説明

HfO2を含むPd/Auシェル触媒、生成プロセス、およびその使用

本発明は、酢酸ビニルモノマーの生成のためのシェル触媒に関し、外殻を備えた酸化多孔質触媒担体を備え、金属PdおよびAuを含み、その中の、多孔質触媒担体の骨格構造はハフニウム酸化物ユニットを含む。このシェル触媒はVAM生成に適しており、比較的高い活性とVAM選択性と、比較的長期間にわたってこの活性と選択性を維持することを特徴とする。さらには、本発明はこのシェル触媒の生成プロセスにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酢酸ビニルモノマー(VAM)の生成のためのシェル触媒であって、ハフニウム酸化物(hafnium oxide)ユニットを含む酸化多孔質触媒担体からなり、前記担体が金属PdおよびAuを担持する外殻を備えているシェル触媒、およびその生成に関する。
【0002】
VAMは、プラスティックポリマーの生成における重要なモノマー構成単位である。
VAMを使用する主な分野は、特に、ポリビニル酢酸(polyvinyl acetate)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、およびポリビニルアセタール(polyvinyl acetal)および、例えば、以下のような、エチレン、塩化ビニル、アクリレート、マレイネート(maleinate)、フマラート(fumarate)、ビニルラウレート(vinyl lAurate)などの他のモノマーとのこれらの共重合および三元重合体(co− and terpolymerization)の生成分野である。
【0003】
VAMは、主に、ガス雰囲気下で、酢酸とエチレンの酸化反応から生成される。
この生成のためには触媒が使用されるが、この触媒は、触媒活性金属として、およびプロモーターとしてのアルカリ金属成分として、Pd(パラジウム)とAu(金)を、好ましくは酢酸塩の形のカリウムを含んでいることが好ましい。この触媒活性金属のPdとAuは、おそらくそれぞれ純金属粒子の形ではなく、異なる組成のPd/Au合金粒子の形であると推測されるが、非合金粒子を除外することはできない。
【0004】
現在、VAMはいわゆるシェル触媒を使用して生成されているが、そのシェル触媒中の触媒活性金属は、成形体(shaped body)として形成された触媒担体を有し、且つ全成形体の中に完全には存在せずに、大なり小なりの外側の表面領域にのみ含まれている(EP565952A1、EP634214A1、EP634209A1およびEP634208A1を参照のこと。)。
担体が存在する領域よりもさらに奥の領域には、ほとんど触媒活性金属が存在しない。
シェル触媒の助けによって、触媒活性金属がコア中に含浸されている(impregnated through)担体をもつ触媒よりも、多くの場合より選択的な反応制御が可能となる。
【0005】
VAMの生成プロセスの先行技術から知られているシェル触媒は、例えば、シリコン酸化物、アルミニウム酸化物、アルミノケイ酸塩、チタン酸化物、またはジルコニウム酸化物をベースとする触媒担体を持つものがある(EP839793A1、WO1998/018553A1、WO2000/058008A1およびWO2005/061107 A1を参照のこと)。
しかしながら、チタン酸化物、またはジルコニウム酸化物をベースとする触媒担体は、これらの触媒担体は長期間酢酸耐性がなく比較的高価であるため、近年はほとんど使用されない。
【0006】
VAMの生成に現在使用されているほとんどの触媒は、成形体として形成された酸化多孔質触媒担体(oxidic porous catalyst support)上にPd/Auシェルを持つシェル触媒であり、例えば、多孔状の、アモルファスアルミナケイ酸塩の担体であって、天然酸処理か焼ベントナイトベースの球状のものがある。触媒担体は通常、いわゆるプロモーターとして、酢酸カリウムが全体に含浸されている
【0007】
このようなVAMシェル触媒は、通常、湿式化学的製法で生成されるが、そのプロセスでは触媒担体には、対応する金属前駆体化合物溶液が負荷される。
例えば、溶液中に浸すことで、または、初期の湿式方法(細孔含浸プロセス(pore−filling process)によって、担体には担体の細孔容積(pore volume)に対応する量の溶液が浸漬によって含浸される。
【0008】
触媒のPd/Auシェルは、例えば次のようなプロセスで生成可能である。
第一スティーピング(steeping)によって、触媒担体が、第一ステップにおいて、触媒担体をパラジウム塩溶液、例えば、Na2PdCl4溶液など、の中におかれ、さらに、続く第二ステップで、NaOH溶液を適用することによって、パラジウム化合物をそのPd水酸化化合物の形で触媒担体上へ固定する。
さらに続く独立した第三ステップで触媒担体は金塩化物溶液、例えばNaAuCl4溶液などの、中へスティーピングされうる。そして、金化合物はNaOHを使用して同様に固定される。
触媒担体の外殻への貴金属化合物の固定化の後、負荷された触媒担体は、塩化物とナトリウムイオンがほぼない状態に洗浄され、乾燥されて、最後に、150℃のエチレンによって還元される。
形成されたPd/Auシェルは通常、約100μm〜500μmの厚みを有する。
【0009】
貴金属が負荷された触媒担体は、通常、固定及び/または還元ステップの後、酢酸カリウム(プロモーター)が負荷され、そこで、貴金属が負荷された外殻においてのみ酢酸カリウムの負荷が生じ、触媒担体は完全にプロモーターで含浸される。
自然的に生じる酸処理か焼ベントナイトをベースとし、約160m2/gのBET比表面積を持っているSud(uはウムラウト)−Chemie AG社の「KA−160」といわれる球状の担体を、例えば触媒担体として使用しうる。
【0010】
先端技術から知られているPd/Auシェル触媒を使用するVAM生成における選択率は、供給されたエチレンに対して約90モル%である、
そのうちの、残りの反応生成物の10モル%は(その反応生成物は)は、実質的にCO2からなり、そのCO2は、有機抽出物/生成物の完全酸化によって形成されたものである。
【0011】
このようなシェル触媒の活性を高める種々の可能性、特に、触媒担体のドーピング(doping)や、さらなるプロモーター金属が提案されてきた。
【0012】
従って、触媒担体の構成要素としてのTiO2の使用に加えて、追加のプロモーター金属化合物としてバリウム及びカドミウムを使用することがUS6849243B1において述べられている。
特に、ネオジウム、チタニウム、マグネシウム、ジルコニウム、イットリウム、プラセオジム、ランタノイド類およびルビジウム、およびそれらの二元性合金が、シェル触媒のシェル中の追加のプロモーター金属化合物としてUS2006/0135809A1に開示されている。
【0013】
さらに、VAM生成におけるMoVNbX触媒の使用が、US6605739から知られているが、ここでいうXはリン、ボロン、ハフニウム、テルルリウム、砒素、またはそれらの混合物をいう。
【0014】
EP1102635も、特に、シェル触媒のシェル中の、担体上に配された一またはそれ以上のハフニウム化合物を示している。その結果、触媒活性化合物は Pd/Au/HfO2の式に一致したものになる。
【0015】
特に、前記3つの文献のハフニウムをパラジウム及び金に加えて、シェル触媒のシェルに導入するというコンセプトは、特にハフニウム化合物の溶解性が不十分であるという理由で、効果がないと証明されていた。
【0016】
さらに、これらの触媒は、前記の純粋なPd/Auシェルを有する触媒と比較して、VAMの変換の意味における活性向上を示すものの、それらの活性は比較的短い期間のみ向上させられ、且つ最大になったあと再び急速に低下する、ということが認められてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明の課題は、新規なシェル触媒、特に、VAMの生成用、を提供することであり、そのシェル触媒は高い活性とVAM選択率、さらには、長期間にわたって活性と選択率の向上が維持できることを特徴としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この課題は、特に酢酸ビニルモノマー(VAM)の生成用のシェル触媒を提供することで解決された。
そのシェル触媒は、外殻を備えた酸化多孔質触媒担体であって、その外殻は、金属Pd及びAuを有し、その骨格構造が、ハフニウム酸化物ユニット(HfO2)を含む多孔質の触媒担体である。
【0019】
ここでいう、ハフニウム酸化物ユニット(HfO2)とは、個別の粒子状のハフニウム酸化物であって、例えば、か焼することで触媒担体の骨格構造に固く負荷しており、このような担体の骨格構造の不可欠な要素を構成する。
さらなる可能性として、特に好ましくは、本願発明によれば、例えば下記のように置き換えができる。
