説明

ICカードシステム

【課題】 1枚の鉄道用ICカードを用いて電子マネー機能を実現できるシステムを提供する。
【解決手段】 乗車券のプリペイド機能と電子マネー機能とを有する鉄道用ICカードを用いて物品を購入すると、物品販売端末がICカードの電子マネー情報を読取り、物品販売の情報を情報処理センターサーバへ送信する。このサーバは、明細情報が正当なものか否かを確認して上位装置のカードホスト6へ転送する。このホストは、明細情報が正当であれば明細情報の内容によって鉄道用ICカードに記録されている金額情報の決済処理を行う。物品販売端末が様々な販売処理を行っているので、情報処理センターサーバは、各物品販売端末が販売を行った時の品名・金額、及び販売時刻やネガデータ(無効番号)によって明細情報の正当性を確認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカードによって電子マネー機能を実現することができるICカードシステムに関し、特に、鉄道機関で用いられる鉄道用ICカードによってプリペイド乗車券機能と電子マネー機能とを実現することができるICカードシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道会社などにおいては、ICカードを用いた自動改札システムが利用され始めている。以下、このように鉄道機関で利用されるICカードを鉄道用ICカードと云う。
鉄道用ICカードは、例えば、乗車券をプリペイドするための金額情報が書き込まれた『Suica(登録商標)』、または定期券情報と乗車券のプリペイド金額情報とが書き込まれた『Suica定期券(登録商標)』などと呼ばれ、プリペイド型乗車券または定期券を兼ねたプリペイド型乗車券として広く普及し始めている。このような鉄道用ICカード(つまり、『Suica(登録商標)』)を乗車券として利用する場合には、あらかじめ鉄道用ICカードに所定の金額情報をチャージ(入金処理)しておけば、この鉄道用ICカードを自動改札機の読取部に触れることによって鉄道用ICカードにチャージされている金額情報が読み取られ、この鉄道用ICカードにチャージされている金額情報から乗車料金が相殺されて行くので、プリペイド型の乗車券として極めて便利なカードである。
このような鉄道用ICカードに金額情報をチャージする場合は、通常、カード発売機や乗越し精算機などの読書装置に鉄道用ICカードと所定の金額を投入すれば、その鉄道用ICカードに所定の金額情報が書き込まれてチャージが行われる。また、鉄道用ICカードにクレジットカードの機能を複合させたカードとして、下記の特許文献1に記載されたものが知られている。
【特許文献1】特許第3428958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記のような従来の鉄道用ICカードは、記憶容量が大きいにも関わらず乗車券のプリペイド利用に限られている。したがって、ユーザは鉄道機関の構内で物品を購入するときは、例えば、クレジット機能を備えたICカードを使用したり、電子マネー機能を備えたICカードを使用したりしている。このため、ユーザは、何種類ものICカードを所持してそれぞれの用途に応じてICカードの使い分けを行っている。すなわち、ユーザは、1枚の鉄道用ICカードを用いて、『電車に乗る』、『買い物をする』、『施設に入場する』などといった暮らしを便利にする手段を求めているが、現在の技術では、このようなユーザの期待に応えるようなICカードシステムは実現されていない。
【0004】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、1枚の鉄道用ICカードを用いて、乗る、買う、入場するなどといった暮らしを便利にすることのできる電子マネー機能を実現できるICカードシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記の目的を達成するために創案されたものであり、鉄道機関で用いられる鉄道用ICカードによってプリペイド乗車券機能と電子マネー機能とを実現するICカードシステムであって、鉄道用ICカードに記録されている電子マネー情報を読み書きして物品販売を実行する物品販売端末と、物品販売端末が読み書きした物品販売に関する明細情報を受信してその内容の正当性を確認し、その明細情報を上位装置へ送信する情報処理センターサーバと、情報処理センターサーバから受信した明細情報の内容に基づいて、鉄道用ICカードに記録されている金額情報の決済処理を行うカードホストとを備え、情報処理センターサーバは、物品販売端末が鉄道用ICカードの電子マネー情報を読み書きした時刻の情報に基づいて明細内容の正当性を確認することを特徴とする。
