説明

GPC3の血中可溶化N端ペプチドまたはC端ペプチドに対する抗体

【課題】肝癌細胞において高発現しているGPC3遺伝子の肝細胞癌マーカーとしての利用、並びに癌の治療への利用に関する手段を提供する。
【解決手段】分泌型GPC3のN端を認識する抗GPC3抗体による、被検試料中の可溶化GPC3のin vitroにおける検出、および、被検体が癌、特に肝臓癌に罹患しているか否かの診断。さらに、GPC3のC末端に対する抗体が高い細胞傷害活性を有することを見出し、細胞、特に癌細胞を破壊する、該抗体を含む細胞破壊剤または抗癌剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はGPC3のN端ペプチドまたはC端ペプチドに対する抗体に関する。具体的には、可溶型GPC3コアタンパク質に見られる約40kDaのGPC3N端ペプチドに対する抗体に関する。また、可溶型GPC3コアタンパク質に見られる約30kDaのGPC3C端ペプチドに対する抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞表面上に存在するヘパラン硫酸プロテオグリカンの新しいファミリーとしてグリピカンファミリーの存在が報告されている。現在までのところ、グリピカンファミリーのメンバーとして、5種類のグリピカン(グリピカン1、グリピカン2、グリピカン3、グリピカン4およびグリピカン5)が存在することが報告されている。このファミリーのメンバーは、均一なサイズ(約60kDa)のコアタンパク質を持ち、特異的でよく保持されたシステインの配列を共有しており、グリコシルフォスファチジルイノシトール(GPI)アンカーにより細胞膜に結合している。
【0003】
グリピカン3(GPC3)は、発生における細胞分裂やそのパターンの制御に深く関わっていることが知られている。又、GPC3遺伝子が肝癌細胞において高発現しており、GPC3遺伝子が肝細胞癌マーカーとして利用できる可能性があること知られている。
【0004】
以前、本発明者らは抗GPC3抗体がADCC活性及びCDC活性を有しており肝癌の治療に有用であることを見出し、特許出願を行った(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、GPC3は膜結合タンパク質であり分泌型のPGC3タンパク質が存在することは報告されておらず、GPC3タンパク質自体を血中の癌マーカーとして用いることは検討されていなかった。
【0006】
【特許文献1】特願2001-189443号
【発明の開示】
【0007】
本発明者らは、グリピカン3(GPC3)が358番目のアミノ酸部位、若しくは374番目のアミノ酸部位、若しくはそれらの近傍領域で切断される事実を見出し、可溶型GPC3が肝癌患者の血中に分泌されるという仮説を立て、GPC3サンドイッチELISA系を確立し、GPC3高発現であるヒト肝癌細胞HepG2の培養上清中に分泌型GPC3の存在を明らかにした。さらに、HepG2を移植したマウス血漿中のみならずヒト肝癌患者血清中の可溶型GPC3測定にも成功した。GPC3は肝癌マーカーであるAFPよりも早期の肝癌で遺伝子発現が認められるので、GPC3の検出は癌の診断として有用であると考えられた。また可溶型GPC3はC末端ペプチド断片側を認識する抗GPC3抗体では検出しにくい傾向にあることから、分泌型GPC3はN端ペプチド断片優位と推定された。従って、分泌型GPC3の検出には、N端を認識する抗GPC3抗体を用いるのが好ましいと考え、GPC3のN端ペプチドを認識する抗体を開発することを試み、本発明を完成させるに至った。さらに、GPC3のC末端に対する抗体が高い細胞傷害活性を有することを見出し、癌細胞の破壊、すなわち癌の治療には、C末端を認識する抗GPC3抗体を用いるのが好ましいと考え、GPC3のC端ペプチドを認識する抗体を開発することを試み、本発明を完成させるに至った。
【0008】
GPC3は肝癌細胞株以外に、肺癌、大腸癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、リンパ腫などの癌細胞株においても発現が確認されているので、肝癌以外の診断にも適用できる可能性がある。
すなわち、本発明はGPC3のN端ペプチドに対する抗体である。
また、本発明はGPC3のN端ペプチドが血中可溶化ペプチドである前記抗体である。
【0009】
さらに、GPC3のN端ペプチドがGPC3の第1番目のアミノ酸から第374番目のアミノ酸からなるペプチド又は第1番目のアミノ酸から第358番目のアミノ酸からなるペプチドである前記抗体である。
さらに、本発明はモノクローナル抗体である前記抗体である。
さらに、本発明は不溶性支持体に固定されていることを特徴とする前記抗体である。
さらに、本発明は標識物質で標識されていることを特徴とする前記抗体である。
さらにまた、本発明はGPC3のC端ペプチドに対する抗体である。
【0010】
さらに、GPC3のC端ペプチドがGPC3の第359番目のアミノ酸から第580番目のアミノ酸からなるペプチド又は第375番目のアミノ酸から第580番目のアミノ酸からなるペプチドである前記抗体である。
さらに、本発明はモノクローナル抗体である上記抗体である。
さらに、本発明はキメラ抗体である上記抗体である。
さらに、本発明は細胞傷害抗体である上記抗体である。
【0011】
さらに、本発明は上記の抗体を含む細胞破壊剤である。
さらに、本発明は細胞が癌細胞である上記細胞破壊剤である。
さらに、本発明は上記の抗体を含む抗癌剤である。
【0012】
さらに、本発明は上記の抗体を細胞と接触させることを含む、細胞傷害を引き起こす方法である。
さらに、本発明は細胞が癌細胞である上記方法である。
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、被検試料中の可溶化グリピカン3(GPC3)を検出することができる可溶化GPC3に対する抗体である。被検試料中の可溶化GPC3をin vitro で検出することにより被検体が癌、特に肝臓癌に罹患しているか否かを診断することができる。
【0014】
検出とは、定量的又は非定量的な検出を含み、例えば、非定量的な検出としては、単にGPC3タンパク質が存在するか否かの測定、GPC3タンパク質が一定の量以上存在するか否かの測定、GPC3タンパク質の量を他の試料(例えば、コントロール試料など)と比較する測定などを挙げることができ、定量的な検出としては、GPC3タンパク質の濃度の測定、GPC3タンパク質の量の測定などを挙げることができる。
【0015】
被検試料とは、GPC3タンパク質が含まれる可能性のある試料であれば特に制限されないが、哺乳類などの生物の体から採取された試料が好ましく、さらに好ましくはヒトから採取された試料である。被検試料の具体的な例としては、例えば、血液、間質液、血漿、血管外液、脳脊髄液、滑液、胸膜液、血清、リンパ液、唾液、尿などを挙げることができるが、好ましいのは血液、血清、血漿である。又、生物の体から採取された細胞の培養液などの、被検試料から得られる試料も本発明の被検試料に含まれる。
【0016】
本発明のGPC3のN端ペプチドに対する抗体を用いて診断される癌は、特に制限されず、具体的には、肝癌、膵臓癌、肺癌、大腸癌、乳癌、前立腺癌、白血病、リンパ腫などを挙げることができるが、好ましいのは肝癌である。
【0017】
また、本発明のGPC3のC端ペプチドに対する抗体は、高い細胞傷害活性を有するので、癌細胞の破壊、すなわち癌の治療に用いることができる。該抗体を用いて治療し得る癌は、特に制限されず、具体的には、肝癌、膵臓癌、肺癌、大腸癌、乳癌、前立腺癌、白血病、リンパ腫などを挙げることができるが、好ましいのは肝癌である。
1.抗GPC3N端ペプチド抗体または抗GPC3のC端ペプチド抗体の作製
GPC3のアミノ酸配列及び塩基配列はLage, H. et al., Gene 188(1997), 151-156、又はGenBank: Z37987を用いることができる。
【0018】
本発明で用いられる抗GPC3 N端ペプチド抗体および抗GPC3のC端ペプチド抗体はそれぞれGPC3タンパク質のN端ペプチドおよびGPC3タンパク質のC端ペプチドに特異的に結合すればよく、その由来、種類(モノクローナル、ポリクローナル)および形状を問わない。具体的には、マウス抗体、ラット抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト型化抗体などの公知の抗体を用いることができる。
【0019】
GPC3が切断点において切断された場合、約40kDaのペプチドと約30kDaのペプチドとなり、N端側が約40kDa、C端側が約30kDaとなる。GPC3切断点は358番目のアミノ酸部位、若しくは374番目のアミノ酸部位、若しくはそれらの近傍領域で切断される。主な切断点は358番目のアミン酸部位であると考えられる。
【0020】
GPC3のN端ペプチドは、可溶型GPC3コアタンパク質に見られる約40kDaのGPC3N端ペプチドである。上記切断点から、N端ペプチドは好ましくはアミノ酸1番目のMetからアミノ酸374番目のLysまでのアミノ酸配列からなるペプチドまたはアミノ酸1番目のMetからアミノ酸358番目のArgまでのアミノ酸配列からなるペプチドであり、さらに、主な切断点が358番目のアミノ酸部位と予測されることから、より好ましくはアミノ酸1番目のMetからアミノ酸358番目のArgまでのアミノ酸配列からなるペプチドである。また本発明においては、それらN端ペプチドの断片でもよい。本明細書においてN端ペプチドは、N端断片、N端ペプチド断片ともいう。
【0021】
すなわち、本発明のGPC3のN端ペプチドに対する抗体は、GPC3タンパク質のN端ペプチドに存在するエピトープを認識する抗体であり、その認識するエピトープの部位は限定されない。
【0022】
GPC3のC端ペプチドは、可溶型GPC3コアタンパク質に見られる約30kDaのGPC3C端ペプチドである。上記切断点から、C端ペプチドは好ましくはアミノ酸359番目のSerからアミノ酸580番目のHisまでのアミノ酸配列からなるペプチドまたは375番目のValからアミノ酸番号580番目のHisまでのアミノ酸配列からなるペプチドであり、さらに、主な切断点が358番目のアミン酸部位と予測されることから、より好ましくはアミノ酸359番目のSerからアミノ酸580番目のHisまでのアミノ酸配列からなるペプチドである。また本発明においては、それらC端ペプチドの断片でもよい。本明細書においてC端ペプチドは、C端断片、C端ペプチド断片ともいう。
【0023】
すなわち、本発明のGPC3のC端ペプチドに対する抗体は、GPC3タンパク質のC端ペプチドに存在するエピトープを認識する抗体であり、その認識するエピトープの部位は限定されない。
抗体はポリクローナル抗体でもよいがモノクローナル抗体であることが好ましい。
【0024】
さらに、本発明で使用される抗GPC3N端ペプチド抗体または抗GPC3C端ペプチド抗体は、公知の手段を用いてポリクローナルまたはモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗GPC3抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマに産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものを含む。
【0025】
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、GPC3を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
【0026】
具体的には、モノクローナル抗体を作製するには次のようにすればよい。
まず、抗体取得の感作抗原として使用されるGPC3を、Lage, H. et al., Gene 188(1997), 151-156に開示されたGPC3(MXR7)遺伝子/アミノ酸配列を発現することによって得る。すなわち、GPC3をコードする遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中または培養上清中から目的のヒトGPC3タンパク質を公知の方法で精製する。
また、天然のGPC3を精製して用いることもできる。
【0027】
