説明

IκBαタンパク質ユビキチン化を調節する薬剤のスクリーニング方法および該方法を実施する手段

下記の工程を含むことを特徴とする、β-TrCPタンパク質を含有する官能性ユビキチンリガーゼタンパク質複合体によるIκBαタンパク質ユビキチン化を調節する薬剤のスクリーニング方法:
(a) 試験すべき候補薬剤を、核心において下記を発現する組換え酵母細胞と接触させる工程;
(i) ポリペプチドIκBαおよび少なくとも1種の第1検出可能タンパク質を含む融合タンパク質;および、
(ii) ポリペプチドβ-TrCPを含有するタンパク質;
(b) 上記酵母細胞内の上記第1検出可能タンパク質を、上記候補薬剤を上記細胞と接触させた後の少なくとも一定期間の終了時に定量する工程;
(c) 工程(b)において得られた結果を、工程(a)を上記候補薬剤の不存在下に実施したときに得られる対照結果と比較する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IκBαタンパク質ユビキチン化を調節し得る生物学的活性剤、とりわけ、治療上興味のある治療剤、より具体的には、炎症性もしくは自己免疫疾患またはガンの予防または治療を指向する治療剤のスクリーニングに関する。
【背景技術】
【0002】
1つの主要な未解決医療問題は、炎症および自己免疫症候群の有効な治療法の開発である。これらの病変は、現在、アスピリンおよびイブプロフェンのような非ステロイド抗炎症薬およびコルチコステロイド類を使用して治療しており、これらの薬物は、限られた有効性しか有さず、かなりの毒性副作用を有する。つい最近市場に出現したレフェコキシブ(refecoxib)および腫瘍壊死因子(TNF)遮断薬のような最も特異的なシクロオキシゲナーゼインヒビターも、同じ欠点を有することが判明している。
NF-κB群の転写因子は、ウイルス、細菌または真菌感染に対する、さらにまた、生理学的ストレス状態における身体の最初の防御系の1部を形成する。これらの転写因子は、炎症メディエーターをコードする多くの遺伝子のような多数の遺伝子類の発現を決定する。これらの遺伝子としては、TNF-α因子;IL-1、IL-6およびIL-8インターロイキン類;接着分子 ICAM-1、VCAM-1およびE-セレクチン;NO-シンターゼおよびCox2プロスタグランジンシンターゼをコードする遺伝子類がある。
NF-κB群の転写因子は、細菌の脂質またはタンパク質、サイトカイン類、増殖因子および酸化的ストレス状態に関連する分子のような多くの内因性および外因性の病原性刺激によって活性化される。これらの病原性刺激に応答してのNF-κB因子の活性化は、上皮細胞、間充織細胞、リンパ球、好中球およびマクロファージのような、免疫応答に関与するほぼ全ての細胞において観察される。
現在のところ、殆どの慢性炎症症候群の正確な原因は決定されていないものの、臨床試験の結果のような実験結果により、炎症を開始し且つ慢性炎症症状を確立する双方におけるNF-κB因子の活性化が果たす重要な役割が証明されてきている。即ち、NF-κB群に属する因子の活性化を阻止することは、喘息、関節リウマチ、クローン病のような大腸憩室症、多発性硬化症および乾癬のような炎症症候群を治療する有効な経路を構成する(Ballard、2001年;BaudおよびKarin、2001年)。
【0003】
現在、NF-κB因子の炎症応答および活性化は、ユビキチンプロテアソーム系によるIκBα因子の破壊に直接関連することが確立されてきている(Kroll等、1999年;Winston等、1999年)。事実、刺激を受けていないまたは活性化されていない細胞においては、NF-κB因子は、細胞質内に隔離されている。従って、刺激を受けていないまたは活性化されていない細胞においては、NF-κB因子は、この因子に対するターゲット遺伝子の発現を活性化し得ない。ターゲット遺伝子の活性化は、因子NF-κBの細胞質から核心への転座を先ず必要とする。この転座は、ユビキチンプロテアソーム系によるIκBα因子の分解によって誘発される。事実、IκBα因子は、刺激を受けていない細胞の細胞質内にNF-κB因子を隔離するタンパク質である(Hay等、1999年)。
ウイルスまたは細菌感染のような外因性炎症刺激は、IκBα因子のリン酸化に至る情報伝達経路を活性化する。このリン酸化は、IκBαアミノ酸配列の位置32および36のセリン残基において特異的に生じる。IκBα因子は、タンパク質キナーゼ複合体Iκκによってリン酸化される。IκBα因子は、この形でリン酸化される場合、ユビキチンリガーゼSCFβ-TrCpにより認識される(Kroll等、1999年;Winston等、1999年)。ユビキチンリガーゼSCFβ-TrCpによるIκBα因子の認識は、この因子のポリユビキチン化をもたらす。ユビキチン化後、IκBα因子は、上記プロテアソームによって認識され、分解する。IκBα因子の破壊により、細胞質NF-κB因子の放出が生じる。NF-κB因子は、細胞質から核心へ転座する。刺激された細胞の核心に局在化した時点で、NF-κB因子は、ターゲット遺伝子のプロモーター類を特異的に認識し、その転写を強力に活性化する:炎症応答は、定位置である(Ben Neriah、2002年)。
多くの実験データにより、リン酸化因子IκBαの分解によって生じるNF-κB因子の放出が、炎症が始まりさらにまた慢性炎症症状が確立するための不可欠のステップであることは確認されているようである(Magnani等、2000年;LewisおよびManning、1999年)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
急性炎症および慢性炎症を治療するための新たな最新技術の抗炎症化合物が求められている。とりわけ、既知の抗炎症化合物よりも有効で且つ特異性である抗炎症化合物が求められている。そのような抗炎症化合物は、生物学的ターゲットに対する特異性故に、望ましくない副作用をおそらく軽減するであろうし、また、望ましくない副作用を全く有しない可能性さえある。
また、治療上興味ある化合物、さらに具体的に、本発明における利点のような増大した利点を有する抗炎症化合物の同定方法を開発することも求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のスクリーニング方法の一般的説明
本発明によれば、可能性ある治療薬のスクリーニング方法を開発し、これら薬剤を、ヒトIκBαタンパク質のユビキチン化に対するその作用の特異性について、ヒトβ-TrCPタンパク質を含有するユビキチンリガーゼ複合体によって選択する。
本出願人は、驚くべきことに、酵母細胞内で、プロテアソームによるIκBα因子の分解過程、即ち、ヒト細胞内で自然に生じる過程を擬態し得ることを証明した。
驚くべきことに、本発明によれば、酵母細胞内で、ヒト細胞において自然に産生されるユビキチンリガーゼ活性を有し且つSCFβ-TrCp複合体を特異的に認識するタンパク質複合体を人工的に生成させ得ることを証明した。そのように、本発明に従い、本発明者等は、酵母細胞において、ヒトβ-TrCPタンパク質に関連する酵母タンパク質を含有する人工ユビキチンリガーゼ複合体を構築した。とりわけ、本発明者等は、ヒトβ-TrCPタンパク質は、酵母細胞内で人工的に発現させたとき、酵母Skp1タンパク質に結合し、この酵母Skp1タンパク質を酵母ユビキチンリガーゼタンパク質複合体中に含有させることを証明した。即ち、ヒトβ-TrCPタンパク質をコードする発現カセットを挿入した酵母細胞においては、β-TrCPタンパク質は、(i) 結合したSkp1、Cdc53およびHrt1タンパク質からなる触媒コアを含有する酵母SCFタンパク質複合体と結合し、上記触媒コアは、それ自体、酵素 E2 Cdc34に結合する。上記ハイブリッド酵母/ヒトタンパク質複合体は、酵母細胞において、天然ヒトSCFβ-TrCp複合体によりヒト細胞内で生じるユビキチンリガーゼ活性を擬態し得ることを証明した。
【0006】
同様に驚くべきことに、本発明により、ヒトSCFβ-TrCp複合体のユビキチンリガーゼ活性を有するこの人工タンパク質複合体は、酵母細胞内において、この人工複合体を細胞核心に局在させたときのみ生物学的に活性であることを証明した。これに対し、ヒト細胞においては、天然SCFβ-TrCp複合体は、ヒト細胞の細胞質中で生物学的に活性であり、この細胞コンパートメント内で、これも細胞質内に局在する第2タンパク質、即ち、IκBα因子のユビキチン化を成し遂げる。また、本発明によれば、開発した上記人工ユビキチンリガーゼ複合体は、IκBα因子の分解過程においては、IκBα因子が上記人工ユビキチンリガーゼ複合体と核心内で共存するときのみ活性であることも証明した。
そのようにして、本発明によれば、本発明者等は、ヒトβ-TrCPタンパク質を含有する上記人工ユビキチンリガーゼタンパク質複合体は、上記β-TrCPタンパク質とIκBα因子を細胞核心内で人工的に発現させたときに、ヒトIκBα因子のユビキチン化をなし得ることを証明した。
最後に、酵母細胞においては、上記の新規な人工ユビキチン化リガーゼ複合体によるIκBα因子のユビキチン化は、このユビキチン化が細胞質中ではなく細胞核心においてなされる場合においてさえも、プロテアソームによるユビキチン化IκBα因子の分解を依然として生じさせることも証明した。
これらの驚くべき結果は、全て、IκBα因子の分解を、酵母細胞内で、自然ヒトSCFb-TrCpユビキチンリガーゼ複合体の生物学的活性を擬態する人工ユビキチンリガーゼ複合体の存在下に調節し得る薬剤をスクリーニングする方法を本出願人が開発することを可能にした。
【0007】
本発明の目的は、下記の工程を含むことを特徴とする、β-TrCPタンパク質を含有する官能性ユビキチンリガーゼタンパク質複合体によるIκBαタンパク質ユビキチン化を調節する薬剤の生体外スクリーニング方法である:
(a) 試験すべき候補薬剤を、核心において下記を発現する組換え酵母細胞と接触させる工程;
(i) ポリペプチドIκBαおよび少なくとも1種の第1検出可能タンパク質を含有する融合タンパク質;および、
(ii) ポリペプチドβ-TrCPを含有するタンパク質;
(b) 上記酵母細胞内の上記第1検出可能タンパク質を、上記候補薬剤を上記細胞と接触させた後の少なくとも一定期間の終了時に定量する工程;
(c) 工程(b)において得られた結果を、工程(a)を上記候補薬剤の不存在下に実施したときに得られる対照結果と比較する工程。
上記方法は、当業者が、試験すべき薬剤がプロテアソームによるIκBα因子の分解速度または分解度合を、β-TrCPタンパク質およびヒトIκBα因子の双方を発現する酵母細胞内で改変させ得るかどうかを判定することを可能にする。
上記生体外スクリーニング方法は、人工ヒト化ユビキチン化系を酵母細胞内で使用する故に、これら細胞内で発現させたヒトタンパク質のみの活性に対して特異的に作用する薬剤をスクリーニングすることを可能にする。
【0008】
さらにまた、上記方法により、ユビキチンリガーゼ系に対して活性な薬剤をスクリーニングする生理学的試験も、ヒトIκBα因子のプロテアソーム分解を擬態するタンパク質分解の代謝経路を酵母細胞内で構築することによって開発した。即ち、タンパク質分解のターゲット代謝経路に関する限りは、本発明方法は、ヒトプロテアソームによるタンパク質分解の生理学的条件に極めて近い生理学的条件を使用する。
上記方法を使用することにより、酵母細胞プロテアソームによるIκBα因子の分解速度または度合を抑制する薬剤を同定することが可能となる。本発明方法を使用して同定したこのタイプの抑制剤は、これらの薬剤がヒト細胞中のIκBα因子の分解も抑制するので、細胞核心中のNF-κB因子の転座を抑制または遮断し得る、ひいては、炎症、自己免疫病変またはガンに関与する種々の遺伝子のNF-κBによる活性化を抑制または阻止し得る有力な治療剤である。
従って、上記の生体外スクリーニング方法は、工程b)において測定した検出可能タンパク質の量が比較し得る対照値よりも低い候補抑制剤を正選択することからなる後工程(d)を含み得る。
【0009】
また、本発明方法は、酵母細胞プロテアソームによるIκBα因子の分解速度または度合を増大させ得る薬剤を同定することも可能にする。このタイプの薬剤を活性化は、細胞核心内のNF-κB因子の転座を誘発または増大させ得、ひいては、炎症、自己免疫病変またはガンに関与する種々の遺伝子のNF-κBによる活性化を誘発または増大させ得る。従って、この第2の局面によれば、本発明の生体外スクリーニング方法は、炎症反応促進剤のスクリーニングを可能にする。本発明に従って選択した幾つかの炎症反応促進剤は、これら促進剤を、例えば、体液介在または細胞介在のいずれかにより、感染に対する非特異性抵抗反応を誘発させるような或いは抗原に対する特異的免疫応答を開始させるための抗原提示細胞を活性化させるような、早期免疫応答を誘発させるための薬剤として低投与量で使用する場合または短期間において投与する場合に治療特性を示しているようである。本発明の生体外スクリーニング方法に従って選択したある種の他の炎症反応促進剤は、薬物の活性原性のような既知の活性原性を含み、その場合、有害炎症促進作用を同定し、さらに、ヒトの健康において使用するための特別の予防処置を観察しなければならない。
従って、さらなる局面によれば、本発明に従うスクリーニング方法は、工程b)において測定した検出可能タンパク質の量が比較し得る対照値よりも高い候補アクチベーター薬剤を正選択することからなる後工程(d)を含み得る。
【0010】
従って、β-TrCPタンパク質のユビキチン化を“調節する”薬剤は、本発明のスクリーニング方法の工程(b)において検出するβ-TrCPタンパク質の分解を、本発明方法を試験する薬剤の不存在下に実施したときのこの同じタンパク質の対照の分解と対比して、(i) 増大させる薬剤からなるか、或いは逆に、(ii) 抑制するまたは阻止する薬剤からなる。
