説明

IGF−1R及びErbB3シグナル伝達を標的とする二重特異的結合剤及びその使用

IGF−1及びErbB細胞内シグナル経路の両方を特異的に標的とする二重特異的結合剤を開示する。例えば、リンカーにより接続されている抗IGF−1R抗体及び抗ErbB3抗体を含む二重特異的結合剤を、本明細書に記述する。これらの二重特異的剤は、IGF−1及びErbBシグナル経路の両方によるシグナル伝達をアンタゴナイズすることが可能であり、その増殖が両経路のシグナル伝達活性を要する腫瘍細胞の増殖を、阻害するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
腫瘍細胞は、細胞の増殖を刺激する増殖因子及びサイトカインの受容体を発現し、更にそのような受容体に対する抗体は、増殖因子及びサイトカインにより媒介される細胞増殖の刺激を阻止して腫瘍細胞増殖を阻害するのに有効であり得ることが確立されている。がん細胞上の受容体を標的とする市販の治療用抗体には、例えば、HER2受容体(ErbB2としても知られている)を標的とする、乳癌治療用のトラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、並びに上皮増殖因子受容体(EGFR、HER1又はErbB1としても知られている)を標的とする、結腸直腸癌及び頭頸部癌治療用のセツキシマブ(Erbitux(登録商標))が含まれる。
【0002】
単一の治療用モノクローナル抗体のみを含む治療剤を投与するこの手法(別の治療用抗体を投与しない状態で投与された場合、本明細書では単独療法と呼ぶ)は、がん治療にそれなりの成功を示しているが、そのような治療の失敗又は初期阻害後の腫瘍増殖の再発に結び付く場合がある多数の要因が存在する。例えば、ある腫瘍は、細胞増殖に関して複数の増殖因子媒介性シグナル伝達経路に依存しており、従って、単一の経路を標的とすることは、腫瘍細胞増殖に著しい効果を及ぼすには不十分であることが判明する場合がある。或いは、1つの経路が唯一の又は支配的な増殖刺激経路である場合でさえ、ある腫瘍細胞は、元の経路が抗体により阻止されると、増殖刺激の別のシグナル経路を活性化させることが可能である(治療に対する先天的抵抗性)。また更に、幾つかの腫瘍は、抗体単独療法に初期応答性を示すが、別のシグナル経路の使用に切り替わることにより、後に治療に対して抵抗性を発生させる(治療に対する獲得抵抗性)。
【0003】
従って、抗体単独療法の制限を克服し、他の利点を提供する、がん治療の更なる治療手法が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
概要
腫瘍細胞により増殖の活性化に使用される2つのシグナル経路である、インスリン増殖因子1受容体(IGF−1R)経路、及びErbB経路、特にErbB3(HER3としても知られている)経路を標的とする二重特異的結合剤(BBA)が、本明細書で提供される。BBAは、中間にあるリンカー部分(モジュール)を介して共有結合で一緒に連結されている、IGF−1Rを標的とする結合部分(モジュール)及びErbB3を標的とする結合部分(モジュール)を含む。本明細書に記載のように、これらのBBAは、IGF−1経路又はErbB3経路のいずれかのみを標的とする単一の結合剤の使用よりも、腫瘍細胞の増殖を阻害するのにより効果的であることが示された。
【0005】
従って、1つの態様では、IGF−1受容体(IGF−1R)と特異的に結合する第1の結合部分、及びErbB3と特異的に結合する第2の結合部分を含み、第1及び第2の結合部分が、リンカー部分により共有結合で連結されている、BBAが提供される。1つの実施形態では、連結部分は、そのような連結部分の1つの分子が他の連結部分分子と多量体を形成しないという点で単量体である。この単量体部分は、SEQ ID NO:18に示されている配列を有する、ヒト血清アルブミン(HSA)を含んでいてもよい。別の実施形態では、単量体連結部分は、34位にセリン及び503位にグルタミンを有し、SEQ ID NO:19に示されている配列を有する突然変異型のヒト血清アルブミンである。別の実施形態では、SEQ ID NO:32に示されている単量体リンカー部分は、化学的に及び生物学的に不活性である(リンカーが、生物学的結合機能又は触媒機能を有していないという点で)。別の実施形態では、連結部分は、構成的に又は誘導可能に二量体化することが可能である(本明細書では、二量体と呼ぶ)。この二量体のリンカーは、例えば、SEQ ID NO:20〜29に示されているヒト免疫グロブリンの断片を含む。別の実施形態では、連結部分は、構成的に又は誘導可能に三量体化することが可能である(本明細書では、三量体と呼ぶ)。この三量体連結部分は、腫瘍壊死因子相同ドメイン又は腫瘍壊死因子相同ドメインの断片を含んでいてもよい。構成的三量体リンカーの例は、SEQ ID NO:31に示されている。誘導可能な三量体リンカーの一例は、SEQ ID NO:30に示されている。
【0006】
リンカー部分のグリコシル化状態は、真核生物発現宿主中でN結合グリコシル化を起こすアミノ酸モチーフの導入により操作することができる。1つの実施形態では、連結部分は、180位にアスパラギン、181位にセリン、及び182位にトレオニンを含有しており(SEQ ID NO:24に示されている)、グリコシル化されている。別の実施形態では、連結部分は、180位にアスパラギンからグルタミンへの突然変異を含有しており(SEQ ID NO:25に示されている)、無グリコシル化(aglycosylate)されている。別の実施形態では、連結部分は、第2のN結合グリコシル化モチーフ(78位のアスパラギン、79位のグルタミン、及び80位のトレオニン)を含有するように操作されていた。SEQ ID NO:26に示されているこの連結部分は、過剰グルコシル化されている。糖鎖操作された連結部分の更なる例は、SEQ ID NO:27〜29に示されている。
【0007】
そのような糖鎖操作の更なる方法は、米国特許出願公開第2006/0269543号及びその中の参考文献に記載されている。
【0008】
1つの実施形態では、第1の結合部分は、単鎖抗体(scFv)等の抗IGF−1R遺伝子操作抗体断片である。例示的な抗IGF−1R単鎖抗体は、SEQ ID NO:1に示されている。
【0009】
別の実施形態では、第1の結合部分は、Fab等の抗IGF−1R抗体断片である。Fab断片は、軽鎖(LC)及び重鎖(HC)のヘテロ二量体で構成される。抗IGF−1R Fab断片の例示的なHC及びLC配列は、SEQ ID NO:8及びSEQ ID NO:10に示されている。
【0010】
別の実施形態では、第1の結合部分は、VHドメイン等の抗IGF−1R抗体断片である。例示的な抗IGF−1R VHドメインは、SEQ ID NO:6に示されている。
【0011】
別の実施形態では、第1の結合部分は、VLドメイン等の抗IGF−1R抗体断片である。例示的な抗IGF−1R VLドメインは、SEQ ID NO:12に示されている。
【0012】
1つの実施形態では、第1の結合部分は、単鎖抗体(scFv)等の抗ErbB3遺伝子操作抗体断片である。例示的な抗ErbB3単鎖抗体は、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:43、及びSEQ ID NO:44に示されている。
【0013】
別の実施形態では、第1の結合部分は、Fab等の抗ErbB3抗体断片である。Fab断片は、軽鎖(LC)及び重鎖(HC)のヘテロ二量体で構成される。抗ErbB3 Fabの例示的なHC及びLC配列は、SEQ ID NO:37及びSEQ ID NO:39に示されている。
【0014】
別の実施形態では、第1の結合部分は、VHドメイン等の抗ErbB3抗体断片である。例示的な抗ErbB3 VHドメインは、SEQ ID NO:35に示されている。
【0015】
別の実施形態では、第1の結合部分は、VLドメイン等の抗ErbB3抗体断片である。例示的な抗ErbB3 VLドメインは、SEQ ID NO:41に示されている。
【0016】
別の実施形態では、第2の結合部分は、抗ErbB3抗体、例えば単鎖抗体(scFv)である。例示的な抗ErbB3単鎖抗体は、AB2−3 scFv(SEQ ID NO:33に示されている配列を含む)、AB2−6 scFv(SEQ ID NO:43に示されている配列を含む)、及びAB2−21 scFv(SEQ ID NO:44に示されている配列を含む)である。1つの実施形態では、第1の結合部分は、単鎖抗体(scFv)等の抗ErbB3遺伝子操作抗体断片である。例示的な抗ErbB3単鎖抗体は、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:43、及びSEQ ID NO:44に示されている。
【0017】
別の実施形態では、第1の結合部分は、Fab等の抗ErbB3抗体断片である。Fab断片は、軽鎖(LC)及び重鎖(HC)のヘテロ二量体で構成される。抗ErbB3 Fab断片の例示的なHC及びLC配列は、SEQ ID NO:37及びSEQ ID NO:39に示されている。
【0018】
別の実施形態では、第1の結合部分は、VHドメイン等の抗ErbB3抗体断片である。例示的な抗ErbB3 VHドメインは、SEQ ID NO:35に示されている。
【0019】
別の実施形態では、第1の結合部分は、VLドメイン等の抗ErbB3抗体断片である。例示的な抗ErbB3 VLドメインは、SEQ ID NO:41に示されている。
【0020】
別の実施形態は、突然変異HSAリンカーのN末端に連結されたAB5−7 scFv及び突然変異HSAリンカーのC末端に連結されたAB2−3 scFv(SEQ ID NO:99によりコードされたSEQ ID NO:93)、突然変異HSAリンカーのN末端に連結されたAB5−7 scFv及び突然変異HSAリンカーのC末端に連結されたAB2−6 scFv(SEQ ID NO:100によりコードされたSEQ ID NO:94)、突然変異HSAリンカーのN末端に連結されたAB5−7 scFv及び突然変異HSAリンカーのC末端に結合されたAB2−21 scFv(SEQ ID NO:108によりコードされたSEQ ID NO:95)、突然変異HSAリンカーのN末端に連結されたAB2−3 scFv及び突然変異HSAリンカーのC末端に連結されたAB5−7 scFv(SEQ ID NO:115によりコードされたSEQ ID NO:96)、突然変異HSAリンカーのN末端に連結されたAB2−6 scFv及び突然変異HSAリンカーのC末端に連結されたAB5−7 scFv(SEQ ID NO:116にコードされたSEQ ID NO:97)、並びに突然変異HSAリンカーのN末端に連結されたAB2−21 scFv及び突然変異HSAリンカーのC末端に連結されたAB5−7 scFv(SEQ ID NO:117によりコードされたSEQ ID NO:98)を含む。
【0021】
他の実施形態は、N末端でリンカー部分に融合され、次いでリンカー部分がC末端の抗IGF−1R部分に融合されている抗ErbB3部分を含む。そのような分子は、下記に示されている式A−L−Bと一致していてもよく、下記の表11に示されている部分の特定の組み合わせを有していてもよい。これら部分は、介在配列なしで連続的に融合されている。同時発現部分は、存在する場合、個別のポリペプチド鎖として同じ細胞中で発現される。これらポリペプチド鎖の折り畳みは、ELIトポロジーの二重特異的分子をもたらす。
【0022】
他の実施形態は、N末端でリンカー部分に融合され、次いでリンカー部分がC末端の抗ErbB3部分に融合されている抗IGF−1R部分を含む。そのような分子は、下記に示されている式A−L−Bと一致していてもよく、下記の表12に示されている部分の特定の組み合わせを有していてもよい。これら部分は、介在配列なしで連続的に融合されている。同時発現部分は、存在する場合、個別のポリペプチド鎖として同じ細胞中で発現される。これらポリペプチド鎖の折り畳みは、ILEトポロジーの二重特異的分子をもたらす。
【0023】
C末端リジン変異は、バイオ医薬品抗体及び抗体様分子で一般的に観察される。C末端リジンは、カルボキシペプチダーゼB等の塩基性カルボキシペプチダーゼにより切断することができる。このプロセシングは、生産プロセスに感受性であることが知られており、不完全な切断は、バイオ医薬品製品の不均質性の増加をもたらす場合がある。
【0024】
1つの実施形態では、C末端の抗IGF−1R部分は、C末端リジンを除去することにより均質になるように操作されている。例示的な均質性抗IGF−1R部分は、SEQ ID NO:3に示されている。
【0025】
別の実施形態では、C末端の抗ErbB3部分は、C末端リジンを除去することにより均質になるように操作されている。例示的な均質性抗ErbB3部分は、SEQ ID NO:82に示されている。
【0026】
安定性の増強及び発現の増加を示すscFv、VH、VL、及びFab等の抗体断片を操作するための方法は、米国特許出願公開第2006/0127893号、米国特許出願公開第2009/0048122号、及びそれらの中の参考文献に記載されている。
【0027】
1つの実施形態では、抗ErbB3部分は、安定性を増強するためにそのような方法により操作されている。例示的な安定化された抗ErbB3部分は、SEQ ID NO:34に示されている。
【0028】
別の実施形態では、抗IGF−1R部分は、安定性を増強するためにそのような方法により操作されている。例示的な安定化された抗IGF−1R部分は、SEQ ID NO:2に示されている。
【0029】
別の実施形態では、抗IGF−1R部分は、発現を増加させるためにそのような方法により操作されている。例示的な発現最適化抗IGF−1R部分は、SEQ ID NO:4に示されている。
【0030】
複数の親和性相互作用(典型的には単一標的に対して)に起因する結合強度の増加におけるアビディティーは、抗体及び抗体様分子の生物学的機能を向上させることができる。
【0031】
ある実施形態では、BBAに含まれている結合モジュールは両方とも、単一の親和性相互作用のみが可能であり、つまりそれらは、IGF−1Rとの単一の親和性相互作用及びErbB3に対する単一の親和性相互作用が可能である。これらの特徴を有する例示的なBBAは、実施例5に記載のように、アミノ酸が介在しないSEQ ID NO:43−SEQ ID NO:19−SEQ ID NO:1の遺伝子融合により構築することができる。
【0032】
他の実施形態では、BBAの結合モジュールの1つ又は複数は、複数の親和性相互作用が可能であり、アビディティー結合特性をもたらす。そのような結合モジュールは、少数価(oligovalent)であり、同一標的との2、3、4、又は5つ以上の別個の親和性相互作用が可能であり、本明細書では「タンデム」モジュールと呼ぶ。
【0033】
従って、あるより高い親和性(アビディティー)実施形態では、BBAは、IGF−1Rに対する2つの親和性相互作用及びErbB3に対する2つの親和性相互作用が可能である。これらの特徴を有する例示的なBBAは、実施例5に記載のように、配列を介在させずにSEQ ID NO:35−SEQ ID NO:22−SEQ ID NO:1を遺伝子融合し、同一の細胞中でSEQ ID NO:39と共に同時発現させることにより構築することができる。
【0034】
ある更により高い親和性(アビディティー)実施形態では、BBAは、IGF−1Rに対する3つの親和性相互作用及びErbB3に対する3つの親和性相互作用が可能である。これらの特徴を有する例示的なBBAは、実施例5に記載のように、配列が介在しないSEQ ID NO:47−SEQ ID NO:31−SEQ ID NO:5の遺伝子融合により構築することができる。
【0035】
他の実施形態では、BBAは、IGF−1Rとの単一の親和性相互作用のみ及びErbB3に対する2つの親和性相互作用が可能である。これらの特徴を有する例示的なBBAは、実施例5に記載のように、配列が介在しないSEQ ID NO:1−SEQ ID NO:19−SEQ ID NO:50の遺伝子融合により構築することができる。
【0036】
IGF−1R標的部分、リンカー部分、及びErbB3標的部分を含み、IGF−1R標的部分が、特異的にIGF−1Rと結合し、ErbB3標的部分が、特異的にErbB3と結合し、標的部分が各々、リンカー部分に連結されている、二重特異的結合剤タンパク質も提供される。1つの実施形態では、標的部分の各々は、ペプチド結合によりリンカー部分に共有結合で連結されて、単一のポリペプチドを形成し、リンカー部分は、長さが2〜5、6〜10、11〜25、26〜50、51〜100、101〜250、251〜500、又は501〜1000個のアミノ酸である。
【0037】
種々の形態のリンカー部分が企図される。1つの実施形態では、リンカー部分は、化学的に及び生物学的に不活性である。別の実施形態では、リンカー部分は、1つ又は複数のタンパク質ドメインで構成されている。別の実施形態では、リンカー部分は、例えば、Fcγ受容体、新生児型Fc受容体、腫瘍壊死因子ファミリー受容体を含む1つ又は複数の受容体、ヒト免疫グロブリン、又はヒト血清アルブミンと結合する。別の実施形態では、リンカー部分は、ヒト血清アルブミンである。別の実施形態では、リンカー部分は、免疫グロブリン、又は免疫グロブリン断片である。別の実施形態では、リンカー部分は、腫瘍壊死因子相同ドメイン、又は腫瘍壊死因子相同ドメインの断片である。別の実施形態では、リンカー部分は、単量体を形成する。別の実施形態では、リンカー部分は、ホモ二量体又はヘテロ二量体を形成する。別の実施形態では、リンカー部分は、ホモ三量体又はヘテロ三量体を形成する。別の実施形態では、リンカー部分は、グリコシル化されているか、又は無グリコシル化(非グリコシル化)されている。別の実施形態では、リンカー部分は、突然変異型のヒト血清アルブミンである。別の実施形態では、リンカーは、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4アイソタイプのヒト免疫グロブリンのCH2及び/又はCH3ドメインを含有している。別の実施形態では、リンカー部分は、ヒトTRAIL、ヒトLIGHT、ヒトCD40L、ヒトTNFα、ヒトCD95、ヒトBAFF、ヒトTWEAK、ヒトOX40、又はヒトTNFβの断片であり、断片は、構成的に又は誘導可能に二量体化又は三量体化することが可能である。別の実施形態では、リンカー部分は、増強された溶解性を有するように糖鎖操作されている。別の実施形態では、リンカー部分は、増強された安定性を有するように糖鎖操作されている。別の実施形態では、リンカー部分は、血清中半減期の延長を提供するように操作されている。別の実施形態では、リンカー部分は、低減された不均質性を有するように操作されている。
【0038】
特定の実施形態では、ErbB3標的部分は、リンカー部分のアミノ末端に連結されており、IGF−1R標的部分は、リンカー部分のカルボキシ末端に連結されている。
【0039】
別の実施形態では、IGF−1R標的部分は、リンカー部分のアミノ末端に連結されており、ErbB3標的部分は、リンカー部分のカルボキシ末端に連結されている。
【0040】
更なる実施形態では、IGF−1R標的部分は、1つ又は複数の抗IGF−1R抗体(例えば、単鎖抗体又は単一ドメイン抗体)を含む。特定の実施形態では、IGF−1R標的部分は、2つの抗IGF−1R抗体を含み、ErbB3標的部分は、1つの抗ErbB3抗体を含む。
【0041】
別の実施形態では、ErbB3標的部分は、1つ又は複数の抗ErbB3抗体(例えば、単鎖抗体又は単一ドメイン抗体)を含む。
【0042】
本明細書で提供される標的部分は、安定性が増強され、不均質性が低減され、発現が増強されるように操作することができる。例えば、1つの実施形態では、IGF−1R標的部分及びErbB3標的部分のいずれか又は両方は、安定性が増強されるように操作されている。別の実施形態では、IGF−1R標的部分及びErbB3標的部分のいずれか又は両方は、不均質性が低減されるように操作されている。また更なる実施形態では、IGF−1R標的部分及びErbB3標的部分のいずれか又は両方は、発現が増強されるように操作されている。
【0043】
本発明の別の態様は、核酸分子、例えば、プロモーターに機能的に連結された本明細書に記載の二重特異的結合剤をコードする配列を含む発現ベクター、及びそのような発現ベクターを含む宿主細胞、並びにBBAが発現されるようにそのような宿主細胞を培養することを含むBBAを発現する方法に関する。
【0044】
本明細書に記載のBBAの1つ又は複数を含むキット、並びにがんを治療するためにそのような剤を使用するための説明書も包含される。
【0045】
別の態様では、腫瘍細胞の増殖が阻害されるように、腫瘍細胞を本明細書に記載のBBAと接触させることを含む、IGF−1R及びErbB3を発現する腫瘍細胞の増殖を阻害するための方法が提供される。また、患者のIGF−1R及びErbB3発現腫瘍を治療する方法が提供され、該方法は、腫瘍の増殖が阻害されるように、本明細書に記載のBBAを患者に投与することを含む。BBAで治療される(例えば、本明細書で開示された治療法により)腫瘍の例には、肺癌、肉腫、結腸直腸癌、頭頸部癌、膵臓癌、及び乳癌が含まれる。種々の実施形態では、肺癌は、非小細胞肺癌又はゲフィチニブ抵抗性肺癌であり、肉腫は、ユーイング肉腫であり、又は乳癌は、タモキシフェン抵抗性エストロゲン受容体陽性乳癌若しくはトラスツズマブ抵抗性転移性乳癌である。提供される腫瘍治療法は、患者に、化学療法剤等の第2の抗がん剤を投与すること、又は電離放射線等の抗がん治療理学療法を施すことを更に含むことができる。
【0046】
二重特異的結合剤を作製する方法、並びに腫瘍細胞の増殖が阻害されるように、本明細書に記載の二重特異的結合剤のいずれかと腫瘍細胞とを接触させることにより、IGF−1R及びErbB3を発現する腫瘍細胞の増殖を阻害する方法が更に提供される。
【0047】
患者の腫瘍(例えば、IGF−1R及びErbB3を両方とも発現する腫瘍細胞を含む腫瘍)を治療する方法も提供され、該方法は、本明細書に記載の二重特異的結合剤のいずれか1つを、腫瘍細胞増殖を低減するのに有効な量で患者に投与することを含む。1つの実施形態では、腫瘍は、肺癌(例えば、非小細胞肺癌又はゲフィチニブ抵抗性肺癌)、肉腫(例えば、ユーイング肉腫)、結腸直腸癌、頭頸部癌、膵臓癌、卵巣癌、又は乳癌の腫瘍(例えば、タモキシフェン抵抗性エストロゲン受容体陽性乳癌又はトラスツズマブ抵抗性転移性乳癌)である。別の実施形態では、本方法は、BBAによる治療と組み合わせて、第2の抗がん剤(例えば、化学療法薬剤)を患者に投与すること、又は第2の抗がん治療理学療法(例えば、電離放射線)を患者に施すことを更に含む。
【0048】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1A】図1Aは、BBA AB5−7N/AB2−3Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:93)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:99)を示す図である。
【図1B】図1Bは、BBA AB5−7N/AB2−3Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:93)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:99)を示す図である。
【図1C】図1Cは、BBA AB5−7N/AB2−3Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:93)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:99)を示す図である。
【図1D】図1Dは、BBA AB5−7N/AB2−3Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:93)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:99)を示す図である。
【図1E】図1Eは、BBA AB5−7N/AB2−3Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:93)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:99)を示す図である。
【図2A】図2Aは、BBA AB5−7N/AB2−6Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:94)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:100)を示す図である。