次に、この精製GPC3タンパク質を感作抗原として用いる。GPC3タンパク質の全体を感作抗原として用いてもよく、この場合はGPC3タンパク質のN端ペプチドに対する抗体もC端ペプチドに対する抗体も誘起されるので、その中からGPC3タンパク質のN端ペプチドに対する抗体およびC端ペプチドに対する抗体を別々に選択すればよい。あるいは、GPC3のN端側の部分ペプチドまたはGPC3のC端側の部分ペプチドを感作抗原として使用することもできる。この際、部分ペプチドはヒトGPC3のアミノ酸配列より化学合成により得ることもできるし、GPC遺伝子の一部を発現ベクターに組込んで得ることもでき、さらに天然のGPC3をタンパク質分解酵素により分解することによっても得ることができる。部分ペプチドとして用いるGPC3の部分はGPC3のN端ペプチドであり、この部分のエピトープを含むより小さいペプチド断片を用いることもできる。さらに、部分ペプチドとしてGPC3のC端ペプチドを用いればよいし、この部分のエピトープを含むより小さいペプチド断片を用いることもできる。
【0028】
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター、あるいはウサギ、サル等が使用される。
【0029】
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内または皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate-Buffered Saline)や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものに所望により通常のアジュバント、例えばフロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4〜21日毎に数回投与する。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することもできる。特に分子量の小さい部分ペプチドを感作抗原として用いる場合には、アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン等の担体タンパク質と結合させて免疫することが望ましい。
【0030】
このように哺乳動物を免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞を採取し、細胞融合に付されるが、好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
【0031】
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞として、哺乳動物のミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞は、公知の種々の細胞株、例えば、P3(P3x63Ag8.653)(J. Immnol.(1979)123, 1548-1550)、 P3x63Ag8U.1(Current Topics in Microbiology and Immunology(1978)81, 1-7)、 NS-1 (Kohler. G. and Milstein, C. Eur. J. Immunol.(1976)6, 511-519)、MPC-11(Margulies. D.H. et al., Cell(1976)8, 405-415)、SP2/0 (Shulman, M. et al., Nature(1978)276, 269-270)、FO(de St. Groth, S. F. et al., J. Immunol. Methods(1980)35, 1-21)、S194(Trowbridge, I. S. J. Exp. Med.(1978)148, 313-323)、R210(Galfre, G. et al., Nature(1979)277, 131-133)等が好適に使用される。
【0032】
前記免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は、基本的には公知の方法、たとえば、ケーラーとミルステインらの方法(Kohler. G. and Milstein, C.、Methods Enzymol.(1981)73, 3-46)等に準じて行うことができる。
【0033】
より具体的には、前記細胞融合は、例えば細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては、例えばポリエチレングリコール(PEG)、センダイウイルス(HVJ)等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
【0034】
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は任意に設定することができる。例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1〜10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
【0035】
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液(例えば平均分子量1000〜6000程度)を通常30〜60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)を形成する。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去する。
【0036】
このようにして得られたハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えばHAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。上記HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、数日〜数週間)継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよび単一クローニングを行う。
【0037】
目的とする抗体のスクリーニングおよび単一クローニングは、公知の抗原抗体反応に基づくスクリーニング方法で行えばよい。例えば、ポリスチレン等でできたビーズや市販の96ウェルのマイクロタイタープレート等の担体に抗原を結合させ、ハイブリドーマの培養上清と反応させ、担体を洗浄した後に酵素標識第2次抗体等を反応させることにより、培養上清中に感作抗原と反応する目的とする抗体が含まれるかどうか決定できる。目的とする抗体を産生するハイブリドーマを限界希釈法等によりクローニングすることができる。この際、抗原としては、GPC3のN端ペプチドもしくはその断片またはGPC3のC端ペプチドもしくはその断片をスクリーニング用抗原として用いればよい。
【0038】
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球をin vitroでGPC3に感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞と融合させ、GPC3N端ペプチドまたはGPC3C端ペプチドへの結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1-59878号公報参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原となるGPC3を投与して抗GPC3N端ペプチド抗体産生細胞または抗GPC3C端ペプチド抗体産生細胞を取得し、これを不死化させた細胞からGPC3N端ペプチドに対するヒト抗体またはGPC3C端ペプチドに対するヒト抗体を取得してもよい(国際特許出願公開番号WO 94/25585 号公報、WO 93/12227 号公報、WO 92/03918 号公報、WO 94/02602 号公報参照)。
【0039】
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
【0040】
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法に従い培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
【0041】
本発明では、モノクローナル抗体として、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型のものを用いることができる(例えば、Vandamme, A. M. et al., Eur. J. Biochem.(1990)192, 767-775, 1990参照)。
【0042】
具体的には、抗GPC3N端ペプチド抗体を産生するハイブリドーマまたは抗GPC3C端ペプチド抗体を産生するハイブリドーマから、抗GPC3N端ペプチド抗体または抗GPC3C端ペプチド抗体の可変(V)領域をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. et al., Biochemistry(1979)18, 5294-5299)、AGPC法(Chomczynski, P.et al., Anal. Biochem.(1987)162, 156-159)等により行って全RNAを調製し、mRNA Purification Kit (Pharmacia製)等を使用して目的のmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit (Pharmacia製)を用いることによりmRNAを直接調製することもできる。
【0043】
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit(生化学工業社製)等を用いて行う。また、cDNAの合成および増幅を行うには、5'-Ampli FINDER RACE Kit(Clontech製)およびPCRを用いた5'-RACE法(Frohman, M. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1988)85, 8998-9002、Belyavsky, A.et al., Nucleic Acids Res.(1989)17, 2919-2932)等を使用することができる。
【0044】
得られたPCR産物から目的とするDNA断片を精製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。そして、目的とするDNAの塩基配列を公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法等により確認する。
【0045】
目的とする抗GPC3N端ペプチド抗体または抗GPC3C端ペプチド抗体のV領域をコードするDNAを得たのち、これを、所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAを含有する発現ベクターへ組み込む。
【0046】
本発明で使用される抗GPC3N端ペプチド抗体または抗GPC3C端ペプチド抗体を製造するには、抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより、宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させる。
【0047】
抗体遺伝子の発現は、抗体重鎖(H鎖)または軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換させてもよい(WO 94/11523 号公報参照)。
【0048】
また、組換え型抗体の産生には上記宿主細胞だけではなく、トランスジェニック動物を使用することができる。例えば、抗体遺伝子を、乳汁中に固有に産生されるタンパク質(ヤギβカゼインなど)をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたはその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。また、トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology(1994)12, 699-702)。
【0049】
