説明

IL−18アンタゴニストを用いる自己免疫疾患の治療

本発明は、関節リウマチ(RA)および炎症性腸疾患(IBD)を含めて、自己免疫疾患の分野に関する。特に、本発明は、TNF-αアンタゴニストおよび/またはT細胞共刺激アンタゴニストを用いる治療に対して経時的に非応答性または抵抗性である患者における自己免疫疾患を、IL-18アンタゴニストを用いて治療する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節リウマチ(rheumatoid arthritis: RA)および炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease: IBD)を含めて、自己免疫疾患の分野に関する。特に、本発明は、TNF-αアンタゴニストおよび/またはT細胞共刺激アンタゴニストを用いる治療に対して経時的に非応答性または抵抗性である患者における自己免疫疾患を、IL-18アンタゴニストを用いて治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自己免疫疾患は、自己の身体組織への異常な免疫系による攻撃を特徴とする疾患のグループである。自己免疫疾患では、身体の正常な「自己」分子が自分自身の抗体により誤って認識され、破壊に向けて標的化される。さらに、生体防御系が、攻撃すべき「異物」がないにもかかわらず、炎症反応を不適切に誘発する。
【0003】
関節リウマチ(RA)は進行性の関節損傷をもたらす慢性の全身性炎症性自己免疫疾患である。米国では人口の1%以上が関節リウマチ(RA)に罹患しており、一般に先進工業国では人口の0.5〜1%が罹患している。RAは世界中で最も一般的な慢性の炎症性多発性関節炎である(Pollard et al., 2005)。実際、すべての末梢関節がこの疾患によって侵される可能性があるが、最もよく侵される関節は手足と膝の関節である。RAは赤み、熱感、腫れ、痛みを特徴とする。多くの場合、RA患者はこわばり(特に、朝または長時間座った後のこわばり)と疲労感に耐えている。疾患が進行するにつれて、関節の変形や障害がよく見られる。
【0004】
RA、クローン病、乾癬を含めて、増加しつつある免疫性病変において腫瘍壊死因子-α(TNF-α)を遮断する生物製剤の臨床上の成功は、慢性炎症を引き起こすTNF-αの重要性を裏付けており、また、これらの病状に起因する苦痛を軽減する上で重要な一歩前進となっている。
【0005】
TNF-αは炎症と免疫反応に関与する重要なサイトカインである。TNF-αを標的とする多くの生物製剤が臨床用途のために承認されている(Maini and Taylor, 2000)。かかる製剤として以下のものが挙げられる:モノクローナル抗体(mAb)のインフリキシマブ(infliximab) [レミケード(RemicadeTM) - マウスFvを含むヒトIgG1κ抗体を含むキメラmAb]、およびアダリムマブ(adalimumab) [ヒュミラ(HumiraTM) - ファージディスプレイにより作製された「ヒト」抗体]、ならびに可溶性TNF-α受容体融合タンパク質のエタネルセプト(etanercept) [エンブレル(EnbrelTM) - ヒトIgG1のFc部分に連結された遺伝子組換えp75 TNF-α受容体ダイマー]。これらの製剤はTNF-α受容体に対してTNF-αの競合的阻害剤として作用する。臨床効果が証明されている他の抗TNF-α製剤には以下のものが含まれる:CDP571、ヒト化マウス相補性決定領域-3グラフト化抗TNF-αmAb;Celltech/Pharmacia社のPEG付加CDP870抗TNF-α抗体(Choy et al., 2002);およびAmgen社のPEG付加抗TNF-α受容体抗体(Davis et al., 2000)。
【0006】
RAや他の自己免疫疾患のための追加的および代替的治療が必要とされている。TNF-α遮断薬を投与された患者の20%ほどは応答せず(Kremer, 2001)、また、かなりの数の追加の患者が時間の経過とともに抗TNF-α療法に対して抵抗性となり(Durez et al., 2005)、さらなる治療戦略の必要性が強く求められている。患者の最大50%は5年後にはもはや抗TNF-α療法を受けていないことを示唆するデータが存在する。現在のところ、患者が抗TNF-α療法に応答しない理由、または最初に応答した患者がその後応答しなくなる理由は不明である。
【0007】
インフリキシマブは、点滴静注されるもので、1回の注射により投与されるアダリムマブやエタネルセプトと比べて見劣りする(Moreland et al., 2006)。さらに、抗TNF-α療法は感染症罹患率の増加と結びついている。特に、潜伏性の結核の再燃が問題となっており、結果的に治療開始前に患者を選別する必要がある(Keane et al, 2001)。また、エタネルセプトとインフリキシマブはどちらも神経系の障害、例えば多発性硬化症(MS)に至る脱髄に関係しており、さらにインフリキシマブはうっ血性心不全の高い発生率とも関連している。
【0008】
抗TNF-α療法に付随する問題ゆえに、研究者らは、新規な生物学的療法を用いて、RAや他の自己免疫/炎症性疾患の他の病原因子を標的にしようと模索してきた。
【0009】
アバタセプト(abatacept) (オレンシア(OrenciaTM))はT細胞共刺激経路に対する最初の免疫療法剤であった。この薬剤は、メトトレキセートやTNF-αアンタゴニストのような他の薬剤に対し十分な応答をしなかった患者を治療する目的で、米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている。アバタセプトは、疾患の活動性、クオリティ・オブ・ライフ(生活の質)および疾患のX線造影進行を改善することによって、RAでの臨床効果を示した。
【0010】
アバタセプトは、ヒトIgG1の修飾Fc部分に連結されたヒト細胞傷害性Tリンパ球関連抗原-4(CTLA-4)の細胞外ドメインからなる完全ヒト可溶性融合タンパク質である。抗原提示細胞(APC)上のCD80とCD86 (B7分子)に結合して、T細胞上のCD28との相互作用を妨害することによって、アバタセプトは完全T細胞活性化に必要とされる重要な共刺激経路の1つを阻害する。活性化されたT細胞は、RA患者のリウマチ滑膜に見られる慢性炎症へとつながる免疫プロセスを統合する上で、重要な役割を果たすことが広く認められている(Choy and Panayi, 2001)。これは細胞間接触ならびに単球、マクロファージおよび滑膜線維芽細胞からの多くの各種サイトカインの関与を通して達成される。こうしたサイトカイン(TNF-α、IL-1およびIL-6を含む)の放出はRAに特徴的な慢性炎症を引き起こす極めて重要な事象であると思われる。したがって、T細胞活性化の上流の事象を調節することによって、アバタセプトは伝統的な治療法やTNF-αアンタゴニストよりも免疫カスケードにおいて早期に作用して、RAの免疫病理学での多様な下流経路および事象に影響を及ぼす可能性を持っている(Weisman et al., 2004)。
【0011】
インフリキシマブと同様、アバタセプトは静注により投与されるが、そのことは投与の利便性を損ない、また、感染のリスクを高める。アバタセプトで最も多く報告された有害事象は頭痛、上気道感染症、鼻咽頭炎、それに吐き気である。重症の感染症が患者の3%に報告されている(Lundquist, 2007)。
【0012】
IL-18は、以前はインターフェロン-γ(IFN-γ)誘導因子(IGIF)と呼ばれていたもので、Tヘルパー細胞1型(Th1)応答において重要な役割を果たす炎症性サイトカインである。IL-18は、T細胞とNK細胞によるTNF-α産生の誘導を含む生物学的活性を示す。自己免疫/炎症性疾患の発症におけるIL-18の役割は実証されている。IL-18の発現は病気発症の直前に非肥満糖尿病(NOD)マウスの膵臓と脾臓で顕著に増加する(Rothe et al., 1997)。さらに、IL-18の投与はマウスの実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)の臨床的重症度を高めることが証明されている。このEAEは多発性硬化症(MS)のモデルとなるTh1介在自己免疫疾患である。加えて、中和抗ラットIL-18抗血清は雌LewisラットにおいてEAEの発症を予防することが示されている(Wildbaum et al., 1996)。Taniguchi et al. (1997)は、7種のマウスおよび6種のラット抗ヒトIL-18モノクローナル抗体(mAb)を記載しており、これらの抗体は明確に区別される4つの抗原部位と結合する。マウスmAbのうちの1つ(#125-2H)と6種のラットmAbはKG-1細胞によるIL-18誘導IFN-γ産生を阻害するが、その際ラットmAbは#125-2Hの中和活性の10分の1の活性を示す。
【0013】
ヨーロッパ特許EP0712931は、2種類のマウス抗ヒトIL-18モノクローナル抗体、H1 (IgG1)およびH2 (IgM)を開示している。ウェスタンブロット解析で検証したところ、両方のモノクローナル抗体とも膜結合型ヒトIL-18と反応するが、膜結合型ヒトIL-12とは反応しない。H1は、ヒトIL-18を精製するためにイムノアフィニティークロマトグラフィーのプロトコールで、また、ヒトIL-18を測定するためにELISAで利用される。H2はラジオイムノアッセイでヒトIL-18を測定するために利用される。
【0014】
WO01/58956号およびWO2005/047307号は、ヒトIL-18と結合する抗体、ならびに前記抗体を作製してRAのために使用する方法を開示している。
【0015】
WO2007/137984号(その内容をそのまま参照により本明細書に組み入れる)は、ヒト化抗IL-18抗体、前記抗体の作製方法、および前記抗体を用いる治療方法を開示している。さらに、治療可能性のある抗体を同定するための、例えば表面プラズモン共鳴を用いる、スクリーニング方法が開示されている。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、第1の態様において、TNF-αアンタゴニストおよび/またはT細胞共刺激アンタゴニストを用いる治療に非応答性または抵抗性である被験者における自己免疫疾患を治療する方法であって、その被験者に、治療に有効な量のIL-18アンタゴニストを投与するステップを含む方法を提供する。
【0017】
本発明の実施形態において、自己免疫疾患は炎症性腸疾患(IBD)、乾癬、I型糖尿病、多発性硬化症(MS)、または関節リウマチ(RA)のような関節炎疾患である。特定の実施形態では、自己免疫疾患はRAである。
【0018】
本発明の実施形態において、TNF-αアンタゴニストはインフリキシマブ(infliximab) (レミケード(RemicadeTM))、エタネルセプト(etanercept) (エンブレル(EnbrelTM))、アダリムマブ(adalimumab) (ヒュミラ(HumiraTM))、CDP571、CDP870、またはCNTO148 (ゴリムマブ(golimumab))である。別の実施形態では、TNF-αアンタゴニストはアダリムマブ(adalimumab) (ヒュミラ(HumiraTM))である。
【0019】
本発明の実施形態において、T細胞共刺激アンタゴニストはアバタセプト(abatacept) (オレンシア(OrenciaTM))である。
【0020】
本発明のさらなる実施形態において、IL-18アンタゴニストはIL-18に免疫特異的な抗体である。
【0021】
