説明

IP電話端末

【課題】IP電話システムでは、システム全体のバックアップ電源を準備しないと、停電時の発着信ができない。とくに着信の代替手段がない。
【解決手段】IP電話端末300は、受電検出部305とバックアップ電源304とネットワークサービス起動部302とを搭載し、停電を検出したとき、転送電話サービスを使ってアナログ電話などへ転送させる。また、停電からの復旧を検出したとき、IP電話端末300は、転送電話サービスによる転送を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はIP電話端末に係り、特に停電時にネットワークサービスを起動するIP電話端末に関する。
【背景技術】
【0002】
通信事業者は、商用電源が停電しても電話サービスを継続できるように交換機に、バッテリと自家発電機からなるバックアップ電源を設けている。特に、アナログ電話やISDN電話は、交換機からの局給電のみで動作するため、商用電源が停電しても発着信が可能である。また、携帯電話も、移動体通信事業者の基地局と利用者の携帯電話端末のバッテリが無くなるまでは、発着信が可能である。
【0003】
ところが、IP電話システムでは、ONU、VoIPアダプタ(VoIPゲートウエイ)、ルータ、呼制御サーバ、ハブ、IP電話端末などIP電話を使うために必要な機器の全ての電源をバックアップしないと、商用電源の停電と同時に発信も着信も出来ない。発信できない問題は、停電用に準備しておくアナログ電話、ISDN電話、携帯電話を利用することで軽減される。しかし、着信については、準備されたアナログ電話等の番号を知らない人からは、不可能となる。これは、特に業務用電話では大きな問題となっている。 もちろん商用電源の停電時には、転送電話サービスや留守番電話サービスの開始設定通知をアナログ電話、ISDN電話、携帯電話などのいずれかを使って行うことは可能である。しかし、停電直後のパニック状態の中では、速やかなサービス開始設定通知が困難である。
【0004】
また、停電など非常時に備えて設けられたアナログ回線やISDN回線は、日常業務で使うIP電話回線に比べて回線数が少ないこともあり、全ての着信を転送して応答することが困難である。
【0005】
近年、自然災害に伴う停電は減少している。しかし、ビル等では受変電設備の法定点検を年1回実施する必要があり、年1回停電が発生する。
この停電時の着信対応として、特許文献1では、停電監視およびIP電話機制御装置を通信網内に挿入することにより停電時における通信網からの着信に対応させている。
非特許文献1には、ネットワークサービスの一例として、かかってきた電話を予め設定しておいた電話番号に転送するサービスが記載されている。このサービスは外出先から転送の開始/停止をリモートコントロールできることが、記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−323259号公報
【非特許文献1】NTTサービス窓口、”ボイスワープ”、[online]、NTTサービス窓口、[平成19年7月6日検索]、インターネット<URL:http://www.ntt-flets.jp/add/vw.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された技術では、停電時の発信および着信のための追加の機器および停電時の発信および着信のための追加の機器を動作させ続けるためのシステム全体の電源バックアップ手段を必要としていた。
【0008】
本発明は懸かる事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、商用電源が停電しても、ネットワークサーバに設定されたネットワークサービスを開始させるIP電話端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題は、外部電源からの受電の停止を検出する受電停止検出手段と、内部への電力を所定の時間だけ供給する電源バックアップ手段と、ネットワークサービスの起動を要求するネットワークサービス自動起動手段とを有し、受電停止検出手段が外部電源からの受電の停止を検出したとき、電源バックアップ手段は電源供給を開始するとともに、ネットワークサービス自動起動手段は予め定められたアドレスにネットワークサービスの起動要求信号を送信するIP電話端末により、達成できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、小規模のバックアップ電源で、ネットワークサーバに設定された転送サービスを開始させるIP電話端末を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明の実施の形態について、実施例を用い図面を参照しながら説明する。なお、実質同一部位には同じ参照番号を振り、説明は繰り返さない。