本発明では、上記抗体のほかに、人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ抗体(ヒト化(Humanized)抗体、など)を使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。本発明の抗体を治療用抗体として使用する場合には、遺伝子組換え型抗体を用いることが好ましい。
【0050】
キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V領域をコードするDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる。この既知の方法を用いて、本発明に有用なキメラ抗体を得ることができる。
【0051】
ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、これは、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開番号EP 125023号公報、WO 96/02576 号公報参照)。
【0052】
具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)とを連結するように設計したDNA配列を、CDR及びFR両方の末端領域にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPCR法により合成する(WO98/13388号公報に記載の方法を参照)。
【0053】
CDRを介して連結されるヒト抗体のフレームワーク領域は、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように、抗体の可変領域におけるフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato, K.et al., Cancer Res.(1993)53, 851-856)。
【0054】
キメラ抗体及びヒト化抗体のC領域には、ヒト抗体のものが使用され、例えばH鎖では、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4を、L鎖ではCκ、Cλを使用することができる。また、抗体またはその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C領域を修飾してもよい。
【0055】
キメラ抗体は、可変領域にヒト以外の哺乳動物由来抗体の配列を含み、定常領域にヒト抗体由来の配列を含むことが好ましい。
【0056】
ヒト化抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の相補性決定領域と、ヒト抗体由来のフレームワーク領域およびC領域とからなる。ヒト化抗体などのキメラ抗体はヒト体内における抗原性が低下されているため、本発明の治療剤の有効成分として有用である。
【0057】
本発明で使用される抗体は、抗体の全体分子に限られず、GPC3N端ペプチドまたはGPC3C端ペプチドに結合する限り、抗体の断片又はその修飾物であってもよく、二価抗体も一価抗体も含まれる。例えば、抗体の断片としては、Fab、F(ab')2、Fv、1個のFabと完全なFcを有するFab/c、またはH鎖若しくはL鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)が挙げられる。具体的には、抗体を酵素、例えばパパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、または、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co, M.S. et al., J. Immunol.(1994)152, 2968-2976、Better, M. & Horwitz, A. H. Methods in Enzymology(1989)178, 476-496, Academic Press, Inc.、Plueckthun, A. & Skerra, A. Methods in Enzymology(1989)178, 476-496, Academic Press, Inc.、Lamoyi, E., Methods in Enzymology(1989)121, 652-663、Rousseaux, J. et al., Methods in Enzymology(1989)121, 663-669、Bird, R. E. et al., TIBTECH(1991)9, 132-137参照)。
【0058】
scFvは、抗体のH鎖V領域とL鎖V領域とを連結することにより得られる。このscFvにおいて、H鎖V領域とL鎖V領域は、リンカー、好ましくはペプチドリンカーを介して連結される(Huston, J. S. et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.(1988)85, 5879-5883)。scFvにおけるH鎖V領域およびL鎖V領域は、本明細書に抗体として記載されたもののいずれの由来であってもよい。V領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えばアミノ酸12〜19残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる。
【0059】
scFvをコードするDNAは、前記抗体のH鎖またはH鎖V領域をコードするDNA、およびL鎖またはL鎖V領域をコードするDNAのうち、それらの配列のうちの全部又は所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を鋳型とし、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコードするDNA、およびその両端が各々H鎖、L鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合せて増幅することにより得られる。
【0060】
また、一旦scFvをコードするDNAが作製されると、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いることにより、常法に従ってscFvを得ることができる。
【0061】
これら抗体の断片は、前記と同様にしてその遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。本発明における「抗体」にはこれらの抗体の断片も包含される。
【0062】
抗体の修飾物として、標識物質、トキシン、放射性物質等の各種分子と結合した抗グリピカン抗体を使用することもできる。本発明における「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物は、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。なお、抗体の修飾方法はこの分野においてすでに確立されている。
【0063】
さらに、本発明で使用される抗体は、二重特異性抗体(bispecific antibody)であってもよい。二重特異性抗体はGPC3N端ペプチドまたはGPC3C端ペプチド上の異なるエピトープを認識する抗原結合部位を有する二重特異性抗体であってもよいし、一方の抗原結合部位がGPC3N端ペプチドまたはGPC3C端ペプチドを認識し、他方の抗原結合部位が標識物質等を認識してもよい。二重特異性抗体は2種類の抗体のHL対を結合させて作製することもできるし、異なるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを融合させて二重特異性抗体産生融合細胞を作製し、得ることもできる。さらに、遺伝子工学的手法により二重特異性抗体を作製することも可能である。
【0064】
さらに、本発明においては、細胞傷害活性を増強する目的などで、糖鎖を改変した抗体などを用いることも可能である。抗体の糖鎖改変技術は既に知られている(例えば、WO00/61739、WO02/31140など)。
【0065】
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させ、取得することができる。哺乳類細胞の場合、常用される有用なプロモーター、発現させる抗体遺伝子、その3'側下流にポリAシグナルを機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウイルス前期プロモーター/エンハンサー( human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer)を挙げることができる。
【0066】
また、その他に本発明で使用される抗体発現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レトロウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、シミアンウイルス40(SV40)等のウイルスプロモーター/エンハンサー、あるいはヒトエロンゲーションファクター1a(HEF1a)などの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサー等が挙げられる。
【0067】
SV40プロモーター/エンハンサーを使用する場合はMulliganらの方法(Nature(1979)277, 108)により、また、HEF1aプロモーター/エンハンサーを使用する場合はMizushimaらの方法(Nucleic Acids Res.(1990)18, 5322)により、容易に遺伝子発現を行うことができる。
【0068】
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列及び発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させて当該遺伝子を発現させることができる。プロモーターとしては、例えばlaczプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。laczプロモーターを使用する場合はWardらの方法(Nature(1098)341, 544-546 ; FASEB J.(1992)6, 2422-2427)により、あるいはaraBプロモーターを使用する場合はBetterらの方法(Science(1988)240, 1041-1043)により発現することができる。
【0069】
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol.(1987)169, 4379)を使用すればよい。そして、ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切に組み直して(refold)使用する。
【0070】
複製起源としては、SV40、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス(BPV)等の由来のものを用いることができ、さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは、選択マーカーとしてアミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
【0071】
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の発現系、例えば真核細胞又は原核細胞系を使用することができる。真核細胞としては、例えば樹立された哺乳類細胞系、昆虫細胞系、真糸状菌細胞および酵母細胞などの動物細胞等が挙げられ、原核細胞としては、例えば大腸菌細胞等の細菌細胞が挙げられる。
【0072】
好ましくは、本発明で使用される抗体は、哺乳類細胞、例えばCHO、COS、ミエローマ、BHK、Vero、HeLa細胞中で発現される。
次に、形質転換された宿主細胞をin vitroまたはin vivoで培養して目的とする抗体を産生させる。宿主細胞の培養は公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM、RPMI1640、IMDMを使用することができ、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
