説明

HIF−1蛋白蓄積の阻害剤

本発明は、血管形成関連の障害の治療および/または予防のためのシクロペンタベンゾフラン誘導体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管形成関連の障害、好ましくは肺高血圧の処置および/または予防に有用なシクロペンタベンゾフラン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
低酸素誘導因子1(HIF−1)は、細胞不死化、肝細胞プールの維持、細胞の脱分化、赤血球産生、遺伝的不安定性、血管形成、代謝性再プログラミング、自己分泌増殖因子のシグナル伝達および浸潤/転移を含む、低酸素圧に対する適応反応の鍵となる態様に含まれる数種の遺伝子の発現を制御する転写因子である。
【0003】
HIF−1転写因子は、酸素制御のHIF−1αおよび構成的に発現しているHIF−1βによって、ヘテロ二量体として形成される。後者はまた、標的遺伝子のバッテリーの重複を制御する、構造的または機能的に関連するHIF−2α蛋白と二量体を形成する。該HIF−1複合体は、例えばVEGF、EPO、LDH、PDK1等などの多くの遺伝子の発現を媒介し、上記した生体内作用における鍵となる媒介物質であると考えられる。
【0004】
HIF−1の転写活性は低酸素刺激により密接に制御される。標準的な酸素圧(約20%O)の条件下では、プロリルヒドロキシラーゼ(PHD)による酸素媒介のプロリルヒドロキシル化に対する対象としてのHIF−1α(ならびにHIF−1β)は、高いターンオーバー(半減期:約5分間)を受ける。PHDによる修飾はフォン・ヒッペル−リンドウ・サプレッサー蛋白(VHL)の結合を要件とし、それはエロンギンC(Elongin C)にも結合し、それによりHIF−1αをユビキチン化することを標的とする、ユビキチンリガーゼ複合体をリクルートする。ついで、ユビキチン化されたHIF−1α蛋白はプロテアソーム複合体により分解される。反対に、ヒドロキシル化およびユビキチン化の割合は低酸素圧の条件下では減少し、例えば、HIF−1αのニトロシル化により蓄積および安定化がもたらされる(図1a:低酸素またはVEGF刺激によるHIF−1蛋白介在の(プロ血管形成)活性の模式図を参照のこと)。
【0005】
HIF−1依存性転写を特異的に調節することで、血管新生および血管リモデリングの特異的調節/処置が可能となるであろう。病理学的血管新生および血管リモデリングは、癌(すなわち、腫瘍血管新生)または肺高血圧などの複数のヒト障害と関連付けられ、例えば酸素の欠如により誘発され得る(低酸素:図1aを比較のこと)。HIF−1活性は持続的低酸素、間欠的低酸素、成長因子刺激に対する応答にて誘発され、例えば、慢性持続的および間欠的低酸素に対する不適応な応答を媒介し、肺性および全身性高血圧を発症する基礎となる(非特許文献1)。つい最近になって、HIF−1、EPOおよびVEGF活性が幼児の肺高血圧と関連付けられた(非特許文献2)。
【0006】
HIF−1は酸素依存的に制御され、それにより組織の酸素化における変化に対する適応反応を媒介すると報告されている(非特許文献3を参照のこと)。
【0007】
HIF−1はまた、血管内皮成長因子(VEGF)の転写活性を刺激し、VEGF受容体ファミリーのリガンドは、順次、細胞増殖および血管形成を刺激すると報告されている(非特許文献4を参照のこと)。HIF−1の抑制および機能喪失は、腫瘍の増殖、血管新生および転移の減少と関連付けられると報告されている(非特許文献5を参照のこと)。
【0008】
HIF−1の過剰発現が、腫瘍増殖、血管新生の増加および転移に関する動物実験にて観察されている。局所的に進行した充実性腫瘍の大部分は酸素利用度の小さな領域を含有する。この腫瘍内低酸素状態は、腫瘍細胞を機能的な血管から遠ざけ、腫瘍細胞が迅速に増殖した結果として、適量の酸素の拡散を防止し、血管形成が阻害される。その一方で、HIF−1αの過剰発現の生検断片での免疫組織学的検出が、多くの癌における主たる因子となった。多くの新規な抗癌剤が種々の分子機構を介してHIF−1を阻害することが明らかにされた(非特許文献6)。所定の患者に投与する薬物のコンビネーションを決定することは癌治療の結果を改善するのに大きな障害が残っている。
【0009】
これらの知見とは反対に、HIF−1介在の転写を阻害することは反対の作用があり、かくしてHIF−1が低酸素および血管形成(新規な血管新生)関連の障害を治療するための標的として有効であることが分かった。
【0010】
HIF−1の作用部位は、例えば低酸素、および例えばVEGF受容体シグナルなどの他の刺激によって開始される調節経路内でより下流に位置するため、本発明の化合物によって標的とされる介入点は、例えばスニチニブ(Sunitinib);ソラフェニブ(Sorafenib)およびアバスチン(Avastin)などの市販のVEGF受容体阻害剤と比べて、より特異的な作用をもたらすであろう(図1bを参照のこと)。さらには、本発明の化合物は、例えば、VEGFまたは他の受容体チロシンキナーゼ(RTK)阻害剤よりもより直接的かつ正確に低酸素誘導の生理学的なシグナル伝達に影響を及ぼすか、または修飾することができる。このように、本発明の化合物を用いて、新規な治療法を設計することができ、例えば、併用療法により療法を(個々に)最適化することができ、副作用を軽減することができる。さらには、本発明の化合物の薬理学的に有用な作用は細胞膜を貫通することができるため、本発明の化合物は抗原などの生体物質と比べてより優れた効果を示すであろう。したがって、抗体を基剤とするエフェクターは、通常、細胞の内部にさえ達することができないが、本発明の化合物は哺乳動物細胞の内部にてその作用を発揮することができる。
【0011】
HIF−1発現ならびに関連するHif蛋白の産生に依存するものとしてのさらに具体的な疾患も当該分野にて知られている。
【0012】
子宮内膜症は子宮腔の外側に異所性子宮内膜組織が存在することを意味する。子宮内膜症は生殖年齢の間にある女性に影響を与える一般的な疾患である。
【0013】
Hif−1は子宮内膜症の制御に一の役割があると報告されている(非特許文献7を参照のこと)。VEGFおよび/またはHIF−1(シグナル)のVEGF発現の伝達物質としての阻害剤は、当該分野にて、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)および肺高血圧症などの肺障害を治療するための可能性のある治療法として記載されている(例えば、非特許文献8を参照のこと)。
【0014】
当該分野にて、HIF−1は、低酸素およびアンジオテンシン受容体発現を介する炎症プロセスと関連付けられると記載されている(非特許文献9を参照のこと)。
【0015】
HIF−1は低酸素誘導性腎線維症およびESRDに対する治療法の標的として記載されている(非特許文献10を参照のこと)。
【0016】
HIFのアップレギュレーションは当該分野にてペイロニー病と関連付けて記載されている(非特許文献11を参照のこと)。
【0017】
Hif−1アルファの過剰発現は当該分野にて勃起不全と関連付けられている(非特許文献12を参照のこと)。
【0018】
当該分野にて、HIF−1の過剰発現は線維症を促進すると記載されている(非特許文献13を参照のこと)。
【0019】
当該分野にて、低酸素誘導のHIF−1は強皮症の進行に起因するものとして記載されている(非特許文献14を参照のこと)。
【0020】
低酸素症に起因するHIF−1の過剰発現は、臨床的にはARDS進行と関連付けられる(非特許文献15を参照のこと)。
【0021】
当該分野にて、HIF−1はアテローム性動脈硬化症と関連付けられている(非特許文献16および17を参照のこと)。HIF−1発現は血管芽細胞腫とも関連付けられる(非特許文献18および19を参照のこと)。
【0022】
当該分野にて、HIF−1は腫瘍細胞の転移性表現型に寄与する因子として記載されている(非特許文献20を参照のこと)。
【0023】
HIF−1は当該分野にて黄斑変性症を治療するための標的として記載されている(非特許文献21を参照のこと)。
【0024】
ヒトの治療剤として既に使用されている既知の血管新生阻害剤がある。ソラフェニブ(Sorafenib)(ネキサバル(Nexavar)、Bayer Health Careの登録商標)が、当該分野にて、とりわけ、血管内皮成長因子(VEGF)受容体を阻害することで血管形成(例えば、腫瘍血管新生)を顕著に減少させるキナーゼ阻害剤として記載されている(非特許文献22を参照のこと)。
【0025】
スニチニブ(Sunitinib)(ステント(Sutent)、Pfizerの登録商標;以前は、SU11248で特定されていた)は、当該分野にて、直接的な抗腫瘍活性および受容体チロシンキナーゼ血小板誘導の成長因子受容体、血管内皮成長因子受容体、KITおよびFLT3の阻害を通して抗血管形成活性を示す、抗血管形成エフェクターとして記載されている(非特許文献23および24を参照のこと)。PTK787/ZK222584(バタラニブ(Vatalanib)、NovartisとBayer Schering AGの共同製品)が、以前に、抗血管形成VEGF受容体阻害剤として作用すると報告されていた(非特許文献25を参照のこと)
【0026】
他のVEGF受容体阻害剤がバンデタニブ(Vandetanib)(ザクチマ(Zactima)、AstraZenecaの登録商標;前はZD6474として流通していた)、AZD2171(レセンチン(Recentin)、AstraZenecaの登録商標)および抗体のベバシズマブ(Bevacizumab)(アバスチン、Genentech/Rocheの登録商標)である。
【0027】
しかしながら、HIF阻害剤として用いられる既知のVEGFおよびRTK阻害剤の特性はあらゆる点で満足のいくものではなく、したがって、さらなるHIF阻害剤に対する、特に低酸素症および血管形成(新規な血管新生)関連の障害の治療に有用である、HIF1阻害剤に対する要求がある。
【0028】
従来の化合物よりも利点のある化合物を提供することが本発明の目的である。比較的に低容量でHIFを効果的に阻害する化合物は、血管形成関連の障害の治療および/または予防に有用である。
【0029】
この目的は特許請求の範囲に記載の発明により達成される。
【0030】
意外にも、特定のシクロペンタベンゾフランがHIF阻害活性を示すことが見出された。これらのシクロペンタベンゾフランは、すなわち、種々の種のアグライア植物より抽出され得る、ロカグラオール(rocaglaol)またはロカグラミド(rocaglamide)と称される一連の天然の産物より誘導され得る。
【0031】
当該分野では、多くのシクロペンタベンゾフラン誘導体、すなわち、炎症プロセスおよび発癌作用にて中心的役割を果たすNF KB転写因子に対して阻害活性を示す、誘導体が知られている。例えば、シクロペンタベンゾフランが強力な抗癌剤(非特許文献26)として、すなわち抗白血病剤(非特許文献27;特許文献1)として知られている。さらには、シクロペンタベンゾフラン誘導体はまた、痛みの治療(特許文献2)に、炎症および/または自己免疫疾患の治療(特許文献3;特許文献4;特許文献5)に有用であることも知られている。
【0032】
特許文献6はマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤として有用なヒドロキサム酸化合物を開示する。
【0033】
特許文献7は、慢性の難治性炎症および関節リウマチを含む、特定の障害を治療するための医薬の製造におけるある種のC−Cケモカイン産生阻害剤の使用に関する。
【0034】
本発明の化合物は、HIF−1依存性ルシフェラーゼ転写の極めて強力な(低nMの)阻害剤であり、HIF−1依存性標的遺伝子(例えば、PDK1)の転写を一桁のナノモル量で阻害することが明らかにされた。これらの効果は転写(mRNA)レベルで媒介されず、一の治療方法(シグナル誘発後の化合物の投与)にて達成され得ることが明らかにされた。さらには、HIF依存性作用はHIF−1α蛋白そのものを強力に阻害することで開始されることが明らかにされた。この作用はHif−1a蛋白に特異的であり、翻訳工程の非特異的な阻害の結果によるものではないことが分かった。本発明の化合物は、インビトロにて、二桁のナノモルのIC50でHUVECの成長(血管形成;血管モデリング)において強力な阻害を示した。このインビトロ実験にて、該化合物はスニチニブ(ステント(登録商標))およびソラフェニブ(ネキサバル(登録商標))などの市販の対照よりも優れた作用を示した。VEGF誘導のHUVECの成長アッセイにおいて、本発明の化合物はステントよりも2.5ないし6倍優れた(小さな)値に達し、ネキサバルよりも50ないし100倍小さな値に達した。HUVECがデフェロキサミン(Deferoxzmine)により誘発された時(低酸素)であっても、これらの値は改善された。これらのケースにおいて、本発明の化合物のIC50はステントよりも33−100倍小さく、ネキサバルは全く活性を示さなかった。これらの知見は、低酸素刺激およびVEGF刺激(経路:図1aおよびbも参照のこと)がある程度の特徴を共有するが、顕著な違いもあることを示すものであり、本発明の化合物が、例えば、スニチニブ(ステント(登録商標))およびソラフェニブ(ネキサバル(登録商標))などのVEGF受容体阻害剤よりも、例えば新規な血管形成および/または血管リモデリングの治療に対して全く新たにアクセスし得ることを証明するものである。
【0035】
例えば、このようなHIF−1シグナル伝達のVEGF/受容体チロシンキナーゼ阻害剤または他の上流のモジュレータでは、例えば下痢、湿疹、抜け毛、出血、高血圧、甲状腺機能低下、吐き気、嘔吐、紅斑、かゆみ、疲れ、痛みならびにアミラーゼおよびリパーゼ活性の増加などの一般的副作用を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】米国特許第4539414号
【特許文献2】WO2008/014066
【特許文献3】EP1693059
【特許文献4】WO2005/113529
【特許文献5】WO2006/129318
【特許文献6】WO01/12592
【特許文献7】EP1016408
【非特許文献】
【0037】
【非特許文献1】Semenza GL.、Physiology(Bethesda), 2009;24:97−1006
【非特許文献2】Lemus−Varela ML etら、Expression of HIF−1alpha, VEGF and EPO in peripheral blood from patients with two cardiac abnormalities associated with hypoxia. Clin Biochem. 2009
【非特許文献3】J.J. Haddad、Oxygen−sensing mechanisms and the regulation of redox−responsive transcription factors in development and pathophysiology. Respir Res 2002, 3:26 and G. Semenza, Targeting HIF−1 for Cancer Therapy. NatRevCancer 2003, 3:721−732
【非特許文献4】J.M.G. LarkinおよびT. Eisen、Renal cell carcinoma and the use of Sorafenib. 2006, Therapeutics and Clinical Risk Management, 2(1):87-98
【非特許文献5】G. Semenza、Evaluation of HIF−1 inhibitors as anticancer agents. Drug Discovery Today 2007, 12(19/20):853−859
【非特許文献6】Semenza G. L.;2007, Drug Discovery Today, Vol. 12, 19/20, 853−859
【非特許文献7】Beckerら、2−Methoxyestradiol Inhibits Hypoxia−Inducible Factor−1・alpha and Suppresses Growth of Lesions in a Mouse Model of Endometriosis. Am J Pathol 2008, 172:534-544
【非特許文献8】H. Kanazawa、Role of vascular endothelial growth factor in the pathogenesis of chronic obstructive pulmonary disease. MedSciMonit 2007, 13(11):RA189−195
【非特許文献9】G.R. Smith、Cancer, inflammation and the AT1 and AT2 receptors. Journal of Inflammation 2004, 1:3
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【非特許文献13】V.H. Haase、Pathophysiological Consequences of HIF Activation:HIF as a modulator of fibrosis. Ann N Y Acad Sci. 2009,1177:57−65
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【非特許文献20】N. Simiantonakiら、Hypoxia−inducible factor 1 alpha expression increases during colorectal carcinogenesis and tumor progression. BMC Cancer. 2008, 8:320
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【非特許文献22】J.M.G. LarkinおよびT. Eisen、Renal cell carcinoma and the use of Sorafenib. 2006, Therapeutics and Clinical Risk Management, 2(1):87−98
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【非特許文献24】S. de Bourdら、Anti−angiogenic and anti−invasive effects of sunitinib on experimental human glioblastoma. Neuro Oncol. 2007, 9(4):412−23
【非特許文献25】A. Alajatiら、Spheroid−based engineering of a human vasculature in mice.. Nat Methods 2008, 5, 439−445
【非特許文献26】King, M. A.ら、J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1982:1150−1151
【非特許文献27】Lee, S. K.ら、Chem. Biol. Interaet. 1998, 115:215−228
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
しかしながら、HIF阻害活性を示すシクロペンタベンゾフランは未だ文献に報告されていない。
【課題を解決するための手段】
【0039】
本発明の第一の態様は、一般式(I):
【化1】

