説明

HLA遺伝子型を分析するためのオリゴヌクレオチド組成物およびその検査方法

本発明は、HLA遺伝子型を分析するためのオリゴヌクレオチド組成物およびその検査方法に関する発明である。その好適な態様は、組織移植の際に必要な組織適合性検査を施すためにHLA遺伝子型を分析するためのオリゴヌクレオチドチップ(oligonucleotide chip)組成物である。具体的にはHLA‐DR遺伝子型を決
定するための二つ以上のプローブからなる群で構成されるグループより選択された一つ以上のプローブ群を含む、HLA遺伝子型を決定するための複数のオリゴヌクレオチドプローブを有する組成物である。その製造方法と結果の検出方法も提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴヌクレオチドチップ(oligonucleotide chip)
組成物およびその製造方法に関する発明であり、詳しくは組織移植の際に必要な組織適合性検査を施すためにHLA遺伝子型を分析するためのオリゴヌクレオチドチップ組成物およびその製造方法と結果の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主要組織適合性複合体(Major Histocompatibility Complex:MHC)とは、遺伝子レベルで制御されている複雑な抗原系であって、臓器組織を移植する際に拒絶反応(免疫反応)に関係する一連の遺伝子群を称し、すべての哺乳動
物に存在する。ヒトのMHCは、白血球表面の抗原を認識する抗白血球因子で初めて発見され、ヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)と称し、第6番染色体の短腕に位置する。このHLA遺伝子座は、免疫学的特性および分子構造、遺伝子の位置と分布する細胞のタイプによって3群(HLA‐class I,II,III)に分類され、この中で第1群の抗原部位のHLA‐A、‐B、‐Cw遺伝子座と第2群の抗原部位のHLA‐DRが組織拒絶反応と密接な関係があるとされる。
【0003】
HLA遺伝子の代表的な特徴は以下のようである。第一に、HLA遺伝子は数十個を超える対立遺伝子を有するため、人体の数多い遺伝標識子(genetic marker
)中でも、最も高い遺伝的多型性(genetic polymorphism)を現わす。第二に、半数体型(haplotype)レベルにおける遺伝象である。HLA遺伝子群に属する多くの遺伝子は第6染色体上で極めて接近して位置するため、親から子に遺伝される際に一つの単位に纏められて遺伝され、このような対立遺伝子における特定の組み合わせをHLA半数体型と称する。第三に、人種間のHLA遺伝的多型性を挙げることができる。HLA対立遺伝子の分布は、他の遺伝子に比べ各人種間で著しく大きい差異を示している。このような様相はHLA半数体型において一層の人種間差異を示している。種族によってあるHLA遺伝子は強い連鎖不均衡(linkage disequilib
rium)を示すため、特定種のHLA半数体型はある人種に特徴的に存在するようにな
る。このようなHLAの遺伝的多型性現象により、種族間でHLA遺伝子の遺伝子型頻度(gene frequency)と半数体型頻度(haplotype frequen
cy)とが異なるため、人種間の遺伝的背景の相違を研究する強力なマーカーとして用い
られる。第四にHLA遺伝子のさらに他の重要な機能は、免疫反応に関係することである。免疫反応は、HLA‐class I分子とclass II分子が細胞内で抗原と結合し
た後に細胞表面に提示され、Tリンパ球の表面にあるT細胞抗原受容体がHLA分子に結合された抗原を認識することによって発現される。
【0004】
このようにHLA遺伝子の高い遺伝的多型性と免疫反応に深く関与する特性のために、臓器移植、疾病との関連性、輸血、親子鑑定といった法医学的応用および人類学的研究に至るまで広く応用されている。現在、腎臓および骨髄の移植プログラムにおいてはHLA検査が必須である。提供者と受与者についてABO血液型検査、HLA‐A、‐B、‐Cw、およびDR型検査を実施し、移植する前に交差適合試験を施す。もし、骨髄、腎臓などを移植する際に提供者と受与者間のHLA型が互いに異なる場合、移植された臓器に対する拒絶反応が生じるであろう。通常、骨髄移植は免疫細胞の移植であるために、患者と提供者間に完璧な遺伝的一致が要求され、移植する際には、受与者と同一タイプのHLAを有する提供者を予め選別しなければならないということが重要である。特に、急性もしくは慢性の白血病や免疫不全、または再生不良性貧血などにおいて試みられる骨髄移植に
おいては、HLA遺伝子型が完全に一致しなければならない。このため骨髄提供者としては同一のHLAタイプを遺伝的に受け継ぐ兄弟または姉妹が最も適合する。しかし家族がいない場合には、血縁関係のない人々の中で提供する人を探さなければならない。このとき多くの人について検査し、HLA遺伝子型を同定することが必須的に要求される。