理解されているように、β-TrCPタンパク質のユビキチン化を調節する薬剤は、任意の種類であり得る。該薬剤は、任意の有機または無機化合物であり得、天然産生薬剤、または少なくとも1部を化学または生物学的合成によって調製した薬剤のいずれかであり得る。該薬剤は、とりわけ、ペプチドまたはタンパク質であり得る。また、該薬剤は、生物学的作用、とりわけ、治療作用或いは逆に人体に対する証明されたまたは疑いのある毒性作用を有することが既に知られている任意の分子を含む。
本発明に従う方法においては、IκBα検出可能タンパク質融合タンパク質がβ-TrCPポリペプチドを含有する人工SCF複合体によってユビキチン化された時点で、該融合タンパク質は、多触媒プロテアソーム複合体によってもたらされるタンパク質分解を受ける。酵母細胞中に含まれる検出可能タンパク質を一定の時点で測定することにより、上記IκBα検出可能タンパク質融合タンパク質の上記一定の時点での分解度合を測定することが可能である。
【0011】
本発明に従い、上述のスクリーニング方法の感度が、酵母細胞を試験すべき薬剤と接触させる前に、細胞核心中でのターゲット融合タンパク質IκBα検出可能タンパク質の集積を増進させた場合に上昇することを証明した。
従って、上記方法の第1の好ましい実施態様によれば、工程(a)自体が、下記の工程を含む:
(a1) 核心において上記ポリペプチドIκBαおよび少なくとも1種の第1の検出可能タンパク質を含有する融合タンパク質を発現する酵母細胞を培養する工程;
(a2) 上記酵母細胞による上記ポリペプチドIκBαおよび少なくとも1種の第1検出可能タンパク質を含有する上記融合タンパク質の発現を停止させる工程;
(a3) 工程(a2)の終了時に得られた酵母細胞を試験すべき候補薬剤と接触させる工程。
当業者であれば、IκBα検出可能タンパク質融合タンパク質の発現を選定した時点で停止させることは、酵母細胞を形質転換させるのに、上記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを酵母細胞内の官能性プロモーターの制御下に、或いは、誘発剤によってもたらされる活性化または逆に抑制下においた発現カセットを使用することによって、容易になし得ることであろう。当業者であれば、酵母細胞内での多くの活性誘発性プロモーターには精通していることであろうし、また、それらプロモーターの幾つかは、以下の説明において、さらにまた実施例において説明する。
【0012】
上記方法の工程(a1)における酵母細胞核心内でのIκBα検出可能タンパク質融合タンパク質の集積は、上記方法の出発点において上記検出可能タンパク質からの強い検出シグナルを得ることを可能にする。これらの強いシグナル条件は、IκBα検出可能タンパク質融合タンパク質がβ-TrCPタンパク質を含有する人工SCF複合体によりユビキチン化された後の、IκBα検出可能タンパク質融合タンパク質がプロテアソームによって破壊されたときおよび場合に、上記検出可能タンパク質を、方法全体を通して極めて正確に測定することを可能にする。明らかに、出発時における検出可能シグナルが強いほど、本発明方法を実施する時の測定感度は高い。
上記実施態様の第1の局面によれば、上記酵母細胞は、工程(a1)、(a2)および(a3)の全てに亘って上記ポリペプチドβ-TrCPを含有するタンパク質を発現する。
上記実施態様の第2の局面によれば、上記酵母細胞は、(a2)および(a3)の全てに亘って上記ポリペプチドβ-TrCPを含有するタンパク質を発現し、工程(a1)においては上記ポリペプチドβ-TrCPを含有するタンパク質を発現しない。
【0013】
この第2の局面によれば、β-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質の発現を制御することは、酵母細胞を形質転換させるのに、上記β-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを酵母細胞内の官能性プロモーターの制御下に、或いは、誘発剤によってもたらされる活性化または逆に抑制下においた発現カセットを使用することによって、容易になし得る。当業者であれば、酵母細胞内での多くの活性誘発性プロモーターには精通していることであろうし、また、それらプロモーターの幾つかは、以下の説明において、さらにまた実施例において説明する。最も好ましくは、β-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質をコードする発現カセットに含ませる誘発性プロモーターは、IκBα検出可能タンパク質融合タンパク質をコードする発現カセットに含ませる誘発性プロモーターとは異なる。この好ましい実施態様によれば、(i) IκBα検出可能タンパク質融合タンパク質の発現および(ii) β-TrCPポリペプチド含有タンパク質の発現のそれぞれにおいて、別個の制御を実施する。
この第2の局面によれば、IκBα検出可能タンパク質融合タンパク質は、β-TrCPポリペプチドの不存在下の工程(a1)における酵母細胞核心中に集積する。その後、工程(a2)においては、もはや産生されないIκBα検出可能タンパク質融合タンパク質は、β-TrCPタンパク質を含有する人工SCF複合体の細胞核心(β-TrCPタンパク質の発現が誘発された)内での存在下に置かれる。本発明方法のこの実施態様においては、先ず、IκBαを含有するターゲット融合タンパク質が集積し、その後、ユビキチン化におけるエフェクタータンパク質、即ち、β-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質が発現し、β-TrCPポリペプチドが融合タンパク質IκBα検出可能タンパク質の分解を開始させる。そして、試験下の薬剤によって改変され得るIκBα検出可能タンパク質融合タンパク質分解過程を、本発明のスクリーニング方法の工程(b)において測定する。
【0014】
本発明のスクリーニング方法の好ましい実施態様の第3の局面によれば、上記酵母細胞は、(a2)および(a3)の全体に亘って上記ポリペプチドβ-TrCPを含有するタンパク質を発現し、そして、
(i) 工程(a1)の開始時の一定時間においては上記ポリペプチドβ-TrCPを含有するタンパク質を発現せず、
(ii) 工程(a1)の残りの時間においては前記ポリペプチドβ-TrCPを含有するタンパク質を発現する。
同様に、この第3の局面によれば、上記融合タンパク質IκBα検出可能タンパク質を本発明方法の工程(a1)の全体に亘って発現させ、該融合タンパク質の発現を本発明方法の工程(a2)において停止させる。
この第3の局面によれば、β-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質の発現を工程(a1)の選定した時点において活性化させる。これらの条件においては、工程(a1)の1部(ii)においては、融合タンパク質IκBα検出可能タンパク質とβ-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質とが酵母細胞内で同時に発現する。
この第3の局面によれば、融合タンパク質IκBα検出可能タンパク質は、工程(a1)の全体において、酵母細胞核心中に大量に集積し、そして、β-TrCPポリペプチドを含有するエフェクタータンパク質は、工程(a1)の途中の早期で発現し、上記ターゲット融合タンパク質がもはや合成されない工程(a2)および(a3)の全体に亘って集積し続ける。これらの条件においては、酵母細胞核心内に集積した大量のβ-TrCPポリペプチド含有エフェクタータンパク質故に、ターゲット融合タンパク質の高レベルのユビキチン化、従って、プロテアソームによる高レベルのターゲットタンパク質分解が促進され、IκBαポリペプチドユビキチン化に対して抑制性の可能性ある候補薬剤を試験するときに、本発明のスクリーニング方法の感度を著しく上昇させる。
【0015】
好ましくは、本発明方法のこの第3の局面によれば、工程(a1)において、IκBα検出可能タンパク質融合タンパク質の発現は、0.25時間〜10時間、好ましくは0.5時間〜6時間、最も好ましくは1時間〜4時間からなる期間T1において活性化される。
次いで、期間T1における所定の時間t2において、β-TrCPポリペプチドを含有するエフェクタータンパク質の発現が活性化される。時間t2は、好ましくは[T1における8時間]〜[T1における0.1時間]の間、より好ましくは[T1における5時間]〜[T1における0.25時間]の間、最も好ましくは[T1における3時間]〜[T1における0.5時間]の間であり、時間t2は、当然のこととして、上記で選択した期間T1の制限内で選択する。
その後、期間T1の終了時に、即ち、工程(a2)の開始後、IκBα検出可能タンパク質融合タンパク質の発現を停止させる。この時点からは、β-TrCPポリペプチドを含有するエフェクタータンパク質の発現のみが酵母細胞内で活性化され、この活性は、スクリーニング手順の残りの全体に亘って、即ち、手順の終了まで維持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のスクリーニング方法の好ましい実施態様の説明
本発明のスクリーニング方法の好ましい実施態様を、とりわけ、該方法を実施するための種々の資源の構造的および機能的局面の説明に関連して、以下に説明する。
一般に、IκBα検出可能タンパク質融合タンパク質中に含有させる検出可能タンパク質は、その存在をそのタンパク質分解前に酵母細胞内で特異的に検出し得、且つ検出可能タンパク質のタンパク質分解形、とりわけ上記検出可能タンパク質のタンパク質分解によって生成したペプチドフラグメントの存在は上記選択した特異的検出方法によっては検出されないような、任意の種類であり得る。
容易に理解し得るように、β-TrCPタンパク質を含有する人工タンパク質複合体のユビキチンリガーゼ活性は、本発明方法に従い、IκBα検出可能タンパク質融合タンパク質の安定性に対するその効果を測定することによって追試する。人工ヒト/酵母SCF複合体によるIκBα因子へのポリユビキチン鎖の付加は、プロテアソームによるユビキチン化IκBα因子の認識およびそのプロテアソームによる急速分解をもたらす。融合タンパク質形での因子IκBαの酵母細胞内での発現ため、IκBαを含有する融合タンパク質の分解は、タンパク質分解していない検出可能タンパク質を検出することによってリアルタイムで追試し得る。IκBαに融合させた検出可能タンパク質のタイプ次第で、融合タンパク質の分解自体を、フローサイトメーター、マイクロプレートリーダー、蛍光検出計または蛍光顕微鏡による蛍光測定を使用する測定法、さらにまた比色分析法、酵素法または免疫法による測定法のような公知の方法によって追試し得る。例としては、検出可能タンパク質は、抗原、蛍光タンパク質または酵素活性を有するタンパク質から選択し得る。
【0017】
検出可能タンパク質が抗原である場合、検出可能タンパク質は、この抗原に対する特異性抗体を容易に入手し得或いはポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のような抗体の当業者にとって周知の任意の調製方法によって調製し得る限りは、任意のタイプの抗原であり得る。好ましくは、この場合、検出可能タンパク質、β-TrCPポリペプチドによるIκBα因子の認識を干渉しないような小サイズ抗原である。従って、好ましくは長さ7〜100個のアミノ酸、より好ましくは7〜50個のアミノ酸長、またはさらに良好には7〜30個のアミノ酸長、例えば、10個のアミノ酸長のペプチド鎖を抗原として使用する。例としては、配列[NH2-YPYDVPDYA-COOH] SEQ ID No.17を有するHA抗原;または、配列[NH2-DYKDDDDK-COOH] SEQ ID N0.18(FLAGモノマー)を有するまたは配列[NH2-MDYKDHDGDYKDHDIDYKDDDDK-COOH] SEQ ID N0.19 (FLAGトリマー)を有するFLAG抗原を使用し得る。この場合、上記検出可能タンパク質を上記手順の工程(b)において定量するためには、上記融合タンパク質中に含有させた抗原に対し特異性の抗体を使用し、この抗体を直接または間接的に標識化する。その後、定量を、標識化抗体とIκBα抗原融合タンパク質との酵母細胞内に形成させた複合体からの検出可能シグナルを測定することによって実施する。そのように、工程(b)においては、第1の検出可能タンパク質が抗原である場合、該第1検出可能タンパク質は、該第1検出可能タンパク質を認識する上記タンパク質と抗体間で形成された複合体を検出することによって定量する。
【0018】
検出可能タンパク質が内在性蛍光タンパク質である場合、検出可能タンパク質は、例えば、GFPタンパク質またはその誘導体の1種、YFPタンパク質またはその誘導体の1種、およびdsREDタンパク質から選択する。例えば、GFPタンパク質から誘導されたタンパク質のうちでは、名称GFPMut3、Venus、Sapphire等として知られているタンパク質の1種を使用し得る。本発明方法において使用するのに適するGFPタンパク質の具体的な目録は、後記の表3に示している。
また、内在性蛍光タンパク質は、オワンクラゲ(Aequorea Victoria)以外の各種生物体に由来する自己蛍光タンパク質の中から選択し得る。例えば、内在性蛍光タンパク質は、下記のタンパク質から選択し得る:
‐カイアシ(Pontellina plumata)に由来し、D.A. Shagin等により開示されたCopGFPタンパク質(2004, Mol. Biol. Evol. 21:841-850);
‐TurboGFPタンパク質、CopGFPの変異体、D.A. Shagin等により2004年に開示された(Mol. Biol. Evol. 21:841-850);
