GNSS解析システム、GNSS解析装置、及びGNSS解析プログラム
【課題】キネマティック方式とスタティック方式の両者の特徴を活かした基線解析を現場で実施可能な基準局を提供する。
【解決手段】基準局2は、GNSS受信部24と、無線受信部25と、データ処理部41と、時系列取得部40と、を備えている。GNSS受信部24は、GNSS衛星からの電波を受信して自局観測データを取得する。無線受信部25は、GNSS衛星からの電波を受信した計測局3から出力された観測データである他局観測データを取得する。データ処理部41は、所定の繰り返し時間内に取得された自局観測データ及び他局観測データを処理して測位結果を得る。時系列取得部40は、データ処理ステップを、前記繰り返し周期ごとに繰り返し実行して、測位結果の時系列を取得する。そして、時系列取得部40は、繰り返し時間を異ならせた複数の時系列を取得している。
【解決手段】基準局2は、GNSS受信部24と、無線受信部25と、データ処理部41と、時系列取得部40と、を備えている。GNSS受信部24は、GNSS衛星からの電波を受信して自局観測データを取得する。無線受信部25は、GNSS衛星からの電波を受信した計測局3から出力された観測データである他局観測データを取得する。データ処理部41は、所定の繰り返し時間内に取得された自局観測データ及び他局観測データを処理して測位結果を得る。時系列取得部40は、データ処理ステップを、前記繰り返し周期ごとに繰り返し実行して、測位結果の時系列を取得する。そして、時系列取得部40は、繰り返し時間を異ならせた複数の時系列を取得している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、GNSS解析装置に関する。詳細には、GNSS解析装置によって、迅速性と高精度を兼ねた基線解析を現場で行うための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
地滑り等の災害が発生しそうな危険地帯においては、地盤や構造物のわずかな変位を監視するために地盤監視システムが設置される場合がある。近年、このような地盤監視システムに、GNSS(Global Navigation Satelite System:全地球航法衛星システム)を用いた変位監視が採用されている。
【0003】
従来、GNSSを用いた変位監視では、取得した観測データに基づいて公知のスタティック方式による基線解析を実行することにより、変位を得ていた。このスタティック方式の基線解析は、高精度(数mm程度の精度)ではあるものの、十分な精度を得るためにはGNSS電波の測定に時間が掛かる(通常は1時間以上)という欠点があった。また、図6に示すように、このスタティック方式では、一般的に、現場に設置された計測局80においてGNSS電波を受信して観測データを取得した後、遠隔地にある監視センター81に観測データを転送して、当該監視センター81内の解析パソコン82によって基線解析を実施している。この構成では、監視センター81に観測データを転送しなければならないため、解析結果を現場で直接確認することができない。
【0004】
一方で、変位監視には、公知のリアルタイムキネマティック方式が用いられる場合もある。このリアルタイムキネマティック方式では、図7に示すように、現場に設置された計測局90においてGNSS電波を受信し、その観測データを、同じく現場に設置された固定点である基準局91へ無線通信等によって送信する。基準局91は、受信した観測データの解析処理を行い、計測局の変位を求めて出力するように構成されている。この構成によれば、短時間の測定(数秒から数十分程度)を行うだけで、結果を現場で得ることができる。しかしながら、このリアルタイムキネマティック方式の精度は数cm程度であり、上記スタティック方式に比較すると精度が劣る。
【0005】
上記のように、スタティック方式とリアルタイムキネマティック方式は、一長一短の関係にある。この点、特許文献1及び特許文献2には、スタティック方式とリアルタイムキネマティック方式とを組み合わせて観測を行う構成が開示されている。
【0006】
特許文献1は、特に異常のない状態では、地盤変動が小さい状態にあるためスタティック解析処理を行い、地盤変位値が危険範囲と判断される規定の範囲を超えた時には、変化に即応できるようにするためにリアルタイムキネマティック解析処理を選択する構成を開示している。特許文献1は、これにより、微小な地盤変動から急速な地盤変動まで連続して監視ができ、早期の警戒や避難の判断が行えるシステムとすることができるとしている。
【0007】
また、特許文献2は、スタティック測位手法に応じて観測した斜面変位データが示す斜面変位が予め設定された変位閾値を越えると、スタティック測位手法からリアルタイムキネマティック測位手法に変更して、予め規定された第1の時間間隔で斜面変位データを求めるとともに、第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔で斜面の変位を監視するようにした構成を開示している。特許文献2は、これにより、斜面の状態を精度よく把握できるばかりでなく、斜面の変位が大きい場合等の緊急事態に的確に対処することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−45158号公報
【特許文献2】特開2004−144623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1は、遠隔にある地盤監視局に計測値を送信し、当該地盤監視局にある解析処理装置によって解析処理を行う構成である。また、特許文献2は、監視センターに観測データを送り、当該監視センターにおいて斜面変位データを求める構成である。このように、特許文献1及び特許文献2では、現場で取得したデータを別の場所(地盤監視局又は監視センター)に転送しなければならないという煩わしさがあった。このため、現場で即座に結果を得ることができるというリアルタイムキネマティック方式の利点を活かすことができていない。
【0010】
また、特許文献1及び特許文献2の構成では、地盤監視局又は監視センターが必要であるため、高コストであるという問題がある。また、地盤監視局又は監視センターで解析を行う場合、当該解析は専門知識を有する専門家に依頼することになるため、この点でもコストがかさんでいた。
【0011】
更に、上記特許文献1及び特許文献2の構成は、スタティック測位かキネマティック測位かという二者択一的構成であり、例えばスタティック測位とキネマティック測位の中間的な解析結果を得たいと思っても、そのような解析結果を現場で取得することができなかった。
【0012】
また、特許文献1及び特許文献2の構成は上記のように二者択一的な構成であるため、スタティック測位とキネマティック測位の何れか一方の結果しか得ることができない。従って、例えばスタティック測位とキネマティック測位の解析結果を比較したいと思っても、何れか一方の解析結果しか得られていないために、上記のような比較を行うことはできなかった。
【0013】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、キネマティック方式とスタティック方式の両者の特徴を活かした基線解析を現場で実施可能なGNSS解析システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0014】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0015】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成のGNSS解析システムが提供される。即ち、このGNSS解析システムは、1つ以上のGNSS計測装置と、GNSS解析装置と、を備える。前記GNSS解析装置は、GNSS受信部と、他局観測データ取得部と、データ処理部と、時系列取得部と、を備える。前記GNSS受信部は、GNSS衛星からの電波を受信して自局観測データを取得する。前記他局観測データ取得部は、GNSS衛星からの電波を受信した前記GNSS計測装置から出力された観測データである他局観測データを取得する。前記データ処理部は、所定の繰り返し時間内に取得された前記自局観測データ及び他局観測データを処理して測位結果を得る。前記時系列取得部は、前記データ処理部における処理を、前記繰り返し時間ごとに繰り返し実行して、前記測位結果の時系列を取得する。そして、前記時系列取得部は、前記繰り返し時間を異ならせた複数の前記時系列を取得する。
【0016】
このように、GNSS計測装置が出力した観測データをGNSS解析装置に取得させ、当該GNSS解析装置において測位結果を求めることにより、前記観測データを外部の監視センター等に転送する必要が無く、現場で結果を得ることができる。そして、上記のように繰り返し時間を異ならせた複数の時系列を取得することにより、所望の精度又は即応性で測位結果を得ることができる。即ち、繰り返し時間を短く設定すれば、精度が低下する代わりに即応性が向上する。逆に、繰り返し時間を長く設定すれば、即応性が低下する代わりに精度が向上する。このように、特性の異なる複数の時系列を得ることができるので、当該時系列同士を相互に比較することが可能となり、測位結果を適切に評価することができる。
【0017】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成のGNSS解析装置が提供される。即ち、このGNSS解析装置は、GNSS受信部と、他局観測データ取得部と、データ処理部と、時系列取得部と、を備える。前記GNSS受信部は、GNSS衛星からの電波を受信して自局観測データを取得する。前記他局観測データ取得部は、GNSS衛星からの電波を受信したGNSS計測装置から出力された観測データである他局観測データを取得する。前記データ処理部は、所定の繰り返し時間内に取得された前記自局観測データ及び他局観測データを処理して測位結果を得る。前記時系列取得部は、前記データ処理部における処理を、前記繰り返し時間ごとに繰り返し実行して、前記測位結果の時系列を取得する。そして、前記時系列取得部は、前記繰り返し時間を異ならせた複数の前記時系列を取得する。
【0018】
このように、GNSS計測装置が出力した観測データをGNSS解析装置に取得させ、当該GNSS解析装置において測位結果を求めることにより、前記観測データを外部の監視センター等に転送する必要が無く、現場で結果を得ることができる。そして、上記のように繰り返し時間を異ならせた複数の時系列を取得することにより、所望の精度又は即応性で測位結果を得ることができる。即ち、繰り返し時間を短く設定すれば、精度が低下する代わりに即応性が向上する。逆に、繰り返し時間を長く設定すれば、即応性が低下する代わりに精度が向上する。このように、特性の異なる複数の時系列を得ることができるので、当該時系列同士を相互に比較することが可能となり、測位結果を適切に評価することができる。
【0019】
前記のGNSS解析装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記データ処理部は、所定のセッション処理時間内に取得された自局観測データ及び他局観測データに基づいてキネマティック方式による基線解析を複数回行い、当該複数回の基線解析の結果を平均化して前記測位結果を得るセッション処理を実行するセッション処理部を備える。前記時系列取得部は、前記セッション処理を前記セッション処理時間ごとに繰り返し実行することにより、前記測位結果の時系列を取得する。
【0020】
即ち、キネマティック方式による基線解析は、即答性に優れるものの、スタティック方式による基線解析に比べて精度が落ちるという特性がある。そこで、このキネマティック方式による基線解析の結果の平均を求める処理(上記セッション処理)を行うことにより、精度が低いというキネマティック方式の欠点を補うことができる。
【0021】
前記のGNSS解析装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記データ処理部は、所定のスタティック処理時間内に取得された自局観測データ及び他局観測データに基づいてスタティック方式による基線解析を行って測位結果を得るスタティック処理を実行するスタティック処理部を備える。前記時系列取得部は、前記スタティック処理を前記スタティック処理時間ごとに繰り返し実行することにより、前記測位結果の時系列を取得する。そして、前記スタティック処理時間は、前記セッション処理時間よりも長く設定されている。
【0022】
即ち、スタティック方式による基線解析は、精度が高いものの、即応性が劣るという特性がある。そこで、スタティック方式の解析周期よりも短い周期でセッション処理を行うように構成することにより、スタティック方式よりも即応性に優れた結果を得ることができる。また、セッション処理による解析結果では精度が不十分な場合には、スタティック方式による解析結果を参照することができる。
【0023】
前記のGNSS解析装置において、前記他局観測データ取得部は、無線通信によって前記他局観測データを取得することが好ましい。
【0024】
このように、GNSS解析装置とGNSS計測装置との間の通信を無線通信とすることにより、通信線の設置等が不要になるため、装置の設置が容易になる。
【0025】
前記のGNSS解析装置は、電力供給源として太陽電池を備えることが好ましい。
【0026】
このように、電源を太陽電池とすることにより、GNSS解析装置を設置する際に電源コード等を配線する煩わしさが無くなり、設置作業が簡単になる。また、仮に電池のみによって動作する構成とした場合は観測可能時間が限られてしまうが、上記のように太陽電池を採用して自立電源とすることにより、長期間にわたって観測を続けることができる。
【0027】
前記のGNSS解析装置は、前記時系列を出力する結果出力部を備えることが好ましい。
【0028】
これにより、解析結果をその場で確認することができる。