【図2B】図2Bは、BBA AB5−7N/AB2−6Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:94)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:100)を示す図である。
【図2C】図2Cは、BBA AB5−7N/AB2−6Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:94)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:100)を示す図である。
【図2D】図2Dは、BBA AB5−7N/AB2−6Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:94)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:100)を示す図である。
【図2E】図2Eは、BBA AB5−7N/AB2−6Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:94)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:100)を示す図である。
【図3A】図3Aは、BBA AB5−7N/AB2−21Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:95)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:108)を示す図である。
【図3B】図3Bは、BBA AB5−7N/AB2−21Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:95)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:108)を示す図である。
【図3C】図3Cは、BBA AB5−7N/AB2−21Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:95)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:108)を示す図である。
【図3D】図3Dは、BBA AB5−7N/AB2−21Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:95)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:108)を示す図である。
【図3E】図3Eは、BBA AB5−7N/AB2−21Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:95)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:108)を示す図である。
【図4A】図4Aは、BBA AB2−3N/AB5−7Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:96)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:115)を示す図である。
【図4B】図4Bは、BBA AB2−3N/AB5−7Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:96)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:115)を示す図である。
【図4C】図4Cは、BBA AB2−3N/AB5−7Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:96)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:115)を示す図である。
【図4D】図4Dは、BBA AB2−3N/AB5−7Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:96)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:115)を示す図である。
【図4E】図4Eは、BBA AB2−3N/AB5−7Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:96)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:115)を示す図である。
【図5A】図5Aは、BBA AB2−6N/AB5−7Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:97)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:116)を示す図である。
【図5B】図5Bは、BBA AB2−6N/AB5−7Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:97)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:116)を示す図である。
【図5C】図5Cは、BBA AB2−6N/AB5−7Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:97)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:116)を示す図である。
【図5D】図5Dは、BBA AB2−6N/AB5−7Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:97)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:116)を示す図である。
【図5E】図5Eは、BBA AB2−6N/AB5−7Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:97)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:116)を示す図である。
【図6A】図6Aは、BBA AB2−21N/AB5−7Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:98)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:117)を示す図である。
【図6B】図6Bは、BBA AB2−21N/AB5−7Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:98)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:117)を示す図である。
【図6C】図6Cは、BBA AB2−21N/AB5−7Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:98)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:117)を示す図である。
【図6D】図6Dは、BBA AB2−21N/AB5−7Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:98)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:117)を示す図である。
【図6E】図6Eは、BBA AB2−21N/AB5−7Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:98)及びヌクレオチド配列(SEQ ID NO:117)を示す図である。
【図7】図7A〜Cは、抗IGF−1R IgG単独又は抗ErbB3 IgG単独の効果と比較した、ADRr(図7A)、MCF7(図7B)、及びA549(図7C)細胞の腫瘍球状体増殖に対するBBA、AB2−21N/AB5−7C及びAB5−7N/AB2−21Cの阻害効果を示す棒グラフである。
【図8】図8A〜Cは、抗IGF−1R IgG単独又は抗ErbB3 IgG単独の効果と比較した、ADRr(図8A)、MCF7(図8B)、及びA549(図8C)細胞の腫瘍球状体増殖に対するBBA、AB2−21N/AB5−7C及びAB5−7N/AB2−21Cの阻害効果を示す棒グラフである。
【図9】単量体BBA ILE−6(94%単量体)MW120kDaをELI−7二量体BBA(94%単量体)MW195kDaと比較したグラフを示す図である。
【図10】異なるロットのILE−6二量体BBA(MW195kDa)のSDS pageを示す図である。
【図11】異なるロットのELI−1単量体BBA(MW120kDa)のSDS pageを示す図である。
【図12A】ADRr細胞に対する結合を示す図である。
【図12B】MC7細胞に対する結合を示す図である。
【図13】三価型とHSA二重特異的型との比較を示す図である。
【図14A】ILE−7及びELI−7によるpIGF−1R阻害を示す図である。
【図14B】ILE−7及びELI−7によるpErbB3阻害を示す図である。
【図14C】ILE−7及びELI−7によるpAKT阻害を示す図である。
【図15】DU145(CTG)におけるELI−7の効果を示す図である。
【図16】2D培養でのELI−7によるBXPC3増殖の阻害を示す図である。
【図17】三価の二重特異体(ILE−7及びILE−9)と対照IgG Ab#6との比較を示す図である。
【図18】DU145球状体増殖に対する三価の二重特異的抗体ILE−7の効果を示す図である。
【図19】BxPC−3腫瘍増殖曲線を示す図である。
【図20】41日目のBxPC−3最終腫瘍体積を示す図である。
【図21A】DU145腫瘍増殖曲線を示す図である。
【図21B】36日目のDU145腫瘍体積を示す図である。
【図22】ILE−2及びILE−3によるHRG誘導性pERbB3を示す図である。
【図23A】HRGに刺激されたpERbB3を示す図である。
【図23B】HRG誘導性pAktを示す図である。
【図24】BBA ILE−7は、10−11M ILE−7でのpErbB3レベルと比較して、10−7MでpErbB3を完全に阻害した一方で、BBA ILE−3は、10−11M ILE−3でのpErbB3レベルと比較して、10−7MでのpErbB3の阻害は50%以下であったことを示す図である。
【図25】ILE−7は、10−11M ILE−7でのpAktレベルと比較して、10−7Mで50%を超えてpAKTを阻害した一方で、ILE−3は、10−11M ILE−3でのpAktレベルと比較して、10−7MでのpAktの阻害は20%以下であったことを示す図である。
【図26】BBAが、広範囲のErbB3及びIGF−1R受容体レベルにわたってシグナル伝達を阻害することを示す図である。
【0050】
配列表の簡単な説明
SEQ ID NO:1:scFv IGF−1Rモジュール5−7アミノ酸配列
SEQ ID NO:2:安定化scFv IGF−1Rモジュール5−7アミノ酸配列
SEQ ID NO:3:安定化均質性scFv IGF−1Rモジュール5−7アミノ酸配列
SEQ ID NO:4:安定化発現最適化scFv IGF−1Rモジュール5−7アミノ酸配列
SEQ ID NO:5:安定化均質性発現最適化scFv IGF−1Rモジュール5−7アミノ酸配列
SEQ ID NO:6:VH IGF−1Rモジュール5−7アミノ酸配列
SEQ ID NO:7:安定化均質性VH IGF−1Rモジュール5−7アミノ酸配列
SEQ ID NO:8:Fab HC IGF−1Rモジュール5−7アミノ酸配列
SEQ ID NO:9:安定化均質性Fab HC IGF−1Rモジュール5−7アミノ酸配列
SEQ ID NO:10:Fab LC IGF−1Rモジュール5−7アミノ酸配列
SEQ ID NO:11:安定化Fab LC IGF−1Rモジュール5−7アミノ酸配列
SEQ ID NO:12:VL IGF−1Rモジュール5−7アミノ酸配列
SEQ ID NO:13:安定化VL IGF−1Rモジュール5−7アミノ酸配列
SEQ ID NO:14:scFv IGF−1Rモジュール5−5アミノ酸配列
SEQ ID NO:15:均質性scFv IGF−1Rモジュール5−5アミノ酸配列
SEQ ID NO:16:Fab HC IGF−1Rモジュール5−5アミノ酸配列
SEQ ID NO:17:Fab LC IGF−1Rモジュール5−5アミノ酸配列
SEQ ID NO:18:単量体均質性ヒトアルブミン様リンカーアミノ酸配列
SEQ ID NO:19:ヒトアルブミン配列に「C34S及びN503Q」置換を有する単量体均質性ヒトアルブミン様リンカーアミノ酸配列
SEQ ID NO:20:二量体CLカッパ様リンカーアミノ酸配列
SEQ ID NO:21:二量体CLラムダ様リンカーアミノ酸配列
SEQ ID NO:22:二量体IgG2様リンカーアミノ酸配列
SEQ ID NO:23:二量体IgG2様短鎖リンカーアミノ酸配列
SEQ ID NO:24:二量体グリコシル化IgG1様リンカーアミノ酸配列
SEQ ID NO:25:二量体無グリコシル化IgG1様リンカーアミノ酸配列
SEQ ID NO:26:二量体過剰グリコシル化IgG1様リンカー
SEQ ID NO:27:二量体グリコシル化IgG4様リンカーアミノ酸配列
SEQ ID NO:28:二量体無グリコシル化IgG4様リンカーアミノ酸配列
SEQ ID NO:29:二量体過剰グリコシル化IgG4様リンカーアミノ酸配列
SEQ ID NO:30:三量体TRAIL様リンカーアミノ酸配列
SEQ ID NO:31:三量体LIGHT様リンカーアミノ酸配列
SEQ ID NO:32:化学的に及び生物学的に不活性なリンカーアミノ酸配列
SEQ ID NO:33:scFv ErbB3モジュール2−3アミノ酸配列
SEQ ID NO:34:安定化scFv ErbB3モジュール2−3アミノ酸配列
SEQ ID NO:35:VH ErbB3モジュール2−3アミノ酸配列
SEQ ID NO:36:安定化VH ErbB3モジュール2−3アミノ酸配列
SEQ ID NO:37:Fab HC ErbB3モジュール2−3アミノ酸配列
SEQ ID NO:38:安定化Fab HC ErbB3モジュール2−3アミノ酸配列
SEQ ID NO:39:Fab LC ErbB3モジュール2−3アミノ酸配列
SEQ ID NO:40:安定化Fab LC ErbB3モジュール2−3アミノ酸配列
SEQ ID NO:41:VL ErbB3モジュール2−3アミノ酸配列
SEQ ID NO:42:安定化VL ErbB3モジュール2−3アミノ酸配列
SEQ ID NO:43:scFv ErbB3モジュール2−6アミノ酸配列
SEQ ID NO:44:scFv ErbB3モジュール2−21アミノ酸配列
SEQ ID NO:45:均質性scFv ErbB3モジュール2−21アミノ酸配列
SEQ ID NO:46:scFv ErbB3モジュールE3Bアミノ酸配列
SEQ ID NO:47:scFv安定化及び最適化ErbB3モジュールE3Bc8アミノ酸配列
SEQ ID NO:48:タンデムErbB3モジュールAアミノ酸配列
SEQ ID NO:49:タンデムErbB3モジュールBアミノ酸配列
SEQ ID NO:50:タンデムErbB3モジュールCアミノ酸配列
SEQ ID NO:51:二量体IgG2様Fcリンカーアミノ酸配列
SEQ ID NO:52:二量体IgG2様短鎖Fcリンカーアミノ酸配列
SEQ ID NO:53:二量体グリコシル化IgG1様Fcリンカーアミノ酸配列
SEQ ID NO:54:二量体無グリコシル化IgG1様Fcリンカーアミノ酸配列
SEQ ID NO:55:二量体グリコシル化IgG4様Fcリンカーアミノ酸配列
SEQ ID NO:56:二量体無グリコシル化IgG4様Fcリンカーアミノ酸配列
SEQ ID NO:57:鎖全長ErbB3モジュール2−3アミノ酸配列
SEQ ID NO:58:鎖全長IGF−1Rモジュール5−7アミノ酸配列
SEQ ID NO:59:VH IGF−1Rモジュール5−6アミノ酸配列
SEQ ID NO:60:安定化VH IGF−1Rモジュール5−6アミノ酸配列
SEQ ID NO:61:Fab HC IGF−1Rモジュール5−6アミノ酸配列
SEQ ID NO:62:安定化Fab HC IGF−1Rモジュール5−6アミノ酸配列
SEQ ID NO:63:scFv IGF−1Rモジュール5−6アミノ酸配列
SEQ ID NO:64:安定化scFv IGF−1Rモジュール5−6アミノ酸配列
SEQ ID NO:65:安定化均質性scFv IGF−1Rモジュール5−6アミノ酸配列
SEQ ID NO:66:Fab LC IGF−1Rモジュール5−6アミノ酸配列
SEQ ID NO:67:VL IGF−1Rモジュール5−6アミノ酸配列
SEQ ID NO:68:安定化scFv IGF−1Rモジュール5−5アミノ酸配列
SEQ ID NO:69:均質性安定化scFv IGF−1Rモジュール5−5アミノ酸配列
SEQ ID NO:70:VH IGF−1Rモジュール5−5アミノ酸配列
SEQ ID NO:71:安定化VH IGF−1Rモジュール5−5アミノ酸配列
SEQ ID NO:72:安定化Fab HC IGF−1Rモジュール5−5アミノ酸配列
SEQ ID NO:73:scFv ErbB3モジュール2−14アミノ酸配列
SEQ ID NO:74:安定化scFv ErbB3モジュール2−14アミノ酸配列
SEQ ID NO:75:VH ErbB3モジュール2−14アミノ酸配列
SEQ ID NO:76:安定化VH ErbB3モジュール2−14アミノ酸配列
SEQ ID NO:77:Fab HC ErbB3モジュール2−14アミノ酸配列
SEQ ID NO:78:安定化Fab HC ErbB3モジュール2−14アミノ酸配列
SEQ ID NO:79:Fab LC ErbB3モジュール2−14アミノ酸配列
SEQ ID NO:80:VL ErbB3モジュール2−14アミノ酸配列
SEQ ID NO:81:安定化scFv ErbB3モジュール2−21アミノ酸配列
SEQ ID NO:82:安定化均質性scFv ErbB3モジュール2−21アミノ酸配列
SEQ ID NO:83:VH ErbB3モジュール2−21アミノ酸配列
SEQ ID NO:84:安定化VH ErbB3モジュール2−21アミノ酸配列
SEQ ID NO:85:VL ErbB3モジュール2−21アミノ酸配列
SEQ ID NO:86:Fab LC ErbB3モジュール2−21アミノ酸配列
SEQ ID NO:87:Fab HC ErbB3モジュール2−21アミノ酸配列
SEQ ID NO:88:安定化Fab HC ErbB3モジュール2−21アミノ酸配列
SEQ ID NO:89:VH ErbB3モジュールE3Bアミノ酸配列
SEQ ID NO:90:VL ErbB3モジュールE3Bアミノ酸配列
SEQ ID NO:91:Fab LC ErbB3モジュールE3Bアミノ酸配列
SEQ ID NO:92:Fab HC ErbB3モジュールE3Bアミノ酸配列
SEQ ID NO:93 AB5−7N/AB2−3Cアミノ酸配列
SEQ ID NO:94 AB5−7N/AB2−6Cアミノ酸配列
SEQ ID NO:95 AB5−7N/AB2−21Cアミノ酸配列
SEQ ID NO:96 AB2−3N/AB5−7Cアミノ酸配列
SEQ ID NO:97 AB2−6N/AB5−7Cアミノ酸配列
SEQ ID NO:98 AB2−21N/AB5−7Cアミノ酸配列
SEQ ID NO:99 AB5−7N/AB2−3Cヌクレオチド配列
SEQ ID NO:100 AB5−7N/AB2−6Cヌクレオチド配列
SEQ ID NO:101 scFv IGF−1Rモジュール5−7ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:102:安定化scFv IGF−1Rモジュール5−7ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:103:安定化均質性scFv IGF−1Rモジュール5−7ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:104:安定化発現最適化scFv IGF−1Rモジュール5−7ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:105:安定化均質性発現最適化scFv IGF−1Rモジュール5−7ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:106:VH IGF−1Rモジュール5−7ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:107:安定化均質性VH IGF−1Rモジュール5−7
SEQ ID NO:108:AB5−7N/AB2−21Cヌクレオチド配列
SEQ ID NO:109:安定化均質性Fab HC IGF−1Rモジュール5−7ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:110:Fab LC IGF−1Rモジュール5−7ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:111:安定化Fab LC IGF−1Rモジュール5−7ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:112:VL IGF−1Rモジュール5−7ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:113:安定化VL IGF−1Rモジュール5−7ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:114:scFv IGF−1Rモジュール5−5ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:115 AB2−3N/AB5−7Cヌクレオチド配列
SEQ ID NO:116 AB2−6N/AB5−7Cヌクレオチド配列
SEQ ID NO:117 AB2−21N/AB5−7Cヌクレオチド配列
SEQ ID NO:118:単量体均質性ヒトアルブミン様リンカーヌクレオチド配列
SEQ ID NO:119:ヒトアルブミン配列に「C34S及びN503Q」置換を有する単量体均質性ヒトアルブミン様リンカーヌクレオチド配列
SEQ ID NO:120:二量体CLカッパ様リンカーヌクレオチド配列
SEQ ID NO:121:二量体CLラムダ様リンカーヌクレオチド配列
SEQ ID NO:122:二量体IgG2様リンカーヌクレオチド配列
SEQ ID NO:123:二量体IgG2様短鎖リンカーヌクレオチド配列
SEQ ID NO:124:二量体無グリコシル化IgG1様リンカーヌクレオチド配列
SEQ ID NO:125:二量体過剰グリコシル化IgG1様リンカーヌクレオチド配列
SEQ ID NO:126:三量体TRAIL様リンカーヌクレオチド配列
SEQ ID NO:127:三量体LIGHT様リンカーヌクレオチド配列
SEQ ID NO:128:scFv ErbB3モジュール2−3ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:129:安定化scFv ErbB3モジュール2−3ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:130:VH ErbB3モジュール2−3ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:131:Fab LC ErbB3モジュール2−3ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:132:VL ErbB3モジュール2−3ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:133:scFv ErbB3モジュール2−6ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:134:scFv ErbB3モジュールE3Bヌクレオチド配列
SEQ ID NO:135:scFv安定化親和性成熟ErbB3モジュールE3Bc8ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:136:タンデムErbB3モジュールAヌクレオチド配列
SEQ ID NO:137:タンデムErbB3モジュールBヌクレオチド配列
