説明

ICチップ実装体の製造装置

【課題】ICチップをフィルム基板に固定する接着剤の加熱加圧機構用の大きなスペースを必要とせず短時間での養生が可能であり、ICチップの損壊を招きにくく歩留まりを向上することができるICチップ実装体の製造装置を提供する。
【解決手段】ICチップ実装体の製造装置に、アンテナ回路が形成され且つ接着剤84を介してICチップ83が搭載されたフィルム基板8の搬送経路上に、カバーシート85でフィルム基板8を覆い重ね合わせつつICチップ83をフィルム基板8に熱圧着する熱圧着部と、カバーシート供給部4とを設け、熱圧着部に、カバーシート85と共にICチップ83が搭載されたフィルム基板8を挟む1本のベルトと、カバーシート85に張力を付与する張力付与手段と、フィルム基板8を加熱する加熱手段とを設けた構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップ実装体の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ICチップを搭載した実装体として、RFID(Radio Frequency
Identification)の一種である無線ICタグが実用されてきている。ICタグのなかでも、パッシブタグと呼ばれるものは、電池を搭載せず、固有の識別情報が記録されたICチップと小型のアンテナ回路とをフィルム基板に貼付した構成を有しており、ICタグリーダから発せられる電波によって回路内に微量な電力を発生させ、その電力でICタグリーダとの通信を行ってICチップ内の情報を読み書きするものであり、非接触ICカードとして、乗車カード、電子マネー、認証用カード等の分野で広く利用されるようになっている。また最近では、電池を搭載して自ら電波を発するアクティブタグと呼ばれるICタグも登場してきており、通信方式や使用する電波の周波数帯なども種々実用化又は検討されている。
【0003】
このようなICタグに代表されるICチップ実装体は、ベースシート上にICチップとアンテナ回路とを固定しているという、共通した構成を有している。斯かるICチップ実装体の製造装置としては、例えば、一方の面を粘着面としたベースシートに対してアンテナ回路及びICチップが形成された回路シートを貼り合わせて搬送し、さらにカバーシートを貼り合わせることによってICチップ実装体を製造する装置や、若しくは予め一方の面にアンテナ回路が形成されたベースシート(アンテナ回路が形成されたベースシートを「フィルム基板」と称する場合がある)を搬送し、このアンテナ回路と接続するように接着剤を介してICチップを搭載し、さらに一方の面を粘着面(この面に接着剤を塗布して粘着面としてもよい)としたカバーシートを貼り合わせることによってICチップ実装体を製造する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。これらの何れの装置においても、ベースシートは、長尺なシートをロール状として搬送経路の開始位置に配置され、ICチップ実装体の製造装置に順次供給されてICチップ実装体が製造された後に、所定の長さに切断されて、非接触ICカード等の製造装置へと送られる。
【0004】
ここで、ベースシート上のアンテナ回路にICチップを取り付ける際には、異方導電性接着剤等が用いられるが、このような接着成分の養生には一般に加熱と加圧が必要である。すなわち、加熱により接着成分を乾燥・硬化させるとともに、加圧によりICチップをアンテナ回路に対して強固に固定するようにされている(例えば、特許文献2参照)。その他、カバーシートで覆っていない態様で提供されるICチップ実装体もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−209144号公報
