説明

HLA−DR結合性ペプチドおよびそれらの使用

本発明は、卵巣癌/乳癌関連抗原、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER-2/neu)、癌胎児性抗原(CEA)、インスリン増殖因子結合タンパク質2(IGFBP-2)およびサイクリンD1に由来するHLA-DR(MHCクラスII)結合性ペプチドを提供する。これらの免疫原性ペプチドは癌ワクチンに用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年11月1日に提出された米国仮出願第60/984,646号による優先権の恩典を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、癌などのさまざまな病的状態を予防するため、治療するため、または診断するための組成物および方法に関する。特に、本発明は、選択された主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子と結合して、免疫応答を誘導することのできる、新規ペプチドを提供する。
【背景技術】
【0003】
MHC分子は、クラスI分子またはクラスII分子のいずれかに分類される。クラスII MHC分子は主として、免疫応答の開始および持続に関与する細胞、例えばTリンパ球、Bリンパ球、樹状細胞、マクロファージなどの上で発現される。クラスII MHC分子はヘルパーTリンパ球によって認識されて、ヘルパーTリンパ球の増殖、および提示された特定の免疫原性ペプチドに対する免疫応答の増幅を誘導する。特定の疾患に関連した抗原性ペプチドとクラスII HLA分子との間の複合体は、ヘルパーTリンパ球によって認識されて、ヘルパーTリンパ球の増殖、ならびに特異的なCTLおよび抗体免疫応答の増幅を誘導する。
【0004】
HLA分子とペプチド抗原との複合体は、HLA拘束性T細胞によって認識されるリガンドとして作用する(Buus, S. et al., Cell 47:1071, 1986(非特許文献1);Babbitt, B. P. et al., Nature 317:359, 1985(非特許文献2);Townsend, A. and Bodmer, H., Annu. Rev. Immunol. 7:601, 1989(非特許文献3);Germain, R. N.,Annu. Rev. Immunol. 11:403, 1993(非特許文献4))。
【0005】
本発明のペプチドは、HLAクラスII DR分子と結合するエピトープを含む。クラスIIペプチドリガンドに関しては、モチーフのサイズ、ならびにペプチドのN末端およびC末端からみた結合フレームの位置の両方の点で、より大きな度合いの異質性が存在する。HLAクラスIIペプチドリガンドのこの異質性の高さは、そのクラスI対応物とは異なり、両端が露出(open)している、HLAクラスII分子の結合溝の構造に起因する。HLAクラスII DRB*0101-ペプチド複合体の結晶学的分析により、主な結合エネルギーは、DRB*0101分子上の相補的ポケットと複合体化したペプチド残基によって付与されることが示されている。1つの重要なアンカー残基が最深部の疎水性ポケットと係合し(例えば、Madden, D.R. Ann. Rev. Immunol. 13:587, 1995(非特許文献5))、これは位置1(P1)と呼ばれている。P1はクラスII結合性ペプチドエピトープのN末端残基に相当することもあるが、より典型的には、N末端の側に1つまたは複数の残基が隣接している。他の諸研究も、P1からみてC末端側に6番目の位置にあるペプチド残基の、さまざまなDR分子との結合に関する重要な役割を指摘している。
【0006】
この数年で、HLAクラスI分子およびクラスII分子の大部分は、大きく重なり合うペプチド結合レパートリー、および主要なペプチド結合ポケットのコンセンサス構造によってそれぞれが特徴づけられる、比較的少数のスーパータイプに分類されうることを実証する証拠が蓄積している。したがって、本発明のペプチドは、いくつかのHLA特異的アミノ酸モチーフのうちのいずれか1つ、または、モチーフの存在がいくつかのアレル特異的HLA分子と結合する能力に対応するならば、1つのスーパーモチーフによって同定される。特定のアミノ酸スーパーモチーフを保有するペプチドと結合するHLA分子は、HLA「スーパータイプ」と総称される。
【0007】
人種集団および民族集団を含むヒト人口集団は、HLAアレルの分布に関して明確に異なるパターンを有することから、すべての人口集団の十分な対象範囲(coverage)を達成するために、複数のHLAアレルと結合しうるペプチドを表すモチーフを同定することには意義があると考えられる。本発明は、これらおよび他の需要に応える。
【0008】
Tリンパ球は、元のままの(intact)外来性抗原それ自体ではなく、MHCクラスI分子またはクラスII分子と結合したペプチド断片の形態にある抗原を認識する。MHCクラスII分子によって提示される抗原は通常、ファゴサイトーシス、ピノサイトーシスまたは受容体媒介性エンドサイトーシスを介して抗原提示細胞内に入る可溶性抗原である。ひとたび細胞内に入ると、抗原はエンドソーム内の酸依存性プロテアーゼによって部分的に分解される。その結果生じた断片またはペプチドは、CLIP断片の放出後にMHCクラスII分子と会合して安定な複合体を形成し、それは続いて特異的HTLによる認識を受けるために表面に輸送される。Blum, et al., Crit. Rev. Immunol., 17: 411-17 (1997)(非特許文献6);Arndt, et al., Immunol. Res., 16: 261-72 (1997)(非特許文献7)。
【0009】
特定のMHCアレルと結合するペプチドは、しばしば、あるモチーフの内部に適合すると考えられ、ペプチド内部の特異的な位置に特定の生化学特性を備えたアミノ酸残基を有する。そのような残基は通常、MHCアレルの生化学的特性によって決まる。ペプチド配列モチーフは、MHC分子と結合しうるペプチドのスクリーニングのために利用されており(Sette, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:3296 (1989)(非特許文献8))、クラスI結合モチーフが動物モデルにおいて免疫原性ペプチドの可能性のあるものを同定したことが以前に報告されている(De Bruijn, et al., Eur. J. Immunol. 21: 2963-70 (1991)(非特許文献9);Pamer, et al., Nature 353: 852-955 (1991)(非特許文献10))。また、MHC分子に対する特定のペプチドの結合が、そのペプチドの免疫原性と関連づけられてもいる(Schaeffer, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:4649 (1989)(非特許文献11))。
【0010】
したがって、いくつかのMHC結合性ペプチドは同定されてはいるものの、腫瘍関連抗原から、これらの標的に対するワクチンに免疫応答を生じさせるために利用することのできる新規MHC結合性ペプチドを同定することには、当技術分野において需要がある。さらに、ヒト非近交系集団の大部分において免疫原性であるように、多様な種々のタイプのMHC分子と結合しうるペプチドを同定することにも、当技術分野において需要がある。
【0011】
幅広い効能のあるペプチドベースの免疫治療薬の開発に対する最も手強い障害の1つは、HLA分子の極度の多型性である。集団の偏りない有効な対象範囲は、それぞれの個々のアレルに対応するHLA分子に対して特異的なエピトープを用いるならば、民族的に多様な集団をカバーするために膨大な数を用いなければならないと考えられるため、かなり複雑な作業になるであろう。このため、エピトープベースのワクチンに用いるために、複数のHLA抗原分子によって高い親和性で結合されるペプチドエピトープを開発することには需要がある。結合したHLA抗原分子の数が大きいほど、ワクチンによる集団の対象範囲の幅は広くなる。本明細書に開示した情報に基づいて類似体ペプチドを人工的に作製し、その結果、それを、そのような集団の対象範囲の幅の強化を達成するために用いることもできるであろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Buus, S. et al., Cell 47:1071, 1986
【非特許文献2】Babbitt, B. P. et al., Nature 317:359, 1985
【非特許文献3】Townsend, A. and Bodmer, H., Annu. Rev. Immunol. 7:601, 1989
【非特許文献4】Germain, R. N.,Annu. Rev. Immunol. 11:403, 1993
【非特許文献5】Madden, D.R. Ann. Rev. Immunol. 13:587, 1995
【非特許文献6】Blum, et al., Crit. Rev. Immunol., 17: 411-17 (1997)
【非特許文献7】Arndt, et al., Immunol. Res., 16: 261-72 (1997)
【非特許文献8】Sette, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:3296 (1989)
【非特許文献9】De Bruijn, et al., Eur. J. Immunol. 21: 2963-70 (1991)
【非特許文献10】Pamer, et al., Nature 353: 852-955 (1991)
【非特許文献11】Schaeffer, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:4649 (1989)
【発明の概要】
【0013】
本発明は、ウイルス性疾患および癌などのさまざまな病的状態を予防するため、治療するため、または診断するための組成物および方法に関する。したがって、本明細書で提供されるのは、選択された主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子と結合して、免疫応答を誘導またはモジュレートすることのできる、新規ペプチドである。開示されるペプチドのいくつかは、HLA-DRアレルおよびHLA-DQアレルを含む、ヒトクラスII MHC(HLA)分子と結合することができる。また、MHC分子に対して特異的な結合モチーフを有する免疫原性ペプチドを含む組成物も提供される。開示されるペプチドおよび組成物は、系(system)に対して投与された時に、免疫応答、ヘルパーTリンパ球(HTL)応答または細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を誘導するための方法に利用することができる。
【0014】
さまざまな免疫原性腫瘍関連抗原上のエピトープが同定されている。本ペプチドは、このため、インビボおよびエクスビボでの治療用途および診断用途の両方のための薬学的組成物においても有用である(例えば、テトラマー試薬;Beckman Coulter)。
【0015】
本ペプチドはまた、エピトープベースのワクチンとしても有用である。エピトープベースのワクチンは、好ましくは、集団の対象範囲が増強されており、典型的には幅が広くなっている。ワクチン組成物を構成するHLA-DRスーパーモチーフ保有エピトープは、好ましくは、複数のHLA DRスーパータイプ分子と1000nM未満または500nM未満のKDで結合し、そのペプチドが結合するHLA DRスーパータイプアレルを保有する患者におけるHTL応答を刺激する。
【0016】
モチーフ保有ペプチドはさらに、免疫応答を評価するための、免疫原性試薬というよりむしろ、診断用試薬として用いることもできる。例えば、HLA-DRスーパーモチーフ保有ペプチドエピトープは、ペプチドエピトープによって結合されるHLA DRスーパータイプアレルを所有する患者からの特定のHTL集団の存在に対する免疫応答を分析するために予後予測的に用いることもできる。
【0017】
少なくとも1つのHLA DRスーパータイプ分子に対する、本発明によるペプチドエピトープの結合親和性が決定されることが好ましい。好ましいペプチドエピトープは、少なくとも1つのHLA DRスーパータイプ分子に対して1000nM未満、またはより好ましくは500nM未満の結合親和性を有し、最も好ましくは50nM未満の結合親和性を有する。
【0018】
HLA DRスーパーモチーフ含有エピトープの合成は、インビトロまたはインビボのいずれで行われてもよい。1つの好ましい態様において、ペプチドは組換え核酸によってコードされ、細胞において発現される。核酸は1つまたは複数のペプチドをコードすることができ、そのうち少なくとも1つが本発明のエピトープである。
【0019】
本発明のペプチドエピトープは、それが結合するHLA DRスーパータイプ分子の状況下において、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞傷害性Tリンパ球と接触させて、その結果、HLAの多様な集団におけるT細胞応答を誘発させるために用いることができる。
【0020】
HTLエピトープは単一のペプチドによって構成されてもよい。さらに、HTLエピトープが、好ましくはパルミチン酸による脂質付加を受けてもよく、スペーサー分子によって別のHTLエピトープまたはCTLエピトープと結び付いてもよい。エピトープは1つのヌクレオチド配列によって発現されてもよい;1つの好ましい態様において、ヌクレオチド配列は弱毒化ウイルス宿主内に含まれる。
【0021】
以下の考察から明らかであるように、方法および組成物のその他の態様も本発明の範囲内にある。さらに、本発明に記載した方法のうちのいずれかによって生産される新規合成ペプチドも本発明の一部である。
【0022】
本発明は、ワクチンおよび治療薬に用いるための、ペプチドおよびそれらをコードする核酸を提供する。本発明は、患者における、あらかじめ選択した抗原に対するヘルパーT細胞応答を誘導する方法であって、ヘルパーT細胞を本発明の免疫原性ペプチドと接触させる段階を含む方法を提供する。本発明のペプチドは、さまざまな腫瘍関連抗原に由来しうる。本発明の方法はインビトロまたはインビボでいずれで行うこともできる。1つの好ましい態様において、ペプチドは、患者に対して免疫原性ペプチドをコードする配列を含む核酸分子を投与することによってヘルパーT細胞と接触される。
【0023】
本発明は、ペプチドエピトープとHLAクラスII分子との結合をモジュレートする方法を対象とする。本発明は、HLA分子との結合と関連づけられたモチーフを保有する元のペプチドエピトープの結合を改変する方法であって、前記モチーフが少なくとも1つの一次アンカー位置を含み、前記少なくとも1つの一次アンカー位置で本質的には2つまたはそれ以上の残基からなる一次アンカーアミノ酸残基が特定されており、前記方法が元のペプチドエピトープの一次アンカー残基を別の一次アンカー残基と交換する段階を含み、元の一次アンカー残基が交換される一次アンカー残基と同じではないことを条件とする方法を含む。本発明の1つの好ましい態様は、元の一次アンカー残基がより好ましくない残基であって、交換される残基がより好ましい残基である方法を含む。
【0024】
本発明の1つの代替的な態様は、HLA分子との結合と関連づけられたモチーフを保有する元のペプチドエピトープの結合を改変する方法であって、前記モチーフが、少なくとも1つの一次アンカー残基が特定されている少なくとも1つの一次アンカー位置、および少なくとも1つの二次残基が特定されている少なくとも1つの二次アンカー位置を含み、前記方法が元のペプチドエピトープの二次アンカー残基を別の二次アンカー残基と交換する段階を含み、元の二次アンカー残基が交換されるアミノ酸残基とは異なることを条件とする方法を含む。場合によっては、元の二次残基は有害な残基であって、交換される残基は有害な残基以外の残基である、かつ/または、元の二次アンカー残基はより好ましくない残基であって、交換される残基はより好ましい残基である。
【0025】
以下の考察から明らかであるように、他の方法および態様も想定される。さらに、本明細書に記載した方法のうちのいずれかによって生産される新規合成ペプチドも本発明の一部である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】乱交雑性HER2/neu HLA-DRエピトープに対する先在免疫の同定を示している。各パネルは、健常志願者ドナーおよび患者の両方における、同定されたHER-2/neu(各パネルの標題を参照)ペプチドの1つに対して特異的なT細胞の平均数の散布図を示している。各パネルはユニークなペプチドを表しており、各データポイントは1人の個体に由来する。グレイのボックス(すなわち、カットオフ)は、健常個体から計算した平均および二標準偏差を構成する領域を描いている。パーセンテージは、平均T細胞値がカットオフを上回った患者の割合を表している。丸で囲んだペプチドは、健常対照と比較して、患者のより高い割合が応答したものである。これらのペプチドは最良のワクチン候補であると判断される。しかし、このアプローチの厳格さが多くの偽陰性を生じさせた可能性があることは明らかである。例えば、p885は患者の25%によって認識されることが示されているが、ほぼ同一なペプチドであるp886は4%によってしか認識されない。しかし、p886に関するグラフを見るならば、非常に強い応答を示した健常個体が1例ある。そのデータポイントを除外すると患者の応答率は15%となり、これはp885の応答と一貫性があると考えられる。こうした事情にもかかわらず、本発明者らは先に進展させるための5つの候補を同定した。このアプローチの正確さは、p885の結合モチーフを範囲に含むHER-2/neuペプチドの1つであるp884〜899がHLA-DR4エピトープであることを既に示した、以前の研究から明白である。
【図2】乱交雑性CEA HLA-DRエピトープに対する先在免疫の同定を示している。図2は、CEAが抗原であるという一点の例外を除き、図1と同一である。7つの候補ペプチドが同定された。
【図3】乱交雑性IGFBP2 HLA-DRエピトープに対する先在免疫の同定を示している。図3は、IGFBP2が抗原であるという一点の例外を除き、図1と同一である。4つの候補ペプチドが同定された。上記の本文中で説明しているように10種のペプチドのみを評価したことに留意されたい。
【図4】乱交雑性IGFBP2 HLA-DRエピトープに対する先在免疫の同定を示している。図4は、サイクリンD1が抗原であるという一点の例外を除き、図1と同一である。より寛容な(liberal)統計学的方法を用いて、エピトープの可能性のあるものが7つ同定された。
【図5】HER-2/neuペプチドであるp59、p83、p88およびp885が、天然にプロセシングされて提示される抗原であることを示している。HER-2/neuペプチドのp53(パネルA)、p83(パネルB)、p88(パネルC)およびp885(パネルD)に対して生成された短期的T細胞系のIFN-γ ELISpot分析。これらの系統を、各々の培養ペプチド、無関係な15-merペプチド、HER-2/neuタンパク質断片(アミノ酸22〜122、パネルA〜C;アミノ酸676〜1255、パネルD)または無関係な同程度の重量のタンパク質であるオブアルブミンに対する応答に関して調べた。それぞれは、ペプチドに対するELIspot応答が陽性であった2例の異なる乳癌患者または卵巣癌患者から樹立した2つの系統からの結果を示している。各バーは、3回の反復試験の平均(s.e.m.)である。