(I)
[式中;
、R、RおよびRは、相互に独立して、−H;−F;−Cl;−Br;−I;−NO;−CN;−OH;−O−C1−8−アルキル;−O−フェニル;−O−C1−8−アルキル−フェニル;−O−C(=O)−C1−8−アルキル;−O−C(=O)−フェニル;−C5−12−糖質(その酸素原子の一つを介在して結合);6−(1,2−ジヒドロキシ−エチル)−3−メトキシ−2−ヒドロキシ−1,4−ジオキサン−2−イルであるか;あるいは
とR、RとR、またはRとRは、その結合する2つの炭素原子と一緒になって、−O−CH−O−を有する5員環を、または−O−CH−CH−O−を有する6員環を形成し、その一方で残りの基のRないしRは、独立して、上記した基より選択され;
およびRはフェニルであり;
は−OH;−O−C1−12−アルキル;−O−フェニル;−O−C1−8−アルキル−フェニル;−O−C(=O)−C1−8−アルキル;−O−C(=O)−フェニルであり;
は−H;−OH;−O−C1−8−アルキル;−O−フェニル;−NH;−NH−C1−8−アルキル;−N(C1−8−アルキル)であり;
は−H;−C(=O)−OH;−C(=O)−O−C1−8−アルキル;−C(=O)−O−フェニル;−C(=O)−C1−8−アルキル;−C(=O)−O−C1−8−アルキル;−C(=O)−NH;−C(=O)−NH−C1−8−アルキル;−C(=O)−N−(C1−8−アルキル)であるか;または−C(=O)−ヘテロシクリルを意味し、ここで該ヘテロシクリルは該−C(=O)−基に結合した少なくとも1個のN−原子を含有し;
10およびR11は−Hであるか;あるいは
およびR10は一緒になって=O、=Sまたは=NR15を意味し、
ここでR15は−C1−8−アルキル;−OH;−O−C1−8−アルキル;または−O−フェニルであるか;
あるいはR10およびR11は一緒になって単結合を形成し、RおよびRは一緒になって、式(II):
【化2】

