HIV感染の予防および治療のためのワクチン
本発明は、Gag、PolおよびNefのHIVポリペプチドならびにポリヌクレオチド融合体に関し、これらは免疫原性組成物およびワクチンに有用である。本発明は特に、Nefまたはその免疫原性断片、およびp17 Gagおよび/もしくはp24 Gagまたはその免疫原性断片を含んでなるポリペプチドに関し、ここでp17とp24の両方のGagが含まれている場合、それらの間には少なくとも1つのHIV抗原または免疫原性断片が存在する。該ポリペプチドはまた、PolもしくはRTまたはそれらの免疫原性断片を含むこともできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規HIVポリペプチド構築物、医薬におけるその使用、それらを含む医薬組成物およびその製造方法に関する。本発明はまた、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにも関する。具体的には、本発明は、HIV−1 NefおよびHIV−1 Gagまたはその断片を含む融合タンパク質、ならびにそれらをコードするポリヌクレオチドに関する。より具体的には、本発明は、HIV−1 Nef、HIV−1 PolおよびHIV−1 Gagタンパク質またはその断片を含む融合タンパク質ならびにそれらをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0002】
HIV−1は世界の主要な健康問題の一つであるとみなされている後天性免疫不全症候群(AIDS)の主な原因である。HIV感染の予防および/または治療のためのワクチンに対する必要性が存在する。
【背景技術】
【0003】
HIV−1はレトロウイルスファミリーのRNAウイルスである。HIVゲノムは少なくとも9個のタンパク質をコードし、これらは3つのクラス:主要な構造タンパク質Gag、PolおよびEnv、調節タンパク質TatおよびRev、ならびに補助タンパク質Vpu、Vpr、VifおよびNefに分類される。HIVゲノムは全てのレトロウイルスの5’LTR−gag−pol−env−LTR3’編成を示す。
【0004】
HIVエンベロープ糖タンパク質gp120は、宿主細胞への付着に用いられるウイルスタンパク質である。この付着は、CD4および2つのケモカイン受容体CCR−5またはCXCR−4の1つとして知られる、ヘルパーT細胞およびマクロファージの2種類の表面分子への結合により媒介される。gp120タンパク質はまず、より大きい前駆体分子(gp160)として発現され、次いで、翻訳後に切断されてgp120およびgp41になる。gp120タンパク質はgp41分子への連結によりビリオンの表面上に保持され、ウイルス膜中に挿入される。
【0005】
gp120タンパク質は中和抗体の主な標的であるが、不幸なことに、このタンパク質の最も免疫原性の高い領域(V3ループ)は、このタンパク質の最も可変性の高い部分でもある。従って、中和抗体を引き出すためのワクチン抗原としてのgp120(またはその前駆体gp160)の使用は、幅広く保護的なワクチンのための使用が制限されると考えられる。gp120タンパク質はまた、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)により認識されるエピトープをも含む。これらのエフェクター細胞はウイルス感染した細胞を排除することができ、従って、第2の主要な抗ウイルス免疫機構を構成する。中和抗体の標的領域とは対照的に、いくつかのCTLエピトープは異なるHIV株間で比較的保存されているようである。このことから、gp120およびgp160は、細胞媒介性免疫応答(特に、CTL)を引き出すのを助けるワクチンでは有用な抗原性成分である。
【0006】
HIV−1の非エンベロープタンパク質としては、例えば、gagおよびpol遺伝子の産物などの内部構造タンパク質ならびにRev、Nef、VifおよびTatなどの他の非構造タンパク質が挙げられる(Greenら、New England J. Med, 324, 5, 308以下参照(1991)およびBryantら(Pizzo編), Pediatr. Infect. Dis. J., 11, 5, 390以下参照(1992))。
【0007】
HIV Nefは初期タンパク質であり、感染の初期に、かつ構造タンパク質の非存在下で発現される。
【0008】
Nef遺伝子は、初期補助HIVタンパク質をコードし、いくつかの活性を有することが示された。例えば、Nefタンパク質は細胞表面からのCD4(HIV受容体)、およびMHCクラスI分子のダウンレギュレーションを引き起こすことが知られているが、これらの機能の生物学的重要性が議論されている。さらに、NefはT細胞のシグナル経路と相互作用し、活性状態を誘導し、次いで、より効率的な遺伝子発現を促進することができる。いくつかのHIV単離体がこの領域に突然変異を有し、これらは機能的タンパク質をコードしないようにし、in vivoでのその複製および病因に重篤な障害が生じる。
【0009】
Gag遺伝子は、前駆体ポリタンパク質として翻訳され、プロテアーゼにより切断されて、マトリックスタンパク質(p17)、キャプシド(p24)、ヌクレオキャプシド(p9)、p6ならびに2つの間隔ペプチド、p2およびp1を含む産物を生じる。
【0010】
Gag遺伝子はp55とも呼ばれる55キロダルトン(kD)のGag前駆体タンパク質を生じ、スプライスされていないウイルスmRNAから発現される。翻訳中に、p55のN末端はミリストイル化され、細胞膜の細胞質面とのその結合が生じる。膜に結合したGagポリタンパク質は、感染細胞の表面からのウイルス粒子の発芽を誘発する他のウイルスタンパク質および細胞タンパク質と共に、2コピーのウイルスゲノムRNAを集合させる。発芽後、p55は、ウイルス成熟のプロセス中に、ウイルスにコードされるプロテアーゼ(pol遺伝子の産物)により、MA(マトリックス[p17]、CA(キャプシド[p24])、NC(ヌクレオキャプシド[p9])、およびp6と呼ばれる4つのより小さいタンパク質に切断される。
【0011】
3つの主要なGagタンパク質に加えて、全てのGag前駆体はいくつかの他の領域を含み、これらは切り出され、様々な大きさのペプチドとしてビリオン中に保持される。これらのタンパク質は異なる役割を有し、例えば、p2タンパク質は前記プロテアーゼの活性を調節する提案された役割を有し、タンパク質分解プロセスの正確なタイミングに寄与する。
【0012】
p17(MA)ポリペプチドはp55のN末端、すなわちミリストイル化された末端から誘導される。多くのMA分子はビリオンの脂質二重層の内部表面に付着されたままであり、粒子を安定化させる。MAのサブセットはビリオンの深い方の層の内部に集合させられ、ここでそれはウイルスDNAを核に送り届ける複合体の一部となる。MA上の核親和性シグナルは細胞の核の取り込み機構により認識されるため、これらのMA分子はウイルスゲノムの核輸送を容易にする。この現象により、HIVは非分裂細胞に感染することができ、これはレトロウイルスに関して普通でない特性である。
【0013】
p24(CA)タンパク質はウイルス粒子の円錐状コアを形成する。シクロフィリンAは、p55のp24領域と相互作用して、HIV粒子へのその取り込みを誘導することが証明されている。GagとシクロフィリンAとの相互作用は、シクロフィリンAによるこの相互作用の破壊がウイルスの複製を阻害するため、必須である。
【0014】
GagのNC領域は、いわゆるHIVのパッケージングシグナルの特異的な認識を担う。このパッケージングシグナルはウイルスRNAの5’末端の近くに位置する4つのステムループ構造からなり、これはHIV−1ビリオンへの異種RNAの取り込みを媒介するのに十分である。NCは2つのジンクフィンガーモチーフにより媒介される相互作用を介してパッケージングシグナルに結合する。NCはまた、逆転写を促進する。
【0015】
p6ポリペプチド領域は、p55 Gagと補助タンパク質Vprとの相互作用を媒介し、集合するビリオンへのVprの取り込みを誘導する。p6領域はまた、感染細胞からの発芽ビリオンの効率的な放出にとって必要であるいわゆる後期ドメインをも含む。
【0016】
Pol遺伝子は、感染初期においてウイルスにより必要とされる2つの活性を含む2つのタンパク質、RTおよびウイルスDNAの細胞DNAへの組込みにとって必要とされるインテグラーゼタンパク質をコードする。Polの主要産物はビリオンプロテアーゼにより切断されて、DNA合成にとって必要な活性を含むアミノ末端RTペプチド(RNAおよびDNA依存的DNAポリメラーゼ活性ならびにRNase H機能)ならびにカルボキシ末端インテグラーゼタンパク質を生じる。HIV RTは、完全長RT(p66)とカルボキシ末端RNase Hドメインを欠く切断産物(p51)とのヘテロ二量体である。
【0017】
RTはレトロウイルスゲノムによりコードされる最も高度に保存されたタンパク質の1つである。RTの2つの主要な活性はDNA PolおよびリボヌクレアーゼHである。RTのDNA Pol活性は、鋳型として互換的にRNAとDNAを使用し、全ての公知のDNAポリメラーゼと同様、de novoでDNA合成を開始することができず、プライマー(RNA)として働く予め存在する分子を必要とする。
【0018】
全てのRTタンパク質において固有のRNase H活性は、DNA合成が進行するにつれてRNAゲノムを除去する複製の初期に必須の役割を果たす。それは全てのRNA−DNAハイブリッド分子からRNAを選択的に分解する。構造的には、ポリメラーゼおよびリボHは、別々の、重複しないドメインを占有し、PolはPolのアミノ酸の3分の2をカバーする。
【0019】
p66触媒サブユニットは5つの異なるサブドメインに折り畳まれる。これらのアミノ末端23はRT活性を含む部分を有する。これらのカルボキシ末端はRNase Hドメインである。
【0020】
WO 03/025003は、HIV−1 p17/24 Gag、NefおよびRTをコードするDNA構築物を記載しており、ここで、このDNA配列をコドン最適化して、高度に発現されるヒト遺伝子に類似させることができる。これらの構築物はDNAワクチンにおいて有用である。
【0021】
複数のHIV抗原を含む融合タンパク質がHIVのためのワクチン候補として提唱されており、例えば、WO 99/16884に記載のようなNef−Tat融合体が挙げられる。しかしながら、融合タンパク質は製造するのが容易ではない;それらは天然のタンパク質と一致しないため、それらを発現させることが難しい場合がある。転写レベルで、またはさらに下流に困難が存在する場合もある。また、それらは製薬上許容し得る組成物に製剤化するのが容易ではない。注目すべきことに、複数の抗原を一緒に融合することを含むHIVワクチンに対する多くの手法は、ポリペプチド融合タンパク質よりもむしろDNAまたは生ベクター手法である。
【特許文献1】WO 03/025003
【特許文献2】WO 99/16884
【非特許文献1】Greenら、New England J. Med, 324, 5, 308 (1991)
【非特許文献2】Bryantら(Pizzo編), Pediatr. Infect. Dis. J., 11, 5, 390 (1992)
【発明の開示】
【0022】
発明の概要
本発明は、HIV感染およびAIDSの予防および治療のためのワクチンにおける使用のための新規構築物を提供する。
【0023】
一態様においては、本発明はNefまたはその免疫原性断片もしくは誘導体、ならびにp17 Gagおよび/もしくはp24 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体を含むポリペプチドであって、p17 Gagとp24 Gagの両方が存在する場合、それらの間には少なくとも1つのHIV抗原またはその免疫原性断片が存在する、前記ポリペプチドを提供する。
【0024】
本明細書に記載の本発明による構築物および組成物においては、Nefは完全長Nefであるのが好ましい。
【0025】
本発明による構築物においては、p17 Gagおよびp24 Gagは、それぞれ完全長のp17およびp24であるのが好ましい。
【0026】
一実施形態においては、前記ポリペプチドはp17およびp24の両方のGagまたはその免疫原性断片を含む。そのような構築物においては、p24 Gag成分とp17 Gag成分は、少なくとも1つのさらなるHIV抗原またはその免疫原性断片、例えば、Nefおよび/もしくはRTまたはその免疫原性断片もしくは誘導体により分離されている。
【0027】
あるいは、p17またはp24のGagを別々に提供する。かくして、本発明はまた、(i)Nefまたはその免疫原性断片もしくは誘導体およびp17 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体を含むポリペプチド、ならびに(ii)p24 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体;または(i)Nefまたはその免疫原性断片もしくは誘導体およびp24 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体を含むポリペプチド、ならびに(ii)p17 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体を含む組成物も提供する。
【0028】
別の実施形態においては、本発明によるポリペプチド構築物は、PolまたはPolの誘導体、例えば、RTまたはその免疫原性断片もしくは誘導体をさらに含む。本発明における使用にとって好適であるRTの特定の断片は、好ましくは、これらがカルボキシ末端RNase Hドメインを欠くように、RTをC末端で切断した断片である。カルボキシ末端RNase Hドメインを欠く1つのそのような断片は、本明細書に記載のp51断片である。
【0029】
好ましくは、本明細書に記載の融合タンパク質中のRTまたはその免疫原性断片はp66 RTまたはp51 RTである。
【0030】
本発明による融合タンパク質または組成物のRT成分は、必要に応じて、メチオニンを、リジン等の別の残基への突然変異により除去するような、位置592での突然変異、またはHXB2以外の株における等価な突然変異を含む。この突然変異の目的は、原核発現系における内部開始部位として働く部位を除去することである。
【0031】
RT成分はまた、またはあるいは、酵素活性(逆転写酵素)を除去するための突然変異を含む。かくして、K231がWの代わりに存在してもよい。
【0032】
p24およびRTを含む本発明による融合タンパク質においては、抗原を大腸菌において単独で発現させる場合、RTよりもp24の方がより良好な発現が観察されるため、p24は前記構築物中でRTの前に配置されるのが好ましい。
【0033】
本発明による好ましい構築物としては、以下のもの:
1. p24−RT−Nef−p17
2. p24−RT*−Nef−p17
3. p24−p51 RT−Nef−p17
4. p24−p51 RT*−Nef−p17
5. p17−p51 RT−Nef
6. p17−p51 RT*−Nef
7. Nef−p17
8. Nef−p17(リンカーあり)
9. p17−Nef
10. p17−Nef(リンカーあり)
(*はRTのメチオニン592のリジンへの突然変異を表す。)
が挙げられる。
【0034】
上記構築物に含まれるリンカーは、それが連結する2つの融合パートナー間での相互作用の可能性を減少させるための任意の短いアミノ酸配列であってよい。このリンカーは、例えば、4〜10アミノ酸の長さであってよい。例えば、それは実施例中、本明細書に記載のGSGGGP配列などの6アミノ酸の配列であってよい。
【0035】
本発明の別の態様においては、Nef、PolおよびGagから誘導される、少なくとも4つのHIV抗原またはその免疫原性断片を含むHIV抗原の融合タンパク質を提供する。Gagは、前記融合体において少なくとも1つの他の抗原により隔てられている2つの別個の成分として存在するのが好ましい。Nefは完全長Nefであるのが好ましい。Polは、p66またはp51RTであるのが好ましい。Gagは、p17およびp24 Gagであるのが好ましい。本発明のこの態様における前記融合体の抗原成分の他の好ましい特徴および特性は、本明細書に記載の通りである。
【0036】
本発明のこの態様の好ましい実施形態は、上記に既に列挙された4つの成分の融合体である:
1. p24−RT−Nef−p17
2. p24−RT*−Nef−p17
3. p24−p51 RT−Nef−p17
4. p24−p51 RT*−Nef−p17。
【0037】
本発明に含まれるHIV抗原に関する用語「から誘導される」または「誘導体」とは、該抗原がその天然の対応物と比較して限定された方法で変更されていることを意味する。これは、例えば、原核系における発現を改良するか、または望ましくない酵素活性などの望ましくない活性を除去することにより、該タンパク質の特性を変化させ得る点突然変異を含む。RTに関する本明細書に記載の点突然変異を、これらの事象を達成するために設計する。しかしながら、前記抗原は、それらがワクチンにおいて望ましい抗原特性を保持し、かくして、それらが天然の抗原に対する免疫応答を生じる能力を保持するように、該天然の抗原と十分に類似したままでなければならない。特定の誘導体がそのような免疫応答を生じるかどうかを、ELISA(抗体応答について)または細胞マーカーおよびサイトカインのための好適な染色を用いるフローサイトメトリー(細胞応答について)などの好適な免疫学的アッセイにより測定することができる。
【0038】
本発明によるHIV抗原のポリペプチド構築物を、大腸菌などの原核系などのin vitro系で発現させることができる。有利には、これらを従来の精製方法により精製することができる。
【0039】
本明細書に記載の融合体は、選択された発現系において発現される場合、可溶性である、すなわち、それらが該発現系からの粗抽出物の上清中に実質的な量で存在するのが好ましい。該粗抽出物中の融合タンパク質の存在を、SDSゲル上での泳動、クマシー染色および密度測定による好適なバンドのチェックなどの従来の手段により測定することができる。本発明による融合タンパク質は、実施例中、本明細書に記載の技術により測定した場合、好ましくは少なくとも50%可溶性、より好ましくは少なくとも70%可溶性、より好ましくは90%以上可溶性である。組換え発現されたタンパク質の可溶性を改善するための技術は公知であり、例えば、原核発現系においては、遺伝子発現を誘導する温度を低下させることにより、可溶性が改善する。
【0040】
本明細書に記載の融合タンパク質を精製することができる。具体的には、それらを、可溶性であるか、または顕著に可溶性であるまま精製することができる。
【0041】
本明細書に記載の免疫原性断片は、前記抗原の少なくとも1つのエピトープを含み、HIV抗原性を示し、また、例えば、他のHIV抗原に融合されるか、または担体上に存在する場合など、好適な構築物中に存在する場合、前記天然の抗原に対する免疫応答を生じる能力を有するであろう。典型的には、前記免疫原性断片は、HIV抗原に由来する、少なくとも20個、好ましくは50個、より好ましくは100個の連続したアミノ酸を含む。
【0042】
本発明は、さらなる態様において、本発明によるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0043】
本発明によるポリヌクレオチドを、ポリヌクレオチドワクチンとして用いることができる。このポリヌクレオチドを、プラスミドDNA、細菌およびウイルス発現系などの核酸発現系などの、当業者には公知の様々な送達系のいずれかの中に存在させることができる。Rolland, Crit. Rev. Therap. Drug Carrier Systems 15: 143-198, 1998およびそこに引用された参考文献により記載されたものなどの、いくつかの遺伝子送達技術が当分野でよく知られている。好適な核酸発現系は、患者における発現のための必須DNA配列(好適なプロモーターおよび終結シグナルなど)を含む。この発現系が、ウイルスまたは細菌などの組換え生微生物である場合、目的の遺伝子を、生の(live)組換えウイルスまたは細菌のゲノム中に挿入することができる。この生ベクターを用いる接種およびin vivoでの感染は、前記抗原のin vivoでの発現および免疫応答の誘導をもたらすであろう。この目的のために用いられるウイルスおよび細菌は、例えば、ポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、改変ポックスウイルス、例えば、改変ウイルスアンカラ(MVA))、アルファウイルス(シンドビスウイルス、セムリキフォレストウイルス、ベネズエラ馬脳炎ウイルス)、フラビウイルス(黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、日本脳炎ウイルス)、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ピコルナウイルス(ポリオウイルス、ライノウイルス)、ヘルペスウイルス(水痘帯状疱疹ウイルスなど)、麻疹ウイルス(例えば、麻疹)、リステリア菌、サルモネラ菌、シゲラ菌、ナイセリア菌、BCGである。これらのウイルスおよび細菌は毒性のものであってもよいし、または生ワクチンを取得するために様々な方法で弱毒化されたものであってもよい。そのような生ワクチンも本発明の一部を形成する。
【0044】
本発明による生ベクターとしての使用のための好ましい麻疹ベクターは、Schwartz株またはそれから誘導された株である。
【0045】
生ベクターとしての使用のための好ましいアデノウイルスは、Ad5もしくはAd35などの低い血清陽性率のヒトアデノウイルスか、またはサルアデノウイルスなどの非ヒト霊長類アデノウイルスなどの非ヒト起源のアデノウイルスである。そのような低い血清陽性率のヒトまたは類似のアデノウイルスは、集団中で60%未満、典型的には50%未満の血清陽性率を有するであろう。このベクターは複製欠損性であるのが好ましい。典型的には、これらのウイルスは、E1欠失を含み、E1遺伝子で形質転換された細胞株で増殖させることができる。好ましいサルアデノウイルスは、チンパンジーから単離されたウイルスである。特に、C68(Pan9としても知られる)(米国特許第6,083,716号を参照)ならびにPan5、6およびPan7(WO 03/046124)が本発明における使用にとって好ましい。これらのベクターを操作して、本発明によるポリペプチドが発現されるように、本発明による異種性ポリヌクレオチドを挿入することができる。そのような組換えアデノウイルスベクターの使用、製剤および製造はWO 03/046142に詳細に記載されている。
【0046】
かくして、本発明による好ましいワクチンのNef、p17およびp24 GagならびにRTを、所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの形態で提供することができる。
【0047】
本発明によるポリヌクレオチドを用いて、選択された発現系において、コードされたポリペプチドを発現させることができる。少なくとも1つのHIV抗原、例えば、RTを、ポリヌクレオチド中のコドン最適化された配列によりコードさせることができる。すなわち、この配列を、大腸菌などの選択された組換え発現系における発現のために最適化することができる。
【0048】
本発明の別の態様においては、好ましくは、好適な発現系、特に、大腸菌などの原核生物系における発現のためにコドン最適化された、p51 RTポリペプチドもしくはその誘導体またはそれをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0049】
p51 RTポリペプチドもしくはポリヌクレオチドを、単独で、または本発明によるポリペプチドもしくはポリヌクレオチド構築物と組合わせて用いることができる。かくして、本発明のさらなる態様においては、(i)NefまたはNefエピトープを含む断片ならびにp17 Gagおよび/もしくはp24 Gagを含むポリペプチドであって、p17およびp24の両方のGagが存在する場合、それらの間に少なくとも1つのHIV抗原または免疫原性断片が存在するポリペプチド、ならびに(ii)p51 RTポリペプチドを含む組成物を提供する。本発明はさらに、これらをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0050】
この実施形態に従えば、(i)を、例えば、
1. Nef−p17
2. Nef−p17(リンカーあり)
3. p17−Nef
4. p17−Nef(リンカーあり)
から選択することができる。
【0051】
好ましくは、Nefは完全長のNefである。好ましくは、p17は完全長のp17である。
【0052】
本発明によるポリペプチドおよびポリヌクレオチドを、他の抗原または他の抗原をコードするポリヌクレオチドと組合わせることができる。特に、これはHIVのenvタンパク質またはその断片もしくは誘導体を含んでもよい。envの好ましい形態はgp120、gp140およびgp160である。このenvは、例えば、R2として知られるHIV−1のクレードBエンベロープクローンに由来する、WO 00/07631に記載のエンベロープタンパク質、またはその断片もしくは誘導体であってよい。かくして、本発明はさらに、HIV envタンパク質またはその断片もしくは誘導体と共に、本発明によるポリペプチド群のいずれかを含む組成物またはポリペプチド組成物を提供する。同様に、本発明は、本発明によるポリペプチドもしくはポリペプチド群をコードするポリヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド群およびHIVのenvタンパク質またはその断片もしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドを含む組成物を提供する。
【0053】
本発明はさらに、本明細書に記載のポリペプチドを調製する方法であって、好適な発現系、特に、大腸菌などの原核生物系において前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現させること、および発現されたポリペプチドを回収することを含む前記方法を提供する。発現を低温、すなわち、37℃より低い温度で誘導して、前記ポリペプチドの可溶性を促進するのが好ましい。
【0054】
本発明はさらに、本明細書に記載のポリペプチドの精製方法であって、
i) 未精製ポリペプチドを含む組成物を用意すること;
ii) 該組成物を少なくとも2つのクロマトグラフィー工程に供すること;
iii)必要に応じて、該ポリペプチドをカルボキシアミド化すること;
iv) 製剤化に適したバッファー中に該タンパク質を提供するためにバッファー交換工程を行うこと、
を含む方法を提供する。
【0055】
カルボキシアミド化を、2つのクロマトグラフィー工程の間に行ってもよい。カルボキシアミド化を、ヨードアセトイミドを用いて行ってもよい。
【0056】
1つの例においては、本発明による方法は2つ以下のクロマトグラフィー工程を用いる。
【0057】
本発明はさらに、本発明によるポリペプチドおよびポリヌクレオチドと、製薬上許容し得るアジュバントまたは担体とを含む医薬組成物および免疫原性組成物およびワクチンを提供する。
【0058】
本発明によるワクチンを、HIVに対する予防的または治療的な免疫付与に用いることができる。
【0059】
本発明はさらに、HIVに対する予防的または治療的な免疫付与のためのワクチンの製造における、本明細書に記載のポリペプチドおよびポリペプチド組成物ならびにポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチド組成物の使用を提供する。
【0060】
本発明のワクチンは、免疫保護的もしくは免疫治療的な量のポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチド抗原を含み、これを従来の技術により調製することができる。
【0061】
ワクチンの調製は、New Trends and Developments in Vaccines, Vollerら(編), University Park Press, Baltimore, Maryland, U.S.A. 1978に一般的に記載されている。リポソーム内へのカプセル封入は、例えば、Fullertonの米国特許第4,235,877号に記載されている。巨大分子へのタンパク質の結合は、例えば、Likhiteの米国特許第4,372,945号およびArmorらの米国特許第4,474,757号により開示されている。
【0062】
ワクチン用量中のタンパク質の量を、典型的なワクチンにおいて、顕著な有害副作用を示すことなく免疫保護応答を誘導する量として選択する。そのような量は、どの特異的免疫原を用いるか、およびどのワクチン接種計画を選択するかに依存して変化するであろう。一般的には、各用量は1〜1000μgの各タンパク質、好ましくは2〜200μg、最も好ましくは4〜40μgのポリペプチド融合体を含むと予想される。特定のワクチンにとって最適な量を、被験体における抗体力価および他の免疫応答の観察を含む標準的な試験により確認することができる。初回のワクチン接種の後、被験体は約4週間以内に追加免疫を受けてもよく、続いて、2回目の追加免疫を受けてもよい。