【特許文献2】特開2005−149130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述したようなICチップ実装体の製造装置では、ベースシート又はフィルム基板を停止することなく連続的に搬送しながら回路シートの貼り合わせやICチップの搭載を行う構成の装置においても、接着剤の養生のために熱圧着を行うためには、相当な長時間が必要であり、加熱加圧の機構部分の総延長を長くしなければならず、大きなスペースが必要となる。さらに、ICチップは微細な(例えば1mm角以下)精密部材であり、外部からの圧迫や衝撃には非常に弱いものであるため、接着剤の養生時においてもICチップが過度な圧迫を受けると破損する可能性があると考えられ、ICチップ実装体の歩留まりが低下する要因となりかねない。また、ICチップを破損しない程度の圧力調整も困難である。このような諸要因から、従来のICチップ実装体の製造装置では、時間、コスト、スペース、歩留まりの各面でロスが生じていた。
【0007】
以上のような問題に鑑みて本発明は、ICチップをフィルム基板に固定する接着剤の加熱加圧機構用の大きなスペースを必要とせず短時間での養生が可能であり、またICチップの損壊を招きにくく歩留まりを向上することができるICチップ実装体の製造装置を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係るICチップ実装体の製造装置は、ベースシートの少なくとも一方の面にアンテナ回路が形成され且つ所定位置に接着剤を介してICチップが搭載されたフィルム基板の搬送経路上において、アンテナ回路とICチップとをフィルム基板に重ね合わされるカバーシートで覆いつつICチップをフィルム基板に熱圧着する熱圧着部と、この熱圧着部にカバーシートを供給するカバーシート供給部とを具備しており、熱圧着部に、カバーシートと共にICチップが搭載されたフィルム基板を挟み込む1本のベルトと、カバーシートに張力を付与し、ICチップとフィルム基板に圧力を発生させる張力付与手段と、ICチップが搭載されたフィルム基板上の接着剤を加熱する加熱手段とを設けていることを特徴とするものである。ここで、フィルム基板は、ベースシートの何れか一方の面にのみアンテナ回路が形成されたもの、またはベースシートの両面にそれぞれアンテナ回路が形成されたもの、これら何れであっても構わない。
【0009】
このような本発明のICチップ実装体の製造装置では、ICチップが搭載されたフィルム基板にカバーシートを重ね合わせる工程において、カバーシートとベルトとの間にICチップが搭載されたフィルム基板を挟み込み、カバーシートに張力を付与しつつ同時にフィルム基板上の接着剤を加熱することができるため、この工程でICチップをフィルム基板に固定するための接着剤を養生することが可能となり、且つICチップをフィルム基板に固定する接着剤の加熱加圧のための大きなスペースを設ける必要がなくすことができる。そのため、装置を小型化しコストを低減しつつ、ICチップ実装体の製造時間を短縮することが可能となる。しかも、上述の通り、ICチップを搭載したフィルム基板を片面側から被覆しているカバーシートに付与された張力により加圧を実現しているため、圧力調整が比較的容易であるうえに、剛性の高い金属製ローラ等による加圧と比べて小さい圧力での加圧が可能であるため、ICチップの破損を招きにくく、ICチップ実装体の歩留まりを向上することも可能となる。なお、本発明に係るICチップ実装体の製造装置は、加圧に用いたカバーシートを、接着剤の養生後にフィルム基板から取り除く態様、または接着剤の養生後もフィルム基板に重ね合わせた(貼り合わせてもよい)態様、何れをも含むものである。
【0010】
このような本発明において、熱圧着部に、カバーシート供給部から供給されるカバーシートをICチップが搭載されたフィルム基板との重ね合わせ位置へと案内するカバーシート案内路を設ける場合、張力付与手段として、カバーシート案内路に、カバーシートに張力を付与するモータを設けた構成とすれば、このモータの回転トルクの調整によりカバーシートに対する張力を容易に調整することができる。
【0011】
また、ICチップを搭載したフィルム基板をカバーシートとベルトにより両側から挟み込んで加圧しつつ確実にフィルム基板を搬送するためには、熱圧着部に、ICチップが搭載されたフィルム基板にカバーシートを重ね合わせて搬送経路の下流側へ搬送する搬送体を設け、この搬送体の表面上において、内側から順にベルト、ICチップが搭載されたフィルム基板、カバーシートを重ね合わせるように構成することが望ましい。
【0012】
