説明

ICチップ搭載カード

【課題】ICチップ搭載カードからICチップを容易かつ短時間で分別する。
【解決手段】融点がICチップ搭載カード1の使用温度以上で、カード基材の融点未満の熱可塑性プラスチック8を接着剤として、電熱体9にICチップ2を貼り付ける。電熱体9の電極4は、ICチップ搭載カード1の側面に露出させ、外部から電源供給する。この構成とすることによって、ICチップ搭載カード1からICチップ2を容易かつ短時間で分別することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分別する必要のある物質が含まれた熱溶解可能な部品、部材に係わり、特に分別する必要のある物質を溶解温度の差異により簡単に分別する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
製造企業において、廃棄後の分別方法を容易にする為に様々な方式を考慮しながら製品開発を行なうことが求められている。特に、材質の異なる物質を容易に分別する方法が課題となっている。ICチップを、埋め込んだカードが乗車券、入場券等として徐々に浸透しつつある。しかし、現在のICチップ搭載カードでは、埋め込まれたチップが容易に分別できるような仕組みにはなっていない。
【0003】
特許文献1には、プラスチックから金属部品を分離する方法が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−155472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された発明では、電源供給端子が電源の電力入力端子と接続しやすいように簡素化されていない為、分別の自動化等量産性を考えた時には適さない。本発明は、埋め込んだICチップの分離が容易なICチップ搭載カードを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題は、第1の樹脂基板に載置された電熱体上に、ICチップが、その融点が100度を超え、かつ第1の樹脂基板の融点未満の熱可塑性樹脂を接着材として固定され、少なくとも電熱体の導線部は、第2の樹脂基板で被覆され、電熱体の電極は、第1の樹脂基板および第2の樹脂基板の側面に設けた切欠きにより、表面および裏面に露出させたICチップ搭載カードにより、達成できる。
【0007】
また、第1の樹脂基板に載置された電熱体上に、第1のICチップが、その融点が100度を超える第1の熱可塑性樹脂を接着材として固定され、電熱体上に、第2のICチップが、その融点が第1の熱可塑性樹脂の融点を超え、かつ第1の樹脂基板の融点未満の第1の熱可塑性樹脂を接着材として固定され、少なくとも電熱体の導線部は、第2の樹脂基板で被覆され、電熱体の電極は、第1の樹脂基板および第2の樹脂基板の側面に設けた切欠きにより、表面および裏面に露出させたICチップ搭載カードにより、達成できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、埋め込んだICチップの分離が容易なICチップ搭載カードおよび分別方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、実施例を用いて図面を参照しながら説明する。なお、同一部位には同じ参照番号を振り、説明は繰り返さない。なお、以下の実施例ではICチップ搭載カードを用いて説明するが、異種材料はICチップに限らない。
【実施例1】
【0010】
実施例1について図1および図2を用いて説明する。ここで、図1はICチップ搭載カードの透視平面図である。また、図2はICチップ搭載カードの要部拡大平面図である。
【0011】
図1において、ICチップ搭載カード1のICチップ2は電熱線3でその周囲を巻かれ、ICチップ搭載カード1の長辺側に電熱線の電極4が露出した構造を有している。ICチップ2、電熱線3および2つの電極4は、2枚のPET(PolyEthylene Terephthalate)シートの間に圧接されて、形成されている。このとき、2枚のPETシートは、その対向する長辺に接する一部(2ヶ所)に切欠きを設け、平面図である図1において、電極4が露出するように構成されている。
【0012】
図2は、図1の電極部の拡大図である。図2において明らかなように、電極版の形状は2等辺3角形であり、PETシートに形成された切欠きにより、電極4を形成する。
【0013】
PETのガラス転移温度は約80℃、融点は約264℃であり、ICチップの周囲が融点以上となるよう電極4から電源供給すれば、電熱線3の発熱により、ICチップ2と電熱線3をPETシートから取り外すことができる。このとき、電極4はICチップ搭載カード1に埋め込まれているが、電極版の一部が切り込みによってむき出しとなっており、ICチップ搭載カード1の表面、裏面のどちら側からも電力出力端子(図示せず)が電極4に接続しやすくなっている。
【0014】
本実施例に拠れば、埋め込んだICチップの分離が容易なICチップ搭載カードを提供できる。
なお、電熱線と電極の間を導線で結んでも良い。
【実施例2】
【0015】