【0029】
前記のGNSS解析装置において、前記結果出力部は、前記時系列を表示可能な表示装置であることが好ましい。
【0030】
これにより、測位結果の変動(時系列)を視覚的に把握することができる。
【0031】
本発明の第3の観点によれば、以下のGNSS解析プログラムが提供される。即ち、このGNSS解析プログラムは、GNSS受信ステップと、他局観測データ取得ステップと、データ処理ステップと、時系列取得ループと、を含む処理を、コンピュータに実行させる。前記GNSS受信ステップでは、GNSS衛星からの電波を受信して自局観測データを取得する。前記他局観測データ取得ステップでは、GNSS衛星からの電波を受信したGNSS計測局から出力された観測データである他局観測データを取得する。前記データ処理ステップでは、所定の繰り返し時間内に取得された前記自局観測データ及び他局観測データを処理して測位結果を得る。前記時系列取得ループでは、前記データ処理ステップを前記繰り返し時間ごとに繰り返し実行して、前記測位結果の時系列を取得する。そして、前記時系列取得ループでは、前記繰り返し時間を異ならせた複数の前記時系列を取得する。
【0032】
このように、GNSS計測局が出力した観測データを取得して測位結果を求めることにより、前記観測データを外部の監視センター等に転送する必要が無く、現場で結果を得ることができる。そして、上記のように繰り返し時間を異ならせた複数の時系列を取得することにより、所望の精度又は即応性で解析結果を得ることができる。即ち、繰り返し時間を短く設定すれば、精度が低下する代わりに即応性が向上する。逆に、繰り返し時間を長く設定すれば、即応性が低下する代わりに精度が向上する。このように、特性の異なる複数の結果を得ることができるので、測位結果を適切に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る現地解析型GNSSシステムの概略的な構成を示す図。
【図2】現地解析型GNSSシステムの機能的な構成を示すブロック図。
【図3】基線解析処理の流れを示すフローチャート。
【図4】スタティック処理の流れを示すフローチャート。
【図5】セッション処理の流れを示すフローチャート。
【図6】スタティック解析を採用した従来のGNSSシステムの概略的な構成を示す図。
【図7】リアルタイムキネマティック解析を採用した従来のGNSSシステムの概略的な構成を示す図。
【図8】実験の際に計測局に与えた変位を示すグラフ。
【図9】10分セッション処理による測位結果の時系列を示すグラフ。
【図10】20分セッション処理による即位結果の時系列を示すグラフ。
【図11】30分セッション処理による即位結果の時系列を示すグラフ。
【図12】スタティック処理による即位結果の時系列を示すグラフ。
【図13】60分セッション処理による即位結果の時系列を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1には、本発明の1実施形態に係る現地解析型GNSSシステム(GNSS解析システム)の概略的な構成が示されている。この現地解析型GNSSシステムは、基準局(GNSS解析装置)2と、計測局(GNSS計測装置)3と、を備えている。
【0035】
計測局3は、GNSSアンテナ30でGNSS衛星からの電波を受信し、観測データを基準局2に対して送信するように構成されている。基準局2は、計測局3から送信されてきた観測データに基づいて、当該計測局3の相対位置(基線ベクトル)を求めるように構成されている。
【0036】
なお、図1等には計測局3を1つしか図示していないが、計測局3は複数存在していても良い。その場合、基準局2は、複数の計測局3それぞれについて基線ベクトルを求める。
【0037】
この現地解析型GNSSシステム1で、例えば地滑りの危険がある現場の地盤変位を監視する場合、地滑りが発生しそうな場所に計測局3を適宜設置する。また、基準局2は、地滑りの影響を受けない固定点に設置する。そして、基準局2において各計測局3の基線ベクトルの変化を監視することにより、地盤の変位を検出することができる。
【0038】
図1に示すように、基準局2は、GNSSアンテナ20と、太陽電池21と、筐体22と、がポール23に対して一体的に取り付けられた構成となっており、簡単に持ち運ぶことができるようになっている。計測局3も同様に、GNSSアンテナ30と、太陽電池31と、筐体32と、がポール33に対して一体的に取り付けられた構成となっており、簡単に持ち運ぶことができるようになっている。このように、基準局2及び計測局3は、ポールと一体的でコンパクトに構成されており、当該ポールを地面に立設するだけで簡単に現場に設置することができる。
【0039】
続いて、計測局3の詳細な構成について、図2を参照して説明する。
【0040】
計測局3が備えるGNSSアンテナ30は、GNSS衛星から送信されるGNSS電波を受信するように構成されている。なお、GNSSとしては、例えばGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)を用いることができる。
【0041】
また、計測局3が備える前記筐体32の内部には、GNSS受信部34と、無線送信部35と、が収容されている。
【0042】
GNSS受信部34は、GNSSアンテナ30で受信したGNSS電波に基づいて、観測データを取得するように構成されている。なお、本実施形態の現地解析型GNSSシステム1においては、計測局3の基線ベクトルを求める手法として、干渉測位法(具体的には、スタティック解析及びリアルタイムキネマティック解析)を採用している。この干渉測位法は公知であるので詳細な説明は省略するが、計測局3及び基準局2で受信されたGNSS電波の搬送波の位相の差に基づいて基線ベクトルを求める手法である。従って、上記観測データには、GNSSアンテナ30で受信されたGNSS電波の搬送波の位相に関する情報が含まれる。
【0043】
無線送信部35は、GNSS受信部34が取得した観測データを、基準局2に対して無線送信するように構成されている。このように、観測データの通信を無線で行うことにより、データ通信線の配索等が不要となるので、計測局3及び基準局2を簡単に設置することができる。
【0044】
なお、本実施形態のようなGNSS解析システムにおいては、監視対象にもよるが、計測局3と基準局2との距離は比較的近距離(200m〜300m程度)とされる場合が多い。そこで本実施形態の現地解析型GNSSシステムでは、無線送信部35を、簡易的な無線データ伝達経路である無線LANとし、かつ通信可能範囲を比較的近距離(200m〜300m程度)としている。このように、無線送信部35を、比較的近距離用の無線LANとすることにより、当該無線送信部35の部品コストを抑えるとともに、無線通信による消費電力を抑えることができる。
【0045】
計測局3が備える太陽電池31は、GNSS受信部34及び無線送信部35等に電力を供給するように構成されている。このように、計測局3の電源を太陽電池31とすることにより、電源コード等によって外部から電力を供給する必要がないため、当該電源コード等を配線する必要が無く、計測局3を簡単に設置することができる。また、太陽電池31によって発電することができるので、電源として電池のみを使用する場合と比べて、長時間の測定が可能となる。特に本実施形態では、無線送信部35を近距離用の無線LANとすることにより、無線通信による消費電力を抑えているので、太陽電池によって電力を十分に賄うことが可能となっている。
【0046】
次に、基準局2の詳細な構成について、同じく図2を参照して説明する。
【0047】
基準局2が備えるGNSSアンテナ20は、計測局3が備えるGNSSアンテナ30と同様に、GNSS衛星から送信されるGNSS電波を受信するように構成されている。また、基準局2が備える前記筐体22の内部には、GNSS受信部24と、無線受信部(他局観測データ取得部)25と、解析処理部26と、結果出力部27と、が収容されている。
【0048】
GNSS受信部24は、GNSSアンテナ20で受信したGNSS電波に基づいて、観測データを取得するように構成されている。上記観測データには、GNSSアンテナ20で受信されたGNSS電波の搬送波の位相に関する情報が含まれる。
【0049】
無線受信部25は、各基準局2の無線送信部35が無線送信した観測データを受信(取得)するように構成されている。なお、無線受信部25は、基準局2の無線送信部35と同じく無線LANとして構成されている。なお、以下の説明においては、基準局2自身がGNSS電波を受信して取得した観測データ(GNSS受信部24が取得した観測データ)を自局観測データと呼び、各基準局2から無線送信されてきた観測データ(無線受信部25が取得した観測データ)を他局観測データと呼ぶ。
【0050】
解析処理部26は、CPU、ROM、RAM等のハードウェアと、前記ROMに記憶されたGNSS解析プログラム等のソフトウェアと、から構成されており、前記ハードウェアとソフトウェアが協働して動作することにより、前記自局観測データ及び他局観測データに基づいた基線解析を行って各計測局3の基線ベクトルを求めるように構成されている。なお、本実施形態において、解析処理部26の前記CPUには、小型低消費電力タイプのCPUを採用している。
【0051】
本実施形態では、各計測局3における観測データが無線通信によって基準局2に集められているので、この解析処理部26において各計測局3の基線ベクトルを求めることができる。従って、基線解析を行うために、遠隔地にある監視センター等に観測データを転送する必要がないので、監視センター等が不要となる。
【0052】
結果出力部27は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置として構成されており、解析処理部26による基線解析の結果に応じて、各計測局3の変位を表示するように構成されている。このように、本実施形態の現地解析型GNSSシステムでは、基線解析の結果を現場で確認することができるので、例えば、地盤の変化を測定するための他の機器(伸縮計、傾斜計など)との比較をその場で行うことができる。即ち、現在の業務に合ったデータ回収が可能となる。
【0053】
基準局2が備える太陽電池21は、GNSS受信部24、無線受信部25、解析処理部26及び結果出力部27等に電力を供給するように構成されている。このように、基準局2の電源を太陽電池21とすることにより、電源コード等によって外部から電力を供給する必要がないため、当該電源コード等を配線する必要が無く、基準局2を簡単に設置することができる。また、太陽電池21によって発電することができるので、電源として電池のみを使用する場合と比べて、長時間の測定が可能となる。特に本実施形態では、解析処理部26に小型低消費電力タイプのCPUを採用することにより、当該解析処理部26における消費電力を抑えているので、太陽電池によって電力を十分に賄うことが可能となっている。
【0054】
次に、解析処理部26における処理内容について詳しく説明する。
【0055】
解析処理部26は、前記ハードウェア上で前記GNSS解析プログラムを実行することにより、図3のフローチャートに示す基線解析処理を行い、各計測局3の基線ベクトルを求める。前記GNSS解析プログラムは、GNSS受信ステップと、他局観測データ取得ステップと、データ処理ステップと、時系列取得ループと、を含んでいる。
【0056】
解析処理部26が実行する基線解析処理は、図3のフローに示すステップS101からステップS108を含む時系列取得ループがメインの処理となっている。このループ処理によって、測位結果の時系列(後述)を取得することができる。従って、解析処理部26は時系列取得部40として機能すると言うこともできる。
【0057】
時系列取得部40は、時系列取得ループ処理の最初に、GNSS解析プログラムのGNSS受信ステップと他局観測データ取得ステップを実行する(ステップS101)。GNSS受信ステップでは、解析処理部26は、GNSS受信部24が取得した自局観測データを取得する。他局観測データ取得ステップでは、解析処理部26は、無線受信部25が受信した各計測局3の観測データ(他局観測データ)を取得する。これにより、新しい観測データ(自局観測データ及び他局観測データ)が、順次蓄積される。
【0058】
本実施形態では、ステップS101において10分間分の観測データ(自局観測データ及び他局観測データ)を蓄積するように構成されている。この10分間分の観測データが蓄積されるまでの間、時系列取得ループはステップS101で待機状態となる。ステップS101で10分間分の観測データが取得されると、時系列取得部40は、ステップS102からステップS108までの処理を実行した後、ステップS101に戻る。即ち本実施形態においては、時系列取得ループを、10分周期で実行するように構成されている。
【0059】
時系列取得ループの内部において、解析処理部26は、自局観測データ及び他局観測データに基づいたデータ処理を行って測位結果を得るデータ処理ステップ(ステップS102,S104,S106,S108)を実行する。従って、解析処理部26は、データ処理部41としての機能も備えているということができる。
【0060】
データ処理部41としての解析処理部26は、セッション処理(後述)と、スタティック処理と、の2通りの処理方法で観測データ(自局観測データ及び他局観測データ)を処理して測位結果を得ることができるように構成されている。従って、データ処理部41としての解析処理部26は、セッション処理部29とスタティック処理部28とを兼ねていると言うことができる。
【0061】
なお、データ処理部41が実行する各データ処理ステップ(ステップS102,S104,S106,S108)は、必ずしも時系列取得ループの周期で(10分ごとに)実行される訳ではなく、それぞれ別々の周期で実行される。具体的には、ステップS102のセッション処理(10分セッション処理)は、10分周期で実行される。ステップS104のセッション処理(20分セッション処理)は、20分周期で実行される。ステップS106のセッション処理(30分セッション処理)は、30分周期で実行される。そして、ステップS108のスタティック処理は、60分周期で実行されるように構成されている。以下、図3のフローチャートに沿って説明する。
