説明

HIV−1TAT及び/又はNEFタンパク質を含んで成る融合タンパク質

【課題】新規のHIVタンパク質構築体、それを含む医薬の提供。
【解決手段】本発明は、(a)(i)融合パートナーもしくは(ii)HIV Nefタンパク質もしくはその誘導体のいずれかに連結されたHIV Tatタンパク質もしくはその誘導体;又は(b)(i)融合パートナーもしくは(ii)HIV Tatタンパク質もしくはその誘導体のいずれかに連結されたHIV Netタンパク質もしくはその誘導体;又は(c)HIV Tatタンパク質もしくはその誘導体及び融合パートナーに連結されたHIV Nefタンパク質もしくはその誘導体;を提供する。本発明は更にかかるタンパク質をコードする核酸、及びかかる核酸で形質転換された宿主細胞、例えばピチア・パストリスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規のHIVタンパク質構築体、医薬におけるその利用、それを含む医薬組成物、及びその製造の方法に関する。
【0002】
詳しくは、本発明はHIV−1 Tat及び/又はNefタンパク質を含んで成る融合タンパク質に関する。
【0003】
HIV−1は世界中の大きな健康問題の一つとして認識されている後天的免疫不全症候群(AIDS)の主たる原因である。世界中で多大な研究がワクチンの製造に費やされているが、かかる努力は今のところ成功を収めていない。
【背景技術】
【0004】
HIV−1の非エンベロープタンパク質が発表されており、それには例えば内部構造タンパク質、例えばgag及びpol遺伝子、並びにその他の非構造タンパク質、例えばRev,Nef,Vif及びTatが挙げられる(Greeneら、New England J.Med, 324, 5, 308以降、及びBryantら(Ed. Pizzo), Pediatr.Infect.Dis.J., 11, 5, 390 以降(1992)。
【0005】
HIV Nef及びTatタンパク質は早期タンパク質であり、即ち、それらは感染の早期において、且つ構造タンパク質の非存在下で発現される。
【発明の概要】
【0006】
本発明に従うと、以下を含んで成るタンパク質が提供される:
(a)(i)融合パートナーもしくは(ii)HIV Tatタンパク質もしくはその誘導体のいずれかに連結されたHIV Nefタンパク質もしくはその誘導体;又は
(b)(i)融合パートナーもしくは(ii)HIV Nefタンパク質もしくはその誘導体のいずれかに連結されたHIV Tatタンパク質もしくはその誘導体;又は
(c)HIV Tatタンパク質もしくはその誘導体及び融合パートナーに連結されたHIV Nefタンパク質もしくはその誘導体。
【0007】
融合パートナーとは、Tat又はNefではない任意のタンパク質配列を意味する。好ましくは、融合パートナーはヘモフィルス・インフレンザBに由来するタンパク質D又はその脂質付加誘導体リポタンパク質Dである。特に、N末端側の1/3、即ち、およそ最初の100〜130個のアミノ酸が利用される。ここではそれをLipo D 1/3と称する。本発明の好適な態様において、Nefタンパク質又はその誘導体はTatタンパク質又はその誘導体に連結されていてよい。かかるNef−Tat融合体は任意的に融合パートナー、例えばタンパク質Dにも連結されていてよい。
【0008】
融合パートナーは通常Nef又はTatタンパク質のN末端に連結されている。
【0009】
本発明に包含される誘導体には、5〜10個のヒスチジン残基を好適に含むC末端ヒスチジンテールを有する分子が含まれる。一般に、n個の残基を含むヒスチジンテールをここではHis(n)と呼ぶ。ヒスチジン(又は「His」)テールの存在は精製に役に立つ。より詳しくは、本発明は下記の構造を有するタンパク質を提供する:
Lipo D 1/3 − Nef − His(6 )
Lipo D 1/3 − Nef−Tat − His(6 )
Prot D 1/3 − Nef − His(6 )
Prot D 1/3 − Nef−Tat − His(6 )
Nef−Tat − His(6 )
【0010】
図1はかかる構築体のための融合パートナーのアミノ酸(Seq. ID. No.7 )及びDNA配列(Seq. ID. No.6 )を示す。
【0011】
好適な態様において、当該タンパク質は5〜10個、そして好ましくは6個のヒスチジン残基を含んで成るヒスチジンテールを伴って発現される。酵母(サッカロマイセス・セレビシエ)における、Nef(Macreadie I.G.ら、1993, Yeast 9 (6) 565-573 )及びTat(Braddock Mら、1989, Cell 58 (2) 269-79)の個別の発現は既に報告されている。Nefタンパク質のみがミリスチル化されている。本発明ははじめてピチア発現系においてNef及びTatの個別の発現(Nef−His及びTat−His構築体)、並びに融合構築体Nef−Tat−Hisの有効な発現を提供する。代表的なNef−His(Seq. ID. No.8 及び9)、Tat−His(Seq. ID. No.10及び11)、並びにNef−Tat−His融合タンパク質(Seq. ID. No.12及び13)のDNA及びアミノ酸配列を図12に示す。
【0012】
本発明に包含される誘導体には突然変異タンパク質も含まれる。「突然変異」なる語は、部位特異的突然変異誘発のための周知の技術又は任意のその他の慣用の方法を利用して1又は複数個のアミノ酸の欠失、付加又は置換の施された分子を意味する。
【0013】
突然変異Tatを図2(Seq. ID. No.22及び23)に、Nef−Tat突然変異−His(Seq. ID. No.24及び25)と一緒に示す。
【0014】
本発明は更に、本発明のタンパク質をコードするDNAも提供する。かかる配列は適当な発現ベクターに挿入でき、そして適当な宿主内で発現されうる。
【0015】
本発明のタンパク質をコードするDNA配列は標準のDNA合成技術、例えばD.M.Roberts ら、Biochemistry 1985, 24, 5090-5098に記載の酵素ライゲーションにより、化学合成により、in vitro酵素重合により、又は熱安定ポリメラーゼの如きを利用するPCR技術により、又はこれらの技術の組合せを利用して合成できる。
【0016】
