説明

ICモジュール、ICモジュールを含む基板、ICモジュールを含む基板の製造方法

本発明は、曲げ応力等に強いICモジュール、ICモジュールを含む基板、ICモジュールを含む基板の製造方法を提供する。本発明のICモジュール10、及びICモジュール10を含む基板30、50は、電極11aを有する集積回路11において、集積回路11の上面と下面に前記集積回路11を補強するための補強部材12、13を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、耐物理特性を備えたICモジュール、ICモジュールを含む基板、ICモジュールを含む基板の製造方法に関する。
【背景技術】
最近特にICカードが定期券等に導入されるなど身近に使用され始めてきた。ICカードは磁気カードなどに比べ記憶容量が大きく、セキュリティ性が高いなどネットワークを利用した電子商取引などに大変期待されている記憶媒体である。
このICカードは例えばISO14443などで規定されている。このICカードは厚みが約0.8mmのカード内部に集積回路(以下、「ICチップ」と呼ぶ。)が基板上に設けられている。
このように、ICチップを基板上に実装する技術としてワイヤボンディング方式やフリップチップ方式等が存在する。
ワイヤボンディング方式とは、第16図に示すように、ICチップ35の入出力端子35a、35aからワイヤ36、36によりプリント配線板37の電極37a、37aと金属間接合により接続する方式である。
また、フリップチップ方式とは、第17図に示すように、ICチップ40の入出力端子40a、40a上に突起電極41、41を形成し、直接プリント配線板42の電極端子42a、42aと接合する方式である。
通常ICチップは電子機器等の内部の基板に設けられ外部からの衝撃から守られており、今まで、ICカードのような薄い構造体の内部にICチップが設けられる場合はなかった。
しかしながら、ICカードは、ほとんど携帯するような形態で使用されるため、ポケットに挿入されるなど厚みが薄いだけにICカード自体にはかなり大きなストレス(外圧)が作用する。例えば、曲げによる伸長圧縮応力等である。この応力等により、ICカード内のICチップが破損してしまうことがあるという問題がある。
そこで、曲げ応力等に強いICモジュール、ICモジュールを含む基板、ICモジュールを含む基板の製造方法を提供することを目的とする。
【発明の開示】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
本発明のICモジュール(10、20)は、電極を有する集積回路(11、21)において、前記集積回路の少なくとも上面と下面のいずれかに前記集積回路を補強するための補強部材(12、13、22、23)を備えていることを特徴とする。また、本発明のICモジュールを含む基板(50)は、ICモジュールがワイヤボンディング方式で実装されていることを特徴とする。また、本発明のICモジュールを含む基板(30)は、ICモジュールがフリップチップ方式で実装されていることを特徴とする。
このようにすれば、ICチップ近傍に外圧(曲げ応力等)がかかっても、補強部材により外圧(曲げ応力等)に対して強くなる。また、ICチップの両面に補強部材を設けることにより、上下から作用するピンポイントの外圧に対応できる。また、曲げによる内部機材からのICチップに対する応力に対しても強くなる。また、ICチップに補強部材が設けられるのでICチップの薄型化を図れる。
また、本発明であるICモジュールを含む基板を生産(製造)する際、予めICモジュールを製造しておくだけで、従来の生産ラインを変えることなく生産できるので、生産ラインの変更等が必要ない。
また、前記ICモジュールが基板に実装される場合において、前記基板と接するICモジュールを構成する補強部材の端部は、少なくとも前記集積回路の端部と同じ、又は越えている長さであるとよい。
このようにすれば、ICチップが補強部材により保護されるとともに、基板とICモジュールとの間に注入される接着剤がICモジュールの側面を伝って上下方向へ移動するのを防止することができる。
また、前記補強部材は、前記集積回路と接する面に凸部(12a、23a、51a)が備えられていることを特徴とする。また、前記凸部は複数設けられていることを特徴とする。また、前記集積回路と前記補強部材は、接着剤(14、24)を介して接着されていることを特徴とする。
このようにすれば、補強部材がICチップの表面(上下の面)に安定して設けられる。また、ICモジュールの厚さtを一定に保てるとともに、外圧に対しても安定した対応が取れるため、品質が一定する。また、ICチップと補強部材とが剥離することなく密着して接着される。
また、前記補強部材は、補強体(51)と、前記補強体の外周に垂設される外周枠(51b)と、を備えていることを特徴とする。
