説明

IL4抗体およびその使用

【課題】好酸球性炎症を抑制し、しかもアレルギー性反応の治療、予防もしくは診断に使用可能な高アフィニティーIL4アンタゴニスト、ならびにその使用を提供する。
【解決手段】ヒト・IL4に対して高力価のモノクローナル抗体を含む、ヒトにおける過剰な免疫グロブリンE産生に関連したアレルギーおよび他の症状を診断するための組成物であって、生物学的液体の試料をヒト・IL4に対して高力価のモノクローナル抗体と接触させ、次いで、該モノクローナク抗体とヒト・インターロイキン−4との間の結合の生起をアッセイすることを特徴とする、組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般的には、本発明は、融合蛋白の分野に関し、IL4および過剰のIgE産生により伝達される症状の治療および診断に有用な蛋白に関し、より詳細には、キメラおよびヒト化IL4抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
アトピー性アレルギー疾患は、季節的な鼻炎および結膜炎のごとき比較的軽症のものから、アトピー性皮膚炎およびアトピー性喘息のごときより重症のもの、さらにアナフィラキシーショックのごとき生命を脅かすものまでを包含する。これらの症状を関連づけるものは、アレルゲンに対する身体の免疫応答であり、その応答は、一般的に素因のある個体における免疫グロブリンE(IgE)抗体の産生(アトピー)を包含する。長い間、IgE産生の阻害は、脱感作ワクチンを用いるアレルギー性疾患の特異的免疫療法の最終目的であった。しかしながら、近年、ワクチン療法の安全性および効果に疑問がもたれているが、IgEレベルの低下に対する要望は小さくならない。
【0003】
インターロイキン4(IL4)はリンパ系の蛋白メディエーターである。アトピー性の個体由来のリンパ球に関する研究は、刺激に応答してIL4を分泌する能力のある正常数以上のTリンパ球の存在、および刺激後に分泌された大量のIL4の存在を明らかにした。
【0004】
抗IL4抗体はIgEを阻害するが、IgGまたはIgG2aを阻害せず[非特許文献1参照]、IL5を分泌するT細胞の産生を阻害する[非特許文献2参照]ことが見いだされた。さらに、最近のデータは、組織におけるIL4が好酸球の蓄積に影響しうるということを示唆している。例えば、非特許文献3、非特許文献4参照。
【非特許文献1】フィンケルマン(Finkelman)ら,アニュアル・レビュー・オブ・イミュノロジー(Ann.Rev.Immunol.),第8巻:303頁(1990年)
【非特許文献2】マッギ(Maggi)ら,ジャーナル・オブ・イミュノロジー(J.Immunol.),第148巻:2142頁(1992年)
【非特許文献3】テッパー(Tepper)ら,セル(Cell),第62巻:457頁(1990年)
【非特許文献4】テッパーら,セル,第57巻:503頁(1989年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
IL5分泌細胞の増殖を抑制すること、および好酸球が組織に蓄積しうる付着機構を阻害することの両方により、好酸球性炎症を抑制し、しかもアレルギー性反応の治療、予防もしくは診断に使用可能な高アフィニティーIL4アンタゴニストに対する必要性が当該分野において存在し続けている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様において、本発明は、2X10−10Mに等しいかまたはそれ未満のヒト・IL4に対する解離定数により特徴づけられる非ヒト・中和モノクローナル抗体(MAb)由来の相補性決定領域(CDRs)、および第1の融合パートナーからなる、ヒト・インターロイキン−4に対する結合アフィニティーを有する融合蛋白を提供し、第1の融合パートナーにおいては、第1の融合パートナーの相補性決定領域(CDRs)の少なくとも1つ、好ましくはすべてが非ヒト・モノクローナル抗体(MAb)由来のCDRsにより置換されている。非ヒト・中和モノクローナル抗体を、詳細な説明の欄においてより十分に説明される3B9および6A1からなる群より選択してもよい。好ましくは、融合蛋白は、さらに免疫グロブリンの不変鎖の全部または一部からなる第2の融合蛋白に作動可能に結合される。
【0007】
関連する態様において、本発明は、2X10−10Mに等しいかまたはそれ未満のヒト・IL4に対する解離定数により特徴づけられる非ヒト・中和モノクローナル抗体(MAb)由来のCDRs、およびかかるCDRsをコードする核酸分子を提供する。
【0008】
もう1つの態様において、本発明は、2X10−10Mに等しいかまたはそれ未満のヒト・IL4に対する解離定数により特徴づけられる非ヒト・中和モノクローナル抗体(MAb)由来の少なくとも1つ、好ましくは6つの相補性決定領域(CDRs)を有するヒト化抗体を提供する。
【0009】
さらにもう1つの態様において、2X10−10Mに等しいかまたはそれ未満のヒト・IL4に対する解離定数により特徴づけられる、ヒト・重鎖ならびに軽鎖の不変領域および非ヒト・中和モノクローナル抗体(MAb)由来の重鎖ならびに軽鎖の可変領域を含むキメラ抗体が提供される。
【0010】
さらに別の態様において、本発明は、1種(もしくはそれ以上)の上記融合蛋白またはMAbs(例えば、ヒト化、キメラ等)および医薬上許容される担体からなる医薬組成物を提供する。
【0011】
さらなる態様において、本発明は、ヒトに有効量の本発明医薬上許容される組成物を投与することによる、ヒトにおけるアレルギー性症状の治療および/または予防方法を提供する。
【0012】
さらに別の態様において、本発明は、2X10−10Mに等しいかまたはそれ未満のヒト・IL4に対する解離定数により特徴づけられる非ヒト・中和モノクローナル抗体(MAb)由来の融合蛋白、MAbs(例えば、ヒト化、キメラ等)、そのCDRs、そのFabまたはF(ab)もしくはそれらのアナログの組み換え法による製造方法、およびかかる製造に有用な成分を提供する。これらの成分は、それらをコードする単離核酸配列、宿主細胞中で発現を指令しうる選択調節配列の調節下にある当該核酸配列を含むプラスミド、および当該プラスミドで形質転換された宿主細胞(好ましくは、哺乳動物のもの)を包含する。本発明製造方法は、抗体、好ましくはヒト化抗体が該細胞中で発現されるような条件下で、形質転換された本発明宿主細胞系を培養し、次いで、細胞から発現された生成物を単離することを包含する。
【0013】
さらにもう1つの態様において、本発明は、生物学的液体を、本発明融合蛋白、MAbs(例えば、ヒト化、キメラ等)およびFabsと接触させ、次いで、該融合蛋白、MAbまたはFabとヒト・インターロイキン4との間の結合の生起をアッセイすることからなる、ヒトにおける過剰な免疫グロブリンE産生に関連するアレルギーおよび他の症状の診断方法である。
【0014】
もう1つの関連した態様において、(a)ヒト・インターロイキン4に対するモノクローナル抗体の分泌により特徴づけられるハイブリドーマ細胞系を調製し;次いで、(b)アルデヒド結合ヒト・インターロイキン4またはビオチン化ヒト・インターロイキン4を用いて該ハイブリドーマ細胞系をスクリーニングすることからなる、ヒト・インターロイキン4に対して高力価を有するモノクローナル抗体をスクリーニングする方法が提供される。好ましくは、ハイブリドーマ細胞系をビオチン化ヒト・インターロイキン4を用いてスクリーニングする。
【0015】
さらに、アルデヒド結合ヒト・インターロイキン4またはビオチン化ヒト・IL4を用いてハイブリドーマ生成物のライブラリーをスクリーニングすることにより得られる、IL4に高アフィニティーを有する中和MAb、そのFabフラグメントもしくはF(ab)フラグメントが提供される。
【0016】
もう1つの態様において、本発明は、ヒト・インターロイキン−4に特異的で、約2X10−10Mと同等またはそれ以下の解離定数により特徴づけられる結合アフィニティーを有する齧歯類の中和モノクローナル抗体を提供する。かかるモノクローナル抗体の例は、ネズミ・MAbである3B9、およびラットMAbである6A1ならびに同じ同定特性(すなわち、ヒト・IL4に特異的で、約2X10−10Mに等しいかまたはそれ未満の解離定数を有し、3B9または6A1と同じエピトープに結合する)を有する他のMAbsである。本発明のもう1つの態様はハイブリドーマ3426A11C1B9である。
【0017】
本発明の他の態様および利点を、以下の本発明の好ましい具体例の詳細な説明においてさらに説明する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、IL4および過剰のIgE産生により伝達される症状の治療および診断に有用な蛋白、より詳細には、キメラおよびヒト化IL4抗体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、種々の抗体、そのフラグメント、およびヒト・IL4結合特異性、中和活性ならびにネズミ・MAb3B9もしくはラット・MAb6A1において例示されるようなヒト・IL4に対する高親和性により特徴づけられる融合蛋白、とりわけ、ヒト化抗体を提供する。これらの生成物は、IL4により伝達されるアレルギー反応およびIgEにより伝達されるアレルギー反応を治療する治療用ならびに医薬組成物において有用である。さらにこれらの生成物は、ヒトにおいて循環している内在性IL4レベルを測定(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)による)することによる、IL4により伝達される症状の診断においても有用である。
【0020】
I. 定義
「融合蛋白」は、選択宿主細胞における発現により得られる、融合分子によりコードされる蛋白をいう。かかる融合蛋白は人工抗体、例えば、キメラもしくはヒト化抗体、または免疫グロブリン不変領域の全部もしくは一部を欠く抗体フラグメント、例えば、Fv、FabもしくはF(ab)等である。
【0021】
「融合分子」は、ヒト・可変部枠組み構造からなる第1の融合パートナー中に挿入された非ヒト・免疫グロブリン由来の相補性決定領域(CDRs)をコードする核酸配列をいう。所望により、第1の融合パートナーが第2の融合パートナーに作動可能に結合されていてもよい。
【0022】
「第1の融合パートナー」は、無処理の(天然の)CDRsがドナー抗体のCDRsにより置換されたヒト・枠組み構造もしくはヒト・免疫グロブリン可変領域をコードする核酸配列をいう。ヒト・可変領域は免疫グロブリン重鎖、軽鎖(もしくは両方)、そのアナログもしくは機能的フラグメントであってよい。抗体(免疫グロブリン)の可変領域中に位置するかかるCDRsもしくはCDR領域は、当該分野において知られた方法により決定されうる。例えば、カバト(Kabat)ら,「シークエンシズ・オブ・プロテインズ・オブ・イミュノロジカル・インタレスト(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」第4版,USデパートメント・オブ・ヘルス・アンド・ヒューマン・サービシズ,ナショナル・インスティチューツ・オブ・ヘルス(U.S.Department of Health and Human Services,National Institutes of Health)(1987年)には、CDRsの位置に関する規則が開示されている。さらに、CDR領域/構造を同定するのに有用なコンピュータープログラムが知られている。
【0023】
用語「高力価」は、2X10−10Mに等しいかまたはそれ未満のヒト・IL4に対するKにより特徴づけられる結合アフィニティーを有する抗体をいう。
【0024】
「ヒト・IL4に対する結合特異性」は、ヒト・IL4に対する高力価(もしくはアフィニティー)を意味し、ウシまたはネズミのIL4に対するものはいわない。
【0025】
