説明

ICタグ装置とそれを用いたRFIDシステム

【課題】ICタグ装置が金属面や水分を有する物品に貼付された場合であっても、タグ情報を読み取るときの交信の信頼性を高めることを目的とする。
【解決手段】ICタグ装置3は、タグ情報を記憶保持するタグICチップ21と、タグICチップ21に電気的に接続され、無線信号を受信すると共に、受信した無線信号により電力を生成するタグアンテナ部20と、タグICチップ21に電気的に接続され、受光した光により電力を生成する光電変換部22とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップに記憶保持されたタグ情報をやりとりするICタグ装置とそれを用いたRFIDシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生産管理、物流管理、物品管理などを効率化するために、RFID(Radio Frequency IDdentification)システムが利用されている。このRFIDシステムは、ICタグ装置と、このICタグ装置が記憶保持しているタグ情報を読み取るリーダライタ装置とを備えている。RFIDシステムでは、管理物品に貼付されたICタグ装置からタグ情報を読み取り、管理物品の管理をしていた。
【0003】
ICタグ装置は、タグアンテナ部とタグICチップとを備え、リーダライタ装置の送信アンテナから出力される無線信号をタグアンテナ部で受信すると共に、受信した無線信号によりタグアンテナ部で生成した電力をタグICチップに供給し、タグICチップを作動させていた。そして、ICタグ装置は、無線信号の一部をタグICチップ内に記憶保持されているタグ情報に応じて変調し、タグアンテナ部を介してリーダライタ装置に応答信号を出力していた。
【0004】
リーダライタ装置は、ICタグ装置からの応答信号を受信アンテナで受信し、復調してタグ情報を得ていた(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2006−311239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のICタグ装置は、金属面や水分を有した管理物品に貼付されると、受信信号の一部が金属面や水に吸収され、タグアンテナ部で発生する電力が減り、タグICチップに供給する電圧が下がってしまい、タグICチップの動作が不安定になっていた。これにより、リーダライタ装置でタグ情報を読み取るときの交信の信頼性が低くなるといった課題があった。
【0006】
そこで、本発明は交信に対する信頼性を高くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明のICタグ装置は、タグ情報を記憶保持するタグICチップと、このタグICチップに電気的に接続され、無線信号を受信すると共に、受信した無線信号により電力を生成するタグアンテナ部と、タグICチップに電気的に接続され、受光した光により電力を生成する光電変換部とを備えている。この構成により、初期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のごとく本発明は、タグICチップと、このタグICチップに電気的に接続され、無線信号を受信すると共に、受信した無線信号により電力を生成するタグアンテナ部と、タグICチップに電気的に接続され、受光した光により電力を生成する光電変換部とを備え、タグアンテナ部で生成した電力をタグICチップに供給すると共に、光電変換部で生成した電力をタグICチップに供給する。このため、金属面や水分を有する物品などに貼付され、タグアンテナ部で生成される電力が減った場合でも、光電変換部で受光した光を電力に変換すると共に、この電力をタグICチップに供給することができ、電圧の低下を抑えることができる。その結果として、タグICチップの動作を安定させ、リーダライタ装置でタグICチップに記憶保持されているタグ情報を読み取るときの交信の信頼性を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0010】
(実施の形態)
まず、図1および図2を参照しながら、本発明の実施の形態におけるRFIDシステムついて説明する。図1は本実施の形態におけるRFIDシステム1の構成図、図2は本実施の形態におけるRFIDシステム1の電気的な構成を示すブロック図である。
【0011】
ここでは、複数の管理物品2を、例えば、フォークリフトなどの車両11を使って倉庫などの搬出入口から搬出入する場合の一実施例について説明する。
【0012】
図1に示すように、RFIDシステム1は、管理物品2に貼付されたICタグ装置3と、このICタグ装置3が記憶保持しているタグ情報を読み取るリーダライタ装置5と、ICタグ装置を照明する照明部4とを備えている。
【0013】