このようにすれば、補強部材としての剛性が上がり強度が増す。
また、前記凸部は、前記補強体の中心から外側に向かって放射状に配置されていることを特徴とする。また、前記凸部は、前記補強体の中心から外側に向かって直線的に隣接する凸部の間隔がしだいに増加するように配置されていることを特徴とする。
このようにすれば、凸部が、集積回路の中心部に密集し、その中心から外側に向かってしだいに粗に設けられるので、曲げ等の外力において最も応力が集中する位置を補強できる。
また、前記集積回路の端部と補強部材の外周枠との間には、隙間が設けられていることを特徴とする。
このようにすれば、集積回路に接着剤を介して補強部材を設ける際に、集積回路と補強部材との間に生じる気体及び余った接着剤を接着面から追い出すことができる。また、追い出された接着剤は、集積回路の側面と外周枠の端部とが接着されるとともに、接着剤が外部へ流れ出すのを抑止できる。
また、前記凸部(51a)の一部が、前記集積回路のアースに接地されていることを特徴とする。また、集積回路の上面に備えられた補強部材と下面に備えられた補強部材との少なくとも一部が接触するように両補強部材が備えられるとよい。
このようにすれば、集積回路と補強部材とを同電位にすることができるので、補強部材をシールド体として機能させることができる。
また、フリップチップ方式で基板にICモジュールが実装される過程で前記ICモジュールを封止剤(29)で封止する場合において、前記ICモジュールは、前記封止剤と補強部材との間に熱を緩衝するための熱緩衝部材(28)を介して封止されることを特徴とする。
このようにすれば、ICモジュールの基板への実装工程における圧着等によって生じる封止剤への熱の影響を防止できる。
また、本発明のICモジュールを含む基板(60)は、少なくとも前記集積回路を封止するための封止剤を有していてもよい。
これにより、集積回路(ICチップ)を実装した際の基板の高さを所定の高さに容易に維持することができるとともに、ICチップを外圧(曲げ等の応力)から保護することができる。
また、本発明のICモジュールを含む基板の製造方法として、少なくとも集積回路を封止するための封止剤を充填する封止工程を含む集積回路を実装する基板の製造方法において、前記封止工程後に、複数の凸部を有する補強部材を、前記集積回路の上面に前記凸部の先端が接触するように前記封止剤を介して前記補強部材を設ける補強部材装着工程を具備している。
これにより、集積回路を実装した際の基板の高さを所定の高さに容易に維持することができるとともに、ICチップを外圧(曲げ等の応力)から保護することができる基板を製造することが可能となる。
また、フリップチップ方式で基板25にICモジュールが実装されるICモジュールを含む基板(61)において、ICモジュールと基板との間に補強体(65)を備えている。
これにより、外力が基板に加わって当該基板に曲げ応力等がかかってもICモジュールと基板との間の接着層が破壊されることなく、基板にICモジュールをしっかりと装着した状態で維持することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、第1の実施形態のICモジュールの断面図である。
第2図は、第1図のA拡大図である。
第3図は、ICチップの上面に設けられる補強部材の底面図である。
第4図は、第1図のB拡大図である。
第5図は、第1の実施形態のICモジュールを実装した基板を示す断面図である。
第6図は、第2の実施形態のICモジュールの断面図である。
第7図は、第6図のC拡大図である。
第8図は、ICチップの下面に設けられる補強部材の平面図を示し、第8図Aは第1実施例、第8図Bは第2実施例である。
第9図は、第2の実施形態のICモジュールを実装した基板を示す断面図である。
第10図は、フリップチップ方式で実装されたICモジュールを含む基板の他の実施例を示す断面図である。
第11図は、第3の実施形態のICモジュールの構造図である。
第12図は、第11図のD−D断面図である。
第13図は、第11図のE部分における他の実施形態の拡大図である。
第14図は、フリップチップ方式で実装されたICモジュールを含む基板の他の実施例である。
第15図は、フリップチップ方式で実装されたICモジュールを含む基板の他の実施例である。
第16図は、従来のワイヤボンディング方式のICチップ実装例である。
第17図は、従来のフリップチップ方式のICチップ実装例である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、第1図〜第15図を参照して、本発明によるICモジュール、ICモジュールを含む基板の各実施形態について説明する。なお、以下の説明において、通常、ICチップが基板に装着される際に、基板と対向する側のICチップの面を下面とする。