【0006】
本発明のICカードシステムによれば、鉄道用ICカードが乗車券のプリペイド機能と物品購入時に支払いを行う電子マネー機能とを備えている。したがって、ユーザが鉄道用ICカードを用いて所望の物品を購入すると、物品販売端末がその鉄道用ICカードに記録されている電子マネー情報を読み取り、物品販売に関する明細情報を情報処理センターサーバへ送信する。すると、情報処理センターサーバは、その明細情報が正当なものであるか否かを確認して上位装置のカードホストへ転送する。そして、カードホストは、明細情報が正当なものであれば、その明細情報の内容に基づいて鉄道用ICカードに記録されている金額情報の決済処理を行う。このとき、多数の物品販売端末が様々な物品の販売処理を行っているので、情報処理センターサーバは、それぞれの物品販売端末が販売処理を行ったときのカード番号、金額情報、及び販売時刻情報に基づいて、明細情報の正当性を確認している。これによって、カードホストは、物品販売端末から送信された物品販売に関する明細情報の正確性を高めて鉄道用ICカードによる電子マネーの決済を行うことができる。
【0007】
また、本発明のICカードシステムにおいては、情報処理センターサーバは、物品販売端末が正当な端末であるか否かの認証が行われる度に明細内容の正当性を確認することを特徴とする。つまり、本発明のICカードシステムには多数の物品販売端末が接続されているので、情報処理センターサーバは、それぞれの物品販売端末が物品販売に関する明細情報を取得する度に、それぞれの物品販売端末は正当なものであるか否かを確認し、明細情報の正当性をチェックしている。これによって、物品販売端末が取得したデータとカードホストが決済処理を行うときのデータとの整合性を高めて電子マネーの決済処理を行うことができる。
【0008】
また、本発明のICカードシステムは、さらに、鉄道用ICカードが無効となったときの無効カードのID番号をネガティブデータとして作成するID管理センターサーバを備え、情報処理センターサーバは、ID管理センターサーバから取得したネガティブデータに基づいて明細内容の正当性を確認することを特徴とする。つまり、本発明のICカードシステムによれば、それぞれの鉄道用ICカードに記録されているID番号のネガティブデータによって、その鉄道用ICカードが有効なものであるか無効なものであるかが判定されるので、電子マネーとしてのセキュリティは常に高い状態に確保されている。
【0009】
また、本発明のICカードシステムにおいては、情報処理センターサーバは、自己が現在保有しているネガティブデータと物品販売端末が取得した最新のネガティブデータとの差分である差分ネガティブデータに基づいて明細内容の正当性を確認することを特徴とする。つまり、多数の物品販売端末に送信するネガティブデータは膨大な量となるので、今回新たに発生したネガティブデータ(つまり、情報処理センターサーバが現在保有しているネガティブデータと物品販売端末が今回取得した最新のネガティブデータとの差分である差分ネガティブデータ)のみに基づいて明細内容の正当性を確認すれば、必要最小限の情報量によって明細内容の正当性を正確かつ確実にチェックすることができる。
【0010】
