説明

HER−2ペプチド

免疫系を刺激することができ、かつHER−2タンパク質の過剰発現を随伴する悪性疾患の治療に使用することができる組成物、方法およびワクチンを提供する。こうした組成物は、HER−2タンパク質のエピトープを含む。一部の実施形態において、HER−2 Bエピトープは、免疫原性である。加えて、本発明は、1つまたはそれ以上のキメラペプチドを含む組成物を提供し、該キメラペプチドは、HER−2 Bエピトープを含む。加えて、1つまたはそれ以上の多価ペプチドを有する組成物を提供する。これらの多価ペプチドは、2つまたはそれ以上のHER−2 Bエピトープを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2005年6月15日に出願され、表題「HER-2 Peptides」の米国仮出願第60/690,574号(この全体が、本明細書に参考として援用される)への優先権およびあらゆるほかの利益を主張する。
【0002】
(政府の支援)
本出願に記載する研究は、少なくとも一部は、米国国立衛生研究所(the National Institute of Health)からの援助 NIH 5ROI CA 84356による支援を受けている。米国連邦政府は、本発明に関して一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
現在、乳癌治療の最も一般的なアプローチは、手術、化学的介入および/または放射線療法を含む。癌が被定義領域に限定されなければ、手術のみで癌を除去することはできない。それ故、手術部位付近にあり、手術を免れた癌細胞を破壊するために、手術後、放射線治療を施すことが多い。こうした治療の副作用としては、皮膚の過敏性または痒み、免疫系への干渉、時として、吐き気、および希に、肺の患部が繊維性になる放射線肺線維症が挙げられる。化学療法が手術後に用いられることもある。化学療法には、癌細胞に対して傷害性である薬物が用いられる。これは、完全に選択的なシステムではないので、正常な細胞にも影響を及ぼす。負の副作用としては、悪心、疲労、脱毛、食欲不振および下痢が挙げられる。
【0004】
こうした現在の治療に鑑みて、さらなる乳癌治療アプローチの発見が試みられている。1つのそうしたアプローチが、免疫療法である。免疫療法アプローチのターゲットの1つは、HER−2タンパク質である。HER−2タンパク質(HER−2癌遺伝子の産物)は、様々な癌の際に過剰発現される。これは、非侵潤性乳管癌の50%〜60%およびすべての乳癌の20%〜40%、ならびに卵巣、前立腺、結腸および肺において発生する腺癌の実質的な割合に認められる。ヒトでは、HER−2タンパク質の過剰発現は、悪性形質転換と関係がある。HER−2タンパク質の過剰発現は、悪性疾患の攻撃性にも密接に関連しており、これは、浸潤性乳癌の四分の一に認められる。HER−2タンパク質の過剰発現は、乳癌においても、卵巣癌においても、予後不良と相関している。
【0005】
最近の研究において、HER−2の細胞外結合ドメイン(ECD)に対する抗体は、インビトロおよびインビボ動物モデルの腫瘍増殖に対して阻害作用をもたらすことが証明された(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;および非特許文献5)。加えて、転移性HER−2過剰発現性乳癌を有する患者における組み換えヒト化抗HER−2モノクローナル抗体であるトラスツズマブのIIおよびIII相臨床試験は、単一薬剤として15%の全奏功率をもたらした。トラスツズマブは、細胞傷害性化学療法薬と併用されたとき生存を向上させることも証明された(非特許文献6;非特許文献7)。組み換えHER−2タンパク質、HER−2 ECD、またはHER−2のラット同族体であるラットneuのECDをターゲットにする多数のワクチンアプローチも評価された。例えば、ECDラットneuを発現するワクシニアウイルス組み換え体で免疫したNFS細胞株マウスは、neu形質転換NIH 3T3細胞でのその後の攻撃に対して防護的抗体応答を発現した(非特許文献8)。しかし、同じ免疫原を有するBDIXラットの免疫化は、抗体応答を生じさせず、同系neu発現性B 104神経芽腫細胞の増殖も阻害しなかった。これは、この戦略が、ラットにおいて免疫応答を誘導するには不十分であったことを示唆している。コレステリル基を有するマンナンおよびプルランと複合したHER−2 ECDの147のアミノ末端アミノ酸から成る多糖類腫瘍性タンパク質複合体ワクチンは、BALB/cマウスにおいてHER−2発現性肉腫の拒絶を媒介する細胞および体液性免疫応答を誘導した(非特許文献9)。部分的防護は、精製されたラットneu ECD(非特許文献10)またはneuトランスフェクテッド同種異系マウス線維芽細胞(非特許文献11)のいずれかで免疫することにより乳房腫瘍を発現するように運命づけられたラットneuトランスジェニックマウスにおいて証明されている。
【0006】
上に記載した研究の結果にもかかわらず、HER−2は非突然変異「自己」抗原であるのでHER−2またはHER−2 ECDをターゲットにした細胞またはタンパク質ベースのワクチン戦略を用いて、ヒトにおいて有効な免疫応答を生じさせることができるかどうかは、いまだ判然としない。従って、HER−2タンパク質の過剰発現を随伴する乳癌および他の悪性疾患を治療または予防するための追加の免疫療法アプローチを有することが望ましい。
【非特許文献1】Hudziak,R.M.ら、Mol.Cell.Biol.,1989,9:11−65−72
【非特許文献2】Tagliabue,E.ら、Int.J.Cancer,1991,47:933−7
【非特許文献3】Drebin,J.A.ら、Proc.Natil.Acad.Scie.USA,1986,83:9129−33
【非特許文献4】Drebin,J.A.ら、Oncogene,1988,2:273−7
【非特許文献5】Katsumata,M.ら、Nat.Med.,1995,1:644−8.
【非特許文献6】Baselga,J.ら、J.Clin.Oncol.,1996,14:737−44
【非特許文献7】Pegram,M.D.ら、J.Clin.Oncol.,1988,16:2659−71
【非特許文献8】Bernards,R.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1987,84:6854−8
【非特許文献9】Gu,X.G.ら、Cancer Res.,1998,58:3385−90
【非特許文献10】Esserman,L.J.,Cancer Immunol.Immunother.,1999,47:337−42
【非特許文献11】Cefai.D.ら、Int.J.Cancer,1999,83:393−400
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(概要)
実施形態に従って、HER−2 Bエピトープを提供する。該エピトープは、
【0008】
【化36】

の配列を有する。
【0009】
本発明の追加の実施形態は、本明細書中でさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(発明の実施形態の詳細な説明)
さて、本発明の特定の実施形態を随時参照しながら本発明を説明する。しかし、本発明は、種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載する実施形態に限定されると解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が、詳細、且つ、完全になるように、ならびに当業者に本発明の範囲を十分に知らせるために提供するものである。
【0011】
別に定義されていない限り、本明細書で用いるすべての専門および科学用語は、本発明が属する技術分野の通常の技術者が一般に理解しているのと同じ意味を有する。本明細書において本発明の説明に用いる専門用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものであり、本発明の限定とは解釈されない。本発明の説明および添付の特許請求の範囲において用いる単数形「a」、「an」および「the」は、その文脈に明瞭に別の指示がない限り、それらの複数形も包含すると解釈する。本明細書において言及するすべての出版物、特許出願、特許および他の参照文献は、それら全体が参照により取り入れられている。
【0012】
本発明は、HER−2タンパク質の単離されたポリペプチド(本明細書では、以後、HER−2 Bエピトープと呼ぶ)を提供する。一部の実施形態において、HER−2 Bエピトープは、免疫原性である。加えて、本発明は、1つまたはそれ以上のキメラペプチドを含む組成物を提供し、該キメラペプチドは、HER−2 Bエピトープを含む。加えて、1つまたはそれ以上の多価ペプチドを有する組成物を提供する。これらの多価ペプチドは、2つまたはそれ以上のHER−2 Bエピトープを含む。被験者において免疫応答を刺激する方法および癌を治療する方法をさらに提供する。治療および予防用のワクチンも提供する。単独でまたはキメラペプチドに関連して本明細書に記載するようなHER−2 Bエピトープは、HER−2タンパク質の細胞外ドメインと免疫反応性である抗体の産生を生じさせる体液性応答を引き起こせるもので有りうる。一部の実施形態によると、HER−2 Bエピトープまたはキメラペプチドは、防護効果をもたらす。
【0013】
HER−2タンパク質およびそのラット同族体neuは、約1255個のアミノ酸(aa)の長さである、185kdの相対分子量を有する膜貫通型タンパク質である。HER−2/neuタンパク質は、上皮増殖因子受容体(EGFR)に対する40%相同性を有する約645aaの細胞外結合ドメイン(ECD)と、高疎水性膜貫通アンカードメイン(TMD)と、EGFRに対して80%相同性を有する約580aaの末端カルボキシ細胞質ドメイン(CD)とを有する。HER−2タンパク質のアミノ酸配列、およびそうしたアミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列は、GenBankアクセッション番号M11730に示されている。図1は、HER−2タンパク質のアミノ酸配列(配列番号1)を示すものである。
【0014】
HER−2 Bエピトープは、次の配列(本明細書では、以後、「参照配列」と呼ぶ)のうちの1つを有するペプチドを包含し、その配列とは以下のとおりである。
【0015】
【化37】