本発明の特定の抗IL-18抗体は、米国特許第6,706,487号およびWO2007/137984号(それらの内容をそのまま参照により本明細書に組み入れる)に記載されるものである。かくして、本発明の実施形態において、抗IL-18抗体は以下の相補性決定領域(CDR)を有する重鎖と軽鎖を含むヒト化抗体である:CDRH1: 配列番号1; CDRH2: 配列番号2; CDRH3: 配列番号3; CDRL1: 配列番号4; CDRL2: 配列番号5; CDRL3: 配列番号6。本発明のさらなる実施形態では、CDRの1つ以上がその変異体によって置き換えられてもよい。
【0022】
CDRおよびフレームワーク領域(FR)ならびにアミノ酸の番号付けは、他に指定しない限り、Kabat et al 「Sequences of Proteins of Immunological Interest」(免疫学的に重要なタンパク質の配列), 第4版, U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health (1987)に記載されるKabat定義に従うものとする。
【0023】
本発明の抗IL-18抗体は、配列番号7(H1)、配列番号8(H2)、配列番号9(H3)からなる群より選択される重鎖と、配列番号10(L1)、配列番号11(L2)、配列番号12(L3)からなる群より選択される軽鎖を含むことができる。IL-18と結合する、前記の重鎖および軽鎖配列のあらゆる機能的組み合わせが想定される。特に、本発明の抗IL-18抗体は以下のヒト化抗体のうちの1つを含むことができる:
配列番号7(H1)の重鎖と配列番号11(L2)の軽鎖、または配列番号7(H1)の重鎖と配列番号12(L3)の軽鎖を有するヒト化抗体;
配列番号8(H2)の重鎖と配列番号11(L2)の軽鎖、または配列番号8(H2)の重鎖と配列番号12(L3)の軽鎖を含むヒト化抗体;
配列番号9(H3)の重鎖と配列番号11(L2)の軽鎖、または配列番号9(H3)の重鎖と配列番号12(L3)の軽鎖を含むヒト化抗体。
【0024】
特に、抗IL-18抗体は配列番号7(H1)の重鎖と配列番号11(L2)の軽鎖を含むものである。この抗体を本明細書ではH1L2と呼ぶことにする。
【0025】
当技術分野ではよく理解されているように、アミノ酸は以下に示す側鎖の一般的な性質に基づいてグループに分けられ、こうしたグループ内の特定のアミノ酸置換、例えばある疎水性アミノ酸を別の疎水性アミノ酸で置換すること(例えば、ロイシンをバリンまたはイソロイシンで置換すること)は「保存的」であると見なされる。したがって、1つ以上の保存的アミノ酸置換をさらに有する本明細書に記載の配列は、本発明の範囲内と見なされる。
【0026】
側鎖 アミノ酸メンバー
疎水性 met, ala, val, leu, ile
中性親水性 cys, ser, thr
酸性 asp, glu
塩基性 asn, gln, his, lys, arg
鎖方向に影響を与える残基 gly, pro
芳香族 trp, tyr, phe
【0027】
本発明の実施形態において、抗IL-18抗体は、ELISAアッセイでヒトIL-18への結合について、配列番号7(H1)に示される配列を有する重鎖と配列番号11(L2)に示される配列を有する軽鎖を含む抗体と競合する抗体である。
【0028】
当業者には理解されるように、ある抗体(抗体A)が、特定の結合部位(ヒトIL-18)について、配列番号7に示される配列を有する重鎖と配列番号11に示される配列を有する軽鎖を含む抗体(抗体B)と競合するためには、抗体Aは前記アッセイで効果を及ぼすのに十分な量で存在する必要がある。例えば、抗体Aと抗体Bは等モル量で存在してよい。抗体Aが競合抗体である場合、抗体Aの存在はELISAアッセイにおいてヒトIL-18への抗体Bの結合を10%、20%、30%、40%または50%以上低減させうる。競合抗体(抗体A)はプレートに結合したヒトIL-18への抗体Bの結合を低下させるが、非IL-18特異的対照は低下させない。そうしたELISAアッセイでは、ヒトIL-18をイムノアッセイプレートに結合させることができる。
【0029】
本発明の別の実施形態において、抗IL-18抗体は、それぞれ配列番号7(H1)および配列番号11(L2)のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するポリペプチドを含む重鎖および/または軽鎖を含んでなり、かつヒトIL-18と結合するものである。
【0030】
本発明の別の実施形態では、IL-17Aの発現が、IL-18アンタゴニストで治療された被験者において下方制御(ダウンレギュレーション)される。IL-17Aの下方制御は、例えば定量PCRまたはトランスクリプトミクス(transcriptomics)を用いて測定することができる。
【0031】
本発明の一態様においては、TNF-αアンタゴニストおよび/またはT細胞共刺激アンタゴニストを用いる治療に非応答性または抵抗性である被験者における自己免疫疾患の治療に使用するためのIL-18アンタゴニストが提供される。
【0032】
本発明の別の態様においては、自己免疫疾患にかかった被験者におけるIL-17Aの発現または活性の下方制御に使用するためのIL-18アンタゴニストが提供される。
【0033】
本発明には、前記の抗体をコードするポリヌクレオチド配列も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、実施例1の実験計画を概説する略図である。この研究では6人の提供者を募集した。各患者から4〜5片のバイオプシーを採取した。次に各バイオプシーを4つの組織片に分けて、以下のいずれかの物質の存在下にex-vivoで3日間培養した:シナジス(SynagisTM)対照IgG (4μg/ml)、ヒュミラ(HumiraTM) (4μg/ml)、H1L2 (4μg/ml)、またはアバタセプト(Abatacept) (4μg/ml)。注釈:2人の患者からの組織片はアバタセプト処理を受けなかった。それゆえ、各処理グループの最終サンプル数は次のとおりであった:対照IgG (26)、ヒュミラ(HumiraTM) (26)、H1L2 (26)、アバタセプト(18)。
【図2】図2は、シナジス(SynagisTM)対照に対するH1L2、ヒュミラ(HumiraTM)およびアバタセプト処理についての、実施例1の滑膜組織片研究で観察された、マイクロアレイ遺伝子有意差(P0.05)発現変化をまとめたベン図(Venn diagram)である。
【図3−1】図3は、H1L2処理によって制御される選択された転写産物、すなわちA) TIMP4、B) Noggin、C) EGF、D) TNF-α、E) IL-18RAP、F) ITGA6についての、対照滑膜組織片サンプルにおける遺伝子発現に対する処理済み滑膜組織片サンプルにおける遺伝子発現の平均比率を95%信頼区間とともに示す。信頼区間が1.0ラインを越えない場合は、その処理が対照と比較してその遺伝子の発現を有意(P0.05)に変化させたことを示している。
【図3−2】図3−1の続き。
【図3−3】図3−1の続き。
【図4】図4は、IL17Aについての、未補正(生)p値から計算された、対照滑膜組織片サンプルにおける遺伝子発現に対する処理済み滑膜組織片サンプルにおける遺伝子発現の平均比率を95%信頼区間とともに示す。信頼区間が1.0ラインを越えない場合は、その処理が対照と比較してIL17Aの発現を有意(P0.05)に変化させたことを示している。表には比較のために倍率変化、生p値およびダネット(Dunnett)補正p値が示される。
【図5−1】図5は、H1L2処理によって制御される選択された転写産物、すなわちA) Noggin、B) EGF、C) TNF-α、D) IL-18RAP、E) TIMP4、F) ITGA6についての、各処理グループ(シナジス対照、H1L2、ヒュミラ、およびアバタセプト)のモデル化遺伝子発現強度に関する最小二乗平均(LS平均)プロットを95%信頼区間とともに示す。
【図5−2】図5−1の続き。
【図5−3】図5−1の続き。
【発明を実施するための形態】
【0035】
予想外にも、抗IL-18抗体は、TNF-αアンタゴニストのアダリブマブ(adalimumab)やT細胞共刺激アンタゴニストのアバタセプト(abatacept)と比較して、異なるサブセットの遺伝子の発現を調節していることが今回判明した。さらに予想外にも、抗IL-18抗体によって特異的に調節される遺伝子のサブセットにはIL-17Aが入っている。こうした観察結果は、IL-18アンタゴニストがTNF-αアンタゴニストやT細胞共刺激アンタゴニストを用いる治療に経時的に非応答性または抵抗性である患者の治療において有効でありうることを、初めて示唆するものである。
【0036】
「自己免疫疾患」は、自分自身の組織から発生しかつ自己の組織に向けられた疾患または障害である。自己免疫疾患または障害の例としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:関節炎と他の関節炎疾患(関節リウマチ(RA)、若年性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎を含む)、I型糖尿病、乾癬、炎症性腸疾患(IBD)(クローン病、潰瘍性大腸炎(UC)を含む)、全身性エリテマトーデス(SLE、ループス)、シェーグレン症候群、強皮症、血管炎(高安動脈炎、巨細胞性(側頭)動脈炎、結節性多発動脈炎、ウェグナー肉芽腫症、川崎病、限局性CNS血管炎、チャーグ・ストラウス(Churg-Strauss)動脈炎、顕微鏡的多発動脈炎/多発血管炎、過敏性血管炎(アレルギー性血管炎)、ヘノッホ・シェーライン(Henoch-Schonlein)紫斑病、本態性クリオグロブリン血管炎を含む)、未分化型脊椎関節症(USpA)、強直性脊椎炎(AS)、移植片対宿主病(GVHD)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、特発性肺線維症(IPF)、多発性硬化症(MS)、および喘息。上述した自己免疫疾患のいずれか1つ以上が本発明の治療方法の標的疾患となりうる。特定の実施形態では、自己免疫疾患は、IBD、乾癬、I型糖尿病、MS、およびRAのような関節炎疾患からなる群より選択される。特に、自己免疫疾患はRAまたはIBDである。別の実施形態では、自己免疫疾患はRAである。
【0037】
「TNF-αアンタゴニスト」は、TNF-αの生物学的活性をある程度阻害または拮抗する物質である。その拮抗作用は、TNF-αがその受容体に結合するのを妨げるか、またはその結合を抑制することによって達成される。TNF-αに結合してその活性を中和する物質(例えば、TNF-α結合タンパク質)が含まれ、同様に、可溶性または膜結合型TNF-α受容体に結合してその活性を中和する物質も含まれる。具体的に意図されるTNF-αアンタゴニストとしては、インフリキシマブ(infliximab) (レミケード(RemicadeTM))、エタネルセプト(etanercept) (エンブレル(EnbrelTM))、アダリムマブ(adalimumab) (ヒュミラ(HumiraTM))、CDP571、CDP870、およびCNTO148 (ゴリムマブ(golimumab))が挙げられる。本明細書で定義する「TNF-αアンタゴニスト」は「IL-18アンタゴニスト」を含まないものとする。誤解を避けるために、以下で定義するすべての「IL-18アンタゴニスト」は本明細書中で用いる「TNF-αアンタゴニスト」の定義から明確に除外される。
【0038】