二酸化ケイ素、ハフニウム酸化物を有する担体材料に対応するアルミニウム酸化物あるいはZrO2ユニットのハフニウム酸化物ユニットへ置き換えることであり、これは骨格中のSiO4、AlO4またはZrO44面体構造体の代わりをなしうる。
また、これは骨格構造への化学結合を有するため、同様に、骨格構造の構成要素の一部となっている。
したがって、重要なのは、本願発明によれば、一または他の構造のHfO2は骨格構造の不可欠な要素である。
【0020】
骨格構造の置き換えは、当業者が公知の技術を用いてなしうるが、例えば、このような担体材料の直接合成や、例えば、アルミノケイ酸塩の場合のような固体イオン交換や液体イオン交換による方法などがある。
【発明の効果】
【0021】
先行技術において知られている担体上への(統合の)の代わりに、担体の骨格構造内への、あるいは担体の内部への、ハフニウム酸化物ユニットの統合によって、前記ハフニウム酸化物の添加の従来公知の不利益は回避される。
本発明の触媒は、先行技術から公知のハフニウム酸化物含有VAM触媒よりも高活性と高VAM選択性によって特徴づけられる。また、この活性と選択性を長期間にわたって維持する。
【0022】
この活性および選択性は、慣習的なVAM生成の条件に関連する。通常、VAM生成の反応は、45%酸素置換された装置中で行われ、VAMの空間回収率(the space−time yield (STY))が測定される(単位:VAM kg/触媒の量(リットル)/時間))。
【0023】
ハフニウムのドーピングは、本発明によれば、5%より大きい、好ましくは10%より大きいSTYの上昇をもたらす。
活性の優位性は、本発明によれば、比表面積の標的適用と、担体の空隙率(より小さい比表面積と、より大きい孔)によって、1%より大きい触媒の選択性の改良へとさらに変形されうる。
その規則は、HfO2のより多いドーピングが、担体の比表面積をより小さくすることになる。
典型的な値は、純粋なHfO2に対しては20から40m2/g(BET)であり、および、HfO2含有量(骨格へのドーピング)が0.01から50重量%、好ましくは0.01から25重量%である酸処理されたか焼層状ケイ酸塩に対しては、約60から120 m2/g(BET)である。
【0024】
本発明によれば、酸化多孔質触媒担体は、それ自体が均一な成形体としてすでに形成されることもあり、あるいは、多孔あるいは非孔の成形体、たとえば、ステアタイト、ベントナイト、アルミニウム酸化物など、や、酸化ジルコニウムやそれらの混合材料などのその他の適用可能な材料へ適用されることもある。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下において、「触媒」及び「シェル触媒」の語は、同意語として用いられる。
【0026】
ハフニウム酸化物ユニットは、触媒担体の骨格構造中に均一に分散されていることが好ましいが、骨格構造への不均一な分散もまた本発明に規定されている。
【0027】
前記の「均一に分散」という語によるところは、すでに述べたように、個々のハフニウム酸化物ユニットとして、多孔質触媒の構造中の形に応じた形状で個々の、あるいはグループのハフニウム酸化物ユニットが均一に分散されているもの、または、触媒担体の骨格構造中に均一に分散されているハフニウム酸化物粒子の両方を意味する。
言い換えれば、後者の意味は、触媒担体の基本骨格は、酸化触媒多孔粒子とハフニウム酸化物ユニットがともにか焼された固体構造として形成される。
HfO2と共に骨格がドーピングされているZrO2の場合、本発明によれば好ましいHfO2−ZrO2混合酸化物が、しばしば形成される。
【0028】
「均一に分散」という表現は、必然的に多孔質触媒担体の内部のみ、あるいは、内部および表面が酸化物でカバーあるいはコーティングされている触媒担体、または、前記先行技術から公知のようなHfO2 が外殻のみに集中している触媒担体を排除する本発明に従って使用される。
このような触媒担体は、例えば、多孔酸化触媒担体成形体の表面を、対応する組成物に含浸し、そしてその組成物を対応する酸化物へ変換することで得られる。
【0029】
ハフニウム酸化物ユニットを含む触媒担体(言い換えると、ハフニウム酸化物がドープされた触媒担体)は例えば、以下のステップを有するプロセスによって得ることができる。
a) 粉状の酸化多孔担体材料を、粉状のハフニウム化合物および/またはハフニウム塩の水溶液あるいは液懸濁液と混合するステップ。
b)前記ステップa)で得られた混合物から成形体を形成するステップ。
c)前記ステップb)で得られた成形体をか焼するステップ。
【0030】
ハフニウム化合物は、すでにハフニウム酸化物になっているものを除き、好ましくはか焼の間に酸化物へ変換される。
好ましいハフニウム化合物としては、(NH42[HfF6]、HfCl4、HfO2、HfI3、HfCl3、HfCl2、HfOCl2、HfO(NO32、HfO(OAc)2、HfB5、K5[Hf(CN)5]、[Hf(bipy)3]、Hf(SO42、Na2HfO3、Na4HfO4などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
本発明によればシェル触媒の好ましい実施形態は、以下のようなものが提供される。
多孔酸化触媒担体は、以下のものを含み、あるいは以下のものから構成される。
シリコン酸化物、アルミニウム酸化物、アルミナケイ酸塩(例えばジオライト)、ジルコニウム酸化物、チタニウム酸化物、か焼酸処理ベントナイト、一般的な層状ケイ酸塩、または前記酸化物の二以上の混合物である。
純粋なジルコニウム酸化物およびか焼ベントナイト/層状ケイ酸塩は、20重量%まで含むことができる。ZrO2 が特に好ましい。
【0032】
特に好ましいのは、ハフニウム酸化物ユニットが触媒担体の基本骨格に、純触媒担体の重量に対して0.03から20重量%の割合で含まれている場合である。
ハフニウム酸化物ユニットが、触媒担体の基本骨格中に0.03重量%以下の割合で存在している場合、シェル触媒の活性を増加させるハフニウム酸化物の性能の効果は、本発明によればほんのわずかであり、さらに、25重量%を超える触媒活性の増加は、VAM選択性の明らかな低下に伴う。
【0033】
本発明によれば、触媒担体の比表面積の縮小化は、シェル触媒のVAM活性の増加を生じることが判明した。加えて、触媒担体の比表面積の縮小化は、相当のVAM選択性の低下なしに、Pd/Auシェルの選択された厚みの増加を可能とする。
【0034】
本発明による触媒の好ましい実施形態に従えば、触媒担体の特定の比表面積は160m2/g以下であり、好ましくは140m2/g未満、好ましくは135m2/g未満、さらに好ましくは80m2/g未満、特に好ましくは65m2/g未満である。
【0035】
触媒担体の「特定の比表面積」は、本発明の構成の範囲内では、触媒担体のBET表面積はDIN 66132に従う窒素吸着法によって決定される触媒担体のBET表面積を意味する。
【0036】
本発明によるシェル触媒のきわめて優れた改良によれば、触媒担体は、160から40 m2/gの範囲、好ましくは140と50 m2/gの間の範囲、さらに好ましくは120と50m2/gの間の範囲、特にきわめて好ましくは100と50m2/gの間の範囲の特定の比表面積を有する。
【0037】
本発明によれば、「触媒担体」は、前記材料およびそれらの混合物からなる成形体か、例えばウォッシュコートの形で多孔または非多孔の成形体に適用された層、すなわち、前記の材質またはそれらの混合物の水溶懸濁物のどちらかを意味し、同様に「シェル」を形成する。
機能的に本発明に従えば、「触媒担体」は、シェル触媒の一部であり、本発明によればそのシェル触媒は金属シェルPd/Au触媒を含む金属シェルを持つものである。
この場合、多孔性触媒担体材料からなる成形体を意味するかどうかは文脈から明らかである、
一方で、「触媒担体」は、触媒担体材料を含むまたは触媒担体材料からなるシェルと、該材料からなる成形体の両方について言及する。
【0038】
本発明の触媒の多孔質触媒担体成形体は、例えば、(非か焼の)粉状の酸処理ベントナイトを粉状鉄化合物および/または鉄溶液とさらに水とを共に粉砕し、そして均一になるまで完全に混合された酸化鉄がドープされたか焼酸処理ベントナイトに基づいて、形成されうる。
自然に発生するベントナイトも存在し、それらはすでに不純物として鉄を含み、付加的な鉄を添加することなしに、そこからより多くまたはより少ない量の鉄が、鉄がドープされた担体を形成するために酸によって除去されている。
その結果できた混合物は、それ自体は当業者においてよく知られた装置手段、例えば、押し出し成形器や錠剤成型器によって成形体を形成するために圧縮することを伴って形作られ、そして未処理の成形体はそこでか焼されて安定した成形体となる。
か焼は、固体構造が得られる温度でなされることが好ましく、選択的に、鉄化合物が鉄(III)酸化物へ変換される。
ドープされた触媒担体の特定の比表面積のサイズは、特に、使用されたベントナイト(未処理の)の質、使用されたベントナイトの酸処理のプロセスに依存する。