RFIDシステム1は、さらに、リーダライタ装置5で読み取ったタグ情報を管理する管理部6と、このタグ情報に係る商品情報を格納しているデータベース7とを備えている。リーダライタ装置5と管理部6とは無線または有線により接続されている。無線の場合には、公知の無線システムにより通信を行うことができる。また、有線の場合には、リーダライタ装置5および管理部6を公知のローカルエリア・ネットワークのケーブルに接続して通信を行うことができる。
【0014】
このような構成により、RFIDシステム1は、各管理物品2それぞれに貼付されたICタグ装置3を照明部4で照明しながら、各ICタグ装置3が記憶保持しているタグ情報を読み取ることができる。リーダライタ装置5は、読み取ったタグ情報を管理部6に出力する。管理部6は、このタグ情報に基づいてデータベース7の商品情報を検索し、管理物品2の管理を行う。すなわち、管理部6は、タグ情報から管理物品2ごとの個別識別情報(例えば、商品管理番号、製造番号、製造日など)を取得し、これにより、例えば、製造番号1番の管理物品2の出荷日、商品在庫状況などを管理することができる。管理物品2としては、例えば、缶詰などの金属表面を有する物品、飲料用ペットボトルなど水分を含む物品などがある。各管理物品2はパレットに積載され、パレットごと車両11により搬出入口から搬出または搬入される。
【0015】
具体的には、ICタグ装置3は、図2に示すように、タグ情報を記憶保持するタグICチップ21と、タグICチップ21に電気的に接続され、無線信号を受信すると共に、受信した無線信号により電力を生成するタグアンテナ部20と、タグICチップ21に電気的に接続され、受光した光により電力を生成する光電変換部22とを備えている。
【0016】
ICタグ装置3は、リーダライタ装置5から出力される無線信号である問い合わせ信号をタグアンテナ部20で受信すると共に、この受信した無線信号によりタグアンテナ部20で生成される電力を整流器(図示せず)で整流し、タグICチップ21を動作させるのに必要な直流電圧(以下、「DC電圧」と記す)を生成する。これにより、ICタグ装置3では、電池などの電源を搭載しなくてもタグICチップ21を動作させることができる。なお、ICタグ装置3は、タグアンテナ部20で生成した電力を利用するので、その電源容量は小さい。このため、タグICチップ21では、回路の消費電力を極力抑えている。
【0017】
図1に戻り、リーダライタ装置5は、送信アンテナ8と、受信アンテナ9とを備える。リーダライタ装置5を携帯する場合には、送信アンテナ8と受信アンテナ9を本体に内蔵するのが好ましい。また、リーダライタ装置5を、例えば、ゲート10の所定の位置に設置する場合には、外部に送信アンテナ8と受信アンテナ9を接続するようにしてもよい。図1では、リーダライタ装置5の外部に送信アンテナ8と受信アンテナ9とを接続した実施例を示す。
【0018】
リーダライタ装置5は、照明部4を手動または自動により作動(以下、「ON」と記す)または非作動(以下、「OFF」と記す)することができる。
【0019】
まず、リーダライタ装置5は、照明部4をONにし、ICタグ装置3を照明部4で照明し、その後にICタグ装置3と交信を開始する。照明部4を自動でON/OFFする実施例については後述する。
【0020】
リーダライタ装置5は、送信アンテナ8を介して問い合わせ信号をICタグ装置3に送信し、ICタグ装置3からの応答信号を受信アンテナ9で受信し、後述するように、復調してタグ情報を読み取る。リーダライタ装置5は、タグ情報を読み取った後、照明部4をOFFにする。
【0021】
なお、異なる場所に照明部4を複数設置するようにしてもよい。これにより、異なる位置からICタグ装置3を照明部4で照明することができる。照明部4を、例えば、搬出入口に設置されたゲート10に複数設置し、ONまたはOFFにする。
【0022】
これにより、RFIDシステム1は、パレットに積載された各管理物品2がゲート10を通過するときに、各ICタグ装置3を照明部4で照明し、リーダライタ装置5で各ICタグ装置3のタグ情報を読み取ることができる。
【0023】
このように、RFIDシステム1では、管理物品2がゲート10から搬出または搬入されるときに、リーダライタ装置5が照明部4をONにしてICタグ装置3を照明する。これにより、管理物品2の金属面などにICタグ装置3が貼付され、タグアンテナ部20で生成することができる電力が減った場合でも、光電変換部22で受光を電力に変換してタグICチップ21に供給するため、電圧の低下を抑えることができる。これにより、RFIDシステム1は、タグICチップ21に供給する電圧を安定させ、動作を安定させることができる。その結果として、通信品質を高め、タグ情報を読み書きするときの交信の信頼性を高めることができる。
【0024】