【0012】
実施例について、図1から図4を参照して説明する。ここで、図1は電話ネットワークのブロック図である。図2はIP電話端末の機能ブロック図である。図3はIP電話端末の停電/受電処理フローチャートである。図4はIP電話端末とネットワークサーバと電話機と携帯電話との間の処理シーケンス図である。
【0013】
図1において、電話ネットワーク1000は、WAN(Wide Area Network)400に接続された電話機500とネットワークサーバ100と携帯電話基地局900とネットワーク終端装置700と、ネットワーク終端装置700に接続されたLAN(Local Area Network)200に、さらに接続されたローカルサーバ800とIP電話機300と、携帯基地局と無線接続された携帯電話機600とから構成されている。
【0014】
IP電話端末300は、LAN200に接続され電源バックアップ機能を持ったネットワーク終端装置700を介してWAN400へと接続される。ここで、LAN200は通常のPBXやボタン電話主装置等の内線であっても良い。また、WAN400はアナログ網、ISDN網等の電話網を含む。携帯電話600は、予め登録されたIP電話端末300宛着信の転送先となる携帯電話である。基地局900は、携帯端末600と通信する無線端末の基地局である。
【0015】
ネットワークサーバ100は、WAN400側にあり、通常の呼接続のほか、転送電話・通話録音・着信通知などのネットワークサービスを提供する。電話機500は、WAN400に接続された一般の電話機である。
ローカルサーバ800は、通常時IP電話端末300を含むLAN200に接続された電話システムの発着信を制御する。
【0016】
電話ネットワーク1000において、電話機500からIP電話端末300に発信するとき、ネットワークサーバ100、ネットワーク終端装置700、ローカルサーバ800がこの順で呼を接続する。また、電話機500から携帯電話600に発信するとき、ネットワークサーバ100と、携帯電話基地局900とがこの順で呼を接続する。
【0017】
通常、LAN200側のそれぞれの機器は商用電源より受電して動作している。ここで、商用電源が停電するとネットワーク終端装置700は電源バックアップ機能による動作に切り替わり、IP電話端末300も後述するバックアップ電源部による動作に切り替わる。IP電話端末300は、またネットワーク終端装置700を介してWAN400側にあるネットワークサーバ100に対して、予め定められたネットワークサービスの起動を要求する信号を送信する。
【0018】
図2を参照して、IP電話端末の機能ブロックを説明する。図2において、IP電話端末300は、受電部310と、バックアップ電源部304と、受電部310と受電部310の電源スイッチ311とを監視する受電検出部305と、受電検出部305の制御に基づいて受電部310とバックアップ電源部との一方を選択し、IP電話端末300の各部に供給する電源切替部306と、受電検出部305の制御に基づいて、転送/代理応答等のネットワークサービスを起動/停止するネットワークサービス起動部302と、ネットワークサービス起動部302に接続され受電停止履歴を管理する受電停止履歴記録部307と、ネットワークサービス起動部302とLAN200とを接続する通信制御部301とから構成される。なお、図2において、IP電話端末としての電話機能の機能ブロック(マンマシンインターフェース部他)は、記載を省いた。ネットワークサービス起動部302は、コンピュータ上で実行されるプログラムによって実現する。呼接続等のIP電話端末としての機能も、おなじコンピュータ上で実行されるプログラムによって実現する。
【0019】
図2において、通信制御部301は、LAN200との接続部であり音声や制御データの送受信を行う。ネットワークサービス起動部302は、受電検出部305から受電停止検出を通知されると受電停止履歴記録部307へ電源スイッチ311がオン状態で受電停止したことを受電停止履歴として保存する。ネットワークサービス起動部302は、また通信制御部301を介してネットワークサービス起動要求をLAN200へ送信する。さらにネットワークサービス起動部302は、受電検出部305から受電再開を通知されると受電停止履歴記録部307の受電停止履歴を確認し電源スイッチ311がオン状態で受電停止と記録されていたなら通信制御部301を介してネットワークサービス停止要求を送信する。