【0073】
前記のように発現、産生された抗体は、細胞、宿主動物から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製はアフィニティーカラムを用いて行うことができる。例えば、プロテインAカラムを用いたカラムとして、Hyper D、POROS、Sepharose F.F.(Pharmacia製)等が挙げられる。その他、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、上記アフィニティーカラム以外のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせることにより、抗体を分離、精製することができる(Antibodies A Laboratory Manual. Ed Harlow, David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)。
【0074】
2.GPC3の検出
本発明のGPC3N端側ペプチドに対する抗体を用いて、被検試料中のGPC3を検出することができる。
【0075】
本発明の抗体を用いて検出するGPC3は、特に限定されず、全長GPC3でも、その断片でもよい。GPC3断片を検出する場合には、N端ペプチド断片を検出することが好ましい。
【0076】
被検試料に含まれるGPC3タンパク質の検出方法は特に限定されないが、本発明の抗GPC3N端ペプチド抗体を用いた免疫学的方法により検出することが好ましい。免疫学的方法としては、例えば、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ、発光イムノアッセイ、免疫沈降法、免疫比濁法、ウエスタンブロット、免疫染色、免疫拡散法などを挙げることができるが、好ましくはエンザイムイムノアッセイであり、特に好ましいのは酵素結合免疫吸着定量法(enzyme-linked immunosorbent assay:ELISA)(例えば、sandwich ELISA)である。ELISAなどの上述した免疫学的方法は当業者に公知の方法により行うことが可能である。
【0077】
抗GPC3N端ペプチド抗体を用いた一般的な検出方法としては、例えば、抗GPC3N端ペプチド抗体を支持体に固定し、ここに被検試料を加え、インキュベートを行い抗GPC3N端ペプチド抗体とGPC3タンパク質を結合させた後に洗浄して、抗GPC3N端ペプチド抗体を介して支持体に結合したGPC3タンパク質を検出することにより、被検試料中のGPC3タンパク質の検出を行う方法を挙げることができる。
【0078】
本発明において用いられる支持体としては、例えば、アガロース、セルロースなどの不溶性の多糖類、シリコン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネイト樹脂などの合成樹脂や、ガラスなどの不溶性の支持体を挙げることができる。これらの支持体は、ビーズやプレートの形状で用いることが可能である。ビーズの場合、これらが充填されたカラムなどを用いることができる。プレートの場合、マルチウェルプレート(96穴マルチウェルプレート等)、やバイオセンサーチップなどを用いることができる。抗GPC3N端ペプチド抗体と支持体との結合は、化学結合や物理的な吸着などの通常用いられる方法により結合することができる。これらの支持体はすべて市販のものを用いることができる。
【0079】
抗GPC3N端ペプチド抗体とGPC3タンパク質との結合は、通常、緩衝液中で行われる。緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、炭酸塩緩衝液、などが使用される。また、インキュベーションの条件としては、すでによく用いられている条件、例えば、4℃〜室温にて1時間〜24時間のインキュベーションが行われる。インキュベート後の洗浄は、GPC3タンパク質と抗GPC3抗体の結合を妨げないものであれば何でもよく、例えば、Tween20等の界面活性剤を含む緩衝液などが使用される。
【0080】
本発明のGPC3タンパク質検出方法においては、GPC3タンパク質を検出したい被検試料の他に、コントロール試料を設置してもよい。コントロール試料としては、GPC3タンパク質を含まない陰性コントロール試料やGPC3タンパク質を含む陽性コントロール試料などがある。この場合、GPC3タンパク質を含まない陰性コントロール試料で得られた結果、GPC3タンパク質を含む陽性コントロール試料で得られた結果と比較することにより、被検試料中のGPC3タンパク質を検出することが可能である。また、濃度を段階的に変化させた一連のコントロール試料を調製し、各コントロール試料に対する検出結果を数値として得て、標準曲線を作成し、被検試料の数値から標準曲線に基づいて、被検試料に含まれるGPC3タンパク質を定量的に検出することも可能である。
【0081】
抗GPC3N端ペプチド抗体を介して支持体に結合したGPC3タンパク質の検出の好ましい態様として、標識物質で標識された抗GPC3 N端ペプチド抗体を用いる方法を挙げることができる。
【0082】
例えば、支持体に固定された抗GPC3抗体に被検試料を接触させ、洗浄後に、GPC3タンパク質を特異的に認識する標識抗体を用いて検出する。
【0083】
この際、支持体に固定される抗GPC3N端ペプチド抗体と標識物質で標識される抗GPC3N端ペプチドC抗体はGPC3分子の同じエピトープを認識してもよいが、異なるエピトープを認識することが好ましい。
【0084】
抗GPC3N端ペプチド抗体の標識は通常知られている方法により行うことが可能である。標識物質としては、蛍光色素、酵素、補酵素、化学発光物質、放射性物質などの当業者に公知の標識物質を用いることが可能であり、具体的な例としては、ラジオアイソトープ(32P、14C、125I、3H、131Iなど)、フルオレセイン、ローダミン、ダンシルクロリド、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ホースラディッシュパーオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、ビオチンなどを挙げることができる。標識物質としてビオチンを用いる場合には、ビオチン標識抗体を添加後に、アルカリホスファターゼなどの酵素を結合させたアビジンをさらに添加することが好ましい。標識物質と抗GPC3抗体との結合には、グルタルアルデヒド法、マレイミド法、ピリジルジスルフィド法、過ヨウ素酸法、などの公知の方法を用いることができる。
【0085】
具体的には、抗GPC3N端ペプチド抗体を含む溶液をプレートなどの支持体に加え、抗GPC3N端ペプチド抗体を固定する。プレートを洗浄後、タンパク質の非特異的な結合を防ぐため、例えばBSAなどでブロッキングする。再び洗浄し、被検試料をプレートに加える。インキュベートの後、洗浄し、標識抗GPC3抗体を加える。適度なインキュベーションの後、プレートを洗浄し、プレートに残った標識抗GPC3抗体を検出する。検出は当業者に公知の方法により行うことができ、例えば、放射性物質による標識の場合には液体シンチレーションやRIA法により検出することができる。酵素による標識の場合には基質を加え、基質の酵素的変化、例えば発色を吸光度計により検出することができる。基質の具体的な例としては、2,2-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)ジアンモニウム塩(ABTS)、1,2-フェニレンジアミン(オルソ-フェニレンジアミン)、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TME)などを挙げることができる。蛍光物質の場合には蛍光光度計により検出することができる。
【0086】
本発明のGPC3タンパク質検出方法の特に好ましい態様として、ビオチンで標識された抗GPC3N端ペプチド抗体及びアビジンを用いる方法を挙げることができる。
【0087】
具体的には、抗GPC3 N端ペプチド抗体を含む溶液をプレートなどの支持体に加え、抗GPC3N端ペプチド抗体を固定する。プレートを洗浄後、タンパク質の非特異的な結合を防ぐため、例えばBSAなどでブロッキングする。再び洗浄し、被検試料をプレートに加える。インキュベートの後、洗浄し、ビオチン標識抗GPC3抗体を加える。適度なインキュベーションの後、プレートを洗浄し、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼなどの酵素と結合したアビジンを加える。インキュベーション後、プレートを洗浄し、アビジンに結合している酵素に対応した基質を加え、基質の酵素的変化などを指標にGPC3タンパク質を検出する。
【0088】
本発明のGPC3タンパク質検出方法の他の態様として、GPC3タンパク質を特異的に認識する一次抗体、及び該一次抗体を特異的に認識する二次抗体を用いる方法を挙げることができる。
【0089】
例えば、支持体に固定された抗GPC3 N端ペプチド抗体に被検試料を接触させ、インキュベーションした後、洗浄し、洗浄後に結合しているGPC3タンパク質を、一次抗GPC3抗体及び該一次抗体を特異的に認識する二次抗体により検出する。この場合、二次抗体は好ましくは標識物質により標識されている。
【0090】
具体的には、抗GPC3N端ペプチド抗体を含む溶液をプレートなどの支持体に加え、抗GPC3N端ペプチド抗体を固定する。プレートを洗浄後、タンパク質の非特異的な結合を防ぐため、例えばBSAなどでブロッキングする。再び洗浄し、被検試料をプレートに加える。インキュベートの後、洗浄し、一次抗GPC3抗体を加える。適度なインキュベーションの後、プレートを洗浄し、次いで一次抗体を特異的に認識する二次抗体を加える。適度なインキュベーションの後、洗浄して、プレートに残った二次抗体を検出する。二次抗体の検出は前述の方法により行うことができる。
【0091】
本発明のGPC3タンパク質の検出方法の他の態様としては、凝集反応を利用した検出方法を挙げることができる。該方法においては、抗GPC3N端ペプチド抗体を感作した担体を用いてGPC3を検出することができる。抗体を感作する担体としては、不溶性で、非特異的な反応を起こさず、かつ安定である限り、いかなる担体を使用してもよい。例えば、ラテックス粒子、ベントナイト、コロジオン、カオリン、固定羊赤血球等を使用することができるが、ラテックス粒子を使用するのが好ましい。ラテックス粒子としては、例えば、ポリスチレンラテックス粒子、スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス粒子、ポリビニルトルエンラテックス粒子等を使用することができるが、ポリスチレンラテックス粒子を使用するのが好ましい。感作した粒子を試料を混合し、一定時間攪拌した後に、試料中にGPC3抗体が高濃度で含まれるほど粒子の凝集度が大きくなるので、凝集を肉眼でみることによりGPC3を検出することができる。また、凝集による濁度を分光光度計等により測定することによっても検出することが可能である。
【0092】
本発明のGPC3タンパク質の検出方法の他の態様としては、例えば、表面プラズモン共鳴現象を利用したバイオセンサーを用いた方法を挙げることができる。表面プラズモン共鳴現象を利用したバイオセンサーはタンパク質−タンパク質間の相互作用を微量のタンパク質を用いてかつ標識することなく、表面プラズモン共鳴シグナルとしてリアルタイムに観察することが可能である。例えば、BIAcore(Pharmacia製)等のバイオセンサーを用いることによりGPC3タンパク質と抗GPC3N端ペプチド抗体の結合を検出することが可能である。具体的には、抗GPC3N端ペプチド抗体を固定化したセンサーチップに、被検試料を接触させ、抗GPC3N端ペプチド抗体に結合するGPC3タンパク質を共鳴シグナルの変化として検出することができる。
【0093】
本発明の検出方法は、種々の自動検査装置を用いて自動化することもでき、一度に大量の試料について検査を行うことも可能である。
【0094】
本発明は、癌の診断のための被検試料中のGPC3タンパク質を検出するための診断薬またはキットの提供をも目的とするが、該診断薬またはキットは少なくとも抗GPC3N端ペプチド抗体を含む。該診断薬またはキットがEIA法に基づく場合は、抗体を固相化する担体を含んでいてもよく、抗体があらかじめ担体に結合していてもよい。該診断薬またはキットがラテックス等の担体を用いた凝集法に基づく場合は抗体が吸着した担体を含んでいてもよい。また、該キットは、適宜、ブロッキング溶液、反応溶液、反応停止液、試料を処理するための試薬等を含んでいてもよい。