(II)
(式中;
および2は、各々、RおよびRを介する結合であり;
点線は単結合または二重結合であり、二重結合の場合には、R12は存在せず;
12は−Hまたは−C1−3−アルキルであり;
13は−H;−C1−8−アルキル;−OH;−O−C1−8−アルキル;または−O−フェニルであり;
14は−H、−C1−8−アルキルであるか;または
13およびR14は、その結合する炭素および窒素原子と一緒になって、ヘテロシクリルを形成する)
で示される基を形成し、
ここで、各基中の「アルキル」なる語は、置換されていなくても、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−OCH、−OCHCH、−O−CH−フェニル、−OC(=O)CH、−CHO、−COH、−NH、−NH−(C1−8−アルキル)、−NH−(フェニル)、−NH−(CH−フェニル)、−N(C1−8−アルキル)およびヘテロシクリルからなる群より相互に独立して選択される1、2または3種の置換基で置換されていてもよく、ここで該ヘテロシクリルはアルキル残基に結合する少なくとも1個のN−原子を含有し;
ここで、各基中の「フェニル」は、置換されていなくても、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−OCH、−OCHCH、−OC(=O)CH、−CN、−NO、−NH、−CH、CF、−CHOおよび−COHからなる群より相互に独立して選択される1、2または3種の置換基で置換されていてもよい]
で示される化合物またはその生理学的に許容される塩であって、血管形成関連の障害、好ましくは尿生殖器疾患、眼病、肺疾患、腎疾患、骨関節炎およびリウマチ障害;特に好ましくは肺高血圧症より選択される障害の治療および/または予防のための化合物またはその生理学的に許容される塩に関する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
原文に記載なし
【発明を実施するための形態】
【0041】
本願明細書では便宜上、「アルキル」または「C1−8−アルキル」は、飽和または不飽和の、直線または分岐状および/または環状炭化水素をいう。したがって、「アルキル」なる語は「アルキル」、「アルケニル」および「アルキニル」 ならびに「シクロアルキル」、「シクロアルケニル」および「シクロアルキニル」を包含する。好ましいアルキル残基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec.−ブチル、iso.−ブチル、tert.−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチルおよびn−オクチルである。好ましいアルケニル残基の例はビニル、アリルおよびブタジエニルを包含する。好ましいアルキニル残基の例はエチニルおよびプロパルギルを包含する。環状の炭化水素が少なくとも3個の環原子を必要とすることを当業者は理解する。好ましいシクロアルキル残基の例がシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルである。アルキル残基は置換されていなくても、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−OCH、−OCHCH、−O−CH−フェニル、−OC(=O)CH、−CHOおよび−COH、−NH、−NH−(C1−8−アルキル)、−NH−(フェニル)、−NH−(CH−フェニル)、−N(C1−8−アルキル)およびヘテロシクリルからなる群より相互に独立して選択される1、2または3種の置換基により置換されていてもよく、ここで該ヘテロシクリルはアルキル残基に結合する少なくとも1個のN−原子を含有し、好ましくは、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニルおよびピペリジニルからなる群より選択されるのが好ましい。好ましくは、−NH(C1−8−アルキル)は−NH(CH)、−NH(CHCH)および−NH(CH(CH)からなる群より選択される。好ましくは、−N(C1−8−アルキル)は−N(CH、−N(CHCH、N(CH(CHおよび−N(Cからなる群より選択される。好ましい置換されたアルキル残基の例は−CF、−CHCH−OCH、−CHCHNH、−CHCH−NH(CH)、−CHCH−N(CH、−CHCH−NH(CHCH)、−CHCH−N (CHCH、−CH−CH−ピロリジニル、−CHCHCH−ピロリジニル、−CHCHCH−アゼチジニルまたは−CHCHCH−アジリジニルである。
【0042】
本願明細書では便宜上、「フェニル」は、置換されていないか、または−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−OCH、−OCHCH、−OC(=O)CH、−CN、−NO、−NH、−CH、−CF、−CHOおよび−COHからなる群より相互に独立して選択されるベンゼン基;例えば、フェニル、o−フルオロフェニル、m−フルオロフェニル、p−フルオロ−フェニル、o−クロロフェニル、m−クロロフェニル、p−クロロフェニル、o−アニシル、m−アニシル、p−アニシル等をいう。
【0043】
本願明細書では便宜上、「ヘテロシクリル」または「ヘテロサイクル」は、N、OおよびS、好ましくはNからなる群より選択される1種または2種のヘテロ原子、好ましくは1種のヘテロ原子を含有する、飽和、不飽和または芳香族の3ないし7員環、すなわち、3−、4−、5−、6−または7−員環をいい、ここで該環は置換されていなくても、または−OCH、−OCHCH、−OC(=O)CH、−OC(=O)CHCH、−OC(=O)CH(CH、−NHC(=O)CH、−NHC(=O)CHCH、−NHC(=O)CH(CHからなる群より選択される1または2種の置換基を含有する。好ましいヘテロシクリルまたはヘテロサイクルの例がアジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリル、ピペリジニル、モルホリニルおよびピリジニルである。
【0044】
本願明細書では便宜上、「糖質」または「C5−12−糖質」は、その各々がデスオキシの形態であってもよい、1または2個のペントース(C−糖質またはC10−糖質)および/または1または2個のヘキソース(C−糖質またはC12−糖質)からなる単糖または二糖をいい、該二糖は各形態がグリコシド結合を介して相互に結合し、置換されていないか、またはメチル、エチル、アセチル、ベンゾイルまたは3,4,5−トリヒドロキシベンゾイルからなる群より独立して選択される1、2、3、4または5種の置換基で置換されている。好ましいペントースの例がピラノシドまたはフラノシド形態の各々の、キシロース、アラビノースである。好ましいヘキソースの例が、ピラノシドまたはフラノシド形態の各々の、グルコース、6−デオキシグルコース、ラムノースである。好ましいグリコシド結合の例が1→4および1→6である。「糖質」または「C5−12−糖質」残基はその酸素原子の一つを介して結合し、より高度な一般式で示される糖となる。
一般式(I)の化合物の生理学的に許容される塩は、生理学的に許容される酸との塩ならびに生理学的に許容される塩基との塩を包含する。生理学的に許容される酸は、HCl、HBr、HSO、HPO等の無機酸;およびフマル酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸等の有機酸を包含する。生理学的に許容される塩基はアンモニアおよび有機アミンを包含する。
【0045】
本発明はまた、一般式(I)の化合物の立体異性体、例えばエナンチオマーまたはジアステレオマー、互変異性体、塩、溶媒和物、例えば水和物、多形体等に関する。
【0046】
一般式(I)の化合物の好ましい実施形態において、
、R、RおよびRは、相互に独立して、−H;−F;−Cl;−Br;−I;−NO;−CN;−OH;−O−C1−8−アルキル;−O−フェニル;−O−C1−8−アルキル−フェニル;−O−C(=O)−C1−8−アルキル;−O−C(=O)−フェニル;その酸素原子の一つを介して結合した−C5−12−糖質;6−(1,2−ジヒドロキシ−エチル)−3−メトキシ−2−ヒドロキシ−1,4−ジオキサン−2−イルを示すか;または
とR、RとR、またはRとRがそれらの結合する2個の炭素原子と一緒になって−O−CH−O−を有する5員環を、あるいは−O−CH−CH−O−を有する6員環を形成し、その一方で他の基RないしRは上記した基より独立して選択され;
はH;−OH;−O−C1−8−アルキル;−O−フェニル;−NH;−NH−C1−8−アルキル;−N(C1−8−アルキル)であり;
はH;−C(=O)−OH;−C(=O)−O−C1−8−アルキル;−C(=O)−O−フェニル;−C(=O)−C1−8−アルキル;−C(=O)−O−C1−8−アルキル;−C(=O)−NH;−C(=O)−NH−C1−8−アルキル;−C(=O)−N−(C1−8−アルキル)であるか;または−C(=O)−ヘテロシクリルを示し、ここで該ヘテロシクリルは少なくとも1個のN−原子を含有し、それが−C(=O)−基に結合し;
10およびR11は−Hであるか;または
およびR10は一緒になって=O、=Sまたは=NR15を示し、
ここでR15は−C1−8−アルキル;−OH;−O−C1−8−アルキル;または−O−フェニルである。
【0047】
一般式(I)の好ましい化合物は、一般式(Ia)、(Ib)、(Ic)または(Id):
【化3】


で示される化合物である。
【0048】
一般式(I)または(Ia)の一つの化合物の好ましい実施形態において、
、R、RおよびRは、相互に独立して、−H;−F;−Cl;−Br;−I;−NO;−CN;−OH;−O−C1−8−アルキル;−O−フェニル;−O−C1−8−アルキル−フェニル;−O−C(=O)−C1−8−アルキル;−O−C(=O)−フェニルを示し;
およびRはフェニルであり;
およびRは、相互に独立して、−OHまたは−O−C1−8−アルキルであり;
、R10およびR11は−Hである。
【0049】
一般式(I)、(Ia)または(Ib)の一つの化合物の好ましい実施形態において、
、R、RおよびRは、相互に独立して、−H;−F;−Cl;−Br;−I;−NO;−CN;−OH;−O−C1−8−アルキル;−O−フェニル;−O−C1−8−アルキル−フェニル;−O−C(=O)−C1−8−アルキル;−O−C(=O)−フェニルを示し;
およびRはフェニルであり;
は−OHまたは−O−C1−8−アルキルであり;
は−OHであり;
、R10およびR11は−Hである。
【0050】
一般式(I)、(Ia)、(Ib)、(Ic)または(Id)の一つの化合物の好ましい実施形態において、
、R、RおよびRは、相互に独立して、−H;−F;−Cl;−Br;−I;−NO;−CN;−OH;−O−C1−8−アルキル;−O−フェニル;−O−C1−8−アルキル−フェニル;−O−C(=O)−C1−8−アルキル;−O−C(=O)−フェニルを示し;
およびRはフェニルであり;
およびRは−OHであり;
、R10およびR11は−Hである。
【0051】
一般式(I)の化合物のもう一つ別の好ましい実施形態において、
およびRは、相互に独立して、−H;−OH;−O−C1−8−アルキル;−O−フェニル;−O−C1−8−アルキル−フェニル;−O−C(=O)−C1−8−アルキル;−O−C(=O)−フェニルを示す:
ただし、RおよびR基のうち少なくとも1つは−H以外の基であり;
およびRはHであり;
およびRはフェニルであり;
およびRは、相互に独立して、−OHまたは−O−C1−8−アルキルであり;
、R10およびR11は−Hである。
【0052】
一般式(I)、(Ia)、(Ib)、(Ic)または(Id)の一つの化合物のさらにもう一つ別の好ましい実施形態において、
およびRは、相互に独立して、−H;−OH;−O−C1−8−アルキル;−O−フェニル;−O−C1−8−アルキル−フェニル;−O−C(=O)−C1−8−アルキル;−O−C(=O)−フェニルを示す;
ただし、RおよびRの少なくとも1個は−H以外の基であり;
およびRは−Hであり;
およびRはフェニルであり;
およびRは−OHであり;
、R10およびR11は−Hである。
【0053】
一般式(I)、(Ia)、(Ib)、(Ic)または(Id)の一つの化合物のもう一つ別の好ましい実施形態において、
およびRは、相互に独立して、−H;−OH;−O−C1−8−アルキル;−O−フェニル;−O−C1−8−アルキル−フェニルである;
ただし、RおよびR基の少なくとも1個は−H以外の基であり;
およびRは−Hであり;
およびRはフェニルであり;
およびRは−OHであり;
、R10およびR11は−Hである。
【0054】
一般式(I)のもう一つ別の好ましい化合物は、一般式(Ie):
【化4】

(Ie)
で示される化合物である。
【0055】
一般式(Ie)の化合物の好ましい実施形態において、
はH;置換されていないか、−OCH、−OCHCH、−NH、−NH(CH)、−NH(CHCH)、−N(CH、−N(CHCH
【化5】

からなる群より選択される1個の置換基で置換された−O−C1−8−アルキル;非置換の−O−CH−フェニル;好ましくは−N(CHまたは
【化6】

で置換された−OCHCH−であり;
は−OH;非置換の−O−フェニル;非置換の、または−F、−Cl、−OCH、−OCHCH、−NH、−NH(CH)、−NH(CHCH)、−NH(CH(CH)、−NH(C(CH)、−NH(CH−フェニル)または−NH(フェニル)(ここで、各基中のフェニルは非置換であるか、−N(CH、−N(CHCH
【化7】


で置換されている)からなる群より選択される1種の置換基で置換されている−O−C1−8−アルキルを;非置換の−O−CH−フェニルを示し;
およびRは、非置換の、あるいは−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−OCH、−NH、−CHおよび−CFからなる群より相互に独立して選択される1、2または3種の置換基で置換されているフェニルである。
【0056】
本発明の化合物であって、一般式(If):
【化8】