【図6】IGFBP2ペプチドであるp17、p22、p249およびp293が天然にプロセシングされるペプチドであることを示している。図6は、結果をIGFBP-2由来のヘルパーエピトープを用いて得た点を除いて、図5と同一である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
定義
以下の定義は、当業者が、本明細書に開示された本発明の好ましい態様のいくつかを理解することを可能にするために提供される。しかし、当然ながら、これらの定義は例示に過ぎず、特許請求の範囲に示された本発明の範囲を限定するために用いられるべきではない。当業者は、以下の定義に軽微な改変を加えて、そのような改変された定義を、本明細書に開示された本発明を理解して実施するために利用することができるであろう。当業者に明らかであると考えられる、そのような改変は、以下に示された特許請求の範囲に対して適用可能であることから、本発明の範囲内にあると判断される。この項に示された定義が、参照により本明細書に組み入れられる特許、公開特許出願および他の刊行物ならびにGenBankおよび他のデータベース中の配列に示された定義に反するか、または他の様式で一致しない場合には、この項に示された定義が、参照により本明細書に組み入れられる定義に優先する。
【0028】
「HLAスーパータイプまたはファミリー」は、本明細書で用いる場合、共通の抗原決定基に基づく血清学的スーパータイプではなく、共通のペプチド結合特異性に基づいてグループ化されたHLA分子のセットを説明する。ある特定のアミノ酸モチーフを保有するペプチドに対してある程度類似した結合親和性を共通に持つHLAクラスII分子は、HLAスーパータイプにグループ化される。「HLAスーパーファミリー」、「HLAスーパータイプファミリー」、「HLAファミリー」および「HLA xx様分子」(ここでxxは特定のHLA型を表す)は同義語である。
【0029】
本明細書で用いる場合、「IC50」という用語は、結合アッセイにおける、参照ペプチドの結合の50%阻害が観察されるペプチドの濃度のことを指す。アッセイを実施する条件によっては(すなわち、MHCタンパク質および標識ペプチドの濃度を限定する)、これらの値はKD値に近づく。IC50値は、アッセイ条件が変更された場合や、用いる具体的な試薬(例えば、HLA調製物など)によっては、しばしば劇的に、変化しうることに注意すべきである。例えば、HLA分子の過剰な濃度は、所与のリガンドの、見かけ上測定されるIC50を高めると考えられる。
【0030】
または、結合は参照ペプチドを基準として相対的に表現される。特定のアッセイの感度がより高くなると、またはより低くなると、被験ペプチドのIC50が幾分変化することがある。しかし、参照ペプチドを基準とした相対的な結合は変化しないと考えられる。例えば、参照ペプチドのIC50が10倍になるような条件下で実施したアッセイでは、被験ペプチドのIC50値もおよそ10倍推移すると考えられる。このため、曖昧さを避けるために、ペプチドが優れた(good)、中程度の(intermediate)、弱い(weak)または陰性の(negative)結合剤のいずれであるかの判定は、一般に、標準的なペプチドのIC50を基準とした相対的なそのIC50に基づく。
【0031】
本明細書で用いる場合、HLAクラスII分子に対するペプチドの結合についての「高い親和性」は、50nM未満のKD(またはIC50)での結合と定義される。「中程度の親和性」は、約50〜約500nMのKD(またはIC50)での結合である。本明細書で用いる場合、HLAクラスII分子に対するペプチドの結合についての「高い親和性」は、100nM未満のKD(またはIC50)での結合と定義される。「中程度の親和性」は、約100〜約1000nMのKD(またはIC50)での結合である。結合を決定するためのアッセイは、例えば、PCT公報WO 94/20127号およびWO 94/03205号に詳細に記載されている。
【0032】
また、結合を、以下を用いるものを含む、他のアッセイ系を用いて決定することもできる:生細胞(例えば、Ceppellini et al., Nature 339:392 (1989);Christnick et al., Nature 352:67 (1991);Busch et al., Int. Immunol. 2:443 (1990);Hill et al.., J Immunol. 147:189 (1991);del Guercio et al., J Immunol. 154:685 (1995))、界面活性剤溶解物を用いる無細胞系(例えば、Cerundolo et al., J Immunol. 21:2069 (1991))、固定化された精製MHC(例えば、Hill et al., J Immunol. 152,2890 (1994);Marshall et al., J Immunol. 152:4946 (1994))、ELISA系(例えば、Reay et al., EMBO J 11:2829 (1992))、表面プラズモン共鳴(例えば、Khilko et al., J Biol. Chem. 268:15425 (1993));高フラックス可溶相アッセイ(high flux soluble phase assay)(Hammer et al., J. Exp. Med. 180:2353 (1994))。
【0033】
「ペプチド」という用語は、典型的には、隣接するアミノ酸のα-アミノ基とカルボニル基との間のペプチド結合によって1つのものが他のものと連結された、一連の残基、典型的にはL-アミノ酸を指定するために、本明細書において「オリゴペプチド」と互換的に用いられる。ある態様において、本発明のオリゴペプチドは長さが約50残基未満であり、通常は約6〜約25残基、好ましくは14残基または15残基からなる。さらに、本発明のオリゴペプチドは、それがネイティブな抗原の50個を上回る連続したアミノ酸を含まないようなものでありうる。本発明の好ましいHTL誘導性ペプチドは、長さが30残基またはそれ未満であり、時には20残基またはそれ未満であり、通常は約6〜約25残基、好ましくは14残基または15残基からなる。
【0034】
「合成ペプチド」とは、天然には存在せず、化学合成または組換えDNA技術のような方法を用いて人工的に作製されたペプチドのことを指す。
【0035】
ペプチド化合物を記述するために用いられる命名法は、各アミノ酸残基のアミノ基を左側(N末端)に、カルボキシル基を右側(C末端)に提示する、従来の慣例に従う。本発明の選択された態様を表す式において、アミノ-およびカルボキシル-末端基は、具体的には示されていないものの、別に指定されていない限り、生理的なpH値でとると考えられる形態にあると考えられる。アミノ酸構造式において、各残基は一般に、標準的な三文字名称または一文字名称によって表される。L型のアミノ酸残基は大文字一文字または最初の文字が大文字になった三文字記号によって表され、D型を有するようなアミノ酸に関するD型は、小文字一文字または小文字の三文字記号によって表される。グリシンは不斉炭素原子を有しておらず、単に「Gly」またはGと称する。各アミノ酸に関する記号は以下に示されている。
【0036】
(表1)アミノ酸とそれらの略号

【0037】
特定のアミノ酸配列に関して、「エピトープ」は、特定の免疫グロブリンによる認識に関与するアミノ酸残基のセットのことであり、または、T細胞の状況においては、T細胞受容体タンパク質および/または主要組織適合遺伝子複合体(MHC)受容体による認識のために必要であるような残基のことである。インビボまたはインビトロでの免疫系の状況において、エピトープは、免疫グロブリン、T細胞受容体またはHLA分子によって認識される部位を総合的に形成する、一次、二次および三次ペプチド構造ならびに電荷といった分子の集合的な特徴のことである。本開示の全体を通じて、エピトープおよびペプチドはしばしば互換的に用いられる。
【0038】
別のアミノ酸とともに本発明のエピトープを含むタンパク質またはペプチド分子も、依然として本発明の範囲内にあることが理解されるべきである。ある態様において、本発明のペプチドの長さには限定がある。長さが限定される態様は、本発明のエピトープを含むタンパク質/ペプチドが、ネイティブな配列に対して100%の同一性を有する領域(すなわち、連続した一連のアミノ酸)を含む場合に生じる。例えば、天然分子全体の読み取りから回避する目的で、エピトープの定義は、ネイティブなペプチド配列に対して100%の同一性を有する任意の領域の長さについて限定がある。すなわち、本発明のエピトープ、およびネイティブなペプチド配列に対して100%の同一性を有する領域を含むペプチドについては、ネイティブな配列に対して100%の同一性を有する領域は、一般に以下の長さを有する:600アミノ酸未満であるかそれと等しい、しばしば500アミノ酸未満であるかそれと等しい、しばしば400アミノ酸未満であるかそれと等しい、しばしば250アミノ酸未満であるかそれと等しい、しばしば100アミノ酸未満であるかそれと等しい;しばしば85アミノ酸未満であるかそれと等しい、しばしば75アミノ酸未満であるかそれと等しい、しばしば65アミノ酸未満であるかそれと等しい、およびしばしば50アミノ酸未満であるかそれと等しい。ある態様において、本発明の「エピトープ」は、ネイティブなペプチド配列に対して100%の同一性を有する、最短で5アミノ酸までの任意の刻み目(increment)で51アミノ酸未満の領域を有するペプチドによって構成される。
【0039】
したがって、600アミノ酸よりも長いペプチド配列またはタンパク質配列も、それらがネイティブなペプチド配列に対して100%の同一性を有する600アミノ酸を上回る任意の連続した配列を含まない限り、本発明の範囲内にある。ネイティブな配列に対する5個またはそれ未満の連続した残基を有する任意のペプチドについては、本発明の範囲内に収めることを目的とした、そのペプチドの最大の長さに対する限定はない。CTLエピトープは、最短で8アミノ酸残基までの任意の刻み目で長さ600残基未満であることが、ここでは好ましい。
【0040】
「ドミナントエピトープ」は、そのエピトープを含むネイティブな抗原全体による免疫処置を行うと免疫応答を誘導する(例えば、Sercarz, et al., Annu. Rev. Immunol. 11:729-766 (1993)を参照)。そのような応答は、インビトロで、単離されたペプチドエピトープと交差反応性がある。
【0041】
「潜在(cryptic)エピトープ」は、単離されたペプチドによる免疫処置によって応答を惹起するが、その応答は、そのエピトープを含む元のままのタンパク質全体を抗原として用いた場合には、インビトロでの交差反応性がない。
【0042】
「サブドミナントエピトープ」とは、エピトープを含む抗原全体による免疫処置を行っても応答をほとんどまたは全く誘発しないが、単離されたエピトープによるインビボまたはインビトロでの免疫処置によって応答を得ることができ、タインビトロで応答を復活(recall)させるためにンパク質全体を用いた場合に、この応答が(潜在エピトープの場合とは異なり)検出される、エピトープのことである。
【0043】
「薬学的添加剤」には、アジュバント、担体、pH調整剤および緩衝剤、張性調整剤、湿潤剤、保存料などの物質が含まれる。
【0044】
本明細書で用いる場合、「薬学的に許容される」という用語は、一般に無毒性の、不活性な、および/または生理的に適合性のある組成物のことを指す。
【0045】
本明細書で用いる場合、「防御的免疫応答」または「治療的免疫応答」とは、疾患の症状、副作用または進行を何らかの形で予防する、または少なくとも部分的に停止させる、腫瘍関連抗原に対するHTL応答および/またはCTL応答のことを指す。免疫応答には、ヘルパーT細胞の刺激によって促された抗体応答が含まれうる。
【0046】
ある態様において、「免疫原性ペプチド」とは、そのペプチドがMHC(HLA)分子と結合してHTL応答を誘導しうるようにアレル特異的モチーフを含むペプチドのことである。本発明の免疫原性ペプチドは、適切なクラスII MHC分子(例えば、HLA-DR)と結合して、その免疫原性ペプチドの由来である抗原に対するヘルパーT細胞応答を誘導することができる。
【0047】
「免疫原性応答」は、インビトロおよび/またはインビボのHTL応答および/またはCTL応答を刺激するとともに、特定のT細胞集団における細胞死(またはアポトーシス)の指定誘導(directed induction)を通じて、進行中の免疫応答をモジュレートするものを含む。
【0048】
本発明の免疫原性ペプチドは、適切なHLA-DR分子と結合して、その免疫原性ペプチドの由来である抗原に対するヘルパーT細胞応答を誘導することができる。本発明の免疫原性ペプチドは、約50残基未満の長さであり、しばしば30残基またはそれ未満の長さ、または20残基もしくはそれ未満の長さであり、通常は約6〜約25残基、好ましくは14残基または15残基からなる。
【0049】
「導き出された(derived)」という用語は、エピトープについて考察するために用いられる場合、「調製された(prepared)」と同義語である。導き出されたエピトープは、天然の源から単離することもでき、当技術分野における標準的なプロトコールに従って合成することもできる。合成エピトープは、天然のL型アミノ酸のD型異性体、またはシクロヘキシルアラニンなどの非天然アミノ酸といった人工的アミノ酸「アミノ酸模倣物」を含むことができる。導き出された/調製されたエピトープは、ネイティブなエピトープの類似体でありうる。
【0050】
免疫原性ペプチドは、特定のHLAサブタイプ(例えば、HLA-DR)に関して記述されている結合モチーフアルゴリズムを用いて都合良く同定される。これらのアルゴリズムは、免疫原性ペプチドの選択を可能にするスコアを生成する数学的手順である。典型的には、ある「結合閾値」を有するアルゴリズムスコアを用いることで、ある特定の親和性で結合する確率が高く、敷衍して免疫原性であると考えられる、ペプチドの選択が可能になる。アルゴリズムは、ペプチドの特定の位置にある特定のアミノ酸のMHC結合に対する影響、またはペプチドを含むモチーフにおける特定の置換の結合に対する影響のいずれかに基づく。
【0051】
「残基」という用語は、アミド結合またはアミド結合模倣物によってオリゴペプチド中に組み入れられているアミノ酸またはアミノ酸模倣物のことを指す。
【0052】
「保存された残基」とは、ペプチド中の特定の位置に、ランダム分布によって予想されるよりも有意に高い頻度で存在するアミノ酸のことである。典型的には、保存された残基とは、MHC構造が免疫原性ペプチドとの接触点を提供すると考えられるもののことである。規定された長さのペプチドの内部の少なくとも1つ〜3つまたはそれ以上の、好ましくは2つの保存された残基が、免疫原性ペプチドに関するモチーフを規定する。これらの残基は典型的には、ペプチド結合溝と密に接触しており、それらの側鎖は溝その自体の特異的ポケットの中に埋没している。典型的には、免疫原性ペプチドは、最大で3つまでの保存された残基、より通常は2つの保存された残基を含むと考えられる。
【0053】
「モチーフ」という用語は、特定のMHCアレル(1つまたは複数のHLA分子)によって認識される、規定された長さの、通常は約6〜約25アミノ酸のペプチドにおける、残基のパターンのことを指す。ペプチドモチーフは典型的には各ヒトMHCアレルごとに異なり、高度に保存された残基および陰性残基のパターンに違いがある。ペプチドモチーフは、各ヒトHLAアレルによってコードされるタンパク質に関して多くの場合はユニークであり、それらの一次および二次アンカー残基のパターンに違いがある。典型的には、本明細書で用いる場合、「モチーフ」とは、特定のアレルによってコードされるHLA分子によって認識される残基のそのパターンのことを指す。アレルに関する結合モチーフは高い精度で定義することができる。
【0054】
エピトープ中の残基位置の「カルボキシル末端」または「カルボキシル末端位置」としての名称は、以下に定義する従来の命名法を用いて指定される、ペプチドのカルボキシル末端に最も近いエピトープの末端にある残基位置のことを指す。エピトープの「カルボキシル末端位置」は、ペプチドまたはポリペプチドの末端に実際に対応してもよく、対応しなくてもよい。
【0055】
エピトープ中の残基位置の「アミノ末端」または「アミノ末端位置」としての名称は、以下に定義する従来の命名法を用いて指定される、ペプチドのアミノ末端に最も近いエピトープの末端にある残基位置のことを指す。エピトープの「アミノ末端位置」は、ペプチドまたはポリペプチドの末端に実際に対応してもよく、対応しなくてもよい。
【0056】
「モチーフ保有ペプチド」または「モチーフを含むペプチド」とは、所与のモチーフまたはスーパーモチーフに関して指定された一次アンカーを含むペプチドのことを指す。
【0057】
ある態様において、「スーパーモチーフ」は、2つまたはそれ以上のHLAアレルによってコードされるHLA分子が共通に有する、ペプチド結合特異性のことを指す。好ましくは、スーパーモチーフ保有ペプチドは、2つまたはそれ以上のHLA分子または抗原によって、高いまたは中程度の親和性(本明細書で定義した通り)で認識される。
【0058】
または、「スーパーモチーフ」という用語は、免疫原性ペプチド中に存在する場合に、そのペプチドが複数のHLA抗原と結合することを可能にするモチーフのことを指す。スーパーモチーフは好ましくは、ヒト集団において広範な分布を有する少なくとも1つのHLAアレルによって高いまたは中程度の親和性(本明細書で定義した通り)で認識される、好ましくは少なくとも2つのアレルによって認識される、より好ましくは少なくとも3つのアレルによって認識される、最も好ましくは3つを上回るアレルによって認識される。
【0059】
「ヒト白血球抗原」または「HLA」は、ヒトクラスIまたはクラスII 主要組織適合遺伝子複合体(MHC)タンパク質のことである(Stites, et al., IMMUNOLOGY, 8th ED., Lange Publishing, Los Altos, CA (1994)を参照)。
【0060】
「主要組織適合遺伝子複合体」または「MHC」とは、生理的な免疫応答の原因となる細胞相互作用の制御において役割を果たす、遺伝子のクラスターのことである。ヒトでは、MHC複合体はHLA複合体としても知られる。MHC複合体およびHLA複合体の詳細な説明については、Paul, FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY, 3rd ED., Raven Press, New York, 1993を参照。
【0061】
「単離された」または「生物学的に純粋な」という語句は、そのネイティブな状態で見いだされるようなそれに通常付随する成分を、実質的または本質的に含まない材料のことを指す。したがって、本発明のペプチドは、それらのインサイチュー環境において通常付随する材料、例えば、抗原提示細胞上のMHCクラスII分子を含まない。タンパク質が均一または主要なバンドとして単離された場合であっても、所望のタンパク質とともに共精製される、ネイティブなタンパク質の5〜10%の範囲内の微量の混入物が存在する。本発明の単離されたペプチドは、そのような内因性の共精製されたタンパク質を含まない。