−第1の実施形態−
第1図は第1の実施形態のICモジュールの断面図、第2図は第1図のA拡大図、第3図はICチップの上面に設けられる補強部材の底面図、第4図は第1図のB拡大図である。
ICモジュール10は、ICチップ11と、補強部材12、13と、から構成される。また、ICチップ11と補強部材12、13とは接着剤14、14を介して接着される。また、補強部材12、13は、ICチップ11にかかる外圧(曲げ応力等)からこのICチップ11を保護するための部材である。具体的には、図示のように、上面に電極11a(入出力端子等)を有するICチップ11の上面及び下面に、接着剤14、14を介して、補強部材12、13が備えられる。なお、本実施形態においては、ICチップの両面に補強部材が備えられているが、必ずしもICチップの両面に備えられる必要はない。例えば、このICモジュールを基板に実装する場合、その基板自体が強度をもっている場合である。例えば、ICチップの片側にリードフレームのような曲げに対して強い構造体またはそれに準じた構造体がある場合である。また、補強部材12、13の大きさはICチップ11の形状と同等程度の大きさである。
また、接着剤14は、エポキシ等の熱硬化タイプの接着剤を使用するとよい。通常の接着剤であると、ICチップ11が駆動する際の発熱により接着効果が減少する場合が考えられるからである。
また、ICチップ11と接する補強部材12、13の表面には、円形状の凸部12aを複数有する。この凸部12aは所定間隔に設けられていてもよいし、ランダムに設けられていてもよい。
また、この凸部12aは、数が多すぎると、ICチップ11との接着力が低下し、少なすぎるとICチップ11の表面に補強部材12、13が安定しない。また、前記凸部12aの高さは、接着剤14との関係で決まり、凸部12aの高さが低すぎると接着剤14が薄くなり接着能力が低くなり、凸部12aの高さが高すぎると接着剤14が厚くなり、材破するので、材料に応じた高さに設定する必要がある。また、実験を行った結果、ある熱硬化型エポキシ接着剤では25〜35ミクロンの範囲内であることが好ましいことが分かっている。
以上により、補強部材12、13が接するICチップ11の表面に安定して設けられるので、ICモジュール10の厚さtを一定に保てるため、品質が一定する。また、ICチップ11と補強部材12、13とが密着して接着される。
また、ICチップ11の上面に設けられる補強部材12の所定部には、長矩形状の貫通孔12bを備えている。この貫通孔12bは後述する電極11aとワイヤ17とを接合するために設けられる。よって、この貫通孔12bは長矩形状である必要はなく、円柱形状の孔等を複数設けていてもよい。また、ワイヤボンディング方式でICモジュール10を実装する場合等においては、電極11aと配線回路15aとを接続するワイヤ17が補強部材14と干渉する場合もあるので、その場合には後述する第8図のように、補強部材14の端部に複数の溝23b、23b、…、23b、23c、23c、23cを設けるようにしてもよい。
また、補強部材12、13の材質は好ましくは、ヤング率の高い材料であるとよい。また、補強部材12、13の厚さは、一般に部材の強度(外圧に対するたわみにくさ)は厚みの3乗に比例するので、厚みがある方が好ましいが、少なくとも50ミクロン程度あることが好ましい。なお、規格等において厚みに制限がある場合にはその限りではない。
また、ICモジュール10を基板等に実装する場合において、基板15と接する側の補強部材13は、第4図に示すように、少なくともICチップ11の両端面を越える長さSを有していることが好ましい。この長さSは、具体的には、50ミクロン程度であると良い。この長さSが長すぎると、基板等に外圧が作用した場合に、ICチップ11に必要以上の応力が加わるからである。これにより、基板15とICモジュール10との間に注入される接着剤14のICチップ11方向(上方向)への上がりを防止することができる。
第5図は第1の実施形態のICモジュールを実装した基板を示す断面図である。
図示のように、ワイヤボンディング方式によりICモジュール10を実装した形態である。
ICモジュールを含む基板50は、上面に配線パターン15aを有しているプリント基板15と、このプリント基板15の所定位置に配置されて、上面に電極11aを有するICチップ11と、そのICチップ11の上下の面に設けられる補強部材12、13とを備えるICモジュール10と、前記電極11aと配線パターン15aとを電気的に接続するワイヤ17、17と、プリント基板15上で、前記ICモジュール10とワイヤ17とを覆うように接着するための接着剤部18と、を含んで構成される。また、プリント基板15とICモジュール10とが接する面には、接着剤14が注入される。また、接着剤14は、エポキシ等の熱硬化タイプの接着剤を使用するとよい。通常の接着剤であると、ICチップ11が駆動する際の発熱により接着効果が減少する場合が考えられるからである。また、接着剤部18による接着は、ICチップ11内への空気・湿気の侵入防止/空気・湿気による電極11a、ワイヤ17等の劣化を防止するためである。
