説明

GLP−1の類似体

【課題】グルカゴン用ペプチド−1のペプチド類似体を提供する。
【解決手段】Bocアミノ酸プロトコールを使用して、O−ベンジル−ポリスチレン樹脂上でペプチドを組み立てる。完成したペプチド−樹脂を好適な低級アルキルアミンの薄いDMF溶液に懸濁させ、加熱撹拌し、濾過して、減圧下で溶媒を除去し、開裂したペプチド油分をエーテルで粉砕して、固形の、保護下アルキルアミドペプチドを得る。次いで、これをHFで開裂させ、追加の側鎖保護基を除去し、HPLCで精製する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
本発明は、グルカゴン様ペプチド−1のペプチド類似体、その製剤的に許容される塩、哺乳動物を治療するためにそのような類似体を使用する方法、及びそのために有用な、前記類似体を含んでなる医薬組成物に向けられている。
【0002】
グルカゴン様ペプチド−1(7−36)アミド(GLP−1)(SEQ ID NO:1)は、グルカゴン前駆体のプレプログルカゴンの組織特異的な翻訳後プロセシングにより腸のL細胞において合成され(Varndell, J. M., et al., J. Histochem Cytochem, 1985: 33: 1080-6)、食事に反応して循環中へ放出される。GLP−1の血漿濃度は、約15ピコモル/Lの絶食レベルから40ピコモル/Lのピーク食後レベルへ上昇する。血漿インスリンの増加は、血漿グルコース濃度における一定の上昇について、グルコースを静脈内投与した場合に比較して経口投与したほうが約3倍大きいことが示されている(Kreymann, B., et al., Lancet 1987: 2, 1300-4)。このインクレチン(incretin)効果として知られるインスリン放出の食事による増強は主に体液性のものであり、GLP−1はヒトにおいて最も強力な生理学的インクレチンであると今日考えられている。インスリン放出効果だけでなく、GLP−1はグルカゴンの分泌を抑制し、胃の空洞化を遅らせ(Wettergren A., et al., Dig Dis Sci 1993: 38: 665-73)、末梢のグルコース処理を高める可能性がある(D'Alessio, D. A. et al., J. Clin Invest 1994: 93: 2293-6)。
【0003】
1994年、GLP−1の単回皮下(s/c)投与によりインスリン非依存型糖尿病(NIDDM)の患者において食後のグルコースレベルが完全に正常化され得るという観察事実から、GLP−1の治療薬としての可能性が示唆された(Gutniak, M. K., et al., Diabetes Care 1994: 17: 1039-44)。この効果は、インスリン放出の増加とグルカゴン分泌の減少の両方により介在されると考えられた。さらに、GLP−1を静脈内注入すると、NIDDM患者において食後の胃の空洞化を遅らせることが示された(Williams, B., et al., J. Clin Endo Metab 1996: 81: 327-32)。スルホニル尿素と異なり、GLP−1のインスリン放出促進作用は血漿グルコース濃度に依存している(Holz, G. G. 4th, et al., Nature 1993: 361: 362-5)。つまり、低い血漿グルコース濃度ではGLP−1介在性のインスリン放出がないために、重篤な低血糖症を招かないのである。この複合的な作用により、GLP−1は、NIDDMを治療するために現在使用されている他の薬剤に対する独自の潜在的な治療優位性を有している。
【0004】
数多くの研究は、健常被検者へ与えたとき、GLP−1がインスリン及びグルカゴンの濃度だけでなく血糖レベルにも強力に影響を及ぼすこと(Orskov, C, Diabetologia 35: 701-711, 1992; Holst, J. J., et al., Potential of GLP-1 in diabetes management in Glucagon III, Handbook of Experimental Pharmacology, Lefevbre PJ, Ed. Berlin, Springer Verlag, 1996, p. 311-326)、及びこの効果がグルコース依存的であること(Kreymann, B., et al., Lancet ii: 1300-1304, 1987; Weir, G. C., et al., Diabetes 38: 338-342, 1989)を示した。さらに、それはまた糖尿病を有する患者にも有効であり(Gutniak, M., N. Engl J Med 226: 1316-1322, 1992; Nathan, D. M., et al., Diabetes Care 15: 270-276, 1992)、2型糖尿病の被検者において血糖レベルを正常化し(Nauck, M. A., et al., Diabetologia 36: 741-744, 1993)、1型患者において血糖コントロールを改善し(Creutzfeldt, W. O., et al., Diabetes Care 19: 580-586, 1996)、治療薬としてのその使用の可能性を高めている。
【0005】
しかしながら、GLP−1は代謝的に不安定であり、in vivo での血漿半減期(t1/2)は1〜2分にすぎない。外から投与したGLP−1も急速に分解される(Deacon, C. F., et al., Diabetes 44: 1126-1131, 1995)。この代謝不安定性はネーティブなGLP−1の治療薬としての可能性を制限する。従って、ネーティブなGLP−1より活性であるか又はより代謝的に安定であるGLP−1類似体に対するニーズが存在するのである。
【0006】
発明の要約
1つの側面では、本発明は、式(I)の化合物に向けられている
(R23)−A7−A8−A9−A10−A11−A12−A13−A14−A15−A16−A17−A18−A19−A20−A21−A22−A23−A24−A25−A26−A27−A28−A29−A30−A31−A32−A33−A34−A35−A36−A37−R1 (I)
[式中:
7はL−His、Ura、Paa、Pta、D−His、Tyr、3−Pal、4−Pal、Hppa、Tma−His、Ampであるか又は削除され(但し、A7がUra、Paa、Pta又はHppaである場合、R2及びR3は削除される);
8はAla、D−Ala、Aib、Acc、N−Me−Ala、N−Me−D−Ala、Arg又はN−Me−Glyであり;
9はGlu、N−Me−Glu、N−Me−Asp又はAspであり;
10はGly、Acc、Ala、D−Ala、Phe又はAibであり;
11はThr又はSerであり;
12はPhe、Acc、Aic、Aib、3−Pal、4−Pal、β−Nal、Cha、Trp又はX1−Pheであり;
13はThr又はSerであり;
14はSer、Thr、Ala又はAibであり;
15はAsp、Ala、D−Asp又はGluであり;
16はVal、D−Val、Acc、Aib、Leu、Ile、Tle、Nle、Abu、Ala、D−Ala、Tba又はChaであり;
17はSer、Ala、D−Ala、Aib、Acc又はThrであり;
18はSer、Ala、D−Ala、Aib、Acc又はThrであり;
19はTyr、D−Tyr、Cha、Phe、3−Pal、4−Pal、Acc、β−Nal、Amp又はX1−Pheであり;
20はLeu、Ala、Acc、Aib、Nle、Ile、Cha、Tle、Val、Phe又はX1−Pheであり;
21はGlu、Ala又はAspであり;
22はGly、Acc、Ala、D−Ala、β−Ala又はAibであり;
23はGln、Asp、Ala、D−Ala、Aib、Acc、Asn又はGluであり;
24はAla、Aib、Val、Abu、Tle又はAccであり;
25はAla、Aib、Val、Abu、Tle、Acc、Lys、Arg、hArg、Orn、HN−CH((CH2n−N(R1011))−C(O)又はHN−CH((CH2e−X3)−C(O)であり;
26はLys、Ala、3−Pal、4−Pal、Arg、hArg、Orn、Amp、HN−CH((CH2n−N(R1011))−C(O)又はHN−CH((CH2e−X3)−C(O)であり;
27はGlu、Ala、D−Ala又はAspであり;
28はPhe、Ala、Pal、β−Nal、X1−Phe、Aic、Acc、Aib、Cha又はTrpであり;
29はIle、Acc、Aib、Leu、Nle、Cha、Tle、Val、Abu、Ala、Tba又はPheであり;
30はAla、Aib、Accであるか又は削除され;
31はTrp、Ala、β−Nal、3−Pal、4−Pal、Phe、Acc、Aib、Cha、Ampであるか又は削除され;
32はLeu、Ala、Acc、Aib、Nle、Ile、Cha、Tle、Phe、X1−Phe、Alaであるか又は削除され;
33はVal、Acc、Aib、Leu、Ile、Tle、Nle、Cha、Ala、Phe、Abu、X1−Phe、Tba、Gabaであるか又は削除され;
34はLys、Arg、hArg、Orn、Amp、Gaba、HN−CH((CH2n−N(R1011))−C(O)、HN−CH((CH2e−X3)−C(O)であるか又は削除され;
35はGlyであるか又は削除され;
36はL−又はD−Arg、D−又はL−Lys、D−又はL−hArg、D−又はL−Orn、Amp、HN−CH((CH2n−N(R1011))−C(O)、HN−CH((CH2e−X3)−C(O)であるか又は削除され;
37はGlyであるか又は削除され;
1は、それぞれの出現につき、(C1−C6)アルキル、OH及びハロからなる群から独立して選択され;
1はOH、NH2、(C1−C12)アルコキシ又はNH−X2−CH2−Z0であり{ここでX2は(C1−C12)炭化水素部分であり、Z0はH、OH、CO2H又はCONH2である};
3は、
【0007】
【化1】

