として特定されるヒト遺伝子又は配列番号2として特定されるcDNAに対して、ハイブリダイズすることによって安定な二本鎖を形成するために十分に相補的である、方法。
【請求項26】
治療有効量の長さ8−50ヌクレオチドのアンチセンス核酸を投与することを含む、動物における放射線障害又はGI症候群を予防又は治療する方法であって、ここで該アンチセンス核酸が、Baxをコードするコードする(encoding encoding)配列番号8として特定されるヒト遺伝子又は配列番号4として特定されるcDNAに対して、ハイブリダイズすることによって安定な二本鎖を形成するために十分に相補的である、方法。
【請求項27】
治療有効量の長さ8−50ヌクレオチドのアンチセンス核酸を投与することを含む、動物における放射線障害又はGI症候群を予防又は治療する方法であって、ここで該アンチセンス核酸が、Bakをコードするコードする(encoding encoding)配列番号9として特定されるヒト遺伝子又は配列番号6として特定されるcDNAに対して、ハイブリダイズすることによって安定な二本鎖を形成するために十分に相補的である、方法。
【請求項28】
治療有効量の長さ8−50ヌクレオチドのアンチセンス核酸を投与することを含む、動物における自己免疫疾患を予防又は治療する方法であって、ここで該アンチセンス核酸が、ASMaseをコードする配列番号7として特定されるヒト遺伝子又は配列番号2として特定されるcDNAに対して、ハイブリダイズすることによって安定な二本鎖を形成するために十分に相補的である、方法。
【請求項29】
治療有効量の長さ8−50ヌクレオチドのアンチセンス核酸を投与することを含む、動物における自己免疫疾患を予防又は治療する方法であって、ここで該アンチセンス核酸が、Baxをコードするコードする(encoding encoding)配列番号8として特定されるヒト遺伝子又は配列番号4として特定されるcDNAに対して、ハイブリダイズすることによって安定な二本鎖を形成するために十分に相補的である、方法。
【請求項30】
治療有効量の長さ8−50ヌクレオチドのアンチセンス核酸を投与することを含む、動物における自己免疫疾患を予防又は治療する方法であって、ここで該アンチセンス核酸が、Bakをコードするコードする(encoding encoding)配列番号9として特定されるヒト遺伝子又は配列番号6として特定されるcDNAに対して、ハイブリダイズすることによって安定な二本鎖を形成するために十分に相補的である、方法。
【請求項31】
治療有効量の抗セラミド抗体又はその生物学的活性断片を投与することを含む、炎症を治療する方法。
【請求項32】
化合物が、患者が放射線を受ける前に投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項33】
化合物が、患者が骨髄移植を受ける前に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
1H4、15D9及び5H9マウスモノクローナル抗体からなる群より選ばれるモノクローナル抗体又はその断片もしくは変異体。
【請求項35】
抗体がヒト化されている、請求項34に記載のモノクローナル抗体。
【請求項36】
セラミドと交差反応するモノクローナル抗体であって、ここで、該抗体が宿主を全細胞で免疫することにより得られる、モノクローナル抗体。
【請求項37】
全細胞がカポジ肉腫(KS)細胞又は活性化内皮を再現するその他の細胞である、請求項35に記載のモノクローナル抗体。
【請求項1】
治療有効量の抗セラミド抗体又はその生物学的活性断片を投与することを含む、移植片対宿主病を予防又は治療する方法。
【請求項2】
抗体がヒト化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗体が、モノクローナル抗体である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
モノクローナル抗体が2A2 IgMである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
治療有効量の抗セラミド抗体又はその生物学的活性断片を投与することを含む、放射線病及びGI症候群を予防又は治療する方法。
【請求項6】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
モノクローナル抗体が2A2 IgMである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
抗体がヒト化されている、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
治療有効量の抗セラミド抗体又はその生物学的活性断片を投与することを含む、自己免疫疾患を予防又は治療する方法。
【請求項10】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
モノクローナル抗体が2A2 IgMである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
モノクローナル抗体2A2 IgM又はその生物学的活性断片。
【請求項13】
抗体がヒト化されている、請求項12に記載の2A2 IgM。
【請求項14】
ヒト化抗セラミド抗体又はその生物学的断片を含む医薬組成物。
【請求項15】
モノクローナル抗体2A2 IgM又はその生物学的活性断片を含む医薬組成物。
【請求項16】
抗体がヒト化されている、請求項14又は請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
スタチンをさらに含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項18】
イミプラミンをさらに含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
治療有効量のイミプラミンを投与することを含む、放射線病又はGI症候群を予防又は治療する方法。
【請求項20】
治療有効量のイミプラミンを投与することを含む、移植片対宿主病を予防又は治療する方法。
【請求項21】
治療有効量のイミプラミンを投与することを含む、自己免疫疾患を予防又は治療する方法。
【請求項22】
治療有効量の長さ8−50ヌクレオチドのアンチセンス核酸を投与することを含む、動物における移植片対宿主病を予防又は治療する方法であって、ここで該アンチセンス核酸が、ASMaseをコードする配列番号7として特定されるヒト遺伝子又は配列番号2として特定されるcDNAに対して、ハイブリダイズすることによって安定な二本鎖を形成するために十分に相補的である、方法。
【請求項23】
