説明

ICタグ

【課題】低コストで製造することに加えて、商品がその使命を終えて資源ゴミとして再利用されることも考慮した環境に優しいICタグを提供する。
【解決手段】物品に関する電子的情報が格納されたICチップ30と、ICチップ30が電気的に接続されるアンテナパターン14が形成されている基材と、を備え、基材が、耐水性及び寸法安定性を有する紙基材10から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品に関する電子的な情報が格納されたICタグに関する。本発明は、詳細には、商品が収納された紙器や段ボール等に取り付けて、それらの流通履歴を明らかにするための物流管理に使用されたり、商品の在庫や入出庫状況を把握するための商品管理に使用されるICタグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から使用されているICタグは、プラスチックからなる基材上にICチップが搭載されている構成をしている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。
【0003】
ICタグの基材として、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のプラスチックフィルムが使用されている理由として、通信用のアンテナパターンとして銅からなるパターンを基材上に形成するためである。アンテナパターンを形成する方法として、プラスチックフィルム上に銅箔を積層したものを化学的にエッチングしたり、金属メッキでパターンを形成することが一般的に行われている。また、ICチップを搭載するときには、湿気等によって基材の寸法が変動することなくICチップを基材に対して安定的に位置決めすることができるという基材の寸法安定性が要求される。このような対薬品性や寸法安定性に優れた基材として、上述したようなプラスチック材料が一般に使用されている。しかしながら、プラスチック材料を用いるとともに化学的なエッチング処理を行う上記方法では、銅箔の積層工程や銅箔のエッチング工程に多大なコストがかかることや、エッチングで除去される銅が捨てられるので多くの無駄が出てしまうことや、使用したエッチング廃液の処理が必要であること等の問題がある。
【0004】
ところで、商品が工場で生産されたあと最終的に消費者の手に渡るまでには、紙器や段ボールといった紙製包装部材に商品が収納された状態で一般的に流通している。流通過程においてICタグが取り付けられる紙製部材は、その使命を終えたときには、紙製品類のゴミとして廃棄される。使命を終えた紙製部材を紙製品類の資源ゴミとして再利用する際には、ICタグの一部分を構成するプラスチック基材が異物になってしまう。したがって、ICタグが取り付けられる対象物がプラスチック材料以外のもので構成されている場合には、資源ゴミとして回収する際にはプラスチック基材が異物になってしまうのでその回収に手間やコストがかかるという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2005−100371号公報
【特許文献2】特開2005−332116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、低コストで製造することに加えて、商品がその使命を終えて資源ゴミとして再利用されることも考慮した環境に優しいICタグを提供することである。
【課題を解決するための手段及びその作用と効果】
【0007】
上述の技術的課題を解決するために、本発明に係るICタグは、以下の特徴を有する。
【0008】
すなわち、本発明に係るICタグは、
物品に関する電子的情報が格納されたICチップと、
前記ICチップが電気的に接続されるアンテナパターンが形成されている基材と、を備え、
前記基材が、耐水性及び寸法安定性を有する紙基材から構成されていることを特徴とする。
【0009】
上記構成のICタグによれば、基材が耐水性及び寸法安定性を有する紙素材から構成されているので、アンテナパターンの精密な形成及びICチップの正確な位置決めを行うことができるので、所望の通信特性を有するICタグを低コストで製造することができるとともに、紙という簡単に再利用できる素材を使用しているので、その使命を終えて資源ゴミとして再利用される環境に優しいものとすることができる。
