説明

IGF−1値上昇剤

【課題】魚類の卵巣膜から抽出された成分の新たな用途を提供する。
【解決手段】魚類の卵巣膜から抽出された成分を含む抗加齢剤であり、加齢により低下したIGF−1値を再び上昇させることができ、前記加齢に伴う諸症状を緩和、改善することができる。前記卵巣膜から抽出された成分は、該卵巣膜をタンパク分解酵素で処理することにより抽出された成分である。前記卵巣膜は、鮭の卵巣膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗加齢剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、魚類の卵巣膜(魚卵外皮)を予めオゾン水で処理した後、その構成タンパク質である筋原線維タンパク質を酵素分解してアミノ酸及びペプチドを抽出する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
前記アミノ酸及びペプチドは、生理活性物質として、あるいは食品強化剤として用いることができるとされており、さらに詳しくは、ACE阻害活性を備え、血圧上昇抑制剤(降圧剤)として作用するとされている。
【0004】
しかしながら、魚類の卵巣膜から抽出された成分には、さらに多くの用途の開発が望まれる。
【特許文献1】特開2004−73186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑み、魚類の卵巣膜から抽出された成分の新たな用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明の抗加齢剤は、魚類の卵巣膜から抽出された成分を含むことを特徴とする。
【0007】
生体においては、成年期を過ぎると加齢に伴って新陳代謝が衰える、無気力になる、肌の肌理が荒くなる、つや、はりが無くなる、シミ、ソバカスが多くなる等の諸症状が現れてくる。前記加齢に伴う諸症状は、IGF−1値の低下として把握され、通常は、一旦下降したIGF−1値が再度上昇することは無いとされている。
【0008】
ところが、本発明の抗加齢剤によれば、IGF−1値を再び上昇させることができ、前記加齢に伴う諸症状を緩和、改善することができる。
【0009】
本発明の抗加齢剤において、前記卵巣膜から抽出された成分は、該卵巣膜をタンパク分解酵素で処理することにより抽出された成分であることが好ましい。また、前記卵巣膜としては、例えば鮭の卵巣膜を挙げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は本実施形態の抗加齢剤を摂取した場合とプラセボ(偽薬)を摂取した場合とのIGF−1値の経時的変化を示すグラフ、図2は本実施形態の抗加齢剤を摂取した場合とプラセボ(偽薬)を摂取した場合とのIGF−1値の変化量を示すグラフ、図3は本実施形態の抗加齢剤を8週間摂取した後の体調と摂取中止から2週間後の体調との比較を示すグラフである。
【0011】
本実施形態の抗加齢剤は、例えば鮭等の魚類の卵巣膜から抽出された成分(以下、卵巣膜抽出成分と略記する)を含む。前記卵巣膜抽出成分は、例えば、魚卵から分離された前記卵巣膜を酵素処理してタンパク質を抽出した溶液を、濾過し、得られた濾液を乾燥させる方法等により得ることができる。
【0012】
前記方法では、具体的には、まず、鮭の卵巣膜を原料とし、該卵巣膜に対して水を卵巣膜:水=1:1〜1:3の重量比で加えて撹拌、混合し、さらにタンパク分解酵素を卵巣膜の全量に対して1〜3重量%の範囲で添加し、45〜55℃の温度で30分間〜5時間、好ましくは2時間加熱する。このようにすると、前記卵巣膜の成分のうち、前記タンパク分解酵素で分解された成分が水中に溶出し、該成分の水溶液が得られる。
【0013】
次に、前記水溶液に含まれている前記タンパク分解酵素を失活する。前記失活は、例えば、前記水溶液を90℃の温度で5分間加熱することにより行うことができる。
【0014】
次に、前記水溶液を30メッシュ程度の金網で簡易濾過し、未分解の卵巣膜等の粗大物を除去する。そして、得られた濾液に活性炭を添加して、該濾液の脱臭、脱色、脱脂を行う。前記濾液の脱臭、脱色、脱脂は、前記原料としての卵巣膜の全量に対して2〜4重量%の範囲の活性炭を該濾液に添加し、例えば60℃の温度で30分間加熱することにより行うことができる。
【0015】
前記活性炭による脱臭、脱色、脱脂処理後、前記濾液を例えばフィルタープレスにより濾過し、得られた濾液を、減圧下、例えば60℃の温度で濃縮した後、例えば80℃の温度に10分間維持して滅菌する。そして、滅菌後の前記濾液をスプレードライにて乾燥させることにより、前記卵巣膜抽出成分を得ることができる。前記卵巣膜抽出成分は、アミノ酸、ペプチド、ビタミン、ミネラル、糖類、酵素、核酸及びその代謝物、各種成長因子、サイトカイン等を含んでいる。
【0016】