「T細胞共刺激アンタゴニスト」は、T細胞共刺激シグナルを抑制または阻止することによってT細胞活性化を抑制または阻止することができる物質である。T細胞は完全活性化のための少なくとも2つのシグナル、すなわち抗原特異的シグナル(シグナル1)と共刺激シグナル(シグナル2)を必要とする。T細胞活性化共刺激アンタゴニストは、それゆえ、第2のシグナルを妨害する。第1のシグナルには、T細胞上のT細胞受容体と抗原提示細胞(APC)上の主要組織適合性複合体(MHC)分子との相互作用が含まれる。第2のシグナル、つまり共刺激シグナルには、T細胞上のCD28とAPC上のCD80/86 (B7分子)との相互作用が含まれる。T細胞共刺激アンタゴニストの例はアバタセプト(abatacept) (オレンシア(OrenciaTM))である。
【0039】
「IL-18アンタゴニスト」は、IL-18の生物学的活性をある程度阻害または拮抗する物質である。IL-18アンタゴニストには、IL-18と結合する物質(例えば、IL-18結合タンパク質(IL-18BP)、例えばIL-18BP-Fc融合タンパク質など)、またはIL-18の受容体に結合し、それによってIL-18がその生物学的活性を発揮するのを妨げるアンタゴニストが含まれる。特に意図されるIL-18アンタゴニストは、IL-18に免疫特異的であってIL-18の活性に拮抗する抗IL-18抗体である。IL-18アンタゴニストの非限定的な例としては、ヨーロッパ特許EP0712931に記載されるH1およびH2、H18-108 (Hamasaki et al., 2005)、ならびにWO01/58956号、WO2005/047307号およびWO2007/137984号に記載される抗体が挙げられる。
【0040】
「抗IL-18」という語は、それが本発明の抗体を指すとき、そうした抗体がヒトIL-18の生物学的活性を中和する能力があることを意味する。しかし、その種の抗体が非ヒト霊長類(例えば、アカゲザルおよび/またはカニクイザル)IL-18および/または他の種に存在する形態のIL-18の生物学的活性をもさらに中和しうることを排除するものではない。
【0041】
「抗体」という語は、本明細書では最も広い意味で用いられ、所望の生物学的活性を保持する限り、以下のものを包含する:モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、およびそれらの抗体フラグメント(Fab、Fd、Fab'、F(ab')2、Fv、ScFvフラグメント、および免疫グロブリン単一可変ドメイン(ドメイン抗体、dAb)を含む)、ならびに非Igスカフォールドに基づくドメイン。前記抗体はキメラ、ヒト化またはヒト抗体であってよい。
【0042】
「単一可変ドメイン」という語は、別の可変領域またはドメインとは無関係に、抗原またはエピトープと特異的に結合する抗原結合タンパク質の可変ドメイン(例えば、VH、VHH、VL)を指す。
【0043】
「ドメイン抗体」または「dAb」は、抗原と結合することができる「単一可変ドメイン」と同じとみなすことができる。単一可変ドメインはヒト抗体の可変ドメインでありうるが、さらにげっ歯類(例えば、WO 00/29004号に開示されるもの)、テンジクザメおよびラクダ科動物VHH dAbのような他の種に由来する単一抗体可変ドメインをも包含する。ラクダ科動物VHHは、もともと軽鎖がない重鎖抗体を産生する種(ラクダ、ラマ、アルパカ、ヒトコブラクダおよびグアナコを含む)に由来する免疫グロブリン単一可変ドメインポリペプチドである。そのようなVHHは当技術分野で利用可能な標準技法に従ってヒト化することができ、この種のドメインは「ドメイン抗体」とみなされる。本明細書中で用いるVHはラクダ科動物VHHドメインを包含する。
【0044】
「非Igスカフォールドに基づくドメイン」は、CTLA-4、リポカリン(lipocalin)、SpA、アフィボディ(Affibody)、アビマー(avimer)、GroEl、トランスフェリン、GroESおよびフィブロネクチン/アドネクチン(adnectin)からなる群より選択されるスカフォールドの誘導体であるドメインであって、天然のリガンド以外の抗原への結合を得るためにタンパク質工学に供されたドメインを包含する。
【0045】
抗体との関連で用いる「免疫特異的」とは、標的タンパク質(例えば、ヒトIL-18)と結合するが、他のタンパク質への結合が皆無であるかまたは有意でない抗体を意味する。しかし、この用語は、所定の種(例えば、ヒト)の標的タンパク質に対する抗体が他の種(例えば、非ヒト霊長類)のその標的タンパク質の別の形態とも交差反応しうる、という事実を排除するものではない。
【0046】
「TNF-αアンタゴニストまたはT細胞共刺激アンタゴニストを用いる治療に非応答性」とは、TNF-αアンタゴニストまたはT細胞共刺激アンタゴニストを用いた治療に応答しないか、または負の応答を示す被験者を指す。したがって、非応答性の被験者は、a) TNF-αアンタゴニストおよび/またはT細胞共刺激アンタゴニストを用いた治療の前と後で同じ疾患症状を呈するか、あるいはb) TNF-αアンタゴニストおよび/またはT細胞共刺激アンタゴニストを用いた治療の後で悪化した疾患症状を呈するだろう。
【0047】
「TNF-αアンタゴニストまたはT細胞共刺激アンタゴニストを用いる治療に抵抗性」とは、それぞれTNF-αアンタゴニストまたはT細胞共刺激アンタゴニストを用いた以前のまたは現在の治療に対する不十分な応答または非持続的な応答を指す。したがって、TNF-αアンタゴニストまたはT細胞共刺激アンタゴニストを用いた治療に抵抗性である被験者は、そうした治療に以前は応答したが、もはやその治療に同程度には応答しない被験者を含む。抵抗性の被験者には、明らかな回復または部分的回復の後に、病気が再発して、疾患症状がぶり返し、以前の状態に戻ってしまう被験者が含まれる。
【0048】
TNF-αアンタゴニストに対して不十分な応答を示す患者は一般に、疾患が重症および/または長引いており、しばしば治療が困難であり、一部の患者はTNF-αアンタゴニスト治療に先立つ非生物学的製剤にも不十分な応答を示していた(Lundquist, 2007)。
【0049】
「不十分なまたは非持続的な応答」は、治療に伴う毒性および/または不十分な治療効果に起因している可能性がある。特定の治療への不十分な応答は、疾患または障害と関連する1以上の臨床マーカー(当業者には知られている)を調べることで確認することができる。したがって、不十分な応答は対象となる自己免疫疾患の治療に精通した臨床医によって判定され得る。
【0050】
自己免疫疾患がRAである場合、治療に対する患者の応答を評価するための、広く認められた方法は、「ACR応答値」および「疾患活動性スコア28」(Disease Activity Score 28: DAS28)を利用するものである。ACR応答基準は治療に対する臨床応答および疾患活動性の低下を客観的に記録するものであり、一方DAS28は全般的な疾患活動性を評価するものである(Lundquist, 2007)。
【0051】
RAは研究することがさまざまな理由で困難である。まず第一に、患者間で大きなばらつきがある。すなわち、この疾患は年齢を問わず発症する;いろいろな関節がこの疾患によって侵される;破壊の程度と時間経過にばらつきがある;患者は早い時期に関節外症状を示すこともあり、示さないこともある;RA患者の最大40%、早期疾患ではさらに多くが、この疾患の古典的自己抗体であるリウマチ因子(RF)(その存在は重症度と破壊に関連している)について陰性である。第二に、可能性のある結果判定法、例えば、圧通関節数(TJC)または腫脹関節数(SJC)、指関節の朝のこわばり、患者または医師による疼痛または全般的疾患の評価などが数多く存在する。第三に、RA患者はこれらの変数の大部分の恐るべきプラセボ応答を受け入れやすい(Smolen et al., 2003)。
【0052】
米国リウマチ学会(American College of Rheumatology:ACR)は、変化に対して感受性であり、長期の予測値を有し、冗長性があるにしてもごくわずかであり、それゆえ疾患活動性および/または臨床試験の結果を判定する上で信頼性のある、臨床変数のコアセットを決定して、それを認証した。
【0053】
ACR改善基準は次のとおりである:
圧痛関節数の20%改善(TJC、68または28の関節数を使用);
および
腫脹関節数の20%改善(SJC、66または28の関節数を使用);
および
以下の項目中3項目の20%改善:患者による疾患活動性の全般的評価(視覚的アナログスケール(VAS)または5ポイントLikertスケール);医師による疾患活動性の全般的評価(VASまたは5ポイントLikertスケール);患者による疼痛の評価(VAS);患者による身体機能の評価(健康状態質問表による);急性期反応(赤血球沈降速度(ESR)またはC反応性タンパク質(CPR))。
【0054】
上記の基準は「ACR20応答」と呼ばれる。ACR50およびACR70応答は、それぞれ変数の50%または70%改善を示すことを除いて、先に定義したとおりである(Smolen et al., 2003)。
【0055】
TNF-αアンタゴニストまたはT細胞共刺激アンタゴニストを用いた治療に対するRA患者の「不十分な応答」は、ACR20より低いACR応答として定義することができる。
【0056】
疾患活動性スコア(DAS)は、RA患者の疾患活動性を測定するための組合せ指数である。DAS28は、28の関節数を用いるもので、以下に定義される:
DAS28 = 0.56√TJC28 + 0.28√SJC28 + 0.70(ln(ESR)) + 0.014(全体的な健康)
【0057】
DAS28は、0から10のスケールで、患者の関節リウマチの現在の活動性を示す数字を提供する。5.1より大きいDAS28は高い疾患活動性を示し、一方3.2より小さいDAS28は低い疾患活動性を示し、3.2〜5.1の数値は中程度の疾患活動性を示す。
【0058】
DAS28に基づいて、応答基準が開発されている:欧州リウマチ学会(European League Against Rheumatism: EULAR)応答基準。EULAR応答基準は、疾患活動性の変化だけでなく現在の疾患活動性をも含み、臨床試験で個々の応答を測定するために開発されたものである。応答者として分類されるためには、患者はDAS28において有意な変化を示し、さらに現在の疾患活動性が低い必要がある。疾患活動性の大幅な改善は、DAS28の1.2低下、および高い疾患活動性から中程度の疾患活動性への変化、または中程度から低い疾患活動性への変化として定義される。わずかな改善は、DAS28の0.6低下とともにカテゴリー間の(高から中への、または中から低への)変化として定義される。したがって、DAS28スコアの0.6未満の変化は臨床的に有意とみなされず、本明細書では「不十分な応答」と見なされる。
【0059】
ACR改善基準とEULAR応答基準は、それらの異なる構成にもかかわらず、臨床試験においてかなり一致していることが判明した(Fransen, 2005)。
【0060】
自己免疫疾患がクローン病/IBDである場合、臨床的に確証された指標がいくつか存在しており、例えば、クローン病活動指数(CDAI)、肛門周囲クローン病活動指数(PDAI)および瘻孔からの漏出の評価、ならびに炎症性腸疾患質問表(Inflammatory Bowel Disease Questionnaire: IBDQ)のような生活の質(quality of life)スコアが含まれる。さらに、いくつかの亜臨床的マーカー(CRP、糞便カルプロテクチン、腸透過性)および内視鏡的指標(クローン病の内視鏡的重症度指標(CDEIS)/クローン病のための単純内視鏡スコア(SES-CD))も存在する(Sostegni, 2003)。
【0061】
自己免疫疾患が乾癬である場合には、病変を肉眼でよく見ることができ、したがって比較的定量化しやすい。乾癬病変の基本的な特徴は発赤、肥厚および鱗屑である。残念ながら、この病変の単純な定量化は、患者ごとに異なって病変の影響を受けるので、疾患重症度の完全な評価ではない(Feldman, 2005)。