又は−C(O)−NHR12であり{ここで、X4は、それぞれの出現につき独立して、−C(O)−、−NH−C(O)−又は−CH2−であり、及びfは、それぞれの出現につき独立して、1から29の整数である};
2及びR3のそれぞれは、H、(C1−C30)アルキル、(C2−C30)アルケニル、フェニル(C1−C30)アルキル、ナフチル(C1−C30)アルキル、ヒドロキシ(C1−C30)アルキル、ヒドロキシ(C2−C30)アルケニル、ヒドロキシフェニル(C1−C30)アルキル、及びヒドロキシナフチル(C1−C30)アルキルからなる群から独立して選択されるか;又はR2及びR3の1つはC(O)X5であり{ここで、X5は(C1−C30)アルキル、(C2−C30)アルケニル、フェニル(C1−C30)アルキル、ナフチル(C1−C30)アルキル、ヒドロキシ(C1−C30)アルキル、ヒドロキシ(C2−C30)アルケニル、ヒドロキシフェニル(C1−C30)アルキル、ヒドロキシナフチル(C1−C30)アルキル、
【0008】
【化2】

【0009】
【化3】

又は
【0010】
【化4】

であり、ここでYはH又はOHであり、rは0〜4であって、qは0〜4である};
nは、それぞれの出現につき独立して、1から5の整数であり;及び
10及びR11は、それぞれの出現につき、それぞれ独立して、H、(C1−C30)アルキル、(C1−C30)アシル、(C1−C30)アルキルスルホニル、−C((NH)(NH2))又は
【0011】
【化5】