SEQ ID NO:138:タンデムErbB3モジュールCヌクレオチド配列
SEQ ID NO:139:鎖全長ErbB3モジュール2−3ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:140:鎖全長IGF−1Rモジュール5−7ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:141:scFv IGF−1Rモジュール5−6ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:142:scFv ErbB3モジュール2−14ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:143:(単量体)ヒト血清アルブミンリンカーアミノ酸配列
SEQ ID NO:144:(単量体)ヒト血清アルブミンリンカーヌクレオチド配列
SEQ ID NO:145:C34S及びN503Q置換を有する(単量体)ヒト血清アルブミンリンカーアミノ酸配列
SEQ ID NO:146:「C34S及びN503Q」置換をコードする(単量体)ヒト血清アルブミンリンカーヌクレオチド配列
SEQ ID NO:147:対照shRNA配列
SEQ ID NO:148:IGF−1R標的化shRNA配列
SEQ ID NO:149:ErbB3標的化shRNA配列(mod1)
SEQ ID NO:150:ErbB3標的化shRNA配列(mod2)
【発明を実施するための形態】
【0051】
詳細な説明
I.定義
用語「BBA」は、本明細書で使用される場合、2つの異なる結合部分及び従って2つの異なる結合部位(2つの異なる抗体結合部位等)を有する人工ハイブリッド分子を指す。2つの異なる結合部分は、「共有結合で連結」されており、それらは、2つの異なる結合部分を接続する、BBAの別個の構造成分を指す「リンカー部分」を介して、化学的に一緒に結合されていることを意味する。
【0052】
「IGF−1R」は、ヒトインスリン様増殖因子1(IGF−1、以前はソマトメジンCとして知られていた)の受容体を指す。IGF1−Rは、インスリン様増殖因子2(IGF−2)にも結合し、それにより活性化される。IGF1−Rは、受容体チロシンキナーゼであり、それは、細胞内での1つ又は複数のタンパク質の1つ又は複数の特定のチロシンへのリン酸分子(複数可)の付加を触媒することにより、シグナルを細胞内に伝達することを意味する。IGF1−Rによるチロシンリン酸化は、自己触媒機能を含み、IGF−1又はIGF−2によるIGFR−1活性化は、IGF1−Rの自己リン酸化をもたらす。ヒトIGF−1R前駆体のアミノ酸配列は、Genbankアクセッション番号NP_000866に提供されている。
【0053】
「ErbB3」及び「HER3」は、米国特許第5,480,968号に記載のヒトErbB3タンパク質を指す。ヒトErbB3タンパク質配列は、米国特許第5,480,968号の図4及びSEQ ID NO:4に示されており、最初の19個のアミノ酸は、成熟タンパク質から切断されるリーダー配列に相当する。ErbB3は、チロシンキナーゼ基質であり、ErbB受容体ファミリーのメンバーであり、それらの他のメンバーには、ErbB1(EGFR)、ErbB2(HER2/Neu)、及びErbB4が含まれる。ErbB3それ自体は、チロシンキナーゼ活性を欠如しており、ErbB3は、別のErbBファミリー受容体と一緒になったヘテロ二量体形態でのみ作用すると考えられる。ErbB1、ErbB2、及びErbB4は全て、受容体チロシンキナーゼであり、ヘテロ二量体ErbB3の活性化は、ErbB3のチロシンリン酸化をもたらす。ErbBファミリーのリガンドには、ヘレグリン(HRG)、ベータセルリン(BTC)、上皮増殖因子(EGF)、ヘパリン結合上皮増殖因子(HB−EGF)、形質転換増殖因子アルファ(TGFα)、アンフィレギュリン(AR)、エピゲン(epigen)(EPG)、及びエピレギュリン(EPR)が含まれる。
【0054】
用語「単量体リンカー」は、本明細書で使用される場合、単量体のBBAの形成をもたらす、二重特異的結合剤(BBA)に使用されるリンカー部分を指す。即ち、完全なBBAは、リンカー部分により共有結合で一緒に連結された2つの異なる結合部分(1つはIGF−1Rに特異的であり、他方はErbB3に特異的である)で構成される単一分子(単量体)からなる。典型的には、単量体リンカーは、例えばヒト血清アルブミン等の、単量体として存在するタンパク質に由来する。
【0055】
用語「二量体リンカー」は、本明細書で使用される場合、二量体BBAの形成をもたらす、BBAに使用されるリンカー部分を指す。即ち、完全なBBAは、2つの分子(二量体)又はサブユニットからなり、BBAの各サブユニットは、リンカー部分により共有結合で一緒に連結された少なくとも1つの、典型的には2つの異なる結合部分(1つはIGF−1Rに特異的であり、他方はErbB3に特異的である)で構成される。典型的には、二量体リンカーは、これらのリンカーが二量化して(例えば、ジスルフィド架橋により)二量体BBAを生成するように、例えば免疫グロブリン分子等の、二量体として存在するタンパク質に由来する。
【0056】
用語「三量体リンカー」は、本明細書で使用される場合、三量体のBBAの形成をもたらす、BBAに使用されるリンカー部分を指す。即ち、完全なBBAは、3つの分子(三量体)又はサブユニットで構成されており、BBAの各サブユニットは、リンカー部分により共有結合で一緒に連結された2つの異なる結合部分(1つはIGF−1Rに特異的であり、他方はErbB3に特異的である)で構成される。典型的には、三量体リンカーは、これらのリンカーが三量体化して(例えば、ジスルフィド架橋により)三量体BBAを生成するように、例えばTRAIL又はLIGHT等の、三量体として存在するタンパク質に由来する。
【0057】
用語「化学的に及び生物学的に不活性のリンカー」は、本明細書で使用される場合、リンカー部分それ自体が、例えば対象に投与された際にいかなる化学的又は生物学的活性も示さない、BBAに使用されるリンカー部分を指す。
【0058】
本明細書で使用される場合、「グリコシル化」リンカー又は「グリコシル化」BBAは、その構造に糖部分を含むリンカー又はBBAを指す。例えば、リンカー又はBBAの配列内に1つ又は複数のグリコシル化部位が存在すると、リンカー又はBBAの発現に際して「グリコシル化」リンカー又はBBAがもたらされる。
【0059】
本明細書で使用される場合、「無グリコシル化」リンカー又は「無グリコシル化」BBAは、その構造にいかなる糖部分も含まないリンカー又はBBAを指す。例えば、リンカー又はBBAの配列内にグリコシル化部位が一切欠如していると(天然に存在するか、又は全てのグリコシル化部位を意図的に除去することによる部位特異的突然変異誘発により生成されるかのいずれか)、リンカー又はBBAの発現の際に「無グリコシル化」リンカー又はBBAがもたらされる。
【0060】
本明細書で使用される場合、「過剰グリコシル化」リンカー又は「過剰グリコシル化」BBAは、未修飾型のリンカー又はBBAと比較して、その構造に多数の糖部分を含む修飾型のリンカー又はBBAを指す。例えば、グリコシル化部位の数を増加させるためのリンカー又はBBAの修飾(例えば、部位特異的突然変異誘発による)がリンカー又はBBAの配列内に存在すると、リンカー又はBBAの発現に際して「過剰グリコシル化」リンカー又はBBAがもたらされる。
【0061】
本明細書で使用される場合、「安定化された」配列(例えば、BBAに使用される結合部分の)は、それがタンパク質として発現された場合に、配列の安定性を増強するためにその元々の形態から修飾されている配列を指す。例えば、抗IGF−1R抗体又は抗ErbB3抗体(例えば、VH及び/又はVL配列)をコードするヌクレオチド配列は、BBA内に発現された場合に、コードされた抗体の安定性を増強するために、1つ又は複数のコードされたアミノ酸位置が修飾(例えば、部位特異的突然変異誘発により)されていてもよい。それらの結合親和性/特異性を著しく変更せずに抗体等の結合部分の安定性を増強するアミノ酸修飾は、当技術分野で公知であり、標準的組換えDNA技術により、本明細書に記載のBBAに使用される結合部分に組み込むことができる。
【0062】
本明細書で使用される場合、「最適化」配列(例えば、BBAに使用される結合部分の)は、タンパク質としての配列の発現を増強するためにその元々の形態から修飾されている配列を指す。例えば、抗IGF−1R抗体又は抗ErbB3抗体(例えば、VH及び/又はVL配列)のヌクレオチド配列は、コードされた抗体の発現を増強するために1つ又は複数のコドンが修飾(例えば、部位特異的突然変異誘発により)されていてもよい(当技術分野では、「コドン最適化」として知られている)。抗体等の、コードされた結合部分のタンパク質発現を増強するヌクレオチド(コドン)修飾は、当技術分野で公知であり、標準的組換えDNA技術により、本明細書に記載の結合部分に組み込むことができる。
【0063】
本明細書で使用される場合、「安定化及び最適化」配列は、それがタンパク質として発現された場合に、配列の安定性を増強し、且つタンパク質としての配列の発現を増強するように、その元々の形態から修飾されている配列を指す。
【0064】
本明細書で使用される場合、「均質性」配列(例えば、BBAに使用される結合部分の)は、それがタンパク質として発現された場合に、配列の均質性を増強するためにその元々の形態から修飾された配列を指す。例えば、抗IGF−1R抗体又は抗ErbB3抗体(例えば、VH及び/又はVL配列)のヌクレオチド配列は、BBA内に発現された場合に、コードされた抗体の均質性を増強するために、1つ又は複数のコードされたアミノ酸位置が修飾(例えば、部位特異的突然変異誘発により)されていてもよい。それらの結合親和性/特異性を著しく変更せずに抗体等の結合部分の均質性を増強するアミノ酸修飾は、当技術分野で公知であり、標準的組換えDNA技術により、本明細書に記載のBBAに使用される結合部分に組み込むことができる。
【0065】
本明細書で使用される場合、「IGF−1Rシグナル経路」は、リガンドとIGF−1Rファミリー受容体との相互作用により開始されるシグナル伝達経路を包含することが意図されている。IGF−1Rシグナル経路内の成分には、以下のものが含まれていてもよい:(i)1つ又は複数のリガンド、それらの例にはIGF−1及びIGF−2が含まれる;(ii)1つ又は複数の受容体、それらの例には、IGF−1R及びインスリン受容体が含まれる;(iii)1つ又は複数のIGF結合タンパク質、及び(iv)細胞内キナーゼ及び基質、それらの例には、インスリン受容体基質2(IRS2)、ホスホイノシチド3キナーゼ(PI3K)、AKT、RAS、RAF、MEK、及びマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)が含まれる。
【0066】
本明細書で使用される場合、用語「ErbBシグナル経路」は、リガンドとErbBファミリーの受容体との相互作用により開始されるシグナル伝達経路を包含することが意図されている。ErbBシグナル経路内の成分には、以下のものが含まれていてもよい:(i)1つ又は複数のリガンド、それらの例には、ヘレグリン(HRG)、ベータセルリン(BTC)、上皮増殖因子(EGF)、ヘパリン結合上皮増殖因子(HB−EGF)、形質転換増殖因子アルファ(TGFα)、アンフィレギュリン(AR)、エピゲン(EPG)、及びエピレギュリン(EPR)が含まれる;(ii)1つ又は複数の受容体、それらの例には、ErbB1/EGFR、ErbB2、ErbB3、及びErbB4が含まれる;及び(iii)細胞内キナーゼ及び基質、それらの例には、ホスホイノシチド3キナーゼ(PI3K)、ホスファチジルイノシトールビスホスファート(PIP2)、ホスファチジルイノシトールトリスホスファート(PIP3)、ホスファターゼ及びテンシン相同体(PTEN)、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼアイソザイム1(PDK1)、AKT、RAS、RAF、MEK、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)、タンパク質ホスファターゼ2A(PP2A)、及びSRCタンパク質チロシンキナーゼが含まれる。
【0067】
本明細書中に使用される場合、用語「阻害」は、抗体又はBBAにより媒介される生物学的活性の任意の再現性よく検出可能な減少を指す。幾つかの実施形態では、阻害は、生物学的活性の統計的に有意な減少を提供する。例えば、「阻害」は、生物学的活性の約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%の再現性のある減少を指すことができる。
【0068】
従って、a)リガンド媒介性のErbB3リン酸化の阻害、及びb)IGF−1又はIGF−2媒介性のIGF−1Rリン酸化の阻害は、それぞれa)ErbBファミリーリガンドにより誘導されるErbB3のリン酸化レベル、又はb)IGF−1又はIGF−2により誘導されるIGF−1Rのリン酸化レベルを、各々、BBAで処理されていない対照細胞におけるリン酸化と比べて、再現性よく減少させるBBAの能力により実証することができる。ErbB3及び/又はIGF−1Rを発現する細胞は、天然細胞又は細胞株であってもよく、又はErbB3及び/又はIGF−1Rをコードする核酸を宿主細胞に導入することにより組換えにより産生されてもよい。1つの実施形態では、BBAは、ErbBファミリーリガンド媒介性のErbB3リン酸化を、例えば、下記の実施例に記載のようにウエスタンブロッティングを行い、その後抗ホスホチロシン抗体でプローブすることにより決定して、少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%以上阻害する。別の実施形態では、BBAは、IGF−1又はIGF−2媒介性のIGF−1Rリン酸化を、例えば、下記の実施例に記載のようにウエスタンブロッティングを行い、その後抗ホスホチロシン抗体でプローブすることにより決定して、少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%以上阻害する。
【0069】
本明細書では同義的に使用される用語「抗体」又は「免疫グロブリン」は、抗体全長及びその任意の抗原結合性断片又は単鎖を含む。典型的な抗体は、ジスルフィド結合により相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書では、Vと略される)及び重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、及びCH3で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書では、Vと略される)及び軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLで構成される。V及びV領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存されている領域に散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性領域に更に細分化される。各V及びVは、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で、アミノ末端からカルボキシ末端に配置されている、3つのCDR及び4つのFRで構成される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有している。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の最初の成分(C1q)を含む宿主組織又は因子に対する免疫グロブリンの結合を媒介することができる。
【0070】
抗体−抗原結合機能は、完全長抗体の抗原結合断片により行うことができることが示されている。そのような結合断片の例には、以下のものが含まれる:(i)Fab断片、V、V、CL、及びCH1ドメインからなる一価断片;(ii)F(ab')断片、ヒンジ領域のジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む二価断片;(iii)V及びCH1のドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのV及びVドメインで構成されるFv断片;(v)VH及びVLドメインを含む抗体断片;(vi)Vドメインからなる抗体断片;(vii)VH又はVLドメインからなる抗体断片;及び(viii)単離された相補性決定領域(CDR)、又は(ix)随意に合成リンカーで結合されてもよい2つ以上の単離されたCDRの組み合わせ。
【0071】
用語「単鎖抗体」又は「単鎖Fv」(scFV)は、可変領域重鎖ドメイン及び可変領域軽鎖ドメインが両方とも、単一の直鎖状タンパク質内に含有されている抗体を指す。Fv断片のこれらの2つのドメイン、V及びVは、個別の遺伝子によりコードされており、天然抗体ではそれぞれ軽鎖及び重鎖に発現されるが、それらは、組換え法を使用して、V及びV領域対が一価分子(単鎖Fv(scFv)又は単鎖抗体として知られている)を形成する単一タンパク質鎖として作られることを可能にする合成リンカーにより結合されていてもよい。これら単鎖抗体は、当業者に公知の従来技術を使用して取得され、断片は、完全抗体と同じように有用性についてスクリーニングされる。単鎖抗体は、その用語が本明細書で使用されるような抗体の「抗原結合部分」でもあり、組換えDNA技術、又は完全免疫グロブリンの酵素的又は化学的切断により産生することができる。
【0072】
用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得たか又は調製された抗体を指し、つまり、集団の各個々の抗体分子は、例えば少量で存在する場合がある様々なグリコシル化及び/又は天然突然変異を含む分子を除き、全ての他の分子と本質的に同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原性部位に対して向けられている。更に、単一の精製された抗原に対して調製された場合でさえ、典型的には、抗原の複数の別々の決定基(エピトープ)に対する多数の異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、典型的には、抗原の単一の決定因子に対して向けられている。モノクローナル抗体は、当分野で認識されている任意の技術を使用して調製することができる。モノクローナル抗体には、キメラ抗体、ヒト抗体、及びヒト化抗体が含まれており、モノクローナル抗体は、天然であってもよく又は組換えにより産生されてもよい。
【0073】
抗体は、以下のもの等の組換え手段により調製、発現、生成、又は単離することができる:(a)免疫グロブリン遺伝子(例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子)のトランスジェニック若しくは染色体導入動物(例えば、マウス)又はそれから調製されたハイブリドーマから単離された抗体、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えばトランスフェクトーマから単離された抗体、(c)ファージディスプレイを使用して、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒト抗体配列を含有する)から単離された抗体、及び(d)免疫グロブリン遺伝子配列(例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子)を他のDNA配列にスプライシングすることを含む任意の他の手段により調製、発現、生成、又は単離された抗体。そのような組換え抗体は、ヒト生殖系免疫グロブリン配列に由来する可変及び定常領域を有してもよい。しかしながら、ある実施形態では、そのような組換えヒト抗体を、インビトロ突然変異誘発にかけることができ、したがって、組換え抗体のV及びV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系V及びV配列に由来及び関連するが、インビボではヒト抗体生殖系レパートリー内に天然に存在しない場合がある配列である。
【0074】
用語「キメラ免疫グロブリン」又は「キメラ抗体」は、その可変領域が第1の種に由来し、その定常領域が第2の種に由来する免疫グロブリン又は抗体を指す。キメラ免疫グロブリン又は抗体は、異なる種に属する免疫グロブリン遺伝子セグメントから、例えば遺伝子操作により構築することができる。
【0075】
用語「ヒト抗体」は、フレームワーク及びCDR領域が両方とも、ヒト生殖系免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を示す。更に、ヒト抗体が定常領域を含有する場合、定常領域もヒト生殖系免疫グロブリン配列に由来する。ヒト抗体は、ヒト生殖系免疫グロブリン配列によりコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム若しくは部位特異的突然変異誘発、又はインビボでの体細胞突然変異により導入された突然変異)を含んでいてもよい。しかしながら、用語「ヒト抗体」は、マウス等の別の哺乳動物種の生殖系に由来するCDR配列が、ヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を含まない。
【0076】
ヒト抗体は、少なくとも1つ又は複数のアミノ酸が、ヒト生殖系免疫グロブリン配列によりコードされていないアミノ酸残基、例えば活性増強アミノ酸残基に置換されていてもよい。典型的には、ヒト抗体は、最大20箇所の位置が、ヒト生殖系免疫グロブリン配列の一部ではないアミノ酸残基と置換されていてもよい。特定の実施形態では、これらの置換は、下記で詳述されているようにCDR領域内にある。
【0077】
用語「ヒト化免疫グロブリン」又は「ヒト化抗体」は、少なくとも1つのヒト化免疫グロブリン又は抗体鎖(つまり、少なくとも1つのヒト化軽鎖又は重鎖)を含む免疫グロブリン又は抗体を指す。用語「ヒト化免疫グロブリン鎖」又は「ヒト化抗体鎖」(つまり、「ヒト化免疫グロブリン軽鎖」又は「ヒト化免疫グロブリン重鎖」)は、実質的にヒト免疫グロブリン又は抗体に由来する可変フレームワーク領域と、実質的に非ヒト免疫グロブリン又は抗体に由来する相補性決定領域(CDR)(例えば、少なくとも1つのCDR、好ましくは2つのCDR、より好ましくは3つのCDR)とを含み、更に、定常領域(例えば軽鎖の場合、少なくとも1つの定常領域又はその部分、及び例えば重鎖の場合、3つの定常領域)を含む可変領域を有する、免疫グロブリン又は抗体鎖(つまり、それぞれ軽鎖又は重鎖)を指す。用語「ヒト化可変領域」(例えば、「ヒト化軽鎖可変領域」又は「ヒト化重鎖可変領域」)は、実質的にヒト免疫グロブリン又は抗体に由来する可変フレームワーク領域と、実質的に非ヒト免疫グロブリン又は抗体に由来する相補性決定領域(CDR)とを含む可変領域を指す。
【0078】
「単離されたBBA」は、本明細書で使用される場合、異なる抗原特異性を有する他のBBAが実質的に存在しないBBAを指すことが意図されている。加えて、単離されたBBAには、典型的には細胞性物質が実質的に存在しない。
【0079】
「アイソタイプ」は、重鎖定常域遺伝子によりコードされる抗体クラスを指す。1つの実施形態では、抗体又はその抗原結合部分は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgD、又はIgE抗体アイソタイプから選択されるアイソタイプである。幾つかの実施形態では、抗体は、IgG1アイソタイプである。他の実施形態では、抗体は、IgG2アイソタイプである。
【0080】
「抗原」は、BBA内の結合部分が結合する実体(例えば、タンパク質性実体又はペプチド)である。本明細書に開示されている種々の実施形態では、抗原は、ErbB3又はIGF−1Rである。特定の実施形態では、抗原は、ヒトErbB3又はヒトIGF−1Rである。
【0081】
用語「エピトープ」又は「抗原決定基」は、免疫グロブリン又は抗体が特異的に結合する抗原の部位を指す。エピトープは、連続したアミノ酸、又はタンパク質の三次構造折り畳みにより近接される非連続アミノ酸のいずれから形成されていてもよい。連続したアミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には変性溶媒と接触しても保持されるが、三次構造折り畳みにより形成されるエピトープは、典型的には変性溶媒により処理されると失われる。エピトープは、典型的には、固有の空間的立体構造中に、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個のアミノ酸を含む。エピトープの空間的立体構造を決定する方法には、当技術分野の技術及び本明細書に記載の技術、例えば、X線結晶解析法及び2次元核磁気共鳴法が含まれる。