‐ハナクラゲ目(Anthomedusae)由来のJ-Redタンパク質、D.A. Shagin等により2004年に開示された(Mol. Biol. Evol. 21:841-850);
‐コザラクラゲ(Phialidium sp)由来のPhiYFPタンパク質、D.A. Shagin等により開示された(2004, Mol. Biol. Evol. 21:841-850);
‐アザミサンゴ科(Galaxeidae)由来の“単量体Azami-Green”とも称されるmAGタンパク質、S. Karasawa等によって開示された(2003, J. Biol. Chem. 278:34167-34171);
‐オワンクラゲ(Aequorea coerulescens)由来のAcGFPタンパク質、およびその変異体、N.G. Gurskayaによって開示された(2003, Biochem. J. 373:403-408);
‐イソギンチャクモドキ科ディスクコラール類(Discosoma sp.)由来のDsRedタンパク質、M.V. Matz等により開示された(1999, Nature Biotech. 17:969-973)。
検出可能タンパク質が内在性蛍光タンパク質である場合、該検出可能タンパク質は、本発明方法の工程(b)において、任意の適切な装置を使用してIκBα-蛍光タンパク質融合タンパク質が発出する蛍光シグナルを測定することによって定量する。従って、工程(b)においては、第1の検出可能タンパク質が蛍光タンパク質である場合、該検出可能タンパク質を、該タンパク質が発出する蛍光シグナルを測定することによって定量する。
【0019】
検出可能タンパク質が酵素活性を有するタンパク質である場合、該検出可能タンパク質は、例えば、ルシフェラーゼおよびβ-ラクタマーゼから選択する。この場合、検出可能タンパク質は、本発明方法の工程(b)において、基質の酵素変換により生成した化合物(1種以上)の量を測定することによって定量する。酵素活性を有する生成物を着色した場合、測定は、比色分析によって実施し得る。酵素活性を有する生成物が蛍光である場合、該生成物の発出する蛍光シグナルの強度を、蛍光測定用の任意の適切な装置を使用して測定する。従って、工程(b)においては、第1の検出可能タンパク質が酵素活性を有するタンパク質である場合、該検出可能タンパク質を、該タンパク質によって形質転換された基質の量を測定することによって定量する。
【0020】
本発明に従うスクリーニング方法の特定の実施態様においては、β-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質は、β-TrCPポリペプチド以外に、もう1つの検出可能タンパク質も含有する融合タンパク質からなる。この特定の実施態様においては、酵母細胞内でのβ-TrCPポリペプチド発現レベルを、β-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質に含有させた検出可能タンパク質を検出することにより、場合によっては、定量することにより、経時的に追試し得る。この特定の実施態様は、主として、β-TrCPポリペプチドを認識するタンパク質の発現を本発明方法の工程(a)の各種下位工程において正または負制御する場合に使用する。β-TrCPポリペプチドを含有するポリペプチド中の検出可能タンパク質は、抗原、蛍光タンパク質、および酵素活性を有するタンパク質から選択する。好ましくは、β-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質中の検出可能タンパク質は、IκBα検出可能タンパク質融合タンパク質中の検出可能タンパク質とは異なっていて、酵母細胞内での因子IκBαの発現とβ-TrCPポリペプチドの発現を個別に追試することを可能にする。
本明細書において既に説明したように、ヒトIκBαターゲットポリペプチドの酵母細胞プロテアソームによる分解は、IκBα検出可能タンパク質融合タンパク質とヒトβ-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質とが共に酵母細胞核心に存在するときに生じる。
とりわけ、本出願人は、各実施例において例証しているように、因子IκBαは酵母細胞の核心中のセリン残基32のみにおいてリン酸化されること、並びに該因子は細胞質中ではリン酸化を受けないことを証明している。帰納的には、酵母細胞中での因子IκBαの位置32のセレン残基のリン酸化は、酵母細胞におけるこの因子のユビキチン化が細胞核心内でのみ生じ得ることの理由を少なくとも部分的に説明している。
従って、本発明のスクリーニング方法を実施するためには、全ての手段が適所に存在して、融合タンパク質IκBα検出可能タンパク質とβ-TrCPポリペプチドを認識するタンパク質との自然な核局在化を可能にしなければならない。
【0021】
好ましくは、融合タンパク質IκBα検出可能タンパク質とβ-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質は、共に、これらタンパク質の双方を酵母細胞の核心中に局在化させ得るポリペプチドを含有する。
従って、好ましくは、融合タンパク質IκBα検出可能タンパク質とβ-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質は、共に、それらのアミノ酸配列中に、真核細胞内、より具体的には、酵母細胞内で官能性である少なくとも1種の核局在化ペプチド(“NLS”)を含有する。各タンパク質は、互いに別個に、1、2、3または4種の核局在化ペプチドを含有する。もう1つの局面によれば、これらタンパク質の各々は、互いに別個に、核局在化ペプチドの1〜4種のコピーを含有する。
好ましくは、核局在化ペプチド(1種以上)は、下記のペプチドから選択する:
‐SV40ウイルスの大抗原由来のアミノ酸配列SEQ ID NO.24を有するNLSペプチド;
‐アミノ酸配列SEQ ID NO.20を有する核質NLSペプチド;
‐配列SEQ ID NO.21およびSEQ ID NO.22から選択した酵母アルファ2レプレッサーのNLSペプチド;
‐アミノ酸配列SEQ ID NO.23を有する、酵母Gal4タンパク質のNLSペプチド。
実施例においては、融合タンパク質IκBα検出可能タンパク質とβ-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質は、共に、配列SEQ ID NO.24を有する核局在化ペプチドを含有している。
好ましくは、IκBα検出可能タンパク質融合ポリペプチドは、NH2末端からCOOH末端において、(i) 検出可能タンパク質の配列、(ii) 核局在化配列NLSおよび(iii) IκBα配列をそれぞれ含有するアミノ酸鎖からなる。
先ず、上記融合ペプチドにおいては、GFP配列とNLS配列を、ペプチド結合により互いに直接結合させ得る。同様に、NLS配列とIκBα配列も、ペプチド結合により互いに直接結合させ得る。
もう1つの局面においては、GFP配列とNLS配列を、上記融合ポリペプチド配列において、第1のスペーサーペプチドにより分離し得る。
さらにもう1つの局面においては、NLS配列とIκBα配列を、上記融合ポリペプチド配列において、第2のスペーサーペプチドにより分離し得る。
有利には、スペーサーペプチド(1以上)は、存在する場合、サイズ的に、1〜30個のアミノ酸、好ましくは1〜15個のアミノ酸、最も好ましくは2〜10個のアミノ酸長の範囲である。
【0022】
好ましい実施態様によれば、IκBαポリペプチドを含有するタンパク質は、核酸配列SEQ ID NO.1によってコードされ得るアミノ酸配列SEQ ID NO.2を有するタンパク質からなる。配列SEQ ID NO.2を有するタンパク質は、NH2末端からCOOH末端において、(i) アミノ酸位置1からアミノ酸位置240まで続く検出可能タンパク質配列GFP(yEGFP3)、(ii) アミノ酸位置241からアミノ酸位置243まで続く第1スペーサーペプチド、(iii) アミノ酸位置244からアミノ酸位置250まで続くSV40ウイルス大T抗原NLSペプチド、(iv) アミノ酸位置251からアミノ酸位置255まで続く第2スペーサーペプチドおよび(v) アミノ酸位置256からアミノ酸位置572まで続くIκBαポリペプチドのそれぞれからなる。配列SEQ ID NO.1の核酸は、5’末端から3’末端において、(i) ヌクレオチド位置1からヌクレオチド位置ま714で続く検出可能タンパク質GFP(yEGFP3)をコードする配列、(ii) ヌクレオチド位置715からヌクレオチド位置729まで続く第1スペーサーペプチドをコードする配列、(iii) ヌクレオチド730からヌクレオチド750まで続くSV40ウイルス大T抗原NLSペプチドをコードする配列、(iv) 位置751からヌクレオチド765まで続く第2スペーサーペプチドをコードする配列および(v) ヌクレオチド766からヌクレオチド1719まで続くIκBαポリペプチドをコードする配列のそれぞれからなる。
【0023】
好ましくは、β-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質は、NH2末端からCOOH末端において(i) 第2検出可能タンパク質の配列、(ii) 核局在化配列NLSおよび(iii) β-TrCP配列をそれぞれ含有するアミノ酸鎖からなる。
好ましい実施態様によれば、β-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質は、核酸配列SEQ ID NO.3によってコードされているアミノ酸配列SEQ ID NO.4を有するタンパク質からなる。配列SEQ ID NO.4を有するタンパク質は、NH2末端からCOOH末端において、(i) アミノ酸位置1からアミノ酸位置240まで続く検出可能タンパク質配列GFP(yEGFP3)、(ii) アミノ酸位置241からアミノ酸位置243まで続く第1スペーサーペプチド、(iii) アミノ酸位置244からアミノ酸位置250まで続くSV40ウイルス大T抗原NLSペプチド、(iv) アミノ酸位置251からアミノ酸位置255まで続く第2スペーサーペプチドおよび(v) アミノ酸位置256からアミノ酸位置860まで続くβ-TrCPポリペプチドのそれぞれからなる。配列SEQ ID NO.3の核酸は、5’末端から3’末端において、(i) ヌクレオチド位置1からヌクレオチド位置714まで続く検出可能タンパク質GFP(yEGFP3)をコードする配列、(ii) ヌクレオチド位置715からヌクレオチド位置729まで続く第1スペーサーペプチドをコードする配列、(iii) ヌクレオチド730からヌクレオチド750まで続くSV40ウイルス大T抗原NLSペプチドをコードする配列、(iv) 位置751からヌクレオチド765まで続く第2スペーサーペプチドをコードする配列および(v) ヌクレオチド766からヌクレオチド2538まで続くβ-TrCPポリペプチドをコードする配列のそれぞれからなる。
【0024】
さらにもう1つの局面によれば、本発明に従うスクリーニング方法は、組換え酵母細胞を下記によって形質転換させることに特徴を有する:
(1) (a) (i)IκBαポリペプチドを含有する融合タンパク質、(ii) 核局在化配列および(iii)第1検出可能タンパク質をコードする読取り枠、および(b) 酵母細胞内で上記読取り枠の発現をもたらす官能性調節配列を含有する第1のポリヌクレオチド;および、
(2) (a) (i) 上記β-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質、(ii) 核局在化配列をコードする読取り枠、および(iii) 酵母細胞内で上記読取り枠の発現をもたらす官能性調節配列を含有する第2のポリヌクレオチド。
上記ポリヌクレオチド(1)は、配列SEQ ID NO.1の核酸からなり得る。
上記ポリヌクレオチド(2)は、配列SEQ ID NO.3の核酸からなり得る。
【0025】
本発明に従う好ましい核酸、発現ベクターおよび形質転換酵母細胞
本発明によれば、核酸は、これら核酸を酵母細胞中に導入するときに、これら核酸が、それぞれ、融合タンパク質IκBα検出可能タンパク質とβ-TrCPポリペプチド含有タンパク質との発現をこれらの細胞内、より具体的には、酵母細胞の核心内で生じさせるように合成する。
先ず、合成した核酸の各々は、それぞれ、融合タンパク質IκBα検出可能タンパク質またはβ-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質である興味あるタンパク質をコードする“読取り枠”または“ORF”とも称するコード配列を含有し、また、該興味あるタンパク質は、その配列中に、少なくとも核局在化ペプチドの配列も含有する。本発明に従う核酸の幾つかの具体的な例は、配列SEQ ID NO.1およびSEQ ID NO.3の核酸であり、それらの構造は、本明細書において前記で説明している。
また、上記核酸の各々は、酵母細胞内で官能性のプロモーターを含有する調節配列も含有する。
第1の好ましい実施態様によれば、酵母細胞内で官能性のプロモーターは、プロモーターPGK1、ADH1、TDH3、LEU2およびTEF1から選択し得る構成プロモーターからなる。
好ましくは、IκBα検出可能タンパク質融合タンパク質およびβ-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質のそれぞれを発現させる時間を正確に制御するという目的でもって、核酸の各々は、プロモーターとして、いわゆる“誘発性”のプロモーター、即ち、誘発剤の作用に対して感受性である酵母細胞内で官能性のプロモーターを含有する。誘発剤を酵母細胞培養培地に添加したとき、上記興味あるタンパク質をコードする配列の発現を活性化させるプロモーターを使用し得る(その発現は該プロモーターの制御下にある)。また、誘発剤を酵母細胞培養培地に添加したとき、上記興味あるタンパク質をコードする配列の発現を抑制または阻止するプロモーターも使用し得る(その発現は該プロモーターの制御下にある)。