「第2の融合パートナー」は、第1の融合パートナーがフレームを合わせて、あるいはさらなる慣用的なリンカー配列により結合(すなわち、作動可能に結合)している蛋白もしくはペプチドをコードしているもう1つのヌクレオチド配列をいう。好ましくは、それは免疫グロブリンである。第2の融合パートナーは、同じものに対する全不変領域(すなわち、同種−第1および第2の融合蛋白は同じ源に由来する)またはさらなる対象抗体(すなわち、異種)をコードしている核酸配列を含んでいてもよい。それは免疫グロブリン重鎖または軽鎖(あるいは単一ポリペプチドの一部としての両鎖)であってもよい。第2の融合パートナーは、特定の免疫グロブリンクラスまたはイソタイプに限定されない。さらに、第2の融合パートナーは、FabもしくはF(ab)において見いだされるような免疫グロブリン不変領域の一部(すなわち、適当なヒト・不変領域または枠組み構造領域の別々の部分)からなっていてもよい。かかる第2の融合パートナーは、宿主細胞の外表面に露出した必須の膜蛋白をコードする配列、例えば、ファージ・ディスプレイ・ライブラリーの一部、または分析もしくは診断における検出のための蛋白、例えば、セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ等をコードしている配列からなっていてもよい。
【0026】
用語Fv、Fc、Fab、またはF(ab)は、それらの標準的な意味において用いられる(例えば、ハーロウ(Harlow)ら,アンチボディーズ・ア・ラボラトリー・マニュアル(Antibodies A Laboratory Manual),コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory),(1988年)参照)。
【0027】
本明細書の用語「人工抗体」は、選択アクセプター抗体の軽鎖および/または重鎖可変ドメインの一部が、選択エピトープに対して特異性を有する1種もしくはそれ以上のドナー抗体由来の類似部分により置換されている融合蛋白のタイプ、すなわち合成抗体(例えば、キメラもしくはヒト化抗体)をいう。例えば、かかる分子は、未修飾軽鎖(もしくはキメラな軽鎖)に結合したヒト化重鎖(また、その逆も可)により特徴づけられる抗体を包含してもよい。人工抗体は、ドナー抗体の結合特異性を保持するようにアクセプター抗体の軽鎖および/または重鎖可変ドメイン枠組み構造領域をコードしている核酸配列の変更によっても特徴づけられる。これらの抗体は、アクセプター抗体由来の1つまたはそれ以上のCDRs(好ましくは、全部)を本明細書記載のドナー抗体由来のCDRsと置き換えたものからなっていてもよい。
【0028】
「キメラ抗体」は、アクセプター抗体由来の軽鎖および重鎖不変領域に結合したドナー抗体由来の天然の可変領域(軽鎖および重鎖)を含む人工抗体のタイプをいう。
【0029】
「ヒト化抗体」は、非ヒト・ドナー免疫グロブリン由来のCDRsを有し、分子の残りの免疫グロブリン由来の部分が1種(またはそれ以上)のヒト・免疫グロブリン由来である人工抗体のタイプをいう。さらに、結合アフェニティーを保存するように枠組み構造支持残基を変更してもよい(例えば、クイーン(Queen)ら,プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・ユーエスエイ(Proc.Natl.Acad.Sci.USA),第86巻:10029〜10032頁(1989年)、ホジソン(Hodgson)ら,Bio/Technology,第9巻:421頁(1991年)参照)。
【0030】
用語「ドナー抗体」は、その可変領域、CDRs、またはその他の機能的フラグメントもしくはアナログの核酸配列を第1の融合パートナーに与え、その結果、融合分子および得られるドナー抗体の抗原特異性ならびに中和活性を伴った発現融合蛋白を提供する抗体(ポリクローナル、モノクローナルまたは組み換え型)をいう。本発明における使用に適する1のドナー抗体は、非ヒト・中和モノクローナル抗体(すなわち、ネズミの)3B9と命名された抗体である。抗体3B9は、高力価、ヒト・IL4特異性(すなわち、ウシまたはネズミのIL4を認識しない)、配列番号:1ならびに2の可変軽鎖DNAならびにアミノ酸配列、および適当なネズミ・IgG不変領域上の配列番号:3ならびに4の可変重鎖DNAならびにアミノ酸配列を有するイソタイプIgGに対する中和抗体であると定義される。
【0031】
用語「アクセプター抗体」は、その重鎖ならびに/もしくは軽鎖枠組み構造領域、および/またはその重鎖ならびに/もしくは軽鎖不変領域をコードしている核酸配列の全部(またはいかなる部分であってもよいが、好ましくは全部)を第2の融合パートナーに与える、ドナー抗体とは異種の抗体(ポリクローナル、モノクローナルまたは組み換え型)をいう。好ましくは、ヒト・抗体がアクセプター抗体である。「CDRs」は、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の超可変領域である抗体の相補性決定領域として定義される。例えば、カバト(Kabat)ら,「シークエンシズ・オブ・プロテインズ・オブ・イミュノロジカル・インタレスト(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」第4版,USデパートメント・オブ・ヘルス・アンド・ヒューマン・サービシズ,ナショナル・インスティチューツ・オブ・ヘルス(U.S.Department of Health and Human Services,National Institutes of Health)(1987年)参照。免疫グロブリンの可変部分には3種の重鎖および軽鎖CDRs(またはCDR領域)が存在する。よって、本明細書の用語「CDRs」は、3種すべての重鎖CDRs、または3種すべての軽鎖CDRs(あるいは、適当な場合には、すべての重鎖およびすべての軽鎖のの両方のCDRs)をいう。
【0032】
CDRsは、抗原またはエピトープに対する抗体の結合のための接触残基の大部分を提供する。本発明で対象とするCDRsは、ドナー抗体の可変重鎖および軽鎖配列由来であり、天然のCDRsのアナログを包含する。また、該アナログは、それらが由来するドナー抗体と同じ抗原結合特異性および/または中和能を共有あるいは保持している。
【0033】
「抗原結合特異性および/または中和能を共有」は、例えば、MAb3B9があるレベルの抗原アフィニティーにより特徴づけられ、適当な構造上の環境において3B9の核酸配列によりコードされるCDRがより低いまたはより高いアフェニティーを有しうるとしても、それにもかかわらず3B9のCDRsはかかる環境において3B9と同じエピトープを認識するであろうと考えられるということを意味する。3B9のCDRsの重鎖の例は、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26を包含し、3B9の軽鎖CDRsの例は、配列番号:16、配列番号:18および配列番号:20を包含する。
【0034】
「機能的フラグメント」は、それが由来する抗体と同じ抗原結合特異性および/または中和能を保持する部分的な重鎖または軽鎖の可変部配列(例えば、免疫グロブリン可変領域のアミノ末端またはカルボキシ末端において少しのアミノ酸が欠失したもの)である。
【0035】
「アナログ」は、少なくとも1個のアミノ酸により修飾されたアミノ酸配列であって、少数(すなわち10個未満)のアミノ酸の該修飾は化学修飾であってもよく、また、置換もしくは転位であってもよい。該修飾があっても配列は未修飾配列の生物学的特性、例えば、抗原特異性および高力価もしくはアフィニティーを保持する。例えば、沈黙の変異を置換により構築してCDR領域の中もしくは周囲にエンドヌクレアーゼ制限部位を作ることができる。
【0036】
アナログが対立遺伝子の変異として生じてもよい。「対立遺伝子の変異または修飾」は、本発明アミノ酸またはペプチド配列をコードしている核酸配列における変異である。かかる変異または修飾は遺伝コードの縮重によるものであってもよく、また、意識的に操作された結果所望の特性を有するものであってもよい。例えば、軽鎖CDRのアミノ酸配列(配列番号:16)は、無処理のネズミおよびヒト化3B9抗体と同じである。しかしながら、このCDR配列は配列番号:15および配列番号:53の両方によりコードされる。同様に、CDR(配列番号:22)は、配列番号:21および配列番号:54の両方によりコードされる。CDR(配列番号:24)は、配列番号:23および配列番号:55の両方によりコードされる。さらにCDR(配列番号:26)は、配列番号:25および配列番号:56の両方によりコードされる。
【0037】
用語「エフェクター剤」は、融合蛋白および/または天然もしくは合成のドナー抗体の軽鎖ないしは重鎖、またはドナー抗体の他のフラグメントが慣用的手段により結合されていてもよい非蛋白性キャリヤー分子をいう。かかる非蛋白性キャリヤーは、診断分野において使用される慣用的キャリヤー、例えば、ポリスチレンまたは、例えば、BIAcore「ファルマシア(Pharmacia)]システムに用いられる多糖類、あるいは医学分野で使用され、ヒトおよび動物への投与に関して安全である他のプラスチックビーズを包含しうる。他のエフェクター剤は、重金属原子または放射性同位元素をキレートするための大員環を包含してもよい。ポリエチレングリコールのごときかかるエフェクター剤は融合蛋白の半減期を延長するのにも有用でありうる。
【0038】
II. 高アフィニーIL4モノクローナル抗体
抗体の構築において使用するために、本発明の非ヒト種(例えば、ウシ、ヒツジ、霊長類、齧歯類(例えば、ネズミおよびラット)のフラグメントおよび融合蛋白を用いて、無処理のヒト・IL4またはそれ由来のペプチドエピトープに関する提示に基づいて所望の免疫グロブリンを得てもよい。慣用的なハイブリドーマ法を用いて、IL4に対する非ヒト・MAbを分泌するハイブリドーマ細胞系を提供する。次いで、96ウェルプレートに結合したIL4を用いて、あるいは別法として実施例2に詳述するスクリーニングアッセイに使用するビオチン化IL4を用いてかかるハイブリドーマをスクリーニングする。よって、本発明の1の特徴は、アッセイ系がIL4の変性を回避するものである、ヒト・IL4に対するMAbを検出方法である。かかる方法において、ヒト・IL4に対して高力価(または高アフィニティー)のMAbを検出することができることが見いだされた。
【0039】
一例として、ネズミ・ドナー由来の高力価中和MAbの生産を、まず開示する。キメラまたはヒト化抗体を得ることに使用する望ましいネズミ(ドナー)抗体であるMAb 3B9を、実施例1において詳細に説明する。3B9 MAbは、ヒト・IL4に対する抗原結合特異性(IL4に対して2.0X10−10M未満(約1.8X10−10M)のK)により特徴づけられる。この3B9のFabフラグメントのIL4に対するKは約3X10−10M未満である。この抗体のエピトープを直鎖状ペプチドIL4とともにマッピングすることができなかったので、該エピトープは隣接していないエピトープに結合すると考えられる。結合のパターンは、B−Cループ(残基60〜69)→Cヘリックス(残基70〜93)領域における結合部位を示唆する。これらの領域は、クック(Cook)ら,ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.),第218巻:675〜678頁(1991年)、ワルター(Walter)ら,ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.),第267巻:20371〜20376頁(1992年)、ウロダバー(Wlodaver)ら,FEBS Lett.,第309巻:59〜64頁(1992年)、レッドフィールド(Redfield)ら,バイオケミストリー(Biochem.),第30巻:11029〜11035頁(1991年)、スミス(Smith)ら,ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー,第224巻:899〜904頁(1992年)、ガレット(Garrett)ら,(1992年)、およびパワーズ(Powers)ら,バイオケミストリー,第31巻:4334〜4346頁(1992年)ならびにサイエンス(Science),第256巻:1673〜1677頁(1992年)(参照により本明細書に取り入れる)において提供されるマップ中に示されている。
【0040】
もう1つの望ましいドナー抗体はラット・MAb 6A1である。このMAbの製造は下記実施例7に記載されている。このMAbは、イソタイプIgGであること、および2.0X10−10M未満(約1.6X10−10M)のヒト・IL4に対する解離定数を有することにより特徴づけられる。3B9に関するのと同じように、この6A1の標的エピトープは直鎖状ペプチドIL4に関してはマッピングされず、それゆえ、該エピトープは隣接しておらず、3次元的であると考えられる。IL4変異蛋白への結合パターンおよびその生物学的活性は、ヒト・IL4のDヘリックス領域(アミノ酸残基109〜127)での結合を示し、アミノ酸残基#124におけるチロシン付近での結合の可能性が最も高い。