【0082】
「特異的結合」、「特異的に結合する」「選択的結合」、及び「選択的に結合する」は、BBAの抗体又は結合部分が、特定の抗原又はエピトープに対する検出可能な親和性を示し、一般的には他の抗原及びエピトープとの著しい交差反応性を示さないことを意味する。「検出可能な」又は好ましい結合には、10−6、10−7、10−8、10−9−1、又は10−10M、又はそれより更に低いK値の解離定数(K)での結合が含まれる。10−7M未満、好ましくは10−8M未満の値を有する解離定数が、より好ましい(より低い値の解離定数は、より高い結合親和性を示し、従って10−7のKは、10−8のKよりも低値の(より良好な)結合親和性を示すことに留意されたい)。本明細書に示されている値の中間にある値も本開示の範囲内にあり、好ましい結合親和性は、ある範囲の解離定数により、例えば10−6〜10−10M、好ましくは10−7〜10−10M、より好ましくは10−8〜10−10M以下により示されていてもよい。「著しい交差反応性を示さない」結合部分は、それが交差反応しない実体(例えば、タンパク質性実体)に検出可能には結合しないであろう部分である。特異的又は選択的結合は、そのような結合を決定するための当技術分野で認識されている任意の手段により、例えばスキャッチャード分析及び/又は競合結合アッセイにより決定することができる。
【0083】
解離定数(K)、及び従って結合親和性は、表面プラズモン共鳴アッセイ(例えば、組換えErbB3を被検体として使用し、抗体をリガンドとして使用して、BIACORE 3000装置(GE Healthcare社製)で決定される)又は細胞結合アッセイを使用して便利に測定することができる。1つの実施形態では、BBAの結合部分は、抗原(ErbB3又はIGF−1Rのいずれか)に50nM以下の解離定数(K)(つまり、50nMのKにより示される結合親和性と少なくとも同じ程度に高い結合親和性)(例えば、40nM、又は30nM、又は20nM、又は10nM以下のK)で結合する。特定の実施形態では、BBAの結合部分は、抗原(ErbB3又はIGF−1Rのいずれか)に8nM以下のKで結合する(例えば、7nM、6nM、5nM、4nM、2nM、1.5nM、1.4nM、1.3nM、又は1nM以下)。他の実施形態では、結合部分は、およそ10−8M、10−9M、又は10−10M未満、又は更にそれ以下等の、およそ10−7M未満の解離定数(K)で抗原(ErbB3又はIGF−1R)に結合し、非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン、つまり、所定の抗原以外の抗原、又は所定の抗原と緊密に関連した抗原)に対するその結合親和性よりも少なくとも2倍高い親和性(つまり、少なくとも2倍低いK値)で所定の抗原に結合する。
【0084】
用語「IC50」は、最大応答の50%阻害を提供する、つまり応答を、最大応答と基線との中間レベルに低減するBBAの濃度を指す。IC50値は、例えば、Cheng−Prusoff式に使用して、絶対的阻害定数(K)に変換することができる。
【0085】
用語「核酸分子」は、本明細書で使用される場合、DNA分子及びRNA分子を含むことが意図されている。核酸分子は、一本鎖であってもよく、又は二本鎖であってもよいが、典型的には二本鎖DNAである。
【0086】
核酸分子は、細胞全体中に、細胞溶解産物中に、又は部分的に精製された形態若しくは実質的に純粋な形態で存在していてもよい。
【0087】
用語「機能的に連結された」は、核酸配列が、別の核酸配列と機能的関係性を持つように配置されることを指す。例えば、プレ配列又は分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、ポリペプチドのDNAに機能的に連結されており、プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に機能的に連結されており、又はリボソーム結合部位は、翻訳を促進するように配置されている場合、コード配列に機能的に連結されている。一般的に、「機能的に連結された」は、連結されているDNA配列が連続しており、分泌リーダーの場合は、連続しており、且つリーディング相にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、連続している必要はない。連結は、ライゲーションにより、便利な制限部位で達成される。そのような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが、従来の慣行に従って使用される。核酸は、別の核酸配列と機能的関係性を持つように配置される場合に「機能的に連結されている」。例えば、プロモーター又はエンハンサーは、コード配列の転写に影響及ぼすように連結されている場合、コード配列に機能的に結合されている。転写制御配列に関して、「機能的に連結された」とは、連結されているDNA配列が、連続しており、2つのタンパク質コード領域を結合するのに必要な場合、連続し且つリーディングフレーム中にあることを意味する。
【0088】
用語「ベクター」は、本明細書で使用される場合、それに連結されている別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指すことが意図されている。1つのタイプのベクターは、更なるDNAセグメントがライゲーションされていてもよい円形二本鎖DNAループを指す「プラスミド」である。別のタイプのベクターは、ウイルスベクターであり(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)、更なるDNAセグメントが、DNAセグメントによりコードされたタンパク質の発現を駆動することになるプロモーター(例えば、ウイルスプロモーター)に機能的に連結されるように、ウイルスゲノムにライゲーションされてもよい。あるベクターは、それらが導入される宿主細胞中で自律的複製が可能である(例えば、細菌複製開始点を有する細菌ベクター、及びエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入に際して宿主細胞のゲノムに組み込まれる場合があり、それにより宿主ゲノムと共に複製される。更に、あるベクターは、それらが機能的に連結されている遺伝子の発現を指図することが可能である。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。
【0089】
用語「宿主細胞」は、本明細書で使用される場合、発現ベクターが導入されている細胞を指すことが意図されており、その細胞は、増殖が可能であり、好ましくはベクターによりコードされたタンパク質の発現が可能である。そのような用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も指すことが意図されていることが理解されるべきである。突然変異又は環境的影響のいずれかにより、ある修飾が次世代に生じる場合があるため、そのような子孫は、実際には親細胞と同一ではない場合があるが、本明細書で使用される場合、依然として用語「宿主細胞」の範囲内に含まれる。
【0090】
用語「治療する」、「治療すること」、及び「治療」は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載の治療的又は予防的処置を指す。「治療」の方法では、疾患若しくは障害の1つ若しくは複数の症状又は疾患若しくは障害の再発を予防、治癒、遅延、重症度を低減、若しくは軽減するために、又はそのような治療をしない場合に予想される生存を越えて患者の生存を延長するために、本明細書で開示されたBBAを患者に投与することが使用され、例えば、患者は、ErbB3及び/又はIGF−1依存性シグナル伝達に関連する疾患又は障害を有するか、又はそのような疾患若しくは障害を有する素因がある。
【0091】
用語「ErbB3及び/又はIGF−1R依存性シグナル伝達に関連する疾患又は障害」は、本明細書で使用される場合、ErbB3及び/又はIGF−1Rのレベル増加が見出され、及び/又はErbB3及び/若しくはIGF−1Rに関与する細胞カスケードの活性化が見出される疾患状態及び/又は疾患状態に伴う症状を含む。ErbB3は、ErbB3のレベル増加が見出される場合に、EGFR及びErbB2等の他のErbBタンパク質とヘテロ二量体化する。一般的に、用語「ErbB3及び/又はIGF−1R依存性シグナル伝達に関連する疾患又は障害」は、ErbB3及び/又はIGF−1Rの関与を必要とする任意の障害、その症状の開始、進行、又は持続を指す。例示的なErbB3媒介性及び/又はIGF−1R媒介性障害には、これに限定されないが、例えばがんが含まれる。
【0092】
用語「がん」及び「がん性」は、典型的には無秩序な細胞増殖を特徴とする哺乳動物の生理学的な状態を指すか又は記述する。がんの例には、これらに限定されないが、カルシノーマ、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれる。そのようながんのより多くの特定の例には、扁平上皮癌、肺小細胞癌、非小細胞肺癌、胃癌、膵臓癌、神経膠芽腫及び神経線維腫症等の膠細胞腫瘍、子宮頚癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌、メラノーマ、結腸直腸癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓癌、腎癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、及び種々のタイプの頭頸部癌が含まれる。特定の実施形態では、本明細書で開示された方法を使用して治療されるがんは、メラノーマ、乳癌、卵巣癌、腎癌、胃腸/結腸癌、肺癌、及び前立腺癌から選択される。本明細書で開示された方法により治療するための他のがんは、下記の「BBAを使用する方法」の項に更に記述されている。
【0093】
用語「有効量」は、本明細書で使用される場合、患者に投与した際に、本明細書に記載のような、ErbB3及び/又はIGF−1依存性シグナル伝達に関連する疾患又は障害の治療、予後、又は診断を達成するのに十分なBBAの量を指す。治療上有効量は、治療されている患者及び疾患状態、患者の体重及び年齢、疾患状態の重症度、及び投与方法等に応じて変動することになり、当業者であれば容易に決定することができる。70kgの患者に投与する用量は、例えば、約1μg〜約5000mg、約2μg〜約4500mg、約3μg〜約4000mg、約4μg〜約3,500mg、約5μg〜約3000mg、約6μg〜約2500mg、約7μg〜約2000mg、約μg〜約1900mg、約9μg〜約1,800mg、約10μg〜約1,700mg、約15μg〜約1,600mg、約20μg〜約1,575mg、約30μg〜約1,550mg、約40μg〜約1,500mg、約50μg〜約1,475mg、約100μg〜約1,450mg、約200μg〜約1,425mg、約300μg〜約1,000mg、約400μg〜約975mg、約500μg〜約650mg、約0.5mg〜約625mg、約1mg〜約600mg、約1.25mg〜約575mg、約1.5mg〜約550mg、約2.0mg〜約525mg、約2.5mg〜約500mg、約3.0mg〜約475mg、約3.5mg〜約450mg、約4.0mg〜約425mg、約4.5mg〜約400mg、約5mg〜約375mg、約10mg〜約350mg、約20mg〜約325mg、約30mg〜約300mg、約40mg〜約275mg、約50mg〜約250mg、約100mg〜約225mg、約90mg〜約200mg、約80mg〜約175mg、約70mg〜約150mg、又は約60mg〜約125mgの抗体又はその抗原結合部分の範囲であってもよい。投与計画は、最適な治療応答を提供するために調節することができる。また、有効量は、抗体又はその抗原結合部分の任意の毒性又は有害効果(つまり、副作用)が最小限に抑えられるか、及び/又は有益な効果がそれを上回る量である。更なる投与計画は、下記の医薬組成物に関する項に更に記述されている。
【0094】
用語「患者」は、予防的又は治療的処置のいずれかを受けているか又は受けることになるヒト対象を示す。例えば、本明細書で開示された方法及び組成物は、がんを有する患者を治療するために使用することができる。
【0095】
用語「試料」は、患者に由来する組織、体液、又は細胞を指す。通常、組織又は細胞は、患者から取り出されることになるが、インビボ診断も企図される。固形腫瘍の場合、組織試料は、外科的に摘出された腫瘍から採取し、従来技術による検査用に調製することができる。リンパ腫及び白血病の場合、リンパ球、白血病細胞、又はリンパ組織を取得し、適切に調製することができる。特定の腫瘍の場合、尿、涙滴、血清、脳脊髄液、糞便、痰、細胞抽出液等を含む他の患者試料も有用であり得る。
【0096】
用語「抗がん剤」及び「抗腫瘍剤」は、腫瘍、がん、及び悪性腫瘍等を治療するために使用される薬物を指す。薬物療法は、単独で、又は手術若しくは放射線療法等の他の治療と組み合わせて使用することができる。関与する器官の性質に応じて、幾つかのクラスの薬物をがん治療に使用することができる。例えば、乳癌は、一般的にエストロゲンにより刺激され、性ホルモンを不活性化する薬物で治療することができる。同様に、前立腺癌は、アンドロゲン(男性ホルモン)を不活性化する薬物で治療することができる。本明細書に開示のある方法において、本明細書に開示のBBAと組み合わせて使用するための抗がん剤には、中でも付録Aに列挙されたものが含まれるが、それらは限定的であると解釈されるべきでない。1つ又は複数の抗がん剤は、本明細書で開示されたBBAの投与と同時に、又は投与前に、又は投与後のいずれで投与されてもよい。
【0097】
用語「抗がん治療理学療法」は、がんの治療又はがん細胞の増殖阻害に有効な薬物又は他の形態の治療剤の投与以外の治療を指す。そのような抗がん理学療法の非限定的な例には、外科手術、及び熱又は電離放射線による治療が含まれる。
【0098】
更なる定義が、本明細書の全体にわたって見出される場合がある。
【0099】
II.scFv及びBBA並びにその調製
SEQ ID NO:44に対応するアミノ酸配列を有するか又は含む単鎖抗体scFv AB2−21、及びSEQ ID NO:1に対応するアミノ酸配列を有するか又は含む単鎖抗体scFv AB5−7が、本明細書で例として提供されている。
【0100】
本明細書で提供されるBBAは、以下の3つの機能的に別個の成分を含む:IGF−1Rと特異的に結合する第1の結合部分、ErbB3と特異的に結合する第2の結合部分、並びに第1及び第2の結合部分を、例えば共有結合で一緒に接続して単一分子を形成する連結部分。これらの成分の各々は、下記に更に記述されている。
【0101】
A.IGF−1R結合部分
BBAの1つの結合部分は、IGF−1Rと特異的に結合する。好ましくは、結合部分は抗体であるが(つまり、抗IGF−1R抗体)、IGF−1Rと特異的に結合する他の結合部分も、BBAでの使用に好適である。抗体は、例えば、完全長抗体、又はFab若しくはF(ab)'断片等の、その抗原結合性断片若しくは部分であってもよい。抗体は、例えば、ヒト又はヒト化抗体であってもよい(又はヒト若しくはヒト化可変領域を含む)。更に、抗体はキメラ抗体であってもよい。例示的なIGF−1R結合部分は、単鎖抗体(scFv)、例えば、ヒト単鎖抗体である。BBAで使用するのに好適な抗IGF−1R scFvの一例は、AB5−7 scFvであり、そのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1に示されている。或いは、CP−751,871(Pfizer社製)、IMC−A12(Imclone社製)、R1507(Genmab社製)、MK−0646(Merck社製)、AMG479(Amgen社製)、及びAVE−1642(Sanofi−Aventis社製)等の当技術分野で公知の他の抗IGF−1R抗体が、BBAでの使用に適している場合がある。更に、BBAで使用される他の抗IGF−1R抗体は、下記で更に詳述されている、抗体を作製及び選択するための標準的方法を使用して調製することができる。
【0102】
B.ErbB3結合部分
BBAの別の結合部分は、ErbB3と特異的に結合する。好ましくは、結合部分は抗体であるが(つまり、抗ErbB3抗体)、ErbB3と特異的に結合する他の結合部分も、BBAでの使用に好適である。抗体は、例えば、完全長抗体、又はFab若しくはF(ab)'断片等の、その抗原結合性断片若しくは部分であってもよい。抗体は、例えば、ヒト又はヒト化抗体であってもよい(又はヒト若しくはヒト化可変領域を含む)。更に、抗体はキメラ抗体であってもよい。ErbB3結合部分は、単鎖抗体(scFv)、例えば、ヒト単鎖抗体であってもよい。BBAで使用するに好適な抗ErbB3 scFvの例は、AB2−3 scFv−SEQ ID NO:33、AB2−6 scFv−SEQ ID NO:43、及びAB2−21 scFv−SEQ ID NO:44である。或いは、Merrimack Pharmaceuticals社による国際公開公報第2008/100624号及びMerrimack Pharmaceuticals社に帰属する米国特許出願公開第20090291085号に記載されている抗体、1B4C3(U3 Pharma AG社製)、及びU3−1287(U3 Pharma/Amgen社製)等の当技術分野で公知の他の抗ErbB3抗体を、BBAに使用することができる。更に、BBAで使用される他の抗ErbB3抗体は、下記で更に詳述されている、抗体を作製及び選択するための標準的方法を使用して調製することができる。
【0103】
BBAに使用することができる更なるモノクローナル抗体(つまり、抗IGF−1R及び抗ErbB3抗体)は、様々な公知の技術を使用して生成することができる。特定の実施形態では、抗体は、完全ヒトモノクローナル抗体である。
【0104】
C.連結部分
BBAの連結部分は、典型的にはタンパク質性分子であるが、2つの結合部分を結合するための、当技術分野で公知の他の化学リンカーも、BBAでの使用に好適である。1つの実施形態では、連結部分は、ヒト血清アルブミン(HSA)を含み、そのアミノ酸配列及びヌクレオチド配列は、それぞれSEQ ID NO:143及びSEQ ID NO:144に示されている。別の実施形態では、連結部分は、34位がセリンで置換され、503位がグルタミンで置換された突然変異型のヒト血清アルブミンを含む。これらの置換は、分子の血清中半減期を増強するためになされた。この突然変異型のHSA(mHSA)のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:145に示されている。mHSAのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:146に示されている。この突然変異型のHSA、及びBBAのリンカーとしてのその使用は、Merrimack Pharmaceuticals,Inc.社によるPCT国際出願PCT/US2009/040259に更に記述されている。
【0105】
更なる実施形態では、SEQ ID NO:143のリンカーは、N末端が4個のアミノ酸及びC末端が6個のアミノ酸で伸長されており(SEQ ID NO:18)、SEQ ID NO:144のリンカーは、N末端が12個のヌクレオチド及びC末端が18個のヌクレオチドで伸長されており(SEQ ID NO:118)、SEQ ID NO:145のリンカーは、N末端が4個のアミノ酸及びC末端が6個のアミノ酸で伸長されており(SEQ ID NO:19)、並びにSEQ ID NO:146のリンカーは、N末端が12個のヌクレオチド及びC末端が18個のヌクレオチドで伸長されている(SEQ ID NO:119)。
【0106】
1つの実施形態では、第1の結合部分は、連結部分のアミノ末端(N末端(N−terminus)又はN末端(N−terminal end))に結合されており、第2の結合部分は、リンカー部分のカルボキシ末端(C末端(C−terminus)又はC末端(C−terminal end))に結合されている。別の実施形態では、第2の結合部分は、連結部分のアミノ末端(N末端(N−terminus)又はN末端(N−terminal end))に結合されており、第1の結合部分は、リンカー部分のカルボキシ末端(C末端(C−terminus)又はC末端(C−terminal end))に結合されている。
【0107】
突然変異HSAリンカーを含む例示的なBBAは、AB5−7N/AB2−3C(SEQ ID NO:93)、AB5−7N/AB2−6C(SEQ ID NO:94)、AB5−7N/AB2−21C(SEQ ID NO:95)、AB2−3N/AB5−7C(SEQ ID NO:96)、AB2−6N/AB5−7C(SEQ ID NO:97)、及びAB2−21N/AB5−7C(SEQ ID NO:98)である。そのような結合剤の結合活性、アンタゴニスト活性、及び腫瘍増殖阻害活性は、下記の実施例で更に詳述されている。好ましくは、実施例3及び4で実証されているように、BBAは、以下の機能的特性の1つ又は複数を示す:(i)IGF−1誘導性のIGF−1Rリン酸化を阻害する;(ii)ヘレグリン(HRG)誘導性又はベータセルリン(BTC)誘導性のErbB3リン酸化を阻害する;(iii)IGF−1誘導性のAKTリン酸化を阻害する;(iv)腫瘍細胞の増殖を阻害する;(v)腫瘍球状体の増殖を阻害する。これら機能的特性の各々を評価するための方法は、下記の実施例3及び4に更に詳述されている。
【0108】
BBAをコードする核酸は、標準的組換えDNA技術を使用して、例えば、第1の結合部分をコードする核酸分子及び第2の結合部分をコードする核酸を、リンカー部分をコードする核酸にインフレームでライゲーションすることにより調製することができる。BBAをコードする核酸分子を発現ベクターに導入し、その結果生じたBBA発現ベクターを、リンパ腫細胞等の宿主細胞に導入する(例えば、形質移入、形質導入、又は感染により)ことにより、本明細書で提供されるBBAを発現する方法が、本明細書で更に提供される。その後、その結果生じたBBA宿主細胞を培養してBBAを発現させ、それを宿主細胞又は宿主細胞が増殖されている培地から回収することができる。BBAの構築及び発現は、実施例1に更に記述されている。組換えにより発現されたBBAは、下記の実施例2に記述されている手法等の、種々のクロマトグラフィー手法を使用して精製することができる。
【0109】
他の実施形態では、本明細書に記載のBBAは、下記の式により表すことができる:
A−L−B
式中、A、L、及びBの順序は、N末端からC末端であり、(i)Aは、IGF−1Rと特異的に結合する結合部分であり、Lは、リンカー部分であり、Bは、ErbB3と特異的に結合する結合部分であるか、又は(ii)Aは、ErbB3と特異的に結合する結合部分であり、Lは、リンカー部分であり、Bは、IGF−1Rと特異的に結合する結合部分である。種々の実施形態では、リンカー部分「L」は、例えば、単量体リンカー、二量体リンカー、又は三量体リンカーであってもよい。種々の実施形態では、IGF−1Rと特異的に結合する結合部分(「A」又は「B」)は、scFv、Fab断片、V断片、V断片、又は上記に詳述されている他の抗原結合性断片等の抗体又は抗体断片であってもよい。種々の実施形態では、タンデム結合部分は、1、2、又は3価の結合価を有する。種々の実施形態では、ErbB3と特異的に結合する結合部分(「A」又は「B」)は、scFv、Fab断片、V断片、V断片、又は上記に詳述されている他の抗原結合性断片等の抗体又は抗体断片であってもよい。別の実施形態では、リンカー部分「L」は、化学的に及び生物学的に不活性である。更に他の実施形態では、リンカー部分「L」又はBBA全体は、例えば、グリコシル化、無グリコシル化、又は過剰グリコシル化されていてもよい。更に他の実施形態では、「A」、「L」、及び/又は「B」をコードする配列(複数可)は、安定化、最適化、安定化及び最適化、並びに/又は均質化されていてもよい。種々の実施形態では、リンカー部分は、例えば、ヒト血清アルブミン、ヒト免疫グロブリン、ヒトTRAIL、ヒトLIGHT、ヒトCD40L、ヒトTNFα、ヒトCD95、ヒトBAFF、ヒトTWEAK、ヒトOX40、又はヒトTNFβの断片であってもよい。
【0110】
従って、式A−L−Bを含む実施形態の更なる非限定的な例は、下記の14個の表(表A〜N)に示されており、示されている配列は全て、アミノ酸配列である。示されている組み合わせのアミノ酸配列をコードする対応するヌクレオチド配列を組み合わせた構築物も企図され、そのような対応するヌクレオチド配列は、配列表に提供されている。下記の表A〜Nの各々では、各列の個々の配列の各々により示されている各部分と、その表の他の列の各々に示されている任意の部分との、あらゆる可能なA−L−Bの組み合わせが、新規のBBAとして企図される。
【0111】
(表A)