特に、UHF帯やマイクロ波帯の電波は金属面や水の影響を受けやすい。そのため、タグアンテナ部20は、湿気を含んだダンボールや水、ジュース、マヨネーズの入った瓶、飲料用のペットボトル、牛乳パック、りんごなどの果物、魚類、肉類、大根などの野菜などに影響を受け、生成することができる電力が減ってしまう。このような場合でも、本実施の形態におけるICタグ装置3を用いることで、上記した効果が得られるため、リーダライタ装置5がICタグ装置3からタグ情報を取得するときの交信の信頼性を高めることができる。
【0025】
次に、照明部4を自動でONまたはOFFにする実施例について説明する。
【0026】
RFIDシステム1は、さらに、移動物体検知部12をゲート10に設け、ゲート10を通過する車両11などの移動物体を検知し、移動物体がゲート10の近傍を含む所定の領域範囲内にあることを検出したときに、リーダライタ装置5に検知結果として、「移動物体あり」を出力する。これにより、リーダライタ装置5は、移動物体検知部12から「移動物体あり」の検知結果が得られたときに、照明部4をONにする。また、リーダライタ装置5は、移動物体検知部12から「移動物体あり」の検知結果が得られないときには、照明部4をOFFにする。これにより、例えば、車両11がゲート10を通過するときに、リーダライタ装置5は、自動で照明部4をONまたはOFFに制御することができる。
【0027】
移動物体検知部12は、例えば、公知のセンサやカメラを用いることができる。カメラを用いる場合には、カメラで撮影して得た複数の撮影画像の差分情報から移動物体を検出し、予め設定されている撮影画像領域の内側にこの移動物体があるか否かの判断によって、ゲート10の近傍を含む所定の領域範囲内に移動物体があるか否かを判定し、検知結果を出力する。また、カメラに代えて、ゲート10の両側の一方に設けた発光部(図示せず)から発光される光を他方に設けた受光部(図示せず)で検知し、移動物体が光を遮ったときに「移動物体あり」とする検知結果を出力するフォトインタラプタなどを使用することができる。
【0028】
このように、移動物体がゲート10を通過するときに、照明部4によってICタグ装置3を照明するため、ICタグ装置3では光電変換部22が受光した光を電力に変換し、タグICチップ21に供給することができる。これにより、タグアンテナ部20で生成する電力が減っている場合でも、リーダライタ装置5または送信アンテナ8をICタグ装置3に近づけてタグアンテナ部20で生成する電力を増やす必要がなくなるため、タグアンテナ部20のみで電力を生成する場合と比較して、通信距離を拡大することができる。そのため、RFIDシステム1では、図1に示すように、ゲート10の所定の位置にリーダライタ装置5および送信アンテナ8を設置したまま、リーダライタ装置5でICタグ装置3のタグ情報を読み取り、管理部6で管理することができる。よって、各管理物品2の搬出入における作業効率を高めることができる。
【0029】
次に、図2を用いて、RFIDシステム1の動作について説明する。
【0030】
図2に示すように、リーダライタ装置5は、問い合わせ信号をICタグ装置3に送信し、ICタグ装置3からの応答信号を受信してタグ情報を読み取る。
【0031】
まず、リーダライタ装置5は、制御回路41により照明部4をONにすると共に、ICタグ装置3に、例えば「管理番号1は存在するのか?」という問い合わせが行われる。
【0032】
次に、この問い合わせは、変調回路42により、所定の搬送波を変調し、送信回路43、送信アンテナ8を介して、ICタグ装置3に向けて出力される。所定の搬送波として、UHF帯(952MHz〜955MHz)やマイクロ波帯(2.45GHz)の周波数を利用することができる。
【0033】
ICタグ装置3は、タグICチップ21に電気的に接続されているタグアンテナ部20(タグアンテナ20a、20b)で問い合わせ信号(無線信号)を受信すると共に、受信した無線信号から生成した電力をダイオード23、24で整流し、DC電圧を発生させる。このDC電圧をコンデンサ25に充電すると共に、このDC電圧をタグICチップ21に供給し、タグICチップ21を起動する。これによって、タグICチップ21の制御回路28、復調回路29、変調回路30、メモリ31が起動する。
【0034】
ICタグ装置3は、さらに、光電変換部22を備え、この光電変換部22はタグICチップ21に電気的に接続されている。光電変換部22は、受光した光を電力に変換してDC電圧を生成し、このDC電圧を、ダイオード32を介してコンデンサ25に充電すると共に、タグICチップ21に供給する。このように、光電変換部22はタグアンテナ部20と併用して使用される。
【0035】