(If)
で示される特に好ましい化合物を、以下の表(表1)に要約する。
【0057】
【表1−1】


【表1−2】

【0058】
本発明の特に好ましい化合物は、一般式(Ig):
【化9】

(Ig)
[式中:
は−Hおよび−OCHより選択され;
’は−H;−CHNHCH;−CHN(CH;および
【化10】


で置換された−CH−より選択され;
は−F、−Clまたは−OCHであり;および
は−H、−Fまたは−Clである。
【0059】
式(I)、(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)、(If)または(Ig)の一つの特に好ましい化合物は、
(1,3,3a,8b)−3−(3−フルオロフェニル)−6,8−ジメトキシ−3a−(4−メトキシフェニル)−2,3,3a,8b−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]シクロペンタ[b]フラン−1,8b−ジオール(本願明細書では便宜上、「IMD−019064」とも称される):
【化11】



(1,3a,8b)−3a−(4−クロロフェニル)−3−フェニル−6−(2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ)−2,3,3a,8b−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]シクロペンタ[b]フラン−1,8b−ジオール(本願明細書では便宜上、「IMD−026259」とも称される;WO 2005/113529、実施例33を参照のこと):
【化12】


;および
(1,3a,8b)−3a−(4−クロロフェニル)−6−(2−(メチルアミノ)エトキシ)−3−フェニル−2,3,3a,8b−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]シクロペンタ[b]フラン−1,8b−ジオール(本願明細書では便宜上、「IMD−026260」とも称される;WO2005/113529、実施例34を参照のこと):
【化13】


