説明

ICタグ付き保温保冷容器

【課題】 過酷な温度環境下でもICタグに障害が生じないようにしたICタグ付き保温保冷容器を得る。
【解決手段】 予備発泡粒子を型内発泡成形して得られる発泡樹脂成形容器本体1の一部に切り欠き部3を形成する。切り欠き部3内に、一面にICタグ6を装備した埋め込み材5を装着する。ICタグは容器の壁面に埋め込まれた状態となり、外気から遮断されるので、過酷な温度環境下でもICタグに障害が生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報データを記録しまた読み出すことのできるICタグを取り付けた、発泡樹脂成形容器からなる保温保冷容器に関する。
【背景技術】
【0002】
予備発泡粒子を型内発泡成形して得られる発泡樹脂成形容器からなる保温保冷容器は、成形の容易性や軽量性、耐衝撃性などで優れており、食品や薬品等の品温管理を必要とする通い箱等として広く用いられている。それらの容器には、収容した商品に関する情報(例えは、品番や製造者などの情報)が直接印刷されるか、そのような情報を印刷した用紙が貼り付けられるか、または商品と共に収容されることが多い。また、個々の商品の物流経路や在庫状況などの管理情報を正確に把握することも必要であり、関連情報をバーコード化して容器に印刷または貼り付け、それをリーダーにより読み取って、一括管理することも行われる。
【0003】
近年、そのような商品情報を大量に書き込むことができ、また書き換えることのできる非接触型あるいは接触型のICタグが開発され、種々の容器にそれを取り付けて、商品管理を効果的に行うことが提案されている。例えば、特許文献1(特開2002−332047号公報)には、発泡樹脂で作られた断熱性芯層とそれを覆う外装材とで構成される多層断熱コンテナにおいて、芯層と外装材との間にICタグに相当する非接触型記録媒体を装着したものが記載されている。また、特許文献2(特開2000−355379号公報)には、発泡ポリプロピレン製の通い箱の表面にICタグに相当する非接触型認識素子を付したものが記載されている。
【0004】
上記のように、ICタグを容器に取り付けることにより、収容した商品に関連する大量の情報を書き込みまたは書き換え、かつ一括して情報管理できることから、生産者や販売店あるいは物流に携わる者にとって、商品管理はきわめて円滑となる。
【特許文献1】特開2002−332047号公報
【特許文献2】特開2000−355379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
容器が保温保冷容器として主に用いられる場合にも、上記のようにICタグを備えることは望ましい。しかし、保温保冷容器の場合、きわめて過酷な温度条件下(例えば−50℃のような低温環境下)に容器が長時間放置されることがあり、そのような環境下でもICタグが損傷を受けないような手当をすることが必要となる。また、容器本体を廃棄するときにICタグを分離することは、ICタグの再利用の観点からも、資源の分別回収の観点からも望ましい。
【0006】
特許文献1に記載の多層断熱コンテナでは、ICタグは外装材と発泡樹脂で作られた断熱性芯層との間に配置されており、外装材の素材を適切に選択することにより、ある程度の低温環境には耐えられるようになる。しかし、多層容器は構成が複雑であり、かつ高コストなものとなる。さらに、廃棄時にICタグを分離するのは容易でなく、実使用においては、ほぼ不可能である。
【0007】
特許文献2に記載の通い箱では、ICタグの分離は容易となるが、箱の表面にICタグが位置しているため、過酷な温度環境に曝されたときに、ICタグの不調動作や破損が生じやすい。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、過酷な温度環境下に置かれた場合でも、ICタグに不調動作や破損が生じるのを効果的に回避できるようにしたICタグ付き保温保冷容器を提供することを目的とする。本発明の他の目的は、必要な場合にはICタグを容器本体から容易に分離できるようにしたICタグ付き保温保冷容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明によるICタグ付き保温保冷容器は、予備発泡粒子を型内発泡成形して得られる発泡樹脂成形容器の中にICタグが埋め込まれていることを特徴とする。
【0010】
上記のICタグ付き保温保冷容器では、ICタグは、容器本体を形成する予備発泡粒子を型内発泡成形して得られる発泡樹脂成形品の中に埋め込まれており、効果的に断熱効果を受ける。そのために、過酷な温度環境下に保温保冷容器が放置されるような場合でも、ICタグに不調が生じるあるいは破損するのを回避できる。また、容器本体は、型内発泡成形品の単体構成であり、容器の廃棄時等、必要な場合には、ICタグを容易に取り出して分別することができる。
【0011】
本発明において、予備発泡粒子を構成する樹脂としては、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−エチレン共重合体、スチレン改質ポリエチレン系樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂等のポリメタクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の混合物やモノマーの共重合体なども使用できる。