【0062】
ステップS101で10分間分の観測データが取得されると、セッション処理部29は、ステップS102のセッション処理ステップ(10分セッション処理)を実行する。従って、ステップS102のセッション処理は、時系列取得ループの周期で(即ち、10分ごとに)、繰り返し実行される。なお、セッション処理の繰り返し時間のことを、セッション処理時間と呼ぶ。従って、この10分セッション処理のセッション処理時間は10分であるということができる。
【0063】
続いて、時系列取得部40は、20分セッション処理の実行周期か否かの判定を行う(ステップS103)。具体的には、20分セッション処理は20分周期で実行されるので、直前の20分セッション処理から20分経過しているか否かを判定する。20分経過していた場合、セッション処理部29は、ステップS104のセッション処理ステップ(20分セッション処理)を実行する。一方、ステップS103で20分経過していないと判断された場合には、20分セッション処理を行わずにS105に進む。以上の処理により、20分セッション処理が20分ごとに繰り返し実行される。従って、この20分セッション処理のセッション処理時間は20分であるということができる。
【0064】
続いて、時系列取得部40は、30分セッション処理の実行周期か否かの判定を行う(ステップS105)。具体的には、30分セッション処理は30分周期で実行されるので、直前の30分セッション処理から30分経過しているか否かを判定する。30分経過していた場合、セッション処理部29は、ステップS106のセッション処理ステップ(30分セッション処理)を実行する。一方、ステップS105で30分経過していないと判断された場合には、30分セッション処理を行わずにS107に進む。以上の処理により、30分セッション処理が30分ごとに繰り返し実行される。従って、この30分セッション処理のセッション処理時間は30分であるということができる。
【0065】
続いて、時系列取得部40は、スタティック処理の実行周期か否かの判定を行う(ステップS107)。具体的には、スタティック処理は60分周期で実行されるので、直前のスタティック処理から60分経過しているか否かを判定する。60分経過していた場合、スタティック処理部28は、ステップS108のスタティック処理ステップを実行する。一方、ステップS107で60分経過していないと判断された場合には、スタティック処理を行わずにS101に戻る。以上の処理により、スタティック処理が60分ごとに繰り返し実行される。なお、このスタティック処理の繰り返し時間のことを、スタティック処理時間と呼ぶ。従って、本実施形態において、スタティック処理時間は60分であるということができる。
【0066】
上記のように、基線解析処理はステップS101からステップS108の間でループとなっており、自動的に繰り返し実行されるように構成されている。このように基線解析処理が自動化されていることにより、従来のスタティック解析のように専門家に依頼して基線解析を行わせる必要が無いので、人員を削減してコストを抑えることができる。
【0067】
続いて、スタティック処理部28におけるスタティック処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0068】
スタティック処理部28は、直近のスタティック処理時間の間に蓄積された観測データ(自局観測データ及び他局観測データ)に基づいて、スタティック方式による基線解析(スタティック解析)を行い、測位結果(基線ベクトル)を求める(ステップS201)ように構成されている。本実施形態においてはスタティック処理時間を60分としているから、スタティック処理部28は、直近60分の間に蓄積された観測データに基づいて、スタティック処理による測位結果を求める。
【0069】
続いて、スタティック処理部28は、前記ステップS201で求めた測位結果を結果出力部27に表示させる(ステップS202)。このように、スタティック解析による測位結果が求められると、即座に結果出力部27に表示されるので、最新の解析結果をその場で確認することができる。
【0070】
最後に、スタティック処理部28は、上記スタティック解析による測位結果を、適宜の記憶装置に記録(ステップS323)して、スタティック処理を終了する。
【0071】
そして前述のように、時系列取得部40は、上記スタティック処理を60分(スタティック処理時間)ごとに繰り返し実行するように構成されているので、スタティック処理による測位結果を60分ごとに取得することができる。即ち、スタティック処理による測位結果を、60分間隔の時系列で取得することができる。
【0072】
次に、セッション処理部29におけるセッション処理について、図5のフローチャートを参照して説明する。前述のように、本実施形態では、10分セッション処理を10分周期で、20分セッション処理を20分周期で、30分セッション処理を30分周期で、それぞれ繰り返し実行している。
【0073】
セッション処理部29は、まず、観測データ(自局観測データ及び他局観測データ)に基づいて、リアルタイムキネマティック方式による基線解析(キネマティック解析)を行い、各計測局3の基線ベクトルを求める(ステップS301)。
【0074】
なお、周知のように、リアルタイムキネマティック方式によれば、1秒間隔以下のリアルタイムで基線解析を行うことができる。即ち、1秒分の観測データがあれば、キネマティック解析を行うことができる。なお、1秒分の観測データを使って基線解析を行うことを、1秒エポックと呼ぶ。
【0075】
セッション処理部29は、直近のセッション処理時間の間に蓄積された観測データに基づいて、上記キネマティック解析を行う。具体的には、10分セッション処理の場合は、直近の10分の間に蓄積された観測データに基づいてキネマティック解析を行う。また20分セッション処理の場合は、直近の20分の間に蓄積された観測データに基づいてキネマティック解析が行を行う。30分セッション処理の場合は、直近の30分の間に蓄積された観測データに基づいてキネマティック解析を行う。
【0076】
キネマティック解析は1秒分の観測データがあれば実行することができるので、上記のように10分〜30分間分の観測データが蓄積されていれば、複数回のキネマティック解析を行うことができる。そこで、セッション処理部29は、ステップS301において、キネマティック解析を複数回実行するように構成されている。
【0077】
例えば、1秒エポックで10分セッション処理を実行した場合、ステップS301で600回のキネマティック解析が行われる。また1秒エポックで20分セッション処理を実行した場合、ステップS301で1200回のキネマティック解析が行われる。1秒エポックで30分セッション処理を実行した場合、ステップS301で1800回のキネマティック解析が行われる。
【0078】
なお、本実施形態のキネマティック解析では、上記のように予め蓄積された観測データに基づいて解析を行っているので、言葉本来の意味での「リアルタイム」キネマティック方式ではないという見方もできる。ただし、リアルタイム性という点を別にすれば、本実施形態のキネマティック解析は、従来のリアルタイムキネマティック方式と同じでものある。
【0079】
続いて、セッション処理部29は、上記複数回のキネマティック解析の結果を平均化する処理を実行する(ステップS302)。セッション処理部29は、この平均化された値を、セッション処理による測位結果として採用する。このように平均を求めることにより、精度が低いというキネマティック解析の欠点をある程度解消することができる。なお、平均化の処理は、複数回分のキネマティック解析の結果を単純に算術平均しても良いが、これに限らず、何らかの統計的な処理により平均的な値を求めることができれば良い。また、ステップS301で求めた複数回分の結果を全て平均化しなければならない訳ではなく、例えば残差が高いときに得られたデータを削除してから平均化の処理を行っても良い。
【0080】
次に、セッション処理部29は、セッション処理による測位結果(上記平均処理の結果)を結果出力部27に表示させる(ステップS303)。このように、各セッション処理で解析結果が求められると即座に結果出力部27に表示されるので、最新の解析結果をその場で確認することができる。
【0081】
最後に、セッション処理部29は、セッション処理による測位結果(上記平均処理の結果)を、適宜の記憶装置に記録(ステップS304)して、セッション処理を終了する。
【0082】
そして、解析処理部26は、上記セッション処理をセッション処理時間(10分、20分、又は30分)ごとに繰り返し実行するように構成されているので、当該セッション処理時間ごとにセッション処理による測位結果を取得することができる。即ち、10分セッション処理による測位結果を、10分間隔の時系列で取得することができる。また、20分セッション処理による測位結果を、20分間隔の時系列で取得することができる。また、30分セッション処理による測位結果を、30分間隔の時系列で取得することができる。
【0083】
ここで、10分セッション処理は、20分セッション処理に比べて繰り返し時間が短いので、その分迅速性に優れるが、平均を取る範囲が狭いので精度の面では劣ると考えられる。同様に、20分セッション処理は、30分セッション処理に比べて繰り返し時間が短いので、その分迅速性に優れるが、平均を取る範囲が狭いので精度の面では劣ると考えられる。また、スタティック処理の繰り返し時間(スタティック処理時間、本実施形態では60分)に比べて、各セッション処理の繰り返し時間(セッション処理時間、本実施形態では10分、20分及び30分)は短く設定されている。従って、スタティック処理は、各セッション処理に比べて迅速性では劣るものの、精度は高いと考えられる。
【0084】
そこで本願発明者らは、上記のような結果が実際に得られるかどうかを確認するため、本実施形態の現地解析型GNSSシステムを用いて変位を測定する実験を行った。以下、図8〜図13を参照して、実験結果について説明する。
【0085】
当該実験は、計測局3の変位に対して測位結果がどの程度追従するかを確認するため、計測局3の位置を変化させながら行った。具体的には、図8のグラフに示すように、計測局3を1時間おきに東西方向で所定距離だけ移動させて測位を行っている。
【0086】
図9には、10分セッション処理による測位結果の時系列がグラフで示されている。図9のグラフに示すように、10分セッション処理による測位結果は、単位時間あたりのプロット数は多い(迅速性が高い)ものの、正確な値から外れたプロットが多い(精度は低い)ことがわかる。
【0087】
一方、図12には、スタティック処理による測位結果の時系列がグラフで示されている。図12に示すように、スタティック処理による測位結果は、単位時間あたりのプロット数は少ない(迅速性は低い)ものの、ほぼ正確な測位結果を得ることができていることがわかる。
【0088】
また、図10及び図11に示すように、20分セッション処理及び30分セッション処理は、10分セッション処理とスタティック処理との中間的な結果であることがわかる。このように、繰り返し時間を異ならせて、測位結果の時系列を取得することにより、精度及び迅速性がそれぞれ異なる複数の結果を得ることができることが確認された。
【0089】
従って、例えば、地滑り初期の微細な地盤変位を検出するためには、スタティック処理や30分セッション処理等の高精度な測位結果を監視すれば良いし、急速な地盤変位を検出するためには、迅速性に優れる10分セッション処理や20分セッション処理による測位結果を監視すれば良い。このように、目的に応じて測位結果を柔軟に使いわけることができるので、キネマティック解析とスタティック解析の両者の特徴を活かすことができる。
【0090】
また、本実施形態の現地解析型GNSSシステムでは、キネマティック解析にセッション処理という手法を導入し、かつ、繰り返し時間を異ならせた複数のセッション処理を行うことにより、キネマティック解析とスタティック解析との中間的な性格の分析結果を得ることができている。例えば、10分セッション処理では精度が不十分であるが、スタティック解析ほどの精度は必要ないという場合には、20分セッション処理や30分セッション処理の結果を参照すれば良い。このように、キネマティック解析にセッション処理を導入することで、キネマティック解析の結果とスタティック解析との間にあった明確な違いが薄れ、キネマティック解析とスタティック解析をある程度統一的に取り扱うことが可能となっている。
【0091】
また、迅速性や精度が種々異なる測位結果を、結果出力部27に表示することができるので、現場において、他の機器(伸縮計、傾斜計など)の検出結果との比較を適切に行うことができる。
【0092】
また本実施形態の現地解析型GNSSシステムでは、10分セッション処理、20分セッション処理、30分セッション処理、スタティック処理のそれぞれについて、測位結果の時系列(履歴)を示すグラフを、結果出力部27に表示することができるように構成している。具体的には、図9から図12に示すような時系列グラフを、結果出力部27に表示させるように構成されている。
【0093】
即ち、変位の有無を判断するためには、測位結果が時間の経過とともにどのように変化しているかという時系列の情報が必要になるのであって、例えば最新の測位結果のみを結果出力部27に出力しても、それだけでは地滑りの有無等を判断することはできない。この点、上記のように測位結果の時系列をグラフとして表示することにより、変位の有無(例えば地滑りの有無)を視覚的に把握することができる。
【0094】
