説明

ICタグの装着構造

【課題】小径の砥石であっても、確実にICタグを装着でき、離れた場所からも、情報の読み書き可能なICタグの装着構造を提供する。
【解決手段】樹脂製の円筒状のコア14の外周側に形成された砥石11と、コア14を介して、砥石11が固定される砥石アーバ12とを有する砥石工具に、ICタグ15を装着する装着構造であって、コア14を軸方向に延設した延設部14bの内部にICタグ15を設けると共に、ICタグ15のアンテナ16をコア14の延設部14bの外周に沿ってリング形状に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を管理するIC(Integrated Circuits)タグの装着構造に関し、特に、砥石等の工具を管理するためのICタグの装着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で情報の読み取り/書き込みが可能な無線式ICタグを用いて、対象物の情報の管理を行う技術がある。工具を対象とするICタグの装着構造としては、特許文献1、2が従来技術として知られている。例えば、特許文献1においては、砥石にICタグを埋設するようにしており、又、特許文献2では、切削ブレードの基台にネジ式のICタグを螺着するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−051596号公報
【特許文献2】特開2007−256994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図4に示すように、砥石21の内周側のコア24に、砥石アーバ22の軸部22aを挿通し、砥石アーバ22とナット23とでコア24を挟み込んで、砥石21を固定した砥石工具がある。このような砥石工具に、特許文献1の装着構造を適用して、ICタグを装着するとき、砥石21の取付範囲(図4中のAの部分)にICタグを装着する場合には、金属製の砥石アーバ21にICタグが覆われてしまい、ICタグの情報を受信機で読み取ることができない。又、砥石21の使用範囲(図4中のBの部分)にICタグを装着する場合には、砥石21の外径が砥石アーバ22の外径より十分に大きくないと、ICタグの取り付けができない。特に、小径の砥石21の場合、砥石21の使用範囲B以外は、ほとんどが取付範囲Aとなってしまい、ICタグを取付ける範囲が無くなってしまう。
【0005】
又、上述した砥石工具に、特許文献2の装着構造を適用して、ICタグを装着するときには、ICタグの取り付けがネジ式になっているので、砥石工具の振動や回転により、ICタグが外れるおそれがある。
【0006】
加えて、特許文献1、2の装着構造では、ICタグの読み取り/書き込みを行うリーダ/ライタを、ある程度ICタグに接近させる必要があるため、リーダ/ライタが加工雰囲気に曝されてしまい、リーダ/ライタの誤動作や故障の原因となる。加工雰囲気にリーダ/ライタが曝されないようにするには、必要時(読み書き時)にのみICタグに近接するような機構が必要となり、設備のコストアップに繋がり、又、その機構自体が故障する可能性もある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、小径の砥石であっても、確実にICタグを装着でき、離れた場所からも、情報の読み書き可能なICタグの装着構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する第1の発明に係るICタグの装着構造は、
樹脂製の円筒状のコアの外周側に形成された砥石と、前記コアを介して、前記砥石が固定される砥石固定軸とを有する砥石工具に、ICタグを装着するICタグの装着構造であって、
前記コアを軸方向に延設した延設部分の内部に、前記ICタグを設けると共に、前記ICタグのアンテナを前記コアの外周に沿って周状に設けたことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する第2の発明に係るICタグの装着構造は、
樹脂製の円筒状のコアの外周側に形成された砥石と、前記コアを介して、前記砥石が固定される砥石固定軸とを有する砥石工具に、ICタグを装着するICタグの装着構造であって、
前記コアの内部に、前記ICタグを設けると共に、前記ICタグのアンテナを前記コアの外周に沿って周状に設けたことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第3の発明に係るICタグの装着構造は、
円筒状のコアの外周側に形成された砥石と、前記コアを介して、前記砥石が固定される砥石固定軸とを有する砥石工具に、ICタグを装着するICタグの装着構造であって、
前記コアの軸方向の端部に樹脂製の円筒状のカラーを接着し、
前記カラーの内部に、前記ICタグを設けると共に、前記ICタグのアンテナを前記カラーの外周に沿って周状に設けたことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第4の発明に係るICタグの装着構造は、
上記第1から第3のいずれか1つの発明に記載のICタグの装着構造において、
前記アンテナを、前記コア又は前記カラーの中心軸を中心とするリング形状としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外周側に砥石が形成される樹脂製のコアを延設した延設部の内部にICタグを設けたので、又は、コアの内部にICタグを設けたので、又は、コアの端部に接着したカラーの内部にICタグを設けたので、小径の砥石であっても、ICタグを設置できるスペースを確保することができ、ICタグを確実に装着して、その落下を防止することができる。又、延設部、コア、又は、カラーの外周に沿って、ICタグのアンテナを周状(リング形状)に設けたので、離れた場所からも、ICタグの情報の読み書きが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るICタグの装着構造の実施形態の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示したICタグの装着構造のA−A線断面図である。
【図3】図1に示したICタグの装着構造の変形例を示す斜視図である。
【図4】ICタグ装着時の問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るICタグの装着構造の実施形態について、図1〜図3を用いて、説明をする。