【0063】
本発明のタンパク質を、本発明のワクチン製剤中でアジュバント化するのが好ましい。アジュバントは、「ワクチンの設計-サブユニットおよびアジュバント手法(Vaccine Design - the Subunit and Adjuvant Approach)」、PowellおよびNewman(編), Plenum Press, New York, 1995に一般的に記載されている。
【0064】
好適なアジュバントとしては、水酸化アルミニウムもしくはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩が挙げられるが、カルシウム、鉄もしくは亜鉛の塩であってもよく、またはアシル化されたチロシン、もしくはアシル化された糖、陽イオンもしくは陰イオン的に誘導体化された多糖、もしくはポリホスファゼンの不溶性懸濁液であってもよい。
【0065】
本発明の製剤においては、前記アジュバント組成物は優先的にTh1応答を誘導するのが好ましい。しかしながら、他の体液性応答などの他の応答も排除されないことが理解されるであろう。
【0066】
免疫応答を、抗原と、免疫系の細胞との相互作用を介して、該抗原に対して生じさせる。得られる免疫応答を、体液性免疫応答または細胞媒介性免疫応答の2つの極端なカテゴリー(通常は、それぞれ抗体および防御の細胞性エフェクター機構を特徴とする)に広く区別することができる。応答のこれらのカテゴリーは、Th1型応答(細胞媒介性応答)、およびTh2型免疫応答(体液性応答)と呼ばれてきた。
【0067】
極端なTh1型免疫応答は、抗原特異的な、ハプロタイプにより制限された細胞傷害性Tリンパ球、およびナチュラルキラー細胞応答の生成を特徴とする。マウスにおいては、Th1型応答は、IgG2aサブタイプの抗体の生成を特徴とすることが多いが、ヒトにおいては、これらはIgG1型抗体に対応する。Th2型免疫応答は、マウスのIgG1、IgA、およびIgMなどの広範囲の免疫グロブリンアイソタイプの生成を特徴とする。
【0068】
これらの2つの型の免疫応答の発達を助ける駆動力はサイトカインであり、いくつかの同定されたタンパク質メッセンジャーは免疫系の細胞を助けるように働き、Th1またはTh2応答のいずれかに対して結果として起こる免疫応答を制御すると考えられる。かくして、高レベルのTh1型サイトカインは、所与の抗原に対する細胞媒介性免疫応答を誘導しやすい傾向があるが、高レベルのTh2型サイトカインは該抗原に対する体液性免疫応答を誘導しやすい傾向がある。
【0069】
Th1型およびTh2型の免疫応答の区別が絶対的なものではないことを覚えておくことが重要である。実際には、個体は、主にTh1または主にTh2として表される免疫応答を支持するであろう。しかしながら、マウスCD4+T細胞クローンにおいてMosmannおよびCoffman (Mosmann, T.R.およびCoffman, R.L. (1989) TH1 and TH2 cells: different patterns of lymphokine secretion lead to different functional properties., Annual Review of Immunology, 7, p145-173)により記載されたという点で、サイトカインのファミリーであると考えるのが都合が良いことが多い。通常は、Th1型応答は、Tリンパ球によるINF−γおよびIL−2サイトカインの産生と関連する。他のサイトカインは、IL−12などのT細胞により産生されないTh1型免疫応答の誘導と直接関連することが多い。対照的に、Th2型応答は、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10および腫瘍壊死因子−β(TNF−β)の分泌と関連する。
【0070】
特定のワクチンアジュバントが、Th1またはTh2型のサイトカイン応答の刺激にとって特に好適であることが知られている。伝統的には、ワクチン接種または感染後の免疫応答のTh1:Th2の平衡の最良の指示因子としては、抗原による再刺激後のin vitroでのTリンパ球によるTh1もしくはTh2サイトカインの産生の直接的測定、および/または抗原特異的抗体応答のIgG1:IgG2a比の測定が挙げられる。
【0071】
かくして、Th1型アジュバントは、単離されたT細胞集団を刺激して、in vitroで抗原により再刺激された場合、高レベルのTh1型サイトカインを産生し、かつTh1型アイソタイプと関連する抗原特異的免疫グロブリン応答を誘導するものである。
【0072】
本発明における使用にとって好適なアジュバントを製造するために製剤化することができる好ましいTh1型免疫刺激因子としては、限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。モノホスホリルリピドA、特に、3−デ−O−アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL)が、本発明における使用にとって好ましいTh1型免疫刺激因子である。3D−MPLはRibi Immunochem, Montanaにより製造されるよく知られたアジュバントである。化学的には、それは3−デ−O−アシル化モノホスホリルリピドAと、4、5、または6アシル化鎖との混合物として供給されることが多い。それを、GB2122204Bに教示された方法により精製および調製することができ、この参考文献はジホスホリルリピドA、およびその3−O−デアシル化変種の調製も開示している。他の精製されたリポ多糖および合成リポ多糖が記載されている(米国特許第6,005,099号およびEP 0 729 473 B1;Hilgersら、1986, Int.Arch.Allergy.Immunol., 79(4):392-6;Hilgersら、1987, Immunology, 60(1):141-6;およびEP 0 549 074 B1)。3D−MPLの好ましい形態は、直径0.2μm未満の小さい粒径を有する粒子状製剤の形態にあり、その製造方法はEP 0 689 454に開示されている。
【0073】
サポニンも、本発明に従う好ましいTh1免疫刺激因子である。サポニンはよく知られたアジュバントであり、Lacaille-Dubois, MおよびWagner H (1996. A review of the biological and pharmacological activities of saponins., Phytomedicine vol 2 pp 363-386)に教示されている。例えば、Quil A(南アメリカの樹木キラヤ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮に由来する)、およびその画分が、米国特許第5,057,540号および”Saponins as vaccine adjuvants.” Kensil, C.R., Crit Rev Ther Drug Carrier Syst, 1996, 12(1-2):1-55;ならびにEP 0 362 279 B1に記載されている。溶血性サポニンQS21およびQS17(Quil AのHPLC精製された画分)が強力な全身性アジュバントとして記載されており、その製造方法は米国特許第5,057,540号およびEP 0 362 279 B1に開示されている。また、これらの参考文献には、全身性ワクチンのための強力なアジュバントとして働くQS7(Quil Aの非溶血性画分)の使用も記載されている。QS21の使用は、Kensilら(1991. J. Immunology vol 146, 431-437)にさらに記載されている。QS21とポリソルベートまたはシクロデキストリンとの組合せも公知である(WO 99/10008)。QS21およびQS7などのQuil Aの画分を含む粒子状アジュバント系はWO 96/33739およびWO 96/11711に記載されている。1つのそのような系はIscornとして公知であり、1種以上のサポニンを含んでもよい。
【0074】
別の好ましい免疫刺激因子は、非メチル化CpGジヌクレオチド(「CpG」)を含む免疫刺激性オリゴヌクレオチドである。CpGはDNA中に存在するシトシン−グアノシンジヌクレオチドモチーフの省略形である。CpGは、全身経路および粘膜経路の両方により投与される場合のアジュバントとして当分野で公知である(WO 96/02555、EP 468520、Davisら、J.Immunol, 1998, 160(2):870-876; McCluskieおよびDavis, J.Immunol., 1998, 161(9):4463-6)。歴史的には、BCGのDNA画分が抗腫瘍作用を示し得ることが観察された。さらなる研究において、BCG遺伝子配列から誘導された合成オリゴヌクレオチドが、免疫刺激作用を誘導することができる(in vitroおよびin vivoの両方において)ことが示された。これらの研究の著者らは、中央のCGモチーフなどの、特定のパリンドローム配列がこの活性を有すると結論付けた。免疫刺激におけるCGモチーフの中心的な役割はKrieg, Nature 374, p546 1995による刊行物において後に解明された。詳細な分析により、CGモチーフが特定の配列の前後関係の中になければならず、そのような配列は細菌のDNAにおいて一般的であるが、脊椎動物のDNAにおいては稀であることが示された。免疫刺激性配列は多い:プリン、プリン、C、G、ピリミジン、ピリミジン;ここで、CGモチーフはメチル化されていないが、他の非メチル化CpG配列も免疫刺激性であることが知られており、本発明において用いることができる。
【0075】
6つのヌクレオチドの特定の組合せ中に、パリンドローム配列が存在する。これらのモチーフのいくつか、1つのモチーフの繰り返しまたは異なるモチーフの組合せのいずれかが、同じオリゴヌクレオチド中に存在してもよい。これらの免疫刺激性配列を含む1つ以上のオリゴヌクレオチドの存在は、ナチュラルキラー細胞(インターフェロンγを産生し、細胞溶解活性を有する)およびマクロファージ(Wooldrigeら、Vol 89 (no. 8), 1977)などの様々な免疫サブセットを活性化することができる。この共通配列を含まない他の非メチル化CpGを含む配列も、現在では免疫刺激性であることが示されている。
【0076】
ワクチン中で製剤化する場合、一般的には、CpGを、遊離の抗原と共に遊離の溶液中で投与するか(WO 96/02555;McCluskieおよびDavis,上掲)、または抗原に共有結合させるか(WO 98/16247)、または水酸化アルミニウムなどの担体と共に製剤化する((肝炎表面抗原) Davisら、上掲; Brazolot-Millanら、Proc.Natl.Acad.Sci., USA, 1998, 95(26), 15553-8)。
【0077】
上記のような免疫刺激因子を、例えば、リポソーム、水中油型乳濁液、および/またはアルミニウム塩(水酸化アルミニウムなど)などの金属塩などの担体と一緒に製剤化することができる。例えば、3D−MPLを、水酸化アルミニウム(EP 0 689 454)または水中油型乳濁液(WO 95/17210)と共に製剤化することができる;有利には、QS21を、コレステロールを含有するリポソーム(WO 96/33739)、水中油型乳濁液(WO 95/17210)またはミョウバン(WO 98/15287)と共に製剤化することができる;CpGを、ミョウバンと共に(Davisら、上掲; Brazolot-Millan、上掲)または他の陽イオン性担体と共に製剤化することができる。
【0078】
免疫刺激因子の組合せ、特に、モノホスホリルリピドAとサポニン誘導体の組合せ(WO 94/00153;WO 95/17210;WO 96/33739;WO 98/56414;WO 99/12565;WO 99/11241)、より具体的には、WO 94/00153に開示されたようなQS21と3D−MPLの組合せも好ましい。あるいは、CpGとQS21などのサポニンの組合せも、本発明における使用のための強力なアジュバントを形成する。あるいは、サポニンをリポソーム中で、またはIscorn中で製剤化し、免疫刺激性オリゴヌクレオチドと組合わせることもできる。
【0079】
かくして、好適なアジュバント系としては、例えば、モノホスホリルリピドA、好ましくは3D−MPLと、アルミニウム塩との組合せが挙げられる。増強された系は、モノホスホリルリピドAとサポニン誘導体の組合せ、特に、WO 94/00153に開示されたようなQS21と3D−MPLの組合せ、またはWO 96/33739に開示されたようなコレステロールを含有するリポソーム(DQ)中でQS21をクエンチする低反応性組成物を含む。この組合せはさらに、免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含んでもよい。
【0080】
水中油型乳濁液中にQS21、3D−MPLおよびトコフェロールを含む特に強力なアジュバント製剤がWO 95/17210に記載されており、本発明における使用にとって別の好ましい製剤である。
【0081】
別の好ましい製剤は、CpGオリゴヌクレオチドのみ、またはCpGオリゴヌクレオチドとアルミニウム塩とを含む。
【0082】
本発明のさらなる態様においては、本発明によるポリペプチドを、好適なアジュバントと混合することを含む、本明細書に記載のワクチン製剤の製造方法を提供する。
【0083】
本発明による製剤における使用にとって特に好ましいアジュバントの組合せは以下の通りである:
i) 3D−MPL+QS21(リポソーム中)
ii) ミョウバン+3D−MPL
iii) ミョウバン+QS21(リポソーム中)+3D−MPL
iv) ミョウバン+CpG
v) 3D−MPL+QS21+水中油型乳濁液
vi) CpG。
【0084】
医薬組成物の投与は、例えば、同じポリペプチドを含む組成物の反復用量として、または異種性の「初回−追加」ワクチン接種計画中での、1もしくは2回以上の個々の用量の形態を取ってもよい。異種性の初回−追加計画は、初回および追加において異なる形態のワクチンの投与を使用し、その各々はそれ自身、2回以上の投与を含んでもよい。初回用組成物および追加用組成物は、一般的には少なくとも1種の抗原を有するが、それは同一の形態の抗原である必要はなく、同じ抗原の異なる形態であってもよい。
【0085】
本発明による初回−追加免疫を、タンパク質およびDNAに基づく製剤の組合せを用いて実施することができる。そのような戦略は、広範な免疫応答を誘導するのに有効であると考えられる。アジュバント化されたタンパク質ワクチンは、主に抗体およびTヘルパー免疫応答を誘導するが、プラスミドまたは生ベクターとしてのDNAの送達は強力な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を誘導する。かくして、タンパク質およびDNAワクチン接種の組合せは幅広い免疫応答を提供するであろう。中和抗体およびCTLは両方ともHIVに対する免疫防御にとって重要であると考えられるため、これはHIVとの関連において特に適切である。
【0086】
本発明に従えば、ワクチン接種のためのスケジュールは、ポリペプチド抗原および該ポリペプチドをコードするDNAの連続的(「初回−追加」)または同時的な投与を含んでもよい。このDNAを、プラスミドDNAなどの裸のDNAとして、または、例えば、ポックスウイルスベクター、アデノウイルスベクター、麻疹ウイルスベクターもしくは任意の他の好適な生ベクターなどの組換え生ベクターの形態で送達することができる。タンパク質抗原を、1回もしくは数回注入した後、1回以上、DNAを投与してもよいし、またはDNAを最初に1回以上の投与に用いた後、1回以上のタンパク質による免疫付与に用いてもよい。
【0087】
本発明による初回−追加免疫の特定例は、改変ポックスウイルスベクター、例えば、改変ウイルスアンカラ(MVA)もしくはアルファウイルス、例えば、ベネズエラ馬脳炎ウイルス、またはアデノウイルスベクター、または麻疹ウイルスベクターなどの組換え生ベクターの形態のDNAを用いて初回免疫した後、タンパク質、好ましくはアジュバント化されたタンパク質を用いて追加免疫することを含む。
【0088】
かくして、本発明はさらに、以下のもの:
a)Nefまたはその免疫原性断片もしくは誘導体ならびにp17および/もしくはp24 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体を含むポリペプチドであって、p17およびp24の両方のGagが存在する場合、それらの間に少なくとも1つのHIV抗原またはその免疫原性断片もしくは誘導体が存在するポリペプチドと、製薬上許容し得る賦形剤とを含む組成物;ならびに
b)1つ以上のNefおよびGagをコードするポリヌクレオチドまたはa)のポリペプチド中に存在するNefもしくはGagエピトープを含むNefもしくはGagの免疫原性断片もしくは誘導体と、製薬上許容し得る賦形剤とを含む組成物、
を含む医薬キットを提供する。
【0089】
好ましくは、a)のポリペプチドは、RTまたはその免疫原性断片もしくは誘導体、例えば、p51RTなどをさらに含む。
【0090】
代替的な実施形態においては、前記医薬キットは、
a)Nefまたはその免疫原性断片もしくは誘導体ならびにp17および/もしくはp24 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、p17およびp24の両方のGagが存在する場合、それらの間に少なくとも1つのHIV抗原またはその免疫原性断片もしくは誘導体が存在するポリヌクレオチドと、製薬上許容し得る賦形剤とを含む組成物;ならびに
b)1つ以上のNefおよびGagを含むポリペプチドまたはa)のポリペプチド中に存在するNefもしくはGagエピトープを含むNefもしくはGagの免疫原性断片もしくは誘導体と、製薬上許容し得る賦形剤とを含む組成物、
を含む。
【0091】
好ましくは、a)のポリヌクレオチドは、RTまたはその免疫原性断片もしくは誘導体、例えば、p51RTなどをさらに含むポリペプチドをコードする。
【0092】
本発明による初回/追加キットにおける使用にとって好ましいポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、本明細書に記載のポリペプチドおよびポリヌクレオチドである。かくして、タンパク質/DNA型の初回−追加手法のタンパク質成分は、本明細書に記載の好ましい融合タンパク質のいずれかであってよい。同様に、DNA成分は好ましいタンパク質のいずれかをコードするポリヌクレオチドであってよい。
【0093】
かくして、例えば、本明細書に記載のp24-RT-Nef-p17、p24-RT*-Nef-p17、p24-p51RT-Nef-p17、p24-p51RT*-Nef-p17、p17-p51RT-Nefもしくはp17-p51RT*-Nef融合体またはp17−Nef融合体のいずれかを、初回用組成物が融合タンパク質を含み、追加用組成物が該融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むか、または初回用組成物が該ポリヌクレオチドを含み、追加用組成物が該融合タンパク質を含む、初回−追加キット中で提供することができる。
【0094】
初回用組成物および追加用組成物は両方とも、2回以上の用量中で送達することができる。さらに、最初の初回および追加用量に、例えば、DNAプラスミドによる初回/タンパク質による追加/さらなるDNAプラスミド用量/さらなるタンパク質用量をもたらすように変化させてもよいさらなる用量を続けることができる。
【0095】
コドン最適化とは、ポリヌクレオチド配列を、所望の発現系、例えば、大腸菌などの原核生物系における遺伝子のコドン使用頻度に類似するように最適化することを意味する。特に、該配列におけるコドン使用頻度を、高度に発現される大腸菌遺伝子のものと類似するように最適化する。
【0096】
本発明による組換え系における発現のためのコドン最適化の目的は2つである:組換え産物の発現レベルを改善すること、および発現産物をより均質にさせること(より均質な発現パターンを取得すること)である。改善された均質性とは、切断型などの無関係の発現産物があまり存在しないことを意味する。大腸菌発現へのコドン使用頻度の利用により、推定「フレームシフト」配列ならびに早期終結および/または内部開始部位を排除することもできる。
【0097】
DNAコードは4文字(A、T、CおよびG)を有し、これらを用いて、生物の遺伝子中にコードされるタンパク質中のアミノ酸を表す、3文字の「コドン」を綴る。DNA分子に沿ったコドンの直線状配列を、これらの遺伝子によりコードされるタンパク質中のアミノ酸の直線状配列に翻訳する。このコードは非常に縮重性が高く、61種類のコドンが20種類の天然アミノ酸をコードし、3種類のコドンは「停止」シグナルを表す。かくして、多くのアミノ酸は2種類以上のコドンによりコードされ、実際、いくつかのものは4種類以上の異なるコドンによりコードされる。
【0098】
所与のアミノ酸をコードさせるのに2種類以上のコドンが利用可能である場合、生物のコドン使用パターンが非常に非無作為的であることが観察された。異なる種は、そのコドン選択において異なる偏りを示し、さらに、コドンの使用頻度は高レベルおよび低レベルで発現される遺伝子間で、1つの種において顕著に異なっていてもよい。この偏りは、ウイルス、植物、細菌および哺乳動物細胞中で異なっており、いくつかの種は他のものよりも無作為なコドン選択から離れてより強い偏りを示す。例えば、ヒトおよび他の哺乳動物は特定の細菌またはウイルスよりもあまり強く偏っていない。これらの理由から、大腸菌中で発現される哺乳動物ウイルス由来のウイルス遺伝子、または哺乳動物細胞中で発現される外来遺伝子もしくは組換え遺伝子が、効率的な発現のためには不適当なコドンの分布を有するかなり大きな可能性が存在する。コドンのクラスターの異種DNA配列中での存在、または発現を起こさせる宿主中で稀に観察されるコドンが多く含まれることは、その宿主における低い異種性発現レベルを予測させる。
【0099】
かくして、本発明のポリヌクレオチドにおいては、コドン使用パターンを、典型的なヒト免疫不全ウイルスのものから変化させて、標的生物、例えば、大腸菌のコドンの偏りにより近づけることができる。
【0100】
コドン最適化にとって有用な様々な公共的に利用可能なプログラムが存在し、例えば、「CalcGene」(HaleおよびThompson, Protein Expression and Purification 12: 185-189 (1998))が挙げられる。
【実施例1】
【0101】
HIV−1 p24−RT−Nef−p17融合体F4およびコドン最適化されたF4(co)の構築および発現
1.コドン最適化されていないF4
HIV−1 gag p24(キャプシドタンパク質)およびp17(マトリックスタンパク質)、逆転写酵素およびNefタンパク質を、バクテリオファージT7プロモーター(pET発現系)の制御下で、大腸菌B834株(B834(DE3)はBL21(DE3)のメチオニン要求性の親株である)で発現させた。
【0102】
これらを、4つのタンパク質の完全な配列を含む1個の融合タンパク質として発現させた。成熟p24コード配列はHIV−1 BH10分子クローンに由来し、成熟p17配列およびRT遺伝子はHXB2に由来し、かつNef遺伝子はBRU単離体に由来する。
【0103】
誘導後、組換え細胞は総タンパク質の10%の量の顕著なレベルのp24−RT−Nef−p17融合体を発現した。
【0104】
細胞を22℃で増殖および誘導した場合、p24−RT−Nef−p17融合タンパク質は主に細菌ライセートの可溶性画分に確認された(凍結/解凍の後でも)。30℃で増殖させた場合、約30%の組換えタンパク質が不溶性画分に存在した。
【0105】
融合タンパク質p24−RT−Nef−p17は1136個のアミノ酸からなり、約129kDaの分子量を有する。完全長タンパク質はSDSゲル上で約130kDaに移動する。このタンパク質は、そのアミノ酸配列に基づいて7.96の理論等電点(pI)を有し、これは2D−ゲル電気泳動により確認された。
【0106】
組換えプラスミドの詳細
名称: pRIT15436(または研究室における名称pET28b/p24−RT−Nef−p17)
宿主ベクター:pET28b
レプリコン:colE1
選択: カナマイシン
プロモーター:T7
インサート:p24−RT−Nef−p17融合遺伝子。
【0107】
組換えタンパク質の詳細
p24−RT−Nef−p17融合タンパク質:1136アミノ酸
N末端−p24:232a.a.−ヒンジ:2a.a.−RT:562a.a.−ヒンジ:2a.a.−Nef:206a.a.−P17:132a.a.−C末端
【0108】
ヌクレオチドおよびアミノ酸配列:
ヌクレオチド配列
【表1】
[配列番号1]
p24配列を太字で示す。
Nef配列を下線付きで示す。
囲み:遺伝子構築により導入されたヌクレオチド。
【0109】
アミノ酸配列
【表2】
[配列番号2]
P24配列:アミノ酸1−232(太字)
RT配列:アミノ酸235−795
Nef配列:アミノ酸798−1002
P17配列:アミノ酸1005−1136
囲み:遺伝子構築により導入されたアミノ酸
K(リジン):トリプトファン(W)の代わり。酵素活性を除去するために導入された突然変異。
【0110】
組換えタンパク質の発現:
pETプラスミドにおいては、標的遺伝子(p24−RT−Nef−p17)は強力なバクテリオファージT7プロモーターの制御下にある。このプロモーターは大腸菌RNAポリメラーゼにより認識されず、宿主細胞中のT7 RNAポリメラーゼの起源に依存する。B834(DE3)宿主細胞は、lacUV5の制御下のT7 RNAポリメラーゼ遺伝子の染色体コピーを含み、その発現は細菌培養物へのIPTGの添加により誘導される。
【0111】
前培養物を、振とうフラスコ中、37℃で中間対数増殖期(A620:0.6)まで増殖させた後、4℃で一晩保存した(静止期培養を避けるため)。培養物を、1%グルコースおよび50μg/mlカナマイシンを添加したLBT培地中で増殖させた。増殖培地へのグルコースの添加は、基底状態での組換えタンパク質発現を減少させる利点を有する(lacUV5プロモーターのcAMP媒介性抑制を回避する)。
【0112】
4℃で一晩保存した10mlの培養物を用いて、カナマイシンを含む200mlのLBT培地(グルコースを含まない)に植菌した。培養物を30℃および22℃で増殖させ、O.D.620が0.6に達した時、IPTGを添加した(最終濃度1mM)。培養物をさらに3、5および18時間(一晩)インキュベートした。サンプルを、誘導前と、誘導の3、5および18時間後に回収した。
【0113】
抽出物の調製は以下の通りであった:
細胞ペレットをブレーキングバッファー*中に懸濁し(10の理論的O.D.で)、フレンチプレス(20,000psiまたは1250バール)に4回の通すことにより破壊した。粗抽出物(T)を20,000gで30分間遠心分離して、可溶性画分(S)と不溶性画分(P)とを分離した。
【0114】
*ブレーキングバッファー:50mM Tris−HCl pH8.0、1mM EDTA、1mM DTT+プロテアーゼインヒビターカクテル(Complete/Boerhinger)。
【0115】
SDS−PAGEおよびウェスタンブロット分析:
不溶性ペレット(P)、上清(S)および粗抽出物(T)に対応する画分を、10%の還元的SDS−PAGEで泳動した。p24−RT−Nef−p17組換え体を、クマシーブルー染色により、およびウェスタンブロット(WB)で検出した。
【0116】
クマシー染色:p24−RT−Nef−p17タンパク質は以下のように現れる:
130kDa付近(算出されたMWに適合する)の1本のバンド
MW理論値:128,970ダルトン
MW見かけ:130kDa
ウェスタンブロット分析:
試薬= ・RT(p66/p51)に対するモノクローナル抗体
ABI(Advanced Biotechnologies)から購入
希釈率:1/5000
・アルカリホスファターゼコンジュゲート抗マウス抗体
希釈率:1/7500
発現レベル: 22℃で20時間の誘導後の非常に強力なp24−RT−Nef−p17特異的バンド、総タンパク質の最大10%にあたる(図1Aを参照)。
【0117】
組換えタンパク質の「可溶性」:
「新鮮な」細胞抽出物(T、S、P画分):22℃で20時間の増殖/誘導を用いた場合、ほとんど全てのp24−RT−Nef−p17融合タンパク質が細胞抽出物の可溶性画分中に回収される(図1A)。30℃で20時間の増殖/誘導を用いた場合、約30%のp24−RT−Nef−p17タンパク質が不溶性画分に存在する(図1A)。
【0118】
「凍結/解凍」(S2、P2画分):
可溶性画分(S1)(22℃で20時間の誘導)を−20℃で保存した。解凍および20,000g/30分間で遠心分離:S2およびP2(1/10容量中に再懸濁)。
【0119】
DTTを含むブレーキングバッファー:ほとんど全てのp24−RT−Nef−p17融合タンパク質が可溶性のままであった(1〜5%のみが沈降)(図1Bを参照)。
【0120】
DTTを含まないブレーキングバッファー:85〜90%のp24−RT−Nef−p17が可溶性のままであった(図1B)。
【0121】
図面:
図1A−クマシー染色およびウェスタンブロット
図1B−p24−RT−Nef−p17可溶性アッセイ。