【0016】
【化38】


【0017】
HER−2 Bエピトープは、環化されていることもあり、または線状であることもある。環化されている場合、それらのエピトープは、任意の適する方法で環化され得る。例えば、選択されたシステイン(Cys)対の間にジスルフィド結合を形成して、所望の立体配座を生じさせることができる。環化エピトープの形成により、体液性応答を向上させる、従って、防護効果を向上させる立体配座を生じさせることができると考えられる。
【0018】
配列番号2〜5によって特定されるHER_2 Bエピトープは、HER−2細胞外ドメイン(配列番号1)のトラスツズマブ結合領域内のトラスツズマブと接触する3つの領域のうちの少なくとも1つの領域を含有する。2003年、単独でのおよびトラスツズマブのFabフラグメントと複合したHER−2の細胞外領域の結晶構造が、発表された。トラスツズマブは、ループ1:579−583(C563−C576間、およびC567−C584間の2つのジスルフィド対合)、ループ2:592−595(C587−C596間のシステインジスルフィド対合)およびループ3:615−625(C600−C623間のシステインジスルフィド)において配列番号1からの残基を含むサブドメインIV内の3つのループと相互作用することが明らかになった。ループ1および3は、主として静電相互作用によるトラスツズマブとの相互作用によってさらに安定化され、これに対してループ2は、疎水性相互作用に参加する。
【0019】
配列番号2によって特定されるHER−2 Bエピトープは、HER−2タンパク質(配列番号1)の563〜598位を表す。配列番号2によって特定されるHER−2 Bエピトープは、Cys−563とCys−576の間、Cys−567とCys−584の間、および/またはCys−587とCys−596の間のジスルフィド結合形成により環化することができる。配列番号3によって特定されるHER−2 Bエピトープは、585〜598位を表す。配列番号3によって特定されるHER−2 Bエピトープは、Cys−587とCys−596の間のジスルフィド結合形成によって環化することができる。配列番号4によって特定されるHER−2 Bエピトープは、597〜626位を表し、下線が引かれているロイシン(Leu)アミノ酸は、ジスルフィド結合形成に干渉しないようにCysからLeuに突然変異させた。配列番号4によって特定されるHER−2 Bエピトープは、Cys−600とCys−623の間のジスルフィド結合形成により環化することができる。配列番号5によって特定されるHER−2 Bエピトープは、613〜626位を表し、太字Leuアミノ酸は、本明細書中でさらに論じるように、ジスルフィド結合形成に干渉しないようにCysからLeuに突然変異させた。配列番号4および5に示されているLeuアミノ酸は、代替的にCysである場合があることは、理解されるであろう。
【0020】
配列番号6〜8によって特定されるHER−2 Bエピトープは、HER−2(配列番号1)のペルツズマブ結合部位に類似した抗体を惹起するように設計された配列を表す。配列番号6によって特定されるHER_2 Bエピトープは、HER−2タンパク質(配列番号1)の315〜333位を表す。配列番号6によって特定されるHER−2 Bエピトープは、Cys−315とCys−331の間のジスルフィド結合形成により環化することができる。配列番号7によって特定されるHER−2 Bエピトープは、298〜333位を表す。配列番号7によって特定されるHER−2 Bエピトープは、Cys−299とCys−311の間、および/またはCys315とCys331の間のジスルフィド結合形成により環化することができる。配列番号8によって特定されるHER−2 Bエピトープは、266〜296位を表す。配列番号8によって特定されるHER−2 Bエピトープは、Cys−268とCys−295の間のジスルフィド結合形成により環化することができる。
【0021】
配列番号9によって特定されるHER−2 Bエピトープは、626〜649位を表す。この配列は、Cys−626とCys−634の間、および/またはCys−630とCys−634の間にジスルフィド結合を有することがある。1つより多くのCysを有する各エピトープが、環化されていることもあり、または線状であることもあることは、理解されるであろう。
【0022】
本明細書に記載するようなHER−2 Bエピトープは、配列番号2〜9によって特定されるエピトープの機能的等価物であるペプチドも包含する。こうした機能的等価物は、対応するHER−2 Bエピトープ配列におけるアミノ酸の1つもしくはそれ以上が置換されている、または1つもしくはそれ以上のアミノ酸が、対応する参照配列から欠失している、もしくは対応する参照配列に付加されている、改変配列を有する。例えば、1から3個のアミノ酸がアミノ末端、カルボキシ末端または両方に付加されていることがある。一部の例では、HER−2 Bエピトープは、グリコシル化されている。
【0023】
他の例では、HER−2 Bエピトープは、HER−2 Bエピトープのレトロ−インベルソ異性体であり得る。このレトロ−インベルソ修飾は、ペプチド骨格内のすべてのアミド結合の逆転を含む。この逆転は、Dアミノ酸をLアミノ酸の代わりに使用することにより、配列の方向を逆転させ、各アミノ酸残基のキラリティーを反転させることによって達成することができる。このレトロ−インベルソ異性体形は、少なくとも一部のペプチド結合の平面性および配座拘束を保持する。例えば、配列番号5の非レトロ−インベルソ形は、NH−L[IWKFPDEEGACQPL]−COOHと示すことができる。配列番号5のレトロ−インベルソ形は、NH−D[LPQCAGEEDPFKWI]−COOHと示すことができる。
【0024】
非保存的アミノ酸置換および/または保存的置換を行うことができる。置換は、置換されたアミノ酸が、参照配列内の対応するアミノ酸と同様の構造的または化学的特性を有する場合、保存的アミノ酸置換である。一例として、保護的アミノ酸置換は、ある脂肪族または疎水性アミノ酸、例えばアラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン、の別の脂肪族または疎水性アミノ酸での置換;あるヒドロキシ含有アミノ酸、例えばセリンおよびトレオニン、の別のヒドロキシ含有アミノ酸での置換;ある酸性残基、例えばグルタミン酸またはアスパラギン酸、の別の酸性残基での置換;あるアミド含有残基、例えばアスパラギンおよびグルタミン、の別のアミド含有残基との交換;ある芳香族残基、例えばフェニルアラニンおよびチロシン、と別の芳香族残基との交換;ある塩基性残基、例えばリシン、アルギニンおよびヒスチジン、と別の塩基性残基との交換;ならびにある小さなアミノ酸、例えばアラニン、セリン、トレオニン、メチオニンおよびグリシン、と別の小さなアミノ酸との交換を含む。
【0025】
一部の例では、上に示す配列のうちの1つのアミノ末端、カルボキシ末端または両方に欠失および付加がある。例えば、HER−2 Bエピトープ等価物は、対応するHER−2 Bエピトープ配列と少なくとも70%同一、少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する。少なくとも90%同一である配列は、参照配列の10個のアミノ酸当たり1つより多くの交代、すなわち、欠失、付加または置換の一切の組み合わせを有さない。同一率は、DNA STARプログラムのMEGALIGNプロジェクトを使用して参照配列と変異体のアミノ酸配列を比較することにより決定する。
【0026】
対応するHER−2 Bエピトープ配列より長い機能的等価物の場合、その機能的等価物は、野生型HER−2タンパク質におけるHER−2 Bエピトープ配列およびそのHER−2 Bエピトープ配列に隣接する配列と、少なくとも90%同一である配列を有し得る。
【0027】
HER−2 Bエピトープの機能的等価物は、そのエピトープの配列を修飾し、その得られたポリペプチドを、免疫応答を刺激する能力、例えば抗体の産生についてアッセイすることによって、特定することができる。例えば、一般に、こうしたアッセイは、修飾ポリペプチドおよびThエピトープを含むキメラペプチドを作製し、そのキメラペプチドを試験動物に注射し、抗体についてアッセイすることによって行うことができる。こうした抗体は、血清および腹水をはじめとする様々な体液において見出すことができる。簡単に言うと、HER−2/neuポリペプチドに特異的な抗体が存在するかどうか判定することが望まれる温血動物、例えばヒト、から体液サンプルを単離する。その体液を、HER−2/neuポリペプチドとともに、そのポリペプチドとそのタンパク質に特異的な抗体との免疫複合体を形成させるために十分な条件下、形成させるために十分な時間、インキュベートし、その後、好ましくはELISA技術を用いて、アッセイする。こうした技術では、比色変化を490nmで測定する。HER−2/neuタンパク質に対して10,000またはそれ以上の力価を示す抗体の産生を誘導するエピトープが有用であり得る。本明細書で用いる場合、10,000の力価は、バックグラウンドより0.2高い吸収値を指す。
【0028】
本発明の他の実施形態に従って、キメラペプチド、および1つまたはそれ以上のキメラペプチドを含む組成物を提供する。様々な実施形態によると、これらのキメラペプチドは、HER−2 Bエピトープと、Tヘルパー(Th)エピトープと、そのHER−2 BエピトープをそのThエピトープに連結させるリンカーとを含む。任意の適するThエピトープを使用できることは理解されるであろう。例えば、プロミスカスThエピトープを使用することができる。本明細書で用いる場合、「プロミスカス」Thエピトープは、MHC拘束の回避を補助するサイトカインの放出を促進するものである。さらに、任意の適するリンカーを使用できることは理解されるであろう。例えば、使用されるThエピトープに依存して、HER−2 BエピトープをそのThエピトープのアミノ末端に連結させることもあり、またはカルボキシ末端に連結させることもある。Thエピトープの位置および選択は、HER−2 Bエピトープの構造的特徴、αヘリカルであるのか、ベータ・ターンであるのか、鎖であるのか、に依存する。適するThエピトープの選択方法は、Kaumayaら、「DE NOVO」ENGINEERING OF PEPTIDE IMMUNOGENIC AND ANTIGENIC DETERMINANTS AS POTENTIAL,VACCINES,in Peptides,Design,Synthesis and Biological Activity(1994),pp.133−164に記載されている。これは、特に、本明細書に参照により取り入れてられている。B細胞エピトープキメラを含有する様々なThエピトープを惹起した免疫応答の概要は、Kaumayaらにより「Synthetic Peptides: Dream or Reality」と題する総説に提示されており、PEPTIDES IN IMMUNOLOGY,Wiley and Sons,Ltd.(1996)において発表された。
【0029】
一部の例では、Thエピトープは、約14から約22個、約15から21個、または約16個のアミノ酸の長さであり得る。他の実施形態における、適するThエピトープの例としては、次のものが挙げられるが、これらに限定されない:
【0030】
【化39】