【0015】
(実施例1)
本実施例において、砥石工具は、図1の斜視図に示すように、樹脂製の円筒状のコア14の外周側に形成された砥石11を、コア14を介して、砥石アーバ12(砥石固定軸)に固定したものである。具体的には、コア14の中心部に形成された挿通孔14aに、砥石アーバ12の本体から延設された挿通軸12aが挿通され、この挿通軸12aにナット13を螺着することにより、コア14を砥石アーバ12とナット13とで挟み込んで、砥石11を固定している。
【0016】
コア14は、その軸方向に延設されており、その全長が砥石11の軸方向の全長より長くなっている(コア14の延設された部分を延設部14bとする。)。そして、図2の断面図にも示すように、この延設部14bの内部に、ICタグ15を設けると共に、ICタグ15のアンテナ16を延設部14bの外周に沿って、外周面に近接して周状(リング形状)に設けており、これにより、ICタグ15を装着する装着構造としている。この延設部14bの延設方向は、図1中の上端側でもよいし、下端側でもよい。
【0017】
なお、コア14を軸方向に延設せず、その全長を砥石11の軸方向の全長と同じとする場合、そのコア14の内部に、ICタグ15を設けると共に、ICタグ15のアンテナ16をコア14の外周に沿って、外周面に近接して周状(リング形状)に設けるようにしてもよい。
【0018】
又、コア14を軸方向に延設せず、その全長を砥石11の軸方向の全長と同じとする場合、上述した延設部14bに代えて、図3に示すように、そのコア14の軸方向の一方の端部に、中心部に挿通軸12aを挿通する挿通孔17aを有する樹脂製の円筒状のカラー17を接着し、カラー17の内部に、ICタグ15を設けると共に、ICタグ15のアンテナ16をカラー17の外周に沿って、外周面に近接して周状(リング形状)に設けるようにしてもよい。このカラー17を接着する端部は、図3中の上端側でもよいし、下端側でもよい。又、この場合、コア14は樹脂製でなくてもよく、更には、コア14自体がないもの、即ち、コア14の部分も含めて、全て砥石でできているものでもよい。
【0019】
アンテナ16は、延設部14b、コア14又はカラー17の外周に、より近接していることが好ましい。又、回転時の動バランスを考慮すると、延設部14b、コア14又はカラー17の中心軸を中心とする円環状のリング形状であることが好ましい。又、上記装着構造を有する砥石工具の完成後、回転時の動バランスを取るため、延設部14b、コア14又はカラー17の一部を削ったり、延設部14b、コア14又はカラー17にバランサ(錘)等を設けたりしてもよい。
【0020】
なお、ICタグ15には、砥石11の履歴や砥石11の加工対象(例えば、歯車)の諸元等の情報が書き込まれており、書き込まれた情報に基づいて、砥石11を再加工したり、寿命管理をしたりしている。
【0021】
本実施例においては、コア14を延設し、延設した延設部14bの内部にICタグ15を設けているので、又は、コア14の内部にICタグ15を設けているので、又は、コア14の端部に接着したカラー17の内部にICタグ15を設けているので、小径の砥石11であっても、ICタグ15を設置できるスペースを確保することができ、ICタグ15を確実に装着して、その落下を防止することができる。
【0022】
又、樹脂製の延設部14b、コア14又はカラー17の外周に近接して、アンテナ16をリング状に設けているので、延設部14b、コア14又はカラー17の径方向の領域を最大限に利用して、アンテナ16を広い範囲に埋め込むことになり、又、アンテナ16が埋め込まれた延設部14b、コア14又はカラー17は、無線電波を通す樹脂製であるので、ICタグ15の交信距離を伸ばすことができる。その結果、ICタグ15の読み書きを行うリーダ/ライタを、ICタグ15から離れた所(例えば、別室等)に設置することが可能となり、油煙などの雰囲気に晒されることがなくなり、誤動作や故障の危険性を小さくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、円筒状のコアの外周に形成された砥石にICタグを装着する際に好適なものであり、例えば、コアの外周面に電着された砥石、コアの外周に設けられ、内歯車を加工するための樽形砥石等に適用可能である。
【符号の説明】
【0024】
11 砥石
12 砥石アーバ(砥石固定軸)
14 コア
14b 延設部
15 ICタグ
16 アンテナ
17 カラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の円筒状のコアの外周側に形成された砥石と、前記コアを介して、前記砥石が固定される砥石固定軸とを有する砥石工具に、ICタグを装着するICタグの装着構造であって、
前記コアを軸方向に延設した延設部分の内部に、前記ICタグを設けると共に、前記ICタグのアンテナを前記コアの外周に沿って周状に設けたことを特徴とするICタグの装着構造。
【請求項2】
樹脂製の円筒状のコアの外周側に形成された砥石と、前記コアを介して、前記砥石が固定される砥石固定軸とを有する砥石工具に、ICタグを装着するICタグの装着構造であって、
前記コアの内部に、前記ICタグを設けると共に、前記ICタグのアンテナを前記コアの外周に沿って周状に設けたことを特徴とするICタグの装着構造。
【請求項3】
円筒状のコアの外周側に形成された砥石と、前記コアを介して、前記砥石が固定される砥石固定軸とを有する砥石工具に、ICタグを装着するICタグの装着構造であって、
前記コアの軸方向の端部に樹脂製の円筒状のカラーを接着し、
前記カラーの内部に、前記ICタグを設けると共に、前記ICタグのアンテナを前記カラーの外周に沿って周状に設けたことを特徴とするICタグの装着構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のICタグの装着構造において、
前記アンテナを、前記コア又は前記カラーの中心軸を中心とするリング形状としたことを特徴とするICタグの装着構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−218487(P2011−218487A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90175(P2010−90175)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】