【0062】
「末梢血単核細胞」(PBMC)とは、患者の末梢血中から見いだされる細胞のことである。PBMCは、例えば、CTLおよびHTLならびに抗原提示細胞を含む。これらの細胞はインビボで抗原と接触することができ、または哺乳動物源から入手してインビトロで抗原と接触させることができる。
【0063】
「交差反応性結合」は、ペプチドが複数のHLA分子によって結合されていることを指し示す;同義語は縮重(degenerate)結合である。
【0064】
「乱交雑性(promiscuous)認識」とは、異なるHLA分子によって結合された同一のペプチドが、同一のT細胞クローンによって認識されることを指す。これはまた、ペプチドが複数のHLAアレルの状況下で単一のT細胞受容体によって認識される能力を指すこともある。
【0065】
「結び付ける(link)」または「つなぐ(join)」は、組換え融合、共有結合、ジスルフィド結合結合、イオン結合、水素結合および静電結合を非限定的に含む、ペプチドを機能的に連結させるための、当技術分野で公知の任意の方法のことを指す。
【0066】
「非ネイティブな」配列または「構築物」とは、天然には見られない、すなわち、「天然には存在しない」配列のことを指す。そのような配列には、例えば、脂質付加された、または他の様式で修飾されたペプチド、およびネイティブなタンパク質配列の中では連続していない複数のエピトープを含むポリエピトープ性組成物が含まれる。
【0067】
本明細書で用いる場合、「ワクチン」とは、本発明の1つまたは複数のペプチドを含む組成物のことであり、例えば、表Iを参照されたい。本発明によるワクチンには、1つもしくは複数のペプチドのカクテル;ポリエピトープ性ペプチドによって構成される1つもしくは複数の本発明のペプチド;またはそのようなペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸、例えば、ポリエピトープ性ペプチドをコードするミニ遺伝子、などによる数多くの態様がある。「1つまたは複数のペプチド」には、1から150までの任意の単位整数全体、例えば、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、100個、105個、110個、115個、120個、125個、130個、135個、140個、145個または150個またはそれ以上の本発明のペプチドが含まれうる。ペプチドまたはポリペプチドは、任意で、脂質付加、標的指向性配列または他の配列の付加などによって修飾されうる。本発明のHLAクラスII結合性ペプチドは、細胞傷害性Tリンパ球およびヘルパーTリンパ球の両者の活性化を促すために、HLAクラスI結合性ペプチドと結び付けることができる。ワクチンは、ペプチドでパルス刺激を受けた(peptide pulsed)抗原提示細胞、例えば、樹状細胞を含みうる。
【0068】
発明の詳細な説明
本発明のある態様は、一部には、ワクチン設計のためのエピトープベースのアプローチに関する。そのようなアプローチは、HTL免疫応答を誘導するための機序は、HTLエピトープを、抗原提示細胞上に提示されたHLA分子と結合した約6〜25アミノ酸のペプチドとして提示する段階を含むという十分に確立された知見に基づく。
【0069】
本発明のある態様は、HLAクラスII分子と結合する、アレル特異的なペプチドモチーフおよびスーパーモチーフを含むペプチドに関する。
【0070】
上述したように、高いHLA結合親和性は、より高い免疫原性と関連づけられている。より高い免疫原性は、いくつかの異なる様式で顕在化しうる。例えば、結合性のより高いペプチドは、より高い頻度で免疫原性であると考えられる。高結合性ペプチドの90%近くが免疫原性であり、これは中程度の親和性を有するペプチドの約50%とは対照的である。結合性のより高いペプチドはまた、より活発な応答も招くと考えられる。その結果として、同程度の生物学的効果を惹起するために必要なペプチドはより少ない。したがって、本発明のいくつかの態様においては、高結合性エピトープが特に所望される。
【0071】
公知の非ウイルス性腫瘍関連抗原(TAA)に由来するエピトープのかなりの数が、HLAクラスIIと中程度の親和性(50〜500mMの範囲にあるIC50)で結合する。腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)またはCTLによって認識される15種の公知のTAAペプチドのうち8種が、50〜500mMの範囲で結合される。これらのデータは、ペプチドとして認識される公知のウイルス性抗原の90%がHLAと50mMまたはそれ未満のIC50で結合されており、50〜500mMの範囲で結合されているのはおよそ10%に過ぎないという推計値とは対照的である(Sette, et al., J. Immunol., 153:5586-5592 (1994))。この現象はおそらく、T細胞寛容化事象のためと推定される、癌の状況における最も高結合性のペプチドのいくつかを認識するCTLの排除または機能的阻害に起因する。
【0072】
本発明によるエピトープ保有ペプチドは、合成的に、組換えDNA技術により、またはウイルス全体もしくは腫瘍などの天然の源から調製することができる。ペプチドは好ましくは、他の天然に存在する宿主細胞タンパク質およびそれらの断片を実質的に含まないと考えられるが、いくつかの態様において、ペプチドはネイティブな分子または粒子と合成的にコンジュゲートされる;また、ペプチドを非ネイティブな分子または粒子とコンジュゲートさせることもできる。
【0073】
本発明によるペプチドは、種々の長さであってよく、それらの中性(非荷電)形態または塩である形態のいずれであってもよい。本発明によるペプチドは、グリコシル化、側鎖酸化もしくはリン酸化などの修飾を含まないか;またはそれらはこれらの修飾を含むかのいずれかである。
【0074】
望ましくは、エピトープ保有ペプチドは、大型ペプチドにおいて該当する免疫学的活性を依然として保ちながらも、できるだけ小さいと考えられる;当然ながら、病原性生物体由来のペプチドについては、病原性機能を避ける目的でペプチドは小さいことが特に望ましい。可能な場合には、クラスII分子に対しては、本発明のエピトープを約6〜約25アミノ酸残基、好ましくは14〜15アミノ酸残基に最適化することが望ましい。好ましくは、ペプチドは、細胞表面上のHLAクラスI分子またはクラスII分子と結合した内因性にプロセシングされたウイルス性ペプチドまたは腫瘍細胞ペプチドと、サイズの点で釣り合う。しかしながら、他の長さのペプチドの同定および調製を、一次アンカー位置の開示のような、本明細書に記載した手法を用いて行うこともできる。本発明によるペプチドエピトープは、エピトープそれ自体よりも長いペプチドまたはタンパク質中に存在しうることが理解される必要がある。さらに、マルチエピトープ性ペプチドは、少なくとも1つの本発明のエピトープを、他のエピトープとともに含みうる。
【0075】
特に、本発明は、複数のHLAアレルによって結合されるペプチドに共通するモチーフを提供する。モチーフの同定およびMHCペプチド相互作用試験の組み合わせにより、ペプチドワクチンのために有用なペプチドが同定されている。
【0076】
これらの抗原からのエピトープを含むペプチドを合成し、続いてそれらが適切なMHC分子と結合する能力を、アッセイにおいて、例えば、免疫蛍光染色およびフローマイクロフルオロメトリー(flow microfluorometry)、ペプチド依存性クラスIIアセンブリアッセイを用いて検査する。クラスII分子と結合するペプチドを、感染または免疫処置を受けた個体由来のHTLの標的としてそれらが役立つ能力、ならびに潜在的な治療薬として腫瘍細胞と反応しうるHTL集団を生じさせることのできるインビトロまたはインビボ一次HTL応答をそれらが誘導する能力についてさらに評価する。
【0077】
このため、有効なワクチンの設計のための出発点は、そのワクチンが、都合良く提示されうる多数のエピトープを確実に生成させるようにすることである。エピトープそれ自体に相当するペプチドを投与することも可能な場合がある。そのような投与は、対象の細胞上に呈示された「空の(empty)」HLA分子の提示に依存する。免疫原性ペプチドそれ自体を用いるための1つのアプローチでは、これらのペプチドを、治療しようとする対象由来の抗原提示細胞とともにエクスビボでインキュベートし、続いて細胞を対象に戻す。
【0078】
または、ペプチドを、それをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を投与することによってインサイチューで生成させることもできる。そのような核酸分子を提供するための手段はWO99/58658号に記載されており、その開示内容は参照により本明細書に組み入れられる。さらに、免疫原性ペプチドをより大きなペプチド分子の部分として投与し、切断して所望のペプチドを放出させることもできる。より大きなペプチドは外来性アミノ酸を含んでもよいが、一般に少ないほど良い。すなわち、そのようなアミノ酸を含むペプチドは、典型的には50アミノ酸またはそれ未満、より典型的には30アミノ酸またはそれ未満、より典型的には20アミノ酸またはそれ未満である。また、前駆体が、数多くの異なるまたは同一なHTLエピトープを含むヘテロポリマーまたはホモポリマーであってもよい。当然ながら、種々の免疫原性ペプチドを生成するペプチドおよび核酸の混合物を用いることもできる。ペプチドワクチン、核酸分子、またはヘテロ-もしくはホモ-ポリマーの設計は、所望のエピトープを含めることに依存する。
【0079】
ある態様において、ペプチドはHLA-DRスーパータイプアレルと結合するエピトープを含むことが好ましい。これらのモチーフは、任意の所望の抗原に由来するT細胞エピトープ、特に潜在的な抗原標的のアミノ酸配列が公知であるヒト癌と関連性があるものを定義するために用いることができる。
【0080】
本ペプチドはこのため、インビボおよびエクスビボの治療用途および診断用途の両方のための薬学的組成物においても有用である。
【0081】
スーパーモチーフ配列を含むペプチドは、上述したように、潜在的な抗原の源のスクリーニングによって同定することができる。有用なペプチドを、スーパーモチーフ中の可変残基の系統的またはランダムな置換によってペプチドを合成し、それらを提供されたアッセイに従って検査することによって同定することもできる。以下で実証されるように、標的HLA分子の配列を参照することも同じく有用である。
【0082】
エピトープベースのワクチンに関しては、本発明のペプチドは、好ましくは、ヒト集団において広範な分布を有するHLAクラスII分子によって認識されるスーパーモチーフおよび/またはモチーフを含む。HLA多型性の度合いが大きいことは、ワクチン開発のためのエピトープベースのアプローチで考慮すべき重要な要因である。この要因に対処するためには、複数のHLA分子と高いまたは中程度の親和性で結合しうるペプチドの同定を範囲に含むエピトープ選択が好ましくは利用され、最も好ましくは、これらのエピトープは2つまたはそれ以上のアレル特異的HLA分子と高いまたは中程度の親和性で結合する。
【0083】
ワクチン組成物に関する関心対象のHTL誘導性ペプチドには、好ましくは、クラスII HLA分子に対するIC50または結合親和性の値が1000nMまたはそれよりも良いものが含まれる(すなわち、値が1000mMよりも大きいかそれと等しい)。例えば、ペプチド結合を、候補ペプチドが精製されたHLA分子とインビトロで結合する能力を検査することによって判定する。続いて、高いまたは中程度の親和性を呈するペプチドを、さらなる分析のために選考する。選択したペプチドを、一般に、スーパータイプファミリーの他のメンバーに対して検査する。好ましい態様においては、続いて、交差反応性結合を呈するペプチドを、細胞スクリーニング分析またはワクチンに用いる。
【0084】
特定のクラスIIアレルに対する結合を予測するモチーフの定義により、そのアミノ酸配列が公知である抗原性タンパク質からの潜在的なペプチドエピトープの同定が可能になる。典型的には、潜在的なペプチドエピトープの同定は、まず、所望の抗原のアミノ酸配列をモチーフおよび/またはスーパーモチーフの存在に関してスキャニングを行うためにコンピュータを用いて行われる。
【0085】
種々のクラスIIアレルに対して特異的なモチーフの以前の定義は、そのアミノ酸配列が公知である抗原性タンパク質からの潜在的なペプチドエピトープの同定を可能にする。典型的には、潜在的なペプチドエピトープの同定は、モチーフの存在に関して所望の抗原のアミノ酸配列のスキャニングを行うためにコンピュータを用いて行われる。続いてエピトープ配列を合成する。MHCクラスII分子と結合する能力を、種々の異なる様式で測定する。
【0086】
本発明のペプチドを同定するために用いられる手順は、一般に、Falk et al., Nature 351:290 (1991)に開示された方法に従い、それは参照により本明細書に組み入れられる。手短に述べると、本方法は、典型的には適切な細胞または細胞系からの免疫沈降または親和性クロマトグラフィーによる、MHCクラスII分子の大規模単離を伴う。当業者に同等に公知である、所望のMHC分子の単離のための他の方法の例には、イオン交換クロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、サイズ排除、高速リガンドクロマトグラフィー、および上記の手法すべての組み合わせが含まれる。
【0087】
単離されたMHC分子のペプチド結合溝と結合したペプチドは、典型的には酸処理を用いて溶出される。また、ペプチドを、熱、pH、界面活性剤、塩、カオトロピック剤またはそれらの組み合わせといった種々の標準的な変性手段によって、クラスII分子から解離させることもできる。
【0088】
ペプチド画分を、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってMHC分子からさらに分離して、シークエンシングを行う。ペプチドは、濾過、限外濾過、電気泳動、サイズクロマトグラフィー、特異的抗体を用いる沈降、イオン交換クロマトグラフィー、等電点フォーカシングなどを含む、当業者に周知の他の標準的な手段によって分離することができる。
【0089】
単離されたペプチドのシークエンシングは、エドマン分解(Hunkapiller, M.W., et al., Methods Enzymol. 91, 399 [1983])などの標準的な手法に従って行うことができる。シークエンシングのために適した他の方法には、以前に記載されたような、個々のペプチドの質量分析シークエンシングが含まれる(Hunt, et al., Science 225:1261 (1992)、これは参照により本明細書に組み入れられる)。異なるクラスI分子由来の大量の異種ペプチド(例えば、プールしたHPLC画分)のアミノ酸シークエンシングは、典型的には、各クラスIアレルに関して特徴的なモチーフを明らかにする。
【0090】
次に、MHCクラスII結合アッセイで検査陽性であったペプチドを、ペプチドがインビトロで特異的HTL応答を誘導する能力に関してアッセイする。例えば、ペプチドとともにインキュベートした抗原提示細胞を、レスポンダー細胞集団におけるHTL応答を誘導する能力に関してアッセイする。抗原提示細胞は、末梢血単核細胞または樹状細胞などの正常細胞であってよい(Inaba, et al., J. Exp. Med. 166:182 (1987);Boog, Eur. J. Immunol. 18:219 (1988))。
【0091】
本明細書で開示するように、より高いHLA結合親和性はより大きな免疫原性と関連づけられている。より大きな免疫原性は、いくつかの異なる様式で顕在化しうる。免疫原性は、免疫応答が多少でも惹起されるか否か、および任意の特定の応答の活発さ、ならびに応答が惹起される多様な集団の程度に対応しうる。例えば、ペプチドが多様な数々の集団における免疫応答を惹起し、それでもなお両方の場合も活発な応答を生じないことが考えられる。本明細書に開示された原理によれば、高結合性ペプチドの90%近くは免疫原性であることが見いだされており、これは中程度の親和性を有するペプチドの約50%とは対照的である。さらに、結合親和性のより高いペプチドは、より活発な免疫原性応答も招くと考えられる。その結果として、高親和性の結合性ペプチドを用いる場合には同程度の生物学的効果を惹起するために必要なペプチドはより少ない。したがって、本発明の好ましい態様においては、高親和性の結合性エピトープが特に有用である。しかしながら、先行技術を上回る改良が、中程度のまたは高い結合性のペプチドを用いて達成される。
【0092】
それらの結合親和性を決定した後に、これらのワクチン候補の中から、集団の対象範囲、抗原性および免疫原性の点で好ましい特徴を有するエピトープを選択するために、さらなる確認作業を行うことができる。
【0093】
例として、免疫原性を評価するためには、以下を含む、さまざまな戦略を利用することができる。
【0094】
1)正常個体由来の一次T細胞培養物の評価(例えば、Wentworth, P. A. et al., Mol. Immunol. 32:603, 1995;Celis, E. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:2105, 1994;Tsai, V. et al., J. Immunol. 158:1796, 1997;Kawashima, I. et al., Human Immunol. 59:1, 1998を参照);この手順は、インビトロでの抗原提示細胞の存在下における、数週間の期間にわたる、被験ペプチドによる正常対象由来の末梢血リンパ球(PBL)の刺激を伴う。そのペプチドに対して特異的なT細胞は、この時間の間に活性化され、検出される。
【0095】
2)HLAトランスジェニックマウスの免疫処置(例えば、Wentworth, P. A. et al., J. Immunol. 26:97, 1996;Wentworth, P. A. et al., Int. Immunol. 8:651, 1996;Alexander, J. et al., J. Immunol. 159:4753, 1997を参照);この方法では、不完全フロイントアジュバント中にあるペプチドを、HLAトランスジェニックマウスに対して皮下投与する。免疫処置から数週間後に、脾細胞を取り出して、被験ペプチドの存在下でおよそ1週間インビトロで培養する。ペプチド特異的T細胞を検出する。
【0096】