【0041】
本発明は、3B9 MAb、6A1 MAb、またはその超可変(すなわち、CDR)配列の使用に限定されない。ヒト・IL4に対する2.0X10−10Mに等しいかまたはそれ未満の解離定数により特徴づけられる他の適当な高力価IL4抗体のいずれかおよび対応する抗−IL4 CDRsを、それらに代えて使用できる。以下の説明においてドナー抗体が3B9または6A1と確認される場合はいつでも、記載の説明および簡単のためだけにこの表記を行う。
【0042】
III. 抗体フラグメント
さらに本発明は、ヒト・IL4に指向されたMAb由来のFabフラグメントまたはF(ab)フラグメントの使用も包含する。これらのフラグメントは、インビボにおいてIL4およびIgEにより伝達される症状に対して防御的な薬剤、あるいはインビトロにおいてIL4診断試薬の一部として有用である。Fabフラグメントは軽鎖全体と重鎖のアミノ末端部分を含む。F(ab)フラグメントは、ジスルフィド結合により結合された2個のFabフラグメントにより形成されるフラグメントである。MAbs 3B9、6A1および他の類似の高アフィニティーIL4結合抗体は、慣用的方法、例えば、適当な蛋白分解酵素であるパパインおよび/またはペプシンでのMAbの開裂、あるいは組み換え法により得ることのできるFabフラグメントおよびF(ab)フラグメントの源を提供する。これらのFabフラグメントおよびF(ab)フラグメントは、それ自体、治療、予防または診断薬として有用であり、さらに、本明細書記載の組み換え型またはヒト化抗体の形成に有用な可変領域およびCDR配列を含む配列のドナーとして役立つ。
【0043】
IV. 対象とする抗−IL4のアミノ酸およびヌクレオチド配列
MAb 3B9または上記他の抗体は、ドナー抗体の抗原結合特異性により特徴づけられる種々の融合蛋白(人工抗体を含む)を設計し得ることにおいて有用な、融合蛋白可変重鎖および/または軽鎖ペプチド配列、枠組み構造配列、CDR配列、機能的フラグメント、ならびにそのアナログのごとき配列、およびそれらをコードしている核酸配列を与える。
【0044】
よって、本発明は、一例として、IL4ネズミ抗体3B9由来の可変軽鎖および可変重鎖の配列、ならびにそれ由来の配列を提供する。3B9の重鎖可変領域は、配列番号:4のアミノ酸残基20ないし140により特徴づけられる。図2において、そのCDR領域は下線が付されており、配列番号:22、配列番号:24および配列番号:26に示されている。3B9の軽鎖クローン可変領域を、図1[配列番号:2]のアミノ酸残基21ないし132により特徴づけられる。そのCDR領域は、アミノ酸残基44〜58[配列番号:16]、74〜80[配列番号:18]および113〜121[配列番号:20]由来である。
【0045】
キメラな重鎖可変領域およびシグナルのヌクレオチドならびにアミノ酸配列を提供する。これらの配列は、シグナル配列を除いて3B9重鎖と同じである。キメラな重鎖シグナル配列を配列番号:5および6に示す。図3において、CDR領域は下線により示され、無処理のネズミ・CDRs[配列番号:21〜26]とアミノ酸配列が同じである。キメラな軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、未修飾3B9配列(配列番号:2のアミノ酸残基21〜132)と同じであり、天然のマウス・シグナル配列(配列番号:2のアミノ酸残基1〜20)を利用したものである。
【0046】
ヒト化重鎖可変領域およびシグナルの配列を図4[配列番号:11および12]に示す。そのシグナル配列を配列番号:5および6にも示す。当業者に知られた他の適当なシグナル配列により、本明細書に例示したシグナル配列を置換してもよい。この構築物のCDRアミノ酸配列は無処理のネズミおよびキメラ重鎖のCDRsと同じであり、配列番号:22(配列番号:54によりコードされる)、配列番号:24(配列番号:55によりコードされる)、および配列番号:56(配列番号:26によりコードされる)に示される。
【0047】
代表的な(合成された)ヒト化軽鎖可変部配列を図5[配列番号:13および14]に示す。シグナル配列は、配列番号:8のアミノ酸残基1から19に及ぶ。このCDR配列は下線で示され、配列番号:20のただ1つのアミノ酸によって、無処理のネズミ・CDRのCDRとは異なる。よって、ヒト化軽鎖のCDRsは、配列番号:53および16、配列番号:17および18、そして配列番号:27および28によって提供される。この相違を、実施例3において詳述する。
【0048】
可変軽鎖および重鎖ペプチド配列をコードしている本発明核酸配列もしくはそのフラグメントは未修飾形態で使用され、あるいは合成されて所望修飾、例えば制限部位を導入される。MAb 3B9または他の望ましい高力価IL4抗体由来の単離された天然または合成の核酸配列は、所望により、所望抗体枠組み構造領域をコードしているような適当な核酸配列中への挿入もしくは結合、変異したCDRsとの結合、または選択された第2の融合パートナーをコードしている核酸配列との融合を容易にするための制限部位を有していてもよい。
【0049】
遺伝コードの縮重を考慮して、ドナー抗体の抗原特異性を共有している種々の重鎖ならびに軽鎖のアミノ酸配列、および本発明CDR配列、ならびにその機能的フラグメントもしくはアナログ種々の暗号配列を構築することができる。第2の融合パートナーに作動可能に結合された場合、可変鎖ペプチド配列またはCDRをコードしている本発明の単離核酸配列もしくはそのフラグメントは、本発明の融合蛋白、キメラもしくはヒト化抗体、または他の人工抗体の製造に使用されうる。
【0050】
これらの配列は、CDRsまたは枠組み構造領域をコードしている核酸配列中における特異的変化の突然変異による導入、および得られた修飾もしくは融合核酸配列の発現用プラスミドへの導入にも有用である。例えば、枠組み構造およびCDRをコードする領域のヌクレオチド配列における沈黙の置換を用いて、突然変異されたCDR(および/または枠組み構造)領域の挿入を容易ににする制限酵素部位の作成が行われた。これらのCDR領域は、本発明ヒト化抗体の構築に用いられた。
【0051】
本明細書記載の融合蛋白および抗体の一部をコードしている単離核酸配列以外に、無処理の配列に相補的な核酸配列のごとき他のかかる核酸配列を用いてもよい。有用なDNA配列は、緊縮条件下[ティー・マニアテイス(T.Maniatis)ら,モレキュラー・クローニング(ア・ラボラトリー・マニュアル)(Molecular Cloning(A laboratory Manual),コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)(1982年),387〜389頁参照]で当該DNA配列にハイブリダイズするDNA配列を包含する。1のかかる緊縮ハイブリダイゼーションの例は、65℃における4XSSC中でのハイブリダイゼーション、次いで、65℃で1時間0.1XSSCでの洗浄である。これとは別に、代表的な緊縮ハイブリダイゼーション条件は、50%ホルムアミド、42℃において4XSSCである。好ましくは、これらのハイブリダイズするDNA配列は少なくとも約18ヌクレオチドの長さ、すなわち、ほぼCDRのサイズである。
【0052】
V. 融合分子および融合蛋白
融合分子は、キメラ抗体およびヒト化抗体のごとき人工抗体を含む融合蛋白をコードしうる。望ましい融合分子は、IL4抗体、好ましくは、第1の融合パートナー(ヒト・枠組み構造またはヒト・免疫グロブリン可変領域)中に挿入された本発明により提供される高アフィニティー抗体の抗原特異性を有するペプチドをコードしているCDR配列をを含む。
【0053】
好ましくは、第1の融合パートナーは、第2の融合パートナーに作動可能に結合される。第2の融合パートナーは上記にごとく定義され、さらに対象とする第2の抗体領域、例えばFc領域をコードする配列を含んでいてもよい。さらに第2の融合パートナーは、軽鎖または重鎖不変領域がフレーム中で、あるいはリンカー配列により融合される別の免疫グロブリンをコードしている配列を含んでいてもよい。IL4の機能的フラグメントまたはアナログに指向された人工抗体を設計して当該抗体の結合の増大を誘導してもよい。
【0054】
第2の融合パートナーは、非蛋白性キャリヤー分子をはじめとする上記定義のエフェクター剤に結合していてもよく、それに第2の融合パートナーが慣用的手段により作動可能に結合していてもよい。
【0055】
第2の融合パートナー、例えば抗体配列と、エフェクター剤との間の融合または結合は、いかなる適当な手段、例えば慣用的な共有結合もしくはイオン結合、蛋白融合、またはヘテロ−二機能架橋、例えばカルボジイミド、グルタルアルデヒド等によって行われてもよい。かかる方法は当該分野において知られており、慣用的な化学および生化学の教科書によく記載されている。
【0056】
さらに、第2の融合パートナーとエフェクター剤との間に所望量のスペースを単に提供するだけの慣用的なリンカー配列を融合分子中に構築してもよい。かかるリンカーの設計は当業者によく知られている。
【0057】
さらに、本発明分子に対するシグナル配列を修飾して発現を増大させてもよい。一例として、図2[配列番号:4]に示すキメラな可変部重鎖(V)と同じであるネズミ・重鎖配列のアミノ酸配列を有する望ましい融合蛋白は、元のシグナルペプチドを別のシグナル配列(アミノ酸残基1〜20)[配列番号:6]で置換されたものである。
【0058】
代表的な融合蛋白は、MAb 3B9の抗原特異性を有する可変部重鎖および/または軽鎖ペプチドまたは蛋白の配列、例えば、V[配列番号:9および10のアミノ酸残基21〜141]およびV鎖[配列番号:1および2のアミノ酸残基21〜132]を含んでいる。さらに別の本発明の望ましい融合蛋白は、ネズミ・抗体分子3B9の重鎖および/または軽鎖の可変領域の少なくとも1個、好ましくは全部のCDRsを含んでおり、残りの配列はヒト起源であるかあるいはその機能的フラグメントもしくはアナログであることにより特徴づけられる。例えば、配列番号:11ならびに12、および配列番号:13ならびに14(図4および5)のヒト化VおよびV領域参照。
【0059】
さらなる具体例において、本発明の人工抗体にさらなる作因が結合していてもよい。例えば、組み換え型DNA法を用いて、完全な抗体分子のFcフラグメントまたはCH3ドメインが酵素もしくは他の検出可能な分子(すなわち、ポリペプチドエフェクターもしくは受容体分子)により置換されている本発明の人工抗体を製造してもよい。
【0060】
さらに所望により第2の融合パートナーが、ネズミ・3B9の抗原特異性を有するCDR含有配列に対応しない非免疫グロブリンペプチド、蛋白もしくはそのフラグメントに作動可能に結合していてもよい。生じる蛋白は、抗IL4抗原特異性および発現された場合に非免疫グロブリンの特性の両方を示す可能性がある。その融合パートナーの特徴は、例えば、別の結合ドメインもしくは受容体ドメインのごとき機能的特性、または融合パートナーがそれ自体治療蛋白である場合には治療特性、あるいはさらなる抗原特性であってもよい。
【0061】
本発明の別の所望蛋白は、全長の重鎖および軽鎖を有する完全な抗体分子、またはFabもしくはF(ab)フラグメントのごときそれらの別個のフラグメント、重鎖ダイマー、またはFもしくは1本鎖抗体(SCA)のごとき何らかの最小組み換え型フラグメント、あるいは、例えばMAb 3B9もしくは6A1のような選択ドナーMAbと同じ特異性を有する他のいずれかの分子からなっていてもよい。かかる蛋白を融合蛋白の形態で使用してもよく、あるいはその融合していない形態で使用してもよい。
【0062】
第2の融合パートナーが別の抗体、例えば、いずれかのイソタイプもしくはクラスの免疫グロブリン枠組み構造または不変領域由来である場合はいつでも、人工抗体が得られる。人工抗体は、1の起源(例えば、アクセプター抗体)由来の免疫グロブリン(Ig)不変領域および可変枠組み構造領域、およびドナー抗体抗体(例えば本明細書記載の抗IL4抗体)由来の1個もしくはそれ以上(好ましくは全部)のCDRsからなっていてよい。さらに、ドナー抗体の抗原結合特異性を保持するように、アクセプターMAb軽鎖および/または重鎖可変ドメイン枠組み構造領域あるいはドナーCDRの核酸またはアミノ酸レベルでの変更、例えば欠失、置換もしくは付加を行ってもよい。