【0112】
(表B)

【0113】
(表C)

【0114】
(表D)

【0115】
(表E)

【0116】
(表F)

【0117】
別の実施形態では、本発明は、A=抗IGF−1R抗体断片+同時発現抗体パートナー(二重鎖抗体分子を形成する)、L=単量体、二量体、又は三量体リンカー、及びB=抗ErbB3 scFv抗体のBBAを提供する。下記の表G、H、及びIのA、L、及びBのあらゆる可能な組み合わせが企図されるが、但し「A」部分の抗体対の場合、同じ抗体に由来する軽鎖及び重鎖対が維持される(例えば、下記の表G、H、及びIに示されているように、抗体5−7に由来する断片は、抗体5−7パートナーと対になり、抗体5−6に由来する断片は、抗体5−6パートナーと対になる等)。
【0118】
(表G)

【0119】
(表H)

【0120】
(表I)

【0121】
別の実施形態では、本発明は、A=抗ErbB3 scFv抗体、L=単量体、二量体、又は三量体リンカー、及びB=抗IGF−1R抗体断片+同時発現抗体パートナー(二重鎖抗体分子を形成する)のBBAを提供する。下記の表JのA、L、及びBのあらゆる可能な組み合わせが本発明により包含されることが意図されているが、但し「B」部分の抗体対の場合、同じ抗体に由来する軽鎖及び重鎖対が維持される(例えば、下記の表Jに示されているように、Ab5−7に由来するFab HCは、Ab5−7パートナーと対になり、Ab5−6に由来するFab HCは、Ab5−6パートナーと対になる等)。
【0122】
(表J)

【0123】
別の好ましい実施形態では、本発明は、A=抗ErbB3抗体断片+同時発現抗体パートナー(二重鎖抗体分子を形成する)、L=単量体、二量体、又は三量体リンカー、及びB=抗IGF−1R scFv抗体のBBAを提供する。下記の表K及びMのA、L、及びBのあらゆる可能な組み合わせが本発明により包含されることが意図されているが、但し「A」部分の抗体対の場合、同じ抗体に由来する軽鎖及び重鎖対が維持される(例えば、下記の表K及びMに示されているように、抗体2−3に由来する断片は、抗体2−3パートナーと対になり、抗体2−14に由来する断片は、抗体2−14パートナーと対になる等)。
【0124】
(表K)

【0125】
(表M)

【0126】
別の実施形態では、本発明は、A=抗IGF−1R scFv抗体、L=単量体、二量体、又は三量体リンカー、及びB=抗ErbB3抗体断片+同時発現抗体パートナー(二重鎖抗体分子を形成する)のBBAを提供する。下記の表NのA、L、及びBのあらゆる可能な組み合わせが本発明により包含されることが意図されているが、但し「B」部分の抗体対の場合、同じ抗体に由来する軽鎖及び重鎖対が維持される(例えば、下記の表Nに示されているように、Ab2−3に由来するFab HCは、Ab2−3パートナーと対になり、Ab2−14に由来するFab HCは、Ab2−14パートナーと対になる等)。
【0127】
(表N)