【0005】
分子生物学の進歩によりHLA抗原を支配する対立遺伝子の塩基配列が詳しく明らかになるにつれて、塩基配列の相違を通じてHLAの多様性を見出すことができるHLA遺伝子解析が可能となった。特に、PCR法の導入によりHLAのDNAタイピング分野は急速に発展し、HLA抗原の多型性がDNAレベルでほとんど明らかになっている。PCR法を用いるHLA対立遺伝子の類別には、HLA分子の細胞表面での発現量に関係なくすべての有核細胞をサンプルとすることができるために、Tリンパ球とBリンパ球の分離が必要なく、リンパ球が含まれていない体液、組織などにおいても遺伝子型の解析が可能であるという利点がある。また、DNAは比較的安定した分子であるために、冷蔵保管すれば数ヶ月、冷凍保管すればほとんど永久的に保管することができる。DNAタイピング方法が有している多くの有利な点の中で最も重要な利点は、多数のHLA対立遺伝子の類別が可能であるということである。
【0006】
現在、一般に用いられているHLA DNAタイピング手法を見てみると、まずPCR
‐SSP法がある。この手法は、各対立遺伝子の塩基配列に特異なプライマーを合成してPCRを実施することから、数十個の対立遺伝子を判別するためには数十対のプライマーが必要となる。この方法は分析時間が短く簡便な方法であるが、そうしたプライマーを合成する際には細心な注意と知識および時間が要求されるため、大量の検体分析には限界がある。加えて対立遺伝子が多いほどPCR‐SSPの数も多くなるため、多数の検体を一度に扱うのは難しいという欠点がある。第二のPCR‐RFLP法を用いたHLA遺伝子型の類別は、対立遺伝子の制限酵素に対する反応形態を調べる比較的単純な方法であり、様々な制限酵素によって切断されたDNA断片の大きさで対立遺伝子型を類別する。この方法は結果の判定が易しく方法も簡単ではあるが、制限酵素が認識できる部位が限定された場合に判別が困難となり、ポリアクリルアミドゲルを使用しなければならないため、大量の検体や数十個の対立遺伝子を同時に類別することは難しい。このため対立遺伝子の数が少ない遺伝子型の類別に適した方法である。第三の方法としてPCR‐SSCP法は、PCR産物をホルムアミド(formamide)などの変性剤を添加して一本鎖DNA(ssDNA)に変性させた後に、非変性ポリアクリルアミドゲルで電気泳動する方法である。電気泳動においてssDNAは、その塩基配列に基づく特有の構造を有し、電気泳動中に固有の移動速度を示してそれぞれ異なるタイプのバンドを形成する。このような性質を利用してHLA遺伝子型を類別する方法であって、複雑かつ難易度の高い技術が必要であり、その結果の解析にも経験と知識が必要とされる。第四として配列依拠のタイピング法は、HLA遺伝子についてそれぞれPCRした後にDNAの塩基配列を決定して調べることである。この方法を利用したキットとしては、ABI社(米国)のHLA Sequence Based Typing(SBT)があるが、キットの価格が非常に高く、高
価な装置も必要であり、実験過程も複雑である。第五のPCR‐SSOP法は、遺伝的多型性を示す領域の塩基配列に相補的なプローブを合成し、該プローブとPCR増幅産物とのハイブリダイゼーションについての可否を分析する方法である。これは数多くのプローブが必要であり、塩基配列が類似している他の対立遺伝子とハイブリダイゼーション反応が起き易いために、その適切な温度と反応条件の設定などに経験と技術が要求される方法である。この方法は、プローブの種類によっては正確な結果を得ることができるが、フィルターを使用するために多数のプローブを固定するに限界がある。一つのフィルターで一つのタイプのみを分析できるだけであるから、多くの検体を処理して分析するのに時間と手間が多く消耗される。この方法を用いて商用化されている商品としては、HLA cl
assIとclass IIに対して各々のSSOPを用いて逆ハイブリダイゼーション(reverse hybridization)するラインプローブ・アッセイ(line
probe assay)方法である、INNOGENETICS社(ベルギー)のIN
NO LiPA キットとDYNAL Biotech社(米国)のDynal RELITM SSO HLA Typing キットがある。
【0007】
上述したようにHLA遺伝子を分析するために様々なタイピング方法が用いられており商品化もされているが、これらの方法の共通した欠点は、HLA‐A、‐B、‐Cw、‐DRを同時にタイピングするには極めて多い時間と労動力が要求され、特に大量の検体を分析するにはさらに難しいという点である。
【0008】