この基板50は、この基板内にアンテナ回路を設けるか、外部にアンテナを付ければ、ICカードの外部を構成する構造体の内部等に装着することによりICカードとして機能する。
−第2の実施形態−
第6図は第2の実施形態のICモジュールの断面図、第7図は第6図のC拡大図、第8図はICチップの下面に設けられる補強部材の平面図を示し、第8図Aは第1実施例、第8図Bは第2実施例である。
ICモジュール20は、ICチップ21と、補強部材22、23と、から構成される。また、ICチップ21と補強部材22、23とは接着剤24、24を介して接着される。また、補強部材22、23は、ICチップ21にかかる外圧(曲げ応力等)からこのICチップ21を保護するための部材である。具体的には、下方向に突出するように電極21a(入出力端子等)を有するICチップ21の上面及び下面に、接着剤24を介して、補強部材22、23が備えられる。なお、本実施形態においては、ICチップの両面に補強部材が備えられているが、必ずしもICチップの両面に備えられる必要はない。例えば、このICモジュールを基板に実装する場合、その基板自体が強度をもっている場合である。例えば、ICチップの片側にリードフレームのような曲げに対して強い構造体またはそれに準じた構造体がある場合である。また、補強部材22、23の大きさはICチップ21の形状と同等程度の大きさである。
また、接着剤24は、エポキシ等の熱硬化タイプの接着剤を使用するとよい。通常の接着剤であると、ICチップ21が駆動する際に発生する熱により接着効果が減少する場合が考えられるからである。
また、ICチップ21と接触する補強部材22、23の面には、複数の円形状の凸部23a、23a・・・23aを有する。この凸部23aは、ICチップ21と接触する面に所定間隔に設けられていてもよいし、ランダムに設けられていてもよい。
また、この凸部23aは、数が多すぎると、ICチップ21との接着力が低下し、少なすぎるとICチップ21の表面に補強部材22、23が安定しない。また、前記凸部23aの高さは、接着剤24との関係で決まり、凸部23aの高さが低すぎると接着剤24が薄くなり接着能力が低くなり、凸部23aの高さが高すぎると接着剤24が厚くなり、材破するので、材料に応じた高さに設定する必要がある。また、実験を行った結果、熱硬化型エポキシ接着刑では20〜30ミクロンの範囲内であることが好ましいことが分かっている。
以上により、補強部材22、23が接するICチップ210表面に安定して設けられるので、ICモジュール20の厚さtを一定に保てるため、品質が一定する。また、ICチップ21と補強部材22、23とが密着して接着される。
また、ICチップ21の下面に設けられる補強部材23には切欠き部(溝)23b、23b、…、23b、23c、23c、23cが両端に備えられる。この切欠き部23b、23cは、第8図A、Bに示すように、ICチップの電極の配置に合わせて設けられる。よって、この切欠き部23b、23cは、電極21aの数に応じて複数設けられる。また、この切欠き部23b、23cは、丸みをおびた形状である。これにより、応力が集中するのを防ぐ。
また、補強部材22、23の材質は好ましくは、ヤング率の高い材料であるとよい。補強部材22、23の厚さは、一般に部材の強度(外圧に対するたわみにくさ)は厚みの3乗に比例するので、厚みがある方が好ましい。なお、規格等において厚みに制限がある場合にはこの限りでない。更にまた、フリップチップ方式でICモジュールを実装する場合、ICチップ21の下面に設けられる補強部材23は、この補強部材23の下面から電極21aが突出するように補強部材23の厚さが設定される。
また、ICモジュール20を基板等に実装する場合において、基板25と接する側の補強部材23は、少なくともICチップ21の両端面を越える長さSを有していることが好ましい。この長さSは、具体的には、50ミクロン程度であると良い。この長さSが長すぎると、基板等に外圧が作用した場合に、ICチップ21に必要以上の応力が加わるからである。これにより、基板25とICモジュール20との間に注入される接着剤24の上がりを防止することができる。
第9図は第2の実施形態のICモジュールを実装した基板を示す断面図である。
図示のように、フリップチップ方式によりICモジュール20を実装した形態である。