であり{但し、R10が(C1−C30)アシル、(C1−C30)アルキルスルホニル、−C((NH)(NH2))又は
【0012】
【化6】

である場合、R11はH又は(C1−C30)アルキルである};及び
12は(C1−C30)アルキルである;
但し:
(i)式(I)の化合物の少なくとも1つのアミノ酸は、hGLP−1(7−36又は−37)NH2(SEQ ID NOS:1,2)又はhGLP−1(7−36又は−37)OH(SEQ ID NOS:3,4)のネーティブ配列と同じではなく;
(ii)式(I)の化合物は、1つの位置がAlaにより置換された、hGLP−1(7−36又は−37)NH2(SEQ ID NOS:1,2)又はhGLP−1(7−36又は−37)OH(SEQ ID NOS:3,4)の類似体ではなく;
(iii)式(I)の化合物は、[Lys26(Nε−アルカノイル)]hGLP−1(7−36又は−37)−E(SEQ ID NOS:5〜8)、[Lys34(Nε−アルカノイル)]hGLP−1(7−36又は−37)−E(SEQ ID NOS:9〜12)、[Lys26,34−ビス(Nε−アルカノイル)]hGLP−1(7−36又は−37)−E(SEQ ID NOS:13〜16)、[Arg26,Lys34(Nε−アルカノイル)]hGLP−1(8−36又は−37)−E(SEQ ID NOS:17〜20)又は[Arg26,34,Lys36(Nε−アルカノイル)]hGLP−1(7−36又は37)−E(SEQ ID NOS:21〜24)(ここでEは−OH又は−NH2である)ではなく;
(iv)式(I)の化合物は、Z1−hGLP−1(7−36又は37)−OH、Z1−hGLP−1(7−36又は37)−NH2ではなく{ここでZ1は以下の群から選択される:
(a)[Arg26](SEQ ID NOS:25〜28)、[Arg34](SEQ ID NOS:29〜32)、[Arg26,34](SEQ ID NOS:33〜36),[Lys36](SEQ ID NOS:37〜40)、[Arg26,Lys36](SEQ ID NOS:41〜44)、[Arg34,Lys36](SEQ ID NOS:45〜48)、[D−Lys36],[Arg36](SEQ ID NOS:3,4,1,2)、[D−Arg36],[Arg26,34,Lys36](SEQ ID NOS:49〜52)又は[Arg26,36,Lys34](SEQ ID NOS:25〜28);
(b)[Asp21](SEQ ID NOS:53〜56);
(c)[Aib8](SEQ ID NOS:57〜60)、[D−Ala8]及び[Asp9](SEQ ID NOS:61〜64)のうち少なくとも1つ;及び
(d)[Tyr7](SEQ ID NOS:65〜68)、[N−アシル−His7](SEQ ID NOS:69〜72)、[N−アルキル−His7][N−アシル−D−His7](SEQ ID NO:73〜76)、又は[N−アルキル−D−His7]};
(v)式(I)の化合物は、群(a)〜(d)に列挙した置換基のいずれか2つの組み合わせではなく;及び
(vi)式(I)の化合物は、[N−Me−Ala8]hGLP−1(8−36又は−37)(SEQ ID NOS:77,78)、[Glu15]hGLP−1(7−36又は−37)(SEQ ID NOS:79,80)、[Asp21]hGLP−1(7−36又は−37)(SEQ ID NOS:53,54)又は[Phe31]hGLP−1(7−36又は−37)(SEQ ID NOS:81,82)ではない]。
【0013】
直前に述べた式(I)の化合物の好ましい化合物は、A11がThrであり;A13がThrであり;A14がSer、Aib又はAlaであり;A17がSer、Ala、Aib又はD−Alaであり;A18がSer、Ala、Aib又はD−Alaであり;A21がGlu又はAlaであり;A23がGln、Glu又はAlaであり;及びA27がGlu又はAlaである化合物;又はその製剤的に許容される塩である。
【0014】
直前に述べた式(I)の化合物の好ましい化合物は、A9がGlu、N−Me−Glu又はN−Me−Aspであり;A12がPhe、Acc又はAicであり;A16がVal、D−Val、Acc、Aib、Ala、Tle又はD−Alaであり;A19がTyr、3−Pal、4−Pal又はD−Tyrであり;A20がLeu、Acc、Cha、Ala又はTleであり;A24がAla、Aib又はAccであり;A25がAla、Aib、Acc、Lys、Arg、hArg、Orn、HN−CH((CH2n−NHR10)−C(O)であり;A28がPhe又はAlaであり;A29がIle、Acc又はTleであり;A30がAla、Aibであるか又は削除され;A31がTrp、Ala、3−Pal、4−Palであるか又は削除され;A32がLeu、Acc、Cha、Alaであるか又は削除され;A33がVal、Acc、Ala、Gaba、Tleであるか又は削除される化合物;又はその製剤的に許容される塩である。
【0015】
直前に述べた式(I)の化合物の好ましい化合物は、A8がAla、D−Ala、Aib、A6c、A5c、N−Me−Ala、N−Me−D−Ala又はN−Me−Glyであり;A10がGly、Ala、D−Ala又はPheであり;A12がPhe、A6c又はA5cであり;A16がVal、Ala、Tle、A6c、A5c又はD−Valであり;A20がLeu、A6c、A5c、Cha、Ala又はTleであり;A22がGly、Aib、β−Ala、L−Ala又はD−Alaであり;A24がAla又はAibであり;A29がIle、A6c、A5c又はTleであり;A32がLeu、A6c、A5c、Cha、Alaであるか又は削除され;A33がVal、A6c、A5c、Ala、Gaba、Tleであるか又は削除される化合物;又はその製剤的に許容される塩である。
【0016】
直前に述べた式(I)の化合物の好ましい化合物は、R1がOH又はNH2である化合物、又はその製剤的に許容される塩である。
直前に述べた式(I)の化合物の好ましい化合物又はその製剤的に許容される塩では、R2がHであり、R3が(C1−C30)アルキル、(C2−C30)アルケニル、(C1−C30)アシル、
【0017】
【化7】

【0018】
【化8】

又は
【0019】
【化9】

である。
【0020】
式(I)の最も好ましい化合物は、
【0021】
【化10】

【0022】
【化11】

である前記化合物;又はその製剤的に許容される塩である。
【0023】
式(I)のもう1つの最も好ましい化合物は、
【0024】
【化12】

【0025】
【化13】

である前記化合物;又はその製剤的に許容される塩である。
【0026】
もう1つの側面では、本発明は、上記に定義したような式(I)の化合物又はその製剤的に許容される塩の有効量と製剤的に許容される担体又は希釈剤を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0027】
さらにもう1つの側面では、本発明は、GLP−1受容体からの作動薬効果をそれが必要とされる被検者において誘導する、上記に定義したような式(I)の化合物又はその製剤的に許容される塩の有効量を前記被検者へ投与することを含む方法を提供する。
【0028】
さらなる側面では、本発明は、I型糖尿病、II型糖尿病、肥満、グルカゴノーマ、気道の分泌障害、代謝性障害、関節炎、骨粗鬆症、中枢神経系疾患、再狭窄、神経変性疾患、腎不全、うっ血性心不全、ネフローゼ症候群、肝硬変、肺浮腫、高血圧、及び食物摂取の低減が所望される障害からなる群から選択される疾患を治療が必要とされる被検者において治療する、上記に定義したような式(I)の化合物又はその製剤的に許容される塩の有効量を前記被検者へ投与することを含む方法を提供する。直前の方法の好ましい方法では、疾患はI型糖尿病又はII型糖尿病である。
【0029】
N末端アミノ酸を例外とし、本明細書に開示されるアミノ酸のあらゆる略号(例、Ala)は、−NH−CH(R)−CO−の構造を表し、ここでRはアミノ酸の側鎖である(例えば、AlaではCH3)。N末端アミノ酸では、略号は(R23)−N−CH(R)−CO−の構造を表し、ここでRはアミノ酸の側鎖であり、R2及びR3は上記の定義通りであるが、A7がUra、Paa、Pta又はHppaである場合、Ura、Paa、Pta及びHppaがここではdes−アミノアミノ酸と考えられるので、R2とR3は存在しない。β−Nal、Nle、Cha、Amp、3−Pal、4−Pal及びAibという略号は、以下のα−アミノ酸をそれぞれ表す:β−(2−ナフチル)アラニン、ノルロイシン、シクロヘキシルアラニン、4−アミノ−フェニルアラニン、β−(3−ピリジニル)アラニン、β−(4−ピリジニル)アラニン及びα−アミノイソ酪酸。他のアミノ酸の定義は以下の通りである:Uraはウロカン酸;Ptaは(4−ピリジルチオ)酢酸;Paaはtrans−3−(3−ピリジル)アクリル酸;Tma−HisはN,N−テトラメチルアミジノ−ヒスチジン;N−Me−AlaはN−メチル−アラニン;N−Me−GlyはN−メチル−グリシン;N−Me−GluはN−メチル−グルタミン酸;Tleはtert−ブチルグリシン;Abuはα−アミノ酪酸;Tbaはtert−ブチルアラニン;Ornはオルニチン;Aibはα−アミノイソ酪酸;β−Alaはβ−アラニン;Gabaはγ−アミノ酪酸;Avaは5−アミノ吉草酸;及びAicは2−アミノインダン−2−カルボン酸である。
【0030】
Accが意味するものは、1−アミノ−1−シクロプロパンカルボン酸(A3c);1−アミノ−1−シクロブタンカルボン酸(A4c);1−アミノ−1−シクロペンタンカルボン酸(A5c);1−アミノ−1−シクロヘキサンカルボン酸(A6c);1−アミノ−1−シクロヘプタンカルボン酸(A7c);1−アミノ−1−シクロオクタンカルボン酸(A8c);及び1−アミノ−1−シクロノナンカルボン酸(A9c)の群から選択されるアミノ酸である。上記の式では、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシフェニルアルキル、及びヒドロキシナフチルアルキルは、1〜4個のヒドロキシ置換基を含有し得る。COX5は−C=O・X5を表す。−C=O・X5の例には、限定しないが、アセチル及びフェニルプロピオニルが含まれる。
【0031】
Lys(Nε−アルカノイル)が意味するものは以下の構造により表される:
【0032】
【化14】