そして、この搬送体に、加熱手段により加熱された空気を表面から吐出する吐出口を形成し、吐出口から吐出される空気によって、ICチップが搭載されたフィルム基板とカバーシートとを載せたベルトを浮上させながら搬送するように構成すれば、加熱された空気によりベルトが熱せられ、それによりフィルム基板も熱せられ、フィルム基板上の接着剤を硬化・乾燥させることができるうえに、ベルトと搬送体との間の摩擦係数を低減し、搬送体上での搬送をスムーズに行うことができる。
【0013】
この場合、カバーシートに張力を作用させることよって生じるカバーシートが搬送体に巻き付く力に抗して吐出口から空気を噴射させることにより、ベルトを搬送体から浮上させた状態を維持することができる。
【0014】
さらに、ICチップをフィルム基板に固定する接着剤の硬化・乾燥を促進するためには、熱圧着部に、搬送体を覆い、重ね合わされたベルト、ICチップが搭載されたフィルム基板、及びカバーシートを高温状態に維持する保温炉を設けることが有効となる。
【0015】
このように、ベルト、ICチップが搭載されたフィルム基板、カバーシートを重ね合わせて効率よく搬送しつつICチップが搭載されたフィルム基板を加熱加圧することができる搬送体の好ましい具体例としては、ベルトとICチップが搭載されたフィルム基板とカバーシートを周面に螺旋状に巻き付けた状態で搬送するドラムを挙げることができる。
【0016】
また、カバーシートを無端環状のものとしてICチップ実装体の製造装置内部を循環させるようにすれば、接着剤の硬化・乾燥のために一時的にフィルム基板に重ね合わせるだけで、カバーシートが劣化するまで使い続けることができて、経済的である。
【0017】
この他、カバーシートにおいてフィルム基板と対向する面を、粘着性を有する面とすれば、カバーシートをフィルム基板に重ね合わせると同時に貼り合わせ、ICチップを挟んでフィルム基板にカバーシートを貼り付けたICチップ実装体を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ICチップ実装体の製造装置において、フィルム基板にアンテナ回路とICチップを保護するカバーシートを重ね合わせると同時に、ICチップをフィルム基板に押しつけ且つ接着剤を硬化・乾燥させるための加圧と加熱を一挙に行うことができるため、装置の小型化と省スペース化、省コスト化並びにICチップ実装体の製造時間の短縮化を図ることができる。さらに、ICチップを搭載したフィルム基板への加圧は、カバーシートに付与される張力によりなされるため比較的緩やかであり、その張力調整も容易であることから、ICチップにかかる圧力を適度なものとして破損を防止し、ICチップ実装体の歩留まりをも向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態により製造されるICチップ実装体から作製されるICタグを模式的に示す平面図。
【図2】同ICタグを模式的に示す縦断面図。
【図3】同実施形態に適用されるフィルム基板の一部を示す平面図。
【図4】同実施形態においてICタグとして切り出される前のシート上のICチップ実装体の一部を示す平面図。
【図5】同実施形態に係るICチップ実装体の製造装置の全体構成模式図。
【図6】同実施形態における熱圧着部の構成を模式的に示す側面透視図。
【図7】同熱圧着部の構成を模式的に示す平面透視図。
【図8】同熱圧着部においてドラムに巻回したベルト、フィルム基板、カバーシートの状態を示す模式図。
【図9】同熱圧着部においてドラムに巻回した状態のベルト、フィルム基板、カバーシートの関係を3次元的に示す模式図。
【図10】同ドラムの表面近傍を拡大して模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