従って、プロモーターの第2の好ましい実施態様によれば、本発明の核酸中に含有させる誘発性プロモーターは、CUP1, GAL1, MET3, MET25, MET28, SAM4およびPHO5から選択する。
【0026】
好ましい実施態様においては、融合タンパク質IκBα検出可能タンパク質をコードする核酸またはポリヌクレオチドは、グルコースの存在下に、IκBαポリペプチドを含有する融合タンパク質をコードする読取り枠の発現を活性化させるGAL1調節配列を含有する。
従って、本発明のスクリーニング方法の有利な実施態様においては、IκBα因子を含有する融合タンパク質の発現は、スクリーニング中に一時的な形で生じる。20分〜24時間で変動する一定時間にて誘発させた後、IκBαを含有するタンパク質の発現を、細胞をスクリーニングすべき分子に暴露させる前に、選択的に停止させる(当業者に“プロモーター遮断”として知られている手順により)。この発現の停止は、IκBαを含有する3成分タンパク質の発現を制御するプロモーターの活性を抑制し得る分子を培養培地に添加する(または除去する)ことによって実施する。
即ち、IκBα検出可能タンパク質融合タンパク質をGAL1遺伝子プロモーターの制御下に発現させるとき、その後で、このプロモーターの発現を、グルコースを培養培地に2%の最終濃度に添加することによって抑制する。IκBαを含有する融合タンパク質の新たな合成を停止させることは、該融合タンパク質の安定性のリアルタイム測定を、例えば、合成を停止させた後に酵母細胞の蛍光を経時的に測定することによって可能にし、この実施態様においては、該融合タンパク質は、GFPまたはGFP由来のタンパク質のような、内在性蛍光により検出可能なタンパク質を含有する。
【0027】
本発明に従うスクリーニング方法のもう1つのとりわけ有利な実施態様においては、IκBα因子を含有する融合タンパク質の一時的発現を、β-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質の等価の一時的発現と関連させる。この実施態様においては、IκBαポリペプチドを含有する融合タンパク質を、選定した時間T1において、例えば、IκBαポリペプチドを含有する融合タンパク質をGAL1プロモーターの制御下に発現させ、且つT1時間中に0.5〜4%ガラクトースの存在下に増殖させる酵母細胞を使用することによって発現させる。t2の時点で、β-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質の発現を誘発させる。この誘発は、CUP1遺伝子プロモーターの制御下にβ-TrCPを含有するタンパク質を発現させる細胞内で、例えば、0.05mM〜5mMからなる濃度の硫酸銅を培養培地に添加することによって達成される。時間T1の終了時に、IκBαを含有する融合タンパク質の発現を、グルコースを0.5〜2%からなる濃度まで培養培地に添加することによって停止させる。このグルコースの添加は、遺伝子プロモーターCUP1下でのβ-TrCPを含有するタンパク質の発現に対しては影響を有さない。即ち、本発明方法のこの実施態様においては、β-TrCPを含有するユビキチンリガーゼの集積は、IκBαを含有する融合タンパク質の新たな合成が停止している間も続く。
即ち、本発明のスクリーニング方法の特定の実施態様においては、β-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質をコードする核酸またはポリヌクレオチドは、β-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質をコードする読取り枠の発現を硫酸銅の存在下に活性化させる調節配列CUP1を含有する。
【0028】
従って、本発明のさらなる目的は、IκBαポリペプチドおよび少なくとも1種の第1検出可能タンパク質を含有する融合タンパク質をコード化する読取り枠並びに該読取り枠の発現を生じさせる酵母細胞内で官能性の調節配列を含むコードポリヌクレオチドを含有する、酵母細胞内で官能性の発現カセットである。
そのような発現カセットは、本発明に従う核酸、即ち、配列SEQ ID NO.1からなり得、該配列は、融合タンパク質GFP-NLS-IκBα、即ち、配列SEQ ID NO.2をコードしている。
また、本発明は、β-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質をコード化する読取り枠、および該読取り枠の発現をもたらす酵母細胞内で官能性の調節配列を含有するポリヌクレオチドを含む、酵母細胞内で官能性の発現カセットにも関する。
そのような発現カセットは、本発明に従う核酸、即ち、配列SEQ ID NO.3からなり得、該配列は、融合タンパク質GFP-NLS-βTrCP、即ち、配列SEQ ID NO.4をコードしている。
そのような発現カセットの第1の好ましい実施態様によれば、上記調節配列は、プロモーターPGK1、ADH1、TDH3、LEU2およびTEF1から選択するプロモーターのような、酵母細胞内で官能性の誘発性プロモーターを含有する。
そのような発現カセットの第2の好ましい実施態様によれば、上記発現カセットのいずれかまたは双方内で、上記ポリヌクレオチド中に含有させた調節配列、上記第2ポリヌクレオチド中に含有させた調節配列、または双方の調節配列は、誘発性プロモーターとも称する、誘発剤の作用に対して感受性である酵母細胞内で官能性のプロモーターを含有する。
最も好ましくは、酵母細胞内で官能性の誘発性プロモーターは、CUP1, GAL1, MET3, MET25, MET28, SAM4およびPHO5から選択する。
【0029】
従って、本発明に従うスクリーニング方法のもう1つの有利な実施態様においては、酵母細胞は、組込まれていない形、例えば、酵母細胞内で官能性のベクターの形で存在し且つ酵母細胞内で官能性の少なくとも1つの複製起源を担持する(i) 融合タンパク質IκBα検出可能タンパク質をコードする配列を含有する核酸またはポリヌクレオチドおよびそれと一緒の(ii) β-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質をコードする核酸またはポリヌクレオチドによって形質転換させる。
本発明に従うスクリーニング方法のさらにもう1つの実施態様においては、上記組換え酵母細胞は、実施例において例証するように、そのゲノム中に組込んだ形で、融合タンパク質IκBα検出可能タンパク質をコードする配列を含有する核酸またはポリヌクレオチド並びにβ-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質をコードする核酸またはポリヌクレオチドを含む。
一般に、本発明のスクリーニング方法を使用するためには、高浸透性膜を有する、とりわけ、本発明方法によって試験すべき薬剤に対して良好な浸透性を有する酵母細胞を使用するのが有利である。
上記2種の興味あるタンパク質の発現が誘発性プロモーターの制御下にあるような本発明のスクリーニング方法の好ましい実施態様を使用するには、この場合も、該誘発性プロモーターが感受性である誘発剤物質に対して高浸透性膜を有する酵母細胞を使用するのが有利である。
従って、本発明のスクリーニング方法のもう1つの好ましい実施態様においては、PDR1およびPDR3遺伝子(これら2つの遺伝子は、酵母内で、原形質膜トランスポーターの発現を制御する転写因子をコードする(Vidal等、1999年;Nourani等、1997年))を不活化させる変異体のような、試験下の上記物質に対する浸透性を増大させる1種または数種の変異体を含有するゲノムを有する酵母株を使用する。
好ましくは、Bailis等(1990年)によって開示されたサッカロミセス セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)酵母株W303または該酵母サッカロミセス セレビジエの任意の他の特性決定株の遺伝子背景を有する酵母株を使用する。
【0030】
外来DNAによる酵母細胞の形質転換は、好ましくは、当業者にとって公知の方法、とりわけ、Schiestl等(1989年)によって開示された方法を使用して実施する。種々の酵母株の構築は、Sherman等(1979年)によって詳細に開示された公知の遺伝子技術(増殖、胞子形成、子嚢の開裂および胞子のフェノタイプ分析)およびRothstein等(1991年)によって詳細に開示された逆遺伝子法を使用して実施した。
本発明によれば、酵母は、好ましくは、古典的な分子生物学法に従って、とりわけ、Sambrook等(1989年)およびAusubel等(1990〜2004年)によって開示されたプロトコールに従って構築したプラスミドによって形質転換させる。
即ち、本発明のもう1つの目的は、本明細書において定義したような発現カセットを含有することを特徴とする発現ベクターからなる。
本発明に従う第1のベクターは、実施例において記載しており、且つパリのパスツール研究所のCollection Nationale de Cultures de microorganismes(寄託当局である)に寄託番号I-3187として寄託された酵母株CYS135の構築において使用したベクターpCSY226-NLS-IκBαである。
本発明に従う第2のベクターは、実施例において記載しており、且つパリのパスツール研究所のCollection Nationale de Cultures de microorganismesに寄託番号I-3187として寄託された酵母株CYS135の構築において使用したベクターpCSY226-NLS-β-TrCPである。
【0031】
また、本発明は、ゲノム中に取込ませた形で、下記を含有する組換え酵母株にも関する:
(i) IκBαポリペプチドおよび少なくとも1種の第1検出可能タンパク質を含有する融合タンパク質をコード化する読取り枠、および該読取り枠の発現を制御する酵母細胞内で官能性の調節配列を含有する第1のポリヌクレオチド;および、
(ii) β-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質をコード化する読取り枠、および該読取り枠の発現を制御する酵母細胞内で官能性の調節配列を含有する第2のポリヌクレオチド。
とりわけ、本発明は、パリのパスツール研究所のCollection Nationale de Cultures de Microorganismes (CNCM)に寄託番号I-3187として寄託された酵母株CYS135からなる、上記で定義した組換え酵母株に関する。
また、本発明は、下記を含有することを特徴とする、β-TrCPタンパク質を含有する官能性ユビキチンリガーゼタンパク質複合体によるIκBαタンパク質のユビキチン化を調節する薬剤のスクリーニング用の手段またはキット関する:
(i) 上記で定義したようなIκBαポリペプチドを含有する融合タンパク質をコードする発現カセットを含有する第1の発現ベクター;および、
(ii) 上記で定義したようなβ-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質をコードする発現カセットを含有する第2の発現ベクター。
また、本発明は、ゲノム中に組込んだ形で、下記のそれぞれを含有する組換え酵母細胞を含むことを特徴とする、β-TrCPタンパク質を含有する官能性ユビキチンリガーゼタンパク質複合体によるIκBαタンパク質のユビキチン化を調節する薬剤のスクリーニング用の手段またはキットに関する:
(i) 上記で定義したようなIκBαポリペプチドを含有する融合タンパク質をコードする発現カセット;および、
(ii) 上記で定義したようなβ-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質をコードする発現カセット。
好ましくは、上記の手段またはキットは、CNCMに寄託番号I-3187として寄託された株CYS135の組換え酵母細胞を含有する。
【0032】
本発明に従うスクリーニング方法は、ヒトIκBα因子、即ち、タンパク質分解のプロテアソーム-ユビキチン経路の基質に関連するユビキチンリガーゼSCFβ-TrCP活性の可視化を可能にする。本発明方法は、炎症および免疫症候群、ある種のガン、“再灌流損傷”のようなある種の症状並びに真菌、細菌およびウイルス感染症のような、ヒトにおけるNF-κB因子の活性化およびNF-κB経路機能障害に関連する症状において使用するのに適する分子または薬剤をスクリーニングするのにとりわけ有利である。
本発明のスクリーニング方法の主な利点は、下記のとおりである:
‐使用の簡素性:IκBα因子に対するSCFβ-TrCPユビキチンリガーゼ活性は、酵母細胞内でのヒトIκBαおよびβ-TrCP因子の制御された発現により、容易に誘発される。さらにまた、IκBα因子をGFPのような内在性蛍光タンパク質と融合させたハイブリッドタンパク質として発現させたとき、IκBα因子に対する人工ユビキチンリガーゼSCFβ-TrCPの活性は、上記ハイブリッドタンパク質が発出する蛍光を定量することによって直接測定される。同様に、IκBα因子をルシフェラーゼのようなタンパク質に融合させたハイブリッドタンパク質として発現させたとき、IκBα因子に対する人工ユビキチンリガーゼSCFβ-TrCPの活性は、上記ハイブリッドタンパク質が発出する発光をフルオレセインのような基質の存在下で定量することによって直接測定される。