【0020】
受電部310は、商用電源からの受電を行い、電源供給が絶たれても状態を保持する自己保持型の電源スイッチ311を備えている。バックアップ電源部304は、電話端末に搭載の予備電源(2次電池または1次電池)である。 受電検出部305は、受電部303の受電の停止および復旧を検出し、その状態をネットワークサービス起動部302へと通知する。電源切替部306は、受電検出部305からの指示により電話端末内に供給する電源元を受電部310またはバックアップ電源部304のどちらかに切替える。受電停止履歴記録部307は、IP電話端末300の受電停止履歴を保存する。
【0021】
なお、ネットワークサービス起動部302に図示しない乱数タイマ(0〜5分)を設けて、受電検出部の通知(受電停止/受電再開)から、サービス起動/停止要求の送信までの時間をランダムに遅延させても良い。これは、停電によるネットワークサーバ100へのサービス起動/停止要求の輻輳を防止するためである。
【0022】
図3を参照して、IP電話端末300の処理を説明する。図3において、フローは、IP電話端末300が商用電源にて動作開始した時にSTARTする。IP電話端末300は、受電検出部305が受電の停止を検出判定する(S301)。YESなら、受電検出部305は、受電部310の電源スイッチ311の状態がONか判定する(S302)。電源スイッチ311がOFFの場合(S302:NO)、受電検出部305は、通常の停止と見なし特別な処理は行わず、終了する。電源スイッチ311がONであれば(S302:YES)、受電検出部305は、ネットワークサービス起動部302に受電の停止を通知する。ネットワークサービス起動部302は、受電検出部305からの通知により通信制御部301を介してLAN200へ予め登録しておいたネットワークサービスの起動を要求する通知を送出する(S303)。ネットワークサービス起動部302は、また、受電停止履歴記録部307へ電源スイッチ311がON状態で受電停止したことを受電停止履歴として記録する(S304)。この状態で、IP電話端末300は、処理を終了する。なお、図示の簡便のため省いたが、受電検出部305は、電源切替部306にも受電の停止を通知する。受電停止の通知を受信した電源切替部306は、各部に供給する電源をバックアップ電源部304に切替える。また、電源切替部306は、受電停止履歴の記録が終了した時点で、受電部310側に切戻す。ここで、電源切替部306は、切替え用リレーの受電部310側の接点をデフォルト(電源供給を絶たれたときの選択側)としておけば、切戻しをせずに、バッテリ供給が切れるのを待っても良い。
【0023】
ステップ301において、受電検出部305が受電を検出したなら(S301:NO)、受電検出部305は、ネットワークサービス起動部302へ受電開始を通知する。ネットワークサービス起動部302は、受電停止履歴記録部307にある受電停止履歴を確認する(S305)。ステップ304の電源スイッチがオン状態で受電停止されたことが記録されていたならば(S305:YES)、ネットワークサービス起動部302は受電の復旧と判断し、通信制御部301を介してLAN200へネットワークサービスの停止を要求する通知を送信し(S306)、受電停止履歴記録部307の受電停止履歴を削除して(S307)、受電監視を継続するためステップ301に戻る。受電停止履歴記録部307に受電停止履歴が無かったならば(S305:NO)、ネットワークサービス起動部302は、なにもせずステップ301に戻る。
【0024】
図4を参照して、受電停止時と受電再開時の処理シーケンスを説明する。なお、図示の簡便のため、ネットワーク終端装置700、携帯電話基地局900は、図示を省いた。また、ネットワークサービスは、事前に契約済みであることを前提としている。
【0025】
図4において、まずIP電話端末300は、受電の停止を検出する(S401)。IP電話端末300は、ネットワークサーバ100宛てに携帯電話600を転送先とする転送サービスの起動要求を送信する(S402)。転送サービスの起動要求を受け取ったネットワークサーバ100は、その内容に基づいて転送サービスを起動する(S403)。
【0026】
ここで、電話機500からIP電話端末300あての着信があったとする(S404)。ネットワークサーバ100は、転送サービスにより図示しない基地局900を介して携帯電話600へと呼び出しを行い(S405)、携帯電話600と電話機500間で通話を確立する。
【0027】