まず、本発明に係るICチップ実装体の製造装置により製造されるICチップ実装体の一例であるICタグ10について説明する。図1は、ICチップ実装体9(図4参照)から切断された1つのICタグ10を平面図として、図2は同ICタグを縦断面図として示す模式図である。アンテナ回路82は、ベースシート81上に予め印刷やエッチングによって形成されたものであり、図3に示すように、ベースシート81上に間隔をあけて(例えば等間隔とすることができる)で連続的に複数形成されている。ICタグ10は、ベースシート81の一方の面の所定位置にアンテナ回路82が形成されたフィルム基板8と、このアンテナ回路82の所定位置に接続されるように搭載されるICチップ83とから構成される。図4はICタグ10として切り出される前のシート状のICチップ実装体9を模式図として示す平面図である。以下、ベースシート81上にアンテナ回路82を形成したものをフィルム基板8と呼ぶものとする。ICチップ83は、裏面にアンテナ回路82に接続するための例えば銅や金等の金属で形成されたバンプ83aが設けられており、例えば絶縁ペーストや異方導電性ペースト等からなる接着剤84を介してアンテナ回路82に接続される。本実施形態においてICチップ実装体9は、このような個々のICタグ10に切り出される前の長尺なシート状のものを指している。
【0022】
このようなICチップ実装体9を製造する本実施形態に係るICチップ実装体の製造装置1について概略的に説明する。このICチップ実装体の製造装置1は、図5に模式的に示すように、フィルム基板搬送経路(以下、「搬送経路」という)の始点となり搬送フィルム基板8を収容し順次送り出すフィルム基板供給部2、フィルム基板8の所定位置に順次ICチップ83を搭載するICチップ実装部3、カバーシート85を収容し順次送り出すカバーシート供給部4、ICチップ83が搭載されたフィルム基板8にカバーシート85を重ね合わせ且つ加熱加圧を行うことでICチップ83をフィルム基板8に固定してICチップ実装体9を形成する熱圧着部5、ICチップ実装体9を検査し順次巻き取る製品検査・巻取部6、これら各部を制御する制御部7を主たる構成機構として備えている。
【0023】
フィルム基板供給部2は、ロール状に巻回したフィルム基板8を収容するとともに、制御部7により制御されて一定速度且つ一定張力で搬送経路へフィルム基板8を連続的に繰り出して供給するものである。
【0024】
ICチップ実装部3は、フィルム基板供給部2から搬送されてきたフィルム基板8に対して、所定間隔で接着剤84を塗布し、且つ塗布された接着剤84を介してICチップ83をアンテナ回路81に接続するように搭載するものである。そのための構成として、ICチップ実装体3は、制御部7により回転速度を制御されて図示しないモータにより回転する主ローラ31と、この主ローラ31に沿って搬送されるフィルム基板8に対して接着剤84を塗布する接着剤塗布装置32と、フィルム基板8にICチップ83を搭載するICチップ供給部(パーツフィーダ、図中に想像線で示す)33及び同期ローラ34とを備えている。同期ローラ34は、制御部7の制御により主ローラ31と同期して回転し、ICチップ供給部33から供給されたICチップ83を1つずつ、主ローラ31上のフィルム基板8に塗布された接着剤84に載せてゆく。すなわち、ICチップ83が搭載されたフィルム基板8がこのICチップ実装部3を通過する際には、接着剤84はまだ乾燥していない状態である。なお、このICチップ実装部3では、主ローラ31上におけるフィルム基板8の接着剤を塗布する位置やICチップ83を載せる位置が複数台のカメラ35で撮影されており、所定の位置から誤差などがあれば随時制御部7と通信して補正できるようにしている。このようなICチップ実装部3の構成により、フィルム基板8への接着剤84の塗布とICチップ83の搭載は、フィルム基板8の搬送を停止することなく連続的に行われる。
【0025】
カバーシート供給部4は、ロール状に巻回したカバーシート85を、搬送経路上のフィルム基板8に重ね合わせるように順次繰り出すものである。カバーシート85は、フィルム基板8の表面をICチップ83と共に覆うようにフィルム基板8に重ね合わせられるものである。本実施形態において、カバーシート85のうち少なくともファイル基板8に対向する面は、接着剤84が付着し難い性状としたものを用いることができる。
【0026】
熱圧着部5は、ICチップ実装部3から搬送されてきたICチップ83が搭載されたフィルム基板8と、カバーシート供給部4から搬送されたカバーシート85とを、重ね合わせた状態で加熱するとともに、フィルム基板8上の接着剤84を乾燥硬化させてICチップ83をアンテナ回路52に密着固定することによって、一体のICチップ実装体9として作製するものである。熱圧着のための具体的な構成は後述する。