3)有効にワクチン接種を受けた患者または腫瘍を有する患者からのリコール(recall)T細胞応答の実証;(例えば、Rehermann, B. et al., J. Exp. Med. 181:1047, 1995;Doolan, D. L. et al., Immunity 7:97, 1997;Bertoni, R. et al., J. Clin. Invest. 100:503, 1997;Threlkeld, S. C. et al., J. Immunol. 159:1648, 1997;Diepolder, H. M. et al., J. Virol. 71:6011, 1997;Tsang et al., J. Natl. Cancer Inst. 87:982-990, 1995;Disis et al., J. Immunol. 156:3151-3158, 1996を参照)。この戦略の適用においては、「天然に」免疫応答を生じた癌を有する患者、または腫瘍抗原ワクチンによるワクチン接種を受けた患者からのPBLを培養することによってリコール応答を検出する。対象由来のPBLを、「メモリー」T細胞の活性化を可能にするために、被験ペプチド+抗原提示細胞(APC)の存在下で1〜2週間インビトロで培養し、「ナイーブ」T細胞と比較する。培養期間の終了時に、T細胞活性を検出する。
【0097】
本発明の免疫原性ペプチドエピトープは、同じ抗原の別のペプチドエピトープ、同じ源からの抗原、および/または異なる源からの抗原を含む、ポリエピトープ性ワクチン組成物中に含めることができる。さらに、クラスIIエピトープをクラスIエピトープとともに含めることもできる。同じ抗原からのペプチドエピトープは、配列中で連続している隣接エピトープであってもよく、またはタンパク質の異なる領域から得てもよい。
【0098】
本発明のペプチド中に存在するエピトープは、MHCアレルおよびアレルサブタイプとのその相互作用について交差反応性であってもよく、または非交差反応性であってもよい。エピトープ(またはペプチド)の交差反応性結合は、エピトープが複数のHLA分子によって結合されることを許容する。そのような交差反応性は縮重結合としても知られている。非交差反応性エピトープは、特定のMHCアレルまたはアレルサブタイプとの結合に制限されると考えられる。
【0099】
クラスII HTL誘導性ペプチドエピトープを指し示すモチーフ
HLAクラスIIスーパーモチーフおよびモチーフの一次アンカー残基について、以下に描写する。
【0100】
HLA DR-1-4-7スーパーモチーフ
3つの一般的HLAクラスIIアレル特異的HLA分子:HLA DRB1*0401、DRB1*0101およびDRB1*0701と結合するペプチドに関してもモチーフが同定されている(例えば、Southwood et al. J. Immunology 160:3363-3373, 1998を参照)。一括して、これらのモチーフからの共通の残基がHLA DR-1-4-7スーパーモチーフを描写する。これらのDR分子と結合するペプチドは、大型の芳香族残基または疎水性残基(Y、F、W、L、I、VまたはM)によって特徴づけられるスーパーモチーフを、9-merコア領域の位置1における一次アンカー残基として、および小型の非荷電残基(S、T、C、A、P、V、I、LまたはM)を位置6における一次アンカー残基として保持する。これらのHLA型のそれぞれに関するアレル特異的な二次的効果および二次アンカーも同定されている(Southwood et al., 前記)。HLA-DRB1*0401、DRB1*0101および/またはDRB1*0701に対するペプチド結合は、一次および/または二次アンカー位置での置換によってモジュレートすることができ、好ましくは各々の残基をスーパーモチーフに関して特定されているように選択する。
【0101】
2つの代替的なモチーフ(すなわち、サブモチーフ)は、HLA-DR3分子と結合するペプチドエピトープを特徴づける(例えば、Geluk et al., J. Immunol. 152:5742, 1994を参照)。第1のモチーフ(サブモチーフDR3A)には、大型の疎水性残基(L、I、V、M、FまたはY)が9-merコアのアンカー位置1に存在し、Dが、エピトープのカルボキシル末端側の位置4にアンカーとして存在する。他のクラスIIモチーフと同じように、コア位置1はペプチドN末端位置を占めることもあれば、または占めないこともある。
【0102】
代替的なDR3サブモチーフは、エピトープのカルボキシル末端側の位置6での正の荷電の存在による、アンカー位置1での大型の疎水性残基の欠如、および/または、位置4での負に荷電したもしくはアミド様のアンカー残基の欠如をもたらす。すなわち、代替的なアレル特異的DR3モチーフ(サブモチーフDR3B)に関しては:L、I、V、M、F、Y、AまたはYがアンカー位置1に存在する;D、N、Q、E、SまたはTがアンカー位置4に存在する;かつ、K、RまたはHがアンカー位置6に存在する。HLA-DR3に対するペプチド結合は、一次および/または二次アンカー位置での置換によってモジュレートすることができ、好ましくは各々の残基をスーパーモチーフに関して特定されているように選択する。
【0103】
HLAクラスI結合性ペプチドの場合と同じく、モチーフは、HLAクラスII結合性ペプチドに関しても定義されている。いくつかの研究により、典型的にはより長いペプチド配列の内部に入れ子状態(nested)になっている、9-merコア領域の位置1にある芳香族残基または疎水性残基(I、L、M、V、F、WまたはY)の、ペプチドリガンドといくつかのHLA-クラスIIアレルとの結合における重要な役割が同定されている(Hammer et al. Cell 74:197, (1993);Sette et al. J. Immunol. 151:3163-70 (1993);O'Sullivan et al. J. Immunol. 147:2663 (1991);およびSouthwood et al. J. Immunol. 160:3363-73 (1998))。強い役割は、9-merコアの位置6における残基に関しても実証されており、ここでは短いおよび/または疎水性残基(S、T、C、A、P、V、I、LまたはM)が好ましい。この位置1〜位置6のモチーフは、DR-スーパーモチーフとして記載されており(Southwood et al. J. Immunol. 160:3363-3373 (1998))、一般的HLA-クラスIIアレルの大規模セットと結合しうるペプチドを効率的に同定することが示されている。
【0104】
また、クラスII分子に対するペプチド結合を、二次的に好ましいまたは有害な残基の同定に関して分析することもできる。例えば、ペプチド結合に影響を及ぼす二次残基を明確にするためにより詳細なDRB1*0401モチーフを導き出す目的で、本発明者らは、クラスIペプチドを用いて行われたものに類似した戦略を用いた。分析する各ペプチドに対して、9残基長のコア領域を一次クラスII位置P1およびP6アンカーに基づいてアライメントした。続いて、各位置について、特定の残基を保持するペプチドの平均結合親和性を、群の残りのものに対して相対的に計算した。この方法の後に、平均相対結合を示す値をまとめた。これらの値はまた、P1-P6クラスIIモチーフ位置からみて相対的に特定の位置を占有した場合の、DRB1*0401結合能における20種の天然アミノ酸のそれぞれの正または負の効果のマップも呈示する。
【0105】
4倍よりも大きいかもしくはそれと等しい、または0.25よりも小さいかもしくはそれと等しい平均相対結合の変動は、有意であってかつHLA-ペプチド相互作用に対する所与の残基の二次的効果を指し示すものと判断した。ほとんどの二次的効果は、P4、P7およびP9と関連していた。これらの位置は、DR分子上の浅いポケットと係合する二次アンカーに対応する。二次残基を既定する同様の研究を、DRB1*0101およびDRB1*0701に対しても行った。DR1、DR4およびDR7に関するモチーフの二次残基の定義は表139に示されている。
【0106】
アレル特異的な二次的効果および二次アンカーが明確にされたことを受けて、アレル特異的アルゴリズムを導き出し、DRB1*0101、DRB1*0401およびDRB*0701と結合するペプチドを同定するために利用した。さらなる実験により、HLAクラスII分子の大規模セットが同定され、それは少なくとも、DRスーパーモチーフを認識するDRB1*0101、DRB1*0401およびDRB*0701、DRB1*1501、DRB1*0901およびDRB1*1302アレル産物(allelic product)を含み、大きく重なり合うペプチド結合レパートリーによって特徴づけられる。
【0107】
以上に呈示したデータは、いくつかの一般的HLAクラスII型が、大きく重なり合うペプチド結合レパートリーによって特徴づけられることを裏づける。これに基づき、HLAクラスI分子の場合と同様に、HLAクラスII分子をHLAクラスIIスーパータイプにグループ化して、明確にし、類似のまたは大きく重なり合う(ただし同一ではない)ペプチド結合特異性によって特徴づけることができる。
【0108】
本発明において存在するペプチドは、任意の適した方法によって同定することができる。例えば、ペプチドは、係属中の米国特許出願第09/894,018号に記載された発明のアルゴリズムを用いて都合良く同定することができる。これらのアルゴリズムは、免疫原性ペプチドの選択を可能にするスコアを生成する数学的手順である。典型的には、ある結合閾値を有するアルゴリズムスコアを用いることで、ある特定の親和性で結合する確率が高く、敷衍して免疫原性であると考えられる、ペプチドの選択が可能になる。アルゴリズムは、ペプチドの特定の位置にある特定のアミノ酸のMHC結合に対する影響、またはペプチドを含むモチーフにおける特定の置換のMHC結合に対する影響のいずれかに基づく。
【0109】
分子結合アッセイおよび捕捉アッセイで特徴づけられたペプチド配列を、さまざまな技術を利用して同定することができる。モチーフ陽性配列は、Epimmune社で作り出されたカスタマイズされたアプリケーションを用いて同定することができる。配列をマトリックスベースのアルゴリズムを利用して同定することもでき、これは予想される50%阻害濃度(PlC)値を生成する「パワー」モジュールと組み合わせて用いられている。これらの後者の方法は、Epimmune社のHTMLベースのEpitope Information System(EIS)データベース上で動作可能である。記載した方法はすべて、結合アッセイを用いるIC50決定のためのペプチド配列選択において実行可能な選択肢である。
【0110】
MHC分子と結合する能力は、種々の異なる様式で測定される。1つの手段は、上記の関連出願に記載されているようなMHC結合アッセイである。文献中に記載されている他の代替的なものには、抗原提示の阻害(Sette, et al., J. Immunol. 141:3893 (1991)、インビトロアセンブリアッセイ(Townsend, et al., Cell 62:285 (1990)、およびRMA.Sなどの突然変異細胞を用いるFACSに基づくアッセイ(Melief, et al., Eur. J. Immunol. 21:2963 (1991))が含まれる。
【0111】
捕捉アッセイ:上記のような、HPLCに基づく分子結合アッセイとは異なり、ハイスループットスクリーニング(「HTS」)捕捉アッセイは、結合した放射活性マーカーを結合していない放射活性マーカーから分離するためのサイズ排除シリカカラムを用いない。その代わりに、乳白色の96ウェルOptiplate(Packard)のウェルを、100μlの0.05%NP40/PBS中にある分子結合アッセイプレートから移した放射標識MHCおよび非標識ペプチドの複合体を「捕捉」する、3μg(100μl @ 30μg/ml)のHLA特異的抗体(Ab)でコーティングする。3時間のインキュベーション期間の後に、上清をデカントして、シンチレーション液(Microscint 20)を加える。続いて、捕捉された複合体をマイクロプレートシンチレーションおよび発光カウンター(TopCount NXTTM;Packard)で測定する。
【0112】
結合を決定するための別のアッセイは、すなわち、PCT公報WO 94/20127およびWO 94/03205号に詳細に記載されている。結合データの結果はしばしばIC50値で表現される。IC50は、結合アッセイにおける、参照ペプチドの結合の50%阻害が起こるペプチドの濃度のことである。アッセイを実施する条件が与えられれば(すなわち、MHCタンパク質および標識ペプチドの濃度を限定する)、これらの値はKD値に近づく。IC50値は、アッセイ条件が変更された場合や、用いる具体的な試薬(すなわち、MHC調製物など)によっては、しばしば劇的に、変化しうることに注意すべきである。例えば、MHC分子の過剰な濃度は、所与のリガンドの、見かけ上測定されるIC50を高めると考えられる。または、結合は参照ペプチドを基準として相対的に表現される。特定のアッセイの感度がより高くなると、またはより低くなると、被験ペプチドのIC50が幾分変化することがあるが、参照ペプチドを基準とした相対的な結合は変化しないと考えられる。例えば、参照ペプチドのIC50が10倍になるような条件下で実施したアッセイでは、被験ペプチドのIC50値もおよそ10倍推移すると考えられる。このため、曖昧さを避けるために、ペプチドが優れた(good)、中程度の(intermediate)、弱い(weak)または陰性の(negative)結合剤のいずれであるかの判定は、一般に、標準的なペプチドのIC50を基準とした相対的なそのIC50に基づく。
【0113】
また、本発明のペプチドは、MHC結合性ペプチド中に2つまたはそれ以上の残基の同配体を含んでもよい。本明細書で定義する同配体とは、第1の配列の立体コンフォメーションが第2の配列に対して特異的な結合部位と適合することから、第2の配列によって置換することのできる、2つまたはそれ以上の残基の配列のことである。この用語は具体的には、当業者に周知のペプチド骨格の修飾を含む。そのような修飾には、アミド窒素、α-炭素、アミドカルボニルの修飾、アミド結合の完全な置き換え、伸長、欠失または骨格の架橋が含まれる。概論については、Spatola, Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides and Proteins, Vol. VII (Weinstein ed., 1983)を参照のこと。
【0114】
さまざまなアミノ酸模倣物または非天然アミノ酸によるペプチドの修飾は、インビボでのペプチドの安定性を高める上で特に有用である。安定性はさまざまな様式でアッセイすることができる。例えば、ペプチダーゼおよびさまざまな生物学的媒体、例えばヒトの血漿および血清などが、安定性を検査するために用いられている。例えば、Verhoef et al., Eur. J. Drug Metab. Pharmacokin. 11:291-302 (1986)を参照。本発明のペプチドの半減期は、25%ヒト血清(v/v)アッセイを用いて都合良く決定される。そのプロトコルは一般に以下の通りである。ヒトのプール血清(AB型、熱非働化せず)を使用前に遠心によって脱脂する。続いてこの血清をRPMI組織培養液で25%に希釈し、ペプチドの安定性を検査するために用いる。所定の時間間隔で反応液の少量を取り出し、6%トリクロロ酢酸水溶液またはエタノールのいずれかに添加する。濁った反応試料を15分間冷却し(4℃)、その後に遠心して、沈殿した血清タンパク質をペレット化する。続いて、ペプチドの存在について、逆相HPLCによって、安定性特異的なクロマトグラフィー条件を用いて決定する。
【0115】
そのような類似体が、改良された貯蔵寿命または製造特性を有してもよい。より具体的には、決定的に重要でない(non-critical)アミノ酸は、L-α-アミノ酸、またはそれらのD型異性体のような、タンパク質中に天然に存在するものに限定される必要はなく、以下のようなアミノ酸模倣物などの非天然アミノ酸も含まれうる:例えば、D-またはL-ナフチルアラニン;D-またはL-フェニルグリシン;D-またはL-2-チエニル(thieneyl)アラニン;D-またはL-1、-2、3-または4-ピレニル(pyreneyl)アラニン;D-またはL-3チエニルアラニン;D-またはL-(2-ピリジニル)-アラニン;D-またはL-(3-ピリジニル)-アラニン;D-またはL-(2-ピラニジル)-アラニン;D-またはL-(4-イソプロピル)-フェニルグリシン;D-(トリフルオロメチル)-フェニルグリシン;D-(トリフルオロメチル)-フェニルアラニン;D-p-フルオロフェニルアラニン;D-またはL-p-ビフェニルフェニルアラニン;D-またはL-p-メトキシビフェニルフェニルアラニン;D-またはL-2-インドール(アルキル)アラニン;および、D-またはL-アルキルアラニン、ここでアルキル基は置換型または非置換型のメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、ブチル、ペンチル、イソプロピル、イソ-ブチル、sec-イソチル(isotyl)、イソ-ペンチルまたは非酸性アミノ酸でありうる。非天然アミノ酸の芳香環には、例えば、チアゾリル、チオフェニル、ピラゾリル、ベンズイミダゾリル、ナフチル、フラニル、ピロリルおよびピリジル芳香環が含まれる。
【0116】
有効なペプチド類似体を生成するためのもう1つの態様は、例えば液体環境における、ペプチドの安定性または溶解性に有害な影響を及ぼす残基の置換を伴う。この置換はペプチドエピトープの任意の位置に生じうる。本発明の類似体には、結果的に生じるペプチドの物理的性質(例えば、安定性または溶解性)を修飾するための置換を含むペプチドが含まれうる。例えば、システイン(C)を置換除去してその代わりにα-アミノ酪酸を選ぶことができる。その化学的性質のために、システインはジスルフィド結合架橋を形成して、結合能が低下するのに十分なほどにペプチドを構造的に変更させる性向がある。Cをα-アミノ酪酸に置換することは、この問題を改善するだけでなく、ある特定の場合には、結合能および交差結合能も実際に改善する(例えば、Sette et al., In: Persistent Viral Infections, Eds. R. Ahmed and I. Chen, John Wiley & Sons, England, 1999による総説を参照)。α-アミノ酪酸によるシステインの置換はペプチドエピトープの任意の残基で、すなわちアンカー位置または非アンカー位置のいずれで生じてもよい。
【0117】
本発明のペプチドの結合活性の変更、特にHLAスーパータイプファミリーのメンバー間での結合親和性または交差反応性の修飾を、1/6/99に提出された係属中の米国出願第09/226,775号に記載されている類似体化(analoging)を用いて行うこともできる。手短に述べると、類似体化戦略は、ある特定のHLA分子に対する結合と相関するモチーフまたはスーパーモチーフを利用する。類似体ペプチドは、一次アンカー位置、二次アンカー位置、または一次および二次アンカー位置のアミノ酸残基を置換することによって作り出すことができる。一般に、類似体は、モチーフまたはスーパーモチーフをすでに保有するペプチドに対して作られる。本発明によるさまざまなモチーフまたはスーパーモチーフに関して、各々のモチーフまたはスーパーモチーフと結合する、アレル特異的HLA分子またはHLAスーパータイプのメンバーに対する結合に対して有害な残基を規定する(例えば、Rupert et al. Cell 74:929, 1993;Sidney, J. et al., Hu. Immunol. 45:79, 1996;およびSidney et al.;Sidney, et al., J. Immunol. 154:247, 1995を参照)。これにより、結合に対して有害な、そのような残基の除去を、本発明に従って行うことができる。例えば、A3スーパータイプの場合には、そのような有害な残基を有するすべてのペプチドを、分析に用いるペプチドの集団から除去すると、交差反応性の発生率が22%から37%に上昇した(例えば、Sidney, J. et al., Hu. Immunol. 45:79, 1996を参照)。