【0128】
III.医薬組成物
別の態様では、薬学的に許容される担体と一緒に製剤化された、本明細書で開示されたBBA又は単鎖抗体(例えば、scFv)の1つ又は複数を含有する組成物、例えば医薬組成物が提供される。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」には、生理学的に適合するありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、並びに等張剤及び吸収遅延剤等が含まれる。好ましくは、担体は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、非経口投与、脊髄投与、または上皮投与(例えば、注射又は点滴による)に好適である。投与経路に応じて、BBA又はscFvは、タンパク質を不活化する場合がある酸の作用及び他の自然条件からBBAを保護するための物質でコーティングされていてもよい。
【0129】
医薬組成物は、単独で、又は併用療法で、つまり他の剤と組み合わせて投与することができる。例えば、併用療法は、以下に記載の抗がん剤等の少なくとも1つの更なる治療剤と共に本開示のBBAを含むことができる。医薬組成物は、放射線療法及び/又は外科手術等の、別の抗がん治療理学療法と併せて投与することもできる。
【0130】
本開示の組成物は、当技術分野で公知の様々な方法により投与することができる。当業者であれば理解するように、投与の経路及び/又は方法は、所望の結果に応じて様々であろう。
【0131】
ある投与経路により本明細書で提供された組成物を投与するためには、その不活性化を防止する物質でBBAをコーティングすることが必要であるか、又はその不活性化を防止する物質と共にBBAを同時投与する必要がある場合がある。例えば、適切な担体、例えばリポソーム又は希釈剤中のBBAを、患者に投与してもよい。薬学的に許容される希釈剤には、生理食塩水及び緩衝水溶液が含まれる。リポソームには、水中油中水型CGF乳剤、並びに従来のリポソームが含まれる。
【0132】
薬学的に許容される担体には、無菌注射用溶液又は分散液の即時調製用の無菌水溶液又は分散液及び無菌粉末が含まれる。薬学的活性物質用のそのような媒体及び剤の使用は、当技術分野で公知である。あらゆる従来の媒体又は剤は、活性化合物と非適合性でない限り、本明細書で提供された医薬組成物におけるその使用が企図される。補完的な活性化合物(例えば、下記に開示されている抗がん剤)を、組成物に組み込むこともできる。
【0133】
治療用組成物は、典型的には、製造条件下及び保管条件下で無菌及び安定的でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高薬物濃度に好適な他の規則的構造として製剤化することができる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、及びそれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒であってもよい。適切な流動度は、例えば、レシチン等のコーティングの使用により、分散液の場合は必要とされる粒径の維持により、及び界面活性剤の使用により維持することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトール等の多価アルコール、又は塩化ナトリウムを含むことは有用であろう。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる剤、例えばモノステアリン酸塩及びゼラチンを組成物に含むことによりもたらすことができる。
【0134】
無菌注射用溶液は、必要量の活性化合物を、上記で列挙された成分の1つ又は組み合わせと共に適切な溶媒に組み込み、その後必要に応じて滅菌精密ろ過することにより調製することができる。一般的に、分散液は、活性化合物を、塩基性分散媒及び上記で列挙されたものからの必要とされる他の成分を含有する無菌媒体に組み込むことにより調製される。無菌注射用溶液を調製するための無菌粉末の場合、調製方法には、真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)が含まれ、それらは、活性成分と、以前に滅菌ろ過されたその溶液に由来する任意の更なる所望の成分との粉末を産出する。
【0135】
投与計画は、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するために調節することができる。例えば、単一のボーラス又は点滴で投与してもよく、幾つかの分割用量を、ある時間にわたって投与してもよく、又は用量は、治療状況の緊急性により示されるのと比例して、低減又は増加されてもよい。例えば、本明細書で開示されたBBAは、例えば静脈内若しくは皮下注射により週1回若しくは2回、又は例えば静脈内若しくは皮下注射により月1回若しくは2回で投与してもよい。
【0136】
好適な用量範囲及び投与計画の非限定的な例には、2〜50mg/kg(患者の体重)の週1回、又は週2回、又は3日毎に1回、又は2週毎に1回、又は月1回投与、及び1〜100mg/kgの週1回、又は週2回、又は3日毎に1回、又は2週毎に1回、又は月1回投与が含まれる。種々の実施形態では、BBAは、3.2mg/kg、6mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、又は40mg/kgの用量で、週1回、又は週2回、又は3日毎1回、又は2週毎に1回、又は月1回のタイミングで投与される。好適な投与スケジュールには、3日毎に1回、5日毎に1回、7日毎に1回(つまり、週1回)、10日毎1回、14日毎に1回(つまり、2週毎に1回)、21日毎に1回(つまり、3週毎に1回)、28日毎に1回(つまり、4週毎に1回)、及び月1回が含まれる。
【0137】
投与の容易性及び用量の均一性のため、単位剤形の非経口組成物を製剤化することが、特に有利である。単位剤形は、本明細書で使用される場合、個々の患者治療用の単位用量に適合する物理的に個別の単位(例えば、バイアル又はアンプル中の)を指し、各単位は、必要とされる医薬担体と共に所望の治療効果を生じさせることが予測される所定量のBBAを含有する。
【0138】
薬学的に許容される酸化防止剤の例には、以下のものが含まれる:(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、及び亜硫酸ナトリウム等の水溶性抗酸化剤;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、及びアルファ−トコフェロール等の油溶性抗酸化剤;及び(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、及びリン酸等の金属キレート剤。
【0139】
語句「非経口投与」及び「非経口で投与される」は、本明細書で使用される場合、通常は注射による、腸内投与及び局所投与以外の投与方法を意味し、これらに限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、胸骨内の注射及び点滴が含まれる。
【0140】
医薬組成物に使用することができる好適な水性及び非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコール等)、及びそれらの好適な混合物、オリーブ油等の植物油、並びにオレイン酸エチル等の注射用有機エステルが含まれる。適切な流動度は、例えば、レシチン等のコーティング材料の使用により、分散液の場合は必要とされる粒径の維持により、及び界面活性剤の使用により維持することができる。
【0141】
また、これらの組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤等の更なる剤を含有していてもよい。
【0142】
微生物存在の予防は、上記の殺菌処理と、種々の抗細菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、並びにフェノールソルビン酸等の含有との両方により保証することができる。糖及び塩化ナトリウム等の等張剤を組成物に含むことも望ましい場合がある。加えて、注射用医薬品形態の持続的吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン等の吸収を遅延させる剤の含有によりもたらすことができる。
【0143】
医薬品としてヒト及び動物に投与される場合、BBAは、薬学的に許容される担体と組み合わせて、例えば、0.001〜90%又は0.005〜70%又は0.01〜30%の活性成分を含有する医薬組成物として与えることができる。
【0144】
医薬組成物中の活性成分(例えば、BBA)の実際の用量レベルは、特定の患者、組成物、及び投与方法で、患者に毒性を与えずに所望の治療応答を達成するのに効果的な量の活性成分を得るために、変動させることができる。選択される用量レベルは、使用される特定の組成物又はそのエステル、塩、若しくはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用されている特定の化合物の排泄速度、治療期間、他の薬物、使用される特定のBBA(複数可)と組み合わせて使用される化合物及び/又は物質、治療されている患者の年齢、性別、体重、状態、全体的な健康、及び以前の病歴、並びに医学分野で周知の類似要因を含む様々な薬物動態学的要因に依存するだろう。当技術分野で通常の技術を有する医師は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定及び処方することができる。例えば、医師は、所望の治療効果を達成するのに必要とされるよりも低いレベルから用量を開始し、所望の効果が達成されるまで徐々に用量を増加させることができる。一般的に、好適な1日用量は、いかなる許容されない有害効果も引き起こさずに治療効果を再現性よくもたらすのに効果的な最も高い用量である活性成分の量であろう。そのような有効量は、一般的に上述の要因に依存するだろう。投与は、例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下であってもよい。必要に応じて、治療用組成物の有効1日用量は、その日のうちに適切な間隔で別々に投与される2、3、4、5、又は6つ以上の部分用量として、随意に単位剤形で投与されてもよい。
【0145】
治療用組成物は、当技術分野で公知の医療デバイスを用いて投与することができる。例えば、ある実施形態では、本明細書で提供された治療用組成物は、米国特許第5,399,163号、第5,383,851号、第5,312,335号、第5,064,413号、第4,941,880号、第4,790,824号、又は第4,596,556号に開示されているデバイス等の無針皮下注射デバイスを用いて投与することができる。周知の移植片の例には、以下のものが含まれる:米国特許第4,487,603号、そこには、制御された速度で薬剤を放出するための埋込可能なマイクロ注入ポンプが開示されている;米国特許第4,486,194号、そこには、皮膚を通して薬剤を投与するために治療デバイスが開示されている;米国特許第4,447,233号、そこには、正確な注入速度で薬剤を送達するための薬剤注入ポンプが開示されている;米国特許第4,447,224号、そこには、連続薬物投与用の流量可変の埋込可能な注入装置が開示されている;米国特許第4,439,196号、そこには、多チャンバー区画を有する浸透圧薬物送達システムが開示されている;及び米国特許第4,475,196号、そこには、浸透圧薬物送達システムが開示されている。多くの他のそのような移植片及び送達システム等が、当業者に公知である。
【0146】
IV.BBAを使用する方法
また、様々なエクスビボ及びインビボ検出、診断、及び治療応用にBBAを使用する方法が提供される。BBAは、IGF−1R及びErbB3と特異的に結合するため、これらの剤は、これらの受容体のいずれか又は両方の発現を検出するために、並びに免疫親和性技術によりタンパク質を精製するために使用することができる。更に、本明細書で開示されたBBAは、様々ながんを含む、ErbB3及び/又はIGF−1R依存性シグナル伝達に関連する疾患又は障害を治療するために使用することができる。
【0147】
1つの実施形態では、IGF−1R及びErbB3を発現する腫瘍細胞の増殖を阻害するための方法が提供され、該方法は、腫瘍細胞を、腫瘍細胞の増殖が阻害されるように、本明細書に記載のBBAと接触させることを含む。
【0148】
別の実施形態では、本明細書で開示されたBBAを、疾患又は障害を治療するのに有効な量で患者に投与することにより、ErbB3及び/又はIGF−1R依存性シグナル伝達に関連する疾患又は障害を治療するための方法が提供される。好適な疾患又は障害には、例えば、これらに限定されないが、メラノーマ、乳癌、卵巣癌、腎癌、消化管癌、結腸癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、及び前立腺癌を含む様々ながんが含まれる。
【0149】
また更に、患者のIGF−1R及びErbB3発現腫瘍を治療する方法が提供され、該方法は、腫瘍が治療されるように、本明細書に記載のBBAを投与することを含む。好ましくは、腫瘍は、肺癌、肉腫、結腸直腸癌、頭頸部癌、膵臓癌、及び乳癌からなる群から選択される。1つの実施形態では、腫瘍は、非小細胞肺癌である肺癌である。別の実施形態では、腫瘍は、ユーイング肉腫である肉腫である。別の実施形態では、腫瘍は、タモキシフェン抵抗性エストロゲン受容体陽性乳癌である乳癌である。別の実施形態では、腫瘍は、ゲフィチニブ抵抗性肺癌である肺癌である。別の実施形態では、腫瘍は、トラスツズマブ抵抗性転移性乳癌である乳癌である。
【0150】
別の態様では、腫瘍を治療する方法は、BBAと組み合わせて第2の抗がん剤を投与することを更に含む。そのような組み合わせ及び治療方法において第2の抗がん剤として役目を果たすことができる好適な抗がん剤の例は、付録Aに列挙されている。従って、例えば、付録Aに列挙されているものから選択される第2の抗がん剤と一緒に、典型的には少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と一緒に、BBA、例えば本明細書に記載のBBAを含む新規の組成物が企図される。それに加えて又はその代わりに、腫瘍を治療する方法は、BBAと組み合わせて第2の抗がん治療理学療法を施すことを更に含む。そのような併用方法において「第2の抗がん治療理学療法」として役目を果たすことができる理学療法の非限定的な例には、外科手術及び電離放射線が含まれる。
【0151】
ある態様では、本明細書で開示されたBBAは、患者に投与される。
【0152】
別の実施形態では、本明細書で開示されたBBAを(例えば、エクスビボ又はインビボで)、対象に由来する細胞と接触させ、細胞上のErbB3及び/又はIGF−1Rに対する結合のレベルを測定することにより、ヒト対象のErbB3及び/又はIGF−1R依存性シグナル伝達に関連する疾患又は障害(例えば、がん)を診断するための方法が提供される。ErbB3及び/又はIGF−1Rに対する異常に高いレベルの結合は、対象が、ErbB3及び/又はIGF−1R依存性シグナル伝達に関連する疾患又は障害を有する可能性が高いことを示す。
【0153】
また、本明細書で開示されたBBAを含むキットが提供される。キットは、キットの内容物の使用目的を示す表示を含んでいてもよく、随意に、ErbB3及び/又はIGF−1R依存性シグナル伝達に関連する疾患又は障害を治療又は診断する、例えば腫瘍を診断又は治療する際の、キットの使用説明書を含む。表示という用語は、キット上に又はキットと共に提供されているか、又は別様にキットに付随する任意の書面、広告、又は記録物を含む。
【実施例】
【0154】
以下の例は、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。
【0155】
材料及び方法
別様の記述がない限り、実施例の全体にわたって、以下の物質及び方法が使用される。一般的に、本開示の技術の実施には、別様の指定がない限り、化学、分子生物学、組換えDNA技術、免疫学(特に、例えば抗体技術)、薬理学、薬学の従来技術、及びポリペプチド調製における標準的技術が使用される。
【0156】
ヘレグリン
これら実施例及び図に使用される場合、HRGは、ヘレグリン1ベータ1、HRG1−B、HRG−β1、ニューレグリン1、NRG1、ニューレグリン1ベータ1、NRG1−b1、及びHRG ECD等として様々に知られているヘレグリンのアイソフォームを指す。HRGは、市販されている、例えばR&D Systems社製の377−HB−050/CFである。
【0157】
IGF−1
これら実施例及び図に使用される場合、IGF−1は、インスリン増殖因子1を指す。組換えヒトIGF−1は、市販されている、例えばR&D Systems社製の291−GI−050/CFである。
【0158】
細胞株
下記の実験で使用されている細胞株は全て、示されるように、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC、マナッサス、バージニア州)又は米国国立癌研究所(NCI)、例えばDivision of Cancer Treatment and Diagnostics(DCTD)から取得することができる。
・MCF7 −ATCCカタログ番号HTB−22
・T47D −ATCCカタログ番号HTB−133
・OVCAR8 −NCI
・A549 −ATCCカタログ番号CCL−185
・ADRr −NCI
・BxPC−3 −ATCCカタログ番号CRL−1687
・DU145 −ATCCカタログ番号HTB−81
【0159】
対照抗体
米国特許出願公開第20090291085号に記載のAb#6(MM−121)を、抗ErbB3 IgG抗体対照として使用した。マウス抗ヒトIGF−1Rモノクローナル抗体mAb391(IgG1、R&D Systems社から市販されている、カタログ番号MAB391)を、抗IGF−1R IgG抗体対照として使用する。
【0160】
実施例1:単量体BBAの調製及び発現
BBAは、標準的組換えDNA技術を使用して、結合部分の各々をコードする核酸を、ヒト血清アルブミン(HSA)リンカーをコードするDNAにライゲーションして構築することができる。より詳しくは、SEQ ID NO:145に示されるアミノ酸配列を有する突然変異型のHSAリンカーをコードする核酸、及びSEQ ID NO:146に示されるヌクレオチド配列を使用する。
【0161】
一組の3つの異なる剤では、リンカーのN末端は、AB5−7 scFv(抗IGF−1R)をコードする核酸に機能的に連結されており、リンカーのC末端は、AB2−3、AB−2−6、又はAB2−21 scFv(抗ErbB3)のいずれかをコードする核酸に機能的に連結されている。これら3つの剤は、本明細書では、AB5−7N/AB2−3C、及びAB5−7N/AB2−6C、及びAB5−7N/AB2−21Cと呼ばれる(表11及び12)。
【0162】
別の一組の3つの異なる剤では、リンカーのN末端は、AB2−3、AB2−6、又はAB2−21 scFv(抗ErbB3)のいずれかをコードする核酸に機能的に連結されており、リンカーのC末端は、AB5−7 scFv(抗IGF−1R)をコードする核酸に機能的に連結されている。これら3つの剤は、本明細書では、AB2−3N/AB5−7C、AB2−6N/AB5−7C、及びAB2−21N/AB5−7Cと呼ばれる(表11及び12)。
【0163】
HSAが融合されたBBAをコードする核酸を、単一分子として発現プラスミドにクローニングする。例示的な発現ベクターは、pMP 10K(SELEXIS社製)であり、例示的な細胞株は、CHO−k1−S(SELEXIS社製)である。発現プラスミドを線形化し(例えばPvu1を用いて)、その後QIAQUICK精製(QIAGEN社製)する。CHO細胞への形質移入には、リポフェクタミンLTX(Invitrogen社製)をOptiMemI(Gibco社製)中で使用する。形質移入した細胞を、10%FBSを含有するF12Hams培地で、2日間は淘汰圧をかけずに、その後4日間は淘汰圧をかけて回復させ、その後無血清培地に交換して淘汰圧をかけた。HSAが融合されたBBAには、HyClone(登録商標)(Thermo Scientific社製)を、HT補充剤(GIBCO社製)と共に使用する。
【0164】
実施例2:単量体BBAの精製
プロテインA親和性、陽イオン交換、及び陰イオン交換の3つのクロマトグラフィーステップを使用して、BBAを精製する。各々は、製造業者の説明書に従って実施することができる。プロテインA親和性ステップは、最も重要なクロマトグラフィーステップであり、それは、プロテインAが、回収した細胞培養液(HCCF)等の複雑な溶液中でBBAと選択的に及び効率的に結合し、単一ステップで99.5%を超える生成不純物を、高収率及びハイスループットで除去するためである。このステップは、著しいウイルス除去も提供する。GE社製のMABSELECTを、プロテインA親和性樹脂として使用する。必要に応じて、プロテインA親和性クロマトグラフィーの代わりに、プロテインG親和性クロマトグラフィーを使用してもよい。第2のクロマトグラフィーステップには、GE社製のSPFF(スルホプロピルファストフロー)、アガロース系樹脂を、陽イオン交換樹脂として使用する。このステップは、宿主細胞不純物、及びBBAの多量体型(凝集体)の除去を更に支援する。第3の最終クロマトグラフィーステップでは、GE社製のQSFF(第四級アミンセファロースファストフロー)、アガロース系陰イオン交換樹脂が、SPFF貯留に由来するあらゆる微量ウイルス、エンドトキシン、及び宿主細胞不純物を除去することにより、産物の最終ポリッシングを支援する。
【0165】
実施例3:単量体BBAの結合及びアンタゴニスト活性
A.BBAの結合親和性
1×10個のMCF7細胞及び1×10個のADRr細胞を、室温で2時間2μMのBBAと共にインキュベートし、その後12回の連続3倍希釈をする。その後、ヤギ抗HSA−Alexa647結合抗体を検出抗体として使用して、細胞を45分間氷上でインキュベートする。MCF7及びADRr細胞に対するBBAの細胞結合解離定数(結合親和性の尺度)を、FACS(蛍光励起細胞分取)により評価し、各BBAの見かけ上の解離定数を決定する。以下の結果が得られた。
【0166】
(表1)BBAの解離定数

【0167】
B.BBAのアンタゴニスト活性
(i)pIGF−1R形成の阻害
IGF−1RをアンタゴナイズするBBAの能力を決定するために、剤の存在下におけるIGF−1Rリン酸化の阻害を検査した。2.5×10個のADRr細胞を、1 MのBBA又は抗IGF−1R IgGのいずれかと共に24時間プレインキュベートし、その後9回の連続3倍希釈をして10データ点の曲線を生成する。細胞を、13nMのIGF−1で10分間処理する。ホスホ−IGF−1R(pIGF−1R)を産生するIGF−1誘導性のIGF−1Rリン酸化を、ELISA(R&D Systems社製;カタログ番号DYC1770)により測定して、pIGF−1R形成を阻害する剤の能力を評価する。以下の結果が得られた。
【0168】
(表2)BBAによるpIGF−1R形成の阻害

【0169】
このように、同様のIC50が観察され、BBAは、抗IGF−1R IgG抗体と同様にIGF−1誘導性のIGF−1Rリン酸化をアンタゴナイズすることが可能であることが示された。
【0170】
(ii)pErbB3形成の阻害
ErbB3をアンタゴナイズするBBAの能力を決定するために、剤の存在下におけるErbB3リン酸化の阻害を検査した。(2.5,×10個のADRr細胞を、1 MのBBA又は抗ErbB3 IgGのいずれかと共に24時間プレインキュベートし、その後9回の連続3倍希釈をして10データ点の曲線を生成する。細胞を、5nMのヘレグリン(HRG)で15分間処理する。HRG誘導性のErbB3リン酸化を、ELISA(R&D Systems社製;カタログ番号DYC1769)により測定して、pErbB3形成を阻害する剤の能力を評価する。モノクローナルIgG2抗ErbB3抗体(AB#6)を対照として使用した。以下の結果が得られた。
【0171】
(表3)BBA(及び比較用IgG)によるHRG誘導性pErbB3形成の阻害

値は、2つの独立した実験の平均である。
【0172】
10〜20倍のKの違いが、BBAと抗ErbB3 IgGとの間で観察され、BBAは、抗ErbB3 IgG抗体と同様に、HRG誘導性のErbB3リン酸化をアンタゴナイズすることが可能ではないことが示された。
【0173】
別の一組の実験では、ベータセルリン(BTC)誘導性のErbB3リン酸化を検査する。2×10個のADRr細胞を、1μMのいずれかのBBAと共に1時間プレインキュベートし、その後9回の連続3倍希釈をして10データ点の曲線を生成するか、又は500nMの抗ErbB3 IgGと共に1時間プレインキュベートし、その後9回の連続3倍希釈をして10データ点の曲線を生成する。細胞を、50nMのBTCで5分間処理する。BTC誘導性のErbB3リン酸化を、pErbB3 ELISAキット(R&D Systems社製;カタログ番号DYC1769E)を使用して測定し、pErbB3形成を阻害する剤の能力を評価する。以下の結果が得られた。
【0174】
(表4)BBA(及び比較用IgG)によるBTC誘導性pErbB3形成の阻害