【0095】
3.抗GPC3C端ペプチド抗体を用いた癌細胞の破壊および癌の治療
(1) 抗体の活性の確認
本発明で使用される抗体の抗原結合活性(Antibodies A Laboratory Manual.Ed Harlow, David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)、リガンドレセプター結合阻害活性(Harada, A. et al., International Immunology(1993)5, 681-690)の測定には公知の手段を使用することができる。
【0096】
本発明で使用される抗GPC3C端ペプチド抗体の抗原結合活性を測定する方法として、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、EIA(酵素免疫測定法)、RIA(放射免疫測定法)あるいは蛍光抗体法を用いることができる。例えば、酵素免疫測定法を用いる場合、GPC3C端ペプチドをコーティングしたプレートに、抗GPC3C端ペプチド抗体を含む試料、例えば、抗GPC3C端ペプチド抗体産生細胞の培養上清や精製抗体を加える。アルカリフォスファターゼ等の酵素で標識した二次抗体を添加し、プレートをインキュベートし、洗浄した後、p-ニトロフェニル燐酸などの酵素基質を加えて吸光度を測定することで抗原結合活性を評価することができる。
本発明で使用される抗体の活性を確認するには、抗GPC3C端ペプチド抗体の中和活性を測定する。
【0097】
(2) 細胞傷害活性
治療目的の場合、本発明に使用する抗体は、細胞傷害活性として、ADCC活性またはCDC活性を有することが好ましい。
【0098】
ADCC活性は、エフェクター細胞と標的細胞と抗GPC3C端ペプチド抗体を混合し、ADCCの程度を調べることにより測定することができる。エフェクター細胞として例えば、マウス脾細胞やヒト末梢血や骨髄から分離した単核球等を利用することができ、標的細胞としてはヒト肝細胞株HuH-7等のヒト株化細胞を用いることができる。標的細胞をあらかじめ51Crにより標識し、これに抗GPC3C端ペプチド抗体を加えインキュベーションを行い、その後、標的細胞に対し適切な比のエフェクター細胞を加えインキュベーションを行う。インキュベーション後上清を採取し、上清中の放射活性をカウントすることによりADCC活性を測定することができる。
【0099】
また、CDC活性は、上述の標識標的細胞と抗GPC3C端ペプチド抗体を混合し、その後補体を添加してインキュベーションを行い、培養後に上清中の放射活性をカウントすることにより測定することができる。
【0100】
抗体が細胞傷害活性を発揮するには、Fc部分が必要であるので、本発明の細胞増殖阻害剤が、抗体の細胞傷害活性を利用したものである場合には、本発明に使用する抗GPC3C端ペプチド抗体はFc部分を含んでいることが好ましい。
【0101】
(3) 細胞の破壊
本発明の抗GPC3C端ペプチド抗体を細胞破壊、特に癌細胞の破壊に用いることもできる。さらに本発明の抗GPC3C端ペプチド抗体を抗癌剤として用いることもできる。本発明の抗体により治療・予防させる癌は特に限定されず、肝癌、肺癌、大腸癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、リンパ腫などに用いることができるが、肝癌が好ましい。
【0102】
(4) 投与方法および製剤
本発明の細胞破壊剤または抗癌剤は、細胞の異常増殖に基づく疾患、特に癌に対する治療又は改善を目的として使用される。
【0103】
有効投与量は、一回につき体重1kgあたり0.001mg から1000mgの範囲で選ばれる。あるいは、患者あたり0.01〜100000mg/bodyの投与量を選ぶことができる。しかしながら、本発明の抗GPC3C端ペプチド抗体を含有する治療剤はこれらの投与量に制限されるものではない。
【0104】
また、本発明の治療剤の投与時期としては、疾患の臨床症状が生ずる前後を問わず投与することができる。
【0105】
本発明の抗本発明の抗GPC3C端ペプチド抗体を抗体を有効成分として含有する治療剤は、常法にしたがって製剤化することができ(Remington's Pharmaceutical Science, latest edition, Mark Publishing Company, Easton,米国)、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。
【0106】
このような担体および医薬添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。
【0107】
実際の添加物は、本発明治療剤の剤型に応じて上記の中から単独で又は適宜組み合わせて選ばれるが、もちろんこれらに限定するものではない。例えば、注射用製剤として使用する場合、精製された抗本発明の抗GPC3C端ペプチド抗体を抗体を溶剤、例えば生理食塩水、緩衝液、ブドウ糖溶液等に溶解し、これに吸着防止剤、例えばTween80、Tween20、ゼラチン、ヒト血清アルブミン等を加えたものを使用することができる。あるいは、使用前に溶解再構成する剤形とするために凍結乾燥したものであってもよく、凍結乾燥のための賦形剤としては、例えば、マンニトール、ブドウ糖等の糖アルコールや糖類を使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0108】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0109】
本願明細書記載の実施例において、以下の材料を用いた。
可溶型GPC3、可溶型GPC3コアタンパク質の発現ベクターとして、pCAGGSにDHFR遺伝子及びネオマイシン耐性遺伝子を組み込んだpCXND2、pCXND3を用いた。
【0110】
DXB11はATCCより購入した細胞を用い、培養には5%FBS(GIBCO BRL CAT# 10099-141, LOT# A0275242)/ Minimum Essential Medium Alpha medium (αMEM(+)) (GIBCO BRL CAT# 12571-071)/ 1% Penicillin- Streptomycin(GIBCO BRL CAT# 15140-122)を用いた。DXB11を用いた発現株の選抜には、500μg/mL Geneticin (GIBCO BRL CAT# 10131-027)/ 5% FBS/ αMEM without ribonucleosides and deoxyribonucleosides (GIBCO BRL CAT# 12561-056) (αMEM(-))/ PSあるいは同培地に終濃度25nMとなるようにMTXを加えたものを用いた。
【0111】
HepG2はATCCより購入した細胞を用い、10% FBS /ダルベッコの改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium, DMEM) (GIBCO BRL CAT# 11995-065)/ PSで培養を行った。
【0112】
ハイブリドーマは10%FBS / RPMI1640 / 1 x HAT media supplement(SIGMA CAT# H-0262) / 0.5 x BM-Condimed H1 Hybridoma cloning supplement (Roche CAT# 1088947)で培養した。
【0113】
[実施例1]ヒトGPC3(GPC3)cDNAのクローニングおよび発現解析
ヒトグリピカン3(以下GPC3)をコードする全長cDNAのクローニング
ヒトGPC3をコードする全長cDNAは、大腸癌細胞株Caco2より常法により調製した1st strand cDNAを鋳型とし、Advantage2 kit(CLONTECH社 Cat. No. 8430-1)を用いたPCR反応により増幅した。すなわち、2 μlのCaco2由来cDNA、1μlのセンスプライマー(配列番号1)、1μlのアンチセンスプライマー(配列番号2)、5μlのAdvantage2 10xPCR buffer、8μlのdNTP mix (1.25 mM)、1.0μlのAdvantage polymerase Mixを含む50μlの反応液を、94 ℃で1分、63 ℃で30秒、68 ℃で3分からなるサイクルを35回行った。PCR反応による増幅産物は(pGEM-T Easy Vector System I(Promega社Cat. No. A1360)を用いてTAベクターpGEM-T easyに挿入した)ABI3100 DNAシーケンサーを用い配列の確認を行った結果、ヒトGPC3の全長をコードするcDNAを単離した。配列番号3で表される配列はヒトGPC3遺伝子の塩基配列を、配列番号4で表される配列はヒトGPC3タンパク質のアミノ酸配列を示す。
配列番号1:GATATC-ATGGCCGGGACCGTGCGCACCGCGT
配列番号2:GCTAGC-TCAGTGCACCAGGAAGAAGAAGCAC
【0114】
GeneChipを用いたヒトGPC3 mRNA発現解析
24例の肝臓癌腫瘍部(高分化癌:WD、中分化癌:MD、低分化癌:PD)、16例の肝臓癌非癌部(肝炎部位:CH、肝硬変部位:LC)、8例の正常肝臓:NL(インフォームドコンセント取得済み、東京大学医学部及び埼玉癌センターにおいて入手)におけるmRNA発現解析をGeneChipTM UG-95A Target(Affymetryx社)を用いて行った。すなわち、上記各組織よりISOGEN(日本ジーン社)を用いてトータルRNAを調製した後、それぞれ15μgのtotal RNA を使用し、Expression Analysis Technical Manual(Affymetryx社)に準じて遺伝子発現解析を行った。
【0115】
その結果、図1に示すようにヒトGPC3遺伝子(Probe Set ID:39350_at)は肝癌の分化の程度に関わらず多くの症例においてmRNAの発現量が正常肝組織に比べ明らかに高いことが確認された。さらに、現在最もよく肝癌の診断マーカーとして使用されているアルファフェトプロテイン(Probe Set ID:40114_at)のmRNA発現と比較した結果、アルファフェトプロテインのmRNA発現がほとんどみられない高分化癌においてもGPC3は十分なmRNAの発現の亢進が認められ、かつmRNA発現亢進している割合がGPC3において高いことが明らかとなった。以上のことより、GPC3の検出は肝癌の早期診断法として有用と考えられる。
【0116】
[実施例2]抗GPC3抗体の作製
可溶型ヒトGPC3の作製
抗GPC3抗体作製のための材料として、C末端側の疎水性領域を欠損させた可溶型GPC3タンパク質を作製した。
【0117】
東大先端研より供与された完全長ヒトGPC3 cDNAを含むプラスミドDNAを用い、可溶型GPC3 cDNA発現プラスミドDNAを構築した。C末端側の疎水領域(564-580アミノ酸)を除くように設計した下流プライマー(5’- ATA GAA TTC CAC CAT GGC CGG GAC CGT GCG C -3’(配列番号5))とEcoRI認識配列、Kozak配列を加えた上流プライマー(5’- ATA GGA TCC CTT CAG CGG GGA ATG AAC GTT C -3’(配列番号6)を用いてPCRを行った。得られたPCR断片(1711bp)をpCXND2-Flagにクローニングした。作製された発現プラスミドDNAをCHO細胞DXB11株へ導入し、500μg/mL Geneticin での選抜により、可溶型GPC3高発現CHO株を得た。
【0118】
1700 cm2ローラーボトルを用い可溶型GPC3高発現CHO株の大量培養を行い、培養上清を回収し精製を行った。培養上清をDEAE sepharose Fast Flow (Amersham CAT# 17-0709-01)にチャージし、洗浄後、500mM NaClを含むバッファーにより溶出した。次に、Anti-Flag M2 agarose affinity gel(SIGMA CAT#A-2220)を用いてアフィニティー精製を行った。溶出は200μg/mLのFLAGペプチドにより行った。Centriprep-10(Millipore CAT#4304)による濃縮後、Superdex 200 HR 10/30(Amersham CAT# 17-1088-01)によるゲルろ過を行いFLAGペプチドを除去した。最後にDEAE sepharose Fast Flowカラムを用いて濃縮し、同時にTween20を含まないPBS(500mMのNaClを含む)で溶出を行うことによりバッファー置換を行った。