【0118】
したがって、所与のスーパーモチーフの内部のペプチドの交差反応性を改善するための1つの戦略は、ペプチド内部に存在する有害な残基の1つまたは複数を単純に削除して、(T細胞のペプチド認識に影響を及ぼさないと考えられる)Alaなどの小型の「中性」残基で置換することである。ペプチド内部の有害な残基の排除とともに、アレル特異的HLA分子またはスーパーファミリー内部の複数のHLA分子に対する高い親和性結合と関連している「好ましい」残基を挿入するならば、交差反応性の見込みの強化(enhanced likelihood)が期待される。
【0119】
いくつかの態様においては、Tヘルパーペプチドを、本発明のペプチドの1つに加えて用いることができる。Tヘルパーペプチドの1つの種類は、集団の大半でTヘルパー細胞によって認識されるものである。これは、MHCクラスII分子の多く、大部分またはすべてと結合するアミノ酸配列を選択することによって実現することができる。これらは「緩いMHC拘束性(loosely MHC-restricted)」Tヘルパー配列として知られる。緩いMHC拘束性であるアミノ酸配列の例には、破傷風毒素の位置830〜843

熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falcparum)サーカムスポロゾイト(CS)タンパク質の位置378〜398

および連鎖球菌18kDタンパク質の位置1〜16

などの抗原由来の配列が含まれる。
【0120】
または、天然には見られないアミノ酸配列を用いて、Tヘルパーリンパ球を緩いMHC拘束性の様式で刺激することのできる合成ペプチドを調製することもできる(例えば、PCT公報WO 95/07707号を参照)。Pan-DR結合エピトープまたはPADRE(登録商標)分子(Epimmune, San Diego, CA)と呼ばれるこれらの合成化合物は、大部分のHLA-DR(ヒトMHCクラスII)分子に対するそれらの結合活性に基づいて設計されている(例えば、USSN 08/121,101号(現在は放棄されている)および関連するUSSN 08/305,871号(現在は米国特許第5,736,142号)を参照)。例えば、式:aKXVWANTLKAAa(SEQ ID NO:4)、式中、Xはシクロヘキシルアラニン、フェニルアラニンまたはチロシンのうちのいずれかであり、「a」D-アラニンまたはL-アラニンのいずれかである、を有するpan-DR結合エピトープペプチドは、大部分のHLA-DRアレルと結合して、それらのHLA型にかかわらず大部分の個体からのTヘルパーリンパ球の応答を刺激することが見いだされている。
【0121】
特に好ましい免疫原性ペプチドおよび/またはTヘルパー結合物は、スペーサー分子によって結び付けられている。スペーサーは典型的には、生理的な条件下で実質的に非荷電性である、比較的小型の中性分子、例えばアミノ酸またはアミノ酸模倣物などで構成される。スペーサーは典型的には、例えば、Ala、Gly、または非極性アミノ酸もしくは中性極性アミノ酸である他の中性スペーサーから選択される。任意で存在するこのスペーサーは同じ残基で構成される必要はなく、それ故にヘテロオリゴマーであってもホモオリゴマーであってもよいことは理解されるであろう。スペーサーが存在する場合には、それは通常は少なくとも1残基または2残基であり、より通常は3〜6残基であると考えられる。または、HTLペプチドは、Tヘルパーペプチドとスペーサーを伴わずに結び付けてもよい。
【0122】
免疫原性ペプチドは、HTLペプチドのアミノまたはカルボキシ末端のいずれかで、直接的にまたはスペーサーを介してTヘルパーペプチドと結び付けることができる。免疫原性ペプチドまたはTヘルパーペプチドのいずれかのアミノ末端をアシル化してもよい。本発明に用いられるTヘルパーペプチドは、HTLペプチドと同じ様式で修飾することができる。例えば、D-アミノ酸を含むようにそれらを修飾してもよく、脂質、タンパク質、糖などの他の分子とコンジュゲートさせてもよい。例示的なTヘルパーペプチドには、破傷風トキソイド830〜843、インフルエンザ307〜319、マラリアサーカムスポロゾイト382〜398および378〜389が含まれる。
【0123】
いくつかの態様においては、本発明の薬学的組成物中に、HTLおよびCTLをプライミングする少なくとも1つの成分を含めることが望ましい。脂質は、インビボでHTLおよびCTLをウイルス抗原に対してプライミングすることのできる作用物質として同定されている。例えば、パルミチン酸残基をLys残基のαおよびεアミノ基に結合させて、続いて、例えばGly、Gly-Gly-、Ser、Ser-Serなどの1つまたは複数の連結残基を介して、免疫原性ペプチドと結び付けることができる。続いて、脂質付加されたペプチドを直接にミセル形態で、リポソーム中に組み入れて、またはアジュバント、例えば不完全フロイントアジュバント中に乳化させて注射することができる。1つの好ましい態様において、特に有効な免疫原は、Lysのαおよびεアミノ基に結合させ、続いて例えばSer-Serの連結を介して免疫原性ペプチドのアミノ末端に結合しているパルミチン酸を含む。同じく1つの好ましい態様において、特に有効な免疫原は、Lysのαおよびεアミノ基に結合させ、続いて例えばSer-Serの連結を介して、本明細書に記載されたペプチド、ならびにそのような決定基を有するとして同定された他のペプチドのような、T細胞決定基を有するクラスI拘束性ペプチドのアミノ末端に結合しているパルミチン酸を含む。
【0124】
HTL応答およびCTL応答の脂質プライミングのもう1つの例として、トリパルミトイル-S-グリセリルシステイニルセリル-セリン(P3CSS)などの大腸菌(E. Coli)リポタンパク質を適切なペプチドと共有結合させれば、ウイルス特異的なHTL CTLをプライミングするために用いることができる。Deres et al., Nature 342:561-564 (1989)を参照、これは参照により本明細書に組み入れられる。本発明のペプチドを、例えばP3CSSとカップリングさせて、このリポペプチドを、標的抗原に対するHTL応答を特異的にプライミングするために個体に投与することができる。さらに、中和抗体の誘導も、適切なエピトープを提示しているペプチドにコンジュゲートされたP3CSSによってプライミングされるため、この2つの組成物を組み合わせて、感染に対する体液性および細胞媒介性応答の両方をより有効に惹起することができる。
【0125】
加えて、ペプチドを互いに容易に結び付けるため、担体支持体もしくはより大きなペプチドとカップリングさせるため、ペプチドもしくはオリゴペプチドの物理的もしくは化学的性質を修飾するなどのために、追加のアミノ酸をペプチドの末端に付加することもできる。チロシン、システイン、リジン、グルタミン酸またはアスパラギン酸などのアミノ酸は、ペプチドまたはオリゴペプチドのC末端またはN末端に導入することができる。場合によっては、C末端での修飾はペプチドの結合特性を変更させることがある。加えて、ペプチド配列またはオリゴペプチド配列は、末端NH2アシル化によって、例えばアルカノイル(C1-C20)またはチオグリコリルアセチル化によって、末端カルボキシルアミド化、例えばアンモニア、メチルアミンなどによって修飾されることにより、天然の配列と異なってもよい。場合によっては、これらの修飾は支持体または他の分子に対する結合部位を提供することもある。
【0126】
本発明のペプチドは非常にさまざまなやり方で調製することができる。これらのペプチドは比較的短いサイズのため、従来の手法に従って溶液中または固相支持体上で合成することができる。さまざまな自動合成装置が販売されており、公知のプロトコルに従って使用可能である。例えば、Stewart and Young, Solid Phase Peptide Synthesis, 2d. ed., Pierce Chemical Co. (1984)、前記を参照。
【0127】
本発明のもう1つの局面は、本明細書に記載したような1つまたは複数のペプチドの免疫原性有効量を含むワクチンを対象とする。ペプチドは、ペプチドおよびウイルス様粒子が封入されたPLGミクロスフェアを含む当業者に公知の種々の送達媒体を用いて、宿主に導入することができる。さらに、エピトープを、当技術分野で公知であるような、多抗原性ペプチド(MAP)として(例えば、Mora and Tam, J. Immunol. 161:3616-23 (1998))、または免疫刺激複合体(ISCOMS)(see e.g., Hu et al. Clin. Exp. Immunol. 113:235-43 (1998))として導入することもできる。
【0128】
本明細書に記載したような1つまたは複数のペプチドの免疫原性有効量を含むワクチンは、本発明のさらなる態様である。本発明のワクチンは、予防薬(prevantative)または治療薬のいずれとしても用いることができる。ひとたび適切な免疫原性エピトープが明確にされれば、それらを、本明細書で「ワクチン」組成物と称するさまざまな手段によって送達することができる。そのようなワクチン組成物には、例えば以下が含まれる:リポペプチド(例えば、Vitiello, A. et al., J: Clin. Invest. 95:341, 1995を参照)、ポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド)(「PLG」)マイクロスフェア中にカプセル封入されたペプチド組成物(例えば、Eldridge, et al., Molec. Immunol. 28:287-294, 1991: Alonso et al., Vaccine 12:299-306, 1994;Jones et al., Vaccine 13:675-681, 1995を参照)、免疫刺激複合体(ISCOMS)中に含まれるペプチド組成物(例えば、Takahashi et al., Nature 344:873-875, 1990;Hu et al., Clin Exp Immunol. 113:235-24: 1998を参照)、多抗原性ペプチド系(MAP)(例えば、Tam, J. P., Proc. Nati. Acaa Sci. U.S.A. 85:5409-5413, 1988;Tam, J.P.,J Immunol. Methods 196:17-32, 1996)、ウイルス(vir)送達ベクター(Perkus, M. E. et al., In: Concepts in vaccine development, Kaufmann H. E., ed., p. 379, 1996;Chakrabarti, S. et al., Nature 320:535,1986;Hu, S. L. et al., Nature 320:537, 1986;Kieny, M.-P. et al., AIDS Bio/Technology 4:790, 1986;Top, F. et al., J Infect. Dis. 124:148, 1971;Chanda, P. K. et al., Virology 175:535, 1990)、ウイルス由来または合成由来の粒子(例えば、Kofler, N. et al., J Immunol. Methods. 192:2〜 1996;Eldridge, J. H. et al., Sem. Bematol. 30:16, 1993;Fa10, L. D., Jr. et al., Nature Med. 7:649, 1995)、アジュバント(Warren, H. S., Vogel, F. R., and Chedid, L. A. Annu. Re immunol. 4:369, 1986;Gupta, R. K. et al., Vaccine 11:293, 1993)、リポソーム(Reddy, R et al., J. Immunol. 148:1585, 1992;Rock, K. L., Immunol. Today 17:131, 1996)、または裸のもしくは粒子に吸収させたcDNA(Ulmer, J. B. et al., Science 259:1745, 1993;Robinsol H. L., Hunt, L. A., and Webster, R. G., Vaccine 11:957, 1993;Shiver, J. W. et al., In: Concepts in vaccine development, Kaufmann, S. H. E., ed., p. 423, 1996;Cease, K. B., and Berzofsky, J. A., Annu. Rev. Immunol. 12:923, 1994 and Eldridge, J. H. et al., Sem. Hematol. 30:16, 1993)。Avant Immunotherapeutics, Inc.(Needham, Massachusetts)のもののような、受容体媒介性ターゲティングとしても知られる毒素ターゲティング送達技術を用いることもできる。
【0129】
本発明のワクチン組成物は、核酸を介した治療様式(modality)を含む。本発明のペプチドの1つまたは複数をコードするDNAまたはRNAを患者に投与することもできる。このアプローチは、例えば、Wolff et. al., Science 247: 1465 (1990)、ならびに米国特許第5,580,859号;第5,589,466号;第5,804,566号;第5,739,118号;第5,736,524号;第5,679,647号;WO 98/04720号に記載されている;さらに以下により詳細に記載されている。DNAベースの送達技術の例には、「裸のDNA」、促進(ブピビカイン、ポリマー、ペプチド媒介正性)送達、陽イオン性脂質複合体、および粒子媒介性送達(「遺伝子銃」)または圧力媒介性送達(例えば、米国特許第5,922,687号を参照)が含まれる。
【0130】
治療的または予防的な免疫処置の目的には、本発明のペプチドは、ワクシニアまたは鶏痘などの弱毒化ウイルス宿主を含む発現ベクターであってよい。このアプローチは、例えば、本発明のペプチドをコードする核酸配列を発現するベクターとしてのワクシニアウイルスの使用を伴う。急性的もしくは慢性的に感染した宿主または感染していない宿主に導入すると、組換えワクシニアウイルスは免疫原性ペプチドを発現し、それによって宿主のCTLおよび/またはHTL応答を誘発する。免疫処置プロトコールにおいて有用なワクシニアベクターおよび方法は、例えば、米国特許第4,722,848号に記載されている。もう1つのベクターはBCG(カルメット-ゲラン桿菌)である。BCGベクターは、Stover et al., Nature 351:456-460 (1991)に記載されている。本発明のペプチドの治療的投与または免疫処置のために有用な非常にさまざまなその他のベクター、例えば、アデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、チフス菌(Salmonella typhi)ベクター、無毒化炭疽毒素ベクターなどは、本明細書の記載から当業者には明らかであろう。
【0131】
さらに、本発明によるワクチンは、本発明のペプチドの1つまたは複数を範囲に含みうる。したがって、ペプチドはワクチン中に個々に存在することができる。または、ペプチドをそれ独自の担体と結び付けることもできる;または、ペプチドは同じペプチドの複数のコピーを含むホモポリマーとして、またはさまざまなペプチドのヘテロポリマーとして存在することもできる。ポリマーは、免疫反応の増大という利点を有し、ポリマーを構築するために複数の異なるペプチドエピトープを用いる場合には、免疫応答の標的となる病原性生物体または腫瘍関連ペプチドの複数の異なる抗原決定基と反応する抗体および/またはCTLを誘導するさらなる能力という利点を有する。組成物は、抗原の天然に存在する領域であってもよく、または例えば、組換え的にもしくは化学合成によって調製することもできる。
【0132】
本発明のワクチンとともに用いうる担体は当技術分野で周知であり、これには例えば、チログロブリン、ヒト血清アルブミンなどのアルブミン、破傷風トキソイド、ポリL-リジン、ポリL-グルタミン酸などのポリアミノ酸、インフルエンザ、B型肝炎ウイルスコアタンパク質などが含まれる。ワクチンは、水または食塩水、好ましくはリン酸緩衝食塩水などの生理的に寛容される(許容される)希釈剤を含んでもよい。ワクチンはまた、典型的にはアジュバントも含む。不完全フロイントアジュバント、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウムまたはアラム(alum)などのアジュバントは、当技術分野で周知の材料である。さらに、本発明のペプチドをトリパルミトイル-S-グリセリルシステイニルセリル-セリン(P3CSS)などの脂質とコンジュゲートさせることによって、CTL応答をプライミングすることもできる。
【0133】
注射、エアロゾル、経口、経皮、経粘膜、胸内、髄腔内または他の適切な経路を介した、本発明によるペプチド組成物の免疫処置を行うと、宿主の免疫系は、所望の抗原に対して特異的な大量のHTLおよび/またはCTLを産生することによってワクチンに応答する。その結果として、宿主は、以後の感染に対して少なくとも部分的には免疫を獲得するか、または進行中の慢性感染の発症に対して少なくとも部分的には抵抗性になる、または抗原が腫瘍関連であった場合には少なくとも何らかの治療的便益を得る。
【0134】
治療または免疫処置の目的には、本発明のペプチドをベクターによって発現させることもできる。発現ベクターの例には、ワクシニアまたは鶏痘などの弱毒化ウイルス宿主が含まれる。このアプローチは、本発明のペプチドをコードする核酸配列を発現するベクターとしてのワクシニアウイルスの使用を伴う。免疫処置プロトコールにおいて有用なワクシニアベクターおよび方法は、例えば、米国特許第4,722,848号に記載されている。もう1つのベクターはBCG(カルメット-ゲラン桿菌)である。BCGベクターは、Stover, et al., Nature 351:456-60 (1991)に記載されている。本発明のペプチドの治療的投与または免疫処置のために有用な非常にさまざまなその他のベクター、例えば、チフス菌(Salmonella typhi)ベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターなどは、本明細書の記載から当業者には明らかであろう。
【0135】