ごく最近、微小な大きさのスライドグラスやシリコンなどの基板上に非常に少ない量のDNAを高密度で付着させることができ、また、同時に多数を検索することができるDNAチップ技術を通じて、遺伝子発現分析、遺伝子診断、遺伝子の突然変異検索、医薬品の検査および疾病診断などに使用することができる新しい次元の分析システムが開発された。本発明は、このDNAチップの技術を用いてHLA‐A、‐B、‐Cw、‐DRを一つのスライド上で同時に分析することで可能である。即ち、一つのアルデヒドガラススライド(aldehyde glass slide)上で、5つの区域に各々のプローブを集積させる。スライド上に集積されたこのプローブ類と非対称PCR法を用いて増幅させたHLA遺伝子とをハイブリダイズさせる。反応が現われたプローブをHLAタイピングプログラムを用いて調べることによってHLA遺伝子型を類別する。
【0009】
本発明は上記方法の問題点を解決し、上述の必要性に応じて案出されたものである。本発明の目的は、HLA遺伝子型を解析するための組成物を含むオリゴヌクレオチド組成物を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、上記組成物を用いてHLA遺伝子型を分析する改善された方法を提供することである。
上記の目的を果たすために、本発明は、配列情報1から配列情報41に示される塩基配列からなる群より選択されるプローブであって、HLA‐A遺伝子型を決定するための二つ以上のプローブからなる群;配列情報42から配列情報89に示される塩基配列からなる群より選択されるプローブであって、HLA‐B遺伝子型を決定するための二つ以上のプローブからなる群;配列情報90から配列情報112に示される塩基配列からなる群より選択されるプローブであって、HLA‐Cw遺伝子型を決定するための二つ以上のプローブからなる群;および配列情報113から配列情報140に示される塩基配列からなる群より選択されるプローブであって、HLA‐DR遺伝子型を決定するための二つ以上のプローブからなる群で構成されるグループより選択された一つ以上のプローブ群を含む、HLA遺伝子型を決定するための複数のオリゴヌクレオチドプローブを有する組成物を提供する。
【0011】
また本発明は、
配列情報1から配列情報41に示される塩基配列からなる群より選択されるプローブであって、HLA‐A遺伝子型を決定するための二つ以上のプローブからなる群;配列情報42から配列情報89に示される塩基配列からなる群より選択されるプローブであって、HLA‐B遺伝子型を決定するための二つ以上のプローブからなる群;配列情報90から配列情報112に示される塩基配列からなる群より選択されるプローブであって、HLA‐Cw遺伝子型を決定するための二つ以上のプローブからなる群;および配列情報113から配列情報140に示される塩基配列に示される塩基配列からなる群より選択されるプローブであって、HLA‐DR遺伝子型を決定するための二つ以上のプローブからなる群で構成されるグループより選択された一つ以上のプローブ群を含む、HLA遺伝子型を決定するための複数のオリゴヌクレオチドプローブを有する組成物がその上に固定化されている試験支持体(test support)を提供する。
【0012】
本発明の前記支持体は、フィルター、ストリップ、マイクロスフェア(microsphere)、チップ、スライド、マルチウェルプレート(multi well plate)、メンブレン(membrane)および光ファイバーからなる群より選択される支持体であることが望ましい。
【0013】
また本発明は、配列情報141から配列情報157に示される塩基配列からなる群より選択された、一つ以上のHLA遺伝子型を決定するためのプライマーを含み、これが上記のプローブと目的遺伝子との間のハイブリダイゼーション反応を検出するのに用いられることを特徴とするプライマーである。
【0014】
本発明のプライマーの中で、配列情報142、144、146、148、150、152または154に示されるアンチセンス(antisense)プライマーの好ましい例は、ビオチン(biotin)またはローダミン(rhodamine)が付着されたことを特徴とするプライマーであり、これらのプライマーの中でビオチンが付着されたアンチセンスプライマーは、ストレプトアビジン‐シアニン(Streptavidin‐Cyanine)と相互作用することを特徴とする。
【0015】
また本発明は、
a)血液、細胞および組織よりHLA DNAを調製する段階;
b)調製したDNAを用いて非対称PCRを実施する段階;
c)上記の非対称PCRの産物と第1項または第2項のプローブとを結合させる段階;および
d)上記の結合を確認する段階;
を含むHLA遺伝子型の分析方法を提供する。
【0016】