;およびその生理学的に許容される塩からなる群より選択される。
【0060】
本発明のさらなる態様は、本発明の、一般式(I)の、好ましくは一般式(1a)、(1b)、(1c)、(1e)、(1f)または(1g)の少なくとも1種の化合物の、血管形成関連の障害、好ましくは肺高血圧症の治療および/または予防のための医薬の製造における使用に関する。一般式(I)の化合物の好ましい全ての実施態様はまた本発明の医薬にも適用可能であり、かくして以下にて繰り返して記載されない。
【0061】
好ましくは、該医薬は、上記した本発明の一般式(I)の少なくとも1種の化合物と、生理学的に許容される担体とを含む、医薬組成物である。
【0062】
本発明のさらなる態様は、血管形成に関連する障害、好ましくは肺高血圧症の治療および/または予防のための、上記した医薬組成物の製造における本発明の一般式(I)の少なくとも1種の化合物の使用に関する。一般式(I)の化合物の好ましい全ての実施態様はまた本発明の医薬組成物にも適用可能であり、かくして以下にて繰り返して記載されない。
【0063】
本発明の医薬組成物は、液体、例えば液剤、分散液、懸濁液またはエマルジョンであっても;または固体、例えば散剤、ペースト、ゲル等であってもよい。
【0064】
適当な生理学的に許容される担体は当業者に知られている。適当な液体担体としては、水、エタノール等が挙げられる。適当な固体担体は、充填剤、結合剤、滑剤、崩壊剤等の典型的な医薬賦形剤を包含する。この点において、例えば、D.E. Bugayら、Pharmaceutical Excipients、Informa Healthcare;第1版(December 1、1998)を参照できる。一般に、本発明の医薬組成物は、例えば、賦形剤、溶媒、ベヒクル、乳化剤および/または分散剤などの不活性な非毒性の医薬上適当な補助剤を含有してもよい。
【0065】
例示として、以下の補助剤:水、粉砕した天然または合成の鉱物(例えば、タルクまたはシリケート)などの固体賦形剤、ショ糖(例えば、ラクトース)、非毒性の有機溶媒、例えばパラフィン、植物油(例、ゴマ油)、アルコール(例、エタノール、グリセロール)、グリコール(例、ポリエチレングリコール)、乳化剤、分散剤(例、ポリビニルピロリドン)および滑沢剤(例、硫酸マグネシウム)に言及しうる。
【0066】
一般式(I)の化合物と、生理学的に許容される担体の相対的な重量比は、好ましくは、99.9:0.1ないし0.1:99.9の割合の範囲内にあることが好ましい。
【0067】
本発明のさらなる態様は、本発明の一般式(I)の少なくとも一種の化合物の、血管形成関連の障害の治療および/または予防のための上記した医薬組成物を含有する医薬剤形の製造における使用に関する。一般式(I)の化合物の好ましい全ての実施態様はまた本発明の医薬剤形にも適用可能であり、かくして以下にて繰り返して記載されない。
【0068】
本発明の医薬剤形は、例えば全身、局所または局部投与用に適合され得る。全身投与は、例えば、静脈内、吸入または経口投与を包含する。
【0069】
本発明の化合物は、非全身性または全身性活性を示すことができ、ここでは後者が好ましい。全身性活性を得るために、活性な化合物を含有する医薬剤形は、とりわけ、経口、非経口または吸入投与することができ、ここでは経口投与が好ましい。非全身性活性を得るには、活性化合物を含有する医薬剤形が、とりわけ、局所投与され得る。
【0070】
非経口投与の場合、粘膜(すなわち、頬側、舌側、舌下、直腸、鼻、肺、結腸または膣内)に、または体内に投与するための医薬剤形が特に適している。投与は吸収を回避すること(心臓内、動脈内、静脈内、髄腔内または脊椎内投与)により、あるいは吸収を含めること(皮内、皮下、経皮、筋肉内または腹腔内投与)により実施され得る。
【0071】
上記した目的の場合、活性化合物を含有する医薬剤形はそのままで、あるいは医薬剤形(投与形態)にて投与され得る。
【0072】
経口投与用の適当な医薬剤形は、とりわけ、通常の、腸溶性コーティング錠、カプセル、コーティング剤、ピル、顆粒、ペレット、散剤、固体および液体エアロジル、シロップ、エマルジョン、懸濁液および溶液である。適当な非経口投与用の医薬剤形は注射および注入用溶液である。
【0073】
活性な化合物は、医薬剤形中、0.001−100重量%の濃度で配合することができ;好ましくは活性な化合物の濃度は0.5−90重量%、すなわち特定の用量範囲を満たすのに十分な量とすべきである。
【0074】
経口投与の場合には、錠剤はまた、もちろん、クエン酸ナトリウムなどの添加剤、ならびに澱粉、ゼラチンなどの添加剤を含有しうる。フレーバーエンハンサーまたは着色剤もまた、経口投与用の水性製剤に添加され得る。
【0075】
非経口投与の場合にて効果的な結果を得るためには、一般に、体重1kgに付き、約0.0001ないし100mg、好ましくは約0.001ないし10mg、より好ましくは約0.01ないし1mgの量を投与することが有利であることが確認された。経口投与の場合には、その量は、体重1kgに付き、約0.001ないし100mg、好ましくは約0.1ないし50mgである。
【0076】
これにも拘わらず、状況によっては、上記した量を、すなわち、体重、投与経路、個々の活性化合物に対する作用;調製方法および投与が行われる時期または間隔の関数としての量を逸脱する必要もあり得る。例えば、ある場合には、上記した最低量よりも少ない量で十分であり得るし、別の場合では、上記した上限を越えるであろう。より多くの量を投与する場合には、その量を一日を通して複数の個々の用量に分けることが望ましい。
【0077】
以下の試験例および実施例におけるパーセントは、特記しない限り、重量%であり;部は重量部である。液体/液体溶液について報告されている溶媒割合、希釈割合および濃度は、各々、容量に基づく。
【0078】
医薬剤形は、例えばその中に含まれる活性化合物の即時または徐放特性を示してもよい。
【0079】
本発明の化合物はHIF−1蛋白の蓄積を阻害する剤であり、したがってHIF−1蛋白の蓄積を阻害することを意図とする医薬の製造に用いられ得る。
【0080】
本発明の化合物は、予測できない、有用な薬理学的かつ薬物動態学的活性スペクトルを示す。したがって、該化合物はヒトおよび動物の障害の治療および/または予防用の医薬として用いるのに適している。
【0081】
一般式(I)の化合物はHIF阻害剤であり、したがって種々の血管形成関連の障害の治療および/または予防に適しているか、または血管形成関連の障害の治療および/または予防用の医薬の製造に有用である。
【0082】
一般に、本発明の一般式(I)の化合物は、血管形成関連の障害の治療および/または予防に用いることができるか、または血管形成関連の障害の治療および/または予防用の医薬の製造に有用である。
【0083】
血管形成関連の障害は、尿生殖器疾患、好ましくは女性の生殖器の非炎症性疾患、子宮内膜症、卵巣子宮内膜症、卵管子宮内膜症、腸子宮内膜症、瘢痕部子宮内膜症、直腸膣中隔子宮内膜症、膣子宮内膜症および骨盤腹膜子宮内膜症;眼病、好ましくは黄斑変性、卵黄様ジストロフィ(ベスト病)、網膜症、糖尿病性網膜症、緑内障、血管新生緑内障(neuroscular glaucoma)、脈絡膜血管新生、潜在性脈絡膜血管新生、角膜血管新生、後水晶体繊維増殖症および虹彩ルベオーシス;肺疾患、好ましくは気道リモデリング、COPD(慢性閉塞性呼吸器障害)、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)、新生児呼吸窮迫症候群、肺高血圧、肺サルコイドーシスおよび突発性肺線維症;腎疾患、好ましくはネフロパシー、慢性低酸素誘発性疾患、ESRD、腎線維症、腎動脈狭窄症および糸球体腎炎;骨関節炎、好ましくは変形性膝関節炎、変形性股関節症、ポリ関節症(polyarthrosis)、リズ関節症(rhizarthrosis)およびさらなる関節症;リウマチ障害、好ましくは関節リウマチ;骨疾患、好ましくは骨粗鬆症および軟骨細胞関連の障害;心筋血管新生;転移;子宮内膜症;創傷治癒;勃起不全、好ましくはペーロニー病;良性増殖性疾患、好ましくは良性腫瘍;血管腫、好ましくは肝血管腫、海綿状血管腫およびクリッペル・トレナウナイ・ウェーバー(KTW)症候群;皮膚障害、好ましくは強皮症;貧血、好ましくは赤血球産生;全身性疾患、好ましくは全身性硬化症およびサルコイドーシス;耐性軽減、好ましくは放射線増感、化学増感および薬物耐性軽減;小児悪性腫瘍;組織エンジニアリング;アポトーシス刺激からなる群より選択されるのが好ましい。
【0084】
特に好ましい実施態様において、該化合物は、肺高血圧、肺サルコイドーシスおよび突発性肺線維症からなる群より選択される肺障害を治療または防止するものである。かかる疾患は、一般に、血管形成に関連していると考えられる。それでも、本願明細書の目的のためには、「肺高血圧」、「肺サルコイドーシス」および「突発性肺線維症」なる語は、血管形成と関係しているか、いないかに関わりなく、各々、肺高血圧、肺サルコイドーシスおよび突発性肺線維症をいう。
【0085】
本発明の好ましい実施態様において、血管形成関連の障害は、尿生殖器疾患、好ましくは女性の生殖器の非炎症性疾患、子宮内膜症、卵巣子宮内膜症、卵管子宮内膜症、腸子宮内膜症、瘢痕部子宮内膜症、直腸膣中隔子宮内膜症、膣子宮内膜症および骨盤腹膜子宮内膜症からなる群より選択される。
【0086】
本発明のもう一つ別の好ましい実施態様において、血管形成関連の障害は、眼病からなる群より選択され、好ましくは黄斑変性、卵黄様ジストロフィ(ベスト病)、網膜症、糖尿病性網膜症、緑内障、血管新生緑内障、脈絡膜血管新生、潜在性脈絡膜血管新生、角膜血管新生、後水晶体繊維増殖症および虹彩ルベオーシスからなる群より選択される。
【0087】
本発明のもう一つ別の好ましい実施態様において、血管形成関連の障害は、肺疾患からなる群より選択され、好ましくは気道リモデリング、COPD(慢性閉塞性呼吸器障害)、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)、新生児呼吸窮迫症候群、肺高血圧、肺サルコイドーシスおよび突発性肺線維症からなる群より選択される。
【0088】
本発明のもう一つ別の好ましい実施態様において、血管形成関連の障害は、腎疾患、好ましくはネフロパシー、慢性低酸素誘発性疾患、ESRD、腎線維症、腎動脈狭窄症および糸球体腎炎からなる群より選択される。
【0089】
本発明のもう一つ別の好ましい実施態様において、血管形成関連の障害は、骨関節炎、好ましくは変形性膝関節炎、変形性股関節症、ポリ関節症、リズ関節症およびさらなる関節症からなる群より選択される。
【0090】
本発明のもう一つ別の好ましい実施態様において、血管形成関連の障害は、リウマチ障害、好ましくは関節リウマチからなる群より選択される。
【0091】
本発明の一般式(I)の化合物は、種々の経路により合成され得る。例えば、該化合物は商業的に入手可能なビルディングブロックより出発して完全に合成操作により調製され得る。さらには、該化合物は植物、好ましくは種々のアグライア植物より単離され得るか、あるいは該植物より単離された前駆体の生成物は合成(半合成経路)における出発物質として用いられ得る。かくして、一般式(I)の化合物は、単離により、あるいは既に公開されいる経路または新規な合成経路により得ることのできる化合物を単離または半合成で誘導化することで得ることができる。換言すれば、本発明の化合物は、例えば、天然産物、これらの天然産物の誘導体または完全な合成アナログであり得る。
【0092】
本願明細書では便宜上、「Hif−1」が遺伝子/mRNAを記載するのに対して、「HIF−1」は蛋白を記載する。
【0093】
一般式(I)の化合物を調製する好ましい方法を以下に記載する:
【0094】
実施例
実施例1:低酸素誘導のHIF−1依存性ルシフェラーゼ発現の抑制
2細胞系統(Jurkat Tおよび293T細胞)における化合物のHIF−1ルシフェラーゼ依存性レポータ遺伝子活性に対する用量応答曲線
【0095】
HIF−1−依存性ルシフェラーゼレポータ遺伝子を、R otifect(登録商標)(Carl Roth GmbH;Karlsruhe、Germanyの登録商標)と一緒に形質移入することで293T細胞にトランスフェクトするか、あるいは別法としてエレクトロポレーションでJurkat T細胞にトランスフェクトした。両方の細胞系統をHIF−1−依存性レポータ遺伝子でトランスフェクトした。その次の日に、細胞を所定のマイクロモル以下の濃度の試験化合物と一緒に1時間プレインキュベートし、ついで標準酸素または低酸素圧(1%O)条件下でさらに8時間インキュベートした。その後で、細胞を収穫し、つづいてルミノメータにてルシフェラーゼ活性を解析した。
【0096】
3種の例示としての化合物の結果を図2a(293T細胞)および2b(Jurkat T細胞)に示す。相対光単位が示され、該実験を3回行い、平均値を得る。
【0097】
239T細胞(図2a)およびJurkat細胞(図2b)におけるHIF−1介在ルシフェラーゼ活性の阻害を示す、ルミノメータにおけるルシフェラーゼ活性の解析では、各化合物は50nM以上の濃度で顕著にHIF−1活性を遮断したのに対して、10nMではHIF−1依存性転写に対してわずかな衝撃を示すに過ぎなかった。
【0098】
実施例2:化合物のHIF−1ルシフェラーゼ阻害活性についてのIC50値の測定
【0099】
HIF−1−依存性ルシフェラーゼレポータ遺伝子を293T細胞にトランスフェクトした。その翌朝に、細胞を所定の濃度の化合物で1時間にわたって前処置し、つづいて低酸素圧(低酸素チャンバ)にて8時間誘導させた。その後、細胞を収穫し、溶解させた。20μLのアッセイバッファを20μLの細胞抽出液に注入することで、該抽出液におけるルシフェラーゼ活性をルミノメータ(Duo Lumat LB 9507、Berthold)で測定した。発光を10秒間測定し、相対光単位を得る。その結果が図3に示されており、各々、IMD−026259、IMD−026260およびIMD−019064について認められる、19、18および23nMのIC50値を示す。
【0100】
実施例3:HRE−ルシフェラーゼ発現に対する化合物干渉の時間依存性
293T細胞をHIF−1−依存性ルシフェラーゼレポータ遺伝子でトランスフェクトした後、細胞を図4に示すように標準酸素圧または低酸素圧(8時間、1%O)条件下でさらにインキュベートした。低酸素とする1時間前に、または低酸素を誘導した2および4時間後のいずれかにて、有効遮断濃度(各250nM)のIMDを添加した。
【0101】
IMD−019064;IMD−026259およびIMD−026260は、低酸素誘導の4時間後に添加した場合であっても、HIF−1−依存性ルシフェラーゼ発現を阻害し得ることを示した。これらの結果は、本発明の化合物がHIF−1応答の誘導を防止するだけでなく、蛋白が既に安定化されている場合のHIF−1−依存性転写の継続に干渉することを、明らかにするものである(図4)。
【0102】
実施例4:化合物のHif−1のmRNA発現についての効果
本発明の化合物がそのHIF−1−1転写の阻害を介してそのHIF−1−1抑制作用を発揮するかどうかを試験するのに、該化合物をHIF−1αのmRNA産生についてのその作用について試験した。実験は全て、有効遮断濃度(250nM)の試験化合物にヒト細胞を3時間曝露した。ついで、さらに細胞を、各々、標準酸素圧または低酸素圧(45分、1%O)下で、培養させた。その後、細胞サンプルを収穫し、RNAを抽出した。cDNAを特異的プライマーおよびPEアプライド・バイオシステムズ・リバース・トランスクリプション・リージェント(PE Applied Biosystems Reverse Transcription Reagents)を用いて合成した。SYBR Green I検出化学システム(Applied Biosystems)およびABI Prism 7300システムを用いてリアルタイムPCRを行った。Hif−1αの発現を定量し、結果をHprt1およびβ−アクチン(「ハウスキーピング遺伝子」)発現に対して正規化した。異なる遺伝子の相対存在度を比較CT法により計算した。標準酸素圧の対照細胞のHIF−1α転写を任意に1に設定した。代表的な実験例を図5に示す。低酸素圧は利用した条件下でHIF−1α転写を約3倍適度に増加させるが、HIF−1αmRNA発現のqPCRによる定量では、試験した化合物の顕著な効果は見られなかった。試験物質(IMD−019064;IMD−026259およびIMD−026260)は、標準酸素圧でも低酸素圧の条件下でもHif−1αのmRNA産生についていずれの効果も示さなかった。従って、IMD−化合物のHIF−1−依存性遺伝子発現についての効果はHIF−1α転写を介していないようである(図5)。
【0103】
実施例5:IMD化合物のHIF−1標的遺伝子発現についての効果
ヒト293T細胞を、標準酸素圧条件または低酸素圧条件(1%酸素)下で、各々、4および8時間、培養した。細胞を集め、つづいてRNAを単離し、逆転写酵素キットを用いてオリゴ(dT)20プライマーよりcDNAを生成した。ついで、遺伝子発現を、次の2種の選択したHIF−1α標的遺伝子:LDH−A(ラクタート脱水素酵素イソフォームA)およびPDK1(ピルバート脱水素酵素キナーゼ1)についてリアルタイムPCRに付すことで測定した。リアルタイムPCRは、特異的なプライマーおよびSYBR Green I検出化学システム(Applied Biosystems)を用い、ABI Prism7300システムを利用してcDNAで行われた。内部対照としてアクチンも測定した。異なる遺伝子の相対存在度を比較CT法により計算した。比較を容易にするために、標準酸素圧条件下の遺伝子発現を3種の遺伝子の各々について任意に1に設定した。2回の独立した実験で、PDK1がLDHと比べて最も顕著に誘導される遺伝子であることを確認した。結果を図6aに示す。
【0104】
化合物のPDK1を阻害する能力を検査するために、3種の異なる濃度の各阻害剤(IMD−019064;IMD−026259;およびIMD−026260)で1時間、293T細胞を前処置した。その後で、細胞を標準酸素圧/低酸素圧の条件下でさらに8時間インキュベートし、PDK1発現を上記したリアルタイムPCRで定量した。結果を図6bに示し、それは3種のすべての阻害剤が内在性PDK1遺伝子の活性化を強力に抑制することを示す。IC50値が8ないし12nMの範囲(IMD026259、9nM;IMD026260、8nM;およびIMD019064、12nM)にあるように測定され、このことは内在性遺伝子(例えば、PDK1)がレポータ遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ)よりもなおさら強力に抑制されることを示す。
【0105】
その上さらに、IMD−019064、IMD−026259およびIMD−026260がHIF−1α−依存性標的遺伝子発現を特異的に抑制する能力を有することも明らかにされた。
【0106】
実施例6:低酸素誘発のHIF−1α蛋白の蓄積の抑制
低酸素誘発のHIF−1安定化の防止について化合物が用量依存性であることの測定
IMD−026259、IMD−026260およびIMD−019064のHIF−1α蛋白の安定化/蓄積についての効果を検査した。293T細胞を所定の濃度の3種すべての化合物と共にプレインキュベートした。プレインキュベーションの1時間後に、293T細胞を所定の濃度の化合物と一緒にプレインキュベートし、ついでさらに標準酸素圧または低酸素圧(4時間、1%O)条件下で各々インキュベートした。細胞を1xSDSサンプルバッファおよび超音波処理に付して溶解させた後、該サンプルを免疫ブロット法によりHIF−1α存在度について分析した。溶解物に含まれる等量の蛋白を還元性SDS−PAGEにより分離し、ついでさらにHIF−1αを特異的に認識する抗体およびローディング対照のアクチン(等しい蛋白量のローディングを示す)を用いる免疫ブロット法により分析した。
【0107】
図7にて示されるように、HIF−1α蛋白の蓄積は標準酸素圧条件(−)では検出できず、低酸素圧条件(+)で誘導された。HIF−1α蛋白の蓄積は、化合物の濃度が50nM以上で、顕著かつ特異的に防止された。250nMの濃度のIMD−019064およびIMD−026260は、HIF−1α蛋白の蓄積をほぼ完全に遮断した。
【0108】
実施例7:無細胞蛋白翻訳の阻害
IMD−019064のインビトロにおける無細胞蛋白翻訳に対する効果を調べた(図8のアッセイ原理も参照のこと)。4種のウイルス蛋白をコードするブロムモザイクウイルス(BMV)mRNAをIMD−019064(図9a)、IMD−026259、IMD−026260(図9b)またはシクロヘキシミド(Chx、10μM)(正対照)の存在下で、またはなしでリボソームと一緒にインキュベートし、形成された蛋白をSDS−PAGEにより分析した。
【0109】
図9aに示されるように、IMD−019064はインビトロにおける蛋白合成に影響しないのに対して、シクロヘキシミドは新たに合成される蛋白の形成を強く抑制した(図9a、レーン:Chx)。IMD−019064(図9a)、IMD−026259、IMD−026260(図9b)の、インビトロでの蛋白翻訳における顕著な効果は関連する(nM)濃度で観察されなかったが、シクロヘキシミド(Chx;正の対照)は蛋白翻訳を抑制した。パネルは代表的なSDS−PAGE蛋白ゲルを示す。ビヒクル含有の翻訳反応物(Veh)は100%の翻訳効率を示し、それに対して正の対照として用いられた蛋白翻訳の既知の阻害剤である、シクロヘキシミド(Chx;10μg/ml)は顕著な蛋白の減少を示す。
【0110】
実施例8:無細胞蛋白翻訳の阻害
化合物のインビトロ翻訳についての効果。TNT(登録商標)Coupled Reticulocyte Lysate Systems(無細胞蛋白発現)を用いて翻訳に対する潜在的効果を試験した。フラッグのタグを付したNF−κB p50蛋白をインビトロにて産生した。各100nMの化合物(IMD−019064;IMD−026259およびIMD−026260)および溶媒対照としてのDMSOを含む、網状赤血球システムを用いた。フラッグのタグを付したNF−κB p50蛋白を非放射性のインビトロ翻訳に供した後、蛋白をSDS−PAGEで分離し、産生されたp50蛋白をフラッグ抗体を用いる免疫ブロット法により検出した(図10を参照のこと)。
【0111】
これらの結果は、無細胞のインビトロ翻訳について、本発明の化合物の検出可能な効果を示さず、実施例7の結果と一緒になって、試験化合物の蛋白合成/翻訳に対する直接的かつ非特異的な効果をほとんどありそうもないようにする。
【0112】
実施例9:細胞におけるシグナル依存性アミノ酸取り込みの特異的阻害
式(I)の化合物は、文献中、蛋白合成の非特異的阻害剤であると報告されている。かくして、IMD−019064(ロカグラオール(rocaglaol)誘導体)が蛋白合成の直接的阻害剤であるかどうかの問題は異なるレベルで対処されている。活性化されたシグナル化カスケード(例えば、IL−1シグナル化経路)の阻害がIMD−019064の阻害活性に起因するかどうかを調べるために、細胞アッセイ(放射性標識されたアミノ酸の非刺激およびIL−1b−刺激の内皮細胞への取り込み)を行った。この実験において、アミノ酸の組み込みについて、IL−1刺激細胞に比べて非刺激細胞では20倍の用量応答曲線のより高い濃度へのシフトが観察された。このことはIL−1依存性シグナル伝達が実際にIMD−019064の蛋白合成−阻害活性に起因することを示すものである。IMD−019064が作用する細胞蛋白翻訳についてのIC50値はIL−1の前誘導の後で顕著に低下する。この細胞アッセイは、これにより、IMD−019064の細胞蛋白合成についての阻害活性が、例えばIL−1依存性シグナル化カスケードを特異的に遮断することで媒介されることを示す(図11を参照のこと)。
【0113】
実施例10:細胞(インビボ)蛋白翻訳の阻害
293T細胞を既知の翻訳阻害剤であるシクロヘキシミド(10μg/ml)および、各々、100nMのIMD−019064、IMD−026259およびIMD−026260の存在下で増殖させた。後者の用量は、(例えば、実施例2と5を比較して)遺伝子発現実験からのIC50値よりも十分に高い濃度(約5ないし10倍)を示す場合に選択されるが、非特異的な効果を惹起しうる濃度より下でも選択され得る。細胞を10時間および24時間後に収穫し、細胞溶解物を生成した。該細胞溶解物に含まれる等量の蛋白を、図12に示されるように、抗−IKKγ/NEMO抗体での免疫ブロットに用いた。IKKγ/NEMOは構造的に発現される相対的に不安定な蛋白である。かくして、細胞蛋白翻訳の阻害が成功すると、抗−IKKγ/NEMOシグナルの顕著な低下がもたらされるはずである。293T細胞のIMD−019064、IMD−026259およびIMD−026260化合物での処置は、抗−IKKγ/NEMOシグナルの減少をもたらさなかった。これらの実験はシクロヘキシミドによる蛋白翻訳の強力な阻害を確認するが、試験した3種の化合物による非特異的阻害を示さなかった。
【0114】
実施例11:低酸素刺激後のHUVEC細胞における血管新生発芽の抑制
先行の出願では、IMD−019064のストック溶液[100mM]はDMSOにて1:10に希釈され、100%DMSOを用いて10mMないし1μMの濃度範囲をカバーする半対数工程にて連続して希釈された。最後に該アッセイにてDMSO濃度を1%とし、最終アッセイ濃度は100μMから10nMの範囲にあった。実験を最初に公開されたプロトコルに変更を加えて続けた(KorffおよびAugustin:J Cell Sci 112: 3249-58, 1999)。簡単には、KorffおよびAugustin:J Cell Biol 143:1341-52, 1998に記載されるように、500の内皮細胞(EC)を懸滴にてプラスチック皿上にピペットで取り、スフェロイドを調製し、該スフェロイドを一夜凝集させた。ついで、50のECスフェロイドを0.9mLの3Dコラーゲンマトリックスに埋め込み、24ウェルプレートの個々のウェルにピペットで取り、高分子化させた。デフェロキサミン[100μM;化学的に誘発される低酸素状態の誘導]と組み合わせて、HUVECについての試験化合物を、30分後に、高分子化ゲルの上に100μlの10倍濃縮した希釈体をピペットを用いて加えた(化合物の最終濃度については表2を参照のこと)。
【0115】
【表2】