更に、本実施形態の現地解析型GNSSシステムでは、図3のフローで説明したように、10分セッション処理、20分セッション処理、30分セッション処理、及びスタティック処理を、1つのループの中で実行している。この構成により、10分セッション処理による測位結果の時系列、20分セッション処理による測位結果の時系列、30分セッション処理による測位結果の時系列、及びスタティック処理による測位結果の時系列は、同時並行的に取得される。この点、スタティック解析とキネマティック解析の何れか一方の解析結果しか取得しない特許文献1及び特許文献2の構成とは異なっている。
【0095】
そして、上記のように構成することにより、繰り返し時間が種々異なる時系列を現場で取得することができるので、当該時系列同士を相互に比較することが可能となる。例えば、結果出力部27に表示された図9〜図11の時系列グラフを比較することにより、各時系列の動きを相互に比較することができる。これにより、それぞれの時系列の精度と迅速性とのトレードオフを考慮しつつ、変位の有無等を総合的に判断することができる。
【0096】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0097】
上記実施形態では、10分、20分、30分のセッション処理に加えて、60分ごとにスタティック処理を実行している。しかしこの60分ごとのスタティック処理を省略し、代わりに60分セッション処理(60分のセッション処理時間ごとに繰り返し実行されるセッション処理)を行っても良い。
【0098】
即ち、60分ごとにスタティック処理を行う場合であっても、60分セッション処理を行う場合であっても、60分間の観測データの基づいて基線解析を行うという点では同じである。そして、セッション処理における平均化の処理において適切な処理を行えば、60分セッション処理と60分のスタティック処理とでは大差の無い解析結果を得ることができると考えられる。従って、60分セッション処理と60分のスタティック処理に本質的な相違は無いとも言える。このように、基線解析にスタティック方式を採用するか、それともキネマティック方式を採用するか、という解析手法の違いは、本願発明において本質的な問題ではない。
【0099】
60分セッション処理による測位結果の時系列を、図13のグラフに示す。図13と図12のグラフを比較するとわかるように、60分セッション処理でも、スタティック処理と遜色の無い測位結果を得ることができることができている。
【0100】
以上で説明したように、本実施形態の基準局2は、GNSS受信部24と、無線受信部25と、データ処理部41と、時系列取得部40と、を備えている。GNSS受信部24は、GNSS衛星からの電波を受信して自局観測データを取得する。無線受信部25は、GNSS衛星からの電波を受信した計測局3から出力された観測データである他局観測データを取得する。データ処理部41は、所定の繰り返し時間内に取得された自局観測データ及び他局観測データを処理して測位結果を得る(ステップS102,S104,S106,S108)。時系列取得部40は、データ処理ステップを、前記繰り返し周期ごとに繰り返し実行して、測位結果の時系列を取得する。そして、時系列取得部40は、繰り返し時間を異ならせた(10分、20分、30分、及び60分)複数の時系列を取得している。
【0101】
また、本実施形態の現地解析型GNSSシステムは、基準局2と、1つ以上の計測局3と、を備えている。
【0102】
また、本実施形態のGNSS解析プログラムは、GNSS受信ステップと、他局観測データ取得ステップと、データ処理ステップと、時系列取得ループと、を含む処理を、基準局2に実行させている。前記GNSS受信ステップでは、GNSS衛星からの電波を受信して自局観測データを取得する。前記他局観測データ取得ステップでは、GNSS衛星からの電波を受信した計測局から出力された観測データである他局観測データを取得する。前記データ処理ステップでは、所定の繰り返し時間内に取得された自局観測データ及び他局観測データを処理して測位結果を得る。前記時系列取得ループでは、前記データ処理ステップを前記繰り返し時間ごとに繰り返し実行して、前記測位結果の時系列を取得する。そして、前記時系列取得ループでは、前記繰り返し時間を異ならせた複数の前記時系列を取得する。
【0103】
このように、計測局3が出力した観測データを基準局2に取得させ、当該基準局2において測位結果を求めることにより、前記観測データを外部の監視センター等に転送する必要が無く、現場で結果を得ることができる。そして、上記のように繰り返し時間を異ならせた複数の時系列を取得することにより、所望の精度又は即応性で測位結果を得ることができる。即ち、繰り返し時間を短く設定すれば、精度が低下する代わりに即応性が向上する。逆に、繰り返し時間を長く設定すれば、即応性が低下する代わりに精度が向上する。このように、特性の異なる複数の時系列を得ることができるので、当該時系列同士を相互に比較することが可能となり、測位結果を適切に評価することができる。
【0104】
また、本実施形態の基準局2は、以下のように構成されている。即ち、データ処理部41は、所定のセッション処理時間内に取得された自局観測データ及び他局観測データに基づいてキネマティック方式による基線解析を複数回行い、当該複数回の基線解析の結果を平均化して前記測位結果を得るセッション処理を実行するセッション処理部29を備える。時系列取得部40は、セッション処理をセッション処理時間ごとに繰り返し実行することにより、前記測位結果の時系列を取得する。
【0105】
即ち、キネマティック方式による基線解析は、即答性に優れるものの、スタティック方式による基線解析に比べて精度が落ちるという特性がある。そこで、このキネマティック方式による基線解析の結果の平均を求める処理(上記セッション処理)を行うことにより、精度が低いというキネマティック方式の欠点を補うことができる。
【0106】
また、本実施形態の基準局2は、以下のように構成されている。即ち、データ処理部41は、所定のスタティック処理時間内に取得された自局観測データ及び他局観測データに基づいてスタティック方式による基線解析を行って測位結果を得るスタティック処理を実行するスタティック処理部28を備える。時系列取得部40は、スタティック処理を前記スタティック処理時間ごとに繰り返し実行することにより、前記測位結果の時系列を取得する。そして、前記スタティック処理時間は、前記セッション処理時間よりも長く設定されている。
【0107】
即ち、スタティック方式による基線解析は、精度が高いものの、即応性が劣るという特性がある。そこで、スタティック方式の解析周期よりも短い周期でセッション処理を行うように構成することにより、スタティック方式よりも即応性に優れた結果を得ることができる。また、セッション処理による解析結果では精度が不十分な場合には、スタティック方式による解析結果を参照することができる。
【0108】
また、本実施形態の基準局2において、無線受信部25は、無線通信によって他局観測データを取得している。
【0109】
このように、基準局2と計測局3との間の通信を無線通信とすることにより、通信線の設置等が不要になるため、装置の設置が容易になる。
【0110】
また、本実施形態の基準局2は、電力供給源として太陽電池21を備えている。
【0111】
このように、電源を太陽電池21とすることにより、基準局2を設置する際に電源コード等を配線する煩わしさが無くなり、設置作業が簡単になる。また、仮に電池のみによって動作する構成とした場合は観測可能時間が限られてしまうが、上記のように太陽電池21を採用して自立電源とすることにより、長期間にわたって観測を続けることができる。
【0112】
また、本実施形態の基準局2は、前記時系列を出力する結果出力部27を備えている。
【0113】
これにより、解析結果をその場で確認することができる。
【0114】
また、本実施形態の結果出力部27は、時系列を表示可能な表示装置である。
【0115】
これにより、測位結果の変動(時系列)を視覚的に把握することができる。
【0116】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0117】
解析処理部26はハードウェアとソフトウェアとから構成されるとして説明したが、その機能の全部又は一部が専用のハードウェアによって実現されていても良い。
【0118】
上記実施形態では、無線通信方法として無線LANを採用することとしたが、無線LAN以外の適宜の無線通信方法を用いることができる。もっとも、無線ではなく有線によって基準局2と計測局3とが通信する構成であってもよい。
【0119】
また、上記実施形態では、基準局2及び計測局3の電源は太陽電池であるとしたが、充電式電池を補助的に用いても良いことはもちろんである。もっとも、長期的な観測を行わないのであれば、太陽電池は省略して電池のみで電力を賄う構成としても良い。
【0120】
上記実施形態において、スタティック処理の繰り返し時間(第1時間)は60分であるとしたが、これに限定されない。また上記実施形態において、セッション処理の繰り返し時間(第2時間)は10分、20分及び30分であるとしたが、これに限定されない。また、セッション処理の種類の数は上記3種類として説明したが、これに限らず、1種類以上であれば良い。
【0121】
結果出力部27は液晶ディスプレイであるとして説明したが、これに限らず、例えばプリンタで結果を印刷して出力する構成であっても良い。
【0122】
上記実施形態では、固定点である基準局2において基線解析処理を行うものとしたが、この構成に代えて、1つ以上の計測局3それぞれにおいて基線解析を行っても良い。この場合、基準局がGNSS計測装置であり、各計測局がGNSS解析装置であると把握することができる。この場合であっても、キネマティック方式とスタティック方式の両者の特徴を活かした基線解析を現場で行うことができるという本発明の効果を発揮することができる。ただし、上記実施形態のように計測局3からの観測データを基準局2に集めて基線解析を実行するように構成すれば、複数の計測局3の変位を基準局2でまとめて確認することができるので特に好適である。
【0123】
本発明の構成は、地盤変位の監視に限らず、各種の測量に用いることができる。
【符号の説明】
【0124】
1 現地解析型GNSSシステム(GNSS解析システム)
2 基準局(GNSS解析装置)
3 計測局(GNSS計測装置)
21 太陽電池
24 GNSS受信部
25 無線受信部(他局観測データ取得部)
28 スタティック処理部
29 セッション処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、GNSS解析装置に関する。詳細には、GNSS解析装置によって、迅速性と高精度を兼ねた基線解析を現場で行うための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
地滑り等の災害が発生しそうな危険地帯においては、地盤や構造物のわずかな変位を監視するために地盤監視システムが設置される場合がある。近年、このような地盤監視システムに、GNSS(Global Navigation Satelite System:全地球航法衛星システム)を用いた変位監視が採用されている。
【0003】
従来、GNSSを用いた変位監視では、取得した観測データに基づいて公知のスタティック方式による基線解析を実行することにより、変位を得ていた。このスタティック方式の基線解析は、高精度(数mm程度の精度)ではあるものの、十分な精度を得るためにはGNSS電波の測定に時間が掛かる(通常は1時間以上)という欠点があった。また、図6に示すように、このスタティック方式では、一般的に、現場に設置された計測局80においてGNSS電波を受信して観測データを取得した後、遠隔地にある監視センター81に観測データを転送して、当該監視センター81内の解析パソコン82によって基線解析を実施している。この構成では、監視センター81に観測データを転送しなければならないため、解析結果を現場で直接確認することができない。
【0004】
一方で、変位監視には、公知のリアルタイムキネマティック方式が用いられる場合もある。このリアルタイムキネマティック方式では、図7に示すように、現場に設置された計測局90においてGNSS電波を受信し、その観測データを、同じく現場に設置された固定点である基準局91へ無線通信等によって送信する。基準局91は、受信した観測データの解析処理を行い、計測局の変位を求めて出力するように構成されている。この構成によれば、短時間の測定(数秒から数十分程度)を行うだけで、結果を現場で得ることができる。しかしながら、このリアルタイムキネマティック方式の精度は数cm程度であり、上記スタティック方式に比較すると精度が劣る。
【0005】
上記のように、スタティック方式とリアルタイムキネマティック方式は、一長一短の関係にある。この点、特許文献1及び特許文献2には、スタティック方式とリアルタイムキネマティック方式とを組み合わせて観測を行う構成が開示されている。
【0006】
特許文献1は、特に異常のない状態では、地盤変動が小さい状態にあるためスタティック解析処理を行い、地盤変位値が危険範囲と判断される規定の範囲を超えた時には、変化に即応できるようにするためにリアルタイムキネマティック解析処理を選択する構成を開示している。特許文献1は、これにより、微小な地盤変動から急速な地盤変動まで連続して監視ができ、早期の警戒や避難の判断が行えるシステムとすることができるとしている。
【0007】
また、特許文献2は、スタティック測位手法に応じて観測した斜面変位データが示す斜面変位が予め設定された変位閾値を越えると、スタティック測位手法からリアルタイムキネマティック測位手法に変更して、予め規定された第1の時間間隔で斜面変位データを求めるとともに、第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔で斜面の変位を監視するようにした構成を開示している。特許文献2は、これにより、斜面の状態を精度よく把握できるばかりでなく、斜面の変位が大きい場合等の緊急事態に的確に対処することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−45158号公報