本発明において、上記の確認段階は、ローダミンを用いたり、ビオチンと結合するストレプトアビジン‐シアニンを用い、マイクロアレイスキャナを用いて結果を確認し、HLAタイピングプログラムを用いて分析することによって、HLA遺伝子型を便利に確認することを特徴とする。本発明においては、最近開発されたDNAマイクロアレイ技術を用いて一つのスライド上でHLA‐A、‐B、Cw、DRを同時に分析することができるHLAオリゴヌクレオチドチップを開発した。すなわちHLA遺伝子型を決定するために、HLA‐Aの21タイプと特異的に反応することができる38個のオリゴヌクレオチド、HLA‐Bの36タイプと特異的に反応することができる46個のオリゴヌクレオチド、HLA‐Cwの14タイプと特異的に反応することができる20個のオリゴヌクレオチド、HLA‐DRB1/3/4/5の16タイプと特異的に反応することができる22個のオリゴヌクレオチド、HLA‐DRB1のB1*3、*8、*11、*12、*13、*14、*15および*16なる8タイプと特異的に反応することができる17個のオリゴヌクレオチドを作製し、これらを一枚のアルデヒドガラス・スライド上の5区域に集積させた。非対称PCR法を利用して増幅させたHLA遺伝子を該スライドに集積させたオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイゼーション反応させた。これを蛍光反応法の利用により反応が現われたプローブを分析して総HLAに対する87個の遺伝子型を類別した。
【0017】
図1は、HLAオリゴヌクレオチドチップのスライド全体を示す写真である。すなわち一枚のスライド上でHLA‐A、‐B、‐Cw、‐DRB遺伝子型を同時に分析するために、表示された数字により指定される5個の「チャンバ(chamber)」で構成されている。
【0018】
このスライド上には表に示されるように、HLA‐A遺伝子型を類別するための38個
のプローブ、陽性コントロール(positive control)として用いられる
2個のプローブと陰性コントロール(negative control)として用いら
れる1個のプローブ、HLA‐B遺伝子型を類別するための46個のプローブと陽性コントロールおよび陰性コントロールとして用いられる各々1個のプローブ、HLA‐Cw遺伝子型を類別するための20個のプローブと陽性コントロールとして用いられる2個のプローブと陰性コントロールとして用いられる1個のプローブ、HLA‐DRB1/3/4/5遺伝子型を類別するための22個のプローブと陰性コントロールおよび陽性コントロールとして用いられる各々1個のプローブ、HLA‐DRB1/3/4/5遺伝子型を類別するプローブがDRB3/4/5遺伝子型により影響を受けるためにHLA‐DRB1遺伝子型の分析が一部曖昧となる点を補ってHLA‐DRB1の遺伝子型類別の判別能力を向上させるための17個のプローブと陰性コントロールおよび陽性コントロールとして用いられる各々1個のプローブを、総数155個のプローブとして各遺伝子群を区分して二重に固定化した。
【0019】
そして、このプローブ上にCoverwell Perfusion Chamber(SIGMA、米国)を付着し、各遺伝子群を判別するプローブを別々に混合、反応させる
ことができるように分離させてHLAオリゴヌクレオチドチップを作製した。
【0020】
図2から図6までは、HLAオリゴヌクレオチドチップのHLA‐A*11/*31、B*27、Cw*06、DRB1*01/*11/DRB3タイプに関する蛍光反応の結果を示す写真であり、図1のスライドにおける5個のチャンバで起こった反応をイメージ拡大したものである。
【0021】
PCRおよびハイブリダイゼーション反応の際には蛍光性のプライマーおよびプローブを用い、それらの結果の解析にはGenePiX4000スキャナ(Axon inst
ruments社、米国)を用いて、蛍光を示すプローブの種類を、HLAタイピングプ
ログラムを用いてHLA遺伝子型を分析した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を限定的に解されるべきでない実施例を通じて、さらに説明する。これらの実施例は単に本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されるものと解釈されないのは当業界における通常の知識を持つ者にとっては自明であろう。
【実施例1】
【0023】
HLAプライマーの合成およびその塩基配列
HLA PCRプライマーは、表1に示したようにHLA‐A、‐B、‐Cwはエクソ
ン(exon)2番と3番で、HLA‐DRB1/3/4/5はエクソン2番で共通して反応できる部位を、HLA‐DRB1はエクソン2番でB1*3、*8、*11、*12、*13、*14、*15、*16のような8種の特定遺伝子型のみを特異的に増幅できる部位を分析することにより非対称PCRにおいて用いた。
【0024】
非対称PCRに用いるアンチセンスプライマーの5'末端に、ハイブリダイゼーション
反応後に蛍光反応によって確認できるようにローダミンを付着させ、あるいはハイブリダイゼーション反応後にストレプトアビジン‐シアニンと結合するようにビオチンが付着された。ここで用いたプライマーは、ドイツのMetabion社に依頼し、Molecular cloning 3版(SambrookとRusell,Cold Sprin
g Harbor Laboratory Press,New York,USA,2001年)の10.42に記載されたオリゴヌクレオチド合成方法を用いて合成された。
【0025】
【表1−1】