ICモジュールを含む基板30は、主基板25a上に配線回路25bを有している基板25と、下面に突出する電極21aを有するICチップ21と、そのICチップ21の上下の面に設けられる補強部材22、23とを備えるICモジュール20と、前記電極21aを直接配線回路25b上に配置し、前記ICモジュール20と基板25間を接着するための接着剤部26と、を含んで構成される。また、接着剤部26による接着は、ICチップ21内への空気・湿気の侵入防止/空気・湿気による電極21a等の劣化を防止するためである。また、接着剤部26に使用される接着剤は、ICモジュール20のICチップ21と補強部材22、23とが接着される接着剤24が用いられている。
この基板25は、この基板内にアンテナ回路を設けるか、外部にアンテナを付ければ、ICカードの外部を構成する構造体の内部等に装着することによりICカードとして機能する。
第10図はフリップチップ方式で実装されたICモジュールを含む基板の他の実施例である。
図示のように、フリップチップ方式で実装されたICモジュール20を含む基板30aは、ICモジュール20(補強部材22)の上面に設けられた熱を緩衝するための熱緩衝部材28を介し、ICモジュール20が覆われるように封止されて形成される。ICモジュール20の封止は、封止剤29により行われる。封止剤29は、エポキシ樹脂等が使用される。このように、ICモジュール20が、熱緩衝部材28を介して封止剤29により基板30a上に封止されることにより、基板形成工程における接着剤を硬化させるために発生する熱の影響により、接着剤と金属の比熱の関係から、例えばこのICモジュール20をICカードに実装した場合に生じるICカード表面に発生するICチップの跡を見えにくくすることができる。
−第3の実施形態−
第11図は第3の実施形態のICモジュールの構造図、第12図は第11図のD−D断面図である。なお、第11図、第12図において、第6図と共通する部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。
本実施形態は、フリップチップ方式で実装されるICモジュール55である。
ICモジュール55は、ICチップ21と、補強部材23と、を備えている。補強部材23は、ICチップ21の両面に備えられる。また、ICチップ21と補強部材23とは接着剤24を介して接着される。
補強部材23は、矩形状の補強体51と、補強体51の一方の面の所定部から垂直方向に延ばされて形成され複数の凸部として機能する突設部51a、51a、・・・、51aと、その突設部51aを囲むように補強体51の外周から垂直方向に延ばされた外周枠51bと、から構成されている。また、突設部51aの先端はICチップ21の表面、及び/又は裏面に接触するように設けられる。
突設部51aは、円柱形状である。また、突設部51aは、補強体51の中心から外周方向に直線的、且つ放射状に配置されている。また、中心から外側に向かって直線的に隣接する突設部51a、51aの間隔は、中心から外側に向かってしだいに増加するように設けられる。故に、突設部51aは補強体51の中心ほど密に設けられている。これにより、特に曲げ等の外力が多々作用する場合において、応力が集中しやすいICチップ21の中心部が保護される。
また、補強部材23の長さは、ICチップ21の端部を越えて設けられる。具体的には、補強部材23は、外周枠51bの厚みと隙間dの分だけICチップ21の端部を越えて設けられる。これにより、ICチップ21と補強部材23との間に注入される接着剤24がICチップ21の端部を越えて側方へはみだしても、補強部材23の外周枠51bによってそれ以上外方へ流れ出すのを抑止できる。また、外周枠51bの端面とICチップ21の側面とが接着面からはみだした接着剤により接着され、ICチップ21と補強部材23とがより強固に接着される。また、補強部材23の外周枠51bがICチップ21の外周面を越えた位置に設けられることにより、ICチップ21の端部(外周部)を保護できる。
また、ICチップ21の端部と外周枠51b(補強部材23)との間に隙間dを設けることにより、補強部材23とICチップ21とを接着剤24により固定する際に、この隙間dより補強部材23とICチップ21との接着面に存在する気体が外部へ押し出されるとともに、余った接着剤24が外部へ押し出される。そのため、補強部材23の外周枠51bの端面とICチップ21の側面とが押し出された接着剤24により強固に固着される。
また、ICチップ21の上面の所定部には、アース端子21bが設けられている。補強部材23がこのICチップ21の上面に設けられる場合は、補強部材23の突設部51aの一部がアース端子21bと接触(接地)するように設けられる。これにより、ICチップ21と補強部材23とが同電位となり、ICチップ21の上面に設けられた補強部材23がシールド部材として機能する。これにより、ICチップから発生する電気的なノイズの影響を排除し、安定した電波の送受信が可能となる。