DNAの酵素重合はin vitroで、DNAポリメラーゼ、例えばDNAポリメラーゼI(クレノウフラグメント)を利用し、ヌクレオシド三リン酸、dATP,dCTP,dGTP及びdTTPを適宜含む適当なバッファーの中で10〜37℃の温度において、一般に50μl以下の容量で実施できうる。DNAフラグメントの酵素的ライゲーションはDNAリガーゼ、例えばT4 DNAリガーゼを利用し、適当なバッファー、例えば0.05MのTris(pH7.4)、0.01MのMgCl2 、0.01Mのジチオスレイトール、1mMのスペルミジン、1mMのATP及び0.1mg/mlの牛血清アルブミンの中で、4℃乃至室温の温度で、一般に50ml以下の容量で実施できうる。このDNAポリマー又はフラグメントの化学合成は慣用のホスホトリエステル、ホスフィット、又はホスホラミジットにより、固相技術、例えば「Chemical and Enzymatic Synthesis of Gene Fragments-A Laboratory Manual」(ed. H.G.Gassen and A.Lang), Verlag Chemie, Weinheim (1982))又はその他の科学文献、例えばM.J.Gait, H.W.D.Matthes, M.Singh, B.S.Sproat, and R.C.Titmas, Nucleic Acids Research, 1982, 10, 6243; B.S.Sproat, and W.Bannwarth, Tetrahedron Letters, 1983, 24, 5771; M.D.Matteucci and M.H.Caruthers, Tetrahedron Letters, 1980, 21, 719; M.D.Matteucci and M.H.Caruthers, Journal of the American Chemical Society, 1981, 103, 3185; S.P.Adams et al., Journal of the American Chemical Society, 1983, 105, 661; N.D.Sinha, J.Biernat, J.McMannus, and H.Koester, Nucleic Acids Research, 1984, 12, 4539; 及びH.W.D.Matthes et al., EMBO Journal, 1984, 3, 801に記載の固相技術を利用して実施できうる。
【0017】
本発明は、本発明のタンパク質を調製するための方法も提供し、この方法は:
i)宿主細胞内で、前記タンパク質又はその誘導体をコードするヌクレオチド配列を含んで成るDNAポリマーを発現できる複製可能な又は組込み式発現ベクターを用意する;
ii)宿主細胞を前記ベクターで形質転換する;
iii )前記形質転換宿主細胞を前記タンパク質が産生されるよう前記DNAポリマーの発現を可能にする条件下で培養する;そして
iv)前記タンパク質を回収する;
工程を含んで成る。
【0018】
本発明の方法は慣用の組換技術、例えばManiatisらMolecular Cloning-A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor, 1982-1989に記載の技術により実施してよい。
【0019】
本明細書において用いる語「形質転換」とは、外来DNAの宿主細胞への導入を意味する。これは例えばGenetic Engineering; Eds.S.M.Kingsman and A.J.Kingsman; Blackwell Scientific Publications; Oxford, England, 1988に記載の慣用の技術を利用しての適当なプラスミド又はウィルスによる形質転換、トランスフェクション又は感染により達成できうる。「形質転換」は以降、注目の外来遺伝子を含み、且つ発現する宿主細胞結果物に適用する。
【0020】
当該発現ベクターは新規であり、そして本発明の一部を構成する。
【0021】
複製可能な発現ベクターは本発明に従い、前記宿主細胞に適合するベクターを切断してインタクトなレプリコンを有する線形DNAセグメントを供し、そしてこの線形セグメントを、それと一緒になって所望の生成物をコードする1又は複数のDNA分子、例えば本発明のタンパク質又はその誘導体をコードするDNAポリマーとライゲーション条件下で結合させることにより調製できうる。
【0022】
かくして、当該DNAポリマーは適宜、予め形成しておく、又は当該ベクターの構築中に形成してよい。
【0023】
ベクターの選択はある程度宿主細胞により決定される。かかる細胞は原核系でも真核系でもよいが、好ましくはE.コリ又は酵母とする。適当なベクターにはプラスミド、バクテリオファージ、コスミド及び組換ウィルスが挙げられる。
【0024】
複製可能な発現ベクターの調製は、例えばManiatisら、前掲に記載のDNAの制限処理、重合及びライゲーション用の適当な酵素により慣用的に実施されうる。
【0025】
組換宿主細胞は、本発明に従い、宿主細胞を本発明の複製可能ベクターで形質転換条件下で形質転換させることにより調製する。適当な形質転換条件は慣用であり、そして例えばManiatisら、前掲又は「DNA Cloning 」Vol.II, D.M.Glover ed., IRL Press Ltd., 1985に記載されている。
【0026】
形質転換条件の選定は宿主細胞により決定される。即ち、細菌宿主、例えばE.コリをCaCl2 の溶液(Cohen ら、Proc.Natl.Acad.Sci., 1973, 69, 2110 )又はRbCl,MnCl2 、酢酸カリウム及びグリセロールの混合物を含んで成る溶液、次いで3−〔N−モルホリノ〕−プロパン−スルホン酸、RbCl及びグリセロールで処理してよい。培養物中の哺乳動物細胞はこの細胞上へのベクターDNAのカルシウム共沈殿により形質転換されうる。本発明は更に本発明の複製発現ベクターで形質転換された宿主細胞にまで及ぶ。
【0027】
当該DNAポリマーの発現を可能にする条件下での形質転換宿主細胞の培養は、例えば上記のManiatisらの「DNA Cloning 」に記載の通りにして慣用的に実施する。かくして、好ましくは細胞に栄養分を供給し、そして50℃以下の温度で培養する。
【0028】
当該生成物は宿主細胞に従って慣用の方法により回収される。かくして、宿主細胞が細菌、例えばE.コリ又は酵母、例えばピチアのとき、それを物理的、化学的又は酵素的に溶解し、そして得られるリゼートからタンパク質生成物を単離してよい。宿主細胞が哺乳類系の場合、その生成物は一般に栄養培地から、又は細胞フリーエキスから単離されうる。慣用のタンパク質単離技術には選択的沈殿、吸着クロマトグラフィー、及びモノクローナル抗体アフィニティーカラムを含むアフィニティークロマトグラフィーが挙げられる。
【0029】
ヒスチジンテールの施された本発明のタンパク質にとって、精製は金属イオンアフィニティーカラムの利用により容易に達成されうる。好適な態様において、このタンパク質はそれを陽イオン交換クロマトグラフィー及び/又はゲル濾過クロマトグラフィーにかけることにより更に精製する。次いでこのタンパク質を0.22μmの膜に通すことにより滅菌する。
【0030】
本発明のタンパク質はワクチンとして調剤でき、又はヒスチジン残基を酵素的に浄化してよい。
【0031】
本発明のタンパク質はSDS PAGEによる可視化に従い、好ましくは純度80%以上、より好ましくは純度90%以上で提供される。好ましくは、このタンパク質はSDS PAGEにより単一バンドとして出現する。
【0032】
本発明は医薬的に許容される賦形剤中の本発明のタンパク質を含んで成る医薬組成物を提供する。
【0033】
ワクチン製剤はNew Trends and Developments in Vaccines, Voller ら (eds.), University Park Press, Baltimore, Maryland, 1978 に一般に記載してある。リポソーム内での封入はFullerton 、米国特許第4,235,877号に記載されている。