【0063】
IL4 MAb(所望により上記のごとく修飾されていてもよい)の可変重鎖および/または軽鎖の一方(もしくは両方)、あるいは下記において同定される重鎖もしくは軽鎖のCDRs(実施例3参照)の1つもしくはそれ以上を用いるために、かかる人工抗体を設計する。本発明の人工抗体は中和的、すなわち、望ましくはIL4蛋白の受容体への結合をブロックするものである。例えば、MAb 3B9由来の人工抗体は、上記のごとく、B−Cループ→Cヘリックス領域にあると考えられる特異的なヒト・IL4の3次元蛋白エピトープに対して指向される。
【0064】
かかる人工抗体は、選択ヒト・免疫グロブリンもしくはサブタイプの枠組み構造領域を含んでいるヒト化抗体、あるいはIL4抗体の機能的フラグメントに融合しているヒト・重鎖および軽鎖不変領域を含んでいるキメラ抗体を包含する。適当なヒト(もしくは他の動物)のアクセプター抗体は、ドナー抗体の核酸またはアミノ酸配列に対する相同性により、慣用的なデータベース、例えば、KABATデータベース、ロス・アラモス(Los Alamos)データベース、およびスイス・プロテイン(Swiss Protein)データベースから選択されるものであってもよい。ドナー抗体の枠組み構造領域に対する相同性により(あるいはアミノ酸に基づいて)特徴づけられるヒト・抗体は、ドナーCDRsの挿入のための重鎖不変領域および/または重鎖可変枠組み構造領域を提供することに適している可能性がある。適当な枠組み構造領域を同様の方法で選択してもよい。アクセプター抗体の重鎖および軽鎖は同じアクセプター抗体由来であることを必要としないことに留意すべきである。
【0065】
望ましくは、異種枠組み構造および不変領域は、IgG(サブタイプ1ないし4)、IgM、IgAおよびIgEのごときヒト・免疫グロブリンクラスならびにイソタイプから選択される。しかしながら、アクセプター抗体はヒト・免疫グロブリン蛋白配列のみからなることを要しない。例えば、ヒト・免疫グロブリン鎖の一部をコードしているDNA配列がポリペプチドエフェクターもしくはレポーター分子のごとき非免疫グロブリンのアミノ酸配列をコードしているDNA配列と融合している遺伝子を構築してもよい。
【0066】
特に望ましいヒト化抗体の一例は、選択ヒト・抗体配列の枠組み構造に挿入された3B9のCDRsを含む。ヒト・抗体を中和のためには、IL4抗体の重鎖および/または軽鎖可変領域由来の1個、2個もしくは3つのCDRsを選択ヒト・抗体配列の枠組み構造領域中に挿入し、後者の抗体の元のCDRsを置換する。
【0067】
好ましくは、ヒト化抗体において、ヒト・重鎖および軽鎖の両方の可変領域は、1個もしくはそれ以上のCDRの置換により加工されたものである。6個すべてのCDRs、または6個未満のCDRsの種々の組み合わせを使用することが可能である。好ましくは、6個すべてのCDRsが置換されている。軽鎖としてヒト・アクセプター抗体由来の未修飾軽鎖を用いて、ヒト・重鎖においてのみCDRsを置換することが可能である。さらに別法として、慣用的な抗体のデータベースに基づいて、適合する軽鎖を別のヒト・抗体から選択してもよい。人工抗体の残りの部分は、いかなる適当なアクセプターヒト・免疫グロブリン由来であってもよい。
【0068】
よって、人工的なヒト化抗体は、好ましくは、天然のヒト・抗体もしくはそのフラグメントの構造を有し、効果的な治療用途、例えば、IL4により伝達されるヒトの炎症性疾患の治療または診断用途に必要とされる特性の組み合わせを有する。
【0069】
別の例として、人工抗体は、3B9の可変軽鎖領域の3個のCDRs[配列番号:16、18および28]および3B9の可変重鎖領域の3個のCDRs[配列番号:22、24および26]を含んでいてもよい。得られるヒト化抗体は、MAb 3B9の抗原結合特異性および高アフィニティーにより特徴づけられる。
【0070】
必ずしもドナー抗体の特異性および高アフィニティーに影響することなく、可変ドメインのアミノ酸の変化により人工抗体をさらに修飾できる(すなわち、アナログ)ことが当業者に理解されよう。例えば、軽鎖アミノ酸残基が位置120においてアルギニン[配列番号:13および14]またはスレオニン[配列番号:57および58]となっているヒト化モノクローナル抗体が構築された。可変ドメイン枠組み構造もしくはCDRsあるいはその両方のいずれかにおいて重鎖および軽鎖のアミノ酸を他のアミノ酸により置換しうると考えられる。
【0071】
さらに、不変領域を変更して本発明分子の特定の特性を増減させてもよい。例えば、ダイマー化、Fc受容体への結合、または結合して補体を活性化する能力である(例えば、アンガル(Angal)ら,モレキュラー・イミュノロジー(Mol.Immunol.),第30巻:105〜108頁(1993年)、ズー(Xu)ら,ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.),第269巻:3469〜3474頁(1994年)、ウィンター(Winter)ら,EP307,434−B参照)。
【0072】
キメラ抗体である融合蛋白は、両鎖に関するヒト・免疫グロブリン不変領域と結合している枠組み構造領域を含んだ非ヒト・ドナー抗体の重鎖および軽鎖可変領域の全体を提供することにより、上記ヒト化抗体とは異なる。本発明のヒト化抗体に対するさらなる非ヒト・配列を有するキメラ抗体は、ヒトにおける有意な応答を誘導しうる。
【0073】
かかる抗体は、下記のようなIL4により伝達されるアレルギー性疾患の予防および治療に有用である。
【0074】
VI. 融合蛋白および人工抗体の製造
好ましくは、種々の軽鎖および/または重鎖配列およびMAb 3B9または他の適当なドナーMAbs(例えば6A1)のCDRs[配列番号:16、18、20、22、24および26]、ならびにそれらがコードしている核酸配列を、以下の方法による本発明の融合蛋白および人工抗体、好ましくはヒト化抗体の構築に使用する。同じまたは類似の方法を用いて本発明の他の具体例を得てもよい。
【0075】
ハイブリドーマを産生する選択ドナーMAb、例えば、ネズミ・抗体3B9を慣用的にクローン化し、当業者に知られた方法、例えば、サムブルック(Sambrook)ら,モレキュラー・クローニング(ア・ラボラトリー・マニュアル),第2版,コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Sprong HarborLaboratory)(1989年)により、その重鎖および軽鎖可変領域のDNAを得る。ドナーMAbの結合特異性ならびにヒト免疫グロブリン由来の抗体鎖の残りの免疫グロブリン由来の部分を保有するために必要な少なくともCDRsおよびアクセプターMAbの軽鎖および/または重鎖可変ドメイン枠組み構造領域の一部を含む3B9の可変重鎖および軽鎖領域を、ポリヌクレオチドプライマーおよび逆転写酵素を用いて得る。既知のデータベースを用い、他の抗体と比較することにより、当該CDRsを同定する。
【0076】
次いで、マウス/ヒト・キメラ抗体を調製し、結合活性をアッセイする。かかるキメラ抗体は、両鎖に関するヒト・Ig不変領域に結合した非ヒト・ドナー抗体のVおよびV領域の全体を含んでいる。
【0077】
ヒト・抗体由来の重鎖可変領域同種の枠組み構造領域を、コンピューターデータベース、例えばKABATを用いて同定し、3B9に対して相同性を有するヒト・抗体をアクセプター抗体として選択した。ヒト・抗体枠組み構造内に3B9のCDRsを含んでいる合成重鎖可変領域の配列を、制限部位を有するように枠組み構造領域中の最適なヌクレオチド置換を用いて設計した。次いで、この設計された配列を、ヌクレオチドを重複させることにより合成し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅し、次いで、エラーを修正する。
【0078】
同様の方法で、適当な軽鎖可変枠組み構造領域を設計した。
【0079】
ヒト化抗体をキメラ抗体から誘導してもよく、あるいは好ましくは、重鎖および軽鎖由来のドナーMAbのCDRsを適当に選択重鎖および軽鎖枠組み構造内に挿入することにより合成的に作成してもよい。別法として、標準的な突然変異法を用いて本発明のヒト化抗体を製造する。かくして得られたヒト化抗体は、ヒト・枠組み構造領域およびドナーMAbのCDRsを含んでいる。引き続いて枠組み構造残基の加工を行ってもよい。得られたヒト化抗体は、組み換え型宿主細胞、例えばCOSまたはCHO細胞中で発現されうる。この方法のさらなる詳細を実施例4に示す。他の適当なIL4特異的中和高力価非ヒト・抗体についてこの方法を用いて他のヒト化抗体を調製してもよい。
【0080】
宿主細胞中での複製ならびに発現、および/または宿主細胞からの分泌能のある慣用的な調節配列に作動可能に結合した融合蛋白に対するこれらのコーディング配列を配置することにより、慣用的な発現ベクターまたは組み換え型プラスミドを製造する。調節配列は、他の知られた抗体から誘導されうるプロモーター配列、例えば、CMVプロモーターおよびシグナル配列を包含する。同様に、相補的抗体の軽鎖または重鎖をコードするDNA配列を有する第2の発現ベクターを製造する。好ましくは、この第2の発現ベクターは、コーディング配列および選択可能なマーカーが、ポリペプチド鎖が可能なかぎり機能的に発現されるように関連していること以外は、第1の発現ベクターと同じである。
【0081】
選択宿主細胞を、慣用的方法により、第1のベクターおよび第2のベクターの双方を用いる慣用的方法により同時トランスフェクションするかまたは単一ベクターにより単にトランスフェクションして、組み換え型もしくは合成の軽鎖および重鎖からなる本発明のトランスフェクションされた宿主細胞を作り出す。次いで、トランスフェクションされた細胞を慣用的方法により培養して本発明の人工抗体を得る。組み換え型重鎖および/または軽鎖の双方の結合物を含むヒト化抗体を、ELISAまたはRIAのごとき適当なアッセイにより培養物からヒト化抗体をスクリーニングする。同様の慣用的方法を用いて本発明の他の融合蛋白および分子を構築してもよい。
【0082】
本発明方法および組成物の構築に用いられるクローニングおよびサブクローニング工程用の適当なベクターは当業者により選択されうる。例えば、慣用的なpUCシリーズのクローニングベクターを用いてもよい。使用される1のベクターはpUC19であり、アマシャム(Amersham)社(英国バッキンガムシャー(Backinghamshire))またはファルマシア(Pharmacia)社(スゥエーデンのウプサラ(Uppsala))のごとき供給元から市販されている。さらに、容易に複製する能力を有するすべてのベクターは、クローニング部位およびマーカー遺伝子が豊富であり、取り扱いが簡単で、クローニングに使用されうる。よって、クローニングベクターの選択は、本発明における限定因子ではない。
【0083】
同様に、本発明の人工抗体の発現に使用されるベクターが、当業者により、いかなる慣用的なベクターから選択されてもよい。さらにベクターは、免疫グロブリン領域のDNAコーディング配列に作動可能に結合しており選択細胞中の異種DNA配列の複製および発現を指令しうるCMVプロモーターのごとき選択調節配列を含んでいる。これらのベクターは、人工抗体または融合分子をコードしている上記DNA配列を含んでいる。また、ベクターが、取り扱いを容易にするための所望制限部位の挿入により修飾された選択免疫グロブリン配列を含んでいてもよい。
【0084】
さらに発現ベクターを、異種DNA配列の増幅発現に適するマーカー遺伝子、例えば、哺乳動物のジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(DHFR)またはネオマイシン耐性遺伝子(neo)により特徴づけてもよい。他の好ましいベクター配列は、ウシ・成長ホルモン(BGH)由来のごときポリAシグナル配列およびベータたグロブリンプロモーター配列(betaglopro)を包含する。本発明に有用な発現ベクターを、当業者によく知られた方法により合成することができる。
【0085】
かかるベクターの成分、例えば、レプリコン、選択遺伝子、エンハンサー、プロモーター、シグナル配列等を、天然ソースから得てもよく、あるいは選択宿主における組み換え型DNA産物の発現および/または分泌の指令に用いる既知方法により合成してもよい。哺乳動物、細菌、昆虫、酵母および真菌の発現に関して多くのタイプが当該分野において知られている他の適当な発現ベクターをこの目的にために選択してもよい。