【0026】
【表1−2】

【実施例2】
【0027】
HLA DNAの抽出と非対称PCR反応
1)HLA DNAは、Gentra systems社のPUREGENETM DNA isolation kitを用いて単離した。RBC lysis solution,900μlと血液300μlとを混ぜて、常温で1分間、10回程度振盪させながら反応さ
せた後、13,000rpmで20秒間遠心分離し、上澄液を20μlくらい残して除去
した。
【0028】
2)残っている上澄液を、10秒間ボーテクス(vortex)して白血球細胞を再浮遊させた後、cell lysis solution 300μlを加えた後、ピペット
で細胞を溶解させた。
【0029】
3)細胞が溶解された溶液にタンパク質沈澱溶液100μlを加え、20秒間ボーテクスして混ぜた後、13,000rpmで1分間遠心分離した。
4)DNAが含まれている上澄液を100% イソプロパノールと混ぜた後、チューブ
を50回振盪して混合し、次いで13,000rpmで1分間遠心分離した。
【0030】
5)上澄液を捨ててから70% エタノール300μlでペレットを洗浄し、13,000rpmで1分間遠心分離した。
6)上澄液を捨ててペレットを乾燥させた後、DNA hydration solution,100μlでペレットを再浮遊(resuspend)した。
【0031】
7)表2のような方法で非対称PCR反応を、GeneAmp PCR system
9600 thermal cycler(Perkin ElmerCetus社、米国)で実施した。
【0032】
8)非対称PCRが終了した産物5μlに、ゲルローディングバッファー(0.25% ブロモフェノール ブルー(bromophenol blue),0.25% キシレンシアノール(xylene cyanol) FF,15% フィコール(Ficoll)4
00)1μlを加えて混合した。1μg/ml 臭化エチジウム(EtBr)を含有する2
% アガロースゲルで電気泳動を行なった。PCRバンドを、UV transilluminatorが装着されたイメージアナライザ(Vilber Lourmat社、フラ
ンス)で確認した。
【0033】
【表2】

