説明

ICモジュール及びICカード

【課題】導電ペーストの供給量が多少多くなっても、導電ペーストをカード表面に溢れ出すことのないようにする。
【解決手段】ICカードのカード基材Kに形成された収納用凹部17内に収納され、収納用凹部17内のアンテナパッド9aに導電ペースト18を介してアンテナ接続端子5が電気的に接続されるICモジュール1において、基板3と、この基板3の一面側に配設されるLSI、及びLSIに電気的に接続されるアンテナ接続端子5と、基板3の他面側に配設され、LSIに電気的に接続される外部コンタクト端子C2と、基板3の他面側にアンテナ接続端子5の外側に位置して設けられ、収納用凹部17内への収納時にカード基材Kの表面側に溢れ出ようとする導電ペースト18を溜めるためのペースト溜まり12とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触、非接触両方式のデータ通信が可能なICカードに用いられるICモジュール及びICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードには、接触、非接触の両方式で外部とデータ通信を行うことができるものがある。このICカードは、例えば図16に示すようなICモジュール101を備えている。ICモジュール101は基板102を有し、この基板102の一面側には図17にも示すようにLSI103、及びアンテナ接続端子104が配設されている。LSI103とアンテナ接続端子104は金ワイヤ105を介して接続されている。この基板102の他面側には複数個(8個)のISO接触方式の外部コンタクト端子C1〜C8が配設されている。
【0003】
また、基板102には、外部コンタクト端子C1〜C3、C5、C7に対向する複数の貫通孔107が穿設され、外部コンタクト端子C1〜C3、C5、C7とLSI103は貫通孔107に挿通される金ワイヤ105を介して接続されている。LSI103、及び金ワイヤ105は例えば、エポキシ樹脂108によりモールドされている。
【0004】
このICモジュール101は、図18に示すように、アンテナ9を内蔵するカード基材Kの収納用凹部110内に収納されてそのアンテナ接続端子104をアンテナパッド9aに接続させてICカードを構成するようになっている。
【0005】
このように構成されるICカードは、カード外部から供給される電波を電力に変換してLSI103を動作させ、残りの電力でレスポンスを返して非接触でデータ通信を行い、また、接触方式での交信時には、外部コンタクト端子C1〜C3、C5、C7をリーダ/ライターに接触させてデータ通信を行なう。
【0006】
ところで、上記したICモジュール101のアンテナ接続端子104と、収納用凹部110内のアンテナパッド109aとは、導電性の接着剤、例えば導電ペースト111によって接着されて一体化され、電気的に接続されている。
【0007】
導電ペースト111はICモジュール101がカード基材Kの収納用凹部110内に収納される前に、収納用凹部110内のアンテナパッド109aに供給され、ICモジュール101が収納用凹部110内に収納されて加熱加圧されることにより、硬化するようになっている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【特許文献1】特開2003−271918号公報
【特許文献2】特開2005−50326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来においては、導電ペースト111の供給量が多少多くなった場合には、収納用凹部110内に収納されたICモジュール101が加熱加圧されたときに、導電ペースト111の一部がカード表面に溢れ出てカード表面の例えば、コンタクト端子C2とアンテナ接続端子104間がショートし、LSI103が機能不能になるという問題があった。
【0009】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、接着剤の供給量が多少多くなっても、接着剤をカード表面に溢れ出すことのないようにしたICモジュール及びICカードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、ICカードのカード基材に形成された収納用凹部内に収納され、前記収納用凹部内のアンテナパッドに導電性の接着剤を介してアンテナ接続端子が電気的に接続されるICモジュールにおいて、基板と、この基板の一面側に配設されるLSI、及び前記LSIに電気的に接続される前記アンテナ接続端子と、前記基板の他面側に配設され、前記LSIに電気的に接続される接触通信用の接続端子と、前記基板の他面側に前記アンテナ接続端子の外側に位置して設けられ、前記収納用凹部内への収納時に前記カード基材の表面側に溢れ出ようとする接着剤を溜めるための接着剤溜め部とを具備する。