【0027】
製品検査・巻取部6は、作製されたICチップ実装体9の検査を行い、ロール状に巻き取って収容するものである。
【0028】
ここで、本実施形態における熱圧着部5の具体的構成、ICチップ83が搭載されたフィルム基板8へのカバーシート85の重ね合わせ並びに熱圧着方法について詳細に説明する。図6及び図7は、それぞれ熱圧着部5の概略構成を模式的に示す側面透視図及び平面透視図である。熱圧着部5は、図5、図6、図7に示すように、フィルム基板8(図6では破線で示す)を運搬するドラム51と、ドラム51に巻き付けられて巡回するベルト52(図6では一点鎖線で示す)と、カバーシート供給部4から供給されるカバーシート85(図6では二点鎖線で示す)を案内するカバーシート案内路54と、主としてドラム51を内部に収容する保温炉55(図5には一点鎖線で示す)と、ドラム51の内部に加熱した空気を送風する高温空気送風機56(図8参照)とを備えている。ドラム51は、本発明における搬送体に相当するものである。なお、カバーシート85は、カバーシート案内路54を経て、ドラム51よりも下流側に設けられるカバーシート回収部4’により回収される(図5参照)。
【0029】
ドラム51は、回転軸51kにより枢支された中空の円筒状をなす部材であり、図8に示すように、高温空気送風機56から送られてくる高温高圧の空気を内部に取り入れ、周面51aに内部から連通するように多数形成された吐出口51bから高温高圧の空気を吐出するように形成したものである。保温炉55は、高温空気送風機56からドラム51を経て噴出する空気によってドラム51を含む周辺部を高温に保つように、ドラム51を含む領域を覆うように設けられる。また、ドラム51の周面51aには、図7、図8及び図10に示すように、ベルト52が螺旋状に巻き付けられるが、このベルト52がドラム51の周面51a上で蛇行するのを防止するために、ドラム51の周面51aには多数のピン51cが螺旋状に配列されて突設されている。
【0030】
ベルト52は、比較的薄肉で柔軟な例えば金属製の輪状エンドレスベルト(無端環状ベルト)である。このドラム51に巻回されて循環するベルト52の表面には、フィルム基板搬送経路の上流側から送られてくるICチップ83を搭載したフィルム基板8が重ね合わせられる。
【0031】
カバーシート案内路54は、カバーシート供給部4から送られてくるカバーシート85を複数のローラ(符号省略)及びモータ54aによりドラム51上のICチップ83を搭載したフィルム基板8へと導き、フィルム基板8上のアンテナ回路82とICチップ83を保護するようにカバーシート85を重ね合わせる。すなわち、ベルト52及びICチップ83を搭載したフィルム基板8を介してカバーシート85もドラム51の周面51aに螺旋状に巻回される。ドラム51の周面51a上におけるベルト52、ICチップ83を搭載したフィルム基板8及びカバーシート85の関係は、図9(ドラム51を省略して示す)のようになる。ここで、カバーシート85はベルト52及びフィルム基板8とともにドラム51の周面51a上を周回した後にフィルム基板8から離間させられてカバーシート回収部4’により回収される。カバーシート案内路54には、カバーシート供給部4から供給されるカバーシート85をドラム51上へ送るモータ54a及びローラ(符号省略)と、ドラム51上からカバーシート回収部4’へ送るモータ54b及びローラ(符号省略)がある。そして、カバーシート85の搬送方向に沿って設けた複数のモータ54a、54bのうち相対的に下流側に配置したモータ54b(カバーシート85をドラム51上からカバーシート回収部4’へ送るモータ54b)は低速でローラを回転させるのに対して、相対的に上流側に配置したモータ54a(カバーシート85をドラム51上へ送るモータ54a)には若干のブレーキ又はアシスト力を発生させることにより、これらのモータ54a、54b間におけるカバーシート85に対して一定の張力を発生させるようにしている。このようなモータ54a、54bの作動によって張力が付与されたカバーシート85によりICチップ83はフィルム基板8へ押さえつけられて加圧される。なお、カバーシート85への張力を検知し、モータ54aのトルクを適宜調節するために、カバーシート案内路54には例えばロードセルのような張力検出器54cを設けている。