また、本発明のICカードシステムにおいては、ID管理センターサーバは、鉄道用ICカードが紛失されたとき、直ちに、紛失カードのID番号を無効化する緊急ネガティブデータを発行し、その緊急ネガティブデータを情報処理センターサーバへ送信することを特徴とする。このようにして、緊急ネガティブデータを用いて紛失カードを無効化する処理を最優先で実行することによって、鉄道用ICカードによる電子マネー機能のセキュリティを一段と向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のICカードシステムによれば、1枚の鉄道用ICカードを用いて、乗車券のプリペイド機能と物品購入時やイベント会場への入館時に支払いを行う電子マネー機能とを実現することができる。この場合、電子マネーとして用いるときには、カード番号、金額情報、及び販売時刻情報に基づいて物品販売に関する明細情報の正当性を確認しているので、鉄道用ICカードによる電子マネーの決済処理をより正確に行うことができる。さらに、それぞれの鉄道用ICカードに記録されているID番号のネガティブデータによって、その鉄道用ICカードの有効/無効が判定されるので、電子マネーとしてのセキュリティは常に高い状態に確保されている。また、緊急ネガティブデータを用いて紛失カードを無効化する処理を最優先で実行することによって、鉄道用ICカードによる電子マネー機能のセキュリティを一段と向上させることができる。つまり、本発明のICカードシステムによれば、1枚の鉄道用ICカードを用いて、『電車に乗る』、『買い物をする』、『施設に入場する』などといった暮らしを一層便利にすることができると共に、ユーザが使用する鉄道用ICカードのセキュリティは確実に確保されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明におけるICカードシステムの実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の実施の形態では、鉄道機関で利用される鉄道用ICカードを用いた場合について説明する。本発明におけるICカードシステムは、鉄道用ICカードを用いて乗車券のプリペイド利用ができると共に、電子マネー機能によって物品を購入したり所望の施設への入館ができるようになっている。例えば、鉄道用ICカードを自動改札機にかざして改札口を入退場したり、駅構内の販売店のレジスターにかざして支払いの決済をしたり、あるいは美術館などの読み取り装置にかざして館内に入館したりすることができるようになっている。このようにして、1枚の鉄道用ICカードを用いて乗る、買う、入館するといった生活を一層便利にすることができる。
【0013】
図1〜図3は本発明におけるICカードシステムの機能を示す構成図である。図1〜図3に示すICカードシステム10は、鉄道用ICカードの電子マネー情報を読み書きして物品の販売を行う物品販売端末1と、物品販売に関する明細内容の正当性を確認しながらその明細内容を上位装置へ送信する情報処理センターサーバ2と、情報処理センターサーバ2から送信されてきた明細内容の前処理を行うバッファ手段であるFEPシステム3と、鉄道用ICカードのID番号を管理するID管理駅サーバ4と、無効カードのID番号をネガティブデータとして作成して管理するID管理センターサーバ5と、日々の売上集計に対してバッチ処理(一括処理)を行いながら電子マネーの決済処理を実行するカードホスト6と、支払いデータや仕訳データの作成処理を行う経理システム7と、販売取り扱い実績表の作成を行う駅収ホスト8と、払戻しデータの管理を行う駅収POS9とを備えた構成となっている。
【0014】
図1〜図3に示すICカードシステム10の各構成要素の機能をさらに詳細に説明する。図3に示す物品販売端末1は、情報処理センターサーバ2との間で取引の可否を決めるための端末認証情報1aと、販売に関する時刻の整合を行うための整時情報1bと、売上一件ごとの電子マネーの決済内容を表す一件明細情報1cと、情報処理センターサーバ2から配信された一括ネガティブデータ1dと、カード紛失などの緊急時に情報処理センターサーバ2から配信される緊急ネガティブデータ1eとを用いて各種物品の販売処理を実行している。
【0015】
情報処理センターサーバ2は、店舗ごとの物品販売端末情報を格納する端末別店舗情報データベス(DB)2a、FEPシステム3へ送信するための一件明細情報を格納する上位送信用一件明細DB2b、膨大なネガティブデータから内容が変更された差分のネガティブデータのみを格納する差分ネガティブデータDB2c、及び紛失カードを最優先で無効化するための緊急ネガティブデータを格納する緊急ネガティブデータDB2dを備え、物品販売端末1との間で、端末ID情報2e、整時情報1b、一件明細情報1c、一括ネガティブデータ1d、緊急ネガティブデータ1e、及びファームウェア1fなどを送受信して物品販売に関する所定の処理を行っている。また、図2に示すFEPシステム3は、上位送信用の一件明細情報を格納する上位送信用一件明細DB2b、一括ネガティブデータDB3a、及び緊急ネガティブデータDB2dを備えている。