【0011】
請求項7記載の発明は、アンテナを内蔵するカード基材と、このカード基材に形成され、前記アンテナの端子を露出させる収納用凹部と、基板と、この基板の一面側に配設されるLSI、及び前記LSIに電気的に接続される前記アンテナ接続端子と、前記基板の他面側に配設され、前記LSIに電気的に接続される接触通信用の接続端子と、前記基板の他面側に前記アンテナ接続端子の外側に位置して設けられる接着剤溜め部とを有して構成され、前記カード基材の収納用凹部内に前記LSI側から収納されて、そのアンテナ接続端子を導電性の接着剤を介して前記アンテナの端子に接続し、この接続時に前記カード基材の表面側に溢れ出ようとする前記接着剤を前記接着剤溜め部に溜めるICモジュールとを具備し、前記収納用凹部の前記アンテナの端子を露出させる面を前記収納用凹部の内側に向かって下降するように傾斜する傾斜面としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、接着剤の供給量が多少多くなっても、接着剤をカード表面に溢れ出すことがなく、接触通信用の接続端子とアンテナ接続端子との間のショートを防止でき、LSIの機能を良好に維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図面に示す実施の形態を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態である接触、非接触の両方式で外部とデータ通信を行うことができるコンビカードの等価回路を示すものである。
【0014】
即ち、図中2はLSIで、このLSI2にはアンテナ接続端子5及びアンテナパッド9aを介してカード内蔵アンテナ9が接続されて共振回路が形成されている。この共振回路は、カード外部から供給される電波を電力に変換してLSI2を動作させ、残りの電力でレスポンスを返して非接触でデータ通信を行なう。また、LSI2には複数個の接触通信用の外部コンタクト端子C1〜C3、C5、C7が接続され、接触方式での通信時には、外部コンタクト端子C1〜C3、C5、C7をリーダ/ライターに接触させてデータ通信を行なう。
【0015】
なお、端子C1はVCC(供給電圧)、C2はRST(リセット信号)、C3はCLK(クロック信号)、C5はGND(接地)、C6はVPP(可変供給電圧)、C7はI/O(データ入出力)用の端子である。
【0016】
図2は、コンビカードとして適用されるICカードを示す平面図である。
【0017】
このICカードは上記アンテナ9を内蔵するカード基材Kと、このカード基材Kに装着されるICモジュール1とによって構成されている。カード基材Kには、図3に示すように収納用凹部17が設けられ、この収納用凹部17内にICモジュール1が収納されるようになっている。
【0018】
ICモジュール1は、図4〜図6に示すような、厚さ100pmのガラスエポキシ製の基板3を備えている。この基板3の裏面側(一面側)にはアンテナ接続端子5が形成され、表面側(他面側)には8個の外部コンタクト端子C1〜C8が配設されている。なお、端子C4,C8は、RFU(予備端子)となっている。この外部コンタクト端子C1〜C8は、35μmの厚の銅箔にニッケルメッキと金メッキを施して形成される。基板3には外部コンタクト端子C1〜C3,C5,C7に対向する5個の貫通穴6がそれぞれ穿設されている。
【0019】
また、基板3の裏面側(一面側)には図7から図9に示すように、厚さ250μmのLSI2が配置されている。LSI2と外部コンタクト端子C1〜C3、C5、C7とは、貫通穴6に挿通される金ワイヤ7を介してそれぞれ電気的に接続されている(ワイヤボンディング)。LSI2とアンテナ接続端子5も金ワイヤ7を介して電気的に接続されている。このLSI実装部はエポキシ樹脂8でモールドされて保護され、厚さ630μmのICモジュール(コンビモジュール)1が構成されている。
【0020】
なお、LSI2と外部コンタクト端子C1〜C3、C5、C7との接続を金ワイヤ7を用いたワイヤーボンディング方式としたが、これに限られることなく、他の接続方式でも構わない。また、アンテナ接続端子5も、外部コンタクト端子C1〜C3,C5,C7と同様に35μmの厚の銅箔にニッケルメッキと金メッキを施して形成される。