【0031】
他の例では、リンカーは、約2から約15個のアミノ酸、約2から約10個のアミノ酸、または約2から約6個のアミノ酸の長さのペプチドであり得る。例えば、リンカーは、アミノ酸配列 Gly−Pro−Ser−Leu、配列番号18を有するペプチドであり得る。このキメラペプチドは、線状であることもあり、または環化されていることもある。加えて、HER−2 Bエピトープ、Thエピトープおよび/またはリンカーは、レトロ−インベルソ形であることがある。従って、HER−2 Bエピトープのみが、レトロ−インベルソ形である場合がある。あるいは、HER−2 BエピトープおよびThエピトープが、レトロ−インベルソ形である場合がある。もう1つの例では、HER−2 Bエピトープ、Thエピトープおよびリンカーが、レトロ−インベルソ形であり得る。
【0032】
適するキメラペプチドの例としては、次のものが挙げられるが、これらに限定されない:
【0033】
【化40】


【0034】
配列番号19〜26のペプチドは、Thエピトープ、GPSLリンカーおよびHER−2 Bエピトープを有する。
【0035】
前記キメラペプチドおよび該ペプチドを含む組成物は、HER−2タンパク質の細胞外ドメインと相互作用し、それらに結合する抗体の産生を誘導するために有用な免疫原であり得る。前記キメラペプチドは、被験者の血清中のHER−2タンパク質に対する抗体を検出するための実験ツールとしても有用であり得る。前記キメラペプチドは、被験者において抗体応答を引き起こすことができ、そうした抗体は、(a)HER−2タンパク質を免疫沈降させることができ、(b)培養でのER−2過剰発現細胞上の無傷HER2受容体に結合することができ、および(c)インビトロでHER−2過剰発現細胞の増殖を減少させることができる。前記キメラペプチドを使用して、被験者を免疫し、腫瘍の発現を遅らせるまたは防止することもできる。前記キメラペプチドをワクチンで使用して、防護効果をもたらすことができる。
【0036】
本発明の追加の実施形態に従って、2つまたはそれ以上のキメラペプチドの混合物を含む組成物を提供する。一部の例では、該2つまたはそれ以上のキメラペプチドのHER−2 Bエピトープは、異なる。他の例では、該HER−2 Bエピトープのうちの1つは、配列番号2〜5から選択され、該HER−2 Bエピトープのうちの別の1つは、配列番号6〜8から選択される。
【0037】
前記HER−2 Bエピトープおよびキメラペプチドは、市販のペプチド合成装置を使用して合成することができる。例えば、Kaumayaら、「DE NOVO」ENGINEERING OF PEPTIDE IMMUNOGENIC AND ANTIGENIC DETERMINANTS AS POTENTIAL,VACCINES,in Peptides, Design, Synthesis and Biological Activity(1994),pp 133−164(これは、特に、本明細書に参照により取り入れられている)に記載されているキメラ法を使用することができる。
【0038】
例えば、HER−2 B細胞エピトープをThエピトープと共直線的に合成して、キメラペプチドを形成することができる。ペプチド合成は、Fmoc/t−But化学を用いて行うことができる。該HER−2 Bエピトープおよびキメラペプチドは、任意の適する方法で環化することができる。例えば、ジスルフィド結合は、差次的に保護されたシステイン残基、ヨウ素酸化、Acm除去およびジスルフィド結合の付随的形成を増進するための水の添加、ならびに/またはシリルクロライド−スルホキシド法を用いて実現することができる。
【0039】
前記HER−2 Bエピトープおよびキメラペプチドは、無細胞翻訳系、および該エピトープまたはペプチドをコードしているDNA構築物から誘導されたRNA分子を使用して生産することもできる。あるいは、該エピトープまたはキメラペプチドは、それぞれのエピトープまたはキメラエピトープをコードしているDNA配列を含む発現ベクターで宿主細胞をトランスフェクトし、その後、その宿主細胞においてそれらのポリペプチドの発現を誘導することにより、作製することができる。組み換え生産については、該エピトープ、キメラペプチドまたはその変異体をコードしている配列を1つまたはそれ以上含む組み換え構築物を、従来の方法、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、トランスベクション、マイクロインジェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、スクレープローディング(scrape loading)、弾丸導入(ballistic introduction)または感染、によって宿主細胞に導入する。
【0040】
前記HER−2 Bエピトープおよびキメラペプチドは、従来の技術を用いて、適切なプロモーターの制御の下、例えば哺乳動物細胞、酵母、細菌、昆虫細胞または他の細胞などの適する宿主細胞において発現させることができる。適する宿主としては、大腸菌(E.coli)、P.パストリス(P.pastoris)、Cos細胞および293HEK細胞が挙げられるが、これらに限定されない。適する宿主株を形質転換し、その宿主株を適切な細胞密度まで増殖させた後、遠心分離によって細胞を回収し、物理的または化学的手段によって破壊し、得られた粗抽出物を、エピトープまたはキメラペプチドのさらなる精製のために確保しておく。
【0041】
形質転換宿主細胞から組み換えタンパク質を単離するための従来の手順、例えば、細胞ペレットまたは細胞培養基からの最初の抽出による単離、続いて、塩析そして水性イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー段階、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、および親和クロマトグラフィーをはじめとする1つまたはそれ以上のクロマトグラフィー段階、を用いて、組み換えポリペプチドを単離することができる。
【0042】
グリコシル化エピトープおよびキメラペプチドを生産するには、組み換え技法を用いることができる。例えば、Cos−7およびHep−G2細胞などの哺乳動物細胞をこの組み換え技法に用いることができる。あるいは、グリコシル化エピトープおよびキメラペプチドは、標準的なFmoc/tBut合成を用いて生産することができる。例えば、オリゴ糖転移のキー酵素としてエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼを用いる化学酵素的アプローチを用いて、1つまたはそれ以上の糖単位をペプチドに付加させることができる。
【0043】
HER−2 Bエピトープの自然発生変異体も、例えば、そのポリペプチドをコードしているDNA配列で適切なcDNAまたはゲノムライブラリーをスクリーニングすることにより、単離することができる。
【0044】
さらなる実施形態に従って、複数の、すなわち、少なくとも2つの、HER−2 Bエピトープまたはそれらの機能的等価物とThエピトープとを含む多価ペプチドを提供する。該HER−2 BエピトープおよびThエピトープは、テンプレートに連結している。例えば、該HER−2 BエピトープおよびThエピトープは、コアβシートテンプレートに連結していることがある。もう1つの例では、該テンプレートは、リンカーによって連結されている、交互のロイシンおよびリシン残基の2本の鎖であり得る。該リンカーは、1個のアミノ酸であるか、約2から約15個のアミノ酸、約2から約10個のアミノ酸、または約2から約6個のアミノ酸の長さのペプチドである。例えば、該リンカーは、アミノ酸配列 Gly−Pro−Ser−Leu、配列番号18であり得る。
【0045】
多価ペプチドは、任意の適する方法で合成することができる。例えば、多価ペプチドは、コンビナトリアルFmoc/t−ブチル、Fmoc/ベンジルおよびBocベンジル戦略、ならびに第四レベルの差次的保護基(Npys)戦略を用いることにより、作製することができる。こうしたアプローチの詳細は、Larimoreら(1995)Journal of Virology 69:6077−6089(これは、特に、本明細書に参照により取り入れられている)に提示されている。
【0046】
本発明のさらの他の実施形態に従って、本明細書で論じているHER−2 Bエピトープおよびキメラペプチドをコードしている、単離されたポリヌクレオチドを提供する。本ポリヌクレオチドは、ストリンジェント条件および/または高ストリンジェント条件下で、該HER−2 Bエピトープまたはキメラペプチドのヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができる配列を有するポリヌクレオチドも包含する。ハイブリダイゼーション条件は、Berger and Kimmel(1987)Guide to Molecular Cloning Techniques,Methods in Enzymology,vol 152,Academic Pressに記載されているように、その核酸結合複合体またはプローブの融点(Tm)に基づく。本明細書で用いる用語「ストリンジェント条件」は、約Tm−5(そのプローブの融点より5℃下)からTmより約20℃下までの範囲内で生ずる「ストリンジェンシー」である。本明細書で用いる「高ストリンジェント」条件は、少なくとも0.2×SCC緩衝液および少なくとも65℃を用いる。当該技術分野において認知されているように、ストリンジェンシー条件は、多数の因子、例えば、プローブの長さおよび性質、すなわち、DNAまたはRNA;ターゲット配列の長さおよび性質、ハイブリダイゼーション溶液の塩および他の成分、例えばホルムアミド、硫酸デキストランおよびポリエチレングリコール、の濃度、を変えることによって獲得することができる。すべてのこれらの因子は、上に挙げた条件と等価であるストリンジェンシー条件を生じさせるために変えることができる。
【0047】
本発明のHER−2 Bエピトープまたはキメラペプチドをコードしている配列を含むポリヌクレオチドは、適する化学的方法または組み換え法を用いて、すべてまたは一部、合成することができる。HER−2 Bエピトープをコードしているポリヌクレオチドは、そのHER−2タンパク質に免疫特異的な抗体でゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーをスクリーニングして、そうしたポリヌクレオチドを含有するクローンを特定するにより、得ることができる。
【0048】