Lys(Nε−アルキルスルホニル)が意味するものは以下の構造により表される:
【0033】
【化15】

Lys(Nε−(2−(4−アルキル−1−ピペラジン)−アセチル))が意味するものは以下の構造により表される:
【0034】
【化16】

Asp(1−(4−アルキル−ピペラジン))が意味するものは以下の構造により表される:
【0035】
【化17】

Asp(1−アルキルアミノ)が意味するものは以下の構造により表される:
【0036】
【化18】

上述した諸構造におけるnの変数は1〜30である。
【0037】
本明細書に使用される他の略号の完全な名称は以下の通りである:Boc=t−ブチルオキシカルボニル、HF=フッ化水素、Fm=ホルミル、Xan=キサンチル、Bzl=ベンジル、Tos=トシル、DNP=2,4−ジニトロフェニル、DMF=ジメチルホルムアミド、DCM=ジクロロメタン、HBTU=2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロリン酸、DIEA=ジイソプロピルエチルアミン、HOAc=酢酸、TFA=トリフルオロ酢酸、2ClZ=2−クロロベンジルオキシカルボニル、及びOcHex=O−シクロヘキシル。
【0038】
本発明のペプチドはまた、本明細書では別の形式により、例えば[A5c8]hGLP−1(7−36)NH2(SEQ ID NO:130)と示されるが、ここでは天然の配列から置換されたアミノ酸が最初の括弧のなかに配置される(例えば、hGLP−1のAla8に対するA5c8)。略号GLP−1はグルカゴン様ペプチド−1を意味し、hGLP−1はヒトグルカゴン様ペプチド−1を意味する。括弧内の数字はこのペプチドに存在するアミノ酸の位数を意味する(例えば、hGLP−1(7−36)(SEQ ID NO:3)は、ヒトGLP−1のペプチド配列のアミノ酸7位〜36位である)。hGLP−1(7−37)(SEQ ID NO:4)の配列が Mojsov, S., Int. J. Peptide Protein Res., 40, 1992, pp. 333-342 に挙げられている。hGLP−1(7−36)NH2(SEQ ID NO:1)における「NH2」の明示は、このペプチドのC末端がアミド化されていることを示す。hGLP−1(7−36)(SEQ ID NO:2)は、C末端がフリーの酸であることを示す。