光電変換部22は、例えば、光電変換デバイスである3個のフォトダイオード22a〜22cを有し、受光した光を電力に変換する。なお、光電変換デバイスの個数は3個に限定されない。光電変換デバイスが1個または2個でも、電力を発生させることができる。これにより、タグアンテナ部20だけでなく、光電変換部22でも電力を発生させ、それぞれの電力から生成したDC電圧をタグICチップ21に供給することができる。さらに、光電変換デバイスの個数を3個より増やすことで、受光したときの面積が増えるため、さらに安定した電力を発生させることができる。
【0036】
次に、制御回路28からの指示で復調回路29は、受信した無線信号から上記「管理番号1は存在するのか?」という問い合わせを復調する。
【0037】
また、制御回路28は、上記復調回路29への指示と同時にメモリ31に記憶保持している個別情報を読み出している。
【0038】
メモリ31に記憶保持されたタグ情報、すなわち、個別識別情報が「管理番号1」であった場合には、制御回路28は、その問い合わせに対して「管理番号1」が存在することを、変調回路30を介してスイッチ27をON、OFFさせて応答する。
【0039】
つまり、スイッチ27がONすれば、タグアンテナ20a、20bの端子aと端子bとが短絡され、スイッチ27がOFFされれば、タグアンテナ20a、20bの端子aと端子bとが開放される。これによって、リーダライタ装置5から送信された電波を反射するか否かをタグ情報に応じて制御し、そのタグ情報の内容を伝達することができる。すなわち、タグ情報の「1」と「0」に対応させてスイッチ27をONまたはOFFさせ、このスイッチ27のON、OFFの繰り返しパターンにより、タグアンテナ20a、20bからリーダライタ装置5に応答出力し、「管理番号1」が存在することが報告される。例えば、タグ情報の「1」のときはスイッチ27をONにし、タグ情報の「0」のときはスイッチ27をOFFにする。なお、ICタグ装置3では、タグアンテナ20a、20bの端子aと端子bを開放させたときに、反射が起きないように、インピーダンスをマッチングさせるコンデンサ26を有している。
【0040】
リーダライタ装置5では、受信アンテナ9で受信した応答信号が受信回路44を介して復調回路45に伝達され、復調した信号により、制御回路41は、「管理番号1」の存在を確認する。リーダライタ装置5は、この「管理番号1」情報を、例えば、制御回路41を介して管理部6に出力する。管理部6では、入力された「管理番号1」の情報に基づいてデータベース7から管理物品2の商品情報を検索し、商品在庫、製造日などを管理する。
【0041】
また、リーダライタ装置5は、管理部6からの指示を制御回路41で受け、制御回路41からICタグ装置3に、「管理番号1は存在するのか?」と、問い合わせが行われたにも係わらず、「管理番号1」を記憶したICタグ装置3が存在しない場合には、応答がないので、制御回路41は、この「応答なし」から「管理番号1」は存在しないことを確認する。
【0042】
次に、リーダライタ装置5は、ICタグ装置3からタグ情報の読み取りが完了すると、制御回路41により照明部4をOFFにする。
【0043】
なお、図2において、リーダライタ装置5は、変調、同期を行うためのクロック回路46と、各回路にDC電圧を供給するための電源回路47を備えている。電源回路47は、例えば、DC電圧を発生させる電池などを有する。
【0044】
また、リーダライタ装置5は、メモリ31が書き換え可能な場合には、ICタグ装置3で記憶保持されているタグ情報を外部から書き換えることもできる。
【0045】
次に、図3から図5を用いて、ICタグ装置3の構成について説明する。
【0046】
図3は本実施の形態におけるICタグ装置3の構成を示す平面図、図4は同ICタグ装置3の構成を示す正面図、図5は同ICタグ装置3の一部切り欠きの構成を示す斜視図である。
【0047】
ICタグ装置3は、図3に示すように、後述する長方形の容器54内にタグICチップ21と、タグアンテナ部20(タグアンテナ20a、20b)と、フォトダイオード22a〜22cとを収納している。
【0048】
容器54は、貼付面を有し、この貼付面には金属板50を設けている。
【0049】
また、金属板50上に、金属緩衝材51を介して基板52を設けている。
【0050】
金属板50には、無線信号を反射する反射作用を有すると共に、管理物品2の影響を抑える効果もある。すなわち、ICタグ装置3が金属容器や飲料水などが充填されたペットボトルに貼付された場合でも、金属板50によりその影響を排除することができ、アンテナ特性を安定させることができる。
【0051】
また、タグICチップ21、フォトダイオード22a〜22cおよびタグアンテナ部20は、長方形の基板52上に形成された配線層53を介して結線されている。
【0052】
基板52には、部品実装と光反射を兼ね備えるため、表面に金をめっきした金フラッシュ表面処理がなされている。
【0053】
金属緩衝材51は、所定の厚みを有し、この所定の厚みにより、タグアンテナ部20を金属板50から離すようにしている。これにより、タグアンテナ部20のアンテナ特性の劣化を抑えている。