すなわち、例えば、ベントナイトに関連する性質および量、および、使用された無機酸の濃度、酸処理の時間および温度、モールド圧力、か焼時間および温度、およびか焼雰囲気、などである。
【0039】
酸処理ベントナイトは、ベントナイトを例えば、硫酸、リン酸、または塩酸などの強酸(Bronstedt)で処理することで得られる。
本発明の構成内で使用される用語「ベントナイト」は、Rompp Lexikon Chemie、Georg Thieme Verlag、10th editionによって定義される。
本発明の構成内で、ベントナイトとして特に好ましいものは、自然のアルミニウム含有の層状ケイ酸塩であって、主鉱物成分としてモンモリロナイトを含む(スメクタイトとして)ものである。
酸処理の後で、ベントナイトは通常水で洗浄され、乾燥されて粉状に粉砕される。
【0040】
本発明のシェル触媒は、通常、成形体の大多数をバッチ処理されることで形成されるが、個々のプロセスステップの間、成形体は、例えば、攪拌混合装置によってそれぞれ高い機械的負荷ストレスに支配される。
加えて、本発明の触媒は、反応装置へ充填されている間、強い機械的負荷ストレスに支配されうる。
それは、触媒担体、特に、外側のエリアにある触媒的活性シェルへのダストやダメージという望ましくない形の結果をもたらす。
【0041】
本発明の触媒の磨耗は、特に正当な制限の範囲に保たれるが、触媒担体はしたがって好ましくは硬度が20N以上であり、好ましくは25N以上、さらに好ましくは35N以上、もっとも好ましくは40N以上である。
この硬度は、本件では8M 錠剤硬度計(8M tablet−hardness testing machine、 Dr. Schleuniger Pharmatron AG 社製)を用いることによって、触媒を130℃、2時間で乾燥後、以下のような装置内へセットすることで、99個のシェル触媒の平均を決めることで、確認されている。
硬度: N
成形体からの距離: 5.00 mm
遅延時間: 0.80 s
フィード タイプ: 6 D
速度: 0.60 mm/s
【0042】
触媒担体の硬度は、たとえば、その生成の間のプロセスパラメタの変動によって影響されうる。パラメタとしては、例えば、担体の材料、及び、ハフニウム初期材料のタイプおよびその質の選択、対応する担体混合物から形成される未処理の成形体のか焼時間及び/またはか焼温度、または、個別の任意の導入材料、例えば、メチルセルロースまたはステアリン酸マグネシウムのような個別の任意の負荷材料、などがある。
【0043】
本発明の触媒は、従って、事実上の触媒担体としての成形体からなり、それは、好ましくは、対応するものとしてドーピングされたか焼酸処理ベントナイトまたは、ジルコニウム酸化物またはそれらの混合物をベースにした混合された酸化物をベースにしたものである。
【0044】
「ベースとする」という表現は、本件では、本発明の触媒はドープされた酸処理されたか焼ベントナイトからなる、ということを意味する。好ましいのは、酸処理されたか焼ベントナイトの比率は、ハフニウム酸化物ユニットを含む触媒担体の重さに対して、50重量%以上であり、より好ましいのは、60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上である。
【0045】
触媒担体の総細孔容積が増加すると、本発明のVAMの触媒選択性は上昇することが判明した。より好ましい本発明の触媒の実施形態に従えば、触媒担体は0.25ml/gより大きいBJHに従った総細孔容積を有し、好ましくは0.30ml/gより大きく、そしてもっとも好ましくは0.35ml/gより大きいことである。純ZrO2の場合は、比較として、0.2−0.4ml/gの細孔容積の範囲にある。
【0046】
触媒担体の総細孔容積は窒素吸収法によるBJH法に従って決定される。触媒担体の比表面積と、その総細孔容積は、BETまたはBJH法に従って決定される。
BET比表面積はDIN 66132によるBET法によって決定される。BTE法の公開は J.Am.Chem.Soc.60、309(1938)においても見られる。触媒担体または触媒の比表面積と総細孔容積を決定するために、サンプルは、例えば、ミクロメトリックス社のASAP2010タイプの自動窒素ポロジメーターで、吸着と脱着等温線が記録される方法によって測定される。
【0047】
BET法に従った触媒担体または触媒の比表面積と空隙率を決定するために、データはDIN66131に従って評価される。
空隙率は、BJH法(E.P.Barret, L.G.Joiner, P.P. Haienda, J.Am.Chem.Soc.73(1951、373)を使用したデータの測定から決定される。
濃縮能力の影響はこの方法を使用した時の評価にも考慮される。特定の孔サイズの範囲での細孔容積は、BJHに従った吸着等温線の評価から得られた増加細孔容積を合計することによって決定される。BJH法に従った総細孔容積は、径が1.7から300nmの孔に関係する。
【0048】
本発明のシェル触媒のさらに好ましい実施形態によるさらなる有利さは、触媒担体の吸水率が水の吸収による重量の増加として計算される、40−75%の場合、好ましくは50から70%の場合である。吸水率は、10gの担体サンプルを脱イオン水に、担体からの気泡が出なくなるまで30分間漬けて決定される。
余分な水はそこで別の容器へうつされ、そして浸漬サンプルはコットンのタオルでサンプルに負荷した水を吸い取られる。水分が導入された担体はそこで重さが測定され、以下のプロセスで給水率が測定される。
{(取り出した総重量(g)− 入れた総重量(g)}×10=給水率(%)
【0049】
触媒担体のBJHによる総細孔容積が0.25から0.7ml/gの範囲である場合、好ましくは0.3から0.55ml/gの範囲、きわめて好ましくは0.35から0.5ml/gの範囲である場合が有利である。
【0050】
本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%の触媒担体のBJHによる総細孔容積が、メソ細孔及びマクロ孔から形成されていることが好ましい。
これもよって、本発明の触媒、特にかなりの厚みのPd/Auシェルをもつもの、の拡散限界による影響をうけて活性が低下することを妨げる。
ミクロ細孔、メソ細孔及びマクロ孔による、とは、この場合は、径が1nm未満のもの、1から50nmのもの、および50nmより大きいものをそれぞれ意味する。
【0051】
小さい孔の拡散限界の観点からと同様に、本発明の触媒の実施形態によれば、触媒担体は8から50nmの平均孔径を有していることが好ましく、好ましくは9から20nm、さらに好ましくは10から50nmである。
【0052】
本発明の触媒は、好ましくは、0.4g/mlのかさ密度、好ましくは0.45g/ml、特に好ましくは、0.45と0.75g/mlの間のかさ密度である。
【0053】
本発明の触媒の十分な化学的安定性を確保するために、か焼酸処理ベントナイトを含む担体の場合、SiO2の含有量が未ドーピングのか焼酸処理ベントナイトの重量に対して、少なくとも65重量%、好ましくは80重量%、さらに好ましくは95から99.5重量%、であることが好ましい。
【0054】
酢酸及びエチレンからのVAM生成のガス相においては、か焼酸処理ベントナイト中のAl23 含有量はかなり低くなり、ほとんど不利益はないが、Al23の高含有は、圧入硬度における著しい減少を予想させる。
本発明の触媒の好ましい実施形態によれば、酸処理ベントナイトは従って、か焼酸処理ベントナイトの重量に対して10重量%より少ないAl23を含み、好ましくは0.1 から 3重量%、さらに好ましくは0.3から1.0 重量%のAl23を含む。
【0055】
触媒担体の活性は、酢酸とエチレンからのVAM生成のガス相の間、本発明の触媒の活性に有利に影響を及ぼす。
本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、触媒担体は、1と150μval/gの間のバイヤー酸性度(Bayer acidity)を有し、好ましくは5と130μval/gの間の、特に好ましくは10と100μval/gのバイヤー酸性度を有する。
【0056】
すでに前述したように、本発明の触媒の触媒担体は、好ましくはいわゆる成形体として存在する。触媒担体は、原理上は、詳細は下記に説明されている適用可能な触媒活性金属を含むシェルに対して、いくつかの幾何学的な形状をとると推定されうる。
しかしながら、好ましいのは、触媒担体が、球状、円筒状(円形端部表面を有する)、開口を有する円筒状(円形端部表面を有する)、三葉状(trilobe)、蓋で覆われた錠剤状(capped tablet)、四葉状(tetralobe)、リング状、ドーナツ状、星状、車輪状、逆車輪状(reverse cartwheel)、またはらせん状などであり、好ましくは、うねりのあるらせん状(ribbed strand)またはらせん状に連なった星状(star strand)である。