前記ポリヌクレオチドは、HER−2 Bエピトープまたはキメラペプチドの生産に有用である。例えば、多価キメラペプチドをコードしているRNA分子を無細胞翻訳系で使用して、そうしたポリペプチドを作製することができる。あるいは、HER−2 BエピトープまたはキメラペプチドをコードしているDNA分子を発現ベクターに導入し、使用して、細胞を形質転換させることができる。適する発現ベクターとしては、染色体、非染色体および合成DNA配列、例えば、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA;酵母プラスミド;プラスミドおよびファージDNAの組み合わせから誘導されたベクター;ならびにワクシニアウイルス、アデノウイルス、伝染性上皮種ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、バキュロウイルスおよびレトロウイルスなどのウイルスDNAが挙げられるが、これらに限定されない。該DNA配列は、任意の適する手順によって発現ベクターに組み込むことができる。
【0049】
さらなる実施形態に従って、1つまたはそれ以上のHER−2 Bエピトープまたはキメラペプチドをコードしているポリヌクレオチドを1つまたはそれ以上含む組み換え構築物を提供する。適する構築物としては、例えば、HER−2 Bエピトープまたはキメラペプチドをコードしている配列が挿入されたベクター、例えばプラスミド、ファージミドまたはウイルスベクター、が挙げられる。発現ベクターの場合、該エピトープまたはキメラペプチドをコードしているDNA配列は、発現制御配列、すわなち、mRNA合成を指図するプロモーター、に機能的に作用するように連結されている。こうしたプロモーターの代表例としては、LTRまたはSV40プロモーター、大腸菌lacまたはtrp、ファージラムダPLプロモーター、および原核もしくは真核細胞におけるまたはウイルスにおける遺伝子の発現を制御することが知られている他のプロモーターが挙げられる。該発現ベクターは、翻訳開始および翻訳停止のためのリボソーム結合部位を含有することもある。例えば、該組み換え発現ベクターは、複製起点、および選択可能マーカー、例えば、形質転換細胞、すなわち異種DNA配列を発現する細胞、の選択を可能にする大腸菌のアンピシリン耐性遺伝子など、も含むことがある。HER−B細胞エピトープまたはキメラペプチドをコードしているポリヌクレオチド配列を、翻訳開始および停止配列を有するフレーム内のベクターに組み込むことができる。例えば、該ポリヌクレオチドは、HER−2 Bエピトープまたはキメラペプチドのアミノ末端に機能的に作用するように連結されているシグナル配列をさらにコードしていることがある。
【0050】
HER−2 Bエピトープまたはそうしたエピトープを含むキメラペプチドをコードしているポリヌクレオチドを使用して、適する技法を用いて組み換えペプチドを発現させることができる。こうした技法としては、Sambrook,J.ら(1989)Molecular Cloning A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Plainview,N.Y.およびAusubel,F.M.ら(1989)Current Protocols in Molecular Biology,John Wile & Sons,New York,N.Y.が挙げられるが、これらに限定されない。HER−2 Bエピトープまたはそうしたエピトープを含むキメラペプチドをコードしているポリヌクレオチドを使用して、被験者を免疫することもできる。
【0051】
尚さらなる実施形態に従って、癌の治療方法を提供する。本方法は、被験者に医薬組成物を投与することを含む。他の実施形態において、少なくとも1つのキメラペプチド、多価ペプチドもしくは両方またはそれらをコードしているポリヌクレオチドを含むワクチンを提供する。本医薬組成物は、本明細書において説明するような、医薬的に許容されるビヒクルおよび少なくとも1つのキメラペプチド、多価ペプチドもしくは両方またはそれらをコードしているポリヌクレオチドを含む。医薬的に許容されるビヒクルとしては、医薬的に許容される担体、賦形剤または希釈剤が挙げられるが、これらに限定されない。一般に、これらのビヒクルは、用いられる投薬量および濃度で被験者に対して非毒性である。
【0052】
前記エピトープ、多価ペプチドおよびキメラペプチドまたはそれらをコードしているポリヌクレオチドに加えて、他の成分、例えば、抗原送達用のビヒクル、およびそのタンパク質の免疫原性を強化するように設計された免疫刺激物質が、本医薬組成物に含まれる。抗原送達用のビヒクルの例としては、アルミニウム塩、油中水型乳剤、生体分解性油性ビヒクル、水中油型乳剤、生体分解性マイクロカプセル、およびリポソームが挙げられる。キメラペプチドを含むワクチンのための、抗原送達に適するビヒクルは、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)から成り得る生体分解性マイクロスフェアである。
【0053】
任意の適するビヒクルを本発明の医薬組成物に用いることができるが、担体のタイプは、投与方式、および実質的な放出が望まれるかどうかに依存して変わるであろう。皮下注射などの非経口投与のための担体は、水、食塩水、アルコール、脂肪、蝋または緩衝液であり得る。生体分解性マイクロスフェア(例えば、ポリ乳酸ガラクチド)を本発明の医薬組成物用のビヒクルとして用いることもできる。一部の実施形態によると、本医薬組成物は、アジュバントを含む。
【0054】
HER−2キメラおよび多価ペプチドならびにそれらをコードしているポリヌクレオチドは、被験者または細胞系統において、体液性応答および好ましくは細胞免疫応答(例えば、抗原特異的細胞溶解性T細胞の産生)を増進または惹起するために有用であり得る。一部の例では、被験者は、ヒトである。被験者は、癌もしくはHER−2を伴う他の癌、例えば乳癌に罹患していることあり、または正常である(すなわち、検出可能な疾病および感染がない)こともある。本医薬組成物およびワクチンは、乳癌の家族歴を有する女性または乳房腫瘍を除去した女性の治療に有用であり得る。一部の実施形態によると、「治療」は、腫瘍の増殖を阻害または遅速または遅延させることを意味する。こうした癌としては、乳癌、肺癌、卵巣癌、膀胱癌および前立腺癌が挙げられるが、これらに限定されない。一部の例では、三週間間隔での多数の筋肉内注射を用いて、本医薬組成物を投与する。
【実施例】
【0055】
具体例としての方法を下で説明するが、本明細書において説明するものと同様または等価の方法および材料を本ペプチド、組成物および方法の実施または試験の際に使用することができる。本明細書において言及するすべての出版物および他の参照文献は、それら全体が参照により取り入れられている。これらの材料、方法および実施例は、単に実例となるものであり、限定と解釈しない。
【0056】
ペプチド合成およびHPLC精製。ペプチドは、以前に記載されている(Kaumaya 1994)とおりに合成した。簡単に言うと、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂を固体支持体(置換 0.54mm/g)として使用して、Milligen/Biosearch 9600 ペプチドシンセサイザーでペプチドを合成した。4−(ヒドロキシメチル)フェノキシ酢酸をリンカーとして使用するFmoc/t−ブチル合成法を用いた。最終脱保護段階後、結合した保護基およびペプチド樹脂を、90%TFA、5%アニソール、3%チオアニソール、2%エタンジチオールで切断した。32.5℃でVydac C4(10mm×25cm)カラムを使用する半分取HPLCにより、粗製ペプチドを精製した。緩衝液は、HO中の0.1%TFAおよびアセトニトリル中の0.1%TFAであった。ペプチドには、「プロミスカス」T細胞エピトープMVF228−302(Kaumaya 1994):DW1MVF(HER−2 376−395)、MVFDW4(628−647)、DW5MVF(115−136)、DW6MVF(410−429)が組み込まれている。
【0057】
ゲル濾過。20mg/mLの酸性化ペプチド溶液(DTT中、0.1mg/mL)をSephadex G−25カラムに充填し、5mLの画分を0.1M HOAcで溶出させた。ペプチドサンプルを235nmで分光光度測定し、吸収値を時間に対してプロットした。0.1より高い吸収値を有し、且つ、DTTより前に溶出したサンプルをプールし、凍結乾燥させた。エルマン試薬により410nmで反応の完了をモニターした。
【0058】
キャピラリーゾーン電気泳動。キャピラリーゾーン電気泳動は、IBMコンピュータとインターフェースで接続されたBeckman P/ACE System 2100を用いて行った。20分にわたって50cmキャピラリーを使用して100mMホウ酸ナトリウム中でサンプルを電圧分離(15kV)した。溶離液を214nmでモニターした。
【0059】
円偏光二色性および質量分析。IBMコンピュータとインターフェースで接続されたJASCO J−500分光偏光計を用いて測定を行った。この計器は、d−10−カンファースルホン酸アンモニウムの0.06%(w/v)溶液で較正した。ペプチド(水でのペプチド原質の希釈により、62.5〜250uM)のCDスペクトルを、0.1cmの路長の円筒形石英キュベット(Hellma)において、周囲温度で測定した。平均残基楕円率(mdeg)は、[θ]=100θ/cnlの関係[この場合、 は、楕円率であり、cは、ペプチド濃度(mM)であり、nは、ペプチド中のアミノ酸の数であり、lは、路長(cm)である]を用いて計算した。高速原子衝突(FAB)質量分光測定は、inneganMat−900装置を用いて行った。
【0060】
酢酸水銀。ペプチドを最小量の水に溶解し、100mg/mm S−tBu溶液(2〜10倍過剰)を添加した。ペプチドを真空下に置き、攪拌しながら55℃の水浴内で2−メルカプトエタノールによって沈殿させた。湿らせたセライトに通して濾過した後、濾液を回転蒸発させ、水中の0.1%TFAで酸性化し、凍結乾燥させた。
【0061】
生物学的手順
免疫化および動物。雌ニュージーランド白ウサギを、Mochican Valley Rabbitry(オハイオ州、Loudenville)から入手した。ウサギを、CFA中で乳化させた合計1gのペプチドで、多数の部位に皮下免疫した。初回免疫の3および6週間後、続いてブースター注射(PBS中、1mgおよび500μg)を施した。血清を採取し、30分間、56℃に加熱することにより補体を不活性化した。血清アリコートを−5から−15℃で保管した。抗体を硫酸アンモニウム沈殿法によって精製した:硫酸アンモニウム飽和溶液(SAS)の保存溶液を調製し、オートクレーブで処理し、4℃に冷却した。冷室内で攪拌しながら35% v/vまでSASをゆっくりと添加することにより、抗体を沈殿させた。サンプルを14,000×gで20分間、遠心分離し、上清を−20℃で保存した。1/2原体積のペレットを0.1M PBSで溶解した。その後、画分をSlide−a−lyzerカセット(Pierce)内に配置し、>200体積のpH8の0.15M NaClの頻繁な交換により透析した。数滴の0.1M NaOHでその食塩水をpH8にした。IgG濃度を、放射免疫拡散(RID)(英国、The Binding Site)により決定した。モノクローナル抗体は、Oncogene Scienceから購入した。