【0010】
耐水性及び寸法安定性を有する紙基材としては、ロウ紙やパラフィン紙や油紙等のロウや乾性油を含浸させた防水防湿紙を使用することもできるが、シロキサン結合を主鎖としたポリマーを塗工してなる。紙のセルロース繊維の間に形成されたシロキサン結合は、引っ張り強度の向上や優れた撥水性や耐水性や適度な柔軟性を付与する。
【0011】
シロキサン結合は、ゾル−ゲル法によって作成される。アルコキシシランを主原料として、これをアルコールに溶かして更に触媒(加水分解可能な有機金属化合物(金属アルコキシド))を加えて十分に攪拌・熟成することによってコート液が調製される。紙の表面や内部に存在する水分を利用して短時間で反応が進行して、シロキサン結合のネットワークが生成される。
【0012】
アンテナパターンは、導電性粒子を含むペーストを用いて作成される。
【0013】
導電性粒子として、金や銀や銅やニッケル等の金属粉、カーボンブラックやグラファイト等の炭素粉、あるいは酸化スズや酸化インジウム等の金属酸化物等が使用可能であるが、導電性と信頼性とコストの面で、銀が優れている。
【0014】
本発明の紙基材は、耐水性及び寸法安定性を有しているので、当該紙基材に対してICチップを直接に搭載しても位置ズレの発生はほとんど無い。しかしながら、さらに高い寸法安定性を得るために、すなわちICチップの位置決めエラーを大幅に低減するために、好ましくは、粘接着層を介して剥離フィルムで担持されている紙基材に対して、前記ICチップが搭載される。非常に高い寸法安定性を有する剥離フィルムと当該紙基材とを一体化することによって、当該紙基材の寸法安定性をさらに高めることができる。
【0015】
剥離フィルムで担持されている紙基材は、ロール状で供給される。
【0016】
粘接着層を紙基材に対して全面的に形成することもできるが、粘接着層の形成面積が増大するために、材料費がより多くかかってしまう。そこで、粘接着層を必要な箇所に形成することが材料費の削減に有効である。ロール状で供給される紙基材上に対してICチップを搭載させるときに、剥離フィルムと紙基材との間で剥がれが発生しないように、抗張力を確保する必要がある。したがって、材料費の削減及び抗張力の確保のために、粘接着層が、ロール送り方向に沿ってストライプ状に形成されていることが好ましい。
【0017】
本発明に係るICタグは、容易に燃やすことのできる低公害性の紙基材を主要構成要素としているので、様々な部材に貼付することができるが、資源ゴミとしてリサイクルされるときに再生の障害とならないように、好ましくは、紙製包装部材に貼付される。
【0018】
ICタグには、多くの電子的な情報を格納することができる。紙器や段ボール等の紙製包装部材の製造過程でICタグを取り付けて、紙製包装部材の製造工程での生産管理情報や在庫管理情報から始まって、紙製包装部材が得意先に納品され、紙製包装部材に商品が詰められ、流通を終えて廃棄されるまでの紙製包装部材及び商品の履歴が明らかになるように、紙製包装部材を一貫して管理することが好ましい。したがって、これらの過程における最も川上に位置するカートンブランクに対して、ICタグを貼付することが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の一実施形態に係るICタグ1を、図1乃至3を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明するICタグ1は、専ら、紙器や段ボールや紙袋や包装紙やポスター等の紙製包装部材に、より好ましくは、未だ箱状に組み立てられていないカートンブランク40に貼付されるが、樹脂製コンテナや樹脂トレイ等の他の部材に貼付して使用することができることは言うまでもない。
【0020】
図1に示すように、本発明に係るICタグ1は、シリコンチップからなるICチップ30が紙基材10上に搭載された構成をしている。ICチップ30には、紙製包装部材の製造工程での生産管理情報や在庫管理情報から始まって、紙製包装部材が得意先に納品され、紙製包装部材に商品が梱包され、商品入りの紙製包装部材が需要者の手に渡ることによって、流通を終えて廃棄されるまでのその履歴に関する電子的な情報が格納されている。このようなICチップ30は、半導体集積回路であるICチップ又はさらに集積度のアップしたLSIチップである。
【0021】