球状体は容易にシェルに供給しうるため、きわめて好ましい。
【0057】
本発明の触媒の触媒担体の直径または長さおよび厚みは、触媒が使用される反応チューブの形状によるが、好ましくは2から9mmである。触媒担体が球状に形成されている場合には、触媒担体の直径は、2mmより大きいことが好ましく、3mmより大きい直径であることが好ましく、4mmから9mmの直径が好ましい。
【0058】
通常、さらにPd/Auシェルの厚みが小さくなるにしたがって、触媒のVAM選択性は高くなる。さらに好ましい本発明の触媒の実施形態は、触媒のシェルは、従って、300μmより小さい厚みを有していることが好ましく、好ましくは200μmより小さい厚みであり、好ましくは150μmより小さい厚みであり、さらに好ましくは100μmより小さい厚みであり、さらにもっと好ましくは80μmより小さい厚みである。
【0059】
シェルの厚みはマイクロスコープを使用することで視覚的に測定可能である。貴金属Pd/Auのあるエリアは、黒く蒸着され、貴金属のないエリアは白くみえる。原則として、貴金属のエリアと貴金属のないエリアの境界は、きわめて鮮明で、視覚的にはっきり認めることができる。
もし前記境界が、はっきり認められないために視覚的にはっきり認識できない場合には、対応するシェルの厚みは、触媒担体のアウター表面から測定された担体上に蒸着された95%の貴金属を含むものである。
【0060】
しかしながら、本発明の触媒の場合と同様に、特に表面のアームにおいて、Pd/Auシェルは、本発明の触媒のVAM選択性の顕著な低下を生じることなく、触媒の高活性をもたらす比較的大きい厚みに形成されうることが見出された。
本発明の触媒の好ましい他の実施形態によれば、触媒のシェルの厚みは、従って、200μmから2000μmの範囲であり、好ましくは250μmから1800μmの範囲であり、特にきわめて好ましくは、300μmから1500μmの範囲であり、さらに好ましくは400μmから1200μmの範囲である。
【0061】
本発明の触媒の適切な触媒活性を確保するために、触媒中のPdの割合は貴金属が担持された触媒担体の重量に対して、0.5から2.5重量%であり、好ましくは、0.6から2.3重量%であり、好ましくは0.7から2.0重量%である。
【0062】
本発明の触媒が、1から20g/l、好ましくは2から15g/l、また好ましくは3から10g/lのPdを含んでいる場合もまた好ましい。
【0063】
同様に、本発明の触媒の適切な活性および選択性を確保するために、Pd/Auの原子比率は、0と1.2の間であることが好ましく、好ましくは0.1と1の間であり、好ましくは0.3と0.9の間であり、また好ましくは0.4と0.8の間である。
【0064】
加えて、本発明の触媒が、2から20g/l、好ましくは1.5から15g/l、また、好ましくは 2から10 g/lのAuを含んでいる場合もまた好ましい。
【0065】
本発明の触媒のPd/Auシェルの厚みにわたってほとんど均一である活性を確保するために、貴金属の濃度はシェル厚みにわたってはほとんど変化しない。
これが意味するところは、シェル厚みの90%にわたるエリアにおいて、このエリアは、シェルの厚みにおいて内側と外側の境界からそれぞれ5%の位置から存在するが、貴金属濃度のプロファイルは、このエリアの平均の貴金属濃度から最大±20%、好ましくは最大±15%、また好ましくは最大±10%変動する。
【0066】
さらに好ましい実施形態では、ハフニウム酸化物ユニットは、同様に本発明の触媒のシェル中に追加的に存在し、好ましくは、全触媒重量に対して0.1−20重量%の量で存在することである。
【0067】
さらに、シェルは、ジルコニウム酸化物も含有し得る、そしてそのジルコニウム酸化物含有量は、全触媒重量に対して10から20重量%である。
【0068】
塩化物は本発明の触媒へ害を及ぼし、同様に、非活性化をもたらす。
さらに好ましい本発明の触媒の実施形態によれば、その塩化物の含有量は、従って、250ppmより少なく、好ましくは150ppmより少ないことである。
【0069】
本発明の触媒が好ましく含有するのは、ハフニウム酸化物に加えて、さらなるプロモーター少なくとも1つのアルカリ金属化合物、好ましくは、カリウム、ナトリウム、セシウムまたはルビジウム化合物で、好ましくはカリウム化合物である。
ふさわしくは及び好ましくは、以下のものを含むカリウム化合物である、酢酸カリウム(KOAc)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸水素カリウム(KHCO3)及び、水酸化カリウム(KOH)、そして、VAM生成の各反応条件下では酢酸カリウムになるすべてのカリウム化合物。
カリウム化合物は、金属化合物のPd及びAu金属への還元の前後両方において触媒担体上に沈着されうる。
【0070】
確実に適切なプロモーター活性を得るために、触媒中のアルカリ金属酢酸塩含有量は、特に好ましくは、0.1から0.7mol/l、好ましくは0.3から0.5mol/lである。
【0071】
さらに好ましい本発明の触媒の実施形態によれば、アルカリ金属のPd原子比率は、1と12の間、好ましくは、2と10の間、特に好ましくは4と9の間である。
好ましくは、触媒担体の比表面積が小さくなるほどアルカリ金属のPd原子比率は低くなる。
【0072】
本発明はさらに以下のステップからなる本発明のシェル触媒の生成プロセスに言及する。

a)ハフニウム酸化物ユニットを含む基本骨格に酸化多孔質触媒担体を供給するステップ。
b) Pd前駆体溶液を触媒担体上に沈着させるステップ。
c) Au前駆体溶液をハフニウム酸化物ユニット(HfO2)を含む触媒担の基本
骨格上に沈着させるステップ。
d) Pd前駆体化合物のPd成分を金属に変換するステップ。
e) Au前駆体化合物のAu成分を金属に変換するステップ。
【0073】
基本的に、到達可能な金属の高い分散度を使用したすべてのPdまたはAu化合物はPdおよびAu前駆体化合物として使用可能である。
「分散度」とは、金属/合金粒子の全金属原子数の総量に対する金属触媒に担持された全表面金属/合金粒子の数の比率を意味する。
一般的に、分散度が比較的高い数値に対応する場合が好ましく、すなわち、この場合には多くの金属原子が触媒反応のために自由に利用可能であるからである。
これが意味するところは、担持された金属触媒の比較的高い分散度が与えられると比較的少ない量の金属の使用で同等の特定の触媒活性に到達しうる。
本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、金属粒子の分散度は1から20%である。分散度の値はCO吸収法によって決定される。
【0074】
PdおよびAu前駆体化合物は以下のものから選択することが好ましい。
ハロゲン、特に、塩化物、酸化物、硝酸塩、亜硝酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、水酸化物、炭酸水素塩、アミノ化合物またはたとえば、トリフェニルリン酸化合物、またはアセチルアセトン化合物などの有機化合物、およびそれらの金属塩など。
【0075】
特に好ましいPd前駆体化合物の例は水溶性Pd塩である。
本発明の好ましいプロセスの実施形態によれば、Pd前駆体化合物は以下のものからなるグループから選択される。
Pd(NH34(OH)2、Pd(NO32、K2Pd(OAc)2(OH)2、Pd(NH32(NO22、Pd(NH34(NO32、K2Pd(NO24、Na2Pd(NO24、Pd(OAc)2、PdCl2 および Na2PdCl4およびH2PdCl4および K2PdCl4および(NH42PdCl4およびPd(NH34Cl2およびPd(NH34(HPO4)およびアンモニウムPdシュウ酸塩およびPdシュウ酸塩およびK2Pd(C242およびPd(II)トリフルオロアセテート。
Pd(OAc)2に加えて、他のパラジウムカルボン酸も使用可能であり、好ましくは、炭素数3から5の脂肪族モノカルボン酸塩、たとえば、プロピオン酸塩、またはブチレート塩である。
【0076】
本発明のプロセスの特に好ましい実施形態によれば、亜硝酸Pd前駆体化合物も好ましい。好ましい亜硝酸Pd前駆体化合物は、Pd(OAc)2をNaNO2溶液中に溶解させて得られるものなどである。
【0077】
好ましいAu前駆体化合物の例は水溶性Au塩である。
本発明のプロセスの特に好ましい実施形態によれば、Au前駆体化合物は以下のものからなるグループから選択される。
KAuO2、HAuCl4、NaAuO2、KAu(NO24、AuCl3、NaAuCl4、KAuCl4、(Nh4)AuCl4、KAu(OAc)3(OH)、NaAu(OAc)3(OH)、HAu(NO34およびAu(OAc)3
Au(OAc)3またはKAuO2は、金の酸溶液から酸化物/水酸化物を沈殿させ、洗浄し沈殿物を分離し、酢酸またはKOH中で取り上げることによって、フレッシュなものを適切なところで生成することが推奨される。