【0062】
乾癬面積と重症度の指標(PASI)スコアの75%低下(PASI 75)は、大部分の乾癬臨床試験のための主要評価項目のベンチマーク(基準指標)である(Carlin, 2004)。PASIは、病変部面積によって加重された、病変の平均的な発赤、肥厚および鱗屑の尺度(それぞれ0〜4のスケールで採点)である。PASI 75とPASI 50はいずれも臨床試験のための臨床的に意味のある評価項目であると考えられる。TNF-αアンタゴニストまたはT細胞共刺激アンタゴニストを用いた治療に対する乾癬患者の「不十分な応答」は、50未満のPASIスコア、より厳密には75未満のPASIスコア、として定義することができる。
【0063】
新たに開発された医薬の乾癬に対する効果を評価するために、Salford乾癬指数(SPI)、自己記入式PASI(Self-Administered PASI: SA-PASI)、および全米乾癬財団(National Psoriasis Foundation: NPF)の乾癬スコア(NPF-PS)など、他の指標も開発されている。定量的に乾癬を測定する他の2つの方法は生検と写真である(Feldman, 2005)。皮膚疾患によって影響される生活の質の面に焦点を当てた具体的手段としては、皮膚疾患ライフクオリティー指標(Dermatology Life Quality Index: DQLI)およびSkindexが挙げられる(Feldman, 2005)。
【0064】
RA、IBDおよび乾癬との関連で上に挙げた臨床マーカーおよび指標は単なる例であり、本発明を限定するものでは一切ない。対象となる自己免疫疾患の治療に精通した臨床医は、特定の治療に対する応答が十分であるか、それとも不十分であるかを判定する際に使用するための、最適なマーカーもしくは指標またはそれらの組み合わせを決定することができるだろう。
【0065】
「被験者」は脊椎動物を指し、特に哺乳動物、とりわけヒトである。イヌ、ウマ、ネコ、ウシなどのペットや家畜もこの定義に含まれる。
【0066】
「治療に有効な量」とは、特定の被験者または被験者集団において単独でまたは他の薬剤もしくは治療と併用して投与したとき、治療対象の疾患(例えば、RAなどの自己免疫疾患)を抑制し、阻止し、またはその疾患の改善を可能にするのに十分である物質(例えば、IL-18アンタゴニスト)の量(用量)を指す。「治療に有効な量」は、所望の治療効果を与える量、例えば特定の生物学的または医学的応答を引き出す量でありうる。注意すべきことは、物質の「治療に有効な量」は疾患を治す必要はないが、疾患に対する治療を少なくとも提供する必要がある、ことである。「治療に有効な量」は、治療対象の特定の疾患および被験者のため、研究室や臨床の現場で実験的に決定することができる。
【0067】
「同一性」(場合によって、ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの同一性)は、以下の(1)および(2)に提示したアルゴリズムを用いて計算された比較を意味する:
(1) ポリヌクレオチドの同一性は、所定の配列中のヌクレオチドの総数に、同一性パーセントを規定する整数を100で割った数を掛け、次にその積を前記配列中のヌクレオチドの総数から引くことによって、すなわち下記の式により算出される:
nn xn−(xn・y)
ここで、nnはヌクレオチド変化の数であり、xnは所定の配列中のヌクレオチドの総数であり、yは、95%では0.95、97%では0.97、100%では1.00などであり、そして「・」は乗算演算子の記号であり、その際、xnとyの非整数積は、それをxnから引く前に、最も近い整数に切り捨てられる。ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の変化は、そのコード配列にナンセンス、ミスセンスまたはフレームシフト変異を引き起こし、それによって、そのような変化の後にそのポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドを変更することがある。
【0068】
(2) ポリペプチドの同一性は、総アミノ酸数に、同一性パーセントを規定する整数を100で割った数を掛け、次にその積を前記総アミノ酸数から引くことによって、すなわち下記の式により算出される:
na xa−(xa・y)
ここで、naはアミノ酸変化の数であり、xaは配列中のアミノ酸の総数であり、yは、95%では0.95、97%では0.97、100%では1.00などであり、そして「・」は乗算演算子の記号であり、その際、xaとyの非整数積は、それをxaから引く前に、最も近い整数に切り捨てられる。
【0069】
「CDR」は、抗原結合タンパク質の相補性決定領域のアミノ酸配列として定義される。これらは免疫グロブリン重鎖および軽鎖の超可変領域である。免疫グロブリンの可変部には3つの重鎖CDRと3つの軽鎖CDR(またはCDR領域)が存在する。したがって、本明細書中で用いる「CDR」とは、3つ全ての重鎖CDR、3つ全ての軽鎖CDR、全ての重鎖および軽鎖CDR、または少なくとも2つのCDRを指す。
【0070】
本明細書全体を通して、全長抗体配列中のアミノ酸残基およびCDRに関するアミノ酸残基は、Kabatのナンバリング規則に従って番号付けされる。さらなる情報に関しては、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第4版, U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health (1987)を参照されたい。
【0071】
当業者には明らかであろうが、可変ドメイン配列および全長抗体配列中のアミノ酸残基に関する別のナンバリング規則が存在する。さらに、CDR配列に関する別のナンバリング規則も存在し、例えば、Chothia et al. (1989) Nature 342: 877-883に記載されるものである。抗体の構造およびタンパク質フォールディングは、他の残基がCDR配列の一部とみなされることを意味しており、また、当業者によってそうであると理解されている。
【0072】
「CDR変異体」は、CDRの1個から数個のアミノ酸の欠失もしくは置換による、またはCDRへの1個から数個のアミノ酸の付加もしくは挿入による、またはこれらの組み合わせによる、CDRアミノ酸配列の部分的変化を含む。CDR変異体はCDRのアミノ酸配列中に1、2、3、4、5または6個のアミノ酸の置換、付加または欠失を含みうる。CDR変異体はCDRのアミノ酸配列中に1、2または3個のアミノ酸の置換、挿入または欠失を含みうる。アミノ酸残基の置換は保存的置換であってよく、例えば、ある疎水性アミノ酸を別の疎水性アミノ酸で置換することができる。例えば、ロイシンがバリンまたはイソロイシンで置換される。
【0073】
変異型CDRを含む抗体は、上記のCDRを含むものと同じまたは同様の機能特性を示すだろう。したがって、変異型CDRを含む抗体は、本明細書に記載したCDRと同じまたは同様の結合親和性で、同じ標的タンパク質に結合することができる。
【0074】
本発明の医薬組成物に関して、当然のことながら、適切な投与剤形、投与量および投与経路を決定することは、薬学・医学分野における当業者のレベルの範囲内であり、以下で説明される。
【0075】
本発明のアンタゴニストの精製された調製物(特に抗体およびそのモノクローナル調製物)は、上記のようなヒト疾患および障害の治療に使用するための医薬組成物中に組み込むことができる。一般的に、そうした組成物は、許容される製薬業務として知られ、かつそれに求められる製薬上許容される(すなわち、不活性の)担体をさらに含む(例えば、Remingtons Pharmaceutical Sciences, 第16版, (1980), Mack Publishing Co.を参照されたい)。そのような担体の例としては、滅菌された担体、例えば、適当なバッファーを用いて5〜8のpH範囲に緩衝化された、食塩水、リンゲル液またはデキストロース溶液が挙げられる。注射用(例えば、静脈内、腹腔内、皮内、皮下、筋内もしくは門脈内)または持続注入用の医薬組成物は、目に見える粒子状物質を含まないことが好ましく、0.1ng〜1000mgのアンタゴニスト、一般には5mg〜25mgのアンタゴニストを含むことができる。かかる医薬組成物の調製方法は当業者に周知である。本発明の医薬組成物は、単位投与剤形中に0.1ng〜1000mgの治療用アンタゴニスト(特に本発明の抗体)を含み、場合によっては使用説明書を伴う。本発明の医薬組成物は、投与に先立って再調製するために、当業者によく知られたまたは明らかな方法に従って凍結乾燥(フリーズドライ)することができる。本発明の実施形態がIgG1アイソタイプの本発明の抗体を含む場合は、クエン酸塩(例:クエン酸ナトリウム)、EDTAまたはヒスチジンなどの銅キレート剤を医薬組成物に添加することで、このアイソタイプの抗体が銅によって分解される程度を減らすことができる(EP 0612251を参照されたい)。
【0076】
本発明のアンタゴニストを投与するための有効用量および治療計画は、一般には経験的に決定され、患者の年齢、体重、健康状態、および治療対象の疾患または障害といった諸要因に左右される。これらの要因は主治医の裁量権の範囲内である。適正な用量を選択するためのガイダンスは、例えばSmith et al (1977) Antibodies in human diagnosis and therapy, Raven Press, New Yorkに見い出すことができるが、一般には0.1mg〜1000mgの範囲である。ヒトRA患者をH1L2で治療するための可能性ある有効量は、滑液中のIL-18の90%阻害に基づいて、0.3〜0.8mgほど(体重70kgの被験者では4.3μg/kg〜11.4μg/kg)であり、この用量が反復投与(28日の投与間隔)後の定常状態において2時間静注される。
【0077】
治療対象の疾患または障害に応じて、治療に有効な量の本発明のアンタゴニストを含む医薬組成物は、有効量の他の医薬と同時に、別々に、または順次に用いることができる。有利には、本発明の抗体の部材キットを他の医薬とともに含む医薬組成物、場合により使用説明書を伴って含む医薬組成物もまた本発明により想定される。
【0078】
本明細書中で挙げた全ての文献は、参照により本明細書中に明示的かつ全体的に組み込まれる。
【0079】
本発明のさらなる詳細を以下の非限定的な実施例により説明する。
【実施例1】
【0080】
RA患者からの滑膜組織片のin vitro分析
はじめに
IL-18はRA滑液中に存在しており、血管新生を刺激しかつ接着分子の発現を上方制御することによってパンヌス形成に寄与すると考えられている。さらに、それはIFNγ産生を刺激し、また、TNF-αとIL-1βの局所産生に対して調節作用を有する。
【0081】
準備作業
患者:活動性の膝関節障害がある(すなわち、炎症を起こした膝関節にRAが見とめられる)RA患者をセント・ヴィンセント大学病院(Dublin)から募集した。
【0082】
巨視的分析:滑膜(SM)を、以前に認証された視覚的アナログスケール(VAS: 0〜100mm)を用いて巨視的に評価した。血管のマーキングは血管パターンによって規定した:曲がりくねったブッシュ状血管=1;まっすぐな分岐状血管=0。
【0083】
予備データ:予備実験では、約1mmの組織片を対照マウスモノクローナル抗体の存在下に培養した。サンプル組織片をいろいろな時間間隔で凍結させ、その後抗マウスIg抗体を用いて免疫組織化学的に分析した。これらの結果から、4μg/mlのマウス抗体とのインキュベーション後に、抗体は24時間で組織片全体に浸透することがわかった。この実験は組織片全体が抗体に曝されたことを実証したが、このことは以後の研究の前提条件であった。