【0034】
本発明のタンパク質は好ましくは本発明のワクチン製剤の中でアジュバント付加されている。適当なアジュバントにはアルミニウム塩、例えば水酸化アルミニウムゲル(みょうばん)又はリン酸アルミニウムが挙げられるが、カルシウム、鉄もしくは亜鉛の塩であってもよく、又はアシル化チロシンの不溶性懸濁物、又はアシル化糖、陽イオンもしくは陰イオン誘導多糖類、又はポリホスファゼン類が挙げられる。
【0035】
本発明の製剤において、当該アジュバント組成物が優先的なTH1応答を誘導することが好ましい。適当なアジュバント製剤には、例えばモノホスホリル脂質A又はその誘導体、好ましくは3−デ−O−アシル化モノホスホリル脂質A(3D−MPL)とアルミニウム塩との組合せが挙げられる。
【0036】
増強システムはモノホスホリル脂質Aとサポニン誘導体との組合せ、特にWO94/00153に開示のQS21及び3D−MPLの組合せ、又はWO96/33739に開示の如きQS21がコレステロールでクエンチングされた反応性の弱い組成物を包含する。
【0037】
QS21,3D−MPL及びトコフェロールを水中油エマルションの中で包含する極めて有効なアジュバント製剤がWO95/17210に記載され、そして好適な製剤である。
【0038】
従って、本発明の一の態様において、モノホスホリル脂質A又はその誘導体、特に3D−MPLで強化された本発明に係るタンパク質を含んで成るワクチンを提供する。
【0039】
好ましくは、このワクチンは更にサポニン、より好ましくはQS21を含んで成る。
【0040】
好ましくは、この製剤は更に水中油エマルション及びトコフェロールを含んで成る。本発明は更に、本発明のタンパク質を医薬的に許容される賦形剤、例えば3D−MPLと混合することを含んで成るワクチン製剤の製造のための方法を提供する。
【0041】
本発明のワクチンは更にHIVタンパク質、例えばエンベロープ糖タンパク質gp160又はその誘導体gp120を含んで成る。
【0042】
別の観点において、本発明はピチア・パストリスにおいて発現されたHIV Nef又はHIV Tatタンパク質、又はそれらの誘導体に関連する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
(原文記載なし)
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明を以下の実施例を参考に更に説明する。
【0045】
実施例
一般事項
ヒト免疫不全ウィルス(HIV−1)によりコードされる2種類の調節タンパク質、Nef及びTatタンパク質をE.コリ及びメチロール向性酵母ピチア・パストリスの中で生産した。
【0046】
Bru/Lai単離体由来のnef遺伝子(Cell 40: 9-17, 1985 )をこれらの構築体のために選定し、なぜならこの遺伝子はとりわけ共通Nefに最も似しているからである。
【0047】
Bru/Lai nef遺伝子のための出発材料は哺乳動物発現ベクターpcDNA3上にクローニングされた1170bp DNAのフラグメントとした(pcDNA3/nef)。
【0048】
tat遺伝子はBH10分子クローンに由来する。この遺伝子にはHTLVIII cDNAクローン名pCV1が付与され、そしてScience, 229, p-69-73, 1985 に記載されている。
【0049】
1.HIV−1 nef及びtat配列のE.コリ内での発現
Nefタンパク質をコードする配列並びにnef及びtat配列の融合体をプラスミドベクターpRIT14586及びpRIT14589に設置した(図1参照)。
【0050】
Nef及びNef−Tat融合体を、融合パートナーとしてタンパク質Dの一部を利用して製造した。タンパク質Dはグラム陰性菌、ヘモフィルス・インフレンザの表層に露出したイムノグロブリンD結合タンパク質である。
【0051】
pRIT14586は、λPLプロモーターのコントロール下で、タンパク質Dの最初の127個のアミノ酸をコードするヘモフィルス・インフレンザ菌に由来するDNA配列(Infect.Immun. 60: 1336-1342, 1992 )、その直後に後続する多重クローニング部位領域、並びに1個のグリシン、6個のヒスチジン残基及び停止コドンをコードするDNA配列を含む(図1A)。
【0052】
このベクターはプロセシングされた脂質化Hisテール付き融合タンパク質(Lipo D融合タンパク質)を発現するようにデザインされている。この融合タンパク質は長さ18個のアミノ酸残基のシグナル配列を有する前駆体として合成し、そしてプロセシングの後、この前駆体分子内の19位のシステインはアミノ末端残基となり、その後共有結合した脂肪酸により修飾される(図1B)。
【0053】
pRIT14589はpRIT14586とほぼ同一であるが、prot D誘導配列がシステイン19コドンの直後で始まる。
【0054】
このベクターからの発現はHisテール付き、脂質無しの融合タンパク質(Prot D融合タンパク質)をもたらす。
【0055】
LipOD−nef−His,LipoD−nef−tat−His,ProtD−nef−His及びProtD−nef−tat−Hisの4つの構築体を作った。
【0056】
最初の2つの構築体は発現ベクターpRIT14586を利用して作り、最後の2つの構築体はpRIT14589を利用して作った。
【0057】
1.1 LIPOD−Nef−HIS融合タンパク質を産生する組換株ECLD
−N1の構築
1.1.1 lipoD−nef−His発現プラスミドpRIT14595の
構築
nef遺伝子(Bru/Lai単離体)をPCRによりpcDNA3/Nefプラスミドから、プライマー01及び02を用いて増幅した。
【0058】
NcoI
プライマー01(Seq ID NO 1 ):5′ATCGT CCATG.G GT.GGC.AAG.TGG.T3′
SpeI
プライマー02(Seq ID NO 2 ):5′CGGCT ACTAGTGCAGTTCTTGAA3′
【0059】
nefDNA領域の増幅はヌクレオチド8357で開始し、そしてヌクレオチド8971で終結する(Cell, 40: 9-17, 1985)。
【0060】
NcoI制限部位(nef遺伝子のATGコドンを担持する)をPCRフラグメントの5′末端に導入し、そしてSpeI部位は3′末端に導入した。
【0061】
得られるPCRフラグメント及び発現プラスミドpRIT14586を共にNcoI及びSpeIで制限処理し、アガロースゲルで精製し、ライゲーションし、そして適当なE.コリ宿主、株AR58に形質転換させた。この株はgalE::Tn10,Δ−8(chlD−pgl),Δ−H1(cro−chlA),N+ 及びcI857であるN99に由来するクリプチックλリソゲンである。
【0062】
得られる組換プラスミドを、自動配列決定によりnef増幅した領域の確認後(下記1.1.2章参照のこと)、pRIT14595と命名した。
【0063】
1.1.2 pRIT14595を有するE.コリ株AR58の形質転換体の選