【0016】
ID管理駅サーバ4は、緊急ネガティブデータDB2d、一件明細DB4a、及び一括ネガティブデータDB3aを備えている。ID管理センターサーバ5は、緊急ネガティブデータDB2d、一括ネガティブデータDB3a、及び一件明細DB4aを備えている。
【0017】
図1に示すカードホスト6は、店舗ごとの物品販売端末情報を格納する端末別店舗情報DB6a、一件明細DB4a、精算データを格納する精算データDB6bを備えている。
経理システム7は、精算データDB6b、支払データを格納する支払データDB7a、振替データを格納する振替データDB7b、及び振替要求データを格納する振替要求データDB7cを備えている。駅収ホスト8は、端末別店舗情報DB6a、払戻データを格納する払戻データDB8b、振替要求データDB7c、及び一件明細DB4aを備えている。
駅収POS9は払戻データDB8bを備えている。
【0018】
次に、図1〜図3に示すICカードシステム10の各構成要素の動作を詳細に説明する。なお、図1に示すICカードシステム10においては、鉄道用ICカードが通常行っている乗車券のプリペイド機能は周知の技術であるので含まれていない。また、以下の各動作を説明するためのフロー図においては、動作の流れを説明する性質上、図1に示す各構成要素のDB(データベース)を省略して、直接、作用的な表現をすることがある。例えば、図2では、「FEPシステム3は一括ネガティブデータDB3aに格納されている一括ネガティブデータを情報処理センターサーバ2へ送信する。」というような表現になるが、以下の各図(例えば、図11のフロー図)では、「FEPシステム3は一括ネガティブデータ3aを情報処理センターサーバ2へ送信する。」と云うようにDB(データベース)を省略して作用的に表現することにする。
【0019】
まず、鉄道用ICカードが電子マネー機能によって物品を販売したときの明細内容を示す一件明細処理機能について説明する。図3に示すように、情報処理センターサーバ2は、物品販売端末1から物品の売上げに関する一件明細情報1cを受信した後、上位送信用一件明細DB2bへ保存する。その後、上位送信用一件明細DB2bに蓄積されている一件明細情報1cを上位システム(つまり、FEPシステム3やカードホスト6など)へ送信する。
【0020】
図4は、図1〜図3に示す情報処理センターサーバが行う一件明細情報の受信処理の流れを示すフロー図である。図4に示すように、情報処理センターサーバ2は、物品販売端末1から一件明細情報1cを受信した後に、上位送信用一件明細DB2bへ保存する。
【0021】
図5は、図1〜図3に示す情報処理センターサーバが行う一件明細情報の送信処理の流れを示すフロー図である。図5に示すように、情報処理センターサーバ2は、物品販売端末1から一件明細情報1cを受信した後、その一件明細情報1cを上位送信用一件明細DB2bへ保存しておくが、所望の時期に、上位送信用一件明細DB2bに蓄積された一件明細情報1cをFEPシステム3へ送信する。
【0022】
図6は、図1〜図3に示すFEPシステムが行う一件明細情報の送信処理の流れを示すフロー図である。図6に示すように、FEPシステム3は、情報処理センターサーバ2から一件明細情報1cを受信した後に自己の上位送信用一件明細DB2bへ保存し、必要なタイミングでこの一件明細情報1cをカードホスト6へ送信する。また、FEPシステム3は、上位送信用一件明細DB2bに保存されている一件明細情報1cをID管理駅サーバ用一件明細DB3bへ保存する。その後、ID管理駅サーバ用一件明細DB3bに保存された一件明細情報1cは、ID管理センターサーバ2の一件明細収集処理時にID管理駅サーバ4へ送信される。
【0023】