【0062】
直接ELISA。U底ポリ塩化ビニルプラスチックアッセイプレートを、PBS中、2μg/mLの100μLの抗原で、一晩、4℃で被覆した。非特異的結合部位を、1時間、200μLのPBS−1%BSAでブロックし、プレートをPBT(0.05% Tween 20および1%ウマ血清を含有するリン酸緩衝食塩水)で洗浄した。PBT中、ウサギ抗血清 1/500またはマウス抗血清 1/50を抗原被覆プレートに添加し、PBT中1:2で系列希釈し、2時間、室温でインキュベートした。それらのプレートを洗浄した後、50μLの1/500 ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼにコンジュゲートしたヤギ抗ウサギまたはヤギ抗マウスIgG(Pierce Chemical Co.)を各ウエルに添加した。過剰な抗体コンジュゲートを除去し、50μLの、24mM クエン酸中0.15% H、5mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)と発色団として0.5mg/mL 2,2’−アミノビス(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸)を使用して、結合抗体を検出した。発色を10分間、進行させ、25μLの1%ドデシル硫酸ナトリウムで反応を停止させた。Dynatech MR700 ELISAリーダーを使用して410nmで吸収を検出した。バックグラウンドを引いた後の二重反復試験ウエルの平均吸収度として結果を表示する。
【0063】
細胞培養。保存株を5%COインキュベーター内で、37℃で維持した。すべての細胞培養基、FCSおよび補足物は、GEBCO(ニューヨーク州、グランドアイランド)から購入した。ヒト乳腺癌細胞系統SKBR−3およびMCF−7は、American Type Culture Collectionから入手し、10%FCSおよびL−グルタミンを補足した、マッコイ5AまたはDMEM中で二次培養した。10%FCSおよびL−グルタミンを伴うRPMI 1640中でCav−1を維持した。Cav− は、冷温保存された新鮮な結腸腫瘍検体から採取し、その後、培養した。これは、検出可能レベルのHER−2/neuを発現しない。SKBR3は、HER−2タンパク質を過剰発現する乳房腫瘍細胞系統であるが、MCF−7は、正常濃度のタンパク質を発現する。
【0064】
免疫沈降法およびウエスタンブロッティング。第0日、1.0×10 SKBR3細胞を75cm細胞培養フラスコにプレーティングし、一晩放置して付着させた。抗ペプチド抗体(100μg/mL)を4時間にわたって添加した。培地を吸引し、直ちに氷冷0.1Mリン酸緩衝食塩水(PBS)を添加することにより、反応を停止させた。細胞をトリプシン処理し、冷ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)で2回洗浄した。100μLのHBSSに再懸濁させた細胞に、3mMのNaVO、各10μg/mLのアプロチニンおよびロイペプチンを含有する冷溶解緩衝液(150mM NaCl;50mM Tris、pH8;10mM EDTA、10mMピロリン酸ナトリウム、10mMフッ化ナトリウム、1%NP−40、0.1%SDS)を添加した。4℃で20分間、穏やかに回転させることによって、溶解を達成した。遠心分離(14,000×g、20分)して細胞破壊片を除去した後、溶解産物を3〜5μgの抗体および30μLのプロテインA/プロテインG(Oncogene Science)とともに一晩インキュベートした。遠心分離(14,000×g、30秒)によりビーズをペレット化し、1mMのNaVOを含有する溶解緩衝液中で2回洗浄し、SDSサンプル緩衝液中で5分、沸騰させた。
【0065】
7.5%SDS−PAGEによりタンパク質を分離し、ニトロセルロースに転写し、抗体でプローブした。あらかじめ染色された分子量標準物質(BioRad)でタンパク質転写をモニターした。ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼコンジュゲート化ヤギ抗ウサギ免疫グロブリンを使用し、強化化学発光(Amersham)により、免疫反応性ビーズを検出した。
【0066】
間接的結合アッセイ。SKBR3細胞またはMCF−7細胞を、V底プレート(バージニア州、マクレーンのLinbro)に、細胞数5,000/ウエルでプレーティングした。それらの細胞を様々な濃度の抗体とともにインキュベートした。ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)で洗浄した後、細胞をフルオレセインイソチオシアネート(FITC)コンジュゲート化ヤギ抗ウサギまたはヤギ抗マウス抗体とともに1時間インキュベートし、ホルマリンで固定した。マウスモノクローナルAb(マサチューセッツ州、ケンブリッジのOncogene Science)を正の対照として使用し、抗CD3 Abを負の対照として使用した。488mnでの励起用のアルゴンレーザーおよびFITC蛍光用の525run帯域フィルターを有するCoulter ELITEフローサイトメーター(フロリダ州、ハイアレアのCoulter)により細胞を分析し、各サンプルにつき5.0×10の細胞をカウントし、最終処理を行った。破壊片、細胞集塊および死滅細胞を光散乱評定により排除し、その後、単一パラメーターヒストグラムを描いた。
【0067】
細胞増殖に対するAbの効果。SKBR3、MCF7およびCAVI細胞を、第0日に、様々濃度のAbとともに、V底プレートに細胞数5,000/ウエルでプレーティングした。第3日、細胞を[3H]チミジン(1μCi/ウエル)でパルスし、この時、それらを20℃の冷凍器の中に1時間、置いた。室温で解凍した後、細胞をPHDセルハーベスター(Cambredge Tech,Inc.)で回収した。サンプルを5mLのReady Safe液体シンチレーションカクテル(Beckman)中でインキュベートし、ベータカウンターにより放射活性を判定した。結果を平均CPM+/−標準偏差(SD)として表示する。
【0068】
CTLアッセイ:インビトロ刺激。鼠経および大動脈周囲リンパ節(LN)を免疫の7〜10日後に除去する。その後、1μMの適切なCTLペプチドで1時間、予めパルスしておいた1.5×10の照射(10,000rad)P815細胞と共培養することにより、LN細胞(4×10〜5x10)をインビトロで刺激する。使用した培養基は、cDMEM(10%FCSを補足したDMEM)である。上清は、30U/mL(最終濃度のIL−2、2mM L−グルタミン、10mM Hepesおよび5×10M−2−メルカプトエタノールを含有する。
【0069】
インビトロ刺激の7日後、CTL活性を標準的なクロム放出アッセイで試験する。P815細胞(10)を、1時間、37℃で、適切なペプチド(1μM)の存在下または不在下、150μCiの[51Cr]クロム酸ナトリウムで標識し、3回洗浄する。標識されたターゲット(2×10)を、V底96ウエルプレートで、200μLの体積で、所定の比率で刺激LN細胞とコ・インキュベートする。4時間、37℃でインキュベートした後、上清(100μL)をγ−カウンティングのために回収する。比溶解%は、100×[(実験−自然放出)/(合計−自然放出)](Valmoriら、1994)として計算する。
【0070】
インビボでの抗体の効果。HER2細胞(3×10)を250μLのPBSに懸濁させ、氷上で250μLのMATRIGEL(Beckton Dickinson)と混合し、マウスに皮下注射した。第9および11日に、ポリクローナル抗体を2mg/マウスの合計濃度まで腹腔内注射した。週に2度、腫瘍体積は、カリパスで測定し、(長さ×幅×高さ)の式によって計算した。
【0071】
(実施例1)
2つの天然ジスルフィド結合が組み込まれている配座HER−2細胞エピトープは、強化された腫瘍細胞結合を示す。
【0072】
ヒトEGFRジスルフィド対合を規定した。EGFRとHER−2の間の高い相同性に基づき、Cys−626とCys−634の間およびCys−630とCys−642の間に2つのジスルフィド結合を組み込むために626−649への628−647エピトープ。差次的側鎖保護、そして限定的脱保護、そして酸化を行うことにより、CDによって判定して望ましい二次構造特性を有する環化生成物を首尾よく生成した。非近交系マウスにおいて、線状構築物と環化構築物は、両方とも、高度に免疫原性であった(力価>200,000)。フローサイトメトリー分析は、環化エピトープに対する抗体が、非環化エピトープより高い親和性でHER−2タンパク質に結合することを示した(それぞれ、平均対数蛍光2.29および1.65)。環化エピトープと非環化エピトープの両方に対する抗体は、足場非依存性増殖アッセイで測定したところ、HER−2を過剰発現する細胞において増殖を減少させることができた(それぞれ、31および58%阻害)。両方の構築物に対する抗体は、エフェクターヒトPBMCの存在下でIFN−γ放出を惹起することができ、環化抗体は、線状抗体と比較して25%高いレベルのIFN−γを誘導した。環化抗体は、ADCCアッセイでは非環化抗体と比較して2倍のレベルの特異的溶解を惹起した(それぞれ、11および5.6%)。これらのペプチドワクチンのインビボ効果を調査するために、近交系FVB/Nマウスをそれらの構築物で免疫した。両方の構築物が、これらのマウスにおいて免疫原性であり、環化構築物のほうが高い力価を生じさせた。その後、これらのマウスを、FBV/Nバックグラウンドを有するNT2.5腫瘍細胞系統で攻撃した。環化配座の構築物で免疫したマウスは、線状および対照MVF免疫マウス両方と比較して、腫瘍体積の減少を有した。線状またはMVF対照ペプチド(それぞれ、4.31および4.48日)と比較して、環化ワクチンを投与したマウスは、最長の倍増時間(6.63日)を有し、それにより、腫瘍増殖を妨げる最大能力を実証した。このように、これらの結果は、高親和性Abを惹起するための配座ペプチドは、有効なHer−2ワクチンの設計に直ぐに使うことができることを示している。
【0073】
(実施例2)
新規HER−2 B細胞エピトープの設計および合成
表1に示すような4つの新規構築物を合成のために選択した。4つすべての構築物が、トラスツズマブと接触する3つの領域のうちの少なくとも1つの領域を含有する。HER−2 Bエピトープを、MVFプロミスカスThエピトープと共直線的に合成した。ペプチド合成は、Fmoc/t−But化学を用いて行った。エピトープ563−598についての3つのジスルフィド結合の形成は、図2に示す差次的保護システイン残基を使用して達成した。第一のジスルフィド結合は、ヨウ素酸化を用いて形成する。水の添加により、Acm除去、およびC567とC584の間のジスルフィド結合の付随的形成を増進する。C563とC576の間の最後のジスルフィド結合は、シリルクロライド−スルホキシド法を用いて形成する。
【0074】
【化41】