【0084】
組織片の培養方法
関節鏡検査を受けている患者から組織片バイオプシーを取得した。滑膜組織は目に見えるほど赤くなっており、炎症を起こしていて、しばしば絨毛で覆われていた。その組織を直接可視化のもとで悪化した炎症の部位から採取した。それぞれの条件セットのため、1つの大きなSMバイオプシーを約1mm3の小片に切り分けた。その結果として、滑膜の構造と細胞浸潤が1セットの実験条件を通して変わらないようにした。その後、それぞれの大きなバイオプシーから切り分けたバイオプシーの1片を組織学的に検査して、滑膜の構造を評価した。
【0085】
SM組織片(1mm3)は96ウェルプレートで10%熱不活化ウシ胎仔血清、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含むDMEM中で培養した。そのSM組織片を4μg/mlの中和H1L2、ヒュミラ(HumiraTM) (アダリムマブ、ヒトIgG1抗TNF mAb、米国特許第6,090,382号)、シナジス(SynagisTM) (対照ヒトIgG1モノクローナル抗呼吸器合胞体ウイルス(RSV)抗体)またはオレンシア(OrenciaTM) (アバタセプト、ヒトIgG1抗CTLA-4 mAb、米国特許第5,851,795号)の存在下または非存在下に37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。SM組織片を瞬間凍結させて、RNAプロファイリング解析のため−80℃で保存した。
【0086】
実験計画を概説する略図を図1に示す。この研究のため6人の提供者を募り、各患者から4〜5片のバイオプシーを採取した。2人の患者から得られた組織片はアバタセプト処理を受けておらず、したがって、各処理グループの最終サンプル数は次のとおりであった:対照IgG (26)、ヒュミラ(26)、H1L2 (26)、アバタセプト(18)。
【0087】
RNA単離
全RNAは、ポリトロン(Polytron)型ホモジナイザー(YellowLine D1 25 Basic)および1mlのTriZol試薬(Invitrogen社)を用いて、6人の患者から得られた96の凍結SM組織片から単離した。RNAをさらに精製するため、RNeasyミニカラム(Qiagen社)を使用し、混入しているゲノムDNAを除くためのオンカラムDNase1ステップを行って、水で溶出した。抽出されたRNAの量はナノドロップ(NanoDrop)を用いて測定し、RNAの質はAgilent 2100バイオアナライザ(South Plainfield, NJ, USA)上でピコチップ(pico chip)を用いて評価した。RNAの収量は166.4〜1228.8ngの範囲であり、また、バイオアナライザで28Sおよび18S rRNAの可視ピークを示さなかったのは3つのサンプルだけであった。これら3つのサンプルを以後の分析から除外した。
【0088】
RNA増幅およびラベリング
93のサンプルと3つの増幅対照RNAを96ウェルプレートにランダムに配置した。3人の患者からのサンプルをプレートの各半分に入れて、各患者からのサンプルが2つのハイブリダイゼーションバッチに対して一緒になるようにした。2つ組のプレートの50ngの全RNAを増幅アンチセンスsscDNAに変換したが、それは、Ovation WB試薬を含むNuGEN社製のOvation RNA増幅システムV2をメーカーの説明書に従って使用して、Tecan Freedom Evoロボットで行った。cDNAはAgencourt AMPure磁性ビーズ精製システムを用いて精製した。cDNAの濃度はThermo Electron Varioskanスペクトル走査マルチモードリーダーにおける測定により決定し、cDNAの質はAgilent 2100バイオアナライザ上でナノチップにより評価した。各バッチからの1μgのcDNAをqPCRのために分注し、バッチ2からの3.75μgのcDNAをアレイのために分注した。
【0089】
定量PCR
2つ組のcDNAを10ng/μlに希釈して、384ウェルプレートに2μl/ウェルでふり分けた。Applied Biosystems 7900装置でTaqMan 384デフォルトプログラムを用いてプレートをPCRのサイクルに供した。全てのプライマー(Sigma-Genosys社)およびTaqManプローブ(Biosearch Technologies社)は、10000コピーから1コピーまでの10倍連続希釈で、テンプレートとしてゲノムDNAを用いてアッセイ条件下で試験した。
【0090】
TaqMan反応(TaqManユニバーサルPCRマスターミックス(Applied Biosystems社)をメーカーの説明書に従って使用)をGAPDH、b-アクチン、シクロフィリンおよびTNF-αについて完了させた。SYBR green反応(SYBR green PCRマスターミックス(Applied Biosystems社)をメーカーの説明書に従って使用)をIL17Aについて完了させた。SDS v2.2.2を用いてデータを集め、得られたCTをさらなる解析のためExcelにエクスポートした。各複製につき、全RNA 20ngあたりのコピー数を得た。その後、全RNA 20ngあたりの平均コピー数を算出して、さらなる解析のため集計した。ただ1つのH1L2処理バイオプシーだけが信頼できるデータをもたらさず、それを以後の解析から除外した。
【0091】
qPCR用のプライマーおよび(用いる場合には)プローブの配列:
GAPDH (Hs. 544577, 2597)のためのTaqManプライマーおよびプローブ配列
フォワードプライマー: CAAGGTCATCCATGACAACTTTG (配列番号14)
リバースプライマー: GGGCCATCCACAGTCTTCTG (配列番号15)
プローブ: ACCACAGTCCATGCCATCACTGCCAT (配列番号16);
b-アクチン(Hs. 520640, 60)のためのTaqManプライマーおよびプローブ配列
フォワードプライマー: GAGCTACGAGCTGCCTGACTG (配列番号17)
リバースプライマー: GTAGTTTCGTGGATGCCACAGGACT (配列番号18)
プローブ: CATCACCATTGGCAATGAGCGGTTTCC (配列番号19);
シクロフィリン(Hs. 356331, 5478)のためのTaqManプライマーおよびプローブ配列
フォワードプライマー: CATCTGCACTGCCAAGACTGA (配列番号20)
リバースプライマー: CCACAATATTCATGCCTTCTTTCA (配列番号21)
プローブ: CCAAACACCACATGCTTGCCATCCA (配列番号22);
TNF-α(Hs. 241570, 7124)のためのTaqManプライマーおよびプローブ配列
フォワードプライマー: GGTGCTTGTTCCTCAGCCTC (配列番号23)
リバースプライマー: CAGGCAGAAGAGCGTGGTG (配列番号24)
プローブ: CTCCTTCCTGATCGTGGCAGGCG (配列番号25);
IL17A (Hs. 41724, 3605)のためのSybrManプライマー配列
フォワードプライマー: CGCAATGAGGACCCTGAGA (配列番号26)
リバースプライマー: ACGTTCCCATCAGCGTTGA (配列番号27)
【0092】
アフィメトリックス(Affymetrix)マイクロアレイ
3.75μgの増幅cDNAの断片化およびビオチンによる標識を、FL-Ovation cDNA Biotin Module V2 (NuGEN Technologies社)を用いて行い、NuGENプロトコールに従ってハイブリダイゼーションカクテルを調製した。次に、カクテルを2つのバッチでU133plus2.0全ゲノムGeneChipに、Affymetrixプロトコールに従ってハイブリダイズさせた。GeneChipをGeneChip 3000スキャナでスキャンし、GeneChip Operating Software (Affymetrix社)を用いてアレイの各特徴の蛍光強度を得た。合計93サンプルをハイブリダイズさせ、標準Affymetrix品質管理基準について評価した。1つのサンプル(H1L2処理バイオプシー)は低い品質QC基準(b-アクチン3'5'比 20256、存在パーセント40.30)を与え、以後の解析から除外した。残りのサンプルのバックグラウンドは27.12〜43.15の範囲であり、また、アレイ全体で検出されたプローブセットの平均パーセントは65.97であって、データの高い品質を反映していた。NetAffx (www.affymetrix.com)によるAffymetrix標準アノテーションを用いて、全プローブセットを遺伝子にマッピングした。
【0093】
定量PCRデータ解析
データは全ての解析のためにlog10に変換した。分散分析を用いてハウスキーパー遺伝子発現(GAPDH、b-アクチンおよびシクロフィリン)を処理効果について調べた。GAPDHは有意な処理効果を示し、それゆえ標準化因子として除外した。b-アクチンとシクロフィリンの主成分分析(Simca-P v11)からの第1の主成分はRNAローディング標準化のための共変量として使用した。その後、TNF-αとIL17AのデータをSASv9.1で解析するにあたって、処理を主因子とし、ハウスキーパーの主成分を共変量とし、患者とバイオプシー(患者内にネスト化した)をランダム因子とした混合モデルの分散分析により解析した。ベースライン(SynagisTM対照IgG処理グループ)と比較した各処理の概算値を算出した。倍率変化、生p値およびダネット(Dunnett)補正p値を決定した。
【0094】
トランスクリプトミクス(transcriptomics)データ解析
各スキャンの生シグナル強度(.Celファイル)を遺伝子発現解析ソフトウェアResolver v5.1 (Rosetta Biosoftware社, Seattle, USA)にインポートした。シグナル抽出をResolver内で行い、次に標準化データをさらなる解析のためにエクスポートした。全てのプローブセット(54,613)をlog10に変換し(1未満の数値は底を1とした)、SASv9.1において処理を主因子とし、患者とバイオプシー(患者内にネスト化した)をランダム因子として混合モデルの分散分析により解析した。ベースライン(SynagisTM対照IgG処理グループ)と比較した各処理の概算値を算出し、倍率変化および未補正p値を決定した。データをフィルタリングにかけて、検出が不十分なプローブセット(全ての処理グループにおいて中央値強度<30を示すプローブセットと定義される)と、設計が不適切なプローブセット(アンチセンスまたはイントロン領域に対して設計されたもの)を除いた。
【0095】
Taqmanおよびトランスクリプトミクスの結果
96のうち93のSM組織片から良質の全RNAを、トランスクリプトーム解析に十分なRNA収量で単離した。次いで定量RT-PCRおよびオープンプラットフォーム全ゲノムAffymetrixプロファイリングを実施した。ただ1つのH1L2処理バイオプシーは使用可能なデータが両プラットフォームで得られず、データ解析から除外した。
【0096】
定量RT-PCRからは、SynagisTM IgG対照と比較して、H1L2処理組織片におけるIL-17Aの有意に低い発現が実証された。TNF-α発現では、処理を対照と比較したとき、下方制御(ダウンレギュレーション)の可能性があるシグナルを検出したが、このシグナルは統計的に有意でなかった。
【表1】