図7は、図1〜図3に示すID管理駅サーバが行う一件明細情報の送信処理の流れを示すフロー図である。図7に示すように、ID管理駅サーバ4は、FEPシステム3から一件明細情報1cを受信してID管理センターサーバ用一件明細DB4aに保存した後に、ID管理センターサーバ5へ送信する。
【0024】
図8は、図1〜図3に示すID管理センターサーバが行う一件明細情報の送信処理の流れを示すフロー図である。図8に示すように、ID管理センターサーバ5はID管理駅サーバ4から一件明細情報を受信して一件明細DB4aに格納した後、駅収ホスト送信用ODデータ5aを作成し、この駅収ホスト送信用ODデータ5aを駅収ホスト8へ送信する。なお、駅収ホスト送信用ODデータ5aには鉄道データと物品販売データとが混在している。
【0025】
次に、一括ネガティブデータの作成処理の機能について説明する。なお、ネガティブデータとは、電子マネー機能を無効化するために発行する無効カードのID番号などのデータである。ID管理センターサーバ5は、一件明細情報の最終収集後に夜間のバッチ処理において一括ネガティブデータを作成する。
【0026】
図9は、図1〜図3に示すID管理センターサーバが行う一括ネガティブデータの送信処理の流れを示すフロー図である。図9に示すように、ID管理センターサーバ5で作成された一括ネガティブデータ3aは、ID管理駅サーバ4へ配信される。また、一括ネガティブデータには物品販売対応力ードの全てが含まれる。
【0027】
図10は、図1〜図3に示すID管理駅サーバが行う一括ネガティブデータの送信処理の流れを示すフロー図である。図10に示すように、ID管理駅サーバ4はID管理センターサーバ5から一括ネガティブデータ3aを受信した後、この一括ネガティブデータ3aをFEPシステム3へ送信する。
【0028】
図11は、図1〜図3に示すFEPシステム3が行う一括ネガティブデータの送信処理の流れを示すフロー図である。図11に示すように、FEPシステム3はID管理駅サーバ4から一括ネガデータ3aを受信した後、この一括ネガデータ3aを情報処理センターサーバ2へ送信する。
【0029】
次に、情報処理センターサーバ2が行う差分ネガティブデータの作成処理について説明する。情報処理センターサーバ2は、FEPシステム3より受信した最新の一括ネガデータと以前に受信している一括ネガデータとを比較し、最新の一括ネガティブデータに対する変更分(つまり、追加分、削除分、更新分)の変更ネガティブデータを作成する。このとき、情報処理センターサーバ2は、物品販売端末1に格納済みのネガティブデータ(つまり、ある時点の一括ネガティブデータ)に変更分ネガティブデータの情報を反映(つまり、追加、削除、更新)することによって最新の一括ネガデータを作成する。
【0030】
図12は、図1〜図3に示す情報処理センターサーバが行う変更ネガティブデータの送信処理の流れを示すフロー図である。図12に示すように、情報処理センターサーバ2は、自己が保持しているネガティブデータのバージョンと物品販売端末1が保持しているネガティブデータのバージョンとを比較し、該当する変更ネガティブデータを物品販売端末1へ送信する。ここで、物品販売端末1が保持しているネガティブデータのバージョンが古く、変更ネガティブデータでは対応できない場合は、FEPシステム3から受信した最新の一括ネガティブデータを変更ネガティブデータとして物品販売端末1へ送信する。また、物品販売端末1へ変更ネガティブデータを送信する契機は、物品販売端末1の開局時及び物品販売端末1が一件明細情報を送信したときとする。つまり、図12に示す情報処理センターサーバ2の送信処理においては、情報処理センターサーバ2は、自己が保持しているネガティブバージョンと物品販売端末1の保持しているネガティブバージョンが合致した場合に、作成したN世代の変更ネガティブデータを物品販売端末1へ送信する。
【0031】
図13は、図1〜図3に示す情報処理センターサーバが行う最新の一括ネガティブデータの送信処理の流れを示すフロー図である。図13に示すように、情報処理センターサーバ2は、自己が保持しているネガティブデータのバージョンと物品販売端末1が保持しているネガティブデータのバージョンとを比較し、両者が合致しなかった場合は最新の一括ネガティブデータ2gを物品販売端末1へ送信する。
【0032】