【0021】
ところで、上記した基板3の裏面側にはアンテナ接続端子5の外側に位置してダム部としてのペーストダム11が突設され、ペーストダム11とアンテナ接続端子5との間に接着剤溜め部としてのペースト液溜まり12が形成されている。ペーストダム11はアンテナ接続端子5と同時成形されて一体化されている。ペースト液溜まり12により、後で詳しく述べるように接着剤としての導電ペースト18がカードの表面に溢れ出ることが規制されるようになっている。
【0022】
次に、ICカードの製造方法について説明する。
【0023】
まず、図10(a)、図11(a)に示すように、アンテナ9を内蔵するカード基材Kを用意し、このカード基材Kの所定位置に図10(b)、図11(b)に示すように、ミーリング加工によりICモジュール1を収納するための収納用凹部17を形成し、コイルアンテナ9の両端部のアンテナパッド9aを外部に露出させる(露出工程)。この露出後、アンテナパッド9aに接着剤としての導電ペースト18をニードルで塗布する(塗布工程)。この塗布後、図10(c)、図11(c)に示すように、ICモジュール1をそのLSI2側からカード基材Kの収納用凹部17内に挿入して収納する。この収納後、ICモジュール1とほぼ同じ大きさの加熱ヘッドをICモジュール1に押し付けて、導電ペースト18を硬化させる。
【0024】
ところで、上記した導電ペースト18の塗布時には、導電ペースト18の供給量が多少大目になることがある。このような場合には、加熱ヘッドでICモジュール1を加圧すると、導電ペースト18の一部がカード基材Kの表面側に溢れ出ようとする。しかしながら、この場合には、図12に示すように、溢れ出ようとする導電ペースト18がペーストダム11により遮られてペースト液溜まり12に収容され、カード基材Kの表面側への流出が規制される。
【0025】
この実施の形態によれば、導電ペースト18がカード基材Kの表面側へ流出することがないため、カード基材Kの表面の例えば、外部コンタクト端子C2とアンテナ接続端子5とがショートすることがなく、機能を良好に維持することができる。
【0026】
図13は、ICモジュールの第1の変形例を示すものである。
【0027】
上記した実施の形態では基板3の裏面外側部にペーストダム11を突設してペースト液溜まり12を形成したが、この第1の変形例では、基板3の裏面外側部に凹部21を形成することにペースト液溜まり22を構成している。
【0028】
この第1の変形例によっても、カード基材Kの表面側に溢れ出ようとする導電ペースト18をペースト液溜まり22に収容してカード基材Kの表面側への流出を規制でき、外部コンタクト端子とアンテナ接続端子5とのショートを防止してLSI2の機能を良好に維持することができる。
【0029】
また、この第1の変形例によれば、ICモジュール1を偽造したり改造しようとしてICカードから無理に取り外そうとした場合には、ICモジュール1の基板3がその凹部21から破断し易く、偽造などの不正行為を未然に防止できる利点がある。
【0030】
図14はICモジュールの第2の変形例を示すものである。
【0031】
基板3の表面には、複数の外部コンタクト端子から基板外周に向かって伸びるメッキ引出線25が形成されるが、この第2の変形例では、メッキ引出線25を基板3の裏面側のペーストダム11上から側方に変位させている。
【0032】
この第2の実施の変形例によれば、導電ペースト18がペーストダム11付近のカード基材表面に溢れ出たとしても、メッキ引出線25がペーストダム11上から側方に離れた位置にあるため、アンテナ接続端子5とのショートを防止することができる。
【0033】
図15は本発明の第2の実施の形態を示すものである。
【0034】
この第2の実施の形態では、アンテナパッド9aを露出させるためのミーリング加工時に、収納用凹部17のミーリング深さを外側から内側に向かって深くなるように傾斜させている。
【0035】
この第2の実施の形態によれば、ICモジュール1のインプラント時において、導電ペースト18が過剰に供給されていた場合には、収納用凹部17の傾斜面31に沿って導電ペースト18を内側に逃がすことができ、カード表面への導電ペースト18の流出をより一層確実に防止することができる。
【0036】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施の形態であるICカードを示す等価回路図。