【特許文献2】特開2004−144623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1は、遠隔にある地盤監視局に計測値を送信し、当該地盤監視局にある解析処理装置によって解析処理を行う構成である。また、特許文献2は、監視センターに観測データを送り、当該監視センターにおいて斜面変位データを求める構成である。このように、特許文献1及び特許文献2では、現場で取得したデータを別の場所(地盤監視局又は監視センター)に転送しなければならないという煩わしさがあった。このため、現場で即座に結果を得ることができるというリアルタイムキネマティック方式の利点を活かすことができていない。
【0010】
また、特許文献1及び特許文献2の構成では、地盤監視局又は監視センターが必要であるため、高コストであるという問題がある。また、地盤監視局又は監視センターで解析を行う場合、当該解析は専門知識を有する専門家に依頼することになるため、この点でもコストがかさんでいた。
【0011】
更に、上記特許文献1及び特許文献2の構成は、スタティック測位かキネマティック測位かという二者択一的構成であり、例えばスタティック測位とキネマティック測位の中間的な解析結果を得たいと思っても、そのような解析結果を現場で取得することができなかった。
【0012】
また、特許文献1及び特許文献2の構成は上記のように二者択一的な構成であるため、スタティック測位とキネマティック測位の何れか一方の結果しか得ることができない。従って、例えばスタティック測位とキネマティック測位の解析結果を比較したいと思っても、何れか一方の解析結果しか得られていないために、上記のような比較を行うことはできなかった。
【0013】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、キネマティック方式とスタティック方式の両者の特徴を活かした基線解析を現場で実施可能なGNSS解析システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0014】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0015】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成のGNSS解析システムが提供される。即ち、このGNSS解析システムは、1つ以上のGNSS計測装置と、GNSS解析装置と、を備える。前記GNSS解析装置は、GNSS受信部と、他局観測データ取得部と、データ処理部と、時系列取得部と、を備える。前記GNSS受信部は、GNSS衛星からの電波を受信して自局観測データを取得する。前記他局観測データ取得部は、GNSS衛星からの電波を受信した前記GNSS計測装置から出力された観測データである他局観測データを取得する。前記データ処理部は、所定の繰り返し時間内に取得された前記自局観測データ及び他局観測データを処理して測位結果を得る。前記時系列取得部は、前記データ処理部における処理を、前記繰り返し時間ごとに繰り返し実行して、前記測位結果の時系列を取得する。そして、前記時系列取得部は、前記繰り返し時間を異ならせた複数の前記時系列を取得する。
【0016】
このように、GNSS計測装置が出力した観測データをGNSS解析装置に取得させ、当該GNSS解析装置において測位結果を求めることにより、前記観測データを外部の監視センター等に転送する必要が無く、現場で結果を得ることができる。そして、上記のように繰り返し時間を異ならせた複数の時系列を取得することにより、所望の精度又は即応性で測位結果を得ることができる。即ち、繰り返し時間を短く設定すれば、精度が低下する代わりに即応性が向上する。逆に、繰り返し時間を長く設定すれば、即応性が低下する代わりに精度が向上する。このように、特性の異なる複数の時系列を得ることができるので、当該時系列同士を相互に比較することが可能となり、測位結果を適切に評価することができる。
【0017】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成のGNSS解析装置が提供される。即ち、このGNSS解析装置は、GNSS受信部と、他局観測データ取得部と、データ処理部と、時系列取得部と、を備える。前記GNSS受信部は、GNSS衛星からの電波を受信して自局観測データを取得する。前記他局観測データ取得部は、GNSS衛星からの電波を受信したGNSS計測装置から出力された観測データである他局観測データを取得する。前記データ処理部は、所定の繰り返し時間内に取得された前記自局観測データ及び他局観測データを処理して測位結果を得る。前記時系列取得部は、前記データ処理部における処理を、前記繰り返し時間ごとに繰り返し実行して、前記測位結果の時系列を取得する。そして、前記時系列取得部は、前記繰り返し時間を異ならせた複数の前記時系列を取得する。
【0018】
このように、GNSS計測装置が出力した観測データをGNSS解析装置に取得させ、当該GNSS解析装置において測位結果を求めることにより、前記観測データを外部の監視センター等に転送する必要が無く、現場で結果を得ることができる。そして、上記のように繰り返し時間を異ならせた複数の時系列を取得することにより、所望の精度又は即応性で測位結果を得ることができる。即ち、繰り返し時間を短く設定すれば、精度が低下する代わりに即応性が向上する。逆に、繰り返し時間を長く設定すれば、即応性が低下する代わりに精度が向上する。このように、特性の異なる複数の時系列を得ることができるので、当該時系列同士を相互に比較することが可能となり、測位結果を適切に評価することができる。
【0019】
前記のGNSS解析装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記データ処理部は、所定のセッション処理時間内に取得された自局観測データ及び他局観測データに基づいてキネマティック方式による基線解析を複数回行い、当該複数回の基線解析の結果を平均化して前記測位結果を得るセッション処理を実行するセッション処理部を備える。前記時系列取得部は、前記セッション処理を前記セッション処理時間ごとに繰り返し実行することにより、前記測位結果の時系列を取得する。
【0020】
即ち、キネマティック方式による基線解析は、即答性に優れるものの、スタティック方式による基線解析に比べて精度が落ちるという特性がある。そこで、このキネマティック方式による基線解析の結果の平均を求める処理(上記セッション処理)を行うことにより、精度が低いというキネマティック方式の欠点を補うことができる。
【0021】
前記のGNSS解析装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記データ処理部は、所定のスタティック処理時間内に取得された自局観測データ及び他局観測データに基づいてスタティック方式による基線解析を行って測位結果を得るスタティック処理を実行するスタティック処理部を備える。前記時系列取得部は、前記スタティック処理を前記スタティック処理時間ごとに繰り返し実行することにより、前記測位結果の時系列を取得する。そして、前記スタティック処理時間は、前記セッション処理時間よりも長く設定されている。
【0022】
即ち、スタティック方式による基線解析は、精度が高いものの、即応性が劣るという特性がある。そこで、スタティック方式の解析周期よりも短い周期でセッション処理を行うように構成することにより、スタティック方式よりも即応性に優れた結果を得ることができる。また、セッション処理による解析結果では精度が不十分な場合には、スタティック方式による解析結果を参照することができる。
【0023】
前記のGNSS解析装置において、前記他局観測データ取得部は、無線通信によって前記他局観測データを取得することが好ましい。
【0024】
このように、GNSS解析装置とGNSS計測装置との間の通信を無線通信とすることにより、通信線の設置等が不要になるため、装置の設置が容易になる。
【0025】
前記のGNSS解析装置は、電力供給源として太陽電池を備えることが好ましい。
【0026】
このように、電源を太陽電池とすることにより、GNSS解析装置を設置する際に電源コード等を配線する煩わしさが無くなり、設置作業が簡単になる。また、仮に電池のみによって動作する構成とした場合は観測可能時間が限られてしまうが、上記のように太陽電池を採用して自立電源とすることにより、長期間にわたって観測を続けることができる。
【0027】
前記のGNSS解析装置は、前記時系列を出力する結果出力部を備えることが好ましい。
【0028】
これにより、解析結果をその場で確認することができる。
【0029】
前記のGNSS解析装置において、前記結果出力部は、前記時系列を表示可能な表示装置であることが好ましい。
【0030】
これにより、測位結果の変動(時系列)を視覚的に把握することができる。
【0031】
本発明の第3の観点によれば、以下のGNSS解析プログラムが提供される。即ち、このGNSS解析プログラムは、GNSS受信ステップと、他局観測データ取得ステップと、データ処理ステップと、時系列取得ループと、を含む処理を、コンピュータに実行させる。前記GNSS受信ステップでは、GNSS衛星からの電波を受信して自局観測データを取得する。前記他局観測データ取得ステップでは、GNSS衛星からの電波を受信したGNSS計測局から出力された観測データである他局観測データを取得する。前記データ処理ステップでは、所定の繰り返し時間内に取得された前記自局観測データ及び他局観測データを処理して測位結果を得る。前記時系列取得ループでは、前記データ処理ステップを前記繰り返し時間ごとに繰り返し実行して、前記測位結果の時系列を取得する。そして、前記時系列取得ループでは、前記繰り返し時間を異ならせた複数の前記時系列を取得する。
【0032】
このように、GNSS計測局が出力した観測データを取得して測位結果を求めることにより、前記観測データを外部の監視センター等に転送する必要が無く、現場で結果を得ることができる。そして、上記のように繰り返し時間を異ならせた複数の時系列を取得することにより、所望の精度又は即応性で解析結果を得ることができる。即ち、繰り返し時間を短く設定すれば、精度が低下する代わりに即応性が向上する。逆に、繰り返し時間を長く設定すれば、即応性が低下する代わりに精度が向上する。このように、特性の異なる複数の結果を得ることができるので、測位結果を適切に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る現地解析型GNSSシステムの概略的な構成を示す図。
【図2】現地解析型GNSSシステムの機能的な構成を示すブロック図。
【図3】基線解析処理の流れを示すフローチャート。
【図4】スタティック処理の流れを示すフローチャート。
【図5】セッション処理の流れを示すフローチャート。
【図6】スタティック解析を採用した従来のGNSSシステムの概略的な構成を示す図。
【図7】リアルタイムキネマティック解析を採用した従来のGNSSシステムの概略的な構成を示す図。
【図8】実験の際に計測局に与えた変位を示すグラフ。
【図9】10分セッション処理による測位結果の時系列を示すグラフ。
【図10】20分セッション処理による即位結果の時系列を示すグラフ。
【図11】30分セッション処理による即位結果の時系列を示すグラフ。
【図12】スタティック処理による即位結果の時系列を示すグラフ。
【図13】60分セッション処理による即位結果の時系列を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1には、本発明の1実施形態に係る現地解析型GNSSシステム(GNSS解析システム)の概略的な構成が示されている。この現地解析型GNSSシステムは、基準局(GNSS解析装置)2と、計測局(GNSS計測装置)3と、を備えている。
【0035】
計測局3は、GNSSアンテナ30でGNSS衛星からの電波を受信し、観測データを基準局2に対して送信するように構成されている。基準局2は、計測局3から送信されてきた観測データに基づいて、当該計測局3の相対位置(基線ベクトル)を求めるように構成されている。
【0036】
なお、図1等には計測局3を1つしか図示していないが、計測局3は複数存在していても良い。その場合、基準局2は、複数の計測局3それぞれについて基線ベクトルを求める。
【0037】
この現地解析型GNSSシステム1で、例えば地滑りの危険がある現場の地盤変位を監視する場合、地滑りが発生しそうな場所に計測局3を適宜設置する。また、基準局2は、地滑りの影響を受けない固定点に設置する。そして、基準局2において各計測局3の基線ベクトルの変化を監視することにより、地盤の変位を検出することができる。
【0038】
図1に示すように、基準局2は、GNSSアンテナ20と、太陽電池21と、筐体22と、がポール23に対して一体的に取り付けられた構成となっており、簡単に持ち運ぶことができるようになっている。計測局3も同様に、GNSSアンテナ30と、太陽電池31と、筐体32と、がポール33に対して一体的に取り付けられた構成となっており、簡単に持ち運ぶことができるようになっている。このように、基準局2及び計測局3は、ポールと一体的でコンパクトに構成されており、当該ポールを地面に立設するだけで簡単に現場に設置することができる。
【0039】
続いて、計測局3の詳細な構成について、図2を参照して説明する。
【0040】
計測局3が備えるGNSSアンテナ30は、GNSS衛星から送信されるGNSS電波を受信するように構成されている。なお、GNSSとしては、例えばGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)を用いることができる。