【0032】
以上の構成に基づいて、ICチップ83が搭載されたフィルム基板8への熱圧着方法とICチップ実装体9の形成方法をまとめて説明する。まず、高温空気送風機56から加熱された高圧空気が導入されたドラム51の周面51aにはベルト52が螺旋状に巻回されており、図10に示すように、ドラム51に形成された吐出口51bから吐出する高温高圧の空気によってベルト52が周面51aから浮き上がった状態となっており、またベルト52はその空気によって熱せられている。この状態のベルト52に、フィルム基板搬送経路の上流側から送られてくるICチップ83を搭載したフィルム基板8が重ね合わされ、さらにそのフィルム基板8にICチップ83とアンテナ回路82を覆うようにカバーシート85が重ね合わされた状態とされる。
【0033】
この状態で、ベルト52とフィルム基板8とカバーシート85は、互いの間に生じる摩擦力により一体的となり、ドラム51の周面51aを滑りつつ螺旋状に搬送される。そしてこのとき、モータ54a、54bのトルクが適度に調節されることによってカバーシート85に張力が付与されると、カバーシート85とベルト52との間でICチップ83を搭載したフィルム基板8が加圧されることになる。さらに、カバーシート85に張力を作用させることによってカバーシート85がドラム51に巻き付く力が生じるが、この巻き付く力に抗して、ドラム51の吐出口51bから高温高圧の空気を吐出させることにより、図10に示したように、ドラム51の周面51aから一体的となったベルト52とフィルム基板8とカバーシート85が浮上した状態に維持され、これらのドラム51による搬送がより滑らかに行われる。また同時に、高温高圧の空気によってベルト52が熱せられており、また保温炉55によりドラム51の周囲が高温に保たれていることから、フィルム基板8も熱せられてフィルム基板8に塗布された接着剤84が硬化・乾燥するため、ICチップ83がフィルム基板8(ベースシート81及びアンテナ回路82)に密着固定されることになる。なお、フィルム基板8に重ね合わせた状態で加圧時に用いられたカバーシート85は、カバーシート回収部4’によりフィルム基板8から離され回収される。
【0034】
このように、本実施形態のICチップ実装体の製造装置1では、フィルム基板8にカバーシート85を重ね合わせた状態で、フィルム基板8に塗布された接着剤84を硬化・乾燥させ同時にカバーシート85に張力を付与してICチップ83をフィルム基板8に密着固定するように構成しているため、装置の小型化やコストダウン、ICチップ実装体9の製造時間の短縮化を図ることが可能である。さらに、フィルム基板8への加圧は、カバーシート案内路54に設けられカバーシート85に張力を付与するモータ54aのトルク調整により実現しているため、その圧力調整が容易であるとともに、ICチップ83の破損を招かない程度の適度な圧力を容易に実現できることから、ICチップ実装体9の歩留まり向上をも図ることができる。
【0035】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、カバーシートを無端環状のものとしてICチップ実装体の製造装置内部を循環させるようにしてもよい。具体的には、上述した実施形態においてカバーシート回収部4’で回収したシートをカバーシート供給部4に送るようにしてもよく、或いは上述した実施形態に示したベルト52のようにドラム51に巻き付けられて巡回するようにしてもよい(図示省略)。このような態様であれば、接着剤の硬化・乾燥のために一時的にカバーシートをフィルム基板に重ね合わせるだけで、カバーシートが劣化するまで使い続けることができて経済的である。
【0036】