‐治療背景における適応性:IκBα因子に対する人工ユビキチンリガーゼSCFβ-TrCPの活性は、細胞全体に対して行なう官能性試験に従って追試される。即ち、本発明に従う生体外スクリーニング方法は、IκBαの分解を活性化または抑制し得る分子の選択をこれら分子の最終的な治療用途の背景と同様な背景において可能にする。
【0033】
‐特異性:本発明に従うスクリーニング方法は、細胞内での生体外使用であるが、ヒトとは異種の生物体内での2つのヒトタンパク質IκBαおよびβ-TrCPの共発現に依存しているので、特異性である。本発明のスクリーニング方法により選択された分子は、ユビキチンリガーゼβ-TrCP/タンパク質基質IκBα対に対して特異性であり、従って、例えば、ヒト細胞中のIκBα分解を誘発させる広範囲の経路情報伝達の1つを干渉する能力故に選択された分子ではない。事実、本発明に従うスクリーニング方法の出発時において、中間人工ユビキチンリガーゼSCFβ-TrCPによるIκBαの分解は、例えば、IκBαをGAL1プロモーターの制御下に発現させたときの該プロモーター活性を遮断するグルコースの添加のような完全に人工的で且つ完全に再現性のある代謝経路によって誘発される。
‐組換え酵母株の安定性:酵母染色体中の選定した位置での組込み方法および遺伝子のターゲット置換方法は、酵母染色体由来のIκBαまたはβ-TrCPのいずれかを含有するハイブリッドヒトタンパク質を発現する組換え酵母株の構築を可能にする。従って、これらの組換え酵母株は、遺伝子的に安定であり、無限に増殖し保持し得る。
‐増殖およびスクリーニングの迅速性:酵母は、急速増殖性の高収率生物体である。とりわけ、本発明のスクリーニング方法は、好ましくは、酵母細胞を酵母細胞の増殖がとりわけ迅速で且つ収率がとりわけ高い完全培養培地中で培養させることによって実施し、それによって、大量の組換え酵母細胞を回収して大量のスクリーニング試験を同時に実施するのを可能にしている。
‐低コスト:酵母は、培養、保存および特性決定が費用高でない微生物である。
‐本発明のスクリーニング方法の自動化:酵母は、小容量で、低温で、標準雰囲気で、空気中で培養し得る微生物であり、このことは、本発明方法を自動化スクリーニング(ロボット工学)にとりわけ適するものにしている。
本発明に従うスクリーニング方法は、抗炎症剤、抗がん剤および抗ウイルス剤並びに真菌、細菌またはウイルス感染症において使用する薬剤のような活性薬剤を選択し、特性決定するのにとりわけ有用である。
【0034】
さらにまた、本発明を、如何なる形でも限定するものではないが、添付図面および以下の実施例により具体的に説明する。
(実施例)
実施例1〜3:本発明に従う組換えベクターの構築
A. 実施例1〜3における材料および方法
A.1. 使用するポリヌクレオチド配列の概要
IκBαタンパク質の配列は、Strausberg等において記載されている配列である(PNAS (1999), 99(26): 16899-16903)。
ユビキチンリガーゼ複合体SCFβ-TrCPのβ-TrCPレセプターサブユニットの配列は、Yaron等において記載されている配列である(Nature (1998) 396(6711): 590-594)。
酵母中での発現に最適化したオワンクラゲ(Aequorea Victoria)由来のGFP遺伝子(yEGFP3)およびその生成物の緑色蛍光タンパク質mut3 (以下、GFPと称する)の配列は、Cormack等によって開示された配列である(Gene (1996) 173 (1): 33-38)。
SV40ウイルス大T抗原の核局在化シグナル“NLS”配列は、下記の核酸配列の翻訳である:
5’-ACCTCCAAAAAAGAAGAGAAAGGTCGAATT-3’ (SEQ ID NO.25)
pRS306プラスミドの配列は、SikorskiおよびHieterによって開示された配列である(Genetics (1989) 122(1): 19-27)。
pRS304プラスミドの配列は、SikorskiおよびHieterによって開示された配列である(Genetics (1989) 122(1): 19-27)。
pRS314プラスミドの配列は、SikorskiおよびHieterによって開示された配列である(Genetics (1989) 122(1): 19-27)。
pRS316プラスミドの配列は、SikorskiおよびHieterによって開示された配列である(Genetics (1989) 122(1): 19-27)。
【0035】
LacZ遺伝子の上流で4個のLexAオペレーターを含有するプラスミドpSH18-34の配列は、Hanes et Brentによって開示された配列である(Cell (1989), 57:1275-1293)。
LexAタンパク質と融合させたSkp1タンパク質を発現するpLexSkp1-1プラスミドの配列は、Patton等において開示された配列である(Genes & Dev (1998), 12:692-705)。
Gal4酵母転写因子のアクチベータードメインに融合させたヒトβ-TrCPタンパク質を発現するpGADβTrCPプラスミドの配列は、Margottin等において開示された配列である(Molec. Cell (1998), 1:565-574)。
以下の説明において使用する酵母サッカロミセス セレビジエ(S. cerevisiae)に由来するGAL1プロモーター遺伝子の配列は、JohnstonおよびDavisによって開示された配列である(Mol. Cell. Biol. (1984) 4 (8): 1440-1448)。
以下の説明において使用する酵母サッカロミセス セレビジエに由来するMET3プロモーター遺伝子の配列は、Cherest等によって開示された配列である(Mol. Gen. Genet. (1987) 210 (2): 307-313)。
以下の説明において使用する酵母サッカロミセス セレビジエに由来するMET28プロモーター遺伝子の配列は、Kuras等によって開示された配列である(EMBO J. (1996) 15(10): 2519-2529)。
以下の説明において使用する酵母サッカロミセス セレビジエに由来するTEF1プロモーター遺伝子の配列は、Schaaff-Gerstenschlager等によって開示された配列である(Eur. J. Biochem. (1993) 217 (1): 487-492)。
以下の説明において使用する酵母サッカロミセス セレビジエに由来するSAM4プロモーター遺伝子の配列は、Thomas等によって開示された配列である(J. Biol. Chem. (2000) 275(52): 40718-40724)。
【0036】
以下の説明において使用する酵母サッカロミセス セレビジエに由来するMET25プロモーター遺伝子の配列は、Kerjan等によって開示された配列である(Nucleic Acids Res.(1986) 14(20): 7861-7871)。
以下の説明において使用する酵母サッカロミセス セレビジエに由来するPHO5プロモーター遺伝子の配列は、Feldman等によって開示された配列である(EMBO J. (1994) 13(24): 5795-5809)。
以下の説明において使用する酵母サッカロミセス セレビジエに由来するCUP1プロモーター遺伝子の配列は、Karin等によって開示された配列である(PNAS (1984) 81(2): 337-341)。
以下の説明において使用する酵母サッカロミセス セレビジエに由来するPGK1プロモーター遺伝子の配列は、Bolle等によって開示された配列である(Yeast (1992) 8(3): 205-213)。
以下の説明において使用する酵母サッカロミセス セレビジエに由来するADH1プロモーター遺伝子の配列は、BennetzenおよびHallによって開示された配列である(J. Biol. Chem.
(1982) 257(6): 3018-3025)。
以下の説明において使用する酵母サッカロミセス セレビジエに由来するTDH3プロモーター遺伝子の配列は、Arroyo等によって開示された配列である(未公表(1996年)、直接MIPSに寄託)。
以下の説明において使用する酵母サッカロミセス セレビジエに由来するLEU2プロモーター遺伝子の配列は、Rad等によって開示された配列である(Yeast (1991) 7(5): 533-538)。
【0037】
A.2. 使用慣例
説明には、サッカロミセス セレビジエ酵母生物学団体よって使用されている命名および活字規則を使用する。
‐野生タイプ遺伝子の名称は、イタリック体大文字で示す;例えば:GAL1。
‐変異形の遺伝子の名称は、イタリック体小文字で示し、知られている場合の対立遺伝子番号はハイフォンの後に続く;例えば、cup1-1。
‐遺伝子中の非官能性対立遺伝子の名称は、小文字で示し、その後2個のコロン、次いで官能性遺伝子の名称と続く;例えば、ppr1::TRP1 (この例においては、非官能性遺伝子ppr1は官能性遺伝子TRP1によって遮断されている)。
また、非官能性遺伝子は、名称と一緒の“デルタ記号”によっても示し得る;例えば、gal4Δ。
‐タンパク質の名称および該タンパク質をコードする遺伝子の名称は、大文字である頭文字を除いて、小文字で示す;例えば、Gal4 (また、pが後に付く同じ記号を使用してもよい;例えば、Gal4p)。
A.3. プラスミドの構築についての事前説明
プラスミドは、全て、Sambrook等(Molecular Cloning, Laboratory Manual, 2nd
edition, (1989), Cold Spring Harbor, N. Y.)およびAusubel等(Current Protocols in Molecular Biology, (1990-2004),
John Wiley and Sons Inc, N.Y.)によって開示されているプロトコールに従う古典的分子生物学方法を使用して構築した。プラスミドDNAのクローニング、複製および産生は、大腸菌のDH10B株中で実施した。
【実施例1】
【0038】
酵母内で融合タンパク質GFP-IκBαおよびGFP-NLS-IκBαを発現し得るプラスミドの構築
以下のプラスミドは、オワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質(GFP)の変異体と融合させたヒトIκBαタンパク質の誘導体を酵母サッカロミセス セレビジエ内で発現し得る。プラスミドの構築次第で、上記融合タンパク質は、SV40ウイルスの大T抗原由来の核局在化配列を含有するかまたは含有しない。この配列の導入は、上記細胞の核コンパートメントへ向わせる配列を含有するタンパク質を生じさせる。
酵母サッカロミセス セレビジエのGAL1遺伝子プロモーター(pGal1)に相応する620塩基対(bp)フラグメントを、野生タイプサッカロミセス セレビジエ株、X2180-1AのゲノムDNAによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、オリゴヌクレオチド“pGAL1(Asp)Forw”:配列5’-GCTGGGTACCTTAATAATCATATTACATGGCATTA-3’ [SEQ ID NO.6]および“pGAL1(EcoRI)Rev”:配列5’-GGCGGAATTCTATAGTTTTTTCTCCTTGACGTTA-3’ [SEQ ID NO.7]を使用して増幅させた。
得られたフラグメントを制限酵素Asp718IおよびEcoRIにより消化し、前以って酵素Asp718IおよびEcoRIで消化したサッカロミセス セレビジエ-大腸菌シャトルプラスミドpRS306中に挿入して、ベクターpRS306-pGAL1を産生させた。
ベクターpUC19-yEGFP3に由来し、配列が酵母中での発現に最適化されているオワンクラゲの緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子の変異体(yEGFP3)に相応する720塩基対(bp)フラグメントを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、オリゴヌクレオチド“GFPEcoR15”:配列5’-GGTCGGAATTCATGTCTAAAGGTGAAGAATTATTC-3’ [SEQ ID NO.8]および“PBamHI(SmaI/SrfI PstI)3’”:配列5’-GGCGGGATCCGCCCGGGCTCTGCAGTTTGTACAATTCATCCATACC-3’ [SEQ ID NO.9]を使用して増幅させた。得られたフラグメントを制限酵素BamHIおよびEcoRIにより消化し、前以って酵素BamHIおよびEcoRIで消化したプラスミドpRS306-pGAL1中に挿入して、ベクターpRS306-pGAL1-yEGFP3を産生させた。
【0039】
酵母サッカロミセス セレビジエのADH1遺伝子ターミネーターシグナル(tADH1)に相応する340塩基対(bp)フラグメントを、野生タイプサッカロミセス セレビジエ株、X2180-1AのゲノムDNAによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、オリゴヌクレオチド“TermADH1(NotIBstXI)5’”:配列5’-GGCGGCGGCCGCCACCGCGGTGGGCGAATTTCTTATGATTTATG-3’ [SEQ ID NO.10]および“TermADH1(SacI)3’”:配列5’-GGCGGAGCTCTGGAAGAACGATTACAACAG-3’
[SEQ ID NO.11]を使用して増幅させた。得られたフラグメントを制限酵素SacIおよびNotIにより消化し、前以って酵素SacIおよびNotIで消化したプラスミドpRS306-pGAL1-yEGFP3中に挿入して、ベクターpCSY226を産生させた。