AR58E.コリ宿主株で形質転換を行うと、組換プラスミドは異種タンパク質の熱誘導性生産を指令する。
【0064】
いくつかの組換lipoD−Nef−His形質転換体の熱誘導性タンパク質生産をクマジーブルー染色したSDS−PAGEにより分析した。形質転換体は全て熱誘導性異種タンパク質生産を示した。組換LipoD−Nef−Tat−His融合タンパク質の量は総タンパク質の10%と推定された。
【0065】
形質転換体の一つを選定し、そして実験室承認番号ECLD−N1を付与した。
【0066】
組換プラスミドを株ECLD−N1から再単離し、そしてnef−Hisコード領域の配列を自動配列決定により確認した。このプラスミドに公共名pRIT14595を付与した。
【0067】
株ECLD−N1により生産された完全にプロセシングされ、且つアシル化された組換LipoD−nef−His融合タンパク質は
・脂肪酸
・109a.a.のタンパク質D(a.a.19で始まり、a.a.127に至る)
・pRIT14586のNcoIクローニング部位を利用して構築したメチオニン(図1)
・205a.a.のNefタンパク質(a.a.2で始まり、a.a.206に至る)
・クローニング手順により構築したスレオニン及びセリン(pRIT14586のSpeI部位においてクローニング)
・1個のグリシン及び6個のヒスチジン
から成る。
【0068】
1.2 PROTD−Nef−HIS融合タンパク質を産生する組換株ECD−
N1の構築
ProtD−Nef−His融合タンパク質をコードする発現プラスミドpRIT14600の構築は実施例1に記載のプラスミドの構築と同じであるが、PCR増幅nefフラグメントのためのレセプタープラスミドとしてpRT14589を使用した。
【0069】
E.コリAR58株をpRIT14600で形質転換し、そしてその形質転換体を実施例1.1.2に記載の通りにして分析した。選定した形質転換体に実験室承認番号ECD−N1を付与した。
【0070】
1.3 LIPOD−Nef−Tat−HIS融合タンパク質を産生する組換株
ECLD−NT6の構築
1.3.1 lipoD−Nef−Tat−His発現プラスミドpRIT14
596の構築
tat遺伝子(BH10単離体)をPCRにより、pCV1プラスミドの誘導体から、プライマー03及び04を用いて増幅させた。SpeI制限部位をPCRフラグメントの両端に導入した。
【0071】
SpeI
プライマー03(Seq ID NO 3 ):5′ATCGT ACTAGT. GAG.CCA.GTA.GAT.C 3′
SpeI
プライマー04(Seq ID NO 4 ):5′CGGCT ACTAGTTTCCTTCGGGCCT 3′
【0072】
増幅tat遺伝子のヌクレオチド配列はpCV1クローンにおいて示され(Science 229: 69-73, 1985)、そしてヌクレオチド5414乃至ヌクレオチド7998をカバーする。
【0073】
得られるPCRフラグメント及びプラスミドpRIT14595(lipoD−Nef−Hisタンパク質を発現する)を共にSpeI制限酵素により消化し、アガロースゲルで精製し、ライゲーションし、そしてコンピテントAR58細胞に形質転換させた。得られる組換プラスミドに、自動配列決定によるtat増幅配列の確認後(以下の1.3.2章参照のこと)、名称pRIT14596を付与した。
【0074】
1.3.2 pRIT14596を有する株AR58の形質転換体の選定
形質転換体を増殖させ、熱誘導し、そしてそのタンパク質をクマジーブルー染色したゲルにより分析した。組換タンパク質の生産レベルは総タンパク質の1%と推定された。一の組換株を選定し、そして実験室名ECLD−NT6を付与した。
【0075】
lipoD−nef−tat−His組換プラスミドをECLD−NT6株から再単離し、配列決定し、そして公共名pRIT14596を付与した。
【0076】
株ECLD−N6により産生された完全にプロセシングされ、且つアシル化された組換LipoD−Nef−Tat−His融合タンパク質は
・脂肪酸
・109a.a.のタンパク質D(a.a.19で始まり、a.a.127に至る)
・pRIT14586のNcoIクローニング部位を利用して構築したメチオニン
・205a.a.のNefタンパク質(a.a.2で始まり、a.a.206に至る)
・クローニング手順により構築したスレオニン及びセリン
・85a.a.のTatタンパク質(a.a.2で始まり、a.a.86に至る)
・クローニング手順により導入されたスレオニン及びセリン
・1個のグリシン及び6個のヒスチジン
から成る。
【0077】
1.4 PROTD−Nef−Tat−HIS融合タンパク質を産生する組換株
ECD−NT1の構築
ProtD−Nef−Tat−His融合タンパク質をコードする発現プラスミドpRIT14601の構築は実施例1.3.1に記載のプラスミド構築と同じであるが、PCR増幅nefフラグメントのためのレセプタープラスミドとしてpRIT14600を使用した。
【0078】
E.コリAR58株をpRIT14601で形質転換し、そして形質転換体を前述の通りに分析した。選定した形質転換体に実験室承認番号ECD−NT1を付与した。
【0079】
2.ピチア・パストリス内でのHIV−1 nef及びtat配列の発現
Netタンパク質、Tatタンパク質及び融合体Nef−Tatをメチロール向性酵母ピチア・パストリス内で誘導性アルコールオキシダーゼ(AOX1)プロモーターのコントロール下で発現させた。
【0080】
これらのHIV−1遺伝子を発現させるため、組込み式ベクターPHIL−D2(INVITROGEN)の改良バージョンを利用した。このベクターは異種タンパク質の発現がAOX1遺伝子の天然ATGコドンの直後で開始し、そして1個のグリシン及び6個のヒスチジン残基のテールを有する組換タンパク質が産生できるように改良されている。このPHIL−D2−MODベクターを、PHIL−D2ベクターの隣接AsuII及びEcoRI部位の間にオリゴヌクレオチドリンカーをクローニングすることにより構築した(図3参照)。Hisテールの他に、このリンカーはNcoI,SpeI及びXbaI制限部位を担持し、その間にnef,tat及びnef−tat融合体が挿入されている。
【0081】
2.1 組込み式ベクターpRIT14597(Nef−Hisタンパク質をコ
ード)、pRIT14598(Tat−Hisタンパク質をコード)及
びpRIT14599(融合体Nef−Tat−Hisをコード)の構