次に、カード紛失時に行う緊急ネガティブデータの処理機能について説明する。図14は、図1〜図3に示すID管理センターサーバが行う緊急ネガティブデータの送信処理の流れを示すフロー図である。図14に示すように、ID管理センターサーバ5は、カード紛失時に駅またはビユーカードセンタで再発行登録された情報である緊急ネガティブデータ2dを受信した後、この緊急ネガティブデータ2dをID管理駅サーバ4へ配信する。
これによって、ID管理駅サーバ4は緊急ネガティブデータ2dに記載されたID番号のカードを無効にすることができる。
【0033】
図15は、図1〜図3に示すID管理駅サーバが行う緊急ネガティブデータの送信処理の流れを示すフロー図である。図15に示すように、ID管理駅サーバ4は、緊急ネガティブデータ2dをID管理センターサーバ5から受信した後に、この緊急ネガティブデータ2dをFEPシステム3へ送信する。
【0034】
図16は、図1〜図3に示すFEPシステムが行う緊急ネガティブデータの送信処理の流れを示すフロー図である。図16に示すように、FEPシステム3は緊急ネガティブデータ2dをID管理駅サーバ4から受信した後、この緊急ネガティブデータ2dを情報処理センターサーバ2へ送信する。
【0035】
図17は、図1〜図3に示す情報処理センターサーバが行う緊急ネガティブデータの送信処理の流れを示すフロー図である。図17に示すように、情報処理センターサーバ2は、FEPシステム3から受信した緊急ネガティブデータ2dを物品販売端末1へ送信する。
【0036】
次に、カードホスト6が行う電子マネーの振替要求フレキシブルディスク(FD)の作成処理機能、及び電子マネーの支払要求FDの作成処理機能について説明する。図18は、図1〜図3に示すカードホストが行う精算データの引渡し処理の流れを示すフロー図である。図18に示すように、カードホスト6は、物品販売端末1から情報処理センターサーバ2及びFEPシステム3を経由して送信された一件明細データ及びジャーナル(画面登録)データに基づいて、加盟店への精算データ(つまり、Suica振替データやSuica支払データ)を精算データFD6eとして作成し、その精算データFD6eを経理システム7へ引き渡す。
【0037】
次に、経理システム7が行うカードシステム関係の支払データや仕訳データの作成処理機能について説明する。経理システム7は、カードホスト6から受け取った精算データFD6e(例えば、Suica振替データやSuica支払データ)を接続する。そして、Suica振替データ及びSuica支払データは、ユーザが一括して承認処理を行った後に、Suica振替データに関しては仕訳データを作成する。また、Suica支払データに関しては加盟店への支払データと仕訳データを作成する。
【0038】
次に、カードホスト6が行うジャーナルの一件明細データの登録及び他システムへの提供機能について説明する。図19は、図1〜図3に示すカードホストが行うジャーナル一件明細データの送信処理の流れを示すフロー図である。カードホスト6は、障害時においてオンライン接続が不可となった一件明細データ6d1についてVENUS業務端末より売上げの手動登録を行い、該当する一件明細データ6d1を駅収ホスト8ヘ送信する。
図20は、駅収ホストでID管理センターサーバから受信した一件明細データを鉄道利用分と物品販売利用分とに仕分けするためのものであり、また、情報処理センターへ送信しているのは、物品販売端末と情報処理センターの間で認証を行うためである。
【0039】
次に、駅収POS9が行う駅収POS控除・払戻(端数調整額)データの送信機能について説明する。図21は、図1に示す駅収POSが行う控除・払戻(端数調整額)データの送信処理の流れを示すフロー図である。図21に示すように、駅収POS9より登録れたsuica物品販売対応カードの控除・払戻(端数調整額)データ8b1を駅収ホスト8へ送信する。このとき、控除・払戻(端数調整額)データ8b1の端数については切り上げ精算を行う。なお、駅収ホスト8が行う駅収POS9の控除・払戻(端数調整額)データの取込機能は、駅収POS9より端数調整額項目が新規に追加された駅収ホスト8への転送データの取り込をするものである。これによって、Suica物品販売対応カードの控除・払戻時において1円、5円の釣銭を取り扱うことが不要となる。
