説明

H型鋼杭の構造

【課題】簡単な構成で、施工性に優れるとともに、先端支持力を向上させて本設構造物の基礎杭等にも使用可能なH型鋼杭を得る。
【解決手段】H型鋼杭(10)の先端中央部に開口を設けてフランジ間にプレート(20,21)を渡して取付けた構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は施工性を改善し、先端支持力を大きくしたH型鋼杭の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物や仮設構造物の基礎に使用されているH型鋼杭は、地震などによる水平方向に作用する曲げモーメントに対する杭の耐力が、フランジと平行な軸回りのモーメントに対しては強く、ウエブと平行な軸回りモーメントに対しては弱く、水平荷重作用方向に対する耐力の差が大きい。そこで、H型鋼杭の頭部や先端部の側面フランジ端部間にウエブと平行に補強鋼板を設けることで、水平荷重作用方向に対する耐力の差を少なくし、ソイルセメント工法などで施工した際、補強鋼板とフランジとで杭先端部が閉断面を構成するようにして鉛直支持力を向上させるようにしたものが提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、H型鋼杭の先端部にワイヤにより開閉可能な開閉部を有する面積拡大部材を取付け、杭の打設中は開閉部を閉じて貫入抵抗を小さくし、所定深さまで打設したときワイヤを僅かに牽引することで開閉部を開くと、貫入抵抗により開閉部が全開し、面積拡大部材により杭の底面積が拡大して先端支持力を強化するようにしたものも提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平11−293667号公報
【特許文献2】特開平2007−85043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、H型鋼杭の先端部の側面フランジ端部間にウエブと平行に補強鋼板を設けることで、水平荷重作用方向に対する耐力の差を少なくし、ソイルセメント工法などで施工した際、補強鋼板とフランジとで杭先端部が閉断面を構成するようにして鉛直支持力(引き抜き力に対する反力)を向上させているが、H型鋼杭の先端支持力(荷重に対する反力)は、その鋼板の面積でしか評価されないため、補強鋼板の厚み分だけしか増加しない。
【0005】
特許文献2では、H型鋼杭の先端部に開閉可能な面積拡大部材を取り付け、杭を設置したとき杭先端部の面積を拡大させて先端支持力を強化させているが、H型鋼杭先端に開閉可能な面積拡大部材を取り付けて貫入抵抗により全開させるという複雑な構成であるため、コストアップになるとともに、面積拡大部材の開閉部材がうまく開かない場合も起こり得る可能性もあり、その場合は先端支持力の向上を図ることができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決しようとするものであり、簡単な構成で、施工性に優れるとともに、先端支持力を向上させて本設構造物の基礎杭等にも使用可能なH型鋼杭の構造を提供することを目的とする。
本発明は、H型鋼杭の先端中央部に開口を設けてフランジ間にプレートを取付けたことを特徴とする。
また、本発明は、H型鋼杭の各フランジの先端角部から内側へ所定高さまで斜めに切断し、各斜め切断面の間のフランジとウエブとを切断除去し、フランジの各斜め切断面間にプレートを取り付けたことを特徴とする。
また、本発明は、H型鋼杭の各フランジの先端中央部を残して先端角部を斜めに切断除去し、各切断面間にプレートを取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、H型鋼杭の先端部に開口を設けてプレートを取り付けるようにしたので、杭先端部の面積を拡大して先端支持力の強化を図ることができ、簡単な構造で経済性に優れ、開口により建込み時の抵抗を小さくして施工性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
H型鋼杭の建て込みには、オーガーにより削孔してセメントミルク等を充填した後にH型鋼杭を建込むプレボーリング工法が使用されているが、H型鋼杭が開断面のため施工精度が十分ではないため先端の品質を所定のとおり確保しにくい。また、ソイルセメントで先端強度は確保されるものの先端支持力は十分ではないので仮設構造物用の杭としてしか使用されていない。そこで、本発明はH型鋼杭の先端中央部に開口を設けてフランジ間にプレートを取付ける構造とすることで先端閉断面形状として施工精度を改善し、H型鋼の辺×辺の面積で先端支持力を発揮できる構成を採用する。