nef遺伝子をPCRにより、pcDNA3/Nefプラスミドから、プライマー01及び02を用いて増幅させた(1.1.1章、pRIT14595の構築参照)。得られるPCRフラグメント及び組込み式PHIL−D2−MODベクターを共にNcoI及びSpeIにより制限処理し、アガロースゲルで精製し、そしてライゲーションして組込み式プラスミドpRIT14597を構築した(図3参照)。
【0082】
tat遺伝子をPCRにより、pCV1プラスミドの誘導体から、プライマー05及び04を利用して増幅させた(1.3.1章、pRIT14596の構築参照):
NcoI
プライマー05(Seq ID NO 5 ):5′ATCGT CCATGGAGCCAGTAGATC3′
【0083】
NcoI制限部位をPCRフラグメントの5′末端に導入し、一方でSpeI部位をプライマー04により3′末端に導入した。得られるPCRフラグメント及びPHIL−D2−MODベクターを共にNcoI及びSpeIにより制限処理し、アガロースゲルで精製し、そしてライゲーションして組込み式プラスミドpRIT14598で構築した。
【0084】
pRIT14599を構築するため、nef−tat−Hisコード配列に対応する910bpのDNAフラグメントをPHIL−D2−MODベクターのEcoRI平滑末端化(T4ポリメラーゼ)とNcoI部位との間にライゲーションした。このnef−tat−HisコードフラグメントはpRIT14596のXbaI平滑末端化(T4ポリメラーゼ)及びNcoI消化物により得た。
【0085】
2.2 ピチア・パストリス株GS115(his4)の形質転換
Nef−His,Tat−His及び融合体Nef−Tat−Hisを発現するピチア・パストリス株を得るため、株GS115を、対応の発現カセットと、宿主ゲノム内のhis4を相補するHIS4遺伝子とを担持する線形NotIフラグメントで形質転換した。GS115のNotI−線形フラグメントによる形質転換はAOXI座での組換を優先する。
【0086】
マルチコピー組込み式クローンを定量ドットブロット分析により選定し、そして組込み、挿入(Mut+ 表現型)又は転位(Mut5 表現型)のタイプを決定した。
【0087】
各形質転換体から、組換タンパク質について高い生産レベルを示す一の形質転換体を選定した:
ミリスチル化された215個のアミノ酸のタンパク質である組換Nef−Hisタンパク質を産生する株Y1738(Mut+ 表現型)は:
・ミリスチン酸
・PHIL−D2−MODベクターのNcoIクローニング部位を利用して構築したメチオニン
・205a.a.のNefタンパク質(a.a.2で始まり、a.a.206に至る)
・クローニング手順により構築したスレオニン及びセリン(PHIL−D2−MODベクターのSpeI部位でクローニング)
・1個のグリシン及び6個のヒスチジン
から成る。
【0088】
95個のアミノ酸のタンパク質であるTat−Hisタンパク質を産生する株Y1739(Mut+ 表現型)は:
・NcoIクローニング部位を利用して構築したメチオニン
・85a.a.のTatタンパク質(a.a.2で始まり、a.a.86に至る)
・クローニング手順により導入したスレオニン及びセリン
・1個のグリシン及び6個のヒスチジン
から成る。
【0089】
ミリスチル化された302個のアミノ酸タンパク質である組換Nef−Tat−His融合タンパク質を産生する株Y1737(Muts 表現型)は:
・ミリスチン酸
・NcoIクローニング部位を利用して構築したメチオニン
・205a.a.のNefタンパク質(a.a.2で始まり、a.a.206に至る)
・クローニング手順により構築したスレオニン及びセリン
・85a.a.のTatタンパク質(a.a.2で始まり、a.a.86に至る)
・クローニング手順により導入されたスレオニン及びセリン
・1個のグリシン及び6個のヒスチジン
から成る。
【0090】
3.ピチア・パストリス内でのHIV−1 Tat−突然変異体の発現
Nef−Tat突然変異融合タンパク質と同様に、突然変異組換Tatタンパク質も発現させた。この突然変異Tatタンパク質は生物学的に不活性であり、一方でその免疫原エピトープは維持している。
【0091】
D.Clements(Tulane University )により構築された二重突然変異tat遺伝子をこれらの構築体のために選定した。
【0092】
このtat遺伝子(BH10分子クローンを起源とする)は突然変異を活性部位領域(Lys41→Ala)及びRGDモチーフ(Arg78→Lys及びAsp80→Glu)において保有する(Virology 235: 48-64, 1997 )。
【0093】
突然変異tat遺伝子に、CMV発現プラスミド(pCMVLys41/KGE)内のEcoRI及びHindIII 部位の間にサブクローニングしたcDNAフラグメントを付与した。
【0094】
3.1 組込み式ベクターの構築
pRIT14912(Tat突然変異−Hisタンパク質をコード)及びpRIT14913(融合Nef−Tat突然変異−Hisをコード)
tat突然変異遺伝子をPCRにより、pCMVLys41/KGEプラスミドから、プライマー05及び04を利用して増幅させた(2.1章、pRIT14598の構築参照)。
【0095】
NcoI制限部位をPCRフラグメントの5′末端に導入し、SpeI部位はプライマー04で3′末端に導入した。得られるPCRフラグメント及びPHIL−D2−MODベクターを共にNcoI及びSpeIにより制限処理し、アガロースゲルで精製し、そしてライゲーションして組込み式プラスミドpRIT14912を構築した。
【0096】
pRIT14913を構築するため、tat突然変異遺伝子をPCRにより、pCMVLys41/KGEプラスミドから、プライマー03及び04を利用して増幅した(1.3.1章、pRIT14596の構築参照)。
【0097】
得られるPCRフラグメント及びプラスミドpRIT14597(Nef−Hisタンパク質を発現)を共にSpeI制限酵素により消化し、アガロースゲルで精製し、そしてライゲーションして組込み式プラスミドpRIT14913を構築した。
【0098】
3.2 ピチア・パストリス株GS115の形質転換
Tat突然変異−Hisタンパク質及び融合体Nef−Tat突然変異−Hisを発現するピチア・パストリスを、2.2章に前述した組込み及び組換株選定戦略を適用することにより、得た。
【0099】
95個のアミノ酸のタンパク質であるTat突然変異−Hisタンパク質を産生する2種類の組換株、Y1775(Mut+ 表現型)及びY1776(Muts 表現型)を選別した。
【0100】
302個のアミノ酸のタンパク質であるNef−Tat突然変異−His融合タンパク質を発現する一の組換株、Y1774(Mut+ 表現型)を選定した。
【0101】
4.Nef−Tat−His融合タンパク質(ピチア・パストリス)の精製
精製スキームを146gの組換ピチア・パストリス細胞(湿潤重量)又は2LのDyno−millホモジネートOD55から展開した。クロマトグラフィー手順は室温で実施した。工程の間、Nef−Tat陽性画分を低温室(+4℃)に夜間保存しておいた。長期間のためには、サンプルを−20℃で冷凍した。
【0102】
146gのピチア・パストリス細胞