または、関心対象の免疫原性ペプチドをコードするヌクレオチド配列を発現ベクター中に挿入し、適切な宿主細胞への形質転換またはトランスフェクションを行って、発現のために適した条件下で培養する、組換えDNA技術を用いることもできる。これらの手順は、参照により本明細書に組み入れられる、Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (1982)(同じく1989)に記載されているように、当技術分野において一般に公知である。このようにして、本発明の1つまたは複数のペプチド配列を含む融合タンパク質を用いて、適切なT細胞エピトープを提示させることができる。例えば、本発明のペプチドをコードするコード配列に適切なリンカーを付与して、当技術分野において一般的に入手可能な発現ベクター中に連結し、そのベクターで適した宿主を形質転換させて、所望の融合タンパク質を産生させることができる。そのようなさまざまなベクターおよび適した宿主系が現在では入手可能である。発現構築物、すなわちミニ遺伝子は、以下の項でさらに詳細に説明されている。そのような方法はまた、少なくとも1つの本発明のペプチドを、本発明のペプチドではない物質とともに提示させるために用いることができる。
【0136】
本明細書で想定している長さのペプチドのコード配列は、例えば、Matteucci et al., J. Am. Chem. Soc. 103:3185 (1981)のホスホトリエステル法を用いて化学的手法によって合成することができ、その際にネイティブなペプチド配列をコードする塩基を適切な塩基で単に置換することによって修飾を加えることができる。続いてコード配列に適切なリンカーを付与して、当技術分野において一般的に入手可能な発現ベクター中に連結し、そのベクターで適した宿主を形質転換させて、所望の融合タンパク質を産生させることができる。そのようなさまざまなベクターおよび適した宿主系が現在では入手可能である。融合タンパク質の発現のためには、コード配列に対して、機能的に連結された開始コドンおよび終止コドン、プロモーターおよびターミネーター領域、ならびに通常は複製系を付与して、所望の細胞宿主における発現のための発現ベクターを得る。例えば、細菌宿主と適合性のあるプロモーター配列を、所望のコード配列の挿入のために好都合な制限部位を含むプラスミド中に付与する。その結果得られた発現ベクターを適した細菌宿主中に形質転換導入する。当然ながら、適したベクターおよび制御配列を使用することで、酵母または哺乳動物細胞宿主を用いることもできる。
【0137】
本発明のペプチドならびに薬学的組成物およびワクチン組成物は、癌を治療および/または予防するための、哺乳動物、特にヒトに対する投与のために有用である。
【0138】
治療用途では、組成物を、腫瘍抗原に対して有効なHTL応答を惹起させて、症状および/または合併症を治癒させるかまたは少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で患者に投与する。これを達成するために適当な量は、「治療的有効量」または「単位用量」と定義される。この使用に関して有効な量は、例えばペプチド組成、投与の様式、治療される疾患の病期および重症度、患者の体重および全般的健康状態、ならびに処方医の判断に依存すると考えられるが、一般に初回免疫処置(治療的または予防的な投与のため)のための範囲は70kgの患者に対して約1.0μg〜約5000μgのペプチドであり、その後に、患者の血液中の特異的CTL活性を測定することによって患者の応答および病状に応じて数週間から数カ月にわたり、追加投与レジメンに従って約1.0μg〜約1000μgのペプチドの追加投与を行う。代替的な態様において、一般にヒトの場合の初回免疫処置(治療的または予防的な投与のため)のための用量の範囲は、70kgの患者に対して約1.0μg〜約20,000μgのペプチド、好ましくは100μg〜、150μg〜、200μg〜、250μg〜、300μg〜、400μg〜または500μg〜20,000μgであり、その後に、患者の血液中の特異的HTL活性を測定することによって患者の応答および病状に応じて数週間から数カ月にわたり、追加投与レジメンに従って同じ用量範囲での追加投与を行う。組換え核酸の投与を用いる態様では、適切な治療応答が達成されるように、投与する材料の微調整を行う。
【0139】
本発明のペプチドおよび組成物は一般に、重篤な疾病状態、すなわち、生命を脅かすかまたは潜在的に生命を脅かす状態に用いられるであろうことを念頭に置かなければならない。そのような場合には、外来性物質が最小限であって本ペプチドが相対的に非毒性であることを考慮して、それらのペプチド組成物のかなりの過剰量を投与することが可能であり、そうすることが望ましいと治療医が感じることもあるであろう。
【0140】
治療的使用については、投与は、腫瘍の最初の徴候の時点、または診断のすぐ後に開始すべきである。これに続いて、少なくとも徴候が実質的に軽減するまで、さらにその後もある期間にわたって追加投与を行う。
【0141】
本発明の組成物による罹患個体の治療は、急性感染した個体における感染の回復を早めるであろう。癌の発症に対する感受性のある(または素因のある)個体については、本組成物は癌の進展を予防する方法において特に有用である。
【0142】
治療的処置(therapeutic treatment)のための薬学的組成物は、非経口的、局部的(topical)、経口または局所的投与を意図したものである。好ましくは、本薬学的組成物は、非経口的に、例えば、静脈内、皮下、皮内または筋肉内に投与される。したがって、本発明は、許容される担体、好ましくは水性担体中に溶解または懸濁化され免疫原性ペプチドの溶液を含む、非経口投与のための組成物を提供する。種々の水性担体、例えば、水、緩衝水、0.8%食塩水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸などを用いることができる。これらの組成物は従来の周知の滅菌手法によって滅菌すること、または濾過滅菌することができる。その結果得られた水溶液はそのまま用いるためにパッケージ化してもよく、または凍結乾燥して、凍結乾燥された調製物を投与の前に滅菌溶液と合わせてもよい。本組成物は、生理的条件に近づけるために必要とされる薬学的に許容される補助物質、例えば、pH調整剤および緩衝剤、張性調整剤、湿潤剤など、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミンなどを含みうる。
【0143】
本発明の薬学的組成物は、本発明の1つまたは複数のT細胞刺激ペプチドを含む。例えば、本薬学的組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30種またはそれ以上の本発明のT細胞刺激ペプチドを含む。さらに、本発明の薬学的組成物は、本発明の1つまたは複数のT細胞刺激ペプチドを、1つまたは複数の他のT細胞刺激ペプチドとの組み合わせで含んでもよい。薬学的配合物中のそれぞれの固有な本発明のT細胞刺激ペプチドの濃度は非常にさまざまであってよく、例えば、重量比で約0.001%未満、約0.002%未満、約0.003%未満、約0.004%未満、約0.005%未満、約0.006%、0.007%、0.008%、0.009%未満、約0.01%未満、約0.02%未満、約0.025%未満、約0.03%未満、約0.04%未満、約0.05%未満、約0.06%未満、約0.07%未満、約0.08%未満、約0.09%未満、約0.1%未満、約0.2%未満、約0.3%未満、約0.4%未満、約0.5%未満、約0.6%未満、約0.7%未満、約0.8%未満、約0.9%未満、約1%未満、約1.1%未満、約1.2%未満、約1.3%未満、約1.4%未満、約1.5%未満、約1.6%未満、約1.7%未満、約1.8%未満、約1.9%未満、約2%未満、約3%未満、約4%未満、約5%未満、約6%未満、約7%未満、約8%未満、約9%未満、約10%未満、約20%未満から、約50%まで、またはそれ以上までであってよく、選択された特定の投与様式に従って、主として液量、粘性などによって選択される。1つの好ましい態様において、薬学的配合物中のそれぞれの固有な本発明のT細胞刺激ペプチドの濃度は、重量比で約0.001%、約0.002%、約0.003%、約0.004%、約0.005%、約0.006%、0.007%、0.008%、0.009%、約0.01%、約0.02%、約0.025%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%である。1つのより好ましい態様において、薬学的配合物中のそれぞれの固有な本発明のT細胞刺激ペプチドの濃度は、重量比で約0.01%、約0.02%、約0.025%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、約0.1%である。
【0144】
薬学的配合物中の本発明のHTL刺激ペプチドの濃度は非常にさまざまであってよく、すなわち、重量比で約0.1%未満、通常は約2%であるか少なくとも約2%から、20%〜50%まで、またはそれ以上までの高さであってよく、選択された特定の投与様式に従って、主として液量、粘性などによって選択される。ペプチド組成物のヒト単位用量剤形は、典型的には、許容される担体、好ましくは水性担体のヒト単位用量を含む薬学的組成物中に含められ、そのような組成物のヒトへの投与のために用いられることが当業者に公知である容積の流体中にある状態で投与される。
【0145】
また、本発明のペプチドをリポソームを介して投与することもでき、これはペプチドをリンパ系組織などの特定の組織にターゲティングさせるか、または感染細胞に選択的にターゲティングさせるために役立つほか、ペプチド組成物の半減期を延長させるのにも役立つ。リポソームには、乳濁液、フォーム、ミセル、不溶性単分子層、液晶、リン脂質分散体、多層膜などが含まれる。これらの調製物において、送達させようとするペプチドは、単独で、または例えばリンパ系細胞に広く存在する受容体と結合する分子、例えばCD45抗原と結合するモノクローナル抗体などとともに、または他の治療的もしくは免疫原性組成物とともに、リポソームの一部として組み入れられる。このようにして、本発明の所望のペプチドで満たされた、または装飾されたリポソームを、リンパ細胞の部位に向かわせて、そこで選択した治療用/免疫原性ペプチド組成物をリポソームに送達させる。本発明で用いるためのリポソームは、標準的な小胞形成脂質から形成され、これには一般に中性または負に荷電したリン脂質およびステロール、例えばコレステロールなどが含まれる。脂質の選択は一般に、例えばリポソームのサイズ、酸不安定性、および血流内でのリポソームの安定性の考慮によって導かれる。リポソームの調製のためには種々の方法が利用可能であり、例えば、Szoka et al., Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9:467(1980), 米国特許第4,235,871号、第4,501,728号、第4,837,028号および第5,019,369号に記載されており、これらは参照により本明細書に組み入れられる。
【0146】
免疫細胞へのターゲティングに関して、リポソーム中に組み入れられるリガンドには、例えば、所望の免疫系細胞の細胞表面決定基に対して特異的な抗体またはその断片が含まれうる。ペプチドを含むリポソーム懸濁液は、静脈内、局所的、局部的その他で、とりわけ投与の様式、送達されるペプチド、および治療される疾患の病期に応じて異なる用量で、投与することができる。
【0147】
固体組成物に関しては、従来の無毒性の固体担体を用いることができ、これには例えば、医薬品級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどが含まれる。経口投与のためには、薬学的に許容される無毒性の組成物が、以前に列記した担体のような通常用いられる添加剤のうちのいずれか、および一般に10〜95%の、より好ましくは25%〜75%の濃度の有効成分、すなわち本発明の1つまたは複数のペプチドを組み入れることによって形成される。
【0148】
エアロゾル投与のためには、免疫原性ペプチドは、微細化された形態で、界面活性剤および噴霧剤とともに供給されるのが好ましい。ペプチドの典型的なパーセンテージは、重量比で0.01%〜20%であり、好ましくは1%〜10%である。界面活性剤は、当然ながら無毒性でなければならず、好ましくは噴霧剤中に可溶性である。そのような薬剤の代表は、6〜22個の炭素原子を含む脂肪酸のエステルまたは部分エステル、例えばカプロン酸、オクタン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、オレステリン酸(olesteric acid)およびオレイン酸と脂肪族多価アルコールまたはその環状無水物とのものなどが含まれる。混合エステル、例えばグリセリドまたは天然グリセリドなどを用いることもできる。界面活性剤は、組成物の重量比で0.1〜20%、好ましくは0.25〜5%を占めてよい。組成物の残りは通例、噴霧剤である。所望であれば、例えば、鼻腔内送達のためのレシチンの場合のように、担体を含めることもできる。
【0149】
もう1つの局面において、本発明は、本明細書に記載したような免疫原性ペプチドの免疫原性有効量を有効成分として含むワクチンに関する。本ペプチドは、それ自身の担体と結び付けて、または活性ペプチド単位のホモポリマーもしくはヘテロポリマーとして、ヒトを含む宿主に導入することができる。そのようなポリマーには免疫反応の増大という利点があり、ポリマーを作るために複数の異なるペプチドを用いる場合には、腫瘍細胞の複数の異なる抗原決定基と反応する抗体および/またはCTLを誘導するという、さらなる利点がある。有用な担体は当技術分野で周知であり、これには例えば、チログロブリン、ヒト血清アルブミンなどのアルブミン、破傷風トキソイド、ポリ(リジン:グルタミン酸)などのポリアミノ酸、インフルエンザ、B型肝炎ウイルスコアタンパク質、B型肝炎ウイルス組換えワクチンなどが含まれる。ワクチンは、水、リン酸緩衝食塩水または食塩水のような、生理的に忍容される(許容される)希釈剤を含むこともでき、さらに典型的にはアジュバントを含む。不完全フロイントアジュバント、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウムまたはアラムなどのアジュバントは、当技術分野で周知の材料である。注射、エアロゾル、経口的、経皮的または他の経路を介して、本明細書に記載したようなペプチド組成物による免疫処置を行うと、宿主の免疫系は所望の抗原に対して特異的なHTLを多量に産生することによってワクチンに応答し、宿主はその後の感染に対して少なくとも部分的には免疫を獲得するか、または慢性感染症の発症に対して抵抗性となる。
【0150】
本発明のペプチド、ならびに本発明の薬学的組成物およびワクチン組成物は、癌を治療および/または予防するための、哺乳動物、特にヒトへの投与のために有用である。本発明のペプチドを含むワクチン組成物は、癌に対する感受性が高い、または他の様式でそのリスクがある患者に対して、抗原に対する免疫応答を惹起させ、それ故に患者自身の免疫応答能を強化させるために投与される。そのような量は「免疫原性有効量」と定義される。この使用法において、その正確な量はやはり患者の健康状態および体重、投与様式、配合物の性質その他に依存するが、一般に患者体重70kg当たり約1.0μg〜約5000μg、より一般的には患者体重70kg当たり約10μg〜約500μgの範囲である。
【0151】
本明細書で述べたように、本発明のペプチドは、そのペプチドによって含まれるエピトープに対して特異的なHTLと接触させた場合に、HTL免疫応答を誘導する。ペプチドがHTLと接触する様式は、本発明にとって特に重要ではない。例えば、本ペプチドはインビボまたはインビトロのいずれでもHTLと接触させることができる。接触がインビボで起こる場合は、ペプチドそれ自体を患者に投与することもでき、または、本明細書に記載するように、1つまたは複数のペプチドをコードするDNAベクター、ペプチドをコードするウイルスベクター、リポソームのような他の媒体を用いることもできる。
【0152】
治療または免疫処置の目的で、本発明のペプチドの1つまたは複数をコードする核酸を患者に投与することもできる。さまざまな方法を、患者に核酸を送達するために都合良く用いることができる。例えば、核酸を「裸のDNA」として直接送達することができる。このアプローチは、例えば、Wolff et. al., Science 247: 1465-68 (1990)ならびに米国特許第5,580,859号および第5,589,466号に記載されている。また、核酸を、例えば米国特許第5,204,253号に記載されているようなバリスティック(ballistic)送達を用いて投与することもできる。DNAのみを含む粒子を投与することができる。または、DNAを、金粒子などの粒子に付着させることもできる。
【0153】
また、核酸を、陽イオン性化合物、例えば陽イオン性脂質などと複合体化させて送達することもできる。脂質を介した遺伝子送達方法は、例えば、WO 96/18372号;WO 93/24640号;Mannino and Gould-Fogerite (1988) BioTechniques 6(7): 682-691;Rose 米国特許第5,279,833号;WO 91/06309合;およびFelgner et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 7413-14に記載されている。
【0154】
本発明のペプチドの1つまたは複数をコードする核酸を患者に投与することもできる。このアプローチは、例えば、Wolff, et. al., Science, 247:1465-68 (1990)ならびに米国特許第5,580,859号および第5,589,466号に記載されている。
【0155】
本発明のペプチドをコードする核酸を投与する1つの好ましい手段は、本発明の複数のエピトープをコードするミニ遺伝子構築物を用いるものである。ヒト細胞における発現のための、選択されたHTLエピトープをコードするDNA配列(ミニ遺伝子)を作り出すためには、そのエピトープのアミノ酸配列を逆翻訳(reverse translate)させる。ヒトのコドン使用頻度表を、各アミノ酸に関するコドン選択のための手引きとするために用いる。これらのエピトープをコードするDNA配列を直接接合させて、連続したポリペプチド配列を作り出す。発現および/または免疫原性を最適化するために、ミニ遺伝子の設計に追加の要素を組み入れることができる。逆翻訳させてミニ遺伝子配列中に組み入れることができると考えられる配列の例には、以下が含まれる:リーダー(シグナル)配列、および小胞体保留シグナル。加えて、HTLエピトープのMHC提示は、HTLエピトープに隣接して合成配列(例えば、ポリアラニン)または天然に存在するフランキング配列を含めることによって改善することもできる。
【0156】
ミニ遺伝子配列は、そのミニ遺伝子のプラス鎖およびマイナス鎖をコードするオリゴヌクレオチドをアセンブリすることによってDNAに変換される。周知の手法を用いて、部分的に重複するオリゴヌクレオチド(30〜100塩基長)が合成され、リン酸化され、精製されて、適当な条件下でアニーリングされる。オリゴヌクレオチドの末端は、T4 DNAリガーゼを用いて連結される。HTLエピトープポリペプチドをコードするこの合成ミニ遺伝子を、続いて、所望の発現ベクター中にクローニングすることができる。
【0157】