発明の詳細な説明
本発明のペプチドは標準的な固相ペプチド合成により製造し得る。例えば、Stewart, J. M., et al., Solid Phase Synthesis (Pierce Chemical Co., 2d ed. 1984) を参照のこと。上記一般式の置換基R2及びR3は、当技術分野で知られている標準法により、N末端アミノ酸のフリーアミンに付けることが可能である。例えば、アルキル基、例えば(C1−C30)アルキルは、還元的アルキル化を使用して付けることができる。ヒドロキシアルキル基、例えば(C1−C30)ヒドロキシアルキルも、フリーのヒドロキシ基がt−ブチルエステルで保護されている還元的アルキル化を使用して付けることができる。アシル基、例えばCOE1は、処理済の樹脂を3モル当量の遊離酸及びジイソプロピルカルボジイミドとともに塩化メチレンにおいて1時間混合することにより、遊離酸、例えばE1COOHをN末端アミノ酸のフリーアミンへカップリングさせることによって付けることができる。遊離酸がフリーのヒドロキシ基を含有する場合(例えば、p−ヒドロキシフェニルプロピオン酸)、このカップリングはさらに3モル当量のHOBTとともに実施されるべきである。
【0039】
1がNH−X2−CH2−CONH2(即ち、Z0=CONH2)である場合、ペプチドの合成は、MBHA樹脂へカップルしたBocHN−X2−CH2−COOHから始まる。R1がNH−X2−CH2−COOH(即ち、Z0=COOH)である場合、ペプチドの合成は、PAM樹脂へカップルしたBoc−HN−X2−CH2−COOHから始まる。
【0040】
以下に、本発明のペプチドを製造するための合成法を説明するが、この方法は当業者によく知られている。当業者に知られている他の方法もある。
塩化イオンの形態にあるベンズヒドリルアミン−ポリスチレン樹脂(Advanced ChemTech,Inc.,Louisville,KY)(0.9g,0.3ミリモル)を、以下の反応サイクルを実行するようにプログラムされた、Advanced ChemTech Peptide Synthesizer Model 200の反応槽へ入れる:(a)塩化メチレン;(b)33%トリフルオロ酢酸/塩化メチレン(1分及び15分をそれぞれ2回);(c)塩化メチレン;(d)エタノール;(e)塩化メチレン;(f)10%ジイソプロピルエチルアミン/塩化メチレン。
【0041】
中和した樹脂を、合成される所望のペプチドのC末端アミノ酸になるべきBoc−保護化アミノ酸とジイソプロピルカルボジイミド(それぞれ3ミリモル)とともに塩化メチレンにおいて1時間撹拌し、次いで、生成したアミノ酸樹脂を上記の洗浄プログラムの工程(a)〜(f)で処理する。次いで、所望されるペプチドの他のアミノ酸(3ミリモル)を同じ方法により連続的にカップルさせる。完成したペプチドを、アニソール(5ml)、ジチオスレイトール(100mg)及び無水フッ化水素(35ml)と約0℃で混合し、それを約45分撹拌することによって樹脂から開裂させる。乾燥窒素流の下で過剰なフッ化水素を速やかに蒸発させ、遊離したペプチドをエーテルで沈澱させて洗浄する。次いで、この粗ペプチドを最少量の希酢酸に溶かし、VYDAC(登録商標)オクタデシルシランシリカ(10mM)のカラム(2.5x25cm)にかけ、20〜60%アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸水溶液の線形勾配で約1時間にわたり溶出させる。薄層クロマトグラフィーと分析用高速液体クロマトグラフィー(B:40〜70%、1%/分、溶液B:80%アセトニトリル/0.1% TFAを含有する水)により分画を試験し、収量よりも純度を最大化するようにプールする。この溶液を水から繰り返し凍結乾燥させることにより、白色の綿毛様の粉末として生成物を得る。
【0042】
ペプチド生成物をHPLCにより分析する。ペプチド生成物の酸加水分解物のアミノ酸分析により、ペプチドの組成を確認することができる。レーザー脱着MSを使用して、ペプチドの分子量を決定する。
【0043】
保護化アミノ酸、1−[N−tert−ブトキシカルボニル−アミノ]−1−シクロヘキサン−カルボン酸(Boc−A6c−OH)を以下のように合成した。1−アミノ−1−シクロヘキサンカルボン酸(Acros Organics,Fisher Scientific,ピッツバーグ、PA)19.1g(0.133モル)をジオキサン200ml及び水100mlに溶かした。それへ2N NaOH 67mlを加えた。この溶液を氷水浴に冷やした。ジ−tert−ブチル−ジカーボネート32.0g(0.147モル)をこの溶液へ加えた。この反応混合液を室温で一晩撹拌した。次いで、減圧下でジオキサンを除去した。この残存した水溶液へ酢酸エチル200mlを加えた。この混合液を氷水浴に冷やした。4N HClを加えることによって、水層のpHを約3へ調整した。有機層を分離した。水層を酢酸エチル(1x100ml)で抽出した。2つの有機層を一緒にし、水(2x150ml)で洗浄し、無水MgSO4で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮乾固させた。酢酸エチル/ヘキサンにおいて残渣を再結晶させた。純生成物9.2gを得た。収率29%。
【0044】
Boc−A5c−OHはBoc−A6c−OHに類似したやり方で合成した。他の保護化Accアミノ酸も、本明細書の教示により可能なように、類似したやり方で当業者により製造し得る。
【0045】
A5c、A6c及び/又はAibを含有する本発明のペプチドの合成においては、上記の残基群とその直後に述べた残基につき、カップリング時間は約2時間である。[Tma−His7]hGLP−1(7−36)NH2(SEQ ID NO:117)の合成については、最終のカップリング反応において、HBTU(2ミリモル)及びDIEA(1.0ml)/DMF 4mlを使用して、ペプチド−樹脂のN末端フリーアミンと反応させるが、このカップリング時間は約2時間である。
【0046】
上記に使用した略号の完全な名称は以下の通りである:Boc=t−ブチルオキシカルボニル、HF=フッ化水素、Fm=ホルミル、Xan=キサンチル、Bzl=ベンジル、Tos=トシル、DNP=2,4−ジニトロフェニル、DMF=ジメチルホルムアミド、DCM=ジクロロメタン、HBTU=2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロリン酸、DIEA=ジイソプロピルエチルアミン、HOAc=酢酸、TFA=トリフルオロ酢酸、2ClZ=2−クロロベンジルオキシカルボニル、2BrZ=2−ブロモベンジルオキシカルボニル、及びOcHex=O−シクロヘキシル。
【0047】
上記一般式の置換基R2及びR3は、当技術分野で知られている標準法により、N末端アミノ酸のフリーアミンに付けることが可能である。例えば、アルキル基、例えば(C1−C30)アルキルは、還元的アルキル化を使用して付けることができる。ヒドロキシアルキル基、例えば(C1−C30)ヒドロキシアルキルも、フリーのヒドロキシル基がt−ブチルエステルで保護されている還元的アルキル化を使用して付けることができる。アシル基、例えばCOX1は、処理済の樹脂を3モル当量の遊離酸及びジイソプロピルカルボジイミドとともに塩化メチレンにおいて1時間混合することにより、遊離酸、例えばX1COOHをN末端アミノ酸のフリーアミンへカップリングさせることによって付けることができる。遊離酸がフリーのヒドロキシ基を含有する場合(例えば、p−ヒドロキシフェニルプロピオン酸)、このカップリングはさらに3モル当量のHOBTとともに実施されるべきである。
【0048】
本発明の化合物は、以下の方法により、GLP−1受容体に結合する化合物としての活性について試験し得る。
細胞培養:
GLP−1受容体を発現する、RIN 5F ラットインスリノーマ細胞(ATCC−# CRL−2058,American Type Culture Collection,マナッサス、VA)を、10%胎仔血清含有ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)で培養し、5% CO2/95%空気の加湿気体において約37℃に維持した。
放射リガンド結合:
放射リガンド結合試験のために、Brinkman Polytron(ウェストベリー、NY)(目盛6にセット、15秒)を用いて、氷冷50mM トリス−HCl 20mlにおいてRIN細胞を均質化することにより膜を調製した。このホモジェネートを遠心分離(39,000g/10分)により2回洗浄し、最終ペレットを、2.5mM MgCl2,バシトラシン(シグマケミカル、セントルイス、MO)0.1mg/ml、及び0.1% BSAを含有する50mM トリス−HClに再懸濁させた。アッセイでは、0.05nM[125I]GLP−1(7−36)(SEQ ID NO:151)(〜2200Ci/ミリモル、New England Nuclear、ボストン、MA)とともに、非標識の競合試験ペプチド0.05mlとともにか、又は含まずに、アリコート(0.4ml)をインキュベートした。100分のインキュベーション(25℃)後に、0.5%ポリエチレンイミンに前もって浸漬しておいたGF/Cフィルター(Brandel,ゲイサースブルグ、MD)を通す高速濾過により、結合した[125I]GLP−1(7−36)(SEQ ID NO:151)をフリーのものから分離した。次いで、氷冷した50mMトリス−HClのアリコート5mlを用いてこのフィルターを3回洗浄し、フィルター上にトラップされた結合放射活性をガンマ分析計(Wallac LKB,ゲイサースブルグ、MD)により計数した。[全(125I)GLP−1(7−36)(SEQ ID NO:151)結合]から[GLP−1(7−36)(SEQ ID NO:3)(Bachem,トーランス、CA)1000nM存在下での結合]を差引いたものを特異的な結合と定義した。
【0049】