【0122】
F4タンパク質を、実施例7の精製方法Iを用いて精製した。
【0123】
以下の実施例のための細胞の増殖および誘導条件ならびに細胞抽出物の調製は、他の条件(例えば、温度、ブレーキングバッファーの組成)を特定しない限り、実施例1に記載の通りである。
【0124】
2.コドン最適化されたF4
以下のポリヌクレオチド配列は、そのコドン使用頻度が大腸菌で多く発現される遺伝子におけるコドン使用頻度と類似するようにコドン最適化されている。アミノ酸配列は、コドン最適化されていないF4について上記に示したものと同一である。
【0125】
F4coのヌクレオチド配列:
【表3】
[配列番号3]
p24配列を太字で示す。
Nef配列を下線付きで示す。
囲み:遺伝子構築により導入されたヌクレオチド。
コドン最適化されていないF4に関して用いた手順を、コドン最適化された配列に適用した。
【0126】
組換えプラスミドの詳細:
名称: pRIT15513(研究室での名称:pET28b/p24−RT−Nef−p17)
宿主ベクター:pET28b
レプリコン: colE1
選択: カナマイシン
プロモーター:T7
インサート: コドン最適化された、p24−RT−Nef−p17融合遺伝子。
【0127】
F4のコドン最適化された遺伝子を、B834(DE3)株のrecA−誘導体である大腸菌BLR(DE3)細胞中で発現させた。RecA突然変異は推定されるλファージの産生を防止する。
【0128】
前培養物を、振とうフラスコ中、37℃にて、中間対数増殖期(A620:0.6)まで増殖させた後、4℃で一晩保存した(静止期培養を避けるため)。
【0129】
培養物を、1%グルコースおよび50μg/mlカナマイシンを添加したLBT培地中で増殖させた。増殖培地へのグルコースの添加は基底状態での組換えタンパク質発現を減少させる利点を有する(lacUV5プロモーターのcAMP媒介性抑制を回避する)。
【0130】
4℃で一晩保存した10mlの培養物を用いて、カナマイシンを含む200mlのLBT培地(グルコースを含まない)に植菌した。培養物を37℃で増殖させ、O.D.620が0.6に達した時、IPTGを添加した(最終濃度1mM)。培養物をさらに19時間(一晩)、22℃にてインキュベートした。サンプルを、誘導前および誘導19時間後に回収した。
【0131】
抽出物の調製は以下の通りであった:
細胞ペレットをサンプルバッファー中に再懸濁し(10の理論的O.D.で)、ボイルし、SDS−PAGEに直接ロードした。
【0132】
SDS−PAGEおよびウェスタンブロット分析:
粗抽出物サンプルを10%の還元的SDS−PAGEで泳動した。
【0133】
p24−RT−Nef−p17組換えタンパク質をクマシーブルー染色により、およびウェスタンブロットで検出する(図2)。
【0134】
クマシー染色:p24−RT−Nef−p17タンパク質は以下のように現れる:
130kDa付近(算出されたMWと適合する)の1本のバンド
MW理論値:128.967ダルトン
MW見かけ:130kDa
ウェスタンブロット分析:
試薬= ・ウサギポリクローナル抗RT(ウサギPO3L16)
希釈率:1/10,000
・ウサギポリクローナル抗Nef−Tat(ウサギ388)
希釈率:1/10,000
・アルカリホスファターゼコンジュゲート抗ウサギ抗体
希釈率:1/7500。
【0135】
22℃で19時間の誘導の後、組換えBLR(DE3)細胞は、総タンパク質の10〜15%の範囲の非常に高いレベルでF4融合体を発現した。
【0136】
ネイティブな遺伝子由来のF4と比較して、コドン最適化された遺伝子に由来するF4組換え産物のプロフィールはわずかに単純化されている。60kDaの主要なF4関連バンド、ならびにそれ以下の小さいバンドは消失した(図2を参照)。F4を発現するB834(DE3)組換え株と比較して、F4coを産生するBLR(DE3)株は以下の利点を有する:F4完全長タンパク質のより高い産生、組換え産物のより複雑性の低いバンドパターン。
【実施例2】
【0137】
P51RT(切断型、コドン最適化されたRT)の構築および発現
アミノ酸428〜448の間のRT/p66領域は大腸菌プロテアーゼに対して感受性である。P51構築物はLeu 427で終結し、RNaseHドメインの排除をもたらす(図3中のRT配列アライメントを参照)。
【0138】
RTのネイティブな遺伝子配列中で特定された推定上の大腸菌「フレームシフト」配列も排除された(p51遺伝子のコドン最適化により)。
【0139】
p51合成遺伝子の設計/構築
合成p51遺伝子の配列を、大腸菌のコドン使用頻度に従って設計した。かくして、それは、そのコドン使用頻度が大腸菌中で多く発現される遺伝子におけるコドン使用頻度に類似するようにコドン最適化された。合成遺伝子を以下のように構築した:32個のオリゴヌクレオチドを単一工程PCR中で組み立てた。2回目のPCRにおいて、完全長集合体を末端プライマーを用いて増幅し、得られたPCR産物をpGEM−T中間プラスミド中にクローニングした。遺伝子合成の間に導入されたポイントエラーの補正後、p51合成遺伝子をpET29a発現プラスミド中にクローニングした。この組換えプラスミドを用いて、B834(DE3)細胞を形質転換した。
【0140】
組換えタンパク質の特性:
p51 RTヌクレオチド配列
【表4】
[配列番号4]
囲み:遺伝子構築により導入されたアミノ酸。
【0141】
アミノ酸配列:
【表5】
[配列番号5]
囲み:遺伝子構築により導入されたアミノ酸。
K(リジン):トリプトファン(W)の代わり。酵素活性を除去するために導入された突然変異。
【0142】
長さ、分子量、等電点(IP):
433AA、MW:50.3kDa、IP:9.08
B834(DE3)細胞中でのp51の発現
P51の発現レベルおよび組換えタンパク質の可溶性を、RT/p66産生株と並行して評価した。
【0143】
p51の発現レベル:
誘導条件:5時間、37℃(+1mM IPTG)で細胞を増殖/誘導
ブレーキングバッファー:50mM Tris/HCl、pH:7.5、1mM EDTA、+/−1mM DTT
ウェスタンブロット分析:
試薬:ウサギポリクローナル抗RT(ウサギPO3L16)(希釈率:1/10,000)
アルカリホスファターゼコンジュゲート抗ウサギ抗体(希釈率:1/7500)
粗抽出物(T)、不溶性ペレット(P)および上清(S)に対応する細胞画分を、10%の還元的SDS−PAGEで泳動した。
【0144】
クマシー染色されたゲルおよびウェスタンブロット(図4)に示されるように、非常に高いP51の発現(総タンパク質の15〜20%)が観察され、これはP66について観察されたものよりも高かった。
【0145】
p51およびp66タンパク質の両方について(37℃で5時間の誘導後)、80%の組換え産物を、細胞抽出物の可溶性画分(S1)中に回収した(図4を参照)。30℃で発現させた場合、99%の組換えタンパク質が可溶性画分に存在していた(データは示していない)。
【0146】
p51のウェスタンブロットパターンは複数のバンドであったが、P66について観察されたものよりも複雑性は低かった。
【0147】
可溶性アッセイ
可溶性アッセイ:還元的条件(DTTを含むブレーキングバッファー)および非還元的条件下で調製された可溶性(S1)画分(5時間の誘導、37℃)の凍結/解凍。解凍後、S1サンプルを20,000gで30分間遠心分離し、S2およびP2(p2を1/10容量に再懸濁する)を生成した。
【0148】
還元的ならびに非還元的条件で調製された、可溶性画分(S1)の凍結/解凍後、99%のp51およびp66が依然として可溶性(S2)画分中に回収される。1%のみが沈降物(P2)中に認められる。これを図5に示す。
【実施例3】
【0149】
リンカーを含むか、または含まないp17−NefおよびNef−p17の構築および発現
二重融合タンパク質を、リンカーを用いて、および用いずに構築した。このリンカーは、2つの融合パートナー間の相互作用の可能性を減少させるためのものであり、以下の通りである:
組換えプラスミドの構築:
・pET29a/Nef−p17発現ベクター:
Nef−p17融合遺伝子を、F4組換えプラスミドからPCRにより増幅した。PCR産物をpGEM−T中間クローニングベクター中にクローニングした後、続いてpET29a発現ベクター中にクローニングした。
【0150】
・pET28b/p17−Nef発現ベクター:
Nef遺伝子を、F4組換えプラスミドからPCRにより増幅した。PCR産物をpGEM−T中間クローニングベクター中にクローニングした後、続いてp17遺伝子とのC末端インフレーム融合体として、pET28b/p17発現ベクター中にクローニングした。
【0151】
・pET29a/Nef−リンカー−p17およびpET28b/p17−リンカー−Nef発現ベクター:
ヘキサペプチドリンカー(GSGGGP)をコードする18bpのDNA断片を、部位特異的突然変異誘発により(「GeneTailor部位特異的突然変異誘発システム」、Invitrogenを用いて)、Nefとp17融合パートナーの間に挿入した。
【0152】
組換えタンパク質の特性:
・長さ、分子量、等電点(IP)
・アミノ酸配列およびポリヌクレオチド配列:
Nef−p17ヌクレオチド配列
【表6】
[配列番号6]
Nef−p17(NP)
【表7】
[配列番号7]
囲み:遺伝子構築により導入されたアミノ酸。
Nef配列を太字で示す。
【0153】
P17−Nefヌクレオチド配列:
【表8】
[配列番号8]
P17−Nef(PN)
【表9】
[配列番号9]
囲み:遺伝子構築により導入されたアミノ酸。
p17配列を太字で示す。
【0154】
Nef−リンカー−p17ヌクレオチド配列:
【表10】
[配列番号10]
Nef−リンカー−p17(NLP)
【表11】
[配列番号11]
ヘキサペプチドリンカー
囲み:遺伝子構築により導入されたアミノ酸。
【0155】
P17−リンカー−Nefヌクレオチド配列:
【表12】
[配列番号12]
P17−リンカー−Nef(PLN)
【表13】
[配列番号13]
ヘキサペプチドリンカー
囲み:遺伝子構築により導入されたアミノ酸。
【0156】
リンカーを含む、および含まないNef−p17、p17−Nef融合体の発現の比較
4種類の組換え株を、F4およびNef産生株と並行して、30℃で3時間に渡って誘導した。粗抽出物を調製し、クマシー染色ゲルおよびウェスタンブロッティングにより分析した。
【0157】
ウェスタンブロット分析:
試薬:ウサギポリクローナル抗RT(ウサギPO3L16)(希釈率:1/10,000)
アルカリホスファターゼコンジュゲート抗ウサギ抗体(希釈率:1/7500)。
【0158】
図6に示されるように、リンカーを含む、および含まないNef−p17およびp17−Nef融合体は高レベルで発現される(総タンパク質の10%)。
【0159】
ウェスタンブロット分析においては、4種類の二重融合構築物は複数のバンドパターンを示すが、F4について観察されたものよりも複雑性が低かった。単独で発現させた場合、Nefおよびp17タンパク質は単一のバンドパターンを示す。
【0160】
リンカーペプチドを含まない、Nef−p17(NP)およびp17−Nef(PN)融合体を発現する株を、さらに分析した(可溶性アッセイ、以下を参照)。
【0161】
Nef−p17およびp17−Nefの可溶性アッセイ:
Nef−p17およびp17−Nefタンパク質を、F4およびNef産生株と並行して誘導した。
【0162】
誘導条件:30℃(+1mM IPTG)で3時間に渡る細胞増殖/誘導
ブレーキングバッファー:50mM Tris/HCl pH:8、50mM NaCl、1mM EDTA。
【0163】
新鮮な細胞抽出物:
細胞抽出物を調製し(非還元的条件下で)、粗抽出物(T)、不溶性ペレット(P)、および上清(S1)に対応する画分をクマシー染色ゲルおよびウェスタンブロット上で分析した。
【0164】
クマシー染色ゲルおよびウェスタンブロットで図7に示されるように、ほとんど全てのNef−p17、p17−Nef、ならびにNefタンパク質は、細胞抽出物の可溶性画分(S)中に回収される。F4構築物については、5〜10%の組換えタンパク質がペレット画分中に回収されている。
【0165】
結論:
試験した全ての二重融合構築物は強く発現される(総タンパク質の10%を超える)。P17−NefおよびNef−p17融合タンパク質はF4よりも可溶性が高い。両方とも複雑性の低いWBパターンを示す。
【実施例4】
【0166】
p24−RT*−Nef−p17(F4*)の構築および発現
F4*は、592位のメチオニンをリジンに置き換えたF4(p24−RT/p66−Nef−p17)融合体の突然変異体である。このメチオニンは、F4精製実験のQセファロース溶出物サンプルについて行ったN末端配列決定により支持されるように、推定上の内部転写「開始」部位である。実際、Q溶出物サンプル中に存在する、主要なF4に対応する62kDaの小さいバンドは、メチオニン592から始まる。
【0167】
メチオニンを、リジンに置き換える:RMR→RKR。RKRモチーフはクレードAのRT配列中に天然に存在する。
【0168】
CD4−CD8エピトープに対するこの突然変異の影響を評価した:
・1個のHLA−A3 CTLエピトープ(A*3002)が失われるが、他の9個のHLA−A3エピトープがRT配列中に存在する。
【0169】
・ヘルパーエピトープはこの領域中で同定されなかった。
【0170】
組換えタンパク質の特性:
・長さ、分子量、等電点(IP):
1136AA、129kDa、IP:8.07
【0171】
・ヌクレオチド配列:
【表14】
[配列番号14]
p24配列を太字で示す。
Nef配列に下線を付す。
囲み:遺伝子構築により導入されたヌクレオチド。
【0172】
・アミノ酸配列
【表15】
[配列番号15]
P24配列:アミノ酸1−232(太字)
RT配列:アミノ酸235−795
Nef配列:アミノ酸798−1002
P17配列:アミノ酸1005−1136
囲み:遺伝子構築により導入されたアミノ酸
K(リジン)592:メチオニンの代わり(内部「開始」コドン)
K(リジン)464:トリプトファン(W)の代わり。酵素活性を除去するために導入された突然変異。
【0173】
B834(DE3)細胞中でのF4*の発現
F4*組換え株を、F4非突然変異構築物と並行して、18時間、22℃で誘導した。粗抽出物を調製し、クマシー染色ゲルおよびウェスタンブロッティングにより分析した。
【0174】
図8に示されるように、F4*は高レベルで発現され(総タンパク質の10%)、これはF4と比較してわずかに高く、小さい62kDaのバンドは消失した。
【0175】
ウェスタンブロット分析:
試薬:プールした3種類のMab抗p24(JC13.1、JC16.1、IG8.1.1)(希釈率:1/5000)
ウサギポリクローナル抗RT(ウサギPO3L16)(希釈率:1/10000)
ウサギポリクローナル抗Nef−Tat(ウサギ388)(希釈率:1/10000)
アルカリホスファターゼコンジュゲート抗ウサギ抗体(希釈率:1/7500)
アルカリホスファターゼコンジュゲート抗マウス抗体(希釈率:1/7500)。
【実施例5】
【0176】
F3およびF3*(突然変異型F3)の構築および発現
F3(p17−p51−Nef)およびF3*(p17−p51*−Nef)中の推定上の内部メチオニン開始部位をリジンで置き換えた。
【0177】
F3およびF3*融合体をp24と組合わせて用いることができた。
【0178】
組換えプラスミド構築物:
F3:p51をコードする配列をpET29a/p51発現プラスミドから切り出し(ScaIおよびStuI DNA断片として)、pET28b/p17−Nefプラスミド中、StuI部位(p17とNef遺伝子の間に位置する)に、p17およびNef配列とインフレームの融合体として連結した。得られた融合構築物p17−p51−NefをF3と命名する。
【0179】
F3*:推定上の内部メチオニン開始部位の突然変異を、「Gene Tailor部位特異的突然変異誘発システム」(Invitrogen)を用いて行い、F3*構築物を作製した。
【0180】
F3およびF3*プラスミドを用いて、B834(DE3)細胞を形質転換した。
【0181】
組換えタンパク質の特性:
・長さ、分子量、等電点(IP)
770AA、88.5kDa、IP:8.58
【0182】
・ヌクレオチド配列(F3*について)
【表16】
[配列番号16]
P17:配列を太字で示す。
P51:配列を大文字で示す。
Nef:配列を小文字で示す。
囲み:遺伝子構築物により導入されたヌクレオチド。
【0183】
・アミノ酸配列(F3について)
【表17】
[配列番号17]
P17配列:アミノ酸1−134(太字)
P51配列:アミノ酸137−562
Nef配列:アミノ酸565−770
囲み:遺伝子構築により導入されたアミノ酸
F3*構築物においてはメチオニン494をリジン(K)に置き換えた。
K(リジン)366:トリプトファン(W)の代わり。酵素活性を除去するために導入された突然変異。
【0184】
B834(DE3)細胞におけるF3の発現:
F3の発現レベルおよび組換えタンパク質の可溶性を、F4(p24−p66−Nef−p17)およびp17−Nef(F2)産生株と並行して評価した。
【0185】
誘導条件:37℃で細胞増殖/30℃(+1mM IPTG)で3時間誘導
ブレーキングバッファー:F4:50mM Tris/HCl pH:8.0、50mM NaCl、1mM EDTA、+/− 1mM DTT
F2:50mM Tris/HCl pH:8.0、50mM NaCl、1mM EDTA、DTTを含まない
F3:50mM Tris/HCl pH:7.5、50mM NaCl、1mM EDTA、+/− 1mM DTT
ウェスタンブロット分析:
試薬 ウサギポリクローナル抗RT(ウサギPO3L16)(希釈率:1/10000)
ウサギポリクローナル抗Nef−Tat(ウサギ388)(希釈率:1/10000)
アルカリホスファターゼコンジュゲート抗ウサギ抗体(希釈率:1/7500)。
【0186】
「新鮮な」細胞抽出物
粗抽出物(T)、不溶性ペレット(P)および上清(S)に対応する細胞画分を、10%還元的SDS−PAGEで分析した。図9に示されるように、F3融合タンパク質は高レベルで発現される(総タンパク質の10%)。ほとんど全てのF3が細胞抽出物の可溶性画分(S)中に回収されるが、5〜10%のF4産物は既にペレット画分に存在している。WBパターンはF4と比較して単純である。
【0187】
B834(DE3)細胞におけるF3*の発現:
F3*組換え株を、F3非突然変異構築物と並行して、3時間に渡って37℃で誘導した。粗細胞抽出物を調製し、クマシー染色ゲルおよびウェスタンブロッティングにより分析した。図10に示されるように、F3*融合タンパク質は非常に高レベルで発現される(総タンパク質の10〜20%)。F3と比較して単純なWBパターンであり、32kDa付近(WBのみで検出された)の非常に弱いバンドが消失した。
【実施例6】
【0188】
F4(p51)およびF4(p51)*の構築および発現
RT/p51を、F4融合構築物中で(RT/p66の代わりに)用いた。
【0189】
F4(p51)=p24−p51−Nef−p17
F4(p51)*=p24−p51*−Nef−p17(突然変異型F4(p51)):推定上の内部メチオニン開始部位(RT部分に存在する)をリジンに置き換えて、抗原パターンをさらに単純化する。
【0190】
組換えプラスミドの構築:
F4(p51):p51をコードする配列を、pET29a/p51発現プラスミドからPCRにより増幅した。制限部位をPCRプライマー中に組み入れた(コード配列の5’末端にNdeIおよびStuI部位、3’末端にAvrII部位)。PCR産物をpGem−T中間プラスミド中にクローニングし、配列決定した。pGem−T/p51中間プラスミドをNdeIおよびAvrIIにより制限処理し、p51断片を、NdeIおよびNheIにより制限処理された(RT/p66配列が切り出される)pET28b/p24−RT/p66−Nef−p17発現プラスミド中に連結した。連結を、T4 DNAリガーゼの存在下で、好適な濃度で消化反応と組合わせることにより行った。連結産物を用いて、DH5α大腸菌細胞を形質転換した。正しい翻訳読み枠へのp51の挿入(f4融合体中、RT/p66の代わり)の確認を、DNA配列決定により行った。得られた融合構築物p24−RT/p51−Nef−p17をF4(p51)と命名する。
【0191】
F4(p51)*:推定上の内部メチオニン開始部位(RT/p51中に存在)の突然変異を、「GeneTailor部位特異的突然変異誘発システム」(Invitrogen)を用いて行い、F4(p51)*構築物を作製した。
【0192】
F4(p51)およびF4(p51)*発現プラスミドを用いて、B834(DE3)細胞を形質転換した。
【0193】
組換えタンパク質の特性:
・長さ、分子量、等電点(IP):
1005AA、114.5kDa、IP:8.47
【0194】
・ヌクレオチド配列(F4(p51)*について)
【表18】
[配列番号18]
P24:配列を太字で示す。
P51:配列を大文字で示す。
Nef:配列を小文字で示す。
P17:配列に下線を付す。
囲み:遺伝子構築物により導入されたヌクレオチド。
【0195】
・アミノ酸配列(F4(p51)*について)
【表19】
[配列番号19]
P24:アミノ酸1−232
P51:アミノ酸237−662
Nef:アミノ酸666−871
P17:アミノ酸874−1005
K(リジン)594:メチオニンの代わり(内部「開始コドン」)
K(リジン)466:トリプトファン(W)の代わり。酵素活性を除去するために導入された突然変異。
【0196】
B834(DE3)細胞におけるF4(p51)の発現:
F4(p51)の発現レベルおよび組換えタンパク質の可溶性を、F4発現株と並行して評価した。
【0197】
誘導条件:37℃で細胞増殖/22℃(+1mM IPTG)で19時間に渡って誘導
ブレーキングバッファー:50mM Tris/HCl pH:7.5、1mM EDTA、1mM DTT
ウェスタンブロット分析:
試薬 ウサギポリクローナル抗RT(ウサギPO3L16)(希釈率:1/10000)
ウサギポリクローナル抗Nef−Tat(ウサギ388)(希釈率:1/10000)
アルカリホスファターゼコンジュゲート抗ウサギ抗体(希釈率:1/7500)
粗抽出物(T)、不溶性ペレット(P)および上清(S)に対応する細胞画分を、10%還元的SDS−PAGE上で分析した。
【0198】
図11に示されるように、F4(p51)は、F4と同様、高レベルで発現された(総タンパク質の10%)。ほとんど全てのF4(p51)は細胞抽出物の可溶性画分(S)中に回収される。抗Nef−tat試薬を用いる検出に際しては、F4(p51)のWBパターンが単純化されることが示された(60kDa付近より小さい切断された産物の減少)。
【0199】
B834(DE3)細胞におけるF4(p51)*の発現:
F4(p51)*組換え株を、F4(p51)非突然変異型構築物、F4およびF4*と並行して、22℃で18時間に渡って誘導した。粗細胞抽出物を調製し、クマシー染色ゲルおよびウェスタンブロッティングにより分析した。図12に示されるように、F4(p51)およびF4(p51)*融合体の高い発現が観察され、それは総タンパク質の少なくとも10%であった。WBパターン:60kDa付近より小さい切断された産物の減少。さらに、F4(p51)*構築物については、47kDaのバンド(内部開始部位に起因する)が消失した。
【実施例7】
【0200】
F4、F4(p51)*およびF4*の精製−精製方法I
4つのHIV抗原p24−RT−Nef−p17を含む融合タンパク質F4を、以下の基本工程:
・F4の硫酸アンモニウム沈殿
・SO3フラクトゲル陽イオン交換クロマトグラフィー(ポジティブモード)
・オクチルセファロース疎水性相互作用クロマトグラフィー(ポジティブモード)
・QセファロースFF陰イオン交換クロマトグラフィー(ポジティブモード)
・SDSの存在下でのSuperdex 200ゲル濾過クロマトグラフィー
・透析および濃縮
を含む精製方法Iに従って、大腸菌細胞のホモジネートから精製した。
【0201】
さらに、F4(p51)*融合タンパク質(追加の突然変異Met592Lysを有するコドン最適化されたp51により置換されたRT)およびF4*タンパク質(追加のMet592Lys突然変異を有するF4)を、同じ精製方法Iを用いて精製した。
【0202】
タンパク質の定量
・総タンパク質をLowryアッセイを用いて測定した。タンパク質濃度を測定する前に、全てのサンプルをPBS、0.1%SDSに対して一晩透析して、干渉物質(尿素、DTT)を除去する。BSA(Pierce)を標準として用いた。
【0203】
SDS−PAGEおよびウェスタンブロット
・サンプルを還元的または非還元的SDS−PAGEサンプルバッファー(+/−β−メルカプトエタノール)中で調製し、95℃で5分間加熱した。
・プレキャストNovex Tris−グリシンゲルまたはCriterionゲル(Bio-Rad)(1mmの厚さ)を用いて、200Vで75分間、4−20%SDSポリアクリルアミドゲルで、タンパク質を分離した。
・タンパク質を、クマシーブルーR250を用いて可視化した。
・ウェスタンブロット(WB)のために、タンパク質を、4℃にて、100Vで1.5時間、または30Vで一晩、SDSゲルからニトロセルロース膜(Bio-Rad)にトランスファーした。
・F4を、種々の抗原に対するモノクローナル抗体(抗p24、抗Nef−Tat、抗RT)を用いて検出した(時には抗p24と抗Nef−Tatの混合物を用いて、最大数のタンパク質バンドを検出した)。
・アルカリホスファターゼコンジュゲート抗マウスまたは抗ウサギ抗体を一次抗体に結合させ、タンパク質バンドをBCIPおよびNBTを基質として用いて可視化した。
【0204】
抗大腸菌ウェスタンブロット
・5μgのタンパク質(Lowry)をSDS−PAGEにより分離し、上記のようにニトロセルロース膜にトランスファーした。
・残りの宿主細胞タンパク質を、ポリクローナル抗大腸菌抗体を用いて検出した。タンパク質バンドを、上記のようにアルカリホスファターゼ反応を用いて可視化した。
【0205】
精製方法I
方法Iは、硫酸アンモニウムによる沈殿および4つのクロマトグラフィー工程を含む:
・大腸菌細胞を、10mM DTT、1mM PMSF、1mM EDTAの存在下、OD50で、50mM TrisバッファーpH8.0中でホモジナイズした(〜360ml)。2回のRannieでのパッセージを1000バールで行った。
・細胞破片および不溶性物質を、14400×gで20分間の遠心分離により除去した。
・清澄化した上清に硫酸アンモニウム(AS)を3.8Mストック溶液から1.2Mの最終濃度で添加した。タンパク質を約2時間、室温(RT)にて沈殿させた後、遠心分離(14400×gで10分間)によりペレット化した。ペレットを、10mMリン酸バッファーpH7.0中の8M尿素、10mM DTT中に再懸濁した。
・抗原を、リン酸バッファー中の8M尿素および10mM DTT、pH7.0の存在下で、SO3フラクトゲルカラム(Merck)で捕捉した。カラムを洗浄して未結合のタンパク質を溶出させた後、170mM NaClを用いて予備溶出工程を行って、結合した宿主細胞タンパク質(HCP)を除去した。次いで、F4を、リン酸バッファーpH7.0中の460mM NaCl、8M尿素、10mM DTTを用いて溶出させた。
・SO3溶出液を、10mMリン酸バッファーpH7を用いて2倍希釈し、リン酸バッファーpH7.0中の4M尿素、1mM DTT、230mM NaClの存在下でオクチルセファロースカラム(Amersham Biosciences)にロードした。洗浄工程(平衡化バッファー)の後、結合したF4を、25mM TrisバッファーpH8.0中の8M尿素、1mM DTTを用いて溶出させた。
・オクチル溶出液を希釈し、pH9.0に調整した後、F4を、8M尿素pH9.0(25mM Tris)の存在下でQセファロースカラム(Amersham Bioscience)に結合させた。未結合のタンパク質を洗浄除去し(8M尿素、25mM Tris、pH9.0)、予備溶出工程(8M尿素、25mM Tris、pH9.0中の90mM NaCl)によりHCPおよびF4分解産物を除去した。F4を、Trisバッファー、pH9.0中の200mM NaCl、8M尿素を用いてカラムから脱離させた。
・Q溶出液のアリコートに1%SDSを加え、0.1%SDSおよび1mM DTTを含むPBSバッファーに対して透析して、尿素を除去した後、サンプルをゲル濾過カラム(調製グレードのSuperdex 200、横に接続した2本の16×60cmカラム)に注入した。対応する画分を、工程途中のSDS−PAGE分析後にプールした。
・サンプルを、110.5Mアルギニン、10mM Tris、5mMグルタチオン、pH8.5に対して一晩、透析膜(12−14kDaカットオフ)中でRTにて2回透析した。
【0206】
一連の精製工程を以下のフローチャートに示す。
精製フローチャート
360mlホモジネートOD50(Rannie)
50mM Tris pH8.0、1mM PMSF、10mM DTT、2mM EDTA
↓
清澄化
14400×gでの20分間の遠心分離
↓
硫酸アンモニウム沈殿
1.2M AS、RTで2時間、14400×g、10分間の遠心分離
↓