【0041】
また、計測局3が備える前記筐体32の内部には、GNSS受信部34と、無線送信部35と、が収容されている。
【0042】
GNSS受信部34は、GNSSアンテナ30で受信したGNSS電波に基づいて、観測データを取得するように構成されている。なお、本実施形態の現地解析型GNSSシステム1においては、計測局3の基線ベクトルを求める手法として、干渉測位法(具体的には、スタティック解析及びリアルタイムキネマティック解析)を採用している。この干渉測位法は公知であるので詳細な説明は省略するが、計測局3及び基準局2で受信されたGNSS電波の搬送波の位相の差に基づいて基線ベクトルを求める手法である。従って、上記観測データには、GNSSアンテナ30で受信されたGNSS電波の搬送波の位相に関する情報が含まれる。
【0043】
無線送信部35は、GNSS受信部34が取得した観測データを、基準局2に対して無線送信するように構成されている。このように、観測データの通信を無線で行うことにより、データ通信線の配索等が不要となるので、計測局3及び基準局2を簡単に設置することができる。
【0044】
なお、本実施形態のようなGNSS解析システムにおいては、監視対象にもよるが、計測局3と基準局2との距離は比較的近距離(200m〜300m程度)とされる場合が多い。そこで本実施形態の現地解析型GNSSシステムでは、無線送信部35を、簡易的な無線データ伝達経路である無線LANとし、かつ通信可能範囲を比較的近距離(200m〜300m程度)としている。このように、無線送信部35を、比較的近距離用の無線LANとすることにより、当該無線送信部35の部品コストを抑えるとともに、無線通信による消費電力を抑えることができる。
【0045】
計測局3が備える太陽電池31は、GNSS受信部34及び無線送信部35等に電力を供給するように構成されている。このように、計測局3の電源を太陽電池31とすることにより、電源コード等によって外部から電力を供給する必要がないため、当該電源コード等を配線する必要が無く、計測局3を簡単に設置することができる。また、太陽電池31によって発電することができるので、電源として電池のみを使用する場合と比べて、長時間の測定が可能となる。特に本実施形態では、無線送信部35を近距離用の無線LANとすることにより、無線通信による消費電力を抑えているので、太陽電池によって電力を十分に賄うことが可能となっている。
【0046】
次に、基準局2の詳細な構成について、同じく図2を参照して説明する。
【0047】
基準局2が備えるGNSSアンテナ20は、計測局3が備えるGNSSアンテナ30と同様に、GNSS衛星から送信されるGNSS電波を受信するように構成されている。また、基準局2が備える前記筐体22の内部には、GNSS受信部24と、無線受信部(他局観測データ取得部)25と、解析処理部26と、結果出力部27と、が収容されている。
【0048】
GNSS受信部24は、GNSSアンテナ20で受信したGNSS電波に基づいて、観測データを取得するように構成されている。上記観測データには、GNSSアンテナ20で受信されたGNSS電波の搬送波の位相に関する情報が含まれる。
【0049】
無線受信部25は、各基準局2の無線送信部35が無線送信した観測データを受信(取得)するように構成されている。なお、無線受信部25は、基準局2の無線送信部35と同じく無線LANとして構成されている。なお、以下の説明においては、基準局2自身がGNSS電波を受信して取得した観測データ(GNSS受信部24が取得した観測データ)を自局観測データと呼び、各基準局2から無線送信されてきた観測データ(無線受信部25が取得した観測データ)を他局観測データと呼ぶ。
【0050】
解析処理部26は、CPU、ROM、RAM等のハードウェアと、前記ROMに記憶されたGNSS解析プログラム等のソフトウェアと、から構成されており、前記ハードウェアとソフトウェアが協働して動作することにより、前記自局観測データ及び他局観測データに基づいた基線解析を行って各計測局3の基線ベクトルを求めるように構成されている。なお、本実施形態において、解析処理部26の前記CPUには、小型低消費電力タイプのCPUを採用している。
【0051】
本実施形態では、各計測局3における観測データが無線通信によって基準局2に集められているので、この解析処理部26において各計測局3の基線ベクトルを求めることができる。従って、基線解析を行うために、遠隔地にある監視センター等に観測データを転送する必要がないので、監視センター等が不要となる。
【0052】
結果出力部27は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置として構成されており、解析処理部26による基線解析の結果に応じて、各計測局3の変位を表示するように構成されている。このように、本実施形態の現地解析型GNSSシステムでは、基線解析の結果を現場で確認することができるので、例えば、地盤の変化を測定するための他の機器(伸縮計、傾斜計など)との比較をその場で行うことができる。即ち、現在の業務に合ったデータ回収が可能となる。
【0053】
基準局2が備える太陽電池21は、GNSS受信部24、無線受信部25、解析処理部26及び結果出力部27等に電力を供給するように構成されている。このように、基準局2の電源を太陽電池21とすることにより、電源コード等によって外部から電力を供給する必要がないため、当該電源コード等を配線する必要が無く、基準局2を簡単に設置することができる。また、太陽電池21によって発電することができるので、電源として電池のみを使用する場合と比べて、長時間の測定が可能となる。特に本実施形態では、解析処理部26に小型低消費電力タイプのCPUを採用することにより、当該解析処理部26における消費電力を抑えているので、太陽電池によって電力を十分に賄うことが可能となっている。
【0054】
次に、解析処理部26における処理内容について詳しく説明する。
【0055】
解析処理部26は、前記ハードウェア上で前記GNSS解析プログラムを実行することにより、図3のフローチャートに示す基線解析処理を行い、各計測局3の基線ベクトルを求める。前記GNSS解析プログラムは、GNSS受信ステップと、他局観測データ取得ステップと、データ処理ステップと、時系列取得ループと、を含んでいる。
【0056】
解析処理部26が実行する基線解析処理は、図3のフローに示すステップS101からステップS108を含む時系列取得ループがメインの処理となっている。このループ処理によって、測位結果の時系列(後述)を取得することができる。従って、解析処理部26は時系列取得部40として機能すると言うこともできる。
【0057】
時系列取得部40は、時系列取得ループ処理の最初に、GNSS解析プログラムのGNSS受信ステップと他局観測データ取得ステップを実行する(ステップS101)。GNSS受信ステップでは、解析処理部26は、GNSS受信部24が取得した自局観測データを取得する。他局観測データ取得ステップでは、解析処理部26は、無線受信部25が受信した各計測局3の観測データ(他局観測データ)を取得する。これにより、新しい観測データ(自局観測データ及び他局観測データ)が、順次蓄積される。
【0058】
本実施形態では、ステップS101において10分間分の観測データ(自局観測データ及び他局観測データ)を蓄積するように構成されている。この10分間分の観測データが蓄積されるまでの間、時系列取得ループはステップS101で待機状態となる。ステップS101で10分間分の観測データが取得されると、時系列取得部40は、ステップS102からステップS108までの処理を実行した後、ステップS101に戻る。即ち本実施形態においては、時系列取得ループを、10分周期で実行するように構成されている。
【0059】
時系列取得ループの内部において、解析処理部26は、自局観測データ及び他局観測データに基づいたデータ処理を行って測位結果を得るデータ処理ステップ(ステップS102,S104,S106,S108)を実行する。従って、解析処理部26は、データ処理部41としての機能も備えているということができる。
【0060】
データ処理部41としての解析処理部26は、セッション処理(後述)と、スタティック処理と、の2通りの処理方法で観測データ(自局観測データ及び他局観測データ)を処理して測位結果を得ることができるように構成されている。従って、データ処理部41としての解析処理部26は、セッション処理部29とスタティック処理部28とを兼ねていると言うことができる。
【0061】
なお、データ処理部41が実行する各データ処理ステップ(ステップS102,S104,S106,S108)は、必ずしも時系列取得ループの周期で(10分ごとに)実行される訳ではなく、それぞれ別々の周期で実行される。具体的には、ステップS102のセッション処理(10分セッション処理)は、10分周期で実行される。ステップS104のセッション処理(20分セッション処理)は、20分周期で実行される。ステップS106のセッション処理(30分セッション処理)は、30分周期で実行される。そして、ステップS108のスタティック処理は、60分周期で実行されるように構成されている。以下、図3のフローチャートに沿って説明する。
【0062】
ステップS101で10分間分の観測データが取得されると、セッション処理部29は、ステップS102のセッション処理ステップ(10分セッション処理)を実行する。従って、ステップS102のセッション処理は、時系列取得ループの周期で(即ち、10分ごとに)、繰り返し実行される。なお、セッション処理の繰り返し時間のことを、セッション処理時間と呼ぶ。従って、この10分セッション処理のセッション処理時間は10分であるということができる。
【0063】
続いて、時系列取得部40は、20分セッション処理の実行周期か否かの判定を行う(ステップS103)。具体的には、20分セッション処理は20分周期で実行されるので、直前の20分セッション処理から20分経過しているか否かを判定する。20分経過していた場合、セッション処理部29は、ステップS104のセッション処理ステップ(20分セッション処理)を実行する。一方、ステップS103で20分経過していないと判断された場合には、20分セッション処理を行わずにS105に進む。以上の処理により、20分セッション処理が20分ごとに繰り返し実行される。従って、この20分セッション処理のセッション処理時間は20分であるということができる。
【0064】
続いて、時系列取得部40は、30分セッション処理の実行周期か否かの判定を行う(ステップS105)。具体的には、30分セッション処理は30分周期で実行されるので、直前の30分セッション処理から30分経過しているか否かを判定する。30分経過していた場合、セッション処理部29は、ステップS106のセッション処理ステップ(30分セッション処理)を実行する。一方、ステップS105で30分経過していないと判断された場合には、30分セッション処理を行わずにS107に進む。以上の処理により、30分セッション処理が30分ごとに繰り返し実行される。従って、この30分セッション処理のセッション処理時間は30分であるということができる。
【0065】
続いて、時系列取得部40は、スタティック処理の実行周期か否かの判定を行う(ステップS107)。具体的には、スタティック処理は60分周期で実行されるので、直前のスタティック処理から60分経過しているか否かを判定する。60分経過していた場合、スタティック処理部28は、ステップS108のスタティック処理ステップを実行する。一方、ステップS107で60分経過していないと判断された場合には、スタティック処理を行わずにS101に戻る。以上の処理により、スタティック処理が60分ごとに繰り返し実行される。なお、このスタティック処理の繰り返し時間のことを、スタティック処理時間と呼ぶ。従って、本実施形態において、スタティック処理時間は60分であるということができる。
【0066】
上記のように、基線解析処理はステップS101からステップS108の間でループとなっており、自動的に繰り返し実行されるように構成されている。このように基線解析処理が自動化されていることにより、従来のスタティック解析のように専門家に依頼して基線解析を行わせる必要が無いので、人員を削減してコストを抑えることができる。
【0067】
続いて、スタティック処理部28におけるスタティック処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0068】
スタティック処理部28は、直近のスタティック処理時間の間に蓄積された観測データ(自局観測データ及び他局観測データ)に基づいて、スタティック方式による基線解析(スタティック解析)を行い、測位結果(基線ベクトル)を求める(ステップS201)ように構成されている。本実施形態においてはスタティック処理時間を60分としているから、スタティック処理部28は、直近60分の間に蓄積された観測データに基づいて、スタティック処理による測位結果を求める。
【0069】
続いて、スタティック処理部28は、前記ステップS201で求めた測位結果を結果出力部27に表示させる(ステップS202)。このように、スタティック解析による測位結果が求められると、即座に結果出力部27に表示されるので、最新の解析結果をその場で確認することができる。
【0070】
最後に、スタティック処理部28は、上記スタティック解析による測位結果を、適宜の記憶装置に記録(ステップS323)して、スタティック処理を終了する。
【0071】
そして前述のように、時系列取得部40は、上記スタティック処理を60分(スタティック処理時間)ごとに繰り返し実行するように構成されているので、スタティック処理による測位結果を60分ごとに取得することができる。即ち、スタティック処理による測位結果を、60分間隔の時系列で取得することができる。
【0072】