【0097】
表1はqPCRからの結果を示す。ベースライン(SynagisTM対照IgG処理グループ)と比較したH1L2、ヒュミラ(HumiraTM)、およびアバタセプトにおける倍率変化、ならびに生p値およびダネット(Dunnett)補正p値。
【0098】
Affymetrix U133plus2.0 Genechips(38,500のよく特性解析された遺伝子の転写産物を含む)へのハイブリダイゼーションは、3083のAffymetrixプローブセットについて、SynagisTM IgG対照と比較してH1L2処理組織片で有意な変化(検出が信頼できるプローブセット、P0.05)を確認した。4052の有意な変化がヒュミラ(HumiraTM)処理組織片において、また、940の有意な変化がアバタセプト処理組織片において確認された。処理間にはオーバーラップがあり、プローブセットの約30%(1095)は、H1L2処理で有意な変化を示し、かつHumiraTM処理でも変化を示す。しかし、HumiraTMでは有意な変化を示さない(P0.05)が、H1L2に対して特異的である1801の有意な変化(P0.05)が確認された。これらのマイクロアレイの結果を図2のベン図(Venn diagram)にまとめて示す。
【0099】
H1L2で確かな発現変化を示すが、HumiraTMでは変化を示さない遺伝子を同定するため、H1L2で変化|1.25|倍率を示し(P0.05)かつHumiraTMでは有意な変化を示さない(P>0.2)データについてフィルタリングを行った。これにより、233のプローブセット(149が上方制御され、84が下方制御される)のリストが作成された。記録のため、アノテーションされていない全てのプローブセット(不明の標的遺伝子)が除かれ、下方制御されるプローブセットのみが表2に示してある。しかし、上方制御された2つのプローブセット、ITGA6とSynapsin IIが表2に含まれる。
【0100】
プローブセット243879_atはSynapsin IIにマッピングされているが、このプローブセットは実際には、次の理由のため、TIMP4に対応する可能性が高いと思われる。まず第一に、Synapsin IIはTIMP4と染色体位置を共有する。第二に、Synapsin IIとRAとの関連性が文献に一切報告されていないが、げっ歯類RAモデルでのTIMP4の予防的役割が報告されている。第三に、内部マッピングアルゴリズムはSynapsin IIの代わりにTIMP4を表すとして243879_atを同定している。
【0101】
TIMP4の遺伝子は遺伝子SYN2のイントロン領域内に位置するが、反対方向である。AffymetrixプローブはTIMP4のコード領域の3'末端とSYN2エキソンとの間の領域に位置し、プライマーは全てがTIMP4の方向で読み取る。コンセンサス配列を作成するために用いたESTの大部分はポリTを含み、ポリTはTIMP4 UTR領域の末端の逆方向ポリAテイルとフィットする。さらに、Ensembl Affymetrixマッピングもまた、このプローブセットをTIMP4にマッピングする。
【0102】
Synapsin IIへの誤ったマッピングはNetAffxで起こった可能性がある。というのは、NetAffxアノテーションがEST IDによるUniGeneの検索に基づいており、UniGeneがSYN2 ESTと一緒にTIMP4 ESTをプールしているからである。さらに、誤ったマッピングは、これらのサンプルがRA滑膜組織に由来すること、およびSynapsin IIが脳で豊富に発現されること、の事実によっても支持される。
【表2】