ペレットを、8M尿素、10mM PO4、10mM DTT、pH7.0に再懸濁
↓
(+)SO3フラクトゲルEMD650(M)クロマトグラフィー
pH7.0、8M尿素、10mM DTT、170mM NaClでの予備溶出、溶出460mM NaCl
↓
pH7.0、4M尿素、5mM DTT、230mM NaClに2倍希釈
↓
(+)オクチルセファロースクロマトグラフィー
pH7.0、4M尿素、230mM NaCl、溶出8M尿素、20mM Tris pH8.0
↓
約2倍希釈、pH9.0に調整(NaOH)
↓
(+)QセファロースFFクロマトグラフィー
Tris pH9.0、8M尿素、予備溶出90mM NaCl、溶出200mM NaCl
↓
1%SDSの添加
↓
透析
→TBS、0.1%SDS、pH8.5
↓
Superdex 200ゲル濾過クロマトグラフィー16×120cm
TBS、0.1%SDS、pH8.5
↓
IPA SDS−PAGE
↓
プール/濃縮/透析
→製剤適合性バッファー
IPA−工程途中の分析(in process analysis)
全てのバッファーは、特に指摘しない限り、1mM DTTを含む。
【0207】
F4の精製の結果
精製プロセスのSDS−PAGE/ウェスタンブロットによる追跡
図13は、F4の精製中に回収されたF4を含有する画分のSDSゲルおよび抗p24/抗Nef−Tatウェスタンブロットを示す。
【0208】
大腸菌ホモジネートを図13、レーン2に示すが、F4は総タンパク質の約10%に相当すると見積もられる(クマシーブルー染色されたSDSゲルの密度スキャン)。遠心分離後、F4の可溶性画分は、清澄化された上清(レーン3)中に回収された。硫酸アンモニウム沈殿工程により多くの不純物を除去し(レーン4)、その後のクロマトグラフィー工程のためにタンパク質電荷を低下させた。さらに、8M尿素を用いて沈殿を懸濁して、F4とHCPとの複合体を解離させ、SO3樹脂によるF4の完全な捕捉および同樹脂からの定量的溶出の両方を可能にした。レーン5に示されるSO3溶出物においては、かなりF4が富化されているが、異種性パターンは基本的に未変化のままであった。疎水性オクチルセファロースカラムは主に低分子量(LMW)のHCPおよびF4分解産物を除去し(レーン6)、それによってF4パターンを単純化した。QセファロースクロマトグラフィーはさらにF4パターンを単純化し、多くの不純物を除去した(レーン7)。大腸菌の不純物の点での最終的な純度がこの工程後に得られた。実際、抗大腸菌ウェスタンブロット分析によっては、Q溶出物中に宿主細胞タンパク質は検出されなかった。かくして産生された精製済みF4をF4Qと呼ぶ。Superdex 200カラムは完全長F4からLMW F4分解産物を分離し、Superdex 200溶出物中でのF4の均質性を改善した(レーン8)。用語F4Sを、方法Iの完全なスキームに従って精製されたF4について用いる。
【0209】
抗大腸菌ウェスタンブロットを、F4の精製中に回収された同じ画分について行った。抗大腸菌ウェスタンブロット上に可視的バンドがないことは、Q溶出物およびSuperdex溶出物中に存在するHCP夾雑物が1%未満であることを示していた。
【0210】
F4およびタンパク質の回収
精製プロセスの各工程でのF4の回収を、SDS−PAGEおよびウェスタンブロット分析から評価した。SDSゲルからのF4の回収を評価するために、SDSゲル上に載せられるサンプル容量は、精製中に回収されるそれぞれの画分の容量に対応させる。
【0211】
表1は、F4を含有する画分中でのタンパク質の回収を示す。
【表20】
【0212】
この表は、清澄化工程の後に上清中に回収された、ホモジネートおよび可溶性物質、F4を含めたタンパク質の量を示す。AS沈殿工程は大量のHCPを除去し、F4のわずかな損失のみがSDSゲルで観察された。SO3クロマトグラフィーはさらに多くの不純物を除去し、SDSゲルはF4の高い回収を示した。対照的に、オクチルセファロースおよびQセファロースカラムの両方では、測定された約50%のタンパク質の回収は、F4の損失も伴っていた。ゲル濾過クロマトグラフィー後のタンパク質の回収は約50%であった。SDSゲルは、F4回収の減少に付随して、多くのLMWタンパク質バンド(F4分解バンド)が除去されたことを示している。
【0213】
F4の収率
上記の表1は、約36mgの精製されたF4がOD50の360mlのホモジネートから得られたことを示している。従って、OD50の1Lのホモジネートは約100mgの精製されたF4をもたらすはずである。70〜90のODが発酵プロセス中に達成されたため、1Lの発酵装置あたりの収率は従って140〜180mgの範囲のF4である。
【0214】
F4(p51)*の精製の結果
F4(p51)*融合構築物を、改変せずに上記の精製方法Iを用いて精製した。
【0215】
精製プロセスのSDS−PAGE/ウェスタンブロットによる追跡
図14は、F4(p51*)の精製中に回収されたF4(p51)*を含有する画分のSDSゲルおよび抗p24/抗Nef−Tatウェスタンブロットを示す。
【0216】
SDSゲルおよびウェスタンブロットは、F4(p51)*融合タンパク質が、全体的には、硫酸アンモニウム沈殿工程において、ならびにクロマトグラフィー工程中にF4と同様に振舞ったことを示している。精製されたF4(p51)*は精製されたF4と類似する均質なパターンを有していた。
【0217】
抗大腸菌ウェスタンブロットは、Q溶出物およびSuperdex溶出物の両方におけるHCP夾雑物が1%未満であることを示していた。
【0218】
収率
約25%のF4(p51)*がホモジネートの不溶性画分中から失われた。さらに、この精製方法はこのタンパク質には適合しないため、クロマトグラフィー工程において損失が観察された。従って、F4(p51)*の全体の回収はホモジネート1リットル(OD50)あたり約25mgに減少した。OD177で1リットルの培養物を想定した場合、収率は従って85mg程度のF4(p51)*となる。
【0219】
F4*の精製の結果
F4*融合構築物を、改変せずに上記の精製方法Iを用いて精製した。
【0220】
精製プロセスのSDS−PAGE/ウェスタンブロットによる追跡
図15は、F4*の精製中に回収されたF4*含有画分のSDSゲルおよび抗p24/抗Nef−Tatウェスタンブロットを示す。
【0221】
F4(p51)*と同様、F4*は全体的に精製手順中にF4と全く同様に振舞ったことにも気づくであろう。このタンパク質は、SDSゲルおよびウェスタンブロットにより示された予想される画分中に回収された。抗大腸菌ウェスタンブロットはまた、多くのHCPがQセファロースカラム後に既に排除されたことを示していた。
【0222】
収率
全体の回収は、OD50の465mlのホモジネートから得られた約17mgの精製されたF4*であった。OD140の1Lの培養物を想定した場合、収率は従って100mg程度のF4*となる。
【0223】
まとめると、3種類の融合タンパク質F4、F4(p51)*およびF4*を、精製方法Iを用いて精製した。図16中のSDSゲルは、Qセファロース工程後、およびSuperdex 200カラムによるLMWバンドの排除後の3種類の精製されたタンパク質を比較し、前記構築物の異なるレベルの均質性を示す。
【実施例8】
【0224】
F4およびF4co(コドン最適化)の精製−精製方法II
精製方法II
方法Iと比較して単純化された精製手順である方法IIも開発した。方法IIは、2つのクロマトグラフィー工程およびバッファー交換のための最終的な透析/ダイアフィルトレーションのみからなる。注目すべきことに、CMハイパーZクロマトグラフィーカラム(BioSepra)を導入して、方法Iの清澄化工程、硫酸アンモニウム沈殿およびSO3クロマトグラフィー(実施例7)を置換した。方法IIを用いて、F4および完全にコドン最適化されたF4(「F4co」)の両方を精製した。F4coについては、1つはカルボキシアミド化を含み、1つはそれを含まない、2つの異なる形態の方法IIを実施した。カルボキシアミド化工程の目的は、タンパク質の酸化的凝集を防止することであった。このカルボキシアミド化を、1回目のクロマトグラフィー工程の後に実施する(CMハイパーZ)。
【0225】
・大腸菌細胞(F4またはF4coを発現する)を、OD90で、10mM DTTの存在下で50mM TrisバッファーpH8.0中でホモジナイズした。2回のRannieでのパッセージを1000バールで行った。
・8M尿素をホモジネートに添加した後、ホモジネートをpH7のリン酸バッファー中の8M尿素で平衡化させたCMハイパーZ樹脂(BioSepra)に用いた。抗原の捕捉をバッチ様式で行った。次いで、この樹脂をカラム中に充填し、未結合のタンパク質を平衡化バッファーを用いて洗浄除去し、結合した宿主細胞タンパク質(HCP)を、120mM NaClを用いる前溶出工程により除去した。次いで、F4coを、pH7.0のリン酸バッファー中の360mM NaCl、8M尿素、10mM DTTを用いて溶出させた。
・融合タンパク質の酸化的凝集を抑えるために、F4coのシステイン基をヨードアセトアミドを用いてカルボキシアミド化することができる。従って、必要に応じて、50mMのヨードアセトアミドをCMハイパーZ溶出物に添加し、暗室中、室温にて30分間、カルボキシアミド化を行った。
・次いで、CMハイパーZ溶出物を十分に希釈し(約5〜8倍)、pH9.0に調整した。次いで、F4coまたはF4cocaを、TrisバッファーpH9.0中の8M尿素の存在下でQセファロースカラム(Amersham Bioscience)に結合させた。未結合のタンパク質を平衡化バッファーを用いて洗浄除去し、同じバッファー中の90mM NaCl(非カルボキシアミド化タンパク質についてのみ)を用いる前溶出工程により結合したHCPを除去した。F4coをTrisバッファーpH9.0中の200mM NaCl、8M尿素を用いて、カラムから脱離させた。
・サンプルを、1Lの0.5Mアルギニン、10mM Trisバッファー、10mMグルタチオン(非カルボキシアミド化タンパク質についてのみ添加)、pH8.5に対して一晩、透析膜(12−14kDaカットオフ)中、RTにて2回透析した。あるいは、バッファー交換を、30または50kDaのカットオフを有する接線流膜(tangential flow membrane)を用いて、10倍サンプル容量の同じバッファーに対するダイアフィルトレーションにより行った。
・最後に、透析産物を0.22μmの膜を通して滅菌濾過した。
【0226】
一連の精製工程を以下のフローチャートに示す。
精製フローチャート
ホモジネートOD90(Rannie)
50mM Tris pH8.0、10mM DTT
↓
8M尿素の添加、pH7.0に調整
↓
(+)CMハイパーZクロマトグラフィー
pH7.0、8M尿素、10mM DTT、120mM NaClで前溶出、溶出360mM NaCl
↓
必要に応じたカルボキシアミド化:50mMヨードアセトアミドの添加、RTにて30分間
↓
希釈およびpH9.0に調整、8M尿素
↓
(+)QセファロースFFクロマトグラフィー
Tris pH9.0、8M尿素、NaCl*で前溶出、溶出
↓
透析/ダイアフィルトレーション
→リン酸バッファー、0.5Mアルギニン、pH8.5(10mMグルタチオン)
↓
滅菌濾過
全てのバッファーは、F4coがカルボキシアミド化されていない場合にはDTTおよび精製されたバルク中にグルタチオンを含んでいた。一度、タンパク質がカルボキシアミド化されれば、還元剤を除去した。*NaCl:F4coについては、これは200mM NaClであり、F4cocaについては、溶出はNaClの勾配によるものであった。この工程を、F4cocaについては60mM NaClを用いる前溶出および100mM NaClを用いる溶出により;ならびにF4coについては100mM NaClを用いる溶出(前溶出工程は必要ない)によりさらに最適化することができる。
【0227】
結果:F4coの精製
図17は、F4coの精製およびカルボキシアミド化されたF4co(「F4coca」)の精製中に回収されたF4を含む画分のSDSゲルを示す。
【0228】
CMハイパーZ樹脂は、8M尿素の存在下で粗ホモジネート(レーン1)からF4coを完全に捕捉し、360mM NaClを用いて定量的溶出を達成した。レーン2に示されたCMハイパーZ溶出物はF4co中でかなり富化されていた。好適な希釈およびサンプルのpH9への調整の後、F4coまたはF4cocaをQセファロースカラムに結合させた。次いで、F4coまたはF4cocaを、レーン3に示されるように200mM NaClを用いて特異的に溶出させた。このクロマトグラフィーは残存する宿主細胞タンパク質だけでなく、DNAおよびエンドトキシンをも除去した。製剤適合性バッファー中に精製された物質を入れるために、Qセファロース溶出物を、12〜14kDaのカットオフを有する透析膜中の10mM Trisバッファー、0.5Mアルギニン、10mMグルタチオンpH8.5に対して透析した。グルタチオンはカルボキシアミド化されたタンパク質については省略した。
【0229】
F4coおよびF4cocaの両方の精製により、OD130の培養物1Lあたり約500mgの精製された物質が得られた。これはコドン最適化されていないF4を用いる前に観察されたものと類似する範囲にあった。
【0230】
上記のように、2つの異なる精製方法(IおよびII)を、異なるF4構築物を精製するために開発した。図18は、得られた異なる精製バルクを比較するものである。
【0231】
図18中のSDSゲルは、2つの異なるタンパク質、F4およびF4coの識別パターンを明確に図示するものである。F4はいくつかの強い低分子量(LMW)のバンドを示したが、コドン最適化されたF4coについてはかすかなバンドのみが可視的であった。方法Iおよび方法IIは非常に類似するF4coパターンをもたらした。抗大腸菌ウェスタンブロット分析により、精製されたタンパク質の純度を確認したところ、全ての調製物中で1%未満の宿主細胞タンパク質夾雑物を示した。
【実施例9】
【0232】
マウスにおけるF4の免疫原性
製剤:
アジュバント製剤1B:
アジュバント製剤1Bを調製するために、有機溶媒中の脂質(卵黄由来もしくは合成由来のホスファチジルコリンなど)およびコレステロールおよび3D−MPLの混合物を減圧下で(またはあるいは、不活性ガス流下で)乾燥する。次いで、水性溶液(リン酸緩衝生理食塩水など)を加え、全ての脂質が懸濁されるまで容器を攪拌する。次いで、この懸濁液を、リポソームの大きさが約100nmに減少するまで微小流体化した後、0.2μmフィルターを通して滅菌濾過する。押出しまたは超音波処理をこの工程の代わりに行ってもよい。
【0233】
典型的には、コレステロール:ホスファチジルコリン比は1:4(w/w)であり、水性溶液を添加して5〜50mg/mlの最終コレステロール濃度を得る。
【0234】
リポソームは100nmの規定の大きさを有し、SUV(小型単層小胞)と呼ばれる。この溶液を繰り返し凍結/解凍すると、小胞は融合して、500nm〜15μmの範囲の大きさの大きな多層構造物(MLV)を形成する。リポソーム自体は長時間に渡って安定であり、融合能力を有さない。
【0235】
水性溶液中のQS21をリポソームに添加して、100μg/mlの最終3D−MPLおよびQS21濃度を達成する。
【0236】
製剤2A:水中油型乳濁液中の3−脱アシル化モノホスホリルリピドAおよびQS21:
水中油型乳濁液の調製は、WO95/17210に記載のプロトコルに従うことにより行うことができる。詳細には、この乳濁液は5%スクアレン、5%トコフェロール、2.0%tween 80を含み、その粒径は180nmである。
【0237】
水中油型乳濁液の調製(2倍濃縮物)
Tween 80をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に溶解して、PBS中の2%溶液を得る。100mlの2倍濃縮乳濁液を得るために、5gのDLαトコフェロールおよび5mlのスクアレンをボルテックスして完全に混合する。90mlのPBS/Tween溶液を添加し、完全に混合する。次いで、得られた乳濁液をシリンジに通し、M110S微小流体装置を用いることにより最終的に微小流体化する。得られる油滴は約180nmの大きさを有する。
【0238】
滅菌バルク乳濁液をPBSに添加して、1mlあたり500μlの乳濁液の最終濃度(v/v)を達成する。次いで、3D−MPLを添加して、100μgの最終濃度を達成する。次いで、QS21を添加して、100μg/mlの最終濃度を達成する。成分のそれぞれの添加の間に、中間生成物を5分間攪拌する。
【0239】
精製方法Iに従って精製された、コドン最適化されていないF4Qを、リン酸/アルギニンバッファーpH6.8中で希釈した。この希釈液を2つの異なる濃度のアジュバント(アジュバント2Aおよび1B)と混合して、290(アジュバント2Aについて)−300(アジュバント1Bについて)mMのアルギニン、50μgのMPLおよび50μgのQS21の存在下で、500μlのF4の40μg/用量の最終製剤を取得した。100μlの各製剤をマウスに注入した。
【0240】
マウスの免疫原性試験を実施して、F4内に認められる4つの抗原(p24、p17、RTおよびNef)に対する細胞性および体液性免疫応答を評価した。
【0241】
F4抗原の複雑性に起因して、それぞれ異なる遺伝的背景を有する8系統のマウスを、100μlの容量中、上記のように調製された8μgのアジュバント化されたF4タンパク質を用いて、0日目および21日目に2回免疫した。血清および脾臓サンプルを、F4の4つの成分の各々(p24、p17、RTおよびNef)、ならびにF4に対する体液性および細胞性応答の分析のために、最後の免疫(35日目)の14日後に回収した。
【0242】
総抗体応答を、p24、p17、RT、NefおよびF4にとって特異的なELISAにより特性評価した。以下の表2は、抗原特異的体液性応答が各系統において観察された場合をまとめたものである。この結果は、アジュバントのみで免疫された対照動物と比較した抗体の存在または不在を示す。示した結果は、2回の別々であるが同一の実験からのまとめである。表中、2Aは水中油型乳濁液中で3D−MPLおよびQS21を用いて製剤化された抗原を指し、1Bは3D−MPL、QS21およびコレステロールを含むリポソームを用いて製剤化された抗原を指す。
【表21】
【0243】
OF1マウスでは4つ全てのF4成分に対する抗体応答を増加していた。観察された応答を図19に示す。+/−は、観察された応答が弱いか、または2つのアジュバントの1つについてのみ観察されたことを示す。例えば、B6D2F1マウスのp17応答:全体として+/−であり、+2Aおよび−1Bとは、2Aについての応答(弱くない)が存在し、1Bについての応答が存在しないことを意味する。Balb/cマウスのp17応答:全体としては−であり、+/−2Aおよび−1Bとは、この場合+/−はアジュバント2Aについての応答が弱かったことを意味する。
【0244】
細胞性応答を、11merの重複を有する15merのペプチドライブラリープールを用い、p24、p17、RTまたはNefに特異的なペプチドを用いた脾臓細胞の再刺激後に、CD4およびCD8、IFNγおよびIL−2発現についてのフローサイトメトリー染色(IFNγおよびIL−2発現についての細胞内サイトカイン染色)により特性評価した。CD4応答は主要な細胞応答であることが観察された。以下の表3は、抗原特異的CD4+IL−2+応答が各マウス系統について観察された場合をまとめたものである。ここでも、これは応答の存在または不在として示されるものである。
【表22】
【0245】
DBAマウスでは4つ全てのF4成分に対するCD4応答を増加していた。このマウス系統について観察されたCD4+IL−2+およびCD4+IFNγ+応答を、図20に示す。
【0246】
まとめると、2つのアジュバント製剤のいずれかにおいて製剤化されたF4は、p24、p17、RTおよびNefに対する体液性および細胞性応答を促進することができる。これは、F4の各領域がin vivo状況において免疫原性であることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0247】
【図1A】p24−RT−Nef−p17の発現誘導について示す。
【図1B】p24−RT−Nef−p17の可溶性アッセイを示す。
【図2】p24−RT−Nef−p17組換えタンパク質についてのクマシーブルー染色およびウェスタンブロットによる検出を表す。
【図3】RTタンパク質のアライメントを示す。
【図4】RT(コドン最適化)の発現について示す。
【図5】RTの可溶性アッセイを示す。
【図6】リンカーを含むか含まないNef−p17およびp17−Nefの発現について示す。
【図7】Nef−p17およびp17−Nefの可溶性アッセイを示す。
【図8】F4*の発現について示す。
【図9】F3の発現について示す。
【図10】F3*の発現について示す。
【図11】F4(p51)の発現について示す。
【図12】B834(DE3)細胞におけるF4(p51)*の発現について示す。
【図13】F4の精製について示す。
【図14】F4(p51)*の精製について示す。
【図15】F4*の精製について示す。
【図16】F4、F4*、F4(51)*の精製度について示す。
【図17】F4coおよびカルボキシアミド化F4coの精製についてのSDS−PAGEでの追跡を示す。
【図18】方法Iおよび方法IIに従い精製されたF4、F4coおよびF4cocaについてのSDS−PAGE分析を示す。
【図19】マウスにおけるF4の免疫原性を示すグラフである。
【図20】各マウス系統についてのCD4+IL−2+およびCD4+IFNγ+応答を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規HIVポリペプチド構築物、医薬におけるその使用、それらを含む医薬組成物およびその製造方法に関する。本発明はまた、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにも関する。具体的には、本発明は、HIV−1 NefおよびHIV−1 Gagまたはその断片を含む融合タンパク質、ならびにそれらをコードするポリヌクレオチドに関する。より具体的には、本発明は、HIV−1 Nef、HIV−1 PolおよびHIV−1 Gagタンパク質またはその断片を含む融合タンパク質ならびにそれらをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0002】
HIV−1は世界の主要な健康問題の一つであるとみなされている後天性免疫不全症候群(AIDS)の主な原因である。HIV感染の予防および/または治療のためのワクチンに対する必要性が存在する。
【背景技術】
【0003】
HIV−1はレトロウイルスファミリーのRNAウイルスである。HIVゲノムは少なくとも9個のタンパク質をコードし、これらは3つのクラス:主要な構造タンパク質Gag、PolおよびEnv、調節タンパク質TatおよびRev、ならびに補助タンパク質Vpu、Vpr、VifおよびNefに分類される。HIVゲノムは全てのレトロウイルスの5’LTR−gag−pol−env−LTR3’編成を示す。
【0004】
HIVエンベロープ糖タンパク質gp120は、宿主細胞への付着に用いられるウイルスタンパク質である。この付着は、CD4および2つのケモカイン受容体CCR−5またはCXCR−4の1つとして知られる、ヘルパーT細胞およびマクロファージの2種類の表面分子への結合により媒介される。gp120タンパク質はまず、より大きい前駆体分子(gp160)として発現され、次いで、翻訳後に切断されてgp120およびgp41になる。gp120タンパク質はgp41分子への連結によりビリオンの表面上に保持され、ウイルス膜中に挿入される。
【0005】
gp120タンパク質は中和抗体の主な標的であるが、不幸なことに、このタンパク質の最も免疫原性の高い領域(V3ループ)は、このタンパク質の最も可変性の高い部分でもある。従って、中和抗体を引き出すためのワクチン抗原としてのgp120(またはその前駆体gp160)の使用は、幅広く保護的なワクチンのための使用が制限されると考えられる。gp120タンパク質はまた、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)により認識されるエピトープをも含む。これらのエフェクター細胞はウイルス感染した細胞を排除することができ、従って、第2の主要な抗ウイルス免疫機構を構成する。中和抗体の標的領域とは対照的に、いくつかのCTLエピトープは異なるHIV株間で比較的保存されているようである。このことから、gp120およびgp160は、細胞媒介性免疫応答(特に、CTL)を引き出すのを助けるワクチンでは有用な抗原性成分である。
【0006】
HIV−1の非エンベロープタンパク質としては、例えば、gagおよびpol遺伝子の産物などの内部構造タンパク質ならびにRev、Nef、VifおよびTatなどの他の非構造タンパク質が挙げられる(Greenら、New England J. Med, 324, 5, 308以下参照(1991)およびBryantら(Pizzo編), Pediatr. Infect. Dis. J., 11, 5, 390以下参照(1992))。
【0007】
HIV Nefは初期タンパク質であり、感染の初期に、かつ構造タンパク質の非存在下で発現される。
【0008】
Nef遺伝子は、初期補助HIVタンパク質をコードし、いくつかの活性を有することが示された。例えば、Nefタンパク質は細胞表面からのCD4(HIV受容体)、およびMHCクラスI分子のダウンレギュレーションを引き起こすことが知られているが、これらの機能の生物学的重要性が議論されている。さらに、NefはT細胞のシグナル経路と相互作用し、活性状態を誘導し、次いで、より効率的な遺伝子発現を促進することができる。いくつかのHIV単離体がこの領域に突然変異を有し、これらは機能的タンパク質をコードしないようにし、in vivoでのその複製および病因に重篤な障害が生じる。
【0009】
Gag遺伝子は、前駆体ポリタンパク質として翻訳され、プロテアーゼにより切断されて、マトリックスタンパク質(p17)、キャプシド(p24)、ヌクレオキャプシド(p9)、p6ならびに2つの間隔ペプチド、p2およびp1を含む産物を生じる。
【0010】
Gag遺伝子はp55とも呼ばれる55キロダルトン(kD)のGag前駆体タンパク質を生じ、スプライスされていないウイルスmRNAから発現される。翻訳中に、p55のN末端はミリストイル化され、細胞膜の細胞質面とのその結合が生じる。膜に結合したGagポリタンパク質は、感染細胞の表面からのウイルス粒子の発芽を誘発する他のウイルスタンパク質および細胞タンパク質と共に、2コピーのウイルスゲノムRNAを集合させる。発芽後、p55は、ウイルス成熟のプロセス中に、ウイルスにコードされるプロテアーゼ(pol遺伝子の産物)により、MA(マトリックス[p17]、CA(キャプシド[p24])、NC(ヌクレオキャプシド[p9])、およびp6と呼ばれる4つのより小さいタンパク質に切断される。
【0011】
3つの主要なGagタンパク質に加えて、全てのGag前駆体はいくつかの他の領域を含み、これらは切り出され、様々な大きさのペプチドとしてビリオン中に保持される。これらのタンパク質は異なる役割を有し、例えば、p2タンパク質は前記プロテアーゼの活性を調節する提案された役割を有し、タンパク質分解プロセスの正確なタイミングに寄与する。
【0012】
p17(MA)ポリペプチドはp55のN末端、すなわちミリストイル化された末端から誘導される。多くのMA分子はビリオンの脂質二重層の内部表面に付着されたままであり、粒子を安定化させる。MAのサブセットはビリオンの深い方の層の内部に集合させられ、ここでそれはウイルスDNAを核に送り届ける複合体の一部となる。MA上の核親和性シグナルは細胞の核の取り込み機構により認識されるため、これらのMA分子はウイルスゲノムの核輸送を容易にする。この現象により、HIVは非分裂細胞に感染することができ、これはレトロウイルスに関して普通でない特性である。
【0013】
p24(CA)タンパク質はウイルス粒子の円錐状コアを形成する。シクロフィリンAは、p55のp24領域と相互作用して、HIV粒子へのその取り込みを誘導することが証明されている。GagとシクロフィリンAとの相互作用は、シクロフィリンAによるこの相互作用の破壊がウイルスの複製を阻害するため、必須である。
【0014】
GagのNC領域は、いわゆるHIVのパッケージングシグナルの特異的な認識を担う。このパッケージングシグナルはウイルスRNAの5’末端の近くに位置する4つのステムループ構造からなり、これはHIV−1ビリオンへの異種RNAの取り込みを媒介するのに十分である。NCは2つのジンクフィンガーモチーフにより媒介される相互作用を介してパッケージングシグナルに結合する。NCはまた、逆転写を促進する。
【0015】
p6ポリペプチド領域は、p55 Gagと補助タンパク質Vprとの相互作用を媒介し、集合するビリオンへのVprの取り込みを誘導する。p6領域はまた、感染細胞からの発芽ビリオンの効率的な放出にとって必要であるいわゆる後期ドメインをも含む。
【0016】