【実施例3】
【0034】
HLAオリゴヌクレオチドチップを作製するためにプローブの合成およびその塩基配列
アルデヒドガラス(aldehyde glass)上に共有結合させるためにすべてのプローブの各5'末端にアミノリンクを付着させ、ハイブリダイゼーション反応を容易
にするために10〜20個のオリゴ(dT)を付着した後、表3に示す塩基配列をAmi
no link‐Oligo(dT)1020に付着させた。つまり「Amino link
‐Oligo(dT)1020‐プローブ塩基配列」の順からなるプライマーを、ドイツの
Metabion社に依頼して合成した。このとき同定されたHLA遺伝子型の塩基配列は、表3に示したようにHLA‐Aは21種、HLA‐Bは36種、HLA‐Cwは14種、およびHLA‐DRは16種の遺伝子を分析することにより決定した。
【0035】
表4から7に示される塩基配列において、中央に大文字で表記された塩基配列が最も重要な部分である。これを中心として約13bpから30bpの大きさにしたプライマーを、Tm値とGC%を考慮し約60〜65℃となるように合成した。
【0036】
【表3】

【0037】
【表4−1】

【0038】
【表4−2】

【0039】
【表4−3】

【0040】
【表4−4】

【0041】
【表4−5】

【0042】
【表5−1】

【0043】
【表5−2】

【0044】
【表5−3】

【0045】
【表5−4】

【0046】
【表5−5】

【0047】
【表5−6】

【0048】
【表5−7】

【0049】
【表6−1】

【0050】
【表6−2】

【0051】
【表6−3】

【0052】
【表7−1】

【0053】
【表7−2】

【0054】
【表7−3】

【0055】
【表8−1】

【0056】
【表8−2】

【0057】
【表8−3】

【実施例4】
【0058】
HLAオリゴヌクレオチドチップの作製
1)オリゴヌクレオチドチップを作製するために、Nuricell社(大韓民国)またはCell社(米国)のアルデヒドガラス・スライドを使用した。アミノ基が付着され
ているプローブ,100pmole/μlと同量の3X SSCとをよく混合してスライド上に固定し、16時間室温で反応させた。次に該スライドを0.2% SDSで5分間2回洗浄してから、蒸溜水で5分間2回洗浄した。次いで該スライドは95℃に加熱された蒸溜水で2分間1回洗浄した後、蒸溜水を用いて5分間1回室温で洗浄した。
【0059】
2)水素化ホウ素ナトリウム(1.3g NaBH4、375ml PBS、125ml
100% EtOH)に上記スライドを5分間反応させた後、0.2% SDSで1分間3回洗浄し、蒸溜水で1分間2回洗浄した後に室温で乾燥させた。
【0060】
3)5個のHLA PCR反応物を分離して反応させるために、SIGMA社のCov
erwell Perfusion Chamberを上記スライドに付着させて、チャンバ(Chamber)を分離させた。このように完成したHLAオリゴヌクレオチドチップは、使用前まで室温の暗所で保管した。
【実施例5】
【0061】
HLA PCR産物とのハイブリダイゼーション反応
1)ローダミンまたはビオチンが結合したHLA PCR産物と、ハイブリダイゼーシ
ョン溶液(3X SSC、0.3% SDS)とを1:9の割合で混合した。蛍光反応を起こ
すためにビオチンを用いた場合には、ストレプトアビジン‐シアニンを1μg/ml濃度
で添加して反応させた。
【0062】
2)チャンバを覆ったまま90μlのハイブリダイゼーションバッファーをスライド上のチャンバに滴下し、62℃で1時間反応させた。
3)前記スライドを1X SSCを用いて室温で5分間洗浄し、次いで0.1X SSC
で2分間洗浄してから室温で乾燥させた。
【0063】
4)結果の確認
スキャナ(GenePiX4000、Axon instruments、米国)を使用し、蛍光を示すプローブを本発明者が開発したHLAタイピングプログラムを用いてHLA遺伝子型を解析した。
【0064】
表4から7に示される塩基配列において、中央に大文字で表記された塩基配列が最も重要な部分であって、これを中心として約13bpから30bpの大きさにしたプライマーを、Tm値とGC%を考慮して60〜65℃となるように合成した。
【0065】
その結果を図2〜図6に示した。これらの図においては、PCRとハイブリダイゼーション反応の際に蛍光性のプライマーおよびプローブを用い、結果の解析には、GenePiX4000スキャナ(Axon instruments社、米国)を使用して蛍光を示すプローブを本発明者が開発したHLAタイピングプログラムを用いてHLA遺伝子型を解析した。
【0066】