【0086】
さらに本発明は、本発明の人工抗体または融合分子のコーディング配列を含んでいる組み換え型プラスミドでトランスフェクションされた細胞系を包含する。これらのクローニングベクターのクローニングおよび他の取り扱いに有用な宿主細胞宿主細胞もまた慣用的なものである。しかしながら、最も望ましくは、イー・コリ(E.coli)の種々の株由来の細胞を、クローニングベクターの複製および本発明融合蛋白の構築における他の工程に使用する。
【0087】
本発明の人工抗体または融合蛋白の発現に適する宿主細胞または細胞系は、好ましくは、CHO、COS、線維芽細胞(例えば3T3)および特に骨髄細胞のごとき真核細胞、最も好ましくはCHO細胞または骨髄細胞のごとき哺乳動物細胞である。よって、ヒト・細胞を用いて、分子がヒトのグリコシレーションパターンを有するように修飾されるようにしてもよい。別法として、他の真核細胞細胞系を用いてもよい。適当な哺乳動物細胞の選択および形質転換、培養、増幅、スクリーニングおよび生成物の生産ならびに精製の方法は当該分野において知られている。上記サムブルック(Sambrook)らの文献参照。
【0088】
細菌細胞は、本発明の組み換え型MAbsの発現に適していることがわかる。しかしながら、細菌細胞で発現された蛋白の変性しやすさまたは不当に折り畳まれやすさのため、細菌細胞で生産されたすべての組み換え型MAbを抗原結合能の保持についてスクリーニングしなくてはならないであろう。細菌細胞により発現された分子が適切な折り畳み形態で生産されるならば、当該細菌細胞は望ましい宿主であろう。例えば、発現に使用される種々のイー・コリ株はバイオテクノロジーの分野においてよく知られた宿主細胞である。ビー・ズブチリス(B.subtilis)、ストレプトミセス(Streptomyces)、他の枯草菌等の種々の株も本発明に使用できる。
【0089】
所望であれば、当業者に知られた酵母細胞株ならびに例えば、ドロソフィラ(Drosophila)よびレピドプテラ(Lepidoptera)のような昆虫細胞、そしてウイルス発現系も宿主細胞として使用できる。ミラー(Miller)ら,ジェネティック・エンジニアリング(Genetic Engineering),第8巻:277〜298頁、プレナム・プレス(Plenum Press)(1986年)およびそこに引用された文献参照。
【0090】
本発明ベクターを構築しうる一般的方法、本発明宿主細胞を製造するために必要なトランスフェクション法、およびかかる細胞から本発明融合蛋白または人工抗体を生産するのに必要な培養方法は、すべて慣用的方法である。同様に、本発明融合蛋白または人工抗体を、生産後、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動等をはじめとする当該分野において標準的な方法により細胞培養物から精製することができる。かかる方法は当業者の能力範囲内であり、本発明を限定するものではない。
【0091】
ヒト化抗体の発現のさらに別の方法には、米国特許第4,873,316号記載のごときトランスジェニック動物における発現を用いてもよい。この方法は、トランスジェニックに動物中に取り込まれた場合メスの乳中に所望組み換え型蛋白を産生せしめる動物のカゼインプロモーターを用いる発現系に関する。
【0092】
所望方法により発現されたならば、人工抗体を、適当なアッセイを用いてインビトロにおいて試験する。現在慣用的となっているELISAアッセイフォーマットを用いて人工抗体のIL4エピトープへの定性的および定量的結合を評価する。さらに、他のインビトロでのアッセイ、例えば、通常のクリアランス機構にもかかわらず体内における人工抗体の維持を評価するために、引き続き行われるヒトの臨床研究の前にBIAcore[ファルマシア]を用いて中和効率を確認してもよい。
【0093】
3B9から調製されたヒト化抗体に関して説明した方法を行った後、当業者は、本明細書記載の他のドナーIL4抗体、可変領域配列およびCDRペプチドからヒト化抗体を構築してもよい。人工抗体のレシピエントにより「自己」であると認識されうる可変領域枠組み構造を用いて人工抗体を製造することができる。可変領域枠組み構造に対する少しの修飾を行って、レシピエントに対する免疫原性の認められる程度の増加を伴わずに抗原結合を大いに増大させることができる。かかる人工抗体は、IL4により伝達される症状に関してヒトを有効に治療することができる。かかる抗体はかかる症状の診断にも有用である。
【0094】
VII. 治療的/予防的使用
本発明は、有効量の1種もしくはそれ以上の本明細書記載の人工抗体または融合蛋白またはそのフラグメントを投与することを特徴とするアレルギー性疾患にかかっているヒトの治療方法にも関する。
【0095】
本発明分子の使用により誘導される治療的応答は、IL4への結合、次いで、IgE放出のブロッキングにより得られる。よって、本発明分子は、治療的使用に適した調製物および処方中にある場合には、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎、アトピー性喘息、およびアナフィラキシーのショックのごときアレルギー性応答にかかっているヒトにとり非常に望ましい。
【0096】
本発明の融合蛋白、抗体、人工抗体またはそれらのフラグメントを他の抗体、特に、本発明の人工抗体が指向される症状の原因である他のマーカー(エピトープ)と反応するヒト・MAbsと組み合わせて使用してもよい。同様に、本発明抗体が指向される選択動物における症状の原因となるエピトープと反応するMAbsを、獣医用組成物に使用してもよい。
【0097】
本発明治療薬は、約2日ないし約3週間あるいは必要な期間のアレルギー症状の治療に望ましいと考えられる。例えば、季節性の鼻炎等の治療の場合には、より長い治療が望ましい。本発明治療薬は、先行技術のIL4により伝達される疾患の治療に関する現用されている輸液プロトコールよりもかなり有利である。用量および治療期間は、ヒトの循環系における本発明分子の相対的存在時間に関連しており、治療すべき症状および患者の一般的健康状態に応じて当業者により調節されうる。
【0098】
本発明治療薬の投与方法は、薬剤を宿主に送達するいかなる適当な経路であってもよい。本発明の融合蛋白、抗体、人工抗体およびそれらのフラグメント、ならびに本発明医薬組成物は、非経口投与、すなわち、皮下、筋肉内、静脈または鼻腔内投与に特に有用である。
【0099】
本発明治療薬を、医薬上許容される担体中の有効量の本発明の人工的な(例えば、ヒト化)抗体を活性成分として含有する医薬組成物として製造してもよい。本発明の予防薬において、好ましくは生理学的pHに緩衝化された、人工抗体を含有する水性懸濁液または溶液は、容易に注射できる形態であるのが好ましい。非経口投与用組成物は、通常は、医薬上許容される担体中、好ましくは水性担体中に溶解された本発明の人工抗体の溶液またはそのカクテルからなる。種々の水性担体、例えば、0.4%セイライン、0.3%グリシン等を用いてもよい。これらの溶液は滅菌され、一般的には微粒子物質を含まない。慣用的なよく知られた滅菌法(例えば、濾過)によりこれらの溶液を滅菌してもよい。組成物は、pH調節剤、緩衝剤等のごとき適当な生理学的条件に必要とされる医薬上許容される補助的物質を含有していてもよい。かかる医薬処方中の本発明抗体の濃度を広範囲に変更できる。すなわち、約0.5%重量未満、通常には約1重量%もしくは少なくとも約1重量%から15ないし20重量%までであり、主として液体の体積、粘度等により、そして選択された特定の投与方法により選択される。
【0100】
よって、筋肉内注射用の本発明医薬組成物を、1mLの滅菌済み緩衝水および約1ngないし約100mg、例えば、約50ngないし約30mg、あるいはより好ましくは、約5mgないし約25mgの本発明の人工抗体を含有するように調製することができる。同様に、静脈輸液用本発明医薬組成物を、約250mlまでの滅菌済みリンゲル溶液および約1mgないし30mg、好ましくは、5mgないし約250mgの本発明の人工抗体を含有するように調製することができる。非経口的投与組成物の実際の製造方法はよく知られているかまたは当業者に明らかであり、より詳細には、例えば、レミントンズ・ファーマシューテイカル・サイエンス(Remington's Pharmaceutical Science),第15版,マック・パブリッシング・カンパニー(Mack Publishing Company),イーストン(Easton),ペンシルベニア(Pennsylvania)に記載されている。
【0101】
本発明治療薬を、医薬調製物とした場合には、単位剤型として提供するのが好ましい。適切な治療的に有効な用量を、当業者は容易に決定することができる。ヒトまたは他の動物における炎症性疾患を有効に治療するためには、体重70kgあたり約0.1mgないし約20mgの本発明蛋白または抗体を1回分の用量として非経口的に、好ましくは、筋肉内投与すべきである。必要であれば、かかる投与を、炎症性応答のある間、医師により適当であると選択された適当時間間隔をおいて繰り返してもよい。
【0102】
さらに本発明は、本発明IL4融合蛋白の、本発明融合蛋白のIL4受容体結合能に適合する抗腫瘍壊死因子活性または他の医薬活性成分のごとき抗IL4活性により特徴づけられる他の抗体または融合蛋白との同時投与または連続投与を包含する。かかる他の抗体は市販されているかまたは本明細書記載の方法と同様の方法で設計することができる。
【0103】
本発明の融合蛋白および人工抗体を、IL4により伝達される疾患の決定またはかかる疾患の治療の進行の追跡のごとき診断法に用いてもよい。診断試薬として、これらの融合蛋白を慣用的に標識して、血清、血漿もしくは他の適当な組織におけるIL4レベルの測定のためのELISAおよび他のアッセイのフォーマットに使用してもよい。融合蛋白が使用されるアッセイの性質は慣用的なものであり、本発明を限定するものでない。
【0104】
本明細書記載の抗体、人工抗体またはそれらのフラグメントを、保存のために凍結乾燥し、使用前に適当な担体中で復元することができる。この方法は、慣用的な免疫グロブリンに関して有効であることが示されており、当該分野で知られた凍結乾燥および復元方法を用いることができる。
【0105】
以下の実施例は、代表的な人工的抗体の構築および適当なベクターならびに適当な宿主細胞中でのその発現をはじめとする本発明の種々の態様を説明するが、本発明の範囲を限定するものではない。すべてのアミノ酸は慣用的な3文字コードまたは1文字コードにより表される。特にことわらない限り、すべての必要な制限酵素、プラスミド、および他の試薬ならびに材料を市販ソースから得た。すべての一般的なクローニングのライゲーションおよび他の組み換えDNA法を、上で引用した、ティー・マニアティス(T.Maniatis)らの文献またはサムブルックら編の同じ出版社によるその第2版(1989年)(「サムブルックら」)と同様に行った。
【実施例1】
【0106】
実施例1−MAb 3B9の製造
A. 免疫方法
4匹のマウス(Balb/cとC57BL/6のF1雑種)を、フロイント(Freund)の完全アジュバント中の50μgの組み換え型イー・コリヒトIL4で皮下免疫し、4週間後にフロイントの不完全アジュバント中の50μgのIL4で腹腔内追加免疫した。IL4に対する良好な血清抗体力価に基づいて、1匹のマウスには、8週目に200μgのIL4(セイライン中腹腔内免疫)を、その2日後100μgのIL4(セイライン中腹腔内免疫)を、さらにその2日後に50μgのIL4(セイライン中腹腔内免疫)をさらに免疫した。最後の免疫から2日後に、脾臓切除を行った。
【0107】
B. 融合方法およびスクリーニング系
マウスの脾臓細胞を用いてハイブリドーマを調製し(標準的方法、例えばコーラー(Kohler)ら,ネイチャー(Nature),第256巻:495頁(1975年)による)、IL4結合に関して市販BIAcoreシステムおよび下記ELISAアッセイを用いて、250個より多い細胞をIL4に対する抗体の分泌に関してスクリーニングした。5個のウェルが陽性の応答を示した。マウスからの1クローンのみ、すなわち3B9が強く陽性であった。3B9由来のすべての2次クローンは陽性であった。
【実施例2】
【0108】