【0119】
可溶型ヒトGPC3コアタンパク質の作製
上記野生型ヒトGPC3 cDNAをテンプレートとし、アッセンブリーPCR法によって495番目と509番目のSerをAlaに置換させたcDNAを作製した。この際、C末端にHisタグが付加されるようにプライマーを設計し、得られたcDNAをpCXND3ベクターにクローニングした。作製された発現プラスミドDNAをDXB11株へ導入し、500μg/mL Geneticin での選抜により、可溶型GPC3コアタンパク質高発現CHO株を得た。
【0120】
1700 cm2ローラーボトルを用い大量培養を行い、培養上清を回収し精製を行った。培養上清をQ sepharose Fast Flow (Amersham CAT# 17-0510-01)にチャージし、洗浄後、500mM NaClを含むリン酸バッファーにより溶出した。次に、Chelating sepharose Fast Flow (Amersham CAT# 17-0575-01)を用いてアフィニティー精製を行った。10〜150mMのイミダゾールでグラジエント溶出を行った。最後にQ sepharose Fast Flow を用いて濃縮し、500mM NaClを含むリン酸バッファーにより溶出した。
【0121】
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果、50〜300kDaのスメアなバンドと、約40kDaのバンドが得られた。図2に電気泳動の結果を示す。GPC3は69kDaのC末端にヘパラン硫酸付加配列を有するプロテオグリカンである。スメアなバンドはヘパラン硫酸修飾を受けたGPC3であると考えられた。約40kDaのバンドはアミノ酸シークエンスの結果、GPC3のN末端側断片を起点としており、GPC3は何らかの切断を受けていることが予想された。
【0122】
以下のハイブリドーマのスクリーニングにおいてヘパラン硫酸に対する抗体を排除するため、ヘパラン硫酸付加シグナル配列である495番目と509番目のSerをAlaに置換させた可溶型GPC3コアタンパク質を作製した。同様にCHO高発現株を構築し、培養上清よりHisタグを利用したアフィニティー精製を行った。SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果、70kDa、40kDa、30kDaの3つのバンドが得られた。アミノ酸シークエンスの結果、30kDaのバンドはGPC3のC末端側断片であることが判明した。C末端断片は、359番目のセリン、もしくは375番目のバリンより開始しており、何らかの酵素的な切断を受けている事が予想された。ヘパラン硫酸付加型GPC3でこの30kDaのバンドが見られなかったのは、ヘパラン硫酸が付加しているためスメアなバンドになっていたためと思われる。GPC3が特定のアミノ酸配列で酵素的な切断を受けることは新しい知見であり、生物学的意義に関しては明らかにされていない。
【0123】
本発明者らは、この結果より肝癌患者においても膜上のGPC3が切断を受け、可溶型としてGPC3が血中に分泌されるという仮説を立てた。GPC3は肝癌腫瘍マーカーであるAFPと比較してより早期肝癌患者で遺伝子の発現が高値であることを見出した(図1)ので、AFPより臨床的有用性の高い新しい腫瘍マーカーとしての可能性について検討するため、実施例2以降に記載のように、抗GPC3抗体を作製し、サンドイッチELISA系を構築した。
抗GPC3抗体の作製
【0124】
ヒトGPC3とマウスGPC3のホモロジーはアミノ酸レベルで94%の高い相同性を示すため、通常のマウスに免疫しても抗GPC3抗体を得難い可能性を考え、自己免疫疾患マウスであるMRL/lprマウスを免疫動物として用いた。MRL/lprマウス(CRL)5匹に可溶型GPC3を免疫した。初回免疫には免疫タンパク質を100μg/匹となるように調製し、FCA(フロイント完全アジュバント(H37 Ra)、Difco(3113-60)、ベクトンディッキンソン(cat#231131))を用いてエマルジョン化したものを皮下に投与した。2週間後に50μg/匹となるように調製したものをFIA(フロイント不完全アジュバント、Difco(0639-60)、ベクトンディッキンソン(cat#263910))でエマルジョン化したものを皮下に投与した。以降1週間間隔で追加免疫を合計5回行った。最終免疫については50μg/匹となるようにPBSに希釈し尾静脈内に投与した。GPC3コアタンパク質をコートしたイムノプレートを用いたELISAによりGPC3に対する血清中の抗体価が飽和しているのを確認後、マウスミエローマ細胞P3U1とマウス脾臓細胞を混合し、PEG1500(ロシュ・ダイアグノスティック、cat#783 641)により細胞融合を行った。96穴培養プレートに播種し、翌日よりHAT培地で選択後培養上清をELISAでスクリーニングした。陽性クローンについては限界希釈法によりモノクローン化した後、拡大培養を行い培養上清を回収した。ELISAによるスクリーニングは、GPC3コアタンパク質との結合活性を指標に行い、強い結合能を有する抗GPC3抗体を6クローン得た。
【0125】
抗体の精製はHi Trap ProteinG HP(Amersham CAT#17-0404-01)を用いて行った。ハイブリドーマ培養上清を直接カラムにチャージし、結合バッファー(20mM リン酸ナトリウム (pH7.0))にて洗浄後、溶出バッファー(0.1M グリシン-HCl (pH2.7))で溶出した。溶出は中和バッファー(1M Tris-HCl(pH9.0))を加えたチューブに行い直ちに中和した。抗体画分をプールした後、0.05%Tween20/PBSで一昼夜透析を行いバッファー置換した。精製された抗体は0.02%となるようにNaN3を添加した後、4℃で保管した。
【0126】
抗GPC3抗体の解析
抗体濃度はヤギ抗マウスIgG (gamma) (ZYMED CAT# 62-6600)とアルカリフォスファハターゼ - ヤギ抗マウス IgG (gamma)(ZYMED CAT# 62-6622)を用いたマウスIgGサンドイッチELISAを行い、市販の精製マウスIgG1抗体(ZYMED CAT#02-6100)をスタンダードとして定量した。
【0127】
抗GPC3抗体のアイソタイピングは、ImmunoPure Monoclonal Antibody Isotyping Kit II (PIERCE CAT# 37502)を用い、方法は添付のマニュアルに従った。アイソタイピングの結果全てIgG1タイプであった。
【0128】
GPC3コアタンパク質を用いたウエスタンブロッティングにより抗GPC3抗体のエピトープ分類を行った。100ng/レーンとなるように可溶型GPC3コアタンパク質を10%SDS-PAGE mini (TEFCO CAT#01-075)にチャージし、電気泳動(60V 30min, 120V 90min)後、Trans-Blot SD Semi-Dry Electrophoretic Transfer Cell (BIO-RAD)を用いてイモビロン-P(Millipore CAT#IPVH R85 10)へトランスファーした(15V 60min)。membraneをTBS-T(0.05% Tween20, TBS)で軽く洗った後、5%スキムミルク入りTBS-Tで1時間(室温)あるいは一晩(4℃)振とうした。TBS-Tで約10分間振とうした後、1%スキムミルク入りTBS-Tで0.1〜10μg/mLに希釈した各抗GPC3抗体を加え1時間振とうした。TBS-Tで洗い(10分間x3回)、1%スキムミルク入りTBS-Tで1.1000に希釈したHRP-抗マウスIgG抗体(Amersham CAT#NA931)で1時間振とう後、TBS-Tで洗った(10分x3回)。発色はECL-Plus (Amersham RPN2132)を用いて行い、Hyperfilm ECL(Amersham CAT# RPN2103K)を用いて現像した。図4にウエスタンブロット解析の結果を示す。40kDaのバンドに反応する抗体はN末端にエピトープを有し、30kDaのバンドに反応する抗体はC末端にエピトープを有すると判断し分類した。N末端側を認識する抗体としてM6B1、M18D4、M19B11、C末端側を認識する抗体としてM3C11、M13B3、M3B8を得た。BIACOREを用いた解析の結果、各抗体のKD値は0.2〜17.6nMであった。
【0129】
[実施例3]可溶性GPC3の検出
マウス異種移植(xenograft)モデル
6週令雌性のSCIDマウス(Fox CHASE C.B-17/Icr-scid Jcl、日本クレア株式会社)およびヌードマウス(BALB/cA Jcl-nu、日本クレア株式会社)の腹部皮下へヒト肝癌HepG2細胞を300万個移植した。腫瘤が充分に形成された53日後にHepG2移植SCIDマウス#1,3,4の後大静脈より全採血し、EDTA-2Naとアプロチニン存在下(ニプロネオチューブ真空採血管、NIPRO、NT-EA0205)で血漿を調製し、測定日まで-20℃で保管した。なお、HepG2移植SCIDマウス#2はHepG2移植62日後に、HepG2移植ヌードマウス#1,2は移植66日後に後大静脈より全採血した。対照として、同週令の正常SCIDマウスから同様の操作で血漿を調製した。
【0130】
サンドイッチELISA
血中の可溶型GPC3を検出するため、GPC3のサンドイッチELISA系を構築した。96ウェルプレートにコートする抗体にはM6B1を、M6B1に結合したGPC3を検出する抗体としてビオチンで標識したM18D4を用いた。発色には高い検出感度を達成するためDAKO社のAMPAKを用いた。
【0131】
96ウェルイムノプレートに10μg/mLとなるように抗GPC3抗体をコーティングバッファー(0.1M NaHCO3(pH9.6), 0.02%(w/v) NaN3)で希釈したものをコートし、4℃で一晩インキュベートした。翌日300μL/wellの洗浄バッファー(0.05%(v/v) Tween20, PBS)で3回洗浄後、200μLの希釈バッファー(50mM Tris-HCl(pH8.1), 1mM MgCl2, 150mM NaCl, 0.05%(v/v) Tween20, 0.02%(w/v) NaN3, 1%(w/v) BSA)を加えブロッキングを行った。室温で数時間後、あるいは4℃で一晩保管後、マウス血漿、あるいは培養上清を希釈バッファーで適当に希釈したものを加え1時間室温でインキュベートした。300μL/ウェルのRBで3回洗浄後、希釈バッファーで10μg/mLとなるように希釈したビオチン標識した抗GPC3抗体を加え1時間室温でインキュベートした。300μL/ウェルのRBで3回洗浄後、希釈バッファーで1/1000に希釈したAP-ストレプトアビジン(ZYMED)を加え、1時間室温でインキュベートした。300μL/wellの洗浄バッファーで5回洗浄した後、添付のプロトコールに従いAMPAK(DAKO CAT#K6200)を用いて発色させ、マイクロプレートリーダーで吸光度を測定した。
【0132】
抗体のビオチン化にはRoche社のBiotin Labeling Kit (CAT# 1 418 165)を用いた。また、サンプル中の可溶型GPC3濃度の換算には、表計算ソフトGlaphPad PRISM(GlaphPad software Inc. ver.3.0)を用いて解析した。図5に本実施例のサンドイッチELISAの原理を示す。
【0133】
精製可溶型GPC3を用いてスタンダードカーブを作製した結果、検出限界が数ng/mLの系を構築することができた。図6にM6B1およびM18D4を用いたGPC3サンドイッチELISAのスタンダードカーブを示した。この系を用い、前述のHepG2の培養上清、及びヒト肝癌HepG2細胞を移植したマウス血清中の分泌型GPC3の検出を試みた。コントロールの培地、及びコントロールマウス血清では可溶型GPC3は検出限界以下であったのに対し、HepG2の培養上清、及びヒト肝癌HepG2細胞を移植したマウス血清中に可溶型GPC3が検出された。精製可溶型GPC3の濃度に換算すると、HepG2培養上清では1.2μg/mL、マウス血清でも23〜90ng/mLであった(表1)。