第13図は第11図のE部分における他の実施形態の拡大図である。
アース端子21bを有するICチップ21において、補強部材23、23がICチップ21の上下面に設けられる場合は、ICチップ21の上面に設けられる補強部材23は、突設部51aの一部がアース端子21bと接触するように設けられる。また、ICチップ21の上面に設けられる補強部材23と下面に設けられる補強部材23とは少なくとも一部分が接触するように設けられる。具体的には、両補強部材23、23をICチップ21に設けた際に、補強部材23の外周枠51bの一部(例えば、第12図に示すICモジュールのうち左側の外周枠のみ)が接触するように設けられる。例えば、第13図に示すように、ICチップ21の下面に設けられる補強部材23の外周枠51bにおける一部の外周枠51cが、他の突設部51aの端面を越えてICチップ21の厚み分だけ長く設けられる。また、補強部材23の外周枠51bの全部が他の突設部51aの端面を越えてICチップ21の厚み分だけ長く設けられてもよい。これにより、少なくともICチップ21の下面に設けられる補強部材23の一部と上面に設けられる補強部材23の一部とが接触し、ICチップ21、及び両補強部材23、23が同電位となり、補強部材23がシールド部材として機能する。
また、補強部材23は、ワイヤボンディング方式で実装されるICモジュールの補強部材として用いられてもよい。この場合、ICチップの電極位置により補強部材の形状は適宜変更される。具体的には、ICチップの上面にのみ補強部材が使用される。ワイヤボンディング方式の場合は、通常、ICチップの下面は、下側リードフレームなどで基板と固定されるからである。
−第4の実施形態−
第14図はフリップチップ方式で実装されたICモジュールを含む基板の他の実施例である。なお、第14図において、第10図、第11図と共通する部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。
図示のように、他の実施形態におけるICモジュールを含む基板60は、主基板25a上に配線回路25bを有している基板25と、その基板上にフリップチップ方式で実装されたICチップ21と、ICチップ21を覆うように充填された封止剤29と、ICチップ21の上面に複数の凸部51a、51a、・・・、51aの先端が接触する程度に封止剤29に押圧して設けられた複数の凸部51aを有する補強部材23と、を備えている。
また、この基板60の製造方法は、基板25の所定部にICチップ21を装着するICチップ装着工程と、ICチップ21及びそのICチップ21が接触する基板25の表面を含んで封止剤29を充填して封止する封止工程と、複数の凸部51aを有する補強部材23をICチップ21の上側に、凸部51aの先端がICチップ21の上面に接触する程度まで押圧して設ける補強部材装着工程と、から構成される。
これにより、大量生産時において、基板の高さを所定の高さに容易に維持することができるとともに、ICチップを外圧(曲げ等の応力)から保護することができる。
−第5の実施形態−
第15図はフリップチップ方式で実装されたICモジュールを含む基板の他の実施例である。なお、第15図において、第9図と共通する部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。
本実施形態は、図示のように、フリップチップ方式によりICモジュール20を実装した形態である。本実施形態におけるICモジュールを含む基板61は、ICモジュール20と配線回路25bを有している基板25との間の空間63(接着剤部26)に補強体65を設けている。補強体65は、フレキシブルであって、外力が加わっても変形しにくい(固い)材質が用いられることが好ましい。また、補強体65は、好ましくは、フィルムが用いられる。このフィルムの材質は例えば、PET、PI等である。なお、補強体65の材質は、上記フィルムに限られず、金属、ステンレス、SUS等の材質を適宜選択して用いてもよい。
通常、この空間63は接着剤(特に、エポキシ樹脂等)で埋められているが、例えば、ICモジュール20、及び基板25の上部から外力(曲げ応力等)が繰り返し加わった場合には、接着剤からなる接着層が破壊されることが考えられる。そこで上記ICモジュール20と基板25との間に補強体65を設けることにより、接着層が補強体65を介して薄く形成されるため、繰り返し、曲げ応力等の外力がICモジュール20や基板25に加わっても接着層は破壊されず、ICモジュール20は基板25にしっかり装着され、製品の耐久性を向上させることができる。