実施例2−ELISAアッセイおよびアフィニティー定数
A. ELISA
以下のごとく行われるスクリーニングアッセイを設計して無処理のヒト・IL4に対するアフィニティーを測定した。実験1に関して、アルデヒド活性化96−ウェルプレートを、pH8.5の0.1Mホウ酸緩衝液100μl/ウェル中1μg/mLのIL4で被覆し、室温で一晩インキュベーションした。ヒト・IL4はプレートに共有結合した。IL4溶液を吸引し、非特異的結合(NSB)部位をTBS緩衝液(50mM Tris、150mM NaCl、1mM MgCl、0.02% NaN,pH7.4)中のウシ・血清アルブミン(BSA)で、37℃において60分間ブロックした。この工程および以下の各工程に従って、プレートを洗浄緩衝液(10mM Tris、150mM NaCl、0.05% ツイン20、0.02% NaN,pH7.4)で4回洗浄した。この後、50μlのハイブリドーマ培地(または精製3B9もしくはFabフラグメント)および50μlのアッセイ緩衝液(TBS緩衝液中0.5%ウシ・ガンマグロブリン)を添加し、プレートを37℃で60分間インキュベーションした。ウェルあたり100μlのアッセイ緩衝液中のビオチン化抗マウス抗体を添加し、上記のごとくインキュベーションした。ウェルあたり100μlのアルカリ性ホスファターゼ結合ストレプトアビジンを添加し、インキュベーション(37℃で30分間)した。100μl/ウェルのPNP基質を添加し、37℃で30分間インキュベーションした。405nmの光学密度を読み取った。
【0109】
実験2に関しては、ストレプトアビジン被覆プレート(100μl/ウェル,リン酸緩衝化セイライン(PBS)中1μg/mL)を4℃で一晩インキュベーションし、以下のようにアッセイした。ストレプトアビジン溶液を吸引し、NSB部位をTBS緩衝液中1%BSAでブロックした(37℃で60分)。この工程の後、以下の各工程を行った。プレートを洗浄緩衝液で4回洗浄した。50μlのビオチン化IL4を50μlのアッセイ緩衝液とともに添加し、37℃で30分インキュベーションした。次いで、50μlの精製3B9 IgGまたはFabフラグメント(もしくはハイブリドーマ培地)および50μlのアッセイ緩衝液を添加し、37℃で60分インキュベーションした。100μlの抗マウスIgGアルカリ性ホスファターゼ抱合物を添加し、37℃で60分インキュベーションした。100μlのPNP基質を添加し、37℃で30分インキュベーションした。上記のごとく光学密度を読んだ。
【0110】
B. IL4に対する3B9のアフィニティーの計算
上記実験の結果を用いて、ベティ(Beatty)ら,ジャーナル・オブ・イミュノロジカル・メソッズ(J.Immunol.Methods),第100巻:173〜179頁
(1987年)に記載のごとく3B9に対するKを計算して以下のようにまとめた。
【数1】

Ab*=150ng/mlのビオチン化ヒト・IL4の場合に結合したAb濃度
Ab=300ng/mlのビオチン化ヒト・IL4の場合に結合したAb濃度
解離定数Kを以下の関係式から計算した。
【数2】

実験1:ストレプトアビジン被覆96ウェルプレート(100ng/ウェル)上でのELISAアッセイ
=2.2X10−10M(3B9 Fab)
実験2:ストレプトアビジン被覆96ウェルプレート(100ng/ウェル)上でのELISAアッセイ
=1.4X10−10M(3B9 IgG)
【0111】
C. 特異性
MAb 3B9はヒト・IL4を認識するが、ウシ・またはネズミのIL4を認識しない。これを調べる1の方法は以下のごとし。抗マウスIgGで被覆した96ウェルプレートを用い、次いで、ウシ・血清アルブミンでブロックし、これに50μlの3B9(100ng/ml)、25μlの非ヒト・IL4および25μlのビオチン−IL4を添加し、37℃で60分インキュベーションし、次いで、洗浄し、ストレプトアビジン抱合アルカリ性ホスファターゼおよびPNPを添加した。
同様に、MAb 6A1はウシまたはネズミのIL4を認識しないことが見出された。
【実施例3】
【0112】
実施例3−ヒト化抗体
ヒト・抗体枠組み構造内にネズミのCDRsを含むように1のヒト化抗体を設計した。以下の操作を行うことにより、このIL4特異的マウス・抗体3B9のヒト化バージョンを調製した。
【0113】
A. ベーリンガー・マンハイム(Boehringer Mannheim)社のキットを用いて、3B9ハイブリドーマ細胞系[実施例1]から抽出したmRNA由来の3B9重鎖および軽鎖からcDNAクローンを作成した。マウス・ヒンジ領域またはカッパ不変領域にいずれかに特異的なプライマーを第1鎖の合成に使用した。
カッパ鎖プライマーは[配列番号:29]:
5'-CTAACACTCATTCCTGTTGAAGCTCTTGACAATGGG-3'
である。
ガンマ重鎖プライマーは[配列番号:30]
5'GTACATATGCAAGGCTTACAACCACAATC3'
である。
2本鎖cDNAをプラスミドpGEM7f+中に直接組み込み、次いで、イー・コリDH5−α[ベセスダ・リサーチ・ラブズ(Bethesda Research Labs.)]中に形質転換した。
【0114】
B. DNA配列決定
上記Aからの8つの重鎖および1つの軽鎖に関するネズミcDNAクローンの配列決定を行った。これらのクローンの可変領域の配列決定の結果を配列番号:1、2、3および4に示す。各クローンは、マウス・重鎖可変領域または軽鎖可変領域、およびネズミ・シグナル配列の間で保存的であることが知られているアミノ酸を含んでいた。CDRアミノ酸配列を以下に示す。
【0115】
重鎖に関するCDR領域は、配列番号:22、24および26(配列番号:4のアミノ酸50〜56、71〜86および119〜129)である。図2参照。これらの配列は、配列番号:21、配列番号:13および配列番号:25によりそれぞれコードされている。軽鎖に関するCDR領域は、配列番号:16、18および20(配列番号:2のアミノ酸45〜58、74〜80および113〜121)である。図1参照。これらの配列は、配列番号:15、17および19によりそれぞれコードされている。
【0116】
C. ヒト・枠組み構造の選択
3B9のクローニングの後、KABATおよびSWISSデータベースを用いて可変領域のアミノ酸配列(配列番号:2のアミノ酸21〜132および配列番号:4のアミノ酸20〜140)を、ヒト・免疫グロブリン配列のデータベースと比較し、配列の相同性においてネズミの親配列と最もよくマッチすると考えられる重鎖および軽鎖双方に関するヒト・枠組み構造を同定した。これらの配列相同性に関する探求以外にも、Fabドメインの構造モデルから得られる位置のデータベースに対して重鎖および軽鎖を評価して、CDR型に影響する可能性のあるアミノ酸置換が原因の存在しうる矛盾を評価した。本ケースに関しては、構造の探求においては明らかな矛盾は検出されなかった。それゆえ、アミノ酸配列の相同性の探求から推定されるDNAコーディングを使用した。
【0117】
ヒト・骨髄腫免疫グロブリン(COR)から得られた抗体の重鎖枠組み構造領域を使用した[イー・エム・プレス(E.M.Press)およびエヌ・エム・ホッグ(N.M.Hogg),バイオケミストリー・ジャーナル(Biochem.J.),第117巻:641〜660頁(1970年)]。この配列は、アミノ酸レベルにおいて、3B9可変鎖領域に対して約77%の相同性(69.4%が同一)があることが示わかった。
【0118】
適当な軽鎖可変枠組み構造領域に関しては、エイチ・ジー・クロベック(H.G.Klobeck)ら,ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.),第13巻:6515〜6529頁(1985年)において同定されているヒト・抗体の軽鎖可変枠組み構造配列を用いた。そのヒト・抗体の配列は、アミノ酸レベルにおいて、3B9可変軽鎖領域に対して約80.2%の相同性(72.0%が同一)があることがわかった。
【0119】
ネズミ・3B9のCDRs[配列番号:15〜26]およびヒト・抗体の配列が与えられたので、合成重鎖を作成し、PCRを行ってフィル・インし、DNAを増幅した。以下の重複オリゴヌクレオチドによりこれらの配列を合成し、PCRにより増幅した。配列番号:31〜37は5個の重複オリゴヌクレオチドおよび2個のPCRプライマーを提供する。オリゴ1[配列番号:31]は塩基5〜121にまたがることがわかる。オリゴ2[配列番号:32]は塩基122〜241にまたがることがわかり、オリゴ3[配列番号:33]は塩基242〜361にまたがることがわかる。2個のボトム鎖プライマー(配列番号:34および配列番号:35)は塩基134〜110および塩基253〜230にまたがる。PCRにより挿入されたマッピングされた配列におけるエラーをすべて修正した。5'プライマーヌクレオチド1〜25(配列番号:36)および3'プライマーヌクレオチド361〜341(配列番号:37)を用いて再度PCRを行った。
【0120】
合成可変領域を、IgGヒト・不変領域を伴ったキメラな重鎖構築物由来の合成シグナル配列(配列番号:5および6)とともに、発現ベクターpCD中に連結した。合成Vおよびシグナル配列ならびにアミノ酸配列を図4に示す[配列番号:11および12]。CDRsのアミノ酸配列[配列番号:22、24および26]はネズミ・3B9のCDRsと同一である。しかしながら、これらのCDRsに対するコーディング配列[配列番号:54、55および56]はネズミ・3B9のコーディング配列[配列番号:21、23および25]とは異なる。得られた発現ベクターIL4hzhc1−1−Pcdを図9に示す。
【0121】
もともと存在する軽鎖枠組み構造のCDR遺伝子領域を制限消化して除去し、以下の合成されたIL4CDR遺伝子により置換した。
【0122】
CDR1に関しては:
配列番号:38:
5'CTAGCTGTGTCTCTGGGCGAGAGGGCCACCATCAACTGCAAGG3'
配列番号:39:
CCTTGCAGTTGATGGTGGCCCTCTCGCCCAGAGACACAG
配列番号:40:
TCGAGAGGCCTCCCAAAGTGTTGATTATGATGGTGATAGTTATATGAACTGGTATCAGCAGAAACCC
配列番号:41
GGGTTTCTGCTGATACCAGTTCATATAACTATCACCATCATAATCAACACTTTGGGAGGCCTC
【0123】
CDR2に関しては:
配列番号:44
GGGCAGCCTCCTAAGTTGCTCATTTACGCTGCATCCAATCTAGAATCTGGGGTAC
配列番号:45
CCCAGATTCTAGATTGGATGCAGCGTAAATGAGCAACTTAGGAGGCTGCCC
【0124】
CDR3に関しては:
配列番号:42
ATACTACTGTCAGCAAAGTAATGAGGATCCTCCGAGGTTCGGCGGAGGGAC
配列番号:43
CTTGGTCCCTCCGCCGAACCTCGGAGGATCCTCATTACTTTGCTGACAGTAGT
【0125】
合成Vおよびシグナル配列のヌクレオチドならびにアミノ酸配列を図5に示す[配列番号:13および14]。はじめの2個のCDRのアミノ酸配列[配列番号:16および18]はネズミの3B9 CDRsと同一である。しかしながら、はじめのCDR[配列番号:53]に対するコーディング配列はネズミ・3B9のコーディング配列[配列番号:15とは異なる。さらに、最後のCDRにおいて、3B9アミノ酸配列の2個のヒト化構築物を構築した。1つは配列番号:28であり、無処理のネズミ・3B9配列[配列番号:20]とはただ1つのアミノ酸が異なる。配列番号:28は配列番号:27によりコードされている。合成可変軽鎖領域を、シグナル配列[配列番号:7および8]とともに発現ベクター中に連結した。得られた発現ベクターの1つであるIL4hzlc1−0−Pcnを図10に示す。
これらの合成可変軽鎖および/または重鎖配列をヒト化抗体の構築に用いた。
【実施例4】
【0126】
実施例4−COSおよびCHO細胞におけるヒト化MAbの発現
に関してはpUC18サブクローンを作成してヒト・抗体からもともと得られたシグナル配列(配列番号:5)を付加した。Vに関してはpUC18サブクローンを作成してシグナク配列(配列番号:7)を付加した。
【0127】