当業者に周知の標準的な調節配列が、標的細胞における発現を確実に行わせるためにベクターに含められる。いくつかのベクター要素が必要とされる:ミニ遺伝子挿入のための下流クローニング部位を有するプロモーター;効率的な転写終結のためのポリアデニル化シグナル;大腸菌の複製起点;大腸菌用の選択マーカー(例えば、アンピシリン耐性またはカナマイシン耐性)。この目的には、例えばヒトサイトメガロウイルス(hCMV)プロモーターなどの、さまざまなプロモーターを用いることができる。他の適したプロモーター配列については、米国特許第5,580,859号および第5,589,466号を参照のこと。
【0158】
ミニ遺伝子の発現および免疫原性を最適化するために、追加のベクター修飾が望まれることがある。場合によっては、効率的な遺伝子発現のためにイントロンが必要とされ、ミニ遺伝子の転写される領域内に、1つまたは複数の合成または天然イントロンを含めることができると考えられる。ミニ遺伝子の発現を増大させるために、mRNA安定化配列を含めることを考慮することもできる。最近、免疫刺激性配列(ISSまたはCpG)がDNAワクチンの免疫原性において役割を果たすと提唱されている。これらの配列は、免疫原性を強化することが見いだされたならば、ベクター中に、ミニ遺伝子のコード配列の外側に含めることができる。
【0159】
いくつかの態様においては、ミニ遺伝子にコードされたエピトープ、および免疫原性を増強または低下させるために含められた第2のタンパク質の産生を可能にする、2シストロン性(bicistronic)発現ベクターを用いることができる。共発現された場合に免疫応答を有利に増強させうると考えられるタンパク質またはポリぺプチドの例には、サイトカイン(例えば、IL2、IL12、GM-CSF)、サイトカイン誘導分子(例えば、LeIF)または共刺激性分子が含まれる。ヘルパー(HTL)エピトープを細胞内ターゲティングシグナルと連結させて、CTLエピトープとは別に発現させることもできるであろう。これは、HTLエピトープを、CTLエピトープとは異なる細胞区画に向かわせることを可能にすると考えられる。必要であれば、これにより、HTLエピトープをMHCクラスII経路内により効率的に入れることが容易になり、それによってCTL誘導が向上すると考えられる。CTL誘導とは対照的に、免疫抑制分子(例えば、TGF-β)の共発現によって免疫応答を特異的に低下させることが、ある種の病気では有益な可能性がある。
【0160】
発現ベクターを選択した上で、ミニ遺伝子をプロモーターの下流のポリリンカー領域にクローニングする。このプラスミドを適切な大腸菌株に形質転換導入し、DNAを標準的な手法を用いて調製する。ミニ遺伝子の向きおよびDNA配列は、ベクター中に含まれる他のすべての要素とともに、制限マッピングおよびDNA配列解析を用いて確認される。正しいプラスミドを有する細菌細胞を、マスター細胞バンクおよび作業用細胞バンクとして保存することができる。
【0161】
プラスミドDNAの治療的量を、大腸菌における発酵によって産生させ、続いて精製する。作業用細胞バンクからのアリコートを用いて発酵用培地(Terrific Brothなど)に接種し、周知の手法に従って振盪フラスコまたはバイオリアクター内で飽和するまで増殖させる。プラスミドDNAは、Quiagenにより供給される固相陰イオン交換樹脂などの標準的な生物分離技術を用いて精製することができる。必要であれば、ゲル電気泳動あるいは他の方法を用いて、超らせんDNAを開環状および線状の形態から単離することができる。
【0162】
精製されたプラスミドDNAは、種々の配合物を用いて注射用に調製することができる。これらのうち最も簡単なものは、滅菌リン酸緩衝食塩水(PBS)中での凍結乾燥DNAの再構成である。さまざまな方法が記載されてきており、また新しい技術も利用できるようになるであろう。上述したように、核酸は陽イオン性脂質とともに都合良く調合される。加えて、安定性、筋肉内分散、または特定の臓器または細胞種への輸送といった変数に影響を及ぼすために、糖脂質、融合性リポソーム、ペプチド、および、保護性の相互作用性非凝縮化合物(protective, interactive, non-condensing)(PINC)と総称される化合物を精製プラスミドDNAと複合体化させることもできると考えられる。
【0163】
また、核酸を、例えば米国特許第5,204,253号に記載されているようなバリスティック(ballistic)送達を用いて投与することもできる。DNAのみを含む粒子を投与することができる。または、DNAを、金粒子などの粒子に付着させることもできる。
【0164】
インビボでの免疫原性は、ミニ遺伝子DNA配合物の機能検査のための第2のアプローチである。適切なヒトMHC分子を発現しているトランスジェニックマウスに、DNA産物による免疫処置を行う。用量および投与経路は配合物に依存する(例えば、PBS中にあるDNAについてはIM、脂質と複合体化したDNAについてはIP)。免疫処置から21日後に脾細胞を収集し、検査する各エピトープをコードするペプチドの存在下で1週間にわたり再刺激する。
【0165】
本発明によるワクチン組成物の1つの態様は、患者の血液由来のPBMC、またはそれから単離されたDCに対する、エピトープ保有ペプチドのカクテルのエクスビボ投与を含む。DCをペプチドでパルス刺激した後に、患者に再注入する前に、非結合性ペプチドを除去するためにDCを洗浄する。この態様において、ワクチンは、HLA分子中にあるパルス刺激されたペプチドエピトープをその表面に提示する、ペプチドパルス刺激されたDCを含む。
【0166】
また、免疫応答を惹起するために、例えば、本発明によるエピトープをコードする核酸配列を含むミニ遺伝子を、樹状細胞にトランスフェクトすることもできる。ワクチン組成物は、樹状細胞の動員および収集を行い、それによって樹状細胞のローディング(loading)を生じさせた後に、インビトロで作り出すことができる。
【0167】
適切なハプロタイプのトランスジェニック動物がさらに、ミニ遺伝子DNAのインビボ免疫原性を最適化するための有用なツールとなることもある。加えて、ヒトMHC分子によって認識されるCTLエピトープに対する交差反応性を有する保存されたHLA分子を有するサルなどの動物を、CTLエピトープのヒト免疫原性を決定するために用いることもできる(Bertoni, et al., J. Immunol. 161:4447-4455 (1998))。
【0168】
そのようなインビボ試験は、投与経路、ワクチン配合物、組織生体内分布、ならびに一次および二次リンパ系器官の関与といった、インビトロアッセイによっては容易に評価されない、ワクチン開発のために非常に重要な変数を取り扱うために必要とされる。その簡単さおよび融通性(flexibility)のために、HLAトランスジェニックマウスは、少なくとも初期ワクチン開発の試験のためには、非ヒト霊長動物のようなより高等な動物種におけるより煩雑でかつ費用のかかる試験と比較して、魅力のある代替的な選択肢となっている。
【0169】
抗原性ペプチドは、HTL応答をエクスビボで惹起するためにも用いられる。その結果生じたHTL細胞は、他の従来の形態の治療法に反応しない患者、または本発明による治療的ワクチンペプチドもしくは核酸に反応しないと考えられる患者における腫瘍を治療するために用いることができる。特定の抗原に対するエクスビボHTL応答は、組織培養下で患者の(HTLp)または遺伝的に適合性のあるHTL前駆細胞を、抗原提示細胞(APC)の源、例えば樹状細胞など、および適切な免疫原性ペプチドとともにインキュベートすることによって誘導される。前駆細胞が活性化して成熟し、エフェクター細胞へと増殖する適切なインキュベーション時間(典型的には約7〜28日(1〜4週間))の後に、細胞を患者に注入すると、そこでそれらはそれらの特異的標的細胞(感染細胞または腫瘍細胞)を破壊すると考えられる。また、トランスフェクトされた樹状細胞を抗原提示細胞として用いることもできる。特異的なヘルパーT細胞の生成のためのインビトロ条件を最適化する目的で、刺激細胞の培養物を適切な無血清培地中に維持する。
【0170】
また、本ペプチドは診断用試薬としても用途があると考えられる。例えば、本発明のペプチドは、本ペプチドまたは関連ペプチドを用いる治療レジメンに対する特定の個体の感受性を決定するために用いることができ、それ故に現行の治療プロトコールを修正する上で、または罹患個体の予後予測を決定する上での一助になると考えられる。加えて、本ペプチドを、どの個体が慢性感染症を発症するリスクがかなり高いかを予測するために用いることもできる。
【0171】
例えば、本発明のペプチドは、病原体または免疫原に対する曝露後に末梢血単核細胞を抗原特異的CTLの存在に関して判定するためのテトラマー染色アッセイに用いることができる。HLA-テトラマー複合体は、抗原特異的CTLを直接描出するため(例えば、Ogg, et al. Science 279:2103-2106, 1998;およびAltman, et al. Science 174:94-96, 1996を参照)、および末梢血単核細胞の試料における抗原特異的CTL集団の頻度を決定するために用いられる。本発明のペプチドを用いたテトラマー試薬は、以下の通りに生成させることができる:アレル特異的HLA分子またはスーパータイプ分子と結合するペプチドを、対応するHLA重鎖およびβ2-ミクログロブリンの存在下でリフォールディングさせて、三分子複合体を生成させる。この複合体を、重鎖のカルボキシル末端にある、事前にタンパク質の中に人工的に導入した部位でビオチン化する。続いて、ストレプトアビジンの添加によってテトラマー形成を誘導する。蛍光標識されたストレプトアビジンを利用することで、テトラマーを用いて抗原特異的細胞を染色することができる。続いて細胞を、例えばフローサイトメトリーによって同定することができる。そのような分析は、診断または予後予測の目的に用いることもできる。加えて、ペプチドを、どの個体が慢性感染症を発症するリスクがかなり高いかを予測するために用いることもできる。
【0172】
本明細書において引用したすべての刊行物、特許および特許出願は、それぞれの個々の刊行物、特許または特許出願が参照により組み入れられるように特定的および個別に指示されている場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。理解を容易にする目的で、上記の本発明を例証および例示としてある程度詳細に説明してきたが、当業者には、本発明の教示に鑑みて、添付する特許請求の範囲の精神または範囲を逸脱することなく、ある種の変更または修正を加えうることは容易に明らかであろう。
【実施例】
【0173】
実施例
材料および方法
以下の材料および方法は、本明細書で開示される実施例のすべてに一般に該当する。具体的な材料および方法は、各実施例の中で必要に応じて開示される。
【0174】
試薬
抗IFN-γおよびビオチン化抗IFN-γは、Mabtech(Sweden)から入手した。ホルボールミリステートアセテート(PMA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、ポリクローナルヒトIgG、破傷風毒素(TT)およびイオノマイシンは、Sigma(St. Louis, MO, USA)からのものとした。ヤギ抗ヒト西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合抗体は、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz, CA)から入手した。ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)、RPMI-1640およびリン酸緩衝食塩水は、Cellgro(Hernden, VA, USA)からのものとした。Ficoll-Paqueは、Amersham Biosciences(Uppsala, Sweden)からのものとした。ペプチドはすべて、Mayo Clinic Protein Chemistry and Proteomic CoreまたはEpimmune, Inc.(San Diego, CA)のいずれかによって合成され、以前に記載された通りに逆相HPLCによって均質性95%超に精製した(Dzuris JL, Sidney J, Appella E, Chesnut RW, Watkins DI, Sette A. Conserved MHC class I peptide binding motif between humans and rhesus macaques. J Immunol 2000;164: 283-91)。ペプチドの純度は、逆相HPLCおよびアミノ酸分析、シークエンシング、ならびに/または質量分析によって決定した。凍結乾燥ペプチドを20mg/mlで100% DMSO中に再懸濁させ、続いてPBS中に必要な濃度となるまで希釈した。
【0175】
エピトープ予測
用いた予測プログラム、PlC(Predicted IC50)は、HLA-DR結合能を有するペプチドを予測するための、改変型の線形係数またはマトリックスベースの方法である。PlCは、ペプチド分子に沿った各残基が、結合親和性に独立に寄与しうるという仮定の上で予測される(Sette A, et al. Proc Natl Acad Sci U S A 1989;86: 3296-300;Sette A, et al. J Immunol 1989;142: 35-40)。本アルゴリズムは、対応する入力配列に対して予測IC50値(PlCと命名)を生成する。より低いPlC値は、HLAに対する結合の確率がより高いことを指し示す。本プログラムは、タンパク質全体を包含する、3残基ずつずれている15アミノ酸長の配列を分析する。
【0176】
末梢血単核細胞の調製(PBMC)
PBMCは、記載された通りに血液から単離し(Disis ML, et al. Clin Cancer Res 1999;5: 1289-97)、凍結用培地(12.5% HSA、ペニシリン、ストレプトマイシンおよび2mMグルタミンを含むRPMI)中にある状態で液体窒素中(20×106個/ml)で凍結保存した(Disis ML et al. J Immunol Methods 2005.)。
【0177】
HLA-DRの精製
15種の異なるHLA-DR分子を、可溶化したHLA-DR分子に対するペプチドの結合を測定するための定量的アッセイに用いた。これらのHLA-DR分子は、均衡のとれた集団対象範囲が可能となるように選択した:DRB1*0101、DRB1*1501、DRB1*0301、DRB1*0401、DRB1*0404、DRB1*1101、DRB5*0101、DRB4*0101、DRB3*0101、DRB1*0701、DRB1*0405、DRB1*0802、DRB1*0901、DRB1*1201およびDRB1*1302(24)。利用するMHC分子は、EBVで形質転換させたホモ接合型細胞系、または単一のMHCがアレルトランスフェクトされた721.221、C1Rまたは線維芽細胞系から精製した。これらの細胞系を、2mM L-グルタミン、100 U(100μg/ml)ペニシリン-ストレプトマイシン溶液および10%熱非働化FCSを補充したRPMI-1640培地中での培養によって維持した。HLA-DR分子は、1%(v/v)NP-40、150 mM NaCl、5mM EDTAおよび2mM PMSFを含む50mM Tris-HCL、pH 8.5中で調製した細胞溶解物から、抗体を利用するアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した。手短に述べると、不活性化Sepharose CL4BおよびプロテインA Sepharoseのカラムをプレカラム(pre-column)として用いた。HLA-DR分子は、溶解物をLB3.1モノクローナル抗体(抗HLA-DRA)カラムに通過させることによって捕捉した。抗体カラムを、1%(v/v)NP-40を含む10mM Tris-HCL、pH8.0中で洗浄し、続いて0.4%(w/v)n-オクチルグルコシドを含むPBS中で洗浄した。続いてMHC分子を、0.4%(w/v)n-オクチルグルコシドを含む0.15 M NaCl、pH 11.5中にある50mMジエチルアニリンで溶出させた。pHを8.0に低下させ、溶出液を、Centriprep 30濃縮器(Amicon, Beverly, MA)における2000rpmでの遠心によって濃縮した。
【0178】
HLA-DR結合アッセイ
以前の記載の通りに、可溶性HLA-DR分子に対するペプチドの結合を、放射標識した標準ペプチドの結合の阻害に基づいて測定するために、放射性リガンド結合阻害アッセイを用いた(Sidney J, Southwood S, Oseroff C, del Guercio MF, Grey HM, Sette A. Measurement of MHC/peptide interactions by gel filtration. Cuff Protocols Immunol 1998;18: 18.3.2-.3.9.)。手短に述べると、1〜10nMの放射標識ペプチドを、プロテアーゼ阻害薬のカクテルの存在下で、1μM〜1nMの精製HLA-DR分子とともに室温または37℃で2日間コインキュベートした。アッセイは、pH 4からpH 7までのさまざまなpH条件で行った。アッセイ混合物の最終的なpHは、以前の記載の通りにクエン酸緩衝液を用いて調整する(Sidney J, Curr Protocols Immunol 1998)。インキュベーション後に、HLA-DRに結合した放射能のパーセンテージを、LB3.1抗体をコーティングしたOptiplate(Packard Instruments, Meriden, CT)上にHLA-DR/ペプチド複合体を捕捉して、1分当たりの結合カウント数をTopCountミクロシンチレーションカウンター(Packard Instruments)を用いて決定することによって決定する。10〜20%の結合放射能が得られるHLA-DRを、放射標識ペプチドの結合の50%阻害が得られるペプチドの濃度を算出する阻害アッセイに用いる。用いた条件下で、測定されたIC50値は、真のKd値の妥当な近似値となる。競合ペプチドを、30μg/mL〜300pg/mLの範囲の濃度で、2〜4回の完全な独立した実験において検査する。以前の研究と同じく、特定のHLA-DR分子に対して1000nMまたはそれよりも良好な親和性を有するペプチドは、各々の抗原に対する結合剤として定義される。
【0179】
酵素結合免疫吸着スポットアッセイ
低頻度T細胞を検出するための10-day ELIspotを、腫瘍抗原ペプチド(表1)に対する反応性を記載された通りに決定するために用いた(Knutson KL et al. J Clin Onc 2006;24: 4254-61)。ペプチドに対する陽性応答は、対照非抗原ウェルの平均を有意に上回り(p<0.05、両側t検定)、かつ検出可能(すなわち、>1:100,000)である頻度と定義した。PMA/イオノマイシンおよびCEFプールを、以前の記載の通りに、陽性非腫瘍関連対照として用いた(Knutson, 2006)。
【0180】
ELISA