本実施形態の抗加齢剤は、前記卵巣膜抽出成分を、例えば錠剤等の形に製剤したものであり、例えば健康食品等の食品として摂取することにより、加齢により低下したIGF−1値を再び上昇させることができ、前記加齢に伴う諸症状を緩和、改善することができる。
【0017】
次に、本発明の実施例と比較例とを示す。
【実施例】
【0018】
本実施例では、まず、鮭の卵巣膜抽出成分を錠剤の形に製剤して、抗加齢剤を製造した。前記錠剤は、前記卵巣膜抽出物245mg、賦形剤(ラブリワックス(登録商標))5mgからなり、8mmの直径を備えている。
【0019】
次に、38〜42歳の健康な女性モニター10名に、前記錠剤を健康食品として1日当たり4錠、8週間に亘って摂取させた。尚、各モニターは、1ヶ月前からサプリメント、薬品(漢方薬を含む)の摂取を行っていない。
【0020】
そして、摂取開始前、摂取開始4週間目、摂取開始8週間目に、血液検査を行い、IGF−1値を測定した。前記モニター10人のIGF−1値の平均値を図1に、摂取開始から4週間目まで、摂取開始から8週間目までのIGF−1値の平均値の変化量を図2に、それぞれ示す。尚、図1中、摂取開始前を「0週」、摂取開始4週間目を「4週」、摂取開始8週間目を「8週」と記載し、図2中、摂取開始から4週間目までを「0−4週」、摂取開始から8週間目までを「0−8週」と記載する。
【0021】
また、各モニターの自己申告による体調について、摂取開始8週間目と、摂取中止から2週間後との状態を比較した。結果を図3に示す。
〔比較例〕
本比較例では、まず、前記実施例の抗加齢剤に代えて、コーンスターチ125mg、乳糖125mgからなるプラセボ(偽薬)を、直径8mmの錠剤の形に製剤した。
【0022】
次に、前記実施例とは異なる38〜42歳の健康な女性モニター10名に、前記偽薬のカプセル剤を1日当たり4錠、8週間に亘って投与した。尚、各モニターは、1ヶ月前からサプリメント、薬品(漢方薬を含む)の摂取を行っていない。
【0023】
そして、前記実施例と全く同一にして、IGF−1値を測定した。前記モニター10人のIGF−1値の平均値を図1に、摂取開始4週間目、摂取開始8週間目のIGF−1値の平均値の変化量を図2に、それぞれ示す。
【0024】
図1から、本実施形態の抗加齢剤(実施例)によれば、摂取開始4週間目には摂取開始前に比較してIGF−1値が増加しており、摂取開始8週間目には摂取開始4週間目よりもさらに増加しており、単調に増加していることが明らかである。これに対して、プラセボ(比較例)によれば、摂取開始8週間目には摂取開始前に比較してIGF−1値が増加しているものの、摂取開始4週間目には摂取開始前に比較して一旦IGF−1値が減少しており、単調な増加ではないことが明らかである。
【0025】
また、図2から、本実施形態の抗加齢剤によれば、IGF−1値の増加量がプラセボよりも大きいことが明らかである。
【0026】
さらに、図3から、本実施形態の抗加齢剤を摂取開始後、8週間目の体調の方が、摂取中止から2週間後の体調よりも優れていることが明らかである。これは、本実施形態の抗加齢剤を摂取開始後、8週間目には、IGF−1値の増加により体調が好転していたものが、摂取中止に伴いIGF−1値増加の効果が低減したものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る抗加齢剤を摂取した場合とプラセボ(偽薬)を摂取した場合とのIGF−1値の経時的変化を示すグラフ。
【図2】本発明に係る抗加齢剤を摂取した場合とプラセボ(偽薬)を摂取した場合とのIGF−1値の変化量を示すグラフ。
【図3】本発明に係る抗加齢剤を8週間摂取した後の体調と摂取中止から2週間後の体調との比較を示すグラフ。
【符号の説明】
【0028】
符号なし。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚類の卵巣膜から抽出された成分を含むことを特徴とする抗加齢剤。
【請求項2】
請求項1記載の抗加齢剤において、前記卵巣膜から抽出された成分は、該卵巣膜をタンパク分解酵素で処理することにより抽出された成分であることを特徴とする抗加齢剤。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の抗加齢剤において、前記卵巣膜は、鮭の卵巣膜であることを特徴とする抗加齢剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−13441(P2008−13441A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−183234(P2006−183234)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【特許番号】特許第3946238号(P3946238)
【特許公報発行日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(501195223)株式会社日本バリアフリー (26)
【Fターム(参考)】