表1は、HER−2/ヘルセプチン構造からの候補ペプチドワクチンを示すものである。イタリック体で示されているプロミスカスTヘルパーエピトープ配列は、4残基ターン配列(GPSL)によりB細胞エピトープに連結している。下線が引かれているアミノ酸は、天然ジスルフィド結合に緩衝しないように、CysからLeuに突然変異させた。
【0075】
(実施例3)
HER−2ペプチドの免疫原性
表1に記載した4つの構築物の免疫原性は、ジスルフィド結合構築物と線状構築物の両方を使用し、FBV/nマウス(n=4〜9)週齢6〜8週の群に免疫することにより判定した。563−598環化および非環化構築物の両方が、高度に免疫原性であった(図3A)。第三回免疫の3週後には、すべてのマウスが、120,000より高い力価を有し、環化構築物(MVF563SS)での2匹のマウスは、250,000より高い力価を有した。585−598構築物は、最小の免疫原性であることが判明し(図3B)、第三回免疫の3週間後、環化(SS)群と線状(NC)群の両方からの1匹のマウスだけが、120,000より高い力価を有し、平均力価は、約58,000であった。597−626ペプチド構築物と613−626ペプチド構築物の両方が、高度に免疫原性であった(図3C、D)。環化形の597−626を受けた3匹のマウスは、120,000より高い力価を有したが、線状形を受けたいずれのマウスも、120,000より高い力価を有さなかった。
【0076】
次に、本発明者らは、Guyらによって開発されたneu−NトランスジェニックマウスにおいてB細胞エピトープの免疫原性を試験した。これらのneu−Nトランスジェニックマウスは、neu特異的全細胞ワクチンで免疫したとき、neu特異的IgGの基底レベルが低かったにもかかわらず、FVB/nマウスにおいて見られるものと同様のペプチド構築物に対するAbの高い力価(データは示さない)を惹起した。
【0077】
(実施例4)
ヘルセプチン結合ペプチドとヘルセプチン(トラスツズマブ)の交差反応性
ELISAにより、トラスツズマブ結合部位からの配座ペプチドがヘルセプチンを認識できるかどうかを試験した。図4に示すように、563−626の結合領域内の様々なペプチドが、トラスツズマブと結合した。最大の結合は、3つのジスルフィド対合を有する環化エピトープ563−598で発生した。この結果は、グリコシル化に起因するHER−2への抗体のFACS結合とは対照的である。
【0078】
(実施例5)
ペプチド抗体とHER−2タンパク質の交差反応性
ヘルセプチン−ペプチドエピトープにより惹起された抗体が、HER−2受容体を認識するそれらの能力に差を示すかどうかを判定するために、HER−2過剰発現ヒト乳癌細胞系統BT474へのFBV/n精製抗体の結合を試験した。図5C、Dは、597−626構築物と613−626構築物の両方が、正常マウス抗体に比べてシフトしていることを示している。しかし、563−598および585−598構築物は、正常マウス抗体と比較して殆どシフトを示さなかった(図5A、B)。563−598は、HER−2がトラスツズマブと共に作る3つの構築物のうちの2つを含有する。トラスツズマブとの最後の接点を含む597−626エピトープは、天然タンパク質を認識する11のアミノ酸から成る(図5C)。この配列613−626のさらに短いバージョンも、同様に天然タンパク質を認識する(図5D)。エピトープ563−598および585−598の認識の欠如についての尤もらしい説明は、残基571−573に潜在的グリコシル化部位(NGS)があり、その大きな嵩高い糖部分が立体的に干渉し、そのエピトープの結合を妨げるということである。
【0079】
(実施例6)
腫瘍攻撃
B細胞エピトープワクチンへの配座拘束の導入に随伴する潜在的な臨床的利点をさらに良好に理解するために、FVB/nマウスとneu−Nトランスジェニックマウスの両方を、neu−Nトランスジェニックマウスから単離した自然発生乳房腫瘍から採取した腫瘍細胞系統NT2.5で攻撃した。neu過剰発現の結果として、これらのマウスは、ヒト乳癌患者において観察されるものと同様の様式で自然発生乳腺癌を発症し、従って、ヒト乳癌研究の適するモデルである。FVB/nマウスの群を、最終免疫の2週間後に5×10のNT2.5細胞で皮下攻撃した(下腹部)。第55日まで週に2度、腫瘍測定を行った。腫瘍体積は、(長いほうの測定値×短いほうの測定値)/2の式によって計算した。第30日の後、FBV/nマウスの腫瘍は退縮し始める(これは、腫瘍の拒絶を示す)ことに留意すること。FBV/nマウスを使用するその後の腫瘍研究に関しては、第30日まで腫瘍を測定した。563−598NCおよびSS構築物で免疫したマウスは、第30日に、それぞれ、166.517および173.7292mmの平均腫瘍体積を有し、一方、免疫しなかったマウスは、346.6563mmの平均腫瘍体積を有した(データは示さない)。第33日には、613−626および585−598CYCで免疫したマウスは、免疫しなかったマウスとMVFで免疫したマウスの両方と比較して、腫瘍体積の低減を示した。トラスツズマブB細胞エピトープで免疫したマウスの腫瘍負荷の低減の点で何らかの適度な成功があるように見えるが、ほぼすべてのマウスが腫瘍を発症した。
【0080】
(実施例7)
新規ペルツズマブ結合配座B細胞エピトープの設計および評価
表2に記載する3つのペプチド配列は、ペルツズマブ結合部位に類似した抗体を惹起する最小配列をさらに描写するために設計した。これらの複合配座ペプチドエピトープを合成し、首尾よく精製し、適正なジスルフィド対合で環化した。エピトープ266−296(Cys268−Cys295間のSH結合)、エピトープ298−333(Cys299−Cys311間のSH結合)およびエピトープ315−333(Cys315−Cys331間のSH結合)により、最小ペルツズマブ結合エピトープを描写することができよう。
【0081】
【化42】