【0054】
タグアンテナ部20では、タグICチップ21の両側にタグアンテナ20aとタグアンテナ20bを対称に配置している。タグアンテナ部20は、無線信号を受信すると共に、受信した無線信号によりタグアンテナ部20で電力を生成し、その電力からDC電圧を生成してタグICチップ21に供給している。
【0055】
フォトダイオード22a〜22cは、互いに離されると共に、電気的に並列接続されている。例えば、基板52の両端近傍に各1個と、中央近傍に1個設けている。
【0056】
このように、フォトダイオード22a〜22cを離して設けたことにより、光を異なる位置で同時に受光することができ、受光面積を3倍に増やすことができる。これにより、効果的に光を受光することができ、弱い光でも安定して電力を生成することができる。
【0057】
また、フォトダイオード22a〜22cを電気的に並列接続するようにしたが、さらに、複数個を直列接続するようにしてもよい。これによれば、端子cと端子dとの間のDC電圧を高くすることができる。
【0058】
なお、フォトダイオード22a〜22cは、光エネルギーを直接に電力に変換する光電変換デバイスであればよく、フォトダイオードに代えて、太陽電池を使用することができる。
【0059】
次に、図4に示すように、金属緩衝材51は、金属板50と基板52との間に絶縁材として設けられている。この絶縁材としては、高誘電率な材料を単層、あるいは異なる高誘電率な材料を積層したものを使用する。これにより、金属緩衝材51では、入射してきた電波を屈折させ、電波路としての距離を長くすることができる。その結果として、金属緩衝材51は、紙や空間を設けるためのスペーサなどの低誘電率な材料で絶縁する場合に比較して、その厚みを薄くすることができる。これにより、ICタグ装置3を薄く製造することができる。
【0060】
次に、図5を用いて、容器54について詳細に説明する。図5に示すように、容器54は、覆い上面54aと、覆い側面54bと、貼付面とを有している。覆い上面54aには、フォトダイオード22a〜22cに光をあてるために、光を透過させることができる透明な材料を使用する。例えば、透明なプラスチックを使用する。覆い側面54bには、取り込んだ光を逃がさないように非透明な材料を使用する。例えば、光を吸収せず、かつ反射する白色のプラスチックにする。貼付面には、金属板50を設けている。
【0061】
このような構成により、タグICチップ21、フォトダイオード22a〜22cおよびタグアンテナ部20を保護すると共に、フォトダイオード22a〜22cが受光できるように外部から光を取り込む。
【0062】
なお、容器54の形状を長方形にすることで、タグアンテナ部20に最適な長さを確保するスペースを確保すると共に、フォトダイオード22a〜22cの配置するときの距離を離すことができる。これにより、タグアンテナ部20のアンテナ感度を向上させると共に、フォトダイオード22a〜22cでは、光を効果的に受光することができる。
【0063】
次に、図6を用いて、外部から弱い光があたってもフォトダイオード22a〜22cで十分な電力を生成することができる容器54について説明する。図6は、ICタグ装置3を分解したときの斜視図である。
【0064】
図6に示すように、容器54の一部に光を集光する集光レンズ55を設けた。この集光レンズで集光した光をフォトダイオード22a〜22cに照射するため、フォトダイオード22a〜22cそれぞれが配置された近傍に集光レンズ55をそれぞれ設けている。なお、各集光レンズ55は、その中心がフォトダイオード22a〜22cそれぞれの中心になる位置に設けることで、効率よく集光した光をフォトダイオード22a〜22cに照射することができる。
【0065】
このように、ICタグ装置3では、各集光レンズ55により弱い光を強い光に変換してフォトダイオード22a〜22cそれぞれに照明することができ、外部から弱い光があたっても安定した電力を生成することができる。
【0066】
以上述べたように、本実施の形態におけるRFIDシステム1では、ICタグ装置3を照明部4で照明しながら、ICタグ装置3が記憶保持しているタグ情報を読み取ることができる。このため、ICタグ装置3では、金属面や水分を有する管理物品2に貼り付けられ、無線信号を受信したときにタグアンテナ部20で生成する電力が減った場合であっても、光電変換部22でも受光した光を電力に変換すると共に、タグICチップ21に供給することができる。このため、タグICチップに供給されるDC電圧の低下を抑え、動作を安定させることができる。この結果として、リーダライタ装置5でタグ情報を読み取るときの交信の信頼性を高くすることができる。
【0067】