【0012】
また、発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、シクロブタン等の脂肪族環化水素類、二酸化炭素、窒素、空気等の無機ガス、水などが挙げられる。これらの発泡剤は単体で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0013】
予備発泡粒子を型内発泡成形する方法も、従来知られた型内発泡成形法によればよく、例えば、発泡剤を含浸させた発泡性樹脂粒子を5倍〜60倍に予備発泡して得られた1mm〜5mm程度の予備発泡粒子を使用し、それを成形型内に注入し、蒸気加圧により発泡した粒子間を融着させるような方法であってよい。
【0014】
本発明によるICタグ付き保温保冷容器のより具体的な態様の1つは、発泡樹脂成形容器は一部に切り欠き部を有し、その切り欠き部への埋め込み材を別途有し、該切り欠き部への埋め込み材は一面にICタグを装備しており、該埋め込み材がICタグを内面側として切り欠き部に埋め込まれていることを特徴とする。
【0015】
発泡樹脂成形容器に形成される切り欠きは、成形型に切り欠き部のための凸部を形成しておき、型内発泡成形と同時に切り欠きが形成されるようにしてもよく、発泡成形された発泡樹脂成形容器に切除等の後作業で形成するようにしてもよい。該切り欠き内に挿入または嵌入される埋め込み材は、発泡樹脂成形容器の素材と同じ素材で形成されていてもよく、異なった素材のものであってもよい。異なった素材としては、容器本体を形成する発泡樹脂とは異なる発泡倍率または異なる樹脂の発泡樹脂、あるいはゴムのようなものを挙げることができる。
【0016】
この形態のICタグ付き保温保冷容器では、埋め込み材を取り外すことによって、必要時に、ICタグを容易に容器本体から分離することができる、利点がある。
【0017】
本発明によるICタグ付き保温保冷容器のより具体的な他の態様は、発泡樹脂成形容器を型内発泡成形する際に、ICタグを一面に装備した別部材を成形型内に取り付けておき、ICタグが埋設された状態で一体に同時成形されたものであることを特徴とする。この場合にも、前記別部材は、発泡樹脂成形容器の素材と同じ素材で形成されていてもよく、異なった素材のものであってもよい。異なった素材の場合には、一体に成形されていても別部材を外観で認識することが容易であり、外見からICタグの位置を認識しやすくなるので、より好ましい。また、素材が違うことから分離がし易くなり、容器の廃棄時に、ICタグを分離する作業が容易となる。異なった素材としては、容器本体を形成する発泡樹脂とは異なる発泡倍率または異なる樹脂の発泡樹脂、あるいはゴムのようなものを挙げることができる。
【0018】
本発明において、ICタグは、ICチップ(半導体メモリ)と、それに接続するアンテナ(誘導電流による電力発生用、電波送受信用)と回路パターンからなり、好ましくは、アンテナや回路パターンは、導電性インキと絶縁性インキとを用いてフォトリソグラフィ方式や印刷方式にて回路形成されていてもよい。より具体的には、ICタグは、書き込み手段(リーダー)やメモリ読み取り手段(ライター)に対して非接触式または接触式にて接続して交信できる小型で偏平状のICメモリであり、アンテナ部とメモリ部と、アンテナ部とメモリ部とを接続する導電回路部とより構成される。アンテナ部はメモリ部への情報データの書き込み記録や、記録した情報データをメモリ部から読み出す動作電力を供給するための誘導起電力を発生させる。なお、ICタグは、書き込み読み出し手段(リーダーライター)によって書き込み記録(書き換えや再書き込み記録を含む)と読み出しの両方が可能であってもよいが、本発明においては、情報の改ざんや不正使用を防止するために、書き込み読み出し手段(リーダーライター)によって、予め書き込み記録されている情報データの読み出しのみが可能である形態のものであってもよい。
【0019】
本発明による保温保冷容器は、容器本体と同様な予備発泡粒子の型内発泡品である蓋体を、通常は持つ。その場合、蓋体の方に同様にしてICタグを持たせるようにしてもよい。より厳格な温度管理を求められる場合には、容器本体と蓋体との双方にICタグを持たせるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、過酷な温度環境下に長時間放置されても、ICタグが不調をきたしたり破損することのない、ICタグ付き保温保冷容器が得られる。また、必要なときに、ICタグを容易に回収することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1および図2は本発明によるICタグ付き保温保冷容器の一例を説明する図であり、図3は本発明による他の形態のICタグ付き保温保冷容器を製造するときの製造過程を説明するための図である。
【0022】
図1に示すICタグ付き保温保冷容器10は、従来知られた予備発泡粒子を従来知られた型内発泡成形法により発泡成形して得られた発泡樹脂成形容器を容器本体1と、ICタグ6を一面に装着した埋め込み材5とからなる。図示しないが、通常、容器本体1と同じようにして発泡成形された蓋体が同時に用いられ、容器本体1に保温保冷すべき商品を収容した後、蓋をして保冷環境下に置かれたり、流通に付される。
【0023】