紙基材10のおもて面の上には、アンテナパターン14が形成されている。アンテナパターン14の中心側電極端子のそれぞれに対して、ICチップ30の接続端子が電気的に接続されている。使用する電波の波長に応じて様々なパターンを用いることができるが、例えば、図2に示したようなパターンを用いることができる。このようなアンテナパターン14は、後述するように、印刷又は転写によって形成される。
【0022】
ところで、紙は、一般的に、その周囲に存在する水分や湿気の影響を受けやすい。紙が水分や湿気を吸うと膨張してしまうために、その寸法が変動してしまう。ICタグ1の基材として一般的な紙を使用すると、吸水によって、ICチップ30の基材への高精度な配置や、アンテナパターン14の高精度な形成が困難である。そこで、本発明においては、基材が、耐水性及び寸法安定性を有する紙基材10から構成されている。
【0023】
耐水性及び寸法安定性を有する紙基材10として、ロウ紙やパラフィン紙や油紙等のロウや乾性油を含浸させた従来の防水防湿紙を使用することもできるが、シロキサン結合を主鎖としたポリマーを塗工してなるものが好ましい。紙のセルロース繊維の間に形成されたシロキサン結合は、引っ張り強度の向上、優れた撥水性や耐水性、及び適度な柔軟性を付与する。
【0024】
シロキサン結合の形成によって耐水性及び寸法安定性を有する紙基材10は、アルコキシシランを主原料とする溶液に加水分解可能な有機金属化合物(金属アルコキシド)を触媒として作用させると、溶液が毛細管現象で紙の繊維の中に浸透し、加水分解した有機金属化合物と反応することによってシロキサン結合のネットワークが作成される。いわゆるゾル−ゲル法によって作成される。このような耐水加工に適した紙は、例えば、上質紙、グラシン紙、クラフト紙、非塗工の白板紙(アイボリーやカード等)、ねずみボール、黄ボール、チップボール、クラフトボール、茶ボール等である。アルコキシシラン液は、グラビア印刷法やシルクスクリーン印刷法等の一般的な印刷法の他に、ロールコート法やディッピング法等で紙に塗工される。
【0025】
アンテナパターン14は、従来から使用されている銅箔に近い導電性を持った導電性フィラーを含む低抵抗ペーストを用いて、印刷又は転写によって形成される。印刷方式としては、グラビア印刷、オフセット印刷、シルク印刷が用いられるが、配線抵抗を低くするために厚膜化の可能なシルク印刷法が好適である。また、量産性を考慮すると、ロータリーシルク印刷機が好適である。あるいは、転写方式としては、別の離型基材の上にアンテナパターン14を印刷し、アンテナパターン14を転写ヘッドとして利用する方法を用いることができる。導電性フィラーとして、金や銀や銅やニッケル等の金属粉、カーボンブラックやグラファイト等の炭素粉、あるいは酸化スズや酸化インジウム等の金属酸化物粉等が使用可能である。印刷ペースト中には、50重量%以上の導電性フィラーが含まれることが好ましい。金属粉は、鱗片状又は針状の結晶で酸化しにくいものとして、銀が好適である。アンテナパターン14の比抵抗としては、10−6Ω・cmオーダーの低抵抗のものが好適である。
【0026】
導電性インキとしては、酸化重合型インキや紫外線硬化型インキが使用される。酸化重合型インキとは、炭素−炭素の二重結合を有する油脂、酸化重合促進触媒、顔料を含み、酸素の存在により酸化重合が起こり硬化するインキである。炭素−炭素の二重結合を有する油脂としては、不飽和脂肪酸、酸化重合促進触媒としては、有機カルボン酸の金属塩が用いられる。また、紫外線硬化型インキは、紫外線を照射することで瞬間的にインキを乾燥させるものである。
【0027】
例えば、酸化重合型の導電性インキとして、東洋インキ製造(株)の銀ペースト導電性インキRFZ−620が好適である。この導電性インキは、固形分を70%含み、粘度が3.7(E型粘度計、5rpm)、TI値が3.2、体積抵抗値が1.5×10−6Ω・cmというものである。第一ゾーンが200℃、第二ゾーン、第三ゾーン及び第四ゾーンが220℃という温度勾配を持った乾燥機の中で熱風乾燥することによって、低抵抗のパターンを得ることができる。乾燥硬化後のパターンの厚みは、おおよそ6乃至8μmである。
【0028】