ICタグ装置3は、さらに、光でも電力を生成することができるため、タグアンテナ部20での起電力を増やすために、リーダライタ装置5をICタグ装置3に近づける必要がない。これにより、金属面や水分を有する物品などにICタグ装置3を貼付しても、光を照射することで通信距離を拡大することができる。例えば、図7に示すように、金属製の台車13にICタグ装置3を貼付しても、同様に、タグICチップ21からタグ情報を読み取るときの交信の信頼性を高めることができる。
【0068】
なお、ICタグ装置3は、金属面や水の影響を受けにくいので、人物、動物などにも適用することができる。また、光としては、自然光を利用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、タグアンテナ部で発電した電力と、光電変換部で受光した光を電力とをタグICチップに供給することができ、金属面や水分を有する物品などに貼付された場合であっても、電圧低下を抑えることができ、タグICチップの動作を安定させることができる。このため、タグICチップからタグ情報を読み取るときの交信の信頼性を高めることが可能なICタグ装置、このICタグ装置を用いたRFIDシステム、物品管理装置、物流管理装置、生産管理装置、人物管理装置、動物管理装置などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の形態におけるRFIDシステムの構成図
【図2】同RFIDシステムの電気的な構成を示すブロック図
【図3】同ICタグ装置の構成を示す平面図
【図4】同ICタグ装置の構成を示す正面図
【図5】同ICタグ装置の一部切り欠きの構成を示す斜視図
【図6】同ICタグ装置を分解したときの斜視図
【図7】同ICタグ装置の他の応用例を示す斜視図
【符号の説明】
【0071】
1 RFIDシステム
2 管理物品
3 ICタグ装置
4 照明部
5 リーダライタ装置
6 管理部
7 データベース
8 送信アンテナ
9 受信アンテナ
10 ゲート
11 車両
12 移動物体検知部
13 台車
20 タグアンテナ部
20a,20b タグアンテナ
21 タグICチップ
22 光電変換部
22a,22b,22c フォトダイオード
23,24,32 ダイオード
25,26 コンデンサ
27 スイッチ
28,41 制御回路
29,45 復調回路
30,42 変調回路
31 メモリ
43 送信回路
44 受信回路
46 クロック回路
47 電源回路
50 金属板
51 金属緩衝材
52 基板
53 配線層
54 容器
54a 覆い上面
54b 覆い側面
55 集光レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タグ情報を記憶保持するタグICチップと、
このタグICチップに電気的に接続され、無線信号を受信すると共に、受信した無線信号により電力を生成するタグアンテナ部と、
前記タグICチップに電気的に接続され、受光した光により電力を生成する光電変換部とを備えたことを特徴とするICタグ装置。
【請求項2】
前記光電変換部は、光を受光して電力を生成する光電変換デバイスを複数有し、これら複数の光電変換デバイスを互いに離すと共に、電気的に並列接続したことを特徴とする請求項1に記載のICタグ装置。
【請求項3】
前記タグICチップと、前記タグアンテナ部と、前記光電変換デバイスとを、
光を透過する容器内に収納させたことを特徴とする請求項2に記載のICタグ装置。
【請求項4】
前記容器は、貼付面を有し、
この貼付面には金属板を設けたことを特徴とする請求項3に記載のICタグ装置。
【請求項5】
前記容器は、光を集光する集光レンズを備え、
この集光レンズで集光した光を前記光電変換デバイスに照射することを特徴とする請求項3または請求項4に記載のICタグ装置。
【請求項6】
前記光電変換デバイスとして、フォトダイオードを用いたことを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一つに記載のICタグ装置。
【請求項7】
前記光電変換デバイスとして、太陽電池を用いたことを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一つに記載のICタグ装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一つに記載のICタグ装置と、
このICタグ装置が記憶保持しているタグ情報を読み取るリーダライタ装置と、
前記ICタグ装置を照明する照明部とを備えたことを特徴とするRFIDシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−193115(P2009−193115A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30266(P2008−30266)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】