容器本体1は底面と周壁2とを有し、周壁2の適所には、図2に示すように、埋め込み材5が挿入される切り欠き部3が形成されている。必須のものではないが、この例では切り欠き部3の周面には凹溝4が形成されており、埋め込み材5の装着を安定にしている。このような切り欠き部3は、容器本体1を型内発泡成形するときに、成形型内に当該形状の部材を取り付けておくことにより、発泡成形と同時に形成することができる。切り欠き部3のない形状の容器本体1を発泡成形し、そこに適宜の手段により後加工で形成してもよい。また、切り欠き部3は図示の位置に限ることはなく、底面に形成してもよく、他の周面に形成してもよい。1個でなく、複数個の切り欠き部3を形成してもよい。
【0024】
埋め込み材5は、切り欠き部3に入り込みうる形状と大きさのものであり、この例では切り欠き部3に形成した凹溝4に入り込む凸条7を木口面に有している。なお、凸条7は省略してもよく、また、木口面を傾斜面としておくこともできる。埋め込み材5の内側面、すなわち、容器本体1の切り欠き部3に挿入するときに容器本体1側となる面には、ICタグ6が装着されている。
【0025】
図2に示すようにして、容器本体1に埋め込み材5を取り付けると、ICタグ6は容器本体1の周壁内に埋め込まれた状態となる。そのために、ICタグ6は外からの攻撃、特に、熱的攻撃に対して、高い抵抗性を保持することとなり、−50℃というような過酷な環境下に保温保冷容器10が放置されても、ICタグ6に誤作動や破壊が生じることはない。一方、必要な場合には、容器本体1から埋め込み材5を取り外すことにより、ICタグ6を容易に分離することができるので、ICタグ6の再使用も容易であり、容器本体1の廃棄時での分別回収も確実に行える。
【0026】
図3は、予備発泡粒子を成形型内に充填して型内発泡成形品を発泡成形するのに用いられる、従来知られた雌型21と雄型22とからなる成形型20を模式的に示している。図3aは型を開いた状態であり、図3bは型を閉じた状態である。この成形型20は、型を開いた状態で、雌型21のキャビティ面の適所に、図1、図2で示した埋め込み材5を、そこに装着したICタグ6がキャビティ空間23側となるようにして取り付けている。埋め込み材5を雌型キャビティ面に取り付けるには、両面テープで貼るか減圧エアーで吸引するような方法により容易に行うことができる。
【0027】
その後、図3bに示すように型を閉じ、以下、キャビティ空間23内に、発泡剤を含浸させた発泡性樹脂粒子を5倍〜60倍に予備発泡して得られた1mm〜5mm程度の予備発泡粒子を充填し、蒸気加圧により発泡させることにより、所望の発泡成形品を得ることができ、得られる発泡成形品は、図1に示したものと同様の、容器本体1に埋め込み材5が一体化したものとなる。この場合も、ICタグ6は容器本体1の周壁内に埋め込まれた状態となっており、ICタグ6は外からの攻撃、特に、熱的攻撃に対して、高い抵抗性を保持することとなる。
【0028】
また、発泡成形された成形品(容器本体1)と埋め込み材5との間には、所要の界面が形成されるので、ICタグ6を分離しようとするときも、作業は比較的容易である。容器本体1の素材と埋め込み材5の素材を別のものとする場合には、界面の分かれがはっきりとするので、分離作業は一層容易となる。例えば、容器本体を形成する予備発泡粒子としてポリスチレン系樹脂を用い、埋め込み材5の素材樹脂としてより低発泡の発泡ポリスチレンまたは発泡ポリエチレンを用いる場合に、良好な断熱性と良好な分離性との双方を満足したものが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明によるICタグ付き保温保冷容器の一例を説明する図。
【図2】本発明によるICタグ付き保温保冷容器の組み立て方の一例を示す図。
【図3】本発明による他の形態のICタグ付き保温保冷容器を製造するときの製造過程を説明するための図。
【符号の説明】
【0030】
10…ICタグ付き保温保冷容器、1…容器本体、2…周壁、3…切り欠き部、4…凹溝、5…埋め込み材、6…ICタグ、7…凸条、20…成形型、21…雌型、22…雄型、23…キャビティ空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予備発泡粒子を型内発泡成形して得られる発泡樹脂成形容器の中にICタグが埋め込まれていることを特徴とするICタグ付き保温保冷容器。
【請求項2】
発泡樹脂成形容器は一部に切り欠き部を有しており、該切り欠き部への埋め込み材は一面にICタグを装備しており、前記埋め込み材がICタグを内面側として切り欠き部に埋め込まれていることを特徴とする請求項1に記載のICタグ付き保温保冷容器。
【請求項3】
発泡樹脂成形容器の素材と埋め込み材の素材が異なることを特徴とする請求項2に記載のICタグ付き保温保冷容器。
【請求項4】
発泡樹脂成形容器の型内発泡成形時にICタグを一面に装備した別部材がICタグが埋設された状態で一体に同時成形されたものであることを特徴とする請求項1に記載のICタグ付き保温保冷容器。
【請求項5】
発泡樹脂成形容器の素材と別部材の素材が異なることを特徴とする請求項4に記載のICタグ付き保温保冷容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−8212(P2006−8212A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190088(P2004−190088)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】