【0078】
すべての選択された前駆体化合物中の純溶媒または混合溶媒は溶解しやすく、そしてそれらは、触媒担体上に沈着した後には、前駆体化合物の溶媒として、適した乾燥法により簡単に再度除去することが可能である。
前駆体化合物の好ましい溶媒の例は金属の酢酸塩であり、特に置換基のないカルボン酸、特に好ましくは酢酸であり、および金属の塩化物、特に好ましくは水性あるいは希釈した塩酸である。
【0079】
前駆体化合物が酢酸、水性または希釈塩酸、またはそれらの混合物に十分に溶解されない場合には、他の溶媒は代替としてあるいは前記溶媒に追加することで使用されうる。
他の溶媒としてこの場合に好ましく考慮されるものは、不活性および酢酸または水に溶解可能なものである。
例えば、アセトンまたはアセチルアセトンなどのケトンや、さらに他の例としては、例えば、テトラヒドロフラン、またはジオキサン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドなどのホルムアミドエーテル、および、ハイドロカーボンをベースとする溶剤、例えばベンゼンは好ましい溶媒としてあげられ、酢酸に追加するのに適切であるが、他の実施形態では単独の溶媒としても使用可能である。
【0080】
例えばアセトンなどのケトンや、例えばエタノール、イソプロパノール、メトキシエタノールなどのアルコールや、KOHまたはNaOHなどの苛性アルカリ水溶液、または酢酸、ギ酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グリコキシリル酸、グリコール酸、シュウ酸、ピルビン酸、または乳酸などの有機酸が水に追加される好ましい溶媒として挙げられるが、他の実施形態としては単独の溶媒として使用されうる。
【0081】
塩化化合物が前駆体化合物として使用される場合、本発明のプロセスによって触媒生成する際に、使用する前に塩素イオンは許容される残留量にまで減少させなければならない。すなわち、塩素イオンは阻害剤となるためである。
このため、触媒担体は、原則として、触媒担体上にPdまたはAu化合物が固定化されたあと大量の水で洗浄される。
一般的には、これは、苛性アルカリによるPdおよびAuの水酸化物の沈殿による固定化の直後、あるいは、各金属/合金に対する貴金属化合物の還元の直後におきる。
【0082】
しかしながら、本発明のプロセスの好ましい実施形態によれば、塩素イオンフリーのPdおよびAu前駆体化合物は、塩素イオンフリーの溶媒と同様に、触媒中の塩素含有量をできるだけ低く抑えるため、および面倒な塩素イオンフリー洗浄を避けるために使用される。
対応するアセテート化合物は前駆体化合物として好ましく使用される。すなわち、それらは触媒担体を塩化物で汚染する度合が極めて少ないためである。
【0083】
PdおよびAu前駆体化合物の、触媒担体の外殻のエリアにおける触媒担体上への沈着は、公知のプロセスに従って成しえる。
このような前駆体溶液は、スティーピングによって、担体を前駆体溶液中に浸漬することによって、あるいは、それを初期の湿式プロセスに従ってスティーピングすることによって沈着されうる。
例えば、苛性ソーダ溶液または苛性カリウムなどの塩基は、触媒担体上に沈着されるが、それにより貴金属化合物は担体上に水酸化物の形で沈殿する。
また、例えば、まず担体を苛性液中にスティープし、それから前駆体化合物をこの前処理された担体に適用することも可能である。
ハフニウム酸化物が追加的にシェル中に存在する場合にも、同様のことが適用され、その場合には水溶性ハフニウム化合物もまた好ましく使用できる。
【0084】
さらに好ましい本発明のプロセスの実施形態によれば、PdおよびAu前駆体化合物は、触媒担体のPd前駆体化合物の溶液中、Au前駆体化合物の溶液中または、PdおよびAu前駆体化合物両方を含む溶液中へのスティーピングによって触媒担体上に沈着されることとなる。
【0085】
先端技術によれば、担体のシェルのエリアにおける塩化物から出発される活性金属PdおよびAuまたは選択的にHfは、スティーピングによって同様に適用される。しかし、この技術は、最小のシェルの厚みおよび最大のAu担持および最大のHf担持に関してその限界に到達した。
VAM触媒として知られているシェル厚みは、およそ100μmであり、スティーピングによって得られるこれより薄いシェルは予想できない。
加えて、スティーピングによる要求されるシェルの範囲におけるより高いAu担持はかろうじて実現可能である。
すなわち、Au前駆体化合物は、シェルから触媒担体成形体の内部へ拡散する傾向にあるため、結果としてほとんどPdを含まないエリアが広いAuシェルとなる。
【0086】
活性金属は、またはより優れたプロセスにおいて、それらの前駆体化合物も、また例えば、いわゆる物理的プロセスによって担体上に沈着しうる。
このために、本発明の担体は、例えば前駆体化合物の溶液がスプレーされることが好ましく、そこで、触媒担体はコーティングドラムへ移送され、ホットエアが吹きつけられ、その結果、溶剤は素早く蒸発する。
【0087】
本発明のプロセスのさらに好ましい実施形態によれば、Pd前駆体化合物の溶液およびAu前駆体化合物の溶液が、触媒担体の流動層(fluid bed)、あるいは流動床(fluidized bed)の上に溶液をスプレーすること、好ましくは、溶液のエアゾル法によって、触媒担体上に沈着される。
シェルの厚みは、それによって、例えば、2mm厚さになるまで、継続的に調整され、および最適化されうる。
しかし、厚み100μmよりも薄い厚みの極めて薄いシェルでさえ、このように実現可能である。
【0088】
前記本発明のプロセスの実施形態は、流動層あるいは流動床ユニットを使用して実施可能である。
特に好ましいのは、ユニットがいわゆる制御されたエアグライド層が含まれている場合である。
ひとつには、触媒担体成形体は制御されたエアグライド層によって完全に混合され、そこで、それらは同時にそれ自身の軸について回転され、そこで、プロセスエアによってむらなく乾燥される。他の制御されたエアグライド層の影響については、続く軌道運動のため触媒担体成形体は実質的に、一定の頻度でスプレー処理(前駆体化合物のアプリケーション)を通過する。
【0089】
成形体のバッチ式処理のほぼ均一なシェル厚みは、これによって獲得される。
すなわち、このような貴金属濃度は、シェル厚みの大きいエリアを超えて、矩形関数を示す。ここで、結果として生じる触媒のほとんど均一な活性は、Pd/Auシェルの厚みにわたって確保される。
本発明のプロセスの好ましい実施形態によれば、本発明のプロセスを実施するために適しているコーティングドラム、流動層ユニットおよび流動床は最先端の技術分野において知られており、また例えば、以下によって販売されているものがある。
Heinrich Brucks GmbH (Alfeld、ドイツ)、
RWEK GmbH (Heusenstamm、ドイツ)、
Stechel(ドイツ)、
DRIAM AnlagenbAu GmbH (Eriskirch、ドイツ)、
Glatt GmbH (Binzen、ドイツ)、
G.S. Divisione Verniciatura (Osteria、イタリア)、
HOFER−Pharma Maschinen GmbH (Weil am Rhein、ドイツ)、
L.B.Bohle Maschinen および Verfahren GmbH (Enningerloh、ドイツ)、
Lodige(oはウムラウト) MaschinenbAu GmbH (Paderborn、ドイツ)、
Manesty(Merseyside、イギリス)、
Vector Corporation(Marion、IA、米国)、
Aeromatic−Fielder AG(Bubendorf、スイス)、
GEA Process Engineering(Hampshire、イギリス)、
Fluid Air Inc.(Aurora、Illinois、USA)、
Heinen Systems GmbH(Varel、Germany)、
Huttlin(uはウムラウト) GmbH(Steinen、Germany)、
Umang Pharmatech Pct Ltd.(Marharashtra、India)およびInnojet Technologies(Lorrach(oはウムラウト)、Germany)。
【0090】
本発明のプロセスのさらなる好ましい実施形態によれば、触媒担体は溶液の沈着の間、例えば加熱されたプロセスエアによって加熱される。
沈着された貴金属前駆体化合物の溶液のドライオフスピードは、触媒担体の加熱の程度を通じて決定される。
比較的低温でのドライオフスピードは、例えば比較的遅く、その結果、溶媒の存在によって引き起こされる前駆体化合物の高い分散のために、対応する量の沈着とともに、大きいシェル厚みが形成される。
比較的高温でのドライオフスピードは、例えば比較的速く、その結果前駆体化合物の溶液は成形体と接触するとすぐに乾燥するが、それは、触媒担体上に沈着された溶液が深い個所に浸透しないためである。