【0103】
表2は、マイクロアレイ研究から得られたH1L2およびヒュミラ(HumiraTM)の倍率変化とp値を示す。全てのプローブセットは、NetAffx (www.affymetrix.com)によるAffymetrix標準アノテーションを用いて遺伝子にマッピングされた。表は、H1L2では発現変化-1.25を示すがヒュミラでは示さない(P0.05 H1L2 vs. Synagis;P>0.2 ヒュミラ vs. Synagis)プローブセットのみを示すために、フィルタリングされている。上方制御される2つの遺伝子、すなわちITGA6とSynapsin II (TIMP4 - 上記参照)のデータも含まれている。
【0104】
H1L2処理を対照と比較したとき、TNF-α発現の有意な変化がマイクロアレイによって観察されたが、TaqManでは観察されなかった。両技法とも同じサンプルで行ったので、これはTaqManのほうが技術的変動が高いことおよび検出される倍率変化が小さいことにより説明される(TaqMan標準化はマイクロアレイより標準化するために用いるデータポイントが少ない)。詳細を提供するために両方のデータに対して出力計算を行った。TaqManによるTNF-α発現の処理間の測定差は1.31であり、出力計算からは、我々が1.35の倍率変化に対して有意性(P<0.05)に到達する可能性は20%であることが示された。したがって、1.31の倍率変化がTaqManによって有意な変化として検出されることはまずあり得ない。反対に、マイクロアレイによるTNF-α発現の処理間の測定差は1.45であり、出力計算によれば、我々が1.45の倍率変化に対して有意性(P<0.05)に到達する可能性は70%であることが示された。したがって、1.45の倍率変化がマイクロアレイによって有意な変化として検出される可能性は高い。
【0105】
結論
我々の実験と現在の知識から、H1L2がTNF-αアンタゴニストのアダリムマブ(HumiraTM)およびT細胞共刺激アンタゴニストのアバタセプトと比較して異なるサブセットの遺伝子の発現を調節することは明らかである(図2参照)。H1L2処理に特異的で(P0.05)、それゆえアダリムマブにもアバタセプト(P>0.05)にも観察されない、1801の遺伝子発現の有意な変化が検出された。この変化の数は、H1L2処理で検出された変化の総数の58%に相当する。
【0106】
上記のデータから、TNF-αアンタゴニスト、T細胞共刺激アンタゴニストおよびIL-18アンタゴニストは異なる遺伝子サブセットの発現に影響を及ぼすことが明白である。コアセットの遺伝子は3種すべてのアンタゴニストによって影響される;3種のうちの2種のアンタゴニストによって影響されるが、3番目のアンタゴニストによっては影響されない遺伝子が存在する;また、1種のみのアンタゴニストによって影響される遺伝子が存在する。病状と関連している遺伝子が存在し、それらの遺伝子が1種のアンタゴニストによって特異的に標的化されるが、他の2種によっては標的化されない場合、他の2種のアンタゴニストに非応答性または抵抗性である被験者を治療できる可能性が出てくる。これらの結果は、IL-18アンタゴニストがTNF-αアンタゴニストとT細胞共刺激アンタゴニストによる治療に非応答性または抵抗性である患者において有益でありうることを、初めて示すものである。
【0107】
予想外にも、炎症反応に関与し、RAを含めていくつかの自己免疫疾患に関連しているサイトカインIL-17Aは、抗IL-18抗体H1L2によって特異的に調節されるが、アダリムマブやアバタセプトによっては調節されない遺伝子のサブセットに入る(表1参照)。
【0108】
IL-17Aは主にCD4+ T細胞により産生される。IL-17Aの主な作用は、炎症性メディエーター(TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-12およびPGE2)のマクロファージによる産生(Jovanovic et al., 1998)、ならびにIL-16およびIL-8の線維芽細胞とケラチノサイトによる産生を含めて、炎症誘発性である。組換えIL-17Aを関節に注入すると、関節の炎症や軟骨の破壊が起こることが報告されている(Dudler et al., 2000)。マウス軟骨誘発関節炎(CIA)モデルでは、IL-17Aをコードするアデノウイルスの注入により、疾患の重症度が増し、また、IL-1とは別の作用機序を介する核内因子κB活性化受容体リガンド(receptor activator of nuclear factor κB ligand: RANKL)の産生が誘導される(Lubbers et al., 2000)。IL-17Aはリウマチ滑膜に、特に数多くのT細胞を含む領域に、見い出される。これらの細胞は骨量減少と軟骨退化へと至る破壊過程に直接かかわっているようである(Chabaud et al., 1999)。
【0109】
IL-17Aの遮断は多くの関節炎モデルにおいて炎症、関節の破壊および疾患の進行をin vivoで抑制する。IL-17A受容体(IL-17R)Fc融合タンパク質の使用は、マウスCIAでは巨視的レベルで(Nakae et al., 2003)、さらに関節炎のラットアジュバント誘発関節炎(AIA)モデルでは組織学的分析によって、関節の損傷を抑制することが実証されている。IL-17AおよびIL-17Rに対する市販の中和抗体(いずれもラット抗マウス)の使用は、関節炎の感染モデルにおいて腫れおよび関節炎の発症を抑えることが実証されている(Nakae et al., 2003)。ウサギ抗マウスポリクローナル抗体がマウス関節炎モデルで使用されたが、それらは関節損傷と軟骨破壊の重症度の低下および炎症性メディエーター(RANKL、IL-1β、IL-6など)のレベルの低下を実証した(Lubberts et al., 2004)。最近になって、Hoeve et al., (2006)は、ヒトT細胞によるIL-17Aの産生に及ぼすIL-12およびIL-23の分岐効果を記載した。
【0110】
RAの治療に特に関係がある、次の遺伝子の発現はH1L2処理で特異的に下方制御されるが、HumiraTM処理では下方制御されない:noggin、EGF、TNF-αおよびIL-18RAP (表2参照)。
【0111】
nogginはマウスCIAモデルにおいて軟骨損傷に関与している(Lories et al., 2006)。EGFはADAMTS7と選択的に結合するが、ADAMTS7は軟骨オリゴマー基質タンパク質に直接結合して、それを分解するメタロプロテイナーゼである(Liu et al., 2006)。EGFは骨格の発達中に軟骨細胞の増殖を促進し、RAでは滑液中に蓄積する(Bonassar et al., 1997)。EGFはDNA合成とMMP-1およびMMP-3の産生を高める(Domeij et al., 2002)。TNF-αは多くの細胞型(血液単球、マクロファージ、マスト細胞および内皮細胞)によって産生される炎症性サイトカインであって、多発性の自己免疫および非自己免疫疾患の発症機構において重要な役割を果たしている(Atzeni et al., 2007)。IL-18RAP (IL-18Rβ)は、IL-18シグナル伝達およびIL-18Rα受容体鎖へのリガンド結合親和性にとって不可欠である(Fizsher et al., 2007)。
【0112】
表2はまた、インテグリン-α6およびTIMP-4 (243879_atはSynapsin IIとしてマッピングされた)(両方ともRA関連遺伝子)はH1L2処理で特異的に上方制御されるが、HumiraTM処理では上方制御されないことを示している。
【0113】
インテグリン-α6は過形成性の滑膜中に非常に低いレベルで存在し、一方、非炎症性の滑膜ではこのインテグリンがよく発現されている。このインテグリンはTGF-βによって増強され、TNF-αとインターフェロン-γの組み合わせによって下方制御される(Pirila et al., 1996)。TIMP-4はマトリックスメタロプロテイナーゼの組織阻害剤である。TIMP-4による処置はラット関節炎モデルにおいて疾患スコアを改善することが報告されている(Ramamurthy et al., 2005)。
【0114】
これらの結論は我々の現在の知見に基づくものである。しかし、関係する正確な作用機序の知識は不完全であるかもしれない。
【0115】
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【0116】
配列表
配列番号1 (CDRH1)
GYYFH