ホモジナイゼーション バッファー:2L 50mMのPO4 pH7.0
最終OD:50

Dyno−Mill破砕(4回)

遠心分離 JA10ローター/9500rpm /30min /室温

Dyno−Millペレット

洗浄 バッファー:+2L 10mMのPO4 pH7.5−15
(1h−4℃) 0mMのNaCl−0.5%のエンピジェン

遠心分離 JA10ローター/9500rpm /30min /室温

ペレット
【0103】

可溶化 バッファー:+660mlの10mMのPO4 pH7.5−
(O/N−4℃) 150mMのNaCl−4.0MのGuHCl

還元 +0.2Mの2−メルカプトエタンスルホン酸、ナト (4H−室温−暗所) リウム塩(粉末添加)/pHインキュベーション前に7
.5に調整(0.5MのNaOH溶液で)

カルボキシメチル化 +0.25Mのヨードアセトアミド(粉末添加)/pH(1/2h−室温−暗所)インキュベーション前に7.5に調整(0.5MのN
aOH溶液で)

Ni++−NTA−アガ 平衡バッファー:10mMのPO4 pH7.5−150mMロース(Qiagen−30 のNaCl−4.0MのGuHCl
mlの樹脂)上での固定 洗浄バッファー:1)平衡バッファー
化金属イオンアフィニ 2)10mMのPO4 pH7.5−15ティークロマトグラフ 0mMのNaCl−6Mの尿素
ィー 3)10mMのPO4 pH7.5−15
0mMのNaCl−6Mの尿素−25mMのイミダゾール
溶出バッファー:10mMのPO4 pH7.5−150mM
のNaCl−6Mの尿素−0.5Mのイミダゾール
【0104】

希釈 18mS/cm2 のイオン強度にまで下げる
希釈バッファー:10mMのPO4 pH7.5−6Mの尿


SP Sepharose FF 上で 平衡バッファー:10mMのPO4 pH7.5−150mMの陽イオン交換クロマ のNaCl−6.0Mの尿素
トグラフィー 洗浄バッファー:1)平衡バッファー
(Pharmacia −30ml 2)10mMのPO4 pH7.5−25の樹脂) 0mMのNaCl−6Mの尿素
溶出バッファー:10mMの硼酸塩pH9.0−2MのN
aCl−6Mの尿素

濃縮 5mg/mlに至る
10kDa Omega膜(Filtron )

Superdex200 XK上での 溶出バッファー:10mMのPO4 pH7.5−150mMゲル濾過クロマトグラ のNaCl−6Mの尿素
フィー16/60 5mlのサンプル/インジェクション→5回インジェク(Pharmacia −120 ション
mlの樹脂)