【図2】図1のICカードを示す平面図。
【図3】図2のICカードを構成するカード基材とICモジュールを分離して示す図。
【図4】図3のICモジュールの基板を裏面側から示す図。
【図5】図4中A−AA線に沿って示す断面図。
【図6】図4中B−BB線に沿って示す断面図。
【図7】図4の基板にLSIを取り付けた状態を示す図。
【図8】図7中A−AA線に沿って示す断面図。
【図9】図7中B−BB線に沿って示す断面図。
【図10】図2のICカードの製造工程を示す図。
【図11】図2のICカードの製造工程を示す図。
【図12】図11(a)中のA部を拡大して示す図。
【図13】ICモジュールの第1の変形例を示す図。
【図14】ICモジュールの第2の変形例を示す図。
【図15】本発明の第2の実施の形態であるICカードを示す図。
【図16】従来のICモジュールを示す図。
【図17】図16中A−AA線に沿って示す断面図。
【図18】図16のICモジュールがカード基材の収納用凹部内に収納されて加圧されたときに導電ペーストが表面側に溢れ出た状態を示す図。
【符号の説明】
【0038】
K…カード基材K、1…ICモジュール、3…基板、5…アンテナ接続端子、9a…アンテナパッド、11…ダム部、12,22…ペースト溜まり(接着剤溜め部)、17…収納用凹部、18…導電ペースト、C1〜C3、C5、C7…外部コンタクト端子(接触通信用の接続端子)、21…凹部、25…メッキ線、31…傾斜面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICカードのカード基材に形成された収納用凹部内に収納され、前記収納用凹部内のアンテナパッドに導電性の接着剤を介してアンテナ接続端子が電気的に接続されるICモジュールにおいて、
基板と、
この基板の一面側に配設されるLSI、及び前記LSIに電気的に接続される前記アンテナ接続端子と、
前記基板の他面側に配設され、前記LSIに電気的に接続される接触通信用の接続端子と、
前記基板の他面側に前記アンテナ接続端子の外側に位置して設けられ、前記収納用凹部内への収納時に前記カード基材の表面側に溢れ出ようとする接着剤を溜めるための接着剤溜め部と
を具備することを特徴とするICモジュール。
【請求項2】
前記接着剤溜め部は前記アンテナ接続端子の外側に平行に所定間隔を存して形成される配線によってダム部が構成されることを特徴とする請求項1記載のICモジュール。
【請求項3】
前記接着剤溜め部は前記アンテナ接続端子の外側に平行に所定間隔を存して形成される基材の凹部によって構成されることを特徴とする請求項1記載のICモジュール。
【請求項4】
前記接着剤溜め部は前記アンテナ接続端子に沿って設けられ、前記アンテナ接続端子よりも長さ寸法を大とすることを特徴とするICモジュール。
【請求項5】
前記基板の接触通信用の接続端子から前記基板の外周に向かって伸びるメッキ線は前記ダム部上から側方へ変位する位置に配置されることを特徴する請求項2記載のICモジュール。
【請求項6】
前記基板の接触通信用の接続端子から前記基板の外周に向かって伸びるメッキ線は前記凹部上から側方へ変位する位置に配置されることを特徴する請求項3記載のICモジュール。
【請求項7】
アンテナを内蔵するカード基材と、
このカード基材に形成され、前記アンテナの端子を露出させる収納用凹部と、
基板と、この基板の一面側に配設されるLSI、及び前記LSIに電気的に接続される前記アンテナ接続端子と、前記基板の他面側に配設され、前記LSIに電気的に接続される接触通信用の接続端子と、前記基板の他面側に前記アンテナ接続端子の外側に位置して設けられる接着剤溜め部とを有して構成され、前記カード基材の収納用凹部内に前記LSI側から収納されて、そのアンテナ接続端子を導電性の接着剤を介して前記アンテナの端子に接続し、この接続時に前記カード基材の表面側に溢れ出ようとする前記接着剤を前記接着剤溜め部に溜めるICモジュールとを具備し、
前記収納用凹部の前記アンテナの端子を露出させる面を前記収納用凹部の内側に向かって下降するように傾斜する傾斜面としたことを特徴とするICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−75782(P2009−75782A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243079(P2007−243079)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】