【0009】
図1はH型鋼杭の一実施例を説明する図であり、図1(a)はフランジ面に垂直な側断面図、図1(b)は杭先端の平面図である。
H型鋼杭10は、ウエブ11の両側部にフランジ12,13を有しており、その先端部には中央部に開口を設けて2枚のプレート20,21を取り付けた構造を有している。すなわち、フランジ12の先端角部12a,12b、フランジ13の先端角部13a,13bから内側へ所定高さまで斜めにフランジを切り込み、さらにフランジ12、13の各斜め切断面の間のフランジ部とウエブとを切断除去し、フランジ12,13の各斜め切断面間に鋼製のプレート20,21を取り付けた構造で、プレート20,21の間の中央部は開口している。
【0010】
この杭先端構造によれば、オーガーにより削孔してセメントミルク等を充填した後、H型鋼杭を建込む際に、プレート20、21の先端が外側に向かって斜めに食い込み、セメントミルク等の充填物が中央部の開口を通して逃げるため施工性に優れ、プレート20、21があるため先端閉断面形状が形成されて施工精度が改善する。さらに、杭建込み後、ソイルセメントが固化した状態では中央部に開口があるとは言え、フランジの幅をS、ウエブ幅をLとしたとき、杭先端底面積がS×Lに拡大して先端支持力を強化することができ、本設構造物の基礎杭として使用可能となる。なお、フランジの先端角部から内側へ所定高さまで斜めに切り込む角度は、例えば、30°、45°、60°等任意であり、状況に応じて選択すればよい。
【0011】
図2はH型鋼杭の他の実施例を説明する図であり、図2(a)はフランジ面に垂直な側断面図、図2(b)は杭先端の平面図である。
この例においても、H型鋼杭10の先端中央部に開口を設けて2枚のプレート30,31を取り付けた構造を有している。すなわち、フランジ12の先端角部12a,12b、フランジ13の先端角部13a,13bの部分を、フランジの先端中央部を残してその外側を斜めに切断除去し、各プレートの切断面間に鋼製のプレート30,31を取り付けた構造で、プレート30,31の間の中央部は開口している。
【0012】
この杭先端構造によれば、オーガーにより削孔してセメントミルク等を充填した後、H型鋼杭を建込む際に、プレート30、31の先端が中央部に向かって斜めのため、プレートの外面でセメントミルク等の充填物を外側に排除しながら、中央部の開口を通して充填物が逃げるため施工性に優れ、プレート30、31があるため先端閉断面形状が形成されて施工精度が改善する。さらに、杭建込み後、ソイルセメントが固化した状態では中央部に開口があるとは言え、フランジの幅をS、ウエブ幅をLとしたとき、杭先端底面積がS×Lに拡大して先端支持力を発揮することができ、本設構造物の基礎杭として使用可能となる。フランジの先端角部を切断する角度は、例えば、30°、45°、60°等任意であり、状況に応じて選択すればよい。
【0013】
なお、上記の例においては、施工性を考慮してH型鋼杭先端部のフランジやウエブの一部を切断してプレートを取り付けるようにしたが、状況に応じて杭先端部の一部を特に切断せず、杭先端部に2枚のプレートを中央部に開口を設けるようにしてフランジ間に取り付けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】H型鋼杭の一実施例を説明する図である。
【図2】H型鋼杭の他の実施例を説明する図である。
【符号の説明】
【0015】
10…H型鋼杭、11…ウエブ、12,13…フランジ、20,21,30,31…プレート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
H型鋼杭の先端中央部に開口を設けてフランジ間にプレートを取付けたことを特徴とするH型鋼杭の構造。
【請求項2】
H型鋼杭の各フランジの先端角部から内側へ所定高さまで斜めに切断し、各斜め切断面の間のフランジとウエブとを切断除去し、フランジの各斜め切断面間にプレートを取り付けたことを特徴とする請求項1記載のH型鋼杭の構造。
【請求項3】
H型鋼杭の各フランジの先端中央部を残して先端角部を斜めに切断除去し、各切断面間にプレートを取り付けたことを特徴とする請求項1記載のH型鋼杭の構造。

【図1】
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【図2】
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