IgGイソタイプ由来のヒト化重鎖は、アミノ酸レベルにおいて、3B9由来のネズミ・重鎖と89.3%の相同性(84.3%が同一)を示す。この合成Vは、配列番号:11および12のアミノ酸20〜141において提供される。 ヒト化軽鎖であるヒト・カッパ鎖は、アミノ酸レベルにおいて、3B9と92.0%の相同性(86.6%が同一)を示す。3B9のDRsを含んでいるこの合成V[配列番号:13および14のアミノ酸21〜131]を設計し、合成重鎖について上で説明したように合成した。
【0128】
慣用的方法[マニアティスら,上で引用]により、ヒト化重鎖または軽鎖いずれかの可変領域に結合したそれぞれのシグナルを含むDNAフラグメントを、下記実施例5で製造される、キメラなCMVプロモーターおよびヒト・重鎖またはヒト・軽鎖不変領域を含むpUC19をベースにした哺乳動物細胞発現プラスミド中に挿入して、プラスミドIL4hzhc1−1Pcd(重鎖)[図9]およびIL4hzlc1−0−Pcn(軽鎖)[図10]を得た。HZHCおよびHZLCプラスミドをCOS細胞中に同時トランスフェクションし、3日および5日後にヒト化抗体の存在についてすぐ上で説明したELISAにより上清をアッセイした。別のヒト化抗体を構築したがIgG4イソタイプを用いなかった。
【0129】
上記実施例は、代表的な人工抗体の調製を説明するものである。慣用的手段により得られた他の抗IL4抗体(例えば、6A1−実施例7)を用いて、同様の方法により他の人工抗体を得た。
【実施例5】
【0130】
実施例5−キメラ抗体の構築
A. 元のマウス・Mab 3B9からネズミ・可変重鎖領域をEcoRI−BstEII制限フラグメントとして単離することによりキメラな重鎖を構築した。小型のDNAオリゴヌクレオチドを設計し、合成してネズミ・可変領域とヒト・IgG1不変領域を結合した(BstEII−ApaI):
5’プライマー:配列番号:50:
GTCACCGTCTCCTCAGCTAGCACCAAGGGGC
3’プライマー:配列番号:51:
CTTGGTGCTAGCTGAGGAGACG
【0131】
これら2個のフラグメントを、すでにヒト・IgG1不変領域をコードしているプラスミドpCD(図7参照)(EcoRIおよびApaIで消化)中に連結した。このクローンは発現しなかった。それゆえ、野生型5'UTRおよびシグナル配列を欠失させ、配列番号:5および6で置き換えた。
【0132】
都合のよい制限エンドヌクレアーゼ部位がシグナル配列の3'末端において使用できなかったので、PCRによりBstEII部位を導入した(すなわち沈黙の変異)。以下のPCRプライマーを用いた:
配列番号:48:5'プライマー:
5'CAGGTTACCCTGAAAGAGTC3'
配列番号:49:3'プライマー:
5'GAAGTAGTCCTTGACCAG3'
【0133】
次いで、BstEII−PstI制限フラグメントをこのプラスミドから単離した。次いで、新たなシグナル配列および5'UTRを消化し、EcoRIおよびBstEII末端を有するように合成した。
配列番号:46:5'プライマー:
AATTCGAGGACGCCAGCAACATGGTGTTGCAGACCCAGGTCTTCATTTCTCTGTTGCTCTGGATCTCTGGTGCCTACGGGCAG
配列番号:47:3'プライマー:
GTAACCTGCCCGTAGGCACCAGAGATCCAGAGCAACAGAGAAATGAAGACCTGGGTCTGCAACACCATGTTGCTGGCGTCCTCG
【0134】
pGEM72f(+)[プロメガ(Promega)社製]中に組み込まれた元のネズミ・3B9軽鎖にPCR法を適用することにより、キメラな軽鎖を構築した。使用プライマーは、5'末端(EcoRI)においては市販されているpUC18ユニバーサルリバースプライマー、およびマウス・可変領域をヒト・不変領域に融合させるために用いられるNarI部位を導入する3'プライマー
5'CATCTAGATGGCGCCGCCACAGTACGTTTGATCTCCAGCTTGGTCCC3'
[配列番号:52]
であった。次いで、この可変領域を、すでにヒト・カッパ領域を含んでいる発現ベクターpCDN(EcoRI NarI)(図8)中に連結した。
【0135】
3日後および5日後に培養上清を集め、以下に説明するELISAによりアッセイした。ELISAプレートを、ヒト・抗体のFcフラグメントに特異的な0.1μgのヤギ・抗体で被覆した。培養上清を添加して1時間おいた。ヒト・IgG抗体全体に特異的なセイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ結合ヤギ・抗体を添加した。次いで、ABTSペルオキシダーゼ基質(メリーランド州ゲイサースバーグ(Gaithersburg)のキルケガード・アンド・ペリー・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド(Kirkegaard & Perry Laboratories Inc.)社製)を添加して1時間おいた。キメラ抗体の発現を検出した。2回目のELISAにおいて、キメラ抗体を含有するCOS細胞上清が特異的に組み換え型ヒト・IL4蛋白に結合した。この結果により、IL4に特異的な抗体をコードしている遺伝子がクローン化されたことが確認された。
【0136】
B. このキメラ重鎖からヒト化重鎖を得ることもできる。ヒト・枠組み構造中にネズミ・CDRsを挿入することによりヒト化重鎖を設計した。選択されたヒト・枠組み構造は上記のようなものであり、ネズミ・3B9のVに基づくSwiss蛋白データ中の最も相同的な蛋白配列である(配列番号:4のアミノ酸20〜140)。このヒト化重鎖配列(EcoRI ApaI)を合成し、PCRを行って上記のごとくフィル・インし、DNAを増幅した。この合成可変領域を、キメラな重鎖構築物由来の合成シグナル配列(配列番号:5および6)ならびにIgGヒト・不変領域と一緒に発現ベクターpCD(EcoRI ApaI)中に連結した。
【0137】
同様に、ヒト化軽鎖を重鎖について説明したようにしてキメラな軽鎖から誘導することができる。この遺伝子(EcoRV NarI)も合成した。ヒト化Vを、シグナル配列(EcoRI EcoRV)とともに、EcoRI EcoRVで消化された発現ベクターpCN中に連結した。該発現ベクターはヒト・カッパ不変領域を提供した。
【実施例6】
【0138】
実施例6−精製および熱力学−ヒト化MAb
CHOにより発現されたキメラかつヒト化された3B9の精製を、慣用的な蛋白A(またはG)アフィニティークロマトグラフィー、次いで、イオン交換および分子ふるいクロマトグラフィーにより行うことができる。他のMAbs(例えば、呼吸器合胞体ウイルスおよびマラリア・サーカムスポロゾイト抗原)の95%より高い純度での精製に同様のプロセスがうまく用いられている。
【0139】
ヒト化MAb3B9およびネズミ・3B9(実施例1)に対するIL4の結合のアフィニテイーおよび詳細な熱力学を、滴定微小熱量測定(titration microcalorimetry)により調べた。この方法は、固有の反応熱によって結合反応を測定するものである(例えば、ワイスマン(Wiseman)ら,アナリティカル・バイオケミストリー(Anal.Biochem.),第179巻:131〜137頁(1989年)参照)。両方のMAbsのアフィニティーは強固すぎて室温では直接測定できないことがわかった。よって、以下の熱力学的アプローチを採用した:i)アフィニティーが十分弱く直接測定可能である60℃においてアフィニティーを測定した;およびii)結合エンタルピーの温度依存性を30〜60℃で測定した。これらのデータを合わせて、ギッブス−ヘルムホルツの等式を用いて広範囲の温度におけるアフィニティーの計算が可能となる。
【0140】
ヒト化およびネズミの3B9抗体のIL4結合の熱力学のまとめを表1に示す。自由エネルギー、エンタルピーおよび2つのMAbsの熱容量の変化に基づくと、結合の熱力学は区別できないものである。
【表1】

【実施例7】
【0141】
実施例7−ラット・MAbの製造および特徴付け
高アフィニティー結合に関して選択されたMAb 6A1は、実施例1においてマウスに関して説明したのと同じ免疫プロトコールを用いて免疫されたラットから誘導されたものであった。6A1は、ヒト・IL4で免疫されたラットから調製したハイブリドーマ(特別には、ハイブリドーマ3426A11C1B9)から選択された。
【0142】
ベティ(Beatty)ら,ジャーナル・オブ・イミュノロジカル・メソッズ(J.Immunol.Methods),第100巻:173〜179頁(1987年)記載のように6A1のKを計算すると2x10−10Mであった。
【0143】
ハイブリドーマ3426A11C1B9は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に従い、1993年10月6日に、英国、SP40JG、ウィルトシャー、サリスベリー、ポートン・ダウン(Porton Down,Salisbury,Wiltshire,SP4 0JG,United Kingdom)のヨーロピアン・コレクション・オブ・アニマル・セル・カルチャーズ(ECACC)、パブリック・ヘルス・ラボラトリー・サービス・センター・フォー・アプライド・マイクロバイオロジー・アンド・リサーチ(European Collection of Animal Cell Cultures(ECACC),Public Health Laboratory Service Centre for Applied Microbiology & Research)に、受託番号93100620の下、寄託された。
【実施例8】
【0144】
実施例8−MAbsの生物学的活性: 3B9(ヒト化)、3B9(ネズミ)および6A1
下記方法を用いて以下のアッセイを行った。
【0145】
A. 糖鎖付加された組み換え型ヒト・IL4に対する結合
上で同定した抗体を、イー・コリにおいて生産された非糖鎖付加組み換え型ヒト・IL4(rhIL4)に対して生起させた。無処理のヒト・IL4が糖鎖付加されているため、哺乳動物細胞系により分泌された物質に対する結合を確認することが重要であった。3B9は、糖鎖付加および非糖鎖付加ヒト・組み換え型IL4の両方に対して等しく十分に結合し、それゆえ、3B9は、天然のヒト・IL4上でマスクされていると考えられるエピトープには指向されない。
【0146】
B. 受容体へのIL4結合に対する阻害
細胞1個あたり約6000個の受容体を有するテナガザル細胞系MLA[ATCC TIB201]に結合する125I−rhIL4を用いてIL4のその受容体への結合を阻害する3B9の能力を研究した。MLA細胞を125I−IL4とともに37℃で30分インキュベーションした。油グラジエントによる遠心分離により細胞に結合した125I−IL4を分離した後放射活性の取り込みをガンマカウンターで調べた。100倍モル過剰の非標識IL4の存在下においてインキュベーションすることにより非特異的結合を調べた[パーク(Park)ら,ジャーナル・オブ・イクスペリメンタル・メディシン(J.Exp.Med.),第166巻:476〜488頁(1987年)]。IL4(添加)量が83pMである場合、このアッセイにおける非標識IL4に対するIC50値は22pMであった。インタクトなネズミ・(IgG)3B9に対するIC50は63pMであり、Fabフラグメントに対しては93pMであった。別の濃度(218pM)におけるネズミ(IgG)3B9のアッセイ量は109pMであった。
【0147】
C. リンパ球増殖に対する阻害
スピッツ(Spits)ら,ジャーナル・オブ・イミュノロジー(J.Immunol.),第139巻:1142〜1147頁(1987年)記載の方法を用いて、ヒト・末梢血リンパ球を、フィトヘマグルチニン、T細胞マイトジェンとともに3日間インキュベーションしてIL4受容体をアップレギュレーションした。次いで、得られた幼若細胞をIL4でさらに3日間刺激した。Hチミジンの取り込みにより増殖を測定した。以下のように変更されたカラード(Callard)ら,リンホカインズ・アンド・インフェクションズ.ア・プラクティカル・アプローチ(Lymphokines and Infections. A Practical Approach),第19章,345頁のアッセイによりB細胞の増殖を測定した。精製されたヒト・扁桃B細胞をIL4および固定化抗IgMで3日間刺激した。Hチミジンの取り込みにより増殖を測定した。
【0148】