比較的高温において、このような比較的薄いシェル厚みは、高い貴金属担持によって得ることができる。
【0091】
PdおよびAuをベースとするVAMシェル触媒の生成についての先端技術に記載されるプロセスにおいては、商業的に利用可能な前駆体化合物の溶液、例えばNa2PdCl4、NaAuCl4 またはHAuCl4溶液が使用される。
最近の文献中には、すでに以前に述べられているように、塩素フリーPdまたはAu前駆体化合物、例えばPd(NH34(OH)2、Pd(NH32(NO22およびKAuO2なども使用される。
これらの前駆体化合物は塩基性溶液中で反応し、標準的な塩化物、硝酸塩、およびアセテート前駆体化合物は溶液中の酸に反応を起こさせる。
【0092】
触媒担体上への前駆体化合物の沈着のためには好ましくはNa2PdCl4および NaAuCl3水溶液が通常使用される。
これらの金属塩溶液は通常、室温にて担体に適用される、そして金属化合物はNaOHで不溶性のPd またはAu水酸化物として固定される。
そこで、担持された担体は通常、水で塩素フリーに洗浄される。
特にAuの固定は、安定したAu四塩化物化合物の沈殿を導入するための塩基の長い反応時間および付随する不適切なAuの反応などの不利益を有する。
【0093】
本発明のプロセスのさらに好ましい実施形態によれば、プロセスは下記のステップを有する。
a)Pd および/またはAu前駆体化合物の第一溶液が供給されるステップ
b)Pd および/またはAu前駆体化合物の第二溶液が供給され、その中では
第一溶液が逆に第二溶液の前駆体化合物の貴金属化合物の沈殿に影響を及ぼす
ステップ。
c)第一溶液と第二溶液は触媒担体上に沈着されるステップ。
【0094】
この本発明の実施形態では二つの異なる前駆体溶液を使用したが、これは例えば、ひとつがPdを、もう一つがAu前駆体化合物を含む。
【0095】
一般的に、溶液のひとつは塩基性を有し、またもう一つは酸性のpHを有することが好ましい。
一般的に、まず担体への最初の第一液の含浸によって、そして続くステップでの上述したような第二液のスティーピングによって、溶液は触媒担体上に沈着される。
第二液の沈着において、二つの溶液は担体上で結合され、それによって溶液のpHは変化し、それぞれの前駆体化合物のPdまたはAu化合物は担体上に沈殿されるが、これは担体へ適用されることが必要な通常の先端技術におけるNaOHまたはKOHのような補助的な塩基なしに行われる。
【0096】
前記本発明のプロセスの実施形態は、このような触媒担体のPdおよび/またはAu前駆体化合物の第一溶液およびPdおよび/またはAu前駆体化合物の第二溶液の含浸を基本としているが、そこでは二つの溶液が互いに相容れず、つまり、第一溶液は逆に、第二液の前駆体化合物の貴金属の沈殿に作用し、その結果二つの溶液の接触する領域において、予備的含浸されたPd/Au化合物と事後的含浸されたPd/Au化合物がほとんど同時に沈殿し、Pd/Auの混合を通じて密な混合に導かれる。
乾燥は二つの含浸ステップの間に選択的に行われうる。
【0097】
不相溶な溶液とともに含浸するためのPd前駆体化合物の適切な水溶液は表1に例示される。
【0098】
【表1】

【0099】
もし、早期のAuの還元(premature au reduction)について、NH3 が還元作用には強すぎた場合、パラジウムアミン化合物のかわりに、リガンドとしてのエチレンジアミンとともに、またはリガンドとしてのエタノールアミンとともに、対応するジアミン化合物も使用しうる。
【0100】
不相溶な溶液とともに含浸するためのAu前駆体化合物の適切な水溶液は表2に例示される。
【0101】
【表2】

【0102】
貴金属化合物の塩基フリーの沈殿のための適切な不相溶な溶液の組み合わせは、例えば、PdCl2 および KAuO2 溶液、Pd(NO32 および KAuO2 溶液、Pd(NH34(OH)2 および AuCl3またはHAuCl4溶液である。
【0103】
本発明のプロセスの好ましい実施形態によれば、例えば、PdCl2 溶液による接触、または、KAuO2 溶液とともにHAuCl4の接触を行うことによって、不相溶なPd溶液とともにPdは沈殿され、また、不相溶なAu溶液とともにAuも同様である。
このようなプロセスでPdおよび/またはAu成分は、高濃度溶液を使用する必要なくシェルに沈殿する。
【0104】
本発明のプロセスのさらなる実施形態によれば、他の溶液と相溶された混合溶液もまた使用可能であり、それは、貴金属の沈殿のために混合溶液と接触させられる。
混合液の一例は、PdCl2とAuCl3を含む溶液であり、貴金属化合物は、KAuO2 溶液、またはPd(NH34(OH)2とKAuO2を含む溶液とともに沈殿され、それらの貴金属化合物は、KAuO2含有溶液、またはPd(NH34(OH)2及びKAuO2含有溶液とともに沈殿され、それらの貴金属化合物はPdCl2及びHAuCl4含有溶液と共に沈殿される。さらなる混合液の例は、HAuCl4とKAuO2の組み合わせである。
【0105】
不相溶な溶液との含浸は、好ましくは、スティーピングあるいはスプレー含浸によって行われ、そこでは、不相溶な溶液は、例えば、一また二以上のダブルノズルで同時にスプレーされ、または、二つのまたはノズル群または一またはそれ以上のノズルによって連続的にスプレーされる。
【0106】
すばやい前駆体化合物の金属成分のシェルへの固定化(固定)と、および同時に起こる短縮したPdとAuの分散のため、不相溶液の含浸は慣習的な相溶液の使用よりも、シェルを薄くさせることを導く。
不相溶液の使用によって、薄いシェル中の貴金属の高い含有、改善された金属維持力、より早くより完全な貴金属の沈殿、担体の分解性の残留Na成分の減少、ひとつの固定ステップにおけるPdとAuの同時の固定、NaOHコストの不要およびNaOH処理および担体の余分なNaOHとの接触を通じた機械的疲労の回避が実現されうる。
【0107】
不相溶溶液との含浸によって、二つの不相溶な溶液の沈着からなる単一の固定化ステップを通じて、より多くの貴金属含有が触媒担体上に沈殿され、それは標準的な塩基(NaOH)固定化による場合よりも大きい。
シェル触媒、特にClとNaが低含有のシェル触媒は、塩素フリー貴金属前駆体の酸固定によって得ることができる。
【0108】
特に、Au/Pd原子比率0.6以上の高いAu含有はVAM選択性に関しては極めて望ましいが、不相溶溶液の原則的な使用によって容易に成しえる。
【0109】
本発明のプロセスのさらに好ましい実施形態によれば、触媒担体上にPdおよびまたはAu前駆体化合物が沈着された後に、前駆体化合物の貴金属化合物の触媒担体上への固定のために、触媒担体は固定化ステップの対象となる。
すでに上述したように、苛性アルカリ溶液による担体の処理、または、貴金属成分を水酸化物へまたは酸化物へ変化させるための担体のか焼を固定化ステップは含みうる。固定化ステップ、例えば、ガス相中などは省略可能で、直接的還元を行うこともできる。
【0110】
同様にドープされた触媒担体を粉体として導入し、活性金属の前駆体化合物をこれに含浸することは可能である。
予備的処理がなされた粉体はウォッシュコートの形で適正な成形体、例えば、球状のステアタイト、またはKA−160担体など、の上にコートされ、そして、さらにか焼と還元によって処理され触媒中へ処理される。
【0111】
その結果、下記のステップを含む本発明のシェル触媒の生成のための二番目のプロセスに本発明は言及する、
a)その基本骨格中に酸化ハフニウム(HfO2)ユニットを含む粉状の酸化多孔質触媒担体を供給し、およびそこで触媒担体は、PdおよびAu前駆体化合物またはPdおよびAu粒子を担持されるステップ。
b)沈着、成形体状に担持された触媒担体をシェルの形の成形体上に沈着させるステップ。
c)ステップb)によって担持された成形体をか焼するステップ。
d)選択的に、PdおよびAu前駆体化合物のPdおよびAu化合物を金属に変換するステップ。
【0112】
また、かわりとして、前記プロセスは、成形体の上に貴金属によって担持されていない粉状の触媒担体の第一の沈着によって実行され、その後にのみ貴金属を適応する。
【0113】
前駆体化合物の担持後、あるいは、貴金属化合物の固定後、担体は対応する酸化物への変換のためにか焼されうる。
か焼は、好ましくは700℃より低温で行われる。特に好ましいのは、エアの追加と同時に300から450℃の間で行うことである。
か焼時間はか焼温度により、好ましくは、0.5から6時間の間である。約400℃のか焼温度においては、か焼時間は好ましくは1から2時間である。約300℃のか焼温度においては、か焼時間は6時間までが好ましい。
【0114】
貴金属化合物は典型的には触媒の使用前にさらに還元され、そこでは、還元はもとの位置(in situ)、すなわち、プロセス反応装置や、または実験設備内(ex situ)において、特に還元反応装置においてなどで行われる。