タンパク質IκBαをコードする遺伝子を、プラスミドpGad1318-IκBαから、制限酵素XbaIによる消化、次いで、突出物を除去して平滑3’末端を得るためのKlenow DNAポリメラーゼIによる処理、さらにその後の遺伝子の5’末端におけるBamHIによる第2の消化によって精製した。このフラグメントを、KpnI制限消化、次いで、Klenowフラグメントによる処理、さらにその後の制限酵素BamHIによる消化よって調製したプラスミドpCSY226中にクローニングした。得られたベクターをpCSY226-IκBαと称した。
また、このベクターの変形は、核局在化配列NLSを含む。この変形は、配列“NLS-5’”:5’ACCTCCAAAAAAGAAGAGAAAGGTCGAATT-3’ [SEQ ID NO.12]、および“NLS-3’”:5’-AATTCGACCTTTCTCTTCTTTTTTGGAGGT-3’ [SEQ ID NO.26]に相補性の1対のオリゴヌクレオチドを合成し、これらを再ハイブリッド化して二本鎖DNAを形成させることによって得られた。その後、このDNAフラグメントを制限酵素ScrFIで消化したベクターpCSY226-IκBαに導入して、ベクターpCSY226-NLS-IκBαを得た。
【実施例2】
【0040】
酵母内で融合タンパク質GFP-β-TrCPおよびGFP-NSL-β-TrCPを発現し得るプラスミドの構築
以下のプラスミドは、オワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質(GFP)の変異体と融合させたヒトβ-TrCPタンパク質の誘導体を酵母サッカロミセス セレビジエ内で発現し得る。プラスミドの構築次第で、上記融合タンパク質は、SV40ウイルスの大T抗原由来の核局在化配列を含有するかまたは含有しない。この配列の導入は、上記細胞の核コンパートメントへ向わせる配列を含有するタンパク質を生じさせる。
酵母サッカロミセス セレビジエのGAL1遺伝子プロモーター(pGal1)に相応する620塩基対(bp)フラグメントを、野生タイプサッカロミセス セレビジエ株、X2180-1AのゲノムDNAによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、オリゴヌクレオチド“pGAL1(Asp)Forw”:配列5’-GCTGGGTACCTTAATAATCATATTACATGGCATTA-3’ [SEQ ID NO.6]および“pGAL1(EcoRI)Rev”:配列5’-GGCGGAATTCTATAGTTTTTTCTCCTTGACGTTA-3’
[SEQ ID NO.7]を使用して増幅させた。
得られたフラグメントを制限酵素Asp718IおよびEcoRIにより消化し、前以って酵素Asp718IおよびEcoRIで消化したサッカロミセス セレビジエ-大腸菌シャトルプラスミドpRS306中に挿入して、ベクターpRS306-pGAL1を産生させた。
ベクターpUC19-yEGFP3に由来し、配列が酵母中での発現に最適化されているオワンクラゲの緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子の変異体(yEGFP3)に相応する720塩基対(bp)フラグメントを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、オリゴヌクレオチド“GFPEcoR15’”:配列5’-GGTCGGAATTCATGTCTAAAGGTGAAGAATTATTC-3’ [SEQ ID NO.8]および“GFPBamHI(SmaI/SrfI PstI)3’”:配列5’-GGCGGGATCCGCCCGGGCTCTGCAGTTTGTACAATTCATCCATACC-3’ [SEQ ID NO.9]を使用して増幅させた。
得られたフラグメントを制限酵素BamHIおよびEcoRIにより消化し、前以って酵素BamHIおよびEcoRIで消化したプラスミドpRS306-pGAL1中に挿入して、ベクターpRS306-pGAL1-yEGFP3を産生させた。
【0041】
酵母サッカロミセス セレビジエのADH1遺伝子プロモーターシグナル(tADH1)に相応する340塩基対(bp)フラグメントを、野生タイプサッカロミセス セレビジエ株、X2180-1AのゲノムDNAによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、オリゴヌクレオチド“TermADH1(NotIBstXI)5’”:配列5’-GGCGGCGGCCGCCACCGCGGTGGGCGAATTTCTTATGATTTATG-3’ [SEQ ID NO.10]および“TermADH1(SacI)3’”:配列5’-GGCGGAGCTCTGGAAGAACGATTACAACAG-3’
[SEQ ID NO.11]を使用して増幅させた。得られたフラグメントを制限酵素SacIおよびNotIにより消化し、前以って酵素SacIおよびNotIで消化したプラスミドpRS306-pGAL1-yEGFP3中に挿入して、ベクターpCSY226を産生させた。β-TrCPタンパク質をコードする遺伝子を、プラスミドpGad1318-β-TrCPから、制限酵素BamHIおよびNotIによる消化によって精製した。このフラグメントを、制限酵素BamHIおよびNotIによる消化よって調製したプラスミドpCSY226中にクローニングした。得られたベクターをpCSY226-β-TrCPと称した。
また、このベクターの変形は、核局在化配列NLSを含む。この変形は、配列“NLS-5’”:5’ACCTCCAAAAAAGAAGAGAAAGGTCGAATT-3’ [SEQ ID NO.12]、および“NLS-3’”:5’-AATTCGACCTTTCTCTTCTTTTTTGGAGGT-3’ [SEQ ID NO.26]に相補性の1対のオリゴヌクレオチドを合成し、これらを再ハイブリッド化して二本鎖DNAを形成させることによって得られた。その後、このDNAを制限酵素ScrFIで消化したベクターpCSY226-β-TrCPに導入して、ベクターpCSY226-NLS-β-TrCPを得た。
【実施例3】
【0042】
酵母内で融合タンパク質GFP-β-TrCPおよびGFP-NSL-β-TrCPを発現し得るプラスミドの構築
以下のプラスミドは、酵母サッカロミセス セレビジエ内で、アミノ末端において3個の抗原性Flagモチーフの繰返しを含有するヒトβ-TrCPタンパク質の誘導体を発現する。これら融合タンパク質の発現は、プラスミドを含有する上記酵母細胞を、1〜10時間、2〜5%のガラクトースを含有する培養培地中で培養することによって誘発させる。
酵母サッカロミセス セレビジエのPGK1遺伝子プロモーター(pPGK1) )に相応する720塩基対(bp)フラグメントを、野生タイプサッカロミセス セレビジエ株、X2180-1AのゲノムDNAによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、オリゴヌクレオチド“pPGK1-Asp718-5'”:配列5’-GGCGGGTACCGTGAGTAAGGAAAGAGTGAGG-3’ [SEQ ID NO.13]および“pPGK-EcoRI-3’”:配列5’-GGCGGAATTCTGTTTTATATTTGTTGTAAAAAG-3’ [SEQ ID NO.14]を使用して増幅させた。
得られたフラグメントを制限酵素Asp7181およびEcoRIにより消化し、前以って酵素Asp7181およびEcoRIで消化したサッカロミセス セレビジエ-大腸菌シャトルプラスミドpRS304中に挿入して、ベクターpRS304-pPGK1を産生させた。
3 FLAGレポーター配列(3FLAG)の連鎖に相応する100塩基対(bp)フラグメントを、ベクターp3XFLAG-myc-CMV-24 5Sigma Aldrichによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、オリゴヌクレオチド“3FLAG-EcoRI-5’”:配列5’-GGCGGAATTCATGGACTACAAAGACCATGACGG-3’
[SEQ ID NO.15]および“3FLAGBamHI(SmaI/SrfI PstI)3’”:配列5’-GGCGGGATCCGCCCGGGCTCTGCAGCTTGTCATCGTCATCCTTGTA-3’ [SEQ ID NO.16]を使用して増幅させた。
得られたフラグメントを制限酵素BamHIおよびEcoRIにより消化し、前以って酵素BamHIおよびEcoRIで消化したプラスミドpRS304-pPGK1中に挿入して、ベクターpRS304-pGAL1-3FLAGを産生させた。
【0043】
酵母サッカロミセス セレビジエのADH1遺伝子ターミネーターシグナル(tADH1)に相応する340塩基対(bp)フラグメントを、野生タイプサッカロミセス セレビジエ株、X2180-1AのゲノムDNAによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、オリゴヌクレオチド“TermADH1(NotIBstXI)5’”:配列5’-GGCGGCGGCCGCCACCGCGGTGGGCGAATTTCTTATGATTTATG-3’ [SEQ ID NO.10]および“TermADH1(SacI)3’”:配列5’-GGCGGAGCTCTGGAAGAACGATTACAACAG-3’
[SEQ ID NO.11]を使用して増幅させた。
得られたフラグメントを制限酵素SacIおよびNotIにより消化し、前以って酵素SacIおよびNotIで消化したプラスミドpRS304-pPKG1-3FLAG中に挿入して、ベクターpCSY614を産生させた。
β-TrCPタンパク質をコードする遺伝子を、プラスミドpGad1318-β-TrCPから、制限酵素BamHIおよびNotIによる消化によって精製した。このフラグメントを、制限酵素BamHIおよびNotIによる消化よって調製したプラスミドpCSY614中にクローニングした。得られたベクターをpCSY614-β-TrCPと称した。
また、このベクターの変形は、核局在化配列NLSを含む。この変形は、配列5’ACCTCCAAAAAAGAAGAGAAAGGTCGAATT-3’ [SEQ ID NO.12]に対するオリゴヌクレオチドの相補対を合成し、これらを再ハイブリッド化して二本鎖DNAを形成させることによって得られた。その後、このDNAフラグメントを、制限酵素ScrFIにより消化したベクターpCSY614-β-TrCP中に組込み、ベクターpCSY614-NLS-β-TrCPを得た。
実施例4〜12:本発明に従うスクリーニング方法の開発
【実施例4】
【0044】
酵母細胞内での酵母Skp1とヒトβ-TrCPタンパク質との相互作用
Skp1とβ-TrCPタンパク質との相互作用を、Bartel等のツー・ハイブリッド方法を使用して可視化する(Cellular Interactions in Development: a practical approach (1991),
Oxford University Press, Oxford, pp153-179)。酵母細胞を、LexAオペレーターの制御下に、アクチベータードメインGal4と融合させたヒトβ-TrCPタンパク質を発現するプラスミドpGAD-β-TrCP、細菌タンパク質LexAのDNA結合性ドメインに融合させた酵母タンパク質Skp1を発現するプラスミドpLexSkp1-1、およびβ-ガラクトシダーゼをコードするLacZレポーター遺伝子を含むプラスミドpSH18-34によって同時に形質転換させる。そのような細胞由来の細胞抽出物中のβ-ガラクトトシダーゼ活性の測定は、このレポーター遺伝子の発現が、本明細書で説明する上記2種の融合タンパク質の1種のみを発現する細胞内でのβ-ガラクトトシダーゼの発現と比較したとき、係数15で増大することを示している。このレポーター遺伝子発現の誘発は、サッカロミセス セレビジエ由来のSkp1タンパク質がヒトβ-TrCPタンパク質と相互作用し得ることを示唆している。β-ガラクトトシダーゼ活性は、タンパク質のmg当りで分毎に形質転換した基質のnモル(nモル/分/mg)で表す。
【実施例5】
【0045】
SV40のNLS配列に融合させたまたは融合させてないいずれかに従うヒトタンパク質IκBαおよびβ-TrCPの酵母細胞内での局在化
GAL1プロモーター下に、ハイブリッドタンパク質GPF-IκBα、GFP-NLS-IκBα、GFP-β-TrCPまたはGFP-NLS-β-TrCPのいずれかを発現し得るプラスミドを含有する酵母細胞を、2%ガラクトースの存在下に2時間増殖させ、その後、蛍光顕微鏡で観察する。核心の位置は、核特異性染料のHoescht 333-42を使用して明確にする。
【実施例6】
【0046】
酵母細胞核心内でのIκBαタンパク質のリン酸化
実施例6は、酵母細胞の核心内でのヒトIκBαタンパク質の存在がセリン32および36においてそのリン酸化をもたらすかどうかを証明する。
融合タンパク質GFP-IκBαまたは3成分融合タンパク質GFP-NLS-IκBαのいずれかをGAL1プロモーター下に発現する細胞を、最少必須培地中で、2%のガラクトースの存在下に2時間培養させる。その後、これらの細胞由来のタンパク質を、Kuras等によって開示されたプロトコールに従って抽出する(Mol. Cell (2002), 10:69-80)。その後、これらのタンパク質を、先ずGFPタンパク質(いわゆる“GFP-IκBα”)に対する特異性抗原を、次いでセレン32においてリン酸化されたヒトIκBαタンパク質(いわゆる“P-IκBα)を特異的に認識する抗体を使用して、ウェスタンブロッティングにより分析する。各ウェル中に負荷したタンパク質総量の対照として、同じタンパク質を、酵母Lysyl-tRNA-シンターゼ(いわゆる“LysRS”)に対して特異性の抗体により分析する。いずれの融合タンパク質も発現させない酵母の親株によって産生されたタンパク質(いわゆる“対照”)は、特異性の試験として機能する。