また、藤倉化成(株)の高導電性銀ペースト(例えば、型番がXA-9053)も好適である。この高導電性ペーストは、酸化銀微粒子をエチレングリコール等の還元剤と混合し、150℃程度の低温加熱によって銀に還元させることで、銀粒子同士の接触で低抵抗を実現するというものである。すなわち、金属表面に形成されている酸化皮膜を還元反応を利用して除去して、金属面を露出させるというものである。
【0029】
ICチップ30が搭載された、すなわちアンテナパターン14が形成された紙基材10のおもて面の反対面(裏面)には、粘着材又は接着材からなる粘接着層24が設けられている。また、粘接着層24の上(裏面側)には、着脱自在の剥離フィルム20が貼付されている。剥離フィルム20は、剥離しやすいように表面処理したPET(ポリエチレンテレフタレート)のフィルムである。
【0030】
剥離フィルム20は、必要なときに粘接着層24を露出させる離型フィルムとして機能するとともに、ICチップ30を搭載するときに紙基材10の所定のピッチが確保できるようにするピッチ確保機能(位置ズレ防止機能)も有している。
【0031】
基材として、耐水性及び寸法安定性を有する紙基材10を用いているので、紙基材10のピッチ変動が抑制されている。しかしながら、量産時における紙基材10のピッチ変動をさらに抑制するために、紙基材10が、粘接着層24を介して、高い寸法安定性を有する剥離フィルム20で担持されていることが好ましい。
【0032】
粘接着層24は、シルク印刷やグラビア印刷によるダイレクト印刷で行う方法、あるいはパターン転写で形成する方法の中から適宜選択することができる。その中で、シルク印刷法が好ましい。液状の粘着材又は接着材をシルク印刷法でダイレクト印刷し、剥離フィルム20とラミネートした後、剥離フィルム20の側から紫外線(UV)を照射することによって、パターン塗工した粘着材又は接着材を粘着化する。ここで、UV照射型粘着材として、ザ・インクテック(株)のUV硬化型粘着材UPSA−906が好適である。
【0033】
粘接着層24を紙基材10に対して全面的に形成することもできるが、粘接着層24の形成面積が増大するために、多大な材料コストが必要になってしまう。そこで、粘接着層24を必要な箇所に形成することが粘着材又は接着材の費用削減に有効である。ロール状で供給される紙基材10上に対してICチップ30を搭載させるときに、剥離フィルム20と紙基材10との間で剥がれが発生しないように、ロール送り方向の抗張力を確保する必要がある。したがって、材料費の削減及び抗張力の確保のために、粘接着層24が、ロール送り方向に沿ってストライプ状に形成されていることが好ましい。したがって、図2に例示するように、粘接着層24(破線で示されている部分)が、ロール送り方向に沿って二本のストライプと中央の一本のストライプとが並行したストライプ状に形成されている。
【0034】
次に、ICタグ1の作成方法、及び作成したICタグ1の使用形態について説明する。
【0035】
ロール状に巻き取られた上質紙をシート状に延在させて、ロールコーター又はグラビアコーターによって、アルコキシシラン系の塗工液((株)飾一のSPK-902B)をシート状の上質紙のおもて面及び裏面にコーティングする。そして、塗工液のコーティングされたシートを150℃で10分間の条件で乾燥させたあと、ロール状に巻き取る。シロキサン結合の形成によって耐水性及び寸法安定性を備えた紙基材10が作成される。
【0036】
耐水性・撥水性ポリマーのコーティングされた紙基材10のおもて面に対して、上述した銀ペースト導電性インキをロータリスクリーンによって印刷して、シートの長手方向に沿って並行に繰り返された複数のアンテナパターン14を形成する。アンテナパターン14の印刷された紙基材10を、入口温度200℃で出口温度220℃の温度勾配を設けた乾燥炉に10乃至20m/分の速度で通過させて乾燥させたあと、ロール状に巻き取る。なお、複数列のアンテナパターン14をシートの幅方向に形成することができる。この場合、複数列のアンテナパターン14の形成後に、シートの長手方向に沿って所定幅でスリット加工し、それを小型のロールで巻き取ることができる。その結果、一列のアンテナパターン14がシートの長手方向に沿って繰り返された小型のロール体を作成することができる。
【0037】
紙基材10の裏面上に対して、紫外線反応型粘着塗液をシート長手方向のストライプ状にパターン印刷したあと、透明な剥離フィルム20と積層する。剥離フィルム20と積層された紙基材10に対して、その裏面側から紫外線を照射することによって、粘着塗液が粘着化されて、紙基材10と剥離フィルム20との間に粘接着層24を形成する。
