説明

ICタグ

【課題】電源を必要とせず、輸送中の振動を利用して動作電力を得ることができるようにしたICタグを提供すること。
【解決手段】コイル状のアンテナ5とICチップ6に内蔵された容量素子とにより共振回路を形成して一定周波数の電波を送受信できるように構成されたICタグ1であって、外部からの振動によってアンテナ5の内部で往復動するように設置された磁性体からなるコア7を備えており、そのコア7が往復動してアンテナ5に電流が流れることによってICチップ6内の容量素子に電力が蓄えられるようになっている。外部からの振動によってコアが往復動することによって、動作電力を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取扱い物品に取り付けるためのラベル、荷札、伝票などに用いられるICタグの技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ICチップとアンテナからなり、外部処理装置との通信を非接触で行うICタグが一般に広く知られるようになってきた。そして、運送や流通での物品管理の分野、工場での工程管理の分野などにおいては、このICタグをラベル、荷札、伝票等に用いることが行われている。
【0003】
このICタグは、ラベル、荷札、伝票等に組み込まれ、取扱い物品に取り付けて使用されるが、その使い方としては取扱い物品の流れを管理するというのが一般的である。したがって、例えば、物品が輸送中に大きな振動を受けて損傷したり、品質が低下したりした場合、普通のICタグではそれを知ることはできない。そこで、振動センサ付きのICタグを使用することにより、物品の輸送時における振動の有無、振動発生の場所、振動の程度などを監視するようにしたものが提案されている。
【特許文献1】特開2006−62864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に記載されているような振動センサ付きのICタグは、物品の振動による損傷や異常、或いはその可能性の有無を監視することができる。しかしながら、振動センサからの振動情報を通信するために電源としての電池を必要とし、価格が高くなるという問題がある。また、電源である電池の残量をチェックし、充電や交換を行うなどのメンテナンスが必要となる。
【0005】
本発明は、上記のような問題点や事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電源を必要とせず、輸送中の振動を利用して動作電力を得ることができるようにしたICタグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明のICタグは、コイル状のアンテナとICチップに内蔵された容量素子とにより共振回路を形成して一定周波数の電波を送受信できるように構成されたICタグであって、外部からの振動によってアンテナの内部で往復動するように設置された磁性体からなるコアを備えており、そのコアが往復動してアンテナに電流が流れることによってICチップ内の容量素子に電力が蓄えられるようになっていることを特徴としている。
【0007】
このICタグによれば、外部からの振動によってコアが往復動するとアンテナに電流が流れ、ICチップの容量素子に電力が蓄えられるので、ICタグの動作電力を得ることができる。
【0008】
そして、コアがアンテナの内部で往復動する移動範囲を調節可能としてよい。これによって、ICタグの動作電力を変更することができる。
【0009】
上記のようなICタグにおいて、ICチップ内の容量素子に所定値以上の電力が蓄えられると、ICチップ内の情報をアンテナから送信するよう設定するとよい。これによって、大きな振動があったことを知らせることができる。
【0010】
或いは、ICチップ内の容量素子に所定値以上の電力が蓄えられると、ICチップ内のメモリに記録を残すように設定してもよい。これによって、大きな振動があったことを記憶することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るICタグによれば、外部からの振動によってコアが往復動することによって、動作電力を得ることができるため、電源としての電池を必要とせず、安価なものとなる。また、電源をメンテナンスするような作業も不要となる。そして、外部から大きな振動を受けたことを送信したりメモリに記憶させたりすることにより、ICタグを取り付けた取扱い物品が輸送時に大きな振動を受けたか否かを監視することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、具体例を挙げて本発明の好適な実施形態について説明する。
【0013】
図1は本実施形態に係るICタグの一例を示す断面図、図2は図1のA−A断面図である。
【0014】
このICタグ1は、ネジ構造により互いに嵌め外しができるそれぞれプラスチック製の容器部分2と蓋部分3とからなる偏平なケースの形態を採っており、容器部分2に蓋部分3を取り付けると図示のように偏平な収納空間が形成されるようになっている。容器部分2の底部付近にはPETフィルム等の絶縁性のベースフィルム4が張設されており、このベースフィルム4にはコイル状のアンテナ5とICチップ6が設けられ、さらにアンテナ5の中央に位置するようにして磁性体からなるコア7が取り付けられている。アンテナ5はベースフィルム4上に印刷により形成され、ICチップ6はベースフィルム4上に載置接合されている。また、コア7はベースフィルム4上に接着剤を介して貼り付けられている。コア7は磁性体であれば何を用いてもよいが、価格面及び性能面からフェライトを使用するのが好適である。
【0015】
このICタグ1に外部から振動が加わると、容器部分2に張設されているベースフィルム4が収納空間内でばたつくことによってコア7がアンテナ5の内部で往復動する。そして、ベースフィルム4の面をX−Y面とすると、コア7の往復動によりZ軸方向に磁界が発生し、その磁界と垂直方向に存在するアンテナ5に電流が流れる。このようにアンテナ5に電流が流れ、ICチップ6内の容量素子に電力が蓄えられる。
【0016】
このICタグ1は、ケースの蓋部分3を容器部分2に対して上下させることで、収納空間の高さを変えることができる。このように、コア7がアンテナ5の内部で往復動する移動範囲を調節することにより、ICチップ6内に一定以上の電力が蓄えられるのに必要な外部からの振動エネルギーを設定することができる。
【0017】
ICタグ1は、アンテナ5とICチップ6に内蔵された容量素子とにより共振回路を形成して一定周波数の電波を送受信できる。そして、その機能はICタグ1の使い方によって任意に設定すればよい。例えば、ICチップ6内の容量素子に所定値以上の電力が蓄えられると、ICチップ6内の情報をアンテナから送信するようにしてもよいし、ICチップ6内のメモリに記録を残すようにしてもよい。前者では、大きな振動があったことを知らせることができるし、後者では、大きな振動があったことを記憶することができる。
【0018】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明してきたが、本発明によるICタグは、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは当然のことである。
【0019】
例えば、上記の例では、ケースをネジ構造にすることで、コアがアンテナの内部で往復動する移動範囲を調節可能としたが、内部空間を固定して移動範囲を決めておくようにすることもできる。この場合、ICタグの外観は、円形状でなく矩形状やその他の形状にできることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係るICタグの一例を示す断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 ICタグ
2 容器部分
3 蓋部分
4 ベースフィルム
5 アンテナ
6 ICチップ
7 コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル状のアンテナとICチップに内蔵された容量素子とにより共振回路を形成して一定周波数の電波を送受信できるように構成されたICタグであって、外部からの振動によってアンテナの内部で往復動するように設置された磁性体からなるコアを備えており、そのコアが往復動してアンテナに電流が流れることによってICチップ内の容量素子に電力が蓄えられるようになっていることを特徴とするICタグ。
【請求項2】
コアがアンテナの内部で往復動する移動範囲を調節可能であることを特徴とする請求項1に記載のICタグ。
【請求項3】
ICチップ内の容量素子に所定値以上の電力が蓄えられると、ICチップ内の情報をアンテナから送信するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のICタグ。
【請求項4】
ICチップ内の容量素子に所定値以上の電力が蓄えられると、ICチップ内のメモリに記録を残すようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のICタグ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−176363(P2008−176363A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6657(P2007−6657)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】