通常、基板25上に有する配線回路25b面の厚さが25〜40μm、ICモジュール20の電極21a、21aの突出長さが20〜25μmであることを考慮すると、補強体65の厚さは、20〜30μm程度が好ましい。この補強体65の厚さは、配線回路25b面の厚さやICモジュール20の電極21aの厚さにしたがって適宜変更することができる。
なお、第10図に示すような基板において、ICモジュール20を基板に装着した状態において、ICモジュール20と基板との間に上記補強体65を設けるようにしてもよい。
また、製造過程において、基板25にICモジュール20を実装する際に、上記補強体65を設ける工程を追加することにより、当該補強体65が設けられたICモジュールを含む基板61を製造することができる。
以上の説明により、本発明のICモジュール10、20は、電極11a、21aを有するICチップ11、21において、前記ICチップ11、21の少なくとも上面、下面のいずれかに前記ICチップ11、21を補強するための補強部材12、13、22、23を備えている。また、ICチップ11、21と補強部材12、13、22、23の間には熱硬化タイプの接着剤14、24が使用される。
また、特にICモジュール10、20が基板15、25に実装される場合において、基板15、25と接する補強部材13、23の端部は、少なくともICチップ11、21の端部と同じ、又は越えているとよい。また、補強部材23は、補強体51と、その補強体の外周に垂設される外周枠51bと、を備えていてもよい。また、補強部材12、13、22、23は、ICチップ11、21と接する面に凸部12a、23a、51aが備えられている。また、凸部12a、23a、51aは複数設けられていてもよい。また、突設部51aは、補強体51の中心から外側に向かって放射状に配置されていてもよい。また、突設部51aは、補強体51の中心から外側に向かって直線的に隣接する突設部51aの間隔がしだいに増加するように配置されていてもよい。また、ICチップ21の端部(側面)と補強部材23の外周枠51bとの間には隙間dが設けられているとよい。
また、電極11a、21aを有するICチップ11、21の電極側の面と接触する補強部材12、23は、電極(入出力端子等)を取り出せるように構成される。具体的には、電極21aが突出している場合は、電極21aとの干渉を避けるように丸みをおびた切欠き部23b等を備える。また、電極11aがICチップ11の上面に配線パターン等により有する場合は、所定の電極11aと接合するための貫通孔12b等を備える。
また、本発明のICモジュールを含む基板30、50は、ICモジュール10、20がワイヤボンディング方式で実装されている。また、ICモジュール10、20がフリップチップ方式で実装されていてもよい。
また、フリップチップ方式で基板にICモジュール20が実装される過程で前記ICモジュール20を封止剤29で封止する場合において、前記ICモジュール20は、前記封止剤20と補強部材22との間に熱を緩衝するための熱緩衝部材28を介して封止されるようにするとよい。
これにより、ICチップ11、21に外圧(曲げ応力等)が作用しても、補強部材12、13、22、23により曲がりにくくなり、ICチップ11、21にも応力が作用しにくくなるためICチップ11、21の破損を防ぐことができる。
また、本発明のICモジュールを含む基板60は、少なくとも前記集積回路21を封止するための封止剤29を有していてもよい。
これにより、ICチップを実装した際の基板60の高さを所定の高さに容昜に維持することができるとともに、ICチップ21を外圧(曲げ等の応力)から保護することができる。
また、本発明のICモジュールを含む基板の製造方法として、少なくとも集積回路21を封止するための封止剤29を充填する封止工程を含む集積回路を実装する基板の製造方法において、前記封止工程後に、複数の凸部51aを有する補強部材51を、前記集積回路21の上面に前記凸部51aの先端が接触するように前記封止剤29を介して前記補強部材51を設ける補強部材装着工程を具備している。
これにより、基板の高さを所定の高さに容易に維持することができるとともに、ICチップを外圧(曲げ等の応力)から保護することができる基板を製造することが可能となる。
また、フリップチップ方式で基板25にICモジュール20が実装されるICモジュールを含む基板61において、ICモジュール20と基板25との間に補強体65を備えるようにしてもよい。
これにより、外力が基板25に加わって基板25に曲げ応力等がかかってもICモジュール20と基板25との間の接着層が破壊されることなく、基板25にICモジュール20をしっかりと装着した状態で維持することができる。
また、本発明は以上の実施形態に限定されることなく、種々の形態にて実施できる。例えば、電極11a、21aを有するICチップ11、21の電極側の面と接触する補強部材12、23に備えられている貫通孔12bは、電極を取り出せるように構成されていればどのような形状であってもよい。