【実施例7】
【0047】
GFP-NLS-IκBαタンパク質の分解
実施例7は、落射蛍光顕微鏡により、3成分融合タンパク質Flag-NLS-β-TrCPを同時に発現させる酵母細胞内での3成分融合タンパク質GFP-NLS-IκBαの分解を証明する。
使用する全ての株を、同一の方法で、増殖させ、蛍光顕微鏡によって分析する。細胞を、炭素源としてのガラクトースリッチの培地中で120分間増殖させる。時間t = 0において、2%グルコースを培養物に添加し、細胞を落射蛍光顕微鏡(Omega XF116フィルターを備えたNikon Eclipse蛍光顕微鏡)により観察する。全ての画像を、全く等しく調整したHamamastuRカメラを使用して記録し、LUCIA Gソフトウェアにより、グルコース添加の直前(t
= 0)、および添加後の10分、20分、30分および60分で分析した。融合タンパク質GFP-IκBαまたはGFP-NLS-IκBαの蛍光は、いわゆる“GFP”である。細胞内の核心(いわゆる“DNA”)の位置は、核特異性染料のHoescht 333-42を使用して明確にした。
A) NLSを含まず、酵母細胞の細胞質に局在化した融合タンパク質GFP-IκBαを発現すする酵母株CYS22 (MATa、his3、leu2、trp1、ura3::pGAL1-GFP-IκBα::URA3);
B) 酵母細胞の細胞質に局在化した融合タンパク質GFP-IκBαおよびFLAG-β-TrCPを発現する酵母株CYS61 (MATa、his3、leu2、ura3::pGAL1-GFP-IκBα::URA3、trp1::pGAL1-3Flag-βTrCP::TRP1);
C) 酵母細胞の核心に局在化した融合タンパク質GFP-NLS-IκBαを発現する酵母株CYS126 (MATa、his3、leu2、trp1、ura3::pGAL1-GFP-NLS-IκBα::URA3);
D) 酵母細胞の核心に局在化した融合タンパク質GFP-NLS-IκBαおよびFLAG-NLS-β-TrCPを発現する酵母株CYS135 (MATa、his3、leu2、ura3::pGAL1-GFP-NLS-IκBα::URA3、trp1::pGAL1-3Flag-NLS-ßTrCP::TRP1)。
【実施例8】
【0048】
Flag-NLS-β-TrCPの共発現を伴うまたは伴わないGFP-NLS-IκBαの分解(蛍光による結果)
実施例8は、発生した蛍光の測定により、3成分融合タンパク質Flag-NLS-β-TrCPを同時に発現させるまたは発現させない酵母細胞内での3成分融合タンパク質GFP-NLS-IκBαの分解を証明する。
図4に記載するのと同一で且つ図4に記載するのと同じ条件で増殖させた酵母株を蛍光顕微鏡で分析した。各株において、200個の細胞(少なくとも)の蛍光を、LUCIA Gソフトウェアを使用して、グルコース添加の直前(t=0)、および添加後の10分、20分、30分および60分で測定した。結果は、細胞当りで測定した蛍光量として、任意単位で示す。
【実施例9】
【0049】
Flag-NLS-β-TrCPの共発現を伴うまたは伴わないGFP-NLS-IκBαの分解(イムノブロッティングによる結果)
実施例9は、ウェスタンブロットタイプ生化学分析により、3成分融合タンパク質Flag-NLS-β-TrCPを同時に発現させる酵母細胞内での3成分融合タンパク質GFP-NLS-IκBαの分解を証明する。使用する全ての株を、同一の方法で、増殖させ分析する。細胞は、炭素源としてのガラクトースリッチの培地中で120分間増殖させる。時間t = 0において、2%グルコースを培養物に添加し、全タンパク質をグルコースの添加の直前(t = 0)、および添加後の10分、20分、30分および60分で抽出する。これらのタンパク質を、ウェスタンブロッティングにより、IκBαを含む融合タンパク質(いわゆる“GFP-NLS-IκBα”)のGFP成分に対する抗体および融合タンパク質Flag-NLS-β-TrCP(いわゆる“Flag-NLS-β-TrCP”)のFLAG成分に対する抗体を使用して分析する。各ウェル中に負荷したタンパク質総量の対照として、同じタンパク質を、酵母Lysyl-tRNA-シンターゼ(いわゆる“LysRS”)に対して特異性の抗体により分析する。いずれの融合タンパク質も発現させない酵母の親株によって産生されたタンパク質(いわゆる“対照”)は、特異性の試験として機能する。
A) NLSを含まず、酵母細胞の細胞質に局在化した融合タンパク質GFP-IκBαを発現すする酵母株CYS22 (MATa、his3、leu2、trp1、ura3::pGAL1-GFP-IκBα::URA3);
B) 酵母細胞の細胞質に局在化した融合タンパク質GFP-IκBαおよびFLAG-β-TrCPを発現する酵母株CYS61 (MATa、his3、leu2、ura3::pGAL1-GFP-IκBα::URA3、trp1::pGAL1-3Flag-βTrCP::TRP1);
C) 酵母細胞の核心に局在化した融合タンパク質GFP-NLS-IκBαを発現する酵母株CYS126 (MATa、his3、leu2、trp1、ura3::pGAL1-GFP-NLS-IκBα::URA3);
D) 酵母細胞の核心に局在化した融合タンパク質GFP-NLS-IκBαおよびFlag-NLS-β-TrCPを発現する酵母株CYS135 (MATa、his3、leu2、ura3::pGAL1-GFP-NLS-IκBα::URA3、trp1::pGAL1-3Flag-NLS-ßTrCP::TRP1)。
【実施例10】
【0050】
Flag-NLS-β-TrCPの共発現を伴うまたは伴わないセレン残基32および36において変異させたGFP-NLS-IκBαの分解(イムノブロッティングによる結果)
実施例10は、ウェスタンブロットタイプ生化学分析により、リン酸化部位Ser32およびSer36をAla残基で置換した変異3成分融合タンパク質GFP-NLS-IκBα[S3236A]、即ち、ヒト細胞において上記タンパク質を非分解性にする変異体の分解を証明する。分析は、この場合も、3成分融合タンパク質Flag-NLS-β-TrCPを発現するまたは発現しないいずれかの酵母細胞内で実施した。使用する全ての株を、同一の方法で、増殖させ分析した。細胞は、炭素源としてのガラクトースリッチの培地中で120分間増殖させた。時間t = 0において、2%グルコースを培養物に添加し、全タンパク質をグルコースの添加の直前(t = 0)、および添加後の10分、20分、30分および60分で抽出した。これらのタンパク質を、ウェスタンブロッティングにより、NLS-IκBα[S3236A]を含む融合タンパク質(いわゆる“GFP-NLS-IκBα[S3236A]”)のGFP成分に対する抗体および融合タンパク質Flag-NLS-β-TrCP(いわゆる“Flag-NLS-β-TrCP”)のFlag成分に対する抗体を使用して分析する。各ウェル中に負荷したタンパク質総量の対照として、同じタンパク質を、酵母Lysyl-tRNA-シンターゼ(いわゆる“LysRS”)に対して特異性の抗体により分析する。いずれの融合タンパク質も発現させない酵母の親株によって産生されたタンパク質(いわゆる“対照”)は、特異性の試験として機能する。
A) 酵母細胞の核心に局在化した変異融合タンパク質GFP-NLS-IκBα[S3236A]を発現する酵母株CYS138 (MATa、his3、leu2、trp1、ura3::pGAL1-GFP-NLS-IκBα[S3236A]::URA3);
B) 酵母細胞の核心に局在化した融合タンパク質GFP-NLS-IκBα[S3236A]およびFlag-NLS-β-TrCPを発現する酵母株CYS139 (MATa、his3、leu2、ura3::pGAL1-GFP-NLS-IκBα[S3236A]::URA3、trp1::pGAL1-3Flag-NLS-ßTrCP::TRP1)。
【実施例11】
【0051】
Flag-NLS-β-TrCPの共発現を伴うまたは伴わないGFP-NLS-IκBαの分解(蛍光による結果)
実施例11は、落射蛍光顕微鏡分析により、3成分融合タンパク質Flag-NLS-β-TrCPを同時に発現させる酵母細胞内での3成分融合タンパク質GFP-NLS-IκBα[S3236A]の分解を証明する。使用する2つの株(CYS138およびCYS139)を、同一の方法で、増殖させ、蛍光顕微鏡で分析した。細胞を落射蛍光顕微鏡(Omega XF116フィルターを備えたNikon Eclipse蛍光顕微鏡)により観察する。全ての画像を、全く等しく調整したHamamastuRカメラを使用して記録し、LUCIA Gソフトウェアにより、グルコース添加の直前(t=0)および添加後の10分、20分、30分および60分で分析した。融合タンパク質GFP-IκBαまたはGFP-NLS-IκBαの蛍光は、いわゆる“GFP”である。細胞内の核心(いわゆる“DNA”)の位置は、核特異性染料のHoescht 333-42を使用して明確にした。
【実施例12】
【0052】
Flag-NLS-β-TrCPの共発現を伴うまたは伴わないGFP-NLS-IκBαの分解(蛍光による結果)
実施例12は、発出蛍光の測定により、本明細書において説明する各酵母株における3成分融合タンパク質GFP-NLS-IκBα[S3236A]の分解を証明する。各株において、200個の細胞(少なくとも)の蛍光を、LUCIA Gソフトウェアを使用して、グルコース添加の直前(t = 0)および添加後の10分、20分、30分および60分で測定した。結果は、細胞当りで測定した蛍光量として、任意単位で示す。
【0053】

【0054】

【0055】

【0056】

【0057】
参考文献


【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】Skp1酵母タンパク質とβ-TrCPヒトタンパク質が酵母細胞内で相互作用する能力を示す。 x軸:形質転換酵母細胞内に存在するプラスミド、y軸:形質転換基質ナノモル/分/mg細胞タンパク質で表すβ-ガラクトシダーゼ活性。
【図2】SV40のNLS配列に融合させたまたはさせていないいずれかのヒトタンパク質IκBαおよびβ-TrCPの酵母細胞内での局在化を示す。 上の画像:Hoescht 333-42染料で染色した細胞核心DNAの蛍光顕微鏡画像。 下の画像:細胞内でのGFP発現の局在化を示す蛍光顕微鏡画像。 A:GFP-NLS-β-TrCPベクターによって形質転換させた細胞、B:GFP-β-TrCPベクターによって形質転換させた細胞、C:GFP-NLS-IκBαベクターによって形質転換させた細胞、D:GFP-IκBαベクターによって形質転換させた細胞。
【図3】酵母細胞の核心中でのヒトIκBαタンパク質の存在がセリン32および36においてそのリン酸化をもたらしているかどうかを示す。 図は、組換え酵母株CYS22およびCYS126それぞれの細胞タンパク質のゲル電気泳動画像である。
【図4】落射蛍光顕微鏡により、3成分融合タンパク質Flag-NLS-β-TrCPを同時に発現させる酵母細胞内での3成分融合タンパク質GFP-NLS-IκBαの分解を示す。 図4A〜4Dは、蛍光顕微鏡画像を示す:上の画像、Hoescht 333-42染料で染色した細胞核心DNA;下の画像、細胞内でのGFP発現の局在化を示す蛍光顕微鏡画像。 図4A:組換え酵母株CYS22によって得られた結果;図4B:組換え酵母株CYS61によって得られた結果;図4C:組換え酵母株CYS126によって得られた結果;図4D:組換え酵母株CYS135によって得られた結果。 x軸上:グルコースを細胞培養物に添加した後の各時間(分)。
【図5】発生した蛍光の測定による、3成分融合タンパク質Flag-NLS-β-TrCPを発現させるまたは発現させない酵母細胞内での3成分融合タンパク質GFP-NLS-IκBαの分解を示す。 結果は、グラフ上で囲い表示している組換え酵母株CYS135、CYS126、CYS61およびCYS22のそれぞれについて示している。 x軸:グルコースを細胞培養物に添加した後の時間(分)、y軸:蛍光の任意単位で示す平均蛍光強度。
【0059】
【図6】ウェスタンブロットタイプ生化学分析により、3成分融合タンパク質Flag-NLS-β-TrCPを同時に発現させる酵母細胞内での3成分融合タンパク質GFP-NLS-IκBαの分解を示す。 抗-GFP抗体およびFLAG抗-ペプチド抗体によって明らかにしたウェスタンブロッティングゲル画像。 x軸上:グルコースを細胞培養物に添加した後の時間(分)。 結果は、以下の組換え酵母株について示している:CYS22(図6A)、CYS61(図6B)、CYS126(図6C)およびCYS135(図6D)。
【図7】ウェスタンブロットタイプ生化学分析により、リン酸化部位Ser32およびSer36をAla残基で置換した変異3成分融合タンパク質GFP-NLS-IκBα[S3236A]、即ち、ヒト細胞において上記タンパク質を非分解性にする変異体の分解を示す。 抗-GFP抗体およびFLAG抗-ペプチド抗体によって明らかにしたウェスタンブロッティングゲル画像。 x軸上:グルコースを細胞培養物に添加した後の時間(分)。 結果は、以下の組換え酵母株について示している:CYS138(図7A)およびCYS139(図7B)。
【図8】落射蛍光顕微鏡分析により、3成分融合タンパク質Flag-NLS-β-TrCPを同時に発現させる酵母細胞内での3成分融合タンパク質GFP-NLS-IκBα[S3236A]の分解を示す。 図8A〜8Bは、蛍光顕微鏡画像を示す:上の画像、Hoescht 333-42染料で染色した細胞核心DNA;下の画像、細胞内でのGFP発現の局在化を示す蛍光顕微鏡画像。 図8A:組換え酵母株CYS138によって得られた結果;図8B:組換え酵母株CYS139によって得られた結果。 y軸上:グルコースを細胞培養物に添加した後の各時間(分)。