【0038】
剥離フィルム20と積層された紙基材10に張力を加えた状態で、ICチップ30が紙基材10のおもて面上に搭載される。ICチップ30の接続端子以外の部分に接着材をポッティングして、ICチップ30の一対の接続端子と、アンテナパターン14の一対の電極端子とが物理的に接触した状態で接着材を固化させることによって、ICチップ30を紙基材10に固定するとともに、ICチップ30をアンテナパターン14に電気的に接続する。また、導電性接着材や半田等の電気的接続部材をICチップ30の接続端子と、アンテナパターン14の電極端子との間に介在させて電気的接続部材を固化させることによって、ICチップ30を紙基材10に固定するとともに、ICチップ30をアンテナパターン14に電気的に接続することもできる。そのあと、ICタグ1の周囲にトリミング加工を施して、紙基材10のおもて面から剥離フィルム20の直前まで切り込みの入った半抜き加工状態にする。そして、ICチップ30の搭載されたシート状の原反2は、原反ロール6として巻き取られる。
【0039】
粘接着層24は、アンテナパターン14の形成された必要部分だけに形成したり、その周囲の不要部分にも形成することができる。
【0040】
アンテナパターン14の周囲の不要部分にも粘接着層24を形成した場合、当該不要部分をスクラップとして事前に回収して、アンテナパターン14の形成された必要部分だけが剥離フィルム20の上に残存した原反2とすることができる。
【0041】
アンテナパターン14の形成された必要部分だけにストライプ状の粘接着層24を形成した場合、後述するように、ICタグ1及び不要部分(スクラップ部分)を一緒に貼付しようとしたときに、ICタグ1だけが紙製包装部材に貼付されて、粘接着層24が無いために貼付されない不要部分(スクラップ部分)が分離回収される。したがって、紙基材10の必要部分、紙基材10の不要部分(スクラップ部分)、剥離フィルム20が別々に回収可能であるから、リサイクル時の再生利用が容易になる。
【0042】
次に、図3を参照しながら、ICタグ1の使用形態について説明する。
【0043】
ICタグ1の搭載された上記原反2は、紙製包装部材へのラベル貼りに供せられる。
【0044】
ロール状に巻き取られた原反ロール6の原反2には、アンテナパターン14の形成された必要部分だけにストライプ状の粘接着層24が形成されている。回収ロール26が原反2の下方に配置されている。原反2の紙基材10の左端に張力を印加しながら、原反2の紙基材10をシート状に引き延ばす(図3においては、右側から左側に)。紙基材10を左方の水平方向に所定のピッチで送るとともに、原反2の下方に配置された回収ロール26によって、原反2から剥離フィルム20が引き剥がされ、引き剥がされた剥離フィルム20を回収ロール26にて回収する。
【0045】
ICタグ1を含む紙基材10は、そのおもて面の左右の端部を不図示の把持手段で把持した状態で、紙基材10の右端部をスリットすることで、紙基材10の本体から切り離される。また、切り離された紙基材10の本体のおもて面の左端部を不図示の把持手段で把持して、次の切り離し工程に備える。
【0046】
ICタグ1を含む紙基材10を、不図示のラベル貼り機を用いて、紙器や段ボール等の紙製包装部材のカートンブランク40の所定の箇所に貼付する。ICタグ1を含む紙基材10の貼付されたカートンブランク40には、ICタグ1の必要部分と、不要部分(スクラップ部分)と、が共存しているが、ICタグ1の必要部分だけにストライプ状の粘接着層24を形成しているので、ICタグ1だけが紙製包装部材に貼付されて、粘接着層24の無い不要部分(スクラップ部分)が引き離されて回収される。
【0047】
ICタグ1の貼付されたカートンブランク40は、紙器や段ボール等の紙製包装部材メーカーの組み立て工程において箱状に組み立てられる。そして、紙製包装部材の工程管理や在庫管理に関する電子的な情報が、無線通信の入出力手段によってICチップ30に書き込まれる。
【0048】