次に、セッション処理部29におけるセッション処理について、図5のフローチャートを参照して説明する。前述のように、本実施形態では、10分セッション処理を10分周期で、20分セッション処理を20分周期で、30分セッション処理を30分周期で、それぞれ繰り返し実行している。
【0073】
セッション処理部29は、まず、観測データ(自局観測データ及び他局観測データ)に基づいて、リアルタイムキネマティック方式による基線解析(キネマティック解析)を行い、各計測局3の基線ベクトルを求める(ステップS301)。
【0074】
なお、周知のように、リアルタイムキネマティック方式によれば、1秒間隔以下のリアルタイムで基線解析を行うことができる。即ち、1秒分の観測データがあれば、キネマティック解析を行うことができる。なお、1秒分の観測データを使って基線解析を行うことを、1秒エポックと呼ぶ。
【0075】
セッション処理部29は、直近のセッション処理時間の間に蓄積された観測データに基づいて、上記キネマティック解析を行う。具体的には、10分セッション処理の場合は、直近の10分の間に蓄積された観測データに基づいてキネマティック解析を行う。また20分セッション処理の場合は、直近の20分の間に蓄積された観測データに基づいてキネマティック解析が行を行う。30分セッション処理の場合は、直近の30分の間に蓄積された観測データに基づいてキネマティック解析を行う。
【0076】
キネマティック解析は1秒分の観測データがあれば実行することができるので、上記のように10分〜30分間分の観測データが蓄積されていれば、複数回のキネマティック解析を行うことができる。そこで、セッション処理部29は、ステップS301において、キネマティック解析を複数回実行するように構成されている。
【0077】
例えば、1秒エポックで10分セッション処理を実行した場合、ステップS301で600回のキネマティック解析が行われる。また1秒エポックで20分セッション処理を実行した場合、ステップS301で1200回のキネマティック解析が行われる。1秒エポックで30分セッション処理を実行した場合、ステップS301で1800回のキネマティック解析が行われる。
【0078】
なお、本実施形態のキネマティック解析では、上記のように予め蓄積された観測データに基づいて解析を行っているので、言葉本来の意味での「リアルタイム」キネマティック方式ではないという見方もできる。ただし、リアルタイム性という点を別にすれば、本実施形態のキネマティック解析は、従来のリアルタイムキネマティック方式と同じでものある。
【0079】
続いて、セッション処理部29は、上記複数回のキネマティック解析の結果を平均化する処理を実行する(ステップS302)。セッション処理部29は、この平均化された値を、セッション処理による測位結果として採用する。このように平均を求めることにより、精度が低いというキネマティック解析の欠点をある程度解消することができる。なお、平均化の処理は、複数回分のキネマティック解析の結果を単純に算術平均しても良いが、これに限らず、何らかの統計的な処理により平均的な値を求めることができれば良い。また、ステップS301で求めた複数回分の結果を全て平均化しなければならない訳ではなく、例えば残差が高いときに得られたデータを削除してから平均化の処理を行っても良い。
【0080】
次に、セッション処理部29は、セッション処理による測位結果(上記平均処理の結果)を結果出力部27に表示させる(ステップS303)。このように、各セッション処理で解析結果が求められると即座に結果出力部27に表示されるので、最新の解析結果をその場で確認することができる。
【0081】
最後に、セッション処理部29は、セッション処理による測位結果(上記平均処理の結果)を、適宜の記憶装置に記録(ステップS304)して、セッション処理を終了する。
【0082】
そして、解析処理部26は、上記セッション処理をセッション処理時間(10分、20分、又は30分)ごとに繰り返し実行するように構成されているので、当該セッション処理時間ごとにセッション処理による測位結果を取得することができる。即ち、10分セッション処理による測位結果を、10分間隔の時系列で取得することができる。また、20分セッション処理による測位結果を、20分間隔の時系列で取得することができる。また、30分セッション処理による測位結果を、30分間隔の時系列で取得することができる。
【0083】
ここで、10分セッション処理は、20分セッション処理に比べて繰り返し時間が短いので、その分迅速性に優れるが、平均を取る範囲が狭いので精度の面では劣ると考えられる。同様に、20分セッション処理は、30分セッション処理に比べて繰り返し時間が短いので、その分迅速性に優れるが、平均を取る範囲が狭いので精度の面では劣ると考えられる。また、スタティック処理の繰り返し時間(スタティック処理時間、本実施形態では60分)に比べて、各セッション処理の繰り返し時間(セッション処理時間、本実施形態では10分、20分及び30分)は短く設定されている。従って、スタティック処理は、各セッション処理に比べて迅速性では劣るものの、精度は高いと考えられる。
【0084】
そこで本願発明者らは、上記のような結果が実際に得られるかどうかを確認するため、本実施形態の現地解析型GNSSシステムを用いて変位を測定する実験を行った。以下、図8〜図13を参照して、実験結果について説明する。
【0085】
当該実験は、計測局3の変位に対して測位結果がどの程度追従するかを確認するため、計測局3の位置を変化させながら行った。具体的には、図8のグラフに示すように、計測局3を1時間おきに東西方向で所定距離だけ移動させて測位を行っている。
【0086】
図9には、10分セッション処理による測位結果の時系列がグラフで示されている。図9のグラフに示すように、10分セッション処理による測位結果は、単位時間あたりのプロット数は多い(迅速性が高い)ものの、正確な値から外れたプロットが多い(精度は低い)ことがわかる。
【0087】
一方、図12には、スタティック処理による測位結果の時系列がグラフで示されている。図12に示すように、スタティック処理による測位結果は、単位時間あたりのプロット数は少ない(迅速性は低い)ものの、ほぼ正確な測位結果を得ることができていることがわかる。
【0088】
また、図10及び図11に示すように、20分セッション処理及び30分セッション処理は、10分セッション処理とスタティック処理との中間的な結果であることがわかる。このように、繰り返し時間を異ならせて、測位結果の時系列を取得することにより、精度及び迅速性がそれぞれ異なる複数の結果を得ることができることが確認された。
【0089】
従って、例えば、地滑り初期の微細な地盤変位を検出するためには、スタティック処理や30分セッション処理等の高精度な測位結果を監視すれば良いし、急速な地盤変位を検出するためには、迅速性に優れる10分セッション処理や20分セッション処理による測位結果を監視すれば良い。このように、目的に応じて測位結果を柔軟に使いわけることができるので、キネマティック解析とスタティック解析の両者の特徴を活かすことができる。
【0090】
また、本実施形態の現地解析型GNSSシステムでは、キネマティック解析にセッション処理という手法を導入し、かつ、繰り返し時間を異ならせた複数のセッション処理を行うことにより、キネマティック解析とスタティック解析との中間的な性格の分析結果を得ることができている。例えば、10分セッション処理では精度が不十分であるが、スタティック解析ほどの精度は必要ないという場合には、20分セッション処理や30分セッション処理の結果を参照すれば良い。このように、キネマティック解析にセッション処理を導入することで、キネマティック解析の結果とスタティック解析との間にあった明確な違いが薄れ、キネマティック解析とスタティック解析をある程度統一的に取り扱うことが可能となっている。
【0091】
また、迅速性や精度が種々異なる測位結果を、結果出力部27に表示することができるので、現場において、他の機器(伸縮計、傾斜計など)の検出結果との比較を適切に行うことができる。
【0092】
また本実施形態の現地解析型GNSSシステムでは、10分セッション処理、20分セッション処理、30分セッション処理、スタティック処理のそれぞれについて、測位結果の時系列(履歴)を示すグラフを、結果出力部27に表示することができるように構成している。具体的には、図9から図12に示すような時系列グラフを、結果出力部27に表示させるように構成されている。
【0093】
即ち、変位の有無を判断するためには、測位結果が時間の経過とともにどのように変化しているかという時系列の情報が必要になるのであって、例えば最新の測位結果のみを結果出力部27に出力しても、それだけでは地滑りの有無等を判断することはできない。この点、上記のように測位結果の時系列をグラフとして表示することにより、変位の有無(例えば地滑りの有無)を視覚的に把握することができる。
【0094】
更に、本実施形態の現地解析型GNSSシステムでは、図3のフローで説明したように、10分セッション処理、20分セッション処理、30分セッション処理、及びスタティック処理を、1つのループの中で実行している。この構成により、10分セッション処理による測位結果の時系列、20分セッション処理による測位結果の時系列、30分セッション処理による測位結果の時系列、及びスタティック処理による測位結果の時系列は、同時並行的に取得される。この点、スタティック解析とキネマティック解析の何れか一方の解析結果しか取得しない特許文献1及び特許文献2の構成とは異なっている。
【0095】
そして、上記のように構成することにより、繰り返し時間が種々異なる時系列を現場で取得することができるので、当該時系列同士を相互に比較することが可能となる。例えば、結果出力部27に表示された図9〜図11の時系列グラフを比較することにより、各時系列の動きを相互に比較することができる。これにより、それぞれの時系列の精度と迅速性とのトレードオフを考慮しつつ、変位の有無等を総合的に判断することができる。
【0096】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0097】
上記実施形態では、10分、20分、30分のセッション処理に加えて、60分ごとにスタティック処理を実行している。しかしこの60分ごとのスタティック処理を省略し、代わりに60分セッション処理(60分のセッション処理時間ごとに繰り返し実行されるセッション処理)を行っても良い。
【0098】
即ち、60分ごとにスタティック処理を行う場合であっても、60分セッション処理を行う場合であっても、60分間の観測データの基づいて基線解析を行うという点では同じである。そして、セッション処理における平均化の処理において適切な処理を行えば、60分セッション処理と60分のスタティック処理とでは大差の無い解析結果を得ることができると考えられる。従って、60分セッション処理と60分のスタティック処理に本質的な相違は無いとも言える。このように、基線解析にスタティック方式を採用するか、それともキネマティック方式を採用するか、という解析手法の違いは、本願発明において本質的な問題ではない。
【0099】
60分セッション処理による測位結果の時系列を、図13のグラフに示す。図13と図12のグラフを比較するとわかるように、60分セッション処理でも、スタティック処理と遜色の無い測位結果を得ることができることができている。
【0100】
以上で説明したように、本実施形態の基準局2は、GNSS受信部24と、無線受信部25と、データ処理部41と、時系列取得部40と、を備えている。GNSS受信部24は、GNSS衛星からの電波を受信して自局観測データを取得する。無線受信部25は、GNSS衛星からの電波を受信した計測局3から出力された観測データである他局観測データを取得する。データ処理部41は、所定の繰り返し時間内に取得された自局観測データ及び他局観測データを処理して測位結果を得る(ステップS102,S104,S106,S108)。時系列取得部40は、データ処理ステップを、前記繰り返し周期ごとに繰り返し実行して、測位結果の時系列を取得する。そして、時系列取得部40は、繰り返し時間を異ならせた(10分、20分、30分、及び60分)複数の時系列を取得している。
【0101】
また、本実施形態の現地解析型GNSSシステムは、基準局2と、1つ以上の計測局3と、を備えている。
【0102】
また、本実施形態のGNSS解析プログラムは、GNSS受信ステップと、他局観測データ取得ステップと、データ処理ステップと、時系列取得ループと、を含む処理を、基準局2に実行させている。前記GNSS受信ステップでは、GNSS衛星からの電波を受信して自局観測データを取得する。前記他局観測データ取得ステップでは、GNSS衛星からの電波を受信した計測局から出力された観測データである他局観測データを取得する。前記データ処理ステップでは、所定の繰り返し時間内に取得された自局観測データ及び他局観測データを処理して測位結果を得る。前記時系列取得ループでは、前記データ処理ステップを前記繰り返し時間ごとに繰り返し実行して、前記測位結果の時系列を取得する。そして、前記時系列取得ループでは、前記繰り返し時間を異ならせた複数の前記時系列を取得する。
【0103】
このように、計測局3が出力した観測データを基準局2に取得させ、当該基準局2において測位結果を求めることにより、前記観測データを外部の監視センター等に転送する必要が無く、現場で結果を得ることができる。そして、上記のように繰り返し時間を異ならせた複数の時系列を取得することにより、所望の精度又は即応性で測位結果を得ることができる。即ち、繰り返し時間を短く設定すれば、精度が低下する代わりに即応性が向上する。逆に、繰り返し時間を長く設定すれば、即応性が低下する代わりに精度が向上する。このように、特性の異なる複数の時系列を得ることができるので、当該時系列同士を相互に比較することが可能となり、測位結果を適切に評価することができる。
【0104】