透析 バッファー:10mMのPO4 pH6.8−150mMのN
(O/N−4℃) aCl−0.5Mのアルギニン*

無菌濾過 Millex GV 0.22μm
* 比:1600μg/mlのタンパク質濃度に対して0.5Mのアルギニン
【0105】
純度
SDS−PAGEにより推定する純度のレベルを図4でダイイチ銀染色により、そして図5でクマジーブルーG250により示す。
Superdex200工程の後:>95%
透析及び無菌濾過工程の後:>95%
【0106】
回収率
51mgのNef−Tat−hisタンパク質が146gの組換ピチア・パストリス細胞(=2LのDyno−millホモジネートOD55)から精製された。
【0107】
5.ワクチン製剤
本発明に従って調製したワクチンは実施例1及び2に例示する抗原をコードするDNA組換体の発現生成物、並びにアジュバントとして、油/水エマルション中の3デ−O−アシル化モノホスホリル脂質A 3D−MPL及びQS21の混合物を含んで成る配合物を含んで成る。
【0108】
3D−MPLはグラム陰性菌サルモネラ・ミネソタ(Salmonella minnesota)のリポ多糖(LPS)の化学的に解毒した形態である。
【0109】
Smith Kline Beecham Biologicals で行った実験は、様々なビヒクルと組合せた3D−MPLが体液及びTH1型細胞免疫の双方を非常に高めることを示した。
【0110】
QS21はキラジャ・サポナリア・モリナ(Quillaja Saponaria Molina )樹木の樹皮の粗エキスから精製した一種のサポニンであり、これは強力なアジュバント活性を有する:これは抗原特異的リンパ増殖及びいくつかの抗原に対するCTLの双方を活性化する。Smith Kline Beecham Biologicals で実施した実験は体液及びTH1型細胞免疫応答の双方の誘導における3D−MPL及びQS21の組合せの明確な相乗効果を示した。
【0111】
油/水エマルションは2種類の油(トコフェロール及びスクワレン)並びに乳化剤としてTween80を含むPBSから成る。このエマルションは5%のスクワレン、5%のトコフェロール、0.4%のTween80を含んで成り、そして180nmの平均粒径を有する(WO95/17210参照)。
【0112】
Smith Kline Beecham Biologicals で実施した実験は、3D−MPL/QS21に対するこのO/Wエマルションの付加がその免疫刺激特性を更に強めることを実証した。
【0113】
油/水エマルションの調製(2倍濃縮物)
Tween80をリン酸緩衝食塩水(PBS)に溶かし、PBS中の2%の溶液にした。100mlの2倍濃縮エマルションを供するため、5gのDLアルファトコフェロール及び5mlのスクワレンをボルテックスにかけてよく混合する。90mlのPBS/Tween溶液を加え、そしてよく混合する。得られるエマルションをシリンジに通し、そして最後にM110Sマイクロ流動装置を用いてマイクロ流動化した。得られる油滴は約180nmのサイズを有していた。
【0114】
水中油製剤の調製
実施例1又は2に従って調製した抗原(5μg)を10倍濃縮PBS pH6.8及びH2 Oに希釈し、そしてSB62,3D−MPL(5μg),QS21(5μg)及び保存剤としての50μg/mlのチオメルサールを5分間隔で順々に添加した。エマルションの容量は総容量の50%に相当させた(100μlの用量のために50μl)。
【0115】
インキュベーションは全て撹拌しながら室温で実施した。
【0116】
げっ歯動物でのTat及びNef−Tatの免疫原性
Tat及びNefTatによる免疫を経て誘導される免疫応答の特性決定を実施した。アイソタイププロフィール及び細胞媒介免疫(CM1)についての情報を得るため、マウスで2通りの免疫実験を実施した。第一の実験では、マウスに2回、2週間あけて酸化又は還元型のTat又はNefTatそれぞれで肉趾に免疫を施した。抗原をスクワレン、Tween80(商標)(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、QS21,3D−MPL及びα−トコフェロールを含んで成る水中油エマルションに配合し、そしてコントロールグループにアジュバントのみを与えた。最後の免疫の2週間後、血清を獲得し、そして抗体力価及びアイソタイプの決定のためにTat特異的ELISA(コーティングのために還元Tat使用)にかけた(図6a)。抗体力価は酸化型Tatを受容したマウスにおいて最高であった。一般に、酸化型分子は還元型よりも高い抗体力価を誘導し、そしてTat単独はNefTatよりも高い抗体力価を誘導した。この観察は第二の実験で確認された。最も興味深いことには、Tat特異的抗体のアイソタイププロフィールが免疫のために利用した抗原に依存して相違した。TatのみはバランスのとれたIgG1及びIgG2aプロフィールを誘引し、NefTatははるかに強いTH2片寄りを誘導した(図6b)。これも第二の実験で確認された。
【0117】
第二のマウス実験では、動物に還元型の分子のみ、又はアジュバントのみを与えた。血清学分析の他(上記参照)、リンパ節細胞からのリンパ増殖応答を評価した。Tat又はNefTatによるin vitroでのかかる細胞の再刺激の後、3 H−チミジン組込みを4日間の培養の後に測定した。刺激指数としての結果の紹介は、抗体を受容したマウスの双方のグループにおいて非常に強い応答が誘導されたことを示す(図7)。
【0118】
まとめると、マウス研究はTat及びNef−Tatが極めて免疫原性の候補ワクチン抗原であることを示唆する。2種類の分子に対して特異的な応答は50%以上のIgG1を有する高い抗体応答を特徴とする。更に、強力なCMI応答(リンパ増殖により測定)が観察された。
【0119】
7.Tat及びNef−Tatタンパク質の機能特性
酸化型又は還元型のTat及びNefTat分子をヒトT細胞系に結合するその能力について調べた。更に、かかる細胞系の増殖に対する作用を評価した。ELISAプレートに一夜、様々な濃度のTat及びNefTatタンパク質、II型ヘルペス単純ウィルス由来の無関係gD、又はバッファーコントロールのみをコーティングした。コーティング溶液の除去の後、HUT−78細胞をウェルに加えた。2時間のインキュベーション後、ウェルを洗浄し、そしてウェルの底に対する細胞の結合を顕微鏡で評価した。定量手段として、細胞をトルイジンブルーで染色し、SDSにより溶解し、そして上清液中のトルイジンブルー濃度をELISAプレートリーダーで測定した。それらの結果は、4種類のタンパク質全て、即ち、酸化型又は還元型のTat及びNefTatが細胞のELISAプレートに対する結合を媒介することを示唆した(図8)。無関係タンパク質(データーは示さず)及びバッファーは細胞を固定しなかった。このことは、組換発現Tat含有タンパク質がヒトT細胞系に特異的に結合することを示唆した。
【0120】
第二の実験において、HUT−78細胞をタンパク質と16時間接触させたままにした。インキュベーション期間の終了時に、細胞を〔3 H〕−チミジンでラベルし、そして組込み速度を細胞増殖の尺度として測定した。このアッセイに含ませた4種のタンパク質全てが放射活性組込みの消失の判定に従い、細胞増殖を阻害した(図9)。バッファーコントロールはこの効果を媒介しなかった。これらの結果は、組換Tat含有タンパク質がヒトT細胞系の増殖を阻害できることを示した。
【0121】
まとめると、Tat及びNefTatタンパク質の機能特性決定は、これらのタンパク質がヒトT細胞系に結合できることを示した。更に、これらのタンパク質はかかる細胞系の増殖を阻害できる。
【図1】