【0116】
プレートを37℃で24時間インキュベートし、4%パラホルムアルデヒドを添加することで固定した。データポイント当たり無作為に選択された10個のスフェロイドの累積的な発芽の長さを分析し、試験化合物による相対阻害を測定した。IC50曲線のフィッティングおよびIC50値の算定をGraphPad Prism 5.01で行った。ECおよび線維芽スフェロイドの発芽度を倒立顕微鏡およびデジタル式画像ソフトウェアAnalysis3.2(Soft imaging system, Munster, Germany)を用いる画像分析システムで定量した。並行して、NHDF(線維芽)スフェロイドを3Dコラーゲンゲルに埋め込み、異なる濃度のIMD−019064で24時間処置した。データポイントに付き無作為に選択した10個のスフェロイドの累積的な発芽の長さを、HUVEC実験で用いた操作に従って分析した。
【0117】
試験化合物IMD−019064は、コラーゲンマトリックスを用いるスフェロイドをベースとする血管形成において用量依存的方法にて化学的に[デフェロキサミン;100μM]誘導される低酸素状態により刺激されるヒト臍帯静脈内皮細胞(EC)の発芽および線維芽分散を阻害する。デフェロキサミン誘導のHUVECスフェロイドの発芽は、IMD−019064処置により顕著に阻害された。30nMのIC50値が測定され得た(図13)。NHDF(線維芽細胞)スフェロイドの発芽が、180nMのIC50値付近でIMD−019064で阻害されることが判明した(図13)。該知見はHUVECと線維芽細胞のIMD−019064に対する感受性で6倍の違いがあることを明らかにした。このことは、低酸素誘導の血管形成作用(HUVEC発芽)の阻害が非特異的な細胞毒性に依存するものではないことを示す。
【0118】
同じアッセイをIMD−026260;IMD−026259;ステント(登録商標)(スニチニブ)およびソラフェニブ(ネキサバル(登録商標))で行った(最終の化合物濃度については表3を参照のこと)。
【0119】
【表3】

【0120】
13nMのIC50値(図13:低酸素誘導のEC発芽)および180nMのIC50値(図13:NHDF線維芽分散)を示す、各々の結果を図13に示す。これらのデータ(IMD−019064との比較)はHUVECの感受性の均一な増加を示し、その結果、IMD−026260に対して13倍よりも大きなHUVECと線維芽細胞の感受性の違いが生じる。このことはIMD−019064の知見の正当性を立証するものであり、IMD−026260による非特異的細胞毒性に依存しない低酸素誘導の血管形成作用(HUVEC発芽)の阻害を改善することを明らかにする(結果の要約については図14bを参照のこと)。
【0121】
実施例12:VEGF−A刺激の後のHUVEC細胞における血管形成発芽の抑制
実施例4に記載されるように、HUVECスフェロイドを生成し、培養し、3Dコラーゲンゲルに埋め込み、デフェロキサミンの代わりに血管内皮成長因子アルファ[VEGF−A;25ng/ml]で刺激した。細胞スフェロイドを異なる濃度のIMD−026259;IMD−026260;ステント(登録商標)(スニチニブ)およびソラフェニブ(ネキサバル(登録商標)で24時間処置した(モル[M]にて、表4に示す;図14Aも参照のこと)。
【0122】
【表4】