実施例2について図3および図4を用いて説明する。ここで、図3および図4はICチップ搭載カードの斜視図である。実施例2と実施例1との違いは、(1)分別するICチップがPETシート間に圧接されておらず、一方のPET上に載った形態である点、(2)電熱線を周囲に巻くのではなく、電熱体を用いる点である。
【0016】
図3において、分別する必要のあるICチップ2はPETシートに埋め込まれておらず、裏面側のPETシート表面に電熱体9と接着剤のポリアセタール8を介して、搭載されている。ここで、表面側のPETシートは電熱体9の形状と同じ、窓を有し、裏面側PETシートとの間で、導線12および2つの電極4を挟んで、圧接されている。ポリアセタール8は融点165℃であり、ICチップ搭載カード1の常用温度では融解せず、PETより先に融解する。したがって、実施例1より容易にICチップを取り外すことができる。
【0017】
図4において、分別する必要のある第1のICチップ2はPETシートに埋め込まれておらず、裏面側のPETシート表面に電熱体9と接着剤のポリアセタール8を介して、搭載されている。また、分別する必要のある第2のICチップ10はPETシートに埋め込まれておらず、裏面側のPETシート表面に電熱体9と接着剤のポリカーボネート11を介して、搭載されている。ここで、表面側のPETシートは電熱体9の形状と同じ、窓を有し、裏面側PETシートとの間で、導線12および2つの電極4を挟んで、圧接されている。ポリカーボネート11は融点160℃であり、ICチップ搭載カード1の常用温度では融解せず、PETより先に融解する。また、融点の順序は、ポリカーボネート11<ポリアセタール8<PETとなる。したがって、電熱体9の温度制御によって、まず第2のICチップ10を取り外し、次に第1のICチップ2を取り外すことができる。
【0018】
本実施例に拠れば、埋め込んだICチップの分離が容易なICチップ搭載カードを提供できる。
なお、上述した実施例では接着剤として、ポリアセタールとポリカーボネートを用いたが、その融点が100度を超え、かつ基材の融点未満の熱可塑性樹脂ならば構わない。具体的には6ナイロン(融点225℃)等がある。ここで、融点が100度超とは、熱湯に落としたことを想定するものである。また、電熱体はヒータであっても、ペルチェ素子であっても、それ以外であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ICチップ搭載カードの透視平面図である。
【図2】ICチップ搭載カードの要部拡大平面図である。
【図3】ICチップ搭載カードの斜視図である。
【図4】ICチップ搭載カードの斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
1…ICチップ搭載カード、2…ICチップ、3…電熱線、4…電極、8…ポリアセタール、9…電熱体、10…ICチップ、11…ポリカーボネート、12…導線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂基板に載置された電熱体上に、ICチップが、その融点が100度を超え、かつ前記第1の樹脂基板の融点未満の熱可塑性樹脂を接着材として固定され、少なくとも前記電熱体の導線部は、第2の樹脂基板で被覆されたICチップ搭載カードであって、
前記電熱体の電極は、前記第1の樹脂基板および前記第2の樹脂基板の側面に設けた切欠きにより、表面および裏面に露出させたことを特徴とするICチップ搭載カード。
【請求項2】
第1の樹脂基板に載置された電熱体上に、第1のICチップが、その融点が100度を超える第1の熱可塑性樹脂を接着材として固定され、
前記電熱体上に、第2のICチップが、その融点が前記第1の熱可塑性樹脂の融点を超え、かつ前記第1の樹脂基板の融点未満の第1の熱可塑性樹脂を接着材として固定され、
少なくとも前記電熱体の導線部は、第2の樹脂基板で被覆され、
前記電熱体の電極は、前記第1の樹脂基板および前記第2の樹脂基板の側面に設けた切欠きにより、表面および裏面に露出させたことを特徴とするICチップ搭載カード。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のICチップ搭載カードであって、
前記第1の樹脂基板および前記第2の樹脂基板はPETシートであることを特徴とするICチップ搭載カード。
【請求項4】
請求項1に記載のICチップ搭載カードであって、
前記熱可塑性樹脂は、ポリアセタールまたはポリカーボネートであることを特徴とするICチップ搭載カード。
【請求項5】
請求項2に記載のICチップ搭載カードであって、
前記第1の熱可塑性樹脂は、ポリアセタールであり、
前記第2の熱可塑性樹脂はポリカーボネートであることを特徴とするICチップ搭載カード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−207152(P2007−207152A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28100(P2006−28100)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】