【0175】
結果は、BTC刺激性pErbB3シグナルは、BBAにより完全に阻害することができることを実証した。
【0176】
(iii)IGF−1誘導性pAKT形成の阻害
IGF−1R経路に沿った細胞内シグナル伝達を阻害するBBAの能力を決定するために、pAKT形成を阻害する剤の能力を試験する。1.5×10個のMCF7細胞を、12ウェルプレート中でBBAと共に1時間プレインキュベートし(1μMの高用量から開始し、合計9回の3倍希釈をして10データ点の曲線を生成する)、その後13.5nMのIGF−1と共に15分間プレインキュベートする。IGF−1誘導性のAKTリン酸化を、以下の抗体を使用してELISAにより測定する:抗AKT、クローンSKB1(Millipore社製、カタログ番号05−591);ビオチン化抗ホスホ−AKT(Ser473特異的;Cell Signaling Technology社製、カタログ番号5102)。検出は、ストレプトアビジンHRP(R&D Systems社製、カタログ番号DY998)による。以下の結果が得られた。
【0177】
(表5)BBAによるpAKT形成の阻害

値は、2つの独立した実験の平均である。
【0178】
表5に示されている結果は、表1に示されている結果とあわせると、IGF−1誘導性pAKTの阻害レベルが、BBAの結合親和性と相関することを実証する。即ち、剤のより強固な結合は、pAKT形成の阻害の向上に結び付く。
【0179】
(iv)IGF2誘導性pIGF−1R及びpAKT形成の阻害
別の一組の実験では、IGF2誘導性のpIGF−IR及びpAKTを検査する。2.5×10個のMCF7細胞を、1μMのいずれかのBBAと共に1時間プレインキュベートし、その後9回の連続3倍希釈をして10データ点の曲線を生成するか、又は500nMからの抗IGF−IR IgG1 mAb391と共に1時間プレインキュベートし、その後9回の連続3倍希釈をして10データ点の曲線を生成する。細胞を、13nMのIGF2で15分間処理する。IGF2誘導性pIGF−IRを、pIGF−IR ELISAキット(R&D systems社製、カタログ番号DYC1770)により測定して、pIGF−1R形成を阻害する剤の能力を評価する。IGF2誘導性pAKTを、Merrimack社が開発したELISAアッセイにより測定して、pAKT形成を阻害する剤の能力を評価する。以下の結果が得られた。
【0180】
(表6)BBAによるIGF2誘導性pIGF−1R形成の阻害

【0181】
(表7)BBAによるIGF2誘導性pAKT形成の阻害

【0182】
実施例4:単量体BBAの抗腫瘍活性
A.腫瘍細胞増殖アッセイ
細胞性ATPの存在量を測定するルミネセンスに基づくアッセイであるCTGアッセイ(Promega社製;カタログ番号PR−G7572)を使用して、腫瘍細胞増殖に対する二重特異的剤の効果をインビトロで検査する。3つの細胞株を検査する:ADRr、BxPC−3、及びMCF7、それらは、以下のレベルのIGF−1R及びErbB3を発現する。
【0183】
(表8)細胞株受容体発現

【0184】
CTGアッセイを実施するための最適増殖条件を決定するために、細胞数、培地/増殖因子(IGF−1、HRG)、及び時点を、3つの細胞株について滴定する。これらの最適化実験により、ADRr細胞株は、増殖因子に対して最小限の応答を示し、BxPC−3細胞株は、IGF−1に良好に応答し、MCF7細胞株は、IGF−1及びHRGの両方に良好に応答したことが実証された。阻害剤アッセイを実施するために選択された増殖条件は、10%血清又は1%血清+100ng/mlのIGF−1及び135ng/mlのHRGである。以下の細胞数をCTGアッセイに使用する:ADRr及びMCF7 −1250細胞/ウエル(6日目)、5000細胞/ウエル(3日目);BxPC−3 −2500細胞/ウエル(6日目)、7500細胞/ウエル(3日目)。細胞を、以下の用量の阻害剤と共に3日間又は6日間インキュベートする:1μM、250nM、62.5nM、又は15.625nM。プレートを室温で20分間平衡化し、その後CTG試薬を室温で10分間添加し、EnVision(登録商標)プレートリーダー(Perkin Elmer社製)でプレートを測定する。
【0185】
CTGアッセイにおけるBBAの効力は、下記に要約されており、(−)=<10%阻害、(+)=>10%阻害、及び(++)>20%阻害である。
【0186】
(表8A)細胞増殖の阻害

【0187】
結果は、二重特異的結合剤の全てが、試験した腫瘍細胞の少なくとも幾つかの増殖を阻害することが可能であることを示す。ADRr細胞株の場合、AB5−7N/AB2−3C及びAB5−7N/AB2−6Cは、抗IGF−1R IgG及び抗ErbB3 IgGの組み合わせと同様に、増殖を阻害することができた。BxPC−3細胞株の場合、AB2−6N/AB5−7Cは、抗IGF−1R IgG及び抗ErbB3 IgGの組み合わせと同様に、増殖を阻害することができた。MCF7細胞株の場合、AB2−21N/AB5−7C、AB2−3N/AB5−7C、及びAB2−6N/AB5−7Cは、抗IGF−1R IgG及び抗ErbB3 IgGの組み合わせと同様に、増殖を阻害することができた。
【0188】
腫瘍球状体増殖アッセイ
インビトロでの腫瘍球状体の増殖に対するBBAの効果を、インビボでの腫瘍増殖のモデルとして検査する。そのような形成の最適条件を含む、少量の基底膜抽出物マトリゲルを使用した腫瘍球状体の形成は、当技術分野に記述されている(例えば、Ivascu,A.及びKubbies,M.(2006年)J.Biomol.Screen.11巻:922〜932頁;Lin,R.Z.及びChang,H.Y.(2008年)Biotechnol.J.3巻:1172〜1184頁を参照)。4つの細胞株:ADRr、MCF7、A549、及びOvcar8を検査する。細胞(10%ウシ胎仔血清を有する培地200μl当たり2000個の細胞)を、96ウエル低吸着プレートの各ウエルに添加する。2日目又は3日目に、球状体を撮影及び測定し、その後BBAで処理する。9日目又は10日目に、球状体を再び撮影及び測定する。
【0189】
データ分析には、面積に基づく球状体増殖を、以下の式を使用して決定する:(9日目の面積−2日目の面積)/2日目の面積×100。阻害パーセントを、(対照−試料)/対照×100により決定する。
【0190】
一組の初期実験では、細胞を、0.5μM抗IGR−1R IgG単独又は0.5μM抗ErbB3 IgG単独のいずれかで処理して(単独療法)、IGF−1及び/又はHRGにより駆動される球状体増殖を特定する。結果は下記に要約されている。下記の表9及び10では、(+)=>15%(しかし、<30%)阻害、(++)=>30%(しかし、<50%)阻害、(+++)=>50%阻害、及び(−)=<15%阻害である。
【0191】
(表9)IGF−1及び/又はHRGにより駆動される腫瘍細胞株球状体増殖

【0192】
次に、腫瘍球状体増殖に対するBBA(0.5μM)の効果を決定する。
【0193】
(表10)腫瘍球状体増殖に対するBBA及びIgG結合剤の効果

【0194】
これらの結果は、BBAの全てが、検査した腫瘍球状体の少なくとも幾つかの増殖を阻害することが可能であることを実証する。
【0195】
また、腫瘍球状体増殖を阻害するBBAの能力を、抗IGF−1R IgG単独療法、抗ErbB3 IgG単独療法、及び抗IGF−1R IgG+抗ErbB3 IgG併用療法の効果と比較する。単独療法比較の結果は、図7A〜Cに示されており、DX2−21N/DX5−7C及びDX5−7N/DX2−21C BBAが、A549及びMCF7細胞株における抗IGF−1R IgG又は抗ErbB3 IgG単独のいずれよりも大きな腫瘍球状体増殖の阻害パーセントを示し、ADRr細胞株の場合、単独療法とほぼ同等の阻害を示すことが実証されている。併用療法比較の結果は、図8A〜Cに示されており、DX2−21N/DX5−7C及びDX5−7N/DX2−21C BBAは、ADRr及びMCF7細胞株で、抗IGF−1R IgG+抗ErbB3 IgG併用療法と同様に作用するが、A549細胞株では、併用療法がより効果的だったことが実証される。
【0196】
実施例5:ErbB3及びIGF−1Rを標的とするBBAの操作
実施例1〜4に記載の治療法を拡張するために、本発明者らは、ErbB3及びIGF−1Rを標的とする更なるBBAの多様なサブセットを操作した。抗ErbB3−リンカー−抗IGF−1R(ELI)及び抗IGF−1R−リンカー−抗ErbB3(ILE)のN末端からC末端方向の融合分子の構築の例は、それぞれ表11及び12に示されている。表11に示されている各々の例示的な分子の抗ErbB3部分、リンカー部分、及び抗IGF−1R部分は、N末端からC末端に介在配列なしで一緒に連続して結合されている。同時発現部分は、存在する場合、個別のポリペプチド鎖として同じ細胞中で発現される。これらポリペプチド鎖の折り畳みは、ELIトポロジーの二重特異的分子をもたらす。
【0197】
(表11)抗ErbB3−リンカー−抗IGF−1Rトポロジー(ELI)を有する融合分子

【0198】
表12に示されている各々の例示的な分子の抗IGF−1R部分、リンカー部分、及び抗ErbB3部分は、N末端からC末端に介在配列なしで一緒に連続して結合されている。同時発現部分は、存在する場合、個別のポリペプチド鎖として同じ細胞中で発現される。これらポリペプチド鎖の折り畳みは、ILEトポロジーの二重特異的分子をもたらす。
【0199】
(表12)抗IGF−1R−リンカー−抗ErbB3トポロジー(ILE)を有する融合分子

【0200】
要約すると、融合分子ELI−1、ELI−2、ELI−3、ELI−4、ELI−5、ELI−6、ILE−1、ILE−2、ILE−3、ILE−4、ILE−5、ILE−6、ILE−7、ILE−8、ILE−9を、機能的単量体になるように設計した。融合分子ELI−7、ELI−8、ELI−9、ELI−12、ELI−13、ELI−14、ELI−15、ILE−10、ILE−11、ILE−12、ILE−13、ILE−14、ILE−15、ILE−16を、機能的二量体になるように設計した。融合分子ELI−10及びELI−11を、機能的三量体になるように設計した。融合分子ELI−1、ELI−2、ELI−3、ELI−4、ELI−5、ELI−6、ILE−1、ILE−2、ILE−3、ILE−4、ILE−5、ILE−6、ILE−7、ILE−8、ILE−9、ELI−7、ELI−8、ELI−9、ELI−12、ELI−13、ELI−14、ELI−15、ILE−10、ILE−11、ILE−12、ILE−13、ILE−14、ILE−15、ILE−16を、新生児型Fc受容体による能動的再利用により体循環での半減期が増強されるように設計した(Ghetieら、Annu.Rev.Immunol.、2000年、18巻、739〜766頁;Chaudhuryら、J Exp Med.、2003年、197巻、315〜22頁)。融合分子ELI−10及びELI−11を、流体力学半径の増加により体循環での半減期が増強されるように設計した(Tsutsumiら、J Pharmacol Exp Ther.、1996年、278巻、1006〜11頁)。複数の戦略を使用して、IGF−1R標的部分、ErbB3標的部分、及びリンカー部分の薬物特性を向上させた。ELI−10、ELI−11、ELI−12、ELI−13、ELI−14、ELI−15、ILE−15、及びILE−16の標的部分の安定性及び発現レベルを、以前に報告された技術を応用することにより向上させた(Langedijkら、J.Mol.Biol.、1998年、283巻、95〜110頁;Niebaら、Protein Eng.1997年、10巻、435〜444頁;Ewertら、Biochemistry、2003年、42巻、1517〜1528頁;Chowdhuryら、J.Mol.Biol.、1998年、281巻、917〜928頁;Wornら、J.Mol.Biol.、305巻、989〜1010頁)。ELI−10及びELI−11の標的部分の不均質性を、塩基性カルボキシペプチダーゼに対して抵抗性になるようにC末端を再操作することにより減少させた(Harris、Journal of Chromatography、1995年、23巻、129〜134頁)。ELI−13及びELI−14のリンカー部分を、以前に記載のように、溶解性が増加させるか又は不均質性が低減されるように糖鎖操作した(Pepinskyら、Protein Sci.、2010年、19巻、954〜66頁;Lundら、Mol Immunol.、1993年、30巻、741〜8頁)。ELI−1、ELI−2、ELI−3、ELI−4、ELI−5、ELI−6、ILE−1、ILE−2、ILE−3、ILE−4、ILE−5、ILE−6、ILE−7、ILE−8、及びILE−9のリンカー部分の各々の均質性を増加させた。
【0201】
実施例6:ErbB3及びIGF−1Rを標的とするBBAの調製、発現、及び精製
実施例5に記載の融合分子をコードする核酸を、標準的組換えDNA技術を使用して、単一分子として発現プラスミドにクローニングした。使用した発現ベクターは、pMP 10K(SELEXIS社製)だった。発現プラスミドを線形化し、QIAquick精製キット(QIAGEN社製)を使用して精製し、リポフェクタミンLTX(Invitrogen社製)を使用してCHO細胞に同時形質移入した。形質移入した細胞を、10%FBSを含有するF12Hams培地で、2日間は淘汰圧をかけずに、その後4日間は淘汰圧をかけて回復させた。4日後、それらを、グルタミンを含有する無血清培地(Hyclone社製)に交換し、淘汰圧をかけた。一週後、細胞を発現について調べ、所望の容積にスケールアップした。融合分子は全て、3つのクロマトグラフィーステップ:プロテインA親和性、陽イオン交換、及び陰イオン交換の組み合わせを使用して精製した。各々は、製造業者の説明書に従って実施した。プロテインA親和性ステップを使用して、回収した細胞培養液(HCCF)から融合分子を選択的に及び効率的に結合させた。このステップでは、単一ステップで95%を超える生成不純物が、高収率及びハイスループットで除去された。このステップの後、所望の分子形態の融合分子の割合は、60〜98パーセントの範囲であった。GE社製のMABSELECTを、プロテインA親和性樹脂として使用した。第2のクロマトグラフィーステップでは、GE社製のSPFF(スルホプロピルファストフロー)、アガロース系樹脂を、陽イオン交換樹脂として使用した。このステップの後、所望の分子形態の融合分子の割合は、90〜99パーセントの範囲であった。GE社製のQSFF(第四級アミンセファロースファストフロー)、アガロース系の陰イオン交換樹脂を、第3及び最終クロマトグラフィーステップで使用した。精製された物質を、リン酸緩衝生理食塩水に対して濃縮及び透析した。このステップの後、融合分子の最終収量は、20mg〜100mg/Lの範囲だった。
【0202】
実施例7:IGF−1R及びErbB3経路を標的とする多様なBBAの結合及び生物学的活性
A)IGF−1R及びErbBに対するBBAの結合
1×10個のMCF7細胞及び1×10個のADRr細胞を、室温で2時間2μMのBBAと共にインキュベートし、その後12回の連続3倍希釈をする。その後、ヤギ抗HSA−Alexa647結合抗体を検出抗体として使用して、細胞を40分間氷上でインキュベートする。MCF7及びADRr細胞に対するBBAの細胞結合解離定数(結合親和性の尺度)を、FACSにより評価し、各BBAの見かけ上の解離定数を決定する。以下の結果が得られた(図12a及び12bも参照)。
【0203】
(表13)

【0204】
IgG−二重特異体(つまり、ELI−7、ILE−10、ILE−12)は、幾つかの場合、より低い濃度においてより強い結合性で両細胞タイプに結合し、各受容体に対する強力な結合及び結合能力を示した。IgG−二重特異体は、同等のモノクローナル抗体成分に対して同様のKdを示した。
【0205】
2×10個のBXPC3細胞を、0.5μMのBBAと共に室温で2時間インキュベートし、その後11回の連続2.5倍希釈をする。その後、ヤギ抗HSA−Alexa647結合抗体を検出抗体として使用して、細胞を45分間氷上でインキュベートする。BXPC3細胞に対するBBAの細胞結合解離定数(結合親和性の尺度)を、FACSにより評価し、各BBAに対する見かけ上の解離定数を決定する。以下の結果が得られた。
【0206】
図13は、3つの実験の代表的な結果を示す(下記で表にされている)。
【0207】
(表14)

【0208】
三価の二重特異体(ILE−7、ILE−9)は、対照二重特異体(ILE−2、ILE−3)よりも非常に強固に結合し、第2のErbB3結合部分を非重複エピトープに付加することにより、細胞に対する結合が著しく向上することが示される。
【0209】
B)BBAによるIGF−1R及びErbB3及びAktのシグナル阻害
IGF−1R及びErbB3及び共通の下流成分(Akt)をアンタゴナイズするBBAの能力を決定するために、IGF−1Rリン酸化、ErbB3リン酸化、及びAktリン酸化の阻害を、剤の存在下で検査する。3.5×10個のBXPC3細胞を、0.3μMのBBAと共に1時間プレインキュベートし、その後9回の連続3倍希釈をして10データ点の曲線を生成する。細胞を、80ng/mlのIGF−1及び20ng/mlのヘレグリンで15分間処理する。ホスホ−IGF−1R(pIGF−1R)を産生するIGF−1Rのリン酸化を、ELISA(R&D Systems社製;カタログ番号DYC1770)により測定して、pIGF−1R形成を阻害する剤の能力を評価する。ErbB3のリン酸化を、ELISA(R&D Systems社製;カタログ番号DYC1769)により測定して、pErbB3形成を阻害する剤の能力を評価する。AKTのリン酸化を、以下の抗体を使用してELISAにより測定する:抗AKT、クローンSKB1(Millipore社製、カタログ番号05−591);ビオチン化抗ホスホ−AKT(Ser473特異的;Cell Signaling Technology社製、カタログ番号5102)。図14A〜14Cには、ILE−7及びELI−7の結果が示されており、結果は、下記の表にも要約されている。
【0210】
(表15)