【0123】
データポイント当たり無作為に選択された10個のスフェロイドの累積的な発芽の長さを分析し、試験化合物による相対阻害を測定した。IC50曲線のフィッティングおよびIC50値の算定をGraphPad Prism 5.01(GraphPad Software Inc.)で行った。VEGF−A誘導のHUVECスフェロイドの発芽はIMD−026260の処置により顕著に阻害された。28nMのIC50値を測定することができた(図14a)。上記した実施例の結果を図14bに要約する。IC50値は、低酸素状態またはVEGF誘導後のインビトロにおける血管形成(HUVEC発芽)実験にてnMで示される。これらのデータにより、IMD−019064;IMD−026259およびIMD−026260がインビトロにて血管形成発芽び強力な阻害剤として作用することが明らかにされる。さらには、本発明の化合物がステント(登録商標)(スニチニブ)およびソラフェニブ(ネキサバル(登録商標)に比べてインビトロにおけるHUVEC発芽(血管新生)に対して強力な阻害作用を有することも明らかにされた。
【0124】
実施例13:スフェロイドをベースとするインビボでの血管形成アッセイにおける抗血管形成試験項目の抗血管形成効能の評価
ヒト内皮細胞(EC;HUVEC)を、平滑筋細胞(SMC)および線維芽細胞(NHDF)の存在下で、細胞外マトリックス成分が埋め込まれたSCIDマウス(n=10)にて皮下的に適用する。移植されたヒトEC(ECと組み合わされた懸濁状態のECスフェロイド)は、マウス血管系および宿主(マウス)被覆周皮細胞と吻合する(結合する)、ヒト起源の毛細血管の複雑に灌流した三次元ネットワークを形成する。新たに形成される血管系の特性は微小血管密度計数によりモニター観察される。この実験の目的は、スフェロイドをベースとするインビボでの血管形成アッセイにおける試験項目の抗血管形成能を検討することである。この目的のために、HUVECスフェロイドを、記載(KorffおよびAugustin:J Cell Biol 143:1341-52、1998)に従い、100のECを懸滴にてプラスチック皿にピペットで取り、スフェロイドを一夜で形成させることで調製した。翌日、ECスフェロイドを収穫し、マトリゲル/フィブリン溶液にて、懸濁状態のHUVEC、SMCおよびNHDFと混合した。プラグとして用いられる最終混合物は、100000のスフェロイドECおよび200000の単懸濁のEC、300000のSMCおよび100000のNHDFを含有した。SCIDマウスに500μlの細胞/マトリックス懸濁液を皮下注射した。
【0125】
標準アッセイ(VEGF−AおよびFGF−2刺激、およびECのみ)にて、最初の灌流血管は、通常、第4日ないし第6日に検出される。インビボにて20日間増殖させると、ウェルは約50−60%の被覆周皮細胞の血管系を確立し、通常、灌流血管が観察される。SCIDマウスを3日毎に経口投与で、各々、ビヒクルまたはIMD−026260(0.3mg/ml;第3群)で処置した。
【0126】
すべての動物を秤量し、麻酔処理した後に剖検を行った。マウスを頸椎脱臼で殺してから、マトリゲル(登録商標)(BD Biosciencesの登録商標)プラグを取り出した。該マトリゲル(登録商標)プラグを撮影し、4%Roti-Histofix(Roth、Karlsruhe、Germany)中、室温で4−12時間固定した。その後で、半閉鎖性組織プロセッサーLeica TP1020を用いて、該プラグをパラフィン包埋した。
【0127】
ヒト血管系の組織学的検査のために、すべてのプラグのパラフィン断面(厚み=8−10μm)を調製した。ヒトCD34(NCL-END、Menarini、Berlin、Germany)の断面を染色することで血管形成を検出した。プラグ当たり3個の断面を分析し、各断面で、3個の画像をEclipse TE2000-U顕微鏡(日本、神奈川県、ニコン)を用いて200xの倍率で撮影した。断面に付き解析される面積(3個の画像)は0.44mmであった。血管の数(CD34陽性)をNIS−エレメントベーシックリサーチソフトウェア(日本、神奈川県、ニコン)を用いて手動で測定した。IMD−026260での処置は、ビヒクル対照と比べて、有意な(p値=0.0001)42%のヒト血管数の減少をもたらした。該実験の結果を、図15に示されるように、散布図(中央線を含む)としてグラフで示す。
【0128】
実施例14:虚血性傷害後の神経学的損傷の減少(STROKE実験)
Longa E.Z.ら(Stroke、20、84-91、1989)に記載され、Esneaultら(Neuroscience、18;152(2):308-20、2008)と適合した、神経保護活性を検出する方法を用いた。ラット(雄Rj:スプレーグ−ドーリーラット、体重250−350g)をイソフルラン麻酔(導入には5%、維持には2%、30%O)の下に置く。体温を直腸温度プローブを用いてモニター観察し、実験の間を通して、加熱パッドを用い、37℃±1℃に維持する。脳虚血の誘発をカバーする期間(MCAoの10−15分前から5分後)の間、レーザードップラー流量計(Moor Instruments MoorLAB)を用いて、脳血流を連続して記録する。顕微鏡の操作の下で、眼球孔と耳の間に皮膚切開を設け、側頭筋を細かく調べる。レーザードップラープローブを頭部右側面に配置する。
【0129】
頚部を正中切開した後、右総頸動脈(CCA)、外部頸動脈(ECA)および内部頸動脈(ICA)を隣接する静脈および神経より単離する。ついで、CCAを結紮し、ECAをそのCCAの分岐から±2mmでエレクトロコアグレートさせる。先端が透明な熱溶融接着剤で被覆されたナイロンスレッド(0.18mm径)で塞栓(3mm長、0.36−0.38mm径)を構成する。該塞栓を小孔を介してECAの中に挿入し、脳血流が30−50%減少するか、あるいはわずかな抵抗が観察されるまで、ゆっくりとICAまで進める。
【0130】
腔内を結紮した後、頚部開口部を縫合する。レーザードップラープローブおよび直腸温度プローブを取り外す。ラットは麻酔より醒め、その元のケージに戻される。
【0131】
90分後、ラットを再び麻酔処理に付す。CCAの塞栓および結紮を取り外し、再び灌流させる。傷口を縫合し、ラットをその元のケージに戻す。ラットに、生理食塩水(1ml/日)を5日間腹腔内(i.p.)投与し、脱水症状を防止する。
【0132】
IMD−026259を、再灌流の0、2、4および24時間後に、3種の用量(1、10および100μg/kg)で静脈内投与し、ビヒクル対照と比較して評価する。実験は同じ実験条件下でビヒクルを投与した擬似対照群を含む。従って、実験は5群からなる。一群12匹のラットで実験する。試験は盲検で行った。
【0133】
神経学的評点
神経学的評点をBedersonら(Stroke、1986、17(3):472-476)の方法の修飾形に従って評価する。
【0134】
該試験は以下に記載の14のサブセットからなる(表1):
【0135】
最初に麻痺側(paretic side)に無意識に歩き出し、旋回することが観察される。ついで、尾部を掴んでラットを粗面上に置き、同側および反対側に連続してゆっくりと押し、押しに対する抵抗を評価する。最後に、ラットを尾部で、連続して試験者の両手で吊し、ベンチの上に上げ、体の回転および前脚および後脚の屈曲を評価する。
【0136】
各サブセットを0ないし2に階級付けする(0=応答なし、または総合的に異常な応答;1=弱い応答、または異常な応答;2=正常な応答)。損傷がなければ、最大28の神経学的評点で示される。
【0137】
試験を術後24時間および48時間で行う。
【0138】
梗塞の評価
術後48時間で動物をイソフルランで麻酔処理に付し、断頭により殺す。脳を摘出し、イソペンタン溶液(Sigma)中、−20℃で迅速に冷凍した。脳をTissue−Tek(Raymond A Lamb Ltd、C/101.25)に埋め込み、クリオスタットで切断した。冠状断(20μm)を800μmの間隔で5分間、チオニン(Sigma、0.05%)で染色する。その断面をスキャンし、梗塞の体積を画像Jソフトウェア(http://rsb.info.nih.gov/ij/)を用いて測定する。梗塞の体積を全脳および浮腫の体積(同側および反対側の半球の体積の間の違い)に関連して矯正する。
【0139】
統計分析
神経学的評点にて得られた定量的データは、2ウェイANOVA(時間x処置)に、つづいて1ウェイANOVA(処置)および非対応性スチューデントt試験を用いる事後比較に付して分析されるであろう。
【0140】
対象の認識試験では、処置群と適当な対照群とを非対応性スチューデントt試験を用いて比較することでデータは解析されるであろう。加えて、各群について、ファミリーに属する対象を調べるのに要する時間(E2F)を新規な対象を調べるのに要する時間(E2N)と比較し、対応性スチューデントt試験を用いてRIはチャンス値(すなわち、RI=0)と比較されるであろう。
【0141】
梗塞評価の後に得られる定量データは、処置群と適当な対照群とを非対応性スチューデントt試験を用いて比較することで分析されるであろう。
【0142】
実施例15:肺低酸素(エクスビボ)(予測)
IMD026259の低酸素肺血管収縮(HPV)に対する効能
この実験により、IMD026259がHPVの具体的な制御機構に対して阻害剤として作用するかどうかを試験することができる。IMD026259が内在センサー/酸素の感受性を阻害することでHPVを抑制するかどうかを試験することができる。
【0143】
I)急性HPVでの用量応答(DR)の関係(図16を参照)
IMD−026259のHPVに対する効果は、低酸素性でない血管収縮実験にて比較され得る。後者はトロンボキサンに似たU46619をボーラス投与することで誘発され得る。
【0144】
実験群:
a)連続HPV下でのDR曲線(図16を参照)(連続低酸素血管収縮)
b)プラセボ投与での連続HPV
c)連続U46619誘導性血管収縮でのDR曲線
d)プラセボ投与での連続U46619投与の対照
【0145】
II)IMD026259のHPVの長期化に対する効果の研究(180分に及ぶ連続的な低酸素供給)

a)IMD026259を用いる180分の低酸素供給 n=8
b)プラセボを用いる180分の低酸素供給 n=8
【0146】
方法I)
麻酔処理したマウスの肺を手術により胸部より摘出する。肺を単離した状態で灌流し、通気する。灌流には、クレブス−ヘンゼライト緩衝液を用いる。肺を特定の混合気体(21%O、5.3%CO)で通気する。低酸素血管収縮が低酸素供給(1%O、5.3%CO)を繰り返すことで誘導される。低酸素供給を、各々、10分間続け、正常な酸素供給の相では各々15分間繰り返す。阻害剤(試験項目)を正常な酸素供給の終わった5分後に灌流培地に導入する。HPVの強度に対する効果を定量する。
【0147】
HPV度は測定され得、肺圧の上昇として示され得る(PAP:Weissmannら、Respir Physiol. 1995からの図16を参照)。肺は一定容量で灌流されるため、PAPは血液抵抗と正比例の関係にある(Rothら、Am J Respir Crit Care Med 2009、in press;Weissmannら、Proc Natl Acad Sci U S A. 2006 103: 19093)。
【0148】
方法II)
この実験においては、3時間以上、肺に低酸素供給(1%O)を行い、方法Iで見られるような、HPV保護についての所定の試験項目の用量の効果を調べる(例えば、Weissmannら、Am J Respir Cell Mol Biol:34:505-13、2006)。.
【0149】
実施例16:肺高血圧(インビボ)(予測)
IMD−026259の低酸素誘導の肺高血圧に対する効果を測定するために、マウスを慢性的な低酸素状態(10%O、normobar)に維持する。それで、肺高血圧を3週間以内に発症する(Mittalら、Circ Res. 2007 101: 258;Circulation. 2008 118: 1183)。
【0150】
この実験での肺高血圧を、右心室収縮期圧および血管の形態的変化を測定することにより、心臓肥大を測定することで定量する
【0151】
IMD−026259の投与は、3週間の低血圧の間、一日に2回、2種の異なる用量(各々、1および3mg/kg)で強制的経口投与を介してなされる。
【0152】
これが4種の実験群をもたらす(study branches):
1)標準的酸素圧対照(3週間の標準酸素圧状態) n=10
2)低酸素圧対照(ビヒクル処置;3週間の低酸素圧状態、10%O)n=10
3)低酸素圧(IMD−026259、1mg/kg;3週間の低酸素圧状態、10%O) n=10
4)低酸素圧(IMD−026259、3mg/kg;週間の低酸素圧状態、10%O) n=10
【0153】
上記した実験は、IMD−026259が肺高血圧を低下または阻害しうるかどうかとの疑問、特にHIF−1を阻害することで、低酸素誘導の肺高血圧の発症が抑制され得るかの疑問に解答することができる。
【図1A】