追加の結果は、図6〜30に示す。
【0082】
本発明の範囲を逸脱することなく様々な変更を行うことができ、本発明を、本明細書に記載することに限定されるものと見なすべきでないことは、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0083】
後続の「発明の実施形態の詳細な説明」は、以下の図面にともに読むと、最もよく理解することができる。以下の図面では、同じ構造は、同じ参照番号で示されている。
【図1】HER−2タンパク質配列を図示する図である。
【図2】3つのジスルフィド対合の合成戦略を示す図である。差次的システイン保護および選択的除去および酸化を用いて、図示されているような正しいジスルフィド対合を生じさせた。
【図3】FVB/nマウスにおける免疫応答を示す図である。4から10匹のFVB/nマウスの群を、線状(NC)もしくはジスルフィド結合(SS)ペプチド構築物(A)MVF563−598、(B)MVF585−598、(C)MVF597−626、または線状ペプチド(D)MVF613−626で免疫した。各マウスを個々の棒として表す。AのスケールがB〜Dとは異なることに注意すること。
【図4】トラスツズマブが、HER−2のトラスツズマブ結合部位を模倣して設計されたペプチドエピトープを特異的に認識することを示す図である。これらのペプチド配列をx軸に与える。MVF316−339は、Her−2非該当対照ペプチドである。
【図5】ヒト乳癌細胞過剰発現性HER−2とペプチド特異的抗体のフローサイトメトリーを示す図である。フローサイトメトリーを用いて、様々な構築物により誘導されたFBV/nマウスからの抗体が天然HER−2を認識するかどうかを評定した。BT−474ヒト乳癌細胞(HER−2high)を、10μg/mLの正常マウスIg(負の対照)、マウスモノクローナルAb−2(正の対照)、またはFBV/nマウスにおいて産生させたペプチド抗体で処理した。
【図6】HER−2とのペルツズマブ結合部位を示す図である。
【図7】ヘルセプチンペプチドエピトープの3次元構造を示す図である。
【図8】Omnitarg(商標)(ペルツズマブ)に結合したHER−2の構造を示す図である。
【図9】HER−2−トランスツズマブ結合部位を示す図である。(A)HER−2とトラスツズマブのHおよびL鎖との複合体のリボン図。(B)HER−2のトラスツズマブ結合部位。この領域にはジスルフィドが豊富である。トラスツズマブと相互作用する3つのループの配列を示す。
【図10】ペプチドへのトラスツズマブの結合を示す図である。マイクロタイターウエルを2μg/mLの様々なペプチドで一晩被覆し、その後、1%BSAで1時間ブロックした。その後、トラスツズマブを2000μg/mLの濃度でプレートに添加し、PBTで1:2系列希釈した。結合したトラスツズマブをHRPコンジュゲート化抗ヒトIgGで検出し、その後、基質で検出した。(A)2000μg/mLのトラスツズマブを使用した、表Iからのペプチドおよび非該当対照ペプチド(MVF316−339)についてのOD415値。示されている値は、二重反復試験サンプルの平均である。エラーバーによりSEMを示す。(B)ジスルフィド結合(CYC)および線状(NC)形のMVF563−598とともに非該当対照ペプチド(MVF316−339)でのトラスツズマブの力価測定。
【図11】MTTアッセイによる細胞増殖を示す図である。BT474細胞を96ウエルマイクロタイタープレートに細胞数2×104/ウエルでプレーティングし、一晩、37℃でインキュベートした。指示濃度のペプチドを伴うまたは伴わない、トラスツズマブまたは正常ヒトIgG(100μg/mL)を含有するPBSを、各ウエルに添加した。それらのプレートを3日間、37℃でインキュベートした。MTTを用い、OD570を読み取ることにより、生細胞数を測定した。阻害率は、(OD正常ヒトIgG − ODトラスツズマブ + ペプチド)/OD正常ヒトIgG × 100の式を用いて計算した。示されている値は、三重反復試験サンプルの平均である。エラーバーによりSEMを示す。
【図12】FVB/n(A)およびNeu−N(B)トランスジェニックマウスにおけるペプチドに対する抗体応答を示す図である。環化(CYC)および線状(NC)構築物で免疫したマウスからの血清に対して直接ELISAを行って、免疫原性の差を判定した。対応する免疫原に対する抗体力価は、0.2以上の吸収度を有する最高希釈度の逆数と定義した。各棒は、個々のマウスを表す。x軸上の記号は、血清をサンプリングした時間を表し、例えば、1y+3は、初回免疫から3週間後に採取した血清に対応する。Neu−Nは、FVB/nバックグラウンドを有し、乳房特異的プロモーターの制御下で正常ラットneu癌原遺伝子を発現する。これらのマウスは、非トランスジェニックマウスと比べてneuに対して耐性を示す。Bは、これらのマウスはラットneuに対して耐性であるが、ペプチド免疫原に対する免疫応答を生じさせることができることを明示している。
【図13】HER−2に対するペプチド抗体の交差反応性を示す図である。免疫されたマウス血清からの精製抗体の反応性を、フローサイトメトリー分析を用いて、(A)BT474および(B)SKBR−3乳癌細胞系統で試験した。Ab結合が、ヤギ抗マウスFITCコンジュゲート化abで検出された。x軸は、蛍光強度を表し、y軸は、相対細胞数を表す。各ヒストグラムは、マウスプレIgGと、ペプチド抗体と、AB2(HER−2に結合するマウスmAb)とのオーバーレイを含む。両方の細胞系統が、エピトープ563−598および585−598からのAbはHER−2を認識しないが、エピトープ597−626および613−626からのAbはHER−2を認識することを明示している。
【図14】MVFおよびB細胞エピトープの独立した折り畳みを可能にするフレキシブルリンカー(GPSL)によりB細胞エピトープと共直線的に合成された「プロミスカス(promiscuous)」Th細胞エピトープMVFから成るキメラペプチドワクチン構築物の略図を示す。この組み合わせは、免疫系の体液性アームと生得的アームの両方の活性化による最適な抗体産生の惹起を助長し得る。
【図15】ヨウ素酸化を用いて、Cys268とCys295の間に自然発生ジスルフィド結合を形成したことを示す図である。
【図16】MVF HER2(266−296)非環化(NC)および環化(CYC)ペプチドで免疫したNZWウサギにおける免疫原性を示す図である。血清を週に1度採取し、診断試験に使用するために抗体を精製する。抗体力価は、直接ELISAによって決定する。
【図17】A)MVF HER2(266−296)環化(CYC)または非環化(NC)ペプチドのいずれかで免疫したWT FVB/nマウスにおける免疫原性(マウス数8/群)、B)FVB/nバックグラウンドを有する3匹のNew過剰発現マウスにおける免疫原性を示す図である。抗体力価は、直接ELISAによって決定する。
【図18】ヘルセプチンと相互作用するHER−2の細胞外ドメインのリボン構造を示す図である。矢印は、HER−2がヘルセプチンと接触する3つのループを示している。
【図19】水中のHer−2 563−598 CYCおよびHer−2 563−598 NCの100uM溶液を使用して行ったCD分光測定値を示す図である。3つのジスルフィド結合で拘束されているエピトープHER−2 563−598 CYCは、193nmでCD楕円率最小を示すが、エピトープHER−2 563−598 NC非拘束ペプチドは、204nmでCD楕円率最小を示す。これは、二次構造の有意な差を明示している。
【図20】HER2 563−598エピトープと、遊離スルフヒドリル基を攻撃し、よってジスルフィド対合の完成を判定するために用いることができるビオチン化剤を使用する選択的酸化、還元およびジスルフィド結合分析のための戦略とを示す図である。
【図21】位置選択的ジスルフィド形成を示す図である。残基315および331についての側鎖保護は、トリチルであり、これを樹脂からの切断により適便に除去した。299および311のシステイン残基の側鎖は、Acmで保護した。これを、酸化(I2)により、第一環化後、選択的に除去し、環化することができる。
【図22】非近交系NZWウサギ(A)および近交系マウスFVB/nマウス(B)におけるペプチドに対する抗体応答を示す図である。環化(CYC)および線状(NC)構築物で免疫した動物からの血清に対して直接ELISAを行って、免疫原性の差を判定した。対応する免疫原に対する抗体力価は、0.2以上の吸収度を有する最高希釈度の逆数と定義した。各棒は、個々のマウスを表す。x軸上の呼称は、血清をサンプリングした時間を表し、例えば、1y+3は、初回免疫の3週間後に採取した血清に対応する。
【図23】HER−2に対するペプチド抗体の交差反応性を示す図である。免疫されたウサギ血清からの精製抗体の反応性を、フローサイトメトリー分析を用いて、(A)BT474(HER−2high)および(B)MDA468(HER−2low)乳癌細胞系統で試験した。Ab結合が、ヤギ抗ウサギFITCコンジュゲート化abで検出された。x軸は、蛍光強度を表し、y軸は、相対細胞数を表す。各ヒストグラムは、ウサギプレIgGと、ペプチド抗体と、ヘルセプチン(HER−2に結合するヒトmAb)とのオーバーレイを含む。
【図24】ペプチド抗体が、インビトロでBT474乳癌細胞に対するADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害)を誘導することを示す図である。ターゲット細胞系統BT474を、Na51CrO4の存在下で1時間、ウサギからのペプチド抗体、正常ウサギIgGまたはヘルセプチンとともにインキュベートした。3回洗浄した後、ターゲット細胞をヒトPBMCエフェクター細胞とともに4時間、37℃で培養して100:1、20:1および4:1のエフェクター:ターゲット(E:T)比にした。その後、上清を回収し、γ−カウンターを使用して放射活性を決定した。細胞傷害性は、100×(A−B)/(C−B)の式から計算した(この式中、Aは、試験上清からの51Cr(cpm)を表し、Bは、単独での培養(自然発生)でのターゲットからの51Cr(cpm)を表し、およびCは、5%SDSで溶解した細胞からの最大51Cr放出を表す。
【図25】MVFおよびB細胞エピトープの独立した折り畳みを可能にするフレキシブルリンカー(GPSL)によりB細胞エピトープ(HER−2(266−296))と共直線的に合成された麻疹ウイルス融合タンパク質(MVF、残基288−302)から誘導された「プロミスカス」TH細胞エピトープから成るキメラペプチドワクチン構築物の略図である。
【図26】前負荷Fmoc−Val−CLEAR Acid樹脂を使用して固相ペプチド合成を行ったことを示す図である。試薬B(TFA:フェノール:H2O:TIS、90:4:4:1)を使用してペプチドを切断し、粗製ペプチドをRP−HPLCによって精製した。ヨウ素酸化を用いて、Cys268とCys295の間に自然発生ジスルフィド結合を形成した。
【図27】A)MVF−HER−2(266−296)非環化および環化ペプチドで免疫したNZWウサギマウスの抗体力価、B)MVF−HER−2(266−296)非環化および環化ペプチドで免疫した野生型FVB/nマウスの抗体力価、C)MVF−HER−2(266−296)で免疫したNeu過剰発現性FBV/nマウスの抗体力価を示す図である。血清は、週に1度採取し、抗体力価は、直接ELISAによって決定した。
【図28】ヒトBT474 HER−2過剰発現性腫瘍細胞(A)およびマウスNT2.5 neu過剰発現性腫瘍細胞(B)上の天然タンパク質に結合する能力について試験した、精製MVF−HER−2(266−269)環化および非環化抗体を示す図である。両方の抗体が、正常IgGアイソタイプ対照と比較してシフトしており、また正の対照(BT474についてはヘルセプチン、およびNT2.5については抗−c−ErbB2/c−Neu(Ab−4))と比較して同様の結合を有した。
【図29】BTB474細胞を、精製MVF−HER−2(266−296)環化および非環化抗体ならびに51Crとともにインキュベートし、その後、それらの抗体結合細胞をヒトPBMCに暴露し、これによりBT474細胞に関する免疫溶解を行うことによって判定した、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害を示す図である。
【図30】3×106のNT2.5細胞で皮下攻撃し、腫瘍増殖を24日間モニターした、図3Bからの野生型FBV/nマウスを示す図である。MVF−HER−2(266−296)環化および非環化治療マウスでは、MVFのみで免疫したマウスと比較して、腫瘍発現(A)および増殖(B)が遅延された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】