Pol遺伝子は、感染初期においてウイルスにより必要とされる2つの活性を含む2つのタンパク質、RTおよびウイルスDNAの細胞DNAへの組込みにとって必要とされるインテグラーゼタンパク質をコードする。Polの主要産物はビリオンプロテアーゼにより切断されて、DNA合成にとって必要な活性を含むアミノ末端RTペプチド(RNAおよびDNA依存的DNAポリメラーゼ活性ならびにRNase H機能)ならびにカルボキシ末端インテグラーゼタンパク質を生じる。HIV RTは、完全長RT(p66)とカルボキシ末端RNase Hドメインを欠く切断産物(p51)とのヘテロ二量体である。
【0017】
RTはレトロウイルスゲノムによりコードされる最も高度に保存されたタンパク質の1つである。RTの2つの主要な活性はDNA PolおよびリボヌクレアーゼHである。RTのDNA Pol活性は、鋳型として互換的にRNAとDNAを使用し、全ての公知のDNAポリメラーゼと同様、de novoでDNA合成を開始することができず、プライマー(RNA)として働く予め存在する分子を必要とする。
【0018】
全てのRTタンパク質において固有のRNase H活性は、DNA合成が進行するにつれてRNAゲノムを除去する複製の初期に必須の役割を果たす。それは全てのRNA−DNAハイブリッド分子からRNAを選択的に分解する。構造的には、ポリメラーゼおよびリボHは、別々の、重複しないドメインを占有し、PolはPolのアミノ酸の3分の2をカバーする。
【0019】
p66触媒サブユニットは5つの異なるサブドメインに折り畳まれる。これらのアミノ末端23はRT活性を含む部分を有する。これらのカルボキシ末端はRNase Hドメインである。
【0020】
WO 03/025003は、HIV−1 p17/24 Gag、NefおよびRTをコードするDNA構築物を記載しており、ここで、このDNA配列をコドン最適化して、高度に発現されるヒト遺伝子に類似させることができる。これらの構築物はDNAワクチンにおいて有用である。
【0021】
複数のHIV抗原を含む融合タンパク質がHIVのためのワクチン候補として提唱されており、例えば、WO 99/16884に記載のようなNef−Tat融合体が挙げられる。しかしながら、融合タンパク質は製造するのが容易ではない;それらは天然のタンパク質と一致しないため、それらを発現させることが難しい場合がある。転写レベルで、またはさらに下流に困難が存在する場合もある。また、それらは製薬上許容し得る組成物に製剤化するのが容易ではない。注目すべきことに、複数の抗原を一緒に融合することを含むHIVワクチンに対する多くの手法は、ポリペプチド融合タンパク質よりもむしろDNAまたは生ベクター手法である。
【特許文献1】WO 03/025003
【特許文献2】WO 99/16884
【非特許文献1】Greenら、New England J. Med, 324, 5, 308 (1991)
【非特許文献2】Bryantら(Pizzo編), Pediatr. Infect. Dis. J., 11, 5, 390 (1992)
【発明の開示】
【0022】
発明の概要
本発明は、HIV感染およびAIDSの予防および治療のためのワクチンにおける使用のための新規構築物を提供する。
【0023】
一態様においては、本発明はNefまたはその免疫原性断片もしくは誘導体、ならびにp17 Gagおよび/もしくはp24 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体を含むポリペプチドであって、p17 Gagとp24 Gagの両方が存在する場合、それらの間には少なくとも1つのHIV抗原またはその免疫原性断片が存在する、前記ポリペプチドを提供する。
【0024】
本明細書に記載の本発明による構築物および組成物においては、Nefは完全長Nefであるのが好ましい。
【0025】
本発明による構築物においては、p17 Gagおよびp24 Gagは、それぞれ完全長のp17およびp24であるのが好ましい。
【0026】
一実施形態においては、前記ポリペプチドはp17およびp24の両方のGagまたはその免疫原性断片を含む。そのような構築物においては、p24 Gag成分とp17 Gag成分は、少なくとも1つのさらなるHIV抗原またはその免疫原性断片、例えば、Nefおよび/もしくはRTまたはその免疫原性断片もしくは誘導体により分離されている。
【0027】
あるいは、p17またはp24のGagを別々に提供する。かくして、本発明はまた、(i)Nefまたはその免疫原性断片もしくは誘導体およびp17 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体を含むポリペプチド、ならびに(ii)p24 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体;または(i)Nefまたはその免疫原性断片もしくは誘導体およびp24 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体を含むポリペプチド、ならびに(ii)p17 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体を含む組成物も提供する。
【0028】
別の実施形態においては、本発明によるポリペプチド構築物は、PolまたはPolの誘導体、例えば、RTまたはその免疫原性断片もしくは誘導体をさらに含む。本発明における使用にとって好適であるRTの特定の断片は、好ましくは、これらがカルボキシ末端RNase Hドメインを欠くように、RTをC末端で切断した断片である。カルボキシ末端RNase Hドメインを欠く1つのそのような断片は、本明細書に記載のp51断片である。
【0029】
好ましくは、本明細書に記載の融合タンパク質中のRTまたはその免疫原性断片はp66 RTまたはp51 RTである。
【0030】
本発明による融合タンパク質または組成物のRT成分は、必要に応じて、メチオニンを、リジン等の別の残基への突然変異により除去するような、位置592での突然変異、またはHXB2以外の株における等価な突然変異を含む。この突然変異の目的は、原核発現系における内部開始部位として働く部位を除去することである。
【0031】
RT成分はまた、またはあるいは、酵素活性(逆転写酵素)を除去するための突然変異を含む。かくして、K231がWの代わりに存在してもよい。
【0032】
p24およびRTを含む本発明による融合タンパク質においては、抗原を大腸菌において単独で発現させる場合、RTよりもp24の方がより良好な発現が観察されるため、p24は前記構築物中でRTの前に配置されるのが好ましい。
【0033】
本発明による好ましい構築物としては、以下のもの:
1. p24−RT−Nef−p17
2. p24−RT*−Nef−p17
3. p24−p51 RT−Nef−p17
4. p24−p51 RT*−Nef−p17
5. p17−p51 RT−Nef
6. p17−p51 RT*−Nef
7. Nef−p17
8. Nef−p17(リンカーあり)
9. p17−Nef
10. p17−Nef(リンカーあり)
(*はRTのメチオニン592のリジンへの突然変異を表す。)
が挙げられる。
【0034】
上記構築物に含まれるリンカーは、それが連結する2つの融合パートナー間での相互作用の可能性を減少させるための任意の短いアミノ酸配列であってよい。このリンカーは、例えば、4〜10アミノ酸の長さであってよい。例えば、それは実施例中、本明細書に記載のGSGGGP配列などの6アミノ酸の配列であってよい。
【0035】
本発明の別の態様においては、Nef、PolおよびGagから誘導される、少なくとも4つのHIV抗原またはその免疫原性断片を含むHIV抗原の融合タンパク質を提供する。Gagは、前記融合体において少なくとも1つの他の抗原により隔てられている2つの別個の成分として存在するのが好ましい。Nefは完全長Nefであるのが好ましい。Polは、p66またはp51RTであるのが好ましい。Gagは、p17およびp24 Gagであるのが好ましい。本発明のこの態様における前記融合体の抗原成分の他の好ましい特徴および特性は、本明細書に記載の通りである。
【0036】
本発明のこの態様の好ましい実施形態は、上記に既に列挙された4つの成分の融合体である:
1. p24−RT−Nef−p17
2. p24−RT*−Nef−p17
3. p24−p51 RT−Nef−p17
4. p24−p51 RT*−Nef−p17。
【0037】
本発明に含まれるHIV抗原に関する用語「から誘導される」または「誘導体」とは、該抗原がその天然の対応物と比較して限定された方法で変更されていることを意味する。これは、例えば、原核系における発現を改良するか、または望ましくない酵素活性などの望ましくない活性を除去することにより、該タンパク質の特性を変化させ得る点突然変異を含む。RTに関する本明細書に記載の点突然変異を、これらの事象を達成するために設計する。しかしながら、前記抗原は、それらがワクチンにおいて望ましい抗原特性を保持し、かくして、それらが天然の抗原に対する免疫応答を生じる能力を保持するように、該天然の抗原と十分に類似したままでなければならない。特定の誘導体がそのような免疫応答を生じるかどうかを、ELISA(抗体応答について)または細胞マーカーおよびサイトカインのための好適な染色を用いるフローサイトメトリー(細胞応答について)などの好適な免疫学的アッセイにより測定することができる。
【0038】
本発明によるHIV抗原のポリペプチド構築物を、大腸菌などの原核系などのin vitro系で発現させることができる。有利には、これらを従来の精製方法により精製することができる。
【0039】
本明細書に記載の融合体は、選択された発現系において発現される場合、可溶性である、すなわち、それらが該発現系からの粗抽出物の上清中に実質的な量で存在するのが好ましい。該粗抽出物中の融合タンパク質の存在を、SDSゲル上での泳動、クマシー染色および密度測定による好適なバンドのチェックなどの従来の手段により測定することができる。本発明による融合タンパク質は、実施例中、本明細書に記載の技術により測定した場合、好ましくは少なくとも50%可溶性、より好ましくは少なくとも70%可溶性、より好ましくは90%以上可溶性である。組換え発現されたタンパク質の可溶性を改善するための技術は公知であり、例えば、原核発現系においては、遺伝子発現を誘導する温度を低下させることにより、可溶性が改善する。
【0040】
本明細書に記載の融合タンパク質を精製することができる。具体的には、それらを、可溶性であるか、または顕著に可溶性であるまま精製することができる。
【0041】
本明細書に記載の免疫原性断片は、前記抗原の少なくとも1つのエピトープを含み、HIV抗原性を示し、また、例えば、他のHIV抗原に融合されるか、または担体上に存在する場合など、好適な構築物中に存在する場合、前記天然の抗原に対する免疫応答を生じる能力を有するであろう。典型的には、前記免疫原性断片は、HIV抗原に由来する、少なくとも20個、好ましくは50個、より好ましくは100個の連続したアミノ酸を含む。
【0042】
本発明は、さらなる態様において、本発明によるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0043】
本発明によるポリヌクレオチドを、ポリヌクレオチドワクチンとして用いることができる。このポリヌクレオチドを、プラスミドDNA、細菌およびウイルス発現系などの核酸発現系などの、当業者には公知の様々な送達系のいずれかの中に存在させることができる。Rolland, Crit. Rev. Therap. Drug Carrier Systems 15: 143-198, 1998およびそこに引用された参考文献により記載されたものなどの、いくつかの遺伝子送達技術が当分野でよく知られている。好適な核酸発現系は、患者における発現のための必須DNA配列(好適なプロモーターおよび終結シグナルなど)を含む。この発現系が、ウイルスまたは細菌などの組換え生微生物である場合、目的の遺伝子を、生の(live)組換えウイルスまたは細菌のゲノム中に挿入することができる。この生ベクターを用いる接種およびin vivoでの感染は、前記抗原のin vivoでの発現および免疫応答の誘導をもたらすであろう。この目的のために用いられるウイルスおよび細菌は、例えば、ポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、改変ポックスウイルス、例えば、改変ウイルスアンカラ(MVA))、アルファウイルス(シンドビスウイルス、セムリキフォレストウイルス、ベネズエラ馬脳炎ウイルス)、フラビウイルス(黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、日本脳炎ウイルス)、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ピコルナウイルス(ポリオウイルス、ライノウイルス)、ヘルペスウイルス(水痘帯状疱疹ウイルスなど)、麻疹ウイルス(例えば、麻疹)、リステリア菌、サルモネラ菌、シゲラ菌、ナイセリア菌、BCGである。これらのウイルスおよび細菌は毒性のものであってもよいし、または生ワクチンを取得するために様々な方法で弱毒化されたものであってもよい。そのような生ワクチンも本発明の一部を形成する。
【0044】
本発明による生ベクターとしての使用のための好ましい麻疹ベクターは、Schwartz株またはそれから誘導された株である。
【0045】
生ベクターとしての使用のための好ましいアデノウイルスは、Ad5もしくはAd35などの低い血清陽性率のヒトアデノウイルスか、またはサルアデノウイルスなどの非ヒト霊長類アデノウイルスなどの非ヒト起源のアデノウイルスである。そのような低い血清陽性率のヒトまたは類似のアデノウイルスは、集団中で60%未満、典型的には50%未満の血清陽性率を有するであろう。このベクターは複製欠損性であるのが好ましい。典型的には、これらのウイルスは、E1欠失を含み、E1遺伝子で形質転換された細胞株で増殖させることができる。好ましいサルアデノウイルスは、チンパンジーから単離されたウイルスである。特に、C68(Pan9としても知られる)(米国特許第6,083,716号を参照)ならびにPan5、6およびPan7(WO 03/046124)が本発明における使用にとって好ましい。これらのベクターを操作して、本発明によるポリペプチドが発現されるように、本発明による異種性ポリヌクレオチドを挿入することができる。そのような組換えアデノウイルスベクターの使用、製剤および製造はWO 03/046142に詳細に記載されている。
【0046】
かくして、本発明による好ましいワクチンのNef、p17およびp24 GagならびにRTを、所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの形態で提供することができる。
【0047】
本発明によるポリヌクレオチドを用いて、選択された発現系において、コードされたポリペプチドを発現させることができる。少なくとも1つのHIV抗原、例えば、RTを、ポリヌクレオチド中のコドン最適化された配列によりコードさせることができる。すなわち、この配列を、大腸菌などの選択された組換え発現系における発現のために最適化することができる。
【0048】
本発明の別の態様においては、好ましくは、好適な発現系、特に、大腸菌などの原核生物系における発現のためにコドン最適化された、p51 RTポリペプチドもしくはその誘導体またはそれをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0049】
p51 RTポリペプチドもしくはポリヌクレオチドを、単独で、または本発明によるポリペプチドもしくはポリヌクレオチド構築物と組合わせて用いることができる。かくして、本発明のさらなる態様においては、(i)NefまたはNefエピトープを含む断片ならびにp17 Gagおよび/もしくはp24 Gagを含むポリペプチドであって、p17およびp24の両方のGagが存在する場合、それらの間に少なくとも1つのHIV抗原または免疫原性断片が存在するポリペプチド、ならびに(ii)p51 RTポリペプチドを含む組成物を提供する。本発明はさらに、これらをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0050】
この実施形態に従えば、(i)を、例えば、
1. Nef−p17
2. Nef−p17(リンカーあり)
3. p17−Nef
4. p17−Nef(リンカーあり)
から選択することができる。
【0051】
好ましくは、Nefは完全長のNefである。好ましくは、p17は完全長のp17である。
【0052】
本発明によるポリペプチドおよびポリヌクレオチドを、他の抗原または他の抗原をコードするポリヌクレオチドと組合わせることができる。特に、これはHIVのenvタンパク質またはその断片もしくは誘導体を含んでもよい。envの好ましい形態はgp120、gp140およびgp160である。このenvは、例えば、R2として知られるHIV−1のクレードBエンベロープクローンに由来する、WO 00/07631に記載のエンベロープタンパク質、またはその断片もしくは誘導体であってよい。かくして、本発明はさらに、HIV envタンパク質またはその断片もしくは誘導体と共に、本発明によるポリペプチド群のいずれかを含む組成物またはポリペプチド組成物を提供する。同様に、本発明は、本発明によるポリペプチドもしくはポリペプチド群をコードするポリヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド群およびHIVのenvタンパク質またはその断片もしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドを含む組成物を提供する。
【0053】
本発明はさらに、本明細書に記載のポリペプチドを調製する方法であって、好適な発現系、特に、大腸菌などの原核生物系において前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現させること、および発現されたポリペプチドを回収することを含む前記方法を提供する。発現を低温、すなわち、37℃より低い温度で誘導して、前記ポリペプチドの可溶性を促進するのが好ましい。
【0054】
本発明はさらに、本明細書に記載のポリペプチドの精製方法であって、
i) 未精製ポリペプチドを含む組成物を用意すること;
ii) 該組成物を少なくとも2つのクロマトグラフィー工程に供すること;
iii)必要に応じて、該ポリペプチドをカルボキシアミド化すること;
iv) 製剤化に適したバッファー中に該タンパク質を提供するためにバッファー交換工程を行うこと、
を含む方法を提供する。
【0055】
カルボキシアミド化を、2つのクロマトグラフィー工程の間に行ってもよい。カルボキシアミド化を、ヨードアセトイミドを用いて行ってもよい。
【0056】
1つの例においては、本発明による方法は2つ以下のクロマトグラフィー工程を用いる。
【0057】
本発明はさらに、本発明によるポリペプチドおよびポリヌクレオチドと、製薬上許容し得るアジュバントまたは担体とを含む医薬組成物および免疫原性組成物およびワクチンを提供する。
【0058】
本発明によるワクチンを、HIVに対する予防的または治療的な免疫付与に用いることができる。
【0059】
本発明はさらに、HIVに対する予防的または治療的な免疫付与のためのワクチンの製造における、本明細書に記載のポリペプチドおよびポリペプチド組成物ならびにポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチド組成物の使用を提供する。
【0060】
本発明のワクチンは、免疫保護的もしくは免疫治療的な量のポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチド抗原を含み、これを従来の技術により調製することができる。
【0061】
ワクチンの調製は、New Trends and Developments in Vaccines, Vollerら(編), University Park Press, Baltimore, Maryland, U.S.A. 1978に一般的に記載されている。リポソーム内へのカプセル封入は、例えば、Fullertonの米国特許第4,235,877号に記載されている。巨大分子へのタンパク質の結合は、例えば、Likhiteの米国特許第4,372,945号およびArmorらの米国特許第4,474,757号により開示されている。
【0062】
ワクチン用量中のタンパク質の量を、典型的なワクチンにおいて、顕著な有害副作用を示すことなく免疫保護応答を誘導する量として選択する。そのような量は、どの特異的免疫原を用いるか、およびどのワクチン接種計画を選択するかに依存して変化するであろう。一般的には、各用量は1〜1000μgの各タンパク質、好ましくは2〜200μg、最も好ましくは4〜40μgのポリペプチド融合体を含むと予想される。特定のワクチンにとって最適な量を、被験体における抗体力価および他の免疫応答の観察を含む標準的な試験により確認することができる。初回のワクチン接種の後、被験体は約4週間以内に追加免疫を受けてもよく、続いて、2回目の追加免疫を受けてもよい。
【0063】
本発明のタンパク質を、本発明のワクチン製剤中でアジュバント化するのが好ましい。アジュバントは、「ワクチンの設計-サブユニットおよびアジュバント手法(Vaccine Design - the Subunit and Adjuvant Approach)」、PowellおよびNewman(編), Plenum Press, New York, 1995に一般的に記載されている。
【0064】
好適なアジュバントとしては、水酸化アルミニウムもしくはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩が挙げられるが、カルシウム、鉄もしくは亜鉛の塩であってもよく、またはアシル化されたチロシン、もしくはアシル化された糖、陽イオンもしくは陰イオン的に誘導体化された多糖、もしくはポリホスファゼンの不溶性懸濁液であってもよい。
【0065】
本発明の製剤においては、前記アジュバント組成物は優先的にTh1応答を誘導するのが好ましい。しかしながら、他の体液性応答などの他の応答も排除されないことが理解されるであろう。
【0066】
免疫応答を、抗原と、免疫系の細胞との相互作用を介して、該抗原に対して生じさせる。得られる免疫応答を、体液性免疫応答または細胞媒介性免疫応答の2つの極端なカテゴリー(通常は、それぞれ抗体および防御の細胞性エフェクター機構を特徴とする)に広く区別することができる。応答のこれらのカテゴリーは、Th1型応答(細胞媒介性応答)、およびTh2型免疫応答(体液性応答)と呼ばれてきた。
【0067】
極端なTh1型免疫応答は、抗原特異的な、ハプロタイプにより制限された細胞傷害性Tリンパ球、およびナチュラルキラー細胞応答の生成を特徴とする。マウスにおいては、Th1型応答は、IgG2aサブタイプの抗体の生成を特徴とすることが多いが、ヒトにおいては、これらはIgG1型抗体に対応する。Th2型免疫応答は、マウスのIgG1、IgA、およびIgMなどの広範囲の免疫グロブリンアイソタイプの生成を特徴とする。
【0068】
これらの2つの型の免疫応答の発達を助ける駆動力はサイトカインであり、いくつかの同定されたタンパク質メッセンジャーは免疫系の細胞を助けるように働き、Th1またはTh2応答のいずれかに対して結果として起こる免疫応答を制御すると考えられる。かくして、高レベルのTh1型サイトカインは、所与の抗原に対する細胞媒介性免疫応答を誘導しやすい傾向があるが、高レベルのTh2型サイトカインは該抗原に対する体液性免疫応答を誘導しやすい傾向がある。
【0069】
Th1型およびTh2型の免疫応答の区別が絶対的なものではないことを覚えておくことが重要である。実際には、個体は、主にTh1または主にTh2として表される免疫応答を支持するであろう。しかしながら、マウスCD4+T細胞クローンにおいてMosmannおよびCoffman (Mosmann, T.R.およびCoffman, R.L. (1989) TH1 and TH2 cells: different patterns of lymphokine secretion lead to different functional properties., Annual Review of Immunology, 7, p145-173)により記載されたという点で、サイトカインのファミリーであると考えるのが都合が良いことが多い。通常は、Th1型応答は、Tリンパ球によるINF−γおよびIL−2サイトカインの産生と関連する。他のサイトカインは、IL−12などのT細胞により産生されないTh1型免疫応答の誘導と直接関連することが多い。対照的に、Th2型応答は、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10および腫瘍壊死因子−β(TNF−β)の分泌と関連する。
【0070】
特定のワクチンアジュバントが、Th1またはTh2型のサイトカイン応答の刺激にとって特に好適であることが知られている。伝統的には、ワクチン接種または感染後の免疫応答のTh1:Th2の平衡の最良の指示因子としては、抗原による再刺激後のin vitroでのTリンパ球によるTh1もしくはTh2サイトカインの産生の直接的測定、および/または抗原特異的抗体応答のIgG1:IgG2a比の測定が挙げられる。
【0071】
かくして、Th1型アジュバントは、単離されたT細胞集団を刺激して、in vitroで抗原により再刺激された場合、高レベルのTh1型サイトカインを産生し、かつTh1型アイソタイプと関連する抗原特異的免疫グロブリン応答を誘導するものである。
【0072】
本発明における使用にとって好適なアジュバントを製造するために製剤化することができる好ましいTh1型免疫刺激因子としては、限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。モノホスホリルリピドA、特に、3−デ−O−アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL)が、本発明における使用にとって好ましいTh1型免疫刺激因子である。3D−MPLはRibi Immunochem, Montanaにより製造されるよく知られたアジュバントである。化学的には、それは3−デ−O−アシル化モノホスホリルリピドAと、4、5、または6アシル化鎖との混合物として供給されることが多い。それを、GB2122204Bに教示された方法により精製および調製することができ、この参考文献はジホスホリルリピドA、およびその3−O−デアシル化変種の調製も開示している。他の精製されたリポ多糖および合成リポ多糖が記載されている(米国特許第6,005,099号およびEP 0 729 473 B1;Hilgersら、1986, Int.Arch.Allergy.Immunol., 79(4):392-6;Hilgersら、1987, Immunology, 60(1):141-6;およびEP 0 549 074 B1)。3D−MPLの好ましい形態は、直径0.2μm未満の小さい粒径を有する粒子状製剤の形態にあり、その製造方法はEP 0 689 454に開示されている。
【0073】
サポニンも、本発明に従う好ましいTh1免疫刺激因子である。サポニンはよく知られたアジュバントであり、Lacaille-Dubois, MおよびWagner H (1996. A review of the biological and pharmacological activities of saponins., Phytomedicine vol 2 pp 363-386)に教示されている。例えば、Quil A(南アメリカの樹木キラヤ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮に由来する)、およびその画分が、米国特許第5,057,540号および”Saponins as vaccine adjuvants.” Kensil, C.R., Crit Rev Ther Drug Carrier Syst, 1996, 12(1-2):1-55;ならびにEP 0 362 279 B1に記載されている。溶血性サポニンQS21およびQS17(Quil AのHPLC精製された画分)が強力な全身性アジュバントとして記載されており、その製造方法は米国特許第5,057,540号およびEP 0 362 279 B1に開示されている。また、これらの参考文献には、全身性ワクチンのための強力なアジュバントとして働くQS7(Quil Aの非溶血性画分)の使用も記載されている。QS21の使用は、Kensilら(1991. J. Immunology vol 146, 431-437)にさらに記載されている。QS21とポリソルベートまたはシクロデキストリンとの組合せも公知である(WO 99/10008)。QS21およびQS7などのQuil Aの画分を含む粒子状アジュバント系はWO 96/33739およびWO 96/11711に記載されている。1つのそのような系はIscornとして公知であり、1種以上のサポニンを含んでもよい。
【0074】