治療有効量の長さ8−50ヌクレオチドのアンチセンス核酸を投与することを含む、動物における移植片対宿主病を予防又は治療する方法であって、ここで該アンチセンス核酸が、Baxをコードするコードする(encoding encoding)配列番号8として特定されるヒト遺伝子又は配列番号4として特定されるcDNAに対して、ハイブリダイズすることによって安定な二本鎖を形成するために十分に相補的である、方法。
【請求項24】
治療有効量の長さ8−50ヌクレオチドのアンチセンス核酸を投与することを含む、動物における移植片対宿主病を予防又は治療する方法であって、ここで該アンチセンス核酸が、Bakをコードするコードする(encoding encoding)配列番号9として特定されるヒト遺伝子又は配列番号6として特定されるcDNAに対して、ハイブリダイズすることによって安定な二本鎖を形成するために十分に相補的である、方法。
【請求項25】
治療有効量の長さ8−50ヌクレオチドのアンチセンス核酸を投与することを含む、動物における放射線障害又はGI症候群を予防又は治療する方法であって、ここで該アンチセンス核酸が、ASMaseをコードする配列番号7として特定されるヒト遺伝子又は配列番号2として特定されるcDNAに対して、ハイブリダイズすることによって安定な二本鎖を形成するために十分に相補的である、方法。
【請求項26】
治療有効量の長さ8−50ヌクレオチドのアンチセンス核酸を投与することを含む、動物における放射線障害又はGI症候群を予防又は治療する方法であって、ここで該アンチセンス核酸が、Baxをコードするコードする(encoding encoding)配列番号8として特定されるヒト遺伝子又は配列番号4として特定されるcDNAに対して、ハイブリダイズすることによって安定な二本鎖を形成するために十分に相補的である、方法。
【請求項27】
治療有効量の長さ8−50ヌクレオチドのアンチセンス核酸を投与することを含む、動物における放射線障害又はGI症候群を予防又は治療する方法であって、ここで該アンチセンス核酸が、Bakをコードするコードする(encoding encoding)配列番号9として特定されるヒト遺伝子又は配列番号6として特定されるcDNAに対して、ハイブリダイズすることによって安定な二本鎖を形成するために十分に相補的である、方法。
【請求項28】
治療有効量の長さ8−50ヌクレオチドのアンチセンス核酸を投与することを含む、動物における自己免疫疾患を予防又は治療する方法であって、ここで該アンチセンス核酸が、ASMaseをコードする配列番号7として特定されるヒト遺伝子又は配列番号2として特定されるcDNAに対して、ハイブリダイズすることによって安定な二本鎖を形成するために十分に相補的である、方法。
【請求項29】
治療有効量の長さ8−50ヌクレオチドのアンチセンス核酸を投与することを含む、動物における自己免疫疾患を予防又は治療する方法であって、ここで該アンチセンス核酸が、Baxをコードするコードする(encoding encoding)配列番号8として特定されるヒト遺伝子又は配列番号4として特定されるcDNAに対して、ハイブリダイズすることによって安定な二本鎖を形成するために十分に相補的である、方法。
【請求項30】
治療有効量の長さ8−50ヌクレオチドのアンチセンス核酸を投与することを含む、動物における自己免疫疾患を予防又は治療する方法であって、ここで該アンチセンス核酸が、Bakをコードするコードする(encoding encoding)配列番号9として特定されるヒト遺伝子又は配列番号6として特定されるcDNAに対して、ハイブリダイズすることによって安定な二本鎖を形成するために十分に相補的である、方法。
【請求項31】
治療有効量の抗セラミド抗体又はその生物学的活性断片を投与することを含む、炎症を治療する方法。
【請求項32】
化合物が、患者が放射線を受ける前に投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項33】
化合物が、患者が骨髄移植を受ける前に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
1H4、15D9及び5H9マウスモノクローナル抗体からなる群より選ばれるモノクローナル抗体又はその断片もしくは変異体。
【請求項35】
抗体がヒト化されている、請求項34に記載のモノクローナル抗体。
【請求項36】
セラミドと交差反応するモノクローナル抗体であって、ここで、該抗体が宿主を全細胞で免疫することにより得られる、モノクローナル抗体。
【請求項37】
全細胞がカポジ肉腫(KS)細胞又は活性化内皮を再現するその他の細胞である、請求項35に記載のモノクローナル抗体。
【図3−1】
【図3−2】
【図5−1】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16−1】
【図17】
【図18】
【図20】
【図21】
【図23】
【図24】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5−2】
【図16−2】
【図19−1】
【図19−2】
【図22−1】
【図22−2】
【図25】
【図3−2】
【図5−1】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16−1】
【図17】
【図18】
【図20】
【図21】
【図23】
【図24】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5−2】
【図16−2】
【図19−1】
【図19−2】
【図22−1】
【図22−2】
【図25】
【公表番号】特表2010−526153(P2010−526153A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507601(P2010−507601)
【出願日】平成20年5月6日(2008.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/062789
【国際公開番号】WO2008/137901
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(509307934)スローン ケタリング インスティテュート フォア キャンサー リサーチ (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月6日(2008.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/062789
【国際公開番号】WO2008/137901
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(509307934)スローン ケタリング インスティテュート フォア キャンサー リサーチ (2)
【Fターム(参考)】
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