から選択される配列を有する、単離されたポリペプチド。
【請求項2】
線状である、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項3】
環化された、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項4】
レトロ−インベルソ形である、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項5】
グリコシル化されている、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項6】
【化2】

の配列を有する、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項7】
【化3】

の配列を有する、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項8】
【化4】

の配列を有する、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項9】
【化5】

の配列を有する、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項10】
【化6】

の配列を有する、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項11】
【化7】

の配列を有する、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項12】
【化8】

の配列を有する、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項13】
キメラペプチドを含む組成物であって、
該キメラペプチドが、HER−2 Bエピトープと、Tヘルパー(Th)エピトープと、該HER−2 Bエピトープを該Thエピトープに連結するリンカーとを含み、
該HER−2 Bエピトープの配列が、
【化9】

から選択され;
該Thエピトープが、
【化10】

から選択される配列を含み;および
該リンカーが、1〜15アミノ酸である、組成物。
【請求項14】
2つまたはそれ以上の前記キメラペプチドの混合物をさらに含む組成物であって、該2つまたはそれ以上のキメラペプチドの各々のHER−2 Bエピトープが異なる、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記HER−2 Bエピトープのうちの1つが、
【化11】

から選択され、且つ、前記HER−2 Bエピトープのうちの別の1つが、
【化12】

【化13】

から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記HER−2 Bエピトープのうちの少なくとも1つ、前記Thエピトープまたは前記リンカーが、レトロ−インベルソ形である、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
前記Thエピトープが、
【化14】

の配列を有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項18】
前記リンカーが、2から15個のアミノ酸を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項19】
前記リンカーが、
【化15】

の配列を有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項20】
前記Thエピトープが、
【化16】

の配列を有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項21】
前記Thエピトープが、
【化17】

の配列を有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項22】
前記Thエピトープが、
【化18】

の配列を有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項23】
前記Thエピトープが、
【化19】

の配列を有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項24】
前記Thエピトープが、
【化20】

の配列を有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項25】
前記Thエピトープが、
【化21】

の配列を有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項26】
前記Thエピトープが、
【化22】

の配列を有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項27】
前記Thエピトープが、
【化23】

の配列を有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項28】
HER−2タンパク質の免疫応答を刺激するための組成物であって、該組成物は、多価ペプチドであり、2つまたはそれ以上のHER−2 BエピトープとTh細胞エピトープとテンプレートとを含み、
該2つまたはそれ以上のHER−2 Bエピトープの各々が、互いに異なり、
該2つまたはそれ以上のHER−2 Bエピトープの各々の配列が、
【化24】

から選択され;
該Thエピトープが、
【化25】

から選択される配列を含み;
該HER−2 Bエピトープおよび該Th細胞エピトープが、該テンプレートに結合しており;ならびに
該テンプレートが、1〜15アミノ酸のリンカーによって連結された交互のロイシンおよびリシン残基の2本の鎖を含む、
組成物。
【請求項29】
キメラペプチドを被験者に投与することを含む、該被験者における免疫応答を刺激する方法であって、
該キメラペプチドが、HER−2 Bエピトープと、Tヘルパー(Th)エピトープと、該HER−2 Bエピトープを該Thエピトープに連結するリンカーとを含み、
該HER−2 Bエピトープの配列が、
【化26】

から選択され;
該Thエピトープが、
【化27】

から選択される配列を含み;および
該リンカーが、2〜15アミノ酸である、方法。
【請求項30】
多価ペプチドを被験者に投与することを含む、該被験者における免疫応答を刺激する方法であって、
該多価ペプチドが、2つまたはそれ以上のHER−2 Bエピトープ、Th細胞エピトープおよびテンプレートを含み、
該2つまたはそれ以上のHER−2 Bエピトープの各々が、互いに異なり、
該2つまたはそれ以上のHER−2 Bエピトープの各々の配列が、
【化28】

から選択され;
該Thエピトープが、
【化29】

から選択される配列を含み;
該HER−2タンパク質の免疫原性エピトープおよび該Th細胞エピトープが、該テンプレートに結合しており;ならびに
該テンプレートが、1〜15アミノ酸のリンカーによって連結された交互のロイシンおよびリシン残基の2本の鎖を含む、方法。
【請求項31】
医薬的に許容されるビヒクルとキメラペプチドとを含む医薬組成物を被験者に投与することを含む、該被験者において癌を治療する方法であって、
該キメラペプチドが、HER−2 Bエピトープと、Tヘルパー(Th)エピトープと、該HER−2 Bエピトープを該Thエピトープに連結するリンカーとを含み、
該HER−2 Bエピトープの配列が、
【化30】

【化31】

から選択され;
該Thエピトープが、
【化32】

から選択される配列を含み;および
該リンカーが、2〜15アミノ酸である、方法。
【請求項32】
前記被験者が、ヒトであり、かつ乳癌、卵巣癌、肺癌、前立腺癌および大腸癌のうちの1つを有する、または乳癌、卵巣癌、肺癌、前立腺癌および大腸癌のうちの1つについての素因を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記癌が、乳癌である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記医薬組成物が、キメラペプチドの混合物をさらに含み;
該混合物が、2つまたはそれ以上のキメラペプチドを含み;および
該2つまたはそれ以上のキメラペプチドの各々が、前記HER−2 Bエピトープと、前記Tヘルパー(Th)エピトープと、該HER−2 Bエピトープを該Thエピトープに連結する前記リンカーとを含み、該2つまたはそれ以上のキメラペプチドの各々のHER−2 Bエピトープが、互いに異なる、
請求項31に記載の方法。
【請求項35】
HER−2 Bエピトープと、Tヘルパー(Th)エピトープと、該HER−2 Bエピトープを該Thエピトープに連結するリンカーとを含むワクチンであって、
該HER−2 Bエピトープの配列が、
【化33】

から選択され;
該Thエピトープが、
【化34】

【化35】

から選択される配列を含み;および
該リンカーが、1〜15アミノ酸である、ワクチン。
【請求項36】
少なくとも1つの追加のHER−2 Bエピトープと、Tヘルパー(Th)エピトープと、該追加のHER−2 Bエピトープを該Thエピトープに連結するリンカーとをさらに含み、該少なくとも1つの追加のHER−2 Bエピトープが、前記HER−2 Bエピトープとは異なる、請求項35に記載のワクチン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公表番号】特表2009−500298(P2009−500298A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517193(P2008−517193)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/023672
【国際公開番号】WO2006/138675
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(504325287)ザ オハイオ ステート ユニバーシティー リサーチ ファウンデーション (24)
【Fターム(参考)】