配列番号2 (CDRH2)
RIDPEDDSTKYAERFKD

配列番号3 (CDRH3)
WRIYRDSSGRPFYVMDA

配列番号4 (CDRL1)
LASEDIYTYLT

配列番号5 (CDRL2)
GANKLQD
【0117】
配列番号6 (CDRL3)
LQGSKFPLT

配列番号7 (H1)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKVSGEISTGYYFHWVRQAPGKGLEWMGRIDPEDDSTKYAERFKDRVTMTEDTSTDTAYMELSSLRSEDTAVYYCTTWRIYRDSSGRPFYVMDAWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK

配列番号8 (H2)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKVSGEISTGYYFHWVRRRPGKGLEWMGRIDPEDDSTKYAERFKDRVTMTEDTSTDTAYMELSSLRSEDTAVYYCTTWRIYRDSSGRPFYVMDAWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK

配列番号9 (H3)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKVSGEISTGYYFHFVRRRPGKGLEWMGRIDPEDDSTKYAERFKDRVTMTADTSTDTAYMELSSLRSEDTATYFCTTWRIYRDSSGRPFYVMDAWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK

配列番号10 (L1)
DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCLASEDIYTYLTWYQQKPGKAPKLLIYGANKLQDGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLQGSKFPLTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0118】
配列番号11 (L2)
DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCLASEDIYTYLTWYQQKPGKAPKLLIYGANKLQDGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCLQGSKFPLTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC

配列番号12 (L3)
DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCLASEDIYTYLTWYQQKPGKAPQLLIYGANKLQDGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDEGDYYCLQGSKFPLTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC

配列番号13 (IL-18)
MAAEPVEDNCINFVAMKFIDNTLYFIAEDDENLESDYFGKLESKLSVIRNLNDQVLFIDQGNRPLFEDMTDSDCRDNAPRTIFIISMYKDSQPRGMAVTISVKCEKISTLSCENKIISFKEMNPPDNIKDTKSDIIFFQRSVPGHDNKMQFESSSYEGYFLACEKERDLFKLILKKEDELGDRSIMFTVQNED

配列番号14 (GADPH (Hs. 544577, 2597)に対するTaqManフォワードプライマー)
CAAGGTCATCCATGACAACTTTG

配列番号15 (GADPH (Hs. 544577, 2597)に対するTaqManリバースプライマー)
GGGCCATCCACAGTCTTCTG
【0119】
配列番号16 (GADPH (Hs. 544577, 2597)に対するTaqManプローブ配列)
ACCACAGTCCATGCCATCACTGCCAT

配列番号17 (B-アクチン(Hs. 520640, 60)に対するTaqManフォワードプライマー)
GAGCTACGAGCTGCCTGACTG

配列番号18 (B-アクチン(Hs. 520640, 60)に対するTaqManリバースプライマー)
GTAGTTTCGTGGATGCCACAGGACT

配列番号19 (B-アクチン(Hs. 520640, 60)に対するTaqManプローブ配列)
CATCACCATTGGCAATGAGCGGTTTCC

配列番号20 (シクロフィリン(Hs. 356331, 5478)に対するTaqManフォワードプライマー)
CATCTGCACTGCCAAGACTGA
【0120】
配列番号21 (シクロフィリン(Hs. 356331, 5478)に対するTaqManリバースプライマー)
CCACAATATTCATGCCTTCTTTCA

配列番号22 (シクロフィリン(Hs. 356331, 5478)に対するTaqManプローブ配列)
CCAAACACCACATGCTTGCCATCCA

配列番号23 (TNF-α(Hs. 241570, 7124)に対するTaqManフォワードプライマー)
GGTGCTTGTTCCTCAGCCTC

配列番号24 (TNF-α(Hs. 241570, 7124)に対するTaqManリバースプライマー)
CAGGCAGAAGAGCGTGGTG

配列番号25 (TNF-α(Hs. 241570, 7124)に対するTaqManプローブ配列)
CTCCTTCCTGATCGTGGCAGGCG
【0121】
配列番号26 (IL17A (Hs. 41724, 3605)に対するSybrManフォワードプライマー配列)
CGCAATGAGGACCCTGAGA

配列番号27 (IL17A (Hs. 41724, 3605)に対するSybrManリバースプライマー配列)
ACGTTCCCATCAGCGTTGA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TNF-αアンタゴニストおよび/またはT細胞共刺激アンタゴニストを用いる治療に非応答性または抵抗性である被験者における自己免疫疾患を治療する方法であって、その被験者に、治療に有効な量のIL-18アンタゴニストを投与するステップを含む方法。
【請求項2】
自己免疫疾患が炎症性腸疾患(IBD)、乾癬、I型糖尿病、多発性硬化症(MS)、および関節炎疾患からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
自己免疫疾患が関節リウマチ(RA)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
TNF-αアンタゴニストがインフリキシマブ(レミケード(RemicadeTM))、エタネルセプト(エンブレル(EnbrelTM))、アダリムマブ(ヒュミラ(HumiraTM))、CDP571、CDP870、およびCNTO148 (ゴリムマブ(golimumab))からなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
TNF-αアンタゴニストがアダリムマブ(ヒュミラ(HumiraTM))である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
T細胞共刺激アンタゴニストがアバタセプト(オレンシア(OrenciaTM))である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
IL-18アンタゴニストがIL-18に免疫特異的な抗体である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体が、以下の相補性決定領域(CDR):
CDRH1: 配列番号1
CDRH2: 配列番号2
CDRH3: 配列番号3
CDRL1: 配列番号4
CDRL2: 配列番号5
CDRL3: 配列番号6
を有する重鎖と軽鎖を含むヒト化抗IL-18抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記CDRの1つ以上がその変異体により置き換えられており、各変異型CDRが1または2個のアミノ酸の置換、挿入または欠失を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体が配列番号7(H1)の重鎖と配列番号11(L2)の軽鎖を含むヒト化抗IL-18抗体である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体が、ELISAアッセイでヒトIL-18への結合について、配列番号7(H1)に示される配列を有する重鎖と配列番号11(L2)に示される配列を有する軽鎖を含む抗体と競合する抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体が、それぞれ配列番号7(H1)および配列番号11(L2)のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するポリペプチドを含む重鎖と軽鎖を含み、ヒトIL-18と結合するものである、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
IL-17Aの発現が下方制御される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
TNF-αアンタゴニストおよび/またはT細胞共刺激アンタゴニストを用いる治療に非応答性または抵抗性である被験者における自己免疫疾患の治療に使用するためのIL-18アンタゴニスト。
【請求項15】
自己免疫疾患にかかった被験者におけるIL-17Aの発現または活性の下方制御に使用するためのIL-18アンタゴニスト。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【公表番号】特表2012−500242(P2012−500242A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523400(P2011−523400)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060573
【国際公開番号】WO2010/020593
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】