別の好ましい免疫刺激因子は、非メチル化CpGジヌクレオチド(「CpG」)を含む免疫刺激性オリゴヌクレオチドである。CpGはDNA中に存在するシトシン−グアノシンジヌクレオチドモチーフの省略形である。CpGは、全身経路および粘膜経路の両方により投与される場合のアジュバントとして当分野で公知である(WO 96/02555、EP 468520、Davisら、J.Immunol, 1998, 160(2):870-876; McCluskieおよびDavis, J.Immunol., 1998, 161(9):4463-6)。歴史的には、BCGのDNA画分が抗腫瘍作用を示し得ることが観察された。さらなる研究において、BCG遺伝子配列から誘導された合成オリゴヌクレオチドが、免疫刺激作用を誘導することができる(in vitroおよびin vivoの両方において)ことが示された。これらの研究の著者らは、中央のCGモチーフなどの、特定のパリンドローム配列がこの活性を有すると結論付けた。免疫刺激におけるCGモチーフの中心的な役割はKrieg, Nature 374, p546 1995による刊行物において後に解明された。詳細な分析により、CGモチーフが特定の配列の前後関係の中になければならず、そのような配列は細菌のDNAにおいて一般的であるが、脊椎動物のDNAにおいては稀であることが示された。免疫刺激性配列は多い:プリン、プリン、C、G、ピリミジン、ピリミジン;ここで、CGモチーフはメチル化されていないが、他の非メチル化CpG配列も免疫刺激性であることが知られており、本発明において用いることができる。
【0075】
6つのヌクレオチドの特定の組合せ中に、パリンドローム配列が存在する。これらのモチーフのいくつか、1つのモチーフの繰り返しまたは異なるモチーフの組合せのいずれかが、同じオリゴヌクレオチド中に存在してもよい。これらの免疫刺激性配列を含む1つ以上のオリゴヌクレオチドの存在は、ナチュラルキラー細胞(インターフェロンγを産生し、細胞溶解活性を有する)およびマクロファージ(Wooldrigeら、Vol 89 (no. 8), 1977)などの様々な免疫サブセットを活性化することができる。この共通配列を含まない他の非メチル化CpGを含む配列も、現在では免疫刺激性であることが示されている。
【0076】
ワクチン中で製剤化する場合、一般的には、CpGを、遊離の抗原と共に遊離の溶液中で投与するか(WO 96/02555;McCluskieおよびDavis,上掲)、または抗原に共有結合させるか(WO 98/16247)、または水酸化アルミニウムなどの担体と共に製剤化する((肝炎表面抗原) Davisら、上掲; Brazolot-Millanら、Proc.Natl.Acad.Sci., USA, 1998, 95(26), 15553-8)。
【0077】
上記のような免疫刺激因子を、例えば、リポソーム、水中油型乳濁液、および/またはアルミニウム塩(水酸化アルミニウムなど)などの金属塩などの担体と一緒に製剤化することができる。例えば、3D−MPLを、水酸化アルミニウム(EP 0 689 454)または水中油型乳濁液(WO 95/17210)と共に製剤化することができる;有利には、QS21を、コレステロールを含有するリポソーム(WO 96/33739)、水中油型乳濁液(WO 95/17210)またはミョウバン(WO 98/15287)と共に製剤化することができる;CpGを、ミョウバンと共に(Davisら、上掲; Brazolot-Millan、上掲)または他の陽イオン性担体と共に製剤化することができる。
【0078】
免疫刺激因子の組合せ、特に、モノホスホリルリピドAとサポニン誘導体の組合せ(WO 94/00153;WO 95/17210;WO 96/33739;WO 98/56414;WO 99/12565;WO 99/11241)、より具体的には、WO 94/00153に開示されたようなQS21と3D−MPLの組合せも好ましい。あるいは、CpGとQS21などのサポニンの組合せも、本発明における使用のための強力なアジュバントを形成する。あるいは、サポニンをリポソーム中で、またはIscorn中で製剤化し、免疫刺激性オリゴヌクレオチドと組合わせることもできる。
【0079】
かくして、好適なアジュバント系としては、例えば、モノホスホリルリピドA、好ましくは3D−MPLと、アルミニウム塩との組合せが挙げられる。増強された系は、モノホスホリルリピドAとサポニン誘導体の組合せ、特に、WO 94/00153に開示されたようなQS21と3D−MPLの組合せ、またはWO 96/33739に開示されたようなコレステロールを含有するリポソーム(DQ)中でQS21をクエンチする低反応性組成物を含む。この組合せはさらに、免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含んでもよい。
【0080】
水中油型乳濁液中にQS21、3D−MPLおよびトコフェロールを含む特に強力なアジュバント製剤がWO 95/17210に記載されており、本発明における使用にとって別の好ましい製剤である。
【0081】
別の好ましい製剤は、CpGオリゴヌクレオチドのみ、またはCpGオリゴヌクレオチドとアルミニウム塩とを含む。
【0082】
本発明のさらなる態様においては、本発明によるポリペプチドを、好適なアジュバントと混合することを含む、本明細書に記載のワクチン製剤の製造方法を提供する。
【0083】
本発明による製剤における使用にとって特に好ましいアジュバントの組合せは以下の通りである:
i) 3D−MPL+QS21(リポソーム中)
ii) ミョウバン+3D−MPL
iii) ミョウバン+QS21(リポソーム中)+3D−MPL
iv) ミョウバン+CpG
v) 3D−MPL+QS21+水中油型乳濁液
vi) CpG。
【0084】
医薬組成物の投与は、例えば、同じポリペプチドを含む組成物の反復用量として、または異種性の「初回−追加」ワクチン接種計画中での、1もしくは2回以上の個々の用量の形態を取ってもよい。異種性の初回−追加計画は、初回および追加において異なる形態のワクチンの投与を使用し、その各々はそれ自身、2回以上の投与を含んでもよい。初回用組成物および追加用組成物は、一般的には少なくとも1種の抗原を有するが、それは同一の形態の抗原である必要はなく、同じ抗原の異なる形態であってもよい。
【0085】
本発明による初回−追加免疫を、タンパク質およびDNAに基づく製剤の組合せを用いて実施することができる。そのような戦略は、広範な免疫応答を誘導するのに有効であると考えられる。アジュバント化されたタンパク質ワクチンは、主に抗体およびTヘルパー免疫応答を誘導するが、プラスミドまたは生ベクターとしてのDNAの送達は強力な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を誘導する。かくして、タンパク質およびDNAワクチン接種の組合せは幅広い免疫応答を提供するであろう。中和抗体およびCTLは両方ともHIVに対する免疫防御にとって重要であると考えられるため、これはHIVとの関連において特に適切である。
【0086】
本発明に従えば、ワクチン接種のためのスケジュールは、ポリペプチド抗原および該ポリペプチドをコードするDNAの連続的(「初回−追加」)または同時的な投与を含んでもよい。このDNAを、プラスミドDNAなどの裸のDNAとして、または、例えば、ポックスウイルスベクター、アデノウイルスベクター、麻疹ウイルスベクターもしくは任意の他の好適な生ベクターなどの組換え生ベクターの形態で送達することができる。タンパク質抗原を、1回もしくは数回注入した後、1回以上、DNAを投与してもよいし、またはDNAを最初に1回以上の投与に用いた後、1回以上のタンパク質による免疫付与に用いてもよい。
【0087】
本発明による初回−追加免疫の特定例は、改変ポックスウイルスベクター、例えば、改変ウイルスアンカラ(MVA)もしくはアルファウイルス、例えば、ベネズエラ馬脳炎ウイルス、またはアデノウイルスベクター、または麻疹ウイルスベクターなどの組換え生ベクターの形態のDNAを用いて初回免疫した後、タンパク質、好ましくはアジュバント化されたタンパク質を用いて追加免疫することを含む。
【0088】
かくして、本発明はさらに、以下のもの:
a)Nefまたはその免疫原性断片もしくは誘導体ならびにp17および/もしくはp24 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体を含むポリペプチドであって、p17およびp24の両方のGagが存在する場合、それらの間に少なくとも1つのHIV抗原またはその免疫原性断片もしくは誘導体が存在するポリペプチドと、製薬上許容し得る賦形剤とを含む組成物;ならびに
b)1つ以上のNefおよびGagをコードするポリヌクレオチドまたはa)のポリペプチド中に存在するNefもしくはGagエピトープを含むNefもしくはGagの免疫原性断片もしくは誘導体と、製薬上許容し得る賦形剤とを含む組成物、
を含む医薬キットを提供する。
【0089】
好ましくは、a)のポリペプチドは、RTまたはその免疫原性断片もしくは誘導体、例えば、p51RTなどをさらに含む。
【0090】
代替的な実施形態においては、前記医薬キットは、
a)Nefまたはその免疫原性断片もしくは誘導体ならびにp17および/もしくはp24 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、p17およびp24の両方のGagが存在する場合、それらの間に少なくとも1つのHIV抗原またはその免疫原性断片もしくは誘導体が存在するポリヌクレオチドと、製薬上許容し得る賦形剤とを含む組成物;ならびに
b)1つ以上のNefおよびGagを含むポリペプチドまたはa)のポリペプチド中に存在するNefもしくはGagエピトープを含むNefもしくはGagの免疫原性断片もしくは誘導体と、製薬上許容し得る賦形剤とを含む組成物、
を含む。
【0091】
好ましくは、a)のポリヌクレオチドは、RTまたはその免疫原性断片もしくは誘導体、例えば、p51RTなどをさらに含むポリペプチドをコードする。
【0092】
本発明による初回/追加キットにおける使用にとって好ましいポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、本明細書に記載のポリペプチドおよびポリヌクレオチドである。かくして、タンパク質/DNA型の初回−追加手法のタンパク質成分は、本明細書に記載の好ましい融合タンパク質のいずれかであってよい。同様に、DNA成分は好ましいタンパク質のいずれかをコードするポリヌクレオチドであってよい。
【0093】
かくして、例えば、本明細書に記載のp24-RT-Nef-p17、p24-RT*-Nef-p17、p24-p51RT-Nef-p17、p24-p51RT*-Nef-p17、p17-p51RT-Nefもしくはp17-p51RT*-Nef融合体またはp17−Nef融合体のいずれかを、初回用組成物が融合タンパク質を含み、追加用組成物が該融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むか、または初回用組成物が該ポリヌクレオチドを含み、追加用組成物が該融合タンパク質を含む、初回−追加キット中で提供することができる。
【0094】
初回用組成物および追加用組成物は両方とも、2回以上の用量中で送達することができる。さらに、最初の初回および追加用量に、例えば、DNAプラスミドによる初回/タンパク質による追加/さらなるDNAプラスミド用量/さらなるタンパク質用量をもたらすように変化させてもよいさらなる用量を続けることができる。
【0095】
コドン最適化とは、ポリヌクレオチド配列を、所望の発現系、例えば、大腸菌などの原核生物系における遺伝子のコドン使用頻度に類似するように最適化することを意味する。特に、該配列におけるコドン使用頻度を、高度に発現される大腸菌遺伝子のものと類似するように最適化する。
【0096】
本発明による組換え系における発現のためのコドン最適化の目的は2つである:組換え産物の発現レベルを改善すること、および発現産物をより均質にさせること(より均質な発現パターンを取得すること)である。改善された均質性とは、切断型などの無関係の発現産物があまり存在しないことを意味する。大腸菌発現へのコドン使用頻度の利用により、推定「フレームシフト」配列ならびに早期終結および/または内部開始部位を排除することもできる。
【0097】
DNAコードは4文字(A、T、CおよびG)を有し、これらを用いて、生物の遺伝子中にコードされるタンパク質中のアミノ酸を表す、3文字の「コドン」を綴る。DNA分子に沿ったコドンの直線状配列を、これらの遺伝子によりコードされるタンパク質中のアミノ酸の直線状配列に翻訳する。このコードは非常に縮重性が高く、61種類のコドンが20種類の天然アミノ酸をコードし、3種類のコドンは「停止」シグナルを表す。かくして、多くのアミノ酸は2種類以上のコドンによりコードされ、実際、いくつかのものは4種類以上の異なるコドンによりコードされる。
【0098】
所与のアミノ酸をコードさせるのに2種類以上のコドンが利用可能である場合、生物のコドン使用パターンが非常に非無作為的であることが観察された。異なる種は、そのコドン選択において異なる偏りを示し、さらに、コドンの使用頻度は高レベルおよび低レベルで発現される遺伝子間で、1つの種において顕著に異なっていてもよい。この偏りは、ウイルス、植物、細菌および哺乳動物細胞中で異なっており、いくつかの種は他のものよりも無作為なコドン選択から離れてより強い偏りを示す。例えば、ヒトおよび他の哺乳動物は特定の細菌またはウイルスよりもあまり強く偏っていない。これらの理由から、大腸菌中で発現される哺乳動物ウイルス由来のウイルス遺伝子、または哺乳動物細胞中で発現される外来遺伝子もしくは組換え遺伝子が、効率的な発現のためには不適当なコドンの分布を有するかなり大きな可能性が存在する。コドンのクラスターの異種DNA配列中での存在、または発現を起こさせる宿主中で稀に観察されるコドンが多く含まれることは、その宿主における低い異種性発現レベルを予測させる。
【0099】
かくして、本発明のポリヌクレオチドにおいては、コドン使用パターンを、典型的なヒト免疫不全ウイルスのものから変化させて、標的生物、例えば、大腸菌のコドンの偏りにより近づけることができる。
【0100】
コドン最適化にとって有用な様々な公共的に利用可能なプログラムが存在し、例えば、「CalcGene」(HaleおよびThompson, Protein Expression and Purification 12: 185-189 (1998))が挙げられる。
【実施例1】
【0101】
HIV−1 p24−RT−Nef−p17融合体F4およびコドン最適化されたF4(co)の構築および発現
1.コドン最適化されていないF4
HIV−1 gag p24(キャプシドタンパク質)およびp17(マトリックスタンパク質)、逆転写酵素およびNefタンパク質を、バクテリオファージT7プロモーター(pET発現系)の制御下で、大腸菌B834株(B834(DE3)はBL21(DE3)のメチオニン要求性の親株である)で発現させた。
【0102】
これらを、4つのタンパク質の完全な配列を含む1個の融合タンパク質として発現させた。成熟p24コード配列はHIV−1 BH10分子クローンに由来し、成熟p17配列およびRT遺伝子はHXB2に由来し、かつNef遺伝子はBRU単離体に由来する。
【0103】
誘導後、組換え細胞は総タンパク質の10%の量の顕著なレベルのp24−RT−Nef−p17融合体を発現した。
【0104】
細胞を22℃で増殖および誘導した場合、p24−RT−Nef−p17融合タンパク質は主に細菌ライセートの可溶性画分に確認された(凍結/解凍の後でも)。30℃で増殖させた場合、約30%の組換えタンパク質が不溶性画分に存在した。
【0105】
融合タンパク質p24−RT−Nef−p17は1136個のアミノ酸からなり、約129kDaの分子量を有する。完全長タンパク質はSDSゲル上で約130kDaに移動する。このタンパク質は、そのアミノ酸配列に基づいて7.96の理論等電点(pI)を有し、これは2D−ゲル電気泳動により確認された。
【0106】
組換えプラスミドの詳細
名称: pRIT15436(または研究室における名称pET28b/p24−RT−Nef−p17)
宿主ベクター:pET28b
レプリコン:colE1
選択: カナマイシン
プロモーター:T7
インサート:p24−RT−Nef−p17融合遺伝子。
【0107】
組換えタンパク質の詳細
p24−RT−Nef−p17融合タンパク質:1136アミノ酸
N末端−p24:232a.a.−ヒンジ:2a.a.−RT:562a.a.−ヒンジ:2a.a.−Nef:206a.a.−P17:132a.a.−C末端
【0108】
ヌクレオチドおよびアミノ酸配列:
ヌクレオチド配列
【表1】
[配列番号1]
p24配列を太字で示す。
Nef配列を下線付きで示す。
囲み:遺伝子構築により導入されたヌクレオチド。
【0109】
アミノ酸配列
【表2】
[配列番号2]
P24配列:アミノ酸1−232(太字)
RT配列:アミノ酸235−795
Nef配列:アミノ酸798−1002
P17配列:アミノ酸1005−1136
囲み:遺伝子構築により導入されたアミノ酸
K(リジン):トリプトファン(W)の代わり。酵素活性を除去するために導入された突然変異。
【0110】
組換えタンパク質の発現:
pETプラスミドにおいては、標的遺伝子(p24−RT−Nef−p17)は強力なバクテリオファージT7プロモーターの制御下にある。このプロモーターは大腸菌RNAポリメラーゼにより認識されず、宿主細胞中のT7 RNAポリメラーゼの起源に依存する。B834(DE3)宿主細胞は、lacUV5の制御下のT7 RNAポリメラーゼ遺伝子の染色体コピーを含み、その発現は細菌培養物へのIPTGの添加により誘導される。
【0111】
前培養物を、振とうフラスコ中、37℃で中間対数増殖期(A620:0.6)まで増殖させた後、4℃で一晩保存した(静止期培養を避けるため)。培養物を、1%グルコースおよび50μg/mlカナマイシンを添加したLBT培地中で増殖させた。増殖培地へのグルコースの添加は、基底状態での組換えタンパク質発現を減少させる利点を有する(lacUV5プロモーターのcAMP媒介性抑制を回避する)。
【0112】
4℃で一晩保存した10mlの培養物を用いて、カナマイシンを含む200mlのLBT培地(グルコースを含まない)に植菌した。培養物を30℃および22℃で増殖させ、O.D.620が0.6に達した時、IPTGを添加した(最終濃度1mM)。培養物をさらに3、5および18時間(一晩)インキュベートした。サンプルを、誘導前と、誘導の3、5および18時間後に回収した。
【0113】
抽出物の調製は以下の通りであった:
細胞ペレットをブレーキングバッファー*中に懸濁し(10の理論的O.D.で)、フレンチプレス(20,000psiまたは1250バール)に4回の通すことにより破壊した。粗抽出物(T)を20,000gで30分間遠心分離して、可溶性画分(S)と不溶性画分(P)とを分離した。
【0114】
*ブレーキングバッファー:50mM Tris−HCl pH8.0、1mM EDTA、1mM DTT+プロテアーゼインヒビターカクテル(Complete/Boerhinger)。
【0115】
SDS−PAGEおよびウェスタンブロット分析:
不溶性ペレット(P)、上清(S)および粗抽出物(T)に対応する画分を、10%の還元的SDS−PAGEで泳動した。p24−RT−Nef−p17組換え体を、クマシーブルー染色により、およびウェスタンブロット(WB)で検出した。
【0116】
クマシー染色:p24−RT−Nef−p17タンパク質は以下のように現れる:
130kDa付近(算出されたMWに適合する)の1本のバンド
MW理論値:128,970ダルトン
MW見かけ:130kDa
ウェスタンブロット分析:
試薬= ・RT(p66/p51)に対するモノクローナル抗体
ABI(Advanced Biotechnologies)から購入
希釈率:1/5000
・アルカリホスファターゼコンジュゲート抗マウス抗体
希釈率:1/7500
発現レベル: 22℃で20時間の誘導後の非常に強力なp24−RT−Nef−p17特異的バンド、総タンパク質の最大10%にあたる(図1Aを参照)。
【0117】
組換えタンパク質の「可溶性」:
「新鮮な」細胞抽出物(T、S、P画分):22℃で20時間の増殖/誘導を用いた場合、ほとんど全てのp24−RT−Nef−p17融合タンパク質が細胞抽出物の可溶性画分中に回収される(図1A)。30℃で20時間の増殖/誘導を用いた場合、約30%のp24−RT−Nef−p17タンパク質が不溶性画分に存在する(図1A)。
【0118】
「凍結/解凍」(S2、P2画分):
可溶性画分(S1)(22℃で20時間の誘導)を−20℃で保存した。解凍および20,000g/30分間で遠心分離:S2およびP2(1/10容量中に再懸濁)。
【0119】
DTTを含むブレーキングバッファー:ほとんど全てのp24−RT−Nef−p17融合タンパク質が可溶性のままであった(1〜5%のみが沈降)(図1Bを参照)。
【0120】
DTTを含まないブレーキングバッファー:85〜90%のp24−RT−Nef−p17が可溶性のままであった(図1B)。
【0121】
図面:
図1A−クマシー染色およびウェスタンブロット
図1B−p24−RT−Nef−p17可溶性アッセイ。
【0122】
F4タンパク質を、実施例7の精製方法Iを用いて精製した。
【0123】
以下の実施例のための細胞の増殖および誘導条件ならびに細胞抽出物の調製は、他の条件(例えば、温度、ブレーキングバッファーの組成)を特定しない限り、実施例1に記載の通りである。
【0124】
2.コドン最適化されたF4
以下のポリヌクレオチド配列は、そのコドン使用頻度が大腸菌で多く発現される遺伝子におけるコドン使用頻度と類似するようにコドン最適化されている。アミノ酸配列は、コドン最適化されていないF4について上記に示したものと同一である。
【0125】
F4coのヌクレオチド配列:
【表3】
[配列番号3]
p24配列を太字で示す。
Nef配列を下線付きで示す。
囲み:遺伝子構築により導入されたヌクレオチド。
コドン最適化されていないF4に関して用いた手順を、コドン最適化された配列に適用した。
【0126】
組換えプラスミドの詳細:
名称: pRIT15513(研究室での名称:pET28b/p24−RT−Nef−p17)
宿主ベクター:pET28b
レプリコン: colE1
選択: カナマイシン
プロモーター:T7
インサート: コドン最適化された、p24−RT−Nef−p17融合遺伝子。
【0127】
F4のコドン最適化された遺伝子を、B834(DE3)株のrecA−誘導体である大腸菌BLR(DE3)細胞中で発現させた。RecA突然変異は推定されるλファージの産生を防止する。
【0128】
前培養物を、振とうフラスコ中、37℃にて、中間対数増殖期(A620:0.6)まで増殖させた後、4℃で一晩保存した(静止期培養を避けるため)。
【0129】
培養物を、1%グルコースおよび50μg/mlカナマイシンを添加したLBT培地中で増殖させた。増殖培地へのグルコースの添加は基底状態での組換えタンパク質発現を減少させる利点を有する(lacUV5プロモーターのcAMP媒介性抑制を回避する)。
【0130】
4℃で一晩保存した10mlの培養物を用いて、カナマイシンを含む200mlのLBT培地(グルコースを含まない)に植菌した。培養物を37℃で増殖させ、O.D.620が0.6に達した時、IPTGを添加した(最終濃度1mM)。培養物をさらに19時間(一晩)、22℃にてインキュベートした。サンプルを、誘導前および誘導19時間後に回収した。
【0131】
抽出物の調製は以下の通りであった:
細胞ペレットをサンプルバッファー中に再懸濁し(10の理論的O.D.で)、ボイルし、SDS−PAGEに直接ロードした。
【0132】
SDS−PAGEおよびウェスタンブロット分析:
粗抽出物サンプルを10%の還元的SDS−PAGEで泳動した。
【0133】
p24−RT−Nef−p17組換えタンパク質をクマシーブルー染色により、およびウェスタンブロットで検出する(図2)。
【0134】
クマシー染色:p24−RT−Nef−p17タンパク質は以下のように現れる:
130kDa付近(算出されたMWと適合する)の1本のバンド
MW理論値:128.967ダルトン
MW見かけ:130kDa
ウェスタンブロット分析:
試薬= ・ウサギポリクローナル抗RT(ウサギPO3L16)
希釈率:1/10,000
・ウサギポリクローナル抗Nef−Tat(ウサギ388)
希釈率:1/10,000
・アルカリホスファターゼコンジュゲート抗ウサギ抗体
希釈率:1/7500。
【0135】
22℃で19時間の誘導の後、組換えBLR(DE3)細胞は、総タンパク質の10〜15%の範囲の非常に高いレベルでF4融合体を発現した。
【0136】
ネイティブな遺伝子由来のF4と比較して、コドン最適化された遺伝子に由来するF4組換え産物のプロフィールはわずかに単純化されている。60kDaの主要なF4関連バンド、ならびにそれ以下の小さいバンドは消失した(図2を参照)。F4を発現するB834(DE3)組換え株と比較して、F4coを産生するBLR(DE3)株は以下の利点を有する:F4完全長タンパク質のより高い産生、組換え産物のより複雑性の低いバンドパターン。
【実施例2】
【0137】
P51RT(切断型、コドン最適化されたRT)の構築および発現
アミノ酸428〜448の間のRT/p66領域は大腸菌プロテアーゼに対して感受性である。P51構築物はLeu 427で終結し、RNaseHドメインの排除をもたらす(図3中のRT配列アライメントを参照)。
【0138】
RTのネイティブな遺伝子配列中で特定された推定上の大腸菌「フレームシフト」配列も排除された(p51遺伝子のコドン最適化により)。
【0139】
p51合成遺伝子の設計/構築
合成p51遺伝子の配列を、大腸菌のコドン使用頻度に従って設計した。かくして、それは、そのコドン使用頻度が大腸菌中で多く発現される遺伝子におけるコドン使用頻度に類似するようにコドン最適化された。合成遺伝子を以下のように構築した:32個のオリゴヌクレオチドを単一工程PCR中で組み立てた。2回目のPCRにおいて、完全長集合体を末端プライマーを用いて増幅し、得られたPCR産物をpGEM−T中間プラスミド中にクローニングした。遺伝子合成の間に導入されたポイントエラーの補正後、p51合成遺伝子をpET29a発現プラスミド中にクローニングした。この組換えプラスミドを用いて、B834(DE3)細胞を形質転換した。
【0140】
組換えタンパク質の特性:
p51 RTヌクレオチド配列
【表4】
[配列番号4]
囲み:遺伝子構築により導入されたアミノ酸。
【0141】
アミノ酸配列:
【表5】
[配列番号5]
囲み:遺伝子構築により導入されたアミノ酸。
K(リジン):トリプトファン(W)の代わり。酵素活性を除去するために導入された突然変異。
【0142】
長さ、分子量、等電点(IP):
433AA、MW:50.3kDa、IP:9.08
B834(DE3)細胞中でのp51の発現
P51の発現レベルおよび組換えタンパク質の可溶性を、RT/p66産生株と並行して評価した。
【0143】
p51の発現レベル:
誘導条件:5時間、37℃(+1mM IPTG)で細胞を増殖/誘導
ブレーキングバッファー:50mM Tris/HCl、pH:7.5、1mM EDTA、+/−1mM DTT
ウェスタンブロット分析:
試薬:ウサギポリクローナル抗RT(ウサギPO3L16)(希釈率:1/10,000)
アルカリホスファターゼコンジュゲート抗ウサギ抗体(希釈率:1/7500)
粗抽出物(T)、不溶性ペレット(P)および上清(S)に対応する細胞画分を、10%の還元的SDS−PAGEで泳動した。
【0144】
クマシー染色されたゲルおよびウェスタンブロット(図4)に示されるように、非常に高いP51の発現(総タンパク質の15〜20%)が観察され、これはP66について観察されたものよりも高かった。
【0145】
p51およびp66タンパク質の両方について(37℃で5時間の誘導後)、80%の組換え産物を、細胞抽出物の可溶性画分(S1)中に回収した(図4を参照)。30℃で発現させた場合、99%の組換えタンパク質が可溶性画分に存在していた(データは示していない)。
【0146】
p51のウェスタンブロットパターンは複数のバンドであったが、P66について観察されたものよりも複雑性は低かった。
【0147】
可溶性アッセイ
可溶性アッセイ:還元的条件(DTTを含むブレーキングバッファー)および非還元的条件下で調製された可溶性(S1)画分(5時間の誘導、37℃)の凍結/解凍。解凍後、S1サンプルを20,000gで30分間遠心分離し、S2およびP2(p2を1/10容量に再懸濁する)を生成した。
【0148】
還元的ならびに非還元的条件で調製された、可溶性画分(S1)の凍結/解凍後、99%のp51およびp66が依然として可溶性(S2)画分中に回収される。1%のみが沈降物(P2)中に認められる。これを図5に示す。
【実施例3】
【0149】
リンカーを含むか、または含まないp17−NefおよびNef−p17の構築および発現
二重融合タンパク質を、リンカーを用いて、および用いずに構築した。このリンカーは、2つの融合パートナー間の相互作用の可能性を減少させるためのものであり、以下の通りである:
組換えプラスミドの構築:
・pET29a/Nef−p17発現ベクター:
Nef−p17融合遺伝子を、F4組換えプラスミドからPCRにより増幅した。PCR産物をpGEM−T中間クローニングベクター中にクローニングした後、続いてpET29a発現ベクター中にクローニングした。
【0150】
・pET28b/p17−Nef発現ベクター:
Nef遺伝子を、F4組換えプラスミドからPCRにより増幅した。PCR産物をpGEM−T中間クローニングベクター中にクローニングした後、続いてp17遺伝子とのC末端インフレーム融合体として、pET28b/p17発現ベクター中にクローニングした。
【0151】
・pET29a/Nef−リンカー−p17およびpET28b/p17−リンカー−Nef発現ベクター:
ヘキサペプチドリンカー(GSGGGP)をコードする18bpのDNA断片を、部位特異的突然変異誘発により(「GeneTailor部位特異的突然変異誘発システム」、Invitrogenを用いて)、Nefとp17融合パートナーの間に挿入した。
【0152】
組換えタンパク質の特性:
・長さ、分子量、等電点(IP)
・アミノ酸配列およびポリヌクレオチド配列:
Nef−p17ヌクレオチド配列
【表6】
[配列番号6]
Nef−p17(NP)
【表7】
[配列番号7]
囲み:遺伝子構築により導入されたアミノ酸。
Nef配列を太字で示す。
【0153】
P17−Nefヌクレオチド配列:
【表8】
[配列番号8]
P17−Nef(PN)
【表9】
[配列番号9]
囲み:遺伝子構築により導入されたアミノ酸。
p17配列を太字で示す。
【0154】
Nef−リンカー−p17ヌクレオチド配列:
【表10】
[配列番号10]
Nef−リンカー−p17(NLP)
【表11】
[配列番号11]
ヘキサペプチドリンカー
囲み:遺伝子構築により導入されたアミノ酸。
【0155】
P17−リンカー−Nefヌクレオチド配列:
【表12】
[配列番号12]
P17−リンカー−Nef(PLN)
【表13】
[配列番号13]
ヘキサペプチドリンカー
囲み:遺伝子構築により導入されたアミノ酸。
【0156】
リンカーを含む、および含まないNef−p17、p17−Nef融合体の発現の比較
4種類の組換え株を、F4およびNef産生株と並行して、30℃で3時間に渡って誘導した。粗抽出物を調製し、クマシー染色ゲルおよびウェスタンブロッティングにより分析した。
【0157】
ウェスタンブロット分析:
試薬:ウサギポリクローナル抗RT(ウサギPO3L16)(希釈率:1/10,000)
アルカリホスファターゼコンジュゲート抗ウサギ抗体(希釈率:1/7500)。
【0158】
図6に示されるように、リンカーを含む、および含まないNef−p17およびp17−Nef融合体は高レベルで発現される(総タンパク質の10%)。
【0159】
ウェスタンブロット分析においては、4種類の二重融合構築物は複数のバンドパターンを示すが、F4について観察されたものよりも複雑性が低かった。単独で発現させた場合、Nefおよびp17タンパク質は単一のバンドパターンを示す。
【0160】
リンカーペプチドを含まない、Nef−p17(NP)およびp17−Nef(PN)融合体を発現する株を、さらに分析した(可溶性アッセイ、以下を参照)。
【0161】
Nef−p17およびp17−Nefの可溶性アッセイ:
Nef−p17およびp17−Nefタンパク質を、F4およびNef産生株と並行して誘導した。
【0162】
誘導条件:30℃(+1mM IPTG)で3時間に渡る細胞増殖/誘導
ブレーキングバッファー:50mM Tris/HCl pH:8、50mM NaCl、1mM EDTA。
【0163】
新鮮な細胞抽出物:
細胞抽出物を調製し(非還元的条件下で)、粗抽出物(T)、不溶性ペレット(P)、および上清(S1)に対応する画分をクマシー染色ゲルおよびウェスタンブロット上で分析した。
【0164】
クマシー染色ゲルおよびウェスタンブロットで図7に示されるように、ほとんど全てのNef−p17、p17−Nef、ならびにNefタンパク質は、細胞抽出物の可溶性画分(S)中に回収される。F4構築物については、5〜10%の組換えタンパク質がペレット画分中に回収されている。
【0165】
結論:
試験した全ての二重融合構築物は強く発現される(総タンパク質の10%を超える)。P17−NefおよびNef−p17融合タンパク質はF4よりも可溶性が高い。両方とも複雑性の低いWBパターンを示す。
【実施例4】
【0166】
p24−RT*−Nef−p17(F4*)の構築および発現
F4*は、592位のメチオニンをリジンに置き換えたF4(p24−RT/p66−Nef−p17)融合体の突然変異体である。このメチオニンは、F4精製実験のQセファロース溶出物サンプルについて行ったN末端配列決定により支持されるように、推定上の内部転写「開始」部位である。実際、Q溶出物サンプル中に存在する、主要なF4に対応する62kDaの小さいバンドは、メチオニン592から始まる。
【0167】
メチオニンを、リジンに置き換える:RMR→RKR。RKRモチーフはクレードAのRT配列中に天然に存在する。
【0168】
CD4−CD8エピトープに対するこの突然変異の影響を評価した:
・1個のHLA−A3 CTLエピトープ(A*3002)が失われるが、他の9個のHLA−A3エピトープがRT配列中に存在する。
【0169】
・ヘルパーエピトープはこの領域中で同定されなかった。
【0170】
組換えタンパク質の特性:
・長さ、分子量、等電点(IP):
1136AA、129kDa、IP:8.07
【0171】
・ヌクレオチド配列:
【表14】
[配列番号14]
p24配列を太字で示す。
Nef配列に下線を付す。
囲み:遺伝子構築により導入されたヌクレオチド。
【0172】
・アミノ酸配列
【表15】
[配列番号15]
P24配列:アミノ酸1−232(太字)
RT配列:アミノ酸235−795
Nef配列:アミノ酸798−1002
P17配列:アミノ酸1005−1136
囲み:遺伝子構築により導入されたアミノ酸
K(リジン)592:メチオニンの代わり(内部「開始」コドン)
K(リジン)464:トリプトファン(W)の代わり。酵素活性を除去するために導入された突然変異。
【0173】
B834(DE3)細胞中でのF4*の発現
F4*組換え株を、F4非突然変異構築物と並行して、18時間、22℃で誘導した。粗抽出物を調製し、クマシー染色ゲルおよびウェスタンブロッティングにより分析した。
【0174】
図8に示されるように、F4*は高レベルで発現され(総タンパク質の10%)、これはF4と比較してわずかに高く、小さい62kDaのバンドは消失した。
【0175】
ウェスタンブロット分析:
試薬:プールした3種類のMab抗p24(JC13.1、JC16.1、IG8.1.1)(希釈率:1/5000)
ウサギポリクローナル抗RT(ウサギPO3L16)(希釈率:1/10000)
ウサギポリクローナル抗Nef−Tat(ウサギ388)(希釈率:1/10000)
アルカリホスファターゼコンジュゲート抗ウサギ抗体(希釈率:1/7500)
アルカリホスファターゼコンジュゲート抗マウス抗体(希釈率:1/7500)。
【実施例5】
【0176】
F3およびF3*(突然変異型F3)の構築および発現
F3(p17−p51−Nef)およびF3*(p17−p51*−Nef)中の推定上の内部メチオニン開始部位をリジンで置き換えた。
【0177】
F3およびF3*融合体をp24と組合わせて用いることができた。
【0178】
組換えプラスミド構築物:
F3:p51をコードする配列をpET29a/p51発現プラスミドから切り出し(ScaIおよびStuI DNA断片として)、pET28b/p17−Nefプラスミド中、StuI部位(p17とNef遺伝子の間に位置する)に、p17およびNef配列とインフレームの融合体として連結した。得られた融合構築物p17−p51−NefをF3と命名する。
【0179】
F3*:推定上の内部メチオニン開始部位の突然変異を、「Gene Tailor部位特異的突然変異誘発システム」(Invitrogen)を用いて行い、F3*構築物を作製した。
【0180】
F3およびF3*プラスミドを用いて、B834(DE3)細胞を形質転換した。
【0181】
組換えタンパク質の特性:
・長さ、分子量、等電点(IP)
770AA、88.5kDa、IP:8.58
【0182】
・ヌクレオチド配列(F3*について)
【表16】
[配列番号16]
P17:配列を太字で示す。
P51:配列を大文字で示す。
Nef:配列を小文字で示す。
囲み:遺伝子構築物により導入されたヌクレオチド。
【0183】
・アミノ酸配列(F3について)
【表17】
[配列番号17]
P17配列:アミノ酸1−134(太字)
P51配列:アミノ酸137−562
Nef配列:アミノ酸565−770
囲み:遺伝子構築により導入されたアミノ酸
F3*構築物においてはメチオニン494をリジン(K)に置き換えた。
K(リジン)366:トリプトファン(W)の代わり。酵素活性を除去するために導入された突然変異。
【0184】
B834(DE3)細胞におけるF3の発現:
F3の発現レベルおよび組換えタンパク質の可溶性を、F4(p24−p66−Nef−p17)およびp17−Nef(F2)産生株と並行して評価した。
【0185】
誘導条件:37℃で細胞増殖/30℃(+1mM IPTG)で3時間誘導
ブレーキングバッファー:F4:50mM Tris/HCl pH:8.0、50mM NaCl、1mM EDTA、+/− 1mM DTT
F2:50mM Tris/HCl pH:8.0、50mM NaCl、1mM EDTA、DTTを含まない
F3:50mM Tris/HCl pH:7.5、50mM NaCl、1mM EDTA、+/− 1mM DTT
ウェスタンブロット分析:
試薬 ウサギポリクローナル抗RT(ウサギPO3L16)(希釈率:1/10000)
ウサギポリクローナル抗Nef−Tat(ウサギ388)(希釈率:1/10000)
アルカリホスファターゼコンジュゲート抗ウサギ抗体(希釈率:1/7500)。
【0186】
「新鮮な」細胞抽出物
粗抽出物(T)、不溶性ペレット(P)および上清(S)に対応する細胞画分を、10%還元的SDS−PAGEで分析した。図9に示されるように、F3融合タンパク質は高レベルで発現される(総タンパク質の10%)。ほとんど全てのF3が細胞抽出物の可溶性画分(S)中に回収されるが、5〜10%のF4産物は既にペレット画分に存在している。WBパターンはF4と比較して単純である。
【0187】
B834(DE3)細胞におけるF3*の発現:
F3*組換え株を、F3非突然変異構築物と並行して、3時間に渡って37℃で誘導した。粗細胞抽出物を調製し、クマシー染色ゲルおよびウェスタンブロッティングにより分析した。図10に示されるように、F3*融合タンパク質は非常に高レベルで発現される(総タンパク質の10〜20%)。F3と比較して単純なWBパターンであり、32kDa付近(WBのみで検出された)の非常に弱いバンドが消失した。
【実施例6】
【0188】
F4(p51)およびF4(p51)*の構築および発現
RT/p51を、F4融合構築物中で(RT/p66の代わりに)用いた。
【0189】
F4(p51)=p24−p51−Nef−p17
F4(p51)*=p24−p51*−Nef−p17(突然変異型F4(p51)):推定上の内部メチオニン開始部位(RT部分に存在する)をリジンに置き換えて、抗原パターンをさらに単純化する。
【0190】
組換えプラスミドの構築:
F4(p51):p51をコードする配列を、pET29a/p51発現プラスミドからPCRにより増幅した。制限部位をPCRプライマー中に組み入れた(コード配列の5’末端にNdeIおよびStuI部位、3’末端にAvrII部位)。PCR産物をpGem−T中間プラスミド中にクローニングし、配列決定した。pGem−T/p51中間プラスミドをNdeIおよびAvrIIにより制限処理し、p51断片を、NdeIおよびNheIにより制限処理された(RT/p66配列が切り出される)pET28b/p24−RT/p66−Nef−p17発現プラスミド中に連結した。連結を、T4 DNAリガーゼの存在下で、好適な濃度で消化反応と組合わせることにより行った。連結産物を用いて、DH5α大腸菌細胞を形質転換した。正しい翻訳読み枠へのp51の挿入(f4融合体中、RT/p66の代わり)の確認を、DNA配列決定により行った。得られた融合構築物p24−RT/p51−Nef−p17をF4(p51)と命名する。
【0191】
F4(p51)*:推定上の内部メチオニン開始部位(RT/p51中に存在)の突然変異を、「GeneTailor部位特異的突然変異誘発システム」(Invitrogen)を用いて行い、F4(p51)*構築物を作製した。
【0192】
F4(p51)およびF4(p51)*発現プラスミドを用いて、B834(DE3)細胞を形質転換した。
【0193】
組換えタンパク質の特性:
・長さ、分子量、等電点(IP):
1005AA、114.5kDa、IP:8.47
【0194】
・ヌクレオチド配列(F4(p51)*について)
【表18】
[配列番号18]
P24:配列を太字で示す。
P51:配列を大文字で示す。
Nef:配列を小文字で示す。
P17:配列に下線を付す。
囲み:遺伝子構築物により導入されたヌクレオチド。
【0195】
・アミノ酸配列(F4(p51)*について)
【表19】
[配列番号19]
P24:アミノ酸1−232
P51:アミノ酸237−662
Nef:アミノ酸666−871
P17:アミノ酸874−1005
K(リジン)594:メチオニンの代わり(内部「開始コドン」)
K(リジン)466:トリプトファン(W)の代わり。酵素活性を除去するために導入された突然変異。
【0196】
B834(DE3)細胞におけるF4(p51)の発現:
F4(p51)の発現レベルおよび組換えタンパク質の可溶性を、F4発現株と並行して評価した。
【0197】
誘導条件:37℃で細胞増殖/22℃(+1mM IPTG)で19時間に渡って誘導
ブレーキングバッファー:50mM Tris/HCl pH:7.5、1mM EDTA、1mM DTT
ウェスタンブロット分析:
試薬 ウサギポリクローナル抗RT(ウサギPO3L16)(希釈率:1/10000)
ウサギポリクローナル抗Nef−Tat(ウサギ388)(希釈率:1/10000)
アルカリホスファターゼコンジュゲート抗ウサギ抗体(希釈率:1/7500)
粗抽出物(T)、不溶性ペレット(P)および上清(S)に対応する細胞画分を、10%還元的SDS−PAGE上で分析した。
【0198】
図11に示されるように、F4(p51)は、F4と同様、高レベルで発現された(総タンパク質の10%)。ほとんど全てのF4(p51)は細胞抽出物の可溶性画分(S)中に回収される。抗Nef−tat試薬を用いる検出に際しては、F4(p51)のWBパターンが単純化されることが示された(60kDa付近より小さい切断された産物の減少)。
【0199】
B834(DE3)細胞におけるF4(p51)*の発現:
F4(p51)*組換え株を、F4(p51)非突然変異型構築物、F4およびF4*と並行して、22℃で18時間に渡って誘導した。粗細胞抽出物を調製し、クマシー染色ゲルおよびウェスタンブロッティングにより分析した。図12に示されるように、F4(p51)およびF4(p51)*融合体の高い発現が観察され、それは総タンパク質の少なくとも10%であった。WBパターン:60kDa付近より小さい切断された産物の減少。さらに、F4(p51)*構築物については、47kDaのバンド(内部開始部位に起因する)が消失した。
【実施例7】
【0200】
F4、F4(p51)*およびF4*の精製−精製方法I
4つのHIV抗原p24−RT−Nef−p17を含む融合タンパク質F4を、以下の基本工程:
・F4の硫酸アンモニウム沈殿
・SO3フラクトゲル陽イオン交換クロマトグラフィー(ポジティブモード)
・オクチルセファロース疎水性相互作用クロマトグラフィー(ポジティブモード)
・QセファロースFF陰イオン交換クロマトグラフィー(ポジティブモード)
・SDSの存在下でのSuperdex 200ゲル濾過クロマトグラフィー
・透析および濃縮
を含む精製方法Iに従って、大腸菌細胞のホモジネートから精製した。
【0201】
さらに、F4(p51)*融合タンパク質(追加の突然変異Met592Lysを有するコドン最適化されたp51により置換されたRT)およびF4*タンパク質(追加のMet592Lys突然変異を有するF4)を、同じ精製方法Iを用いて精製した。
【0202】
タンパク質の定量
・総タンパク質をLowryアッセイを用いて測定した。タンパク質濃度を測定する前に、全てのサンプルをPBS、0.1%SDSに対して一晩透析して、干渉物質(尿素、DTT)を除去する。BSA(Pierce)を標準として用いた。
【0203】
SDS−PAGEおよびウェスタンブロット
・サンプルを還元的または非還元的SDS−PAGEサンプルバッファー(+/−β−メルカプトエタノール)中で調製し、95℃で5分間加熱した。
・プレキャストNovex Tris−グリシンゲルまたはCriterionゲル(Bio-Rad)(1mmの厚さ)を用いて、200Vで75分間、4−20%SDSポリアクリルアミドゲルで、タンパク質を分離した。
・タンパク質を、クマシーブルーR250を用いて可視化した。
・ウェスタンブロット(WB)のために、タンパク質を、4℃にて、100Vで1.5時間、または30Vで一晩、SDSゲルからニトロセルロース膜(Bio-Rad)にトランスファーした。
・F4を、種々の抗原に対するモノクローナル抗体(抗p24、抗Nef−Tat、抗RT)を用いて検出した(時には抗p24と抗Nef−Tatの混合物を用いて、最大数のタンパク質バンドを検出した)。
・アルカリホスファターゼコンジュゲート抗マウスまたは抗ウサギ抗体を一次抗体に結合させ、タンパク質バンドをBCIPおよびNBTを基質として用いて可視化した。
【0204】
抗大腸菌ウェスタンブロット
・5μgのタンパク質(Lowry)をSDS−PAGEにより分離し、上記のようにニトロセルロース膜にトランスファーした。
・残りの宿主細胞タンパク質を、ポリクローナル抗大腸菌抗体を用いて検出した。タンパク質バンドを、上記のようにアルカリホスファターゼ反応を用いて可視化した。
【0205】
精製方法I
方法Iは、硫酸アンモニウムによる沈殿および4つのクロマトグラフィー工程を含む:
・大腸菌細胞を、10mM DTT、1mM PMSF、1mM EDTAの存在下、OD50で、50mM TrisバッファーpH8.0中でホモジナイズした(〜360ml)。2回のRannieでのパッセージを1000バールで行った。
・細胞破片および不溶性物質を、14400×gで20分間の遠心分離により除去した。
・清澄化した上清に硫酸アンモニウム(AS)を3.8Mストック溶液から1.2Mの最終濃度で添加した。タンパク質を約2時間、室温(RT)にて沈殿させた後、遠心分離(14400×gで10分間)によりペレット化した。ペレットを、10mMリン酸バッファーpH7.0中の8M尿素、10mM DTT中に再懸濁した。
・抗原を、リン酸バッファー中の8M尿素および10mM DTT、pH7.0の存在下で、SO3フラクトゲルカラム(Merck)で捕捉した。カラムを洗浄して未結合のタンパク質を溶出させた後、170mM NaClを用いて予備溶出工程を行って、結合した宿主細胞タンパク質(HCP)を除去した。次いで、F4を、リン酸バッファーpH7.0中の460mM NaCl、8M尿素、10mM DTTを用いて溶出させた。
・SO3溶出液を、10mMリン酸バッファーpH7を用いて2倍希釈し、リン酸バッファーpH7.0中の4M尿素、1mM DTT、230mM NaClの存在下でオクチルセファロースカラム(Amersham Biosciences)にロードした。洗浄工程(平衡化バッファー)の後、結合したF4を、25mM TrisバッファーpH8.0中の8M尿素、1mM DTTを用いて溶出させた。
・オクチル溶出液を希釈し、pH9.0に調整した後、F4を、8M尿素pH9.0(25mM Tris)の存在下でQセファロースカラム(Amersham Bioscience)に結合させた。未結合のタンパク質を洗浄除去し(8M尿素、25mM Tris、pH9.0)、予備溶出工程(8M尿素、25mM Tris、pH9.0中の90mM NaCl)によりHCPおよびF4分解産物を除去した。F4を、Trisバッファー、pH9.0中の200mM NaCl、8M尿素を用いてカラムから脱離させた。
・Q溶出液のアリコートに1%SDSを加え、0.1%SDSおよび1mM DTTを含むPBSバッファーに対して透析して、尿素を除去した後、サンプルをゲル濾過カラム(調製グレードのSuperdex 200、横に接続した2本の16×60cmカラム)に注入した。対応する画分を、工程途中のSDS−PAGE分析後にプールした。
・サンプルを、110.5Mアルギニン、10mM Tris、5mMグルタチオン、pH8.5に対して一晩、透析膜(12−14kDaカットオフ)中でRTにて2回透析した。
【0206】
一連の精製工程を以下のフローチャートに示す。
精製フローチャート
360mlホモジネートOD50(Rannie)
50mM Tris pH8.0、1mM PMSF、10mM DTT、2mM EDTA
↓
清澄化
14400×gでの20分間の遠心分離
↓
硫酸アンモニウム沈殿
1.2M AS、RTで2時間、14400×g、10分間の遠心分離
↓
ペレットを、8M尿素、10mM PO4、10mM DTT、pH7.0に再懸濁
↓
(+)SO3フラクトゲルEMD650(M)クロマトグラフィー
pH7.0、8M尿素、10mM DTT、170mM NaClでの予備溶出、溶出460mM NaCl
↓
pH7.0、4M尿素、5mM DTT、230mM NaClに2倍希釈
↓
(+)オクチルセファロースクロマトグラフィー
pH7.0、4M尿素、230mM NaCl、溶出8M尿素、20mM Tris pH8.0
↓
約2倍希釈、pH9.0に調整(NaOH)
↓
(+)QセファロースFFクロマトグラフィー
Tris pH9.0、8M尿素、予備溶出90mM NaCl、溶出200mM NaCl
↓
1%SDSの添加
↓
透析
→TBS、0.1%SDS、pH8.5
↓
Superdex 200ゲル濾過クロマトグラフィー16×120cm
TBS、0.1%SDS、pH8.5
↓
IPA SDS−PAGE
↓
プール/濃縮/透析
→製剤適合性バッファー
IPA−工程途中の分析(in process analysis)
全てのバッファーは、特に指摘しない限り、1mM DTTを含む。
【0207】
F4の精製の結果
精製プロセスのSDS−PAGE/ウェスタンブロットによる追跡
図13は、F4の精製中に回収されたF4を含有する画分のSDSゲルおよび抗p24/抗Nef−Tatウェスタンブロットを示す。
【0208】
大腸菌ホモジネートを図13、レーン2に示すが、F4は総タンパク質の約10%に相当すると見積もられる(クマシーブルー染色されたSDSゲルの密度スキャン)。遠心分離後、F4の可溶性画分は、清澄化された上清(レーン3)中に回収された。硫酸アンモニウム沈殿工程により多くの不純物を除去し(レーン4)、その後のクロマトグラフィー工程のためにタンパク質電荷を低下させた。さらに、8M尿素を用いて沈殿を懸濁して、F4とHCPとの複合体を解離させ、SO3樹脂によるF4の完全な捕捉および同樹脂からの定量的溶出の両方を可能にした。レーン5に示されるSO3溶出物においては、かなりF4が富化されているが、異種性パターンは基本的に未変化のままであった。疎水性オクチルセファロースカラムは主に低分子量(LMW)のHCPおよびF4分解産物を除去し(レーン6)、それによってF4パターンを単純化した。QセファロースクロマトグラフィーはさらにF4パターンを単純化し、多くの不純物を除去した(レーン7)。大腸菌の不純物の点での最終的な純度がこの工程後に得られた。実際、抗大腸菌ウェスタンブロット分析によっては、Q溶出物中に宿主細胞タンパク質は検出されなかった。かくして産生された精製済みF4をF4Qと呼ぶ。Superdex 200カラムは完全長F4からLMW F4分解産物を分離し、Superdex 200溶出物中でのF4の均質性を改善した(レーン8)。用語F4Sを、方法Iの完全なスキームに従って精製されたF4について用いる。
【0209】
抗大腸菌ウェスタンブロットを、F4の精製中に回収された同じ画分について行った。抗大腸菌ウェスタンブロット上に可視的バンドがないことは、Q溶出物およびSuperdex溶出物中に存在するHCP夾雑物が1%未満であることを示していた。
【0210】
F4およびタンパク質の回収
精製プロセスの各工程でのF4の回収を、SDS−PAGEおよびウェスタンブロット分析から評価した。SDSゲルからのF4の回収を評価するために、SDSゲル上に載せられるサンプル容量は、精製中に回収されるそれぞれの画分の容量に対応させる。
【0211】
表1は、F4を含有する画分中でのタンパク質の回収を示す。
【表20】
【0212】
この表は、清澄化工程の後に上清中に回収された、ホモジネートおよび可溶性物質、F4を含めたタンパク質の量を示す。AS沈殿工程は大量のHCPを除去し、F4のわずかな損失のみがSDSゲルで観察された。SO3クロマトグラフィーはさらに多くの不純物を除去し、SDSゲルはF4の高い回収を示した。対照的に、オクチルセファロースおよびQセファロースカラムの両方では、測定された約50%のタンパク質の回収は、F4の損失も伴っていた。ゲル濾過クロマトグラフィー後のタンパク質の回収は約50%であった。SDSゲルは、F4回収の減少に付随して、多くのLMWタンパク質バンド(F4分解バンド)が除去されたことを示している。
【0213】
F4の収率
上記の表1は、約36mgの精製されたF4がOD50の360mlのホモジネートから得られたことを示している。従って、OD50の1Lのホモジネートは約100mgの精製されたF4をもたらすはずである。70〜90のODが発酵プロセス中に達成されたため、1Lの発酵装置あたりの収率は従って140〜180mgの範囲のF4である。
【0214】
F4(p51)*の精製の結果
F4(p51)*融合構築物を、改変せずに上記の精製方法Iを用いて精製した。
【0215】
精製プロセスのSDS−PAGE/ウェスタンブロットによる追跡
図14は、F4(p51*)の精製中に回収されたF4(p51)*を含有する画分のSDSゲルおよび抗p24/抗Nef−Tatウェスタンブロットを示す。
【0216】
SDSゲルおよびウェスタンブロットは、F4(p51)*融合タンパク質が、全体的には、硫酸アンモニウム沈殿工程において、ならびにクロマトグラフィー工程中にF4と同様に振舞ったことを示している。精製されたF4(p51)*は精製されたF4と類似する均質なパターンを有していた。
【0217】
抗大腸菌ウェスタンブロットは、Q溶出物およびSuperdex溶出物の両方におけるHCP夾雑物が1%未満であることを示していた。
【0218】
収率
約25%のF4(p51)*がホモジネートの不溶性画分中から失われた。さらに、この精製方法はこのタンパク質には適合しないため、クロマトグラフィー工程において損失が観察された。従って、F4(p51)*の全体の回収はホモジネート1リットル(OD50)あたり約25mgに減少した。OD177で1リットルの培養物を想定した場合、収率は従って85mg程度のF4(p51)*となる。
【0219】
F4*の精製の結果
F4*融合構築物を、改変せずに上記の精製方法Iを用いて精製した。
【0220】
精製プロセスのSDS−PAGE/ウェスタンブロットによる追跡
図15は、F4*の精製中に回収されたF4*含有画分のSDSゲルおよび抗p24/抗Nef−Tatウェスタンブロットを示す。
【0221】
F4(p51)*と同様、F4*は全体的に精製手順中にF4と全く同様に振舞ったことにも気づくであろう。このタンパク質は、SDSゲルおよびウェスタンブロットにより示された予想される画分中に回収された。抗大腸菌ウェスタンブロットはまた、多くのHCPがQセファロースカラム後に既に排除されたことを示していた。
【0222】
収率
全体の回収は、OD50の465mlのホモジネートから得られた約17mgの精製されたF4*であった。OD140の1Lの培養物を想定した場合、収率は従って100mg程度のF4*となる。
【0223】
まとめると、3種類の融合タンパク質F4、F4(p51)*およびF4*を、精製方法Iを用いて精製した。図16中のSDSゲルは、Qセファロース工程後、およびSuperdex 200カラムによるLMWバンドの排除後の3種類の精製されたタンパク質を比較し、前記構築物の異なるレベルの均質性を示す。
【実施例8】
【0224】
F4およびF4co(コドン最適化)の精製−精製方法II
精製方法II
方法Iと比較して単純化された精製手順である方法IIも開発した。方法IIは、2つのクロマトグラフィー工程およびバッファー交換のための最終的な透析/ダイアフィルトレーションのみからなる。注目すべきことに、CMハイパーZクロマトグラフィーカラム(BioSepra)を導入して、方法Iの清澄化工程、硫酸アンモニウム沈殿およびSO3クロマトグラフィー(実施例7)を置換した。方法IIを用いて、F4および完全にコドン最適化されたF4(「F4co」)の両方を精製した。F4coについては、1つはカルボキシアミド化を含み、1つはそれを含まない、2つの異なる形態の方法IIを実施した。カルボキシアミド化工程の目的は、タンパク質の酸化的凝集を防止することであった。このカルボキシアミド化を、1回目のクロマトグラフィー工程の後に実施する(CMハイパーZ)。
【0225】
・大腸菌細胞(F4またはF4coを発現する)を、OD90で、10mM DTTの存在下で50mM TrisバッファーpH8.0中でホモジナイズした。2回のRannieでのパッセージを1000バールで行った。