【図9】発出蛍光の測定により、上記の各酵母株における3成分融合タンパク質GFP-NLS-IκBα[S3236A]の分解を示す。 結果は、グラフ上の囲い表示している組換え酵母株CYS138およびCYS139のそれぞれにおいて示している。 x軸:グルコースを細胞培養物に添加した後の時間(分)、y軸:蛍光の任意単位で示す平均蛍光強度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を含むことを特徴とする、β-TrCPタンパク質を含有する官能性ユビキチンリガーゼタンパク質複合体によるIκBαタンパク質ユビキチン化を調節する薬剤のスクリーニング方法:
(a) 試験すべき候補薬剤を、核心において下記を発現する組換え酵母細胞と接触させる工程;
(i) ポリペプチドIκBαおよび少なくとも1種の第1検出可能タンパク質を含有する融合タンパク質;および、
(ii) ポリペプチドβ-TrCPを含有するタンパク質;
(b) 前記酵母細胞内の前記第1検出可能タンパク質を、前記候補薬剤を前記細胞と接触させた後の少なくとも一定期間の終了時に定量する工程;
(c) 工程(b)において得られた結果を、工程(a)を前記候補薬剤の不存在下に実施したときに得られる対照結果と比較する工程。
【請求項2】
工程(a)が、下記の工程を含む、請求項1記載の方法:
(a1) 核心において前記ポリペプチドIκBαおよび少なくとも1種の第1検出可能タンパク質を含有する融合タンパク質を発現する酵母細胞を増殖させる工程;
(a2) 前記酵母細胞による前記ポリペプチドIκBαおよび少なくとも1種の第1検出可能タンパク質を含有する融合タンパク質の発現を停止させる工程;
(a3) 工程(a2)の終了時に得られた酵母細胞を前記試験すべき候補薬剤と接触させる工程。
【請求項3】
前記酵母細胞が、工程(a1)、(a2)および(a3)の全てに亘って前記ポリペプチドβ-TrCPを含有するタンパク質を発現する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記酵母細胞が、工程(a2)および(a3)の全てに亘って前記ポリペプチドβ-TrCPを含有するタンパク質を発現し、工程(a1)においては前記ポリペプチドβ-TrCPを含有するタンパク質を発現しない、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記酵母細胞が、工程(a2)および(a3)の全てに亘って前記ポリペプチドβ-TrCPを含有するタンパク質を発現し、そして、
(i) 工程(a1)の開始時の一定時間においては前記ポリペプチドβ-TrCPを含有するタンパク質を発現せず、
(ii) 工程(a1)の残りの時間においては前記ポリペプチドβ-TrCPを含有するタンパク質を発現する、請求項2記載の方法。
【請求項6】
IκBαポリペプチドを含有する前記ポリペプチド中の検出可能タンパク質を、抗原、蛍光タンパク質、および酵素活性を有するタンパク質から選択する、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記検出可能タンパク質が、GFPタンパク質またはその誘導体の1種、YFPタンパク質またはその誘導体の1種、およびdsREDタンパク質から選ばれる蛍光タンパク質である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記検出可能タンパク質が、ルシフェラーゼおよびβ-ラクタマーゼから選ばれる酵素活性を有するタンパク質である、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記検出可能タンパク質が、HaペプチドおよびFlagペプチドから選ばれる抗原である、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記ポリペプチドβ-TrCPを含有するタンパク質が、第2の検出可能タンパク質も含有する融合タンパク質である、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記β-TrCPポリペプチドを含有する融合タンパク質中に含ませた前記第2検出可能タンパク質を、抗原、蛍光タンパク質、および酵素活性を有するタンパク質から選択する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
(i) 前記ポリペプチドIκBαを含有する融合タンパク質中に含ませた第1検出可能タンパク質と(ii) 前記β-TrCPポリペプチドを含有する融合タンパク質中に含ませた前記第2検出可能タンパク質とが、互いに異なる、請求項10および11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記ポリペプチドIκBαを含有するタンパク質が、核局在化ペプチドも含有する、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記ポリペプチドβ-TrCPを含有するタンパク質が、核局在化ペプチドも含有する、請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記ポリペプチドIκBαを含有するタンパク質が、配列SEQ ID NO 2を有するタンパク質である、請求項1〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記ポリペプチドβ-TrCPを含有するタンパク質が、配列SEQ ID 4を有するタンパク質である、請求項1〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
工程(b)において、前記第1検出可能タンパク質が抗原である場合、該第1検出可能タンパク質を、該タンパク質と前記抗原を認識する抗体との間で形成された複合体を検出することによって定量する、請求項1〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
工程(b)において、前記第1検出可能タンパク質が蛍光タンパク質である場合、該第1検出可能タンパク質を、該タンパク質が発出する蛍光シグナルを検出することによって定量する、請求項1〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
工程(b)において、前記第1検出可能タンパク質が酵素活性を有するタンパク質である場合、該検出可能タンパク質を、該タンパク質が修飾する基質の量を検出することによって定量する、請求項1〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記組換え酵母細胞を、それぞれ、下記によって形質転換する、請求項1〜19のいずれか1項記載の方法:
(1) (a) (i) 前記IκBαポリペプチドを含有する融合タンパク質、(iii) 第1検出可能タンパク質をコードする読取り枠、および該読取り枠の発現を制御する酵母細胞内で官能性の調節配列を含有する第1のポリヌクレオチド;および、
(2) (a) (i) 前記β-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質、(ii) 核局在配列をコードする読取り枠、および(iii) 該読取り枠の発現を制御する酵母細胞内で官能性の調節配列を含有する第2のポリヌクレオチド。
【請求項21】
前記第1ポリヌクレオチド中に含まれる調節配列、前記第2ポリヌクレオチド中に含まれる調節配列、または双方の調節配列が、酵母細胞内において官能性で且つ誘発剤の作用に対して感受性のプロモーターを含有する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
酵母細胞内で官能性の前記誘発性プロモーターを、PGK1、ADH1、TDH3、LEU2およびTEF1から選択する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
酵母細胞内で官能性の前記誘発性プロモーターを、CUP1, GAL1, MET3, MET25,
MET28, SAM4およびPHO5から選択する、請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記第1ポリヌクレオチドが、前記ポリペプチドIκBαを含有する融合タンパク質をコードする読取り枠の発現をグルコースの存在下に活性化する調節配列GAL1を含有する、請求項20〜23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記第2ポリヌクレオチドが、前記ポリペプチドβ-TrCPを含有するタンパク質をコードする読取り枠の発現を硫酸銅の存在下に活性化する調節配列CUP1を含有する、請求項20〜23のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記組換え酵母細胞が、そのゲノム中に取込ませた形で前記第1および第2ポリヌクレオチドを含む、請求項20〜25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記組換え酵母細胞が、そのゲノム中に、原形質膜中でのトランスポータータンパク質の発現を制御する不活化形の1種または数種の遺伝子を含む、請求項1〜26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
前記不活化遺伝子を、遺伝子PDR1およびPDR3から選択する、請求項27記載の方法。
【請求項29】
IκBαポリペプチドおよび少なくとも1種の第1検出可能タンパク質を含有する融合タンパク質をコード化する読取り枠、および該読取り枠の発現を制御する酵母細胞内で官能性の調節配列を含むことを特徴とする、コードポリヌクレオチドを含有する酵母細胞内で官能性の発現カセット。
【請求項30】
β-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質をコード化する読取り枠、および該読取り枠の発現を制御する酵母細胞内で官能性の調節配列を含有することを特徴とする、ポリヌクレオチドを含有する酵母細胞内で官能性の発現カセット。
【請求項31】
前記ポリヌクレオチド中に含まれる調節配列、前記第2ポリヌクレオチド中に含まれる調節配列、または双方の調節配列が、酵母細胞内において官能性で且つ誘発剤の作用に対して感受性のプロモーターを含有する、請求項29および30のいずれか1項記載の発現カセット。
【請求項32】
酵母細胞内で官能性の前記誘発性プロモーターを、PGK1、TEF1、PHO5、MET3、MET28、CUP1、GAL1およびSAM4から選択する、請求項31記載の発現カセット。
【請求項33】
請求項29〜32のいずれか1項記載の発現カセットを含有する、発現ベクター。
【請求項34】
前記発現ベクターが、ベクターpCSY226-NLS-IκBαである、請求項33記載の発現ベクター。
【請求項35】
前記発現ベクターが、ベクターpCSY226-NLS-β-TrCPである、請求項33記載の発現ベクター。
【請求項36】
ゲノム中に組込んだ形で、下記を含有することを特徴とする、組換え酵母株:
(i) IκBαポリペプチドおよび少なくとも1種の第1検出可能タンパク質を含有する融合タンパク質をコード化する読取り枠、および該読取り枠の発現を制御する酵母細胞内で官能性の調節配列を含有する第1のポリヌクレオチド;および、
(ii) β-TrCPポリペプチドを含有するタンパク質をコード化する読取り枠、および該読取り枠の発現を制御する酵母細胞内で官能性の調節配列を含有する第2のポリヌクレオチド。
【請求項37】
前記組換え酵母株が、パリのパスツール研究所のCollection Nationale de Cultures de microorganismes (CNCM)(寄託当局である)に寄託番号I-3187として寄託された酵母株CYS135からなる、請求項36記載の組換え酵母株。
【請求項38】
下記を含有することを特徴とする、β-TrCPタンパク質を含有する官能性ユビキチンリガーゼタンパク質複合体によるIκBαタンパク質のユビキチン化を調節する薬剤のスクリーニング用の手段またはキット:
(i) 請求項29記載の発現カセットを含有する第1の発現ベクター;および、
(ii) 請求項30記載の発現カセットを含有する第2の発現ベクター。
【請求項39】
ゲノム中に組込んだ形で、それぞれ、下記を含有する組換え酵母細胞を含むことを特徴とする、β-TrCPタンパク質を含有する官能性ユビキチンリガーゼタンパク質複合体によるIκBαタンパク質のユビキチン化を調節する薬剤のスクリーニング用の手段またはキット:
(i) 請求項29記載の発現カセット;および、
(ii) 請求項30記載の発現カセット。
【請求項40】
前記手段またはキットが、CNCMに寄託番号I-3187として寄託された株CYS135の組換え酵母株を含有する、請求項39記載の手段またはキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−535314(P2007−535314A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503388(P2007−503388)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050165
【国際公開番号】WO2005/093086
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(506315505)
【Fターム(参考)】