HLAタイピングプログラムは、本発明のHLAオリゴヌクレオチドチップの各「チャンバ」に位置したプローブの結果を分析して、適切に正規化する(normalization)方法を生みだす。該プログラムは陰陽性(positive and negative)を判別することができる境界値のような概念を取り入れた中間帯(intermediate zone)を生じる。その境界値を基準として各プローブの陰陽性が判別
される。プローブの陰陽性形態(positivity and negativity)をプログラム内に格納された陰陽性形態の対照表と比べることにより一致するHLA遺伝子型を調べることができるように開発した。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明ではHLA遺伝子を解析してHLA‐A、‐B、‐Cw、‐DR遺伝子型を診断するオリゴヌクレオチドチップが開発された。これを用いたHLA遺伝子型の分析は、既存の商品化されているキットに比べて、人件費、材料費および時間が著しく節減できる。すなわち既存の検査方法およびキットは、HLA タイピングにおいてHLA‐A、‐B
、‐Cw、‐DR遺伝子型を同時に分析することができないため、それぞれ別途で試験を行わなければならないという煩雑さがあったが、本発明のHLA DNA チップを用いれば一回の実験でHLA‐A、‐B、‐Cw、‐DR遺伝子型がすべて判別されるだけでなく、HLA対立遺伝子の数が多くなってもプローブをスライド上に高密度で固定化するため、一つのスライドだけでも充分である。さらに本発明方法は蛍光物質を使用するものであるため、発色工程が要らないだけでなく、従来方法の試験で必要とされる段階、すなわち洗浄、発色反応などが省略されるため、結果を見るまでの時間が非常に短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、HLAオリゴヌクレオチドチップのスライド全体を示す写真である。
【図2−a】図2aは、HLA‐A*11型とHLA‐A*31型とを同時に有する試料に対する、HLAオリゴヌクレオチドチップの蛍光反応の結果を示す写真である。41個のプローブの中で表4の「反応HLA型」に示されるように、A*11型に関連した13番、14番、15番、17番、18番、23番、29番、30番、33番のプローブと、A*31型に関連した11番、13番、15番、18番、21番、25番、26番、29番、32番、39番、40番のプローブについて同時に陽性反応が起きたものである。また、プローブ01番と41番は陽性コントロールとしてすべての反応で現われるようにし、ならびにプローブ06番は陰性コントロールとしていずれの反応でも現われないようにすることによって、実験の正確性を確認することができる。それぞれ2個の同一の点が現われるようにしたのは、間違いを減らし正確を期するために同一プローブを二重に固定化したためである。
【図2−b】図2bは、スライド上に固定化したプローブの位置を示したものである。
【図3−a】図3aは、HLA‐B*27型を有する試料に対する、HLAオリゴヌクレオチドチップの蛍光反応の結果を示す。48個のプローブの中で表5の「反応HLA型」に示されるように、B*27型に関連した09番、12番、21番、30番、31番、32番、36番、37番、42番、47番のプローブに陽性反応が起きた。また、プローブ01番は陽性コントロールとしてすべての反応で現われるようにし、ならびにプローブ06番は陰性コントロールとしていずれの反応でも現われないようにすることによって、実験の正確性を確認することができる。それぞれ2個の同一の点が現われるようにしたのは、間違いを減らし正確を期するために同一プローブを二重に固定化したためである。
【図3−b】図3bは、スライド上に固定化したプローブの位置を示したものである。
【図4−a】図4aは、HLA‐Cw*06を有する試料に対する、HLAオリゴヌクレオチドチップの蛍光反応の結果を示す。23個のプローブの中で表6の「反応HLA型」に示されるように、Cw*06と関連した06番、08番、13番、17番のプローブに陽性反応が起きた。また、プローブ01番と23番は陽性コントロールとしてすべての反応で現われるようにし、ならびにプローブ04番は陰性コントロールとしていずれの反応でも現われないようにすることによって、実験の正確性を確認することができる。それぞれ2個の同一の点が現われるようにしたのは、間違いを減らし正確を期するために同一プローブを二重に固定化したためである。
【図4−b】図4bは、スライド上に固定化したプローブの位置を示したものである。