3B9(ネズミ)は、133pMのIL4で刺激されたヒト・末梢血Tリンパ球および167pMのIL4により刺激されたヒト・扁桃Bリンパ球によるHチミジンの取り込みを阻害した。IL2により刺激されたTリンパ球は影響を受けなかった。T細胞の増殖に対する阻害についてのIC50は30pMであり、B細胞の増殖に関しては103pMであった。3B9(ネズミ)のFabフラグメントに関する対応値は108および393pMであった。
【0149】
D. CD23誘導に対する阻害
CD23はIgE(FcERII)に対する低アフィニティー受容体であり、IgE産生の不可欠条件として、低濃度IL4により休止B細胞の膜上に誘導される。精製ヒト・扁桃B細胞をIL4で2日間刺激する。CD23受容体を発現している細胞のパーセンテージを、流動細胞計測法[デフランス(Defrance)ら,ジャーナル・オブ・イクスペリメンタル・メディシン(J.Exp.Med.)第165巻:1459〜1467頁(1987年)]により決定する。3B9(ネズミ)は、8.3pMのIL4で刺激されたヒト・扁桃Bリンパ球上のCD23発現を阻害し、IC50値は136pMであった。
【0150】
E. IgE分泌に対する阻害
IL4がEC50濃度で添加される他のアッセイ[ペア(Pere)ら,プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・ユーエスエイ(Proc.Natl.Acad.Sci.),第85巻:6880〜6884頁(1988年)]とは異なり、この系における固有のばらつきを減少させるために、最大の分泌を与える濃度のIL4の存在下でIgE分泌を調べた。T細胞の増殖を以下のように測定した。ヒト・末梢血リンパ球をIL4とともに10〜18日、好ましくは12日間インキュベーションする。培養上清中のIgE濃度をELISAにより決定する。
【0151】
1.7nMのIL4の存在下において、IgE分泌は3B9(ネズミ)および3B9のFabフラグメントにより阻害され、IC50値はそれぞれ1.9および5.0nMであった。より低濃度のIL4(667pM)を用いて実験を繰り返すと、IC50値は3B9(ネズミ)に関して0.65nMに減少した。試験した濃度範囲においては、IL4に対する抗体(IgG)のモル比は不変のまま
(1:1)とした。
【0152】
F. データ解釈のまとめ
バイオアッセイにおいて、機能の50%を阻害するのに必要とされる種々の
MAbsに対するIL4のモル比を表2に示す。
【表2】

【0153】
IgE分泌を除くすべてのアッセイにおいて、ほぼED50濃度でIL4を添加した。50%阻害に要するIL4に対する抗体のモル比は、2種のリンパ球の増殖アッセイにおいてはヒト化3B9、ネズミ3B9、および6A1に関して同様であったが、CD23誘導アッセイにおいてはヒト化3B9に関して高かった。後者は、明らかに低い(〜5%)受容体占有率を要求する特に敏感なアッセイであり(クルセ(Kruse)ら,EMBO J.,第12巻:5121頁(1993年))、ネズミ・3B9について得られた結果から明らかなようにアッセイ間のばらつきがある。
【0154】
ラット・6A1とネズミ・3B9の活性の比較により同様の機能的効果のプロフィールが示されたが、6A1は放射標識されたIL4のその受容体への結合を十分には阻害しなかったことが示された。受容体結合アッセイに使用した放射標識IL4は、近接可能なチロシン(残基124)においてヨウ素化されていると考えられる。非標識またはヨウ素化IL4のいずれかにより誘導されたCD23発現を阻害する6A1の能力を比較した場合、阻害はヨウ素化されたリガンドに対してはあまり有効でないことがわかった。これらの結果は、6A1がチロシン124の領域においてIL4に結合するがチロシン124には特異的でないことを示す。
【0155】
よって、このデータによれば、6A1は、3B9とは非常に異なるIL4の領域に結合する、高アフィニティーを有する中和抗体である。
【実施例9】
【0156】
実施例9−薬物動態学
オスのスプラグ・ダウリー(Sprague Dawley)ラットにおいてヒト化3B9の薬物動態学を調べた。4匹の動物にヒト化3B9を静脈内に濃縮塊として
1mg/kgの用量で投与し、投与後5週間採血を行った。循環しているヒト・IgGのみならず組み換え型ヒト・IL4に対するその結合能をも確認するように設計されたIL−4/抗ヒト・IgGサンドイッチELISAを用いて、ヒト化3B9の血漿濃度を決定した。
【0157】
この研究の結果を表3にまとめる。
【表3】


【0158】
データは、動物間のばらつきは比較的小さく、ヒト化3B9の血漿からの消失は2局面からなるように思われた。見かけの血漿クリアランスは低かった(0.5mL/h/kg)。半減期は11日と思われた。よって、CHO細胞由来のヒト化3B9の薬物動態学的特性は、ラットにおける他のヒト化モノクローナル抗体と矛盾しない。ラットにおけるヒト化3B9の長い循環半減期は、ヒトに投与した場合に、ヒト化3B9は長時間にわたり有効である可能性があることも示唆する。
【0159】
本発明の多くの修飾および変法は、上記明細書に包含され、当業者に明らかである。例えば、上記の代表的な抗体以外のヒト・枠組み構造領域またはその修飾物をヒト化抗体の構築に使用してもよい。本発明の組成物および方法に対するかかる修飾および変更は、添付した請求の範囲内に包含されると確信する。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明は、IL4および過剰のIgE産生により伝達される症状の治療および診断に有用な蛋白、より詳細には、キメラおよびヒト化IL4抗体を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】図1[配列番号:1および2]は、ネズミ・IL4抗体3B9およびヒト/ネズミ・3B9キメラ抗体に関する軽鎖可変領域(アミノ酸21〜132)ならびに無処理のシグナル配列(アミノ酸1〜20)を示す。下線を付した部分はCDRs[配列番号:15および16;配列番号:17および18;配列番号:19および20]を示す。
【図2】図2[配列番号:3および4]は、ネズミ・3B9に関する重鎖可変領域(アミノ酸20〜140)、ならびに無処理のシグナル配列(アミノ酸1〜19)を示す。下線を付した部分はCDRs[配列番号:21および22;配列番号:23および24;配列番号:25および26]を示す。
【図3】図3[配列番号:9および10]は、ヒト/ネズミ3B9キメラ抗体の重鎖可変領域(アミノ酸21〜141)ならびにそのシグナル配列(アミノ酸1〜19:配列番号:5および6)を示す。下線を付した部分は、3B9由来のCDRs[配列番号:21および22;配列番号:23および24;配列番号:25および26]を示す。
【図4】図4[配列番号:11および12]は、ヒト化3B9抗体の重鎖可変領域(アミノ酸20〜141)ならびにシグナル配列(アミノ酸1〜19:配列番号:5および6)を示す。下線を付した部分は、3B9由来のCDRs[配列番号:54および22;配列番号:55および24;配列番号:56および26]を示す。
【図5】図5[配列番号:13および14]は、ヒト化3B9抗体の軽鎖可変領域(アミノ酸21〜131)およびシグナル配列(アミノ酸1〜20:配列番号:7および8)を示す。下線を付した部分は、3B9由来のCDRs[配列番号:53および16;配列番号:17および18;配列番号:27および28]を示す。
【図6】図6A[配列番号:5および6]は、下記実施例4に用いる重鎖シグナル配列である。図6B[配列番号:7および8]は、下記実施例4に用いる軽鎖シグナル配列である。
【図7】図7は、哺乳動物細胞においてキメラなIL4重鎖を発現するために使用されるプラスミドpIL4chhc3−pcdの図解である。該プラスミドは、ベータラクタマーゼ遺伝子(BETA LAC)、SV−40複製開始点(SV40)、サイトメガロウイルス・プロモーター配列(CMV)、シグナル配列、配列番号:9および10のキメラな可変部重鎖、ヒト・重鎖不変領域、ウシ・成長ホルモン由来のポリAシグナル(BGH)、ベータグロブリンのプロモーター(beta glopro)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(DHFR)、およびpUC19バックグラウンド中のもう1つのBGH配列のポリAシグナルを含む。
【図8】図8は、哺乳動物細胞において配列番号:1および2のキメラなIL4軽鎖可変領域を発現するために使用されるプラスミドpIL4chlc−pcdnの図解である。該プラスミドは、キメラな重鎖可変領域ではなくキメラな軽鎖可変領域、ヒト・軽鎖不変領域およびDHFRに加えてネオマイシン遺伝子(Neo)を含むことにより、図7のプラスミドと異なる。
【図9】図9は、哺乳動物細胞において配列番号:11および12の合成IL4重鎖可変領域を発現するために用いられるプラスミドpIL4hzhc−1−pcdの図解である。該プラスミドは、キメラな重鎖の可変領域ではなくヒト化重鎖可変領域を含むことにより、図7のプラスミドと異なる。
【図10】図10は、哺乳動物細胞において配列番号:13および14のヒト化IL4軽鎖可変領域を発現するために使用されるプラスミドpIL4hzlc1−0−Pcnの図解である。該プラスミドは、キメラな軽鎖の可変領域ではなくヒト化軽鎖可変領域を含み、DHFR遺伝子をコードしないことにより、図7のプラスミドとは異なる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト・IL4に対して高力価のモノクローナル抗体を含む、ヒトにおける過剰な免疫グロブリンE産生に関連したアレルギーおよび他の症状を診断するための組成物であって、生物学的液体の試料をヒト・IL4に対して高力価のモノクローナル抗体と接触させ、次いで、該モノクローナク抗体とヒト・インターロイキン−4との間の結合の生起をアッセイすることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
以下のa)、b):
a)ヒト・インターロイキン−4に対するモノクローナル抗体の分泌により特徴づけられるハイブリドーマ細胞系を調製すること;次いで、
b)アルデヒド結合ヒト・インターロイキン−4またはビオチン化ヒト・インターロイキン−4を用いて該ハイブリドーマ細胞系をスクリーニングすること
からなる、ヒト・インターロイキン−4に対して高力価を有するモノクローナル抗体をスクリーニングする方法。
【請求項3】
アルデヒド結合ヒト・インターロイキン−4またはビオチン化ヒト・インターロイキン−4を用いてハイブリドーマ生成物のライブラリーをスクリーニングすることにより得られる、ヒト・インターロイキン−4に対して高力価を有する中和モノクローナル抗体、そのFabフラグメントもしくはF(ab)フラグメント。
【請求項4】
ヒト・インターロイキン−4に特異的であり、約2x10−10Mに等しいかまたはそれ未満の解離定数により特徴づけられる結合アフィニティーを有する齧歯類の中和モノクローナル抗体。
【請求項5】
該齧歯類がマウスである請求項4記載のモノクローナク抗体。
【請求項6】
配列番号:2の軽鎖アミノ酸配列、および配列番号:4の重鎖アミノ酸配列からなる請求項5記載のモノクローナル抗体。
【請求項7】
該齧歯類がラットである請求項4記載のモノクローナル抗体。
【請求項8】
6A1の同定特性を有する請求項7記載のモノクローナル抗体。
【請求項9】
細胞系3426A11C1B9の同定特性を有するハイブリドーマ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−45831(P2007−45831A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243117(P2006−243117)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【分割の表示】特願平7−508835の分割
【原出願日】平成6年9月7日(1994.9.7)
【出願人】(591002957)スミスクライン・ビーチャム・コーポレイション (341)
【氏名又は名称原語表記】SMITHKLINE BEECHAM CORPORATION
【出願人】(595047190)スミスクライン ビーチャム ピー エル シー (34)
【氏名又は名称原語表記】SmithKline Beecham p.l.c.
【Fターム(参考)】