元の位置における還元は、エチレン(5体積%)とともに窒素の中で150℃で例えば5時間以上で行われることが好ましい。
実験設備での還元は、窒素中の5体積%の水素とともに、例えば、混合ガスをしようして、好ましくは150から500℃の範囲の温度において、5時間を越える時間、実行されうる。
【0115】
ガス状の、または、揮発可能な、還元剤としては、例えば、CO、NH3、ホルムアルデヒド、メタノール、および 炭化水素類が同様に使用しうる。そこでは、ガス状の還元剤が、例えば、二酸化炭素、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスで希釈されうる。
不活性ガスで希釈された還元剤が使用されることが好ましい。水素と窒素またはアルゴンの混合は。好ましくは、水素の含有量が、1体積%と15体積%の間であることが適切である。
【0116】
貴金属の還元は、液相中でも行われ、好ましくは、還元剤の、ヒドラジン、ギ蟻K、H22または、次亜リン酸Na、次亜リン酸K、次亜リン酸を使用して行われることが好ましい。
【0117】
還元剤の量は、処理時間の間に貴金属化合物の完全な還元が触媒上で行われるのに必要な量に等しい量が選択される。
好ましくは、しかし、余剰な還元剤は、迅速なおよび完全な還元を保障するために、触媒表面に供給される。
【0118】
還元は好ましくは常圧、すなわち絶対圧力約1バールで行われることが好ましい。
産業的生成のためには、本発明の触媒の量は、ロータリーチューブオーブンまたは流動床反応装置が使われることが、触媒の還元をも確実にするために好ましい。
【0119】
本発明は本発明の触媒の使用について言及する。 その触媒の使用とは、酸化触媒として、水酸化/脱水素化触媒として、水酸化脱硫化触媒(hydrogenating desulphurization)として、水酸化脱窒化触媒(hydrodenitrification)として、水酸化脱酸化触媒(hydrodeoxidation)またはアルケニルアルカノーテス(alkenylalkanoates)の生成における触媒として、特に、酢酸ビニルモノマー(VAM)生成、特に、ガス相におけるエチレンおよび酢酸を酢酸ビニルモノマーへ形成する、ための触媒としての使用である。
【0120】
本発明の触媒は好ましくはVAM生成に使用される。通常これは、酢酸、エチレンおよび酸素または酸素を含むガスを本発明の触媒に100から200℃、好ましくは120から200℃の温度にて、および1から25バール、好ましくは1から20バールの圧力で通すことで、実施されるが、そこでの未反応の抽出物はリサイクル可能である。
便宜上には、酸素濃度は10体積%より低く維持される。特定の状況下で、しかしながら、窒素または二酸化炭素のような不活性ガスによる希釈は有利にもなる。二酸化炭素はVAM生成の過程において、少量で形成されるため特に希釈に適している。酢酸ビニルの形成は、例えば、US5066365中に記載されている適切なプロセスで分離される。
【実施例】
【0121】
下記の実施例は本発明の説明を補足するが、これらに限定されるべきではない。
【0122】
実施例1:
500gの異なる酸処理された乾燥済み粉状ベントナイト混合物、主成分としてモンモリオナイトを含む天然ベントナイトをベースとした層状ケイ酸塩化合物を、100gまでのZrO2および10gのHfO2、および13gの通常取引されているメチルセルロースとともに、ボールミルを使用してよく完全に混合されたものになるように粉砕した。
【0123】
結果の混合物は、水に溶解され、練られたものへ混合される処理を施され、その状態から、タブレットプレスを使用して球状体が形成された。硬化のため、球状体は640℃の温度で4時間を越える時間か焼された。このようにして得られた成形体は表3の特性を持っている。
【0124】
表3:本発明の成形体の特性
【0125】
【表3】

【0126】
通常取引されている流動床装置に、前記のように形成された球状体、比表面積が122 m2/gの球状体を225g充填し、その球状体は、圧縮エア温度調整が80℃(6バール)で流動床ステートにおかれた。
【0127】
一旦、成形体は約75℃で温度制御されて、300mlの貴金属水溶液は7.5gの通常取引されているNa2PdCl4(テトラクロロパラデイトナトリウム)および、4.6gの通常取引されているNaAuCl4(テトラクロロアウレイトナトリウム)を混合し、成形体の流動床の上に40分を超える時間スプレーされる。
【0128】
触媒担体の貴金属混合溶液への含浸の後、担体球体は0.05モル濃度のNaOH溶液が流動床ステートで前記条件で30分を超える時間スプレーされる。NaOHは成形体上で16時間作用させられる。
【0129】
NaOHを作用させた後、担体は流動床装置内で多量の水でおおかたのアルカリ金属を除去するために洗浄され、貴金属化合物とNaOHを介して、塩化物が担体上に導入される。
【0130】
洗浄後、成形体は200から250℃の温度で、流動床装置内で乾燥される。
【0131】
成形体が乾燥された後、それらは、エチレン(5体積%)混合ガスと共に窒素中で約150℃の温度の流動床装置内でPd/Auシェル触媒へ還元される。
【0132】
その結果、シェル触媒は1.2質量%のPdを含有し、約0.5のAu/Pd 原子比率 を有し、約170μmのシェル厚みと37Nの硬度を有する。
【0133】
前記処理をしたPd/Auシェル触媒の貴金属濃度は、シェル厚みの90%のエリアにわたるエリアの平均貴金属濃度から最大+/−10%まで変化し、このエリアは外殻と内殻の境界からそれぞれ5%の距離にある。
【0134】
実施例2
特定の比表面積が39 m2/g の粉状ZrO250gを8gの粉状HfO2 と混合し、ボールミルを使用して完全に混合されたものになるように粉砕する。その結果、平均球径約2μmとなった。
【0135】
前記のように得られたHfO2/ZrO2 粉状体は表3に記載の性質を有する。
表4:HfO2/ZrO2 粉状体の特性
【0136】
【表4】

【0137】
バインダーとしての20%酢酸ジルコニウムZrO(OAc)2 溶液30gはHfO2/ZrO2粉状体に添加され、この混合物は1時間攪拌され、そして、75gのKA−0 (Sud−Chemie社)上にスプレーされた。前記のようなプロセスで得られた球体は600℃、5時間か焼された。
結果、261μmの HfO2/ZrO2シェルが得られた。
【0138】
通常取引されている流動床装置は、前記のように比表面積97 m2/gに形成された球体225gで充填され、この球体は、80℃(6バール)に温度調節された圧縮エアで、流動床ステートに入れられる。
【0139】
一旦、成形体は約75℃で温度制御されて、300mlの貴金属水溶液は7.5gの通常取引されているNa2PdCl4(テトラクロロパラデイトナトリウム)および、4.6gの通常取引されているNaAuCl4(テトラクロロアウレイトナトリウム)を混合し、成形体の流動床の上に40分を超える時間スプレーされる。
【0140】
触媒担体の貴金属混合溶液への含浸の後、担体球体は0.05モル濃度のNaOH 溶液が流動層ステートで前記条件で30分を超える時間スプレーされる。NaOHは成形体上で16時間作用させられる。
【0141】
NaOH処理をした後、担体は流動層装置内で多量の水でだいたいのアルカリ金属を除去するために洗浄され、貴金属化合物とNaOHを介して、塩化物が担体上に導入される。
【0142】
洗浄後、成形体は200から250℃の温度で、流動床装置内で乾燥される。
【0143】
成形体が乾燥された後、それらは、エチレン(5体積%)混合ガスと共に窒素中で約150℃の温度の流動層装置内でPd/Auシェル触媒へ還元される。
【0144】
その結果、シェル触媒は1.2質量%のPdを含有し、約0.5のAu/Pd原子比率 を有し、約210μmのシェル厚みと43Nの硬度を有する。
【0145】
前記処理をしたPd/Auシェル触媒の貴金属濃度は、シェル厚みの90%のエリアにわたるエリアの平均貴金属濃度から最大+/−10%まで変化し、このエリアは外殻と内殻の境界からそれぞれ5%の距離にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル酢酸モノマー(VAM)の合成のためのシェル触媒であって、
金属Pdおよび金属Auを含む外殻を有する酸化多孔質触媒担体を備え、
多孔触媒担体の骨格構造がハフニウム酸化物ユニットを備えることを特徴とするシェル触媒。
【請求項2】
シェル触媒において、触媒担体が、シリコン酸化物、アルミニウム酸化物、アルミノケイ酸塩、ジルコニウム酸化物、チタニウム酸化物、酸処理か焼ベントナイト、またはそれらの混合物からなる群から選択される一種を含むことを特徴とする請求項1に記載のシェル触媒。
【請求項3】
シェル触媒において、触媒担体の骨格構造中のハフニウム酸化物ユニットの含有量が、触媒担体の重量に対して、0.01から50重量%であることを特徴とする請求項2に記載のシェル触媒。
【請求項4】