【図5−a】図5aは、HLA‐DRB1*01タイプとHLA‐DRB1*11タイプを同時に有する試料に対する、HLAオリゴヌクレオチドチップの蛍光反応の結果を示す写真である。41個のプローブの中で表7の「反応HLA型」に示されるように、DRB1*01型に関連した07番、10番プローブと、DRB1*11型に関連した04番、10番、13番、16番プローブと、DRB1*11型とともに遺伝されるDRB3型に関連した16番、24番プローブに同時に陽性反応が起きた。また、プローブ01番は陽性コントロールとしてすべての反応で現われるようにし、ならびにプローブ05番は陰性コントロールとしていずれの反応でも現われないようにすることによって、実験の正確性を確認することができる。それぞれ2個の同一の点が現われるようにしたのは、間違いを減らし正確を期するために同一プローブを二重に固定化したためである。
【図5−b】図5bは、スライド上に固定化したプローブの位置を示したものである。
【図6−a】図6aは、HLA‐DRB1*01タイプとHLA‐DRB1*11タイプとを同時に有する試料に対する、HLAオリゴヌクレオチドチップの蛍光反応の結果を示す。19個のプローブの中で表8の「反応HLA型」に示されるように、選択的に増幅されるDRB1*11型に関連した07番、10番、13番のプローブに同時に陽性反応が起きた。また、プローブ01番は陽性コントロールとしてすべての反応で現われるようにし、ならびにプローブ04番は陰性コントロールとしていずれの反応でも現われないようにすることによって、実験の正確性を確認することができる。それぞれ2個の同一の点が現われるようにしたのは、間違いを減らし正確を期するために同一プローブを二重に固定化したためである。
【図6−b】図6bは、スライド上に固定化したプローブの位置を示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列情報1から配列情報41に示される塩基配列からなる群より選択されるプローブであって、HLA‐A遺伝子型を決定するための二つ以上のプローブからなる群;配列情報42から配列情報89に示される塩基配列からなる群より選択されるプローブであって、HLA‐B遺伝子型を決定するための二つ以上のプローブからなる群;配列情報90から配列情報112に示される塩基配列からなる群より選択されるプローブであって、HLA‐Cw遺伝子型を決定するための二つ以上のプローブからなる群;および配列情報113から配列情報140に示される塩基配列からなる群より選択されるプローブであって、HLA‐DR遺伝子型を決定するための二つ以上のプローブからなる群で構成されるグループより選択された一つ以上のプローブ群を含む、HLA遺伝子型を決定するための複数のオリゴヌクレオチドプローブを有する組成物。
【請求項2】
請求項1のプローブ組成物および該組成物が固定化される支持体とを含む試験支持体。
【請求項3】
前記支持体が、フィルター、ストリップ、マイクロスフェア、チップ、スライド、マルチウェルプレート、メンブレンおよび光ファイバーからなる群より選択されることを特徴とする、請求項2に記載の支持体。
【請求項4】
請求項1または請求項2のプローブと目的遺伝子との間のハイブリダイゼーション反応を検出するために用いられる、配列情報141から配列情報157に示される塩基配列からなる群より一つ以上を選択された、HLA遺伝子型を決定するためのプライマー。
【請求項5】
上記のプライマーの中で、配列情報142、144、146、148、150、152または154に示される塩基配列からなる群より選択されるアンチセンスプライマーは、ビオチンまたはローダミンが付着されていることを特徴とする請求項4に記載のプライマー。
【請求項6】
上記のプライマーの中でビオチンが付着されたアンチセンスプライマーはストレプトアビジン‐シアニンと相互作用することを特徴とする請求項5に記載のプライマー。
【請求項7】
a)血液、細胞および組織からHLA DNAを調製する段階;
b)調製したDNAを用いて非対称PCRを実施する段階;
c)上記の非対称PCR産物と請求項1または請求項2のプローブとを結合させる段階;
d)上記の結合を確認する段階;および
e)確認された結合を、HLAタイピングプログラムを用いてHLA遺伝子型を分析する段階;
を含むHLA遺伝子型の分析方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【公表番号】特表2007−530031(P2007−530031A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504865(P2007−504865)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【国際出願番号】PCT/KR2004/001516
【国際公開番号】WO2005/090605
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(506323201)バイオコア カンパニー リミテッド (1)
【出願人】(506323212)ジェノチェック カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】