本発明のペプチドは製剤的に許容される塩の形態で提供され得る。そのような塩の例には、限定しないが、有機酸(例、酢酸、乳酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、安息香酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸又はパモン酸)、無機酸(例、塩酸、硫酸、又はリン酸)及び高分子酸(例、タンニン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、又はポリ乳酸−グリコール酸のコポリマー)とともに形成されるものが含まれる。本発明のペプチドの塩を製造する典型的な方法は当技術分野でよく知られていて、塩交換の標準法により達成し得る。従って、本発明のペプチドのTFA塩(TFA塩は、緩衝溶液含有TFAで溶出させる調製用HPLCを使用することによってペプチドの精製から生じる)は、少量の0.25N酢酸水溶液にこのペプチドを溶かすことによって酢酸塩のような別の塩へ変換することができる。生成した溶液を半調製用HPLCカラム(Zorbax,300SB,C−8)にかける。このカラムを(1)0.1N酢酸アンモニウム水溶液、0.5時間、(2)0.25N酢酸水溶液、0.5時間、及び(3)線形勾配(20%〜100%のB溶液、30分)、流速4ml/分(A溶液:0.25N酢酸水溶液;B溶液:0.25N酢酸のアセトニトリル/水、80:20溶液)で溶出させる。ペプチド含有分画を回収し、凍結乾燥させる。
【0050】
当業者によく知られているように、GLP−1の既知の使用と潜在的な使用は様々で、多岐に渡っている[Todd, J. F. et al., Clinical Science, 1998, 95, pp. 325-329; 及びTodd, J. F. et al., European Journal of Clinical Investigation, 1997, 27 pp. 533-536 を参照のこと]。従って、作動薬効果を誘導する目的のために本発明の化合物を投与すると、GLP−1そのものと同じ効果及び使用を有し得る。こういったGLP−1の様々な使用は以下のように要約し得る:I型糖尿病、II型糖尿病、肥満、グルカゴノーマ、気道の分泌障害、代謝性障害、関節炎、骨粗鬆症、中枢神経系疾患、再狭窄及び神経変性疾患の治療。被検者から拮抗薬効果を誘導する本発明のGLP−1類似体は、以下を治療するために使用し得る:低血糖症、及び胃切除又は小腸切除に関連した吸収不全症候群。
【0051】
従って、本発明は、製剤的に許容される担体とともに有効成分として式(I)の化合物群の少なくとも1つを含んでなる医薬組成物をその範囲内に包含する。
本発明の組成物にある有効成分の用量は変化し得るが、有効成分の量は好適な剤形が得られるようなものであることが必要である。選択される投与量は、所望される治療効果、投与経路、及び治療期間に依存する。一般に、本発明の諸活性に有効な投与量は、1x10-7〜200mg/kg/日、好ましくは1x10-4〜100mg/kg/日の範囲にあり、これは単回用量として投与し得るか又は数回投与へ分割し得る。
【0052】
本発明の化合物は、経口、腸管外(例、筋肉内、腹腔内、静脈内又は皮下注射、又は埋込み)、鼻、膣、直腸、舌下又は局所の投与経路により投与され、それぞれの投与経路に適した剤形を提供するために、製剤的に許容される担体と製剤化され得る。
【0053】
経口投与用の固体剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末及び顆粒剤が含まれる。そのような固体剤形では、活性化合物が、スクロース、ラクトース又はデンプンのような少なくとも1種の製剤的に許容される不活性な担体とともに混和される。そのような剤形は、普通の方法として、そのような不活性希釈剤以外の追加物質、例えば、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤も含み得る。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合、剤形は緩衝剤を含む場合がある。錠剤と丸剤は、さらに腸溶コーティング剤とともに製造し得る。
【0054】
経口投与用の液体剤形には、当技術分野で通常使用される水のような不活性希釈剤を含有する、製剤的に許容される乳液、溶液、懸濁液、シロップ、エリキシル液が含まれる。そのような不活性希釈剤とは別に、組成物は、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味剤、フレーバー及び芳香剤のようなアジュバントを包含し得る。
【0055】
本発明による腸管外投与の調製物には、滅菌の水溶液又は非水溶液、懸濁液又は乳液が含まれる。非水性の溶媒又は担体の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油やトウモロコシ油のような植物油、ゼラチン、及びオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルである。そのような剤形はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤のようなアジュバントを含有し得る。それらは、例えば、細菌保持フィルターを通した濾過、滅菌剤を組成物へ取込むこと、組成物に照射すること、又は組成物を加熱することによって滅菌し得る。それらはまた、使用直前に滅菌水か又は他の無菌で注射可能な媒体に溶かし得る無菌の固体組成物の形態でも製造し得る。
【0056】
直腸又は膣に投与する組成物は、好ましくは、有効成分に加えて、ココア脂や坐剤用ワックスのような賦形剤を含有し得る坐剤である。
鼻内又は舌下に投与する組成物もまた当技術分野でよく知られている標準的な賦形剤とともに製造される。
【0057】
さらに、本発明の化合物は、以下の特許及び特許出願に記載されたような徐放性組成物において投与し得る。米国特許第5,672,659号は、生物活性剤及びポリエステルを含んでなる徐放性組成物を教示する。米国特許第5,595,760号は、ゲル化し得る形態に生物活性剤を含んでなる徐放性組成物を教示する。1997年9月9日に出願された米国特許出願第08/929,363号は、生物活性剤及びキトサンを含んでなる高分子性の徐放性組成物を教示する。1996年11月1日に出願された米国特許出願第08/740,778号は、生物活性剤及びシクロデキストリンを含んでなる徐放性組成物を教示する。1998年1月29日に出願された米国特許出願第09/015,394号は、生物活性剤の吸収可能な徐放性組成物を教示する。1998年7月23日に出願された米国特許出願第09/121,653号は、ペプチドのような治療薬を含んでなるミクロ粒子を水中油型の方法で製造する方法を教示する。1998年8月10日に出願された米国特許出願第09/131,472号は、ペプチドのような治療薬とリン酸化したポリマーを含んでなる複合体を教示する。1998年11月2日に出願された米国特許出願第09/184,413号は、ペプチドのような治療薬と非重合化ラクトンを担うポリマーを含んでなる複合体を教示する。上述の特許及び出願の教示は、参照により本明細書に組込まれている。
【0058】
特に断らなければ、本明細書に使用されるあらゆる技術及び科学の用語は、本発明が属する当技術分野の当業者により普通に理解されるのと同じ意味を有する。また、上記に述べたあらゆる出版物、特許出願、特許及び他の文献は、参照により本明細書に組込まれている。
【0059】
以下の実施例では本発明のペプチドを製造する合成法について説明するが、この方法は当業者のよく知るところである。当業者に知られている他の方法もある。この実施例は説明のために提供されるのであって、本発明の範囲を決して制限するためのものではない。
【実施例】
【0060】
実施例1:[D−Ala8,Ala17,22,23,27,3−Pal19,31,Gaba34]−GLP−1(7−34)NH2
塩素イオンの形態にあるベンズヒドリルアミン−ポリスチレン樹脂(Advanced ChemTech,Inc.,Louisville,KY)(0.9g,0.3ミリモル)を、以下の反応サイクルを実行するようにプログラムされた、Advanced ChemTech Peptide Synthesizer Model 200の反応槽に入れた:(a)塩化メチレン;(b)33%トリフルオロ酢酸/塩化メチレン(1分及び15分をそれぞれ2回);(c)塩化メチレン;(d)エタノール;(e)塩化メチレン;(f)10%ジイソプロピルエチルアミン/塩化メチレン。
【0061】
中和した樹脂を、Boc−Gabaとジイソプロピルカルボジイミド(それぞれ3ミリモル)とともに塩化メチレンにおいて1時間撹拌し、次いで、生成したアミノ酸樹脂を上記の洗浄プログラム工程(a)〜(f)で処理した。次いで、以下のアミノ酸(3ミリモル)を同じ方法により連続的にカップルさせる:Boc−Val、Boc−Leu、Boc−3−Pal、Boc−Ala、Boc−Ile、Boc−Phe、Boc−Ala、Boc−Lys(2−Cl−Z)、Boc−Ala、Boc−Ala、Boc−Ala、Boc−Ala、Boc−Glu(Bzl)、Boc−Leu、Boc−3−Pal、Boc−Ser(Bzl)、Boc−Ala、Boc−Val、Boc−Asp(Bzl)、Boc−Ser(Bzl)、Boc−Thr(Bzl)、Boc−Phe、Boc−Thr(Bzl)、Boc−Gly、Boc−Glu(Bzl)、Boc−D−Ala、Boc−His(Bom)。
【0062】
完成したペプチド配列の付いた樹脂を、アニソール(5ml)、ジチオスレイトール(100mg)及び無水フッ化水素(35ml)と約0℃で混合し、それを約45分撹拌した。乾燥窒素流の下で過剰なフッ化水素を速やかに蒸発させ、遊離したペプチドをエーテルで沈澱させて洗浄した。次いで、この粗ペプチドを最少量の希酢酸に溶かし、VYDAC(登録商標)オクタデシルシランシリカ(10mM)のカラム(2.5x25cm)にかけ、20〜60%アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸水溶液の線形勾配で約1時間にわたり溶出させた。薄層クロマトグラフィーと分析用高速液体クロマトグラフィー(B:40〜70%、1%/分;室温;14.1分)により分画を試験し、収量よりも純度を最大化するようにプールした。この溶液を水から繰り返し凍結乾燥させることにより、白色の綿毛様の粉末として生成物(49.9mg)を得た。
【0063】
この生成物は、HPLC及びtlcにより、均質であることが見出された。酸加水分解物のアミノ酸分析により、ペプチドの組成を確認する。レーザー脱着MSにより、分子量は2880とされた(M+Hの計算値:2873)。