ICタグ1の付いた紙器や段ボール等の紙製包装部材は、得意先に納品される。得意先では、紙製包装部材の中に得意先の商品が詰められる。このとき、得意先の商品の性状や工程管理や在庫管理に関する電子的な情報が、無線通信の入出力手段によってICチップ30にさらに書き込まれる。そして、商品の詰められたICタグ1付きの紙器や段ボール等の紙製包装部材は、最終需要者に輸送される。万が一、商品に何らかの不具合があった場合には、無線通信の入出力手段をかざしてICチップ30に格納された電子的な情報を読み取ってその履歴を辿ることによって、どこに原因があったかを即座に究明することができる。したがって、本発明によれば、物品すなわち紙製包装部材や商品に関する川上から川下までの履歴を即座に把握することができる。
【0049】
上記実施例では、ICタグ1を紙製包装部材に貼付しているが、他の様々な部材に貼付することができる。そして、本発明に係るICタグ1は、容易に燃やすことのできる低公害性の紙基材10を主要構成要素としているので、資源ゴミとしてリサイクルされるときに再生の障害とはならない。ICタグ1の構成要素であるICチップ30は、通常、比重の大きいシリコンから構成されているので、ICチップ30は、紙基材10や紙製包装部材と一緒に資源ゴミの原料として叩解するときに、比重差で沈降するために容易に分離回収することができる。したがって、ICチップ30がリサイクルでの再生の障害にはなることはない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係るICタグの断面図である。
【図2】図1に示したICタグの上面図である。
【図3】本発明に係るICタグの製造方法を模式的に説明する図である。
【符号の説明】
【0051】
1 ICタグ
2 原反
4 ICタグのシート体
6 原反ロール
10 紙基材
14 アンテナパターン
20 剥離フィルム
24 粘接着層
26 回収ロール
30 ICチップ
40 カートンブランク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に関する電子的情報が格納されたICチップと、
前記ICチップが電気的に接続されるアンテナパターンが形成されている基材と、を備え、
前記基材が、耐水性及び寸法安定性を有する紙基材から構成されていることを特徴とするICタグ。
【請求項2】
前記紙基材は、シロキサン結合を主鎖としたポリマーを塗工してなることを特徴とする、請求項1記載のICタグ。
【請求項3】
前記シロキサン結合は、ゾル−ゲル法によって作成されることを特徴とする、請求項1記載のICタグ。
【請求項4】
前記アンテナパターンは、導電性粒子を含むペーストを用いて作成されることを特徴とする、請求項1記載のICタグ。
【請求項5】
前記導電性粒子が銀であることを特徴とする、請求項4記載のICタグ。
【請求項6】
粘接着層を介して剥離フィルムで担持されている紙基材に対して、前記ICチップが搭載されることを特徴とする、請求項1記載のICタグ。
【請求項7】
剥離フィルムで担持されている紙基材は、ロール状で供給されることを特徴とする、請求項6記載のICタグ。
【請求項8】
前記粘接着層が、ロール送り方向に沿ってストライプ状に形成されていることを特徴とする、請求項7記載のICタグ。
【請求項9】
紙製包装部材に貼付されることを特徴とする、請求項1記載のICタグ。
【請求項10】
ICタグの貼付される紙製包装部材が、カートンブランクであることを特徴とする、請求項9記載のICタグ。
【請求項11】
前記請求項1乃至8のいずれかに記載のICタグが貼付されていることを特徴とする紙製包装部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−9698(P2008−9698A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179279(P2006−179279)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年6月24日神戸新聞(神戸新聞社発行)において文書をもって発表 平成18年6月24日電気通信回線を通じて発表 掲載アドレス http://www.kobe−np.co.jp/kobenews/kz/0000057993.shtml
【出願人】(506225710)
【出願人】(506224872)ヤカ紙工株式会社 (2)
【出願人】(506224089)カルトン・アイ株式会社 (2)
【出願人】(503120999)株式会社テクノリンクス (8)
【Fターム(参考)】