【0211】
ELI−7、IgG連結BBA及びILE−7、三価HSA連結BBAは、IGF−1及びHRGによる同時刺激でさえ、pErbB3、pIGF−1R、及びpAktを阻害することができる。
【0212】
C)2次元培養中でのBBAによる細胞増殖阻害
腫瘍細胞増殖に対する二重特異的剤の効果を、相対光量単位(RLU)として示される細胞性ATPの存在量を測定するルミネセンスに基づくアッセイであるCTGアッセイ(Promega社製;カタログ番号PR−G7572)を使用して、インビトロで検査する。1ウエル当たり500細胞のDU145細胞を、80ng/mlのIGF−1及び20ng/mlのヘレグリンと共に、2μMから開始した3倍稀釈の阻害剤を含有する培地で6日間インキュベートした。IgG二重特異的BBA ELI−7は、DU145細胞の増殖を阻害した(ELI−7の場合、Ki=12nM、図15を参照)。IGF−1R又はErbB3のみに対する阻害剤は、細胞増殖に効果を及ぼさなかった。
【0213】
1ウエル当たり2000細胞のBXPC3細胞を、1μMから開始した3倍稀釈の阻害剤を含有する培地で6日間インキュベートした。IgG二重特異的BBA ELI−7は、BXPC3増殖を46%阻害した(p<0.001、スチューデントT検定)(図16)。
【0214】
D)3次元培養中でのBBAによる細胞増殖阻害
腫瘍細胞増殖に対するBBAの効果を、相対光量単位(RLU)として示される細胞性ATPの存在量を測定するルミネセンスに基づくアッセイであるCTGアッセイ(Promega社製;カタログ番号PR−G7572)を使用して、インビトロで検査する。この場合、専用のナノ培養プレート(Scivax社製:カタログ番号NCP−L−MS−96)を使用して、3次元での細胞増殖を可能にする。10,000個のBXPC3細胞を、10%FBSを含有する培地で10日間インキュベートする。3日目の終了時に、2μMから開始した3倍稀釈液を使用して、阻害剤を種々のウエルに添加する。三価BBA ILE−9及びILE−7は、CTGで測定したところ、BXPC3細胞の増殖を、それぞれ44%及び48%阻害した(p<0.01、スチューデントt検定)(図17)。
【0215】
この場合、専用のナノ培養プレート(Scivax社製:カタログ番号NCP−L−MS−96)を使用して、3次元での細胞増殖を可能にする。10,000個のDU145細胞を、10%FBSを含有する培地で10日間インキュベートした。3日目の終了時に、2μMから開始した3倍稀釈液を使用して、阻害剤を種々のウエルに添加する。三価二重特異体、ILE−7は、CTGで測定したところ、DU145細胞の増殖を28%阻害する(p=0.02、スチューデントt検定)(図18)。
【0216】
E)がんのマウスモデルにおけるBBAによる腫瘍増殖阻害
がんのマウスモデルにおける腫瘍増殖に対するBBAの効果を、まず各BBAの薬物動態学的特性を計算することにより評価した。500μgの各HSA連結BBA又は600μgの各IgG連結BBAを、各マウスの尾部静脈に注射し(1阻害剤及び1時点当たり4匹のマウス)、その後種々の時点で血液を採取した(マウスをまず犠牲にし、その後心穿刺により血液を採取した)。HSA−リンカーを有するBBAの時点は、0.5、4、8、24、28、72、及び120時間である。IgG−リンカーを有するBBAの時点は、0.5、4、24、72、120、168、及び240時間である。HSA−リンカーを有するBBAの血中濃度を、IGF−1R及びErbB3結合を検出する自家製ELISAキットを使用して測定する。詳しくは、プレートをHisタグ付ヒトIGF−1Rでコーティングし、BBAと共にインキュベートし、その後ヒトErbB3−Fcキメラ及び抗Fc−HRP検出試薬で検出する。IgG−リンカーを有するBBAの血中濃度を、製造業者の説明書に従って抗ヒトIgG ELISAキット(Bethyl labs社製、カタログ番号E80−104)を使用して測定する。各BBAの薬物動態学的特性(半減期及びCmax)を、1コンパートメントモデルを使用して計算する。以下の結果が得られた。
【0217】
(表16)

【0218】
薬物特異的半減期のシミュレーションは、以下の用量が、等しい曝露量(又はILE−7の場合には、50%相当の曝露量)をもたらすだろうという予測に結び付いた。
【0219】
(表17)

【0220】
その後、膵臓癌のマウスモデルにおける腫瘍増殖に対するBBAの効果を、各マウス側腹の皮下空間に、5×10個のBXPC3細胞(PBS及び増殖因子が低減されたマトリゲルの1:1混合物に再懸濁されていた;BD Biosciences社製、カタログ番号354230)を注射することにより評価した。腫瘍を7〜10日間成長させ(それらが、およそ100〜200mmの体積に達するまで)、その後各マウスの腫瘍サイズを測定した(pi/6×長さ×幅、幅は最小測定値)。その後、マウスをサイズで一致させ、その後無作為に治療群に割当てた。その後、BBA、抗IGF−1R抗体、抗ErbB3抗体、又はPBS対照を、研究終了まで3日毎に注射した。図19A、19B、及び20は、ILE−7及びELI−7が両方とも、PBS対照と比較して、BXPC3細胞の異種移植片腫瘍増殖を有意に阻害し、最終腫瘍体積は、PBSと比較して、ILE−7で治療した腫瘍では82%低く、ELI−7で治療した腫瘍では77%低いことを示す(p値は、スチューデントT検定により決定した)。0日目は、投与の初日を指す。
【0221】
その後、前立腺癌のマウスモデルにおける腫瘍増殖に対するBBAの効果を、各マウス側腹の皮下空間に、5×10個のDU145細胞(PBS及び増殖因子が低減されたマトリゲルの1:1混合物に再懸濁されていた;BD Biosciences社製、カタログ番号354230)を注射することにより評価した。腫瘍を7〜10日間成長させ(それらが、およそ100〜200mmの体積に達するまで)、その後各マウスの腫瘍サイズを測定した(pi/6×長さ×幅、幅は最小測定値)。その後、マウスをサイズで一致させ、その後無作為に治療群に割当てた。その後、BBA、抗IGF−1R抗体、抗ErbB3抗体、又はPBS対照を、研究終了まで3日毎に注射した。図21A及び21Bは、BBA ILE−7及びELI−7が両方とも、DU145細胞の異種移植片腫瘍増殖を有意に阻害し、その一方でIGF−1R又はErbB3は阻害せず、最終腫瘍体積は、PBS対照と比較して、ILE−7で治療した腫瘍では57%低く、ELI−7で治療した腫瘍では50%低いことを示す(p値は、スチューデントT検定により決定した)。0日目は、投与の初日を指す。
【0222】
実施例8:BBAは、新規の作用機構を有しており、広範な受容体プロファイルにわたって効力を示す
A)三価BBA二重標的ErbB3は、新規の作用機構を有する
a.HSA−二重特異体は、限定的なシグナル伝達阻害を示す
幾つかの場合で、本発明者らは、1つの抗ErbB3部分のみを使用するBBAによるpErbB3の限定的な阻害を観察した。例えば、5nMのヘレグリンは、15分以内でADRr細胞にpErbB3を誘導するが、1時間のILE−2又はILE−3前処理による阻害は、不完全な阻害をもたらす(3倍希釈で1μMが最高用量)。特に、ILE−3は、低用量(<10nM)で最大達成可能阻害に達することができるが、60%を超えて阻害することができない(図22)。
【0223】
b.混合ErbB3アンタゴニストの予測
競合アッセイにより、抗ErbB3部分、SEQ ID NO:33及びSEQ ID NO:44が、ErbB3の個別のドメイン、ドメイン3及び1にそれぞれ結合することが示された。従って、SEQ ID NO:33及びSEQ ID NO:44を使用する阻害剤が、同時にErbB3に結合する可能性がある。これは下記に示されており、そこでは、ADRr細胞が、5nMのヘレグリンで15分間刺激され、阻害剤が、培地中で1時間プレインキュベートされた。
【0224】
SEQ ID NO:33(IgGとして)及びILE−3の組み合わせは、リン酸化ErbB3の完全阻害を達成することができ、抗ErbB3部分、SEQ ID NO:33及びSEQ ID NO:44が、補完的な作用機構を有することを示す(図23a及び23b)。
【0225】
c.三価二重特異型によるpErbB3の完全阻害の実験的確認
ILE−7(SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:44で構成される)が、実際にリン酸化ErbB3を完全に阻害することができることを確認するために、2×10個のADRr細胞を、BBAで1時間前処理した後で(0.5nMの開始濃度で、10データ点3倍希釈)、5nMのヘレグリンで15分間処理した。ILE−7はpErbB3を完全に阻害したが、ILE−3は阻害しなかった(図24)。
【0226】
同様の実験で、3.5×10個のBXPC3細胞を、BBAで1時間前処理した後で(0.5nMの開始濃度で、10データ点連続3倍希釈)、20ng/mlのヘレグリン及び80ng/mlのIGF1で15分間処理した。ILE−7は、リン酸化Aktシグナル伝達を阻害したが、ILE−3は、阻害できなかった(図25)。
【0227】
B)BBAは、広範囲のErbB3及びIGF−1R受容体レベルにわたってシグナル伝達を阻害する
二量体BBA(例えば、4つの結合部分、各標的に対して2つ、を有するBBA)が広範囲のErbB3及びIGF−1R受容体レベルにわたって下流シグナル伝達を阻害することができるかどうかを判断するために、以下の実験を実施した。
【0228】
BXPC3細胞受容体レベルは、pLKO.1 PUROベクター(Sigma社製)を使用して、BxPC−3細胞におけるIGF−1R又はErbB3のshRNA媒介性ノックダウンにより変動させた。その後、ErbB3及びIGF−1Rレベルを、定量的FACSにより測定し、その結果生じた分布から、平均受容体レベルを計算した(相対的発現レベルは、表1.1を参照)。BBAの効力を決定するために、細胞を血清飢餓させ、37℃にて1時間ELI−7で前処理し、その後20ng/mlのHRG+80ng/mlのIGF1で15分間刺激した。pAKTのシグナル阻害を、ELISAにより評価した。
【0229】
(表18)4つのBXPC3細胞株の相対的受容体レベル及びpAktのIC50値

【0230】
BBA ELI−7は、それらのIC50値及び重複した信頼区間により示されるように、修飾された受容体レベルを有するBXPC3細胞株にわたって同様の効力を示し(表1.1を参照)、それらが、広範な受容体プロファイルに対して幅広い活性を有することを示した(図26)。
【0231】
等価物
当業者であれば、単なる日常的な実験作業を使用して、本明細書に記載の特定の実施形態の等価物を多く認識し、又は確認及び実施することができるだろう。そのような等価物は、添付の特許請求の範囲により包含されることが意図されている。従属クレームで開示された実施形態のあらゆる組み合わせが、本開示の範囲内であることが企図される。
【0232】
参照による援用
本明細書に参照されている、ありとあらゆる米国及び外国特許及び係属特許出願及び公報の開示は、参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。
【0233】
付録A
抗がん剤











【0234】
(配列表)










































【特許請求の範囲】
【請求項1】
IGF−1R標的部分、リンカー部分、及びErbB3標的部分を含む二重特異的結合剤タンパク質であって、該IGF−1R標的部分が、IGF−1Rと特異的に結合し、該ErbB3標的部分が、ErbB3と特異的に結合し、該標的部分が各々、該リンカー部分に連結されている、前記二重特異的結合剤タンパク質。
【請求項2】
標的部分の各々が、リンカー部分にペプチド結合により共有結合で連結されて、単一のポリペプチドを形成しており、該リンカー部分が、2〜5、6〜10、11〜25、26〜50、51〜100、101〜250、251〜500、又は501〜1000個のアミノ酸の長さである、請求項1に記載の二重特異的結合剤。
【請求項3】
リンカー部分が、化学的に及び生物学的に不活性である、請求項1に記載の二重特異的結合剤。
【請求項4】
リンカー部分が、1つ又は複数のタンパク質ドメインで構成されている、請求項1に記載の二重特異的結合剤。
【請求項5】
リンカー部分が、Fcγ受容体、新生児型Fc受容体、腫瘍壊死因子ファミリー受容体を含む1つ又は複数の受容体、ヒト免疫グロブリン、又はヒト血清アルブミンと結合する、請求項1に記載の二重特異的結合剤。
【請求項6】
リンカー部分が、ヒト血清アルブミンである、請求項4に記載の二重特異的結合剤。
【請求項7】
リンカー部分が、免疫グロブリン又は免疫グロブリン断片である、請求項4に記載の二重特異的結合剤。
【請求項8】
リンカー部分が、腫瘍壊死因子相同ドメイン、又は腫瘍壊死因子相同ドメインの断片である、請求項4に記載の二重特異的結合剤。
【請求項9】
リンカー部分が、単量体を形成する、請求項1に記載の二重特異的結合剤。
【請求項10】
リンカー部分が、ホモ二量体又はヘテロ二量体を形成する、請求項1に記載の二重特異的結合剤。
【請求項11】
リンカー部分が、ホモ三量体又はヘテロ三量体を形成する、請求項1に記載の二重特異的結合剤。
【請求項12】
リンカー部分が、グリコシル化又は無グリコシル化されている、請求項1に記載の二重特異的結合剤。
【請求項13】
リンカー部分が、突然変異型のヒト血清アルブミンである、請求項6に記載の二重特異的結合剤。
【請求項14】
リンカーが、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4アイソタイプのヒト免疫グロブリンのCH2及び/又はCH3ドメインを含有している、請求項7に記載の二重特異的結合剤。
【請求項15】
リンカー部分が、ヒトTRAIL、ヒトLIGHT、ヒトCD40L、ヒトTNFα、ヒトCD95、ヒトBAFF、ヒトTWEAK、ヒトOX40、又はヒトTNFβの断片であり、該断片が、構成的に又は誘導可能に二量体化又は三量体化することが可能である、請求項8に記載の二重特異的結合剤。
【請求項16】
ErbB3標的部分が、リンカー部分のアミノ末端に連結されており、IGF−1R標的部分が、該リンカー部分のカルボキシ末端に連結されている、請求項1〜15のいずれか一項に記載の二重特異的結合剤。
【請求項17】
IGF−1R標的部分が、リンカー部分のアミノ末端に連結されており、ErbB3標的部分が、該リンカー部分のカルボキシ末端に連結されている、請求項1〜15のいずれか一項に記載の二重特異的結合剤。
【請求項18】
IGF−1R標的部分が、1つ又は複数の抗IGF−1R抗体を含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の二重特異的結合剤。
【請求項19】
抗IGF−1R抗体が、単鎖抗体である、請求項18に記載の二重特異的結合剤。
【請求項20】
抗IGF−1R抗体が、単一ドメイン抗体である、請求項18に記載の二重特異的結合剤。
【請求項21】
ErbB3標的部分が、1つ又は複数の抗ErbB3抗体を含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の二重特異的結合剤。
【請求項22】
抗ErbB3抗体が、単鎖抗体である、請求項21に記載の二重特異的結合剤。
【請求項23】
抗ErbB3抗体が、単一ドメイン抗体である、請求項21に記載の二重特異的結合剤。
【請求項24】
リンカー部分が、増強された溶解性を有するように糖鎖操作されている、請求項1に記載の二重特異的結合剤。
【請求項25】
リンカー部分が、増強された安定性を有するように操作されている、請求項1に記載の二重特異的結合剤。
【請求項26】
リンカー部分が、血清中半減期の延長を提供するように操作されている、請求項1に記載の二重特異的結合剤。
【請求項27】
リンカー部分が、低減された不均質性を有するように操作されている、請求項1に記載の二重特異的結合剤。
【請求項28】
IGF−1R標的部分及びErbB3標的部分のいずれか又は両方が、増強された安定性を有するように操作されている、請求項1に記載の二重特異的結合剤。
【請求項29】
IGF−1R標的部分及びErbB3標的部分のいずれか又は両方が、低減された不均質性を有するように操作されている、請求項1に記載の二重特異的結合剤。
【請求項30】
IGF−1R標的部分及びErbB3標的部分のいずれか又は両方が、発現の増強のために操作されている、請求項1に記載の二重特異的結合剤。
【請求項31】
IGF−1R標的部分が、2つの抗IGF−1R抗体を含み、ErbB3標的部分が、1つの抗ErbB3抗体を含む、請求項18に記載の二重特異的結合剤。
【請求項32】
請求項1〜31のいずれか一項に記載の二重特異的結合剤をコードする核酸分子。
【請求項33】
発現ベクターのプロモーターに機能的に連結された請求項32に記載の核酸分子を含み、二重特異的結合剤を発現することが可能な宿主細胞。
【請求項34】
二重特異的結合剤が発現される条件下で、請求項33に記載の宿主細胞を培養することを含む、二重特異的結合剤を作製する方法。
【請求項35】
腫瘍細胞を、該腫瘍細胞の増殖が阻害されるように、請求項1〜31のいずれか一項に記載の二重特異的結合剤と接触させることを含む、IGF−1R及びErbB3を発現する腫瘍細胞の増殖を阻害する方法。
【請求項36】
請求項1〜31のいずれか一項に記載の二重特異的結合剤を、腫瘍細胞増殖を低減するのに有効な量で患者に投与することを含む、腫瘍を治療する方法であって、
該腫瘍が、該患者に存在しており、かつIGF−1R及びErbB3を両方とも発現する腫瘍細胞を含む、
前記方法。
【請求項37】
腫瘍が、肺癌、肉腫、結腸直腸癌、頭頸部癌、膵臓癌、卵巣癌、又は乳癌の腫瘍である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
肺癌腫瘍が、非小細胞肺癌である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
肉腫が、ユーイング肉腫である、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
乳癌が、タモキシフェン抵抗性エストロゲン受容体陽性乳癌である、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
肺癌が、ゲフィチニブ抵抗性肺癌である、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
乳癌が、トラスツズマブ抵抗性転移性乳癌である、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
第2の抗がん剤を患者に投与すること、又は第2の抗がん治療理学療法を患者に施すことを更に含む、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
化学療法剤である第2の抗がん剤を投与することを更に含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
電離放射線である第2の抗がん治療理学療法を施すことを更に含む、請求項43に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2013−507926(P2013−507926A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534364(P2012−534364)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/052712
【国際公開番号】WO2011/047180
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(508044829)メリマック ファーマシューティカルズ インコーポレーティッド (8)
【出願人】(506181438)ダイアクス コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】