ELISAは以前の記載の通りに行った(Knutson, 2006)。手短に述べると、96ウェルプレートに1μg/ml IGFBP-2タンパク質、200ng/ml破傷風毒素または1μg/ml BSAをコーティングした。標準曲線の作成のために、いくつかのウェルにヒトIgGを200〜0.2ng/mlの濃度範囲で添加した。洗浄およびブロッキングの後に、ヒト血清をプレートに1:40の希釈度で3通りずつ添加し、プレートを室温で2時間インキュベートした。洗浄後に、100μL/ウェルのHRP(Santa Cruz Biotechnology)を1:2000に希釈し、室温で1時間インキュベートした。最終洗浄の後に、各ウェルを100μL(テトラメチルベンザジン(tetramethylbenzadine))TMB基質(BD Bioscience)とともにインキュベートした。呈色を希HCLで停止させ、プレートリーダーで450nMの吸光度を読み取った。
【0181】
以下の例は、例証のみとして提供されるものであり、限定的なものではない。当業者は、種々の決定的でないパラメーターを変更または修正しても本質的に同様な結果が得られることを容易に認識するであろう。
【0182】
実施例1
確立されたモチーフ検索アルゴリズムを用いた、腫瘍関連抗原由来の保存されたHLAクラスII拘束性ペプチドの同定
ワクチン設計のために有用なエピトープを同定するために、可能性のあるHLAクラスIIモチーフを同定するための腫瘍関連抗原配列のアミノ酸モチーフ検索にまず基づく、学際的アプローチを用いた(表I参照)。これに続いて、エピトープペプチド結合の親和性および幅広さを決定するために、精製されたHLA分子を用いるハイスループット合成ペプチド結合アッセイを行った。
【0183】
アルゴリズムモチーフ検索
事実上100%の集団対象範囲を達成するために、モチーフ検索アルゴリズムを最も一般的なHLAクラスIIアレルに関して検証し、HLA DRB1*0101、DRB1*1501、DRB1*0301、DRB1*0401、DRB1*0404、DRB1*1101、DRB5*0101、DRB4*0101、DRB3*0101、DRB1*0701、DRB1*0405、DRB1*0802、DRB1*0901、DRB1*1201およびDRB1*1302スーパータイプに的を絞った。選択された腫瘍関連抗原配列を、モチーフの定義を用いてモチーフ陽性アミノ酸配列に関してスキャニングした。
【0184】
さまざまなDRスーパータイプに対して特異的な、合計で約150種のクラスII拘束性ペプチド配列が同定された(表I参照)。表Iは、それぞれの同定されたDR抗原ペプチド、それぞれの精製されたHLAに関するIC50(nM)を列記している。
【0185】
実施例2
腫瘍ワクチンに含めるためのHTLエピトープの同定
表Iに列記されたペプチドのうち、少なくとも4種の異なるHLAと1000nM未満のIC50で結合したペプチドを同定し、表IIに示している。表IIのペプチド配列を、精製MHC分子に対するそれらの結合能に関してさらに評価した。図1から4までは、免疫原性であった表IIのペプチドを示している(丸の中に示されている)。これらのHTLペプチドは、腫瘍ワクチンの中に含めるための候補である。
【0186】
以上に考察した予測アルゴリズムを用いて、HLA-DR1結合エピトープの候補を同定した。15種の異なるHLA-DR分子を標的とした結合アッセイにより、エピトープのうち10種は無差別的で、少なくとも4種の異なるHLA-DR変異体と結合した(IC50<1000nM)。インターフェロン-γ ELIspotアッセイを用いて、乳癌または卵巣癌のいずれかを有する48人の患者、および18人の健常対照における、これらの無差別結合性ペプチドに対する免疫を判定した。その結果、患者におけるT細胞免疫の亢進が、いくつかのペプチドに対して検出された(図1〜4)。
【0187】
健常ドナーおよび患者の試料を入手した。患者は、血液(200ml)を採取した時点で少なくとも30日間は積極的な治療を受けていなかった。T細胞試験に関して、健常ドナーおよび患者の平均(±s.e.m)年齢はそれぞれ42±11歳および55±2歳であった(p<0.0001)。血清が入手できなかったために、T細胞試験に用いた対照のすべてが、それらの血清中の腫瘍関連抗原抗体に関して検討されたわけではなかった。しかし、追加の対照および患者血清を抗体判定のために入手することができた。追加の健常ドナー血清はBioreclamation(Hicksville, NY)から入手した。
【0188】
100万個のPBMC当たりおよそ1:100,000の抗原特異的T細胞を検出限界とするELIspotアッセイを用いて、患者由来PBMCを、HLA-DR結合性ペプチドのすべてに対する反応性に関してスクリーニングした。いくつかのペプチドの免疫原性データを図1〜4に示している。
【0189】
実施例3
マルチエピトープワクチンの設計および開発
上記の通りの少なくとも4種の異なるHLAサブタイプと結合し、かつ図1〜4に示すように免疫原性であることが示されたペプチドを、マルチエピトープワクチンに含めるために選択した。表IIIは、陽性応答を示した患者のパーセント、および8種のワクチン候補の特定のHLAサブタイプに対する結合パターンを示している。
【0190】
これらの実施例およびそれらの等価物は、本開示および添付の特許請求の範囲を鑑みれば当業者にはさらに明らかになるであろう。しかし、これらの実施例は、例証のみを目的として設計されており、本発明の範囲を全く限定するものではないことが理解されるべきである。
【0191】
(表I)乳房/卵巣由来ペプチドのHLA-DR結合親和性(登場順にそれぞれSEQ ID NO:5〜27、20、28〜33、19、34〜57、57、58〜64、64および65〜192)





【0192】
(表II)乳房/卵巣由来HLA-DRスーパータイプの候補
(登場順にそれぞれSEQ ID NO:6〜10、13〜15、20、25、20、29、32、40〜42、46、51〜52、56〜57、59、67〜70、73〜77、86〜90、102〜103、109、111、114、126、136、145〜146、156、165〜168、171、179、186および188〜190)


【0193】
(表III)ワクチン候補


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表Iに列記されたペプチドからなる群より選択される、単離されたHLA-DR結合性ペプチド。
【請求項2】
請求項1記載のペプチドを含む組成物。
【請求項3】
第2のHTL誘導性ペプチドをさらに含む、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
CTLペプチドをさらに含む、請求項2記載の組成物。
【請求項5】
脂質をさらに含む、請求項2〜4のいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
リポソームをさらに含む、請求項2〜4のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
ペプチドがスペーサー分子と結び付いている、請求項2記載の組成物。
【請求項8】
担体をさらに含む、請求項2〜4のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
抗原提示細胞をさらに含む、請求項2〜4のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
請求項1記載のペプチドをコードする、単離された核酸。
【請求項11】
請求項1記載のペプチドおよび少なくとも1つの追加のペプチドまたはシグナル配列をコードする、単離された核酸。
【請求項12】
少なくとも1つの追加のペプチドまたはシグナル配列が第2のHTL誘導性ペプチドである、請求項11記載の単離された核酸。
【請求項13】
少なくとも1つの追加のペプチドまたはシグナル配列がCTLペプチドである、請求項11記載の単離された核酸。
【請求項14】
請求項1記載のペプチド、および免疫原性を強化または低下させるために含められる少なくとも1つのタンパク質またはポリペプチドをコードする、単離された核酸。
【請求項15】
請求項10〜14のいずれか一項記載の核酸を含む組成物。
【請求項16】
脂質をさらに含む、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
リポソームをさらに含む、請求項15記載の組成物。
【請求項18】
担体をさらに含む、請求項15記載の組成物。
【請求項19】
請求項1記載のペプチドを患者に投与する段階を含む、癌を予防または治療する方法。
【請求項20】
請求項10〜14のいずれか一項記載の核酸を患者に投与する段階を含む、癌を予防または治療する方法。
【請求項21】
患者における癌の治療、予後予測またはリスクを決定するための診断試薬としての、請求項1記載のペプチドの使用。
【請求項22】
表IIに列記されたペプチドの群から選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項23】
HER-2/neu p59、HER-2/neu p83、HER-2/neu p88、HER-2/neu p422、HER-2/neu p885、CEA p24、CEA p75、CEA p176、CEA p423、CEA p488、CEA p650、CEA p663、IGFBP-2 p17、IGFBP-2 p22、IGFBP-2 p249、IGFBP-2 p293、サイクリンD1 p3、サイクリンD1 p49、サイクリンD1 p53、サイクリンD1 p98、サイクリンD1 p137、サイクリンD1 p145、サイクリンD1 p174およびサイクリンD1 p199からなるペプチドの群より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項24】
表Iに列記されたものからなる群より選択されるエピトープを含む、30アミノ酸未満の長さの、単離されたHLA-DR結合性ペプチド。
【請求項25】
表IIに列記されたものからなる群より選択されるエピトープを含む、30アミノ酸未満の長さの、単離されたHLA-DR結合性ペプチド。
【請求項26】
表Iに列記されたものからなる群より選択されるエピトープに対応する、請求項24記載の単離されたHLA-DR結合性ペプチド。
【請求項27】
表IIに列記されたものからなる群より選択されるエピトープに対応する、請求項24記載の単離されたHLA-DR結合性ペプチド。
【請求項28】
30残基またはそれ未満の長さの少なくとも1つのHLA-DR結合性ペプチドを含む組成物であって、前記ペプチドが、表1に列記されたHTLエピトープのうちのいずれか1つから選択されるHTLエピトープ、およびそれらの混合物を含む、組成物。
【請求項29】
30残基またはそれ未満の長さの少なくとも1つのHLA-DR結合性ペプチドを含む組成物であって、前記ペプチドが、表2に列記されたHTLエピトープのうちのいずれか1つから選択されるHTLエピトープ、およびそれらの混合物を含む、組成物。
【請求項30】
少なくとも2、3、4、5、6、7、8、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54または55種のペプチドを含む、請求項28または29記載の組成物。
【請求項31】
少なくとも2つの癌胎児性抗原(CEA)HTLペプチド、少なくとも2つのサイクリンD1 HTLペプチド、少なくとも2つのヒト上皮増殖因子受容体2(HER-2/neu)HTLペプチド、および少なくとも2つのインスリン増殖因子結合タンパク質2(IGFBP-2)HTLペプチドを含む組成物であって、前記ペプチドが表1に列記されたペプチドから選択される、請求項29または30記載の組成物。
【請求項32】
ペプチドが表2に列記されたペプチドから選択される、請求項31記載の組成物。
【請求項33】
2つの癌胎児性抗原(CEA)HTLペプチド、少なくとも2つのサイクリンD1 HTLペプチド、少なくとも2つのヒト上皮増殖因子受容体2(HER-2/neu)HTLペプチドおよび少なくとも2つのインスリン増殖因子結合タンパク質2(IGFBP-2)HTLペプチドからなる組成物であって、前記ペプチドが表2に列記されたペプチドから選択される、請求項31記載の組成物。
【請求項34】
HER-2/neu p59、HER-2/neu p83、HER-2/neu p88、HER-2/neu p422、HER-2/neu p885、CEA p24、CEA p75、CEA p176、CEA p423、CEA p488、CEA p650、CEA p663、IGFBP-2 p17、IGFBP-2 p22、IGFBP-2 p249、IGFBP-2 p293、サイクリンD1 p3、サイクリンD1 p49、サイクリンD1 p53、サイクリンD1 p98、サイクリンD1 p137、サイクリンD1 p145、サイクリンD1 p174およびサイクリンD1 p199からなる群より選択される少なくとも2つのペプチドを含む、請求項29または30記載の組成物。
【請求項35】
少なくとも2つの癌胎児性抗原(CEA)HTLペプチド、少なくとも2つのサイクリンD1 HTLペプチド、少なくとも2つのヒト上皮増殖因子受容体2(HER-2/neu)HTLペプチドおよび少なくとも2つのインスリン増殖因子結合タンパク質2(IGFBP-2)HTLペプチドを含む、請求項34記載の組成物。
【請求項36】
それぞれが腫瘍関連抗原(HTL)エピトープをコードする5〜55種の核酸を含むマルチエピトープ構築物からなる群より選択される、単離されたポリヌクレオチドであって、前記HTLエピトープが、HER-2/neu p59、HER-2/neu p83、HER-2/neu p88、HER-2/neu p422、HER-2/neu p885、CEA p24、CEA p75、CEA p176、CEA p423、CEA p488、CEA p650、CEA p663、IGFBP-2 p17、IGFBP-2 p22、IGFBP-2 p249、IGFBP-2 p293、サイクリンD1 p3、サイクリンD1 p49、サイクリンD1 p53、サイクリンD1 p98、サイクリンD1 p137、サイクリンD1 p145、サイクリンD1 p174およびサイクリンD1 p199からなる群より選択され、前記核酸が同じリーディングフレーム中で互いに直接的または間接的に連結されている、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項37】
以下からなる群より選択される、単離されたポリヌクレオチド:
(a)それぞれが腫瘍関連抗原(HTL)エピトープをコードする5〜55種の核酸を含むマルチエピトープ構築物であって、前記HTLエピトープが表1に列記されたエピトープのうちのいずれか1つであり、前記核酸が同じリーディングフレーム中で互いに直接的または間接的に連結されている、マルチエピトープ構築物;
(b)それぞれが腫瘍関連抗原(HTL)エピトープをコードする5〜55種の核酸を含むマルチエピトープ構築物であって、前記HTLエピトープが表2に列記されたエピトープのうちのいずれか1つであり、前記核酸が同じリーディングフレーム中で互いに直接的または間接的に連結されている、マルチエピトープ構築物;
(c)それぞれが腫瘍関連抗原(HTL)エピトープをコードする5種および8種の核酸を含むマルチエピトープ構築物であって、前記HTLエピトープが表3に列記されたエピトープのうちのいずれか1つであり、前記核酸が同じリーディングフレーム中で互いに直接的または間接的に連結されている、マルチエピトープ構築物;
(d)1つまたは複数のスペーサー核酸が、(a)または(b)または(c)または(d)のHTLエピトープ核酸の間に配置されている、(a)〜(d)のマルチエピトープ構築物;
(e)前記1つまたは複数のスペーサー核酸がそれぞれ1〜8アミノ酸をコードする、(d)のマルチエピトープ構築物;
(f)前記スペーサー核酸の1つまたは複数が、GPGPG(SEQ ID NO:193)を含むかまたはそれからなるアミノ酸配列、PGPGP(SEQ ID NO:194)を含むかまたはそれからなるアミノ酸配列、(GP)n(SEQ ID NO:195)を含むかまたはそれからなるアミノ酸配列、(PG)n(SEQ ID NO:196)を含むかまたはそれからなるアミノ酸配列、(GP)nG(SEQ ID NO:197)を含むかまたはそれからなるアミノ酸配列、および(PG)nP(SEQ ID NO:198)を含むかまたはそれからなるアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードする、(d)または(e)のマルチエピトープ構築物であって、式中、nはゼロから11までの間の整数である、マルチエピトープ構築物;
(g)1つまたは複数のMHCクラスII標的指向性核酸をさらに含む、(a)〜(f)のうちのいずれか1つののマルチエピトープ構築物;
(h)前記1つまたは複数の標的指向性核酸が、Igκシグナル配列、組織プラスミノーゲンアクチベーターシグナル配列、インスリンシグナル配列、小胞体シグナル配列、LAMP-1リソソーム標的指向性配列、LAMP-2リソソーム標的指向性配列、HLA-DMリソソーム標的指向性配列、HLA-DOのHLA-DM会合配列、Ig-a細胞質ドメイン、Ig-ss細胞質ドメイン、Iiタンパク質、インフルエンザマトリックスタンパク質、HCV抗原、および酵母Tyタンパク質からなる群より選択される1つまたは複数の標的指向性配列をコードする、(g)のマルチエピトープ構築物;
(i)HTLエピトーププロセシングのために最適化されている、(a)〜(h)のうちのいずれか1つのマルチエピトープ構築物;
(j)HTL核酸が、それによりコードされるHTL接合エピトープの数を最小限にするように並び替えられている、(a)〜(i)のうちのいずれか1つのマルチエピトープ構築物;
(k)少なくとも2つの癌胎児性抗原(CEA)HTLエピトープ、少なくとも2つのサイクリンD1 HTLエピトープ、少なくとも2つのヒト上皮増殖因子受容体2(HER-2/neu)HTLエピトープおよび少なくとも2つのインスリン増殖因子結合タンパク質2(IGFBP-2)HTLエピトープを含む、(a)〜(j)のうちのいずれか1つのマルチエピトープ構築物;
(l)少なくとも2つの癌胎児性抗原(CEA)HTLエピトープ、少なくとも2つのサイクリンD1 HTLエピトープ、少なくとも2つのヒト上皮増殖因子受容体2(HER-2/neu)HTLエピトープおよび少なくとも2つのインスリン増殖因子結合タンパク質2(IGFBP-2)HTLエピトープが、表2に列記されたエピトープから選択される、(k)のマルチエピトープ構築物;
(k)表3に列記されたエピトープからなる、(a)〜(j)のうちのいずれか1つのマルチエピトープ構築物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−502484(P2011−502484A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532242(P2010−532242)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/081799
【国際公開番号】WO2009/059011
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(501083115)メイヨ・ファウンデーション・フォー・メディカル・エデュケーション・アンド・リサーチ (27)
【出願人】(502457803)ユニヴァーシティ オブ ワシントン (93)
【Fターム(参考)】