【0040】
次に、駅収ホスト8が行う振替要求接続データ作成及び転送機能について説明する。図22は、図1〜図3に示す駅収ホストが行う振替要求接続データの送信処理の流れを示すフロー図である。図22に示すように、駅収ホスト8は、端数調整額項目が新規に追加された売上表データからの振替要求接続データ8cを作成し、この振替要求接続データ8cを経理システム7ヘ送信する。なお、経理システム7が行う審査システム関係の支払データ・仕訳データの作成機能は、駅収ホスト8からの振替データ(審査振替データ)を経理システム7に接続し、さらに、経理システム7が、ユーザによる審査振替データの一括承認処理後に審査振替データに関して仕訳データを作成するものとする。
【0041】
次に、図1〜図3を用いて、物品販売端末1と情報処理センターサーバ2との間で送受信される整時情報1bについて説明する。ICカードシステム1に存在する物品販売端末1は非常に多いので、物品販売端末1と情報処理センターサーバ2との間で整時と称する販売時刻の時刻合わせを行うことにより、物品販売端末1のデータとカードホスト6側のデータとの整合性を図っている。つまり、物品販売端末1に入力された買い物を特定する金額の情報、及び買い物を行った時刻を示す整時情報1bが情報処理センターサーバ2へ送信されると、カードホスト6は、金額の情報及び整時情報1bとに基づいてデータの整合性を確認して電子マネーの決済処理を行っている。なお、このような整時処理は、正当な物品販売端末1を用いて販売が実行されたか否かを確認する認証処理の都度行われている。
【0042】
また、鉄道用ICカードを紛失した場合は、紛失カードを無効化する処理を最優先する必要があるので、ID管理センターサーバ5は緊急ネガティブデータを発行してその紛失カードのカード番号を直ちに無効にする処理を行っている。これによって鉄道用ICカードのセキュリティを確保している。また、現在流通している鉄道用ICカードの無効カード番号を通知するための通常のネガティブデータは膨大な量となるので、カード番号が変更となった差分ネガティブデータのみを物品販売端末1と情報処理センターサーバ2との間で送受信して、鉄道用ICカードのセキュリティを確保している。これによって、鉄道用ICカードのセキュリティを確保すると共に、物品販売端末1と情報処理センターサーバ2との通信時間の短縮を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のICカードシステムによれば、鉄道用ICカードを用いて乗車券機能と電子マネー機能とを実現し、1枚のカードでプリペイド乗車券として使用したり駅構内の販売店で物品の購入に使用したりすることができるのは勿論であるが、鉄道会社がデパートや美術館などとあらかじめ契約しておけば、この鉄道用ICカードを用いてデパートで買い物をしたり美術館に入館したりすることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明におけるICカードシステムの一部の機能を示すブロック図である。
【図2】本発明におけるICカードシステムの他の部分の機能を示すブロック図である。
【図3】本発明におけるICカードシステムのさらに他の部分の機能を示すブロック図である。
【図4】図3に示す情報処理センターサーバが行う一件明細情報の受信処理の流れを示すフロー図である。
【図5】図3に示す情報処理センターサーバが行う一件明細情報の送信処理の流れを示すフロー図である。
【図6】図2に示すFEPシステムが行う一件明細情報の送信処理の流れを示すフロー図である。
【図7】図2に示すID管理駅サーバが行う一件明細情報の送信処理の流れを示すフロー図である。
【図8】図2に示すID管理センターサーバが行う一件明細情報の送信処理の流れを示すフロー図である。
【図9】図2に示すID管理センターサーバが行う一括ネガティブデータの送信処理の流れを示すフロー図である。
【図10】図2に示すID管理駅サーバが行う一括ネガティブデータの送信処理の流れを示すフロー図である。
【図11】図2に示すFEPシステムが行う一括ネガティブデータの送信処理の流れを示すフロー図である。