実施例2:ペプチド−低級アルキルアミドの合成
実施例1に記載のBocアミノ酸プロトコールを使用して、O−ベンジル−ポリスチレン樹脂(しばしばメリフィールド樹脂と呼ばれる)上でペプチドを組み立てる。但し、Asp及びGluアミノ酸のカルボキシル側鎖はFm(フルオレニルメチルエステル)基で保護する。完成したペプチド−樹脂を好適な(エチルアミン、プロピルアミン、フェネチルアミン、1,2−ジアミノエタン等のような)低級アルキルアミンの薄いDMF溶液に懸濁させ、約60℃で(約18時間)撹拌し、濾過して、減圧下で溶媒を除去し、開裂したペプチド油分をエーテルで粉砕して、固形の、保護化アルキルアミドペプチドを得る。次いで、これをHFで開裂させ、追加の側鎖保護基を除去し、実施例1に記載のようにHPLCで精製する。

実施例3〜5
実施例3〜5は、当該ペプチドを産生するのに適した保護化アミノ酸を使用して、実質的に実施例1に記載の方法により合成し得る。
【0064】
【化19】

実施例6〜51
実施例6〜51は、当該ペプチドを産生するのに適した保護化アミノ酸を使用すること以外は、実質的に実施例1に記載の方法により合成した。レーザー脱着MSによりMSを得た(NAはデータなしを意味する)。
【0065】
【化20】

【0066】
【化21】

【0067】
【化22】

実施例52:[Aib8,A6c32]hGLP−1(7−36)NH2(SEQ ID NO:114)
加速化Boc−ケミストリー固相ペプチド合成を実行するように改良されたApplied Biosystems(フォスターシティ、CA)モデル 430Aペプチド合成機において、表題ペプチドを合成した。Schnolzer, et al., Int. J. Peptide Protein Res., 40: 180 (1992) を参照のこと。0.91ミリモル/gの置換を有する4−メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂(Peninsula,ベルモント、CA)を使用した。以下の側鎖保護を有するBocアミノ酸(Bachem,CA,トーランス、CA;Nova Biochem.,ラジョラ、CA)を使用した:Boc−Ala−OH、Boc−Arg(Tos)−OH、Boc−Asp(OcHex)−OH、Boc−Tyr(2BrZ)−OH、Boc−His(DNP)−OH、Boc−Val−OH、Boc−Leu−OH、Boc−Gly−OH、Boc−Gln−OH、Boc−Ile−OH、Boc−Lys(2ClZ)−OH、Boc−Thr(Bzl)−OH、Boc−A6c−OH、Ser(Bzl)−OH、Boc−Phe−OH、Boc−Aib−OH、Boc−Glu(OcHex)−OH及びBoc−Trp(Fm)−OH。合成は0.20ミリモルのスケールで実行した。Boc基は、100% TFA、2x1分の処理により除去した。Bocアミノ酸(2.5ミリモル)をHBTU(2.0ミリモル)及びDIEA(1.0ml)/DMF 4mlでプレ活性化し、ペプチド−樹脂TFA塩の先行中和をせずにカップルさせた。カップリング時間は5分であったが、Boc−Aib−OH残基及びBoc−A6c−OH残基と以下の残基、Boc−Trp(Fm)−OH及びBoc−His(DNP)−OHではカップリング時間は約2時間であった。
【0068】
ペプチド鎖の組立ての終了時に、20%メルカプトエタノール/10% DIEAのDMF溶液で樹脂を2x30分間処理し、His側鎖上のDNP基を除去した。次いで、100% TFA、2x2分の処理によりN末端Boc基を除去した。ペプチド−樹脂を10% DIEA/DMF(1x1分)で中和した後に、15%エタノールアミン/15%水/70% DMFの溶液で2x30分処理することにより、Trpの側鎖上のホルミル基を除去した。この部分的に脱保護したペプチド−樹脂をDMF及びDCMで洗浄し、減圧下で乾燥させた。アニソール1ml及びジチオスレイトール(24mg)を含有するHF 10mlにおいて、このペプチド−樹脂を0℃で約75分間撹拌することによって、最後の開裂を実施した。窒素流を用いてHFを除去した。残渣をエーテル(6x10ml)で洗浄し、4N HOAc(6x10ml)で抽出した。
【0069】
水性抽出液中のペプチド混合物を、逆相VYDAC(登録商標)C18カラム(Nest Group,Southborough,MA)を使用する調製用逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製した。流速10ml/分の線形勾配液(20%〜50%の溶液B、105分)を用いてカラムを溶出させた(溶液A=0.1% TFAを含有する水;溶液B=0.1% TFA含有アセトニトリル)。分画を回収し、分析用HPLCで検査した。純生成物を含有する分画を一緒にし、凍結乾燥させて、白色の固形物92mgを得た。分析用HPLC分析に基づけば、純度は>99%であった。エレクトロ−スプレイ質量分析(MS(ES))は、分子量3324.2を示した(計算される分子量は3323.7である)。
【0070】
本発明の他の化合物の合成は、所望されるペプチドに依存して適切な保護化アミノ酸を使用すること以外は、実施例52の[Aib8,A6c32]hGLP−1(7−36)NH2(SEQ ID NO:114)の合成についての記載と同じやり方で実行し得る。
【0071】
[(Nα−HEPES−His)7]hGLP−1(7−36)NH2(SEQ ID NO:152){HEPESは(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジン−エタンスルホン酸)である}は、以下のように合成し得る:MBHA樹脂(0.20ミリモル)上でこのペプチド長鎖を組立てた後に、このペプチド−樹脂を100% TFA(2x2分)で処理し、DMF及びDCMで洗浄する。次いで、10% DIEA/DMF、約2分間でこの樹脂を中和する。DMF及びDCMで洗浄した後、2−クロロ−1−エタンスルホニルクロリド(0.23ミリモル)及びDIEA(0.7ミリモル)/DMFでこの樹脂を約1時間処理する。この樹脂をDMF及びDCMで洗浄し、2−ヒドロキシエチルピペラジン1.2ミリモルで約2時間処理する。この樹脂をDMF及びDCMで洗浄し、種々の試薬((1)20%メルカプトエタノール/10% DIEA/DMF、及び(2)15%エタノールアミン/15%水/70% DMF)で処理し、上記のように、ペプチドの樹脂からの最終的なHF開裂の前に、His側鎖とTrp側鎖上のホルミル基からDNP基を除去する。
【0072】
[(Nα−HEPA−His)7]hGLP−1(7−36)NH2(SEQ ID NO:153)([(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンアセチル)−His7]hGLP−1(7−36)NH2)は、[(Nα−HEPES−His)7]hGLP−1(7−36)NH2(SEQ ID NO:152)を合成するための直前に記載した方法により実質的に合成し得る。ただし、2−クロロ−1−エタンスルホニルクロリドの代わりに2−ブロモ無水酢酸を使用する。