・8M尿素をホモジネートに添加した後、ホモジネートをpH7のリン酸バッファー中の8M尿素で平衡化させたCMハイパーZ樹脂(BioSepra)に用いた。抗原の捕捉をバッチ様式で行った。次いで、この樹脂をカラム中に充填し、未結合のタンパク質を平衡化バッファーを用いて洗浄除去し、結合した宿主細胞タンパク質(HCP)を、120mM NaClを用いる前溶出工程により除去した。次いで、F4coを、pH7.0のリン酸バッファー中の360mM NaCl、8M尿素、10mM DTTを用いて溶出させた。
・融合タンパク質の酸化的凝集を抑えるために、F4coのシステイン基をヨードアセトアミドを用いてカルボキシアミド化することができる。従って、必要に応じて、50mMのヨードアセトアミドをCMハイパーZ溶出物に添加し、暗室中、室温にて30分間、カルボキシアミド化を行った。
・次いで、CMハイパーZ溶出物を十分に希釈し(約5〜8倍)、pH9.0に調整した。次いで、F4coまたはF4cocaを、TrisバッファーpH9.0中の8M尿素の存在下でQセファロースカラム(Amersham Bioscience)に結合させた。未結合のタンパク質を平衡化バッファーを用いて洗浄除去し、同じバッファー中の90mM NaCl(非カルボキシアミド化タンパク質についてのみ)を用いる前溶出工程により結合したHCPを除去した。F4coをTrisバッファーpH9.0中の200mM NaCl、8M尿素を用いて、カラムから脱離させた。
・サンプルを、1Lの0.5Mアルギニン、10mM Trisバッファー、10mMグルタチオン(非カルボキシアミド化タンパク質についてのみ添加)、pH8.5に対して一晩、透析膜(12−14kDaカットオフ)中、RTにて2回透析した。あるいは、バッファー交換を、30または50kDaのカットオフを有する接線流膜(tangential flow membrane)を用いて、10倍サンプル容量の同じバッファーに対するダイアフィルトレーションにより行った。
・最後に、透析産物を0.22μmの膜を通して滅菌濾過した。
【0226】
一連の精製工程を以下のフローチャートに示す。
精製フローチャート
ホモジネートOD90(Rannie)
50mM Tris pH8.0、10mM DTT
↓
8M尿素の添加、pH7.0に調整
↓
(+)CMハイパーZクロマトグラフィー
pH7.0、8M尿素、10mM DTT、120mM NaClで前溶出、溶出360mM NaCl
↓
必要に応じたカルボキシアミド化:50mMヨードアセトアミドの添加、RTにて30分間
↓
希釈およびpH9.0に調整、8M尿素
↓
(+)QセファロースFFクロマトグラフィー
Tris pH9.0、8M尿素、NaCl*で前溶出、溶出
↓
透析/ダイアフィルトレーション
→リン酸バッファー、0.5Mアルギニン、pH8.5(10mMグルタチオン)
↓
滅菌濾過
全てのバッファーは、F4coがカルボキシアミド化されていない場合にはDTTおよび精製されたバルク中にグルタチオンを含んでいた。一度、タンパク質がカルボキシアミド化されれば、還元剤を除去した。*NaCl:F4coについては、これは200mM NaClであり、F4cocaについては、溶出はNaClの勾配によるものであった。この工程を、F4cocaについては60mM NaClを用いる前溶出および100mM NaClを用いる溶出により;ならびにF4coについては100mM NaClを用いる溶出(前溶出工程は必要ない)によりさらに最適化することができる。
【0227】
結果:F4coの精製
図17は、F4coの精製およびカルボキシアミド化されたF4co(「F4coca」)の精製中に回収されたF4を含む画分のSDSゲルを示す。
【0228】
CMハイパーZ樹脂は、8M尿素の存在下で粗ホモジネート(レーン1)からF4coを完全に捕捉し、360mM NaClを用いて定量的溶出を達成した。レーン2に示されたCMハイパーZ溶出物はF4co中でかなり富化されていた。好適な希釈およびサンプルのpH9への調整の後、F4coまたはF4cocaをQセファロースカラムに結合させた。次いで、F4coまたはF4cocaを、レーン3に示されるように200mM NaClを用いて特異的に溶出させた。このクロマトグラフィーは残存する宿主細胞タンパク質だけでなく、DNAおよびエンドトキシンをも除去した。製剤適合性バッファー中に精製された物質を入れるために、Qセファロース溶出物を、12〜14kDaのカットオフを有する透析膜中の10mM Trisバッファー、0.5Mアルギニン、10mMグルタチオンpH8.5に対して透析した。グルタチオンはカルボキシアミド化されたタンパク質については省略した。
【0229】
F4coおよびF4cocaの両方の精製により、OD130の培養物1Lあたり約500mgの精製された物質が得られた。これはコドン最適化されていないF4を用いる前に観察されたものと類似する範囲にあった。
【0230】
上記のように、2つの異なる精製方法(IおよびII)を、異なるF4構築物を精製するために開発した。図18は、得られた異なる精製バルクを比較するものである。
【0231】
図18中のSDSゲルは、2つの異なるタンパク質、F4およびF4coの識別パターンを明確に図示するものである。F4はいくつかの強い低分子量(LMW)のバンドを示したが、コドン最適化されたF4coについてはかすかなバンドのみが可視的であった。方法Iおよび方法IIは非常に類似するF4coパターンをもたらした。抗大腸菌ウェスタンブロット分析により、精製されたタンパク質の純度を確認したところ、全ての調製物中で1%未満の宿主細胞タンパク質夾雑物を示した。
【実施例9】
【0232】
マウスにおけるF4の免疫原性
製剤:
アジュバント製剤1B:
アジュバント製剤1Bを調製するために、有機溶媒中の脂質(卵黄由来もしくは合成由来のホスファチジルコリンなど)およびコレステロールおよび3D−MPLの混合物を減圧下で(またはあるいは、不活性ガス流下で)乾燥する。次いで、水性溶液(リン酸緩衝生理食塩水など)を加え、全ての脂質が懸濁されるまで容器を攪拌する。次いで、この懸濁液を、リポソームの大きさが約100nmに減少するまで微小流体化した後、0.2μmフィルターを通して滅菌濾過する。押出しまたは超音波処理をこの工程の代わりに行ってもよい。
【0233】
典型的には、コレステロール:ホスファチジルコリン比は1:4(w/w)であり、水性溶液を添加して5〜50mg/mlの最終コレステロール濃度を得る。
【0234】
リポソームは100nmの規定の大きさを有し、SUV(小型単層小胞)と呼ばれる。この溶液を繰り返し凍結/解凍すると、小胞は融合して、500nm〜15μmの範囲の大きさの大きな多層構造物(MLV)を形成する。リポソーム自体は長時間に渡って安定であり、融合能力を有さない。
【0235】
水性溶液中のQS21をリポソームに添加して、100μg/mlの最終3D−MPLおよびQS21濃度を達成する。
【0236】
製剤2A:水中油型乳濁液中の3−脱アシル化モノホスホリルリピドAおよびQS21:
水中油型乳濁液の調製は、WO95/17210に記載のプロトコルに従うことにより行うことができる。詳細には、この乳濁液は5%スクアレン、5%トコフェロール、2.0%tween 80を含み、その粒径は180nmである。
【0237】
水中油型乳濁液の調製(2倍濃縮物)
Tween 80をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に溶解して、PBS中の2%溶液を得る。100mlの2倍濃縮乳濁液を得るために、5gのDLαトコフェロールおよび5mlのスクアレンをボルテックスして完全に混合する。90mlのPBS/Tween溶液を添加し、完全に混合する。次いで、得られた乳濁液をシリンジに通し、M110S微小流体装置を用いることにより最終的に微小流体化する。得られる油滴は約180nmの大きさを有する。
【0238】
滅菌バルク乳濁液をPBSに添加して、1mlあたり500μlの乳濁液の最終濃度(v/v)を達成する。次いで、3D−MPLを添加して、100μgの最終濃度を達成する。次いで、QS21を添加して、100μg/mlの最終濃度を達成する。成分のそれぞれの添加の間に、中間生成物を5分間攪拌する。
【0239】
精製方法Iに従って精製された、コドン最適化されていないF4Qを、リン酸/アルギニンバッファーpH6.8中で希釈した。この希釈液を2つの異なる濃度のアジュバント(アジュバント2Aおよび1B)と混合して、290(アジュバント2Aについて)−300(アジュバント1Bについて)mMのアルギニン、50μgのMPLおよび50μgのQS21の存在下で、500μlのF4の40μg/用量の最終製剤を取得した。100μlの各製剤をマウスに注入した。
【0240】
マウスの免疫原性試験を実施して、F4内に認められる4つの抗原(p24、p17、RTおよびNef)に対する細胞性および体液性免疫応答を評価した。
【0241】
F4抗原の複雑性に起因して、それぞれ異なる遺伝的背景を有する8系統のマウスを、100μlの容量中、上記のように調製された8μgのアジュバント化されたF4タンパク質を用いて、0日目および21日目に2回免疫した。血清および脾臓サンプルを、F4の4つの成分の各々(p24、p17、RTおよびNef)、ならびにF4に対する体液性および細胞性応答の分析のために、最後の免疫(35日目)の14日後に回収した。
【0242】
総抗体応答を、p24、p17、RT、NefおよびF4にとって特異的なELISAにより特性評価した。以下の表2は、抗原特異的体液性応答が各系統において観察された場合をまとめたものである。この結果は、アジュバントのみで免疫された対照動物と比較した抗体の存在または不在を示す。示した結果は、2回の別々であるが同一の実験からのまとめである。表中、2Aは水中油型乳濁液中で3D−MPLおよびQS21を用いて製剤化された抗原を指し、1Bは3D−MPL、QS21およびコレステロールを含むリポソームを用いて製剤化された抗原を指す。
【表21】
【0243】
OF1マウスでは4つ全てのF4成分に対する抗体応答を増加していた。観察された応答を図19に示す。+/−は、観察された応答が弱いか、または2つのアジュバントの1つについてのみ観察されたことを示す。例えば、B6D2F1マウスのp17応答:全体として+/−であり、+2Aおよび−1Bとは、2Aについての応答(弱くない)が存在し、1Bについての応答が存在しないことを意味する。Balb/cマウスのp17応答:全体としては−であり、+/−2Aおよび−1Bとは、この場合+/−はアジュバント2Aについての応答が弱かったことを意味する。
【0244】
細胞性応答を、11merの重複を有する15merのペプチドライブラリープールを用い、p24、p17、RTまたはNefに特異的なペプチドを用いた脾臓細胞の再刺激後に、CD4およびCD8、IFNγおよびIL−2発現についてのフローサイトメトリー染色(IFNγおよびIL−2発現についての細胞内サイトカイン染色)により特性評価した。CD4応答は主要な細胞応答であることが観察された。以下の表3は、抗原特異的CD4+IL−2+応答が各マウス系統について観察された場合をまとめたものである。ここでも、これは応答の存在または不在として示されるものである。
【表22】
【0245】
DBAマウスでは4つ全てのF4成分に対するCD4応答を増加していた。このマウス系統について観察されたCD4+IL−2+およびCD4+IFNγ+応答を、図20に示す。
【0246】
まとめると、2つのアジュバント製剤のいずれかにおいて製剤化されたF4は、p24、p17、RTおよびNefに対する体液性および細胞性応答を促進することができる。これは、F4の各領域がin vivo状況において免疫原性であることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0247】
【図1A】p24−RT−Nef−p17の発現誘導について示す。
【図1B】p24−RT−Nef−p17の可溶性アッセイを示す。
【図2】p24−RT−Nef−p17組換えタンパク質についてのクマシーブルー染色およびウェスタンブロットによる検出を表す。
【図3】RTタンパク質のアライメントを示す。
【図4】RT(コドン最適化)の発現について示す。
【図5】RTの可溶性アッセイを示す。
【図6】リンカーを含むか含まないNef−p17およびp17−Nefの発現について示す。
【図7】Nef−p17およびp17−Nefの可溶性アッセイを示す。
【図8】F4*の発現について示す。
【図9】F3の発現について示す。
【図10】F3*の発現について示す。
【図11】F4(p51)の発現について示す。
【図12】B834(DE3)細胞におけるF4(p51)*の発現について示す。
【図13】F4の精製について示す。
【図14】F4(p51)*の精製について示す。
【図15】F4*の精製について示す。
【図16】F4、F4*、F4(51)*の精製度について示す。
【図17】F4coおよびカルボキシアミド化F4coの精製についてのSDS−PAGEでの追跡を示す。
【図18】方法Iおよび方法IIに従い精製されたF4、F4coおよびF4cocaについてのSDS−PAGE分析を示す。
【図19】マウスにおけるF4の免疫原性を示すグラフである。
【図20】各マウス系統についてのCD4+IL−2+およびCD4+IFNγ+応答を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nefまたはその免疫原性断片もしくは誘導体、およびp17 Gagおよび/もしくはp24 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体を含んでなるポリペプチドであって、p17 Gagおよびp24 Gagの両方が含まれている場合、それらの間に少なくとも1つのHIV抗原または免疫原性断片が存在する、上記ポリペプチド。
【請求項2】
PolもしくはRTまたはそれらの免疫原性断片もしくは誘導体をさらに含んでなる、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記RTまたはその免疫原性断片が、RTがC末端において切断されており、それによりカルボキシ末端のRNaseHドメインが失われている断片である、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記RT断片がp51断片である、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記RTが、592位においてメチオニンをリジン等の他の残基に置き換える突然変異を含んでなる、請求項2〜4のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記Nefが全長Nefである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
以下のもの:
1. p24−RT−Nef−p17
2. p24−RT*−Nef−p17
3. p24−p51 RT−Nef−p17
4. p24−p51 RT*−Nef−p17
5. p17−p51 RT−Nef
6. p17−p51 RT*−Nef
7. Nef−p17
8. Nef−p17、リンカーあり
9. p17−Nef
10. p17−Nef、リンカーあり
*はRTのメチオニン592のリジンへの突然変異を表す、
のうち1つより選択されるポリペプチド。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリペプチドの精製方法であって、
i) 未精製ポリペプチドを含んでなる組成物を用意すること;
ii) 該組成物を少なくとも2つのクロマトグラフィー工程に供すること;
iii)任意により該ポリペプチドをカルボキシアミド化すること;
iv) 製剤化に適したバッファー中に該タンパク質を提供するためにバッファー交換工程を行うこと
を含む、上記方法。
【請求項9】
最大で2つのクロマトグラフィー工程を行う、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記カルボキシアミド化を前記2つのクロマトグラフィー工程の間に行う、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
(i)Nefまたはその免疫原性断片もしくは誘導体およびp17 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体を含んでなるポリペプチド、および(ii)p24 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体を含んでなるか、あるいは(i)Nefまたはその免疫原性断片もしくは誘導体およびp24 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体を含んでなるポリペプチド、および(ii)p17 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体を含んでなる組成物。
【請求項12】
RTまたはその免疫原性断片もしくは誘導体をさらに含んでなる、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
(i)Nefまたはその免疫原性断片もしくは誘導体およびp17 Gagおよび/もしくはp24 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体を含んでなるポリペプチドであって、p17 Gagおよびp24 Gagの両方が含まれている場合、それらの間に少なくとも1つのHIV抗原または免疫原性断片が存在するポリペプチド、ならびに(ii)p51 RTポリペプチドを含んでなる組成物。
【請求項14】
(i)が、以下のもの:
1. Nef−p17
2. Nef−p17、リンカーあり
3. p17−Nef
4. p17−Nef、リンカーあり
より選択される、請求項11〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記RTまたはその免疫原性断片が、RTがC末端において切断されており、それによりカルボキシ末端のRNaseHドメインが失われている断片である、請求項12〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記RT断片がp51断片である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記RTが、592位においてメチオニンをリジン等の他の残基に置き換える突然変異を含んでなる、請求項11〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記Nefが全長Nefである、請求項11〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
Nef、PolおよびGagであるかまたはそれらから誘導される少なくとも4つのHIV抗原または免疫原性断片もしくは誘導体を含んでなる、HIV抗原の融合体であるポリペプチド。
【請求項20】
前記Gagが、前記融合体において少なくとも1つの他の抗原により隔てられている2つの別個の成分として存在する、請求項19に記載のポリペプチド。
【請求項21】
前記Nefが全長Nefである、請求項19または20に記載のポリペプチド。
【請求項22】
前記Polが、p66またはp51 RTである、請求項19〜21のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項23】
前記Gagがp17およびp24 Gagである、請求項19〜22のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1項に記載のポリペプチド、ポリペプチド組成物もしくは融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド群。
【請求項25】
p51 RTポリペプチドもしくはその誘導体、または好ましくはコドンが大腸菌での発現のために最適化されているそれをコードするポリヌクレオチド。
【請求項26】
請求項25に記載のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか1項に記載のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドまたはポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの組成物あるいは請求項1〜26のいずれか1項に記載の精製ポリペプチドと、製薬上許容される担体もしくはアジュバントとを含んでなる、医薬組成物。
【請求項28】
前記アジュバントが、QS21もしくは3D−MPLまたはQS21および3D−MPLの配合物等のTh1誘導性アジュバントである、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項1】
Nefまたはその免疫原性断片もしくは誘導体、およびp17 Gagおよび/もしくはp24 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体を含んでなるポリペプチドであって、p17 Gagおよびp24 Gagの両方が含まれている場合、それらの間に少なくとも1つのHIV抗原または免疫原性断片が存在する、上記ポリペプチド。
【請求項2】
PolもしくはRTまたはそれらの免疫原性断片もしくは誘導体をさらに含んでなる、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記RTまたはその免疫原性断片が、RTがC末端において切断されており、それによりカルボキシ末端のRNaseHドメインが失われている断片である、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記RT断片がp51断片である、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記RTが、592位においてメチオニンをリジン等の他の残基に置き換える突然変異を含んでなる、請求項2〜4のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記Nefが全長Nefである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
以下のもの:
1. p24−RT−Nef−p17
2. p24−RT*−Nef−p17
3. p24−p51 RT−Nef−p17
4. p24−p51 RT*−Nef−p17
5. p17−p51 RT−Nef
6. p17−p51 RT*−Nef
7. Nef−p17
8. Nef−p17、リンカーあり
9. p17−Nef
10. p17−Nef、リンカーあり
*はRTのメチオニン592のリジンへの突然変異を表す、
のうち1つより選択されるポリペプチド。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリペプチドの精製方法であって、
i) 未精製ポリペプチドを含んでなる組成物を用意すること;
ii) 該組成物を少なくとも2つのクロマトグラフィー工程に供すること;
iii)任意により該ポリペプチドをカルボキシアミド化すること;
iv) 製剤化に適したバッファー中に該タンパク質を提供するためにバッファー交換工程を行うこと
を含む、上記方法。
【請求項9】
最大で2つのクロマトグラフィー工程を行う、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記カルボキシアミド化を前記2つのクロマトグラフィー工程の間に行う、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
(i)Nefまたはその免疫原性断片もしくは誘導体およびp17 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体を含んでなるポリペプチド、および(ii)p24 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体を含んでなるか、あるいは(i)Nefまたはその免疫原性断片もしくは誘導体およびp24 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体を含んでなるポリペプチド、および(ii)p17 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体を含んでなる組成物。
【請求項12】
RTまたはその免疫原性断片もしくは誘導体をさらに含んでなる、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
(i)Nefまたはその免疫原性断片もしくは誘導体およびp17 Gagおよび/もしくはp24 Gagまたはその免疫原性断片もしくは誘導体を含んでなるポリペプチドであって、p17 Gagおよびp24 Gagの両方が含まれている場合、それらの間に少なくとも1つのHIV抗原または免疫原性断片が存在するポリペプチド、ならびに(ii)p51 RTポリペプチドを含んでなる組成物。
【請求項14】
(i)が、以下のもの:
1. Nef−p17
2. Nef−p17、リンカーあり
3. p17−Nef
4. p17−Nef、リンカーあり
より選択される、請求項11〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記RTまたはその免疫原性断片が、RTがC末端において切断されており、それによりカルボキシ末端のRNaseHドメインが失われている断片である、請求項12〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記RT断片がp51断片である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記RTが、592位においてメチオニンをリジン等の他の残基に置き換える突然変異を含んでなる、請求項11〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記Nefが全長Nefである、請求項11〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
Nef、PolおよびGagであるかまたはそれらから誘導される少なくとも4つのHIV抗原または免疫原性断片もしくは誘導体を含んでなる、HIV抗原の融合体であるポリペプチド。
【請求項20】
前記Gagが、前記融合体において少なくとも1つの他の抗原により隔てられている2つの別個の成分として存在する、請求項19に記載のポリペプチド。
【請求項21】
前記Nefが全長Nefである、請求項19または20に記載のポリペプチド。
【請求項22】
前記Polが、p66またはp51 RTである、請求項19〜21のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項23】
前記Gagがp17およびp24 Gagである、請求項19〜22のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1項に記載のポリペプチド、ポリペプチド組成物もしくは融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド群。
【請求項25】
p51 RTポリペプチドもしくはその誘導体、または好ましくはコドンが大腸菌での発現のために最適化されているそれをコードするポリヌクレオチド。
【請求項26】
請求項25に記載のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか1項に記載のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドまたはポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの組成物あるいは請求項1〜26のいずれか1項に記載の精製ポリペプチドと、製薬上許容される担体もしくはアジュバントとを含んでなる、医薬組成物。
【請求項28】
前記アジュバントが、QS21もしくは3D−MPLまたはQS21および3D−MPLの配合物等のTh1誘導性アジュバントである、請求項27に記載の医薬組成物。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2008−507987(P2008−507987A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524281(P2007−524281)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008434
【国際公開番号】WO2006/013106
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008434
【国際公開番号】WO2006/013106
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】
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