【表1】

【0134】
分泌型GPC3の構造
先に立てた仮説通り、血中可溶化GPC3がN末端断片の構造をとっているかについて検討を行った。分泌型GPC3がN末端断片であった場合、N末端認識抗体とC末端認識抗体の組み合わせのサンドイッチELISAでは検出できないと考えられる。N末端断片を認識する抗体及びC末端側断片を認識する抗体それぞれ3種ずつを用いて、様々な組み合わせのサンドイッチELISA系を構築した。図7に分泌可溶化型GPC3の構造を、図8に抗体の組み合わせを示す。図9にこのサンドイッチELISAのスタンダードカーブを示す。表1に測定結果を示すが、表1に示すようにHepG2の培養上清、及びヒト肝癌HepG2細胞を移植したマウス血清中の分泌型GPC3の検出はN末端側断片認識抗体同士の組み合わせでは高い値を示し、C末端断片認識抗体を含む系では多くのマウスで検出限界以下であった。このことから、今回明らかになった分泌型GPC3はN末端断片が優位であることが予想された。すなわち、GPC3のアミノ酸第1番目から第374番目のアミノ酸配列に対する抗体を用いる事により、血中可溶化GPC3の検出が高感度に行われる可能性が考えられた。
【0135】
[実施例4]抗GPC3マウス-ヒトキメラ抗体の作製
ヒトGPC3に結合する抗体(ヒトGPC3-C末端認識抗体:M3C11、M1E07、ヒトGPC3-N末端認識抗体:M19B11、M18D04、M5B09、M10D02)を産生するハイブリドーマより抽出したTotal RNAを用いて、RT-PCR法によって増幅した。Total RNAは、RNeasy Plant Mini Kits(QIAGEN社製)を用いて1×10細胞のハイブリドーマより抽出した。1μgのTotal RNAを使用して、SMART RACE cDNA Amplification Kit(CLONTECH社製)、マウスIgG1定常領域配列に相補的な合成オリゴヌクレオチドMHC-IgG1(配列番号:7)またはマウスκ鎖定常領域塩基配列に相補的な合成オリゴヌクレオチドkappa(配列番号:8)を用い、5´末端側遺伝子断片を増幅した。逆転写反応は42℃で1時間30分間反応した。PCR溶液50μlは、5μlの10×Advantage 2 PCR Buffer、5μLの10×Universal Primer A Mix、0.2mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、1μLのAdvantage 2 Polymerase Mix(以上、CLONTECH社製)、2.5μLの逆転写反応産物、10pmoleの合成オリゴヌクレオチドMHC-IgG1またはkappaを含有し、94℃の初期温度にて30秒間そして94℃にて5秒間、72℃にて3分間のサイクルを5回反復し、94℃にて5秒間、70℃にて10秒間、72℃にて3分間のサイクルを5回反復し、さらに94℃にて5秒間、68℃にて10秒間、72℃にて3分間のサイクルを25回反復した。最後に反応産物を72℃で7分間加熱した。各PCR産物はQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて、アガロースゲルから精製した後、pGEM-T Easyベクター(Promega社製)へクローニングし、塩基配列を決定した。
【0136】
次に各抗体のH鎖およびL鎖可変領域配列をヒトH鎖およびヒトL鎖定常領域配列に連結した。各抗体のH鎖可変領域の5´末端側塩基配列に相補的でコザック配列を有する合成オリゴヌクレオチドおよびNheI部位を有する3´末端側塩基配列に相補的な合成オリゴヌクレオチドを用いてPCRを行い、得られたPCR産物をヒトIgG1定常領域がpBluescript KS+ベクター(東洋紡社製)に挿入されているpB-CHベクターにクローニングした。NheI部位により、マウスH鎖可変領域とヒトH鎖(γ1鎖)定常領域が連結している。作製されたH鎖遺伝子断片を発現ベクターpCXND3にクローニングした。本ベクターpCXND3の構築の流れについて、以下に述べる。DHFR-ΔE-rvH-PM1-f(WO92/19759参照)の抗体H鎖遺伝子とベクターを分割するために、制限酵素EcoRI/SmaI部位で消化し、ベクター側のみ回収した後に、EcoRI-NotI-BamHI adaptor(宝酒造社製)をクローニングした。このベクターをpCHOIと命名した。pCHOIのDHFR遺伝子発現部位をpCXN(Niwaら、Gene 1991;108:193-200)の制限酵素HindIII部位にクローニングしたベクターをpCXND3と命名した。本プラスミドに含まれる抗GPC3マウス-ヒトキメラ抗体(M3C11、M1E07、M19B11、M18D04)のH鎖の塩基配列をそれぞれ配列番号:9、11、13、15にアミノ酸配列をそれぞれ配列番号:10、12、14、16に示す。また、各抗体のL鎖可変領域の5´末端側塩基配列に相補的でコザック配列を有する合成オリゴヌクレオチドおよびBsiWI部位を有する3´末端側塩基配列に相補的な合成オリゴヌクレオチドを用いてPCRを行い、得られたPCR産物をヒトkappa鎖定常領域がpBluescript KS+ベクター(東洋紡社製)に挿入されているpB-CLベクターにクローニングした。BsiWI部位により、ヒトL鎖可変領域と定常領域が連結している。作製されたL鎖遺伝子断片を発現ベクターpUCAGクローニングした。本ベクターpUCAGは、pCXN(Niwaら、Gene 1991;108:193-200)を制限酵素BamHIで消化して得られる2.6kbpの断片をpUC19ベクター(東洋紡社製)の制限酵素BamHI部位に連結し、クローニングしたベクターである。本プラスミドに含まれる抗GPC3マウス-ヒトキメラ抗体(M3C11、M1E07、M19B11、M18D04)のL鎖の塩基配列をそれぞれ配列番号:17、19、21、23にアミノ酸配列をそれぞれ配列番号:18、20、22、24に示す。
【0137】
抗GPC3マウス-ヒトキメラ抗体発現ベクターを作製するために、L鎖遺伝子断片が挿入されたpUCAGベクターを制限酵素HindIII(宝酒造社製)で消化して得られる遺伝子断片をH鎖遺伝子が挿入されたpCXND3の制限酵素HindIII切断部位に連結し、クローニングした。本プラスミドは動物細胞内でネオマイシン耐性遺伝子、DHFR遺伝子、抗GPC3マウス-ヒトキメラ抗体遺伝子を発現する。
【0138】
CHO細胞(DG44株)を用いた安定発現細胞株の作製は次のようにして行った。Gene PulserII(Bio Rad社製)を用いたエレクトロポレーション法により遺伝子導入した。25μgの各抗GPC3マウス-ヒトキメラ抗体発現ベクターとPBSに懸濁したCHO細胞(1×10細胞/ml)の0.75mlを混合したものを氷上で10分間冷却し、キュベットに移した後に1.5kV、25μFDの容量にてパルスを与えた。室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を、HT supplement(Invitrogen社製)を1倍濃度で含むCHO-S-SFMII培地(Invitrogen社製)40mLに懸濁した。同様の培地で50倍希釈溶液を作製し、96ウェル培養用プレートに100μl/ウェルで分注した。CO2インキュベーター(5%CO2)で24時間培養後、Geneticin(Invitrogen社製)を0.5mg/mLになるように添加して2週間培養した。Geneticin耐性を示す形質転換細胞のコロニーが観察されたウェルの培養上清中のIgG量について以下に示す濃度定量法で測定した。高産生細胞株を順次拡大培養し、抗GPC3マウス-ヒトキメラ抗体安定発現細胞株を取得し、大量培養を行い、培養上清を得た。
【0139】
培養上清中のIgG濃度の測定は、Goat Anti-Human IgG(BIOSORCE社製)とGoat Anti-Human IgG Alkaline Phosphatase conjugated(BIOSORCE社製)を用いたヒトIgGサンドイッチELISAを行い、市販の精製ヒトIgG(Cappel社製)との比較により定量した。
【0140】
各抗GPC3マウス-ヒトキメラ抗体の精製は、Hi Trap ProteinG HP(Amersham社製)を用いて行った。抗GPC3マウス-ヒトキメラ抗体産生CHO細胞株の培養上清を直接カラムにチャージし、結合バッファー(0.1Mグリシン-HCl(pH2.7))で溶出した。中和バッファー(1M Tris-HCl(pH9.0))を加えたチューブに溶出し、直ちに中和した。抗体画分をプールした後、0.05%Tween20/PBSで一昼夜透析を行い、バッファーを置換した。精製された抗体は0.02%となるようにNaN3を添加した後、4℃で保管した。
【0141】
[実施例5]抗GPC3マウス-ヒトキメラ抗体の作製
全長ヒトGPC3 cDNAがクローニングされたpGEM-T Easyベクターを制限酵素EcoRI(宝酒造社製)で消化して得られるヒトGPC3 cDNAを発現ベクターpCOS2にクローニングした。本ベクターpCOS2の構築の流れについて、以下に述べる。DHFR-ΔE-rvH-PM1-f(WO92/19759参照)の抗体H鎖遺伝子とベクターを分割するために、制限酵素EcoRI/SmaI部位で消化し、ベクター側のみ回収した後に、EcoRI-NotI-BamHI adaptor(宝酒造社製)をクローニングした。このベクターをpCHOIと命名した。さらに、pCHOIのDHFR遺伝子発現部位を除去し、HEF-VH-gγ1(Sato Kら、Mol.Immunol.1994;31:371-381)のNeomycin耐性遺伝子発現部位を挿入した。このベクターをpCOS2と命名した
【0142】
全長ヒトGPC3安定発現細胞株の作製は次のようにして行った。10μgの全長ヒトGPC3遺伝子発現ベクターと60μLのSuperFect(QIAGEN社製)を混合し、複合体を形成させた後に、CHO細胞DXB11株に添加することにより、遺伝子導入を行った。CO2インキュベーター(5%CO2)で24時間培養後、終濃度0.5mg/mLのGeneticin(Invitrogen社製)および10% FBS(GIBCO BRL社製)を含むαMEM(GIBCO BRL社製)を用いて、選抜を開始した。得られたGeneticin耐性コロニーを集め、限界希釈法により細胞のクローニングを行った。それぞれの細胞クローンを可溶化し、抗GPC3抗体を用いたウエスタンブロットにより全長ヒトGPC3の発現を確認し、安定発現細胞株を取得した。
【0143】
[実施例6]ヒト末梢血由来PBMCを用いたADCC活性の測定
(1)ヒトPBMC溶液の調製
健常人よりヘパリン加採血した末梢血を、PBS(-)で2倍に希釈し、Ficoll-PaqueTMPLUS(Amersham Pharmacia Biotech AB)に重層した。これを遠心(500×g、30分間、20℃)した後、単核球画分である中間層を分取した。3回洗浄後、10% FBS/RPMIに懸濁し、ヒトPBMC溶液とした。
【0144】
(2)標的細胞の調製
10%FBS/RPMI1640培地で培養したHepG2細胞を、トリプシン-EDTA(Invitrogen Corp)を用いてディッシュから剥離し、96ウェルU字底プレート(Falcon)の各ウェルに1×104細胞/ウェルで分注し、2日間培養した。培養後、5.55MBqのChromium-51を加え、5%炭酸ガスインキュベータ中37℃1時間培養し、この細胞を培地で1回洗浄し、50μLの10%FBS/RPMI1640培地を加え標的細胞とした。
【0145】
(3)クロム遊離試験(ADCC活性)
標的細胞に各濃度に調製した抗体溶液50μLを添加し、氷上で15分反応させた後に、ヒトPBMC溶液100μL(5×105 細胞/ウェル)を加え、5%炭酸ガスインキュベータ中37℃4時間培養し、培養後、プレートを遠心分離し、培養上清100μL中の放射活性をガンマカウンターで測定した。下式により特異的クロム遊離率を求めた。
特異的クロム遊離率(%)=(A-C)×100/(B-C)
【0146】