シェル触媒であって、触媒担体の比表面積(BET)が、160m2/g以下であることを特徴とする請求項3に記載のシェル触媒。
【請求項5】
シェル触媒であって、触媒担体の比表面積(BET)が、160m2/gから40m2/gの範囲であることを特徴とする請求項4に記載のシェル触媒。
【請求項6】
シェル触媒であって、触媒担体の硬度が20N以上であることを特徴とする請求項5に記載のシェル触媒。
【請求項7】
シェル触媒であって、触媒担体のBJH法による全細孔容積が0.25ml/gより大きいことを特徴とする請求項6に記載のシェル触媒。
【請求項8】
シェル触媒であって、触媒担体のBJH法による全細孔容積の範囲が0.25ml/gから0.7の範囲であることを特徴とする請求項7に記載のシェル触媒。
【請求項9】
シェル触媒であって、触媒担体の平均孔径が、8から50nmであることを特徴とする請求項8に記載のシェル触媒。
【請求項10】
シェル触媒であって、触媒担体のバイヤー酸性度(Bayer acidity)の範囲が1から150μval/gであることを特徴とする請求項9に記載のシェル触媒。
【請求項11】
シェル触媒であって、触媒担体が、酸処理か焼処理ベントナイトを含むものであって、好ましくは触媒担体の重量に対して50重量%以上含有されていることを特徴とする前記請求項のいずれかの一に記載のシェル触媒。
【請求項12】
シェル触媒であって、触媒担体に含有されている酸処理か焼ベントナイトが少なくとも65重量%のSiO2を含有していることを特徴とする請求項11に記載のシェル触媒。
【請求項13】
シェル触媒であって、触媒担体に含有されている酸処理か焼ベントナイトが10重量%未満のAlO23を含有していることを特徴とする請求項12に記載のシェル触媒。
【請求項14】
シェル触媒であって、触媒担体がZrO2を含むことを特徴とする前記請求項1から10のいずれかに記載のシェル触媒。
【請求項15】
シェル触媒であって、触媒担体が、触媒担体とは異なる多孔質または非孔質成形体に適用されていることを特徴とする前記請求項のいずれかの一に記載のシェル触媒。
【請求項16】
シェル触媒であって、触媒のかさ密度が0.4g/mlより大きいことを特徴とする前記請求項のいずれかの一に記載のシェル触媒。
【請求項17】
シェル触媒であって、シェル触媒の外殻の厚みが、300μm未満であることを特徴とする請求項16に記載のシェル触媒。
【請求項18】
シェル触媒であって、シェル触媒の外殻の厚みが、200から2000μmの範囲であることを特徴とする前記請求項1から16のいずれかに記載のシェル触媒。
【請求項19】
シェル触媒であって、特徴とするPdの含有量は、貴金属が付着された触媒の重量に対して0.5重量%から2.5重量%であることを特徴とする請求項17または18に記載のシェル触媒、
【請求項20】
シェル触媒であって、触媒のAu/Pdの原子比率が0と1.2の間であることを特徴とする請求項19に記載のシェル触媒。
【請求項21】
シェル触媒であって、HfO2及び/またはZrO2がさらに外殻に含まれていることを特徴とする請求項20に記載のシェル触媒。
【請求項22】
シェル触媒であって、触媒の貴金属濃度が、前記シェルの厚みの90%の領域であって前記外殻と内殻の境界からそれぞれシェルの厚みの5%の距離からはじまる領域の、平均貴金属濃度から最大±20%変化するあることを特徴とする請求項17から20のいずれか一に記載のシェル触媒。
【請求項23】
シェル触媒であって、シェル触媒は250ppm未満の塩化物を含有していることを特徴とする請求項22に記載のシェル触媒。
【請求項24】
シェル触媒であって、シェル触媒がさらにアルカリ金属酢酸塩を含有することを特徴とする請求項23に記載のシェル触媒。
【請求項25】
シェル触媒であって、触媒の前記アルカリ金属酢酸塩の含有量が、0.1から0.7モル/リットルであることを特徴としている請求項24に記載のシェル触媒。
【請求項26】
シェル触媒であって、アルカリ金属/Pdの原子比率が、1から12の間であることを特徴とする請求項25に記載のシェル触媒。
【請求項27】
前記請求項のいずれかの一に記載のシェル触媒の生成プロセスであって、下記のステップを備えるシェル触媒を生成プロセス。
(a)酸化多孔質触媒担体であって、その骨格構造がハフニウム酸化物(HfO2)ユニットを含有する、酸化多孔質触媒担体を供給するステップ。
(b) 触媒担体の上にPd前駆体化合物溶液を沈着させるステップ。
(c) ハフニウム酸化物(HfO2)ユニットを含有する触媒担体の骨格構造の上にAu溶液前駆体化合物溶液を沈着させるステップ。
(d) Pd前駆体化合物を金属へ変換するステップ。
(e) Au溶液前駆体化合物を金属へ変換するステップ。
【請求項28】
PdおよびAu前駆体化合物が、特に、塩化物などのハロゲン化合物、酸化物、硝酸塩、亜硝酸塩、蟻酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、水酸化化合物、炭酸水素塩、アミノ錯体またはトリフェニルリン酸錯体またはアセチルアセトネート錯体有機錯体などの有機錯体、およびこれらの金属から選択されることを特徴とする請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
Pd前駆体化合物が、Pd(NO32、K2Pd(OAc)2(OH)2、Pd(NH32(NO22、K2Pd(NO24、Na2Pd(NO24、Pd(OAc)2、PdCl2、Na2PdCl4およびPd(NH34(NO32からなる群から選択される一種を含むことを特徴とする請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
Au前駆体化合物が、KAuO2、HAuCl4、KAu(NO24、AuCl3、 NaAuCl4、KAu(OAc)3(OH)、HAu(NO34およびAu(OAc)3 からなる群から選択される一種を含むことを特徴とする請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
Pd前駆体化合物および前記Au前駆体化合物が、触媒担体をPd前駆体化合物溶液、およびAu前駆体化合物溶液に、またはPd前駆体化合物とAu前駆体化合物を両方含む溶液中にスティーピング(steeping)することによって、触媒担体上に沈着されていることを特徴とする前記請求項のいずれかの一に記載のプロセス。
【請求項32】
Pd前駆体化合物およびAu前駆体化合物が、触媒担体の流動層(fluid bed)、または流動床(fluidized bed)、好ましくは、溶液のエアロゾル手段、の上にスプレーすることによって、触媒担体上に沈着されていることを特徴とする前記請求項27から30のいずれかに記載のプロセス。
【請求項33】
触媒担体が溶液の沈着の間に加熱されることを特徴とする前記請求項のいずれかの一に記載のプロセス。
【請求項34】
下記のステップを備えることを特徴とする前記請求項のいずれかの一に記載のプロセス。
(a) Pd及び/又はAu前駆体化合物を含む第一溶液を供給するステップ。
(b) Pd及び/又はAu前駆体化合物を含む第二溶液を供給するステップにおいて、第一溶液が第二溶液中の前駆体化合物の貴金属の沈着に影響を与え、且つ逆も同様であるステップ。
(b)第一溶液および第二溶液が触媒担体上に沈着されるステップ。
【請求項35】
第一溶液の前駆体化合物が酸であり、第二溶液の前駆体化合物が塩基であることを特徴とする請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
触媒担体が、触媒担体上に沈着されたPd及び/又はAu前駆体化合物を一旦固定するステップに供されることを特徴とする前記請求項のいずれかの一に記載のプロセス。
【請求項37】
特に、下記のステップを備える前記請求項のいずれかの一に記載のシェル触媒の生成プロセス。
(a) ハフニウム酸化物(HfO2)をその骨格構造中に有し、PdおよびAu前駆体化合物又はPdおよびAu粒子が付着されている粉状の酸化多孔質触媒担体を供給するステップ。
(b)シェルの形状に形成された成形体上に前記付着された触媒担体を沈着させるステップ。
(c)前記(b)のステップに従って付着された成形体をか焼するステップと。
(d)選択的に、PdおよびAu前駆体化合物のPd及びAu化合物を金属の形に変換するステップ。


【公表番号】特表2010−527779(P2010−527779A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509743(P2010−509743)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004333
【国際公開番号】WO2008/145392
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(508131358)ズード−ケミー アーゲー (30)
【Fターム(参考)】