また、第10図で説明した実施形態以外であっても、例えばワイヤボンディング方式で実装されたICモジュール10を含む基板50が、ICモジュール10(補強部材12)の上面に設けられた熱を緩衝するための熱緩衝部材28を介し、ICモジュール10が封止されて形成されるようにしてもよい。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8A】

【図8B】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を有する集積回路において、前記集積回路の少なくとも上面、及び下面のいずれかに前記集積回路を補強するための補強部材を備えていることを特徴とするICモジュール。
【請求項2】
前記集積回路と前記補強部材は、接着剤を介して接着されていることを特徴とする請求項1に記載のICモジュール。
【請求項3】
前記補強部材の端部は、少なくとも前記集積回路の端部と同じ、又は越えている長さであることを特徴とする請求項1、又は2に記載のICモジュール。
【請求項4】
前記補強部材は、補強体と、前記補強体の外周に垂設される外周枠と、を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のICモジュール。
【請求項5】
前記補強部材は、前記集積回路と接する面に凸部を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のICモジュール。
【請求項6】
前記凸部は複数設けられていることを特徴とする請求項5に記載のICモジュール。
【請求項7】
前記凸部は、前記補強体の中心から外側に向かって放射状に配置されていることを特徴とする請求項6に記載のICモジュール。
【請求項8】
前記凸部は、前記補強体の中心から外側に向かって直線的に隣接する凸部の間隔がしだいに増加するように配置されていることを特徴とする請求項7に記載のICモジュール。
【請求項9】
前記集積回路の端部と補強部材の外周枠との間には、隙間が設けられていることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載のICモジュール。
【請求項10】
前記凸部の一部が、前記集積回路のアースに接地されていることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載のICモジュール。
【請求項11】
前記集積回路の上面に備えられる補強部材と下面に備えられる補強部材の少なくとも一部が接触していることを特徴とする請求項1に記載のICモジュール。
【請求項12】
少なくとも請求項1〜11のいずれかに記載のICモジュールがワイヤボンディング方式で基板に実装されることを特徴とするICモジュールを含む基板。
【請求項13】
少なくとも請求項1〜11のいずれかに記載のICモジュールがフリップチップ方式で基板に実装されることを特徴とするICモジュールを含む基板。
【請求項14】
フリップチップ方式で基板にICモジュールが実装される過程で前記ICモジュールを封止する場合において、前記ICモジュールは、前記封止材と補強部材との間に熱を緩衝するための熱緩衝部材を介して封止されることを特徴とする請求項13に記載のICモジュールを含む基板。
【請求項15】
少なくとも前記集積回路を封止するための封止剤を有することを特徴とする請求項12、又は13に記載のICモジュールを含む基板。
【請求項16】
少なくとも集積回路を封止するための封止剤を充填する封止工程を含む集積回路を実装する基板の製造方法において、
前記封止工程後に、複数の凸部を有する補強部材を、前記集積回路の上面に前記凸部の先端が接触するように前記封止剤を介して前記補強部材を設ける補強部材装着工程を具備していることを特徴とするICモジュールを含む基板の製造方法。
【請求項17】
フリップチップ方式で基板にICモジュールが実装されるICモジュールを含む基板において、前記ICモジュールと基板との間に補強体を備えていることを特徴とするICモジュールを含む基板。

【国際公開番号】WO2005/081310
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【発行日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510135(P2006−510135)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002060
【国際出願日】平成16年2月23日(2004.2.23)
【出願人】(502014606)
【Fターム(参考)】