Aは各ウェルにおける放射活性(cpm)の平均値、Bは標的細胞に2% NP-40水溶液(Nonidet P-40、Code No.252-23、ナカライテスク株式会社)を100 μL、10%FBS/RPMI培地を50 μL添加したウェルにおける放射活性(cpm)の平均値、Cは標的細胞に10%FBS/RPMI培地を150 μL添加したウェルにおける放射活性(cpm)の平均値を示す。試験はtriplicateにて行い、ADCC活性(%)について平均値及び標準誤差を算出した。
【0147】
その結果を第10図に示した。6種類の抗GPC3キメラ抗体のうち、C末端認識抗体であるch.M3C11とch.M1E07がADCC活性を示したのに対して、N末端認識抗体であるch.M19B11, ch.M18D04, ch.M5E09, ch.M10D02はほとんどADCC活性を示さなかった。以上の結果はキメラ抗体のADCC活性は抗体の認識部位によって異なることを示しており、さらに、切断点よりC末端側を認識する抗体がADCC活性を示したことから、GPC3のC末端認識抗体は臨床応用上有用であることが予想された。
【0148】
[実施例7]補体依存性細胞障害活性(CDC活性)の測定
(1)Human Albumin Veronal Buffer(HAVB)の作製
NaCl(特級、和光純薬工業株式会社)12.75 g、Na-barbital(特級、和光純薬工業株式会社)0.5625 g、barbital(特級、和光純薬工業株式会社)0.8625 gをミリQ水に溶解し200 mLとした後、オートクレーブ処理(121℃、20分間)した。オートクレーブ処理した100 mLの温ミリQ水を加え、pH7.43を確認した(推奨pH7.5)。これを5×Veronal Bufferとした。CaCl2・2H2O(特級、純正化学株式会社)0.2205 gを50 mLミリQ水に溶解し0.03 mol/Lとし、CaCl2溶液とした。MgCl2・6H2O(特級、純正化学株式会社)1.0165 gを50 mLミリQ水に溶解し0.1 mol/Lとし、MgCl2溶液とした。5×Veronal Buffer 100 mL、ヒト血清アルブミン(ブミネートa25%、ヒト血清アルブミン濃度250 mg/mL、バクスター株式会社)4 mL、CaCl2溶液2.5 mL、MgCl2溶液 2.5 mL、KCl(特級、純正化学株式会社)0.1 g、glucose (D(+)-グルコース、ブドウ糖無水、特級、和光純薬工業株式会社) 0.5 gをミリQ水に溶解し500 mLとした。これをHAVBとした。ろ過滅菌後、設定温度5℃にて保存した。
【0149】
(2)標的細胞の調製
実施例4で作製されたGPC3を細胞膜上に発現させたCHO細胞は、10%FBSと0.5mg/mL Geneticin(GIBCO)を添加したa-MEM核酸(+)培地(GIBCO)で培養し、細胞剥離緩衝液(Invitrogen Corp)を用いてディッシュから剥離して、96ウェル平底プレート(Falcon)の各ウェルに1×104細胞/ウェルで分注し、3日間培養した。培養後、5.55MBqのChromium-51を加え、5%炭酸ガスインキュベータ中37℃ 1時間培養し、この細胞をHAVBで2回洗浄し、50μLのHAVBを加え標的細胞とした。
【0150】
(3) クロム遊離試験(CDC活性)
各キメラ抗体をHAVBで希釈して40μg/mLの抗体溶液とした。標的細胞に抗体溶液を50 μLずつ添加し、氷上にて15分間静置した。続いて、各ウェルにHAVBにて希釈した幼若ウサギ補体(Cedarlane)を終濃度30%になるよう100 μLずつ添加し(抗体の終濃度10μg/mL)、5%炭酸ガスインキュベーター中に37℃で90分間静置した。プレートを遠心分離後、各ウェルより上清を100μLずつ回収し、ガンマカウンターにて放射活性を測定した。下式により特異的クロム遊離率を求めた。
特異的クロム遊離率(%)= (A-C)×100/(B-C)
【0151】
Aは各ウェルにおける放射活性(cpm)、Bは標的細胞に2% NP-40水溶液(Nonidet P-40、Code No.252-23、ナカライテスク株式会社)を100 μL、HAVBを50 μL添加したウェルにおける放射活性(cpm)の平均値、Cは標的細胞にHAVBを150 μL添加したウェルにおける放射活性(cpm)の平均値を示す。試験はtriplicateにて行い、CDC活性(%)について平均値及び標準誤差を算出した。
【0152】
その結果を第11図に示した。6種類の抗GPC3キメラ抗体のうち、C末端認識抗体であるch.M3C11とch.M1E07がCDC活性を示したのに対して、N末端認識抗体であるch.M19B11, ch.M18D04, ch.M5E09, ch.M10D02はいずれも低いCDC活性しか示さなかった。以上の結果はキメラ抗体のCDC活性は抗体の認識部位によって異なることを示しており、さらに、切断点よりC末端側を認識する抗体がCDC活性を示したことから、GPC3のC末端認識抗体は臨床応用上有用であることが予想された。
【産業上の利用可能性】
【0153】
実施例に示したように、肝癌細胞で高発現しているGPC3は一部分泌型として血液中に存在する可能性が示された。GPC3は肝癌マーカーであるAFPよりも早期の癌で遺伝子発現が認められるので、GPC3の検出は癌の診断として有用であると考えられる。GPC3は肝癌細胞株以外に、肺癌、大腸癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、リンパ腫などの癌細胞株においても発現が確認されているので、肝癌以外の診断にも適用できる可能性がある。
【0154】
また、血中可溶化GPC3は、可溶型GPC3コアタンパク質で認められた約40kDaのN末端断片が優位である可能性が示された。このことから診断用抗体としてはN末端断片認識抗体が有用と考えられる。また、ADCC活性及びCDC活性を有する肝癌治療用抗体としてはC末端断片認識抗体を用いれば、血中の分泌型GPC3にトラップされること無く効率的に肝癌細胞に到達することが可能であり、癌細胞破壊剤、抗癌剤として有用である。
【0155】
本明細書に引用されたすべての刊行物は、その内容の全体を本明細書に取り込むものとする。また、添付の請求の範囲に記載される技術思想および発明の範囲を逸脱しない範囲内で本発明の種々の変形および変更が可能であることは当業者には容易に理解されるであろう。本発明はこのような変形および変更をも包含することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】図1は、Gene Chip を用いたGPC3mRNAの発現解析の結果を示す図であり、図1AはGPC3の発現を、図1Bはアルファフェトプロテイン(AFP)の発現を示す。横軸のNL、CH、LC、WD、MDおよびPDはそれぞれ正常肝臓、肝炎症部位、肝硬変部位、高分化癌、中分化癌および低分化癌を示す。
【図2】図2は、精製へパラン硫酸付加型のGPC3及びGPC3コアタンパク質のCBB染色像を示す図である。
【図3】図3は、ヒト肝臓癌におけるGPC3遺伝子の発現を示す図である。
【図4】図4は、抗GPC3抗体を用いて行った可溶型コアタンパク質のウエスタンブロッティングの結果を示す図である。
【図5】図5は、抗GPC3抗体を用いたサンドイッチELISAの原理を示す図である。
【図6】図6は、M6B1およびM18D4を用いたGPC3サンドイッチELISAのスタンダードカーブを示す図である。
【図7】図7は、GPC3の構造を示す模式図である。
【図8】図8は、ELISAにおける抗GPC3抗体の組み合わせを示す図である。
【図9】図9は、様々な組み合わせの抗GPC3抗体を用いたGPC3サンドイッチELISA系のスタンダードカーブを示す図である。
【図10】図10は、抗GPC3C末端ペプチド抗体のADCC活性測定の結果を示す図である。
【図11】図11は、抗GPC3C末端ペプチド抗体のCDC活性測定の結果を示す図である。
【配列表フリーテキスト】
【0157】
配列番号1−人工配列の説明:合成DNA
配列番号2−人工配列の説明:合成DNA
配列番号5−人工配列の説明:合成DNA
配列番号6−人工配列の説明:合成DNA
配列番号7−人工配列の説明:合成DNA
配列番号8−人工配列の説明:合成DNA
配列番号9−人工配列の説明:マウス−ヒトキメラ抗体(M3C11 H鎖)
配列番号10−人工配列の説明:マウス−ヒトキメラ抗体(M3C11 H鎖)
配列番号11−人工配列の説明:マウス−ヒトキメラ抗体(M1E07 H鎖)
配列番号12−人工配列の説明:マウス−ヒトキメラ抗体(M1E07 H鎖)
配列番号13−人工配列の説明:マウス−ヒトキメラ抗体(M19B11 H鎖)
配列番号14−人工配列の説明:マウス−ヒトキメラ抗体(M19B11 H鎖)
配列番号15−人工配列の説明:マウス−ヒトキメラ抗体(M18D04 H鎖)
配列番号16−人工配列の説明:マウス−ヒトキメラ抗体(M18D04 H鎖)
配列番号17−人工配列の説明:マウス−ヒトキメラ抗体(M3C11 L鎖)
配列番号18−人工配列の説明:マウス−ヒトキメラ抗体(M3C11 L鎖)
配列番号19−人工配列の説明:マウス−ヒトキメラ抗体(M1E07 L鎖)
配列番号20−人工配列の説明:マウス−ヒトキメラ抗体(M1E07 L鎖)
配列番号21−人工配列の説明:マウス−ヒトキメラ抗体(M19B11 L鎖)
配列番号22−人工配列の説明:マウス−ヒトキメラ抗体(M19B11 L鎖)
配列番号23−人工配列の説明:マウス−ヒトキメラ抗体(M18D04 L鎖)
配列番号24−人工配列の説明:マウス−ヒトキメラ抗体(M18D04 L鎖)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPC3のN端ペプチドに対する抗体。
【請求項2】
GPC3のN端ペプチドが血中可溶化ペプチドである請求項1記載の抗体。
【請求項3】
GPC3のN端ペプチドがGPC3の第1番目のアミノ酸から第374番目のアミノ酸からなるペプチド又は第1番目のアミノ酸から第358番目のアミノ酸からなるペプチドである請求項2記載の抗体。
【請求項4】
GPC3のN端ペプチドがGPC3の第1番目のアミノ酸から第358番目のアミノ酸からなるペプチドである請求項3記載の抗体。
【請求項5】
モノクローナル抗体である請求項1から4のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項6】
不溶性支持体に固定されていることを特徴とする請求項1記載の抗体。
【請求項7】
標識物質で標識されていることを特徴とする請求項1記載の抗体。
【請求項8】
GPC3のC端ペプチドに対する抗体。
【請求項9】
GPC3のC端ペプチドがGPC3の第359番目のアミノ酸から第580番目のアミノ酸からなるペプチド又は第375番目のアミノ酸から第580番目のアミノ酸からなるペプチドである請求項8記載の抗体。
【請求項10】
GPC3のC端ペプチドがGPC3の第359番目のアミノ酸から第580番目のアミノ酸からなるペプチドである請求項9記載の抗体。
【請求項11】
モノクローナル抗体である請求項8から10いずれかに記載の抗体。
【請求項12】
キメラ抗体である請求項8〜10のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項13】
細胞傷害抗体である請求項7から12のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項14】
請求項7から13のいずれか1項に記載の抗体を含む細胞破壊剤。
【請求項15】
細胞が癌細胞である請求項14記載の細胞破壊剤。
【請求項16】
請求項8から13のいずれか1項に記載の抗体を含む抗癌剤。
【請求項17】
請求項8から13のいずれか1項に記載の抗体を細胞と接触させることを含む、細胞傷害を引き起こす方法。
【請求項18】
細胞が癌細胞である請求項17記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−108047(P2009−108047A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261270(P2008−261270)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【分割の表示】特願2004−534160(P2004−534160)の分割
【原出願日】平成15年9月4日(2003.9.4)
【出願人】(000003311)中外製薬株式会社 (228)
【Fターム(参考)】