IP電話端末300は、受電の復旧を検出すると(S407)、ネットワークサーバ100へと転送サービスの停止要求を送信する(S408)。転送サービスの停止要求を受け取ったネットワークサーバ100は、転送サービスを停止する(S409)。
【0028】
上述した実施例では、携帯電話600への転送サービスを例に説明したが、アナログ電話、ISDN電話でもよい。また、転送先として無停電バックアップされている局給電で動作するLAN200内の他の電話機であっても良い。ネットワークサービスには、着呼を予め登録したアナログ電話などへ自動的に転送する転送サービス、着呼を録音する通話録音サービス、呼の着信をメールで知らせる着信通知サービス等がある。
【0029】
上述した実施例に拠れば、電話端末にバックアップ電源を搭載し、転送電話サービスを使ってアナログ電話、ISDN電話、携帯電話などへ自動的に転送を開始することができる。また、通話録音サービスを使って通話録音を開始することもできる。
【0030】
上述した実施例に拠れば、さらに、IP電話端末とそのIP電話端末の接続されているネットワーク終端装置のみを電源バックアップすれば良く、その他の機器をバックアップする必要が無い。バックアップの必要な時間も最低限ネットワークサービスの開始設定通知を送信する分だけあれば良いので小容量のバックアップ電源で済ますことが出来る。このため、電源バックアップに要する設備コストを大幅に低減できる。さらに、商用電源の停電時に、該当エリアにある電話端末が一斉にネットワークサービスの開始設定通知を行わないように開始設定通知タイミングを機器毎にずらすことが出来るので、ネットワークの負担増加により電話が繋がり難くなる問題を軽減できる効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】電話ネットワークのブロック図である。
【図2】IP電話端末の機能ブロック図である。
【図3】IP電話端末の停電/受電処理フローチャートである。
【図4】IP電話端末とネットワークサーバと電話機と携帯電話との間の処理シーケンス図である。
【符号の説明】
【0032】
100…ネットワークサーバ、200…LAN、300…IP電話端末、301…通信制御部、302…ネットワークサービス起動部、304…バックアップ電源部、305…受電検出部、306…電源切替部、307…受電停止履歴記録部、310…受電部、311…電源スイッチ、400…WAN、500…電話機、600…携帯電話機、700…ネットワーク終端装置、800…ローカルサーバ、900…携帯電話基地局、1000…電話ネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源からの受電の停止を検出する受電停止検出手段と、内部への電力を所定の時間だけ供給する電源バックアップ手段と、ネットワークサービスの起動を要求するネットワークサービス自動起動手段とを有し、
前記受電停止検出手段が外部電源からの受電の停止を検出したとき、前記電源バックアップ手段は電源供給を開始するとともに、前記ネットワークサービス自動起動手段は予め定められたアドレスにネットワークサービスの起動要求信号を送信することを特徴とするIP電話端末。
【請求項2】
請求項1に記載のIP電話端末であって、
電源スイッチの状態を検出する電源スイッチ状態検出手段と、前記電源スイッチがオン状態で受電停止したことを記録する受電停止履歴記録手段と、受電の再開を検出する受電再開検出手段とを更に有し、
前記受電再開検出手段が受電の再開を検出し、かつ前記受電停止履歴記録手段に電源スイッチがオン状態で受電停止されたことが記録されていたとき、前記ネットワークサービス自動起動手段は前記予め定められたアドレスに前記ネットワークサービスの停止要求信号を送信することを特徴とするIP電話端末。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のIP電話端末であって、
前記ネットワークサービスは、着信呼の転送や留守録音や着信通知等の不在時の対応サービスであることを特徴とするIP電話端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−33513(P2009−33513A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195829(P2007−195829)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000134707)株式会社ナカヨ通信機 (522)
【Fターム(参考)】