その他、カバーシートとして、フィルム基板と対向する側の面を粘着性を有する面としたものを採用してもよい。この場合、一方の面(フィルム基板と対向する側の面)を粘着性を有する面とした単一シート状のカバーシートを適用すれば、上述したカバーシートを回収する手段や機構が不要となり、構造の簡素化に資する。なお、単一シート状のカバーシートを適用した場合、ICチップ実装体の製造装置によって製造されるICチップ実装体は、フィルム基板にカバーシートを貼り合わせたものとなる。また、ベースシートの両面にアンテナ回路を形成したフィルム基板であってもよい。
【0037】
また、ベルトとカバーフィルムに挟まれたフィルム基板への加熱方法や、ベルトを添接させる搬送体、熱圧着部やそれ以外の部位などの各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…ICチップ実装体の製造装置
4…カバーシート供給部
5…熱圧着部
8…フィルム基板
9…ICチップ実装体
10…ICタグ
51…ドラム(搬送体)
51a…周面
51b…吐出口
52…ベルト
53…ベルト巡回路
54…カバーシート案内路
54a、54b…モータ
55…保温炉
56…高温空気送風機(加熱手段)
81…ベースシート
82…アンテナ回路
83…ICチップ
84…接着剤
85…カバーシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースシートの少なくとも一方の面にアンテナ回路が形成されたフィルム基板であってその所定位置に接着剤を介してICチップが搭載されたフィルム基板の搬送経路上において、前記アンテナ回路と前記ICチップとを前記フィルム基板に重ね合わされるカバーシートで覆いつつ前記ICチップを前記フィルム基板に熱圧着する熱圧着部と、当該熱圧着部に前記カバーシートを供給するカバーシート供給部とを具備し、
前記熱圧着部に、前記カバーシートと共に前記ICチップが搭載されたフィルム基板を挟み込む1本のベルトと、前記カバーシートに張力を付与し、前記ICチップと前記フィルム基板に圧力を発生させる張力付与手段と、前記ICチップが搭載された前記フィルム基板上の前記接着剤を加熱する加熱手段と、を設けていることを特徴とするICチップ実装体の製造装置。
【請求項2】
前記熱圧着部に、前記カバーシート供給部から供給されるカバーシートを前記ICチップが搭載されたフィルム基板との重ね合わせ位置へと案内するカバーシート案内路を設け、
前記張力付与手段に、前記カバーシート案内路に設けられ、前記カバーシートに張力を付与するモータを設けている請求項1に記載のICチップ実装体の製造装置。
【請求項3】
前記熱圧着部に、前記ICチップが搭載されたフィルム基板にカバーシートを重ね合わせて前記搬送経路の下流側へ搬送する搬送体を設け、
当該搬送体の表面上において、内側から順に前記ベルト、前記ICチップが搭載されたフィルム基板、前記カバーシートを重ね合わせるように構成している請求項1又は2の何れかに記載のICチップ実装体の製造装置。
【請求項4】
前記搬送体に、前記加熱手段により加熱された空気を表面から吐出する吐出口を形成し、当該吐出口から吐出される空気によって、前記ICチップが搭載されたフィルム基板及び前記カバーシートを載せた前記ベルトを浮上させながら搬送するように構成している請求項3に記載のICチップ実装体の製造装置。
【請求項5】
前記熱圧着部に、前記搬送体を覆い、重ね合わされた前記ベルト、前記ICチップが搭載されたフィルム基板、及び前記カバーシートを高温状態に維持する保温炉を設けている請求項3又は4の何れかに記載のICチップ実装体の製造装置。
【請求項6】
前記搬送体が、前記ベルト、前記ICチップが搭載されたフィルム基板、及び前記カバーシートを周面に螺旋状に巻き付けた状態で搬送するドラムである請求項3乃至5の何れかに記載のICチップ実装体の製造装置。
【請求項7】
前記カバーシートは、無端環状をなし当該ICチップ実装体の製造装置内部を循環させている請求項1乃至6の何れかに記載のICチップ実装体の製造装置。
【請求項8】
前記カバーシートにおいて前記フィルム基板側と対向する面を、粘着性を有する面としている請求項1乃至6の何れかに記載のICチップ実装体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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