実施例53〜90及び104
実施例53〜90及び104は、好適な保護化アミノ酸を使用すること以外は、実質的に実施例52により合成した。
【0073】
【化23】

【0074】
【化24】

【0075】
【化25】

【0076】
【化26】

実施例91:[Aib8,A5c33]hGLP−1(7−36)NH2(SEQ ID NO:154)
表題化合物は、適切な保護化アミノ酸を使用して、実質的に実施例52により合成し得る。

実施例92:[Aib8,A6c32,Lys36(Nε−テトラデカノイル)]hGLP−1(7−36)NH2(SEQ ID NO:155)
使用すべきBocアミノ酸は、[Aib8,A6c32]hGLP−1(7−36)NH2(SEQ ID NO:114)(実施例52)の合成と同じであるが、この実施例ではLys36(Nε−テトラデカノイル)残基のためにFmoc−Lys(Boc)−OHを使用する。最初のアミノ酸残基をシェーカー上で手動により樹脂へカップルさせる。Fmoc−Lys(Boc)−OH 2.5ミリモルを0.5N HBTU/DMF 4mlに溶かす。この溶液へDIEA 1mlを加える。この混合液を約2分間振盪する。次いで、この溶液へMBHA樹脂(置換=0.91ミリモル/g)0.2ミリモルを加える。この混合液を約1時間振盪する。この樹脂をDMFで洗浄し、100% TFAで2x2分処理してBoc保護基を除去する。樹脂をDMFで洗浄する。ミリスチン酸(2.5ミリモル)をHBTU(2.0ミリモル)及びDIEA(1.0ml)/DMF 4mlで2分間プレ活性化し、Fmoc−Lys−樹脂にカップルさせる。カップリング時間は約1時間である。DMFで樹脂を洗浄し、25%ピペリジン/DMFで2x20分処理してFmoc保護基を除去する。樹脂をDMFで洗浄し、ペプチド合成機の反応槽へ移す。ペプチドの合成及び精製法の残り工程は、[Aib8,A6c32]hGLP−1(7−36)NH2(SEQ ID NO:114)の合成と同じである。
【0077】
Lys(Nε−アルカノイル)残基を含有する他の化合物の合成は、[Aib8,A6c32,Lys36(Nε−テトラデカノイル)]hGLP−1(7−36)NH2(SEQ ID NO:155)について記載の方法に類似したやり方で実行される。このペプチドのLys(Nε−アルカノイル)残基にFmoc−Lys(Boc)−OHアミノ酸を使用し、Lysの残基にはBoc−Lys(2ClZ)−OHアミノ酸を使用する。Lys(Nε−アルカノイル)残基がC末端でない場合、ペプチド合成機の樹脂上で、Lys(Nε−アルカノイル)残基の直前にあるペプチドフラグメントを最初に組立てる。

実施例93〜98
実施例93〜98は、好適なアミノ酸を使用して、実質的に実施例92に記載の方法により合成し得る。
【0078】
【化27】

実施例99:[Aib8,Arg26,34,A6c32,Lys36(Nε−テトラデカノイル)]hGLP−1(7−36)−OH(SEQ ID NO:161)
使用するBocアミノ酸は、[Aib8,A6c32,Lys36(Nε−テトラデカノイル)]hGLP−1(7−36)NH2(SEQ ID NO:155)(実施例92)の合成に使用されるものと同じである。Fmoc−Lys(Boc)−OH(2.5ミリモル)をHBTU(2.0ミリモル)、HOBt(2.0ミリモル)及びDIEA(2.5ml)/DMF(4ml)で約2分間プレ活性化する。このアミノ酸を、シェーカー上、手動でPAM樹脂(Chem−Impex,Wood Dale,IL;置換=0.85ミリモル/g)へカップルさせる。カップリング時間は約8時間である。ペプチドを製造するための合成及び精製法の残り工程は実施例52に記載したものと同じである。
【0079】
Lys(Nε−アルカノイル)残基を含有する他の類似体、hGLP−1(7−36)OH(SEQ ID NO:3)及びhGLP−1(7−37)OH(SEQ ID NO:4)の合成は、[Aib8,Arg26,34,A6c32,Lys36(Nε−テトラデカノイル)]hGLP−1(7−36)−OH(SEQ ID NO:161)の合成についての記載に類似したやり方で実行される。このペプチドのLys(Nε−アルカノイル)残基にFmoc−Lys(Boc)−OHアミノ酸を使用し、Lysの残基にはBoc−Lys(2ClZ)−OHアミノ酸を使用する。

実施例100〜103
実施例100〜103は、好適なアミノ酸を使用して、実質的に実施例99に記載の方法により合成し得る。
【0080】
【化28】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の群から選択されるいずれか1つの化合物:
【化1】

【化2】

【化3】

又はその製剤的に許容される塩。

【公開番号】特開2010−1301(P2010−1301A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188046(P2009−188046)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【分割の表示】特願2005−298418(P2005−298418)の分割
【原出願日】平成11年12月7日(1999.12.7)
【出願人】(505474717)ソシエテ・ドゥ・コンセイユ・ドゥ・ルシェルシュ・エ・ダプリカーション・シャンティフィック・エス・ア・エス (41)
【出願人】(501228417)ジ・アドミニストレーターズ・オブ・ザ・ツーレイン・エデュケイショナル・ファンド (6)
【Fターム(参考)】