【図12】図3に示す情報処理センターサーバが行う変更ネガティブデータの送信処理の流れを示すフロー図である。
【図13】図3に示す情報処理センターサーバが行う最新の一括ネガティブデータの送信処理の流れを示すフロー図である。
【図14】図2に示すID管理センターサーバが行う緊急ネガティブデータの送信処理の流れを示すフロー図である。
【図15】図2に示すID管理駅サーバが行う緊急ネガティブデータの送信処理の流れを示すフロー図である。
【図16】図2に示すFEPシステムが行う緊急ネガティブデータの送信処理の流れを示すフロー図である。
【図17】図3に示す情報処理センターサーバが行う緊急ネガティブデータの送信処理の流れを示すフロー図である。
【図18】図1に示すカードホストが行う精算データの引渡し処理の流れを示すフロー図である。
【図19】図1に示すカードホストが行うジャーナル一件明細データの送信処理の流れを示すフロー図である。
【図20】図1に示すカードホストが行う端末別加盟店属性情報の送信処理の流れを示すフロー図である。
【図21】図1に示す駅収POSが行う控除・払戻(端数調整額)データの送信処理の流れを示すフロー図である。
【図22】図1に示す駅収ホストが行う振替要求接続データの送信処理の流れを示すフロー図である。
【符号の説明】
【0045】
1 物品販売端末 2 情報処理センターサーバ 3 FEPシステム 4 ID管理駅サーバ 5 ID管理センターサーバ 6 カードホスト 7 経理システム 8 駅収ホスト 9 駅収POS 10 ICカードシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道機関で用いられる鉄道用ICカードによってプリペイド乗車券機能と電子マネー機能とを実現するICカードシステムであって、
前記鉄道用ICカードに記録されている電子マネー情報を読み書きして物品販売を実行する物品販売端末と、
前記物品販売端末が読み書きした物品販売に関する明細情報を受信してその内容の正当性を確認し、その明細情報を上位装置へ送信する情報処理センターサーバと、
前記情報処理センターサーバから受信した前記明細情報の内容に基づいて、前記鉄道用ICカードに記録されている金額情報の決済処理を行うカードホストとを備え、
前記情報処理センターサーバは、前記物品販売端末が前記鉄道用ICカードの電子マネー情報を読み書きした時刻の情報に基づいて前記明細内容の正当性を確認することを特徴とするICカードシステム。
【請求項2】
前記情報処理センターサーバは、前記物品販売端末が正当な端末であるか否かの認証が行われる度に前記明細内容の正当性を確認することを特徴とする請求項1に記載のICカードシステム。
【請求項3】
さらに、前記鉄道用ICカードが無効となったときの無効カードのID番号をネガティブデータとして作成するID管理センターサーバを備え、
前記情報処理センターサーバは、前記ID管理センターサーバから取得した前記ネガティブデータに基づいて前記明細内容の正当性を確認することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のICカードシステム。
【請求項4】
前記情報処理センターサーバは、自己が現在保有しているネガティブデータと前記物品販売端末が取得した最新のネガティブデータとの差分である差分ネガティブデータに基づいて前記明細内容の正当性を確認することを特徴とする請求項3に記載のICカードシステム。
【請求項5】
前記ID管理センターサーバは、前記鉄道用ICカードが紛失されたとき、直ちに、紛失カードのID番号を無効化する緊急ネガティブデータを発行し、その緊急ネガティブデータを前記情報処理センターサーバへ送信することを特徴とする請求項3または請求項4に記載のICカードシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−99750(P2006−99750A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247501(P2005−247501)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【Fターム(参考)】