【図2−1】

【図2−2】

【図2−3】

【図2−4】

【図2−5】

【図2−6】

【図2−7】

【図2−8】

【図3】

【図6A】

【図6B】

【図7】

【図8】

【図9】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質であって
(a)(i)融合パートナーもしくは(ii)HIV Nefタンパク質もしくはその誘導体のいずれかに連結されたHIV Tatタンパク質もしくはその誘導体;又は
(b)(i)融合パートナーもしくは(ii)HIV Tatタンパク質もしくはその誘導体のいずれかに連結されたHIV Nefタンパク質もしくはその誘導体;又は
(c)HIV Tatタンパク質もしくはその誘導体及び融合パートナーに連結されたHIV Nefタンパク質もしくはその誘導体;
を含んで成るタンパク質。
【請求項2】
Tat−Nef融合タンパク質又はその誘導体である、請求項1記載のタンパク質。
【請求項3】
Nef−Tat融合タンパク質又はその誘導体である、請求項1記載のタンパク質。
【請求項4】
前記Tatタンパク質の誘導体が突然変異Tatタンパク質である、請求項1記載のタンパク質。
【請求項5】
前記Nefタンパク質の誘導体が突然変異Nefタンパク質である、請求項1記載のタンパク質。
【請求項6】
前記融合パートナーがリポタンパク質又はその誘導体である、請求項1〜5のいずれか1項記載のタンパク質。
【請求項7】
前記リポタンパク質がヘモフィルス・インフレンザ(Haemophilus Influenza )Bのタンパク質D又はその誘導体である、請求項6記載のタンパク質。
【請求項8】
前記融合パートナーがヘモフィルス・インフレンザBのタンパク質DのN末端由来の100〜130個のアミノ酸を含んで成る、請求項7記載のタンパク質。
【請求項9】
前記Tatタンパク質が全長Tatタンパク質である、請求項1〜8のいずれか1項記載のタンパク質。
【請求項10】
前記Nefタンパク質が全長Nefタンパク質である、請求項1〜8のいずれか1項記載のタンパク質。
【請求項11】
前記Tatタンパク質がHIV Nefタンパク質及び融合パートナーに融合されている、請求項1〜10のいずれか1項記載のタンパク質。
【請求項12】
前記タンパク質がヒスチジンテールを有する、請求項1〜11のいずれか1項記載のタンパク質。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項記載のタンパク質をコードする核酸。
【請求項14】
請求項13記載の核酸で形質転換された宿主。
【請求項15】
前記宿主がピチア・パストリス(Pichia pastoris )又はE.コリ(E. coli )のいずれかである、請求項14記載の宿主。
【請求項16】
医薬的に許容される賦形剤との混合における、請求項1〜12のいずれか1項記載のタンパク質を含んで成るワクチン。
【請求項17】
アジュバントを更に含んで成る、請求項16記載のワクチン。
【請求項18】
前記アジュバントがTH1誘導アジュバントである、請求項17記載のワクチン。
【請求項19】
アジュバントがモノホスホリル脂質A又はその誘導体、例えば3デ−O−アシル化モノホスホリル脂質Aを含んで成る、請求項17又は18記載のワクチン。
【請求項20】
サポニンアジュバントを更に含んで成る、請求項16〜19のいずれか1項記載のワクチン。
【請求項21】
請求項1〜12のいずれか1項記載のタンパク質を製造する方法であって、宿主を前記タンパク質をコードする核酸で形質転換し、前記タンパク質を発現させ、そして当該タンパク質を回収する工程を含んで成る方法。
【請求項22】
前記宿主がE.コリ又はピチア・パストリスである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
請求項1〜12のいずれか1項記載のタンパク質を医薬的に許容される希釈剤と混合することを含んで成る、請求項16〜20のいずれか1項記載のワクチンの製造方法。
【請求項24】
(i)HIV Nefタンパク質もしくはその誘導体、又は(ii)HIV Tatタンパク質もしくはその誘導体をピチア・パストリス内で製造する方法であって、ピチア・パストリスを前記HIV Nefタンパク質もしくはその誘導体又はHIV Tatタンパク質もしくはその誘導体をコードするDNAで形質転換し、前記タンパク質を発現させ、そしてこのタンパク質を回収する工程を含んで成る方法。

【公開番号】特開2009−213492(P2009−213492A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155916(P2009−155916)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【分割の表示】特願2000−513953(P2000−513953)の分割
【原出願日】平成10年9月17日(1998.9.17)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】