【図1B】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6A】

【図6B】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13A】

【図13B】

【図14A】

【図14B】

【図15】

【図16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管形成関連の障害の処置および/または予防のための、一般式(I):
【化1】

(I)
[式中;
、R、RおよびRは、相互に独立して、−H;−F;−Cl;−Br;−I;−NO;−CN;−OH;−O−C1−8−アルキル;−O−フェニル;−O−C1−8−アルキル−フェニル;−O−C(=O)−C1−8−アルキル;−O−C(=O)−フェニル;−C5−12−糖質(その酸素原子の一つを介在して結合);6−(1,2−ジヒドロキシ−エチル)−3−メトキシ−2−ヒドロキシ−1,4−ジオキサン−2−イルであるか;あるいは
とR、RとR、またはRとRは、その結合する2つの炭素原子と一緒になって、−O−CH−O−を有する5員環を、または−O−CH−CH−O−を有する6員環を形成し、その一方で残りの基のRないしRは、独立して、上記した基より選択され;
およびRはフェニルであり;
は−OH;−O−C1−12−アルキル;−O−フェニル;−O−C1−8−アルキル−フェニル;−O−C(=O)−C1−8−アルキル;−O−C(=O)−フェニルであり;
は−H;−OH;−O−C1−8−アルキル;−O−フェニル;−NH;−NH−C1−8−アルキル;−N(C1−8−アルキル)であり;
は−H;−C(=O)−OH;−C(=O)−O−C1−8−アルキル;−C(=O)−O−フェニル;−C(=O)−C1−8−アルキル;−C(=O)−O−C1−8−アルキル;−C(=O)−NH;−C(=O)−NH−C1−8−アルキル;−C(=O)−N−(C1−8−アルキル)であるか;または−C(=O)−ヘテロシクリルを意味し、ここで該ヘテロシクリルは該−C(=O)−基に結合した少なくとも1個のN−原子を含有し;
10およびR11は−Hであるか;あるいは
およびR10は一緒になって=O、=Sまたは=NR15を意味し、
ここでR15は−C1−8−アルキル;−OH;−O−C1−8−アルキル;または−O−フェニルであるか;
あるいはR10およびR11は一緒になって単結合を形成し、RおよびRは一緒になって、式(II):
【化2】

(II)
(式中;
および2は、各々、RおよびRを介する結合であり;
点線は単結合または二重結合であり、二重結合の場合には、R12は存在せず;
12は−Hまたは−C1−3−アルキルであり;
13は−H;−C1−8−アルキル;−OH;−O−C1−8−アルキル;または−O−フェニルであり;
14は−H、−C1−8−アルキルであるか;または
13およびR14は、その結合する炭素および窒素原子と一緒になって、ヘテロシクリルを形成する)
で示される基を形成し、
ここで、各基中の「アルキル」なる語は、置換されていなくても、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−OCH、−OCHCH、−O−CH−フェニル、−OC(=O)CH、−CHO、−COH、−NH、−NH−(C1−8−アルキル)、−NH−(フェニル)、−NH−(CH−フェニル)、−N(C1−8−アルキル)およびヘテロシクリルからなる群より相互に独立して選択される1、2または3種の置換基で置換されていてもよく、ここで該ヘテロシクリルはアルキル残基に結合する少なくとも1個のN−原子を含有し;
ここで、各基中の「フェニル」は、置換されていなくても、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−OCH、−OCHCH、−OC(=O)CH、−CN、−NO、−NH、−CH、CF、−CHOおよび−COHからなる群より相互に独立して選択される1、2または3種の置換基で置換されていてもよい]
で示される化合物またはその生理学的に許容される塩。
【請求項2】
血管形成関連の障害が尿生殖器の疾患からなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
尿生殖器の疾患が、女性の生殖器の非炎症性疾患、子宮内膜症、卵巣子宮内膜症、卵管子宮内膜症、腸子宮内膜症、瘢痕部子宮内膜症、直腸膣中隔子宮内膜症、膣子宮内膜症および骨盤腹膜子宮内膜症からなる群より選択される、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
血管形成関連の障害が眼病からなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
眼病が、黄斑変性、卵黄様ジストロフィ(ベスト病)、網膜症、糖尿病性網膜症、緑内障、血管新生緑内障、脈絡膜血管新生、潜在性脈絡膜血管新生、角膜血管新生、後水晶体繊維増殖症および虹彩ルベオーシスからなる群より選択される、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
血管形成関連の障害が肺病からなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
肺病が、気道リモデリング、COPD(慢性閉塞性呼吸器障害)、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)、新生児呼吸窮迫症候群、肺高血圧、肺サルコイドーシスおよび突発性肺線維症からなる群より選択される、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
血管形成関連の障害が腎疾患からなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
腎疾患が、ネフロパシー、慢性低酸素誘発性疾患、ESRD、腎線維症、腎動脈狭窄症および糸球体腎炎からなる群より選択される、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
血管形成関連の障害が骨関節炎からなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
骨関節炎が、変形性膝関節炎、変形性股関節症、ポリ関節症、リズ関節症およびさらなる関節症からなる群より選択される、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
血管形成関連の障害がリウマチ障害からなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項13】
リウマチ障害が関節リウマチからなる群より選択される、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
請求項1−13のいずれかに記載の血管形成関連の障害を処置および/または予防するための化合物であって、ここで
ないしRが請求項1の記載と同意義であり;
がH;−OH;−O−C1−8−アルキル;−O−フェニル;−NH;−NH−C1−8−アルキル;−N(C1−8−アルキル)であり;
がH;−C(=O)−OH;−C(=O)−O−C1−8−アルキル;−C(=O)−O−フェニル;−C(=O)−C1−8−アルキル;−C(=O)−O−C1−8−アルキル;−C(=O)−NH;−C(=O)−NH−C1−8−アルキル;−C(=O)−N−(C1−8−アルキル)であるか;または−C(=O)−ヘテロシクリルを意味し、ここで該ヘテロシクリルは該−C(=O)−基に結合する少なくとも1個のN−原子を含有し;
10およびR11が−Hであるか;または
およびR10が一緒になって=O、=Sまたは=NR15を意味し、
ここでR15が−C1−8−アルキル;−OH;−O−C1−8−アルキル;または−O−フェニルである;
上記した請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
請求項1−13のいずれかに記載の血管形成関連の障害を処置および/または予防するための化合物であって、ここで
、R、RおよびRが、相互に独立して、−H;−F;−Cl;−Br;−I;−NO;−CN;−OH;−O−C1−8−アルキル;−O−フェニル;−O−C1−8−アルキル−フェニル;−O−C(=O)−C1−8−アルキル;−O−C(=O)−フェニルであり;
およびRがフェニルであり;
およびRが、相互に独立して、−OHまたは−O−C1−8−アルキルであり;
、R10およびR11が−Hである;
上記した請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
請求項1−13のいずれかに記載の血管形成関連の障害を処置および/または予防するための化合物であって、ここで
およびRが、相互に独立して、H;−OH;−O−C1−8−アルキル;−O−フェニル;−O−C1−8−アルキル−フェニル;−O−C(=O)−C1−8−アルキル;−O−C(=O)−フェニルを意味する;
ただし、基RおよびRのうち少なくとも1個は−H以外の基であり;
およびRがHであり;
およびRがフェニルであり;
およびRが、相互に独立して、−OHまたは−O−C1−8−アルキルであり;
、R10およびR11が−Hである;
上記した請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
請求項1−13のいずれかに記載の血管形成関連の障害を処置および/または予防するための化合物であって、ここで
およびRが、相互に独立して、−H;−OH;−O−C1−8−アルキル;O−フェニル;−O−C1−8−アルキル−フェニルを意味する;
ただし、基RおよびRのうち少なくとも1個は−H以外の基であり;
およびRが−Hであり;
およびRがフェニルであり;
およびRが−OHであり;
、R10およびR11が−Hである;
上記した請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
請求項1−13のいずれかに記載の血管形成関連の障害を処置および/または予防するための化合物であって、上記した請求項のいずれかに記載されており、一般式(Ie):
【化3】

(Ie)
[式中:
は−H;置換されていないか、または−OCH、−OCHCH、−NH、−NH(CH)、−NH(CHCH)、−N(CH、−N(CHCH
【化4】


からなる群より選択される1種の置換基により置換されている−O−C1−8−アルキル;または置換されていない−O−CH−フェニルを意味し;
は−OH;置換されていない−O−フェニル;置換されていないか、または−F、−Cl、−OCH、−OCHCH、−NH、−NH(CH)、−NH(CHCH)、−NH(CH(CH)、−NH(C(CH)、−NH(CH−フェニル)または−NH(フェニル)(ここで各置換基のフェニルは置換されていない)、−N(CH、−N(CHCH
【化5】


からなる群より選択される1種の置換基により置換されている−O−C1−8−アルキル;または置換されていない−O−CH−フェニルを意味し;
およびRは、置換されていないか、または−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−OCH、−NH、−CHおよび−CFからなる群より相互に独立して選択される1、2または3種の置換基で置換されているフェニルである]
で示される化合物。

【公表番号】特表2012−510964(P2012−510964A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538897(P2011−538897)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008632
【国際公開番号】WO2010/063471
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(506220829)インターメッド・ディスカバリー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】InterMed Discovery GmbH
【Fターム(参考)】