また、本実施形態の基準局2は、以下のように構成されている。即ち、データ処理部41は、所定のセッション処理時間内に取得された自局観測データ及び他局観測データに基づいてキネマティック方式による基線解析を複数回行い、当該複数回の基線解析の結果を平均化して前記測位結果を得るセッション処理を実行するセッション処理部29を備える。時系列取得部40は、セッション処理をセッション処理時間ごとに繰り返し実行することにより、前記測位結果の時系列を取得する。
【0105】
即ち、キネマティック方式による基線解析は、即答性に優れるものの、スタティック方式による基線解析に比べて精度が落ちるという特性がある。そこで、このキネマティック方式による基線解析の結果の平均を求める処理(上記セッション処理)を行うことにより、精度が低いというキネマティック方式の欠点を補うことができる。
【0106】
また、本実施形態の基準局2は、以下のように構成されている。即ち、データ処理部41は、所定のスタティック処理時間内に取得された自局観測データ及び他局観測データに基づいてスタティック方式による基線解析を行って測位結果を得るスタティック処理を実行するスタティック処理部28を備える。時系列取得部40は、スタティック処理を前記スタティック処理時間ごとに繰り返し実行することにより、前記測位結果の時系列を取得する。そして、前記スタティック処理時間は、前記セッション処理時間よりも長く設定されている。
【0107】
即ち、スタティック方式による基線解析は、精度が高いものの、即応性が劣るという特性がある。そこで、スタティック方式の解析周期よりも短い周期でセッション処理を行うように構成することにより、スタティック方式よりも即応性に優れた結果を得ることができる。また、セッション処理による解析結果では精度が不十分な場合には、スタティック方式による解析結果を参照することができる。
【0108】
また、本実施形態の基準局2において、無線受信部25は、無線通信によって他局観測データを取得している。
【0109】
このように、基準局2と計測局3との間の通信を無線通信とすることにより、通信線の設置等が不要になるため、装置の設置が容易になる。
【0110】
また、本実施形態の基準局2は、電力供給源として太陽電池21を備えている。
【0111】
このように、電源を太陽電池21とすることにより、基準局2を設置する際に電源コード等を配線する煩わしさが無くなり、設置作業が簡単になる。また、仮に電池のみによって動作する構成とした場合は観測可能時間が限られてしまうが、上記のように太陽電池21を採用して自立電源とすることにより、長期間にわたって観測を続けることができる。
【0112】
また、本実施形態の基準局2は、前記時系列を出力する結果出力部27を備えている。
【0113】
これにより、解析結果をその場で確認することができる。
【0114】
また、本実施形態の結果出力部27は、時系列を表示可能な表示装置である。
【0115】
これにより、測位結果の変動(時系列)を視覚的に把握することができる。
【0116】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0117】
解析処理部26はハードウェアとソフトウェアとから構成されるとして説明したが、その機能の全部又は一部が専用のハードウェアによって実現されていても良い。
【0118】
上記実施形態では、無線通信方法として無線LANを採用することとしたが、無線LAN以外の適宜の無線通信方法を用いることができる。もっとも、無線ではなく有線によって基準局2と計測局3とが通信する構成であってもよい。
【0119】
また、上記実施形態では、基準局2及び計測局3の電源は太陽電池であるとしたが、充電式電池を補助的に用いても良いことはもちろんである。もっとも、長期的な観測を行わないのであれば、太陽電池は省略して電池のみで電力を賄う構成としても良い。
【0120】
上記実施形態において、スタティック処理の繰り返し時間(第1時間)は60分であるとしたが、これに限定されない。また上記実施形態において、セッション処理の繰り返し時間(第2時間)は10分、20分及び30分であるとしたが、これに限定されない。また、セッション処理の種類の数は上記3種類として説明したが、これに限らず、1種類以上であれば良い。
【0121】
結果出力部27は液晶ディスプレイであるとして説明したが、これに限らず、例えばプリンタで結果を印刷して出力する構成であっても良い。
【0122】
上記実施形態では、固定点である基準局2において基線解析処理を行うものとしたが、この構成に代えて、1つ以上の計測局3それぞれにおいて基線解析を行っても良い。この場合、基準局がGNSS計測装置であり、各計測局がGNSS解析装置であると把握することができる。この場合であっても、キネマティック方式とスタティック方式の両者の特徴を活かした基線解析を現場で行うことができるという本発明の効果を発揮することができる。ただし、上記実施形態のように計測局3からの観測データを基準局2に集めて基線解析を実行するように構成すれば、複数の計測局3の変位を基準局2でまとめて確認することができるので特に好適である。
【0123】
本発明の構成は、地盤変位の監視に限らず、各種の測量に用いることができる。
【符号の説明】
【0124】
1 現地解析型GNSSシステム(GNSS解析システム)
2 基準局(GNSS解析装置)
3 計測局(GNSS計測装置)
21 太陽電池
24 GNSS受信部
25 無線受信部(他局観測データ取得部)
28 スタティック処理部
29 セッション処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のGNSS計測装置と、
GNSS解析装置と、
を備えたGNSS解析システムであって、
前記GNSS解析装置は、
GNSS衛星からの電波を受信して自局観測データを取得するGNSS受信部と、
GNSS衛星からの電波を受信した前記GNSS計測装置から出力された観測データである他局観測データを取得する他局観測データ取得部と、
所定の繰り返し時間内に取得された前記自局観測データ及び他局観測データを処理して測位結果を得るデータ処理部と、
前記データ処理部における処理を、前記繰り返し時間ごとに繰り返し実行して、前記測位結果の時系列を取得する時系列取得部と、
を備え、
前記時系列取得部は、前記繰り返し時間を異ならせた複数の前記時系列を取得することを特徴とするGNSS解析システム。
【請求項2】
GNSS衛星からの電波を受信して自局観測データを取得するGNSS受信部と、
GNSS衛星からの電波を受信したGNSS計測装置から出力された観測データである他局観測データを取得する他局観測データ取得部と、
所定の繰り返し時間内に取得された前記自局観測データ及び他局観測データを処理して測位結果を得るデータ処理部と、
前記データ処理部における処理を、前記繰り返し時間ごとに繰り返し実行して、前記測位結果の時系列を取得する時系列取得部と、
を備え、
前記時系列取得部は、前記繰り返し時間を異ならせた複数の前記時系列を取得することを特徴とするGNSS解析装置。
【請求項3】
請求項2に記載のGNSS解析装置であって、
前記データ処理部は、所定のセッション処理時間内に取得された自局観測データ及び他局観測データに基づいてキネマティック方式による基線解析を複数回行い、当該複数回の基線解析の結果を平均化して前記測位結果を得るセッション処理を実行するセッション処理部を備え、
前記時系列取得部は、前記セッション処理を前記セッション処理時間ごとに繰り返し実行することにより、前記測位結果の時系列を取得することを特徴とするGNSS解析装置。
【請求項4】
請求項3に記載のGNSS解析装置であって、
前記データ処理部は、所定のスタティック処理時間内に取得された自局観測データ及び他局観測データに基づいてスタティック方式による基線解析を行って測位結果を得るスタティック処理を実行するスタティック処理部を備え、
前記時系列取得部は、前記スタティック処理を前記スタティック処理時間ごとに繰り返し実行することにより、前記測位結果の時系列を取得し、
前記スタティック処理時間は、前記セッション処理時間よりも長く設定されていることを特徴とするGNSS解析装置。
【請求項5】
請求項2から4までの何れか一項に記載のGNSS解析装置であって、
前記他局観測データ取得部は、無線通信によって前記他局観測データを取得することを特徴とするGNSS解析装置。
【請求項6】
請求項2から5までの何れか一項に記載のGNSS解析装置であって、
電力供給源として太陽電池を備えることを特徴とするGNSS解析装置。
【請求項7】
請求項2から6までの何れか一項に記載のGNSS解析装置であって、
前記時系列を出力する結果出力部を備えることを特徴とするGNSS解析装置。
【請求項8】
請求項7に記載のGNSS解析装置であって、
前記結果出力部は、前記時系列を表示可能な表示装置であることを特徴とするGNSS解析装置。
【請求項9】
GNSS衛星からの電波を受信して自局観測データを取得するGNSS受信ステップと、
GNSS衛星からの電波を受信したGNSS計測装置から出力された観測データである他局観測データを取得する他局観測データ取得ステップと、
所定の繰り返し時間内に取得された前記自局観測データ及び他局観測データを処理して測位結果を得るデータ処理ステップと、
前記データ処理ステップを前記繰り返し時間ごとに繰り返し実行して、前記測位結果の時系列を取得する時系列取得ループと、
を含む処理をコンピュータに実行させ、
前記時系列取得ループでは、前記繰り返し時間を異ならせた複数の前記時系列を取得することを特徴とするGNSS解析プログラム。
【請求項1】
1つ以上のGNSS計測装置と、
GNSS解析装置と、
を備えたGNSS解析システムであって、
前記GNSS解析装置は、
GNSS衛星からの電波を受信して自局観測データを取得するGNSS受信部と、
GNSS衛星からの電波を受信した前記GNSS計測装置から出力された観測データである他局観測データを取得する他局観測データ取得部と、
所定の繰り返し時間内に取得された前記自局観測データ及び他局観測データを処理して測位結果を得るデータ処理部と、
前記データ処理部における処理を、前記繰り返し時間ごとに繰り返し実行して、前記測位結果の時系列を取得する時系列取得部と、
を備え、
前記時系列取得部は、前記繰り返し時間を異ならせた複数の前記時系列を取得することを特徴とするGNSS解析システム。
【請求項2】
GNSS衛星からの電波を受信して自局観測データを取得するGNSS受信部と、
GNSS衛星からの電波を受信したGNSS計測装置から出力された観測データである他局観測データを取得する他局観測データ取得部と、
所定の繰り返し時間内に取得された前記自局観測データ及び他局観測データを処理して測位結果を得るデータ処理部と、
前記データ処理部における処理を、前記繰り返し時間ごとに繰り返し実行して、前記測位結果の時系列を取得する時系列取得部と、
を備え、
前記時系列取得部は、前記繰り返し時間を異ならせた複数の前記時系列を取得することを特徴とするGNSS解析装置。
【請求項3】
請求項2に記載のGNSS解析装置であって、
前記データ処理部は、所定のセッション処理時間内に取得された自局観測データ及び他局観測データに基づいてキネマティック方式による基線解析を複数回行い、当該複数回の基線解析の結果を平均化して前記測位結果を得るセッション処理を実行するセッション処理部を備え、
前記時系列取得部は、前記セッション処理を前記セッション処理時間ごとに繰り返し実行することにより、前記測位結果の時系列を取得することを特徴とするGNSS解析装置。
【請求項4】
請求項3に記載のGNSS解析装置であって、
前記データ処理部は、所定のスタティック処理時間内に取得された自局観測データ及び他局観測データに基づいてスタティック方式による基線解析を行って測位結果を得るスタティック処理を実行するスタティック処理部を備え、
前記時系列取得部は、前記スタティック処理を前記スタティック処理時間ごとに繰り返し実行することにより、前記測位結果の時系列を取得し、
前記スタティック処理時間は、前記セッション処理時間よりも長く設定されていることを特徴とするGNSS解析装置。
【請求項5】
請求項2から4までの何れか一項に記載のGNSS解析装置であって、
前記他局観測データ取得部は、無線通信によって前記他局観測データを取得することを特徴とするGNSS解析装置。
【請求項6】
請求項2から5までの何れか一項に記載のGNSS解析装置であって、
電力供給源として太陽電池を備えることを特徴とするGNSS解析装置。
【請求項7】
請求項2から6までの何れか一項に記載のGNSS解析装置であって、
前記時系列を出力する結果出力部を備えることを特徴とするGNSS解析装置。
【請求項8】
請求項7に記載のGNSS解析装置であって、
前記結果出力部は、前記時系列を表示可能な表示装置であることを特徴とするGNSS解析装置。
【請求項9】
GNSS衛星からの電波を受信して自局観測データを取得するGNSS受信ステップと、
GNSS衛星からの電波を受信したGNSS計測装置から出力された観測データである他局観測データを取得する他局観測データ取得ステップと、
所定の繰り返し時間内に取得された前記自局観測データ及び他局観測データを処理して測位結果を得るデータ処理ステップと、
前記データ処理ステップを前記繰り返し時間ごとに繰り返し実行して、前記測位結果の時系列を取得する時系列取得ループと、
を含む処理をコンピュータに実行させ、
前記時系列取得ループでは、前記繰り返し時間を異ならせた複数の前記時系列を取得することを特徴とするGNSS解析プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−13613(P2012−13613A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152074(P2010−152074)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】
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